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2005-04-18 第162回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十七年四月十八日(月曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         松田 岩夫君     理 事                 世耕 弘成君                 直嶋 正行君                 山根 隆治君                 加藤 修一君     委 員                 大仁田 厚君                 岸  信夫君                 小林  温君                 末松 信介君                 中川 雅治君                 二之湯 智君                 長谷川憲正君                 水落 敏栄君                 大久保 勉君                 工藤堅太郎君                 田村 秀昭君                 藤末 健三君                 前田 武志君                 浮島とも子君                 澤  雄二君                 大門実紀史君    事務局側        第一特別調査室        長        三田 廣行君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題に関する調査  (「多極化時代における新たな日本外交」のう  ち、日本アジア外交中心に)     ─────────────
  2. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  国際問題に関する調査を議題といたします。  本調査会では、「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日本アジア外交日本の対米外交日本の対EU外交等について、これまで八回にわたり十六名の参考人から御意見を伺い、重点的かつ多角的な調査を進めてまいりました。  本日は、これまでの調査を踏まえ、日本アジア外交中心に、各会派からの意見表明及び委員間の意見交換を行います。  本日の議事の進め方でございますが、まず大会派順に各会派より十分以内で御意見をお述べいただきました後、午後三時ごろまでを目途に自由討議方式により委員間の意見交換を行っていただきます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、御意見のある方は順次御発言をお願いいたします。世耕弘成君
  3. 世耕弘成

    世耕弘成君 自由民主党の世耕弘成でございます。  本日は、この当調査会テーマであります「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日本アジア外交中心意見表明をさせていただくということになっていたわけですが、くしくも、正にこの今日本アジア外交というのが大きな波にのみ込まれまして、大変困難な状況にあるわけでございます。本日は個別のテーマに深くということは余り考えてはいなかったんですけれども、やはり今、国民世論が大変、特に中国で行われております反日デモに関して大きな関心を持っているということもありますので、少しそのことについてもコメントをさせていただきたいと思います。  特に、この中国反日デモに関して中国政府謝罪もしないというこの現状は、私は本当に看過し難い状況にあると思っております。外国大使館や領事館をしっかりと守るというのは当該国のこれはもう最低限の私は責務であると思っておりまして、それを積極的に行わない中国に関しては、これは非常に猛省を促したいというふうに考えております。  しかも、この一連の反日デモの中で私が非常に痛感したのは、中国には言論の自由がない、自由な言論機関がないということでございます。もし万が一日本で同じような問題が起こったら、日本ではやはりジャーナリズムがしっかりと機能をする、あるいはいろんな国民一定信頼を得ているオピニオンリーダーという人たちが出てきて、きっちりといろんな賛否両論を提示しながら世論をやはり一定の冷静な方向へ誘導していく、これが私は日本だと思っています。  例えば、北朝鮮とのサッカーの試合でいろんな心配が言われたわけですけれども、やはりこれ、日本マスコミ中心に、これは冷静に対応しよう、サッカーサッカーじゃないかという論調が展開されて、非常に静かな中で、東京で北朝鮮日本サッカーのゲームがやれたという例もあるわけでございまして、非常にやはりジャーナリズムの役割というのが重要。にもかかわらず、中国には政府によってコントロールされた言論機関か、あるいは逆に不正確な情報を垂れ流すばかりのインターネットか、これだけ、二つの情報流通しかないということが今回の問題を大きくしている一つの大きな原因ではないかというふうに思っております。  こういう国とどういうふうに向かい合っていくのか。日本外交にとって高度で、かつかなり専門的なコミュニケーション技術を取り入れた対中外交戦略というのをこれから樹立をしていかなければならないんではないかということを痛感をしております。  さて、今、中国ばかりか韓国ともいろいろ緊張した関係にあるわけでございますけれども、昔からよく外交で言われる言葉で遠交近攻という言葉があります。遠くと交わり近くとは攻め合うという趣旨だと思いますけれども、古くから、どうしても隣接する国と理屈抜きで簡単に仲良くするわけにはいかないというのが、これがもう歴史的私は事実だと思っております。ですから、中国あるいは韓国とはある程度緊張を前提とした戦略的外交展開を行っていく必要があるんじゃないかというふうに思っております。  よく日本では、アジアアジアと一くくりにして議論がされます。アジア国々はこのことについて反発をしている、アジア国々日本についてこう思っているという一把一からげの議論がよく行われるわけですが、私はやはり中国韓国とそれ以外のアジアというのは少し分けて考える必要があるんではないかというふうに思っております。アジア諸国の中には、中国韓国以外ではかなり日本に対して親密な感覚を持っている、あるいは中国が非常に勢力を伸ばしていく中で日本を軸としたもう一つの軸をつくりたいという希望を持っている国々があるということを忘れてはならないというふうに思っております。  だから、そういう意味で、日本アジア外交はどうしても対中、対韓に偏り過ぎている嫌いがあるのではないかという懸念を持っております。やはり日本のこれからアジア外交は、まず東南アジア諸国をじっくりと重視をすることはもちろんのこと、ロシアあるいはインド、さらにはアラブ諸国との交流強化をしていくことによって、かなりすそ野の広い足腰のしっかりしたアジア外交展開をしていく必要があるのではないかというふうに思います。特にインドアラブ諸国は、理屈抜き日本人を好きでいてくれる、あるいは日本のいろんな行動を非常に公平に評価してくれている、そういう国でございまして、特にこういう国と戦略的に関係強化を行っていく必要があるんではないかというふうに思っております。  そしてまた、特に今回の反日デモ等を通して、中国日本に対する厳しい反発中国国民の大半が日本人のことを嫌いだと言っている、その背景には中国愛国教育がある。そういうことを前提としますと、国連における常任理事国入りというのは、これは日本にとっては非常に戦略的に重要な意味がある、これは正に安全保障上の問題であるというふうに考えております。  中国という日本余り好感を持っていない国が常任理事国として入っていて日本が入っていない、その常任理事国でいろいろな重要な決定が行われていくというのは、これは日本安全保障上大変まずい環境だと思っておりまして、そういう視点からも、国連常任理事国入りについて日本は更なる努力を続けていかなければならない。特に中国韓国は今のところ反対意思表明をしているわけですが、彼らが具体的に反対投票権を行使しにくいぐらい多くの国々から日本常任理事国入りを支持を受けるようなそういう体制を築いていかなければならないというふうに思っております。  そういう中で、特に、東南アジア諸国やあるいはインドアラブ諸国ときっちりと交流を進めていく中で特に我々が留意しなければいけないのは、我々自身、自分の歴史認識をしっかりと整理をしていく必要があるということです。最近はどうしても、日本人も過去、日本が戦後特にどういう行動を取ってきたかということについて忘れがちでございますけれども、もう一度それを整理をして、日本教育の現場その他でしっかりと日本は戦後こういう行動を取ってきたんだということを整理をしていく必要があるんではないかというふうに思っております。  もちろん、過去、大きな戦争を起こしたことについては大変な反省を行っているわけですし、憲法においても、二度とそういう戦争を起こさないということを憲法において誓って戦争放棄をしているわけでございますし、戦後六十年間、外国で銃弾の一発も発射したことがない国であるということをまずしっかりと認識をして諸外国に伝えていかなきゃいけない。  そして、よく最近、日本人自身感覚がぶれてきているのは、何かあたかも日本が十分な戦後の補償賠償を行ってないんではないかという議論がよく出てまいります。よく新聞なんかにも出ておりますのは、ドイツはちゃんとやったのに日本はやってないではないかというような議論が出てきますが、これは認識をしっかり改めておかなければいけない。日本は、戦後、国際法上ほぼ完璧に戦後の賠償というのを行ってきているわけでございます。  具体的に申し上げますと、サンフランシスコ講和条約日本に占領若しくは損害を与えられた国には損害賠償権があるということを確認をしておりますし、そして、その中で、アメリカ、イギリス、オランダ、そしてオーストラリア、ラオス、カンボジアは請求権放棄をされましたが、それ以外の国に対しては現金若しくは現物あるいは経済協力という形でしっかりと戦後賠償を行ってきております。で、サンフランシスコ講和条約にはソ連中国は参加をしておりませんでしたけれども、ソ連とは日ソ共同宣言で、中国とは第一段階は日華平和条約請求権放棄確認をしておりますし、現在の日中についても、日中国交正常化時に中国政府は戦後の損害賠償権請求権放棄確認をしてきているわけでございまして、正に国際法上、日本は完璧な賠償対応を行ってきております。  ドイツ賠償した賠償したと言われておりますが、ドイツは戦後、分断国家となったために賠償問題を規定した講和条約は結んでおりません。ということは、国家としての賠償は一切行っておりません。よく世論が間違ってドイツ賠償していると言うのは、これはドイツ連邦補償法と言われるものでございまして、元々ドイツ国民の中のナチスの犠牲者を主たる対象とした国内法でございまして、この法律を国外のユダヤ人中心とする犠牲者にも援用する手法で個人に対して補償を行ってきたというのがドイツのやり方でございまして、日本とは全く位置付けが違う。特に、ホロコーストのようなことを起こしたドイツ日本を同列視して戦後賠償を論ずるというのは、これは誤った私は手法ではないかというふうに思っています。  このように、日本としても言うべきことをしっかりと言いながら、特にアジア諸国中心として、外交すそ野を、中韓中心とする軸から少しすそ野を広げていくということがこれからの日本アジア外交にとって重要なのではないかということを申し上げまして、私の意見表明を締めくくらせていただきます。
  4. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 山根隆治君。
  5. 山根隆治

    山根隆治君 この調査会テーマを「多極化時代における新たな日本外交」としたことが非常に時宜を得たものだったというふうに幸か不幸か思わざるを得ません。EUは二〇一〇年に経済においてアメリカを抜くということを目標にいたしております。そして、中国は二〇二〇年にアメリカ経済を抜く、そう内外に宣言をいたしている。そして、アフリカでは五十三か国がアフリカ連合をつくって、そして加盟国から五名ずつの議員を出して全アフリカ議会を既に設置している。そういう世界の流れの中で、我が国国際戦略はどのようになっていくのかという心配、思いというものが各会派共通した認識であって、このテーマになったという背景も実はあったというふうに私自身認識をいたしているところであります。  そこで、東アジア共同体というものをどのようにつくるべきか、あるいはつくれるのかということが非常な大きな私たち関心事でございました。十六名の参考人先生方、いろいろな御意見を聞かせていただく中でほぼ共通していたものは、ASEANプラス3ということが一つの国の枠としてまず基本にあるのではないかという認識の披瀝がありましたし、そのことについては私自身も共通した認識、理解を持ったものであります。  EUにおきましてはワイダー・ヨーロッパ構想というものがあるわけでございますけれども、一つ枠組みを決めた中で、さらにこのASEANプラス3に加えて南アジア西アジアオーストラリア、ニュージーランドという枠というものを少し何らかの形で広げていく。コアの部分と、そしてそれに準ずるものというものを含めてこの東アジア共同体というものを構築していく必要というのを私自身認識をいたしたわけでございます。  しかし、問題は中国にございます。今回のデモ騒動にもありますように、国民中国を見る目というものは一変をしたというふうに思うわけでありますけれども、中国の問題は何か。根本的には、中国の中にはやはりぬぐえない中華思想というものがある。この中華思想というのは、世界各国それぞれの地域選民意識、あるいは選民思想というものがあったわけでございますけれども、今日の情報化時代の中で、情報自由化そして交流という状況の中で、この選民思想選民意識というものは多くの国々で今克服しつつある概念だろうというふうに思っております。しかし、中国ではこのことがなかなか行われない。情報も国の恣意的な情報を受けるという国民の受動的な状況の中ではなかなかこれを克服できないわけでありますけれども、ここのところを各国民間交流も含めて、中国国民との交流あるいは情報自由化という中でこの問題というのはあるいは克服できるものかも分かりません。  そして、歴史認識の違いについてでありますけれども、この問題については、各国それぞれ自国の歴史があり、これを尊ぶことは当然であります。しかしながら、韓国中国我が国との歴史認識の違いの克服ということについては、私はEUの中でドイツとフランスが融和したような状況を見て、私たちもこの中から何らかの学ぶべきものがあり、この問題についても克服できないものではないというふうに思うわけであります。  しかし、残念ながら、私が定義する三つ目の問題、それは共産主義ということであります。十六名の参考人方々からそれぞれいろいろな中国日本の違いについて述べられましたけれども、一つやや欠落しがちであったのは、中国共産主義国家であるということでございます。  このことを克服するのはなかなか容易なことではない。中国東アジア共同体構想を一緒につくり上げていくという中で一番ネックになるのは、やはり中国共産主義国家であり、自由がないその中で本当に共同体というのがつくれるかどうかということが問題でありまして、今の中国政権の中で共同体構想ができるのかどうか、このことも非常に微妙な問題だということを私自身認識表明させていただきたいと思います。  世耕議員の方からもお話ございましたけれども、やっぱり反日デモの問題について触れざるを得ません。  昨日、今日のテレビ報道を見ていて私がやはり思い浮かべたのは、中国における文化革命でございました。これは大変な革命的な画期的な運動だということで、当時のマスコミ評論家の多くの方々が評価した時期もございましたけれども、しかしそれは政治闘争だと喝破した人たちもおりました。そして、果たしてこの文化革命というのは中国国内における政治闘争そのものであったということを私たちは思い起こすべきでもあろうと思います。  今回のデモの発生、その発信源はどこかということで様々な報道が実はございます。韓国反日的な運動が起きてきた、あるいは政府の方で様々な発言があった、そのことに触発されて、アメリカにいる中国人人たちがネットを使って中国国内にその反日キャンペーンを呼び掛けたということによって国民が呼応したというのが多くの、一つの流れ、大方の見方でございます。しかし、中国政府自身もこれを歓迎するような、あるいは容認するような態度を取り続けたということも私たちは見過ごすわけにはいかないと私は思うわけであります。  また、もう一つ残念なのは、日本経済人方々が今回のこの騒動を見て、小泉首相に逆に中国側に立った立場の中での数々の発言をしておられる方もいるということは極めて残念なことであります。日本政治家マスコミ経済人中国の迎合の、してきた姿勢、それが誤ったメッセージを中国に与え続けた一つの結果もあると私自身は考えるところであります。  それでは、これから日本対応をどのようにするかということは、当然毅然とした態度謝罪要求し続けることが大切であろうというふうに思います。  昨年の十一月、中国原潜領海侵犯の問題が起きました。中国政府は当初このことを、事実を認めておりませんでしたけれども、執拗な日本の抗議によりましてこの事実をとうとう認めるということになったわけでありますけれども、あのときも実は中国自身謝罪をしなかったということを思い起こすべきであります。そして、日本は、この謝罪していないにもかかわらず、その侵犯をしたこと、事実をもって謝罪したというふうな認識を持つに至ったことは非常に残念なことでもございました。  それでは、これから対中国戦略をどのようにするのかということについては、受け身日本外交、対中国外交というのは行われてきましたけれども、これからは受け身ばかりではなく、もちろん攻撃的なものではなく、融和的なものでなくてはなりませんけれども、しかし言うべきことは言う毅然とした態度を持ちつつ、幾つかの問題をやはり中国自身にも求めていく必要があろうかと思います。  一つは、人権に対する要求であります。これは二国間の問題にかかわらず、国家としての人権の問題というのは欧米ではもう既に最優先の一つテーマになるものでございます。日本におきましても、法輪功の弾圧によりまして、金子容子さんが日本人と結婚されて中国で活動していたときに拘束をされたということが起きまして、私自身もかかわったことでありますけれども、その救出に多くの方々が共鳴して、救出に成功いたしたわけでございますけれども、こうした法輪功にかかわる問題、日本にも、日本におられる中国人方々も非常にかかわっているということからしても、この問題についても問題提起をしていくべきであろうかと思います。また、前主席であった江沢民氏の訴訟問題というのは世界各地に今起こされているところでありまして、人権問題の要求というのは日本中国に対して行うべき一つ問題提起、ポイントであろうかと思っております。  それからもう一つは、やはり軍事力増強への牽制を絶えずし続けなくてはいけないということ等が対中国戦略基本的な改めて考えるべき認識であろうというふうに思っております。  日中は協調で共栄し、反目で共倒れするという認識を私たちは持つべきであろうということと同時に、今回のデモ騒動の中で改めて確認すべきは、やはりこれからの日本対外戦略というものは、日米基軸として今後も相当程度、五十年間は日米基軸ということを国家戦略として置くべきであろうというふうに思っております。  永遠の友好国はない、永遠の敵国もないというのは国際外交基本でありますけれども、あくまでも日本の国益を考えてこれからの外交戦略を樹立すべきだということを申し上げて、私の意見表明を終わります。
  6. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 加藤修一君。
  7. 加藤修一

    加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  ただいま同僚の委員から現在中国で起こっておりますデモの件について発言がありましたが、私もこの件について触れておきたいと思います。  北京から始まったデモが暴動に発展いたしまして、日本大使館等への破壊活動日本人への暴行行為があり、けが人も出ていることについては、大変遺憾で深く憂慮すべき状態だ、謝罪補償要求しているとの発言については理解することが十分できるわけであります。従来、一部に見られるようなあいまいな日本対応はかえってマイナスであり、今後の日中間の友好関係を緊密にするためには、あいまいにしないで、しっかりと日本側の主張を明確に伝えることであります。  さて、グローバリゼーションの動きの中で、今後の世界多極化の展望を考えると、日本アジア外交について、日米関係EU関係など様々な論点がありますが、東アジア相互依存関係が深まっている今日、超長期的には東アジアの一体化に向けた時代の要請に日本は積極的に取り組むべきであり、顔の見えない日本から顔が分かりやすい、より一層前向きな対応日本アジア外交を展望していくことであるととらえているところでございます。  ある日本をよく研究している国際政治学者は、受け身で場当たりで、とにかく顔が見えないと批判する日本外交でありますがと述べ、その場しのぎ対応を繰り返すことで経済摩擦が緩和され、結果としては何とか日本優位性を確保している。また、過去の清算をあいまいなままにすることで、かえって対アジア外交が慎重で控え目なものとなり、アジア諸国反発を和らげているという議論もあります。  日本が殊更自らの過去のはれものに触れないことで、自然にはれものが小さくなり干からびて消え去ることを期待すべきではなく、歴史の水底に沈んでいるにすぎなく、何かの拍子に膨れ上がり水面に浮上するものである。そのたびに国際社会アジア社会でぎくしゃくしてしまうことは最大限避ける工夫をすることがアジア全体の価値にもつながることだと考えております。  さらに、歴史認識をしっかりすることは非常に大切であります。非常に困難なことかもしれませんが、歴史認識を共有することも挑戦すべき重要項目であります。憲法の前文にありますように、日本国際社会で名誉ある地位を示すためには、真っ正面から取り組まなければならない課題の一つではないかと思います。  アジア外交における日本の積極的な外交イニシアチブを新たに展開しなければならないと思いますが、同時に、従来から努力しているアジア地域における信頼醸成のアプローチを効果的に組み立てていくことが必要ではないかと思います。  再び戦前のような軍事国家にならない、脅威をどう感じるかは受け取る側の状況、問題によることも決して少なくないわけでありますけれども、軍事的脅威を与えないことの基本的枠組みが大事であると思います。  また、テロ、海賊問題、環境汚染、災害問題などの非伝統的な脅威にどのように貢献するか、そういった仕組みを今まで以上に明確に示すことであり、同時に、対話と協調の繰り返し、繰り返しの積み重ねの中におけます対決をいかに回避するかという方向性を探しつつも、ハードパワーとしての経済力我が国ソフトパワーを相補的に行うことを行動原則としつつ、ソフトパワー有用性を十分駆使し、これを推進力にしつつ、漸進主義に立った粘り強い合意形成を進める方針が大切でなかろうかと思います。  しかしながら、北方領土、台湾問題など難解な問題を抱えている日本にとりまして、今までにない政治的なリーダーシップが求められていることも事実であります。そのようなリーダーシップは、現在、日本国連安保理事国入りについて大きな議論が巻き起こっておりますが、仮に理事国になったとしても、そのときは従来型のその場しのぎ、場当たり的外交はもちろん通用しないこととなるわけであります。国際社会の重要な案件に日本の力量が試されることになり、あいまいな態度ではなく、立場を明確にする、いわゆる国際関係を律する普遍的な外交理念が求め始められているのではないかと、このように思います。  私は、EUが、その淵源で不戦、戦わない不戦を志向し、ドイツとフランスの宿敵同士が歴史的な和解をしたことが着実なEU形成ができたことを踏まえると、この東アジアにおいても繁栄の道を目指すこと、すなわち安定と平和をどのように構築するか、言い換えるならば、不戦の共同体への道を開くことが大きな課題として横たわっているように思います。  表向き声を大きくして言っているものではありませんが、このような、基本的には日中韓相互が友好を深めることが重要なかぎであるということは言うまでもございません。この場合、先ほども言いましたように、共通の脅威に対していかに相互協力し、信頼の醸成を形成するかであります。  まず第一点目は、未来志向を強く堅持しつつ日中韓などとの歴史認識の共同研究を進めることであります。真摯に過去を見詰めることは真摯に未来と向き合うことと同義であります。共通の歴史認識の土台をつくるということでありますが、確かに難しいかもしれませんが、挑戦をすべき重要な課題であると思います。  デモの問題の背景には多くの要因がありますが、過去の歴史認識の問題も当然ございます。日中両国が共同で研究し、まずはそれらの差異を知り合うことであり、次いで、困難が伴いますが共通の歴史認識を持つ必要があるとの意見には基本的には賛同しますし、何回も申し上げますように、簡単ではありませんが、辛抱強い対話の積み重ねが必要であると思います。  EU統合化の過程で、一九九七年に欧州共通教科書「ヨーロッパの歴史」が出版されました。編集者ドルーシュ自身も、本書はまた討論の場でもあり、したがって本質的に異論の余地がある、それどころか疑わしくすら思われる選択も皆無とは言えないでしょうと答えております。したがって、日本中国歴史認識の共同研究は、真摯に進める上では賛同できるわけでありますけれども、様々な課題が横たわっていることも事実であります。  二点目は、不戦の制度化に最大限の努力をすること、時には日本がイニシアチブの発揮を行うことではないかと思います。我が国は、世界でもまれな原則を持っております。非核三原則、武器輸出三原則、PKO参加五原則など、武力的なものに関しての制約を厳しくしております。ある意味では、日本はこの分野におきましては先進的な試みを進めている国かもしれません。  EU中国への武器輸出問題が報道されておりましたが、世界の紛争地域等では軍事費が無造作に出費され、人間の安全保障の面においても、特にミレニアム開発目標等の達成に当たっても大きなマイナスとなっております。武器取引制限条約の早期締結、あるいは年間貿易が二百十億ドルに及ぶ小火器の制限、通常兵器の移転登録制度、武器取引税等の不戦の制度化について具体的な行動を行う時代に入っているというふうに判断できるかもしれません。  非核地帯の拡大を推し進めることでもあります。現在、ラテンアメリカ核兵器禁止条約、南太平洋非核地帯条約、東南アジア非核兵器地帯条約、アフリカ非核兵器地帯条約、南極条約などがあり、更なる展開日本は寄与すべきでないかなと感じているところでございます。  最後に、地球環境問題への努力でありますが、地球環境問題は共通の巨大な地球規模的脅威になっており、この脅威に対処することはどの諸国にとっても明確な共通利益であります。従来から、ASEANプラス3などの枠組み議論されてきた基本の考え方としては、拝金主義が横行し、富の神マモンが統治するグローバルマモニズム化していることを認識することであり、このことによる環境汚染は地球規模化している大きな要因と言うことができると思います。  京都議定書の発効による途上国とのCDMなど、京都メカニズムの積極的な活用等を含めて、いわゆる環境規制など環境外交と見受けられる筋はとりわけEUから波及してくる場合が多く、この分野の規制についても産業界で議論になっているグローバルスタンダードの世界でもあり、いち早く国益を含めたスタンダードを機敏な形で打ち出し、日本としても積極的に考えていかなければいけない、そのような状況にもあると思います。  そのような環境に関するスタンダードを含めて、アジア各地で多くの国際間協力のプロジェクト等が進められていることから、グローバルな環境ガバナンスというよりはアジア環境ガバナンスを強める枠組みの形成を進めていくことが日本アジア外交にとっても極めて重要な分野ではなかろうかと考えておるところでございます。  以上。
  8. 松田岩夫

  9. 大門実紀史

    大門実紀史君 この調査会では、東アジアの共同ということがテーマで質疑をされてきました。  私は、東アジアの共同は、二十一世紀の日本の政治、経済アジア全体の発展を考える上で不可欠の課題と考えております。この点では、当然、日本中国の政治的、経済的連携抜きには考えられないと。むしろ、日本中国が一緒にイニシアチブを取ってつくるべきであろうと思いますし、他の東アジア諸国もそれを望んでいると思います。  ところが、この日中の連携が今極めて憂慮すべき事態になっています。先ほどからございました中国反日デモの問題です。  今日は、当初、日中の経済関係構築について意見表明をしようと思いましたけれども、時が時だけですので、この問題について考えを述べたいというふうに思います。  この問題では、まず日中両国が、今暴徒化したデモや破壊行為から大使館や在留邦人、企業などの安全を確保する問題と、今回の事態の根本にあるいわゆる歴史問題とを区別して冷静に対応することが大切だというふうに考えます。  一点目は、中国側の責任ある対応を求めるという点ですけれども、安全確保の問題では、現に日本大使館や現地の日本企業の施設、日本人に被害が起きているわけですから、中国側国際法とルールにのっとった対応をすべきです。暴力破壊行為は、いかなる理由があっても正当化されるものではございません。中国政府自身が自国民の不法行為の非を認め、再発防止に全力を挙げる責任があるのは当然のことです。  また、この調査会でも参考人の方から意見がありましたように、なぜ、侵略戦争の被害を直接知っている年代よりも若い中国の青年たち反日デモに参加し、あれほど感情的な暴徒になるのか、彼らの怒りのエネルギーの本質は何かという点も分析される必要があります。  同時に、日本の侵略の歴史教育だけでなく、戦後、特に日中国交回復後、日本中国に対して行ってきた経済援助などについても正確に中国の若者に伝えられてきたのかどうか、問われているというふうに思います。  日本製品の排斥運動も行われておりますけれども、これは全く時代錯誤の感があります。戦前戦中の日本商品は、確かに中国にとっては明らかに経済侵略の一つの象徴でありました。実際に排斥運動も起きました。しかし、今の日本経済活動は両国の合意の下に行われており、日中間の経済交流を両国民の利益にかなったやり方で発展させることこそ求められています。  また、靖国参拝や歴史の事実をゆがめる教科書問題を日本国民のすべてが肯定しているわけではありません。中国は、日本の一部の人物の言動と日本国民全体を区別すべきだというふうに思います。日本国民の多数は戦争を二度と繰り返したくないという平和の思いを持っており、平和を願う両国民の連帯が今こそ求められているんではないかと思います。にもかかわらず、デモによる暴力行為が頻発し、中国政府がその責任は日本にあるという態度に終始するならば、歴史を直視し、中国との関係を重視しようとする多くの国民にも大きな落胆を与えることになってしまいます。  二点目は、日本側対応でありますけれども、一方、日本側対応について言えば、安全確保での中国側の責任を指摘することは当然でありますけれども、同時に、今回の事態の根本に歴史教科書問題など、わざわざ侵略戦争を肯定、美化する動きがこの間あったことも直視することが必要です。  昨年、実際に中国を訪問して感じたのは、歴史問題について中国の市民の反応は日本が思うよりもはるかに敏感だということです。日本人でも靖国神社自身が侵略戦争を美化するキャンペーンを展開していることを知る人は少ないわけですけれども、中国人はよく知っております。  第二次大戦後の世界秩序というのは、日本ドイツ、イタリアの侵略戦争への断罪を土台としてつくられています。したがって、この土台を否定するならば、日本アジア世界で生きる足場を失っていきます。そういう重大な性格を持つ問題として、我が党は靖国神社参拝、歴史教科書問題を厳しく批判してきました。  日中関係も、中国歴史事実を共有し、真に未来に向けた友人としての関係を発展させることが求められているというふうに思います。  イギリスのフィナンシャル・タイムズ、これは四月十二日付けですけれども、日本歴史教科書の問題、あるいは中国での一連の反日デモなどに関連して、アジア人の非難合戦という社説を掲載しております。社説は、日本アジアへの侵略について真剣に謝罪する姿勢を見せていないと、そう指摘した上ですけれども、今のような事態は中国の安定と北東アジア安全保障にとって危険である、事態の鎮静化に向け、双方には謙虚な気持ちが求められている、日本は過去を正直に認め、全面的に謝罪すべき、中国も、不満を繰り返し述べるのではなく、和解の手を差し伸べる用意が必要だというふうに述べています。  日本の一部にある侵略戦争美化の勢力と、中国の一部の暴徒化したデモ、それぞれを双方の国民多数が支持しているわけではありません。今求められているのは、両国政府の冷静で慎重な話合いだというふうに思います。日本の一部の動きへの抗議や批判を暴力で表すのではなく、どんな問題も冷静に話し合う態度を守ることが必要です。  今回の不幸な事件を後で振り返れば雨降って地固まるとなったと言えるような方向での解決が今求められているということを申し上げて、意見表明といたします。
  10. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ありがとうございました。  以上で意見の表明は終わりました。  これより委員間で自由に意見交換を行っていただきます。  発言を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って発言を行っていただきたいと存じます。  できるだけ多くの委員方々発言できますよう、委員の一回の発言時間は五分程度でお願いいたします。  また、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、発言を希望される方は挙手をお願いいたします。  それでは、中川雅治君。
  11. 中川雅治

    ○中川雅治君 自民党の中川雅治でございます。  今までの当調査会議論は私にとって大変勉強となりましたが、こうした国際問題、特にアジアの問題を日本経済の再生という見地から見てはどうかと思います。  日本経済の再生、更に言えば今後の日本が衰退せずに発展していくためには、端的に言って、企業のグローバル化での成功がかぎを握ると思います。  今後の日本を見通しますと、少子化になかなか歯止めが掛からず、人口の減少は避けられそうにありません。財政の悪化は政策の幅を狭めるとか後世へ負担を付け回していくといった問題を超えて、景気が回復し金利が上昇すると、既存の国債価格の下落、金融機関等の損失、経済全体への悪影響といったシナリオで、持続的な経済の発展はなかなか望めないと思うのであります。  人口減少社会で、しかも現時点で五百兆円を超える国債残高という言わば爆弾を抱えた日本がこれを乗り越えて発展していくには、技術革新を成し遂げて、企業が海外で成功していくことがどうしても必要になると思います。そうした観点から私はアジア外交というものを考えていくことをもっとすべきであると思います。  特に、日本の企業、そして個人は、アジアでの地域発展への貢献をしつつ、その活動の場を増やしていかなければなりません。また、FTAや経済提携協定の推進を図り、投資ルールの整備に力を入れていかなければならないと思います。  同時に、通貨の安定を図ることが極めて重要であります。第一は、何といってもこの円・ドルの安定を図ることであります。この問題については、やはり米国にきちんとした財政運営をしてもらって、通貨が乱れないようにすべきであることを日本としてはもっと主張していくべきであると思っています。  それから、アジア通貨の安定が重要になってきます。先日のG7でも人民元の切上げ問題が議論されましたが、九七年のアジア経済危機の再来を防ぐためにもアジア通貨の安定が必要であり、日本が主導権を発揮してアジア各国経済情勢について意見交換を密にし、必要であれば金融協力もしていかなければならないと思います。また、外資による乗っ取りを防ぐ手だてを十分に講じることは必要でありますが、日本への人、資本の流入を図ることもグローバル化という見地から重要なことであります。  こうした方向を考えますと、我が国としては、アメリカとの関係EUとの関係が大事であることは当然でございますが、東アジア共同体構想は旗として掲げ続けて、一歩でも前進させていくというスタンスでなければならないと思います。  更に言えば、今回の当調査会では余り議題となっておりませんでしたが、先ほど加藤先生の方から御指摘がございましたが、世界環境問題、地球温暖化をめぐる問題がございます。  日本が今後、人口減少社会、財政悪化という大きな負の条件を乗り越えて発展できるかどうかは、技術革新を成し遂げて企業がグローバル化で成功できるかどうかに懸かっていると今申し上げたわけですが、その考えられる分野は、第一に環境分野であります。日本環境分野で技術革新を成し遂げて国際競争力を持つためには、米国、EUはもちろんでありますが、中国も先を読んで環境技術の開発に相当力を入れ始めているようですので、日本は研究開発に後れを取らないよう、政策のバックアップが必要であることは当然ですが、中国インド東アジアなど発展途上国での米国、EU、さらには中国との競争に勝っていくことが重要であります。特に、アジア諸国において京都議定書のCDMなどの協力を推進していくだけでなく、こうした国への環境意識の向上を図ることが地球環境問題という見地だけでなく、日本の将来の経済発展のために欠かせないことであると思っております。  こうした観点から、まず日本自らが京都議定書のCO2などの六%削減という義務の達成を実現することが世界での発言力を確保するためにどうしても必要なことだと思いますので、そのために最大限の努力をしなければならないことはもちろんでありますが、同時に、特に中国インドを始めその他発展途上国の環境意識の向上をもたらすよう、また世界共通のルールづくりにリーダーシップを発揮していくよう外交努力を続けなければならないと思います。これが地球温暖化を防止し、この地球を将来世代に引き継いでいくことに貢献できることになると同時に、日本経済の再生、さらには日本の持続的な発展のための道であるという意識を日本自らがもっと持たなければならないと思っております。  日本経済の再生という見地から国際問題、特にアジアとの関係を考えていくことの重要性を指摘いたしまして、私の意見といたします。
  12. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) じゃ、直嶋正行君。
  13. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 どうもありがとうございます。  民主党の直嶋です。  幾つか、これまでの経過も踏まえ、私なりの意見を申し上げさせていただきたいというふうに思います。  私ども、これまで講師の方を招く中で、東アジア共同体ということを一つの念頭に置きながら議論をしてきたというふうに思います。私はやはり、いろんな問題を考えるときにそうなんですが、この東アジア共同体ということを念頭に置く場合に、じゃ、何のために東アジア共同体構想というものをつくっていくのかということをやはり整理をしなければいけないんじゃないかというふうに思います。  それからもう一つは、そのときに、今、中川さんからもいい御意見聞いたというふうに思います。これからの日本経済の再生等考えると、私も、東アジア共同体といいますか、こういう構想を持って日本外国との間での経済関係を緊密にしていくということは不可欠のことだというふうに思っています。ただ、そのときにやはり頭に置いておかなければいけないのは、日本にとってメリットがあるだけではなくて、当然相手の国々にとってもそのことが国の発展を含めてメリットがあると、そういう一つの大きな構想のようなものを、骨太なものを持ちながらこの問題をこれから議論していくべきではないかというふうに思います。  私なりに言わせていただきますと、今、中川委員日本の国内的な問題、債務の問題であるとか少子高齢化の問題であるとか、こういうことをお触れになりましたが、私は、全体的に、世界的に見て、一九八〇年代から九〇年代ぐらいまではいわゆる日米欧という言葉が頻繁に言われましたが、この三極を中心にした、どちらかというと先進国を中心にした中での経済あるいは国際的な関係というものを見ていけばよかった、もちろん冷戦構造下という問題あったわけでありますが。しかし、やはり近年様相が変わってきまして、日米欧だけではなくて、これまで議論してきましたように、新たな国々経済発展ということが非常に大きな特徴として出てきているわけでありまして、特に近隣の中国とかインドを含めたアジア、それからロシア、ブラジル等のいわゆる従来途上国という位置付けになされていた国々経済発展を、目覚ましい形で経済発展をしているということでありまして、その中で、じゃ、日本の将来を考えた場合にどういう構想を描いていくかということを考えていかざるを得ない、いかなければいけないというふうに思っています。  ですから、この点は私自身もまだまとまったものはありませんので、いずれまた議論する中で、今は問題意識という形で申し上げておきたいというふうに思います。  特に、企業活動でありますとか経済活動がグローバル化していくということでありますし、その中で当然こういう経済圏の構想というのができているわけでございますが、二つ申し上げたいのは、一つは、グローバル化が進む中で経済圏をつくっていくということになると、当然共通のルールとか共通の価値観ということが重要になってくるというふうに思うわけであります。  例えばEUは、統合に向けて、経済だけではなくて政治的な統合に向けても今着々とといいますか、あるいは遅々としてかもしれませんが、少なくとも前進をしているというふうに思うわけであります。しかし、その背景には、やはり全体的に言うと、キリスト教社会であるとか文化もほぼ似通っているとか、あるいは生活水準も、西欧と東欧の違いはありますが、まあそんなに大きな格差がないといいますか、粒がそろっているといいますか、そういう特徴があると思うんですが、アジアの場合は、この数日の中国状況についてさっき皆さん方から、何人かの方からもお話ありましたが、改めて思うのは、やはり共通の価値観とか共通のルールとかそういうものが全くできていないというよりも、むしろその価値観の違いとかルールの開きの大きさとかいうものを改めて痛感せざるを得ないのかなというふうに思います。  したがって、そういう大きなばらつきのある中で、じゃ、日本がどういう構想を持っていくのかということを考えなければいけないんではないかということを申し上げておきたいというふうに思います。  それから、中国との問題でありますが、この数日の中国デモに関する受け止め、これは冒頭世耕委員がおっしゃったように、私も全く同感であります。やはり中国に対しては猛省を促したいというふうに思っています。  その後、これからじゃどうするかということでありますが、私は先ほど実は、言っていいのか分かりませんが、理事会で、この中国との問題を是非、少しタイミングを見て、今じゃなくていいんで、むしろタイミングを見て冷静に議論できるときに、是非この国際問題調査会でもテーマとして議論していただくように会長にもお願いをさせていただいたわけでありますが、冷静に議論しなきゃいけないと思うんですが、一つ最近私が気が付いていることをちょっとだけ申し上げたいんですが、それは言葉の問題なんですね。  例えば、歴史認識ということを先ほど来も議論出ていますが、歴史認識という言葉を使っても、どうも日本人が言っている歴史認識中国の方が言っている歴史認識とは意味が違うんじゃないかと。中国の方は我々とは違う意味歴史認識という言葉を使っているんじゃないかと。そうすると、同じ言葉を使って議論をしていくことができるんだろうかと。こういうところから実は中国との付き合い方というのを我々は考え直さなきゃいけないんじゃないかと。  例えば、私最近すごく気になるのは、東シナ海の例の天然ガスの油田の話で、日本マスコミ、新聞の記事に載っている地図見ると、必ず、正確に書いているところがないんじゃないかと思うんですが、いわゆる日本が今言っている中間線、EEZと、中国が言っている沖縄トラフ。この沖縄トラフは中国の主張であると。日本の主張はこのEEZであると、の中間ラインであると。日本の主張する中間ライン、あるいは日本の主張する排他的経済水域のラインという報道の仕方をほとんどの新聞がしています。そうすると、係争中の海域というのはどこなんだというのが実は大議論なんですが、中国は、日本のそういう主張を踏まえて係争中の海域は沖縄トラフとEEZ中間線の間であると、こう言っているわけであります。しかし、実は日本政府は、係争中の海域は日本の二百海里と沖縄トラフの間すべてが係争中の海域だというのが公式の主張だと思うんです。  しかし、日本国民マスコミも含めて、このことを正確に知っている人が一体どれぐらいいるんだろうと。テレビなんかで評論家の話を聞いていても間違っている人多いと思うんですよ。そうすると、係争中の海域が中間ラインと沖縄トラフの間であれば、例えば共同開発する場合に、中間ラインから日本寄りのところだけじゃ共同開発しようというのは、という中国の主張の方が正しいわけであります、係争中の海域がそうだとすれば。しかし、昨日テレビで中川経済産業大臣もおっしゃっていましたが、実は係争中の海域はそうじゃないんだと。あれ全体、二百海里と沖縄トラフの間がそうなんだから、今中国がやろうとしているところも含めて共同開発やるんだったら話になり得ると、こういう発言をされていました。だから、こういうこと一つとらえても、私は日本人のとらえ方が非常に雑だし、日本政府国民に周知徹底さす努力をしていないと思います。  これは尖閣列島の領有権も同じです。次の世代に任そうよということで提案をしたのはトウ小平さんで、中国ですよね。トウ小平さんが提案したんです、今回は領有権は棚上げにしておいて次の世代に任そうよと。しかし、そのトウ小平提案を日本政府が受け入れたという記録はないと思います。日本政府は、尖閣列島は日本の領土であるということを公式的には一貫して言っていると思います。しかし、私は例えば同僚議員といろいろ話をしていても、尖閣列島は今棚上げになっているんだけどと、こういう話というのがよく出てくると思いますし、マスコミ報道の中にも、尖閣列島は日中双方が領有権を主張していて棚上げ状態なんだと、こういうふうにおっしゃる方多いんです。ですから、日本人のほとんどがそう思っているとすると、国際的にも棚上げ状態になってしまうんじゃないかと思うんです。  ですから、先ほど申し上げたお互いの言い分の違いとか、あるいは物の考え方の違い、あるいはそれを通じて出てくる言葉意味合いの違いとか、そういうものをもっときちっと定義をしてといいますか、解釈をして中国とやはり話をしていく。そして日本の言い分は私は堂々と言っていけばいいと思っていますが、そういう姿勢がといいますか、ことを我々は考えなきゃいけないんじゃないかなということを申し上げまして、意見とさせていただきます。  済みません、時間が延びまして。ありがとうございました。
  14. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 藤末健三君。
  15. 藤末健三

    ○藤末健三君 民主党の藤末でございます。  私が申し上げたいのは、一つ大きいところは、国会議員である我々がアジア外交をどうやるかということを申し上げたいと思います。一つは、やはり大きいところではFTAの話、そして二つ目に大きいところでは、世耕委員からもお話ありましたけれども、コミュニケーションが取れているかどうかという話だと思います。  まず、FTAの議論をしますと、私自身中国韓国、フィリピンなどに伺いましてFTAの関係者とお話をしまして何を思うかと申しますと、もうすべて役人が決めているんですよ。どこの国と結ぶか、何をするか、いつまでに何をするか、全部役人が決めていると。我々は今何をやっているかというと、条約になってきたときにチェックするだけなんですよね。  ですから、例えば今の政府を見ていますと、外交というのは元々超党派でやらなきゃいけないという前提で申し上げますと、今の政府を見ていますと戦略が全くない。東アジア共同体と言いながら、スイスとやりましょう、チリとやりましょうという話になって、どんどんどんどん、戦略もなく、そしてどこに我々は行くのかも分からないまま進んでいるという状況で、私が思いますのは、やはり国会にいます我々がそういうFTAの戦略などをきちんとチェックする、つくっていくという役割を果たさなきゃいけないんではないかと思っております。  アメリカとどうするか、中国とどうするかという大きなテーマがあった上で、FTAをどうつくっていくかというのが最終ゴールだという設定の下に、今のFTAの締結の方法を見ますと、首相が会ったところと結ぶという本当にいい加減な、どこに我々は進むんだろうというのも見えないような状況でございますので、私が一つ提案したいのは、この国際問題調査会などで是非そのFTAの戦略を、個々のやつを議論するのは外務委員会にお任せしてもいいと思うんですが、大きな枠組みをこの場で議論できるようにしていってはどうかということをまず考えています。  そして、二つ目でございますが、外交、国際問題のコミュニケーションという話を申し上げますと、私が一月に実は中国の大学で講演をしましたら、講演が終わった後、質問がすごいんですよ。何かと申しますと、皆様御想像のとおり、靖国問題どう思いますか、南京虐殺どう思いますかということですごい質問。ただ、面白いのは、私が逆に南京虐殺の中身の話をすると、知らないんですよ。君たちはそう思うかもしれないけど日本はこう思うし、靖国の神社の位置付けも全然知らないで、お墓と勘違いして発言している学生がほとんどでした。  私が思いましたのは、やっぱりこういうときに、外務省の方々にお任せするんではなく、我々みたいな政治家がきちんと中国に行って事実を伝える、そしてまた彼らが何を考えているかということを聞いてくるという役割はあるんではないかなというのを強く思った次第でございます。実際向こうに行って講演しますと、参議院議員とか書いてあるわけですよ。やっぱり彼らが、日本政治家がこうやって来て話ししただけでも有り難いということを言ってくれる人もいましたんで、小さな歩みかもしれませんが、我々ができることはあるんではないかなというようなことを思っています。  特に中国の問題については、今歴史の問題非常に注目を浴びていますけど、私は、もっと先を俯瞰した場合に何があるかというと、今石油のスポット価格が六十ドル近くになっています。一つの原因にやはり中国が石油を買い集めているということを言われていますけれども、今の中国の石油、エネルギー外交を見ていますと、必死なんですよね。私が実際に中東の方に聞いてみると、もう日本がやっていた案件に中国が横入りしてくるという話も聞きますし、例えばオーストラリア、今回日本オーストラリアとのFTAを断ったんですよ。ところが、オーストラリアは今FTAを中国議論していると。なぜオーストラリア中国がひっ付くかというと、鉄鉱石ですよね、簡単に言うと。鉄鉱石の確保、多分これは中国にやられちゃいます。鉄鉱石、石油、いろんな資源がどんどん値段が上がっていく。それはなぜかと申しますと、中国日本が競争して買いあさろうとしているからです。  そういう中で、私が思いますのは、エネルギー問題などにつきまして中国日本が連携して協調した政策をつくるという必要がもう必要じゃないかなというのが私の思いでございます。それはエネルギーだけじゃなく、食料問題、今どんどん中国が食料輸入国になっています。穀物も輸入する、そして肉も輸入するという国に変わりつつある中、恐らく次に食料が大きく不足するという状況も生じかねませんので、例えばアジア地域で食料の備蓄を一緒にやりましょうとかいうような協調政策をやるような必要があるんではないかというふうに考えます。  また、先ほど加藤委員からもお話ございましたが、環境問題もそうです。環境問題につきましても、やはりこれから中国、この十年間で原子炉を二十個造ろうとしているんですよ、二十個。正直申し上げて、私が中国の工場などを見た感じで、あの品質管理で原子炉をやられたらどうなるかなというのは少し不安でございます。やはり原子力といったそういう安全の問題、そして環境の問題などについても日本中国が一緒に対応できるんじゃないかなと思っていまして、そのような仕事はやはり役所がやれないと思うんですよ。省庁横断的にやんなきゃいけないし、強烈なイニシアチブが必要だと思いますので、是非とも我々、特に我々参議院は任期が長いということもございますので、外交などの問題は我々、衆じゃなくて僕は参がやるべきだと、それも超党派で我々は動けますので、やるべきだと思っていますので、是非ともこの調査会においてFTAの戦略をつくったり、またアジア諸国との連携をどう取るか、コミュニケーションをどう取るかという議論をやれればと思っています。  以上でございます。
  16. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 澤雄二君。
  17. 澤雄二

    ○澤雄二君 ありがとうございます。  私も、今起きています、韓国中国で起きている反日運動について少し自分の考え方を述べてみたいというふうに思います。  韓国中国反日運動については、少し前から言われていますけれども、これはナショナリズムの対立じゃないかという意見があります。確かに、オリンピックですとかワールドカップのサッカーなんかを見ていますと、日本人日本が大好きであります。愛国心の論争はともかくとして、もしかしたら日本を愛しているかもしれません。だけど、イズムと言われるような、日本国民の、引っ張っていくような行動規範にまでそのナショナリズムというのは日本にあるのかというと、少なくとも私の周りの友人たちを見る限りはそんなナショナリズムを持った人間はいない。  これは、多分中国の方も同じだと思っています。皆さんも中国の友人たくさんお持ちだと思いますけど、その人たちと話をしていて、今あのデモ隊がやっているような叫び声を聞いたことがありますか。私はありません。だから、よく言われているナショナリズムの対立というのは、本当に中国日本韓国との間にあるんだろうかなというふうに私は疑問に思っています。  じゃ、何が一体問題なのかと。これは、ここにいる皆さんも、それから日本国民も今や共通の認識となっていますけれども、歴史教育の問題だと私も思います。  じゃ、なぜ歴史教育の問題かというと、今度のデモもそうですけども、愛国ということをキャッチフレーズにデモ行われています。中国では愛国教育が今熱心に行われている。国を愛する、ややもすると国を愛するっていいことじゃないかと思うんですが、中国の場合、国を愛するというのは中国共産党を愛するということであります。つまり、中国国家歴史というのはそこから始まるから、共産党の支配下にある国がかつての中国の皇帝たちを賛歌するわけにはいかない。つまり、国を愛するというのは中国共産党の歴史を賛嘆することであります。この中国共産党の歴史でいうと、最も輝かしい瞬間というのは中日戦争に勝利をしたということであります。ですから、愛国教育というのは必ずそこにたどり着きます。これが一番の問題であろうと私には思っています。  そして、実はもっと大きな問題は、この教育だけではなくて、このことが実は国内の政争の具に使われる、つまり国内で不満に思っている人たちの目を自分たちの政権ではなくて外に向けさせる、つまり日本でありますが、このことに度々利用をされるということが実は大変大きな問題であります。  私、この調査会で質問をしたことがありますけれども、三月の一日に韓国の盧武鉉大統領が三・一独立運動記念式典の演説の中で、日本に改めて、過去の真実を究明し、真に謝罪、反省、賠償することがあれば賠償して和解するのが世界歴史清算の普遍的方法だと、日本に改めて謝罪賠償を求めました。このことを、そのときにいらっしゃっていた参考人は大阪市立大学の朴一教授でありますけど、これは具体的に対価を求めていますかとお聞きしたら、即座に教授は答えられました、求めていませんと。これは国内の不満の目を日本に向けるだけです、言下に言われました。確かに、この日を境にして盧武鉉大統領の支持率は上がってまいります。そして、竹島問題まで来て、もうここまで来ると大統領は方向転換できなくなってきています。  じゃ、今度の中国反日運動はどうかというと、どうも気になります。一つは、デモ発生のきっかけであります。どうしてこのデモが起きたのか、先ほど同僚の委員も言われましたけれども、西海岸の華僑、韓国のグループがインターネットで発信したのがきっかけだというのも気になります。それから、参加している人たちがどういうグループかという分析を冷静にする必要があります。ある分析によると、つまり中国の若者の中でも負け組と言われている人たち、大学に行けない、大学でエリート教育を受けたけれども勝ち組に入れない、そういう人たちだという説もあります。  また、もっと厄介なのは、日本に向ける、その国内の不満分子の目を日本に向けるだけではなくて、このことが国内の権力闘争に使われているとなると、これは大変面倒であります。これも別に情報があるわけではありませんが、一つ嫌な情報は、土曜日のデモは北京は抑え込みました、中国政府が。でも、上海は数万人規模でかつてないデモが行われたって、これ、嫌ですよね。上海グループと胡錦濤、よく言われている筋書であります。だから、もしこういうことに歴史教育が使われているとしたら、多分永遠に解決することはないんだろうというふうに思います。  そうしたら、じゃ、あきらめればいいのかということでありますけれども、それはあきらめられません。つまり、経済的にも貿易額からいっても、やっぱり中国韓国を除いて日本の東アジア外交ないからで、どうしてもこれは解決したいと思うんですが、そのことを歴史に学ぼうとすると一つ例があります。それはドイツとフランスであります。  ドイツとフランスは、ちょっと正確に数を数えるのは難しいんですけれども、十数回過去戦争を起こしています。でも、今、EUの中核となって非常に友好関係結んでいる。このドイツとフランスがどのようにして戦後友好関係を結んでいったかということであります。ここに一つ歴史に学ぶことがあるかなというふうに思いますが、画期的なことをドイツとフランスはやっています。  一九五〇年に歴史教科書改善調印というのを結んでいます、ドイツとフランス。何をやったかというと、歴史の教員に、両国のですよ、歴史の教員に相互検討のための教科書を交換するよう促した。また、両国の教員が相手国の教科書を自由に使用できるようにすることが望まれる。新しい教科書を作るに際しては、編者は印刷前に隣国の、相手国の教員に知らせることが望ましい。一九三五年の勧告を拡張、深化させる意思を持って両国の歴史学者、歴史教員の会議を新たに開くことが要望される。会議の参加者は客観的な歴史像を支持するための努力をマスメディアを通じて各国の同僚に伝えること。これが一九五〇年の八月から始まって、お互い歴史教育に対する認識の間違いを徹底的に議論し合って直していくんです。  それから、もう一つ両国がやったことは、一九六三年にドイツ・フランス青少年交流機構というのを設立をして、若者たち交流を両国で活発にいたします。具体的に何をしたかというと、学生や勤労少年の会合及び交歓を活発にやろう、それから集団旅行、青少年及び青少年スポーツに関する行事の交歓をやろう、家族も巻き込もう、その他いろいろなことをフランスとドイツの若者たちに向けて交歓プログラムを作って歴史を築き上げていった、こういうことが一つ歴史の教訓としてあるんではなかろうかな。  だから、本当に中国韓国日本が理解し合うためには、この辺からやっていかないと難しいのかなということを一つ思っております。  最後に、時間でありますので一言だけでありますが、日本の東アジア外交を考えるときに、どうしてもアメリカとの関係を除いては考えられません。そのときには、アメリカ東アジアにおける国家利益のファーストプライオリティーは何かということが最も重要であると思っています。これを考えると、非常に難しい問題が次から次へと出てきますけど、もし可能でありましたら、この調査会議論をさせていただければというふうに思っています。
  18. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 小林温君。
  19. 小林温

    ○小林温君 二月に始まったこの調査会でございますが、十六人の参考人をお呼びをして、今日はこうして議員間での意見交換が行われているわけでございます。  今まで各委員のお話を聞いておりますと、この調査会の中で議論をされたことについてもこの二か月少しの間に様々な変化が起きているわけで、テーマ設定についても、そういう意味でいうと非常に的を得たものであったんではないかというふうに評価をさせていただきたいというふうに思います。  そこで、私、まず日中・日韓関係について少しコメントをさせていただきたいと思います。  調査会の中の参考人のお話の中でも、歴史認識の問題というのは多分、日中間、日韓間では解決というのは難しいだろうということをおっしゃる方がいらっしゃいました。また、日本リーダーシップアジアの中、あるいはグローバルな意味でのリーダーシップについて賛意を得ることは難しいのではないかという意見を述べられた参考人の方もいらっしゃいました。正に、今の日中間、日韓間の関係というのはこういう部分が問われているんだろうというふうに思います。いずれにいたしましても、この何週間かの週末における中国政府対応に対してはこれは猛省を促したいというふうに思いますし、早期の解決に向けて中国側の責任というものをやはり我々もしっかりと追及をしていくべきだというふうに思います。  そんな中で、少し日中間、日韓間、今回の歴史認識、あるいは安全保障理事国の常任理事国入りをめぐる問題について対比をさせていただきたいと思いますが、最初に事が起きたのは韓国でございました。竹島の問題、それから教科書検定の問題ということで、そこから中国は、教科書の問題、そして現在は常任理事国への日本の仲間入りに対して様々な反対論が述べられているわけでございます。  韓国の問題については、一つは、竹島の問題も教科書の問題もある意味では予見可能なものであった、つまり、こういうスケジュールがあったというのはあらかじめ分かっていたはずでございますので、その部分について政府も初めもっとしっかりとした対応ができなかったのかということを是非コメントをさせていただきたいというふうに思います。  しかし、私、実は四月の八日にソウルに単身で訪問させていただきました。予断は許さない状況であるというのは間違いありませんが、韓国側、特に議員サイドの中には決して日韓関係をここで断絶させる、そんなつもりの方はいらっしゃらない。それはこの数年来の日韓間の良好な関係を評価してのことだと思いますが、ですから、今後様々な形で政府間あるいは議員間でもボールのやり取りがある中で、そのやり取りをしっかりと一つ一つ球を見極めながらやっていくということによって、この日韓の今の問題というのはある程度コントロールが可能なのではないかというふうに思いますし、それを裏打ちをしているのがワールドカップや韓流ブームといった相互の草の根の交流であるということも実感をして帰ってまいりました。  四月の七日に日韓の外相会談があったわけでございますが、この中で町村外務大臣が幾つかの歴史認識の問題解決についての提案をしております。一つは、戦時中に徴用をされてサハリンに抑留をされた韓国人の軍人の補償、遺族も含めてでございますが、の問題、それから戦時中に亡くなった方の遺骨の収集の問題、それから広島、長崎での被爆をされた韓国の方の補償の問題、そして歴史認識についての共同委員会が一つの役割を終えましたのでこれをいかに発展させていくかという、この四点でございます。  これは、竹島の問題と教科書の記述の問題については時間を掛けなければ解決をできない中で、今回の具体的な提案というものはしっかりと評価されるにふさわしいものだというふうに私は認識をしておりますが、実はこういうことが韓国のメディアでは全く報道されていないというのもまた事実でございます。ここは、日本も含めて、この歴史認識の問題について、それぞれのメディアが中立公正な報道をするということを是非これからも担保していただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、この日韓間、日中間も含めてでございますが、今我が国が直面をしている北朝鮮の問題の解決、あるいは日本常任理事国入りといった我が国外交にとって大きな意義を持つ問題について多大な影響を与えることでもございますので、我が国政府としても適切な対応をする、その中で我々議員がどういう役割を果たしていけるかということを考えていくべきだというふうに思います。  簡単に経済面について触れさせていただきたいと思いますが、調査会議論の中で東アジア経済統合に向けて日本がそのリード役を担うべきだという議論がございまして、それに対する共通認識もある程度形成をされたのではないかというふうに思います。  しかし、現実を見ますと、日韓のFTAについては停滞をしておりまして、韓国は日韓のFTAに進捗が見られない中で、人事も含めてほかの国とのFTAの交渉にそのリソースを割くという政策を最近採用したと言われております。また、二十一日には日豪首脳会談が行われて、そこで日豪のFTAのスタートについて両首脳間で合意を得るというシナリオがあったようでございますが、どうもこの点についてもなくなったようでございます。  先ほど藤末委員からもお話がございましたが、やはり戦略を持つと、同時にリーダーシップがどこにあるかということを明確にしていくべきだと思います。もう言い古された議論ではございますが、USTR型のヘッドクオーターを日本の中にしっかりと置いて、できれば通商交渉担当大臣をしっかりと任命をして、その現場でのリーダーシップの中でこうしたFTAの交渉を進めていく、あるいはWTOも含めた通商交渉を進めていく、そういう体制整備を図るべきだというふうに思います。  最後になりますが、やはり議員外交というものが今その意義を問われているというふうに私も思います。  この調査会制度、三年間ある程度継続性を持ったテーマで同じメンバーで議論をするという中で、正にこの議員外交の意義付けというものもあると思いますので、今後ますますこの国際問題調査会を通じて、日本外交の中で議員外交というものはどうあるべきかと、あるいはその具体的な中身の実現も含めて進めていっていただきたいということをメンバーの一人としてもお願いをさせていただきたいというふうに思います。  以上でございます。
  20. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) それでは、水落敏栄君。
  21. 水落敏栄

    ○水落敏栄君 自由民主党の水落敏栄でございます。  東アジア共同体構想につきましては、お話のように、ここ二か月の間、参考人意見を聴取をいたしまして、委員各位の意見を開陳されたわけであります。  私も四月六日の本院調査会におきまして、自民党を代表して意見を述べる機会をいただきました。その際、ASEANプラス3から成る共同体構想、こうしたものはもう意見交換の中ですぐ行き詰まってしまうんではないか、中国韓国との日本との関係、とりわけ中国日本関係ではないか、こうしたことがこの議論の中で行き詰まってしまうんではないかな、なぜならば歴史問題、東シナ海の資源の問題等々が要因となっているからだというふうなことも申し上げをさせていただきました。そのことが正に今回の、各委員お話しのように、中国反日デモという事態になってしまったと思っております。これも東アジア共同体の中でリーダーシップを取りたい中国政府の後押しによってこの反日デモがなされたんではないかな、このようにも思います。正に日本をまずけ落としたい、そうした思惑があるんではないかなと、このようにも思います。  この反日デモは、正に中国政府が黙認したことが暴徒化につながった。その証拠に何百人もの武装警官管理の下に行われております。デモが終わったと同時に、この警官隊の指導の下に何百台というバスを動員してデモ隊の方々を自宅まで送っている、そうした事実もございます。投石や、あるいは卵とかペンキ、汚物を領事館に投げ付けて、それを武装している警官が黙認をしている、こういうことが歴然としているわけでありまして、こうして制止しないということは、正にその政府が後押ししたからこそこうしたデモが行われた、このように思っています。  やはり、この底流にあるのは中国の高度成長のひずみが大きいんではないかな。つまり、中国国民の貧富の差に対する怒りのはけ口がこうした形で表れたんではないかな、こう思っています。この怒りが中国政府に向けられるのが当局としては怖い、このことが一番の私は要因ではないかなと思っています。したがって、反日デモという形で国民の目を日本に向けている、こうしたことではないかなと思います。  改善方法については、各委員おっしゃるように、やはり冷静な話合いが一番必要なんでありましょうけれども、我が日本政府といたしましては、破壊された領事館、あるいはその他日本のレストランとか、そうしたものをきちっと補償してもらいたい、また暴力化したこのデモに対する、破壊活動に対する謝罪をしてもらいたいということをきちっとした毅然たる態度で交渉しなけりゃならない、こう思っております。そして、歴史認識とか教科書の問題は、これはまた別の問題でありますから、今後は冷静に双方で議論することが必要だと思っております。  なお、歴史認識の代表格と言われますような小泉首相の靖国神社参拝をやめろと、こういう声もありますけれども、たとえやめたといたしましても反日デモやキャンペーンは続くだろうと思っています。なぜならば、それは中国政府は一九八〇年代から愛国教育を実施しているわけでありますけれども、愛国教育すなわち抗日教育でありまして、これがもう根強く国民の中に浸透している。  一つの例を挙げれば、小学生の算数の問題で日本人中国人を何人殺したという絵までかいて教えている。こうしたことが根強く浸透しているわけでありまして、こうした靖国神社参拝の問題、教科書の問題、こうしたことを改善しろと言っても、百歩譲って改善したとしてもこうした反日デモやキャンペーンは続くだろうというふうに思っております。  したがいまして、大変奥深いものがございますから、こうしたことを今後どういう形で冷静に政府間同士で話し合っていくのか、あるいは民間外交として話し合っていくのか、これが一つの大きな課題じゃないかと思っておりますが、今の私にはその改善方法、ちょっと見当たらないのが残念であります。  以上であります。
  22. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 大仁田厚君。
  23. 大仁田厚

    ○大仁田厚君 済みません。いつもマナーモードにしているんですけど、たまたま出てまして、先生とちょっと中国の問題で話していたもんですから、済みませんでした。  この間、先日、ちょうど自然学校の建設をずっと二年から三年も続けているんですけど、たまたまC・W・ニコルさん、環境運動家のC・W・ニコルさんとたまたま会ったときに、C・W・ニコルさんって元イギリスでレスラーだったらしいですね、プロレスラーだったらしくて、それ以来僕はC・W・ニコルさんを先輩と呼んでいるんですけど、俺を先輩と呼べと言われまして。  それで、面白い話を一つ聞きまして、ちょっと聞いてもらいたいんですけど、ちょうど第一次世界大戦のときに、イギリス海軍がドイツのUボートにしょっちゅう撃沈されるんですね。六段階ありまして、軍用輸送から六段階あれして旅客船まで、六段階、まあ旅客船は最後になるんですけど、どんどんどんどんUボートが撃沈していくわけです。それで、それを、イギリス艦隊、イギリスのそういう輸送船を守るのはどこが守るんだという話になって、全世界に呼び掛けたらしいんです、イギリスが。そこで手を挙げたのが日本海軍だったという話なんですけど。それで、日本海軍がその旅客船や軍用船を守るためにあれして、撃沈されたイギリスの船を、船の中から船員やいろんな人を助けて、そのときにイギリス議会に呼ばれて絶賛されたという、領土分配のときにはイギリスは日本を是非功労者として掲げてほしいということでイギリス国民は絶賛したという、そういった歴史があって、日本国民は誇りを忘れているんじゃないかって僕はそのC・W・ニコルさんに言われたんです。あるときから日本国民国民的誇りを忘れているんじゃないかって。そう言われたときに、ああ、僕らの過去の先祖はやっぱり誇りを確かに持っていたんだなという認識を僕はしたんです。  何か愛国心だとか、何か右翼的な発言をするとレッテルを張られるじゃないですか。ああいう認識っていうのはどうなのかなと僕考えまして、僕はいつも思うんですけど、僕のおふくろが、おふくろは僕のことを一生懸命育ててくれるわけです。僕が学校行くと、もうにこにこしながら、僕は高校、六年前高校生だったもんで、九十点数学で取ると、僕は数学苦手なもんで、九十点なんて初めて取るわけで、それをおふくろのところへ持っていったら、いい年こいて持っていったらおふくろは泣いて喜ぶわけですよ、涙流して喜ぶわけですよ。その顔を見た瞬間、あっ、おれ何かいいことしたのかなっていう気になりまして、それで、そしたら不思議なことにやっぱりそのおふくろを守ろうとするわけですね、僕の考えの中で。ということは家族を守ろうとするわけですね。自分はどこに存在しているのかって、この国に存在しているわけですね。そして、家族を守っているわけですね、兄弟がいるわけですね、友達がいるわけですね。僕はこの国に住んでいるのになぜこの国をストレートに、ああ、愛してないのかなって、愛するって言葉を言えないのかなって。  それで、僕はある種、学生、この間まで明治大学の学生だったもんで、僕、学生に質問するわけですよ。おまえ、この国を愛しているかって言うと、ううん。じゃ、何で愛してないんだって率直に聞くわけですよ。そしたら、この国は、政治に対しても何に対してもそうですけど、主義主張がないというわけです。政治の世界政治家人たちにも主義主張がないって。これを頑としてやるんだとか、これを主張するんだっていう主張意識がないっていうわけですよ。  それで、もう一つ聞くと、もう一人のほかの人間に聞くと、この国は進んでいる方向性があいまいだって言うわけですよ。もっと国がリーダーシップを取ってこっちを向くんだということをちゃんと主張してくれれば、おれたち意見に合えばおれたちは付いていくという、だから、その若い人たちが全くそっちの方を見てないかといったら僕は違うと思うんです。その人たちのハートに、心に炎をともせるような、そういうふうなリーダーシップや主張をちゃんとできれば、僕はあの若者たちも立ち上がるような気がするんですけど。ちょっと端的にまとめたもので、短い時間でまとめたものであれなんですけど。  中国の問題ですけど、僕は、ちょっと僕的な考え方なんですけど、台湾の地震のときに、台湾の地震、先生方御存じでしょうけど、ネットにはんらんしていまして、中国全土で学生たちが何十万件というネットに書き込みがありまして、今だ、台湾にミサイルを撃ち込めって。今こそ台湾を自分の中国として取り戻せというのがネットではんらんしていまして、まあ中国の学者さんとテレビで対談したときもそういう話が出たんですけど。やっぱりそういうネットで一部のはんらんのあれを、実情を見ると、僕はあくまで、何もその収入の格差とかそれだけではないと思います。僕はある種上のクラスというかエリートの人間もこの中に加担しているような気がするんですけど。  一人の、テレビでこの間やっていたんですけど、そのテレビの映された映像が、その家族の中の家の製品が全部日本製なんですよ。で、日本は嫌いじゃないと言う、デモ隊に参加しているくせに。日本は嫌いじゃない、日本は必要な国であると主張するんです。  僕は、対中国が、日本を嫌っているとか教科書問題でどうのこうのしているだけの問題ではないと思うんです。それは、ああいうデモ隊の人は逆に今の中国政権に対しても僕はいろんな問題があるのかなって。だって、日本は、経済大国にどんどん進化して、どんどん成長していく過程においていろいろな、やっぱりいろんな部分でアジアに対してもいろんなことをしたわけじゃないですか。そういった部分で僕は今後、小林先生が言われたのともう全く違いまして、僕は、アジアの国における日本の主張とアジアにおける立場というのをこの国際問題調査会で是非議論してもらいたい。リーダーシップを取るとかいう考え方じゃなく、どういう位置に、どういう位置にこの日本アジアの国で存在を主張していくのか、そしてまた、日本という国がどういうふうな進路で国際社会に対して主張していき、また主義を認めさせるのか。それで、そういったものをどんどん議論していくべきだと思っております。  そういうことで、終わります。
  24. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ありがとうございました。  それでは、前田武志さん。
  25. 前田武志

    ○前田武志君 民主党の前田武志です。  今までの同僚議員のお話を聞きながら、そこで、主に今この事態、容易ならざる事態になっているわけです。我々国会議員としてどういう責任があるのかなということを随分お話を聞きながら考えていたわけです。  大使館、総領事館があれだけの暴動を受ける。これは国権を侵されているわけですから、毅然とした抗議を当然やるべきですね。直ちにやるべきです。しかし、なかなかやりにくい、政府にそういう行動に直ちに反応しにくい何かがある。  平成八年のたしか、あれは何月だったですかね、李登輝さんが初めて総統選挙、直接民主主義で選ばれる、そのときに中国があそこに海軍を張り付けて大演習をやりましたですね。日本の近海、領海にまでミサイルが落ちるというような事態になりました。  ちょうど予算委員会が開かれまして、橋本総理が総理になられて初めてクリントン大統領に会いに行く直前でした。総理が御出席でなくて、私が当時は新進党を代表して質問に立ったんですが、ほかの予定だったんですが、急遽その事態であったので池田外務大臣に、五千年の歴史を持つこのアジア文化の兄貴格の中国にこんな平和を乱すような暴挙を慎めと友情ある忠告をしろと迫りました。最初はなかなか、いろいろ言っておられましたけれども、最終的には何かシンガポールに近々に銭其シン外務大臣と会うときに、外交部長と会うときにその旨を表明すると、こう言っておられた。やっぱり橋本総理が初めて訪米されるときに、日本の国権の最高機関というか国民を代表するところで、そういう中国の平和を乱すような行動に対して日本国民が非常に懸念をしているということを伝えさせにゃいかぬのだろうと思うんですね。  多少申し上げると、当時、私のもう尊敬する日台関係の非常に重鎮の自民党の先生方に、どうして自民党さんはここをもっとしっかりまずは言わないんだと言うんですが、やはり政権政党として多少のそこまで踏み込みにくい何かがあった。先ほど来議論に出ておりますように、政府、内閣としては、政治としてはなかなか踏み出しにくい。官僚が、外務官僚が大体そういうものをすべて一手に抱えてやっている。  多少私事になるんですが、今年はサイゴンが陥落して三十周年になります。実は当時、私は、難民援助、日本政府が難民援助をやり始めたものですから担当の書記官として現地におりました。急遽、あの戦争が終結というようなことでサイゴンが戦場になるというところまで来ました。当時、日本政府は、それは外務省限りでは対応できません。何の邦人救出についての手を打ちませんでした。現地には二千人の日本人がおりましたが、外務大臣名で邦人の安全を確保されたしという訓電が一本来たままです。ナショナルフラッグであったJALのチャーター便を出すでなし、まだ港が開いていたサイゴン港にシンガポールや香港から輸送船を持ってくれば一挙に脱出できるんです。一切手を打たなかった。当時の政治、内閣がそれだけの政治責任を果たさなかったわけであります。  通底しているのは、要は、我々、この国会でつくる国民を代表する政治、そしてそれがつくる内閣、ここが本当に日本の国益と世界の平和を希求する、それを実現していくだけの本当に腹構えを持ってやってきているのかということが常に私の反省の中にあります。  そして、もちろん教科書問題、認識の問題等があります。共同の研究もしなければなりません。しかし、その前に、日本はやっぱり反省を表明しているんですね。もういろんな内閣でやっております。私も直接聞いたのは、例えば細川内閣ができたときには細川総理が国会の冒頭にその表明をされた。それから、自社さ政権になって村山総理はかなり踏み込んで反省をされたわけです。政治の時のトップリーダーがそこまでやられたということは国民がそういうふうに反省をしたということなんですから、それをうまくといいますか、そこをちゃんと押さえた上で中国とも世界とも韓国ともやっていかにゃいかぬと思うんですが、その政治の責任ということがどうも軽くなり過ぎているのではないかという気がいたします。  そこで、多少私なりに申し上げますと、やはりあの前の戦争戦争指導者、これは政治です。そして、曲がりなりにも日本は議会制民主主義を明治憲法下といえ持っていた。大政翼賛会になったといえども、それでない国会議員も選んでいた。したがって、あの戦争の責任というのは政治がどこかで明らかにしなければならないわけです。  いろいろあります。我々も先祖から、前の世代から聞いていることもあるし、我々自身も学び、議論をし、いろんな事実関係というのは知っております。しかし、少なくとも、大陸に出ていったり韓国を併合したり、あの歴史の中で日本がやむにやまれずやってきた歴史というのがある。しかも、最後は、日本国民をあれだけ犠牲を強いた上に一億玉砕ということまで言った。これは私は政治ではないと思うんですね。それだけのことをやってきた上で歴代の内閣が反省の弁を述べているんですから、そこは賢く、うまく、我々政治家がそれを踏まえて、日本はしっかりとしたそういう過去の反省、清算もやった上でこれだけの貢献をしてきているんだということを堂々と述べていけるような政治にする責任があると思うんですね。  先ほどの大門議員が引用されたファイナンシャル・タイムズの論評ですが、日本はあいまいなままでというような、そういう指摘がありましたけれども、そのあいまいさを我々が乗り越えてはっきりと、謝るべきときにはきっぱりと謝り、そして言うべきことを言っていくという形の政治にしたはずなんですけれども、そうなってないというところに今のこの国会にいる我々の責任が重大ではないかということを、私の感想を申し上げて意見陳述といたしますので。
  26. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 末松信介君。
  27. 末松信介

    ○末松信介君 自民党の末松です。  今まで先生方から大変有意義なお話を聞かしていただきまして、感謝をいたしております。  こちらへ入ってくる前に前田先生と話をしながら入ってきたんですけれども、小泉総理、一考の余地あり、と同時にやっぱり、日本国としての誇りというものをやっぱりきちっとこの際は述べていくべきであろうと、主張すべきであろうと、かように思うわけなんですけれども。長い間この東アジア共同体のずっと勉強をさしていただいて、自分なりにもいろいろな本をちょっと読んだりはしましたんですけれども。  前回、話を一遍しましたけれども、週末のデモを見ておりましたけれども、前申し上げたとおり、中国というのはやっぱり十三億の国民を抱えておりまして、大きな可能性を持っていますから、やっぱり小国ではないと。ただ、やることがやっぱり普通の国と変わらぬような立ち居振る舞いをすることがあるから、大きな大国でもないと。だから、中の国であるから中国だということを言ったんですけれども、そういうような気持ちというのをやっぱり日本人持たざるを得ないような、そういう感覚があろうかと思うんです。  結局日本人がどうしてこう、これちょっと庶民的な話になるんですけれども、中国のこういった問題について不快感を持っているかといったら、似て同じなものというとらえ方をしているんですけれども、現実はもう似て非なるものであると。私も中国の留学生の方のちょっとお世話をしたこともあるんですけれども、漢字一つ取ったって、走るというのは、日本人は走るんですけれども中国では歩くということですよね。汽車というのは、こっちでは列車ですけれども向こうではこれ自動車ということでありますから。もっと言いましたら、殺すというのは、これは接尾語で強い意味を込めているということですから、打殺って打ち殺すと思ったら、じゃなくて打倒するという意味であるということで、全然意味が違うんだなということを思ったわけなんですよ。  いずれにしましても、中国人というのは地縁を大切にする反面、日本人は血縁を大事にするということ。日本人は非常に恥の文化でありますけれども、外見的恥を日本人は非常にこだわるけれども、中国は内面的な恥を非常に大事にするということもあります。  そういうことで考えていくと、やはりもう一度、こういった、中国方々のそういった生活思想というものをもう日本国民はもう一度、こういう共同体ということが今叫ばれているときだけに慎重に考えていったらどうかなということを思うんです。  兵庫県は広東省とも付き合いがあるんですけれども、役人の方が来られて、昼弁当を出したんですよ。ごちそうだったからおいしいだろうと言ったら全然おいしくないと言うんですよ。何でこれがおいしくないんだと聞きましたら、中国は温かいものがごちそうだと言うんですよ。温かくないものはごちそうでないという、そういうことを言われたわけなんです。ですから、全く発想が異なるなということを、そういうことを思いました。上に政策あって下に対策ありというようなことなんですけれども。  それで、この東アジア共同体のことなんですけれども、中国という国をどういう評価をしていくかということなんですけれども、これ東アジア共同体を考えるとき、日本は非常に中国歴史を大きく広くとらえようとするんですけれども、中国は少なくとも日本に対しては百年未満でとらえさせようとすると。この東アジア共同体でも、日本は四十年あるいは五十年ぐらいの単位でとらえようという考え方もあろうかと思うんですけれども、中国はやっぱり十年から十五年ぐらいでとらえようという、非常に歴史のとらえ方も違うんだなということを思います。  それと、中国という国は常に敵、仮想敵国をつくって力を付けていくという、そういう国であると。  三つ目は、不安定、不均衡、非常にアンバランスの中から利益を生み出すのが大変巧みな国であると。日本は絶対に安定したところからでしかきちっとした利益を生み出すことができないということがあります。これはもう台中関係や日中関係や中ロ関係見ても分かると思うんです。  そして四つ目は、常に国民をあるいは世論を利用しながら政府意見を反映さして目標を実現させていくということが非常に上手であると。民主化はできないことを知っておりますけれども、民主化を演じる、民主化をまた演じさせているというところがはっきりとやっぱり我々日本人にとっても理解ができると。  そして五つ目の歴史認識問題、靖国問題、教科書問題も、国内世論を一気に反日、抗日に持っていける外交カードとして常に温存されているということなんです。  ですから、アウシュビッツにしたって収容所があります。広島の原爆記念館があります。南京虐殺記念館があるという。それぞれ三つはそれぞれ意味があるんですけれども、南京虐殺記念館、私は行ったことないんですけれども、この持つ意味というのはちょっとこのほかの、アウシュビッツと広島の原爆記念館とは違うというところから、私はやっぱり中国のそういった外交の原点というものをしっかり見詰めていかなきゃ改めていけないなということを、このことをずっと考えています。先富論とか社会主義市場経済というレーニンもマルクスも考えたことのないような思想をこれずっとやっていますから、したたかな非常に国というんでしょうか、巧みな外交術というものを、これをとらえがちであるという。  東アジア共同体をどの分野まで想定しているか分かりませんけれども、中国が周辺の安定を崩れることを一番今嫌っていますのはやっぱり経済的な成長を遂げているからだと思うんですけれども、いずれにしても、安全保障までこれ含めようとして考えた場合には、これはもうアメリカの存在、アメリカの出方ということが一番気になりますから、そうしたら、日本の方針も変えなきゃならぬ、中国も明確にしなきゃならぬというところで、そこまでは行き着くかどうかということは分かりません。そういう点では、経済共同体的なところで落ち着くのかなということを、そういうことを思うんですけれども。  先生方は、常に日本ASEANプラス3で考えるということが多いようですけれども、ニュージーランド、オーストラリアということも考えてもいいんじゃないかという話もありました。ここまで視野に入れる必要もあるということなんですけれども、私はやっぱり中国抜きにしてはこのアジア共同体ということは、東アジア共同体は考えられませんから、一つにはもう中国が民主主義の価値をどう理解するかというところにもうポイントが掛かってきているんだなということを思います。共同体の必要性は、もう環境の問題でもうCO2の排出量が今三百五十七億トンほどありますけれども、アメリカが二四%を超えていると、中国が一三%ですけれども、この上がる率が大変な量ですから、これはもうさっきの原子力の発電所の話もありましたけれども、これはもうアジア全体でとらえていかなきゃならぬという課題があろうかと思います。  それと外国人労働力の問題についても、現にフィリピンはもう、介護とか看護師さんをもう日本へ是非という話がありますので、抜きにしても考えられないということもありますし、ODAも、これはもう北京オリンピックで断ち切っていくということになっていますから、いずれ、これはアメリカが、この海外援助法ですか、共産圏には援助ができないということでありまして、人づくりに支援をしています。そういう点では日本もそこへ比重を置いていくということになろうかと思うんですけれども。  そうした点を考えていったら、共同体構想というのは時期尚早という先生方の声が多かったんですけれども、私なりには少しずつ議論を積み重ねて、今先生方が言われたポイントをつかみながら、これから前へ進めていったらどうかなということを思います。  時間を取りましたけれども、自分のまとめとさせていただきます。  ありがとうございました。
  28. 松田岩夫

  29. 長谷川憲正

    長谷川憲正君 自由民主党の長谷川憲正でございます。  私も一言だけ意見を述べさせていただきたいと思うわけでありますが、先ほど来各委員からいろいろとお話が既にございまして、中国に対して毅然たる態度を取っていくということはもう当然のことでございますし、あるいは今中国で行われていることについていろんなメッセージが発信されているわけでありますから、それをしっかりと分析をしていくということもこれからの対策にとって極めて重要だというふうに思う次第であります。  と同時に、私申し上げたいのは、先ほど世耕委員が近攻遠交ということをお話しになりました。私は、前にも申し上げましたけれども、議員に立候補する以前はフィンランドで駐在大使を三年間務めておりまして、ヨーロッパから日本を見ていたわけでございます。その目で気が付いたことを申し上げてみたいと思うんですけれども、ヨーロッパにおりますと、日本の政治というのがとっても遠く見えます。政治家方々がまず余りヨーロッパへ出てこられないし、発言をされない、新聞に載らないということが一つございます。一方で中国は、これはもう旅行客の数も物すごいですけれども、ヨーロッパを訪れる政治家の数も物すごいものでございまして、例えばフィンランドのような小国でございましても、大臣クラスの方が数十人、年間にですね、入れ替わり立ち替わりお見えになります。  そういうような状況からしますと、次第に世界の中で中国の言うことというのが受け入れられて、そして日本が本来言わなければいけないことというのが世界国々の耳に届かないという状況が出つつあるのではないかということを大変心配をいたします。  ヨーロッパの国々日本と価値観を共有している国々でありますから、例えば大使館や総領事館に暴力行為が行われる、こんなことなんかは許されるはずがないわけでございまして、すぐさま世界じゅうから中国に対して厳しい批判の声が上がらなければいけないわけでありますけれども、それが必ずしもそうならないというところには、やはり日本外交一つ問題があるのかなということを考えざるを得ないわけでございまして、外務省任せの外交ということにはもちろんなっていないとは思いますけれども、しかし、政治家のレベルの外交というのは極めて重要であるということを私特に強調さしていただきたいと思う次第でございます。  以上です。
  30. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 岸信夫君。
  31. 岸信夫

    ○岸信夫君 この調査会におきまして多くの参考人の先生から様々な御意見をいただきながら議論してまいったわけでございますけれども、この東アジア共同体において何を目指していくかということを考えますと、やはり私は、まず第一に、この地域各国経済の発展、そしてそれに伴いますこの地域の安定ということを最終的には目指していくのかなと。すなわち、まず第一には、やはり地域での経済連携ということがまず第一に来るのかなと、こういうふうに思うわけであります。  ただ、このことは、特定の国だけの利益につながる、すなわち経済活動における支配と被支配ということがこの圏内において起こってはいけないわけでありまして、各国に利益をもたらしまして、そしてこの経済圏全体での利益を確保していく、そして安定につなげていく、こういうことが大変重要なことなんではないかと、こういうふうに思うわけであります。  ただ、その大前提となります、すなわち共同体構築の前提としてまず考えなければいけないということは、各国間のその民主化の進展度合いということがある程度同じレベルになってきていなければいけないんではないかと、こういうこと。そしてもう一つは、国民同士でやはり、先ほどからも先生からもお話ございましたけれども、価値観の共有ができてくる、こういう土台ができ上がっていなければいけないんじゃないかと、こういうふうに思うわけであります。  特に、この経済活動についてですけれども、私も以前貿易の仕事に携わっておりまして、中国との仕事もずっとかかわってまいりました。以前、やはり中国との仕事というのは世界のほかのあらゆる国の仕事と比べても非常にやっていて恐ろしい、怖い、未知のリスクが多く抱えた仕事というのが多くあったわけであります。これは、やはり中国の会社なりそういったところが国際ルールにちゃんと従ってもらえない、そういう意味から何が起こるか分からないという意味で非常にやりにくかった。更に言えば、そういった環境の中で中長期にわたる投資活動といったものについても更にやはりリスクも高かったというふうに思います。  そういう意味脅威を感じていたわけでありますけれども、天安門事件以来時間がたって、特に沿岸部、上海を中心とする沿岸部での経済発展を見るにつけて、逆にこの中国と仕事をしないでいたら取り残されてしまうんではないか、中国がどんどん走ってしまうんではないかというような脅威に変わってきたわけであります。  そこで今回の事件が、中国での事件がまた起こってきたわけであります。特に、中国でのこのデモ活動、破壊的な活動が非常に日本に対して向けられている、このこと自体がまた非常に大きな怖い脅威であるわけでございますけれども、より大きな問題としては、やはりその言わば犯罪行為を止めることのできない中国政府対応というところにあるんだと思います。  先ほど長谷川先生からもございましたこの問題については、世界各国、欧米諸国、そしてメディアも取り上げております。そうした中で一定の理解が図られているんだと思いますけれども、まだまだ中国がけしからぬというようなことでは一致しているということでもないのかもしれない。そういう意味では、我が国も、我が国から我が国の主張というものをしっかりと世界に発信していかなければいけないんだというふうに思うわけであります。  この共同体の中で我が国が果たしていかなければならない役割ということで考えますと、やはりその経済活動ということになります。そして、やはり中国との連携ということも非常に進めていかなければいけないわけですけれども、その中で我が国にとって一番アドバンテージとしていかなければいけないのはやはり日米関係であろうと、こういうふうに思います。これはいわゆるアメリカの力をかりるとかトラの威をかると、こういうことでは決してなくて、あくまでも日米関係をしっかりした、軍事同盟のみならず、大きな意味での関係強化につなげていく、その上で我が国がやはりアジアの中で活動していくわけでありますから、この関係強化した上でアジア各国と付き合っていく、その中で安定を確保していく、このことが大変重要なんではないかと、こういうふうに思うわけです。  やはりアジアに生きる日本ですから、アジア重視の外交というのは、これはこれで進めていかなければいけないことだと思いますけれども、今申しましたように、アジアの中での安定と発展というものはやはり日米の同盟を抜きにしては語り得ないんではないかと、このように思っております。  以上です。
  32. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ありがとうございました。  予定の時刻が参りましたので、本日の意見交換はこの程度といたします。  なお、今日、今夜から明日、あさってとIPUのASEANプラス3のグループミーティングというのが初めて開かれ、それが東京であります。当調査会のメンバーの中でも山東理事、加藤理事、そして私、三人が参画させていただくことになっております。多くの先生方から国会議員の果たす役割といったことについての言及がありましたので、あえて、正に今夜からなものですから、御案内のことと思いますけれども、与えられた任務をそれぞれ皆さんから出た御意見を踏まえて全うしていきたいと思っております。  委員各位には、貴重な御意見を熱心にお述べいただきまして、誠にありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十八分散会