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2005-03-02 第162回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十七年三月二日(水曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員異動  二月二十八日     辞任         補欠選任         松下 新平君     大久保 勉君  三月一日     辞任         補欠選任         大久保 勉君     尾立 源幸君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         松田 岩夫君     理 事                 山東 昭子君                 世耕 弘成君                 野上浩太郎君                 山根 隆治君                 加藤 修一君     委 員                 大仁田 厚君                 岸  信夫君                 小林  温君                 末松 信介君                 中川 雅治君                 二之湯 智君                 長谷川憲正君                 水落 敏栄君                 尾立 源幸君                 大石 正光君                 工藤堅太郎君                 佐藤 雄平君                 田村 秀昭君                 藤末 健三君                 前田 武志君                 浮島とも子君                 澤  雄二君                 大門実紀史君    事務局側        第一特別調査室        長        三田 廣行君    参考人        東京大学大学院        総合文化研究科        教授       山影  進君        大阪市立大学大        学院経済学研究        科教授      朴   一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題に関する調査  (「多極化時代における新たな日本外交」のう  ち、日本アジア外交東アジア共同体構築に  向けての課題)について)     ─────────────
  2. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二月二十八日、松下新平君が委員辞任され、その補欠として大久保勉君が選任されました。  また、昨一日、大久保勉君が委員辞任され、その補欠として尾立源幸君が選任されました。     ─────────────
  3. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 国際問題に関する調査を議題といたします。  本日は、本調査会調査テーマである「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日本アジア外交に関し、東アジア共同体構築に向けての課題について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、東京大学大学院総合文化研究科教授山影進参考人及び大阪市立大学大学院経済学研究科教授朴参考人に御出席いただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  本調査会では、日本アジア外交について重点的かつ多角的な調査を進めておりますが、本日は、東アジア共同体構築に向けての課題についてお二方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず山影参考人朴参考人の順でお一人三十分程度で御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、山影参考人から御意見をお述べいただきます。山影参考人
  4. 山影進

    参考人山影進君) 本日は、国際問題に関する調査会にお招きいただいて、どうもありがとうございます。大変光栄に存じます。  本日、私は東アジア共同体構築に向けての課題というテーマを与えられましたので、それについて私の日ごろ考えていることを申し上げたいと思います。  大学で国際関係論を教えているということで、日本対外政策の内側ではありませんで外から見ているということで、本日は、日本アジア外交ということよりは、東アジアで今動いている共同体構築に向けて全体的な流れがどうなっているのかということをお話しして、最後に、日本のなし得る貢献について若干触れさせていただきたいと思います。  この東アジア共同体構想について、様々な国で最近、あるいは日本においても様々な方が様々な構想を打ち上げておられます。その内容についてはここで詳しく逐一御紹介いたしませんが、一つ重要な点は、どのような共同体構想を取り上げても、そこにASEAN東南アジア諸国連合というのが核として存在しているという点です。  このASEANは一九六七年に発足した組織でありますが、一九九〇年代に非常に大きな変革を遂げまして、東アジアで今日最も共同体と呼ぶのにふさわしい組織になっております。  その九〇年代の具体的な変革内容ですが、一つは、東南アジアのほぼ全域ASEANという組織が覆うようになった、もう一つの点は、いよいよASEAN中心経済統合が本格化したと、そういう変化が過去十年の間にありました。  このASEANがそのまま発展すればASEANとして小さくまとまっていく可能性もあったわけではありますが、御案内のように、一九九七年から九八年にかけてタイで発生した通貨危機東アジア全域に及ぶという通貨危機金融危機が生じました。これに日本が非常に積極的にかつ速やかに関与していきます。それについては日本ASEAN関係のこの調査会の会合で多分もう触れておられることと思いますので省略いたしますが、この日本が九七年から九八年にかけての危機に積極的に関与したということが大きなきっかけになりまして、いわゆるASEANプラス3、ASEAN日本中国韓国の三国が一緒になって地域協力を進めるというこの枠組み制度化いたしました。  日本ASEAN関係は一九七〇年代から非常に長い協力の歴史があるわけですが、九七年から始まりましたこのASEANプラス3というのは、わずか数年でこの日本ASEAN協力制度を凌駕する制度に発展いたします。  具体的に申しますと、九七年に首脳会議が初めて開かれるわけですが、九九年には東アジアに関する協力共同声明というのを出します。これは、単に経済協力だけではなくて、国際関係といいますか東アジア地域協力を全般的に進めるということが合意されたわけで、それを受けまして、財務大臣経済大臣外務大臣農水大臣あるいは観光担当大臣といった閣僚会議が次々と開かれるようになり、それぞれの所管の分野でこのASEANプラス3の協力というのが急速に議論され、かつ一部は実行されるようになりました。  こういうASEANの九〇年代の変化、それから危機に対する対応というこの二つの要因を踏まえて、二十一世紀に入ったASEANというのは、周辺諸国から見て非常に将来性の高い、あるいは魅力的な地域組織としてとらえられるようになりました。  そこで、このASEANとの連携強化しようというのが、まず第一にこのASEANプラス3、ASEAN日中韓の中で生じます。具体的に言いますと、ASEAN日本ASEAN中国ASEAN韓国という、ASEANとその他三国の間のバイ関係が急速に深まります。それに加えて、インドあるいはロシアがこのASEANとの経済連携を求める動きを始めました。  以上のような経緯でASEANというのが東アジア共同体構想中核にあるというふうに言ってよいと思います。  ただ、ここで重要なのは、日本から見ていますと、非常に大きな地域連携構想というのはこの東アジア共同体構想だけでありますが、地域協力あるいは経済連携全体を見渡しますと、実はこれはたくさんある構想の中の一つにしかすぎないというふうに言えると思います。特に、ASEANから見てみると、ASEANは既にオーストラリアニュージーランドとも連携を開始しております。それから、最近インドとも経済連携を開始しました。それから、ASEANの個々の加盟国、特にシンガポールタイが二国間の経済連携を模索しております。既に、例えばシンガポールニュージーランドやアメリカ合衆国とFTAを結んでいるという、そういう状態になっているわけです。  その中でも注目できる国はタイであります。タイは、現在、タクシン首相の非常に強いリーダーシップの下、先進国化とそれから周辺国々との協力を推進しております。  ここでは二つ触れたいと思います。  一つは、アジア協力対話と言われているもので、これはASEANプラス3だけではなく、南アジア国々、それから西アジア国々を横断的にくし刺しして、その中でできる協力を次から次へと進めていこうという構想であります。もう一つベンガル湾という一つの地理的な環境を土台にいたしまして、タイが音頭を取って技術協力経済協力地域レベルで進めようとしています。  それから、中国外交のところでも話題になっていたというふうに存じ上げておりますが、中国は、近年、中央アジアロシアとの連携強化して、二〇〇一年には上海協力機構というのをつくり上げている。これは中国が、一九九〇年代末から大国との関係を重視するだけではなくて、周辺諸国との関係強化する、いわゆる周辺外交強化という方針を打ち出しまして、非常に積極的に中国の周りの国々との協力を進めております。  以上申し述べましたような環境の中で、つまりASEANを見ても様々な国、地域協力を模索している、そういう中に東アジア共同体構想というのが位置付けられるのだと思います。  現在の東アジア状況はどうなっているのかということを簡単に整理し直してみますと、共同体構想が盛んに提唱される背景としては、言うまでもなく東アジア域内貿易が伸展している。御案内のように、日本貿易が、アメリカを凌駕して中国が第一位になるとか、東アジア全体の域内貿易比率が五〇%に近づくとか、一九八〇年代後半以降の東アジアの実質的な経済統合動きが、通貨危機を乗り越えて現在も急速に進展しているということがあるのだと思います。  それに加えて、通貨金融危機を受けて通貨金融協力が始まりました。御案内のように、チェンマイ・イニシアティブと言われている、緊急時に通貨をスワップするというASEANが始めた協力関係ASEANプラス3のレベルで始めようということになり、既に様々な二国間の協定が現在ネットワークのように張り巡らされております。それに加えて、アジア債券市場構想、あるいは長期的観点に立って共通通貨構想話題になっているということがあると思います。そして、自由貿易協定FTAを含む包括的経済連携、あるいは経済協力全域化が今焦点になっている。  つまり、先ほど述べましたように、いわゆるASEANプラス1、ASEAN日本ASEAN中国ASEAN韓国という形で現在経済連携が進められているわけでありますが、そのようなASEANバイFTAではなくて、ASEANプラス3全体としての経済連携を実現したらどうかという動きも高まっております。場合によっては、これはまだ具体的に話題になっているわけではありませんが、果たしてASEANプラス3、ASEAN日中韓だけで経済連携制度を作るのが良いかどうかというのも議論され始めております。  具体的に言いますと、オーストラリアニュージーランドASEANが既に経済連携を始めているオーストラリアニュージーランドをこの東アジア共同体をつくる上での経済連携の中に含めていいのではないかといった意見も出されるようになっております。  それから、経済共同体あるいは単に東アジア共同体と呼ばれているものがこれだけ実現性を帯びてきたのは、やはり何といっても中国が積極的な姿勢に転換したからだと思います。その大きな理由は、先ほど申しましたように、中国自身周辺外交強化ということで、その一環としてASEAN関係強化しようと始めたわけですが、そのきっかけはやはり日本ASEAN関係強化というのが九〇年代末にあったからではないかというふうに私は思っております。ただ、御案内のように、中国ASEAN動きは非常に速く、二〇〇二年には包括的経済協力に関する枠組み協定を結んでしまったわけで、このスピードというのが、日本から見ていると中国ASEANへの接近が非常に目立って見える理由ではないかと思います。  このような、経済連携だけではなくて、中国は今、東アジアシンクタンクネットワークという、ある意味では民間レベルでありますが、東アジア共同体の創設を政策的に見ようというシンクタンクネットワークをこの地域につくろうというのを率先して進めております。  以上が、東アジア共同体という構想が現在のこのASEANプラス3の地域話題になっている理由ではないかと思います。  どのような課題がこの東アジア共同体構築をめぐってあるのかということを考えてみますと、一つは、その中核になっているASEAN自身がどれだけのスピード自己変革を遂げるのかということであります。これは、また後で触れようと思いますが、ASEANというのはある意味では総論賛成のところで合意を行い、各論では反対が出てきてなかなか協力の実態が進展しないという、そういう特徴を持っております。つまり、条約ができた、協定ができたということをそのままうのみにしてはいけなくて、どれだけそのフォローアップがなされているのかということを見ていかないとASEAN地域統合の深まりというのはよく分からないわけであります。  一昨年、二〇〇二年にASEANは、二〇二〇年に向けて共同体を創設するのだということに合意いたしました。従来から、共同体を目指して協力をするということをASEANは掲げてきたわけでありますが、年限を切ったのは今回が初めてであります。  このASEAN共同体は三本柱から成っております。安全保障共同体経済共同体社会文化共同体、この三つの異なった種類の共同体を同時並行的に実現しようというのがASEANの戦略であります。ただし、名前は派手、格好いいのでありますが、その実現目標を検討してみますと、今まで基本的に合意されていたことをきちんと実行するのだということの再確認であるというふうに私は考えております。いずれにせよ、今までの総論賛成といったところで足踏みしていたASEANが、いよいよ本当に動かないといけないという時期になったのだと思います。  ASEAN一つ統合していく上で、現在、一番深刻な問題は域内格差であります。ASEANが拡大するということは、それまで内戦やいわゆる鎖国政策世界経済統合から、あるいはグローバリゼーションから外れていたベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー、こういった国がASEANに入り、そのASEANとしての経済統合を進めていくという、そういう義務が生じたわけでありますが、インフラにおいても、あるいは政治制度、あるいはその法整備においても、既存ASEANと比べてはるかに後れている、あるいは状況が劣悪なわけであります。こういった国が先発国にどうやって追い付いていくのかというのが大きな課題でありますが、ASEAN自身にはその十分な資源がないということで、このASEAN域内格差是正には日本の支援が必要だというふうに私は思っております。これが第一点。  第二点は、現在存在しているASEANプラス3という協力枠組みと今提唱されている東アジア共同体というものと、どういう関係にあるのかというのがまだはっきりしていないという点であります。  御案内のように、今年のASEANプラス3の首脳会議に合わせて東アジアサミットというのが開かれることになりました。この東アジアサミットというのは、一九九八年に韓国金大中大統領が提唱したアイデアで、東アジア共同体に向けての第一歩というふうに位置付けられている首脳会議であります。  なぜ九八年に提唱されてから今日まで開かれなかったのかというと、様々な理由でそこまで踏み込むという合意ASEANプラス3で成立しなかったためであります。実は、今回もこの東アジアサミットが開かれるかどうかについては最後最後まで分からなかったのでありますが、ともかく開こうというところまでたどり着いたと言えます。  仮にこれが第一歩だとすると、第二歩はどういう方向に向かって踏み出すのかということであります。ASEANプラス3というのは、言うまでもなくASEAN中心となった制度で、それに日中韓が招待されるという、ある意味では非対称的な協力関係枠組みです。これが東アジア共同体となるときには、発展的に解消して、ASEAN日中韓ではなくて、この東アジアの現在十三か国がこれに参加しているわけですが、それが平等なメンバーとして加わる組織になるのかどうなのかという点です。  ASEANプラス3を解消して東アジア共同体一本になることも可能でしょうし、同じメンバーASEANプラス3とは別の組織をつくることも可能でしょうし、あるいはASEANプラス3に更に別のメンバーを加えて東アジア共同体にすることも可能であります。少なくとも、第二歩がどっちの方向に向かって歩み出されるのかということについてはまだ決まっていないと私は見ております。  第三に、東アジア共同体ASEANプラス3と同じものか違うものかにかかわらず、この共同体運営方式がいわゆるASEAN方式と言われているものになるだろうことはほぼ間違いないと思います。  このASEAN方式というのは何かというと、重要な要素は、コンセンサス意思決定をするということと、お互いに内政には干渉しないという、この二点が特に重要ですが、果たして、この二つの重要な要素をそのまま東アジア共同体で認めていいのかどうなのかということが問題になると思います。このASEAN方式というのは、弱小国相互に信頼できない、あるいは域外大国と不利な関係になりたくないということで、非常に慎重な協力姿勢ということでこのコンセンサス内政不干渉というのを掲げてきました。したがって、これはよく言われているように、決してアジア特徴とか東南アジア文化ではなくて、国際社会の中の弱小国協力していくためのある意味では知恵だったわけです。  しかし、これは欠点があります。一つは、コンセンサスに基づいているために、問題の先送り、あるいは現状維持を変えるのが非常に難しいということがあります。二番目、内政不干渉に関することでありますが、今日の国際規範は、ある種の人権の侵害においてはこの内政不干渉という原則はもはや適用されないのだということになっております。ところが、このASEANというのは、相変わらずミャンマーの問題を抱えています。ミャンマー軍事政権民主化勢力を抑圧していると、総選挙の結果を認めなかったという、こういう国を含んだ中で東アジア協力を進めていくというのが果たしてどういうことなのかというのは、もう少し深刻に考えてみなければいけない問題ではないかと私は思います。  しかしながら、こういう欠点があるにもかかわらず、このASEAN方式が重要なのは、コンセンサス内政不干渉をある種の担保にいたしまして、相互紛争を平和的に解決するということに向けての相互信頼醸成、それから具体化というのが実現してきたという点であります。  古くなりますが、一九七六年にASEAN諸国東南アジア友好協力条約を結びました。これは、今日、ASEAN基本理念というふうになっております。御案内のように、日本も昨年の通常国会でこれを承認したところであり、日本もこの東南アジア諸国紛争平和的解決にコミットしているということを遵守するというか、尊重するということを正式に表明したわけです。もしも東アジア共同体ASEAN方式に似たような形を取らざるを得ないならば、せめて、東アジア全域でこの紛争平和的解決に向けてのコミットメントというのを再確認していくというのは重要なことではないかと思います。  もちろん、日本中国の間には日中平和友好条約がございますし、日本韓国の間には基本関係条約及び紛争に関する覚書があります。決してASEAN以外の地域武力紛争が起こる可能性が高いというふうに私は申し上げているわけではありませんが、平和的解決にコミットするというこの相互コミットメントを常に言い募るということは、やはり平和な東アジアをつくる上で重要なのではないかというふうに思います。  最後になりますが、こういう東アジア共同体がまだ、構想はされているのだけれども具体化は進んでいないという段階でどういう日本のイニシアティブがあるのだろうかと考えますと、そのベースになるのは、過去数年間、様々な将来構想日本から出され、あるいは日本ASEANあるいはASEANプラス3のレベル合意されてきました。それは十以上あります。この中を見て、将来の東アジアにとって望ましい環境、あるいは望ましい関係は何なのかということを具体化していくことが一つの作業ではないかと思います。  第二に、既存関連制度、特にアジア太平洋経済協力APECASEAN地域フォーラムARFとこの東アジア共同体をどのように関係付けるのかということがあります。  言うまでもなく、APECあるいはARFの中にこの東アジア共同体というものができるわけであります。APECは一九九四年にボゴール宣言というのを出して、先進国は二〇一〇年まで、途上国は二〇二〇年までに貿易自由化を実現するということをそれぞれの国がコミットしております。これは法的に拘束されているものではありませんけれども、政治的にコミットしている。このような貿易自由化の次元あるいは流れは今日若干停滞しているわけではありますが、そういうものの中に東アジア共同体があるのだと。そうすると、東アジア共同体は、APECよりもより濃い経済連携あるいはFTAを実現しないと意味がないということになります。  ASEAN地域フォーラムARFアジア太平洋で唯一の安全保障対話であります。これがあるということは、東アジア共同体安全保障協力も含むならば、ARFで行われている信頼醸成予防外交に目指す動きよりも速いペースで、あるいはより高度な安全保障協力を組み込まないといけないということになります。  それから第三点ですが、やはり日本としては、東アジアにおける民主主義の浸透あるいは民主化への建設的な関与というのはやはりやっていくべきではなかろうかというふうに思います。その点で、日本ASEANのパートナーシップ、連携というのは、一昨年の十二月に東京特別首脳会議を開いたときに東京宣言あるいは行動計画という文書にまとまっております。それを実現していくということは大変重要でありますが、特にそのASEANの中の民主化先発国、具体的に言うとタイ、フィリピン、そして最近民主化したインドネシアなどと協力して、やはり東アジア全体で民主化ということが非常に大事な価値なのだということを一層説得していく必要があるのではないかと思います。  以上の問題は、相手があってようやく実現することでありますが、日本だけでも実現できることが一つあります。それは、九九年の十一月にアジア経済再生ミッションというものが報告書を出しました。これは奥田ミッションとも呼ばれておりますが、通貨危機に見舞われたアジアの経済が再び成長軌道に乗るにはどうしたらいいのかということを調べ、日本がどういう貢献をできるのかということを調査したその報告であります。  結論は、一番大事なのは日本が開国をすることであると。人あるいは農業でも、日本東アジアのほかの国々に対して門戸を開放するというこのことがほかのアジア諸国の経済再生にもつながり、日本の経済の成長にもつながると、これは日本が率先してできるだろうということであります。私も全く同感で、FTAというのはもちろん相手との交渉があり、相手から取るべきものというのは当然あるわけでありますが、何よりも日本が率先してこの自由化を進めていくということが、長期的に東アジア共同体が実現していく上での重要な原動力の一つになるのではないかというふうに思っております。  以上で私の発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  5. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ありがとうございました。  次に、朴参考人から御意見をお述べいただきます。朴参考人
  6. 朴一

    参考人(朴一君) 紹介いただきました大阪市大の朴と申します。よろしくお願いします。  本日は、このような調査会にお呼びいただきまして大変光栄でございます。私は在日の三世でございまして、日本に生まれ育っているわけですが、国籍は韓国ですが、日本は第二のふるさとと思っております。韓国に行きましたときは日本の立場を韓国の政治家たちに紹介し、日本では日本の人たちに韓国に対する理解を深めたいという活動をしてまいりました。本日は三十分という短い時間ですので、できるだけ効果的に時間を使って、私が日ごろ考えていることを皆さんに述べたいと思うんですけれども。  まず、今、山影先生の方から、特にASEAN日本とを中心にした東アジア共同体についてのビジョンみたいなものが語られたと思うんですけれども、私は、やはりその東アジア共同体ということを考えるときに、やはり軸になっていくのは日韓と日中の関係が非常に重要になっていくのではないかというふうに考えています。  御承知のように、東アジア共同体というのは、東アジアという大きな枠組みの中で、EUとかNAFTAのように貿易とか投資あるいは安全保障の面で協力体制をつくるということですけれども、こういったEUの経験を例えば見たときでもお分かりのように、特に歴史的な敵対関係にあったフランスとドイツが劇的な和解を遂げてEUというものをつくり上げてきたんですけれども、そういった意味では、日韓の歴史的関係を克服しながら、日韓が軸になってEUに発展していくことが今求められているんじゃないかと私は痛切に感じます。  そういった意味で、現在日本では空前の韓流ブームというのが続いています。先生方の中でも見られた方がいらっしゃるかもしれませんが、ブームのきっかけをつくったのは韓国ドラマの「冬のソナタ」という作品です。私もこの間、副主役を務めたパク・ヨンハさんという方とお食事をしたんですけれども、非常に好青年で、今若い女性に大変人気がございます。  この「冬のソナタ」というDVDボックスが三万五千円するんですけれども、これが三十六万セット売れたと。「冬のソナタ」の小説が上下合わせて百二十二万部売れたという、考えられない、これまでには考えられないことが起こっています。さらに、CDとか、ペ・ヨンジュンさんの写真集、これは今はもう在庫がなくて増刷中なんですけれども、さらに、冬ソナのロケ地を巡るツアーとか、この間もソウルから飛行機で帰ってきましたら、ソウルからのその飛行機、私以外のすべての客がおば様たちで、ペ・ヨンジュンさんのポスターを持ってキャーキャー言っておったんですけれども。  そういうふうな、韓国シンクタンク調査では、冬ソナ関連商品の対日輸出額を合計すると経済効果が大体二兆ウォン、二千億円に達するということなんですね。二〇〇三年の韓国の対日貿易赤字というのは一・九兆ウォンぐらいあるんですけれども、こうした韓流ブームによる韓国商品の対日輸出額というのが日韓のこれまで非常に重いテーマであった貿易不均衡の緩和にも大きく寄与するものと私は考えています。  また、日韓両政府は、今年、国交正常化四十周年ということで、日韓友情年二〇〇五年ということを定めて様々な交流行事が企画されています。これを機会に日韓の文化交流というのが政治や経済面でも密接な協力関係に広がっていって、やがて日韓が中核となった東アジア共同体の基礎が築かれていくことを期待したいと思っています。  しかし、この日中韓三国が、山影先生がおっしゃったように、タイやマレーシア、フィリピンというような国とFTA交渉を進めて、それぞれASEANとの経済統合に踏み出し、正にこの東アジア共同体というのが現実味を帯びていく一方で、肝心のその日韓のFTA交渉が行き詰まりを見せていることは先生方も御承知のとおりだと思います。この日韓のFTA交渉が進展しないのは一体なぜなんでしょうか。  そもそも、日本FTAで高い水準が期待できる韓国との締結に強い意欲を示してきたと言われています。五年の対話を続けまして、二〇〇三年十二月から交渉に入って今年中には締結するものと考えられてきました。しかし、この日韓のFTA交渉が昨年十二月以降中断しておりまして、現在、再開のめどが立っていないということです。  交渉が難航している最大の原因は何なのかといいますと、日本の農水分野の関税撤廃品目が全体の五割程度にとどまっていることに韓国側が強い不満を持っているということです。特に水産物の取扱いをめぐりましては、韓国側は非常に神経質になっています。日本韓国ノリの輸入数量を割当て制にして輸入制限をしていると、そして近海水産物についてもその金額や捕獲量の面で制限枠を設定しているためだと思います。  韓国日本よりも競争力を持っているのは実は、特に水産分野ぐらいで、鉱工業の分野では得られるものが少ないわけです。特に競争力を持つ近海水産物の輸入制限は韓国にとって致命的でありまして、韓国政府が日本のノリ輸入制限をWTOに今回提訴したというのは、正にこうした韓国側の反発を象徴しているものだと思います。韓国側の意思は強くて、日本の農水分野の受入れ姿勢がこのまま大幅に改善されなければ、日韓のFTA交渉は前に進まないのではないかということを私は強く危惧しています。  農林水産省のある知人の話では、韓国FTA交渉に本気で取り組まないのはノリが原因じゃないんだと、実はFTAが締結されると日本製品が一挙に流入してきて対日赤字が増えることを恐れているんじゃないかということを言っていました。すなわち、水産物問題はあくまでカムフラージュで、韓国は本気で日本FTA交渉なんてする気がないんだというふうなことを農林水産省の人が考えている節があるんですけれども。  しかし、私、この間、韓国に何度も一年間に行ったり来たりしていろんな政治家の人たちでありますとかビジネスマンとお話をしていて感じることは、対日文化開放政策がこの九八年から進みまして現在では完全開放されているんですが、このときにも、日本の映画であるとかアニメであるとかCDとかビデオが一挙に流入することで韓国内の映画、音楽産業が大打撃を受けるんじゃないかと韓国人は当初大変恐れていたんですね。ところが、いったん開放してみるとどうだったのかというと、そうした懸念が全く杞憂であることが分かったと。実際はその逆でして、日本の製品が入ってきたことで、かえって韓国の映画や音楽産業の質が向上して国際競争力を付けることができたというのが多くの韓国人の実は実感なんです。  恐らく、日本の水産物問題をクリアすれば、日韓のFTA交渉は大きく前進すると思います。日韓のFTAというのは、将来、中国ASEANを巻き込んだ東アジアの自由貿易圏の軸になるものだと思います。アジアナンバーワンの経済大国のやはり日本には、東アジアの安定と繁栄というグローバルな海に立って、水産物というえさで日韓のFTAという大きな魚を釣るぐらいの器量を示してほしいと私は先生方に訴えたいと思います。  また、日韓がこれから進展していくこの文化とか経済の交流を中断させることなく発展させていくためには、克服すべき政治課題も少なくありません。日韓のその文化・経済交流を中断させないためには、交流の阻害要因になる日韓の政治摩擦をこれからできるだけ回避していく、これは双方の努力が必要になってくるんじゃないかと思います。  こういった問題に向けて韓国側はこの間どういう努力をしてきたのかということをここで先生方に若干アピールさせていただきたいと思うんですが、韓国は今年、日韓国交正常化四十周年だけではなくて、実は日本韓国を保護国にした一九〇五年の第二次日韓協約から百周年に当たるということで、様々なレベルで日韓の歴史問題についての再検討、韓国ではこれを過去の見直し作業というふうに呼んでいますが、それが進められています。  昨年十二月に反民族行為真相究明特別法という、ちょっとおどろおどろしい名前なんですが、そういう法律が韓国の国会で可決されました。これは、植民地時代に行われた朝鮮人の対日協力行為について洗い直し作業を進めていくというものです。これは一体どういうものなのかというふうに考えてみますと、日韓併合や植民地支配の責任を当時の日本帝国主義に求めるだけではなくて、植民地支配許した民族の責任、韓国側の責任を追及すべきという韓国人の反省からもたらされて作られた法律だと思います。  なお、この法律名には当初、親日・反民族行為真相究明法という、親日という名称が付いていたんですけども、この親日という名称は日本側に不快感を与える可能性が強いとして、採択前に法律名からこの親日という言葉が外されたという経緯がございます。日韓関係への悪影響を配慮する韓国側の姿勢がうかがえると思います。  また、韓国政府は今年に入って、日本に先駆けて日韓条約交渉、一九六五年の日韓条約交渉関連文書の公開に踏み切りました。財産請求権などを定めた外交文書から、韓国側は、個人補償など八項目の対日請求を放棄する見返りに日本から経済協力権を獲得して、個人補償については韓国政府自身が行う考えを示したことがこの秘密文書から改めて再確認されました。これによって、植民地時代に日本に徴用、徴兵された韓国人遺族などの個人補償義務については韓国政府が負うことを改めて対外的に明確にされることになったわけです。  九〇年以降、実は韓国の戦争被害者による日本政府を相手取った訴訟が頻発しているんですけれども、今回の文書の公開は、徴用、徴兵の被害者あるいは遺族の責任追及の矛先を、日本政府ではなくてあえて韓国政府に向けさせようとするものだと思います。六五年の日韓請求権協定には戦後処理の在り方をめぐって様々な矛盾や問題点があると思いますけれども、韓国政府はこうした問題処理を引き受けることで日韓の歴史に自ら区切りを付けようとする、歴史問題解決に向けた韓国側の強い姿勢が感じられます。  この間も、このようないわゆる韓国側の作業について、駐日大使を務められました孔魯明さんという方が、やはり、こういった作業を通じて、過去の問題が両国関係の未来の足かせになることを排除したいという強い思いから韓国側はこういった作業をしているんだということを朝日新聞で語っておりました。私は、こういった韓国側の努力に深い敬意を表したいと思います。  一方、過去克服に向けて日本側にはどのような課題が残されているのでしょうか。  日本も日韓条約の関連文書がたくさんあるんですけれども、韓国政府がその日韓条約に関する外交文書を公開して韓国の戦争被害者に対する補償責任を韓国側にあることを明らかにしたわけですが、だからといって日本側の責任がすべてなくなったというわけではないと思います。何よりも、日韓請求権協定の問題点を日本側からも検証していくために、私は日本側もこのような日韓条約関連文書を公開すべきであると、一刻も早く公開すべきであると考えます。  また、日本に補償請求裁判を起こしている太平洋戦争遺族会のメンバーの話では、いまだに日本に徴用された韓国人の大半の遺骨が戻っていないと、肉親の生死すら確認できていない人が多いと言っています。戦後、日本政府が遺体や遺骨を韓国側に返還した韓国人犠牲者はわずか一割で、遺体や遺骨が返還されず放置された遺族からは日本政府の対応に不満の声が上がっています。韓国政府は、今年の二月から、植民地時代に連行された韓国人の死亡や遺骨確認などの真相調査をするための被害申告を受け付け始めているわけですが、国内に資料が乏しいために日本側の協力がなければ対応できないというのが実情です。  昨年十二月、日韓首脳会談で、盧武鉉大統領が強制連行された韓国人の遺骨返還への協力を小泉首相に要請しましたが、日本政府も、九八年の日韓共同宣言に盛り込まれた過去の清算を言葉で終わらせないために、過去と向き合い、植民地支配による加害、被害の真相究明に全力を挙げて取り組んでいただきたいと思っています。  さらに、二〇〇一年にソウルで開かれた日韓首脳会談で、小泉首相は歴史教科書問題について、相互理解を深めるために日韓の専門家で共同研究を行うことを提案しました。韓国の学者、日本の学者、歴史学者が集まって共同研究は現在も続いています。しかし、私は、日韓の共同研究だけで歴史教科書問題が収束に向かうとは到底思えません。共同研究を通じて幾ら歴史に対する相互理解を深めたとしても、日本の政府が過去を正当化する歴史教科書を検定制度を通じて公認し続ける限り、再び日韓や日中間で摩擦が生じることは避けられないと思います。  歴史教科書問題を解決するためには、現在の検定制度を根本的に見直す必要性があるのではないかと思います。日本政府が教科書問題を回避するために取り得る選択肢として、私は以下のようなものを考えています。  まず第一の選択肢は、教科書検定を廃止して、一般書籍と同じように、どのような思想で書かれた教科書も学校で自由に使用できるようにすることだと思います。そうすれば、日本政府も介入できませんが、韓国中国も介入できないと思います。恐らくとんでもない教科書が出版されるかもしれませんが、教科書の選定は各教育委員会や学校教員の良識に任せればよいのではないかと思います。  検定がどうしても必要であるというなら、韓国のように歴史教科書を一種類の国定教科書にしてしまうという方法もあります。ただし、教科書作りには、様々な考え方を持つ歴史学者の人々、あるいは韓国中国の歴史学者から成る御意見番も加えた歴史教科書作成委員会を設置して、だれもが納得する歴史教科書を提供することが必要ではないかと思います。学校には、副読本を自由に選ばせることで独自性を出せばよいのではないかと思います。この選択肢を取った場合は、日韓の共同研究機関が大きな役割を果たすと思います。  最後の選択肢は、日本が思い切って歴史教科書におけるいわゆる近隣諸国条項というものを破棄してしまうことではないかと思います。  私、よくこの教科書問題についてマスコミから意見を求められたり、あるいは授業でこのテーマについて語ったりするときに、日本人の学生から、先生にそのようなことを言われるのは内政干渉だと言う生意気な生徒もいるんですけれども、私、この問題についてその学生にどういうリプライをするかというと、日本は一九八二年に第一次教科書問題が生じたときに、歴史教科書の検定基準に、近現代における日本アジア関係の記述については近隣諸国の意向に配慮するという、この近隣諸国条項を設けたわけです。そして、この外交問題化した教科書問題の収束を図った。このような近隣諸国条項が有効である限り、日本の教科書検定で日韓、日中関係に関する不適切な記述が認められた場合、韓国中国日本側に記述の修正を求めるのはある意味で当然であり、それはまた日本政府から公認された対応であるというふうに考えています。したがって、こうした韓国中国の行為を内政干渉と批判するのは、近隣諸国条項を無視した発言というふうに私は考えています。  そういう意味で、もしそういうものをどうしても排除したければ、やはり近隣諸国条項というものを見直さなければならないということになってきます。しかし、もしこの近隣諸国条項を見直すということになれば、当然、まあ日韓、日中関係は更に冷却化していく可能性もあることを覚悟しなければいけないのではないかと思います。  いずれにしましても、日本アジアに向けて過去を反省すると言いながら、一方で過去を正当化する歴史教科書を公認するというダブルスタンダードの姿勢を取っていては、やはりアジアの国から信頼されないのではないかと思います。  どの選択肢が一番日本の国益にかなうのか、どうすれば歴史教科書の再燃を防ぐことができるのか。特に日韓友情年の今年は、悲劇的なことに教科書検定の時期と重なっています。今年こそ無用な日韓摩擦を回避するために、政治家の先生方や文部科学省の人たちが知恵を絞る時期ではないでしょうか。  時間の関係で、はしょってあと説明していきたいと思うんですけれども、現在、日韓関係について御説明しましたが、やはり日韓が密接な文化・経済交流を通じてどれほど相互関係を深めたとしても、北朝鮮の核問題をめぐって朝鮮半島に緊張が続く限り、東アジアの安定と平和はもたらされることはないと思います。日韓にとってこの厄介な隣国、北朝鮮とどう付き合い、どのようにこの国をソフトランディングさせていくのかということは、東アジアの平和と繁栄をもたらすために避けて通れないテーマであると考えます。  その意味で、拉致被害者の安否確認、不審船の再発防止、核・ミサイル問題への対応など、日朝間のほとんどの懸案処理において、平和構築に向けた日本の要求を北朝鮮に受け入れさせた二〇〇二年九月の日朝平壌宣言というものは、東北アジアの平和と安定に寄与する協定として私は忘れられるべきではないと思います。今、日朝間に必要なのは、この幻の、ある意味で幻の平壌宣言を死文化させない努力ではないかと思います。  確かに、北朝鮮が核保有宣言を行ったことで平壌宣言は死文化したと言う人もいます。また、拉致事件の全容を明らかにしなければ北朝鮮と国交正常化交渉できないという多くの日本人の気持ちも理解できます。しかし、北朝鮮はアメリカの出方によっては核開発を凍結あるいは断念すると宣言しておりますし、また、北朝鮮の中にも日本の拉致被害者と同じような境遇に置かれた人たちもいます。  九〇年から実は日朝交渉は始まったんですけれども、北朝鮮が日本側に安否調査を求めた植民地時代の朝鮮人行方不明者は三百六十余名に上っています。彼らの大部分が日本に徴用された人々です。北朝鮮の遺族もこうした安否調査が進まないことにいら立ちを覚えています。お互いが相手の痛みを理解し、解決に向けた対話を続けていく忍耐力が問われているのではないかと思います。  しかし、日本側は、拉致被害者への北朝鮮の対応のまずさから北朝鮮に対して経済制裁を求める声が高まっています。強硬派の先生方の中には、そのレジュメにも書きましたような幾つかの経済制裁をてこに北朝鮮に拉致問題の早期解決を促すとおっしゃっていますが、経済制裁が北朝鮮に及ぼす効果とはどの程度のものか、本当に感情論抜きで冷静に考えてみる必要性があると思います。  北朝鮮にとって日本はこれまで重要な貿易相手国でありました。しかし、七〇年代になって北朝鮮が債務不履行の問題が表面化しまして、日本政府が貿易相手国のリスクに対応する貿易保険の対象から北朝鮮を除外してしまったために、日朝の貿易額は減少の一途をたどっていきました。食糧援助を除く日朝の貿易額は、八〇年代前半は大体日本円で年間一千億円前後で推移してきましたが、二〇〇〇年以降になりますと五百億円から三百億円に低下し、昨年、二〇〇四年の日朝貿易総額はついに三百億を割り込み二百七十三億円、輸出が九十六億円、輸入が百七十六億円まで減少しているわけです。  特に、北朝鮮への日本の輸出は低迷しておりまして、北朝鮮には貿易保険が付かないことで北朝鮮への大型輸出案件がほぼ停止状態になってしまっています。日本が北朝鮮に対する貿易保険の取扱いを停止しているということが、実は最も強い経済制裁の役割を果たしてきたということはこれで分かると思います。  北朝鮮は、日本との貿易額を減らす一方で、中国韓国との貿易額を大きく増加させています。北朝鮮と中国との貿易総額は、九九年、四百億程度でしたが、二〇〇三年には一千百億円まで増加しています。韓国との貿易も太陽政策にのっとって急増しまして、二〇〇三年には南北の貿易総額が七百九十億まで膨らんでいます。この結果、北朝鮮の対外貿易の大部分が現在韓国中国で占められておりまして、日本との貿易は一割に満たない、大体八%程度というのが実情です。今後もこのような傾向が続く限り、日本が単独で経済制裁をしても、中国韓国連携しなければ金正日政権に大きな打撃を与えることはできないんじゃないでしょうか。  北朝鮮への送金や北朝鮮船籍への日本の寄港が停止されて本当に困る人は一体だれなのか。それは、北朝鮮の支配層ではなくて、十万人に達すると言われている北に帰国した元在日朝鮮人や、彼ら帰国者と結婚して北朝鮮で生活する日本人配偶者たちだと思います。彼らの大部分は北朝鮮帰国後、極めて貧しい経済政策を余儀なくされ、日本の親族からの仕送りを唯一の生活の糧としています。日本からの送金停止は、彼らにある意味で死刑宣告を告げるようなものだと私は考えます。  また、今回、日本政府が十二万五千トンの食糧支援を凍結したことで本当に困っているのはだれでしょうか。それは、やはり北朝鮮の支配層ではなくて、現地で飢餓に直面している子供たちであります。WFPの調査によれば、現在北朝鮮の人口の四分の一に当たる六百四十万人が食糧不足に陥っておりまして、医薬品も必要としている人の半分以下しか行き届いていないということです。昨年、アムネスティ・インターナショナルも北朝鮮の食糧危機でこれまで数十万人が餓死したと報告しています。こういう状況下で食糧支援を凍結するということは、北朝鮮の罪もない子供たちやあるいは弱者を苦しめることにもなるということを日本の政治家の皆様にも十分に御理解していただきたいと思います。  さて、やはり私は、最終的には、圧力よりも対話、経済制裁よりも援助こそが金正日政権を最終的に動かすカードになると考えます。経済制裁のポーズは日本国民の怒りを北朝鮮に伝達するには有効なカードかもしれませんが、核や拉致問題を解決に向かわせるとは到底思えません。六者協議の中で北朝鮮を加盟させ、彼らを粘り強く説得し、核凍結・廃棄に向けた粘り強い交渉をしながら拉致問題を解決していくという忍耐強い姿勢日本の政治にも求められているのではないかというふうに思います。  最後に、残り時間がもう三分ぐらいになりましたので、日本ASEANとの関係について一点だけ私が考えていることを申し上げさせていただきたいんですけれども、最近、日本ASEANとの間でFTAが進んでおります。特にフィリピンやタイとの間でFTA交渉が始まりまして、特にそのフィリピンやタイは、日本製品に市場を開放する見返りに看護師や介護士の分野に対する労働市場の開放を求めております。これが妥結しますと、たくさんの実はフィリピンやタイから看護師や介護士の皆さんがやってきて日本の高齢者のお世話をすることになるのではないかと思いますけれども、このようなアジアからの看護師、介護士の受入れが送り出し国に与える影響も十分に検討しながらこういった政策を進めていかなければいけないのではないかと思います。  九八年時点で、フィリピンの看護師は十七万八千人のうち、その八五%の十五万一千人が海外で勤務している人たちです。そのため実はフィリピン国内では深刻な看護師不足という現実があります。このままFTAが通過し、フィリピンから日本の高額な賃金を求めてたくさんの介護士や看護師が日本にやってくるとなると、ますますフィリピンの看護師不足が深刻になる。アジア全体でアジアのこうした貧しい国の医療体制をどうするのかということも視野に入れた計画的な受入れ政策というものが望まれているのではないでしょうか。  以上、私の意見を終えさせていただきます。ありがとうございました。
  7. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ありがとうございました。  これより質疑を行います。  質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。  できるだけ多くの委員の方々が質疑を行うことができますよう、委員の一回の発言時間は五分程度でお願いいたします。  また、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  まず、大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  末松信介君。
  8. 末松信介

    ○末松信介君 自由民主党の兵庫県から出ております末松信介と申します。  両先生には大変有意義なお話をいただきまして、ありがとうございました。朴先生のお話で目の覚めるところがあったんですけれども。  山影先生中心の質問になろうかと思いますんですけれども、東アジア共同体についてなんですけれども、二〇〇四年の九月に国連総会の一般演説で小泉首相が、ASEANプラス3、この基礎の上に立って東アジア共同体構想を提唱したいというような発言があったわけなんですけれども、東アジア共同体の主要メンバーというのは、まあこれは日中韓の三か国は当然だろうと思うんですけれども、特に日中間は、よく使われる言葉ですけれども、政冷経熟という言葉のとおり、経済的な利益の共有はあっても共同体意識は全くないに等しいということが言われています。それで、評論家の方々もよく、中国という国は共同とか協調という言葉はよく使われてこられておりますんですけれども、共存という、共栄とかいう言葉は余り使ってこなかったという話なんですよね。  実は、私、神戸市の垂水区に住んでおるんですけれども、先生兵庫県出身ですね。孫中山記念館、孫文が神戸にお見えになったとき訪れたところが会館になって、その友の会に入っておるんですけれども、やはりその孫文ですら、三民主義の講話の中で、中国というのはこれ一盤散砂という言葉で、何かといったら、中国はばらばらの砂のようなものであって一つのまとまりがないという。ですから、常に個を確立していくということが思想的にあったと思うんですけれども、その国がにわかにこの東アジア共同体ということも言葉に出始めたと。  これは明らかに、当然、今経済が順調に伸展してきていますので、自分の自国周辺の安定が崩れたら困るということが一つ挙げられると思うんです。そしてもう一つは、やっぱりこの東アジア共同体のリーダーの中のリーダー、つまりトップリーダーを目指そうという意思表示の表れかなということを、そのように思うわけなんですけれども。  とにかく二〇〇二年の第十六回の共産党大会で、二〇二〇年にGDPを二〇〇〇年の四倍にするというような所得四倍増計画を立てられたわけなんですけれども、こうした中国姿勢などを考えると、いろんなテレビ番組見ていましても、経済のああいった特集見ていましても、十年先の東アジア共同体はやっぱりEUとか北米自由貿易圏に並んでいくぐらいの一つの圏域を確立しているかもしれないと、地域連合を形成しているかもしれないという予測を立てる方が多いんですけれども、その東アジア共同体を引っ張るのはやっぱり日中韓、とりわけ日中間の問題がやはり注目されると思うんです。  近くの大国はなかなか両雄並び立たないと。先生のお話があったように、過去のやっぱりイギリスとフランスもそうでしたし、ドイツ、フランスもそうであったと。大久保利通も西郷隆盛もやっぱりなかなか両立はしないという。  そういう中で、小泉首相は日中間は良好であると言うんですけれども、全く関係は良好でないという状況が続いておるわけなんですけれども。日中関係が良好かどうかという世界的な判断がどうも中国に握られているというように思えてならないんです。常に自信を持って外交日本が展開できていないと。これは、先ほどの話にありましたように、歴史問題、教科書、靖国、こういった問題が、靖国問題が出てくると。トウ小平も、過去、円借款供与ですね、円借款供与を引き出すために、日本には貸しがあるということを一九八七年やっぱりはっきり言っているわけなんですね。何かあったらばそういう言葉が出てくるという。日本政府も怠慢なところがあったと思うんです。尖閣列島周辺の問題でも、結局中国側に先に資源があるんじゃないかということで調査を許してしまったというような、こういったこともあろうかと思うんですけれども。  こうした背景が存在する中で、共同体形成という、こういうことは両国のある面で度量、力量が問われていると思うんですけれども、大きく、重く問われているのは、中国日本か。それで、両国に欠けている度量は一体何かということを、抽象的ですけれども、先生にちょっと御指摘をいただきたいと思うんです。  二つ目は、ODAの問題です。  中国には三兆円のODA、累計で出してきています。北京地下鉄二号線にもこれは二百億円、北京国際空港建設にも三百億円といったように経済インフラ中心なんですね。アメリカは経済援助法の問題があって共産圏には経済援助できないという、こういうことがありますからやっていない。ただし、財団を通じて留学生の支援など人的交流の支援をやってきているということなんですけれども、この日本から中国へのODAは、まず中国国民が知らないという、中国政府が知らしていないという問題があるんですけれども、この共同体形成の上において、今ODAについて議論が出てきておるんですけれども、先生のお考えを教えていただきたいこと。  三点目ですね、一番基本的なことなんですけれども、東アジア共同体は我が国にとってこれは必要な意味あることかどうか、APECの充実では駄目なのかということを聞きたいんですよ。なぜ駄目なのか。  これ、EUの場合は、我々小学校のとき、EECがあってECがあってEUに発展してきたと。段階があったんですけれども、それは分かるんですよね。ところが、この東アジア共同体というのは、ちょっとこう意味合いが全く異なってきますんで、これは国民に利益を与えるものかどうかということを、これもし共同体になった場合には、ある面で通商交渉の権限なんかを一部譲渡してしまうわけなんで、これはまず国民が理解ができるものかどうか、国益にとってどうかという点からお伺いしたいと思います。  四つ目なんですけれども、最後なんですけれども、中国にとってアメリカと日本どっちが気になるかといったら、実際やっぱりアメリカだと思うんですよね。  これはやはり、どうして気になるかといったら、やっぱり米国は中国にとっては最大の黒字国であるということ。二つ目はやはり、台湾問題とか、先ほどのお話にありましたが、チベット問題で内政に深く干渉するのがやっぱりアメリカであると。三つ目は、北京オリンピックを成功させたいからテロ対策などアメリカの支援が欲しいということ。四つ目は、発展してきたら中国をアメリカがやっぱり封鎖する、閉じ込めてしまうという、そういうことの可能性があるからやっぱりアメリカ大事ということなんですけれども。  この東アジア共同体の形成について、どうもアメリカの反応が良くないと。米国務省のミッシェル・リース政策企画官が東アジア首脳会談の開催は米国を排除するものだという話をしていますし、パウエル前国務長官は東アジア共同体について、こうした枠組みの必要性はいまだ納得していないと、ただし米国との関係が損なわれないなら参加は自由だということをおっしゃっています。  今後、このアジア共同体構想に向けて、米国への対応としてどういう組立てがいいのか、その辺のところを先生にお話をしていただきます。  最後最後に朴先生に、「日本の論点」も拝見したんですけれども、この北朝鮮の問題について一点ちょっとお聞きしたいのは、救う会の方々は制裁から対話が始まるということをおっしゃるわけなんですね。その考え方は、改めてお聞きするんですけれども、誤りかどうかということ。金正日氏に対して性善説で臨んでいいのか、性悪説で臨むべきではないのか、その辺のところを端的に、先生への質問なんですけれども、時間がないんで、その辺のところ、先生のお考えを教えていただきたいと思います。  最後のアメリカの点についても朴先生からお答えいただいても結構ですので、よろしくお願いします。  以上です。
  9. 山影進

    参考人山影進君) 末松先生、どうもありがとうございました。  いずれも非常に難しい御質問で、的確に答えられるかどうか自信がありませんが、できるだけ考えてみたいと思います。  まず、共同体意識ですが、ヨーロッパの統合において共同体というときには、基本的に一人一人の市民の意識として、国籍は違うけれども、ヨーロッパならヨーロッパというそのまとまりの中において一緒にある価値を共有して、しかも協力していけるのだという、そういう考え方が行き渡っているというのが基本的な共同体のとらえ方だと思います。そうなる上で重要なのは、朴先生も御報告の冒頭におっしゃっていたように、やはりフランスとドイツが歴史的な決断をしたと。これは政治的なリーダーシップのレベルの話だと思います。  ヨーロッパの国際関係、あるいはヨーロッパにおいてその共同体意識がどれだけ浸透してきたのかということは、今でも非常に大きな凸凹があり、進行中のプロセスだと思います。例えば、フランス人の考え方とイギリス人の考え方、自分たちはヨーロッパ市民なのか、それともその国の国民なのかという質問をしてみると、大体その順番が、イギリス人はどちらかというとイギリス国民が強くて次にヨーロッパ市民、フランス人に聞くと、逆にヨーロッパ市民があって次にフランス国民という、そういうことになっているんだと思います。  アジアを考えてみますと、これから恐らく一世代、二世代、場合によっては三世代先にそういう状態が実現しているのかなというのが一つの将来像で、今この地域に問われているのは、共同体意識が存在しているか存在してないかというのではなくて、答えは、普通のこの東アジアに住んでいる二十億近くの人たちに聞いてみれば、恐らくそのほとんどはそのような意識を持っていないと思いますが、政治的なリーダーシップとして、将来、この東アジアに住んでいる人々が、それぞれの国の国民であることに加えて、東アジアの一員として協力関係を築き、平和で繁栄する地域をこの世界の中でつくっていくという、そういう考え方を徐々に受け入れていくようなプロセスを始めるか始めないかという今、ところではないかというふうに私は考えております。  対中ODAというのもいろいろな問題があり、中国の最近の一人当たりの国民所得はもうインドネシアを超えて一千ドルの大台に乗ったということであります。ですから、普通に考えても、長期的な、いわゆる卒業というのを考えなくてはいけないことになりますし、あるいは中国の特に沿海部の発展を見ると、なぜ必要なのかと。中国の方はだんだんもう要らない方向でもいいのではないかという議論が深まっていると思います。  ただ、私は、その東アジア共同体構築という点で考えると、これからのODAというのは、一国に与えてその国の経済水準あるいは生活水準を高めるということだけではなくて、東アジアが将来一つにまとまっていくような、例えば通信インフラあるいは道路等のハードなインフラあるいは文化交流、そういったものが東アジア共同体構築に資するか資さないのかというのも一つアジアにおけるODAの出し方ではないかと思います。  そういうふうに考えると、中国ではやはり、森林破壊、砂漠化の問題であるとか環境汚染の問題、あるいは内陸部と沿海部の発展の格差が非常に大きくなり、現在はいわゆる大西部開発という形で中国の西半分の開発が大きな問題になっているわけですけれども、そこにメコン川が流れていて、東南アジア大陸部とのメコン地域開発というのも話題になっているという意味で、中国という国家に対するODAの減少という話と、東アジア全体で見た中国のある部分の発展、開発に日本のODAのお金が使われるかどうかというのは区別して考えて、後者については私は今後とも出してもいいのではないかというふうに思います。  三番目の一番重要な御質問、共同体、今、日本にとって必要なのか。私の答え、正直言って、ううんという、つまり、どうしても必要かと言われると、そうではないだろうというのが正直言って私の答えです。  理由は、次の対米関係とも関係しますけれども、東アジア国々日本はもちろん、中国もそれから東南アジア国々も、アメリカとの良好な関係なくて発展というのはやっていけない。最終的には、私は、経済についてはやはり多角的な貿易自由化あるいは投資の自由化が実現されるべきだと思います。ただし、WTOの貿易交渉がこのような状況のときに、一つの次善の策として東アジア地域的なFTAがあった方が望ましいというのはこれは確かだと思います。  問題は、経済連携あるいはFTA地域的に日中韓プラスASEANでつくっていくという、その経済的な連携強化共同体というのは同じではないだろうと。やっぱり共同体と言うからにはそれ以上のその価値の共有等がやはり考えられないといけない。それは、私はやっぱり安全保障であり、文化あるいは様々な価値の共有で、地域として平和で繁栄な社会をつくっていくことがいいのだという、そういう共通了解をお互いに確認することだと思います。そういう確認の方法がもしこの東アジア共同体というのに盛り込むことができるならば私は望ましいと思います。経済連携だけで共同体をつくればいいというのは、若干その間に落ちている、あるいは経済と、経済共同体イコール今東アジアで叫ばれている共同体と同じだというふうに考えると、わざわざ東アジア共同体は必要ないのではないか、経済連携強化ということで十分ではないかというふうに私は考えております。  この東アジア共同体の安全保障というのは、私は基本的に相互の安全あるいは安心の確認だと思います。我々日本人にとってみても、もちろん憲法九条があるわけで、日本自身が武力行使をしない、紛争の解決のために武力を使わないというのは非常に重要なコミットメントでありまして、我々自身は疑っていないし、国際社会でこれを疑う人は少ないと思いますが、日本の周りにはまだまだ不安定な地域紛争の争点があるわけで、そういう争点を認めながら、かつ平和的にこれを解決していくのだと。つまり、紛争の争点があることと友好的な協力関係を進展していくのとは別なのだと、あるいは争点があっても友好関係を進めることができるのだというのが、これがASEANが過去三十数年努力してきた成果でありまして、この弱小国であるASEANが苦労してやってきたことを日本中国は少し参考にして学んでもよいのではないかと。  そういう意味で、アメリカが、この東アジアがアメリカに対する一つのブロックだというふうに警戒する必要はないし、そうではないのだということをやはりアメリカの政府あるいは知識人に納得してもらえるようにきちんと説明することが必要なのではないかというふうに思っております。
  10. 朴一

    参考人(朴一君) なぜASEANAPECではなくてアジア共同体かという先生の御質問ですけれども、私が、やはりこのアジア共同体というのが、例えば日本の学会とかあるいは韓国に行きましてもそうですけれども、一番現実味を帯びてきたのは、やっぱり九七年の通貨危機が引き金になっているわけですね。この通貨危機というのは、基本的にはアメリカを中心としたグローバリズムの波にのまれて、余りにも過度にアメリカに依存してきたシステムというものがアジア経済に対してマイナスインパクトを与えたと。いわゆるアメリカ・ドルへの一極集中という状況をある程度相対的に回避するようなシステムをつくらないと駄目なのではないかという反省から実はアジア共同体という言葉が私は出てきたものだと思います。  したがって、やはりAPECでは駄目なんですね、その部分では。再び通貨危機が降り掛かってくる可能性がある。したがって、どうやってアメリカ離れをしながらアジアだけの共存共栄のシステムをつくれるのかということが一つございます。  ただ、山影先生もおっしゃったように、一番問題なのは、アメリカ抜きにして安全保障ができるのかという、アジアだけで。そしてまた、中国は経済的にはアジア共同体の中で日本とか韓国連携度を深めていますけれども、基本的には、政治的にはまだまだ合わない部分が多い。その中で、やはり一つのこれは矛盾したロジックになるかもしれませんが、良好な日米関係を築きながらどのようにアジア共同体のいい部分を残すのかということを考えていくべきではないのかと私は思うんですね。完全にアメリカから脱却してアジア共同体をつくるというようなことは夢物語だと私は思います。  ただ、やはりアジア共同体について先生が先ほど、アメリカが非常に不愉快な姿勢を持っている、発言があったということをおっしゃられておりましたけれども、やっぱり一番アメリカが恐れているのは、実はアジア共同体だけじゃなくて、日本韓国中国、三国でFTAが進んでいくと、例えば農産物が自由化になったときに、日本の穀物やその他食料品の輸入先がアメリカから中国に変えられていくと、そうなると莫大な不利益をアメリカの農民たちは受けるということをかなりアメリカが神経質になっているわけですね。そういう経済的なやはり当然打撃はアメリカ側に与えるかもしれませんけれども、そこら辺をどう説得しながら、アメリカと日米関係をうまく維持しながら、アジア共同体のいい部分を残していくのかということをこれからもっともっと議論していく必要性があるんじゃないかと私は思っています。  それから、北朝鮮の問題なんですけれども、先生が先ほどおっしゃられた、圧力を通じてこそ対話が生まれるという非常に意味深長な御発言があったんですけれども、ただ、圧力あるいは経済制裁というのもポーズの場合と実際に行う二種類があると思うんですね。  例えば、私は三段階あると思っていまして、例えば先ほどいろいろな経済制裁について、そこのレジュメのところに書きましたけれども、例えば食糧支援の凍結はもう実際に行われているわけです。ところが、例えば特定船舶入港禁止法であるとか改正外為法というのは一応法律を作った段階で、まだこれは切り札、実施はしていない。すなわちこれは、これから北朝鮮が誠意ない対応をするとこのような法案が実施されますよという意味で、相手に対して圧力を与えることはできると思います。だから、問題は、法案を準備する段階と法案が成立した段階と法案を実施する段階の三段階をどう使い分けていくのかということ、ここをうまく使わないと効果がなくなってくるわけですよね。  例えば、今回の改正油濁法というのがある。北朝鮮船籍に保険加入の義務付ける。これは北朝鮮が保険加入する能力ないだろうとたかをくくって実際やったわけですが、今回北朝鮮から入ってきた船は全部ニュージーランドの保険会社に入って、クリアして入ってきたと。これからじわじわボディーブローのようにこれは効いてくるかもしれませんけれども、私ははっきり言って余りこれは効果がある法律であるとは思っていません。  だから、こういった、相手に対してある意味で威嚇攻撃のポーズをすることで北朝鮮を交渉に出すことは可能であると思います。ただ、問題は、この法律を実施してしまうと、実際に実施してしまうと、交渉に着こうとしていた相手も引いてしまう可能性も出てくるという、そこのタイミングをどのように見るかということが一つ。  それから、性善説で考えていいのかと、私もよくそういうことをいろいろな方に言われるんですけれども、これは北朝鮮の研究者の中でもいろいろ意見は分かれているところなんですが、私は、北朝鮮というのも金正日の極めて軍事独裁色の強い独裁体制のように見えますが、実は北朝鮮の中にも改革・開放の方に向かっていこうとする外務省を中心とする改革派のグループと、どうしても核兵器を造ってアメリカと何とか立ち向かおうとするいわゆるタカ派の軍部、この軍部と外務省のせめぎ合いがあって、この綱引きの中の一つのバランサーの役割をしているのが金正日だと私は考えているんです。  で、金正日さんの考えていることは、恐らくどうすれば自分は延命できるかということです、どちらに付けば自分が有利なのかという。そこで、あるときは軍部に付いたり、あるときは外務省に付いたりするわけですよね。ところが、外務省に付いて拉致問題を謝罪しても結局日本との交渉はうまくいかなかったということで、かなり今軍部が有利な立場にいる。それを何とか北朝鮮の外務省の側に、日本が対話の路線を引き出すことによって、例えばこの間、基本的には日本が第一次食糧援助を約束したことによって、北朝鮮の、帰ってきた五人の家族が帰ってきましたよね、ああいうことも実際にあったわけです。  すなわち、制裁ではなくて援助があの家族を帰したということは一つやっぱり忘れてはいけない事実だと思いますし、どういうふうにしてその対話と圧力を使い分けていくのかという。だから、圧力だけではどうしても北朝鮮という国はますます硬直的にならざるを得ないと私は考えるわけです。  以上です。
  11. 末松信介

    ○末松信介君 ありがとうございました。
  12. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 佐藤雄平君。
  13. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 両参考人、本当に貴重な話ありがとうございました。  私、四点についてお伺いをしたいと思います。山影参考人には三点、それから朴さんには一点ということを、東アジア共同体構築するという前提の中で、しかもまた中国中心にお伺いしていきたいと思います。  私事でありますけれども、昭和四十六年、実は日中国交回復前に中国に行かしていただきました。あのときは直接実は入れなくて、香港から九龍鉄道で広州に行って、それからずっと回ってきたんですけれども、ちょうどあのときは、それこそ毛沢東主席の毛語録を持った人民がたくさんいて、ともかく道路には自転車がはんらんしていると、そんな状況でございました。さらにまた、十年後、昭和五十六年、行かしていただきましたが、このときは道路には今度はトラックが走っていまして、荷台に人民が、人が乗っていると。さらにまた、四年前行かしてもらって、これはもう一変していまして、北京に行ったらまず動く歩道がありました。そしてまた、インテリジェントビルがたくさんあって、さらにまた今度は路上にあったのは、もう乗用車がたくさんあったと。本当にこれはもう大変な進歩をしているなと痛感してまいったわけでありますけれども。  そういうふうなことを考えますと、東アジア共同体は、どうしてもやっぱり日本韓国、それから中国、しかも、やっぱり中国が世界の最大の消費国であるし、また生産国であるという前提から考えると、中国の大きな動静というのが東アジア共同体構築には役割を果たすのかなと、そんな思いをしながら、まず、EUについても、共同通貨、先ほども先生から話がありましたけれども、このことが第一義的になるのかな、そんな思いをするんです。そうなってくると、それぞれのやっぱり国力の差があるんで、これはある意味では大変な難儀になると思うんですね。  ちょっと調べさせていただきましたら、日本韓国中国ASEAN、これのGDPについても、四兆三千億と、韓国が六千億、中国が一兆四千億、ASEANの平均が六千八百億。平均所得にしても、三万四千ドルと、これ日本韓国が一万二千、中国がまだ千百、このような格差があるんです。  そういうふうな中で、共同通貨構想を立てながらしていくにはどういうふうな今後課題があるのか、そしてまた、それはもう賃金格差と給与格差というのは、日本が今一番でいるわけですけれども、この辺がどれぐらいたつと埋まってくるのか、この件についてまずお伺いをしたいなと。  さらにまた、これ先ほどもちょっと京都議定書の話が出ましたけれども、この京都議定書の中で中国ASEANは参加していないですね。一番やっぱり二酸化炭素を出しているのはアメリカですけれども、次に約二〇%が中国が出している。となると、やっぱり経済共同体が前提というふうなことですから、どうしても京都議定書に絡む二酸化炭素の削減というのが出てくる。二酸化炭素の削減というのはやっぱり経済活動をある程度は抑止していかざるを得ない、こういうふうな課題をどういうふうにクリアしていくか。さらにまた、この間の参考人の方にロシアも含んだらどうだというふうな話があったんですね。これはたしか、排出権取引等を考えれば、ロシアが入ることによって削減量が減るかなと思うんですけれども、そういうふうな構想も私なりにちょっと考えたところなんですけれども、この件について二番目。  それからまた、これASEANが先行しているわけでありますけれども、ASEANでも、今先生お話のとおり、ASEAN日本ASEAN韓国ASEAN中国と、それぞれの状況になっているわけでありますけれども、このASEANとの共同体制をつくっていくにつけてそれぞれの国が今しなきゃいけない、この点について御所見がありましたら。  この三点、京都議定書、それから共同通貨、それからASEANとのそれぞれの国の今しなきゃいけないこと。  今度は、じゃ朴さんにお伺いさせていただきます。ちょうど昨日、今日と今日本でちょっとにぎわしているんで、日本の賠償の検討要請、盧武鉉大統領の昨日の発言があって、正にその先生のおっしゃった歴史問題。まあ中国については靖国問題も含めての話だと思うんです。  これ、韓国のある政治家が去年、おととし、私、あの講演聞いたときに、殴った方は忘れても殴られた方は忘れないぞというような言葉、ちょっと今思い出したんです。確かにそうなんです。私も福島県の会津出身なんです。会津に行きますと、まだ、そのさきの戦争というのは実は戊辰戦争でありまして、会津から、ほかの人が入ってくると、おめえ、長州であんめえなという話になっちゃうんです。この辺ももう十分承知はして、やっぱりなかなかこれ忘れられないことだろうなと思いますけれども。  そういうふうな中で、やっぱり東アジア共同体をつくっていくにつけては、その歴史問題、教科書問題とか靖国問題にとらわれていたら全く私はもう進んでいかないと思うんです。これはやっぱりある意味では分離をしながら考えていかないと共同体制ができないと私自身思うんですけれども、朴先生はどのようにお考えになるか、まあ重複するところはあると思うんですけれども、ひとつお伺いしたいと思います。  以上です。
  14. 山影進

    参考人山影進君) ありがとうございます。  まず、共通通貨ですが、実現するとしてもこれは非常に先の話だと思います。  その前に、ちょっと変な話ですが、現在のところ、例えば中国の人民元はドルとペッグしているということは、これはある意味で、ドルを持っていようと元を持っていようと構わないという意味ではこれは共通通貨になっちゃっているんですね、短期的には。もちろん長期的には元が切り上げられるだろうということで、じゃ、どっちの通貨を持っておくのが長期的に有利なのかという、そういうことはありますが、ペッグしているという限りにおいては自由に交換ができればどちらでもよいと。  共通通貨で現在考えているのは、EC、現在のEUですから、まあEUの中の経済統合部分がECですが、そこで決まったユーロのような単一通貨をどこでも使うというところまでまだ話は進んでいなくて、例えば円、日本の円、ウォンあるいは人民元といったもののある種のバランスで一つのバスケットをつくって、それにいろんな国が自分の国の通貨のレートを考えようということですので、必ずしも単一通貨を導入するということではないと思います。  そういう通貨が、このアジアで単一の、あるいは共通の通貨ができるということは、ある意味では、金融システムがきちんとできないとそのようなものはあっても絵にかいたもちになってしまうわけで、財務省が今考えている戦略というのは、このアジアにおいて、御案内のように、日本中国、それから台湾の外貨準備というのが非常に大きい。これを全部アメリカの国債を買うのはもったいない。あるいは、そのお金がアメリカに行って、アメリカの短期資金が今度アジアに流入して、それが非常にボラタイルというか出入りが激しいと、それに長期的な投資がくっ付いているとこの前の九七年のような危機が起きてしまうということで、アジアにこれだけ外貨準備があるのだから、これをアジアの中でどうやって回していくのか、そういうことをまずつくろうということから始まっているのだと思います。  そういう、先にアジア通貨の信用が高まる、あるいはその互換性が確認されて、安定性が重要だということが、アジアの経済発展のために重要だということが確認される中で、やはり徐々に通貨・金融協力というのは進んでいくんだろうというふうに思います。  それから、二番目の温暖化対策の件でありますが、京都議定書は発効したばかりですが、寿命があと十年足らずということで、やはりアメリカもそうですけれども、温室効果ガスを排出している大量排出国がどうやってなるべく環境を考えるようになるのかということをやらないといけないと思います。  ロシアが入ればいいというのは、ロシアは非常に京都議定書上は優遇された排出権が与えられていますので、京都議定書の枠内ではそれでいいと思いますが、その先の話に、地球全体の温暖化のために地球全体でどういう京都議定書後の制度を作っていく上で、中国も例えば取り込むような制度を設計していくのかというのは、多分日本が一緒にできることだと思います。  それからもう一つは、御案内のように、酸性雨の問題とか黄砂の問題とか、温暖化とは直接結び付かない環境問題というのは東アジアでやはり共有できて、こういったものは、こういった物質はどこに国境があるのかなんというのは関知しませんので、本来的に越境問題というふうに位置付けられるわけで、やっぱり東アジア全体として環境問題も考えていくというのは、これは非常に重要な協力する上での一つの分野ではないかと思っております。  それから三番目、東アジア共同体ができるときに、日中韓とそれぞれがASEANと今どういう関係を結ぶべきかと。  私、ちょっと中国韓国が何が欠けているのかということはちょっと存じ上げないのですが、例えば中国は、昨年の十一月にASEAN絡みの首脳会議が開かれました。その際に、宣言とか協定、あるいは議定書が全部で二十ぐらい結ばれたのですが、そのうちの十近くは中国ASEANです。現在、中国ASEANの間で様々な経済協力FTAに目指しての合意というのが蓄積されています。そういう意味では中国は非常にASEANに対して前向きです。  それから、尖閣列島問題とは大分対照的に、南シナ海にある中国ASEAN諸国との係争地については、これは二〇〇二年ですが、当事国の行動に関する宣言ということで、一方的なサンゴ礁の支配とかそういうことはもうこれ以上やらないというふうに合意しているという意味で、中国は少なくとも短期的にASEANに対して非常に積極的かつ協力的、融和的な態度を示しているなと思います。  ASEAN側は、それに対して若干戸惑いを覚えている。つまり、中国側のラブコールをそでにするわけにはいかない、怒らせたら怖い国というのはよく分かっていますから。そうすると、握手を求められたら握手をしないといけないのだけれども、両手で中国と握手して、中国ASEANの手を離さなくなったらこれは困ると。片っ方では日本と握手しておきたいというふうにやはり思っているわけで、これは中国日本ASEANをめぐって競争するということを私は申し上げているのではないのですが、東アジア共同体中国ASEANとだけでできるということはこれは考えにくいわけで、少なくともASEAN側からしてみると、日本が入ってくれない東アジア共同体というのは非常にある意味では怖い共同体ですね。  ASEAN側はそういう怖い共同体をつくりたくないと思っているわけですから、やはり日本は日中の友好関係、あるいは日韓の友好関係を踏まえながら、弱小国が何とか相互不信を持ちながらも紛争をある程度の範囲内に抑えてきたという、この外交努力の知恵をやはり学ぶというか、そういう流儀を取りあえず採用した中で、どうやって東北アジア関係をも改善していくのかということを考えればいいのではないかというふうに思っております。
  15. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 ありがとうございました。
  16. 朴一

    参考人(朴一君) 過去の問題に余りこだわっていては東アジア共同体なんて前に進まないんじゃないかという先生の御指摘のとおりで、正に、それだからこそ韓国政府は今回、この二つのことをやったということを今日申し上げに私参ったわけです。  ちょっと私の言い方が不十分だったので真意が伝わらなかったのかもしれませんが、この反民族行為真相究明法というのは、基本的に、なぜ植民地になったのかと、韓国がなぜ日本の植民地になったのかという原因を日本側に求めるんじゃなくて、韓国の内在的要因を考えなきゃいけないということで、基本的に、例えば伊藤博文であるとか、当時の日本の支配層に対して糾弾の声を上げるんじゃなくて、ある意味韓国人自身の責任というものをもう少し考えないといけないんじゃないかということが一つこの法律の真意だと私は思っています。  もう一つ、やはりこの日韓条約の文書を公開したのも、恐らく、公開しない方が恐らく韓国側には有利だったと。というのは、これは現在、植民地時代に日本に徴用されたり徴兵された遺族たちがその補償義務を日本側に裁判で求めていると。ある意味で、今回これを公開したのは、そういうことはもうやめなさいと、日本政府にそういうことを求めるのをやめなさいと。実は、我々は六五年の日韓条約の中で、金鍾泌さんと大平首相が、金・大平メモというのがございますけれども、それで有償、無償のお金を得ることで請求権問題に片を付けたんだと。そして、補償については韓国政府がそのお金の中から出して払うということを約束したんだから、もうそれに従ってやってくださいということで、過去の問題が両国の未来に足かせにならないためにこの法律を作ったということを是非先生方に分かってほしいということなんですね。正に、韓国側は余り過去にこだわっていたら前に進まないからこそこれをやろうとしたということなんです。  もう一つ申し上げたいのは、だからこそ日本も、そういうことを逆手に取らないような形で過去の問題と向き合ってほしいという。  だから、よく大阪へ行きましたら、喫茶店に入りますと、おばさん方二人が、私が出すから、私が出すからとお金を払い合っている光景見るんですけれども、最初の、お会計のときに。あれはある意味でほほ笑ましい光景で、あなた払ってよ、あなた払ってよということじゃなくて、私が払いますからというような関係になりたいということなんですよね、基本的には。韓国側はそういった取組をしていると。じゃ、日本もそのような取組を是非してほしいということなんです。  確かに、一部そういうことに反対する声も韓国内にはあります。例えば竹島の島根条例案についても、一部韓国の政治家の中で日韓友情年というのを見直さなきゃいけないという声も出ていますし、韓国の野党の反発も相当なものですけれども、少なくとも盧武鉉大統領の考えはそうだし、盧武鉉の内閣スタッフについては、もう過去の問題になるべく円満にけりを付けながら未来に向けて歩き出していこうということでやろうとしているということを先生方に理解していただきたいと思います。  以上です。
  17. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 ありがとうございました。
  18. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 澤雄二君。
  19. 澤雄二

    ○澤雄二君 公明党の澤雄二でございます。今日はありがとうございます。  実は、質問を用意しておりましたけれども、山影参考人には、東アジア共同体は私は余り進んで賛成ではないと言われました。それから、末松委員と佐藤委員が質問されたこととほとんどかぶっておりまして、改めて、質問は一番最初がいいなと実感をしておりますけれども。  今日のお話を伺って、ちょっと質問の内容を変えて、今日のお話に沿って何点か質問をさせていただきたいと思います。  山影参考人に最初お伺いしますけれども、アジアにおけるどのような防衛、多角的防衛協定であったとしても、ASEAN強化というのが必要だと、これは参考人もおっしゃって、それで、そのASEAN強化するためには日本の支援が是非とも必要だというふうにおっしゃいました。今も御答弁の中にありましたけれども、中国ASEANとの連携強化をかなり進めていますよというようなこともこれあり、日本ASEANに支援をするときに、日本がイニシアチブやリーダーシップを取れるような何か有効な戦略、戦術がもしあるとすれば、どのようなことかということを教えていただければというふうに思います。  それから、東アジア共同体は余り私は乗り気ではないという理由の中に、経済連携強化だけが共同体ではないと思うというお話があったと思います。それで、その中に安全保障の問題もあるし、文化の交流という問題も価値観の共有という問題もあるんだというお話があった。それで、安全保障については、武力による何かそういうことよりも、むしろお互いが安心を持てるということの安全保障だというようなお話もありました。  それでお伺いしますけれども、まあこれは東アジア共同体、私は必要かなと思っているんですけれども、先生がお考えになっているそういう共同体をつくるためにも、実は経済連携強化というのは、そのお互いの相互安心という安全保障にとっても、同じ文化の価値観をこれから共有していくということにとっても、これは大事な手段の一つというか、大きなステップじゃないかと思われるので、その辺はどのようにお考えでしょうかということです。  それから、朴参考人には、昨日、三・一独立運動記念式典で盧武鉉大統領は改めて日本に対して謝罪と賠償について言及をされました。参考人の今日のお話ですと、実は韓国で今行われている検証というのは自分たちに向けられた検証だというお話があった。ということは、昨日、独立運動記念式典で大統領が言われた謝罪と賠償の要求、再要求というのは具体的な対価はないと考えてよろしいんでしょうか。それとも、そうではないのかということを教えていただきたい。  以上でございます。
  20. 山影進

    参考人山影進君) では、澤先生からの御質問にお答えしたいと思います。  日本が今ASEANの、ASEAN自身強化、あるいはそれを通じての東アジアの連帯の強化ということで何ができるのかということですが、ここ数年、日本がこの地域で特に力を入れようとしてきたことは、やはり東南アジア国々がある意味では自立すること、あるいは援助を必要ない状態にまで発展することということで、片仮名でキャパシティービルディングということをよく言っていますが、昔の、かつての人材育成よりも幅の広い概念で、人材も育成するのだけれども、政府の統治能力その他、その社会がその社会としてきちんとまとまっていくと、それがその国の政治安定あるいは民主化、経済成長につながるという、そういう考え方でODAあるいは文化交流をしようとしてきたんだと思います。私は、今後ともこれを積極的に進めるべきではないかというふうに思っています。  じゃ、何ができるのか、具体的に何ができるのかというと、大きく言って二つあると思います。  一つは、今ASEANとして力を入れているのが東部ASEAN地域の開発と。これは何かというと、東南アジアは大陸部と島々と分かれていますけれども、フィリピンの南部、それからマレーシアのボルネオ島の辺り、それからインドネシアの東側の島々と。この辺はある意味では、マレーシア、インドネシア、フィリピンの、そしてブルネイという国がありますけれども、一番国民統合が進んでいない地域であり、かつその辺の国境の存在というのがほとんど無視されていて、いわゆる国境貿易、密輸ですけれども、望ましい製品だけではなくて、テロリストも移動すれば人身売買も移動するという、ある意味では非常に弱い東南アジアになっている。そういうところでしっかりとそれぞれの国の政府が協力をしつつ自分の国のその問題を流出させないようにするということは一つの彼らのキャパシティービルディングであって、それに対して日本はやはりいろいろなことができるのではないか。  もう一つ地域は、ちょっと先ほど述べましたが、メコン地域というもので、これはもう十年以上も前にアジア開発銀行がGMSというふうにローマ字で呼んでいるのですが、直訳すると大メコン・サブリージョンという、メコン川が流れていますが、メコン川のその水系、水に関する開発というのが一九五〇年代ずっとメコン委員会を通じてやられてきたこと。その次にやられたのがメコン流域ということ。メコン・ベイスンということで、水系だけではなくて、そのメコン流域の専ら農業開発ですが、流域まで広げなくてはいけないという発想。現在は更に広がって地域になっている。  つまり、メコン川を国境線上に、あるいはその国境内に含んでいるような国々がまとまって協力しようということで、結局東南アジアの大陸部すべての、まあマレーシアを除きますが、ベトナム、カンボジア、ラオス、タイミャンマー、それに中国の雲南省が協力をし始めている。こういうのは、中国の内部の開発と同時に、非常に後れた東南アジアの開発にもつながる。こういう、その地域的な開発に日本が支援の手を差し伸べるということがあり得るのではないかと思います。  ちょっと前後しますが、東南アジアの島嶼部に対する開発ということで、現在注目され始めているし、私ももっと強化すべきなのは、あそこの海上安全、英語で言うとマリタイムセキュリティーということで、海上の安全保障というふうに訳す場合もあるのですが、安全保障と言うと、すぐ日本だとそれは自衛隊だということになるわけですが、むしろ警察あるいはその海上保安の役割が大きいところで、それに対して日本も現在技術協力を始めている。東南アジアのその東半分だけではなくて、マレーシア、マラッカ海峡等の安全等も考慮すると、やはりその海上保安というのが防衛とか軍事とは違う協力なのだというふうに考えて、日本は積極的に今支援できるのではないかというふうに思います。  というのは、東南アジア側のかつての安全保障政策というのは基本的に治安でして、警察も、それからこの海上保安も基本的に軍の一部でした。ところが、九〇年代の機構改革でこういったものが軍から離れて、いわゆる警察的な位置付けをされるようになると。そうすると、日本側も、警察庁とか海上保安庁とか、防衛、自衛隊ではない、治安ということで協力しやすくなるという、そういうふうな分業体制がASEAN側でできましたので、日本はこれから、海賊であるとか麻薬取引、人身売買、マネーロンダリング、あるいは場合によっては国際テロリスト対策等でできる分野が増えてきたのではないかというふうに思っております。  で、第二点とも関連するのですが、経済連携というのはやはり安全保障あるいは安心感の醸成というのに非常に重要だというのは全くおっしゃるとおりでありまして、私は、そういう経済だけではなくて安全、安心のようなものも含める形で東アジア共同体というのを構想していくべきではないか。経済連携が必要だから、だから共同体というのではないんじゃないかというふうにちょっと申し上げたつもりで、誤解があるような、誤解をされるようなちょっと表現したのはちょっと私の舌足らずでありましたので、おわび申し上げたいと思います。
  21. 朴一

    参考人(朴一君) 昨日の盧武鉉大統領の日本に対する謝罪と賠償を求めるスピーチをどのように考えるかということでございますけれども、大体、歴代の韓国の大統領の大部分が在任中に三・一独立宣言で、一回は謝罪と賠償という言葉は必ず口にするんです。この謝罪と賠償というのをその場で言うと支持率が上がるという、必ず。非常に今、盧武鉉大統領の支持率が下がっておりまして、そういう意味でその支持率を上げるということもありますし、もう一つは、竹島問題で反日ナショナリズムが非常に高まっているときに鎮静化するために、国民に対するリップサービスとして謝罪と賠償を日本に求めるという発言は、ある意味で今の盧武鉉大統領には言わざるを得ないかなと。そういう意味で、ある意味日本に対する牽制球の意味もありますけど、恐らく昨日の発言は、国内向けの反日ナショナリズムを鎮めるためのリップサービスと考えていただいたらいいのではないかと。  本気で盧武鉉大統領が恐らく謝罪や賠償を求めるときは、恐らく日韓首脳会談を通じて正式にそういったことを表明されると思いますし、ただ、その賠償というのはあくまで、これはほとんど言葉の中で出てきたと思いますけれども、私はやはり小泉首相が、ある意味で戦後五十年を節目にアジアの人々に対して改めて例えば戦争責任を認めた気持ちを表明するというような作業は、もしこれからアジア共同体あるいは日韓友情年ということを考えると、ある意味でそれはやっていただきたいし、必要かなと思ったりはするんですけれども、ただ、韓国の大統領に言われたからやるというのでは日本の総理大臣としてはメンツが立ちませんから、あくまで日本で主体的にやってほしいということでございます。  以上でございます。
  22. 松田岩夫

  23. 大門実紀史

    大門実紀史君 お二人、お忙しい中、ありがとうございます。日本共産党の大門でございます。  山影先生にまずお伺いいたしますけれども、東アジア共同体、私は実現してほしいという立場で、実現させるならという前提で御意見を伺いたいと思いますが、東アジア共同体に向けて、今、今日もお話ありましたが、二国間FTAというのが注目されているところですけれども、ただ、これは一つの手段にすぎないといいますか、あちこちFTA結びさえすれば共同体に行き着くというものではないというふうに思います。例えば、今も原産地規則とか、あれにコストが掛かるとか、AとBという国が結んだらCの国がどうなるんだとか、いろんなことがもう出ているところです。そういう点では、何といいますか、この間は特に日本の企業が輸出を拡大するということがぐうっとイニシア発揮して、FTAFTAとなっているところありますけれども、企業利益の追求だけでは限界、共同体構想に行き着くには限界に突き当たるんではないかと思っております。  つまり、FTAというのは二国間の線でありまして、これが面といいますか、自由貿易地域もそうですけれども、この地域といいますか面に行くには、今のFTAだけを一杯結べばということではなくて、もう少しいろんなアプローチが必要ではないかと思う点で、一つは、この間の議論でも聞いたり申し上げたりしているんですが、国家間のプロジェクト的なもの、例えば通貨は先ほどもお話がありましたけど、そうはいってもちょっと前進をしてたり、通貨面ではしておりますよね。あるいは石油の共同備蓄だとか、いろいろ国家間でのプロジェクトみたいなものがこれから必要じゃないかと。  もう一つは、何といいますか、国民同士の共同といいますか、例えば農業問題で、先生のレジュメに第三の開国というのがありましたけれども、ちょっとお話、詳しく聞く時間ありませんでしたけど、私は日本の農業はもう十分開国されていると、数字的にはそう思っております。それ踏まえた上でいくと、政府が言っている、もっと農業の構造改革進めろというのも若干薄っぺらな気がいたしますし、東アジア諸国の食料自給率を見ると、そう簡単に開国、開国といかない部分があります。それと、メジャーのアグリビジネスの問題があります。  そういう点でいくと、ちょっと理想的かも分かりませんが、アジアの人たちの今の農業と日本の農業とが協業する、分担をするとかそういうこと、両方の農民が、農家がやっていけるような、そういう協業をやるような構想とか、あるいは先ほど朴先生言われましたけど、単純に外国人労働者を受け入れることがその国にとって、看護師不足の問題とかどうなのかという国民の目線で共同を、アジア共同体というものを見ていかなきゃいけない、そういうレベルになってくるんじゃないかというふうに思うんですけれども、その辺の御意見あればお聞かせいただきたいと思います。  朴先生には、忌憚のないお話をありがとうございます。制裁より援助、貿易の拡大もという点、大変重要な点だと思います。この点で、韓国の取ってきた太陽政策、これそのものをどう評価されているか、あるいは具体的にどういう効果が生まれているかという点、分かれば、分かる範囲で教えていただければと思います。
  24. 山影進

    参考人山影進君) どうもありがとうございました。  私も、東アジア共同体が実現していく上で、企業のロジックには限界があるというのは全くそのとおりだと思います。例えば、これは国家間プロジェクトと国民間プロジェクトの中間のようなことかもしれませんが、今、日本ASEAN諸国に対していわゆる草の根・人間の安全保障支援というのを始めているのは御案内のとおりだと思いますが、あれも政府間というよりは現地がイニシアティブを取る、NGOが参加するということで、政府間の視点よりははるかに住民あるいはその地域社会に根付いた視点で日本東南アジア諸国関係が緊密になっていくということが進んでいるんだと思います。  それから、農業問題に関しては、日本の農業が十分開かれているかどうかというのは、多分、基本的には米の問題に行き着くのではないかと思いますが、FTAを結ぶときに、現在農水省が非常に外向きになっていることから分かるように、日本の、ある意味では広く農産品をとらえると競争力が非常にあると。ところが、例えば中国日本が事実上輸出できるのはたしかリンゴとナシぐらいで、ほかの果物は非常に関税が高いとか、台湾、台湾は主権国家ではないので若干話題がずれてしまうかもしれませんけれども、日本のお米あるいは日本酒、お酒に対する需要が非常に高いのに関税が高いとかですね。  実は、その農業問題というのは日本だけじゃなくてどの国も選択的な保護をしているわけでありまして、そういったものを相互に開放して、お互い工業製品で産業内貿易というのはこれは常識になっているわけですけれども、東アジア共同体を語るときには、農業も、ある国が輸出国で、ある国が輸入国ではなくて、農業という産業の産業内貿易が非常に進展するんだということが東アジア一つのイメージではないかと思います。  例えば、そういうことを円滑化するために今、私、必要だと思うのは、動植物の検疫制度の標準化、高い水準のその規制というのがやはり日本人の食生活のためには必要でありまして、実はこれは私、昨日聞いただけの話ですが、日本はアメリカからもちろん牛肉を輸入していないし、肉骨粉も非常に制限的に入れていると。ところが、中国はそういうような制限を掛けていなくて、アメリカからどんどん肉骨粉を輸入していると。じゃ、中国で育った牛肉はどうなのか。まだ入ってきていませんけれども、近い将来、FTAが線の関係であるのと同じように、安全規制あるいは動植物検疫というのはこれは基本的に一国ベースでありまして、抜け道はあちこちにあると。これは、日本の行政府でいうと、農水省の所管の問題と厚生労働省の所管の問題がいろいろとぶつかって、私よりも先生方がよく御存じだと思いますけれども、そういうところもクリアしながら、東アジア共同体がもしできるときには、単に自由化だけではなくて、そういう本当に物の流れが円滑にいくような円滑化制度というのは、これはやはり是非整備していかなければいけないことだというふうに思っております。
  25. 朴一

    参考人(朴一君) 金大統領の太陽政策をどう評価するかということですけれども、金大統領の太陽政策を継承して盧武鉉大統領は平和繁栄政策という、名称を変えて同じような北に対する政策を展開しているんですけれども、この基本的な考え方というのは、北朝鮮の硬直的な経済システムを解体させて、北朝鮮を中国のような改革・開放に向かわせていくということに大きなねらいがあります。  北朝鮮自身が、私は北朝鮮の経済というものを専門的にちょっといろいろ研究しているんですけれども、大体一九八〇年代後半から、いわゆる主体思想というのがございますけれども、政治の自主、経済の自立、軍事の自衛という、自主、自立、自衛というのがその主体思想の根本なんですけれども、北朝鮮経済のネックになってきたのは、この経済の自立というものをどう解釈するかということをめぐって随分軍部と改革派の中で駆け引きがあったと言われています。  それで、北朝鮮が大体一九九〇年を前後してどんどんこの経済の自立という部分を拡大解釈してきまして、いわゆる基本的には経済の自立というものは、金日成主席が生きていたときは外資導入、特に西側からの外資導入というのは禁じられてきたわけですね。ところが、これが九〇年以降、金正日さんがこの主体思想の唯一の解釈権を持っているんですけれども、この中で憲法を改正して外資導入を認めるような、例えば外資導入法を設置したり合弁法を作ったりしながら、徐々に徐々に外資拡大の道を切り開いてきたと。  そして、この北朝鮮が二〇〇二年七月からついにこの大きな改革・開放の取組を始めたということで、特に大きなものは配給制の廃止ですよね。この配給制というのは、恐らく先生方も御承知のように、社会主義システムのベースというのは配給制だったんです。その配給制を廃止したということは改革・開放にまず大きく歩み始めたということですが、ただ、配給制の廃止というのは、表向きはきれいに聞こえますが、実際は配給するだけの物資もなくなってしまったというぐらい北朝鮮は厳しいということなんですよ。  ただ、その配給制が廃止されて、実利主義の観点から例えば物価や賃金の見直しがどんどん進められているという。これまで、例えば改革では、例えば企業が商品が売れても売れなくても八割の賃金は保証されたりしたんですけれども、これからは、その保証金制度というのがあったんですが、それも廃止されて、労働者に対しては収益に応じてより多くの報酬が受けられるような成果主義が北朝鮮でも導入されるようになってきたんですね。そういう意味で、政府、企業、労働者がある意味ではリスクを平等に負担しながら労働に対するインセンティブを高めていこうというような、ある意味での中国式の改革・開放路線に徐々に北朝鮮は移行しようとしていると。  韓国は、その太陽政策で、こういった北の改革・開放を支持するために、軍事境界線の北側に開城の工業団地という、開くって書いて城というところがあるんですが、この開城の工業団地に、韓国の企業と土地公社が北朝鮮政府から六十六平方キロの広大な土地を五十年間無料で借り受けて、ここを開発していくということで、二〇一二年にはここに韓国の企業が一千社が入居して、十万人以上の北朝鮮の労働者をそこで雇用するというような構想が出ているわけです。  こういうふうな、韓国は太陽政策、いわゆる平和繁栄政策と現在名称は変わっていますが、こういった政策を通じて北朝鮮の改革・開放を側面的に支援しながらソフトランディングさせていこうという政策で、私はある意味でこの政策というのが実ってきたのかなという気はするんですけれども、残念なことは、二〇〇〇年に金大中大統領が北朝鮮に行かれて、いわゆる南北共同宣言というのをやって、そこでこういった構想がどんどん出たにもかかわらず、やはり二〇〇二年に小泉首相が行ったときに拉致問題で日朝関係が硬直してしまったために、結局日本からほとんど経済協力の金も入ってこなかったし、現在そういった事情で日本から全く企業も入ってこない状況になっていますから、やはり韓国単独で北朝鮮の改革・開放を進めていくのは限界があるのかなと。だから、何とか私は、この拉致問題を克服しながら、北を改革・開放して、西側世界の仲間入りをさしていくような努力も必要なのではないかなというふうに考えています。  以上です。
  26. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 以上で各会派一人一巡いたしましたので、これより自由に質疑を行っていただきます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。  じゃ、小林温君。
  27. 小林温

    ○小林温君 自民党の小林温でございます。  まず、山影参考人にお伺いしたいんですが、最初の「経緯」というところで、東アジア共同体の核にはASEANだというところから今日の御説明をいただいたわけですが、例えばEUというのは先進国、ある程度経済レベルの同じ国が長い時間を掛けて今の共同体をつくってきたと。それから、アメリカ、NAFTAから今発展しているわけですが、ではそのアメリカという中心国が、カナダ、メキシコ、あるいはその周辺国という形で一つの核に、コアになるリーダーがいてその経済共同体を今つくろうとしているというのと比べた場合に、今のアジアの置かれている状態って、確かにASEANはその地域的な統合という意味では、特に経済面において先行はしている、歴史はあるというのは間違いないわけですけれども、これがASEANプラス3、あるいはその共同体ということを考えていったときに、ASEANが先行しているということがどういう意味を持つかということ、今日お話の中でも触れていただいたと思います、そこをもう少し確認をさせていただきたいというふうに思います。  それで、経済共同体をつくるときに、やはり私は、その質をどのように担保していくのかということが、経済統合の質ですね、非常に大事な視点だというふうに思います。ですから、現実的には東アジアに存在する唯一の先進国としての日本の役割というのはその部分で大変重要だというふうに思うんですが、一方、今、例えば中国ASEANに対するアプローチについても、先ほど先生お触れになりましたが、かなり時間的に急ぎながらいろんなアプローチをして、ASEANとの経済統合の中での主導権を、行く行くはこれは東アジア経済統合の主導権ということにもつながると思うんですが、日本に先んじてという姿勢が非常に強く見られるというふうに思います。  この点について私の持論は、やっぱり日韓というのは、後ほど朴参考人にもお聞きしたいと思うんですが、東アジア全体の経済共同体の質を担保するという意味で、そのモデルとしての役割が日韓のFTAというのにあると。そのためには日韓どういう姿勢で臨むべきかということがあるんですが、その前に山影参考人には、つまり質の担保の問題で、日本のアプローチと中国のアプローチ、そしてその対象となるASEANがどういう方向で進むべきかと。特に日本は質の高い経済共同体の創出に向けて果たしてどういうスタンスで臨むべきかということについてお伺いをしたいというふうに思います。  朴参考人には、今の質問でございますが、先ほど日韓のFTAが進まないということについてお触れになられました。農業分野が一つ、ノリを中心にネックになっているというのもまたありますし、先ほど朴参考人自身がお触れになったように、今の日韓の産業構造を見たときに、確かに日本製品が急速に韓国に流入してしまうという部分も懸念としては存在しているというのも事実だと思います。ただし、日韓が東アジア経済統合の中、特に中国に先んじてそのモデルを提示するということの意味というのは私は非常に重要だというふうに思いますし、そのためには、正に日韓が胸襟を開いてお互いに譲ることが結果的に、将来的には東アジア経済統合の質を高めるということに重要だと自覚を持つことが大事なんじゃないかというふうに思いますが、その点について少しお考えをいただければと思います。  それから、北朝鮮の問題について続いてお伺いしたいんですが、日本は総理や政府が対話と言っていますので、我々、例えば議会や党としてはそのもう一方のカードである圧力というのを主張するというのは、対話と圧力というもののバランスを考えるという意味では、役割分担として、ある意味では我々は、意識しているかしていないかは別にしても、そういう役割を担っているのかなというふうに思うわけです。  そういう中で、送金と入港を止めると、それが非常に北朝鮮にいる、例えば日本人妻として行かれた方や帰還事業の中で行かれた方々に対して大きな影響を与えるということなんですが、例えばもう一つの経済制裁のカードであります貿易の停止ということ、アサリの問題にもお触れいただきましたけれども、これはそういう意味でいうと、多分御懸念の北朝鮮にいる日本関係ある人に対する影響というものは比較的軽微ではないかというふうに私は思うわけでございます。  そもそも改正油濁法というのは、別にこれは北朝鮮を対象にしているわけじゃなくて、現実的にはロシアの船や中国の船も昨日の施行を受けて保険に入らなきゃならないということで実はあたふたしているところもあると。ただ、現実の問題として北朝鮮の船籍の加入率が二・五%だというのは、今まで国際ルールを北朝鮮の船が守ってこなかったということで、正にこれから国際社会の中に北朝鮮に仲間入りをしてもらうためにはこういうルールを一つ一つクリアしていただくということも必要なのかなというふうに私は思うわけです。  それで、もう一つの御質問は圧力の問題でございます。多分日本のできる圧力のカードというのはもう限られていて、今であれば入港禁止と貿易、送金の停止と、それから、これから人権法ができたときにこれも圧力のカードになるかもしれませんけれども、例えばアメリカと比べたときの制裁の度合いなんというのはたかが知れているんですね。アメリカはイラクに大量破壊兵器があるかもしれないということで攻撃を仕掛けた国でございます。ですから、ある意味でいうと、我が国が経済制裁も含めたマイルドな圧力のカードを北朝鮮に突き付けるということは、北朝鮮にとっては、アメリカはイラクで忙しいところもありますから、まだ幸運な状況にあるんじゃないかというふうに私は思いますけれども、その点についてはどういうふうにお考えですか。
  28. 山影進

    参考人山影進君) どうもありがとうございます。  先ほど佐藤先生が東アジア諸国の経済規模を御紹介くださったように、ASEAN経済統合あるいは共同体化が進んでいるといっても、経済規模にしてみると、ASEANすべてを合わせても例えば日本の経済規模の八分の一程度だと思います。ですから、東アジアをトータルに見た場合に、日本中国、そして韓国、東北アジア三か国のウエートが圧倒的だというのはこれは全くそのとおりだと思います。  問題は、この東北アジア三か国がなかなか三か国だけでうまく進まないときにどうすればいいのかというと、ASEANを間にかませると東アジア全体、十三か国全体としてうまくいくではないかと。やはり遠い将来には台湾をどうやってこれに組み込むのか、あるいは北朝鮮がどの段階になったならば入れるのかということを長期的には念頭に置きながら進めていくべきものだろうというふうに思います。そういう意味で、やはり日本中国が関与したFTAあるいはASEANとの経済連携がどういうふうに質の高いものになるのかというのは、おっしゃるとおり非常に重要なポイントだと思います。  中国ASEAN動きに比べて日本ASEAN動きが遅い、に見えると、確かにそうだと思います。ただ、日本第一歩が後れたというよりは、先ほど言いましたように第一歩日本の方が早く決断した、中国地域協力に慎重だったわけですが、やはりああいう国家体制ですから、一度指導者が決断を下すとその後の動きは非常に速いと。それに対してやっぱり日本側は、その辺は非常に、民主化がもちろん進んでいるわけですから国内合意というのに物すごくコスト、時間的なコストそれから資源的なコストも掛かるという、これはもう政治体制の差からやむを得ないことではないかと思います。  それからもう一つ中国ASEANも基本的に合意をしてから始めるのではなくて、合意は後なんですね、始めましょうということで歩き出してしまうと。そういう意味では、FTAに向かう第一歩というのが非常に踏み出しやすい。日本は全部決まらないとその一歩を踏み出さないという、これも特徴でして、その代わり合意があればそれを非常に忠実に実行するという意味では、物すごく信頼性が高い僕は国だと思います。  正直言って、中国ASEANと同じ歩調にいくためには、日本政府というか、行政府だけではなくて立法府も少しいい加減になって取りあえず第一歩やってみると。あとは成り行き任せと言うと言い方は悪いんですが、次の一歩をどういう方向に踏み出すのかというときに、常に日本の全体的な国益を見定めながら徐々に徐々にそっちの方に歩いていくと。うまくいかなければ半年ぐらい足踏みするという。  もう少し硬い表現をすると、今、日本ASEANをそれやろうとしているんですが、枠組み協定を作って、総論賛成のところで土俵にのってしまうと。これは京都議定書を作った地球温暖化の場合もそうですが、取りあえずみんなが賛成できる総論でみんなが土俵にのると。その後、いろいろな問題を調整していきましょうというやり方を始めようとしていますので、日本ASEAN各国あるいはASEAN全体として経済連携を進め、それと同時に東アジア共同体を進めるのは、多分、ミャンマー民主化を待ってとか、北朝鮮のソフトランディングを待ってからとか、あるいは中国が平和演変を済ませてからとか、そういう、条件が整ってから一歩踏み出すのではなくて、将来、条件が日本にとって望ましい方向で改善するように東アジア地域を全体に持っていくように、取りあえず第一歩を踏み出すというのが今必要なのではないかというふうに私は考えております。
  29. 朴一

    参考人(朴一君) まず、日韓のFTAについてなんですけれども、やはり最初に日本韓国との関係FTAを結ぼうとしたのは、先生がおっしゃられたように、やはり中国は、WTOへの加盟したときに中国が約束した例えば開放の実施とか、ルールをどれほど守ってくれるのかというかなり疑念があるわけですよね。恐らく、私も中国に何度も行きましたけれども、中国へ行ったら日本製品のコピーだらけで、ほとんどそういう国際ルールが十分に守られていないという。その意味で、例えば韓国なんかでは、外国企業に対して投資前から内国民待遇を約束するというような、先進国水準の高いレベルの投資協定を結ぶというような形で、ある意味アジアにおけるFTAの模範みたいなのを日韓で作ろうというのが一つの目的だと思います。  ただ、だからといって、韓国が全く日本に対して対等な立場でやろうとしているのかというと、交渉を見ていると、どうもやっぱり、例えば日本の一人当たりGNPが三万三千で韓国が大体一万二千ぐらいだと思うんですけれども、やはりそういった経済力格差への配慮をある部分で日本に対して期待している部分もあると。  だから、今日私が申し上げた、例えば漁業面で韓国がかなり不満やいら立ちを見せているんですが、やはり日本もかなりアジアの中で大きな経済力を持っておりますから、やはり韓国の、一つの日韓のFTAモデルを作ってそこからそれを広げていくという意味では、先生がおっしゃったように、譲るべきところは譲るというような形でFTAの交渉を前に進めていった方がいいんじゃないかと。全く先生と私は一緒の考えでございます、その意味では。  それから、北朝鮮への経済制裁の中で、例えば北朝鮮への送金であるとか、北朝鮮への人権法案、脱北者支援ですね、こういったもの、特に送金停止というのが北朝鮮にいる子供たちであるとか、特に帰国した元在日朝鮮人あるいはその日本人妻たちに悪影響を及ぼす可能性がある一方、貿易の停止というのはそういう可能性はないんじゃないかとおっしゃられたんですけれども、私は、貿易停止の面でいえば、逆に日朝貿易というのがこれだけ減少して、減退している中で、すなわち北朝鮮において日本貿易が占める比率というのは八%程度なんですね、一割にない。そういう意味で、貿易の全面停止をしたところでほとんど北朝鮮には打撃にならないということをこれは申し上げたんですね。だから、そういう意味で、北朝鮮に対する経済制裁のカードですね、何が有効なのかというのは非常にいろいろ検討していかなきゃいけないんですけれども。  やはり私は、先ほど申し上げましたが、金大中大統領が太陽政策というのを最初に表明したときに、テレビでその太陽政策とは何かという説明を金大中大統領がやられたんですけれども、そこでイソップ物語の「北風と太陽」というのを出して、私も「北風と太陽」というのを本屋に行って買ってきたんですけれども、要するに、北風さんと太陽さんが、コートを着ている人に、どちらが早くコートを脱がせられるかという競争したときに、結局、北風は冷たい風をびゅうびゅうするんですが、旅人は脱がないと。太陽をぽかぽか当てるとコートを脱いだと。どうすれば北朝鮮のかぶっている重い核とかミサイルのよろいを脱がすことができるのかと。これは北風じゃないんだと、制裁じゃないんだと、対話であるということで金大統領はそういう考え方を表明したと思うんですけれども。  やはり、日本はこれまで圧力と対話という二つの両輪で来たんですけれども、これが、その対話が止まって圧力だけになるときが非常に私は怖いんですよね。その二つがどこまで続けていくことができるのか。この対話というのも、実は小泉首相が北朝鮮に行って直接金正日さんと対話するだけではありませんから、外務省の方が極秘に向こうに行って向こうの外務省と極秘交渉を進めることもできますし、いろんなやり方があると思うんですけれども、そういう意味でのやはり対話という努力がどれだけ持続された上で経済制裁という方向性が模索されているのかというと、どうしてもやっぱり対話が見えてこないという、そこら辺が私には非常に不安な部分なんですね。  ちょっと三点目の小林先生の質問がよく分からなかったんですけれども、もう一度だけ簡単に、どういう質問だったのか。
  30. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) じゃ、小林温君。簡潔に。
  31. 小林温

    ○小林温君 日米はなるべく核の問題解決も含めて共同歩調を取っていると思うんですが、我々日本に持たされている制裁のカードというのは少なくとも経済制裁までしかないわけです、その先の軍事的なオプションというのはないわけですから。だから、一方で、アメリカがイラクに大量破壊兵器を持っているかもしれないという理由で攻撃を仕掛けたということを考えると、北朝鮮人権法の制定も含めて、第二期のブッシュ政権というのはその軍事オプションも含めて私は視野に入れてきていると思うんです。  そういう中で、我が日本がマイルドな正に制裁手段、圧力の手段である経済制裁というものを北朝鮮に迫って、それによって北朝鮮が国際社会に対して胸襟を開いて出てくるということというのは、日米との連携あるいは国際社会ということを考えた中では非常に妥当なお互いの交渉の方法じゃないかというふうに私は思うんですが、その辺はいかがですかと。決して強硬策じゃないと。
  32. 朴一

    参考人(朴一君) 申し訳ございません。  先生のおっしゃるとおりだと思うんですけれども、ただちょっと、私もワシントンに何回も行きまして、それで向こうの国務省の北朝鮮担当官の方とかいろんな関係者に会ってお話をしたんですけれども、北朝鮮の中でもいろいろ、ペンタゴンの考え方と国務省の考え方はかなり温度差があると思うんですけれども、少なくともやっぱり国務省レベルでは、いわゆるピンポイント攻撃というような最悪のシナリオはほとんど想定されていないというようなのが私の実感ですね。  実際問題、北朝鮮が核開発、核をもう所有しているという宣言をしましたけれども、かつての恐らくブッシュ政権ならもっと強い対応がそのとき出たと思うんですけれども、恐らく北朝鮮側は、その核開発をしたということについても極めてブッシュ政権の現在の見方というのは冷静でして、むしろ長期的にどういうふうにその北朝鮮に対して核を凍結あるいは解体させていくのかということで、むしろ一期目のブッシュ政権よりもスタッフは極めて強権派が残ったような気がするんですけれども、北朝鮮に対する対応としては非常に従来よりも穏健的な対応を取ろうとしているというような感じですよね、私の見方は。  だから、北朝鮮がイラクのように、いきなりアメリカがイラクのように軍事介入してくるということはほとんど可能性は低いのではないかと。その中で、問題は、どういうふうにして北朝鮮を六者会議に引き出していき、核を解除させていくのかという方策を練らなきゃいけないということなんですね、重要なことは。そういうことでございます。
  33. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 藤末健三君。
  34. 藤末健三

    ○藤末健三君 民主党・新緑風会の藤末でございます。  私、一点だけちょっとお聞きしたいことがございまして、私、今の民主党でFTAなんかの戦略づくりをやっているんですが、その中で中国とか韓国とかいろんなASEANの方とかオーストラリアの方とかいろいろ議論しているんですけれども、一つ思うのは、東アジアと言っているのは日本だけじゃないかなというふうに思っています。例えば中国周辺諸国、特にASEANの方に伸びていますし、あとオーストラリア、ブラジルとはエネルギーの確保、食料の確保という観点でFTAを結ぼうとしていると。一方、韓国日本とも議論しているんですけれども、アメリカともまた議論を始めていまして、また東アジアという概念もないんじゃないかなというのが、中国韓国東アジアと余り言っていないというのが一つ。  それともう一つ、今、北朝鮮の議論がございましたが、台湾の議論がありますよね。北朝鮮と台湾の議論を処理できずに東アジアってできるのかなというのが私は非常に疑問でございまして、その点、お二人に是非簡潔にちょっと教えていただきたいと思います。お願いします。
  35. 山影進

    参考人山影進君) 藤末先生、どうもありがとうございます。  第一点については、私もほぼ同じような印象を持っているので、私の冒頭の報告で、環境として東アジア共同体というのは様々ある構想のうちの一つにしかすぎないというふうに申し上げた意味はそういうところにございます。ただ、韓国中国もあるいはASEAN諸国東アジアを考えていないのかというと、そこまで言うと言い過ぎで、やはりそれなりに考えていると。だけれども、それだけに自国の運命を懸けて何が何でもつくらなければいけないというところまで、何といいますか、唯一の選択肢であるというふうに絞っていないということでは藤末先生のおっしゃるとおりで、幾つかある選択肢の上の一つであると。  ただ、韓国について私の印象間違っているかもしれないので、朴さんに修正していただきたいんですが、金大中大統領のころはやはり東アジアという枠組みを非常に積極的におっしゃったんだと思います。それが盧武鉉政権になって、韓国東アジア全体という意識がどれだけ維持されているのか、弱くなったのか、ちょっと私自身も知りたいなと思っています。  それから、中国については、おっしゃるように、周辺外交熱心なんですが、そのやっぱり一環として東アジアに物すごく熱心になって、かつ中国にとって望ましい東アジアを、日本も含めてつくろうとしているのは確かだと思います。それに賛同しているASEAN諸国は、特にタイタイはとにかく好むと好まざるとにかかわらず、中国とある種の連携を組んでこの東アジア共同体構想を進めようとしている。それに対して慎重なのがインドネシアということで、ASEAN内部も国によって温度差があるのかなというふうに思っております。  それから、朝鮮半島、台湾の問題ですが、私、学生なんかによく言うことは、冷戦構造がベルリンの壁の崩壊で終わったというのは正に東西対立という言い方でとらえられていた冷戦構造であって、つまり東ヨーロッパ、西ヨーロッパというヨーロッパ戦線の話であって、東アジアでは冷戦構造がつくり出した分裂、二つの分裂国家はまだ残っていると。それが中国、台湾関係だし、南北朝鮮問題であると。基本的にこれは両国の合意の下に解決されるべき問題だということでは、冷戦後の地域紛争あるいは緊張の源ではなくて、やはり冷戦構造のまだ残り、残滓を引きずっているのだというふうに私は思います。  ですから、これはとにかくなるべく早く解決すべきであるのはもちろんですが、周りの国がそういう両当事者の合意の下にこの問題を解決すると。場合によっては統一でしょうし、場合によっては二つの主権国家として認める、どちらでも日本としては、あるいはほかの国は、そこは基本的に当事者の合意がきちんとできるような環境を促すというのが、長期的な取り得る、まあほとんど唯一の選択肢ではないかと思います。これは、そういう紛争要因が存在しているからといってASEANプラス3を基にした共同体構想を進めてはいけないということではなくて、やはり進める中で、どうやって台湾や北朝鮮もこれに含めるのか、その可能性をどうやって高める、高めていくのかということを考えるべきではないかと思っております。
  36. 朴一

    参考人(朴一君) そのFTA韓国が実は先生のおっしゃったように金大中政権から盧武鉉政権に替わってから、実は韓国というのはいろんな国とFTA交渉をやっておりまして、特にASEANだけじゃなくてNAFTA国々、例えばアメリカとかカナダとかメキシコという国ともかなり活発にFTA締結に向けて動いていると。  だから、そういうのを見ると、実は日本側としてはこれだけたくさんの国に一遍にFTAができるんかなということがあって、日本と本気でやろうとしてないんじゃないかなということをよく言われるんですけれども、韓国の人に聞くと、実は、例えば日本FTA交渉をするときに、ある問題について話合いをするときに、外務省に行くと、そうしたら外務省の人がその問題については経済産業省に行ってくださいと言われたと。経済産業省に行くと、その問題は農林水産省の管轄ですよと言われたと。そうしたら今度は農林水産省に行くと、関税問題ですから財務省と話をしてくださいと。とにかく四つを行ったり来たり行ったり来たりで全然話が進まないと言うんですよね。これだけ縦割り行政の弊害の中でFTA交渉が時間ばっかり食ってしまうと。  ところが、韓国という国は実に簡単で、通商外交部が窓口が一本化されていて、これだけで話が上から下にばあんと行くわけですよ。だから、そういう意味日本ほど縦割り行政の弊害のない国ですね。例えばカナダとかメキシコなんかは非常にやりやすい。ASEANの国もそうですけれども。だから、実際問題、やっぱり交渉の早い国との方が締結が早く進んでいくという、これ簡単な問題なんですね。だから、日本の場合、やっぱり何とかして外務省、経済産業省、農林水産省、財務省、とにかくこれをもうちょっと一本化していただいて、FTAの交渉を迅速に、スピーディーに進めるようにしていただきたいと。これは恐らく韓国だけじゃなくていろんな国が考えていることじゃないかと思いますね。  それから、北朝鮮と台湾の問題抜きにこのアジアの、いわゆる東アジア共同体というのはやはりどこかおかしいんじゃないかという話ですが、私、全く同感です。  ただ、台湾も中国と政治対立を超えて活発な経済交流をしておりますし、先ほど言ったように、韓国も北朝鮮と政治対立、イデオロギー超えて活発な経済交流をしておりますので、むしろ台湾と中国との経済交流、北朝鮮と韓国との経済交流をもっとアジア全体にどうすれば広げていくことができるのかということなんですよね。だから、そこで、さっき言ったように、例えば日韓の問題でも政治の問題を介入させると前に進みませんよという話出ましたけれども、私、そこでやっぱり政治の問題と切り離して、例えば北朝鮮の経済の問題を議論することができないのかというふうな気がするんですね。そこら辺はちょっと、余り言うとまた批判されますので詳しく言いませんけれども、ちょっと分けて考えていただきたいなというふうに私は感じます。
  37. 藤末健三

    ○藤末健三君 ありがとうございます。
  38. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 予定の時刻が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人におかれましては、長時間にわたりまして大変貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。  お二方のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日のお礼とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十分散会