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近藤正道君 社民党の
近藤正道です。
調査報告書の
議決に当たり、最後の
意見表明をさせていただきます。
第一に指摘しておきたいことは、この
報告書は
憲法調査会当初の確認を逸脱しているということであります。
憲法調査会設置の際、各
会派は、
調査会の
目的は改憲を目指すものではないことを確認いたしました。しかしながら、
報告書には、
憲法調査会において
憲法改正手続の
議論を続けるべきとする
意見が
すう勢であったと明記されてしまいました。これは、「
日本国憲法について広範かつ総合的に
調査を行う」と
調査目的を限定した
調査会の趣旨に反しており、しかも改憲の
方向付けをしないという確認に実質的にもとるものであります。
当初の確認に基づくなら、
報告書はこの五年間の
調査の経過と結果についてのみ記述すべきであり、一定の
方向付けや今後の
課題などの
項目は盛り込むべきではありません。加えて、
報告書を
参議院議長に
提出した後も、なお
憲法調査会を存続させることなどあってはならないことだと考えます。
私は、今月五日と十二日、二度にわたって
提出をいたしました
意見書の中で、
憲法調査会は
報告書を
議長に
提出することをもって完全にその
役割を終えるべきと主張いたしました。しかし、私の主張は入れられませんでした。
私は、
憲法調査会を存続させる
目的が
憲法改正手続の
議論をすることであることに強い危機感を抱いております。一部
政党の最近の言動を見聞きしておりますと、私の危機感は単なる思い過ごしではないと感じております。
第二は、
環境権や
プライバシー権など、いわゆる新たな
人権について
憲法上の
規定を設けるべきとする
意見が
すう勢であったと
報告書に明記されたことであります。
私は、
プライバシー権や
環境権については
憲法上の
規定を設けなくとも現
憲法で十分に対応できるし、解釈で十分読み込めると考えております。しかし、そのことについて
調査会の中で
意見の一致を見ることができなかったこと、これらの権利の
憲法上の明記が
調査会の
すう勢であるとされたことは残念であります。
第三は、にもかかわらず、
憲法第九条を
改正する
意見は
憲法調査会において多数を占めるに至らなかったということであります。これは、良識の府
参議院の存在を改めてしっかりと
国民に示すものであり、
二院制の良さが現れたものと思っております。
国民の多数は第九条の
改正を望んでおらず、
衆議院と比べ
参議院は
国民の声を正しく反映していると思っております。
私は、第九条の平和
理念の先見性と人類史上の
意義を高く評価いたします。一方、第九条、とりわけ第二項の
役割を否定し、この国を
戦争を否定する国から
戦争のできる国へと変質させていく
方向があります。
私は、今こそ第九条の
理念を
国際社会の規範として生かし、広げていくことが重要だと強く感じております。中国や韓国などにおけるいわゆる反日デモの背景に、
我が国の
歴史認識の問題があることは紛れもない事実であります。こうしたとき、
参議院憲法調査会が第九条
改正の
方向を示さなかったことは、当然とはいえ評価されるべきだと考えております。
第九条は、さきの大戦の多大な犠牲と反省の中から
生まれた
日本とアジアの国々との不戦の誓い、約束であります。それが相互信頼の基礎を成してきたという事実を決して忘れてはなりません。
私は、現
憲法は全体として良くできており、現在の
状況にも十分通用する普遍的価値を有し、基本的に
改正の必要はないと考えております。にもかかわらず、
調査会を存続させ、
改正手続の
議論の場を残し、一部であれ
憲法改正の
方向に誘導しようとする姿勢は納得できません。
よって、
調査報告書の
内容には反対であることを申し述べ、私と
社会民主党の最後の
意見表明とさせていただきます。
以上であります。