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参考人(
後藤康雄君) 三菱総合
研究所の
後藤康雄と申します。私、ふだん三菱総合
研究所でマクロ
経済の取りまとめを
担当してございます。着席して
お話しさせていただきたいと思います。
それでは、私の
お話は、
日本経済の
国際競争力につく
現状と
課題の全体観を御
報告させていただきたいと思います。それで、前半では少し、まあそもそも論と申しましょうか、やや教科書的な内容も含めまして前半ではそもそも論の
お話をさせていただきまして、後半では当社が行いましたアンケート結果などの御紹介をさせていただきたいと思います。
それで、あらかじめ結論的なところを申し上げておきますと、やはり、今、
岸本会長のおっしゃられたように、
技術は大変これからの
競争力を考えていく上では最大のやはりポイントであろうと思います。ただ、
中国などのアジア諸国の追い上げもありますけれども、今のところ、我々の意識ではそれほど悲観しなくてもいいんじゃないかというふうに考えてございます。この辺りが私のプレゼンの結論的なところでございます。
それでは、まず前半
部分の
国際競争力とは何ぞやみたいなところから少し
お話をさせていただきたいと思います。お
手元にお配りしておりますオレンジ色の色の付いた資料に沿いまして御
報告させていただきます。(資料映写)
これの一枚目のグラフにございますのは、我が国の
国際競争力の順位の推移でございます。これはだれが決めたのかというと、IMDという、これはスイスにあるビジネススクールですけれども、これが年に一度、各国の
国際競争力を順位付けをしまして勝手に発表するんですけれども、これはかなり新聞等で大きく取り上げられることが多うございます。
このIMDが
日本に関して
競争力何番か、世界の中で順番は何番かというのをずっと追ってみたのが、付けたのが、追ってみたのがこのグラフでございまして、九〇年代前半ぐらいまではずっと
日本は実は一番でございました。しかし、やはりバブルが崩壊いたしまして
経済情勢が悪化するにつれ、あるいはほかの国々の追い上げを受けるにつれまして急速にランクがダウンいたしまして、現在は二十位辺りを低迷しているという
状況でございます。最悪期は脱したものの、やはりかつての一位を独走していたころの姿はもう遠い昔という感じもございます。
それで、このIMDが順位付けをした、じゃほかの国はどんな
状況かというのを、一番最近のランキングでお示ししたのがこの次の表でございまして、
日本は二十三位なんですけれども、一位はどこかというと、やはり
米国であります。これは、やはり
経済情勢がいいということもございますし、それからやはり八〇年代のレーガン政権時などでいろいろ仕込んできた努力が報われてきているという面もあろうかと思います。
ちなみに、このIMDが順位付けをしているやり方というのは、各国のいろいろな
経済の側面を分析しまして総合的に積み上げていくような方式を取っております。どういう積み上げをしているかというと、本当に大変多岐な項目にわたるんですけれども、大まかに分けて四つの分野を
調査しています。そこの表にも、上の方にちょっと灰色で塗っているところにございますけれども、まずやはり
経済情勢がいいかどうか、それから
政府部門が効率的に運営されているかどうか、それからビジネス環境がどうであるか、
経済のインフラが整っているかという、大体こういう四つの分野に分けて
調査をしているんですけれども、アメリカは、ごらんいただいてお分かりいただけますとおり、ほとんどどの項目も相当高い順位であると。ちょっと、
政府の効率性のところだけはちょっと低めですけれども、しかしやはり全体的に高いランキングにあると。中身を見てもさすがにいい順番にあるということでございます。
翻って
日本を見ますと、インフラはさすがに世界で二位という形になっておりますけれども、
政府の効率性とか、こういった辺りが少し足を引っ張る形で、あと
経済情勢も何といってもまだ厳しい
状況が続いておりますので、全体のランキングが、総合ランキングが二十三位という形になっております。
あと、これを見ているだけでもいろいろと発見があるんですけれども、上の方の顔ぶれが必ずしも
経済規模が大きい国々ばかりではありません。例えば二位にシンガポールが付けているでありますとか、香港とか、こういった必ずしも
経済規模は大きくないけれども、うまく国をあるいは
経済を運営することによって高い
競争力を維持している国々が多いという、そういった
状況かと思います。
よく
競争力という場合に引き合いに出されますこのIMDのランキングを御紹介いたしましたけれども、それでは次に、少し教科書的なそもそも論になって恐縮でございますけれども、
国際競争力とはどのように定義されるのかという辺りを少し整理してみたいと思います。
何となく感覚としては、
競争力というのは、感じる、実感としてはお持ちでいらっしゃるかもしれませんけれども、これを定義付けるとどういうことかというのがこの次のシートにまとめているものでございますけれども、これは大きく
二つの側面がございます。
一つは、やはり何といっても安い価格で
商品やサービスを提供できるという価格
競争力です。これが
一つの
競争力の源になります。しかし、であれば、安けりゃ安いだけでいいのかということになりますと、そうではございません。非価格
競争力という、そういった要素もございます。これはやはり品質でありますとかサービスでありますとか、あるいは納期の確実性とか契約の確実性とか、そういった、価格には必ずしも表れない、そういった
競争力もございます。このように価格、それから非価格、こういったいろいろな側面で
競争力が構成されているというふうに考えていただければと思います。
それから次に、
競争力を語る場合に、ややもすると混同されがちなのが個別
企業の
競争力、それから
産業の
競争力、それから国の
競争力と。今、徐々に大きくなるような順番で
お話をいたしましたけれども、この辺りは多少分けて考える必要があろうかと思います。大まかに言えば、もちろん積み上げていけばだんだん国の
競争力になっていくんですけれども、しかし必ずしもちょっとそこがイコールにならないこともございます。
ちなみに、先ほど
岸本会長の
お話にもございました八〇年代にアメリカが
競争力の向上に向けて努力をした時期ございました、レーガン政権時にございました。そのときにヤング
委員会というのが編成されてヤング・レポートというのを出したという、有名なレポートございますけれども、そこにおきます、そのヤング
委員会における
競争力の定義ですけれども、これは国民生活を向上させつつ世界で競争できる財を生む能力というふうに定義をされていて、これはかなり今も幅広く引き合いに出される定義であります。
ここでのポイントは、単に世界で競争できるというだけではなくて、国民生活を向上させつつということがポイントになっております。すなわち、競争するだけであれば、もうコストを度外視したダンピングというのもあり得るかもしれませんけれども、それは国民生活を豊かにはしない。国民生活の豊かさとそれから競争が同時に成り立って初めて一国の
競争力というのが定義できるだろうというのがヤング
委員会の定義になっております。
それから、一国の
競争力を考える場合に、やはりもう
一つ御念頭に置いていただければと思いますのは、個別
産業の
競争力が低下してもそれをカバーするほかの
産業が盛り上がってくれば国全体の
競争力は必ずしも衰えたとは言えないという面がございます。これはもうもちろんその個別の業種に属されている方々にとっては一大事かと思いますけれども、しかし国全体を考えた場合には、個別
産業の
一つ一つが浮き沈んだ合計が
競争力を維持していれば国としては
競争力が維持できているという、そういった
考え方で受け止められることが一般的かと思います。
それで、次に、じゃ先ほど冒頭でIMDの
競争力ランキングというのを御紹介しましたけれども、これはまあある
意味では、あるスイスのビジネススクールが勝手に主観的にランキングをしたものでございまして、もう少し客観的な
競争力の指標はないだろうかというところで御紹介をさせていただきたいと思います。
これはやはり
経済学のテキスト、特に
国際競争力を語る場合のテキストなどに一般的に出されるものですけれども、大きくこれも
二つの種類の指標がございます。
競争力の指標、大きく分けて
二つございます。
一つは、やはり
競争力を形成する重要な要素がいかに安いコストで作るかということである以上、やはり何らかのコスト的な指標があり得るだろうというのが、まずこの一点目のコスト指標の発想でございます。まあ相対価格とかユニット・レーバー・コストとかいろいろ書いてございますが、これはいずれもいかに安く他国に比べて製品を
生産できるかという指標でございます。
しかし、先ほども申しましたとおり、コストだけでは
競争力は語れません。コストだけではない、価格だけではないいろいろな要因ございます。そういったものももろもろ合わせた指標はないだろうかということで考えられたのが
二つ目のパフォーマンス指標でございます。これはもう発想は非常に単純でございまして、何かつかみどころのないもろもろの要素があるかもしれないけれども、その結果、世界市場でシェアが大きければ、それは
競争力があることだろうという結果主義に基づく指標でございます。まあパフォーマンス指標と仮の名前を付けてございますけれども、単純に輸出のシェアあるいはこのRIC係数、これも同じような概念ですけれども、こういった結果主義で指標を作ったのがこのパフォーマンス指標でございます。
じゃ、このそれぞれについて今
現状がどういう
状況にあるかというのを簡単に御紹介させていただきたいと思います。
まず、一番目のコスト指標の方から御紹介したいと思いますけれども、コスト指標の代表はやはり価格でございます。これは、ちょっと単純な価格ではなくて少し為替レートやあるいはその貿易ウエートなどを考慮して加工をしたものでございますけれども、この価格が下に行けば行くほど安い価格で物が
生産できているということで、
競争力が高いと考えていただければと思います。
これは重立った国々を挙げておりますけれども、コスト指標で見ますと、実は
日本はなかなかちょっと厳しい
状況にございます。例えば、カナダとかフィンランド、こういった国々には全然負けておりますし、あとお隣の
韓国なんかもまだまだ
日本に比べてコスト的に努力をしているという感じでございます。あと、先進国の仲間でありますアメリカ、それからヨーロッパ辺りに比べましても、若干でございますけれども、価格的には必ずしも
日本はそんなに有利な展開をしていないという
状況にございます。
同じくコスト指標、もう
一つ御紹介したいと思います。これはまたちょっと違う視点から見ておりますけれども、ユニット・レーバー・コストという指標でございます。これもよく我々の業界では引き合いに出される指標なんですけれども、
考え方は単純でございまして、物を
一つ生産するときにその一単位当たりに
生産コストがどれぐらい含まれているかという指標であります。労賃がウエートが大きいとそれだけ
経営を圧迫してユニット・レーバー・コストが上がってまいりますので
競争力が低下するという、そういう
関係にございます。
このユニット・レーバー・コストが今、
日本はどういう
状況にあるかというと、これも実は厳しい
状況にございます。先ほどと同じようにフィンランドとかカナダとか
韓国辺りは
日本より全然まだ下でございますし、あとアイルランド、こういったちょっとふだん
日本人の頭には必ずしも上らないような国々が実はかなりこの辺りで
競争力で努力しているという感じでございます。あと、先ほどと同じようにユーロ圏あるいはアメリカといった先進国の仲間と比べても、必ずしも
日本はまだ何というか有利な
状況にはないということでございます。
九〇年代を通じてかなり
日本の
産業界は
雇用のリストラを進めてきて、なるべく労賃を少なくしようと努力をしてきて、かなりそれは実った面もあるんですけれども、しかし国際的に見るとまだ厳しい、必ずしも楽観できる
状況にはないという点を見ていただけるかと思います。
それでは
最後に、
競争力の客観指標として、先ほど結果主義のパフォーマンス指標というのがもう
一つあると御紹介いたしました。その代表であります世界の貿易における輸出シェアを並べたのがこの③の図表でございます。これを見ていただければお分かりいただけますとおり、下の方に
日本ございまして、まあ横ばいあるいはやや輸出シェア減少傾向という感じかと思います。しかし、アメリカとかヨーロッパも同じように下がってきておりますので、この点はそんなに悲観すべきことではないのかもしれませんけれども、ここでやはり目立ちますのはその赤い点線でありますアジア諸国、これらの中にはやはり
中国というのが入っておりますけれども、世界のシェアを食う形で
中国が輸出のウエートをどんどん高めてきていると。で、その割を食う形で
日本あるいはほかの先進国の輸出シェアが減っているという
状況が見ていただけるかと思います。
以上、なかなか
一つの端的な指標で
競争力というのは測れませんけれども、幾つかの指標から
日本の
競争力というのが必ずしもまだ楽観できる
状況にはないというところを御紹介いたしました。
それでは、これから
日本の
競争力をいかに高めていくのかというのが正に今日こちらの場での御関心事項かと思いますけれども、じゃそもそも
競争力を左右する要因というのは何かということを考えてみたいと思いますが、これもまあ言わずもがなのものばかりかもしれません。先ほどの整理と同じく、価格の要因それから価格以外の要因というふうに分けて、それぞれをどういった材料が左右するのかというのを簡単にまとめてみました。
価格要因を左右するものは、これはもう当たり前のようなものばかりでございます。
企業がいかに価格を設定するか。あるいは二番目、これがかなり重要ですけれども、為替レートがどういった水準を付けるか。これによって相手国側が買う価格が全然変わりますので、これも大変重要な要素になります。それから三つ目、これは実は本日の私ポイントと考えておりますけれども、
技術進歩。で、この
技術進歩の中でも特にコストを削減する
技術というのが進んで
生産性がアップすれば世界の競争に勝っていけるだろうということで、その価格要因の要素の
一つとしてやはり
技術進歩というのが大事だろうと考えております。
それでは、一方、価格ではない価格以外の要因でいかにその
競争力を高めるか、その
競争力をどういった要因が左右するのかということをまとめてみましたけれども、やっぱり
一つは何といっても品質やサービスを向上させていくと。そうすると、まあ同じ価格でも品質が良ければ買ってもらえるということがあろうかと思います。
しかし、その裏付けとなるのは、そこにも書いてございますけど、やはり
技術進歩あるいは
研究開発ということだと思います。ここで私が申し上げたいのは、価格要因それから価格以外の要因、いずれにとりましても
研究開発すなわちその
技術進歩の占める役割というのが大変大きいだろうということを申し上げたいわけでございます。
それで、やはり私どもふだん仕事をしておりまして、社内外から
技術進歩あるいは
研究開発というのをどう考えていったらいいのかというお問い合わせを多数いただくことございます。それで、まあそういった辺りもちょっと念頭に置きまして、幾つかアンケート
調査を行ってございます。これに絡むアンケート
調査を行っております。その辺りの内容を御紹介したいと思います。
二つ今日は御紹介したいと思いますけれども、
一つは、これからの
日本は
技術進歩をやっていけるんだろうかという問題意識に沿いまして、日経新聞さんと当社で共同のアンケートを昨年の十一月に行いました。
日本の
技術進歩、
日本の
技術はこれから大丈夫なのかということで、タイトルは二〇一〇年の新
技術・市場
調査というものでございまして、これは国内の製造業を
中心とした主要
企業様二百六十二社の、特に
技術の責任者の方を対象にアンケートを取らせていただきました。オリンパス様からも御回答をいただいておりますけれども。それで、その結果をお示ししたのがこの縦横の何か矢印を書いたものでございます。
それで、ここに何かいろいろ
技術の名前がわっとこう書いてございます。これを余りちょっと
一つ一つ御紹介はできませんけれども、しかしここで申し上げたいのは、この
技術マップ、
技術のこれからの将来性の中で
日本はそう悲観したものではないということをここで申し上げたいわけでございます。
この表の見方ですけれども、上に行くほどこれは今の市場がどんどん成長していくという、その成長性を表しております。で、上半分が五年後に今よりもマーケットが三倍以上になっているだろうというものが上半分になっております。下半分が、三倍ほどにはならないだろうというのが下半分です。上と下の見方はそのように分かれております。
じゃ、今度は右と左の分け方ですけれども、右に行けば行くほどいいわけなんですけれども、これは成長した結果、五年後のマーケットの規模が一兆円以上まで育っているかという、伸び率じゃなくて今度は絶対的な規模ですけれども、それが一兆円以上になっているのが右側、一兆円ほどにはなっていないだろうというのが左側になります。したがって、上半分がいい、右半分がいいということですので、右上のこの四角が一番この中ではいいグループになります。
ちょっと念のため申し上げておきますと、じゃ左下が全然駄目なのかというと、全くそうではございませんで、ここに挙がっている
技術はいずれも将来有望なものばかりですので、もうここに載っているだけでも将来性があるんですけれども、その中でも特に有望なのが右上の四角ということになります。
それで、実はこのいろいろな
技術が、具体名が並んでいますけれども、この中で青い字と赤い字がございますけれども、この青い字は、その
技術者の方のアンケートの結果、特に五年後、十年後に
日本が世界の中で十分に
競争力を発揮できているであろう
技術を青い字で書いてございます。逆に赤い字は、ちょっと五年後、十年後、世界の中では相当厳しい順位になってしまう、今から相当頑張らないとちょっと割り負けてしまうというのが赤い字で書かれております。
それで、ここで申し上げたいのは、右上とかあるいは上半分とか申し上げてもよろしいわけですけれども、成長性があるところ、あるいはこれから規模、マーケットが大きい規模が期待されるところに青い字の
日本がこれから
競争力を発揮できそうだと期待される
部分が少なからず見受けられることでございます。これから、本当にこれからの
日本の
経済界あるいは
産業界の努力に負っている面はあろうかと思いますけれども、今の努力で、努力を続ければそんなに悲観したものではないんじゃないかというのがこの辺りからもビジュアル的に直観的に御理解いただけるんじゃないかと思います。
それで、次の表は、これも同じアンケート結果から得られたものですけれども、将来、五年後あるいは十年後、左側が五年後、右側が十年後ですけれども、にそれぞれ今期待されている
技術がマーケットの規模がどれぐらい大きくなっているかというのを御紹介したものでございます。この中でやはり青い字と赤い字、それぞれ
日本が頑張れそうなところ、それから
日本がちょっと割り負けそうなところというのを赤や青で書いてございます。御関心あればまたごらんいただければと思います。
ちなみに、やはりちょっと具体的なところを若干御紹介しておいた方が御実感持っていただけるかと思いますけれども、先ほどの縦横図でいきますと、やはり多少まだ耳慣れない、我々ふだん生活していて耳慣れないところがあろうかと思いますけれども、例えばICタグと言われる本当に米粒みたいに小さいICの中にいろいろな製品情報を記憶させて、もう製品自体に埋め込んでしまったりとかする、IC値札、IC荷札とか言われていますけれども、そうするとその製品がどういう経路をたどって消費者のところまで届いたかというのが把握できるとか、こういったICタグというのが大変注目されていたり、あるいはハイブリッド車、ガソリンと電気の両方を使うような車。あと、一番その下にITSとございますけれども、最近もう既に実用化されつつありますけれども、高速道路で料金所で止まらなくても自動的に引き落とされるようなのを含めたりとか、あるいは危険が迫るとそれを察知して教えてくれるような、言ってみれば自動車とそれからITの融合みたいな領域、こういったところを今ちょっと代表的なところで御紹介いたしましたけれども、青い字がいろいろあるということを申し上げたかった次第でございます。
ちなみに、この次の表は、正に今私が申し上げた、五年後に
日本の
産業界が相当
競争力を持てるだろうというアンケート結果が得られた上位十
技術が左側の水色のボックス、それから右側は、これから相当頑張らないとちょっと世界の中では割り負けそうだというのが右側のボックスの中に入ってございます。これは、あくまでも個別
企業というよりは
日本の
産業全体図というイメージですけれども、御
参考までにごらんいただければと思います。
これも同じアンケート結果でございまして、今現在がその一番、二〇〇三年のところですけれども、二〇一〇年、二〇一五年と行くほどどんどん成長する市場があって、この太い黒線と青い黒線、これが正に
日本が頑張れるところを表してございまして、この辺りにちゃんと着実に食い込んでいけば満更悲観したものでもないだろうということを申し上げたいわけでございます。
以上、日経新聞さんと共同で行いましたアンケートを
一つ御紹介させていただきました。ここで浮き上がりましたのは、やはり引き続き製造業を
中心に
日本の
技術というのはそれなりに自信を持ってやっていっていいんじゃないかということかと思いますけれども、しかし全く油断はできません。いろいろとやはりそれなりに官民挙げて努力をしていく必要があろうかとも思います。
そういった意識でアンケートを取りましたもう
一つアンケート結果がございまして、それを
最後に御紹介させていただきたいと思います。
それで、八〇年代のアメリカ辺りで盛んに議論をされていたキーワードで死の谷、
技術の死の谷という言葉がございました。これデスバレー現象と呼ばれておりますけれども、ここにちょっと模式図でかいておりますが、これ何かと申しますと、せっかく
会社の中でいい
技術を
開発してもそれが製品に結び付かない。いい
技術とそれから製品の間に一種の死の谷があって、その死の谷を渡れないままにその製品、いい
技術が埋もれてしまって終わっているんじゃないかという、そういう問題意識がございます。正に八〇年代のアメリカで語られた概念なんですけれども。
それで、もしかしたらこういった現象が
日本でも起こっているんじゃないかという意識で、おととし、これは私どもの方でやはりアンケート
調査をさせていただいたものがございます。その結果、やはり面白いいろいろ結果が浮かび上がってまいりました。
それで、アメリカで言われていた死の谷、
米国型デスバレーは、専らその途中段階でお金が付かないことによって
技術が埋もれてしまうという問題意識でございました。
研究開発のところでもうお金がちゃんと付いている、製品の段階でもそれなりにお金が回っている、しかしそれを実用化する途中の段階でお金がきちんと付かない、ここが問題じゃないかというのがアメリカ型デスバレーでございました。
それに対しまして
日本型デスバレーというのは、もちろんそういった面もあるんですけれども、しかしどうもアンケートをいろいろ取ってまいりますと、いろいろ社内に問題があるんじゃないかという結果が得られました。ここにちょっと三つ、①から③まで挙げてございますけれども、例えばせっかくいい
技術があってもそれをうまく、何といいましょうか、需要の具体的な形を表現できない、社内で表現できる人がいないために
技術は
技術でもう単独で終わってしまっているというのがあるんじゃないかと。それから、あと
二つ目、これは先ほどの
岸本会長様の
お話にもございましたけれども、やはり
技術を
製品化する
人材が不足しているんじゃないかという指摘も多々いただきました。
技術経営担当者が不足しているんじゃないかという御指摘も多々いただきました。あるいは、三つ目ですけれども、部門間、組織間の連携。やはり
企業の中もかなり縦割りが進んでいて、この連携がうまく進んでいないために
技術が埋もれてしまっているんじゃないかという、そういう結果が得られました。
以下、アンケート結果をお示ししたこの円グラフがございます。やはり、まずそもそものところで、せっかく
技術を
開発しても製品にされないことがあると回答された
企業が八割を占めました。これは、やはり
企業様自身もかなり深刻な問題だととらえておられると。
じゃ、その原因がどこにあるのかというその原因を伺ったところ、
資金面の問題というのも五位には付けておりまして、それなりに問題ではあるんですけれども、こういったアメリカ型のデスバレーでありますと、
資金面の問題というよりは、むしろ上位を占めております①から③、すなわち社内の連携あるいは
人材の問題なんかが大きいんじゃないかという結果が得られた次第でございます。
こういった
意味で、このアンケート結果だけからそう早急に片付けることはできないかと思いますけれども、しかしやはり
日本型のデスバレーを解消するに当たっては、もう少し
企業をベースとした何か政策、
企業をうまく動かすような政策というのが
一つの方向性なのではないかという、そういった個人的な印象を持ってございます。
以上、ポイントでございましたけれども、私からの
報告をここで終わらせていただきたいと思います。