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2005-03-02 第162回国会 参議院 経済・産業・雇用に関する調査会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十七年三月二日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  三月二日     辞任         補欠選任      松 あきら君     浜四津敏子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         広中和歌子君     理 事                 加納 時男君                 北岡 秀二君                 椎名 一保君                 朝日 俊弘君                 辻  泰弘君                 浜四津敏子君     委 員                 小野 清子君                 大野つや子君                 岡田  広君                 小泉 昭男君                 西島 英利君                 野村 哲郎君                 松村 祥史君                 足立 信也君                 小林 正夫君                 谷  博之君                 広田  一君                 和田ひろ子君                 浜田 昌良君                 井上 哲士君    事務局側        第二特別調査室        長        富山 哲雄君    参考人        オリンパス株式        会社代表取締役        会長       岸本 正壽君        株式会社三菱総        合研究所主任研        究員       後藤 康雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○経済産業雇用に関する調査  (派遣委員報告)  (「成熟社会における経済活性化と多様化する  雇用への対応」のうち、日本経済国際競争力  の強化について)     ─────────────
  2. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ただいまから経済産業雇用に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告申し上げます。  本日、松あきら君が委員を辞任され、その補欠として浜四津敏子君が選任されました。     ─────────────
  3. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事浜四津敏子君を指名いたします。     ─────────────
  5. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 経済産業雇用に関する調査を議題といたします。  先般、本調査会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員報告を聴取いたします。北岡秀二君。
  6. 北岡秀二

    北岡秀二君 座ったまま報告をさせていただきます。  委員派遣の御報告を申し上げます。  去る二月十七日から十八日までの二日間にわたり、京都府において、経済産業雇用に関する実情について調査してまいりました。  派遣委員は、広中会長加納理事朝日理事辻理事松理事小野委員小泉委員西島委員松村委員小林委員広田委員和田委員浜田委員井上委員渕上委員、そして私、北岡の十六名でございます。  以下、調査の概要を申し上げます。  まず初めに、京都府から京都府の経済産業及び雇用現状課題について、また京都商工会議所から京都における観光産業振興及び中小企業振興への取組について、それぞれ説明を聴取しました。  京都府には、歴史文化にはぐくまれた伝統産業が数多く存在する一方、創造的な中小企業ベンチャー企業が活発に活動する風土があります。京都府が実施する施策においても、歴史伝統を大切にするとともに、将来に向けて活力ある京都府の産業を切り開くことを重視したものが展開されております。  具体的な施策として、大手企業とのネットワークを持つ個人や販路開拓等のノウハウを持つ団体創援隊と称する応援団として組織し、ベンチャー企業等販路開拓を進めていくといった非常にユニークなものが紹介されました。また、小規模企業おうえん融資の創設やあんしん借換融資延長等により、中小企業資金面での支援がより強化され、厳しい経営環境の中、中小企業経営の安定が積極的に図られているとのことでした。  京都商工会議所からは、産学公連携を踏まえ、民間の立場からの積極的な取組が紹介されました。特に、京都文化歴史の継承と観光振興等目的とした京都観光文化検定試験の実施や、小倉百人一首を通じて文化芸術等発展を図る小倉百人一首文化財団設立など、長い歴史文化に支えられた京都ならではの独創的な観光文化振興活動在り方が紹介されました。  また、昨年九月に開催された京都ブランドフォーラムでは、清少納言の枕草子をモチーフとした京都創造者憲章が発表され、京都ブランドの確立、発展が図られていることが紹介されました。派遣委員からは、中小企業を対象とした融資制度利用状況のほか、外国人観光者数増加等を見据え、京都歴史的な景観整備在り方等に関して質疑がありました。  次に、株式会社島津製作所を視察しました。まず、カスタマーサポートセンターにおいて、同社の原点でもある各種の計測・分析機器について説明を聴取しました。また、二〇〇二年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一フェローからは、たんぱく質質量分析装置について非常に親しみの持てる分かりやすい説明を伺いました。こうした先進的な取組に対して高い評価を得ているにもかかわらず、服部社長同社の基本的な姿勢として、見えないものを見る、測れないものを測ると語るなど、躍進する企業の強さをうかがい知ることができました。派遣委員からは、技術開発から製品化に至るまでに要する時間、製造個数価格等に関して質疑がありました。  また、同社メディカルセンターでは、核医学診断システムを始め、様々な先端医療機器を視察しました。これら医療機器においても同社の高度な技術が遺憾なく発揮されていることはもちろんですが、その技術の根底には、患者に対する負担を少しでも少なくしようとする人間的な優しさがあることを知りました。  次に、滋賀喜織物株式会社を訪れました。西陣織伝統を受け継ぎ、高い技術に裏打ちされた格調高い帯を作る過程を視察し、昔ながらの作製方法にかたくなにこだわる姿勢から、歴史にはぐくまれた伝統産業を担う誇りが強く感じられました。  次に、西陣織会館を視察しました。西陣織出荷額が大きく減少した背景として、近年の厳しい不況に加え、外国から類似製品が流入していることも大きな要因であるため、より厳しい原産地表示を義務付けてほしい等の要望が示されました。派遣委員からは、西陣織に携わる労働者数推移等雇用面での質疑等がありました。  次に、京都工芸繊維大学地域共同研究センターのインキュベーション・ラボラトリーを視察しました。同大学発ベンチャー企業支援するこのラボラトリーでは、抗酸化物質の探索及び活性評価数値化のための研究開発電子産業用の新しい薄膜製造法開発、蚕に感染するウイルスが作るたんぱく質利用した感染症診断チップ等の作成について説明を聴取しましたが、これら独創的な研究からはベンチャー企業が持つ無限で未知なる可能性と勢いが感じられました。派遣委員からは、産学公連携を踏まえ、学生研究者等における民間人割合やその雇用形態等について質疑等がありました。  最後に、京都若年者就業支援センターを視察しました。京都府では、積極的な雇用施策を展開することにより、平成十三年には六・三%と全国でワースト三位であった失業率平成十五年には六・〇%となる等、徐々に改善されているとのことでした。特に、若年者就業支援については、厳しい雇用環境の中、全国に先駆けてワンストップサービスを提供することを通じ、平成十六年度における就職内定者数が、目標の千人に対し、二月十七日時点で千百人となる等目覚ましい成果を上げているとのことでした。同センターでは若年者に対する就職支援取組を実際に視察しましたが、こうした成果が出ている背景には、一人一人の若年者に対して担当者が一貫して対応することにより若年者に余計な不安感を与えないようにするなど、きめ細やかで真摯な職員の支援があることが分かり、その職務の重要性を改めて認識しました。派遣委員からは、大学等企業との間のインターンシップの実態、就職した学生会社における定着率、同センターを訪問するに至らない若年者に対する支援在り方等に関して質疑がありました。  最後に、今回の派遣に当たりまして、京都府並びに関係者皆様から多大な御協力をいただきましたことに厚く御礼を申し上げ、御報告を終わります。  以上です。
  7. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。     ─────────────
  8. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 次に、「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、日本経済国際競争力強化について参考人からの意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、オリンパス株式会社代表取締役会長岸本正壽さん及び株式会社三菱総合研究所主任研究員後藤康雄さんに御出席いただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  御多用なところ本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございました。  本日は、本調査会が現在調査を進めております「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、日本経済国際競争力強化について忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にさせていただきたく存じております。  議事の進め方でございますが、まず岸本参考人後藤参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、午後四時ごろまで各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず岸本参考人からお願いいたします。
  9. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) 御紹介いただきましたオリンパス株式会社会長をしております岸本正壽でございます。よろしくお願いします。
  10. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) お座りになっていただいて……。
  11. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) ありがとうございます。それじゃ、着席させていただきます。  皆様のお手元にお配りしておりますレジュメに従いましてお話をさせていただきます。  まず結論から先に申し上げますと、日本経済国際競争力強化というのは技術創造立国貿易立国、この二つ基本的要件ではないか、このように考えます。日本経済国際的優位性維持強化というのは、資源の乏しい我が国にありましては、科学技術生産技術発展、これが国際競争力の源泉でございます。同時に、技術開発による新産業創出、これが新しい雇用の受皿になると、このように考えます。したがいまして、先進技術研究開発とその産業化促進するための継続的な投資、高コスト構造の是正、自由貿易体制強化、これが肝要でなかろうかと考えております。  時間の関係もございますので、これから技術開発という点に的を絞ってお話しさせていただきます。現場的な思考でございますので、細かいことが入るかもしれませんが、御容赦いただきたいと思います。  まず第一に、生産技術の方でございますが、日本企業海外生産が伸展する中で、日本におきましては高付加価値創造物作り、これを追求すべきではないかと考えております。どこで作っても同じ商品ではなくて、日本で作らなければならない商品、この創造ということでございます。  現状についてちょっと申し上げますと、一九七〇年代に第一次海外生産移管日本企業海外に進出したわけでございますが、このときは台湾中心にタイ、マレーシア、インドネシア等に進出しまして、いわゆる低コスト生産、これが目的でございましたが、一九九〇年代の第二次海外生産、これはカントリーリスクが減少しました中国中心でございまして、低コスト生産はもちろん目的一つでございますが、あの大きな潜在市場をどう対応するかという市場戦略も含まれている、このように考えております。  日系企業中国生産品というのは軽工業中心軽工業商品中心でございまして、特に高度な生産技術を必要としない組立て中心アセンブリー中心製品群主力でございますが、最近では中級品や、あるいは部品を含めた一貫生産、これに移行しつつありますし、ごく最近では金型あるいは治具工具、そういう生産設計、あるいはソフトの開発、こういうところまで日系企業が移行しているということがうかがえます。  他のアジア地区でも生産につきましてはほぼこれと同じような状況認識をしております。  米国でございますが、ITや半導体関連心臓部であります電子ハイテク部品、これはやはり日本中心でございまして、あと台湾韓国、この辺から輸入をしております。したがいまして、高付加価値商品製造力というのはそんなに強くはない、このように判断をしております。  このような状況に対しまして日系の、我々企業がどのように対応しているかということでございますが、まず海外生産品でございましても日本パイロットラインを敷いております。パイロットラインというのは、わずか一レーンのテストパイロットといいましょうか、テストラインといいましょうか、そのラインを使いまして量産技術を確立し、そしてその上で生産移管をしていると、こういう状況でございますので、量産技術はまだ日本にあると、このように考えます。  それから、高度生産技術を必要とする高付加価値製品、これは日本生産しておりますし、移転が必要、技術移転が必要という場合はブラックボックス化、いわゆる技術を外から見えないように、分からないように凍結をしてそれを移管すると、そのような方法を取っております。  それから、日本と特に中国でございますが、どういう生産区分をしているのかということでございますが、価値創造という字がございます。その創の部分ですが、これは日本担当しよう、そして造の部分、これは海外生産海外担当でもいいじゃないかと、こういう考え方一つございます。もちろん造の部分におきましても高付加価値商品日本生産をする。当社でも、付加価値の高い、高度生産技術を必要とする医療機器につきましては、すべてこれは日本生産をしております。  それから、中国生産、当初はこれいろいろな規制がございまして合弁が主力でございましたけれども、規制緩和が進んだことと、それから技術流出等の防止、そういう意味独資系会社がこのところ多くなっておるという状況でございます。  したがいまして、日本企業もいろいろ工夫をしながら、技術、いかに日本の中に保有するかということに一生懸命対応しているということでございます。  ただ、課題でございますけれども、中国大手企業でございますが、技術、技能を有する企業買収するという傾向が出ているわけでございまして、あのコンピューターの大手でございます聯想という会社がIBMのPC部門を昨年の末巨額で買収をしました。我々企業にとってもあれだけのお金が出るというのはちょっと予想外でございましたが、多分企業だけではなくて国の一つ考え方としてあの買収が入ったのではないか、このように判断をしております。日本におきましても、技術のある中小企業買収、これ現実に今起こっております。  それから、二点目の退職技術者流出ということでございますが、かつて九州を中心に、週末、技術者韓国に飛びまして、それで技術指導をして韓国電子産業発展に寄与した、こういう時代があったわけでございますが、中国におきましても、今のところ日本定年退職技術者、この技術者の方がかなりの高額で指導に入っている、そういう方がだんだん多くなっていくんではないか、このように考えております。  それから、三番目の、これは今日のテーマからちょっと外れるかもしれませんが、社会環境、教育といった大きな課題でございます。  日本若者の仕事への意気込み、挑戦意欲、こういうことがちょっと弱っている、弱まっているということが、継続的な努力とそれから忍耐力を要する製造現場への従事を遠ざけてしまわないか、こういう懸念がございます。  中国日本若者ハングリー精神あるいは労働意欲挑戦意欲の差というものは将来の懸念材料であることは間違いない、このように考えております。  二ページでございますが、その前に、今、生産技術お話をいたしましたけれども、生産技術というのは主として現場から生まれるものでございますので、民間企業主体競争力強化していく、これが大きな命題ではないか、このように認識をしております。  次、二ページの科学技術、俗に言う研究開発ということでございますが、かつて日本応用技術あるいは商品化技術、これは優れているけれども基礎技術は弱い、このように言われました。しかし、昨今、カーボンナノチューブ等材料技術発光ダイオード半導体関連電子ハイテク技術、特にナノテクノロジー等に見ますように、日本発の強い部分増加をしております。また、既存産業におきましても、自動車の飛躍、あるいは新三種の神器と言われておりますフラットパネルとかDVD、デジタルカメラと、これは圧倒的なシェアを保持しております。船舶も一時の低迷から見事に復活しましたが、これは新しい技術開発によるところでございます。  そういう状況でございますが、強化策としてどういうことが望ましいかということでございますが、まず第一に、研究開発投資促進でございます。  a、国家予算による支援でございますが、日本研究開発費民間ベースでは、米国の半分、二分の一でございます。それから、日本が、民間が使用する研究開発費総額に占める政府資金支援といいましょうか資金負担、この割合がドイツの六分の一、米国の五分の一でございます。国家予算全体で見ますと、GDP比率、何を基準にすればいいか分かりませんが、GDP比率で見ますと、欧米主要国の水準以下ということが言えます。したがいまして、日本優位性を期待できる戦略分野に焦点を当てた継続投資、これが必要であると考えます。厳しい財政下ではございますけれども、当面GDPの一%程度の額を最低限として考えるということが必要じゃないかと。一%といいますと、ちょうどこの間、新聞に出ておりました、GDP五百数兆でございますから、五兆円ぐらいということになるかと思います。ただ、GDPというのは上下をいたしますので、できればやはり長期的な観点から額で決めていくということも必要じゃないかと、このように思っています。  一九七六年に、昔の通産省ですか、通産省で取り組まれました産業育成政策というのがございまして、ここに日本大手の五社がLSIの共同開発をいたしております。それから、一九九一年に始まったマイクロマシン国家プロジェクト長期支援、これが十年間続きましたけれども、これらは非常に成功であったということでございますので、これらが参考例になるかと思います。  bの税制でございますが、現在の税制は、従来からある増加試験研究費税額控除、これに加えまして、平成十五年度より新しく導入されました試験研究費総額に対する税額控除、この二つ制度がありまして、企業の方でどちらを選択してもよろしい、有利な方を選択しなさい、こういう有利選択が適用されておりまして、企業研究開発投資促進、これに大変寄与をしていると考えております。  ただし、試験研究費総額に対する税額控除、これには経過措置としまして、三年間、より有利な税控除割合となっているのですが、これが十七年度をもって終了ということになっております。したがいまして、現税制継続、さらにはより有利な制度投資促進支援することになる、このように考えております。  二番目でございますが、産官学連携強化ということでございまして、一九八一年に登場しました米国の大統領、レーガンさんは、強い米国、これを標榜いたしまして、特に産業強化という点でプロパテントと、それから産官学共同による産業強化策として国家プロジェクトの下に科学技術開発、こういうことに多額資金を投入いたしました。一九九〇年代に入ってそれが開花したと、こういう具合に言われております。  この間、日本高度経済成長時代でございまして、これからの高付加価値創出するのは金融とサービス業であると、こういうことで、考え方として、そちらの方に注目が行きました。したがいまして、不動産とか株式とか、そちらの方に資金がかなり流れた。結果としてはそれがバブル経済ということになったわけでございますけれども、そんなことで日本対応が少々後れを取ったということでございますが、近年、産学連携の動きが急激に高まっておりまして、二〇〇三年には国立大学民間との共同研究数というのは八千件を超えている。三年前が四千件ぐらいでございますので、ちょうど倍増ということでございます。  特に、基礎研究というのは長期間を要しますし、多額先行投資を必要としますので、またデジタル時代複合技術開発のスピードという観点からも、一企業での取組は無理でございます。したがいまして、新産業創出の基盤となる世界トップレベル研究開発の推進や、後ほど申し上げます人材育成について、産学連携強化を図ることが重要ではなかろうかと思います。  三番目でございますが、ベンチャー企業育成でございます。  小泉内閣大学発ベンチャー企業一千社設立という目標は、昨年ほぼ八百社ぐらいになったという具合に聞いておりますが、民間を含めてなかなかこれが、育成が困難でございます。  日本の場合、一度失敗しますとまず駄目人間というレッテルを張られますので、なかなかリターンマッチができない。あるいは、ロイヤリティーが非常に強い従業員国民性がございますので、会社を離れてベンチャーに挑戦するということは企業風土にもちょっとなじまないという点がございます。あるいはベンチャーキャピタルあるいは起業家が育っていない、そういう難しさもございます。一円会社設立ができるようになりましたが、運転資金が集まらなければ一円設立できてもこれは意味がないということでございます。  我々が携わっております医療機器用具の業界でございますけれども、日本で使用される医療機器用具の五〇%強が輸入品でございます。特に治療機器用具、この開発産業化が大変後れている。というのは、一つ医療関連ベンチャー日本にはごくごく少ない、そういうことも原因の一つだろうと思います。医療機器のメーカーはリスクを恐れて取組そのものが消極的でございますが、米国ではベンチャーがいわゆるリスクのバッファーとなっております。そして、新しい医療用具開発促進されているという点がございます。  そういう意味でもベンチャー企業育成ということが大変重要なことだろうと思いますので、政府公共団体資金援助、あるいは官民によるマッチングファンド設立、あるいは公的研究機関の設備を一部開放して利用ができるような、そういう育成施策の拡充が必要ではなかろうかと思います。  四番目でございますが、人材育成でございます。  新しい技術開発されても、それを事業化する、いわゆるブリッジ人材というものが不足しておりますし、海外の優秀な人材が集まる世界トップレベル研究機関が非常に少なくて内外の研究者の交流の場が乏しく人材が育ちにくい、こういう点がございます。そこで、産学の人材交流を積極的に推進することによって事業化のスピードを上げる必要がありますし、MOT教育を充実させるとともに、一定期間、インターンシップのお話もございましたが、一定期間企業で経験学習ができるような教育システム、これが有効に働くのではないかと思います。  アメリカでは百六十以上の大学がMOTのコースを持っておりますが、日本では、昨年の春の数でございますが、十六校しかないということでございます。また、海外、特にアジアの優秀な人材が、現在、日本を飛び越えてアメリカの方に行っているわけですが、こういう人たちが日本に来るような、集まりやすい、そういうインフラ整備というものが必要ではなかろうかと思います。  最後の五点目でございますが、知的財産につきましては、特許庁で大変な努力をされておりまして、民間意見も積極的に取り入れていただいて急激に改善が進んでおりますので特に言うべきことはないんでございますが、四点目の知的財産紛争の迅速処理という点でございますけれども、やはり日本においても、近年、法廷での争いが非常に多くなってきておりますので、知的財産にかかわる専門裁判官の養成、これが急務ではなかろうかと、このように感じております。  それから、日本発の国際標準化への取組推進でございますが、日本で得意とする、あるいは有利さが期待できるところにつきましては積極的に標準化を進めていくと。それによって、ISOの規定にも入れていただくというようなことが必要なんですが、民間団体だけではなかなか難しい点もございますので、経済産業省を始めとした政府レベルの推進ということをお願いできればという具合に考えております。  以上でございます。
  12. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、次に後藤参考人にお願いいたします。
  13. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) 三菱総合研究所の後藤康雄と申します。私、ふだん三菱総合研究所でマクロ経済の取りまとめを担当してございます。着席してお話しさせていただきたいと思います。  それでは、私のお話は、日本経済国際競争力につく現状課題の全体観を御報告させていただきたいと思います。それで、前半では少し、まあそもそも論と申しましょうか、やや教科書的な内容も含めまして前半ではそもそも論のお話をさせていただきまして、後半では当社が行いましたアンケート結果などの御紹介をさせていただきたいと思います。  それで、あらかじめ結論的なところを申し上げておきますと、やはり、今、岸本会長のおっしゃられたように、技術は大変これからの競争力を考えていく上では最大のやはりポイントであろうと思います。ただ、中国などのアジア諸国の追い上げもありますけれども、今のところ、我々の意識ではそれほど悲観しなくてもいいんじゃないかというふうに考えてございます。この辺りが私のプレゼンの結論的なところでございます。  それでは、まず前半部分国際競争力とは何ぞやみたいなところから少しお話をさせていただきたいと思います。お手元にお配りしておりますオレンジ色の色の付いた資料に沿いまして御報告させていただきます。(資料映写)  これの一枚目のグラフにございますのは、我が国の国際競争力の順位の推移でございます。これはだれが決めたのかというと、IMDという、これはスイスにあるビジネススクールですけれども、これが年に一度、各国の国際競争力を順位付けをしまして勝手に発表するんですけれども、これはかなり新聞等で大きく取り上げられることが多うございます。  このIMDが日本に関して競争力何番か、世界の中で順番は何番かというのをずっと追ってみたのが、付けたのが、追ってみたのがこのグラフでございまして、九〇年代前半ぐらいまではずっと日本は実は一番でございました。しかし、やはりバブルが崩壊いたしまして経済情勢が悪化するにつれ、あるいはほかの国々の追い上げを受けるにつれまして急速にランクがダウンいたしまして、現在は二十位辺りを低迷しているという状況でございます。最悪期は脱したものの、やはりかつての一位を独走していたころの姿はもう遠い昔という感じもございます。  それで、このIMDが順位付けをした、じゃほかの国はどんな状況かというのを、一番最近のランキングでお示ししたのがこの次の表でございまして、日本は二十三位なんですけれども、一位はどこかというと、やはり米国であります。これは、やはり経済情勢がいいということもございますし、それからやはり八〇年代のレーガン政権時などでいろいろ仕込んできた努力が報われてきているという面もあろうかと思います。  ちなみに、このIMDが順位付けをしているやり方というのは、各国のいろいろな経済の側面を分析しまして総合的に積み上げていくような方式を取っております。どういう積み上げをしているかというと、本当に大変多岐な項目にわたるんですけれども、大まかに分けて四つの分野を調査しています。そこの表にも、上の方にちょっと灰色で塗っているところにございますけれども、まずやはり経済情勢がいいかどうか、それから政府部門が効率的に運営されているかどうか、それからビジネス環境がどうであるか、経済のインフラが整っているかという、大体こういう四つの分野に分けて調査をしているんですけれども、アメリカは、ごらんいただいてお分かりいただけますとおり、ほとんどどの項目も相当高い順位であると。ちょっと、政府の効率性のところだけはちょっと低めですけれども、しかしやはり全体的に高いランキングにあると。中身を見てもさすがにいい順番にあるということでございます。  翻って日本を見ますと、インフラはさすがに世界で二位という形になっておりますけれども、政府の効率性とか、こういった辺りが少し足を引っ張る形で、あと経済情勢も何といってもまだ厳しい状況が続いておりますので、全体のランキングが、総合ランキングが二十三位という形になっております。  あと、これを見ているだけでもいろいろと発見があるんですけれども、上の方の顔ぶれが必ずしも経済規模が大きい国々ばかりではありません。例えば二位にシンガポールが付けているでありますとか、香港とか、こういった必ずしも経済規模は大きくないけれども、うまく国をあるいは経済を運営することによって高い競争力を維持している国々が多いという、そういった状況かと思います。  よく競争力という場合に引き合いに出されますこのIMDのランキングを御紹介いたしましたけれども、それでは次に、少し教科書的なそもそも論になって恐縮でございますけれども、国際競争力とはどのように定義されるのかという辺りを少し整理してみたいと思います。  何となく感覚としては、競争力というのは、感じる、実感としてはお持ちでいらっしゃるかもしれませんけれども、これを定義付けるとどういうことかというのがこの次のシートにまとめているものでございますけれども、これは大きく二つの側面がございます。  一つは、やはり何といっても安い価格で商品やサービスを提供できるという価格競争力です。これが一つ競争力の源になります。しかし、であれば、安けりゃ安いだけでいいのかということになりますと、そうではございません。非価格競争力という、そういった要素もございます。これはやはり品質でありますとかサービスでありますとか、あるいは納期の確実性とか契約の確実性とか、そういった、価格には必ずしも表れない、そういった競争力もございます。このように価格、それから非価格、こういったいろいろな側面で競争力が構成されているというふうに考えていただければと思います。  それから次に、競争力を語る場合に、ややもすると混同されがちなのが個別企業競争力、それから産業競争力、それから国の競争力と。今、徐々に大きくなるような順番でお話をいたしましたけれども、この辺りは多少分けて考える必要があろうかと思います。大まかに言えば、もちろん積み上げていけばだんだん国の競争力になっていくんですけれども、しかし必ずしもちょっとそこがイコールにならないこともございます。  ちなみに、先ほど岸本会長お話にもございました八〇年代にアメリカが競争力の向上に向けて努力をした時期ございました、レーガン政権時にございました。そのときにヤング委員会というのが編成されてヤング・レポートというのを出したという、有名なレポートございますけれども、そこにおきます、そのヤング委員会における競争力の定義ですけれども、これは国民生活を向上させつつ世界で競争できる財を生む能力というふうに定義をされていて、これはかなり今も幅広く引き合いに出される定義であります。  ここでのポイントは、単に世界で競争できるというだけではなくて、国民生活を向上させつつということがポイントになっております。すなわち、競争するだけであれば、もうコストを度外視したダンピングというのもあり得るかもしれませんけれども、それは国民生活を豊かにはしない。国民生活の豊かさとそれから競争が同時に成り立って初めて一国の競争力というのが定義できるだろうというのがヤング委員会の定義になっております。  それから、一国の競争力を考える場合に、やはりもう一つ御念頭に置いていただければと思いますのは、個別産業競争力が低下してもそれをカバーするほかの産業が盛り上がってくれば国全体の競争力は必ずしも衰えたとは言えないという面がございます。これはもうもちろんその個別の業種に属されている方々にとっては一大事かと思いますけれども、しかし国全体を考えた場合には、個別産業一つ一つが浮き沈んだ合計が競争力を維持していれば国としては競争力が維持できているという、そういった考え方で受け止められることが一般的かと思います。  それで、次に、じゃ先ほど冒頭でIMDの競争力ランキングというのを御紹介しましたけれども、これはまあある意味では、あるスイスのビジネススクールが勝手に主観的にランキングをしたものでございまして、もう少し客観的な競争力の指標はないだろうかというところで御紹介をさせていただきたいと思います。  これはやはり経済学のテキスト、特に国際競争力を語る場合のテキストなどに一般的に出されるものですけれども、大きくこれも二つの種類の指標がございます。競争力の指標、大きく分けて二つございます。  一つは、やはり競争力を形成する重要な要素がいかに安いコストで作るかということである以上、やはり何らかのコスト的な指標があり得るだろうというのが、まずこの一点目のコスト指標の発想でございます。まあ相対価格とかユニット・レーバー・コストとかいろいろ書いてございますが、これはいずれもいかに安く他国に比べて製品を生産できるかという指標でございます。  しかし、先ほども申しましたとおり、コストだけでは競争力は語れません。コストだけではない、価格だけではないいろいろな要因ございます。そういったものももろもろ合わせた指標はないだろうかということで考えられたのが二つ目のパフォーマンス指標でございます。これはもう発想は非常に単純でございまして、何かつかみどころのないもろもろの要素があるかもしれないけれども、その結果、世界市場でシェアが大きければ、それは競争力があることだろうという結果主義に基づく指標でございます。まあパフォーマンス指標と仮の名前を付けてございますけれども、単純に輸出のシェアあるいはこのRIC係数、これも同じような概念ですけれども、こういった結果主義で指標を作ったのがこのパフォーマンス指標でございます。  じゃ、このそれぞれについて今現状がどういう状況にあるかというのを簡単に御紹介させていただきたいと思います。  まず、一番目のコスト指標の方から御紹介したいと思いますけれども、コスト指標の代表はやはり価格でございます。これは、ちょっと単純な価格ではなくて少し為替レートやあるいはその貿易ウエートなどを考慮して加工をしたものでございますけれども、この価格が下に行けば行くほど安い価格で物が生産できているということで、競争力が高いと考えていただければと思います。  これは重立った国々を挙げておりますけれども、コスト指標で見ますと、実は日本はなかなかちょっと厳しい状況にございます。例えば、カナダとかフィンランド、こういった国々には全然負けておりますし、あとお隣の韓国なんかもまだまだ日本に比べてコスト的に努力をしているという感じでございます。あと、先進国の仲間でありますアメリカ、それからヨーロッパ辺りに比べましても、若干でございますけれども、価格的には必ずしも日本はそんなに有利な展開をしていないという状況にございます。  同じくコスト指標、もう一つ御紹介したいと思います。これはまたちょっと違う視点から見ておりますけれども、ユニット・レーバー・コストという指標でございます。これもよく我々の業界では引き合いに出される指標なんですけれども、考え方は単純でございまして、物を一つ生産するときにその一単位当たりに生産コストがどれぐらい含まれているかという指標であります。労賃がウエートが大きいとそれだけ経営を圧迫してユニット・レーバー・コストが上がってまいりますので競争力が低下するという、そういう関係にございます。  このユニット・レーバー・コストが今、日本はどういう状況にあるかというと、これも実は厳しい状況にございます。先ほどと同じようにフィンランドとかカナダとか韓国辺りは日本より全然まだ下でございますし、あとアイルランド、こういったちょっとふだん日本人の頭には必ずしも上らないような国々が実はかなりこの辺りで競争力で努力しているという感じでございます。あと、先ほどと同じようにユーロ圏あるいはアメリカといった先進国の仲間と比べても、必ずしも日本はまだ何というか有利な状況にはないということでございます。  九〇年代を通じてかなり日本産業界は雇用のリストラを進めてきて、なるべく労賃を少なくしようと努力をしてきて、かなりそれは実った面もあるんですけれども、しかし国際的に見るとまだ厳しい、必ずしも楽観できる状況にはないという点を見ていただけるかと思います。  それでは最後に、競争力の客観指標として、先ほど結果主義のパフォーマンス指標というのがもう一つあると御紹介いたしました。その代表であります世界の貿易における輸出シェアを並べたのがこの③の図表でございます。これを見ていただければお分かりいただけますとおり、下の方に日本ございまして、まあ横ばいあるいはやや輸出シェア減少傾向という感じかと思います。しかし、アメリカとかヨーロッパも同じように下がってきておりますので、この点はそんなに悲観すべきことではないのかもしれませんけれども、ここでやはり目立ちますのはその赤い点線でありますアジア諸国、これらの中にはやはり中国というのが入っておりますけれども、世界のシェアを食う形で中国が輸出のウエートをどんどん高めてきていると。で、その割を食う形で日本あるいはほかの先進国の輸出シェアが減っているという状況が見ていただけるかと思います。  以上、なかなか一つの端的な指標で競争力というのは測れませんけれども、幾つかの指標から日本競争力というのが必ずしもまだ楽観できる状況にはないというところを御紹介いたしました。  それでは、これから日本競争力をいかに高めていくのかというのが正に今日こちらの場での御関心事項かと思いますけれども、じゃそもそも競争力を左右する要因というのは何かということを考えてみたいと思いますが、これもまあ言わずもがなのものばかりかもしれません。先ほどの整理と同じく、価格の要因それから価格以外の要因というふうに分けて、それぞれをどういった材料が左右するのかというのを簡単にまとめてみました。  価格要因を左右するものは、これはもう当たり前のようなものばかりでございます。企業がいかに価格を設定するか。あるいは二番目、これがかなり重要ですけれども、為替レートがどういった水準を付けるか。これによって相手国側が買う価格が全然変わりますので、これも大変重要な要素になります。それから三つ目、これは実は本日の私ポイントと考えておりますけれども、技術進歩。で、この技術進歩の中でも特にコストを削減する技術というのが進んで生産性がアップすれば世界の競争に勝っていけるだろうということで、その価格要因の要素の一つとしてやはり技術進歩というのが大事だろうと考えております。  それでは、一方、価格ではない価格以外の要因でいかにその競争力を高めるか、その競争力をどういった要因が左右するのかということをまとめてみましたけれども、やっぱり一つは何といっても品質やサービスを向上させていくと。そうすると、まあ同じ価格でも品質が良ければ買ってもらえるということがあろうかと思います。  しかし、その裏付けとなるのは、そこにも書いてございますけど、やはり技術進歩あるいは研究開発ということだと思います。ここで私が申し上げたいのは、価格要因それから価格以外の要因、いずれにとりましても研究開発すなわちその技術進歩の占める役割というのが大変大きいだろうということを申し上げたいわけでございます。  それで、やはり私どもふだん仕事をしておりまして、社内外から技術進歩あるいは研究開発というのをどう考えていったらいいのかというお問い合わせを多数いただくことございます。それで、まあそういった辺りもちょっと念頭に置きまして、幾つかアンケート調査を行ってございます。これに絡むアンケート調査を行っております。その辺りの内容を御紹介したいと思います。  二つ今日は御紹介したいと思いますけれども、一つは、これからの日本技術進歩をやっていけるんだろうかという問題意識に沿いまして、日経新聞さんと当社で共同のアンケートを昨年の十一月に行いました。  日本技術進歩、日本技術はこれから大丈夫なのかということで、タイトルは二〇一〇年の新技術・市場調査というものでございまして、これは国内の製造業を中心とした主要企業様二百六十二社の、特に技術の責任者の方を対象にアンケートを取らせていただきました。オリンパス様からも御回答をいただいておりますけれども。それで、その結果をお示ししたのがこの縦横の何か矢印を書いたものでございます。  それで、ここに何かいろいろ技術の名前がわっとこう書いてございます。これを余りちょっと一つ一つ御紹介はできませんけれども、しかしここで申し上げたいのは、この技術マップ、技術のこれからの将来性の中で日本はそう悲観したものではないということをここで申し上げたいわけでございます。  この表の見方ですけれども、上に行くほどこれは今の市場がどんどん成長していくという、その成長性を表しております。で、上半分が五年後に今よりもマーケットが三倍以上になっているだろうというものが上半分になっております。下半分が、三倍ほどにはならないだろうというのが下半分です。上と下の見方はそのように分かれております。  じゃ、今度は右と左の分け方ですけれども、右に行けば行くほどいいわけなんですけれども、これは成長した結果、五年後のマーケットの規模が一兆円以上まで育っているかという、伸び率じゃなくて今度は絶対的な規模ですけれども、それが一兆円以上になっているのが右側、一兆円ほどにはなっていないだろうというのが左側になります。したがって、上半分がいい、右半分がいいということですので、右上のこの四角が一番この中ではいいグループになります。  ちょっと念のため申し上げておきますと、じゃ左下が全然駄目なのかというと、全くそうではございませんで、ここに挙がっている技術はいずれも将来有望なものばかりですので、もうここに載っているだけでも将来性があるんですけれども、その中でも特に有望なのが右上の四角ということになります。  それで、実はこのいろいろな技術が、具体名が並んでいますけれども、この中で青い字と赤い字がございますけれども、この青い字は、その技術者の方のアンケートの結果、特に五年後、十年後に日本が世界の中で十分に競争力を発揮できているであろう技術を青い字で書いてございます。逆に赤い字は、ちょっと五年後、十年後、世界の中では相当厳しい順位になってしまう、今から相当頑張らないとちょっと割り負けてしまうというのが赤い字で書かれております。  それで、ここで申し上げたいのは、右上とかあるいは上半分とか申し上げてもよろしいわけですけれども、成長性があるところ、あるいはこれから規模、マーケットが大きい規模が期待されるところに青い字の日本がこれから競争力を発揮できそうだと期待される部分が少なからず見受けられることでございます。これから、本当にこれからの日本経済界あるいは産業界の努力に負っている面はあろうかと思いますけれども、今の努力で、努力を続ければそんなに悲観したものではないんじゃないかというのがこの辺りからもビジュアル的に直観的に御理解いただけるんじゃないかと思います。  それで、次の表は、これも同じアンケート結果から得られたものですけれども、将来、五年後あるいは十年後、左側が五年後、右側が十年後ですけれども、にそれぞれ今期待されている技術がマーケットの規模がどれぐらい大きくなっているかというのを御紹介したものでございます。この中でやはり青い字と赤い字、それぞれ日本が頑張れそうなところ、それから日本がちょっと割り負けそうなところというのを赤や青で書いてございます。御関心あればまたごらんいただければと思います。  ちなみに、やはりちょっと具体的なところを若干御紹介しておいた方が御実感持っていただけるかと思いますけれども、先ほどの縦横図でいきますと、やはり多少まだ耳慣れない、我々ふだん生活していて耳慣れないところがあろうかと思いますけれども、例えばICタグと言われる本当に米粒みたいに小さいICの中にいろいろな製品情報を記憶させて、もう製品自体に埋め込んでしまったりとかする、IC値札、IC荷札とか言われていますけれども、そうするとその製品がどういう経路をたどって消費者のところまで届いたかというのが把握できるとか、こういったICタグというのが大変注目されていたり、あるいはハイブリッド車、ガソリンと電気の両方を使うような車。あと、一番その下にITSとございますけれども、最近もう既に実用化されつつありますけれども、高速道路で料金所で止まらなくても自動的に引き落とされるようなのを含めたりとか、あるいは危険が迫るとそれを察知して教えてくれるような、言ってみれば自動車とそれからITの融合みたいな領域、こういったところを今ちょっと代表的なところで御紹介いたしましたけれども、青い字がいろいろあるということを申し上げたかった次第でございます。  ちなみに、この次の表は、正に今私が申し上げた、五年後に日本産業界が相当競争力を持てるだろうというアンケート結果が得られた上位十技術が左側の水色のボックス、それから右側は、これから相当頑張らないとちょっと世界の中では割り負けそうだというのが右側のボックスの中に入ってございます。これは、あくまでも個別企業というよりは日本産業全体図というイメージですけれども、御参考までにごらんいただければと思います。  これも同じアンケート結果でございまして、今現在がその一番、二〇〇三年のところですけれども、二〇一〇年、二〇一五年と行くほどどんどん成長する市場があって、この太い黒線と青い黒線、これが正に日本が頑張れるところを表してございまして、この辺りにちゃんと着実に食い込んでいけば満更悲観したものでもないだろうということを申し上げたいわけでございます。  以上、日経新聞さんと共同で行いましたアンケートを一つ御紹介させていただきました。ここで浮き上がりましたのは、やはり引き続き製造業を中心日本技術というのはそれなりに自信を持ってやっていっていいんじゃないかということかと思いますけれども、しかし全く油断はできません。いろいろとやはりそれなりに官民挙げて努力をしていく必要があろうかとも思います。  そういった意識でアンケートを取りましたもう一つアンケート結果がございまして、それを最後に御紹介させていただきたいと思います。  それで、八〇年代のアメリカ辺りで盛んに議論をされていたキーワードで死の谷、技術の死の谷という言葉がございました。これデスバレー現象と呼ばれておりますけれども、ここにちょっと模式図でかいておりますが、これ何かと申しますと、せっかく会社の中でいい技術開発してもそれが製品に結び付かない。いい技術とそれから製品の間に一種の死の谷があって、その死の谷を渡れないままにその製品、いい技術が埋もれてしまって終わっているんじゃないかという、そういう問題意識がございます。正に八〇年代のアメリカで語られた概念なんですけれども。  それで、もしかしたらこういった現象が日本でも起こっているんじゃないかという意識で、おととし、これは私どもの方でやはりアンケート調査をさせていただいたものがございます。その結果、やはり面白いいろいろ結果が浮かび上がってまいりました。  それで、アメリカで言われていた死の谷、米国型デスバレーは、専らその途中段階でお金が付かないことによって技術が埋もれてしまうという問題意識でございました。研究開発のところでもうお金がちゃんと付いている、製品の段階でもそれなりにお金が回っている、しかしそれを実用化する途中の段階でお金がきちんと付かない、ここが問題じゃないかというのがアメリカ型デスバレーでございました。  それに対しまして日本型デスバレーというのは、もちろんそういった面もあるんですけれども、しかしどうもアンケートをいろいろ取ってまいりますと、いろいろ社内に問題があるんじゃないかという結果が得られました。ここにちょっと三つ、①から③まで挙げてございますけれども、例えばせっかくいい技術があってもそれをうまく、何といいましょうか、需要の具体的な形を表現できない、社内で表現できる人がいないために技術技術でもう単独で終わってしまっているというのがあるんじゃないかと。それから、あと二つ目、これは先ほどの岸本会長様のお話にもございましたけれども、やはり技術製品化する人材が不足しているんじゃないかという指摘も多々いただきました。技術経営担当者が不足しているんじゃないかという御指摘も多々いただきました。あるいは、三つ目ですけれども、部門間、組織間の連携。やはり企業の中もかなり縦割りが進んでいて、この連携がうまく進んでいないために技術が埋もれてしまっているんじゃないかという、そういう結果が得られました。  以下、アンケート結果をお示ししたこの円グラフがございます。やはり、まずそもそものところで、せっかく技術開発しても製品にされないことがあると回答された企業が八割を占めました。これは、やはり企業様自身もかなり深刻な問題だととらえておられると。  じゃ、その原因がどこにあるのかというその原因を伺ったところ、資金面の問題というのも五位には付けておりまして、それなりに問題ではあるんですけれども、こういったアメリカ型のデスバレーでありますと、資金面の問題というよりは、むしろ上位を占めております①から③、すなわち社内の連携あるいは人材の問題なんかが大きいんじゃないかという結果が得られた次第でございます。  こういった意味で、このアンケート結果だけからそう早急に片付けることはできないかと思いますけれども、しかしやはり日本型のデスバレーを解消するに当たっては、もう少し企業をベースとした何か政策、企業をうまく動かすような政策というのが一つの方向性なのではないかという、そういった個人的な印象を持ってございます。  以上、ポイントでございましたけれども、私からの報告をここで終わらせていただきたいと思います。
  14. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行いますので、質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って着席のまま御発言くださるようお願い申し上げます。  なお、午後四時ごろに質疑を終了する予定になっておりますので、一回当たりの質問時間は三分以内でお願いいたします。また、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう質疑、答弁とも簡潔に行っていただきますように、皆様方の御協力をお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方の挙手を願います。  加納時男君。
  15. 加納時男

    加納時男君 加納時男でございます。  岸本参考人後藤参考人には大変有意義な御説明をいただきまして、ありがとうございました。  今、後藤参考人お話の中にも、競争力を左右する要因として価格要因、非価格要因が挙げられたんですが、どちらにも共通するものとして技術進歩を挙げられました。  私、お二人の参考人に、一つだけ絞って御質問をさせていただきたいと思います。それは、製造業における研究開発、なかんずく研究開発投資減税に関する評価課題を伺いたいと思います。  日本にはよく資源がないと言いますが、私はうそだと言っております。確かに、天然資源、鉱物・エネルギー資源には恵まれていませんけれど、何よりも人材があり、そしてその人材による技術というものでは日本は非常に強みがある。もっとも金融技術は余り強くないんですが、製造業の技術は私は世界で通用するものが一杯あるし、ここで勝負ができるんだと。  そういう観点から、不況の克服、国際競争力強化、これをねらって私どもは実は研究開発投資減税、先ほど御紹介ございましたが、これを立ち上げまして、何とか世界の中で引けを取らない水準の税額控除もやったつもりでございます。これの我々のねらいとしましては、新製品の開発であるとか、既にある製品の品質の改善、そして高付加価値化、さらには工程の革新により今お話しのあったユニット・レーバー・コストを引き下げるといったようなことをいろいろねらったわけでございます。  そこで、これを提案、実施したわけでありますけれども、これだけじゃなくて今回は、今年から人材投資減税もやっていこうということにしたわけでございますが、こういった我々が考えてきました研究開発促進していこう、研究開発の担い手は、条件整備は国だけど担い手は企業だと。まあ私も企業出身なんで力が入りますけれども、役人が新しい技術開発するんじゃない。条件をつくってくれればいい。もし政府がやるとすれば、それは先導的、基盤的、長期、巨額、リスキーといった研究開発をやってもらって、より実践的なものは企業にやってもらう。そのための条件整備をやるのが国の仕事だというふうに考えて、これは正直言うと、我々かなり自信持って提案して実行したつもりなんですが、これについての評価と、それから残された課題、まあこれ、今年で一応期限切れることになっているんですけれど、今年というか平成十七年度ですね、これについての、先ほど延長というお話もありましたけど、それも含め、評価と今後の課題、そういったところを御指摘、両先生にお願いしたいと思います。
  16. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、まず岸本参考人、お願いいたします。
  17. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、その新しい税制の意図というのは企業がしっかりと受け止めてやっていると思います。非常に、当社の例で申し訳ないんですけれども、やはりこの技術開発への投資、これはもう減税が非常に生きておりまして、心理的にも大変役に立っていると。金額だけじゃなくて、もっと投資していこう、いわゆる減税があるんだというような感じでございまして、非常に有り難く思っております。  それから、人材投資の減税の問題でございますが、これは私の会社に関しましては余り関係なしに必要な人材は採っていくということでございますし、また人に対する教育投資とか、そういう問題も、今、最近言われているのが、いわゆる終身雇用制がだんだんとなくなってくる。そうしますと、企業はだんだんそこに手抜きをしていくと、早く辞められて、そういう人たちに金を使えないと、まあこういうことですけれども、そう心配したことは我々の場合はない、特に製造業の場合はその考えは余りないんじゃないかという具合認識しております。
  18. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、後藤参考人お願いします。
  19. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) まず評価課題でございます。  まず評価の方でございますが、基本的に私はポジティブに評価してございます。必ずしもはっきりと目には見えていないのかもしれませんけれども、しかしこれだけ経済情勢が厳しくて企業のマインドが萎縮した中では、相応の効果は潜在的にはあったんだろうと思っています。ただ、ふだんいろいろな政策効果なんかを測定したりとかしている私の仕事的な感覚からいいますと、なかなか実際はやっぱりその影響がどれくらいあったかというのは数字で評価しにくかったなというのが正直なところでございます。  と申しますのが、しょせん我々がやるやり方というのは、過去に何回か同じようなことをやれば、それをやっていなかったときに比べてどうだったというのが効果として測れるんですけれども、一回しかやっていない、あるいはやった回数が少ないと、それをきちんとどれぐらいの効果があったというのが客観的に評価できないという、その技術、何というか、手法的な難しさがございます。じゃ、測れないからといって、じゃネガティブに評価をすべきかというと、やはり冒頭で申しましたとおり、私はそれなりに高く評価しております。  ちょっと課題の方に絡んでくるんですけれども、やっぱりこういった研究開発というのは、そもそもがかなり長期的な視野に立ってなされる経営計画に立ったものだと思いますので、やはり政策を発動されるときにもかなり長い目でその効果を評価して発動していただくといいんじゃないかなと思います。逆に言いますと、すぐに効果が出るというのは余り期待せずに、ある程度期間をドアをオープンにしていただくような政策というふうに位置付けていただくといいんじゃないかと思います。  で、正にその課題でもあるんですけれども、中小企業なんかも含めまして、まだそういったその制度自体が十分に浸透していない部分があるんじゃないかという気がいたします。と申しますのが、我々、これ、かなり関心持ちまして、一度企業様のところに何社か伺いましてヒアリングをさせていただいたことがあるんですけれども、実はそもそもそういう意識になかった企業様が少なからずございまして、せっかくこういういい制度があるのにもったいないなという印象を持った次第でございます。  したがいまして、課題という意味では、ある程度やっぱり長い視野に立ってのドアをオープンにされる期間を設けるということと、それから、宣伝と言ってはなかなかちょっと俗っぽい言い方になってしまうかもしれませんけれども、やはり何かのいろいろな機会をとらえて、こういった制度があるということを中小企業も含めて浸透させていくということが効果的なのではないかなというふうに感じております。
  20. 加納時男

    加納時男君 ありがとうございました。
  21. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) 谷博之君。
  22. 谷博之

    ○谷博之君 民主党・新緑風会の谷博之でございます。  参考人の先生方には、大変貴重な御意見をありがとうございました。  端的に何点かお伺いしたいと思いますが、まず岸本参考人には、二点ちょっとお伺いします。  一つは、この説明資料の中で、一ページ目の「生産技術」という項目、ずっと説明をいただきまして、企業対応ということで、創るという「創」は日本で、しんにゅうの「造」は、造るの「造」は海外と役割区分ということで、特にその中でも中国の例を挙げられまして、そうはいっても高付加価値商品については国内で生産をするということでありますけれども。その次の「課題」のところでも説明いただいておりますけれども、高額雇用による定年退職技術者流出というのが増加傾向にあるということを私、前々回のこの調査会でも他の、別の参考人の先生にもお伺いしたんですが、結果的にそのことがそのしんにゅうの造るという、この製造部門の比較的国内で担っている高付加価値商品海外で創るというところまで流れが相当進んでいるんではないかなというふうに感じているんですけれども。ここのところ、こういう形で、「創」は日本、しんにゅうの「造」は海外と役割区分ということで必ずしも言い切れない部分が出てくるのではないかなというふうな感じがしているんですが、その辺の感想についての御所見をお伺いしたい。  それからもう一点は、知的財産の問題ですけれども、一番最後のページに「知的財産」の項目が出ておりますけれども、特に特許行政ですが、日本の場合は非常に、特許庁に登録されているいろんな特許がありますけれども、そういうものが前々から十分活用されていないのではないかというような議論が他方ではあります。  そういう意味で、この特許行政というふうな言葉でくくられておりますけれども、研究開発成果を迅速に保護する特許行政ということですが、それを活用する、そういう分野での現状と今後の何かお考えがありましたら御指摘をいただきたいと思っています。  それから、後藤参考人には一点だけお伺いしたいんですが、これまたそのことに関係をしますが、資料の一番最後の十八ページ、十九ページに、「研究成果技術)の製品化状況」、あるいは「製品化されないことへの自己評価」というのが表として例示されております。これがなぜこうなのかということの説明をもう少し詳しくしていただければ、なぜこういうふうな結果になっているのか、そこら辺の原因と申しますか、そういうところのお考えがありましたら御指摘をいただきたいと思います。  以上です。
  23. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) では、岸本参考人
  24. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) 一点目の御質問でございますが、だんだんと造のところ、創のところがはっきりと区分できなくなる、そういうことも言えるんじゃないかという御指摘でございます。  その理由として、退職技術者流出していろいろ指導に入るんじゃないかと。現実にそういう時点はあるわけでございますが、おっしゃるとおり、最初は付加価値の低いいわゆる価格の安いものの量産品は中国だという考え方だったんですが、だんだんと、量産品物は中国なんですが、価格が少々高くても中国で作る。例えば、カメラでいいますと一眼レフ、これは高付加価値、高価格ですが、今、中国で作られているものもかなり入っております。まあプロ用の高級品じゃなくて中級品と我々は言っているわけですが。ですから、だんだんこういうところが中国で作られるようになってくる。それは、企業としては合弁ではなくて独資系であって、我々がコントロールできるんだという考え方一つあると思います。  ですから、ある程度技術、これは流出と、我々企業流出と言わないで単なる移換と。それはなぜかといいますと、日本人がしっかりと管理をしていると、向こうで。こういう一つの保護予防的な対策を取りながらやっておりますんでいいんですが、私が言っている、企業買収のみならず、この技術者流出というのはこれ中国企業なんですね。外国系の企業じゃなくて中国企業。ここに今、日本人の方で行っていらっしゃるのは、ただ技術を教えるということよりも品質の管理手法、これが今中心でございます。技術となりますと、たった一人ではそうはうまくいかないと思います。ですから、単独で行かれているのはそういう管理手法。特に今品質の管理手法。今、中国で約三万社がISO9000を取っております。それぐらい品質についても大変熱心に今活動しておりますので、そういう点が今起こっているということでございまして、技術の面からいけばそう恐れるほどのことはないんじゃないかという具合認識をしております。  それから、二点目の特許行政のところですが、これは特許庁もディスクに全部今情報を入れていただきまして、それを買えば我々はすぐ取り出して情報を取れる。非常に便利になっておりまして、我々のような企業はそれやっているんですけれども、全部の企業がおやりになっているということじゃないと思います。  私がここで申し上げているのは、逆に言いますと、物すごく今特許件数も多くなっている。特許庁は、何でもかんでも出すなと、内容のしっかりしたものを出してほしい、選択してくれないととても調査をして登録させるというのは難しいんだよという具合におっしゃっているんですが、そこのところを私は申し上げておりまして、成果で特許に申請したものはできるだけ早く登録できるようにということでございます。なかなかこれは特許件数と要員の問題、それから特許技術者の養成の問題、いろいろあると思いますけれども、できるだけ早く保護をしていただきたいなということでございます。
  25. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) それでは、研究開発が必ずしも製品に結び付かない原因をもう少し詳しく御説明させていただきますと、先ほど社内の問題が大きいというふうに申しました。  上位から三つ御紹介いたしましたが、多少ちょっと繰り返しになるかもしれませんけれども少し詳しく御説明いたしますと、一つはやはりマーケットが必要としているニーズを具体的なコンセプトとして表現できるような体制になっていない、あるいはそういう人がいないと。  具体的なイメージで申しますと、ふだん営業マンがお客さんと接していて、こういう製品があったらいいのになというのがうまく伝わらない、それは単に連絡が行かないということだけではなくて、言ってみれば会話の土俵が違うと申しましょうか、言語が違うというような面もあろうかと思います。  いずれにしましても、ニーズがうまく形、ビジョンとして形になっていかない、したがって受け止める研究開発サイドのスタッフもなかなかマッチした研究を提供できないという、そういった広い意味でのやはり連携不足というのがあろうかと思います。  それから、人材面の不足の問題ですけれども、結局三点とも同じような基本的なところに絡んでくると思うんですけれども、そういった技術というのを経営観点から考えられる人材というのが少ないということなんじゃないかと思います。  それで、逆に、うまくいっている、研究開発がうまく製品につながっている企業さんはどういう体制になっているのかというのを聞きますと、そういった人材がいる。人材をじゃどういうふうに提供をしているのかというと、実は結構簡単だったりとかして、トップダウン型で、もうこういうのを作れということが実は一番手っ取り早い解決策だったりとかいたしまして、いずれにしましても、技術というのを理解して、そこを製品と結び付ける人材がいないというような面があるようでございます。  それから、三番目の連携不足というのは、もうそういった、以上全部絡んでくる、もう社内の連絡が悪いということかと思います。  それで、以上を少し別の視点から統一的に申し上げると、やはり、ちょっと今も申し上げましたけれども、研究開発というのを経営全体の中できちんと位置付けて考えるという発想がまだ十分に浸透していないという面があるんじゃないかという理解でおります。  具体的には、例えば研究開発投資というのは、これは経営上紛れもなく投資でございますので、言ってみれば広い意味でのポートフォリオの中に入ってくる項目のはずなんですけれども、どうも日本研究開発体制を見ておりますと、研究開発部隊はもう何かある意味で独立した王国みたいのを築いていて、研究所の中で何か自分たちの何かこう仕事の回し方でやっているというような、まあいい意味についても悪い意味でもちょっと一種独立したところがあるんじゃないかと思います。  それに対しまして、やはり技術というのは、少なくとも企業が行う技術というのはあくまでも経営全体の中の一つなんだというふうに位置付けて、で、研究開発もあくまでもやはり投資一つと位置付けて、かつ、そこで出てきたアウトプットも最終的な目標とする製品のロードマップの中でどういう位置付けで発展させていくべきかというような全体像をつくる、そういった経営全体と技術のかかわりをうまく連携付けるような体制ができていないという、まあ、あえてまとめて統一的に申しますと、そういうことなのかなという理解でおります。
  26. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) よろしいですか。  それでは、浜田昌良さん。
  27. 浜田昌良

    浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。  本日は、両参考人から意義深い御説明をいただきまして、ありがとうございます。それぞれ一問ずつ御質問させていただきたいと思います。  まず岸本参考人には、日本技術の強みを発揮する民間企業の連携の在り方というのはどういうものだろうかということなんです。  お話の中でありましたですけれども、日本研究開発投資、ほとんど政府というよりも民間部門が行っておられます。  で、成功例として挙げられました、七〇年代には超LSIの研究組合がありました。これは民間の大企業同業種で集まった研究組合だったわけですね。九〇年代にはマイクロマシンという例を挙げられました。これは民間の大企業で異業種が集まった研究組合でした。  二十一世紀に入って、先ほどベンチャーがなかなかうまくいかないという話もありました。スピンオフをしようにも出ていかない。  私個人としては、これからは民間の大企業といわゆる中小企業という形の企業間連携というものが一つ日本技術の強みをつくっていく企業間連携ではあるのかなと思っております。そういうものを後押しする一つのツールとして、この国会でも有限責任事業組合という、LLPですね、というものも用意したりしようとしているんですが、そういう今後の日本の強みを発揮する企業間連携の在り方について、少しお話を賜りたいと思っております。  後藤参考人には、今回の御説明の中で非常にショックだったデータなんですが、このIMDのデータが日本が凋落をしているんですが、特にこの要因別に見ますと、政府の効率性が三十七位、ビジネス環境も三十七位で、ともに中国より悪いという状況なんですが、この辺は、いわゆる九〇年代の前半とか八〇年代で日本がトップであったころはどうであったのかと、かつ、どういう要因が悪くなってこの辺が下がっているのかについて、もし御存じであればお教えいただきたいと思います。
  28. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) 民間関係企業連携ということでございます。  一つは、おっしゃいましたように、民間企業が数社集まるということは非常に難しいんですね。したがいまして、ここに官が入ると非常に集まりやすい、マイクロマシンなんかも正にそのとおりでございまして、こういう官が入ったコーディネートしていただけるようなグループ、こういうところは積極的に各民間が異業種、同業種含めてですが参加をしております。民間だけの連携というのは、どうしても同業の中では警戒感があるということと、もう一つ企業が三社以上集まるということが非常に難しい、いろいろ利害関係が絡みますので。ですから、二社での連携というのは非常にたくさん今現実に出ております。  私どもも、同業の会社とも研究開発の部門はやっているとかいう形で、今、一社では、このデジタル時代には一社ではとても研究開発費の巨額なものを負担し切れないとか、あるいは自分たちだけで開発する技術では不足している。そういうところをいかに効率よくやっていくかということになりますと、そういうところと組んでやるということですから、私は企業間連携というのは今後ますます出てくるんじゃないか。アナログ時代は何でもかんでも自分たちでやろうという時代があったんですけれども、もうそういう時代ではなくなったという認識は全員持っていると思います。  よろしゅうございましょうか。
  29. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、後藤参考人
  30. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) 個人的にはこのIMDのランキングは余り何というか、これにとらわれ過ぎるのも良くないかなと思う反面、しかしやはり海外から見てそれほど違和感のない順位付けがなされているという意味では、やっぱりそれなりに真摯に受け止めなくてはいけないのかなという気もしておりますので、やはりちょっと中身の分析というのは確かに御指摘のとおり重要かと思います。  それで、かつて日本が一位だったころの状況がどうだったかと申しますと、これはいずれもその内訳の中身ですね、その経済情勢とか政府の効率性、いずれもそれなりの高い順位でございましたけれども、やっぱり何といってもこの経済情勢が際立って良かったというのがかつての状況でございました。したがって、今やはりバブルが崩壊してまだその痛みから十分立ち直り切れていないという実体経済の悪さが大きく反映されているという側面が一つあろうかと思います。  ただ、そこを差し引いてもやはり政府の効率性というところはまだ残るんですけれども、これは痛しかゆしという面があろうかと思いますけれども、経済を立て直すために財政出動を繰り返して、今巨額の財政赤字を抱えていて、それで政府部門の規模もやはりそれに伴ってまだ大きい状態が続いているというところが低く評価されてしまったということで、やはり九〇年代を通じての財政出動というのが、少なくともこのIMDのランキングにおいてはちょっと裏目に出ている面がございます。  あと、御参考までに、そのビジネスのところもかなり評価が低いんですけれども、ここも挙げれば、不良債権がまだ片付いていないとかというのもあるんですけれども、やっぱり特に我々として参考にすべきところは、国際性とかあるいはマーケットのオープンさとか、こういったところが他の国々、シンガポールとかそういうところはもう着実にぐんぐん努力している中で、日本は努力はしているかもしれないけれども、他の国に比べるとまだ十分じゃないというふうに評価されてビジネス環境というのがこういうふうに下がってきているという、大きく私が気が付いたところでは、以上のような要因が九〇年代初頭に比べて足下にかけての変化を形成したように思っております。
  31. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、井上哲士君。
  32. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。今日は、お二人の参考人、ありがとうございます。  まず、岸本参考人にお伺いをします。  日本国際競争力、とりわけ技術力を考える上で、非常に日本独特と言われます重層下請構造とか系列というのは大変特徴だと思うんです。最近、大手の自動車会社の比較をするものを読む機会があったんですが、言わば目先のコストを優先をして系列を切り捨てるようなやり方が技術力や品質という点で中長期的にはいかがなものだろうかというような指摘もありまして、その中で自動車産業付加価値の七割は部品だというような指摘もありました。そういう点で、国際競争力技術力という角度から、そういう電子工学の分野でこういう言わば系列とか下請との関係がどうなっていて、どうあるべきか、お考えか、これをお聞きしたいと思います。  それから、後藤参考人になんですが、ちょっと先ほどのお話と離れて恐縮なんですが、事前に調査室から「財政と金融の境界」、「小泉改革、切り分け明確に」という産経新聞に出た論文を読ませていただいて大変興味深かったのでこれについて聞くんですが、財政改革が実施をされたけれども、その後の状況を見ると、各機関は事実上、国の信用力を背景に容易に市場からの低コストの資金を調達し、資金調達を通じた規律付けが働くようには見えないと、こう指摘をされております。  私は、今、累積欠損が拡大し続けて実績も芳しくない関西空港などはこの例に当たるのではないかなという気がしているんですが、関空の事業主体である関空会社は、昨年六月にダブルAマイナスの格付を取ったということで大変宣伝しているんですね。やはりこのいただいた資料の三菱総研のを見ておりますと、日本政策投資銀行や日本国債とダブルAマイナスの格付というのは一緒になります。日本政策投資銀行の場合は自己資本率一三・一%ですが、これと一緒ということなわけで、こういう高い格付を得ていることをどうお考えか。  それとの関係で、この関空の二期事業についてお考えがあればお聞かせいただきたいと。このまま二期事業を続けますと、財務上重大な事態になるということは避けられないと思っているんですが、この資料の中でも、公的組織の倒産処理というのは不可能ではないという指摘もされているわけで、仮にこの関空会社の倒産処理ということを想定した場合にどういうことが考えられるのか、その際の責任というのはどうなるのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  33. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) かつての系列とか、それから我々下請というような言葉を使っていた時代、確かにございました。ただ、昨今これ、がらっと変わりつつあるという具合認識しております。  先ほど例に出されました自動車等におきましても、もう系列がだんだん崩れてきているということも言えますし、我々の中でも下請という今意識はないということでございます。じゃ、何と言っているかということなんですが、協力会社、いわゆるパートナーという、横文字で失礼ですけれども、パートナーという感覚でやっていこう。ですから、その精神はウイン・ウインだと、お互いに利益が出るようなそういう関係を構築していかないと、なかなか協力関係はうまくいかない。そういう具合に、特に製造業の話なんですけれども、そういうような経営者の認識というのが随分変わってきているというのが私の感じでございます。
  34. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) 私のつまらない文章を読んでいただきまして、ありがとうございました。    〔会長退席、理事辻泰弘君着席〕  それで、じゃ御質問にお答えいたしますと、そこで私が申し上げたかったことは、別に財政投融資改革、これまで進められてきた努力を、意義を否定するわけでもございませんし、それから今御指摘があった関空なんかも含めた個別の財投機関あるいは政府系機関が実力以上に高い格付を得ていることが、それ自体が駄目と言っているわけではないんですけれども、そこで申し上げたかったのは、マーケットの評価だけですべてを白黒、何か線引きするのはしょせん無理があるんじゃないかということを実は申し上げたかったわけでございまして、例えば関空が本当に政策的な意義で必要あるということが政策レベルで決定されれば、それはマーケットの評価にさらすのではなくて、もう補助金なりなんなりで運営していけばいいと思いますし、あくまでもマーケットでその財投機関債なりを発行して市場に評価させるのは一つのステップ、ステップワンであって、自力では十分に経営ができるかできないかということを評価させる段階だけだという意義しかないと思いますので、個別の格付に関して余りそれ自体がいい悪いということはちょっとすぐには言えないだろうと思います。  ただ、さはさりながら、やっぱりせっかく今財投改革を進めてきていますので、それをまた元に戻して一からやり直すというよりは、せっかくやっていることをベースにして物事を考えていった方がいいと思いますので、何と申しましょうか、場合によっては、倒産までは行かないにしても、何らかの責任を取らせるということをアナウンスするだけでもマーケットは相当反応すると思います。その責任の取り方というのが、いきなり破産なのか、それとも事業縮小なのか、あるいは利子を払わないという一種の緩やかなデフォルトなのか、それは別といたしまして、多少なりとも出資した側に、その投資した側にその損害が及ぶかもしれないということをちょっとアナウンスするだけでも相当今とは違う規律付けが働くと思いますので、現実にはいきなりその政府からの支援を打ち切って個別の政府系機関を倒産させるというのはもう無理だと思いますけれども、しかし場合によっては利子を払わないとか、それぐらいのことはアナウンスしてもいいのかなというふうに考えております。  それで、その際の責任というのは、本来論、そもそも論でいえば、やはりこれは財投機関債の場合は政府保証は付いておりませんので、それは自己責任で投資した投資家が責任を負うべき、それが正に財投機関のそのマーケットを通じた規律付けの発想だったと思いますので、取りあえずそういう方向なのかなというふうに考えてございます。
  35. 辻泰弘

    理事(辻泰弘君) 次に、小泉昭男君。
  36. 小泉昭男

    小泉昭男君 自民党の小泉昭男でございます。  先ほどの岸本参考人後藤参考人お話、大変勉強になりました。  まず、岸本参考人からお伺い申し上げたいと思いますが、事前にいただいた資料なんですけれども、一人生産方式、大分取り組まれているということを聞きました。それと、大事な資産は人でしかない、こういうことも本当に納得できる内容でございましたし、私が今思うのは、ノーベル賞を受賞された小柴さんが言われた言葉の中に、むちゃな要求をしてくれる人が出てこないと技術が伸びないんです、それと、新発見はある実験でうまくいかなかった後、だれかが新しいことを始めたときに達成される法則がある、こういうことを小柴さんが言っているんですけれども、私、極めてこれからの経済の中で必要なことは、今は現実的でなくても近い将来必ず現実的なものになって日本経済の牽引力になってくれるものが大分あるんじゃないかな、こういうふうに思います。  そういう中で、大変御苦労の中での御努力をいただいていることに敬意を表したいと思いますが、この中でひとつお考えをお伺いしたいのは、知的財産の保護ですね。発光ダイオード、裁判が二〇〇四年の一月三十日判決が出まして、二百億、それからどういうわけだか金額が全く変わりまして最終的なものになったということを聞いておりますが、先ほどのお話の中でも紛争の迅速処理がやはり必要ではないかという、両参考人の御意見の中でもそういうふうに自分は感じ取ったんですけれども、この知的財産の日本から海外流出を食い止めるにはどうしたらいいのか、この辺のところについてひとつお伺いをしたいなと、こういうふうに思います。  それと、後藤参考人にお伺いしたいんですが、この資料の中で、これから伸びていくだろうと言われるのは、この中にハイブリッドカーも入っているという資料を拝見しました。今、産学官というか公というか、それに一つ加えて民、産学公民、こういう四つの連携が必要だと言われておりますけれども、私、先日、慶應義塾大学で研究開発している電気自動車、もう何回か見ているんですが、将来これがもし実用化の段階に入っていきますと、エンジンは要らない、ミッションは要らない、エンジンオイルも要らない。こうなると産業構造まるっきり変わってきます。  こういうふうな動きの中で、将来必ずエネルギーの確保と消費のバランスが問題になってくると思いますので、私は、今、原子力発電によって七〇%程度の電力を確保しているというのが日本現状だと思いますけれども、これからそういうふうな部分も踏まえて、エネルギーの確保と消費のバランス、それとまた、これから本当に伸びていくためにハイブリッドカーを含めてどういう考えを進めていったらいいものか、この辺のお考えをちょっと伺いたいと思います。  それと、あと、先ほどのお話も少しございましたが、この参考資料の中に、後藤参考人の新聞記事で国債の保有残高が日銀が一五%持っていると、こういうことについても少しお考えいただきたいなと、こういうふうに思います。  以上でございます。
  37. 辻泰弘

    理事(辻泰弘君) では、まず岸本参考人からお願いいたします。
  38. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) 知的財産保護に関連して、どうやって流出を防ぐのかという御質問のように受け止めておりますが、これはちょっと私も勉強不足でよく分かりませんが、国、いわゆる法律的にどういう法律があってそれを防止しようとしているのかということは分かりませんが、今我々民間でいろいろ努力していることは、特に今、情報問題、情報漏えいとかいろんな機密保持の問題、いろいろな動きが非常にたくさんございまして、やはりこれは企業が、特許というか特許財産というのは企業の財産でございますので、自分から自分の責任において守るという行為が優先しなきゃならないだろうという具合に考えておりまして、今どの企業でもそういう特許に限らず情報の保護をどうするかということで、最近、各社の就業規則といいましょうか、そういうものを見ても、そういう機密情報の保護というのがちゃんと載っているようになっていまして、それでそういうもの、セキュリティーの関係一つの規定というのが規定集になっております。そういうことで、やはりこれは自分で保護するということを優先して考えなければならないという具合に思っております。    〔理事辻泰弘君退席、会長着席〕  それから、当然それには罰則がございますんで、どの企業もどういう罰則をしたらいいのか非常に苦慮しているわけです。懲戒解雇というわけにもいかないかなと。しかし、大きな財産を漏らした、流出したというのは非常に大きい問題でございますので、その辺でちょっともめておりますが、当社の場合、日本企業どこでも組合がございます。ですから、組合と経営の方で話し合ってその辺を固めているというのが現状のように認識をしております。
  39. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  後藤参考人
  40. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) 三点御質問いただいたかと思います。それぞれに順番にお答えさせていただきたいと思いますけれども、まず知的財産との絡みで日本から海外への知的情報の流れを食い止める策でございますけれども、やはり私も政策レベルでの何か特効薬みたいなものはなかなかまだ見いだし難いのかなという感じを持っておりまして、一つ言えば、やはり個別の企業様の御努力と、それからこれも総論、あくまでも総論の域を出ませんけれども、やはり国際的な枠組みでペナルティーを強めていくという方向ぐらいしか余りないのかなと。それ、逆に申しますと、ある程度従来よりは歯止めは掛けられるかもしれないけれども、どうしても相当程度流出というのはもうあらかじめ見込んでおいて、むしろ、それこそ先ほどの御報告ではありませんけれども、技術進歩をいかに常にたゆみなく続けていくかとか、あるいは逆に海外技術日本に集まってくるような体制をいかにつくっていくかというような方向が基本的な路線なのかなという漠然とした印象を持ってございます。何かこう特効薬的な防波堤みたいな施策というのは果たしてあるんだろうかというのが個人的な印象でございます。  それから二点目の、エネルギーとの絡みでのハイブリッド車の将来と申しましょうか、そういったエネルギーの関連と技術というところでございますけれども、この辺りも正直申しまして明確な、何というか、対策というのはまだ私自身も、あるいは恐らく学問のレベルでも答えは出ていないのではないかと思います。  それで、最近ようやくこういったエネルギーとか、あるいは人口といったものが今のペースじゃ維持できないんだという意識が初めてこれ実感を伴って議論の対象あるいは研究の対象になってきたかと思います。たしか内閣府さんもおととしぐらいにやっていらしたかと思うんですけれども、いわゆる維持可能性、この体制を維持できるか。サステーナビリティーという言葉が最近ようやくキーワードとして大きくクローズアップされてきているかと思いますけれども、これからの日本経済あるいは世界経済のサステーナビリティーというのは果たして維持できる、確保できるのかという問題意識の下で、最近ようやく幾つかの研究が出始めているかと思います。  それで、その際のポイントというのは恐らくやはり二つあって、一つは御指摘のエネルギー。このままの調子でエネルギーを使っていってはもう地球がもたなくなると、維持できなくなるというのが一つ。それから、人口が増えるということを前提に組んでいるその経済システムというのは、やはり日本だけじゃなくて世界的にも無理があるだろうということで、エネルギーと人口、この二点のサステーナビリティーというのが最近ようやく議論のテーマとして浮上してきているかと思います。  それで、まだこの人口の方は何とか、まあ何とか対応ができるのか分かりませんけれども、幾つか経済的なロジックでそれなりの対応策みたいなのがちょぼちょぼ出てきているかと思います。例えば、何か、子供をつくるとそれだけ補助金を出すとか、あるいは海外からの移民を少し職種とかを絞って増やしてもいいんじゃないかとか、少しこの人口に関してはいろいろと具体的な案が出てきているかと思いますけれども、エネルギーに関しては、いわゆる経済学の少し教科書的な言葉になってしまいますけれども、外部性と言われる、何と申しましょうか、自分が使ってもその迷惑が自分に来るのではなくて他人に来る、行ってしまうという、まあ使った方が得みたいな性格がありますので、このエネルギーの問題というのは大変その解決が難しいというのが議論の出発点としてあると思います。  例えば、その一つの、外部性というのを一つクリアする工夫が正に排出権取引かと思いますけれども、しかしあれもまだやはり実験の域を出ていませんし、結論的に申しますと特効薬みたいなのはない。むしろ、やはり地道かもしれませんけれども、いかにエネルギー効率を、効率的にやっていくその技術日本発開発していくかというところが実は現実的な解なのかなというのが個人的な印象でございます。  それから三点目、まあその一つのやはり有力な路線がハイブリッドカー、あるいは燃料電池といったような方向性なのかなという感じでございまして、やはりこの技術マップのところに載っている具体的なメニューを見ますと、やはりこのエネルギー関係の項目が少なからず見られますので、この辺りでやはり、特に省エネ関係は実績のある日本が頑張っていくというのがいいのではないかと考えております。  最後の御質問ですけれども、私のかつて書きましたペーパーに、確かに日銀が既に国債を多額に今保有してしまっているという、そういった数字を御紹介させていただきました。  それで、これはもう釈迦に説法だと思いますけれども、既にこれは先進国の中でも相当危険な状態に達しておりまして、日銀が毎月一兆二千億の長期国債をコンスタントに買い続けるという状況がもう恒常化しております。ただ、これは本当にもう背に腹は代えられないところがあって、じゃ日銀が買わなくなったらだれが買うんだと、じゃ政府が破綻してしまうのかという、確かに日銀の信認を取るか、政府の破綻を取るかという大変究極の選択的なところがあろうかと思います。  もちろん日銀が持たなくて済むのであれば、私はもう絶対中央銀行が国債なんか持つべきではないと思いますけれども、しかしもう既に国債残高が五百兆を超えつつある、あるいは地方債とかもろもろの債務を加えれば、あるいは年金債務とかそんなところも加えれば、既に広い意味での政府の債務が一千兆を恐らく超えているであろう現状においては、何らかの形で政府かあるいは日銀どちらかが従来にはない踏み込んだ対応を取ることが、これはもういや応なしに必要になってくるんだろうと思います。  究極の選択は恐らく二つあって、一つは本当に中央銀行あるいは日本円という通貨の信認を犠牲にして日銀が国債を持ち続けるか、あるいはもう一つの究極の選択としては、広い意味政府がデフォルトと申しましょうか、もうお金をある意味では返せないということを宣言するという、恐らくこれから究極の選択になってくるんではないかと思います。  特に、その後者の政府のデフォルトというのは、言葉自体は大変センセーショナルではありますけれども、ある日突然日本国債を返さないというのではなくて、もう少し柔らかなやり方、マイルドなやり方があり得るだろうと思います。例えば、利子の部分だけはちょっと待ってくださいとか、あるいは国債を持っている人に課税をするとか、あるいは年金というのもある意味では広い意味での債務ですので、年金改革というのも極めて広くとらえれば政府の一種のデフォルトに相当すると思いますので、そういった極めて緩やかながらもマイルドな政府のデフォルトというのも路線としてある。  現実的には、恐らく日銀も痛みを取るし、政府もそういった従来にはない踏み込んだ、ちょっと先進国ではなかなかなかったような緩やかなデフォルトと申しましょうか、そういった施策に踏み込まざるを得ないと。政府、中央銀行、両方でこれからはちょっと先進国ではやってこなかったような施策を取らざるを得ないんじゃないかと。取るべきとは思いませんけれども、しかし取らざるを得ないんじゃないかというのが私の印象でございます。
  41. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、足立信也君。
  42. 足立信也

    ○足立信也君 民主党の足立信也です。それぞれ一問ずつ質問させていただきます。内容が重複するかもしれませんので、ちょっと言い回しを変えて質問させていただきます。  まず岸本さんなんですが、私、もう二十二年間、内視鏡をやっておりました。そして、崎田先生、福富先生、高瀬先生という、ずっと三人と一緒にやってきました。海外から、昭和三十年代から多くの方がもちろんその内容を勉強に来る。当然のことながら、その技術面でもオリンパスさんの方に相当行かれたはずなんですが、私は、その後、内視鏡技術あるいは電子スコープの技術でなかなか海外からの追随を許さなかった、オリンパスさんがずっとトップを走っていられる。その大きな原因は何なんでしょうかという質問の仕方にしたいと思います。  それから、後藤さんへの質問なんですが、国際競争力のこの比較についてなんですけれども、シンガポールが政府の効率性でこれはトップだと。これは医薬品の分野でもそうなんです。そこで、具体的な事例、効率性に関して具体的な事例が例示できるものがございましたらお教えいただきたい。  日本型デスバレーというのが先ほど企業で、企業の問題として提示されましたけれども、私は政府、行政の問題と全くイコールだと思っているんですね。岸本さんの産学官の連携ということをおっしゃっていますが、私は産学官政、今度、政治がそこに加わらないと、システムを変えていかないとなかなか発展していかないんだと思っているんですけれども、その点についてお教えください。
  43. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) 私は、基本的にはちょっと観念論になるかもしれませんが、我々の企業理念として顧客原点ということを言っているんです。ソーシャルインという造語をつくって、その理念で運用、運営していこうということなんですが、それは何かといいますと、常にお客さんと目線を合わせる、そういう姿勢と行動を取ろうということなんです。  御存じのように、内視鏡というのは我々が自由にできるものではございません。我々は医師の免許を持っていませんし、医師でもございませんし、人の中に物を入れるというような行為は許されないわけでございますので、どうしても使用者である、ユーザーである各先生方と一緒になって開発をしていくということなんですね。ですから、社会と目線を合わせている、ユーザーとしっかりと目線を合わせて開発をしていく。ということは、ユーザーの意見をどんどん取り入れる、これが私は基本的な考え方と。それから、そこからユーザーの直接意見を吸い上げて一緒に協働してきたというのが大きなそういう面での左右しているという具合に考えております。我々自身がいろいろやったということではなくて、やはりユーザーと一緒にやったことが良かったと。  それからもう一つは、この医療の世界というのは、先ほどもちょっと報告の中で触れましたけれども、大企業がなかなか来ないところでございます。特に、インプラントといって中に入れるものですね、例えばステントだとか、そういう循環器系のところには大企業は絶対行きません。何をやるかといいますと、我々もそうでございますが診断、体外診断機、これはやります。ということは、リスクはそんなに大きくないんですね。ところが、中に入れるものは非常にリスクが大きい。ですから、大企業は、何か失敗したときにそのリスクを負うそのリスクですね、それを物すごく恐れている。ですから、アメリカ辺りはそのリスクを、逆に言うと一点集中型のベンチャーが全部引き受けている、こういうことだろうと思いますね。  そういうことで、だんだんと大きくなった事業でございますが、大企業が全然見向きもしなかった事業なんですね。そういうことで、今はいろいろ注目を浴びておりますけれども、そういう幸運もあったという具合に考えておりますが、基本的にはユーザーと一緒に物を考え、物を開発してきた、これが一番強みだと、このように考えております。
  44. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  後藤参考人
  45. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) 二点御質問いただきましたので、順番にお答えさせていただきたいと思いますけれども、まず競争力ランキングで順位の高い、まあ二位に付けているシンガポール。シンガポールの中身見ますと、政府の効率性が大変高い、一番であるということの具体的な何かその事例的なお話でございますけれども、ちょっとどこまで具体的かは別といたしまして、三つ思い浮かぶところがあるんですけれども、一つは、これはやはりシンガポールの政府の方々ともしお話をされるとお感じになられるんじゃないかなと思いますけれども、私なんかはそういう個人的印象を持ったんですけれども、やはりあの国は本当に資源もありませんし、小さい国なのでちょっと油断しているとすぐに厳しくなってしまうという危機意識が常にあるので、国をかじ取りするパブリックセクターの方々のモラルもかなり高いようにお見受けいたしましたし、彼ら自身、やっぱり自分たちが頑張らなくちゃいけないという意識があるのかなという印象を持ちました。  その辺りはよくお話的には言われるところかと思いますけれども、かつてのリー・クアンユーさんの何かそのカルチャーみたいなのを引き継いでいるところが多分にあるんじゃないかみたいなことも言われることが多いかと思いますけれども、それが事実かどうかは別といたしまして、その官僚の方々のモラル的なところがまず一つ大きなバックグラウンドとしてあるように個人的な印象として持っております。  それはそれといたしまして、もう少し客観的なところで申しますと、効率性を端的に表しているところとして、やはり財政が極めて健全に運営されているというところがあろうかと思います。公共投資なんかも含めて、政府の支出がある範囲内に収まっていて、極めて健全財政が続いているということが恐らく端的なところかと思います。  そういった、いずれにしましても、お金をいかに効率的に無駄に使わないかという発想が彼らにはあるようでございまして、その一つの表れ方が健全財政でありますし、それからもう一つは、これもちょっと必ずしも国際的には評判が良くありませんけれども、例えば外貨準備というお金がございます。日本は、今、世界で一番外貨準備を持っている国ですけれども、シンガポールも小さい国にしてはそれなりに外貨準備持っているんですけれども、彼らはその外貨準備たりといえども無駄には運用しないと。いかにそれを有利なところに運用して、そこでリターンを上げるかみたいな発想でありまして、言ってみれば、国際的にはちょっと評判必ずしも良くありませんけれども、世界最大の国際投資家みたいな側面もございまして、実際、外準でかなりリターンを上げているやに聞いております。こういったいろいろな側面に、やはりいかに政府部門を無駄なく効率的に運営するかという何かカルチャーが浸透しているような、私も実感としてシンガポールの方々を見ております。まず、これが御質問の一点目でございます。  それから二点目の、デスバレーの谷で落ち込んでいるところにおいては、もちろん企業の問題もあるかもしれないけれども、政府がそこに介在する余地があるんじゃないかという御指摘いただきました。実は、私も個人的には実は同感でございまして、先ほど御紹介いたしました何が問題かという順位付け、正にこの画面にございますけれども、これはあくまでも企業の方々に聞いたアンケートでございますので、ちょっと言い方は悪いですけれども、本当に客観的にそうなのかというのは少しフィルターを掛けて、あるいはこの統計、アンケート結果を見る我々の方で消化して考えるべきなのかなと思います。  それで、例えば外部との連携が不足しているんじゃないか。その外部というのは他社とか大学、研究機関との連携が不足しているんじゃないかというのも意識にはあるんですけれども、この表の中では七番でございます。これは別に、外部としっかり連携しているというわけではなくて、私の印象といたしましては、そもそもこういった問題意識が今企業の、特に技術責任者の方々の頭の中に余りないんじゃないかと。実際は、客観的には連携不足というのがもう本当は問題なんじゃないかと。それで、そこに例えば政府なり公的な組織が介在すれば触媒になって何か大きな果実を得る、得られる可能性があるんじゃないかと思いますけれども、この辺りはまだ企業の方々自身の、特に技術担当者の方々の意識に上っていないという面があるのではないかという、そういう印象を持ってございます。  それで、多少それを裏付ける材料を何か見た気がするんですけれども、私どもの方でやはり、昨年、有識者の方々を対象に産学連携に関するアンケートを取ったんですけれども、それで何が問題かというふうに伺いましたところ、やっぱりその産学連携というコンセプトがまだ十分に浸透していないんじゃないかという御回答を多々いただきました。これは必ずしも企業側に問題があるわけではない、あるいは大学側に問題があるわけではないんだけれども、何か鶏が先か卵が先かではないですけれども、産学連携あるいは外部との連携ということに関してまだ十分にその認識が浸透していないということかと思います。そういう意味では、もう少し政府の啓蒙活動とか、あるいは実際にいろいろ行動をそこに起こして、間を取り持って、成果を上げて世の中に示していくというような、そういった取組というのが個人的にはあり得るのかなという気がしております。
  46. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  小野清子君。
  47. 小野清子

    小野清子君 自由民主党の小野清子でございます。本日はありがとうございました。  岸本参考人の方からお伺いしたいと思います。  企業は人なりとよく申しますし、また先ほどのお話で必要な人材は採っているというお話も伺わせていただきました。「課題」の中の三番目に「日本若者継続的努力と忍耐力の弱さ」というものを挙げられていらっしゃいます。これは仕事への意気込みが弱っているという点、それから労働、挑戦意欲が劣っているという点を更に挙げられたわけですけれども、大学、大学院、あるいは専門学校、専修学校等々いろいろなところから入社されていると思いますけれども、そういう弱点と申しましょうか、そういう青年たちに対してどのような教育をなさって育て上げているのか、またあるいは足らないところは外国から人をお入れになっていらっしゃるのか。その辺が一点と、それから研究開発の中で、民間だけではどうしても利害関係があって難しい、官が入ってくるとやりやすいという問題がございましたけれども、大学との共同研究という点で国立大学に対して私立大学の方の税制面の緩和が行われました、二年前になりますか。ですから、大変条件的には国立、私立両方ともやりやすくなったと思いますけれども、この分野における現状あるいは活用、そして期待感というものはどのようなものがあるのか、お伺いしたいと思います。  それから、後藤参考人にお伺いいたしますけれども、日本型デスバレー、もう諸先生から、ちょっとダブっちゃうかもしれませんけれども、研究成果製品化状況という点でございますけれども、何を研究したいか、何を作りたいかという目標があってこういう研究に入るわけですね。そういう結果が、要するにここにありますように、確実に製品化につながっているのが二二%であって、その他のロスがあるということは、研究に取り組み方が間違っていたのか、あるいは時がもう遅れて、ないのか、いずれ日の目を見ることがある待ちなのか、その辺も含めて。先ほどトップダウンで上の者がさせるということが一つ方法だというふうなお話もございましたけれども、そうなってきますと、経営者の姿勢が問題なのか、いわゆるどこにこの原因があるのか、担当部門者なのか、その辺の問題。そして、それを解決するにはどうしていったらいいのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  48. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) これは大変大きなテーマでございまして、一企業が教育をしてどうのこうのということは非常に難しい問題がございます。  ただ、企業が期待するような若者が学校教育を終わって入ってくるかどうか、ここがポイントでございます。小学校から大学までずうっと恐らく受け身の教育でずっと過ごしてまいります。さらに、企業に入っても、いろんな教育システムをつくっていろいろ教育をするんですが、常に受け身ですね。私は、本当にこれ人材教育というのは、自分が燃えて、自分から挑戦をしていかなければ身に付かない。ですから、人事部には自分、人事部で会社が教育をすると思ってはいけないんだと、教育、自分たちがその向上できるようなそういう環境とツールを与えて、提供して支援をしていく、これが一番いいんじゃないかと。  人材教育が非常に難しい点がございますが、昨年のある、日経新聞でしたか、ある国際機関の調査報告というのが載っておりまして、それを読んでみますと、若い人たちを対象として、人生における最も大切な目標は何ですかというアンケートがあるんですね。そこに人生を楽しんで生きるという項目がございまして、これが日本が、若者がナンバーワンで六〇%だというんですね。アメリカは四%だった。高い社会的地位や名誉を得る、これは一種の挑戦でございますが、これは日本は一%で米国は四〇%。この調査結果一つ見ても、先ほど申し上げましたような本当にベンチャーに挑戦していくような若者がいるんだろうかという危惧を非常に持ちます。  それからもう一つ、私どものところでは、一万四千名の従業員中国で働いているんです。もうほとんど平均年齢十九・何歳ですから、本当に中学を出て、それからすぐ就職で来て、それから大体離職率が年間二〇%ほどございますから、五年間働いて実家に帰ってお嫁さんの準備をする、こういうのが普通のパターンでございますが、この二十歳に満たない細腕でとにかく、兄弟はそんなにいないと思いますけれども、一人っ子政策ですから、親を養っているということですね。ここにハングリー精神というのが物すごくあるんです。日本若者が少し快楽主義に走っておる、中国若者と比較しますとそういうことが言えるんじゃないか。同じ、いろんな職場がございますが、残業の多い職場を皆さん望むんですね。残業代を稼いでそれを実家に送るとか、それぐらい非常にハングリー精神が強い。  これはどうしても、日本若者がどうのこうのって、直すことはできません。これはできないです、社会環境がそういう形になっていますから。ですから、我々会社がやることは、やはり情熱のある人、挑戦意欲のある人、こういう人たちをどう更に伸ばしていくか、生かしていくか。その意欲のない人はある程度は平等に教育していきます。大体入社して五年間は大体平等に全員教育をしてまいります。五年間以降になりますと、やはりある程度選別教育に入ります。これはやはり我々も投資をしますんで、やはりそれだけの情熱を持って自己育成を考えている人たち、やっぱりこういう人たちを教育してもっと伸びていただこうと、こういうことですので、なかなか一企業若者をどうするかという教育はちょっと難しい。  ですから、企業の教育というのは自分の企業に合ったような人をつくる、どうつくるか、そういう教育でございますんで、私は本当はこれはもう学校教育のところから何かやっていかないと、あるいは家庭教育も含めてこの今の現実はなかなか直らないんじゃないかなという一つの危惧を抱いております。
  49. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございます。  後藤参考人
  50. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) そもそも企業目標があって研究開発を進めたはずなのに、それが製品に結び付かないのは何が問題か、それを解決するにはどうしたらいいのかという御質問だったかと思いますけれども、これはやはり突き詰めていくと大変難しい御質問をいただいたかなという気がいたします。  と申しますのは、やはりそもそも、やっぱり企業形態というのはいろいろ多様なスタイルがあろうかと思います。例えば、ピラミッド型、トップダウン型でうまくやっていらっしゃる企業様もおありだと思いますし、むしろ分散型に、現場に権限を分けてうまくやっていらっしゃるところもあろうかと思いますので、そもそもうまくいく企業とはみたいなところまで話が行ってしまいますとちょっと話がまとまりませんので、ちょっと私なりの解釈で少し要素を抽出させていただきたいと思いますけれども。  やはり何が問題か。そもそも目標があって始めたはずなのに製品に結び付かないのは何が問題かという、多分何となくこう御実感としてわかないのかなという気もいたしますけれども、恐らく、やはりちょっと先ほども触れさせていただきましたけれども、やはり経営サイドあるいは経営中枢と、それから研究開発サイドの必ずしも連携と申しましょうか、コミュニケーションが十分でなくて、いい意味でも悪い意味でも研究開発部門というのが一種の独立した形になっていて、そこが最初は目標を与えられるんですけれども、あるところから何かこう自己目的化と申しましょうか、でいってしまうというのが比較的多いスタイルなのかなと思います。  今回の我々のアンケートでもちょっと出てきたキーワードなんですけれども、最終的な製品化に向けてのロードマップですね、工程表みたいなのを十分に何か作っておられないところが多いらしいんです。したがって、その目標だけは与えられて予算を獲得するけれども、その後の具体的な製品化のところまでは必ずしも責任を負っていないというようなところが少なからずおありでいらっしゃるようです。  それで、じゃ、それを解決していく手段はどういうのがあり得るのかということになりますと、やはりこれもそれぞれの企業様のスタイルがおありかと思いますので一概には言えませんけれども、やはり一つは先ほどトップダウン型と申しましたけれども、もうちょっと広くとらえて、そのトップあるいは経営中枢と申しましょうか、そういうところと研究開発部門の連携を強めていく、あるいはもうちょっといえば経営中枢ですね、トップ、経営トップあるいは企画セクションなりがもう少し開発部門に乗り込んでいくと言っては言い方が悪いですけれども、そこにいろいろ干渉していくようなのが一つのやり方なのかと思います。  それで、その際、今回我々のアンケートでも出てきた一つのコンセプトなんですけれども、いきなり、ふだんは財務データとかを分析している企画の方々が研究現場に行っても全然会話が成立しないんですね。したがって、恐らくそういった間をつなぐその人材、そういうセクション、いわゆるその社内のいろいろなコミュニケーションを円滑化するような役割を果たすような方々という存在があるかないかで、全然そのパフォーマンスは変わってくるような御回答を多々いただいております。  例えば、その間をつなぐ役割というのは、今申しましたようにその経営中枢とそれから研究開発というのもあると思いますし、それから研究部隊とそれから営業部隊あるいは生産現場、こういったふだん交わしている会話言語が違うような人たちの間をつなぐような役割を果たせる人材、あるいは組織、その部隊があると、全然同じことをしても結果が変わってくるというような可能性を私ども感じた次第でございます。
  51. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) 先ほどの御質問、もう一点ございました。失礼しました。  大学、国立大学、私立大学との連携において何か不都合があるか、差異があるかと、こういう御質問でございましたが、はっきり申し上げまして、国立大学とは非常にやりにくいということは言えます。手続が非常に面倒でございまして、契約を完了するのに半年ぐらい掛かる場合がざらでございました。これ、過去でございますが、ざらでございました。私立大学の方は民間でございますから非常に話がしやすい、手続も簡略化されているということで非常に差があったんですが、独立法人化されまして、随分これ変わりつつあります。今は余り不都合を感じなくなりました。ですから、我々もほとんどの国立大学と何らかの接点を持っておりますけれども、今、技術開発部隊も非常に良くなったと、こういう具合に言っておりますから。  ただ、TLOというあの特許のところがございますが、ここがちょっとまだ、どういうことでしょうか、ちょっと手続がうるさいなというぐらいでございまして、非常に良くなったし、また良くなりつつあるという感触を持っています。  ありがとうございます。
  52. 小野清子

    小野清子君 ありがとうございます。
  53. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました、岸本参考人。  それでは、次に広田一君。
  54. 広田一

    広田一君 民主党・新緑風会の広田一でございます。  本日は、両参考人の皆さん、本当にありがとうございました。  まず、岸本参考人さんの方に質問をさせていただきたいと思います。  このレジュメの生産技術課題というところで、その一番目の、技術・技能を保有する企業買収についての御説明がございました。  現に、この日本でも技術力の大変高い中小企業買収をされているというふうなお話があったわけでございますけれども、まず今のこの実情に対する深刻さをどのようにとらえられていらっしゃるのか。と同時に、この流れというものは今後とも大きくなっていくというふうに認識をされているのか。そうした場合に私たちとしてはどのような対応をすべきなのか、官と民とでそういったものの役割分担ということについての御見解をお聞きしたいというふうに思います。  それと併せまして、最後の方の人材育成のところで、一定期間、企業での経験学習ができるような教育システムというふうなお話で、具体的にはインターンシップのことについて少し触れられたんですけれども、いろいろ、先日京都の方に行ったときも、このインターンシップについて、人材の供給の一つの手段ということもあるんだけれども、現状では企業の地域貢献、社会貢献という意味合いが今のところ強いというふうなお話をお聞きしました。  そのような御認識を持たれているのかどうかということで、このインターンシップが本当に、この国において人材供給の本当に核となる仕組みになるためにはどのような課題があるとお考えなのか、教えていただきたいと思います。  次に、後藤参考人さんの方にお伺いをしたいと思います。  国際競争力の比較、これについても一喜一憂すべきでないというお話があって、そのとおりだなというふうに思いながら、少し教えていただきたいのが、日本と総合順位十一位のスウェーデンの政府の効率性についてかなり差があるわけでございます。そして、参考人は、日本がこの順位に至った一つの理由として、政府の規模についての指摘がございました。  その場合、スウェーデンの場合はもう本当に御承知のとおりの、国の規模に対する政府の占める割合、位置というものは大変大きくて、いわゆる大きな政府の代表例であるわけでございます。しかしながら、日本と比べましてもこのような位置付けをされているというところで、どのような理由でこういった形になっているのか教えていただきたいなというふうに思います。  そして、あわせて、ちょっと日本の財政について、今、財政学者さんの中でいろいろと聞いてくるのが、今のこのデフレの一つの原因が、本当に日本という国が国債を五百兆円も超えるほど保有することによって今のこのデフレといったものが進んでいるんじゃないかと。そういった視点で考えないと、これほど金融緩和、また日銀の金融政策がありながら、なかなか克服できないのはそういったところの視点もあるのではないかなというふうな指摘があるわけでございますけれども、こういったことについて後藤参考人はどのように考えられて、この点についてどういうふうに、国債管理政策についてもどういうふうにされるべきとお考えなのか、教えていただきたいと思います。  よろしくお願いします。
  55. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) では、まず岸本参考人、お願いします。
  56. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) 一点は企業買収の件でございますが、今はそう深刻な問題ではございません。実際に実例、私が知っている限り二件しかございません。ただ、将来そういう傾向が出てくるのかなという危惧はございます。  それは、中国経営者なんかと話しておりますと、物を作ることはできる、特に部品部品なんかは作ってもらっているわけですから、物を作ることはもう作れるんだと。中国は作れる。問題は、それを開発する行為あるいは設計する行為、あるいは品質の問題、そういうノウハウが欲しいんだと、技術が欲しいんだと、こういうことをおっしゃっているんですね。  ですから、当然、今までのように設計図をもらってそのとおりに作る、これはもう卒業だという認識なんですが、私は、ちょっと中国側も早とちりしているんじゃないか。易しい部品しか出してないですから、作れるという具合認識をするのは少し早とちりだという具合に考えていますが。ただ、どうしても中国の場合は、例えば医療の世界におきましても、自分たちがステップを踏んでやってくださいと、日本の医師がそういう教え方をするんですが、いや、もう最初からこういう高度な検査をしたいんだというような、先生御存じかもしれません、パピロトミーというような非常に難しい技法があるんですが、いきなりそこに持っていくというような、そういうちょっと性格が出ておりますので、もしかしたら、今深刻ではございませんと言っておりますが、近い将来、そういう形で出てくる可能性は大いにありという具合に考えております。  それから、インターンシップの問題でございますが、短期のインターンシップ、短期です、これ、今。インターンシップでございますが、これは企業の方にとっては何なんだと、こういうことなんですが、社会貢献だと考えているかどうか。企業にとっては、一つは確かに社会貢献的な感覚はございます。やはり学生が早く、社会に出る前に社会とはこういうものだということを認識してもらうという勉学の一つだ、勉強の一つだという認識はしております。もう一つは、インターンシップで会社に来た人を、よかったら来てもらおうという就職の一つの種ですかね。両面からこのインターンシップというのは見ていると、現在は。そういう具合に思いますが。  私、この人材教育の中で、人材育成の中で、インターンシップというのは余りにも短期過ぎて人材育成にならないんですね、企業にとっては。ですから、ここの産学連携にも関連した人材交流あるいは教育というのは、半年とかそういう単位でできないだろうかと。それで、それに対してどういう具合に単位を出すか出さないか、そういうことを考えていただければ、もっと産学の人材交流という意味では教育面においても有効に働くんではないかと、このように考えております。
  57. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  後藤参考人
  58. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) 二点御質問をいただいたかと思います。  まず一点目の、スウェーデンにすら政府の効率性で劣っているのかという点でございますけれども、これは恐らく、ちょっと我々から見るとそれはひどいかなという感じもありますけれども、しかし恐らくこの順位を決めたIMDの側の意識としては二つあるんだと思います。  一つは、まず、同じ政府が大きいといっても、その中身と申しましょうか分野が、ちょっと分野を見るべきじゃないかと。スウェーデンとか北欧諸国は確かに政府が大きいわけですけれども、あれはやっぱり社会福祉みたいなところがかなりを占めていて、それは、例えば年金とか集めてそれを配るというのは、何というか、政府が何かを消費したりとか物を作るというわけではございませんので、そこの非効率性というのはちょっと測りにくい部分があるのかと思います。  何を申したいかと申しますと、それに対して日本政府が大きいというのは、政府が公共投資をしたり、あるいは広い意味での財政になると思いますけれども、政府自らが金融機能を発揮して、国民からお金を集めてそれを投融資で貸し付けるという、何というか、巨大な銀行機能みたいなのを負っていると。したがって、同じ政府が大きいといっても、やっている中身が違う。その辺りの効率性を比較考量されて低いランキングを付けられたというのがまず一点あると思います。  それからもう一つですけれども、今、規模的にはあちらも大きいけれどもと申しましたけれども、しかしやはり日本の公的部門というのはかなり範囲が多岐にわたっている面があろうかと思います。もう釈迦に説法だと思いますけれども、一般会計だけではなくてもう特別会計がその五倍あるとか、さらに財政投融資というところで政府自らが債権と債務両方、両建てで積み上げて巨大な金融機能を負っている、こういったところも合わせると、やはり規模的な面でももしかしたら北欧諸国に比べるとちょっと大き過ぎるという感じを持たれているのではないかと。  したがって、まとめますと、その中身、その分野的なところ、それから規模の定義、その範囲をどこまでカバーして見るかという、この辺りで日本はちょっと大き過ぎるあるいは非効率的なんじゃないかという評価がされてしまったんじゃないかというふうに認識しております。  それから二点目の、デフレとの絡みでの国債管理政策でございまして、これはもうやはり大変深い議論かと思います。  私なんか、私ごときがこちらの場でそのデフレの原因は何だと一言で一刀両断できるような問題ではないかと思います。もう世界的にも高名な先生方がかんかんがくがく議論をして、それでも真っ向から議論が対立しているというような大変根深い問題だと思います。  例えば、その原因を、デフレの原因を金融システム問題に求められる方もいらっしゃると思いますし、それから、いやいや中国とか海外からの輸入物価が原因なんだとおっしゃられる方もいらっしゃいますし、あるいは家電製品、IT製品なんかを中心とした技術進歩がどんどん値下がりを促しているんだ、いろいろな見方がございますし、デフレが先なのか景気後退が先なのかみたいな、神学論争みたいなのもございます。  しかし、そうした中で、確かに政府部門の借金、すなわちその国債というのが何かしら大きな役割を果たしていることは間違いないと思います。これが主因なのか、どの程度の位置付けなのかは別といたしまして、大変デフレ現象の中では政府の借金あるいはその結果であります国債というのが重要なポジションを占めていることは間違いないと思います。  それで、その国債管理政策がじゃどうあるべきかという最終的な結論のところを申し上げますと、これは基本的にやはり特効薬はないと思います。国債管理政策と申しますと何か妙手があるようなネーミングにも聞こえてしまうかもしれませんけれども、これはあくまでも本当に最後の手段と申しましょうか、言ってみれば歳入と歳出の帳じりのところをどううまくファイナンスするかというだけの問題でございますので、基本はやはりいかに歳出を減らして歳入を増やすかという、もうここしかないと思います。最終的なその両者をつなぐ円滑化としての対策が国債管理政策だと、その程度の位置付け、もうあくまでも役割としては相当その順位が低いところにあるんだと思います。  しかし、さはさりながら、じゃ何もやることがないかというと、それは恐らくいろいろやることがあるんだと思いますが、基本的には、これはもう言われていることかと思いますが、従来やはり国債を余り持ってこなかった個人部門と海外部門にいかに持ってもらうかということだと思います。  今、郵政民営化の議論の絡みで、もう郵貯の既存分を丸々個人向け国債にしたらいいんじゃないかというような議論もございますけれども、そういった辺りも含めまして、やはり個人部門にいかに持ってもらうかというところが一つ課題になるかと思います。  それから、やはり従来持ってこなかった大きな部門としては、海外部門というのがあろうかと思います。それで、これは確かに、しかしこれまで日本がずっと経常黒字を続けてきた中ではお金の流れ的になかなか難しかった面があろうかと思いますけれども、しかしこれからは人口が減ってきて徐々にその経常黒字が減ってきて、下手をすると経常赤字の国になってまいりますので、そうすると海外の人たちに国から外に流れたお金をどう運用してもらうか、初めて海外の人に国債を持ってもらうというのが相当現実味を持った政策課題として出てくるかと思います。  それで、これも持ってくださいとお願いして、はいと持ってもらえるものではないかと思いますけれども、やはり今、財務省さん方がやっていらっしゃるIR活動をするとか、あるいは、多少税制面でのそういう、税制面を含めた優遇措置を付けるとか、そういったこともあろうかと思いますし、それから、これはまた話が大変大きくなってしまいますけれども、恐らく海外の方に国債を持ってもらうというのは、恐らく円の国際化の議論と表裏一体の関係にあるんだと思います。海外でもし円がたくさん使われるようになれば、その円をどういう資産で持とうかという需要が当然高まってまいりますので、その際に国債で持とうという方々がそれなりのウエートで出てくることはある程度期待されるかと思います。  それから、この円の国際化が進むと、恐らくそれと同時並行的に、海外の中央銀行あるいは政府が持つ外貨準備の運用対象として日本国債というのが候補になってくるかと思いますので、これから、ちょっとやや遅きに失した面はありますけれども、円の国際化というのがある程度進んでくれば、それに伴って国債管理政策の辺りにはプラスの影響が出てくるのではないかというふうに考えております。
  59. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  それでは、西島英利君。
  60. 西島英利

    西島英利君 自民党の西島でございます。  岸本参考人にお教えいただきたいんですけれども、私も医者でございますから、先ほどの質問とちょっとダブるかもしれませんが、ちょっと視点を変えて御質問さしていただきたいと思うんですが。  日本の医療というのは世界最高水準と言われておりまして、WHOでも、健康寿命と言いまして、寝たきりでない人の平均寿命が世界最高だというふうに言われているわけでございます。ところが、先ほどのお話の中では、日本利用する医療機器の五〇%はこれは外国産であるというお話でございました。  今まさしく医療費が高いと言われているものの一つに、特に米国製の医療機器それから医療材料が高いということが言われておりまして、常に医師も、医者も、アメリカの特に材料価格が高いということをよく不満として述べているわけでございますね。  日本技術というのは、器用を要する技術が得意とするというふうに私は考えているんでございますけれども、特に先日、京都に行きましたときの島津製作所でいろいろと説明を受けましたときに、非常に高い品質の製品が開発されていたわけでございますが、先ほどのお話ですと、大企業なかなか参入せずに、アメリカでは特にベンチャー産業中心にやられているということでございましたけれども、どうすればこの日本製の医療機器、医療材料が拡大をしていくのか。つまり、ベンチャー産業が育たないのか、それとも育ってはいるんだけれども国家予算が少ないというようなところで、これが支援が問題なのか。特に今、経済産業省の補助金等見てみると、大企業が参入している電子カルテ等にはかなりの補助金が実は使われているわけですね。ですから、この辺りの工夫によってベンチャー産業が成長していくのかどうかということをまずお教えいただきたいと思います。  今、医者の関心というのはどちらかというと遺伝子研究でございまして、これには積極的なんですが、また医者が、医師がそういうほかの分野にも関心を示せば、やはりこれも一つの条件になるのかどうかということも是非お教えいただきたいというふうに思います。  それから、後藤参考人には、先ほどの将来の市場規模予測というところで見ますと、在宅医療機器・製品というのはこの順位の中に実は入ってきているわけでございますけれども、医療機関向けの医療機器、医療材料については全く入ってないわけですが、これ、そもそも市場規模が小さいから入ってこないのか、それともこれからの成長が余り見込まれないというふうにお考えになっているのかどうか、是非それもお教えいただきたいなというふうに思います。  そして、この医療のこういうものが、医療産業というのが広がらない部分については、先ほどの四つの競争力の比較の中で言われました政府の効率性というかビジネスとかインフラとか、こういうところに何か問題がもしあるんであれば、それもお教えいただきたいと思います。
  61. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、岸本参考人お願いします。
  62. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) いろいろ理由はあると思うんですが、まず企業姿勢というのが一つございます。  やはりこの、特に、先ほど申し上げましたように、医療機器の五〇%は輸入品、特に診断というよりも治療機器のところが非常に輸入に頼っているということでございまして、一つ企業姿勢なんですが、この日本企業治療機器に対して投資をしない、非常にリスク投資になる、非常に高いリスクがありますので、なかなかここに投資をしないという一つ経営姿勢がございます。特に大企業になればなるほどそれは顕著に出てまいりますし、その子会社もやはり同じような姿勢を取っているということでございます。リスクは取りたくないということですね。これはもう日本の社会が、やはりこのリスクを取って万が一になりますともうその企業は終わりというぐらいの打撃を受けるわけですから、そこにそういうリスクは取りたくないという。  もう一つは、政府姿勢がございまして、薬事法というのが改正がされまして四月一日から施行が入るんですけれども、この薬事法が今、医療機器と同じようなスタンスで統制をしよう、規制をしようというのがございます。薬と機器というのはおのずからちょっと違うと思うんですね。それを一緒にして一つの規定で抑制をしていく、規制していくと、こういう姿勢がございまして、これちょうど四月一日からの施行でございますので何だかんだ言ってももうしようがないんですが、こういうような一つの問題があると思います。  例えば治験中、機器も治験という行為が入るんですけれども、治験中、その商品にどこか一部変更を加える。実際、性能とかそういうもの一切関係なしに、どうしても治験のやり直しということになるんですね。薬の場合はそうだろうと思いますけれども、治験のやり直し、こういうことにもなります。したがって、いろんなメーカーは工夫しますね。  政府の方で、政府間レベルでいろいろアメリカとヨーロッパと日本という、これで治験の結果はお互いに尊重していこう、こういう動きがあるわけでございますが、一番取りやすいのが、取りやすいと言えば語弊がありますけれども、割合手続が簡単でやりやすいのがヨーロッパでございます。そして、次がアメリカでございます。日本が大変でございますから、アメリカの治験の結果を資料として日本で提出をしていく、こういう方法を取る企業もあるわけでございまして、非常にこの薬事がより厳しくなってきた、医療機器でございますけれども、非常にきつくなってきたということでございます。  この薬事は恐らく日本医療機器の物流を変えてこれからいくんじゃないかというぐらいでございまして、そこが逆に政府のねらいかもしれませんが、中小の恐らく医療機器メーカー、あるいは小売屋さんといいましょうか、流通が統廃合の動きが出てくるだろうと思います。ちっちゃいところはこれで成り立ちません、物すごい投資掛かりますから。そういうことで、一つ政府のそういう規制というものがなかなか、特にこの循環器等を始めとした機械を開発するのをちょっとちゅうちょさせているという点があるかと思いますね。  それからもう一つベンチャーの役割、これがやはり先ほどの報告の中で申し上げましたが、非常に大きい。アメリカがなぜ成功しているかということは、医療のフロンティア、これを切り開くのはアメリカでも大企業ではないんです。一点集中でリスクを取るベンチャーでございまして、ベンチャー成果企業が事業化していくということでございますので、企業が実際にベンチャーから取るところはもうそのリスクが非常に少なくなっていると。それをどう事業化するかということでございますので、これが米国における成功のパターン。  ところが、日本も多分そういうパターンを企業は取りたいと思いますけれども、その前のベンチャーの段階で、もう既にこのベンチャー育成されていないという点がございます。なぜ育成されないんだろうか。いろいろございますけれども、日本ベンチャーキャピタル企業ベンチャーをつくっているところもございますが、これは企業ベンチャーですから、独立系ではございませんね。これ、いろいろなベンチャーがございますけれども、その金を集めるのは、集めるためにいろんなところから投資家を募るんですけれども、日本の場合はベンチャーキャピタルというのはほとんど金融機関の子会社ということになります。金融機関の子会社はやっぱり親会社のことがありますから、そんなリスクの高いところには絶対に投資をしないということですね。  アメリカには独立系のベンチャーキャピタルがたくさんございます。我々もアメリカのベンチャーといろいろ技術提携したりやるんですけれども、少しは投資せざるを得ないんですけれども、一次、二次、三次、四次と、もう何十億という金を集めるんですね。この辺が物すごく違う。これはまあ社会的な問題というか制度の問題というか、よく分かりませんが、この辺が非常に違うところではないのかなということでございます。  それからもう一つは、ベンチャーは、日本の場合、会社つぶしちゃったら恐らく大変ですね。その人はもう立ち上がれない。リターンマッチはできない。まずレッテルを張られた上で、財産全部なげうたなきゃいけないだろうと思いますが、アメリカの場合はそれはないですね。生活費、それから建物、住居費で、住居ですね、住居と、これから生活していく、これだけは保護されるということでございますから、仮に失敗しても社会の方は、ああ、あの男は失敗したというレッテルではなくて、いい経験をした、二度と失敗しないだろうという非常にポジティブに見てくれる。これが一つございます。それから、失敗して本当に全部財産なくしたとしても、自分が、家族が生活できるところだけは確保してもらえると、こういうことがありますので、いろんな意味日本で特に医療関係ベンチャーが育たないというのはやはりそういう点にあるのではないのかなという気がしております。  ただ、最近はカテーテル、これはもうアメリカ品の独占だったわけです。それで、物すごい高い値段でお買いになってお使いになっていたということでございますが、それからステントもそうでした。今でも非常に高いんですけれども、この辺はようやく日本企業開発をして、そして今マーケットに出されておりますね。具体的に言いますとテルモさん、循環器系統では非常に強い会社でございまして、自分の方も開発部門をアメリカにもお持ちになっておりますが。  そういう意味で、少しずつ出てくると思いますが、そういう環境、社会環境の中で非常に開発しにくい、難しい、こういう点はなかなか簡単に解決できないのではないだろうかという具合に思っております。
  63. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  それでは、後藤参考人
  64. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) 在宅医療機器を含め、医療あるいはバイオ関係のマーケットに関してちょっと全般的にお話をさせていただきたいと思いますけれども、こちらに挙げさせていただいて色付けしたのは、本当にあくまでも上位十の競争力が強いところと、上位十の、ちょっと厳しいところという感じでございますので、黒いところが決して劣っているというわけではございません。たしか私の記憶では、在宅医療機器なんかはマーケット規模も十分これ大きい方ですし、それから将来性もあるというふうに見込まれていたところだと思いますので、全然ネガティブな部分ではなかったと思います。ただ、バイオ・医療関係全般につきましては、やはりちょっとやや全体の技術マップの中では厳しい位置付けになっていたようでございます。  それで、これは主に二つの側面が、理由があるようですけれども、一つは、やはりこちらにも、こちら左側が五年後に競争力を維持できてきそうだと、勝負できそうだという上位十、それから右側がちょっと厳しそうだという下位十なんですけれども、例えば代表的なところとしてバイオインフォマティクスでございますですね、ゲノム解読みたいな。こういった辺りに代表されるやっぱり一つの理由としては、単にちょっと後発で出遅れてしまったというのがあろうかと思います。これはもう御案内のとおりかと思いますけれども、やはりちょっと政府を挙げてのもう少し取組があり得たのかなという意識が少なくとも技術担当の方にはあるんじゃないかなと思います。まずこれがバイオ・医療関係がやや全体的に厳しめに評価されている理由の一つだと思います。  それからもう一つは、人工臓器辺りで代表的に言われているようですけれども、ひところちょっとやや期待が高過ぎてしまって、今ちょっとその反動が来ているやに伺っております。今回のアンケート結果でもそういった少し結果だったようですけれども、決して将来性がないというわけではないんですけれども、ただちょっとひところ期待が高過ぎて、しかし実際やってみるとなかなか技術的な壁が高そうだということで、具体的に進めてみて技術的な壁が今認識されている段階という、そういった側面もあるようでございます。  以上の面まとめますと、単にちょっと出遅れてしまったという部分、それからもう一つは、具体的にやってみると意外と技術的な壁が高そうだということが認識されているという部分、こういった辺りが大きな背景となって、ややバイオ・医療関係は全体の中では比較的厳しめの分野になっている、評価の分野になっているようでございます。  ただ、もちろん、ちょっと私、技術の専門家ではございませんけれども、出てきた結果をちょっと拝見したところ、全然悲観的なトーンばかりではございませんで、例えばバイオチップなんかはもう十分日本がこれからも競争力を発揮できそうだと期待されていて、そのバイオチップ辺りを突破口にちょっと今出遅れているバイオの分野で一気に市場を広げられるんじゃないかというような見方もあるようでございますし、この辺りは本当に大変流動的な部分はあろうかと思いますので全然悲観はする必要ないと思うんですけれども、しかし以上申し上げたような二つの大きな理由で全体の、ITとかに比べるとやや厳しめの評価になっているという状況のようでございます。
  65. 西島英利

    西島英利君 ありがとうございました。
  66. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、岡田広君。
  67. 岡田広

    ○岡田広君 自民党の岡田広です。  もう既に出ていますが、是非これ、後藤参考人岸本参考人にお尋ねしたいと思いますが、デスバレーの日米比較ということで十七ページに書かれていまして、米国型デスバレー、投資の不足という、そして日本型デスバレー、社内の問題ということで三点書かれています。研究成果製品化状況、約八割が製品化されないことがある企業ということであります。また、その次行きますと、該当企業のおよそ半数が深刻な課題、若干課題は四〇%と大変高い数字です。最後に、製品化につながらない原因ということが、資金や外部連携、社内課題が上位ということですけれども、こういうことから考えると、やっぱりすばらしい研究成果技術が埋もれてしまっては日本にとっても損失なわけです。  だから、そういうことを考えるときに、やっぱり社内の課題ということであれば、やはり企業の、正に岸本参考人お話しになっているように、トップリーダー、リーダーシップでこれ解決できるんではないかという、そういう気がするんですが、研究開発の位置付けが低いというところにも問題があるんだろうと思いますが、この解決策について、企業のトップセミナーをやるとか何か方法がないんだろうか、国が関与するところがあるのかどうか、そういうことをお尋ねをしたいと思います。  そして、岸本参考人には、正に論文も読ませていただきまして、ニーズに応じて人を集めるという考え方で、実力主義の人事制度という、正にこれは研究開発の位置付けが高いんだろうと思うわけであります。  野村総合研究所がたしか六年ぐらい前だと思いますが、日本が世界に誇れるものベストテンということで全国にアンケート調査をやりました。いわゆるメード・イン・ジャパンですけれども、一番目に入ったのはインスタントラーメンでした。二番目はヘッドホン、これは参考までです、ヘッドホンステレオ、三番目カラオケ、四番目家庭用ゲーム機です。これが家庭に登場してからいじめが残虐になったとも言われていますが、これが一番から四番。何となく私は、この表を見て、結果を見て、家庭への引きこもり現象を起こしているんではないかなという気がしたんですが。五番目に入ったのがカメラでした。正に、私なんかがカメラを買った時代はオリンパス光学という会社だっただろうと思うんですけれども、カメラが五番目、六番目コンパクトディスクです。これは、五番目、六番目は、重厚長大から軽薄短小という二十世紀の百年間をかいま見るような、そんな気がするわけであります。七番目から十番目はちょっと省略をしますけれども、そういう中で、その世界に誇れるもの、正にこのカメラというのが実質のベストワンだということを考えますと、オリンパス光学が果たしてきた役割は大変高いものがあるんだろうと思います。  そういう中で、正にお客様のニーズに応じて人を集めるという、これは人材育成って最も大事なことであろうと思いますから、だから、それでスピードが大事だということもお話しになっています。そういう中で、さっきのデスバレーの日米比較という、社内の課題という、これを解決するということは岸本さんの考え方からすれば私はできるんではないかと思うんですが、どういうふうにしたらこれはできるのか、御意見がありましたらお尋ねしたいと思います。  もう一点だけ申し上げます。  この後藤さんの論文ですけれども、これもちょっと長くなりますからお話ししません。  郵貯改革、郵貯の、郵政改革、今議論していますけれども、そういう中で、当然、今国債の管理政策のお話も出ました。そういう中で、この個人向け国債にほかならない郵便貯金の位置付けというのは大変重要だという、全くそのとおりですけれども、どういう位置付けにされたらいいのか、考え方がありましたらそれも併せてお尋ねしたいと思います。
  68. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) では、後藤参考人から。
  69. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) それでは、そのデスバレーの解消に当たって何をすべきかということでございます。まあ基本はやはり企業様の自主努力だと思うんですけれども、そこをいかに促していくような触媒的な施策があるか、あり得るかということでございます。  一つは、やはり技術経営の啓蒙ということかと思います。経営という視点からやはり技術を考えるということかと思います。そのMOTというメニューも、プログラムも、もう非常に一つの大きな方向性だと思います。あるいは、技術経営をうまくやっていらっしゃる企業様のいいところをやっぱり世の中に広く紹介していくというようなやり方もあるんだと思います。  それから、やはり企業様のあくまでも活動をベースにということであれば、先ほど一番最初に御質問もいただいた、やはり研究開発投資というのに何かインセンティブを付けていくということはある程度長期的なメニューとして用意しておいてもいいのかなという気がいたします。それを実際に使う、すぐ使うかどうかは別として、やはり何年か、使おうと思えばいつでも使えるというような形で、それが減税なのか補助金なのか、それはいろいろ具体的な検討の課題だとは思いますけれども、しかしそこに自主努力を促すインセンティブを付けていくというのはやり方としてあるんだと思います。  いずれにしましても、やはり十分に技術経営というコンセプト、あるいは既にされている研究開発投資減税みたいなところが必ずしも企業様あるいは国民に十分コンセプトが浸透していない面があろうかと思いますので、言うはやすしですけれども、やっぱりそれをいかに浸透させていくかということだと思います。  それで、その一つの有効な策というのは、これも政策的にどこまでできるかは限界があるかもしれませんけれども、しかしはっきりと目に見えた、見える成功事例みたいなのを早くつくっていくと、後に続けというような元気のある人たちが出てくると思いますので、小さくてもいいからはっきりと大成功を収めたような事例というのがもう少数でもいいから出てくると後続が続きやすいんじゃないかなという気が個人的にはいたします。  それから二点目の、郵政改革に絡んでの個人向け国債も視野に入れた郵政の位置付けでございますけれども、ここは大変デリケートな部分で、大いにいろいろ議論があることは私なりには十分認識しておりますけれども、あくまで私個人の認識といたしましては、従来も恐らく郵便貯金というのは、その性格上、相当程度個人向け国債という性格があったと思いますので、まあ強制的になのか選択制なのかは別といたしまして、それを相当程度、今、既存分を、既存の郵便貯金を個人向け国債に振り替えていくというのは、政策メニューとしては十分に検討課題なのかなという感じを持ってございます。
  70. 岡田広

    ○岡田広君 ありがとうございます。
  71. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、岸本参考人お願いします。
  72. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) 我々民間、特に製造業にとっては、そういう無駄な技術、とてもじゃないですけれども耐えられないということです。  我々企業の場合どうするかといいますと、経営戦略というものがございます。その経営戦略に従って個別戦略というものがございまして、例えば財務戦略もそうです、技術戦略もそうでございます。この経営戦略に従って技術戦略というものを構築します。この整合がまず最初に行われます。整合していないと無駄な技術開発するということになりますので、これ整合します。整合した上で、なおかつ各事業部から出てきている要望と整合して、それを技術戦略として技術開発をしていくわけでございますから、まず無駄な技術はその時点では開発しないと、手を付けないということになります。  ただ、世の中変わってきますんで、三年、五年たってくるとその技術の変化ということもありますから、途中で無駄なことがあるかもしれませんが、それはその都度評価基準というのが出ておりますから、それによって毎年レビューをしながら、この技術を更に進めていくのか、やめるのか、そういう評価もしてまいりますから、割合早い時点でなかなか商品化できないような技術は落としていくということになります。  それで、デスバレーの問題なんですが、これは、一つはMOTという技術経営できる人ということもそうなんですが、元々技術がどういう事業を想定してその技術開発をするのか、どういう商品を想定して技術開発するのか、基本にそこがございますので、余りこのデスバレーのような事態は起こらないような工夫をしておるわけです。  それで、それが技術開発されますと、新事業とかあるいは新商品、もう一つ、新技術の培養部隊というのが大体どの会社でもございまして、技術を受けますとその技術で自分で、カルチベートと言っていますから、培養機関みたいなものがありまして、そこでより商品化できるような技術に改良していくという行為が入ります。  あるいは、もうかなりでき上がった技術ですと、そこから既に事業部の方にその技術を回す。それで、事業部の方では当然応用技術商品化技術のところへ入りますので、余り、割合日本企業はそういう無駄なことはやれないし、やるべきではないですし、やってはいないだろうと思うんですけれども、まあこの調査結果から見ると非常にちょっと驚くような数値でございますんで、そういうところもあるのかな。  基本はやはり経営戦略と技術戦略がどうマッチしているか。ここが、基本がしっかりしていないとこういう問題が起こる。ですから、MOT、技術経営者がいるとかいないとかいう以前の問題として、やはり経営に沿ったしっかりした必要な技術開発する、それを技術戦略として取り込む、そういうことが基本的にできていればデスバレーを招くことはそんなにはないんじゃないかと、このように感じております。
  73. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございました。  それでは、最後の質問になりますが、小林正夫君、お願いします。
  74. 小林正夫

    小林正夫君 民主党・新緑風会の小林正夫です。  小学校から高校にかけての学校教育についてお聞きをしたいというふうに思います。  岸本先生と後藤先生からお話しいただければと思うんですが、岸本先生のお話のとおり、日本の国は技術創造立国貿易立国、原材料を輸入して日本人の手先の器用さでいい品物を作ってそれを外国に売る、これが私たちの日本の姿だと思います。これから先もこの姿は日本は変わることはないと、私はそのように思います。そういう中で、特に小学校から高校までの教育について先生方、お考えがあればお聞きをしたいと、このように思います。  実は、私が出た工業高校が今週の土曜日に最後の卒業生を迎えると、こういう状況になっておりまして、ちょっと心情的にも寂しいなと、このような思いがあるんです。確かに人口が減少してきて子供の数が少なくなったという要因もあると思うんですけれども、これから先もこの日本の姿が変わっていかない、そういう意味で、ハード的な資源がないこの日本の国ですから、やはり岸本先生がおっしゃったように、日本の位置付けというのはこういうものだと、このことを前提とした小学校から高校への教育についてどういう姿がいいのか、またお考えがあればお聞きをしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  75. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) それでは、まず岸本参考人、よろしくお願いします。
  76. 岸本正壽

    参考人岸本正壽君) 大変難しい課題を与えられたんですけれども、報告の中で申し上げましたように、日本の教育というのはやはり受け身過ぎる教育、一方的な教育だと思います。  教育というのは、小学校の全般は何も知らない人たちですからやはり一方的な教育、ワンウエーしかないと思いますが、中学に入ったら、やはりコミュニケーションというのは双方のコミュニケーションじゃないとまずいわけでございますので、それが中学でもない、まだ一方的な教育。ただ生徒の方は受けるという、受けるというだけなんですね。ですから、これは知識の蓄積になると思いますけれども、せめて高校に入ったら創造ということをやってもらわないと教育上ちょっと困るなという感じがしています。せっかく知識を得たんならば、知の創造のコツをそろそろ教えてもいいんじゃないかと、高校というのはそういうものじゃないだろうかという具合に考えておりますんで。  ところが、現実には、先ほど申し上げましたように、会社に入ってまでまだ受け身の教育ですから、黙っていても、どこか行って勉強してきなさい。ところが、私、アメリカにいるときに、コミュニティーでいろいろ勉強するところがあります。学校で夜間の教育現場もございますし、いろんなそういうコミュニティーでやっているところがあるんですが。日本の場合はわざわざ会社が金を出して、そしてこの学校に行って英会話を学んできなさい。金まで出しているわけですね。それで、それで行く人もいますし、行かない人もいるんですけれども。アメリカなんかは、会社、金出しませんから、自分で金を出してそういう場所に行ってくると。だから、自己教育を徹底しているということだろうと思いますね。だから、自己向上心をどういう具合に植え付けるかと。これは、やはり小学校から中学校、高校の過程の中でしっかりと教えてもらわないといかぬだろうと。  ですから、企業へ入ってきましても、企業の教育で、昔ですけれども、突出した人が出てくるんです。で、企業はどうしたかといいますと、出るな、こういうモグラたたきをやったんです。それはなぜかといいますと、日本文化ですけれども、和ということを大切にしたんですね。均一的な、平均的な人材の教育。そして、上司の方は自分の職場が波風立たないように、和が保てるように、これは大事なことなんですけれども、そういうことによって個性をみんなつぶしてきたわけです。  ですから、そういうような文化の中でどうやってじゃ創造的な人が出るんだということなんです。ですから、創造力のある人というのは非常に少ないですね。  ですから、今度は、今、企業で一生懸命やろうとしていることは、創造力をどういう具合に出すか。自分で何を創造して、自分で物を考えるのか、自分で物を考える力を付けようというんでやっているんで、そういうのはもう大学というか高校で卒業してやってきてほしいという感じはするんですが、さて、じゃ対策は何だとおっしゃられましても、大変勉強不足でございまして、これは何も学校教育だけに限らず、家庭の教育ということもやはり大変重要なことですし、会社自身もやっぱり教育の仕方というのを今度は、先ほどどなたかおっしゃいました個の時代でございますので、ただ平均的人材だけつくればいいということではどうしても負けてしまいますんで、やっぱり個を尊重したどういう教育方針でやっていくか。この辺を小学校から、家庭も含めて、企業も含めて、本当に考えていかなければならない問題だろうという具合に思いますね。  そうしないと、先ほど申し上げましたように、やはり外国若者と比較して非常に寂しい思いがします。日本の将来どうなるのかと、日本の製造業は将来どうなるんだと、こういう危惧もないとは言えないという具合に感じております。ちょっとお答えになりませんけれども。
  77. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) ありがとうございます。  後藤参考人、よろしく。
  78. 後藤康雄

    参考人後藤康雄君) 私も、確かに、やっぱりこれまでの日本経済はキャッチアップ型だったのが、もはやもう押しも押されぬ世界のトップグループで、むしろ創造していかなくてはいけない国になった以上、教育システムもやはり変わっていかなくてはいけないだろうという意識は同感でございまして、それで、まあこれももう釈迦に説法だと思いますけれども、やはり従来の日本の教育というのは、大学までも含めて、言ってみれば大学で何を、大学とか含めて何を勉強したかというよりは、試験を受かるための一種その選抜システムという役割が相当強かったかと思います。  それで、キャッチアップ型の経済の段階であればそれでもよかったんだと思います。いかに優秀な人を選抜して、で、まあ大学で終わりということでよかったかと思うんですけれども、これからは世界にないオリジナルなものをつくっていかなくてはいけない時代になると、やっぱり何を勉強したかということが重要になってくるんだと思います。そこで、やっぱり一つの、まあこれだけですべて片付くとは思いませんけれども、一つの方向性としては、今も進められているやっぱり大学院の拡充という、それは人を増やすということだけではなくて、やっぱりその大学院をいかに実のあるものにするかということだと思います。  それで、これはもうみんなが大学院に行くべきだということを申し上げているわけではなくて、そういう人たちが世の中に出てちゃんと活躍していくようになれば、やっぱりその勉強した内容が重要なんだということが浸透して、やっぱり世の中全体のその教育をめぐる見方が変わってくると思います。  じゃ、それをどうしたらそういうことができるかというと、一つは、これもあくまでも一つの分野でしかありませんけれども、官僚システムみたいなところは一つの大きな元凶みたいなところになっているのかと思います。学部出て、あるいは下手に大学院とか行くと余りこう、何というか、かえってネガティブに評価されかねないような日本の官僚システム。要するに官僚システムというのは、やはり学生から見ると大変魅力的な就職先で今もあり続けると思いますので、そういうところに就職するのにかえって大学院に行くとマイナスになるというようなことは、やっぱり国全体のシステムを大きくバイアスを掛けてゆがめてしまうと思いますので、なかなか最初のうちは使えないかもしれませんけれども、その大学院卒の方をあえて意識的に登用をして活躍の場を与えるというのも、何となく私の周りなんかを見ていると、実感としてそういうやり方もあるのかなという気がいたします。  いずれにしましても、やっぱり海外、私も会社のお金で留学をさせていただいたこともあるんですけれども、例えば海外とかだと、ハーバード大学を学部だけ出た人と、学部は知らない大学だけれども大学院で、MITとか出て博士号を取っている人であれば、明らかにその後者の方がやっぱり尊敬をされるわけでございます。  それで、それは明らかにその後者の方の方が経済学、学問の知識もあるし立派な論文を書けるからという、その実際知っている知識が上だというふうにみなされるからそういう尊敬を集めるわけでございますので、やっぱり日本も、別にアメリカを盲目的に追従するべきだとは思いませんけれども、しかし何を知っているかという人が活躍できるような社会に持っていくというのが、教育システムをこれから考えていく際の基本的なコンセプトではないかというふうに考えております。
  79. 広中和歌子

    会長広中和歌子君) どうもありがとうございました。  それでは、時間でもございますし、他に御発言もなければ、以上で参考人に対する質疑をこれで終わらせていただきます。  岸本参考人及び後藤参考人におかれましては、御多用中の中、本調査会に御出席いただき、本当に貴重な御意見ありがとうございました。  本日お述べいただきました御意見は今後の調査の中に必ず反映させていきます。本調査会を代表いたしまして心から御礼申し上げます。(拍手)  それでは、次回は四月六日午後一時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四分散会