○三日月大造君
民主党の三日月大造です。
ただいま
議題となりました総合的な
国土の形成を図るための
国土総合開発法等の一部を
改正する等の
法律案につきまして、
民主党・
無所属クラブを代表して質問をさせていただきます。(
拍手)
まず、
冒頭、先月二十五日に
JR西日本福知山線列車
脱線事故が発生してから二十二日が
経過いたしました。お亡くなりになられた百七名の
方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、御遺族の
方々、
被害に遭われた
方々に心よりお見舞い申し上げます。
一国民として、一国
会議員として悲しく、同時に、元JR西
日本の社員として、元電車の運転士として残念、そして心から無念です。
結果的にこうした大事故を起こした
事業者JR西
日本の責任は極めて重いと断ぜざるを得ませんが、曲線に入る前に減速させることのできるATSの設置基準や運転士の事故後再教育のガイドラインが
整備されていなかったこと、事故の兆候の調査や保安監査が徹底されていなかったことなど、人任せ、
事業者任せ、交通運輸行政として
事業者への監督が不十分であったことも明らかになってきています。(
拍手)
今後、徹底した
原因究明とともに、真に
再発防止につながる事故調査機関の設置、安全が確実に担保される交通運輸行政の
充実を早急に果たし、二度とこのような事故が起こらない国づくりに向け、全力を傾注してまいる所存です。(
拍手)
今回の事故を初め、頻発する交通機関の事故の背景には、最も大切にされるべき人間の
生命より利益や効率を重視してきた国家
経営そのものにも大きな問題があるのではないでしょうか。謙虚に検証する必要があると思います。
人間の
生命より郵政民営化なんでしょうか。
生活の安全を犠牲にしてまで
経済の効率化を図っていくんでしょうか。政治家が、
国会が、時間と情熱を傾けるべきテーマについても、根幹から見直す必要があるのではないでしょうか。(
拍手)
人間の
生活の基礎となる安全を確保すべき、また、事前
規制を排し競争を認めれば認めるほど事後チェックや監督が必要となるはずだった交通運輸行政を所管される北側
国土交通
大臣に、まず御所見をお伺いいたします。(
拍手)
さて、このたび提出されました本法案の中身を議論する前に、これまでの計画の評価をしっかりと行うことが肝要です。これまで五次にわたる全総計画の壮大な夢物語の無残な姿は、枚挙にいとまがありません。個別に挙げれば切りがありませんので、以下、四つの観点から伺います。
まず第一は、全体的総括です。
これまでの五次にわたる全総計画をどのように評価されていますか。確かに、この間の計画や
事業によって
社会資本の
整備は進みました。世界に類を見ない速度で
経済成長を遂げてこられたことは、その一つの成果であったと言えるでしょう。しかし、計画倒れが多過ぎ、負の遺産が大き過ぎます。
そもそも、
国土の均衡ある発展を目指してきたにもかかわらず、結果的には、人も物も金も東京に一極集中し、地方の個性が奪われ、衰退してしまい、かけがえのない自然を破壊してきてしまいました。北側
大臣より、評価と、特に反省に基づく全体の総括をお伺いいたします。(
拍手)
第二に、財政面からの検証をしなければなりません。
四十年余り、これらの計画を
実施するのに、一体幾らのお金を投じてきたのでしょうか。投資総額にして千五百兆円以上、公的固定資本形成だけでも、二〇〇三年度までで九百兆円以上を投じてきています。その結果膨らんだ国と地方の長期債務残高は七百七十四兆円にまで達し、現在と将来の国民の大きな重荷となってしまいました。どのように処理されるおつもりでしょうか。
新規のインフラ投資だけでなく、つくったインフラの災害対策補強も含めた維持管理、更新投資なども必要になってきています。全体の、将来の投資の規模やバランスをどのように見積もっていらっしゃるのか。
北側
大臣、谷垣財務
大臣、それぞれ方針とともに明確にお示しをいただきたいと思います。
第三は、破綻をしてしまった大規模開発の清算についてです。
途中、借金のつけかえなど
措置は講じられるも、一九九九年の清算後、二度にわたる
目標も大きく下回る分譲しかできていない苫小牧東部大規模工業基地、当時第三セクターとして過去最大の負債を抱えて破綻し、その後の施設誘致も難航してしまっているむつ小川原コンビナート、一日の交通量が供用時の計画の半分と低迷をしている東京湾横断道路など、全国に散在し、今なお先の見えない開発の夢物語の無残な現状を今後どのように処理、解決されるおつもりなんでしょうか。
北側
大臣、お答えください。
中川
経済産業
大臣には、むつ小川原コンビナートの現状と今後の計画についてもお示しをいただきたいと思います。
第四に、信頼回復についてです。
何より憂慮すべきことは、これら全総計画が、指定
実施する公共
事業とともに、国と地方の関係においては依存と分配、中央省庁、関係業界、族議員、特殊法人や特別会計も絡めた利権政治やむだ遣いの温床の
原因となり、政治や公共
事業そのものの信頼を大きく失墜させてしまっていることです。
これら計画や
事業のすべてが悪かったと言うつもりはありませんが、将来展望も歯どめもなく血税を注ぎ込んできたことに対し、この間一貫して政権を担ってこられた
自民党には猛省を促し、当然のことながら責任を明確にとっていただかなければなりません。もはや、政権を交代するということでしか信頼回復の処方せんはないと考えます。
これら計画を大義名分に、金や利権と政治が不正常に結びつき、政治や公共
事業そのものの信頼を著しく損なってきたことに対する反省と、信頼回復のためにはまず
政権交代しかないとの国民の評価に対して、お答えになられにくいでしょうけれども、北側
国土交通
大臣の御
見解をお伺いいたします。
以下、具体的に法案の
内容に触れながら、
政府の
見解をただしてまいります。
まず、
政府として、目指すべき
国土の形をどのように描いているのかということです。
本
法律案では、基本理念として、目指すべき
国土の形らしきものが記されています。しかし、すべて当たり前で、これまでの反省でしかありません。何より夢がないのです。
もっと血の通った、思いのこもった、先を見越した表現で提案をすべきです。現段階での
国土のありようについての
政府のビジョンを、思いと決意を込めて、責任を持って、北側
大臣、明確にお示しください。
同時に、この
時代の
国土計画の策定、実行に当たり、国が果たすべき役割とは何なんでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
以下、この目指すべき
国土に関連し、五点を提起し、伺います。
第一に、人口についてです。
二〇〇六年をピークとして人口が減少することは、既に推計されています。以前から予想されていたにもかかわらず、拡大開発路線を継続してきたことは大きな問題です。
ただ、
国土計画は五十年後、百年後の
日本の
国土や
生活を展望する計画であることを勘案すれば、人口減少を余りにも所与の条件として容易に認め過ぎてはいないでしょうか。子供を産み、育てやすくするための支援の視点、ソフト、ハード両面でのバリアフリー、ユニバーサルデザインという視点を強く打ち出すことで、出生率を向上させ、長期的に人口を増加させるぐらいの気構えをまず持つべきではないでしょうか。
北側
大臣、人口と
国土計画との関係についてお答えください。
第二に、地方主権の観点から、もっと大胆に
国土計画を改革すべきだということです。
北側
大臣は、地方の意見を反映できるようとたびたび強調され、協議
制度や提案
制度などの導入が提案されています。
しかし、これまで陳情という形で国が地方の意見を聞き、歯どめなく盛り込む無責任な計画をつくってきた結果が、総花的で画一的な
国土、東京一極集中と地方の過疎化、そして財政破綻をつくり出してきてしまったと言っても過言ではありません。
今見直すべきことは、国と地方の力関係です。やるべきことは、全国的に関係する最低限の計画だけを国が策定し、地方の計画は地方でつくり、責任を持って実行される枠組みを
整備することではないでしょうか。
今回の
法改正では、
国土形成計画を、全国計画と、首都圏、近畿圏、中部圏を含めた広域地方計画という区域に再編されます。その広域地方計画の組み合わせは
政府お得意の政令で定めることとなっておりますが、そもそも、国がその組み合わせを規定すること自体が地方主権の
趣旨に反しているのではないでしょうか。
首都圏、近畿圏、中部圏にだけ残る
整備計画との関係も全く不明確です。むしろこの機会に、地方の計画全体を抜本的に再編し、都道府県がおのおの隣り合う県と協議し、組み、計画を立てられる自由度をまず許容すべきです。
加えて、計画実行のエンジンとして、EUの構造基金、結束基金のようなインセンティブ付与型の基金を創設することが重要だと考えますが、北側
大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
第三は、自然との共生という観点です。
本法案において、これまでの計画の反省に立ち、開発だけでなく利用や保全という観点を盛り込もうとされていることは一歩前進と評価いたします。ただ、残念なことに中途半端です。
北側
大臣、この時期、どうせつくりかえるなら、もっと明確に、もっと前面に、自然との共生、特に将来世代への責任という
言葉を明示した理念を打ち出すべきではないでしょうか。
この地球、自然をこれ以上壊さず将来世代へ責任を持って引き継ぐ決意のメッセージを承りたいと存じます。
第四は、
国土計画の範囲についてです。
この二十一世紀は、あらゆる分野、段階で国境を越えて交流や
取引が行われるグローバル
時代です。その
時代にふさわしく、単に国境や領土というものにとらわれない
国土計画をつくるべきです。
特に、アジアの中での
日本の位置づけ、役割をもっと強く自覚し、それを
国土計画に反映すべきではないでしょうか。単なる国際競争力の強化というものの一歩先を展望し、ODAも戦略的に活用しながら、アジアの中での水平的分業や役割分担も視野に入れた広い
国土計画にすべきです。
中国や韓国との日常の外交関係も築けない
小泉内閣では到底無理な話かもしれませんが、北側
大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
また、
時代おくれの全総計画よりも、進んでアジアを見据えながら産業振興策を構築していると自負される中川
経済産業
大臣の御
見解もあわせてお伺いをいたします。
第五は、
生活圏レベルの諸
課題への対応です。
急速な少子高齢化、これまでのさまざまな政策の失敗により、地方山間部においては過疎化と高齢化による活力の低下、それに伴うサービスの低下の悪循環が進行中です。治安の悪化も深刻です。全体的な計画も、個々の国民の日々の
生活の中でその成果が実感されてこそ、初めて意味をなすものです。
新しい
国土形成計画において、福祉、教育、医療、交通など
生活圏レベルの
課題にどのように対応されていかれるおつもりなんでしょうか。北側
大臣、お答えをいただきたいと思います。
以上、五つの視点で問題提起をいたしました。
これ以外にも、
法律や計画の体系が多岐にわたっており、形成と利用、国と地方の計画が並び立つ、役割分担も責任の所在も不明確な計画はそのままです。政策評価についても、全国計画だけが
対象で、広域地方計画や
国土利用計画などは
対象となっておらず、評価の実効性の面からも大きな疑問が残ります。
これらのことを総合的に勘案すると、従来の延長線上で、評価も反省もけじめもなく、なし崩し的に、お茶を濁す形で計画の名称やつくり方だけを変えるだけでは、結局何も変わらないのではないでしょうか。
私
たち民主党がかねてから提案をしているように、
国土総合開発法をまず一たん廃止して、原点から
国土のあり方を検討し直すべきです。セットになっている補助金、そこにぶら下がっている特殊法人や特別会計についても大胆にメスを入れ、廃止や統合を含めて根本的に見直すべきです。過去の呪縛、利権を断ち切り、見直し、転換期二十一世紀の
日本にふさわしい
国土計画をつくり直すことが必要だと考えますが、北側
大臣、いかがでしょうか。
最後に、今、改めてこれまでを振り返り、また立ちどまって静かに考えようではありませんか。
戦後六十年、先人の御努力で、我が国は目覚ましい復興と発展を遂げてまいりました。大規模なインフラ
整備、一ミリ一秒一円を争う
経済活動は、この国
日本を世界に冠たる
経済大国として成長させました。おかげで、物質的な豊かさだけは高いレベルで享受できるようになりました。これからも、このペースで国家
経営を行っていくんでしょうか。
今、生きる
生命を軽んじ、海に囲まれ閉鎖的な狭いこの
国土や国益のことだけを考え、今の繁栄だけをせつな的に享受し、自然や地球を壊し、汚し続けていいはずありません。
今、まさに転換点です。
幸い、まだまだ
日本には悠久の歴史、豊かな自然、まじめな
人材、すぐれた技術があります。今こそ、これまでの計画を国家
経営も含めて真摯に反省し、省庁や地域、有力議員への配慮と遠慮の塊のような
国土計画を改めて、真に未来を展望し、将来世代にも責任ある
国土計画への転換を行うべきであるということを強く重ねて主張し、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣北側一雄君
登壇〕