○
国務大臣(
大野功統君) 本多
議員から私に対して、二十問にわたる御質問がございました。
まず、法案の
提出方法であります。
複数の
法律改正を一つの
法律案で行う場合には、従来から、法案に盛られた
政策が統一的なものであり、
趣旨、
目的が同じであること、そして、法案の条項が相互に関連しており、一つの体系を形づくっていること、できる限り同じ
委員会の所管に属する事項に関するものであることが望ましいことを基準といたしております。
本
法律案に盛り込まれた
政策は、いずれも
平成十七年度予算に関連する統一的なものであることから、ただいま申し上げた基準に沿って法案を
提出させていただいたものであります。
次に、イージス艦による
我が国の防護についてであります。
イージス艦は、
弾道ミサイル対処専用の迎撃ミサイルSM3を用いることにより、半径数百キロメートルを防護でき、イージス艦を二、三隻配備することにより、
日本の全域を防護できると考えております。
現在、海上
自衛隊はイージス艦を四隻
保有いたしておりますが、イージス艦は、国際任務などの他の任務のほか、訓練、
整備、検査等も必要であり、常時
日本全土を防護することが困難なことは御指摘のとおりでありますが、日米間の協力を通じて、対応には万全を期してまいりたいと考えております。
なお、法案第一項の、
弾道ミサイル等の飛来のおそれがあると判断された場合には、
自衛隊の持てる
能力を集中して、対応に努力していく所存であります。
次に、ペトリオットPAC3による防護地域についてであります。
ペトリオットPAC3は、政治や経済の中枢地域等のいわゆるねらわれやすい箇所を守る拠点防御のためのものであり、機動的に移動、展開し、
状況に応じて最適な位置へ配備するという考えであるため、防護する都市を固定しているわけではありません。
また、
我が国のBMDシステムは、イージス艦との多層防御により
我が国全域を防御することとしており、
弾道ミサイル攻撃に対する防御については、ペトリオットPAC3の配備数のみをもって考えるべきではないと考えております。
次に、SM3とPAC3の迎撃率についてのお尋ねであります。
装備の
能力につきましては、我が方の手のうちを明かすということにもなり、また開発した
米国との
関係もあり、お答えを差し控えさせていただきたいと思いますので、御理解をくださいますようお願いいたします。
しかしながら、それぞれの装備の
信頼性について、
米国での試験結果について申し上げます。SM3は、七回中六回迎撃に成功いたしております。PAC3は、十二回中十回迎撃に成功しているという実績がございます。
次に、
弾道ミサイルのおとりや同時発射への対応についてであります。
装備の具体的な
能力については、お答えを差し控えさせていただくことを御理解くださいますようお願い申し上げます。
なお、
弾道ミサイルのおとり、いわゆるデコイについては、さまざまなものが考えられますが、一概に対応できる、できないとは言いがたいものがありますが、イージスBMDシステム、ペトリオットPAC3システムの双方とも、同時に複数の目標に対処する
能力があります。
次に、ミサイル
防衛は軍拡競争を誘発するのではないかというお尋ねでございます。
我が国が導入するBMDシステムは、
弾道ミサイル攻撃に対し、
我が国国民の生命財産を守るために純粋に防御的、かつ、他に代替手段のない唯一の手段であります。また、このシステムは、
相手国が
我が国に対し
弾道ミサイルを発射しない限り、実際に活用されることはありません。
このようなBMDシステムの特徴は、
我が国の専守
防衛の理念に合致するものであり、軍拡競争を招くとは考えられません。
次に、BMDシステムにより対米依存が深まるとの御懸念についてであります。
我が国のBMDシステムにつきましては、
平成十五年十二月の官房長官談話のとおり、
我が国みずからが主体的に判断して運用することを基本といたしております。
また、日米安全保障
体制のもと、効率的、効果的対処のため、
米国との技術面での協力や
情報協力などが重要であると考えておりますが、このことにより対米依存が深まるものとは考えておりません。
次に、過去の戦闘機などの開発における見積もりについてであります。
御指摘の戦闘機はF2を指すものと思いますけれども、当初、F2の開発を検討した時点では、開発総経費を千六百五十億円程度と見込んでいましたところ、
米国との共同開発の枠組みが
整備されたこと等に伴い、最終的には約三千二百七十億円の総経費を要したものであります。ただし、開発期間中においては、結節ごとに要求性能や開発経費の妥当性を判断してまいったところであり、F2の開発に問題があったとは言えないと考えております。
また、他の装備品についても、これまでの開発において、御指摘のような事例はないものと考えております。
次に、BMD経費の見積もりについてであります。
現時点においては、日米共同技術研究関連経費を含め、当面八千億円から一兆円程度を要するものであろうかと見込んでおります。
他方、BMDシステムの
整備やさらなる
能力向上につきましては、その時々の国際情勢や
米国におけるBMDの開発
状況等を考慮し、不断に検証、検討していくことが必要であることから、現時点で正確に経費を見積もることは困難であり、最終的には各年度の予算を通じて確定されるべきものであると考えております。
次に、法案の第一項の総理の
承認と
相手国への影響についてであります。
第一項の内閣総理大臣の
承認には閣議決定が必要と考えておりますが、閣議決定は実際に閣僚が集まらなくても電話連絡などで可能であり、迅速な対応ができるものと考えております。
また、BMDシステムは、純粋に防御的、かつ、他に代替手段のない唯一の手段であり、
相手国が
我が国に対し
弾道ミサイルを発射しない限り、実際に活用されることはありません。したがって、第一項の総理
承認により、
相手国との
関係で問題が生ずることはありません。
次に、法案の第三項の命令の期間についてであります。
緊急対処要領には、どのような場合が第三項の緊急の場合に該当するか、また、どのような場合に
防衛庁長官は命令を発出することができるか等を明記することを考えております。
また、
防衛庁長官は、現実の
自衛隊の活動
状況等を踏まえつつ、緊急対処要領に従い、合理的な期間を定めて命令を発出することを考えております。
このように、第三項の命令は、内閣及び
防衛庁長官のシビリアンコントロールを十分に確保した上で発出することとなるため、必要以上に長い期間が設定されることはないと考えております。
なお、この命令は、
自衛隊の行動に直接かかわるものであり、従来の命令と同様に非公表とすることを考えており、命令の期間終了をねらって
弾道ミサイルが発射されるような
事態は生じないものと考えております。
次に、緊急対処要領の
内容を
法律に記載すべきとの御意見でございます。
緊急対処要領の
目的や作成の手順につきましては、法案に明確に
規定されております。
また、その
内容につきましては、対処
措置の対象やその破壊方法、
措置を命ぜられた
自衛隊の部隊の行動範囲などを記載する考えである旨、
国会の御
審議等を通じ既に御
説明申し上げておりますが、今後とも、可能な限りわかりやすい
説明に努めてまいります。
次に、
国会の事後
承認等の仕組みを設けるべきとの御意見についてであります。
今般の
弾道ミサイル等の
破壊措置は、
国民の生命財産に対する被害を
防止するための必要かつ当然の
措置であります。
当該
措置の特性としましては、落下することによりいずれにせよ損壊するものを破壊するにすぎないこと、
相手国の領域や人員を害することはあり得ないこと、
防衛出動など
国会の関与を必要とする他の行動類型に比べ、
国民の権利の制限は極めて限定的であることなどを考慮すれば、事後であっても
国会承認等の仕組みを設ける必要はないのではないかと考えております。
次に、ミサイル等の
破壊措置の方法、法的性格についてであります。
今般の
弾道ミサイル等の
破壊措置は、
防衛出動が下令されていない
状況のもと、
我が国に
弾道ミサイル等が飛来した場合に、迅速かつ適切な対処を行うこと、シビリアンコントロールを確保することを考慮し、必要な
規定を定めたものであります。
弾道ミサイル等が現に飛来する場合、破壊する以外に被害を防ぐ方法はなく、今般の
措置は、
国民の生命財産に対する被害を
防止するため、
我が国として必要かつ当然のものであります。
当該
措置は、自衛権の
行使ではなく、
自衛隊法上の任務として公共の秩序の維持に該当し、あえて整理すれば、
警察権の
行使に相当するものと言ってもよいと考えられます。
次に、技術の
進展と集団的自衛権の問題についてであります。
今般の
弾道ミサイル等の
破壊措置は、
我が国に飛来する
弾道ミサイル等につき、その落下による
我が国領域における人命または財産に対する被害を
防止するため実施されることは法案に明記されており、技術の
進展等により
憲法上の問題が生じかねないとの御懸念は当たらないと考えております。
次に、今般の
統合運用の
強化について、三点のお尋ねがありました。
まず、これまでの統合に関する経緯についてでありますが、欧米諸国と比較すると、
我が国はこれまでも
統合運用強化のための
措置を講じてきましたが、
統合運用の経験が浅く、その
進展が遅かったのは確かであります。
しかしながら、
陸海空自衛隊の部隊が一体となって活動するニーズが増大し、また、新たな脅威や多様な
事態に実効的に対応し得る
防衛力を効率的に構築することが必要となってきております。
こうした時代の要請を踏まえ、今般、
統合幕僚監部の新設等により、
統合運用をさらに
強化することにいたしております。
二点目は、意思決定の変化についてであります。
現状においては、
陸海空自衛隊の運用に関する軍事専門的見地からの長官の補佐は、基本的に各幕僚長により個別に行うこととなっており、必要に応じ統合幕僚
会議で統合
調整を行い、長官の意思決定を助けることとなっております。
今後は、
自衛隊の運用に関しては、新設する
統合幕僚長が軍事専門的見地から一元的に長官を補佐することとしており、
陸海空自衛隊が有機的に連携し、一体的な運用を行うことを基本とした長官の意思決定が、より迅速に行われることになるものと考えております。
三点目は、今後の課題についてであります。
新たな
体制における
統合運用の
実効性の確保のためには、教育訓練、
情報通信等の各分野において
統合運用の基盤を確立することが必要であると考えており、昨年末に閣議決定された新中期防においても、これらに関する事業を行うこととしているほか、
統合運用を実効的に行い得る組織等のあり方について、検討の上、必要な
措置を講ずることとされております。
さらなる
措置の必要性については、今般の
体制整備を含め、
統合運用の実績等を踏まえ検討してまいる所存であります。
次に、本
法律案における
情報本部の
改編と
情報能力の向上等についてお尋ねがありました。
本
法律案においては、現在は統合幕僚
会議のもとに置かれている
情報本部について、長官直轄の特別の機関とし、また、広範かつ総合的に
情報の収集、分析が行われるよう
所掌事務を定めることといたしております。
これにより、
防衛庁全体の視点から、より広範な
情報を収集、庁内各機関のニーズに応じた総合的な分析を行う、
防衛庁長官等に、より迅速的確に
報告をする、
防衛庁の中央
情報機関としての
情報本部の地位、役割を明確化できるものと考えております。
なお、
防衛庁としては、
情報能力の
強化のため、このような
体制整備に加え、
情報収集器材の
整備や要員の確保、育成等につき今後とも努めるとともに、
アメリカとの
情報面での協力
関係も
強化してまいります。
次に、
情報本部と
関係省庁との連携についてでございます。
既にお答えもございましたが、昨年十二月に策定された
平成十七年度以降に係る
防衛計画の大綱にもあるように、各省庁がその特性、得意分野を生かしながら、
政府全体として連携して
情報の収集、分析に当たるべきことは当然であると考えております。
防衛庁といたしましても、
我が国の
防衛等の
観点から
情報本部が収集、分析した重要な
情報について、内閣官房を初め
関係各省庁に迅速、適切に伝達し、その共有を図るなど、今後とも
情報面での連携に最大限努力してまいります。
最後に、昨年十一月の潜没潜水艦の事案についてお尋ねがありました。
政府としては、位置の特定が難しい潜水航行中の潜水艦に対し、慎重に必要な手続を踏んで対処したものですが、このような事案に対しては、迅速に毅然とした行動をとるべきであり、かつ、透明性をもって対応していくべきであると考えております。
こうした点を反省しつつ、今後は、
我が国領海に接近する潜水艦の
情報が得られた場合には、これを早期に
政府部内で共有すること、
我が国領水内で潜没航行する潜水艦への対処は、特段の事情が認められない限り、閣議決定、
平成八年の閣議決定でありますが、「
我が国の領海及び内水で潜没航行する外国潜水艦への対処について」の要件に該当する旨の認識を統一し、直ちに海上警備行動を発令すること、これらの点について具体的なマニュアル、対処要領を定め、
政府部内で共有することといたしたところでございます。
以上でございます。ありがとうございます。(
拍手)
—————————————