○前原誠司君
民主党の前原誠司です。
私は、
民主党・
無所属クラブを代表いたしまして、新防衛大綱及び次期防衛力中期
整備計画について質問いたします。(
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まず、昨日、マラッカ海峡で
日本船籍のタグボートが海賊に襲われ、三人が連れ去られる
事件が発生しました。
政府に一刻も早い三人の救出を要望するとともに、この海峡は
日本にとっても大切な海上航行路ですが、以前よりこの海峡は海賊行為の多発地帯であることを考えると、再発
防止のために、他国と協調をして、航行の安全を守るための何らかの
取り組み、連携が必要だと考えますが、
政府の考え方をお聞かせいただきたい。
およそ国の安全保障ほど、中長期の見通し、戦略に基づいて政策を立案し、遂行しなければならない分野はありません。戦闘機や艦船などの正面装備は、選定、開発から実戦配備まで、少なくとも十年の歳月を要します。その点から考えると、今回の防衛大綱の改定は、十年先の戦略環境を正確に分析しているとは到底思えません。また、なぜ今なのか、また、防衛の主眼を何に移すために変えるのか、コンセプトも不明瞭であります。
我が国の安全保障の柱の一つが日米同盟関係ですが、先月、ワシントンで2プラス2が行われ、共通の戦略目標を定めて防衛
協力を
強化させることが確認されました。同時に、アメリカが進める米軍再編に呼応する形で
日本における基地の整理再編が行われ、日米間の役割分担も変わることが想定されます。ことしの秋ごろまでに結論を出すとのことですが、なぜ、大綱策定を一年待って同盟のトランスフォーメーションに合わせなかったのか、明快な
説明を求めます。(
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そもそも、防衛大綱を見直さざるを得なかった真の
理由は、ミサイル防衛システムの導入にあります。現に、現中期防を四年で打ち切り、新たな五カ年計画策定を余儀なくされたのは、膨大な費用を要するミサイル防衛を導入するに当たって、陸海空それぞれの予算を削減すると財務省に約束させられたからにほかなりません。
確かに、我が国の周辺には、我が国を射程距離におさめる国が複数あります。
民主党もミサイル防衛の必要性は認識をしていますが、要は、財政の制約と通常戦力とのバランスをどのようにとるかの問題であります。北朝鮮だけでも、
日本を射程におさめる弾道ミサイルは二百基以上あると言われており、新大綱の別表に書かれているイージス艦四隻、ペトリオット部隊三個高射群だけでは、到底あらゆるミサイルを撃ち落とすことはできません。
政府は、
国民に幻想を与えるべきではありません。ミサイル防衛には限界がある、すべてを撃ち落とすことはできないと、まずは認めるべきであります。その上で、何を少なくとも守ろうとしているのかを明確にすべきです。首都の中枢は当然のこととして、他の主要都市はどこを考えているのか、自衛隊や米軍の基地、重要港湾、空港、そして原発なども守る
対象と考えているのか。あるいはまた、それらの施設は新大綱の態勢でカバーできるのか、お答えをいただきたい。
同時に、新大綱でおおむね想定している十年という期間で、ミサイル防衛にどれぐらいの費用を投じようと考えているのか。次期防の中ではどの程度なのか。また、さらに次の十年でもミサイル防衛をさらに進めるべきだと考えておられるのでしょうか。アメリカは、近い将来、エアボーンレーザーを実用化させようとしていますが、
日本も導入すべきかも含めてお答えください。
中国は、
経済発展を背景に、十七年連続、軍事費の伸びは対前年比一〇%以上を記録しています。特に海軍力、空軍力の増強は目覚ましく、このまま中国の軍事力増強が続くと、特に東シナ海における我が国の領土、領海及び排他的
経済水域上空の制空権が維持できなくなるのは明らかであります。
制空権が維持できなくなれば、海洋における支配権を行使できなくなり、制空権を握った中国が中間線の
日本側でさらに天然ガスの探査、開発を行う可能性が高くなります。また、中国がみずから領土だと主張している尖閣諸島や、島ではなく岩だと指摘をしている沖ノ鳥島及びその排他的
経済水域を、中国が実効支配を試みる可能性も否定できません。
政府はそもそも、
日本の領土、領空、領海、排他的
経済水域を実効支配し続ける意思を持っているのでしょうか。仮に中国が
日本の主権を侵した場合、看過せずに毅然とした態度をとる確固とした意思があるのでしょうか。あるいは、現在の戦力と次期防、新大綱をベースとする防衛力
整備で、制空権を今後も維持することが現実に可能と考えているのか。三点すべてに説得力ある回答をいただきたいと
思います。(
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EUはこのたび、一九八九年の天安門
事件以来続いていた対中武器輸出
禁止を、実質解除しました。EUの対中武器禁輸解除は、中台間の緊張を高めるだけではなく、我が国の安全保障にも大きな影響を及ぼすことになります。EUの中で武器の売り込みに最も熱心なのがフランスですが、近々来日されるシラク大統領に
日本の懸念を率直に伝えるべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。(
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2プラス2では日米で共同宣言が出されましたが、共通の戦略目標に、台湾海峡をめぐる問題の対話を通じた平和的な解決を促すという項目が盛り込まれました。この点に関して、
日本は具体的にどのような行動、役回りを考えているのか、それは外交的なアプローチに限られるのか、それともさまざまなシナリオを想定した軍事的なアプローチも排除しないのか、明確にお答えください。昨日、中国の全人代で採択された反
国家分裂法の見解もあわせて答弁を求めます。
私はそもそも、みずからの国はみずからで守るのが原則だと考えております。現在の
日本は、歴史的な経緯からアメリカとの同盟関係を結び、核
抑止力のみならず、敵基地攻撃能力、情報収集力など、防衛の枢要な分野の多くをアメリカに依存しています。したがって、今すぐ同盟関係を解消することは現実的ではなく、今後も日米同盟関係は必要だと考えます。
ただ、自国の安全保障を他国に過度に頼ることが、
日本の真の利益につながるのでしょうか。ある程度は、同盟国に頼らなくても自分の国は自分で守れる体制にする。そうでなければ、同盟国の行動が自国の利益につながらないときにまでおつき合いをせざるを得ず、
国民の
理解も得られずに、長い目で見れば同盟関係も弱体化していきます。健全な同盟関係を続けていく上でも、間合いは必要です。
翻って、新防衛大綱に自衛能力を高める意志が少しでも感じられるでしょうか。ほとんどが現状追認。テロの脅威が高まっているという認識も、アメリカとの間合いが足りないからこそ、
日本にもその脅威が連動して高まるというジレンマに陥っているにすぎません。
官僚答弁ではなく、総理みずからの言葉で、自衛と同盟関係のあり方に対する考え方、あるべき方向性を語っていただきたいと
思います。(
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最後に、BSE問題について伺います。
先日、ブッシュ大統領との電話会談で、アメリカ産牛肉の輸入再開について強い要請があったと承知しています。
政府の食品安全
委員会の専門調査会でも、生後二十カ月以下の牛を全頭検査の
対象外とする方向で議論が進んでいるようです。
問題の要諦は、
政府がいかに
国民に
説明責任を果たすかです。NHKの調査によりますと、輸入再開
賛成は
国民で一五%、反対は七五%に上っています。また、全頭検査支持は八四%に上っています。二十カ月以下の牛とそれ以外とをアメリカはきちんと仕分けができるのか、二十カ月以下の牛の感染確率は、ちまたで言われているように本当に低いのか、危険部位の除去をアメリカ国内では適切に行われているのか、アメリカの検査体制は
日本の基準に合致しているかなど、これらの疑問に、
政府は科学的
根拠を示し、きちんと
国民に答えると約束をしていただきたい。答弁を求めます。
ゆめゆめ、ブッシュ大統領との人間関係を優先して、
国民の食の安全をおろそかにされないことを心からお願いして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(
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〔内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇〕