○松野(信)
委員 国籍があったりなかったりということで、後からあることになったりというのは避けたい、そういうのはわからないではないんですが、ただ、その点についても今回、先ほど申し上げた東京地裁のことしの四月の判決を見ますと、やはりこの国籍法の、言うならば
立法の
趣旨、原点に返って判断をしている。そこはどういうことかというと、生まれてこられた子供さんと
日本との、国との結びつき、ここのところをやはり考えていくべきだ、
日本との結びつきがどの程度あるのかというのを考えて国籍の付与というのを考えるべきだ、このような論旨を展開しておられました。私は、これは国籍法の理念というか
考え方に沿ったもので、非常に傾聴に値するのではないか、このように考えます。
それで、現実に
法務省当局が、原則として胎児認知に限る、あるいはどうしても胎児認知できないような例外的な
ケースは
救済、そういうふうな胎児認知に限定するということで、結局、最高裁の判決が幾つか出たりするたびに継ぎはぎ的な通達で何とか、ある意味じゃお茶を濁しているというのが今の
現状ではないか、こういうふうに思います。
今
答弁の中にもありました、まず平成九年十月十七日の最高裁の判決ですけれ
ども、これは、女性の方が韓国人の方で、
日本人の夫がいたわけですが、別の男性、別の
日本人の男性との間で子供さんが生まれた、こういう
ケースですね。
それで、これは嫡出推定が働いてしまうわけですので本当の
日本人の父親というのがなかなか認知できない、こういう
状況ですので、まず婚姻している
日本人の父親との間で親子
関係不存在
確認をして、それから、その審判が確定した十二日後に認知をしたという
ケースで、まさにこれは出生後認知なんですが、これは最高裁判決の方は、「戸籍の記載上嫡出の推定がされなければ
日本人である父により胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情がある」ということで
救済をしたということだろうと思います。
そうすると、じゃ、この「特段の事情」というのは一体何だというのが次の問題に当然出てくるわけであります。それで、調べてみると、
法務省の方は、平成十年の一月三十日に第一八〇号の
民事局長通達を出しているわけですね。この
局長通達を見ますと、こういう取り扱いをしなさいということで、「子の出生後三か月以内に嫡出推定を排除する裁判が提起され、その裁判確定後十四日以内に認知の届出等がされている場合」には「特段の事情がある」と認定する、こういうことで最高裁の判決の
趣旨を踏まえてはいるわけですね。
ところが、この
局長通達の最後に、いろいろな
ケースについては「その処理につき当職の指示を求める。」つまり、
民事局長のところに具体的な
ケースの場合は持ってこい、こういう通達を出しておられます。
それから、もう一つ最高裁の判決を指摘いたしますと、これは平成十五年六月十二日の判決であります。これまた韓国人である母親と
日本人である父親が離婚ができた翌日に子供さんが生まれた。これはまた嫡出推定が働いて、離婚した父親との間の嫡出が推定されるわけですね。ところが、実は別の
日本人の男性との間の子供だったということで、やはり親子
関係不存在
確認がなされて、最高裁まで持ち込まれて、最高裁はある意味では
救済しているんですが、その
救済の理由がなかなか振るっているわけです。
すぐに裁判手続できませんで、これは子が出生してから約八カ月ぐらいしてから親子
関係不存在の裁判が確定しているんですね。約八カ月たっている。先ほどの
民事局長通達では三カ月以内というふうに言っている。今回のこの平成十五年の最高裁は、約八カ月ぐらいたっているんですが、それはなぜかというと、これは帝王切開で子供さんが生まれたので、ずっと入院で大変だったということで、自宅療養を続けておられたということで、すぐにそういう法的な手続がとれなかったので、出生から訴え提起まで八カ月余りを要したのもやむを得ない、こういうことで、これまた
救済をしているわけですね。
こういう判決が出たら、今度は
民事局長通達がまた出ているわけです。これが平成十五年七月十八日の第二〇三〇号の
民事局長通達でありまして、これについても、一定のこういう判決が出たということがあって、最後に、処理については「当職の指示を求める。」ということで、要するに、
民事局長のところに具体的な事例については持ってこい、
民事局長が判断してやる、こういうくだりです。
特段の事情があるのかないのかというようなことについては、結局、窓口では対応できないものだから、
民事局長のところに持ってきなさい、
民事局長が判断してやると。
しかし、考えてみると、国籍が与えられるか与えられないかというのは、当該子供にとっては大変な問題です。この大変な問題を、
民事局長のところに持ってこい、
民事局長が判断してやる、こういうところなんで、まあ
民事局長は偉いんだと思いますが、しかし、この子供の
ケースは特段の事情があるから、気の毒だから国籍を付与しよう、この
ケースは余り気の毒でないから国籍を与えるのはやめておこう、これはどういう基準で
局長は対応するお考えですか。