○
村上参考人 村上でございます。
本日、このように
意見陳述の
機会を与えていただき、まことにありがとうございます。私は、
株式市場に近いところに身を置く者として、きょう、いろいろな
意見を述べさせていただければと思います。
現実に、
会社を起こして以来、公開買い付けということもやってみましたし、
株主代表訴訟も現在やっております。もしくは、
株主提案も何度も出しておりまして、プロキシーファイトというようなことも現実にやっておりますので、その辺の
意見を言わせていただければありがたいと思います。
きょう、個々の法文というよりも、主に、どのようにすれば
株式市場が活性化していくのか、そして今回の
会社法にどのような物の考え方をつけ加えていただきたいかという視点に立って、四点、お話をさせていただきたいと思います。
お手元にレジュメが配付されていると思いますので、
企業統治、
コーポレートガバナンスの
必要性、それからそもそも公開
企業とはどういう
意味なのか、そして今回この
会社法でも取り上げていただいています
会社の敵対的買収への防衛策、そして
最後に、従業員が大きな
株主になるESOPという
制度について、この四点、お話を申し上げたいと思います。
まず、
コーポレートガバナンスの
必要性でございますけれども、
会社法では、私が読む限り、これは明らかに
株主が
株式会社の所有者であるというふうに読めるわけでございます。そして、
経営者に
株主が
経営を委託して、
取締役は
株主から
経営監視を委託された代理人である、そういうふうに読めると思います。
一方、
株式非公開会社におきましては、多くの場合、所有者と
経営者が一体でございます。そういう
意味では、
株主と
経営者の利害が相反することは少ないと思いますけれども、公開
企業においては、
株式市場を通じて不特定多数の
投資家が
株主となるということで、多くの場合、所有と
経営が分離をしておるわけであります。
そういう
意味で、
経営が
株主の
利益に反するものとならないよう
株主が
経営者を統治する、これが
コーポレートガバナンスではないかと私は思っております。
今回、ちょっと久保利先生とは
意見を異にするかもしれませんが、
株主が
経営者を選ぶということが本来あり得べき姿なのに、
経営者が
株主を選ぶようなことになりかねない事態があったと思います。私は、これは
株主として、認めていただいては困るというふうに思っておるわけでございます。
次に、公開
企業の使命、そもそも上場とは何かという点について申し上げさせていただきたいと思います。
これは選挙とよく似ていると思います。国
会議員の先生も、一人一人の
国民から選ばれて国
会議員になっておられると思います。ただし、国
会議員の先生の選挙の場合、一人一票はほぼ平等でありますが、公開
企業の
取締役の場合は、株に対してお金を出した額もしくは株数に応じて選挙権が変わってくるわけであります。そういう
意味では、多くのお金を出して多くの議決権を持った者は
取締役をより選びやすくなるということでございます。
そもそも、公開
企業は、社員と内部昇格
経営者の共同体ではないと私は思っております。中長期的な
株主価値向上を目的とする機能集団である。その結果、仮に
会社が
経営者と従業員のものであれば、よく感じますのは、国は国
会議員と官僚のものではないかというのと同じようなことになってしまう、それはおかしい。国は
国民のものであるというふうに思いますし、
会社はやはり
株主価値をどのように向上していくかということが重要ではないかと思っております。
もちろん、公開
企業には、顧客、従業員、取引先、地域
社会など多くの
ステークホルダーがありまして、多数の
関係者の利害を調整するということは必要であります。これもあくまで、調整をした上で、どのようにして
株主価値を中長期的に向上させるのかが公開
企業の
経営者の使命であります。
また、
経営者が
株主価値、
企業価値のエンジンだとすると、
社外取締役というのは、暴走を食いとめるブレーキになるものと思います。そういう
意味では、
株主の代表として
経営者を取り締まるのが
社外取締役の大きな役割だと思っております。そのため、先ほど久保利先生の御説明にもありましたが、独立していることということが極めて重要で、社長が全部
取締役を選ぶというのは非常におかしな状況でありまして、あくまで
取締役は
株主が選ぶものであります。そのように
商法には規定されていると思うわけであります。
そういう
意味では、健全な市場のもとでは、使命を果たさない
経営者や
企業はぜひ退場していただくというのが必要ではないかと思っております。
三つ目で、今回の
会社法のテーマにもなっております
企業防衛策ということについてお話をさせていただきたいと思いますけれども、例えば、TOBというものがかかったときに、株価が二〇%とか三〇%アップでTOBというものをかけるわけであります。もし
経営者がそれに反対するのであれば、その
経営者は、それ以上の値段の株価がつくような
経営ができるよということを立証することが大前提であると私は思っております。そういう
意味では、買収者が
企業価値を引き下げることが明確である場合以外、基本的には、
企業防衛策というのは一体何だろうというふうに疑問を感じるわけであります。
公開
企業の使命についての
社会的な合意や
株主価値向上の市場インフラストラクチャーがまだ欠けているような状況、特に独立
社外取締役が過半数を占めないような状況の中で、一体買収防衛策とは何なのか、保身ではないのかというのを強く感じるわけであります。実績のない
経営者や淘汰されるべき
企業、
経営者という方たちの保身、温存につながってはいけないと思うわけであります。
さらに、もう一点述べさせていただきますと、活力のある
株式市場や
日本経済の競争力を維持するためには、これは
商法の
改正ではございませんが、上場基準というものをよく証券取引所には考えていただきたい。
例えば、
株式を持ち合っているというのは、お互いに反対するのはやめようね、特に今回のニッポン放送の公開買い付けでは、買い付け価格が現在のマーケットプライスより低いにもかかわらず、そこに応募した
企業が多数ありました。このようなことは
日本以外の国では考えられないと私は思います。これは明らかにおかしいということであります。そのために、応じてくれたら何かを与えてくれるんじゃないかという不透明さをすごく感じるわけであります。
例えば、持ち合いの株については議決権について
一定の制限を設けること。それからもう
一つ、先ほど久保利先生もおっしゃっておられましたが、イギリス法におきましては、三分の一ぐらい公開買い付けをしてしまうと、あと全部買い取らなきゃいけないよという
法制度があります。そういう
意味では、
日本の場合は親子上場というのがいっぱいありまして、二分の一以上特定の
会社が持っていたときに、私が
株主になっても、何を提案しても通らない可能性がある。こんなおかしな上場があっていいのかというふうに思っておるわけで、これは
商法の問題ではなくて上場
規則の問題ではないかと思っております。
最後になりましたけれども、産業政策と福祉政策ということについて述べさせていただきたいと思います。
私も十数年間、産業政策を立案するような組織におりましたことから、産業政策というのは、
企業活動を促進し、その結果、雇用の増大や収益の向上を伴うことによって国が富んでいくものだというふうに私は考えております。一方、福祉政策というのは、すべての
国民が幸せに暮らせるようなセーフティーネットではないかというふうに思っております。
ただ、戦後の
日本においては、終身雇用制というような、法律には書いていないわけですけれども、
制度によりまして、産業政策と福祉政策を融合させてきた
部分があると思います。いい
部分ももちろんあります。ただし、本来政府が担うべき
社会福祉政策をあえて
企業に押しつけている
部分もあるのかなということで、これは
企業の競争にとっていかがなものかと若干思っておるわけでございます。
今後の大競争時代を迎えて、産業政策と福祉政策の両立を図るようなものがあってもいいのかなと思いますので、
最後に一点だけ、エンプロイー・ストック・オーナーシップ・プラン、ESOPという
制度について、これは
会社法で
制定するものではないかもしれませんが、今回の
会社法の
改正の一環としてぜひお考えいただければいいと思うものを御紹介させていただきます。
アメリカでは現在、ESOP、これは確定拠出年金の一類型として従業員が多くの株を持つという
制度で、ここに税制等の恩典がついております。そうすると、アメリカの場合、特に労働集約型の産業の場合は従業員が大
株主になっている、三〇パー、四〇パー持つというケースがありまして、ESOPで大体一〇%弱はアメリカのマーケットの中で持たれている、従業員が大
株主なわけです。
私も産業政策に
関係しておった人間として、当時役所にいた経験では、
企業の
経営者や従業員に株をもっと買いませんかと言ったときに、いや、こんな
会社の株、危なくて買えませんよというような方がいっぱいいらっしゃったので、違うだろう、そんなことで上場していてどうするんだというふうに思ったわけでございます。
そういう
意味では、こういう
制度をつくって、従業員や
経営者が株を持ちやすくするような
制度をぜひ御提案し、将来的な
課題として、
日本にはこれは向いた
制度だと思いますので、そういう
制度も導入していただけるといいのかなというふうに思っております。
以上でございます。どうもありがとうございました。(
拍手)