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達増委員 ゲームや
テレビは
日本の大人も好きでありまして、最近のIT
技術の進展に伴ってそういった
先端技術も利用したコンテンツの発展、
日本のゲームやアニメは
世界に通用する、いや、
世界に冠たるものだということで、そういう
日本のゲームやアニメに対する期待というものがあるわけでありますが、やはり光と影でありまして、あえて言えばゲームにせよ、アニメにせよ、これは現実逃避産業なんですね。現実逃避ビジネス。やはり、価値あるものではありましょうが、やり過ぎはよくないし、また依存症的になってしまうことは非常に危険なわけであります。
子供たちがそういったことにはまって現実から離れていく、実は大
人たちも同じような状況になっているんじゃないかと思います。
あえて警鐘を鳴らす
意味で紹介いたしますけれども、
佐藤健志さんという評論家、「正論」の三月号に「「ハウルの動く城」が物語る戦後
日本と「論理の死」」、そういう論文を書いているんですが、「ハウルの動く城」というのは宮崎駿監督のアニメで大ヒットしまして、宮崎アニメというのは
日本が
世界に誇る文化、外国で賞をとったりもしているんですけれども、実は、その「ハウルの動く城」という中身をよく見ると、ストーリーが破綻していて筋の通らぬ物語、物語の
内容的破綻、論理のゆがみが見られる。これは原作から大分離れて、だれが悪いのかよくわからない、だれのせいでいろいろな戦争とかのろいとかが起こるのか結局よくわからなくて、いろいろ苦労はするけれども、何の問題の解決にもならないというようなストーリーになっている。これが、実は「ハウルの動く城」だけではなく、その前の「千と千尋の神隠し」とか、その前の「もののけ姫」とか、それらにも
共通する問題。全体をまとめて要約すると、いろいろな戦争とか環境破壊とか、いろいろなトラブルを大
人たちが起こして、その中で
子供が苦労する、苦労はするけれども、結局、大
人たちのそういう基本的な問題構造は変わらないまま何となく物語が終わって、よかった、よかったということになってしまう、そういうところが
共通しているということなんですね。
あたかも、上の世代の勝手な行動のせいで、どんな迷惑や被害を受けようと、下の世代は恨んだり反抗したりしてはいけないというようなメッセージが盛り込まれている。そういうメッセージが明確になってきた三つの作品、その途端に映画がけた違いにヒットし始めたということを
指摘しています。
日本社会全体が上の世代の勝手な行動で世の中論理も通らない、筋も通らない、めちゃくちゃなことになってきているけれども、下の世代はそれを恨むなよ、そういう作品を大人と
子供が一緒になって楽しんで、まあこれでいいかという、それが今の
日本社会だという
指摘をしています。
そういうアニメとかゲームとかは、それ自体現実逃避なわけですけれども、そのフィクションの中ですら、フィクションとしての論理も破綻して二重の現実逃避になっている。私は、今の
日本は高度現実逃避
社会になっているんじゃないかということを言いたいと思います。
そもそも、
小泉内閣が誕生して田中眞紀子外務
大臣になったあの小泉・眞紀子
内閣が誕生したとき、私は、これは本当に現実のことなのか、悪夢ではないかと思いました。非常にリアリティーのない
内閣の誕生。その後の小泉・眞紀子
内閣の一年余りの展開を見ますと、あたかも筒井康隆さんのはちゃめちゃ
小説ですよね。まさに筒井康隆さんのはちゃめちゃ
小説のような展開でありまして、しかし、そういったことがまた
国民の高い支持を得てしまう、そういう異常事態がここ四年余りこの
日本で起きているんじゃないかということを感じております。
さて、そういったコンテンツと関連して、ハードでも、IT
技術ということがあって、
日本は携帯電話の普及率が高く、また携帯電話もどんどん性能がよくなっていて、IT
技術で
日本は非常に進んでいるという
指摘もあるんですが、これも警鐘を鳴らすために紹介します。
早稲田大学理工学部の木村忠正教授が
指摘しているんですが、実は、携帯電話が普及と言っているけれども、本当はあれを使って、銀行の取引でありますとかそういった
仕事関係に使う、またコミュニティーでの暮らしやそういった
社会的なことに活用されることが期待されていたのに、実際に携帯のiモード
サービスで主として利用されているのは、待ち受け画面配信とか着メロ配信とか、およそそういう遊びの、現実逃避型の使われ方ばかりである。そして、このiモードの電子メールが普及するにつれて、インターネットで普通のパソコンを使ったものよりも、こちらの携帯の電子メールを使って非常に簡単なやりとりをするだけのコミュニケーションの方が若い
人たちの間に浸透している。そういう
意味では、木村教授が
指摘しているのは、情報コミュニケーション
能力、情報リテラシーを育成するという
観点からは、むしろこの携帯電話の普及というのは阻害要因になっているのではないかと
指摘しています。
コンテンツの中身については、これはそれぞれのクリエーターに任せるしかないんですが、このIT
技術の活用という点については、
文部科学省でも
教育現場でさまざまな施策をやっているわけでありまして、このIT
技術が、現実逃避に流れるのではなく、きちんと地に足のついた形で
教育分野でも活用されていかなければならないと思うんですけれども、この点について伺いたいと思います。