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河井参考人 河井でございます。
二十一
世紀の
水産を考える会が何者かというのを御
承知ではないと思います。一九八二年にスタートしました。二百海里法が国連で確定したときにスタートした
任意団体なんですけれ
ども、
水産関係のいろいろな
政策提言などをしていまして、今も「
日本人とさかな」、こういう雑誌を出して、いろいろと世の中に訴えておるわけですが、何せ魚の方は余り
皆さん関心がないような感じで見ておりますけれ
ども。
せんだってといいますか、昨年の秋に、この
食育基本法の問題では我々もフォーラムを開いていろいろな議論をしてきましたので、そこにも関連させながら少し提案したいと思います。ただ、きょうは
水産に限らずいろいろなことを述べてみたいと思います。
うちの会の主張とこの
食育基本法の中に掲げられている
テーマというのはかなり一致する
部分があるというふうに我々は見ております。直接
国民の
食生活改善に国が総合的に
責任を持とう、そういう発想なんだろうと思います。これは我が国で初めてのことでして、とりわけ注目をしているところです。今まではどちらかというと、
省庁別の形になっていまして、
産業振興が中心だったように思っているところですね。
ただ、我々としても
二つの点で、きょうは時間の制限もありますから、
二つの点だけに絞って、よりよいものになるだろうと思われる点をお話ししてみたいと思います。
一つは、
基本理念が六つか七つ並んでおりますけれ
ども、いわゆる並列的で、どこかにやはりアクセントをつける必要があるんではないかというのが我々の考え方です。そうでないと、これから毎年
評価をしていくわけですね、
報告書も出すわけですから、
評価があいまいになる
可能性がある。どこに
最大の
ポイントがあるのかということになるわけです。
皆さんのお
手元に一枚紙で表が
二つあるのを見ていただきたいのですが、ちょっと欧米のケースを
参考にして見てください。これは
内閣委員会の方からいただいた赤い資料にも載っていたものなんですけれ
ども、私
どもの方で、対照的に見た方がわかりやすいのではないかということでまとめてみました。
実は、ここには四カ国出ているわけですが、
アメリカ、イギリス、ドイツの三カ国は、肥満及び
虚血性心疾患死亡率が高まったこと、これが
食育に力を入れようというきっかけになったんですね。そこがもう
最大の
ポイントになってきています。例えば、
アメリカの場合、
虚血性心疾患死亡率というのは十万人中百八十三人という数字が出ておりますが、
日本はちなみに五十七人なんですね。ですから、三倍以上のそういうあれがあって、
日本はその点、我田引水じゃないですけれ
ども、
魚食の効果が出ているのかなというようにも感じているところです。
ところが、おもしろいのは
フランスでして、
フランスは実は、もうどんどんいろいろなファストフードなどが入ってくる中で、
子供たちの
味覚が減退しちゃっているんですね。味がわからなくなってしまった。これはやはり
フランス料理の
危機であるというところで、どうしても
味覚を復活させる、そういうことを
テーマに考えなければいけない、そういうことで
食育にずっと
予算をかけているわけです。
では、一体、
日本は何を重点にすべきかということで考えてみると、
日本は、食問題で
最大の弱点というのはやはり
食糧自給率なんですね。この下の表二というところにいろいろな
項目別の
自給率を比較しておきましたけれ
ども、先進国中最低である。これが今まで長寿国をつくってきた和食離れというものを起こしている。ここに食文化の後退という問題もあります。
そして同時に、CPFの
栄養バランスが崩れてきている。このCPFというのは炭水化物、脂肪、たんぱく質のことですけれ
ども、これが
世界で一番バランスがとれているのは
日本だと言われていて、諸
外国が
日本食というのを見直したというそのきっかけになったわけです。それが今崩れてきていまして、いわゆる脂肪がふえて炭水化物が減ってきたという欧米型になってきてしまっているということなんですね。
もともと、
日本人の生理機能というのは欧米とは違うということがよく言われます。これは歴史の中でつくられてきた消化管の
状態が違うというような、そういうような民族的な特徴もあって、やはり欧米食というのは余り合わないというのが実態だと思います。そういう点で、ぜひこれは、やはり輸入に頼らない
日本人の食事というのを構築していく必要があるんじゃないんだろうか。
同時に、輸入依存というのはほかにも欠点がありまして、
一つは、御
承知のようにアフリカなどの飢餓民族、こういった
人たちが片方にいるわけですから、お金に飽かせてどんどん輸入して飽食の民でいるんではなくて、本当に実質的な
食生活、
食育をやる必要があるんじゃないだろうかなというふうに思います。
さらには広域流通、今貿易もそうですけれ
ども、国内でも広域流通などといっていろいろなものが流れていますが、これは
環境破壊のもとにもなるし、地球温暖化の遠因にもなっていくということだと思います。
私は、そういうことを考えると地産地消こそが、
自給率を上げることにもつながるし、食文化を促進することにもつながるし、健康にもよいし、
環境にもよい。そういうことを、やはり
基本理念の大きな柱として考える必要があるのではないかなと思います。
二点目、実は、これを実行する場合、とかくスローガン倒れになる
可能性がある。仏つくって魂入れずじゃありませんけれ
ども、とりわけ
基本法というと割合理想論が述べられるんですけれ
ども、
基本計画になって、五年目の見直しぐらいになるとだんだんそこが崩れてくるというのがよくある中身だろうと思います。
これは、
食料・
農業・
農村基本計画のところで
先ほどもお話ありましたけれ
ども、
一つは、安全、安心と言っていたのが、安心を削ってしまって安全だけでいいというような話になりました。この
食育基本法にも安全と安心という言葉は出ています。ですから、そういう問題であるとか、あるいは
先ほどの生産額ベースの
自給率などという、ちょっと普通には考えられないようなことが起こるような、こういうことがあります。これらはやはり生産者中心、
産業中心の物の発想がそういうものにつながっていくんだと思うんですね。
安全、安心の問題で、安心を取っていいという消費者はほとんどいないというふうに思います。あるいは、生産額ベースの
自給率ということでメリットがあるのはやはり生産者の側だと思うんですね。そういう点では、今度の
食育基本法はそういうごまかしは許されない。なぜならば、国が直接
国民、消費者に
責任を負うという、そういう今度の
食育基本法ですから、生産者側には有利であるけれ
ども消費者側には不利な、そういう物の発想というのは許されないんだろうというふうに思います。
そういう点で、今度の
食育基本計画ができた後の問題をぜひお考えいただきたい。ここには
食育推進会議というものが提起をされているわけですけれ
ども、私らは、これを思い切って民間のものにして、そして議論を公開制にする。必要ならば、
委員を公募して選挙もして、公開制をとれば、いわば
食育国会だとかあるいは
食育議会とか、それに匹敵するような、そんなイメージのもので構成すればごまかしのチェックがきいてくるのではないだろうかな、そんなふうに考えております。
やはり、この
食育基本法は、この文面どおり本気にやればかなり大きな価値のあるものだと思いますので、ぜひそういう点で、本当に理想が現実とマッチしていくような、そういう仕組みをつくっていただきたい、そんなふうに思っている次第です。
時間ですので、私の方からは以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。(
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