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近藤(洋)
委員 私は当時まだ小学生でしたから記憶はないんですけれども、ただ、改めて読みまして、これはすごいんですよ。昭和四十七年六月に初版が発行されて、手元にあるのは昭和四十七年、同じ年の十月ですけれども、十七版。四カ月間で十七の版を重ねた大ベストセラーですよね。
中身を見ますと、本当にダイナミックな内容であります。そして、「
日本列島改造論」はさまざまな政策提言をしておりますが、このあんこが、中心の目玉の政策が実は工業再配置計画になっているのであります。実は、ゴーストライターと言われている人が、これは個別名は別として、経産省の当時の幹部の方がかかわったという話もありますから、いずれにしろ、工業再配置計画というのが実はこの「
日本列島改造論」の目玉の政策の
一つなんです。
ちょっと抜粋を資料のところに書いておりますけれども、資料五ですけれども、「「
日本列島改造論」田中角栄著」のところに「工業再配置で描く新産業地図」「過密と過疎の同時解決」ということで、「
日本列島を現在よりももっと豊かで、公害がすくなく、住みやすい国土に改造することは可能である。(略)私のいう工業再配置は、太平洋ベルト地帯への工業立地の流れをくいとめ、さらに超過密都市から地方に向けて工業を積極的に移転させるところに新しいねらいがある。いいかえれば、都市機能の一部である工業生産を東京、大阪などから追出し、これを全国的な視野に立って再配分するわけである。」略しますが、後半のところの
最後の段落です。「通産省と農林省は」「農村
地域工業導入促進法をつくった。こんどは、それをさらに一歩すすめて工業再配置促進法ができた。(略)「月給が半分でもいいから父さんが家にいてほしい」という出かせぎの悲劇は、このようにしてはじめてなくすことができる。」のであるというふうに書いているんですね。
これは、この当時はなかなか立派なことですよ。しかも、月給が半分でもいいからお父さんが家にいてほしいという農村地帯の当時の出稼ぎの、私も東北人ですから、この気持ちというのは非常に何となく心が打たれるような
部分もあるんですが、この当時は、確かにそれなりに、その趣旨に添ってこの法律がどんとでき上がるわけです。そして、全国総合開発計画も田中角栄さんがどんとつくって政策の体系ができるんですが、あれから三十三年であります。
当時、公害問題があったから、迷惑料というような、工場が来ることは迷惑だということも含めて、この補助金体系ができ上がっているんですね。ところが、今や工場誘致で迷惑だなんて思う自治体はほとんどないですよ。そもそもないということ。迷惑施設でないという、時代も変わったし、実際、三十三年前と比べて今はさま変わりであって、東京、大阪は逆に言えば、副
大臣は横浜ですから、横浜なんかも工場がなくてむしろ困っているんじゃないですか、逆にどんどん出ていって。横浜から出すという時代でもないんですね。時代は大きく変わっています。
しかも、この実績を見ましても、本来、黒地の、
日本地図でいうところのこの黒い
地域の東京、大阪からほかの全国に移転させたケースというのは、平成十五年と十六年で一件も採択されておりません。一件もないんです。全部、増設とかそういう別の用途の形で使われている。本来の使われ方が今されていないんです、この補助金は。
さらに言えば、受け取った自治体がこれは非常に偏っているんですね、この補助金。ちょっと口頭で申し上げますけれども、平成十四年度までで見ますと、京都府の福知山市が十九回、十三回は鳥取、高岡、千歳です。ちなみに、これは申し上げますと、福知山は京都の谷垣財務
大臣のお地元であります。鳥取市は細田官房長官のお地元であります。富山の高岡は綿貫衆議院議員……(発言する者あり)失礼しました。大変失礼しました。北海道の千歳は町村さん、千歳市も一部入っているはずでございます。石川県の根上町というのが十二回、これは森
先生でしょうか、ちょっと確認をしなきゃいけませんが、森喜朗
先生。これは町で、森喜朗
先生というのが十二回。非常に偏りが
指摘されています。三千ある市町のうちの千程度ということ、今まで交付を受けたのが。そういう偏った配分もされている。
しかも、これは電源
地域でないんです。先ほど電源
地域とおっしゃったけれども、重複しているところが。全然違うんじゃないですか。しかもその内容は、これも一部に非常に
意味のない使われ方をしているのではないか。工場から十キロ離れた地点に研修所をつくられたりとか、これはいろいろなことがマスコミでも一部かつて
指摘をされたことがあるということでございます。
こういった制度というのはもはや必要ないのじゃないかと思うんですね。新しい工業再配置という思想は大事であるし、思想というか、
地域に分散をしてそれぞれ産業クラスターをつくるということは、これは我が国にとって重要でありますが、この産業再配置補助金というのはもはや歴史的な役割をほとんど、この法律に基づいては終えてしまったのではないか。しかも、このお金の使い方も、電源特会というところから使う必要は全くないのではないか。補助金のあり方を、私はあえて言います、これは廃止したらいいんじゃないかと思うんですね、補助金自体を。この補助金自体は少なくとも一回リセットするべきだと思うんですね。リセットして、その上でもう一回再構築するということが必要だと思います。
あえて言えば、「
日本列島改造論」の四十七年にできた工業再配置法、これをずっと続けてきた、三十三年も、いつまでも田中角栄さんの残像に引きずられたこの工業再配置計画、
経済産業省は一体この間何をしてきたんだとすら思うわけですよ、この法律に引きずられてきたこと自体が。この法律の廃止も含めて検討すべき時期に来ているということを御提案したいと思うんですが、ここは
中川大臣、いかがでしょうか。御見識を伺いたいと思います。