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沓掛哲男君 どうも、日銀総裁、ありがとうございました。どうぞ退出されて結構ですから。
そこで次に、(発言する者あり)
委員長、
委員長なのか。ごめんなさい。済みません。
次に、
我が国の発展の基盤施策について
お尋ねしたいと思います。
我が国がこれから安定して持続的にずっと成長していくための一番基本的な、基礎的なもので何が必要かということについて、これは私が言うんではなくてアメリカの人が言われたんです。ちょうど今から十年ほど前、ローレンス・サマーズ、サマーズさんといわれて、当時クリントン
政権の
財務長官もされ、ハーバード大学の学長をされた方ですが、こういうふうに言われております。
日本にとって大事なことが二つある。
一つは、創造力豊かな人材の育成を、怠っているというわけじゃないんですけれ
ども、十分ではないよと、しっかりしなきゃ駄目よと。もう
一つは、資本市場の育成がすごく後れている。これを、しっかりしない。この二つをやらないとやがて
日本にいわゆる経済、いろんなもので、まあ隘路なり、そういうものが出てきますよということをこのサマーズさんがおっしゃっています。
そのことで、
一つは、創造力豊かな人材をどうしてこれから培っていくのかということについては
文部科学大臣に
お尋ねしたいし、資本市場の育成については、これは
金融大臣にお願いできるのかと思いますが、その前に私の一説を述べたいんです。
なぜ創造力豊かな人材が必要かというと、お隣の中国はもう産業基盤が猛烈な勢いで発展しております。例えば先ほど
総理言われた高速道路ですけれ
ども、
日本は四十年掛かって七千キロしか供用できませんが、あの国はわずか二十年で三万キロの供用をいたしております。
昭和五十九年のちょうど春休みで、当時水野清建設
大臣と私、道路
局長でしたが、二人で、李鵬首相、当時副首相でしたけれ
ども、公共事業担当
大臣に招かれて、中国の高速道路をどうして造るかということの指導に来てほしいというので行ってまいりました。本当にこの二十年で三万キロができるとは思いませんでした。そのほかいろんなもの、例えば三峡ダムがいよいよ貯水を始めました。その貯水量というのは、
日本のダムの全貯水量の二倍もあるんですよ。そして、
一つのダムで水力発電量は千八百四十万キロワットとか、いろんな面ですごい勢いです。
そういう中国がいて、それよりも
日本が常に優位とは申しませんけれ
ども、豊かであって、そのためにはやはり
科学技術の振興というのが何よりも大切だというふうに思います。その
科学技術の振興については、
我が国は余り適した国ではございません。なぜかというと、いわゆる知的財産の価値が極めて低いんです、みんな優秀ですから。みんな優秀ですから、ある人がすばらしいことを考えて何か取っても大して評価しないんですよ。
三年前ですか、島津製作の田中さんがあのノーベル賞のもらった基になるもので特許を取ったら、社長が一万円をくれたわけですね、褒賞で。そういうことで知的財産の評価が極めて低いんですよ。三共製薬の初代社長というのは、私の石川県出身の高峰譲吉という方です。いわゆるタカジャスターゼとアドレナリンを発明した人です。この人はアメリカで自分の特許を売りました。約一兆円、今の
お金で一兆円で売れたので、それで今の三共製薬を作ったんですよ。そういうふうに知的財産の価値が非常に
日本では低いので、やはり創造力豊かな人、そういう人がなかなか育ちにくいんですよ。
ですけれ
ども、今、中国その他のすごい発展に対して、
日本がこれを更に今の地位を維持向上していくにはやはりそういう方が是非必要なので、それを是非どうしたらいいのか、そういうことについて
文部科学大臣の御所見をいただきたい。
そこで、資本市場の育成なんですけれ
ども、そうして知的財産がいろいろ
日本でできました。特許の件数については
日本はアメリカに負けないぐらい知恵が一杯出ているんですよ。でも、できたものの実用化というのは、アメリカが七割、
日本は三割なんですよ。なぜか。アメリカでベンチャー企業をやろうとする、
日本でそういう新しい
科学技術を使って創業しようとした場合、これ非常に
日本ではしにくいんですよ。
いわゆるそれは資本市場が育成されていないからなんですが、そのことを非常にまたアメリカ人がうまく
説明してくれているんです。それはモジリアーニ・ミラー定理というのを作ってわざわざ
日本のために
説明してくれているんです。どういう
説明かというと、いわゆる資本市場の育成されていない
日本では、新しい事業、ベンチャー企業を始めようとすることを決めるのは銀行家ですと。そして、資本市場の育成されている国では、このベンチャー企業をやるかやらないかを決めるのは事業家ですというのです。
日本の場合は、資本市場が発達していませんから、銀行家から
お金を借りなきゃなりません。銀行家ほど保守的な人はいないわけですから、そんなものはやめとけやめとけということになるのでなかなかできない。しかし、資本市場が育成されておれば、それは銀行貸してくれないんならおれが自ら金集めるよといって集めてやれるわけですね。そのことがアメリカでベンチャー企業が物すごく発達し、それがあの国の大きな国力になっているし、創業がいわゆる廃業より多いんです。
日本は今、廃業が多くて創業が少ないわけですから、やはりこの資本市場の育成というのは欠かせない大事なことで、それは少しずつ進んではいるけれ
ども、なかなか進みません。
ちょうど十年前にサマーズさんは
日本とドイツに行ったんですけれ
ども、ドイツはそういう専門家をすぐ雇って一生懸命そういうことをやり出しました。
日本は銀行家がもう偉くて強くてなかなかいかないという実態があるんではないかなと思いますので、その資本市場の育成について、これは
金融大臣からでしょうか、よろしく御指導いただきたいと思います。