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参考人(中
進士君) 中でございます。
全国三千六十二市町村の
教育委員会の組織であります連合会を代表いたしまして
意見を述べさせてい
ただきたいと思います。
ただ、東京都の二十三区であるとか全国の十三政令指定都市であるとかという大都市は我々の組織の中には入っておりませんので、どちらかというと、しかられるかもしれませんが、弱小の市町村の
教育委員会の意向というふうに受け止めてい
ただければいいと思います。
義務教育費国庫負担がなくなったらという話を聞いたときに、一番先に私の頭に来ましたのは、果たしていい先生が来てくれるかどうかということが最大の課題でありました。いい先生が来てくれるということは、いろいろな
意味での
子供たちに対する
教育条件の整備の最たるものです。まあ人数だけ増やせばいいということではありませんが、やっぱり
子供たちにとって適切な指導者を適切な人数で配置してい
ただきたい。
現在の
制度では、もうかなり国からの補助がありますから、テレビ等で御存じだろうと思いますけれ
ども、島嶼、へき地の非常に小さな山の中の、あるいは島の
学校で
子供が三人に先生が二人というような
状況などよく報道されて見掛けられると思います。これが市町村の
負担でやりなさいということになりますと、そういう光景はまず、非常にコストが高く付いてしまいますから見られなくなると。
御存じと思いますけれ
ども、
公立学校というのは区市町村立が大半でございます。例外として、例えば東京都の都立
大学の附属
小学校というようなものが例外的でございますが、養護
学校と高等
学校は
都道府県の直営、直轄、そして
公立学校の小中
学校は市町村がその
運営を請け負っているということになりますから、ある
意味でいい先生が
確保できなくなるということは、もう市町村の死活問題と言ってもいい、
教育に対する信用の問題にかかわってくるということ、その差をどうそこのところで付けていくかということになります。
後でも
お話ししますけれ
ども、
昭和二十五年からの五年間、四年間ですか、非常に苦い思いをした経験が
教育界にはございます。私はまだ、この八年ほど後に就職をいたしましたからその直接の影響はないんですけれ
ども、小規模の
自治体で起こるのは、今申しましたように小規模の本当に一人や二人の
子供のために対する
教育が
保障できるか、また
自治体、市町村がそれに持ちこたえられるかどうかということ。
それからもう
一つは、特別支援
教育、小さな規模でも、昔の言い方で言いますと心身障害児に対する
教育、特別支援
教育と今は申しておりますけれ
ども、そのものもかなり持ちこたえられなくなりつつある。当然、
都道府県が作っている養護
学校、あるいは盲・聾・養護
学校、その他、病虚弱の
学校というのもありますが、そのほかの下部に来る特別支援を必要とする
子供たちへの対応というものは市町村にかなり実際に任されて、併設
学校であるとか普通
学校級の中に
子供たちが入り込んでいます。
そのほか、県の段階でもかなりいろいろな
意味で、待遇とかあるいは給与とかの
意味で昔は
格差があったわけですが、現在はほとんど
格差が見られません。
ただ、
都道府県の方針によって何に重点を置くかということは割と鮮明になっておりまして、お配りしました
資料を一枚めくってい
ただきますと、
資料①に「生徒指導担当教諭の配当」というのがございます。これは中
学校でございます。私は九年前まで中
学校教育の現場におりましたので、全
日本中
学校長会から実は
資料をちょっと見せてって言って最近の
資料をもらってきて本日御紹介するわけですけれ
ども、生徒指導担当教諭、中
学生の問題行動がかなりいろいろ心配されておりますが、その配当をするのが、全く配当はしていないよというところ、何学級以上、例えば十学級以上でくれるというところと十八学級以上でくれるところと、かなりの誤差があります。
これは既に幾らかの差が出てきている。これが市町村段階になりますと、生徒指導担当だけではなくて、もっと具体的な問題で幾つか問題が出てまいります。
ただ、給与ということ、今回話題になっております教職員の給与ということになりますと、現在はほとんど差がございません。
もう一枚めくってい
ただきまして、
資料の②―1というのは、現在の中
学校と高等
学校の初任給と十年目、二十年目の一覧表でございます。初任給を見てい
ただきますと分かりますように、もうほとんど差はございません。一番高いところで十九万九千何がし、一番安いところで十九万ちょっとというところでございましょうか。現在ほとんど差はない。あとは、その
都道府県の等級、号級によって昇給が違ってきますから、ある程度差は出てまいります。
ところが、私が調べました
昭和四十八年度、これは問題の二十八年度から二十年後でございますが、かなりの差が初任給ではございます。この間にいろいろ苦労をして、本日御列席の西岡先生が
大臣をされているときも随分御苦労をい
ただいたことですけれ
ども、全国の
先生方の給与がほとんど差がなくなってきたということです。初めは、おまえは何県に行くんだ、どこどこ県だと、かわいそうになと言われた
時代を私も経験しております。
ただ、この後の二十年間でほとんど差がなくなってきたと、大変有り難いことですが。それが再現される可能性というのは、今度
国庫負担法が取り払われるということで、危機的な動揺を感じております。
ただ、これはあくまでも本給でございますから、手当は別です。例えば、北海道とかに行きますと寒冷地手当とか、あるいは島嶼、へき地に行きますとへき地手当とかということがありますが、これはあくまでも手当でございますので給料やボーナスや退職金には全くかかわってこない、あくまでも本給でもってこれが決まってくる。ここの、約四十年間かかってほとんど全国的に待遇が、人的条件が同じになってきたということが言えます。
ただし、それでも
格差は
存在しております。私は東京都で
教員をやりましたから経験がありますけれ
ども、例えば
多摩地区の
学校に行きまして試験をやります。そうすると、
事務室から、先生、生徒は二百十名ですか、はい、わら半紙、予備を含めて二百十二枚差し上げますと。試し刷りは二枚分しかないわけです。これが、区内の
学校に行きますと、何枚刷ろうがミスをしようが、
子供たちのためにいい条件で試験やってくださいというような、えらい
格差がありました。これは、市町村のお金の問題です。そのほか、修学旅行費の補助の問題ですとか、給食費の補助の問題ですとか、
学校の備品、消耗品の問題に至る、県単位ではお分かりにならないような苦労がありました。
昔は、御列席の方々もお分かりだろうと思いますけれ
ども、例えば、足りないものはPTAで買ってもらうと。体育館のピアノがない、
学校の緞帳やら校長先生が朝礼、卒業式で使う円卓がない、演壇がないというと、PTAが卒業記念品とか称してお金をもらってくる、
子供たちは毎月学級費として納めるのを担任の先生が受け取ると、それで
子供たちのために使うというのはかなり長く続きました。私も覚えがございます。
ところが、今はそんなことは全くなくなりましたが、
ただ、最近の不況に伴って、教材費とか修学旅行費とか、未納者が非常に多くなって
学校単位では随分苦労しておりますし、市単位でも給食費の未納が増えてきて苦労しているということでございます。修学旅行費の補助も、
学校によっては全部出そうという東京都内の区もございました。一万円出すのがせいぜいだという市もございました。これはもう、あくまでも市町村の
教育に対する見解の問題と、それから財政の問題でございます。
それで、内容は次の
昭和二十五年以降の問題になりますが、先輩に聞きました。これを体験している先生は、大抵今が八十歳以上でないとこれは体験されていないわけですけれ
ども、泣き落とされたと言うんですね。例えば蚕でもってもっているような村は、今、村に金がないから少し待ってくれというようなことが何回かあったという話を聞きました、実際に払いたいんだけれ
ども。
あるいは、昔ありました代用
教員という、もう今では石川啄木でしか聞かないような言葉ですけれ
ども、代用
教員という
制度がありましたが。それでは、村で採用されて、四十円で採用するけれ
ども実質五円は村に寄附してほしい、そういった実態もあった。これはやっぱりやっちゃ駄目だよと、村にあるいは町にその意思はなくても、実際として払えない
状況が出てくるんだからという話を先輩がしてくれました。
また、昇格や後任の人事等、人事権をもらったとしても、その村で採用するということはまず不可能。恐らく現在の採用
制度は変わらないと思いますけれ
ども、人事がかなりその市町村、小さな村の内部ですから、かなり情実が動いた実態があったな、嫌だったなということを実感として申されておりました。
それから、県によっての給与等の
格差の問題は今
お話ししたとおりです。東京都は、長いこと、
昭和二十七、八年ぐらいからもう四十年代の半ばまで、私が就職をした三十三年のころまではトップだったんです。現在は、ごらんになれば分かりますように真ん中辺に落ちてしまいましたけれ
ども。定年制も県によって随分違っていた。もう五十五歳で辞めなければいけない、五十八歳で辞めなければいけない。六十歳の定年制を、これを全国統一するように何とかしてくれという働き掛けに随分苦労をしたという
お話でした。
今度は、時間がありませんので、三番に移ります。もう既に
一般財源化されて、かなり苦労をしている
教育に関する、私
どもの
教育委員の耳に入ってくる問題です。
保育所の
運営費、これが
一般財源化された。お聞き及びと思いますけれ
ども、保育所が、公立の保育所が民間に委託されて、公立が、公が手を引いているという実態が首都圏などでもよく聞きます。それから、学童クラブ、
学校を終えてから
子供たちがすぐうちに帰ってもお父さん、お母さんがいない、いわゆるかぎっ子のためにこしらえているわけです。これも
教育委員会担当ではありませんけれ
ども、この
運営がやっぱり切られました。官から民へというけれ
ども、実際、これは実質、具体的な
学校や保護者たちが非常に苦労しているということです。
同じようなことが図書館司書やスクールカウンセラー等に言えると思います。
資料の④―1に、全国的に特別配当教諭等について何をその県で重点化しているかと。これは県の施策でございますから、これは必ず丸が付いているところはくれるわけです。これは、例えばTT、チームティーチングのためにとか、特別支援学級、身障学級補助のためにとか、免許外担任教諭、中
学校ですから、美術の先生がいない場合に、数学の先生に、一年間、仮免を取ってきて、おまえ美術を教えろと。
ただし、危険がないように、彫刻刀なんかは使わせるような指導はしないようになんというようなことがあるわけです。これがそれぞれの県によって特色があることを採用しているわけですが、現に図書館司書、これ辺りが実質的にますます採用できなくなるような、実際の授業には
関係ないからここまではいいや、スクールカウンセラーも直接授業数には当たらないからいいやと。非常に中
学校が苦労をして導入をしてきたスクールカウンセラーも、どちらかというと先細りの感があります。
このように、いろいろな
自治体が、県段階でも細かい重要事項を、これを採用したいということが行われているわけですが、これが市町村段階になるともっと細かい課題がいろいろ出てまいります。是非これをうちの地域ではやりたいと、帰国子女が多い地域だからやりたい、外国人が多いからこういうことをやりたいと言ってもできなくなる
状況が目に見えているということです。
教育委員会としては、非常に憂えていることです。
これからますます
教育はいろいろな場面で解決していかなければならないことがあります。特に、現在、
学校教育に関する改革は一応目鼻が付いて、問題を残しながらもある程度歩み始めている。問題は就学前
教育。
今、
小学校の低学年で入ってくると学級崩壊というような事実が出てきます。同じ年齢の
子供でありながら、幼稚園に行く子と保育園に行く子においてはその与えられる
教育条件が違ってくる。これでいいのかということはここ五十年間言われてきたことですけれ
ども、ところが、市町村段階ではこれが、この課題は、今、中教審あるいはその他の方策でもっていろいろ言われておりますけれ
ども、実質はむしろ無理。公立幼稚園を持っているところは、むしろ民でできるところは民にというような傾向がここの中にあります。公立幼稚園の廃止の傾向が市町村の中で随分出てきます。これから幼保一元化された総合施設ということを
教育委員会としては取り組みたいんですが、これがなかなか難しい。市長さんとよく話し合って何とかしてい
ただきたいと言っても、ないそでは振れないというのが実情でございます。
教育委員会として具体的にこれから何とかしていかなきゃいけないなというような課題がこの総合施設以外にも幾つかございますが、時間になりましたので、まとまりませんけれ
ども報告とさせてい
ただきます。
失礼いたしました。