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2004-11-11 第161回国会 参議院 文教科学委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年十一月十一日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  十一月二日     辞任         補欠選任      山下 栄一君     荒木 清寛君  十一月四日     辞任         補欠選任      那谷屋正義君     喜納 昌吉君      荒木 清寛君     山下 栄一君  十一月五日     辞任         補欠選任      喜納 昌吉君     那谷屋正義君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         亀井 郁夫君     理 事                 有村 治子君                 北岡 秀二君                 佐藤 泰介君                 鈴木  寛君     委 員                 荻原 健司君                 河合 常則君                 小泉 顕雄君                 後藤 博子君                 山本 順三君                 小林  元君                 下田 敦子君                 那谷屋正義君                 西岡 武夫君                 広中和歌子君                 浮島とも子君                 山下 栄一君                 小林美恵子君    国務大臣        文部科学大臣   中山 成彬君    副大臣        総務大臣    山本 公一君        文部科学大臣  塩谷  立君    大臣政務官        総務大臣政務官  松本  純君        財務大臣政務官  段本 幸男君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 俊史君    政府参考人        財務省主計局次        長        勝 栄二郎君        文部科学大臣官        房長       白川 哲久君        文部科学大臣官        房文教施設企画        部長       萩原 久和君        文部科学省生涯        学習政策局長   田中壮一郎君        文部科学省初等        中等教育局長   銭谷 眞美君        文部科学省高等        教育局長     石川  明君        文部科学省高等        教育局私学部長  金森 越哉君        文部科学省スポ        ーツ・青少年局        長        素川 富司君        厚生労働大臣官        房審議官     北井久美子君    参考人        東京大学名誉教        授        小柴 昌俊君        全国知事会会長        岐阜県知事    梶原  拓君        千葉大学教育学        部教授        中央教育審議会        初等中等教育分        科会教育行財政        部会教育条件整        備に関する作業        部会委員     天笠  茂君        全国市町村教育        委員会連合会副        会長        多摩教育委員        会委員長     中  進士君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○教育文化スポーツ学術及び科学技術に関  する調査  (義務教育費国庫負担制度在り方に関する件  )  (義務教育費国庫負担制度の堅持の必要性に関  する件)  (公立学校災害対策への支援策に関する件)  (三位一体改革における教育論議に関する件)  (高等教育改革在り方に関する件)  (義務教育に関する国と地方役割分担に関す  る件)  (一般財源化された教育費の取扱いに関する件  ) ○政府参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  教育文化スポーツ学術及び科学技術に関する調査のうち、義務教育費国庫負担制度在り方に関する件の調査のため、本日の委員会参考人として東京大学名誉教授小柴昌俊君、全国知事会会長岐阜県知事梶原拓君、千葉大学教育学部教授中央教育審議会初等中等教育分科会教育行財政部会教育条件整備に関する作業部会委員天笠茂君及び全国市町村教育委員会連合会会長多摩教育委員会委員長進士君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) 教育文化スポーツ学術及び科学技術に関する調査のうち、義務教育費国庫負担制度在り方に関する件を議題といたします。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席ただきまして、誠にありがとうございます。  参考人皆さんから忌憚のない御意見をお述べいただきまして、調査参考に是非させていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げたいと存じます。  次に、議事の進め方でございますが、まず小柴参考人梶原参考人天笠参考人、中参考人の順でそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただいた後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございます。  それでは、まず小柴参考人から御意見をお述べいただきます。小柴参考人
  5. 小柴昌俊

    参考人小柴昌俊君) 私、この場に参考人として呼ばれたんでございますけれども、実を申しますと、義務教育に私が関係しましたのは、ずっと昔、一年間だけ雇われ教師としてある中学で物理を教えたという経験だけでございます。ですから、あるいは私の申し上げること、ピントが外れているかもしれませんけれども、思ったことを申し上げさせていただきます。  まず第一に、この委員会、あるいは国と言ってもいいと思うんですが、国にしっかりと忘れないでいてほしいことは、国の義務教育レベルというのは、その国の中にある、たくさんある自治体の貧乏か金持ちかというようなことによって左右されるようなことがあってはならない、これだけははっきりと覚えておいていただきたいことです。つまり、国のレベルでやっていただきたいことは、その国のどこの自治体義務教育でも、少なくともこのレベルまではちゃんと行われているというふうに国で見ていただきたいと、こういうことです。それ以上にレベルを上げるかどうかというようなことは、それぞれの自治体自分たち判断でやればいいことだと私は思います。  さらに、私、思いますことは、国が一体どれだけのことをやるべきかということに関してですけれども、私は、先ほど言いました最低レベル保障ということ以上に、余りああしろこうしろとうるさいことを言っちゃかえっていけないと僕は思います。つまり、ある程度以上のことは、良くするということはそれぞれの自治体判断に任せるというのがいいんだと思います。  そこで、私、この参議院の文教委員会委員先生に是非聞いていただきたいことをここで付け加えさせていただきます。  それは、思い起こすと、我が国ドイツ連邦国も、両方ともこの前の世界大戦で負けた敗戦国ですね。敗戦国でありながら、日本ドイツも、その後、一生懸命努力して先進国に戻って、今は先進国の仲間として、まあ割に大きな顔していられるという事態になりました。  私が見ておりまして、私、政治とは全然関係ないんですけれども、見ておりまして、ドイツ政府、ばかなことも幾つかやりました。これは私も知っています。しかし、私、二つのことを先生方に聞いていただきたいと思うんです。  一つは、一つは、日本の今教育費というのは物すごく高くなっています。大学卒業までの教育費というのを比べてみますと、世界トップレベルの高さだ。ですから、日本夫婦たち、どういうことを今言っているかというと、子供一人を大学まで出すのがやっとで、二人も子供を持ったら大学をまともに終わらせるのは難しいと。これが日本の平均の家庭の言っていることだと思います。現に、日本大学地方から、例えば都会に留学させるよりもアメリカ大学へ留学させた方が安いと。それをやっている人がたくさんおります。  それでは、同じ敗戦国ドイツではどういうことになっているかといいますと、ドイツ大学授業料ゼロ、入学金ゼロ。これは大きな違いです。現に、私の知っているドイツに長くいる日本人は、年取って、生活費が安くなるからというんで、大学に籍を置いて、勉強する気もない神学科学生になっています。なぜかというと、入学金月謝ただで、納めなきゃならないのは学生組合に納める年会費百マルクだけ、一万円足らずですね。それをやると、映画、劇場は割引だし、乗り物も割引、レストランといっても安く学生費用で食える。これ、本当にばかばかしいようですけれども、国が入学金それから月謝、そういうものをただにしている。これは大きな違いだと思います、日本の学費と比べてね。  もう一つ付け加えさせていただくならば、大きな違いのもう一つは、皆さん御存じのように、ドイツではアウトバーンがもう全国土に完備されています。非常にスムーズに動いています。通行料は全部ただです。日本の交通、道路事情というのは本当にそれに比べて情けないと。  やはり僕は、両方政府のやり方がこれまで何十年間の間にそういう違いを作ってきたんだと、反省を込めて先生方にお考えただきたいと、こういうふうにお願いします。  少し時間がまだ余っているようですけれども、ここで私の発言を終わらせていただきます。
  6. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  次に、梶原参考人にお願いいたします。
  7. 梶原拓

    参考人梶原拓君) 私からは、全国知事会立場義務教育費国庫負担金についてお話をしたいというふうに思います。  お手元資料を差し上げてございますが、まず一ページ目ですね。義務教育地方自治事務ということに現行法制はなっておりまして、地方分権一括法によりまして、平成十二年度から明確に義務教育に関するすべての事務地方自治体の行うべき自治事務になっていると、これを前提お話をしたいというふうに思います。  それで、全国知事会あるいは地方団体としてこの税源移譲の対象に義務教育費をしてきた経緯といったものも御紹介したいと思いますが、お手元資料の二ページの一番上をごらんいただきますと、私ども全国知事会議におきまして熱心にこの問題を議論いたしました。今年の八月の十八、十九日にわたりまして新潟で全国知事会議の総会をやりまして、夜遅くまで議論をいたしました。  最終的なまとめとして、国の責任が大きいとか、いろいろな議論ございましたんで、アンケート調査ということをやりました。義務教育は、現行制度のように引き続き自治事務とすべきかどうか、四十七都道府県中、四十三団体現行制度のままでいいと、こういうことでございます。ただ、1の②にございますように、自治体裁量範囲を更に拡大すべきであるというのが四十七都道府県中、四十五団体でございました。  この2のところにございますが、現行制度は、先ほど申し上げましたように地方分権一括法によりまして、義務教育に関するすべての事務自治事務となっておりまして、私どもはその現行制度前提に論じてきておるということでございまして、フランスとかイタリアのように教員国家公務員にして全額国庫負担にするかどうか、これは立法論として論じていただきたいというふうに思います。しかし、我々全国知事会としては、圧倒的に現行自治事務でいいということでございます。  それから、お金の方はどうかということでございまして、六ページの一番上をごらんいただきますと、そのときの各知事意向調査をいたしました。税源移譲、いわゆる一般財源化は三十七団体総額裁量制にしてこの負担金制度維持するというのが八団体ございました。この三十七団体は、税源移譲をすべきだという考え方ですが、どうしてそういう考え方になっているかということは、同じページの3の国による一般財源化の近年の流れ昭和六十年から今日まで徐々に諸経費一般財源化される、そして負担率も下げられる、下げられた負担率から更に一般財源化が進んだということでございまして、平成十四年に総務財務文部科学大臣合意がございますが、それ以来、平成十五、十六ですね、共済関係公務災害関係あるいは退職手当児童手当、そういうものの一般財源化が進んでおるわけでございます。  それで、十ページをごらんいただきたいと思います。十ページに、先ほど申し上げました一般財源化流れがございまして、そして、先ほど申し上げた関係閣僚合意事項平成十八年度末までに国庫負担金全額ですね、全額一般財源化について所要の検討を行うということで、このことが骨太の方針二〇〇三で確認されておりまして、平成十六年度の政府与党合意の中でも確認をされておるということでございます。  それで、十一ページ、最後のページでございますが、そういうような流れの中で、一体、その義務教育関係経費八・七兆円、括弧の中にございますけれども、そのうち実質国庫負担金割合は、平成十四年度、ほぼ三分の一の三四・五%でございましたが、平成十五年度には三一・〇%、そして十六年度は、退職手当とか児童手当分、これは給料の一部と言ってもいいんですが、の一般財源化によりまして二八・八%というような状況で、もう三〇%を切るというのが現況でございます。  金が国の責任割合だと、割合を示すというお考えがございます。私ども必ずしもそうではないと思っていますが、仮に金の割合責任分担割合だとすれば、既に地方は七割強の責任を負っておると、国は三割弱の責任しか果たしていないと、これが現実でございまして、昨今、下から数行のところにございますが、この負担率を更に二分の一から三分の一に下げるというようなお話もございます。仮にそうしますと、国の実質負担率は一九・二%と、もう二割を切るということでございまして、金の割合が国の責任割合というようなお考えであれば、国の実質負担が二割を切るということをどう考えていくかということがございます。  それで、三ページに戻っていただきたいと思いますが、じゃ、国はどういうことをすべきかということですが、金以外で責任を果たすということは十分考えられるわけでございまして、機会均等化あるいは最低水準保障とかあるいは無償制度というものをどう維持するか、こういうところに力を入れていただきたいというふうに思うわけでございます。  一般財源化した場合に、この税収で足りないところが出てまいります。それは地方交付税制度で裏打ちするという考え方で私どもはおるわけでございまして、それでは信用できないと、こういう話もございますが、お手元資料の八ページにございますが、現在、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、それから学級編制教職員定数の標準に関する法律というものがございまして、国がそういう教育水準確保するという諸制度がございます。  地方交付税の方はどうかと。地方交付税法の二十条の二でございますが、文部科学大臣教育水準を低下させていると認められる地方団体に対しては勧告をすると。それに基づいて総務大臣が、八ページから九ページにわたりますけれども、必要があれば交付税全額若しくは一部を減額し、あるいは全部若しくは一部を返還させると、こういう措置がございます。  それから、五項の下に米印がございますが、不交付団体については、別途、地方自治法二百四十五条の五の規定による是正措置等がございまして、財源的な保障はこういうものによって確保されていくというふうに私ども考えておりまして、必要な地方交付税の裏打ちを必要があれば法律でお決めになればどうかと、こんなふうに私どもは思っておるわけでございます。  取りあえず、以上、説明させていただきました。
  8. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  次に、天笠参考人にお願いいたします。
  9. 天笠茂

    参考人天笠茂君) よろしくお願いいたします。  最初ですけれども、私は若いときに三年ほど小学校教師として教壇に立っておりまして、それで以後転じまして現在の職にありまして、そして現在は、多くを義務教育で従事する、そういう若い教師を送り出すという、そういう仕事をしている立場にありまして、その意味においてもこの問題については無関心ではいられないという、そういう思いがあります。  まず、それを申し上げさせていただきまして、本日は義務教育に関する諸課題、とりわけ義務教育費国庫負担制度について議論がある中、中央教育審議会教育条件整備に関する作業部会において義務教育費在り方に関する議論にかかわったことから私にこの機会が与えられたものと理解し、意見を述べさせていただくことにいたします。  まず最初に、私の立場を申し上げさせていただきたいと思いますけれども、私は、義務教育費国庫負担金を他の補助金と同列に地方税に転嫁することは、我が国義務教育制度の根幹を危うくするおそれがあり、慎重な検討が必要であるというふうに考えております。  以下、この立場から、義務教育費国庫負担制度必要性について五点にわたって述べることにしたいというふうに思います。  まず第一点目は、義務教育安定性信頼性確保という点についてであります。  義務教育は安定的に進められる必要があると考えております。義務教育を混乱させる要因をできる限り持ち込まない、これが公教育の経営に当たっての大原則と言わねばならないと考えております。また、義務教育にはこれを支持する国民存在が不可欠であり、これら国民信頼感を与えるものでなければならないと考えております。すなわち、安定性信頼性確保義務教育運営に当たって必要であります。その安定性信頼性確保に国の存在が大きく貢献していると思われます。すなわち、国の保障があること、それが国民義務教育に対する信頼感確保することにつながるものと思われます。さしずめ、義務教育費国庫負担制度義務教育が不安定化することを回避し、安定性確保し、国民からの信頼を得ることに大きな役割を果たしているものと思われます。  次に、第二点目であります。  地方分権時代の国の役割ということについて申し上げたいというふうに思います。  それは、国家戦略としての義務教育ということと、それから義務教育間における格差是正を図るというこの役割の両面があるのではないかというふうに思っております。  まず、国は国家戦略として義務教育政策を推進し、将来の国家社会発展を担う国民資質能力向上を果たす役割が期待されております。義務教育に対する国の責任という問題と考えております。義務教育は、憲法が保障する教育を受ける権利の最小限の保障としての意義を有するものであります。国は国家戦略としての義務教育政策を推進し、将来の国家社会発展を担う国民資質能力向上を図る責任を負っております。国としてこれが確保できなければ、国の責任の放棄と言えなくもないかと思います。  その一方、国はそれぞれの財政事情によって生じる自治体学校間の格差是正を図る役割も求められております。自治体学校への権限の移譲を図り、地方分権を進める中で全体のバランスに配慮した調整機能存在が注目されます。いわゆる地域格差是正の問題であります。国庫負担が廃止され、税源移譲がなされても、各都道府県税源の偏在によって四十県では従来の国庫負担金に見合う税収が得られないという試算もあります。これを穴埋めするに当たって、いろんな意味でそれを廃止した場合には問題が出てくるのではないかと思っております。さしずめ、義務教育費国庫負担制度は、この面の役割を果たすことが期待されております。義務教育学校運営を国として支え、全体としての調整を図り、全体の教育水準維持向上を目指すということがやはり大切なことではないかというふうに思っております。  以上が二点目であります。  続きまして、三点目として、歴史から学ぶということについて申し上げたいというふうに思います。  教育国家百年の計とよく言われております。義務教育は、国家社会形成者の育成、国民一人一人の基本的資質能力の涵養を図るための制度であります。しかも、この制度は決して一日ででき上がったものでないことは改めて言うまでもありません。明治五年の学制発布において、「邑に不学の戸なく、家に不学の人なからしめんことを期す。」と理念を掲げて以来、我々の先人は営々と我が国義務教育確立に心血を注いでまいりましたことは御承知のとおりであります。その義務教育歴史は、実は教育財政歴史であり、義務教育費の国による財政保障制度確立歴史でもあったかと思っております。  明治三十三年の市町村立小学校国庫補助法、大正七年の市町村義務教育費国庫負担法を経て、次第に国の負担が高まることで義務教育無償制確立した、こういう歴史があります。また、昭和の初期、経済が非常に厳しい時代にありながらも、教員給与費国庫負担を増やそうとするその取組があり、その一端が作家の城山三郎氏の「男子の本懐」に描かれております。  国と県が二分の一を負担することを明記した義務教育費国庫負担法が成立したのは昭和十五年であります。その後、戦後、シャウプ勧告により昭和二十五年に廃止されましたが、教育条件の全国的な低下、地域間格差の拡大が発生し、わずか三年で復活しております。それ以来、義務教育教職員給与費の二分の一を国庫負担する制度は、国と地方が共同して義務教育責任を負うという安定した制度として今日までその役割を果たしてきたと考えております。  このような義務教育費国庫負担をめぐる歴史から、中間まとめ、中間報告は次のような教訓が得られたとして四点挙げております。  一つは、義務教育費の中心問題は常に教職員給与費であったということ。それから、義務教育無償制完全就学の実現、義務教育水準維持地域間格差是正のため、国による義務教育費財源保障が必要であったこと。三つ目として、義務教育費国庫負担地方財政健全化にも資するものであったということ。そして、四つ目として、義務教育費財源保障制度は、地方間の財源調整制度とは別に設けられる必要があったこと等々であります。これら義務教育費国庫負担制度検討に当たって、これら教訓から学ぶべき点が多々あったのではないかというふうに思っております。  四点目として、やや観点が変わりますが、国際比較という点から、諸外国における義務教育費負担状況について述べることにしたいと思います。  まず、義務教育教職員給与費については、フランスイタリア、韓国、シンガポールなどの国においては、その全額が国が負担しております。また、ドイツのように歴史的沿革により、州政府政治上の大きな責任を負う国では、州が国に近い位置付けとなっており、教員は州の公務員となっておる。一方、先進主要国義務教育教職員給与費全額負担していないのはアメリカとイギリスであります。しかし、これらの国においても、国が積極的に関与する動きが見られます。  例えばアメリカでは、一九八〇年代に「危機に立つ国家」という政府レポートが出されたことは御承知のとおりかと思いますけれども、これをきっかけに連邦政府教育に果たす役割が大きくなってきました。ちなみに、教育費負担は、学区が四〇%、州が五〇%弱、連邦が七%となっております。  また、イギリスにおいても、サッチャー首相及びその後ブレア首相の下で、教育に国として積極的にかかわりを持っているというのはこれまた御承知のとおりかと思います。  それから第五点目、教職員の人材の確保について申し上げたいと思います。  教育は人なりと言われますが、やはり優れた資質能力を有する教職員を確保する必要があります。そのためにも、教職員給与費の財源として必要な額の安定的な確保が欠かせません。この義務教育費国庫負担制度は、教職員の質と数を全国的に確保するため、公立義務教育学校教職員給与費負担者である都道府県が人材確保法と義務標準法の下で必要とする給与費の財源を確実に保障するための制度考えます。したがって、この制度の廃止は、給与費財源の不足を来し、教職員の人材確保に混乱をもたらすものと考えております。  いずれにしても、優れた資質能力を有する教職員によって次世代を担う人材を育てることは、私どもは常に関心を払い続ける必要があると思います。やはり教育内容の水準維持、さらには子供たちの学力形成に優れた見識と指導力を有する教職員の存在を欠かすことはできず、それら優れた人材を引き付けるに当たって給与水準確保も大事な問題ということになります。すなわち、学力の形成と教職員への給与ということをもっと関心を払っていく必要があるんではないかと思っております。  その意味で、優れた資質能力を有する教職員を間断なく得られることができるか、教員養成から教員採用に連なる人材供給システムを良好な状態に保つ必要があるかと思います。有為な若者を教育界にいざなうために、教職自体の魅力とともに給与水準維持ということも大切な要素と考えており、また同時に、優れた資質能力を有する教職員が偏在することなく全国津々浦々にこれまた広く、そして厚く配置できるか、教職員の人事にかかわるシステムの運用も注視する必要があります。  それにしても、これら人材の供給をスムーズに進めていくに当たって義務教育国庫負担制度は大きな役割を果たしているものと言うことができるかと思います。  これらの点から、今後も優れた教職員の確保と供給という点からこの制度を安定的に維持していくことが肝要というふうに考えてはおります。  以上でありますけれども、なお、その中間報告等々の取りまとめに当たって、財政面とのかかわりでこの制度をなくすことによって混乱が起こるというような指摘を更に付け加えてありますので、今後御検討の際にはその点についても検討をお願いできればというふうに思っております。  以上で終わりますけれども、最後に改めて申し上げておきたい点をここで言わしていただきます。  まず、地方団体義務教育費国庫負担金の中学校分を平成十八年度までに廃止し、続いて平成二十一年度までに小学校分も廃止する案を提出し、それを受ける形で政府において検討が行われようとしていることについて強い懸念を持っております。  先ほど申しましたような、根本的な検討なしに安易に義務教育費国庫負担金を他の補助金と同列に地方税に転嫁することは我が国義務教育制度の根幹を危うくするおそれがあり、慎重な検討が必要であることを再度強調さしていただきまして、私の意見発表を終わりにさしていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  10. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) どうも先生、ありがとうございました。  最後に、中参考人にお願いいたしたいと思います。
  11. 中進士

    参考人(中進士君) 中でございます。  全国三千六十二市町村の教育委員会の組織であります連合会を代表いたしまして意見を述べさせていただきたいと思います。ただ、東京都の二十三区であるとか全国の十三政令指定都市であるとかという大都市は我々の組織の中には入っておりませんので、どちらかというと、しかられるかもしれませんが、弱小の市町村の教育委員会の意向というふうに受け止めていただければいいと思います。  義務教育費国庫負担がなくなったらという話を聞いたときに、一番先に私の頭に来ましたのは、果たしていい先生が来てくれるかどうかということが最大の課題でありました。いい先生が来てくれるということは、いろいろな意味での子供たちに対する教育条件の整備の最たるものです。まあ人数だけ増やせばいいということではありませんが、やっぱり子供たちにとって適切な指導者を適切な人数で配置していただきたい。  現在の制度では、もうかなり国からの補助がありますから、テレビ等で御存じだろうと思いますけれども、島嶼、へき地の非常に小さな山の中の、あるいは島の学校子供が三人に先生が二人というような状況などよく報道されて見掛けられると思います。これが市町村の負担でやりなさいということになりますと、そういう光景はまず、非常にコストが高く付いてしまいますから見られなくなると。  御存じと思いますけれども公立学校というのは区市町村立が大半でございます。例外として、例えば東京都の都立大学の附属小学校というようなものが例外的でございますが、養護学校と高等学校都道府県の直営、直轄、そして公立学校の小中学校は市町村がその運営を請け負っているということになりますから、ある意味でいい先生が確保できなくなるということは、もう市町村の死活問題と言ってもいい、教育に対する信用の問題にかかわってくるということ、その差をどうそこのところで付けていくかということになります。  後でもお話ししますけれども昭和二十五年からの五年間、四年間ですか、非常に苦い思いをした経験が教育界にはございます。私はまだ、この八年ほど後に就職をいたしましたからその直接の影響はないんですけれども、小規模の自治体で起こるのは、今申しましたように小規模の本当に一人や二人の子供のために対する教育保障できるか、また自治体、市町村がそれに持ちこたえられるかどうかということ。  それからもう一つは、特別支援教育、小さな規模でも、昔の言い方で言いますと心身障害児に対する教育、特別支援教育と今は申しておりますけれども、そのものもかなり持ちこたえられなくなりつつある。当然、都道府県が作っている養護学校、あるいは盲・聾・養護学校、その他、病虚弱の学校というのもありますが、そのほかの下部に来る特別支援を必要とする子供たちへの対応というものは市町村にかなり実際に任されて、併設学校であるとか普通学校級の中に子供たちが入り込んでいます。  そのほか、県の段階でもかなりいろいろな意味で、待遇とかあるいは給与とかの意味で昔は格差があったわけですが、現在はほとんど格差が見られません。  ただ都道府県の方針によって何に重点を置くかということは割と鮮明になっておりまして、お配りしました資料を一枚めくっていただきますと、資料①に「生徒指導担当教諭の配当」というのがございます。これは中学校でございます。私は九年前まで中学校教育の現場におりましたので、全日本学校長会から実は資料をちょっと見せてって言って最近の資料をもらってきて本日御紹介するわけですけれども、生徒指導担当教諭、中学生の問題行動がかなりいろいろ心配されておりますが、その配当をするのが、全く配当はしていないよというところ、何学級以上、例えば十学級以上でくれるというところと十八学級以上でくれるところと、かなりの誤差があります。  これは既に幾らかの差が出てきている。これが市町村段階になりますと、生徒指導担当だけではなくて、もっと具体的な問題で幾つか問題が出てまいります。ただ、給与ということ、今回話題になっております教職員の給与ということになりますと、現在はほとんど差がございません。  もう一枚めくっていただきまして、資料の②―1というのは、現在の中学校と高等学校の初任給と十年目、二十年目の一覧表でございます。初任給を見ていただきますと分かりますように、もうほとんど差はございません。一番高いところで十九万九千何がし、一番安いところで十九万ちょっとというところでございましょうか。現在ほとんど差はない。あとは、その都道府県の等級、号級によって昇給が違ってきますから、ある程度差は出てまいります。  ところが、私が調べました昭和四十八年度、これは問題の二十八年度から二十年後でございますが、かなりの差が初任給ではございます。この間にいろいろ苦労をして、本日御列席の西岡先生が大臣をされているときも随分御苦労をいただいたことですけれども、全国の先生方の給与がほとんど差がなくなってきたということです。初めは、おまえは何県に行くんだ、どこどこ県だと、かわいそうになと言われた時代を私も経験しております。ただ、この後の二十年間でほとんど差がなくなってきたと、大変有り難いことですが。それが再現される可能性というのは、今度国庫負担法が取り払われるということで、危機的な動揺を感じております。  ただ、これはあくまでも本給でございますから、手当は別です。例えば、北海道とかに行きますと寒冷地手当とか、あるいは島嶼、へき地に行きますとへき地手当とかということがありますが、これはあくまでも手当でございますので給料やボーナスや退職金には全くかかわってこない、あくまでも本給でもってこれが決まってくる。ここの、約四十年間かかってほとんど全国的に待遇が、人的条件が同じになってきたということが言えます。  ただし、それでも格差存在しております。私は東京都で教員をやりましたから経験がありますけれども、例えば多摩地区の学校に行きまして試験をやります。そうすると、事務室から、先生、生徒は二百十名ですか、はい、わら半紙、予備を含めて二百十二枚差し上げますと。試し刷りは二枚分しかないわけです。これが、区内の学校に行きますと、何枚刷ろうがミスをしようが、子供たちのためにいい条件で試験やってくださいというような、えらい格差がありました。これは、市町村のお金の問題です。そのほか、修学旅行費の補助の問題ですとか、給食費の補助の問題ですとか、学校の備品、消耗品の問題に至る、県単位ではお分かりにならないような苦労がありました。  昔は、御列席の方々もお分かりだろうと思いますけれども、例えば、足りないものはPTAで買ってもらうと。体育館のピアノがない、学校の緞帳やら校長先生が朝礼、卒業式で使う円卓がない、演壇がないというと、PTAが卒業記念品とか称してお金をもらってくる、子供たちは毎月学級費として納めるのを担任の先生が受け取ると、それで子供たちのために使うというのはかなり長く続きました。私も覚えがございます。  ところが、今はそんなことは全くなくなりましたが、ただ、最近の不況に伴って、教材費とか修学旅行費とか、未納者が非常に多くなって学校単位では随分苦労しておりますし、市単位でも給食費の未納が増えてきて苦労しているということでございます。修学旅行費の補助も、学校によっては全部出そうという東京都内の区もございました。一万円出すのがせいぜいだという市もございました。これはもう、あくまでも市町村の教育に対する見解の問題と、それから財政の問題でございます。  それで、内容は次の昭和二十五年以降の問題になりますが、先輩に聞きました。これを体験している先生は、大抵今が八十歳以上でないとこれは体験されていないわけですけれども、泣き落とされたと言うんですね。例えば蚕でもってもっているような村は、今、村に金がないから少し待ってくれというようなことが何回かあったという話を聞きました、実際に払いたいんだけれども。  あるいは、昔ありました代用教員という、もう今では石川啄木でしか聞かないような言葉ですけれども、代用教員という制度がありましたが。それでは、村で採用されて、四十円で採用するけれども実質五円は村に寄附してほしい、そういった実態もあった。これはやっぱりやっちゃ駄目だよと、村にあるいは町にその意思はなくても、実際として払えない状況が出てくるんだからという話を先輩がしてくれました。  また、昇格や後任の人事等、人事権をもらったとしても、その村で採用するということはまず不可能。恐らく現在の採用制度は変わらないと思いますけれども、人事がかなりその市町村、小さな村の内部ですから、かなり情実が動いた実態があったな、嫌だったなということを実感として申されておりました。  それから、県によっての給与等の格差の問題は今お話ししたとおりです。東京都は、長いこと、昭和二十七、八年ぐらいからもう四十年代の半ばまで、私が就職をした三十三年のころまではトップだったんです。現在は、ごらんになれば分かりますように真ん中辺に落ちてしまいましたけれども。定年制も県によって随分違っていた。もう五十五歳で辞めなければいけない、五十八歳で辞めなければいけない。六十歳の定年制を、これを全国統一するように何とかしてくれという働き掛けに随分苦労をしたというお話でした。  今度は、時間がありませんので、三番に移ります。もう既に一般財源化されて、かなり苦労をしている教育に関する、私ども教育委員の耳に入ってくる問題です。  保育所の運営費、これが一般財源化された。お聞き及びと思いますけれども、保育所が、公立の保育所が民間に委託されて、公立が、公が手を引いているという実態が首都圏などでもよく聞きます。それから、学童クラブ、学校を終えてから子供たちがすぐうちに帰ってもお父さん、お母さんがいない、いわゆるかぎっ子のためにこしらえているわけです。これも教育委員会担当ではありませんけれども、この運営がやっぱり切られました。官から民へというけれども、実際、これは実質、具体的な学校や保護者たちが非常に苦労しているということです。  同じようなことが図書館司書やスクールカウンセラー等に言えると思います。資料の④―1に、全国的に特別配当教諭等について何をその県で重点化しているかと。これは県の施策でございますから、これは必ず丸が付いているところはくれるわけです。これは、例えばTT、チームティーチングのためにとか、特別支援学級、身障学級補助のためにとか、免許外担任教諭、中学校ですから、美術の先生がいない場合に、数学の先生に、一年間、仮免を取ってきて、おまえ美術を教えろと。ただし、危険がないように、彫刻刀なんかは使わせるような指導はしないようになんというようなことがあるわけです。これがそれぞれの県によって特色があることを採用しているわけですが、現に図書館司書、これ辺りが実質的にますます採用できなくなるような、実際の授業には関係ないからここまではいいや、スクールカウンセラーも直接授業数には当たらないからいいやと。非常に中学校が苦労をして導入をしてきたスクールカウンセラーも、どちらかというと先細りの感があります。  このように、いろいろな自治体が、県段階でも細かい重要事項を、これを採用したいということが行われているわけですが、これが市町村段階になるともっと細かい課題がいろいろ出てまいります。是非これをうちの地域ではやりたいと、帰国子女が多い地域だからやりたい、外国人が多いからこういうことをやりたいと言ってもできなくなる状況が目に見えているということです。教育委員会としては、非常に憂えていることです。  これからますます教育はいろいろな場面で解決していかなければならないことがあります。特に、現在、学校教育に関する改革は一応目鼻が付いて、問題を残しながらもある程度歩み始めている。問題は就学前教育。  今、小学校の低学年で入ってくると学級崩壊というような事実が出てきます。同じ年齢の子供でありながら、幼稚園に行く子と保育園に行く子においてはその与えられる教育条件が違ってくる。これでいいのかということはここ五十年間言われてきたことですけれども、ところが、市町村段階ではこれが、この課題は、今、中教審あるいはその他の方策でもっていろいろ言われておりますけれども、実質はむしろ無理。公立幼稚園を持っているところは、むしろ民でできるところは民にというような傾向がここの中にあります。公立幼稚園の廃止の傾向が市町村の中で随分出てきます。これから幼保一元化された総合施設ということを教育委員会としては取り組みたいんですが、これがなかなか難しい。市長さんとよく話し合って何とかしていただきたいと言っても、ないそでは振れないというのが実情でございます。  教育委員会として具体的にこれから何とかしていかなきゃいけないなというような課題がこの総合施設以外にも幾つかございますが、時間になりましたので、まとまりませんけれども報告とさせていただきます。  失礼いたしました。
  12. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) どうも大変ありがとうございました。  以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、各参考人にお願い申し上げます。  御答弁の際は、委員長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。  また、時間が限られておりますので、できるだけ簡潔におまとめください。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 河合常則

    ○河合常則君 自由民主党の河合でございます。  十五分間時間いただきましたので幾つか質問したいのですが、四人の先生方おられますので一つか二つずつ。  委員長、四つとも全部、四人の方一遍にやらさせていただいてよろしゅうございますか。一問一答でなくてもよろしゅうございますか。
  14. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ええ、結構です。
  15. 河合常則

    ○河合常則君 はい、分かりました。  小柴先生、ノーベル賞おめでとうございました。  私、富山ですので、四十一号線から神岡へ行って高山へ行って、ノーベル街道という、田中耕一先生おられましたし、利根川先生おられましたし、小柴先生おられまして、こういうことで、非常にうれしかったと思いますし、天皇陛下御夫妻もせんだってカミオカンデ行かれました。おめでとうございました。  そこで、先生、せんだって十月二十一日の、毎日新聞でしょうか、今さっきも先生おっしゃいましたが、文科大臣に緊急メッセージを渡されまして、日本の夫婦は子供一人を大学卒業させるのに精一杯だと。これほど学費の高い国はなく、なぜこうなったかを考える必要がある。大体、子供の暗記力が最もいい年ごろにゆとり教育なんて間違いだと文部省に注文付けられましたとありました。これはやっぱり国の将来の帰趨を大きく左右する義務教育の将来像を正面から議論する姿勢、日本の国力を支えてきた教育制度の重要性を正面から訴えること、これが今非常に大事なんだというふうに思われて大臣におっしゃったんだと思います。  さらにまた、この基礎教育は、国が責任を持って国家戦略としてやるべきものだと、最低限財政面だけでもしっかり担保することが必要だというふうに思うのでございますが、実はこの基本のことについて改めてお伺いしたいというふうに思うわけでございます。  次は、梶原知事にお願いしたい、お尋ねします。  何度かお会いしましたし、上平村でのパーティー、四、五年前にも知事さんにお会いしました。僕は、中沖、この間辞められました富山県知事の後援会の副会長をしていましたので、知事さんから大変な激励を受けて、いただいて、中沖先生、中沖知事の下にいてうれしかったことを覚えておるんでございますが、まあ今日は厳しいことを知事に申し上げるようになるかもしれぬと、心を鬼にして言おうと思っておるところでありますが、よろしくお願いします。  ここは、義務教育、先ほど天笠先生おっしゃいました、フランスは国だと、イギリスだとかアメリカ地方だと言われましたけれども、四年前に地方分権一括法地方事務なのだと、だからもう流れは国から地方へ来ておるんだと、梶原知事さんそうおっしゃいました。ただし、国、憲法で定めた、憲法で国の事務議論を主張する、そんなことはおまえ憲法で定まっておるからもう地方事務行ったんだよと言うのは不勉強だという話も日経に出ていまして、これはまあひどいこっちゃなと。  義務教育費の財源は税源移譲で行うと、不足分は交付税で処置したらいいと、こうまあ先ほどそういうふうにおっしゃったわけでございますね、そういう法的根拠があるとおっしゃいましたが、税源移譲で計算するとプラスになる県は七つ、マイナスの県は四十県と。それで、プラスの県からマイナスの県に回すわけありませんから、じゃ、あと四十県の分は、四十道府県の分は交付税で処置すると。ただし、交付税そのものは、今度は財務省と総務省のせめぎ合いで両大臣いろいろやっておられますが、まあ七兆円、八兆円は地方交付税の計算では余計行き過ぎておるよと、こう財務省が言うと。そういうことになっていって、ある面では、まあ本家の息子が分家の金の使い方に文句を言っておるような感じするんですね。これはどうも、だけれども交付税は減額されていくのではないかと。  知事さんは、それはまあ交付税できちんと処置できるから、税源移譲のほかに交付税で処置できるからそれは大丈夫なんだと。交付税そのものは地方自治体の財源なんだと、地方交付税は国からもらうものでなしに地方自治体の財源なんだ、それはだからおれたちのものだよと、こうおっしゃいますが、パイそのものが小さくなるのではないかなと。そうすると、知事さんのおっしゃることは、ちょっと僕は何となく、夢とまでは申しませんが、これやってみたら駄目だったぞと、これ何とかしろという話になるのではないかという心配するんですね。  それと、世界教育重視の政策という傾向。これは先ほど天笠先生おっしゃったとおり、これはやっぱり大体国が面倒見ていくという傾向なんですね。イギリスのブレア首相さえ、今六〇%だけれども将来一〇〇%にすると言っておるんですね、国が。こういうことで、そういう中にありながら交付税全額担保できなければ、この義務教育のやり方は、幾ら地方地方事務なんだと言われていても国民や県民に納得してもらえるかなと。補助金を廃止するという、廃止すると、そして一般財源化すると、こういうことに対する提言についての法的な根拠はあるんだと言われていても、本当にこの不安、国民の不安、それから県民の不安というものは現状では払拭できないのではないかと。非常に混乱を起こしたままスタートするのではないかという気がするのでございますが、これについてお伺いいたしたいと思います。  さて、三つ目でございます。天笠先生にお願いします。  僕は、先生の話、なるほどなと思ってお聞きをしました。さすがにこの道、中教審で頑張っておられる担当の先生だなと思ったのですが、ちょっと素朴な疑問で、これとは関係ないのかもしれませんが、都道府県には教育委員会がございますよね、市町村にも教育委員会がございます。ところが、国にないんですね、教育委員会。中央教育審議会なんですね。これはまあいろんな歴史的な経緯、戦後の経緯があってこうなっておるんだとは思いますが、こういうことについて中教審では何の議論もなされていないものかどうかと。もっときちっと、本当はいかんなものなのでないかということが一つございます。  それと、まず八千五百億円、これは確保しなけりゃならぬ、守ろうではないかというような雰囲気ですから、非常にいい、大変大事なんだと。それは憲法二十六条、教育基本法の第四条、それから義務教育費国庫負担法第一条で、これはもうちゃんとやっておるんだよと。シャウプ勧告でそのとおりやってみたら失敗したから二十八年にまた復活したではないかと。この前車の轍を踏まない方がいいと、こういうものだろうと私は思いますが、いや、何よりも感じとしては、申し訳ないけど、中教審がというのか文部科学省というのか、守りだけで攻めの姿勢が足りぬのではないかなという気がするんですね。文部科学省というか、中教審でそういう議論あるかどうか分かりませんが、予算取るの下手だと思いますわ、私は、本当。  こんなこと言うのはなんですが、例えば校舎造ると。それは沖縄から北海道一律平米幾らという単価、それで補助率二分の一といったって、豪雪地帯では柱太くしなきゃならぬ、それから屋根は軽くしなきゃならぬ、きっと沖縄などでは天井低くして屋根を重たくしなきゃならぬと、こういうことになるんだと思いますよ。平米単価が違うのに一律にして、いや半分補助金出したと。実質はそれは三分の一か四分の一になっていますから、こんなことを直そうという動きはないのかなと。それは、この間、埼玉で国体ございました。国民体育大会、各県順番に回っていますよね。その際には、陸上競技場を造り直そうと、スタジアムを直そうと、いろいろな体育施設造り直そうとしますよ。それは大事なことなんだと思います。  ところが、スタジアムや、あんた、陸上競技場とかそういうのはみんな国交省の公園緑地課ですよ。文部省、補助金出したのは、これは少ないと思うんですわ。それでなかったら、どちらにも付かないものは、トラック競技場などはみんな地総債でしたよ。こんなこと考えると、本当になあと。  もう一つは、先ほど、中先生おっしゃいましたが、いや、母親クラブ、児童クラブかな、金が少なくなった、そういう話ございましたですね。  私、実は青年団も長い間やらせてもらいましたし、ボーイスカウトもやりました。それから体育協会の役員もずっとしたのでございますが、ボーイスカウトは特にずっと長い間やっていました。世界ジャンボリーも二回行きましたし、第二回の日本ジャンボリーからずっと最後の、県会議員になるまでの、北海道のジャンボリーまで全部出たのでございますが、実はガールスカウトやボーイスカウトの補助金、市町村の補助金ですよ、年間五万とか六万ですね。ところが、厚生労働省の出す母親クラブとか児童クラブの補助金というかな、随分大きいんですね。  それで、どうしてかと県会議員のときに調べたんです。ここなんかは国がちゃんとしてこういうふうになっておるんですよという。それは、使い切れぬとまでは言いませんが、何という文部省、下手やと、もっときちっと、本当にボランティアでやっておるところにきちっと手当てすべきでないかと、そんなことを実は思いました。  それは、スポーツ少年団は何となくうまくいっているみたいですが、それは、緑の少年団は農林水産省丸抱えですから、というか、農業水産部というかな、県の、各県による。ところが、それと、そのカリキュラム何かといったら、ボーイスカウトの森林愛護章を持っていっただけだから。こんなことを考えると、文部省はもっと頑張ってもらわなならぬ、もっと予算、全部を要求してくれと、こういう思いしますよ。八千五百億円守ろうというのでない、もっと前へ行ってもらいたいという気さえします。このことを天笠先生にお尋ねしたい。気持ちをお尋ねしたいと思います。  それで、こういうことを考えてですね、中先生、今度は四つ目になります、中先生、四人目で申し訳ありません。もうちょっとしか、もうちょっとだけですね。それで……
  16. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) 今から答弁もらいますから、一言言ってください。
  17. 河合常則

    ○河合常則君 あ、そうですか。  財源と人事権とを別にすると。人事権は地方にある、財源は国からというふうにやり方すれば教育活性化になると、そういうふうに思います。
  18. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  それでは、お答えをお願いします。小柴参考人
  19. 小柴昌俊

    参考人小柴昌俊君) 特にお答えということも、申し上げてしまったと思うんですけれども、私、たった一言付け加えさせてください。  皆さんが大変いろいろお調べになって、参考人のほかの方、御意見を述べられて、私、一々うなずいていたんですけれども、今まで一言もここで議論になっていないことが気に掛かっております。  それは何かというと、日本の少子化で一人っ子が大変多くなった。これは大変な教育問題ですよ。これは、一人っ子となると、親が子離れできない、子供が親離れできない。昔は五人六人の兄弟で物心付かぬうちからもまれて、それで社会に出たときどういうことを心得てなきゃならないかというのが独りでに教育されたものです。今、それが全然できてない。それで学校へ押し出しても、一体どういうふうに育っていくか。これは皆さん新聞で、若い男が小学校へ行って子供を何人も殺しちゃう、昔は考えられなかったようなことが起きているわけです。  私、このことを、この文教委員会では、これからの教育というのは本当に大変なんだと。それを何とか正していく唯一の方法は、子供たちに尊敬されるような先生をたくさん用意するということ以外に私はないと思います。ですから、先生が世の中からも尊敬される、もちろん子供からも尊敬されるというように、先生を大事にする法律考えていただきたいと思います。
  20. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  それでは、引き続きまして梶原参考人、よろしくお願いします。
  21. 梶原拓

    参考人梶原拓君) 岐阜県もノーベル賞街道、シェアしておりますので、仲良くさせていただきたいと思いますが。  先ほど申し上げましたように、私ども全国知事会あるいは六団体立場といたしましては、今、この義務教育を国の事務にするとか、先生は国家公務員にするとか、全額国庫負担にするとか、根本的な政策論を論ずるという態度ではございません。平成十二年度から自治事務になっている、それから教員地方公務員であると。  それはそれでよしという前提で、あとはお金の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、どんどんどんどん身ぐるみはがされていって、実質国の負担が三割を切っているという現状なんです。これを重く受け止めなきゃいけないと思うんですね。  そして、三大臣合意もございますし、財務省は、常に地方財政より国家財政の方が、国の財政の方が大変だと、そして補助率カットとかどんどん進めているわけですよね。私どもは、この三兆円の税源移譲という機会税収義務教育経費確保していこう、その方が安心だ、義務教育を守れると、こういう判断をしたわけなんです。  ただ税収の凹凸がございます。これは地方交付税で補完すれば十分であると。これは今の義務教の二分の一分ですね、教員の給与関係、その地元負担分の交付税総額ですね、これで全体としては賄える規模の数字であるということでございまして、それで義務教がどうしても最優先であるということであれば、地方交付税制度において法律で優先配分ということを決めていけばいいわけなんですよね。それは別の方法で保障できることなわけなんですよね。  そして、地方自治体がそのとおり使わなければ、さっき申し上げましたように、現行制度で十分必要な義務教育経費を使ってないというときにはペナルティーを掛けられるわけなんです。ですから、おっしゃるような自治体の必要な義務教育財源を確保するという方法はあるわけなんです。  今のままにしておきますと、三大臣合意もあり、そして全体の流れからして、いつ二分の一負担が三分の一になるやもしれない、そして従来のように裏付け財源も保障されないでどんどんどんどん地方にしわ寄せが来る、こういう危険を感じて、義務教育を守らなきゃいかぬということで、三兆円移譲税源移譲をきっかけにそれを先取り確保していきたいと、こういう思いでございますので、そのところを十分御理解いただきたい。  国の事務にしたらいいじゃないか、国家公務員に先生をしたらいいじゃないか、全額国庫負担がいいじゃないかと、これは一つの政策論で別途論じていただきたいんですが、我々は、現実的に現行制度、そしてこれまでの流れというものを踏まえて、義務教育を守るためにこういう我々の提案をしているということを十分御理解いただきたい。  そして、いろいろ御議論ございますが、教育レベルというものはただお金だけじゃないんです。教員資質を上げることなんです。教育は人なりというお話ございましたが、いかに教員レベルを上げるか、それにもっと国は力を入れてもらいたい、こういうことです。
  22. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  それでは、引き続きまして天笠参考人にお願いしたいと思います。
  23. 天笠茂

    参考人天笠茂君) 失礼いたします。  守る姿勢云々というような話がありましたけれども、確かにそういうところが大きな環境、社会の変化の中でどうしても後手に回る部分があるのかなというような、個人的にはそんな印象を持っております。そういう点については、やはりこう何が必要かといった場合には、二十一世紀における我が国義務教育公教育、公の教育のやっぱり在り方とか、グランドデザインというんでしょうか、そういうものをやっぱり大きく描いていくということだと思いますので、それはもちろん一省庁でもいろんな意味で努力されているというふうに私は認識しておりますけれども、もっと広いところで、もうそれを含めてそれを描き出していくという、そういうことがやはり必要なんじゃないかと思うし、例えばこういう場もその一つではないかというふうに私は理解しております。  そういう点では、いわゆる素人ですとか、いろいろ立場の違う方ですとか、そういう方々の声をいかに糾合しながら教育行政に反映させていくかという、これも今のことと重なって、やっぱり必要な課題ではないかと、こんなふうに思っております。  なお、予算云々ということについては、私はそういう意味での立場じゃありませんですので、何ともお答えをしようがないということで、失礼させていただきます。  以上です。
  24. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  それでは、引き続きまして中参考人にお願いいたします。
  25. 中進士

    参考人(中進士君) 十分お話しいただけなかったのが残念ですが、参考にして、私も考えさせていただきたいと思います。
  26. 河合常則

    ○河合常則君 終わります。
  27. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  それじゃ、引き続きまして西岡武夫君。
  28. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 本日は、小柴先生、また梶原知事天笠先生、そして中教育委員会の委員長には、御多忙のところを委員会にお越しをいただきまして、貴重な御意見をいただきましたことを、心から感謝を申し上げます。  特に、小柴先生から御指摘をいただきました幾つかの点、特に少子化における教育在り方等につきましては、私自身も真剣に受け止めて、同僚の文教委員、与野党ともに文部科学省とこの問題については話し合っていかなきゃいけないということを痛感をしているところでございます。  実は今日、わずか十五分でございますので、持ち時間が少のうございますので、本来ならば私の教育についての考え方を申し述べて、それぞれ参考人先生方の御意見を賜りたいところでございますけれども、十五分間で私が申し上げ、いろいろと御意見を賜ることは不可能に近うございますので、特に今回の義務教育費国庫負担につきまして、梶原知事全国知事会会長として大変大きな役割を果たしておられますので、梶原知事に、知事会の、全国知事会会長としてのお立場に対して質問をさせていただきたいと思います。  私の考えは先ほど天笠先生からお話がございましたお話に大体近いんでございますけれども、私は、むしろ義務教育費国庫負担につきましては、学校の先生は義務教育については全額国が給与については負担をするというのが適当であると。で、これは参考人先生方に申し上げるということではなくて、私ども議論をしなければいけない問題でございますけれども、そういう基本的な考え方を持っております。  それともう一つ、いろいろ、新聞等でいろんなことが論じられているわけでございますけれども、非常に誤解があるなと感じますのは、例えばこの問題が大きな問題になりましてから、文部科学省が先生の配置や一学級当たりの児童生徒の数などを細かく決めてきたと、もうこういったことは必要ないと、地方に任せるべきだというようなことを朝日新聞など、全国に大きな影響を与えます新聞で対談的に子供たちにこのことを説明するというような形でこういうことを述べておられますけれども、書いておられますけれども、実は、今日御出席の皆様方はもう十分御承知のとおりに、文部科学省が決めておりますのは最低の基準であって、それ以上のことについては地方自治体が思うとおりやっていただいて結構だと。もちろん、財源等いろいろな問題がございますからそう簡単なことではございませんけれども、そういう趣旨で文部科学省の基本的な基準というものが定められているということについては改めて御理解をいただきたいと思っております。  そこで、お尋ねでございますけれども地方自治が教育義務教育について責任を持つべきであると、これは基本なんだと、いろいろと新聞等で知事お話しになっておられますのを拝見しているんですけれども、大体そういう御趣旨で、地方に任せてくれればいいと、文部科学省がいろいろなことを、予算につきましてもその他いろんなことについてはいろいろ言わなくても地方に任せてくれという御趣旨のように受け止められる御発言が多々あるわけですけれども、そのように理解してよろしゅうございましょうか。
  29. 梶原拓

    参考人梶原拓君) 私は、国と地方責任をシェアしていくべきだということでございまして、丸々自治体がこのすべてについて義務教育責任を持たなきゃいけないというふうには考えておりません。  おっしゃるとおり、国がその最低水準というものを維持するために全力で頑張っていただきたいと。で、仮に一般財源化されたら、地方交付税について義務教に十分充てられるように措置をすべきであるということが一つ。それから、学級編制とかいろいろございますね、そういうのも、国として少なくともこれだけはという線は決めて、それが実現されるように国の方で御努力をいただきたいということでございます。
  30. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 私がお尋ねしておりますのは、それぞれの地方自治体がそれぞれの責任教育のことはいろいろやればいいということをこの新聞等のこの質疑応答の中では拝見をしているわけですけれども、そうであるならば、内閣から、六月でございましたか、この問題についての知事会の考え方をまとめてもらいたいという要請が、これは文書であったのか口頭であったのか知りませんけれども、あったというふうに承っております。ところが、これまでの私の記憶では、知事会が多数決で、全国知事会議意見を多数決で決定して政府意見として、知事会の意見として具申したという例はほかにございますか。
  31. 梶原拓

    参考人梶原拓君) まあいろいろ知事会の内部、意思決定をしておりますけれども、それを今回の三位一体改革のような形で政府に提出したということはございませんが、いずれにしても、多数決というお話がございましたけれども、このことをもう随分全国知事会の中でも議論をいたしました。で、多数決という結果になりましたけれども、十分論議を尽くすということが前提だということで、御承知のとおり、この義務教育問題についても、夜十二時まで議論をし、かつ翌日午前中掛けて更に議論をしたと。そして、異論がある場合はそれを付記すると、それから討論、議論の経過も公表すると、そういう前提で我々は改革案をまとめたということでございました。機械的、形式的に数で抑え込んだということではございませんし、そのことにはもう知事会内部の知事さん方から強い要請がございまして、そういうような処理はしなかったという経緯でございます。
  32. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 いや、私がお尋ねしておりますのは、これまでに多数決で知事会の意思を決定して、全国知事会として政府に対して意見を具申したという前例があるかということをお尋ねしているんです。
  33. 梶原拓

    参考人梶原拓君) いろいろ要望なんか出しております。そういう中で、その要望書なんかに異論があってという事例は今までもございますが、正式に多数決という議決を経てやったかどうか、はっきりした記録について私は確かめてございませんが、全部全員一致で全国知事会が必ずしも常に政府に対して要望書を出しているというわけではございません。
  34. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 全国知事会として三分の二の賛成がなければ、たしか内規で、私はちょっとこう読んでみたんですけれども、内規ではなかなか見付からなかったんですけれども、そういうような内規があって今回の意思決定がなされたというふうに聞き及んでいるわけでございますけれども。  そういう多数決でやられる、しかもこの義務教育費国庫負担という、正に私の意見から申しますと、国家観にもつながるような非常に大事な義務教育費国庫負担という考え方を、あえて多数決で決定して内閣に意見を具申しなければならなかったという必然性というものを私は知事会としてどこに持っておられたのか、私は非常に疑問に思っております。  そして、知事がおっしゃっているように、地方自治が中心なんだと、これはいろいろ書いておられるやつを引用しているんですけれども地方自治体に任せておけばいいんだと、国よりうまくやるよということもおっしゃっているわけです。ところが、反対した知事が、まあ十三の県が反対したともいうふうに聞いておりますけれども、ここでは十県の、この知事から提出されました資料によりますと十県の知事が反対したというふうになっておりますけれども地方自治というのは全国知事会じゃないでしょう、都道府県ですから。それをなぜ知事会であえてまとめなければいけなかったのか。これは不可思議なんです。  それと、もう時間があと二分しかございませんので、もう一つ最後に御質問したいんですけれども知事教育委員会って要らないとおっしゃっているわけですけれども、これはどういう意味なんでしょうか。私も教育委員会の在り方については考えていかなきゃいけないという、多くの問題を含んでいるというふうに私も思っております。しかし、ある新聞の対談では教育委員会なんていうものは要らないと、いずれこれはなくしていいと、廃止もというようなこともおっしゃっているわけですけれども、そこの二点についてお尋ねをいたします。
  35. 梶原拓

    参考人梶原拓君) 全国知事会としてというよりも、さらに地方団体として政府の方から意見を求められたわけですから、こういう意見もあります、こういう意見もあります、ばらばら出しておったんじゃ役に立ちません。したがって、全国知事会としての意見の大勢というものをまとめたわけでございまして、それで各県知事さんからも御要請がありまして、そのいろいろ異論があったという経過も添え、かつ反対の少数意見も添えて政府に出してあるんで、政府はそういうことも勘案しながら御判断されればいいんじゃないかというふうに思います。こちらの問題ではないと。  それから、教育委員会の問題は、先ほど河合先生でしたかお話しございましたが、なぜ国家公安委員会とかそのように教育委員会というものが国のレベルでないかということなんですね。これは行政の公平性を保つということよりも、歴史的に見ますと国家教育というものを末端まで貫徹させるための組織であったということなんです。教育の公平性とかそういうものを担保するんであれば、国のレベル教育委員会がなきゃいけないんです。その国家教育を貫徹させるという趣旨ですね、この意義はもう随分薄れてまいりました。  私は、今地元で申し上げているのは、教員の人事ですね、これは絶対に客観的な公平性を保たなきゃいけないと。だから、教育委員会というものは必要だと申し上げております。ただ、それがいつまでもそのためだけに教育委員会というものが必要かどうか、それはまあ私は疑問だと思っております。  今、先ほどお話出ましたように、教育委員会というものがどういうものだということは、戦後教育から随分もう年数も経過したわけですから、抜本的に国においても検討されるべきだと。教育の公平性を確保したいということであれば、国家公安委員会のように国のレベル教育委員会というものを設けるべきだと私は思います。
  36. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 委員長、最後に一点言ってもいいですか、あと、時間参りましたけれども
  37. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) はい。
  38. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 お許しをいただきまして、最後にもう一言申し述べさしていただきます。  知事が六団体というふうに持ち出されたんですけれども、私は全国知事会議ということで申し上げているわけで、全国知事会議意見というものが、この義務教育国庫負担につきましてまず中学校からというのも不思議な話なんで、つじつまが合わない話だなというふうに思っておりますけれども知事責任全国知事会議の、知事会の会長としての責任というのは非常に重いと思うんです、この問題に関して。  と申しますのは、いろいろ反対意見があったというのは意見を付記するというふうにおっしゃっておりますけれども、それを見るか見ないかは政府の勝手だというふうなお話ですけれども、やはり全国知事会の意思としては、義務教育費国庫負担については、これはまず中学校から手を付けて、すべて地方の方に移譲するんだという考え方が全国の知事の意思だというふうな受け止め方をされて、それが独り歩きするわけですから、その責任の重さということについては全国知事会会長としての梶原知事責任というのをもう少し御自覚をいただきたいと申し上げて、私の質問を終わります。
  39. 梶原拓

    参考人梶原拓君) 新潟の会議はテレビでもずっと生中継されております。多くの方がごらんになっておられまして、その経過は十分御存じでございます。  それで、国の方が何県はこういう制度、何県はこういう制度という一国多制度を認めるならともかく、全国でやはり制度としては一本にしなきゃいけないですね。全国知事会としても、これだけじゃなくて法律に基づいて政府意見具申しなきゃいけない、こういう記載がたくさんあるわけなんですよね。だから、内部の意思決定ルールによって知事会としての意思を決めていくということは今後も大いにあり得ると、こういうことでございます。
  40. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  それでは、次に移らしていただきます。山下栄一君。
  41. 山下栄一

    山下栄一君 西岡先生は立っていられたんですが、私は座らせて、それでよろしいですね。
  42. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) じゃ、座ったままで結構です。
  43. 山下栄一

    山下栄一君 申し訳ありません。済みません。  今日は本当にお忙しい中、それぞれを代表するお立場で当委員会で貴重な御意見をちょうだいしたこと、感謝申し上げます。  先ほど小柴先生からもお話ございました少子化問題、極めて深刻でございますし、児童虐待、フリーター問題、その他やっぱり人を育てることの重みがちょっと忘れられてきているといいますか、そういう時代性、物が豊かになればなるほど人は育てにくい、また自然環境の破壊もそれに加担している、こういう考え方を持っております。そういう意味で、教育にお金が掛かるけれどもそれを国民全体で負担しようじゃないかというドイツ在り方についても、国費ということだと思いますけれども、まあ州ですかね、ドイツの話を小柴先生にもしていただきました。  ところが、先ほど知事おっしゃったように、義務教育国庫負担、国の、これは人件費にかかわることだと思いますけれども、どんどん削られてきたと。昭和六十年からどんどん減る中で、危機感を持って地方の方は義務教育を守るために今回は提案したんだという、そのお考えが披露されたわけでございます。  確かに、教育にお金が掛かるのをどうしていくんだということ、非常に深刻なんだけれども、国全体としての優先順位はどちらかというと上がってきてないと、下がってきているということ。また、高齢者対策と比べると、少子化への、少子化対策もそうですけれども、胎児の段階から就学前の子供たち、そして義務教育の段階もそうだと思います。そして、大学までのお話をさっき小柴先生にしていただきましたけれども、特にこの少子、子供、小さい子供たち、有権者でない世代に対するお金の使い方は非常に私は力が入っていないと今も私思っております。  それで、憲法第二十六条でございますけれども、すべて国民はその能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有すると。だれが保障するんだと。それは私は知事と同じ考え方になるのかなと思いますけれども、国と地方両方でやっぱりそれを保障せないかぬという考え方に憲法は立っているんではないかと。  九兆円近い義務教育に金が掛かっている。人件費だけじゃない、建物、用地買収、その他、先ほど中教育長おっしゃいましたように、様々な市町村においても工夫しながらお金を使っている。学校図書館の司書の問題もそうかも分かりません。特別支援教育に掛かるお金もそうかも分かりません。国とか県が面倒を見てくれないところについてもきめ細かく市町村はやらないかぬ。そういうことも含めて、やっぱり国と地方両方でやっていかにゃいかぬという、財源保障は国と地方協力してやるんだということだというふうに確認したいと思います。  その上で、私、知事にちょっとお聞きしたいんですけれども、要するに税源移譲に見合う形でこの国庫負担を切るという形で出てきているわけです。ということは、知事もいろいろお考えかどうか分かりませんけれども一般財源化する。特に県だと思いますけれども、県の意向によって、義務教育国民の基礎教育への、特に教員確保のための人件費はトップに行くのかどうなるのか、優先順位がちょっと変わってくる可能性がある。ということは、現在県で行われている、県の中で行われている市町村の教育水準が現在の水準よりも下がる可能性が出てくることは間違いないというふうに思うわけです。  特に、地方の財政は今もう本当にひどい状況になっていると。先ほど天笠先生おっしゃったように、地方財源の健全化のためにも、国がやはり、教育目的に限定した国庫負担というのは大事だというふうな意味だったと思いますけれども、そういうことを、追い込まれている状況の中で、現在の市町村の小中学校教育水準は下がる可能性が出てくるのではないかと私は思うわけでございます、国庫負担を廃止することによってですね。このことについての知事の御見解をお聞きしたいというふうに思いますことが一点。  まとめて、時間の関係で、お答え願いたいと思いますけれども、同じく知事にお聞きしたいこと二点目なんですけれども、これは中教育長の方にも掛かる話でございますけれども。  地方団体の中に中先生の方の全国市町村教育委員会連合会というのが入っていないと、市町村長は入っていたと思いますけれども、そういうことも含めて、現場の、携わっておられる方々の意見が、この六団体という形の中で、教育の内容にもう大変な大きな影響を与える国の、国というか、財源保障の問題にどれだけの意見が反映されておるのかということ。  と同時に、先ほどからも何遍も言われておりますけれども、三大臣合意の中に確かに一般財源化を含めて検討と書いてあるけれども、その前に中央教育審議会検討をよく踏まえてということが書いてあると。私、これは中教審を代表していると思いますけれども、やはり教育というのは本来、これ知事おっしゃいましたように、教育の公平性、中立性ということがあって、教育というものはやはりできるだけ権力抑制的にという、教育活動は非常に重要な私は分野だったと思うわけですけれども。  そういう意味でも教育の専門家とか、その他国民を代表する、教育の観点から代表される教育審議会、また教育関係者、教育現場の、直接携わっておられる方々、特に市町村の教育委員会の考え方、こういうことが反映されない形で今回この義務教育の根幹にかかわることが主張されてしまった。そういうことで内閣も揺れ動いているというふうなことになってしまっていることについてどうお考えかということ。  それからもう一点は、この六団体の要望の中に、教育には金が掛かるから、税だけではなくて、寄附の話がちょっと書いてあったと思うんですね。企業からの寄附なんかも、公教育に対して、寄附に対してのこの税、非課税ですか、ことも含めて検討するべきだと。私、これは大事な考え方だと思いまして、国とか地方財政事情によって揺れ動くことであってはならないと。できるだけ教育、特に義務教育に対する財源は安定的にというためにも、義務教育の恒常的な、義務教育にかかわる恒常的な教育資金といいますか、これはもう本当に大事な課題だと思いまして、景気、日本の動向によって左右される税収税収だけではない、やはり国民参加でそういう企業ないしその他の団体からの寄附ということも、公教育に、恒常的教育基金の確立という観点からもこういう構想は大事なのではないかということを、これは別の観点ですけれども、感じましたので、このことを申し上げておきたいと思います。  それから、天笠先生に一点だけ、済みません。これ、知事も主張されましたように、戦後日本義務教育は基本的に自治事務だということだけども、現実はなかなか、学級編制権にしろ教員人事にしろ県中心。県が握っていて、まあ国も一部握っていて、市町村、学校設置者に、本来自治事務なのになかなかそうなっていない。これは金出してないからということもあるかも分かりませんけれども。それと、義務教育自治事務ということと国家戦略ですね。国家戦略の観点からという言葉、言葉なんですよ、私、気になるのは。この国家戦略ということになってくると、何となく、まあ戦前とは言いませんけど、国主導、国ということの、公権力主導で戦略という言葉がありますので、国家戦略という言葉のイメージとして、そういうふうなことで誤解されがちな面があるのではないかというふうに思いまして、自治事務国家戦略という言葉の関係性についての天笠先生の御見解をお聞きして、私の質問は終わりたいと思います。
  44. 梶原拓

    参考人梶原拓君) まず、教育水準が下がらないかということですが、自治体の首長としては、地域住民からの教育に対する要請非常に強うございます。それ抜きに行政をやっていくわけにいかないと思います。  根本的に、いろんな御議論聞いていますと、地方自治とは何や、何だということにもつながります。地域住民が自らの子弟の教育在り方について意見を反映させていくと。これは、地方自治の根底の問題ですね。そちらは信用しないと、国がやる、あるいは官僚がやることの方が正しいんだと、こういう潜在意識、既定観念があるような気がしてしようがないんですよ。これは民主主義の否定だというふうに思います。金の面で下がらないようにするということ、これは最低水準を守るということで、直接の負担金であろうが交付税であろうが、国の責任措置すべきだというふうに思います。  それから、教育委員会の連合組織なんかの考え方違うんじゃないかというお話ですが、これは教育だけじゃなくて、いろんな分野で縦割りの組織がありまして、三位一体改革補助金負担金の改革反対だという要望をたくさん聞いております。これはだれがそういう運動をやれと言ったのか言わないか、我々関知するところじゃございませんが、それぞれの地域で、横の連携で意見交換する限りは我々の意見と大差はございません。立場立場がございますので、我々もそれに介入はいたしません。  それから、三大臣合意とかそういうお話ございましたが、中央教育審議会意見がどうだとか。我々から申し上げれば、この二年だけでも五千億円以上のお金が国庫負担から削減されているんですよ。それから、さかのぼれば、平成十二年度から自治事務になっているんですよ。そのときに、今日も出ているような議論がなぜされていないのかですね。どんどんお金が、この負担金が減っていると、そのことを、この中央教育審議会議論されてそうなったのか、私はそこをこちらからむしろ御質問申し上げたいと思います。  それから、国の事務がいい、先生は国家公務員がいい、教育義務教育の金は国の全額負担がいいというようなお話もございましたけれども、それなれば、平成十年度から始まった地方分権一括法自治事務として明確に法律で規定した、そのときに徹底して議論が行われたのかどうかですね。義務教育は国の事務なのか地方自治事務なのか、徹底的に論議は尽くされているはずなんですよ。しかも、それが法律で決まっているわけなんですから、それを蒸し返して今度は我々が悪いようにおっしゃる方がおられますけれども、それは国会があるいは政府が決めたことなんです。それを前提に私ども議論もし、考えをまとめているわけなんですよ。自治事務になった、そして、どんどんどんどん国の助成が減っていると、そういう流れの中で、我々は義務教育をどう守るかという観点から御提案を申し上げているということでございます。  それからもう一つ、寄附の話ございました。これは非常に大事なことで、当然これは非課税にして優遇していくべきだと思います。こういうような寄附の形、あるいは労力奉仕の、ボランティアの形ですね、それで、義務教も市民の協力を得て守っていくべきだと思うんです。  ただ、問題は、そういうことで所要経費が少なくなると補助金が減るという仕組みになっているんですね、実績から外されて。これがやはり地方分権の根本的な問題の一つでもあると。努力すればするほど国の方の支援が減ると、こういう仕組みが問題なんですね。
  45. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) どうもありがとうございました。  引き続きまして、天笠参考人、お願いします。
  46. 天笠茂

    参考人天笠茂君) では、失礼いたします。  以前からこういうことを言われていたと思うんですけれども我が国は狭い国土の中に多くの人々が生活している、ひしめいて生活しているという、こういうことがよく言われ、また、事実またそういうふうに思います。そういう点では、その人、人々をどういう人々として育てるのか、人間としてどういう資質能力を持っていくのかどうなのか、やはりこれはもうこの判断を誤ると大変なことになるということを私は認識しております。そういう意味で、教育在り方というのはやはり最大の関心事であるべきだというふうに思っております。  まずはそういうことを申し上げて、そういう点ではどういう国民資質能力が必要かとか、どういう方向を選択していくべきなのかどうなのか、これは常に検討すべき点だと思いますし、そういうことを模索し、描き、提示していくという、そういう役割というのが必要だと思いますし、その多くはやはり国が担うべき点が私はあるんじゃないかと思っていますけれども。  ただし、やはり、先ほどちょっと二十一世紀の公教育云々と申し上げましたけれども、その中、単一の目標とか単一の人間像がそのまま、先ほどの話じゃないですが、貫徹して学校まで、教室まで下ろされて、それを実現するのが二十一世紀の教育在り方教育経営の在り方と私は思えないわけでして、それはかつての時代歴史の中にそういう時代もあったかと思うんですけれども、やはりそういう方向ではないんじゃないかというふうに思います。  やはり一番大切なのは、学校の、教室の中での子供教師の人間関係の中で育っていくものというんでしょうか、そこを大切にするというところがあるわけですけれどもただ、それは国とそれとは決して、何というんでしょうか、矛盾するものでもなければ、私は二者択一の、どちらのものでも、どちらかという、そういう発想ではなくて、先ほど来出ていますように、国と地方の共同ですとか、国と地方のバランスですとか、そういう中で描き出していくということが大切なんじゃないかと、こんなふうに申し上げたいというふうに思います。
  47. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  それでは、続きまして、小林美恵子君。
  48. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。  今日は、参考人皆さん、お忙しい中お越しいただいて、貴重な御意見、本当にありがとうございます。  私たち日本共産党は、この義務教育費国庫負担金制度というのは、憲法と教育基本法が定めました、国民はひとしく教育を受ける権利を有する、いわゆる教育機会均等、また義務教育はこれを無償とする、そういう立場に基づいた制度だというふうに考えています。ゆえに憲法も、もちろん教育基本法もしっかり生かすと、そういう立場から義務教育費国庫負担金制度を堅持しなくてはならないというふうに考えます。今日は、そういう立場を先に申し上げて、参考人皆さんにお伺いしたいと思います。  まず、小柴参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、先生を始め有識者の皆さん大臣に「日本の将来を憂える緊急メッセージ」というのをお出しになりました。そのメッセージの中に、義務教育費国庫負担金制度は、義務教育機会均等と教育水準維持のための制度として大きな役割を果たしてきたとあります。この点について、小柴先生からごらんになって、どんな役割かというのをもう少しお話ししていただけたら有り難いと思います。
  49. 小柴昌俊

    参考人小柴昌俊君) 私、先ほども申し上げましたように、義務教育に私、関与したことほとんどないんです。ですから、実際どういうふうに効き目があったかということを私が言うわけにいかないんですけれども、先ほども申し上げたように、私、国家というのはその国民教育最低レベル、少なくともこれだけは大人になる前に教育を受けなきゃいけないよというレベルをちゃんとできるように、財政面でも規則の面でもちゃんと保障してやるということが国家としては大事ではないかと、そういう意味で私はあの誘いに乗って共同声明をしたわけなんです。
  50. 小林美恵子

    小林美恵子君 ありがとうございます。  それで、もう一つ小柴先生にお聞きしたいんですけれども、その同じメッセージの中に、義務教育費国庫負担金制度の廃止は、それが日本の将来にどのような影響を及ぼすことになるか検証なくして、財政論を中心とする観点からのみに安易に行われることがあってはならないというふうにあります。先生御自身も先ほどのお話の中に、国の義務教育については自治体の貧乏か金持ちかで左右されることはあってはならないと。その点で、今そういう廃止、この国庫負担金制度は廃止というふうな議論の中で、今の時点で先生御自身がこれは影響を与えるかもしれないというふうに懸念されていることがありましたら教えていただきたいと思います。
  51. 小柴昌俊

    参考人小柴昌俊君) 私は、日本にたくさんある府県のどこがどのくらい金持ちで、どこがどのくらい貧乏かというのは知らないんです。知らないし、程度も分かりませんから、実際に国庫負担金義務教育に関するのをぱっとやめたときに、どの県ではどのくらい惨めなことになるかというのは全然知らないんです。ただ、心配なんです。心配だから、貧乏な県だからといって勝手に教員を減らしたりそういうことをやってもらっちゃ困りますよと、少なくとも最低限のちゃんとした教育だけは国で保障してくださいよと、そういう意味で私はあのことに賛成したんです。
  52. 小林美恵子

    小林美恵子君 ありがとうございます。  それでは次に、中参考人にお伺いしたいというふうに思います。  先ほど市町村の教育委員会のお立場から大変具体的なお話もお聞きしました。それで、一つは、お聞きしたいのは、最近、新聞報道等を見ていますと、市町村に対して、この負担制度ですね、市町村に対して三分の一あるいは五分の一の負担をというような報道もされています。これについて、一つはどうお考えになっているかということをお聞きしたいのが一点なんですね。  もう一つ続けてお伺いしますけれども、先ほどのお話の中で、この間、既に一般財源化された教育関係する予算から見た問題点ということで幾つかお挙げになりました。この間、学校教育にかかわっては旅費とか教材費が一般財源化されたと思います。そういう一般財源化に伴って、今のお立場で、学校の現場でどうなっていたかということをおつかみの点ありましたら教えていただきたいというふうに思います。
  53. 中進士

    参考人(中進士君) 市町村の負担が明確になるということ、非常に裕福な市町村はいいと思います。現にそれによって独自の教員を採用したい、育てたいというような自治体も出ておりますし、そんなのは夢物語だというような、現在の状況を何とかして確保するんだけれども、それでも足りないというような市町村、あるいは今度の中越地震によって被害を受けたような学校また町村などはその心労はもう察するに余りありますけれども、やはり大きな、先ほど申し上げたような三千以上の市町村で見れば、大半のところが三分の一の負担確保しなければいけないということで、非常に大きな重荷を背負わされるという受け止め方はしていると思います。  それからもう一点、旅費等についてですが、旅費等については今回は資料をお出ししませんでしたけれども都道府県ばらばらです。本当にばらばらです。ですから先生方、ここ数年間、本当はいろいろ勉強していただきたいんです、先生方には。もう教育改革はどこでどういう試みをやって、どこでどんないいことをやっているということ。ところが、旅費がありませんから、先生方やめてくださいとか、上限は幾らまでですというようなデータが随分出ておりますので、これは更に一層厳しくなって、現在ほとんど管外研修とか管外視察行けないで、行くんなら自分のお金で行きなさい、夏休みが一杯ありますよというような姿勢になっている。ちょっと、もう少し先生方勉強してもらいたいな、生き生き子供たちに立ち向かってもらいたいなというような気がするんですが、そういう意味でも非常に苦しくなっていることは事実でございます。
  54. 小林美恵子

    小林美恵子君 ありがとうございます。  続いて天笠参考人にお伺いいたします。  中教審のお出しになった、作業部会がお出しになりました義務教育費に係る経費負担在り方についての中間報告を読ませていただきますと、教員はもとよりですけれども学校事務職員、そして栄養職員の方々についても学校運営には必要な基幹的職員というふうにありました。その点は私も同感なんですけれども、その基幹的職員としての役割をどういうふうに評価されているかということと同時に、こういう職員ももちろん含めて国庫負担の対象に今後も堅持すべきだというふうに思いますけれども、この点、改めてお聞きしたいと思います。
  55. 天笠茂

    参考人天笠茂君) 失礼いたします。  学校の中にはいわゆる教諭という先生方のみならず、今御指摘のような事務職員の方ですとか栄養職員の方ですとか、そういう方々によって学校というのは組織されているのは御承知のとおりだと思います。  ただ歴史的に長く見てみると、事務職員の方ですとか栄養職員の方というのは後から必要に迫られて発生してきたというんでしょうか、そういうことになってきたわけで、どうしても教諭の方のところに目が、あるいは光が集まってきたというのもまた否定できない事実ではないかというふうに思います。ただ、現に学校が果たしている、あるいは期待されている役割、あるいはこれから学校が取り組まなければいけない課題を考えていくと、教諭という立場だけですべてのことが処せ得ることができないような、そういう状況に今立ち至っているんではないかと。様々な専門性を持ったそういう立場の方が共同してその教育に当たるということがこれからの学校の方向としては避けて通れないんではないかと、そういうふうに思っています。  したがいまして、そういう意味では、学校事務職員を含めて、そういう立場の方がやっぱり教諭とともに一緒に仕事ができるような、そういう環境を作り出していくということが必要なんではないかと、こんなふうに思います。  以上です。
  56. 小林美恵子

    小林美恵子君 ありがとうございました。  それでは、最後になって申し訳ありませんけれども梶原知事にお伺いいたします。  お話をお伺いしていますと、実質国の負担率といいますか、実質の負担率も結局は下がっているというふうにおっしゃっていたかなと思うんですけれども、そういう中で地方自治体としてはかなりの矛盾を抱えておられるというふうには、それは私も思います。しかしながら、義務教育費国庫負担金制度というのは、やっぱり私、憲法と教育基本法に基づいて本当に大事な制度だと思うんですけれども、その点でお伺いしたいんですけれども、この皆さんがお出しになった改革案の中にも付記意見としてこの制度を堅持すべきだという意見が出されていると思うんですね。それと知事会の、もちろん知事の、その中にそういう立場知事の方の意見があると思うんですけれども、そういう方々の意見について、梶原知事としてはどのようにお考えなのかということをお聞きしたいと思います。
  57. 梶原拓

    参考人梶原拓君) 憲法論のお話ございましたが、これはかつて平衡交付金という地方交付税のような制度があったこともあるんですね。そのときに憲法違反論、憲法違反だということになってないんです。だから、憲法の精神ということは分かりますが、憲法違反とかそういう問題には直結しないと、これは共通の意見だと思います。  それから、国家責任ということは、中央政府地方政府である我々の自治体を含めて、共同で国家として教育を守っていくと、こういうことであるわけですね。で、お金を中央政府の方で裏打ちしていくと、これも当然やっていただきたいと、こんなふうに思います。  いろいろこの全国知事会の中でも反対意見ございましたけれども、それに一々私がここでコメントするわけにいきませんけれども国家、国の事務にするというようなこととか、教員国家公務員にするとか、あるいはこの際義務教育費を全部国庫負担にするとか、抜本的な制度論にかかわってくるような議論というのは、当面、今我々の直面している課題ではないんですよね。そこのところをよく御理解をしていただくようにしておりますけれども、それぞれお立場でいろいろ御意見ございますけれども、それはそれで御意見として、私ども政府の方にそれも一緒にして提案申し上げているので、政府の方で御判断の材料にしていただきたいと、こういうことです。
  58. 小林美恵子

    小林美恵子君 ありがとうございました。  終わります。
  59. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  それでは、以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  それでは、午前の調査はこの程度にとどめまして、午後一時まで休憩といたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  60. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ただいまから文教科学委員会を再開いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  教育文化スポーツ学術及び科学技術に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として財務省主計局次長勝栄二郎君外八名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  62. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) 教育文化スポーツ学術及び科学技術に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  63. 山本順三

    山本順三君 愛媛県選出の山本順三でございます。この文教科学委員会で質問する機会をちょうだいいたしましたことを心から感謝を申し上げたいと思いますし、また、皆様方の忌憚のない、そしてまた率直な御答弁をいただければ大変有り難い、心からお願い申し上げたいというふうに思っております。  実は、午前中に参考人の皆様方からいろいろなお話を聞かせてもらいました。小柴先生、梶原先生、天笠先生、中先生、それぞれの立場での義務教育国庫負担に関する議論というものを聞かせていただいたわけでございまして、私もそのことを中心に据えながら、多分野にわたっての質疑をさせていただきたいというふうに思っております。  特に、小柴先生のお話というものは、私どもにとりまして大変印象的なお話でございました。ノーベル賞を受賞された方でありつつ、なおかつ教育がいかに大切かということを、言わば心の中から声にされておったなということをつくづくと感じました。そういった気持ちを込めて、我々もこれから教育問題にかかわっていかなければならないということを痛切に感じておるところでございます。  また一方では、梶原知事の方から、私の聞き方によるわけでしょうけれども、財政論を主体にした義務教育国庫負担一般財源化に向けてのお話があったように感じました。できれば質問もしたかったですし、本音のところを言いましたら、もし小泉総理から三兆円ではなくて二兆円の削減ということでのボールが投げ掛けられておったならば、果たしてこの義務教育国庫負担の問題がこのような形で提案されてきたのかどうか、その辺りを実は本当は聞きたかったな、こんなことも感じました。  御案内のとおり、憲法二十六条、あるいはまた教育基本法の三条ないし四条において、言わば教育機会均等であり、そしてまたその水準をいかにして維持していくか、その責任は国にあるし、その国に責任があるという裏付けというものは、正に財政的な財源の保障というものが必要だということがうたわれていることはもう御案内のとおりでございます。  しかしながら、そのような基本方針があるにもかかわらず、地方分権なりあるいは三位一体の改革、こういうふうな流れの中でこの義務教育国庫負担制度の見直しを迫られることになったということでございまして、この動向に私も大いに関心を払っておるところであります。  参考人皆さん方からもお話がございましたけれども、この義務教育というのはあくまでも国家戦略としてしっかりと位置付けをしていかなければならない、こういうふうなお話がありましたし、先進国においても、特に主要な先進国においても、義務教育に対しての考え方というものはそういった方向で進んでおるというお話もございました。  また一方では、地方分権に絡みまして、一般財源化することによりまして地方の財政力の差によってその格差が生じてくる、したがって教育機会均等が守られない、こういうふうな議論があることはもう御案内のとおりでありまして、そういったときに、全国知事会梶原知事はあのような御意見でございますが、愛媛県出身は、これ文部省の知事でありますけれども、もう反対の旗幟を鮮明にいたしまして、むしろ旗を立ててという表現がいいのかも分かりませんけれども、全面対決という形で取り組んでおるところでございました。私も愛媛県というよしみがあるわけじゃございませんけれども、やはり憲法なり教育基本法ということに観点を置いたときにこの問題は看過できない、こういうふうに思っておるところでございます。  そこで、まず最初に質問いたしますのは、地方団体が取りまとめをして以降、文部科学省としてどういうふうな経緯があったのかということについての御説明をいただき、また今後どのように取り組んでいかれるのか、まずはその基本的なスタンスをお示しをいただきたいと思います。  なお、このことに関連いたしまして、昨今新聞報道によりますと、国庫負担の率というものを二分の一から三分の一に引き下げる話が具体的に進んでいるやの報道があるわけでございますけれども、その辺りも含めて、今後文部科学省としてどういうふうな方針で進まれるのか、そのことをお伺いをしたいと思います。
  64. 塩谷立

    ○副大臣(塩谷立君) 既に山本先生始め皆さん方、参考人の御意見等をお伺いしていただいて、義務教育に関するいろんな議論をしていただいているところ、これが私どもとしては非常に大事だと思っておりまして、六団体から提案された、むしろこれは財源、財政論で終始しておりますので、正に教育はどうあるべきだという議論を徹底的にすることが我々文部科学省としては一番大事な点であると思っております。  御案内のとおり、この義務教育につきましては、憲法の要請により、知、徳、体、調和の取れた児童生徒に国民として共通に身に付けるべき基礎的資質を養うものであって、国はすべての国民に対して無償で一定水準教育を提供する最終的な責任を負っているわけでございます。したがって、義務教育費国庫負担制度は、国がその責任を全うするために制度的、財政的に保障しておるわけでございまして、地方公共団体の財政力に応じてその差があったときには、やはり全国すべての地域において優れた教員を必要数確保する、教育機会均等、そして教育水準維持向上を図るための重要な施策であると思っておりますので、この制度についてはしっかりと今後も守ってまいらなきゃならぬと思っております。  この制度については、平成十四年三大臣合意がありまして、それと同時に平成十五年の基本方針二〇〇三の三位一体改革に関する政府・与党協議会の合意により、平成十八年度末までにこの検討を行うとされております。つまり、それだけある程度時間を掛けて、我が国義務教育あるいは教育改革全般にわたってしっかりと、制度の見直しも含めて明確な方向性を出すということが大事であると思っておりますので、そういう中で、義務教育制度在り方、あるいは国と地方役割分担等々をしっかりと踏まえて、十分に検討してまいりたいと思っております。  なお、先ほど委員から二分の一から三分の一へというお話がございました。これにつきましてはいろいろ報道されているところでございますが、私どもは全くそういった考えは持っておりません。あくまで義務教育国庫負担については、義務教育における国と地方役割、そして中教審の審議における議論を踏まえて検討してまいりたいと考えておりますので、その点よろしく御承知おきをお願いしたいと思います。  以上でございます。
  65. 山本順三

    山本順三君 是非、今ほどの副大臣の決意というものをしかと文部科学省も受け止めていただいて、そしてこの問題に対しての適切な方向付けをしていただきたいというふうに思っております。  さて、この問題の背景にあるのは何かというと、私も長らくの間地方議員をしておりましたから、やはり地方分権ということについての議論、このことについては私どもも賛同するものでございますし、そのことから派生して、三位一体改革なり、あるいはこの義務教育国庫負担一般財源化というような話になったのであろうというふうに思っておりますけれども、先ほど副大臣の方からもお話ございましたけれども税源移譲というものは地方にとっては非常に響きがいい言葉ではありますけれども、現実問題は、財政力の強弱によりましてそのことが地方間の財政力の格差、あるいはそれがひいては教育格差につながっていく危険性があるということを私どももいま一度真剣に考えていかなければならない、こういうふうに思っておるところでございますし、またその裏付けとして、地方財政の一番のベースになる地方交付税の動向、このことも実は今回の問題に大きく絡んでくるというふうに思っておりまして、大変厳しい中で三位一体改革補助金が三兆円カットされるが、その分は実は財源の税源移譲三兆円に連動するものだから取りあえず出してこいという、その数字合わせ的な感覚だけではこれは処理ができない、そういう問題だろうというふうに私自身は感じております。  特に、この義務教育国庫負担金につきましては、あくまでも教育におけるナショナルミニマムということを保つためにどういうふうな国家論あるいは教育論をしていく必要があるのか。今の副大臣の御答弁のとおりでありまして、そのことをきっちりと議論した上でその方向付けというものを考えていかなければならない、こういうふうに思っておるところでございます。  そこで、もしこれ、仮にですけれども義務教育国庫負担制度一般財源化ということが決定をして、そして税源移譲、これ所得税から個人譲与税へということに相なるわけでございますけれども、そうした場合に、文部科学省としては、まずこれどのような問題が生じるのか、各地方格差が出るといういろいろな議論がありますし、私どももそれなりに勉強したわけでありますが、いま一度この場で、その影響について、どのような問題が生じるのかという点についてお示しをいただきたいというふうに思います。
  66. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 義務教育費国庫負担金が廃止されて一般財源化した場合どういう問題が生ずるかというお尋ねでございますけれども、私どもとしては、まず第一に、義務教育水準確保機会均等を確保することが国の責任であって、それを廃止をするということは国の責任放棄につながるというふうに考えております。  主要国におきましては、フランスや韓国など多くの国が教職員給与費全額負担しているわけでございますが、アメリカやイギリスなど全額負担していない国でも、近年、中央政府財源保障に積極的な役割を果たすようになっております。日本だけがこういう世界的な潮流に逆行することになるとまず考えております。  第二には、義務教育地域間格差が生ずるおそれがあるということでございます。すなわち、義務教育費国庫負担制度を廃止をした場合には、その分、税源移譲という形になるわけでございますけれども、地域間の税収格差によりまして、私どもの試算では、四十道府県で教育費の財源不足に陥り、結果として教育水準に著しい地域格差が生じるおそれがあるというふうに考えております。  このほか、幾つかやっぱり課題がございまして、例えば義務教育無償の趣旨に反すること、学校に必要な教員確保できなくなること、義務教育費の不安定化を招くこと、地方財政自体の硬直化を招くといった問題点もあると考えております。  なお、これらの点につきましては、中央教育審議会の「義務教育費に係る経費負担在り方について」という今年五月に出ました中間報告の中でも、六点に整理をして問題点を指摘をしているところでございます。
  67. 山本順三

    山本順三君 先ほどのお話のとおり、文部科学省としてはゆゆしき問題であるという、そういう考え方の下で具体的に地域間の格差が出てくるということにも言及されたわけであります。  午前中の梶原知事お話を聞いておりましても、格差が生じたら、その生じた分は地方交付税で補てんをしてもらう、これはそういうふうなことが当然であると、こういうふうなお話がございました。総務省といたしましても、この財源不足、これはしかと地方交付税で補てんする、こういうことを明言をされておるところでございます。  ただ、この地方交付税におきましては、正に今現在、三位一体改革流れの中でその総額が抑えられるということがもう現実問題として出ておるわけでございまして、後ほどの財務省への質問の中でも触れたいと思いますけれども地方の三位一体の改革による影響というものは、これ計り知れないものが現実問題あるわけでございまして、そういった流れの中で、果たしてこの地方交付税総額が恐らくや今後どんどん縮減をされていくだろう、それを止めることは不可能に近いのだろうというふうな、そういうことを私自身考えておるわけでございますけれども、先ほど申し上げました総務省の御意見としては、この税収による地方格差、これは地方交付税で埋める、このことにつきましての基本的な見解なり、あるいは今後どのような形で対応されていくのか、その基本的な御所見をお示しいただきたいというふうに思います。
  68. 松本純

    大臣政務官(松本純君) 山本委員自治体の財源確保に関しての御質問にお答えをいたしたいと思います。  三位一体の改革の中で、補助金の廃止、縮減、そして税源移譲を行うこととしているところでございますが、財政力の弱い団体におきましては、税源移譲額が補助金の廃止、縮減に伴い、財源措置すべき額に見合わないということが生じます。このことから、事業の推進に支障を生じることがないよう、交付税によりこれを調整するなどの万全の措置を講じる必要がございます。  このように、交付税により確実に財源を保障しつつ適切な財源調整を行うことが改革を達成する上で不可欠であるということから、こうした方針をあえて基本方針二〇〇四に明記して閣議決定した上で、その実現に向けて全力で取り組んでいるところでございます。
  69. 山本順三

    山本順三君 万全の措置をということでございますけれども、実際なかなか難しいんじゃないかと思うんです、この今の時代流れの中で。私も地方分権論者でありますから、これから地方の無駄を省きつつ、そしてまた国の財政状況なりあるいは各地方の財政状況なりを冷静に判断していく場合に、この地方交付税というものが今までと同じような機能を果たせるのかどうかということについては、実は大きな疑義を持っておるところでございますが、是非今の御答弁のような形で万全の措置を講じていただきたいというふうに思います。心の中では、そうはいってもなかなか難しいんじゃないかなというのが私の今の本音の印象であります。  そこで、続いて財務省にお伺いしたいと思います。  実は先般、これまた新聞報道でございますけれども、谷垣財務大臣の方から、地財計画の不適切な過大計上がある、これが七兆ないし八兆円に及ぶと、この過大計上については平成十七年及び十八年二か年でこれを是正、削減するというような方針が報道で示されました。この記事を読みまして、私ももう実のところ大変びっくりいたしましたし、正に地方に激震が走っておるというのが今の状況ではないだろうかというふうに思います。  さかのぼって、昨年、平成十六年度、これ三位一体改革、このことが、先ほど申し上げましたけれども地方に大混乱を巻き起こしたということはもう御案内のとおりでございますけれども補助金のカットで約一兆円、それから地方交付税がたしかあれ一二%ぐらいだったと思いますけれども、二兆九千億ぐらいのカットが行われました。三位一体ですから、その分税源移譲というふうに我々も思っておりましたけれども、精査をすると六千五百億余りの税源移譲しかされなかったと、こういうふうな現実がございました。  このことによって地方の財政がもう言わば根底から崩されるというような場面が度々ございましたし、私も県議会議員として知事との予算折衝をするときに従来と全く違った印象を受けました。すなわち、新しいものをどう作っていこうかという、そういう予算折衝ではなくて、どの削減を阻止するかというふうな、言わば前向きの議論から、悲しいかな後ろ向きの議論をせざるを得ないような状況に追い込まれたということを今思い出すわけでありますし、これが小さな過疎に悩む市町村におきましてはもっと深刻な状態になってまいりまして、例えば愛媛県には三崎町というちっちゃな町があるわけでございます。そこの町長さん、もういよいよごみを回収する経費がなくなってしまうと。したがって、自らがごみ収集車に乗り込んで、そして回収作業をせざるを得ない。これ、パフォーマンスというよりか、これはもう本当に笑ってられないような、そういう現実というものが地方の中に起こってきておる。それがまた地方の混乱に拍車を掛けるような、そういう流れが出てきているんではないだろうか。それがひいては国と地方との正に信頼関係というところにまで影響するような状況になってきておると、こんな私は印象を実は持っておるところであります。  そして、地財計画の不適切な過大計上、このことに関しましては、国には国の、財務省には財務省の考え方がありましょうし、また地方にも地方考え方がある。その中で、例えば経常的経費とその投資的経費、このプラスマイナスは見合っているじゃないかというような議論地方から出てきておりますし、また地方公務員の給与関係経費でありますけれども、これ地方の給与が高いではないかという御指摘が多々あります。そういうところもあるんだろうと、これは我々も思うところでありますけれどもただ、これはラスパイレス指数によりまして国家公務員並みに置き換えて計上しているじゃないかというような議論もあります。  また、地方財政の悪化の一因というのは、これは過去の景気対策、このことによって国と連動した公共事業の実施による影響というものがかなり大きく実は地方財政には現れているんだよと、こんな議論も実はあるわけでございまして、そういった意味では、確かに地方の様々な政策についてしっかりと精査をしていかなければならないし、無駄も当然省いていかなければならないということは私も理解しておるつもりでありますし、そういった方向付けを明確にしていかなければならないというふうに思っておりますけれども、決して、地方がモラルハザードを起こすという議論というのは、私はちょっと看過できないぐらいの憤りを実は感じておるところなのであります。  先ほども申し上げましたけれども地方のいわゆる財政健全化に向けて、正に各団体が血の出るような努力をしておるという現実も是非財務省の皆さん方にも御理解をいただきたいというふうに思います。  そんな私見を述べながら質問させていただきたいというふうに思いますけれども、今回の地方交付税改革について、財務省としてどういうふうな今後の見通しを立てていらっしゃるのか。特に、冒頭申し上げました谷垣財務大臣の七兆ないし八兆円過大計上である、これを二か年で削減する。これは、本当にこのことが具体化されますと、もう我々はパンクせざるを得ないというような自治体皆さん方たくさんいらっしゃいますし、今日の議題である義務教育国庫負担、その地方格差というものを交付税で賄っていこうという今のお話との整合性というものがなかなか付きにくいんじゃないかな、こういうふうに思っておるところでございますが、財務省のお考えをお示しいただきたいというふうに思います。
  70. 段本幸男

    大臣政務官段本幸男君) お答え申し上げます。  地方交付税につきましては、骨太の方針におきましても、地方の自立、そういった観点から地方歳出をやっぱり国同様に徹底的に抑えていくと、見直すと、抑制する、こういうふうな方針が立てられております。そういう視点から見れば、地財計画において、今、山本先生おっしゃったように、見てみますと、投資的経費から約七、八兆円が一般行政経費の方に回されている。これは、先生もおっしゃったようにいろいろ地方が工夫されて、いろんな形の中でやっておられて、万やむを得ない部分もあると思いますが、しかし、私どもの方で少し調査さしていただきましたら、いろいろ過大、必ずしも適切でない、そういう部分も含まれている、そんなことではないかというふうに思っております。  国の立場から見ても、交付税を、国の税金を使って交付税でやる以上、国民に対する説明責任、そんなふうな観点から見れば、この経費の中身につきまして十分精査をして、そしてそれらがやはり抑制の観点から十分に行われているかどうか、こういうことが見直していく必要があるんではないかと、こんなふうに考えております。  いずれにしましても、交付税改革につきましては、現在、交付税改革など三位一体改革につきましては、改革の全体像を年内に決定するというふうなことで現在政府内部で議論されているところでございまして、そういう地方交付税の改革のスリム化についてもそういう中で十分議論をされていくべきものと、かように考えております。
  71. 山本順三

    山本順三君 ありがとうございました。  いずれにしても、これ、総務省対財務省なんて構図があって、そのあおりを文部科学省が受けてしまうという、そんな形になるのかな、そうはなってもらいたくないなということをつくづくと感じておるところでございますけれども。  これ、午前中の議論にもありましたけれども、過去にさかのぼってみて、過去、文部科学省の様々な経費等々について一般財源化をしたものがたくさんあります。例えば、教材費あるいは教員の旅費であるとか、そしてまた、昨今言われておりますけれども学校図書費もこれも大変なばらつきが全国で出てきたというような結果も聞いております。  まずここで、過去に一般財源化されたものがどのような状況になっているのか、その具体的な実態というものをお示しいただきたいというふうに思います。
  72. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 昭和六十年に一般財源化をいたしました教材費を例に取りまして御説明をさせていただきたいと存じます。  教材というのは、掛け地図とか音楽の楽器でございますとか、跳び箱、マットといった体育用具など様々なものが教材として学校には必要になるわけでございますが、一般財源化されました昭和六十年度以降も、各学校における標準的な教材整備が図られるように整備計画を策定をし、必要な経費について地方交付税措置を講じてきたところでございます。  現在、教材費につきましてはそれぞれの地域で予算措置をされているわけでありますが、全国ベースで予算の措置状況を基準財政需要額に比較をしてみますと、平成十三年度では九二%、平成十四年度では八六%という措置状況でございます。最近調査がまとまりました平成十五年度につきましては七五・七%の措置状況ということで、国が予定をいたしております基準財政需要額に対しましては非常に予算の措置率が低く、下降傾向にあるという状況が見られるわけでございます。
  73. 山本順三

    山本順三君 そのような実態が実はあるわけであります。  今までの話を私なりに総括してまいりますと、地方の財源不足を補うということで地方交付税を活用しようという、そういう方針があるけれども、先ほどの財務省の考え方ということを勘案したときには、なかなかその縮減方針に歯止めを掛けることはなかなか難しい。これはある意味では、地方交付税の今の現状を見てみますと、もう借金体質になってしまっているわけでありますから、その改革をしていかなければならないということは私自身もそれなりに理解しておるつもりでありますけれども、そういった流れの中で地方交付税の縮減方針というものを歯止めを掛けることは難しいというふうにも思います。  そしてまた、一般財源化が推進されるとどうなるかというのは、今一例をお示しいただきましたけれども教育機会均等なりあるいは水準確保ということで財源を保障していくということが大変厳しい今状況になっておるということが当然にして分かってくるわけであります。  こんな状況でありますが、もう一度総務省にお伺いしたいと思いますけれども、そんな中でも教育の質を落とすわけにはいかない、そして国の宝である子供たちの教育レベルを上げることはあっても下げることはまかりならないというような、そういう決意の下にお伺いするわけでありますけれども、十分な教職員数を確保して地域間格差を防ぐための具体的な制度設計というものをしっかり示していく必要が私は総務省にはあるんじゃないかというふうに思っておりますし、もし質問を変えるとするならば、四十七都道府県の県知事さん、教育費を削る知事はいないよということ、あるいはまた教育費確保するかどうかはもう知事判断次第ですよというふうな、そんなお考え総務省としてお持ちかどうか、ちょっと質問が適切じゃないかも分かりませんけれども、そんな気持ちを込めてちょっとお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
  74. 松本純

    大臣政務官(松本純君) 山本委員から、教育費確保するかどうかは知事判断次第との御指摘でございますが、現状におきましても、都道府県が国の基準を大幅に超えて独自に教職員を配置している実態にございます。全額地方負担である高等学校におきましても教職員数が適切に確保されております。これらにかんがみれば、教職員数等の基準が法律上明確にされ、その所要財源が確実に保障されるのであれば、全国的な教育水準確保されるものと考えております。  まあ万一、この学級規模やあるいは教職員配置が不適正な状況となった場合であっても、文部科学大臣は適正化に向け指導、助言等の関与も行えるものとされております。さらに、地方交付税法第二十条の二におきまして、関係大臣地方団体に対する勧告権及び総務大臣に対する交付税の減額・返還請求権を与えておりまして、総務大臣にこれに従うことを義務付ける仕組みも存在しているところでありまして、このように二重三重の仕組みが現行でもなされている状況にあります。
  75. 山本順三

    山本順三君 ありがとうございました。  さて、ちょっと視点変えて質問したいと思いますけれども文部科学省として、その一般財源化に対抗するために総額裁量制の導入ということについていろいろな提案をされております。  詳しいことは後ほどまた荻原委員の方から質問があると思いますので、私はもう基本的なことだけをお伺いしたいというふうに思いますけれども、正に都道府県の自由裁量の部分を拡大をしていこうと、そして定数改善計画の弾力的な運用を図っていこうと、それが教育地方分権にも当然つながっていくんだと、こんな論点の下に総額裁量制というのが導入されたところであります。ただ、これはまたマスコミ報道でありますけれども、この総額裁量制、三十六都道府県で利用されていませんよというような報道がございました。  そしてまた、私どもも地元の様々な方々と議論する中で、この総額裁量制というのは、都道府県が教職員の給与を一生懸命抑えていく、抑制していく、その結果として出てきたものを、これを他の分野に活用していく、総額を裁量、総額裁量制というものを導入していく、そこにとどまってしまっておって、まだまだ地方がこれからいろんなことをやっていきたいというときに、それが機動的に対応できるような、そういう制度にはなっていないのではなかろうかと。  もっともっと地方の使い勝手のいいものに改善をしていくことが必要じゃないかと、こんな指摘があるわけでありますけれども、それについての文部科学省の御見解をお示しいただきたいというふうに思います。
  76. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 総額裁量制についての御質問でございますけれども、基本的には都道府県の教職員の平均給与に標準法で定めます教職員定数を乗じて得た金額の二分の一を国庫負担する制度でありまして、その負担金総額の範囲内で給与額や教職員配置につきまして都道府県の裁量を大幅に拡大するものでありまして、今年度から新たに導入した制度でございます。  先ほどお話がありましたけれども、十月十五日付けの朝日新聞におきまして、三十六都道府県総額裁量制を利用していない旨の報道がされたところでありますけれども文部科学省の調査によりますと、例えば従来国庫負担の対象とならなかった少人数学級実施に伴う教員増について、四十四都道府県におきまして国庫負担の対象といたしまして総額裁量制のメリットを利用しているという結果も得ているわけでございます。  今後さらに、文部科学省といたしましては、総額裁量制のメリットをより生かした多様な教育施策の展開が図られますよう、機会あるごとにPRしていきたいと、このように考えております。
  77. 山本順三

    山本順三君 ありがとうございました。  地方分権というのは、すべての分野でこれから我々が求めていかなければならない。ただし、その前提条件として、国の役割はどういうものがあり、そして地方役割はどういうものだ、ナショナルミニマムをどのような形で保っていくのかと、そういった基本的な議論を中央と地方とでしっかりした上での地方分権でなければならない、こういうふうに改めて感じておるところでございますが、この義務教育国庫負担制度の動向にかかわらずに、先ほど申し上げた総額裁量制等々、これから教育の特性、地方の特性というものを教育に表していくという意味におきましても、この問題について是非前向きに具体的に改善すべきところは大いに改善していただいて、地方の使い勝手のいい流れというものを築き上げていただきますようにお願い申し上げたいというふうに思っております。  さて、いずれにしても、義務教育国庫負担というものについての制度というものは、私どもも堅持をしていかなければならないというふうに思っておりますし、文科省におかれましても、そのことのアピールをしっかりとしていただきたいというふうに思うわけでございますし、また見方を変えたら、先ほども申し上げましたが、単なる三兆円補助金カットの中の八千五百億円という、いわゆる数字合わせに終わっちゃいけないんだということを私もつくづくと思っておるわけであります。  ただ、ここで少し観点変えて、なぜ、なぜ地方からこのような提案がなされてしまったんだろうかと。ここも、地方は数字合わせをするだけだという、そういう批判だけにとどまらずに、文部科学省として、地方の実態というものをどれほど吸収して今ほど申し上げた教育地方分権に対しての対応というものをされてきたのか、あるいはまた、地方の言わば声というものをどういうふうに生かしてこられたのか、そんなこともしっかりと私は検証していかなければならないだろうというふうに思うわけであります。  教育にかかわる人間、これは知事がどういうふうな話をしようとも、それぞれに教育委員会があるわけでございますし、その教育委員会の中で、知事に対して、これだけは絶対いけないよと、この負担金の一般財源化はいけないという声がもっともっと起こってしかるべきだというふうに私は思っているんですけれども、それがなかなか起こってこない。そのことは、国と地方教育に絡む信頼関係というのが、もっともっとこの信頼関係を固めていく必要があるんではないだろうかということを、私は実はこの問題を考えるときにはつくづくと感じるわけであります。  例えば、今ちょっと回りくどい言い方いたしましたけれども、文科省のいろいろな基本方針の中で、これ新学習指導要領というものが出て、まあ大体十年ごとに改訂されるというふうなことでございますけれども、その教育方針というものがかなり短期的に変わっていくということに対しての危機意識を実は地方は持っているんです。  もっと具体的に申し上げましたら、今、学力低下ということが大きな問題になってきています。しかし、国の方針としては学校週五日制、そしてゆとりの教育をしっかりとしていこう。でも、このゆとりの教育というのは、御案内のとおり、学習内容を厳選して、これ大体三割ぐらいカットしたというようなお話も聞き及んでおりますし、主要教科、これの授業数というものが削減される、これは約七%削減されたんだというような話も聞いております。そういったゆとりの教育を推進していく中で、一方では理科であるとかあるいは数学であるとか、そういった教科において学力が低下をしてきたと、こういうふうな議論も同時になされ始めた。その結果として、文部科学省としては「学びのすすめ」というような通達を出して、もう少し勉強をするような流れを作っていこうということが二〇〇二のアピールでも出され、確かな学力を更に向上させようというようなことになったわけであります。  ただ、これ、極めて短期間のうちにゆとりの教育と「学びのすすめ」というものが教育現場の方にやってまいりますと、そこで勉強する子供たちも大変でありますが、教師も大変ですし、保護者も大変ですし、いろんな意味地方教育現場に混乱が起こってきた。それが国と地方信頼関係をより固めることに対しての阻害要因になったのかもしれないなというふうに私は個人的に考えております。  さらにまたその流れの中で、総合的な学習ということで、ゆとりの教育をして、そして特色ある教育をしながら生きる力を養っていくんだ、こういう観点の下にこの総合学習をやろうということがスタートしたわけでありますけれども、でも実際スタートをするや、その目標あるいは内容というものが余り明確じゃないよ、だからその検証なり評価が不十分になってしまうというような意見が同時並行的に出てまいりましたし、また教える側の教員資質ということにつきましても、これ適切な指導というものが十分できていないんではないか、教育効果が不十分ですよと、こんな実は話も私の耳に入ってくるわけでありまして、その結果として、これまた平成十五年の十二月に一部学習指導要領の改訂、もっと趣旨を明確化しようというようなことが起こったことも事実であります。  時間が余りありませんので細かいことを申し上げませんが、この相対評価から絶対評価に変わった。これも現場におきましては非常に反応が難しい問題でありますし、それから学習指導要領というのは本来、教育の標準なり到達目標というものを示してきたというふうに理解をいたしておりますけれども、学力低下というような話の中で、これ実は最低基準だよというような方向に変わったように思います。  こんな流れの中で、地方団体義務教育国庫負担金の廃止を提案してきている、提案してきたということは、実はその裏では、文科省と地方との間で、教育改革に向けて一体的に取り組んでいこう、お互いの理解の上に取り組んでいこうという、そういう取組に若干欠けるところがあったんではないだろうか。そのことが、お互いの信頼関係の構築をできなかったがゆえに、こういう義務教育国庫負担一般財源化というような問題も出てきたのかなというふうにもついつい邪推をしてしまうところでございますが、そういったことに関して中山大臣の御見解をお聞かせいただければ大変有り難いというふうに思います。
  78. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 今、山本先生からるる、地元といいますか、現場の声、また父兄等の声を聞かせていただきまして、正にそういう実態があるなということを私自身も考えておりまして、朝令暮改といいますか、余り頻繁に変えることも良くないというようなことを考えております。  しかし、一方、この前経済財政諮問会議で牛尾委員から言われたんですけれども日本の文部行政というのは時代とかあるいは社会の変化に対応し切れていないんじゃないか、もっと即応性を持ってやるべきじゃないか、民間の会社だったらもうつぶれていますよと、こういうふうな御指摘もいただいたところでございまして、本当にそうだなと、こう思うわけでございます。  私自身も、今回文部科学大臣拝命いたしまして、私なりに考えておるところ、あるわけでございまして、例えばもっと頑張る子供を応援する、そういう風潮といいますか、そういうのを作りたいし、あるいはもう少し、何といいますか、競争意識を持たせるために学力テストとかあるいは体力測定とかそういったものもやって、やっぱり小さいころから競い合うそういう精神というものを、チャレンジする精神というものが必要じゃないか。そういうことはもう個人的には考えているんでございますけれども、余り急激にやってもいかぬかなと思いながら、恐る恐る歩み出したところでございます。  そういう意味で、いろいろとお話を聞いていますと、御指摘のとおり国と地方との信頼関係というのは非常に大事でございまして、国と都道府県と市町村がそれぞれの責任役割を果たしながら、お互いに連携あるいは協力していくことが極めて重要であるということは御指摘のとおりでございまして、これまで文部科学省、教育改革を進めるに当たりましても、教育委員会とかあるいは各校長会等の地方教育関係者の意向を十分酌みながら実施してきたということでございますし、さらに、その施策の周知や広報に意を用いてきたところでございます。  今お話がありましたけれども、例えば学習指導要領の策定に当たりましても、審議会委員には教諭など教育関係者の参画を得ながら進めてきたところでございますし、地方公共団体考え方を伺いながら、今回その総額裁量制の趣旨などにつきましても説明を重ねてきたところでございます。  現に、今回知事会の方からああいう改革案が出たところでございますけれども、一方、地方公共団体の議会とかあるいは教育関係者からは、この義務教育国庫負担制度の堅持ということにつきまして多くの意見が寄せられているわけでございまして、私自身も小泉総理から地方意見に真摯に耳を傾けるようにと、こう言われていますけれども、じっと耳を澄ましていますと、地方にもいろんな声があるなということを感じるわけでございまして、そういったことを十分踏まえた上で地方との信頼関係というのを一層深めながら、国と都道府県と市町村が協力し合って、本当により良い義務教育の実施のやり方というものを考えていかにゃいかぬなというふうに考えておるところでございます。
  79. 山本順三

    山本順三君 中山新大臣の手腕に大いに期待をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  荻原委員の方から気持ちよくもっとやっていいよという御配慮がございましたので、若干時間をオーバーするわけでございますけれどもお許しをいただいて、荻原委員の友情に心から感謝を申し上げたいというふうに思います。  あと一、二問だけでございますが、今回の義務教育関係において、負担金の廃止ということについて、私はもしかしたら教育の本質論をお互いがこれ考えていくいい機会を与えられたんではないだろうかな、そんな気持ちを感じておりました。また、その議論をする時期がもう到来したんだというようなことを感じるわけであります。  実は、私の好きな言葉の中で不易流行という言葉があります。不易、すなわち変えてはならないこと、これは命懸けでしっかり守っていくべきだと。また、流行、すなわち変えるべきことは勇気を持って変えていかなければならない。それをいかにバランスを取るかということが非常に大事だというふうなことでありますけれども、私は、この教育関係におきましても、正に不易の部分と流行の部分と、これをしかと我々が把握をした上でこれからの教育改革に向けての議論をしていかなければならないというふうに思います。流行の部分についてはいろんな提案があるわけでございますが、その不易の部分についての議論がもうそろそろやっていくべきではないんだろうか。  これは何を言いたいかといいますと、正に教育基本法の改正に向けて、これからお互いが真剣に取り組んでいく時期がもう到来したのではないだろうかというふうなことを私なりに今感じておりますし、私がこちらの国会に出てきたのも、一つの大きな目標として、教育基本法の改正というものをしかと国民議論として呼び起こして、そして今、その不易の部分、何をしっかり押さえていかなければならないか、こういった点についての議論を是非ともしていかなければならないというふうに思っております。  先般も、ある先輩議員から、おい、山本、質問するんなら中山大臣に聞いてくれと。何ですかと言いましたら、教育基本法、いつ国会で議論するんだ、できれば来年、通常国会でその議論ができるように、そういうふうな話をしてこいという命令を実は受けたわけでありますが、私自身も実はそんな気持ちで一杯でございますけれども。そういったことを勘案しながら、中山大臣の率直な御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  80. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 御承知のように、この教育基本法というのは、戦後間もなくでございますけれども昭和二十二年に制定されたものでございますけれども、それが一回も改正されることなく今日に至っているわけでございます。  その中で、正に山本委員が御指摘のように、不易流行、変えてはいけないもの、これもありますけれども、もうこれだけ時代流れ、変化が激しい時代におきましては、やはりもう一回見直すべきじゃないかと。もちろん、この今の教育現場のいろんな乱れとかそういったものがこの教育基本法を変えれば全部解決するというものじゃありませんけれども、やはりこの根本になるものといいますか、精神的な一つのバックボーンというものをやっぱり考え直すときが来たんじゃないかと。  そういうことで、今、教育基本法の改正の論議が進んでいるわけでございまして、御承知のように、昨年の三月に新しい時代にふさわしい教育の基本となる理念を明確にするために教育基本法の改正が必要であるという中央教育審議会の答申もいただいているわけでございます。  また、与党におきましても、教育基本法の改正は大変重要な課題であるという認識から、昨年五月以来、与党教育基本法改正に関する協議会を設けて精力的な議論が行われておりまして、本年六月には「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について」という中間報告を取りまとめて、更に現在、今議論が深められているというふうに理解しておるところでございまして、私自身の気持ちとしてはできるだけ早くということを思いますけれども、しかし、やはりこういう非常に重要な法案でございますから、与党ともよく相談しながら、また特に国民的な議論も深めながら、これはもう拙速に陥らないように、一度こういう基本的なものは決めたらそんなに簡単に変えられるものじゃございませんから、正にその不易の部分だと、こう思うわけでございまして、よく議論を深めながら、できれば、できるだけ早く国会に提出できるようにしっかりと取り組んでまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  81. 山本順三

    山本順三君 是非そういった方向で進んでいただきたいと思いますし、正に国会でしっかりと議論をしていくことが国民皆さん方の言わば関心を、あるいはまたその必然性についての考え方を更に高めていくことにつながるんだろうと思いますので、是非できるだけ早く対応していただけるようにお願いを申し上げたいと思います。  最後に、もう一点だけ質問して終わらせてもらいたいと思います。  実は、義務教育国庫負担金の問題だけにとどまらずに、実は私立高等学校経常費経費の補助、あるいはまた幼稚園の就園奨励費、これの補助、これについても削減対象になっておるところでございます。  私も、ある高等学校の理事をしたり、私立幼稚園の、愛媛県の、PTAの会長をしたりということで、私立学校には非常に関連がございますし、また、現実に生徒の割合見ましても、高等学校で約三割、幼稚園ではもう八割が私立の学校に通っているという実態があります。  そういった中で、憲法第八十九条の問題は実はあるわけでございますけれども昭和五十年に私立学校の振興助成法というのが制定されました。そして、しっかりとこれから私学の振興のために国も大いに関与していかなければならない、こういうふうなことでございます。  そういった中で、今回のこの三位一体改革の中での補助金のカットということがもし起こるならば、正にこれ、私立学校でも公私間の格差というものが非常に拡大してくるというふうにも思いますし、現実問題、少子化の流れの中で私学の経営というものが極めて厳しい状態に立ち至っておる、これもまた否定できない分野でありますし、そのことによって教育水準の低下が起こってはいけないというようなことを感じます。  また、幼稚園におきましても、これ就園奨励費、今現時点でもまだ各自治体によって対応しているところ、対応していないところというのがあるわけでございますけれども、この補助金がなくなってまいります、削減されますと、一般財源化されますと、もっとこの就園奨励事業というのが縮小してしまうんではないだろうか、幼児教育の衰退につながってしまうんではないだろうか、国を挙げて取り組んでおる少子化対策に逆行してしまうんではないだろうかということを大変危惧をしておる者の一人であります。  そこで、現行の国庫補助制度を何としても維持していただきたいというふうに思うわけでございますけれども、どのようにお考えなのか。加えて、来年度の予算編成に向けての中山大臣の決意も併せてお聞かせいただければ有り難いというふうに思います。
  82. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 今御指摘のように、今回の知事会の方の案によりますと、この私学助成につきましても削減と。要するに、地方の方に任せろと、こういう提案になっているわけでございまして、今のところ、その義務教育が専ら正面の闘いになっておりますが、私はこの私学助成も極めて重要なものであると、こういうふうに考えまして、何とか堅持しなきゃいけないと、こう考えているところでございます。  私学学校というのは、御承知のように、それぞれの建学の精神がございますし、特色のある教育を展開しております。我が国学校教育を支える重要な役割を果たしているわけでございまして、正にこの少子化の中にあって私学が頑張るからこそ公立の方も頑張らにゃいかぬということで、そういう意味じゃ、お互いに相乗効果でもって私は日本教育水準を高めていると、そういった効果もあるんじゃないかと、このように思うわけでございまして、そういう点でこの私学助成の果たす役割というのは極めて重要なものがあると、こう考えておりまして、今後ともこの助成の充実ということには努めてまいらにゃいかぬと、こう考えるというときにあのような削減案が出てきているわけでございまして、これは絶対に堅持していきたいと、こう思っていますし、また現に、私学助成の総額でございますが、平成十六年度予算総額で四千五百五十六億円でございますけれども、来年度の概算要求におきましては四千八百十四億円ということで、二百五十八億円増ということで要求しているということで、文部科学省の考えを御理解いただきたいと思います。
  83. 山本順三

    山本順三君 よろしくお願いします。  どうもありがとうございました。
  84. 荻原健司

    ○荻原健司君 自由民主党、荻原健司でございます。  私も今日、初めていよいよ質問に立たせていただくことになりました。午前中では河合常則委員、そして先ほど山本順三委員、初めての質問のトリオの最後をやらせていただきたいと思っております。  いずれにしましても、私も七月に初めて当選をさせていただいて、この世界に飛び込んでまいりました。まだまだ本当に右も左も分からない状況の中で、本当に多くの皆さんに御支援をいただいて何とか日々過ごさせていただいております。  私も、スキーの選手として活動してまいりまして、その後引退をしてからは、やはりこれからの子供たち、あるいは若者たちに夢や希望を持ってもらえるような、そんな環境づくりをしたいということで、この世界に飛び込んできたつもりでおります。  本当に、私も引退をして様々なところで講演会活動、その中で頑張れ、夢を持って挑戦するんだ、しっかりやってくれ、そんなことを子供たちにエールを送ってきた中で、ただただエールを送っていただけでは駄目だな、やはり本当の意味で夢を実現できる環境づくり、又はしっかりとした教育受けられる、そういった環境づくりも同時に行っていかなければならない、そんな思いでこの選挙を戦ってきたつもりでおります。  いずれにしましても、私もスポーツを通じた、スポーツの普及振興、そしてそれを通じた教育というのは、これからまだまだ日本には足りないと思って、しっかり取り組んでいきたいと思っております。そういった中で、今日初めての質問の機会をいただきまして心から感謝を申し上げます。  私も初めての質問ですので、今日は清水の舞台から飛び降りるような気持ちで清水谷の宿舎を立ちましたが、でも実際考えてみましたら、もっともっと高いところから自分は飛び降りていたなと、そんなことで自分を鼓舞をしながら今日は質問をさせていただきたいと思っております。  義務教育国庫負担については、先ほど山本順三先生、委員がたっぷりと御質問をしていただきました。また、それに関連してということで、今回、実は私は新潟の中越の地震、特にこの被災地である小千谷に入ってまいりました。その体験の中で、是非皆さんにお伺いをしたいと思って質問をさせていただきたいと思っております。  先月の二十三日に私も東京で大きな揺れを感じました。果たしてこの震源はどこなのだろうかということで、その後テレビのチャンネルをひねりましたら、新潟の小千谷だということで、私は本当にびっくりをして心配をいたしました。といいますのは、新潟の小千谷、またあのかいわいというのはスキーの選手が多数おられる、また多く輩出しているところでございます。  私は、小千谷の総合体育館、私が入りましたときには千五百名余りの方が避難をされて避難生活を強いられていたところでございますけれども、こちらの陣頭指揮を取っていた方も私と同じノルディック複合の選手としてオリンピックに参加した経緯がある、そういった方が現場で総指揮を取っておられました。  いずれにしましても、本当に、現場に入りましてこの地震の状況、もう家はつぶれて、電柱もまっすぐ立っているものも一つもない、道路は割れ、マンホールがもう一メートル高く以上突き抜けている、そんな状況を見てまいりました。本当に悲惨な状況がありました。  そういった中で、私が入った小千谷では市の総合体育館でありましたけれども、例えば中には小学校の体育館、中学校の体育館、そういったところが避難場所になっておりました。私つくづく思いましたのは、やはりいろんな災害、日本というのは本当に災害が多い国ではありますけれども、そういった災害のたびに必ず学校の体育館というのが避難場所に選ばれ、そして多くの方々が避難をされている。いわゆるこれからの日本のこの状況の中で、例えば体育館、これからしっかり造っていくときにはそういった避難場所にきちんとなり得る機能を有さなければいけないのではないか、そういったことを感じました。  実は、小千谷の総合体育館でも、水は寸断され、いわゆる暖房施設等も使えない状況でした。余震がある中で、各地からストーブ、暖房器具は届くんですけれども、余震が来て倒れてしまってもし火災が発生してしまったらということで、全国からストーブであるとか暖房の器材届くんですけれども、実際もう使えない、そういった状況がございました。やはりそういったことから考えますと、これからの公立学校の体育館というものは、やはり被災の避難場所となり得るそういった機能が必要ではないかなと思っております。  また、私、今回二日お手伝い、ボランティアとして行ってまいりまして、自分の車がたまたまワンボックスカーだったものですから車の中で寝たわけですけれども、やはり中には、エコノミークラス症候群、これによって多くの方が亡くなってしまっている状況もある中で、それでも、注意をしても車の中でお休みになられる方がやはり多数おられました。これは、一つは、やはりもう建物の中にいることさえ嫌なんだ、そういったお気持ちを持っておられる方が多かったと。多分これは、やはり皆さんが避難をされているところでありながらも、しかしながらその体育館が本当に安全なのか、そういった不安があるからこそ、エコノミークラス症候群の危険性がありながらも車の中で休まざるを得ない、そういった状況もありました。  また、やはりプライバシーというところでも、例えば自分が日ごろ寝ている素顔というのはなかなか見られたくないものであろうかと思います。また、着替えもしなければならない、又はトイレもしなければならない、そういったところで特にプライバシーをいかに確保をしていくかということもこれから考えていかなければならない、そういったことがあろうかと思いますが。  まず、さきの新聞報道にもありました、中越地震の被災地、四市町村のすべての小学校の建物のうちの三分の一が危険であるという報道がされておりました。いわゆる、私ここで質問をしたいと思いますけれども、まず一時避難施設として使用される体育館のみ、体育館のみで構いませんが、その耐震性の調査の結果、調査の結果を、これは四市町村で構いませんが、お示しをしていただきたいと思います。  また、自宅が被災し、不自由な避難生活を余儀なくされる被災者の方々が、せめてやはり安心してお休みになれるよう、そういった避難所としての機能が期待される体育館等についての耐震化、耐震化はどのように進められているのか、お伺いをしたいと思っております。  先日の委員会では、半分強の公立小中学校において耐震性が確認されていないという状況があるという御答弁がありました。これからの厳しい財政事情の下、一気に耐震化を進めるのは大変厳しい面もあろうかと思いますけれども、せめて耐震診断だけでも早急にする必要があるのではないかと。いわゆるこれからの耐震化への足掛かりを早速取り入れていかなければならないのではないかと思っております。  こういった点について、文部科学省の御見解をお伺いしたいと思っております。
  85. 萩原久和

    政府参考人(萩原久和君) 体育館の耐震についての御質問でございますが、議員御指摘のとおり、公立学校施設、特に体育館は地震等の非常災害時におきましては地域住民の避難場所となることが多いわけでございまして、その安全性の確保は極めて重要なことだと認識しております。  それで、今回の新潟県中越地震での体育館の被害でございますが、文部科学省では、特に被害の著しかった一市四町、具体的には小千谷市、越路町、川口町、旧小出町、旧堀之内町、この五つの自治体の方から要請を受けまして、先月の十月の二十九日から今月の三日にかけまして、文部科学省の技術系の職員など八名を現地に派遣いたしまして、公立の小中学校など被災した文教施設三十八施設、合計百四十三棟の応急危険度の判定など、安全点検を行いました。  お尋ねはその公立学校の体育館でございますが、調査結果を申し上げますと、全部で三十七棟調査いたしましたけれども、そのうち構造体の破損等で危険という判定が下されたものが八棟ございました。それから、構造体はそれほど損傷はないんですが、天井材及び照明器具等の落下、転倒の危険があるということで危険とされたものが十二棟、ですから危険と判定されたものが合計二十棟でございました。そのほか、構造体の破損は軽微で落下、転倒の危険性が低いけれども、要注意という判定を受けたものが七棟ございました。それから、ほとんど被害なしという、調査済みという判定でございますが、これが十棟ございました。合わせて三十七棟でございました。  これらの判定結果につきましては、直ちに対処方法も含めまして設置者である市及び町の教育委員会にお伝えしました。そして、その判定区分に従って適切な対応を取るようにお願いしたところでございます。  もう一点、全国の体育館の耐震化の進捗状況でございますが、文部科学省が今年の四月に調査した結果でございますが、公立小中学校の体育館のうち、耐震性が確保されている建物は全体の五二・八%ということでございます。しかしながら、他の公共施設と比べましても耐震化の進捗状況が後れている状況でございます。このため、文部科学省としては、現下の厳しい財政事情ではありますが、平成十六年度予算において耐震関連予算として一千百五十五億円、これは前年度に比べて六億円増でございますが、措置して耐震化に努めているところでございます。  それからもう一点、耐震診断の早急な実施ということでございますが、これ……
  86. 塩谷立

    ○副大臣(塩谷立君) ただいま御指摘の耐震診断についてでございますが、委員おっしゃったように、耐震化については耐震診断がまずは大事だということで、本年四月に調査したところによりますと、公立の小中学校のうち耐震診断を実施した建物は、昭和五十六年度以前の旧耐震基準で建てられた建物の約四五%となっております。昨年と比べて一〇%改善が見受けられましたもののまだまだ深刻な状況でありますので、学校施設の耐震化推進のためには必要な耐震診断を行い、そして耐震性能を確認することが重要でありますので、各設置者に対して平成十七年度までに耐震診断を完了するよう具体的な計画の策定を依頼しているところでございます。  さらに、今般の新潟県の中越地震など大規模な地震が発生していることを踏まえて、公立学校施設の耐震診断の早期実施を依頼する通知を発出したところでございまして、改めて注意を喚起したところでございます。  文部科学省としましても、計画どおり耐震診断が行われるように様々な機会を通じて指導を努めてまいりたいと思っております。さらに、財政厳しいという先生御指摘でございまして、診断をするだけではなくて、やはり問題は耐震化でございますので、この点もしっかりと努めなきゃならぬと思っているところでございます。  以上でございます。
  87. 荻原健司

    ○荻原健司君 是非、文部科学省の取組に期待をしたいと思っております。やはり耐震診断だけではなくてしっかり耐震化を是非お願いをしたいと思っております。  さて、次に、私は小千谷の総合体育館で二日ほどお手伝いをさせていただいたときに、中学校三年生の女の子がサインをくれということで私の目の前に現れました。彼女は小さなちゃぶ台を持ってきまして、余りそういったちゃぶ台にサインすることはないんですけれども、ちゃぶ台を持ってまいりまして、これにサインをしてくれということでございました。何でこれにサインなんだと聞きましたら、実は受験勉強の真っ最中なんだということをおっしゃっておりました。その大きな体育館のもう足の踏み場もない中で、彼女は、本当に薄暗い中で勉強をしている姿をその後見ましたけれども、いずれにしてもこのテーブルにサインを書いてくれ、そういったことでございました。  そのときに、私の目の前に現れたときには大変元気な様子でにこやかに現れました。ですから、本当にこういった中で、ああ、子供たちは本当に元気でいてくれてよかったなと思ってサインを書いて、是非、希望の高校に入学できるぞ、間違いないぞというふうな気持ちでサインをお渡ししました。そうしましたら、彼女の表情が見る見る一気に変わっていきまして、もう直後に涙を流して大泣きしてしまいました。  何か私はそのときに思ったのは、やはり子供たち、元気な様子のように見られる、又は妹がいるのか弟がいるのか、またお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんがいる中で、やっぱり自分は元気を持ってそういった家族を励まさなきゃいけない、そういった立場にならなきゃいけないんだと、そんなことを子供ながらに、何かそんな使命感を持っている中で、でもやっぱり頑張れよという声を掛けた途端にその気持ちがほろほろと崩れて涙がこぼれてきたのかな、そんなふうに思っております。  そういった意味で、やはりこれからの子供たち、特にこの被害、これは今回の地震だけに限らないとは思っておりますけれども、心のケアの重要性というのは必要ではなかろうかというふうに思っております。いわゆるPTSD、心的外傷後ストレス障害、こういったことが懸念をされておりますし、いまだに床が揺れるだけで怖い、突然泣き出す、そういった子供たちがまだまだ後を絶たないというふうに伺っております。  先日の当委員会では、文部科学省から、日本臨床心理士会や近隣の自治体と連携をしてカウンセラーの確保について検討を依頼をしていると、いわゆるお願いをした、依頼をしているという御答弁がありましたが、実際、現段階、この今、この段階において、それでは果たしてどれくらいのカウンセラーが確保され、また、そのうち新潟県外から派遣されているカウンセラー、どのくらいであるのか、そして被災地で子供たちの心のケアがどのように行われているのか、お伺いをしたいと思います。
  88. 塩谷立

    ○副大臣(塩谷立君) お答え申し上げます。  新潟県の教育委員会からの報告によりますと、児童生徒の心のケアを実施するに当たっては、十一月一日以後、教員を対象とした専門家による研修会を実施しました。その研修会終了後に、被災地域の小中学校の全児童生徒に対してまずはアンケート形式で心の健康調査を順次実施してきたところであります。その上に、この結果に基づいて専門家を派遣してカウンセリングを行おうということにしております。  そして、現在、このカウンセリングに必要な専門家については、新潟県内では被災地域に派遣するスクールカウンセラーとして二十八名が確保されているところでありまして、もちろんそれでは十分なカウンセリングが困難であるということから、県の教育委員会と協議をした結果、更に県外からスクールカウンセラーや臨床心理士等の専門家を三十名派遣することになっております。実際には今日からその派遣をスタートしたということでございます。  以上でございます。
  89. 荻原健司

    ○荻原健司君 ありがとうございました。  是非、やはり二十八名、三十名、それ以上のスクールカウンセラー、心のケアに取り組む方々の確保をお願いをしてまいりたいと思っております。  残念ながら、やはり我が国は地震であるとか水害、本当に自然の災害に見舞われやすいそういった国がある中で、先ほど申し上げましたが、PTSDが懸念をされ、十分な対応が求められます。  文部科学省がスクールカウンセラーの計画的な配置を進められていることは承知をいたしておりますが、今回、このような災害発生時には迅速にできる限りの専門家を動員して対応に当たっていただくことが求められると思います。そのため、今回のように特に心のケアが必要とされる場合においては、近隣の自治体など広域的に協力して大勢の専門家が迅速にかつ十分に心のケアに当たることができるように、いわゆるその体制作りであるとかネットワークの構築、こういったものを日常的に行う必要があるというふうに考えております。緊急のときにお願いをするということだけではなくて、やはりこういったことは日常的に行われるべきではないかということを考えておりますが、今後の取組方針を是非伺いたいと思っております。
  90. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 新潟県内の被災地におけるスクールカウンセラーの現在の措置状況は、先ほど副大臣の方から御説明をしたとおりでございますけれども、今回のこの措置に当たりましても、各県の臨床心理士会が中心となって、いろいろとスクールカウンセラー、専門家の派遣について御協力をいただいたところでございます。  お尋ねのスクールカウンセラー、専門家の体制づくり、ネットワークの構築につきましては、一つには、先ほど申し上げました臨床心理士会が中心となってネットワークづくりを行っているところでございます。独自に研修会を開催をしたり、お互いの情報交換を通じてネットワークづくりを行っております。  それから、文部科学省におきましても、そういった取組を支援する意味で、各都道府県教育委員会の担当者を集めた会議を開催をし、そのネットワークづくりを応援をしているところでございます。  また、私どもが行っておりますこのスクールカウンセラーの活用事業補助の中におきましても、各県それから政令市ごとに事例研究などを通じたカウンセラー同士の連絡協議会というものを開催する事業を併せて実施をするようにしておりまして、こういった事柄を通じまして日常的なスクールカウンセラーのネットワークづくりを推進をして、災害時の緊急時に速やかな対応ができるように引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
  91. 荻原健司

    ○荻原健司君 是非今後の取組に期待をしております。  さて、地震といいますといわゆる平成七年の阪神大震災が思い出されるわけでございますが、今からもう十年、十年がたとうとしております。県の教育委員会によれば、心のケアを必要とする子供がまだ千三百人も及ぶというふうに言われております。そして、今回の新潟中越地震の映像による影響なのかどうか分かりませんけれども、新たにPTSDを発症したと、そういう子供たちが七十四人にも上っている。そういった結果があります。  そういったことから、やはり心のケアというものはじっくり腰を据えていただいて十分に行う必要があると考えます。長期的視野に立った心のケアの重要性について、文部科学省の見解をお伺いをしたいと思います。  また、阪神大震災のときには、心に不安を抱えた子供たちに対して、いわゆる心のケア、そういったことも含めまして、この対応をするために復興担当教員、復興担当教員というものが配置をされたと承知をしておりますけれども、今回の新潟中越地震を受けて同様の教員配置を行うつもりはあるのかどうか、併せてお伺いをしたいと思っております。
  92. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 阪神大震災からもう本当に十年だなと感じますけれども、今委員御指摘のように、この震災に遭った子供のケアというのは長期的な視野に立って考えるべきだと、正にそのとおりだと思うわけでございまして、災害に遭遇した子供に現れる症状というのは、災害の規模とかあるいは発生後の時間の経過、あるいは子供の発達段階等によりまして症状に様々な差異が生ずるわけでございまして、子供たちの心のケアにつきましては、長期的な視野に立って適切な対応を取っていくことが極めて重要であると、このように認識しているわけでございます。  このため、まず、養護教諭を含む教職員全体が災害後の子供の心の状態あるいはその態様等についての理解を深め、時間の経過に伴いまして子供の症状に応じた適切な対応を取っていただくことが重要であると、このように考えているところでございます。  今回の地震の対応におきましても、被災地域の学校の教職員の理解を深めていただくために、新潟県教育委員会の要請に応じまして、非常災害時の子供の心のケアに関する教師用の手引というのがございますが、これを改めて送付するなどの対応を既に取っているところでございます。  今後も、地元の教育委員会とも連携しながら、子供の症状に応じた心のケアについて適切に対処していきたいと、このように考えております。  なお、阪神大震災のときに配置いたしました教育復興担当教員のことについての御質問でございましたが、ちょっと数字を申し上げますと、平成七年度、正にその年でございますけれども百二十八人、翌年からは二百七人ということでずっと十二年まで参りまして、そして十三年、十四年、十五年、十六年と少しずつ減らしてきているわけでございますけれども、やはり長期的にずっとケアしていくということが非常に必要だと、このように考えているわけでございまして、この児童生徒に対する心のケアあるいは学習支援等を行います教育復興担当教員というものを配置するためのいわゆる加配措置ですね、加配措置につきましては、この十月の末に下村大臣政務官が現地を視察した折に、新潟県の教育委員会から要望を受けておるところでございまして、現在、文部科学省といたしましては、新潟県の教育委員会と連絡を取りながら教員定数の措置について検討をしているところでございまして、今後、児童生徒の状況等を踏まえまして適切に対応してまいりたいと、このように考えております。
  93. 荻原健司

    ○荻原健司君 ありがとうございます。是非そういった対応をお願いをしていただきたいと思っております。  私も二日間ほどボランティアをやらせていただいて、中には、やはり本当に荻原さん助かる、ありがとうというような声を掛けていただくこと多かったわけでございますが、この地震の被災地にも全国から多くのボランティアの皆さんが駆け付けてくれておりました。また、そういった中には大学等の学生も多く見られておりました。本当に、子供たちと一緒にスポーツをしていたり、遊んでいたり、そういった姿、これは子供たちにとっては何よりではないかなと思っておりますし、やはりこの若いボランティアの皆さんにも大変貴重ないい経験になるのではないかなというふうに思っております。  そういった中で、以下の二点についてお伺いをしたいと思っておりますが、今、ボランティア活動、ボランティアなどに参加した場合には修学上の配慮を行う、そういったことが文部科学省から先日各大学等に対して要請をされたということがございました。今回の要請も新潟中越地震の発生に伴うものであろうかと思っておりますが、残念ながら今年は例年以上に自然災害多く見られました。また、他の被災地でボランティア活動に当たる学生にも同様の配慮が求められるものと考えますが、まず、ボランティア活動を単位認定に認める措置、これは徐々に広まりつつあると思いますけれども、具体的にどのくらいの大学で取り組まれているのか。今回の要請にとどまらず、今後、学生のボランティア活動の促進が重要と考えますけれども、そのために文部科学省としてどのような対応で臨むつもりであるのか。これが一点目でございます。  二点目は、例えば教育学部であるとか心理学部の学生については、これは何か実習の一環として、例えば週末などを利用して、教員の指導の下で補助教員であるとかカウンセラーとして集中的にボランティア活動を行うことも取組として考えられるのではないか。そういった促進策。また、こういった時期だからこそ文部科学省も積極的に考えてみる必要があるのではないかと。  この二点についてお伺いをしたいと思っております。
  94. 石川明

    政府参考人(石川明君) 初めに、学生のボランティア活動の単位認定のお尋ねの件でございますけれども、例えば長岡技術科学大学ですとかあるいは武庫川女子大学、これは私立大学でございますけれども、事前の届出や事後の活動記録の提出などによりまして、ボランティア活動について単位を認定しているところでございます。このほかにも、この一、二年で数大学が新たにこのような措置を導入していることを承知しております。  そういった意味で、このような取扱いは徐々に増えてきていると私どもも承知しておりますけれども、大変恐縮ですけれども、正確な数とかその全容についてはまだ把握しておらないところでございます。  それから、ボランティア活動を取り入れた授業科目につきましては、例えば平成十二年と十四年比べますと五十大学ほど大幅に増加をしております。こういった状況でございます。  それから第二点目の、例えば教育学部や心理学部等の学生の活動についてのお話がございました。  御指摘のようなケースにつきましては、学生がその専攻分野の学習成果を生かすというような観点、あるいはボランティア活動の内容が学生のその学習内容そのものにもなるという点から大変意義の大きいものだと思っておりますし、また貴重な御提言だというふうに考えております。  こういったケースを含めまして、私ども日本学生支援機構でも様々なそのガイドブックを作ったりあるいはセミナーを開催するなど、こういった活動をしておりますけれども、これらの活動を通じまして、そしてまた私どももいろいろな諸会議等の場を通じまして幅広い学生のボランティアの参加について呼び掛けてまいりたいと、このように考えております。
  95. 荻原健司

    ○荻原健司君 もう残りが多分三十秒かそこらだと思いますので、まとめさせていただきます。  今回、この三位一体改革の中で、やはり義務教育費国庫負担の問題、これは大きな問題だと思っている中で、こういった地震に対しての子供たちの対応であるとか学校施設の問題も併せて同時に進めていかなければならないと思っております。  大変、この地方団体案の中では、本当に大幅に削られてしまうものも多数ございます。特に私はこの地方スポーツ振興費補助金、こういったことも削減リストの中に入っておりまして大変心配をしているところでございますけれども、やはりこういった議論が長引けば、また混乱すればするほど、一番は子供たちに被害が及んでしまう。そういったことも踏まえまして、やはり私たち大人が真剣に議論を、またじっくり時間を掛けて取り組んでいかなければならないことだと思っております。  また、先ほど山本委員が御指摘ありましたけれども、やはり教育基本法、私は十二年ほど前に日の丸を掲げてオリンピックでゴールをしましたし、国歌を大きな声で歌わせていただきました。自分こそが日の丸・君が代を象徴する人間だと思っております。そういった中で、是非この教育基本法の方も併せて真剣な御議論の中で取り組んでいただきたいと思っております。  質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  96. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 民主党の佐藤泰介でございます。  義務教育国庫負担制度在り方について、午前中の参考人質疑での梶原知事の発言にも触れながら質問をさせていただきたいと思います。  まず中山大臣に、大変ここまでこじれてまいりました義務教育国庫負担制度と人材確保法の意義について、改めてその確認をさせていただきたいと思います。  義務教育国庫負担制度と人材確保法は我が国義務教育制度を支えてきた二本柱であり、その今日的な意義について、わずか半年少し前の当委員会の場にて、私の質問に対して文部科学大臣から次のような答弁をいただいたところであります。  これだけに非常に複雑な時代、そしていろんな社会問題を抱え、また子供たちをめぐる環境も大きく変わってきた、こうした中で、教員が優れた感性を持って頑張ってもらう、このことにも、やはりそれなりの処遇をきちっとやっていく、こういう意味では人材確保法は今後とも必要な課題である、大事な法律である、義務教育国庫負担法と人材確保法相まって、教育機会均等そして教育水準維持、これができると思っておりますと。また、小泉改革の起承転結の部分はやはり米百俵の精神、その教育投資に持っていくとの答弁もなされました。この点については最近大変危うくなっておりますが、そんな答弁をいただきました。  つまり、二本柱の意義は、子供を取り巻く状況を顧みるに、重要性は増すことはあっても減ずる部分はないはずとの認識を示されたものと思います。  この点について、中山大臣に改めて、義務教育国庫負担制度、人材確保法の二本柱の意義について御認識をお伺いいたします。
  97. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 佐藤委員正に御指摘のとおり、この義務教育国庫負担制度というのと人確法、これが正に二本柱で今日の日本義務教育を支えてきたと、このように考えているわけでございます。  まず、義務教育国庫負担制度の意義でございますけれども、もう既にもう何度も言われていることでございますけれども、この義務教育というのは、憲法の要請によりまして、全国どの地域においてもひとしく一定水準教育を受けられるように教育条件の整備を図っていくことが必要であるということでございます。特に義務教育の成否は教員に懸かっておりまして、義務教育水準を一定に維持するためには全国すべての地域において優れた教員を一定数確保することが不可欠であります。  義務教育国庫負担制度というのは、このような考え方に基づきまして、義務教育水準を全国的に確保するために、義務教育を担う教職員の給与費について国が一定の負担をすることによりまして優れた教職員を必要数確保するための財源を保障する制度でございます。  一方、人確法でございますけれども、人確法というのは、学校教育が次代を担う青少年の人間形成の基本を成すものであるということにかんがみまして、教員の給与を一般の公務員より優遇することによりまして優れた人材を確保をしまして、もって学校教育維持向上に資することを目的とする法律でございます。  このような人材確保法の考え方というのは、現在学校が抱える課題がますます多様化、複雑する中、教員に優れた人材を維持確保していくために今後とも必要と考えるわけでございます。    〔委員長退席、理事北岡秀二君着席〕  今、米百俵の話もされましたけれども、いずれにしましても、この義務教育国庫負担法及び人材確保法につきましては、我が国における義務教育水準維持向上及び教育機会均等を図る上で必要なものであり、今後とも引き続き維持すべきものであると、このように考えております。
  98. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 今答弁されたこと自体が、その基本が今大変問われているわけだと思いますので、大臣としては、今の認識で十分頑張っていただきたいと思いますし、各方面との折衝をしていただきたいと思います。  それでは、やや具体的な課題に入らせていただきますけれども、先ほど、山本委員の質問に対して副大臣も答弁をされましたが、平成十四年十二月十八日の総務財務文部科学大臣合意について、その位置付けについて伺いますが、三大臣合意では、教育改革の中で義務教育制度在り方の一環として検討を行い、これを踏まえつつ義務教育に係る国庫負担金全額一般財源化について所要の検討を行うとされており、その期限は平成十八年度末までとされている。副大臣も十八年度末まで長い期間をかけて検討をするんだというようなことも付け加えられたような気がいたしますが、この内容は閣議決定である骨太方針二〇〇三で確認されているものです。  これは今の時点でどのような意味を持っているのか伺いたいと思いますが、午前中の参考人質疑の中で、梶原知事もこの三大臣合意に基づいて一般財源化を進めているんだという発言をされましたが、この三大臣合意というものの、いろんなとらえ方ができるような気がいたしますが、本質はどの部分で、今の時点ではどんな意味をこれが持っているのか、そのことについて改めて伺いたいと思います。
  99. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 御指摘の平成十四年の十二月の総務財務文部科学大臣によります義務教育の、教育改革の中で義務教育制度在り方の一環として検討を行い、これを踏まえつつ、「改革と展望」の期間中、これは平成十八年度末でございますが、までに国庫負担金全額一般財源化について所要の検討を行うと、こうされたわけでございまして、このことは、平成十五年の、いわゆるその平成の、骨太二〇〇三ですね、あるいは去年の十二月の政府・与党協議会におきましても同様なことが確認されているわけでございまして、これは、三大臣合意とかあるいは閣議決定の決定は、当然のことながら現在でも有効であると、このように考えておるわけでございまして、この決定に基づきまして平成十八年度末までに検討するということになっておりまして、義務教育制度在り方義務教育における国と地方役割分担など、こういったものは中央教育審議会における議論を踏まえつつ十分検討していくというこのスタンスは今でも変わっていないものということで、今、文部科学大臣として協議に臨んでいるところでございます。
  100. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 それは閣議決定ですから、政府内でもそのように確認をされていると理解してよろしいですか。
  101. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) それが、いろいろ言われるものですから、常にこのことを持ち出しまして、これは中央教育審議会議論を踏まえつつ、十八年度末までに結論を出すということになっているんでありまして、それを今度のいわゆる地方側の改革案ということで、そういう中央教育審議会議論も経ずに決めるというのはおかしいということを主張しているところでございます。
  102. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 そこのところをしっかりと地方の方にも伝えていただいて整理をしないと、お互いに、教育関係者はその教育制度在り方の中でと、知事会の方は全額十八年度末だから例外はないんだというような梶原知事の発言でございましたので、今、大臣が言われたことだとするならば、その点について十分に、政府内あるいは地方も含めての一定の合意が進むような対策なり方策といいますか、そういうことを考えないと、お互いに文章のいいとこ取りをして意見を闘わせてもなかなかかみ合わないと思いますので、是非、今言われたことの趣旨をもって地方ともあるいは閣内でも更に議論を進めていただきたいと、このように思いますが、いかがでしょうか。
  103. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 正に御指摘のとおりでございまして、今回の補助金改革から始まったのが義務教育の国の責任を放棄するというふうなことになるのは、これは本末転倒であると。そもそもといいますか、要するに教育制度在り方、その中における国と地方役割分担と、そういったことを政府全体として考えていただきたいと。  地方に丸投げしたものを丸のみということでは政府として知恵がないと言われるんじゃないかということで、いろいろと今議論を闘わせているところでございます。
  104. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 是非そんな方向で議論を更に深めていただきたいというふうに思います。十八年度末までに結論を出すというふうに理解を私はさせていただきたいと、このように思います。  もう一方ですけれども義務教育国庫負担対象経費の一部削減案を半年少し前にこの委員会議論した際にも、教育論をきちっと踏まえた上で対応していきたいとの大臣の答弁があり、義務教育制度在り方の一環としての検討とは中央教育審議会での議論のことであるとの参考人の答弁もありました。これが先ほど言われた十五年の政府与党合意に述べられている、それに沿っての答弁だったろうというふうに思いますが。  じゃ、ここまでの中教審での議論の経過、簡単に説明を願いたいと思いますし、また、今日もお見えになりましたが、教育条件整備に関する作業部会中間報告が本年五月に公表されていますが、この位置付けについても説明をいただきたいというふうに思います。これを更に進めていって最終答申までいってという、そんな時期的なものを含めて御説明をいただきたいと思います。
  105. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) まず、中央教育審議会義務教育費国庫負担制度に係る検討状況でございますけれども中央教育審議会初等中等教育分科会行財政部会でこの問題は検討をしてまいりました。去る五月の二十五日に行財政部会の下に設けられました教育条件整備に関する作業部会中間報告を取りまとめているところでございます。この中間報告は、初等中等教育分科会、それから総会に順次報告をいたしております。その中間報告の内容は、今後とも義務教育費国庫負担制度の堅持が必要であるという内容になっているわけでございます。  現在、この義務教育費国庫負担制度に関する中教審の検討は、この中間報告を受けながら、更に世界各国の状況について調査を行いつつ、今後審議を深めるということにいたしておりますけれども、中教審自体、この国庫負担制度と絡みまして、義務教育制度在り方、それから地方教育行政制度在り方教員養成制度の今後の在り方等々、多様な観点から現在義務教育の問題について議論をしておりますので、それらの審議との整合も取りながら今後さらに審議を深めていくということになろうかと思っております。
  106. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 今、義務教育国庫負担の意義から始まって、お伺いして、大臣あるいは政府参考人から答弁をいただいたわけですが、そのような形で進められているとするならば、地方団体とのやり取りにより義務教育国庫負担制度の将来が今月じゅうにも決定するかのような雰囲気となっているのはやや理解ができないということになるわけではないかと私は思うんです。三大臣合意や閣議決定である骨太の方針が生きているとするならば、平成十八年度末までの検討事項とされたこの問題については、十分な教育論を政府内で闘わせ、その結果を国民に明確にした上で議論を進めていくべきものであると私は考えます。  そこで、義務教育国庫負担金一般財源化について今の答弁を総合しますと、政府内において教育の視点に立った議論はどこでどの程度行われてきたのかをお聞きしたいと思います。
  107. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) この議論につきましては、まだ私の前任の河村大臣が八月の二十四日に経済財政諮問会議議論をしておりますけれども、私自身も十一月四日の経済財政諮問会議で出させていただきまして議論を闘わさせていただきました。    〔理事北岡秀二君退席、委員長着席〕  それから、十一月の一日と九日の官房長官及び総務財務、経済担当大臣の四大臣との会合におきまして教育の基本的な在り方についての議論を始めたところでございまして、義務教育制度在り方義務教育における国と地方役割というようなことについて様々議論をしておるところでございまして、私は、この義務教育国庫負担制度というのが日本教育を支え、今の日本の繁栄を後押ししてきたんだと、そしてまた、世界は正にこの教育というものを国家戦略としてとらえまして、もう地方には任せられないと、国が全部やらなきゃいかぬというようなそういう方向で、例えばイギリスがそうでございますが、そういうふうにして国の関与を強めようとしているときに、何で日本が、やれ補助金改革とか地方分権とか、そういった論点からのみ国の関与を減らすようなそういうことをするんだと、要するに、世界の潮流と違う方向に今行こうとしているんだと、そんなことで私たち政治家が責任取れるのかと、そういう強い調子で議論をしているところでございます。  また、私ごとき者ではなくて、もっと教育に造詣の深い中央教育審議会先生方をこの場にお呼びしたり、あるいは知事の中にも地方自治に携わりながらしっかりとした国家観を持った知事さんもいらっしゃるんだから、そういった方々もこの経済財政諮問会議の場にお呼びして議論を闘わせるとか、そういうこともしてもらいたいというふうな話までしているところでございます。
  108. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 今大臣も答えられたように、経済財政諮問会議議論をされていると。私が若干調べさしていただいたところでは、このことについては、十月二十一日の参議院の予算委員会において、竹中大臣も経済財政諮問会議の場で議論を重ねた旨の発言をされてみえます。その中では、「そもそも論を正に八月の末に議論をしたと。そういうことを更に我々としては積み重ねていくということでございます。」とも発言されてみえます。具体的には、前大臣だと今言われましたけれども、八月二十四日の経済財政諮問会議での議論を指しているのかと思いますが、この日の議論の中身を見ても、義務教育を支える費用負担在り方を真剣に議論した形跡は私には思えませんでした。  中山大臣となってからのことは今言われましたが、今月四日に教育の基本的な在り方議論されたというふうに思っておりますが、そこでも義務教育国庫負担制度が担ってきた役割教育行政における国の責任在り方について結論が出ているわけではないと私は思っております。麻生総務大臣も、「教育を金から入るのはやめた方がいい。必ず、そこを突かれる。だから、義務教育のそもそも論をやらないと。」と、十月二十二日の経済財政諮問会議で述べてみえます。  今月四日の議論を踏まえ、竹中大臣は、教育のそもそも論を積み重ねることが重要であり、文部科学省の審議会以外でも、ここのところを今大臣触れられた部分かとも思いますが、文部科学省の審議会以外でも多様な検討を行う必要があるかどうか、引き続き知恵を出していくと、このように述べてみえます。竹中大臣は、国庫負担在り方議論する前提となる教育論議は、この発言からすれば、全く道半ばであり、結論はこれからであることを明言していると私には思えますが、国庫負担全廃を前提とした中学校費の削減といった一つの案について、今イエスかノーか決断を迫るといった状況政府が作り出している現状は、これまでのこうした経過からすれば全く信義則違反ではないかと、このように思うわけです。  教育のそもそも論を踏まえた上での義務教育費国庫負担制度在り方についての検討を、平成十八年度末までの間にではどのように進めていくつもりなのか。議論が全く煮詰まっていない現状において、中学校費の削減が突き付けられている状況について大臣はどのように考えてみえるのか。地方団体の案に義務教育費国庫負担金全廃が盛り込まれたことを理由に、教育のそもそも論が中途半端なまま削減の決断を迫ることについて、三大臣合意、今中山大臣が答弁されましたが、その三大臣合意あるいは閣議決定の整合性を踏まえ、総務省としてはどのように考えてみえるのか、お答え願いたいと思います。
  109. 山本公一

    ○副大臣山本公一君) 御指摘の平成十四年十二月の三大臣合意等を踏まえまして、二〇〇三年の基本方針、そしてまた本年六月の基本方針二〇〇四が閣議決定をされ、それを受けまして、地方団体から義務教育費国庫負担金の見直し等を含む改革案が提出されたところでございまして、総務省といたしましては、基本方針二〇〇四に基づいて三位一体の改革の実現に全力で取り組んでまいりたいと、かように思っております。
  110. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 大臣にもう一つ、もう少し御質問をさせていただいたと思うんですけれども、どのように、今の迫られている状況について大臣はどのように今考えておみえですか。私は、議論はまだまだだというふうに、教育論のそもそも論がまだ進められていないという、経済財政諮問会議での十分な議論がないまま今中学校費の削減が迫られている、この状況について大臣はどのように考えておみえになるのか、この点もお聞きしたと思いますが。
  111. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 私は、申し上げているのは、地方側も、とにかくまとめろというふうな小泉総理の御指示がありましたんで、本当に苦労をし、苦吟しながらまとめられた案でございますから、もちろん真摯に受け止めて検討しなきゃいけないんですけれども、やはりそれを受け止めてそのままというんじゃこれは能がないと思っていまして、地方地方考え方あるだろうし、政府政府としての考え方があるんじゃないかということで、政府の中で検討しようじゃないかと。要するに、丸投げ丸のみというのはおかしいじゃないかということを中でいろいろ議論しているわけでございまして、麻生大臣等からそもそも論から始めようということでございまして、何度か議論いたしましたが、まだそもそも論じゃなくて、もそもそ論ぐらいでとどまっているわけでございまして、もっともっとこれは議論を深めていこうじゃないかということを主張しておりまして、先ほども申し上げましたが、私ごとき浅学非才な者の話だけじゃなくてもっと教育に本当に深い造詣を持った方々も入れてやってほしいと。  要するに、教育、特にこの義務教育の問題を経済財政、財政論からだけ、まあ俗な言葉で言いますと、銭金から議論するのはおかしいじゃないかということを強く強く主張しているわけでございまして、そういう意味では、まだ政府内において一定の方向が見えているわけじゃございませんけれども、これは、知事会の方からはああいう案が出ていますけれども、例えば市町村の方からは、二千以上の市町村から堅持しろというふうな話もございますし、教育委員会もそういうふうな声でございます。また、PTAとかあるいは究めたその有識者の方々からも堅持のアピールが出ているわけでございます。国会におきましても、これは与野党を通して堅持しろというふうな、むしろ私は激励をいただいているわけでございますから、そういったいろんな方々の声に耳を傾けながら、本当に今私は日本教育において極めて大事なときじゃないかと、こう思っております。  あのときになぜああいう判断をしたんだということの言われないように頑張っていきたいと、そういう一心で議論に加わっているということを御理解をいただきたいと思います。
  112. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 是非頑張っていただきたいと思いますが、そもそも論が必要との声は、手続上の必要性を認識した廃止論者からもそういったのが聞こえてくるわけですが、どのような議論がされれば一体そもそも論が行われたと言えるのか、この点を確認しておく必要があろうというふうに思います。大臣は今、もそもそ論だと言われましたが、どの程度進めたらこれはそもそも論が行われたと言えるのか。経済財政諮問会議でこれを進めるのか。二回ほど行われたと思いますが、そもそも論の中身はどうも具体性がないというふうにも思います。今後どのようにしてこれを運んでいくのか。  私は、政府教育行政の優先順位をどの程度考えているのか、今回の議論を通じて正面からこれは問われているものであり、小泉内閣は、義務教育費国庫負担金を廃止した後、教育行政に対してどのような形で責任を果たしていくつもりなのか、国民に対し明確な意思表示をする必要があると思います。  地方自治体の案を盾に責任回避するのではなく、現政権は、国として教育行政のプライオリティーを引き下げる理由を自ら語る時期を迎えている、今のままで、私はこう考えております。ここが明白になれば、義務教育費国庫負担制度を廃止することによる教育現場に及ぼす甚大な影響がおのずと明らかになるのではないか。だからこそ、今も大臣が言われたように、手後れになる前に教育のそもそも論を十分に積み重ねる必要がある、このように考えますが、これは今後も経済財政諮問会議で進められていくのか。あるいは、そもそも論は今後どのような運び方をしていくのか。  竹中大臣は、中教審以外の場でも知恵を出していくと、出していきたいと、このように発言もされてみえますが、一体どの場で、どのように、いつごろまでに結論を出して、そして平成十八年度末にどうするのかと。そこのところが明らかにならないと、そもそも、もそもそ、こそこそでは進みようが私はないんだろうというように思いますので、そこのところを文科省としてどう考えるのか。政府内でどのように考えるのか。麻生大臣もそもそも論が必要だと、竹中大臣も中教審以外の場でも知恵を出していきたいというような発言もされてみえるわけですので、やっぱりここがきっちりとされないと、いつの間にかお互いに自分のいいとこ取りをして、そして合意ができないんではないかと、こんなように思いますので、改めて聞きますが、このそもそも論、その必要性皆さんが言われるわけですから、どこで、どんな運び方で、いつごろまでにその議論をされていく、そんな見通しを持ってみえるのか、お伺いしたいと思います。
  113. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 基本的には、御指摘のように、平成十八年度末までに中央審議会での審議を踏まえてと、こうなっているわけでございますから、私どもとしては、とにかくこの中央教育審議会を無視して経済財政諮問会議を中心として結論を出してもらっては困るということをまず一番目に主張しているわけでございます。  そしてまた、先ほど申し上げましたけれども補助金改革、地方財政改革というところから話が始まったんですけれども、それがなぜ今のこの義務教育国庫負担制度の廃止ということになるのか。この義務教育国庫負担制度日本教育上何か悪い影響があったのかということから話し始めるべきでありますし、私どもが心配しますのは、この負担制度を廃止いたしまして地方が全部持つということになった場合、一方では、最近明らかになりましたけれども交付税改革ということで大幅に削減されるという状況の中で、本当に地方責任を持ってやれるのか。憲法の要請でございますけれども日本のどの地域、どういったところに生まれても、ひとしく一定水準以上の教育を受けることができるのかどうか、そこが大変心配でございます。  特に一番大事な、これは教員の給与をしっかり持つということ。これやはり、教育は人なりと申しますけれども、そこのところが一番大事だと、こう思うわけでございまして、そういったもろもろのことを含めて、最初に申し上げましたように、経済財政諮問会議だけで決めるんじゃなくて、広く、中央教育審議会、そして与党の方でもいろいろ今検討していただいているわけでございまして、このことにつきましては、それこそ国民の本当に総意を踏まえた、みんなが知恵を出して私は検討していくべきだということを主張してまいりましたし、これからも主張してまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  114. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 大臣として、文科大臣としては精一杯のお答えをされたところだというふうに理解をさせていただきますが、どうも短時間で、何かペーパーが出て、財政諮問会議でとことことこと何か決められて、そして決断を迫られるというような状況を迎えることを大変心配をしているわけでございますけれども、竹中大臣の、中教審以外の場での知恵も出していきたいというようなことは、文科省としては中教審の最終の答申を待つんでしょうか。財政諮問会議としての、中教審以外の場での知恵も出していきたいということは、それは具体的なことも出ているんですか。それとも竹中大臣のその場での発言なのか、まとめのペーパーなのか、私にはよく分かりませんけれども、そこのところを、やっぱり財政諮問会議がこれリードしていくんでないかなということを大変心配をいたしておりますので、そこのところを、中教審以外、文科省以外にも知恵を出し合ってというところはどんなことになっているんでしょうか。そこのところを少し御見解、御説明願えませんでしょうか。
  115. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 竹中大臣が私ども議論の中で経済財政諮問会議以外でという発言があったということについては、私ちょっと記憶がございません。むしろ、私の方が、先ほど言いましたけれども、この経済財政諮問会議中央教育審議会先生方をお呼びしたり、あるいは知事さん方を呼んで一緒に議論してほしいというふうなことは申し上げましたが、そのときにはそうしようという話にはなりませんでしたから、私の記憶でいいますと、何かほかのところの知恵という話は、発言はなかったように記憶しております。
  116. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 是非その財政諮問会議で十分に、地方の方も、今日、梶原知事もここお見えになったわけですから、交えて議論ができる場を私は作る必要があろうというふうに思っております。  そこで、今日、梶原知事が言われたことについて一つ伺いたいというふうに思います。ちょっと通告した順番と変わるかもしれませんが。  今、私は、義務教育における国の責任の果たし方として、国庫負担制度が適切だったかどうかという点について教育的な議論が必要だとの主張をしてまいりました。中教審でもこの観点からの議論が続けられるという今答弁がありました。  国の財政上の責任の果たし方を規定しているのが義務教育国庫負担法であり、地方財政法第十条であると思います。そこでは、義務教育にかかわる費用を国が責任を持って支弁すること、すなわち国庫負担することを法律上明記しています。  十月二十二日の財政諮問会議において総務大臣は、国として義務教育自治事務平成十二年度に決まったわけだから、生活保護は法定受託事務義務教育等々は自治事務で、あとは財源が決まっていないだけの話。だから、教育議論義務教育のそもそも論をやるべきと述べてみえると思います。この発言は、自治事務として整理した時点で地方財政法十条から義務教育が除かれるべきであったとの主張と私は解さざるを得ないと思います。  今日も梶原知事は、教育自治事務だということを主張されて今回の提案に至ったということを強調をされました。しかし、平成十年五月に閣議決定された地方分権推進計画では、自治事務の中でも、その実施内容、方法等の基本的枠組みが法律若しくはこれに基づく政令で定められ、ナショナルミニマムの維持達成のためにはその運営につき国が進んで経費負担する必要があるものについては、例外として国がその経費の全部又は一部を負担する。なお、国はその負担すべき割合に応じ、毎年度確実に負担することとするとしています。  義務教育は、正にこの条件に合っているがゆえに、自治事務でありながら国庫負担されてきたと私は理解しております。  平成十年と平成十六年では義務教育に対するナショナルミニマムとしての位置付けが大きく変わって、今回このような形になってきているのか、その点について伺いたいというふうに思いますし、梶原知事が、午前中の参考人質疑では、自治事務、したがって、これは地方が進めていくんだというような点を冒頭、力説をされました。しかし、地方分権推進計画では、そうではあってもという部分があって、義務教育のナショナルミニマムとして守られてきたんだというふうに思って私はおります。  したがって、これがわずか五、六年の間に大きく変わったのか、ここのところをも、私は、だとするならば整理をする必要がある。これも私はそもそも論だというふうに思いますが、やっぱり中途半端な整理でここまで来てしまったんではないかと、そして今日のような問題が生じてきているのではないかというように思うわけです。  したがって、状況が変化をしたなら変化をしたと、地方自治法十条から義務教育を除くというような整理をするのか、そんな点を改めて文科省、政府参考人でも結構ですが、総務省と併せてお伺いしたいと思います。
  117. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) まず、自治事務の関連のお話でございますけれども、結論を申し上げますと、まず、学校の設置管理の事務というのは、戦後一貫して地方事務でございまして、平成十二年の地方分権一括法によって変化をしたというわけではないと理解をいたしております。  すなわち、地方分権一括法以前、戦後の体制でございますけれども学校の設置管理事務は市町村の団体委任事務とされていたわけでございますが、地方分権一括法におきます整理で自治事務ということになったわけでございます。ただ、この団体委任事務地方事務であることは変わりはないわけでございまして、戦後は一貫して学校の設置管理事務地方事務であったということをまず一点申し上げたいと存じます。  それから第二点目でございますけれども、今、教員の人事は都道府県が行っているわけでございますけれども地方分権一括法以前は、教員の人事は都道府県が市町村から機関委任事務として受けていた事務でございます。地方分権一括法以降は機関委任事務ということがなくなりまして、法定受託事務自治事務ということになったわけでございますが、これは一応都道府県自治事務として整理をされたと。これは、教員人事は国からの機関委任事務ではなくて市町村からの機関委任事務であったと。下から上への機関委任事務であったということでございます。それで、一応こういう具合に事務の整理は行われたわけでございますが、本質が変わったということではしたがってありません。  これによりまして、地教行法等の規定ぶりについても、従来から例えば指導、助言、援助といったような部分にかかわる規定の変更とかは行っていないわけでございます。  なお、先生お話しのこの地方分権一括法に先立ちます平成十年五月の地方分権推進計画の閣議決定におきましても、国が一定水準確保することに責任を持つべき行政分野に関して負担をする経常的国庫負担金、その中で、生活保護や義務教育等真に国が義務的に負担を負うべきと考えられる分野、これは経常的な国庫負担金として存するという趣旨の閣議決定がなされているところでございます。
  118. 山本公一

    ○副大臣山本公一君) 私どもといたしましては、義務教育地方自治事務ということで認識をいたしております。分権一括法において、教職員任免、学級編制基準も機関委任事務から自治事務に転換をしたということだと思っております。  先生御指摘の云々というお話がございましたが、ちょうどこの分権計画当時は税源移譲なる発想は前提としていなかったということから始まりまして、二〇〇四年の骨太方針で今日に至っているというふうに流れとして思っておりまして、私どもは、義務教育地方自治事務だというふうに理解をいたしております。
  119. 佐藤泰介

    ○佐藤泰介君 どうも擦れ違いが文科省と総務省であるようでございますが、やはりここのところをも、私ずっと教育のそもそも論を言ってまいりましたけれども、ここももう一度きっちりと政府内で議論をして整理をしないと、今の答弁なかなか理解、私だけが理解できないのかもしれませんが、十分に理解できない。  自治事務と決めたけれども、推進計画の中でナショナルミニマムを守るということで国庫負担があったと。それが、今日的な税源移譲の問題が出てきたからこれは自治事務で、もうそっちはなしなんだと。文科省はまだまだナショナルミニマムの維持水準に必要であると。ここのところをも、教育論をすると同時に、この地方財政法十条をしっかりと整理をする議論が、これもまたどこでやるんだと聞いても、もう時間が来ましたのでまたにさせていただきたいと思いますけれども、そうしたことをきっちりと詰めていただかないと議論が進まないのではないか、このように思っております。  そんなことを申し上げて、時間が来ましたので今日は質問を終わりたいというふうに思いますけれども財務省にもちょっと聞きたいと思ってお呼びをしておきながら聞けませんでしたことをおわびを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  120. 広中和歌子

    広中和歌子君 民主党の広中和歌子でございます。私にとりましても、この委員会、初めての質問でございますので、よろしくお願いいたします。  先ほど同僚議員から、地震など突発的に起こる災害に、非常時のトラウマに対する心のケアの必要性ということで御質問がございましたけれども、そうした突発的な事故だけではなくて、日常的に様々な形で今現代人というのはストレスを感じている、子供たちも例外ではないわけでございます。  今朝の参考人質疑小柴昌俊先生もおっしゃいましたように、本当に今子供たちの置かれている状況というのはかつてと大いに違うわけでございます。決して今の子が不幸だと言うつもりはございませんけれども、かつて家庭が持っていた、あるいはコミュニティーが持っていた教育力というのが非常に衰える中で、社会、なかんずく学校が果たすべき役割というのがますます増大しているのではないかと。そういうことで、教育予算の配分というものもそれに応じて変わってこなければならないし、また新たな対応というのでしょうか、新たな学部が必要であったり新たなトレーニングが必要であったりするのではないかと思います。  それで、まずカウンセラーというんでしょうか、先ほどからいろいろな言葉が飛び出しておりましたけれども、臨床心理士ですか、その現状について、まず数からお伺いいたします。
  121. 素川富司

    政府参考人(素川富司君) お答え申し上げます。  臨床心理士の数でございますけれども、これは財団法人日本臨床心理士資格認定協会の指定を受けました心理学系の大学院の修士課程を修了した者などに対しましてこの協会が資格試験を行いまして、その合格した方を登録するということで活動している資格でございますけれども平成十六年の六月現在で全国で約一万一千名がこの資格をお持ちになっておられまして、学校などの教育分野で活動している方は約五千名というふうに承知しているところでございます。
  122. 広中和歌子

    広中和歌子君 これは国家認証制度でございますか。
  123. 素川富司

    政府参考人(素川富司君) お答え申し上げます。  この財団法人が資格審査を行って認定を行っているいわゆる民間資格でございます。
  124. 広中和歌子

    広中和歌子君 こうした民間資格のままでいいというふうにお思いでございますか。  それから、数についてでございますけれども、今、学校ですね、小学校、中学校、高等学校に配置されているカウンセラーの現状はどうでございましょうか。
  125. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 今、スクールカウンセラーという形で、主として中学校でございますけれども、配置をされております臨床心理士は約三千三十人でございます。  なお、スクールカウンセラーは臨床心理士以外、精神科や大学教授等の方もいらっしゃるわけでございまして、スクールカウンセラー自体としては約四千人の方が約七千校の学校に配置をされている状況にございます。
  126. 広中和歌子

    広中和歌子君 済みません、七千校というのは全国に存在する中学の数でございますか。
  127. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 全国の中学校の数は約一万一千校でございますけれども、そのうちの約七千校に現在スクールカウンセラーが配置をされている。  なお、文部科学省といたしましては、平成十七年度までに約一万校、大体この数は三学級以上の公立の中学校という数になりますけれども平成十七年度までに一定規模以上の、三学級以上の全公立中学校一万校にスクールカウンセラーを配置をするということを目標にいたしてございます。
  128. 広中和歌子

    広中和歌子君 今のシステムで、認証制度で十分なカウンセラーを作り出すことが、輩出することができるのかどうかということと、それから、中学校というところで結構問題児が存在するわけですよね、いじめであるとかなんとか。ただ、逆にこういう芽って、そうした問題の芽というのはむしろ小学校のときに生まれるという可能性もあるわけで、是非小学校にも必要ではないかという声も聞くわけでございますけれども、それについてお伺いいたします。
  129. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 先ほど申し上げましたように、スクールカウンセラーは子供たちのいろいろな悩みに応じて相談にあずかったり心のケアを行ったりするわけでございまして、私ども大変、今の中学校状況考えたときに必要な方々だと思っております。  ただ、スクールカウンセラーの有資格者につきましては近年増えてきております。特に臨床心理士は、大学院で大変養成するコースが増えてまいりましたので増えてはきておりますけれども、いわゆる地域的な偏在とか、それからまだ業務経歴がまだ若い方がいらっしゃるので、更にスクールカウンセラーになられる臨床心理士の方自体も経験をどんどん積んでいただくといったような課題があることは認識をしておりますけれども、今後、スクールカウンセラーについてはそういった課題を克服しながら、きちんと有資格者の配置ができるようにしていきたいなと思っております。  それから、小学校につきましても、現在は中学校中心でございますけれども小学校にも、スクールカウンセラーそのものの配置というよりは、いろいろそのスクールカウンセラーの指導を受けながら、スクールカウンセラーといいますか、臨床心理士そのものの有資格ではないけれども子供たちの心の相談に応ぜられるような方を子どもと親の相談員という形で今配置を進めているところでございます。
  130. 広中和歌子

    広中和歌子君 是非その方向でいっていただきたいと思うわけでございますが、私が子育てをしておりましたアメリカにおきましては、小学校、中学校でも必ず各校に一人ずついらしたということで、例えば不登校の子がいたり、あるいはいじめ、問題を起こした子は受持ちの先生がそういうカウンセラーのところに早めに送るわけですよね。そして、何が原因なのか、その原因を取り除くようなカウンセリングをするというようなことで、非常に日常的に、大きなことではなくて、日常的にそれが行われているし、まして高等学校に至りましては、進学指導も含めまして、私のおりました、子供が通っていた高等学校では、千二百人ぐらいのたしか高校で六人ぐらいのカウンセラーがいて、それぞれ個室を持っていてカウンセリングに当たっていたと。  そういうふうに、やはり国によっては、国によって生徒をどういうふうに扱うかというのが違うのは当たり前でございますけれども、好むと好まざるとにかかわらず、日本の現状というのがだんだんアメリカ的になっているということを考えれば、こうした新しい種類の先生というんでしょうか、カウンセラーが必要ではないかと。  それから、どういう方にカウンセラーになっていただくかということでございますけれども、私は、大学教員資格を取りながら先生にならなかった人、あるいは先生をやっていても自分の家庭の事情で辞めた方、子育てを体験した人、そういう人たちが再び大学院に戻ってそうした資格を得る、そのような道がどんどん開かれれば、つまり、若手のそういうカウンセラーも結構でございますけれども、やはり人生経験、子育ての経験を積んだ人などがもっともっとこういう分野に参入することが必要ではなかろうかと思っているものでございます。  それについてどのようなお考えでいらっしゃるか、お伺いいたします。
  131. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 今、スクールカウンセラーの主体を、数としてスクールカウンセラーの多くの部分を占めております臨床心理士の方々は、臨床心理士資格認定協会の認定した方でございますし、非常に大学レベルで専門的な教育を受けて、それで資格を取ってスクールカウンセラーになっている方でございます。それに加えて、スクールカウンセラーにはそれに準ずる方ということで一定の子供たちのカウンセリングの経験のある方なども登用することにいたしておりますけれども、今後のことを考えたときに、そういう幅広い専門家の方がスクールカウンセラーとして御活躍いただくということは、これは大変大事なことだろうと思っております。  なお、もう一つ、いろいろ大学院で例えば現職の先生とかあるいは教職をお持ちの方がカウンセリングについて研修を行って、そういうカウンセリングマインドを身に付け、あるいは技法を身に付けて子供たちの相談にあずかっていくことができるようにするということも、これも大切でございますので、今大学院でカウンセリングに関するコースを開設をしているところが徐々に増えてきていると思いますし、また現職の先生が特に大学院でのカウンセラー教育を受けるという機会もございますので、こういったことから、現職の先生や今先生をやっておられない方がより高度なカウンセリングに関する実践力を身に付けるような、そういう機会の充実というのが図られていけばいいなというふうに思っているところでございます。
  132. 広中和歌子

    広中和歌子君 是非進めていただきたいと思います。  最近、再教育というんでしょうか、いったん職業に就いた方でも何年かに一度は再び自分のトレーニングを、リフレッシュすると、専門をリフレッシュするといった形が必要だという声が出ているわけです。議員の場合は六年に一度、参議院では、何というんでしょう、住民の皆さんの、有権者の皆様の信託を得て再び議員になるということがあるわけでございますけれども学校の先生などもやはり時々はサバティカルといったような形で学校を離れて新たな研修の機会を持つような、そのような方向が本当に必要ではないかなというふうに思っております。  今、義務教育国庫負担等々、その財政的な問題が非常に大きな話題となっているときに、まあ夢みたいな話をしていると思われるかもしれませんけれども、ともかく、やはり重点政策というのは時代とともに変わっていくんではないかということを申し上げて次のテーマに移りたいと思います。  働く母親が非常に増えていると。これに対してはいろいろなお考えのある方も社会の中にはあるかもしれませんけれども、やはりこれからの人口減少社会の中で、働き手としての女性、女性が社会で仕事を持ちながら非常に充実した人生を送ると。そういう意味でも、働く母親が安心して働けるような状況を作らなければならないんではないかと、それはもちろん子供の心の健康を含めてのことでございますけれども。  幼稚園と保育所が別々になっているということ、いろいろな、多様な施設があること自体は否定するものではございませんけれども、やはりこれから働く母親というのが増えてきたときに、むしろ幼保一元化というのが必要ではないかと思うんでございますが、その現状と、それから方向性についてお伺いいたします。
  133. 塩谷立

    ○副大臣(塩谷立君) 広中委員御指摘の幼保一元化につきましては、かなり以前から問題として取り上げられておりますが、なかなか現在までは進んでおらないのが現状だと思っております。  幼稚園につきましては、満三歳から小学校就学前の幼児を対象にして一日四時間を標準とした教育を行う学校であり、保育所は、親の就労等の事情により保育に欠ける零歳から小学校就学前の子供を対象に一日原則八時間の保育を行う児童福祉施設であります。  このように、幼稚園と保育所はそもそも目的、役割を異にしているところでありますが、幼稚園と保育所は元々就学前の幼児を対象としておりますので、今先生おっしゃったような一元化も当然ながら今後考えていかなければならない。そして、現状としては、文部科学省と厚生労働省はその連携を強化しようという努力をしているところでございます。  具体的には、施設の共用化指針の策定、教育内容、保育内容の整合性の確保、幼稚園教諭と保育士の合同研修の実施、資格の併有の促進、そして幼稚園と保育所の連携事例集の作成などの取組に加えて、構造改革特区においても、幼稚園において幼稚園児と保育所児の合同活動を行う特例など、幼稚園と保育所の連携に係る特例を設けているところでございます。  そして、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三年におきまして、これは平成十五年の六月二十七日閣議決定されたところでありますが、就学前の教育・保育を一体としてとらえた総合施設について、その実現に向けて平成十六年度中に基本的な考え方をまとめる、そして平成十七年度に試行事業の先行実施するなどして必要な法整備を行うことも含めて様々な準備を行い、そして平成十八年度から本格実施を行う予定であります。  文部科学省としましても、厚生労働省を始め関係各省と協力しながら、中教審の審議を踏まえて幼保の連携の一層の推進に努力をしてまいりたいと思っているところでございます。  以上でございます。
  134. 広中和歌子

    広中和歌子君 去年視察に参りましたデンマークでも十年ぐらい前から幼保一元化ということで、ただし三歳児まで、あるいは三歳から六歳まで、そして今度は学童保育というふうに、いろいろ行く場所は違っても一貫して、子供たちが必ず寂しくないような、親がいなくても面倒を見てもらえるような環境というものを社会全体として作っているということに非常に感銘を受けたわけでございますが、日本の場合も是非その取組を急いでいただきたいと。  縦割りということを申し上げては恐縮でございますけれども、やはりこういう新しい時代でございますし、昨日開かれました経済・産業・雇用調査会におきましても新しい取組がどんどん始まっているようでございまして、期待しておりますので、是非この幼保一元化の分野におきましても取組を加速させていただきたいと心からお願いする次第でございます。  それから、もう一つ伺いたい、次に学校関係で伺いたいことは、学校施設の流動的な有効利用ということでございます。  図書館とか職業高校ですよね。職業高校というのは、私は今現状はよく分かりませんけれども、少なくとも最先端の様々な技術、機械や教育設備を整えているところだろうと思います。それを一部の学生さんだけが使うのではなくて、午後、放課後とか夜とか、そういうものを社会の中に還元することによって新しい分野の知識を、いわゆる転職にさらされている人、新しく分野を変えなければならない方々に提供するといったような、要するに職業、何というんでしょう、職業習得の場として文部省の様々な施設が使えないかということをお伺いしたいわけでございますけれども、いかがでしょうか。
  135. 田中壮一郎

    政府参考人田中壮一郎君) 学校施設の地域あるいは大人の方々に開放するということにつきましては、平成十四年度の調査におきまして、何らかの学校の施設を地域住民の方に開放しているという学校は、小学校で九六・九%、中学校では九三・四%、高等学校は、これ職業高校だけに絞った調査はしておらないわけでございますけれども、高校全体では七三・五%となっておるところでございます。  特に、公立学校におきましては、そういう施設の開放と同時に、四割の高校におきましては学校開放講座というものを開設しておりまして、職業高校等におきましてはその有します施設なり人材を生かした講座を開設しておるというふうに認識しておるところでございます。
  136. 広中和歌子

    広中和歌子君 是非そういう方向で進めていただきたいとお願いする次第です。  次に、大学についてお伺いいたします。  過去十年間に認可されたり設置されたりした大学の数、あるいは大学の数が減ったのであればその数字を教えていただきたいと思います。
  137. 石川明

    政府参考人(石川明君) 大学の数についてのお尋ねでございます。  まず、設置認可の数でございますけれども、過去十年間、平成六年度から平成十五年度までの間の大学新設の認可件数につきましては累計で百七十二大学となってございます。そして、短期大学につきましては三十大学の新設を認可しているところでございます。  また、大学の総数でございますけれども、総数の推移につきましては、平成七年度の五百六十五大学から平成十六年度につきましては七百八大学ということで、百四十三大学の増加となってございます。また、短期大学につきましては五百九十六大学から五百八大学ということで、八十八大学の減少という状況になってございます。
  138. 広中和歌子

    広中和歌子君 国立大学が減っておりますけれども、それは事実でございますか。
  139. 石川明

    政府参考人(石川明君) 国立大学につきましては、この二、三年の大学の統合の動きの中で、十一大学だったと記憶してございますけれども、減少しているところでございます。
  140. 広中和歌子

    広中和歌子君 減少したケースでございますけれども、統合されたということで、廃校になったわけではないということでございますか。  そうすると、教授の数、職員の数、あるいは生徒の数というのはどういうようなことになっておりますでしょうか。
  141. 石川明

    政府参考人(石川明君) 教職員の数等につきましては、合理化による減等はもちろん幾らかございますけれども、定員等を含めまして基本的な構成については従来の規模を維持しておるということでございます。
  142. 広中和歌子

    広中和歌子君 じゃ、なぜ統合なさったんですか。  私も、ほかの委員会で、いろいろ独立行政法人の中で幾つかの特殊法人などの統合というんでしょうか、見てまいりましたけれども、普通、合理化のために統合するというんだったら、一足す一は二以下にならないといけないわけですよね。ところが、一足す一が二そのもので、だったら何でするんだろうなというような思いをするわけですが、教育の場合はどうなんで、大学の場合はどうなんでございましょう。
  143. 石川明

    政府参考人(石川明君) お話しのように、特殊法人の整理合理化等々、複数の機関が一つになることによって世帯をできるだけ小さくして効率化、運営の効率化を図るというような観点もございます。また、この国立大学の統合につきましては、そういった観点ももちろんある程度入ってございます。しかしながら、教育面ということで申し上げれば、例えば規模の小さな大学で、そして限られた分野しか持っていない大学というものが近隣にあるとした場合に、それぞれ関係のある大学が一緒になる、関係のあると申しますか、分野において関連のあるところが一緒になることによりまして、それぞれの関連性あるいは統合したことによる教育研究上のメリット、そういったことで新しい発展の方向が例えば求められると。こういった観点で、それまでもそれぞれの大学でこういった議論検討はなされてきておりまして、その結果としてそういった再編統合がなされておると、このように理解しております。
  144. 広中和歌子

    広中和歌子君 それでは、私立として新たに設置される、認可される、認可が必要なわけですよね、認可される大学の数が非常に増えているように思います。これから少子高齢社会ということで、大学に十分に生徒さんが来てくれるかという心配をしているところが多い中で、あえて認可なさっているその理由というんでしょうか、はどういうものなんでしょうか。
  145. 石川明

    政府参考人(石川明君) 先生御指摘のとおり、十八歳人口につきましては平成四年度に二百五万人という最近のピークを一回迎えておりまして、それが平成七年度には百七十七万人、それから平成十六年度には百四十一万人とかなり激しい減少傾向を見せておるわけでございます。  一方で、大学の数につきましては、先ほど御紹介いたしましたように、平成七年度の五百六十五校から平成十六年度の七百八校ということで増加をしているところでございます。  こういった少子化が進行する中で、大学の数、特に私立大学が増加している要因ということにつきましては、その理由を一概に申し上げることはなかなか難しい面があると、こんなふうに考えておりますけれども、主な原因として考えられますものは、一つは十八歳人口自体は減少しておりますけれども大学の進学意欲というものが大変高まってきておりまして、社会人も含めた高等教育への実際の進学者数自体はほぼ安定的に推移をしてきているという、こういう状況がございました。  それから二番目といたしましては、例えば短期大学、主に大体二年制が多うございますけれども、四年制の大学への志向といったようなものが高まってきているというような背景の中で、短期大学から四年制大学へ転換をするというケースが非常に増加をしてきたというようなことが二番目として挙げられようかと思います。  それから三点目といたしましては、看護ですとかあるいは社会福祉それから情報関係、こういった新しい分野の人材需要、これに対応した形で大学が多く新設されてきたと、こんなような事情があろうかと、こんなふうに見ております。
  146. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は、多分、教育に携わる人たちの自助努力というんでしょうか、あるいは大学間の様々な競争があっての結果だろうと思って、これは必ずしも悪い傾向ではないとは思いますけれどもただ、具体的に経営上成り立っていくのかどうかといったような問題、どれだけこれから助成というんでしょう、文部省の大学助成がどういう形で継続していくのかどうかと、そういうことが心配なわけでございますけれども、国立大学、そしてまた私立大学への国の助成というのはどういう現状でございましょうか。
  147. 石川明

    政府参考人(石川明君) まず、国立大学につきましては、法人化前の国立大学等の予算は、これは国立学校特別会計という形で措置をしてございました。総収入に占める国費の割合は大体約五五%という状況でございました。法人化後におきましては、先生方既に御案内のとおり、当委員会における附帯決議も十分に留意をいたしまして、平成十六年度の運営費交付金、法人化後の運営費交付金予算全体につきましては平成十五年度と実質的に同水準の額を措置をさせていただいているところでございます。  その結果といたしまして、事業費に占める運営費交付金の割合は五六・五%と、このような状況でございまして、文部科学省といたしましては、各国立大学が今後また六年間の中期目標、中期計画期間を通じまして教育研究を着実に実施していけるように、今後とも必要な運営費交付金の確保に努めてまいりたいと、このように考えております。
  148. 広中和歌子

    広中和歌子君 私立はどう。
  149. 金森越哉

    政府参考人(金森越哉君) お答え申し上げます。  私立大学に対する支援についてのお尋ねでございますが、私立大学の財政基盤につきましては、我が国高等教育の質や量、両面の発展において私立大学が果たす役割の重要性にかんがみ、これらの法人が自ら努力しつつ、安定的な運営を進めていけるよう、一定の支援を行っていくことが必要であると考えております。  このため、文部科学省におきましては、私立学校振興助成法に基づきまして私学助成の充実に努めてきたところでございまして、平成十六年度予算におきましては三千二百六十二億五千万円を措置しているところでございます。  なお、私立大学における経常的経費に占めるこういった補助金割合でございますけれども、私立大学全体で申しますと、経常的経費に占める国の補助金割合は十五年度では一二・一%ということになってございまして、過去十年間一二%前後で推移をしているところでございます。
  150. 広中和歌子

    広中和歌子君 多分、今の日本の財政状況とか、それから少子化の問題で、これから大学の国庫補助というんでしょうか、そういうものが減っていくのではないかという危惧があるんではないかと思います。  今、お二人の御答弁で、少なくとも次の五年間、六年間ぐらいはこの水準維持するというお言葉をいただいたと思うんでございますけれども、そこから先ですよね、問題は。そのうちに重点化みたいな、学校によって差を付けていくといったようなこと、それがもちろん自由競争の時代に入っていく、教育も自由競争の時代に入りますから、どういう学生をどれだけ受け入れ、どういうような教育をするかということも問われるわけですが、これから先の見通しについて安心できるようなお答えをいただければと思います。
  151. 石川明

    政府参考人(石川明君) 先ほどは、一つの説明の中で今後六年間というふうなことも申し上げたところでございます。しかしながら、別に六年間で大学世界がなくなってしまうわけではございませんので、私どもとしては、あくまで長期的な視点、展望に立って高等教育発展のために必要な予算措置、必要な額を確保してまいりたいと、このように考えております。
  152. 広中和歌子

    広中和歌子君 明日のことではなくて六年先のことでございますから、大変はっきりとしたお答えは無理かもしれませんけれども、ともかくこれからの日本にとりまして教育というのが、特に高等教育が非常に大切であるということを申し上げ、是非この大学の、何というんでしょう、支援に対して文部行政として前向きに対応していただきたいとお願いする次第でございます。  それから、大学院について伺うわけでございますけれども、最近非常に大学院の数がまた増えましたよね。それはどういうことなんでございましょうか。大学院が増えた分、アンダーグラジュエートというんですか、学部の学生が減ったのか、それとも、つまり総量としての学生数というのが増えているのか、そこのところをお伺いします。
  153. 石川明

    政府参考人(石川明君) 大学院の規模についてのお尋ねでございます。  大学院につきましては、平成三年の大学審議会の答申で「大学院の量的整備について」といった答申が出されておりまして、その当時、今もそうでございますけれども、欧米に比べまして大変日本の場合は大学院の全体の規模といいますか量的な規模が小さかったということがございます。そういったことで、日本の高等教育研究あるいは学術研究の発展を大きく目指そうというときにこのままではいけないのではないかという議論が行われまして、そういった意味我が国水準が他の先進諸国と比べて非常に小規模なものにとどまっているというような認識から、その量的な整備の必要性が指摘されたところでございます。  具体的に申し上げますと、大学院修了者に対する需要動向ですとか、あるいは社会人のリカレント教育に対する意欲、それから留学生の受入れの動向、こういったものを総合的に考えて、平成十二年度時点における我が国大学学生数の規模につきまして、全体としては少なくとも当時の規模の二倍程度に持っていこうと、拡大をするというようなことが必要であると、こんなふうに提言をされまして、現実問題として、実際に平成三年度の約九万八千人から平成十二年度におきましては約二十万五千人ということで二倍以上に増加をいたしておりますし、平成十五年度におきましては約二十三万一千人に増加をしているところでございます。  また、学部との関係についてのお話もございましたけれども大学院の増加につきましては、特別に、別に学部を削ってということではございませんで、学部の規模は維持をしながら大学院について量的な拡大を図ってきたと、こういうことでございます。
  154. 広中和歌子

    広中和歌子君 量的な拡大は結構なんでございますけれども、それに予算が伴っているかどうかということでお伺いしたわけでございます。  それで、今二十万五千人ですか、大学院の学生さんがいるということですけれども、当然卒業すればどこかに就職しなければならないということで、その受入れ体制というのはどうなんでございましょうか。  すべての方が、昔は、一昔前は大学院というと研究者を育てるということであったわけですけれども、そういう方たちの就職先というのはあるのか、あるいは企業などにその就職先が広がっているのかどうかと。日本はどちらかというと、少なくとも今までは、これからは違うかもしれませんけれども、基礎的な教育大学でしてくれてもいいけれども、そこから先は企業に入ってから我々が教育をしますと。だから、理科系の方であってもせいぜいマスター、修士ぐらいで結構ですというようなところで、大学院、博士課程を出てもなかなか企業に就職することができなかったんではないかと思います。  田中耕一さんという方がノーベル賞をもらわれましたけれども、あの方が博士課程を持っていらっしゃるかどうか、就職どきです、伺いましたらば、持っていらっしゃらなくて、ノーベル賞をもらってから、後から博士号が下りてきたということでございますけれども。企業の要請とそれから大学院の卒業生との、何というんでしょう、連携はどのように今変わりつつあるのか、お伺いいたします。
  155. 石川明

    政府参考人(石川明君) ただいま広中先生から幾つかの、大学院の修了者についての幾つかのお尋ねがございました。  例えば、その修了した方の就職状況でございますけれども、例えば理工系というお話がちょっとございましたので理工系について見てみますと、例えば修士課程の修了者につきましては、これは平成十五年の場合は六万七千四百十二人の理工系の方の修了者がおりまして、そのうち、就職をされた方がそのうちの六四・五%という状況になってございます。それから、博士課程の場合には、同じく申し上げますと、一万四千五百十二人の修了者がいらっしゃいます。そして、そのうちの五四・四%の方が就職をしておるということです。これは、失礼しました、これは理工系でなくて全体の修了者のことでございます。  そして、理工系の方々の就職先を見てみますと、修士課程のケースで見ますと、就職者が理工系につきましては七七・二%ということでございまして、その主な就職先といたしましては、建設業ですとかあるいは製造業、情報通信業等、そういった分野の実際の企業等に七九・九%の方がいらしています。それから、博士課程につきましては、就職者の方が理工系で五二・一%ということでして、同じく建設業、製造業、情報通信業等々へいらしている方が三二・一%ということで、先生おっしゃったとおり、企業等への就職状況を見ますと、修士課程の方々はまずまずということが言えると思いますけれども、博士課程の修了者の方々がなかなか企業等へ行っておらないという状況がございます。  御案内のように、大学院の教育の目的につきましては、従来、研究者養成といったようなことが主流でございましたけれども、例えば平成元年には大学院の博士課程の目的につきまして、優れた研究能力を持って高度で専門的な職業に従事するというそういった人たちも養成するんだといったようなことになっております。そういった意味で、博士課程の方々も様々な分野でその専門的な能力を生かして活躍していただきたいと私ども思っておりますし、どうか企業の方にもそういった博士課程修了者の能力を適切に評価をしていただいて、どんどん採用していただければいいと、こんなふうに考えているところでございます。
  156. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は、理科系の博士課程の在籍者というのか、多いのか少ないのか、ほかの国に比べてよく分からないのでございますけれども、やはりもうちょっと増やしていく。そして、彼らがきっちりとその学習の成果を社会の中で生かせるような状況というものを作っていくことが、これから元気に日本をしていくために絶対に必要ではなかろうかと思うわけでございます。  こんなことを、またアメリカの例を出して恐縮なんですけれどもアメリカの場合には、大学院の、例えばロースクールだとかビジネススクールですと、借金をして学生が行きます。卒業するとそれに見合うだけの給料があるということで、銀行なども融資をしてくれるという状況があるわけですけれども、理科系の場合にはほとんどが奨学金で行きます。  日本の、これも数年前に調べたことなので現状を教えていただきたいわけですが、日本の場合には、博士課程の優秀な学生さんであっても、要するに月謝は免除かもしれないけれども生活費まではなかなか見てもらえない。大学院の学生というのは二十二歳以上でございますから、当然、親元から経済的に自立していなければならない年齢なわけですが、そういう中で、なかなかこうした理科系の博士課程に進む優秀な人たちが余り出ないんじゃないかということをむしろ心配しているわけなんですが、奨学金の現状についてお伺いいたします。
  157. 石川明

    政府参考人(石川明君) 大学院の学生を主として念頭に置かれました奨学金の充実についてのお尋ねでございます。  奨学金事業につきましては、先生も既に御存じのとおり、無利子貸与事業と有利子貸与事業という大きな二本立てで充実を図っております。そういったことで、例えば大学院の学生に対しましては、無利子貸与の場合には、月額、修士課程で八万七千円、博士課程で十二万一千円というような形で奨学金の貸与を行っておりますし、この有利子事業、無利子事業、ともに併せまして、今、毎年充実を図っているところでございます。  来年の予算に向けましてもそういったことも念頭に置きまして、学習意欲のある方々が安んじて勉学に励むことができるように、この奨学金事業、引き続き充実に努めてまいりたいと、このように考えております。
  158. 広中和歌子

    広中和歌子君 これで終わりますけれども、例えば外国人の留学生を呼ぶ場合にはかなりそれよりも多くの奨学金を出していて、しかも返済の必要がないわけですよね。日本人に対しては、無利子といっても、いずれにしても今銀行の金利はほとんどゼロに等しいわけですけれども、そういう中で借金を背負って卒業しなければならないということでございまして、やはりもうちょっと理科系の学生に対して国家的な形で支援することが必要なんではないかと思っているわけでございますけれども、最後に、済みません、大臣、一言、それについてもしお考えがあれば、お伺いしたいと思います。
  159. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 今、広中委員意見をしっかり受け止めまして、頑張っていきたいと考えております。
  160. 山下栄一

    山下栄一君 もう長時間でございまして、お疲れのところ、済みません。  先ほど佐藤議員の方からも教育の本来の在り方についての質疑がございましたが、私もその続きをお願いしたいというふうに思いますけれども。質問の通告の順番、ちょっと変わると思いますが。  義務教育国庫負担の問題なんですけれども、公明党も私も、義務教育国庫負担は、今は大変な状況に追い込まれている中でしっかりと堅持すべきだと、こういう立場でございます。  では、憲法二十六条ですけれども教育を受ける権利がすべての国民保障されている。二項では、義務教育は無償とすると。それを受けて教育基本法四条では、国とか地方自治体、公共団体が設置する学校については授業料を徴収しないと。その分、税金で建物を建てたり教員の人件費を払ったりせないかぬということになっていくと思うんですけれども。  この憲法が本来求めている義務教育、小中学校義務教育教育を受ける権利の観点から、そういう国民保障する、また特に小中学生保障する財政的保障、これは一体だれに求めているんだと。これは私は、国と自治体両方協力してと。税金で、特に公立学校の場合は税金でやるわけですから、国にも地方にも協力してやるということじゃないのかなと、こういうふうに思います。現在はそういうふうになっているわけですよね。現在も約十兆円近く義務教育、金が掛かっているけれども、国三兆円、県四兆円、市町村三兆円と分担して義務教育を支えていると。ただ、人件費については国と県だと、こういう考え方だと思うんですね。  それで、今、六団体の方は、国庫負担やめて一般財源にして県によこせと、人件費についてですけれども。例えば人件費に限ってもいいんですけれども全額国庫負担という考え方もあると。国と地方両方一緒にという今現在みたいな考え方もあると。場合によったら、六団体みたいに全部地方という考え方も憲法上はあり得るのかなと私は考えるんですね。  ところが、今は国も地方も財政がたがたで、というよりも教育が混乱して、というよりも教育が非常に大事になってきて、だからアメリカもイギリスも国が乗り出して、本来は、今まで自治体やっていたけれども、それこそイギリスの場合でしたら二〇〇六年から全額負担するぞと。それぐらい大事なんだという、国の政策の優先順位というか、そういう考え方だと思うんですね。  日本の国の憲法が本来要請しているのは、私は、全額国庫負担でも、国と地方両方でも、場合によったら、余裕があるんだったら、また地方に課税自主権があって教育税みたいなものを作れるんだったら、そういう体制作るんだったら、また基礎的自治体を強化し都道府県体制も道州制にするとかいろんなことを考えた場合に、元々二十六条というのはいろいろあり得るということなのかなと。  だから、例えば六団体がああいう要求をするのも、憲法違反じゃないと思っているから要求しているんだと思うし、実際、今日もおっしゃっていましたけれども昭和二十年代には国が負担してない時代もあったんじゃないかと、そのときに憲法違反だと言ってなかったじゃないかというふうに梶原知事おっしゃいましたけれども、私が今申し上げたような考え方について、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  161. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 義務教育につきましては、憲法二十六条で、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有すると、こう書いてあるわけでございますし、また第二項で、すべて国民はその保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負うと、こう書いてあるわけでございます。  今、山下委員、いろんな話をされましたけれども、一体その義務というのはだれの義務なんだということについてはいろんなお考え考え方あるんだろうと、こう思うわけでございます。  そういう意味では、イギリスみたいに全額国が持つというふうにしてもいいのかなと。私も、今、地方側の案に対してどうするというときに、むしろ増やしたっていいんじゃないかと、こういうふうな論陣も張ったりしているわけでございますが、今、日本のやり方というのは、国と都道府県と市町村の適切な役割分担、協力によってこの教育行政を遂行すると、こういうことになっているわけでございます。  そこで、今言われましたように三対四対三というこの比率を、三をゼロにして七対三にすると。国の負担というのをゼロにするということは、これは憲法の要請するところではないんじゃないかと。憲法違反かどうかということについてはまた疑問があるとは思いますけれども、少なくともこの憲法の要請するところではないんじゃないかと、こう思うわけでございまして、そういう観点からこの義務教育の義務ということを考えておるところでございます。
  162. 山下栄一

    山下栄一君 今、ちょっと若干擦れ違った点があるんですけれども。  ということは、大臣は、全額国庫負担なら憲法違反ではないけれども地方に全部任したら違反になるという、そういうことをおっしゃっているのでしょうか。
  163. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 必ずしも断定はできないと思うんですけれども、現に戦後すぐ、昭和二十五年から二十八年の間は、これはもう地方全額持ったという時代があるわけでございまして、このことをもって憲法違反だったというのか、あるいは当時はまだGHQの支配下にあったわけで、超法規的にしようがなかったんだと、こう考えるのか、いろんな考え方あると思いますけれども、少なくとも全部地方に持たせるというのは憲法の要請するところではないんじゃないかというふうなことは考えております。
  164. 山下栄一

    山下栄一君 じゃ、もう一回確認します。  じゃ、日本の今の憲法は、現状は三、四、三で国と地方、協力して負担していると。人件費だけじゃありませんよ、私言っているのはね。義務教育に掛かるお金については、国、そういう教育を受ける権利を保障し、義務教育は無償として授業料を徴収しないと。こういう体制にするために国と地方が協力して今々現在やっているわけですけれども。だから、それは国も自治体両方とも一緒になってそういう教育を受ける権利を保障せよと、こういうふうに憲法は要請していると、こういうことでよろしいですか。
  165. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) そのように考えております。
  166. 山下栄一

    山下栄一君 はい、分かりました。  先ほども佐藤議員おっしゃっていましたけれども、私は、この三大臣合意の話、それから去年の財政諮問会議、骨太の方針、これは非常に大事な見識をおっしゃっているというふうに私は理解しております。  要するに、この財務大臣総務大臣、文部大臣、内閣の中においては、まあ障壁とは言いませんけれども、いろいろ考えがあると。だけれども、だけれども、この義務教育国庫負担一般財源化するに当たっては、本体の教育論を大事にしたいと。そういう何か政治家とか公権力でぐちゃぐちゃにするんではなくて、今ぐちゃぐちゃにされ掛かっていますけれども。だけれども教育というのはもっと尊い、聖なる業だと。だから、そういう教育の専門といいますか、見識の高い方々、それをひとつ中教審ということで代表していると思うんですけれども。中教審の検討をしっかりと踏まえてその上で判断するんだと。それほど大事なこの義務教育の根幹にかかわる問題が財政の視点だよという見識を私は三大臣が述べられて、それを財政諮問会議もきちっと認めたということだと思うんですね。  それが今、国と地方というよりも、官邸とか与党とか、こっちの方は地方団体とのそういう対立とか、総務省と文部省とか、そういうことに翻弄されていると。それは、だけれども、本来の姿じゃないからもうちょっと慎重に丁寧にやるべきだということを、三大臣合意、そして財政諮問会議も確認したという、これ非常に重たい私は考え方だと思うんです。それを前倒しして、中教審の検討はやっとこ中間報告今年だったばっかりなのに。ということが、教育を一体どういうふうに考えているんですかと、日本の国はと、政府は、内閣は、地方自治体はと、全部私はそういうふうに問われているというふうに。  だから、いろんな教育の荒廃というかね、本来もっと国に、教育には金が掛かるんだから、今日も小柴先生はおっしゃっておりましたけれども、それぐらい大事だと。何も権力の介入とかいうことじゃなくて、それほど教育を受ける権利を保障し、学習権を保障するということは大事なんだと。それがおろそかになってきているよと、児童虐待その他の問題。だから、そういう教育のことについて金を掛けていこうということが、イギリス、アメリカ。あのイギリス、アメリカでさえ国が乗り出してという、本来地方分権を大事にする国、お国柄でもね。それぐらいやっぱり文明社会の物の豊かな時代、この人を育てるということが大事なんだということを確認している御時世に、日本の国は一体何をしているんですかということが問われているというふうに思うわけです。  それで、ところが、今日も午前中ありましたけれども、この義務教育国庫負担の問題は最近起こった問題ではなくて、昭和六十年から義務教育国庫負担の問題、これは人件費の問題ですけれども、じり貧でどんどんどんどん減ってきていたと。今はもう本体の給与そのものも脅かされているというふうに至っているのに、今ごろ何が議論ですかというようなことを今日梶原知事おっしゃっておりましたけれどもね。もうちょっと早めにちゃんと手を打たんかいと。それは私たち議員の責任でもあるかも分かりませんけれども国民も余りよう分からぬままにそうなってしまっているという。  で、こういうふうに地方に全部よこせと言われて初めていろいろ議論が出てきているけれども、その議論そのものも教育本論よりも別の議論されているところに悲劇があるわけですけれども。やっぱり、この義務教育の本来の、すべての国民の基礎教育をどうするかというこの大事な議論を、ちょっと、まあおろそかにしてきてはいないかも分からぬけれども、十八年度待ってくれと言う方もちょっとまあ、もうちょっと早めに気が付いてやっておくべきではなかったんですかと。危機感持って今地方自治体考えているんですよと。義務教育を守りたいと。国庫負担がどんどんじり貧になってきて大丈夫なんかと。それやったらうちによこせと。もっと減らされるんやったらうちによこして、守りたいというふうなことを今日知事がおっしゃっていましたけれどもね。  その辺の何かこうやっぱりミスマッチとかいろんな、ちょっと政治行政の取組の自覚の足らぬ部分といいますか、そういうことがこういう今日の事態に至っているのではないかというふうに感じておるわけですけれども、いかがでしょう。
  167. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 今回初めてこの文部科学大臣拝命したわけですけれども、これまでも外から見ておりまして、この義務教育国庫負担、少しずつ少しずつ削られていくなと、一体どういうことなんだろうということは不思議に感じておりました。  これは、まあ地方と中央のどちらも財政苦しいという中でそういったことが行われてきたんだろうとは思いますけれども、その結果どうだったかということにもなりますと、先ほどから議論がありましたけれども、例えば教材費等がだんだん減ってきているというふうな実態もあるわけでございまして、どっかで歯止めを掛けなければならないと。この義務教育国庫負担制度の根幹、守るべきものは何なんだ、もうこれ以上は絶対駄目というふうな、そういった議論をすべきところに来ているんじゃないかなと、こう思うわけでございまして、今回地方団体側がこの義務教育国庫負担、全部地方で持つと、こういうふうに言われるわけですけれども、本当に大丈夫なんですかと。  先ほども申し上げましたけれども、一方では交付税がどんどん減らされていくわけでございます。そういった中で本当に地方側が責任を持ってやれるかどうかということになりますと、私は心配な点があるわけでございまして、やはり国がしっかりと負担制度でもって維持すると、だから地方の方もそれに合わせてしっかりこの義務教育についてやってくれよと。そういうことをお互いに意思を確認し合って、私は、この義務教育国庫負担制度というものをやっぱり堅持していくということが大事なことではないかなと、このように考えておるところでございます。
  168. 山下栄一

    山下栄一君 次の質問に移ります。  義務教育という言葉ですけれども義務教育の義務、これは憲法二十六条二項で、すべて国民はその保護する子女に普通教育を受けさせる義務があると、そこから出ている言葉だと思うんですけれども義務教育制度のこの義務という言葉ですけれども、だれのだれに対する義務かと。すべて国民が自分の子供に対してということなのか。憲法の言葉ですけれども、だれのだれに対する義務なのかということを再確認させていただきたいと思います。
  169. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 憲法二十六条にありますように、すべて国民はその能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有すると。この権利を有するその裏側として国民は義務を負っているんだと、こういうことではないかと私は考えているわけでございまして、第二条にありますように、保護者というのはその保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負うと、こう書いてあるわけでございまして、そういう意味では、国ということは表には出てきておりませんが、やっぱり全体として考えれば、やはり国民、国がこの義務教育責任を持つということを私は考えるべきじゃないかなと、こう考えております。
  170. 山下栄一

    山下栄一君 ちょっと違うんじゃないかなと思うんですけれども。  第一義的には、要するに保護者ですね。分かりやすく言えば親が、義務教育ですよ、自分の子供に対して普通教育を受けさせる義務があるという、そのことを書いてあるから、保護者は自分の子供に対して義務を負っているんだと。しかし、その義務を果たさぬときは、それはまあ国にしろ自治体、私は国とは限らないと思うんですね、国でも自治体でも、やっぱり公的なところが、それは児童虐待も一緒ですけれども、親がそういう子供を虐待する場合はだれかが守らにゃいかぬわけやから。二次的にはそうかも分かりませんけれども、本来は、これが戦前と違うところだと思う。戦前は、国民国家に対して義務を負っているというようなことを、という理解だったと思うんですね。ところが、戦後はそうじゃなくて、保護者が自分の子供に義務を負っているんだということを確認したのが二十六条で、それが機能しないときは、もちろんそれは公的なところでサポートするという、そういう考え方が正しいのではないかなと思うんですが。  もう一度お願いします。
  171. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 義務教育と言った場合、確かに、国民の三大義務と言われるように、自分の保護する子供に普通教育を受けさせる、これは保護者の義務であるということだろうと思うんですけれども、その場合に、国と言いましたけれども、公と言った方がいいのかもしれませんが、国民全体としてその子供たちに教育を受けさせる義務と言う場合、国と言った場合の国というのは、国と地方公共団体も含めて、公といいますか、そういう意味で、大きな意味で国というものが義務を負っているんだと、私はそのように考えております。
  172. 山下栄一

    山下栄一君 それから、これは先ほどちょっともう銭谷局長もおっしゃられたことですけれども自治事務の話ですけれども、これもちょっと若干混乱があったような感じがしますので、確認させていただきたいと思います。  戦後は、この義務教育、小中学校教育については、国が命令してやるものじゃなくて、国の監督事務じゃなくて、地方事務自治事務になったと。これは戦後一貫して変わらない。先ほど局長おっしゃったことはそのとおりだというふうに思います。  ただ、国とか県が特に教員のお金を出している分、市町村にとっては思うようにいかない部分がいろいろあると。学級編制権にしろ教員人事配置にしろ、そうじゃない部分があって、それを緩やかに今弾力化しようという動きなんですけれどもね。本来、小中学校の設置・管理は市町村の事務なんだということを再確認させていただきたいことと、これ局長に確認します。  それと、今度は国の関与ですね。そういう学校教育、市町村現場の、現場の学校教育に対して国の関与の在り方、国の関与の在り方は権力的にはしませんと。指導、助言、援助という、地教行法の四十八条によって指導、助言、援助という形で、非権力的で法的拘束力を持たないそういう教育行政特有の関与の仕方をしますと、こういう位置付けになっているという、これでよろしいでしょうか。
  173. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 二点お尋ねあったわけでございますが、まず第一点の小中学校の設置・管理の事務でございますが、これは市町村の自治事務ということでございます。  それから、二点目の国の関与の問題でございますけれども、小中学校の設置・管理については市町村が主体性を発揮しつつ行うべきものでございますけれども、国は教育に関する事務の適正な処理を図る観点から、地教行法の四十八条に基づきまして市町村に対して指導、助言、援助を行うことができるとされております。この指導、助言、援助は非権力的な行為でございまして、一定の方向性を示し誘導を図るといったようなこともありますけれども、拘束力はなく、指導、助言、援助にどのように対応するかは市町村の判断にゆだねられているものでございます。
  174. 山下栄一

    山下栄一君 ありがとうございました。  冒頭、冒頭というか、先ほど、三大臣の、中教審の議論を踏まえてというか、非常に見識のある話やと私言いましたけれども、本来この教育活動、人を育てるという行為は本来自主性を重んじるものだと。だから、余り戦前みたいに国家主導型で教育するという形じゃないと。それが先ほど確認しました、非権力的な関与とか拘束力を持たない指導、助言という形でやられているという考え方教育活動は本来自主性を重んじるという認識、公権力の介入を抑制的にという考え方について確認させていただきたいと思います。
  175. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 繰り返しになりますけれども、国と市町村の関係は、先ほど言いましたように指導、助言、援助の関係でございまして、これは非権力的で拘束力のないものでございます。それはやはり、教育というものが教育を行う者の主体性というのを尊重して行われなければならないというところから来ていると思います。  それと、なお一言だけ加えさせていただきますと、国の関与の仕方としては、指導、助言、援助のほかに、もちろん教育制度の枠組みとか全国的な基準の設定とか、それからもう一点、義務教育費国庫負担制度を始めとする財政的な保障、これを一体的に行うことによりまして、憲法が要請する教育機会均等、水準維持向上無償制確保すると、こういう役割も持っているということでございます。
  176. 山下栄一

    山下栄一君 国家戦略としての義務教育の意義ということが、大臣しばしば強調されますし、中教審の条件整備の作業部会でもそういう言葉が出てまいるんですけれども、ちょっと私は誤解されがちな言葉ではないかと。国家戦略として教育があるということは、権力主導でやるのかというふうなイメージが出てしまう。そうじゃないというイギリスの話もございましたように、それほど教育というのは大事で、財政的な面のサポートとして条件整備をしっかりするためには、国も自治体も全力を挙げて、場合によっては国が全力を挙げてサポートするんだと、サポートという言葉をあえて言いますけれども。そういうふうな意味国家戦略という言葉を理解しないと、何か復古主義的な、そういうとらえがちになってしまうので、この国家戦略という言葉の使われ方、教育行政の基本的在り方は、先ほど何遍も確認しておりますけれども、それを前提にした言葉だという理解でよろしいでしょうか。
  177. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 私は、この義務教育というのは二つの面があると思っております。  一つは、子供立場からいいますと、この世に生まれてきたと、非常に有り難いといいますか、有り難い命であるということを子供たちがしっかり自覚して、そして、その人生、一生が幸せで、また有意義なものとして一生を送れるように、そのための素養といいますか、土台を作ってあげるのが義務教育だと、こういうふうに考えるわけでございます。  また一方では、国という場合、見た場合、やはりその国の形成者といいますか、一人一人がその国を支えるわけでございますから、やっぱり形成者としての素養もしっかり身に付けさせるということ。特に最近、非常にいわゆる知の大競争といいますか、国際競争が非常に激しくなっている中で、どこの国も国を挙げてこの教育というものに取り組んでいると。  先ほども申し上げましたけれども、特にイギリスなどは、地方に任しておれぬと、国が全額出して子供たちを養成すると、こういう強い意思を表明しているわけでございます。  そういった面で、本当にどこの国も国を挙げて、子供たち、次なる世代を養成している。私は、それを、まあちょっと言葉の使い方があるいはきついのかもしれませんが、国家戦略といいますか、言葉がきつければ国としての戦略と言ってもいいかと思うんですけれども、そんな感じでとらえているということを御理解いただきたいと思います。
  178. 山下栄一

    山下栄一君 先ほど局長に確認しました、教育活動の本来自主性を重んじるという、そのことを踏まえた上での、もちろん国民形成者を作っていかなきゃいかぬと教育基本法にも書いてありますので、そういう理解でいいということですね。はい、ありがとうございました。  ちょっと時間が余りありませんけれども、小中学校の設置者は市町村なわけですけれども、ところが、財源なくして権限なしという言葉にもございますように、やっぱりお金出さない分、なかなか自治事務といえども、実際、設置者管理主義といいますか、原則が貫きにくい面がある。これはやむを得ない部分があると思うんですけれども、こういう観点から、地方のこの自由度を高めろという強い要求が出てきていると思うんですけれどもね。  文科省としても、いろいろ義務教育制度の弾力化の試みを今どんどんされているというふうに思っております。その中で、私は、今、学級編制権は市町村にあるんだけれども、あるんだけれども、四十人学級という言葉があるように、これは大分緩やかになって義務標準法が緩和されて四十人に満たない学級が基本的にできるようになったということは非常に大事なことやと思いますけれども。本来の学級編制権は市町村にありというふうに近づいてきているというふうに理解しております。  教員人事権は今県にあると、市町村にはないと。これも、もちろん市町村の規模にも、政令市、それから中核市もそういう方向で、市町村の一部には教員人事権、学級編制権を与える方向ですから。すべての市町村にこれを与えることは確かに一挙に無理かも分かりませんけれども、市町村合併がどんどん進んでいったときに、中核市ぐらいが基本になってきたときには、私は、教員人事権は市町村にという、学級編制権も、今もそうなんですけれども、そういう姿がやはり本来正しいのではないかと。  それに向かって義務標準法も最低基準を、最低基準であって加配の措置ももっと自由に、大分緩やかになってきましたけれども、個別加配から目的加配とか、目的加配から一般加配といいますか、そういう形にやっぱり教員人事権なんかも向かって進んでいく方向で制度改革、法律改正をすべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  179. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 正に山下委員御指摘のとおりだと私は思っているわけでございまして、地域の実情に応じた特色ある教育を実現していくためには、できる限り地方そして学校に権限を移しまして、地域と学校責任を持って学校運営に当たれるように学校システムを改革することが必要であると、このように考えております。  このため、教職員人事あるいは学級編制に関する権限を、例えば中核市など一定規模の自治体移譲すると、先ほどお話がありました。余り小さいところはちょっと問題でございますけれども、一定規模以上の自治体移譲することとか、あるいは市町村が独自に教職員を任用する事業の全国展開など、教職員人事や学級編制についての市町村の権限強化に向けまして今中央教育審議会議論をいただいているわけでございまして、そういう方向で検討してまいりたいと、このように考えております。
  180. 山下栄一

    山下栄一君 この四十人学級も平成十二年から、僕も再確認させていただきましたけれども、毎年のように改革されて、現在では四十人を下回る学級、すなわち三十人学級とか三十五人学級を全県で、例えば一つの中学校全学年でということもできるような、そのような法律改正と通知その他でされるようになってきているということだという理解、これはよろしいでしょうか。
  181. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 学級編制の弾力化につきましては、平成十三年度に標準法を改正をいたしまして、国の標準四十人を下回る特例的な学級編制基準を設定できるということを可能にし、その後、平成十五年度以降運用の弾力化を図ってまいりまして、特例的な場合に限らず、全県一律に国の標準を下回る一般的な学級編制基準を設定することを可能にしてきたところでございます。さらに、平成十六年度からは、少人数学級を実施する場合についても、いわゆる加配定数を活用するということを可能にしてきたところでございます。
  182. 山下栄一

    山下栄一君 一挙にできないとは思いますけれども、徐々にこういう形で市町村の自由度を高める、学校設置者の自由度を高める形でいろいろ文部科学省も手を打ってこられたということ、これがなかなかまだ現場に理解されて、一般国民にも理解されていない。何か特区法で一部やったりとか、何かこう、もうちょっとこうすっきりとできないのかというようなことがあるわけですけれども法律改正またその他で国庫負担の裏打ちしながら努力されてきているということ、ただし、なかなかというふうに思います。  今度は市町村ではなくて一つ一つ学校に対しても、これは学校というのは直接自治、自治というふうなことにはなっていないとは思いますけれども学校自治というふうな言葉は不適当かも分かりませんけれども学校地域運営協議会ですね、コミュニティースクールという言い方もされておりますけれども、こういう制度も地教行法を改正してできるようにしていったと。これはだけど、一斉にやなくて、できるところから、意欲があるところから、できはるところから設置するという、これも私は非常に大事な取組だというふうに思います。日本国民、民度が問われることかも分かりませんけれども、非常に大事な取組が進みつつあるというふうに思っております。  ちょっともう時間がなくなってきました。  先ほど荻原議員もおっしゃっていました地震の話ですけれども、地震の話というか耐震化の話ですけれども、この学校の耐震化の取組は、ここ数年我が党も一生懸命主張してまいりましたし、文科省も予算措置で努力されてきているわけです。  今回、三位一体改革の中で、これは決まっているわけやないけれども、この文科省の検討しているという中に、学校施設の補助、負担金でなくて補助金の方ですね。負担金の一部も一緒にして、この補助金を、施設に対する建て直し、その他施設改善のための補修その他のお金を交付金化すると。メニューを広げて、耐震化に絞らない形で別の、学校トイレとかいろんなこと、それを交付金という形で地方に渡すというふうなことも検討するということになっておりますけれども、私はちょっと時期が早いんではないかなと、検討していただくのはいいんですけど。  今これほど地震のことが問われて、先ほど荻原議員が繰り返しおっしゃったことでございますけれども学校というのは、単に教育の場だけじゃなく、地域の重要な場であり、防災拠点でありという観点から、耐震化は、これはもう全力を挙げてやらないかぬのに、まだまだ半分ぐらいしか行っていないというのが実態であるというならば、私はきちっと、目的、特定目的、いわゆる学校耐震化に絞った施設の改善への補助金ということは、これは別に自治体の方からも文句言われる筋合いないのではないかと思いますので、その代わり、地方もしっかりと裏負担して、どっちが裏負担か分かりませんけれども、補助率しっかりして、そしてやっていくということを当面続けないと、これを一遍に今交付金にするというふうなことはちょっと時期尚早ではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょう。
  183. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) この公立学校の施設整備費負担金・補助金でございますけれども、これは地方側の改革案にあったわけでございまして、それに対しましてこの交付金化を検討するというようなことにしたわけでございまして、御指摘のありました建て替えによる耐震化につきましてもこの交付金の中で引き続き国による財政支援を維持する方向で検討したいと、このように考えているわけでございまして、この交付金化によりまして、より弾力的で地方の自主性、裁量を生かせる形の中で国として支援していくと。また、そうすることによりまして、効率的な執行に努めることによって生じた財源を地方自治体の裁量によりまして耐震化事業に重点的に充当するというふうなこともまた可能になるんではないかと、このように考えておるところでございます。
  184. 山下栄一

    山下栄一君 ちょっと考え方違いますけれども、時間がございません。  最後に、就学義務の話ですけれども、元へまた戻りますけれども、済みません。  だれのだれに対する義務かということを確認させていただきました。それで、私は、この就学義務も、憲法には書いてないんだけれども学校教育法で、子供はちゃんと学校に行かせる義務があると、ちゃんと行かせへんかったら罰則だと。これはちょっと見直す時期が来ているのではないかというふうに思います。別に不登校が増えているからということだけではなくて、この就学義務を保護者に、とにかく学校に行かさないかぬというふうな義務は、これは途上国時代は別として、成熟社会ではそろそろ見直す必要があるのではないかというふうに考えます。これは人権規約でもそういう方向で、個人が学校を設置して、その代わりきちっと、基本的な最低基準の教育内容はちゃんと国の了解を得てということですけれども。それぐらい、自ら国民学校を作ってもいいという、設置基準の見直しにもかかわることかも分かりませんけれども。  学校がどんどん多様化され、株式会社なりまたNPOについてもこの単位認定のようなことが今言われている時代ですので、この就学義務の学校教育法における見直しについても検討課題にのせるべき時期ではないかというふうに考えますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。
  185. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 現在、就学義務につきましては、憲法二十六条、教育基本法第四条の規定を受けまして、学校教育法において、具体的には小学校及び中学校に就学させる義務を課しているわけでございます。いわゆる学校に就学をしなければいけないというこの義務につきまして、義務教育の今日的な意義、目的、学校役割等について議論をする中で考えなければいけないのではないかという御意見があることも事実かと思います。  現在、中央教育審議会では、児童生徒の多様な状況等に対応して義務教育制度の弾力化を図るという観点から、例えばでございますけれども、就学の期間や就学時期の弾力化など、義務教育の就学に関する制度在り方についても検討が行われているところでございます。  もちろん、まだどのような結論になるか、様々なこの点については御意見がございますので、幅広い観点から中教審で今御議論をいただいているという状況でございます。
  186. 山下栄一

    山下栄一君 終わります。
  187. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。  私は、今日、義務教育費国庫負担金問題を中心に質問させていただきます。  まず初めに、私の手元に届きました大分県の学校事務職員の方のはがきをちょっと紹介をします。義務教育地方によって差があってはなりません。特に、財政力の弱い地方では教育費削減が危惧され、多くの保護者が不安を抱いています。是非とも義務教育費国庫負担制度を堅持をと、そういうおはがきをいただきました。これは一人の方の御意見でございますが、今、国に対してもこの義務教育費国庫負担金制度堅持の意見書が、上げてこられている自治体議会が多数あると思います。  そこで、まず、その数を先に教えていただけますでしょうか。
  188. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) まず、義務教育費国庫負担制度の堅持を求める地方公共団体の議会からの文部科学大臣あての意見書でございますが、平成十五年度では二十二都道府県、二千二十六市区町村から提出をされております。平成十六年度は、年度途中でございますが、十月の二十九日まで、十一都道県、千八十八市区町村から意見書が提出をされております。
  189. 小林美恵子

    小林美恵子君 今お話しされた数というのは大変な数だと思います。  先ほどの審議の中でも、大臣も二千以上の市町村から意見が上がってきているというふうに御自身もおっしゃいました。地方団体の改革案の中でも、この制度を堅持をという立場知事意見が付記をされています。その中で、長野県知事が、基礎的な学力をすべての子供に授ける義務教育はその実施主体を問わず国が責任を持って財源保障すべきものというふうに述べています。  私は、こうしたどんどんと上がってくる自治体の議会の意見書、その数、そして今御紹介をしましたような意見というのは本当に重く受け取るべきだというふうに思いますけれども、この点、大臣、いかがでしょうか。
  190. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 御指摘のように、地方の方からもこの義務教育国庫負担制度を堅持すべしという、たくさんの声が各層から上がってきているわけでございます。一方では、六団体の改革案を真摯に受け止めろと、こういう総理の指示もあったわけでございますが、私としては、地方意見というのもいろんな意見があるんだということもしっかり踏まえた上で、この義務教育国庫負担制度について、堅持という方向で頑張っていきたいと、このように考えております。
  191. 小林美恵子

    小林美恵子君 さらに、私、歴史的な点でお聞きしたいと思います。  もう皆さんも周知のごとくですけれども義務教育費国庫負担金制度というのは、一九五〇年のシャウプ勧告によって、地方自治を確立するために、地方自治体の財政力を強化し、地方自治体の財政力の均等化を図るということで一度廃止をされました。しかし、一九五三年に再び復活して、今日引き継がれている制度だと思います。  そこでお伺いしますけれども、その復活の理由の中心点を簡潔に御説明いただけるでしょうか。
  192. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 義務教育費国庫負担制度は、一時期廃止をされて、地方の一般財源で賄われた時期があったわけでございます。その結果、義務教育におけるナショナルミニマムの水準確保が困難になり、教育条件の全国的な低下、地域間格差の拡大という事態が生じたわけでございます。  教育条件の低下につきましては、例えば小学校の一学級当たりの教員数が減少するとか、児童一人当たりの小学校費における格差が拡大をするといったようなことがございました。  このため、教育界から、義務教育費国庫負担制度の廃止直後からこの制度の復活を求める声がございました。一方、義務教育教職員給与費地方財政に与える圧迫も大きくなりまして、昭和二十六年六月、全国知事会議において復活を求める決議が行われるなど、地方行政関係者からの声も出てきたということでございます。このような教育関係者や地方行政関係者からの要望を背景として、昭和二十七年の八月に議員立法によって国庫負担法が成立をし、翌年施行されたということでございます。
  193. 小林美恵子

    小林美恵子君 今お話がありましたように、たとえ時代は違えども今の問題とやっぱり私は共通しているというふうに思います。  それで、実際、文部科学省のお調べによっても、一般財源化して税源移譲しても四十道府県が国庫負担金よりも下回るという、そういう資料が出されていました。地方格差はやっぱり生まれるというふうに思うんですね。今日、午前中の参考人質疑の中でも、千葉大学天笠参考人がこうした歴史から学ばないといけないというふうにもお話をされていました。  ここで改めて確認したいんですけれども、私はやっぱり過去に戻ってはいけないと。ですから、歴史教訓をやっぱり生かすべきだというふうに思いますけれども大臣、どうですか。
  194. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 四大臣との協議あるいは経済財政諮問会議におきましても私がいわゆる繰り返し指摘したのが正にそのことでございまして、一時期、一般財源化したために非常に地域格差ができてしまった。だから、そのときは今と違って、知事会側の要請によってこの義務教育国庫負担制度二分の一というものができたわけでございまして、やっぱり歴史教訓に学ぶべきじゃないかということを再三再四にわたって主張しているところでございます。
  195. 小林美恵子

    小林美恵子君 そういう立場で、是非確固とした堅持の立場で頑張り抜いていただきたいと思うんですね。  それで、この制度が復活されたものの、今日に至るまでの過程で、この間も随分議論がございましたけれども、先行して教材費とか旅費とかが一般財源化されました。私はそのことで、数値的なものもそうですけれども学校がどうなっているのか、子供たちや教職員の皆さんにどんな影響が出ているのか、これもやっぱり見なければならないというふうに思います。  それで、これは文科省の資料ですから、もう皆さんが一番よく分かっている資料でございますけれども、一九八五年に一般財源化されてから以降のいわゆる旅費と教材費の小中学校措置状況を示したグラフでございます。(資料提示)もうごらんのとおりに、昨年度でいくともう急速に右下がりになっているというのがすごく分かると思うんですけれども、教材費でいくと、その実績率は、八四%、旅費でいって八四%、教材費でいくと七五%にも下がっているということが分かると思うんですね。  それで、地方自治体ごとに見ますと、これもかなり格差があります。例えば大阪は、旅費の場合でいくと、交付税単価の五七・三%が実績なんですね。それで、現場でいきますと、例えば、現場の学校では二〇%旅費がカットされたと。だから、子供たちの遠足の下見を教職員が行くにも人数を減らしてやっぱり行かなくてはいけないと、そういう現状が出ています。同時に、大阪市内の学校の現場でいきますと、一回の旅費というのは二百円に統一されているというんですね。二百円といいますと、大阪市内の今地下鉄が一区間で二百円です。それ以上になりますと結局自己負担ということになるわけですけれども。  要するに、こういう一般財源化というのは、私は、教職員の方とか、ひいては子供たちにまで大きな影響を与えてきているというふうに思うんですけれども、この点、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  196. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 昭和六十年に一般財源化されました教材費や旅費につきまして、基準財政需要額に対する予算の措置状況については、先生からお話のあったような実情でございます。大変残念でございますが、平成十五年度教材費については、基準財政需要額に対して七五・七%、旅費については八四・一%という状況でございます。私ども、例えば教材費について措置額を調べましたときに、どういう理由で十分な予算措置ができないのかということを聞いたわけでございますけれども、やはり最も多い理由が財政上の事情ということで、八〇%の回答率でございました。  ですから、やっぱり財政事情というものがこういう教育における教材費あるいは先生方の活動経費でございます旅費に影響があると。現実に、教材費については、学校現場の声を聞きますと、結局、例えば社会科の掛け地図が非常に古くてなかなか国名が変わらないとか、ピアノはあるけれども、古いピアノ、あるいは調律がうまくいかなくて時々音が出なくなるとか、教育活動上いろいろな支障が生じているという報告を受けているところでございます。  もちろん、私ども、毎年、交付税上の積算を示した通知を各教育委員会へ送付をし、計画的な教材整備に努めていただくようお願いをしているところでございますが、実態は予算措置率が下降傾向にあるということで、これは事実でございますので、必要な予算措置が図られるように更に指導してまいりたいと思っているところでございます。
  197. 小林美恵子

    小林美恵子君 先行されたこうした状態というのがやっぱり子供たちとか学校の現場に大きな影響を与えているということだということだと思うんですね。  もう一つ、先ほどからも出ていますけれども学校図書の整備状況です。これは元々負担金の制度ではないですけれども、一般財源のものですけれども、これも文科省さんの資料を基にして作りました。(資料提示)これも、文科省さん自身が学校図書館が備えるべき標準を示していますけれども、結局その達成率というのは、小学校で三五%、中学校で二九%と低いものですね。  ここでお聞きしますけれども、結局、この間、交付税額が増額されていますけれども、どうしてこの整備の到達が低いのかと、原因はどこにあるとお考えか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  198. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 学校図書館の図書整備につきましては、基本的には文部科学省が定めております学校図書館図書標準という各学校ごとの規模に応じた備えるべき図書冊数というのがあるわけでございますけれども、それに達するための増加冊数分として交付税措置をずっとここのところ行っているわけでございます。現在は毎年、百三十億円の地方交付税による所要の財源措置を行っているわけでございます。  平成十四年度の決算で見ますと、全国ベースでは百三十億円以上措置をされているわけでございますけれども、廃棄されている図書の分というのがございますので、国が目標として示している学校図書館図書標準になかなか到達しないという状況がございます。  私どもとしては、今、学校図書館図書標準に到達している学校が、小学校で三四・八%、中学校で二九・〇%でございますので、言わば増加冊数分の図書費に加えて、廃棄される、経年、時間がたって廃棄しなきゃいけない図書の補充分、この措置も含めて図書費の充実が図られるように努力していきたいと思っております。
  199. 小林美恵子

    小林美恵子君 いや、いずれにしましても、子供たちにとってみれば、達成率がこんなに低いということですから、十分な環境状況にないということですよね。それを私は申し上げておきたいと思うんですけれども、そういう、例えば旅費とか教材費、図書費の実態は今申し上げたとおりですけれども、ましてや教員事務職員そして栄養職員として学校になくてはならない教職員の給与を負担している義務教育費国庫負担金制度は、正に憲法と教育基本法にうたわれた、国民はひとしく教育を受ける権利を有すると、義務教育はこれを無償にすると、そういう立場から国として義務教育に優先的に財源を保障する、そういう制度だと思うんですね。だから、絶対にこれを廃止して崩してはならない、必ず堅持しなければならないというふうに、私ども日本共産党もそういう考えです。  そこで、次に別の角度から質問させていただきたいんですけれども、この制度というのは国が今二分の一、都道府県が二分の一ということで負担していますが、学校の設置者の市町村の負担ではなく県費負担教職員として都道府県負担にしているというのは大きな意味があると思うんですけれども、それはなぜかということを簡潔におっしゃっていただけますか。
  200. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 学校教育法第五条によりまして、学校を設置する地方公共団体等は、その設置する学校を管理し、経費負担するものとなっております。しかしながら、この教職員給与費につきましては、義務的経費であると同時に多額なものになるところから、市町村の財政上の重圧を除くとともに、一定水準教職員給与費を安定して確保するために、市町村に比べて地域的に広くかつ財政力が強く安定している都道府県負担としたもので、離島、へき地も含め、すべての学校に安定して教職員を確保するためには広域人事によることが望ましいことから、都道府県が給与を負担した上で人事権を有する制度として有効に機能しているものと考えております。
  201. 小林美恵子

    小林美恵子君 要するに、県費の負担制度によって、市町村に財政力の差があったとしても、給与に差が付かないで、すべての市町村の学校教員とか事務職員とか栄養職員がいる制度が作られてきたというのがやっぱりそういうことですよね。  こうした県費負担教職員制度をなくしては義務教育機会均等、水準確保はできないというふうに思いますけれども、この点はいかがですか。
  202. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 市町村によりましては本当に小さなところもありますし、財政力の弱いところもありますから、そういう意味でこの県費負担の教職員制度があるものと、このように考えております。
  203. 小林美恵子

    小林美恵子君 では、最近の新聞報道にかかわって確認をしたいと思いますけれども、これは先ほどからの質問の中でも出ていましたけれども、今この制度をめぐって、国の負担割合を今の二分の一から三分の一又は五分の二に引き下げる、そういう報道もされています。逆に、市町村に三分の一あるいは五分の一を負担してもらう、こういう報道もあります。正にこれは県費教職員負担制度そのものを否定するものだというふうに思うんですね。  それで、市町村にこういう負担を強いるような見直しは絶対行うべきではないと私は思うんですけれども、先ほど大臣は答弁の中で、いろいろ報道されているが考えはないというふうにおっしゃいました。ここで確認したいんですけれども考えがないということは、いわゆる負担率を引き下げないということと理解してよろしいでしょうか。
  204. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 正に市町村にそういう負担能力がないから都道府県負担としているわけで、ところがその都道府県も経済力、財政力の差がありますから、地方格差ができるんじゃないかという心配から、せめて義務教育費国庫負担制度、二分の一負担しようというふうなことで頑張っているわけでございまして、二分の一を三分の一にするとか、そんな報道があることは承知しておりますけれども、この問題は、繰り返しになりますけれども義務教育制度在り方地方と国の負担割合とか役割在り方とか、そういったことも含めて中央教育審議会議論してもらいたいと、このように考えているところでございます。
  205. 小林美恵子

    小林美恵子君 是非、大臣は引き下げないという立場で頑張っていただきたいというふうに思います。  それで、残された時間で私は最後の質問をさせていただきたいと思います。  世界青少年交流協会の補助金不正受給問題についてちょっとお伺いをします。この交流協会は一九六九年に設立されました。その目的に、世界的視野に立つ有為な青少年を育成するということがあります。こうした目的を持つところが子供を利用して不正受給をするということは、私はもう絶対に許せないなというように思うんですね。  時間もありませんので、これ、まとめてちょっとお聞きしたいと思いますが、まず第一に、この点について大臣はどう認識をされているか、この問題について。  第二に、逮捕されました鈴木副会長は、協会ができた当時から不正受給を続けていたということが供述、続けていたと供述していたことが報道されています。これが事実であれば、三十五年間も不正を続けていたということになるんですね。じゃ、一体文部科学省はどういう補助金の申請とか実績報告をチェックしていたのかということになると思うんです。しかも、報道には文部科学省職員が毎年百万円も接待を受けていたということもあります。  今、こうした疑惑について文部科学省として調査をされているというふうに聞いていますけれども、ここで確認させていただきたいと思います。これは重大なことなので、調査結果がいつ出るのか、その結果が出たら私は委員会にしっかりと報告していただきたいと思いますが、この点いかがですか。
  206. 中山成彬

    ○国務大臣(中山成彬君) 文部科学省の職員と協会との関係につきましては、現在文部科学省におきまして過去の担当者から事情を聴取しているところでございます。現時点で確たることは申し上げられませんが、事情聴取の結果、国家公務員倫理法上の問題が確認された場合には厳正に対処してまいりたいと、このように考えております。
  207. 小林美恵子

    小林美恵子君 私は、今の話、大変本当に重大な問題だと思いますので、調査の結果が分かりましたら委員会でしっかり報告をされるよう、そのことを求めたいと思いますけれども委員長、お取り計らいのほどよろしくお願いします。
  208. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) 理事会で協議させてもらいます。
  209. 小林美恵子

    小林美恵子君 質問を終わります。
  210. 亀井郁夫

    委員長亀井郁夫君) ありがとうございました。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時八分散会