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麻生国務大臣 これは、中村
先生、ちょっと話が長くならざるを得ぬのですが、
基本的に、日
本人の場合は他の先進国の人に比べて、いわゆる
個人金融
資産というものを
貯金、預金で持っている比率が約五五%くらい。先進国の中では、アメリカはちょっと少な過ぎるという感じで一二、三%くらい、ヨーロッパで大体二五、六%から三〇%くらいなんだと思うのですね。日本はまず異常に高い、いい、悪いは別にして。
私は、これは、
資金がなかった時代、とにかく小口金融で集める、これは金がなかった時代には非常にうまくいったんだと思っております。この金を使っていろいろ、財投を初め政策金融機関で傾斜配分して日本の経済復興に充てたことは間違いないと思うのです。ただ、それがたまりにたまって三百五十兆、加えて銀行が危ないというような話になったものだから、また預金がごそっと移ったりして、
個人金融
資産約一千四百兆のうちの四分の一が一つの国有
貯金に集まり過ぎているというのは、これは世界じゅうで日本だけなんだと思うのですね。
これだけ金を持ってくると、当然のこととして、金がないときは
貯金は目的になりますけれども、ある程度金を持ったら、今度は金は目的から手段に変わって、その金を使って何をするのかという話になっていくのが当然の流れだと思いますが、貯蓄より
投資とか、いろいろな表現になってきつつある。それだけ余裕が出てきたといえば、余裕が出てきたんだと思います。
今度は株の比率を見ますと、これは
投資信託というのは、日本の比率を見ますと、二%しかないということです。アメリカとかドイツというのは十何%ありますので、えらく高いなとも思いますけれども、イギリスやフランスでも四とか九とかいう数字になっています。
投資信託の比率です。
そういうものを見ますと、もうちょっとこれは貯蓄が減って
投資に回ってもおかしくない数字なのかなという感じがするんですが、いずれにしても、金の流れというものが、ある程度金のできてきたような時代に合わせて、そういったものになっていくという流れなんだと思います。
問題は、具体的な例を言う方が、
先生の場合、わかられると思いますので、例えば、今普通預金で預けて金利〇・〇〇五%、だから千万円預けて五百円。五百円ですよ。一回おろしたら手数料が三百円、もうあほらしくてやっておられぬ、私だったらそう思うのですね。今、かたい株で、どの株がかたいかと言うとちょっと問題ですね、配当率でいきますと二%くらい。だから、配当率二%ということは、千万円預けて二十万円。今、
税金が別枠で一律一〇%になっていますので、二十万円引く二万円で残り十八万。十八万と五百円はどっちが利益がでかいかといえば、これはかなり年をとられた方でも
理解をしていただけるところだとは思うのです。
それでも、やはり日
本人の意識というのは、株は怪しげなものなんですよ。田舎で、中村さん、株やっているんだって、と何だかばくち打ちに近いようなイメージにとられかねないくらい、昔は株をやっていると言ったらほとんどアウトですよ。少なくとも私の田舎では、間違いなく。とにかく信用しちゃいかぬのは石炭掘りとばくち打ちと言われたくらい。私はそういうところに育ちましたので、株をやっているというのはそういうイメージなんです、日本の場合は。
いや、そんなものじゃありません、今株というものは、信託とか
投資とかいうものは全然違うんですということの
理解というのは、金を持っておる高齢者ほどないんですよ。そこのところが、今の日本というのはかなり貯蓄に偏り過ぎていると思っておるんです。
先生、加えて、この五、六年で見ますと、企業は、借りるより返済している額の方が実に二十五・六兆円多いんです、この六年間の平均で。これは日銀が公式に発表している数字です。
九〇年代の初めのころは、企業は年間五十兆借りておるわけですから。預金は二十兆、五十兆借りて差額は日銀がという話なんですが、その五十兆借りているものが二十五兆、返済の方が多いとなると、これは、二十兆の預金がふえて二十五兆の返済が返ってくれば、合計四十五・六兆円のデフレ圧力ということになっているのが、今の日本の経済というか金融の実態であろうと思います。
そういった
意味では、その金がまた
貯金に回って、
基本的に今返済する方が多いわけですから、これは金利がゼロでも企業は金を借りに来ないという
前提で経済というものを書いた本は私が読んでいる話ではないので、そういう状態が今初めて起きておるという
状況でもあります。中村
先生、これは、今いろいろな試みがなされているものなんだと思いますけれども、少なくとも今までの例ではなかなかできない状態で、あわせてどうするかというところが経済としては今一番問われているんだと思います。
この
貯金も、昔はとにかく郵貯、郵貯といったんだけれども、借りるところがなくなってくれば、これは、今三百兆の金を持っていて何をするんだという話になっていきはせぬかなという感じが率直なところですね。