○鶴島
参考人 鶴島でございます。よろしくお願いをいたします。
まず、西武鉄道株式の上場廃止につきまして
説明をするようにとあらかじめ御指示をちょうだいしておりますので、この件に関します私
どもの対応、
考え方について御
説明を申し上げたいと存じます。
御
案内のとおり、私
ども東京
証券取引所では、十一月の十六日に、西武鉄道株式の上場廃止を決定し、公表をいたしました。
西武鉄道は、去る十月十三日、個人が所有しているとしてきた株式のうちに、実質的には、同社の大株主であるコクド及びその子
会社であるプリンスホテルが所有している株式が多数存在することが判明した旨を開示いたしました。
これを受けまして、私
どもでは、同日、西武鉄道株式を監理ポストに割り当て、上場廃止のおそれのある銘柄として、投資者の注意を喚起するとともに、西武鉄道からその原因等について報告を求め、株券上場廃止基準に規定をいたします虚偽記載に係る上場廃止基準及びその他公益または投資者保護に係る上場廃止基準に該当するかどうか、これにつきまして審査を行ってまいりました。
その結果、
一つ、西武鉄道は投資者の投資判断の基礎となるコクドからの支配の程度や同社株式の分布状況に関する情報について誤った開示を長期間にわたって継続してきたこと。また、その
影響は、過年度において、上場廃止基準において充足要件としております少数特定者持ち株比率に継続的に抵触する水準にまで及んでいたことが確認されました。そして、三つ目に、こうした事態が成立し得る事情といたしまして、西武鉄道における組織的な取り組みがあったと推認されるに至ったものでございます。
加えまして、西武鉄道における株式事務は、議決権や配当など株主の権利にかかわる事務
処理について不適当な行為を継続してきております。また、所有の態様に疑義のある多数の株式の存在を発見してからこれまでの間の対処についても、開示の遅滞あるいは開示前におけるコクドによる株式の売却への関与、こうした状況が見られるなど、投資者の信頼を裏切るともいうべき問題が
認められました。
こうしたことから、私
どもでは、西武鉄道は株券上場廃止基準に規定する虚偽記載を行い、かつ、その
影響が重大であると
認める場合、及び、その他公益または投資者保護のため上場廃止を適当と
認めた場合、こうした規定に該当するものとして西武鉄道の上場廃止を決定したものでございます。
なお、同株式は、十一月十七日付で整理ポストに割り当てられました。整理ポストは上場廃止が決定した銘柄について投資者に換金の機会を提供するため設けられているものでございまして、その期間は原則として一カ月間となります。したがいまして、同株式は、本年十二月十六日木曜日を最終売買日とし、十二月十七日金曜日に上場廃止となります。
ところで、十月十三日の西武鉄道の有価証券報告書の訂正以降、私
どもの上場
会社において、西武鉄道以外にも、伊豆箱根鉄道、
日本テレビ放送網など、有価証券報告書における重要な情報の記載の訂正を理由として監理ポストに割り当てられる銘柄が相次いでおります。
このうち、伊豆箱根鉄道につきましては、審査の結果、上場廃止基準に該当するとして上場廃止を決定し、
日本テレビ放送網につきましては、上場廃止事由に当たらないと判断し、監理ポスト割り当てを解除しておりますが、いずれにせよ、私
どもでは、先般来、短期間のうちにこのように多くの投資者の信頼を損なうような事例が相次いで判明し、上場
会社並びに証券
市場に対する社会的な信頼の失墜を招きかねない事態が生じている事態を大変重く受けとめております。
まず、私
どもでは、十月の二十九日に全上場
会社の代表者に対しまして、
会社情報の適切な開示に関する
要請文を送付しておりますので、その
内容から御
説明を申し上げたいと存じます。
要請内容について概略を申し上げますと、先般来、多くの投資者の信頼を損なうような事例が相次いで判明し、上場
会社並びに証券
市場に対する社会的な信頼の失墜を招きかねない事態が生じている状況を踏まえまして、全上場
会社の代表者に対しまして、情報開示に関係する社内管理体制等の検証を行うなど、万全の対応をとるよう
要請をいたしました。
また、上場株券の公正な価格形成及び円滑な流通を確保する上で、
財務内容を初めとする重要な
会社情報が適時適切に開示されることは不可欠なものでありまして、投資者の証券
市場に対する信頼の根幹をなすものでございますので、上場
会社の代表者に対しまして、投資者の視点に立った
会社情報の適切な開示ということの重要性について改めて認識を深めていただきますよう
要請をいたしました。
さらに、私
どもでは、今申し上げました上場
会社に対する
要請事項の実効性を上場制度の側面から確保するための検討を急ぎ、十一月十六日に、
会社情報等に対する信頼向上のための上場制度の見直し、制度要綱として公表をいたしました。この
内容につきましては、来年一月初旬を目途に実施をしたいと
考えております。
制度改正の概要でございますが、上場
会社の誠実な業務遂行に関する基本理念を上場規則にまず設けることといたします。
これは、上場
会社においては誠実に業務を遂行することが社会的に期待されているということを改めて意識していただくため、上場
会社が遵守すべき基本理念、すなわち、「上場
会社は、投資者への適時適切な
会社情報の開示が健全な証券
市場の根幹をなすものであることを十分に認識し、常に投資者の視点に立った迅速、正確かつ公平な
会社情報の開示を徹底するなど、誠実な業務遂行に努めなければならない」旨を私
どもの取引所の規則において定めるものであります。
次に、タイムリーディスクロージャーの重要性に対する上場
会社の一層の意識向上を促す観点から、
会社情報の投資者への適時適切な提供について真摯な姿勢で臨む旨の宣誓を行っていただくことといたします。
これは、今次相次いだ投資者の信頼を損なうような事例の発生を踏まえまして、全上場
会社の代表取締役が投資者に対して誠実な行動を約束することが証券
市場への信頼を回復するために有効であると
考えて実施をするものでございます。具体的には、代表取締役等が異動したときまたは前回の宣誓から五年を経過するたびに宣誓書を提
出していただくことといたしまして、宣誓事項について重大な違反を行った場合には上場廃止基準の対象とすることといたします。
次に、上場
会社に対し、有価証券報告書等の記載
内容の適正性に関する確認書、具体的には、有価証券報告書等の提出者の代表者がその提出時点において当該有価証券報告書の
内容に不実の記載がないと認識している旨を記載した書面の提出を求めることといたします。
さらに、親
会社等の
会社情報の適時開示ルール等の見直しを行うことといたします。
現行制度におきましては、平成七年以前に上場した
会社につきましては、親
会社等の
会社情報の適時開示は任意となっておりますが、投資者に提供される
会社情報の充実を図るため、非上場の親
会社等を有するすべての上場
会社に対して、親
会社情報の適時開示を求めることといたします。
また、親
会社等を有する上場
会社に対し、現在、決算短信への記載を
要請しております親
会社等の持ち株比率及び当該親
会社等との取引の開示について、規則上も開示を求めることといたします。
以上、御
説明をいたしました
会社情報に関する経営者の意識向上策と親
会社情報の充実化が今回の対応の大きな柱でございます。
なお、そのほか、株式の権利
処理について適切な手続の実施を確保するため、株式事務代行機関の設置をすべての上場
会社に義務づけることといたしまして、上場後に代行機関への委託をしないこととしたときには上場を廃止することとするなど、幾つか所要の手当てを行いましたが、やや技術的な見直し
内容も含まれておりますので、詳細は省略をさせていただきます。
以上が、今回の一連の問題発生を踏まえて私
ども東京
証券取引所が取り組む施策の概要でございます。
私
どもでは、十月十三日の西武鉄道の問題発生以降、証券
市場の信頼回復のためには一刻の猶予もない、こうした意識を持って臨み、このような対応策を迅速に策定したところでございますが、今後も、
市場運営者として投資者が安心して参加できる環境を提供できるよう一層の努力を払いたい、こう思っている次第でございます。
以上でございます。