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國廣参考人 こんにちは。
弁護士の
國廣と申します。
きょうは、私、
弁護士という
実務家の
立場から
意見を述べさせていただきたいと思っております。
きょうの
委員会の
テーマは
金融機関の
コンプライアンスであると言われています。
コンプライアンスという
言葉は非常によく使われているのでありますけれども、私、いろいろ新聞、テレビ、ラジオなどを聞いておりまして、
コンプライアンスという
言葉はどういう
言葉かな、どういう
場面で使われるのかなというふうに考えてみますと、大概暗い使われ方、ろくでもない使われ方をしていることが多い。どういうときかというと、
不祥事を起こした
企業の
役員がずらっと並んで頭を下げるときに必ず
念仏のように唱える
言葉が、今後は当社も
コンプライアンスをうんちゃらかんちゃらというようなことであります。そのような
意味において、
コンプライアンスというのは、ごめんなさいとか、何か起こった後に済みませんと言うときに使われる
言葉である。そのような使われ方こそが、まさに
日本企業の
コンプライアンス経営を阻害しているものではなかろうかというふうに感じるわけであります。
では、
コンプライアンスというのは一体どういうふうに考えていくのかということを少し
意見を述べさせていただきたいと思うのでございますが、まず、前提問題として、最近、
企業不祥事が、
金融機関に限らずですけれども、続発しております。非常に多くの
企業不祥事というものが起きている。これで、昔に比べて
日本企業の
遵法意識が低下した、昔はよかったけれども最近は
企業が劣化したというような評価が加えられることがあります。しかし、私は必ずしもそれは正しくないと考えます。
つまり、私の
意見でございますが、
日本の
企業行動は変わっていない、従来と同じに
横並びになっている、ところが、
日本社会の方がそれを許さない
社会に変わってきている。すなわち、
日本社会というのがどういうふうに変わったかというと、特にバブルを境として、やはり
グローバル化という形で、要するに、
行政との
事前指導あるいは癒着と言ってもいい
場面もあるのかもしれませんけれども、それで
横並びで業界でやっていく、そういうやり方が通用しなくなって、
企業みずからが
自分の頭で
自由競争の公正な
ルールの中で競争していかなければならない世の中に変わってきつつある。ほぼ変わった。にもかかわらず、従来の
横並び的発想から抜け出さずに、それまでそれでうまくいってきたからということで
企業が旧態依然とした
行動をやり続けていること、これがいわゆる
企業不祥事の
原因なのかなという感じがいたします。
したがいまして、先ほど最初に申し上げました、
不祥事を起こして
コンプライアンスをなどと下を向いて言っている
企業というのは、多くの場合、ある
自動車会社などの例に見られるように、そういう
不祥事を繰り返します。やはりそこの
意識、
社会が変わったんだという
意識を
企業自身が
自分の頭と
自分の足で考えていかなければこの問題は解決しないのかなと思うわけであります。
あと、ちょっと横道にそれますが、
企業不祥事、
不祥事という
言葉自身が、これまで従来の
日本社会の
不祥事に対する対応、
姿勢をあらわすものだと思います。
と申しますのは、広辞苑で
不祥事という
言葉を引きますと、縁起が悪いこと、不運と書いてあって、
違法行為とか不正という訳語がないんですね。ということは何かというと、結局、
横並びで赤信号をみんなで渡っていれば怖くない時代が長く続いてきたわけであります。その中で、ちょっとやり過ぎた
企業が捕まっちゃったね、だから
不祥事だよというような使われ方を恐らくこれまでされてきたのではないか。今は不正とかいけないことという
意味で
不祥事という
言葉が使われるようになっておるわけでありますけれども。
そのような
言葉一つとってみても、単純に
コンプライアンスということを
念仏のように唱えるのではなくて、
企業行動自体が問題ではないか、その根っこにある
意識、さらに言えば
社会意識、やはりそこまで踏み込んだ形で考えなければ、いわゆるこういう
不祥事の問題というものはいつまでたってもなくならないであろうと考えます。
では、
金融機関の
不祥事、
コンプライアンスについてはどのように考えるべきかということであります。
今、
不祥事の
一般論で申し上げました。先ほど
岩原先生も、基本的には
銀行と
一般企業は同じだよということをおっしゃいましたけれども、私も同
意見でございます。ただ、
銀行、あるいは
証券会社も
保険会社も
金融機関に含まれるわけでありますけれども、これらの
機関というのは非常に
公共性が高い、すなわち
資本主義の血液である
金融を担っているという
意味があるかと思います。
銀行について見ますと、従来はいわゆる大蔵省の
護送船団と言われる中で、ある
種合理性が、当時、二十年前、三十年前にはあったのかと思いますけれども、これからその
発想からいかに抜け出ていくのかというところ、抜け出ることができない
銀行がやはりいろいろな問題を起こしていく。すなわち、
自分の頭で
ルールとは何なのかということを考えて、その判断に従って自主的、自律的
行動をすることになれている
企業、
銀行であるか否かというところが、これから成長していくか
不祥事を起こすかを分けることになるのではなかろうかと思います。もちろん、
検査監督当局の
検査等の強化、あるいは、先ほどのお話にもありましたような、
違反行為を公表するという厳しい態度、このようなことが行われることによって
規律というものはできてくる面も非常に強いと思いますけれども、やはり最終的には
自分の頭で考えるようになれるかどうかということ、ここが一番大事な問題だろう。
金融庁に
検査されるから対応しましょうというようなことであると、やはり今後の国際競争の中で生き残っていくことは難しいのではなかろうかと考えます。
銀行ばかりの話ではなくて、
金融機関のもう一つの
証券会社についても考えてみたいと思います。
証券会社も相変わらずいろいろな
不祥事を起こし続けているわけであります。しかし、本来、今後の
日本の
金融のあり方ということから考えますと、大きな流れとして間接
金融から直接
金融への流れ、これがなければやはり
日本の今後の経済成長、発展というのはなかなか難しいであろうと考えます。そのような
意味において、まさに
証券会社の果たすべき役割というものは大事でありまして、それに対する税制の問題などもいろいろ議論されており、それは大事なことだと思いますけれども、私は、まさにその直接
金融にシフトしていくという中での
証券会社の役割という観点からすると非常に
コンプライアンスというものが大事だろうと思います。
ここで言う
コンプライアンスというのは、要するに公明正大に
ルールを守るというやり方でありまして、従来の、株屋は怪しいことをやっているのではないかという一種の差別的な見方もあるのかもしれませんけれども、そのような、早耳の何とかみたいな形で早い情報をとってくる
証券会社がその情報を顧客に与えるのがいいことだなどという古い体質の部分があるんですけれども、こういうのはインサイダー
取引になるわけです。そのような
意味において、まさに
証券会社が公明正大に
ルールに従ってきちんとした営業をやっていくんだということ、これがやはり多くの顧客を直接
金融に資金を移転させるために不可欠の前提ではなかろうかというふうに考えるわけであります。
以上、
金融機関で
証券会社と
銀行を例にとって申し上げましたけれども、
最後に、私の
実務家としての現状の印象について述べさせていただきたいと考えます。
まず、
金融機関の
コンプライアンスは進んでいるのか進んでいないのかということですけれども、私は、これはすごく差が歴然としてきている、すなわち、
銀行においても
証券会社においても、
コンプライアンスを本音でやっていくところと、仕方がないから形だけやっていくところ、ここに非常に現実的には分かれているのかなというふうな印象であります。いわゆる本音で
コンプライアンスをやる
企業と、建前でしかやらない
企業に分かれているであろう。
では、本音でやっている
企業というのはどういうところかというと、やはり時代の流れというものをしっかりと見据えた
企業であろうというのが言えると思います。あるいは、本音でやっている
企業は、痛い目に遭って、それで目が覚めて本音でやっている
企業、ここもかなりの数あるのではなかろうかと思います。さらに言えば、痛い目に何度遭っても繰り返していく、こういう
企業もあるように思われます。このようなところは、やはり市場から退場を願うしかないのかなというふうに考えているわけであります。
国会という場で
金融機関の
コンプライアンスということを御
検討、お考えいただくわけでございますけれども、私の希望といたしましては、
金融機関というものは非常に大事でありますが、より広く、
コンプライアンスとは何なのか、あるいはコーポレートガバナンス、
企業統治とは何なのか、あるいは証券市場というものの
信頼をどうやって確保するのか。最近の西武の
事件などを見ている限り、本当に新しい
金融の時代が出てくるとはなかなか、悲観的にならざるを得ないわけであります。
したがいまして、まさに
資本主義の血液の
金融というものが安定的、
信頼に足りるものとして機能されるように、ぜひ国会で十分な御審議をされ、長い目で見て、長い目に耐え得るシステムづくりということをやっていただければ大変ありがたいのではないかと思います。
以上、
意見を述べさせていただきました。(
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