○水島
委員 私が
質問しましたのは、そのような今までとられてきた政策の評価、検証をされたことがあるかという
質問でしたので、今のお答えを伺いますと、多分されたことがないので推論を述べられたんだろう、そういうふうに
理解をさせていただくわけですが、一日評論家みたいな方はどこにでもいらっしゃって、推測というのはどこでもされているわけですので、ここで必要なのは、やはり個々の政策の検証作業、
効果の評価ということだと思うわけです。
そんな中で、総務省が本年の七月に、
少子化対策に関する政策評価書として、新エンゼルプランを
対象に政策の評価を行っております。その中の「把握の結果」の
部分を、きょうお手元に資料一として配らせていただいているので、ごらんいただきたいんですけれ
ども、ここで、「政策
効果について」といたしまして、「
仕事と子育ての両立に係る負担感 いまだ十分とはいえないものの総じて緩和されてきている。」「子育てそのものの負担感 必ずしも緩和されているとはいえない。」「出生数・
合計特殊出生率 い
ずれも低下の一途」と並んでいますけれ
ども、ここに非常に大げさな囲みで、ここの
部分なんですけれ
ども、「しかし、低下傾向には、外部要因も影響」と、さも大発見をしたかのように書いてあるわけでございます。
外部要因とは何なのかと見てみると、「理想の子
ども数の減少」とありまして、「子
どもが欲しい
理由として、社会的な規範
意識を挙げる者が減少している等子
どもを持つことに対する個人の
意識が変化」とあるわけでございます。
「社会的な規範
意識」という大げさな書きぶりに驚きまして、今度その
根拠を見ますと、国民生活白書からデータをいいかげんに抜き取っているわけでございます。
この紙の下の「子
どもが欲しい
理由」というところに書いてありますが、「子
どもをつくるのは自然であるから」が、この六年で三・六%低下、「社会的に一人前になれるから」が四・七%低下、「つくれと周りがうるさくなるから」が一一・一%低下しているのですけれ
ども、それをもって「社会的な規範
意識」と言ってしまう感覚にも驚いてしまうわけですが、引用元の国民生活白書を資料二として、こちらも配らせていただいておりますけれ
ども、これを見ると、総務省の感覚にもっと驚いてしまうわけでございます。
ここには、
子供が欲しい
理由がずらりと並んでいるわけですけれ
ども、一九九七年も二〇〇三年も、
子供が欲しい
理由として、過半数の人は「子
どもがかわいいから」を挙げておりまして、「結婚して子
どもを作るのは人間として自然であるから」が続いております。それ以外のものは、全体から見るとせいぜい二割以下でございます。
細かく見てまいりますと、「子
どもは夫婦の間をつなぎとめる働きをするから」「子
どもは老後の面倒をみてくれるから」というような打算的なものが、それぞれ八・一%、三・三%減っておりまして、「結婚すると子
どもを作れと周りがうるさくなるから」という、親になることへの主体性そのものを疑わせるようなものが一一・一%低下をしているということで、「子
どもがかわいいから」は三・八%ふえているのですから、
子供の立場から見ると、むしろ好ましい変化ともとれるのではないかと思っております。
これを一概に「社会的な規範
意識」としてしまうのは、とても客観的な評価作業とは言えないと思います。これを、きちんとした評価、そしてそこから導き出される推論や考察としてこんなことを書き切ってしまいますと、多分、今
委員長もほほ笑んでいらっしゃるわけですが、学術論文などでは認められないんじゃないかなというふうにも思うわけです。
かなり恣意的な、そして客観的ではない評価が、この総務省の一枚紙でされておりまして、私は常々思っていますけれ
ども、政治や
行政が行うべきことは、価値
中立的な
制度の整備であって、価値観や規範
意識をつくることではないはずだと思っています。価値観や規範
意識というのは別の要素によってつくられるべきものであって、規範
意識の形成ということであれば、例えば、むしろ政治と金の問題に決着をつけることとか、公約破りをしないこととか、そういうことの方が、規範
意識の形成のためにはずっと重要だと考えております。
本来
行政としてやるべき
仕事が進まず、そのために
効果があらわれないというときに、国民の規範
意識などに言いわけを求めるというのは、とてもよくある責任転嫁の手法だと思っております。
大臣はまさかそんな方ではないと思いますけれ
ども、御自身がやるべきことは
次世代育成支援のための
施策を充実することであって、くれぐれも、
子供を持って初めて一人前などとキャンペーンを張ることではないということを、もちろん
理解されていらっしゃいますでしょうか。