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松村龍二君 自由民主党の
松村議員でございます。
先国会において
北朝鮮による
拉致問題等に関する
特別委員会というのが初めて発足いたしました。そして今日、第一回目の会議、この臨時国会もこれで終わりかと思いますが、第一回目の
委員会に自民党を代表して発言させていただきます。大変光栄に存ずる次第でございます。
といいますのは、私は福井県出身でありまして、福井県には皆様御
承知の小浜というところから地村保志、富貴恵夫妻、またこのたびの
交渉で三人のお子様が帰ってまいりまして、まだ
特定失踪者という方が三人ぐらいおられるわけですけれども、そういうようなことで大変に
関係も深いということでございます。
さて、この
拉致の本質が一体何なんだろうかなということを考えることがあるわけですけれども、
拉致問題というのは、例えば私どもの普通の家庭で子供や孫がだれかにさらわれたということの問題だと思うんですね。そうしたときに、その家のおじいさんであれおばあさんであれ、父親であれ母親であれ、白髪につえをついているようなよぼよぼのおじいさんであっても、かわいい孫がだれかにさらわれたということになりますと、腕の力はなくても、さらった人の家の玄関へ行ってうちの孫を返せということを主張すると。幾ら暴力でけ飛ばされても、うちの孫を返せと言って肉薄する性質の問題だろうと、こういうふうに思うわけです。
これが今度の
拉致、いわゆる
北朝鮮による
拉致問題ということになりますと、国家の主権ということが
関係しているわけですね。
日本の刑法を無視して海岸から無理やり麻の袋をかぶせて連れていったと。こういうことですから、この問題は昔であれば戦争してでも
解決しないといかぬと。国家のメンツが懸かっている話でありますから。先ほどのおじいさんがつえついてでも返せということを肉薄しなければならない、肉薄するであろうという性質の問題であろうというふうに思います。
また、これが過去に起きた事件でありますので、長い時代
国民の大半がこれを無視して過ごしてきたという、あるいは知らされなかったから無視してきたということもあるわけですけれども、そういう中の過去の事件でありますが、現在仮にこういう事件が起きればどうなのかと。
外交交渉に行かれた
外務省の偉い方が、
大臣なり高官がその国にさらわれてしまったと。あるいはそういう場合、やっぱり国家のメンツを懸けて、ほかのことはもう全部うっちゃっておいてでもその問題を
解決しないといかぬという性質の話かと思うんです。そして、これが高官であれば救って庶民なら救わないのか、男なら救って女なら救わないのか、年寄りなら救わないで若い人なら救うのかということになりますと、それは差がないわけでありまして、あくまでもこの
拉致という問題については国家の威信を懸けて
解決に取り組まなければならないというふうに思います。しかし、一面、やっぱり非常にこの
拉致の問題だけに目を奪われて、全体のバランスということも無視してはいかぬということもあると思うんです。
最近、私は共同通信のOBでデモクラシー・ウィズ・ウエポンという本を書いた松尾さんという方から
お話を聞いたことがありますが、現在、アメリカのある財団が
北朝鮮の大学生を特待、呼んで、コンピューターの教育をしてあげているというようなことも聞いたことがあります。
したがって、
外交には絶えず、国と国の付き合いには絶えず一面的ではなくて両面から広い視点でアプローチしなければならない。まして、
北朝鮮との間では核、ミサイルの問題があるわけですから、これが
日本に対しては鋭敏に刃向かっているよりはこれを穏やかにした方がいいということは、もうこれは間違いのない事実でございます。
それから、やはり歴史の問題も無視できないと思いますね。私は地元で朝鮮の、
日朝関係の朝鮮の歴史をよく勉強している方から最近も
お話聞いたんですが、六世紀のころからの、白村江の
日本が行って敗れてきたというとき以来、あるいはそれ以前から、千年、二千年の大変な歴史があるわけです。皆様御
承知の豊臣秀吉の朝鮮征伐、朝鮮全土に殺りくを行い、何千人もの技術者や婦女を
拉致したことを徳川家康に対し朝鮮国が返せと言ったが返さなかったと、それをなだめるために朝鮮通信使を迎えることになったと。私も詳しくないので知りませんが、そんな話をしておりました。
それから、戦前の話はまあさておきまして、そのような大きな歴史の中でいかにこの
拉致問題をさっきの
最初に申しました原則に立ちながら
解決していくということかなというふうに思うわけです。
したがいまして、
小泉内閣の
小泉外交というのは、この
拉致については二回とも単身
北朝鮮に乗り込んでいって、平壌に乗り込んでいって、せっかく議員立法で作った外為法の改正の法案とか入港する船を差し止めることができるといったことを使いませんというようなことを言って
交渉すると。せっかくの道具を捨てて、放棄して
交渉するというような
交渉術を見れば、非常に
拉致という問題だけ見ればとんでもない
交渉の仕方だなというふうに思いますけれども、アジアの平和、北東アジアの平和全体ということを広く考えた上での
外交であると。それはなるほど、これはなかなかのものだなというふうにも理解したいという気持ちもあるわけでございます。
しかし、こういうことを、よく
小泉政治はワンワードポリティックスという、ワンフレーズポリティックスですね、そういうことも言われるわけですが、よく
国民にその真意を説明していただきたいなというふうに思う次第でございます。
そこで、具体的な
質問に入りますが、先ほど木庭先生の
質問でありましたけれども、今日、食糧の支援を、
人道支援をするというふうに発表になったようですが、まず、どのような支援を行うのかということについてお聞きしたいわけですが、先ほどちょっとおっしゃいましたので私から御紹介しますと、十二・五万トンの食糧支援、七百万ドルの医薬品等の
人道支援、米四万八千トン、小麦五万トン、トウモロコシ一万八千五百トン、大豆五千トン、砂糖二千トン、食用油千五百トンと。こんな
内容だというふうにお伺いするわけです、
承知するわけですが、しかし、これは
総理が
日朝交渉、首脳
交渉のときに発表した数字とはちょっと違うと。
小泉総理が表明したのは二十五万トンの食糧支援、ちょうど半分ですね。それから一千万ドル相当の医薬品等の
人道支援の数字、これが七百万ドルということでありますけれども、これはどうしてこういう違う数字になっているのか。
十一日の
交渉に向けてまだ切り札として半分取っておくということであれば、これはこの
人道支援が
拉致被害者の解放のあれではない、対価ではないということと食い違うことになりますけれども、まずこの数字の違いはどうして起きたのか、教えていただきたいと思います。