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海江田万里君
民主党の
海江田万里でございます。
私は、日本共産党、
社会民主党・市民連合、そして
民主党・
無所属クラブを代表し、ただいま
議題となりました
厚生労働大臣坂口力君に対する
不信任決議案について、趣旨弁明を行います。(
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まず、決議案文を朗読します。
本院は、
厚生労働大臣坂口力君を信任せず。
右決議する。
〔
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以下、
提案理由の説明をいたします。
さきの
通常国会では、
政府提出の
年金法案の
問題点が次々と明らかになりました。しかし、
与党の強行
採決によって
改正年金法が成立し、その後、
参議院選挙を経て、本臨時
国会召集に至る間、坂口君が責任を負うべき厚生労働行政についての不祥事が頻発していることは、だれの目にも明らかです。その一つ一つが
国民生活に直結した問題であり、厚生労働行政の根幹の問題であり、
政府への
信頼を根底から揺るがすものであります。
国民は、
さきの
参議院選挙において、
改正年金法に対して、白紙で
議論をやり直すことを強く求めました。この
民意に対しても坂口大臣は耳を傾けず、反省の姿勢は全く見られません。
坂口大臣の監督責任あるいは
政治責任は極めて重いものであります。責任を問われる案件がこれほど多い坂口大臣が、巷間うわさされている九月の内閣改造まで漫然とその座にとどまることは、決して許されるものではありません。(
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事ここに至り、我々は、
国民の代表として、坂口力厚生労働大臣の
不信任決議案を提案するものです。
不信任の
理由は数限りなくありますが、その主たるものを、以下、具体的に御説明いたします。
まず第一の
理由は、続発する厚生労働省、
社会保険庁の不祥事、ミスであります。
例えば、
社会保険庁職員による個人情報の勝手な閲覧です。驚くべきは、その
理由が興味本位であったことです。この
社会保険庁職員のモラルの低さには驚くばかりですが、必要もない者が安易に他人の個人情報を閲覧できる環境、管理体制であったことにも大きな問題があったことは明々白々です。職員のモラル維持、管理体制の整備などについて坂口大臣に監督責任があったことは当然であります。(
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また、
年金の支給ミスも繰り返されています。
社会保険庁は、昨年六月の支給ミス判明に続き、今回は振りかえ加算、過払いという失態を犯してしまいました。ミスそれ自体も問題ですが、
社会保険庁は、この失態を二月に確認していたにもかかわらず、その事実を、公表はおろか、
社会保険庁幹部にさえ
報告していなかったことは、より重大な問題です。他人の個人情報をのぞき見する一方で、みずからの過ちはだれにも公表しない
社会保険庁の体質が明らかになったのです。
社会保険庁という組織は、余りにもモラルに欠け、隠ぺい体質に染まり過ぎています。坂口大臣は、
社会保険庁長官に民間人を任命することでみずからの責任を覆い隠すのではなく、ここまで
国民をだまし欺いてきた
社会保険庁を放置した責任を明確にとるべきであります。
厚生労働省関係職員の不祥事は、
社会保険庁にとどまりません。さらに許せないのは、
国民の貴重な税金を自分
たちの懐に入れていたことです。先日、厚生労働省職員が、外郭団体など約二十法人から、監修料に名をかりて約二億円もの現金を受け取っていたことが判明しました。そして、そのうち少なくとも一億円は厚生労働省の補助事業に関連した報酬であり、実質的には税の着服が行われていたのです。このような
行為が省内で広く組織的に、しかも継続的に繰り返されていたのです。断じて許されるものではありません。(
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坂口力君
不信任の第二の
理由は、
改正年金法にかかわる多くのごまかし、隠ぺいです。
そもそも、坂口大臣自身が
改正法の中身を
理解していたのかどうか、疑問が残ります。坂口大臣は、
法案提出前に
年金給付水準について、現役時代の平均的収入の五〇%の
給付を維持する、あるいは、若いときに
皆さんが受け取りになりました手取り、その五〇%を確保しますと繰り返し明言しています。しかし、これは明らかに
政府が従来言ってきた
給付水準の説明とは異なります。仮に誤った
理解のままに
法案を
提出し、その成立を強行したのなら、
国民に対する愚弄そのものであると考えます。
国民を愚弄したといえば、何といっても出生率の後出しです。出生率は
年金財政の根幹です。
政府は、
負担と
給付を具体的に定めたから
抜本改革などと言いますが、出生率の見込みが狂えば、その
負担と
給付は実現できるはずもありません。百年
安心プランなど砂上の楼閣、夢のまた夢であります。
民主党は、
改正法の
審議中から、重ねてこの出生率の最新値の公表を求めてまいりました。しかし、
政府から一向に回答はなく、
法案成立後にマスコミ報道に追い立てられるように、ようやく公表したのです。このような
政府の態度に、
国民は怒り、強い
不信感を抱いたのです。坂口大臣は、この責任を何と考えるのでしょうか。
特に、坂口大臣は、六月三日の参議院
厚生労働委員会において、我が党の
議員が強く二〇〇三年の出生率の早期公表を求めた際、「私も早く出してほしいと言っているのです」と
発言しました。しかし、あろうことか、この委員会
発言より十日前の五月二十四日には、既に出生率一・二九が厚生労働省内で把握されていたことが明らかとなりました。坂口大臣がこれを初めて知ったのは六月十日とのことですので、大臣は十七日間も情報に触れることができなかったことになります。
なぜこのような情報が十七日間も大臣に知らされずにいたのか。それは組織の問題なのか、あるいは厚生労働省の職員が坂口大臣を信じていないのか、いずれにしましても、坂口力君の責任は重かつ大であります。(
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加えて、
改正年金法の条文
過誤が判明しました。これも我が党の参議院
議員の指摘をきっかけに判明したものでありますが、四十カ所の
過誤というのは余りにも多過ぎます。これでは
法律としての体をなしていません。しかも、これを
官報正誤という手続で修正を行ってしまいました。
政府として、
法律の重要性をかんがみるなら、改めて修正
法案を
提出し、
国会の
審議を求めるのが筋であると考えましたが、坂口大臣はこれを回避しました。
欠陥法を
提出し、その修正を密室で行ったのです。厚生労働省、
社会保険庁の隠ぺい体質は、やはり坂口大臣に根差していたのかという疑念を抱かざるを得ません。これによって、
国民の
年金に対する
不信はますます高まりました。
坂口力君
不信任の第三の、そして最大の
理由は、坂口大臣が責任者として
国会に
提出した
改正年金法が、
国民から明確に否決されたことであります。
さきの
参議院選挙は、どの世論調査を見ても、有権者は
年金問題を最大の判断基準としていました。まさに
年金選挙であったわけです。その
選挙で、
与党は改選過半数を獲得することはできませんでした。
国民が
改正年金法にノーを突きつけたのです。
年金法という最重要課題において、
国民からこれほど明確に否決されたのですから、坂口大臣の
政治責任は極めて重大です。
このように、坂口大臣の
不信任の
理由を挙げれば限りがありません。本来なら、坂口大臣みずから職を辞するべきであり、あるいは任命者によって罷免されるところであります。ところが、
政府・
与党は、
選挙結果にも一切責任をとらない体質をそのまま引きずり、
国民に
改正年金法を否決された責任もだれ一人とろうとしません。だれも責任をとらないままに
改正年金法を十月から施行すれば、
国民の
年金に対する
不信は増大し、ひいては
政治に対する
信頼が地に落ちてしまいます。(
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厚生労働大臣の厚生とは、「正徳、利用、厚生、惟(これ)和すれば、九功惟叙し、九叙惟歌う」という中国の古詞に由来し、その意味は、言うまでもなく、民生を豊かにすることです。今日の坂口力君の姿からは、民生を豊かにするという姿勢はみじんも見られません。かえって民生を塗炭の苦しみに追いやるというのが、その姿です。
本日の本
会議において、
民主党が
提出した
改正年金改革関連法の
廃止法案が否決されました。
年金を一から
議論し直せという明確な
国民の意思を、
与党は否決したのであります。本
不信任案の
採決に当たっては、重ねて、本議場の
皆さん方が
民意を否定することのないよう強く求めまして、私の趣旨説明を終わります。(
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