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2004-03-17 第159回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年三月十七日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月十六日     辞任         補欠選任      田中 直紀君     福島啓史郎君      山内 俊夫君     段本 幸男君      池田 幹幸君     小林美恵子君  三月十七日     辞任         補欠選任      松谷蒼一郎君     中川 義雄君      宮本 岳志君     紙  智子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         片山虎之助君     理 事                 尾辻 秀久君                 小林  温君                 伊達 忠一君                 林  芳正君                 朝日 俊弘君                 高橋 千秋君                 山根 隆治君                 渡辺 孝男君                 大門実紀史君     委 員                 愛知 治郎君                 有馬 朗人君                 大島 慶久君                 扇  千景君                 岸  宏一君                 山東 昭子君                 清水嘉与子君                 段本 幸男君                 仲道 俊哉君                 福島啓史郎君                 保坂 三蔵君                 舛添 要一君                 森田 次夫君                 山崎  力君                 小川 勝也君                 小川 敏夫君                 大塚 耕平君                 榛葉賀津也君                 辻  泰弘君                 中島 章夫君                 樋口 俊一君                 平野 達男君                 峰崎 直樹君                 高野 博師君                 森本 晃司君                 山本 香苗君                 紙  智子君                 小林美恵子君                 林  紀子君                 福島 瑞穂君                 島袋 宗康君    国務大臣        総務大臣     麻生 太郎君        法務大臣     野沢 太三君        外務大臣     川口 順子君        財務大臣     谷垣 禎一君        文部科学大臣   河村 建夫君        厚生労働大臣   坂口  力君        農林水産大臣   亀井 善之君        経済産業大臣   中川 昭一君        環境大臣     小池百合子君        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)        (内閣特命担        当大臣(青少年        育成及び少子化        対策、食品安全        ))       小野 清子君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣金融、        経済財政政策)        )        竹中 平蔵君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣規制改        革、産業再生機        構))      金子 一義君    内閣官房長官        内閣官房長官  山崎 正昭君    副大臣        内閣府副大臣   伊藤 達也君        法務副大臣    実川 幸夫君        外務大臣    阿部 正俊君        財務大臣    石井 啓一君        文部科学大臣  原田 義昭君        厚生労働大臣  谷畑  孝君        農林水産大臣  市川 一朗君        経済産業大臣  泉  信也君        環境大臣    加藤 修一君    大臣政務官        財務大臣政務官  山下 英利君        経済産業大臣政        務官       江田 康幸君        環境大臣政務官  砂田 圭佑君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    政府参考人        司法制度改革推        進本部事務局長  山崎  潮君        内閣府政策統括        官        山本信一郎君        金融庁監督局長  五味 廣文君        総務省自治財政        局長       瀧野 欣彌君        法務省民事局長  房村 精一君        法務省刑事局長  樋渡 利秋君        外務省総合外交        政策局軍備管理        ・科学審議官   天野 之弥君        外務省北米局長  海老原 紳君        外務省欧州局長  小松 一郎君        外務省経済協力        局長       古田  肇君        財務省理財局長  牧野 治郎君        文部科学省初等        中等教育局長   近藤 信司君        厚生労働省医政        局長       岩尾總一郎君        厚生労働省健康        局長       田中 慶司君        厚生労働省医薬        食品局長     阿曽沼慎司君        厚生労働省医薬        食品局食品安全        部長       遠藤  明君        厚生労働省雇用        均等・児童家庭        局長       伍藤 忠春君        厚生労働省保険        局長       辻  哲夫君        厚生労働省年金        局長       吉武 民樹君        農林水産省消費        ・安全局長    中川  坦君        経済産業大臣官        房地域経済産業        審議官      平井 敏文君        経済産業省通商        政策局長     林  洋和君        経済産業省産業        技術環境局長   小川  洋君        資源エネルギー        庁長官      日下 一正君        環境省総合環境        政策局長     松本 省藏君        環境省地球環境        局長       小島 敏郎君        環境省環境管理        局水環境部長   吉田 徳久君        環境省自然環境        局長       小野寺 浩君    参考人        日本銀行総裁   福井 俊彦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成十六年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十六年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十六年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成十六年度予算三案に関する理事会決定事項について御報告いたします。  本日は、一般質疑を百三十八分行うこととし、各会派への割当て時間は、自由民主党四十八分、民主党・新緑風会五十分、公明党十五分、日本共産党十五分、社会民主党・護憲連合五分、無所属の会五分とすること、質疑順位につきましてはお手元の質疑通告表のとおりでございます。     ─────────────
  3. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 平成十六年度一般会計予算平成十六年度特別会計予算平成十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。福島啓史郎君。
  4. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 自由民主党福島啓史郎でございます。  今日は、財政健全化金融問題、また日本経済地域活性化環境税等について御質問したいと思います。  まず、財政健全化でございます。  財政健全化につきましては、日本の場合、今まで国債が千四百兆円という個人金融資産の中で消化可能であったことから問題は顕在化しなかったという事情はあるわけでございますが、アメリカと違って基軸通貨国ではありませんので、経済の急速なグローバル化の進展の中で大きな問題となりつつあるというふうに認識しているわけでございます。  財政健全化は、そもそも三つ方策、つまり歳出削減する、それから二つ目には名目成長率を引き上げる、三番目には増税をすると、いずれかの選択ないしその組合せであると、それしかないと思うわけでございます。  まず、竹中大臣にお聞きしたいわけでございますが、内閣府作成の参考資料では、プライマリーバランスは二〇一三年にプラスに転じるというふうな試算をしておるわけでございますが、その場合の前提は今申しました三つ方策のうちのどれを前提にしておられるか、お聞きしたいと思います。
  5. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員指摘くださいましたように、今赤字のギャップがあるわけですから、それを減らすということになりますと、歳出を抑制する、GDPを上げて税収を増やしていく、ないしは制度的に税の増収を図る、これを組み合わせるしかない、結論はこれを組み合わせなきゃいけないのだと思っております。  歳出につきましては、二〇〇六年度までは少なくとも今の規模を大きくしないという抑制を行います。その間に経済活性化して、デフレを克服して、名目GDPを上げてまいります。その二〇〇七年以降については、どのような形で受益負担を明確化していくかについて、歳出をどうするこうするのか、負担の方をどうこうするのか、それについては二〇〇六年までに是非結論を出して、二〇〇六年までと同じような改善を続ける、そのような前提試算は作成されております。
  6. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 ということは、二〇一三年度プラスに転じるという二〇一三年度歳出を、歳出を想定いたしますと、社会保障費高齢者の増加に伴いまして増加いたすわけでございますけれども、公共事業関連費及びその他は相当減額になっているというふうに想定されるわけでございます。それで、かつ、その時点でも公債等残高は九百兆円強であるというふうに見通されるわけでございます。  そうした状態を考えますと、その時点では、国の事務というのは社会保障とそれから国防なり治安という、それが基本だという、そういう国家を想定することになるんではないかと思うわけでございますが、竹中大臣のその見解、いかがでしょうか。
  7. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 先ほど申し上げましたように、二〇〇六年までは政府規模を大きくしないということで、相対的には先生おっしゃったようなウエートがやっぱり高くなってくるわけでございますけれども、まあ夜警国家以外のことを何にもしないというわけには実はいかないんだと思います。  したがいまして、正に、その場合の負担を今後、二〇〇七年以降はどうするのか、それと財政の支出の内容をどうするのか、それを二〇〇六年までにきちっと議論をして、二〇〇七年以降も同様の歳出赤字の縮減ができるような歳出負担受益のバランスを考えていこうと、そのような趣旨でございます。
  8. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 今、竹中大臣は、夜警国家を考えているわけではないというふうに今言われたわけでございます。そうしますと、今、先ほど申しました歳出削減、それから名目成長率上昇、それから増税という三つを組み合わせていかなければならないわけでございます。  それで、この参考資料試算によりますと、二〇一七年度名目成長率は三・七%、実質は二・二%と想定しているわけでございますが、私は潜在的な我が国経済成長率はもっと高いんだろうと思うわけでございます。私は、名目成長率は五%、その場合には実質が三%で、それから消費者物価上昇が三%、そうしますと、大体GDPデフレーターが二%でございますので、名目成長率は五%になると。それでこれを、消費者物価三%といいますのは、アメリカ連銀等は、金利政策が有効に機能するにはやっぱり消費者物価は三%ぐらいないといけないという、そういう見解を持っているというふうに聞いているわけでございます。  そういうことから、実質成長率を上げ、かつ消費者物価三%を目標とする。で、名目成長率五%と。それを目標とした経済運営を行いまして、早期にこのプライマリーバランス黒字化、これが第一段階、さらに早期財政再建を図るべきだと考えるわけですが、いかがでしょうか。
  9. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 実質三%、名目五%を目指すべきであると、大変勇気付けられる委員の御意見であるというふうに思います。確かに、そのような状況が実現できれば、これはもう経済財政運営というのはかなり景色が違ってくると思っております。多くの専門家によりますと、日本潜在成長力は二%から二%せいぜい強であるということでございまして、我々はそれを前提としております。  しかし、アメリカの場合、一般に言われているよりも潜在成長率が実は高くなったんだという事例がございます。これはやはり改革を更に加速することによって、そういう状況を是非私としては個人的には目指していきたい。そうしますと、委員指摘のように、日本経済景色もかなり変わったものになってくるというふうに考えております。
  10. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 今、竹中大臣言われましたように、アメリカ潜在成長率、思ったより高かったわけでございますね。日本も私はそれを目指すべきだというふうに思うわけでございます。  それで、今度は財務大臣にお聞きしたいわけでございますが、イタリア、これは一九九〇年代、非常に世界一の財政赤字、また公債残高比率が、GDP比率が高かったわけでございます。ところが、一九九九年に日本を逆転したといいますか、日本がそれを上回って世界一位になったわけでございますね、先進国の中では。一九九九年を境に逆転したわけでございます。  イタリアはどういう財政再建措置を講じたのか、そのことによって達成したのか、その辺りを財務大臣見解をお聞きしたいと思います。
  11. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 確かに、イタリア努力というのは我々もよく研究して学ぶべきところは学ばなければいけないと思っております。  おっしゃるように、一九八〇年代に大変イタリア財政赤字が拡大したわけですけれども、マーストリヒト条約、これ、九二年に参加を、加盟をして、これに、欧州通貨統合への参加を目指すことになったわけですから、そこで参加条件を満たさなきゃいけない、財政赤字の縮小をしなきゃいけない、政府債務削減をしなきゃならぬということになりまして、どういうことをやったかといいますと、一つは、新規歳出増要求に当たっては必ず財源確保を徹底しなきゃ、していなきゃその歳出増は認めない、それから社会保障制度改革に取り組んだ、それから増税もやった、それから脱税取締り強化、これは黄色い炎と呼ばれる財務警察脱税摘発を徹底化したということでありますけれども、こういう組合せで取組をしまして、この結果、長期金利の低下ということもあったわけですが、財政収支が九二年には対GDP比マイナス一〇・七%ありましたものが、九七年にはマイナス二・七%に改善をしたと。それから、それで、九九年通貨統合の基準はマイナス三%ですが、それをクリアしたということでありまして、イタリアではこういう組合せでいろんな努力をして目標を実現したということでございます。  委員がおっしゃいますように、我が国もこういう組合せでやらないとこれはとてもできないと思っておりますが、大きな方向は先ほどもお引きになりました骨太の方針に書いてございます。実務的に毎年毎年予算を組んでいくとなりますと、これは生き物でございますから、これはもう様々な仮定の要因を組み合わせてそういう道筋を作っているわけでありますけれども、何とかそれを実現したい、努力を惜しまずにやりたいと、こう思っております。
  12. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 大臣はお触れにならなかったわけでございますが、イタリアの場合、地方財政改革ですね、地方と国、中央との財政負担事務負担につきましても相当、南北問題がそもそもあるわけでございますから見直しをしたと思いますので、そのことも念頭に置いていただきたいと思います。  それで、三つ、先ほど申しました三つ方策のうち、要するに夜警国家になるわけにはならないとすれば、歳出削減はもちろん努力はしていかなきゃなりませんが、一定の必要な歳出確保をしていかなければならないと思うわけでございます。  そうしますと、我が国におきまして、増税、特に消費税増税という選択を迫られているんではないかと思うわけでございます。その場合には、まず西欧のように、食料品などの生活必需品は据え置くなどの複数税率、あるいは社会保障目的税とするなど、そういった増税選択、特に消費税増税選択ということを視野に入れて進まなければ、財政運営を進めていかなければならないと思うわけでございますが、財務大臣、いかがでしょうか。
  13. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) まず最初に申し上げなければいけませんのは、小泉総理は、自分の在任中は消費税に、消費税増税ということに手を付けないと、これは明言されておられて、そういう経済環境ではないという御判断ですが、議論はしてほしいと。  それで、先ほど竹中大臣の御答弁にもございましたけれども、二〇〇六年度までにいろいろな、どういう、夜警国家というわけにはいかない、どういう財政需要国民の間のニーズがあるかというようなこともよく見極めてそれからの税制改革を考えなきゃいかぬというときに、当然消費税は大きな選択肢になってくるわけで、それをどうすべきものか議論はしていかなきゃならない。昨年暮れの与党税制改正大綱でもそのような道筋を示していただきまして、もちろん政府としてまだ正式に決定したわけではございませんけれども、そのようなことを念頭に置いてこれから物を考えていく必要があるかと思っております。  そこで、複数税率化の問題ですけれども、これは例えば、国民のライフスタイルが多様化している中で一体、複数税率化していく場合に生活必需品税率を安くしろというような議論になってくると思うんですが、一体その生活必需品というのは一体何なのかというような範囲の問題、それから軽減税率の対象というものをどのように定めるべきかというのはなかなか難しい問題があるんじゃないかと思います。  それで、私は、理想は、理想はやはり、何というんでしょうか、税率一定というのが、一律というのが本当は理想ではないかと思っておりますけれども、まあ消費税率の水準が欧州諸国並みである二けた税率となったような場合には、これは軽減税率の採用というものは検討課題になってくると。これは政府税調でそういう議論もしていただいております。  この議論は、ですから、制度簡素化とか経済活動に対する中立性確保観点、これを強調しますと一律が望ましいわけでございますけれども、税率が高くなったときに今のような観点をどうしていくかというのはこれから議論をしていかなきゃならぬと、こう思っております。
  14. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 目的税につきましては。
  15. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) これも、私ども税を扱っている者としましては、できるだけ租税をどう扱っていくかというのは柔軟であるということが望ましいと思っておりますが、今後、特に税制で考えなければならないことは、一つは、三位一体による地方税源移譲をどういう形でしていくか。これは、念頭にありますのは所得税地方住民税にしていくということでありますけれども、それと同時に、年金国庫負担を三分の一から二分の一にしていくという問題でありますから、それをどう考えていくかというような問題がございますので、これはまたいろんな形で議論をさせていただかなきゃならないと思います。
  16. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 これからの財政健全化の道は非常に厳しい、険しい道ではあるわけでございますが、やはりそれに取り組んでいかなければ先ほど申しましたように経済の急速なグローバル化の中で円がねらわれると、あるいは国債がねらわれるということにもなりかねないわけでございますので、筋道を立てて検討していかなきゃならない。特に、増税問題につきましても、今申しました複数税率の問題を含めて、あるいは目的税の問題を含めて検討をしていただきたいと思うわけでございます。  次に、そうしますと歳出の中で増大が、顕著な伸びが予想される社会保障制度社会保障につきまして、統一的な社会保障制度を考えるべきだというふうに考えるわけでございます。  坂口大臣にお聞きしたいわけでございますが、現在、年金医療介護につきまして、それぞれ年度を変えながら五年ごと見直しをしているわけでございますが、私は、この際五年ごとに一斉に統一して見直すシステムとすべきではないかと考えるわけでございますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
  17. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 確かに社会保障の場合に、日本ではそれぞれ年度を変えまして御審議をいただいてお願いをしているわけでございます。しかし、今先生御指摘になりましたように、これを全体でトータルでやはり考えていかなきゃならないという御指摘は、私もそのとおりだというふうに思うんです。  ただ、今までの法体系上からいいますと、それぞれを国会で御審議をいただきますときに、三つ一緒になったら三つともなかなか進まないということもあったりいたしまして、一つ一つお願いをしているというような今までの経緯もあろうかというふうに思います。これは、法体系をどういうふうにしていくかということとも大きくかかわる問題だというふうに感じている次第でございます。
  18. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 正に法体系と絡んでくるわけでございます。  私は、大陸法体系という事情の下で、ドイツフランス社会保障関係法律を統一化した社会保障法典というものを制定しております。我が国も、中長期的課題としましてドイツフランスのような社会保障法典を制定し、その中で社会保障関係、先ほど言いました年金医療介護、さらには私は生活保護もこれは関連してくると思うわけでございますが、そうしたものを中長期的課題としまして社会保障法典のようなものを考えるべきではないかと思うわけでございますが、大臣見解はいかがでしょうか。
  19. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 現在のところは医療とか年金とか、介護最初から一律になっておりますが、特に医療年金などは、そのスタートの段階のところが、いわゆる地域で生まれましたものとそれから職域で生まれましたものと、そうした歴史的な背景もあるものでございますから、それをどう一元的に取り扱っていくかということに今まだ精力を割いている状況でございまして、いわゆる一本的にこれを、社会保障を一本的に考えるというところまでは至っていないわけでございます。しかし、御指摘いただきましたように、これからの全体の社会保障財源を考えていきます場合にも、全体としてやはり見ていかなければならないことは御指摘のとおりでございます。  法律上これを一元化するということは、私は、今御指摘になりましたように、フランスもやっておりますし、ドイツも長い時間を掛けてではございますけれども、ようやくそこに到着をしているというようなことがございますので、これは努力をすることによって可能だというふうに思いますが、法律としては可能でございますけれども、その中身をもう少し整理をしていくという努力が先に必要ではないかというふうに思っております。中身の努力をどういうふうに積み重ねていって、最終的に先生が御指摘になりますような全体としての法典としてやっていけるという体制にできるかどうかということになってくるのではないかというふうに思っている次第でございます。
  20. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 その点でいえば、正に今大臣の言われたような取組方だろうと思います。  その点からいえば、今言いましたように、介護の方は一元化されているわけでございますが、年金の方は国民年金、厚生年金、また各種共済組合があると、また医療も健康保険法、健保組合とそれから国民保険とあるということで、この年金医療の世界をまず一元化していかなければならないと思うわけでございますが、その点についての見解はいかがでしょうか。
  21. 坂口力

    国務大臣坂口力君) そこは御指摘のとおりでありまして、医療の方、今一元化の方向に向けて、いわゆる組合健保、政管健保そして地域における国保、これらの統合化を今進めているところでございますが、それぞれで、今までの立て分けになりましたものを統合化、今している段階でありまして、その垣根を越えて更に統合化していくというところまでまだ至っておりません。しかし、その辺はもう視野に入れなければならないときに来ているというふうに思っているところでございます。  年金につきましては、今御審議をいただくことでいろいろ御提案申し上げているところでございますが、これにつきましても、過去の経緯をどう踏まえて今後進めていくかということだろうというふうに思っております。
  22. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 正に年金の一元化というのは、もう十年ぐらい前から内閣に対策検討本部を作ってやっているわけでございますが、遅々として進まないわけでございますね。お互いのエゴもあるでしょう。財政健全な間はできるだけ自前でやりたいと。しかし、悪化の兆しが見えると厚生年金と一緒にしてくれというような、それが今までの例ではなかったかと思いますが、これはしかし避けては通れないと思いますので、是非年金一元化、医療一元化に取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  次に、国民年金の件でございます。  我が国国民年金ということで、そういう建前といいますか、そういう制度で設計されているわけでございますが、国民年金の場合、四割が保険料未納という実態があるわけでございます。  欧米諸国の例を見ますと、一定の低所得者ないし失業者は任意としているわけでございます。要するに、強制加入ではなくて、一定の所得、低所得者等は任意となっているわけでございます。そうした場合、非加入者に対しましては給付の時点高齢者になった段階で、必要ならばもう生活保護というような形でもって国の税金で見るというそういうスキームになっているわけでございますが、日本の場合もこの四割の未納ということを考えますと、一定の低所得者等につきましては任意という制度設計を考えるべきではないかと思うわけでございますが、いかがお考えでしょうか。坂口大臣お願いします。
  23. 坂口力

    国務大臣坂口力君) ここはまあ各国それぞれ知恵を絞っているところでございますが、割り切り方の問題だと思うわけでございまして、日本の場合には全部入っていただいて、そして所得の少ない人、無業者その他払えない人に対しましては免除制度を作っている。国によりましては、そこをもう最初からそういう人たちは制度の中に入れないというそういう行き方をしている。それぞれ私は一長一短あるというふうに思いますが、日本の今までの経緯からいえば、全体入っていただいて、そしてできる限りやはり御自身で自助努力をしていただく、自助努力を促するという意味からは、是非入っていただいて、そうなるように努力をしていただくということを、制度を作っておいた方がいいのではないかというふうで、今迎えているというふうに思っております。  ただし、現実はそうもいかない面も率直に言ってあるわけでございますから、今後この制度改正を行いますときに、そうしたことも視野に入れながら、しかし現在までの行き方というものの、十分これで行けるかどうかということの見定めもしていかなければいけない。私は今のところ、その確かに掛けない人もおりますけれども、掛金をしない人もおりますけれども、そこは自助努力を促するということをまず中心にして考えていくべきだというふうに思っております。
  24. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 制度改正、大幅な改正をする際には是非検討課題一つに入れていただきたいと思うわけでございます。  社会保障の世界、特に医療介護の世界におきましては、私はできるだけ市場メカニズムを活用すべきではないかと思うわけでございます。特に介護等につきまして、今現在は補助金付きの特養老人ホームが中心でございますけれども、それに限らず、補助金なしでも特養老人ホームを作る、あるいはその現在の有料老人ホームに介護施設を付設する、またこの特養の入所者の負担を引き上げるなど、市場メカニズムを一層活用していかなければならない。そのことによって需要に対して供給を確保すると同時に、価格を競争によって下げていくことが必要だと思うわけでございますが、大臣見解いかがでしょうか。
  25. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 今御指摘をいただいたような方針、方式を取っておりますのが介護付きの有料老人ホームでございます。これは、自らお作りをいただいて、そしてそれに対しまして自由に入居料等を設定していただくという方針を取っているわけでございます。介護老人ホームの方は、その入っていただきます皆さん方の支払の内容等につきまして細かく決めているということがございまして、そういう状況を続けていくということになりますと、やはり特養を作りますときにも一定の補助をして、そしていくということをやらないと、そこがなかなか成り立たないということになってくるだろうと思うんです。  ですから、もし仮に、先生が御指摘になりますように、特養もそういう方針で、建築はそれぞれ自分でやってほしいというふうにいたしますと、そうすると、そこに今度入居する人の今度は入居料その他をそれじゃ自由にできるかという話になってくるということだというふうに思いますので、その辺の割り切りがなかなか難しいということではないかというふうに思っておりますが、介護付きの有料老人ホーム等につきましてはそういう方式も導入しておるということでございます。
  26. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 そうしますと、現在でも補助金なしで特養老人ホームを作るということは、これは制度上認められているということで理解してよろしいわけでしょうか。
  27. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 有料付きの、介護付きの有料老人ホームにおきましては、市場メカニズムを生かしているということでございます。
  28. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 いや、特養老人ホームを補助金なしで作れるかという御質問なんですが。
  29. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 先ほど申しましたとおり、これは、そういたしますと、その中に入居する人たちのいわゆる個人がどれだけ負担をしなきゃならないかということとかかわってくる話になるものでございますから、今のところはそこまではなかなか踏み切れない。その辺を考えますと、どうしても特養につきまして、ほかの有料老人ホームと同じような調子には今のところいきにくいというふうに思っております。  もしも先生がおっしゃるように、それは自由にもう建設はやってくださいということにするということになれば、そうすると今度はそこに入る人たちの補助金を、補助率を上げると申しますか、そういうことをやらないとこれはなかなかやっていけないということになるんではないかというふうに思います。だから、建設のときにお手伝いをするか、建設は御自身でやっていただいて、今度はその中に入る人たちのところでアップをするかという話になってくるのではないかというふうに思います。
  30. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 しかし、私は、今の待ち状況、特養等の今の待機状況等を考えますと、補助金なしで特養ができる、私はたしか補助金なしでもできるというふうに聞いているんですが、どうですか、大臣
  31. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 済みません。  現在も、やろうと思えばできるわけでございます。御自身でお建てをいただくということは、それは可能でございますが、先ほども申しましたように、そこにお入りになる皆さん方の入居料その他が制限されているものでございますからなかなかやれないということになって、現在のところそういうのがないということになっておると。
  32. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 しかし、待機状況等考えて、そういった面につきまして市場メカニズムの導入によります需給バランスを取っていくということも是非考えていっていただきたいと思います。  私から坂口厚生労働大臣への質問は以上でございます。委員長がよろしければ、坂口大臣には御退席いただいて結構でございます。
  33. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) それじゃ、ああいうことでございますから、どうぞ。
  34. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 次に、金融問題に移りたいと思います。  まず、骨太方針、二年後に不良債権処理を半減するということでございますけれども、その状況につきましてお伺いしたいと思います。
  35. 五味廣文

    政府参考人(五味廣文君) 主要行におきましては、十七年の三月期におきまして不良債権比率をほぼ四%台、すなわち金融再生プログラムが策定されましたころの半分程度へ低下をさせるという目標がございます。  状況を見ますと、十五年九月期の主要行の金融再生法開示債権、不良債権でございますが、これは十七・五兆円となっております。直前の十五年三月期末が二十・二兆円でございましたので、約二・八兆円の減少ということでございます。その結果、不良債権比率は六・五%になっております。十五年三月期からは〇・七%ポイントの低下ということでございますので、金融再生プログラムにおける目標達成に向けて着実な進捗を見せております。
  36. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 確かに、株価の回復等によりまして、あるいは経済の製造業を中心とした回復を背景にいたしまして不良債権処理は進んでいると思うわけでございます。  しかし、貸出し状況が非常に落ちている。例えば、国内銀行で見ますと、九七年の十二月の五百十四兆円から、二〇〇三年の十二月は四百十兆円ということで、百兆円も残高、貸出し残高が落ちているわけでございます。これは中小の場合にも同様でございます。  こうした貸出し残高の減、貸出し状況についてどういうふうに判断しているか、お聞きしたいと思います。
  37. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 伊藤内閣府副大臣
  38. 五味廣文

    政府参考人(五味廣文君) 済みません。
  39. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 立たないで手を挙げないでくださいよ。はい、五味局長。挙げたり下げたりされちゃかなわぬ。
  40. 五味廣文

    政府参考人(五味廣文君) 申し訳ございません。  各業態の貸出しの状況の数字を御紹介を申し上げますが、いずれも御指摘のように減少の傾向にございます。  大手行でございますと、十四年三月期末が二百一兆円でございましたのが、十五年九月末では百九十二兆円。地域銀行は、十四年三月末百七十八兆円に対して、十五年九月末百七十四兆円。また、信用金庫、信用組合合計でございますが、十四年三月末七十六兆円に対しまして、十五年三月末は七十二兆円ということで、減少の傾向にございます。
  41. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 その、だから、要因は何かということをお聞きしているわけですが。
  42. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 大丈夫ですか、伊藤内閣府副大臣
  43. 伊藤達也

    ○副大臣(伊藤達也君) 貸出金が減少している要因でありますけれども、その貸出し先である企業の資金需要の低迷のほかに、例えば金融機関のリスク対応能力が低下しているなど、様々な要素があるというふうに考えております。  この貸出金の推移を見てみますと、一九八〇年代は、GDP比で見ますと大体七〇%台で安定してきたわけであります。しかし、このバブル期を迎えて、このGDP比で見ますと、それが一〇〇%を超えるまでぐうっと上がってきている。そして、バブルが崩壊をして、債務者からすれば過剰債務問題、金融機関からすれば不良債権問題という大変厳しい問題に直面をして、そして、こうした状況を解決するためのその調整をしていかなければいけなくなってしまった。現在はいろいろな努力によってそのGDP比で見ますと大体八五%ぐらいまで下がってきているわけでありますが、引き続き厳しい現状は続いているというふうに思っております。  そこで問題なのは、債務者からすると一生懸命この借金を返していくわけでありますが、一方で様々な資金需要が出てきているわけであります。その資金需要にこたえていくことができるのかどうか、あるいは潜在的な資金需要を開拓していくことができるかどうか、そうしたことが問われているわけであります。  バブル期においては、ともすれば銀行は、担保至上主義といいますか、そうしたものに陥ってしまっていて、やはり自らの融資審査能力というものが低下してしまっていると。その中で、過度に担保や保証に依存をしないで自らの目利きの能力というものを上げて、あるいは中小企業に対する融資のノウハウというものを充実をして、積極的に融資をしていく、そうした試みが今強く求められているところでございまして、私どもとしてはそうした取組を促進していくために積極的にこれからも対応していきたいと考えているところです。
  44. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 今言われましたように、金融機関がリスクを取らなくなったと、バブル崩壊の中で、不良債権処理に追われたということでございます。したがって、金融機関がリスクを取って貸付けができるように、金融機関の判断を最大限尊重する検査マニュアルとすべきではないかと思うわけでございます。  中小金融機関では、現在、五千万までは銀行、金融機関の判断を尊重するという検査マニュアルになっているわけでございます。私は、それを勘案すれば、大手の場合には、例えば五億円までは銀行の判断を、金融機関の、銀行の判断を尊重するといったような検査マニュアルに改正すべきだと思うわけでございますが、これについてはいかがですか。
  45. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員指摘のように、できるだけ銀行が判断できるようにしなければいけないと、そういう環境を作っていくというのは一般論としてはやはり大事なことだと思っております。  今の状況でありますけれども、その抽出基準であります、マニュアルにおける、検査における抽出基準でありますけれども、資産内容に特に問題がなく前回の検査の結果が良好であると認める場合は、与信額が二千万円又は資本の部の合計の一%のいずれか小さい額未満の債務者については自己査定結果の正確性の検証を省略することができるというふうにしていたわけでありますけれども、今回の改定に合わせて抽出基準を五千万円に引き上げたところでございます。  リスクをどのように見ていったらよいかということで、そこら辺はやはりかなり現実的な判断をしていかざるを得ないのであろうというふうに思っております。ただ、現実問題として、中小の機関でありますと、五千万円という基準になりますと対象が五〇%ぐらいになってしまう、ないしは場合には切ってしまうという事実もございます。  そうした観点から、我々としては現実的に判断して、今の基準で当面しっかりと様子を見ていきたいというふうに思っているところでございます。
  46. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 次に、是非この検査マニュアルの改正につきましては、大手の場合は五億円ということも検討していただきたいと思うわけでございます。  次に、新生銀行の問題の経緯及び現状についてお聞きしたいと思います。  結果的には、リップルウッドは千二百億円の投資で、含み益も入れれば約一兆円の利益を得ているわけでございます。私は、この旧長銀の売却方法について問題があったのではないかと思うわけでございますが、これについてはいかがでしょうか。
  47. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 旧長銀の問題についていろんな御議論をいただいているということは、我々も承知しているところでございます。  しかし、経緯についてやはり振り返りますと、この平成十年当時、国会で様々な議論が行われまして、その上で与野党合意を踏まえて金融再生法が成立して、それで同年十月、この施行に伴いまして特別公的管理の開始決定を行ったというふうに承知をしております。  当然のことながら、その際には金融再生委員会で、公的負担はやはり極小化しなければいけない、金融システムは安定化しなければいけない、大変限られた状況で、しかも時間が区切られていて、そんなに数が多くない持ち手の中での選択をしなければいけなかった。当時の再生委員会としても大変難しい御選択であったというふうに思いますが、その中で最善を尽くしたものであるというふうに認識をしております。
  48. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 確かに、竹中大臣の在任中ではないわけでございますので、責めるわけにはいかないわけでございます。しかし、旧長銀に全部で八兆円を国庫から、預金保険機構を通じてでございますけれども、出しているわけですね。旧日債銀には約五兆円を出しているわけでございます、トータルといたしまして。八兆円、五兆円でございます。  私は、その際の判断として預金は保護する、しかし銀行業務は廃業するという決断をしておれば、それぞれその段階では、八兆円が旧長銀につきましては三・七兆円で終わった、資金援助で済んだはずです。また、旧日債銀の場合には五兆円の投入に対しまして三・三兆円の資金援助で済んだはずでございますが、それについては、確かに竹中大臣の在任中でないわけでございますが、今から振り返ってどういうふうに考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  49. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) こういう大きな政策選択でございますから、やはり十年とかそのぐらいの期間を経て専門家によってこれはしっかりと検証されなければいけない重大な政策決定であったというふうに思っております。  ただ、今委員指摘のように、いわゆる特別公的管理ではなくて、いわゆる清算してしまっていた方が安かったのではないだろうかと、そういう御指摘だと思います。  これについてはいろんな御意見があろうかと思いますが、その場合は、言わば、健全なそこにいる借入れを行っている企業等々が、その扱いがどのようになっていたのか、そういうことで企業が影響を受けないようにする必要があるのではないかということで、正に与野党合意の下で、当時、そういう清算型ではなくて、国有管理、国有にして、それで受皿を探すという、そういう特別公的管理が必要であるという当時のやはりそれなりのコンセンサスがあったのではないかというふうに考えております。  繰り返し申し上げますが、長い評価をこれ、していただかなきゃいけない問題ではございますけれども、当時としては清算、これだけ大きな企業を、銀行を清算して混乱させてはいけないと、借り手を保護しなければいけないというやはり強い意識があったものというふうに拝察をしております。
  50. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 しかし、私は、今から振り返れば、その時点で八兆円なり五兆円という大量な資金を贈与する等の措置に代えて、廃業、清算ということも当然視野に入れた検討をすべきであったというふうに考えるわけでございます。しかし、それは大臣の任期中じゃなかったので、それは更に追及するわけにはまいりませんが、しかし、これからは大臣の任期中の問題でございます。  この新生銀行は再上場したわけでございます。私は、その際に、佐々波委員会で注入した分は早く普通株に転換をして、再上場時、新生銀行の再上場時に同時に売り出すべきじゃなかったかと。それでまた、金融安定化法で資本注入した部分につきましても、乙種につきましても早急に普通株化いたしまして売り出す、そのことによって元を早く取るべきだと思うわけでございますが、それについての見解はいかがですか。
  51. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員の御指摘も理解できる面はあるというふうに思っております。普通株に転換して、それで売ってしまってということだと思います。  ただ、契約書には、やはりその当時、国庫として負担した分について幾らかということを踏まえまして、やはりある程度、株、市場価値が上がって、その上でそれを回収するということが想定されているのだと思っております。  そういう意味では、これは資金援助した分、更には含み益として渡した分、これは五千億、約五千億でございますけれども、そういうふうに価値が上昇した場合には先方からも買取りの要求ができるという契約になっているわけでございますけれども、そういう状況にはまだ至っていないと。国民負担を少なくするためにも、その意味では契約書の精神にのっとって対応していくのがやはり適切であろうというふうに考えております。
  52. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 私は、その契約書も問題なきにしもあらずと思うわけでございますが、しかし、契約がある以上、それに従わざるを得ないというのは分かるわけでございますが、しかし、できるだけ早く普通株に転換をして売却するということを、そのことによって元をできるだけ早く取るように努力していただきたいと思うわけでございます。  また、あおぞら銀行についても同様な事態の進展が予想されるわけでございます。その際には、この新生銀行の轍を踏まないように普通株式化、また早期の売出しということを考えていただきたいと思いますが、いかがですか。
  53. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) これは、個別行の今後のことでございますので、具体的にはちょっとお答えしかねるわけでございますけれども、このあおぞら銀行の政府保有株式についても、新生と同様に旧日債銀譲渡に係る最終契約において規定がされております。  簡単に言いますと、おおむね政府が投入した三千五百五十億円の収入を確保する趣旨の条項が織り込まれております。そうした意味で、普通株転換後の時価総額が三千五百五十億円を超えていない状況においては優先株を普通株に転換して売却するということは、この契約ではやはり想定されていないということだと思います。  いずれにしましても、まだ今後の問題でございますので、この条項にのっとりながら、市場の状況、それと銀行の経営状況等を見ながらしっかりと判断して適切に対応してまいりたいと思っております。
  54. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 要するに、外資にいいように操られているという印象を持っております。そういうことのないようにしっかり運用して対応していただきたいと思います。  次に、中川大臣にお聞きしたいわけでございますが、先日、日墨FTAが締結されたわけでございます。その評価と、私は、これからASEANとやるわけでございますが、農業あるいは農産物、あるいは労働力移動など、センシティブな分野があるわけでございます。それらはバイの交渉によって相互に配慮しながら解決し得るというのが日墨のFTAにしましても、正にFTAのいいところだと思うわけでございます。そのことが早急にFTAを結ぶ近道だと考えるわけでございますが、その点につきまして大臣見解をお聞きしたいと思います。
  55. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、福島委員指摘のように、先週、日墨の閣僚間で、FTAという言葉が一般的でございますけれども、トレードよりももっと広い分野なので、私は、努めてEPA、エコノミック・パートナーシップ・アグリーメントという言い方をしているわけでございますが、貿易のみならず投資あるいは政府調達あるいはルール、二国間協力、幅広い分野で閣僚間の合意ができたということは、これは日本の国益のみならず二国間にとっても非常に大きな意味があることだろうというふうに思っております。  何といいましても、世界で百九十を超えると言われておるEPA、FTAがあるわけでございますが、日本にとりましては、シンガポールが二年前スタートいたしましたけれども、実質的、包括的な意味では初めてのEPAでございますし、相手のメキシコが世界で十番目の経済力を持った非常にある意味では大きな国であり、御承知のようにNAFTAあるいはEU等、三十二の国・地域とFTA、EPAを持っておるということでございますから、これはいわゆるお互いにどっちが勝ったとか負けたとか、損した得したではなくて、いわゆるウイン・ウインの関係で、一足す一が五にも十にもなるような形でこれが実行に移され、そして発展をしていくということの意味は非常に大きいというふうに思っております。  そしてまた、現在、東アジアの四か国と正式交渉をやっておりますけれども、これもそれぞれ相手の国々が違うわけでございますから交渉の中身は少しずつ違うわけでございますけれども、センシティブな品目として今御指摘になりました農業分野あるいはまた人の移動の問題、実は私どものところにもセンシティブ分野があったわけでございますけれども、そういうものをじっくりと、守るべきは守り、そして譲るべきは譲って、獲得すべきは獲得してやっていくことが我が国の国益にとって、単に経済的な利益のみならず広い意味でメリットがある。  他方、WTOというマルチのものもございますけれども、こういう二国間が世界の大きな一つの流れにもなっておりますので、両々相まちましてこういう形で貿易立国としての日本の立場を更に強化していきたいというふうに思っております。
  56. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 それで、これから日本経済活性化のための方策につきまして論議してまいりたいわけでございますが、まず竹中大臣にお聞きしたいわけでございますが、今の経済の実態は引き続きデフレであるとの認識であるのか、また、大臣は、デフレは貨幣的現象だと従来から発言しておられるわけでございますが、今もそう考えておられるのか、その二点をお聞きしたいと思います。
  57. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 日本経済は引き続き緩やかなデフレの中にあると思っております。  デフレはすべてが貨幣的現象であるとは申しませんが、実物経済によって影響される面もあるし、やはり貨幣によって影響される面も両方ある、これは両面あるということを認識すべきだと思っております。
  58. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 同じ質問を福井日銀総裁にお聞きしたいと思います。
  59. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) お答え申し上げます。  日本の物価、特に消費者物価指数を見ておりますと下落幅が少しずつ緩やかになってきておりますが、でも緩やかな下落が続いていると、デフレの状況が続いているというふうに認識しております。  デフレには様々な要因がやっぱり作用していると思います。国内の要因だけでなくて、今世界的に景気が良くなっても、最終段階の物価、消費者物価指数はどこの国を見てもやはり弱含みになっていると。こういった影響も日本に当然及んでいると思いますが、やはり基本的な原因は、日本経済が長期の停滞を続けました結果、経済がなおかなりの需給ギャップを抱え続けていると、ここにいわゆる基本的な理由があるというふうに思っています。
  60. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 なかなかデフレから脱却できないわけでございますね。緩やかなとはいっても、バブル崩壊後デフレに陥ってなかなかデフレから脱却できない。また、仮に今の景気回復が本格化してくれば、逆にこの物価の目標をどこに置くかという議論も出てくるわけでございます。  そこで、私は年来主張しているわけでございますが、物価安定数値目標を設定すべきじゃないかというふうに考えるわけでございますが、まず、竹中大臣にこの物価安定数値目標の設定につきましての考えをお聞きしたいと思います。
  61. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 私は、日本銀行は独立して政策手段を選ぶという、その立場を尊重することは大事だと思っております。ただし、政策の目標はやはり共有していただく必要があると思っております。その点に関しては、デフレを克服するということは共有していただいているというふうに思っております。  具体的に、そのためには、需給ギャップを減らすという福井総裁のお話がありましたが、需給ギャップが減って同時にマネーサプライが増えると、そういう状況がなければ、需給ギャップだけでデフレは克服できないというふうに考えております。その意味では、マネーサプライがやはり増える状況は作っていかなければいけない。これにも政府、日銀の協力が必要だと思っております。  具体的にそれをどのような状況で実現するか、その中の一つに物価目標という一つのやり方もありますが、これについては、政策選択の独立性ということで日本銀行の方で責任を持ってお考えいただく問題であると思っております。
  62. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 福井日銀総裁、いかがですか、物価安定数値目標の設定につきましての御見解
  63. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) お答え申し上げます。  日本経済が望ましい均衡の姿に向かって円滑に成長していくというふうな過程に入りますれば、中央銀行として目指すべき、何といいますか、均衡の取れた物価水準はどんなものかというものを明示的に示すかあるいは明示的に示さないかは別にして、それを意識しながら金融政策をやっていくということは非常に重要な状況になってくるというふうに思います。  各国の中央銀行を見ましても、それを暗黙のうちに持っている中央銀行と、委員おっしゃいましたとおり、明示的なターゲットとして持っている中央銀行と、これは経済情勢とか中央銀行の戦略の違いによって出てくるわけでございますが、ともあれ日本経済は、私どもの認識ではそうした正常な認定ができる段階にまだ至っていない。取りあえず私どもは、消費者物価の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になるまでと、もう少し手前のところに明確な目標を持って、わき目も振らずそこ前進しようと。言ってみれば、一つの通過点としての物価安定目標と言ってもいいと思います。あくまでも通過点でございますが、そういう二段論法で我々はやっているということでございます。
  64. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 二段論法、取りあえずゼロと、それから更なる数値目標ということを御答弁あったわけでございます。私は、確かに西欧諸国あるいは主要な国を、先進国を見ましても、大部分の国、相当数の国は物価安定数値目標を定めておりますので、是非、私は日銀に検討していただきたいと思うわけでございます。  それで、先ほど竹中大臣も言われたわけでございますが、通貨供給量の増大が重要でございます。実物経済と併せまして通貨供給量の増大が重要でございます。マネーサプライはアメリカでは四・一%、これは下がったといっても四・一%、二月ですね。ところが、日本は一・七%と低いわけでございます。ハバード前アメリカ経済諮問委員長日本の通貨供給量が低いと言っているわけでございますが、この増大方策、増大をさせるべきだと考えますが、日銀総裁、いかがでしょうか。
  65. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 委員指摘のとおり、私どもも、金融緩和政策を実行し、その効果を懸命になって上げようとしている以上、最終的にはやはり望ましいマネーサプライの増加率を実現したいと、この点に全く不一致はございません。  ただ現状は、日本経済は非常に錯綜した姿になっている。つまり、企業は引き続きダウンサイジングといいますか、リストラをやりながら、しかし同時に新しい投資の機会を求めて、つまり後ろ向き、前向き、両方の視点で今努力中と。デフレ脱却あるいは持続的な経済成長のパスへの到達という視点からは、企業のこの両面の努力、後ろ向きのリストラと前向きに新しいビジネス機会を見付ける、この両方とも必要で、金融緩和政策は実はこの両方の努力をバックアップしていると。後ろ向きの努力、これは過去の過剰な借金を返すと。前向きの努力は、この新しい時代ですから、いきなり新規の借金をするというんではなくて、リストラによってキャッシュフローが生まれれば、まずはそのキャッシュフローの範囲内で投資を始める、こういうふうにステップを踏んでおりますものですから、実際に金融緩和がマネーサプライの増加につながるまでにはもう少し時間が掛かると、ここのところは我々も十分正確に事態の推移を認識しながら金融緩和の浸透度合いをウオッチしているということでございます。  日本に限られた現象ではありませんで、アメリカでも、日本よりはマネーサプライ伸び率の水準は高いんですけれども、最近、マネーサプライの伸び率が下がっているということが問題になっております。あれほど景気が良くて、そして企業の活動も日本よりは活発でございます。そして、連銀はペーシェント、我慢強く緩和している、でもマネーサプライの伸び率は下がっている。  なぜか。明確な答えがあります。アメリカといえども、これだけ国際的に厳しい競争社会になったら、企業は、やはり一方でダウンサイジングをやりながら、しかし同時に新しい投資機会を求めている、過去の不必要な借金は懸命になっている、返しているという点では、日本と同じ現象が起こっています。そのことは連銀の分析と日本銀行の分析とが明確に一致している点でございます。
  66. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 しかし、レベルが違うわけでございますね。マネーサプライの水準が日本は低いわけでございまして、この辺り、これから設備投資が製造業から徐々に非製造業に及びつつあるという認識を踏まえれば、是非金融緩和、資金供給策を考えて実行していただきたいと思うわけでございます。  それで、その次に、私はもう一つの問題としまして、為替レートの問題でございます。ドル安を是正して円安に持っていかなきゃいけないと思うわけでございます。  その際に、ユーロと連携をして為替介入、為替安定を図っていくということ、また介入資金につきまして非不胎化政策を引き続き実行すべきだと思うわけでございますが、財務大臣見解はいかがですか。
  67. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 委員は円安の方に誘導すべきだとおっしゃいましたけれども、私どものやっております為替介入の目的は、市場の思惑的なあるいは投機的な乱高下、こういうものを是正していくというのが主な目的でございまして、主な目的というか、それを目的としているわけでございまして、円安に誘導しようというようなことを考えているわけではありません。
  68. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 ドル安防止。
  69. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) そういうことでございます。  それで、昨年度は確かに大量の介入になっておりますけれども、アメリカの双子の赤字等に対する懸念が地政学的要因などと相まちまして過度に強調された面が昨年はあって、それが市場の不規則な動きに連なった面がありましてこういう形になっております。  それから、ヨーロッパと協調介入すべきではないかということになりますと、これは、私どもは必要なときには介入をする姿勢を持っておりますけれども、どういうときにどういう形で介入をするかということについては、これはコメントしますと市場にいろんな予断を与えますので、私どもはそれは申し上げない。ただ、通貨当局間での緊密な情報連絡とか意見交換というのは常にいたしているところでございます。  それから、不胎化の問題につきましては、これはもう日銀の専管でございますので、私からはコメントを差し控えさせていただきます。
  70. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 財務大臣としてなかなか公式的な見解言えないのは分かるわけでございますが、ユーロ、連携をしてドル安防止、是非徹底していただきたいと思うわけでございます。  それで、景気が回復してきますと、特に既発債を中心に国債価格の暴落が懸念されるわけでございます。で、国債管理政策につきまして、例えばアメリカのように非市場性の国債を発行して公的年金であるとかあるいは簡保であるとかあるいは生保に購入してもらうという方式が、これは一つでございます。  また、日本では個人の国債保有が少ないわけでございます。アメリカの六分の一ぐらいでございます。個人が国債を一層購入しやすいように、変動金利なりあるいは税制で優遇するという方式が二番目でございます。  それから三番目には、更に暴落が懸念された場合には、一九三〇年代、アメリカの連銀がやりましたように、長期金利国債の売買によってコントロールする方式もあります。  さらには、暴落局面では、既発国債を新規国債と交換する、あるいは日銀が額面で購入するなどの方式を、多様な方式を検討しておかなければならないと思うわけでございますが、財務大臣及び日銀総裁の見解をお聞きしたいと思います。
  71. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) この委員会で委員から暴落の懸念、暴落の懸念とこうおっしゃられますと、ぎくっとこういたすわけでございますが、確かにこれだけたくさん国債を発行しておりますと、国債長期金利がどうなるのかということは常に私ども注視をしておかなければいけないことだと思います。そして、やはり国債の管理政策というものをきちっとしなければいけないということはもう御指摘のとおりだと思います。  その一番の根本は、国債に対する信認を確保するということ。これは、基本は財政規律に対して政府がやはり確固たる姿勢を持って臨んでいるということが私は根本ではないかと思っておりますが、それは、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復するという先ほど御指摘になったのが一番基本的な姿勢でございます。  それで、昨年、いろいろ研究をいたしまして、国債の管理政策についてレポートをまとめまして、それにのっとりまして、中長期的に国債を消化するコストを下げながら安定的に消化をしていくと。いろんなことを考えておりまして、一番は、やはりニーズに合った国債を、市場のニーズをよく研究するということではないかと思いますし、それから、市場のインフラを、環境を整備していくということではないかと思いますが、さらには、それを超えまして、委員のおっしゃったような非市場性の国債の問題であるとか、そういうようなこともいろいろ勉強しなければならない課題ではないかと思っております。
  72. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 国債の発行残高が既に相当累増している、そして今後とも更に累増していく可能性が感じられるというふうな状況の下では、マーケットの期待の安定化を常に図りながら金融政策を円滑に進めていくということは大変な負担を我々はやっぱり感じております。感じておりますが、しかし、その負担を感じながらも、結果はやはり市場の期待の安定化が十分保たれるように最大限の努力をしていかなければならないと思っております。  いろいろな前提条件があると思いますが、まず第一は、今大臣がお答えいただきまして大変心強く感じました。発行者である国が財政規律を保っていただく、これは基本でありますし、同時に、発行者がやはり投資家のニーズを十分お酌み取りいただいて、それにふさわしい発行の形態というものを常に考えていただくということが大前提だと思いますが、我々、マーケットの中で仕事をする立場から申しますと、国債の流通市場の流動性をいつも高くするように市場のインフラを整備していくと、地道でありますけれども、これが大事なことだと思います。  そして、私ども日本銀行として一番重要に考えておりますことは、これからの日本経済が本当に活力を持って国際的な競争に打ち勝っていくための条件というのは、やはり市場のルールをきちんと守る、そして市場の規律を尊重するということだと思います。  したがいまして、国債につきまして、今せっかくの委員の御指摘でございますけれども、額面で日本銀行がこれを買い取るというふうな措置には、やはりこれは決して踏み切るべき事柄ではないんではないかと私どもはやっぱり考えております。あくまで、何と申しますか、きめ細かな市場調節と、そして我々の経済の見通し、物価の見通しに対する的確な判断、そしてそれをメッセージとして市場に流すことによって市場参加者との間の呼吸をぴたっと合わせていくと、大変難しい業なんでございますが、このことを拳々服膺しながら粘り強くやっていく以外に道はないというふうに考えております。
  73. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 国債の信認、それが大前提だと、財政健全化は冒頭申し上げたわけでございます。また、きめ細かい管理と同時に、やっぱり新しいニーズもあるわけでございますから、国債に対しまして、発行条件等もいろいろ多様性を考えて追求していっていただきたいと思うわけでございます。  次に、地域活性化地域再生についてお聞きしたいわけでございますが、現在の地域再生策は特区とよく似ているわけでございますね、構造特区と。かつ、助成策は、新規の補助金は出さないということでございますが、そうであれば、私は、金融、政策金融を中心に、金融を中心に据え、それに地域再生債というものを考え、かつ、既存の補助金、例えばまちづくり交付金千六百億でございますけれども、それらを非公共事業にも使えるようにするなど、この助成策の検討をすべきだと思うわけでございますが、金子大臣、いかがでしょうか。
  74. 金子一義

    国務大臣(金子一義君) 御指摘のとおり、今度の地域再生の中で、政策金融をその地域再生プログラムの中に入れさせていただく。  それから、まちづくり交付金は、国土交通省、予算は所管でありますけれども、この地域再生、これ、私たちは予算ありきではありませんけれども、しかし地域でいろいろな要望が出てくる、アイデアが出てくる、そういう中で、これを私たちも省庁連携で取り込ませていただいて使わせていただくと。  あるいは、中小企業再生ファンド、これは通産、経産省の所管でありますけれども、このプログラムの中で、必要な地域、出てきた、彼らがこれをやりたいという中で、必要があればそれをプログラム、使わせていただくという、プログラムの中に取り込ませていただくという、幅広い省庁連携は今度のプログラムの中で作らせていただいております。
  75. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 是非、地域再生、私は、緒に就いたばっかりだという事情はありますけれども、非常に関心も低い、自治体のですね。是非CD—ROMも約束どおり配っていただいて、是非活用、立派な政策の柱となるようにしていただきたいと思います。  時間の関係で、次に、環境税に移りたいと思うわけでございますが、今の環境税の検討状況、特に水準と使途についてどういうふうに考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  76. 小池百合子

    国務大臣小池百合子君) 温暖化対策ということで、国民の皆様方に、電灯の小まめにつけ消しをするというような道義的な部分だけではなくて、この環境税という、環境税を導入することによって、省エネ製品の購入、そして省エネ投資がうまく回っていくというような期待があるわけでございます。そしてまた、環境税というのはそもそも家庭そして運輸部門を含みますすべての対象に係るわけでございますので、対策へのかかわりの効果が非常に広いというポイントがあるわけでございます。  今年、温暖化対策全体の評価見直しをいたしますので、その結果として環境税の導入が必要だということに備えまして、現在、中央環境審議会で温暖化対策税制とそれに関する施策とを総合的に今御議論をいただいているところでございますけれども、まずは、この税という問題でございますので、国民各層、幅広く議論をまず重ねていただくというのが基本的なスタンスでございます。  そして、今どういう水準でということでございますけれども、今、中央環境審議会温暖化対策税制専門委員会、こちらで報告書をおまとめいただいているということに指針が記してございますので、それを御紹介させていただこうと思いますが、その温暖化対策にどのようにしてこの環境税を使っていくのかということですが、世の中の納得を得られる透明な使い方、透明性、それから効率的で確実に排出削減につながるような対策に充てるということで効果が高いということ、そして日本経済活性化、国際競争力の強化の同時達成に寄与するということなど、こういったことをポイントにこれからの税制、税収の充て方などについて考えていきたいと思っております。
  77. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 今審議会で検討されております水準、CO2トン当たり三千円ないし三千四百円というのが出ているようでございます。それによる税収約一兆円弱ということでございます。GDP比が〇・二%ということでございますが、諸外国と比較した場合は低いというような指摘もあります。  しかし、この使途につきまして私、水準と使途を更に検討しなければならないわけでございますけれども、基本的には目的税とすべきだと。その場合、現行の石油エネルギー特会を活用した管理をするということ、また使途につきましては、CO2を吸収する森林であるとかあるいは再生可能なバイオマス等のエネルギー開発等の新技術に向けるなど、市場経済で吸収できない、市場経済で対応できない分野に投入すべきだろうというふうに考えます。しかし、需要増によってそのコストが吸収されるような、例えば省エネの自動車、プリウス等ですね、あるいは家電、省エネ家電などは私は市場経済で十分対応できるというふうに考えます。そういう分野にはあえて助成する必要はないというふうに考えるわけですが、大臣見解はいかがでしょうか。
  78. 小池百合子

    国務大臣小池百合子君) 先ほども申し述べさせていただきましたけれども、いろいろその使途については、こちらは今御議論をいただいているところで、その使途の目安として先ほど三点ほど御紹介させていただいたところでございます。  その中で、例えば今御指摘ありましたように、各種の省エネ設備の整備を支援する、そして燃料電池など省エネに役立ちます技術の開発普及をするということに加えて、森林の整備保全などの吸収源対策の推進なども幅広く活用されることも十分考えられるわけでございます。  そういった意味で、トータルとしてどのようにして温暖化対策が行われるかということをしっかりと大綱の評価見直しに合わせて幅広く議論をしてまいりたいと考えております。
  79. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 幅広く検討をしてもちろんいかなければならないわけでございますが、第二ステップが来年度、十七年度から始まるわけでございます。したがって、今年の夏までには概要といいますか、新しいこの環境税の中身を詰めていかなきゃいけないと思います。そうしますと、相当早いピッチで合意形成を図っていかなければならないと思うので、その辺りは十分間に合うように進めていただきたいと思うわけでございます。  それでまた、京都メカニズムの対応部分が全体で一・六%、六%、九〇年水準に比べまして六%削減のうちの一・六%は京都メカニズム対応ということになっておるわけでございますが、その現在の取組状況と、私はやはり基本は国内対策をすべきだと思うわけでございますが、その見解についてお聞きしたいと思います。
  80. 小池百合子

    国務大臣小池百合子君) ただいま御指摘ありましたように、政府としても、京都議定書の削減の約束については、地球温暖化対策推進大綱にもございますように、まずは工場などの省エネ対策を進めるということ、それから風力発電などの新エネの対策を進める、さらには森林整備などの吸収源対策などを進めるということで、これまた総合的に国内対策をしっかりと進めていくことによって目的の達成、約束の達成を図ることといたしておりまして、国内対策に関しての各目標、それぞれの目標の達成が十分見込まれる場合でも甘んじることなく一層の排出削減を進めるということを肝に銘じてまいりたいと思いますが、その上で、京都メカニズムが国内対策に対して補足的であるという、これは原則でございますが、京都議定書の削減約束を費用的な効果、これをしっかりと達成するためにも適切に活用することが重要だと考えております。  去年のCOP9の方でも、これまで余り決まっておりませんでしたCDMについてもいろいろと整備が整いました。このCDM、そしてJIの政府承認体制の整備を進めるための基盤整備を行うということが一点と、それからそれぞれの事業案件の実現の可能性を調査するための事業を促進させるということで、一つ一つしっかり積み重ねをして進めてまいりたいと考えております。
  81. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 私は、プーチン再選されたわけでございますので、ロシアに地球温暖化防止議定書に、京都議定書に加入を強く働き掛けて、かつ環境税の導入によってこのCO2削減日本の義務を果たしていく、その際に、特別税としてその税収は森林の対策なりあるいは再生可能エネルギーの技術開発等に向ける、もうそういう基本方針でできるだけ国内で対応していくことを基本として対応してもらいたいということを要望したいと思います。  時間が参りましたので、次の時間は、残りの時間は同僚議員、舛添議員に引き継ぎたいと思います。
  82. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 関連質疑を許します。舛添要一君。
  83. 舛添要一

    ○舛添要一君 ただいま福島委員の方から日ロ関係、いみじくも出ましたけれども、外務大臣にお伺いします。  先般、ロシア、圧倒的な多数でプーチン大統領再選されました。この意味というのをどういうようにお考えでしょうか。
  84. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 大変な多数のサポートで当選をしたわけですけれども、これは過去四年間のプーチンの政策に対しての強力な支持が国民の間にあるということであるというふうに思います。私どもとしては、ロシアが、そのプーチン大統領がその支持の上に乗って引き続き国内の改革経済社会の情勢の進展、それを進めてくれるということを期待をしているわけです。  それから、日ロ間、二国間の関係でいいますと、日ロ行動計画、これは両国の首脳が合意をして、特に、領土問題につきましては、平和条約の問題につきましては、これをやりましょうということで、できるだけ早くやりましょうということで合意があったわけでございまして、プーチン大統領のこの再選というのはそういったことの継続性という観点から非常に望ましいというふうに考えております。  昨晩、総理がプーチン大統領とお電話でお話をなられて、そのときにもそういった点についての合意があった。日本にも来ていただきたいと我々は思っているわけでして、そういったいろいろなことの機会に平和条約の問題も前に進めていきたいというふうに考えております。
  85. 舛添要一

    ○舛添要一君 私も、ロシアに参って、この日ロ関係の再構築というのを考えないといけないと思って、いろいろ接触もしました。  例の一連の鈴木宗男代議士をめぐる事柄などを理由にして、若干日ロ関係が停滞している。しかし、プーチンさんが再選されるということは大体もう相当前から分かっていたので、再選されるとやっぱりすぐアクションに出てやると。そして、北方四島の問題、北方領土の問題、この解決目指さないといけないんですけれども、具体的に、外務大臣御自身で行かれる、そして私は、秋にはプーチンさんをお呼びして首脳会談、日本でやるべきだと思っていますけれども、こういう戦略についてはどういうようにお考えでしょうか。
  86. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) よその国の選挙ではありますが、私どもも今委員がおっしゃったようなその選挙の結果になるんではないかということを考えておりまして、日ロ行動計画というものをその両首脳の間で合意をしていただき、そこに盛り込まれている六つの柱を着実に進めながら、平和条約の問題については肯定的な雰囲気を作っていこうと、そのように考えておりました。  それで、私の今年の初めの外交演説の中でも含めて、入れておりますけれども、今年の前半にもロシアを訪問をして平和条約の問題についてじっくり話し合いたいというふうに私は考えております。今、その日程については調整を事務的に行っているところでございます。  総理とプーチン大統領は、今年、APECとそれからG8の首脳会談で顔を合わせられる機会があるわけでございます。また、そういった折にも両首脳の間で平和条約の問題については話を進めていただきたいというふうに思っておりますし、またその訪日の件につきましては、これは今後事務的に外交チャネルで調整をしていこうということになっておりまして、今具体的に秋であるとかいつであるとか、そういうことが全くこれは決まっていないということでございますが、できるだけ早くそういうことを行って、この話を更に進めたいというふうに思っております。
  87. 舛添要一

    ○舛添要一君 このプーチンさんというのは、新しいツァーというか、ツァー、皇帝という、非常に絶対的な権力を持っていまして、やっぱりプーチンさんが動けば動くんだと思うんですね。  ところが、私の見るところ、残念ながら、日ロ関係のプライオリティーが非常に低い。チェチェンの問題があったり国内の問題があったり、いろいろ、プーチンさんにとってですよ、ありますので、何としてでも、この北方領土問題がいかに我々にとって重要なのか。最終的に、二島か四島かなんというのは、それは途中の戦術の問題であって、我々は四島ちゃんと返還してもらって、これは平和条約を結ぶと。そして、経済関係を改善することと領土問題とは別にバーターでも何でもない、両方やっぱり目指していかなきゃ。全体的に日ロ関係が良くなる中で領土もちゃんと返還を実現させると。  そういうことでありますので、これは中国との、ロシアとの関係を見る、それから全体の国際的な枠組みの中でロシアとの付き合いをどうするか、非常にこれはやっぱり高度な政治的判断が要求される、正に日本外交の質が問われる大問題だと思いますので、我々も一生懸命議員外交をやり、それからまた、この前もクレムリンに参りまして、プーチンさんの側近の方々、やっぱり日本を余り御存じない方が多い。我々もパイプをつないでいきますので、是非、外務省としてそういう大きな戦略というのを構築していただきたいと思います。そして、これは別に、外務省にも優秀な方たくさんおられますけれども、内外の知恵を集めて対ロ戦略の構築、単独じゃなくて国際戦略の中での構築と。  例えば、私は昨日の外交防衛委員会でも外務大臣にお尋ねをいたしましたけれども、日本が安全保障理事会の常任理事国になるとすれば、ロシアはビートーを持っていますね。こういうことも考えてやらないといけないと思いますので、是非その御決意を御披瀝いただきたいと思います。
  88. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) おっしゃるように、日ロ関係、様々な側面を一歩前に進めていく一つの大きなチャンスが今目の前にあるというふうに思っています。ロシアでプーチン大統領が必ずしも日本の問題について認識が低いというふうに私どもは思っておりませんで、極東というのはロシアにとって非常に重要である。これは昨年ロシアの幹部がどれぐらい多く極東に行ったかということを見ていますと、これはそういうことが読み取れるわけでございます。それから、賢人会議というのを立ち上げることにいたしておりまして、そういったルートでも進めようといたしております。  いろいろな手段、ツール、これを活用いたしまして、日ロ関係をこの機会を最大限活用して前に進めたいというふうに思っております。
  89. 舛添要一

    ○舛添要一君 今の問題について私が申し上げたかったのは、認識低い、プーチンさんが日本についてどういう認識を持っているかということではなくて、プーチンさんの政策の優先順位の中で日本が相対的に低い地位にある、これを上げる必要があるんだというように思いますので、そのことを強調しておきたいと思います。  続きまして、イランの情勢について少しお伺い申し上げたいと思います。  ブッシュ大統領によって悪の枢軸としてイラクと並んで、北朝鮮と並んでこのイランが挙がってきました。幸いなことに、IAEAの査察を拒否していたんですけれども、二十七日に査察を受け入れるということを決定を行ったみたいなんで、この前後の経緯のようなこと、そして、もしそういうポジティブな決定にイランの政府が変わったとした場合に、我々は非常にイランといい関係を持っているわけですから、当然外務省も働き掛けやったと思いますけれども、そういうことの成果が上がったのかどうなのか、含めてお答え願います。
  90. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) おっしゃるように、日本とイランは歴史的にも伝統的にもそして今もいい関係を持っているわけでございます。それから同時に、日本は唯一の被爆国でありますから、核の問題については非常に強い意識を持っているということでございまして、今年の一月に私が行きましたときにも、イランが昨年来のIAEAの決議、これをきちんと完全に履行することが大事であって、また追加議定書を批准、署名は十二月にしましたが、することが大事であるということを言ってきております。  それで、その二十、IAEAの査察を受けないということにしたという経緯は、これはいろいろなことが言われておりますので、一つは、二十日からイランのお正月ということになっておりまして、事実上動いていないということが主たる理由ではないかということでありますけれども、同時に、十三日に採択をされた決議について若干のその気持ちを表したいというところもなくはないというようなニュアンスの話も聞こえてきております。  昨晩、私は二時間半、ローハニ書記と会談をいたしまして、この問題について相当な長い時間を使ってお話をいたしました。  イランに対しては、引き続きこの完全履行、IAEAの、九月、十一月、三月と三つありますけれども、そのIAEAの決議の完全履行、そして、今暫定適用はしていますが、追加議定書を批准をするということが大事であって、そういうことをしながら国際社会の信頼をつなぎ、回復をしていくということが大事であるということも言っております。  日本としては、引き続き、イランも日本のことを非常に重要な国であるというふうに位置付けておりますし、我々もそう考えておりますので、協調してこの核の問題、またそれ以外に、イラク、アフガニスタン、様々なテロの問題ございますので、そういったことについても協力をしていきたいと考えております。
  91. 舛添要一

    ○舛添要一君 イランの国内政治状況ですけれども、保守派が少し選挙なんかをめぐってイニシアチブを取るような側面がございますけれども、こういうことは国際協調にどういう影響を及ぼすかというのは外務省はどういうふうに分析なさっていますか。
  92. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 基本的にはないというのが我々の考え方でございます。  それはなぜかといいますと、外交案件につきまして、今までも保守派、保守派の現実派がこれをやってきたという経緯がありまして、正にローハニ書記の、書記をしていらっしゃる最高安全保障委員会でしたでしょうか、ちょっと名前は正確でございませんが、そこがその主要な案件についてはリードをしてきているということがあるわけでございます。したがって、余り大きな変化はないということと、国内改革を進めてほしいということも昨日私は申しましたけれども、それについても、それもやっていくということでございました。  我が国としても、イランの中の改革が進んでいくように後押しをしていきたいというふうに考えております。
  93. 舛添要一

    ○舛添要一君 我が国とイランとの関係は非常に緊密でありますし、アメリカにできないことを我が国ができる面があると思いますので、是非この日・イラン関係というのを今後とも発展させるという方向で努力していただきたいと思います。  で、外務大臣に対して最後の質問でございますけれども、やがて二〇〇三年版のODA白書が出されます。その内容の大まかなことは私も読ませていただきましたけれども、特に中国との関係について、このODA絡みでお話を申し上げたいと思いますけれども、だんだん円借款なんかのレベルが下がってはきているんですけれども、これだけ経済大国になった中国がですよ、それで輸出攻勢を掛けている、日本は不況であると。なのに、こういう国にまだ援助を渡すということはいいんだろうかと、こういう意見がたくさん出てまいっていますけれども、ここら辺について、外務大臣、いかがでしょうか。
  94. 阿部正俊

    ○副大臣(阿部正俊君) 中国に対するODAの問題でございますが、委員、大変ODAの本質に迫る御指摘ではないかなと、こんなふうにも思っております。  正に今更言うまでもなく、中国が今後どんな国になっていくのかということにつきましては、私どもの国の在り方あるいは安全の問題、あるいはいろんな日中関係というのを構築することで東南アジアにおける我が国の立場と、これをどういうふうに持っていくのかと、大変影響が大きいことでございますので、重視しているところでございます。  他面、そういった中国が、沿海部では確かに一定経済発展が行われまして、かなりの勢いで経済成長をしているということは事実でございますけれども、一方では、依然として深刻な貧困問題を内陸部を中心に抱えておりますし、我が国にも直接影響を及ぼし得る環境の問題とか、あるいはいわゆる感染症などの深刻な問題も全体としては抱えているということも事実だろうというふうに思います。  こうした国に対して、ODAとして、我が国としてどう対応するのかということでございますが、やはりODAについては従来の在り方というのを少し見直しまして、新しくその目的を、国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することというふうに規定いたしました。  一言で言いますと、やはり我が国の安全と繁栄ということが最終的な目的であり、ねらいというのをしっかり持った上でODAというのをやっていくというのがこれからの姿勢だろうと思っております。一言で言いますと、広い意味での国益といいましょうか、いうことを重視した上で、ODAについても有効な外交上の手だてとしてどう活用していくのかというふうな視点が必要なんだろうというふうに思っております。  従来の、何といいましょうか、少し安易に過ぎたのかなというような反省もあったかと、あったわけでございますけれども、そうしたことじゃなくて、ねらいをしっかり持った上でODAを考えていく、対応を考えていくということでございます。  ただ、一方で、やはりこれは国の予算でございますし、国民の税でございますので、そこら辺について精査をした上で考えるということでございますので、御指摘のように、借款についても二〇%程度削減いたしましたし、それから無償援助につきましても毎年十億前後ずつ削減しているというのも現実でございますので、その辺のはっきり見極めを付けた上で、必要な配慮をした上で適切に対応していきたいと、こんなふうに思っております。
  95. 舛添要一

    ○舛添要一君 我が党の外交部会やりまして、この問題取り上げますと、もう中国に対してやめろという声ばっかりですね。だから、与党の中をちゃんとまとめられなくて国民全体に納得させられるんですかということでございますので。私も今すぐやめろとは言いません。ただ、カードとして非常に重要ですから、この有効性をあらゆるときに使うと。  今、阿部副大臣は元々厚生省の御出身でございますから衛生の問題申し上げましたけれども、おっしゃいましたけれども。  私も中国人の学生で教え子がいます。そして、彼らがやっぱり日中関係に関係する役所の重要なポストを占めるようになっていると非常にこれ助かるんです。ですから、今後はやっぱり人材交流、日本の仲間というか、日本が好きだと、日本で留学させてもらって、何とか日中懸け渡しをやろうと、こういうのを育てていくという長期戦略が必要なんで、外務大臣、一言最後に、是非、いろんな批判がございます、私が申し上げたような。しかし、それを乗り越えてやるための戦略、その説得できる理論構築をやっていただきたいと思いますので、一言お答え願います。
  96. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) おっしゃるように、中国に対してどのような内容のODAをやっていくかということは重要な、重大な問題であると思っています。  円借について言いますと、今、先ほど阿部副大臣からお話ありましたけれども、かなり多くの部分が、先生がおっしゃった人材交流、それから環境環境で多分六割、円借の六割ぐらいになっていると思います。その残りのほとんどは人材交流という形になっていまして、互恵的な、そういったことに既になっているわけでございますけれども、中長期的にどのように人材を育成し、かつ中国の制度我が国制度とすり合わせていくか、日本と違わないような形にしていくか、我が国にとって、中国がどのような国であることが我が国にとって利益かという観点からこれを考えていきたいと考えております。
  97. 舛添要一

    ○舛添要一君 これで外務省に対する質問は終わります。  続きまして、日銀総裁に御質問申し上げます。  先般、谷垣財務大臣それから竹中大臣にはお話し申し上げたときに、たまたま御出張中でございましたので御質問できませんでしたので、その補足ということでお話しいたしたいと思いますけれども、先ほど福島委員の方が相当この問題も取り上げましたので、皆さんのお手元の資料をちょっとごらんいただきながら御質問申し上げたいと思います。  まず、その前に、この二十日で就任一年目を、一年間この大任を果たされたことになりますけれども、どういう御感想でございますか。
  98. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 御指摘を受けますと確かに一年経過しておりますけれども、私どもは年度の区切りあるいは年間の区切り、月の区切りということを一切意識しないで仕事をしておりまして、ただ目標が非常にはっきりしていると。我々の最大の敵はデフレだと、デフレの克服に向かって全力を挙げていると。余り後ろを振り返る時間もなく今日まで来たというのが率直な実感でございます。  ただ、私個人としては、常に反省を繰り返しながら、しかし心持ちとしては前向きの努力を続けていると、こういう心境でございます。
  99. 舛添要一

    ○舛添要一君 福井総裁とこの予算委員会議論をいたしますのは初めてでございまして、その前任者の速水総裁とも私はかなり激論を交わしました。隔世の感があるなという気がしますが、皆さん、ちょっと資料をごらんいただきたいと思いますけれども、日銀の当座預金残高、私が参議院に当選したころはまあ五兆円前後だと。三十二兆円から三十五兆円ということで、それで二ページ目の、昨日、実は金融政策決定会合がございまして、このレベルをそのまま維持するということでございます。  同じ方が総裁でおられれば、これ見て何か反省しませんかということを申し上げたいんですけれども、総裁お替わりになりましたし、福井総裁が前任者のことをとやかく言うということは品位にも欠けると思いますけれども、やっぱり私はこれを見ていると、ツーレート・ツーリトルというような感じがしてならないんで、私が、例えば日銀が五兆円規模のときはもうやっぱり七兆、八兆でいいんじゃないかと。ずっと後追いをしてきた。途中でテロの、九・一一のテロがあったりいろんな要因もございますけれども、常に反省し見直しをやりながら前に進んでいかれるというようなことを今おっしゃったと思いますけれども、やっぱりこれ見て本当に隔世の感がするんでございますけれども、福井総裁、どういう御感想ですか。
  100. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 現在、私どもが取っておりますいわゆる量的緩和政策、これは恐らく世界の中央銀行でも今まで経験していない、日本銀行が初めて経験中のことでございます。そのことは二〇〇一年三月から既にスタートしていて、前任の速水総裁のころにその決断をされたということでございます。  私は、やっぱりこの量的緩和政策が持続的な経済の成長パスに戻す、あるいはデフレ克服のために有効だとすれば、やはり重要な決断は前任のときに既にしていただいたというふうに考えております。
  101. 舛添要一

    ○舛添要一君 非常にやっぱり品位のある、お伺いの、お答えをいただきましたけれども。  ただ、それをおっしゃるなら、やっぱりゼロ金利に解除したというのは、私は日銀の金融政策上大失敗だと思うんですね。だけれども、それを認めた上でおやりになるんだけれども、私は竹中大臣にも申し上げたんだけれども、反省は反省、見直し見直しでやりながら進めばいいんで、それで一々あげつらうことはいたしませんので、やっぱりこの量的緩和政策というもの、これがもう少し早かったらなというのが私の考えでございます。  そして、その一ページ目の資料の下にありますように、買いオペにしても今一兆二千億円のレベルまで行っている。あの当時、四千億ですから、三千億円ですね。だから、副作用を恐れて大胆な政策取れなかったと、こういうふうに私は総括しますけれども、いかがでしょうか。
  102. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 量的緩和政策につきましては、初めての経験でございますので、まず第一に、過去に経験則の積み重ねがないと。それからもう一つは、量的緩和政策につきましては内外の学者の先生方からは非常に頼りになる新しい知識を提供していただいております。しかし、金融政策を責任を持って実行していく立場から、全面的に頼れる理論的体系というのはやはりまだ十分は確立されていないんではないか。そういう意味では、大変挑戦的な仕事だと。したがって、挑戦的仕事に踏み切った以上は、実践を重ねながら、その効果と副作用といいますか、作用と副作用、ベネフィットと副作用と両面を常に点検しながらやっていかなきゃいけない。したがって、どうしても出発時点では慎重なスタートになると思いますし、自信を持つにつれ思い切った政策が取れるようになると、こういうふうなことではないかと思います。  私はその途中から引き継いだということをお分かりいただければというふうに思います。
  103. 舛添要一

    ○舛添要一君 私もこの予算委員会で速水総裁と議論したときに、まさかその二年半後に三十二兆から三十五兆になると思っていなかったので、我々が理論的な問題提示したときに、やっぱりマネタリストの仲間を含めて、何か異端者扱いされましたけれども、これはやっぱり結局事実で証明されたと思いますので、日銀、福井総裁をヘッドとする日銀っていうものは現実の政策の場ですから、是非、その理論云々よりも現実にいい結果を出していただくという方向でやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  104. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 結局、日本銀行として通計してみますと、二〇〇一年三月以降、三年間の実践を経てきていると。その実践に踏み切って以降の事実を点検して我々が確認しておりますことは、量的緩和政策の下での効果ということですが、一つは、やはり市場に思い切って多額の流動性を供給することによって市場参加者の流動性懸念を払拭できると。これは、つまり金融市場の安定を確保できると、どんな厳しいショックが及んできても市場の安定は確保できると、これが一つでございます。  もう一つは、短期の金利をほぼゼロに固定することができるということに加えて、時間軸効果との合わせ技で、より長めの金利についても比較的低いところに抑えられると。プラス、信用スプレッドと申しますか、各種の金利間の開きもかなり小さいものにすることができる。これはすなわち、企業にとりましては非常に有利な金融環境を形成することができる、企業のリストラにしても前向きの努力にしても、すべてこれを金融面からサポートしていける条件を整えることができる、このことは明確に確認されたと思います。  この効果をしっかり発揮させる形で量的緩和を推進していけば、今後ともより強い効果を出していけるのではないかと、この点は確信をいたしております。
  105. 舛添要一

    ○舛添要一君 まあ今、量的緩和政策の効果について御説明いただいたんですけれども、皆さん方、お手元に配りました資料の三ページ、ベースマネーの伸びとマネーサプライの推移が書いてございます。これは先ほど福島委員も問題にした点でございますけれども、ちょっとやっぱり、この量的緩和の今おっしゃった効果もあるんですけれども、まあ我々が予期したよりもこのマネーサプライが伸びない。先ほど簡単にその理由を御説明は願いましたけれども、二年ぐらい前に我々が議論していたのは、もっと一気に量的緩和をやればマネーサプライ伸びたんじゃないかと、つまりこの今の量的緩和のレベルを一年前にやっていたらもっと伸びていたんじゃないかと、こういう仮定を理論的に出していたわけです。これ、まだ実証していませんから分かりません。私もまだそれ、逆の結果が出るかどうかやってみないと分からないんで、一〇〇%自信あるわけじゃありませんけれども、今私が申し上げたことについてはどういうコメントをなさいますでしょうか。
  106. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 今おっしゃいましたポイントにつきましては、私どもも政策の効果というものを今後とも考えていく上で非常に重要な点だと、したがっていろんな形で分析努力を怠れないし、委員からも今後ともお知恵を拝借したいと思っている点でございます。  この分析の仕方はいろいろあるんですけれども、やはり従来の伝統的な手法、つまりマネタリーな世界でベースマネーと最終的なマネーとの連関関係、あるいは実体経済あるいは物価の動向との相関性というふうな枠組みでこれを分析します限り、最近はやはりその間の相関関係が非常に過去に比べて崩れている。日本だけかなと思うと、外国においても崩れている、我々の重要なパートナーであるアメリカの連銀についても同様なことが起こっているということで、ここのところはなかなか明確な結論が得にくくて、実は悩んでいる点でございます。  そうなりますと、我々は現場で仕事をしておりますので、どうしても実践の足下を、現場をよく分析すると。こうなりますと、企業がお金を借りようとするか返そうとするか、その中間かと、これはもう本当に現場の点検になってまいります。これでなりますと、製造業はこれまで借金を返済する一方でございました。最近になってようやく前向きの投資活動が見え始め、しかし今のところはキャッシュフローの範囲内で極力賄おうと。新規の借入れ需要に結び付くのにこれからという段階に来ている。非製造業はまだ借金の返済努力中と、そのペースも製造業に比べればまだ少し緩めに推移していると、こんな段階でございます。  しかし、これはいかぬと、もう早く急いで金を借りろと言っても、やはりこれからの経済の中で企業がしっかり生きていくためには、企業が自ら過剰と思っている借金を返すなと言うわけにはいかない、やっぱりむしろ早く返してもらって次の局面に行かなきゃいけない、そういうふうに思っておりまして、我々も本当にもどかしく思っておりますが、マネーサプライの増加につながるまでに今しばらくペイシェント、我慢強く、我々としても対処していかなきゃいけないというふうに思っています。
  107. 舛添要一

    ○舛添要一君 先ほど長期国債の買入れのグラフを一ページ目でお見せしましたけれども、まあ三倍に増えた。しかし、一般的な言葉で言うと、日銀と市中銀行の間をマネーとボンドが行ったり来たりしているという状況で、本当に困ったところにまで資金需要、資金が流れていかないということなんで、私の一つの理論的仮説というか、これは現場を見てですけれども、なぜ行かないか。今言った要因ももちろんバランスシート上の問題もございます。だけれども、これは金融政策のやり方のまずさ、それは厳しい金融検査入る、そうすると金融機関としては貸したくても貸せない、いろんな問題があります。今度の予算で二兆円の予防的注入であるとか、金融検査マニュアル中小企業編の改定ということをやりました。これは一つの進歩かなと思います。それは前回既に竹中大臣にお話ししましたけれども。  そういうその金融の現場におけるシステムの機能的な作動を阻止するというか、妨害する要因がまだあったんだと思うんですね。それはどういうふうにお考えでしょうか。
  108. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 先ほど私は企業のバランスシートの方から現場の実情を申し上げました。委員が今御指摘になられましたのは、今度は同じ現場の問題分析であっても金融機関の側からどうか、金融機関がその第一線、本店支店の窓口で十分リスクを取るという体制が整っていればそれはより早く貸出しが伸び、マネーサプライが増えるということは間違いないというふうに思います。  これまでのところは金融機関は不良債権問題の処理を最優先にし、それは政府の検査、日本銀行の考査というものがそれを後押ししていたと思いますが、恐らく金融機関のトップから第一線の現場への指令は、過度なリスクは取らないという指令を強く出していたというふうに思います。  したがいまして、金融機関の一線のリスクテークはバランスシートが示す以上にリスクを回避するという姿になっていたということは間違いないと思います。しかし、これは徐々にほぐれつつあると。最近は金融機関も次第に前向きに融資を増やそうという方向に姿勢は変わってきている。まだ実績に結び付いておりませんけれども、徐々にそういうふうに変わってきている。  もう一つ重要な問題があると思いまして、時代が変わって、ここから先はやはり金融機関がリスクを取る場合にリスクに見合った金利がやはり実現されるということが重要になってまいります。ここのところは企業と金融機関とで新しい話合いが始まっている。そして、やはりこれは大企業だけでなくて中小企業の段階でも、企業の方でも準備ができたところは次第にその糸口がほぐれ始めております。地域金融機関におきましても無担保無保証で中小企業のお金が出せるようになってきております。これが少しずつ広がってきております。これは企業の方でも、担保さえあればお金を貸してくれると、その場合は低い金利だという従来の発想を抜けて、自分たちが幾ら将来稼げるんだと、キャッシュフローはこうであり、そしてビジネスに伴うリスクがこれぐらいだから、両方評価すれば自分たちはこれぐらいの金利で貸してくれておかしくないんじゃないか、今度は銀行の方からその企業を見て同じ計算をしていこう、そういうバーゲニングが既に始まっている。新しい動きがもっと広がってほしいというふうに思っております。
  109. 舛添要一

    ○舛添要一君 この後また別の角度から理論的な問題をやりたいと思いますので、ちょっとこれ、お答えが相当時間掛かると思いますので、一応委員長のお許しいただけばここで午前中やめたいと思いますが。
  110. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) はい。分かりました。  それでは、残余の質疑は午後に譲ることにいたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  111. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十六年度予算三案を一括して議題とし、質疑を行います。舛添要一君。
  112. 舛添要一

    ○舛添要一君 午前に引き続き討議をしたいと思います。  今日は、金融政策についてこの過去二、三年検証してみようと。これは、私自身もいろんな理論的なことを述べて、現実にそれが正しかったかどうか検証したい。日銀総裁の立場でもやっぱり同じことが言えると思いますので、ともに協力して何とかこの異常な状況から脱して日本経済を回復軌道に乗せたいと、そういう思いでございますので、ポジティブに、前向きに一緒に検討したいと思います。  これまで、金融政策、量的緩和政策について、その評価それからその問題点その他について議論しましたけれども、実は私、福島委員の話を聞いていて若干苦笑、苦笑というか、つまり私は最近インフレターゲットを何も言わなくなったんですね。で、同僚の方がインフレターゲット、まあそれは物価目標水準と言って何でもいいんですけれども、実は私は福井総裁とある意味では似た見方をしていまして、これだけ量的緩和が続くというのは実質的にインフレターゲットをやっていると、それマーケットが見たからもう言わなくていい、そんな感じですけれども、どうでしょうか。
  113. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 今朝ほどもちょっとお答えを申し上げたわけでございますけれども、私どもが現在ただいま国民の皆様にお約束しながらやっておりますことは、消費者物価指数というものを明確にターゲットにしている。この指数の前年比変化率が安定的に〇%以上になるまで今の緩和を続けるということでございますので、インフレターゲットに準ずるような形のコミットメントをしているということだと思います。  本当のインフレターゲットは、より均衡の取れた経済状況のときの望ましい物価指数と、あるいは物価上昇率というふうなものを念頭に置く、あるいは明確に目標に置くということでありまして、そこと違いますのは、恐らく我々は通過点のところに絞って金融政策の目標を置いていると、そこが違うということだと思います。
  114. 舛添要一

    ○舛添要一君 総裁、その点は若干私違いまして、例えば一年前だったら、非常に異常な状態ですけれども、この劇薬のようなものが効いたんではないかなと思っていますが、これは現実で検証されていませんですから、私は依然としてそういう考え方を持っているということを申し述べておきたいと思います。  そこで、異常ですから、政策手段として非伝統的な手段を活用する。株を買う、ABSを買う、それから場合によっては土地を買う。買えなきゃ我々が日銀法を改正して、例えば土地まで買っていいようにしてもいいんだよと、こういうことまで申し上げましたけれども、まず、非伝統的手段、どういう手段を今活用して、それは量的にどれぐらいの金額でしょうか。
  115. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) まあ、何が伝統的で何が非伝統的かというのは、明確な区分けはなかなか難しいというふうに思います。一番伝統的には、ごく短期の政府証券を売買の対象にして金融調節を行うと、恐らくこれが一番伝統的だと思いますけれども、それに比べますと、現在やはり長期国債の買入れ比率を非常に上げているということがあると思いますし、さらに民間のインスツルメントといいますか、手形、特に資産担保証券という形で非常にリスク度の高い民間債券に手を出していると。この段階でやはり非伝統的な世界にかなり踏み込んでいるというふうに思います。  しかし、私どものアプローチは、やはり中央銀行の本来の金融政策の舞台に近いところからだんだん一定の距離感を持って離れたところに広げていくというアプローチをしております。資産担保証券というのは、言ってみればクレジットマーケット、将来もっと発展してほしいクレジット市場でございまして、それがまだ萌芽の段階にあるので、そこを幾らかお手伝いしながら我々は多少一石二鳥をねらっていると。当面の金融緩和効果の浸透という目標と、もう一つは、非常に将来長い目で見てこのマーケットが健全に育ってほしいという長期的な目標と、一石二鳥をねらっていると。  委員指摘の不動産その他の市場になりますと、もっと距離感の遠いところに行ってまいります。それよりも前に、やはり金融市場の舞台により近いところで将来必ず必要になるマーケットの発展に一石投じることができればというところからスタートしているということでございます。
  116. 舛添要一

    ○舛添要一君 あえて不動産の問題を出しましたけれども、必ず、その非伝統的手段について言うと、国民の資産を劣化させるんではないかと、こういう議論があって、それは正しいと思うんですね。だから、正にバランスの問題で、私はもう今これぐらい景気の回復の芽が出てくれば余りリスクを取らなくていいかなと思っていますが、御判断いかがでしょうか、総裁。
  117. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) その辺の度合いの秤量がなかなか難しい微妙な局面になってきていると思いますが、デフレスパイラルのリスクを非常に強く心配しなければならなかったほんの少し前までの状況に比べますと、やはり経済が次第に自律的な回復の足音を遠くから感じさせるところぐらいまでもう回復してきているということは、中央銀行のリスクの取り方も、やはり目をつむって思い切って取るという段階よりは、目を開けてしっかりやっぱり正確に状況を判断しながら前進する、そういう時期に変わってきているというふうに思います。
  118. 舛添要一

    ○舛添要一君 私もその判断は大体同じでございますけれども、株購入、どれぐらいの株、金額にして御購入なさっていますか。
  119. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 現在までのところ約二兆円、若干切れていると思いますが、累計二兆円ぐらい株式を買っております。
  120. 舛添要一

    ○舛添要一君 それにつきましても、本当に時代変わったなと。もう非常に短い時間で変わっているので、例えばこれ半年前、一年前だったら、そんなのは二階から目薬差すぐらいで何にもならないという議論がありました。我々も若干そこにくみするところもあったんですけれども、その議論も実はほとんどなされなくなったという現状であるので、やっぱり現実の重みというのは非常に重いなという感じがしますが、もう一度、いかがですか、その点。
  121. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 日本銀行による株式の買入れは、ある意味で非常に思い切った飛躍のある判断をしたというふうに思います。確かに、非常に買入れ量も限定しながら慎重なやり方をしたと思います。大胆ですけれども慎重にやったと。それは二階から目薬的かもしれないというふうな気持ちで多分やったんではないかと思いますが、結果的にはやっぱりそのことが金融機関のバランスシートから株価変動のリスクがやっぱり遮断されるんだということが確認され、そして株式市場がやはりいい方向に動き出した、実体経済もいい方向に動き出した。そうしますと、金融機関が株式を売却して調整する場合にも、日本銀行の買入れだけに頼らなくても市場でも結構処理できるようになると。加えて、政府の方でも買入れ機構の買入れの可能性を広めていただいたというふうなことがありまして、かなり売却が実績として上がったということだと思います。  厳密に申しますと、大手の銀行の場合に、中核的な自己資本、いわゆるティア1を超えて保有している株式の額が平成十四年の九月末時点では五兆円ぐらいございました。現在はもうそのティア1を超えている銀行の数自身が少ないんですが、超えている銀行のその超過部分を合計しましても大体一兆円ぐらいで、ほぼこの問題は当初の目的は達成しているというふうな状況でございます。
  122. 舛添要一

    ○舛添要一君 先ほど、クレジットマーケットの整備のためにも非伝統的手段の活用ということをおっしゃったんですけれども、やっぱり銀行が持ち合い株を持つような形の金融システムというのは、日本的良さもありますけれども、改革という視点からやっぱり変えないといけないというふうに思います。  そういう観点から、今、総裁いみじくもおっしゃいましたように、ティア1を超えての持ち合いはほとんどないと。だから、そういう意味でも、実を言うと、ペイオフを来年完全実施をするという条件が整いつつあるかなという判断を私はしつつありますが、これは総裁、日銀のカバー範囲でないかと思いますけれども、今のようなその銀行の改善努力、これは私と同じような評価をなさいますか。いかがでしょうか。
  123. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 金融機関と申しますか、特に銀行が抱えておりました大きな問題、不良債権、もう一つが持ち合いという形での非常に多額の株式保有と。後者の方は、今委員からも御指摘ありました、私もお答え申し上げましたとおり、かなり問題解消している。不良債権の方も、大手の銀行についていえば、不良債権比率が来年の春までに政府のプロジェクトのとおり大体平均して四%台というところまで下がっていくことがほぼ確実になってきている。地域金融機関につきましても、テンポは少し大手の銀行に比べますと遅れておりますけれども、傾向としては同じような方向をたどっている。  ペイオフ完全実施は是非実行してほしいと、日本銀行の立場からはそう思っておりますが、残り一年を、約一年の期間、やはり金融機関の努力が更にもう少し加速していただければ、条件を満たすというところまでですが、つまりもう少しの努力で手が届くところまで来ているんではないかというふうに判断しております。
  124. 舛添要一

    ○舛添要一君 我々も、どこまで改善できるか、どこまで改革進むかというのを見ながら、我が党としても財政金融部会などでこのペイオフに対する態度を決めたいと、そういうふうに思っていますが、私はできれば完全実施できる条件を早く整えたいと思っています。  さあ、そこで、私は、福井総裁の前任者の速水総裁とかなり激論した一つの点で、やっぱり日銀法の解釈というか、日銀法には、政府の政策と日銀、政策のハーモナイズをやりなさい、一体となって協力してやるということがあるわけですが、どうも右左行っていたという感が否めなかったものですから、かなりその点を日銀法の精神に照らしてやってくださいということを申し上げました。  最近私が余り日銀を批判しなくなったのは、福井さんに替わったから別に批判しなくなったということではなくて、かなりやっぱり政府との協力、政策協調が行われていると、そういう判断をいたしております。その点はどういう評価か。  それから、谷垣財務大臣、これは私、質問通告も何もしていませんが、目の前におられるんで、政府の側から見ても日銀さん、日銀のその政策というのはどうかというのを、今言った日銀法の精神に基づいてのハーモナイゼーションということについてお答え願います。  まず……。
  125. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 新しい日本銀行法の精神は、国を挙げて、つまり政府と中央銀行がともに目標を共有しながらより望ましい日本経済の姿を作っていくと、ただし、具体的な政策行為については、それぞれが特有の意思決定メカニズムを持っているのでそこで自己完結的に物事を決め、勇気を持って実施していくと、こういう枠組みだと私どもは理解いたしております。  現在ただいまの状況に即して言えば、やっぱり日本経済を早く持続的な成長軌道に戻すと、それに伴ってデフレ的な状況から早く脱却すると。目標は明確に一つであり、これは明確に共有しているということだと思います。私どもの方から政府の方のお仕事を拝見させていただいておりますと、そのために構造改革に全力を挙げておられると、こういうことでありますので、大枠として、私どもがデフレ脱却を目指して全力を挙げれば相互にそごのある政策が出ようはずがないというふうに思っております。  日本銀行では、政策委員会のメンバーを中心にやはり金融面からできることを一〇〇%以上やっていくと、こういうことで懸命に努力をしている、結果的に整合性が取れているかどうかは国民の厳しい目で御判断をいただきたいと、こういうふうに思っています。
  126. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 具体的な金融政策の決定は日銀の独立になさることですけれども、大きな意味で、今福井総裁がおっしゃいましたように、何というんでしょうか、平仄が合っているというか波長が合って仕事をそれぞれ分け持っているのではないかと思います。  日銀の政策決定会合には、今日おられる石井副大臣に原則として出ていただくことにしておりますけれども、そういう形でのいろいろな連携と申しますか、認識の共有の場、あるいは経済財政諮問会議などでも御一緒してよく議論をしておりますので、大きな意味での認識を共有して仕事ができていると思っております。
  127. 舛添要一

    ○舛添要一君 政府、日銀、それぞれその守備範囲が異なりますけれども、越境して、お互い境界を越えてやるぐらいのつもりで日本経済を引き上げていただきたいと思います。  それで、そういう観点から少し金融政策プロパーより議論を広げたいと思いますけれども、午前中の福島委員との議論でも福井総裁も既におっしゃいましたけれども、やっぱりまずデフレ、私もまだ緩やかなデフレが続いているというように考えています。だから、ここで手を緩めたら駄目だという判断でありますけれども、福井総裁就任一年ということでいろいろこの日銀の政策の検証というのはメディアも通じて行われるような時期に来ていますけれども、一部の論者は、もうここまでデフレの行き先は見えたんだからその一歩先の手を打てということを結構おっしゃる方がおられます。私は、ちょっとまだ時期尚早ではないかと、もう少し慎重に見極めて、まあ秋、夏から秋ぐらいまで見極めてやった方がいいというような判断ですけれども、そこは日銀総裁、いかがですか、デフレの判断と。
  128. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 重要なポイントの御指摘だというふうに思います。  普通、経済を見ます場合に、景気の動向、景気が回復する過程に入り、その回復のモーメンタムが少しずつ強まっていくという過程においては、従来の経験則ですと、物価の面でもある幅を持ってやはりデフレ基調が修正され、次第にインフレ予測というものが芽生え始めると。この距離感というものは従来、ある安定的なものはみんな共有していたというふうに思います。しかし、今回は少し違うというふうに私どもは認識しております。経済が良くなる度合いと物価の状況がいい方向に変わる度合いとの間に、従来持って、保っていた距離感がもうちょっと離れているような実感がしてしようがないわけであります。  私はこの前も、委員の御質問があるということを承知の上で国際決済銀行の会議に出させていただきました。あの場におきましても、これは日本だけの感覚かと思っていろいろ議論いたしました。やっぱりそうではありません。先進国、おしなべて、経済が良くなる状況と物価の状況が、物価と申しますのは消費者物価、特に……
  129. 舛添要一

    ○舛添要一君 CPI。
  130. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) はい。最終段階での物価の変化の度合いとの間にどうも従来の感覚からいけば距離感がやっぱり開いていると。これはもう共有をいたしました。  そうであれば、日本の場合には他の先進国以上にやはりデフレ脱却の難しさを持っていると。バブル崩壊以降の需給ギャップの大きさ、それから、企業部門も金融機関部門も構造改革を要する問題の大きさというのがやっぱり違っているということを考えますと、景気がいい方向に行ったということは率直にやっぱり判断しなきゃいけないし、そのことについて人々に疑いを持っていただく必要は全くないんですけれども、それを追っ掛けて物価がどれだけ良くなっていきますかという点については、日本銀行が今の時点で正確な判断をやっぱりしていかなきゃいけない。この点については我々は慎重に判断していきたいというふうに思っております。  したがいまして、委員がおっしゃいましたとおり、あと半年見ればいいのか、一年見ればいいのか、ここはよく分かりません。ここも予断を持たないでしっかり見ていきたいというふうに思っております。
  131. 舛添要一

    ○舛添要一君 今、需給ギャップのお話をされましたけれども、この景気回復への道筋を探るため、まず、需要の側面からいきますと、これ我々も責任あるんですけれども、やっぱり心理的側面が、心理的な側面が非常に多い。年金どうなるんだろうかと、失業したらどうだろうか、介護必要になったらどうだろう、漠然とした社会の不安と、これは数値化できません。  しかし、例えば、企業業績上がる、まず第一段階でそれがサラリーマンの所得にまですぐ跳ね返るかと。ここでちょっとギャップがあります。さらに、跳ね返ったとしても、今度そこから先は、いや、もう年金がどうなるか分からない、将来どうなるか分からない。で、購買意欲わきません。そうすると、個人消費の伸びという形で、これはもう国民所得の六割占める三百兆にレベルがあるわけですから、これが動かないと、企業の設備投資、輸出主導だけではなかなかいかないと思う。  だから、これ我々も努力して、国民に安心できる将来の保障というものを提供すべきだというように思っていますけれども、これの数値化が非常に難しい。それが今総裁おっしゃったような、なかなか判断、CPIレベルでの判断ができないということだと思いますが、私のその見解に対してどういうお考えでしょうか。
  132. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 経済の自律的な回復という点で、必要な、非常に重要な条件として私自身も考えておりますのは、ただいま委員指摘のとおり、景気が回復していく過程で、企業の段階で見て生産が増え、企業の所得が増え、そして企業の支出、つまり投資が増える。この一つの好循環のほかに、企業所得がやはり個人の所得に還元されて、つまり賃金に還元されて、個人の所得の増加を伴って個人消費が増えると。で、個人消費が増えれば余計物が売れますから、また改めて企業の生産が増えるというふうに、二筋道のこの好循環が働くと。これが本当の意味での持続的な回復のパスが完成したということになると思いますが、現在ただいまの段階では、企業の生産が増え、企業の所得が増え、企業の支出が増えるという好循環、片方の好循環が作動し始めている、もう一方の好循環はまだほんの入口のところで、これから本当に働き始めるのかどうか分かれ目に立っていると、こういうふうに思います。そこを金融面から緩和を続けながら、是非、後押しして実現していきたいという点が一つのポイントでございますが。  もう一つ重要な点は、やはりこれから先の日本経済社会ということを日本国民の皆様は本当に真剣に見ておられます。少子高齢化社会の中で、かつてに比べて、あれほどの高い成長は実現できないと、こういう社会の中で人々の生活の安定をいかに図っていくかといった場合に、高齢者の比重がだんだん高まる社会においては、年金、ヘルスケア、そうした社会福祉システムというのが制度の崩壊リスクなく安定的に保たれるんだという将来の保障というのがもう一つ非常に重要な条件になっている。しかも、将来のシステムが人口が減る中の高齢化社会ということでございますので、世代間の受益負担の平等性、公平性ということが人々の感覚に真に正しく訴えられるような姿で実現していく、そこで初めて本当の安心感が出ると思います。そうでなければ、安心して、高齢化社会にあっても、貯蓄率を下げながら経済生活の幸せを築くということができなくなりますので、そこがもう一つの重要なポイントだというふうに思っております。
  133. 舛添要一

    ○舛添要一君 需給の、今度、供給の側面について、まあこれも金融政策とは直接かかわりありませんけれども、少し議論したいと思いますと、先ほど外務大臣に私は中国について質問をいたしました。やっぱりどうしてもODA絡みでも中国に対する反感というか、日本国民が持ってくるのは、あれだけ安価な製品を大量に輸出しているじゃないかと。もう中国という存在が異常な供給側面での問題を起こしていると。それに対しては我々は、産業の再編をやる、産業の高度化をやっていく、そういう立場で、改革をやりながら対応するしかないなと。かつては水平分業というような形でアジアの分業体制ということを言っていたんで、まあその連続線上にあるんですけれども、そういう産業政策上この供給側面に対応していかざるを得ないと思います。  これも日銀総裁のカバー範囲ではございませんけれども、一言御見解賜れればと思います。
  134. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 中国経済のプレゼンスの拡大という一つの言葉でこの問題を大きく指摘されているわけでございますけれども、私は、やっぱり中国経済については、供給面のウエートの増大と中国のマーケット、需要の面のやはり拡大と、この両面から正しくとらえて日本経済の在り方を考えた方がいいというふうに思っています。  中国の供給面の姿は、単に人口が多い、労働力が多い、しかも安価な労働力だというだけではなくて、やはり中国の若い人たちは非常に近代的な技術、物の考え方をどんどん勉強しながら、ある意味でイノベーションを伴いながら、しかしコストも安い労働力がどんどん供給されて、それで供給先行型の、何といいますか、供給力先行型の高度成長を今遂げていると、こういうふうに思いますけれども。しかし、中国が高度成長を続ければ必ず中国の国内での平均的な所得レベルも上がってまいります。現に上がってきております。  つまり、膨大な人口を抱える中国経済が消費者マーケットとしてもどんどん大きくなる。この市場の中で、日本のビジネスもきっちりと収益機会をとらえて日本のビジネスを拡大すべきではないか。つまり、供給面からいきますと、日本の企業は最先端の技術の開発ということは常に先行して優位な立場を保たなければいけない、同時に、中国の国内市場においては十分マーケティングを施しながら十分消費者市場の中に浸透していかなければならない、この両面の作戦が要ると思います。  先ほども御議論をわきから拝聴しておりましたけれども、自由貿易協定その他大きな問題ありますが、これはやはりお互いに市場を開放するという問題で、国内の市場を自由に相互の企業がビジネスの場として使っていくことによって経済の相互依存関係が強まる形で相互の経済のパイを大きくすると、これが非常に大切なことだというふうに思っています。  今、世界経済の姿を見ますと、中国の経済大きいし、成長率も高いんですけれども、世界経済全体の推進力という点からいきますと、やっぱりアメリカ、イノベーションの力の強いアメリカ経済が先頭に立っている。言葉を悪くして言えば、アメリカ経済に依存しながら世界経済が走っているという状況でございますが、そういうことでいきますと、アメリカ経済の双子の赤字がいつまでたっても解決しない、グローバルインバランスの解決の糸口がなかなか見いだせないまま走り続けるということになりますけれども、委員指摘のような中国経済を含むアジアの経済の相互依存関係、それも供給力先行型という形ばかりでなくて、消費者のマーケットが大きくなる、そこに企業がうまく進入できるという形で大きくなれば、世界経済を引っ張っていく力は必ずしもアメリカだけではなくなっていって、グローバルインバランスの本質的な解決にもつながる、こういうふうに考えています。
  135. 舛添要一

    ○舛添要一君 中国の問題に関して、もう一つ為替レートの問題がございます。  中国の通貨、元、ユアン、これの引上げをやるべきではないか。理論的に言えば、それを実行すればかなりのインバランスというのは解消できるだろうと思いますが、しかしまた、そのための条件、いろんな金融インフラ含めて中国に備わってないと思います。これを我々も助ける形で成熟させると。で、一気に変動相場ということよりも、まあバスケットとかクローリングペッグとかいろいろ中間的なシステムもございますけれども、この元の為替レートの問題、これはどういうふうにお考えでしょうか。
  136. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) これから先の中国経済を世界の経済との関係で考えました場合に一番重要な点は、非常に規模の大きい中国の経済が市場、世界の市場経済のメカニズムの中にきちんと組み込まれていくということだと思います。  WTOに加盟して既に二年ということでいろんな形の自由化が徐々に進んでおりますけれども、委員指摘金融の面からいきますと、やはり中国の通貨、人民元がいつの日かやはり交換性を完全に回復し、為替相場についてもかなりフレキシブルな制度に移行していくと、そういう方向性をきっちり中国政府には持っていただきたいというふうに我々も思います。  ただ、日本の過去の経験から考えましても、そのためにはやっぱりいろんな条件があるということは率直に認めざるを得ないんではないか。やはり資本の移動がかなり規制されている状況であれば、資本移動の規制をやっぱり緩和するあるいは撤廃するというふうな条件を整えないと、本当の意味での為替相場の実勢というのはマーケット自身もつかめないということになると思います。  それから、金融システムについて、やはり中国もかなり大きな問題をなお残しておりまして、金融システムに不安がありますと、為替のあるいは資本の移動を自由にいたしますと、資本移動、逃避というふうな形で不規則なお金の動きが起これば、これまた為替相場の実勢がつかみにくい状況になってしまいます。少なくともそうした前提条件を中国政府がこれから全力を挙げて整備されて、一刻も早く為替相場、通貨の交換性、そして為替相場のより機動的な変動を許容し得るような体制に持っていかれるということが大切だと思っております。中国人民銀行の総裁は、私、何回も話していますけれども、その問題意識を非常に正確に持っておられるというふうに思います。
  137. 舛添要一

    ○舛添要一君 午前中の福島委員との議論でも円の押し下げ介入、今年で十兆、昨年二十兆、この問題は竹中大臣とも、それから谷垣大臣とも前回御議論申し上げましたけれども、日銀に対する一つの批判というか、先ほどの量的緩和の問題に絡めて、要するに日銀が介入資金を供給しているんじゃないか、それでみんながうまくいくようにやっているんじゃないかと、そういう批判が根強く、これはどっちのサイドから見るかによりけりですけれども、ありますけれども、この巨額円売り介入と今の日銀の量的緩和との関係についてどういう御認識でおられるのか、お話しください。
  138. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) その点は、金融政策は自己完結的に日本銀行の政策委員会の意思決定として行っております。為替市場への介入は、これまた自己完結的に財務省、政府の責任においてなさっておられる。  私どもの金融緩和政策は、国内経済の回復の状況、物価の状況、それから国内の金融市場における資金の流れの円滑さの度合いというふうなことを十分吟味しながら、必要十分あるいは十分過ぎる以上に流動性を供給しているということでございますが、日本銀行がそういう判断の下に流動性をマーケットにたくさん供給いたしますと、一方、政府の方において独自の判断として為替市場への介入が行われます場合に、為替介入に必要な資金は政府はマーケットから調達されますが、その資金の調達が容易になる、あるいは介入をされました後の為替相場への影響の度合いもより強くなるというふうに、結果的にはそういう双方の共鳴効果はあるというふうに認識しております。
  139. 舛添要一

    ○舛添要一君 今日は竹中大臣谷垣大臣もおられますし、それから日銀総裁おられます。是非、政府と日銀と一体となって、政策の整合性ということを図りながら一刻も早くデフレから脱却する、そういう努力を展開していただきたいと思いますし、我々もまた批判すべきは批判する、しかし非常にポジティブなマインドで前向きにというふうに思っています。  今日、大変お忙しいときに日銀総裁にお見えいただきましたけれども、大変実りある議論ができたと思っています。  委員長、私は、参議院は良識の府ですから、非常にこういう、こういうって、自分たちで自分たち褒めてもしようがないんですけれども、やっぱり理論的な水準も高い、そしてそういう、(発言する者あり)いやいや、私はいい議論だったと思います。こういう議論をやっていきたいと思いますので、日銀総裁、是非またおいでいただくことをお願いしまして、終わります。  ありがとうございました。
  140. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 以上で福島啓史郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  141. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 次に、平野達男君の質疑を行います。  レベルの高い議論でいきましょう。平野達男君。
  142. 平野達男

    ○平野達男君 民主党・新緑風会の平野達男でございます。  じゃ、舛添委員の今の発言に従いまして、知的水準の高いちょっと質問を、ちょっとやりたいと思います。  今日は、前回に引き続きまして、まず三位一体改革についての質問をやらしていただきたいと思います。  お手元に、早速ですが、資料を用意させていただきました。資料一ということで、これは私が一地方出身の国会議員の観点から見た三位一体改革ということで、私なりの考え方でちょっと整理をさしてもらいました。  三位一体、御承知のように、補助金の削減地方交付税の縮減、見直し、それから税源移譲、これで三つの柱になっております。  そこで、一番目の補助金の削減。これは、税源移譲の対象となる削減税源移譲の対象外となる削減がございます。  これはちょっと通告申し上げませんでしたけれども、財務大臣、この税源移譲の対象となる削減とそうでない削減というのは、この境というのはどういう判断でやっておるでしょうか。これはちょっと通告していなかったんですが、簡単で結構です。
  143. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) これは、もう補助金、こういう補助金は必要ないというものは税源移譲しておりませんし、これからも地方で主体的に取り組んでいただく必要がある、そういう形で国ではやめようと、こういうものは税源をお譲りすると、こういう形であります。
  144. 平野達男

    ○平野達男君 これも通告してなくて申し訳ないんですけれども、普通、予算は毎年主計局査定してますね。この補助金は要りませんとか、要らないというやつは毎年予算査定しながらやっているんです。何でこのときに改めてそういう予算査定というか、この補助金は要らないということがこの三位一体の改革の中に入ってきたんでしょうか。
  145. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) これは、やはり地方の主体性といいますか、自主性を拡大していくときに、国が、何というんでしょうか、国の判断で補助金を付けるというようなことが往々にして地方の自主性を縛っていると、こういうこともありまして、できるだけ無駄な補助金はスリム化していこうということで議論をしたわけであります。
  146. 平野達男

    ○平野達男君 私が言いたいことは、主計局が予算を査定するときには、もうそういう視点を常に毎年毎年持っているんですよ。今回、三位一体改革というふうに言った以上は、それは外だという話でやっぱり整理してもらいたかった。  今回、三位一体の中でずっとこう流れを踏まえますと、削減対象となる補助金が十あれば、十はそっくりそのまま税源移譲というふうに私は理解していたんです。ところが十を見て、まずそれを普通の予算査定で一回ここで縮減をしますと、縮減をした後でなおかつ税源移譲をやったということで、そこにまず今回のいろんな議論があって、議論の中に混乱があるし、地方も混乱をしているということで、ちょっと指摘しておきたいと思います。  それで、この補助金の削減なんですが、これ、補助金への依存度の高い自治体、これ地方の自治体、この場合の地方というのは、要するに国対地方地方ではございません。東京対岩手県というのは、地方ということで考えていただきたいんですが、今度これ影響が多くなります。これは財務大臣、じゃない、総務大臣、これでよろしいですか。──はい、うなずいていただくだけで結構です。  次に、地方交付税の縮減ですけれども、これも地方交付税への依存度が高い自治体、まあ岩手県も含みますね。これが影響が非常に大きい。それから、不交付団体への影響は全くなし。総務大臣、これでよろしいでしょうか。よろしいですね。  それから、税源移譲なんですが、これは何をやるか分かりませんが、課税対象の多い都市側に厚く、対象の少ない地方に薄いという偏在の問題がございますけれども、こういう、これもよろしいですね。  財務大臣、ちょっと御見解を伺いますが、この左側の表について何かコメントがございますれば、今、私が御説明申し上げたこの三つの柱について、総務大臣との認識は大体一致したようですから。
  147. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 大きな意味で委員の御認識を私も共有いたします。
  148. 平野達男

    ○平野達男君 それでは、この地方交付税の縮減の中に、の項目の中に不交付団体の数を増やすという記述がございます。この不交付団体の数を増やすというのは、どういう形で、どうやってその不交付団体の割合を増やすんですか。これをちょっと説明していただけますか。
  149. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 基本的には、不交付団体の数を増やすというのは大前提が、約三千三十現状あります今の地方団体の中で不交付団体というのは数えるほどしかないという極めて、ちょっともう少し不交付団体の数が減って交付団体、済みません、交付団体の数が減って交付税の対象とならないようなところがあっておかしくないのではないか、常識的には。そのためには、地方税でいう地道の収入が上がるか、その地方が持っておりますいろいろな意味での歳出削減されて交付税に頼らなくていいようにする。いわゆる税源対象が増えるのと歳出が減るということが不交付の数が増えていくという結果になると存じます。
  150. 平野達男

    ○平野達男君 一般論では多分そうだと思います。  一つのパターンとしては、景気が良くなって地方税収がずっと増えるということですね。しかし、ここではどうもやろうとしていることは、基準財政需要額を圧縮しますよと言っているようにしか見えないんですね。これは財政局長の答弁でもいいですけれども、税源移譲によって不交付団体を作ろうとしているのか、あるいは基準財政需要額、いわゆる財源保障機能の圧縮で不交付団体を作ろうとしているのか、これどっちですか。──あっ、失礼しました。
  151. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 最初に言わせていただいて、細目、税務局長の方から、財政局長から答弁させますが、平野先生、基本的には今回、三位一体改革というのは、基本的には二つのことが入っているんだと思うんですね。それが混線する、しやすいことになっていますので、私も頭の整理ができるのに随分時間が掛かったんですが。  補助金の廃止というものの中には、基本的にはいわゆる一般財源化、例えば保育所等々一般財源化しているというような形で、これは基本的には税、譲与税、また交付税で埋めるのが一つです。もう一つは、同じ補助金の削減になるんですが、スリム化というものと二つの要素があるんだと思うんです。  このスリム化の方は、済みません、ちょっとラスパイレス高過ぎやしませんかとか、例えばおたく人件費が少し高いんじゃないですかとか、また公共事業ちょっと昔並みにどんどん出ちゃいませんかとか、そういった話でいわゆる歳出削減ということを言っている部分というのが二つ同時に入ってきたような感じがするんで、私は、基本的にこれは整理をせないかぬ、頭の整理をせないかぬところなんだなと思ったんで、このスリム化の方は、収入も減りますけれども支出も減るというところが二つ一緒に入ってきたというところが話を非常に混線させているという具合に、私の頭もしばしこれ、たまたま補助金削減という名前同じなものですから、何となくちょっと同じようなものだと思うんですが、本来のところは違うというのが基本の違いだと思います。
  152. 平野達男

    ○平野達男君 いや、私がお聞きしているのは、極めて技術的なことを聞いておるんです。  要するに、不交付団体を作るためには、基準財政需要額、つまり財源保障機能の枠をぐっと下げれば地方交付税でその分だけ面倒を見なくなって済むようになりますから、自動的に不交付団体になるんです。どうもこの全体の枠組みからすると、どうもそっちが主体になるんじゃないかという感じがするので、そこを確認したいんです。
  153. 瀧野欣彌

    政府参考人瀧野欣彌君) 議員御指摘のように、交付税の不交付団体というのは基準財政収入額と基準財政需要額の差額で決定されてくるわけでございますので、両方が絡んでくることは事実でございます。  しかし、我々といたしましては、基本的には地方税を充実し、基準財政収入額を増やすことによって不交付団体を増やしていきたいという基本的な考え方を持っております。もちろん全体、国、地方に通じまして歳出のスリム化をしなきゃいけませんので、その点について基準財政需要額が縮減されるという面はあろうかと思いますけれども、それは不交付団体を作るという目的ではなくて、あくまでも国、地方を通じましてスリム化を図るということでございます。
  154. 平野達男

    ○平野達男君 今回は、先ほど言いましたように地方税の増収ができるような経済状況でもない。それから、税源移譲についても、補助金の削減は一応四割ですけれども、何割行くか分からない。しかも、それは税源移譲をしますと、地方公共団体、地方自治体間で偏在性が起こる。そういう中で、偏在性が起これば、逆にこれは、逆に、失礼しました、不交付団体ができやすくなるかもしれませんが、ただ、全体的に見ますと、ここにありますように、総額の抑制等により、かつ財源保障機能を見直すと書いているんですね。そうすると、この不交付団体というのは、そういった税源の移譲というんじゃなくて、強制的に不交付団体を作れる、作るというふうになっちゃうんじゃないかと思うんです。  ここをもう一回、私の言い方はちょっときつい言い方になっていますけれども、多分言いたいことは分かっていると、分かっていただけると思いますので、財政局長、もう一度答弁お願いします。
  155. 瀧野欣彌

    政府参考人瀧野欣彌君) 交付税の財源保障機能を縮小するというのは、全体として地方団体の自由度を高めていこうという中で考えていることでございまして、特にそれが不交付団体を増やすために、そういう目的で行われているということではないということでございます。あくまでもそれは、全体として地方公共団体の歳出の自由度を高める、あるいは国、地方財政の健全化を図るということでございまして、目的とその結果という面で若干の相互連関はあるかなと思います。
  156. 平野達男

    ○平野達男君 結果的に同じだということです。だから、この結果、不交付団体の人口の割合を大幅に高めることを目指すというのは、そういう操作を通じて不交付団体を作るということだと思うんです、ということだというふうに理解します。  つまり、何を言いたいかといいますと、補助金は削減します、地方交付税は削減します、削減した結果、削減するということで三位一体改革の中の二つは物すごい大きな歳出削減をする、失礼しました、歳出削減が前面にぼんと出ているんです。  そこで、話がちょっと変わりますけれども、竹中大臣に説明します、御質問をいたします。  政府の基本方針、ここに改革のポイントというのがありまして、三位一体改革のタイトルの後に改革のポイントというのが書いてありまして、三つのことが書いてあります。これをちょっと御説明いただけるでしょうか。
  157. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 改革のポイントでございますけれども、基本的には、国の関与を縮小して、税源移譲等により地方税の充実を図ることで歳出、歳入両面での地方の自由度を高めるということと、それと、その下で、自らの責任で自主的、効率的な選択の幅を拡大する、最後に、効率的で小さな政府を実現するということでございます。
  158. 平野達男

    ○平野達男君 片道なものですから、私が説明してもよかったんですけれども、ちょっと時間の節約でやっていただきました。  今の言ったことは、資料一の右下に書いてあります。非常にいいことを書いてあるんです。  そこで、効率的で小さな政府というのは、これは具体的にはどういうイメージでしょうか。
  159. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) そこは厳格に定義をしているわけではございませんですけれども、一つのイメージとしては、特に地方との関連でいうならば、受益負担の関係が明確になることによって、自由度もあるけれども責任も負っていただく、その下で効率的な政府を作るメカニズムが働いていく、そのようなイメージであると認識しております。
  160. 平野達男

    ○平野達男君 一般論としてはそうかもしれません。しかし、ここで効率的で小さな政府というのは、力点は小さな政府に置かれていて、先ほど言いましたように三位一体の大きな柱は補助金の削減地方交付税の削減なんです。地方公共団体について大きな削減歳出見直しを迫るというものなんです。  ですから、私はこの三つの中で効率的な小さな政府というのは、本当は一番最初に来なくちゃならないんじゃなかったかというふうに思っていたんです、と思うんです。それはそういうふうに考えませんか、竹中大臣
  161. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) そこは委員は、地方交付税の削減というのが重要なポイントであるというふうな言い方をされますけれども、そうではございません。地方交付税というのは、むしろ税源が偏在する中で新しい地方交付税の仕組みで調整の機能を果たさなければいけない、それが仕組みの問題でございます。  しかし、この仕組みの改革の中では、同時に、これは谷垣大臣がよくおっしゃいますようにスリム化も実現していかなければいけないんだと。あくまでも三位一体は、これは仕組みの改革であるというふうに認識しています。
  162. 平野達男

    ○平野達男君 それは立場をどの視点で見るかだと思うんですが、三位一体改革というのは、国と地方との財政改革をやっていますから、地方の視点というのも非常に重要だと思うんです。  そこで、上、私の、この平野達男なりの三位一体改革の影響どう出るかということを、ちょっと上にちょっと、改革のポイントに代わってちょっと整理してみました。ちょっと次元が、ちょっと話違いますが、ちょっと読みますと、まず、地方ほど歳出規模の大幅な見直しが迫られます。これはもう地方、ということは、地方ほどというのは、岩手県みたいな山奥の山、山村ほど交付税、補助金に依存していますから、徹底的な効率化が求められます。それから、地方ほど歳入、歳出両面での自由度の高まりが都会に比べりゃ小さい。だから、下に書いているものは、これは平面的に書いていますけれどもね、地方公共団体の中に差が出るということなんです。それから三番目、財源の豊かな自治体はより豊かに、財源の少ない自治体はより少なくなり、両者間の差が一層開く可能性がある。  これ、どうですか、財務大臣総務大臣
  163. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) この問題は、主としてこれは総務省でどう調整していくかということをお考えいただくべきだと思いますが、今後の税源移譲の中でどういう税体系を作っていくか、そういうことで問題を解決していかなければいけないと思います。
  164. 平野達男

    ○平野達男君 済みません。総務大臣が答弁する前に、この認識は共有していただけますか。それをお答えいただければいいです。
  165. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 何も手を打たなければこういう形がある程度出てくると思います。
  166. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 今言われましたように、これは不交付団体のこととかかわってくる話になるんだと思いますけれども、基本的には何もしなければ、今のままで何も手を打たなければ差が出てくるということになりますので、そういうことにならないようにせにゃいかぬということだと思っております。
  167. 平野達男

    ○平野達男君 何もしなければということなので、つまりは、これは何もすると書いていないんですよ、この、ここには。だから、この二〇〇三年の、基本指針二〇〇三年でいくとこうなっちゃうんですよ。しかも、不交付団体ができれば、小さな政府じゃなくて、税源移譲のやり方によっては大きな政府ができちゃうんですよ。  竹中大臣、その認識はございますか、今。
  168. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 先ほど申し上げましたように、三位一体の改革の中には、基本的には税源の偏在があるから、そのことは重要だということは認識をして、どこにも書いていないとおっしゃいますが、三位一体のその基本方針二〇〇三の中にはそのことは明記をしております。「税源移譲を含む税源配分の見直し等の地方税の充実に対応して、財政力格差の調整の必要性が高まるので、実態を踏まえつつ、それへの適切な対応を図る。」、これは交付税の改革の中の重要な柱として掲げているものでございます。
  169. 平野達男

    ○平野達男君 私が言っているのは、それに対する具体策が何も書かれていないと言っているんですよ、ここは。
  170. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 交付税制度直すんですよ。中身を直せば幾らでも。  竹中大臣
  171. 平野達男

    ○平野達男君 片山委員長委員長答えられたけれども……
  172. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) ですから、交付税改革というのはその三位一体の中の非常に重要な柱になっているわけでございます。現実に、今年の一月の諮問会議でそのことを正面から議論しておりまして、そもそも論を行う、そういうことについての議論を始めている。しかし、これは大きな制度改革でありますから一度にできない。これは、税源移譲の充実とともにこの交付税の在り方そのものを見直していく。それが一体となって、我々は三年で四兆というのを目指しておりますけれども、その間にしっかりとした制度を構築、現実的に構築していくということになっているわけであります。
  173. 平野達男

    ○平野達男君 そのために交付税あるんだから、そうでしょう。  ただ、いずれにせよ、交付税そのものも縮減をしていきますよということですから、総体として交付税の額が減っていく、つまり地方に行く交付税は少なくなるということからすれば、いずれにせよ、また同じことの結論になりますけれども、今回の三位一体改革の中では相当の歳出削減を迫られるということは、これはそのとおりだと思います。  そこで、資料の二をちょっと見ていただきたいと思うんですが、これも私なりの理解でちょっと作りました。今言ったようなことを図にしました。  一番上がマクロモデル図で、交付税と補助金見直しますと。補助金を削減して、これ全部が全部ではないですけれども、税源移譲して自主財源のところに乗っけます、交付税改革もやりますから交付税も減りますと。これはマクロ図ですね。今度は自治体間で見ますと、左側が自主財源の豊かな自治体、真ん中が比較的自主財源の豊かな自治体、右側が岩手県と思ってください。そうしますと、結局、不交付団体については、一応これはモデル図ですけれども、理屈上、歳出規模というよりも税源が増えるんです。右側は補助金が削減されますから、それで一方でこれは地方交付税が縮減をされて、これは地方交付税、どういうふうに配分されるか分かりませんが、税源移譲の配分が非常に少ないですから、どうしても歳出規模にこういう差が出てくる、こういう図になります。  総務大臣、この図に対してどのような見解を持ちますか。
  174. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 岩手県という例が出ましたけれども、一番右側のところだと思うんですが、これは、この交付税というものに関しましては自主財源として渡されても、その分だけ、いわゆる交付税より自主財源を与えられても入ってくる絶対量が不足する。したがって、中小、中小じゃない、零細、財政力の弱い県においてはその分だけ、今までより実入りが減る分だけ税源移譲されても意味がないということを言われたいんだと。
  175. 平野達男

    ○平野達男君 意味がないと言っているんじゃないんです。
  176. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 意味がない、財源が減るではないか、それは事実減ります。その分をどうやって埋めるかというのが交付税のいわゆる調整能力なんだと思います。調整機能だと思いますので、その分は、削減分をいわゆる義務教やら公立保育園等々、きちんと決められた分につきましては、この点に関しましては、きちんとその差が、足りない分だけは交付税で調整いたします。
  177. 平野達男

    ○平野達男君 今こうやって、そういう交付税の議論が出てきましたけれども、この二〇〇三年の閣議決定文は国対地方で、地方はマクロとしてとらえているんですよ。だけど、これをやったことによって地方に対するいろんな影響の度合いに差が出てきますよという視点が全然ないんです。  これは、経済財政諮問会議の中で、これはどういう議論がありました、これは。あくまでも国対ということで、地方、固まりとしての議論だけでしか、これしかなかったですか。竹中大臣、その経済財政諮問会議の状況、ちょっとお知らせください、お聞かせください。
  178. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) これは非常に大きな制度設計です。経済財政諮問会議の骨太の方針というのは制度設計をするものではありません。その基本的な考え方を目指して予算編成の中で具体的な制度設計をしていくものでございます。当然のことながら、地方自治体によっていろんな問題がある、そのことを踏まえて、総務大臣財務大臣の間で地方財政計画も含めていろんな今回のこういう準備がなされたわけでございます。  繰り返し言いますけれども、問題の本質としては、この諮問会議の答申の二十一ページにありますように、むしろ財政力格差の調整の必要性が高まるんだと。実態を踏まえながらそれへの適切な対応を図る、その制度設計をこれから予算編成を通してしっかりとやっていくというのが我々の確固たる方針でございます。
  179. 平野達男

    ○平野達男君 竹中大臣にこの質問をしてもなかなか答弁が、私が期待したような答弁が返ってこなくて、しゃくし定規の答弁になってしまうというのは分かります。分かりますけれども、いずれこれをやることによって地方自治体間の中に影響の度合いが違うんです。これを、認識をしっかり持ってもらわにゃいかぬということなんです。この問題はちょっと後で言います。  そこで、ちょっと別な質問にしますけれども、資料三をちょっと開いてください。  これは、前の図は私が作った図ですけれども、これはプロである総務省が作った図であります。この図をちょっと説明していただけますか。
  180. 瀧野欣彌

    政府参考人瀧野欣彌君) 資料三は私どもの方で作ったものでございますが、これは、財政力の乏しい団体、財政力の豊かな団体というふうに表示してございますけれども、それぞれ地方税のウエートの違う団体につきまして、今回の補助金の見直し税源移譲を通じましてどういう影響が出るかということを模式的に分かりやすく表示したものでございますので、委員がもしも全体のことを表示してないのではないかと、一つ一つきめ細かくしてないのではないかということでありますれば、それはモデル的に二つの団体を表示したものであるということでございます。
  181. 平野達男

    ○平野達男君 どこがこれモデルになっているんですか、これが。  先ほどの議論からいったら、地方の縮減したら交付税で調整しますと言っているんだけれども、この図を信用したら、三位一体改革をやろうがなかろうが差額分は全部交付税で補てんされますから影響がありませんという図なんですよ、これ。いい加減な説明したら駄目だよ、これ。もう一回ちゃんと説明してくださいよ、これ、どういう図か。これは義務教育か何かのやつのために作った図でしょう、これ。違うんですか、これ。(発言する者あり)全くだまし討ちなんだよ、これ。
  182. 瀧野欣彌

    政府参考人瀧野欣彌君) この図は、今申し上げましたように、一般的な団体につきまして地方税のウエートの低いところと高いところを示したものでございます。  このほかに、不交付団体の問題ももちろんあるわけでございますけれども、非常に数が少ないという中で一般的な団体をモデル的に表示したものというものでございます。
  183. 平野達男

    ○平野達男君 だから、この図でいきますと、財政力の乏しい団体でも歳出規模削減は、歳出規模見直しはしなくてもいいという図になっちゃうんですよ、これ。それでいいんですか。
  184. 瀧野欣彌

    政府参考人瀧野欣彌君) これはあくまでも歳入の方をとらえまして、税源移譲と補助金の削減ということを交付税というものを通じまして調整できるということをイメージで表そうとしたものでございます。
  185. 平野達男

    ○平野達男君 もう一点だけ確認しますけれども、そうすると、これは財政力の乏しい団体と書いていますけれども、この縦軸を歳出規模だとすれば、歳出規模改革前と改革後については変化があり得ると、こういう理解でいいですか。
  186. 瀧野欣彌

    政府参考人瀧野欣彌君) この図はあくまでも歳入についての図でございますので、歳出についてはまた別途違うアプローチがあると思います。
  187. 平野達男

    ○平野達男君 歳入と歳出はセットじゃないか。もう一回答えてください。
  188. 瀧野欣彌

    政府参考人瀧野欣彌君) これは、今申し上げましたように、補助金の廃止なり一般財源化の団体への影響を示そうというものでございますので、それを分かりやすく示すという意味では図として限界のあるものであるということは事実でございます。
  189. 平野達男

    ○平野達男君 これは、とにかくタイトルが「三位一体の改革における交付税の財政力格差是正機能」となって、イメージとして悪い。  これによると、地方公共団体はやっぱり左のイメージで持っているんですよ。削られても交付税か何かで入ってくるというイメージ持っているんです。最近ちょっとイメージ変わりましたよ。  だけれども、これは大変誤解を与える図なんですよ。もしこれ意図的に作っているとすれば大問題だし、意図的に作っていなかったとすれば物すごいセンスが悪い、これは。片山委員長に感想を聞いてみたいぐらいですけれども、総務大臣、ちょっと、どう思いますか、これは。
  190. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) この図は、基本的には財政力指数のいろいろ御意見があったときに、これできた背景は、いわゆる補助金というものが減って、それが、公立保育園の分を税源移譲されても、税源移譲されても、おれのところには従来どおりの金は入ってこぬと。なぜなら、おれのところは税源移譲なんかされたって入ってこぬのだから。そうすると、今までどおり交付金もらっておいた方がよかったという御意見が非常に多く、特に小さなところからありましたもので、そんなことはないんですといって、その説明をするときに使った図が元々の話でありましたので、今、瀧野の方から申し上げましたように、基本的には、いわゆる不交付団体等々を念頭に置いておりませんし、いわゆる交付税がなくなって、代わりに税源移譲された方が割食ったというと、いや、そんなことはないんですと。  一番最初に申し上げましたように、今回の段階の中で、いわゆる広義と狭義と、いろいろ三位一体もあろうかとは思いますけれども、その中で、一番最初に御説明申し上げましたように、広い意味で質的な改革、量的な改革、いろいろあろうかと思いますけれども、この分に関しましては、今申し上げた補助金、義務的経費の分についての説明を基本としておるというように御理解いただければと思います。
  191. 平野達男

    ○平野達男君 いずれ実態は、私の勝手に言わせていただければ、資料二のようになるはずです。これは地方の実感を表しているはずです。  先ほどの舛添議員の言葉をかりますと、知的な議論じゃなくて、知的な図をかいてもらいたい。分かりやすい図をかいてもらいたい。これを強く言っておきます。  そして、資料二の、ちょっと別な質問に移りますけれども、それでは、この図の中にプラスマイナスというのが書いていますが、ひとつこれからどうするかということで、いわゆる垂直的財政力格差に対して水平的な財政力格差の是正ということが問題になってくると思います。  このモデルでいいますと、いわゆる自主財源の豊かな自治体、これは不交付団体ということをあえて言っていますが、こうして税源移譲の分だけ頭が出た部分、これをいったん削って、もう一回プールをして岩手県に配分をすると、まあ岩手県のような団体に配分するというような、いわゆる逆交付税制度というものが考えられるかどうか、これをちょっと聞いておきたいと思います。
  192. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) これは、水平的財源調整をすべきであるという声というのは、簡単に言えば逆交付税みたいな話なんだと思うんですね、お考えになっておられるところは。  これは、基本的にはおっしゃっている意味は、これはよく分からぬわけじゃありませんが、これは、都議会というのはすぐ目に浮かぶところですけれども、東京都というのは一番多分、入った分を岩手県のために出せという話を都議会を通さないかぬという話を考えますと、やっぱり議員としては、これはなかなか難しいなというのが正直な私のところ、言わせていただきたい。どうだと言われれば、実現はなかなか難しいなという感じはいたします。
  193. 平野達男

    ○平野達男君 いずれそのときに、それは、財源が増えるところと減るところとの、などの利害ががっちんこする世界ですから、本当に難しいと思います。  そこで、財務大臣総務大臣にお伺いしますけれども、二年前ほどから、二年前というか、特にここ一年なんですが、私のところにも市町村長の、首長さんが私に来まして、三位一体の改革を進めてください、進めてくださいという陳情、結構ありました。そういう陳情を受けたことありませんか。
  194. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 財務大臣になる前には受けたことがございます。
  195. 平野達男

    ○平野達男君 総務大臣もありますね。──いいです。総務大臣もあるそうですから。分かりました。
  196. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 総務大臣になる前ならありました。
  197. 平野達男

    ○平野達男君 そのときにどういう対応をされました。
  198. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 正確な記憶はございませんけれども、なかなか制度設計は、私のところはどちらかというと財政力の弱いところが多いものですから、なかなか制度設計は簡単でないなというようなことを申し上げたのではないかと思っております。
  199. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 当時、総務省の中で郵政の民営化とこの三位一体の話が大きな話題だったんですけれども、ちょうど政調会長をしているころだったんですが、これは郵便局の民営化よりこっちの方がよっぽど大変だなというのは率直な当時思った実感です。
  200. 平野達男

    ○平野達男君 私は、岩手県の首長さんが来たときに、何で三位一体改革を推進してくれるか分からなかったんです。何で、要するに岩手県の市町村の首長さんがこの三位一体改革の推進の立場に立つんですかと。これは、先ほど私らが言っているように、地方ほど大変な歳出見直しを迫られるんですよと、本当にこれを、要するに中身を理解すれば、推進どころじゃない、大変だ、大変だといって騒がなくちゃならない話なんですよと言ったんです。  何を言いたいかといいますと、殊更、私が先ほど言っているように、さっきの総務省のこの図が示すように、三位一体改革の本当の姿、自治体間で差があるという姿がきちっと伝わっていないんですよ。これは最大の問題だと、大きな問題なんです。  総務大臣、それに対してどのような見解をお持ちですか。
  201. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 基本的には私も谷垣財務大臣と同じで、財政力指数、極めて弱い筑豊というところから選挙区になっておりますんで、これは間違いなく、おっしゃるように、厳しいことになってくるという感じは率直なところでしたし、そういった意味では合併というのはこれどうしても必要になるかなと思ったり、いろんな、これ地方の交付税の在り方等々いろいろ触らぬととても難しいなというのが正直な実感だったんで、やっぱり今言われましたように、そういったような地方の方の財政の方はより厳しくなるというようなことにならないようにするためにどうするかという知恵が今一番問われているんだと思いますんで、この交付税の在り方とか、いろいろ今経済財政諮問会議で話題になっているところでもありますけれども、この対応というものにつきましては偏在性の少ない地方税制の体系というものを作るというのが一番肝心だと思っておりましたんで、今回も基幹税にはどうしてもということをやらせていただいたのが一つ、満足できるところまではいっておりませんけれども、一つの突破口にはなったと思っているんですけれども、基本的には、地方の自由度を増やすためには、やっぱり基幹税的なもので、偏在性の少ないものでやっていく必要がある。  しかし、それでも足りないということははっきりしていると思いますんで、やっぱり交付税としての調整機能というものは、これはいろんな御意見がありますけれども、これは維持されてしかるべきと思っております。
  202. 平野達男

    ○平野達男君 まあ総務大臣の答弁は答弁として受けますけれども、いずれにせよ、トータルとして見た場合に、補助金の削減規模、これは税源移譲がどうなるかは分かりません。あと、そこが削減規模が非常に大きい。それから、地方交付税も今回一兆何がしか削減しました。そういったものがマスとして削減が幅が非常に大きい中で、地方公共団体が相当な歳出規模見直しを迫られるということはしっかり伝えにゃいかぬと思うんです。  で、今、先ほどの財務大臣総務大臣も同じような認識を持っているんですが、なぜか地方公共団体の首長さんが持っていないというのが何でかといったら、これは総務省が説明していないということだからでしょうかね。それとも、地方自治体さんのその認識が甘いということなんでしょうか。質問にならないような質問で申し訳ありませんが、総務大臣、どのように思われますか。
  203. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) いろいろ地方の方お見えになるんですけれども、今言われたように、意外と小さなところは、もっと進めてくださいなんという人には、僕は何回か図をかいて分かっています、という調子で説明をしたことは一度ならず、一度ならずどころか何度も、何度、何度と、何度もあるんですが、これは結構説明をしていくと分かっていただける、おお、これは大変なんだなと分かっていただけるという方も確かにいらっしゃいますし、じゃ、今まで一回も説明しておらぬかと思ってきちんと説明しようとすると、そんなことは前から聞いておるという方もいらっしゃるんで、同じ話をしても、理解をさっとされた方とされていない方との差もあるのかなとか、人によって非常に対応が違いますんで、何ともこれは、平野先生、ちょっとこれが答えだったと言うのはなかなか難しいんですが、結構それなりに分かっておりましたんで、今回対応をあらかじめしておりましたから、むしろ来年以降どうなるかというのがもっとはっきりしておいてもらうものを示してもらいたいという意見は結構あります。
  204. 平野達男

    ○平野達男君 これは私なりに理解すると、とにかく背景にあるのは、国は物すごい借金抱えていますと、社会保障費も上がりますと、地方交付税特会はもう、要するに借入金と加算金で今までごまかしてきたけれども、それも限界がありますと。そういう中で、歳出地方の要するに面倒見切れませんということは本音としてありますよね。あるんだけれども、それを隠しながら、うまくうまくやろうとしているんですよ。だから、三位一体改革の中で一番これ大変なのは地方自治体、自治体なんです。自治体の中に、素直に、簡単に、素直にしゃべればいいんですよ。もちろんそれに対して物すごく自治体は反発しますよ。だけれども、反発する機会すら与えられていないんだ、今のは。全体の図を示していないから。  これ、竹中大臣、今のような観点、特に国対地方というマスでとらえるんじゃなくて、地方自治体間の中に非常に差が出てくるんですよという観点を入れて、是非経済財政諮問会議のテーマとしてこれもう一回議論してくださいよ。
  205. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 先ほども申し上げましたように、大きな制度設計でありますので、当面三年間で四兆円という規模を設定しながらも、引き続き検討しなければいけないという強い問題意識を持っております。  とりわけ、今年は二点が大事であると。  一つは、その全体的なプロセスについてもう少し明確に示せないかと。全体のプロセスが分からないんだという委員の御指摘がありましたけれども、そういう問題意識を我々は持ってやっております。総理からもそういう御指示をいただいております。  それと、今おっしゃった、もう少しこれは制度の詳細が見えることによって各自治体に対してそれなりの個別のインフォメーションが行くという面もあろうかと思いますので、この点、とりわけ財政の調整のメカニズムである交付税のそもそも論について、これもしっかりと、今年の議論するというテーマになっておりますので、この二点、是非しっかりと取り組むつもりでおります。
  206. 平野達男

    ○平野達男君 先ほども総務大臣からも検討を前向きにやるという発言がございましたので、是非……
  207. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 三位一体の改革と関係ないんだよ。交付税を切り過ぎたんだよ。それだけの話なんだよ。
  208. 平野達男

    ○平野達男君 あのですね、いずれにせよ……
  209. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) これは総務省の責任だよ。  はい、平野達男君。  三位一体の改革はうまくいっているんですよ。交付税を切り過ぎたんだよ、ほかのことで。はい。
  210. 平野達男

    ○平野達男君 委員長参考人として呼びたいと思うんですが、よろしいでしょうか。
  211. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) いや、分かっていないんだよ、答弁の方も。
  212. 平野達男

    ○平野達男君 いずれにせよ、これは国の、自治体の立場から見ますと、今回の三位一体改革、別な視点を当てますと、国から地方への歳出の大幅な見直し、これは補助金と交付税ですね、これが一本目。それから、補助金、要するに税源移譲、これは補助金の削減についてどうも、比較して少なくなりそうですが、まあ税源移譲、これは二本目ですね。それから、財政の、地方自治体にとっては財政の効率化を求められるという、三位一体を自治体の立場に立ってみますとこの三つの柱が成り立つんですね。  これは三位一体じゃなくて、岩手県のような本当に自治体にとってはもう三重苦の改革ですよ。そういうことをしっかり分かるようにまず問題意識を持ってもらうのと、それに対してどういう対策を取るのかということを是非分かりやすくするように、分かりやすく説明していただくよう求めて、この三位一体改革についての質問を終わりますが、委員長、発言がございましたら、どうぞやってください。
  213. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) あのね、三位一体改革の方は、これは税源移譲含めて公共事業を少し圧縮しましたからその分減りましたけれどもね、一兆円に見合うような七千八百億措置しているんですよ。問題は、地方財政計画を作るのが、この私は策定が不手際だったと思いますよ。だから、実際上は交付税を必要以上に切り過ぎた結果になっているんですよ。それは三位一体と全く関係ないんですよ。地方財政計画を作って、地方財政対策を単年度のやつをきちっとやるところが不十分だったんですよ。そこはひとつ分けて考えていただく方がいい。詳しく説明してもいいけれども、もうこれ以上時間取るとね。三位一体何の関係もありませんよ、地方交付税のこれだけ圧縮は。  はい、平野達男君。
  214. 平野達男

    ○平野達男君 ありがとうございました。取りあえずはお礼を、お礼だけ言っておきます。  次に、鳥インフルエンザに関して質問いたします。  あと、総務大臣、私の方は結構でございますので、委員長がよければ退席していただいて結構です、総務大臣は。
  215. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 何を。
  216. 平野達男

    ○平野達男君 私の方はもう質問ございませんので、委員長がよければ……
  217. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) いや結構です、結構です。  はいどうぞ、麻生総務大臣、じゃないのか。
  218. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 退席の話です。
  219. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) あ、どうぞ、それじゃ。
  220. 平野達男

    ○平野達男君 今、鳥インフルエンザの発生、国内で大騒ぎになっておりますけれども、今日はちょっと視点を変えまして、元々鳥インフルエンザが発生したのがこれは東南アジアだったと私は理解していますが、あるいは中国だったかもしれません。東南アジアと中国に視点を当てまして、以下質問をしたいと思います。東南アジアといっても国が広いんで、特にタイと中国に視点を当てて質問したいと思います。  まず一番最初に、日本はタイ、中国、ブラジルからたくさんの鳥を鳥インフルエンザ発生の前に輸入しておりました。タイ、中国からの鳥肉の輸入、インフルエンザ発生する前の状況はどうだったかをちょっと御説明願えるでしょうか。
  221. 中川坦

    政府参考人中川坦君) お答え申し上げます。  まず、タイからの輸入量でありますが、インフルエンザ発生前ということでございますので平成十四年度の数字で申し上げますけれども、タイからは年間十四万トン、それから中国からは十二万トンの輸入をいたしております。
  222. 平野達男

    ○平野達男君 いずれ相当の量を輸入していたということだと思うんですが、それでは、タイと中国での鳥インフルエンザの発生確認というのはいつになっていますか。
  223. 中川坦

    政府参考人中川坦君) タイにおきましては、一月の二十三日に初発を確認をいたしておりまして、それから、中国におきましては、一月の二十七日以降、四十九の地域において発生があったというふうに承知をいたしております。
  224. 平野達男

    ○平野達男君 今の答弁を、資料四を参考にしながら、踏まえまして、資料四をちょっと参考にしていただきたいと思います。  そこで、タイと中国なんですが、タイでは一月二十三日に報告があった、中国では一月二十七日に報告があった。その後どういう発生状況でどういう対応をしているか、ちょっと御説明願えますか。
  225. 中川坦

    政府参考人中川坦君) それではタイから順次申し上げますけれども、三月の十六日現在で、既に七十六県中三十二県において発生があり、現地におきましては三千万羽の処分をしたというふうに聞いておりますし、それから最近におきましてもまだ発生が続いているということでございます。  それから、中国の方は、四十九地域に発生があって、既に八百万羽を処分をしたというふうに聞いております。中国では、二月の十七日の報告以降、失礼、二月の十七日の発生以降、新たな発生はないということで、昨日、全発生地域の移動制限を解除した旨、発表いたしておりますけれども、私どもとしましては、今後、中国から更に具体的な発生状況の中身あるいは具体的な措置についてもう少し情報を取る必要があるというふうに思っております。
  226. 平野達男

    ○平野達男君 鳥インフルエンザは人に感染することが知られております。一般論で結構でございますから、鳥から人に感染する確率というのは、これは高いのかどうか、これをちょっと御説明、言っていただけますか。
  227. 田中慶司

    政府参考人田中慶司君) 人は、鳥インフルエンザウイルスに対するレセプターというものを持っていませんので、感染した鳥の羽や、あるいは粉末状になったふんを吸い込むなどして大量のウイルスに暴露しない限り、感染することはないというふうにされているところでございます。  海外では、香港やベトナムのように、店頭での生きた鶏の小売が一般的な地域において感染事例が報告されておりますけれども、我が国では通常の生活で病気の鳥と接触したり、ふんを吸い込むことはほとんどないことから、一般国民が感染する可能性はないというふうに考えているところでございます。
  228. 平野達男

    ○平野達男君 この資料四の中に書いてありますけれども、タイでは一月二十三日に公表されまして、人の感染が十一人、うち死亡が七人と出ています。今の説明では、私は、人から、じゃない、鳥から人に感染する可能性は低いと。ただし、タイの場合は鳥を生、生きたまま扱ったりしていますので、日本の国と、の感覚で考えるとちょっと感覚、判断が間違うかもしれませんが、それでもやっぱりそんなに可能性は高くないというふうに私は理解しました。    〔委員長退席、理事尾辻秀久君着席〕  しかし、としますと、そういう観点で、人の感染十一人、うち死亡七人というのは、これは非常に多いんじゃないかと思います。ベトナムはもっと多いです。そうしますと、一月二十三日に公表されましたけれども、タイではもっと前から、少なくとも数か月前から鳥インフルエンザが発生したと考える必要があるように思いますけれども、農林水産大臣はこれをどのように認識されていますか。
  229. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 今御指摘のとおり、一月二十二日に人に感染したとの報道があったことから、念のための措置として、緊急的にタイからの、家禽の、家禽肉の輸入停止を実施したわけであります。そうしましたら、翌日、タイ政府から鳥インフルエンザの発生と、こういうことを外交ルートで通じて来たわけでありまして、いつの時点でタイで発生しているかと、この辺のことは、通報がそのような状況でありますので、確認をできないというような状況であります。
  230. 平野達男

    ○平野達男君 それじゃ、中国ではどうでしょうか。  中国では、失礼しました、今のお話ではタイではもういつごろから発生したか分からないというお話でしたね。  それから、中国では、それではどうでしょうか。
  231. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 中国におきましても、一月二十六日に中国系香港紙に中国国内でアヒル二百羽が鳥インフルエンザで死亡と、こういう報道があったわけでありまして、外交ルートを通じまして直ちにこれも中国政府に確認を行ったわけであります。これは事実でないというような文書での回答がございました。  翌二十七日に衛生専門家を中国に現地調査に派遣すると、こういう発表をいたしましたところ、同日のもう夜になりまして中国政府から、政府から本病の発生を認める旨の発表があったところであります。  こういう面で、タイ並びに中国におきましても、このインフルエンザの発生日については確定するというのが難しい状況と、こういうふうに認識をしております。
  232. 平野達男

    ○平野達男君 じゃ、一点だけ確認させていただきますけれども、先ほど私は、人の、タイのこういう人の感染の例を見ますと、かなり前から発生したんだと、発生していたと考える必要があるんじゃないかという質問をしましたけれども、これはその考え方は、農水大臣、共有できますか。
  233. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) まあ、かなり前からという、この辺のこと……
  234. 平野達男

    ○平野達男君 いや、大体のスパンでいいですよ。
  235. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) これはね、ちょっと何日というようなことはちょっと、私どもそれを申し上げるようなことは、現実に先方からの報告が、私ども問い合わせしたときからそういう話があったわけでありますから、それを申し上げることはなかなか難しいことだと思います。
  236. 平野達男

    ○平野達男君 問題意識の持ち方として、随分危機意識が薄いんじゃないですか。
  237. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) いや、それは私ども、輸入等々の問題があるわけでありますから、それはやはりいわゆる家畜衛生条件と、こういう面で九十日間というようなこともあるわけであります。  したがって、それは発生の時点、これはいつになるかと、これはなかなか現実に分からないわけでありますのでそう申し上げたわけでありまして、やはり発生ということにつきましては重く受け止めて対応してきたわけであります。
  238. 平野達男

    ○平野達男君 何でこんなことを言っているかと言いますと、例えば三か月前にタイで発生したと、したとするとですよ、その三か月間発生中に生肉が日本に入ってきたんですよ。中国でも同じなんですよ。  これはたまたま鳥インフルエンザという、こういうものでしたから余り大きな話になっていませんが、もしこれが人に感染するような伝染病だったとすれば大変なことになるんですよ。それに対しての危機意識が全くないじゃないですか、今の答弁聞いていたら。
  239. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) いわゆる九十日間と、いわゆる家畜の衛生条件と、あるいはまた輸出をする等々につきましても、やはりその検疫、病気での死亡と、こういうようなことにつきましては、これは輸出できない、こういうことがこの家畜衛生条件にあるわけでありますので、このインフルエンザの発生と、こういうことにつきましては、十分私ども重い認識を持って対応してきておるわけでありますが、やはりそれらの向こうの、先方の状況と、そしてこれはお互いにその輸出輸入と、こういう面での家畜の衛生条件と、これに基づきます検疫を実施をしておるわけでありますので、厳しい対応をするということは当然でありますけれども、この問題、日数をいつにというようなことはなかなか判定し難いことじゃなかろうかと思うわけです。
  240. 平野達男

    ○平野達男君 私が言いたいのは、最後に言った、日数を幾らと判定しろなんて言っていないんです。一月二十三日に分かったんですけれども、その前から鳥インフルエンザが発生していたという認識を持つ必要があるんじゃないですかと言っているんですよ。  そうしたら、質問の仕方を変えますけれども、タイと中国に対して、いつから発生したということを報告しろと求めましたか。
  241. 中川坦

    政府参考人中川坦君) タイ及び中国とその後、家禽肉の、特に加熱処理をしたときには輸入再開ということで条件の交渉をいたしました。その際に相手方に対しまして、いつからこのインフルエンザが発生があったのかということを私ども事務方としては問いただしましたけれども、正式に先方から通報があった、その日以前から発生があったというふうな説明は我々としては引き出せなかったといいますか、そういうことでございます。  そこで、タイとは既に加熱処理をされました鳥肉についての輸入再開の条件をセットいたしましたが、その条件の中に、これからはその相手国、輸出国におきまして高病原性インフルエンザの発生、またその疑いを確認した場合には二十四時間以内にその旨を通報するとともに、これらの発生状況を毎月報告しなければならないという条文を入れまして、今までこういう明定がなかったものですから、今回こういう新たな条件を付けたところでございます。
  242. 平野達男

    ○平野達男君 日本で鳥インフルエンザが発生したら大体分かる、すぐ分かる仕組みになっていますね。ところが、今の答弁だと、タイも中国もいつからやったか、発生したか分からないと、答えられないという答えだ、答えたでしょう。こういう国から鳥肉とかこれから家禽類の輸入というのはできますか。
  243. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) それはあくまでもいわゆる家畜衛生条件と、こういう面におきましてその輸入、輸出輸入につきましてはそれらを十分両国で取り決めまして行うわけであります。  そういう点で、特に今回のこの問題を契機に、特に加熱をいたしました家禽肉の問題等につきましては、我が国の検査官、これを現地に赴きまして、その面での徹底と、検査の徹底と、このようなことを十分いたさせておるわけでありまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、やはりこの輸出国との間で締結されております家畜衛生条件、これにおきまして、いわゆる食鳥処理施設での屠殺前後の検査の結果と、あるいはまた健康と認められたものでなければ原料とすることはできないわけでありますから、その問題と、そういう面での両国との締結された家畜衛生条件、これを遵守、お互いに遵守をして、安全、安心、このことの確立のために行っていかなければならないと、こう思います。
  244. 平野達男

    ○平野達男君 国際協定は遵守する、それは当たり前ですよね。  私が問題にしたいのは、ひょっとしたらタイの生産者というのは病気がどういうものかも分からないかもしれない。発生したとしてもそれを通報する仕組みもできていないかもしれない。いや、日本は今だって京都でああいうのが発生して大騒ぎになっていますね。何で三日も四日も遅れたかとか。ところが、日本では三日、四日遅れたのが、タイでは何か月間も遅れていたかもしれないんですよ。この状況についてしっかりとしたこれ評価をしなくちゃならないと思うんです。この件についてはまた後で質問します。  外務大臣、ちょっとお待たせしましたけれども、FTAの交渉の窓口として今交渉に当たられているのは外務省だというふうに思います。この食の安全、いわゆるFTAの中で農産物というのは一つの大きなテーマになっています。この食の安全に関しまして、抽象的な言葉で言いますと、輸出国には食の安全を確保する私は義務があるんじゃないかと思っています。それから、輸入する側も、そういったものをしっかりとしたものを確保してくれということを言う権利があるんじゃないかと思っていますけれども、外務大臣はどのように考えておられますか。
  245. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) FTAの交渉は、これは外務省が中心となって、この食の安全の場合ですと農水省あるいは厚生労働省と連携をしながら交渉をしております。外務省が総合調整をするという立場でございます。    〔理事尾辻秀久君退席、委員長着席〕  それで、基本的な考え方といたしまして、我が国が食料を輸入をする場合に、その相手国に対しまして食の安全を確保するということを求めていくということは、これは当然のことであろうかと思います。国際的な枠組みを見てみますと、これはWTO協定の中にSPS協定といいまして、衛生植物検疫措置の適用に関する協定というようなものがございますけれども、そういった多角的な防疫体制においての考え方、これは、輸出国側が食の安全を確保するという体制ではなくて、輸入国側が検疫といった措置を取る、そのときのルールが設けられていると、そういう考え方でございます。  ただ、一般的に輸出国側に対しまして食の安全を確保する観点から申入れをする、そういったことを行うこと自体、それがそのマルチの協定上問題があるということではないわけでございます。  今までのEPAの交渉をしてきた過程で言いますと、食の安全の確保のための体制、これにつきましては必ずしもEPAの交渉項目とはなっていないということでございます。ただ、もちろん食の安全への関心は非常に強いわけでございますから、EPAの交渉におきまして総合的な観点から交渉をしていくということは必要であろうかと考えております。
  246. 平野達男

    ○平野達男君 今の外務大臣の説明ではあくまでも水際対策でやっているよという御説明だったと思います。  そこで、坂口大臣、ちょっとお伺いしますけれども、やはり、先ほど私農林大臣にちょっと質問したのは、インフルエンザが実は一月二十三日以前に発生していたかもしれないと、その状況の中で生肉が入っていたと。最近の家禽類のいろんな伝染病、あるいはほかの動物の伝染病でもいいですけれども、人に伝染する、感染する確率が非常に高まっているんじゃないかと思います。SARSもそうでした。ずっと前のスペイン風邪もそうだったと思います。そういったものが発生しているということが分からないまま日本に入ってきているということに対しては、これは人の健康という観点からも非常に大きな脅威だと思うんです。これに対して、坂口大臣、どのように思われますか。
  247. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 鳥インフルエンザだけに限って言えば、これは肉を食べましてもそこから感染するということは報告されておりませんし、ここは大丈夫なんだろうというふうに思っておりますが、今御指摘のように様々な、SARSを始めといたしまして動物とそして人間との間の病気というのは発生をいたしておりますし、その危険性というのは十分にあるというふうに認識をいたしております。  したがいまして、そうした動物等の移動をしますときに、そうした危険性がないかどうかということをどうチェックするかということは非常に重要な課題になってくる。それは輸出をする国がちゃんとやってくれるのか、それとも輸入をする方の国がそこを十分チェックをするのか、やはりいずれかだろう。あるいは両方でやれれば一番いいというふうに思いますが。国によりましてはなかなかそこまで体制ができていない国があるということになれば、輸入をする側できちっとやるということになるのではないかというふうに思います。
  248. 平野達男

    ○平野達男君 私は、今大臣の言われた基本的にはやっぱり両方だと思います。  特にもうこれ、今回の鳥インフルエンザの例で分かりますけれども、発生期間が長ければ長いほどどんどん蔓延すると同時に、今回鳥インフルエンザで言われているのは、人に感染をすれば新たなウイルスになる可能性も、確率、リスクも高まってくる。だからこれは早期に発見して早期に処理するんです。ところが、タイは、中国はいつから発生したか分からないと言っているんです。そうしますと、これは水際対策の以前にタイ、中国の国内の体制を、これぎっちりチェックする必要があるんじゃないですか。これどのように思われます。
  249. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 国際貿易の問題、特に世界最大の食料の純輸入国であります我が国にとりましては、やはり輸入食料の安全性、この確保、これは御指摘いただいております鳥インフルエンザの問題いかんにかかわらず、極めて重要な問題と。そういう面で、このWTO食品衛生のこの中ではSPSの協定があるわけでありまして、そういう面で実は先ほど外務大臣に御質問ございましたが、今度のメキシコとの交渉におきましても衛生検疫措置の緩和を要求されたわけでありますが、私の方は、我が国としてはこの衛生検疫措置、これは貿易促進の観点から取り扱うことは、これは不適当だ、こういうことでこの要求を拒否をしたわけでもございます。  したがって、このSPS協定に認められております人の生命やあるいは健康等を保護するという必要な措置を取る、先ほども御指摘ありましたが、権利、FTAのこの協定におきましても、やはりこのSPS協定の権利、義務を再確認するという条文を規定するということが必要であるわけでありまして、FTAの関係につきましてもそのような考え方で臨んでまいりたいと。特にまた、それぞれ衛生検疫等の情報の交換とリスク管理、リスクの情報を円滑に推進すると、こういうことは必要なことと、このように思っております。
  250. 平野達男

    ○平野達男君 どうも問題意識が、私が問題、持っている意識がちょっと伝わっていないようなんですが、検疫は検疫として分かりました。私が言っているのは、生産者から外に、あるいは地方公共団体に、国に行くルートがしっかりしているのかどうか、それから、そもそも生産者がそういう意識を持っているのかどうか、それからあと、生産条件が疫病とか何か発生しないような条件になっているのか、こういったものをしっかりチェックしないと駄目なんじゃないですかと言っているわけです。  今最近、メキシコでFTA協定締結いたしましたね。このメキシコとの中では、これは豚と鶏、これこれから入ってくるようになりますけれども、こういった話、全然してないでしょう。メキシコはかつて豚コレラが発生したはずです。そういうところから、水際対策だけで十分ですよということで輸入を許可するというわけにはいかないはずなんです。  だから、そういった検疫の体制と同時に、そういったソフトウエア、ソフト対策といいますか、そういった体制整備をしっかり求めていかなければならないし、そういった体制がしっかりしていない国でないと、これは簡単に輸入を認めては駄目なんじゃないかと思うんですよ。こういう視点が大事なんじゃないかということを言っておるんです。
  251. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 我が国といたしましては、輸入につきましては、それぞれ清浄国と、こういうことでなければ輸入も認めてないわけでありますから、そういう面でも、いろいろな情報であるとか、それぞれ外交ルート等々を通じまして、その対応というのはしっかり、今日までもやっておりますが、今回の問題を契機にまた更に努力を十分いたしてまいりたいと、こう思っております。
  252. 平野達男

    ○平野達男君 全く誠意がないですね、答弁に。やる気も感じられませんね。これ本当に大事な話ですよ。  これはタイに、例えばタイの一国でもいいですよ。タイに徹底的にその究明を求めるべく体制を整備するというのは、日本のためだけじゃなくて、これは実はタイのためにもなるんですよ。  それからもう一つ。  最近のこの鳥インフルエンザが示しますけれども、先ほども言いましたように、病気に国境がなくなっているんですよ。そういうときには、繰り返しますが、早期発見、早期対応が大事なんです。先ほど坂口大臣が言われましたように、輸出国であるか輸入国であるか、それはいろいろ議論はあるでしょう。輸入国の中でそういう対応をする能力がなければ、国が行くということが、日本が行っていろいろやることも大事だと。だから、そういうことを、FTAの交渉にしても、これからいろんな二国間の交渉についても、しっかりとした概念を持ってこれは交渉に臨む必要があるんじゃないかなということなんですよ。  それをね、今、これから前向きにどうのこうのという話じゃなくて、まずタイから始める必要が、私は必要だと思いますよ。どうですか、これ。
  253. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) もう既に、御指摘いただく以前に私ども、鳥の関係につきましても、技術関係者をタイに派遣をしたりして、その対応と、こういうことはもう既にやっておるわけでありまして、先ほど来申し上げますとおり、食の安全、安心と、こういう面での輸入の面につきましては十分対応しなければならないわけでありますので、我が国の技術関係者あるいは検査員も行っておりますし、その対応をタイにも、また経済協力と、こういう面での対応という面でもしっかりやってもらいたいと、こう思っております。
  254. 平野達男

    ○平野達男君 外務大臣、今までの議論を聞いていてどのように思われますか。先ほどのお話では、水際対策ということでしかお話しされませんでした。だけれども、やっぱりその前の、輸出するその生産国の状況というものをやはりきっちりチェックする視点というのはこれから持たなくちゃならないと思うんです。FTAの交渉の中でこれを前向きに出していただきたいと思うんですけれども、どうですか。
  255. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) これは、農水省そして厚生労働省と御相談をしながら、この問題については総合的な立場から考えていきたいというふうに考えております。
  256. 平野達男

    ○平野達男君 外務省は要するに窓口業務だからという話かもしれませんが、いずれ外務省もそういう意識はしっかり持ってもらいたいと思います。  そこで、坂口大臣、もう一点、私見というか、で結構でございますから、日本として、輸出国であるか輸入国であるかというお話がございましたけれども、日本にできるとすればどういうことがあるかというのを、もし見解をお持ちでしたらちょっとお話しいただけるでしょうか。
  257. 坂口力

    国務大臣坂口力君) これは農林水産大臣の所管よりも、あるいは私の方の所管の方の方が大きいのかもしれないというふうに思っております。これは、なぜなら食品になるからでございます。それで、これはただウイルスだけの問題ではございませんで、物に対する添加物でございますとか様々な問題が実はあるわけでございます。  昨年、一昨年でございましたか、中国のいわゆるホウレンソウの問題でございますとか塩の問題でございますとか、日本でいえばもう使用してはならないものを使用しているということで、日本に大量に入ってきていたという問題がございました。これは、中国の方にお邪魔をいたしまして、例えばホウレンソウならホウレンソウを作っていただくときに、こういう飼料あるいは、飼料じゃなくて肥料ですね、こういう肥料あるいは消毒物等はもう使用を取りやめてほしいということをお願いをいたしました。塩につきましても精製過程のところでこうしたものは除外をしてほしい、そうでなければ日本は通用しないということを申しました。そうしたことを通じて、向こうもそれを守ってくれるようになってきましたし、そして、その経過の中でこちらもチェックをいたしておりますけれども、以後そうしたものはこちらでも発見されておりません。  そういうことがございますので、鳥だとかそうしたものにつきましても、これもいずれは食べ物になるわけでございますから、農林水産省とよく協議をさせていただきながら、日本に入ってまいります食、鳥にしろあるいは水産物にしろ、そうしたものに対して日本の国で厳重にこれはもう禁止をしておるものにつきましては、あるいはまたその可能性のあるものに対しては、こういうことに気を付けてほしいということをやはりよくお話合いをするということはあり得るのではないかというふうに思っております。  今、ホウレンソウその他のことを今念頭に置いてちょっと思い付いたところでございます。
  258. 平野達男

    ○平野達男君 先ほど言いましたように、今回の鳥インフルエンザ、あるいはその前のSARSもそうなんですけれども、その伝染病の拡大に国境がなくなっている。今回の場合は、鳥インフルエンザの場合は貿易だけではなくて、今度は渡り鳥みたいなものがかんできて、非常にややこしくなっています。  そういう中で、例えば生産条件が、例えば家畜のふん尿、あるいは家禽類のふん尿についてもしっかり処理していない、非常に濃密な形で団地で生産をしている、そういう国があったとして、FTA交渉をやって、日本は輸入を拡大しましょうと言えば、当然生産量を増大しますね。そういう生産条件をそのままにして生産量を拡大したら、そこから伝染病が出てくる確率が高まるんです。  だから、単純に輸入をどんどんどんどん、関税下げて輸入すればいいというものじゃないんですよ。輸入をすることによってその地域の家禽類、家畜の生産条件がどのようになるか、それを判断するためには今の状況がどうなのかというのをきっちり判断しなくちゃならない。その上で、例えばタイにこれから、FTA交渉をこれから、今もう話進めていますけれども、鳥の輸入を、生肉を今禁止されていますが、再開する、あるいはこれから増加をさせる、増やすということであれば、こういう生産体制を作ってください、通報体制を作ってくださいということが、言って、それができたということでやっぱり私は確かめる必要があると思うんです。  そういった意味で、以下は質問なんですが、生肉の輸入、中国、タイも含めて、生肉輸入の再開の条件、それからFTA交渉をやるに当たっての、これはもう世界的枠組みということなんですが、各国の、特に家禽類、肉の生産国のそういった生産条件、それからあと、病気が発生した場合の、何というんですか、伝達経路ですか、ソフト部分ですね、そういったもののステータス評価みたいなものをやる仕組みを、これはWHOになるのか、何でしたか、なるのか、何かちょっと今名前忘れてしまいましたが、分かりませんが、そういったことを日本として提案をして、やっぱり積極的に働き掛けていくべきだと思いますけれども、ちょっと、以上二点、農林大臣見解を伺っておきます。
  259. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) この家畜、家禽等食肉の輸入に当たりましては、事前に輸出国政府との間で輸出のための具体的な検査、要件を定めた家畜衛生条件を取り決めておるわけであります。その中で、この家畜衛生条件には、輸出国政府は、まず当該地域に伝染病が発生がないことと、あるいは屠殺時の検査の結果異常がないことと、あるいは食肉加工時に衛生的な取扱いがなされて、なされたことなどを確認し証明することとしておるわけでありまして、日本での動物検疫においてもこれらの証明内容と現物の検査によって輸入食肉の安全性を確認をしておるわけでありまして、その際に、輸出国の家畜衛生行政とあるいは疾病対策、病気の発生状況等の必要な情報を検討、評価をしまして、輸出国政府が高病原性インフルエンザなどの家畜の伝染病を十分管理していることを確認をした上で当該家畜衛生条件の取決めを行っておるわけであります。  そのような中で、先ほども御指摘の問題いろいろ、更に今後、輸出国における通報体制やあるいは防疫体制等につきまして厳格に評価をし直しをして、必要に応じて家畜衛生条件の見直し、こういうことは行ってまいりたいと、こう思っております。  なお、生の肉の関係、鳥肉の関係、これは清浄になりまして九十日後と、こういうことが一つの条件になっておるわけでありまして、十分そのことをしっかり対応してやってまいりたいと、こう思っております。
  260. 平野達男

    ○平野達男君 今、いずれ、タイ経済も大変だと思います。ただ、タイ経済大変なんですけれども、中長期的に見れば、先ほど言ったような通報体制、それから早く発見してそれを処理するということがタイのためにもなるということで、是非そのことはやっていただきたいと思います。  あと、一般論で言いますと、例えば経済誌なんか見ても、あるいは大きなマスコミを見て、大マスコミ、全国紙なんか見ますと、FTAを早く妥結しろ、妥結しろ、妥結しろと、こればっかりなんですよ。農産物、小泉総理は農業鎖国という言葉を言いましたけれども、農産物輸入、農産物の扱いがかぎになっているというふうに言われています。  それはそれで分かりますけれども、しかし鳥インフルエンザの今回の発生は、そうは簡単にいかないよと。つまり、この貿易の扱い量を増やせば増やすほど、生産国の中における、先ほどの繰り返しになりますけれども、いろんな伝染病の発生する確率が高まるかもしれない。それからあと、体制がしっかりしていない国から輸入をすれば、私たちは発生していることが分からないまま生肉を輸入するということを続けることになるということがまた起こるかもしれない。そういうことをしっかり意識に持ってこれはやっぱりやる必要があるということを重ね重ねちょっと言っておきたいと思います。  それから、あと最後に一問だけ。  これは先般、我が党の森ゆうこ議員がちょっと質問した続きなんですが、日本の国内の鳥インフルエンザに対する、発生に対する対応なんですけれども、私は、これを県に任せておくというのは、これは今の体制がそうなっていますから、法律がそうなっていますからそれで対応しているということだと思うんですけれども、鳥インフルエンザは先ほど言ったように国境もない、県境もありません。こういうときにはやっぱり国が主導してやるという仕組みをやっぱり立てるべきじゃないかと思うんですが、もう一回その件に関しての大臣のちょっと御所見を伺っておきます。
  261. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 鳥の問題、それぞれ家畜衛生保健所等々を通じまして家畜防疫員等々が対応していただくように、国として防疫マニュアルを設置をし、設定をして、そしてそれを地方にいろいろ、現場でいろいろ対応していただいております。  今回の問題を一つの反省といたしまして、私ども、本省、地方農政局のいわゆる獣医師等、専門家をもうリストアップをいたしまして、その対応ができるようなことを、そしてさらに、都道府県におきましてもそのような、よその発生県以外のところからの応援態勢と、こういう面でのリストアップ、そういう中で緊急対応ができるような対応と、このことも今体制を整備をしたわけでもございます。そういう中で、この問題にしっかり対応してまいりたいと、こう思っております。
  262. 平野達男

    ○平野達男君 何でもそうだといえばそうなんですけれども、こういうことというのは余り発生しないと思うし、してはならない話なんですね。しかし、実際一回出ますと、これ、鳥インフルエンザみたいなものが一回出ますと、ばあっと広まったりして大騒ぎになる。そのときの対応のノウハウというのは一つの県に蓄積しておくというのはなかなか難しいと思うんです、今回の場合も発生している県は限られていますから。そうすると、それに国が対応していきますとそのノウハウがやっぱり国に蓄積されますんで、そういった意味でもこういった案件については私はやっぱり国がもっともっと前面に出てきてもいいんじゃないかなということを申し上げまして、私の持ち時間、若干過ぎておりますので、樋口委員に質問を譲りたいと思います。  あと、外務大臣、結構でございます。委員長外務大臣は結構です。
  263. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 関連質疑を許します。樋口俊一君。
  264. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 去る一月の二十三日に参議院議員を拝命しました新人ほやほやの樋口俊一でございます。  予算委員会にこうやって質問をさせていただくということで、十年早いんじゃないかと、こういうふうに言われておりますけれども、この予算委員会を始め国会での質問が初めてということでございますので、大変緊張しながら、また皆さん方の、政府の皆さん方の誠実な御答弁を是非ともよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  さきの選挙から六年をたちましたので、まず、私が今までしてまいりました身近な薬事行政についてまずは質問をさせていただきたいと、こう思っております。  初めに、経済産業省の方で商業統計というのを取っております。百貨店とかあるいは総合スーパーの年間のいろいろな数字の動きを統計をしているわけでございますけれども、事業所数あるいは年間の商品販売数、就業者数等々、ドラッグストアという業態が大変非常に伸びていると。  つまり、非常に消費者に支持されている業態として、また一産業として国の方も認知していただいていると、こういうふうに思っているわけでございますけれども、この消費不況の中でこのように伸びている産業、また薬を通じていろいろと地域の軽医療にも貢献していると、こういったドラッグストアについて、まず坂口厚生労働大臣の御所見をお伺いできればと思います。
  265. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 専門家に質問していただきまして私の方が緊張いたしておりますが、このドラッグストアが伸びましたことは、もうこの統計見るまでもなく、町、街角を歩きましたら本当に多くなりましたから、大変な伸びだというふうに思っております。  この年間の商品の販売額を見ると、平成十一年と比べまして十四年には六六・九%伸びておりますからもう半分以上伸びていると、五〇%以上伸びていると、六六%伸びているということでございます。ほかの例えば百貨店でありますとか総合スーパー、それからこうした類似のもの、こうしたところが平成十一年に比べてかなり減少をしているのと比較いたしまして、大変対照的だというふうに思っております。  近年、高齢化の進展に伴いましてやはり健康に関心が非常に高まったということ、それからまた生活習慣病等がありましてそれに対する関心が高まったといったようなことが合わさってやはり需要が伸びているのではないかというふうに思っている次第でございます。
  266. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 今、坂口厚生労働大臣がおっしゃっておられました少子高齢社会、これは国の財政面あるいは社会保障面、様々な面で大きくその構造改革を求められているというふうに思うわけです。人口動態というのは正に将来予測が付くものでありますから、それに向かって国がどういうプランを作るかということが大変重要になってくると思います。  小泉総理も、いわゆる三方一両損ということで医療削減策に取り組んでおられます。しかし、抜本的な改革という考えの中で、つまり国民が健康で暮らしていけれるという、こういう環境作り、国民のニーズもやはり健康というものに大変関心を持っておられるわけですが、国の健康政策というものがどういうものがあるのか、ちょっとお聞かせいただければと思います。
  267. 辻哲夫

    政府参考人(辻哲夫君) 御指摘の、高齢化に伴いまして、健康政策非常に重要でございますけれども、医療保険改革、具体的には医療費が大変増嵩するという中で、そのことについて議論が行われております。特に、医療保険制度から見ますと、医療費の伸び方というのは非常に高うございまして、この適正化というものをどのように行っていくのかという形で健康政策の議論かかわっているわけでございますけれども、昨年三月に医療保険制度改革の基本方針というのが決められておりまして、この中でも医療費の適正化ということは非常に大きなテーマになっております。  そういうことから、これにつきましては、これから保険者あるいは医療機関あるいは地方公共団体一体となって協議をして地域ごとにこの適正化に取り組むという計画を策定するといったようなことにつきまして、具体的方策を現在、関係審議会で御議論をいただいているところでございますが、特に、この高齢者医療費の適正化につきましては、若いときからの生活習慣病対策あるいは健康作りと言ってよろしいかと思いますが、このようなことが非常に重要でございまして、この方向に向けてあらゆる分野において努力が行われるよう総合的な対応というものが検討されているところでございます。
  268. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 今、お年寄りの慢性病、いわゆる生活習慣病のお話がございました。この生活習慣病について、どのような医療費がそういったものに費やされているかという、その辺の数字は把握しておられるでしょうか。
  269. 辻哲夫

    政府参考人(辻哲夫君) ちょっと手元にストレートな数字、今持ち合わせておりませんが、基本的に、生活習慣病と申しますときに、何といいましょうか、高血圧、高脂血、あるいは高血糖、あるいは肥満、こういった要素に基づく病気が大体生活習慣病としてとらえておりますが、今の医療費の相当部分、半分前後、ざっくり言いまして、生活習慣病という整理にされているんではないかというふうに承知いたしております。
  270. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 半分というと、今医療費が三十兆円超えていますね、その十五、十から十五、この辺の雑駁な数字としてとらえておるのか。
  271. 辻哲夫

    政府参考人(辻哲夫君) 定義によりますが、恐らく、半分弱といたしまして、四割といたしまして、十兆を超えるというふうに言って差し支えないかと思います。
  272. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 確かに、今おっしゃっておられたその数字が非常にあいまいな部分というのは私はちょっと解せないんでありますが、いずれにしましても、糖尿病やあるいは高血圧、あるいは呼吸器系の疾患と、こういったものを、未然にその病気を防いでいく未病対策、こういったものが非常に重要になってくると、こういうふうに感ずる一人でございます。  つまり、自分の体は自分で守っていくという、このセルフメディケーションという考え方があるんでございますけれども、そういう考え方について厚生労働省のお考えをちょっとお聞かせいただけますか。
  273. 岩尾總一郎

    政府参考人岩尾總一郎君) 厚生労働省におきましては、今後の本格的な高齢社会において、セルフメディケーションの手段としての大衆薬の有効活用を進めていくことが重要であるという認識をしておりまして、平成十四年の八月に公表いたしました医薬品産業ビジョンにおいて、そのアクションプランの一つとして大衆薬市場の育成を掲げるなど、施策の推進に努めているところでございます。  具体的には、国民から期待される大衆薬の役割、機能を発揮させるため、セルフメディケーションが期待される分野におけるスイッチOTC薬の推進、二つ目として、国民に対する医薬品情報の提供や普及啓発などを進めているところでございます。  今後ともセルフメディケーションに資する大衆薬市場の活性化には努めてまいりたいと考えております。
  274. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 非常にドラッグストア業界にリップサービスをいただいて、ありがとうございます。  そういう大衆薬の拡売というよりも、やはり生活習慣病と言われるわけでございますから、食事であるだとかあるいは運動だとか、生活にかかわる様々な情報を、やはり国としてもいろんなかかわりの中で情報発信をしていく必要があるんじゃないかと。もちろん大衆薬というのは一つの手法だというふうに思いますけれども、そういった部分で、大きな枠組みの中での国民の健康維持というものをもっともっと国としては考えてもらいたいと、こう思いますが、坂口大臣いかがでしょうか。
  275. 坂口力

    国務大臣坂口力君) ちょっと局長がリップサービスをし過ぎましたけれども、その前にやっぱり、食べ過ぎず、飲み過ぎず、働き過ぎず、そして運動不足にならないようにといったことが一番中心だというふうに思います。  しかる上においてどう薬において調整をしていくかということを、大変大事なことだというふうには思っておりますが、まずやらねばならないこと、それはやはり御指摘のとおりだと思います。    〔委員長退席、理事尾辻秀久君着席〕
  276. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 先ほどの御答弁の中で、スイッチOTCというお話がございました。いわゆるお医者さんに診断をしていただいて処方せんをいただくお薬、医療用医薬品、この医療用医薬品というのは、もちろん個人負担三割だけではなくして、保険料やあるいは税金で賄われているわけでございますが、それを一般のドラッグストアでも購入できるように、特に安全性に非常に高いものをそういったところでも自由に購入できるようにしていこうと、こういう動きだと思います。  このスイッチOTC薬についての厚生労働省さんのそのお考えと今後の方針、この辺をちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
  277. 阿曽沼慎司

    政府参考人阿曽沼慎司君) 御指摘のスイッチOTCの問題でございますが、これはいわゆる医療用医薬品から一般用医薬品に切り替えるということでございます。私ども、ルールを持っておりまして、企業から申請がなされますと、それを前提にいたしまして、一般用医薬品として販売をすることが適切であるというふうに判断したものは薬事・食品衛生審議会の意見を聞きまして承認をすると、そういうことでございます。    〔理事尾辻秀久君退席、委員長着席〕  先ほど来話が出ておりますように、セルフメディケーションあるいは生活習慣病の予防等の観点からスイッチOTCの拡充ということも言われておりますので、私どもとしては、一般用医薬品として使用が適当であるというふうに考えられるものにつきましては、今後とも適宜承認をしていきたいというふうに考えております。
  278. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 今、適宜許可を出していくと、こういう話がございました。  たしか平成九年のころでしょうか、H2ブロッカーという胃腸薬、胃潰瘍の治療薬が出たときにも、非常に国民の支持をいただいていたわけでございますが、なかなかその後、もう一つスイッチOTC薬の許可というものが進んでいないわけでありますが、今どのくらいの企業からの申請があるんでしょうか。
  279. 阿曽沼慎司

    政府参考人阿曽沼慎司君) ちょっと正確な数字を認識しておりませんが、申請のあるものは相当数あると思いますが、御参考までに最近のスイッチOTCの承認の現状を御紹介いたしますと、例えば平成十四年ですと、点眼薬とかあるいは水虫等の薬について五品目程度承認されているという状況でございます。
  280. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 是非、今後とも大いにその辺のことについては推進をいただければというふうに思います。  さて一方、従来の大衆薬と言われます一般用医薬品、これについてちょっと触れたいと思うんですが、総合規制改革会議の方で一般医薬品の販売自由化と、この答申が出ました。たしか平成十二年に、有名なのはドリンク剤などがコンビニエンスストアでも売れるようになったと、こういうことが行われておるわけでございます。  そのときに、もうこれ以上そういった一般医薬品を部外品にするようなことがないと、こういうふうな話があったわけでありますが、昨年の暮れ、よく調査してみるとまだそういうのがありましたということで、約三百五十品目、一般用医薬品が医療用部外品に移行すると、こういうふうな話になっております。  国民にとってみますと、といいますか、今までそういう平成十二年の段階でよく審査した結果、今後そういうのはないというふうな話がまた出てきたということについて、厚生労働省の説明をいただければと思います。
  281. 阿曽沼慎司

    政府参考人阿曽沼慎司君) 樋口委員指摘のように、平成十一年の三月に医薬品から医薬部外品に一部移行いたしております。  今般、また医薬部外品に移行する三百五十品目でございますが、これにつきましては、昨年の六月の小泉総理の裁定内容に従いました政府としての基本方針二〇〇三に基づきまして、「安全上特に問題がないとの結論に至った医薬品すべてについて、薬局・薬店に限らず販売できるようにする。」と。その閣議決定を受けまして、私ども、専門家の先生方にお集まりいただきまして、現在の一般用医薬品、一千三百品目ございますが、それを対象にいたしまして医学、薬学等の専門的見地から再度御検討いただきました。その結果、一応また三百五十品目ほど部外品に移行して差し支えないという結論を得たということでございます。
  282. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 どうもその経緯についての説明がちょっとあいまいな部分があるんですが、結果として、総合規制改革からつつかれて取りあえず出しておこうかと、こういうふうな感じがするわけでありますけれども、総合規制改革会議の方としては、やはり国民に対する利便性、これを大変強く打ち出しておられます。  つまり、医薬品というものすべてをコンビニエンスストアやどこでも買えるようにしろと、こういうふうな御意見でございますが、これについてはどのように厚生労働省としては考えています。
  283. 坂口力

    国務大臣坂口力君) ここはそういうわけにはまいりませんで、規制改革会議におきましていろいろ取り上げられた経緯もございますけれども、私はお断りを申し上げました。非常に副作用の強いものにつきましては、やはりそれなりの責任がございますので、責任をお取りをいただけるところで販売をしていただきたいということを申し上げたところでございます。  ドラッグストアも、薬剤師さんを置いていただいてそしてお売りをいただくということならば、それは、これはもう結構でございますし、現在既に薬剤師さんを何人か置いていただいているところあるわけでございますから、ドラッグストアがいけないとかなんとかというのではなくて、責任者が常駐をしていただくということが前提であるということで申し上げたところでございます。
  284. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 今、坂口厚生労働大臣が、まずは一般用医薬品がすべて自由になるということはまずあり得ないと、このお話を、お言葉をちょうだいしました。  私も、先ほど平野議員もおっしゃっておられましたけれども、今、鳥インフルエンザであるだとか、あるいはBSEであるだろうとか、非常に安全というものに対して国民の関心が高まっている。お薬も正にしかりでありまして、そういった安全性をどう担保しながら、なおかつその効果的な普及をどう国民が求めていき、そして若干の利便性といったものを国民の本来のそういう要望にのっとった形で政府の方としてもお考えいただければと、こう思っております。  そこで、今後、ただ一般用医薬品も、やはり分類していきますと、やはり安全性の高いもの、例えばのどあめのようなものとか、そういったものについてはやはりどこでも購入できるような形というものが好ましいであろうと、そういったことも判断なさってどんどんどんどんそういった部外品の許可が出ているわけでございますが、今後、今後このようなことがまた出てくるかどうか、この辺の将来展望についてちょっとお聞かせいただけますか。
  285. 坂口力

    国務大臣坂口力君) これからまたどういうお薬が出てくるかということにもよりますけれども、昨年行いました三百五十種類というのはかなりぎりぎりのところまでお出しを申し上げたというふうに思っておりまして、もうしばらくこれ以上出てくるということは私はないというふうに思っております。  しかし、これから新しいものがいろいろ出てまいりまして、これはどちらに入れるかというようなものが新しく出てくればそれはもうまた別の話でございますので、その都度検討をしたいというふうに思います。
  286. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 それでは、最近非常に問題といいますか、世論提起をしていますテレビ電話についてちょっと触れたいというふうに思います。  かつて、全国のドラッグストアを束ねております日本チェーンドラッグストア協会というのがございますが、一度、私、昨年、坂口厚生労働大臣大臣室にお邪魔しましていろいろと意見交換をさせていただきました。そのときにも、またそれ以降も、厚生労働省の担当の方々といろんな情報交換をさせていただいております。  そういった中で、私どもも、やはりITのこういった発達した中での通信手段を様々な形で利用してもいいんじゃないかなと、こういうふうな御提案をさせていただきました。しかし、厚生労働省としては、やはりフェース・ツー・フェースで、やはり薬剤師さんが直接お客さん、患者さんと接した中でのそういった情報提供が一番いいという御判断でございましたので、私どもも、私どもじゃない、日本チェーンドラッグストア協会を始めとするドラッグストア業界も、そういった指導にのっとって今までやってきたわけでございますが、突然、ドン・キホーテさんというところがテレビ電話を使用して、夜間、薬の販売をしたと。  それに対して、坂口厚生労働大臣がこういうふうに発言をされておられました。現在の法律の中で考えれば私は違法だというふうに思います、違法であれば指導することは当然あり得ると、こういうふうに当初おっしゃっておられたんですが、この違法性についてどういう観点からそういうふうな御発言になったんでしょうか、ちょっとその辺をお聞かせいただければと。
  287. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 現在の薬事法の中を、薬事法を読みますと、それは薬剤師さんがちゃんといて指導をするということがなければ販売できないことになっているわけです。それは、より具体的に皆さん方にお示しをしている役所の文書を見ましても、やっぱり顔色をちゃんと見なきゃいけないとか、やはり全体の姿形を見てと、こういうことになっているわけであります。  しかし、そのときには、そんなテレビで顔色を見るとかなんとかというようなことはないときの話であったことも事実でございまして、今までのその文書を読みます限り、あるいはまたその施行令やその他のものを見ます限り、これは違法だというふうに言う以外になかったわけでありますが、しかし、最近のそうしたメディアの発達等を計算に入れて、すべて何が何でも駄目かということについては、非常に緊急を要するとかなんとかいったときに、ふだんはお店に薬剤師さんがおみえになる、夜はお帰りになっているといったときに、その薬剤師さんのおうちの、おうちと、あるいはそのお店との間のテレビ電話等がきちっとできる、顔色も分かると言ってきたときに、それでも駄目かという突き詰めた話になってまいりまして、そこは少しゆとりを持って解釈をするようにしてもいいのではないかという意見があって、いろいろの検討会でも御議論をしていただきましたけれども、若干その辺のところはゆとりを持ってもいいのではないかという御意見がありました。したがいまして、その辺のところは少しゆとりを持って解釈をするようにしたということでございます。
  288. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 ゆとりという御表現をされたわけでありますけれども、非常にこう、私にとってみると何かあいまいな部分もなきにしもあらずではありますが、しかしテレビ電話というものが、特に石原都知事が、最近のそういう情報伝達技術が発達したんだからそんなものはあっても当たり前だと、こういうふうな御発言もありました。正に世論の喚起というものが一社の動きの中でこう動いてきたというものには少し、多少なりとも私も解せない部分はあるのでありますけれども、しかしその中で、大所高所に立って御判断をされた中で、また有識者会議を持っていろんな方向性を今見いだそうとしておられます。  このテレビ電話活用について今後どのような形で落としどころを探しておられるのか、その辺、ちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
  289. 阿曽沼慎司

    政府参考人阿曽沼慎司君) テレビ電話の問題でございますけれども、これは大臣からもお話し申し上げましたように、従来の薬事法が想定していなかったような事態でございます。最近、特に深夜、早朝における社会経済活動も増加しておりますし、また情報通信技術の普及でそういう新しいテレビ電話のような技術も出てまいりました。  したがいまして、私どもといたしましては、薬事法の解釈、運用の問題を含めまして、深夜、早朝の医薬品の供給、確保の在り方について、改めて有識者の方々にお集まりいただきまして、どういうふうに考えるかということで御検討いただきました。今年の一月に一応有識者会議の報告書がまとまりましたので、現在、それを受けまして省令改正等、一定の条件を満たす場合には深夜、早朝におけるテレビ電話を活用してもいいんではないかということで、今パブリックコメントの手続を取っておりますし、また関係団体等とも意見交換をいたしております。  したがいまして、最終的な調整をいたしまして、できるだけ早く実施をいたしたいというふうに考えております。
  290. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 是非、パブリックコメントといいますか、国民の声を吸い上げていただくということと、やはりそれぞれ直接かかわりを持っている、先ほど申し上げました日本チェーンドラッグストア協会あるいは日本薬剤師会、こういった各種団体としっかりと意見交換をしていただきますように、よろしくお願いをしておきます。  さて、先ほど申し上げました一般販売薬の、一般用医薬品の販売自由化と、それからテレビ電話の問題、それぞれ違う切り口で出ているわけでございますけれども、考えてみますと、いわゆる現行法の薬事法における一般用医薬品の販売における様々なその在り方、これをやはり考えていくための一つの問題提起ではないかなというふうに私は感じているわけなんですね。先ほど坂口厚生大臣もおっしゃっておられましたけれども、やはり安全性というものをきちっと担保され、なおかつ利便性も一方では考えながら、そういったものをきちっと国民の方々に提供できるような方法論、これを是非とも厚生労働省の方でもお考えいただければというふうに思っておりますが、何かそういったものについてのお考えございますでしょうか。
  291. 阿曽沼慎司

    政府参考人阿曽沼慎司君) 一般用医薬品の販売に当たりましては、いろんな各団体からも御意見をいただいております。それで、私どもといたしましては、諸外国の例なども参考にいたしまして、どういう形で安全性を原則として利便性を確保できるかということで、これからも検討を続けていきたいというふうに考えております。
  292. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 一つとして、一つ私の方としてもちょっと御提案を申し上げておきたいと思いますけれども、先ほどありました医療用医薬品をスイッチするというこの部分は、やはり全体の医療費を抑制していく部分で大変重要な部分を抱えているといいますか、持っておりますし、また、従来の大衆薬と言われる部分と、また自由化していくような、いけれるようなものと、やはりリスクによって三つぐらいに分けて、それに対する薬剤師さんが必要なものを、あるいはそれでなくても一定の資格を持った人が説明できれば、情報提供できればいいようなもの、それを構造的に店舗の中でどういうふうに位置付けていくかと、こういったものを是非御検討いただければ有り難いなというふうに思っております。  さて、この四月に薬剤師法が改正されまして、四年制から六年制になります。この件について、この制度改正の趣旨をお聞かせいただけますでしょうか。
  293. 阿曽沼慎司

    政府参考人阿曽沼慎司君) 今国会に薬剤師法の改正案を提出いたしておりまして、私どもは十八年の四月から実施をいたしたいということでございます。学校教育法の改正と同時に改正をお願いしているわけでございます。  この改正の趣旨でございますが、昨今の医療の高度化あるいは複雑化、あるいは高齢化社会の到来等を考えますと、薬剤師さんの資質の向上というのが大変重要であるというふうに考えたところでございます。特に、医療薬学を拡充するとともに、実習を、長期実務実習を導入する必要があるだろうということで、今は四年制でございますけれども、それを六年に拡大することが必要ではないかということで、六年制の提案を、御提案をしているところでございます。
  294. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 その薬剤師法に、薬剤師の専権業務は調剤であると、こういうふうに記されているわけであります。医薬分業という考え方があるわけでございますけれども、この医薬分業云々に対する厚生労働省の将来的な考え方をお聞かせいただけますでしょうか。
  295. 阿曽沼慎司

    政府参考人阿曽沼慎司君) 厚生労働省としては従来から医薬分業の推進に努めているところでございまして、特に掛かり付け薬局あるいは掛かり付け薬剤師というものを充実させていきたいということを考えております。したがいまして、その方針で今後とも臨みたいというふうに思っております。
  296. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 医薬分業といいましても、なかなか国民にまだまだ浸透してきていない部分がある。診療所やあるいは病院の前にある門前薬局というふうに言われているようなところで処方せんを医薬品に換えておられる患者さんが大変多いわけでございますが、今、厚生労働省が今御答弁いただいた掛かり付け薬局に持っていくためにはどのようなハードルがあるのか、そしてそのハードルをどういうふうにしていけばよりそういったものが促進できるのか、この辺ちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
  297. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 掛かり付け薬局の話が出ました。先ほども、今日こういう御質問があるというお話で、昼休みのときに掛かり付け薬局のところへちょっと聞いたわけでございますが、私も、掛かり付け薬局というのは必要だというふうに私も思うんですが、例えばAという病院でこういう薬をもらって飲んでおります、Bという病院でまた同じにこういう薬もらって飲んでおりますと。で、両方を持っていって、そしてその薬局で、これ合わせて一緒に皆飲んでもよろしいかと言って聞いたといたします。そのときに、いや、これは同じ薬だから、これとこれと一緒に飲むのは具合悪いですよとか、これは大丈夫ですとかと、いろいろのことをそれは指導してくださるんだろうと思うんです。  そのときに、それは、いや、指導料というのは取れるのかと聞いてみたら、今は取れないと言うんですよ。そこで薬を買わない限りは駄目で、そこで新しい薬をその薬局で買うんだったらその薬代は払うけれども、よそでもらった薬を持っていって、これとこれと一緒に飲んでもいいかということを問い合わせても、それは何ら、サービスで言うてもらうだけだということに今なっているんだそうでございます。  私は、それでは掛かり付け薬局というふうに言うのには少しほど遠いと思っておりまして、そういう相談を受ければやっぱり相談料というものをちゃんと払えるような形というのは、やっぱり専門なら専門の薬剤師さんがおみえになる、そこでお聞きをするというんだったら、私はそういうことを少ししていかないことには本当に育ってこないという気がいたします。そういうことがあるということだけひとつ御記憶いただければと思います。
  298. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 これはなかなか一長一短、今までの慣習やあるいは仕組みの中で動いてきたものがございますので、これからいろいろとそういった問題を一つ一つつぶしていかなければ前に進まないのかなというふうに私も思っております。  さて、その薬剤師さんなんですけれども、実はなかなか薬剤師さんを採用するのが大変な時代であるということの御認識をまずいただきたいというふうに思います。ただ、厚生労働省も薬剤師さんの需給バランスといったものをひとつ統計的に集計しておらぬでしょうか。
  299. 阿曽沼慎司

    政府参考人阿曽沼慎司君) 薬剤師さんの全体の需給の関係でございますが、医薬分業も今はもう五〇%ぐらい進展いたしましたが、今日におきましても供給数の方が需要数を上回っているという、全体としてはですね、そういう状況にございます。  十四年時点の薬剤師の需給予測によりますと、今後は医薬分業が進展すると、更に進展をすると仮定をいたしましても、供給数が需要数を常に上回っていきます。それで、医薬分業率がピークに達しました後は更にまだ薬剤師さんが過剰になっていくと、そういう予測をいたしております。
  300. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 どうも皆さん方の考え方というのが、確かにその絶対数が多いということはよく分かるんです。しかし、現実、私も薬剤師なんですけれども、私、大学へ入ったときにこれは女子大かと間違うぐらい女性が多いんですね。いわゆる業界でたんす薬剤師なんて言っておられる。本当にそのライセンスを使っておられる方は非常に少ないという現実をどう把握しておられるのか、やはりその辺はやっぱりきちっと押さえていく必要があると思いますので、これについては、また時間を持って議論をさしていただければというふうに思っております。  実は、中小企業問題の金融政策やあるいは税制問題について、竹中大臣それから谷垣大臣にお伺いしようと思っていたわけでございますが、あと一分しか時間がございません。雑駁にちょっとお話だけさしていただきます。  中小企業向けの融資枠といったもので非常に縛られている部分があり、貸しはがしとか貸し渋りという現状をどのように今把握しておられるのか、その辺をちょっとお聞かせいただければと思います。
  301. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 竹中大臣、簡潔に。
  302. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 銀行全体が資産圧縮をしなきゃいけない中で、正しいしかるべきところに資金が回るように、しかるべき指導を我々としてもしっかりやっているつもりでございます。貸し渋り、貸しはがしのホットライン等々も活用しながら、これはもうしっかりと我々も対応していかなけりゃいけないと思っております。
  303. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 初めてで、本当に時間がなくて申し訳ございませんでした。またどうぞよろしくお願いします。終わります。
  304. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 以上で平野達男君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  305. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 次に、森本晃司君の質疑を行います。森本晃司君。
  306. 森本晃司

    ○森本晃司君 公明党の森本でございます。  今日は私は最初に中小企業問題に焦点を当てていろいろと質問をさせていただきたいと思っておるところでございます。  日本経済、ようやく明るさが見えたと言っても、それはまだ大企業だけの話であったり、あるいは一部地域であったり、あるいは自動車産業であったり輸出産業であったりするところが非常に多い。実際に中小企業の現場へ参りますと、まだまだ十分でないということがうかがわれるわけでございます。  我が党に十四年の、十四年に中小企業活性化対策本部というのを設けまして、日本の中小企業の活性化なくして日本経済の活性はないんだということで、私がその活性化対策本部長で、主に現場に行って現場の声を聞かせていただこうと、それを政策、政治の舞台で反映しようと、こういうことで今日までもう十回を超える現地視察を重ねてまいりました。  つい先週の月曜日も東大阪、中小企業の集積地でございます東大阪へ行きまして、ここには非常に、今テレビでも度々出ておられますが、青木さんという、暗いときほど小さい星が大きく見える、不況はチャンスやということで、中小企業、東大阪から人工衛星を打ち上げようと。その名前も「まいど1号」という非常にすばらしい名前で、来年打ち上げる予定でございます。できっこないことと笑うやつらを見下ろしてやろう、宇宙から。こういう思いで取り組んでおられる元気な中小企業の皆さんもいらっしゃいます。しかし、なかなかやっぱりまだ、まだまだ厳しい。殊に、金融問題等々も含めて厳しい中小企業の皆さんがいらっしゃいます。  去年、私の党で、できるだけ中小企業の皆さんにいろんなこと、そういう制度を分かりやすくという意味で、「なるほど 中小企業応援ブック」、こういうのを作らせていただきました。それで多くの中小企業の皆さんに喜ばれまして、今度は続編「なるほど 中小企業応援ブック」、新版を今度仕上げました。これはまた中川大臣に後ほどお渡しをさせていただきたいと思っておりますが、中小企業のいろんな施策を、できるだけ表とかグラフを作って、利用していただくものに仕上げたわけでございます。  この中で、今日まで非常に喜ばれている制度というのが資金繰り円滑化借換保証制度、これは十五年の二月にスタートいたしまして、十六年の一月三十日まで、この一年間で既にもう三十五万件、五兆円の御利用をいただいた実績がございます。非常にこれはもう多くの皆さんから喜ばれているところでございます。  もう一つは、今日は総務大臣にお見えいただいたんですが、この我が方のブックの二ページ目に書いているわけでございますが、「物的担保が無くても融資が可能」でということで、売掛債権担保融資保証制度というのを、これはでき上がったわけですが、これの利用者というのは非常に喜んでおられて、今日まで約一万件に及んでいるわけでございますが、私は、全体から言うとまだまだ利用者が少ないんではないかなと思っております。兵庫県では千百十四件でございますけれども、一部の県に行きますとまだ利用が二十五件であったり二十九件であったり二十八件であったりする。  これは、いろんな調査をいたしますと、市町村における債権譲渡禁止特約というのがある。これが解除されないということが一つ。もう一つは、これを利用すると、あそこの会社は危ないんじゃないかという風評被害に遭う、こういうことでありますが、総務省は国土交通省と一緒になって去年の四月に通達を出されましたけれども、今度また国土交通省がその調査をいたします。  同時に、総務大臣の方から、全国の市町村にこれの徹底と、そして解除するように通達を、あるいは指導していただくことが一番肝要ではないかと思いますが、大臣のお答えをお願いします。
  307. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 総じて、商売やったことのない人の話というのは、大体損益の話しかせぬのです。商売したことのある人なら、必ず資金繰りの話が分からないと商売したなんということは言われぬのだと思う。総じて役人は駄目です、資金繰りはありませんから。  その点、この種の話は、これは、一番大事なのは資金繰りが付くのであって、損益は黒でも資金繰りが付かないために倒産するというのが中小企業で一番多いケースということになって、特に地方に行きますとそういう例が多いし、これは別に大阪に限らずどこでも同じようなものなんだと、私は常日ごろからそう思っておりますので、ちょっとその内容を読んだことがないので、大変恐縮ですけれども、今言われております点はもう誠に正しいと思っております。  ただ、今言われましたように、この種の話をするときには、多分、建設会社の話でいけば、公共工事を発注いたしますと、発注元のいわゆる地方自治体の方からいわゆる承諾が要る、そういうのをやってもいいよということで要るんで、公共工事請負契約約款というのが、御存じのように昨年の二月、改正をされておりますので、下請セーフティーネット債務保証事業というようにするような場合につきましては、債権を譲渡できることは明確化されておりますが、今言われましたように、地方公共団体においてはそういうことがまだ徹底をされていないではないかという御指摘は当たっていると思います。  いろいろ、これはちょっといろいろ、地域によって建設業組合との間との関係とかいろいろ、例は県ごとにいろいろ違うんですけれども、基本的には御指摘のとおりだと思いますので、この種の話は非常にいい話ですし、現実に即した話だと思いますので、督励をいたしてきちんと対応してまいりたいと存じます。
  308. 森本晃司

    ○森本晃司君 さすが事業経験も豊かな総務大臣の御答弁、前向きにいただきまして、中小企業の皆さんもきっとそれが実現することによって喜び、また資金繰りが得られるんではないかと思っております。ありがとうございます。  総務大臣はもうこれで質問ありませんので、どうぞ結構でございます。ありがとうございました。
  309. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) それじゃ、どうぞ。
  310. 森本晃司

    ○森本晃司君 次に、中小企業の皆さん、だんだん担保ももう少なくなって、地価が下がって融資を受けるのに入れるものがないという状況でございます。ここに、今度はその中小企業の皆さんが新しく創業したり、あるいはいいものを作ったりするときに、金融機関がやっぱり目利きが要るかと思うんです。その目利きをやった上で無担保で融資をする。今日までありますけれども、五百五十万、その制度を拡大したり、無担保融資をもっともっと広げていく必要があるかと思いますが、経済産業大臣、お答え願います。
  311. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず冒頭、森本委員が冒頭おっしゃられたように、森本先生が中心になって中小企業対策について日ごろ大変与党の、与党といたしまして積極的にやっておられることを私の立場からも厚く御礼を申し上げます。  今の日本経済が少し回復しているという状況だということでありますけれども、地域、業種あるいはまた規模によって大変厳しい状況にあるわけでございまして、そういう中で先ほどの東大阪の「まいど1号」でございますか、私もおととし、去年、おととし、去年だったと思いますが、実物を拝見をいたしまして、厳しい近畿地方だとは思いますけれども、そういう元気のある中小企業が頑張っておられるということを大変感動をした記憶がございます。  さて、今御指摘の事業をするには資金が必要である、その資金は基本的には有担保、土地を中心とする有担保、あるいはまた保証、あるいは本人保証、第三者保証、本人保証ということでございますが、これではなかなかこういう経済、デフレ経済状況の中で、あるいはまた資金のスピード感からいってもなかなか厳しい状況にあるわけでございますので、経済産業省として産業政策、地域再生という観点から、担保からの脱却あるいはまた保証からの脱却というものをできるだけやっていきたいということでございまして、今先生御指摘のように、貸し渋り対応の無担保貸付制度を導入をするとか、あるいはまた中小公庫において担保徴求を最大限七五%免除をするとか、あるいはまた中小公庫、国民公庫、商工中金等でも、今御指摘のように五百五十万を七百五十万にするとか、第三者保証の不要額を一千万から一千五百万にするとか、いろんなことをやっております。  と同時に、まだまだこれもやっていかなければいけませんし、それからいわゆる債権の証券化でありますとか、あるいはまた仮に担保を取るときでも、今までのような不動産担保中心ではなくて、例えば在庫資産あるいは売り掛け債権といったものを一つの担保にして、そういう形で機動的な資金調達を特に中小企業の皆さん方に機動的にやっていくべく最大限の努力をしていかなければいけないと思っておりますので、引き続き御指導をお願いいたします。
  312. 森本晃司

    ○森本晃司君 こういった状況の中で、一方、倒産する企業もございます。しかし、中身は非常にいい場合がございます。そういうところを再生支援をしなければならないということで支援協議会がスタートしておりますけれども、各地で声を聞きますと、この支援協議会に人材、人が欲しいんだと、これを充足してもらいたいという意見が、声が出ておりますが、経産大臣、いかがでございますか。
  313. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほどは主に資金についてお話をいたしましたけれども、中小企業が頑張る上では、資金はもとよりでございますが、技術力、販売力等も含めた総合的な人的パワーというかネットワークというものが必要でございまして、それが全国四十七都道府県に設置ができました中小企業再生支援協議会というものでございまして、ここにはいろいろな人材、経験を持った人材あるいはまた自治体、金融機関、商工会議所等々がいろんなネットワークを持って、ある意味では人材も含めてきちっと確保をしながら適時適切に相談に乗って、適切なアドバイス、場合によっては更にそれ以上の御支援ができるような体制にしていかなければならないと思っております。  その代表例が、大分県では再生のためのファンドというものを地方の資金として作ったわけでございますし、近々、第二号、第三号も、静岡と福岡でしたか、発足するやに聞いておりますけれども、そういう形で総合的に、地域の知恵と力を総合的に発揮をしていいものは更に伸ばしていく、それからちょっと困っているところには後押しをするという体制が今一番求められているのではないかということで、我が省といたしましても全力を挙げているところでございます。
  314. 森本晃司

    ○森本晃司君 さらに、中小企業再生支援に人も要りますし、同時に、中小企業が次へ新しい展開をしていこうというときに、市場のニーズあるいは販売を開拓する人たち、そういった経験がある人たちが中小企業に来てくださることが非常に大事ではないかと思います。大企業のOBやあるいはそういう経験のある人が定年になった方々がいらっしゃった、その人が中小企業に応援をしてくれたら、またそういう人と中小企業の雇用とマッチングしたら非常にいいものができ上がっていくんじゃないかと思いますが、この点について大臣のお考えをお伺いします。
  315. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 正に先生御指摘のとおりでございまして、昨年十月から企業OB人材マッチング事業というものをスタートをさせております。  優れた経営ノウハウあるいは広範な人脈、そしてまた企業としての経験というものを生かしたものを中小企業の発展のために大いに活用していただきたいということで、人材面でのバックアップという意味でOBマッチング事業というものをスタートしたところでございます。
  316. 森本晃司

    ○森本晃司君 是非、それがまた中小企業の皆さんが利用しやすいようなもの、一万人程度と考えていらっしゃるように伺っておりますが、そういう制度であっていただきたいと思います。  この間、川口、鋳物の町、かつての鋳物の町の川口へ行きました。たくみの技術と新しい技術が見事に合いながら一つのものを作っていくということも目の当たりにいたしましたし、その他の企業の見学、中小企業を見学させていただきました。  それは、一つは創業、ベンチャー企業でございます。いろいろ開発に費用が掛かる、そして開発にようやく成功した、いよいよこれから販売に行こうと思うときにいわゆる死の谷にはまっていく中小企業、ベンチャー企業の皆さんが多いわけでございます。ここにもう一度資金融資をする必要がある。最初のときは知人や友人や親戚から一生懸命金集めしたんですけれども、開発はしたが使い切ってしまったというところ、ここをどう応援するか。  経済産業大臣、大変大事なことだと思いますので、お願いいたします。
  317. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 極めて大事な御指摘だと思っております。  いいものが開発された、そこでもう開発資金がもうなくなっちゃって次に進めない。今先生御指摘の死の谷という言い方をよくいたしますが、そこを乗り越えるためにいわゆるベンチャーファンドというものが必要でございまして、今までですと無限責任の組合的なものが出資をしたり、あるいはまた預け金的な形でお金を出したりということでございますけれども、より柔軟な形で、有限責任制度の中で、自由に次のところにつなげるような資金を公的金融機関、地元金融機関、更には民間ファンド等々も含めて、これからどんどんそういうものを作っていって提供をする。また、お金の出し手の方もそれによって、あえて言えば若干ハイリスク的かもしれませんけれども、それによる成果というものも非常に大きいというメリットのところも出し手の方にもひとつ御理解をいただいて、そういう制度が大いに活用できるように我々としても努力をしていきたいというふうに思っております。
  318. 森本晃司

    ○森本晃司君 次に、地域新生コンソーシアム研究開発事業、これは各地域で非常に喜ばれ、また御利用いただいているところがございますが、ここにおける中小企業への支援状況、それから非常に、これは今中小企業の皆さんが競って参加されるわけで、高倍率と伺っておりますが、その辺の状況はいかがでございましょうか。
  319. 平井敏文

    政府参考人(平井敏文君) 地域新生コンソーシアム研究開発事業のお尋ねでございますが、大学等の技術ニーズあるいは知見を活用いたしまして、地域の中堅、中小企業を含む産学官が一体となりまして実用化の技術開発を行うことによって新産業の創出を図ることを目的としているこの制度でございますが、この事業に参加している企業のうち約七割から八割が中小企業の皆様でございまして、積極的に御活用いただいているところでございます。  また、公募の倍率のお尋ねでございますが、当事業の平成十五年度におけます公募の倍率は約十倍でございます。したがいまして、こういった高倍率にこたえるべく、予算確保に全力を挙げて取り組んでいるところでございます。
  320. 森本晃司

    ○森本晃司君 この地域新生コンソーシアム研究開発事業、制度に委託費が国から支払われるわけでございますけれども、認定になってから、採択を受けてから一年ぐらいたつ。この一年の間に中小企業の皆さんがその資金繰りに困るわけでございまして、採択になればそのうちの例えば二分の一あるいは三分の一でも国から先にお支払いをすることができると非常に助かるという声を我々は聞いているわけでございますけれども、これは財務大臣経済産業大臣と両方からお答えいただければと思うんです。
  321. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず私からお答えさせていただきます。  今御指摘のように、一年間、これ、トータルで約百億ぐらいの予算を計上させていただいておりますが、一年の間に途中で資金ショートをしてしまって万が一にも事業がとんざをしてしまうということになりますと、このコンソーシアム事業にとって大変なダメージになるわけでございますので、原則は精算払ということが基準なのかもしれませんけれども、必要に応じて資金注入ができるような、いわゆる概算払ということが臨機にできるように財務大臣の方に私からも強くお願いを申し上げたいと思っております。
  322. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 森本委員はかねてから中小企業問題、大変熱心にお取り組みですが、今日はコンソーシアムの問題を取り上げていただきまして、私は大変これは意味のある制度だと思っております。  それで、問題は、委託費がちゃんと早期に出てくるかどうかということで、今、中川大臣から御答弁がありましたように、会計法令上概算払という制度がありまして、必要な場合にそれを早期にお支払いすることができるようになっておりまして、それは私に御相談をいただいてやるということになっておりますので、御相談をいただいた場合には制度の趣旨が生きるようにきちっと適切に対処してまいりたいと考えております。
  323. 森本晃司

    ○森本晃司君 是非、これを実現することによって中小企業の皆さん非常に明るいものを持つかと思いますので、財務大臣の方でも是非よろしくお願い申し上げます。  次に、私たち、今IT産業も先端産業でございますけれども、そのIT産業の携帯電話にしろパソコンにしろ、あるいはデジカメにしろ、結局メッキがなければこれはもうすぐその部品は駄目になってしまうわけでございます。  今日は、メッキ業界の皆さんが大変その中にあって厳しい状況にある、最近で見ますと、一年間で大体七十社ぐらいがメッキ業界が消えていっているという状況がここ数年続いているわけでございますが、この問題についてお尋ねしたいと思いますが、水質汚濁防止のためのメッキ業界に対して行われている硼素、弗素、窒素の暫定排出基準の適用期限が今年の六月までとなっているわけです。今までも一生懸命メッキ業界の皆さんがこの問題については、環境を守らなきゃならないということで取り組んでこられたことは事実であります。  しかし、なかなかそれに対する技術、処理をできる技術開発が十分にできていないというのも現状であります。小規模メッキ業界、新たな規制値に対応するのは非常に困難だと思われますし、このままいきますと、メッキ業界の存続そのものが危ぶまれる状況になって、また我が国の物の製造に深刻な打撃を与えるのではないかと思いますが、今年六月で硼素などの暫定排水基準の適用期限が切れた場合、廃業せざるを得ないとの現状があることについて、経済産業大臣はどのように見ておられますか。
  324. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今委員指摘のように、メッキ産業というのは、機械から家電に至るまで非常に重要な部門を占めておる工程だと思いますし、日本の今まで先生が御質問されてきた産業、物作りという観点一つの基幹部分だと思います。重要な部分を占めていると思っております。    〔委員長退席、理事尾辻秀久君着席〕  そういう中で、今御指摘のように、このまま水質汚濁防止法の暫定基準が六月に切れてしまうということになりますと、大変に産業という観点から大きな影響を受けるわけでございますし、他方、経済産業省としても排水処理装置の開発支援をやっておるところでもございますので、引き続きこの暫定措置、暫定期限が延長になるように環境省によく調整をして、お願いをしてまいりたいと思っております。
  325. 森本晃司

    ○森本晃司君 環境省に伺いますが、こういった問題に厳しいと言われているイギリスでは、この硼素の基準はないようでございますけれども、今経済産業大臣から話がございましたけれども、電気メッキ業界の規制問題への現状をどのように認識されておるのか伺います。
  326. 加藤修一

    ○副大臣(加藤修一君) 森本委員にお答えいたします。  我が国におきましては、平成十三年の七月の一日に、硼素、弗素、アンモニア、アンモニウム化合物、それから亜硝酸化合物、硝酸化合物、この三つの物質について水質汚濁防止法に基づく排水基準が設定されております。このこれらの三物質について直ちに排水基準を達成することが技術的に困難である業種については、先ほど森本議員が指摘なさったように、経過措置として平成十六年の六月三十日までの間、暫定排水基準を設定しているところでございまして、電気メッキ業についてはこれらの該当する業種に判断されておりまして、三物質とも暫定排出基準、これが設定されてございます。  環境省といたしましては、これまでに処理技術の進捗状況や排水の濃度レベルの実態把握に努めてきておりまして、暫定期間の期限も近づいておりますことから、現在、排水濃度実態、それから適用可能ないわゆる処理技術等を考慮した上で暫定排水基準の見直し作業を進めているところでございます。  現実的に適正、適用可能な排水処理レベルを検討し、早急に対応方針を国民に示しながら、これはパブリックコメントをいただいた上で適切な規制の基準を設定していきたいと、このように考えているところでございます。
  327. 森本晃司

    ○森本晃司君 検討していただけるということでございますが、更にもう一度確認したいんですが、暫定排水基準の延長に関してはどのように考えておりますか。延長していただけますか。
  328. 加藤修一

    ○副大臣(加藤修一君) 先ほど述べました三物質についてでありますけれども、メッキ業など、特に小規模な事業場ですけれども、なかなか適用可能な処理技術がないということを十分承知してございます。  このようなことから、適用可能な処理技術水準等を踏まえまして、暫定排水基準の適用期間の延長等を、その措置を含めまして、合理的な結論を出そうと、このように検討している最中でございます。
  329. 森本晃司

    ○森本晃司君 是非、現状をよく踏まえていただいて、そして延長への、延長をしていただくよう、強くこのことについてはお願いを申し上げたいと思います。  もう一つ、メッキ業界の皆さんが抱えている問題、水質汚濁と同時に土壌の汚染でございます。  これをやはり処理するには、スペースも大きなスペースが要る、お金も掛かるということでございますが、東京や大阪のように土地の面積が小さいところでやっておられるメッキ業界の皆さんにとってはこの問題は大変な問題、大きな問題になってきているわけでございますが、環境省はこの問題についてどのように考えておられますか。
  330. 加藤修一

    ○副大臣(加藤修一君) 森本委員の御指摘のとおり、私ども非常に重要な問題だと心得ております。  それで、土壌汚染対策の円滑な推進のためには、やはり簡易で低コスト、それから低負荷型の土壌汚染調査対策技術、その実用化及びその普及が不可欠であると、このように認識しているところでございます。  そのため、環境省では、これらの土壌汚染調査対策技術について、実証実験あるいは実証試験でございますけれども、これを行うことによりまして開発促進及び普及を図っているところでございます。  今後も、この事業を活用いたしまして、大都市における狭い土地においても実施可能な低廉な技術について、実証試験を行うことなどを通しまして、これらの技術の開発促進及び普及に努めてまいりたいと、このように考えておりますし、さらに、このような技術の開発促進及びその普及による市街地における土壌汚染対策の推進、これは極めて都市の再開発等含めまして重要でございますので、こういうことを通しながら、環境産業の発展にもつながっていくところもございます。あるいは経済活性化にもつながると、このように考えておりますので、積極的な対応を行っていきたいと、このように考えてございます。
  331. 森本晃司

    ○森本晃司君 最後に、経産、経済産業大臣に、あと、環境大臣は後、まだございますが、お伺い、メッキ業界のことに関してはお伺いいたします。  このような状況の中、やはりメッキというのはもう物作りにとっては欠かすことのできない代表的な業種でございます。今も取り上げました問題、さらにまた土壌の問題も含めて、メッキ業界について経済産業大臣としてどのような取組、見解をお持ちなのか、お願いいたします。
  332. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) メッキ業界というのは、先ほども申し上げましたように、家電あるいはまた機械、輸送機械を始めとして、つまり日本の、何というんですか、物作りの中核的な、伝統的にもそうですし、これからも一つの製品を作る上で日本が強く、そしてまた強くなければならない大事な部門だと思っております。  もちろん、水質とか土壌とかいった環境にも配慮するということも重要だと思いますけれども、我々は、そういう前提に立って、このメッキ産業、メッキ業界のその重要性というものはますます大きくなってきているものだというふうに認識をしております。
  333. 森本晃司

    ○森本晃司君 是非いろんな角度から、ただ規制するだけではなしに、どうすればメッキという大事な仕事が今後育成されていくかということも含めて、今後力を入れていただきたいと思うところでございます。  産業大臣、ありがとうございました。  それじゃ、あと、環境大臣がお見えいただいておりますが、一言お伺いさせていただきます。  白神山地が世界遺産になりました。それはすばらしいことでございます。そこに鳥獣保護法を掛けようとされておられます、三月一日から掛かりました。  鳥獣保護ということも極めて大事な問題でございますが、大臣、マタギという人たちがいらっしゃることを御存じですか。
  334. 小池百合子

    国務大臣小池百合子君) 環境大臣になりまして、森本先生に廊下でお目に掛かったときに、マタギのことはよろしく頼むというふうに言われて、ネットで調べました。  正に民俗学の柳田国男さんの世界であり、またこれまで自然を守ることをしっかり貢献してきた、自然保護行政と相通ずるところがあるのではないか。また、マタギ道という、マタギ道というんでしょうか、非常に何というんでしょうか、独特のもう文化。  ただ、残念なことに、それを承継なさる方がもう今は激減しているというようなことなど、学ばせていただいております。
  335. 森本晃司

    ○森本晃司君 私は、青森県のマタギの吉川さんという方とお会いさせていただきました。マタギは、今大臣からおっしゃったように、もう明治のはるか昔から、あるいは日本ができたときから、そういった人たちが独特の自然の共生を考えながら猟をされていた人たちだと思うんです。  白神山地のこの守られた、世界遺産になった歴史を振り返ってみると、林道ができるときに強く地元で反対をされた人たちがいる。それは吉川さんであり、そういったマタギの人たち、自然を守ろうとして一生懸命やってこられた。今度鳥獣保護法が掛かると、この鳥獣保護法の範囲の中から出ていって、ほかで猟をやってくださいと。これは、私は余りにもひどいやり方ではないかと思っておるんです。代々ずっと受け継いでこられた方。  私は、今日は時間がありませんが、この問題についてはしつこくしぶとくいろいろと環境省ともやっていきたいと思っておるんですが、大臣、どうですか。
  336. 小池百合子

    国務大臣小池百合子君) 白神山地、すばらしいとお褒めいただいているわけですが、これまでもマタギの皆さんの御努力もそこにあったということはよく承知をいたしております。  また、この白神山地の鳥獣保護区でございますが、今おっしゃいましたように、今年の三月一日から設定をされているということですけれども、世界自然遺産の区域とほぼ一致すると、合致するということで、国際的にも自然環境の保全が最も必要な地域ということで世界的にも認識がされているという地域になっているわけでございます。  今回、これを設定をするに当たっては、今個人のお名前も出ましたけれども、これまでずっと長年時間を掛けまして地元の自治体、そしてマタギの方々、マタギの会員、マタギの方々が会に、猟友会とやって……
  337. 森本晃司

    ○森本晃司君 そういうのは猟友会がやっているから、マタギの人には聞いていないんだよ。
  338. 小池百合子

    国務大臣小池百合子君) いえいえ、ちゃんと聞いております。
  339. 森本晃司

    ○森本晃司君 その場では聞いていない。
  340. 小池百合子

    国務大臣小池百合子君) はい、聞いております。
  341. 森本晃司

    ○森本晃司君 聞いていない。
  342. 小池百合子

    国務大臣小池百合子君) いえ、聞いております。何でしたら、局長の方から聞いていただければと思いますけれども……
  343. 森本晃司

    ○森本晃司君 後になって言っただけのこと。
  344. 小池百合子

    国務大臣小池百合子君) その辺のところは、またしつこくお聞きになるということなので、別途改めてやらせていただければと思っておりますけれども、いずれにしましても国指定鳥獣保護区の約八倍の地域もございますので、そこを、その地域で更にマタギの文化を広げていただきたいということでございまして、引き続き地元関係者の方々には御理解を賜るように努力をしてまいりたいと考えております。
  345. 森本晃司

    ○森本晃司君 もう時間でございます。  大臣、マタギの吉川さん、是非会いたいと言っていますから、一緒に参りますから、会って意見聞いてください。  以上です。
  346. 尾辻秀久

    ○理事(尾辻秀久君) 以上で森本晃司君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  347. 尾辻秀久

    ○理事(尾辻秀久君) 次に、林紀子君の質疑を行います。林紀子君。
  348. 林紀子

    ○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。  まず、私は、最初年金問題についてお聞きいたしますが、年金を取るための資格期間に限って今日はお聞きしたいと思います。  日本は原則として二十五年間保険料を掛けないと年金が一円ももらえない制度です。二十五年未満は掛け捨てという残酷とも言える制度ではないかと思うのですが、高い保険料をとても二十五年間も払えないという声が若者を中心に広がっています。二十五年の年金受給資格期間を短縮して、加入期間に応じて年金がもらえる制度にしましたら、頑張って保険料を掛けてみようという意欲も出てくるのではないかと思うわけです。  そこで、まずお聞きしたいのですが、ドイツフランス、イギリス、アメリカでは何年加入すれば年金はもらえるのでしょうか。
  349. 吉武民樹

    政府参考人(吉武民樹君) 御説明申し上げます。  御質問の受給資格期間でございますが、ドイツは五年、イギリスは十一年、女性の場合には九・七五年でございます。アメリカは十年、フランスは特に受給資格期間を設けておりません。  この背景といたしましては、概しまして諸外国の制度におきましては、無職、無業の方については適用の対象としない、あるいは任意加入とするというような仕組みを取っている国が多うございます。それから、自営業の方につきましても任意加入の仕組みを取っている国が多うございまして、我が国の場合には免除制度を設けておりますので、現役世代全員の方につきまして被保険者となっていただきまして、国民年金の仕組みを取っておりますので、その我が国と比べますと、所得のある方を中心に被保険者とし、それから保険料を納付する仕組みとなっておりますので、いわゆる稼得活動に従事しまして保険料を納付した期間が短い方が外国の場合は発生をいたしますので、この関係で短期間で受給資格期間が得られる制度としているという背景がございます。
  350. 林紀子

    ○林紀子君 私も調べてみましたけれども、二十五年という国は一つもないんですね。日本はやっぱりちょっと異常だと思うわけですよね。なぜ日本は二十五年なのか、その理由、厚生労働大臣、お聞かせいただけますか。
  351. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 外国の場合に非常に短い場合がございますが、これはしかし短くなればそれなりの年金しかないということだろうというふうに思います。  日本の場合にも確かに二十五年というふうになっておりますけれども、しかし基礎年金の方に入っておればその二階の方の年金は短くても別にそれはいいわけでありまして、例えば、私、個人的なことを申し上げて恐縮でございますが、もちろん国民年金の方はずっと入っております。二階の方のところは、勤めておりましたのが七年間しかございませんで、それしかありません。したがいまして、双方合わせますとどのぐらいになりますか、七、八万ぐらいな額になります。だけれども、それは上は短くても、それは基礎年金さえ払っておればそれは給付の対象になるわけでございますから、その辺もお含みをいただいてお考えをいただきたいというふうに思います。
  352. 林紀子

    ○林紀子君 二階部分まで長くなくちゃいけないなんというのはとんでもないことだと思うんですけれども、この二十五年ということで受給資格期間を長くすれば安定した積立金が生まれる、積立金があれば天下り先にも困らない、これが本当のねらいではないかというふうに思うんですよね。  私、今ここに厚生年金保険制度回顧録という本を持っておりますけれども、この中で、元厚生省の年金課長の花澤武夫さんという方、もう故人になっていらっしゃるということですが、ここにはこういうふうに書いてあるんです。この資金があれば一流の銀行だってかなわない。厚生年金基金とか財団とかいうものを作って、その理事長というのは日銀の総裁くらいの力がある。そうすると、厚生省の連中がOBになったときに勤め口に困らない。何千人だって大丈夫だ、こういうふうに述べているんですよね。  もうそういうことは許されない時代だというふうに思うわけですけれども、政府も曲がりなりにも積立金を取り崩すという方針に転換をしたわけです。せめて十年間保険料を納めれば期間に見合った年金がもらえる、そういう制度にすべきではありませんか。社会保障制度審議会でも拠出した保険料はできる限り年金として生きるような方途を考えるべきだと言っておりますし、二十五年という長期にわたる加入を要する資格要件を見直すべきだという答申も出ているんじゃないですか。これはやる気になればできることだと思うんですよね。どうですか、厚生大臣
  353. 坂口力

    国務大臣坂口力君) それは、やる気になったらできますけれども、その代わりに年金の額は減るということだと思うんです。また、短くいたしましたら、もう短な期間、例えば五年なら、ドイツと同じように五年なら五年ということにしてしまいましたら、五年掛けたらもうやめようかという人も出てくるということになれば、全体として年金そのものが小さくなっていく。それが、国民の皆さんがそれはもう覚悟の上だと、小さくていいというふうにおっしゃるのであれば、そういう年金制度もそれはあり得るというふうに思っております。  それから、その本のことですが、その人はいろいろなことを実は言っておりまして、甚だ迷惑でございますけれども、その天下りをするために二十五年にしておるわけでないことだけは確かでございますから、そこは誤解のないようにしていただきたいと思います。
  354. 林紀子

    ○林紀子君 ですから、短い期間だったら、十年間であれば、保険料はそういうことだということになるのは当然だというふうに思うわけですね。ですから、今若者の年金離れ、掛けないという人も増えているわけですから、これも一つ方策として真剣に考えるべきだというふうに思います。  それでは、年金の問題はそれしか質問する時間がございませんけれども、次に私は子どもの権利条約、この問題についてお聞きしたいと思います。  子どもの権利条約を日本が批准して今年で十年たつわけですが、この条約は史上初めて子供を権利行使の主体という形でとらえて、子供の生存権、意見表明権、成長発達権、保護される権利、市民的自由などを保障しようとするもので、これまでの子供に対する見方、子供は大人の言うことを一方的に聞くべき存在だという、そういう見方を大きく変えるものです。同時に、子供の権利を保障する政府などの責任を明確にした画期的な内容を持っているわけです。  九六年の第一回目の日本政府の報告の審査では国連から大変厳しい勧告が日本に出されました。そして今年の一月に行われました第二回の審査には、私も傍聴をしてまいりましたが、これまた厳しい内容の勧告が出されているわけです。その内容について具体的にお聞きしたいのですが、五年前に出されたこの最終所見で、政策調整機関についてこういうふうに言っているわけですね。  子供の権利に関係する様々な政府機関の調整を強化すること、そしてこの勧告が出された当時の野中官房長官は国会でこの提案及び勧告を十分検討した上で、最終勧告を厳守する形で体制を作り上げていきたい、こういう趣旨の答弁をしているわけです。  そこで、その後五年間、政府間の調整機関についてはどのような対応をしてきたのか、そして中心となる責任者はだれで、担当部署というのはどこになるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  355. 小野清子

    国務大臣(小野清子君) 林委員にお答えをさせていただきます。  平成十三年の一月、中央省庁等改革以前は総務庁の青少年対策本部におきまして青少年行政の総合的推進を担ってきたところでございますけれども、中央省庁等改革によりまして内閣の重要政策に関する企画立案、それから総合調整の機能を担う内閣府が設置をされまして、青少年行政の重要性にかんがみまして青少年の健全育成に関する企画立案及び総合調整、こういうものを内閣府において所掌するということに変わったわけでございます。  また、昨年の六月に関係省庁、関係行政機関の緊密な連絡によりまして、高いレベルで図りつつも、青少年育成施策を一層強力に推進する体制といたしまして、内閣に総理大臣を本部長といたしまして全閣僚が構成員となります青少年育成推進本部が設置をされました。さらに、昨年九月に青少年育成特命担大臣が設けられまして施策の総合調整を図っているところでございます。
  356. 林紀子

    ○林紀子君 こう言っては申し訳ないんですが、前青少年特命大臣というのはこの子どもの権利条約というのを御存じなかったわけですよね。現在、青少年の特命担大臣というのは小野大臣ということになるわけですね。  そうしますと、子どもの権利条約に責任を持ってやっていく大臣は小野大臣である、ですから、全体、政府全体を見ながら総合的に施策を進めていく、また行動計画なども作っていく、こういう観点で小野担当大臣は頑張るということになるわけでしょうか。
  357. 山本信一郎

    政府参考人山本信一郎君) 今、小野大臣から答弁いたしましたように、青少年の育成に関する企画立案、総合調整の事務内閣府において担当をしているところでございます。そうしまして、その具体的な担当は私の総合企画調整の政策統括官というところがそのセクションとして担当しておるところでございます。  そうしまして、先生おっしゃいましたように、青少年行政というのは幅広い分野にわたります。文部省、厚生労働省、警察庁等と幅広い分野にわたりますので、その総合調整を行っていくというセクションでございます。    〔理事尾辻秀久君退席、委員長着席〕  そうしまして、先生おっしゃいました児童の権利条約、この条約との関係ということになりますと、条約の解釈等につきましては外務省の所管でございますので、外務省とも緊密に連携を取りまして、そういうことも踏まえまして、総合調整をしっかりとやっていきたいという具合に考えておるところでございます。
  358. 林紀子

    ○林紀子君 今までばらばらで各省庁がやってきた、そこが今回の勧告で非常に厳しく言われているところなんですね。  例えば、NGOなどは今この子どもの権利条約というのを大いに広めていこうということでいろいろな団体が運動を始めているわけですけれども、そうしましたら、そういうNGOがもし子どもの権利条約で政府と話合いをしたいということになりましたら、今御回答くださいました総合企画調整担当、そこにお話をしに行けばよろしいわけですか。
  359. 山本信一郎

    政府参考人山本信一郎君) 青少年行政の総合調整をするというのが私の担当でございます。したがいまして、そういう御趣旨でございますれば私の方が担当でございますし、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、条約の各条項の解釈ですとか、そういったものと国内法制との関連ですとか、そういうことになりますとこれは外務省の所管でございます。物によりまして、あるいは学校教育そのものでございましたら文部科学省ということにもございますけれども、私はそういったものを踏まえて全体を総合調整するという具合に御理解いただければと思います。
  360. 林紀子

    ○林紀子君 分かりました。  それでは、今度は教育についてお伺いしたいのですが、文部科学大臣、急いでこちらに来てくださったということで、教育にかかわっては、前回、子供は教育制度の過度の競争的な性格によりストレスにさらされ発達障害に陥っている、それと闘うための適切な措置を取るようにと勧告されたわけですね。これは要旨でございますけれども。  私は、これを聞いて本当に大きなショックを受けたんですね。といいますのは、本来教育というのは子供の発達を促すために行われるものなのに、それが発達障害をもたらしているというんですから、これはもう大変なことだと思うわけですが、文部科学大臣はこの勧告をどんなふうに受け止められましたでしょうか。
  361. 河村建夫

    国務大臣(河村建夫君) 平成十年六月に出された児童の権利に関する最終報告ですね、委員会、ここで今、林委員指摘のように、高度に競争的な教育制度、これは子供の発達を阻害するんだと、こういう指摘がございました。  日本においても、受験戦争という言葉があって、これに対するいろんな反省から見直しをしようという動きが出てまいりまして、受験の在り方そのものについても入試制度改革という形で、もっと面接的なものを入れようとか、あるいは選抜の在り方についても適性をもっと見ようとか、こういうこと。それから、中高、公立においても中高一貫教育にして入試をなくす形で高等学校に進学できる制度も作ろうというようないろいろな取組もなされてきたところでございます。  こういうことが過度にあってはならないわけでございますから、今後とも教育委員会通じて各種会議等においてもこの問題を取り上げながら、具体的な改善の取組を促していきたい、この勧告を受けましてそう思って進めておるところでございます。
  362. 林紀子

    ○林紀子君 それでは、ちょっと具体的な数字をお聞きしたいんですけれども、不登校の児童生徒の数、第一回政府報告を国連に提出した九六年から五年間でどのような変化があるのか。また、高校の中途退学者の割合はこの五年間でどうなっているのか、数字をお示しいただきたいと思います。
  363. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  まず、第一点の不登校の児童生徒数の推移でございますが、国公私立の小中学校における不登校児童生徒数は、平成年度が約九万四千人でございました。その後、毎年度増加を続けまして、平成十二年度は十三万四千人と、約この間四万人ほど増えておると、こういう状況でございます。  第二点目の高等学校の中途退学率でございますが、公私立高等学校におきます中途退学者数の在籍者数に占める割合、いわゆる中途退学率でございますが、平成年度が二・五%でありました。その後、平成十二年度は二・六%と、こういう状況でございます。
  364. 林紀子

    ○林紀子君 この中途退学の理由を見ますと、学校生活、学業に不適応、これが一番多くなっていて、年々増えているわけですね。そして、IEAの第三回国際数学・理科教育調査の中で、数学と理科の好き嫌いを調査しておりますけれども、それはどんな数字が出ておりますでしょうか。
  365. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  IEA、国際教育到達度評価学会でございますが、国際比較調査を実施をいたしておりますが、その結果によりますと、我が国の児童生徒の数学と理科の成績は国際的に見て上位に位置をしているわけでございますし、また同一問題の正答率について経年比較をしても低下傾向は見られないところでございますが、その一方で課題もございまして、数学や理科が好きであるとか、将来これらに関する職業に就きたいと思う者の割合でありますとか、学校外の勉強時間が国際的に見ても低いレベルにあると、子供たちの学びへの意欲あるいは学ぶ習慣などが必ずしも十分ではないと、こういう課題が見受けられるところでございます。
  366. 林紀子

    ○林紀子君 今のそれぞれの数字を示していただきましたけれども、これを見ましても、得点は高くなっている、だけど勉強が本当に好きかどうかというと、勉強はどうも好きになれない、学校に行きたくない、そういう子供たちの現状というのはこの五年間ほとんど変わっていないわけですね。  高校入試のお話も先ほど大臣からありましたが、これは更に競争的になっているんじゃないかというふうに思うんですね。多面的な評価だといって取り入れられたのは、意欲、関心、態度といった、人格を評価して内申書に書く、子供たちは先生に気に入られる良い子競争を学校でしなければいけない。また、高校の学区も広がって、一部の進学校に県下全域から受験生が競い合ってやってくる。こういうふうな状況ではないですか。大臣、どうでしょうか。
  367. 河村建夫

    国務大臣(河村建夫君) 現実問題として、都市部と地方と高等学校を見てまいりましても、東京を中心とする都市部は私学、中高一貫の私学へ集中傾向がございます。しかし、地方へ参りますとむしろ逆に公立高校に依存する面が多いわけであります。そこにも大学を目指してその高校の時点から受験戦争的なものがあるということは、私も現実にこれは否定をいたしません。  しかし、一方では子供たちの学力低下の問題も指摘されておりまして、やはりしっかり勉強するときに基礎を学んで、そして時には自らを鼓舞して競争に挑戦する、そういうものもやっぱり生きていく中には必要でございます。しかし、それが過度に陥ってはいけないということは事実でございますから、先ほども御答弁申し上げましたように、そういうものを考えながら、その個人の適性、ただただ点数だけでなくて人間力を見るテストに方向を変えていくということによって、そうした過度の競争によって人間性が阻害されることのないようにこれからも留意していかなきゃいけないと、このように思っております。
  368. 林紀子

    ○林紀子君 まだたくさんお聞きしたいことがあるんですけれども、勧告ではNGOや生徒や親、そういうものを含めてカリキュラムを見直すべきだということが言われております。  時間がなくなってしまいましたので、この子どもの権利条約につきましては今後も大いにお話を聞きますし論議もしていきたいということを申し上げて、次のバッターに譲りたいと思います。
  369. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 関連質疑を許します。小林美恵子君。
  370. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党小林美恵子でございます。  私は児童虐待問題について質問をいたします。  大阪岸和田で起こった虐待事件は全国に大きな衝撃を与えました。被害少年は今歌声に反応しているとのことですけれども、それにしても、実の父親から暴力を受け続け、しかも食事も与えてもらえない、そして保護されたときは体重は二十四キロ、この少年がどんなに苦しんだろうかと思うと、私は胸がえぐられるような気がします。続いて、住吉区、泉佐野でも虐待で子供が亡くなる、こういう事件が相次いでいます。厚労省の調べでも、二〇〇二年度二万四千件になっているという調べでございます。  私は、この児童虐待というのは、事は子供の命にかかわる重大な問題で、早急に解決をしなければならないと思います。その点で、青少年育成担当の小野大臣にまず御所見をお伺いいたします。
  371. 小野清子

    国務大臣(小野清子君) お答えをさせていただきます。  児童虐待につきましては、岸和田で発生いたしました事件を始め、大変深刻な虐待の事例がもう頻発をしておりまして、児童相談所における相談件数、この点でも大変急増するなど極めて憂慮すべき状況にあるということを私も同じ気持ちでおります。  青少年の育成の観点から、子供たちが最も信頼を寄せて、そして愛情を受けるべき親、そのような立場の者から虐待を受けるということはあってはならない事態でございまして、関係省庁が連携をいたしまして一体となって取り組んでいかなければならない深刻な課題であると、そのような認識をいたしております。  このためには、青少年育成の総合調整を担当する私といたしましては、青少年育成推進本部や同本部の副本部長会議、こういうものを総合調整の場を活用いたしまして、関係省庁と連携をしながら、改善すべき点は改善するということの中に、痛ましいこのような児童虐待の発生防止のために全力で頑張ってまいりたいと、そのように思っております。
  372. 小林美恵子

    小林美恵子君 担当大臣として本当に力を注いでいただきたいというふうに思うわけでございます。  私は、この岸和田を始めとしまして、大阪の子ども家庭センター、児童養護施設、そして一時保護所、関係職員のお話を聞いてまいりました。  今日はここで厚生労働省にお伺いをいたします。  この岸和田の子ども家庭センターのまず責任範囲、その人口、職員、その数、虐待対応職員数、昨年の虐待相談件数はどうなっているでしょうか。
  373. 伍藤忠春

    政府参考人伍藤忠春君) 御質問のありました岸和田の子ども家庭センターでございますが、管下の市町村は五市四町、管轄人口は五十九万九千七百六十一人、管轄の児童の人口は十一万六千四百六十四人、これは昨年の四月現在でございます。それから、児童相談を担当する職員数は十八人、それから児童虐待への対応を担当する職員数は四名でございます。それから、年間の虐待相談件数、これは平成十四年度でございますが、二百三十五件ということになっております。
  374. 小林美恵子

    小林美恵子君 今御答弁がございましたけれども、この岸和田では虐待対応課職員は、課長などのクラスを除きますと、実働職員は二名になっています。  それで、今お話しされたように、二百三十五件相談を受けているんですね。一人当たりにしますと百数十件に上ります。それでも、この職員の方々は、相談を受ける御家庭との面接の際に罵声を浴びせられたり身の危険を感じながらも、それでも子供を守ろうと本当に必死で頑張っておられるんです。土曜日も日曜日も対応して、しかも夜九時、十時の平時の残業は日常だというふうにおっしゃっておられました。  今回の岸和田の事件は、こういう状況の中で起こった事件だと私は思うんでございますけれども、この点、この児童相談所のこういう現状について厚生労働大臣がどう御認識をされているか、お伺いしたいと思います。
  375. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 大変大阪の事件は残念な事件であり、本当に痛ましい事件だと私も率直にそう思っているわけでございます。  こうした児童虐待が、報道がたくさんされるようになったということもあるのかもしれませんけれども、それにしても余りにも数が増えてきている。これは一体何が原因で最近こう増えてきているのだろうか、何度も何度も私はこう反すうするわけでありますけれども、そこに対する結論といいますか、そこにまで私はまだ至っておりません。  しかし、いずれにいたしましても、起こっております限りこれに対して対応をしていかなければならないわけでございます。それぞれの地域で、地域によりましても、人口割にいたしましてたくさん起こる地域と起こらない地域ともあるんだろうというふうに思います。より多く起こる地域につきましては、それに対してどう対応をするかといったことはそれぞれの地方自治体も真剣に御検討をいただいているというふうに思います。  国といたしましても、これらの対応するために今回、市町村に対しましてもその責任の一端をお持ちをいただいて、そして是非とも対応をしていただきたいということで法律も、法案も提出をさせていただいているところでございますが、国、都道府県、そして市町村、区、そうしたところ、連携を密にしながらやっていかなければならないと思っている次第でございます。
  376. 小林美恵子

    小林美恵子君 先ほど御答弁いただきましたけれども、市町村にもその役割を担っていただくというお話でございましたけれども、そのためにはやっぱり私は、その市町村の専門の方を置くとか予算措置がなければ本当の機能を果たせないというふうに思うわけでございます。  それで、児童相談所のこの体制というのは、やっぱり根本に配置基準があると思うわけですね。今日は朝日新聞にもその記事が載っておりましたけれども、交付税の増額によって児童福祉司の増員をするということの報道もございましたけれども、そこで厚生労働省にお聞きします。現在の児童相談所の設置基準とその数、児童福祉司の配置基準とその数はどうなっているでしょうか。
  377. 伍藤忠春

    政府参考人伍藤忠春君) まず児童相談所の設置基準でございますが、これは児童相談所運営指針におきまして、各都道府県や指定都市の地理的条件あるいは利用者の利便を勘案して、人口五十万人に一か所程度という基準が示されておりまして、現在、全国で百八十二か所設置をされております。  それから、児童福祉司でございますが、これは児童福祉法施行令第二条におきまして、児童福祉司の担当区域は、保護を要する児童の数、交通事情等を考慮し、人口おおむね十万から十三万までを標準として定めると、こういう規定がございまして、これに基づきまして、平成十五年度で現在千七百三十三名の児童福祉司が設置をされておるところでございます。
  378. 小林美恵子

    小林美恵子君 先ほどございました児童福祉法施行令ですけれども、これは何年に施行されたものでございますか。
  379. 伍藤忠春

    政府参考人伍藤忠春君) 昭和三十二年の児童福祉法施行令の改正の際に盛り込まれたものでございます。
  380. 小林美恵子

    小林美恵子君 つまり、四十七年も前のものですよね。その当時と現在の状況というのは随分違うと思うわけですね。  それで、私は今日このパネルを持ってまいりました。お手元にも資料がお配りしていると思いますけれども、ごらんいただきたいというふうに思います。(資料提示)  赤い色が相談、虐待の相談件数、そして緑色が児童福祉司の人数なんですね。このグラフを見ていただきましたら、いかに相談件数に対して福祉司の人数の伸びが追い付いていないかということが一目瞭然だというふうに思うわけです。私は、ここに四十七年前の配置基準が足かせになっているというふうに思うんですね。五年間で児童福祉司の増員は四百九十九人でございます。  ここで、端的にお伺いしたいんですけれども、今日、朝日新聞に報道されておりました地方交付税の増額で二十五人にする、このことの事実確認と、それと、今、全国の児童相談所所長の方々が、せめて五万人に対して一人の児童福祉司をという御要望がされています。これについて、いつまでにお答えなるかというお考えを厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。
  381. 伍藤忠春

    政府参考人伍藤忠春君) まず、児童福祉司の数でございますが、新聞報道のとおり、私ども今総務省とも協議をいたしまして、現在、標準団体で二十三名の配置というふうになっておりますが、これを十六年度は二十五名体制に持っていきたいということで考えているところでございます。  それから、御指摘のありました児童相談所長会からの要望についてでございますが、先ほど申し上げましたように、現在の配置基準を実際の児童福祉司の配置は既に相当上回る水準でもう設置をされておるところでございます。  こういった現状を踏まえて今後どうするかということでございますが、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、今回この児童福祉法の改正を提案をしておりますが、この中で、児童虐待あるいはそのほかの児童の問題に対応するために、児童相談所のみならず市町村にも応分の役割を果たしていただきたいと、こういう今ことを考えているわけでございますので、こういった法の施行の状況でありますとか今後の市町村合併による市町村の能力の向上でありますとか、こういうことを総合的に勘案して今のこの児童福祉司の配置基準を将来どの程度の水準に設定すべきかということを考える必要があると思っておりますが、その際にどういう、こういう標準を示すこと自体についての余り地方の足かせにならないようにという、昨今の国と地方との関係、こういった点も考慮しながら総合的に考えていくべきことかなというふうに考えております。
  382. 小林美恵子

    小林美恵子君 私は、全国児童相談所長の皆さんというのは、本当に現場で子供を守るために本当に頑張っておられると思うわけですよね。やっぱりこういう御要望に真摯におこたえになるのが厚生労働省、政府の役割だというふうに思うんです。このことを一言強く申し上げたいというふうに思います。  次に、虐待を受けた子供たちが保護されていく児童養護施設について質問いたします。  この児童養護施設についてですけれども、私が訪ねた大阪のある児童養護施設は、九十一名の入所のうち六十八名が虐待が理由での入所でした。虐待を受けてきた子供たちはとにかく心に深い傷を持っています。この心の傷をいやすには、どうしても職員が一人一人の子供とかかわる、そういうことがどうしても必要なんですね。  それで、二十四時間体制で職員が三交代勤務で、夜は一人が結局三十人の子供を見る、そういう現状があります。夜、小さな子には絵本の読み聞かせをする。でも、たくさんいてなかなか順番が回ってこずに、もう読んでもらわなくて寝てしまうという、そういう子供もいます。また、夜中に子供が急病をすると、勤務外の職員の応援をもらわないと対応ができないという現場の状況なんですよね。  それで、私は、厚生労働大臣に改めてお伺いしたいと思います。子供が絵本を読んでもらえずに施設の場でも我慢をして寝なくてはならない、こういう現状はやっぱり早急に改めるべきではないでしょうか。厚生労働大臣、いかがでしょうか。
  383. 坂口力

    国務大臣坂口力君) この児童養護施設は施設としての基準があることは、もう今更申し上げるまでもなく御存じのとおりでございます。  しかし、これだけではいけないので、やはり里親制度等もこれは充実をさせて、そしてそうしたところで、やはり本当に家庭的な雰囲気の中で心をいやしていただく、そしてまた新しい立場で成長してもらうということがより大事になってくるのではないかというふうに思っております。そうしたことにも力を入れていかなければなりませんし、先ほど申しましたように、何はさておけ、多くの虐待が起こらないようにするのにはどうしたらいいかということにも力を入れていかなければならない。  起こった子に対する手当て、そしてその双方についてこれはやっていかなければいけないというふうに思っている次第でございます。
  384. 小林美恵子

    小林美恵子君 起こらないようにの体制も本当に私も大事だと思います。同時にやっぱり、起こったときの保護の体制もやっぱり大事だというふうに思うんですね。そういう点で児童養護施設のここにも、今職員が六対一という基準があると思うんですけれども、ここをやっぱり見直さなくてはならないというふうに思うわけでございます。  いずれにしましても、この国連特別総会でも児童には最善のものを与えるということが宣言されています。そういう意味でも、政府がそういう立場に立って児童虐待の問題に、解決へ予算の措置を取ることを強く求めまして、私の質問を終わります。
  385. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 以上で林紀子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  386. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 次に、福島瑞穂君の質疑を行います。福島瑞穂君。
  387. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。  原子力発電と再処理事業のコストについて昨日お聞きしましたが、今日、またちょっと補充で質問いたします。  このパネルを示して先日質問をいたしました。再処理に十一兆円、残りの高レベル放射性廃棄物、低レベルを入れて約十九兆円ということなんですが、これは電力会社が負担すべきもの、民間が民間でやるべきですから、これについて政府負担をするということは、改めてお聞きしますが、あり得るのでしょうか。
  388. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 昨日も申し上げましたように、まず、日本はエネルギー資源がないという大前提の中で議論を進めなければいけないと思っております。そういう中で、それぞれのエネルギー資源については長所あるいはまた劣るものあると思いますけれども、安定的に供給ができて、安全性というものを大前提にした上で、地元の皆さん、そして国民的な理解をいただくという前提で、原子力エネルギーあるいは核燃サイクル、バックエンド、あるいはまたサイクル全体を含めて、昨日も申し上げましたが、十九、十八・八兆円ほど掛かるという審議会の数字が出ているわけでございますけれども、これは、資源がもう基本的にないという前提の中で受益者が負担をするということも視野に入れながらこれから議論を深めていくということでございます。
  389. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 ただ、この十九兆円というのは極めて多額です。  先日も申し上げましたが、審議会では他の電源との比較において遜色はないと、収益性の分析評価としてという審議会の報告が出ております。このバックエンドの分析評価によりますと、他のエネルギーと遜色はないわけですから、特別な措置を国は行うべきではないのではないでしょうか。
  390. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 遜色がないというのは、石油、天然ガス、水力、新エネ、そして原子力発電、先ほど、原子力発電については安全性を前提にして地元また国民の御理解をいただいた上で、例えば供給の安定性の問題であるとか、あるいはまたCO2を排出しないとかいう環境面での問題とか、問題といいましょうか、メリットだとか、そういうものも含めてそれぞれいいところがあるということでございまして、その前提になっております核燃サイクルは十八・八兆円が現時点での試算として前提になっているということでございます。
  391. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 私が質問しているのは、安全性の問題もさることながら、コストが余りに大きい。十九兆円というのは、それは日本経済にとっても大きな痛みとなってしまうんではないか。  では、お聞きをいたします。再処理をしない場合のコストは幾らでしょうか。
  392. 日下一正

    政府参考人(日下一正君) 私どものところ、日本におきましては再処理をしない場合のコストというのを試算したものはございません。  これは、昨年十月に閣議決定されましたエネルギー基本計画におきましても、核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的な考え方としていることも受けているわけでございます。しかしながら、一定の条件の下での計算でございますから、必ずしも我が国に直接当てはめることはできませんが、OECDのレポートにおきまして、再処理をする場合の方が再処理をしない場合と比較して約一割程度費用が高く掛かるという試算もなされていると承知しております。しかしながら、資源の有効利用などの観点から、御承知のように、イギリスやフランスにおきましては我が国と同様、再処理政策を採用しているところでございます。
  393. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 国がある政策を取るときには、その道に突き進むのか、やめるのかというコスト計算をきちっとすべきです。コスト計算をされていないということについて、つまり、この十九兆円が果たして必要なものか、そうでないのかについて、あるいは他の道のコストが幾らなのか計算をされていないと。日本ではこれからもこのコスト計算はされないのでしょうか。
  394. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) バックエンドのコストは十一兆円、核燃サイクルのコストは十八・八兆円という試算が総合エネルギー調査会で出ているということは大前提として昨日から議論をしているわけであります。  なお、遜色がないとかあるとかいう議論は、福島議員は何かこう、コストだけで高い、高いと言っているような議論がありますけれども、総合的に、さっきから、昨日からも申し上げているように、環境面、あるいはまた供給能力の面、その他それぞれいいところがあって、日本の場合にはそもそもエネルギーがないわけですから、エネルギー、原子力エネルギーだけに一〇〇%依存するわけにもいきませんし、石炭、石油、天然ガスに依存するわけにもいきませんから、そういう意味で、まあ金融的な言葉を使えば、ポートフォリオ的な観点も含めて言っているわけであります。  今事務当局から説明があったとおり、再処理コストはこのOECDでは一割高いという試算も出ていることも我々承知をしているわけでありますけれども、そういうものも他方ありますけれども、環境面とか資源の供給能力とかいった面も含めて、いろんなメリット、あるいはまたいろんなところを総合的に勘案して日本のエネルギー政策を今後長期的に考えていかなければならないという前提でこの計画を進めていくわけでございます。
  395. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 再処理という道を今度選択をする場合には、どんなに低く見積もっても十九兆円掛かるわけです。再処理については、この赤い部分、再処理、十一兆円、そしてこれが廃棄物ですから、少なくとも再処理十一兆円は必ず掛かるわけです。今、日本経済が悪く、税収は五十二兆円しかありません。今後再処理に向かっていく道で十九兆円負担することが妥当かどうかと思います。  所信表明演説で総理は、自然エネルギーの促進について議論をされました。ドイツ日本の風力発電の二十倍。先日、ドイツ、緑の党の国会議員と話をしましたが、六月に自然エネルギーの国際会議が開かれます。しかし、新しくできた日本の自然エネルギー特措法によりましては、なかなか風力発電や自然エネルギーの促進が図られておりません。この点について、大臣、この十九兆円、突き進むことがいいのか、あるいは自然エネルギーがなかなか日本はパーセントが向上しない点について、経済の面からも問題があると考えますが、いかがでしょうか。
  396. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほども申し上げたと思いますけれども、新エネルギーというものも今後非常に大事なエネルギーの一つとして位置付けなければいけません。風力あるいはまたバイオエネルギー、あるいは海底に沈んでいると言われるメタンハイドレード、あるいはまた長期的には水素エネルギー、いろいろあって、そういうものが各段階で今研究が進んでいるわけでございますから、我々としても新エネに対する研究に対する意欲、あるいはまた資金投入というものは非常に大きいものがこの限られた財政状況の中にあるわけでございます。  他方、福島議員の昨日からの御議論というのは、何か十八・八兆円が無駄であって、実はそれをなくしてしまえばいいんじゃないかということでありますけれども、仮にこの核燃サイクルの十八・八兆円のエネルギーの部分を抜かした場合には、じゃ、ほかで、代替エネルギーでもってその補てんをする場合にやっぱりコストが掛かるわけでありますから、コストだけの問題ではなくて、トータルとしてそれぞれのいいところをベストミックスでもって資源のない日本資源エネルギー政策を中長期的に進めていかなければならない。何か十八・八兆円とゼロとの比較でもってどっちがいいかみたいな単純な議論ではないわけであります。
  397. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 しかし、再処理の道へ進めば十八兆円掛かると。何のために再処理をするのか。プルトニウムを取り出す後処理なわけですよね。プルトニウムは今日本では大変余っています。こういうエネルギー政策、しかもこの財政逼迫の折、これからどんどんこの費用が掛かるコストの道へ突き進むかどうか、経済産業省で真摯に議論をされることを心から期待をします。  次に、三位一体改革についてお聞きをいたします。  去年七月に三位一体改革について私が質問をしたときに、まず税源移譲からすべきではないかという質問をいたしました。しかし、その後そのことはそうなりませんでした。なぜそうならなかったんでしょうか。
  398. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) これはまず補助金をきちっと見直して、地方で引き続きやっていただく必要のあるものについては財源をお譲りする、しかし、もうこの補助金は要らないというものに関しては財源を譲る必要もない、そういうことで、補助金改革とセットで考えていこうということで議論をしたわけであります。
  399. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 しかし、税源が移譲されなければ、削減だけが先にあれば自治体はサービスができません。セットでも現在ないですね。  なぜ税源移譲が先にならなかったんでしょうか。
  400. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) それは、今申し上げたように、セットでやろうということで進めましたから先に来てないわけですが、税源移譲につきましては、税源移譲につきましては、一つ税源移譲交付金という形で、それからもう一つ所得税を譲与所得税という形で、これは所得税で将来きちっと税源移譲をしていくということを形にして表すためにこういう形にしたわけでありますので、これは暫定的なつなぎの措置です。つなぎの措置ですが、一応今年はそういう形でやらせていただいたということであります。
  401. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 セットではないんじゃないですか。プラスマイナスすれば削減の方が圧倒的に多いですよね。
  402. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) それは最初に申し上げましたように、もうこれはやらなくてよいというようなものについては税源をお譲りする必要はないわけですから、このような形になったということでございます。
  403. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 三位一体改革においては、首相の指示を受けて官房副長官が十一月二十二日、厚生労働二千五百億、国土交通三千二百、文部科学二千五百、農林水産五百億というように、省庁に対して削減目標を指示しました。これは合理的判断、何か理念があって削減額を決めたのでしょうか。
  404. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) これは、三位一体につきましては、基本方針二〇〇三というものがございまして、その改革工程で十六年度に向けた作業を進めていたわけですが、十一月になりまして、小泉総理から、特に地方の声を十分に反映するという観点に立って、一兆円を目指して国庫補助負担金の廃止、縮減等を行うという指示がなされまして、それを受けまして、今おっしゃった官房副長官の下でどういう形で進めていくか作業をしたわけですが、具体的に改革を進めるに当たりまして、全国知事会などから、こういう補助金はもう地方に譲ってくれとかいろんな御要望がありましたので、そういう各種提言において見直し対象としたその個別の補助金、見直し対象とされて指摘をされた個別の補助金ですね、こういうことを参考にしながら目標額を作ったわけです。
  405. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 この中から理念が全然出てきません。初めに削減額を決めて、その中で切り捨てるものを決めたのではないですか。  では、初年度で、今回、公立保育園の施設運営費の補助金を他のものに優先して削減対象とした理由は何ですか。
  406. 坂口力

    国務大臣坂口力君) これは、一つ地方から要望が強かったということ、もう一つ地方が自らの責任において設置されたものであるということ。この最初の要望につきましては、これは知事会、それから政令都市の市長会、それから市長会等から共通して要望のあったものはこの保育所でございました。
  407. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 新聞報道によれば、最初生活保護費が削減対象になったが、全国知事会の反対で公立保育園の補助金になったというふうに聞いておりますが、これは事実でしょうか。
  408. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 先日もここでお話を申し上げましたとおり、国保、介護、そして生活保護、そしてこの保育所あるいは障害者の問題、これでもう九六%、六、七%になるわけであり、その中のどれかということになるわけでございますから、そうした中で検討をさせていただいた。地方からの御要望のあるものに先に決めさしていただいたと、こういうことでございます。
  409. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 私は、なぜ子供なのかと思うんですね。今、少子化で、仕事と家庭の両立支援などは国の施策としてやるべきこと、保育の問題は国が責任を持ってやるべきことでもあります。なぜここでこれを削減としたんでしょうか。
  410. 坂口力

    国務大臣坂口力君) 子供の問題が大事なことはもう御指摘のとおりでございますが、その中で、地方自治体としておやりになっておりますこの公的な保育所につきましては、自らがおやりになっている責任において、これはおやりになっているわけでありますから、その面につきましてお願いを申し上げたと、こういうことでございます。
  411. 福島瑞穂

    福島瑞穂君 自治体が責任を持つべきは当然ですが、国の施策として切り捨てられ、現在どんどん民営化、官から民へですが、民の部分で、民間企業で、公立保育園が民間に切り替わっているなど、たくさん問題があります。  子供の施策の切捨ては許さないということで、今後この問題について追及していきたいと考えます。
  412. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 以上で福島瑞穂君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  413. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) 次に、島袋宗康君の質疑を行います。島袋宗康君。
  414. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 私は、米軍の水中爆破訓練についてお伺いいたします。  米軍は、昨年九月十五日から十七日までの三日間、沖縄本島北西、先島諸島北西、台湾南西海域の三か所、そして今年一月二十三日、沖縄本島南東海域で水中爆破訓練を実施するとの通知を出した後、いずれも中止となっております。  訓練が計画されていた場所の大半は領海の基線から二百海里までの排他的経済水域で、いずれも米軍の訓練水域外であります。訓練名を水中爆破訓練から途中で危険な訓練に変更し、今回は中止となりましたが、昨年五月には訓練を実施しております。沖縄県や水産庁は、漁船の安全が脅かされるので中止を求めたという経緯があります。  外務省は、これらの情報について承知しておられますか。そして、なぜ訓練水域外の排他的経済水域での訓練計画を立てたのか承知しておりますか。今後のこともありますので、日本近海での水中爆破訓練は行わないよう米側に申し入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  415. 海老原紳

    政府参考人(海老原紳君) お答え申し上げます。  ただいま委員から御指摘のありました、昨年の九月、そして今年の一月に、米軍の方から水中起爆訓練等に関しまして航行警報が発出をされ、また、これが取り消されたという経緯、あるいは昨年五月の音響作業に関します経緯、これに関連いたしまして地元の方々の御懸念が表明されていたということについては、当然我々は承知をいたしております。  この訓練でございますけれども、これはいずれも我が国の排他的経済水域において行われた、あるいは行われることが予定されていたものでございます。この排他的経済水域におきましては、天然資源の探査、開発、保存、管理のための主権的権利、あるいは海峡、海洋環境の保護、保全に関して日本が管轄権を有しております。  したがいまして、昨年の五月に行われましたような音響作業のような活動につきましては、沿岸国である我が国の権利義務に妥当な考慮を払う必要があるということでございまして、昨年五月の作業の実施に当たりましては、米側から安全確保は米国の最優先事項であると、米軍からは周辺を確認して船舶がいないことを確認した上で本作業を実施すると。したがって、漁船を含む船舶は当該水域では通常どおり活動が可能であるという確認、また本作業に使用される爆発物はいかなる天然資源にも、また海洋環境にも悪影響を及ぼすことがないよう選択されているというふうな説明を受けた次第でございます。このように、昨年五月の音響作業は、米側としても沿岸国である我が国の権利義務に妥当な考慮を払ったものと考えております。  したがいまして、外務省として中止は求めませんでしたし、今後もし同じような作業があれば、米側から説明を受けた上で、妥当な考慮が払われているかどうかということについて判断をしていきたいというふうに考えております。
  416. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 今後、是非そういった訓練は中止するように、是非強く申し入れていただきたいと思います。  次に、対潜水艦探知の新型ソナー使用問題についてお伺いいたします。  昨年来、米海軍の対潜水艦用新型低周波ソナーが鯨やイルカなどの海洋哺乳類に悪影響を与え、大量死につながるとして、米国の自然環境保護団体から訴訟が提起され、サンフランシスコ連邦地裁で海軍側が敗訴するという事例がありました。その後、この両者間で日本近海に限り使用を認めるとの合意がなされているということであります。この新型ソナーを搭載している米海軍の海上輸送部隊所属の音響調査船コリーシュエストが、昨年の九月、十月、十一月に頻繁に沖縄の那覇軍港に寄港したことも確認されております。  この米海軍の新型ソナー使用問題では、昨年十一月六日に日米双方が外務省で協議したことも聞いておりますけれども、この件に関するこれまでの経緯と日本近海での使用の有無について外務省の説明を求めたいと思います。
  417. 海老原紳

    政府参考人(海老原紳君) 今委員からお尋ねのありました低周波ソナーの使用につきまして、米国の環境保護団体と米海軍との間で訴訟となりまして、追加的な使用制限措置の下で本件ソナーを導入するという和解が合意に達したということは我々としても承知をいたしております。  今委員からもお話がありましたけれども、これを受ける形で、二〇〇三年の十一月に米側と我が方との間でこの問題に関する協議を行ったところでございます。この協議におきましては、米側から、米政府が委託をいたしました専門家により実施されました科学調査の概要などにつきまして説明を受けたところでございます。政府といたしましては、今後更に米側から説明を受けた上で対応を検討していくということになるというふうに考えております。  ソナーにつきまして、我が方の排他的経済水域内で使用されたというふうには承知をいたしておりません。
  418. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 この米海軍の新型低周波ソナーは、三百ヘルツ前後の強力な低周波を発し、より広範で対敵潜水艦の探知が可能である反面、海洋哺乳類の脳に影響し、大量死につながることが指摘されております。  米海軍自身、太平洋艦隊司令部は二年間に一千万ドルの調査費を投じて調査をした結果、海洋生物に与える潜在的影響はほとんどなく、生物的な影響は極めて小さいと説明しているが、全く影響がないということは言っておりません。米海軍は、一九九八年ハワイで、二〇〇三年にグアムで使用したが、海洋生物に悪影響を与えた事実はないと言っております。一方、米海軍がソナーを使用していた時期、いわゆる二〇〇〇年三月には、三月にはハバマ諸島で、二〇〇二年九月にはカナリア諸島で鯨が集団死したという事実があるようであります。  このような点を踏まえて、この米海軍の低周波ソナー、海洋生物に与える影響については、環境省としてはどのような知見を有しているのかお伺いします。
  419. 小野寺浩

    政府参考人(小野寺浩君) これは専門家一般的な見方でありますが、漁船のエンジン音等騒音が生物全般に与える正確な影響については分かっておりません。  しかしながら、鯨に関して言いますと、情報交換ができる、鯨同士の情報交換ができる範囲が短くなる可能性があるという指摘もございます。鯨やイルカに限らず、音圧が百八十デシベルを超えた場合、また周波数によっては生物に与える影響が非常に大きいと指摘する専門家もいるところであります。  なお、今回の米軍の新型低周波ソナーにつきましては、正確な情報がありませんので、影響について申し上げることは私の立場では困難であります。
  420. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 時間がありませんので、前に進みます。  米軍の民間空港強制使用問題についてお伺いいたします。  米軍のCH46中型輸送ヘリとKC130空中給油機が民間空港である下地島空港や宮古空港、石垣空港などを度々使用しているという問題があります。米軍は日米地位協定第五条第一項によって法的には日本国内の民間空港を使用できる権利が認められておりますが、平時において当然のごとく軍用機が民間空港の使用を恒常化することは好ましいことではありません。  沖縄県での米軍のこの有様は有事法制下の我が国内における米軍のありようを先取りした出来事だというべきだと思いますが、外務省は在日米軍に対して民間空港の使用を自粛するように申し入れるべきであると考えますけれども、いかがでしょうか。
  421. 海老原紳

    政府参考人(海老原紳君) 今委員がおっしゃいましたように、正に米軍の航空機は地位協定の第五条に基づきまして我が国の飛行場に出入りをする権利を認められているわけでございます。ただ、実際の使用に当たりましては、米軍といたしましても、民間機によります空港の使用への影響が最小限になるというように空港の管理当局と所要の調整を行うことといたしております。  今回につきましても、米側によりますれば、これまでの経緯、あるいは沖縄県よりの要請にかんがみまして、民間空港を使用せずに済むように種々の検討を行いましたけれども、最終的にどうしても今回のような使用をせざるを得ないということで、それぞれの使用に当たりまして沖縄県との間で所要の調整が行われたというふうに承知をいたしております。  米軍は我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきことは当然でございます。政府といたしましては、米軍の航空機による民間飛行場の使用というものが民間機に与える、及ぼす影響を最小限となりますよう従来よりも米側に配慮を求めておりますが、今後とも配慮を求めてまいりたいというふうに考えております。
  422. 片山虎之助

    委員長片山虎之助君) はい、いいですね。  以上で島袋宗康君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時から公聴会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十二分散会