○小池晃君 私は、
日本共産党を代表して、
国民年金法等の一部改正案に対し、
反対の
討論を行います。
反対の
理由の第一は、
年金保険料を上限なく引き上げることで
年金制度の空洞化を更にひどくすることであります。
政府・
与党が本
法案を百年安心だと宣伝した根拠の一つが、
保険料の上限を決めた、それ以上引き上げないから安心だというものでした。ところが、この
説明は
偽りのものでありました。
政府は、
衆議院の
審議では、
国民年金の
保険料は二〇一七年以降、一万六千九百円で固定する、こう
説明していましたが、
参議院本
会議の
質疑で
坂口厚生労働大臣は、初めて、実際の金額は、賃金上昇に応じて二〇一七年度、二万八百六十円、二七年度、二万五千六百八十円、三七年度、三万一千六百十円と
保険料を際限なく引き上げることを明らかにいたしました。また、厚生
年金の
保険料率の上限についても、
政府の試算の前提が崩れれば一八・三%以上に引き上げる可能性があることも認めました。
保険料の際限のない引上げは
年金の空洞化を一層加速します。そして、それが
国民の暮らしと日本の経済に深刻な打撃を与え、結局、
年金財政の破綻をもたらす悪循環となることは余りにも明白ではありませんか。
反対の
理由の第二は、
年金の
給付を削減し、高齢者の
生存権を乱暴に破壊することであります。
政府・
与党が百年安心と宣伝したもう一つの根拠は、
給付は
現役世代の収入の五割を保障するというものでした。しかし、これもまた
偽りのものでありました。サラリーマンと専業主婦の
モデル世帯でも五割保障されるのは
年金を受け取り始めるときだけで、
受給開始後には、今後
年金を受給するすべての世代で五割を下回ることが
参議院の
審議においてこれまた初めて明らかになりました。共働き世帯では、
受給開始二十年後に三一・七%、男性単身世帯では二九%にまで下がります。
このように、百年安心のたった二つのうたい文句であった
保険料の上限固定も五割保障も崩れた以上、廃案にして出直すことは余りにも当然ではありませんか。
重大なのは、今でも低い
国民年金、障害
年金なども一律に引き下げることです。現在、
国民年金の満額受給は月額六万六千円、これが十五年後には現在価格で五万八千円にまで引き下げられます。
基礎的消費支出すら賄えない
水準でどうやって暮らしていけるでしょうか。なぜこれが百年安心などと言えるのでしょうか。
小泉首相は、我が党の
質問に、公的
年金だけでは
生活できる人は一部だけ、
年金以外に蓄えもあると開き直りました。しかし、総務省の家計調査では、高齢者無職世帯の預貯金は、二〇〇一年には毎月三万三千円、二〇〇二年には毎月四万一千円も減り続けています。そして、そもそも取り崩す貯蓄のない世帯が二割を超えている。首相の答弁は、高齢者の置かれた深刻な実態を無視し、憲法二十五条にある
国民の
生存権を保障する
政府の
責任を放棄した暴論であり、断じて許すわけにはまいりません。
第三は、
政府の財政
計算の前提に全く根拠がなく、実施前から破綻が明らかであることであります。
年金財政の基本である
加入者の数の根拠についてすら
説明がされておりません。例えば、厚生
年金加入者数は二〇〇〇年から二年間で百万人以上も減っているにもかかわらず、本
法案の
計算では、突然上昇し始め、二〇〇五年に三千百八十万人と、直近の二〇〇二年の実績を十万人上回る見通しであります。厚生
年金加入者数が増加に転じる根拠を示せという
委員会での
質問に対して、
政府からの
説明は最後までありませんでした。
また、
保険料引上げを見込んだ企業のリストラ、派遣、請負への置き換えが早くも行われようとしているにもかかわらず、
政府は、今回の
保険料の引上げは雇用に対して一切影響を与えないとしていますが、全く説得力を欠くものであります。
さらに、
国民年金の納付率が急速な低下を続けているにもかかわらず、今回の
法案では、現在六割の納付率が二〇〇七年には八割に上がることを前提としています。今回の改悪により、
年金への不信が一層広がることは明らかであるにもかかわらず、このような根拠のない数字を前提としているのですから、
成立前から既に破綻は必至と言わざるを得ないのであります。
反対の
理由の第四は、
基礎年金への国庫負担の引上げを先送りしたことであります。
公明党は、
法案が廃案になると四兆七千億円の穴が空くとしきりに宣伝していますが、この
法案が
成立しても三兆八千億円の赤字であります。結局、廃案の影響は九千億円。廃案になった場合、
年金財政に四兆七千億の穴が空くというのは真っ赤なうそで、
国民を脅しております。これはうそにうそを重ねるもので、断じて許されません。
年金財政に穴が空くことを本当に心配するなら、ほかにやることがあるはずです。本
法案は
基礎年金への国庫負担の二分の一への引上げを六年後まで先送りしており、これを先送りしなければ、廃案にした場合の九千億円の財政悪化分など直ちに解消できます。
国民年金法の附則に明記された国庫負担引上げをやらずに、
年金財政が悪化するから
法案強行などと
国民に負担を押し付けることはもってのほかであります。
反対の
理由の第五は、巨額の積立金運用による無駄遣いをこれまでどおり続けることであります。
厚生
年金の積立金は、二〇〇五年で百六十四兆円に達します。
年金給付費など支出総額の五・二年分に上り、諸外国に比べて異常に高い
水準であります。
巨額の積立金がこれまで全国十三か所のグリーンピアなどの無駄遣いに使われ、政治家の利権や高級官僚の天下り先を生み出してまいりました。
国民の
保険料四千億円を投じたグリーンピア事業が破綻し、二束三文で施設売却されようとしていますが、官僚も政治家も、だれ一人この
責任を取っておりません。
グリーンピアを始め、
年金給付以外に流用された
保険料は総額で五兆六千億円に及びます。しかし、九八年からは、財政構造
改革特別措置法に基づき、それまで国の一般会計から支出されていた事務費まで
年金保険料から支払う仕組みが作られました。
そして、九七年、この
法律を
成立させたときの厚生
大臣がほかならぬ小泉純一郎現
総理大臣であります。ところが、その
責任についていまだに口をぬぐったままであります。
事務費への流用は昨年まで六年間の時限措置でしたが、今年度も特例法により延長し、社会保険庁長官の交際費や職員宿舎の建設、公用車の購入などに七年間で六千億円以上の
保険料が使われました。
坂口大臣は
年金資金の無駄遣いについて、第三者機関で過去の問題を検証すると答弁しましたが、いまだにその具体的
内容は明らかになっておりません。
その上、積立金の株式運用によって二〇〇二年度には三兆六百八億円もの赤字が生まれています。しかも、二〇〇八年には
年金積立金の全額が自主運用となり、
国民の貴重な財産が一層の危険にさらされます。株式などリスクマネーに
年金積立金を運用することや目的外使用はやめ、巨額の積立金を計画的に取り崩して
給付の維持に充てるべきであります。
以上述べてきたように、本
法案は、
年金制度、
老後の
生活の土台を壊すものであり、また、百年安心どころか数年もたたないうちに破綻することは余りにも明らかではありませんか。
日本共産党は、先日、最低保障
年金制度を実現し、今も将来も安心できる
年金制度を作るという
改革案を発表しました。その中心点は、すべての
国民は健康で文化的な最低限度の
生活を営む権利があるとした憲法二十五条の
生存権を保障する見地に立って、
老後の
生活を支えるために全額国の負担で賄う最低保障
年金制度を実現させることであります。第一歩として、最低保障額を月額五万円とし、その上に、支払った
保険料に応じて一定額を上乗せし、低額
年金を底上げする制度をスタートさせます。これにより、低額
年金や無
年金の問題、
年金制度全体の空洞化、サラリーマン世帯の専業主婦の第三号被保険者問題など、今日の
年金問題が抱える様々な矛盾を根本的に解決する道が開けます。
改革というのであれば、国の
責任で無
年金者や低額
年金者の底上げを図ることこそ本当の
改革です。およそ
改革の名に値しない
年金大改悪
法案はきっぱり廃案にすべきであります。
さて、今、
世論調査でも、
法案への
賛否の違いを超えて、
国民の六割、七割が今
国会での
成立を見送るべきだと答えています。この
理由は、何よりも、これまでの
政府の二枚
看板に
偽りがあったことが
参議院段階で明らかになってきたことであります。当初の
説明が違っていた以上、初めから出直してやり直せというこの声、当たり前の声ではありませんか。
そして、
国民の怒りの火に油を注いだのが、公的
年金を決める
責任がある
国会議員の中に
年金未
加入・
未納問題があったことです。しかも、
自民党はいまだに党として調査、発表していません。こうした中で、
保険料の引上げ、
給付のカットを押し付けることなど許されるはずがありません。
そもそも公的
年金は、
老後の
生活を保障するため、長期にわたって国と
国民が結ぶ約束にほかなりません。だからこそ、道理を尽くした
国会での
審議と
政府への
国民の信頼が必要なのです。ところが、
中央公聴会も行わず、衆参両
委員会で
強行採決を繰り返し、あまつさえ私も含めて
議員の
質問権を剥奪した今回の
国会審議の経過と
政府・
与党の
姿勢は、こうした土台を粉々に打ち壊すものでした。たとえ今回の
年金法案に
賛成であろうと、およそ
民主主義というものを理解しているのであれば、こんな
暴挙を断じて許してはいけないはずであります。そして、このようなやり方では、どんな中身であっても
国民の信頼する
年金制度など絶対に作ることができないということを
与党は知るべきであります。
本院が良識の府としてこうしたルール破りを改め、本
法案をきっぱり廃案にすべきであることを申し述べ、私の
反対討論を終わります。(
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