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2004-05-13 第159回国会 参議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年五月十三日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月十二日     辞任         補欠選任      高橋 千秋君     樋口 俊一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山本  保君     理 事                 松村 龍二君                 吉田 博美君                 千葉 景子君                 木庭健太郎君     委 員                 岩井 國臣君                 鴻池 祥肇君                 陣内 孝雄君                 野間  赳君                 今泉  昭君                 江田 五月君                 角田 義一君                 樋口 俊一君                 堀  利和君                 井上 哲士君    衆議院議員        修正案提出者   与謝野 馨君        修正案提出者   泉  房穂君        修正案提出者   佐々木秀典君        修正案提出者   漆原 良夫君    国務大臣        法務大臣     野沢 太三君    副大臣        法務大臣    実川 幸夫君    大臣政務官        法務大臣政務官  中野  清君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   大野市太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        加藤 一宇君    政府参考人        司法制度改革推        進本部事務局長  山崎  潮君        法務省刑事局長  樋渡 利秋君    参考人        東京大学法学部        教授       長谷部恭男君        弁護士        早稲田大学法科        大学院教授    四宮  啓君        共同通信社論説        委員       土屋 美明君        弁護士        市民裁判員制        度つくろう会運        営委員      伊藤 和子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○刑事訴訟法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○総合法律支援法案内閣提出衆議院送付) ○委員派遣承認要求に関する件 ○政府参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 山本保

    委員長山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十二日、高橋千秋君が委員を辞任され、その補欠として樋口俊一君が選任されました。     ─────────────
  3. 山本保

    委員長山本保君) 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  本日は、両案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、四名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、東京大学法学部教授長谷部恭男君、弁護士早稲田大学法科大学院教授四宮啓君、共同通信社論説委員土屋美明君及び弁護士市民裁判員制度つくろう会運営委員伊藤和子君でございます。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございました。  参考人の皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査参考にしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方でございます。まず、長谷部参考人四宮参考人土屋参考人伊藤参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し添えますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。  なお、参考人の方の意見陳述質疑及び答弁とも、着席のままで結構でございます。  それでは、長谷部参考人からお願いいたします。長谷部参考人
  4. 長谷部恭男

    参考人長谷部恭男君) 本日は、このような場で発言機会を与えていただき、誠にありがとうございます。  私は、専門といたします憲法学の立場から、裁判員制度憲法上の幾つかの論点につきまして、若干のお時間をちょうだいしてお話をさせていただきたいと存じます。  この裁判員制度は、一般市民から無作為抽出された裁判員裁判官とともに刑事裁判に関与する画期的な制度でありますが、身分保障のない裁判員裁判に関与することが日本国憲法と整合するか否かにつきまして議論があること、これは御案内のとおりでございます。この問題につきましては、次のような幾つかの論点に着目する必要があるかと存じます。  第一に、第二次世界戦前運用された陪審制が、これが大日本帝国憲法に違反するのではないかが論じられたことがございますが、大日本帝国憲法はその第二十四条で法律に定めたる裁判官裁判を受ける権利を保障していたのに対しまして、現在の日本国憲法はその第三十二条で裁判所において裁判を受ける権利を保障しているにとどまるということであります。  もっとも、戦前憲法学の通説を形成しておりました美濃部達吉博士の「憲法撮要」は、大日本帝国憲法に言う裁判官とは裁判機関意味するのであって、必ずしも官吏であることを意味しないとしております。つまり、美濃部博士解釈では、裁判官の事実認定陪審の答申に拘束されるような制度でたとえあっても、それは大日本帝国憲法に違反するものではないということになります。  第二に、とは言いましても、日本国憲法は、その司法の章におきまして、裁判所構成要素としましては、身分保障のある職業裁判官についてのみ規定を置いており、それ以外の者が裁判に関与することを予想していないのではないかと言われることがあります。  しかしながら、比較法的に見ますと、憲法の条文上は身分保障のある職業裁判官についてしか規定がないにもかかわらず、一般市民から選ばれる陪審員裁判に関与する国も存在をしております。また、職業裁判官であれば、その地位や報酬を保障しなければその行う裁判について内外からの圧力を被るおそれがないとは言えません。アメリカ建国の父の一人であるところのアレグザンダー・ハミルトンが言うように、ある人の生活の糧を支配するものはその人の意思をも支配するからであります。  これに対しまして、陪審員裁判員は、一般市民の中から事件ごとに選ばれて審理に加わり、事件が解決されればまた元の一般市民に帰っていくわけでありますから、裁判について圧力を加えられるおそれについて、これは職業裁判官と同一に論ずることはできないと考えられます。職業裁判官についてのみ身分保障規定を設けなければならないのはそのためであると言えるとも思われます。  もちろん、日本国憲法が法の支配をその基本理念としており、法の支配が、突き詰めれば、専門法律家集団によって解釈運用される法の支配を想定している以上、専門法律家である職業裁判官司法過程の不可欠の構成要素でなければならないことは、これは言うまでもないことであります。しかし、事実認定についても一般市民の関与を決して許してはならないという結論までがこの法の支配という理念から導かれるわけではないと考えることができると思います。  以上のような理由で、私は、裁判員制度憲法の想定する司法あるいは裁判の観念と矛盾するという議論は、これは支持し得ないというふうに考えております。  他方裁判員制度一般市民行動の自由を束縛し、その思想、良心の自由を侵害するおそれがあるとの議論もないではありません。しかしながら、結論から申し上げると、この議論も支持し得ないものであると私は考えております。  第一に、例えば聖書の言うところの、裁くな、あるいは誓うなという言葉を文字どおりに受け取り、それを人生の確信として生きる人にとりましては、裁判員としての務めを果たすことはその信仰と両立しないでありましょう。そうした人が裁判員となることを拒むことにつきましては、今回の法案の第八十三条各号に言う正当な理由があると言えるでしょうし、その人の思想、信条と裁判員としての務めが両立しないという事情は、裁判員となることを辞退するやむを得ない理由とすることが適切であると考えられます。  他方で、裁判員としての務めを果たすことが、ほかにやりたいことがあるのにそれができなくなるという意味での一般的な行動の自由を束縛することになることは、これは確かでありますが、それが直ちに憲法上の問題を生ずるという議論には疑問があると考えます。  このような一般的な行動の自由、つまり自分のやりたいことを何の支障もなくやりたいという自由、これは憲法上は厚く保障されている自由とは言い難いものでありまして、一般市民から無作為抽出された裁判員が公平、適正な裁判を行うという制度に十分な正当性があり、その務め市民行動の自由を過度に制約するものでない限りは違憲の問題は生じないと考えるべきだと思われます。  裁判員制度をめぐる憲法上の論点はほかにも幾つかございますが、時間の関係から以上にとどめたいと存じます。  ところで、たとえ裁判員制度導入憲法に違反しないといたしましても、なぜそうすることが公平、適正な裁判実現に貢献することにつながるのかにつきましては別途考察する必要があると思われます。  裁判員制度導入は、時に司法に対する国民理解を深めることに目的があると言われることがございますが、裁判員制度導入するとすれば、それが公平、適正な裁判実現に資するというのが何よりもその理由でなければならないはずでありまして、また公平、適正な裁判実現に貢献することを目指して国民裁判に関与するからこそ、国民司法に対する理解も深まるはずであります。  裁判員制度導入、これがなぜ公平、適正な裁判実現に貢献するかというこの問題につきましては幾つかの答え方がございます。  一つは、これはフランスの革命期に活躍した哲学者であり、政治家でもありましたコンドルセの主張したいわゆる陪審定理に訴えるものであります。このコンドルセ陪審定理によりますと、刑事被告人が有罪か無罪かといった二つ選択肢の中から一つ答えを選ぶような問題につきましては、ある集団メンバーが正しい選択をする確率、これが平均して二分の一を超えており、かつ各メンバーが独立に投票するといたしますと、その集団多数決によって正しい答えに到達する確率、これはメンバーの数が増すにつれまして増大をして、極限的には一〇〇%に近づきます。選択肢二つの場合につきましては、これはランダムに答えを出したといたしましても五〇%の確率で正解を得られるはずでありますから、公正な手続を通じて十分な事実関係に関する資料を得た上で、裁判に関与する人々が理性的に審議をした上で各自の判断に基づいて評決に加わったといたしますと、多数決で正しい結論に到達する確率は高まるはずであります。  今回の法案におきましても、裁判員はそれぞれ独立してその職権を行うとされておりますし、また評決合議体過半数によって行われることとされております。このことには十分な理由があると考えられます。  また、もう一つ答え方といたしましては、これは哲学者のアリストテレスが「政治学」という著書の中で展開をしている議論を挙げることができます。これは、多様な知識経験を備えた多くの人々がそれぞれ討議に貢献をするような会議体というのは、その会議体の中の最も卓越したメンバーが独力で、つまり一人で到達し得たであろう結論よりも更に優れた結論に到達することができるという、そういう議論であります。優れた能力を備えた人でありましても、一人で収集したり処理したりできる情報には限りがあります。これに対して、多数人から成る会議体、これは多くの人々の多様な知識経験、これを共通のものとしてプールすることができるために、それを基にその会議体が到達し得る結論は、最も卓越したメンバーが到達し得るであろう結論よりも更に優れた結論になるという議論であります。  多様な知識経験が提供されることがこの議論が働くための必要条件ですので、その観点からすれば、一般市民のみから成る陪審制よりは職業裁判官あるいは少なくとも法律家を含んだ会議体判断を下す裁判員制度の方が望ましいということになるでありましょう。今回の裁判員制度におきまして評決裁判官及び裁判員の双方の意見を含む員数の過半数意見によることとされておりますことも、こうした考え方からいたしますと評価に値すると言えると思われます。  以上で述べてまいりましたとおり、裁判員制度が公平、適正な裁判実現に貢献するという期待には十分な根拠があると私は考えております。  以上で、簡単でございますが、私の話とさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  5. 山本保

    委員長山本保君) ありがとうございました。  次に、四宮参考人にお願いいたします。四宮参考人
  6. 四宮啓

    参考人四宮啓君) 今日は、意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  実は、二〇〇二年にもこの委員会司法改革全般についてお招きをいただいて意見を申し述べる機会をいただきました。大変光栄に存じております。  私は、今日、裁判員制度中心司法改革における裁判員制度意義、それから、これに私は基本的に賛成をいたしますけれども、その賛成をする理由、そしてこの制度をよりよく機能させるために幾つかの点について、この三つについて意見を申し述べさせていただきたいと思っております。  実は先週の月曜日に、私、カリフォルニア州のサンディエゴという都市に参りまして、朝、地方裁判所をのぞいてまいりました。そこの陪審ラウンジと言われている、陪審員として呼ばれた人たちが集まる部屋には四百人の市民が待っておりました。一人一人は決してうれしそうな顔をしているわけではありませんでした。しかし、だれもがそこにいるのは当然という顔をして、じっと呼ばれるのを待っていたわけです。私は、近い将来、日本の全国裁判所で似たような光景が実現するのかと思うと、大変感慨深い思いをしたものであります。  司法制度改革裁判員制度意義でありますけれども、御案内のとおり、今回の司法制度改革は、公正で透明な社会をより目指そうというところにその意義があると思います。  司法制度改革審議会意見は、その公正で透明な社会実現するために公正で透明なルールを尊重する社会にしようと、つまり一言で言えば法の支配、法の精神が全国あまねく国民に行き渡るようにしようということを理想としているというふうに思います。そのために、この審議会意見三つのこと、まあ大きく分ければ私二つのことだと思っておりますけれども、二つの方法を提案しました。一つは、国民自身司法を使うということであります。そしてもう一つが、国民自身司法を担うということであります。  御案内のとおり、司法は今まで国民にはむしろ忌み嫌われておりました。できれば一生の間に裁判所には行きたくないというふうに思われておりました。しかし、より公正で透明なルールに基づく社会を運営しようとすれば、国民自身自分生活をより豊かにするために、この司法を積極的に活用していくということがどうしても必要になります。  そのためには今の制度にはいろいろ問題も多いわけでして、一つは、このためには全国どこにいてもだれでも司法のサービスが受けられるように、司法が使えるようにする必要があります。これからこちらでも御審議いただく総合法律支援法案というものは、その仕組みを提案しようとするものと私は受け止めております。  それから、国民自身司法を使うと申しましても、やはり専門的な領域もありますので、専門家のサポートが必要になります。そのためには、質の良い多くの法律家国民のすぐそばにいる必要があります。そのために、審議会意見書は、法曹養成制度というものを抜本的に改革をして、いわゆるロースクール制度法科大学院制度を提案し、この四月から実現をいたしております。  二番目の、国民自身が法を担うというものの目玉が、今回御審議いただいている裁判員制度であろうと思います。  これは、国民が、自分たち生活というよりは社会を構成する一員として社会的なトラブルの解決に関与する、あるいは法を自ら宣言するという役割を担うという意味で大変重大な意義を有するものと評価をしております。つまり、法の支配というものを今までのようなお上や専門家だけではなくて、むしろ国民に主体的に担ってもらうと、その象徴的な制度裁判員制度であろうというふうに思います。  次に、この法案、そして刑事訴訟法等改正法案を私が支持する理由を二点申し述べます。  一つは、国民主権実質化ということでありまして、もう一点は、刑事訴訟制度改革ということであります。  国民主権実質化につきましては、今、長谷部先生からもいろいろとお話がございましたけれども、意見書によれば、憲法が定める個人の尊重ということと国民主権というものが法の支配の内容であると言っているように思います。意見は次のように述べております。国民一人一人が統治客体意識から脱却し、自律的でかつ社会的責任を負った統治主体として、互いに協力しながら自由で公正な社会の構築に参画してほしいと呼び掛けております。つまり、国民利害関係人や有識者としてではなく、社会構成員の一人として、主権者として自分たち社会ルールについて考え、そして正義について考え、そしてそれを宣言するということであります。  このように、裁判員制度国民主権と深い関係を持つ制度でありまして、法務大臣も述べておられますように、司法世界における民主化実現するものと評価できると思います。とりわけ、無作為抽出として一件だけ事件を担当するという仕組みとしたことは、一部の人だけが担う制度ではなく、国民みんなが担うという制度としたという意味で高く評価できるというふうに私は思います。  次に、刑事訴訟手続改革の点であります。  これは、今までと全く変わったものにしてしまう、見ず知らずのものにしてしまうということではなくて、本来憲法刑事訴訟法予定をしていた裁判仕組みというものに変わっていく、あるいは戻っていくという意味評価をできるということであります。  無作為に選ばれた国民は、決して裁判官になることが期待されているわけではありません。裁判経験法律知識などは、プロ裁判官そばにいるわけですから、これらのプロ裁判官たちが提供してくれるわけです。国民期待されていることは、裁判官と同じように仕事をするというよりは、社会の健全な常識を持ってきて、それをみんなでぶつけ合って、より公正な結論に到達するということが期待をされているわけであります。そうだとすると、現在行われている刑事裁判のシステム、実務というものは大きく変えていかなければならなくなります。二つ理由から変えていかなければならなくなります。  一つは、一般国民裁判をするということからであります。  今申し上げましたように、裁判員裁判官になるのではありません。つまり、裁判員には裁判知識経験要求をしなかったのであります。法廷に座っていて、目で見て耳で聞いて分かる裁判にしなければ参加をする意味がありません。公開で行われる公判中心裁判へ変わっていかざるを得ないのであります。  今までは、調書と呼ばれている書かれた記録裁判の中では大きな意義を占めておりました。分厚い調書が作られ、それを裁判官法廷ではなくて法廷の外で熟読玩味し、そして心証を取っていくという実務が行われているわけでありますけれども、これはとても一般国民の方にこの同じことをやっていただくわけにはまいりません。また、本来原則的に刑事訴訟法予定していた裁判仕組みとも異なるものであったわけです。これが大きく変わってくるということになります。  もう一つは、集中審理必要性から、手続が大きく変わらざるを得ないということであります。  今までは、先ほど申し上げましたように、たくさんの記録を後から読んで、あるいは月一回程度行うことでも裁判が成り立ってまいりましたけれども、今度は忙しい国民に来ていただくわけですから、集中して審理を行わなければなりません。そのためには、充実した事前の準備、言わばおぜん立てが必要になるのでありまして、今度の刑事訴訟法改正案もその点に対する配慮が行われております。  その充実したおぜん立てのために最も必要なものは証拠開示拡充であります。争点を十分に明確に整理をするためには、お互いの情報事前に十分に交換し合うことが不可欠であります。今回の刑事訴訟法改正法案にはその拡充が盛り込まれております。ただ、これはやはり更にいろいろと運用段階でも、より争点整理がしやすい方向への運用を是非期待したいというふうに思っているところであります。  刑事手続改革で忘れてならないことは、もう一つ刑事被告人権利でありますけれども、これは今回の法案で決して後退することがあってはなりませんし、またしないと私は信じております。むしろ国民が入る、より公正で透明な裁判実現することによって、本来憲法刑事訴訟法予定をして、保護をして守ってきていた刑事被告人の、被疑者被告人権利というものが一段と尊重されるようになるというふうにならなければならないと思っております。  次に、この裁判員制度の言わば主役である国民が本当の意味での主役になれるためには何が必要かということについて意見を申し述べたいと思います。まず何が必要かということと、それからあと幾つか各論的なことを申し上げたいと思います。  先ほどサンディエゴ裁判所に参ったと申し上げましたけれども、そこでは陪審コミッショナーと呼ばれている陪審員のお世話をする裁判所の職員がおりますけれども、私が会った方は三十年のベテランでありました。その方に陪審員たちが何に一番感謝をしていますかと質問したところ、二つ答えが返ってまいりました。  一つは、集められた後に最初に受けるオリエンテーションであります。ここで制度というものを十分理解することができ、しかも自分が歓迎されているということが分かるからだということであります。二つ目には、仕事が終わった後で、社会に貢献できた、制度の一部となって正義実現できたという満足感だそうであります。つまり、最初と最後にアメリカ陪審員たちは非常に満足感を得ているわけです。  もちろん、その満足感を得るためにはいろいろな仕組みが想定されているわけであります。つまり、国民一人一人が社会から必要とされていると実感してもらえること、そしてその国民役割を果たせたと実感できる仕組みにすることが必要であろうと思います。その仕組みを考える上ではやはり国民の視点が大切だと思います。  アメリカは九〇年代から陪審制度改革に本格的に、しかも全米の規模で取り組んでおります。それはなぜかと申しますと、今まで陪審というのは国民の義務である、来るのが当然だ、仕事がするのは当然だ、待つのも当然だと皆が考えていたわけであります。しかし、それでは国民の側は納得しなくなってまいりました。国民の側が言わば拒絶の反応を示し始めたわけです。  そこで非常に参考になることは、例えば出頭率が下がったときに出頭率を上げるためにどうするか、刑罰を科するか、ペナルティーを科するかという方向で議論が行われたかというと、そうではありません。この運動をリードしたニューヨークの最高裁の長官のジュディス・ケイという女性の長官がいますが、彼女はこう語っています。コミュニティーの八〇%の人たちが、単なる義務としてではなく、それ以上の大切な仕事だと認識して来てもらえるようにするにはどうしたらいいだろうか、そこをみんなで考えようという発想であります。  私、今回の裁判員法案は、実はアメリカが九〇年代から改革に取り組んだその改革をも先取りしていると評価できる点があることを指摘したいと思います。例えば、今回の裁判員制度は、無作為に選ばれて一回だけ呼ばれます。そして、もし選ばれなければそれで義務を果たしたことになりますし、選ばれればその裁判だけを担当すれば帰っていいことになっています。これはアメリカではワンデー・オア・ワントライアル・システム、日本語で言いますと一日又は一公判システムと呼ばれておりまして、アメリカでも最近導入された仕組みであります。これは国民の負担をなるべく少なくして、しかしみんなで社会の責任も果たしてもらおうというために編み出されたものであります。  それから、日本の裁判員法、今回の裁判員法案裁判員が質問することを認めておりますけれども、実はアメリカ陪審員に質問を認め始めたのは最近のことであります。陪審員たち仕事をする上での充実感に資するという点からでありまして、このように裁判員法はアメリカ改革を先取りしている部分もあります。しかし、まだまだアメリカ改革はそれにとどまらずに広範囲に及んでおりますので、今回、裁判員法を運用する、準備をするこの五年間の間に私はアメリカ改革から学ぶものはたくさんあるだろうと思います。  次に、このように裁判員を本当の意味での主役にするために幾つか御議論是非いただきたい点がございます。  一つは、分かりやすい公判審理ということであります。  先ほども申し述べましたように、一般国民が一回だけ裁判を行うわけですので、分かりやすい十分な準備、分かりやすいプレゼンテーションなどが必要になります。法案の五十一条が審理を迅速で分かりやすいものとすることを関係者に求めたことは大変相当であると思います。  しかし、ここでは、やはり先ほど申し上げましたように、例えば取調べ状況が争点になった場合には、国民に分かりやすく取調べ状況をビデオに録画をしておいて、それを国民にプレゼントする、国民の前に証拠として出すということが不可欠になってくるであろうというふうに思います。幸い、法曹三者の間でこの点の議論が始まったと聞いておりますけれども、実施までに大きな前進を私は期待をしております。また、審理が行われる法廷仕組みなども、国民理解しやすいような、参加しやすいような法廷に是非してほしいと思います。  二番目は、評議の在り方ですけれども、国民裁判官と一緒に十分に意見を述べ合えるというためには、法案の六十六条の五項が裁判長に分かりやすいように配慮を求めている点は大変よろしいことだと思います。  ただ、例えば全員一致を目指す、少数意見を尊重するために、あくまでも全員一致を目指す、その上でみんなで意見を出し合って、一致しない場合に多数決というようなルールですとか、裁判長は議長役ですので公正な議事進行に資するために自らの意見は最後まで例えば言わないとか、裁判官裁判員だけでは議論をしないとかいったルールを私は考えておく必要があるのではないかと思っております。
  7. 山本保

    委員長山本保君) 参考人に申し上げます。
  8. 四宮啓

    参考人四宮啓君) ええ、間もなく。
  9. 山本保

    委員長山本保君) 簡潔にお願いいたします。
  10. 四宮啓

    参考人四宮啓君) それから、最後に守秘義務でありますけれども、裁判員が自らの経験を語ることは、国民にその情報を伝える、よりよい制度にするというためにも大変重要でありまして、立法趣旨、評議における自由な発言の確保とか、他人のプライバシーなどを損なわない限り、私は調和の取れた開示の方向に向かうべきではないかと思います。  この国会、私、歴史的な意義を有する、そしてまた国際的な意義も有する国会であろうと思います。民主主義のジグソーパズルに例えれば、最後の司法の部分にそのピースがうまく埋め込まれようとしていると思います。国民が、ほかのメンバー自分たちルールに基づいて議論をして一つ結論に到達するというプロセスを通じて、自律的に社会的な責任を分かち合える喜びを味わってもらえる制度とするために、この国会で是非成立をさしていただきたいとお願いしたいと思います。  どうも長くなりました。
  11. 山本保

    委員長山本保君) ありがとうございました。  次に、土屋参考人にお願いいたします。土屋参考人
  12. 土屋美明

    参考人土屋美明君) 共同通信社で司法などを担当しております土屋です。  司法制度改革推進本部の裁判員制度・刑事検討会と公的弁護制度検討会の両方の委員務めておりますけれども、この二つの検討会では、法律家でない委員というのが私と清原委員の二人だけしかおりません。法律家に交じって素人が意見を述べることがいかに大変であるかということを、本当に身につまされて感じています。  本日は、このような一般国民が参加しやすい制度にするという政策的な選択が重要なことを訴えさせていただきたいと思います。少し乱暴な言い方で語弊があるかもしれませんけれども、制度全体の理論的な整合性を保つことよりも、多くの国民が過重な負担を感じることなく刑事裁判に参加しやすくする、そういう道を国会は選択していただきたいと願うものです。  今回審議されております法案に私は基本的に賛成です。国民司法参加を実現することが民主政治を徹底させ、司法国民的基盤を強化する、そういう重要な意義を持つと信じるからです。法案の内容には検討会で私が述べてきた意見と違う部分もありますけれども、もし不都合な点があれば、早い時期に見直しをし、改めていけばいいのではないかと考えています。  どこの世界にもルールを逸脱する者はおりまして、とかく刑事司法国民不信の前提に立った制度設計になりがちですけれども、国民への信頼なしには司法参加はあり得ないはずです。多くの国民は重大な刑事裁判を担えるだけの良識を備えている。国民を信頼して、その良識に結論をゆだねることこそ、司法参加を論じる上で重要な態度だというふうに私は思っています。  衆議院では附帯決議と修正が行われました。これらの方向性にも賛成です。参加する側にとって、当初の案よりも望ましいものになっていると考えます。ただ、まだ不徹底に感じたり、幾つか注文を述べたい点もございます。主な点を簡単に述べさせていただきたいと思います。  まず、裁判員制度法案ですけれども、四点ほど指摘しておきたいと思います。  一つ裁判体の構成ですが、裁判官三人に裁判員六人という基本構成は妥当であろうと考えます。重大事件審理をするのにふさわしい数の職業裁判官と良識ある国民の目が確保できたというふうに思います。裁判員は六人いれば意見を言いやすく、多角的な視点からの評議が期待できます。  争いのない事件では裁判官一人に裁判員四人の構成になることについて、検討会で私は違和感があるというふうに述べました。争いの有無で裁判体の構成を分けるという理屈に、それまでの議論と異質なものを感じたからです。私は、争いのない事件は被告の権利を損なわない限り、速やかに終結させて、争いのある事件に人材とエネルギーを集中させるべきだという趣旨の意見を述べていますけれども、それは即決裁判手続の創設という形で結実したと考えておりました。しかし、小さな裁判体もあり得る選択であって、反対はいたしません。  重要なのは裁判員の選任です。できるだけ多数の人が参加するのが極めて大事なのですが、法案には不満があります。これが二つ目の点です。  第一は、就職禁止事由が広過ぎます。法律関係職種であっても、刑事事件を扱わない弁理士、司法書士らを就職禁止とする理由は乏しいのではないでしょうか。自衛官を除外するのも理解に苦しみます。  第二は、辞退事由として掲げられた政令に定めるやむを得ない事由です。政令で思想、信条を理由とする辞退を認めるということには私は反対です。国民裁判員に当たったらその役目を引き受けるべきものなのだという強いメッセージを送ることこそ大切なのに、これではまるで思想、信条を理由に挙げれば逃げられるということでも言っているようなものです。確かに、国民の心理的な負担は軽くなるでしょう。しかし、重大な刑事事件裁判は元々気持ちの負担の重いものです。それを国民があえて引き受けてこそ、この制度を行う意味があるのではないでしょうか。  三つ目は、裁判員、補充裁判員裁判員候補者の個人情報の保護です。住所、氏名、年齢など、個人が特定される情報の保護は、外部の不当な圧力などを回避するために、特に裁判の進行中は必要です。法案では、任務を終えた裁判員については本人の同意があれば公表してよいということですが、私は、裁判終了後には裁判員の個人情報は本人の同意にかかわらず公表されてもよいのではないかと考えています。公表は公正な裁判が行われたことの何よりのあかしになるというふうに考えるからです。  四つ目は、裁判員の守秘義務です。守秘義務の範囲と罰則が衆議院で修正されたことを私は評価しています。検討会で再三述べたことですけれども、守秘義務違反の罰則は罰金にとどめることが妥当だと思います。罰則を重くすれば、国民裁判員になるのを避け、裁判所の呼出しに不出頭でこたえて、過料に甘んじる道を選ぶかもしれません。その方が不健全な制度の在り方ではないでしょうか。どうしても重大なプライバシーの暴露などが懸念されるというのならば、それに限って重く罰すれば済むことだと考えています。  罰則以上に重要なのは、守秘義務の範囲を明確にすることです。何が処罰され、何が許されるのか、それをだれもが容易に判断できるようになっていなければなりません。私は検討会で守秘義務を三つに限定すべきだと述べました。裁判官裁判員意見評決の数、それから特に秘密を守るべきだと合意された事項という、この三つです。また、義務を守る期間も、裁判終了後一定期間に限るべきだと述べました。守秘義務の範囲の単純化と明確化は、これは更に突き詰めた議論をしていただきたいと思います。  刑事訴訟法等の一部改正案に移ります。懸念される点など、以下の七点について述べます。  まず、裁判員制度の下では、国民の負担はできる限り軽くしたい、そのために最も必要なことは審理期間の短縮です。長過ぎる裁判に多忙な国民は付いていけません。裁判の長期化が続くならば、今度の刑事司法改革は水泡に帰すおそれがあります。裁判員制度の成否のかぎは、どこまで審理期間が短縮できるかに懸かっているとさえ言ってもいいと考えます。検討会で私は、裁判員の任期は原則二十日に限ったらどうかという意見を述べました。そのくらい本気で国民負担の限度を明確にする必要があると考えております。  刑事裁判の充実、迅速化を図る方策として、新たな準備手続の創設、計画的、集中的な審理のための様々な方策、直接主義、口頭主義の徹底が図られましたけれども、さらに今後、法曹三者の間できめ細かな運用が行われることを期待しております。  国民参加によって刑事司法は普通の国民にも理解できるように変わらざるを得ませんが、今回、一定類型の証拠などについて開示範囲の拡充と開示ルールの明確化が行われたことは、刑事被告人権利保障という面から見ても現行制度のかなりの改善だと考えます。しかし、これで必ずしも十分だとは思えません。将来は更に開示の方向を推し進めて、すべての証拠を事前に弁護側へ開示するところまで行くのが理想的だと考えます。あらゆる捜査資料は国民の血税を使って集められた公的な性格を持ちますから、それにふさわしい使い方が模索されるべきでしょう。  開示証拠を目的外使用することが原則的に禁じられるのは、これはやむを得ません。しかし、衆議院の修正によって、諸事情を考慮した上、目的によっては使用を認める余地が生まれました。具体的な裁判の研究あるいは報道、そういった公益目的の使用が可能になったことは歓迎です。  容疑者の取調べの状況を文書で記録化することは、被告の供述の信用性をめぐる無用な争いや冤罪の防止に向けて一定程度の改善になると受け止めています。しかし、これも将来的にはもう一歩進めて、ビデオや録音テープへの記録に切り替えていくべきだろうと考えています。  容疑者の勾留段階から国選弁護人を選任できるようにしたことは人権保障の面で大きな意義があります。弁護士会の態勢が十分に整っていないのが残念ですけれども、対象を短期一年以上の懲役若しくは禁錮の事件に限るのは当面やむを得ない事情があります。そういうふうに考えます。被疑者被告人がその資力によって不平等な扱いを受けることがないように、この対象も将来的には拡大されていくべきだろうと考えています。できるだけ早期に必要的弁護事件へ、さらには、すべての身柄拘束者へと広げられていくことを願っています。  少年事件についても、原則的には国選弁護人の選任を拡大すべきだと考えます。現状では、弁護士会の態勢がこれも不十分なために見送らざるを得なかったのは残念ですけれども、将来、態勢が整えば、少年にも成人の公的弁護と同じような制度的保障が与えられてしかるべきでしょう。  検察審査会法の改正については一点だけ強く反対したい点があります。罰則です。  審査員の守秘義務違反に懲役刑がありますけれども、審査員の職務は公訴提起の当不当を判断することに限られますから、被告の有罪、無罪を判断する裁判員より職務は軽いと言えるでしょう。それなのに制裁が同じというのはいかがなものでしょうか。それに加えて、これまで秘密漏示罪で起訴された例も最高裁の把握する限りゼロだということですから、懲役刑へと引き上げるだけの立法事実もありません。現行の罰金で十分だと考えます。  起訴相当の決議に拘束力を認めるのに、いわゆる二段階の慎重な構造が採用されておりますけれども、決議に当たって弁護士審査補助員が関与するなどしますし、私は現行の一段階で足りるという意見です。ただ、罰則を除いては反対はいたしません。  私は日本新聞協会を代表する立場ではありませんけれども、報道等の関係について一言申し上げます。  新聞協会は、法案の内容についてこれまで四回にわたり見解を表明しております。その概略を御説明しますと、いわゆる偏見報道禁止規定法案に盛り込まれなかったことを評価する一方、現在での問題点として、第一に、裁判員を退いた人にまで接触を禁止すると、公正な裁判が行われたのかどうかということを事後的に検証することなどが難しくなるので、元裁判員への接触には禁止の網を掛けるべきではないこと。第二に、裁判員の守秘義務は義務の範囲と期限をより明確にすること。第三に、開示証拠の目的外使用を罰則付きで禁止することは取材の制限につながる危惧が大きく、懸念されることなどを指摘しております。そして、裁判員制度の施行時には取材・報道のガイドラインとなる指針を決定することも表明し、既に最高裁、法務省、日弁連との意見交換も始まっております。  裁判員制度について国民理解と支持を深めるためには、可能な限り多くの情報を提供することが必要だというのが共通認識です。裁判に関する報道は裁判員制度の定着に大きく貢献するはずです。新聞協会の意見を尊重していただくようにお願いしたいと思います。  最後に要望がございます。  裁判員法案では、裁判員が休暇を取得したことなどを理由として解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めていますけれども、これだけでは国民が参加しやすくなるとは言えません。裁判員に必要な知識を盛り込んだハンドブック、ビデオなどの作成が必要でしょうし、裁判員用の待機室とかロッカールームを設けたり、また、じっくり資料を調べたい人が使える部屋を用意したり、そういったことなども考えてほしいことです。  裁判員制度そのものの周知徹底が大切なことは申すまでもありません。十分な予算措置を講じた上で、裁判員が参加しやすい条件作りをしていただきたいと思います。  以上です。
  13. 山本保

    委員長山本保君) ありがとうございました。  次に、伊藤参考人にお願いいたします。伊藤参考人
  14. 伊藤和子

    参考人伊藤和子君) 弁護士伊藤です。  本日は、お話をする機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  私は、市民裁判員制度つくろう会という市民団体の運営委員としてこの二年間活動してきました。多くの市民の方々と一緒に公聴会やシンポジウム、模擬裁判、アンケート調査などを行って、裁判員制度をより良い市民参加制度として実現するために様々な提言を行ってまいりました。  司法は、個別的な権利救済を通じて私たちの社会を前進させる貴重な役割を果たしてきたと思っております。しかし、やはり一握りの専門家である職業裁判官判断は、時として国民の良識や期待と懸け離れた結論になることもあります。私は、普通の生活者である市民の感覚や良識を司法判断に反映させていくという点で、この制度導入する意義は非常に大きいと思っております。また、市民司法に参加し、そして社会の重要な決定に関与する、そういう中で法や正義を形成する主体となっていくことは、二十一世紀のこの国の民主主義にとって非常に価値あることだというふうに考えております。  この裁判員制度が十分に機能するために、第一に、性別、年齢、職業など、あらゆる層の多様な市民がひとしく参加しやすい制度であること。そして第二に、市民が飾り物ではなく、主体的、実質的に参加できる制度であることが何よりも必要であるというふうに考えます。そのために、これから裁判員となる市民の視点に立ってこの制度を考えていくことが大事だと思います。  この点から、幾つ法案に関する指摘をさせていただきたいというふうに思います。  まず、参加しやすい制度を作るという点です。  仕事を持つ市民裁判員候補者となったとき、その間の休暇制度はどのような取扱いなのかについて、法案では不利益取扱いを禁止すると記載するのみで、ほかに特段の法的措置を定めておりません。仕事を持つ市民が不安なく休暇を取って裁判員となれるように、まず裁判員休業制度を立法化することが重要だというふうに考えます。  次に、裁判員候補者として呼び出された時期にどうしても都合が悪い場合、出頭する期日を延期できるよう、延期制度導入を提案します。  例えば、一か月後には日程が調整できないという多忙な人でも、三か月後、六か月後なら可能な方もいらっしゃると思います。社会の様々なステージで活動する多様な人々の参加を保障するため、延期制度を是非創設していただきたいと思います。  さらに、私は、司法分野における男女共同参画の視点から、合議体の男女比が半々となることが大事ではないかというふうに考えております。そのような構成を可能にするためにも、育児や介護で日ごろ忙しい女性が裁判員として司法に参加する道が閉ざされることがないように、支援のシステムを作ることが必要だと思います。  欧米の研究では、女性の陪審員候補者の辞退理由として、育児、介護が突出して多いということが指摘されております。こうした中、アメリカでは、少なくとも十の州で裁判所に託児所を設置したり、保育費用の補償など、育児サービスを行っております。裁判員制度導入に当たっても、裁判所周辺に託児所、宅老所を設置したり、一時保育、デイサービスの援助などをするなど、援助制度を是非実現していただきたいというふうに思います。  次に、日当に関してです。  法案では具体的な金額は定められておりませんが、裁判員は、人を裁くという非常に重大な仕事をする以上、職務にふさわしい適正な日当が必要だと思います。私としては、調停委員の日当より高額であるということは最低限必要ではないかというふうに考えております。  第二に、法律を見て非常に残念なのは、裁判員に対する罰則が目立つことであります。  出頭義務違反に対する十万円の過料、守秘義務違反に対する懲役や罰金刑は、ただでさえハードルの高い市民参加を余計気の重いものにするのではないでしょうか。出頭義務違反に制裁を設けるよりも、だれもが参加しやすいような基盤整備を実現することが先決だと考えます。  守秘義務違反に関しては、衆議院で若干の修正をしていただきましたが、今でも懲役刑が残っております。その処罰範囲はいまだあいまいなのではないかと思います。市民にとって萎縮効果がもたらされるということが危惧されます。一生守秘義務を負うということは、裁判官経験した普通の市民にとって過酷ではないでしょうか。私は、市民裁判員経験社会に語り、伝え、提言することによってこそ制度が定着、発展し、より良いものになるというふうに思います。その点から、少なくとも裁判員の職務を終えた者については、守秘義務違反に懲役、罰金を科すとの点は是非とも削除をしていただきたいというふうに思います。  第三に、裁判員の構成、それから評決の方法です。  私は、市民の主体的参加の趣旨を全うするため、市民の人数は十名程度、裁判官は一名で足りると考えていました。今回の法案では、裁判官が三名ということで影響力が極めて大きいのではないかと危惧するものです。この点について、今後、改正なども含めて様々な御議論をいただきたいと思います。  また、充実した評議という観点から、単純多数決ではなく、全員一致を目指し、そしてやむを得ない場合は特別多数決制を取るという欧州で採用されているルールを採用することを是非求めたいというふうに思います。  次に、裁判員にとって分かりやすく、納得して判断できる裁判実現するという点です。  市民の多くは、自分の良心に恥じない、責任を持った正しい判断をしたいというふうに思うのではないかと思います。ところが、それは現在の難解で長い裁判のままでは実現しないのではないでしょうか。裁判を分かりやすいものにすることが何よりも大切だと思います。膨大な供述調書がまず出てくる今の刑事裁判を改め、直接主義、口頭主義を徹底する、公判に参加した市民法廷のやり取りを集中して聞くだけで判断ができるようにすることが大切だというふうに思います。  先ほども指摘されましたが、陪審員に対するのと同じような十分なオリエンテーションを行い、裁判員意義、そして事実認定の方法、そして裁判官裁判員が評議において対等であることなどを十分にオリエンテーションするということも重要だというふうに思います。  第四に、今後の裁判員制度の推進体制に市民の声を十分に反映させることを求めます。  これまでに述べてまいりました市民にとって参加しやすい制度、分かりやすい裁判、これは施行までに必ず市民の声を十分に反映させて実現していただきたいというふうに思っております。例えば、評議室や法廷の構造など、裁判員となる市民の声を反映させるべき課題はたくさんあると思います。  私たちは、市民裁判員制度つくろう会として、二年間、司法制度改革推進本部に様々な要請をしてまいりましたが、残念ながらこちらが要請をするのを聞きおいていただくという形で、十分なコミュニケーションが取れなかったことを残念に思っております。そうした点も踏まえて、今後、推進体制においては、本当に市民の声が反映できるように一般公募の市民をモニターとして組み入れるなど、市民意見を反映した推進体制を確立していただくよう、是非提案したいというふうに思います。  次に、刑訴法改正に関連して、刑事司法改革に関する点を述べたいと思います。  私は、今回の制度改革が刑事司法の抜本的な改革につながることを願ってやみません。一弁護士として、私は幾つかの冤罪事件にかかわってまいりました。最高裁の新しい判例を作った調布駅前暴行事件という事件があります。これは少年の冤罪事件でしたが、無実の少年が逮捕され、最初裁判裁判官に僕はやっていないと訴えましたが、裁判官は少年の目を一度も見ることもなく、記録に目を落としたまま、彼を犯人だと結論付けて、少年院送致を決めました。少年は司法に対する信頼を失い、彼が無実を獲得するまでその後八年もの歳月が掛かりました。  また、本日私がパンフレットを配付させていただきましたが、日弁連が支援する冤罪事件である死刑再審名張事件というものの弁護人を私は務めております。この事件で一審無罪判決を受けた被告人は、虚偽の鑑定により、高裁で逆転死刑判決を受け、以後四十年以上にもわたって獄中から無実を叫び続け、死刑の恐怖と隣り合わせの生活を送っています。私は、この現実を片時も忘れることはありません。  現在の刑事裁判の有罪率は九九%という諸外国から見ますと異常な数字になっております。若手の弁護士は、この圧倒的な有罪率に深い絶望感を抱いております。無罪を争う刑事事件を担当していて、疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判の原則が形骸化しているのではないかと思うことがしばしばあります。裁かれる側の被告人と裁く側の裁判官、この立場が本当に非常に遠いということを痛感します。  私は、何度かアメリカ陪審裁判を調査、傍聴し、感動したことがあります。それは、裁判官陪審員に、人を裁くことは人の一生を決める大切で崇高な責務であるということ、そして被告人を有罪とするのには合理的な疑いがなければ無罪としなければなりませんと、無罪推定の原則、陪審員の崇高な役割を繰り返し説明し、陪審員がその責務を深く自覚し、真剣に被告人の言い分にも耳を傾けている様子を見たときでした。  私は、このようなアメリカ陪審員制度と同様な司法制度がこの裁判員制度導入によって実現することを望みます。裁判員制度導入に当たって、疑わしきは被告人の利益にの原則が再度確認されること、そして国際水準に基づいて証拠開示と取調べの可視化が速やかに実現されるよう求めます。日本において取調べの可視化が実現しておらず、検察官手持ち証拠の開示がほとんどなされていないことは、一九九八年の国連規約人権委員会の改善勧告からも明らかとなっております。  先ほど、私が手掛けた二つ事件を紹介いたしましたが、いずれの当事者も捜査段階で自白をさせられました。もし捜査段階で取調べの過程がビデオ録画されていたならば、彼らの運命は今のようであっただろうかと思います。八年も掛けて裁判で無実を争ったり、四十年も死刑の恐怖にさらされなければならないことがあっただろうかと思わずにはいられません。衆議院段階で附帯決議として取調べの可視化に関する決議がなされたことは非常にすばらしいと思っております。これを更に一歩進めて、裁判員法施行までに、是非取調べの可視化、ビデオ録画化を実現していただきたいと思います。  そして、証拠開示に関してです。  資料として提出しておりますが、米国イリノイ州では、過去十年間で十三人の死刑囚が冤罪であったことが真犯人の発見やDNA鑑定により明らかになっております。このことを受けて、州が冤罪を再発させないための委員会を作り、議論の末、すべての事前全面証拠開示、そして捜査段階のすべての可視化、これを実現するという結論に至りました。  市民参加の裁判にあっても、誤った判断を導かないために、可視化と証拠開示を徹底することは極めて重要だと考えております。今回の刑訴法改正案証拠開示に関する規定が新たに盛り込まれたことは前進だと考えております。しかし、検察官手持ち証拠のリストを弁護人にも裁判員にも開示することが認められておりません。また、まだ事前全面開示には至っておりません。更に事前全面開示の方向に向けた努力をお願いしたいというふうに思います。  最後になりますが、裁判員制度が二十一世紀の司法にとって画期的な改革となるということを本当に期待しております。真の市民参加を実現する改革として社会に定着していくことは非常に重要です。この制度市民の支持を得ずに定着しなかったり、形骸化した制度として失敗することがないように、そして被告人の防御権の観点から、将来に禍根を残すこととならないよう、国会での十分な審議と施行までの十分な御努力を望みたいと思います。  ありがとうございました。
  15. 山本保

    委員長山本保君) どうもありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 吉田博美

    ○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。  参考人の先生方におかれましては、大変お忙しい中を法務委員会にお越しいただきまして、それぞれのお立場から貴重な御所見を賜りまして、感謝に堪えないところでございます。  裁判員制度につきましては、関係各位の大変な御尽力によりまして、メディア等でもしばしば取り上げるようになりまして、かなりの国民の皆さん方にも浸透してきたんではないかと思われるわけでございますが、まだまだの感も否めないんではないかということも事実だと思います。特に、この司法制度改革の中で目玉とも言うべきこの裁判員制度につきまして、今日は、それぞれ御所見を賜りまして、また私も感じたことを踏まえた中で質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  まず最初に、長谷部参考人にお伺いいたしますが、憲法上のことにつきましては参考人からの御所見を賜ったわけでございますが、参考人御自身がこの裁判員制度に対する意義についてどのようなお考えであるか、お聞かせいただきたいと思います。
  17. 長谷部恭男

    参考人長谷部恭男君) どうもありがとうございます。  この裁判員制度意義につきましては、何よりもこれが今までよりも更により公正で適正な裁判実現に貢献することになると、少なくともその可能性を秘めているというところにその意義があると私は考えておりまして、その中身につきましては、先ほどの発言の中で実は説明したとおりでございますが、そうした公正で、公平ないし適正な裁判実現に資することになるからこそ、それに関与する、それに参加する国民もその裁判への関与を通じて司法への理解、あるいは法律への理解をますます深めていくと、そういう効果が期待できるのではないか、そういう意義があると考えております。
  18. 吉田博美

    ○吉田博美君 次に、四宮参考人にお伺いいたしますが、これで国民主権とそして刑事訴訟手続改革だと、こうおっしゃったわけでございますが、私は、市民が参加をするというこの裁判員制度につきましては私も同感でございますが、これはあくまでも今現段階では刑事裁判についてでございますが、民事裁判についても将来わたって必要じゃないかと思うわけでございますが、その点についての御所見をお聞かせいただけますでしょうか。
  19. 四宮啓

    参考人四宮啓君) 私も結論から申し上げれば今御指摘の意見賛成でございます。  諸外国を見ましても、余り民事を、国民が多数入っている国というのはそう多くはないわけですけれども、事件を見ますと、一般国民がその社会的な常識で判断するのがふさわしい事件というのはいろいろあると思います。今回のは刑事事件の、しかも重大事件ですが、その実施を見て、国民側により理解をされ、支持されてということになれば、私も民事方面にも拡大していくのが相当であろうと考えております。
  20. 吉田博美

    ○吉田博美君 土屋参考人にお伺いいたしますが、それぞれのこの裁判員制度についての問題点は指摘されたわけでございますが、土屋参考人から見まして、この裁判員制度導入に当たって、最も今回のこの法案について期待をしている点につきましてお聞かせいただきたいと思います。
  21. 土屋美明

    参考人土屋美明君) 私の期待は非常に大きなものがあります。それは、刑事司法国民から見て遠い存在であったというのが今までだと思うんです。つまり、悪いことをした人たち自分たちとは違う存在だという考え方から、国民の関心が特異な事件を除いては強くはなかったというのが現状だと思います。それが全体として法の軽視という傾向、社会的傾向に結び付いて、それが犯罪の多発などにもつながってきている、治安の悪化にもつながってきている、そういう面があろうかと思います。  ですから、国民の法意識を高めていくためには裁判というのは一番いい勉強の場でもあります。そういう大きな意味国民司法参加にはあるというふうに考えております。
  22. 吉田博美

    ○吉田博美君 伊藤参考人にお伺いいたしますが、実は私は長野県の出身でございまして、長野冬季オリンピックというものに取り組んでまいったわけでございますが、その折に組織委員会を作るに当たって、必ず男性がほとんどで女性は本当に数名なんですよね。ところが、選手が参加されるのは男女ほとんど同じような選手が参加される中で、いつもそういうようなまだまだ、日本の中で男女共同参画社会と言われながらも、非常に女性の参加が少ないような現状が男性主導で行われているというのが残念でならないわけでありまして、私も強く主張したわけでございますが、私の名前が女みたいな、女性みたいな名前だから言うわけではございませんけれども。  本当に正直な話、そうした中できちっとすることが大事じゃないかと思うことと、私自身、今度の裁判員制度導入に当たりまして特に感じていることは、私ども政治家もどちらかというと一般国民の皆さん方とのかなりの温度差があるんじゃないかなという、この点については深く反省をしている部分も多分にあるわけでありますが、そうした一つ一つの中で感じることは、我々は一つの問題が提起されると、同じ政治家仲間で判断をしたり、あるいは自分の面従腹背の事務所の皆さん方にその判断を仰いだり、あるいは妄信的な自分自身の後援会の皆さん方の意見を聞いて、こうなんだと思う点があるということを我々も反省しなきゃいけない。  そうした中で私いつも感じているのは、私自身も、主婦の皆さん方で、私の支持者じゃないんですよね、そして何人かのモニターを作っておいて、そしてまた若い皆さん方にも何人かのモニター作って、こういう問題があるんだけれどもどうなんだろうかという、働き掛けると、非常に面白い答えが返ってくるんですよね。ああ、我々が反省しなきゃいけないというのは、それはもう政党だとかそういうものにとらわれるんじゃなくて、本当に市民の皆さん方に直に自分がモニターを作って聞くと、ああなるほどなという。  私は、そういう意味では、この裁判員制度につきましても同じような意味があるんではないかなと思っているわけでございまして、プロ集団でしゃべる言葉もちょっと違う、なかなか理解できないというようなものの中で、そうした中で市民のいろいろな問題について取り組んでこられたわけでございますが。  この一番の問題、私が心配をしているのは、やはり裁判員制度をどう周知徹底をするかということが大事なんじゃないかと思いますが、どのような方法で周知徹底をするのがいいかと、もし御意見がありましたらお聞かせいただきたいと思いますけれども。
  23. 伊藤和子

    参考人伊藤和子君) 大正時代に陪審制度導入された際は、法曹三者が協力をし合って、全国で本当にたくさんの箇所で模擬裁判、模擬陪審裁判を行ってたくさんの市民が参加されたという実績があるというふうに伺っております。  司法制度改革推進本部でもそのような模擬陪審、模擬裁判員裁判を是非やっていただきたかったなというふうに思っているのですが、なかなか実現しなかったわけです。今後、推進体制を作る、五年間の施行期間というものがあると思いますが、是非全国各地で模擬裁判員裁判というものを実現していただいて、その中で出てきた問題点を本当に市民の中からくみ上げていって、そしてより良い制度を作るということが大切ではないかと思います。  同時に、そうした裁判、模擬裁判員裁判をやるということが決まれば、報道もされるわけですし、そして参加をした人からの感想なども報道に載ったりする、そういった形によって普及が進んでいくのではないかというふうに期待をしております。今後の推進体制に大いなる期待を寄せたいと思います。
  24. 吉田博美

    ○吉田博美君 先ほど来、土屋参考人伊藤参考人、捜査の可視化について言明があったわけでございますが、捜査の可視化につきましては、今日もちょっと新聞を見ていましたら、ある大学の有名教授は、捜査段階のときに、現実は、これを自白すればすぐ釈放するからと聞かれてしゃべってしまったと、しゃべったと、しかし現実は違うんだということで、ちょっと新聞記事に載っていましたけれども、そうした中で、やはり可視化をされていたらそんなことはなかったんじゃないかなというような判断もできるわけでありますが。  しかしながら、私どもの国におきまして、刑事あるいは検事の皆さん方の取調べに対して、先般も委員会で赤鬼、青鬼というのがいて、非常に厳しく取り調べる人、優しくしながら自白を導くというようなお話委員会の中で取り上げられたわけでございますが。  私が思いますのは、そうした中で捜査の可視化をするということ、非常に分かりやすくなるわけでありますが、今までの非常にプロ集団として刑事なりが本当に全身全霊自白とかそういうものに対して取り組んできた、一生懸命取り組んできたものが、そうしたことに、いわゆる可視化をすることによって非常に事務的になって、なかなかその辺がうまくいかないんじゃないかというふうな懸念もされる声もあるわけでありますが、その点について、お二人方にちょっと御意見をお伺いしたいと思いますけれども。
  25. 伊藤和子

    参考人伊藤和子君) 欧米でも、まずは一番最初は糾問的な自白というものがなされて、自白は証拠の王様というふうに言われてきました。私もアメリカに伺いまして様々な捜査官の方とお話しする機会もありましたが、ミランダ・ルールというものが確立をされ、州によっては取調べの可視化も実現しております。そういう中でもうかなり、それまでの自白中心ということから転換をして物証中心の立証に切り替える、科学的な立証に切り替えるということを、もうそのように決めてしまえば、その後はそういう形での捜査の手法というものが確立されていくものではないかというふうに思います。  そういう点でいいますと、特に問題はないのではないかと思います。どうしても自白を求めるというふうになりますと、どうしても糾問的になっていってしまいます。例えば、アメリカの今イラクで行われているようなあの捕虜の虐待のような、そういった不幸な事案にまで到達しかねないということがあると思います。やはり、日本の文化として、そのような糾問的な手法に至りかねないような密室での取調べというのは、是非この二十一世紀を機に廃していただきたいというふうに私は考えております。
  26. 土屋美明

    参考人土屋美明君) 私は伊藤弁護士のように明快にちょっと言えないのが残念なんですけれども。  というのは、警察官あるいは検事さんなんかとお話をしていくときに、捜査がいかに難しいかということはその都度その都度聞かされます。簡単なものではないということはよく分かっておりますし、大きな事件であれば、国民から刑事の捜査当局に対して真相解明の要望というのが強く出されるということもありまして、それにこたえなきゃいけないという、そういった責務をひしひしと検察官の方それから警察官の方は感じてやっていらっしゃるということを私も感じます。ですから、簡単ではないと思うんです。  それはなぜかといいますと、今までの刑事司法の、現在行われている刑事司法がそうですけれども、それがやはり被告、被疑者被告人の供述をきちっと押さえてそこから立証していくという、そういう捜査から公判段階までつながったシステムというんでしょうか、そういうのが前提になっているために行われている状況なんだろうというふうに私は思います。ですから、そこだけ、そこを変えずに取調べのところだけをどこまで変えていくことができるのか、それについてはちょっと悩ましいところがあるわけです。  それで、先ほども申し上げましたように、現状については取調べも含めて相当の改善にはなるであろうというふうに思っておりますけれども、それをもっと将来的には少なくとも証拠の任意性をめぐるような入口での争いが起きないように、取調べの部分もきちんと記録化することによって克服していく、そのことによって全体の捜査から公判までを変えていく、そういうような発想を取っていただきたいというふうに願っているということなんです。  以上です。
  27. 吉田博美

    ○吉田博美君 以上でございます。
  28. 江田五月

    ○江田五月君 民主党・新緑風会の江田五月です。  今日は四人の参考人の皆さん、本当に私どもの審議のためにおいでくださいましてありがとうございます。  私たち民主党は、今回の司法制度改革は、これはどうしても成し遂げなきゃならぬと、それはやはり戦後改革は民主主義、国民主権というのが一番大きな柱であったわけですが、しかし行政の場面もまだ十分国民主権になっているかどうかいろいろ問題がありますが、特に司法の場面というのは戦前の天皇の名による司法から国民の名による司法へと冠は替わったけれども、実態は官僚司法で変わっていないと、そこへメスを入れたいということで、一つは法曹一元、もう一つ陪審、これを掲げました。  これはもう文字どおり、そのとおりのものが実現しなきゃいけないということではなくて、そうした基本的な姿勢、理念の下に今回の司法制度改革が、大胆な制度改革を行うことになれば、それは合格点だということで、基本的に法曹一元の根本にある発想を実現していこうということで、いろんな給源の、裁判官の給源の多様化に向かってくると。まだまだ、不十分です。もう一つは、陪審の方は、国民司法参加ということで裁判員制度ということになってきて、これを実現をしていきたいと思っております。  しかし、まあいろんな議論がありまして、与党の方もなかなか大変だったと聞いておりますし、私ども民主党の方もこの法案にどういう態度で臨むかを決めるに当たってはかなり厳しい議論がございました。その上で、結果的に衆議院の方でもう全会一致で一人の異論もなく可決をされて参議院に回ってきたと。これはやはり非常に重要なことで、つまりいろんな意見はある、様々な疑問もある、心配もある、不安もある、しかし今の刑事司法に対してこれは何かやっぱり変えなきゃいけないという、そういう気持ちを国会議員みんなが持ったと。国民の中にもいろんな意見がまだまだあるだろうと思いますが、それでもその国民の代表者たる国会が、まだ一院だけではありますが、衆議院の方で全会一致で可決をされたということは、やはり何かやらなきゃいけないということだったろうと思うんですね。  しかし、まだまだ疑問も不安も一杯あるわけですから、もっといいものにしていくために、参議院の方の議論も十分しなきゃいけないし、さらに、今回私どももこれは参議院でも可決をさせて成立をさせたいと思っていますけれども、施行までの間に五年の期間、まあ私たちは三年ぐらいでいいんじゃないかと思っておりますが、一定の期間がある。その間にかなりこれは柔軟な頭で、先ほどもおっしゃったような例えば模擬裁判をやってみるとか、国民の声も十分聞いてみるとか、いろんなそういうことをやりながら、やっぱりここはちょっとこう変えたらより良くなるねと、国民の皆さんに歓迎されるものになるねと、そんなものがあれば施行までの間にも一定の手直しもしていく必要があると、そういうある種の緩行性というんですか、どうも立法に緩行性というのは余りなじまないかもしれませんが、それでもやっぱりここはそういうような姿勢で柔らか頭でみんなが、国民の皆さんにも参加をしていただいて制度実現にこぎ着ける、まだそのプロセスにいるんだというような感じがいたしますが、四人の方それぞれ今のような私どもの姿勢についてどういうふうにお考えになるか、長谷部参考人から順次。
  29. 長谷部恭男

    参考人長谷部恭男君) なかなか立法に携わる方々としての非常に慎重でかつ賢慮に満ちたお言葉をいただいたのではないかというふうに考えております。  この裁判員制度というのは、何しろ参考人の先生方おっしゃいますとおり、これ画期的な制度でございまして、この運用の在り方というものにつきましても、これもやはり私自身といたしましては一定の年度を経たところでやはり検証し、より良い制度の在り方あるいはより良い運用の在り方というのがあり得るのではないかと、そのことも考えていくということも必要になってくる、そういう制度であろうかというふうに考えております。  そういった長期的な視点からいたしましても、今、江田先生がおっしゃったそういった態度というものはやはり賢慮に満ちた基本的に妥当な方向であるというふうに私は考えております。
  30. 四宮啓

    参考人四宮啓君) 私も全く賛成です。  二つ申し上げたいと思いますが、一つ法律専門家役割と責任ということであります。これは、今度の裁判員制度というのは、決して国民の皆さんに今までの裁判のやり方を教えるというものではあってはならないと思うんですね。ですから、今のような模擬裁判などを実現することによって、本当にその国民の皆さんに分かってもらえる制度とは一体どんなものなのかということを私たち専門家は三者協力してスキルアップをしていく責任があると思います。  模擬裁判などをやってみますと、ある人から皮肉を込めて言われましたけれども、法律家法律村の方言でしゃべっていると言われたことがあります。そうであってはならないわけで、法律や事実を日常語でこれから語る技術を身に付けていく。そのためには、今、江田先生御指摘のような、実際の模擬裁判などを繰り返し繰り返し全国で行っていく必要があると思います。  もう一つは、今、長谷部先生もおっしゃった検証でありまして、幸い見直し規定がございます。そのためには国民のやはり声がきちんと経験者、特に経験者の声が反映されることが大事でありまして、その意味でも先ほどもちょっと申し上げさせていただきましたが、守秘義務の点は、立法趣旨を損なわなければ、国民が自らの経験を広く社会に伝えるということを認めていくべきではないかというふうに考えております。
  31. 土屋美明

    参考人土屋美明君) 今、江田先生おっしゃった方向に私は賛成です。  今ちょっと思い出したんですが、あるスウェーデンの裁判官と話していましたら、評議の仕方について説明してくれました。そのときには、裁判官が先に参審員の前に自分結論を言わない。で、素人に話をさせる。その後に裁判官自分意見を言う。だけれども、その順番は若い裁判官の方から言って、裁判長は最後にするというようなことを言っておりました。これは一つの知恵だろうと思います。  私は、この制度法案にそういうようなことがなかなか書き切れないとは思うんですけれども、実は極めてそういう工夫というのが大事な問題だろうと思っておりまして、そういう素人の人がいきなり裁判所に来て意見をとにかく言いやすい環境を作っていただきたい。法曹村の法曹方言でしゃべられたんでは全く分からないわけですね。だから、そういうようなことではなくて、標準語でできるだけかみ砕いておじいちゃん、おばあちゃんにも分かるように、そういうような制度運用をどう作るかということが本当に大事なんだと思っております。  そのためには、もう一つなんですが、模擬裁判の取材といいましょうか、傍聴などを私はしたことが何回かありまして、あるときは裁判員役の方と裁判官役の法律家の方と一緒に議論している場にも傍聴人させていただいたことがございます。そうするといろんなことが気が付くわけですね、やってみますと。あっ、そうか、こういうところで意見が割れたときにはどういう解決法をしたらいいのだろうかとか、そういうことというのは実際にやってみないと分からない部分が随分あります。思ってもいなかったようなことが出てくる。それが実は参加している市民の人にとってとても大事なものなんだというふうなことが結構ありました。現実にありました。  ですから、模擬裁判などをやっていって、それでその中でもって制度の肉付けをしていくというんでしょうか、細かい規則だとかそういったところで対応する部分も詰めていく、そういう作業を本当に慎重にやっていただきたい、それで充実したものに仕上げていっていただきたいと、そういうふうに感じております。
  32. 伊藤和子

    参考人伊藤和子君) 私も江田先生の御趣旨に賛成をしております。  私たち市民裁判員制度つくろう会としては、裁判員制度を本当にいい制度になるようにというふうに本当に期待を掛けてまいりました。人数の点でも、先ほど言いましたように裁判官が一名対市民が十人ぐらい、そして全員一致を目指して、それが難しくても特別多数決といった形の制度実現したいというふうに考えてきたわけですけれども、いろいろな経過で、衆議院段階で全会一致でこの法律賛成されたという経緯があります。  私たちは、欲を言えば切りがありませんし、是非理想を追求していきたいというふうには考えますが、まずこの制度をとにかく市民参加制度として作り、その後に様々な形で国民意見も踏まえてより良い制度にしていくということが重要ではないかというふうに思っておりますので、今後とも、これから裁判員制度、今まだそれほど広報が進んでおりませんので、これから国民の間の議論も盛んになってくるのではないかというふうに思います。施行期間、五年間ありますけれども、その間も絶えず国会の中で制度の見直しなどにも是非心を砕いていただければというふうに思っております。
  33. 江田五月

    ○江田五月君 裁判員制度賛成で積極的にこれを実現していこうと、そういう態度を取っているある弁護士さんが、メールで、あるメーリングリストのグループに悲鳴にも似たような質問を出しているんですが、それは、理屈ではいろいろできると。しかし具体的に、例えばあの事件裁判員制度にしたらこんなに良くなるというような、何かそういう具体的な事例がだれかあったら教えてほしいという、そんなのがあるんですが、四人のどなたか、こういうのがありますよという、例えば我々の中で議論したのは、甲山事件裁判員制度をやったらどうなる、これで悪くなるんじゃないなんというような意見もあったんですが、何か具体的なものがあればどなたか。──どなたも手が挙がりませんか。  これ難しいんです。私は、例えば甲山事件の場合でも、裁判員制度でやるとどうしたって直接主義、口頭主義はもうこれ必須ですよね。必須だとすると、やはりそれと、先ほどの土屋参考人意見に多少反論するんですが、捜査の可視化というのが結び付くだろう。そうすると、捜査の可視化であの甲山事件のいろんな捜査全体状況が後からちゃんと検証できれば、もっと無罪にせよ有罪にせよ、そしてそれを素人が見れば裁判官が見るよりもっとぴたっとくる結論が出るんじゃないかという気がするんですが、土屋参考人伊藤参考人、先ほど可視化の問題で言われましたんでお二人に聞きます。簡単で結構です。
  34. 山本保

    委員長山本保君) 時間がありませんので簡便、簡潔にお願いします。
  35. 土屋美明

    参考人土屋美明君) 私、先ほど余り明確に述べられないというふうに言いましたのは、正にそういう点でありまして、取調べ状況をビデオだとか記録に取ることが両面の影響を与える可能性があるんだろうと思います。それがいい方向というと変ですけれども、冤罪防止の方向に働くかもしれないし、逆にそれがインパクトを与えてしまって冤罪をかぶせる方向に働いてしまうかもしれない。その辺りの作り方というのは非常に難しいんだろうと私は感じておりまして、それですべてもろ手を挙げて賛成もしにくい部分がありますというふうに申し上げたわけであります。  ですけれども、そういう懸念が払拭される、そういう制度的保障措置を取りながら、なおかつ積極的に導入する方向を将来は目指すべきであると、私はそう考えておりますということでございます。
  36. 伊藤和子

    参考人伊藤和子君) 私は、基本的に今の刑事裁判に比べてかなりいい結論に達する場合が多いのではないかというふうに感じております。  先ほど私が言いました名張事件であるとか調布事件などというのも、自白によって、一たび自白をしてしまったことによってずっと拘束をされて、なかなか無実を晴らすまでに時間が掛かってしまうということがあります。もし取調べの可視化が進んでいれば、全く違った事態になるのではないかというふうに思います。  それから、国民の良識が入るという点でも非常に重要だと思うんですが、例えば草加事件という少年事件は、AB型の体液が被害者から発見されましたが、逮捕された被告人の中にAB型の者はいなかったわけです。良識的に考えますと彼らが犯人ではないということはかなり早い段階に分かるはずであるにもかかわらず、十年ぐらい無実を晴らすのに時間が掛かっております。こういった問題も裁判員制度導入によっていい方向に適正に前進していくのではないかというふうに考えております。
  37. 江田五月

    ○江田五月君 終わります。
  38. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 公明党の木庭健太郎でございます。  参考人の皆様方には貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。  参議院におきましても、衆議院で先ほどお話があったように全会一致でこの法案が送られてきたということに、ある意味ではこれを今から審議いたしております私たち国会議員としても、一つの新しいものが始まるときに、一院としてすばらしい結果を出していただいて参議院に送っていただく、参議院ではより皆様方から、各方面の皆さんの御意見も聞きながら慎重な審議をし、是非いい形でのこの制度発足へ、もちろん法案を早く上げる必要もあるとは感じておりながら、そんなことを思いながら、今日は本当に皆様方に貴重な意見を伺ったことを感謝を申し上げます。  まず最初に、長谷部参考人憲法との関係でのお話を、歴史的経過をたどりながらお話をいただきました。そのとおりだろうと思いますが、それでもなおかつ、この委員会でも議論になったんですけれども、やはり日本そのものの風土というもの自体が、一つ裁判というものは裁判官によってなされるという、そういうことを国民の多くは感じている。つまりそこに、極論すれば素人が入ってきて何ができるんだと。逆に言うと、そんな素人が参加した中で裁かれた、裁かれる被告人の側はどうなるんだというような御意見もあります。  そういった観点でとらえると、一つは、今回の裁判員制度になりますと、被告人裁判員による裁判を受けることについて拒否できないことになるわけですよね。そうすると、憲法上の関係からいっても、そういうものが本当に果たしてどうなんだろうかという御意見も出てくるわけでございまして、言わば被告に選択権を与えないという問題とこの憲法との関係という問題も少し整理してお伺いしたい点と。  もう一つは、したがって裁判員制度をやるんであれば、今、国会では憲法改正の論議もいろいろやっております。その中で、この司法に関する規定の問題の中で、裁判員導入するということであれば憲法にそれを規定してしまった方がいいんじゃないかという意見もございます、正直に。そういった点も含めて、そういう裁判員を、刑事裁判に関する規定憲法に明記するというような問題、こういう提起もあるわけでございますが、そういったことに対する参考人意見をお伺いできればと思います。
  39. 長谷部恭男

    参考人長谷部恭男君) どうもありがとうございました。  ただいまの御指摘の点、つまり被告人には職業裁判官による裁判を受ける権利というものがあるのではないかというそういう疑問、確かにあり得る話ではあるかとは存じますが、少なくとも日本国憲法の文面は職業裁判官による裁判を受ける権利を保障しているわけでございませんので、少なくとも、被告人のそういった権利憲法によって保障されているのに侵害されるという、その問題は恐らく出てこないはずでございます。  他方裁判員制度裁判員が関与するような裁判を受けることによって、むしろ被告人にとって不利な裁判がもたらされることになるのではないかという懸念を漏らされる方もいらっしゃるのですが、これも私存じ上げているのは、イングランドの陪審制度における実態調査の研究等を見てまいりますと、やはりこれは検察側の法律家と、それから弁護側の法律家と、その陪審の結果に驚いたと、驚くべき結論が出たという、その数の割合ですね。これは、やはり検察側の法律家がとても驚いたと、てっきり有罪になると思ったのに無罪になったと。そういった結論が出されているわけでございます。  これは日本の戦前陪審制につきましても同様の調査結果が報告されていることもございまして、こういう裁判員の関与を認めることによって、何というか、被告人にとって不利な裁判がもたらされるという、そういったことが少なくとも一般的に言えるわけではないと思います。  もう一点の憲法改正との関係で申しますと、これはむしろ必要であるのであれば裁判員制度を設けるということを憲法を改正して入れる必要があると存じますが、私の考えと申しますのは、先ほどからも申しておりますとおり、裁判員制度というのは現行憲法下で十分可能な制度であるという、そういうような立場でございまして、そういう意味では必要、憲法改正が必要であるということは言えないであろうというのが私の結論でございます。
  40. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 四宮参考人に、次は、同じようなことをお伺いしようと思うんです。というのは、やはりこの裁判員制度導入についての反対論、主なものを整理しますと、やはり憲法違反であるということをおっしゃっている方たちのグループがいらっしゃる。もう一つは、こういう制度を設けて裁判員に過重な負担を寄せる点がある。更に言うと、裁判員にそういう証拠判断はできないといったのが反対論の主なものだと思うんです。それともう一つは、やはり日本の風土に合うのかという問題点。  この四点ぐらいが、まだ、いまだにいろんな場で国民の側からこの裁判員制度の問題を御指摘、民主化司法民主化では本当に大事な制度だという話をしても、いやそうじゃないんじゃないかとおっしゃる方の主な論点はこんなところだろうと思うんですけれども。これに対して一々反論全部しろというわけじゃないですけれども、その点の整理してお話をいただければいいだろうと思うんですけれども。
  41. 四宮啓

    参考人四宮啓君) どうもありがとうございます。  憲法論は今、長谷部先生からお話ありました。  一つ申し上げたいのは、裁判員の能力の点であります。申し上げるまでもなく、裁判というのは、一つ法律的な事柄、専門的な事柄の部分と、あるいはそうではない常識的な事柄の部分があります。特に証拠の評価というのは、これは十分に一般の人が行えるものであるし、またむしろ一般の人が行う方がふさわしいと思います。  なぜかと申しますと、裁判官は確かにたくさんのケースを経験するわけですが、決して同じ証人が目の前に出ていることはないわけです。同じ証拠物が出てくることはあり得ないわけです。なぜかというと、事件が全部違うからですね。つまり、裁判官も証拠の信用性を判断するのは、彼ら自身の常識に基づいて行っているわけです。そうだとすると、その常識に基づく判断は多様な視点が加わって行った方がより適正なものになるだろうという意味で、それ、世界を見ましても、国民が参加するのはやはり事実の認定、証拠の評価の部分ですので、それはむしろ国民にこそゆだねるのがふさわしいし、十分できるというふうに私は思っております。  それから、日本の風土なんですけれども、実は、考えてみますと、国民がいろいろな社会の問題を判断するというのが実は日本の社会は少ない、国際的に見ると少ない社会であったように思います。しかし、では日本の国民がそういうものを拒絶しているかというと、実は先生方が選挙されるのは正に国民の意思に基づいているわけですし、地方でも首長や議員たちは国民が選択しているわけですね。そして、司法だけがなぜ、じゃ国民がやってこなかったのかということで、むしろ私はそういった経験的なものに基づく反応ではないかと思います。  先ほどから出ているように、戦前は日本も陪審をやっておりまして、これは非常に高い評価を残しております。ですので、新しくこの仕組みができることによって、むしろ私は日本の国民たちが自分たち社会のことをやはり自分たちで決めていくということに自信を持ってくれると確信をしております。
  42. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 土屋参考人にお伺いしたいと思います。  多分、裁判員が担当をするようになるだろうという事件は決められているわけですから、重大事件を取り扱うようになるだろうと。そうなると、これをマスコミとの関係の問題でいうと、一般の方々ですから、じゃ、それ、その裁判員になったときに頭の中、事前に刷り込まれる情報は何かといえば、マスコミ情報だと思います。しかも、そういう事件というのは、どちらかというと発生段階から丹念に追い掛けながら、ある意味では、時にはセンセーションになりがちな、そんなことになったものを取り扱うと。職業裁判員なら、それはそれなりの訓練をされていますから、その上でのそんなものがあったとしても判断はできたとしても、一般の方々にとってみると、そういうマスコミとの関係の問題でいくと、その裁判員制度導入された際、報道の在り方と、報道する側、この裁判員制度導入されるということで報道側がどう変わっていくのかなというようなところも必要な部分はあるんじゃないかと思うんですけれども、そういった点をどんなふうに携わる側からお感じになられるのかというのをまずお聞きしておきたいと思うんです。
  43. 土屋美明

    参考人土屋美明君) 二つ申し上げたいと思います。  一つは、裁判員になるような一般国民に対する予断の部分ですね。予断を与えるのは報道ではないかということなんですが、実は私、いろんな裁判官だとか検察官の方、弁護士さんもそうですけれども、お話ししていていつも感じるのは、すごく報道をよく読んでいらっしゃるんです。事件段階から読んでいらっしゃるんです。それで、それは職業倫理に基づいて、きちんと仕分ができて、証拠上立証できているものとそうでない単なる風評、報道の内容もそうだという部分があろうかと思いますけれども、そういうものをきちんと区別できるから大丈夫なんだというふうに言われますけれども、果たしてどうかなと思う部分も感じることはないわけではありません。非常にやはり裁判官であっても報道の内容については気にしていらっしゃる、そういうことをひしひしと感じます。それが一つです。  それからもう一つは、メディアの内部でこういう重大事件が起きますと、関心が非常に高まって、事件の発生段階からいわゆる集団的過熱取材というような、殺到をするような報道がなされる可能性があろうかと思います。これまでのやり方をそのままほうっておいたらば、そういう事態は非常に心配なものとして現実に起きる可能性があると私は思っています。ですけれども、この裁判員制度との関係で報道の在り方が問題になり、新聞協会の内部などでいろいろ議論をしていきます過程で、もう二年ぐらいになりますけれども、そういう取材の在り方というのは基本的に改めていかないと制度の趣旨に反することになるという認識が共通にできてきております。まだ具体的に形を成すものになっておりませんけれども、先ほど述べましたように、具体的にガイドライン、指針のようなものを作ろうじゃないかということで現実に動いておりますし、それから最高裁だとか法務省、日弁連とも話をしておりますから、法案ができて具体的に制度が固まってくれば、それに対応してメディアの方はどうあるべきかということももっと突っ込んだ話合いができる、その中からきちんとした形のあるものができてくるであろうと私は思っております。新聞協会はヒアリングでもそういうことを表明しておりますので、これは社会的な公約ですから裏切ることはないだろうと思っております。
  44. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう時間があとわずかになりましたので、伊藤参考人一つだけ。  やはりこれ、選挙人名簿から選ばれる形ですから、男女どうなるかというのは、これはもうしようがないところもあるんですけれども、実際はこれ、やっぱりそういうものをやる以上、男女の比、本当ならこうすべきじゃないかなというようなお考えがあるのか。また、女性が参加しやすくするためにはどんな点を改善しなくちゃいけないのか、もう少し御意見があれば短い時間なりに、一分しか残されていませんがよろしくお願いいたします。
  45. 伊藤和子

    参考人伊藤和子君) 私たちは、私は裁判員制度にも是非ジェンダーバランスというのが大事だというふうに考えております。裁判官の多くが残念ながら男性、男性ばかりで決めてしまうという場合も多くて、特に女性が関係するドメスティック・バイオレンスであるとかセクシュアルハラスメントの事件に関しては少し違和感のある判決というものが多くあります。刑事事件の中にもそういった部分が出てくるということも危惧されます。そういった観点から、私たち、私は裁判官裁判員を合わせて四割は女性であるべきだということを是非ガイドラインにできればいいなというふうに思っております。  それから、先ほど言いました参加しやすいという点で、育児であるとか介護サービスだけではなくて、裁判所の近くに託児所があっても満員電車で子供を連れて裁判所に通うというようなことはなかなか難しいというふうに思います。そういった点で、フレキシブルな時間ですね、時間が、例えば満員電車の時間を避けてもうちょっと遅い時間から始まるであるとか、家事の時間に合わせて帰れるとか、フレキシブルな開廷時間というものも是非考慮していただきたいというふうに思います。
  46. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ありがとうございました。
  47. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  今日は四人の参考人、本当にそれぞれの立場から大変貴重な御意見をいただきまして、大変参考になりました。  まず、長谷部参考人にお聞きをいたします。  思想、良心の自由との関係で御発言がありました。信仰と両立しない場合などに正当な理由として辞退ができるということが入った、入っているということを評価をされました。一方では、土屋参考人からはこれには反対だという御意見もありました。これについては、こういうふうに認めると、それこそみんなが思想、信条の理由を言って制度が崩壊してしまうんじゃないかという意見もございます。それから、自分はこういう宗教に入っているんだということを言わないという内心の自由の保障ということもあります。政府の方もどうこれを政令に書き込むかというのをいろいろ頭を悩ませているようなんでありますけれども、この辺の問題、どのようにお考えでしょうか。
  48. 長谷部恭男

    参考人長谷部恭男君) どうもありがとうございました。  思想、良心の自由、これは恐らく、辞退をする、辞退の正当化のやむを得ない事由ということで政令に書き込むということがただいま検討されているのではないかというふうに聞き及んでおりますが、御指摘のとおり、非常に重要な難しい問題が出てまいります。ただ、私は、先ほど例をお出ししましたように、その人の人格の確信を構成するような信仰と裁判員としての務めが両立しないような人についてまでこの裁判員としての務めを強制すると。これはやはり憲法上の思想、良心の自由を侵害することになる、違憲の問題を生ずると考えております。  ただ、そういった思想、信条の自由を理由にして、やむを得ない事態、事由があるということで辞退を認める対象としては、これは世間一般が考えている宗教に限定するべきではないと思います。と申しますのは、これは宗教に限定をしてしまいますと、逆に政教分離違反の問題が出てまいります。要するに、世間一般で宗教だと思われているものについてだけ特権を与えるということになってしまいます。  したがいまして、これはアメリカでの兵役拒否に関する幾つかの判例がそういう考え方を示しておりますけれども、やはりそういう人格の確信を構成するような基本的な世界観、それが宗教と同じような形で考えられるようなそういった世界観がそういう裁判員としての務めと両立しないような場合には、やはりやむを得ない事由があるということで辞退を認めるべきだろうと思います。  その際にはやはり、私にはこういう信仰がある、あるいはこういう世界観があるということは、これはやはり言っていただかないと困るだろうと思います。これはやはり公平、適正な裁判実現するために国民一般的に参加を要請されている制度でありまして、そういう制度があることによって、そういった辞退をする人も含めてそういった利益を直接あるいは間接に受ける、そういった制度でございますから、その理由をちゃんと言わないで辞退をするということは、これはやはりフェアなことではないというふうに考えられます。  ですから、その点は、やはり理由としては、その思想ないし信条はお話しいただかなくてはいけないということになるかと存じます。
  49. 井上哲士

    ○井上哲士君 次に、四宮参考人にお伺いをします。  アメリカの例を挙げられて、市民が単なる義務ではなくて大切な仕事だと実感することが必要だというようなことも言われました。大変興味深くお聞きをしましたが、そのためにも守秘義務のことも挙げられました。立法趣旨を損なわない限りにおいてということを強調されたわけでありますが、衆議院での一定の修正もされたわけでありますけれども、今の法案のこの守秘義務でいいますと、更に正すとすればどこが必要とお考えでしょうか。
  50. 四宮啓

    参考人四宮啓君) 今の仕組みは、裁判員が職務上知り得た秘密という概念がまずありまして、それからその中に評議の秘密というのがございます。評議の秘密が更に三つに分かれていると理解しておりますけれども、各人の意見、それからその多少の数ですね、それからそのほかということになると思います。  私は、この守秘義務の立法趣旨には賛成をしておるんですけれども、一つはその評議において自由な発言を確保する、それからもう一つは他人のプライバシーを尊重する、それから最終的には裁判の公正、信頼を確保するということ、これは理由のあることだろうと思います。  ただ、そうだとすると、この趣旨を損なわないものなどは、仮にその評議の中で出たことだとはしても、裁判員経験者が、裁判員の任務が終わるまでの間は私は語ってはならないと思いますが、任務が終わった後には語っていいものも含まれているのではないかというふうに個人的には考えております。つまり、評議の秘密の中から意見と数を除いたものすべてが語ってはならないということにはならないのではないかと思っているんです。  ですから、そこら辺はまたいろいろと参議院の方でも御議論をいただいて、本当に語ってはいけないことは何なのかということを立法趣旨との関連でより明確にしていただいて、国民に一定の指針を示していただきたいと考えております。
  51. 井上哲士

    ○井上哲士君 次に、開示された証拠の目的外使用の問題で土屋参考人伊藤参考人にお聞きをします。  土屋参考人は、御意見としては、目的外使用の禁止は必要だということを言われた上で、新聞協会の見解としてはこれは問題だというようなことを言われたと理解をしたんですが、多分、範囲とか、そういうことの違いなのかと思うんですが、報道の立場からしてこの問題について御意見をお願いいたします。
  52. 土屋美明

    参考人土屋美明君) 実は、報道関係者で一番この法案で懸念している部分というのはここです。目的外使用が原則的、一般的に禁じられることによって報道に対する制約というのが非常に強く出るであろうと。事件事故の、事件、それから、そうですね、報道についてですね。  つまり、検察側から示された証拠を具体的に引用しながら、事実関係の誤りがないように確認する手段として調書のコピーをいただいたりして報道するということは通常行われていることなんですね。これは、むしろいい加減な報道をすることを避ける、正確な報道をする、ちゃんとした法廷に出された証拠に基づいて報道する、そういう精神の一つの表れだったわけです。それが裁判の検証にもつながり、それから学問的な研究にも堪えるものになるであろうという、そういう考え方でやっておりました。むしろ、そういう方向が最近強まってきていると私は思っています。  ところが、目的外使用というのが一般的に禁止されてしまいますと、そういう手法が取れなくなるわけですね。そうしますと、弊害の方が大きいであろうというふうに私は考えております。  ですから、先ほど開示証拠をその目的以外に使うことは原則的に禁じられるのはやむを得ませんと申し上げましたけれども、それは原則的に禁止ということでありますけれども、ただ、正当なそういう目的、社会的な利益を図る目的、あるいは現実的にそういう公益が図られる、期待がある、そういう状況の下では目的外使用というのも一部分認められてしかるべきであろうと。それも封じてしまうことは逆に社会にとって利益にならない、そういうことを報道の関係者は非常に心配しておるということであります。
  53. 井上哲士

    ○井上哲士君 同じ問題、伊藤参考人にお聞きいたします。  冤罪事件にも取り組まれてきたということがありまして、いただいた資料にもパンフなども入っておりますけれども、そういう冤罪事件等に取り組んでこられた経験から、この目的外使用という、の禁止というのがどういう問題を起こすのか、お願いをいたします。
  54. 伊藤和子

    参考人伊藤和子君) 私は、この刑訴法の一部改正案の中で最も懸念している部分がこの目的外使用の部分で、先ほど冒頭にお話ししようと思ったんですが、時間がなくなってしまって残念だった部分です。  それで、まず先ほど申しました調布事件という事件に関しては、この事件はおかしいということで幾つかの新聞社が、若い記者の、社会部の記者の方がキャンペーンを張っていただきまして、そして最終的に最高裁でいい判決をかち取れたという経過があります。その過程の中では、供述調書を読まなければ本当に冤罪だという確信を持てないというふうに新聞記者の方がおっしゃられ、慎重な、弁護団として慎重な検討を重ねた上で供述調書を一部見ていただくというようなこともございました。そうした中で、社会の中で光の当たっていない冤罪事件に光が当たり、そして人権が回復されるという点で報道の役割は非常に大きいと思います。そういった点で目的外使用が認められなくなってしまいますと、そういった部分が阻害されてしまうのではないかと、非常に心配をしております。  もう一つは、こちらの名張事件の方なんですけれども、お配りしているパンフレット、このパンフレットは死刑囚を支援する団体が作ったものですが、私も作成に関与いたしました。このパンフレットに証拠の複製が二か所ですね、コピーをしてございます。これは私たちがおかしいというふうに言って問題にしておりました鑑定に関するものと、それから凶器である農薬に関するものです。このうち、鑑定に関する証拠、私たち様々な運動をしまして、裁判所結論としてもこの鑑定は間違っているという結論が得られました。まだ再審開始はされておりませんが、そういうところまで行っております。  こういう形で支援の方に、様々な市民の方に支援をしていただく中で冤罪事件というものもきちっとした形で無実をかち取れる、そういった経験を私も積み重ねてまいりましたが、やはりおかしさを表すには、証拠の複製などをこういう形で広く人々に知っていただくということは非常に大きな意味を有するというふうに思います。  複製に関して被告人、弁護人に一律に処罰対象になる、しかも被告人に対する処罰というのはかなり広範囲であるというふうに条文を読んでおりますが、こういったパンフレットを作成することによって、その処罰が被告人に矛先が向かないかということを心配してしまいますと、こういった形での広報活動や支援活動がストップさせられてしまう、足止めを食ってしまうのではないかということを非常に心配をしております。私としては、開示証拠のうち取調べ済みのものについては少なくとも罰則から除外するように求めたいというふうに思います。  以上です。
  55. 井上哲士

    ○井上哲士君 最後にもう一点、伊藤参考人に。  裁判員制度の下での集中審理とか、非常に新しいことになるわけですが、その下でも被告人、弁護人の防御権、弁護権というのが後退をしてはならないと、そういう点でいいますと、どういう条件が要るのか、どういう体制が要るのか、その辺り証拠開示の問題などをお願いをいたします。
  56. 伊藤和子

    参考人伊藤和子君) まず、証拠開示が検察官取調べ請求予定の証拠については、とにかく一日も早く開示をされて準備ができるようにということを願っております。そして、それら開示された証拠に基づいて反証をしていくということになりますが、連日的開廷で一気にやってしまわなければならないというふうになりますと、ある程度の準備期間が必要です。検察官が行った鑑定に対して、それに反対するような鑑定医を見付けるであるとか、新しい証拠を見付けるなど、そういった弁護活動をするために充実した準備期間が必要だと思います。  それから、連日的開廷の際に被告人と打合せをしなければならないわけですけれども、現在、夜間、休日の拘置所での接見が難しいという状況がございます。夜間、休日に拘置所で接見をできる、それから、裁判所内でも十分な時間を取ってきちんと被告人と翌日の公判について打合せができる、そういった体制が重要だと思います。  それから、先ほど申しましたとおり、検察官手持ち証拠に関するすべての証拠のリストを是非弁護人に開示するということを求めたいというふうに思います。
  57. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございました。
  58. 山本保

    委員長山本保君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、大変お忙しいところ御出席いただきまして、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時一分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  59. 山本保

    委員長山本保君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  総合法律支援法案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。野沢法務大臣
  60. 野沢太三

    ○国務大臣(野沢太三君) 総合法律支援法案について、その趣旨を御説明いたします。  我が国においては、内外の社会経済情勢の変化に伴い、法による紛争の解決が一層重要になっております。この法律案は、このような状況にかんがみ、裁判その他の法による紛争の解決のための制度の利用をより容易にするとともに、弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の隣接法律専門職者のサービスをより身近に受けられるようにするための総合的な支援、すなわち総合法律支援の実施及び体制の整備に関し、この基本理念、国等の責務その他の基本となる事項、その中核となる日本司法支援センターの組織及び運営について定め、もってより自由かつ公正な社会の形成に資することを目的とするものであります。  以下、法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、総合法律支援の実施及び体制の整備については、民事、刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会実現することを目指して行われるものとするとともに、情報提供の充実強化、民事法律扶助事業の整備発展、国選弁護人の選任態勢の確保、被害者等の援助等に係る態勢の充実等が図られなければならないものとしております。  第二に、これらに関する国の責務について所要の規定を置くとともに、地方公共団体及び日本弁護士連合会等の責務についても所要の規定を置いております。  第三に、日本司法支援センターは、総合法律支援に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的とすることとし、その設立、組織及び運営に関し所要の規定を置くこととしております。この支援センターはその業務として、法による紛争解決制度の有効な利用に資する情報提供の充実強化の業務、民事法律扶助業務、国選弁護人の選任に関する業務、弁護士等を依頼することに困難がある地域における法律事務に関する業務、犯罪被害者の支援業務等を行うこととしております。その組織及び運営については、役員の任命や中期目標を定める際等に最高裁判所の適切な関与を得ることとするとともに、その業務運営上特に弁護士等の職務の特性に配慮して判断すべき事項について審議させるため、支援センターに審査委員会を置くこととしております。  このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上がこの法律案の趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  61. 山本保

    委員長山本保君) 次に、衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員房穂君から説明を聴取いたします。衆議院議員房穂君。
  62. 泉房穂

    衆議院議員(泉房穂君) ただいま議題となりました法律案に対する衆議院における修正部分について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明いたします。  第一は、総合法律支援の実施及び体制の確保について、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供に当たり、高齢者及び障害者に特段の配慮が必要であることを踏まえ、連携の確保強化を図る対象として、「高齢者又は障害者の援助を行う団体」を加えるものであります。  第二は、支援センターの審査委員会及び法律事務取扱規程について、規定の趣旨を一層明確化するため、「当該契約に基づき契約弁護士等に対してとる措置」について記載された「(懲戒を含む。)」との文言を削るものであります。  第三は、支援センターの業務の範囲について、特に被害者等に対する適切な弁護士によるサービスの提供等が重要であることを踏まえ、被害者等の援助に関する情報提供等の業務につき、「この場合においては、被害者等の援助に精通している弁護士を紹介する等被害者等の援助が実効的に行われることを確保するために必要な措置を講ずるよう配慮すること。」との文言を加えるとともに、連携の確保強化の業務につき、この対象として、「高齢者又は障害者の援助を行う団体」を加えるものであります。  第四は、支援センターの義務等について、「支援センターは、前項に規定する者が高齢者及び障害者等法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供を求めることに困難がある者である場合には、前条に規定する業務が利用しやすいものとなるように特別の配慮をしなければならない。」との条項を加えるものであります。  以上が本法律案に対する衆議院における修正部分の趣旨及び概要であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  63. 山本保

    委員長山本保君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ─────────────
  64. 山本保

    委員長山本保君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案刑事訴訟法等の一部を改正する法律案及び総合法律支援法案の三案につき、宮城県及び大阪府において意見を聴取するため、来る十七日に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  67. 山本保

    委員長山本保君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君及び法務省刑事局長樋渡利秋君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  69. 山本保

    委員長山本保君) 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  70. 吉田博美

    ○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。私は、本日は刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に絞って質問をさせていただきたいと思います。  平成十三年六月、司法制度審議会は、その最終答申において、新たな時代、社会の状況の中で、国民の信頼を得ながら、刑事司法の使命を一層適切に果たし得るような制度改革が必要であるとして、刑事裁判の充実、迅速化を図るための方策並びに被疑者に対する公的弁護制度導入を図るとともに、被疑者段階と被告人段階の一貫した弁護体制の整備、検討、審査会の一定の議決に対し法的拘束力を付与する制度導入などが提言されたと承知をしておりますが、本日は、これらの経緯を踏まえ、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  まず、この改正案では、刑事裁判の充実、迅速化のための方策が導入されておりますが、迅速化について大臣の御所見を賜りたいと思います。
  71. 野沢太三

    ○国務大臣(野沢太三君) 今回御提案申し上げております刑事訴訟法第一条にも規定されているとおり、刑事裁判においては、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障を全うしながら、事案の真相を明らかにいたしまして、刑罰法令を適正、迅速に適用実現することが要請されておるところでございます。また、裁判の遅延は国民刑事裁判への信頼を損なうことになると考えております。  それらの要請にこたえまして、国民刑事裁判への信頼を確保するためには、当事者が必要な主張、立証活動を尽くすことを前提として、継続的、効率的かつ効果的に審理を行って迅速な裁判実現しなければならず、御指摘のとおり、刑事裁判の充実、迅速化を図ることが極めて重要であると考えておるところでございます。
  72. 吉田博美

    ○吉田博美君 大臣がおっしゃったとおり、極めて重要でございますが、そこで、刑事裁判の充実、迅速化を実現させるためには具体的にどのような方策を講じておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  73. 実川幸夫

    ○副大臣(実川幸夫君) 具体的にはどのような方策を講じているのかという御質問でございますけれども、まず、十分な争点整理を行いまして明確な審理計画を立てることができるようにするための公判前整理手続の創設及び証拠開示拡充でございます。さらに、連日的開廷の原則の法定化、さらには、裁判所の出頭命令を遵守しない当事者に対します制裁措置などの導入がございます。さらには、簡易明白、争いのない事件につきまして簡易迅速に裁判を行う即決裁判手続の創設などの制度的手当てを講じております。
  74. 吉田博美

    ○吉田博美君 副大臣の方から触れられましたが、公判整理手続の創設をされるとのことでございますが、その趣旨は何でしょうか、またどのような効果を期待されているのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  75. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 刑事裁判の充実、迅速化、これを行うためには、真に争いのある点を中心といたしまして、それをなるべく連続的に行っていくということ、これが肝要なわけでございます。したがいまして、その公判期日に入るまでに争点を明確化して、その争点にどういうような証拠を、どういう順番でその証拠調べを行っていくかというような計画を明確に立てると、これが必要になるということでございます。そこで、今回、公判前整理手続というものを創設しているわけでございます。  この争点整理を含む準備手続というんですか、これは現在も刑事訴訟の訴訟規則の中に置かれていることは置かれているんですけれども、これは当事者の打合せを促す程度のものにとどまっているということでございまして、必ずしも実効性があるものではないということから、事前争点整理などが十分に行われない事件も少なくないという状況でございます。  そこで、今回の法案では、裁判所の主宰によりまして、第一回公判期日前に十分な争点整理を行いまして明確な審理計画を策定すると、こういうことを目的とする手続を創設をするということになるわけでございます。これによりまして、集中的な、実質的な証拠調べができると、こういうことを可能にしようというものでございます。
  76. 吉田博美

    ○吉田博美君 そこで具体的にどのようなことをするのでしょうか、詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
  77. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 若干大まかな手続の流れを申し上げたいと思いますけれども、まず、検察官が公判期日において証拠によって証明しようとする事実ですね、これを明らかにまずいたします。その証明のために用いる証拠調べを請求するということを行います。これ以外にも、取調べ請求をするその証拠の開示のほかに必要な証拠を開示していくと、こういう手続がまず行われます。  二番目に、今度、被告人、弁護人でございますけれども、これは検察官の証明予定事実、それから開示を受けました証拠ですね、これを検討した上で、公判前整理手続において今度は自分の方で公判でする予定の主張、これを明らかにいたします。それから、自ら取調べを求める証拠があるという場合には、その証拠調べの請求をしてもらう、こういう手続になります。  お互いの主張と証拠が出てまいりますけれども、そこで両者の分かりにくいところなんかは釈明して、それで修正するものは修正をして、最終的に争点として明確化をするわけでございまして、その争点で、じゃ何を取り調べる証拠とするか、それからそれに要する時間はどのぐらいかと、こういうことを全部、それから順序もどうするかということを決めて審理計画を立てると、こういうようなことを想定しているということでございます。
  78. 吉田博美

    ○吉田博美君 公判前整理手続で行った争点整理等は、実際の公判においてはどのようにして実効性を担保されるのでしょうか。
  79. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) この実効性担保、今手続の流れを申し上げましたけれども、もう少しこれを幾つかのパターンに分けて御説明すると分かりやすいかもしれませんけれども、例えば、検察官についてどういう義務付けがされているかということでございますが、先ほど申し上げましたけれども、公判で証明予定の具体的事実ですね、これを明らかにすることを義務付けております。それから、被告人側に対する証拠の開示の拡充ということで、求められた開示について必要なものは提出をするということが求められているということになります。  それから、被告人側でございますけれども、検察官によるその所定の証拠開示がされたということを前提にいたしまして、被告人側が今度公判で明らかにする予定の主張、これを明らかにすること、これを義務付けるということになります。  それから、検察官及び被告人両方に義務付けることでございますけれども、それぞれ必要なものは証拠調べの請求、これをしなければならないということで義務付けをいたします。それから、所定の証拠開示がされたということを前提にいたしますけれども、相手の証拠調べ請求に対する意見ですね、これも明らかにするという義務付けをするということになります。  それから、裁判所でございますけれども、裁判所は、その証拠開示の要否について当事者間で争いが生じたというような場合には、これは裁判所が裁定をすると、こういうことになります。それから、この公判前の整理手続において公判で取り調べるべき証拠を決定をいたしまして、これらの手続が終了したときに事件争点を確認するということをいたします。  これが裁判所が行うべきことということでございまして、こういうようなことを前提にいたしまして、公判審理の段階におきましては、検察官、被告人側が新たな証拠調べ請求をすることを原則として制限をすると、こういうことによりまして争点整理の実効性を担保すると、こういうような手続になっているわけでございます。
  80. 吉田博美

    ○吉田博美君 今答弁にもございましたが、公判前整理手続の終了後は新たな証拠調べ請求を制限することとしておりますが、その趣旨は何なんでしょうか。
  81. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) これは、もしこれを認めるということになりますと、相手方のその反証の準備のために公判が中断してしまうということになるわけでございます。そうしますと、せっかく審理計画を立てて行っているものが、その審理計画による実行が、実現が困難になってしまうということになるわけでございます。  特に、裁判員制度の対象となる事件につきましては、当初の審理予定期間、これを前提として仕事予定などを整理してもらいましてその審理に参加をしていただくということになるわけでございますけれども、これが変更になることによってその都合が付かなくなってしまう、立ち会うことができなくなってしまうということにもなりかねないわけでございまして、そうなりますと、この裁判員制度自体が成り立たなくなってくると、こういうようなことにもなるわけでございます。  こういうようなことを考えまして、証拠調べを原則として制限をするということでございます、新たな、新たな証拠調べですね、これは原則として制限をすると、こういうことでございます。
  82. 吉田博美

    ○吉田博美君 公判を審理する裁判所が公判前整理手続を主宰することは、いわゆる起訴状一本主義に反するという見解もありますが、この点についての御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  83. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 起訴状一本主義の趣旨でございますけれども、これは、公訴提起の際の検察官から裁判所への一件記録、この提出を認めないということによって、捜査機関の心証が裁判所へ一方的に引き継がれると、それで裁判所があらかじめ事件の実態について心証を形成してその公判に臨むと、こういうことを防止しようということにあるわけでございます。  一方、その公判前整理手続におきましては、裁判所は当事者にその主張の予定を明らかにさせると、あるいは証拠調べ請求、あるいはそれに対する意見ということを明らかにさせるということになるわけでございますけれども、これはあくまでも公判の審理が計画的に円滑に進行するように準備するために行うというものでございまして、あくまでもその両当事者の主張に触れると、あるいは証拠に触れるというものでございまして、それによって心証を得ていくと、こういうような手続ではないということと、もう一つポイントは、この手続、検察官も、それから被告人弁護士も、両当事者が一緒に参加をして行ってやるということでございますので、ある一方当事者から相手の知らないところで一方的に主張をしたり証拠を持っていくと、こういう手続ではないということでございまして、こういうことを考えますと、実質的に起訴状一本主義の理念、これに反するものではないというふうに考えているところでございます。
  84. 吉田博美

    ○吉田博美君 この改正案では証拠開示制度拡充を図っておりますが、その趣旨をお聞かせいただきたいと思います。
  85. 野沢太三

    ○国務大臣(野沢太三君) 刑事裁判の充実、迅速化のためには、事件争点中心とした無駄のない充実した審理をできるだけ連続して行うことが肝要であることからいたしまして、今回の法案では、十分な争点整理を行いまして明確な審理計画を立てるための公判前整理手続を創設することとしておるわけでございます。  そして、被告人、弁護人が公判前の整理手続におきまして公判でする予定の主張を明らかにし、十分に争点整理を行うとともに、防御の準備を十分に整えることができるようにするためには、その前提として、それを可能にするだけの証拠が開示される必要があります。そこで、今回の法案では、争点整理被告人の防御の準備に十分な証拠が開示されるよう、検察官による証拠開示拡充することとしたものでございます。
  86. 吉田博美

    ○吉田博美君 この改正案による証拠開示制度は、現行の制度に比べ、どの点でどのように開示が拡充されているのでしょうか。
  87. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 現行の刑事訴訟法では、検察官は証人等の尋問を請求する場合には、その氏名及び住居を知る機会を与え、それからまた証拠書類、それから証拠物もありますけれども、この取調べを請求する場合には、これを閲覧する機会、これを与えなければならないというふうにされているわけでございます。これが基本の考え方でございます。  これに対しまして今回の法案では、まず、検察官が取調べを請求した証拠の開示の範囲を拡充しているわけでございます。すなわち、検察官は公判前の整理手続において、取調べを請求した証拠書類、それから証拠物、これを開示するほか、証人尋問、証人等の尋問を請求した場合について、現行制度のように証人等の氏名及び住居、これを知る機会を与えるというだけではなくて、その供述内容が明らかとなる供述調書等、これを開示しなければならないということにされているわけでございまして、そこで現在ともう手続一つ違うということでございます。  それから、検察官が取調べを請求した証拠以外の証拠、これに関しても、公判前整理手続の段階から、被告人、弁護人の請求によって提出をしていくという手続を設けているわけでございます。具体的には、検察官が取調べを請求した証拠の証明力、これを判断するために重要な一定類型の証拠、あるいは被告人、弁護人が明らかにした主張に関連する証拠、こういうものにつきまして、開示の必要性とそれを出すことによる弊害、これを両方を考えまして開示すべきものは開示しなければならない、こういう手続を新たに置くということでございます。  こういうような制度によりまして、その開示の必要性とそれに伴う弊害、これを比較して出すべきものは提出をいたしまして、争点整理とかあるいは被告人の防御の準備のために十分な証拠が開示されるということになるわけでございます。  先ほども若干触れましたけれども、この証拠開示をするかしないかということをめぐって検察官と被告人との間に争いが生じる場合もあるわけでございますけれども、これにつきましては裁判所が中立公正な裁定を行うと、こういう制度を設けておりまして、これによりまして、被告人側に開示されるべき証拠が開示されないと、こういうような事態を防ぐことができるというふうに考えているわけでございます。
  88. 吉田博美

    ○吉田博美君 検察官の手持ち証拠をすべて開示すべきだとの意見がありますが、この点についてはどのようなお考えでしょうか。
  89. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) この法案の作成段階、あるいは、私ども本部で検討会を設けておりますけれども、その中でも様々な御意見がございました。それ以外のところからも手持ち証拠をすべて開示すべきじゃないかと、こういうような御意見がございました。これにつきまして私どもは、その全部を請求をするということは相当ではない、しかし必要なものはなるべく拡充してお出しをすると、こういう政策を取ったわけでございます。  全面的に被告人側に検察官手持ち証拠を開示しなければならないとした場合に何が起こり得るかということでございますけれども、一つは、罪証隠滅あるいは証人を威迫するとか、そういう問題があるということと、それから関係者の名誉、プライバシーの侵害等、証拠開示に伴う弊害、これが生じるおそれがあると、そういうような証拠があるわけでございます。それから、検察官の取調べ請求証拠の証明力を判断するために重要でなくて、かつ被告人の主張とも関連しないというような証拠、その開示の必要性が認められない場合であってもこれを全部開示しなければならないということになると、膨大な証拠が出ていって、これの整理のためにかえって時間を使ってしまう、あるいは関連もないものを出すということになるわけでございまして、これはもう相当ではないというふうに考えたわけでございます。  今回の法案では、先ほどちょっと御説明いたしましたけれども、やはり開示の必要性と弊害、この両方をよく考えてやはり必要なものは出すということでございまして、争点整理やあるいは被告人の防御の準備のために十分な証拠を開示していこうという思想でございますので、その点で、この制度を利用していただければ、被告人被告人のこの事件における防御に支障がない程度の証拠は出ていくというふうに考えているところでございます。
  90. 吉田博美

    ○吉田博美君 そこで、開示証拠の目的外使用を禁止する趣旨はどこにあるんでしょうか。
  91. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) この刑事訴訟法の一部改正案の中では、目的外の、開示証拠の目的外使用、これを禁止をしているわけでございます。これは、検察官による証拠開示は、現に係属する被告の事件、これに十分にその争点整理するとともに、被告人、弁護人がその訴訟準備を十分に整えることができるようにするために行うわけでございます。  この開示証拠の例えば複製が本来の目的以外の目的で第三者に交付されるということになると、罪証隠滅のおそれあるいは証人を威迫するという場合にもつながりますけれども、場合によっては、関係者の名誉、プライバシー、これが侵害されるというような弊害が拡大されるというおそれが大きいわけでございます。  それからまた、開示証拠の目的外使用が許されるということになりますと、証拠開示をすべきかどうかの判断においても目的外使用による弊害の可能性をも考慮しなければならず、かえって証拠開示の範囲が狭くなってしまうおそれがあるということにもつながります。その事件で使われるということならば出しましょうということになりますけれども、それが他にいろいろ出回るということが前提になれば、そこはむしろ出す証拠を狭くしとかないと、そうすると、そうでないと弊害が起こってしまうということになって逆の効果になるだろう、こういうことでございます。  それから、現行法では証拠開示の取扱いに関する明確なルールを定めていないわけでございますけれども、証拠開示の複製等が暴力団関係者に流出したり、あるいは雑誌だとかインターネットで公開された、こういう事例も発生しております。現に発生をしております。  そこで、証拠開示が本来の目的のみに使用されることを担保して、証拠開示がされやすい環境を整えて、ひいては証拠開示制度の適正な運用、これを確保するというために被告人、弁護人は開示証拠の複製等を本来の目的である被告事件の準備等の目的にのみ使用すべきことを法律上明らかにするということでございます。  現在はそのルールがないのに何で決めるのかという御意見もいろいろあるわけでございますが、現在は、出る、提出される証拠が現在の範囲よりもこの改正案で行った、行う場合の方がはるかに多くの証拠が出ていくということになるわけでございまして、それだけそれが流出することによって弊害も生じやすいということになるわけでございますので、この際、そういうことになるならばきちっとしたルールを設けた方がいいということからこの規定を設けたということでございます。
  92. 吉田博美

    ○吉田博美君 審理に二日以上を要する事件については連日開廷とし、継続して審理を行うこととしていますが、その趣旨と期待される効果についてお伺いいたします。
  93. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 先ほど公判前整理手続について申し上げましたけれども、まず争点をきちっと明確にして、どういう証拠をどういう順番で調べていくかということ、これがまず肝要だというふうに申し上げましたけれども、これをじゃ公判で調べる場合も、それをあるときに少しやりまた大分先にやるというようなことになっては、これはやっぱり充実した審理ができないということにもなるわけでございます。  したがいまして、せっかく争点をきちっと絞って証拠を収集しようといった場合には、それを短期間で終わっていくということが必要になるわけで、どうしても必要不可欠になるわけでございます。特に、裁判員制度の対象事件でございますけれども、これに関しましてはやはり裁判員の方の負担を軽くするということも大きな要素になるわけでございます。そういう意味からもできる限り連日開廷をしていくと、こういうことになるわけでございます。  現在の制度でも、刑事訴訟規則において連日開廷を原則とするというような規定もあるわけでございますけれども、現在の状況ではやっぱり実効性に欠けるという指摘もございます。そこで、今回は連日的に開廷されることを確保するために、法律のレベルできちっと置いて、これをなるべく連日開廷をいたしまして継続して審理を行わなければならないということを明らかにしたわけでございます。特に裁判員制度の場合を考えますと、証言をしていただいたことについて、またそれを書面化してその書面を読んでいただくということはなかなかもう難しいわけでございますので、短期間のうちに証人等を調べまして、その記憶のあるうちに裁判をしていただくと、こういうことにしなければならないということもございまして、こういうような制度を設けたということでございます。
  94. 吉田博美

    ○吉田博美君 また、新しく即決裁判手続を創設されるとのことですが、その趣旨をお聞かせいただきたいと思います。また、どのような効果を期待されているのでしょうか。
  95. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) この即決裁判手続も今回設けることとするわけでございますけれども、この趣旨でございますけれども、争いない簡易明白な事件も中にはあるわけでございますけれども、この裁判を簡易迅速に行うことによって手続を合理化、効率化するということが中心になるわけでございますけれども、これによりまして被告人が従来の手続よりも早く裁判手続から解放されるという点がメリットとして一つ挙げられます。  それから、争いある事件あるいは裁判員制度の対象の事件、こういうような捜査、公判に人を投入すると、重点的に投入をするということによりまして、その人的な資源をより重点的に投入してやることが可能になっていくと、こういうメリットもあるということでございます。
  96. 吉田博美

    ○吉田博美君 即決裁判手続は、現行の簡易公判手続とはどう違うのでしょうか。また、簡易公判手続は余り利用されていないと風聞しておりますが、即決裁判手続の利用見込みはいかがでしょうか。
  97. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) たしか現在、簡易公判手続というのがあるわけでございます。これは、その公判において被告人が有罪であるという陳述をした場合に証拠調べの簡易化、迅速化を図るということ、これをやっているわけでございます。それに対しまして即決裁判手続は、その手続全体の迅速化、合理化を図るということになるわけでございます。  即決裁判手続では、簡易公判手続と同様に通常の手続よりも簡易な方法によって証拠調べを行うということにはしているわけでございますが、これに加えまして以下に申し上げるようないろいろな手続を設けまして合理化を図っているということでございます。  まず、即決裁判手続による場合には、検察官は、捜査の段階ですね、において被疑者の同意を得るなどいたしまして、起訴と同時に即決裁判手続の申立てをするということにしているわけでございます。したがいまして、簡易公判手続が第一回公判期日を開いて、そこからその手続になっていくのとはもうちょっと時点が前になるということでございます。それから、起訴がされた後、検察官はできる限り速やかに所定の証拠開示を行わなければならないという義務を課しております。それから、裁判所はできる限り早期に公判期日を開いた上、原則としてその日、即日判決を言い渡さなければならないということにしているわけでございます。それから、懲役又は禁錮の言渡しをする場合には、その刑の執行猶予を言い渡さなければならないということにしております。それから、判決で示されたその罪となるべき事実というのがあるわけでございますが、その誤認、それが間違っているというそういう理由で控訴をすることができないと、上訴をすることができない、こういうような規定を設けております。  このように、この手続は簡易公判手続以上に手続の合理化、効率化を図っているわけでございます。  こういうことによってかなりの利用ですかね、これが期待ができるということでございまして、罰金につきましては、現在、略式の裁判というのがあるわけでございますが、その罰金じゃない懲役、禁錮についての略式型というようなものに当たるわけでございまして、かなりの利用が見込まれるんではないかというふうに期待をしております。
  98. 吉田博美

    ○吉田博美君 時間の関係もございますので、この改正法によって公的弁護制度が整備されるわけですが、その意義必要性について大臣にお伺いいたします。
  99. 野沢太三

    ○国務大臣(野沢太三君) 被疑者弁護制度導入によりまして、被疑者段階と被告人段階等を通じた一貫した公的弁護体制を整備することがまず被疑者被告人の弁護人の援助を受ける権利を実効的に担保することになります。また充実し、かつ迅速な刑事裁判実現を可能にするという観点から重要な意義必要性があると考えております。
  100. 吉田博美

    ○吉田博美君 公的弁護制度においては、具体的にどのような場合、国選弁護人が選任されるでしょうか。
  101. 野沢太三

    ○国務大臣(野沢太三君) 新たに導入される捜査段階での国選弁護人制度における選任の要件について申し上げますと、まず一定の重大事件について被疑者に対して勾留状が発せられている場合におきまして、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選定できないときには、被疑者からの請求により裁判官は国選弁護人を付さなければならないとしております。また、一定の重大事件について被疑者に対して勾留状が発せられている場合におきまして、精神上の障害等の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者につきましては、裁判官は職権で弁護人を付することができることなどとしております。  このように、捜査段階で国選弁護人が選任されるのは一定の重大事件としておりますが、本法案施行時においては死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件としますが、施行後三年程度を経過した後には死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件に拡大することとしております。なお、いずれの場合においても被疑者に私選弁護人がある場合には国選弁護人は選任されません。
  102. 吉田博美

    ○吉田博美君 この改正法では、勾留後において国選弁護人を付けることとしていますが、逮捕段階ではなく、勾留後とした理由についてお聞かせいただきたいと思います。
  103. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) この点に関しましても、逮捕されたときから身柄が確保されるわけでございますので、そこから付ける必要があるという御意見もかなりございました。最終的に私どもは勾留段階からということにさせていただきました。これは、捜査機関の持ち時間というのが最大限七十二時間ということになっているわけでございまして、非常に短い期間でおるわけでございます。そういう中で、被疑者の請求をしてもらう、被疑者から請求をしてもらって、裁判官による審査を受けて、それから公的弁護制度の運営主体となるという予定がされております日本司法支援センターですね、ここに連絡をして、弁護人の候補の、候補者の氏名あるいは通知、その氏名等を通知してもらうということ、こういうことも全部経なければならないということでございまして、これはとてもじゃないけれども時間的に余裕がないということでございます。  それからまた、特に裁判官が選任を、弁護士を選任するに当たって事実の取調べのために被疑者裁判官の元に押送するという場合もあり得るわけでございますけれども、こうなりますと、これに短時間で対応するということが非常に困難、それからかなり広い地域でありますとこの押送の時間が物すごく掛かるわけでございますので、もう物理的には難しいと、こういう状況にございますので、私どもといたしましては勾留の段階、その段階から、勾留は原則十日間でございますので、その段階から行っていくと、こういうふうに考えたわけでございます。
  104. 吉田博美

    ○吉田博美君 検察官が不起訴処分にしても検察審査会が起訴すべきだと議決した場合には必ず起訴しなければならないとする制度導入されるとのことですが、その趣旨をお聞かせいただきたいと思います。
  105. 野沢太三

    ○国務大臣(野沢太三君) 検察審査会の議決に基づきまして公訴が提起されるものとすることによりまして、公訴権の行使に国民の感覚をより直截に反映させることができるものと考えております。また、これによりまして公訴権をゆだねられている検察官が独善に陥ることを防ぎまして、公訴権の行使をより適正なものとし、司法に対する国民理解と信頼を深めることが期待できるものと考えております。
  106. 千葉景子

    ○千葉景子君 民主党・新緑風会の千葉景子でございます。  裁判員法、そして刑事訴訟法審議をスタートいたしまして、私も何か非常に感慨深いものを感じているところでもございます。ちょうど今日は参考人の皆さんにも来ていただきまして、大変貴重な意見を伺うことができました。また、この委員会では地方へも出向いて、それぞれ地域での皆さんの本当に率直な御意見もお聞きしようと、こういうことにもなっているところでもございます。そういう中で、先般の質疑、そして今日の質疑、ようやくこの裁判員制度、そして刑事訴訟法を含めまして、ようやく何か入口に入ってきたのかなと、そういう感じがいたします。  私も、長年といいますか、やはり司法に対する市民の参加、あるいはまた国民主権というものをやっぱりもっと実質的に具体化をする、そういう制度として司法が新しい役割を果たしていくことができるのではないかということも含めて取組をし、そしてこの裁判員法の制定に向けましても私なりのかかわり方をさせていただいてきたつもりでございます。  その間で、ほぼ自分なりには分かったつもりのような気がいたしておりましたけれども、やはりこうやって広い公の場で議論を更に進め、そしていろんな皆さんの御意見をまた改めて聞かせていただきますと、これは本当に日本のこれからの社会を大きくやっぱり変えていく、あるいはこれからの時代の本当に何か、今、何か分岐点に一歩踏み入れていくのではないかなという、そんな感慨を持つところでもございます。それだけに、ここでの審議というのが、これから歴史的にもまた検証され、あのときにやっぱり日本の大きな新しい道に第一歩を踏み出したと、その際に大変貴重な、活発な議論がされたんだと、こういうことにつながったら本当にうれしいなという気がいたします。  そういう意味では、私も、是非、責任と、そしてまたこういう質疑にかかわらせていただけることをある意味では大変誇りに思いながら、是非今日も質疑をさせていただきたいというふうに思っております。  ただ、この間の質疑でも分かりますように、なかなかそれはもう、この国会での議論だけでこの裁判員制度等が本当に一〇〇%見事なものになったのだというわけにはきっといかないのだろうと、そんな気がいたします。衆議院の方でも、本当に御努力によりまして、やはり更に法案の内容、そして制度を充実をさせようということで大変御議論をいただき、修正を全会一致でまとめていただいたという経過がございます。本当にこれはその御努力と、そしてまたそれによりまして法案が、そして制度がより一層前進をする、そういう方向になったということ、私も大変うれしく思っているところでございます。  ただ、多分、おまとめになりました皆さんこぞって、ここまでみんなで議論を積み重ねたけれども、これからもまだまだ議論をしたり、あるいは検討すべきことがあるなと、きっと内心では思っておられるところも多々あるのではないかというふうに思います。先般も、大臣からも、この法案は決して施行までに、もうこれだ、これでなければもう施行できないのだということではなくして、やはり柔軟な思考を持って、やっぱりもう日に日にいろんな出てくる課題、あるいは新しく直面をする問題、そういうものを十分にまた議論をしながら、施行までであってもより良き制度にしていく、そういうことのためには、決して今のこの内容だけに固執するものではないという、そういう趣旨の大臣の御発言もあり、私もそのとおりであろうというふうに思っております。  その意味で、この参議院での審議、これを本当にもう十分に、十二分にやらせていただくということも当然でございますけれども、さらに、それで良かった、良かったと満足をすることなくして、更に議論というのは施行までも、そしてその後も続けられていくものだというふうに感じておりますので、是非そんなこともこの委員会の皆さんと一緒に胸に置いておきたいものだというふうに思っております。  さて、そんな私の感想めいたものを少し話をさせていただきましたが、実は私は従前、日本にも陪審制度というのが導入をされていたと、こういうこともあり、それから諸外国での陪審裁判ということにもいささかなりとも関心を持たせていただいておりまして、陪審を求める、あるいはそれに関心を寄せる皆さんとも従前からいろいろな議論をさせていただいてまいりました。  せっかく日本にも陪審制度があったことだし、そして陪審法というのも、なくなったわけではなくして停止状態にあると。言わば何というんでしょうね、今しばらく寝ている状況にあるということでもございまして、まあいつの日にかこの陪審法をもう一度ちょっと揺り動かして目を覚ましていただきまして、そういう陪審制度というようなものを日本にまた復活をする日が来るのではないか、あるいはそういうことができないものだろうかと、こういうことを感じていたこともございました。  ただ、やはり新しい時代、いろいろな司法に対する、そしてまた日本の民主主義に対するいろんな要請も含めて、司法制度の大きな改革ということが手掛けられるようになり、その中で日本の新しい市民参加ということで裁判員制度という形で、司法にも国民のやっぱり力を、そして国民が担っていく司法という方向が取られてまいりました。私は、この流れはもう積極的に支持をする立場ではございますけれども、先ほど言いましたように、その陪審法というのもまだ眠ったまま存在をいたしておりまして、さてさて、これはいずれ裁判員制度というのはこれから是非より良きものとして確立をしていく。しかし、じゃ一方に寝ているこの陪審法、そして陪審制度というのは一体どうなっていくのかなという率直な気持ちがいたします。  いつぞや、いつかの日にひょっとして起き上がってくるものなんだろうか。裁判員制度というのができたから、これはもうこの際永久にもう寝てしまっていただこうとした方がいいものなのか。私も別に結論が出ているわけではありませんですけれども、この裁判員制度というのが法的に確立をされると、この陪審法というものは一体今後どういうことになってしまうのでしょうか。  まだ、これは余りどうしようという議論、私たちも、そして国会などの場でも特段になされてきたということはございませんけれども、法務省などはこれについてはどんなふうに御認識をなさっているのか。あるいは、この間こういう制度が、ある意味では片方は寝ているにしても並立するような格好になっていくわけで、そんな辺りについて、何かやっぱりこれは整理をしなきゃいけないのだというふうにお考えでおられるのか、その辺、率直にどんな程度に御認識をなさっているのか、ちょっとお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  107. 樋渡利秋

    政府参考人(樋渡利秋君) 今回のこの裁判員制度は、先生御指摘されました陪審法に規定する陪審制度とは別の新たな制度であるというふうに承知しております。したがいまして、陪審法をどうするかにつきましては、裁判員制度の実施状況等も踏まえまして今後検討すべきであるというふうに考えております。
  108. 千葉景子

    ○千葉景子君 確かに、そういうもう実情であろうというふうに思っております。是非、これはまたこの裁判員制度、その行方ということとも絡みながら、また広い場面で議論がされていくものだというふうに思いますけれども、是非そういう意味では今後の推移、そしてまた幅広い議論なども私も是非参加をしながらさせていただきたいものだというふうに思います。  さて、今回の法案は衆議院で、先ほど言いましたように大変御努力をいただきまして一定の修正をいただき、より良き方向へと進められたこと、心から敬意を表する次第でございます。  そこで、衆議院の方での修正案の提案者の方に少しお聞かせをいただきたいというふうに思います。  まず、裁判員等による秘密漏示罪の懲役刑の上限が一年から六月ということにされました。また、裁判員又は補充裁判員の職にあった者による秘密漏示の刑罰が、七十九条二項各号に掲げられた場合以外は罰金刑ということになったわけでございます。  この趣旨を改めてお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  109. 佐々木秀典

    衆議院議員佐々木秀典君) 民主党の佐々木秀典でございますけれども、今日は、この修正案の提案者であります与謝野議員、それからその他の方々と御一緒に努力をしてまいりましたけれども、一応ただいまの御質問に対しては、私、佐々木の方からお答えをしたいと存じます。  御承知のように、この守秘義務、それからそれに対する違反の場合の罰則などについては、例えば国家公務員ですとかあるいは調停委員の場合の秘密漏示罪ですけれども、この罰則が懲役刑が設けられておりまして上限一年となっておるわけですね。今度の法案、原案では一年になっているというのはこれに倣ったものだというように私どもとしては認識をしておりましたけれども、しかし、御案内のように、今度の裁判員は、これは自分から進んでなるというわけではありませんで、言わば無作為に抽出された一般国民の方々が裁判員になるわけですね、自分から希望するというわけではない。しかも、法律上の義務として裁判員の職務を行っていただくと、こういうわけですから、できるだけ負担を掛けないようにした方がいいのではないかと私どもは思っていたわけです。  したがいまして、できることならば罰則はない方がいいのではないかと、特に置くとしても懲役刑というのはいかがなものか、まあ罰金刑だけでとどまらないものかというようにも思ったのですが、しかしこの論議の中で、やはりこの守秘義務に違反するというような場合も、大方の裁判員の方々というのは非常にまじめな方々で、その守るべきことも恐らく守るだろう。例えば、裁判に参加することによって知り得たいろいろな秘密、特にその個々人のプライバシーにかかわるようなこと、あるいはだれがどういう意見を言ったというようなことになると、裁判の公正ということに対する信頼も薄らぐというようなこともあるので、守秘義務があるのは仕方がないとする。そして、それに違反してべらべらべらべらしゃべるというような場合も、中には心掛けが悪くてそういう情報を対価を得て売るというか、また、どうも最近のマスコミの風潮を見ておりますと、とにかく情報を得たいと、そのためにはそういう対価を提供しても得たいというような、ある意味では逆にその誘惑に負けるという方もないではないのではないかというようなことで、どうしてもこの守秘義務違反ということについては、一定のやはりそれに対するペナルティーを科すということはやむを得ないというような話になりました。  そこで、懲役刑についても私どもとしては外せないものかと御相談をしたわけですけれども、様々なそういうような状況を考えると、今いきなりこれを外すというのはいかがなものかということにもなる。しかし、そうだとすると、やはり調停委員だとか国家公務員の場合との違いがあるわけですから、その負担を軽くするという意味からも、やはりその罰則というのはそれよりもむしろ軽くすべきだというようなことから、協議の結果、一年をこの半分の六月以下にするということの合意ができたわけであります。  それからまた、次に、懲役刑を設ける範囲でございますけれども、これは裁判の評議の秘密以外の職務上知り得た秘密については、裁判の終了の前後を問わず他人のプライバシーの重大な侵害を招くようなこれは悪質な言わば事案があり得ますから、これは裁判の終了の前後を問わず懲役刑も選択できるようにするのはやむを得ないかなと、こう考えました。  次に、評議の秘密について、裁判中の評議の秘密の漏示や、裁判終了後であっても、修正された後の法案の七十九条二項二号あるいは三号に掲げられているような評議の秘密の漏示ですけれども、これは評議における意見表明の自由や裁判の公正さ、あるいは裁判への信頼を害するという程度がこれはやっぱり大きいというために懲役刑も選択できるようにするのはやむを得ないかなと、こう考えました。  ただ、これに対して、裁判が終わって、裁判員であった人たちについても、それ以外の評議の秘密、評議の経過を漏らす行為などについてはその悪質性の程度というのがやっぱり違うのではないだろうかというようなことから、これは罰金刑にとどめてよろしいということでの合意が得られましたものですから、これを修正とすることにしたような次第でございます。  以上、お答え申し上げます。
  110. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございました。  今の御説明でも分かりますように、一定のやはりペナルティーが必要だということと、しかし、そうはいってもいわゆる職業裁判官等とは異なり、本当に無作為で選ばれ、そしてその職責を果たそうというそういう国民に対して余り過大な負担になってもあるいは制約になってもいかぬということなどを総合勘案されて、その集約点を作られたということであろうかというふうに思っております。  私も、やはり裁判員制度を本当にこれから進めていくためには、裁判員がやはり十分にこの仕事を、何というんでしょうね、積極的に気持ちよくやっぱり携わってもらうと、こういうことが必要であると思いますし、そして裁判員として経験をしたことがやはりでき得る限りやはり地域に、そして自分の身近なところにやっぱり伝えられて、そしてそれがやっぱり蓄積をされながら裁判員制度というものが充実をしていく、そして市民が一人一人新しい社会に対する責任というようなものを自覚をしていくということではないかというふうに思います。  そういう意味では、やはり余りにも裁判員の皆さんに、本当に犯罪に該当するようなことは別としても、余りにも沈黙を求めますと、この裁判員制度国民がやっぱり司法を担うという意味でのその本質がなかなか発揮されないことになるのではないかというふうに思います。  そういう意味では、刑罰を置いて抑制をしていただいたと。そういう方向になったということは私も大変大きな評価をさせていただきますが、それと同時に、今お話にもちらっとかかわりますけれども、この守秘義務の言わば中身ですね、一体どういうことを話しちゃいけないのか、どういうことならば大丈夫なのかと。こういうことがある程度明確になっていませんと、やはりこれは結果的には何か境目どの辺か分からないから全部口をつぐんでおいた方が無難だろうと、こういうことになってしまうのではないかと。それから、刑罰をやっぱり科すということになりますので、罪刑法定主義ではありませんけれども、その要件がやっぱり明確になっているということが必要なのではないだろうかというふうに思っております。  その基準ということになるんですけれども、修正によりまして、漏らしてはならない秘密の内容としては、職務上知り得た秘密と。これは言わば他人のプライバシーの保護というようなことにもかかわりますので、一定理解ができるところでもあろうかというふうに思います。  また、評議の秘密と。これが私も非常に何か漠然としているという感じがいたします。ただ、その中身につきまして一定の要件が明確化されまして、例えばそれぞれの裁判官若しくは裁判員意見と。これは、個々の意見はやっぱり余り開陳をしてしまうとその後の自由な意見表明ということのやっぱり担保を弱めるということにもなろうかというふうに思いますので、こういう基準もやっぱり作っておくことは大事だというふうに思います。  また、意見の多少の数。これも一定、やっぱり最終的な裁判の構成というようなことを考えたときには、こういう要件も非常に分かるところだというふうに思います。  そうすると、それ以外、一体あと、あとは全部評議の秘密に、評議の経過等々は全部もう評議の秘密ということになってしまうんだろうかと。こういう私はちょっと心配をするわけでして、例えばこういうことを言うとどうかなというふうに思いますが、評議をする過程ではいろんなことが出てくると思うんですね。  裁判員にとっては、裁判官御出身の政府関係者の方いらしたら申し訳ないと思うんですが、いや、あの裁判官の評議の進め方は非常に何か整理が付かなくてよく分からなかったとか、あるいは裁判官の方がもうしゃべるばっかりで、ちっとも、裁判員の方は何か口を挟むなかなか余地がなかったとか、いろんなそういう経過の中で意見とか感想も持つだろうというふうに思ったりもいたします。あるいは、審議の仕方についても、最初から何か有罪のような何か印象を与えるようなやり方だったとか、そんないろんなことがあると思います。  これはケース、ケースですから、どんなことが生じてくるかも分かりませんけれども、そういう意味では、衆議院の方で付けていただいた要件、これは十分にこれが一つの歯止めになるということが分かりますけれども、やはりそれ以外はもうすべて口をつぐんでおくんだということになりませんように、この適用等に当たってはやっぱり十分に考えていただきたいというふうに思っております。  そういう意味では、その際に、やっぱりこの守秘義務ということが設けられる趣旨というのは、一つは、申し上げましたような他人のプライバシーと、こういうものをやたらに暴露をしてはいけないと、あるいは裁判の公正、裁判の信頼、こういうものを損なうようなことはやっぱり問題だと、それから評議においてそれぞれが後からどこからか文句を言われたり非難されたりするようなことがないように自由に意見表明ができるということを保障するというようなことがやっぱり趣旨だろうと思います。  これは、既に衆議院の委員会でも立法趣旨としてこういうことだということがはっきりされているわけですので、やはりこの秘密の、守秘義務の範囲、そして、それに対してやっぱり罰則が科せられるわけですので、この解釈等に当たっては、運用に当たっては、やっぱりこの趣旨を十分に認識をしていただいて、そして、ただみんなもうあとは全部口をつぐんで、一生何もしゃべらないでおくんだというようなことになりませんように、是非その認識と、そして今後の運用等に当たっていくべきだと思いますけれども、その点について、これから運用に当たる、あるいはこれを具体化していく政府側としてはどのように考えておられるでしょうか。
  111. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 評議の経過が一番問題になるだろうと思いますけれども、一般論でございますけれども、その評議がどのような進行過程を経て結論に至ったかという、その筋道をいうわけでございまして、その評議において議題にされた事項の内容、あるいはその評議の審理審議過程、これが当たるということになるわけでございます。  ただいま委員の方から幾つかその具体的な事例等が言われたわけでございますけれども、ちょっと個々の問題について申し上げることはなかなか難しいんでございますから一般論で申し上げますけれども、そういうような発言がその評議の審理過程に触れるものであるという場合には、確かにその評議の経過に該当するということはあり得ますので、そこに該当するような発言かどうかという点がポイントになるわけでございます。  その点に関しまして、ただいま御指摘のように、これが設けられたいろんな趣旨等、こういう点もよく勘案して、例えば一般論で言えば、検察官が公訴を提起するという場合に起訴猶予にするかそうじゃないかという判断とか、仮に不幸にして裁判になっちゃったというような場合でも、裁判官はそこをどういうふうに考えていくかというような場面においても、その秘密漏示罪の保護法益ですね、これがどういうものであるかということを踏まえまして、その情状の程度の判断がされるということになっていくだろうというふうに考えているところでございます。
  112. 千葉景子

    ○千葉景子君 是非、これはこの裁判員制度のやっぱり根幹にかかわるということであろうというふうに思います。是非、裁判員となった市民が本当にそれを、またこれから社会にその経験を還元をして、それが積み重なり、より良き社会の一員としてまた活躍できるような、そういう辺りを是非認識をしながら、今後の運用等がなされることを期待をさせていただきたいというふうに思っております。  さて、裁判員が今申し上げましたように本当に司法を担う担い手ということでこの裁判にかかわるということになるためには、やっぱり裁判官裁判をやる、ちょっとその横に裁判員が飾り物のようにいるということになっては全く意味がないわけでございます。やはり、裁判員が主体的、実質的に裁判にかかわる、かかわることができる、そういう構造を持たなければならないというふうに思っております。  それは、私は二面あると思うんですけれども、一つは、やはりそのためには、まず公判手続の方ですね、この公判手続がやはり分かりやすく、そして公判を通じて本当に自らが、その公判で展開をされる主張や、あるいは証拠の開示、証拠などによってやっぱり自分で本当に実質的な意見形成を行っていくということができないと、飾り物になってしまうということになるかと思います。  これについても、これまでも大分議論がなされてまいりました。でき得るだけやはり公判を通じて直接的にそこで主張をされる、そして展開をされる、証拠等を中心にしてやはり意思が形成されるような形にしなければいけないと。そういう意味では、これまでのような、どちらかというと調書中心とした裁判から、やっぱり公判での直接的なシステムに転換をしていくということが大事だろうというふうに思っております。これは、今回の法案、そして刑事訴訟法等でも、一定のやはりそれに対する担保措置というものができてきたかというふうに思っております。  ただ、そうはいっても、やはり調書とかそれ以前の捜査段階でのいろいろな取調べの状況等々をやっぱりまた振り返って検証しなければいけないという場面も当然それは残されるわけでございまして、そうなりますと、やっぱりそこも含めて十分に分かりやすい、そして裁判員にとってもやっぱりすぐにそれを見ることによって、あるいはそれを検証することによって意思形成ができるということがなければならないというふうに思います。  何しろ裁判員というのは無作為に抽出をされて、一回、そして一定の限られた時間でやっぱり判断をするということになるわけですので、家に帰って、宿題を持って帰るようなそういうことはできないわけですね。そういう意味で、これも常々言われておりますように、捜査過程をできるだけ透明にするということがやはり求められてくるのではないかというふうに思います。  この委員会で私は一つの先鞭を着けさせていただいたというふうに思っておりますのは、裁判の迅速化を図ろうという法案につきまして審議をさせていただき、そしてそのときに、この委員会の決議として、やはり迅速、そしてかつ充実な裁判を進めるためには、捜査過程、取調べについて可視化、録音とか録画とかそういうやっぱりできるだけ後からすぐに検証できる、そういうことをやっぱり検討すべきだということを初めてこの委員会での決議として挙げさせていただいたことを改めて思い起こします。  そういうことを考えますときには、裁判員制度というのが更に加わることによりまして、この可視化ということについては今後本当に積極的に取り組んでいかなければいけない。私たちも決議をした責任者でもありますので、こちらも積極的にやはり議論を進めていく必要があるだろうというふうに思っております。  これについては、裁判員制度だから可視化だけというわけではないんだという御答弁、御説明をこの間もいただいてまいりました。それも十分に承知をしております。決して裁判員制度導入するというだけではなくしても、やっぱり捜査過程の透明化、そして迅速で充実な裁判ということの本当に根幹になるということでもあり、それは十分承知をいたしておりますが、裁判員制度ということになりますと、やっぱりこの可視化というのは、捜査全体を見直したり、刑事司法の在り方を見直す大きなやっぱり柱になるのではないかというふうに思っております。  その点についての御認識を改めてお聞かせをいただきたいと思います。
  113. 樋渡利秋

    政府参考人(樋渡利秋君) 委員御指摘のように、裁判員制度導入に伴いまして、裁判員に分かりやすく迅速な審理が行われるようにすることは極めて重要であるというふうに考えております。  しかしながら、取調べ状況の録音、録画等につきましては、司法制度改革審議会意見におきましても、刑事手続全体における被疑者の取調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であること等の理由から将来的な検討課題とされているところでございまして、慎重な検討が必要であると考えているところでございます。  なお、最高裁判所、日本弁護士連合会及び法務省・最高検察庁は、本年の三月、裁判員制度導入等を踏まえまして検討を要する刑事手続の在り方等に関し協議、検討を行うために、刑事手続の在り方等に関する協議会を設けたところでございます。この協議会におきましては、取調べ状況の録音、録画等の問題についても協議、検討することとされておりまして、法務省といたしましては、同協議会における議論も踏まえ、刑事手続の在り方全体の中で多角的な見地から検討することが必要であると考えております。  今後とも慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  114. 千葉景子

    ○千葉景子君 余り慎重、慎重と強調なさらなくても結構かと思います。全体を総合的に、そういう意味で慎重にというか、これだけが突出するわけではないという御趣旨であろうというふうに思いますけれども、是非そういう全体の検討の中で、やはりこれも大変重要なポイントだと、柱だという認識を是非お持ちをいただき、遠慮をすることなく、むしろ、結論はそれはそんな明日出せということではありません。むしろ積極的なやっぱりむしろ議論をやっていくんだという姿勢でやはりこの問題を見ていただきたいというふうに思っております。  裁判員が主体的にやっぱり参加をするため、その公判手続の問題、それからもう一つは評議ですね。この評議においても、やはり裁判官だけがリードして裁判官意見だけがやっぱり中心になるということではなくして、でき得る限りというか、参加した裁判員がやはりむしろ主体的に中心となって、意見がどんどん活発に展開をされてまとまっていくものだということが大事だろうというふうに思っております。  そこで、今日ちょうど参考人四宮参考人でございましたかね、やはり実質的に裁判員の参加をやっぱり担保するためには、この評議についても一定の指針というのでしょうか、ルールというようなものをやっぱり考えておく必要があるのではないかという御意見がありました。私も本当にもっともなことだというふうに思っているところでもございます。  これはなかなか、それぞれの裁判体、それから裁判事件等によって構成されて評議が行われるわけですので、なかなかしゃくし定規なルールということは難しいのかなというふうには思います。ただ、やはりこの裁判員制度導入をされる趣旨から考えますときにはやはり認識として、あるいは精神条項みたいになってしまうのかも分かりませんけれども、やっぱり幾つか考えておく必要があるのではないかというふうに思います。  それは、裁判官が三人ということになりました。そういう意味では、その三人がああだらこうだら、もう何かそこでがあがあ裁判官ばっかりがしゃべっているというようなことになっても困る。やっぱり裁判官が、三人の中でもやっぱり調整をきちっとして全体をまとめていく役、あるいは何かのときに皆さんの意見をきちっと整理をしていつでもまた、さっきどういう議論だったっけというときにぱっと、いやいやこういうことでしたというようなことをやっぱりサポートするような役回りといいますか、あるいはいろんな意見が出やすいように、やっぱりこういう考え方もあるよというようなことで、いろんな意見を出しやすく促していく役割とか、いずれにしても、これから裁判官三人の中でのいろんなそういう役割なんぞも裁判体としては念頭にだんだん置かれるようになっていくのかなというふうに思いますし、あるいは裁判員ができるだけ先に発言できるように、裁判官だけがもうこう思うこう思うと言って進んじゃうんじゃないような、裁判員にできるだけ意見表明の機会を促すということ、あるいは多数決制ではありますけれども、基本的にはやっぱり全会一致でみんなが納得できるそういう答えを出していくようなやっぱりそういうルール、こういうようなことを含めてやっぱりこの評議の在り方というのも大変重要ではないかというふうに思っております。  先ほど申し上げましたように、まあしゃくし定規なルールというわけにはいかないかもしれませんけれども、今幾つか申し上げましたような点などをやっぱり念頭にあるいは踏まえた今後の評議ということが考えられようかというふうに思いますけれども、その辺りについては、これはどうでしょうか、これから運用に当たっていくのは裁判所ということになるのでしょうか。考え方あるいは今後の方向性みたいなものがもし既におありであればお聞かせをいただきたいと思います。
  115. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 現在固まった案があるというわけではありません。  ただ、委員御指摘のように、評議は裁判体を構成する者が全員が意見を交換して、できるだけ評議を尽くして意見を一致するようにしていくというのが望ましい評議であろうと思います。それでも意見が一致しなかったときには多数決というようなことが法律で決められているわけですけれども、理想とすれば意見が一致するように努力していくということだろうと思います。  そのために評議を尽くすということは裁判官として当然でありますし、これまでも三人の合議体でやっているときには、できるだけ若い人から意見を言ってもらうということをしておりましたし、その意見をどうやってくみ上げていくかというのはやっぱり裁判長の訴訟運営といいますか、一つの合議の運営の、を主として重要な役割を果たしていたわけです。これからも恐らく同じことになるだろうと思いまして、裁判員の方々にやっぱり忌憚のない意見を出していただく、裁判官とともに、そこの中で意見を交換して一つ意見形成ができればいいというふうに思っております。  そのために法律の方も、今度の法案では六十六条の五項で、裁判長がそういう裁判員発言する機会を十分設けるなど裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならないというふうにされております。  裁判所といたしましても、こういった規定の趣旨を十分認識しながら、十分な意見交換ができるように、裁判員の方々が来ていただいて意見を述べられたという気持ちを持っていただけるような評議を運営していけるように努力してまいりたいというふうに思っております。
  116. 千葉景子

    ○千葉景子君 さて、この裁判員制度、それから刑事訴訟法の改正ということがやはり我が国の刑事訴訟手続の本当に大きな大変革ということになろうかというふうに思うんですけれども、これも今日、参考人質疑の中でも出てまいりましたが、これが被疑者とか被告人の言わば権利、防御権などを、何というんでしょうね、阻害するあるいはそれを後退をさせるものではないかというような論がないわけではありません。私は決してそんなことはないのだというふうに考えておりますし、それから今日、参考人の皆さんもそれぞれ、決してそういうものではないと、むしろ被疑者被告人権利、こういうものをむしろ充実をしていく方向にあるものなんだという御意見が開陳をされ、大変私も納得をさせていただいたところですが、この取りまとめに当たった政府としても、これが被疑者被告人の防御権などを侵害をしたり後退をさせるというものではないこと、それは当然ないものとしてまとめてこられたというふうに思いますけれども、その点、改めてちょっと分かりやすくといいましょうか、御説明をいただければというふうに思います。
  117. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) ただいま委員御指摘のとおり、裁判員制度導入したからといって、被告人の防御権、これが損なわれるようなことになるということは厳に避けるべきであるということからその法案を考えてきたということでございます。  例えば、一例を申し上げますと、この制度に伴いまして公判前整理手続、これはその裁判員裁判の対象の事件につきましては必ず行うということにするわけでございますけれども、この中で、従来に増して、必要な証拠については法廷になるべく出て、その被告人の防御等に、それから防御等に役に立つように、あるいはその準備が十分できるようにという配慮からその証拠を、証拠開示拡充をしていくと、こういう制度を設けているわけでございまして、そういう意味では、従来の手続より手厚い手続もちゃんと中に設けて、被告人の防御権に影響がないようにという配慮もしているということで御理解を賜りたいというふうに思います。
  118. 千葉景子

    ○千葉景子君 そういう配慮がなされているということでもあり、それから基本的に裁判員制度、そして刑訴の大きな変革、それ自体がむしろ積極的な意味被疑者被告人権利、防御をむしろ拡大といいますかね、むしろ強めていくものだと、私はそちらの面も大事なんだろうというふうに思っております。これは確認をさせていただきました。  さて、提案者、修正案の提案者の方にまたお尋ねさせていただきますが、附則の三条で「環境の整備」ということが盛り込まれました。これは、これも今日、参考人等からも、やっぱり本当に気持ち良くといいましょうかね、やっぱりやった、裁判員になれたことが非常に自分にとっても満足のいくことだったんだと、こういうふうになるように、まあ、今は皆さんに聞くと、なるべく裁判員には抽せんでも当たらない方がいいなというのが今は率直なやっぱり国民の意識ではないかというふうに思うんですけれども、やっぱりそうではないんだと、むしろこうやって皆さんの本当に市民の力が裁判にとっても必要なんですと、むしろそういう本当にアピールをしていくということが大事なんだということも参考人からも御発言がありました。  そういう意味で、そういう環境整備をしていくというのは私は本当に極めてこれ大事であろうと、附則であってもこれが皆さんの合意で付けられたということにはやっぱり大きな意味があると思いますが、具体的にはどういうことを皆さん、修正案の提案者の皆さんが考えながらこういう条項が盛り込まれたのでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  119. 佐々木秀典

    衆議院議員佐々木秀典君) お答えをいたします。  要するに、国民の皆さんに裁判員になっていただけるようにお願いをするわけですね。裁判員の皆さんとしても決して自分から進んでということではないと思うだけに、できるだけ気持ち良く裁判員のお務めをしていただけるような環境を整える必要があるだろうと思っておりまして、負担も、それからまたいろいろな生活への影響が出てくるのは当然だと思います。  議論の中では、例えばお子さんを抱えている御婦人の場合だとか、あるいは介護を要する方、あるいは介護者を抱える方、こういう方々でも裁判員になっていただくためには、そういう方々に対する手当てというか設備を設けることも含めて考える必要があるのではないか。あるいは、お勤めをしている方々については、そのお勤めの中から裁判員の方にお仕事をしてもらうわけですから、そのときにはやはり雇主さんの御理解や御協力も必要だろうし、あるいは有休扱いにしていただくようなことで、その雇用上の身分関係に支障を与えるようなことであってはならないというふうなことを含めて、要は裁判員として参加しやすい環境を整える必要があるだろうと。  そういうような思いからこの附則を修正として付けさせていただいたということでございますので、なお、こういうことについてはということは、まだこれから検討の期間が置かれるわけですから、その中でも私は十分に今度の質疑を踏まえて具体的にやはり措置を講じられるべきだと、こんなふうに思っております。
  120. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございます。  今ございましたように、修正案の提案者の皆さんもこの条項の中に本当にそれぞれ思いを込めて、なかなか具体的には言葉にはなっておりませんけれども、そういう幾つか今挙げられたようなことを含めて環境の整備に努めていくということがこの中からにじみ出てくるものだろうというふうに思います。そういう意味では、議論をする私たちの立場も、そしてこれをこれから更に充実をさせて施行までに持っていく政府側としても、この趣旨をやっぱり生かした整備、制度の整備、いろいろな措置を積極的に講じていただくことを、これも期待をしておきたいというふうに思います。  それとかかわりまして、これも参考人からも御指摘いただいて、今日はもう参考人の御指摘を何か私は全部丸取りしているようなところもあるんですけれども、いわゆるやっぱり裁判員というのができるだけ偏りなく幅広い市民の常識を入れようというわけですので、いろんな偏りのないやっぱり選任がなされるというのがいい、私はいいんだろうと思います。無作為で抽出するというのはそれの大きな基本になる。  ただ、なかなか難しいのは、やはり今、司法だけではなくして社会のあらゆる場面で言われておりますけれども、やはりジェンダーの視点、こういうものをやっぱり忘れてはならないだろうというふうに思っております。  なかなかこの裁判員の選任について性の隔たりがないようにするというのは、これは難しいことです。性別に抽出をするというわけにはまいりませんし、そういう意味ではできるだけ人数の幅が大きければその中に性別が混在してくることがよりやりやすくなるのかなとは思いますけれども、なかなか性の偏りがないようにするというのは、制度的には難しいところはあるというふうには思っております。  世界のいろいろな市民参加の制度の中には、いわゆるクオータのように何割はいなきゃいけないという、片方の性に偏ってはいけないというような、そういう制度を取り入れているところもあるようですけれども、そう簡単ではないということは十分に承知をいたしております。それだけに、ほかの要素で女性の方が非常に選ばれにくい、あるいは選ばれてもどうしてもその裁判にかかわりにくい、そういう環境に置かれたり、あるいはそういう条件に置かれたりすることをまずは除去をしていくということが大事なんだろうというふうに思います。  今、修正の中で、環境整備ということの中で、やっぱり育児とか介護とか、そういう問題などにもできるだけ配慮をするような思いが込められているということがございました。そういう意味で、その辺りのやはり性に偏りがないことの言わば前提ですね、環境整備という意味で、その辺り、やはり託児所の問題とか様々あるかというふうに思いますけれども、その辺りについては、今後、積極的に施行までの間にいろんな条件を整えていこうという御覚悟はあるのでしょうか。その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  121. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 先ほど、衆議院における議員修正によりまして環境の整備、努力義務が入れられたわけでございます。私どもも、これを踏まえましてその対応をしてまいりたいというふうに考えております。  この点につきましては、育児、介護だけではなくて、例えば障害者の方の問題だとか、あるいは中小零細企業の方をどうするかとか、今まで様々な議論がございました。こういうものにつきまして、今後、法律が成立をさせていただいた後、その施行までの間にいろんな形で広報あるいは周知徹底を図っていくわけでございますが、その中で、様々な御意見ですね、また出てくるだろうと、それも期待をしているわけでございまして、そういう中で、可能なものについてはできる限り取り入れて、取り入れた形でやっていくということが必要かというふうに思っております。  ただ、現在の段階で、どういうジャンルについてどういう程度可能かというのは、まだそこまでは思いが至っておりませんけれども、今後、その辺のところを念頭に置きながら施行に向けて準備をしてまいりたいというふうに考えております。
  122. 千葉景子

    ○千葉景子君 是非そうしていただきたいと思いますが、今私が指摘をさせていただいておりますのは、そういう中でやはり、ジェンダーバイアスがやはり掛かってしまうようなことになりませんような、できるだけジェンダーバランスが取れる、そのためのやっぱり基礎作りといいますか環境整備と、こういうところは常に念頭に置いていただきたいというふうに思います。  先ほど言ったように、やっぱり数の上でこっちだけ選ぶ、こっちだけ選ぶということはなかなかできないわけですので、少なくとも基盤としては、どちらの性にあっても気持ちよくといいますか、障害なく、裁判員に選ばれたら断ることもなく、積極的に参加ができるんだというやっぱり環境を整備をしておいていただくことがまず大前提であろうというふうに思いますので、しっかりと意識をしておいていただきたいと思います。  必ずしも、女性、性がバランスが取れるとは必ずしも限りません。そういう中で、やはりこれから裁判員が参加をする、そういう裁判ということも併せて、裁判所におけるあるいは裁判官に対するやっぱりジェンダー教育、これがやっぱり大事だろうというふうに思います。やっぱり議論整理をしていく、裁判員にいろんな、何というんでしょうね、情報をきちっと提供しながら合意を形成していくというようなときに、やっぱりその取りまとめといいますか、合意形成の議長役を務めるやっぱり裁判官自体がやっぱりジェンダーに対する偏見のようなものがありますと、これはやっぱり問題あるわけでして、まずは裁判所裁判官におけるジェンダー教育、こういうことがより一層求められてくるのではないかというふうに思います。  その点、現状と、そしてこういう裁判員制度などを展望しながらの考え方、お示しをいただきたいというふうに思います。
  123. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 裁判官社会におきますジェンダーバイアスについて十分な認識を持って執務に当たらなければならないということは大変重要なことであるというふうに私どもも考えております。  そのためには、まず裁判官の場合は自己研さんというのが一番最初にあるわけですけれども、それ以外にも研修という形で裁判所ではいろいろなそういう自己啓発の機会を、きっかけを設けるようにしております。  具体的に申し上げますと、司法研修所におけるこれまでの各種の研修で、研究会等でジェンダーバイアスの問題も取り上げております。また、それ以外にも少年事件、家事事件の問題研究のように女性の権利保護あるいは福祉に関する具体的問題を含んだカリキュラムを行ったりしておりますし、またDV関係法律関係で、そういった問題に関する男女の問題、さらには男女共同参画社会の在り方等の問題について研修をこれまでも行ってきております。  これからも裁判員制度の中でどのようなジェンダー教育が必要かというようなことを含めまして検討していきたいというふうに思っております。
  124. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 修正者の皆さん、お疲れさまでございました。  今日は刑事訴訟法の一部改正の法案につきまして時間をいただいて質疑をしたいと思っております。  今回のこの刑訴法の一部改正、一つは、刑事裁判の充実、迅速化を図るために新たに公判前整理手続のこの制度を創設しておりますし、証拠開示についても拡充ルールの明確化もしていただき、また新たな裁判仕組みとして即決裁判手続が設けられたり、またその一方で、被疑者の人権ということでこの被疑者に対する公的弁護人制度導入もなされ、なおかつ検察審査会についても今回ある意味ではこれを審査を充実、更に法的拘束力の付与をなすような様々な改善がなされており、是非これはこの一連の司法制度改革の中で果たしていかなければならない一つ一つのことだと私どもも思っておりますので、この法律成立をし、きちんとした形でできるようにと、こう思っておるわけでございまして、その中で幾つか疑問の点もございますので、お伺いもしながら質疑をいたしたいと思っておるんですけれども、一点目は証拠開示の点でございますが、先ほどから話があっておりますように、証拠開示の今回は拡充を図るというふうになっておりますが、その開示をするに当たって、法案を読ませていただきますと、開示することの必要性の程度並びに開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮しなければならないというふうに規定をされているわけでございます。  ただ、その文言だけ読むと、一体じゃ開示によって生じるおそれのある弊害というものが具体的にどういうことを想定しているのかというのがこの条文を読むだけじゃ分かりませんし、拡充したといっても、じゃこういうものが大きく規定されてしまえばその関係の中で疑問が生じてくるわけであって、しかも、この弊害という言葉でございますが、これは検察官にとっての弊害というような趣旨で書かれているのかどうか、この点につきましても併せて御答弁をお願いしたいと思います。
  125. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) まず、どういう弊害があるかということをちょっと三つぐらいの典型例で御説明を申し上げます。これによりまして、検察の都合だけだと、弊害だということではないということもお分かりをいただけるというふうに思います。  まず、被告人に不利益な供述をしている証人予定者、これに対しましてその被告人関係者等が脅迫、買収等の手段によってその被告人に有利な証言をするように働き掛けるというような、いわゆる罪証隠滅とかあるいは証人威迫、こういうような態様があり得るというのが一つの弊害の典型例でございます。  それから、例えば会社ぐるみの犯罪におきまして、検察官の立証に必要ではないんですけれども捜査の端緒となったという、そういう内部告発者、こういう人の供述調書が明らかになることによって、その内部告発者に対していろんな嫌がらせ、あるいは場合によっては解雇というような報復が行われるおそれもある、こういう弊害もあり得るということでございます。  それから、三つ目でございます。これもかなり重大な問題でございますけれども、被害者等の私生活にわたる事項が記載された日記、手帳等、こういう証拠物あるいは供述調書の内容が第三者に明らかになるということによって、名誉あるいはプライバシー、この侵害が生ずるおそれがあるというような弊害ということがございます。したがいまして、裁判に影響のあるもの、それからそれを告発した方に迷惑が掛かるようなもの、それからあるいは事件関係者、そういう方の名誉とかプライバシーに影響があるもの、様々な弊害があるわけでございまして、こういうことを総合してその証拠を開示すべきかどうかを考えると、こういうことでございます。
  126. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そういった、正にそれはおっしゃるように弊害があるという内容だと思いますが、その弊害の内容を含めて今言ったような問題点があると。これはちょっと、法律に基づく弊害もある程度あるので考慮した上でということを検察側から結局これ、こういうものがありますよということで開示はできないということになるわけですよね、その問題は。ただ弁護側から、今度は逆にそれは弊害という問題と違うんじゃないですかという問題がもし出てくるような接点があった場合は、これは先ほどおっしゃっていましたが、最終判断裁判官がということですか、そのところを解説しておいてください。
  127. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 確かに、この弊害があるか、それからこの証拠を出す必要があるか、この辺のところはやっぱり両当事者で食い違う可能性は当然ございます。したがいまして、検察官の方が弊害があると判断をしても弁護人側としてはそれほどの弊害はないじゃないかという、あるいはそれから、これがどうしても必要なんだという主張が出てくる可能性は当然ございます。ここで最終的に決着が付かないということになれば、これはもう最終的には裁判所が裁定をいたしまして出すべきものは出しなさいと、こういう形になります。
  128. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、この証拠開示の面で、この開示証拠の目的外使用を禁止するというのが基本に今回なっていると。これは、先ほども御説明いただきましたように、今後は出される証拠というもの、これまでよりも膨大な量になる。ある意味じゃいろんな様々なものがあるという御指摘もいただきました。  ただ、これをもし禁止ということになってくると、特に弁護士の方々から御指摘があるんですけれども、例えば共犯事件において各共犯者の弁護人が集まってそれぞれの弁護人が検察官から開示された証拠を見せ合って検討することができなくなるのではないかというような指摘も、これ弁護士の方からもお聞きしましたし、また例えば弁護士が、無罪が起きた場合、無罪の事例集のような資料を作ったり、無罪事例の執務の参考にすることができないというような指摘も、これ弁護士の方からお伺いをしているんですけれども、このような指摘というのは当たっているのかどうか、またどういう場合に使用を認められるのか、併せてこの点を御説明いただいておきたいと思います。
  129. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) この開示された証拠の基本的な考え方でございますけれども、やはりこれは現に係属している被告事件、これに争点整理をすると。これに十分なものを出していきましょうということでございます。したがいまして、基本は被告事件、それから、あるいはこれに密接不可分の再審請求の事件とか、そういうような非常上告という手続もございますけれども、そういうものに基本的には限るということでございます。  ただいま御指摘の点で、まず共犯者の関係の点が指摘されましたけれども、その各共犯者の弁護人が開示された証拠を見せ合うということにつきましては、弁護士が自らに開示された証拠のコピーを他の共犯者の弁護人に示すという場合であっても、例えば開示の証拠に関係する事実についての共犯者の認識、これを調査するという目的で行うというような場合には、結局自ら担当する被告事件、その審理の準備のために必要であるということになるわけでございますので、こういう場合には当然のことながらそれを禁じているわけではないということになるわけでございます。  これに対しまして、当該被告事件審理の準備のためとは言えないような場合、これについては使用が制限がされるということになるわけでございまして、ただその場合でありましても、開示された証拠の複製、コピー、これをそのものを示すのではなくて、その証拠の概要を伝えるということについては何ら制限をしているものではないということでございます。  先ほどちょっと御指摘がございましたけれども、無罪の事例集でございますが、こういうような場合には、これで執務資料を作成して出版するということですね。これが使用が許される場合に該当するものではないのですけれども、この場合は、ただ、あくまで開示証拠のコピーをそのまま引用するということではなくて、その概要を伝えると、それを概要を記載するということ、これによって目的も達せられるわけでございまして、このことについては禁止をしていないと、こういう考え方になるわけでございます。
  130. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 次は即決裁判の点、これも先ほど御説明がありました。これを導入する理由、それからこれまでの簡易裁判と違ってこの制度であれば利用もされるだろうというような御答弁がございました。大体どんな裁判の流れになるのかというようなイメージの図もいただいてはおるんですけれども、もちろんこれによって裁判の迅速化、効率化図るという意味では、極めて一つの新しい形として重要な制度導入だと私も思っておりますが、イメージ的に見ると、これは一体、流れからいうとどうなって、例えば、これ裁判開かれれば五分ぐらいで終わるんですかね。まず、イメージ的に、こう、どう、その日のうちに即決になるわけですね、判決そのものは。冒頭で冒頭陳述やって、即決裁判手続も決定して、簡易、簡易公判手続と同じようにやる、で、結審でしょう、で、判決ですから、まずちょっと国民の皆さんに分かるように、こんななるんですよということができれば御説明いただいておきたいんです。
  131. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 基本的には公判になりますと簡易公判手続とかなり類似したところもあります。簡易公判手続の場合は、最初起訴状を朗読して、それから冒頭陳述をやります。後は証拠調べは、争っていないということを前提になるべく簡易に行っていくと。場合によっては、朗読もほんの一部を要旨を言ってあとは省略するとか、こういうような形でやられることになります。で、争っておりませんので、それでそこの犯罪事実についての証明はあるということになるわけでございます。そうすると、あと情状が必要になってくるということでございますが、そういう場合は、多分大体そのことを見越して情状証人の方を同行されていることが多いと思いますけれども、その証人の方を調べて、直ちにそこで最終的に論告求刑が行われて、若干時間空け、一遍裁判官は休廷するかもしれませんけれども、頭を整理してそこで速やかに判決をすると、こういうようなイメージになるんだろうというふうに考えています。(「弁論」と呼ぶ者あり)
  132. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ちょっと横から声がある弁論については、弁論はあるんですかね。
  133. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 済みません。論告求刑、弁論でございますね。落としました、大変失礼いたしました。
  134. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 あと、ちょっと幾つか、この即決裁判手続審理した場合は、これも先ほど御説明いただきましたが、特に懲役刑、禁錮刑を言い渡す場合には、これは執行猶予付きの判決しか言い渡せないというふうに決めてあるわけですね。これはなぜかという理由を説明してください。
  135. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 結局は、この手続は争いない簡易明白な事件について迅速に行うということで、証拠調べ等も簡易に行っていくわけでございます。そういうような中で行う手続であるという性格を、性質を考えますと、それで実刑までを、その判決を科すというのはいかがなものかと、こういう考えでございます。本当に実刑を科すというようなものであれば、きちっとした手続で、簡易じゃなくてきちっとした手続でその上でやるべきだと、こういう考え方によるものでございます。
  136. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、即決裁判手続においてされた判決に対しては事実誤認を理由として上訴することができないというようになっておるわけでございます。これも従来の裁判仕組みでいけば、我が国の刑事訴訟というのはこれ三審制を一応採用していると。その中で、被告人との権利の問題なんですけれども、新たな裁判であり、即決、しかもこの場合は被疑者に異議がないということから始まっていると。いろんな理由があるにしても、一応原則は三審制。ただ、新たなこの制度を作るときは上訴ができないというふうなことになっておるわけであって、その場合、いわゆる被告人との権利関係の上でこういうふうな仕組みでどうなんだという疑義も起こってくるんではないかと思うんですけれども、ともかくこのように上訴できないというふうにした理由についてもこれ伺っておきたいと思うんです。
  137. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 端的に言えば、上訴ができるんだという前提になりますと、やはり上訴に備えて即決裁判手続審理段階から犯罪事実の認定のためにきちっとした証拠を必要以上に出していかなきゃならないということでございます。即決裁判手続は争っていないということから、もちろん犯罪の証明のために必要なものは出しますけれども、それほど手厚く出すというよりも最小限必要なもので賄っていくわけでございますけれども、もしこれ上訴できるんだということになれば、それ十分なものを出していかなきゃいけないということになりまして、簡易かどうかという問題にもなってくるわけでございます。  それと、この裁判手続においては必ず弁護人を付けるということで、必ず助言を得られるという機会がございます。  それから、この手続によって判決が言い渡されるまではいつでも有罪の陳述とかあるいはこの手続の同意、これを撤回することができるわけでございまして、本当にぎりぎりのところまで、あっ、この手続ではまずいという場合には元へ戻っていただくことができるわけでございますので、そういうことをしないで判決を受けたという方、そういう方についてはその上訴は認めないと。これは、ある意味では自ら選んだ道ということで、私どもはこれは当然であるということを考えているわけでございます。
  138. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そしてその際、この場合は結局、上訴できないときというのは結局、正確に言うと、罪となるべき事実誤認を理由とする控訴は不可ということになるわけですよね。  そうすると、例えばそんなことはあるのかどうか分かりませんが、例えば、手続していろんなこともして、自分としては異議もなく即決で、即決裁判手続の決定まで行ってしまったと。ところが、判決が言い渡されたと。判決が言い渡されたと。そうしたら、どうも自分の考えていた量刑と、量刑と、ちょっとこれ、こんなはずないのにちょっと重いなとか、執行猶予付いたとしてもですよ。いわゆる量刑不当ですよ。そういうふうに自分が思った場合、これは事実誤認の理由ではできないわけですよね。だったら、これは量刑不当を理由にということであれば上訴することが許されるようになるのかどうかということをお聞きしたいし、また、もしそうなると、量刑不当を理由に上訴することができるというんであれば、これ結果的に量刑不当という問題というのは、常に返っていくのは何に返っていくかと、本来的には事実誤認の問題に返っていってしまうんじゃないかなとも思うんですよね。そうした場合も量刑不当として控訴することが可能なのかどうか、そこを御説明いただきたいと思います。
  139. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) これは、今御指摘のとおり、事実誤認を理由とする控訴、これができないということを言っているのみでございますので、量刑不当を理由とする控訴、これを禁じているわけではないということになります。  ただ、現実問題に、両者がかなり密接不可分になるわけでございまして、これが全く切り離された量刑不当の控訴があり得るのかどうかという問題にはなり得ますけれども、観念的にはあるということになろうかと思います。  それで、ただ、現実に起こってくる問題といたしましては、やっぱり事実の認定と量刑というのはかなり密接不可分になることが多いわけでございますので、もし事実誤認を基礎とする量刑不当ということになれば、事実誤認についての控訴はできないということになっておりますから、これはできないということになろうかと思います。
  140. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 まあそういう、ちょっとまだ、まだ細かい点をいろいろ詰めなくちゃいけない点もあるなとは思いながら、もう一つ、今度新たに設けられます公的弁護制度についてお伺いを何点かしておきます。  これ、先ほど大臣も少し、同じような御答弁になるかどうか、ともかく今、現行では、被告人しかこの国選弁護人の選任権、請求権、与えられていないわけですが、それが被疑者まで拡大する、もう人権、私は人権上の問題でも、法律上でいうならば被疑者権利確保の上でも、ある意味じゃ大きな前進だと私は思っております。  ともかく大臣に、この意味、つまり被疑者に国選弁護人を付けることによって被疑者に具体的にどのような効果をもたらすと、こう判断されておやりになられたのか、御答弁をいただいておきたいと思います。
  141. 野沢太三

    ○国務大臣(野沢太三君) 国選弁護人を付けるということは、資力が十分でないなどの理由で自ら弁護人を依頼できない被疑者に国選ということで弁護人が付されることでございますが、被疑者としては、弁護人と相談しましてその助言を受けるなど、自己の権利を守るため弁護人の援助を受けることができるということで、これまでとは大変違った立場になると思います。このように、被疑者に対する公的弁護制度導入につきましては、被疑者が弁護人の援助を受ける権利を実効的に担保するという意義があると考えております。  さらに、捜査段階から国選弁護人が選任されることによりまして、弁護人の早期の争点把握が可能になりますので、刑事裁判の充実、迅速化を図るという観点からも重要な意味があると考えます。  被疑者の立場で考えますと、相談相手がいるかいないかということは、安心をし裁判に取り組める、あるいは反省を早めて改悛のチャンスを私は大きくできるのではないかと。それによりまして、本人の立ち直り、社会復帰を期待することができるということになれば最も望ましい姿になると思っております。
  142. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 正に大臣おっしゃったような意味があると思うんです。あると思うとともに、それだったら、どうして今回こういう一つ仕組みを作っているのかなと、逆に疑問に思うところも出てくると。それは何かというと、国選弁護人を付けるということができるとはいっても、まず第一段階でどうするかというと、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役、禁錮に当たる事件最初は限る、そして法施行三年後を目途に、今度は対象となる事件の範囲は、死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役、禁錮に拡大すると。  いずれにしても、流れで、段階的にやろうとしているという。なぜこんなことをお考えになられるのかというところとともに、ある意味では全事件について最初からやれるようにしてもいいんじゃないかという意見もあるわけですね。その辺をどうしてこう、特にこの場合、まず第一段階があって第二段階があってということになるわけであって、で、最後に、まあ私は、将来的にですよ、御説明いただいた上では言おうと思ったが、もうまとめて聞きますが、段階的にこうやるというのも、一つ理由、それなりに分かりますけれども、最終的にはやっぱりこれ全被疑者という形まで拡大できるというようなところまで検討すべきだと思っていますが、併せて。大臣答弁されますか。
  143. 野沢太三

    ○国務大臣(野沢太三君) まず基本的な問題について私からお答えを申し上げますが、何事も初めてでございます。特にこの制度につきましては、やはり慎重に取り組む中で、それぞれの立場におります者がこれに徐々に習熟するということからして、こういった段階的な取組と、こう考えたということでございますので、まあそれが一遍に確かに目標まで行ければいいんですが、なるべくその点は安全に運転しようということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  144. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 基本は今大臣からお話しされたとおりでございます。  一番大きな問題は、まず過疎地、司法過疎地域と言われる、いわゆる弁護士がいない地域がかなりございます。あるいは一人しかいない。こういう地域についてこの被疑者弁護の制度導入いたしますと、被疑者、いつ捕まってくるか分からないという状況になりますので、かなり緊急な対応を要するということにもなり得るわけでございます。そのとき、弁護士がいないというわけにはいかないということになります。  そうなりますと、そういうところに本当に弁護士が配置できるかという問題がまず前提にあります。これをある程度補充をするというんですか、可能にするために、これから法案の御承認を得ます総合法律支援法でございますけれども、その中で日本司法支援センター、これを設けまして、一般弁護士さんでは足りないところにつきましてこのセンターの弁護士がそれを可能にしていくと、こういうことにするわけでございます。  この裁判員制度は、一応五年以内で政令で定める日から施行いたしますけれども、日本司法支援センターの方のその関係法律はそれより前に施行を予定をしているわけでございまして、まずそこでその組織を立ち上げて、それから十分にいろいろ確保ができるという体制を作らないと現実問題難しいという点がございます。それを考えまして、まず段階的に導入をしていくこと。それから、やはり公的資金も伴うわけでございますので、一番必要性の高いところにまず導入をいたしましょうと。それから、それを対応できるような人的な基盤ができてきたらそれを広げていきましょうと。それが大体三年を目途にということになっております。  将来的にそれを全部増やすかどうかという問題につきましては、これはなかなか難しいところもございまして、その時点における本当に過疎地域の充実度ですね、これがもっともっと事件増えるということになるとまた対応ができないということにもなりますので、それからあと、公的資金の関係国民理解が得られるかと、そういう問題を含めてまたこれは将来課題として考えていくということになろうかと思います。
  145. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もちろん今おっしゃったみたいに、これ司法ネット、総合支援というものができ上がっていかなければなかなか現実に対応できない。もちろん、予算取りも法務大臣頑張らなくちゃいけない問題もあるという整備の中から極めて現実的に私はやられた問題だろうと、こう思っておりますし、将来は、ただやっぱり被疑者に対しても、日本というのは、被疑者になった段階で、もし金銭的に苦しければそういうのができる社会だということを、目指すべき方向性は目指すべき方向性で持ちながら現実的対応をしていくということなんだろうと思いますし、是非そういった方向を目指していただきたいと。  最後に、検察審査会も今回変わっていくわけでございまして、一つは検察審査会、法的拘束力を与えるということでございます。  一つは、お聞きしたいのは、この検察審査会、権限強化、今回なるわけでございますが、これが司法にとってどういう具体的にいい点があるのかというのをお伺いするとともに、まとめてお聞きしますが、今回は、検察審査会が起訴議決した後は裁判所が指定した弁護士が起訴議決にかかわる事件について公訴の提起とか維持に当たることになるんですよね。普通ならば検察官がやるものを、これ弁護士が行うということになってくるわけであって、その理由とともに、私がちょっと心配しているのは、検察の場合はきちんとした組織がございます。そういうものがない弁護士さんが公訴維持をする、していくということは本当に大丈夫かな、大変なんじゃないかなということもちょっと感じるものですから、そういう体制ができているのかなというのも心配しつつ、弁護士になぜしたのかという理由、また検察審査会の権限強化の利点、併せて御答弁いただいて質問を終わりたいと思います。
  146. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) まず、この改正の理念でございますけれども、検察審査会の議決に基づいて公訴が提起されるということによって公訴権の行使に国民の感覚をより直截に反映をさせるという点にございます。これによりまして、公訴権をゆだねられております検察官ですね、これが独善に陥ることを防ぎまして公訴権の行使をより適正なものにすると、こういう観点から行われているものでございます。  これにつきまして、起訴を相当だといった場合に、なぜ検察官がやらないで、最終的には弁護士にやらせるのかということになるわけでございますけれども、これは一般国民から見て有罪に向けて十分な立証活動がなされるかどうかという、そういう職務の公正らしさに疑念を生ずるおそれがございます。検察官は不起訴、起訴をしないと言っているわけですから。それからもう一度考え直せと言ってもまだしないと言っているわけですから、その方にやらせるというのはやっぱり問題があるだろうということでございます。その観点から指定弁護士が公訴の提起をするということになっているわけでございます。  これは、現在も、例えば公務員が職権濫用した場合ですね、こういう場合についての付審判請求という事件がございまして、これについて起訴をする場合にはやっぱり裁判所が選任をした弁護士が検察官の役割をするということの制度がありまして、これは今までに例がないわけではございません、それが例が多いかというとそれは別でございますけれども。そういう関係で現在もやっているものであるということでございます。  最終的には捜査の指揮権がなければならないんですけれども、これについても自らやるとなかなか難しいところもございますので、これは捜査の指揮についても嘱託をしていただければ積極的に検察の方で応ずるということ、それから職場の執務環境ですね、こういうものについても全部手当てをするとか、そういう形で支障がないようにさせていただくということが前提になっているということで御理解を賜りたいと思います。
  147. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  前回の質問で、裁判員が実質的に裁判に関与できる制度にしなくちゃならないという柱でお聞きをいたしました。今日はまずもう一つの柱、国民が参加しやすい、参加したくなるような制度にどうするのかという点をお聞きをいたします。  ちょっと通告と順番を変えますが、まずその点で守秘義務のことについてお聞きをいたします。  午前中、大変充実した参考人質疑をいたしましたが、その中で四宮参考人アメリカ陪審制度改革について紹介をされておりました。出頭率を上げる上で、刑罰を引き上げるんじゃなくて、八〇%の人が単なる義務ではなくてこれは大切な仕事だと、こういうふうに思ってもらうことが大事なんだということで改革をしたということを言われておったんですね。これは大事な仕事だと皆さんに思っていただくという点からいいますと、裁判員になった方が大いにその経験を語って、大変大事な仕事をしてきたということを語っていただくこと、そして問題があればそれに基づいて正すということが、私は制度の発展にも定着にもつながっていくんではないかというふうに思うんです。その点、まず大臣の認識をお聞きをしたいと思います。
  148. 野沢太三

    ○国務大臣(野沢太三君) 大変大事なことでございまして、意欲的に主体的に参加していただくことがこの制度を今後十分機能させるということで大変大事なことであると思います。  そこで、裁判員経験された皆さんが評議の秘密とかその他プライバシーとかいったことの秘密に当たらない経験談を述べることは、大いにこれは結構なことじゃないかと。むしろ、そのことによりまして、国民の皆様が関心を持っていただきまして、この裁判員制度に対する理解を深めていただくということは大変大事なことと思っております。午前中の参考人お話もございましたが、そういった意味も含めまして、やはり十分に感想を述べていただいた上で、かつ最低限の秘密は守っていただく、こういうことになっていけば有り難いと思っております。
  149. 井上哲士

    ○井上哲士君 今も、大いに語りながら最低限の秘密は守っていただきたい、こういう答弁があったんですね。  ところが、どうも法案の方は、最低限というよりも、かなり広範な守秘義務が課せられているんではないかと思いますが、こうした守秘義務を課しているその保護法益についてまずお聞きをいたします。
  150. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) ここでは、他人のプライバシーとそれから評議の秘密と、職務上知り得た秘密とそれから評議の秘密、大きくこの二つに分けているわけでございます。  最初に申し上げましたものは他人のプライバシーの問題でございます。これが外へ出るということになりますと、本当に裁判制度としていいのかどうかという問題が問われるわけでございます。  それからまた、評議の秘密がそのまま出るということも同じでございまして、それが出るならばもう後で自由に物が言えなくなってしまうというおそれもあるわけでございます。したがいまして、その二つを保護法益にしているということでございます。  特に、評議における自由な発言、これを保障するということにつきましては、その裁判員が後に批判されることを恐れたりして自らの意見を開陳することを差し控えるというおそれがあるわけでございますので、それがないようにして、自由濶達に様々な意見が交換される、あるいは充実した評議が行われるようにする、これを守りたいということがその保護法益でございます。それからもちろん他人のプライバシーがそのまま外へ出てしまうということも、これも絶対守らなきゃいけないと、こういう二つの保護法益だということでございます。  ある意味ではまた、それにそのことが外へ出てしまって公表されるということになりますと、事後的にその裁判員の方がいろいろ追及をされたり、それから報復をされたりということのおそれもあるわけでございますので、考え方によっては裁判員の方の負担を軽減するという意味もあろうかというふうに思っているわけでございます。
  151. 井上哲士

    ○井上哲士君 大きく他人のプライバシーと、そして自由な意見表明のこの二つが挙げられましたが、やはり法案の守秘義務の範囲はこれを超えていると私は思うんですね。  幾つか具体的に聞いてまいりますが、まず今回衆議院で法案が修正をされました。評議の秘密のうちから評議の経過というのが、経過の漏えいが罰金刑に落ちましたので、この区別は非常に大事になっておりますが、個人を特定していない意見というのはこの評議の経過に入るのか、それとも裁判官裁判員意見の方に入るのか、これはどうでしょうか。
  152. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) たしか、評議の秘密が、意見とそれから評議の経過というふうに大きく分かれるわけでございます。ここで言われています意見ということでございますけれども、これは当該個人が特定されていない場合であっても、その意見の内容を明らかにするということにほかならないわけでございますので、これは評議の経過ではなくて裁判官及び裁判員意見、これを明らかにする場合に該当するという考えでございます。
  153. 井上哲士

    ○井上哲士君 それでは、評議でこういうことがテーマになった、この点は評議の経過に入ってくるんでしょうか。
  154. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 評議でこういうことが議論された、テーマになったということは、評議の経過でございます。
  155. 井上哲士

    ○井上哲士君 そうしますと、これは秘密漏えいに掛かってくるわけですが、ただ、そのテーマについて明らかにしても、各人の発言には直結しないわけですから、別に自由な発言を阻害することにはなりませんし、どういうテーマが評議で行われるかということは大体公判を見ていれば、の当事者の活動からも明らかになることでありまして、結果としてこのテーマも経過として秘密漏えいにしてしまいますと、公判で明らかになったようなことすらしゃべれなくなるということに結果としてはなるんじゃないでしょうか。その点、どうでしょうか。
  156. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) これは評議の秘密でございますので、公判で行われたこと、これに関しましては皆見ているわけでございまして、聞いているわけでございます。その公の場で行われていることでございますし、あるいは判決に書かれたこと、これも判決も外に明らかになるわけでございますので、これについてはそれについての限りで物を言うということはこれは自由でございます。問題は、その評議でどういう論点についてどういう順番で何が行われたかということですね、これについては守っていただきたいと、こういうことを言っておるわけでございます。
  157. 井上哲士

    ○井上哲士君 ですから、その多くがダブってくるわけですから、これは大変、やはり分かりにくいことになっていくと思うんですね。結果としてやはり秘密秘密ということに流れとしてなっていくんじゃないかと思うんです。  じゃ、もう一つ聞きますが、この評議の方法、それから評議の進行の状況、これも評議の経過ということに入るんでしょうか。
  158. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) これもどういう評議の方法でやったか、それから順番ですね、そういう点についても全部その評議の経過に入るということでございます。
  159. 井上哲士

    ○井上哲士君 裁判官における評議の進行の在り方とか、そういうことはどうですか。
  160. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 進行のその方法ですね、どういう具体的にやっていくかという手順の問題もありますし、それから項目の取り上げ方、こういうこと全部含まれるわけでございます。
  161. 井上哲士

    ○井上哲士君 そうしますと、これも特に各人の発言には直結しないわけですから、自由な発言の阻害に当たるものではないと思うんですね。  それから、六十六条で、裁判長の評議における配慮義務というのが規定をされておりますが、ちゃんとそういう配慮が行われたかという検証の道が閉ざされてしまうと思うんですね。おとついの答弁の中で、評議での議論しやすい環境整備は重要だということも認められまして、今後の検討課題だということも答弁がありましたけれども、そういう、制度を良くしていく、評議を本当にふさわしくしていくということになりますと、どういう方法や進行がやられたかということを大いに検証していくということが必要だと思うんですね。そうしなければ改善方法も出てきませんし、仮に強引なやり方が行われたとすれば、それを正すこともできないということになるので、これをも協議の経過として秘密にしてしまっては、これはやはり問題だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  162. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) それは、評議の順番、事項、これが全部明るみに出ますと、どういう点が問題になって、どういう流れになって、どういう結論になったかということをおのずと示すようなことになるわけでございまして、そうなりますと、そういうことが全部オープンになるということになると、こんな議論もしていたのかということになるわけでございまして、そうなりますと、裁判員の方によっては、そういうことが明るみに出るならばもう自分はしゃべらない方がいいということにもなりかねないわけでございまして、これは例えば、ある裁判員の方が話をしたと、その人の問題じゃなくて、他の裁判員の方、その考え方等もそれが明るみに出てしまうということになればその方が迷惑をするわけでございまして、それは自分だけの問題ではないということでございます。  したがいまして、評議の秘密としてそれは保護しなければならない。ただ、それについて、先ほど千葉先生の方からも御質問がございましたけれども、それが評議の秘密にかかわるものであればそれは駄目だということになりますけれども、そこにかかわらないものであるならば、それは一種の裁判員制度の感想ということで行われていく、許されていくということになろうかというふうに思います。
  163. 井上哲士

    ○井上哲士君 裁判官がどういうふうに評議を進めたかということがなぜ個々の裁判員発言が明らかになることにつながっていくのかというのは、私はどうも幾ら聞いてもよく理解できないんですね。  もう一個聞きます。  裁判長が法律解釈とか、それから訴訟手続、こういうことについてこういうふうに判断をしたと、これについてはやはり評議の経過に入るんでしょうか。
  164. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) この法律解釈あるいはその訴訟手続上の判断、これは裁判官のみで行うということになっておりますけれども、これはやはりそういうものであっても、その合議体裁判員の方が一緒になってその議論を聞いていく、聞くということも可能でございますし、最終的にそれがなくても、裁判官の方でこういう解釈で行うということを言われて、それもやっぱり裁判官意見というよりも評議の審理経過の一つに含まれるわけでございまして、その評議の経過に含まれるというふうに考えております。
  165. 井上哲士

    ○井上哲士君 私は、これも各人の自由な意見の表明の阻害にもならないし、プライバシー侵害にもならないと思うんですね。裁判長の説明というのは言わば評議の土台にもなっていくわけですね。前回のときに、例えば公判の場で裁判長が基本的な説明をするべきだということを言いましたけれども、それも否定をされました。そうしますと、公開の場でやはり検証をできるものがなくなっていくということになりますから、私は、やはり裁判への本当の意味での信頼性という点からいっても、できる限り本当に守秘、プライバシーとかいうものに限った守秘義務に絞るべきだということを思うんです。  もう一つ、しかも、裁判員裁判官の違いというのがあるんですね。法案裁判員裁判が終了しても当該判決に対しての当否を述べるということを禁止をしておりますけれども、感想は述べてもらっても構わないと言いますけれども、当否を述べることが禁止されますと事実上感想も述べれなくなるんじゃないでしょうか、いかがでしょうか。
  166. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 私申し上げておるのは、職務上知り得た秘密、他人の例えばプライバシーとかそれから評議にかかわる秘密でございまして、そこにかかわらない感想は言っても構わないと言っているわけでございまして、公判廷で行われていること、判決に書かれたこと、それ以外にも、物すごく疲れたなとか、いろんな感想はあると思うんですよね。分かりにくかったというようなこともあるかもしれません。そういうことについては構わないわけでございます。  したがいまして、そこと、要するに秘密とそれ以外のものを、これを分けなければならないわけでございますが、じゃ、秘密についてそれは将来の役に立てるからもう少ししゃべってもいいようにすべきじゃないかということになりますと、これは裁判そのもの、これが裁判制度として成り立つかどうか、一つのかなめの制度でございますので、これについてはやっぱり、最低限やっぱり評議の秘密ということについてはお守りをいただきたいと、こういうことでございます。
  167. 井上哲士

    ○井上哲士君 秘密を漏らせと言っているんじゃないですね。そこまで秘密にする必要があるんだろうかということを言っているわけなんです。  裁判の判決に対する当否というのはこれは述べれないことになっているかと思いますが、裁判官の場合は、判決に対しての当否を述べることや、そして秘密漏えいということはどういうふうになっているんでしょうか。
  168. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 裁判官裁判員と同じでございまして、評議の秘密とそれから職務上知り得た秘密、これを守る義務を負っております。  評議の秘密の方は、ちょっと具体的に言いますと、裁判所法の中に規定がございます。それから、職務上知り得た秘密につきましては、裁判官の場合、国家公務員法の適用が直接今ございませんので、いろんな規定関係で、大変古いわけでございますけれども、官務服務紀律というのが明治二十年の七月三十日という、勅令というものがございまして、この適用を受けているというのが一般的な解釈でございます。ここでやっぱり職務上知り得た秘密を漏らしてはならないと、こういうことになっております。  ただ、これに伴う罰則は両方ともないと、こういう状況でございます。
  169. 井上哲士

    ○井上哲士君 判決の当否を述べる、判決に対する当否を述べることはどうなっていますか。
  170. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) これは、裁判官は、裁判所法四十九条でございまして、罰則はございませんけれども、判決の当否を述べた場合、その具体的な事情いかんによってはその裁判官の品位を辱める行状があったということに当たる場合があり得ますので、これは裁判所法四十九条でその規定がございまして、裁判官は職務上の義務に違反し、若しくはその職務を怠り、又は品位を辱める行状があったときは別に法律で定めるところにより裁判によって懲戒されるということでございまして、別の裁判というのが、いわゆる弾劾裁判、あるいは分限裁判ということを意味するわけでございます。
  171. 井上哲士

    ○井上哲士君 今ありましたように、裁判員の場合は刑罰付きでありますけれども、裁判官の場合は守秘義務はあっても刑罰はありません。しかも、判決に対する当否を述べることは、今ありましたように確かに在籍中は懲戒理由になりますけれども、逆に言いますと、裁判員を辞めた後はこれは掛からないわけです、裁判官を辞めた後はそういう懲戒というのは掛からないわけですね。  これはやっぱり、今日の午前中もありましたけれども、参加をしてもらおうと思ったら国民を信頼をするということが大事だと思うんですが、同じ裁判をやっても、裁判員に対しては刑罰付きで、しかも辞めた後も当否を述べちゃいけない、裁判官の方は刑罰ない、辞めた後は当否を述べること、それ自体は懲戒理由にならない、できないと。これは私はおかしいと思うんですね。やはり裁判員裁判官に準じて扱うべきじゃないでしょうか。
  172. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) これは、裁判員の方はその事件ごとに選任されるということになりますので、他に担保措置が考えられないことから刑事罰を、刑事の罰則を設けるということになるわけでございますけれども、裁判官の場合は別の担保措置がございまして、分限だとか、いわゆる懲戒ですね、分限、弾劾、こういうものがあるわけでございますので、これによって担保をされるということになります。じゃ、退職後はどうかという問題でございますけれども、これは長年高い倫理観で培われてきたということから一般的には守られていくという形で考えているわけでございます。  これは余分なことかもしれませんけれども、裁判官だけの問題ではなくて、特別公務員の方についてはすべていったん国家公務員法の適用から外されておりまして、そういう意味では特別公務員の方全体にかかわる問題でございます。  それからもう一つは、裁判官の、裁判員裁判だけにかかわる問題ではございませんで、民事、家事、そのほかのいろんなものございます。それ全体の問題であるということでありますし、裁判官のみの問題ではないということでございますので、そこのところは御理解を賜りたいというふうに思います。
  173. 井上哲士

    ○井上哲士君 過去に、私、幾つか持ってきましたけれども、これは八海事件の担当した裁判官が本を出しておられます。それから、財田川事件を担当した裁判官、この人は裁判官を辞して、そしてこういう本を出しておられますし、それから、松川事件の再審を担当された、差戻し審を担当された方もいろいろ語っておられるのがありますし、最近は徳島ラジオ商殺人事件にかかわられた当時の裁判官も「裁判官はなぜ誤るのか」というような新書も出されております。それぞれに、こういうことを明らかにするのがやはり冤罪もなくし、いろんな意味裁判の信頼をむしろ高めていくことになるという思いから出されていると思うんですね。  現に、こういうことが、中には現職のときにも、そして退職をされた裁判官の方が出されていると。一方で、裁判が終わっても裁判員にはやはりずっと一生涯罰則が付くと。これはやっぱり明らかに私はアンバランスだと思うんですけれども、改めていかがでしょうか。
  174. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 私、今御指摘されました本を全部読んでおるわけではございませんけれども、そういうものがあるということは承知はしております。  これは正に自己判断で行われていることだろうというふうに私は理解をいたしますけれども、その取上げ方について、それぞれやっぱり法律専門家としてある程度抽象化して物を言っているところがあろうと思うんですね。そういう意味で、その内容についてストレートに全部外に話をするのか、あるいはそれを抽象的に丸めて話をするのかということによっても大分違うわけでございますけれども、いずれにしましてもそれは自己判断で行われているということでございまして、私はそれについてとやかく言うつもりはございません。
  175. 井上哲士

    ○井上哲士君 これがけしからぬからとやかく言ってほしいということで質問しているんじゃないんですね。  現にこういうことが行われている中で、一方でやはり裁判員だけには生涯の罰則を掛けて、そして当否も言うことができないというのは、本当に国民を信頼して司法に参加をしてもらおうというこの制度の趣旨からいっても、そしてこの守秘義務の先ほど言われた保護法益からいってもずれているんじゃないかということを指摘をしているわけでありまして、是非ここは更に私は見直しをすることが必要だということを指摘をしておきます。  もう一つ、いわゆる請託罪のことについてお聞きをいたします。  今も幾つかの冤罪事件についてお聞きをしましたけれども、これをいろんな形での支援運動というのが支えてまいりました。困難な被告人を支えるいろんな活動というのは、被告人権利を守り、結果として裁判への信頼も高めてきたと思いますが、こういう裁判支援運動について大臣はどのような評価を持っていらっしゃるでしょうか。
  176. 野沢太三

    ○国務大臣(野沢太三君) 被告人が無罪を主張している事件につきまして、被告人を支援する方々が熱心に様々な活動を行われているという事例があることは十分承知をしております。  ただ、いわゆる裁判支援運動の果たしてきた役割につきましては、個別具体の事件に現実に与えた影響の有無やその内容にかかわるものでありますので、その詳細を承知してはおりませんし、また個別具体の事件評価にわたることにもなりかねませんので、法務大臣としてはお答えは差し控えたいと存じます。
  177. 井上哲士

    ○井上哲士君 いろんなやはり大きな役割を私は果たしてきたと思うんですね。そういうことが新しい制度の下で妨げになるということはあってはならないと思うんです。  審理に影響を与える目的での情報提供というのが七十七条で刑事罰の対象になりますが、例えばこういう支援活動でいろんな、駅頭であるとか、場合によっては裁判所近くの公道であるとか、いろんなところで公正な裁判をしてほしいということを求めるような不特定多数に向かっての宣伝行動というのがあります。そうしますと、結果として裁判員の方にそういう宣伝物が渡るということもあり得るかとは思うんですが、こうした不特定多数に対するそうした公正な裁判等を求める宣伝活動、表現活動、これはこの処罰の対象には当たらない、こういうことでよろしいでしょうか。
  178. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 一般論で申し上げますけれども、裁判員に対してなされたものと認められないようなもの、例えば不特定多数の人に対する一般的な活動、これはこの項の罪には該当はしないというふうに考えております。
  179. 井上哲士

    ○井上哲士君 それから、いろんな支援活動の中で、公正な裁判を求める署名を集めまして、これを裁判所に対して請願権の行使として提出をするということもいろんな支援運動で行われてきました。  今は書記官を通じて裁判体に提出をしているわけでありますが、これもこの法律ができたといっても憲法で保障された請願権の行使として裁判長とか、そして裁判官あてにこういう要請署名などを提出をするということは今後も許される、こういうことでよろしいでしょうか。
  180. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) ただ、一般論で申し上げますけれども、特定の事件について無罪判決をすべきである旨の書面を裁判員を名あて人に含めずに裁判長あるいは裁判官あて、こういうことにしまして、裁判員も閲覧するという認識、意図、そういうのを持たずに裁判員が閲覧することのないようにして提出をするというような行為、これにつきましてはこの罪には当たらないというふうに考えております。
  181. 井上哲士

    ○井上哲士君 最後ですが、現在でも同じように関係者等の上申書を情状証拠として裁判所に提出するということもありますが、裁判員の参加する裁判において、例えば弁護人が公判の場で述べる際に、こういう要請署名が幾つ集まっているとか、こういう中身だということを述べたり、また裁判体に提示をする、こういうことについても許されるということでよろしいでしょうか。
  182. 山崎潮

    政府参考人(山崎潮君) 一般論としていえば、通常は弁護人の意見陳述としてなされた行為についてはこの罪には当たらないというふうに考えておるところでございます。
  183. 井上哲士

    ○井上哲士君 終わります。
  184. 山本保

    委員長山本保君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時四十六分散会