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2004-05-11 第159回国会 参議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年五月十一日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員異動  四月二十七日     辞任         補欠選任      大脇 雅子君     江田 五月君  五月十一日     辞任         補欠選任      樋口 俊一君     高橋 千秋君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山本  保君     理 事                 松村 龍二君                 吉田 博美君                 千葉 景子君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 岩井 國臣君                 鴻池 祥肇君                 陣内 孝雄君                 野間  赳君                 今泉  昭君                 江田 五月君                 高橋 千秋君                 角田 義一君                 堀  利和君                 井上 哲士君    衆議院議員        修正案提出者   与謝野 馨君        修正案提出者   佐々木秀典君        修正案提出者   漆原 良夫君    国務大臣        法務大臣     野沢 太三君    副大臣        法務大臣    実川 幸夫君    大臣政務官        法務大臣政務官  中野  清君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   中山 隆夫君        最高裁判所事務        総局刑事局長   大野市太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        加藤 一宇君    政府参考人        司法制度改革推        進本部事務局長  山崎  潮君        法務省刑事局長  樋渡 利秋君        法務省矯正局長  横田 尤孝君        文部科学大臣官        房審議官     金森 越哉君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○刑事訴訟法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 山本保

    委員長山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る四月二十七日、大脇雅子君が委員辞任され、その補欠として江田五月君が選任されました。     ─────────────
  3. 山本保

    委員長山本保君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案審査のために、本日の委員会司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省刑事局長樋渡利秋君、法務省矯正局長横田尤孝君及び文部科学大臣官房審議官金森越哉君政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山本保

    委員長山本保君) 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  まず、両案について、政府から趣旨説明を聴取いたします。野沢法務大臣
  6. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) まず、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  国民の中から選任された裁判員裁判官とともに刑事訴訟手続に関与することは、司法に対する国民理解を増進させ、また、その信頼向上に資するものと考えられます。そこで、この法律案は、刑事裁判裁判員が参加する制度導入するため、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法及び刑事訴訟法特則その他必要な事項を定めるものであります。  以下、法律案内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、裁判員の参加する合議体で取り扱う事件を定めるとともに、当該合議体構成は、原則として、裁判官員数を三人、裁判員員数を六人とすること、裁判所の行う事実の認定法令の適用及び刑の量定は、当該合議体構成員である裁判官及び裁判員合議によることなど、合議体構成並びに裁判官及び裁判員権限等について所要規定を置いております。  第二に、裁判員衆議院議員選挙権を有する者の中から選任するものとするとともに、裁判員となることのできない事由裁判員候補者名簿の調製、裁判員候補者に対する質問等裁判員選任手続及び裁判員解任手続等について所要規定を置いております。  第三に、裁判員の参加する合議体で取り扱う事件については第一回の公判期日前に公判整理手続に付さなければならないことなど、裁判員の参加する裁判手続に関し所要規定を置いております。  第四に、裁判官裁判員合議による判断は、裁判官及び裁判員双方意見を含む合議体員数過半数意見によることなど、裁判員の参加する刑事裁判における評議及び評決について所要規定を置いております。  第五に、労働者裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならないことを定めるほか、裁判員等を特定するに足りる情報の取扱い及び裁判員等に対する接触規制に関して裁判員等の保護のための所要規定を置いております。  このほか、所要規定整備を行うこととしております。  次に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  我が国においては、刑事司法がその役割を十全に果たし、国民期待により一層こたえることができるようにするため、刑事裁判充実及び迅速化を図ることなど、刑事司法改革が求められております。この法律案は、このような状況にかんがみ、刑事裁判充実及び迅速化を図るための方策を講ずるとともに、被疑者に対する国選弁護人選任制度導入等国選弁護人制度整備及び検察審査会議決に基づき公訴が提起される制度導入を行うことを目的とするものであります。  以下、法律案内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、刑事裁判充実及び迅速化を図るための方策として、公判審理に先立ち、十分に争点及び証拠整理するため、公判整理手続等を創設するとともに、その手続の中で、検察官による証拠開示を拡充することとしております。あわせて、連日的開廷の確保裁判所訴訟指揮実効性確保、争いのない一定事件について簡易迅速な審判を行う即決裁判手続創設等についての所要規定を置いております。  第二に、国選弁護人制度整備として、被疑者に対する国選弁護人選任制度導入するとともに、国選弁護人選任要件及び選任手続選任の効力、解任、費用の負担等についての所要規定を置いております。  第三に、公訴権行使に民意をより直截に反映させてその一層の適正を図るため、検察審査会一定議決に基づき公訴が提起される制度導入することとし、当該議決要件、その議決に基づく公訴の提起及びその維持等についての所要規定を置いております。  このほか、所要規定整備を行うこととしております。  以上が各法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  7. 山本保

    委員長山本保君) 次に、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員佐々木秀典君から説明を聴取いたします。衆議院議員佐々木秀典君。
  8. 佐々木秀典

    衆議院議員佐々木秀典君) 衆議院議員佐々木秀典でございます。  ただいま議題となりました裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案に対する衆議院における修正部分について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明いたします。  第一は、裁判員等に対する接触規制に係る保釈等取消し事由について、「接触すると疑うに足りる相当な理由があるとき」の表記を、「接触したとき」の表記に改めようとするものであります。  第二は、裁判員等による秘密漏示罪について、「一年以下の懲役」とされている懲役刑期間を「六月以下の懲役」とするとともに、裁判員又は補充裁判員の職にあった者の処罰を、金銭対価を得る等の悪質な場合を除き、罰金刑に限定するものであります。  第三は、裁判員の参加する刑事裁判制度を円滑に運用するために、国は、そのために必要な環境の整備に努めなければならないとするとともに、政府は、この法律施行後三年を経過した場合において、この法律施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、所要措置を講ずるものとするとの条項を附則に加えるものであります。  以上が本法律案に対する衆議院における修正部分趣旨及び概要であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。  ありがとうございました。
  9. 山本保

    委員長山本保君) 次に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員漆原良夫君から説明を聴取いたします。衆議院議員漆原良夫君。
  10. 漆原良夫

    衆議院議員漆原良夫君) ただいま議題となりました刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正部分について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明いたします。  第一は、被告人又は弁護人が、開示された証拠目的外使用禁止規定に違反した場合の措置について、被告人防御権を踏まえ、複製等内容、行為の目的及び態様等の諸事情を考慮する旨の条項を加えるものであります。  第二は、検察官請求証拠証明力判断のために開示され得る証拠の類型のうち、検察官請求証人の供述録取書等について、当該証人証言予定事項同一事項のものに限るとしている限定を削除するものであります。  第三は、検察審査員等における秘密漏示罪について、「一年以下の懲役」とされている懲役刑期間を「六月以下の懲役」に改めるとともに、検察審査員等であった者の処罰を、金銭対価を得る等の悪質な場合を除き、罰金刑に限定するものであります。  以上が本法律案に対する衆議院における修正部分趣旨及び概要であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。  以上でございます。
  11. 山本保

    委員長山本保君) 以上で両案の趣旨説明及び衆議院における修正部分説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 松村龍二

    松村龍二君 自由民主党の松村龍二でございます。  いよいよ本日、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案、また、ただいま同時に付託のありました刑事訴訟法等の一部を改正する法律案、また、衆議院で修正されました案について審議参議院で始めるわけであります。  この二年間にわたりまして、司法制度について、戦後のいろいろな問題を整理検討いたしまして、この間、司法制度改革推進本部本部長小泉首相が鋭意検討を重ねてまいりまして、それが、各党とも調整いたしまして、司法改革関連法案ということで閣議で決定されて、今、法務委員会において先般来審議を重ねているところでございます。中でも、この裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案国民関心も高く、大変な法案であるというふうに世間も注目しておるところでございます。  我が参議院にありましては、与野党、委員長を中心に、理事会におきましてもいかに参議院らしい審議をしていこうかということで鋭意検討いたしておりまして、衆議院では行われなかった公聴会等も是非やりたいと、あるいは参考人もいたしまして、しっかり時間を掛けて、国民が納得のいく審議をしたいというふうに思っております。  冒頭、基本的な質問から入らせていただきます。  戦後の我が国刑事裁判は、戦後のあの大変な混乱の時代から今日に至るまで、また、最近は外国人犯罪を犯すというようなことで治安が大変悪くなっているということが言われますが、そのような刑事事件に対しまして、刑事裁判が、職業裁判官によってこの裁判を行ってきたわけであります。裁判に直接かかわるのは、被告人証人といった立場の人を除けば、裁判官検察官、そして弁護士である弁護人でありまして、こうしたプロによって担われてきたのが我が国刑事裁判でございました。  このようにして行われてきた裁判はうまくいっていなかったのかといえば、私は必ずしもそうではないと。むしろ、日本国民の意識、日本の中において、多くの場合には求められる役割をよく果たしてきてるんではないかというふうにも考えられまして、国民信頼も高く、世界的にも良好とされてきた我が国治安を支える一つの要因となってきたものと考えております。  そうしますと、今度は、それでは、なぜ今我が国刑事裁判在り方を大きく変えることになる裁判員制度導入する必要があるかという問題になるわけでございます。我が自民党にありましても、日本国民にとってこのような裁判員制度というのはなじまないんじゃないかと、君ら、本気で委員会でこの法案通すつもりかというようなことも言われることもあるぐらいでございます。  そこで、まず法務大臣にお伺いしますが、裁判員制度導入意義をどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  13. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 国民裁判官とともに刑事裁判に関与することにつきましては、司法に対する国民理解の増進とその信頼向上に資するものと考えております。  すなわち、裁判員制度意義は、広く国民裁判の過程に参加し、その感覚裁判内容に反映されることによりまして司法に対する国民理解支持が深まりまして、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになることにあると考えておるところでございます。  加えまして、裁判員制度導入されますと、職業や家庭を持つ国民方々裁判に参加していただくことができるようにするため、裁判が迅速に行われることになります。また、裁判手続判決内容裁判員方々にとって分かりやすいものとする必要がありますから、国民にとって分かりやすい裁判が実現されることになります。  この法案は、今回の司法制度改革の中でも一番重要な柱の一つでございまして、これから議会の御審議をいただき、実現の暁には、五十年に一度、あるいは百年に一度と目されるような大きな改革につながるものと考えております。
  14. 松村龍二

    松村龍二君 ただいま大臣からもお話のありました裁判迅速化ということは非常に重要なことであろうかと思います。  先般の法務委員会において、私の質問の中でも指摘させていただいたことでありますが、遅過ぎる裁判というのは、秩序の維持ということを目標にしたその趣旨からしますと、もう既にその役割を果たしていないというような指摘もされるところかと思います。  オウム事件が、地下鉄サリン事件あるいは弁護士一家殺人事件松本においてサリン事件を起こしましたあの凶悪な松本智津夫につきまして、あれは事件が起きましたのが、発覚しましたのが平成七年、私が初めて選挙に当選した年でございます。そして、今九年目になってようやく第一審の判決があったということで、いかにこの裁判が、現制度の中においてはやむを得ないということであっても、国民期待からしますともう既に大きく逸脱しているというようなことで、この裁判迅速化という点で裁判員制度が効果を果たすというふうに、その一点について見ても大変に意義のあることではないかなというふうに思うわけでございます。  さて、我が国におきましては、裁判国民が直接参加する制度は、戦前に陪審制度が一時期導入されて、休眠状態になっておると言われておりますが、直接参加する制度は戦後初めて導入されると言ってもいいかと思います。  諸外国においては、古くから陪審制度参審制度という形で国民参加制度が行われているものと承知しておりますが、こうした制度は諸外国の歴史や伝統を踏まえたものなのでありましょうが、我が国の新たな制度として裁判員制度導入考えるに当たりまして参考となる前例と言うことができるかと思います。  そこで、推進本部事務局長に伺いますが、諸外国において行われている陪審制度参審制度はそれぞれ具体的にはどのような制度なのか、要領よく御説明いただきたいと思います。
  15. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいま御指摘のとおり、世界の国々の制度在り方はばらばらでございますけれども、その共通的な考え方を申し上げたいというふうに思います。  まず、陪審制度でございますけれども、基本的には犯罪事実の認定裁判官が加わらずに陪審員のみによって行うと、こういう制度でございます。それから、参審制度でございますけれども、これは基本的には裁判官参審員一つ合議体を形成してともに裁判を行う制度、ここの違いが大きな違いであるというふうに認識をしております。
  16. 松村龍二

    松村龍二君 それでは、本法案裁判員制度が諸外国陪審参審制度とどのような点が異なるのか、明確に説明をお願いします。
  17. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この点につきましては司法制度改革審議会の中でもいろいろ議論がされたわけでございますけれども、世界の各国の制度在り方を十分に検討しながら我が国にとって何が一番ふさわしいかと、こういう観点から考えていったということになります。  基本的には、ただいま御説明いたしましたけれども、裁判官裁判員がともに合議体を形成して判断をしていくという点をとらえれば、これは参審制度、ヨーロッパの参審制度ですね、これに共通した点が多いということになりますけれども、例えばドイツと比較いたしますと、ドイツ裁判員選任方式が無作為抽出方式ではございません。別の有識者選任方式という方式を取っておりますし、またその裁判員権限でも違っているところがございまして、例えば法律解釈とか訴訟手続上の判断についても一緒に判断をするとか、それから個々の事件ごと選任がされるのではなくて、ある長い任期をもって選任をされると。それぞれの在り方は様々に変わって、違っておりますけれども、我が国にとってはただいま法案として御提案させていただくようなものがベストであるということから、こういう案を考えてきたということでございます。
  18. 松村龍二

    松村龍二君 制度の細部はともかくといたしまして、諸外国においても同種の制度は広く採用されているということですが、他方、裁判員制度我が国制度として導入することになるわけでありますから、我が国法体系に合致したものでなければなりません。特に、国の最高法規である憲法に合致していることは絶対に不可欠の条件であります。  そこで、確認のため推進本部事務局長にお伺いしますが、裁判員の加わった裁判所による裁判憲法に違反するのではないかという意見がありますが、何で憲法に違反するかということもちょっと何かはっきり分かりかねる主張でもありますけれども、裁判官というのは非常に給与も下げちゃいかぬというぐらい憲法で保障された崇高な任務であると。それと訳の分からぬ裁判員制を一緒くたにするなというような裁判官のプライドからのような主張にも見えますし、何か憲法の文言上、憲法に違反するというような御説明のように読みましたけれども、この点に関しましてはどのようなふうに理解したらよろしいか、お伺いします。
  19. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 憲法の関係でございますけれども、憲法は基本的な規定を三つ置いておりますけれども、まず七十六条以下では裁判官職権独立あるいはその身分保障、これについて定めております。それからもう一つは、三十二条で裁判所において裁判を受ける権利というものを規定していること。それから、三十七条で公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利と。大きく分けてこの三つを規定しているわけでございます。  これの要請が何であるかということでございますけれども、やはり憲法は、独立して職権を行使する公平な裁判所による法による裁判、これが行われること、これを要請しているものと解釈することができるわけでございます。この法案における裁判員制度につきましては、この憲法趣旨に従った、要請に従ったものであるというふうに考えております。  その論拠でございますけれども、まず法による公平な裁判を行うことができる裁判員確保する、こういう要請が、必要がありますけれども、そのために、その資格に関する要件、あるいは職権行使独立に関する規定等、様々な手当てをまず置いているということが一つでございます。二番目に、法による公正な裁判が保障されているというためには、適正手続の下で証拠に基づく事実認定が行われまして、その認定された事実に法が適正に解釈、適用される、この必要があるわけでございます。  この法案におきましては、法令解釈については裁判官のみが判断権限を有し、裁判員はその判断に従うということにされているわけでございますが、これに加えまして、裁判官裁判員が対等な権限を有する事項についての判断は、その双方意見を含む合議体過半数意見によるということにされているわけでございまして、こういうことによって適正な結論に到達すること、これができるということが予定されているわけでございまして、そういう意味から、この法案における制度憲法要請にこたえられる裁判確保することが可能な制度ということになっておりまして、憲法上も問題ないというふうに考えているわけでございます。
  20. 松村龍二

    松村龍二君 最近は、時々、地方裁判所の段階で、ある裁判官憲法違反であるというふうな判決をすることがございます。僕は、この制度につきましても、後ほどどこかの訳の分からぬ裁判官地方裁判所憲法違反であるというふうな判決がしないことを期待するわけでございます。  次に、制度導入に向けまして若干気になる点についてお伺いいたします。  裁判員制度については、最近マスコミでも相当頻繁に取り上げられまして、社会関心もそれなりに高まっているように思われます。しかしながら、各種世論調査の結果を見ますと、国民の多くは、裁判国民感覚が反映されることは歓迎しながらも、いざ自分たち裁判員となることについては不安やちゅうちょを感じているように思われるのです。裁判員制度国民裁判員になってもらわなければ動かない制度ですから、国民が自ら裁判員となってもよい、裁判員になりたいと思うようになってもらわないと困るわけでございます。これは相当大変なことだと思いますが、どうしても必要なことだと思われます。  法務大臣にお伺いします。政府は、裁判員制度に対する国民理解を得るための努力をすべきであると考えますが、この点に関してはどのようにお考えでしょうか。
  21. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 議員指摘のように、裁判員制度の円滑な導入、運営には、国民の皆様の支持理解が不可欠でございます。したがいまして、裁判員制度意義やその具体的内容についての理解関心を深めまして、進んで刑事裁判に参加していただけますよう、積極的かつ十分な広報活動を行う必要があると考えております。  具体的には、例えば制度内容を分かりやすく説明したパンフレットやビデオの作成、頒布等考えられるところでありますが、広報活動の効果的な在り方につきましては今後更に検討を進めてまいりたいと考えております。また、長期的には、文部科学省等の御協力をいただきまして、学校教育社会教育の場におきまして司法教育を充実させる等の方策も取り入れ、普及を図ってまいりたいと思っております。
  22. 松村龍二

    松村龍二君 五年間の、施行まで五年という時間があるということでございますが、しっかりこのことをやっていただく必要があると思います。  裁判員制度国民理解を得るためには、刑事裁判の実情が国民から理解してもらえるようなものでなければなりません。現在、一部の事件で見られますように、審理に長期間を要するようなことがしばしば起きるようでは、到底国民に参加してくださいとは言えないかと思います。毎日忙しい生活をしている多くの国民に参加してもらうには、刑事裁判の飛躍的な迅速化が必要であります。  そこで、推進本部事務局長にお伺いいたしますが、一般の国民に参加してもらう以上、裁判迅速化が不可欠だと思われます。そのためにはどのような手当てを行うのでありましょうか。
  23. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 御指摘のとおり、裁判迅速化、これをきちっとしていかなければならないということになりますが、この法案の関係では、刑事訴訟法の一部改正案におきまして二つ大きなポイントを設けております。  一つは、十分なその争点整理を行いまして、明確な審理計画を立てることができるようにするための公判整理手続というものを新たに創設をいたしますとともに、証拠開示につきましてこれを拡充をしていくと、こういう手当てを設けているということが一つでございます。  それから、開廷、法廷を開く場合には連日的開廷を原則とするということ、こういう法定化についても規定を設けるということによりまして、この大きく二つの規定によって迅速化充実化を図っていきたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  24. 松村龍二

    松村龍二君 国民の多くは裁判に直接かかわる経験はございません。裁判所に呼ばれたこともないかと思います。そのような国民裁判員になってもらうわけであります。しかも、重大事件刑事裁判に関与することになるわけでございます。事件関係者から嫌がらせや報復を受けないか、希望したわけでもないのに裁判員となることでプライバシーや平穏な生活が侵害されることはないだろうかといった不安を抱くのは当然であります。そこで、このような制度導入する以上は、国民裁判員になる際に感じる不安をできる限り除去する必要があります。  推進本部事務局長にお伺いします。国民裁判員となることに不安を抱かないようにするために、法案ではどのような手当てをしているのでしょうか。
  25. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 法案では幾つかその手当てをしているわけでございます。  まず、法案の七十二条におきまして、裁判員等の、あるいはその予定者、その氏名、住所等、その個人を特定する情報を公にしてはならないということをまず規定しているわけでございます。それから、七十三条以下でも、裁判員又はその補充裁判員に対する接触を禁ずるという規定を置く。あるいは、その裁判員に対する不当な働き掛けを防ぐという観点から、裁判員に対する請託罪、あるいは裁判員に対する威迫罪、こういうものを設けているわけでございます。それに加えまして、裁判員の氏名等の漏示罪、これを漏らした、これを罪として設けるということにしておりまして、正当な理由がなくその裁判員候補者の氏名などを漏らす行為、これを禁止するということにしているわけでございます。  これ以外に、例えば裁判員、その親族等に対する加害行為が加えられるおそれがあるというような事件に関しましては、裁判員制度の対象事件から除外をするというような制度も設けているということで、いろいろなところでその手当てを講じているということでございます。
  26. 松村龍二

    松村龍二君 次に、多くの議論が行われてまいりました合議体構成する裁判官の、裁判員の人数についてお伺いします。  この点は、政府における法案作成の段階で大変大きな議論になった点であると承知しております。私自身は、報道を始め、この問題に関心が集中し過ぎていたのではないかという感じすら持っておりますが、裁判を行うのは裁判官裁判員合議体である以上、その人数や構成比が制度の基本的な性格に大きな影響を及ぼすことは事実でありまして、その意味では重要な、極めて重要な論点であると考えます。裁判官裁判員の人数については、様々な意見があったと承知しておりますが、法案では原則として裁判官を三人、裁判員六人としております。  法務大臣にお伺いします。この法案において、合議体構成を原則として裁判官三人、裁判員六人としたのはどのような理由からでしょうか。
  27. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) この制度の基本となる合議体構成内容につきましての御質問でございますが、まず評議の実効性確保や、個々の裁判員が責任感と集中力を持って裁判に主体的、実質的に関与することを確保するという観点からいたしまして、合議体全体の規模には一定の限度がありまして、十人に至らない程度が適当であると考えられるところでございます。  次に、裁判員制度の対象事件は、法定合議事件のうちでも特に重大と考えられる一定事件であることから、現行の法定合議事件と同様に、原則として裁判官三人による慎重な審判を行うことが必要であると思われます。そして、合議体全体の規模を一定の限度内とした上で、裁判国民感覚がより反映されるようにするため、相当程度裁判員の数を多くするという観点から、その人数を六人とすることとしたものでございます。
  28. 松村龍二

    松村龍二君 この点に関しましては、裁判官の人数をより少なくして、裁判陪審に近いような民間主体の意見が出るようにというふうな意見とか、あるいは裁判員の人数をより、そのような議論が行われまして、法案に対する批判があるものと承知しております。  推進本部事務局長にお伺いしますが、裁判官三人、裁判員六人では裁判員が実質的に審理に参加できないのではないかという指摘がありますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  29. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この点に関しましては、まず裁判員の数が六名ということでございまして、裁判官の倍の数がいるということが一つ言えるかと思います。それから、その最終的な判断につきましては、裁判員意見を含む過半数意見によるということにしております。それから、この法案でも規定を置いておりますけれども、裁判長は裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならないということにしておりまして、評議のところでも十分に意見を言ってもらえるような、そういうようなシステムを設けているわけでございまして、これらの点を総合して考えれば、裁判員の実質的な関与は十分できると、それが期待できるというふうに私どもは考えているわけでございます。
  30. 松村龍二

    松村龍二君 法案では、一定要件を満たす場合に裁判官一人、裁判員四人の合議体で審理することができることとされております。  推進本部事務局長にお伺いしますが、一定の場合に裁判官一人、裁判員四人の合議体で審理、裁判することができる制度を設けたのはどのような趣旨からでしょうか。
  31. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 裁判員制度の対象になる事件は重大な事件でございますけれども、先ほど申し上げました公判前の整理手続、これによりましてその争点の有無あるいはその程度が公判前に明らかになるわけでございますが、その中には被告人が事実関係を争っていない、あるいは法律解釈訴訟手続上の問題も生じないであろうというような事件も予想されるわけでございます。  こういうような事件について、裁判官三人、裁判員六人という相当規模の大きな合議体の審理、これが常に必要不可欠かということになりますと、必ずしもそうではないんじゃないかと。通常の場合よりも少人数の構成で審理することも差し支えない場合があるということから、裁判官一名、それから裁判員四人の合議体で審理をするという制度を設けるということにしたものでございます。
  32. 松村龍二

    松村龍二君 次に、裁判員制度の対象となる事件の範囲について法務大臣にお伺いしますが、法案においては、裁判員制度の対象事件は死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件と、裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件、すなわち法律合議体で取り扱わなければならない事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るものとされております。裁判員制度の対象事件をこのように法案規定された範囲のものとした理由は何でしょうか。
  33. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) まず、裁判員制度の円滑な導入のためには対象事件を限定する必要があると考えております。そして、その範囲につきましては、国民関心が高く、社会的にも影響の大きい重大事件とすることが相当であると考えたものであります。  そのような観点から、まず、最も重い法定刑が定められている罪として死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件を対象とするとともに、特に国民関心の高いものとして、法定合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件を対象としたものであります。  ちなみに、これに相当する事件の数としては、平成十三年度の統計では約二千八百件程度の事件が起こっております。
  34. 松村龍二

    松村龍二君 法案では、先ほど御紹介したような範囲の事件を対象事件とした上で、一定要件がある場合には、そもそも裁判員の参加しない合議体、すなわち裁判官だけの合議体で審理することができるとする規定を設けております。  推進本部事務局長にお伺いします。対象事件からの除外の制度を設けたのはどのような趣旨からでしょうか。
  35. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 事件によっては、裁判員あるいはその親族等に対する危害が加えられるおそれがあるというものもございます。そのために、裁判員が強く恐れの感情を持ちまして裁判員の職務を行うことができない場合も想定されるということになるわけでございます。  こういうような事件では裁判員の負担が非常に精神的に重くなるということになりますし、その負担を一般の国民に負わせることが妥当でないというふうに思われることが一つはございます。それから、そのような状況にある裁判員に公平で的確な判断を行うことを期待することは困難であるというふうに思われる場合もあり得るということから、例外的に裁判官のみで審理及び裁判をすることができると、こういう規定も設けたということでございます。
  36. 松村龍二

    松村龍二君 またいろいろ突っ込んだ質問は同僚の委員方々から御質問があろうかと思いますので先へ進みますが、裁判員選任についてお伺いします。  法案によれば、裁判員選挙人名簿から無作為で抽出された裁判員候補者から選任されることとされております。裁判員選任方法をどのようなものとするかは制度の基本的性格を決める点であると思われますので、法務大臣にお伺いします。  裁判員選任方法を選挙人名簿からの無作為抽出とした理由をお答えください。
  37. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 裁判員選任方法につきましては、広く一般の国民感覚裁判に反映されるようにするという裁判員制度趣旨からいたしまして、幅広い範囲の国民から選任することが可能な制度が相当であるということ、それからもう一つは、無作為抽出方式でやりますと選任過程の透明性あるいは公平性の確保が容易であることなどを踏まえまして、司法制度改革審議会意見書において提言されているとおり、選挙人名簿からの無作為抽出方式によることが相当と考えたものでございます。
  38. 松村龍二

    松村龍二君 この辺につきましては、また午後、同僚岩井委員からいろいろな観点からまた質問もあろうかというふうに思います。  法案では、裁判員候補者として呼び出された国民は、欠格事由などに該当せず裁判員となる資格を有している場合には一定の辞退事由が認められる場合を除いて裁判員となることを義務付けられております。制度としては裁判員となる国民の同意を条件とする制度もあり得ると思いますが、この点について推進本部事務局長にお伺いいたします。  本法案において、裁判員となることを法律上の義務とした趣旨は何でしょうか。
  39. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 先ほど大臣からも御答弁ございましたように、裁判員、できるだけ幅広い層の国民の中から選任される必要があるわけでございます。そうなりますと、裁判員となることを義務とすることはこうした要請制度的に担保するものでございまして、また、それによりまして国民の負担が平等なものになるというふうに考えられるわけでございます。  これを義務としないということなりますと希望者のみが裁判員となるという制度になってしまうわけでございまして、そうなりますと、最終的に選任される裁判員の資質あるいは考え方、これに偏りが生ずることも懸念がされると、こういう点を考えまして義務付けをしたということでございます。
  40. 松村龍二

    松村龍二君 次の評議及び評決についての質問にも関係いたしますけれども、私ども、政治家になっておりますと、確かに有権者の票の重さというのが平等であると。非常に意識のある人の一票と、まあ、あるいは自分の子供を殺してしまうような若い親の一票も一票であるというふうなことを見るわけですけれども、しかし、票に軽重がないように、国民の一人一人についてこの人が明らかに上だ、この人は下だと、大学教授が昔は賢いということになっておりましたけれども、破廉恥なことをする大学教授もおりますので、そういうことを見ておりますと、確かに国民に軽重の差はないなというようなことも感ずるわけでございます。  評決の要件についてでありますが、この点について、法案では評決の要件合議体員数過半数を要することとされるとともに、その過半数意見裁判官裁判員双方の少なくとも一人の意見を含むものであることを要することとしております。これに関しては、例えば、全員一致によるべきであるとか合議体の人数の三分の二以上の多数によるべきであるという意見もあるようです。  推進本部事務局長にお伺いします。本法案において評決の要件合議体員数過半数を要することとともに、その意見裁判官裁判員双方意見を含むものであることを要することとした理由は何でしょうか。
  41. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) まず、過半数かどうかでございますけれども、これは、ほかにも裁判というのはたくさんあるわけでございますが、すべて今現在ある法律裁判につきましては過半数で決していくということになっておりまして、この裁判員制度だけを特別に扱うという理由はないということから過半数のルールを採用しております。  それからもう一つは、双方意見を含む過半数という、双方意見を含むという点でございますけれども、これは、裁判官裁判員が責任を分担して一緒になってその裁判を行っていくということでございますので、そうなりますと、やっぱり両方の意見を含むという形ですね、これが非常にバランスがいいものであるわけでございまして、権限に差がないということを表すものでございます。  それともう一点は、法による公平な裁判を受ける権利、これを保障している憲法趣旨、こういう点にもかんがみたということでございまして、裁判官裁判員の方が両方入られて、両方の意見が入って裁判が行われると、こういうことで公平な裁判が行われていくという、そういう要請にもかなうと、こういう点でございます。
  42. 松村龍二

    松村龍二君 評決に至るまでには裁判官裁判員が一緒になって評議を行うわけでありますが、裁判内容国民感覚を反映させるという裁判員制度趣旨からすれば、評議においては裁判員が十分にその意見を述べることができるようになっていなければなりません。そうでなければ、裁判員はお飾りであるということにもなりかねません。しかし、裁判員となる国民が皆、議論に慣れているわけではありません。そのような人が裁判員になった場合であってもそのような裁判員感覚をも裁判内容に反映させるのが裁判員制度趣旨なのでありましょう。そうしますと、裁判員意見が評議でできるだけ反映されるような工夫が必要になると思われます。  推進本部事務局長にお伺いします。評議においては裁判員が十分に意見を述べることができるような配慮が必要だと思いますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  43. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいまの点は御指摘のとおりでございまして、この法案で六十六条五項という規定を置かせていただいておりまして、これで、裁判長は裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならないという旨の規定を置いております。これを、規定を設けることによって裁判員が十分に意見を述べ、その職責が果たすことができるよう配慮する義務を課しているわけでございますので、これによりましてきちっと意見が言っていただけるだろうと、こういうことを期待しているわけでございます。
  44. 松村龍二

    松村龍二君 最後に、国民裁判員となりやすくするための措置についてお伺いします。  まず、裁判員制度が円滑に導入され、定着するためには、既に指摘したとおり、裁判員制度国民理解され、支持されるものでなければなりません。また、その点を別にしましても、国民裁判員となることを義務付け、裁判に参加していただく以上、国民の負担が加重なものとならないようにしなければならないことは当然かと思います。  そこで、推進本部事務局長にお伺いします。裁判員となる国民の負担が加重なものとならないようにするため、法案ではどのような手当てが行われているのでしょうか。
  45. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 先ほど、裁判員となることが国民の義務であるということにいたしましたけれども、義務といってもその負担が加重にならないようにすべきということは当然のことでございます。この法案でも幾つかの点でその手当てをしているということでございます。  まず第一点が、辞退事由というものを設けているということでございます。本人の病気あるいは介護、養育の必要など、一定のやむを得ない事由がある場合に辞退を認めるということでございます。それから、迅速で分かりやすい裁判を実現するために、公判整理手続における争点整理を義務付けるということにしております。それから、出頭いたしました裁判員に対し、旅費、日当等を支給をするということ、それから、裁判員の職務のために必要な時間は職場を離れることができ、また、裁判員の職務を行うために仕事を休んだこと等を理由として事業主が不利益な取扱いをすることを禁止をすると、こういうような規定を設けているわけでございます。  そのほかいろいろな規定、先ほどからいろいろな点で裁判員が仕事をしやすいような規定の御紹介を申し上げましたけれども、そういうようなもの全体を含めまして配慮をしているということで御理解を賜りたいと思います。
  46. 松村龍二

    松村龍二君 国民負担という観点から具体的な点を若干伺っておきます。  推進本部事務局長に伺います。  サラリーマンは裁判員となるために休暇を取ることはできるのでしょうか。また、新たに裁判員となる場合に、有給で休暇を取ることができる制度を設けるべきであるとの意見もあるようでありますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。  さらにお伺いします。  法案第七十一条は、「労働者裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員補充裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」と規定しております。ただ、この規定に違反した場合について罰則は設けられていないようであります。  推進本部事務局長にお伺いします。第七十一条の規定、不利益取扱いの禁止は現実にはどのような法的効果を持つことになるのでしょうか。
  47. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) まず、労働者裁判員としてその職務を行うことにつきましては労働基準法の七条の適用があるというふうに考えております。これによりまして、労働者裁判員の職務を行う場合には、労働時間中であってもそのために必要な時間は職場を離れることができるというふうに考えております。  なお、有給休暇制度を設けるかどうかにつきましては、これは事業者側の負担等の問題もございまして、今回はその点については手当てをしていないということになります。  それからもう一点は、七十一条の不利益取扱いの禁止の規定の関係でございますけれども、この規定に反した法律行為あるいは業務命令、これは民事上無効となるというふうに考えております。したがいまして、労働者が業務命令に従わないというような場合でありましても就業義務違反とはならずに、雇用契約上の債務不履行責任は生じないと。例えば、解雇をしたというような場合でも、その解雇は無効となる、こういうような解釈になるということを考えておるわけでございます。
  48. 松村龍二

    松村龍二君 第七十一条のような規定裁判員制度導入するためには必要な規定であろうと思います。ただ、それだけでは恐らく不十分だと思います。職業を持った国民裁判員となりやすくするためには、保護制度整備も必要でしょうが、現実には、会社や社会理解がなければ結局は絵にかいたもちになりかねないのではないでしょうか。  法務大臣にお伺いします。職業を持った国民裁判員となりやすくするためには会社や社会理解を得られるようにする必要があると思われますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  49. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 委員指摘のとおり、裁判員制度がその役割を十分に果たすためには社会全体の理解と協力が不可欠であると考えております。そのような観点から、政府といたしましては、裁判員制度が実施されるまでの間において、裁判員制度意義やその内容についての理解関心を深め、職業を持った国民方々にも進んで刑事裁判に参加していただけるようにするため、積極的かつ十分な広報活動を行う所存でございます。
  50. 松村龍二

    松村龍二君 また、国民裁判員になりやすい制度とするためには、先ほどとは別の意味での負担軽減が必要ではないかと思われます。すなわち、裁判員となることが法律上の義務とされていることから、実際には必ずしも裁判員となることを希望しているわけでもない国民裁判員の職務に就くこととなります。もちろん、広報活動などによって国民理解を得て、その積極的な協力を得ることが理想ではありますが、現実には気が進まないまま裁判員となる人もいるはずです。裁判員は一般の国民であり、その中には裁判員となることを望んでいない人もいるということになると、裁判員になりやすい制度とするためには、裁判員となった国民のプライバシーを最大限尊重することが必要だと思います。  そこで、推進本部事務局長にお伺いします。裁判員のプライバシーが暴露されないようにするため、本法案ではどのような手当てが行われているのでしょうか。
  51. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) プライバシーの保護に関しましては、先ほど申し上げましたけれども、裁判員等の氏名、住所等ですね、この個人を特定する情報を公にしてはならないという規定を置いております。それからまた、裁判員あるいは補充裁判員に対する接触を禁ずるということ、あるいは裁判員の氏名等を漏らす漏示罪でございますけれども、こういうものを設けているというようなことで個人のプライバシーを保護をしている、こういうことでございます。
  52. 松村龍二

    松村龍二君 ただいまの答弁で、裁判員のプライバシー保護という観点から法案第七十三条の裁判員等に対する接触規制について言及がありました。この規定に対しては、一部からメディア規制につながるのではないかという懸念も述べられているようですので、念のため確認しておきたいと思います。  推進本部事務局長にお伺いします。裁判員に対する接触禁止規定を設けた趣旨は何でしょうか。
  53. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) これにつきましては、裁判の公正及びこれに対する信頼確保するためにまず置いているということでございますし、それから、裁判員の生活の平穏を保護してその負担を軽減するためにも必要であるということから設けたものでございまして、これは別にマスコミだけが対象になるわけではなくて、すべてのものが対象になるということで御理解を賜りたいと思います。
  54. 松村龍二

    松村龍二君 以上で私の質問を終わりますが、この法案は、国民というのはこういうものだろうと、ステレオタイプといいますか、裁判官三名、裁判員六名おれば、裁判員は、大体裁判員、三名にきちっとリードされて必要な発言をするだろうというふうなステレオタイプ的なことでこの案が進められているようですが、実際の国民というのは、司法試験の勉強をしていてこの裁判員になった人も出てくるでしょうし、それから、いろいろ社会のいろいろな活動をしておりまして、非常に議論が、自分の意見を強硬に言う国民も混じるでしょうし、非常に、実際にやる場合にはいろいろ考えていたのと違うような側面もあろうかと思いますので、この五年間の間によくいろいろな、実験というわけにはいかぬでしょうけれども、この制度について認識を深めていって、この制度がうまくいくようにお願いすることを要望いたしまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  55. 江田五月

    江田五月君 昨日は、私ども民主党、大変試練の日でございました。菅直人代表が自らの年金問題で政治不信を増幅したという理由辞任をされました。まあそれやこれやで遅くまで党内の議論が続きまして、質問の通告が深夜になって、十分な通告ができていないというのをまず冒頭おわびをしておきます。  私は、今やはり歴史的な変革期だと思いますね。今が歴史の曲がり角。戦争か平和かといった問題もありますが、同時に、その他のいろんな制度改革をしていかなきゃならぬということもあると。この裁判員制度というのもやはりその一つだと思いますし、また年金改革もその一つだと。市場システムの前提としての社会在り方、これをこの裁判に至るまで国民が参加するようなシステムにするとか、あるいはみんなに一番基本的な年金だけはちゃんと用意をするとか、そうした大きな変革期で、まあそういう制度の変革を乗り切っていく法律を次々と作っていく、そういう私ども国会議員が今国民の皆さんから十分信用されていないということは、これは大変重要なことだと思っております。  年金については、これは、政府の案、私どもはそれでは一番基本的な年金による老後の支えが準備できていないというので一元化ということを言っておりまして、その一元化については、衆議院の議論の中で国会と政党間に協議機関ができるということになったようでございまして、これは、是非これをしっかりしたものにしなきゃいけないと思っておりますが、国民をしっかり支えるということについて言えば、一部大変不幸な関係で無年金になった、こういうケースについては、裁判所がこれは憲法違反だと、そんなことも言っているわけですね。どこかのおかしな裁判官憲法違反をという、そうじゃないんで、やはりこれは、裁判所がそういうことを言っているということは我々重く受け止めていかなきゃならぬと思うんですが。  そこで、実は私も自分の年金はちゃんとなっているともう思い込んでおりまして、しかし、念のためと思って調べましたら、裁判官を辞めて国会議員になるまでの国会議員でない期間がちょっとあって、その間が数か月国民年金に入ってなかったと。大変申し訳なく思っております。今から二十年以上前の話で、しかも、その最初のころは国会議員になると国民年金に入れないという時代ですから、その国民年金に入れない国会議員になろうとする何か月か国民年金に入れというのもなかなか理解できない状態ではあったけれども、それにしてもこれは申し訳ないと思っておりますが。そう思っていたら、今度、六年前に一緒に岡山県で当選した相方が、今度はこれ一議席をめぐって熾烈な争いをするんですが、その同僚議員は、昨日発表されましたが、国会議員になってから十一年九か月国民年金に入っていなかったというようなことで、これは私、責めるつもりありません。もう本当に皆そういうことになってしまっていて。  しかし、やっぱりこれは、国会議員、今すべて年金加入状況こうだと。私は、ひとつ国会議員は、もうその間は特別立法でさかのぼって年金掛金を払うと、払ってつながるというのは申し訳ないから、それは期間に算入しないと、そんなことでもやって、国民の皆さんに、それで済むかどうか分かりませんが、ひとつ頭を丸めるということぐらいやらなきゃいけないんじゃないかと思っておりますが、裁判員制度のずばりの関係じゃありませんが、国民の皆さんとの信頼をしっかり回復しないと、この裁判員制度国民の皆さんに大変な負担を掛ける制度ですので、前提としてそういう信頼確立ということが必要だと思うのであえて大臣にお伺いをしますが、大臣大臣の年金の状況というのは、これはお調べになりましたか。
  56. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) この問題につきましては、私、衆議院でも同じようなお尋ねがございまして、そこでもお答えをしておりますが、私は国民年金が強制加入となりました昭和六十一年四月以前から日本鉄道共済年金の繰上げ受給を受けておりまして、国民年金未納というような問題は生じないと承知しております。  以上でございますが。
  57. 江田五月

    江田五月君 年金受給者だったの。
  58. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 大変やりくりが苦しいものですから、減額の先取り支給をいただいておると、こういうことでございます。
  59. 江田五月

    江田五月君 ほっとしました。本当にほっとしたんです。本当に皆、本当に明らかにすべきで、しかし、それは、もうそういう今までの制度の欠陥が一杯あるからしようがないところがあるんで、それですぐ責任とかという話じゃなくて、ちゃんとした始末を付けるということが必要だと思っております。  さて、そこで、この歴史的変革期に当たって司法制度を変えるということですが、今回の裁判員制度、これはそういう歴史的な変革なんだと、先日、四月の二十八日でしたか、本会議で私も質問に立たせていただいて大臣に伺いましたが、もう一度、委員会質疑ですので、歴史的な変革期の、日本司法というものを歴史的に変えていくんだという、そういう覚悟というか、気概といいますか、これをお聞かせください。
  60. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 今回の裁判員制度導入されまして、国民感覚裁判内容に反映されるようになることによりまして司法に対する国民理解支持が一層深まり、現在にも増して司法はより強固な国民的基盤を得ることができるようになるものと考えておりまして、先日、委員から本会議において御指摘をされた点につきましては、私も大いに同感するところがあるわけでございます。そのような意味で、裁判員制度導入につきましては、我が国司法にとって極めて重要な意義のある大きな改革であると考えております。  刑事裁判制度の運用に当たっている裁判官検察官弁護士においても、このような裁判員制度趣旨を十分に理解した上で裁判員に分かりやすい裁判とすることや、裁判員も十分に発言することのできる充実した評議が行われるようにすることなどによりまして、制度趣旨の実現に努めることが期待されているものと考えております。今までも裁判の結果というものは大変国民の皆様からは最も信頼された制度であると思いますが、更にそれが国民的な基盤としてしっかりまた確立されるということで、委員も御指摘されましたとおり、五十年、百年に一度の改革に相当する歴史的な意義ある仕事と考えております。
  61. 江田五月

    江田五月君 大臣は、基本的にはこれまでの司法というものは、まあ刑事司法だけに限ってもいいんですが、国民から信頼されている、しかしそれを更にという、そういうお話ですが、私は必ずしも信頼されていないという面がやはりあったのではないかと。裁判が長いということもありますが、裁判を受ける者、これは刑事司法ですから、裁判を受ける者は、有罪が確定しないとそれは悪いことをしたということが確定するわけじゃないけれども、それでも、まあ何かおずおずと出ていくわけですよね。そうすると、しかし、やっぱり聞いてもらいたいことも一杯あるという人たちばかりなんですが、なかなか聞いてもらえるという雰囲気にならない、怖い、十分に弁解を聞いてくれない。まあ民事裁判の場合なんかはもう書面だけのやり取りで、準備書面陳述ですね、はい、じゃ次回期日はといって、あとは弁護士さんがずっと手帳を見ながら、もうその日は詰まっています、詰まっています、何で詰まっているかよく分からぬ、ゴルフの約束とか、どんどん先へ延ばされてとか、ゴルフの約束とは言わないんですね、そのときは、手帳を見ているだけで。生きた裁判になかなかなっていない。  刑事裁判でも、特に、多少長くなるとやっぱり間に更新手続なんかが入って裁判官が替わる。あのときあの裁判官に自分は言って聞いてもらったのに、今度の裁判官はそれを聞いてくれているんだろうか。何か更新といったって、別にそれは弁護士が、弁護人が強く求めればいろんな更新はやるけれども、普通ならば更新というだけの話ですから。  というようなことで、今の刑事裁判が私は国民から十分信頼されていない、国民の満足を得るような裁判になっていない、そういうところもあると思うんですが、法務大臣、そういう認識はおありなんでしょうか。
  62. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 委員が多年の実務上の御経験を踏まえて現在の制度についての御意見を幾つかお持ちだということについては私も大いに敬意を表するところでございますが、我が国の現在の刑事裁判につきましては、基本的には国民信頼を得ているものと私は認識をしているところでございます。  国民の意識、価値観が多様化し、社会が急速に変化する中で、御指摘のとおりに裁判に時間が掛かり過ぎる、時として刑が重過ぎたり軽過ぎたりする刑の軽重の問題も議論になりますし、それから、裁判手続内容が分かりにくいという点は私どもにとっては本当に深刻な問題でもございまして、このような指摘があることは十分承知をしております。  今後、司法の果たすべき役割がより大きくなっていく中で、司法がその機能をより多く果たしていくためには国民的基盤をより強固にすることが必要であるということが今回の改革一つのきっかけになっているわけでございますが、この裁判員制度導入されまして国民感覚裁判により反映されるようになりますと、司法に対する国民理解支持が一層深まりまして、より強い基盤を得ることができるというふうに今考えているわけでございます。  加えまして、今回の裁判員制度導入されますと、何よりもやはり一般の方々が参加していただけるということで、これを迅速に行うという連日的開廷というような制度導入することになっておりますし、また手続判決内容裁判員方々により分かりやすいものとする必要がありますから、ひいてはこれが国民にとって分かりやすい裁判が実現される道につながる、こういうこと考えられます。  そして、国民刑事裁判の過程に参加していただくことによりまして、広く社会秩序や治安あるいは犯罪の被害や人権といった問題について国民の皆様がこの際ひとつ一人一人お考えいただく大きなこれはきっかけになっていくのではないかなと、こう考えておりまして、基本的に今のが駄目だからというよりも、より一層改善をする、改革をするという観点からの御提言を申し上げているところでございます。
  63. 江田五月

    江田五月君 余りそこをぎりぎり詰めてもそれほど生産的な話じゃないけれども、やはり大臣、そこは是非分かっていただきたいのは、こういう国会とかあるいは霞が関とか、そういうところにいたら分からないんですよ。しかし、現場に行くと本当に、特に裁判受けている人たちというのは、それはやっぱり言いたいことを聞いてもらった、で、その上で十分な証拠調べでなるほどと、しかも最後にしっかり諭されて、納得して、そして受刑するという、そういうプロセスがあるかというと、決してそれはそうじゃない。  事件が最近はかなり迅速になってきている。しかし、迅速といいながら、それは迅速でやることだけをやろうと思うと、裁判官がぼんぼんぼんぼんやれば速くはなりますよね。だけれども、やっぱり十分な納得というものがあるとは言えないという状況は、それは大臣、いや、それはあるでしょうとはお答えできないのかもしれませんが、これは分かっておいていただきたいと強く申し上げておきます。  そして、私は、この裁判員制度導入が、とにかく一般の人から選ばれた裁判員裁判をしてもらう、そこまで裁判手続が一般の人に分かるようなものになっていかなきゃいけないわけですから、そうすると、専門用語で審理をするようなことでは到底駄目とか、あるいは十分納得のいくまで言い分を聞いてもらえるようになるとか、そういうような刑事裁判の変化がこの裁判員導入によってできていくことは必要なことだと。あるいはそれが、そういうことができていくように制度設計をちゃんとして、あるいは運用をきっちりすべきだと。それによって、国民裁判に参加をしながら裁判を支える、そして裁判国民的にも深い信頼を置くようになると、これがこの制度の一番重要なかなめだと思っております。  もう一度伺いますが、今の裁判について国民が満足しているかしていないかというところはいいですから、しかし裁判がそういうふうに、私、今申し上げたように、みんなの納得と確信と信頼と、そういうものになっていくための制度だということはいかがなんですか。
  64. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 正にその点こそ今回の制度の、新しいこの法案を提出している理由でございまして、私自身も、わずかな経験の中ではございますが、裁判は大変取り付くのが難しいということは確かでございますし、それから、やればまた時間が掛かる、お金も掛かる、そしてなかなかやり取りの中で分かりにくい専門的なお話も幾つか克服しなければならない、何とかしなきゃいかぬということは確かにあったかと思います。ただ、その裁判制度そのものに関する国民的な信頼という意味からしたら、私は日本裁判制度司法制度というのは先進国の中でも比較的信頼、信用された部分ではなかったかなと。私どもはこれまで政治改革や行政の改革を一生懸命やってまいりましたが、その意味では、信頼、信用されたがゆえにこの問題の解決がやや手間取ったのではないかなと思います。  今委員指摘のような問題点をもちろん持った上での改革への取組でございますので、基本的には現状を一層より良いものに改革をするということで進んでいきたいと思っております。
  65. 江田五月

    江田五月君 もう一つ、今の刑事司法について、国民の中で不満もあり、また私どももこれは変えなきゃいかぬなというのは、裁判の前のこと、つまり捜査ですね。日本刑事司法というのは、やっぱり自白に頼り過ぎている面があるんです。それから、裁判自体も供述書面に頼り過ぎているとか、また自白偏重というもののもう一つの現れというのは、どうしても捜査が密室、捜査というのは元々密室の面はありますけれども、また単に物理的に密室というだけじゃなくて密行性というもの、それはありますけれども、それにしてもやはり後から捜査をチェックをしてみるというようなことがなかなか難しい。  そういう現実があって、この裁判員制度になったらそこが変わってくると。これは副次的効果かもしれませんが、裁判員制度の中で一般の人に十分分かっていただくような、そういう捜査の過程でなければ一般人を納得させられないですから、そういう副次効果も私はあると思いますが、大臣、いかがですか。
  66. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 正に御指摘のとおりかと思います。今回、事前の争点を明確にする手続を法定化しましたのも、そこのところが正にねらいでございまして、分かりやすく証拠を事前にそろえる、それによって審議を進めるということから、今委員指摘のとおり、客観的なだれにでも分かるやはり事実、起訴事実が出てくるんではないかなと、こう思っておりまして、今回は裁判そのものだけではなくて、その事前の捜査の段階から大きくこれは問題が改善されるものと考えております。
  67. 江田五月

    江田五月君 そこで、捜査の段階がこういうことでございましたという、これ裁判員制度になったら、特にそこはもうぱっと裁判員の方に分かっていただくようになっていなきゃいけないんで、いや、密室で責められて無理やりに、これを言ったらもうおまえ外出られるからなどなどというようなことが言われることがよくあります。よくありますので、捜査の可視化と、易しい言葉でと言いながらそんな難しい言葉を使っちゃいけないんですが、よく見えるように、捜査の経過が。これは録音、録画といったこともあるでしょうし、既に諸外国でもそういうことをもうちゃんとやっている、我が国の近隣の国でもそういうことをしているのですが、可視化というテーマがあって、以前、裁判迅速化法案のときに参議院のこの法務委員会で附帯決議も付けさせていただいたりしているんですが、これは可視化をすぐ今どうするというのはなかなかお答えにくいところかもしれませんが、可視化が必要だと、そういう意識を頭の片隅に置いているかどうか、これを法務大臣から。
  68. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) これまでも度々御指摘をいただき、御要望もいただいておるところでございますが、この取扱いにつきましては、捜査全体のシステムそのものともかかわり合いもございますので、そういった全体の見直しの中で御議論をいただくべきものと考えておりまして、日弁連等でもそういった取組もしておられるようですが、今後の課題として十分受け止めさせていただきたいと思います。
  69. 江田五月

    江田五月君 これは受け止めてください。  本当に、捜査の現場の人は、何を言っているんだ、捜査が分からぬやつが要らぬことを言うんじゃない、捜査はこれでなきゃできるもんかという、そういう意識があるんですよね。それもそれでよく、その皆さんの気持ちとしては分からぬわけじゃない。だけれども、やっぱりそれでは国民裁判員として入ってきたときに、その裁判員の皆さんの納得を得るわけにいかないということがあると思いますよ。その辺りでもこれは革命的な変革なんです。  さて、裁判官は、これから五年後は一般の人に交じって裁判体を構成してやるということになるので、これはなかなか大変だと思いますね。裁判官は寝ているか寝ていないか知りませんが、黙ってじっと座って聞いているというのは得意かもしれませんけれども、しかし、本当に人の話を十分聞き出すというようなことは余り得意じゃない、あるいは人を説得していくということも余り得意じゃない、おれが決めるんだからというね。あるいは合意を作っていく、そのために押したり引いたりするということも余り得意じゃないと思うんですよね。  そこで、この五年の間に、裁判官にそういう合意形成の、あるいは人の話を聞いたり人を説得したりという、そういう技術を磨いてもらわなきゃならぬと思うんですが、最高裁の方では、この裁判員制度導入されたら裁判員と一緒に裁判体を構成する裁判官にこういう資質が必要だと、そのためにはこういう準備をこれからしていくんだと、そんなことを何かお考えでしょうか。
  70. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 議員委員指摘のとおりの能力がこれからますます強く要請されるようになるだろうと思います。  裁判員裁判においても、適正な手続の下で証拠に基づいた認定を行っていくと。それが法による裁判を保障するということになるんだろうと思います。法によるこういった裁判を実現していくためには、裁判官裁判員に対して証拠内容ですとか、あるいは法律解釈手続の意味といったようなことを丁寧に分かりやすく説明していく。分かりやすくと、これなかなか本当に専門用語を分かりやすく説明するというのは非常に難しいんですけれども、私どもとしても、そういった専門用語をどうやって分かりやすくしていかなくてはいかぬかということをひとつ考えていかなくてはいかぬだろうと思っております。  こういったきちんとした説明をする中で、一人一人の裁判員から意見を引き出して、そして十分な意見交換を行っていく必要があるだろうと。そうしませんと、結局、なかなか裁判官裁判員との間の意思の疎通が十分にできないということになりますし、そういったことをきちっと行っていけるようにする中で参加していただいた裁判員方々が、その裁判の中に意見が反映されていくという、そういう裁判員制度趣旨もまた生かされてくることになるんだろうと思います。  委員指摘のように、裁判官にはコミュニケーション能力を含めたいろいろな能力がこれまで以上に必要とされるようになります。今までも不十分ではあるかもしれませんけれども、法廷での訴訟運営ですとか打合せ、あるいは民事ですと和解といったような手続の中でそういった能力を生かす、あるいは身に付けていく場面はあったわけですけれども、今後は更にそれが一層強く求められていくようになると思います。  裁判所ではこういった問題意識を持っておりまして、昨年の長官・所長会同でも、裁判官のそういった能力、資質をどう高めていくかということが議論されました。今後は、諸外国でも参審国等では、裁判官参審員とが評議を行い、その中でいろいろ議論をしていって一つ判断をしておるわけですので、そういったところの実情等も研究した上で、その成果を踏まえ、裁判員の参加する刑事裁判を想定した実践的な研修といったようなこともこれから考えていきたいというふうに思っております。  今後も引き続いて、短期的あるいは中期的なその方策考えていきたいというふうに思っております。
  71. 江田五月

    江田五月君 もう一方で、国民も実はまだ裁判員制度については、まあ迷っているといいますか、迷うところまで行っていないかもしれない、よく知らない人が、それがもう大部分で、実を言うと、これ私どもは衆議院で可決をするまでの間、党内でもいろいろ議論しましたが、大変な議論がありました、率直に言って。  私もみんなに理解を、同僚議員理解をしていただくために大変苦労をいたしましたし、なお今もまだいろんな議論があるので、よく衆議院で全党、全会一致で可決されたなと、本当にそう思っている、そのくらいなところなので、国民の皆さんにこれから分かっていただく、そして決してこれは何か憂うつな、頭を抱えるようなことじゃなくて、むしろ裁判というのは分かりやすい、ある意味では楽しい、楽しいと言うとちょっと語弊はあるけれども、何か達成感のあるそういう仕事なので、当たったら喜んで行かなきゃというそういうところまで、喜んではなかなか難しいかもしれないけれども、それでも行って裁判をしてこようという、そういうことになっていくようにいろんな啓発をしていかなきゃならぬと思いますが、推進本部の方はどういうことを今お考えですか。
  72. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいま御指摘の点、正にこの制度のかなめだろうというふうに私も意識しております。  この五年間、施行期間をいただいている、そういう案を提案させていただいておりますけれども、やはりこの間に、国民方々にきついけれどもやってみようと、そういうような気持ちになるような、そういうような宣伝活動、広報活動が大変重要になっていくというふうに私ども理解をしております。  そのためには、まずこの制度自体の手続内容とかその意義、ここをきちっと理解をしていただくことが必要かなと思います。そのためには、難しい専門用語の羅列ではなくて平易な言葉でそれを表すというようなことから、例えば制度内容説明したパンフレットとかあるいはビデオ、そういうような作成、頒布、それから講演会等の開催、それから今、法科大学院ではもう必ず法廷を持っているようでございますので、そういうような模擬法廷の実施とか様々なことが考えられています。それで、裁判国民にもう少し身近になるような、そういうような広報活動を続けていきたいというふうに思うわけでございます。
  73. 江田五月

    江田五月君 広報活動という意味でいえば、例えば模擬裁判やるとか映画を作るとかいろいろあると思うんですが、日弁連が「裁判員」という映画を作りまして、石坂浩二さんが裁判官になって、あのケースは裁判官とあとは裁判員と、裁判官一人なんですけれども、あれを見て、まだあれでもやっぱり石坂浩二裁判長は難しい言葉を使い過ぎていると。しかし、それは現実の、さあ今日から始まるというときを想定した映画ですから、恐らくまだ精一杯、裁判員制度理解を持った裁判官がやってもあのくらいだということを多分あの映画は意識してちょっと難しめに作っているんだろうと思いますけれども。  さて、これ通告していませんが、簡単なことですから、裁判員制度、「裁判員」というその映画、ごらんになりましたかどうか。大臣、副大臣、政務官、それから政府参考人の皆さん、皆さん見たかどうかお答えください。
  74. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) まだ見ておりません。
  75. 実川幸夫

    ○副大臣(実川幸夫君) まだ見ておりません。
  76. 中野清

    大臣政務官(中野清君) まだ見ておりませんですけれども。
  77. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 見ております。
  78. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 内容の要約は承知しておりますが、通して見る時間ございませんでした。
  79. 横田尤孝

    政府参考人横田尤孝君) 見ておりません。
  80. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 見ております。
  81. 江田五月

    江田五月君 決して責めるつもりじゃないんです、これも。是非見てください。それはもちろんドラマですから、現実はなかなか難しいこと一杯あるけれども、いろんなことがその中に入っています。最後に、やっぱりあれは良かったと思うんですが、裁判官国民と接することによってやっぱり自分の気持ちが変わってくるんですね。これがなかなかいいので、時間がないのはよく分かりますけれども、是非見てください。  そして、更にもっと国民に分かっていただけるような、そういう設定の啓発の映画を作るとか、何かポンチ絵かいて、こうでこうで、ああでああでと言うだけでは、それはやっぱり血が通いませんよ。是非そういうこともやっていただきたいと思います。  さて、それと、やはりそういうことをやりながら、模擬裁判もしたりいろんなことをやりながらこの五年の間に、私どもは五年じゃなくても三年で実施したらどうだと思っておるんですが、いずれにせよ、実施までの間、これはある程度の期間が必要。その間にいろんなことをやりながら、うん、ここはやっぱりちょっと変えた方がいいなというようなところが出てきたら、やはりこれは過ちを改むるにはばかることなかれで、変えることもどうぞ柔らか頭で対応していただきたいと思うんですが、まだ決まってないこともいろいろありますよね。  そこで、ひとつ、これも決まってないことを聞くんですから決まってないというお答えになるかと思いますが、どんなことをお考えだというので、併合罪処理ですよね。この裁判員制度の対象事件と非対象事件がある。これは適当な場合には併合してやるということになっているけれども、どうも適当でない場合というのも一杯あるでしょう。それは対象事件でないものは複雑で、相当の証拠調べも必要で、とても裁判員の皆さんに対象事件じゃないのに手間を取らせるというのも困るというような場合があるかもしれません。  そういう場合は判決二つになるんで、これは併合罪加重の刑法の処理が行われませんから、それだけでいえばこれは被告人に不利になります。裁判員制度自体が被告人に不利になるぞと、とにかく今の裁判大体軽過ぎるんで、これは裁判員の皆さん入れたら大体刑が重くなるぞというような見方もあって、それはどうだか分かりません。データはちょっとないと思いますね。しかし、今の併合罪処理の関係というのは、これはきっちりしたことをやっておかないと、これは制度上明らかに被告人に不利になるわけで、そこはどう考えておられるのか、お伺いします。
  82. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいま御指摘の点につきましては、私どもに設けられました検討会、この中でも議論がされたわけでございますけれども、最終的には結論を出すに至らなかったということでこの法案の中には入っていないということでございます。  これについてどうしていくかということでございますけれども、その弁論を例えば併合しないまま審理が行われた場合の刑の調整の制度につきましては、様々ないろんな私どもの検討会でも議論があったわけでございますけれども、やはり併合罪の刑を科すその在り方の問題、あるいはその裁判員制度対象事件以外の刑事事件の処理、こういうものにも大いに関係するわけでございますので、ある意味じゃ総合的に考えていかなければなかなか解決が難しい点でもございます。  この法案、御承認をいただいた後、この点についても継続して検討を続けていかざるを得ないだろうという認識を持っているわけでございます。ただいま御指摘ございましたように、それでその施行の前に必要であるということで法改正が必要であれば、それもやらざるを得ないだろうという認識は持っているわけでございます。
  83. 江田五月

    江田五月君 併合罪というこの処理の仕方自体をやめてしまうというような頭はあるんですか。
  84. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) まだ議論はそこまでいっておりませんけれども、その議論を詰めていきますと、そういう問題も全部一応視野に入れて最終的にどういう形に持っていくかということで総合的な検討は必要であろうというふうに思っております。
  85. 江田五月

    江田五月君 是非、しかしその大前提として裁判員制度が入ることによって被告人にというか、国民に刑、国民に科せられる、国民が受刑しなきゃならぬ期間が長くなる、この制度があるがゆえに長くなるというようなことにはならないようにすると、それは言えるんですかね。
  86. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) これは両面ございますので、例えばAとBとの事件がありまして、それぞれでその判断をすれば、それは有期懲役だという場合もあり得ますけれども、ただ、それが一緒になった場合には無期懲役という考え方もあるわけでございますので、その被告人に有利なものとそれからやっぱり不利なもの両面がありまして、これはそのやはりバランスを取って物を考えなきゃなりませんので、被告人の立場とそれからやっぱり被害者の立場ですね、被害者の遺族の立場、国民感情両方ございますので、この辺のところはやっぱり総合的に考えていかざるを得ないということで、必ずしも片っ方の意見だけでやるかどうかはちょっと別だということでございます。
  87. 江田五月

    江田五月君 次に、これは法務省の方に伺っておかなきゃならぬのですが、裁判員制度導入すると、例えば裁判の経過を記録にしますね。その記録というのは、これはすぐできてこなきゃいけませんね。まあ大体直接主義、口頭主義で裁判を開いているときに、公判手続の中で証人なら証人の供述を直接聞いて、それで心証を取るということですが、それでも終わって評議室に入って議論していると、あの証人こう言った、いや、そうではない、こう言ったんだなんということで、じゃ、まあ記録を見てみようというようなことにそれはしなきゃいけないんで、記録はなしで済むというわけにはやっぱりいかない。何かの形で、それが書面になるのか、それとも何か電磁記録的なものになるのか、これはいろいろあると思うんですけれどもね。  いずれにしても、そういうことをちゃんとやるためには相当の予算措置が必要であろうと思います。あるいは、環境整備ということを衆議院で修正で入れさせてもらっていますが、国民裁判員になりやすくするように、それは、裁判所に託児施設を設けるというようなこともあるかもしれないし、いろんなことがございます。今の啓発、そのためにもいろんな予算も必要だろうし、それから、弁護士の皆さんが一つおっしゃっているのは、接見がスムーズにできないと、連日開廷なんというときに、接見に余りにも、接見室がなくてずっと並んで三時間も待ってなんというようなことだと連日開廷に間に合わないと、現実に。したがって、接見の設備なんかももっと拡充してほしいという、そういう現実的な要求も出ているんですが、そういうようなことで、これはやっぱり金ですね、金はなかなか大変だと思います。  裁判所予算もあるだろうし法務省予算もあるだろうし、いろんなところに予算がある。法務省は、やっぱりここはもう、財務省とどんな折衝をしてでも裁判員制度がちゃんと動くように予算的な措置はきっちりやるという、やはり大臣、そういう覚悟が要ると思うんですが、いかがですか。
  88. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 正に委員指摘のとおりでございまして、今この制度を本当に実行していくためには、制度をまず整えることも大事ですが、ハードウエアの方ですね。今のお話のような接見の部屋も問題でしょうし、裁判室そのものも、委員が、六人裁判員が入るとすると改造が必要になる。広さもまたあれでいいかどうかということで、先日、私も、隣にあります東京地裁の現場へ参りまして裁判の実況を拝見し、また、担当の裁判官やあるいは責任者の皆様とも御相談をしてまいりました。相当これは抜本的な手当てをしないといけないなという印象を持って帰ったわけでございます。  その意味で、広報活動の段階から、あるいは先ほど申しました教育の内容改革、それからハードウエアの改革含めて、しっかりした予算の裏付けがございませんと、絵にかいたもちと言ったらなんですが、画竜点睛を欠くということになってはいけませんので、これは事前に十分見積りをいたしまして、円滑な裁判ができるような予算措置だけは私どもの方で責任を持って確保してまいりたいと考えております。
  89. 江田五月

    江田五月君 責任を持って確保をお願いいたします。  もう一つ、今、接見のことをちょっと言ったんですが、連日開廷になると、弁護人の方としては、ちょっとここを確認したいと、被告人にですね、身柄拘束されている被告人に、この場合は。しかし、一々接見に行って手続を取ってというと、それはなかなか大変。電話でちょっと確認、あの金払ったのいつだったかねというようなことぐらいですよね。そういう電話接見というのは何か考えてあげなきゃいけないんじゃないかと。  その場合に、これは弁護人であるかどうかの確認が拘置所の方ではできないからとかいろいろあるようですが、例えば、例えば裁判所にどこかに設置した電話とか、検察庁に設置した電話とか、信頼関係に基づいて弁護士会の会館に設置した電話とか、そういうところで、そこへちゃんとだれか担当者がいればとかいろんな方法はあると思うんですが、これは、今そういうことを私これは要望したいんですが、大臣、どういう態度でそれを、私の要望をお受け止めになりますか。
  90. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) お気持ちはよく分かるところでございますが、今のルールの中では、被収容者の電話の使用については、刑事訴訟法上の接見の中に電話の使用が含まれていない、あるいは監獄法令上その使用は認められていないということでございます。  電話による通話につきましては、必ずしもその相手方が弁護人であるかどうか十分確認ができないということもございまして、逃亡若しくは罪証隠滅の防止の観点や施設の規律及び秩序維持の観点からの問題もあると考えておりますが、なお、昨年からやりましたいわゆる行刑改革審議会におきましては、既決の方々についての電話利用についての道は検討するということで承っておりまして、今後の監獄法改正の中でもその辺についての検討は十分しなければいけないとは考えております。
  91. 江田五月

    江田五月君 これはやはり、今おっしゃったような問題点はあるんですが、そこをクリアするやり方というのは、これだけ技術が進んでいるときですから、それはいろんな、証拠隠滅の関係などなどあるのはよく分かっていますが、しかし、そういう被告人ばかりじゃないので、ごく普通の市民が被告人になるんですよ。被告人になったのは全部暴力団の何とかというわけじゃないので、そこはいろんな、今の問題点を克服する方法を見付けると、こういう覚悟を是非持っていただきたいと思います。  細かなことをいろいろと聞かなきゃならない点はあるんですが、もう少し、整理手続ですよね。  これは、起訴状一本主義との関係で整理手続というもの自体が大問題だと言う人もいます。それは、起訴状一本主義というのは裁判所が予断、偏見を持っちゃいけない、起訴状が来て、その起訴状に書いてある公訴事実だけしかない段階で裁判が始まって、そこから後はもう当事者が、双方が対等にやり合って、それを裁判所が聞くんだという、こういう思想ですよね。  しかし、今回は、その第一回の期日が始まる前に裁判所、三人の裁判官がいろんな整理手続に入るわけですから、起訴状一本主義からすると、ちょっとこれは問題だと言われる面あるだろうと。  私自身は、起訴状一本主義というのも何かもう神聖不可侵な大原則というわけではなくて、起訴状一本主義の精神にのっとりながら、しかし、そこはいろんな裁判を運用していく過程の中で、どういいますか、修正があってもいいと。起訴状一本主義の精神、しかし、よりそのほかの原理原則と一体となって裁判がうまく動いていくようにということで事前の整理手続というのを入れるということはいいと思うんですけれども、その起訴状一本主義との関係、これは一体どうお考えになっておるのかお答えください。
  92. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 起訴状一本主義につきましては、今回、この裁判員制度法案を提出させていただいておりますけれども、その下でも妥当するという考えであるということでございます。内容的には今御説明申し上げます。  もう一つポイントは、裁判員制度裁判はこれから行われていくわけでございますけれども、従来型の裁判、これも残るわけでございますので、そうなりますと、両方の制度それぞれ整合的に説明が付かなければならないという命題を抱えるわけでございます。したがいまして、そこはある程度共通にルールは考える。それから、内容的にはどういう説明をしていくかと、こういう認識を持っているわけでございます。  この内容でございますけれども、まず、その起訴状一本主義の趣旨でございますけれども、公訴提起の際の検察官から裁判所への一件記録の提出を認めない、こういうことによりまして、捜査機関の心証が裁判所へ一方的に引き継がれ、裁判所があらかじめ事件の実体について心証を形成して公判に臨むこと、これを防止することにあると一般的に言われているわけでございますけれども、今回の公判整理手続がポイントになろうかと思いますけれども、これにつきましては、当事者に主張の予定を明らかにさせたり、それから証拠調べ請求、あるいはそれに対する証拠意見、こういうことを明らかにさせるということになるわけでございますけれども、これは、公判審理が計画的に円滑的に進行するようにその準備をするために行うと、こういう性格のものでございまして、これも、両当事者が主張に、あるいは証拠に触れるということでありまして、そこから心証を形成するという、そういうものではないということと、それから、両当事者がひとしく参加する場合において行われるということでございまして、これはその両者が対等な立場でそこで行っていくということでございますので、一方的にどちらからどちらにその証拠を提出をしてあらかじめ心証を取るとか、こういうようなものではないということでございます。  そういう点を考えますと、例えば証拠に触れるという場合には、その証拠能力の判断とか、それから証拠開示の裁定、こういうもので証拠に触れることもあり得るわけでございますけれども、これもその証拠能力の有無とかあるいは証拠開示の要否の判断のために証拠を確認するという手続でございまして、その証拠の信用性を判断するわけではないということになるわけでございます。  したがいまして、公判整理手続は、事件の実体面について心証形成を目的とするものではなくて、実際に裁判所が心証を形成することもないわけでございまして、受訴裁判所公判整理手続を主宰しても起訴状一本主義に抵触するものではないというふうに考えておるわけでございます。
  93. 江田五月

    江田五月君 やはりそれは理屈の世界であって、現実にはなかなかそうはいかない。  起訴状一本主義、私は、起訴状一本主義も一つの原理だが、そのほかにもいろんな原理があって、それの総合調整で裁判というのは成り立つ、そういう多元的な世界だと思いますけれども、したがって、起訴状一本主義とこれはちょっと違うけれどもここの範囲ならいいんだということだろうと思うんですが、今みたいに起訴状一本主義には全然抵触しないんだ、それはこうこうがああいう理由だというんじゃ、それは理屈の世界であって、現実はなかなかそうはいかないですよ。  やっぱりそれは、起訴状があって、そして公訴事実の朗読があって、黙秘権の告知、弁解を聞いて、そこからでなきゃ裁判は始まらないという大原則からすると、その前に、その前に既に、これは争いはどこなんです、ああ、殺したこと自体は争いじゃないんですか、なるほどとかね、というふうなことをやるわけでしょう。そうすると、それは心証取りますよ、そこで。  ですから、そういう説明じゃなくて、もっと何か、どういうか、もう少ししっかりした理念を持った説明の方がいいんじゃないかと思いますがね。ここでやり取りしてもしようがないんですかね。  私は、受訴裁判所がやるという方法よりも、むしろ受命裁判官かあるいはできれば受訴裁判所と別の準備裁判官整理裁判官は別に置くとか、そういうことの方がいいんじゃないかと思いますが、そういう考えは全然ないですか。
  94. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この点につきましては検討会でも両意見があったと記憶しております。最終的には受訴裁判所がやるということになるわけでございますけれども、やはりこれから審理をどういうふうにしていくかということでございますので、それを整理する裁判官とそれを行う裁判官、全く別々にやるということになったときに、本当にその手続的な流れが本当につなげるのかと、心証じゃございませんけれども、手続的な流れでございますけれども、そういう点について、どの範囲できちっと証拠調べをしていくかということはやっぱり受訴裁判所が一番関心のあるところでございますので、それを別の裁判官が決めてそのとおりやるということで果たしていいのかどうかという点も考慮をいたしまして、やはり受訴裁判所で行う、こういう選択をしたということでございます。
  95. 江田五月

    江田五月君 だから、受訴裁判所でやることが絶対駄目と言っているんじゃないんですが、起訴状一本主義とはそこはちょっと、確かに起訴状一本主義の精神を壊さないようにはするけれども、形式的にはやっぱり多少違ってくるということじゃないかと思いますよ。  大臣が次の予定がおありだということで、取りあえずこれで今日は終わります。
  96. 山本保

    委員長山本保君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  97. 山本保

    委員長山本保君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  98. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 私、今回の裁判員制度に必ずしも反対というわけではないんですけれども、果たして我が国の現状においてこういう制度がいいのかどうか、かなり素朴な疑問を持っておりますので、そういう立場から幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  まず最初の疑問は、現在、我が国状況からして、裁判員制度導入する土壌というものが果たして育っているのかどうかというその点、大いに疑問に思っておるわけであります。すなわち、素人が裁判に参加するということで、裁判の適正、裁判への信頼というものが損なわれるのではないかと、そういう心配をしておるわけであります。  それからまた、今回の法律では、普通の人ならすべての人が裁判員となることを法律上の義務とされておるわけでございますけれども、したがいまして、忙しいからといって拒否できないわけですし、子供が大学受験中だからといって拒否できるわけでもありませんし、あるいは海外旅行を計画中だからといって拒否できるわけでもないということで、どうもその辺が納得できないというのか、むちゃくちゃなことではないのかなと、こう思うわけであります。個人の自由はどこに行ったのかと。  私は、大きく分けまして今言いました二つの素朴な疑問を持っているわけであります。  まず、最初の質問をさせていただきますが、裁判員制度我が国の伝統とか国民性に合わないのではないかという意見がかなりあるかと思います。この点に関する所見をお伺いしたいと思います。
  99. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいま御指摘のその意見につきましては、この案を練る段階にもいろいろございました。私どもも、日本の伝統とか文化に合うのかと、こういう観点からも御意見をちょうだいしております。この点もよく考えた上で、最終的にこういう案を練ったわけでございます。  基本的には、私どもも日本の伝統文化、これは守るべきだろうと思いますけれども、ただ、伝統文化というのは時代とともにも変わってくるという性質のものでございまして、そういう点も考えたということが前提にございます。  まず前提として、戦前でございますけれども、十五年間にわたりまして陪審員制度裁判ですね、これを日本でも導入してきたというまず歴史があるということは一つ言えるかと思います。それとともに、戦後はそれはないわけでございますが、それと類似のものとして検察審査会制度というものがこれは五十年以上続いて行われているわけでございまして、正に国民参加司法手続ということで行われてきている、こういう伝統もあるということでございます。それから、ここまでの制度ではございませんけれども、民事関係で調停委員とか司法委員という形でその手続に参加をしていただいていると、こういうものも現在あるということでございます。  それともう一つは、世界の各国で、主要な国として、何らかの意味で刑事裁判国民が参加をするという手続、これはいろんな形があり得ますけれども、そういうものを持っていない国というのは本当に日本プラス幾つかという、そういうような状況にございまして、少なくともG8の中では我が国だけがそういう制度を持っていないと、こういう指摘がされているわけでございまして、これがそれほどおかしい制度であれば世界で何十か国もこういう制度を本当に導入していくかということでございますし、先進国では皆こういうものを導入していっている。それがある意味の民主主義の在り方一つであるというふうな考え方で来ているわけでございまして、これは私どもとしても自前のものも持っていますし、それから、世界の各国の例を見てもこれはもう長年の間根付いてきているわけでございます。  ですから、我が国に最も適したような形で導入をしていくと、こういうことは日本の伝統とか文化に合うのではないかと、こういう点を考えまして、戦前、陪審員制度というのを行ったわけでございますが、そういう制度をそのまま復活ということではなくて、裁判官裁判員がともに評議をして、ともに決断を下していくと、こういう制度我が国に合うのではないかということで御提言をさせていただいたと、こういうことでございます。
  100. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 まだちょっとよく分からないんですけれども、ヨーロッパ、アメリカ、世界の各国、G8の話されましたけれども、G8、ほかの国がこうだからこうでなけりゃいかぬということはないと思うんですよね。宗教一つ考えても、多くの国は一神教だし、こっちは多神教だということがありますので、ちょっと今の説明ではもう一つよく分かりませんので、必然性がよく分からない。  もう一度、同じ趣旨質問を角度を変えて質問させていただきたいと思います。  今回の裁判員制度は、三年前の司法制度改革審議会意見が契機となって立法化の作業が始まったというふうに私は認識しております。この法律を制定するに至った社会的背景というのは何か、裁判員制度導入がなぜ今我が国で必要なのかというところがよく私には分からないわけでございますけれども、そういった必然性、社会的な必然性というものがあるんでしょうか。
  101. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 我が国刑事裁判をどう見るかということにもなるわけでございますけれども、午前中、大臣の方からも答弁ございましたけれども、基本的には国民信頼を得ているものというふうに認識はしておりますけれども、ただ、国民の意識、価値観が非常に多様化して社会が急速に変化してくると、こういう時代でございます。そうなりますと、やっぱり国民裁判に求めるものもだんだん質が違ってくるわけでございまして、例えば裁判に時間が掛かり過ぎるとか、時には刑が重過ぎる、軽過ぎる、いろいろな御批判があったり、それから、あるいは手続が時間が掛かり過ぎる、これをもっとどうにか短縮できないのかと、あるいはもう周りから見ても分かりにくいと、これじゃなかなか裁判というのは自分たちのものということにならないと、こういうような御批判があったわけでございます。  特に、この裁判に関しましては、社会が非常に複雑多様化をいたしまして、社会構造も変わってくるということでございますので、明確なルールと自己責任原則に貫かれました事後チェック・救済型の社会、これが求められているわけでございますので、基本的には自由に活動はしていただくと。しかしながら、何か問題があれば、それは最後は裁判で決着をする。一つは民事裁判できちっとやる、それから違法なことをした場合には刑事で厳しく処罰をしていくと、こういう社会在り方が変わってきているわけであります。したがいまして、刑事裁判に求める内容的なものも時代とともに変わってきているわけでございます。  そういう意味で、やっぱり国民の感情がある程度納得するような判決をちゃんとやってほしい、それから裁判に時間が掛からずに速やかに結論を下してほしい、そういうような思いが国民の中にあるわけでございます。そうなりますと、国民の方がその裁判の中に参加をしていただいて、そこに判断を加えていただいて、最終的には裁判というものが国民に納得できるようなもの、自分たちも参加して決めたものである、こういうようなことによって社会に、国民の方に納得をしていただこうと、こういうような大きな流れが出てきているということでございまして、その辺のところを酌みまして今回のその制度につなげていったと、こういうことでございます。
  102. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 国民の現在の裁判制度に対する不信感みたいなものがあって、何とかしなきゃいかぬのだと。いろいろ問題点は、それはあろうかと思いますけれども、その点について、午前中、江田先生は極めて不信感が国民の間に渦巻いているみたいな感じのことをおっしゃいましたよね。ですけれども、法務大臣はそれ、そうじゃないと、今特段これという問題はないというふうに明確にお答えになっているわけですよ。そういう前提に立ったときに、なぜこれやらなければならないのかという社会的な必然性ですよね、そこがやっぱりどうも私にはよく分からない。  別の観点から質問いたします。この法律目的です。裁判員制度は、市民の感覚裁判に反映させて、納得性と信頼性の高い裁判を実現しよう、これが基本的な目的だと思います。司法国民化という問題、つまり国民司法参加による公共精神の養成という面もあるとは思いますが、これはどちらかというと副次的なものだと私は理解しております。そういう理解、間違いでしょうか。
  103. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいまのをちょっとお答えする前に、先ほど大臣の御答弁と私の答弁の点がありましたけれども、私も基本的には大臣と同じでございます。現在は、ある意味じゃ基本的には順調にいっているんですけれども、やはり個々に見れば、国民の目から見ればいろんな点が御指摘があって、そういう声にどうこたえていくかと、そういう時代が変わってきているという、そういう認識を申し上げているわけでございますので、そこは御理解を賜りたいというふうに思います。  ただいまの御指摘の、御質問の点でございますけれども、私ども、裁判員制度意義は、広く国民裁判の過程に参加をして、その感覚裁判内容に反映されることによって司法に対する国民理解支持が深まっていくと、これが目的であるということでございまして、ただいま御指摘のように、国民刑事裁判の過程に直接参加をしていただくことによって、社会秩序やあるいは治安、あるいは犯罪の被害者や人権といった問題ですね、こういう問題、国民一人一人にもかかわりがある問題だと考えていただく契機になるということでございまして、正にそれは副次的なものであるという理解でございます。
  104. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 司法国民化ということは極めて私はやっぱり大事なことだとは思います。そういう司法国民化という目的を達成するために、今回の裁判員制度もその一つかも分かりませんけれども、それ以外にもいろいろと政策があろうかと思うんですね。要は、そういういろんな政策のうち、現在急がなければならない政策は何かということだろうと思うんですけれども、そういう見方を私はしておるんですが、そういう見方につきまして御所見ございますか。
  105. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 確かに、御指摘のとおり、裁判国民がどう参加をしていくかということはこの司法制度改革の中の大きな一つのテーマでございます。そのために、もう現実に幾つか御承認いただいているものもございますし、今その途中のものもあるということでございます。  御承認いただいたものとしては、昨年、調停の手続の中に民事調停官とか家事調停官という形で弁護士さんがそこに参加をしてもらうという制度、それから、あるいは裁判官選任をするときに指名諮問委員会というものを設けまして、ここに裁判官以外の方に入っていただいて、そこで諮問をしてもらうとか、こういう形もやらせていただきました。それから、裁判所の運営に裁判官以外の外部の方に入っていただいて意見をちょうだいするという制度、これも設けてまいりました。これが今までやってきたものでございます。  今後の問題でございますが、現在御承認をいただきたいということで提案をさせていただいているのが、検察審査会権限を拡大するということで、この法案の中にも含まれているわけでございます。  それから、判事補あるいは検事がその身分を保有しながら一定期間外へ出て弁護士になって、それで民間の感覚というんですか、外の感覚を学んで元の仕事に戻っていくという、これも今御承認をいただくべくここに継続させていただいているものでございますけれども、こういうものがございます。  それからもう一つは、もう御承認いただきましたけれども、労働事件の関係で労働審判制度導入いたしまして、労働界の、労働に関する有識者に裁判の中に参加をしてもらいまして、審判の中に参加をしていただきまして一緒に判断をしていくと、こういう制度も既に導入させていただきましたけれども、こういうものの中の一環として、その中の一番大きなものとしてこの裁判員制度を位置付けているわけでございまして、まず、裁判員制度の御承認を早くお願いをしたいと考えているところでございます。
  106. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 私は、政策の選択の問題だろうと思っておりまして、まだちょっとこの裁判員制度そのものは我が国においてちょっと早過ぎるのではないか、まだほかにやるべき政策が幾つかあるのではないかという気がして仕方ないわけであります。  要は、これ裁判ですからね、裁くわけです、人を裁くわけでありますからね。法律専門家としての訓練を受けていない裁判員が有罪か無罪かというだけ、陪審制度というか、だけだったらまあ分からぬでもないんですけれども、有罪である場合には犯した罪に見合った刑、つまり量刑を科すという大変難しい判断をしなければならないわけですよね。素人の裁判員が量刑を科すという刑事裁判の基本的役割をきちっと果たせるのかどうかという、そこに大変大きな疑問を持ちます。そういう根本的な問題につきまして、法務大臣はどのようにお考えになっておるのでしょうか。
  107. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 一番基本的な点につきまして委員が御質問をいただいておりまして、私も法務大臣を拝命してから、この制度をどうこれから前進させるかについて、最初に持ちました問題意識が今議員が展開されておりますような論点であったわけでございます。その中でいろいろ勉強しているところで、やはりこれは大変意義のある制度であるということにだんだん気が付いてきた中でこの審議をいただいているわけでございますけれども、今回のこの法案で、裁判員は有罪、無罪の決定及びお話がありましたような刑の量定についての判断をすると、裁判官と同等の権限を持って判決内容の決定に関与をするわけでございます。  この判断の前提として必要な法的な知識、刑事裁判手続等につきましては、公判の審理開始前に、公判審理の間あるいは最終の評議等の場をとらえまして裁判官から丁重な説明がなされるものと考えておるわけでございまして、これにつきましては法第六十六条五項でしっかりと決めてございます。  そして、裁判員制度の大事なところは、裁判官裁判員がともに評議して、相互のコミュニケーションを通してそれぞれの知識経験を共有し、適正な結論に到達することが期待されると、こういうことでございますが、量刑につきましても、審理の最終段階で検察官から同種の事件における量刑を踏まえていわゆる求刑が行われます。これが一つ判断のステップになるわけでございますが、また被告人弁護人からもこれに対応する形で量刑に対する意見が当然これ述べられるわけでございまして、裁判員はまずこれらの意見参考にしながら量刑に関する判断を行うことが可能となるわけであります。  当然、裁判官の立場といたしましても、過去における判例等についての資料は十分説明が行われるものと考えておりますが、そしてその評議の段階におきまして、裁判官は必要に応じて他の事件における量刑、いわゆる判例ですね、これを紹介しながら意見を述べることができますし、裁判員はこれも参考にしながら判断を行うことができるということで、量刑の幅というものはそれほど広いものではなくて、相当集約されたところで判断が可能ではないかなと。  私自身も、実は、今委員が御疑問に持たれたような前提で問題をたどってみると、何とかいけそうだなと、こういう今感じになっておりますが、このように裁判官裁判員が一緒に協働して作業することによりまして、裁判員制度の下においても刑事裁判の基本的な役割が適切に果たされるものと考えておりますが、六人というその人数はその意味でも相当、国民の皆様の良識をある程度代表できるものと信頼してよろしいんじゃないかなと思っておるわけでございます。
  108. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 今大臣、コミュニケーションという言葉を使われました。午前中の質疑の中で、政府参考人からもコミュニケーションという言葉があったかと思います。合議体でございますから、裁判官のコミュニケーション能力が求められるというふうな意味合いでコミュニケーションという言葉が使われたと思います。十分な意見交換が必要である、そういう認識に立っての御発言だったと思います。  それから、江田先生からは、やっぱり合意を作っていくために押したり引いたりすることが必要だと。それから、日弁連の映画、「裁判員」という映画でしょうか、その話もなさいました。石坂浩二扮する裁判長が、コミュニケーションを重ねていく中で自分の気持ちが変わってくるという趣旨をなさいました。そこが問題なんです。そこが私は問題だと思っておりまして、松村先生の午前中の話とちょっと違うことを申し上げるかも分かりませんけれども、私は憲法違反ではないかと。  日本憲法第七十六条第三項に「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」という規定があります。裁判官職権独立規定でありまして、そもそも裁判官独立の原則とは何かということがこの際問題になるのだと思います。  裁判員制度におきまして、裁判員の思いと職業裁判官の思いとが一致するということが必然でない以上、裁判員職業裁判官を評議において拘束し得ることが前提となっているかと思います。  この点につきまして、憲法第七十六条第三項の原則に反するおそれがあるのではございませんか。
  109. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 確かに憲法七十六条三項に裁判官職権独立について規定がございます。  この規定でございますけれども、この趣旨は、裁判官が個々の具体的な訴訟事件裁判を行うに当たって、外部の国家機関あるいは政党など、社会、それから社会的、政治的なそういうような勢力からいかなる命令や指示も受けてはならず、またいかなる圧力やその影響も受けてはならないと、こういう原則を示しているというのが一般的な解釈でございます。このように、この原則は、裁判のその合議体の外部の者からの独立、これを保障しているというものでございます。  現行法上も、例えば、それぞれ独立して職権を行使する裁判官合議構成するわけでございますけれども、その合議が全員一致ならばそれはそれでいいんでしょうけれども、そうじゃない場合には最終的に多数決で決めるというルールになっているわけでございますので、そうなりますと、個々の裁判官意見が通らないということもあり得るわけでございますけれども、これは憲法に違反するものではないというふうに考えられておりまして、これは外部からの圧力じゃございませんで自分たちの議論の中の多数決の問題だということで、そういうことを考えると、これは憲法には違反をしないというふうに考えられると思います。
  110. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 憲法解釈みたいな話はもう私は余りよく分かりませんので、もうこれ以上突っ込んで議論はできないと思いますけれども、今お話しになったようなこと、国民に、一般国民に、我々も含めて、合憲であるということを分かりやすく平易な言葉でどこかに何かお書きに、これ法律になったらですよ、なった暁にはみたいなことかも分かりませんけれども、やっぱりちゃんと説明していただく必要があるように思いますので、その点だけお願いを申しておきたいと思います。  次に、裁判員に、素人の方が多いと思うんですけれども、求められる、この制度において裁判員に求められる判断力というのはどのようなものでしょうか、判断力。
  111. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この裁判員制度では、裁判員の方には、裁判官とともに評議をして、証拠の信用性、これを評価して有罪、無罪をまず決めていただく、それから、有罪の場合には、刑をどのぐらいのものにするかという判断をしてもらうということにしているわけでございますけれども、これらの判断事項については、法と良心に従ってやるわけでございまして、いわゆる法令に従って公平誠実に判断するということが求められておりまして、この法案の中の九条一項でもその旨の規定を置いているということでございまして、基本は、法律に従って判断をすると、公平な判断をすると、これが求められる判断力ということになろうかと思います。
  112. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 その辺がどうも分かりにくいところがあるんですね。  戦後の教育改革だけが原因でないと思いますけれども、近年、記憶力は優れているけれども判断力弱いという人、増えているようなんですね。判断力というものは、その人の経験だとか学習から生まれてくるものだと思いますけれども、そのやはり一番底にある基盤というものは何か、私は判断力の基盤、それは歴史と伝統文化であるというふうに実は考えておるわけでありますが。戦後、我が国では、学校教育、家庭教育、社会教育などにおいて歴史と伝統文化がややおろそかにされてきた嫌いがあるのではないか、特に家庭教育の問題が大きいかもしれない、そんなふうにも思います。  したがいまして、現在、いい加減な判断力しか持ち合わせていないような人が結構多いのではないかと私は感じているんですよね。したがいまして、私は、今回の裁判員制度、これスタートするんであれば、できるだけ小さく産んで時間を掛けて大きく育てると、根気強く大きく育てるということで少しずつ改善していくというふうなことが大事なのかなと思うんです。  私はやっぱり、私の身の回りの人にも多いんですけれども、裁判員判断力について疑問に思っている人が多いんでございます。裁判員の資質を維持するためには、取りあえずは一定の、そこは難しいかも分かりませんが、一定の有識者を選考して裁判員になってもらう、そういうふうにならぬかなと、こう思ったりしておるんでございますけれども、その点、推進本部事務局長、いかがでございましょうか。
  113. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいま御指摘の点で、判断力をきちっと発揮していただくために、実はもう少し小さいころからの司法教育、これがこの制度とともに非常に重要になってくるということで、現在その関係の詰めを、別途法務省の方でも文部科学省といろいろ相談をしながら、これから低学年の生徒から司法教育をきちっと教えて、それで、その最終的に選ばれたときにきちっとした判断力ができるよう、判断ができるようにと、こういうようなことも考えておるわけでございます。  御指摘の点でございますけれども、選考方式をどうするかということでございます。世界的にはいろんな例があるわけでございますけれども、有識者方式という方式と、それから無作為抽出方式がございます。どちらかというと無作為抽出の方が多いということでございまして、この理由でございますけれども、まず有識者方式を取りますと、裁判員の母体、選ぶ母体、これを一定の均質な基盤ですね、そこのところに限定をしてしまうという可能性がございます。  それから、無作為抽出方式では選任手続の透明性、公平性が容易でありますけれども、有識者選考方式では公正公平な選考を確保できる組織だとかあるいは機関の設置、それから選考基準とか、こういうものをきちっと決めなければならないわけでございますけれども、現実にそれで公平に選ぶということになるわけでございますが、本当にこれが可能かどうかということは、これは大変な手続になるという問題がございます。  それから、裁判員の選ばれる方は相当の数に上ることになってくるわけでございますけれども、こういうような相当な数を有識者の選考方式で本当に選んでいくことが可能かどうか、こういう点でいろいろ考えてみると、有識者方式というのはかなり難点があるということでございます。それで、私どもは最終的にはその無作為抽出方式を取ったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、戦後五十年以上行われております裁判員制度、失礼しました、検察審査会制度でございますけれども、これに関しましても無作為抽出方式一定のものを加えながら行っておりまして、これで五十年の歴史を持っていて、それで大きな問題点はないと、こういうような経験もございましたのでこちらの方式を選ばせていただいたということでございます。
  114. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 政府のお考えは分かりましたけれども、もう近年、御承知のように、親が自分の子供を殺すというようなケースもいろいろ出てきておるわけだし、そこまでいかなくても家庭がもうおかしいというのが多いんですよね、現実は多いと思います。したがって、私はいい加減な判断力しかない人とそれから普通の判断力がある人を峻別して、普通の判断力のある人というか、しかるべき有識者ということになるのかも分かりませんけれども、そういう人を厳選していくと。疑わしきは選ばないということで、厳選してもらいたいなという感じがしているんですね。私はやっぱり判断力に問題があると思われるような人が人を裁く私は資格はないのではないかと思います。これはちょっとこれ以上申し上げても同じような答えしかいただけないと思いますのでやめたいと思います。  次の質問に移りたいと思いますけれども、法律の専門家でない一般の国民にもっともっと裁判ということを、司法ということを、あるいは今申し上げました判断力を、きっちりした判断力を付けてもらう、そのための国としての努力、制度としての努力というものが必要だと思います。その点につきましてどのようなことをお考え、手だてをお考えになっているのか、推進本部事務局長にお伺いしたいと思います。
  115. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この点に関しましてここで幾つか、この法案でも幾つか措置を講じているということになります。  まず、十分な争点整理を行いまして明確な審理計画を立てるようにするということを可能にするために、公判整理手続というものを創設するということにしております。それから、裁判員制度の対象事件については、これは必ずこの手続を行うという形にさせていただいています。それから、公判期日でございますけれども、できるだけ連日継続して開廷をすると、こういうようなことを設けているわけでございます。それから、専門的な知識を要する法律解釈あるいは訴訟手続に関する問題につきましては、裁判官判断をするということにしております。  これが一つの、まあ幾つかの措置でございますが、これ以外に、裁判官公判の審理開始前あるいは公判の審理の間、あるいは最終の評議の場をとらえて丁寧な分かりやすい説明をして十分に裁判員の方に意見を言ってもらうような形にしなければならないという規定も置いております。それからまた裁判官検察官弁護人全員に対してでございますけれども、審理を迅速で分かりやすいものにするという努力義務、こういうものも課しているわけでございまして、こういうものを総合してなるべく裁判員の方に分かりやすく判断をきちっとやってもらえるような、そういう手当てを講じているということでございます。
  116. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 くどいようですけれども、私の身の回りの人にいろいろお聞きしますと、こういう心配もあるんですね。やはり法律あるいは裁判ということについて専門家でない一般の国民裁判員ということで裁判に参画すると、やっぱり法と事実に基づいて判断できればいいんだけれども、どうしても感情に流されたり、あるいは社会の雰囲気に、マスコミの風潮とか社会の雰囲気に流されるようなことがないのかなと。もしそういうことがあれば、やはりその裁判員制度導入した結果、裁判そのものの信頼性というものが損なわれると思うんですよね。絶対そういうことはあってはならないと思うわけであります。もう一遍、くどいようであれですが、大丈夫ですか、事務局長さん。
  117. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいま御指摘のとおりに、感情とか社会のいろんな動きに流されてはいけないと、そのとおりでございます。  この法案の中ではそういう点についての若干、いろいろ配慮をしておりまして、例えば法に従った公平な裁判を行うということを担保するために事件関係者等を裁判員から除外する制度がまずございます。それから、不公平な裁判をするおそれがある者、こういう者もいるわけでございますので、こういう者については事前の手続でそれを排除していくもの、こういう手続も設けているわけでございます。それ以外に、理由を示すのははばかりがありますけれども、理由を示さないで裁判員選任をしないと、こういうような制度、こういう制度も設けている、これはいわゆる不選任請求の制度と言っているわけでございますが、こういうものも設けているということでございまして、このものを使って最終的にこの裁判がきちっとできない方についてはお引き取りを願うと、こういうような制度を設けているということがまず第一点でございます。  それから、これは裁判員裁判官一緒に話し合ってそれで最終的な結論を出していくということでございまして、その過程を通じて適切な結論になっていくだろうということが期待されるということと、それからもう一つは、やっぱり一般の国民の方、非常に難しい法律解釈とかそれから訴訟上の手続の細かいところまでこれを判断するのは非常に難しいわけでございますので、こういう点につきましては裁判官のみで判断をするという形で負担を軽減しているわけでございますので、こういう点を全部合わせて使っていただければ御心配になるような点はないだろうと考えておるわけでございます。
  118. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 次に、辞退の問題に移りたいと思います。  裁判員となることを法律上の義務としたとしても、どうしてもやりたくないという人が現実にいる以上、そのような場合にどう対処するのかという問題、どうしても生じてくるのではないかというふうに思います。裁判員になることを義務とする場合にはどのような場合には辞退が認められるのか、この点が極めて重要な問題だと思います。その具体的な範囲をどう決めるのか。これ一歩間違いますと憲法違反の問題も出てくるのではないか、単にやりたくないというだけで辞退を認めるのでは義務とした趣旨が損なわれるということにもなるわけでありますので、この問題は大変難しい問題だなと思っておるわけであります。  で、質問でありますけれども、どうしても裁判員になりたくないという人につきましても無理やり裁判員を務めさせることになるのでしょうか。どうしてもそうせざるを得ないんでしょうか。そこは何か工夫がないんでしょうか。その点、お聞きします。
  119. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この点に関しましては、この法案を練るそのいろいろ作業の段階でもいろいろ御意見がございまして、最も強い意見としては、どうしてもやりたくない人に首に縄を付けてまでやらせるのかと、こういうような御議論もあったわけでございます。私どもも、その辺もある程度考慮しながらこの制度を構築をしているということになるわけでございます。  まず、基本的には、裁判員候補の方に出頭義務を課して行わないと、これはやりたい人だけになってしまうということで平等ではなくなるということと、それから広い層からその候補者を得られないという問題がございますので、義務を掛けることはいたしますけれども、これが過酷なものになってしまってはそれは問題があるということでございます。  そこで、この法案においても典型的な四つの事由法律できちっと定めまして、これに当たる方については辞退を認めていくと、こういう方向でやろうと、それからもちろん政令で定めるものもあるということで、これが一つのものでございます。  で、そこでその辞退という制度があるわけでございますけれども、辞退も、単にやりたくないというだけではこれは辞退の事由には当たらないというふうに考えているわけでございます。ただ問題は、先ほど御指摘がありましたように、強硬にやりたくないと、どうしてもやりたくないという方がおられると思います。こういう方を本当に裁判の方でじゃお願いをするということになったときに、本当に正常な判断ができるかどうかという問題も出てくるわけでございます。これが、そういう事態に至るということになれば、やはり公平な裁判をすることができないおそれがあるということにも当たり得るわけでございます。そういう場合には選任をしないという形でお引き取りを願うということももちろんあります。  それからもう一つは、理由は付さなくてもいいけれども、両当事者が何人かは理由を付さないでこの人にはお引き取りを願いたいと、こういうことができる制度も設けておりますので、この制度を使ってお引き取りを願うということになるわけでございまして、最終的にはこういうことを通じながら、本当にどうしてもやりたくないという方についてはこの裁判員に無理無理なってもらうということにはならないであろうというふうに考えているわけでございます。
  120. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 辞退の事由、その他やむを得ない事由、政令で定めるということになっておるわけでありますが、やむを得ない事由というのは、政令でその範囲を拡張するということではなくて、本来法律で定めるべきところを、範囲を明確にするという趣旨だと思います。その他やむを得ない事由の範囲を、解釈にゆだねないで政令で規定するということに問題はないのかなというちょっと感じも大いに、まあ議論、議論があるのかなと。  質問でございますけれども、第十六条第七号のその他やむを得ない事由法律ではなくって政令で定めるということにされた理由、あわせて、やむを得ない事由に関する政令はどのような内容のものになるのか、お答えいただきたいと思います。
  121. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 十六条の考え方でございますけれども、この十六条七号には、法律でその典型的な類型、これを掲げるという考え方にしておりまして、典型的とは言えないかもしれないけれども、ある一定事由はやっぱり認めざるを得ないかもしれないと、こういうものに関しまして、ただその解釈だということではなくて、やっぱり国民の方にある程度分かりやすいような形にしなければならない。それから、そういう事由は典型例ではないかもしれませんけれども、それから時代によって変わってくるという可能性もあるわけでございますので、そうなりますと、その都度法律を変えていくかということにもなるわけでございますので、そこはある程度時代の流れにも対処できるように、政令という形でそこは必要なものは変えていくと、こういうような形で政令にゆだねて、それで時代のその流れにも対応できる。  それから、これからもこの法案が成立しましても、施行までにどういうことをここに盛り込んだらいいかということは、国民のいろいろな意見をお聞きしながら、典型ではないかもしれないけれども、これは事由として掲げるべきかどうかというものについて、いろいろ御意見を聞きながら定めていくと、こういうことになろうかと思います。  そういうような役目としまして、法律ではっきり典型的なものは決める、典型以外のものについては政令で定めると、こういう役割でこの法律を作っているわけでございます。この中につきましては、どういうことを盛っていくかということは、これからいろいろそのいろんな意見をお聞きしながら最終的に決めていきたいと思っているわけでございます。
  122. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 もう大体政令の中身が決まっているのかなと思ったら、これからまあ広く意見を聞いて定めるんだいうことでございますので、ちょっと、じゃ私、気になっている、こういう場合どうかというのをどうお考えになっておるかですね。それも国民意見を聞いてから、それから考えるんや、検討するんだということかも分かりませんけれども、例えば個人商店ですよ、個人商店、それから中小企業の経営者ですね。その人がしばらく商売留守にしたらもう仕事成り立たないということが僕はあると思うんですね。そういう場合はどうなんでしょうか。
  123. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 十六条七号のハというところにその関係の規定が設けられておりますけれども、「その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるもの」、こういう規定でございまして、これの解釈ということになろうかと思いますけれども、単に個人商店あるいは中小企業を営んでいるということから辞退ができるということにはならないということではございますけれども、ここに書いてございますように、やっぱり自分がその業務をこなさないとその事業がもうおかしくなってしまうとか駄目になってしまうと、こういうような事情の方については辞退ができると、こういう解釈でここに書かれているわけでございますので、その事由いかんによるということになろうかと思います。
  124. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 じゃ、私はとても人を裁く自信はありませんという人はどうなりますでしょうか。
  125. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 済みません、もう一つ今答弁漏らしましたけれども、人を裁く自信がないというだけでは、これは辞退事由には該当しないというふうに考えております。先ほど申し上げましたように、それが自信がないというだけではなくて、もう強硬に自分はそんなとこへ行くの嫌だというような場合ですね。それで、もう正常な判断ができないおそれがあるというようなことになれば、先ほど言ったような手続を使いましてお引き取り願うということはあり得ても、これで辞退を認めるという形にはならないということでございます。
  126. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 次に、同じような質問でございますけれども、いわゆる思想、信条を理由とした辞退、つまり裁判員として人を裁くことそのものがその人の思想に反する、宗教上の理由だとかいろんな理由があると思いますけれども、そういう人を裁判員にすると、憲法上保障された思想の自由を侵害することになるのではないかと、そんなふうに思います。そのような事態に至る特別の場合の辞退というのは当然認められるんだろうなと思っていますけれども、しかしそれを認めると、私は思想上の理由で辞退させてほしいという、そういうケースが出てきて、本当の思想上の理由、宗教上の理由の場合と、ただ便法としてそう言っているのとの区別がちょっと付きにくいというようなことも起こってくるのではないかと思いますけれども、その点につきましてはどのようにお考えでしょうか。
  127. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 確かに思想、良心の自由等、憲法上の権利を侵すこととなるような義務付けを行うということは許されないということになりますので、そのような場合には政令で定めるやむを得ない事由があるものとして、辞退することができることを政令において何らかの形で明らかにするということは現在考えているところでございます。  ただ、その思想、良心の自由というものについてですけれども、これはそもそも人が人を裁くような、そういう裁判制度そのものを強要しないと、こういう考え方によるわけでございまして、ただ私は、自分は裁きたくないと言っている方について、それが本当に思想、良心の憲法上の行使かということになるかどうかという問題は微妙な問題があろうかと思います。  いずれにしましても、私どもは、ここのところはよく周知徹底をいたしまして、なるべく参加をしていただけるような、そういうような形で処理をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  128. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 なかなか難しいですね。  冒頭に申し上げましたように、私は、現在の我が国には裁判員制度導入する土壌というものが果たして育っているのかどうか、その点大いに疑問にも思っておるわけでございます。素人が裁判に参加することによってその裁判の適正、裁判への信頼というものが損なわれる結果にならないのかどうかと心配しているわけですね。  また、今回の法律では、普通の人ならすべての人が裁判員となることを法律上の義務とされておるわけでございますけれども、冒頭に言いましたように、忙しいからといって拒否できるわけでもないと、子供が大学受験中だから嫌やというわけにもいかない、あるいは海外旅行を今計画中だからということで拒否することもできないということで、何かちょっとしっくりせぬような感じもいまだに残っておるわけでございます。そういう二つの素朴な疑問、疑念がなかなか払拭できないわけであります。  幾つか質問をさせていただきましたけれども、必ずしも反対というわけじゃないんですけれども、賛成しようか反対しようかちょっと迷っているということなんでございますけれどもね、迷っておるわけです。大臣、自民党には実は私のような人が多いんですよ、結構。結構多い。  最後に大臣にお聞きしたいと思います。  裁判員制度につきまして、我が国社会にこれを受け入れる土壌が育っているということが必要だと思います。法案によりますと、幸い法律施行までは五年近い余裕がありますので、政府にはこの間最大限の努力をしてもらわなければなりません。当然だと思います。政府として一番大事なことは、国民判断力といいますか、国民の資質を高めるために今後早急に私は歴史と伝統文化を重視する政策を国全体として取っていく必要があるのではないか。私たちは歴史と伝統文化に生きるのではなくて、私たちは歴史と伝統文化を生きておるのだというのが私の常日ごろの考えでありますけれども、その歴史と伝統文化ということにつきまして今回のこの裁判員制度と大いに関係があると思うんですね、そこのところで。ということで、法務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  129. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 良識の府として正に国民の皆様の一番大事なところを代表しております参議院での御議論、これはもう大変実は大事であると思っております。そして、今率直に岩井議員の方からも問題点が指摘され、そしてこれに対する政府の対応について御質問がございました。その意味で、ここでの御理解が正に私はこの法案の成否を懸けるものとも思う次第でございます。  今回のその裁判員制度につきましては、その意味で国民裁判官とともに刑事裁判内容の決定に関与していただくという制度、そして、良識がこの裁判の結果に反映されるというところが大事でございます。この制度は、その意味で国民の皆様の自覚並びに御協力、これがあって初めて成立するということで、我が国司法制度国民参加という面からの大きな私は前進になるんではないかなと、かように考えているわけでございます。  そこで、今委員質問のところでございますが、まだ十分時間がございますから、施行するまでの間に国民理解関心を高めて、深めていくためにも、国民の皆様が、自分の司法に対する権利でありまた義務であるという、そういった自覚といいましょうか、心構えをこれからもう一度思い起こしていただく、呼び起こしていただく。これは本来、私は国民の皆様が持っている力であり、あるいは権利であり、そしてまた義務であることについて、今までは余りそこに触れずに来られた部分ではなかったのかなと、こう思うわけでございますが、その意味で、何としてもこの国民参加刑事裁判、主体的にこれをしかも進めるということが大事でございますので、政府並びに最高裁におきましては、義務付けという規定も設けながら、最終的にはしかしこれが国民の皆様が喜んで参加していただける、まあ喜んでというところまでは行かないながらも、やはりやるべきだという自覚で御参加いただけるということが大事ではないかなと思っておるところでございます。  この制度が円滑かつ適正に実施できるかどうかについて、政府について大きなやはり役割法案の中でも期待されているわけでございますので、これはしっかり取り組んでまいるつもりでございます。やはり、この制度が定着していくためには、何よりもまずこの法案趣旨国民の皆様に御理解をいただくPR、あるいは社会教育、あるいは場合によっては学校教育の段階から公平公正さを求めて、世の中が明るく進んでいくんだという一番の基盤作りの仕事をこれから進めなければならないと、こう考えております。  正に、和をもって貴しとなすということで始まっております日本の法治社会の基本にむしろこれは合致した制度になるのではないか、またそのように育てなければならないと思っておるわけでございます。
  130. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 終わります。  ありがとうございました。
  131. 角田義一

    ○角田義一君 民主党・新緑の角田義一でございます。  ただいままで、松村先生それから私どもの江田さん、さらに岩井先生の御議論をお聞きをいたしておりまして、私は本当にもっともな御質問だなと、裁判員制度の本質に触れる様々な問題をお尋ねになっておられて、参議院としてこの法案が来た以上、やはり本当の国民の立場に立って、真っ白な立場からこれは審議を私は徹底してやっていくべきだというふうに改めて感じておる一人であります。  私自身も、率直に白状しますと、裁判員制度というものが世間で騒がれてと言っちゃちょっと恐縮ですが、問題になるまで、まあ弁護士で恥ずかしながらそれほどの興味というか、強い意識を持っておったわけでは率直に言ってありません。政治の方が忙しかったといえばそれまでの話なんですが、一生懸命国事に尽瘁してきたつもりですから、余り、裁判員制度というと何か遠い話のように最初思っていたんですけれども、何ぞえらいことになってきたなと、こういう気持ちで、自分にも言い聞かせる意味で、やっぱり日本における司法に対する庶民、国民の参与というか関係というか、これどうだったのかなという歴史的な系譜というようなものもある程度やっぱり考えておかにゃいかぬ、学んでおかにゃいかぬじゃないかと。何か、昨日今日突然降ってわいたような問題ではあるいはないのかもしれないというようなことで、ちょっと物の本を読み始めますと、やはりこの陪審という制度にぶち当たるわけでありますが、大正デモクラシーの一つの頂点といいましょうか、そういうものとして、陪審制度というものは、当時の原敬、原内閣の下で、天皇制の時代ですし、しかも貴族院もある、枢密院もあるというので今とは全然違う国家統治の状況の中ですら、原敬という一つの立派な見識を持った総理が、この陪審制度というものをやらなければ、やはり政治なり司法なりというものは民衆のものにならないと、こういう強い理念を持って、そしてそれを推進をしたと。  当時の司法関係者もそれなりの努力をして陪審制度というものができて、そしてかなりの成果を上げながら、いろいろの状況でこれが停止されて、戦後ずっと停止の状態になっておるわけでありますけれども、改めて大臣、やはりこの日本司法における民衆の司法に対するかかわりということについて、やはりこの際、裁判員制度を改めてこの参議院で議論するに当たって、その辺の歴史的な系譜というようなものについても深い思いをいたす必要が私はあるのではないかなというような気持ちは率直にいたしますものですから、その辺について大臣はどんなお考えでおられるのか、ちょっと一言、この法案に入る、今の言葉で言えばイントロですな、としてお尋ねしておきたいという気がいたします。
  132. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 私も、この制度の議論に入る前に、一体、本質的に見てこの裁判員制度というものはどういう性格のものかということについて思いをいたしたわけでございます。  そして、ちょっと調べてみると、委員からの御示唆もいただきながら、明治の憲法を作る段階で既にこの制度についての議論が出されているということ、そしてその段階で既にある程度法案の段階まで用意された準備行為があったという、これも非常に貴重な実績であったと思いますが、今お話がありましたように、大正の時代に入りまして、政党政治の言わば草分けとしての原敬総理の大変な尽力と、それに触発されました関係の皆さん方の努力によって我が国に初めて陪審制度がスタートできたと。  そういうことで、昭和の初め、三年からたしか十八年まで十五年間ほど行われたということになっておるわけでございますが、この経過を見ますと、やはり明治のあの文明開化という大きな流れの中で鎖国から開国へと、そしてまた大正時代というのは、例の大正デモクラシーということで、言わば国民権利が十分ここで主張できるような雰囲気ができたと。この大きな二つの流れの中でこの陪審制というものが当時議論され、そして具体的な実現も見たと。  それで、今日、今、この裁判員制度が議論され実現されようという中で、やはりこれは司法世界における一つの民主化というような流れの一環ではないかなと。国民の皆様が直接その決定に、議論に参画し、決定に関与できるということからいたしましても、正にこれは司法世界における一番根源的な進歩であり、また最後の姿ではないだろうかなと思うわけでございます。  昔の文献でうかがいますと、いわゆる古代の民主主義発生過程においてもみんなで裁判をしたというような事実があるわけでございますから、そういったところの原点を頭に置きながら、今日における発達した、かつまた複雑多様な社会現象を国民の皆様の良識によって判断を下していくという、その意味で、この制度のスタートは、私、前から申しましておりますが、五十年ぶりあるいは百年ぶりの大きな改革であり、前進になるのではないかなと。様々な今、疑問点、御提案がございますが、これは私真摯に受け取りまして、これについては克服、改善する道は十分これからの努力の中で可能ではないかなと、かように思っておりまして、本委員会におきましても是非ひとつその意味での積極的かつ建設的な御意見を大いに期待しておるところでございます。  よろしくお願いします。
  133. 角田義一

    ○角田義一君 陪審制度というのは、法の、制度の上では、別に廃止されたわけではなくて停止状態、仮死状態と言っていいのかな、ずっと続いていたわけですね。  物の本を読みますと、今日、最高裁の偉い人が来ているの、偉い人が来ている。国民司法参加に関する裁判所意見、二〇〇〇年九月十二日付けの審議会の資料を見ますると、最高裁は、基本的には、我が国においては、この制度、というのは陪審制度ですね、陪審制度を復活させるだけの政治的、社会的エネルギーがなかったということに帰すると、こう断言しているんですね。  最高裁の今までの終始一貫した流れというのは、国民は今の刑事裁判に満足しておる、本当は司法参加など望んでいないんだと、こういうように受け取れますが、間違いですか。民衆というものに対して最高裁というのはこういう見方ですか。
  134. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 突然の質問であれですけれども、決して民衆の力を考えていないということでありませんで、結局、戦後、その陪審が復活しなかった、停止のままであったという、そういう時代の中、戦後の一時期においては、それだけのものはやっぱり時代の背景の中ではなかったということでありまして、決して現段階で、その民衆の力あるいは民主主義のための国民の参加ということを否定しているというようなことではございません。
  135. 角田義一

    ○角田義一君 私があえてちょっと嫌らしい質問をしたのは、やっぱり今度の制度改革していく上で、もちろん法務省や弁護士会の任務というもの、うんと大事だと思いますけれども、現実に裁判をやる裁判所裁判官の認識なり意識なりというものを相当これは思い切って変えませんと、従前のような意識で、あるいは気持ちでおったら、とてもじゃないけれども、この制度付いていけないというか、やっていけないんじゃないかという気がするんですね。  だから、まず、もちろん法曹三者の意識革命というのは大事だと思いますけれども、特にこの最高裁の基本的なスタンスというか民衆との関係というか、その辺を根本的に裁判官の頭の切替えということがまずは大事だと思いますけれどもね、局長、どうですか。
  136. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 議員指摘のとおりでありまして、これから裁判員という国民から選ばれた人たちと一緒に裁判をやっていくと。今までは、刑事裁判ですと、弁護士検察官、そして裁判官という法律家だけでやってきたわけですが、その中に本当に新鮮な感覚を持った国民が入ってくるわけですから、そういう人たちにどれだけきちっと審理に参加してもらい、分かってもらえるかということについて、裁判官として一番これから考えていかなくてはいけないし、そのために、裁判官としての能力あるいは意識を含めて、どのように考えていかなくてはいけないかということは、今委員指摘のとおり、裁判所としても真正面から受けているところでありまして、今日午前中にもお話ししましたけれども、昨年の長官・所長会同では、やはりそういった裁判官の資質、能力、コミュニケーション含めた国民とのコミュニケーションをきちっと取れる能力を含めて、裁判員裁判を遂行していくためにどのようにしていったらいいかということを議論したということもそういった問題意識の表れであります。
  137. 角田義一

    ○角田義一君 この制度は、この前の一般質疑でもちょっと私の方から申し上げたんですけれども、この制度が本当に軌道に乗った場合に、やっぱり日本の民主主義の質というものは非常に発展をするだろうと思いますし、日本社会そのものも変わっていくのではないかと思います。  この裁判員制度によって国民の、まあたまたま抽せんで選ばれた人ですけれども、その人たちが被告人に対して有罪、無罪、あるいは死刑、無期というような非常に重い責任を課する、責任というか、ペナルティーを科するわけですから、相当みんな深刻に考えるだろうと思うんです、なった人は。そして、しかも司法の場においてすらそういう自分たちが責任を負わなきゃならぬという自覚を持つようになって、それが定着をすれば、これはもう行政にしろあるいは政治にしろ、そういうものに対しても本当に責任を持たなきゃならぬという、この自覚なりを持つ非常に知的レベルの高い、あるいは良識のある国民が増えていくわけですから、そういうことを考えると、私はこの制度というのは二十年、三十年、長いスパンで考え、そして定着を図るべきだというふうに考えます。  そしてなお、なぜ私はそれを痛切に感じるかというと、先ほど岩井先生はどうも参議院じゃどうしようかなというようなことを言われて、私は率直だと思うんですよ、そうだと思うんです。ただ、私は、衆議院で何しろ満場一致でこれを可決されたのを聞きまして、率直に言って、うれしいやら、有り難いやら、恐ろしいやら、誠に私、率直に言うと複雑な心境でしたよ。それは、これは賛成した国会議員国民に対して大変な責任を背負うことに私なるんじゃないかと思うんですね。  そして、これもう国へ帰れば必ず、この裁判員制度通ったということになれば、先生これどういう制度だいという話にも必ずなりますから。そのときは、これこれこういうわけだという説明をしなきゃならない。そんなものはおれたちは知らねえとか関係ねえよとか、とんでもない法律を作ってくれたなと、こういうふうに言われかねません、これは率直に言って。そのときに、満場一致で通っちゃった以上、いちゃもんを付ける、いちゃもんなんてちょっと事だけれども、できないんです、これは。弁護しなくちゃならないんです、この制度を。そして理解をしてもらわなきゃならぬと。  これをすべての国会議員が背負うということに、これ、参議院でも恐らく十分させていただきたいと思いますけれども、なるわけで、これはそれは大臣も大変だと思うけれども、一人一人ここにいる国会議員、ここにいる人たちは全部大変な実は責務というか、あれを負うということで、そういう自覚の下に我々は参議院においてはところてんのような審議はしないよと、即席ラーメンを作るようなわけにいかないよと、やるべきことは、慎重に審議をやるべきものはやらしてもらうよという態度で基本的には皆さんおられると思うんですね。  大臣どうですか、満場一致であなた方が出した法案が通ったんだけれども、どんな御心境です。
  138. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 満場一致の御裁可をいただきましたとき、私も感激をすると同時に、大変実は驚きまして、必ずこれはだれか一人くらいは造反が出るのかなというイメージは持ったわけでございますが、それに先立ちます法務委員会における審議の中で、相当各般にわたる項目について細部にわたっての御議論、あるいは先ほどのように本質論にわたる御議論、もうすべてちょうだいをする中で相当部分の修正項目が出たわけでございまして、これを政府側としても尊重し、各党協議の結果として出たものについてちょうだいして、今日もそういうことで提案者に並んでいただいたような次第でございます。  相当その意味では柔軟に対応したつもりでございますので、その点ではいわゆる満場一致の基盤はできているのかなと思いますが、参議院での御審議はまた一つそこで一味違って、それぞれの道の専門家でもあり、また違った広い立場での御意見もいただけるものと考えますので、なお一層この法案の成り行きにつきましての有益なる御議論を十分ちょうだいして、満場一致だからこれは瑕疵がないとか完璧であるとかということとは必ずしもつながらないと思いますので、この結果は尊重していただきながら、かつまた参議院としての御意見は十分賜りたいと思っております。よろしくお願いします。
  139. 角田義一

    ○角田義一君 ちょっと先走って申し訳ないんだけれども、先ほどの午前の質問で、私どもの江田議員がこの法案に対しては柔らか頭というか、彼の表現ですけれども、柔軟にこれから法案に対して対応していかなきゃならぬということを言っておったんですが、私は、普通、法案政府が出し、我々が通せば、これはもう一応建前上、完全なものだという形にはなってはいるわけですよ。だから満場一致で通しているわけだとは思うんです。  しかし、これは未知の分野に入ってくるわけです、我々とすると。未知の分野に入ってくると。五年間という期間はあります。あって、その間、これから広く国民の皆さんに理解と協力を求めることをやっていかなければならないわけですが、相当いろいろな意見が出ると思うんですよ、僕は、やればやるほど。  そして、法曹三者もいろいろな協議会を作ってこれから詰めの作業を、細かいところをやっていくそうですが、やっていきますと、これはやはりある法律を変えなきゃならぬ、あるいはこの裁判員制度そのものも、本案についても修正をあるいは加えなきゃならぬ、あるいは足していかなきゃならぬ。  さらには、刑事訴訟法なんかなおさらです。これは、今出てくる刑事訴訟法について一層のまた深い修正なりが要るということになると、普通は施行後いろいろ見直すというようなことも、この修正にも施行後三年というふうになっていますけれども、私はこの裁判員制度なり、それにまつわる制度については、それにこだわる必要はないと思う、むしろ。  施行前であっても、いろいろな議論を聞いていって、この法律じゃまずいと、このままじゃまずいと思ったら、スタートするときに一番いい方法でスタートすればいいんだから。そのくらいの、江田君の言葉で言えば柔らか頭、私で言えば柔軟な対応、そのくらいな気持ちがあってもいいと。これを突っ張って、絶対これはもう一指も手を触れさせないとか、五年の施行はこれでいくんだとか、そういう硬直した姿勢では、この制度、私は物にならないというぐらいの気持ちでいるんですがね。  大臣、それから山崎さん、あんた、今まで苦労してきたけれども、どんな気持ちでいるか聞きたい。
  140. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) まず私の方から大筋のところで申し上げたいと思いますが、五年というやはり年月というのはそのためにも私は必要な年月だろうと思います。  今もちろん私どもはこれを最上の法案として、そして各党の皆様方からも、一人一人の方々が、あるいはそれぞれの御政党の御意見が、みんな当事者として実は御参加いただいていると。これは政府対議会ということとか、あるいは与党対野党というような、そんな次元でなくて、むしろ日本司法制度をいかにして良くするかというお立場での御議論がいただいたがゆえに私は満場一致という結果が得られたのではないかなと、こう思っておるわけでございますが、当然、今後の社会情勢の進歩あるいは変化によりまして問題点が出てくる、あるいは気が付く、そしてまたそこでどうしても直す必要があるならば、その段階はもちろん、法務省はもちろん存在しておると思いますが、国会における御議論は自由にひとつこれを交わしていただきまして、必要な段階には必要な措置を取る、それこそ正に柔らかい制度として機能していく大きなやっぱり前提になるだろうと思いますので、その点はどうぞこれからも変わらぬひとつ御指導、よろしくお願いしたいと思います。
  141. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいま御指摘の点につきましては、私どものこの法案の原案では法案の見直し規定は置いていなかったわけでございますが、この考え方は、やはりこれから重要な制度を動かしていくわけでございますので、問題が起こるとすれば、何年を待つという必要もない、必要なときには必要な改正をしていかざるを得ないということを前提に、頭に置いておりましたので、あえて置かなかったわけでございます。  今回、議院修正でそれを置かれた。これはまた意味があることだろうと思いますけれども、私どもの基本的な考え方は正にそういう考え方でございまして、これが仮に制度を動かす前にもいろんな問題が見付かってきたということになれば、それはそれなりの手当てをしなければ現実に制度が動かないということになりますので、それは柔軟に対応せざるを得ないというふうに考えております。  私ども今、ある程度見通して、この制度で動くんだということで御提案をさせていただいておりますけれども、現実に詰めていくといろんな問題が生ずることは間違いございません。そういう事態がなるべく生じないで、うまくスムーズにいってくれればいいわけでございますけれども、仮にそういう事態が生ずるということになれば柔軟な対応が必要かというふうに考えております。
  142. 角田義一

    ○角田義一君 これは御両者の私は答弁というのは、猛烈大事な答弁だと思うんですね。  普通の法案でありますと、先ほど、ちょっとくどいようですけれども、あり得ないことですよ、出したのに、施行する前に直すなんということは。普通の、我々も長いこと国会議員生活をやったってそういうことはない。そういう、だけれども、前例をやっぱり破るというか、ぐらいのやっぱりお気持ちがお二人にあると。これは是非ひとつ、議員の諸公の皆さんに是非頭に置いていただきまして、この五年間の間に柔軟に対応して、一番いい制度、スタートするときに一番いい制度にしていきたい。  これは委員長、歴代の委員長に引き継いでくださいよ、この裁判員制度を発足するまで。申し送りにしておいてもらいたいぐらい、私はそういう気持ちでおります。  そこで、もう一つ大事なことをお聞きしたいんですけれども、だれもがこの裁判員制度というものについては国民理解と協力がなきゃ絶対駄目だと、こう言うんですよ。口では言うんです、言うし、みんなそう思っている。だけれども現実は、いろいろな調査のあれを、世論調査、最近の、直近の世論調査はちょっとありませんですけれども、幾つかの世論調査を見ますると、例えば今年の二月の二十三日の産経新聞の世論調査、三つの非常に簡単な問いです。裁判員制度導入の動きを知っているかと。六五・四%が知っていると、こういうことですね。知らないという人は三四・二%。こんなもんかなと思うんですが。  次です。裁判員になりたいと思うかという、裁判員になりたいと思うか、思うというのは一四・六%、思わないという、八四・二%です。分からないという人が一・二%。そして、仮に起訴されるようなことがあれば裁判員に裁かれたいと思うかと、こう言ったら、裁判員に裁かれたいと思うという人が二九%、三割で、嫌だ、思わないという人が六六%です。これは、これ産経のあれですけれども、ほかのあれも似たか寄ったかのあれですよ、見たら。  これはどうです、法務大臣。えらい統計ですぜ。だけれども、私は率直なこれは国民の現時点における意識というか認識というか、よく出ていると思いますよ。だからこの、何と言うかな、裁判員になりたいと思うかというのを思わないという人が八四%いる。この人たちに参加してもらうということでしょう。これは相当な努力が私はないと動かないと思いますがな。  法務大臣、こういう統計を見て、容易でないなと、これは、この仕事を取り組むのはと思うんですが、どう対処していきます。我々はもちろん支援をして協力もする責任があるからやるんだけれども、容易なことじゃありませんぞ、これ。どう思います。
  143. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 委員指摘のとおり、この制度が円滑に実施され機能を発揮するためには、国民の皆様の理解と協力、そして積極的な御参加がなければ成り立たないと、かように思うわけでございます。  今の数字は大変その意味で重い数字として受け止めさせていただきますが、これまでのところ政府側としてもできる限りの広報はしてきたつもりですが、それはもう十分ではなかったという点はもう明らかでございますので、今後のこの法案が成立しました暁には、その内容に沿いまして十分なPRをやはりまずしなければならないと。そして、そのための具体的な広報手段、今のメディアを十分活用しまして進めてまいりますが、一番大事なことは、この制度に参加することが自分のやはり権利でもあり、また義務でもあり、誇りでもあると思えるようなやはり国民的コンセンサスを醸成すると、ここがやはり非常に重要なことであろうと思います。  既に政治の世界では皆さんが投票するということがもう当たり前になっておりますが、この変化を見ましても、一部の人だけしか持っていなかった選挙権が一般的になって全員に及んで、そしてそれに基づいて今日の政治が運営されているという経過を見ましても、やはり司法世界でも、そういった国民参加制度に切り替えることによって、有効適切かつ公平な裁判が行われるということが望まれるんだと、また希望があるんだということを国民の皆様によく理解していただく、このために今後の我々の努力の過半をやはり集中する必要があろうかと思っております。
  144. 角田義一

    ○角田義一君 先ほど岩井先生から、この裁判員制度憲法上の位置付けというか御指摘があって、私ももっともだなと思うんですが、裁判員になりたいと思うかと、思わないという人がこれだけ多いということは、ある意味では非常にこれ苦痛だというふうに思っている人がおられると思うんですね。  そうしますと、これはどうしても一つ憲法上の問題として裁判員になる義務というものが、憲法との関係で義務がですよ、義務がどういう位置付けになるのか。うんと端的に言うと、憲法十八条には、御案内のとおり、あれですな、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」と、こうなっております。  これはいろいろな読み方もあるんだと思うんですけれども、一つにはこの十八条との関係で、その意に反するこれ苦役になるのかならないかと。自分は人を裁きたくない、その人を死刑にするとか無期にするとか、そんな恐ろしいことを背負って裁判所へ行ってやるのはもう耐えられないということです。ただ辞退をすればいいという問題じゃないですね。そういう本質的な苦役に当たるのか当たらないのか、これだけの義務を課すことが。  憲法上義務を課すのは、御案内のとおり、もう納税と子供たちに教育をさせる義務と勤労の義務と、この三つしか憲法に明文の義務はないわけですから。それにこれが新たな一つの義務として出てくるわけですから、この憲法上の位置付けというか、これはきっちり国民の皆さんに我々としてもお伝えをする責任があると思う。だから、これは憲法解釈としてどういうふうな立場を取るのかということは、やっぱり立法する者の立場としては、当然私どもは乗り越えなきゃならぬと思うし、提出者のあなた方がその辺をどういうふうに考えているのかということは私は非常に大事な問題だと思うので、ひとつお答えをいただきたいと思いますな。
  145. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいま御指摘憲法の条文があること、我々も十分認識しておりますけれども、この憲法の条文につきまして、これ、じゃ、すべてこれに反するものが駄目かということでございますが、そこの解釈は、行うものの必要性と、それからそれを行うについて必要最小限のという、そういう制度の歯止めですね、こういうものを設けているということから、最終的にはそういうものであれば、それはこの憲法十八条、これに該当するものではないというふうに考えているわけでございます。  まず、今回の裁判員制度でございますけれども、裁判内容国民感覚が反映されるということによりまして司法に対する国民理解の増進と信頼向上が図られるということになりまして、司法がより強固な国民的な基盤を得るということができるようにするための重要な意義を有する制度であるということでございます。  広く国民司法参加を求めることが制度趣旨である以上、現実に相当多数の国民の参加を得る必要があるということや、それから国民の負担の公平を図らなければならないということから、裁判員となることにつきましては法律上の義務にするということにしているわけでございます。  この法案における裁判員制度におきましては、裁判員となる義務の履行を担保するための手段といたしまして、刑事罰やあるいは直接的な強制の措置によることはなく、いわゆる秩序罰としての過料を科すにとどめているということが一つございます。それから、一定のやむを得ない事由がある場合には裁判員となることを辞退する制度を設けていると。それから、適切にその義務の免除が、それを設けて、適切に義務の免除が得られるような、そういう制度を設けているということでございます。また、迅速な裁判を実現するための刑事訴訟法の改正、あるいは出頭したその裁判員に対する旅費、日当等の支給等の国民の負担を軽減するための様々な手当てを行っているわけでございます。  このような点を考慮すれば、この法案における裁判員になることの義務付けを行うということは、裁判員制度の実施のために必要最小限のものということができるわけでございまして、こういう意味からも、憲法十八条の「その意に反する苦役」を強制するものではないというふうに考えているところでございます。
  146. 角田義一

    ○角田義一君 まあ山崎さんの御口演はよく私はそれなりに理解できるけれども、これを、国民の皆さんにそこのところを理解してもらうというのはそんなに簡単じゃないですよ。  それと、この法案を読んでみると、秘密を漏らしたときの懲役というような問題もあるんだが、それはそれとして、科料というか、とがめですな、結構多いんですね。必要に、場合によっては私は科料、過料必要だと思うけれども、余り、科料というかな、そういうものでこの裁判員制度を、別に脅すわけでもないだろうけれども、縛るというか、基本的にはそういう発想を余り私は好まないです。国民が自発的に参加してもらうということであれば、出てこなきゃ罰金じゃないけれどもおとがめ料を取るよとか、そういう基本的な発想というのはなるべく避けた方がいいだろうというふうに思うんですよ、権力側は。どう思います。
  147. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 確かにそのような考え方はあろうかと思いますが、ただ、この過料に関しましては、この制度だけではなくて、例えば現在でも証人に呼ばれる場合ですね、これを、出頭しないとか、こういう場合にも過料の問題がございますし、それから場合によっては刑事罰の問題もあるわけでございますけれども、要は、これをどういうふうに利用、履行していくかという問題はございますけれども、要するに、制度のいわゆる担保、担保として、じゃほかにこういうふうに出てきていただけるような形の担保があり得るかということを考えるとないわけでございまして、単に義務を課したというだけで何も制度的担保がなかったら、本当に皆さん出てきていただけるのかということにもなるわけでございますので、必要最小限のものとしてもう置かざるを得ないということで、現在の考え方と整合性を持たせるためにこういうものを設けたということでございます。
  148. 角田義一

    ○角田義一君 いずれにしてもなかなか容易でない問題がたくさんあると思いますが、午前中のいろいろの議論を聞いておりましても、これは刑事裁判のシステム、構造というものに相当な影響が、与えること間違いないと私は思う。  盛んに、分かりやすい裁判にしなくちゃいけない、裁判員が参加しやすい裁判にしなきゃならぬと。私は、それは、それは一方として、ああ、それはそうなんだと思うけれども、大事なことは、裁かれる被告人の立場も考えにゃいかぬ。何かえらい簡単になっちゃっていたり、変な話だけれども、連日的開廷なんというと、格好いいことを言うけれども、私が被告人の立場になって、例えば重罪でですよ、死刑になるか、されないかという、三日か四日でだね、おまえは死刑だと。「死刑台のエレベーター」という映画があったけれども、死刑台のエスカレーターに乗せられたような形で、三日四日議論されて死刑になったんじゃたまらないというふうに私は被告人になっても思うかもしれませんよ。  だから、分かりやすい裁判制度にあるいは刑事システムにするのは一方当然なんだけれども、しかし裁かれる被告人の立場というものをよく考えると、ただそれだけでいいという問題でも私はないような気がする。そこのところの兼ね合いというのが、これは、法務大臣ね、難しいんだと思うんですよ。裁かれる人の立場も考えてやらなくちゃいけないと。死刑台のエレベーターに乗せられたんじゃかなわないですよ。そこのところはどういうふうにお考えですか。それから、専門的な立場から、山崎さん、どういうふうに考える。
  149. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 私は、やはり迅速に、しかも公平に、公正にと、これはもう極めて今回のこの制度の基本的な条件といいますか、大事なポイントだろうと思います。  三日か四日でそういった決定がと言うんですが、もし御不満があれば二審の道も開かれる、あるいは三審、最高裁までの道も当然開かれているわけでございますし、いろいろと救済手段についてはあるわけでありまして、一審段階から延々と時間を掛けるということの無駄といいますか、この費用と労力と、そして結果が見通しが付かないということの方が大変やはり私はマイナスになるんじゃないかなと。まず最初の、この出だしのところでしっかりした御判断をこの新しい制度でいただくということは、大方の私は被害者といいますかあるいは被告にとってもこれはプラスの、両方の立場にとっても評価すべきものと考えております。
  150. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) その被告人憲法上の権利あるいは地位、これは、裁判員制度でありましてもそれは守らなければならない、こういう認識でございます。  この法案に関しましては、今先生が言われたのは、公判が始まれば何日かでということにはなるかと思いますけれども、ただ、その前に公判前の整理手続があるわけでございまして、ここでも、被告人も当然そこに出席することもできるわけでございますので、それからもちろん弁護人は当然でございますけれども、その中で、準備をする中でもかなり自分たち権利は行使をできるわけでございます。  そこで、要は争点をきちっと絞って、その上でそこの一番大事な争点について証拠を集中させて審理をしていきましょうと、こういうシステムを作るわけでございますので、そういう事前の手続も含めまして考えるとすれば、これは被告人にとってもそれなりの防御権をきちっと果たし得る制度でございまして、公判が始まってから短い時間というのはそのとおりかもしれませんけれども、これは全体で考えていただきたいと、こういうことで考えておりますので、被告人にとっても不利益になる制度ではないというふうに理解をしております。
  151. 角田義一

    ○角田義一君 細かいちょっとまた手続的なことはまた次回に譲るにいたしましても、この大臣の言う二審があるじゃないか、あるいは最高裁があるじゃないかと、これはちょっと私いただけないんだな、やっぱり。これは二審といったって、今の、ちょっと最高裁の偉い人そこにいるけれども、私もつたない経験であるけれども、日本の控訴審というのは割かし丁寧にやると言うけれども、丁寧にやらないね、若干の六年ぐらいの経験で言うと。情状の証人ですら呼んでくれないもん、却下するもの、どんどん。それはあれですよ、迅速な裁判という毒が回っているんだよ、今毒が裁判所に、私に言わせると。  やっぱり一審と高裁というのは違いますよ。やっぱり一審というものが充実せにゃいかぬ。一審で徹底的な事実調べなり充実した審議をやらないと、高裁の偉い裁判官というのはやっぱり書類だけで事を処理するという、いいとか悪いとかじゃないんですよ、それが現実なんですね。だから、大臣弁護士さんじゃないから無理もないと思うんだけれども、余り僕は高裁とか最高裁、そんなこと言うと最高裁の偉い人に申し訳ないけれども、余り信用していないんだよ。一審の裁判、これが大事なんですよ、やっぱりね、現場。  だから、そうすると、この制度導入しても一審の裁判がうんと大事だと。それで、山崎さんは、準備手続というものがあるから、それをつっくるみで、まあつっくるみというのは上州の言葉で申し訳ないけれども、全体でということで考えれば、何も三日四日ですぐエスカレーターに乗せるように死刑にするんじゃねえと、こう言うけれども、私は、その準備手続そのものが非常に問題を含んでいると思うんですね。  第一、準備手続というのは公判でやるんじゃないでしょう。公開の法廷でやるんじゃないでしょう。密室でやるんでしょう、密室で関係者が。要するに、裁判官と検事と弁護士と、まあ被告人が出るかもしれぬけれども、公の法廷でやるわけじゃないわけですよ。時と場合によったら公の法廷でやらなけりゃならないような事件だってあるんじゃないですか、その争点整理そのものだって。それを、争点整理は全部、今度はその密室の事務手続に全部移行するわけ、やってしまうわけですよ。これも相当私は問題があると思うんですけれども、山崎さん、どう考えますか。
  152. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) これはあくまでも心証を取る手続ではございませんので、その証拠整理をして、どういうようなその証拠調べをどういう計画で行っていくかということでございますので、これは裁判一般にいわゆる準備手続というものは公開しないでやるという形で行っておりますけれども、これはその当事者は全部参加するわけでございますので、そこで公開するかしないかということで、その準備手続のいわゆる準備でございまして、心証を取るそういう手続ではございませんので、そこで公開しないからといって決定的に何かそこでおかしいかと言われますと、そうではないだろうと。その手続自体のその中身がどの程度になっていくかということだろうと思います。  先ほどちょっと言い忘れている点がございますけれども、今回証拠開示の拡充というこういう規定を置いているわけでございまして、これに関しましては、従来よりもその事件に関して必要なものに関しましてはかなり多くの証拠が出ていくわけでございまして、こういうものを利用していただければ、あるいは被告人の防御についても役に立つものが出てくるわけでございますので、そういう点では、全体としては考えていただければ被告人憲法上の権利、地位、これに影響を与えるような、そういうような制度ではないというふうに考えているところでございます。
  153. 角田義一

    ○角田義一君 じゃ、それに関連して聞きますけれどもね、盛んに今この審議衆議院でも参議院でも言われていますが、捜査の可視化という言葉がありますね、可視化。こういう難しい言葉を使わないで、この可視化というのはどういうことなんですか。説明してくれませんかね、国民に分かるように。
  154. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 委員が一番よく御存じなんでございましょうけれども。  要は、捜査の取調べの過程におきまして、法廷におきましてはその取調べにおいて取られました調書、作成されました調書の任意性を争うような場合がございますが、そういうようなことのあることを踏まえて、その取調べの内容が後から検証できるようにするシステムを作るべきじゃないかというような議論だと思いました。  具体的には、ビデオに撮るとか、あるいはテープレコーダー、まあ古い言い方で失礼いたしますけれども、テープに録音をするとか録画するとかというような方法を取れないかというような議論だというふうに承知しております。
  155. 角田義一

    ○角田義一君 それで、あなた方法務省や最高裁の偉い人は、可視化についてはどうなの。賛成じゃないんでしょう。
  156. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) これは、司法制度改革審議会のときから審議会の委員の先生方でも議論をされたところでございますが、要は、取調べというものの我が国司法制度、捜査から公判、そして矯正、すべてを含めましての刑事司法制度に、中における取調べの重要度というもののことに、重要であるということ、他国の制度と比べて我が国は違う制度を取っているというところが前提となっておりまして、このような制度の中で、取調べの、取調べによって得る真相解明と、これは刑事訴訟法の一条で言っております、公共の福祉と基本的人権の尊重の両方を全うしつつ、事案の真相を解明しなければならないという刑事司法システム全体の中で考えていくべきだと。今の制度の中でいきなり録音、録画をすれば、本当の意味での刑事司法の健全化というものは本当はあり得ないのではないかという考え。  したがいまして、刑事司法全体、捜査の在り方全体を今後考えながら検討していくべきだということで、司法制度改革審議会意見書の中でも、将来に、将来検討すべき事項であるというふうに位置付けられているものでございます。
  157. 角田義一

    ○角田義一君 これは局長、これ議論すれば一日掛かったってあれだよな、議論尽きないところだよね。  これは、裁判員制度導入する上で、この可視化というものとは私は不可分一体だと思うんですよ。今の、あれじゃないですか、お話ですと、日本の伝統的な捜査手法である自白を得るというか、言葉は余り良くないけれども、落とすとか落ちるとか、テレビでもやっていますやん。一生懸命、それで、これ被告人落としてみろとか、被疑者落としてみろとかやってますじゃない、テレビでも。  要するに、一対一で、密室でだ、調べる方も全、ちょっと言葉はきついかもしれないけれども、全人格を懸けてその被疑者と対決しながら自白を取ろうとするわけです。それによって、変な話だけれども、悪いことをしたやつが改心することもあるだろうと、裁判よりもっと効果があるんだと。自分の全人格を取調べに懸けて、これを白状させて改心させるんだと、これがだいご味だと、こういう人もいるんだよ。いいとか悪いじゃないんです。それに生きがいを感じる人だって一杯いるんだから。  私、しかしそれを非難しているんじゃないんですよ。そういう伝統があるんですよ、日本の捜査官には。それは検察官だって、あんただってみんな経験してきたでしょうが。やってきたでしょう、自分の命懸けて調べてきて落としてきたんじゃないですか。落としてきたなんと言っちゃ悪いけれども、それがいいと思っている人がずっと今だっているわけですよ。  それで、まあ警察に行けば、あなたも知っているとおりに赤鬼と青鬼がいるわけだよ。赤鬼というのは、怒ってさ、おめえ白状しなければとんでもないぞと、こういうふうに言って脅す。片っ方は青鬼がいて、おだてる、申す。こういう赤鬼、青鬼という任務分担をしながら自白を取る、こういう、いい悪いじゃない、伝統はずっと一貫してあるわけですよ。その伝統を踏まえたままこの裁判員制度導入してやったときに、調書が出てくるわけでしょう、検察庁の調書が出てくる。そのときに争っていたら、これはどうなりますか。これは大変なことですよ。  じゃ、その証拠、じゃちょっとうんと基本、基本的な質問をするわ。供述調書の証拠能力というのはどういうことなんですか。皆さんに分かるように説明してください。証拠能力、証拠能力なんて偉そうなことを書いてあるから、証拠能力というのはどういうふうに、供述調書の証拠能力というのはどういうこと。うんと分かるように説明してください、国民に。
  158. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 供述調書、要するに供述をしている方の供述の内容が録取されている書面、要するにその人が語った内容が書かれている書面のことが供述調書でございまして、その取調べといいますか、聞く側によりまして、検察官であれば検察官面前の録取書面になりますし、司法警察員であれば司法警察員に対する面前の録取書面、あるいは本人がそのまま書いた書面もある意味で供述書でございます。  本来、刑事訴訟法の原則でいきますと、裁判の法廷での直接主義と口頭主義というのがございますから、本来法廷で証人として語っていただければ済むという場合を想定いたしますと、それがその法廷で証言していただければ、それが良くも悪くも証拠となるわけでございます。  その委員のおっしゃっている供述調書の証拠能力という問題がありますと、これはその証人に呼ぶまでもなく、供述を録取された書面を、被告人あるいは被告人が、それを代理、弁護する弁護人が同意をすれば、そのまま証拠能力を持った証拠として法廷に顕出されることになるわけでございます。しかしながら、それを証拠とすることに同意しない場合には、これは直接主義、口頭主義からいいますと、伝聞、伝え聞いた人の話を、いったん検察官なり司法警察員が聞いたことを録取したことでありますから、間に他の人間が入った伝聞ということになりますので、その伝聞である供述調書にどうやって証拠能力を認めるかということが刑事訴訟法に書かれているわけでございます。任意に供述されたものである、あるいは特信性の情況があるとか、法律用語のことを言いますと、またややこしいと言われるかもしれませんけれども、とにかくそういうような条件をクリアしたものが証拠能力があるものとして今度は法廷に顕出されることができる。  ただ、これは、証明力の問題はまた別でございますから、証言の内容と、その証拠能力はありとされた供述調書、どちらを信用するか、これはまた裁判官、今度の裁判員制度であれば裁判員を含めた裁判体が自由心証に基づいて判断をするということでございます。
  159. 角田義一

    ○角田義一君 で、そのさっきの問題に戻るんだけれども、先ほど言った可視化というのは、その証拠能力、任意性の問題とどういうふうに絡むんですか。皆さんに分かるように説明してくださいよ、私も含めて。可視化。
  160. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 要は、委員のおっしゃりたいことは、この裁判員国民の、一般の国民が入ってこられて、その供述調書、証言以外の供述調書に任意性ありかどうかというようなことの判断をどうするのかと。しかし、これは認定の問題でございますから、これは、今の今回の制度が、これが法律問題になるのか、あるいは認定事実の問題になるのか、これは法案を提出されている本部の方に聞いていただきたいのでありますけれども、それはともかくといたしまして、とにかく裁判員に分かりやすい裁判をすべきではないかという御意見であれば、それはもっともでございます。  裁判員に分かりやすい裁判をしていくこと、これが裁判員制度一つの柱となるわけでございますから、そのために、最高検察庁におきましても、裁判員制度導入されることを前提といたしまして、充実した迅速な裁判をどのように遂行していくかということの検察官の責任、立場というものをずっと研究しているところでございまして、また、検事正を集めました会同でも、全検事を集めました会同でもいろいろと議論をしているところでございます。  しかしながら、これと先ほど申し上げております可視化の問題とは全く別問題でございまして、この可視化の問題は、司法制度改革審議会意見でも刑事司法全体の中で考えるべき問題だと。要するに、我が国のこの刑事司法の今の制度のままで可視化を入れるというべきかどうかといえば、即断できない、だから将来にわたって検討しろというのが司法制度改革審議会意見書でございます。  したがいまして、我々はそれを今後とも検討していこうとしているところでございまして、なお、現在、最高裁判所法務省、最高検察庁、そして日本弁護士連合会で、この間、裁判員制度導入等を踏まえた検討を要する刑事手続在り方等に関し協議、検討を行うために、刑事手続在り方等に関する協議会を設けたところでございます。この協議会におきましては、今申し上げました取調べ状況の録音、録画等の問題についても協議、検討することとされておりまして、法務省としましては、同協議会における議論も踏まえて、刑事手続在り方全体の中で多角的な見地から今後とも検討する必要があるというふうに考えているところであります。
  161. 角田義一

    ○角田義一君 じゃ、山崎さんに答弁をしてもらいたい。
  162. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この点に関しましては、私どもも、意見書の実現のためにこの本部が作られておるわけでございまして、意見書の内容につきましては先ほど法務省から答弁ございましたけれども、この捜査過程の透明性といいますか、可視化と言っておりますけれども、この点に関しましては、今回の私どもの法案の作成の前提とはなっていない。この問題は将来課題として切り分けられておりますので、議論はその点についてはしてはいないということでございます。  これが現実でございまして、ただ、これに関しましても、やはり意見がまだ今の段階で合意には達しておりませんけれども、将来的な課題として検討は必要だということで法務省の方にお願いをいたしまして、現在、先ほど刑事局長からもお話がございましたけれども、検討を開始していると、こういう状況でございまして、これを見守ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  163. 角田義一

    ○角田義一君 これは、この裁判員制度が本当に名実ともにきちっと立派なものになっていくかいかないかということと私は不可分だと思います。  ただ、今の検察庁の基本的なスタンスというのは、大分変わってはきているとは思うけれども、伝統的な取調べの手法というか、それにもししがみついておるということになると、これはちょっと裁判員制度、動きませんよ。  世界の可視化のあれ見ていると、まず最初にこの可視化に反対するのはお巡りさん、警察なんですね。密室でやるのを全部テープに撮られたり録音に取られたりするの嫌だから、大反対ですよ、大多数。ところが、これがいったん導入されると、一番喜ぶのはお巡りさん、ある意味では。それは、変な話だけれども、いい悪いは別ですよ、自白を強要なんかするは必要はないんだから、これはテレビに映されちゃっているんだから、単なるやり取りしていればいい、机ぶたることもできないし、全人格を懸けてやるなんということもなくなっちゃうと思うんです、私は、場合によると。だから、非常にある意味ではビジネス化しちゃって、楽になっちゃう面もあるんです。  その楽になっちゃう面が果たして真実を引き出すためにいいかどうかという問題も私はあるんで、可視化がすべて全部オールマイティーだとは私は思わない。思わないんだけれども、少なくともこの裁判員制度を動かしていく上では、この可視化の問題というのは絶対避けて通れない。だから今、三者でもって協議しているわけじゃないですか。ここはやっぱり相当柔軟にお互いさっき言ったような対応をしてもらわぬと私はいけないんじゃないかということを申し上げておきます。  私の時間はあと三分あるんで、これに関係して一点だけ聞いておきますけれども、山崎さん、山崎さんなんて言っちゃいかぬな、事務局長。  変な話ですけれども、今までの刑事裁判のように、調書が裁判所検察官から裁判官の方に右から左に渡って、そして裁判官はその調書をふろしき包みに包んで家へ持って帰って夜遅くまで一生懸命読むというような刑事裁判は駄目だね。これはできませんよ。そうでしょう。だって、裁判員だって今度は、じゃ、べらぼうな調書をみんな、六人いるんだから六冊分作って、それを渡して、これを家へ持って帰って読んでくれ、そんなわけにいかないでしょう。そんなことできないでしょう。  そうすると、刑事裁判在り方は根本的に変えなきゃならぬです。ある意味では直接主義、あるいは口頭主義というふうに言われている原則というかな、それにもうのっとらざるを得ないじゃないですか、刑事裁判は。  これは最高裁の刑事局長にも聞きたい。裁判官が調書を持って帰るようなことできますか。六人の裁判員にみんなふろしき包み持たして帰して、これ読んでこいよ、そんなことできないでしょう。これどういうふうに根本的に直すんです。
  164. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 裁判員に本当に記録を持って帰ってもらって読んでもらうというようなことはもうできないだろうというふうに思っております。  結局、それを解決するためには、裁判員公判廷でどれだけきちっと心証を取れるかと。要するに、判断できるようなものとしての証拠調べができるかということにかかってくるんだろうと思います。そのためには、一つは、証拠調べを丁寧に行うということが一つだろうと思いますが、もう一つは、やっぱり集中して聞いておける時間というのは限りがあるわけですし、それからポイントがどこかということが分かっていないと漫然と進んでいってしまう、本人の中でもよくポイントがつかみ切れていないというようなこともあろうかと思います。  したがいまして、争点をきちっと明確にして、どこが問題になっているのか、その関係でこの証人はどういう関係に立つのかと、どういうことが一番大事なところとしてこの証人に証言を求めているのかといった辺りをきちっと理解できるようにしてもらうということもあります。  それから、書証の数につきましても、できるだけ厳選して絞っていくということも必要だろうと思います。  また、証拠調べをする、例えば証拠書類について調べる場合でも、今の調書は、必ずしも全部ではありませんけれども、いろんなものが、事実が、要するに今までの生い立ちの問題から、それから事件のことやら後のことやら友達のことやらとか、いろいろこう一通の調書の中に一杯入っているというような調書もあるわけです。その辺りもやはり工夫して、事項ごとに調書を分けるとか、項目をきちっと分けるとかいったようなことで、裁判員が聞いていてきちっと分かるというような調書の在り方というようなことも考えていかなくてはいけないんではないかと思います。  こういったいろいろな方法、証拠調べ、あるいは証拠書類の作り方、証人証拠請求の在り方等を含めて、どうしたら一番分かってもらえるようになるかということをこれから法曹三者を含めて検討していきたい、検討していかなければならないだろうというふうに思っております。
  165. 角田義一

    ○角田義一君 山崎さん、ありますか。
  166. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいま御指摘のとおり、やはり公判廷で、直接そこで聞いて、それで耳できちっと聞いて理解をすると、いわゆる直接主義、口頭主義、これを中心にやっていかなければならないということは御指摘のとおりだろうと思います。そのために、公判前の整理手続をして、争点を絞ったところについてきちっとやっていくということになろうかと思います。  ただ、書類の関係が全くゼロになるかというと、そうではない。それは補充的に、争いないところはその書類でも使わせてもらうと、こういうふうに今までのやり方がやや主客が逆転していくというようなやり方をしないと、裁判員の方の判断がなかなかできにくくなるということで、そこは頭のチェンジが必要かなということで、この法案も全体としてそういうことでできているということで御理解を賜りたいと思います。
  167. 角田義一

    ○角田義一君 今日は終わります。     ─────────────
  168. 山本保

    委員長山本保君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、樋口俊一君が委員辞任され、その補欠として高橋千秋君が選任されました。     ─────────────
  169. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今日から参議院でこの裁判員の問題、法務委員会質疑されることになったわけでございます。  午前中から議論があっておりましたように、私は、この裁判員制度というのは、ある意味ではこの司法世界にとってはかつてない画期的な問題なんだろうと私は認識しております。素人が裁判に参加してどうなるんだというような御意見が事実あることもそのとおりですが、やはり今まで国民から一番遠かったこの司法という分野に初めて国民参加という形を取り入れる。その形をどう仕上げていくかは、先ほども議論がありましたが、日本日本らしいものを作っていけばいいんであって、ただ、やはり国民が参加するという形を作り上げる必要は今あると私は思っておりますので、是非ともこの法案、私もびっくりいたしました。衆議院で全会一致でまさか来ると思っておりませんし、本会議場で満面笑みだった法務大臣の姿が非常に印象深く残っておりますし、是非参議院でも、本当に大事な制度ですから、そういったものに対してきちんと国民一般の意見も伺う場も作りながら、さらに法案の中身、慎重な議論もした上でこの判断を下すべきだと、こう思っております。  私は、今までの先生方と違って、どちらかというと細かい点も含めて少しこの制度について質問をしていきたいと、今日はまず第一弾として質問をさせていただきたいと思っております。  まず最初に私がお尋ねしたいのは、先ほどからいろいろ話題になっております裁判員、どう選び、どうするかという問題の第一点で、この裁判員及び補充裁判員という問題がございますが、これを決めるに当たって様々な手続を経ながらやっていくことになります。その選任手続について、時間的な流れについて一応説明をまずいただいておきたいと思います。
  170. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 手続の流れについて御説明をいたします。  まず、裁判員が参加する事件でございますけれども、これは公判前の整理手続が義務的に行われますので、これが行われますと、大体審理が何日掛かるか、それから証人にどういう方が必要かということが定まるわけでございます。この定まることを前提にして、裁判所は、その審判に要すると見込まれる期間、その他のいろんな事情を考慮いたしまして呼び出すべき裁判員候補の員数を定めることになります。これは、まだこれから運用でいろいろやっていくことになると思いますけれども、例えば六人の裁判員が必要で六人というわけにいきませんので、いろんな事情を抱えた方もおられますので、それはかなりの数のところを呼び出すと、こういうことにまずなります。  この裁判員候補の名簿に記載されましたその裁判員候補者の中からその員数分の呼び出すべき者をくじで選定をするということになります。これは、例えばある地方裁判所考えた場合に、そこの管内の市町村がございます。そこの市町村の大体人口比でその呼び出すべき裁判員の数、これを案分で割るような形になるんだろうと思います。そういう形でその全体をまずくじで選び出すと、こういうことになろうかと思います。  裁判所は、その選定がされました裁判員候補者裁判員等選任手続の期日に呼び出すということを行います。この場合、裁判所は必要な質問をするために質問票を用いることもできるということになっておりますので、この質問票などによって、その呼出し前にその欠格事由、あるいはその辞退事由があるということが認められるという者はあるわけでございますので、こういう者については呼出しをしないということになろうかと思います。  それから、その後、裁判員等選任手続において裁判所は、出頭した裁判員候補者に対して質問を行いまして、欠格事由あるいは辞退事由等があると認める者、それから検察官被告人側による理由を示さない不選任の請求のあった者につきましては不選任の決定をいたします。不選任の決定がされなかった者について裁判員選任する決定をするということになるわけでございます。この場合には、裁判員は、くじその他作為が加わらない方法として最高裁判所の規則で定める方法に従いまして選任されることになるわけでございます。  補充員を置くときも手続的にはこれと全く同じでございますので、補充員の数をどのぐらいにするかということを考えながらこの手続を進めていくと、こういうような手順になるということで御理解を賜りたいと思います。
  171. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほどの議論の逆をちょっと聞いておきたいんですよ。何かと言うと、先ほどの議論というのは、自分でなりたくない、そういう人たちが選ばれたらどうするかという問題をずっと質問ありましたが、逆のケースというのは何かと言うと、例えば、今おっしゃったみたいに、この裁判員の候補者の中から一定数についてまず皆さん呼び出されて来るわけですよね。呼び出されて来ます。そこで、じゃ理由を示さずにこれ不選任の請求をすることができて、そして裁判所は不選任の請求があった裁判員候補者については不選任の決定をするわけですよね。本人やりたいと思っていたと。ところが来たと。仕事を休んでこの手続まで裁判所まで行ってやった人間が、何で自分は選任されないんだろうかというようなことに疑問を感じるんではなかろうかと私なんかは逆に思うわけですね。  つまり、この理由を示さない不選任の請求を認める理由というのは一体これは何なのか、そこをお尋ねしておきたいんです。
  172. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この不選任には二つのタイプがございまして、その裁判の公正を確保するためと、その方策といたしまして不公平な裁判をするおそれがある者、これを不選任事由としている、これは御理解が得られるだろうと思います。  それでもう一つは、当事者がその質問手続を通じまして、そのようなおそれがあると感じたといたしましても、具体的な根拠に基づいてこれを明らかにするということは相当でない、あるいは困難であるというような場合も考えられるわけでございます。  そういうことを考えているわけでございますけれども、なぜこういうことを守って、こういう手続を入れたかということでございますけれども、これは、やはりその裁判を受ける被告人側も、やっぱり最終的には自分が刑を受けるわけでございますので、その立場というものも配慮をしなければならないということでございますので、例えば、もう明らかにこれは公平な裁判をする期待ができないという方もおられるかもしれませんけれども、そこまで至らなくても、そういう心配のあるような方がもしおられるといった場合に、理由を示すことはかえって適当ではない。しかし、自分としてはお引き取り願いたいと、こういうものをやはり与えないと、やっぱり被告人権利の問題、こういうことにも影響してくるわけです、もちろん逆の立場も、検察の立場もあるわけでございますけれども。やっぱり裁判をきちっと公平にやっていただくと、こういうことを前提にしてこのような制度を置いたということでございます。  したがいまして、裁判の公正を確保して当事者からも信頼される裁判体、これを構成することができるようにこういう制度を設けたということになろうかと思います。
  173. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 確かに被告人の立場、検察の立場と、それも十分に配慮する必要はあるでしょうけれども、逆に、そういう人がどんどん出てもらいたいんですけれども、裁判員の就任について強く、強い意欲があったと、ところが選ばれなかったというので何か物すごいショックを受けるというような方がもし出た場合、これは、やはりこの裁判員制度というのは、成功させるためには積極的に裁判員になって義務を果たそうという人をどう確保するかという問題にもつながるわけであって、そういう意味でいけば、これは理由なく、理由なくという、理由を告げずにやる場合、その辺は逆にどう、今度は、被告人の立場、検察の立場から言いました。でも、選ばれなかった人の立場ですね、今度は。今度は選ばれなかった人たちに対してどういう配慮をする必要があるのか。  私は、何かそこに対しても一つ一定程度のものがなければ、これはやろうと始めたと。しかし、実際に参加しようと思って、あっ、来たと。自分は選ばれるんだと行ったと。行ったら何か、あれ、選ばれないんだと。何なんだこれはというようなことにもなりかねない面があるとも感じるんですけれども、そういう人に対してどういう配慮をすべきなのか、また配慮をしようと考えているのか、その辺について御答弁いただいておきたいと思います。
  174. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この制度の前提といたしまして、裁判員になることは、先ほどから出ておりますが、義務ではございますが権利ではないということがまず前提にございます。それともう一つは、仮に不選任請求、これの対象にならずに選ばれたといたしましても、そこからまた最終的に六人、あるいは補充員の方を入れましてもう少し多い数かもしれませんけれども、その方を選ぶわけでございますけれども、ここも作為が加わらないような方法のいわゆる無作為抽出をするわけでございまして、いろんな形で選任されない方が出てくるわけでございます。  これについて、個々にどういうことでこうなりましたということを、これ全部御説明するとなかなか難しいんですね。例えばくじ引で当たりませんでしたということ、これをただ言うだけでは余り意味ない話でございますし、そういう制度であるということをもう理解していただくほかないのかなというふうに思っておりまして、ここのところを特段の手当てを加えているわけではないということでございます。
  175. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今おっしゃったように、義務であって権利ではない、そういう位置付けは位置付けとしてどうにか理解しようとしても、やはり実際にそういうことに当たった場合どう感じるのかなという部分はありますので、そこは私は何なりかの方法、それは取りようどうあるかという、今御説明いただいたようになかなか難しい面もあると思います。しかし、そこはそこでお考えになられた方が、私はこの制度が成功するためには大事な一面だと思っておりますし、また別の面でちょっとお聞きしたいんですけれども。  この選任手続においては、この裁判員候補者の欠格事由、不適格事由があるかどうかを確かめるために、裁判長は候補者に対して質問することができるとなっています。候補者はその質問に対して正当な理由なく供述を拒んではならないとし、もし供述を拒めばこれ罰則まで規定をしているわけでございまして、そういう意味では、裁判員のこの選任手続において裁判長がする質問というのは、質問として相当なもう十分吟味はされなければいけないと思いますし、またプライバシーに対する配慮みたいなものも必要だと思いますが、そういった工夫や方策、どんなことをお考えか、御答弁をいただいておきたいと思います。
  176. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 先ほどの御質問で若干言葉が足りなかった点がございますけれども、この選任手続で、この法案で若干の規定も、配慮規定を置いておりまして、選任等の手続は「不選任の決定の請求が裁判員候補者の面前において行われないようにすることその他裁判員候補者の心情に十分配慮して、これを行わなければならない。」と規定をしておりますので、そういう点の配慮規定は置いているということでございます。その点は御理解を賜りたいと思います。  それから、ただいま言われました選任手続の点でございますけれども、この法案では、裁判員候補者のプライバシー保護のために裁判員等選任手続は公開をしないという形を取らせていただいております。  それから、質問につきましては、選任に必要な限度においてなされるものでございまして、その限度を超えてプライバシーに踏み込むということは当然ないということでございます。先ほど言いましたような配慮規定ももちろん設けているということでございます。  それから、候補者に対する質問でございますけれども、これにつきましては、一人ずつ行うかなどについて法案は特にその規定を置いておりませんけれども、質問やあるいは回答の内容いかんによっては、裁判員候補者の回答を他の裁判員候補者に知られるとプライバシーにかかわるという問題もございますので、こういう点も踏まえまして、この規定趣旨に沿った運用がきちっと行われるように裁判所の方にもお願いをしてまいりたいというふうに考えております。
  177. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つは、これ候補者になって是非とも裁判員として審理や裁判に関与したいと思っているにもかかわらず、例えば様々な事情から決められた公判期日にどうしても出頭できない、あるいはその時期が例えば農村であれば農繁期で忙しいのでもう少し先延ばししてもらいたいというようなケースもあると思われます。意欲ある国民の気持ちを逆に考えると、一定期間であれば裁判員の延期制度を設けることも考えられないわけではないとは思うんですけれども、そういう制度を設けるべきだという意見検討の中であったと私もお伺いしております。この点についてどうお考えなのかもお聞きしておきたいと思います。
  178. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいまの御指摘の点につきまして、確かに検討会等を含めていろいろ御議論がございました。これにつきましては、都合の付く時期というのがそれぞれの方によってかなり時期がいろいろ、ばらばらであろうということでございまして、そういうようなことになりますと非常に複雑なシステムを設けなければならないということにもなるわけでございますので、その技術的な問題もなかなかクリアできないだろうということが一つ前提にございますけれども、これ以外に、仮にじゃそういう仕組みができるとして、したとしても、裁判員を広く国民から公平に選ぶという建前を取っているわけでございますので、その建前からして辞退が認められたその一部の方にまた優先的に裁判員となる地位を与えるという結果になるわけでございまして、そういう例外的な取扱いを認めるべきかどうかという議論になったわけでございますが、やはりこれはみんな無作為抽出だという建前からいけば、一部の方に優先的な地位を与えるというのはやっぱり制度としてはそぐわない、こういう議論になったわけでございます。  そこで、こういうような制度は取り入れないと。しかしながら、その場合には、裁判員の候補者としてのプールの大きな母体があるわけでございますので、その母体にいったん戻して、そこでまた公平なくじで選ばれる方は選ばれるというところまでは戻すということにいたしましたけれども、優先的な地位を与えるということは、それは制度としてそぐわないだろうということから取り入れないということにしたわけでございます。
  179. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 次は、裁判員権限の問題で、これも先ほど一つ議論があっておりましたけれども、今回の裁判員制度というのが、一つの特徴は、一般国民公訴事実について有罪無罪だけでなくて量刑まで決めることになっていると、これどうなんだという意見が先ほどもあっておりました。ただ、量刑まで決める、つまりそこまで踏み込んでやることに対しての一つ意義付けは私はあるとは思っております。正に司法の民主化というものを考えるときの一つの大きな要素ではあると思ってはおりますが、これ事務局として、この一般国民である裁判員が事実認定をして量刑まで決めることということの意義について、どうとらえてここまで踏み込むことを決めたのか、それがある意味では民主主義国家にとってどういう効果をもたらすのか、どういう認識でここをお決めになられたのかについて御説明を願いたいと思うんです。
  180. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この関係の議論に関しましては、現在の裁判、基本的には順調に行われておりますけれども、やはり時代の流れとともにいろいろな国民の声が出てきておるわけでございまして、そういう中で裁判に時間が掛かるとかいろんな問題がございますけれども、その中の一つ意見として、やはり裁判の刑についてもあるときには重かったり、あるいは軽かったり、そのばらつきというんですか、それからやっぱり国民感情から見たときに、これだけの事件でこんなに軽くていいのかとか、これだけのことで何でこんなに重いのかと、いろいろなそういう御意見もございまして、やっぱり国民関心は、ある事件が起こったときにそれが有罪か無罪かというだけではなくて、仮に有罪である場合もその刑はどうあるべきかというところまで非常なやっぱり国民関心事であるということで、こういう実態にあるということでございます。  そうなりますと、単に有罪無罪だけを決めていただいて、あとは量刑は裁判官だということになりますと、やっぱり国民感覚が全部に入り切らないということにもなるわけでございますので、やっぱりそこは一体として参加をしていただいて、そこで自分たち感覚も入れてやった裁判だということになれば、それはやっぱり司法というものが国民信頼を得られると、こういうことになっていくという点から非常に重要なポイントであるということから、これ一緒に判断をしていただくと、こういう政策を取ったわけでございます。
  181. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そのときにももう多分意見があったと思うんですけれども、今全体の流れの中で国民感情から見て、国民から見て、その量刑がどうだという今の裁判官在り方の問題もある一方で、やはり今の裁判在り方というのは裁判官がある意味の一つの経験則、全体の状況を見ながらやりますから、量刑については一つの草案みたいなものができ上がっているわけですよ。例えば、こういう事件であればこうだと、一つのこういうものができ上がっている。  ところが、もしこれ裁判員制度でやっていくとなると、量刑まで決めるわけですから、どんなことが起きるかというと、各裁判員、それぞれ生活環境とかいろいろ違うわけですから、それを自分のものを基にしながらそのことを判断することになれば、ある意味では、同程度の事件であったとしても、それが行われる場所、裁判所の場所、若しくはそのどんな裁判員が参加しているかによってその量刑のある意味では今度逆にばらつき、同じ事件であってもこのばらつきというものが生まれてくるような怖さも感じるんですけれども、この点についてはどんなふうに考えていらっしゃるんですか。
  182. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 確かにおっしゃるようなその面も分からないわけではありませんけれども、この量刑に関しましては、まず裁判では検察官の方から求刑がございます。例えば、懲役十五年にしろと、こういうような求刑があるわけでございますが、逆に今度被告人あるいは弁護人側から、またその刑に関する弁論も行われるわけでございまして、そういう意味ではその事件において請求する側と守る側がどういうふうに考えているかという一応の指針が出てくるわけでございます。こういうものを考えながら最終的に量刑を決めていくということができますので、そういう意味においてはそう大きなばらつきが出るかという問題も出てくるわけでございます。  それからもう一つは、裁判の最後の評議のときにやはり裁判官の方から現在の大体判例の傾向、こうなっているとか、そういうような一般的な考え方、今の状況についての説明はあろうかと思います。そういうものを判断しながら最終的に決めていくということでございますし、それからこの量刑を決めるについても、裁判官裁判員、これが両方の意見が必ずあってその上で決まっていくということでございますので、そこで適正な量刑が出てくると、こういう担保もされているわけでございます。  最悪の場合というんですか、これでもどうしてもという場合にはこれは控訴ができるわけでございますので、最終的にはその控訴審の是正という問題も出てくるということでございますので、それは三審制を取っている意味が正にそういうところもあるわけでございますので、その制度全体で調整が図られていくと、こういうことだろうというふうに理解をしております。
  183. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私は裁判員導入した意味からいえば、正直申し上げると多少のばらつき出てきても私はやむを得ないと思っているんですよ。そういうものが出てもいいという覚悟を持ってこの制度に突入するしかないんじゃないかなというのが正直な気持ちなんですけれども、いろんなものを含みながらおやりにならなくちゃいけない問題だろうとは思いますが。  そしてもう一つ、この裁判員権限の問題でお聞きしておきたい問題で、これやむを得ないのかとも思いながらも、法案を見るとこの法令解釈にかかわる判断とか訴訟手続に関する裁判判断ですね、裁判じゃなくて判断、これは裁判官のみが行うというふうに規定をされているわけでございます。これ最初からどうかとも思うんですが、一般国民裁判に参加する制度を創設するんですから、ある意味ではそういったところもこの裁判員が関与するということの仕組みは作れなかったのかと思わないでもない面もあるんです。ただ、感じますよ、そういうものまで裁判員が関与することになれば大変な、専門家じゃないわけですから、そこの部分からいろんな負担が重くなる結果にもなる、その辺でこういうことにはなっているんだろうとは思いながらも、やはり創設するときに裁判員が関与できる部分というのをある意味では判断する部分を限られた理由、この辺について御説明もいただいておきたいと思うんです。
  184. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 確かに法令解釈訴訟手続に関する判断、これについては裁判官のみで行うと、こういうシステムを取っているわけでございます。  この法令解釈に関する点でございますけれども、まず、専門的で複雑な法律判断を要求される場合が多いということで、やはり負担が掛かるということですね、裁判員の方に。これが一つでございます。それから、やはり法的な安定性の見地から裁判所間の判断の統一性も要請されるという点もあるわけでございまして、こういう点を考えまして、法令解釈ですね、これについては裁判官のみで行うと、こういうふうにしたわけでございます。  それから、訴訟手続でございますけれども、これもかなりその訴訟手続判断というのは実体の法令解釈よりももっと専門性が高くて技術性が高い分野でございまして、こういう点についてもやはりその裁判員の方に判断をしていただくということは相当な負担になるということ。それから、例えば証人尋問の際の当事者の異議の申立てに対する判断とか、あるいは被告人の身柄に関する保釈とか、こういう判断もあるわけでございますけれども、こういうような点については迅速な対応が求められるということになるわけでございますので、これはやはりそういう点を考えますと裁判官のみで行った方がいいだろう、こういうような点も総合的に考えましてこのようなシステムにしたということでございます。
  185. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そして、今度は実際に裁判をやるときの問題です。裁判員公判期日にもちろん出席して審理に関与するわけですから、裁判員被告人質問できるとするのもあり得ると思いますが、その反面、これもいろんな議論あったと思いますが、裁判員がとんでもないような質問するという懸念というのも、これ一般の方が来た場合というのはそういうものに慣れてないわけですから、これもそういう懸念をおっしゃる方もいらっしゃるわけです。  そこで、法律上はこれ、裁判員被告人に対して質問することができると、こととするというこの理由について伺っておきたいと思うんです。
  186. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) これに関しましても裁判員の方は法と証拠に従うわけでございますけれども、少なくとも最後は自分の判断で事実認定をして量刑を決めるわけでございます。そうなりますと、やはり自らの問題意識で、例えば証人が来られたときにその疑問を聞いておくということですね、それから考え方を聞いておく、事実をもう少し聞いておくと、こういうことは当然やっぱり必要になってくる、主体的に参加をするためには必要になってくるということから、その質問をすることができるということにしたわけでございます。  ただ、これはやっぱり裁判のルールの中で質問をしていくということになるわけでございますので、その公判期日等におきましては裁判長の訴訟指揮に従わなければならないということになりますので、裁判員がその審理の適正を損なうような不適切な質問、これを被告人にしたり、あるいは証人にするというような場合には、裁判長の訴訟指揮によって是正ないし制限をされるということでございますので、裁判長の許可を得てその質問をすると、こういうシステムになっておりますので、自ら質問をするということと、それからおかしい、非常に不適切な尋問が行われるということがないようにと、両方の要請を満たしているということでございます。
  187. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今度は控訴審について。  先ほどから一審の裁判員制度の、迅速にやると、すると、あとは残りの問題は控訴審であり最高裁があると、いろんなお話がありました。今回の仕組みそのものは、一審において裁判員制度導入するということになっているわけでございます。  じゃ、これ、控訴審は一体どんなふうなことをお考えなのか。つまり、裁判員制度導入するということに今回なっていないわけでございまして、控訴審では裁判官のみで合議体で審理、裁判することになると。なぜ一審では裁判員導入してやるのに控訴審ではしないのかと、この理由についてきちんと説明しておいていただきたいと思います。
  188. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) これは、現在も控訴審は専門的に言えば事後審というシステムを取っておりまして、一審が行われたそのことについて、それが正しいかどうかをチェックをしていくと、こういうシステムになっておりまして、もう一度その対象になった事実についてそれを全部元から見ていくと、こういうことではないシステムでございます。そこが民事事件刑事事件の違うところでございます。  そうなりますと、一審は裁判員制度で行ったと、それを事後的にチェックをしていくというシステムですね。そうなりますと、そのシステムは現在と変わらないわけでございまして、それは裁判官のみで事後的にチェックをしてもいいのではないかという、そういうような構造を取っているということが一つでございます。  それから、控訴審でございますけれども、これは主に書面から成るその公判記録、膨大な記録があるわけですけれども、これによって一審に提出されたその証拠あるいは主張、それからあるいは審理の経過を精査をいたしまして一審の判断の当否をする、審査をするという、そういうような控訴審のその現実の職務内容からいたしましても、このような経験のない裁判員が本来の力を発揮できる場面は非常に少ないだろうということから、その一審に、その負担も一審に比べて相当に重くなるということも考えまして、ここに裁判員の方に入っていただくのは相当ではないということから、控訴審については現行法どおりというふうにしたわけでございます。
  189. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その点も、まあ裁判員制度をどう始めるかという趣旨でいえば極めて私は妥当だというふうに思っておるんですけれども、ただ裁判員が関与をして出された第一審の判決、これが今度は控訴審に上がっていくと。控訴審に上がった場合、裁判官だけですから、控訴審は。この裁判官だけの控訴審がその判決を破棄して自判することについて、これは特に制限が設けられていないわけですね、今。  つまり、一般国民が加わって行った判断、これを今度は職業裁判官だけになったと、それを破棄して今度は自ら判断するということになった場合、今度、裁判員制度というのは何のために作るかというと、国民社会常識や多様な意見裁判に反映させるという意味で始めていったと。これだったら、そういうその制度そのものを、もし破棄して自判するということにしてしまった場合は、否定する結果を生みはしないかという危惧を抱くわけでございまして、ある意味では控訴審というのは一審の判決を破棄した場合は自判することはできない、これぐらいのことまですべきじゃないかなと考えるんですけれども、いかがでしょうか。
  190. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 先ほども申し上げましたけれども、控訴審は事後審とされているわけでございまして、第一審を破棄する場合には事件を第一審に戻す、差し戻すのが原則でございますけれども、事後審査のために用いた資料によって直ちに新たな判決を言い渡せる場合に限って自判できるというふうにされておりまして、これは現在のシステムがそのとおりになっているわけでございまして。  これを裁判員制度の場合に変えるかということでございますけれども、例えば、いろいろ検討の途中で出てきた議論でございますけれども、控訴審で実は私は犯人ではないということで身代わりであるという主張が出てくることがありまして、これについて身代わりの、その出てきた人の言っている部分、ことですね、その人の言っていることが非常に信用できるというような状況であるならば、これをわざわざ元へ戻してやるというよりも、それがもう明白であるというような場合には自判ができてもいいんではないかと。その人については、ですからもう無罪ということになるわけですね。それ以外のまたそのことに関して、いろいろしゃべったことに関しての罪はまた別でございますので、少なくともその事件についてはその人はやっていないということが明白になる場合に、わざわざ差し戻して、それで裁判員の方を入れてやる必要があるかという点も考慮する必要があるということから、現行法どおりの運用で、法制度で構わないのではないか、こういうことでここの点については新たな規定は置かなかったと、こういうことでございます。
  191. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 逆に言えば、そういうことであれば、それで国民理解を求める点で、御説明をいろんな場で、今後ですよ、要するに一審やって、原則はそれは破棄した場合は、控訴審が、戻すんだということは、それは皆さん分かっていると言っちゃ分かっているでしょうけれども、いやそうじゃなくて、控訴審でまた勝手に変えられるんじゃないかと。仕組みとしてはそれが残ってしまっているわけですから、仕組みとしては。それが改められないという、今のおっしゃったようなケースがあるんだと、現実には。それであれば、例外的にそういうケースは起こり得ると。ただ、原則、もしその一審の問題で控訴審に、破棄した場合というのは原則は差し戻す形になるわけですから、そこはそこで十分な御説明をなさっておかないといけない部分ではないかなと、私は感じているんですけれども。  そういうことを御要望申し上げ、もう一つ、次の論点は、これもずっと論議に午前中からなりましたが、その裁判迅速化の問題とこの裁判員制度の関係の問題なんですけれども、調べさせてもらいましたらば、法定刑に死刑、無期の懲役、禁錮を含む事件平成十四年における平均審理期間は八・五か月ですか、そのうち否認事件の平均審理時間が十三・二か月という統計がございます。  三月に判決言渡しのあった仙台のあれは筋弛緩剤事件だったと思いますが、これは初公判から二年八か月でございます。公判回数は百五十六回に及んだと聞いております。裁判員制度始まれば、このような事件も実質的には裁判員が扱うことになると思いますが、もちろんこんなにも長い間裁判員を拘束することは事実上不可能であって、とにかくこの審理期間を、先ほどいろんな御説明ありましたが、短くすることが裁判員制度を成功させるための重要な課題だと、これは私もそう考えます。  この審理期間を短縮させるための方法、先ほども幾つかおっしゃっておられましたが、どういうふうにしてこの審理期間を短縮されようとしているのか、その方策によって裁判員が耐え得るだけの審理期間に短縮することは本当可能なのかなと、今までの事例が余りに長いものですから、大丈夫かなということも思うんですけれども、その点についての認識を伺っておきたいと思うんです。
  192. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) これは裁判員が参加する審理期間の短縮のためには、真に争いのある点を中心にした無駄のない充実した審理をできるだけ連続して行うということが肝要でございます。そのために、その公判前に争点を明確化した上で、その争点の判断のためにどのような証拠をどのような順序で取り調べるかといったその明確な審理計画、これを立てるということ、これが非常に重要なことになってくるわけでございます。  そこで、今回の刑事訴訟法の一部改正案でこの点の手当てをしておりまして、一つはその十分な争点整理を行って明確な審理計画を立てることができるようにするための公判整理手続というものを設けております。また、この手続の中で、証拠の提出、証拠提出の拡充、これについての規定も明確に置いているということでございまして、そこである程度必要な証拠が出てくるということになれば非常に争点も絞っていきやすいということになるわけでございます。そういうその整理手続あるいは証拠提出手続を経まして、それで争点をなるべくポイントに絞って、それを短い期間でやっていくという、そういう計画を立ててもらうということがまず大事になるわけでございます。  それからもう一つは、開廷についても、現在行われておりますような五月雨式な方式ではなくて、なるべく可能であれば連日的に開廷をして短期間で終わっていくと。これもその手続的には法定化をしているわけでございまして、こういうものを利用してもらいまして、その上でなるべく公判手続は短くするように、それをやっていかなければ本当に裁判員制度として動かなくなるおそれもございますので、これで是非きちっと短縮がされていくだろうということを期待しているわけでございます。  したがいまして、公判前の整理手続ですね、これについて若干時間が掛かってもそこでよく整理をしていただいて、きちっとした審理計画を立てた上で公判手続を行うと、これが非常に重要になっていくということだろうというふうに理解をしております。
  193. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非、耐え得るだけの期間に短縮することが一番これ本当に大事な問題ですから、それをやっていただきたいし、また国会の方では、昨年の通常国会でございましたが、裁判迅速化法というのも成立をさせていただいております。  これについて御説明いただくより、最高裁の方にこの裁判迅速化法に基づいて、つまり裁判手続に要した期間などについて最高裁判所による検証が行われることになっておるはずでございまして、最高裁判所で今、裁判迅速化に係る検証に関する検討会というのをもう立ち上げられたと聞いていますが、その目的及びどんな委員構成でやっていらっしゃるのか、簡単に御説明お願いします。
  194. 中山隆夫

    最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今委員指摘のとおり、裁判迅速化に関する法律八条において、最高裁判所が、裁判所における手続に要した期間状況、その長期化の原因その他必要な事項についての調査分析を通じて、裁判迅速化に係る検証を行うということが定められております。  裁判所では、迅速化法が成立したことを受けまして、早速、この検証が同法に定めるとおり総合的、客観的かつ多角的なものとなるように、最高裁判所規則を制定し、検証作業を行うに当たって学識経験者及び法律実務家から広く意見を聞くために、裁判迅速化に係る検証に関する検討会というものを設けました。  この検討会は様々な裁判手続の特徴というものを考慮しながら、裁判手続の実施状況などについて実情を把握するための調査の内容や方法、あるいは調査結果の分析の内容あるいは方法、そういったことに関して様々な視点から委員意見を聞くというものでございます。  現在、委員の数は十人であり、その内訳は、裁判官二名、検察官一名、弁護士二名といった法曹関係者が五名のほか、学識経験者が五名。これをもう少し詳しく申し上げますと、民事、刑事の法律学者が二名、それから経済法の学者が一名、理工学部の教授、自然科学系の観点からのいろんな見方を提供していただこうかと思いますけれども、その教授が一名、さらにマスコミ関係者一名と、こういうことになっており、既に四回の審議を行って、平成十七年六月ころ予定しております第一回の検証結果の公表に向け、実情を把握するための調査方法について意見を伺った上で、現在、最高裁判所においてその調査を開始したというところにございます。
  195. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ちょっと随分先の話をするわけですけれども、これ裁判員裁判が始まった場合ですよ、ここの検討会で、そういう本当に迅速に行われているかというところ等をここの検討会が見るようになるのかどうかという、ちょっと先の話で、まだ法律も通していないのにこんなことを言っていいのかどうか分かりませんが。また、例えばこの検討会で、裁判員がどうもこれで裁判が長くなり過ぎていると、こんなときに、いや、ちゃんと早くおまえきちんとやれというような勧告とか意見を述べたりするような場所がこの検討会になるのかどうか、その辺ちょっと聞いておきたいと思うんです。
  196. 中山隆夫

    最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 裁判迅速化法のときの立案当局の説明によりますと、二年という審理期間の目標を立てた上で、しかし、二年で全部できているからということで事足りるということではなく、更にその二年を割り込んでできる限り短い審理期間でやるようにということでございました。  これ、裁判員制事件というものが理論的にこういった迅速化法の対象になってくるかどうかといいますと、それは刑事訴訟法の一形態でございますから当然入ってくるということになりますし、これが二年を超えて裁判員制事件が行われるということになれば、そういったものが検証の対象になってくるということになります。  しかし、他方で、二年も掛かるような言わば検証検討会の対象になるようなことになってまいりますと、これは国民の負担、裁判員の負担という観点から到底その裁判員制度というものはもたないことは必至でありまして、そういう意味では次元が異にするということではないかと思っております。  裁判員制度事件につきましては、個人的な考えを申し上げますと、普通の事件で一週間からせいぜい二週間、長くても一か月あるいは数か月の範囲内にすべてが終わるというようなものを作っていかなければならないと思っておりますし、今回の刑事訴訟法の改正といったものはその基盤を与えていただけるものではないかと、そういう意味での提出であろうというふうに考えているわけであります。  刑訴法の改正が今回成りますれば、裁判所としては、法曹二者、弁護人検察官の協力も得ながら、この刑訴法の改正に沿って具体的な運用を行っていく、そしてどこまで審理期間というものが短くできるかどうか、そういったものを実地に検証していく必要があるだろうと思っています。仮に、それでもまだまだ大変であるということになりますれば、それはやはり関係機関で話し合って更なる手当てというものも考えていくべきものだろうと思っております。  最後に、検証委員会の方がそういったような形の意見を、勧告といったものを述べることができるかどうかということでありますが、迅速化法の検証の最終的な責任者、責任主体はあくまでも最高裁判所ということになっております。どういう結論を出すかというところが、しかし、最終責任者ではありますけれども、裁判所だけで考えていった場合に、裁判実務家の視点あるいは法曹実務家の視点だけにとらわれてしまいかねないと。  したがって、いろんな方に入っていただいて様々な視点を提供していただく、それに基づいて最高裁判所の出す結論というものに厚みを持たせる、あるいは客観性を持たせようというものとしてこの委員会が発足しておりますので、勧告あるいは意見を述べるというような、その裁判員制についてでございますね、そういうことにはならないというところは御理解いただきたいと思います。
  197. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後の一項目というか、項目で、もうこれも一番この制度の成功するかどうかのかぎを握っているのは、正に国民に対する周知の問題、もう何回も議論になっていますが、これが一番のポイントだと思います。  そのために五年という期間も置かれているでしょうし、そういう意味では最大のポイントだと思っていますが、先ほどもお話があっておりましたが、戦前、陪審裁判、これをやったわけですけれども、このときにも結構何か周知徹底、いろんなことが行われたと聞いておりますが、何か分かるものがあるなら、模擬試験とか何かいろんなことをやったんですかね、もし御存じならば法務省の方から御説明、いわゆる戦前の陪審制の施行前における広報活動、どんなことをやったか、内容が分かれば御答弁をいただきたいんですけれども。
  198. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 陪審法は大正十二年四月十八日に公布されまして、昭和三年十月一日から実施されましたが、それまでの約五年半の間に行われました広報活動といたしまして、全国各地の公会堂や学校等における講演会の開催、陪審制度内容を解説した出版物の配布、陪審裁判を主題とした映画の作成、上映、ラジオや新聞等のマスメディアを利用した陪審制度に関する説明等がなされたものと承知しております。
  199. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私も数、見させてもらいましたが、物すごい数の講演をやり、わあ、やっぱりこういうものをやるときにはそれだけのものが必要なんだなとつくづく感じたぐらいやっていらっしゃいますし、それに負けないぐらいの問題が要るでしょうし、戦前とは違うわけであって、情報化社会なんですから、そういう高度情報化の中でどうやっていくかと。正にそういうものも少し下敷きにしながら負けないようにやっていただきたいし、検察庁さんもそれなりに、私の地元、福岡でございますが、この前、どんたくという祭りがありました。どんたくという祭りで何やったかというと、この裁判員制度説明を、あれ高検さんですか、福岡高検、地検、どっちか忘れましたが、やっていらっしゃった、こんな制度ですよと。  あらゆる機会を通じてやらなければいけないと思っていますが、ともかくどういうふうな形でこの裁判員制度国民に浸透させていくのかということについて、これは事務局の方からちょっと伺っておきたいと思います。
  200. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 確かに大変重要なポイントでございます。戦前と違いまして、今メディア関係のいろんな手段がございますので、これを大いに利用したいというふうに考えております。一つはパンフレットという問題はもちろんございますけれども、それ以外にいろいろなビデオですね、こういうものを作りまして、やっぱり目で見て、動いている場面できちっと理解をしてもらうと、こういうような活動が必要であろうと思います。  それからまた、もう一つ、今度、実際にやってみるという、そういう経験ということも考えますと、多分模擬裁判ですね、こういうものもやっぱりやっていかざるを得ないだろうというふうに思っております。これ本当に法科大学院でも全部模擬法廷を持っているようでございまして、別にこの裁判員裁判だけではなくて、現実に裁判を生徒にやってもらうと、そういうことから身に付けて覚えていくというようなことも考えているようでございますので、正に国民に参加していただくためには、そういう模擬体験というんですかね、これをなるべく多くの方にしていただいて、それで安定的に裁判の中に入っていけると、こういうことも考えざるを得ないだろうということで、いろいろな手段を考えまして広報活動に努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  201. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つは、やっぱり一番大事な問題は何かというと、教育におけるこの裁判員制度、どんなふうにして教育現場の中でこれを取り上げ、やる、私はやる必要があると思っているんですけれども、ある意味では司法というのは本当に遠い世界という、今はそういう感じでしか国民は思っていない面もある。  じゃ、学校教育で学ぶのは何かと。立法、司法、行政があってみたいな話でしか学びやしない。こういう新しい制度を始め、正に義務とさっきおっしゃいました、国民の義務としてこういうものを始めるんだというお話もあった。それである以上は、ある意味じゃ義務教育の現場であるのがいいのかどうか分かりません。また、社会教育における法教育という形でやったらいいのかどうか、いろんな場所があると思うんですけれども、言わばこれは文部科学省の方にお伺いしておきたいんですけれども、いわゆるこの法教育、これを充実させるために今後どのような取組をお考えになっていらっしゃるのか、是非その点をお聞きしておきたいと思います。
  202. 金森越哉

    政府参考人(金森越哉君) お答え申し上げます。  義務教育段階におきまして、児童生徒が法や決まりの意義司法の仕組みを理解するとともに、社会の一員として法や決まりを尊重してより良い社会の形成にかかわる態度を育成することは大変重要であると考えております。このため、学習指導要領におきましては、社会科などの各教科等で法や司法に関する指導を行うこととしておりまして、例えば小中学校の社会科では、日本憲法の基本的原則や権利義務の関係、法に基づく公正な裁判の保障があること、裁判の働きなどを指導することといたしております。また、道徳でも法や決まりの意義理解し、遵守することなどを指導するなど、学校の教育活動全体を通じて児童生徒が主体的、積極的に法にかかわる態度の育成を図ることとしているところでございます。  さらに、社会教育におきましても、例えば社会人を対象にした大学の公開講座におきまして、現代企業社会と法や医療行為と法などの講座が設けられておりますほか、地域の公民館などの社会教育施設におきましても、各種講座の中で法律等に関する基礎的知識などを習得し、理解を深めるための学習機会が提供されているところでございます。  今後の法教育の在り方につきましては、学校教育等における法や司法に関する学習機会を充実させますために、昨年九月から、法務省の法教育研究会において検討が行われているところでございまして、文部科学省といたしましても、法務省と連携して、この研究会における検討に参加、協力しているところでございます。  今後とも、この法教育研究会における専門的な検討の動向も踏まえまして、法や司法に関する教育が適切に進められるように努めてまいりたいと存じます。
  203. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 山崎事務局長、ちょっと文部科学省ともう少し、あと五年、これ通れば五年間準備期間ありますよね。その準備期間の間に、やっぱり少し、こういう新しい制度を始めるんであれば、社会教育の中でまずはどうこの裁判員制度の問題、知ってもらう場を作ることも必要だと思うんですよ。  そういう意味では、文部科学省にもお働き掛けなられて、もう少しいろんな形でこれやらないといけないなという感じを私はしておるんですけれども、是非御要望して、法案通せばあなたの仕事は終わりじゃないんですから、これからが大事でございますので、是非そういう点もお願いをしておきたい。  もう一つ、これやっぱり、これもいろいろ議論ありましたが、五年という準備期間を設けていると。確かに、もう少し早く法案通すなら始めた方がいいんじゃないかという意見もある。でも、実際始めるまでにはいろんな検討も要るだろうと。いろんなこれ、その始めるまでの期間の問題については議論があった上で五年になっています。やっぱり五年、必要ですかね。  また、五年やるならば、大事なことはもうさっきから皆さん確認されていましたが、本当、頭を柔軟にしておいてもらって、是非いろんなことを御検討なされて、このもし五年が必要だとおっしゃるんであればですよ、不備な面があればもういつでも結構でございます、参議院先議で法案審議いたしますので、是非直すべき点があれば法律も出していただきたいと、こう思いますが、ともかくこの五年の必要性の問題、どうお感じかを一応お話を伺っておきたいと思います。
  204. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この五年かどうかというのもいろんな議論を経たわけでございますが、私はやっぱり五年は必要だろうというふうに思っております。  まず、周知徹底の問題でございます。これはやはり国民の方に、つらいけれども頑張ろうという気持ちになっていただかなけりゃならないという点が第一点でございます。  それから、この準備について、これ法律ができましても、これ最高裁判所の方でまた規則というものを作っていかざるを得ません。それから、現実にそういう、その運用をどうしていくかということ、この協議も相当にやらなければならない、あるいは実験的に始めていかざるを得ないということもあろうかと思います。それから、裁判所の方でいろいろ物的な設備等を含めました周辺整備を全部しなければならないということもございます。  それともう一つは、大きなものは、その弁護体制ですね。これ連日的に開廷をするといった場合に、弁護士さんをどう確保していくかということ、これ日弁連の方とまたいろいろ御相談はしなければならないと思いますけれども、そういうことのためにも、セーフティーネットとして日本司法支援センターですが、これを作ってその運用をしていくということで、また法案の方も御承認いただくわけでございますけれども、これを先行的に制度としてスタートさせて、これが安定的に動くようにしてからこの裁判員制度導入しないと、実際やろうとしてもその体制ができないということになったら、これは制度として欠陥であると言われかねませんので、そこの運用をきちっとまず見たいということですね。  それともう一点、午前中からずっと議論が行われておりますけれども、要は、裁判官検察官弁護士、これのプロの意識改革が必要でございまして、どうしても難しいことを難しく言うということになるわけでございまして、難しいことを易しくどう言うかと、これが一番難しいんですけれども、このことを本当に染み付くように、ちゃんと研修を経て自然に出てくるようにしないと、とてもこの制度動かないわけでございます。どうしても旧来の裁判も残るわけですから、両方に対応できる頭を作らなきゃいかぬ。これが非常に難しい。それを意識改革するためにはある程度の時間は必要であろうと、こういうふうに考えているわけでございます。  それ以外にも、先ほどございましたけれども、いろいろ練っていって、不都合が生ずるならば、そこは柔軟に対応して、必要な改正はお願いをしたいというふうに考えているところでございます。
  205. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に大臣に、何回も私は大臣に聞くときは、国民の周知が最大課題ですと、もう何回も申し上げながらやってまいりましたが、まず、今日の質疑を締めくくるに当たって、大臣のこういう問題に対する決意伺って、質問終わりたいと思います。
  206. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 私、この制度に取り組むに当たりまして、大変実は認識を新たにしたところがございます。それは、この司法制度改革に取り組むに当たって、言い出したときがたしか橋本総理のころでございまして、それから小渕総理、森総理、そして今、小泉総理が、これを五年掛かって仕上げようということで内閣として取り組んでまいりました。その本部長が今、小泉総理ですが、私も副本部長としてその一助を務めておるわけでございますけれども、実に壮大な取組でございまして、言い出したときにも実は、やれるかどうか実は見込みが十分でなかったと。しかし、ついに法案を十本にわたってまとめまして今御提案し、審議をいただいておるわけでございます。  しかも、先ほどもお話がありましたとおりに、衆議院におきましては相当多面的な御修正はいただきましたが、全会一致という正に記録的な、新しい法案にしては大変な実績もちょうだいし、そして今参議院におきましてそれぞれの分野から更なる御検討をいただいておると、こういうことでございます。やれるかどうかもはっきりしないという中での五年という歳月がいかに実は値打ちがあったかということを申し上げたいわけでございますが、これからこれを更に実行に移していくためのやはり準備は、ただいま事務局からもお話がありましたとおり、ハード、ソフト両面にわたって相当なやはり準備が必要だと。  おかげでさまでロースクールの方も今順調にスタートをしておりまして、あと二年、三年すれば相当な数の法曹の卵がひなになってかえってくると、こういう楽しみもあるわけでございますから、一連のそういった全体の制度が正にそれぞれが補完し合い、相互に均衡し合った中でこの制度が実を、実効を有する状況になると、こう考えておるわけでございます。そのためにこそ、正に国民の皆様によくその制度理解していただき、積極的に御参加いただけるような状況を作ることがこれからの我々の大きな課題と考えておりますので、どうぞ今後ともよろしく御指導のほどお願いしたいと思います。
  207. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  208. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  本会議に続いて質問をさしていただきますが、朝からの審議にありますように、裁判員制度が本当に国民にとって実のあるものにする上でこの参議院での議論が大変大事だと思っております。裁判員制度に今後参加をしていく皆さんが、当時、国会ではどういう議論がされたんだろうかということで議事録をごらんになる方もいらっしゃる。そのときに本当に分かりやすい議論がされているということが大事だと思うんですね。  先ほど、プロの意識改革が必要で、難しいことを難しく言う傾向があるということが言われましたけれども、むしろ簡単なことを難しく言うという場合も結構多いなということを私はこの委員会で思うんです。是非、国民に分かりやすい言葉での答弁を、とりわけこの法案での審議ではお願いをしたいと思います。  本会議でも申し上げましたけれども、この裁判員制度が、長く職業裁判官が独占をしてきた日本裁判制度国民が参加をするという点で大変大きな意義があると思っております。そして、そういう改革の実を上げるためには何を改革すべきなのかと、現状はどうなのかと、このことの認識というのが私は土台になると思います。  本会議でも、日本刑事裁判が有罪率九九%で世界でも突出をしているということを挙げました。そして、その下で少なくない冤罪事件も生んできたし、捜査段階で自白をしたけれども、あれは強要されたんだということで公判で否認をされるという場合も少なくないということも指摘をいたしました。その上で、現在の刑事司法の認識を大臣にただしました。大臣からは、基本的に国民信頼を得ているという答弁でありました。私も、国民の多数が今の日本刑事裁判に不信感を抱いているとかそういうことを言うつもりはございませんし、法治国家としてそういうことはあってはならないことかと思います。  ただ一方で、午前中の審議にもありましたように、刑事裁判にかかわった皆さんからは、例えば絶望的という言葉もありますけれども、様々な問題が指摘をされてきました。そして現に、世界に例を見ないあの免田事件のような、死刑確定事件での再審無罪になった例などもあるわけです。こうした少なくない冤罪事件などが発生してきた、こういうことからどういう教訓を酌み出されているのか、まずこの点を改めて大臣にお聞きしたいと思います。
  209. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 刑事事件で、正に今委員指摘のとおり、有罪か無罪か、しかも死刑を含めての御議論をこれから考えていかなきゃいかぬということになりますと、大変この今行っております議論は重い課題をしょっておるということは私もよく認識をしておるところでございます。  今委員指摘の無罪判決が言い渡された事件で、しかもそれが冤罪として後で修正されたと、こういったのも幾つかあるわけでございますけれども、その内容理由については様々でございますが、起訴処分について申し上げますと、検察官は刑罰権の実現が国家的な問題であり、かつ検察官には公益の代表者の立場から実体的真実を追求することが求められていると。これは、従来から、自ら被疑者を取り調べるなど所要の捜査を遂げ、収集された証拠検討し、有罪判決を得ることができるとの高度の見込みがある場合に初めて起訴を行うということの中で裁判をこれまで実行してきたと承知しておるわけでございます。  もとより、この結果としまして検察官主張が認められず無罪判決が言い渡されて確定する場合もありますが、その場合においては、無罪判決等において指摘された問題点を踏まえまして、検察当局としても更に客観証拠の収集に努めるとともに、取調べに当たっては自白の任意性や信用性の確保に努めるなど、捜査が適正に行われるよう努力しているものと承知をいたしております。  あくまで証拠をしっかり集める、そして適切な法令の適用を図ると、ここに更なる努力を費やすべきだということで、今後とも冤罪等の発生がないように努力をしなければならない、心して取り組む最大のポイントであろうと思います。これは制度がどのように変わりましても、この基本については変わりはないと考えております。
  210. 井上哲士

    ○井上哲士君 心して取り組む最大のポイントだと、こういう答弁でありました。  ただし、問題は、こうした幾つかの冤罪事件の中で、やっぱり警察や検察の言わば不当な捜査などによって起きたものが幾つか指摘をされております。  例えば八五年の七月に徳島地裁で、初めて死後、被告人が死後に再審をされ、無罪になったという徳島ラジオ商殺し事件という有名な事件がありますが、これは、有罪になった決め手は店員の証言であったわけですけれども、その後、判決後に検事の誘導、強制によってうその証言をしてしまったと、こういう告白をいたしまして、そしてその後、再審が開始をされ、無罪が宣言されました。この二人の店員は、その後、そのうちの一人は告白の手記の中で、自分は途中で過ちと思ったけれども、もし証言を取り消せば偽証罪になると、こう思わされたので公判廷において偽証を続けてしまったんだと、こういうことを手記の中で告白をしております。  それから、これは昭和五十七年の一月に最高裁で有罪の判決破棄になった鹿児島夫婦殺し事件というのもありますが、これも、判決の中では警察による証拠の捏造というような問題も指摘をされております。  それより前で言いますと、いわゆる松川事件で諏訪メモという、被告人に有利な証拠を隠したという問題も指摘をされていると。  こういう警察や、警察によって事実上作られたようなこうした一連の事件というものについてはどういう反省を法務省としては持っているんでしょうか。
  211. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 先ほど法務大臣からも答弁がありましたとおり、具体的事件におきまして無罪判決が言い渡される理由は様々でございますが、一般論として申し上げれば、検察当局におきましては、無罪の判決が確定した事件又は有罪の判決が確定した後に再審で無罪となった事件につきまして、裁判書及び訴訟記録等を精査するなどして捜査及び公判並びに再審の具体的経過に照らしながら、物証を発見、収集した状況やその鑑定状況等の物証にかかわる捜査の観点、供述の変遷や裏付け証拠の有無等の供述の任意性、信用性にかかわる捜査の観点、事件発覚の端緒から事件検察官に送致するまでの司法警察員等による捜査の観点、公判における立証の観点、再審請求審及び再審公判における対応の観点等のあらゆる観点から問題点を吟味し、これらにより把握しました問題点を踏まえ更に客観証拠の収集に努めるとともに、取調べに当たっては自白の任意性や信用性の確保に努めるなど、捜査が適正に行われるように努力してきているものと承知しております。
  212. 井上哲士

    ○井上哲士君 幾つかの事件挙げましたけれども、過去の話で済まないことであります。  昨日、東京地裁で、通勤電車で痴漢行為をしたという、と言われる元会社員の男性に無罪判決が出されました。報道によりますと、本人は電車のドアに挟まったコートを必死に出そうとしていたと、それを若いOLが見ていて痴漢ではないと言ってくれたと。これは冤罪だということを訴えたわけですね。そして、結局その人が、目撃者が出てきて無罪になったわけでありますが、男性は報道によりますと、検察と、検察にも事情を説明したけれども調書に残してもらえなかったと、拘置所は、拘置は約五か月に及んだと、こういうことでありました。報道では、次席検事の方が反省すべき点があると言われたということは昨日言われておりましたけれども、現に今もこういうことがあります。  私は、やはり冤罪というのは一件たりとも起きてはならないことだと思うんですね。こうした、しかし不幸なことが起きてきた、こういう問題を抱えてきた日本刑事司法裁判員という形で国民が関与をするということ、そして国民の一般的な常識が刑事司法に反映させられるということ、これが今回の裁判員だと思うんですが、その国民の一般常識が反映するということの意義については、大臣、これはどうお考えでしょうか。
  213. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 死刑再審・冤罪事件の反省という点では、国民の良識を刑事司法に反映させることは大変これ意義があると、委員指摘のとおりだと思います。  様々な現在の裁判制度に関する御批判、御意見があることは承知をしておりますが、私はこの裁判員制度導入によりまして、広く国民の皆様が裁判に参加する、それによって今まで御議論いただいていますように、証拠の取りそろえ、あるいは論点の整理、そして事前の問題点の検討と、こういった事柄を通して私はこの冤罪に関してもその可能性といいますか、間違いを起こす機会というものは確実に減っていくんじゃないかなと、こう思っております。  やはり、何といいましても、分かりやすく、速く、そして公平にやろうというこの趣旨からいたしましても、この制度はやはり間違いを正す、やはり大勢の人が判断をする、いろんな違った目で物事を見て考える。このことは、やはりこの冤罪事件に関しても、直接的に響くかどうかはともかくといたしまして、大きな意味では大変これ効果のある制度ではないかと期待をいたしておるわけでございます。
  214. 井上哲士

    ○井上哲士君 間違いを起こさないということに期待をしていると、こういうことでありました。その上でも大事なことは、やはり刑事裁判の原則というのが本当に貫かれることだと思います。  確認をいたしますけれども、疑わしきは被告人の利益にと、こういう刑事裁判の大原則というのは当然この裁判員制度の下でも堅持をされると、これはここでよろしいですね。
  215. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 疑わしきは被告人の利益という刑事司法の大原則でございますけれども、これは直接成文法に規定があるというわけではございませんで、いろんな解釈から出てくるということになるわけでございますけれども、この法案では、裁判員は職務遂行に関する一般的な義務として、「法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない。」としているわけでございますので、その法令解釈等も当然ここに入ってきますので、この原則は当然適用があるということになろうかと思います。
  216. 井上哲士

    ○井上哲士君 当然適用されるということでありますが。  問題は、現在の裁判にこの疑わしきは被告人の利益にという原則がしっかりと貫かれているかどうかということだと思うんですね。私も元裁判官の方等からお話を聞く機会もありますけれども、ずっと刑事裁判にかかわっておりますと、裁く側、言わば検察の側からのバイアスが掛かってしまうと、こういうことをお聞きをすることがあります。  最近、元水戸地裁の所長で東京高裁の判事部総括を経験された木谷さんという法政大学の教授が「現代刑事法」に大変興味深い文章を書いておられました。こう言われているんですね。  この疑わしきは被告人の利益にという立場に忠実であろうとすれば、起訴された被告人が一見犯人らしく見える場合でも、合理的疑いを超えた立証がされたと認められない限り無罪の判決をしなければならないと。これは、社会秩序維持役割をも担う裁判官にとって、かなりの心理的負担となると。そのため、被告人が虚偽の弁解をしていたり、訴訟外で怪しげな言動をしていたりすると、証拠は足りないが実際は犯人に間違いないのではないかという考えが頭をもたげてくると。しかし、そういう考えでする刑事裁判は、えてして冤罪につながりやすい。これは経験の教えるところであるということを、自らの刑事裁判にずっとかかわってきた経験として言われております。  こういう、言わばプロとしてかかわってきたときに、裁く側のバイアスが掛かってしまう、こういう指摘についてはどのようにお考えでしょうか。事務局長。
  217. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ちょっと私、その論文読んでおりませんのでその詳しい内容は分かりませんけれども、少なくとも裁判官は法と証拠に従って裁判をするわけでございまして、そういう観点からバイアスが掛かるというのはちょっと私も余り納得はできないところがございます。  やはり、それは個々の方の感じ方によるわけでございますので、その点について私はとやかく申し述べるつもりはございませんけれども、今回この裁判員制度導入したというその視点につきましては、今申し上げた、そういう指摘されたようなことに対応するのではなくて、裁判、基本的には順調には行っておりますけれども、時代の変化とともにやっぱり周りが要求するものが変わってきているわけでございます。それから、個々に見れば、それはいろいろな問題点もあるということでございまして、そういう点を解決をするという観点からこの制度導入をさせていただいているわけでございまして、ただいま言われたような点からそれを解消するためにこの制度導入すると、そういうものではないというふうに理解をいただきたいと思います。
  218. 井上哲士

    ○井上哲士君 ちょっと最高裁にお聞きをいたしますが、疑わしきは被告人の利益にというこの刑事裁判の大原則というのは当然選ばれる裁判員方々にきちんと説明をされなくてはいけないと思いますが、それはどの機会にどういう形で説明をされるんでしょうか。
  219. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 疑わしきは被告人の利益という、これは刑事裁判の大原則であります。この点についてきちっと理解をしていただくということがやはり裁判員にとって極めて重要であるというふうに私ども思っております。  その機会、いつどのような方法で行うかということにつきましては、一番裁判員がその点を理解し分かってもらえる場面というところできちっと行う必要があるだろうと思っております。それが一回で済むのか、場合によっては、事案によっては何度か行うということも考え得るところだろうと思っておりますので、今後どの場面でどのような方法で行うのがいいかという辺りを実際の運用を頭に置きながら考えていきたいというふうに思っております。
  220. 井上哲士

    ○井上哲士君 私は、大原則ですから言わば審理に入るまでにこの点は徹底をするべきだと思うんですが、例えば選ばれた直後の説明とか、そういう最初の段階でするべきだと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。
  221. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 一つ考え方としてそういう選択肢、十分あり得るだろうと思います。  先ほど申し上げたように、どこで一番説明するのが分かってもらえるかというところをもう少し詰めて考えてみたいと思っておりますので、いずれそういったことについても私どもとして十分な検討をしたいというふうに思っております。
  222. 井上哲士

    ○井上哲士君 先ほど山崎局長の答弁がありましたけれども、衆議院なんかの答弁を見ておりますと、やはりプロは物の見方がだんだん狭くなってくると、そこに国民の常識が入ることが大変大事だということを答弁もされているかと思うんです。  先ほどの木谷さんの結論というのは、裁判所はあくまで常識、換言すれば健全な社会通念に従い素直な判断をすべきであり、証拠の不足や想像を、憶測で補うようなことがあってはならないと、こういうことを述べられて、裁判員制度の発足を間近に控えた現在、このことは一層強く意識されるべきであると、こういう結論なんですね。  私はやっぱり、改めてこの裁判員の方に疑わしきは被告人の利益ということをいろんな場面で今徹底をするというお話がありました。そういうことを議論をする中で、とかく物事の見方が狭くなりがちだというプロの方が、国民の常識と共同する中で、言わば裁く側に知らず知らずのうちに偏ってしまったような見方も正していくと、こういう契機に私はこの制度をするべきだと思うんですけれども、改めて答弁をお願いします。
  223. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 先ほど私申し上げたのは、長くやっていると検察のバイアスが掛かると、そういう見方については私はちょっといかがかというふうに申し上げておりますけれども、ただ私、元々この制度考えるときに、非常に裁判というのは、裁判官というのはなかなか外へ出て自由に行動できない制約もございます。そうなりますと、物事を一定の方向から見るということになるわけでございます。物事が自分の見えている面を見るということでございますけれども、じゃ、その裏側は本当に見られるかということになりますと、なかなかそこまで目が行き届かない、あるいは見る範囲も長年仕事をやっておりますとどうしても狭くなってくると、こういうことになるわけでございます。  それで、このまず弊害を取り除かなければならないということから、今法案として御承認を得たく、得るべくこの国会に提出しておりますけれども、判事補あるいは検事を二年間弁護士として職務をさせて、それで元へ戻すという、こういう制度を提案させていただいておりますけれども、まずそういう点で裁判官は外に出て物事の裏側もちゃんと見るようにということでございまして、それがまず必要であろうということでございます。  ただ、これは二年という限られた期間でございますので、それだけでは十分ではないということでございますので、そこで国民の方に裁判の中に入っていただいて、裁判官から見る物の見方、それだけではないということもその中に反映をさせていただいて、それで常識的な落ち着きのある判決、これをすることによって国民にも司法が納得してもらえるものになると、こういうことからこの制度導入するということでございますので、言われている点が似て非なるものだというふうに考えております。
  224. 井上哲士

    ○井上哲士君 私は、繰り返しになりますけれども、やはり国民の健全な常識が裁判にかかわるということが、やはりいろんなところから指摘をされてきた日本刑事裁判の問題の改善につながるものでなくちゃいけないし、そういうものとして作られていく、改善もされていくということを強く求めておきます。  その上で、幾つか具体的な点について質問をいたします。  本会議でも、この裁判員制度がその意義にふさわしいものになるためには二つの柱が必要だということを述べました。一つは実質的に裁判員の方が裁判に参加できるような制度にすること、それからもう一つは参加しやすい、参加したくなるような制度にすることが必要だということでありますが、まず実質参加という点についてお聞きをいたします。  この点で、繰り返し合議体構成ということについて質問をしてまいりました。やはり裁判員が自由に発言をプロの前でできるようにするためには、この問題は非常に大事だと思っております。例えばイタリアでは、戦後、国民意見をより反映させようということで、参審員の数を五人から六人に増やしております。我々は裁判官一名に裁判員九名が必要だということを提案をしておりますが、少なくとも裁判員裁判官の三倍は要るというのが多くの関係者からも出されております。この間、この問題を議論いたしますと、通常の合議体裁判が三人で行われると、それとの整合性ということを盛んに言われるんですが、例えばイタリアなどは通常の裁判は三人、そしてこの参審制では裁判官が二人に減るという、こういう制度にもなっておるんですね。  ですから、私は、全く新しい国民参加制度を作るということからは、そことの整合性というよりも、本当にいい制度を作るという点でこの裁判員の数というものをやはり三倍以上ということを考えることが必要だと思うんですが、その点、改めてどうでしょうか。
  225. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) イタリアは確かにそのような制度を取っているということでございますけれども、私ども、この制度導入するに際しまして世界の各国のその在り方等についても研究はいたしました。ただ、私ども、この制度を安定的に進めていくという見地から考えた場合に、現在行われている裁判、これもあるわけでございまして、これについては大事な事件は三人で行っていくと、こういうことでございます。  今回導入する裁判員裁判の対象事件につきましては、現在三人で行われているものの一部分、これを行うわけでございますけれども、残りの部分については裁判員の対象とならない事件も三人でやるということになるわけでございます。そういう関係から、やはり裁判はきちっと裁判官三人で法律問題等を判断して、その上で決めていくというルールが前提になっておりまして、それよりもっと重い事件につきまして、裁判官の数を減らすということが、やはり制度のバランスとしてこれでいいのかという問題は当然出てくるわけでございまして、この裁判員制度の中でも法律解釈につきましては、これは裁判官の専権になるわけでございます。それから、訴訟手続も同じでございますけれども、この法律解釈の中には憲法に違反するかしないかというような重要な判断も当然に入ってくるわけでございます。こういう判断につきましても、やっぱりきちっと行っていくという点から考えますと、やはり三人の裁判官が必要になると、こういう結論に達したわけでございます。  それと、裁判員の数でございますけれども、これは全体として余り人数が多過ぎるとかえって主体的、実質的に参加をすることができなくなってしまうと。どうせだれかが意見を言ってくれるんだから、それから意見を言う時間もないから自分は黙っているということになるわけでございますので、そういうことにはならないような範囲の人数にしましょうと。  この二つの大きな命題を前提にいたしまして、その中で裁判員の数については最大限多くして実質的に参加をしてもらえるようにというような配慮をしたということでございますので、そこは御理解を賜りたいというふうに思います。
  226. 井上哲士

    ○井上哲士君 現行制度との整合性を改めて強調されたわけですが、今度の法案では裁判官一人、裁判員四人という制度もあります。この場合も、裁判員制度でなく裁く場合には合議体三人で行われるわけですね。その点でいえば整合性が考慮されていないんではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  227. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 確かに、この裁判員制度の対象になる重大な事件、その中でも、準備手続を経まして争点の有無がはっきりしてくるわけでございますけれども、その中で被告人が事実関係を争っていないという事件、これがございます。その中でも、それ以外にも法律解釈、あるいは訴訟手続上の問題等、それから情状でございますね、刑の量定についてもそれほど厳しい状況にはならないというようなもの、こういうものは、ある場合には三人と六人という大きな単位のところで判断をする必要はないのではないかということから一人と四人と、こういうものを作ったわけでございます。  これにつきましては、バランスでございますけれども、裁判官は一人でございますけれども、これは法律解釈上の問題等が余り起こらないということをある程度念頭に置きながら考えているわけでございますので、その点では裁判官は一人ということで可能であるということになるわけでございますが、ただ、量刑等の問題についてはどうするかということでございますけれども、量刑についてもやはり複数の目で見るということが必要になってくるということから、裁判官裁判員、必ずしも同じ形ではないんですけれども、やはり複数の目をもって見るということから四人の方に入っていただいて、五人で量刑についても全体を見ていくということになればそれなりの正しい結論が出てくるんだろうということでその一人と四人という構成考えたということでございまして、やはり量刑でありましても複数の目できちっとチェックをすると、こういう点の要請は同じであるというふうに考えておるわけでございます。
  228. 井上哲士

    ○井上哲士君 そういう考え方であれば、私は、複雑な問題であっても一人の裁判官と九人の裁判員、十人の目で大いに議論をするということもあり得るし、それがむしろ必要だということを指摘をしておきたいと思います。  その上で、今度は評決の問題でありますけれども、陪審制や参審制などの場合に、合議体における評決要件というのはヨーロッパなどではどういうふうになっているでしょうか。
  229. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ちょっと主要の五か国の評決要件について御紹介をいたします。  アメリカでございますけれども、連邦の関係では、陪審員十二名、全員一致で決めるということです。それから、イギリスも陪審員十二名全員の一致ということです。それから、ドイツの、地方裁判所でございますけれども、有罪評決は裁判官三名それから参審員二名の三分の二の多数決ということでございます。フランスは、裁判官三名、参審員九名の三分の二以上の判決と。それから、イタリアでございますけれども、裁判官二名、参審員六名の単純多数決という、このようにばらばらに分かれているという状況でございます。
  230. 井上哲士

    ○井上哲士君 イタリア以外は全員一致ないしは三分の二というのが基本になっております。刑事罰を科すという重大な問題を決めるわけですから、私は当然だと思うんですね。  法案ではこれは過半数ということになっているわけですが、やはり評決要件はそういう既に参審制を取り入れている諸外国の流れなどを見ましても三分の二にするべきではないのか、とりわけ死刑判決という重大な結果をもたらす場合は全員一致にすべきではないのかと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  231. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 世界の各国はいろんな在り方があるんですけれども、例えばドイツ、今三分の二の多数決というふうに申し上げましたけれども、これは裁判員裁判以外の裁判についても同じルールでございます。世界の各国、いろいろ在り方がそれぞればらばらに分かれております。  私どもの考え理由は、現在、裁判のルールは全部単純多数決で決めていくということで動いているわけでございます。これは別に刑事に限らず、民事であっても全部そのルールでやるということになっているわけでございます。例えば刑事事件、現在行われていますのも、これは三人の裁判官であれば三対二になりますけれども、これはただ多数決ということでたまたま裁判官の人数の構成がそうだからそうなるというだけでございます。これは最高裁に投影してみますと、十五人の裁判官でございますので八対七ということでの多数決でございます。これによって、死刑であろうとそうでないものであろうとそこで決めていくと、こういうルールを取っているわけでございます。  そうなりますと、そのルール全体の在り方をもし考えるならばまた違う論点が出てくるかもしれませんけれども、現在、そのほかの点についてもすべて問題があるという指摘はございません。したがいまして、この裁判手続導入するからといってこれだけを特別に扱わなければならないという合理的な理由は私どもはないというふうに考えまして多数決ということを取ったわけでございます。
  232. 井上哲士

    ○井上哲士君 確かに、現行、過半数ですけれども、先ほどありましたように、高裁にしても地裁にしても合議体は三人ですから三分の二と、過半数といいましてもなっています。それから、最高裁でも小法廷は五分の三ということになるわけですね。ですから、八対七という大法廷というのはめったに行われないわけでありまして、実際的に言えば三分の二のような運用もされてきたという問題もあります。  それから、この裁判員制度自身が広く世界各国で行われてきている、そういうものとして日本でも導入をしていくという中で、やはり今の日本在り方ということにこだわらず、新しい制度として、そして外国の例も見てやはり三分の二ということを考えることが必要だと思いますけれども、改めていかがでしょうか。
  233. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 現段階においては私は過半数、これが相当であるというふうに考えておりますけれども、これをまた運用していって、世界のいろんな例、これもフォローしながら、将来的にどうするかという問題はあり得るかと思いますけれども、ただ、現在においてはこれでスタートをすべきであるというふうに考えております。
  234. 井上哲士

    ○井上哲士君 次に、評議、評決の在り方についてお聞きをします。  十分な評議を行わないままに評決で簡易に結論を出すということは絶対あってはならないと思いますし、審議会の議論でも、そして検討会の議論でも、原則全会一致を目指すべきだと、こういうことが繰り返し議論をされていたと思いますけれども、原則全会一致を目指すべきだと、この点は確認してよろしいですね。
  235. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 基本的にみんなが一致して結論を出すというのは、それは望ましい姿であるというふうに考えます。
  236. 井上哲士

    ○井上哲士君 そうしますと、そういう原則全会一致を目指して、そしてそのことによってできるだけ多くの裁判員の皆さんが率直に意見を出せるようにする、そういうやはり評議の進め方というものをある程度ルール化をしておくことが必要だと思うんですね。  例えば、裁判員の前に裁判官意見を言わない、裁判官は最後に意見を言うとか、そういう形で多くの意見を引き出すというやり方が必要かと思うんですが、この運用に当たって、最高裁としてはこの点いかがお考えでしょうか。
  237. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 裁判員の方に積極的に評議に加わっていただいて、裁判員の健全な良識が裁判に反映されるということがこの制度趣旨であるとすれば、裁判員からできるだけ多くの意見が出される、そして裁判官との間で実質的な意見交換がなされていくということが必要だろうと思います。  ただ、評議といいますのは千差万別といいますか、事案によっていろいろ違います。それから、その評議の中でどなたが一番最初に発言してもらうのがいいかといった辺りも裁判官はそれまでのいろいろな経過を見ながら考えていくことでありますので、そこら辺りのところをルール化していくというのはちょっと硬直化してかえって動きにくくなるのかなという懸念もございます。  そういったこともありますので、今後慎重に検討していく必要があろうかと思っております。
  238. 井上哲士

    ○井上哲士君 イタリアなどは法文の中に明確なルールがあるようですし、フランスなどでも明文のルールがあると聞いております。硬直的なルールにするかどうかは別として、いろんな方法でのルール化というのは、私は工夫できると思うんですね。  いずれにしても、裁判官が言わば議論を引き回すというようなことがないように、先ほど事務局長からありましたように、本来、やっぱり全会一致を目指して大いに議論をするという本来の立法の趣旨であるとか、それからそういうための評議のガイドライン的なものを作るであるとか、そのための研究、研修をするであるとか、そういうことも必要かと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  239. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 委員指摘のとおり、合議において評議を尽くすということは当然であります。実際の運用の場面でも、きちっと評議を尽くして、できるだけ全員が同じ意見になるように議論を進めていくんだろうと思います。  こういった合議において評議を尽くすべきということは、裁判官にとってはこれは現在でもそうですし、これから裁判員が入った裁判でも同様だろうと思います。こういった考えでおりますし、また法律自体がそういったものを予想している、想定している、あるいは期待しているものでありますので、そういった趣旨についてはきちっと周知を図っていきたいと思っております。
  240. 井上哲士

    ○井上哲士君 その上でちょっと評決についてお聞きをしますけれども、事実認定とか、それから無罪か有罪か、量刑をどうするか、こういうことが、いろいろな評決があろうかと思うんですが、それぞれどういうやり方になるんでしょうか。
  241. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 事実認定と量刑についてちょっと分けて現実にどうなるかということを申し述べたいと思いますけれども、まず犯罪事実の認定でございます。  例えば被告人の犯人性というんですか、被告人が犯人かどうかという点について争いがある殺人事件で、裁判員の五人の方は被告人が犯人である、こういう意見を述べたということを前提にいたしまして、裁判官三人及び裁判員の一人、これは被告人は犯人とは認められない、こういう意見を述べたということを前提にしたといたします。刑事裁判におきましては、検察官犯罪事実の立証責任を負うということにされておりますので、そうなりますと犯罪事実の一部であります被告人が犯人であるということの立証がされているかという点が評決の対象になることになります。  ただいま申し上げた点で申し上げますと、裁判員五人が被告人が犯人であるという意見でありますので、合議体の総数九人の過半数に達していることにはなります。しかし、ここの法案ではそのルールは単純には採用しておりませんので、両者の意見が反映された上の過半数、こういうルールを取っております。  そこで、その五人には裁判官が一人も含まれていないということから、この法案の六十七条一項が要求しております裁判官裁判員双方意見を含む過半数、これにはなっていない、達してはいないということになります。したがいまして、評決によって被告人が犯人であると認定することができないということになります。結局、被告人が犯人であることの立証が十分にされていないということに帰着するわけでございますので、これは判決で無罪の言渡しをする、こういうようなルールになるということでございます。  それから次に、量刑でございます。  量刑について、設例は、裁判員五人が被告人は無期懲役に処すべきであるという意見を述べまして、裁判官の一人が懲役二十年、それから裁判官の二人とそれから裁判員の一人、残りの一人は懲役十五年の刑が相当であると、三つに分かれたということをちょっと想定をしたいと思います。  それで、裁判員五人が無期懲役という意見でございますので過半数には達しておりますけれども、その五人の中には裁判官が一人も含まれていないということになりますので、先ほど申し上げました法案の六十七条二項、この評決の要件を満たさないということになるわけでございます。そうなった場合には、裁判官一人の意見を含む過半数意見となるまで最も被告人に不利な意見の数を順次有利な方に加えていくという、こういう作業をするわけでございます。その中で最も利益な意見である、そうなりますと懲役二十年の刑について評決が成立をするということになるわけでございます。  こういう手順というんですか、考え方で決まっていくということでございますので、ちょっとやや複雑ではございますけれども、この辺のところを御理解賜りたいというふうに思います。
  242. 井上哲士

    ○井上哲士君 常に被告人の利益にという形で評決がされていく、こういうことでありますが、先ほどのルールとの関係でいいますと、少なくとも評決に関しては裁判官が自分の意見を述べるのは最後にする、これは明確なルール化をしたらどうかと思うんですが、その点いかがでしょうか。
  243. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この法案でも、裁判長は評議に当たって裁判員の方が十分意見が言えるように、そして適切な審理ができるようにという配慮義務規定ですか、これ六十七条だと思いますけれども、ここで設けておりますので、この規定によりまして、実際の運用も、裁判長はまず裁判員の方に意見を言っていただいて、その上で審議を始めていく、こういうようなことになっていくだろうというふうに予想をしております。
  244. 井上哲士

    ○井上哲士君 アメリカの陪審などでいいますと、説示というのが行われます。評議に入る前に裁判員役割とか注意事項とか事実認定の原則など、これは評議の中で逐次やるという説明でありますけれども、むしろ基本的な問題については公判廷でやるということが必要ではないかと思うんですね。  制度は違いますけれども、アメリカの場合は、不適切な説示というのは、これは上訴理由にもなるわけで、やはり評議の基本的枠組みになる事項については公判で行って、やはり検証が可能にするということも必要かと思うんですが、その点いかがでしょうか。
  245. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 先ほど、ちょっと訂正させていただきますが、六十七条と申し上げましたが、六十六条の間違いでございます。済みません。  ただいまの御指摘の点については、例えばアメリカの陪審員における説示ですか、こういうものがあるわけでございますけれども、これは事実審理の終結後に、陪審が評議に入る前に裁判官陪審員に対し事件法律問題についての説明を与えると、こういうルールがあるようでございます。  こういうような説示に関しましては、陪審員独立して判断をするのに裁判官が不当な影響を与えないようにという配慮から評議室ではなくて法廷でされる、こういうルールを採用しているわけでございますけれども、裁判官裁判員が一緒に評議をするというようなルールの場合にはこういうような心配はないわけでございますので、これは裁判の評議の中、こういう中で説明をしていくということで問題はないということから、あえてそういう制度を採用はしていないということになります。  なお、裁判員選任手続がございますけれども、その最後に、検察官、それから弁護士、この出席の下で裁判長が選任された裁判員あるいは補充裁判員に対していろいろな説明をするということも予定をされておりますので、そういう中で、一般の傍聴人はおりませんけれども、当事者がいる中で一般的なルールの説明をするということも行われるということになりますので、こういう点で、あえて法廷のところでやる必要がないということでございます。
  246. 井上哲士

    ○井上哲士君 あえて必要ないというお話でありましたけれども、やはり関係者の検証可能な形できちっと示すということが私は裁判への信頼性とかいうことからいっても必要ではないかということを思います。  最後に、いわゆる取調べの可視化の問題について幾つかお聞きをいたします。  本会議でも指摘をいたしましたけれども、否認事件が長期化する要因の一つに、捜査段階での自白の任意性をめぐる争いというのがあります。これが続きますと、正に裁判員制度自身が成り立たないということになると思うんですね。  最近話題になりましたもの、例えばリクルート事件の場合は、大部分の証人が供述調書の記載と異なる証言をしたということが言われておりますが、公判回数三百二十二回に及ぶ事件でありますけれども、被告人質問が三十八回と、やはり任意性、信用性が大きな争点となって、おおむね被告人質問の三分の一程度が取調べ状況に関する質問で、取調べ検事と接見した弁護士証人になったり、こういうものの開廷数だけでも二十五回になったというふうにお聞きをしております。  こういう自白の任意性をめぐる争いというのが刑事裁判の長期化の一つの原因だと、この認識はよろしいでしょうか。
  247. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 刑事裁判の長期化との御指摘でございますが、平成十四年の地裁におきます通常第一審事件の平均審理期間は三・二か月間となっておりまして、一部に長期化している事件はございますが、二年を超える長期公判事件はおおむね減少傾向にありまして、検察当局におきましても、昨年成立しました裁判迅速化に関する法律に基づき、迅速かつ充実した刑事裁判の実現に努めているところと承知しております。  言うまでもなく、裁判に要する期間は事案の内容被告人弁護人の防御活動によって異なり、一部の事件について裁判が長期化している原因も、公判期日の頻度の問題や証人尋問等個別の証拠調べに長時間を要する事件もあるなど、個々の事件によって異なり、一概に申し上げることは困難でございまして、御指摘のように、必ずしも自白の任意性をめぐる問題が裁判の長期化の原因であるとは認識しておりません。  リクルート裁判の例を挙げられましたけれども、これからの、これからの裁判制度には、先ほど来本部の方で説明されておりますように、裁判を、法廷を始める前の準備手続というものがございまして、そこで争点を絞ってやっていこうというわけでございますので、ますます迅速化になっていくだろうというふうに考えております。
  248. 井上哲士

    ○井上哲士君 日弁連が作られた長期刑事事件の分析という資料を今手に持っておるんですけれども、確かに長期化の要因というのはいろいろあります。  しかし、自白の任意性が争いになった事件というのはやはりかなり長期化しているということは、これからも見て取ることができるんですね。密室で行われていますから、結局、法廷では水掛け論になると。これは非常にやはり長期化をしますし、裁判員にとっては大変難しい判断を求められることになると。そういうことが続きますと、正に裁判員制度自身がもたないということになると思うんですね。  この自白の任意性をめぐるそういう争いをなくしていくということを何らかのやはり制度的手当てが私は不可欠だと思うんですけれども、これはどのような方策考えていらっしゃるんでしょうか。
  249. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) お尋ねに関しましては、法務当局といたしまして、自白の任意性に関する審理のために刑事裁判が長期化しているとは認識しておりませんが、裁判迅速化に関する法律趣旨を実現するため、迅速かつ充実した公判審理を実現する必要があり、これは裁判員制度導入された場合、その円満な実施を図るためにも重要であると考えております。  法務省を含めました関係各省庁におきましては、被疑者の取調べの適正を図るための方策として、平成十六年四月一日から、身柄拘束中の被疑者被告人の取調べの過程・状況に関する事項につき書面による記録の作成、保存を義務付ける取調べ過程・状況の記録制度を実施しており、この制度は、公判において取調べに関する客観的、外形的な証拠資料を提供することにより、公判審理充実迅速化に資することも目的とするものでございます。  また、最高検察庁におきましては、平成十五年七月十五日、次長検事を統括責任者とする刑事裁判充実迅速化プロジェクトチームにおきまして刑事裁判充実迅速化に向けた方策に関する提言を取りまとめており、その中で、捜査段階における自白の任意性を主として客観面から担保するため、検察官として留意すべき点としまして、今後導入される取調べ過程・状況の書面記録制度を適正に運用すること、任意性担保に関する資料を整えること、弁護人との接見に関して今後なお十分な配慮をすること、被告人調書の開示にできる限り柔軟に対応していくことを挙げているものと承知しております。
  250. 井上哲士

    ○井上哲士君 法曹三者の協議会が設けられているわけですが、その中で、例えば今、書面による記録ということがありますけれども、そういうことがどういう効果を上げているかとか、そのことも検証の対象になっていくんでしょうか。
  251. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 御指摘の法曹三者との協議会というのは、先ほど少し申し上げました、三月に設けました協議会のことであろうと思いますが、今後の裁判員制度の実施に伴いまして、その運用面についていろいろなやるべきことの協議をしていくとともに、今後、将来検討すべき刑事司法制度についての問題点を協議していこうという場でございます。  そういうことに関しまして、今御指摘のような点に関しまして、そういう問題点が出されれば、協議をすることにやぶさかではございません。
  252. 井上哲士

    ○井上哲士君 可視化をするとなかなか自白が得られない、真実発見ができないということは今日の昼間の議論の中でもありました。  衆議院参考人質疑の中で、元日弁連会長の本林さんが、自白がなければ立証できないということになりますと、憲法が黙秘権を定めていることを否定する論理につながると。重要なことは、自白に頼らない立証のスキルを捜査官、捜査機関で身に付けていくことであって、決して取調べを密室化することではないと、こういう指摘をされております。そして、従来はいわゆる取調べ過程の録音、録画というのは専らヨーロッパということでありましたけれども、最近はアジアにもずっと広がっております。  これも、日弁連が韓国とか台湾を訪問をした記録集もいただきました。既に韓国は取調べの弁護人の立会いということが認められてきていて、そして今年五月には録画、録音の試験的実施も開始する予定だと、こういうことを聞いております。日弁連の調査団に、韓国の警察庁の捜査局長が、現代は透明性の要請が増し、隠すことができなくなった時代ですと、このような時代にはすべてを公開することによってこそ信頼が得られると、こういうことを言われたということが言われております。  裁判員制度という新しい制度導入する中で、世界的にも大きなやはり潮流、流れになっている録音、録画ということについて、やはり足を踏み出すということが必要かと思うんですけれども、改めて法務省の御見解を伺います。
  253. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 繰り返して申し上げるようで恐縮でございますが、この問題は今後、刑事手続全体の中で取調べの重要性等のことを考慮しながら、いろいろと将来にわたってといいますか、今後検討を続けていきたいというふうに思っております。
  254. 井上哲士

    ○井上哲士君 先ほどの韓国の調査の資料の中で、直接取調べに当たっている検事、刑事の方のコメントも出ておりますけれども、取調べにおいて被疑者が真実を語るかどうかは弁護人が立ち会っているかどうかとは関係がないということを実際にやり始めたところで言われているわけでありまして、私は、新しいこの裁判員制度が始まる下で、是非前向きな積極的な検討を強く求めまして、終わります。
  255. 山本保

    委員長山本保君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  256. 山本保

    委員長山本保君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案審査のため、来る十三日、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任いただきたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三分散会