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2004-03-24 第159回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年三月二十四日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山本  保君     理 事                 松村 龍二君                 吉田 博美君                 千葉 景子君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 岩井 國臣君                 鴻池 祥肇君                 陣内 孝雄君                 中川 義雄君                 野間  赳君                 今泉  昭君                 江田 五月君                 樋口 俊一君                 堀  利和君                 井上 哲士君    国務大臣        法務大臣     野沢 太三君    副大臣        法務大臣    実川 幸夫君    大臣政務官        法務大臣政務官  中野  清君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   中山 隆夫君        最高裁判所事務        総局経理局長   大谷 剛彦君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  園尾 隆司君        最高裁判所事務        総局刑事局長   大野市太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        加藤 一宇君    政府参考人        警察庁警備局長  瀬川 勝久君        法務省民事局長  房村 精一君        法務省刑事局長  樋渡 利秋君        法務省矯正局長  横田 尤孝君        法務省保護局長  津田 賛平君        法務省入国管理        局長       増田 暢也君        公安調査庁次長  柳  俊夫君        外務省北米局長  海老原 紳君        中小企業庁事業        環境部長     大道 正夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 ○平成十六年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付)、平成十六年度特別会計予算内閣提出  、衆議院送付)、平成十六年度政府関係機関予  算(内閣提出衆議院送付)について  (裁判所所管及び法務省所管)     ─────────────
  2. 山本保

    委員長山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  去る二十二日、予算委員会から、三月二十四日の一日間、平成十六年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管について審査委嘱がありました。  本件を議題といたします。     ─────────────
  3. 山本保

    委員長山本保君) この際、政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  委嘱審査のため、本日の委員会警察庁警備局長瀬川勝久君、法務省民事局長房精一君、法務省刑事局長樋渡利秋君、法務省矯正局長横田尤孝君、法務省保護局長津田賛平君、法務省入国管理局長増田暢也君公安調査庁次長柳俊夫君、外務省北米局長海老原紳君、中小企業庁事業環境部長大道正夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山本保

    委員長山本保君) 平成十六年度裁判所及び法務省関係予算につきましては、去る十一日に説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 千葉景子

    千葉景子君 おはようございます。民主党・新緑風会の千葉景子でございます。  今日は、法務省そして裁判所予算にかかわりまして質問をさせていただくわけですが、ちょっとその冒頭一つお尋ねをしておきたいことがございます。外交防衛委員会と重なっているようでございますものですから、冒頭ということになりまして恐縮でございます。それは、日米地位協定刑事手続にかかわる問題でございます。  沖縄中心にいたしまして基地のある地域では、かねてから米軍兵士をめぐる犯罪捜査についていろいろ問題視されてまいりました。特に、米軍兵士犯罪捜査については、一九九五年のいわゆる少女暴行事件におきましてその理不尽さが大変問題になったわけでございます。その際、米軍兵士犯罪捜査に最も障害になっていることは、現行犯逮捕を除きましては起訴されるまで身柄米軍確保すると、こういう実態にあるということではないかと思います。  この沖縄少女暴行事件をきっかけにいたしまして、地位協定改定必要性ということが指摘されるようになったわけですが、なかなかこれは進捗が進んでおりません。しかし、そういう中で、凶悪犯罪については起訴の前でもアメリカ側が犯人の引渡しについて、これ括弧付きですけれども、好意的な配慮を払うと、こういう形でここまで至っているということでございます。  以来、米軍兵士犯罪捜査をめぐってはいろいろな交渉がなされているやには私も承知をいたしましたが、このところちょっと報道等で、米軍兵士犯罪捜査についてアメリカ政府関係者の同席を認めるということを条件に身柄を言わば日本側に引き渡すと、そして取調べ等捜査を行うということで何か合意をされたやな報道がなされておりますけれども、この点どうでしょうか。具体的な事実関係について、外務省の方にお尋ねをしたいというふうに思います。
  7. 海老原紳

    政府参考人海老原紳君) お答え申し上げます。  今、千葉委員がおっしゃいましたように、平成七年に日米地位協定運用改善という形で合同委員会合意を成立させまして、それに基づきまして起訴前の身柄引渡しを受ける道を開いたということでございまして、この合意に基づきまして過去三回身柄が引き渡されております。  現在、この九五年の合同委合意、これを更に運用改善という形で円滑な遂行が行われるようにしたいという観点から、昨年夏、四回にわたりまして米側交渉を行いました。交渉につきましては依然現在も進行中ということでございますので中身につきましては申し上げられませんけれども、基本的には米兵の容疑者の取扱いなどを交渉しているということでございます。  その後、一時中断をいたしまして、昨年の十一月にラムズフェルド国防長官が訪日されたときにも川口外務大臣との間で早期解決について認識が一致をいたしまして、その後更にいろいろな形で日米間で非公式な話合い意見交換を行ってきております。  大分話合いは進んでいるとは思いますけれども、現在まだ、今先生がおっしゃったような報道にありますような、具体的にもう合意ができているとかそういう段階ではございませんけれども、我々といたしましては、なるべく早く合意を得まして、更なる地位協定運用改善という形にしたいというふうに考えております。
  8. 千葉景子

    千葉景子君 この交渉の経緯、これからも是非進めていただきたいと思いますが、アメリカ側がなかなか被疑者を引き渡さないと、日本捜査になかなか協力しかねているという一つ理由として、日本のやはり捜査過程に不信を抱いているという部分があるのではないかというふうに思います。  これは私も率直に理解ができるところで逆にございまして、すなわち日本捜査過程では、例えば取調べ弁護人の立会いというようなことは認められておりませんし、あるいは捜査過程をできるだけ透明にするということで、捜査可視化と言われておりますけれども、こういうことも今の日本制度の中では具体的にはされていないと、こういう状況でございます。こういう刑事司法捜査過程問題点、これがやっぱりアメリカ側被疑者引渡しについての大きなネックになってもいるのではないかというふうに私は感じております。  私どもも、そういう意味では、この日米地位協定改定とか、あるいは日米交渉を前進させるためというばかりではなくして、やはり捜査過程について弁護人の立会いを認める、あるいは可視化を進めると、こういうことを問題提起を既にさせていただいておりますし、これからもその実現に向けて是非日本捜査過程もその方向に向かっていただきたいと、こう考えているところでもございますけれども、もしそういうことが進捗をすれば、この日米協議自体も大変大きな前進、その大きな後押しということにもつながってくるのではないかというふうに思っております。  もし今回、立会いを、米軍関係者の立会いを認めて引渡しを具体化するということになると、米軍の方は立会いを認めて日本捜査過程ではそういうことは一切ないという、変な逆転現象というか矛盾が起きてまいります。そういう意味でも、この日米地位協定にかかわり、そしてまた日本捜査過程を更に適正なものにしていくためにも、この可視化あるいは弁護人の立会い、こういう問題について積極的に大臣のリーダーシップを発揮していただきたいと、こう思いますけれども、こういう日米間の問題等念頭に置きながら、大臣、いかがでしょうか、御所見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  9. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) お尋ね日米地位協定の下における刑事裁判手続に関する日米協議内容にかかわる事柄につきましては、現在交渉中ということもあり、答弁に、具体的な答弁は控えさしていただきますが、我が国刑事手続一般におきます弁護人取調べへの立会い問題ということについてはかねてから話題になってきたことでもございますが、現在進めております司法制度改革審議会意見に基づく諸改革の中で、この御意見でも、刑事手続全体における被疑者取調べの機能、役割との関係におきまして慎重な配慮が必要であるという理由から将来的な検討課題ということにされておるところでございまして、先生方の御意見あるいは国民世論を含め、慎重に検討を進めていく必要があると考えております。
  10. 千葉景子

    千葉景子君 慎重にというお話でございます。  しかし、今、本当に司法制度改革、大きな抜本的な改革の流れという中にあり、そしてまた国際的なやはり基準、そういうことも念頭に置きながらこの捜査過程についての適正を更に進めていくということは大きな課題であろうというふうに思いますので、慎重にといいながらも、むしろもう積極的に議論を巻き起こしていくというぐらいの御覚悟で是非大臣にも御認識をお持ちをいただいておきますようにお願いをして、この問題についてはこの程度にさせていただきたいというふうに思います。  さて、今回は予算委嘱ということでもございますので、それに関連して、裁判所予算もやはりちょっと見ておかなければいけないというふうに思っております。  そこで、まず、裁判所予算に関連してですが、裁判所予算というのはなかなか増えないといいますか、なかなかささやかな予算でこれまでも推移をして、裁判所も遠慮がちだなという感じがするんですけれども、額で見ると、その中身というのはほとんどが施設費、そして人件費ということになるのかもしれません。  そこで、施設関係してですが、近年、裁判件数も非常に増えております。一方では、迅速にやっぱりできるだけ利用者の便を図ろうという要請も強まっているわけで、施設充実というのがやはり問われているのではないかというふうに思います。法廷の数が限られている、あるいは調停室が不足をしている、そういうことでなかなか円滑な裁判がスピーディーに進みにくいというようなことになっては困るわけで、その辺りの今実情はどういうふうにございますでしょうか。それから、実態としては、いやいやもう足りなくて困っていると、予算はもっともっと増やしてほしいと、こういう裁判所としては御認識なんでございましょうか。そのちょっと実情について御説明をいただきたいと思います。
  11. 大谷剛彦

    最高裁判所長官代理者大谷剛彦君) お答えいたします。  近年、事件が増加いたしまして、またそれに伴う人的充実も図られておるところでございまして、そういうことから法廷増設などの必要な場合が生じてまいります。庁舎の新営とか増築に当たりましてはこれに見合った法廷整備しておりますし、また庁舎改修をいたしましてラウンドテーブル法廷整備するなどしてございます。  その結果でございますが、法廷数でございますと、十年前の平成五年は法廷数がおよそ千四百でございましたけれども、現段階千九百ということで、約五百の法廷増設してまいりました。また、個別に見ましても、例えば横浜地裁平成十三年に新営になりましたけれど、それ以前の法廷数は二十一でございましたけれども、この新営に伴いまして四十を超える法廷整備しているというところでもございます。  今後とも、既存施設有効利用を図るとともに、事件の増加や人的体制充実に応じまして、必要な施設整備に努めてまいりたいと考えております。
  12. 千葉景子

    千葉景子君 是非施設の物理的な制約で裁判自体がやはり遅れたり、あるいは不便を来すというようなことがあってはならないわけですので、是非これからも積極的な整備に努めていただきたいというふうに思いますが、特に、この国会に提案をされておりますが、近い将来に裁判員参加をする裁判ということも予測をされるわけでございます。特に、そうなりますと、集中的なやはり審議をしなければいけない。こういうことも含めて、それに対応するための施設充実というのはどういうふうになっていくのかと、こういうことも非常に私も心配をするところでもございます。  実際、裁判員というのはどういう形で法廷参加をするのかと。そうすると、法廷の形もやっぱりいろいろ変えたり、そういう整備もしなければいけないのではないかということも予測をされますし、申し上げましたように、やっぱり集中的に審議をするとなりますと、それに専用の法廷をやっぱりきちっと確保していくということも必要になってくるわけで、こういうようなことを少し、予測といいますか、将来像を考えながら、今どんな御認識でおられるのか、そこをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  13. 大谷剛彦

    最高裁判所長官代理者大谷剛彦君) 裁判員制度に伴う施設整備関係でございますけれども裁判所といたしましては、現在、裁判員制度の具体的な運用等についての検討を始めたという段階にございまして、裁判員事件審理対応した法廷の形態の在り方等につきましては、まだ具体的なその検討内容を示せるという段階にはございません。今後、検討を進めまして、計画性を持ったその物的な体制整備を図っていきたいと考えております。  その際には、既存の設備、有効に活用するという方策検討するとともに、必要に応じて、法廷あるいは評議室、こういった部屋を始めといたします関係施設改修とか増設を行って、裁判員制度導入に遺漏がないようにしていきたいと考えてございます。  裁判員事件法廷在り方でございますが、今提出されている法案では、裁判官の員数三人、それから裁判員六人と、また補助員裁判員の数を超えない範囲で置かれることもあり得ると、こういうことが盛り込まれております。  この裁判員参加する事件審理する法廷在り方につきましては、裁判員の方が裁判官とともに審理に集中し、そして審理内容を十分理解していただくにはどういう法廷が望ましいかという観点から検討を始めておるところでございまして、今後の国会審議とかあるいは外国法廷の例などを参考検討、慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。  また、集中審理とか連日開廷に伴う法廷の数の点でございますが、これも、一方で、この裁判員の負担考えますと、争点を十分絞って審理するということから、審理の、法廷における審理の時間の短縮ということが考えられる反面、やはり裁判員十分審理内容を理解していただくという点では相応の時間を要するということも考えられますので、そういったいろんな点を踏まえまして、またいろんな状況を想定しながら法廷整備必要性、シミュレーションいたしまして、裁判員制度導入に支障のないような施設面充実を図ってまいりたいと、こう考えているところでございます。
  14. 千葉景子

    千葉景子君 そこの点については、是非どもも関心を持ちながらこれから議論をさせていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。  さて、裁判所にかかわりましては、最近ですね、最近というか近年というんでしょうか、やはり我が国に在留する外国人の方も大変増えております。もう国境が本当にだんだんだんだん低くなっているという、そういう時代でもございまして、そういう意味では、日本裁判の場に外国人の方がかかわるというケースも決してもう少なくはございません。当たり前のような時代になってきているんだというふうに思います。  そうなりますと、裁判における通訳人の問題というのが大変重要になってくるだろうと思います。やっぱりこの通訳人がきちっと対応をするような形になっておりませんと、やっぱり裁判を受ける権利、そして自分の主張、そういうものがやっぱり十分に裁判に生かされないと、こういうことにもなってまいります。  そういう意味では、人権をきちっと確保する、保障するという意味では大変重要なこれから位置を占めてくるのではないかというふうに思いますが、通訳にはその数そして言語も多様化しておりますので、一体、今裁判の現場でそういうことが十分に確保をされているのかどうか。まあ多分、首都圏とかそういうところはかなり充実をされているのではないかと思いますが、地方などに行きますと、多様な言語といいましてもなかなかそれに合う通訳人確保できにくいということもあろうと思いますし、あるいはまた捜査段階と同じ通訳人というこれはわけにはまいりません。  そういう意味では、この辺の実情、どうでしょうか、十分に対応し切れているのでしょうか。その辺のちょっと実情についてお知らせをいただきたいと思います。
  15. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) お答えいたします。  まず、外国人通訳を要する外国人事件の動向をちょっとお話しさせていただきたいと思いますが、議員から平成十四年の四月にも通訳関係お尋ねがあったところですが、その後も外国人事件は増加しておりまして、平成十四年度におきまして、地方裁判所被告人通翻訳人が付いた外国人事件判決に至った人員といいますのは八千九百七十七人と、ほぼ九千人に近づきまして、過去最高の数値を記録していることになります。その年で地裁判決のあった人員が七万五千五百七十人ということですので、約一二%の人たち通訳を要するといった状況になっております。  言語別には中国語、韓国、朝鮮語等通訳事件がほぼ半数を占めておりますけれどもフィリピンの語、タガログ語ですね、フィリピンの言葉ですが、あるいはタイ語ペルシャ語等アジア諸国言語中心通訳を要するといった事件も増えてきております。また、国籍別に見ますと、平成十四年度では七十三か国ということで、平成五年度では五十三か国でありましたが、大きく広がってきております。  裁判所では、こういった多国籍多言語通訳対応するために、各国の大使館あるいは大学、語学学校、さらには国際協力団体にも協力お願いしまして通訳人確保に努めているところであります。その結果、平成十五年の四月には四十六言語で三千六百三十五人の通訳人確保しております。ただ、そうは申しましても、通訳言語が多様に及んでいますことから、通訳人が一、二名といったような言語もあるところであります。  議員お尋ね地方で特に少数言語があった場合に対応が困難であろうというお話、ごもっともなところでありまして、私どもは全国的な通訳人関係を名簿として登載しておりまして、そこから、できればその近くにそういった方々がいればその方にお願いするし、いない場合には先ほど申し上げたような大使館、領事館、国際協力団体等お願いして通訳人確保に努めるといったようなことをしております。  また、捜査段階との通訳人関係でございますが、これは原則として、捜査段階で付いた通訳人公判段階では付けないという扱いをしております。ただ、そうは申しましても、その地方にその言語をしゃべれる人が一名しかいないというようなことになりますと、例外的にはそういったこともやらざるを得ない場合もありますが、そういうことのないようにできるだけ別の通訳人確保するように努めているところであります。  以上です。
  16. 千葉景子

    千葉景子君 今お話がございましたように、本当に多言語にわたり、そして確保も努力はなさっておられるわけですけれども、大変だという実情が分かります。  こうなりますと、この法廷通訳人という問題について、もう少し何というんでしょうね、システム的にも確立をしていかないと対応し切れないという段階にもなってきているのかなというふうに思いますし、それから、そうなりますと、やっぱりその待遇というか報酬在り方、こういうことも併せて、きちっとした基準作りというんでしょうか、そういうことも必要なのではないかというふうに思います。  今はそういう明確な、法的なといいましょうか、基準ということではなくして行われて、裁判所の方のいろいろな内規のような形で行われているのかもしれませんけれども、もうそんな、やっぱりそうではなくて、やっぱり裁判の一翼を担うというくらいの形になってきております。そういう意味では、何かいい加減なさじ加減とか、あるいは何かその場その場の対応というだけでは足りないような感じもいたします。  そういう意味で、報酬などでも何か基準を作っていく等々、明確なそういう方針を確立する必要があるのではないかというふうに思いますけれども、その辺りはどうでしょうか。報酬等などについては一定の何か裁判所としての基準を持って行っているのか。あるいは、今後こういう問題について何らかの方策といいましょうか、システムをきちっとして整備をしていくというおつもりがあるのか。その辺、どうお考えでしょうか。
  17. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) 通訳料支給につきましては、これ裁判所が、裁判官が判断するというふうに、決めるというふうに法律で定められております。したがいまして、各裁判官通訳の難易ですとか事案の概要、あるいは通訳時間等を勘案しまして個別的に決定しているというのが実情ですけれども、ただ、今議員御指摘のありましたように、通訳料支給余りばらつきがあるというようなことでは困ったことになりますので、各裁判所裁判官申合せとしまして一つ基準的なものを設けております。  ただ、それはあくまでも裁判通訳料支給決定をする際の一つ目安ということで、先ほど申し上げたような事情を考慮して、それを目安にしながら決めているということで、基準としては裁判所内部にはそれぞれの裁判所で今言いましたような一応申合せができているという実情にあります。  また、通訳料についてどの程度支払われているのかというようなことを通訳人から問われた場合には、その目安を基にしまして、一時間当たり大体一万五、六千円の金額を払っているところが多いというふうに聞いておりますので、そういったことを通訳人にもお話ししているんだろうというふうに思います。
  18. 千葉景子

    千葉景子君 最終的には個々の案件ということになりますので、裁判長決定をするということは私も別に分からないわけではありません。  ただ、やはりその基本になる基準というようなものは、ある程度最高裁なり含めて一定の最低基準なりやっぱりもう少し決めて、そして通訳人が十分に確保できる、そしてまた、その職務に十分に携わることができるということをやっぱり確立をしておく必要もあるのではないかと思いますので、是非その辺り、分かりやすく明確になりますように御検討をいただきたいというふうに思っております。  さて、裁判所では、本当に時代というか社会も変化をしていきますと、いろいろな課題、やっぱり出てくるのだろうというふうに思いますが、そういう中でも、やっぱり司法制度改革という一環の中で、裁判所でもいろんな時代に合った改革を進めておられるということは承知をしております。  そういう中で、一つ裁判官の任命手続につきましても大きく改革を進めてこられまして、裁判官の任命に関して指名諮問委員会というのが作られて、今機能を始めているということでございます。  ちょっとこの指名諮問委員会の、何というんでしょうかね、結論、検討の結果、昨年十二月ですけれども、本年前半に任期が切れる裁判官百八十一人のうち、その諮問委員会にかけたら、六人が再任が適当でないという結論が出たと伺っております。これ、百八十人のうち六人というのは、多いといえば多いし、少ないといえば少ないのかもしれませんが、これまで諮問委員会がない形のときは、本当に一年にゼロとか、一遍にこんなに六人などという数が出た経過はございません。三十年間で五人ぐらいでしょうかね、何かその程度だというふうに私も思うんですけれども、一体そうなると、諮問委員会は非常に厳しく評価をして、これまでの最高裁は非常に甘かったのかなと、こういうことにも受け取れますし、一体どういうこれはことなのかなと思います。  ただ、その結論はともかくといたしまして、この本当に六人の再任は適当でないという結論に至るためにはやっぱりいろいろな議論があったと思いますし、それから、それを議論するための十分なやっぱり資料といいましょうか材料、こういうことがないと、単にどうも何か気に入らぬから再任は駄目だと、こういうことになったんではこれ本当の意味での諮問委員会としての機能を果たすことができないわけで、その辺り、六人出たことが云々ということではありませんけれども、本当にこれが十分に判断のためのデータとかあるいは材料が示されて行われたのかどうか、その辺ちょっと懸念する声もあるようでもございますので、裁判所としては、この点について、ちょっと経緯と、それから今申し上げましたような十分な諮問委員会が機能できるようなやっぱり体制といいますか、裁判所としての、何というんでしょう、条件整備もきちっとされているのかどうか、その辺についてちょっと御説明をいただきたいと思います。
  19. 中山隆夫

    最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 委員も御承知のとおり、下級裁判所裁判官の任命は最高裁判所が指名した者の名簿によって内閣が行うということにされているわけでありますけれども、これまで、その名簿決定、名簿登載決定のプロセスというものが裁判所内部の手続で行われていたと、第三者が関与することがなかったために、ともすると国民の目から見てその登載あるいは裁判官への任用というものが適正に行われているのかどうかというところがよく分からない、こういうところがあったわけでございます。  そういった声があることを承知しておりましたので、平成十三年の二月十九日に、当時ございました司法制度改革審議会において最高裁の方から、下級裁の裁判官については指名諮問委員会というものを作るということも検討したいと、こういうふうにプレゼンテーションを行い、これを受けて審議会の方で最終的にいろいろ議論された結果、その最終意見で、最高裁判所に、そのような諮問を受け、裁判官として「指名されるべき適任者を選考し、その結果を意見として述べる機関を設置すべきである。」と、こういうような御提言がありました。  この御提言を踏まえて、その後、裁判所外の委員を多数含みます一般規則制定諮問委員会で十分な御議論をいただき、どういった仕組みにし、あるいは裁判所からどういった独立した判断を担保するかというところも含めて御議論いただいたわけでございます。  その結果、委員会は十一人の委員によって構成されると。これは、法曹三者五名、それから一般有識者六名ということでありますが、これも裁判所から見ますると、裁判所内が二名、裁判所外の委員が九名ということでかなり外の方に手厚くした組織というふうにしておりますし、また、最高裁は、諮問をするに当たって、その適否について、候補者の適否について意見は述べないということを規則上明記され、さらにまた、人事当局がそれに強く絡むということ自体がやはり疑問を持たれることにもなりますので、最高裁の総務局がその庶務を行うという形で、峻別された体制、言わばその委員会が独立して判断できるというような担保措置も取られたわけであります。  その結果、昨年の五月にこれは動き始めたわけでございますけれども、その結果は先ほど委員ちょっと御紹介ありましたけれども、まず平成十年の段階で、失礼しました、昨年の十月の段階で、判事補任官候補者、これは修習生からの判事補任官候補者でありますが、その諮問百九人行われまして八名が否とされました。またその後、先ほどもお話がありましたように、判事任命再任候補者百八十一人について諮問がなされ、それについては六人が否とされ、それからこの四月期の弁護士等からの任官候補者ということで十二人が諮問されましたけれども、そのうち五人が否とされ、その後、出向からの復帰候補者等も含めますと、これまでに三百十八人中、三百十八人諮問されまして、そのうち十九人が否とされているという状況でございます。  しかし、また、こういった委員会における資料、あるいは判定基準というものをどうするか、こういうことについても実は委員会において一から議論をしていただきまして、最高裁にどういった資料があるのかと、そういったものをそれじゃ出してもらおうというようなことも全部その委員会の主体性を持った判断で進められてきております。また、まだ始まって一年たっていないわけでございますが、レビューということも今後行っていかなければならないだろうと。もう少し充実させるためにはどんなふうにもっとやっていったらいいだろうかと、こういったことの議論もまたお願いすることにしているところでございまして、そういう意味で、私は庶務としてその審議を拝見しておりますけれども、非常に適正になされているんではないかなというふうに思っております。  これまで随分、否とされる者が元々少なかったではないかというところでございますが、これは、総務局長でございますから、これまでの状況を全部把握しているというわけではございませんけれども、例えば司法研修所教官としての経験に基づきまして言いますと、司法修習生から判事補への任官の際には、やはりその修習生自体が二回試験等の成績を見て教官に相談をしてまいります。その上で、教官の方も平素の通常点、そういったことも勘案して、なかなか難しいかもしれないというような形でのアドバイスを行っていたのがこれまで通常でございました。  しかし、今回はその辺のところは新しい制度ができましたところから、修習生の方もこれを様子見という状況で、そういうことをしませんでしたし、また、教官の方もかえって誤解を招くことになりかねないということで、それをすべて委員会の方にゆだねるというふうにしたというところもございます。  恐らく、判事の再任候補者につきましても、やはり問題点があるということであれば、その点をこれまででありますと人事当局の方からその辺のところを示唆し、本人が最終的に考えてそれを、再任申立てを取り下げたと、こういった事例もあったんではないかなというふうに推察されるところでありますけれども、そういったところが数字としてちょっと違ったものが出てきているということだろうかと思っております。
  20. 千葉景子

    千葉景子君 私も経験ありますけれども、修習生から任官をと、時には肩たたきがあったり、そういう事実は確かにあったのではないかというふうに思いますが、いずれにしても、その数字の変化はいろんな条件にもよるだろうというふうに思います。  ただ、そこの諮問委員会がやはり十分に機能を果たして、やはり開かれた裁判所ということでこれからもきちっと機能していくためのやっぱり条件整備については、その諮問委員会が独立性を持っていろいろ判断をされていくだろうというふうに思いますが、それに対したきちっとした適切な対応裁判所の方でも取っていただくように要請をしておきたいというふうに思います。  さて、裁判所の方は以上お聞きをいたしました。  この際ですので、ちょっと一、二点、問題提起というんでしょうか、ちょっとしてみたいというふうに思っております。  というのは、やっぱり社会の変化、社会情勢あるいは価値観、いろんなものが変化をしてまいります。あるいは、技術面でも発展が目覚ましいという時代でもございます。そうなると、やっぱりそれに伴って、これまでの法律あるいは制度ではとても対応し切れない、あるいはいかがなものかという問題もいろいろ出てくる時代でもございます。  そこで、ちょっと今日はひとついわゆる生殖補助医療、簡単に言うと例えば代理出産とか、そういうことなぞが絡む問題と今の法制度という点でちょっと御議論をさせていただきたいというふうに思っております。  ちょうど昨年の十一月になりますが、新聞などの報道によると、法務省の方で、日本人の夫婦ですね、五十代の方ですけれども、代理出産、アメリカで代理出産をした、その子供が生まれまして、その出生届について、母という、その母というのは実際に出産した代理の母、これは米国人の方ですけれども、それによって出生届をすれば出生届を受理できると、要するに直接出産をした者が母親であるという形で出生届を出す必要があるんだと、こういうことで対応をなさったという話、記事が出てまいりました。確かに、これまで普通に考えれば、出産をした者が母親だということは、それはそうかなというふうにも思います。  ちょうどその前の昨年七月に発表されました生殖補助医療等に関する民法の特例に関する要綱中間試案というのがございまして、ここでは「女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し、出産したときは、その出産した女性を子の母とする」と、こういう考え方が示されているわけでもございます。従来の考え方を踏襲すれば、これも私も理解できないわけではございません。  しかし、どうなんでしょうか、本当にそれだけで十分なのかどうか。やっぱりこの生殖補助医療というのは、本来子供を持ちたいと、そういう方が自らの身体的いろんな理由でできないがゆえに代理に行ったりするわけでございまして、これから先子供を育て、そして実質的な親というのはやっぱり元々の夫婦ということになっていくわけで、そうなりますと、本当にその代理の人が出産はしたけれども、それを母とする、やり方によっては養子縁組をするとかそういう形でまた母を定めるということはできるかとは思うんですけれども、やっぱり子供は生まれて責任はないということになるわけで、そういうことを考えると、この生殖補助医療の在り方いかんということも別な問題としてありますけれども、やっぱり子供の幸福、子供の幸せ、あるいは子供のやっぱり人権というんでしょうか、そういうことを含めて考えると、本当に出産をした者を母とするという、そういう考え方だけをこれからも進めていくだけで足りるんだろうかと、こういうちょっと私は感を持つところでもございます。  これは、今ここですべて結論が出せるという問題でもなく、私も大変悩ましい問題なんだなというふうに思いますが、その点についてはどんなふうに法務省としては認識をなさっておられるのでしょうか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  21. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) なかなか難しい問題でございますが、法務省としては、現行法の解釈としては、やはり分娩によって母子関係が発生するということになるのではないかと。  将来的にどうするかということは、御指摘の中間試案で、やはり母子関係については出産した女性を母とするという考え方を示しているわけでございますが、これにつきましては、母子関係の発生を出産という外形的事実に係らせることによって、客観的な基準によって法律関係を明確に決定することができる。それから、分娩という事実で親子、母子関係の発生を認めるということになりますと、いわゆる自然懐胎の子供と生殖補助医療によって出生した子を同じ、同一に扱えるということ。それから、何といっても、卵子が仮に他の方の卵子であっても、出産する方は十か月間、自分の体の中で正に血を分けて育てているわけですので、そういう懐胎し出産する過程において女性が出生してくる子に対して母性をはぐくむというような指摘もございます。そのようなことを考慮して、一応中間試案としては出生した女性を母親とするという考え方を示したわけでございます。  これについての御意見、いろいろ寄せられましたけれども、やはり賛成する意見が多数でございました。  ただ、この問題は従来にない新しい事態でございますし、また、生殖補助医療としてどこまでを認めるのか、代理懐胎を認めるかどうかというようなことも含めて検討をする必要があるだろうと、こう思っております。
  22. 千葉景子

    千葉景子君 本当に難しい問題だろうというふうに思いますが、やはり子供のことも十分に念頭に置き、そしてこれからの生殖技術のありよう等々の変化、その是非等も含めながら、もう、一つに何か余りぎゅうっとこだわるということではなくして、大いに中身のあるこれから議論を進めていく必要があるのではないかというふうに思っています。  どうしてこういうことを申し上げるかというと、どうもよく分かりません、法務省の方では五十歳以上の出産という場合には本当に御本人が出産したのかどうかということも含めて確認をされるような手だてをしているようです、出生届の場合にですね。さっきの例も五十歳以上の方だったものですからその確認の際に代理で出産があったということが判明をしたということなんですが、五十歳以下の場合ですと、出生届というのは形式的な審査ですので、結局代理で、代理出産であったとしても、やっぱりこれは自分のもう実子として届けたいということで、直接、本来の夫婦の子として出生届がなされている例もあるのではないだろうかと。形式的な審査だからちょっとそこがはっきりしないようですが、そういうことも言われております。  そうすると、片方では既にもう実子として届けているような例があり、たまたま確認の上、代理だということが分かって、やっぱり分娩によって出産した方が母親だということで実子としては届けられないというケースが出たり、もう既にそういうやっぱり矛盾とか、いろんな問題が発生をしてきてしまっている。こういう事態ですので、先ほど言ったように、一つの余り考え方に凝縮を早くしてしまうというのも問題ですが、かといって、やはりこの議論をじゃずっと放置をしておくということもできないという気もいたします。  その辺を含めて、大臣、ちょっとこういう問題について今後是非中身のある議論を進めていただきたいと思いますが、ちょっと御所見を伺って、終わりたいと思います。
  23. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 最近の医学の進歩によりまして、これまでの法律体系あるいは我々の常識を超える状況が出てきているというのはもう委員も御心配をいただいているところでございますが、これにつきまして、特に母親が五十以上の場合の出生届の取扱いにつきましては、出産能力のない高齢の母の出生した子として虚偽の出生届がされる傾向があるということで、もう昭和三十六年九月の段階で民事局長の通達が出ておりますが、その中で、届出の受否につきまして、市町村長から管轄の法務局に対し指示を求めた上で処理をすることとされておるものでございまして、それについての相応の合理性はこれはあると考えておりますが、当時としましては代理出産というようなことは想定していなかったわけでございます。  したがいまして、五十以下の場合の方とのアンバランスの問題というのは当然議論が出てくるかと思いますが、御指摘の点を踏まえまして、今後の立法論と併せまして慎重に検討してまいりたいと思っております。
  24. 千葉景子

    千葉景子君 ちょっと準備してきていただいているものありましたけれども、ちょっと時間ございますので、また後日にさせていただきたいと思います。  ありがとうございます。
  25. 松村龍二

    ○松村龍二君 本日は、法務委員会委嘱審査ということでございますが、幾つかこの一年間の法務行政、法と秩序という観点からの御質問をさせていただきたいと思います。  まず、拉致問題でございますが、拉致問題は、この国会におきまして、衆議院、参議院含めていろいろな委員会で今まで幾たびか審議されてきたと思いますが、私は法的側面に絞ってこの拉致問題について質問をさせていただきたいと思います。  私もこの拉致の救出のシンボルにもなっておりますこのバッジを付けておりますが、これは昭和五十三年に私の地元でも二人のアベックの方が北朝鮮に拉致されたと。先般、帰国してきたわけでございますが、その関係者からしますと、早く子供さんを日本に連れ帰ってほしいということを願望されておられまして、私どもも政治家でございますのでそのような要望も受けるわけでございます。  これ、拉致の問題は非常に御承知のとおり難しい問題でございます。私は、分析して、これ、個人が自分の孫をさらわれたというときに、その個人はどういうふうな対応をするであろうかなというふうに分析して考えるわけですが、個人であれば、自分の孫がさらわれたということであれば、まだお孫さんいない若い方も委員の方におられるかと思いますが、そのおじいさんは、あるいは親は、自分が武道の腕前があるか、そういうこととはもう関係なしに、隣町のやくざ風の男にさらわれたということであれば、自分の身が、武道の心得があるかどうかということにかかわらず、そこの家へ行って孫を返せ、息子を返せ、娘を返せということで迫ると思うんですね。  それでは、国の問題になったらどうなんだろうかと。これも今の時点において、日本人が外国の人に明らかにさらわれたということであれば、これは仮に一人であっても国家の威信を懸けて頑張ると思うんですね。  そういう点において、北朝鮮からさらわれた拉致というのが捜査という点で十分なのかなと。あるいは、捜査でなくて外交的な交渉で解決しなきゃいけない。今も申しましたような、こちらも力を蓄えて相手と交渉しないといかぬという意味において、外為法の改正とか、あるいは外国船舶の入港禁止というようなことも今行われている、法律化されているようでございますが、そもそも、この拉致というのは、そういう非常に自分の身を顧みず解決に迫らぬといかぬ。そうしませんと、国家の威信とか個人の尊厳というものが保てない種類の問題である、こういうふうに思うわけです。  現在、今まで政府は十五名、それから、救う会等では特定失踪者というような名称で、どうも北朝鮮にさらわれたのではないかなという人が更に百名もいるというふうな話も聞くわけでございますが、まず警察庁の方に、今までの拉致の被害者はそういう百名にも達しているのかどうか、どういうふうに把握しておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  26. 瀬川勝久

    政府参考人瀬川勝久君) 警察といたしましては、現在まで一連の捜査の結果、拉致容疑事件は十件十五名というふうに判断をいたしておりますが、もとより、この十件十五名以外にも、北朝鮮により拉致されたという、そういう可能性を排除できない事案もこれはあるというふうに見ておりまして、鋭意所要の捜査を進めているところでございますが、その全体の人数については今申し上げられる確たる状況ではございません。
  27. 松村龍二

    ○松村龍二君 そもそも、この拉致が刑法上どういう犯罪になるかということでございますが、刑法第三十三章に「略取及び誘拐の罪」というのがあります。二百二十四条に「未成年者略取及び誘拐」、「未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。」、横田めぐみさんがこれに当たろうかと思います。二百二十五条で「営利目的等略取及び誘拐」、二百二十五条の二で「身の代金目的略取等」というのがございますが、二百二十六条に「国外移送目的略取等」、「日本国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期懲役に処する。」と、こういうふうに刑法には書いてございますが、そのような罪で捜査をしているものなのでしょうか。また、これまで外交的な側面はいろいろ日々載るわけですけれども捜査をどのように行っているのか、必ずしも姿が見えないわけですけれども、警察及び法務省にどのような捜査を今行ってきているのか、また行っているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  28. 瀬川勝久

    政府参考人瀬川勝久君) この北朝鮮による日本人拉致容疑事案でございますけれども、の捜査状況についてのお尋ねでございますが、この日本人拉致容疑事案は、まず被害者の所在が不明であると、それから事案発生の時点で目撃者もほとんどいません、それから証拠もほとんど残されていないと、こういう状況でございます。そういった大変難しい状況の中、現在まで鋭意関連情報の収集と証拠の積み上げに努めて捜査をしてまいりました。先ほど申し上げましたとおり、その結果、拉致容疑事案は十件十五名ということに判断するに至っているわけでございます。  これらの拉致に関与した北朝鮮工作員とそれからよど号事件の犯人、こういった者たち三名につきまして、警察としましては既に逮捕状の発付を得て所要の手配を行っております。  その罪名についてのお尋ねでございますが、この国際手配中の三名につきまして申し上げますと、原敕晁さん拉致の実行犯である北朝鮮の工作員辛光洙、これにつきましては、手配罪名は免状等不実記載、旅券法違反、出入国管理法違反となっております。それから、有本恵子さん拉致の実行犯であるよど号犯人魚本公博につきましては結婚目的誘拐であります。それから、いわゆる宇出津事件の主犯格であります北朝鮮工作員の金世鎬でございますが、これにつきましては国外移送目的拐取という罪名で逮捕状を得て、それぞれ国際手配をしているところでございます。  現在までの捜査といたしましては、先ほども申し上げましたとおり、十件十五名以外の方々についても拉致の可能性を排除できない事案があるというふうに見ておりまして所要の捜査を進めておりますが、実は全国における家出人捜索願の受理件数というのは年間十万人ぐらい毎年あるわけでございまして、こういった中で捜査を続けております。  それで、さらに一昨年の総理訪朝以降、北朝鮮による拉致ではないかということで大変多くの届出、相談等も警察に参っておりまして、受理をしております。ただ、その事案の大半につきましても、これは発生から相当年月が経過をしておりまして当時の状況を把握することが非常に難しいわけでございますが、各都道府県警察におきまして、当時にさかのぼりまして関係者を割り出したり、当時の捜査担当官から事情を聴取をするということで鋭意所要の捜査、調査を進めております。  こうした例、一例を申し上げますと、実は昭和五十九年、山梨県内で失踪されまして、今年に入りましてから北朝鮮による拉致容疑事案ではないかという告発状が提出されている事案がございました。これにつきまして、山梨県警察が捜査の一環といたしまして昭和五十九年当時の身元不明死体の調査を鋭意行いました結果、この方が失踪直後に実は死亡されて、当時身元不明死体ということで処理をされていたということが判明するに至っております。このように、その届出を受けた事案につきましては警察といたしましては真摯に対応し、捜査を進めているところでございます。  拉致事案といいますのは、国家の主権を侵害し、国民の生命、身体に危害を及ぼす極めて悪質かつ重大な事案であるというふうに考えておりまして、今後とも事案の全容解明に向けまして努力を進めてまいる所存でございます。
  29. 松村龍二

    ○松村龍二君 事件として立件しているものについても、必ずしも国外移送目的略取ではないということも今御説明がありましたが、これは国外、この構成要件に当てはまる事実の証拠がないからそれで立件していないと、こういうふうに理解してよろしいかと思いますが。  それで、お伺いしたいことは、被害、目撃者がいないとか証拠が少ないとか被害者がいないとか、そういうことで非常に難しいということは分かるわけですが、この五人の被害者が日本に帰国されまして、当然に普通の事件であれば直ちにその被害者であるこの五人から事情をお聴きするというのが捜査の常道だと思うんですけれども、あのとき、帰ってこられたときは、まあ金日成バッジを胸に付けておられましたし、警察が事情聴取することが被害者五人の身辺に危害が及んではいかぬとかいろんな、マスコミの余りに注目を浴びていたとか、いろんな事情はあって多少少し時間的に逡巡しておられたんじゃないかなと、時期を見ておられたんじゃないかなと思うんですが、もう既にこの五人の被害者については、被害、誘拐されたときの状況その他についてはもう詳しく、あるいは北朝鮮に連れていかれた後のことについては警察として必要な事情聴取等はもう既に行ったのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  30. 瀬川勝久

    政府参考人瀬川勝久君) この北朝鮮による日本人拉致容疑事案の全容解明のためには、もう委員御指摘のとおり、被害者の方からの事情聴取というのはこれはもう是非とも必要であると、また捜査の常道でもあるというふうに考えておるところでございますけれども、ただ、その実施につきましては、帰国後の被害者の方々をめぐる諸情勢を勘案をいたしまして慎重に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。  なお、拉致容疑事案に関する情報収集につきましては、国内の関係省庁とも緊密な連携を図った上で鋭意関連情報の収集に取り組んでおります。また、海外の関係機関からの情報収集ということにつきましても、外務省とも緊密に連携を図りまして、強化しているところでございます。
  31. 松村龍二

    ○松村龍二君 私は聴取をされたんですかと聞いたんですが、何か、したという、むしろしていないというふうに聞こえたんですけれども、再度、どう理解したらいいのかお聞かせ、あるいは言えないんなら言えないということで結構ですけれども。  それと、この事件は、私が調べたところによれば、時効という問題で、昭和五十三年とか五十年とかそのころの事件ですけれども、国外に犯人がいるときには時効は停止するという刑法の条文があるので、時効は停止していると。したがって、時効の壁によって捜査ができないということではないというふうに理解したいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
  32. 瀬川勝久

    政府参考人瀬川勝久君) まず、帰国されました五人の方に対する事情聴取でございますが、先ほども答弁申し上げましたとおり、この被害者の方々をめぐる諸情勢を勘案いたしまして慎重に対応することとしているということでございまして、結論的に申し上げれば、現時点まだ事情聴取は実施をしておりません。  それから、時効の問題でございますが、これは個別の事案それぞれによって、具体的に事件ごとに判断をしなければいけないと思いますけれども、一般論といいますか、で申し上げれば、御質問にありますとおり、被疑者外国にいる場合は時効は停止をするものというふうに承知をしております。
  33. 松村龍二

    ○松村龍二君 検察、法務省といたしましては、警察が事件捜査した後、送致されてからかかわるという形になろうかと思いますが、法務大臣、法の番人といたしまして、この拉致問題についての捜査について、最終的には国民を代表して捜査を遂行するという立場におありかと思いますが、御決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  34. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 北朝鮮によります拉致問題は、我が国の国民の生命や安全にかかわる重大な問題であり、また主権にかかわる問題ということで、法務省といたしましても、極めてこれ重要な課題として受け取っておるわけでございます。  検察におきましても、警察等との関係機関と緊密に連携を取りまして、情報を収集し、捜査の進展等に迅速かつ適切に対応できる体制整備を進めているものと承知をしているところでございます。特にまた、刑事事件にかかわるものにつきましては、法と証拠に基づきまして、今後とも適切に対応したいと考えております。
  35. 松村龍二

    ○松村龍二君 次、オウム裁判についてお伺いいたします。  先般、松本智津夫に対しまして、オウム真理教の教祖麻原彰晃こと松本智津夫に対しまして第一審の東京地裁が死刑を言い渡したわけでございます。ただ、非常に時間が掛かった。あの事件が起きましたのは平成七年です。私が選挙に立候補いたしましたのが平成七年です。それで、この九年間の間にようやく今第一審判決が下りたわけですが、まずもって何でこんなに遅れたのか。  この新聞社説によれば、弁護団に長期化の責任があると。裁判が長期化した責任の大半は、国選弁護団にある、迅速な審理に不可欠の争点整理に応じなかったと。また、弁護団は、証人尋問では重箱の隅をつつくような枝葉末節の尋問を繰り返し、検察側の五倍の約千時間を掛けて引き延ばしを図ったと。また、弁護のための弁護に近いものであったと。これを阻止できなかった裁判所の訴訟指揮にも問題があったと。これは必要的弁護事件、弁護士がいなければ開廷できない事件であったので、裁判所が強力な訴訟指揮を取ろうとすると弁護士が辞任し、法廷が空転することを恐れたためだと見られると。また、松本被告は公判の大半を通じて沈黙したままで、意思の疎通もできなかった、こうした中で、時はいたずらに流れ、オウム事件の全体像は遠のいていったと。検察も努力した、薬物密造関連の四事件起訴を取り下げるなど、異例の措置を取り、審理のスピードアップを図ろうとしたというような、これは読売新聞の二月二十八日の社説でありますけれども、まず冒頭法務省刑事局長、また最高裁判所の方から、なぜこの事件がこのように長期化したのか、お伺いします。
  36. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 裁判に要します期間は事案の内容被告人弁護人の防御活動等によって異なるものでございまして、その長期化の原因を一概に申し上げることは困難でございますが、御指摘の事件につきましては類例のない重大事件で、かつ、関係者多数の中、証人尋問に日時を要するなどしましたことが原因の一つと考えられるのではないかと思っております。
  37. 大野市太郎

    最高裁判所長官代理者大野市太郎君) お答えいたします。  具体的な事件関係でございますので、裁判所として当該事件についてのコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に申し上げますれば、事件によって長期化の原因というのは異なりますけれども、長期化する要因として多いと思われるものにつきましては、一つは、起訴された事件が多数かどうかという点が一つ、それから争点が複雑多数に上ってくるのかどうか、あるいは事実関係に争いがあるのかと、そういった関係で証人尋問あるいは被告人質問に多数の時間、開廷数を要するかといったようなことが要因として考えられます。  御指摘のオウム関連事件審理が長期化したものの中にはこのような要素を有するものが多かったというふうに思っております。
  38. 松村龍二

    ○松村龍二君 このように裁判が長期化するということに国民が辟易しておるということは、このたびの司法改革の努力によりまして一定の結論を得て、いろいろな面から訴訟の迅速化ということを努力しておられることは喜ばしいわけですが、しかしこの事件は、何といいましても、二十七人もの殺人事件、五千人を超える負傷者を出したと。今、イラクのテロリストの問題が話題になっておりますが、そのいつも教材となるのはあの地下鉄サリン事件であるということを考えましても、いかに大きな事件だったかなというふうに思うわけです。  私は、常々、日本人の法的感覚と明治時代に取り入れた法律とのギャップということを感じるわけです。といいますのは、私も就職いたしまして治安関係の職に就いたわけですが、初め一年間、現場に行きましたときに、大学の法学部で習っていたことと、その法的感覚と現場の法的感覚は全然違うと。日本人は自分の思っている法的感覚の方が正しいということで進めていくわけです。  例えば、外国のテレビ番組なんか見ていますと、懲役二百五十年なんという裁判が出ておりますが、日本人だと、二百五十年も生きているわけないからもう勝手にぱっとこう、条文がどうであろうと、まあそういうむちゃな結論を出さないという一事を例に挙げるまでもなく、日本人の法的感覚というのがあると思います。  その日本人の法的感覚は何にあるかといえば、江戸時代のやはりとんでもない刑事事件を、凶悪犯に対しましては、逮捕した後は白州で調べて、白状した後、正に市中引き回しの上獄門、首を斬首してさらし首と、そして高札を立てて、二度とこのようなことはするなよということをすることが日本人の法的感覚だと思うんですね。  それがこんなに時間を掛かっているようでは、小学生、中学生を始め日本人、素朴な日本人はもう、まあ裁判に対する不信感、司法に対する不信感ということになろうかと思います。  ここに至ったそのいきさつは、さっきのお話ではありませんけれども、現場の具体的なそういう問題とは別に、やはりそういう大岡裁きでは外国の理解が得られないということで、ヨーロッパ、フランス等から刑法、刑事訴訟法の手続を取り入れて、それから戦後は、アメリカの当事者訴訟的な考え方を取り入れて近代法、近代的な法体制を整えたということですけれども、これにまた日本人の性格がプラスしまして、そういう海外の法制度ではアレインメントというんですか、白状、もう自分がやりましたと認めたら、もう審理やめて判決してしまう。日本人は自分がやらないのにやったと言うような民族だから、おとなしい民族だからそういうことは認められないということでこれを排除する。あるいは、司法取引ということもありません。また、陪審制度というのが、今度、裁判員制度で促進しようとする面があるかと思いますけれども、そういうものもないと。  したがって、欧米では迅速化の仕掛けがあるのに、日本人はその仕掛けを外してしまって、日本人のきちょうめんな性格プラスそういう欧米の仕組みが取り入れられて、これが非常にマイナスに作用して裁判が長引くということもあるんじゃないかな。  それから、先般、速記官制度の話でありましたけれども最高裁判所の総務局長が非常にざっくばらんにお話しされますので、日本人、日本の訴訟におきます書面審理がちょっと度を逸しているというような御指摘もありました。  それから、私はいつも思うんですが、弁護士出身の国会議員と日程等の打合せしていますと、自分の手帳見てね、この日は駄目です、この日は駄目です、その目的のためにその日やる必要があるかどうかは別として、自分は日程詰まっています、詰まっていますと、こういうお話で、裁判の現場においても、検事さんと弁護士さんが手帳見て、あっ、この日駄目です、この日駄目ですと言えば、ぽんぽんと一か月ごとに次の審理が延びていくというふうなこともあるんではないかと、私、門外漢といたしまして観察するわけですけれども。  法務大臣、やっぱりオウム事件がこの現在の日本の法律の仕組みの中ではここまで掛かったことは仕方がないと。また、今後二審の審理に入るまでに二年間掛かるというようなことになりますと、国民からすれば、あきらめているのかどうか知りませんが、司法の敗北というふうに断じてもいいんでないかなというふうに思いますけれども、このオウム事件裁判長期化の問題につきましてどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  39. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 具体的な裁判内容にかかわる問題についてはお答え差し控えたいと思いますが、迅速な裁判の実現というのは我が国の司法制度が実現すべき最も重要な課題であるということを認識しております。既に裁判迅速化法も成立、昨年、いたしまして、その実効が今表れつつあるわけでございますが、今回の一連の司法制度改革一つの柱は裁判の迅速化、そしてこれを国民に身近なものにし、結果が社会の生活、それで我々の活動に対して直ちに反応できる、裁判の結果をフィードバックできるようにして、復活、立ち直りの可能な世の中にしていくんだと、これが非常に重要な柱になっていると思うわけでございます。  お尋ね事件につきましても、検察当局は審理期間が短縮されますように相当な努力を尽くしてきておると承知しておるわけでございますが、これからも今後のこの司法制度改革を促進することによりまして、裁判の迅速化、ひいては裁判に対する国民の信頼を高めるということに一層努めてまいりたいと考えております。
  40. 松村龍二

    ○松村龍二君 自民党は今一時間、時間いただきまして、私三十分ということでございますが、同僚の吉田理事から御理解いただきまして、少し時間を食い込んで質問をさしていただきます。  次、刑務所問題についてお伺いするわけですが、昨年ですか一昨年ですか、名古屋刑務所で革手錠を使って傷害を受刑者に及ぼすというようなリンチ事件、あるいはホースで、室内を自分のふん尿で汚しまくるという囚人に対しまして、収容者に対しましてホースでおしりを、高圧の放水を当てたら翌日亡くなったというような事件を契機に刑務所の改革ということが取り組むことになりまして、その間、非常に法務省当局、矯正局当局もいろんな観点から鋭意これに取り組んでおられるというふうに、敬意を表するところであります。  それから、民間の、大臣の私的諮問機関、後藤田さんを相談役か参与にしまして、各界各層の方を集めてこの問題について浮き彫りにしてきたということで、具体的な改革につなげていこう。そして、それが収容施設の増強であり、我が刑務所職員の増員であるというふうに、具体的に予算の面でも着々手当てをしておると、こういうふうに承知するわけですが、ただ、私はこの前、昨年、法務委員会に所属になったときの第一回目の質問でもちょっと申し上げたかと思うんですけれども、せっかく、これだけの事件が起きて、百年に一回の改革をしようと。正に監獄法が明治時代にできた法律であると。したがって、改正すれば百年に一回の改革に正になるわけですけれども、そういうことで取り組まれておられますが、私は、この際、刑法も一緒に改正してみたらどうかということを御提案したいわけです。  といいますのは、現在、刑務所においては懲役制度というのが基本になっているわけです。一日八時間働かせるということですけれども、明治時代ならいざ知らず、昨今、暴力団ふう、暴力団、元暴力団の収容者も多い、外国人も多い。小学校一年生ですら先生の言うことを聞かないで教室を徘回するのに、何で刑務所の大の大人が、そんないろいろな生い立ちを持った大人が刑務官の指示によって行儀正しく行動し、職、仕事をするというふうな制度がちょっと時代後れなんじゃないかなと。  この前お聞きしたところによると、まあ八時間のうち二時間ぐらいは座学でほかのことをやらせるとか、いろんなことを考えることも含めてという検討はしておられるというお話でございました。  それから今、懲役制度の仕事が、先般、名古屋刑務所を拝見したときには非常ににぎにぎ、にぎやかに皆さん作業しておられまして、ああ、やっぱり名古屋は景気がいいんだなと。東北や北海道や我々の県ですと、あんなにみんないそいそと一日仕事するだけの仕事が刑務官も見付けてくることができないんじゃないかなというふうな心配もいたしたわけですが、そういう面から、せっかく百年に一度の改革検討するんであれば、懲役制度そのものについても検討してみるということも必要ではないかというふうに思うわけですが、これについていかがでしょう。
  41. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 私も昨年就任いたしまして、名古屋刑務所事件に象徴される一連の収容者に対する処遇の在り方について大変心を痛めまして、現場を十数か所にわたって拝見して歩きました。もちろん、名古屋刑務所を真っ先に参りましたが、あわせて、行刑改革会議、昨年の春立ち上げまして暮れに答申をいただいております行刑改革会議におきましては、大変、各方面の識者の方々にお集まりをいただき、現場の見学から外国の調査までやっていただいた上で、大変有益な御提言をちょうだいいたしましたことは皆様御承知のとおりでございます。  そこで、今委員御指摘の刑法と併せ検討したらどうかということにつきましても、現在、刑法の例えば量刑の在り方が適切かどうかということは法制審にも諮問をしておるところでございますけれども、一番大事な矯正の在り方、いわゆる受刑者の処遇という点で見た場合に、この御指摘の刑務作業というものが極めて実は大事な内容になっていることを私は改めて実感をした次第でございます。  委員も名古屋をごらんいただいて、あるいは警察の関係でのお仕事の中で痛切に見ておられての御所見と思いますが、刑務作業の一つの大きな目的といいますか、なぜやるかということでございますが、まずは規律のある生活を保つということ、それから共同生活に対する順応を図っていくということ、またさらに勤労意欲の育成、生きがいがそこで生まれてくるんじゃないかと。また、職業知識や技能を習得しまして社会に復帰したときに備えるということも一つの目的としてございますし、それから単調な仕事ではございますが、これを繰り返し勤めることによって忍耐力を涵養するといういわゆる受刑者の皆様のやっぱり資質の向上、これがあるかと思います。  まとめて言いますと、受刑者の皆さんが改善更生をしまして、円滑な社会復帰ができるようにするためにも、実はこの刑務作業は重要な役割を果たしておると思うわけでございます。そうはいいながらも、行刑改革会議でも指摘されておりますけれども、やはりこの内容についての見直しはやはりしていかなきゃいかぬなと。軍隊式の行進などについてはやはり改めたらどうかとか、いろいろございますが、やはり大事なことは、受刑者の方々が社会に円滑に復帰できるということを考えますと、一律の八時間の作業ということがいかがなものかということでございますので、この辺は必ずしもこれが必要であるかどうか、場合によっては作業を短縮いたしまして、より柔軟な処理を行うことも大事ではないかと思っております。  そのための一つの試みといたしまして、この四月一日から、一部の刑務所におきまして試行的に作業時間を短縮しまして、逆にその余った時間で改善更生、社会復帰に必要な教育などの処遇をより充実させたらどうかと、この結果を見まして更にこの対象を拡大していくことも検討しておるわけでございます。  ちなみに、禁錮ということで作業をしなくていい刑に服している方々も希望によりましてこの作業に従事できることになっておりますが、今九割程度の方々が作業を希望して、一緒に所内で作業をしているという事実もございます。  それから、監獄法の改正につきましては、今後の受刑者の処遇の多様化の問題、あるいは外部の皆様の御意見が刑務所の運営等に反映されまするように、そういった組織の導入等についても併せ考えまして、これからしっかり時間を掛けまして内容充実させてまいりたい。  要は、受刑者の人権に配慮し、刑務官の皆様の負担を軽くすることと、いわゆる国民の皆様に開かれた刑務所にするということを目的としてこれから進めてまいるつもりです。
  42. 松村龍二

    ○松村龍二君 最後に、御要望といいますかあれなんですが、私はやはり非常に、法務省の方のお仕事ぶり見ていると、もう非常によくやっておられるということで、いったん事件が起きますとなんですが、何でこんな刑務所の実態がここに至るまで何も手を付けられなかったのかなということをやっぱりこの際指摘せざるを得ないというふうに思います。  刑務所の刑務官に十八歳なり二十何歳で採用になった方は、もうひたすらその仕事を覚えてその中で完全にやっていくという立場ですから、だんだん慣習その他によって、中のある制度をいじくるような頭は働かない。法務省の方は、法務省の高官は、また現場のことは分からない、あるいは分かろうとしないといったことがあったんでないかなと。  私もいろんな、過去、総務省にちょっとおりますときに、いろんな役所から来る人を拝見していますと、それぞれ特徴があるなと。時間の点で言えば、農林省は三年に一回、政策変えますね、猫の目農政と言われるようにね。それから、林野庁は三十年に一回です。それから、防衛庁を見ていますと、防衛施設庁なんか百年に一回の単位で物を考えていますね。それで、もう結論出なくていいんですね、実際に使うことないんですから。そんなような意識を感じたことがあります。それから、自治省の人は公平に公平に。何か重点的にやりましょうと言うと、いやいや公平に公平に。やっぱり奈良県と島根県が違うことをやったら、奈良県にだけ認めてやって島根県認めませんと怒りますから、平等に平等にというようなふうに特徴があるんですね。  その点、法務省の方は、言いにくいことを言いますと、やっぱりいったん預かった事件を無罪にしないようにとか、非常に緻密。そのためにはもう夜も寝ないで家へ持って帰って家で仕事やるというぐらい熱心で善意なんですが、今言ったように、刑務所の中のことまでは興味がないというか気が付かない。あるいはこの入管についても、長らく外務省の方が入管局長をやっていましたですね。それで、あるいは治安と入管という問題について、どうしても入管の方は治安の問題はさほど興味なく、やっていれば任務が務まるといったことで、ようやく今治安と入管行政が結び付いてきた感じがしますけれども、そういうことで、やっぱり刑務所の問題をここまで放置されたということは、やはり人事管理上その他何らかの問題があったというふうに御指摘したいと思いますので、もうこれ御要望だけでよろしいでしょうか。せっかくでございますので、一言だけ、法務大臣お願いします。
  43. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 矯正の現場とまた本省矯正局との幹部との意見交流あるいは人事の交流につきましても、これまで適材適所を旨に心掛けてきたところでございますが、委員御指摘のとおり様々な問題も現れているところでございますので、今後一層心して取り組みまして、国民の皆様にとって何が一番大事かということを最大の眼目といたしまして、治安の回復、そして矯正の適切な実行と、そしてできる限りここで世話になった皆様が再度復帰して世の中でお役に立つ人間として立ち直っていただくんだということが実現できまするよう、世間の常識が通用するような刑務所の在り方を考えていかなければならないなと思っております。  ただいま入管のお話もございましたが、正に法務省一つ問題点は、それぞれの専門家が集まって一つの大きな目的を実行するというところに課題がありますが、その横の連絡とかあるいは縦の連絡とか、更に言えば、専門家であるがゆえに国民の皆様の声が届いていなかったのではないかという、こういう反省があるところでございますので、これからはひとつ一致団結しまして、今回の司法制度改革一つの契機として、国民のために尽くす法務省、あるいは行刑の在り方、さらには検察含め、裁判所等についてもそういった連携を取りまして努力をしてまいりたいと考えております。
  44. 吉田博美

    ○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。  時間が大分押し迫ってまいりまして、私の方から答弁お願いし、質問を通告しておりました皆さん方に全員から答弁をいただくことができないかも分かりませんが、それはまた後刻、お許しをいただきたいと思います。  そこでまず最初に、松村委員に関連いたしまして質問をさせていただきます。  犯罪情勢の悪化等に伴う行刑施設の過剰収容状況は極めて深刻な問題となっております。一日も早い収容体制の強化が求められておりますが、そのような中で、法務省は刑務所の整備にも民間の資金、ノウハウ等を活用するPFIを導入する方針を示しておられますが、具体的な取組状況をお伺いいたします。
  45. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 刑務所の過剰収容問題は、正に委員御指摘のとおり深刻な状況にございます。定員五万そこそこというところに六万人余りの受刑者、そしてまた、未決の方入れますと七万人近い方がここでお世話になっているということでございまして、一人部屋を二人とか、五人部屋に七人とか、あるいは六人部屋が八人とか、もう私はその現場をつぶさに見て歩きまして、一刻も早くこれを解消しなければならないという思いに駆られておるわけでございます。  私、法務大臣就任のときにも小泉総理から、治安の回復、司法制度改革と並んで行刑制度在り方を見直してほしいと、特にPFI活用の刑務所の実現について格段の配慮をという特命をいただいておるような次第でございます。  私、たまたま自由民主党におきまして、本日お見えの岩井先生共々、PFI推進調査会の会長代行を仰せ付かっておりました関係で、刑務所に対するPFIの適用ということは正に最も難しい分野の一つということで承知をしておったものでございますが、いよいよその実行をつかさどる立場になりました関係で、早速に各関係方面の皆様の知恵をいただき、これまでも既に法務省は諸外国の実例等の調査をしておりました関係もありまして、山口県美祢市におきまして美祢テクノパークというところを活用してひとつモデルを作ろうと、約千人のこれは収容する刑務所ということで決定を、方針を決定したところでございます。
  46. 吉田博美

    ○吉田博美君 PFI手法による刑務所の整備のほか、人的体制整備も重要だと思われますが、しかし大幅な職員の増加が容易でない現状から考えますと、民間委託の拡大も必要だと考えます。この点についての現状と今後の方針について、大臣の御所見をお伺いいたします。
  47. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 矯正施設におきましては、これまでも庁舎周辺の警備であるとか、あるいは自動車運転、輸送の業務、それから通訳の仕事、それから庶務、経理その他含めまして総務系の業務の民間委託は行ってきたわけでございますが、更にこれをこれからも拡大いたしまして、先ほどのPFI手法は建設し運営し、そしてまた管理をすると。そういった面で、民間の皆さんでできるところはすべてお願いをしていくという手法を逆に現在やっております我々の仕事に反映をさせることによってどこまで民営化が可能か、そしてこれまたできる限り、またそれを進めるという中で要員を生み出していかなければならないと、こう考えておりまして、正に総理おっしゃいます、民間でできることは民間へといった、この一番大事なポイントがここで必要になる課題であると思っております。
  48. 吉田博美

    ○吉田博美君 我が国では犯罪者等の社会復帰を助けるために保護司や更生保護施設を始めとする民間の方々に協力をいただいて大きな成果を上げておりますが、十六年度の更生保護関係予算においてはこれらの民間の方々への支援をどのように図ろうとしているのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  49. 中野清

    大臣政務官(中野清君) 委員が御指摘のとおり、我が国の更生保護におきましては、保護司や更生保護施設の方々の献身的な努力によりまして多くの人々の社会復帰が図られているということは過日も御指摘のとおりでございます。  その中で、最近の犯罪情勢等の悪化の影響を受けまして保護観察事件というものがいまだ七万五千人台と高水準で推移しておりますが、質的にも困難化しておりまして、これら民間の方々の協働によるところの社会復帰の支援体制充実させる必要があることから、予算措置、以下のような予算措置を講じております。  まず、保護司につきましては、保護観察事件等の増加に対処するため、この事件処理に関する予算件数というのがございますが、これが約六十四万件を六十六万件というふうに見直しを行うこととしたほか、保護司研修の充実を図ることといたしまして、また保護司の実費弁償金につきましては、保護司一人当たりにつきましては昨年より二千円増で年間七万九千円、合計といたしまして前年対比九千三百万円増の三十八億八千七百万円を計上をしておるところでございます。  また、保護施設につきましては、四か所の施設整備のための補助金といたしまして二億二千五百万円を計上したほか、矯正施設収容者の増加に伴うところの要保護者の増加に対処するため、これは御承知のように、例えば、仮釈放が例えば平成二年には一万三千二百人だったのが、平成十四年には、平成十二年には一万千二百人だったのが、平成十四年には一万五千三百というふうに増えております。また、いわゆる刑務所に収容される人もどんどん増えておりますが、そういうためにどうしても更生保護委託費が対前年対比九千四百万円増の三十億八千八百万円を計上しておるところでございます。  また、民間の更生保護施設の職員の研修の充実を図ることといたしまして、研修経費といたしましては、対前年度比三百万円増の千四百万円を計上をしているところでございます。  今後とも、委員御指摘のとおり、保護司や更生保護施設の協働によりまして、再犯のない社会復帰ができる支援体制充実に努めてまいりたいと考えております。
  50. 吉田博美

    ○吉田博美君 保護司や更生保護施設に対しまして、より一層手厚い施策を取っていただきたいと思います。  時間が参りましたので、最後に飛ばしていただきまして、最後に一つだけでございますが、やはり外国人の犯罪が非常に多発して、いろいろなことの中で我々も社会問題になっております。  そうした中で、最近発表された統計の一つ平成十五年度における外国人の上陸拒否数がありますが、外国人の入国者数が減少している中で上陸拒否数は増加しているということは、入国管理局が水際対策を積極的に行っている証拠だと思います。さきに発表された出入国数及び上陸拒否数について、何か特徴的なことがあればお伺いしたいと思います。
  51. 増田暢也

    政府参考人増田暢也君) 平成十五年におきます外国人の入国者数は五百七十二万七千二百四十人で、これは平成十四年と比較いたしますと、SARSの影響等もございまして四万四千七百三十五人減少いたしました。一方、我が国の空港や海の港などで上陸を拒否された外国人の総数は、平成十五年は九千八百六人で、これは平成十四年が九千百三十三人でしたから、六百七十三人、七・四%の増加となっております。  上陸を拒否した理由を見ますと、不法就労などの違法な活動が目的であるにもかかわらず、観光であるとか、あるいは短期商用、親族・知人訪問と偽って上陸申請を行うなど入国後の活動に疑義が認められた事案が五千三百五十八人、全体の五四・六%を占めております。  次いで、偽変造旅券を行使するなどして上陸許可を受けようとした事案が千四百三十七人、これが全体の一四・六%を占めております。この偽変造旅券の行使事案につきましては、手口の巧妙化に対応するため、高性能の偽変造鑑識機器を配備するなどの対策を強化しているところでございます。  上陸を拒否された外国人の国籍について見ますと、我が国との経済格差の大きい国とか、あるいは雇用機会の少ない国から不法就労などを目的として我が国に入国しようとする者が依然として後を絶ちませんし、また我が国への入国を図るための手段もますます悪質巧妙化の傾向を示しておりますが、入管といたしましては、不法滞在者を半減させるという方策の積極的推進のため、今後も関係省庁との連携の強化や偽変造文書対策の強化を進めまして、不法な意図を持って入国しようとする外国人に対する水際対策を積極的に進めてまいりたいと考えているところでございます。
  52. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今日は個人保証制度の問題、ようやく法務省としても、大臣が諮問をされて審議会でこの見直しの議論がなされるところまでやってまいりましたんで、この問題を今日はお聞きをしておきたいと思うんです。  中小企業が当然金融機関から融資を受ける際には、経営者が個人保証を求められるのが我が国では通例でございます。私が解説する必要もないんですけれども、論議の前提として個人保証はどうなっているかと、日本においては。今は普通保証と根保証があると。普通保証は、これは特定の債務だけを保証するものですから、これに対してはそう問題は起きにくいんですけれども、根保証というのは、これは継続的な取引から生じる不安定な債務を保証するということになっておりまして、この根保証を見ますと、二つに分野が分かれて、一つは金額や期間などに限定を設ける限定根保証、もう一つは限度を一切設けない包括根保証があると、こういうふうに承知をしております。  このうちやっぱり一番問題になってくるのは、これ商工ローンなんかの問題でも出ましたが、結局こういうところから零細中小企業向け融資などでは必ず対応されているこの包括根保証という問題でございます。これの一番の問題は何かというと、金額に限度がないという問題が一番大きいんであって、結局そのために保証人が予期しない債務を負ってしまうことになって、これが土地や家屋を手放すとか自殺につながるとか、正に社会問題としての結果につながっているんじゃないかというような指摘もあるわけでございまして、またその一方で、こういう包括根保証という問題があるがために、この債務の発生を恐れて、業績が悪化してもなかなかこれ再生手続を取らずに、結果的にまたこれ悲惨な結果になると、こういった問題が新聞報道でも多数指摘をされている問題でございます。  もう一方で、どういう問題があるかというと、経営破綻した場合ですよ、多額の債務が残っていると。結局、能力があっても新規融資が受けられず、よその国では結局倒れても立ち上がれるという仕組みがある。ところが、こういう制度があるために一回倒れたらそのままもう完璧に終わりになると、法の仕組みのために、こういう制度があるがためにそういう問題が起きているという一因になっていると考えます。その意味では大きな弊害があるんじゃないかと、こんなふうに私どもも考えておりまして、この見直しをすることはもう必至の状況だろうと思っております。  これを受けて、去る二月十日でございましたか、この根保証制度の見直しについて法務大臣から法制審議会へ諮問がようやくなされまして、今この検討が行われているというふうにお聞きしております。私は私なりにこう考えて、この個人保証制度というのは当然見直すべきである、特にこの包括根保証なんて問題はもうこれ私は廃止を含めて考えるべき問題だと、こう思っておりますが、まず法務省として、この個人保証制度の見直しを行うこととした背景と経緯と見直しとねらい、基本的考え方、法務省としての見解をまずお伺いしておきたいと思います。
  53. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、現在、法務省法制審議会におきまして個人保証制度の見直しをしております。  その背景でございますが、これはただいま委員から御指摘のありましたように、個人保証、特に包括根保証、これが非常に中小企業の経営者等に過酷な結果を招いている、あるいはその再起を妨げていると、こういう事実が指摘されておりますので、それを踏まえまして見直そうということになったわけでございますが、もう一つ、政府の経済財政諮問会議が策定いたしました経済財政運営と構造改革に関する基本方針と、二〇〇二年に定めておりますが、その中におきましても、起業の促進、廃業における障害除去という目的実現の観点から個人保証の在り方検討、見直しを進めることと、こういうことを求めております。この方針を受けまして、関係省庁におきまして実務運用面での改善策等が検討あるいは実施されているところでございますが、現在のように企業倒産が多発する経済情勢を考えますと、保証契約の内容を適正化するためのより直接的な措置を講ずる必要があるだろうと、こういうことから見直しをしたわけでございます。  そういうことから、主として特に問題の多い包括根保証契約、この内容を適正化するということを目的といたしまして、保証制度全般についての検討を行うということが現在の考え方でございます。
  54. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 検討事項としては、連帯保証制度なんかも含めて広く検討なさるつもりでいらっしゃるのか、それとも、もう今おっしゃるように包括根保証のところにぎゅっと絞り込んでしまうつもりでいらっしゃるのか、どちらですか。
  55. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 最も問題点が指摘されておりますのは包括根保証制度でございますが、それが中心になりますが、審議会において特にそこに限定するということではなくて、保証契約全般について御検討願うつもりでございます。  ただ、立法のスケジュール等との関係で、どのようなところに力点を置くかということは、これは正に審議会で決めていただくつもりでおります。
  56. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 中小企業というのはもちろん担保力が弱いということでこの個人保証を求められることが多いと思うんですけれども、今、中小企業について融資の際、個人保証がどの程度現実に行われているのか、中小企業白書等まとめられているようですから、経済産業省からその実態、報告をいただきたいと思います。
  57. 大道正夫

    政府参考人大道正夫君) お答えを申し上げます。  平成十四年度の中小企業白書、というのは一番最新の昨年発表されたものでございますけれども、これによりますと、メーンバンクから借入れを行う際に個人保証を提供している企業の割合について書いてございますけれども、要点だけ申し上げますと、大企業が二六・八%というふうに結果が出ておりますけれども、これに対して中小企業が八一%となっておりまして、中小企業の大部分がメーンバンクに個人保証を提供しているということでございます。
  58. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その中で、今おっしゃった個人保証の対応の中で問題になっていると言われている包括根保証というのはどれくらいあるのか、他の保証制度と違ってどういう弊害があると経産省としては思っているのか、お聞きしたいと思います。
  59. 大道正夫

    政府参考人大道正夫君) 中小白書の、中小企業白書の分析におきましては包括根保証とほかの保証を必ずしも区別して調査をしておりませんけれども、我々中小企業庁といたしましても、金融機関から中小企業への融資におきまして金額、期間に限定のない保証契約がある程度行われているというふうに承知をしておるところでございます。  こうした包括根保証の問題点でございますけれども、期間の限定がまずないということでございますので、例えばその保証契約を行った後、非常に長い期間が経過した後、突然保証の履行を求められるというようなこととか、あるいは保証を行った経営者が引退をされて経営陣から外れた後も突然保証契約の履行を求められると、こういうようなケースが指摘をされておりますし、また、金額の制限がないということでございますので、主債務者の借入れ増で知らないうちにどんどんお金が増えて、借入れが増えていって、ある日突然保証の履行を求められると、こういうようなケースがあろうかと思いますので、今回の法制審の見直しにおきまして、こういった保証人にとって過度の負担になる場合があるというふうな認識検討が進めて、これから進めていくというふうに理解しているところでございます。
  60. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 本当は中小企業庁さんね、やっぱりこういうやつは、例えば包括根保証の問題点、確かにある。ある以上、そういう実態についてはある程度中小企業庁さんの方できちんと掌握して、それを上げていくことが、逆に言うと、これをどう直させるかというときの一番の資料になるわけですよ。そんなのをやっぱりやっておかなくちゃいかぬ。あなた方が中小企業に対して、どういう中小企業が追い込まれる実態になっていて、どこに問題があるのかというのを一番提起しなくちゃいけない。そこの基礎になる部分なんだから、そこは、こういった問題についてやるときは、やはりそういう実態解明みたいなものをしてあげることによって法制審議会に対してもいろんな申出をできるんであって、それはちょっときちんとやった方がいいよ。
  61. 大道正夫

    政府参考人大道正夫君) 昨年発表いたしました中小企業白書ではそこの分析を分けてはしてないんでございますけれども、包括根保証の問題、今度いろいろ検討するということでございますので、我々としても一応今調査をしようと思って考えております。まだちょっとそれをまとめて結果を出すというところまで至っておりませんけれども、今の検討に合わせていろいろ調査をしたいというふうに考えております。  以上でございます。
  62. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一方で、これ検討するときにもう一つの、あっ、最高裁にちょっと一言だけ。  負債整理のため個人破産に追い込まれたケース、どの程度あるか。
  63. 園尾隆司

    最高裁判所長官代理者園尾隆司君) 法人役員が個人保証の債務整理を原因として破産申立てをする件数がどの程度あるかというお尋ねでございますが、何を破産原因と考えるかということについて裁判統計で把握するということは困難でありますために統計数値は持ち合わせておりませんが、昨年一月まで東京地裁の破産事件担当部の裁判官をしておりました私の経験から申しますと、法人の破産申立てがある場合には、過半数の事件において法人の役員の破産申立てがございます。  この中には、保証債務ではなく、小口の貸金業者やいわゆる消費者金融から自己の名義で借入れをしている者、あるいは個人所有の不動産を担保に自己名義で借入れをしている者という者も一定数ございますけれども、過半数を占めるのはやはり多額の保証債務を抱えている会社役員の破産申立てということになってございます。この多額の保証債務を抱えて破産申立てをしている会社役員の破産事件が、個人保証の債務整理を原因とする破産の申立てであると言うことができると思っております。  その数値を推計いたしますと、平成十五年の速報値によりますと、全国の法人破産の申立て件数は約八千九百件となっております。この法人破産に伴って当該会社の役員が破産申立てをする件数は、これは推計でございますが、五千件以上あるというように考えられます。そのうち個人保証の債務整理を原因とする破産申立ては、少なくとも数千件は存在しているというように推計されるところでございます。したがいまして、全国では少なくとも数千人が個人保証の債務整理を原因とする破産の申立てをしていると言うことができると思います。
  64. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 これは、今後調べようというのはなかなか難しいんですかね。  私どもは、裁判官について、とにかくこういう経済事件も多いし、増やすことで一生懸命国会としては予算も考えて努力しようとしていると。しかし、何かこういう実態のことを聞こうとすると、なかなか最高裁から数字が出てこないと。こういう問題も努力していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  65. 園尾隆司

    最高裁判所長官代理者園尾隆司君) 裁判統計の性質上、裁判の手続から客観的に把握できるというものを統計として把握するということでありますために先ほど御説明をしました制約があるわけですが、ただ、このような破産事件に担当する者として様々な研究をするということは今後とも続けていくという考えでおりますので、そのような研究過程で、ただいま問題になっているような問題についても大いに検討ができるであろうというように考えております。
  66. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 まあ余り言いますまい。  もう一つ、この問題考えるときに、これも中小企業庁、ちょっと聞いておきたいんですけれども、今度は、個人保証にいろんな今度は制限を加えていくと金融機関が貸出しに消極的になりと、中小企業向け融資が更に低迷する懸念があるというようなことを指摘するマスコミやそういう人たちもいらっしゃいますが、こういうことについて中小企業庁としてどうお感じになりますか。
  67. 大道正夫

    政府参考人大道正夫君) まず、個人保証につきまして、これは債務者の信用補完手段の一つとして現に機能しているのではないかと、そういう面があるんではないかという面が、そういうことが考えられるということかと思いますけれども、そういう意味で、この個人保証制度の見直しに当たって中小企業の方々に対する円滑な金融を阻害しないようにしなきゃいかぬと、そこを十分に留意をしながらやらなきゃいかぬと、こういうふうに考えているところでございまして、今回の法制審における検討も、そういう意味では、先ほど限度額、保証期間を定めていないというところが問題だということなんで、そういう過度にやっぱりその保証人に負担が掛かっているというところを主眼にやっぱりいろいろ議論いただく、していただく必要があるんじゃないかと思っております。  そのほか、中小企業庁といたしましては、例えば中小企業の決算書類の信用力というのを上げるための努力をするというふうなことで、そういった信用、過度に保証なり担保に依存しなくても中小企業の方がお金を借りられるんじゃないかと、あるいは政府系金融機関を中心にそういった新しい制度をいろいろ作っていかなきゃいけないんじゃないかと、こういうことで中小企業の方々への円滑の金融を阻害しないように配慮しながら、こういう検討にも参加していきたいというふうに考えております。
  68. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 大臣、諮問したのが二月十日でございますが、私はやはりこういう問題は、今の経済状況、さらに中小企業者が置かれた現状を考えると、検討についてもちろん十分にやっていただきたいし、私はこの包括根保証については廃止も含めて本当にいろいろ考えてもらいたいぐらいの気持ちでおりますが、いずれにしても法改正をするならば早く出す必要もあると考えております。  今後、これ法制化をどういうふうにされていくのか、見通し含めて、私はできるなら参議院選挙終わった後、臨時国会どうなるか分かりませんが、そういった時期にもう法案を提出していただいてやるべきだと思っておりますが、見通し含めて御見解を伺っておきたい。
  69. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 法務省、これまで会社の倒産法制一連につきまして、民事再生あるいは会社更生という関係については既に法案化しておるわけでございますが、さらに今年は破産法について御審議をいただく予定になっております。  こういった一連のいわゆる表看板の法律もさることながら、今委員御提起の、中小企業にとってはこの根保証を含めた保証制度在り方というのが極めて重要な要件になっていることは十分わきまえておるわけでございまして、そのこともありまして、これを解決しないことには、やはり立ち直り可能なという先ほどから申し上げております世の中を作るために一番実はかぎになるこれは要件ではないかと思っております。  そこで、今法制審に御審議お願いしておりますけれども、ここで十分御議論をいただきまして、できるだけ早い機会にその結論を得て法律にしていきたいと、かように考えております。どうも。
  70. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 どうですか、時期は。なかなかまだ言えない。真剣に検討中だから。どうですか。
  71. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 結局、根保証という制度、大変便利な制度なもんですから、これがあることによって融資が円滑化するという側面もまた一つあるわけでございますが、そういった両面いろいろ含め、この制度在り方、今後の内容を含めてしっかりこれは御議論をいただいた上で法制化しないことには、また問題が起こってもいけませんので、その点は可及的速やかにと、こういうことで、今御指摘のような期間を視野に置きつつ頑張りたいと思っております。
  72. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一点、全く別の課題で、テロ対策についてお伺いを何点かだけしておきたいと思います。  スペインで列車爆破テロ起きて、国内でもという心配される面もいろいろあるわけでございまして、内閣としてこれも取り組むというようなことも、政府として必要な措置はすべて取り組むというようなことも発表はされているわけでございますが、いろんなテロ防止はやらなくちゃいけないことはあるんですけれども一つは、やっぱり法務省関連でいうと水際対策の問題が非常に重要であると考えておりますし、これ昨年でございましたが、十二月一日、事務次官会議で、これはイラクで外交官が殺害された事件を受けての話でございましたが、テロリストの入国を阻止する水際対策の強化を申し合わせたということもお聞きしておりますが、法務省はこういう水際対策について体制強化のためにどのような対応をしておるのか、お伺いをしておきたいと思います。大臣
  73. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 正にこのテロ対策は今一番日本にとっても、あるいは国際社会にとっても脅威となっておる問題でございますので、テロリスト等を始めとする不法入国を企てる外国人を水際で確実に止めるということは極めて重要であると認識しております。  これまで取りました政府の累次の申合せを踏まえまして、法務省におきましては、一貫して厳格な上陸審査に努めることはもとより、警察庁を始めとする関係機関との連携を強化しまして確実な水際対策の実現に努めているところでございます。  また、これらの外国人が往々にして偽変造文書を所持していることが多いということから、平成十三年度におきまして、成田空港を始めとする全国の空海の港におきまして最新鋭の偽変造文書鑑識機器を配備するとともに、今年は更にブース型の鑑識機器というものを導入したところでございまして、平成十五年中の上陸審査手続時における偽変造文書発見件数は三千六百六十件と、前年に比べ約四一%の増加を見ております。  法務省といたしましては、今後とも関係省庁の連携の強化や偽変造文書対策の強化等を努めながら、的確な上陸審査を実施してまいるつもりでございます。
  74. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そういう水際対策の一環でもあると思うんですけれども、二〇〇四年度から運用する予定ということで、これは警察庁、財務省と共同で運営するものでございますが、いわゆる事前旅客情報システムというのを導入しようということで今やっていらっしゃるとお伺いしております。これは結局、航空会社から事前に搭乗者の名簿の情報を受けて保有するリストと照合する、自動照合できるようなやつでございますが、こういったもの、システム開発の状況、さらに今後の運用の見通しどうなっているか、お伺いしておきたいと思います。
  75. 増田暢也

    政府参考人増田暢也君) 委員御指摘のとおり、法務省、財務省及び警察庁におきまして、テロリスト、不法入国者等の上陸阻止あるいは銃器や薬物等禁制品の持込み阻止、また国際組織犯罪対策強化といった観点から事前旅客情報システムの構築を進めておりまして、平成十七年一月の運用開始を目指して現在開発作業中でございます。
  76. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 これは、今度の予算法務省関係としてどれくらいを計上されているのか、全体の額でどれくらいが必要なものなのか、御説明をいただいておきたいと思います。
  77. 増田暢也

    政府参考人増田暢也君) 事前旅客情報システムの開発、運用に要する費用ですが、先ほど申し上げた三省庁全体で約九億円です。法務省分といたしましては約三億円となっております。
  78. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 これは、やっぱり運用によってどういう効果を期待されているのかと。実際に同じようなシステムを使っている外国での実情を踏まえて、国際的な動向についても伺っておきたいと思います。
  79. 増田暢也

    政府参考人増田暢也君) 事前旅客情報システムはアメリカにおきまして一九八九年に導入されたのを始めといたしまして、私どもの承知しているところ、現在、カナダ、オーストラリア、韓国などで同様のシステムが導入されておりまして、テロリストなど不審者が入国することを未然に防止する上で大きな効果を上げていると承知しております。  我が国におきましても、このシステムを導入することによりまして、外国から航空機が我が国に到着する前に我が国の安全上問題のある人物を特定し把握することが可能となりますから、入管による上陸審査あるいは税関による旅具検査、さらに警察による捜査などがより的確に実施されることになると考えております。
  80. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今日はこの水際の対策の問題をお聞きしましたが、大臣に最後に、もちろん法務省として担当する分野はこの水際の問題だけじゃございません、国全体の問題もあるわけでございまして、今やはり日本にとって、また国民の一番の心配もこのテロ対策ということになると思いますし、最後に大臣、この取り組む決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  81. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 委員御指摘のとおり、テロ対策は我が国の治安対策にとって最も重要課題一つであると認識をしております。現在、世界各地でテロが頻発している状況におきまして、我が国におけるテロを未然にしかも確実に防ぐために、内外の関係機関との連携を密にするなどをしてテロ関連情報の収集に努めながら出入国管理の徹底を図るなど、今後とも万全を期して取り組んでまいりたいと思います。
  82. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  83. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  まず、保護司制度について質問をいたします。  犯罪や非行を起こした人がきちんと社会復帰を果たすのか、それとも再び罪を犯して刑務所に入ることになるのか、非常に重要なのが更生保護だと思います。私、一昨年は更生保護施設について、去年は保護観察官について質問をする機会がありましたけれども、今日は保護司制度について質問をいたします。  一月の当委員会の委員派遣でも、愛知県で保護司会の会長さんのお話伺いました。私も、地元の京都で保護司会の代表の皆さんと懇談をする機会がありました。主に少年の保護観察のお話でありましたけれども、相手にどういう愛情が不足してきたのかということをずっと考えて、一年ぐらい面接を続ける中で親にも言えないようなことを話してもらえるようになったとか、それから、保護観察が終わってからもずっと人間的付き合いが続いて子供が生まれたら名付けの親になったんだと、こんなお話もお聞きをいたしまして、非常に献身的な活動に感銘をいたしました。  これ、世界でも例のない制度だと言われておりますけれども、この保護司の制度の果たしている役割について、まず大臣の御所見を伺います。
  84. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 我が国の保護司制度は、地域社会における民間の篤志家の方が犯罪者や非行少年の更生、社会復帰を無報酬で援助するという世界に類例のない制度でありまして、その立ち直りと社会の安定に極めて重要な役割を果たしていると認識しております。  今、小泉内閣では民間でできることは民間へと、こういうことを掲げて努力をしておりますが、既に法務省では、現行のこの保護司制度は昭和二十四年から司法保護委員という方で、形でスタートをし、戦前から既にその濫觴、実績があるわけでございまして、この制度を持っているということは、法務行政が国民の皆様にとって身近なものであり、かつまたそれが自発的なボランタリーな行為で支えられているということは私どもにとっては宝のような存在であると、こう考えておりまして、一層今後ともこの制度充実とまた拡大に努めてまいりたいと、かよう考えております。
  85. 井上哲士

    ○井上哲士君 宝のような制度だという高い評価がございました。  一九九八年に保護司法が改正をされましたし、二〇〇〇年の十一月には、当時の矯正保護審議会が二十一世紀における矯正運営及び更生保護の在り方についての提言というのも出しております。この中でも、この保護観察事件に占める少年の割合が七割を超えているという現状の下で、ベテランとともに若い保護司の確保が非常に必要だということを指摘をしております。そして同時に、この適任者の確保が非常に困難だということも言っております。こういう、この保護司の確保のために法務省としてはどういう努力をされてきているんでしょうか。
  86. 津田賛平

    政府参考人(津田賛平君) 近年、保護観察事件がますます複雑多様化しておりますし、処遇困難な対象者も増えておりますから、ただいま委員御指摘のとおり、幅広い分野から若手の保護司さんを含めまして多様な保護司さんを確保することが必要であるというふうに考えております。  そこで、社会を明るくする運動を始めまして、あらゆる機会を通じまして、保護司制度でございますとか、保護司の活動を紹介するような広報に努めておるところでございますし、また各地の保護観察所におきましては、地方公共団体との連携を密にいたしますとともに、学校関係者でございますとか社会福祉関係者等の幅広い分野から保護司さんの適任者の推薦をまとめるようなことをいたしております。  さらには、保護司会のほかに、地域の組織でございますが、例えば自治会でございますとか、民生児童委員協議会でございますとか、社会福祉協議会等の代表の方々で構成いたします委員会のようなものを設けまして、その中で適任の方々の推薦を受けると、このようなことも行っておるところでございます。  このような形で、地域の方々の御協力によりまして幅広く保護司の適任者の確保に努めておるようなところでございます。今後とも、さらに保護司の適任者の確保に努めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  87. 井上哲士

    ○井上哲士君 この提言の中でも、保護司の適任者を確保することの困難な理由一つに、職務に比較して評価、待遇が必ずしも十分ではないと思われていることを挙げております。  保護司の皆さんは無給でありますけれども、実費については支給をするということになっていますが、その基準それから予算はどうなっているでしょうか。
  88. 津田賛平

    政府参考人(津田賛平君) ただいま御指摘のとおり、保護司に対しましては、保護司法の規定によりまして、職務に要する費用の全部又は一部を支給するという形になっております。  その主なものといたしましては、保護観察事件を担当した場合には担当事件一件につきまして一月五千六百二十円以内、あるいは環境調整事件を担当した場合には報告書、報告一回当たり千六百五十円、それから犯罪予防活動等の地域活動に従事した場合には一人当たり年間で一万六百二円が支給されると、このようになっております。このほか、研修に出席した場合などにつきましては所定の実費が支給されております。  それから、保護司実費弁償金の予算総額でございますが、平成十五年度が三十七億九千万円、平成十六年度の予算案におきましては三十八億九千万円を計上しておるところでございます。
  89. 井上哲士

    ○井上哲士君 それで実際に実費が賄えていると、こういう認識でしょうか。
  90. 津田賛平

    政府参考人(津田賛平君) 必ずしも賄えるとは考えておりません。
  91. 井上哲士

    ○井上哲士君 懇談でお聞きしましても、それこそ交通費も出ないことがあると、こういうふうなことでありました。  もちろん、保護司の皆さんは、無給だからこそこの役割を果たせることができるということも言われまして、保護観察をしていた青年の更生を目の当たりにしたときの喜びはほかに代え難いということで、本当に誇りを持ってやられております。  ただ、やはり、今後新しい人材を確保していくという場合には、やはりこの問題というのはネックになると思うんですね。やっぱり、最低、実際の実費が出るようにまでやっぱり上げていくべきだと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
  92. 津田賛平

    政府参考人(津田賛平君) 委員御指摘のとおりだと思いますので、できるだけとにかく実費弁償金の増額ということに努めてまいりたいと、このように考えております。
  93. 井上哲士

    ○井上哲士君 是非これはお願いをしたいと思います。  かつ、この実費が補償されない上に、自分たちで会費を払ってこの保護司会の活動を支えているという問題があります。  保護司法が改正をされた際に地方自治体との協力関係というのが明文化をされて、自治体の人的、物的支援の拡大を期待していると、こういうことが言われました。ところが、京都でお聞きしましても、最近、自治体からの補助金というのは軒並み毎年のように削減をされていると、こういう事態なわけですね。  一方では、今、地域の防犯活動を強化をしようといろんな自治体の取組もあるわけですが、そこで本来役割を担うべき保護司会への補助金が削られると、こういうことになっております。これは、やはり保護司会任せではなくて、国がしっかり理解と協力を求める活動が必要だと思うんですが、この点弱いんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
  94. 津田賛平

    政府参考人(津田賛平君) 御指摘のとおりだと思っておりますので、法務省といたしましても保護司活動に対する支援の一層の充実を図ってまいりたいと、このように考えております。
  95. 井上哲士

    ○井上哲士君 自治体の方は削ってもまだ出しておるんですが、国の方はこの保護司会に対してはお金を直接出していないわけですね。やはり実費が賄えていないという状況の下で、せめてこの保護司会の運営についてはもっと国に体制を支えてほしいという、これも強い要望をお聞きをいたしました。  この矯正保護審議会の提言でも、「保護司法の改正に伴い、保護司組織の役割の重要性が一層高まったことにかんがみ、地区保護司会等の事務局体制整備に国としても相応の措置を講じる必要がある。」と、ここまで踏み込んでいるわけですが、この事務局体制整備への国としての措置という点で、その後どういう具体化がされてきているんでしょうか。
  96. 津田賛平

    政府参考人(津田賛平君) 御指摘のとおり、保護司法の規定によりまして、保護司はその職務を行うために要する費用の全部又は一部の支給を受けるということになっておりますが、保護司組織に対する実費弁償という規定はございません。一応、その関係がございまして、保護司組織そのものに対する形での財政的支援ということはいたしておりませんが、地区の保護司会の代表者として関係機関と連絡調整等をされておられる保護司さんに対しましては、その活動に対しまして保護司実費弁償金を支給するという形は取っております。
  97. 井上哲士

    ○井上哲士君 そうすると、保護司会の事務局の人件費などを国が支える上での何か制度的な支障があると、こういうことですか。それはないんですね。
  98. 津田賛平

    政府参考人(津田賛平君) そのようなものでございませんで、先ほど申しましたのは、地区の、例えば単位会の保護司さん、保護司会がございますけれども、その保護司会の代表として活動しておられる保護司さんに対して別途実費弁償金を支給しておるということはあるということでございます。保護司組織そのものに対してではございません。
  99. 井上哲士

    ○井上哲士君 これは先ほども紹介しましたように提言でも言われてきた問題でありますし、元々この保護司、日本で保護司が担っている分野というのは諸外国では公務員が担っているわけでありまして、本来国の仕事なわけですね。ですから、この保護司の皆さんの献身的な活動にどうこたえていくのかということが問われております。  この今の問題で、やはり保護司法の改正の際に、当時の下稲葉法務大臣は、実費弁償とはいえわずかでございます、保護司そのものに対するものと、あるいは保護司会に対するものと両方の問題があろうかと思いますが、これらの問題につきましては法務省としても最善の努力をいたしたいと、こういう答弁もされております。  にもかかわらず、この保護司会への援助というのは実現をしていないわけで、私は、今後予算確保してやはりこの保護司会の事務局を支える、また実費弁償を増やしていく、この点での予算的な配慮をして、国が責務を果たすべきだと思います。その点で、大臣の御決意をお願いをします。
  100. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) ボランタリーな御奉公をいただいているという点が極めてこの価値のあることと承知はしておりますが、あわせて、これが具体的に仕事として効果を上げるためには、御指摘のとおりの実費の支給、あるいは今言った保護司会の組織を活性化するということも極めてまた重要だと認識しております。  実は、この御質問をいただきまして、私自身も今委員と同じ、その感覚で改善をしなければならない、そういった思いに駆られておるわけでございまして、下稲葉前、元大臣の御所見と併せ、更にひとつ努力を重ねてまいりたいと思っております。
  101. 井上哲士

    ○井上哲士君 宝のようなものだという最初の答弁ありましたけれども、本当にそれにふさわしい援助を、援助と責任を果たすということで、重ねて要望をしておきます。  次に、行刑改革の問題について質問をいたします。  行刑改革会議の提言が出されました。これは一昨年以来、当委員会でももう何度も集中審議も行いましたし、視察も行いました。多分、出していただいた資料、死亡帳など段ボール箱一つでは収まらないぐらいの資料も目を通して議論をしてまいりました。その中でこの会議が立ち上がりまして、審議過程もマスコミに公表される、議事録も顕名で明らかにされる、大変それまで出なかったような資料も公表されるという点では大変重要な会議でありました。読みましても、非常に真剣な議論が伝わってまいります。  この中でこういうくだりがあります。「かつて他人の人間性を踏みにじった受刑者の人権を尊重する必要などあるのかという声も国民の中にあるかもしれない。また、受刑者のために一層のコストをかけることに対して抵抗感を抱く国民もいるかもしれない。しかし、我々は、受刑者の人権を尊重し、改善更生や社会復帰を図るために施す処遇を充実させることに要するコストを無駄なものとは考えない。」と。「なぜなら、この改革において実現される処遇により、受刑者が、真の意味での改善更生を遂げ、再び社会の担い手となるべく、人間としての自信と誇りをもって社会に復帰することが、最終的には国民全体の利益となるものと考えるからである。」と。  議論を通じてこういう結論を出されたということは、非常に私も感銘をもってこの提言を読みました。もちろん、更に踏み込むべき問題はあるわけでありますけれども、大変、刑事施設視察委員会の設置など画期的な内容を含んでおります。立法化が必要なものもありますし、すぐにできるものもあるわけでありますが、この提言に基づいた改革に向けての体制、そして決意をまず大臣からお聞きをいたします。
  102. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 私、就任以来、この行刑改革会議の会議にも後半からでございますが参加をし、拝聴、議論を拝聴してまいりまして、ただいま委員からも御紹介のありましたような一言半句に至りますまで、この報告書の作成について我々のまたお願いも申し上げてきた立場でございます。  そういう中で、これからやはり努めるべきことは、国民の皆様に理解されてかつ支えられる、また役に立つ行刑施設ということになりますと、やはりそこでお世話を受けています受刑者の人間性尊重というところに改めて思いを致すということ、そこで真の改善更生、社会復帰が期待できる、これが一つでございますが、もう一つは、お世話をしております刑務官の皆様の御負担が物すごく今過重でございます。これをやはり軽減していくということが同時に解決されないと、やはり人間的な処遇ということもなかなか達成できないということがありますから、これが二つ目の大きな課題であり、そして最終的には開かれた行刑を実現するということで、国民にとってよく理解され、かつ、これは役に立つ刑務所であるなという御認識が行き渡るように、外からの御意見もいただけるような仕組みもひとつ整備しようじゃないかと、こういう内容の三つの柱で成り立っていると考えておるわけでございますが、これを実現していくために、私ども法務省の中におきます検討のグループを作りまして、最終的には監獄法の改正作業も視野に置きながら、取りあえず現行の法制下でできることについては直ちに実行しようじゃないかと。これはもう十数項目にわたる具体的な提言をいただいておりますので、その幾つかは既に実行に移しておりますけれども、それを進めながら、最終的には法改正で、百年越しの懸案でございました監獄法の見直しもできるだけ早く実現をいたしたいと、かように考えております。
  103. 井上哲士

    ○井上哲士君 問題は、立法作業の在り方一つあります。この提言は、この受刑者と未決拘禁者の法的性格の違いなどを踏まえて細かく検討しなければならない問題があるけれども、これは時間的制約もあってできていないということを言った上で、「専門的な知識、ノウハウをいかして、速やかにこの点の検討を行うことを期待する。」と、こういうふうに述べております。  ですから、代用監獄の問題、未決拘禁者の問題はこの会議では全く検討されていないわけですから、当然この提言に基づく立法作業からはこの分野は除かれるというのが関係者の理解であります。当然、この立法作業としては分けるということで確認をしたいんですが、いかがでしょうか。
  104. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) いわゆる代用監獄や未決拘禁者処遇の問題につきましては、様々な御意見がありまして、監獄法改正に当たってもこれを切り離すべきとの御意見があることは承知しております。他方、監獄法の改正ということになりますと、未決拘禁者の処遇について、受刑者と同様、その改善を図るべきとの意見も同時にございます。したがいまして、今後の監獄法改正の議論に当たりましては、このような様々な御意見を踏まえまして、慎重に考えたいと考えております。
  105. 井上哲士

    ○井上哲士君 これまで刑事施設法案が三度国会に提出をされながら成立しなかったと、その一番の原因がこの代用監獄の問題でありますから、それをそのままにしたこのかつての法案に今回の提言を付け加えて立法すると、こういうやり方は、この行刑改革会議の提言の趣旨にも反しますし、過去の経緯からいいましても、そういうやり方では立法自身も成功しないと、せっかくの提言を無にしてしまうということになりますので、この問題はやはり切り離して立法していくということを改めて求めておきます。  同時に、ちょっと確認をしておきたいんですが、先ほど法務省の問題で、専門家であるがゆえに国民の声が届かなかったんではないかと、こういうような反省の答弁大臣からありました。そうしますと、この提言で言っています「専門的な知識、ノウハウをいかして、速やかにこの点の検討を行うことを期待する。」とあるわけですが、まさか、法務省が一番専門的に分かっているんだから自分たちの専門的知識とノウハウだけでこの検討を進めると、こういうことはないかと思うんですけれども、その点もう一回大臣、御確認しておきたいんですが、いかがでしょうか。
  106. 横田尤孝

    政府参考人横田尤孝君) この問題につきましては、先ほど大臣がお答えになったとおりで、やはりいろんな考えございますので、慎重にまた検討してまいりたいということでございます。
  107. 井上哲士

    ○井上哲士君 慎重に検討する上で法務省内部だけでやったりしないでしょうねと、先ほどの反省もあるわけですから、このことはちょっと大臣是非確認をしておいてください。
  108. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 専門家であるということを十分生かしながら、この作業に当たってまいりたいと思っております。
  109. 井上哲士

    ○井上哲士君 これは、この間の司法制度改革もそうですし、この行刑改革の問題もそうだったわけですから、正に、広く国民の声をしっかり聞く、やり方はいろいろあると思います。そのことなしに立法化の問題も成功しないし、この提言の趣旨を生かすことはできないんだということで、改めてこれは強く求めておきます。  それで、じゃ直ちに実施できる方策との関係でありますが、医療の問題についてお聞きをいたします。  提言は、被収容者に対しては、国は基本的に一般社会の医療水準と同程度の医療を供給する義務を負うというふうにしております。そして、矯正医療の改善を求めているわけですが、私、昨年も質問いたしましたけれども、冤罪を主張し、高裁での第一回の期日を前にして東京拘置所の中で自殺をされた水野憲一さんという方がいらっしゃいます。この方は、精神科で治療を受けていて、やっと相性のいい薬が見付かって、それを服薬して十数年間は普通に働いておられました。これが、拘置所に入りますと、こういう今まで処方されてきた薬が処方されないということになりました。頼んでも与えてもらえないという中で、結局この病気を悪化をさせられまして、冤罪を晴らすこともなく自ら命を絶たられたと。  これ、今御家族が国家賠償の訴訟をされているわけでありますが、こういうことは二度とあってはならないと思うんですね。特に、こうした精神科に掛かっていらっしゃる方の場合には、薬の相性があるわけですから、必要な薬が与えられるという点での医療の改善というのは、今回の提言を生かしてどのようにされようとしているのか、いかがでしょうか。
  110. 横田尤孝

    政府参考人横田尤孝君) お答えいたします。  今御指摘のあった事例につきましては、現在、死亡した本人の遺族から民事訴訟を提起されておりまして、これは委員今おっしゃったとおりです。裁判の過程でこの投薬の適正さに関する評価も含めて専門家による検証が行われるというふうに考えております。  なお、行刑施設におきましては、医師が治療上必要と認められる薬剤を患者に投与しておりまして、必要があれば、その者が社会におりますときにおける投薬内容等についても医療機関に照会の上、これを参考としつつ投薬内容決定するなど、適切な医療の確保に努めているものと承知しておりますが、行刑改革会議の御提言の趣旨も踏まえ、近隣の医療機関等との連携協力体制の更なる強化に努めるなどいたしまして、その万全を期していくことにしております。  以上です。
  111. 井上哲士

    ○井上哲士君 ただ、問題は、やはり予算が限られているということがあります。  行刑改革会議に出されました「行刑施設に勤務する医師に対するアンケート結果」というのを私も読ませていただきましたけれども、非常にこの困難な中で医師の皆さんが御苦労をされている姿も非常によく分かりました。同時に、こういう声が載っているわけですね。薬や医療材料が予算で決められているために予算面で過剰収容に対応する必要があると、予算が限られているので機器や薬も限定されると、こういうのが現場の医師の生の声としてこのアンケートにも出ております。先ほどの裁判関係でいいますと、水野さんの御家族がこの八王子の拘置所に行った際に、そういう薬は高いから置いてないんだということを言われたということもお聞きをいたしました。  私は、やはりこういう自殺者も出たということを見ますと、二度とこういうことが起こさないように必要なやはり薬というのが、特にこういう精神医療の場合には特段の配慮をするということの徹底、それから、こういう予算の枠の中で必要な薬が出すことができないようなことが起きないような予算確保も含めたことが必要かと思いますが、この点での大臣の所見をお願いします。
  112. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 私も、行刑施設視察するときには、必ずその施設の中の医療設備、それから担当しているお医者さんの御意見を聞いて歩いたわけでございます。委員御指摘のような、確かに十分な予算はないところもありますけれども、しかしながら、その中で工夫と努力によりまして最善の手当てをしている方がもう大部分でございまして、また難しい問題につきましては医療刑務所という形で専門の医師のいる刑務所もまた備えられていることは御承知のとおりでございます。  この医療問題につきましては、そういう意味で、人権擁護という面からしても一番基本的な要素でございますので、これからもひとつ御提言をいただきながらしっかりこれの確立を図ってまいりたいと思うわけでございます。  特に、この平成十六年度予算で見た場合には、医療専門施設の治療体制充実、歯科医と精神科の医療体制整備、それから健康診断の充実と、こういったことが盛り込まれておりまして、外部に対する移送の費用が拡大される。これは対前年度五億一千万円増の約二十八億五千五百万ということが、金額が計上されておりまして、関係の機関との連携もこれで図れるということになっております。  行刑施設の医療関係につきましては、これからも社会のレベルに十分配慮をいたしまして、適切な対応を取ってまいりたいと考えております。
  113. 井上哲士

    ○井上哲士君 終わります。
  114. 山本保

    委員長山本保君) 以上をもちまして、平成十六年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会