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2004-06-14 第159回国会 参議院 文教科学委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年六月十四日(月曜日)    午前十時三十七分開会     ─────────────    委員異動  六月十日     辞任         補欠選任      阿南 一成君     森下 博之君      伊藤 基隆君     松井 孝治君      谷  博之君     田名部匡省君      林  紀子君     市田 忠義君  六月十一日     辞任         補欠選任      森下 博之君     阿南 一成君      田名部匡省君     谷  博之君      松井 孝治君     伊藤 基隆君      市田 忠義君     林  紀子君  六月十四日     辞任         補欠選任      大野つや子君     小林  温君      中曽根弘文君     愛知 治郎君      草川 昭三君     千葉 国男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         北岡 秀二君     理 事                 亀井 郁夫君                 後藤 博子君                 鈴木  寛君                 山本 香苗君                 林  紀子君     委 員                 阿南 一成君                 愛知 治郎君                 有馬 朗人君                 大仁田 厚君                 扇  千景君                 小林  温君                 橋本 聖子君                 伊藤 基隆君                 谷  博之君                 西岡 武夫君                 草川 昭三君                 千葉 国男君                 畑野 君枝君                 山本 正和君    国務大臣        文部科学大臣   河村 建夫君    副大臣        文部科学大臣  小野 晋也君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 俊史君    政府参考人        文部科学大臣官        房総括審議官   玉井日出夫君        文部科学省生涯        学習政策局長   銭谷 眞美君        文部科学省初等        中等教育局長   近藤 信司君        文部科学省高等        教育局長     遠藤純一郎君        文部科学省高等        教育局私学部長  加茂川幸夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事林紀子君を指名いたします。     ─────────────
  4. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会文部科学大臣官房総括審議官玉井日出夫君、文部科学省生涯学習政策局長銭谷眞美君、文部科学省初等中等教育局長近藤信司君、文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君及び文部科学省高等教育局私学部長加茂川幸夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 有馬朗人

    有馬朗人君 おはようございます。有馬朗人でございます。  今日は、質問というより、最後お願いを主に申し上げたいと思います。  東京大学を始め国立大学協会大学審議会学術審議会と、高等教育に関することにずっと携わってまいりました。日本大学社会からいろいろ批判を受けておりまして、世界で何十番目と、百番の中でしりの方だとか、そういうことをよく言われるんですが、決してそうではないと私は思います。日本大学は随分努力をして、しかも活躍をしてきていると思います。この十年くらいでまた実力も大変大きく向上しております。例えば研究で申しますと、物理材料科学、化学等々では、もう世界の第一位を占める、第二位を占めるというふうな上位の大学が非常に多くなってきているわけです。  私自身が属していた東京大学物理教室がどうしてこういうふうに世界一位になってきたかということを考えてみますと、実に長い間の努力がありました。人事を公募せよとか、早々と講座制を打破する、こういうことを法律の許される範囲でやってきたわけです。  そしてまた、なるべく他大学の人を選べということで、東大の理学部物理教室は、お調べいただくと分かると思いますが、三分の一ぐらいが外部大学出身者であります。しかも、その中から何人もが理学部長として選ばれているわけであります、外部から来た人が。そういう努力を続けてまいりましたので、小柴さんのノーベル賞を始め、先ほど申しましたように論文の数及びその評価の上、サイテーションインデックスの上で世界の第一位を占めるようになったと思います。こういう点で、一例を挙げましたけれども、日本大学大変自己努力を重ねてきたんだということを申し上げてみたいと思います。  そしてまた、教育の面でも様々な点で今努力をしているわけであります。一例を申しますと、研究中心から教育へ随分意識が変わってきています。教育を大切にしようというふうに意識が変わってきているわけであります。  さて、考えてみますと、この十年において日本大学がかくのごとく研究の上で向上してきた理由というのは、これは一に掛かって一九九五年にできました科学技術基本法によるわけでありまして、そしてまたその翌年、一九九六年の科学技術基本計画によって大変科学研究関係研究費が充実してきた、このことに大いによっているわけです。そしてまた、ポスドクが一万人取れるようになった。ポスドク等一万人計画が非常に有効に働いていること、このことによって世界じゅうの学者が日本に来るようになった、呼べるようになった、そしてまた日本からも大勢の若手の研究者が外国に行けるようになった。こういうことによって日本研究がいかに優れているかということを世界に知らすことができるようになった。こういう意味で、科学技術基本計画に基づく様々な施策は大変な成功を収めたわけであります。論文の数も増えた、そして引用度も増えてきたわけであります。こういう点で、大いに日本政策は良かったというふうに誇りを持ってよいと思います。  私が大学貧乏物語をひっ提げて皆さんにお願いをいたしましたのは一九九〇年の初めでありますけれども、その当時は科学研究費補助金がわずかに五百億円。幾つかの会社を見ますと、RアンドDに使っているのが四千億円の時代でありました。日本じゅう研究者が使えるのがわずかに五百億円。これではなかなか日本実力が発揮できないということを大いに訴えた次第でありますが、このことによって今年はもう既に千八百億を超えるような時代が来たということは、正に夢のように私は思っております。大変有り難かったと思うわけです。そのことによって日本研究世界に見えるようになってきたということを最初に申し上げておきます。  ただ、ついに私の夢が実現しなかったことがあります。それは、高等教育に対する教育費の抜本的な増大であります。随分訴えてまいりました。大学使命というものは、高等教育使命というものは研究教育の両輪であるということを申し上げて、教育費も増やしていただきたいということを申し上げてまいりましたが、国公私立を含めて財政的にまだ十分であると私は思えないわけであります。この点は皆様方もよく御認識賜っていることと思いますけれども、是非とも今後御努力を賜りたいと思うんです。  そして、ここで度々申し上げたことを繰り返すようで申し訳ありませんけれども、科学技術基本計画がかくのごとく成果を生み出したのでありますから、高等教育基本計画を速やかにお立ていただいて、五年ごとに、何兆円とまで申しませんけれども、大きな経費を国から出していただくべく御努力を賜りたいと思っております。  また、細かいことになりますけれども、最近、先ほど申しましたように、大学教員大変教育に熱心になってきたことは有り難いことだと思っておりますけれども、幾つかの私立大学等々を見ておりますと、教員は一生懸命教育に熱中しようとするときに、逆にむしろ大学側からもうちょっと研究やったらどうかと、研究論文も書けよと、こういう二重に三重にむしろ要求してくることがあるようであります。是非とも、大学使命を見て、自分大学教育中心であるとすれば、教育中心で活躍している教員に対しては過重に研究まで要求しないようにすべく御努力を賜りたいと私は思っております。  さて次に、中央教育審議会からの初中教育に関してのことについて少しお願いを申し上げてみたいと思います。  まず最初に、小人数教育がいいかどうかということに関しては、必ずしもまだ議論が定着していないと思います。数学とか英語とか、ある科目に関しては明らかに小人数教育がいい、あるいは小学校一年、二年においては小人数教育が良いというふうなことがはっきりしてきているようでありますが、必ずしもまだ十分小人数あるいは少人数教育がいいかどうかはまだ定着していないと思います。  しかしながら、中央教育審議会でもお願いをいたしましたことは、速やかに先進国並みクラス編制にしてほしいということであります。先進国並みクラス編制というのは何人に見るか、二十人見るのか三十人見るか、いろいろ考えがあると思いますけれども、やはり割に早い時期において小人数教育ができるようにしていただきたいと思います。  ただ、その際に、すべての科目に対して三十人とか二十人でなきゃならないというわけではなくて、科目によって小人数でやれるように、少しチームティーチャーの数を増やすというふうなことで、加配の教員の数を増やすというふうなことでお考えいただくこともよろしいかと思っております。  そしてまた、大変有り難いことに教育課程実施状況調査が行われるようになって、このことによって日本子供たち小学校中学校子供たち学力がはっきりしてきたことは極めて良いことであると思います。度々これもお願いをいたしておりますように、今後とも更に継続してくださいまして、今までのように十年に一回というのではなくて、五年に一回、できれば三年に一回ぐらいを続けていただけますと、現在の日本子供たち学力がどの辺であるかということを常に正しく知ることができ、無駄な学力論争を引き起こすことがないと思いますので、是非お願いをいたしたいと思います。  そして、前にもお願いしたことがありますけれども、各地方で、それぞれの地方自分のところの子供たち実力がどの辺であるかということで、わざわざ二重に三重に県なり市でテストをするようになりました。これはこれでその地区の教育に対する熱心さを表している点でいいんですけれども、どうも先生たちに聞くと、またやらされるのかという気持ちが明らかにあって大変なようです。ですから、これは一回で済ますようにしていただけないか。  このことはどういうことを意味するかはもうお分かりいただけると思いますが、国でやっているものをどういうふうに各地方に知らせていくかは別といたしまして、何らかの方法で地方に、あなたのところの実力はこのくらいであるよというふうなことをお知らせいただければ、各地方でもう一度同じような、しかも民間の受験校受験対策をやっている産業受験産業人たちに問題を作ることを依頼して調査をするというようなことは避けられるのではないかと思います。今、どこか幾つかの県では、幾つかの今申しましたように教育機関受験対策のための教育機関お願いをして問題を作って調査をしているということが新聞にも出ておりますので、これはなるべく避けていただきたいと思っています。  そして、子供たちに、是非お願いいたしたいことは、子供たち未来に対して希望を持てる社会にしていただきたい。子供たち希望がないということが極めて残念なことでありまして、希望を持つような形にしていただきたい。そして、志をしっかり持ち、その上で更に体力、運動力をきちっと持つようにしていただきたいと思います。  最後お願いは、今回の不幸な長崎の事件を見ましても、テレビインターネット影響がいかに大きいかがお分かりだと思います。私は、長年、テレビにはVチップのようなものを付けて、子供たちが見られない、親が見せてはいけない、社会が見せてはいけないと思っているものに対してVチップというもので止めることができるようにアメリカはしているわけですが、ここまでいかなくても、何らかの格好で、日本の民放も含めて、そしてビデオテープの制作者たちも含めて、きちっと子供たちに有害な情報を流さないようにしていただきたいと私お願いをしてまいりました。このことをひとつしっかりとお考えいただきたいと思います。そして、インターネットによる影響をどういうふうに良い方にのみ向けていくかということについて御検討を賜り、施策を施していただきたいと思います。  以上、長い間大変お世話になりました。心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。  そして、最後にひとつ、一言で結構でございますので、大臣より今後の御方針についてお聞かせ賜れれば幸いでございます。  ありがとうございました。(拍手)
  8. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 有馬先生、いつもこの委員会で高邁な教育論を展開していただいて、我々大変啓発を受けてきたところでございます。今日はいよいよ最後の日と承っておりまして、私ども謹聴して拝聴いたしました。  特に、先生指摘のように、日本教育、正にこれからが問われておるわけでございまして、先生、なし得なかったとおっしゃいますが、大臣としても御苦労をいただきました。  やっぱり教育投資の問題、私も小泉改革の総仕上げは、やはり米百俵の精神、教育改革、そしてそれはひいては人材づくりというふうに向いていかなきゃいかぬと、こう考えておるところでございます。この点については是非これからの文部科学行政の中で特に力を入れてまいりたいと、こう思っておりますし、御指摘がありました初中教育等々につきましても、元々教育基本計画はこれからの教育基本法の改正等々の中にもこれ含まれておるわけでございまして、この中できっちり高等教育計画あるいは初中計画、そういうものを打ち立てていかなきゃいかぬ。教育基本計画を打ち立てて、その目標に向かって積み上げていくと、こういうことが必要であろうと考えております。  また、昨日の新聞でございましたか、子供たち、小学生もその希望未来にないと。未来にいいことがありそうだと感じるのはわずか三割の子供しかないという統計も出ておりまして、これはやっぱり深刻な問題だと思っております。  そういう意味からしても、大人社会が気を付けなきゃいけないこともたくさんございます。マスメディアの影響等々もございますが、やっぱりこれは大人が注意しなきゃいかぬ課題でもあろうと、こう思っておりまして、昨今の事件を見るにつけそういう思いでございまして、有馬先生の御指摘された点を踏まえながら、我々打って一丸となって我々の力の及ぶ範囲文部科学行政を通じて教育改革に努めてまいりたいと、このように思っております。今後ともどうぞよろしくお願いを申し上げます。  ありがとうございました。
  9. 鈴木寛

    鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。  本日は私立学校共済法ということでございますが、これも今国会で最重要課題一つでございました年金改革法の一角を成す法律案だというふうに考えております。  実は、十日の朝刊に非常にショッキングな数字、事実がまた明らかになりました。正に少子化、合計の特殊出生率が更に過去最低の一・二九になるという数字でございます。私は東京を選挙区といたしておりますが、東京の場合はついに一を割りまして〇・九九八七という本当に深刻な事態、この実態年金改革法案質疑の後に明らかになったということも大変遺憾でございますが、そのことは今日はさておくといたしまして、やはりこの年金の問題、あるいは年金のみならずこの国の将来を考えていく上で、正に特殊出生率東京については一を切ると、これは本当に深刻で、かつすべての関係者がこの問題に英知を振り絞らなければいけないというふうに思うわけでございます。  私は今日はその観点から御質問をさせていただきたいと思いますが、先ほども有馬先生からお話がございました。私も全く同感でございまして、私も有馬先生の御意志を継いでこの文教科学委員会で引き続き高等教育の充実という仕事に更に邁進していきたいという思いを、先生お話を聞かせていただいて更に新たにいたしたわけでございますが。  やはり出生率の低下、いろんな要因があろうかと思いますが、その極めて重要な要因一つが、やはり子供を一人前に育てるのに大変にお金が掛かる、時間が掛かる、コストが掛かる。お金だけではありません、いろいろな時間的な、子供を育てていく、あるいは一人前にしていく上でのいろんな意味での負担というものが社会全体としてそれをうまくシェアできていない、ここに大きな少子化の問題があるんだろうというふうに私は思います。  いろんな、例えば財団法人こども未来財団子育てコストというのを算定をいたしております。ここにはもちろん必需的な費用生活費用、そして選択的費用、より高度な教育を受けようと、こういう費用を含むわけでありますが、実に一人当たり二千四百二十一万一千円と、二千四百万円掛かるんですね、一人。そして、この負担をほとんどがそれぞれの家計負担をしなければいけないと。この二千四百万については家計負担する分です。これではやはりなかなか抜本的な少子化が改善されるということにならないのではないかなと。とりわけ、この二千四百万のうち教育費大宗を占めております。文部省が出されておられます資料でも、例えば私立中学校から中高大私立に通った場合は学費だけで一千六百万円掛かると、こういう数字もございますし、そしてその大宗が、やはり先ほど有馬先生お話ありました高校を含む高等教育機関高等教育段階負担というものが極めて大きくなっていると、こういうことであります。  いろいろ調べてみますと、やはり日本高等教育についてのいわゆる私的負担というのが大変多いなというのがよく分かります。例えば、OECD高等教育費比率というのを出しておりますけれども、OECD平均が対GDP比率一・〇%でございますが、日本はわずかに〇・五%でありまして、これはOECD調査国中最下位の数字であります。  更に申し上げますと、高等教育段階における私費負担割合という数字がございます。これはOECD全体で平均を見ますと約四〇%、四一%でございます。韓国が一番高いんでありますが、日本韓国に次いで五五%という極めて高い高等教育私費負担割合がございます。例えば、ドイツとか見ますと私費負担割合は八%なんですね。あるいはノルウェーも七%、スウェーデンも九%、デンマークについては一%であります。私は最近、特に北欧の教育というのはOECDのいろんな調査でもうまくいっているというふうに評価されておりますけれども、やはりそうした国を見ますと、特にこの高等教育私費負担割合というのが物すごい低いわけですね、デンマークで一%ですから。  更に申し上げますと、そのOECD加盟国調査三十か国のうち、高等教育、十二か国においては授業料は完全に無料であります。イギリスにおいても九八年までは無料でございました。今は約半分以下の学生を二十万だけ取るということになっておりますけれども、しかし希望者全員奨学金をもらえるということになっております。  ですから、そういう意味で、高等教育の正にレベルといいますか、一生懸命頑張って更に高い学力、知力を身に付けていこうという、そういう若人にとってこの国が極めて冷たい国であると。そして、OECDの中で正にグローバルスタンダードに全く達していないということを私はやはりこうしたときにきちっと私指摘をして、そしてこのことに向けて私は文教科学行政というものをもう一度立て直していただきたいというふうに思います。  アメリカの場合でも、アメリカは一見高等教育費高いなと思いますが、先ほど申し上げましたように、アメリカだって私費負担割合、四割なんです。さらに、あの国は奨学金というのは極めて充実しておりますから、大学院以降はほぼ全員がもらえます。そして、学部レベルでも七割の人たち奨学金をもらうということでありまして、一方、日本はそちらの方も弱い。今、国立大学、これも国立私立でかなりその差がありまして、私立においては一〇%を割るレベルでしか奨学金がもらえないと、こういう実態なわけであります。  私は、是非、正に子供が一人前になるまでの学費というものについて、これは真剣に文部科学省、取り組んでいただきたいというふうに思いますが、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  10. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 今回、特殊出生率最低一・二九という数字、これがかなりいろいろな問題点を呼んでおる、議論のこれからまた大きな的になるわけでございます。  かねてから出生率がどんどん下がっていく、これにどう歯止めを掛けるかということで、先般ああいう少子化社会対策基本法もできたわけでございまして、これに具体的にこれから取り組んでいかなきゃならぬと、我々政治家みんなそう思っておると思いますし、また日本の国にとってもこれは非常に大きな課題だと思っております。その一つのバリアとして考えられる中で教育費が高いというのがいつも原因の中に上がってきておるというのも私も現実であろうと、こう思っております。  これは、まず経済的なそういう面からきちっと文部科学省として考えていく、その直接的な原因をまず取り除いていくということと、もう一つは、やっぱり教育の中で子供を産み育てること、これはやっぱり一つの大きな人生における大事業であるという意識、ややもするとそういうことがこれまで希薄になってきておったんではないか。男女共同参画社会でありますから、子育て夫婦一体となってやっていく、当然のことでありますが、ややもすると日本ではこれまで子育てはお母さんといいますか、主婦に負担が掛かっておる、それだけ掛けながらもそれに対する評価が少ない、こういう傾向がある。我が家でも絶えず妻からそういうことを言われ続けておるわけでありまして、この子育てに今まで掛けてきたのをどういうふうに評価してもらえるんだと、こういう話を聞くにつけ、そういう点がこれまでのずっとその積み上げが今日になってきたんではないかと、こう思っております。  かつての戦後の非常に厳しいとき、しかし、それでも皆さん、先輩の方々が頑張って、私どもの兄弟を見れば今のような状況ではなかったということを考えますと、やっぱりこの社会の大きな変化の中でこれからの時代に対応した対策を立てていくというのは当然だと思っております。  特に、御指摘のありました教育費の問題、これはやっぱり日本の今当面からいえば、奨学金をやっぱりいかに充実するかということに一つは大きな課題が入ってきておると思いまして、基本的には、無利子、有利子ございますけれども、ここまで来たといえば聞こえはいいかもしれませんが、有利子については少なくとも希望し学ぶ意欲のある方にはこれはもう全員差し上げる、そしてこれは自らの、自立して、大学においては自分で返還していく、そしてそれで自立の道を目指してもらいたいと、そういう方向に来ておりますし、これまでも、単なる育英資金という考え方じゃなくて、学生支援機構という仕組みにも上げて、正に学生を支援していくんだという体制でいこうということが今政策としても大きく転換をしてきたところでございまして、これからこの問題も含めながら、特にこれからこの基本法に伴いまして大綱ができてまいりますし、それから政府の基本計画も出てまいります。  これは厚生労働省側との少子化対策にもいろいろ関係あるわけでございますが、新新エンゼルプラン、こういう中で具体的に今から計画も、政策も出てきてまいりますから、これを受けまして、文部科学省としてやらなきゃいけないこと、少子化対策の推進、これは大きな課題でございますから、文部科学省を挙げてこれにも取り組んでいく体制を作っていかなきゃならぬと、このように考えておりまして、少子化対策大綱は閣議決定をもうしたわけでございますので、これを受けて対応していく。  一義的に一番重要な課題は、やっぱり経済的負担の重要性、そして家庭教育をしっかり支援をしていくということ、それから幼稚園における子育て支援ももっと力を入れていくというようなこと、このようなことを施策の充実に全力を尽くしてまいりたいと、このように考えております。
  11. 鈴木寛

    鈴木寛君 是非、恐らく年金改革について、参議院選以降も恐らくこのままでは済まないと思いますので、抜本的な議論が行われるんだと思います。その中で、やはり少子化の問題というのはきちっと真ん中に据えていただきたい。そして、その核心が相当程度いわゆる教育費問題にあるということをもっともっと声高に、文部科学大臣、内外に主張をしていただきたいというふうに思います。  そこで、もちろん我が国の財政が極めて逼迫していることは私も承知しております。そういう中でいろんな知恵を出していくということが、もちろん私は、例えば先ほど申し上げましたように、対GDP比の、アメリカでも一・四です、高等教育だけで。スウェーデンとかフィンランドになれば一・七ですね。日本は〇・五ですから、これを早急に三倍にしていただくということはもちろん常に声高に主張していただきたいということは当然なわけでありますが、加えて、税制とかいろんな工夫の余地があると思います。  そこで、私は幾つか御提案を申し上げたいと思いますが、一つ目は、親御さんがお子さんの教育費授業料、大変に多額に払っておられます。これを所得税額控除にするということについて、今勤労学生が自分学費をという税制はありますけれども、保護者が自分子供の分を所得税額控除にする、これは一つ大きな施策になるんではないかというふうに思いますので、これについて是非御検討をいただきたいというのが一つ目の提案でございます。  時間がございませんので、ちょっとまとめて何本か御提案と御質問を申し上げますが、それから二つ目は、年金の積立金の使途の乱脈ぶりというものが今国会でも明らかになりました。先ほど大臣は、有利子については希望者がというお話でございましたが、確かに私が国会に参りましてから、そのときは六十九万人でした、もらえる人が。それが八十六万人と、毎年本当に一生懸命頑張っていただいていると。私ももう本当にスッポンのごとく言わせていただいていて恐縮なんですが、これはしかし言い続けさせていただきたいと思います。大体、私の認識ですと、百三十万人ぐらいいるんだと思います、希望者は、潜在的希望者も含めますと。そうしますと、今八十六万ですから、やはりもう少し頑張っていただかなければいけない、有利子についてもですね。  その際に、これも御提案なんですけれども、今、年金の積立金を原資にしてこれを奨学金として貸し付ける、そしてきちっと有利子については返していただくと。場合によれば、返済がない場合は年金分から相殺をすると。いろんな制度設計はあろうかと思うんですけれども、確かに今厳しいいろいろな、財政投融資の状況も厳しいということは存じています。その中で、私は是非この国の将来、次世代を温かく、そういう国にしていく、そのことが年金財政の、あるいは財源の健全化ということにもつながると。  そういう意味で、奨学金の原資として年金積立金を使うというのは、私は国民的なコンセンサスは得られるんだというふうに思います。こういう点も是非厚生省、そして財務省、文部科学省一体となってもっともっと踏み込んで検討をいただきたいというふうに思います。  それから、これは私はもう何度でも申し上げさせていただきますが、やはり奨学金、そろそろ概算要求の時期にもなりますけれども、まだまだ不十分だと思います、有利子についても、そしてとりわけ無利子についても。  そもそも、スカラーシップというのは給付するのをスカラーシップと呼ぶわけでありますから、我が国についてはそういう意味では奨学金がないと。教育ローンなんですね、有利子奨学金という言葉は使っていてもですね。でありますので、是非文部科学大臣に、この夏の予算獲得に向けて、この点についてはより一層の御奮闘をお祈りを申し上げ、御期待を申し上げたいと。  以上三点についてお答えをいただきたいと思います。
  12. 玉井日出夫

    政府参考人玉井日出夫君) 所得税等の御指摘がございました。  これは御案内のとおり保護者の経済的負担の軽減ということで、これは予算、税制などの様々な面での施策が必要だろうということを考えているわけでございまして、そのうちで税制面につきましては、御案内のとおり十六歳以上二十三歳未満の扶養親族にかかわります扶養控除額の割増しいたします特定扶養控除制度、こういうものが平成元年度に創設をされまして、その後、控除額の引上げが図られてきているわけでございます。また一方、児童手当の充実なども図られてきているわけでございまして、したがいまして、これは他の施策との関連というものも十分考慮いたしながら税制面についての必要性についても研究、検討していく必要があろうかと、かように考えているわけでございます。
  13. 遠藤純一郎

    政府参考人遠藤純一郎君) 奨学金の原資として年金をという御提案でございます。  実は、厚生労働省に置かれております社会保障審議会の年金部会、ここでこの問題が審議をされまして、昨年の九月でございますか、年金制度改正に関する意見が提出をされまして、その中でこの問題につきまして肯定的な見解、否定的な見解と両論があったという旨述べられておるというふうに承知をしておりまして、まだこの問題についての方向性が出されていると、こういう状況にはなっていないと、こう思っております。  私どもとしましても、全体として奨学金事業が充実していくという方向は大変いいことだとは思っております。ただ、年金積立金を学生に対する奨学金に活用するということについてはやはり検討すべき課題もあるんじゃないかと、こう思っておりまして、例えば、事業の永続性の必要等から、長期かつ安定的な財源確保が可能なのかどうか、あるいは学生に有利な現行の貸与条件を維持するためには無利子あるいは低利での資金調達が可能なのかどうかと、こういったような問題等々いろいろあろうかとも思うわけでございまして、いずれにしましても、私どもとしては、厚生労働省の社会保障審議会における今後の審議の動向というものを踏まえながら、厚生労働省とも連絡調整を図りながらこの問題については対応してまいりたいと、こう考えております。  それから、奨学金の充実のお話でございます。  先般の骨太方針二〇〇四、この閣議決定の中におきましても、「奨学金制度による意欲・能力のある個人に対する支援を一層推進する。」と、こういう方針が示されておるところでございまして、来年度の奨学金の事業につきましてはこの方針に沿ってしっかりと取り組んでまいりたいと、こう考えております。
  14. 鈴木寛

    鈴木寛君 終わります。
  15. 山本香苗

    山本香苗君 公明党の山本香苗です。  今日は、最初有馬先生から大変貴重な御意見をいただきまして、私もしっかり受け止めていきたいなと思っております。また、今、鈴木先生の方からお話ございましたこと、大変意見を、共鳴するところがたくさんございました。特に奨学金のことにつきましては、我が党からもいつもお願いしているとおりでございますけれども、しっかりと取り組んでいただければと思っております。  今日審議することになっております私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律案、これにつきましてお伺いしたいところ三点ございまして、その三点につきまして端的にお伺いをさせていただきたいと思っております。  まず一点目でございますけれども、この私学共済の制度というものは、制度創設以来、国家公務員共済制度等々との均衡を保ちながら随時いろんな必要な見直しが行われてきているわけでございますけれども、今回、こうした形で見直しに至るまでの経緯及びその改正に至る背景についてまず最初にお伺いさせていただきたいと思います。
  16. 加茂川幸夫

    政府参考人加茂川幸夫君) 今回の改正案の背景、経緯についてのお尋ねでございます。  今回の私立学校共済法の改正案は、今般の年金改革の一環として、厚生年金の改正内容を踏まえ、他の共済制度と同様に、私学共済の長期給付、いわゆる年金でございますが、これについて所要の見直しを行うものでございます。  厚生年金の制度改正におきましては、いわゆる少子高齢化の一層の進展等に対応いたしまして、社会経済と調和した持続可能な制度の構築、あるいは制度に対する信頼、国民の信頼を確保することを基本的な考え方としておりまして、二点主な目的がございます。  一点は、将来の現役世代の負担を過重なものとしないようにするとともに、高齢期の生活を支える公的年金としてふさわしい給付水準を確保する、こういうことがまず第一の目的でございます。さらに、社会経済の変動に柔軟に対応でき、頻繁に制度改正を繰り返す必要のない持続可能な制度とすること、これが第二の目的でございまして、この二つが主な目的となっておるわけでございます。  こういった厚生年金の制度改正を踏まえまして、共済年金につきましては、従来より、委員指摘のように、厚生年金の改正内容を踏まえた見直しを行ってきておりましたので、今回も厚生年金との公平性、整合性を図る見地から同様の見直しを図るものでございます。  また、検討の経緯についても御質問ございましたのでお答えをいたしますと、今回の改正法案を取りまとめるに当たりましては、私学の教職員及び学校法人関係者、さらには学識経験者で構成をいたします、少し長い名前で恐縮でございますが、私学共済年金制度の在り方等に関する調査研究協力者会議、私ども私学共済年金研究会と略しておりますが、ここにおきまして御検討をいただきました。数回、今回の改正法案につきましても、年金制度全般に関します動向について、あるいは年金制度改正に関します厚生労働省原案について、具体には私学共済法の改正案の方向について等々、この場で御審議をいただきまして、御検討をいただきまして、私学関係団体への説明、意見聴取を行ったわけでございますが、全体としては関係者の理解を得たものと私どもは理解をいたしております。
  17. 山本香苗

    山本香苗君 今お話ございましたとおり、今回の改正というのは年金本体の方の年金改革の一環として行われる改正だということでございますけれども、今回の年金制度改革の中では、よく負担はどうなるんや、給付はどうなるんだと、そういう話があったわけでございますが、この私学共済改正によりまして、この負担と給付の関係は一体どうなるんでしょうか。  また、今回、年金の、厚生年金の方は法律に書くと、そういうことが水準については法律に書くという形で担保をされているわけなんですけれども、この私学共済につきましてはどういう形で法令上担保がなされるのか、この二点についてお伺いします。
  18. 加茂川幸夫

    政府参考人加茂川幸夫君) 私学共済の今後の給付と負担についてのお尋ねでございます。  まず、私学共済の給付に関しましては、国公立学校教職員との均衡を勘案しまして、従来から国家公務員共済法の関係規定を準用しているところでございます。今回の制度改正に関しましても、国家公務員共済においては厚生年金の給付水準の調整措置と同じ仕組みを導入することとしておりますので、その内容を私学共済も準用をするとしているわけでございます。  具体に申しますと、厚生年金の場合には、給付水準調整措置としていわゆるマクロ経済スライドという方式を今回は導入をいたしております。保険料負担の上限を固定した上で、おおむね百年間における財政均衡を図るために、年金額の改定に当たっては、改定の指標となる賃金でありますとか物価でありますとか、そういった指標の伸び率から調整率を控除することによって給付費の伸び率を抑制しようとするものでございます。この調整率の中には、今後の公的年金加入者数の減少の動向でありますとか平均余命の延びといったことを勘案して率を定めるということが構想されておるわけでございます。  今回の改正による私学共済年金についてでございますが、将来の給付水準については、厚生年金のモデル年金世帯における所得代替率を基に算定をいたしております。平成三十七年、西暦二〇二五年になりますが、この時点での受給開始時点における所得代替率は四八・一%と見込まれます。この数字は厚生年金よりも低くなるわけでございますが、年金の支給額、金額自体は、共済年金にはいわゆる職域年金部分がございますために、そういった違いがございますために厚生年金の場合よりも多い額になってまいります。  また、私学共済の掛金率についてでございますが、保険者である日本私立学校振興・共済事業団の内規で定められております。今回の制度改正を踏まえた掛金率の見直しにつきましても、同事業団において現在準備を進めております財政再計算の結果等を踏まえまして所要の見直しを行うことといたしておるところでございます。ですから、このことにつきまして、現時点で委員の御質問に将来の掛金率をすべてお示しすることは若干困難な事情にございます。  ただ、粗い試算をいたしてございまして、この粗い試算によりますと、おおむね百年間を財政均衡期間としてとらえた上で、将来加入者数が新人口推計による学齢人口に比例して機械的に減少すると、こうしますと、平成六十二年、西暦二〇五〇年度には現在より四割以上減少するという大変厳しい前提を置くわけでございます。子供の数がどんどん減っていくということによって厳しい前提を置いた場合を粗い試算で行っておるわけでございますが、その場合でも、毎年度〇・二七八%ずつ掛金率を引き上げることによりまして、平成五十二年、西暦二〇四〇年には掛金率が二〇・三五%に一応計算ができますけれども、これを最終掛金として安定した財政運営が見込まれるものと試算をしておるところでございます。
  19. 山本香苗

    山本香苗君 どれだけ少子高齢化が進んでいく中でも堪え得る制度にしたんだと、今回の改正はそうしたんだということだと、そういう御答弁だと思うわけなんですが、最後に一点だけお伺いしたいわけなんですが、今国会提出法案で三共済のうちの私学共済を除いた国共済と地方公務員共済の財政単位が一元化されるという形になるわけですけれども、今後、私学も含めました三共済一元化することになるのか、将来一元化するというのであれば、その具体的な時期、手順はどうなるのか、最後にお伺いして、終わりたいと思います。
  20. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 今御指摘の点、一元化の問題は、平成十三年三月に閣議決定を見ておりまして、一元化の当面の対応として、私学共済については、第一点は次期財政再計算時から保険料引上げの時期の前倒しの実施をする、二点としては被用者年金制度における私学共済の位置付けの二点について検討されておりまして、その結果を踏まえて必要な措置を講ずることと、こうなっておるわけでございます。  こうしたこれらの課題に関して、私学関係者を含む検討の場を設けて鋭意今検討を進めておるところでございますが、保険料引上げの前倒しについては、平成十七年四月の掛金率の引上げから対応する方向で今まとまりつつあるということでございます。  このような閣議決定に基づく一元化に向けての取組をこれは着実に進めていかなきゃなりませんし、さきに三党合意も受けて設置をされる予定の与野党の協議機関等における一元化の検討に関しても、適切かつまた真摯にこれは対応していかなきゃいかぬと、こう思っております。  なお、こうした一元化の検討を進めるに当たりましては、私学共済制度の設立の目的等に留意をしなきゃなりません。特に、私学共済制度は、年金事業のみならず民間の健康保険に該当する短期給付事業とかあるいは各種福祉事業を一体的に運営しておりますし、また年金財政は他の制度に比べても最も健全な状況にあるという状況がございます。こういう点を踏まえて多角的な議論を行って、結果として私学関係者を含む全体的な理解が得られるようにということを大いに期待をいたしておるところでございます。
  21. 林紀子

    林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。  年金制度改正全体のポイントというのは、際限のない保険料の引上げ、そして給付の方は切り下げる、こういうものだと思います。そこで私は、私学共済の場合というのをお聞きしたいと思います。  給付水準は現役世代の収入の五〇%を確保するというふうに言われておりますけれども、私学共済ではどうなっているのか。モデル世帯で現在五十五歳の人、四十五歳の人、それぞれ十年後、二十年後の現役世代平均賃金に対する年金比率、どうなっているのか、数字の問題ですが大変大切な点ですので、大臣にお答えいただけたらと思います。
  22. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 御指摘の点、御質問の点、さきの衆議院の文部科学委員会の審議でお示ししておりますが、私学共済年金の所得代替率、現役世代の所得に対する年金給付額の割合であります。現在六十五歳の者及び四十五歳の者について厚生年金モデルと同じ就労状況で試算した場合の年金受給開始時点、六十五歳時点の率であります。  このお尋ねの点で、現在五十五歳と四十五歳、これの推移を見ますと、現在五十五歳の方の場合でございますが、受給開始時点が六十五歳時五一・七%、受給開始十年後、七十五歳時は四三・五%、受給開始二十年後、八十五歳になりますと三九%であります。現在四十五歳の方の場合でありますが、受給開始時点は六十五歳四八・一%、受給開始十年後、七十五歳時点では四三・一、受給開始二十年後、八十五歳は三八・七になると、このように試算をいたしておるところでございます。
  23. 林紀子

    林紀子君 そうしますと、四十五歳の人は四八・一%、六十五歳の時点でというお話でしたので、そうなりますと、もう五〇%をその時点で割っている。今まで五〇%はモデル世帯では割りませんというお話が何度も年金についてはありましたけれども、私学共済ではこういう状況だということになるわけです。給付がどんどん切り下げられてしまう。とても百年安心などと言うことはできないと思います。  それからもう一つ大臣にお聞きしたいのですが、先ほどもお話がありました合計特殊出生率、十日に発表されました。昨年は一・二九だということですね。しかし、これは政府の予測というのはたしか一・三二、そして一番低いところ、二〇〇七年でも一・三〇台でそれが底を打つと、そしてだんだん回復するという話だったわけですが、既に大幅に狂って一・二九、これは大問題だと思います。  そもそも、年金給付の見直しというのはマクロ経済スライドという仕組みが導入されるということですけれども、これはどういうものかと大臣は認識をなさっていますか。
  24. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 厚生年金のこれからの給付水準の調整措置をマクロ経済スライドと、こう言っておりますが、これは加入者がどの程度減っていくか、かなり、先ほど、前回の答弁の中にもございましたけれども、相当減るであろうということ、それから一方で平均余命が大きく延びるということを考えなきゃなりません。  これは、厚生年金の給付水準調整措置、マクロ経済スライドは、今申し上げましたように、保険料負担の上限を固定をしながらおおむね百年間これの財政均衡を図るということでありますから、そういう意味での今申し上げた公的年金加入者が減少する、それから平均余命の延び、これを考えながら、これを控除することによって給付費の伸びを抑えていかなきゃならぬ、こういうことになっていくわけでございます。  今回の場合には、特に私学共済年金の給付水準で考えますと、厚生年金のモデル年金世帯における所得代替率を基に計算いたしますと、さっき申し上げましたように四八・一という数字、厚生年金より低い数字が出てくるわけでありますが、しかし、年金の支給額自体は共済年金の職域年金部分がありますために厚生年金の場合よりも高いものになっていくわけでございます。  この点で、確かに五割を目標にということで来たわけでありますが、これが五割を切るという数字、先ほど申し上げたわけでございます。しかし、現実に私学共済現役世代の今の手取り賃金そのものがいわゆる厚生年金より相当高いものでありますから、実際の先での手取りといいますか、共済年金を受ける金額というものは、例えば厚生年金が五〇・二を目標にいたしておりますが、私学共済四八・一でありますけれども、現実には、平成三十七年で見ましても、厚生年金の場合には二十三・七万円が、私学共済でいきますと二十九・四万円であるという、こういう点から、現在の設計がそういう形に四八・一という所得代替率で表れておると、こういうふうに考えておるわけであります。
  25. 林紀子

    林紀子君 今、マクロ経済スライドのお話がありましたが、係数が〇・九ということだということですね。これは年金加入者数が大きくかかわっているわけですね、受け取る方と支え手と。  私学共済におきましては、少子化影響というのはほかの年金に比べてもっと大きいんじゃないかと思うわけですね。先ほども加茂川部長の方からお話がありましたけれども、子供の数が減って教職員の数が一番厳しい場合、現在より四割以上減るんだということなわけですね。少子化、こういうふうに見込み違いだということが明らかになったわけですけれども、そうなりますと、この私学共済の場合は支え手の数はもっと大変なことになるということになるんじゃないでしょうか。  私たちは、政府の年金の財政計算の全体、前提は全く根拠がなくて、実施前から破綻は明らかだと指摘をしてまいりましたけれども、一番根本的なところが本当に間違っているということがたちまち明らかになってしまったわけです。ですから、私たちは、国民年金、厚生年金、そして今回の私学共済も含めて、年金制度、もう一度見直すべきじゃないかというふうに思いますし、それが圧倒的な世論だと思いますが、大臣はどうお考えでしょうか。
  26. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 今回、法案を通していただいて、そして三党合意、これもどうなるかといろいろ議論あるところでございますが、そこで更にこれからの問題についていろいろ御協議をいただくということでございます。  いずれにいたしましても、これからの高齢期の時代、この生活を支えていくにふさわしい公的年金としてその給付水準を確保していかなきゃならぬ、そして同時に、持続可能な仕組みにしなきゃならぬ、こういうことで今制度設計を正にいたさんとしておるわけでございまして、今後、こういう一・二九という数字が、一・三二から一・二九という形になっていったということ、そういう点で、このモデル世帯の在り方がこれでいいのかどうか、正にこれはこれからの高齢期の、さっき申し上げたような形の公的年金であるかどうかということを踏まえながら御検討をいただけるものだと、このように考えております。
  27. 林紀子

    林紀子君 私は、この世論の声にもこたえて見直すべきだということをもう一度申し上げて、次に、私学の問題全般、いろいろお聞きしたいところがありますが、お聞きしたいと思います。  私学のあるべき姿という点から見ると、これでいいのかというようなことがいろいろ起こっております。  私学の中でも派遣労働が、用務、清掃から実習助手、果ては予備校から講師を招いている、こんなところまであるということですね。ある私立学校では授業運営までも外部に委託する例があるとして、これは新聞でも大きく報道されました。教員の業務まで事業委託、請負ということになりますと、校長はその労働者には直接指示、監督することができない。校長は公務をつかさどり職員を監督するという学校教育法の規定どおりのことを行いますと、労働者派遣法の違反になります。  東京都では、私立学校に対して、請負に偽装した労働者派遣の防止についてこういう文書も配布して注意を喚起しているというところですが、文部科学省としても、全国的に実態調査して、問題があれば私立学校に対して指導を行うことが必要ではないでしょうか。
  28. 小野晋也

    ○副大臣(小野晋也君) 先生指摘の問題につきましては、本年の五月十九日、東京労働局がこの問題の指摘、そして依頼を受けて、東京都生活文化局の私学部が、私学の関係に六月三日、その趣旨の周知を行ったところでございます。  文部科学省といたしましては、学校の運営又は管理の問題を持っているわけでございますし、また一方、厚生労働省としては、労働行政上の問題としてこの問題をとらえているという問題でございますので、今後、文部科学省としては、厚生労働省と相談を行いながらの対処を進めてまいりたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
  29. 林紀子

    林紀子君 少なくとも学校の現場で違法の状態が起こることはないように、そのことをしっかり見据えてきちんと対処をしていただきたいと思います。  不況が続いておりますので、私学の経営そのものが大変なのでこういうような状況が起こっているというところもあると思いますので、私学助成というのが、どうしてもその充実は必要だと思います。  そこで、私学助成についてお聞きいたします。  経営の方が大変だけれども、子供大学、高校に通わせている家庭の収入も不況の中で大変厳しくなっています。この対応として、各大学では学費免除というのを行っていますね。国立私立も充実させる必要があると思いますが、今、国立では何%の学生に対して学費の減免措置が行えるようにしているのか、お聞きしたいと思います。
  30. 遠藤純一郎

    政府参考人遠藤純一郎君) 国立大学それぞれにおいて授業料の免除がなされておるわけでございますが、平成十四年度のデータで見ますと、学部、大学院の免除者数、前期分で六・八七%、後期分で六・八三%、こうなっております。
  31. 林紀子

    林紀子君 それでは、私学の場合はどのくらいの割合になっているか分かりますでしょうか。──済みません。この数字については通告をしていなかったので結構ですけれども、少なくとも、私学の場合は国立の場合よりもずっと低いと思うんですね、減免されているところが。しかし、私立大学でもせめて、学費の減免措置、国立と同じ割合の学生に行えるようにすべきではないかと思います。そして、そのために助成を行うべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  32. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 御指摘のように、確かに私立大学の減免措置の対象が国立より低いわけでありますから、これに近づける努力、必要だと思いますが、私立大学授業料等の学生が納付するお金、本来これは大学自身がそれぞれの経営の責任において自主的に決定をいただいておるところでございます。そういう意味で、私立大学も、これは各大学が独自に減免事業を持っておりまして、そういう意味では、国がこれまでやってきたことと私学にやるやり方は基本的には違うわけであります。  しかし、私立大学がこうした学生の経済的負担の軽減を図っていくということ、これに対して私学側に対する取組を国が支援をしていくということは大切なことでございます。これまでも、予算編成の段階において、私立大学等が経常費補助金の中に傾斜配分ということをその補助金を出すときに考えておりまして、各大学が経済的に修学困難な学生に対して減免措置をやっている、あるいは奨学事業を充実させている、こういう場合には補助金を増額させておるわけでございます。給与制の奨学金授業料、そういうもの、入学料を免除している、こういうものは全額そういう対象にしておりますし、ローンの利子負担を軽減している場合には利子負担額を全額見る、あるいは無利子の貸与奨学事業をやっていけば、貸与額の全体の二十分の一をこの傾斜配分に見るというような形で、国もできるだけ、私学助成に対するこういう取組に対して、私学に対しても支援をしておると、こういうことでございます。
  33. 林紀子

    林紀子君 文部科学省が二年ごとに調査をしているということで、六月に入ってから平成十四年度学生生活調査結果ということを発表いたしましたけれども、それを見ますと、家庭の平均収入、国立では二年前と一・四%家庭の収入が減っているけれども、私立の場合は家庭の収入は六・八%も落ち込んでいると、そういう結果になっております。ですから、全体として私立大学生は年収の低い家庭の方にシフトをしていっているということが全体的な状況から見てもこの文部科学省調査によって明らかだと思います。  そういうことでは、今お話があり、大臣からもお答えがありましたけれども、この私学助成、奨学金だけではなくて私学助成のところを本当に大きくきちんと膨らませて、そして私立に通う大学生たちがきちんと学業が続けられるようにということをお願いしたいというふうに思います。  そして、大学生の場合はこうですけれども、高校生の場合というのもこれまた大変深刻です。  全国私教連が九日の日に、今年三月末現在での経済的理由での退学者調査というのを発表いたしました。これは一九九八年から毎年実施をしておりますけれども、今回は経済的理由で退学した学生、高校で二百九十三人、中学校で六人。これ、どれだけの数を調べたかといいますと、二百十三学園、生徒数はおよそ二十一万人。だから、かなりの数の生徒たちを対象に調査をしたわけですが、その中でこういう結果が出ております。高校一校当たり一・三八人が経済的な理由で退学をせざるを得なかったということになっております。  この報告の中では、父親が夜逃げをしてしまった、蒸発をしてしまった、居どころが不明である、音信不通である、そして保護者が死亡をしたという件数も八件ありますけれども、これはリストラであるとか倒産であるとか、そういう中で中高年の自殺の増大ということが報道されておりますけれども、これと大きな関係があるというふうに思わざるを得ません。そして、大変悲劇なのは、子供が中学生で、滞納、退学を苦にした母親が自殺をしたと、そういうこともこの中に入っているわけです。  ですから、授業料、こういう状況でやむにやまれぬ事情で払うことができず、泣く泣く退学せざるを得ない、依然としてあるわけです。是非、私学助成、ここでも拡充することが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  34. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 私立学校、特に私立高等学校の教育条件維持向上、あるいは就学上の経済的負担によってそうしたことのないようにということで、私立学校等に対する経常費の補助も行っておるわけでございます。そういう、また大学と別の角度から私学助成の充実を図ってきておりますが、平成十六年度予算につきましても、前年度比二・七%増で一千二十八億五千万円を計上いたさせていただいております。  今後とも、この問題、非常に切実な問題でございまして、今御指摘のような途中退学しなきゃいけないような状況、特に経済状況が非常に悪い、これにつきましては、そうした高等学校に対する私学助成と併せて、その高校生そのものに対する経済的支援といたしまして緊急採用奨学金制度を実施をいたしておりまして、予算的にも平成十六年度にはこの緊急採用の奨学金四十億持っておりまして、貸与予定一万人までということでおりますが、十五年度を見ましても失職等含めて七千二百三十九名の方がこの貸与を受けておられます。  そういうことで、この問題はこの問題で、特に経済的な問題、特に今御指摘のあったように、父親がいなくなったとか企業が倒産したとか、こんな緊急の場合にはこれで対応しようということで、私学助成と併せて対応いたしておるところでございます。
  35. 林紀子

    林紀子君 今日は私の最後質問になりました。最後に言いたいこと、今、私学のこういう助成につきましても今までずっとお願いをしてきましたけれども、公立、私立の区別なく、一人一人の子供たちが本当に安心して教育を受けられる、そういう条件を整えるというのが教育行政の役割と責任だと思っております。教育基本法でうたわれております十条の理念、それを守り抜いていただきたいということを最後お願いして、私の質問を終わります。(拍手)     ─────────────
  36. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、中曽根弘文君、大野つや子君及び草川昭三君が委員辞任され、その補欠として愛知治郎君、小林温君及び千葉国男君が選任されました。     ─────────────
  37. 山本正和

    山本正和君 有馬先生、また林先生の後を受けまして、私も一九八六年の文教委員会の初質問以来、これで、今日で最後質問でございます。時間をいただきましたことを委員長並びに委員の皆さんにまず感謝申し上げます。  私は、今日は個々の問題というよりも考え方ということで、大臣また副大臣がもし私から申し上げたことについての御感想ございましたら承りたいと思います。  私は、実は今の義務教育の中で何が一体足りないといったらおかしいんですけれども、私自身の気持ちからいって、それでどうなんだろうかという、ざっとですけれども、学習指導要領も斜め読みでずっと見ていた。そこで思ったのは、命というもの、これをどこでどう扱っているんだろうかと。命というものの大切さ、尊さ、また美しさ、こういうものをどういうふうに教えていくんだろうかと。そしてまた、生まれてきた命は誠に多様でありますし、いろんな形を持っておる。人の顔が全部違うようにすべて違うと。しかし、それがそれぞれに、それぞれ大変尊いものなんだと、こういうことをどういうふうに教えているんだろうかということで、眺めてみたんですけれども、個々のところにはそういう部分が出てきますけれども、体系としてといったらおかしいんですが、全体の流れとして本当に教えているんだろうかと。一遍この付近で二十一世紀に入った我が国の教育、あるいは世界の状況から考えて、本気になって我々大人がというか、今の国なりあるいは人の、人類社会といっていいんですか、考えていく必要があるんじゃないかという気がしてならないんですね。  私は命というものを考えたら、自分たちが生まれてきた命は親から授かったと、そのことから親に対する尊敬の気持ちというか、いたわりの気持ちを持つんだろうと。私も実は七十七歳になって初めて亡くなった両親のことを時々思い出します。しかし、親の恩なんていうのはなかなか簡単には分からないんですね。しかし、そういうことはやっぱり義務教育で本当はきちっと議論もし、子供たちにも考えることができる、そういう必要があったんじゃないかということが思えてならないんです。ですから、中教審で議論していただく様々な議題の中に何とかこういうことを入れていただけないだろうかと。  やがて人間は生まれて死んでいくわけです。しかし、生まれて死んでいく中に命が様々な働きをして、すばらしい芸術やあるいは学問や科学技術の発達、社会の発展というものがある。その中で一つ一つの命は形も違うし、場合によっては何か恥ずかしいような思いをする形で現れる場合もあるかもしれない。しかし、それが全部それぞれに尊いんだということをみんなでもう一遍確認し合わなきゃいけない時代に今来ているような気がしてならないんですね。  そういう意味で、何とかひとつ人間教育のここだけは、義務教育だけは国の責任でもって子供たち教育の場を与える場所ですから、そういうことを体系的に何か考えていくことができないんだろうかと、こういう気がしてなりません。非常に抽象的な問題提起になるかもしれませんけれども、これからの文部行政の中で是非ともひとつお取り上げいただかなきゃいけないだろうかという気持ちがしております。これが一つです。  それから、二つ目にお願いしてみたいと思っているのは、義務教育というのは、これはいわゆる国民の義務もあるし、国の義務もある。しかし、義務教育の九年間は、これいやでも応でもその間子供たちに学校に行くことを保障するし、ある意味でいうと義務付ける期間ですね。したがって、勉強したくないとかあるとかいう問題じゃなしに、義務教育は義務教育。しかし、それを越えたら、学びたい者が行くのが学校だろうと思うんですよ。  実は、私も若いときに高校全入とか盛んに言って、やった時代がありました。しかし、その高校全入の思想というのは、義務教育を延長しようという思想だったと思うんですけれども、それがかなわないとするならば、やっぱり義務教育と違うんなら違うように、学びたい者が学べる学校、これが高等教育、高等学校以上の教育だろうと。  そうすると、学びたい者が来ていることは、これはもう学びたくない人は学校へ来てもらわないでいいようにする。学びたい者だけが来る、年齢は問わないと。例えば私のように、国会議員辞めて、七十七歳の段階でもう一遍大学受けると、講義も聴けると。たとえ、若くて、二十歳で、幾らでも勉強しようとすればできるけれども、したくない者は別に大学行かなくてもよろしいと。こういうふうに、学びたい者が学ぶ場所が学校なんだと、いわゆる義務教育除いた学校なんだと。  自分が必要を感じて行くところが学校なんだというふうに、もしも制度があるとしたならば、ただしそうなったら、企業として営んでいる私立学校はつぶれるだろうと思うんですね。また逆に、ひょっとしたら非常に優秀な者を集めて良くなるかもしれませんけれども、分かりませんけれども。だけれども、本当からいったら、学びたい者が保障されるのが教育なんだろうと。そうすると、高等教育の在り方も、今の私学の問題や、今度は特殊法人になりましたけれども国立大学の問題も変わってくるんじゃないかと。  私どもの子供のときの記憶では、どんな貧しいうちの子供でも、本当によく勉強ができたら、みんなその村が、町が、あの子は学校にやろうというんで、東京大学までやったんですよ、ようできる子はね、貧しい子でも。前も申し上げましたけれども、大平総理は小作人の子ですよね。それで、成田さんは、成田社会委員長は大地主の子ですよね。しかし、小作人の子であった大平総理は、あの当時の時代に生きていますから、きちっと勉強して、今の一橋大学を卒業することもできるんですね。私はそういう、だから、学びたい者が学べるような制度をどうやって作っていくかということも、これは国が考えなきゃいけない責任じゃないだろうかというふうな気がしてならないんです。  ですから、学校の在り方、特に義務教育を除いた学校についての在り方についての検討を何とかお願いできないだろうかと、こういう気持ちがしてなりません。  それからその次に、第三番目ですけれども、これは、我々が今生きているのは、こういう社会に生きている、しかし、こういう社会がその前にどうだったんだろうかということを学んでいって、そして歴史がある、そこからまた現在認識ができて、未来に対する展望を持つとなるんですね。今現在、我々はこうやって生きていると。しかし、その前はどうだったんだと、そのもっと前はどうだったんだと、その起源は何なんだと探っていって、そしてその歴史を知って、それから新しい二十一世紀、二十二世紀を展望すると。これが人間の考えるべき在り方だろうと思うんですね。  ところが、我が国の今の歴史教育というのは、全然関係のないというか、今自分が生きている生活と関係のない古代から出発して学ぶんです、ずっと。そして、もう近代ぐらいで終わりです。今、今日日本の国がこうやっている姿を学ばないで、この今生きている姿の五十年前を学ばずにみんな歴史教育が終わっているんですね。何かそこがどうもよその国の教育と違っているような気がしてならないんです。  だから、やっぱり歴史教育というものを、歴史教育というかな、要するに歴史というのは実は未来を展望するために必要なんですけれども、その意味として位置付けするならば、我々が今日こうあるのは、今例えばこうやって生きていると。しかし、こんなこと言ったら、女性の議員の先生たくさんおられますから、ひょっとしたらびっくりされる方もおるかもしれない。六十年前は女性は身売り、女性は売買の対象だったんだ。六十年前、美しい娘がおったら、貧乏なうちの子供でも大変なお金が入ったんだ。そういう人身売買の時代が六十年前にあったんですよということを今の若い人ほとんど知らないですよね。小作人がどんなに惨めだったかという話も知らない。そして、それは昭和の時代にあったと。本当ですかという話。大正時代はこうですよと。あるいは、女工哀史なんかの話をしても何も感じないんですよね。しかし、その日本の国が、人権というものが大事にされる、こういう世の中になってきたんですよという歴史教育をやっていない。そういうことの、私は逆の意味でいうと、こんなんでいいのかしらんと。  私の父親の時代、私の父親はシベリア出兵行って全身凍傷して帰ってきた。しかし、父親はそんなことを子供には話、せぬですよね。私も実は子供に、自分は戦争の、負けて二年間満州おったときの苦しい話、しないんですよね。親というものはなかなかしにくいんです。  しかし、学校ではそれを教えられると思うんですね。学校では、小学校でも中学校でも、あなたたちのお父さんお母さんの時代こうなんですよと、おじいさんおばあさんの時代はこうだったよと、そないなことして教える、そのことが親に対して子供がいろんなことが理解できるようになると思うんです。  何か知らぬけれども、ただそれは、そういう私が言うのはちょっといささか常識的かもしれません。学校といったら、一番手っ取り早いのは明治の教育勅語ですよ。我々全部あれを暗記させられた。だから、もう理屈じゃないんですよ、暗記させられたから、お父さんお母さんには孝行せにゃいかぬと、夫婦相和さにゃいかぬと、こういうぎゅうっともうお経のようにたたき込まれる、それも一つ教育かもしれない。  しかし、今の世の中はそうじゃないはずなんですね。今あなたたちはこうやって家に冷蔵庫もあるでしょう、みんな。テレビもほとんどありますよね。携帯電話皆持っている。しかし、その前の時代はこうですよ、その中で人間は生きてきたんですよ、お父さんお母さんて、その中で育ったんですよ、おじいさんおばあさんはこうです、その話をして、子供にいろんな話をすることが大切なんじゃないかと。  人の命もそうなんですね。命というものは尊いという気持ちを子供にみんなが分かってもらわなきゃいけない。私は、だから福田前官房長官のお父さんが言われた、命は地球より重いと言われた言葉なんか、私は非常にうれしい気持ちですね。何かしたら近ごろの人は、あれはひきょうな言葉だなんと言う人もいますけれども。  そんなことも含めて、私は最後にこの三つの点をお願いいたしまして、私の最後質問に代えます。どうも。(拍手)
  38. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 山本先生、本当長い間この文教科学委員会、いつも大所高所からお話をいただきまして、私も本当勉強させていただいていると思います。今いただきました三点の問題、いずれも大事なことでございます。  特に、命の問題は、昨今のあの佐世保のああした事件を思うにつけても、やっぱり家庭もそうでありますし、学校教育においても、正に私はもう幼児教育の段階から絶えずそういうことの重要性を子供たちに、ある場合には本当にたたき込むといいますか、そういうものででもやっていかなければ、これからのああいうIT社会とかいろんな広い範囲の中、いろんな情報入ってくる、これに影響を受ける、特にバーチャルの世界へ入ってしまう、そのときでもはっと気が付く、それはやっぱり日ごろからそういうことをやっていかないと駄目だと思うんです。  それで、今御指摘いただきましたことを踏まえて、これからこれをもっと強めていかなきゃいけないと思っておりまして、今回のああいう事件を踏まえて、学校側も、ただこういうことがあったということではなくて、この問題を一つの教訓といいますか教材にして、先生方は、受け止め方はいろいろあると思いますが、この問題について私はもっと率直にみんなで学校で話し合ってもらいたいと思います。  そういうことが必要であろうと、こう思っておりまして、やっぱり命きらめくといいますか、そういう命のきらめきというものが世の中をどんどん作っていく、明るい方向へ持っていくんだという教育が大事だと思っておりますし、特に義務教育については国が責任を持つんだということ、これはやっぱり大事なことだろうと、こう思っておりますし、少なくともそういうことで今日日本はここまでやってきてこの国づくりに到達したのでありますが、今御指摘のようないろんな問題点を考えると、これをもっと強くしていくということが今正に日本に問われておるんだろうと、こう思っておりまして、命の尊さといいますか、人間教育の中で、この心の教育、命の教育、これをきちっと体系付けていかなきゃいけないんではないかと。御指摘の点踏まえて、これからの行政の中において位置付けをもっと強めてまいりたいと思っております。  それから、正にこれからの義務教育、更にその上の高等教育の在り方。今よく言われるように、大学全入時代が今ほとんど来掛かっておるわけでございますが、入学、ともかく行きさえすればというような思いではなくて、本当に学びたい人が学んで、そして正にいろんな知識を得、そして力を付けて社会に巣立っていくという仕組み、これはまたこれから必要であろうと、こう思っておりまして、例えば生涯教育の一環として放送大学というのがあります。これは正に学ぶ意欲がなかったらとても卒業できない。これは一つの理想だと、私は大学の理想ではないかと、こう言っておりますが、各大学もそういう方向で取り組んでもらわなきゃいけない。  そうすると、入学の在り方、それから卒業のときの在り方、出口は、出るときをもっと管理を厳しくと、こういう話もございますが、そういう方向へ大学も変わっていく必要があろうと、こう思っておりまして、そうした高等教育制度の設計をこれから考えていかなきゃならぬと、こう思っておりますし、正に社会、これまでの日本は、おっしゃったように、小作人であろうと大地主であろうと、みんなもう学ぶことについては一緒でありますし、そういう意味での平等というものはある意味では戦後確保されてきたと思いますね。これをやっぱり社会全体が取り組む方向が大事だと思います。  先ほど来、奨学金の制度等々あるいは私学助成の御指摘がございましたが、そういう意味で、高等教育においても本当に学ぶ人が安心して学べるといいますか、そういう仕組みをこれから更に教育制度の中で確立していくということが大事だろうと思います。  それから、歴史教育と一口に言ってしまえばそれまででありますが、やはり温故知新といいますか、やっぱり過去に学びながら未来を考えていく、そういうことが必要でございますし、先生指摘のように、我々の時代を考えてみても、確かに大森貝塚がどうとか、古い話をずっとやるんでありますが、最後の、戦後、特に戦争後の話というのはどこかもう意識に全くない。ややもすると日本の歴史のそこのところが抜け落ちるものでありますから、一歩間違うと、ともかく日本はあの戦争でとにかくもう大変なことをやらかして、もちろん平和国家はつくるのはいいんでありますが、日本のこれまでの歴史というのは全部悪かったのかというような話にもなりかねない嫌いがございます。やっぱりそうじゃなくて、世界を広く見たときに、日本の通ってきた道というのはどういうものだったか、どこでどう間違ったのかということ、しかし世界だって植民地政策はあったし、日本はどういう思いでこういう問題に取り組んできて、どこで間違ったのか、いわゆる負の部分、それから、しかし同時に日本のプラスの部分、そういうことも一緒に教えていく必要があるんではないかと、こう私は思っております。  そういう意味で、人権教育もまだまだ十分ではないという指摘もございますし、やっぱりその根底には命を大事にする、そこに行き着くにはやっぱり人権教育というのが必要でありましょうから、そういうものも教育の中できちっと位置付ける必要性というのはもっともっと必要だろうと思いますが、先生おっしゃったように、やっぱり我々日本人が世界の中でここまでやってきた、その生い立ちから始まって、どういう点で日本が立派であって、どこで失敗したかという事実ということについては、きちっと、この戦後の問題についてもやっぱり教育の中で歴史的な考察を加えながら事実はきちっと学んでおく。それでないと、これからグローバル社会の中で日本人としてアイデンティティーを持って生きていく上において、やっぱり非常にそういう意味では日本人はちょっと変じゃないかと言われることになりかねません。  そういう意味で、非常に大事な御指摘をいただいたと思いますので、御指摘をいただきました人間教育の在り方、それから義務教育後の高等教育の在り方、そしてこれまで日本人が作り上げてきた歴史、伝統、文化、そういうものも史実に基づいてきちっと学びながら、これからの二十一世紀を自信と誇りを持って生き抜く子供たちをつくり上げていくその根幹が教育にあるということ、特に義務教育は国が大きな責任を持っているということを心を致しながら頑張ってまいりたいと、このように思います。  ありがとうございました。
  39. 小野晋也

    ○副大臣(小野晋也君) 山本先生始めとして、本当に長い間文教科学行政にこの議会における議論に御参加いただいた先生方に私からも深く感謝申し上げておきたいと思います。  先ほど山本先生から非常に教育の根幹にかかわる御指摘をちょうだいいたしました。  特に第一点目の生命の尊厳の問題というのは、私は、私見でございますけれども、この日本社会においても人類社会においても根底に置くべき課題であると思っております。しかも、それはものとしての、また生物としての命というのみならず、もっと大きく目に見えないものも含める命の中に私たちの命がともに生きているし、その中ではぐくまれているという意識を持つことが、社会を構成する人間として、またそういう人を教育する上において大変大切なことだと意識をいたしております。  山岡荘八先生が「徳川家康」という大著の本を執筆を終えられたときに日光東照宮に句碑を建てられたということでございますが、そこに彫り込まれた言葉というのが、「人はみな生命の大樹の枝葉なり」という言葉であります。人間というのは、目に見えない大きな大木の中から時期が来れば葉を出して、それが夏の光を受けて大きく成長し、秋が来るとその葉が散っていく。しかしながら、その葉っぱが一つの一年の間生きてきたその命というものは、その大木の下に戻っていって、目に見えない大木だけれども年輪を一つ一つ積み重ねていくものになっていっているんだと。私たちは、今もう生きていないこの日本の国に生きた人たち、これは人類といった方が的確かもしれませんが、そういう人の命の年輪の中から新しい葉として今、生をうけている。そしてまた、私たちが生きたその命の下に次の新しい葉っぱが生まれてきて、それがまた新しい生を生きていく。こういう大きな時の流れの中にある生命観みたいなものをきちんと理解し身に付けていく。こういうことを通して健全な社会を築くことができるし、また一人一人の人生の意義もその活動の中において初めて認められてくるものであるような気持ちがいたしております。  ですから、先生から非常に尊い御指摘をちょうだいいたしましたが、生命観の問題ということについては、これは更に研究が必要なテーマだとは思いますが、私どもも重視しながら取り組んでいくべき問題だと思います。  それから第二点目に、学ぶ意欲のある人が学ぶ学校という御指摘でございましたが、私は、ちょっとこれを言い換えさせていただきますと、むしろ人間というのは学ぶからこそ人間であるというような位置付けを考えるべき問題ではなかろうかと思います。  一度、小泉総理が議場で「少くして学べば壮にして為すあり、壮にして学べば老いて衰えず、老いて学べば死して朽ちず」、こういう言葉を語られたことがありますが、私たちは学び、精神的にもその成長を遂げ続けることこそが人生である、だから与えられたことを学ぶという意味ではなくて、自らが常に学びつつ日々に新たなる成長を遂げて生き続ける人生というものを尊重する、そういう考え方を根底に置く教育の在り方というものをこれから模索すべきであるし、それはもう学校教育のみならず、社会教育という問題もすべて含めて構築すべき問題なのではないかと、こんな意識を持っております。  それから、第三点目の歴史教育の問題に関しましては、これは河村大臣のふるさとでございます長州・萩、こちら松下村塾という有名な私塾が幕末期にございましたけれども、この吉田松陰先生が、歴史教育というものはまず近代、近世から、そしてまた自分のふるさとから学ぶべきであると、こういうことをお言葉として残しておられるんですね。その趣旨は何かというと、自分の身近に考えられるところで一つ自分の見識を立てる、その考え方の基本的なものを作り上げる、それが作り上げられさえすれば、それを大きく広げていくのが勉強であると、こういう考え方でございまして、現代というのを理解すればこそ過去の歴史をより我々は理解することができるし、自分のふるさと、今生きている場所をより良く知ることを通してこそ日本全体、また世界というものを理解していくことができる、そういうふうにしながら広い見識を培っていくのが学問の基本であると、こういう言葉でございまして、非常に大きな示唆の含まれた言葉であろうと思います。この点は、これまでの歴史教育の歴史がありますものですから、すぐに転換できる問題ではないかとは思いますが、一つの大事な視点として考えるべきものだと私個人の意見として持っている次第でございます。  本当に皆さんありがとうございました。
  40. 山本正和

    山本正和君 本当にどうも大変ありがとうございました。  皆さんの御健闘を心からお祈り申し上げます。(拍手)
  41. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  42. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 私は、日本共産党を代表して、私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律案について反対討論を行います。  まず初めに、私学共済法案が準用することとしている国家公務員共済法案の審議の行方そのものが定まっていない本日の現時点でこの私学共済法案の採決を委員長職権で強行することを厳しく批判するものであります。  今回の改正は、年金改革関連法案として提出されたものです。先日の参院厚生労働委員会での年金法案の質疑打切り、強行採決に見られる議会制民主主義をじゅうりんすることは、断じて許すことのできないものであることを強く指摘しておきます。  年金改悪法案が成立した途端、厚生労働省がまとめた二〇〇三年動態統計で合計特殊出生率が一・二九となり、過去最低となることが六月十日に明らかになりました。今度は受給開始時の五〇%確保の前提の政府出生率見通し一・三二をも下回ることになり、受給開始時の五〇%確保すら偽りだった可能性があり、政府に対する国民の怒りは収まりません。  その上、国家公務員共済、地方公務員共済、そして私学共済に至っては、わずかな審議時間で今後保険料の引上げと給付の削減を自動的に進める仕組みを導入することは、国民無視の一方的な負担押し付けであり、強く反対するものです。  さらに、年金一元化に対する私学関係者の抵抗は根強く、二〇〇三年三月現在での私学共済の被保険者は四十三万人に対し年金受給者はまだ八万人しかなく、いわゆる年金の成熟度が低いために独立運営にこだわってきた経過もあります。安易な一元化ではなく、私学関係者の意見もよく聞き、慎重な対応をしていくべきであります。  以上の点から、今回の私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律案に反対することを表明し、討論を終わります。
  43. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  44. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十二分散会