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2004-04-06 第159回国会 参議院 文教科学委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年四月六日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月一日     辞任         補欠選任      伊藤 基隆君     本田 良一君      池田 幹幸君     畑野 君枝君  四月二日     辞任         補欠選任      本田 良一君     伊藤 基隆君  四月六日     辞任         補欠選任      佐藤 泰介君     小林  元君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         北岡 秀二君     理 事                 亀井 郁夫君                 後藤 博子君                 鈴木  寛君                 山本 香苗君                 林  紀子君     委 員                 阿南 一成君                 有馬 朗人君                 大仁田 厚君                 大野つや子君                 扇  千景君                 橋本 聖子君                 伊藤 基隆君                 小林  元君                 谷  博之君                 中島 章夫君                 西岡 武夫君                 草川 昭三君                 畑野 君枝君                 山本 正和君    国務大臣        国務大臣     茂木 敏充君    副大臣        内閣府副大臣   中島 眞人君        文部科学大臣  稲葉 大和君    大臣政務官        内閣大臣政務        官        宮腰 光寛君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 俊史君    政府参考人        内閣府政策統括        官        林  幸秀君        日本学術会議事        務局長      吉田 正嗣君        文部科学大臣官        房文教施設企画        部長       萩原 久和君        文部科学省科学        技術学術政策        局長       有本 建男君        文部科学省研究        振興局長     石川  明君    参考人        日本学術会議会        長        黒川  清君        日本学士院院長  長倉 三郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本学術会議法の一部を改正する法律案内閣  提出、衆議院送付)     ─────────────
  2. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る一日、池田幹幸君が委員辞任され、その補欠として畑野君枝君が選任されました。     ─────────────
  3. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  日本学術会議法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会内閣府政策統括官林幸秀君、日本学術会議事務局長吉田正嗣君、文部科学大臣官房文教施設企画部長萩原久和君、文部科学省科学技術学術政策局長有本建男君及び文部科学省研究振興局長石川明君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本学術会議法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会日本学術会議会長黒川清君及び日本学士院院長長倉三郎君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 日本学術会議法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 有馬朗人

    有馬朗人君 皆さん、おはようございます。自民党の有馬朗人でございます。  日本学術会議法の一部を改正する法律を審議するに当たりまして、まずその歴史についてお聞きいたしたいと思います。  私は、初期の学術会議の果たしてきた功績といたしましては、原子力平和利用についての三原則を確立したこと、南極地域観測恒久的事業として再出発させることについて勧告を出されたことを挙げたいと思います。そして、国立大学附置研としての共同利用研究所、後に国立大学共同利用研究所創立を求める申入れ勧告を多数出し、政府がそれを実現してこられたことであります。  一九四五年、敗戦時、日本では原子核実験的研究原子力研究はGHQの命によって厳しく禁止されておりました。理化学研究所大阪大学が持っていたサイクロトロンはそれぞれ東京湾大阪湾に投げ入れられました。私は長い間の希望として、サルベージをしてこの二つ記念品として私は捜し出したいと思っております。  一九五一年より原子核研究原子力研究が許されました。そして、原子核研究は直ちに再開されましたけれども、原子力研究は極めて多くの研究者が兵器としての利用を恐れ、なかなか原子力研究を出発することができませんでした。そこで、学術会議は、原子核特別委員会原子核特別委員会原子力研究是非検討し、激しい論争の結果、原子力平和利用原則を作り、それを国に要求したわけであります。その下で原子力研究開発することを是といたしました。一九五四年のことであります。  そこで、まず第一の質問は、原子力平和利用原則とは何か、その原則原子力基本法にどのように用いられているか、お聞きいたしたいと思います。
  9. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) ただいま御指摘のございました原子力原則でございますが、これは昭和二十九年に日本学術会議が出しました原子力研究利用に関し、公開、民主、自主原則を要求する声明、これにおいて述べられております。  内容は、一つ原子力研究利用に関する一切の情報を完全に公開すること、二つ目に真に民主的な運営によって我が国原子力研究が行われること、三番目に日本における原子力研究利用日本国民自主性ある運営の下に行われるべきこと、この三つ原則でございます。  そして、昭和三十年に制定されました原子力基本法に、「原子力研究開発及び利用は、平和の目的に限り、」「民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。」と同法第二条に書かれておりまして、ここに原子力原則が盛り込まれております。
  10. 有馬朗人

    有馬朗人君 ありがとうございました。今後もこの三原則に基づいて日本原子力政策が行われることを強く要望いたします。  こうして学術会議努力によりまして原子力利用原則基礎とした原子力基本法が作られ、特殊法人原子力研究所創立され、原子力研究が始まったわけであります。そこで日本学術会議役割は極めて大きかったと私は考えております。  次に、南極について議論をいたしたいと思います。  一九五六年十一月、日本は第一次南極観測隊観測船宗谷」で送り出し、昭和基地を開設いたしました。そして、六二年の第六次まで「宗谷」によってこの研究は続きました。しかし、以後、一九六二年二月より一九六六年の間、南極観測は中止されました。砕氷船宗谷」は海上保安庁に属しておりましたので、「宗谷」を用いることは研究者反対はありませんでした。しかし、海上保安庁では要員の確保が不十分であることになりました。そこで、防衛庁協力を得るということが必要になりましたが、この検討において研究者反対は極めて強く、代船「ふじ」が船造中ということもあって、長期にわたって南極観測が中断いたしました。このとき、学術会議では南極特別委員会中心に議論し、輸送担当機関について防衛庁協力を得ることはやむを得ないと考えるに至ったと思います。  そこで、質問でありますが、南極観測再出発を求める勧告とその結果についてお教えください。
  11. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議は、昭和三十七年五月に「南極地域観測の再開について」ということで、南極地域観測事業恒久的国家事業として取り上げ再出発させる方針を速やかに決定されたいという旨、政府に向けて勧告いたしました。  これを受けまして、政府としましては、昭和四十年に南極地域観測を再開させるということを念頭に準備を進めまして、輸送担当機関海上保安庁から防衛庁にすることとしまして、自衛隊法改正を行うなどの準備を進めました。この結果、昭和四十年七月には新しい南極観測船ふじ」が完成し、同年十一月第七次観測隊が編成され、南極に向けて出発いたしました。翌年二月には第七次越冬隊が成立し、昭和基地及び我が国南極地域観測が再開されました。その後現在まで、毎年観測隊を派遣しているところでございます。
  12. 有馬朗人

    有馬朗人君 このように、南極観測が再出発でき、防衛庁籍砕氷船ふじ」が一九六五年から八二年、一九八三年以降は「しらせ」が海上輸送に当たって今日に至っているところであります。ここでも日本学術会議研究者意見をまとめる上で極めて大きな功績を残したと思います。  話は飛びますけれども、次は共同利用研究所創立について考えてみたいと思います。  一九四九年、湯川秀樹先生中間子理論によってノーベル賞を受賞されました。これを顕彰して一九五七年、京都大学湯川研究所が創設されました。その際も日本学術会議、特に原子核特別委員会の援助が極めて大きなものでありました。初めは京都大学のみのものでございましたが、日本じゅう素粒子原子核理論研究者がここをメッカとして集まってまいりました。私もその一人であったわけであります。  しかし、当時の法律では、大学を超えて違う大学研究者が、特に若手研究者が滞在し共同研究を行うことは極めて難しかったわけであります。併任教授というようなことはありましたが、若手研究者長期に滞在して他の大学研究することは極めて難しかった。もちろん、研究費や旅費を支給することは不可能でありました。  このころ、学術会議では、物理学研究連絡委員会及び原子核研究連絡委員会中心にこの困難を取り除く方法が議論されました。その結果と京都大学の寛大な取り計らいにおいて、一九五三年七月に国立学校設置法の一部を改正する法律で同法第四条に第二項が加わりました。  この二項は、第四条に、前項に掲げる研究所のほか、国立大学教員その他の者で当該研究所目的たる研究と同一の研究に従事する者に利用させるため、国立大学に次の表に掲げるとおり研究所を附置するというわけで、ほかの大学の人もこの新しい研究所に出掛けていって共同研究ができるようになりました。  ここで挙げられましたのが、京都大学基礎物理学研究所と、現在ニュートリノ観測で有名なスーパーカミオカンデを有する東京大学宇宙線研究所前身であります宇宙線観測所がありました。この大学共同利用という考え方は世界で極めて珍しいものであり、多分、今でも日本が、日本だけが持っているような研究施設だと思います。誠に世界に誇るべきものであります。  現在はこの二研究所以外にも極めて多くの附置研共同利用研究所があると思います。このような共同利用研にいかなるものがあるか、さらに、後に大学附置でない高エネルギー研究所のような国立大学共同利用研究所も創設されておりますが、どんなものが現在あるか、お聞かせください。
  13. 石川明

    政府参考人石川明君) 国立大学法人には現在五十九の附置研究所が設置されておりますが、このうち、全国共同利用型の附置研究所につきましては、ただいま先生からお話ございました京都大学基礎物理学研究所、あるいは東京大学宇宙線研究所のほか、海洋に関する基礎研究目的といたしました東京大学海洋研究所でありますとか、あるいはたんぱく質に関する研究目的としております大阪大学たんぱく質研究所など、合わせて十九の研究所が設置されております。  また、大学附置でない共同利用研究所であります大学共同利用機関につきましては、ただいまお話のありました高エネルギー物理学研究所、あるいは人文社会科学系で申し上げますと国立民俗学博物館、あるいは自然科学系では国立情報学研究所など十六の機関が設置されているところでございます。
  14. 有馬朗人

    有馬朗人君 ありがとうございました。  この国立大学共同利用研にしても、全国共同利用基礎物理学研究所等大学に附属する研究所等も、すべて、国立、公立、私立の差なく、すべての人が利用できるものであることを申し上げておきたいと思います。名前は国立大学共同利用といいますものですから国立大学だけと思われるかもしれませんが、国立大学の間が離れていまして、国立大学共同利用研究所というふうな意味と解釈しているわけであります。  そこで、このように多くの共同利用研はほとんど、すべてがとは申しませんが、かなりの部分が学術会議勧告に基づいていると思いますが、いかがでしょうか。
  15. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議勧告等に基づきまして設置されました大学附置共同利用研究所でございますが、これは委員指摘のものを始め、東京大学物性研究所京都大学数理解析研究所等機関ございまして、全体の約半数余りということになろうかと思います。
  16. 有馬朗人

    有馬朗人君 この共同利用研究所が画期的であったということは、大学学部自治を超えまして、運営を他大学研究所の、あるいは他大学教員及び他大学研究所教員共同利用研究所やそれに属する、それが属する大学教員とともに運営を行うことができることであります。  これに至るまで、例えば東京大学原子核研究所では大変難しい事情がありました。戦前中の苦い経験を御自分自身が持っておられた矢内原総長が、他大学教員、他大学研究所教員東大の人々と一緒に運営に参画することは大学自主を反するといって強く反対されました。したがいまして、原子核研究所では長い間、他大学教員の加わった運営委員会は、私的には行っておりましたが、東京大学としては正式には認知されなかった期間がありました。  この点については実はあらかじめの質問に加えておきませんでしたけれども、もしこのことが今どうなっているかが御存じでしたらお教えください。
  17. 石川明

    政府参考人石川明君) その点につきましては、ちょっと今日詳しく承知しておりませんし、資料も用意しておりませんので、後ほど御報告をさせていただければと思います。
  18. 有馬朗人

    有馬朗人君 これはもう既に解決しておりまして、一九七〇年の後半であったと思いますが、すべての共同利用研究所大学自主大学自治を侵さないように他大学の人が運営に入れるようにしたところであります。  もう一つ京都基礎物理学研究所が行いました画期的な制度は、教授、助教授助手、すべてに任期制導入したことであります。一九五三年のことでありました。これは、その前身でありました湯川記念館の、あるいは湯川研究所助手の人事からそのことが行われていたところであります。  このような研究者任期制日本大学でも例の少ないことでありました。問題は、特に国立大学では教育公務員特例法に反することでありまして、言わば紳士協定で行っておりました。一九九六年、文部省大学審議会でこの問題を検討いたしまして、一九九七年、大学教員等任期に関する法律を成立させまして、現在行うようになったわけであります。その検討に従いまして作られた法律に基づき、公に任期を付けることができるようになりました。今回の国立大学法人化に当たりましても、中期計画の素案を見ますと、八十九大学中八十六大学任期制導入し、又は導入検討するという趣旨の記述が盛り込まれていると聞いております。  このように、任期制を一九五三年に既に導入したということは極めて先見の明にあふれた考えでありました。そして、その後ろには学術会議、特に物理学研究連絡委員会原子核研究連絡委員会等の進歩的な考えがあったのであります。文部省による国立大学への任期制導入は一九九七年でありました。それに先立つこと約四十年前にもう既に任期制基礎物理学研究所導入しておりましたし、その後の共同利用研究所はほとんどすべてが任期制導入しておりました。  共同利用研に類するものが幾つかあります。その一つは、一九九九年までありました全国共同利用大型計算機センターであります。  私事になりますけれども、一九六一年、アメリカから帰国いたしまして、日本国公私立大学すべてを見て、大型計算機が皆無であることに愕然といたしました。また、当時の日本産業界では世界で競争できる大型計算機を製作する力がありませんでした。一九六三年当時、多くの若手研究者は総力を結集いたしまして、全国共同利用大型計算機センターの設立を要望いたしました。その結果、学術会議が一九六三年に勧告を行ったわけであります。そして、東京大学、次に京都大学等々、全国に、七つの国立大学国立大学大型計算機センターが設立されたわけであります。  これは、渇望していた全国国公私立すべての大学研究者要望にこたえたのみではありません。大型計算機を用いた日本学術論文の質を一変いたしました。それまでは日本の我々が書いた論文は信用されなかったんです。特に実験のデータの解析が信用されませんでした。それは、日本研究の分析は手でやっているということでありました。しかし、この大型計算機センターが作られて、一変して日本論文が受け入れられるようになったわけです。さらに、学生や特に大学院学生情報教育を抜本的に向上いたしました。  それ以上に重要なことは、ほとんどゼロに近かった日本計算機産業の力を急激に伸ばしまして、アメリカと肩を並べるまでになりました。  一例を申します。一九八三年から一九八五年、私は東大大型計算機センター長でありましたが、一九八三年、当時、世界最高ベクター型スーパーコンピューター東京大学センター導入いたしました。これは国産でありました。アメリカにもクレイというのが一つありましたが、日本では二つ三つ国産のすばらしい計算機があったわけであります。その一つ導入いたしました。重要なことは、アメリカを含め世界大学にはこの水準計算機を持ったところはなかったのです。アメリカより国の調査団東大に参りまして調べていきました。そして、少し後、アメリカの六大学スーパーコンピューターセンターができたと聞いております。ここまで日本計算機を育てたのは、実に一九六三年の学術会議勧告があったということを私は申し上げたいわけです。  しかし、その後、ワークステーション等、言わば自家用車時代に入りまして、超大型計算機需要は低減いたしました。そのため、大型計算機センターは改組されたのであります。それでは、本当の超大型コンピューター要らなくなったかというと、そうではありません。超大型スーパーコンピューターは更に伸びまして、現在、その最先端に独立行政法人海洋研究開発機構地球シミュレーターがあります。ごく最近、日本計算機用の超大型計算機調査中心アメリカより調査団が来たと聞いております。この地球シミュレーターは特別の目的を持っていて、一般の大学研究者が使用することは、不可能ではありませんが、なかなか難しい。  そこで、要望でありますが、全国大学研究者が共同して用いられる汎用世界最高水準スーパーコンピューターを持つセンター全国に少なくとも二か所に設置いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  19. 石川明

    政府参考人石川明君) 大学計算機センター等におけるスーパーコンピューターの配置のお尋ねでございますけれども、科学技術計算等が大変現在量的にも増大し、また質的にも高度化をしております。そういった意味で、情報基盤関係施設設備の整備は重要であると私どもも考えております。  文部科学省では、日本学術会議勧告等を受けまして、今、先生からお話ございましたように、全国地域大学情報基盤センター、名称はちょっと違ったりするところもございますけれども、そういったものを整備いたしましてその充実を図っております。これらのセンターに配置いたしておりますスーパーコンピューターにつきましても、その時々の需要の増大に対応するために必要な性能が確保されますように随時更新をしてきております。今後とも、その性能維持向上に努めてまいりたいと私ども考えております。  また、今お話のありました地球シミュレーターにつきましても、こういった大変高度な研究に必要なコンピューターとして今大活躍をしております。そして、これにつきましても、必ずしも十分と言えるかどうか分かりませんけれども、大学研究者にも大いに利用されているというところでございます。  いずれにいたしましても、こういった状況などを踏まえまして、今後、全国大学研究者共同利用のために世界最高水準スーパーコンピューターを整備していくかどうかということにつきましては、研究所需要を十分把握いたしますとともに、また技術面の問題もございます、それからコスト面課題等もございますので、これらを十分考慮いたしまして、関係者意見も聞きながら検討を進めてまいりたいと、このように思っております。
  20. 有馬朗人

    有馬朗人君 先ほど申しましたように、全国共同利用大型計算機センターを置いたことによって学生情報についての学力が猛然上がったんです。研究力も猛然上がった。そして、日本計算機産業が、全くゼロだったと言っていいくらいですが、アメリカに匹敵するところまで参りました。ヨーロッパにはこういうものはないんです。したがって、ヨーロッパ計算機から撤退したと言っていいくらいになっている、アメリカヨーロッパヨーロッパ、ちなみに申しますと、CERNという大共同利用研究所がありますが、全世界的な共同利用研、ここではアメリカ計算機導入しているわけです。  そういう点で、日本計算機を進めていく上でも、是非とも大学研究者学生協力し、研究者以上に学生協力して、その研究の上での研究計算機汎用性を増す、そしてソフトウエアを開発するという御努力を賜りたいと思います。よろしくお願いをいたしたいと思います。  さて、以上述べてまいりましたように、極めて多くの勧告ないしは申入れによって研究方針が決まり、研究所創立されました。このような方針日本学術会議が決定するに至る上で研究連絡委員会が極めて重要な役割を演じていると思います。  これら研究連絡委員会委員はだれがどうやって選ぶのか、その役割は。今回の改正によってこの委員会はどう変わっていくのかをお聞きいたしたいと思います。
  21. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 研究連絡委員会委員でございますが、その選任方法でございますが、日本学術会議法によって定められておりまして、それぞれの研究連絡委員会所掌事務、担当する学問分野でございますが、それを専門とされる会員の方のうちから学術会議会長が指名する、もう一つは、各研究連絡委員会の担当する学問領域等に関しまして専門的な知識を有する方、そういった方から日本学術会議会長が委嘱する方、この二つ選任方法がございます。  それから、研究連絡委員会役割でございますが、これは、科学に関する研究の領域及び重要な課題ごとに、日本学術会議が担っております科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること、この職務を遂行するために必要な事項を調査審議することでございます。  それから、今回の改正でございますが、現在、主に科学の領域別に固定的に設置されております研究連絡委員会につきましては廃止することといたしております。今後は、総合科学技術会議意見具申を踏まえまして、様々な科学に関する課題に応じて柔軟に会員や連携会員を中心として委員会を編成することにより審議活動を行ってまいりたいと考えております。
  22. 有馬朗人

    有馬朗人君 私は、研究連絡委員会は、もちろん分野によりますけれども、学術会議以上の役割を果たしていたと思うことがあります。それは、かなり若手が積極的に参加することによって現場の問題を非常に率直に議論してきたからです。  私が心配しておりますことは、あえて言えば、ボス的な存在の人たちだけが議論をするのでは本当に第一線の人の意見が酌み取れないという問題があると思いますが、これは質問に書いておきませんでしたけれども、この若手意見をどうやって酌み取るのか、もしお分かりでしたらお教えください。
  23. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 今回の改正によりまして研究連絡委員会というもの、そのものはなくなるわけでございますけれども、今後、会員あるいは新しくできます連携会員を選任していくに当たりましては、そういった若手の科学者の方々の登用ということにも十分配慮しながら進めてまいると、そういうことになろうかと思います。
  24. 有馬朗人

    有馬朗人君 是非それお願いいたしたいと思います。  総合科学技術会議の人たちも大ボス中の大ボス、それから文科省の中にある科学技術・学術審議会も、これもかなりの大ボス、そしてここに学術会議のまた大ボスだけ集めていたんじゃ、もう大ボスの声だけで、小ボスや若手意見が全然入らなくなっちゃうと思うんですね。そこを私は非常に心配していまして、日本学術会議若手意見が十分反映するようにしていただきたい。もう一度吉田さんにお聞きしたいと思います。よろしく。
  25. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 今回の改正の内容には、定年制の導入でありますとか、あるいは再任の禁止とか、そういった会員の年齢構成の若返りということも考えた措置も盛り込まれております。先ほど申しましたように、今後、若手の方の登用ということに十分配慮しながら進められていくものと考えております。
  26. 有馬朗人

    有馬朗人君 次の質問に入りますが、学術会議勧告又は申入れによって創立された研究機関の数を、一九六〇年以降、十年ごとに区切ってお教えください。
  27. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議勧告又は申入れによりまして創立されました研究機関の数は、一九六〇年代は十三、一九七〇年代は十八、一九八〇年代は八、一九九〇年代は十一、二〇〇〇年以降は一となっておりまして、合計で五十一でございます。
  28. 有馬朗人

    有馬朗人君 日本学術会議にはもう一つ大変重要な役割があると思います。それは、海外の学会に対応する日本代表の役割を演じているわけであります。また、海外の学会の総会、理事会、そして国際会議への代表派遣をいたしておられますが、このことについて手短にお教えください。また、それに関する予算は幾らぐらいでしょうか。
  29. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議は、日本の科学者の代表機関といたしまして、国際科学会議、インターアカデミーカウンシルなど四十七の主要な国際学術団体に加入しております。例年、これらの国際学術団体の総会、理事会を始め、様々な国際学会等が主催する国際会議に代表を派遣しておりまして、平成十五年度は八十六人を派遣しております。  また、平成十六年度の代表派遣に係る予算でございますが、約五千万円を計上いたしております。
  30. 有馬朗人

    有馬朗人君 私も学術会議の命でもって国際会議に一、二度出席いたしましたけれども、率直に言って非常に予算が安過ぎるというか、旅費もエコノミーで参りましたし、非常に窮屈でありました。そういう意味で、やはりもしこの日本学術会議内閣府に移すのであれば、やっぱり内閣としっかりとした予算をお付けいただきたい。  ちなみに申しますと、学術会議のメンバー、事務局のメンバーですね、人数、それから調査費、出張費等々非常に少な過ぎる。これは国際比較をなさっていただけば明々白々でありますが、この点について後ほど大臣の御意見を、後ほどお聞きいたします。  改正されました場合も、学術会議が海外に対して日本代表として考えてよろしいのでしょうか。そのためには予算も十分に付けなければならないと思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  31. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 有馬委員には昭和六十年から平成六年まで三期九年間にわたって日本学術会議の会員をお務めいただいておりまして、先ほど来の質問を伺っておりまして、質問というよりも、正に日本学術会議であったりとか、日本のアカデミーの歴史を自らの経験で語っていただいている、そういう印象を私は受けたところでありまして、若手の登用の問題、そして政策提言の持つ重み等々、今後の改正されました日本学術会議運営にしっかり生かしていくことが必要だなと、そんなふうに感じた次第であります。  そこの中で、日本学術会議が海外に対して日本の代表となり続けるのかどうかということでありますが、結論的に申し上げますと、それはイエスであります。  御案内のとおり、日本学術会議法の第二条におきましては、「日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。」こととしておりまして、今回の改革でもこの目的規定の変更は行っておりません。したがいまして、今回の改革においても、海外に対する我が国の科学者の代表機関としての性格は変わらない、このように考えております。  それから、予算面につきましても、この分野の専門家の有馬先生の方から大変心強い、また力強い御要望をいただいたと感じておりますが、正直申し上げまして、私もそういった権威のある先生方が海外に行くときにエコノミーをお使いだと、それは今初めて聞いた次第であります。御案内のとおり、政府の財政事情も大変厳しいところあるわけでありますけれども、正にこの学術会議そして会員の皆さん、そういった方々が我が国の科学者の代表機関にふさわしいような活動ができるように、予算面につきましても十分な配慮が必要だと、このように考えております。
  32. 有馬朗人

    有馬朗人君 いや、どうも力強いお答えで、ありがとうございます。是非よろしくお願いをいたします。  ところで、これも予告していなかったんですが、不意に気が付いたことですが、学術会議は外へ出なきゃいけないということになっていませんでしたか。あの建物を出なきゃいけないということになっていたと思いますが、その辺はもう議論しなくなったんでしょうか。
  33. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 先生指摘のとおりでございまして、国の行政機関の移転につきましては以前に閣議決定がされております。日本学術会議につきましても、横浜に移転するようにという方針が決められておるところでございます。
  34. 有馬朗人

    有馬朗人君 私はやめたらどうかと思っているんですよ。あのまま残っておられたらいい。建物もしっかりしたものがあり、生産研は駒場の方に移しました、それから物性研は柏の方に移しまして、あそこが空っぽになった後、ナショナルギャラリーかな、何かになるはずですね。そういう意味では、あそこは地の利を得ているし、今はそれほど、昔ほど都心から出ていけ出ていけという、人口が非常に大き過ぎるからというそういう議論もなくなってきていると思うので、もう一度お考えになっていただきたいと思います。大臣、よろしくお願いいたします。大変あそこは便利でありますので、私たち研究者としてはあそこが非常にいいと思っております。
  35. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 貴重な意見として承らさせていただきたい、今後どういうことができるか検討してみたいと思います。
  36. 有馬朗人

    有馬朗人君 学術会議は国の諮問を受けることになっておりますね。過去に何件ほど、どういうところから受けていたかお聞かせいただきたいと思います。その中で特に重要なもの二、三についてお示しください。そして、その答申に基づきまして、国はどのように実行策を取ったかについてお教えください。
  37. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 昭和二十四年の学術会議の設立以降、諮問を受けまして答申を出した件数は現在まで百八件でございます。  二つほど例を申し上げますと、昭和三十一年に内閣総理大臣から放射線医学総合研究所の設立についてという諮問を受けまして、その答申に基づきまして、昭和三十二年に放射線医学総合研究所が設立されております。また、平成十二年には農林水産大臣から諮問がございまして、地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について諮問がございまして、その答申に基づき、農林省におかれましては、農業や森林の有する機能の多様性に関する普及啓発活動等を行っておられると承知しております。
  38. 有馬朗人

    有馬朗人君 これも通告していなかったので、もしそこで資料があればお聞きしたいんですが、学術会議が答申をして実現するまでに、十年とかいうふうに長く掛かった私は記憶があるものがたくさんあるんですが、そういう御記憶はありませんか。
  39. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) そのように長期間掛かったという事例につきましては、今直ちに資料を持ち合わせておりません。もし必要でございましたら、後ほど御報告させていただきます。
  40. 有馬朗人

    有馬朗人君 原子核関係の加速器なんかは実に長い時間掛かったことがあるんですね。ですから、せっかく勧告をされて、それが国で議論されたらば、速やかに実行できるようにしていただきたいと思います。  次の質問をいたしますが、科学研究費補助金審査委員会の候補を学術振興会の方に推薦していると思いますけれども、今後これはどういうふうになるのでしょうか。それ以外にも幾つか推薦を依頼されているようなことがあると思いますが、いかがでしょうか。
  41. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 総合科学技術会議意見具申におきましては、日本学術会議が行っております科学研究費補助金審査委員の推薦につきましては見直す必要があるということで書かれております。これを受けまして、審査委員の推薦については取りやめる方向で関係機関と調整を進めておるところでございます。  また、日本学術会議におきましては、このほかに、東京大学物性研究所共同利用施設の専門委員会委員、あるいは京都大学原子炉実験運営委員会委員など、各大学からの依頼を受けまして各種委員会委員の推薦を行っております。また、弁護士会からの依頼を受けまして、弁護士会の懲戒委員会委員等の推薦などを行っているところでございます。
  42. 有馬朗人

    有馬朗人君 科学研究費は分かりましたけれども、ほかはそうすると継続することになるわけですか。
  43. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 現在のところ継続する予定でございます。
  44. 有馬朗人

    有馬朗人君 勧告申入れなどが実現して、その結果大活躍をしている研究所等々が大変多いわけでありますが、そういう影響を考えてみますと、日本学術会議が大変大きな影響力を持ったのは率直に言って一九七五年、七七、八年ころまでではなかったかと思うんですね。その理由の一つは、会員が代表する研究者層及びグループに偏りがあったからと言われております。そして一方、一九七〇年後半から文部省関係では学術審議会が大変大きな力を持つようになったと思います。  そこで、日本学術会議の会員の選び方には、各学会等の選挙に基づいたものであったわけでありますが、一九八四年に現在の方法に変わったと思っています。それは一九八〇年から一九八一年の間に、当時の中山太郎総理府総務長官より当時の伏見康治先生に、日本学術会議の会員選出法の改革が要求された結果であったと思います。そのとき、伏見先生が私に漏らした感想は、人間は座布団の上へ座ったときにその座布団を自分が持ち上げても自分を持ち上げることはできないよねと言われた感想を聞いたことがあります。すなわち、非常に苦労、改革は、自分でやるのは改革は難しいんだということを漏らされたことがありました。  そこで質問。会員の選び方についてお教えいただきたい。一九八四年以前はどうだったか、八四年にどう変わったのか、そしてその変わった理由は何であったか、そして現在は、また今回の改正策ではどう考えるのか、この辺についてお聞かせください。
  45. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 昭和五十九年以前でございますが、これは科学者による選挙制を取っておりました。ただ、この選挙制の下で科学の目覚ましい進展がございましたわけですが、日本学術会議の組織、活動が科学の現状に十分適合しなくなった、あるいは科学者が日本学術会議から離れていきまして第一線の科学者が会員に選ばれなくなったというような状況がございました。これを是正するために、科学者による選挙制から一定の要件を満たす学術研究団体の推薦に基づく会員選出方法に改められたものでございます。  さらに、今回の改正でございますが、これは総合科学技術会議意見具申を受けまして、日本学術会議自らが優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員候補者を選考する方法に改めるものでございます。これは、日本学術会議が真に科学者コミュニティーを代表し、総合的、俯瞰的観点から活動し、個別学術研究団体の利害から自立した科学者の組織となることを目的として行うものでございます。
  46. 有馬朗人

    有馬朗人君 私は、一九八四年に改正されました選出法に従いまして、一九八四年、五年より三年任期で三期会員を務めました。その間、会員といたしまして研究費の増大、大学教育費の増大などを大いに図ったのですが、うまくまいりませんでした。  そこで、高等教育費や研究費の増大や研究施設設備改善について申入れ又は勧告は行ったと思いますが、どういうものがあったでしょうか。
  47. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 今おっしゃられましたような提言の例としましては、昭和六十二年に大学における学術予算の増額についての要望、平成元年には大学等における学術研究の推進について、副題として研究設備等の高度化に関する緊急提言とありますが、そういった勧告、それから平成十一年には我が国大学等における研究環境の改善についてという勧告などを行っております。
  48. 有馬朗人

    有馬朗人君 こういう勧告はやはり現在の大学を良くする方向に役立ったと思って感謝しております。  ところで、私は、脳死問題についての審議に出席したことがありますが、議論が大揺れに揺れて、当時の近藤次郎会長が、私も脳死状態ですということを座長席から言われたことを覚えています。一同爆笑いたしました。  ところで、私の記憶では、脳死については日本学術会議としては何も出せなかった、ただ特別委員会報告で終わったと思いますが、いかがでしょうか。
  49. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議といたしましては、第十三期、昭和六十二年の十月に医療技術と人間の生命特別委員会から脳死に関する見解という報告、それから第十四期の平成三年五月に医療技術と社会に関する特別委員会から脳死をめぐる問題に関するまとめの報告を行っております。
  50. 有馬朗人

    有馬朗人君 だから、学術会議としての声明、全体の声明にはならなかったですね。
  51. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) これは特別委員会の報告として学術会議が公表したものでございますが、おっしゃいますように、学術会議の声明とか勧告、そういったものではございません。
  52. 有馬朗人

    有馬朗人君 この議論を私はずうっと出席して見ていたのですが、会員の同意を得ることは極めて難しかった。  そこで、今回の改正でこのような状況が改善できると考えておられますか。
  53. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 脳死の問題は大変難しい問題であったと思います。  政策提言を行うに際しましては、広く科学者の多様な意見を聴取した上で委員会審議などで議論を深めるということはもとより、科学的水準の高い政策提言として結実させていくということが重要であろうと思います。今後とも、日本学術会議が提言を行うに当たりましては、そういったことを重視して進めてまいりたいと思います。  ただし、総合科学技術会議意見具申で指摘しておりますように、様々な課題に対しまして機動的に対処して迅速に政策提言を行っていくということも求められているところでございます。このため、今回の改革では、新たに幹事会を設けることによりまして迅速な意思決定を行うことが可能な運営体制の確立を図ることとしておりまして、政府政策形成に有効に活用し得る提言を適時に取りまとめていきたいと考えております。
  54. 有馬朗人

    有馬朗人君 日本学術会議はしばしば研究者の国会と呼ばれますね。今回の改正案でそのような性格は本当に保たれるのでしょうか。  学術や科学技術は公平、公正、そして透明に進められなければなりません。会員の選考においてこの点はどう保障されるのでしょうか。私は、多くの人の心配にもかかわらず公正に行われるならば、若手意見を酌み取る上で一部は選挙ということもあり得ると思いますが、いかがでしょうか。
  55. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 今回の改革は、日本学術会議我が国の科学者コミュニティーの代表機関として広く科学者の知見を集約し、政策提言を行うといった役割を果たすために行うものでございます。  会員の選考方法につきましては改革後の新体制において定めることが適当でございますけれども、例えば、先生のおっしゃいましたような要請にこたえるために、学術会議の中に選考委員会を設けまして、会員だけではなく連携会員の協力を得るとか、あるいは分野にとらわれずに意見交換を行うとかしまして、公平に選考するとともに、可能な限り透明性を確保していくということが必要であろうかと思います。  なお、選挙制につきましては昭和五十九年以前に取っておったわけでございますが、その際にはいわゆる日本学術会議からの学者離れといったような問題も起こったわけでございます。そういったことで廃止されたわけでございますが、会員の選出方法として選挙制は適当ではないのではないかと考えております。
  56. 有馬朗人

    有馬朗人君 それにしても、現役の若い人たちの意見が十分反映するようにしていただきたいと思います。  一九九七年の行政改革会議第三十七回会議で、日本学術会議について議論いたしました。そのときは廃止論が強かったのですが、私は、日本学術会議の過去の業績から判断いたしまして存続すること、しかしその将来の在り方を総合科学技術会議検討することを提案いたしました。  その学術会議について、行政改革会議三十七回の議事概要はどう書いてありますか、お教えいただきたいと思いますし、最終報告にどう書いてありますでしょうか。
  57. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 行政改革会議の第三十七回の議事概要では、日本学術会議につきまして多くの内容が書かれておりますけれども、幾つか申し上げますと、日本学術会議と総合科学技術会議との関係が問題である。あるいは、日本学術会議は諮問してもなかなか結論が出ない機関であるけれども、学者が自由に意見を述べ合う場として広く意見を聴取するのに便利な機関であり、その使命について整理するべきであると。あるいは逆に、一度廃止して、どうしても必要ならば再度設置すればいいのではないかと。あるいは、当面存置し、どこかでその在り方を検討してはどうかと。そういったような意見が述べられておりまして、これらを踏まえまして、日本学術会議につきましては当面総務省に置いて存置させることとするが、その在り方については総合科学技術会議検討することという結論が了承されたと記述されております。  また、平成九年十二月の行政改革最終報告におきましても、そのような記述と同様の内容が書かれておるところでございます。
  58. 有馬朗人

    有馬朗人君 そこで、総合科学技術会議検討した結果、どういうふうなことが出てまいりましたでしょうか。
  59. 林幸秀

    政府参考人(林幸秀君) 平成十五年の二月に総合科学技術会議意見具申をしておりますけれども、その中で、学術会議に求められる機能といたしまして、一つ政策提言機能、それから二つ目として科学に関する連絡調整機能、三つ目として社会とのコミュニケーション機能といったものを掲げております。  それからまた、設置形態の在り方でございますけれども、国家的な設置根拠と財政基盤の保証を受けた独立の法人とすることが最終的な理想像ということを言っておりますけれども、当面は国の特別の機関としての位置付けを維持しつつ、主体的な改革を推進すべきであるというふうにしております。その上で、改革の進捗状況と社会的状況を見極めながら、十年以内により適切な設置形態の在り方を検討すべきであるということを述べております。  さらに、改革の推進という面でございますけれども、一つ目としまして、会員選出等についての当面の制度改革につきまして、これは今般の法律案に盛り込まれている点が中心でございますけれども、これを早急に実施すべきであるという点。それから二つ目としまして、特に政策提言機能の充実、活性化を図り、科学技術活動の評価などの面で総合科学技術会議と連携し、国の科学技術政策に寄与することを期待するというふうに述べております。
  60. 有馬朗人

    有馬朗人君 今のお話のように、日本学術会議を将来どうするかということが大きな問題であることはまたもう一度後に触れたいと思います。  しかし、当分の間、日本学術会議内閣府へ移行するのが良いと判断したのでしょうか。なぜかというと、独立せよという意見がかなり強かったと思うんですね。それが一つ。それから、総合科学技術会議との役割分担はどう考えているのかについてお聞きいたします。
  61. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 日本学術会議の独立性につきましては法律でもきちんと担保されているところでありまして、これを継続するということは非常に重要だと思っております。  そこの中で日本学術会議の所管、日本学術会議をどこに置くかと。これにつきましては、総合科学技術会議意見具申におきましては、日本学術会議と総合科学技術会議が連携して我が国科学技術の推進に寄与していく体制を確立するため、日本学術会議に関する改革の具体化に向けて、所管を含め関係省庁で速やかに検討を進める必要がある、このように述べているところであります。  これは日本学術会議と総合科学技術会議役割分担でありますが、同じ政策形成を担っている中でも、総合科学技術会議の方は言わばトップダウンの形で正に政策形成そのものにかかわる、これに対しまして日本学術会議の方は広く科学者のコミュニティーから意見を吸い上げるボトムアップ型で政策提言を行う、こういう役割分担の違いがあると、私はそのように理解しているわけでありますけれども、いずれにしましても、この二つ機関が大変重要な役割を持つわけでありまして、同じ内閣府の中にあって連携を強めていく、こういうことが今後は非常に重要だと考えておりまして、そういう観点からも内閣府への移管というものが望ましいと思っております。
  62. 有馬朗人

    有馬朗人君 ありがとうございました。  私は、今、大臣言われたように、日本学術会議の大きな役割というのはボトムアップ的に科学者の意見を広く集約することだと思います。そして、科学者の視点から中立的に政策提言を行う役割を持たせる、これは総合科学技術会議が述べておられるとおりであります。  そこで、内閣府に属することになれば、時の政府方針に強く左右されるようにならないか、その歯止めは一体どうなっているかについてお聞きいたしたいと思います。
  63. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) ただいま大臣からお話がございましたように、法律上も日本学術会議は独立して職務を行うということになっておりまして、従来同様、政府に対して中立的に提言を行っていけるということには変わりはないと考えております。  日本学術会議はボトムアップ型で、科学者の知見を集約して提言をしていくという役割を持っておるわけでございますが、そういったことから直接政府政策がその提言に影響するというような性格のものではないのではないかと考えております。
  64. 有馬朗人

    有馬朗人君 総合科学技術会議は科学技術基本計画を検討し、予算の配分まで判断するわけでありますが、日本学術会議は基本計画や個々の研究計画の検討に参画するようになるのでしょうか。
  65. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 総合科学技術会議政府の科学技術政策の司令塔ということで、科学技術基本計画や研究計画の策定、決定をされておられるわけでございますが、日本学術会議はボトムアップ的に広く科学者の意見を集約して、長期的、総合的、国際的観点から、科学者の視点に立って政府に対し政策提言を行うという役割を担っておるわけでございます。  こういった立場から、総合科学技術会議が行っておられますそういった政策の立案に当たって必要な内容を政策提言してまいりたいと考えております。
  66. 有馬朗人

    有馬朗人君 少し話は飛びますけれども、私の聞いたところでは、最近、日本学術会議は科学技術基本法の評価を行っていると聞いております。一例は、理化学研究所のSPring8を対象とした調査であります。  私は、本来、大いに評価を行うべしという立場であります。大いに公平に評価が行われればよいと思っておりますが、今回の調査の結果をどういうふうに使おうとしておられるのか、そしてまた、今後も総合科学技術会議が推進する政策の評価を独自にやろうとしているのか、その目的をお教えください。
  67. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議におきましては、平成十五年の五月に運営審議会に科学技術基本計画レビュー委員会というものを附置いたしまして、科学技術基本計画のレビューに関する調査を行っております。  この委員会におきましては科学技術基本計画に関する国内及び海外調査を実施しておりまして、理化学研究所のSPring8を対象とした調査につきましても国内調査一つと位置付けております。  学術会議としましては、こういった事項の調査結果を総合的に考察いたしまして、次期科学技術基本計画に必要な事項を俯瞰的に政策提言するということによりまして、より良い科学技術基本計画の策定に貢献していきたいと考えております。
  68. 有馬朗人

    有馬朗人君 今まで述べてまいりましたように、日本学術会議は様々な研究所の設立を勧告したり、申し出てきました。このような勧告や申出も、今後も総合科学技術会議あるいは文部科学省等々になさるのでしょうか。
  69. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 今後の勧告、提言の内容につきましては様々なものがあろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、科学者の意見を集約しまして、長期的、総合的、国際的観点から政府に対して勧告を始めとする政策提言を行っていきたいと考えております。  また、その政策提言の内容に応じまして、総合科学技術会議を所管する内閣府を始め、広く政府全体を対象として提言をしていくということになろうかと思います。
  70. 有馬朗人

    有馬朗人君 大変意地悪い質問をしたいと思うんです、ここで。  それは、総合科学技術会議方針日本学術会議方針が相反したらどうであろうかと。例えば今、総合科学技術会議としてはIT、バイオ、ナノ、環境などの四重点項目を唱えておられます、推進しておられますが、そのことには反対ないと思いますが、仮に、仮にどれかに反対というようなことが起こったときにどうするんでしょうか。
  71. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議は、科学者コミュニティーの代表機関といたしまして、科学者の意見を集約してこれを政策提言していくという機関でございます。学術会議法律上も独立して職務を行うということになっております。  そういうことで提言をしていくわけでございますが、その行った提言につきましてどのように政策形成に反映させるかということにつきましては、政策立案をされます政府の責任で最終的に判断されるべきものと考えております。
  72. 有馬朗人

    有馬朗人君 そうすると、実行においてはあくまでも総合科学技術会議がイニシアチブを取るということですね。学術会議はそれに対して、時に評価をし、時に批判をするということですね。
  73. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議が行います提言は、これはもちろんその内容を実行していただきたいという提言でございますが、政策、具体的な政策の立案、決定ということになりますと、それぞれを所管しておられます省庁あるいは総合科学技術会議、こういったところで責任を持って行われるということになろうと思います。
  74. 有馬朗人

    有馬朗人君 総合科学技術会議意見具申を読みますと、同会議、すなわち総合科学技術会議日本学術会議の両者は車の両輪として我が国の科学技術の推進に寄与するものと位置付けると述べられています。  私は、この両輪という言葉を日本語として解釈いたしますと、ほとんど平等な役割を演ずるというふうな意味に解釈しますが、よろしいでしょうか。
  75. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 総合科学技術会議日本学術会議はそれぞれ違った役割を持っております。総合科学技術会議は自らトップダウン的に政策形成を行う、日本学術会議は科学者の意見を集約しまして提言につなげていくと、そういった役割の違いがございます。  ただ、そういった役割の違いがございますけれども、両者が連携していくことによりまして我が国の科学技術を推進していく必要があると、そういった意味でこの車の両輪という言葉が使われておるのではないかと思います。
  76. 有馬朗人

    有馬朗人君 そうしますと、今後、両会議は、科学技術基本計画などを立案する際などにも常に相談して、特にボトムアップ的なことに関しましては日本学術会議考え、例えば基礎科学技術をもっと強く国として支持せよというふうな方針を総合科学技術会議に反映することができるわけですね。
  77. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議は科学者の意見を集約しまして提言につなげていくということで、その提言の内容がどのような内容になるか、これは様々なものがあろうかと思います。  先生指摘のような内容というものも考えられるわけでございますが、その内容につきましても、そのような提言がございますれば総合科学技術会議に提言し、相互に連携し、相談しながら我が国科学技術の推進に努めていくということでございます。
  78. 有馬朗人

    有馬朗人君 日本学術会議には、科学者の良心に基づいて意見を広く集約し、独立性を保ち、中立性、公平性、透明性が強く要求されると思います。  内閣府の中に総合科学技術会議と両輪となったときに、政府の意向に大きく反するというふうなことが起こった場合にはどうするんでしょうか。中立性などは本当に保てるのでしょうか。
  79. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 車の両輪という表現、私は、重要性から見て車の両輪なんだと。右のタイヤが右側を向いたから左のタイヤも同じように向いていかなくちゃならない、こういう意味とは解釈をいたしておりません。  そういった中で、委員おっしゃる中立性、独立性、公平性、そしてまた透明性、正に今後の日本学術会議に更に求められる性格だ、そのキーワードだと、そんなふうに解釈をいたしているところであります。  独立性につきましては、先ほども申し上げましたように、法律的にも担保されているわけであります。そしてまた、中立性、公平性の問題、これは正に、政府としても、政府の中ではなくて独立した機関から求める政策提言としては中立なものがいい、公平なものがいい、こういう政府としてもニーズを持っている、そういう自覚を持って、日本学術会議の方からもいい提言をしていただきたい、こんなふうに考えております。
  80. 有馬朗人

    有馬朗人君 多々ありがとうございました。非常にはっきりとお答えくださってありがとうございました。ただ、後ほど独立性をどう保ったらいいかということについての私の提案をいたしたいと思います。  日本学術会議は今まで様々な申入れ勧告等を行いました。そしてその多くが実現し、日本の科学技術、学術の発展に大きく寄与したことは今まで述べてまいりましたとおりであります。今後もボトムアップ的な科学技術、学術の政策提案を出し、諮問に応じてほしいと思います。  しかし、やはりどうも内閣府の中に入ったときに、総合科学技術会議との関係が私は気になります。学術会議政策提案はどこへ出すんでしょうか。そしてだれが実行するのでしょうか。諮問はどの省庁も直接することができるのでしょうか。総合科学技術会議日本学術会議に諮問できるのでしょうか。この辺についてお伺いいたします。
  81. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 学術会議の提言でございますが、これは広く言えば政府に対して提言をするということでございます。政府の中の、それぞれ内容に応じて実行される省庁がございますので、そういったところでその提言を反映した政策を企画立案していただきたいと、こういうことでございます。  また、諮問につきましても、各府省からこれは直接いただいておりますけれども、総合科学技術会議学術会議に諮問するということもこれは可能であろうかと思います。
  82. 有馬朗人

    有馬朗人君 ここでがらっと質問の形を変えたいと思います。  日本学術会議が対応しておりますアメリカ等諸外国のアカデミーの設置形態はどうなっているでしょうか。アメリカのナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスなどは多く非政府、非営利法人と思えますが、いかがでしょうか。
  83. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 主要国の例で見てみますと、アメリカの全米科学アカデミー、イギリスの王立協会、フランスの科学アカデミー、ドイツの学術アカデミー連合などは政府から独立した非営利法人でございます。また一方、ポーランドの科学アカデミー、韓国の学術院、中国の科学院などは政府機関ということになっておりまして、アカデミーの設置形態は、政府から独立した非営利法人となっている国、政府機関となっている国、それぞれがございまして、一様ではございません。ただ、欧米先進国におきましては非営利法人になっているところが多いのではないかと思います。
  84. 有馬朗人

    有馬朗人君 今お話がありましたように、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ等はどれも政府から独立した機関でありますし、確かに中国のアカデミーは国のものであります。  私は、日本学術会議政府よりの予算を得ることを前提としながら、政府より独立した機関になることが望ましいと考えております。国立大学国立大学法人になったのは自主性を強くするためでありました。しかも、非公務員になった方が本来の自主性、独立性を保ちつつ、学術・科学技術政策を立案し評価し、時に批判をすることがやりやすいのではないでしょうか。  そこで、非政府、非営利法人の道を今回なぜ取らなかったのでしょうか。
  85. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 総合科学技術会議意見具申では、まず、日本学術会議役割、機能、組織、機構等につきまして改革に必要な法令改正を行うこととされております。そして、その上で、今回の改革後十年以内に新たに体制を整備して日本学術会議の設置形態について検討を行うとされております。  今回、これに基づきまして、会員の選考方法、内部組織、運営、所管等につきまして改革を実施するための法案を取りまとめたところでございますが、設置形態の在り方の検討につきましては、意見具申に基づきまして、今後、今回の改革から十年以内に改めて検討が行われ、その結果を受けまして、必要であれば措置がなされるということになろうかと思います。
  86. 有馬朗人

    有馬朗人君 日本の科学者の各省庁別分布というのは一体どんなものでしょうか、お聞きできますでしょうか。
  87. 有本建男

    政府参考人有本建男君) お答えいたします。  我が国研究者の組織別な数字を調べてございます。全体で七十五万人ほどおいででございまして、産業界が四十三万人ということになってございます。大学が二十八万人、その他政府研究機関等でございます。  文部科学省所管でまとめてみますと、大学研究者がほとんどでございますけれども、約四割ということになろうかと思います。
  88. 有馬朗人

    有馬朗人君 このように、日本研究者の約四割は文部科学省に属しているわけであります。大学共同利用研などの方針は、今日まで主として文科省の科学技術・学術審議会で議論し、検討してまいりました。  そこで、科学技術・学術審議会の役割は一体何でしょうか。特に、加速器、天文台、宇宙科学など巨大巨費、大きな費用、巨大巨費研究方針日本学術会議の各研究連絡委員会検討の進行を見ながら決定したことが多かったと思いますが、今後もこの方針は変わらないのでしょうか。
  89. 石川明

    政府参考人石川明君) 科学技術・学術審議会は、科学技術の総合的振興に関する重要事項及び学術の振興に関する重要事項を調査審議し、文部科学大臣意見を述べるということをその任務としております。このうち、学術分野につきましては、先生御案内のとおり学術分科会が設置されているところでございまして、研究者のみならず産業界あるいはマスコミなど国民各層の意見を反映いたしまして学術の振興に関する報告を行うなど、学術行政の推進に当たって重要な役割を果たしてきておるところでございます。  ただいまお話のありましたようなビッグサイエンスに関しましては、例えば大強度陽子加速器計画あるいはALMA計画の推進に当たりまして、日本学術会議研究連絡委員会での様々な検討、御報告、こういったものが科学技術・学術審議会あるいは旧文部省の学術審議会などでの検討につながりまして、そして最終的に計画の実現につながっていくというようなこと、そういったケースがよく見受けられるわけでございまして、こういった意味でも、ビッグサイエンスの推進に関しまして日本学術会議は大変大きな役割を果たしてきたものと私どもとしても考えております。  今回の改正では、研究連絡委員会自体は廃止というふうに伺っておりますけれども、また新たな仕組みというのは取られるというふうに聞いております。こういったものを通じまして、長期的、総合的な観点からの政策提言を引き続き適時適切にいただけるものと私どもとしても期待をしておりますし、文部科学省といたしましては、今後ともこういった日本学術会議等の御意見も十分に聞きながら、そして科学技術・学術審議会における議論や検討の結果をしっかりと踏まえまして学術の振興に努めていきたいと、このように考えております。
  90. 有馬朗人

    有馬朗人君 ここで研究の評価ということについてお聞きいたしたいと思います。  例えば、予算要求における評価であります。文部科学省では、科学技術・学術審議会で十分検討した上で順番を付け、予算要求に入っていると思いますが、いかがでしょうか。
  91. 有本建男

    政府参考人有本建男君) 文部科学省におきましては、科学技術に関する予算の概算要求に先立ちまして、今、先生指摘のとおり、科学技術・学術審議会等におきまして専門家による事前評価ということを行っております。  特にその評価に当たりましては、平成十四年六月に策定をいたしてございます文部科学省における研究及び開発に関する評価指針、これのポイントを申し上げますと、優れた研究開発を見いだし、伸ばし、育てる、さらには研究者を励ますということ、それから研究者専門性を発揮すると、それからさらに研究開発の特性に応じて適切なものとして評価すると、こういったところをポイントとして事前評価を行っているわけでございます。具体的には、次の年度の概算要求における新規あるいは拡充いたします重要な研究開発課題におきまして、科学技術・学術審議会に置かれている分野別の専門委員会等を使いまして評価を行っておるわけでございます。  これを踏まえて私ども概算要求を作成しておるということでございまして、今後とも、こういう体制をしっかり充実しながら概算要求の作成をしてまいりたいというふうに思ってございます。
  92. 有馬朗人

    有馬朗人君 例えば、昨年度の予算要求で、文部科学省としては第一に選んだスーパーカミオカンデの計画が総合科学技術会議でCランクとされたことがありました。いろいろな理由は聞いておりますが、もう一度公式見解をお教えいただきたいと思います。
  93. 林幸秀

    政府参考人(林幸秀君) 平成十六年度の概算要求におきましてニュートリノ関係の計画としましては二つ出ておりまして、一つ目としましては、つくば市に設置されました加速器から発射されるニュートリノを岐阜県の神岡町に設置されましたニュートリノ観測装置スーパーカミオカンデによって検出すると、こういったプロジェクト、これが一つ目でございます。それから二つ目として、茨城県東海村におきまして建設中でございます大強度陽子加速器計画、これが二つ目と。この二つのプロジェクトが要求されたわけでございます。  で、この二つ目のプロジェクトでございます大強度陽子加速器計画といいますのは二つ、この中でまた二つに分かれておりまして、第一期計画としまして加速器本体等の建設を行う、それから第二期計画としましてニュートリノ実験施設等の建設を行うということでございます。  問題となりましたのは、この第二期計画のうちでニュートリノ実験施設建設着手というものを平成十六年度に前倒しして行うかどうかといった点でございます。これを文部科学省としては要求するということになったわけでございますが、総合科学技術会議としましては、文部科学省において事前評価が適切になされたかどうかということについて疑問があるというふうに判断をいたしまして、見直しを行うべきであるということでCランクといたしたわけでございます。あわせまして、第一期の計画の完遂というものが最重点でありまして、合理的かつ現実的なスケジュールを検討して、これに基づいて第二期計画を検討すべきであるという留意事項を付けております。  なお、ニュートリノ研究の重要性といいますものは十分に総合科学技術会議としても認識しておりまして、現行のスーパーカミオカンデ関係のプロジェクトにつきましては、積極的な発展を期待するという観点からSランクとしております。  以上でございます。
  94. 有馬朗人

    有馬朗人君 同僚が十分評価して大きな順位、高い順位に付いているようなものは慎重にお取り計らい願いたいと思います。  ゲノム解明とか遺伝子治療やナノテクノロジーのように、基礎原理はある程度解明され、その応用に重点がある場合には、国家戦略的方向付け、重点投資が必要であります。このようなトップダウン的政策検討と決定は正に総合科学技術会議の使命であると思います。そして、専門でなくても良識によって評価できる部分が大きいと思います。しかし、野のものとも山のものとも分からない未知の分野の研究は、やはりボトムアップ的に芽を出してきたときの評価が大変重要であると思いますし、その評価は、その研究を進めている研究者及び協力者と同じか近い分野の専門家たちによってのみ可能であると私は思っています。  したがって、トップダウン的にやる研究の評価とボトムアップ的な研究の評価はしっかり分けてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
  95. 林幸秀

    政府参考人(林幸秀君) 研究開発の評価につきましては、国の研究開発評価に関する大綱的指針におきまして、その目的、内容、あるいは基礎、応用、開発等の性格に応じまして適切な評価の観点を設ける等、柔軟に実施するということになっております。特に新しい知の創出が期待されております基礎研究につきましては、主に独創性、革新性、先導性等を重視する必要がある一方、その成果は必ずしも短期間のうちに目に見えるような形で現れてくるとは限らず、長い年月を経て予想外の発展を導くものが少なからずあるといった点が考えられます。  そういった点を勘案しまして、この大綱的指針におきましては、画一的、短期的な観点から性急な成果を期待するような評価に陥ることのないように留意するということにしておりまして、高い資質を有した専門家によるピアレビューを行うこととしております。  総合科学技術会議におきましても、このような観点に沿いまして、研究開発目的、内容や基礎、応用、開発等の性格に応じて評価を実施するというふうにしております。
  96. 有馬朗人

    有馬朗人君 文科省の科学技術・学術審議会は、どっちかというとボトムアップ型の研究基礎研究を重要視して、同僚による評価を大切にしてきたと思います。  そこで、お願いでございますけれども、研究を評価するとき、特にボトムアップ型の研究の評価では、専門が同じか近い同僚たちによるものを大切にしていただきたいと思うのです。いったん何とか委員というふうな強い立場に立ちますと、ついつい何でも分かるという自信ができるものであります。自信過剰になることが多い。しかしながら、先端的な研究、例えば学術でいいますとサンスクリットのようなものの先端研究もあるわけであります。そういう学術としての先端的な研究も、ニュートリノやクオークのような基礎科学研究、先端的な基礎科学研究も、これは内外の、日本だけでなく内外の研究者、同僚の研究者中心にしてしか評価できないようなことがあるということを十分御理解を賜りたいと思います。  そこで、総合科学技術会議文部科学省の科学技術・学術審議会の役割分担は一体どうなっているんでしょうか。特に予算案作成時の評価での協力はどういうふうになっているのでしょうか。
  97. 林幸秀

    政府参考人(林幸秀君) 優れた科学技術を推進するためには、選択と集中の考え方の下、不必要な重複あるいは府省の縦割りによる弊害といったものを排除しまして、真に重要な施策に研究開発資源を重点的に配分するといったことが重要だと考えております。  このために、総合科学技術会議におきましては、予算要求の際に、各府省の科学技術関係施策につきましてS、A、B、Cの四段階におきまして重点順位付けを実施するということになっております。この優先順位付けにつきましては、基礎的な研究から産業化、実用化に近い研究開発プロジェクトまで、府省にまたがる広い範囲につきまして総合的、俯瞰的な観点から行うということでございまして、一方、文部科学省の科学技術・学術審議会の方につきましては、文部科学省単独省、一省の範囲内で、所掌の範囲内で行う評価ということになっておりますので、おのずと異なるというふうに考えております。  ただし、その優先順位付けを行う際には外部の専門家からの助言を受けるということになりますし、あわせまして、文部科学省における科学技術・学術審議会など、各府省の審議会による評価をした結果につきましても十分に参考にするということに考えております。  以上でございます。
  98. 有馬朗人

    有馬朗人君 大臣にお聞きしたいことでございますが、私は日本学術会議が伸び伸びとより一層活躍されることを望んでいる人間であります。しかし、十年後にまた日本学術会議の在り方について見直しがあるというふうにおっしゃっておられますが、非政府、非営利法人化一つの可能性として検討を続けていただきたいと思います。これは、独立性を真に確保する上でこの方針が良いかと思っていますが、大臣の御見解をお聞きいたします。
  99. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) やはり理想的な姿としては、欧米諸国のアカデミーのように独立の法人になると、そういう形態があると思います。委員御案内のとおり、今回の改革におきましては、日本のまだ社会というものはこの科学者の提言に対してどう受け止めるかという問題であったりとか、欧米と違う税制制度の問題等々があって見送られるという結果になったわけでありますが、正に十年という期間を設定して今後の改革の進捗状況を評価して、望ましい在り方、再度検討するということでありまして、そこの中におきましては、委員御提言の非政府、非営利法人の可能性、これも検討の中に入ってくる、このように認識を私はいたしております。  今いただきました質問が数えてみますと四十五問目になるんじゃないかなと思うところでありますけれども、一つ一つ大変重要な御質問、御提言をいただいておりまして、そういったことを今後の日本学術会議運営にしっかり生かしていくことが必要だなと感じた次第であります。先ほど、自分の座っている座布団を持ち上げるのは大変だと、こういう話がありましたけれども、これからの日本学術会議には、自分の座っている布団に安穏とするんじゃなくて、それを持ち上げる、それぐらいのエネルギーで私は運営してほしいと思っております。
  100. 有馬朗人

    有馬朗人君 ありがとうございます。なかなか、物理法則はそうできていないものですから、難しい。  そこで、少し違った問題になるかと思いますが、第三次科学技術計画で、重点項目として大学大学院等における科学技術の人材養成を入れていただけないか、そのための予算を増大していただけないかということをお願いをいたしたいと思うのですが、この点をお聞きいたしたいと思います。  文部科学省の科学研究費補助金のいわゆる科研費がこの十年間大幅に増大したこと、一九九五年、科学技術基本法によっていると私はしみじみ思うんでありますが、と同時に、一九九六年に始まる科学技術基本計画のおかげだと感謝しております。しかし、度々同じ質問で恐縮ですが、研究の競争的資金としてはアメリカの十分の一ぐらいであったと思います。確認をお願いいたしたいと思います。
  101. 林幸秀

    政府参考人(林幸秀君) まず競争的資金の方を先にお答えいたしますと、競争的資金につきましては、平成十六年度予算で日本の全体で三千六百六億円ということでございます。これは、非常に厳しい中では、予算の中では三・三%の伸びということでございます。  ただ、今、先生指摘がありましたけれども、我が国の科学技術関係の予算の中では三兆六千億の中で一割ということでございますし、アメリカの場合には競争的資金といいますのは科学技術全体の予算の中で三割を占めておりますし、日本の競争的資金の総額と比較しますと、日本のものがアメリカの一割にすぎないという状況にあることは事実でございます。  それから、最初の方のお話でございました第三次基本計画の中に大学とか大学院における人材の問題についてきちっと触れるべきじゃないかという御質問でございますけれども、現在、大学大学院における優れた科学技術の人材の育成ということにつきましては、現行の第二期の科学技術基本計画の中でも非常に重要な項目であるということでうたっておりまして、我々としましては、科学技術創造立国の実現に向けまして取り組むべき重要な課題であるというふうに認識しております。  また、総合科学技術会議におきましても、昨年の七月から科学技術関係人材専門調査会を設置しましていろいろ議論をしておるところでございます。今度の、現在の科学技術基本計画につきましては平成十七年度末までが終期でございまして、現在、三年経過後のフォローアップを行っておりまして、そういったことを踏まえまして、また人材専門調査会の結果、議論の結果を踏まえまして、次期基本計画の策定の具体的検討を行っていくことになるというふうに承知しております。
  102. 有馬朗人

    有馬朗人君 大臣にお願いでありますが、やっぱり日本の科学技術に十分寄与できるような人材を育成することは極めて大切だと思うんですね。大学院、大学役割は大変大事だと思います。そういうことについても十分御関心をお持ちくださいまして、御推進賜りたい。  それからもう一つは、やはり先ほど議論いたしましたように、競争的資金が非常に日本は少ないので、この点も是非とも根本的に増大するようお願いをいたしたいと思いますが、お考えはいかがでしょうか。
  103. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 科学技術の人材の育成の問題、そして競争的資金、正に基礎研究担っていく上で重要だと考えておりまして、その拡充につきましては、物理の法則はよく分かりませんが、しっかりやってまいりたいと考えております。
  104. 有馬朗人

    有馬朗人君 よろしくお願いします。  最後に、二分を使いまして、国立大学等の施設についてお聞きいたします。  国公私立を含めまして、日本大学の施設というのは私は非常に不満足に思っております。そういう意味で、科学技術の発展のための人材育成や世界水準の教育研究成果を確保するためには施設を良くするということが絶対必要であると認識しているわけであります。  そこで、国立大学法人等の施設については、従来から、老朽化、狭隘化を改善すべく、国立大学等施設緊急整備五か年計画を策定し整備中であると聞いておりますが、三年目となる現在においてどれほど良くなったか、そして今後どうするのか等についてお聞きいたします。
  105. 萩原久和

    政府参考人萩原久和君) 施設の整備についてお答えいたします。  国立大学法人等の施設につきましては、平成十三年に策定されました国立大学等施設緊急整備五か年計画に基づきまして、重点的、計画的に整備を進めております。この計画の四年次に当たる平成十六年度予算までを含めますと、これまでに整備量で三百七十三万平米、事業費で一兆二千五百八十六億円の整備を行ってまいりました。これによりまして、整備目標の一兆六千億円、これを整備目標として定めておりますが、これに対しまして約八〇%の整備が図られたことになり、大学院施設の狭隘解消や卓越した研究拠点の整備などは目標に達しつつあります。しかし、既存施設の老朽改善、整備につきましては、今後、更に努力が必要であると認識しております。  一方、本計画では、量的整備と併せまして、システム改革といたしまして、全学的な視野に立った施設管理運営システムの構築や、各学部等が共有する総合的、複合的な研究棟の整備など、施設の弾力的、流動的利用の実施に取り組んでおりまして、各法人においてその成果が現れてきていると思います。  また、本五か年計画の最終年度に当たります平成十七年度までは本計画に基づきまして着実に整備を実施することにしておりますが、十八年度以降におきましては、先生指摘の人材育成のための教育施設の充実やあるいは耐震改修を含む老朽化した施設の改善整備、さらには、新たな科学技術の発展や社会の要請に対応した施設整備、これらを改めて整備目標を見直し、引き続き計画的、重点的に施設の整備をしてまいりたいと考えております。
  106. 有馬朗人

    有馬朗人君 施設は、長期的な見通しの下、継続的な投資が必要であると思います。五か年計画、今の五か年計画が終了いたしましても、次期五か年計画を策定し、重点的、計画的整備が必要であると考えます。  そこで、大学研究所施設設備の充実を第三次科学技術計画に入れていただきたいということを要望いたしまして、もし大臣がそうだとおっしゃってくだされば大変ありがたいんですが、この要望、もう時間参りましたので要望をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  107. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) しっかり検討させていただきたいと思います。
  108. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 本日の審議は日本学術会議法改正でございますけれども、私はあえて、大変御多忙な中に日本学士院の長倉先生にお見えをいただきまして御高見を承りたいと思って委員長にお願いをした次第でございます。  長倉先生におかれましては、大変御多忙な中、誠にありがとうございます。感謝いたします。先生も御多忙と思いますので、初めに長倉先生に御意見を承らさせていただきたいと思います。  私は、かねがね、日本の科学の発展のためには、日本学士院と学術会議と、それと性格はちょっと違いますけれども今回独立行政法人になっております日本学術振興会、こうした組織を一本化して、先ほど有馬委員の御質問にもございましたけれども、政府から予算的な支援は受けるけれども、その存在そのものは政府から独立しているという組織にする方が望ましいのではないかと、こう長い間考えてきております。  このことにつきまして長倉先生の御高見を拝聴いたすことができれば幸いと思います。
  109. 長倉三郎

    参考人長倉三郎君) 日本の科学技術の推進の根源にかかわる一つの大きな問題を御提議いただいたわけでございまして、この問題について、私、考えておりますことを述べさせていただきます。  日本学士院の現在の活動につきましては、ここで改めて申し上げるまでもなく、西岡先生、文部大臣の御経験、御活躍等を通してよく御存じのことでございますので、省かせていただきたいと存じます。  ただ、現在、日本学士院は碩学の府という形で、学術志向の活動を、優れた会員の学識経験、高い識見等を通して、国内的な面及び国際的な面の両面において活動を続けているわけでございます。具体的な活動の内容は省略をさせていただきますけれども、学術志向の活動を続けておるという点で、日本学術会議の言わば政策志向の活動とはその目的、機能等において異なっているというふうに理解しているわけでございまして、そうした面から、この二つ機関はそれぞれ日本学士院法、日本学術会議法等によりまして独立して設置されているというのが現状でございます。  現在、科学技術あるいは学術自身も大きな変革の流れの中にございますので、そうした中で日本学士院もこれからどういうふうな目的に沿って活動し、機能を発揮するか、これはもちろん日本の学術の発展に対して貢献をできるだけいたすということが我々の目的でございますが、具体的にどのような活動を続けていったらよろしいかというふうなことで、私、院長に就任いたしまして、内部に将来問題検討委員会というものを作りまして、今審議を続けている段階でございます。したがいまして、今、先生のこの大きな御提案に対しまして私から現段階でこういたしますというお返事はできないということを御理解いただきたいと思います。  特に、この学士院の会員は独立不羈の精神が大変旺盛な方が多いわけでございまして、これは学問のうんのうを究めるという面では大変大きな意味があるわけでございますけれども、しかし、会議で全体の意見をまとめるというふうな面におきましては、院長としては大変苦労しなければならない問題であるということでございまして、この点は西岡先生にも御理解いただける点があるのではないかというふうに存じているわけでございます。しかし、今後、この将来問題検討委員会等を通しまして、先生の御提案の点につきましては慎重に内部でも検討させていただくということで進めていくことはできるかと存じておりますけれども、いずれにいたしましても、この独立不羈の精神の高い、そういう会員の表れであるということで慎重に審議いたしまして、しかもそう簡単には結論が出ないのではないかというふうには考えている次第でございます。  それから、私、実はこれまで日本の学術体制の中で、例えば総合研究大学大学を作るとか、岡崎の機構、研究機構を作るとか、いろんな面で新しい試みを進めてまいったわけでございますけれども、その際に私が常に念頭にございましたのは、学術関係の組織については適正規模が重要であるということをいつも念頭に置いておりました。余り大き過ぎてもいけないし、余り小さ過ぎてもいけない。小さ過ぎれば、家族的になりまして相互批判が十分行われないというふうな面が実際にかつて大学附置研究所等であったわけでございます。大き過ぎますと、これは目的があいまいになりまして、未来、未知の知識を探求するというふうな面から申しますと、必ずしも効率のいい成果の上がる形にならない場合もあり得るというふうに考えておりまして、そうした面で適正規模が重要であるということを私は自身の経験から申しまして強く感じている次第でございます。  そういう面から申しまして、この三つを合わせることが適正規模であるかどうかと、これは目的とかあるいは組織等によるわけでございますけれども、そうした面からも慎重に検討する必要があるというふうに考えておる次第でございます。  今後、私自身もいろんなアドバイスをいただきながら、この問題については慎重に検討をしたいというふうに考えておりますということを申し上げたいと存じます。  どうもありがとうございました。
  110. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 私がなぜこういう問題を提起しているかと申しますと、なかなか、先ほど有馬委員からもお話がございましたように、科学の振興のための費用というものは最近でこそかなり予算が増えてきておりますけれども、私が非常に鮮明に記憶をいたしておりますのは、昭和五十年、一九七五年でございましたか、当時私は与党の文教関係の責任者でございまして、坂田文部大臣のときに私は政務次官をさせていただきまして、そのときから五年ほどたって、いろいろと科学研究費の増額のために坂田先生と一緒に努力をいたしまして、私の記憶では一九七五年、昭和五十年にようやく二百億円台に、多分有馬先生有馬委員は御記憶と思いますけれども、大台に上がったと言って、坂田先生と私ともう一人だれか、当時の文部省の幹部と三人で喜びの宴をしたという記憶がございます。  そういう経験からいたしまして、日本の、これは文系も理系も含めて、科学の振興のために最高の権威はここなんだという、そういうものがきちっと存在をするということが必要なのではないかと。  長倉先生おっしゃったように、確かに組織には適正規模というものがあると。これは、私も自分自身の体験からいっても十分そのことは理解いたしますけれども、いろいろなところにいろいろな機関が存在をしていることによって、これだけいろんな分野で、科学、特に自然科学の分野における研究というものが我々が想像している以上に進んできている。それを考えますときに、哲学という問題になるわけでございますけれども、先ほど有馬委員からもお話がございました脳死の問題のときに、実は私は、臓器移植の法案が提案されたときにこれに反対をいたしました。反対の投票をいたしました。これはまだ日本において、あるいは人間がそのことに対して踏み込んでいいのかどうかということに対して疑問を持っていたからでございます。  もう一つ経験がございますのは、たまたま私が文部大臣に就任をいたしましたときに、ヒトゲノムの解析に対して、文部省として正式にこの研究に取り掛かるかどうかということを決定するという場面に私は遭遇をいたしまして、かなり私はそのときに考えたわけでございます。確かに世界的に、当時、ちょうど平成元年でございましたから、世界的に日本は後れていると、これを何とかして早く追い付いていかなきゃいけないということで、これに取り掛かることを急がなければいけないという、そういう状況下にあったわけでありますけれども、行き着くところは、もちろんヒトゲノムの解明によっていろいろな人間の、難病などが治っていくとかいろいろな問題が解明されてきているということにもつながるわけでございますけれども、一方でクローン人間というものが想定をされると。  そういうことを考えると、日本の、正に今、長倉先生がおっしゃったように、日本の碩学と言われるような方々がこうした問題についてどう考えられるのか。適切な時期に適切な発言を権威ある立場でおっしゃっていただかなきゃいけないと。そういう意味では、これはヨーロッパ等においては、私の知る限りでは少なくとも日本学士院のような組織が科学全体を見ているという組織だと思うんです。こういうようなことを考えたときに、今のような日本の、確かに適正規模という点からいうといろいろ問題があるかもしれませんけれども、この機関、この皆さん方がこうおっしゃるならばそれは正しいのであろうと国民も納得するという、そういう権威ある機関というものがやはり必要なのではないか。  そういう点で、私はあえて、日本学術会議法改正の審議でございますけれども、学士院の院長であられる長倉先生にお見えをいただきまして、そういうもの、そういう機関というものが今正に求められているのではないかと、そういう意味で御質問をしたわけでございます。この点についてはいかがでございましょうか。
  111. 長倉三郎

    参考人長倉三郎君) 分散と集合ということがあろうかと思っております。そして、この分散と集合というのは、目的とか機能、それから置かれておる背景等によりまして、調和を保ちながら適当に進められるということが大変望ましいと考えております。  したがいまして、今の問題につきまして申しますれば、学士院といたしましては、学術の基礎にある、学術研究の基本的な考え方あるいはその背後にある精神、これはギリシャ哲学とかキリスト教の考え方とか、そういったものが基本にあるわけでございますけれども、そういったものについて十分な検討をし、それを伝統として根付かせながら、その下で新しい創造を加えていくというふうな面で、日本の学術における継承と創造ということに対して学士院は大いに力を振るいたいというふうに考えておるわけでございます。  そういう面から申しまして、ただいま西岡先生から御指摘のような点につきましては、これは会員個人個人、専門的な立場から意見を持っておるということは私もいろいろ聞いておるわけでございます。学士院の中でそういう議論もございます。しかし、これをまとめた形として政府にいろいろ勧告し、お願いするという点につきましては、これは正に日本学術会議役割ではないかというふうに私自身は考えております。  ただ、この問題につきましても、御提案のとおり、学士院として、もし日本学術会議の活動に対して協力する必要があるというふうな判断をした場合には、当然そうした面について意見を提示するというふうなことはしなければならないかと思っておりますけれども、少なくとも現在、現段階においては、今お話しのような問題につきましては、日本学術会議の方で十分御審議の上、政府に対して勧告をされるとか、あるいはいろいろな意見を出していくというふうなことがむしろ望ましいことではないかなというふうな気持ちを持っておりますということを非常に率直に申し上げさせていただいて、そんなことで失礼いたしますが。
  112. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 これは短時間で答えの出る課題ではないということは私も承知をいたしております。しかし、日本学術会議自体も、先ほど申し上げましたように、政府からは財政的な支援は受けるけれども独立した機関であるべきであると私は思っております。ところが、もちろん議会制民主主義の下における内閣総理大臣に権限を集中しようという今の小泉政権の考え方は私は反対ではありません。責任を持つという意味反対ではありませんけれども、学問の分野についてそういう方向というのはいかがなものかなと、このように考えております。  そこで、日本学士院の皆様方がこうしたことについてどうお考えなのかなということを感じたために、御多忙の中、長倉先生にお見えをいただきまして、私のこれまで考えておりました考えの一端を述べさせていただいて先生の御高見を承ったわけでございますけれども、是非、今のままの学士院の姿というのは、元々学士院の目的の中にも日本の学術の振興のためにいろいろなことをやるんだということが書いてあるわけですから、それをもっと広げていくということが必要なのではないかと。そういうことを考えますと、日本学術会議自体も、これも先ほど有馬委員が御指摘になりましたように、余りにも予算が少な過ぎると。  そういうことも含めて、学士院の会員の皆様方が存在をし、そしてその下に日本若手も含めた各分野の正に活躍される方々、そういう方々が配置されて日本、まあ名前はどういうことになるか分かりませんけれども、そういう組織を作る方が望ましいのではないかという意味で御質問をさせていただいたわけでございます。  是非検討をいただきたいということをお願いをいたします。  本日はありがとうございました。
  113. 長倉三郎

    参考人長倉三郎君) 先ほど科学研究費お話等、私、大変懐かしく実は拝聴させていただいたわけでございます。二百億を突破して千億に、大台に乗るというところまで大変御貢献をいただいたわけでございまして、そういう御貢献に対しては感謝いたしたいという気持ちが一杯でございます。これは有馬先生も大変御活躍いただいた問題でございまして、研究者にとっては大変大きな影響を与えたことでございます。  それで、今の先生の御提案につきましては、先ほど申しましたように、日本学士院として、将来問題検討委員会等が今動いておりますので、そうした面も含めて検討をさせていただくということ、慎重に検討させていただきたいというふうに申し上げたいと存じます。  どうもありがとうございました。
  114. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 長倉参考人、どうもありがとうございました。御退席いただいて結構でございますので、どうぞ御退席ください。
  115. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 大臣にお尋ねをいたします。  今回、法律をこうしてかなり大きな改革をされるわけです。内容、中身につきましてもかなりの改正の部分があるわけでございますけれども、日本学術会議法の前文をなぜ手を付けられなかったのか、お尋ねをいたします。
  116. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議法には前文というものが付いておるわけでございますが、この前文に書かれております趣旨は、現在もなお当時と共通するものがあろうかと思います。特に今回の法律改正によりまして前文を改正するといったようなことは必要ないという判断から、改正いたしておりません。
  117. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 それではお尋ねいたしますが、前文にございます「わが国の平和的復興」というのは現時点においてどういう意味を持っているんでしょうか。
  118. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 日本学術会議法が制定されました昭和二十四年当時におきましては、先生指摘のように、第二次世界大戦後の日本の復興、経済的復興、平和的復興、社会の、文化的な復興、こういったものを遂げなければならないと、そういう強い趣旨が込められておったように思います。  しかし、現在そのことは非常に達成されておるわけでございますが、必ずしもすべて終わったと、いつかの時点で終わるというものではないのではないかと考えております。そういった考え方、理念は今後も受け継いでいく必要があるという考え方から改正しておらないというものでございます。
  119. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 これはちょっと意外な御答弁でございまして、大臣にお尋ねをいたしますが、この「平和的復興」とはどういう意味でしょうか。
  120. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 我が国の経済社会が戦争のない、そういう平和な中に復興を遂げていくと、文章に書かれているとおりだと、こんなふうに考えておりまして、そういった気持ちというのは今後も我が国の科学技術の振興の中でも生かしていく必要があると、そういうふうに思っております。
  121. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 それでは、今の日本の社会は依然として敗戦状態で復興していないということでしょうか。
  122. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 私、社会の発展というのは、ある程度の段階がこれが完全な段階だと、こういうものはないと思っております。例えば、今新しいIT革命と、こういうものが起こっているわけでありますけれども、正にこれは日進月歩の世界でありまして、そこの中にあって新しい目標を達成する、そのために様々な改革を進めていく、こういうことはどの時代にあっても要請をされることではないかなと、こんなふうに考えておりまして、次のステップに向けてどういった努力をしていくか、またそういった中で学術の力をどう使っていくかと、このことにつきましては、常々問い掛けが必要な大きな課題だと思っております。
  123. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 今、大臣が言われたことは私の質問とはちょっと違った御答弁で、今、大臣がおっしゃったようなことをなぜこの前文に、復興ということではなくて、書き換えられなかったんでしょうか。
  124. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 法律の前文は制定当時の法律制定意思、立法意思、そういったものを書いておるものだと思いますが、その意思自体は今日もなお継続しておるものという考えの下にこの趣旨、前文を改正しないということにしたものでございます。
  125. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 これはまた異なことをおっしゃる御答弁だと思いますけれども、今、小泉政権の下で憲法を改正しようという方向、また教育基本法を改正しようということを小泉政権は明言をされているわけです。そういう中にあって、法律の前文は立法の趣旨であるからこれは変えられないというのはどういうことなんでしょうか。
  126. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 法律改正技術的なことで申しますと、通常の内容、今回の改正は一部改正でございますけれども、法律全体を廃止するとか、あるいは新しく制定するとか、そういったものではございません。こういった場合には、通常この前文というものはそのまま存置するというのが通例だというふうに私自身理解しておるわけでございますし、またこの前文自体も、現在の時点におきまして間違っておるというものではございません。引き続きこの立法の趣旨に沿ってこの学術会議法を施行していくということが必要であろうかと思いますので、改正ということはいたしておらないわけでございます。
  127. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 余り、こういう問答は余り好きじゃないんですけれども、我が国の平和的復興という問題と、先ほど大臣が御答弁になった人間の進歩というものも定義が必要でございますけれども、発展には、社会の発展には限りがないと。常に進歩、発展しなきゃいけないと。これにも、発展にもいろいろあるわけですけれども、それと、少なくとも日本の言葉として復興という言葉は違うんじゃないんですか。  それは、その技術的な、法律技術的な問題という問題じゃなくて、法律改正するときに、そのときそのときに合った、時代に対応した法律改正をするというのが法律改正で、こうして国会で審議をする意味なんですから、正確に答えていただきたい。平和的復興は済んでいないとお考えなんですか。
  128. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 法律改正技術的な点につきましては、この改正ができないということを申し上げたわけではございません。今回の改正の内容がこの前文の改正にまで及ぶ必要のあるものかどうかという判断をした上で改正をしないということにしたものでございます。  この平和的復興の趣旨につきましては、この日本学術会議が設立されました当時、戦後、日本の復興を図るためには科学の振興が非常に重要であるという強い趣旨がありまして設立されたものでございます。そういった考え方は、今後の日本におきましても科学の重要性というものは変わらないわけでございますので、そういった意味も込めましてここに引き続き書かれるということでございます。
  129. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 こういう問答をしていてもちょっとしようがないんですけれども。せっかくこれ、総理大臣の直轄にこの日本学術会議というものがなるわけでして、そういう法律改正をするわけですから、私はやっぱりこの時点における言葉の使い方というものも私は大事だと思うんです。大臣、そうお考えじゃありませんか。
  130. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 法律における、私、言葉の使い方というのは、委員のおっしゃるとおり大変重要だと思っております。同時に、私は、そういった趣旨というものは更に重要なのではないかなと。科学技術が文化国家の基礎であると、こういうことを明確に書き、その国の発展のために科学技術というものが必要なんだと、そして国だけではなくて、前文にありますように、この世界の人類の福祉に貢献をする、さらには国際的なコミュニティーともしっかり連携をしていく、そういう趣旨をいかに具現化するかと、このことが今、正に問われている一番重要な課題だと考えております。
  131. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 大臣はお答えいただけないので、この問題はもうこれで止めます。  もう一点、今回、今まで七つの部門に日本学術会議の中のそれぞれの学問分野が分かれていたわけでありますけれども、これを三分野にされた趣旨はどこにあるんでしょうか。
  132. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 現在の科学を考えますと、様々な融合領域というのが出てきているということでありまして、物理は物理であったり化学は化学であると、そういうことから、いろんなものを包含した研究から新しい成果を生むと、こういう時代に私は入っているんだと思っております。  そういうことも踏まえまして、総合科学技術会議意見具申におきましては、科学の新分野の成立や分野の融合に柔軟かつ的確に対応できるよう、現行の七部制を二部制又は三部制に大ぐくり化することと、こういうふうにされたわけであります。  これを受けまして、日本学術会議において検討いたしました結果、近年、生命科学の進歩が著しく、学問の分野において大きな比重を占めていることから、人文科学、生命科学、理学及び工学、それぞれを中心とする三つの部に区分する三部制とすることが適当とされたものであります。
  133. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 私も、この時代の大きな変化とそれぞれの学問分野が大きく変化してきている、そういう意味でこういうふうな形に改正するということについては特に異議はございません。  一つ大臣にお尋ねをいたしますけれども、私どもが学生のころ、学問というものは哲学に始まり哲学に終わるということをある教授から教わったことがございます。大臣はどうお考えでしょう。
  134. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 哲学というのは非常に重要だと考えておりまして、中世の学問におきましても四つの大きな分野、医学、そしてまた法学、神学、哲学と、これが四つの分野でありまして、正に哲学の世界、博士でいいますとPhDと、ドクター・オブ・フィロソフィー、そこの中に、例えば経済学であったり政治学であったり歴史も包含すると、そういう非常に理念的にも広い学問分野だと、こんなふうに考えております。  先ほど三つの分野と、人文科学であったりとか生命科学そして理学、工学、そういう大ぐくりの話をしましたけれども、私はそれぞれの分野に哲学というものは必要なんではないかなと、こんなふうに考えておりまして、先ほど委員から脳死のお話、そしてヒトゲノムのお話あったわけでありますけれども、正に生命倫理をどう考えるかと、ここにつきましても哲学が問われる問題だと、こんなふうに理解をいたしております。
  135. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 日本における、あるいは世界と申し上げてもいいと思いますけれども、哲学の置かれている現状はどういう状況か、大臣の御認識をお伺いいたします。
  136. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 大臣お話しされましたが、すべての分野において哲学は非常に重要であるという考え方は現在も同じであろうと思いますし、日本我が国におきましても世界におきましてもそういった考え方が取られているのではないかと考えております。
  137. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 いや、そんなことを聞いているんじゃないんです。日本における哲学の現状をどうお考えなのかと。哲学という学問が実際問題としては私は非常に存在自体が危なくなっているというふうな感じさえするんです。それをどうお考えかとお尋ねしているんです。大臣にお願いします。
  138. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 文部科学大臣でありませんので、どう答えていいかという部分はあるわけでありますけれども、最近の学生を見ていると、私も同じようなことは感じます。  私、先ほど先生が一九七五年に二百億円を突破したと、そういうお話聞きながら、ちょうど私そのころ大学学生でありまして、まだ学生の間でも哲学の本を読んだりとか、そういう議論をする機会というのは多かったんじゃないかなと。私も時々最近の学生と話をする機会ありますけれども、そういう哲学書を読んだりとか、そういう機会というのが減ってきているような気もいたしまして、それを専門的にじゃどう専攻していくかと、こういう課題もあるわけでありますけれども、冒頭申し上げましたように、哲学の重要性というのは古今東西変わらないものでありますから、それがしっかり生かされるような教育、これは検討が必要だと思っております。
  139. 西岡武夫

    ○西岡武夫君 ちょうど時間となりましたので終わりますが、今日、学士院の長倉院長にお見えをいただきまして、私が、日本学士院と学術会議とそして独立行政法人日本学術振興会、これを一本化すべきであると私は思うということを申し上げたわけでございますけれども、大臣はこのことについてどう受け止められたか、御感想を承って、質問を終わります。
  140. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 日本のアカデミーが独立性を担保すると、このことは極めて重要だと私は思っております。また、先生が一貫してこの一本化について強い御持論をお持ちだと、こういうことも伺っておりまして、今日は先生の御意見も拝聴した次第であります。  将来的には、日本のアカデミーの姿につきましては、常にあるべき姿というのを検討していくことが必要だと、こんなふうに感じました。
  141. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ─────・─────    午後一時十五分開会
  142. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ただいまから文教科学委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本学術会議法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  143. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。  午前中は有馬先生、そして西岡先生に本当に良識の府参議院にふさわしい御議論をしていただいて、そしてそれを我々勉強させていただきまして、本当にありがとうございました。  私も午前中の両先生の御意見、御主張に深く賛同を覚えるわけでありますし、そして私の今までいろいろなことをやってきた立場からも、両先生の御経歴に比べますと私はまだまだ何もしてきていないわけでありますけれども、しかし私は九五年からこのアカデミズムの端くれで今仕事をさせていただいております。実は、この週末からも大学の新入生、一年生にゼミをまた始めるわけでありまして、大学受験を終えて、そして入学式が今行われているところでありますが、正にこの四月から学問の府に入ってくる若者たちにこの金曜日からまたその前に立つわけでありますけれども、そうした立場から、今日行われてきております学問の在り方、学術の在り方、あるいはその在り方に大変大きな影響を与える学術会議あるいは学士院も含めたこの国の学問の権威というものをどういうふうにこれから我々国会としても作っていくかという議論を聞かしていただいたわけであります。  今日その意を更に強くしたわけでありますが、私は昔から、以前からこの学術会議あるいは学士院も含めたこの学問の権威というものは、二十一世紀、知の時代あるいは知性国家ということが、学術会議が平成十一年にお出しになっておられる自己改革についての声明の中でも知性国家という言葉が出ているわけですね。知性国家というものを作っていく上で本当にこの知の在り方というのは社会の在り方そのものを規定するんだろうというふうに思っております。  私の認識をまず結論から申し上げますと、この日本学術会議、あるいはさらには午前中来提言をされている独立の、しかも権威のあるこうした学識の見解というものを表明をしていく組織といいますか機関、これは私は、日本国憲法で定める裁判所に匹敵する機能というものを、知性国家の社会統治、社会創造においてそれぐらいの役割を担うべき存在だというふうに思っておりました。  先ほど前文が付いている法律だということについての西岡先生の御議論もありましたが、正に学術会議法を作った当初の意気込みというのも、やはり前文が付く法律というのはそうそうございませんから、正に戦後復興の中で科学というものが新しい社会を作っていく上で極めて重要な存在なんであるということの当時の立法制定者の意思の表明がこの前文に表れていると思いますし、そういう観点からしたときに、今回の学術会議法の改正案を見させていただきました。  もちろん、現場の皆様方は大変に御苦労をされて、様々な諸課題についての調整を行われこの法律が出てきているということについては、私も十分にその御苦労、御努力については理解をしておりますし、また敬意を表したいと思いますけれども、今私が申し上げた、あるいは午前中に有馬、西岡両先生から御議論をされた、この歴史的、哲学的、思想的学術会議法審議の意味合いといいますか、あるいは学問のこの中立的で権威を持った機関を我々がもう一回二十一世紀のこの初頭に当たって作り直していくんだ、あるいは更に言うと進化させていくんだと。  そういう意味では、総務大臣から内閣府に所掌が変わったということは半歩前進ということで評価はしたいと思いますが、本来これは、例えば国会に所属する機関であっていいと思いますし、さらには憲法上、私は参議院の憲法調査会の幹事もさせていただいておりますけれども、憲法上位置付けられてしかるべきぐらいの議論があって私はいいのではないかなというふうに思っております。  そういう意味で、最初の質問に入りたいと思いますが、結局やはり多数決でもって決せられない話というのは一杯あるわけでありまして、かつ重要な話というのは一杯あるわけでありまして、特に知の時代、知性国家ということになりますと、真理というものが極めて重要な意味を持つ、より重要な意味を持つ。真理というのは必ずしも多数によって支持されるわけでないのが真理の特質、特性でありまして、そのことについて裁判所は正に法の支配を貫徹する観点から、法律上のあるいは法の支配における真理とは何であるかということを確定をさせる。その意味において、科学というものがこの社会の統治において欠かすことのできない今日、何が科学的真理であるかということをやはりその権威ある機関が判断あるいは見解をきちっと示していくということがやはり重要なんだということだと思います。  午前中の議論を聞いていてやや違和感がありましたのは、提言というお言葉をお使いになる、これは私ちょっと違和感がございます。もちろん、いろんな提言はしていただきたいと思います。しかし、提言で済む話なのかと、とどまる話なのかと。  審議会というのがあります、政府の審議会。これは正に諮問に対してそして政策提言をする、そして提言を採択をして政策につなげるかどうか、これは最終的に政府機関が判断をするわけでありますが、学術会議というのは政策提言機関にとどまっていただきたくないというのが私の主張でございます。正に先ほど申し上げましたように、知性国家によって欠かすことができない科学的なその真理というものに対して権威を持って判断をしていく、あるいはきちっと社会にその科学的な真理というものを伝えていく、表明をしていく、ジャッジをしていくという私は機能という観点からしたときに、提言を超えたお仕事というものをやっぱりしていただかなければいけないというふうに思っております。  その観点から、私は、この五十年間の学術会議のお仕事を、もちろん大変なボリュームでありますから全部はフォローすることはできませんが、かなりいろいろな勧告でありますとか声明でありますとか報告を見させていただきました。大変なことに気が付きまして、それは何かといいますと、学術会議法の五条は、学術会議の主たる仕事として勧告ということがきちっと明記をされております。学術会議の本来業務であるこの勧告が、第一期から大体第十一期ぐらいまでは極めて熱心に出されております。例えば第五期、昭和三十五年から昭和三十八年が第五期でありますが、四十七件の勧告が出されている。その後も、二十九件とか二十七件とか、第十一期まではあるいは毎年十本以上の、あるいは時としては二、三十本出ている。それが、平成になってから毎年一本か二本なんですね。十八期、十九期に至っては勧告ゼロと。  果たして、この第五条で定める正に一番重要な勧告、それが十八期以降ほとんどその活動がなされていないということは私は大変残念な事態だというふうに思いますが、その理由、あるいはそのことについてどういう認識を持っておられるのか、お答えを賜りたいと思います。
  144. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 先生指摘になられましたように、昭和二十四年の学術会議の設置以来、昭和三十年代から四十年代にかけまして非常に多くの勧告要望等を政府に対して行ってまいりました。しかしながら、当時の勧告要望などが、予算の増額、研究予算の増額あるいは研究機関の新設といったようなものを求めるという内容のものが大変多かったわけでございますが、こういったものが政府として必ずしも財政面等で実現は容易でないと、そういったものが含まれておりました。そういう問題があったという認識を持っておるわけでございます。  こういったことを背景に、勧告要望等につきましても実現可能性というものを十分に考慮し、真に必要なものに絞って行おうということに努めたことから数については減少してきたと、そのように理解いたしております。
  145. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 もちろん、過去の反省、総括はそういうことなのかもしれませんが、今回法律をお出しになっているその趣旨は、この学術会議をもう一回活性化しようと、そして二十一世紀、知性国家を作る上でもっともっと、大変な役割を担っておられるわけでありますから、その役割をもっともっと果たしていこう、発揮していこうと、こういう御趣旨だというふうに理解をしておりますけれども、じゃ、この法律ができて学術会議が生まれ変わって、今後この勧告、どういうふうになっていくでしょうか。
  146. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 今回の改革におきましては、日本学術会議我が国科学者コミュニティーの代表機関としての役割を真に果たしていこうということで様々な改革を行うものでございます。  そういったことで、総合科学技術会議意見具申では幾つかの機能を十分に発揮するようにという御指摘をいただいておるわけでございますが、その中の重要なものとして、政府への政策提言機能というものが掲げられております。これは、科学者の知見を広く集約して、長期的、総合的、国際的観点からの政策提言を行うというものでございまして、勧告要望等を含む提言でございますけれども、こういったものに力を入れていこうということでございます。  形式としては、勧告、様々な形式があろうかと思いますけれども、大変重要な機能を果たしていくということに努めてまいるということを考えております。
  147. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 先ほどから車の両輪論というのが議論されています。これ、総合科学技術会議の報告書、答申には車の両輪というのは述べられているんですね。しかし、平成十一年にお出しになった日本学術会議の自己改革についてという声明文では車の両輪論は述べられておりません。  これはどういうことかといいますと、これは学術会議の方々も恐らくは私の意見と相当同じポジションに立つんだと思いますが、車の両輪というのは、これは並列ということであります。これは有馬先生がおっしゃった。だけれども、しかも提言というのは、まあ提言聞こうじゃないかと、そして、まあいいのがあればやろうじゃないかと、これは提言であります。  しかし、学術会議は車の両輪の片っ方じゃないんです。その上という言い方はおかしいかもしれませんけれども、正に勧告と提言はこれは本質的に違う話でありまして、正に日本の科学的真理のオーソリティーとして日本国あるいは社会全体に対して責任を果たしていくと、そして政府に対してもきちっと意見を言っていく、社会に対しても意見表明をしていく、声明をしていく、これが声明であり勧告でありまして、このところを私は、法律作っておられる方は当然法律専門家でありますから、これは意識的に混同しているんだというふうに思うわけであります。でありますから、提言ではなくて、やはりきちっと勧告というものをもう一回復活させていただきたい。  現に、学術会議がおまとめになった声明では大変そのことを自己分析、ある意味で自己総括をされて、勧告の件数が少なくなっているということをきちっとこの自己改革の中に書かれていらっしゃいますし、様々な政策の形成に役立つ科学的知見を政府に提供する方向や、国民のニーズに対応する方向での審議には特別な注意が払われてなかった嫌いがあるときちっと総括しておられるんです。ですから、学術会議の総括は、私は極めて的確な総括だと思います。  しかし、問題はそこからでありまして、その総括がこの法案にきちっと生かされているのか、反映されているのかと。その間に総合科学技術会議の答申が入ることによってそこがやや骨抜きになっている、あるいはそこが内容的に変質をしているということを私は大変に問題だというふうに思っているわけでございます。  更に申し上げますと、総合科学技術会議の報告書は、日本学術会議役割というものを私はやや矮小化しているんじゃないかと思います。  この法律の第二条では、私は学術会議二つ大きな使命があると思うんです。もちろん、二つとか三つとかっていろんな分類がありますが、一つは科学の向上発達を図る、これはもちろん今までも、これからもきちっと議論されると思います。しかし、もう一つ極めて重要なのは、今朝も原子力について有馬先生から御議論がありました。正に行政、産業、国民生活に科学を反映浸透させるという目的、これは極めて重要な目的だと思いますが、を日本学術会議は担っている。  じゃ、その日本学術会議が正に行政に対して、産業に対して、国民生活に対して、科学的なこの見識、正に先ほど自己総括されていたところ、この部分というものが特にこの平成になってから極めて弱体化していると。この問題意識を日本学術会議と我々は共有するわけでありますが、しかし、そのことがこの法案審議あるいは法案の中身、あるいは法案を取り組もうとしている政府にそこまでの気概といいますか志というものがまだ残念ながら感じられないわけでありますが、私はせっかく二十数年ぶりの改革をやるその意義はここにあると思いますが、いかがでございましょうか。
  148. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 貴重な御意見として謙虚に受け止めさせていただきたいと、このように思っておりますけれども、今回の法案の改定のベースになりました総合科学技術会議日本学術会議の在り方についての提言、ここの中でも、委員も御案内のとおり、日本学術会議に求められる機能として三つの機能と、そこの中の一つ政策提言機能であり、二つ目が科学に関する連絡調整機能、これは科学者の間のコミュニティーの意見の集約であったりとか各国の科学者との連携、交流が入ってくると、そして三番目に社会とのコミュニケーションの機能と、こういうのを明確に提案をさせていただいておりまして、恐らく一番目の政策提言機能の中でも、政府に対して科学的、中立的な提言を行うと、そこの中には委員指摘勧告であったりとかそういうものも入ってくると思いますし、提言といいましても、単にその、何というか、物をこうですよという中には当然科学者の専門的な立場から見解を示すと、こういうものも入ってくると思っておりまして、私も最近の勧告、声明の数等々見たわけでありますけれども、数だけいいましても少ないなと、こういうふうには感じます。ただ、じゃ数が多ければそれだけでいいのかといいますと、そういうことではありませんけれども、質、量ともに今回の改革を通じてしっかりした提言が出されると、そういうことを期待いたしております。
  149. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 是非大臣、お願いしたいと思いますが、学術会議は時として本当にいい勧告、声明を出しておられるんです。例えば、平成十二年に人間としての自覚に基づく教育と環境の両問題の統合的解決を目指してという声明があります。この中で何を言っているかといいますと、要するに、物質・エネルギー志向から脱物質・エネルギー志向へ根本価値の転換を図り、人間としての自覚に基づいたより豊かな人間性を確保する、より多様な内容を持った新しい価値観の醸成を図る必要があるという提言をしているんですね。これはすばらしい提言だと思います。そして、今、国会で憲法の議論をしていますけれども、こういうところから私は憲法議論って始めなきゃいけないと思う。  要するに、学術会議のこうした声明、勧告をより権威あるものにどうやってしようかという議論が午前中から続いているわけでありますが、それはひとえに、こうしたものを政府の側がいかに本当にこれを尊重して受け止めて、そしてそれを政府政策立案、政策形成の中に取り込んでいくかという政府の姿勢、その姿勢がこの今回の法律の中でも少し寂しいなと思っているわけでありますし、それ以外の例えば憲法議論にも、あるいは教育の議論でも、文教科学委員会で盛んにやっておりますが、脱物質・エネルギー志向の時代の新しい価値観を前提に果たして日本の初等中等教育の学力問題議論がなされているかと、これは我々も含めてでありますけれども、もっともっとこういう知からの提案といいますか、正に知をきちっと尊重をしていかなければいけないのではないかなというふうに思っております。  今日は学術会議黒川議長にも来ていただいておりますけれども、御感想あればお願いを申し上げます。
  150. 黒川清

    参考人黒川清君) おっしゃるとおりだと思います。  私、外国で生活したのが長くて、二十年前に日本に帰ってきておりますが、そうして見ると、やはり日本の社会の在り方その他についても、やはりこれから二十一世紀の知の輝く日本というのは、何も経済復興だけではなくて、新しい方向を模索すべきだと思っております。  実は、二十年前の学術会議改正についても議事録その他を読ませていただきますと、やはり時代は随分変わってきたなと思っております。そういう意味からいうと、教育の環境の今おっしゃった報告も実は国際的には非常に評価されておりまして、その後でいろいろな会員がそこの外国のアカデミーに呼ばれて、この報告についてのいろいろなヒアリングとか意見を聞かれたということも聞いております。そういう意味では、全地球的な規模での検討が非常に中長期的に大事ではないかと、それはやはり学術会議のようなボディーの責務だと思っております。  実際、そのような動きが世界的に動いてきているのはここ数年でありまして、二〇〇〇年には学術会議がホストをしました国際アカデミーのパネルというのができまして、九十か国のアカデミーの連合体ができ、それの下に今度十五か国のインターアカデミーカウンシルというのができまして、つい先月の、二月の五日に最初の報告書、特に南北問題の底流にある教育、人材の育成ということについて、これは国連の本部でアナン事務総長がホストをされまして、全大使を呼んでプレスリリースをし、各国のアカデミーは是非この一部でもインプリメントできるようなことを考えてほしいということで、今担当の政府あるいはそこといろいろ相談しているところでございます。  二番目にはアフリカの食料問題を今年六月に出す予定になっておりまして、このようなことも学術会議一つの現れとして国際的に非常に今注目を集めておりますし、さらに、エネルギー問題も去年十二月にやっておりますけれども、この辺も今、国際連合で非常に動いているというところでありますので、これから是非、私どもも科学者コミュニティー全体がアジア、世界に向けて発信するようなメカニズムと、政府当局にも是非連携を強めていきたいと思っているところでございます。
  151. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 どうもありがとうございました。是非頑張っていただきたいと思います。  私が引き続き提起したい問題は、今日、文部科学省もお見えだと思いますが、これも午前中、有馬先生からお話がありました、日本の学界というものをもっともっと活性化をしていきたいと。特に私の問題意識は、私は、情報社会論とか知価社会論という講座を、これまたある大学では環境情報学部、ある大学では総合政策学部、ある大学では法学部、ある大学では教育学部、こういう、同じ講座名なんですけれども、いろんな学部で担当をしてまいりました。そうした私ないしは私の仲間の日本の学界の現状に対する問題意識なんですけれども、やはり日本の学界というのはまだまだ硬直的といいますか、何もそれは硬直的であることを批判するつもりはありません。しかし、今、科学というのは本当に何百年に一回かの大きなパラダイムシフトを迎えていると。要するに、今日、哲学の話がありましたが、本当に哲学的、思想的な次元で大きなパラダイムがシフトしている、あるいはそのことを日本がリードしていただきたいというふうに思います。  そういう観点から考えたときに、やはり日本の学界の現状は、もちろん例外はいろいろありますが、午前中に有馬先生が総括していただいたように、オールドパラダイムで大変な業績を収められた方がやはり大ボスとしていらっしゃる、そしてその一つの集まっておられるのが学術会議であるという実態は私は否めないと思います。  日本が引き続き二十一世紀、正に知の世界世界をリードする存在になるためには、ニューパラダイムの科学の進歩にどれだけ貢献をするかということが極めて重要だというふうに思っておりまして、そういう意味でも、何も若い研究者と言うつもりはありません、若くてもオールドパラダイムの若い研究者も一杯いますから。そういうことじゃなくて、ニューパラダイムを、あるいはそういう領域で頑張っておられる研究者、あるいはそういう領域を開拓していかれようという若き志を持った非常に経験豊かな、年齢的にはもちろん若くなくても結構なんですけれども、そういう正にパイオニアというものがこの日本の学界というものを活性化していく。そのために、私は、学術会議の在り方も、あるいは学界、正にアカデミーですね、広義の意味での日本の学界の在り方というものをもう一回点検をし、そして今回の議論にも反映をさせていかなければならないというふうに思いますが、学界の活性化、特にニューパラダイムに対応した日本の科学技術振興の在り方について、文部科学省、お答えをいただきます。  そして、その同じ質問について学術会議がそのことにこたえているのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  152. 稲葉大和

    ○副大臣(稲葉大和君) 今まで鈴木先生の御意見を拝聴しておりまして、大変学術に関しましての含蓄を含んだお話に感銘しているところであります。まさしく文部科学省におきましても科学技術創造立国を目指しているわけでありまして、これを実現するには特に若手の優秀な研究者が自由濶達に研究をすることができる環境、そしてその研究成果を十分に発表できる環境を整備することが何より肝要かと考えております。  したがって、御承知のように、平成十三年に閣議決定されました第二期科学技術基本計画におきましても、若手研究者がその能力を最大限発揮できるように自立性を確保し環境を整備することと、こううたっているわけでありまして、その具体的な案としまして、ポストドクターに対する支援、あるいは研究費に対しましての補助金の制度、こういうところを年々拡充してきているところであります。特にポスドクにつきましては、前年比、これは実質になるかもしれませんが六億円増の百三十九億、これを十六年の予算として皆さんに御承認いただいたところでありますし、さらに科学研究補助金としまして前年度比三十三億円を超える増額を果たすことができたわけであります。  これで十分だとは決して考えておりませんが、さらに年次を経てこの数字をかさ上げすることと同時に、先生から御指摘のあります、いわゆる閉鎖的と言われるんでしょうか、先生と助教授、あるいは助手、講師、こういった関係についても更に解消できるところを積極的に解消するように努めているところでありますし、また、先生におかれましては、そういった御指摘を今お持ちでございましたら、御指摘いただけるのであれば、私たちもその先生の資料に基づいて改善できるよう最善の努力を果たしてまいりたいと、かように考えております。
  153. 黒川清

    参考人黒川清君) 先生のおっしゃるとおりかと思いますけれども、この本体が今までの研究連絡委員会ではなくて連携会員ということで、その機能的なベースを広げるというのがこの趣旨でございまして、そうなると、いろんな報告書を出す、あるいは勧告を出す際に、適材適所といいますか、必ずしも会員だけではなくて、いろんなその分野の方たちに参加していただく、そういうものが出てくるという、輝くようなボディーになっていくというのが一番大事じゃないかと思っております。  実際、この日本の計画というのは、ブルントラントの八七年の持続可能な社会への呼応したアメリカのアカデミーの報告書、ヨーロッパの報告書、それに対応して私どもが二年前に出しましたけれども、これも会員じゃない人も何人か入っておりまして、そのようなメカニズムですね、是非このボディーをもっと機能的に、国の中で政策提言をする、あるいは学術の大きなコミュニティーからの認められるようなボディーにしていくのが我々の責務だと思っております。
  154. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 正に日本が知性国家になれるかどうかは黒川会長を始め皆様方の双肩に掛かっていますので、是非御健闘をお祈りしたいと思います。  今日はどうもありがとうございました。     ─────────────
  155. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、佐藤泰介君が委員辞任され、その補欠として小林元君が選任されました。     ─────────────
  156. 山本香苗

    山本香苗君 公明党の山本香苗です。  本日は、黒川会長にお越しいただきまして誠にありがとうございます。また、茂木大臣、初めて今回御質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。  早速質問に入らせていただこうと思うわけなんですが、もう今日午前中から、また今、鈴木先生の御質問と、非常にアカデミックな質問が続いてきているわけなんですけれども、今回の改正、午前中のお話の中にもありました目的規定は触っていないわけでございます。じゃ、今回の改正で一体何が変わるんかという話が衆議院の中でも質疑応答、答弁あったわけなんですけれども、今回の改正によって日本学術会議、これが真の科学者の代表機関となるんだということでございますが、この真の科学者の代表機関となるということは現在の日本学術会議がどう変わるということなんでしょうか。また、今回の改正、これは会員の方々のみならず、科学者の皆さん方はどう受け止められていらっしゃるのか。その二点についてお伺いいたします。
  157. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 今回の改革によりまして、日本学術会議我が国科学者コミュニティーの代表機関としての役割を真に果たしていこうというふうに考えておるところでございます。そういたしまして、科学者の知見を集約し、科学の発展や社会の諸課題の解決に貢献していこうというものでございます。  今回の改革では、特に具体的には政府への政策提言を行う機能、あるいは科学者間の連絡調整機能、社会とのコミュニケーション機能、こういったものをこれから十分に発揮していくということによりまして、科学的観点から次代を先導していく役割を果たしていくということが求められております。このため、学術会議の会員の選考方法、組織、運営、所管等について改正を行うものでございます。これまでの選考方法、学会、学協会からの推薦によっておりましたが、個別学協会の利害に影響を受けがちであるということで、今回、選考方法についても改正することにしておるわけでございます。
  158. 黒川清

    参考人黒川清君) 確かに、今までの機能をどのように発揮するかということについては、広報機能もそうですけれども、科学者コミュニティー全体が社会に一体何をコミットするのかという意思がはっきりしないというところに問題があるのではないかと思っております。  実は、そういう意味では、最近は、この間、日本からの情報発信というシンポジウムもやっておりますけれども、それも今度、三月のサイエンスに全面一ページ報道されるぐらいの知名度になっておりますし、先日の衆議院のヒアリングはもうネイチャーに三分の二ページ割いて報道されるぐらいに日本の活動が現在注目されているところでありますし、現在、来月行われますけれども、アジアの学術会議というのも学術会議中心になってやっておりまして、これから成長するアジアについて、どのように、環境問題その他に科学者の連合がどのような提言ができるかということで、今回、多分、一つ報告書ができ上がってくると思っております。  そのようなことからいうと、この活動が、実は教育についての科学者コミュニティーの役割は非常に大事だというのがアジア学術会議からおととしの世界国際環境サミットで認められまして、国連で去年、科学者コミュニティーと教育者というのが一つのステークホルダーとして認められて文書に出るというような活動をしておりまして、そういう意味では、日本の科学者の、これから日本の国内だけではなくてアジアあるいは国際社会での貢献が非常に期待されているということを皆さんにもっともっと意識してもらおうという活動をしているところでございます。
  159. 山本香苗

    山本香苗君 国内外でそういった活動をきちっと認知されてプレステージが上がっていくことを私は望みながら、今日改正案について具体的に御質問させていただきたいと思っているわけなんですが、今回、午前中にお話ありましたけれども、所管が変わるというお話でございます。総務省から内閣府に移ったところで行政機関というところは変わらないわけでありまして、そこで皆さんが御懸念されているのは、やっぱり自由濶達に話せる、意見が述べられるためには、中立的でかつ独立的な場で専門家としての提言ができるのかというところが、そこをきちんと担保できるのかというところが非常に懸念があるところなんだと思います。  そこで、三条には独立して職務を行うと書いてはございますけれども、実際、この日本学術会議の独立性、中立性を今後どのように担保されていくのか、またあわせまして、総務省から内閣府に変わる、このことによるメリットにつきましてお伺いいたします。
  160. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 午前中からの議論でも、独立性の担保と、これは非常に重要だと、そういう答弁させていただいておりますが、正に委員おっしゃっていただきましたように、法律上も独立性の担保と、これはしっかり書き込みをさせていただいているところであります。また、提言を受け取る側からして、偏った提言でない、やはり科学者の専門的知見に立って中立的な提言をしていただきたい、それが政府側からの要望でありますから、そういった提言がなされることを期待しているわけであります。  ここで難しいのは、独立性の担保とそれから政策提言が実際に実行できると、こういうこと、相反する部分といいますか、あるわけでありまして、ある程度やはり政府との連携を強めなくちゃならない。それによって政策提言というものが実現していく必要があると。しかし、それは政府とはまた違った機関であって、きちんと独立を保っていく、こういう組織的な位置付けが必要なんではないかなと、こんなふうに考えております。  今回、内閣府に移ることによりまして、総合科学技術会議、こちらはトップダウンで正に政策決定、政策立案を行っていく機能を持つわけであります。一方、こちらの学術会議の方は、科学者のコミュニティーの意見を吸い上げてボトムアップ型で政策提言をしていく。その二つ機関が同じ屋根の下で連携を取っていく、このことが今後実際に政策提言も具体的に政府政策に生かされていく、こういうことにつながっていくと期待をいたしております。
  161. 山本香苗

    山本香苗君 ありがとうございます。  そういった形で、メリットを更に生かしていただく形で連携をしっかり取っていただきまして頑張っていただきたいと思うわけなんですが。  今回、今、内閣府の方に移るという話でございますけれども、平成十五年二月に出された総合科学技術会議意見具申、今回の改革後十年以内にまた新たに日本学術会議の在り方を検討するための体制を整備して、評価、検討を客観的に行い、その結果を踏まえ云々とあるわけでございますけれども、今後、総合科学技術会議としてはどういう形で評価、検討を行い、客観的に行い、結果を踏まえて、どういう形で在り方を検討していかれるんでしょうか。
  162. 林幸秀

    政府参考人(林幸秀君) 総合科学技術会議意見具申では、日本学術会議としての主体的な改革を進め、政策提言機能等、期待される役割にこたえる活動を積極的に行うように求めております。その上で、改革の進捗状況を実証的に評価するとともに、社会的な状況や科学者コミュニティーの状況の変化を見極めつつ、より適切な設置形態の在り方を検討していくことが適当であるというふうにしております。したがいまして、十年以内に行われる設置形態の検討に当たりましては、これらの点が基本に据えられるというふうに考えております。また、意見具申におきましては、今後十年以内に新たに設置するための体制を整備してこのような評価、検討を行うべきであるというふうにしております。  こういった点からしますと、今後の見直しにつきましては、日本学術会議が自ら行う改革の進捗が基礎となるべきでありまして、同会議自らが中心となり改革に関する考え方を打ち出していくことが望ましい姿であるというふうに考えております。総合科学技術会議といたしましては、日本学術会議中心とするこのような改革と検討の状況をフォローしまして、我が国の科学技術政策全体を見渡す立場から、必要に応じて連携を図るなどして適切にかかわってまいりたいというふうに考えております。
  163. 山本香苗

    山本香苗君 黒川会長にお伺いしたいんですけれども、今、総務省さん、自ら主体性をとかいう、日本学術会議の方が主体性を持って検討していくべきだみたいな御答弁があったわけなんですけれども、黒川会長としては適切な時期に独立法人化を目指すべきじゃないかという御意見をお持ちだとお伺いしているわけなんですが、今後、会長としてはどういった形で御検討を進めていこうとお考えになっていらっしゃるのか、また、茂木大臣の方に同じく、同じ質問をさせていただきたいと思います。
  164. 黒川清

    参考人黒川清君) これにつきましては、これからの日本の国の在り方が正に国際的な枠組みで問われているときが来るだろうと思っております。  そういう意味では、現在、例えば十八期だけで見ても、例えばこの科学における不正行為とその防止というような分析の結果、あるいは中国へ残してきた遺棄化学兵器の処理問題、その他についての提言というのは、提言といいますか、その報告書というのは、ある意味では、政府がそのまま中から出すというよりは、むしろこういう学術会議のようなところから出すと。じゃ、その報告書は実際に政策にインプリメントされるかどうかは、やはりアメリカ、イギリスなんか見てみますと、その報告書はあくまでもニュートラルでありまして、常にインターネットその他で報告書がだれにでも見られるようになっている。  それが五年、十年後になってどのように政策に取られたか、あるいは取られないかということによって国の形がどう変わってくるのかということをやはり評価されているわけでありまして、あくまでも国民のための科学者コミュニティーということを評価していただけるような活動をしているつもりでありますけれども、更にそれを一層強化すべきであろうというふうに思っております。
  165. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 理想的な形としては、欧米諸国のアカデミーのような独立の法人、これが可能性として私も考えられるんだと思っております。正に今回の改革、そういったものに向かっていくためのベースを作るといいますか、これからの定められました十年間の中で、学術会議がいかに自己改革を図り、そして、今、黒川会長おっしゃるような活動の中で学術会議自体が重みを持つ、そして学術会議の提言が更に重みを持つ、こういう活動をしてくれることを期待をいたしております。
  166. 山本香苗

    山本香苗君 失礼いたしました。先ほど総務省というのは内閣府の統括官、申し訳ございません。済みません。  次の改正のポイントの一つとして選出方法、一番冒頭にも選出方法変えたというお話がございましたが、前回の改正のときもこの選考方法を変えたわけでございます。  今回この選考方法を新たに変更せざるを得なくなったと判断した理由、背景について御説明ください。
  167. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 総合科学技術会議意見具申では、日本学術会議は、科学者コミュニティーを代表して、総合的、俯瞰的観点から活動するために、個別学術研究団体の利害から自立した科学者の組織となることとされております。また、科学的水準の高い提言を行い、その権威を高めて社会に貢献していくために優れた科学者を会員とすることが重要とされております。  このため、科学に関する優れた業績を有し、かつ科学者コミュニティーの代表機関としての日本学術会議の使命と役割を十分理解しておられる科学者を会員とするために、現行の学術研究団体からの推薦に基づく選出方法を見直し、欧米諸国のアカデミーで行われております現会員による選出、いわゆるコオプテーションを基本とした選出方法に改めることとされております。  今回の会員選考制度の改革は、この意見具申を受けまして、日本学術会議自らが優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員候補者を選考することとするものでございます。
  168. 山本香苗

    山本香苗君 今回この選考方法が変わるということで、ちょっとお伺いしたところによると、日本学術会議の会員というのは、組織とか学界のリーダー格の人たちがなるものだと、自分には関係ないという研究者の方が結構いらっしゃるんですね。これはこのままじゃいけない、科学者の代表機関というんだから科学者の方々がきちっと認知しているようなものじゃないといけないと思っているわけなんですけれども、今、変える背景みたいなことで、いろんな個別学術研究団体の利害にとらわれないような形を取るためにこの選考方法を変えたんだというお話ありましたけれども、この選考方法を変えることによって科学者の方々の意識も、自分なんか関係ないって言っているような意識なんか変えることができるような選考方法になっているんでしょうか。
  169. 黒川清

    参考人黒川清君) 実は、十七期、十八期で各国のアカデミーの機能、会員の選出方法、それから歴史的な背景、それから科学技術政策へのかかわり方その他についてかなり勉強させていただきました。そうしますと、もちろん国の歴史、社会的な価値観ということがいろいろ反映されておりまして、いわゆる今の西洋科学というのは十五世紀からの、後半から起こってきたいわゆるルネッサンスの背景を持っておりまして、一番古いアカデミーがイタリアのリンチェイアカデミー、一六〇六年にできておりますし、イギリスのロイヤルソサエティーが一六六〇年と。そういうような歴史がある西洋のルネッサンスを背景にした国と、まだ明治維新から百四十年たっていない日本というのは、近代国家になるプロセスではかなり違いがあるというのはこれはやむを得ないだろうと思っております。  そういう意味では、二十年前の改革では各学協会から選ばれるとなるとどうしてもそういうふうな意識が出てきますし、しかも、どうしても、自分の背景の学協会の利益というわけではありませんが、そういうどうしても発想が出てきますので、むしろやはり個人の資格というのをどういうふうに認定するのかという話で、そういう意味ではイギリスやアメリカの長い間の歴史を持ったところのアカデミーの会員の選出の方法というのは大変参考になると思っておりまして、現在、両副会長アメリカのナショナルアカデミー、多分あした訪問すると思いますけれども、それを更に確認しながら、後で見ても非常に開かれた公平なプロセスを築いていくのが我々の責務だと思っております。
  170. 山本香苗

    山本香苗君 そのいわゆる新しい選考方法の成否を担うというのが一回目の選出ではないかと思うわけなんですけれども、この日本学術会議会員候補者選考委員会、これの構成員とか選考方法、基準って、いつまでに作っていつごろ選考を行うというスケジュールはどのように決まっているんでしょうか。
  171. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) この初回の会員候補者につきましては、会員候補者選考委員会というものを作りまして新しい会員を選考していくわけでございます。この選考作業につきましては、この法律が成立いたしますとすぐに実施いたしまして、約一年半近い期間を掛けまして新しい会員を選考していきたいと考えております。
  172. 山本香苗

    山本香苗君 初回も大事なんですけれども、初回も二回目もいわゆる選定の前提として会員候補者に関する情報を収集するということになっているわけなんですけれども、この情報収集といったときに、国内のみならず国外、また民間シンクタンク、いろいろなところからいい人がいるかって探すと思うんですけれども、これはきちんと体制が整備されているんでしょうか。
  173. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 初回の会員選考あるいは二回目の会員選考の具体的な方法につきましては、例えば初回でありますと、この選考委員会ができまして、その選考委員の皆様が具体的に検討されるものでございますけれども、この会員候補者に関する情報の収集というものは非常に重要な事項でございます。このために、幅広く情報を収集いたしまして、また会員候補者選考委員会におきましては専門委員を活用するなどによりまして選考作業をしていきたいと考えております。
  174. 山本香苗

    山本香苗君 ここの情報収集が非常に大事だと思うんです。そこで上がってこなかったら何か上にも上がってこないわけでありまして、きちっとここの体制を、単に下から上がってくるのを待ってるというんじゃなくて、積極的に探すというか、情報収集に努めていただきたいと思っております。  先ほどちらっと連携会員という言葉が出てまいりましたけれども、今回、二百十名の会員の方に併せて連携会員の方を新たに置くということなんですが、以前、研究連絡委員会委員というのがありました。これとどう異なるんでしょうか。また、連携会員としてイメージされているのはどういう人か。連携会員というのは会員の職務の一部を行わせるということなんですけれども、この一部というのは具体的に何を指すのでしょうか。
  175. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 現在は研究連絡委員会というのがございまして、その委員会研究連絡委員という方々がそれぞれ所属して、その研究連絡委員会の学問領域あるいは課題に関して調査審議等の活動をされておられるわけでございます。  今回新しく設けます連携会員は、緊急の課題や新たな課題に迅速、柔軟に対処するために、科学の課題別に設置される委員会におきまして会員とともに日本学術会議の活動を担うものでございます。ということで、この連携会員もまた優れた科学的な業績を有する方になっていただくということで考えております。  会員と連携会員の差異は、一体として活動するものでございますけれども、総会への出席でありますとか、そういったものにつきましては連携会員は含まれないと、そういった差異はございます。
  176. 山本香苗

    山本香苗君 また、十四条におきまして、また今度は、先ほども、連携会員を置く、機動性を高める一つの手段、もう一個の機動性を高める手段として、運営審議会を幹事会という形に置き換えて職務及び権限の一部を幹事会の方に委任すると、そういうことが十四条に規定されているわけでございます。  幹事会、これに具体的にどのような職務、権限が委任されるんでしょうか。総会とこの幹事会、この役割の違い、デマケ、役割をどういうふうな形で分担されているのか、されることになるのか、その点について具体的にお答えいただきたいと思います。
  177. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 具体的な委任事項の決定につきましては改革後の新たな体制におきまして検討し決定されるということになろうかと思いますけれども、今回の総合科学技術会議意見具申の趣旨を踏まえまして、緊急時に時宜を得た政策提言を行うと、そういったことを可能にするために、緊急時における委員会の設置でありますとか、あるいは意思決定、緊急時における提言等の意思決定、そういった事項について幅広く委任していくということになるものと考えております。  また、総会におきましては、例えば会長の選出でありますとか新会員の選考等の組織上の重要事項、そういったものを取り扱っていくという区分になろうかと思います。
  178. 山本香苗

    山本香苗君 人の選考方法だとか、そうした組織運営だとか、そういうものを変えていく、それによって大きく活性化していくということがあって、それで意味付けとして分かったんですが、一つ、二十六条というところに、会員として不適切な行為がある場合に、以前というのは総会三分の二以上の議決による学術会議の申出により退職させることができるとなっていたんですけれども、今回、この総会での三分の二以上の議決という要件がぽんと落ちているわけなんですね。この理由はどういう理由から落ちたんでしょうか。どういう場合が不適切な行為となるんでしょうか。
  179. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 現在は、会員として不適当な行為があったときの退職手続につきましては、総会における出席会員の三分の二以上の議決による日本学術会議の申出によると、そのようにされておりますけれども、現在の制度の下では、常に総会を開催いたしましてこの議決を行わなければならないということから、場合によっては著しく機動性に欠けるということもあり得るという問題点がございます。このため、今回の改正案におきましては、このように法律で一律に手続要件を定めるということではなくて、日本学術会議が事案の種類や具体的な状況に応じまして、必要に応じ機動性のある手続を取るということが可能となるように規定を改めることとしたものでございます。  また、不適当な行為というのは非常に幅広いと思いますが、例えば犯罪行為等を想定しているところでございます。
  180. 山本香苗

    山本香苗君 具体的に法案、改正案の内容を一つ一つ押さえていっていたわけなんですけれども、最後に会長にお伺いしたいわけなんですが、今回こうした改正がなされるわけなんですけれども、一番大事なところは、いろんな方々も言われていらっしゃいましたけれども、やっぱりこの日本学術会議というのが本当に日本の国を代表するような機関にならなくちゃいけないと。そのためには、やっぱり中にいらっしゃる方々が、ああ、学術会議に入ったことが誇りだなと思えると、入りたい、あそこに入るために頑張ろうとか、そういう何か前向きなものがないといけないと思うわけなんです。そのためには、やっぱり日本学術会議というもののアカデミープレスティージをすごく高めなくちゃいけないという非常に大きな大きな課題があるんではないかと思うわけなんですけれども、今後この課題についてどういうふうに取り組まれるのか、最後にお伺いします。
  181. 黒川清

    参考人黒川清君) おっしゃるとおりだと思いますが、二十一世紀を迎えて我々はどんな問題を抱えているかといえば、日本の計画に書いてありますが、現在もう六十三億人いる人間があと五十年したら九十億人超えると。環境の劣化、エネルギー、水、食料、そのような問題があって、決して一国で解決できるような問題ではありません。さらに、南北の格差が更に広がって、六十三億人のうち八〇%は低開発国あるいは開発途上国にいるわけで、この問題をどうするかというのは、国とか産業、企業だけでは解決できないのは明らかであります。そういう意味では、先ほどから伝えているようなその国際的な枠組みの連合が急にできてきたというのは実はそういう背景があるわけで、そういうことからいうと、我々がどんなアウトプットを出すかというのが期待されているわけだと思います。  実は、この間の衆議院でもありましたけれども、最近、アメリカ日本と、科学技術と国の安全ということについての二国間協議がされましたけれども、そのときに実はアメリカのアカデミーと私ども学術会議がそれとはパラレルに一つのコミッティーのスタディーをやろうということになっておりまして、現在、そのディーテルを打合せに行っているところであります。そのようなことはやはり国ではなくて科学者コミュニティー同士がある程度自発的にやる活動だということを皆に知ってもらいたいというのが、この方策の一つの理由であります。  それからもう一つは、学術会議の会員、元会員たちが、五月にやりますけれども、それぞれの地元での小学校、中学校の教育、あるいは地域でのいろいろな社会的な貢献について自分たちでやろうというその運動の提言をしまして、財界その他にも呼び掛けようと思っておりまして、これを基盤にするとみんな、科学者、若い人たちもみんなですけれども、そういう社会活動に自発的に参加しようというような動きをどんどん広めていければと思っておりまして、具体的なやはり提言を次から次へと出すことによってやはり科学者コミュニティー全体が、ああ、学術会議はそのようなプレスティージがあるんだというようなことを見せていければと考えているところでございます。
  182. 山本香苗

    山本香苗君 是非ともそういった方向で頑張っていただきたいと思うんです。  私も外国で留学していたときに、やっぱりアカデミーという形で、から出ているとなると、すごく信頼性が高い、評価が高い。そういうものを感じて、日本に帰ってきて、済みません、不勉強だったもので余り提言等読ませていただいていなかったんですけれども、いろんなこと、今回こういった法案の審議をするに当たりましていろいろと読ませていただきました。これからもしっかりと読ませていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日はありがとうございました。
  183. 林紀子

    ○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。  今日はまず、参考人としておいでいただいております黒川会長の方にお話を伺いたいと思います。  学術会議の機能として、科学者の代表であること、代表制というのが一つの柱になっていると思いますが、今回の改正では、七部制から三部制にする、定員もあらかじめ定めないやり方に変更する、こういうことになっています。しかし、会員が人文・社会科学から医学まで総合的に広い学問分野から選出されてこそ学術会議の代表制というのも確保できるのではないかと思います。結果として特定の学問分野に偏るというようなことはないのでしょうか。    〔委員長退席、理事亀井郁夫君着席〕
  184. 黒川清

    参考人黒川清君) これは、総合科学技術会議の答申を受けてこのような、私ども十八期に随分議論しておりまして、外国にも随分参考に、資料集めに行っておりますが、これはあくまでも選出されるその道筋であると考えておりまして、定員を決めてしまうと学問の変化その他に自発的に自分たちで対応できないということがありますのでこのようにしているのが一つということであります。  もう一つは、会員がやはり、学協会ではなくて、そのような今までの業績のメリットによってお互いに選んでいこうというようなのが従来の、海外では普通なのでありまして、そのようなことによってむしろ、先ほどから出ているような、ああ、あのような人たちのグループがあのような活動しているところに参加しようというような意識を醸成できていければと思っております。  そのような意味では、今回の改正案は、研究連絡委員会のような何となく上下的な構造ではなくて、むしろ連携会員というすそ野を広げながら、会員という二百十名の定員のところはむしろ運営するような母体であると、もっとすそ野を広げようという趣旨と取っておりますので、そういう意味では、大いに我々が活躍して社会の要請にこたえられるようなメカニズムができてきたというふうに認識をしておりまして、会員にも、これからは我々の社会的責任が問われるようなメカニズムになってきたんだということを話しているところでございます。
  185. 林紀子

    ○林紀子君 次の質問は、今までも出たところですけれども、十二期以前というのは勧告要望などがたくさん出されております。内容も、午前中お話がありましたが、原子力の平和利用原則とか、それから南極観測日本も参加すべきだとか、こういう大きな構えで勧告が行われているということを私も午前中の論議の中でもよく分かりました。  ところが、十二期を境に十三期目からは、勧告要望などが目に見える形で減っているわけですね。先ほど事務局長からお話がありましたので、このような差がどうして出ているのか、会長さんの方からも伺わせていただきたいと思います。
  186. 黒川清

    参考人黒川清君) 昭和二十四年に設立されたときのこと、それからその後のいろいろ実現された提言につきましては、午前中に有馬議員から随分、専門家でございまして、伺ったところかと思いますけれども、実は、その会員の選出の方法が当時の社会をあるいは反映しまして、どうしても会員の選出方法の、立候補する科学者が少ないということがありまして二十年前の大改革になり、それからいろいろ学協会を背景にして会員が選出されたようになったんだろうと思っております。  当時の勧告要望等については非常に重いものもありますが、だんだん増えてきますと、その立場上、実際、政策実現ができるのか、中のプライオリティーはどうなのかというようなことについてもなかなか自分たちで調整できなかったんではないかというようなことや、実現の可能性についてはいかがなものかというような話もあったようなことも伺っております。  このような状況に陥ったことがありまして、必ずしも勧告あるいは要望よりも、実現の可能性を十分に考慮しているというところと、それから国の、最近数年はそうですけれども、総合科学技術会議がどのような政策を出しているのかということについて対応できるような機能も現在発揮しているところでありまして、そのようないろいろなファクター、因子がありまして、報告書がどんどん増えておりまして、それを実際にどのようにお届けするかということの戦略には少し欠けていたんではないかと私どもは現在反省しているところでございます。    〔理事亀井郁夫君退席、委員長着席〕
  187. 林紀子

    ○林紀子君 今お話がありましたように、十二期と十三期の間というのがその選出の方法が変わったということなんですよね。先ほど、午前中、事務局長さんからのお話では、第一線の科学者がなかなか選ばれなくなったというようなお話もあったわけですけれども、ちょっと素人考え考えますと、じゃその後、第一線の科学者が選ばれるようになったんだったら、もっと活発化してもっといろいろそれこそ役に立つ提言というのが行われてしかるべきであったのではないかなと。でも、この数字からはそのことは考えられないので、やはり直接投票による公選制というものがなくなってしまったというのが一つ大きかったのかなというふうに思った次第です。  しかし、今、会長の方からもお話がありましたように、十三期以降は研究連絡委員会などの審議結果を取りまとめて報告という形で意見の表明が行われるようになったと。ここのところは大変たくさん出るようになったんだと思うんで、有益な報告がたくさん出されていると思うわけです。  例えば、第十八期にこの研究連絡委員会から提出された報告というのはどれくらいあって、具体的には、どういう分野、どういう内容であったのか。六十九もあるというふうに表で見せていただいたので、二、三といってもちょっと申し訳ないんですが、具体的な例ではこんなものがあったよということを事務局長さんの方からお示しいただけたらと思います。
  188. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 第十八期、これは平成十二年から平成十五年でございますが、そこにおける報告等の数は、報告は六十九件でございます。そのほかに、声明二件、要望一件、答申四件、会長談話三件と、こういったものもございます。  研究連絡委員会に限らず、日本学術会議では特別委員会というようなものを設置して様々な報告を出しておりますけれども、この十八期の間の主な報告というものを挙げますと、一つは、午前中も申し上げましたが、農林水産大臣からの諮問に応じまして、「地域環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について」の答申を行いました。これ平成十三年でございます。  また、我が国が第二次世界大戦終了時に中国に遺棄した化学兵器の処理事実に関する対外報告であります「遺棄化学兵器の安全な廃棄技術に向けて」という報告を出しております。これは平成十三年でございます。  また、平成十五年には、食品の安全を確保するための研究体制の強化、リスクコミュニケーションの促進などの必要性に関する対外報告でございます「食品の「安全」のための科学と「安心」のための対話の推進を」というタイトルの対外報告を行っているところでございます。
  189. 林紀子

    ○林紀子君 そういう意味では本当に有益な報告というのが出されているというふうに思うわけですね。  今回の改正でこの研究連絡委員会制度というのは廃止される。そして、研究連絡委員会は、学術会議と学協会を結び付けて、学術会議が、今お示しいただきましたように、社会に様々な提言をしていく上での基盤になっていたというふうに思うわけですが、こうした内容のある報告を出すということは、新たな制度、連携会員制度でも可能になるのかどうか、その辺を会長の方からお伺いしたいと思います。
  190. 黒川清

    参考人黒川清君) 学協会との関係というのは非常に大事でございますけれども、必ずしもその縦の関係と会員の選出というようなこととはリンクする必要はないんではないかというのが十七期、十八期の論点でございまして、そういうことがなくても、ふだんからのそれぞれのディシプリンの学協会との間を密接につなぎたいということでありまして、そこが連携会員のようなので、すそ野を広げていくというところに目標が一つあると思っております。  それからもう一つは、今、事務局長が申しましたように、実は農水相から森林の多面的機能という諮問を受けまして、それの答申を出しております。それが去年、カンクンの、WTOではありませんが、カンクンに行ったときに、実は農水相はこのような勧告学術会議からもらっているんだという話を言ったところ、非常に向こうから一目置かれたという話を帰国されて農水大臣から伺っております。そういうわけで、従来の省の中の、役所の中の審議会ではなくて、学術会議に諮問してこういう答申をもらっていますよと。  現在は農水相からまた水産についてのいろいろな多面的評価という諮問を受けておりまして、そのようなことをするのが、やはり外国から見てもより健全な国の在り方ということを非常に今評価され始めているんではないかと思っておりまして、そのようなことをすることによって学協会のいろいろな知恵を出していただく、あるいはそれへの参加をいただくというようなこと、あるいは当該の省庁のいろいろな方々とも相談をするというようなメカニズムを是非築きながら、世界、国際社会でも学術会議役割日本政府の中といいますか、日本の国の在り方として非常に評価されるようにしていきたいと考えているところでございます。
  191. 林紀子

    ○林紀子君 今のお話で、選出では学協会とはリンクはしないけれども、中身では十分にリンクをしていくんだというお話だったと思うわけですが、それではこの連携会員というのはどういうような形で選ばれていくのか、事務局長さんの方から教えていただきたいと思います。
  192. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) この連携会員は会員と一体となって日本学術会議の様々な活動に参画していただくわけでございますけれども、これはやはり会員と同様、我が国の優れた科学業績を持つ科学者の方々、その中から選考いたしまして会長から委嘱をすると、そういう形になってまいります。
  193. 林紀子

    ○林紀子君 私も、昨年のこの委員会海洋科学研究連絡委員会の出しました「海洋科学の教育と研究のための船舶不足と水産系大学練習船の活用について」という報告を基に、海洋科学について質問をいたしました。これは平成十三年に出されたものですけれども、地球環境と食糧の両問題を同時解決するかぎを秘めた海洋への期待が高まって、海洋研究の重要性が改めて強調されているので、その人材育成を急がなければいけない、その人材育成の基盤施設としての教育・研究船が不足をしているというお話なんですね。そして、国立大学水産学部練習船の一部というのが減船されたり小型化されようとしているけれども、そこの部分の今まである権利といいますか、そういうものを使って、その練習船を教育や研究船へと転換して実習教育に当たったらどうかというお話で、なるほどなと、いろいろ学ばせていただいたわけですけれども。  このとき質問をして一番感じたことは、こういう問題がなかなか政府部内では検討をされていないんじゃないかと。これを政府検討をして施策を進めていきましたら、お金の面でも、練習船を転用したらいいんだという、非常にお金の面も考えた、予算もそんなに掛からなくて済むような提言をなさっているわけですから、これは十分研究に値する、検討に値する、施策としても取り込んでいけるものだというふうに思ったんですが、残念ながらこれは実現はしなかったわけですね。  政府内部で余り検討をされていないというのが実情じゃないかというのが本当に感じたわけなので、こういう姿勢についてまずモギ大臣の方からお伺いしたいんですけれども、もっともっとこの報告というようなものを、せっかく出したものを政府としては活用していく、そういうことが必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  194. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) モテギです、よろしくお願いいたします。  日本学術会議の様々な提言につきまして、今日も午前中からいろんな審議の中で、原子力の平和利用の三原則の問題、それから南極観測の問題、また共同利用研究所の問題、重要な提言につきましては当然政府としてもそれを具体化する、政府政策に反映させる、そういう努力をしてきたと、こういうつもりであります。  それぞれの報告であったりとか、それから提言によりまして政府政策にそのままダイレクトになじむもの、それからその基本的な考え方というのを反映をさせて、そこの中で新たに政策を作っていくもの、様々なタイプの私は提言というものがあるんだろうと、そんなふうに考えておりますが、今回日本学術会議の組織が改正をされまして、また機能も充実をされると、そういう中でどんどんいい提言を出していただきたい、それにつきましては政府としても一層積極的に具体的な施策に反映させるようにしていきたいと思っております。
  195. 林紀子

    ○林紀子君 失礼いたしました。茂木大臣に聞かせていただきましたけれども、政策提言機能を発展させるんだというお話もあったわけなので、もう一つ私が経験したことでは、今回国立大学法人化するに当たりまして、労働安全衛生法に違反をしてしまうのではないかという問題が持ち上がりまして、この委員会でも私は質問させていただいたわけですけれども、そのときも化学研究連絡委員会から出されました「大学研究室における安全確保と実験環境の改善について」と、そういう報告を引用させていただいたんですね。  このときは、まとめとして、これまで安全のための経費というのは研究活動には直接結び付かないため限られた予算の中では後回しにされてきた、そのツケが大学研究室の潜在的危険性の極めて高い深刻な状態となって現われている、続けて、世の中では今後ますます安全、環境の確保が厳しく求められる、大学教育での実践を通じてこのことをしっかり身に付け、社会的要請にこたえる科学者、技術者を養成する大学の社会的責任は極めて大きいというふうに結んでいるわけですね。これは、是非きちんと所管官庁や大学自身が実効ある対応をしてほしいということを言っているわけです。  私はこれを読みまして、もし、これが十年前に提案をされているわけですので、それがそのまま実行をされておりましたら、土壇場になって労働安全衛生法に違反をしてしまうというような大騒ぎにはならなかったと思いますし、特にここで言われている安全環境の確保というのをきちんと人材育成の一環としてするということは、今、三菱自動車のリコール問題とか雪印の不正の問題とかいろいろありますけれども、企業の倫理が非常に低下をしているということが社会問題になっておりますけれども、この安全と同時に、大学研究室の安全と同時に、やはりそういう人材、きちんとそうしたものを身に付けていく人材の育成が必要だという、この提言というのは非常に耳を傾けるべきものだなというのをこのときも感じたわけなんですね。  そういうことでは、やっぱりこれも生かされていなかったということだと思うんですね。その辺につきまして黒川会長は、是非、特に行政に対してどういうふうにしてほしいと、せっかくこういういいものを出しているのに、ちっともそれが生かされないということについてはどういうふうにお考えか、思いのたけを是非、御見解、お聞かせいただきたいと思います。
  196. 黒川清

    参考人黒川清君) これは恐らく、有馬議員はそのころ東京大学におられて、大学院部局化とかいろいろ大学への投資が増えてくるときに、人ばかりではなくて、非常に危険な研修室というのがございますね。  ですから、こういうことは出ているんですが、これはそういう意味ではその後の政策にどんどんどんどん反映されていると思いますけれども、それ、どこまで十分かというのは別として、かなり大学の方のスペースの問題、非常にもう混雑して、ポスドクが多いとかそういうことはありますが、その改善されていくのは必ずしも学術会議が言ったからというような大問題というのではないのかもしれません。  それから、先生がおっしゃるように、こういうのを出して、労働の問題、その辺についてはこちらの方の十分に配慮はないのかもしれませんけれども、そういうところは行政に提案をして、いろいろなところが、行政が、各省庁が協力してそのようなことが改善されているんだろうというふうに認識しておりますので、これからもそういう意味では、やはり行政あるいは政治あるいは政府に向かっていろんな中長期的な提言をやはり出すということを更に広げていく必要があると。  そういう意味では、今回の改正法案は、大変我々自身にとって非常に責任の重い、社会的責任を果たす、フリーダムは増えた代わりに我々の社会的責任が問われるんだよということをしょっちゅう話しておりますけれども、そういう意味では是非頑張って、これからの日本の将来を担うような若者がそれを通じて元気が出るような学術会議の機能を発揮していきたいと存じているところでございます。
  197. 林紀子

    ○林紀子君 学術会議法の第二条には、科学の向上発展を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とするというのを私も今回改めて読みまして、そういう意味ではなかなか行政には反映浸透していないのかなというふうな気もいたしましたけれども、是非学術会議の方といたしましても、私はここに「学術の動向」というのを届けていただいて必要に応じて見せていただいているわけですけれども、もっともっと、議員に対しましてももちろんですけれども、一般国民に対してこういうことを言っているんだという発信もしていただきたいということも併せてお願いしたいと思います。  学術会議の改革として、総合科学技術会議意見具申では、今回の改革後十年以内にということで、より適切な設置形態の在り方を検討するというふうに言っているわけです。  そこで、学術会議が二〇〇二年の四月にまとめた「日本学術会議の在り方について」の中間まとめですね、事務局長さんにここをちょっとお読みいただきたいのですけれども、このまとめの「4 組織・位置付け」、「(1)国の機関としての位置付け」、ここでは何というふうに学術会議の方はおっしゃっているのか、お示しいただきたいと思います。
  198. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) ただいま先生がおっしゃいました項目の部分でございますけれども、四項目記載されております。  そのとおりに読ませていただきますと、「①現場の科学者を代表する提言は、学術・科学技術をはじめ広く行政を補完するもので、その実効性を確保するためには、日本学術会議を国の機関として位置付けることが必要である。 ②とりわけ、政策決定に際しての科学的提言の実効性を確保するためには、現行の諮問・勧告等の制度が重要であり、日本学術会議を国の機関として位置付けることが必要である。 ③上記Ⅱ」、大きなⅡですが、「上記Ⅱのような幅広い活動を行うとともに、内閣総理大臣や各省大臣に対する助言機能を適切に果たすためには、日本学術会議は、国の「特別の機関」として、総合科学技術会議とは、相互補完的な関係で連携・協力して「科学技術創造立国」に資する体制とする。 ④日本学術会議を独立行政法人等の法人形態にすることは、必要性を欠くのみならず、その基本的性格に照らして妥当でない。」と記述されております。
  199. 林紀子

    ○林紀子君 今お読みいただいたところでは、国の特別機関ということで位置付けることが必要だということと同時に、法人形態にすることは必要性を欠くのみならず、基本的性格に照らして妥当でないというふうに述べていらっしゃいますけれども、その法人の問題につきまして参考資料というのを後ろの方に付けてくださっていますが、その最後に「独立行政法人等の法人形態の可能性について」ということでまた書いていらっしゃいますね。そこのところの、その法人の問題のところをちょっとまたお示しいただけたらと思います。
  200. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) ただいまおっしゃいました参考資料の中の独立行政法人等の可能性のところには非常に長い記述がございますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
  201. 林紀子

    ○林紀子君 そうですね、随分長いので、かいつまんで言っていただいて結構ですが。
  202. 吉田正嗣

    政府参考人吉田正嗣君) 「独立行政法人等の可能性」の中に独立行政法人、それから特殊法人・認可法人等、それから公益法人と、この三種類に分けまして可能性についての記述がされております。  独立行政法人に関しましては、これは国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業を行うものであって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないものを行うという性格のものでありますが、学術会議の場合はこういったものに該当しないのではないかというようなことが書かれております。  それから、特殊法人や認可法人でございますけれども、学術会議は現在職員が六十人程度の小さな組織でございますが、その小さな組織のためにあえて特別の範疇を設けて法人、特殊法人を作ることは適切でないんではないかというようなことが書かれております。  また、公益法人につきましては、日本学術会議は科学者の内外に対する代表機関でございますけれども、基本的に学術研究団体と異ならないような公益法人というような性格の法人にすることは適当ではないんじゃないかと、そういったような記述がなされております。
  203. 林紀子

    ○林紀子君 そうしますと、独立行政法人ということでは、独立行政法人も特殊法人も認可法人も公益法人も、やはり日本学術会議というものはなかなか当たらないのではないか、今考えられている独立行政法人ということではそれに当たらないのではないかということが述べられているというふうに思うわけです。  今日は会長さんに来ていただいておりますが、戒能副会長もこの「学術の動向」で書いていらっしゃるのを読みますと、科学者コミュニティーの代表者である我々は、政界、官界、財界のそのどれとも区別される科学の世界から社会のために提言する固有の任務がある。今日、総合科学技術会議内閣府に置かれ、科学技術基本計画の策定によって巨額の科学技術予算を動かしているとき、それとは機能も役割も異なる日本学術会議が、長期的かつ俯瞰的な視点から積極的に提言していくことは大いなる意義があると考える。この機関が仮に民間のシンクタンクのようになり、あるいは特定の省の下位機関になってしまったとき、その提言をどこが今以上に聞くであろうかというふうに書かれていらっしゃいますので、そういう意味では、やはり国の特別の機関として独立をもってこれからも存在をしていくということが非常に大事ではないかというふうに思うわけです。  最後に、茂木大臣にお聞きしたいと思いますが、今後の学術会議の改革というのは学術会議自身が自主的に行うべきものだと衆議院の場で答弁をなさっていらっしゃいますが、政府として学術会議自身の検討を見守る、そのことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  204. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) 正に今回の改革によりまして学術会議自身がどういう機能を果たしてもらうかと、こういうことにつきましては、政策提言の機能につきましても、また社会とのコミュニケーションの機能につきましても今まで以上に重要な役割を果たしてほしいと、そんなふうに思っておりまして、そういった改革の流れ、これにつきましては政府としても見守りたいと思っております。  そして同時に、今後の在り方につきましては、先ほど来様々な議論が出ておりますように、独立の形態、中立性を保つ、その一方で、その出された提言というのがしっかり政府政策にも反映させる、させなきゃならない、そういう難しい課題を考えているわけでありまして、学術会議自らも検討していただくというのは当然のことでありますし、政府としてもそういうことについての意見交換をしっかりしていきたいと考えております。
  205. 林紀子

    ○林紀子君 自らの改革は自らで行う、そして学術会議自身の自主性が守られてこそ独立性というのも守られると、そのことを申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  206. 山本正和

    山本正和君 事務当局からもいろいろと今度の改正についてお聞きしまして、私も賛成でございますが、また今日は同僚議員のいろんな御質問がありまして更にいろいろなことが分かったわけでございますけれども、私、一問だけお聞きしまして終わりたいと思います。  日本学術会議が国際社会というか国際的にどういうふうな活動をしておられるのか、また国際的な役割あるいは地位、こういうふうなことについて、また会長さんも大変お忙しい中でいろいろとかかわっておられると思うんですけれども、その辺のことについて一遍教えていただきまして、ひとつそれで終わりたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  207. 黒川清

    参考人黒川清君) 現在、先ほど申しましたように、国際的には大きな枠組みで環境問題、人口問題、南北問題を中心にして科学者のアカデミーの連携機能が進んでいるところでございます。これは過去数年のことだと思いますが、実際その中で前会長の吉川先生が、国際的な学術会議の連合のアンブレラオーガニゼーションの国際科学会議、ICSUというのがありますが、そこの会長をたまたま三年間務められまして、その激動の改革の真っただ中におられたということで、学術会議も実際その中に一緒に飛び込んでいるというところがここ数年の起こっているところであろうと思います。  先ほどから申していますように、したがって、現在二〇〇〇年から毎年国際会議を開いておりまして、持続可能な社会へのいろいろなテーマを取りまして、去年の一月にはITを使った科学能力開発国際会議、これはユネスコの教育担当のディレクタージェネラルのダニエルさんも来られまして非常に評価されましたが、それに続きまして、先ほど言いましたようなエネルギーの国際会議を開催したところでございます。さらに、ICSUそのものが今機能を非常に改革しておりまして、私自身がその理事会のすぐ下にある全体の政策を決める企画委員会に入っておりまして、年に三回パリで会議をやっておりますが、そういう意味ではいろんなところにかかわっている。  それからもう一つは、先ほどお示ししましたインターアカデミーパネルというのができまして、そのインターアカデミーカウンシルでは、先日、二月の五日に国連に最初のリポートを出したというところでありますが、これも日本学術会議が十五の世界のアカデミーの一つとして参加しているというところでございますし、そのほかに実は最近アジア学術会議というのも作りまして、アジアについての、これも学術会議が実はリードして、今十一か国のアカデミーで、中国それからインドその他も入れて、これからのアジアの将来に向けた持続可能な社会を構築するためのアカデミーからの提言というのを現在第一歩を、多分今年の五月に出ますけれども、この活動が現在国連の方に持ち上がったということをやっております。  そのほか、もう一つは、実を言うと、ここにおられる有馬議員が五年前まで務められた太平洋学術協会というのがございまして、有馬先生会長でございましたけれども、その後オーストラリアの方が四年間会長を務められた後、これはもう八十年以上ある非常に由緒正しいといいますか、そういうアカデミーなんですが、実はどうしても日本海洋国家であるし、これからの太平洋の、例えば地球の温暖化、それからいろんな、火山の問題、それからサンゴ礁の問題、それから魚の問題、ダイバーシティーの、生物多様性の問題その他はどうしてもやはり日本にもうしばらくリーダーシップを取ってもらわないと困るということで、実際、今度は私が四年間務めることになっておりまして、実は有馬先生とも御相談に行っているところでございます。  日本はやはり海洋国家ですので、先ほどの水産の問題もありましたけれども、やはり海洋国家としてユニークな科学技術と、そういう意味では先進国としてのこれから太平洋でのプレゼンスというのは非常に大事だと思っておりまして、そういう意味では国際的な枠組みではもう大変現在のところは活動について注目されているところでありまして、そのようなものを通じながら、是非将来の若い人材も含めて科学者コミュニティーの社会的な役割を果たしていきたいと思っておりまして、そのためには、今回の改正については今までよりははるかにプラスになる要因が多いので、これはむしろ我々が社会的な責任を果たす方策として、より自由度が増えたんではないかということを会員と話しているところでございます。
  208. 山本正和

    山本正和君 ひとつ一層の御尽力をお願いいたします。どうもありがとうございました。  終わります。
  209. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  日本学術会議法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手をお願いいたします。    〔賛成者挙手〕
  210. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、鈴木寛君から発言を求められておりますので、これを許します。鈴木寛君。
  211. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 私は、ただいま可決されました日本学術会議法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     日本学術会議法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一、政府及び日本学術会議は、日本学術会議我が国の科学者の内外に対する代表機関として独立性を保つとともに、科学の向上発達と行政・産業・国民生活への科学の反映浸透というその目的・機能を十分に発揮することができるよう努めること。  二、日本学術会議は、科学と社会のかかわりが増大している状況にかんがみ、時宜を得た答申、勧告、声明等を行うよう努めるとともに、国民に分かりやすい形での情報発信等、効果的・機動的な活動を行い、社会との交流の機会の充実に配意すること。  三、日本学術会議及びその委任を受けた幹事会等が職務を行うに際しては、多様な学問分野における学術動向について十分に配慮するとともに、公正性・中立性の確保に留意するよう努めること。  四、法改正後の日本学術会議会員の選出に当たっては、今回の法改正趣旨にかんがみ、急速に進歩している科学技術や学問の動向に的確に対応する等のため、第一線の研究者中心に、年齢層等のバランスに十分に配慮するとともに、女性会員等多様な人材を確保するよう努めること。  五、今後の日本学術会議の設置形態を検討するに当たっては、総合科学技術会議日本学士院等との連携や役割分担の在り方等を踏まえるとともに、今回の法改正後の日本学術会議の活動状況の適切な評価に基づき、できる限り速やかに開始し、適当な時期に国会に報告すること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いを申し上げます。
  212. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ただいま鈴木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  213. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 全会一致と認めます。よって、鈴木君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、茂木内閣府特命担当大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。茂木内閣府特命担当大臣
  214. 茂木敏充

    国務大臣(茂木敏充君) ただいまの附帯決議につきましては、政府といたしましても、十分その趣旨を尊重し、努力してまいります。
  215. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十一分散会