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2004-03-30 第159回国会 参議院 文教科学委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年三月三十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      佐藤 泰介君     岩本  司君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         北岡 秀二君     理 事                 亀井 郁夫君                 後藤 博子君                 鈴木  寛君                 山本 香苗君                 林  紀子君     委 員                 阿南 一成君                 有馬 朗人君                 大仁田 厚君                 大野つや子君                 扇  千景君                 中曽根弘文君                 橋本 聖子君                 伊藤 基隆君                 岩本  司君                 谷  博之君                 中島 章夫君                 西岡 武夫君                 草川 昭三君                 畑野 君枝君                 山本 正和君    国務大臣        文部科学大臣   河村 建夫君    副大臣        文部科学大臣  原田 義昭君    大臣政務官        文部科学大臣政        務官       馳   浩君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 俊史君    政府参考人        総務大臣官房審        議官       岡本  保君        財務省主計局次        長        杉本 和行君        文部科学省生涯        学習政策局長   銭谷 眞美君        文部科学省初等        中等教育局長   近藤 信司君        文部科学省高等        教育局長     遠藤純一郎君        文部科学省スポ        ーツ・青少年局        長        田中壮一郎君        厚生労働省職業        能力開発局長   上村 隆史君    参考人        愛媛県知事    加戸 守行君        品川教育委員        会教育長     若月 秀夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特  別措置法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○政府参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。  義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として愛媛県知事加戸守行君及び品川教育委員会教育長若月秀夫君の二名の方に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変お忙しい中、当委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人皆様方から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案審査参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  次に、議事の進め方でございますが、まず加戸参考人若月参考人の順でそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただいた後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございます。  それでは、まず加戸参考人から御意見をお述べいただきます。加戸参考人
  3. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 本日は、当委員会参考人としてお招きいただきまして意見を述べる機会を与えていただきましたことに心から感謝申し上げます。  結論的に申し上げますと、今御審議になっております法案につきまして、私としましては当面の応急措置としてやむを得ないものではないかという認識はさせていただいております。ただ、義務教育国庫負担在り方そのものについての私の見解を申し述べることをお許しいただきたいと思っております。  今から三十数年前になりますが、私、著作権を担当しておりまして、各種の国際会議に出ましたときに、ほとんどのコーヒーブレークあるいはレセプションで、当時のアフリカ諸国代表日本代表である私に対しましての、あんな小さい国がどうして発展したのか、それを教えてほしいということを度重なる機会に問われました。そのとき、私が様々な状況の中で一つだけ強調させていただきましたのは、日本明治維新の後、明治五年、一八七二年に学制を発布して、全国津々浦々に小学校を設置して義務教育をスタートさせた。そして、その義務教育は、今、教職員人件費を含め国が二分の一を財源保障することで仕組みが成り立っている。このことが日本発展近代化の原動力であったということを度々申し上げさせていただきまして、各国代表からは、自分たち義務教育を大切にしなきゃいけないんだなということをお話しになったのが大変印象的でございました。  教職員給与問題につきましては、既に御承知のように、明治二十九年に教員年功加俸国庫補助法が萌芽となりまして、大正七年に市町村義務教育費国庫負担法が制定され、今日に、形態は様々な形での変動等はありましたけれども、続いております。  歴史の中では義務教育費国庫負担の問題が二度危機に瀕したことがございます。  一回目が大正十年、当時の内閣首相直属調査会を設けまして、義務教育費大幅削減を目指したことがございます。これは、例えば財政力の弱い町村の場合には、二部授業にするとか、あるいは三学級を二人の教員で担当するとか、あるいは校長先生クラス担任をして補助教員廃止するとか、様々な形での財政削減を図ったことがございます。  この構想自体は、当時の首相が不幸なことに暗殺されるという事態がありまして、不発に終わったケースでございますが、二回目が、昭和二十四年のシャウプ勧告によりまして当時の義務教育国庫負担制度廃止され、昭和二十五年から地方財政平衡交付金に切り替えられまして、全額都道府県における財源措置となったわけでございます。この結果、二十五年から二十七年にかけまして、それぞれの自治体財政力の差によりまして義務教育費が大幅な格差を生じ、極端な場合には、トップの一〇〇とびりの五三というぐらいの格差を生じたような事態があり、県によりましての定数削減給与カット等が相次いだ時期があり、これを受けまして、また昭和二十八年に義務教育費国庫負担法が復活したという経緯があります。  事柄は、国が、憲法あるいは学校教育基本法学校教育法に基づきまして一定年齢の子女に対する就学を義務付けた、この考え方自体は、国が地方、国民に対しての責任を履行するシステムであり、そのことを自主的に財源的に保障するのが義務教育費国庫負担法ではなかったのかと思ってもおります。  時により、財政状況によりまして、様々な変動を受けます。現実に、義務教育費国庫負担法の中でも、時期によりまして教材費あるいは旅費、そして共済給付費等々が、補助国庫負担制度廃止されて、地方一般財源化をされてまいりました。その中にありまして、県側立場自治体側立場といたしましては、大きな影響はそれほどなかったわけでございますが、昭和十五年に共済給付制度一般財源化されたことによりまして、財源措置が十分の十保障されると思っていましたら、結果としては八分の七の保障にとどまり、八分の一は県側の持ち出しになるということがありました。今回の案につきましては、今、私どもが耳にいたしておりますのは、既に税源移譲予定交付金ということで十分の十が満額保障されるということでございますので、実害はないであろうと考えております。  この三位一体改革ということに関しまして、知事会側取組というのは、現在ございます国庫補助負担金二十兆円の中でどれが都道府県側に、あるいは自治体側にとって必要なもので、あるいはどの分野廃止削減すべきかということを知事会が各四十七県知事にアンケートを取りました。その中で各県知事が具体的に指摘をしました項目を拾い出して、三分の二の廃止を、あるいは削減を主張する費目が九兆円に上るということで、それが全国知事会としては三位一体改革として九兆円の国庫負担補助金削減廃止等を提案したわけでございます。  もちろん、私自身は義務教育国庫負担金に関しましては堅持立場ではございましたが、多数の知事廃止削減を提案した考え方の中には、この運用においての国の縛り、規制がきついということで、もっと地方自主性を与えろという声が底流とあって、そういう数字になったのかなと想像はいたしております。  二年間にわたります知事会で毎回この三位一体改革等議論が行われてまいりました。その中で、私は義務教育国庫負担金制度堅持を訴え続けてまいりまして、当初は余り賛同する声はございませんでしたが、時間を経るに従って賛同者も増えてまいっております。そして、今回のこの法案措置等によりまして義務教育国庫負担金に対する重大な懸念等が生じているのが実態でもございます。  具体的に申し上げますと、一般財源化され、そして自由になるということでございますけれども、一体道行きがどうなっていくのかということの不安、懸念を持っている点は、現実の問題といたしまして、知事会側が求めておりますのは税源移譲所得税住民税といった形での基幹税での税源譲与でございます。そういった点では、今国が負担している制度に基づきます金額が全額国税から地方税に切り替わるとした場合に、大きな都道府県間の格差を生ずることは当然のことでございます。その分の調整は、当然のことながら地方交付税によってその凸凹調整が行われるわけでございますけれども、その道行きがどうなるのかという不安感が正直に申し上げてございます。  それから、過去の経験に徴しますれば、現在の都道府県知事、それぞれ教育を大切にされておりますから、このことによって、自由になるからといってそれを削減して他の経費に回すというようなことは当面考えられないと思いますが、御承知のように、過去、昭和二十五年から三年間続いたそういった教育格差というのは、いずれ、今の都道府県すべて借金の返済に追われている、言うなれば公債費増大の中にありまして、テーマが例えば雇用確保のための産業の創出経費あるいは環境保全経費、特に社会保障の中でも福祉関係経費増大等々、様々な財政需要の中にありまして、財源の捻出に四苦八苦をいたしております。しかも、今回の三位一体改革で、地方交付税並びにそれに補てんすべき臨時財政対策債、合わせて二兆九千億がカットされました。愛媛県にとりましても二百七十億円という財源不足に陥りました。  そういう中にあって、これから、のどから手が出るほど財源が欲しい中で、仮に義務教育国庫負担制度一般財源化された場合に、ある県で一千億の経費が掛かっていて半分の五百億が国庫負担金であったと仮定しました場合に、これは極端な例でございますが、今までならば百億円カットしても、それは自己財源の五十億を他の分野に回すことができますが、国庫負担金は五十億返上しなきゃなりませんから、百億の経費カットしても五十億しか使えなかった。しかし、仮に一般財源化された姿になれば、一〇%カットで、これは定数削減給与カットというやむを得ざる措置を取った場合に、百億は別の分野に回すことが可能になる、ある意味では悪魔的な魅力として映る危険性があります。  そういうことがないことを祈っておりますが、知事の個性によりましては、あるいはその県の置かれた財政状況によりましては、かつて、五十年前のようなことが二度起こらないとは保証できない、そういった不安感もあるわけでございまして、義務教育における国の責任というのは、果たして財源保障的な意味ではどれだけのウエートを占めるべきものであるのか、国と地方責任在り方等を真剣に慎重に検討する必要があると思っております。  そのような意味で、今回、文部科学省の方が各県の不満を吸収する形で総額裁量制を打ち出され、一定全国的に平均レベルの額を保障した上でのそれぞれの弾力的な運用を考える制度を打ち出されたことは画期的なことでありまして、多くの知事がこれを歓迎いたしておりまして、そういう意味では知事会の流れも変わっていくのではないのかなという想像をいたしております。  一国の教育制度の根幹にかかわる事柄はあくまでも慎重の上に慎重を期すべきであるというのが私の考え方でもございますし、過去起きたようなケースを再度現出させない、それが必要ではないかと思っております。  個人の家庭では教育を大切にします。  昨年、ブラジルへ参りました。ブラジルでは九十五年前に愛媛県からも移住し、また戦後、移住が再開されて、五十年前からも愛媛県民が参っております。その二世、三世の方々教育に関し一世の方は、すべての生活を犠牲にしても、幾ら離れた奥地の農園で働いても、子供学校へ通わせるということを最大の家庭方針として、それが今日、ブラジルにおける日系ブラジル人ブラジル社会の中で信頼できる人というすばらしい称賛を受けていることもございまして、非常に感動的でございました。  国家財政地方財政にありましても、財政の論理によって教育にひずみを与えることのないよう、それが私の祈るところでもございます。  オーストリアの宰相メッテルニヒあるいはドイツの、プロシアの宰相ビスマルクのいずれかの言葉と言われておりますが、愚者は経験に学び知者は歴史に学ぶと申しております。現在体験する具体的な事例をベースとした経験によって学ぶのではなくて、歴史に学ぶことによって日本の果たしてきた義務教育における大きな役割を真剣に考えていただきたい、これが私の切望するところでもございます。  以上でございます。
  4. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ありがとうございました。  次に、若月参考人お願いをいたします。若月参考人
  5. 若月秀夫

    参考人若月秀夫君) ただいま御紹介をいただきました東京品川区の教育長若月でございます。今日は、本委員会にお招きをいただきまして意見を申し述べさせていただく、そうした機会をいただきましたことをまずもって御礼を申し上げたいと思います。  もとより、私の場合には区市町村教育委員会人間でございます。したがいまして、非常にある意味では実務的な事細かいお話になろうかと思いますが、その点ひとつお含みをいただき御理解をいただければ大変幸いでございます。  大きく四点についてお話をさせていただきます。  まず一点目の、義務教育費の今話題になっております国庫負担制度についてでございます。  これにつきましては、現場を一番身近で預かる教育委員会人間として、またかつて現場子供たちの前で教職に就いていた人間として言わずもがなの制度でございまして、なぜこれが今こんなに話題になるのかというのがむしろ現場教員の、あるいは身近な区市町村教育委員会の偽らざる実感でもございます。  もういろいろな方がいろいろなお立場から、この今の義務教育経費国庫負担制度につきましては、その役割、そして国の責務と、それからそれまでに果たしてきた一定成果、こうしたものを十分認識しているわけでございますし、またこれを今後堅持をしていくといったようなことは、これはもう広くコンセンサスの取れていたことであるということも考えていたところでございます。これはいろんな方の御意見を聞くまでもなく、またいろいろな歴史を調べてみましても、現在の時点においてこの制度は何があってもやはり堅持をしていくべきだという結論に至っているわけでございます。  これはもうよく持ち出されることでありますけれども、憲法二十六条であるとか教育基本法の定めでといったような様々な御指摘がございます。正にそれはもうそのとおりでありますが、どうもこの負担金制度見直しといったようなことが先行し過ぎていて、やや教育論的なものが後退をしてきているのではないか。もちろん、聖域なき構造改革というその趣旨はよく分かるわけでありますが、それは、様々な無駄であるとか問題点のあったものを、そうしたものを聖域なき分野として見直していこうということでございます。そうした観点から見たときに、なぜこの義務教育費国庫負担制度一つ対象になってきたのか、国家義務教育に対する責務というものを国全体としてどういうふうにとらえているのか、こんなことは現実学校で働いている教職員の偽らざる心情であるということはまずお伝えをしておかなければならないと思います。  それから二点目でありますが、今回の負担対象の一部見直しの点でございます。これにつきましても、税源移譲予定特例交付金という形で財源に穴が空かなくなってきた、そうした意味では一定評価のできるものではあろうと、かように思っているわけであります。  ただ、この退職手当あるいは児童手当ですか、こうしたものは一般財源化して自由になるでしょうと、こう言われましても、言ってみればこれはかなり義務的経費に近い性格のものでございまして、これをこちらの方に一般財源としていただいたところで一体どれほどの自由度が高まるのかなという疑問は持たざるを得ません。  また、今回のこの附則の第二条を拝見いたしますと、なかなか理解しにくい第二条は表記がされております。くれぐれもこのことが義務教育費国庫負担制度一般財源化への布石にならないよう、強く要望をするものでございます。  したがいまして、今現在この税源移譲のところのこの予定特例交付金、これは国に配分権のあるものでございます。やはりこれを解決するためには基本的に、今盛んに話題になっておりますが、本格的な税源移譲という議論をやはりしていくべきであろうと、かように考えているところでもございます。  三点目であります。総額裁量制がこのたび提言をされたわけであります。この総額裁量制につきまして、これは三位一体構造改革の中で、国それから地方役割分担であるとか、あるいはそれに係る費用負担見直しといったような中から、文部科学省が、この国庫負担制度堅持をしつつ、その中で少しでも自由度が高まるような負担金ということで、この総額裁量制といったようなものを御提案していただいたわけでございます。  これにつきましても、その前提をしっかりと担保する、そういった意味で大変に評価のできるものでありますが、ここで、どう申し上げたらいいんでしょうね、地方教育委員会立場から言わせていただきますと、よくこういう財源一般財源化すれば自由度が増すではないかというような議論があるわけであります。しかし、この自由度ということに余り地教委の場合はリアリティーを感じないわけであります。  それはどういうことか。少し教育論お話をさせていただきますと、今盛んに学校教育体質改善であるとか、特に教員資質向上といったようなことが強く言われております。これは長年の我が国における大きな課題でもあります。それを考えたときに、例えば区市町村教育委員会は今何に一番苦闘をしているか、取りも直さず教員資質向上でありますが、これは給与負担者任命権者でもあるという制度がございます。東京の場合には市町村立学校職員給与負担法といったようなものに基づいて国庫の半分を東京都が負担をしているわけであります。  したがいまして、任命権東京都の教育委員会が持っております。問題はここであります。この東京都の教育委員会任命権を持っているということは、もちろん何よりもやはり財源確保というのは大前提で必要ですけれども、しかし教員資質改革あるいは学校体質改善がなかなか進まないというのは、正にこの任命権の所在に懸かっているわけです。  簡単に言いますと、品川区の場合、様々な今教育改革を進めております。そして、ある意味では教員にかなりのプレッシャーを与えています。しかし、そこでちょっとこれがつらいとか厳しいとかということになりますと、教員は当然都教委異動希望を出すわけでありまして、常にそこで人の入替えというのが始まってまいります。本区の校長の場合には、今の教育改革を進めていこうということで、一生懸命教員に長年にわたり指導しているわけですけれども、毎年毎年よその地域から新しい教員が入ってまいりますと、その都度毎年毎年一から、教育改革必要性から、品川が今やっている様々な取組の概要から、その意義といったようなものを毎年繰り返し指導していかなきゃならない。そして、その教員がずっと品川に居着いていくか、そしてそれが蓄積して品川教育改革にあるいは質の向上に結び付いていくか、必ずしもそうではないわけであります。常に人が入れ替わるという非常に不安定な状況があります。  何を申し上げたいかといいますと、この義務教育国庫負担制度といったようなものは、まず当然の前提としてまず私は考えるべきだ、その次に残りの半分を、先ほど申し上げましたように今東京都がその財政負担をしているわけでありますが、今盛んに地方時代地方が、涵養の原則とでも言ったらいいでしょうか、自らの畑は自らで耕す、今そうしたものが要求されているわけです。地方時代であるならば、やはり地方それなり努力もすべきです。  そうした意味では、私は今の都教委が出している半分のその学校職員給与負担ですね、これを、それを半分にしてでも、残りの半分はやはり私はもう、区市町村が最も身近なところで義務教育にかかわっているわけでありますから、その区市町村責任においてやはり私はそれなり努力をするべきだろうと、こう思うわけであります。  今、盛んに教員資質向上であるとか、あるいは教育委員会活性化ということも言われています。なぜ教育委員会がこう形骸化しているとか、余り機能を発揮していないじゃないかと言われるか。それは確かにいろいろな権限を全部、地教行法に変わったときに随分取られてしまった、そういった歴史的な経緯もありますけれども、自らの責任において自らの地域において成果を出すべく努力をするような、そういう社会的環境が必ずしも整っているとは言えない。  ですから、本格的な税源移譲といったようなものを是非実施していただいて、それぞれの区市町村は、国が半分ですね、残りの四分の一が今度は都だとしますね、残りの四分の一はやはり区市町村がしっかり自らの責任において、基礎的自治体というのであるならばそこはやはり持つべきだ。そこでまあ教員任命権をともに区市町村教育委員会に移譲してもらいたい。これがなければ本当の教育自由度というものはなかなか発揮できないのであります。  財政だけ、はい、何でもお使いになれるから自由度が増したでしょうと。じゃ、自由度が増したからといって教育が変わるか。教育論から考えて、教師論から考えて私は必ずしもその論は成り立たないと思う。やはりそこには財政的な自らの責任を伴う任命権が生ずることによって初めてその一つ基礎的自治体は自らの地域における教育の様々なアイデンティティーや新しいクリエーティビティーに富んだ政策を出してこれるんだろう。そこから教育委員会活性化といったようなものも私は十分考えられるのではないだろうかと。  したがいまして、その区市町村税源はどうするか、それは様々なその税源移譲の中でその自治体がやるか、あるいは場合によっては、例えば外国の例なんかを見ますと、教育税とか学校税とかというような一つの目的税を導入している国もあるわけであります。それがもし幾つかの自治体の中でコンセンサスが取れれば、教育税といったような形でその残り四分の一の区市町村負担すべきもの、これをやはり財源確保していくという方法も考えられるでしょうし、そのほかの税源移譲でもって別の方法でそれぞれの地域、地区が、区市町村がそれぞれ考える必要があるんじゃないか。そこはどういうふうに財源確保するかということはそれぞれの自治体基礎的自治体である区市町村にある程度判断をゆだねるべきではないだろうか。それを一番根幹にある義務教育国庫負担を御自由にどうぞという、国の方から御自由にどうぞという形で持ってこられても、これは甚だ現実的ではないだろう、こう思うわけであります。自由に任せられるところ、それは本当に今の制度でいくと残り四分の一のところをどういう財源確保でも御自由にお使いになったらいかがですか、それはそれぞれの自治体の個性ではないでしょうかと、こういうことを考えるわけであります。  そういうことから、一番の問題は任命権というものが財源と一緒にセットで区市町村教育委員会に下りてくる、こうしたらそれぞれの教育委員会はかなり真剣になると思います。正にそういう意味ではいろいろな教育委員会が競争になるわけでありまして、今までのように形式的な教育委員会の運営では済まなくなってくるだろう。自らの自治体の中にいる教員を、自らのその財源の一部も使って、そして任命権を行使して、そして教員資質向上していく。やはりこうした観点が、財源論ばかりがこう先行している、これで果たして本当に今学校教育が抱えている教育課題に正対しているものなのだろうかということを強く感じるわけであります。  是非そうした観点で、将来この国の教育行政をどうしていくべきかという長いスパンの中で今の国庫負担制度といったようなものの在り方を考えていかない限り、なかなか本格的な教育改革の実現は見えないと、かように考えているところでございます。  以上です。
  6. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、各参考人お願いを申し上げます。  御答弁の際は、委員長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。  また、時間が限られておりますので、できるだけ簡潔におまとめください。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 自由民主党の亀井でございます。  今日は、加戸参考人若月参考人、どうもありがとうございました。
  8. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 着席のままで結構です。
  9. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 いいですか。  大変貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。私たちと同じような、私たちが問題にしていることを率直にお話しいただきまして感激しておるわけでございますけれども、これから若干お尋ねしたいと思うわけでございますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず最初に加戸参考人にお聞きしたいんですけれども、加戸参考人がおっしゃったように、これからどうなるんだろうかという先行きの問題について非常に不安に思っている、私もそうでございます。特に、簡単に言いまして、文部省の負担金ということでいくのか例えば総務省の交付金にするかによって、いずれも国庫負担といいながらも随分違ってくるように私は思うわけでありまして、そういう意味では今回の退職金なり児童手当の問題も、これが一つの突破口になって変わってきては困るなと思うんでして、特に教育の問題が、この教育費の問題が教育論から離れて財政論として議論されてしまっては困るんではないかと思うわけでありまして、交付金になりますと、地方知事さん初め市町村長さんは財政的に困っているからというので、おっしゃったようにこの金をそちらに使ってしまう可能性があると。  一年、二年前ですかね、今日お見えの扇千景先生が中心になって子供の図書費を、学校の図書費を随分増やしたわけでありますけれども、どのように使われているかと思ったら、使われている学校は三〇%ぐらいしかなくて、多分七〇%は全部ほかのところに使っておったと。増えたからいいやという格好で喜んで使われているんですね。だから、そういう意味で、図書費で増やしてくれといって付けてみても、もらった方はそれをほかのものに使っちゃう。それだけ困っておられるんでしょうけれどもね。  そういうことでございますので、知事さん方の気持ちというものを相当変えていかないと難しいなと思うんですけれども、知事会でのいろんな議論の中で、これまではそういう形で地方交付税その他に一般財源化することに対して賛成しておられたわけでありますが、今度の総額裁量制になって若干違った考えが出ておりますけれども、率直に言って加戸参考人から知事の皆さん方の、加戸参考人考え方はもちろんですが、ほかの多くの、ここに来ておられない知事さんの考え方はどうなのか、ひとつちょっと教えていただけませんでしょうか。
  10. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 先ほど申し上げましたように、二年前から知事会での議論をいたしております中で、当初はどうしても地方の自由にしてもらいたい、だから欲しいという声が圧倒的だったと思います。現時点で、総額裁量制という案が出された段階で、これ知事会の社会文教委員会というところでも議論いたしましたが、そのときには七人の知事のうち六人が総額裁量制評価して、義務教育費国庫負担制度の検討は棚上げして、ほかのステップとしてはトップバッターではなくてラストバッターにすべきではないか、そういう空気がございますし、そういった動き、考え方はかなり知事の間にも底流としてどんどん広がっているのではないのかと私は感じております。  ただ、知事会の方が総額九兆円というやり玉に数字を、数値目標を示して出した建前もありますので、それとの整合性の問題はあると思っております。
  11. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 もう一度ちょっと加戸参考人にお聞きしたいんですが、十人のうち七人まではそうかもしれませんが、依然として財政論的な見方でとらえている知事がまだたくさんおられるわけでありますけれども、そういう人たちの意見は具体的にはどういうことを考えておられるんでしょうか。教育の問題について、こんな大事な教育の問題で、先ほどおっしゃったようにこの義務教育についての国庫負担制度日本教育を支えてきたことは事実なんですから、それに対してそういうことを平気で言う知事が三割も四割もおるということは残念なんですけれどもね。  そういう意味では、加戸参考人はそれにちょっと、そういう人の立場意見はどんなものかお教えいただけますか。
  12. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 議論をしておりまして、当然、廃止削減を主張される知事の皆さん方も、一般財源化されればその百の財源義務教育のために様々な工夫をして自由に使うんだとおっしゃっておられます。それはそうだろうと、現時点では私も思います。  しかし、これから地方財政がどんどん厳しくなっていけば義務教育費に手を付けて、これは使途限定されておりませんから、一般財源の場合には他の分野へ転用される危険性があるということを私は主張しておりますけれども、そういうことはないという、今、将来に対する担保の問題として、とにかく自主性地方が持ちたい、義務教育地方責任でやりたいという感覚ですので、なかなかかみ合わない点があることは事実でございます。
  13. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 教育の問題も地方がやらなきゃいけないということは当然のことでございまして、お願いしたいわけでありますけれども。  そういう意味では、若月参考人がおっしゃったように、若月参考人にお尋ねしたいんですが、やはり教育委員会の在り方が非常に大きな問題だと思うんですけれども、戦後六十年近くの日本のこの教育の根幹が教育委員会にあったわけでありますけれども、いい加減な教育委員会が余りにも多過ぎると私は思うんですね。小さな四、五百人の村の教育委員会なんか何やっているか分からないという状況も多いわけでございまして、教育委員の名前もみんな知らないというような状況ですから、そういう意味で私は困ったものだと思うので、そういう意味ではこれを何とかしなきゃいけないと思うんですけれども。  しかし、今の教育委員会は、今若月参考人がおっしゃったように人事権もなければ予算権もない、義務だけあると、権利はないという格好ですから、非常に困っておられることもよく分かるわけですね。そういう意味では、教育委員会改革が非常に大きな課題だと私は思うんですが、私も国会議員になりましてこのことをずっと主張してきまして、ようやく今度文科省が中教審にこのことを答申、今月かけましたけれども、だけれども、やはりこれから真剣に考えていかなきゃいかぬ問題で、そういう意味では教育委員会の権限なり、そして、権限、人事権と予算権が一番柱になりますけれども、こういう問題についてどのように具体的に変えていけばいいかと。  さっきちょっと話されましたけれども、もう少し突っ込んで話を聞かせてくれませんか。これも、品川区のようにかなり大きいところで頑張っておられるのと小さな町の場合と違うんですけれども、それも考えながら、この場合はこうだという格好でお教えいただけると有り難いと思いますけれどもね。
  14. 若月秀夫

    参考人若月秀夫君) 教育委員会制度につきましては、大変ある意味じゃ難しい問題でありますけれども、一つは、今、亀井委員指摘のとおり、様々な、教育委員会法から地教行法に移る際、様々な権限が首長の方に移されたと。そうした意味では、今の教育委員会一体何をやっているんだと、こういろいろ批判されますが、ちょっと気の毒な思いがしないわけでもありません。  したがいまして、先ほど申し上げましたようにこれからは地方時代でありますし、地方がその独自性を持って様々な新しい教育を実現していく時代である。そう考えてきたときに、やはり一定教員に対する責任を持たせる必要があるだろうと、こう思うわけです。  ですから、予算権をどうするとか、あるいは人事権、あるいは発議権をどうするとかといったようなものの前に、今の教育委員会そのものに具体的にどうした具体的な権限を与えるか。一番大事なものは、先ほど言った私は任命権だと思います。これを与えてくれさえすれば、それぞれの教育委員会は、例えば予算上程権があるにしろないにせよ、かなり首長との関係、あるいはそれに対する働き掛けといったようなものは相当強くなってくるだろうと思います。  一つネックは、今の教育委員会は、大変言葉は悪いんですけれども、教員の人事も管理職の人事もすべて区市町村の場合には、東京の場合ですけれども、ほとんどが、本当に言葉は悪いんですが、あてがいぶちと言っていいぐらいの状況であります。また、さきの地方分権一括法に伴って地方自治法が変わり、地教行法も変わりました。そして、かなり地教委の内申権が強まったと言われています。しかし現状は、内申すべき内容まで都から指示されているというのが現状なわけであります。そういう状況の中でやはり区市教育委員会任命権を持つということは、すべての責任を、教員資質向上のための責任を持つということであります。  私は、まずそうした社会的環境を早く実現していただきたい。そうすれば、新たに、じゃ予算はどうする、人事はどうする、この発議はどうするといったようなものを、それぞれの首長との関係で新たな関係が私は生まれてくるんじゃないかと、現在はそう考えております。
  15. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 おっしゃるように、区や県の場合は市町村の教育委員会ですが、全く権限がないのが実態ですね、現実にね。人事権もなければ予算権もない。でも、首長さんの場合も、首長さんが推薦し議会の承認を得た教育者なり教育委員ですけれども、実際にはそれだけのことであって、首長さんに教育のことを聞かれると私は知らないよと、教育長教育委員会だって、議会でも逃げてしまうというか答えないという実態で、そういう意味じゃ本当に教育委員会の在り方が非常に大きな問題だと私は思うんですね。大きな問題だと思うんです。そういう意味では、今おっしゃったような問題も考えながらこれから検討していきたいと思いますけれどもね。  そういう意味では、逆に今度は首長の立場になって、首長の立場として加戸参考人に聞きたいんですけれども、愛媛県の場合もそうですけれども、教育委員会があるんですけれども、その辺の調整を常時教育委員会の方と連絡取っておられるのかとは思いますが、なかなか一般の県民には目に見えてこない、目に見えないという点がございますので、知事教育について責任があるのかないのかよく分からない格好になるんですね。それについて、加戸参考人はどのようにお考えですか。
  16. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 首長の立場としまして、現在の制度上は特に、例えば県知事でございますれば教育予算の編成執行権限のみでございまして、それ以外は教育委員会が自らの判断において合議制の機関で決定し、具体的には教育委員会教育長責任者として事務を執行される、そういう建前になっておりますので、正に予算の関係だけが県知事の権限であるということで、おのずからその役割分担が決まっている。  もちろん、予算ということは、現実定数をどこの地域にどれだけ何人ということでございますから相当大きな影響力はありますけれども、教育内容に関して、あるいは様々な研修の実施等その他、財政面や同時並行的な要素はあるとしても、教育委員会の主体性によって行政実行が行われるものだと理解をしております。  ただ、若月参考人のおっしゃった、やや県教育委員会の方が市町村教育委員会よりかなり強い権限を持って、特に人事権がありますからイニシアチブを持っていることは否定できない面で、それは二人三脚という感じでの運用に持っていくことが必要だろうと思っております。  ただし、一点問題なのは、任命権が市町村教育委員会ということになりますと教員異動が不可能になって、へき地、離島等を抱えた市町村と、町村と大都市との間の教員格差というのが結果として出てくる問題、そこの悩みをどう解決していくかという大きな問題点があることは一つの事実でございます。
  17. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 よく分かりました。  知事の権限は予算だけだということですが、逆に教育委員会は予算権もないということになりますし、市町村の教育委員会は、人事は県が持ち予算は首長さんが持つんだから何もないということですから、若月参考人なんかは非常に厳しい思いをしておられるのはよく分かるわけですが、これも区の場合と、区のような大きな世帯と、小さな田舎の人口千人足らずの町の教育委員会とはまたこれも違ってくるわけでありますから、町村合併でこれが多少変わってきますけれどもね。これからやはりそういう意味では、教育委員会のありようというものを十分考え直していかなきゃいけないと思いますけれどもね。  そういう意味で、これからもいろいろと御指導願いたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  今日はもう時間がなくなりましたのでこれでやめますけれども、これからも何かと御指導願いたいと思います。  ありがとうございました。
  18. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。本日は、加戸参考人若月参考人、本当に貴重な御意見をありがとうございました。  まず若月参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。  実は私、東京の地元の事務所が原宿にございまして、神宮前小学校で、若月先生、当時の大変ならつ腕に大変敬意を払っておりますし、品川に移られてからのいろいろな挑戦は、私が教育改革の道に入る上で大変参考にさせていただいておりますし、私が今日ここの席にいるのも若月先生の影響を大変受けているということで、今日は大変に有り難く存じております。それで、今日、若月参考人は大変に重要なお話を御陳述いただいたというふうに思っております。  私は民主党の教育基本問題調査会の事務局長をさせていただいておりますが、私ないし我が党の基本的な考え方は、正に現場主権あるいは現場の尊重というものを徹底的にやるということであります。正に、財源そして権限、人間、ごろ合わせみたいなものですが、この三つのゲンをいかに現場に国というものは管理ではなくて支援という態度で提供をしていくのか、供給をしていくのかということが私たちはこの義務教育段階における教育改革の基本であるという考え方を持っておりましたので、そういう意味で、若月参考人お話というのはそうした考え方にも非常に一致をしているということで、我々意を強くした次第でございます。  それで、恐らくこの文教科学委員会の与野党を問わず、小泉内閣が推進をしているいわゆる三位一体論については、自民党、公明党の委員皆様方からも心情的には大変な疑義と懸念が表明されておりまして、国が憲法上の要請あるいは教育基本法上の要請からきちっと教育費について財源確保するということについては、少なくともこの委員会ではコンセンサスがあるというふうに思っております。  ただ、若月参考人がおっしゃったことを少し確認をさせていただきたいと思っておりますが、私たちは、義務教育財源義務教育費国庫負担制度というものを非常にリジッドにといいますか、狭義に解釈をいたしております。どちらかというと、自民党の先生方は割とこう、何といいますかラフにといいますか、そして私たちは義務教育費国庫負担制度を進化させたいと思っているんですね。そして、若月参考人は進化させたいと思っているのか、堅持したいと思っているのかと。冒頭では堅持とおっしゃって、後半のお話を聞くと進化というふうに聞こえるので、それはどちらなのかということをお伺いしたい。  すなわち、私たちは進化の方向性として、正に若月参考人が後半におっしゃった、任命権とそして財源負担というものが県と基礎自治体とでばらばらになっていると。それを正に基礎自治体教育委員会学校現場の基本ユニットに、先ほど申し上げましたように、権限も財源も人事権も基本的には集約をしようと。それで、もちろんそのベースの部分は国がきちっと負担をすると、こういう考え方なものですから進化論のように私は聞こえたわけでありますけれども、いわゆる県が二分の一、そして国が二分の一、そして県の人事権は今までどおりという堅持なのか、それとも、私たち、あるいは後半おっしゃったような進化論なのかということについてもう一度確認をさせていただきたいんですが、いずれでございますか。
  19. 若月秀夫

    参考人若月秀夫君) どういうふうにお答えしたらいいんでしょうか。  現在の時点では、そして今、様々な課題が投げ掛けられているこの状況においては、義務教育費国庫負担制度堅持であると。何としても堅持である、こういうまずスタンスであります。しかし、これを堅持する、そうすると議論の一方において、例えば、いや一般財源化すれば何も、自由に使えるんだし、自由度が高まるじゃないかという論もあるやに伺います。そのときに、自由度ともし言うんであるならば、一般財源化されて自由度が増すとは言えないんだ。それはなぜかというと、本当に自由度を増すには任命権がセットになったものでなければ自由度が増さないんですよと。したがって、一般財源化すれば自由度が増すというある意味では安易な発想、これに対して歯止めを掛けたいわけです。  じゃ、一体、一般財源化して自由度が高まらないということは具体的に何が欲しいんだ。それは任命権が欲しいんです。行く行くは、国が国の責任として半分、残りの四分の一を都道府県残りの四分の一が基礎的自治体基礎的自治体それなり責任を持つ。しかし、そこに任命権をセットにして下ろしてください。これは行く行くということでありまして、これは進化なのかどうなのか分かりませんが、それが現在の認識でございます。
  20. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 ありがとうございました。  我々も、民主党が政権を取った暁にはということで、行く行くはというところが暁にはというふうに読み替えれば、先生方の御意見とかなり近いなということを確認させていただきました。  それで、加戸参考人にお伺いをしたいわけでありますが、私たちは正に基礎自治体学校現場、この教育ユニットに対して、人事権も、基本的には人事権、そして学校の管理あるいは運営についての基本的な権限を集中をするといいますか移譲をするということを考えているわけでありますが、亀井委員の御質疑の中で、基本的には加戸委員もその方向には御賛成というふうに聞こえました。ただ、我々も認識をしているんですけれども、例えば練馬区の生徒数と高知県の生徒数って同じぐらいなんですね、大体。そうすると、今までは地方教育行政体系を議論するときに、県教委はとか区教委はという、県教委は県の段階でありまして、区教委は基礎自治体だ、こういう議論の設定の仕方自体がもう現実離れしていると。  したがって、我々民主党はさらに教育行政を語る適正なサイズというのはどれぐらいなんだろうかと。東京でいえば大体区ぐらいなんだろうなというふうに我々は認識を、それは区とか市とかという意味じゃなくて、大体三十万人とか、人口にして大体五十万人とか、あるいはそれはもっと言えば生徒数で切った方がいいと思いますけれども、生徒数にして何万人という単位で、あるいは教員数にして何万人という単位で、もう一回行政の基礎単位、教育行政の基礎単位というもののサイズと在り方というものを一から議論し直そうということを今勉強している最中なんですが、そうしますと、実は若月参考人が所掌をされている品川区の生徒数と愛媛県の教育委員会が大体管轄をされている生徒数って、大体けた数において一致するわけですね。  そういうところはきちっと調整なり修正なり進化をさせるという前提において、いわゆる国と基礎自治体の間にある県の権限というものが、将来しかるべき、愛媛県の場合はそれは県のサイズとかなり似ている、あるいは愛媛県の場合はそれは二つぐらいできるのかもしれませんけれども、県から基礎自治体あるいは基礎ユニットに対して財源も人事権も更に大幅に移譲するといいますか、そこに集中させるという若月委員の基本的な考え方について加戸委員はどういうふうな見解を持っておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  21. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 基本的に、義務教育に関して言えば、小中学校は市町村が設置をし管理運営するという原点があるわけでございますので、それに立脚して言えば、若月委員の言う目指される方向はよく理解できます。  一点、私が引っ掛かる点を申し上げさせていただきますと、愛媛県の場合、へき地もあります、離島もあります。現在は七十市町村があります。今合併の方向で旗振っていまして、約二十に収れんしますが、それも松山市という人口の三分の一を除外しますと、十八区で百万の程度の話でございます。問題は、教員の採用はどうするんですか、市町村ごとでやれば、へき地、離島へ志願者はないでしょう、あるいは配置された人の異動はどうするんですかということになると、やっぱりそういった圏域間でバランスが取れて、大きな都市であっても小さな村であっても小さな島であっても、教員資質はほとんど変わりませんよという教育の水準の平等化というのは必要になる。その辺をどう担保するのか。それが現在、県費負担教職員制度といって、任命権、人事権を県教育委員会が持っている理由でもあります。  そこの兼ね合いが、今の二人三脚では区市町村意見が反映されない、おっしゃるとおりだと思います。そのジレンマはどう解決するか。その基本問題のみを解決すれば基礎的な自治体として義務教育は市町村が財源も持ち、責任を持ってやれることになるのが私は理想であろうと思いますが、そこへ行く道のりは様々なバーをクリアしなきゃならない。特に均一な教職員確保、どんな小さなところでも立派な先生が来てもらえますよというシステムをその中でどう確立していくのかが、現在のシステム、それに代わるべき方法をまた大きく検討することには私も賛成でございます。
  22. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 お二人に伺いたいと思います。同じ質問でございます。  今、正に義務教育の在り方を議論する中で、教育委員会というものをどうするかと。一方には、正に知事なり区長なり、正に首長直轄に、教育行政の指揮命令の下にもう一回戻すべきだという考え方と、それから元々の正に教育委員会が作られた趣旨でもありますけれども、そうした、やや政治から距離を置いてレーマンコントロールによって一定の中立性を確保するんだと、そもそもの教育委員会制度の存続意義ですね。  この点について、今日は首長と教育委員会の両方のお立場それぞれから参考人に来ていただいているわけでありますが、教育委員会ではなくて、もう少し首長直結で教育についての行政権限を移すべきだという考え方について、それぞれの御意見、御見解をお聞かせいただければと思います。
  23. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 現在の教育委員会制度は、首長は直接公選で選ばれます。かなり政治的な色彩も持っております。そのことが教育の世界には直結しないように、教育委員会という間接クッションで政治的な中立を確保するというのが第一点ございます。  したがって、また政治的中立を確保するためには、首長が教育委員を議会の同意を得て任命しますけれども、五人総入替え、六人総入替えということができないように、四年に一回一人ずつ交代をしていくということによって安定性、継続性というのが保障されている。そういう意味では、極めて優れた制度であると私は思っておりますが、現実制度の趣旨に即して教育委員会が自主的に判断をし、実質的な権能を持って動いているかというと、どうしても予算を持っている首長によって左右されがちである、その実態との乖離をどう縮めていくのかが問題だと思いますので、私は、教育委員会制度は必要である。それは、先ほど申し上げた趣旨からも、現実に機能していないならば機能するようなシステムへどう持っていくかが大切なんではないのかというのが私の意見でございます。
  24. 若月秀夫

    参考人若月秀夫君) 結論から申し上げますと、教育委員会制度の中身の運用の仕方、これは様々な課題がありますが、教育委員会制度といったようなものに私は一定の意義もあるし、今後もこの制度といったようなものはやはり継続していく必要があるんじゃないだろうか、こう思います。  なぜ首長の部局に持っていくことに余り賛成ができないか。これはよく言われることでありますけれども、やはり教育といったようなものは継続性があり中立性が必要になるわけであります。極端な場合、首長さんが替わるたびに教育行政の根幹が右に左に、縦に横に、前に後ろに、これは必ずしも好ましいことではない。したがいまして、やはり教育委員会制度といったようなものは、これはやはりある一定役割があるだろうと、こう思います。  それから、よく首長さん方は教育委員会といったようなものは、これは要するに首長部局から離れた行政委員会なんだからということで遠慮をされているわけでありますけれども、私はこれは違うだろうと思うんです。私もうちの首長に任命をされ、議会の任命同意をいただいたわけでありますので、当然その時点において首長は教育行政に当然責任が発生していると、私はそう思います。  したがいまして、首長が今の教育委員会制度というものがあるので余り言えないというのは私はむしろおかしいことでありまして、ここは積極的に物を言っていただいて私は構わないだろうと。それに対して教育委員会一つの自らの立場を認識し、対応をすればいいんであって、区長部局と連携の取れるものはバランスを取りながら連携をしていけばいいのであって、どっちかにこの権限を任せるとか、こういったようなものではないだろう。  そう考えますと、今の教育委員会制度といったようなもの、実は教育委員さんをどうするかというのは若干の問題は私はあると思いますけれども、制度そのものにそんな大きな責任はないんじゃないか、こんな見解を持っております。
  25. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 ありがとうございました。  終わります。
  26. 山本香苗

    山本香苗君 公明党の山本香苗です。  本日はお忙しい中、本当にありがとうございます。  大変貴重な御意見をいただいたわけでございますけれども、今日は、本当にこれからの将来を担っていく子供たちのためにこの制度をどういう形にしていくのがいいのか、そういう観点から御質問させていただきたいと思うわけなんですけれども、もうるる御質問ありました。なるべく重ならないように質問させていただきたいわけなんですけれども。  最初に加戸知事の方にお伺いしたいわけなんですが、陳述の最後に総額裁量制は画期的だというふうな形で評価をされていらっしゃいましたけれども、実際その画期的だと評価される点につきましてどうお考えになられていらっしゃるのか。私もこの総額裁量制というものを文科省の方から説明いただいたときに、面積が決まっていて、縦横は自治体の方で決められる、でも一定の歯止めがありますよと、そういう話があったわけです。標準法と人確法という形があるわけですけれども、この二つの法律についての意義付けというものはどういうふうにお考えになられるのか。この二点について初めによろしくお願いいたします。
  27. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 今までの学校、学級編制が基準となった定数でございまして、それにかなりの縛りがございました。問題は、この点に対してのうっせきが知事会の中で出てまいりましたのは、知事の中で、うちは三十人学級やりたい、三十五人学級やりたい、でもその自由がなかなか利かない。三十人学級をやろうとすればどういう現象が起きるかといったら、結果として専科教員は減らしてしまう、それから研修に行く現場の研修定数も減らしてしまう、教育困難校における指導の定員も減らす。様々な形での人数をこちらにシフトすることによって三十人学級が全部又は一部実現する、そういう自由な幅が欲しいというのが知事意見でした。そういった気持ちを、今回の総額裁量制はかなり緩やかに移動することを認めていただいたという点では、今までは増やしたかったら自分のお金でやりなさい、国庫負担しませんよということに対して、要するに思い切って清水の舞台から飛び降りたのは総額裁量制だと私は思っております。  ただし、ここの危険な問題点はあります。そのときの思いで特定のものをこうしたいということでシフトすることが、全体のバランス、全国的にどうなのかということでございます。例えて言えば、私は学校においては音楽を重視しております。情操教育の原点だ、だから音楽の専科教員は百人置きたいとか二百人置きたいと加戸知事が思ったら、どっかの部分の定数を減らして回さざるを得ない。それが極端に行き過ぎることがあるとどうかなと。  しかし、そういった良識ある範囲でその地域の実情に応じて、この地域ではどうしても不登校が多いから複数の教員で何とか指導したいという地域もあれば、この地域は正に大人数は困るから、少し学級編制を小さくしてほしい。一方は、学級編制はこのままでいいから、例えば進学のためのひとつ強化補習もうちはやりたいとかいう地域はいろいろあると思います。そういうものに弾力的に対応できる総額裁量制というのは、かなり知事が持っていた不満を吸収することができて、それぞれが個性ある地域作りを担っていくのにつながるという点で私も評価しておりますし、多くの知事評価し始めていると思っております。
  28. 山本香苗

    山本香苗君 人確法と標準法について。
  29. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 失礼しました。  私は、人確法はすばらしい法律だと思っていました。当初、行政職に比べて三〇%優遇するというだんだん掛け声が今、現実の人事院勧告、歴代の中で目減りしていって、今一般行政職に比べれば五%程度のプラスにしかなっていない。そういった点で人確法の趣旨は生かしてほしい。しかし、今各県の置かれた財政状況を見ておれば、背に腹代えられなくなって、いわゆる優遇措置の部分がどんどん目減りをしていく危険性を、不安は感じていることは事実でございます。  そういった点では、今回の総額裁量制によって影響を受けるとするならば、かなり給与の一%カット、これ一%でも金額としては大きいんです。県によりましては十億、二十億の金が浮いてきます。そういった形でそれが様々な工夫でやられるんでしょうけれども、不安感を持っていることは事実でございます。
  30. 山本香苗

    山本香苗君 若月教育長の方には、本当に現場からの発想で、いろんなのをインターネットで読ませていただいたんですけれども、本当にいろんな改革をしていらっしゃると思うんです。  今、加戸知事の方からそういった総額裁量制についてはこういう形で受け止めていらっしゃるというお話がございましたけれども、現場から見るとこの総額裁量制というものはどういう形で機能していくと考えられますでしょうか。
  31. 若月秀夫

    参考人若月秀夫君) これは、今度は都とあるいは県と区市町村でどんな連携を、どんな話合いをされていくかによってこの総額裁量制制度運用の仕方というものは様々に出てくるだろうと、こう思います。  ただ、東京の場合、そしてまた本区の場合でありますけれども、先ほど加戸参考人が申し上げたとおりでありまして、今まではなかなか学級の、職員の定数についても自由度が利かない部分がありました。これを自由にできるといったようなことについてはかなり現場に近寄った一つ制度であると、これは十分に活用したいと、かように思っています。  ただし、給与の水準を下げるということについては、これはかなりのやはり課題が出てこようかと思います。これはそれなり人間、これも先ほどの人確法との絡みになるわけですが、それなりの人材を確保できるかといったようなそういった問題も出てまいりますので、この辺はやはり、先ほども申し上げましたように、もう基礎的自治体である区、市の教育政策、ポリシーに基づいて一定負担はその地域が持つんだといったような覚悟とセットになってこの総額裁量制度というのは非常にうまく私は機能していくものであろうと期待をしているところでございます。
  32. 山本香苗

    山本香苗君 よく地方自治体方々お話をしますと、文科省が云々とか文科省の方で縛りがこういうのがあるんだという話が出てくるわけなんですけれども、実際、この地方分権という大きな流れがある中で、地方自由度を与えていくということは必要だと私は思っているわけなんです。ただ、今日お話の中で聞いていますと、自由度というのは単に財源的なものではなく、いろんな形で自由度というものが、言葉が、同じ言葉を発しているんだけれども、みんなの受け取り方が違ったりするもんなんだなと。今日は本当にその点貴重なことを学ばせていただいたと思っているわけなんですけれども、これからどんどん地方分権化、少子化、いろんな形でいろんな流れが出てまいりますけれども、教育において国と、本当に大きな話になってしまいますけれども、国と地方役割分担、今後どういう形でなっていくべきか、その在り方についてはお二人の参考人からどういうふうにお考えになられるのか、お伺いしたいと思います。
  33. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 国が義務教育制度で、言うなれば国家意思として国民に対しての子女の就学義務を課しているという責任はどの程度なのかということは基本にあると思います。そういう意味では、やっぱり義務教育の内容として大綱的な学習指導要領、全国的に最低これぐらいの教育をしてくださいよというのは国が示すべきであると思います。  一方、教育条件の整備につきましては、学校ならば建物についてどの程度の建物ならいいのか、この程度は最低限造った方がいいでしょう、補助制度があります、負担しますよというのは、やっぱりそれはデラックスな校舎があり、貧乏な校舎が、地域財政事情で余り極端なアンバランスも出て困るでしょうという、国の手助けも必要でしょう。  それから、今問題となっております教員給与費、これを一定の枠でこれは国が最低限担保します。その中で地域の特性を生かし、地域の実情に応じて地域の判断でかなり弾力的に運用できるようにしよう。そんな形での国と地方との役割分担というのは、実はどこからどこまでが国の責任で、どこからどこは地方がなすべきだということの議論がまだ詰められていない。感覚的には国の責任、いや地方自主性と言いながら、どの程度までが相場として、六、四ならいいのか、五、五がいいのか、金額的な意味、内容的な意味、もう少しもう少し国民的な議論をもっと積み重ねていく必要があると私は思っております。
  34. 若月秀夫

    参考人若月秀夫君) 私は、地方教育行政を預かる立場から、まず義務教育といったようなものの使命は何かということをよく考えます。大きくは二つあると思います。  一つは、国としてあるいは国民としての統一性を実現する。これは紛れもなく義務教育に課せられた私は一つの使命だろうと思います。これは国あるいは国民としての統一性を図るというのは、例えば日本の文化であるとか伝統であるとか習慣であるとか、様々な日本の知識といったようなものがあります。教養というものもあります。こうしたものを広くどの子供たちにも国民の教養として身に付けさせる。これは、それで統一性を図るという言葉を使っておりますが、それをやはり実現するということ。と同時に、ここが難しいんですね、と同時に様々なニーズを持ち、様々な個性、持ち味を持った子供たち一人一人の良さを伸ばしていく、その基礎をやはりきちんと育てていかなければならない。一見相反するもののようでありますが、それをどうやってバランス良く組み立てて進めていくか。これが私は公立の義務教育学校に課せられた使命だと、こういうふうに考えております。  したがいまして、よく文科省が、国が縛りが強いとかなんとかと言いますが、現在は私はさほど、それほど強いものだとは思いません。先ほど加戸参考人もおっしゃっておりましたけれども、国としての、国民としての統一性、それはやはり学習指導要領というものがきちんとあるわけでありまして、これはどの国でもそういった一つの仕掛けといったようなものを持っているわけであります。これはやはり国がきちんと定めるものである。これは国の責任において当然のことだろうと、こう思います。また、これを教育を進めていく上での財政的な一つの担保をする。これも国の責任として当然やっていかなきゃならないことであろうと。  その次に、施設設備のことでありますけれども、これについては設置者管理主義といったような考え方が当然あるわけであります。したがいまして、大変苦しい財政状況の中で品川区もいろいろと基金を取り崩しながらやっているわけでありますが、この点につきましても、現在のところ若干の国庫補助金といったようなものがございます。ここら辺はちょっと、この補助金はどこの地方のことを、学校を想定している補助金なのかな、改築なんかの場合ですね、東京の場合はほとんど当てはまらなくて補助金もらえないなという、若干そこら辺ではフレキシビリティーに欠ける部分というのがないわけではありませんが、その点についても若干国の補助といったようなものがある、これは一定の割合で。これも国の一つ役割なのかもしれません。  これから、じゃ地方役割を持つべきものは何なのか。これはもう何度も申し上げますけれども、やはりそれは教員の専門性の向上、それから教育内容の独自性と言ったらいいでしょうか、あくまでも学習指導要領というものを基本に置きながら、その地方その地方における教育の独自性を発揮すること、これが私は地方に課せられた大きな責務ではないだろうか。最近、どうも地方地方自身の方が地方自身に対して誇りを失っているような気がしてなりません。私はもっとその地方ならではの学習活動、教育のカリキュラム開発と言いますが、こうしたものを、これは地方責任において進めていくべきであろうと、こんなふうに考えているところでございます。
  35. 山本香苗

    山本香苗君 どうもありがとうございました。
  36. 林紀子

    ○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。  今日はお二人の参考人、本当にありがとうございます。お立場からいたしましたら年度末というのは一番忙しい時期ではないかと思いますが、今日はお出掛けくださいましてありがとうございました。  私も、今までいろいろ質問がありましたので重ならないようにお聞きしたいと思うんですけれども、まず私は、小泉内閣が発足をいたしましたときに、小泉首相は米百俵の精神というのをまず本会議の所信表明でなさったわけですね。私はそれを聞きまして日本教育というのもこれから良くなるのではないかという期待を持ったんですけれども、それはすぐに痛みを我慢しろというそのまくら言葉にすぎなかったということを知らされたわけなんですね。今回のこの義務教育費国庫負担法の改正、前年度、今年度そしてまた十八年度までにということを見ますと、ますますその思いを強くしているわけですが、今までもこれはいろいろお話ありましたけれども、この義務教育国庫負担制度というのを守り抜いていく意義というのはどこにあるのかというのを端的にまずお二人にお聞きしたい。  そして、ちょっと横着な質問をさせていただいて申し訳ないんですが、時間の関係がありますので、今後の質問もお二人にそれぞれお答えいただけたらと思うんですが、先ほど若月参考人がこの義務教育費国庫負担制度というのは広くコンセンサスがあるものではないかというお話がございました。ところが、私などもこの問題をいろいろ保護者の皆さんに説明をいたしますと、ああそういうことだったんですか、初めて知りましたというような方が結構いるわけですね。なものですから、保護者の皆さん、父母の皆さん、国民全体にこのコンセンサスというのをもっと広く広げていくのはどういう点をきちんと訴えたらいいのか、分かっていただいたらいいのかということでありますし、加戸参考人にも同じような気持ちがありますが、その前にまだ知事さんにもいろいろ訴えないといけないのかなという思いもいたしましたが、このコンセンサスを広げるということはどうしたらいいのかということです。  それから三点目は、この総額裁量制自由度が増すというお話が今までいろいろありました。しかし私は、この今、自由度が増しますよということで任されるように見えているのは、例えば三十人学級、これは正に広くコンセンサスが得られている問題なのではないかというふうに思うわけですね。保護者の方たちが大変これを願っていらっしゃいます。ところが、この三十人学級をどうやって地方で実現をしていくかということで四苦八苦している、そこにその自由度が任されているというような気がしてならないわけですね。ですから私は、やっぱり三十人学級というような問題というのはきちんと国が制度設計をして、そして義務教育国庫負担でこれはやっていくんですよと、これは最低の国の責任でやっていかなければいけないもので、これ自由度増して好きにやりなさいというのはやっぱり違うんじゃないかなというふうに思っているんですが、この三十人学級の問題についてお二人から御意見を伺いたいと思います。
  37. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 冒頭に米百俵のお話ございまして、実は全国知事会で、私は小泉総理に米百俵のことを触れさせていただきました。軽いジャブが返ってきまして、今回の問題は、米百俵は長岡藩で地方の話であったから地方で米百俵の精神で頑張ってほしいというお話、まあこれは余談でございますけれども。  まず、国庫負担制度の意義についてでございます。これは、先ほどからの意見の繰り返しになりますけれども、国が国民に対し、子女に就学義務を課している、そのことのウエートの大きさからすれば、国が相当程度にそれを担保する必要がある、そのことが、象徴的な存在がこの義務教育費国庫負担制度であると私は認識しております。  そういったことがよく国民に理解されていない、コンセンサスが十分行き届いていないというお話もございました。確かに、制度の問題は難しゅうございますから、一般国民にこんな話をするチャンスもございませんで、財政問題、国と地方の関係で議論はしておりますけれども、国民には余り理解されていなかったんだろうなと思います。そんな意味では、このこと自体が議論になることによって国がこんな制度を何十年もずっと続けてきたのか、しかしそのお金はどうしてきたんだろうとか、そういったことに関心を持っていただくにはいいチャンスなのかなと思いますし、国民的な理解が得られる時期、タイミングに来ていると私は思っております。  それから、三番目の自由度の問題で、三十人学級についてお話ございました。国家財政豊かならば、そして地方財政豊かならば三十人学級を実現することは理想でございますけれども、今の借金だらけであえいでいる国の状況地方状況の中で学級編制を大幅に減らすというのは、当然のことながらその財源をどうするのか、年金問題と同じようにそういった点を考えなければ、自由になったから実現する話ではない。むしろ、実現しようとするならば、どこかを同じパイの中で犠牲にせざるを得ない。その犠牲にする先が、例えば音楽、絵画等の専科教員なのか、現職教員の大学院へ行って研修をする代替定数なのか、あるいは教育困難における加配の定数なのか、あるいは習熟度別学級編制の定数なのか。いずれにしても、そういった全体の調和、バランスの中で、この地域は三十人学級でないと大変困る地域ですというような場合、いわゆる地域の実情、実情に応じての判断が許される自由度という点では評価されることだと私は思っております。
  38. 若月秀夫

    参考人若月秀夫君) 私の方からも繰り返しになります。  やはり義務教育一定レベルでの義務教育といったようなものの水準を全国的に維持していかなきゃならないということであるならば、仕組みとして、国といったようなものに支出義務が課せられる国庫負担といったようなものがあるのは当然のことだろうと、こういうふうに思うわけであります。  次に、二番目のコンセンサスの問題でございますが、コンセンサスがあると先ほど私が申し上げましたのは、少し舌足らずで申し訳ございません。教員の中で、本区の教員の中にはコンセンサスがもうかなりできているという意味で申し上げました。申し訳ございませんでした。しかし、教員だけではこれはしようがないわけでありますので、御指摘のように、広く多くの方々にこの制度のことについて知っていただく必要があろうかと思います。  本区の場合には様々な教育改革をしております。それは、学校が、教育委員会がやるのではなく、基本的なコンセプトとして必ず地域、具体的に言えばPTAでありますが、PTAであるとか地域を巻き込んでやっていこうと、これが一つのコンセプトでございます。  そうした意味では、かなりPTAであるとか町会の方々であるとかといったようなもの、そういった方々の研修会、そういったところでこの義務教育国庫負担についての話というのも何回かさせていただいております。こうした地道な活動を続けていく、またこうして国の方でいろいろ議論をされている、そうしたような積み重ねがこのコンセンサスを広げていく一つの大きなきっかけにもなろうかと、こんなふうに思っております。  それから、最後の三十人学級であります。  さて、これは大変ある意味では難しい問題であります。と申しますのは、三十人学級を是とする必ずしも教育学的なデータというものはないということが現実の問題であります。三十人学級という一つの基準を設けて、そして教員の総人数、総定数を増やしていこうと、こういう発想も当然あろうかとは思いますが、しかし三十人学級というふうに一つのものを固定をする。  現実品川の場合には、三十人学級をもう下回っている学級がほとんどでありますし、また現実に毎日行われている授業というのは、様々な形態で授業が現実に行われております。時には四十人、二クラスで五十人近くで授業をする場合もありますし、また五人、六人というように子供たちの学習集団を分けて学習をさせる、そうした形態もあります。そういった意味では、かなり学校の中で今行われている学習の形態というものは、多様性が広がってきているということは紛れもない私は事実だろうと思います。また、それが一番子供たちの実態に、特に最近学力低下などと言われますが、そうした子供たちの実態に一番合った学習形態ではないだろうか、こんなことも考えているところでございます。  したがいまして、様々な学習形態が出てくるその中の必要、まあこういう言葉もちょっとうまくないかもしれませんが、足らず米は当然区の財政負担をしている。そのときそのときの子供たち学校の見せる表情に応じて臨機応変に対応していく。私は、やはりこれからそうした学校教育活動というものが大事ではないのかなということを考えているところでございます。
  39. 林紀子

    ○林紀子君 ありがとうございました。
  40. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) よろしいですか。
  41. 林紀子

    ○林紀子君 はい。
  42. 山本正和

    山本正和君 これは加戸参考人からひとつ御見解をいただきたいんですけれども、私は今度のこの問題は、本当に日本教育をどうしたらいいかというところから出発してきた議論ならば私も分からぬでもないと思うんですけれども、経済財政諮問会議から問題提起されて、そして補助金、負担金をなくすと、減らしていこうという流れの中で取り上げられたというところに、非常に奇々怪々な思いがしたわけです、初めからですね。  私どもは大日本帝国ですから、教育受けたのは。そのときでもあったのは、どんな貧しい家の子であろうと、お金持ちの子であろうと、義務教育だけはきちっとやれるんだと、こういう制度の中にこの国はあったと。それを保障するために明治以来長い間掛かってやっとできたのが義務教育国庫負担制度と。だから、貧しい家の子でも勉強さえすれば博士にもなれるよと、こういう思いがあったのがこの義務教育の話だろうと思うんですね。ところが、お金持ちは家庭教師も付けられるし、私学のいい学校にも行けますし、そういうふうな状況と比べて公立学校は何だか知らぬけれどもどうも教え方が下手だとか上手だとか、いろんな話になって、そういう空気の中に今度は溶け込んで、国が経済をどうするかということで地方に分権を進めようと。これはいいことなんですけれども、補助金、負担金というやつをぼんと持っていけばいいじゃないかというところへ持っていかれたような気がしてならないんですね。  ところが、補助金と負担金は明確に違うわけですね。しかも、同じ負担金でも、国が国家予算の中で数十億という負担金から、そしてしかも、法律には基づいているけれども、いわゆる憲法上の要請も何もない、中でもしかし必要に迫られて作った法律から生まれる負担金もありますけれども、憲法上の要請に基づいてできている負担金を一緒くたにしてこれが持ち込まれたと。これに抵抗ができなかった文部省は何をしておるんだと、私、本当に怒ったんですよ。本当の意味でこの国を思うのならば、なぜそこのところで議論しなかったのと、私、これは歴代の文部大臣経験者の人に個人的にも会っていろいろお話もしました。  だけれども、今ここで、日本人の中にある義務教育というものについての国民の考え方ですね。物言わない、どっちかといったら貧しい国民は学校に、公立学校にすがらざるを得ないんですよね。ところが、どんどん、大分豊かになってきましたから、発言する人が割合豊かな人が多くなってきて、その中での流れで行かれてしまうような気がして仕方ないんですよね。  これはもう、加戸参考人は、本当に長い間教育行政ずっと国の責任立場から見ておられて、今のこういう流れについて、こんなことでいいんだろうかと、文部省本気になって怒れというふうに私は思うんですけれども、その辺のことについてお考えはいかがでございますか。
  43. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 今回の問題は、いわゆる三位一体改革の名の下において進められている一つの施策であると理解いたしております。  私自身は三位一体改革考え方、総論的な意味では賛成でございます。地方にできることは地方に、それから、できる限り財政状況を考えスリムな体制でいく。  そういった流れの中で、たまたま数値目標が四兆円というのが設定されました。そのときに、先ほど申し上げたような知事会の方で自由度が欲しい、自分たちの自由になるということで、九兆円の数字が上がった中に義務教国庫負担金の三兆円も含まれておりました。四兆円になったときに直観的に感じましたのは、義務教負担金で三兆円を賄えば残り一兆円で済んじゃうということになってくると、本来目標とした考え方と違う方向に行っちゃうのではないんだろうか。  そんな意味で、私も知事会で繰り返して強調させていただいたのは、四兆円を数値目標として掲げる場合に、国は義務的経費は一〇〇%保障します、そして奨励的補助金の場合には八〇%の財源を移譲しますという考え方でしたから、その数値目標の四兆円がすべて奨励的な補助金であれば、その二割である八千億円が国が浮くでしょうと。地方の場合もその補助金に付き合って、この補助率が仮に二分の一とすれば、地方も付き合っていた八千億が浮く。ということは、一兆六千億の国家財政地方財政に節約になるということになるけれども、義務教負担金のような、あと生活保護費のような、義務的経費が四兆円だったら、四兆円が国から地方へ来るだけで、いわゆる財政節約にも何にもならない。そして、確かに自由度自由度というのはあるけれども、そこのところの兼ね合いが、本来目指した三位一体改革というのがこんなものであるのかどうか。言うなれば、目標は正しい、しかし手法、手順において問題なしとしないのかと。  その辺を私自身は強調させていただいて、その以前の、確かに財政の論理、三位一体改革が先行したけれども、理念、哲学がそこには存在していなかった。義務教育の性質はいかなるものであるのかという、あるいは国庫負担制度というものが経済財政諮問会議では必ずしも議論が十分ではなかったのではないのか、そういった違和感を持ち続けてきたというのが正直なところでございまして、ただし、二十兆円の国庫補助負担金を全部国は地方へ移譲するんだと、ならば義務教負担金もその道連れになるということは、それは方向がそうであるならばそれはあり得ることで、しかし、私どもはあくまでも義務教負担金はトップバッターではなくて九番バッターであるべきだという主張をしてまいりましたが、今回の総額裁量制の実施を考えてみますと、もう九番バッターではなくて、もう控えの代打要員に取っておいていただいた方がいいのではないかぐらいの気持ちを持っているのが私自身の感覚でございます。
  44. 山本正和

    山本正和君 これは若月参考人からもお聞きしたいんですけれども、地方分権ということは大切なことですし、そしてまた地方財政を、きっちりと財政力を付けていくというのも非常に重要だと思うんですけれども、我が国の、日本の国の教育というものですね、これは先ほど若月さんからもお話がありましたけれども、学習指導要領によって最低のものは、みんな国民がこれだけの基準は保とうと、あるいは日本人としての一体感としての教育をちゃんとしようと、その上に地方の発展があると。これはよく分かるんですけれども、そのいわゆる日本人として一体的な部分ですね、基礎的な部分、それを保障するのが教育条件の整備で、それの一番根本がお金なんですよ、人件費なんですね。  人件費を賄うということでどれぐらい苦労したかという歴史が、これは三重県で宮川村の村長さんで大瀬東作さんという人が随分苦労しまして、そしてこれは昔の大変偉い人が田舎で村長さんになって、その村長さんが村長さんの歴史を調べておって分かって顕彰碑を作ったんですけれどもね。要するに、市町村長、市町村、小さな村の村長さんなんかがこの教員人件費確保できないので教員が雇えない、雇っても代用教員しか雇えないと。これはどうなるんだといって大変な思い、必死の思いでやって、国に働き掛けてできたという経緯がある。ですから、人件費というのは、これは教育条件の最低のものだ。それを保障するのに国が二分の一負担するということになれば基準ができますから、そこで初めてできる。  だから、したがって人件費の問題は、これはとにかく国が責任を持とうと。しかも、私は日本憲法の中で非常にすばらしいと思うのは、義務教育という言葉を据えている、憲法二十六条も含めてですよ、こんなすばらしい文はないと思うんですよね。憲法改正せいと言う人も、大体ここは皆さん変えぬでいいと言っている人が多いと思うんだけれどもね。  だから、そこのところを守るのが人件費に対する国の責任なんですよね。ほかにもありますけれどもね。それはいろんな基準なんかを作るのは国が当然やらなきゃいけませんけれどもね。そこのところだけは、これはちょっと、未来永劫と言ったらおかしいけれども、私は本当の話、一〇〇%国が人件費持ってもいいぐらいに思っているんですよ、憲法上の流れからいえば。  だから、任命をするということと給与負担するということは必ずしもイコールでなくても私はいいと思うんですよ。四分の一持って、何で金持ったって言えるかということになる、逆に言えばなる。私学なら全部持っているから任命権でばんばんやりますよね。それと一緒で、少なくとも人件費は国が全部持ちなさいよというような方向にぐらい、私は、教育長さんたちは、全国教育長さんたちは考えていただきたいというふうに私は思っておるものですからね。また、知事さんも、恐らくそれは教員人件費負担大変だということで、これは一番大変だと思いますけれども、それもむしろそういう意味でいったら、国に人件費保障しなさいよと、監督は私たちがしっかりやりますからと、こういうふうな形でいくべきだというふうに私は思うんですけれども、その辺のことはどうお考えですか。
  45. 加戸守行

    参考人加戸守行君) 考え方として、国が全額を持っていただけるならば、地方としてこんなに有り難いことはございませんが、先ほどから申し上げておりますけれども、一応、小中学校は市町村に設置義務がある。本来は市町村が賄うべきものを、それを国の要請による就学義務を履行するために、国半分、地方半分。しかし、地方だけでは町村財政大変で、やっぱりこれは広域的に県が負担すべきだという県費負担制度ができ上がって、今は国と県の二分の一ずつの負担になっておりますけれども、理念的には正に国の課した義務であり、しかも、日本国あるいは日本社会への有為な形成者としての人材育成という点では一〇〇%、理念的には一〇〇%国費が私は筋が通ると思っております。  しかしながら、税制の仕組み、今の財政状況、諸般の状況等を考えると今までの、割り勘という言葉は変ですけれども、国と県とで半分ずつというのはいい制度として来たんだなというのが私の率直な感想でございます。
  46. 若月秀夫

    参考人若月秀夫君) 今の御質問伺っておりまして、ふと思い浮かんだのが本区の幼稚園の教員の扱いでございました。幼稚園というのは現在、学校教育法では学校と規定をされておりますけれども、義務教育ではありません。したがいまして、品川区の幼稚園の教員は区の職員であります。したがいまして、財源給与負担も区でやっております。  そこで、つくづく思うことは、この幼稚園の教員のいわゆる資質向上、よく言われることですけれども、資質向上といった点につきましては、はるかに公立の小学校、中学校教員よりも現在のところ効果が出ていることは間違いがないことであります。理論上、そして理想的には委員指摘のとおりすべて国家が持つ、それはそれで有り難いことかもしれませんが、やはり自分の自治体自分たち財源を使って自分たち地域子供を育てる自分たちの先生をどう資質向上していくか、これは正に地方自治の意気込みといったようなものを如実に表している、そんな姿をふつふつと思い出したところでございます。  ですから、確かに委員指摘のように、国が全部見ていただける、それはそれでいいのかもしれませんが、果たしてそれが独立した自治体としての、何といったらいいんでしょう、責任といったらいいでしょうか。もちろん、最終的には財源でありますからこれは是非確保していただきたいことなんだけれども、これからの時代、やはり基礎的自治体地方時代というんであるならば、応分の責任地方が引き受ける、そのぐらいの覚悟が私は必要で、あってもいいのではないだろうか、かように考えているところでございます。
  47. 山本正和

    山本正和君 ありがとうございました。
  48. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な意見をお述べをいただきまして誠にありがとうございます。先ほどもございましたが、年度末で大変お忙しい時間にもかかわりませず、私どもの委員会参考人として本当にお付き合いをいただきまして、今申し上げましたとおり大変貴重な御意見をいただきましたこと、委員会代表いたしまして、改めて心から厚く御礼を申し上げます。  誠にありがとうございました。(拍手)  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  49. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ただいまから文教科学委員会を再開いたします。  委員異動について御報告をいたします。  本日、佐藤泰介君が委員を辞任され、その補欠として岩本司君が選任されました。     ─────────────
  50. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会総務大臣官房審議官岡本保君、財務省主計局次長杉本和行君、文部科学省生涯学習政策局長銭谷眞美君、文部科学省初等中等教育局長近藤信司君、文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君、文部科学省スポーツ・青少年局田中壮一郎君及び厚生労働省職業能力開発局長上村隆史君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  52. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 休憩前に引き続き、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  53. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 自民党の橋本聖子でございます。  二年半前に委員長をさせていただきまして、その前以来ということで久しぶりの質問に立たさせていただくものですから今日は大変緊張しておりますけれども、大臣始め皆様に質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  まず最初に、義務教育費国庫負担法の一部改正案についてお尋ねいたしますけれども、憲法二十六条では、すべての国民がひとしく教育を受ける権利を有すること、保護者に対して子供に普通教育を受けさせることを義務付けること、義務教育は無償とすることを定めております。義務教育の目的は子供たちが基礎学力を身に付けることであり、人間性をはぐくみ、そして心身ともに成長し、社会人となるために必要不可欠であります。国土が狭く資源の貧しい我が国では、経済的に発展を遂げてきたのは、すべての国民が無償で一定水準の教育を受けることができる義務教育制度が設けられていたことが大きな要因であると考えられます。  一方、就学前、幼稚園や、また高校教育の普及率が非常に高い水準にあることや、児童生徒がかかわる様々な凶悪な犯罪の増加や、またそういうことを考えますと、改めて義務教育制度の意義について問われるというふうに考えておりますけれども、そこで、現在における義務教育制度の意義、そして憲法及び教育基本法保障されている教育機会均等の担保方策について、文部科学大臣に見解を改めてお伺いいたします。  そして、この義務教育制度の在り方については、現在、中央教育審議会で議論が行われておりますけれども、その議論、審議状況ですね、と今後の具体的なスケジュールについても併せてお伺いをしたいというふうに思います。
  54. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) 橋本先生から今基本的な問題についてお話を、質問をいただきました。  委員指摘のとおりでございまして、義務教育は、憲法あるいは教育基本法、この要請によって、知徳体、知育、徳育、体育と言われる、この調和を取りながら児童生徒を育成していく、そしていわゆる日本人として、国民として共通に身に付けなきゃいけない、正にそうした基礎的な資質を培うといいますか、そういう役割義務教育は果たしておるわけでございまして、国はそれによって義務教育段階は無償かつ一定水準の教育を提供する、これは最終的な責任が国にあるわけであります。そのために無償制度、授業料は取らないと、こうなっておりますし、特に国は、この教育制度の基本的な枠組みを作る、それから全国的な基準、これを設定する、それから教職員給与費、学校施設等そうした条件整備、これを国の負担によって、国庫負担によってやる、このような形で全国的な教育機会均等を維持していく、保障していく、こういうことになっております。  今御指摘の、これからの義務教育制度の在り方について中央教育審議会等の議論、今後の取組という御指摘で、御質問でございます。  そもそもこの義務教育費国庫負担制度の在り方について問われたのは、基本方針二〇〇三でございます。この中においても、この義務教育費に係る経費負担の在り方につきましては義務教育制度の在り方の一環として検討を行うと、こうなっておるわけでございまして、いわゆる国の財政上から、あるいは地方分権論、そうしたものだけではなくて、そもそも教育論、いわゆる義務教育制度は一体どうあればいいのかと、こういう観点から検討しなきゃいかぬということで今中央教育審議会で議論をいただいておるところでございます。  その中央教育審議会、中教審は、作業部会におきまして正に専門的な立場の皆さん方からいろんなお話を今していただいておりますが、この経費負担の在り方、国はどこまで負担を負うのか、国の責任はどこまでなのか、そして、国と都道府県、市町村の役割分担、こういう問題。特に、都道府県や市町村の教育委員会の関係者の皆さんとかこれに関連する有識者、この方々から今意見を伺っておりまして、正に精力的に意見交換をいただいておるところでございます。  文部科学省といたしましても、この議論を尽くしていただいて、これを取りまとめて速やかに報告書を作り上げたいと、こう思っておりまして、これを基にして、これからのいわゆる二〇〇三の基本方針、いわゆる義務教育制度の在り方、このいわゆる教育論、これを基にしてこの義務教育費国庫負担制度の根幹を守る、こういう基本方針を打ち立ててまいりたい、このように考えておるところであります。
  55. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。やはり何といっても義務教育というものの大切さというものを改めて認識をして、一層進めていただきたいというふうに思います。  続きまして、義務教育教職員給与費に対する負担についてのお尋ねをさせていただきたいんですけれども、諸外国におきましてはやはりこういったものについては国が主に負担する場合が多いというふうに聞いておりますけれども、主要国における国と地方の主な負担割合についてお尋ねをしたいんですけれども、よろしくお願い申し上げます。
  56. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  義務教育学校教員給与につきましては、フランス、イタリア、シンガポール、韓国では全額国が負担をしておるわけでございまして、連邦制を取るドイツでは州が教員給与負担をし、アメリカでは地方の学区と州が教員給与負担をしていると、このように承知をいたしております。
  57. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。やはりそういったことを考えますと、やはり日本としても特に主要国における国と地方の主な負担割合についてまたしっかりと考えていかなければいけないというふうに思います。  また、今後、平成十八年度に向けて総務省などと議論に臨まれると思いますけれども、我が国におきましても、国が教職員給与費の二分の一を負担するという安定的な教育システムというものを構築を図っていくためにも、義務教育費国庫負担制度を引き続き堅持していくということが是非とも必要だというふうに思いますけれども、改めてこのことについての大臣の強い御決意をお伺いしたいと思います。
  58. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) 何といっても、この義務教育成果の、成否といいますか、これは教員に懸かっている、これはもう間違いのないことでございます。そういう意味では、やっぱり教員に優れた人材をどのように確保していくか、そしてそれを確保しながら、そしてその教員の皆さんへの給与、これを財源としてきちっと確保する、このことが保障されなきゃいかぬ、こう思うわけでございます。  そういう意味において義務教育費国庫負担制度があるわけでございまして、義務教育の水準を全国的に維持していくために、そして義務教育を担う教職員給与費について、これは国がきちっと一定負担をしていく、それによって優れた教職員確保する、この財源保障する、これはどうしても必要な制度だと考えておりまして、今日、午前中も参考人質疑をおやりになって、愛媛加戸知事さんや品川教育長さん、若月さん、私も時々テレビで拝見をいたしておりました。いずれもこの制度の持つ意義というのを強調されておったように思います。  そういう意味で、もちろん地方分権の時代で、地方自由度をどういうふうに増せばいいかとか、そういう見直しといいますかそういうことは行わなきゃならぬと思っておりますが、やっぱり国の責任において教育機会均等とその水準を維持する、このことをやっぱり堅持する。そういう意味であるこの義務教育国庫負担制度の根幹を守っていくということはこれは非常に大事な観点でございますから、そういう意味で十分な議論を承りながら、この問題にきちっと対応していきたい、このように考えておるところであります。
  59. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 本当に是非、今の大臣の力強い決意をお伺いしまして心強く思いますけれども、国家百年の計と言われる教育でありますので、是非ともその件につきましてはよろしくお願いをしたいというふうに思います。  続きまして、退職手当とそして児童手当一般財源化についてお尋ねをしたいというふうに思います。  地方から見ますと、退職手当児童手当というのも給与や報酬の一つと考えられていると言ってもいいのではないかなというふうに思いますけれども、これが一般財源化されれば、次は扶養手当などの本俸分以外についてもいずれメスが入るんではないかというような心配の声が地方からも届けられております。  そういった中で、文科省は国庫負担制度の根幹は守ると、大臣はそのように答弁をされておりましたけれども、本俸以外に残される諸手当は本俸とともに今後も引き続き国庫負担対象として残していくという、大臣の力強いお言葉をいただければというふうに思います。
  60. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) この義務教育費国庫負担制度の根幹を守るということは正に給与費というところにあるというのが私どもの考えでございまして、これまでもいろいろ御指摘をいただきました、譲るに譲ってとうとう枝葉も全部取られて、もう最後そのままずるずる押しまくられるんじゃないかと、こういうことでありますが、そのことも含めて、前遠山大臣のときも、この根幹を守らにゃいかぬということはやっぱり教育論を展開しなきゃいかぬ、この、まあ巻き返しという言葉がいいかどうか分かりませんが、ともかく、文部科学省としても、政府の方針について譲るべきところは譲ってきた、しかし、この根幹を守るためにはやっぱり教育論に戻さにゃいかぬということで、いわゆる中央教育審議会において、今の教育改革の中でこの義務教育制度の在り方をいかにすべきか、国と地方役割分担をいかにするべきか、その基本的な考え方をもう一度改めて根幹から問い直し意見をまとめて対応していこうということで、方針としてはそれまでにこの一般財源化等々についても結論を出すということでありますから、これに、ちょっと待ってください、根幹はここですということをきちっとうたった上で対応していきたいと、こう思っておるわけでございまして、そういう意味で、これ以上我々としては譲るものはないという基本的な認識でこの根幹を守っていきたいと、このように考えております。
  61. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。  続きまして、総額裁量制についてお尋ねをいたします。  各自治体に交付される総額は、公立義務教育学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律、いわゆる義務標準法において規定されている定数と文科省が設定する給与単価に基づいて算定されるとの方針と、これまでの答弁によってそれは示されてきたわけでありますけれども、そもそも給与単価というのは具体的にどのように、どのような基準に基づいて設定されるのかを改めて教えていただきたいというふうに思います。
  62. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  総額裁量制におきまして国庫負担金限度額を算定する際の給料単価でございますが、それぞれの職種ごとに、一般の国家公務員行政職の俸給表を基礎といたしまして、人材確保法による教員給与の優遇措置を勘案をして算定いたします経験年数別の給料月額に各都道府県経験年数ごとの教職員数を乗じて得た合計額をその都道府県教職員の合計数で割ることによりまして、それぞれの都道府県ごとの標準的な給料単価を算定することにいたしておるわけでございます。これによりまして、私どもこれまでと同様に人材確保法の優遇措置に基づく給与水準を引き続き維持することができるんではないんだろうか、また各都道府県ごとの教職員定数でありますとか年齢構成等を反映した給料の総額を算定することができると、こういうことで、各都道府県で必要な給料分の財源は引き続き保障ができると、このように考えておるところでございます。
  63. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 では、加配教員とそしてまた事務職員及び学校栄養職員についても総額算定の際の定数に組み込んでいくという考え方でよろしいんでしょうか。
  64. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) 御質問の加配教員、事務職員及び学校栄養職員に係る定数につきましてもこの総額算定の際の定数に組み込んでいくことといたしております。
  65. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 総額裁量制の下では給料単価をどのように、給与単価をどのように設定するかという財政面に注目が集まってばかりいまして、義務標準法に基づく教職員定数は総額を算定する一つの基準にしかすぎないという可能性もあるというふうに見られております。  しかし、義務標準法については、義務教育の在り方を考えていく上で、学級編制や教員配置をどうするかという観点から不断の見直し、そしてまた改善を図っていくべきだという考えがありますけれども、今後の義務標準法の在り方にかかわる方針についてお尋ねをしたいと思います。
  66. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) 先生御指摘のように、義務標準法は国が学級編制や教職員定数の標準を定めることによりまして義務教育水準の維持向上に資することをその目的としておるわけでございます。  今後の義務教育標準法の在り方につきましては、義務教育水準の維持向上を図りつつ、地方自由度を一層高める観点に立ちまして、必要な見直し、改善を図っていくべき事柄と考えております。現在、義務教育におきます教育条件整備の在り方につきまして中教審で御議論をいただいているところでございますが、この義務標準法の在り方につきましても、こうした議論全体の中で検討を行っていくべき大変重要な課題であると認識をいたしております。
  67. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 分かりました。  義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づきまして教職員給与及び報酬等に要する経費等の国庫負担額の最高限度を定める政令、いわゆる限度政令というものがありますけれども、各手当などについてそれぞれ最高限度を設けているものであり、非常にこれは細かな規定というふうになっておりますけれども、総額裁量制の導入はこの限度政令の改正によって措置がされますけれども、その際、給与単価の基準は明確に示しながらも、整理すべきところは整理していくのが望ましいというふうに考えております。限度政令の規定はどのようにすべきだというふうにお考えでしょうか。
  68. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) 御指摘のとおりでございまして、現在の限度政令、細かな最高限度等を設定をしておるわけでございますが、総額裁量制の導入に伴う限度政令の改正につきましては、国庫負担金限度額を算定する際の給料単価につきましては一般の国家公務員行政職の俸給、人材確保法による教員給与の優遇措置等を勘案して設定するということを明確にしながらも、これまで教職員の給料、諸手当及び職種ごとの定数のそれぞれについて細かく最高限度を設定していたわけでございますが、その方法を廃止をすることにいたしております。  また、人材確保法に基づく優遇措置などを勘案した給料単価に、義務標準法に基づき算定いたしました標準定数を乗じることなどにより最高限度を総額として算定する方法に改めることによりまして、算定した負担金総額の範囲内でその使い道を地方にゆだね、教職員給与や配置についての都道府県の裁量を拡大をすると、こんなことで、こういう方向で改正をしてまいりたいと考えております。
  69. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。  続きまして、事務職員及び学校栄養教職員の取扱いについてお尋ねをしたいと思います。  事務職員及び学校栄養教職員国庫負担対象外としようとする議論がありますけれども、まず両者の位置付けをどのようにお考えになっているかということを改めて確認をさせていただきたいということと、また、その上で事務職員及び学校栄養教職員を引き続き国庫負担対象としていくことについて文科大臣の見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  70. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) 学校教育が円滑に進んでいくために、学校運営において校長先生を中心にして、校長のリーダーシップの下で、それぞれの教員であり、そして養護教諭、そして学校栄養職員、そして事務職員、これが一体となって教育に当たっていただくことが非常に大事なことでございまして、そういう意味において事務職員それから御指摘学校栄養職員、両者ともに教員、養護教諭とともに学校の基幹職員であるという考え方、これは全然変わっていないわけでございまして、今回いろいろ、一部そういう指摘一般財源化の中の対象に一部ならなかったりいたしたんでありますが、我々の方としては全然そのことに対して一歩もたじろいでおるわけではございません。特に事務職員それから学校栄養職員については、教員と同様に義務標準法によって都道府県ごとに置くべき総数の標準が定められて、その給与費も国庫負担してきているわけでございます。  そういう意味で、これからも学校の基幹的職員として引き続き義務教育費国庫負担制度対象としてこれをきちっと対応していく、この方針に変わりはないわけでございます。
  71. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 是非その考え方でよろしくお願いいたします。  昨年六月に閣議決定されました骨太の方針二〇〇三では、学校栄養職員、学校事務職員については地域学校の実情に応じた配置が一層可能になる方向で検討を行うとされております。これらの職員の各地方の実情に応じた形での配置の弾力化に向けた取組についてお伺いをしたいというふうに思います。
  72. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  義務標準法におきましては、教諭、養護教諭、学校栄養職員、事務職員等の職種ごとに各都道府県における総数を定めることといたしておりまして、その際には同法に規定する職種ごとの算定方法により算定される数を標準とすることとしておるところでございます。  この義務標準法は個々の学校ごとに置くべき教職員の配置基準を示すものではございませんで、同法に定める算定基準にかかわらず、地域の実情でありますとか各学校の実態に応じまして、例えば学校事務の共同実施を行う場合に拠点となる学校に複数の事務職員を配置をしたり、食の指導を充実させる観点から学校栄養職員を複数配置するなどの工夫が可能でございまして、そういった実情に応じた配置につきましては各都道府県への周知をこれまでもしてきているところでございますが、更に一層努力をしてまいりたいと考えております。
  73. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。  今お話の中に出ました学校栄養教諭のことについてまた次にお伺いをしたいというふうに思っておりましたけれども、近年、食生活を取り巻く社会環境が大きく変化をいたしまして、個人の食行動の多様化が進んでいる中で子供たちの朝食の欠食や、一人で食事をすることを孤独の食事、孤食というふうに言われているようでありますけれども、大変な問題が指摘されております。  こういったことというのは、学校ということがすべて問題があるといいますか責任があることではなくて、子供たちの例えば朝食の欠食ですとかというのは大変家庭に今問題があるというふうに私は思っている一人でありますけれども。特に、仕事柄というと、参議院というのが仕事ですけれども、JOCの私は強化委員の一人として今選手の強化に当たる仕事のほかに、一番今求められている一つが各地域のスポーツ教室の中で食についての、今はもうスローライフとかスローフードとかと言われておりますけれども、食についての指導をしてほしいという要望が全国各地相次いでいるんですね。本当に、選手時代からそういう活動をさせていただいているんですけれども、特にこの五、六年の間というのは食というものに関しての関心が高くなったといいますか、それだけ問題視されているということでもあると思うんですけれども。  そんな中で、子供たち状況を見ましても、例えば各学校そしてまた学級一人ずつは成人病の問題があるというような子供たちがいるわけですね。そういったことも考えますと、新たな健康問題の増加に、深刻化していくということもありまして、児童生徒に対する食に関する指導をもっともっと充実させていかなければいけないし、また、もっと大きなところから見ますと、親に対しても食というものの大切さの指導をこれからはしていかなければいけない、そんな時代になってしまうのかなというふうにも危惧するところでありますけれども。  今国会に提出されている学校教育法の一部を改正する法律案の中で新たに栄養教諭制度が創設されるということになっておりますけれども、国庫負担制度や公立義務教育学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律における位置付けがどのようになっているかということが大変注目をされております。  そこで、栄養教諭制度を創設することとした理由を改めてお聞きしたいということと、栄養教諭の果たすべき役割というものを、どのようなことに期待が掛かっているのかお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  74. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) 橋本先生も御指摘のように、最近の子供たちといいますか児童生徒の食生活の乱れ、これは今おっしゃったように、学校でも肥満が問題になり、あるいは子供たちの糖尿病まで出てきたという状況がございます。私の地元、山口県の萩の田舎の郡部においても、朝、食事をしてこない子供が一六%ある、そして時々とを入れるともう二〇%を超えると、こういう状況下でございます。ああいう田舎でそうですから、都市部ではもう想像に難くない状況だと思います。  こういう乱れを、どういうふうに望ましい食習慣を付けさせるか。これは一義的にはまず家庭にも大きな責任があるわけでございますが、学校においてもこうした指導をきちっと図っていくことが、指導をやっていくことが非常に重要になってまいりました。  かねてから栄養教諭制度の創設については御要望もあり、検討を進めておったわけでございますが、正に社会的要請にこたえる形でこれにいよいよ踏み切る段階に来たわけでございます。栄養に関する高度の専門性、あるいは教育に関する資質、これを併せ備えていただいて、教員として、栄養教諭としてスタートしていただこうということでございまして、これによって学校における食の指導が具体的にできる、充実ができるということでございます。  栄養教諭に期待される役割は、まずは給食、学校給食の管理ということがございます。その給食の時間を中心にしていただいて、関連教科や特別活動の時間などにいわゆる学校給食を生きた教材として有効に使っていただこうということでございます。そして、効果的な食に関する指導を展開をしていただきたいと、こう思っておるわけでございます。そういう意味学校給食の管理と食に関する指導、一体的な役割学校栄養教諭に期待をいたしておるところでございます。  またやっぱり、先ほど委員も御指摘のように、家庭における食の指導、だから学校給食なんかにおいても親子で一緒に親子料理教室などを通じて保護者がやっぱりこのことについて食の重要性を理解してもらう、こういうことを働き掛けたり、啓発活動も一緒にやっていこうと、こういうことも重要であろうと、こう思っております。  食に関する指導においては、学級の担任の先生の御理解あるいは養護教諭、様々な教職員関係するわけです。中学校においては家庭科の先生も栄養学をやっておりますから、そういう面で一体となってやっていただかなきゃなりませんし、特に栄養教諭はその専門性を生かしていただこうということで、学校における食の教育、食の指導のコーディネーターとしての役割を果たしていただきたいと思っております。  一方では、地産地消に対する要請もございまして、学校給食における。やっぱり食物を取ること、その基、これの努力がどういう形でされているか。地域のそうした食文化、そういうものも併せて勉強することが必要になってまいりますので、そういう意味学校栄養職員に対する期待というのは非常に幅広いものがあると、こう思っておりまして、この制度を創設することによって学校栄養職員の皆さんが全部学校栄養教諭として教壇に立って御活躍をいただきたいと、このように考えておるところであります。
  75. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。  アメリカでは、ある一部の学校ですけれども、朝御飯を食べてこない子供たちのために、今は給食が二食ですね、朝御飯とそしてお昼御飯と、二つ出さざるを得ない状況になっている学校があるというふうになってきておりますので、そんなことのないように日本はしていかなければいけないというふうに思います。  やはり、学校栄養教諭の方たちに対しましても、やはり子供たちにどれだけこの食というものが大切なのかということを教えてもらうことによって、逆に子供たちがそういった食に対する関心ですとかまた重要性をはぐくむことによって、家庭でちょっと不規則になっている食生活というものに対しても、逆に今子供たちが親に対して朝食が必要なんだというような、そんなことも逆に指導できるような、そういうようなことまで進んでもらわなければいけないのかなというふうに思っておりますので、是非よろしくお願いをしたいというふうに思います。  そう言われながらも、必ずしもすべての学校に配置されるわけではないというふうなお話もお聞きしております。それはなぜでしょうか。  そして、この場合、教職員の配置基準として義務標準法がありますけれども、これは学校栄養職員としての配置基準というふうに考えられるとお聞きしました。栄養職員としての配置基準は別途設けられるというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  76. 田中壮一郎

    政府参考人田中壮一郎君) 私の方からは前段についてお答えをさせていただきたいと思っておりますが、栄養教諭制度は、現に学校給食を実施しております学校等に配置されております学校栄養職員の方々に、栄養に関する専門性に加えまして教育に関する資質を併せて身に付けてもらいまして、栄養教諭として食に関する指導と学校給食の管理を一体的に行ってもらおうとするものでございます。  したがいまして、その栄養教諭の配置につきましては、学校給食の実施そのものが義務とはされていない、そして現在の学校栄養職員の配置状況や、さらには地方自主性を尊重するという地方分権の趣旨等も踏まえまして、現在国会に提出をさせていただいております学校教育法の改正案におきましては、栄養教諭を置くことができる旨を規定いたしますとともに、その職務を明示させていただいておるところでございます。
  77. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) 栄養教諭としての配置基準についてのお尋ねでございますが、新設される栄養教諭は教諭、養護教諭、事務職員などとともに学校の基幹的職員として位置付けられるものでありまして、食の指導の充実のためにも全国的に一定数の栄養教諭を確保する必要があり、他の教職員と同様、義務標準法により標準定数を定めることといたしておるわけでございます。  具体的な標準定数の算定につきましては、栄養教諭が学校栄養職員のうちから移行することを基本とする、そういった特殊な事情を考慮いたしまして、栄養教諭の標準定数につきましては栄養教諭及び学校栄養職員として合算するものとし、その数の算定に当たりましては、基本的には現行の学校栄養職員に係る標準定数の算定方法を踏襲することにいたしておるところでございます。
  78. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ということは、栄養教諭は当然義務教育費国庫負担制度対象になるものとして理解をしてよろしいんでしょうか。
  79. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) 今申し上げましたように、栄養教諭は学校の基幹的な職員として位置付けられるわけでございまして、栄養教諭の給与費につきましても、市町村立学校職員給与負担法により都道府県負担とした上で、義務教育費国庫負担法により国庫負担をすることにいたしております。
  80. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。  教育における三つの柱が知育、徳育、体育というふうに言われてきましたけれども、それらを支える基礎の部分が私は食だというふうに思います。  総額裁量制の算定の際、基準とされる教職員定数について、栄養教諭の配置状況により算定されるのか、あるいは義務標準法上にあるべき配置基準で算定されるのか。いずれにしても、栄養教諭への円滑な移行が進められるよう検討していただきたいというふうに思いますけれども、この流れについてもう一度御説明をしていただければというふうに思います。
  81. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  先ほど来お答えをいたしておりますように、栄養教諭の配置につきましては、学校給食の実施そのものが義務的なものではないこと、また地方自主性を尊重するという地方分権の趣旨等にかんがみまして、地方公共団体が地域の実情等に応じて判断されることになっておるわけでございます。  一方、総額裁量制は、先ほど来申し上げておりますように、都道府県が支給した教職員給与費の実支出額の原則二分の一を国庫負担することを前提とした上で、その使い道を地方の裁量を拡大をしていこうと、こういうことでございます。  基本的には、総額裁量制の下での栄養教諭の配置につきましては、こういった義務標準法の趣旨を踏まえた上で各都道府県の判断によることになるわけでありますが、食に関する指導の充実を目的とする栄養教諭の大変重要な意義にかんがみまして、私どもはそれを、地方公共団体の理解を積極的には促してまいりたいと、かように考えております。
  82. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。  やはり何といってもこれからは環境、そしてまた食というものが子供たちの基礎、基本を作るものというふうに思いますので、是非、学校栄養教諭の方たちが本当に自分たちの力を発揮できるような体制作りを整えていただきたいというふうに思います。  続きまして、私立幼稚園の施設整備費補助事業についてお尋ねをしたいというふうに思います。  幼稚園は子供たちが初めて通う学校であると思います。そして、学校教育の重要な部分を担っております。幼稚園に就園する幼児全体の八割は私立幼稚園に通っているわけでありますけれども、その幼稚園教育を推進する上で私立幼稚園の果たす役割というものは極めて大きなものだというふうに考えております。  その中で、私立幼稚園施設整備費補助事業について、事業開始は昭和四十二年というふうに認識しておりますけれども、昭和四十二年度の制度創立から昭和五十年代の幼稚園建設ピーク時にかけて、昭和六十年における幼稚園の総面積のおよそ約二〇%弱が整備されているというふうに聞いております。この私立幼稚園整備費補助金は、施設整備の重要な財源として有効に活用されて、幼児急増期に重要な役割を果たしてきました。そして、今後これから大量に建設された園舎が順次改築期を迎えることから事業量増加が予想されております。  でも、今年、十六年度事業採択方針によりますと、改築事業の補助対象工事費が一億二千万円未満の事業は原則採択しないということがありました。今年の一月に事務連絡で各都道府県に、担当者に送られたということで、一月に各全国の幼稚園の関係者から一斉にそういう陳情を受けることになったわけなんですけれども、なぜこの時期に事務連絡が行ったのかということと、そしてまた、改築工事に関する事前事業を準備を進めていることもあって、現時点で不採択ということになりますと平成十六年度の改築事業実施に大変な影響が出ることが考えられるんですけれども、この点についてはどのようにお考えになっておりますでしょうか。
  83. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) この私立幼稚園施設整備費補助事業につきましても、大変今財政的に厳しい状況にあるわけでございまして、実は私ども、昨年十二月の時点で平成十六年度私立幼稚園施設整備事業計画の予備調査を実施をしたわけでございます。その結果、私立幼稚園からの申請予定事業の規模が約三十七億六千万円と、これは昨年の暮れに予算案が内示を受け、確定をしたわけでございますが、十二億九千万円というこの予算案の約三倍と、大幅に上回ると、こういうことが判明をしたわけでございまして、何とかこの事業の適正な執行を図るためにやむを得ない措置として、今年一月の末に各都道府県に採択方針の案をお示しをしたわけでございます。  やはり予算が内示を受けませんことにはそういった方針案も決められなかったということで、結果として一月末ということになったわけでございますが、今現在、事業の必要性等精査をし、採択に向けての作業を鋭意進めているところでありまして、都道府県を通じまして各幼稚園に対しできる限り速やかにその結果を連絡をし、事業の実施への影響が最小限となるように努めてまいりたいと考えております。
  84. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 一月に報告があったということの理解は十分にできましたけれども、私立幼稚園は特に地方では小規模なところがほとんどなんですね。そこで、改築事業の補助対象工事費が一億二千万円未満の事業を原則採択しないということになりますと、ほとんどの幼稚園が難しい状況になってきていますので、今お話しいただきましたように、各都道府県、そしてまた市町村、そして各幼稚園関係者から事情を聴取しているということですけれども、事業を行うかどうかの必要性というのは事業費ということから判断できるものではないと思います。やはり各幼稚園、それぞれの地域の事情というものもありまして、何よりもこれから子供たちが大事な教育を受ける場所でもありますので、そういった環境等を考えたときに、是非この点についてもう一度どのような方向性で取り組んでいくかということを、お考えをもう一回お聞かせいただきたいというふうに思います。
  85. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  平成十六年度の事業採択方針案では、子供の安全性等に配慮するために、改築事業等を対象として、原則として補助対象事業費が一億二千万円以上の事業を対象ということにしたわけでございます。  これは、先ほども御答弁申し上げましたように、十六年度の予算案に比べて申請予定額が約三倍と大幅に上回ることから、適正な執行を行うために一定の基準を設けることが必要ということから採択方針の案として都道府県にはお示しをしたわけでございますが、具体の事業の採択に当たりましては、今、先生御指摘のとおり、事業費の規模だけではなくて、地域状況でありますとか事業の緊急性、必要性、こういったものを十分勘案する必要があると考えておりまして、こうした状況を的確に把握をするために、現在、都道府県を通して各幼稚園に対して調査を行っているところでございまして、原則としてというのはまたそういうことも加味をしてまいりたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、今行っております調査を基にいたしまして、事業の必要性あるいは緊急性等を十分配慮しながら適切な執行を行うように努めていきたいと考えております。
  86. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 是非とも必要性そして重要性、先ほどと同じ繰り返しになりますけれども、何よりも子供たち教育の場でありますので、その点を踏まえて是非よろしくお願いをしたいというふうに思います。  最後の質問の方になるんですけれども、今年はアテネのオリンピックの年でもありますので、ちょっとスポーツの振興についてお尋ねをしたいというふうに思います。  今年は大変、ちょうどアテネのオリンピックというのは近代オリンピック発祥の地で、百年たってやっとまたアテネに返るというような、本当にオリンピックの中でも最高のイベントになるというふうに私たちは楽しみにしているわけなんですけれども、平成十六年度予算においてオリンピックや国際大会などに出場する選手の育成や強化についてどのような予算措置を取っているか、まずお尋ねをしたいと思います。
  87. 原田義昭

    ○副大臣(原田義昭君) オリンピックにつきましては橋本聖子議員の右に出る日本人は多分いないと思いますけれども、いよいよ今年がアテネ・オリンピック、今年の八月でございます。オリンピックは国民に夢と感動を与える、スポーツの振興や青少年の健全育成、また明るく活力ある社会の形成に本当に大いに役立つといいますか、寄与するイベントでございます。国じゅうがこれに向けて今頑張っておる、また関心を持っておるところでございます。  一方、我が国の国際競技の水準というのは、残念ながら諸外国と比較して相対的に低下傾向にあるということも指摘されておるところであります。このため、文科省が中心になりまして平成十二年九月にスポーツ振興基本計画、こういうものを立てまして、これは第一次は十三年から二十二年の十年計画でありますけれども、早期にオリンピック競技大会でのメダル獲得率を倍増すると。実はアトランタのときに一・七%というところまで減ったものですから、できるだけこの十年以内の早い時期に三・四%まで持っていこうと、こういう計画でございまして、橋本委員もしっかりその中でも御活躍いただいたものと、こう思っております。  それで、御質問の件でございますけれども、こういうことを念頭に置きながら、日本オリンピック委員会への助成といたしまして、ナショナルチームの強化合宿や専任コーチの設置、さらに平成十六年度はアテネ・オリンピックへの派遣のための経費等に対して二十億円の予算を補助として考えておるところでございます。  また、あわせまして、メダル獲得の期待の高い十八種目、これには重点的にその予算を予定しておるところでありまして、これには四億円、さらにはトップレベルのリーグやクラブチームのマネジメント強化費、これに三億円という予算を計上しておるところであります。  あわせて、もっと大事なところでございますけれども、またこれらのナショナルレベルのトレーニングセンターを新しい予算におきまして整備することになりました。これが四十二億円を計上いたしまして、このトップレベルのトレーニングの殿堂としてこれを活用しようということであります。この予算の計上に当たっては、橋本委員も本当に頑張られたというふうに伺っているところであります。  いずれにしましても、まだ十分ではございませんけれども、こういうような予算を駆使することによって、今回のアテネ・オリンピック、また次の世代にしっかり取り組んでいこうと、こう考えております。
  88. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。  やはり強化というものには大変時間が掛かりまして、今回のトレーニングセンター、四十二億円の予算措置をしていただいたことも、アテネはもちろんでありますけれども、四年後の北京のオリンピックにも大変な重要なことになってくるというふうに思っておりまして、本当に感謝申し上げます。  三位一体改革を真の意味で実現するには、取捨選択して無駄を省いていくことも必要だというふうに思っております。無駄を省いて節約するためには、これまで投資してきたものをいかに有効に活用するかということも一つの戦略だというふうに思います。この人材育成ということも一つの投資というふうに考えたときに、それを回収するという意味でも大変重要なことではないのかなというふうに思っておりますけれども、やはりオリンピックに出場する選手に対して投資をして、そして子供たちに夢や希望、また経済効果というものを生むオリンピックでもありますので、そういったことに国が投資していくということにおいても大変な重要なことをしていただいているということですけれども、それをまた、その人材をまた新たに使うというとおかしいんですけれども、そういったことに関すると、各競技団体にどれほどの専任コーチが設置できるかということも次の世代に対しての人材育成にかかわってくる問題だと思うんですけれども、どれほどの専任コーチが今設置されているのか、少し教えていただきたいと思います。
  89. 馳浩

    大臣政務官(馳浩君) 文部科学省では、JOCが選手の育成強化を担う専任コーチ及びジュニア強化コーチを設置する事業に対して補助を行っているところでありまして、JOCとしてはこの補助を受け、平成十五年度においては専任コーチ二十七競技四十一名、ジュニア強化コーチ二十七競技四十名を配置いたしております。平成十六年度予算においても、前年度に引き続き同額の三億九千三百六十万円の予算を計上しておりまして、同程度の専任コーチを設置できるものと考えております。  文部科学省といたしましては、目標としては、オリンピック三十四競技ございますので、できればその三十四競技に二名ずつは専任コーチを設置できればなというふうに目標として立てております。  以上でございます。
  90. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。  本当に毎年毎年、御理解をいただいて専任コーチ制度というものを確立してくださっているわけなんですけれども、ただ、競技団体の専任コーチになれるのは競技をやっているほんの一握りの数にしかすぎないわけなんですね。そういったアスリートが第一線で活躍ができる期間は限られていまして、引退後の安定した生活といいますか、そういったものを築き上げていくためにほとんどの選手が四苦八苦しているわけでありますけれども、こういった状況を文科省では専任コーチという形で受け入れていただいておりますけれども、ほかの選手たちに関してどのような受け止め方をしていらっしゃるか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。
  91. 馳浩

    大臣政務官(馳浩君) 世界選手権、オリンピックなどトップレベルの競技者が現役を引退した後の、いわゆるセカンドキャリアについて不安を持ちながら競技を続けているという実態は私もよく理解しております。また、そうはいうものの、今数字でお示ししましたように、専任コーチとして就任をして、後進に今まで培った技能、能力、経験を伝えることができるのは本当にごくわずかの一握りの人材であるということも事実であります。  基本的には、私自身も思うのですが、スポーツには引退なしということを考えれば、生涯を通じてスポーツにできる限り関与できる活動をしていただきたいと思っておりますし、またスポーツだけが人生ではないわけでありまして、そういう意味でいえば、自らが自助努力で生計を立てることのできる職業を、能力を身に付けて頑張っていく、そういう選手もたくさんいるわけでありますから、まさしく本人の努力次第という点もあると思います。  ただ、今、文部科学省としても例えば総合型地域スポーツクラブといった形で全国にやっぱりスポーツの拠点となるべき施設を作る努力をいたしておりますし、それをtotoの収益金などを使いまして、スポーツ振興基金なども使いまして整備いたしております。そういった中で、地域のスポーツクラブで働く、あるいはマネジャーとして働く、コーチとして働く、そういった機会をより多く持つことによってトップレベルの競技者がセカンドキャリアにおいて自分の力を発揮できる、こういう準備もしていかなければならないというふうに考えております。
  92. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 ありがとうございます。  政務官がおっしゃったように、スポーツがすべてではないわけですので、スポーツで培ったものをいかに社会へ生かしていくかということも、スポーツ界、競技界においても、今それをどうやって社会性といいますか、そういうものを身に付けていくかということをやっているところでありますけれども、頂点を維持そして活性化させるためには、やはり何といっても底辺が広く活気があることが必要だというふうに思っております。  先ほどからアテネのオリンピックについて、多少ちょっと義務教育国庫負担法のことについてから外れた部分もあったかと思うんですけれども、最後に質問したいことに結び付けたかったからなんでありますけれども、競技選手の育成というのはやはり学校教育の場においても、やはり十分にそういったものを活用していただけたらなというふうな案があるからなんですね。  今、私たちは元オリンピック選手ですとか又は世界選手権クラスで成績を残した者たちがそれぞれの職に就いているわけなんですけれども、やはりこれからは、それこそ体力の低下というものも問題にしている学校がたくさんあるものですから、学校そして家庭地域というものに対して私たちが何か協力することができないだろうかということで各地域でNPOを作りまして、土曜日の在り方ですとかそういったことに出向きまして、選手がいろいろと生徒の皆さんにボランティアで体験学習等を今させていただくということをやっているわけなんですけれども、やはりそういった子供たちからしますと、ちょっと言い過ぎた言い方かもしれませんけれども、学校の先生に教えてもらう部活動よりも、やはりオリンピックの選手だった方たちから話を聞いたり、そういったことにすごく生き生きとしてくれるわけなんですね。そして、何よりも私たちの財産だというふうに自負しておりますのは、オリンピックや世界選手権等に出るためにやってきたトレーニングというのは、やはり体からにじみ出るようなものといいますか、それが体感といいますか言葉になって子供たちの心に突き刺さるような、心を伝えることができるという評価をいただいているわけなんですけれども、そういった体験や体感をした人間を是非とも教育の場に使っていただくことはできないかなと。  今年二月に子どもの居場所プランというのを発表されました。地域との交流という意味でも非常にすばらしいプランだというふうに思いますけれども、それをもう一歩踏み込んだ形の中で、部活動においてですとか、そういう競技生活を終えたアスリートが、子供たちの指導が直接学校現場でできるような仕組みというものを考えていただければというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。  今、学校では先生たちが大変忙しくなりまして、特に週五日制になると逆に忙しくなったということで、部活動まで面倒を見切れない、やりたくてもやれない競技が、指導者がいないことによって部活動ができないという学校がたくさん増えているんですね。そういったことを考えましても、そういう人材を活用するということも学校には今必要になってきているんではないかなというふうに思いまして、是非お考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  93. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) とても大事な御指摘といいますか、教育現場にとって大いに活用すべき御提言だというふうに思います。最近の子供たちの体力低下、非常に大きな問題で、有馬先生辺りからも、学力低下もそれは大問題だけれどももっとこの方が大切な問題ではないかと御指摘をいただいております。  こういう面からもっと子供たちを体育の授業あるいは部活、積極的に参加させる、そしてそのインセンティブといいますか、それに、自分たちもスポーツやってみようと思わせる意味からにおいても、スポーツ界で活躍した選手の皆さんが現場に来て、自分の体験に基づいて教育していただく。これは非常にスポーツ振興からも意義のあることだと、私も御指摘もっともだと思っております。  そういう意味で、それぞれのそういう方々地域におられるわけでありますから、そういう人材を活用する。免許をもし持っておられなくても、今は特別非常勤講師制度というのもございますから、それを活用すれば教育現場で実際に教壇に立つこともできるわけでございます。  そういう意味で、既にこの制度を活用して、十分じゃありませんけれども、平成十四年では小学校において八百八十八人が体育の授業の指導に当たっておられるということも報告を受けておりまして、また、スポーツエキスパート活用事業というのがございまして、そういうことでスポーツのエキスパートに来ていただいて、体育の授業とかいわゆる学校での運動部の部活動、これが活用されているということでございまして、これも平成十五年度においては体育の授業で、教員、体育の先生がおりますが、実技指導者としてそこへ入っていただく。これも既に体育の授業そのものに一千四百六十一人入っていただいておりますし、また、部活においては、指導者として九千八百十三人実際に活用をして、頑張っていただいておるわけでございます。  それで、今、また先生から御指摘ありましたが、子どもの居場所づくり、この新プラン、この中にも、子供をスポーツ活動にも参加をさせる、これも計画にございまして、このとき是非地域のスポーツ指導者の方に中に入っていただいて、ボランティアも含めて、指導に当たっていただくとこの居場所づくりがもっと生き生きとしたものになっていくだろう、また参加者も増えていくだろうと思っておりまして、こういうことについても積極的に取り組んでまいりたいと思いますし、そうしたNPO法人等々お立てになればそれに是非参加をしていただく、こちらからも呼び掛けをいたしたいと思いますし、そういうものがあれば是非学校側にも働き掛けをしていただくと有り難いと、このように思います。  今後とも、部活動等においてアスリートたち、そういう方々に積極的に参加していただくようにそうした条件整備、スポーツ指導者の活用という条件整備を文部科学省としても大いにやってまいりたいと、このように思っておりますので、今後ともよろしくひとつお願いを申し上げます。  ありがとうございました。
  94. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 力強い御意見、本当にありがとうございました。私たちも、そういった人材育成にスポーツ界も全力を尽くして頑張ってまいりたいというふうに思いますので、その仕組み作りというものも是非よろしくお願い申し上げます。  ありがとうございました。
  95. 中島章夫

    ○中島章夫君 民主党・新緑風会の中島章夫でございます。  今日は、義務教育費国庫負担法その他、この一部改正法律案の最終の審議の機会であります。本来ならば義務教育費国庫負担法の改正に集中をして議論をしたいと思っていたんでありますが、実は義務教育国庫負担法の改正のいろいろな問題点、今まで本会議あるいは、私たまたま予算委員会に属しておりますので予算委員会その他、恐らく総務委員会その他でも議論がなされておりましょうし、この委員会でも再三にわたってなされてまいりました。  議論はかなりはっきりしてまいりまして、残された議論、本当に議論をしたいと思いますのは、来ていただきたいのは官邸でありますし、財務省でありますし、総務省でありますし、そういうところから責任者をお越しいただけない状況で、文部大臣はもう就任早々から、この三位一体改革というのは教育論が真っ先に大事だということをおっしゃって文部科学大臣に就任をされたと。その後、様々な機会で、今日も含めて決意を述べていらっしゃいます。その点について改めて申し上げるつもりはございません。  ただ、この法案の中の例の附則で、二〇〇三の骨太方針を受けて昨年の閣議決定がなされ、その方針が「検討」という中に書かれている。実はこれ、まず私など見まして、文部科学省が読む読み方と、先ほど名前を挙げました幾つかの関係者が読む見方とでは同床異夢ではないかと、こう思っておるわけであります。これから検討をしていって、社会経済的な事象等に応じて、必要があれば一般財源化に向けて検討するということが書かれているわけでございます。  私どもは、御承知のとおり、こういう方向、つまり義務教育費国庫負担というようなことがこういう形で、どちらに行くかがこの時期になってまだ示されていないということに極めて遺憾でございまして、反対の立場を、御承知のとおりその点に関しては少なくとも取っているわけです。  そして、様々な人件費義務的経費と言われるものを地方にという、単純に地方へ移していけば自由度が増していくという考え方にも疑念を再三出してきたわけですが、ここで最初に大臣にお伺いをしておきたいのは、先ほど橋本委員からも御質問のありました中央教育審議会がこれから答申を出してまいりますし、今までのそういう内閣、官邸、それから財務省、それから総務省といった人たちと文部科学省との対置の中でこの最後のよりどころ、つまり今は、言葉は悪いんですが、退職手当とか長期年金給付のお金とか、次々はがされていきまして裸になっちゃったわけですから、この教員給与の部分だけ、少なくとも、これはもう少なくとも死守をいたします、そのことのために中教審の審議というものを踏まえてということをきちっとかませてありますという、そういうことになっているわけですが、改めてそこの、これから恐らく、今年やってくるであろうと思われることについての戦略というか決意について伺わせていただきたいと思います。
  96. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) 中島先生から正にお見通しのような解説を加えていただいて、御指摘があったところでございます。  この問題は、経済財政諮問会議で言われた、しかも地方分権、地方自由度を高める、そのことそのものに我々反対するわけにいかないし、またその流れだし、これは大いに進めていかなきゃいけないことだと。しかし、それと義務教育制度をどうするかという話、これはやっぱり次元が違うんではないかと私は思っております。  しかも、義務教育費の話が最初に来る、全体の財源。二十兆とも十八兆とも言われる全体の補助金、今の在り方の中でこういうものが最初に上がってくるそのものは一体どうなのかという議論、やっぱりこの辺からやりませんといけないんで、この点については私は、財務大臣においても総務大臣においても心の底では私は理解されておると思うんですね。そういうふうに思っております。  これを、しかし具体的に理論付けをしてきちっと対応していかなきゃいかぬと、こう思っております。一つの大きな流れの中でこの義務教育費国庫負担制度が乗っかってしまったものですから、これを今からどうやってその船から降ろすかということを考えていく、これが我々の仕事でありますし、またこれまで多く委員の皆さんから御指摘をいただいた点、これを踏まえて対応していく、それはもう教育論しかない、こう思っておるわけでございまして、そういう意味で中央教育審議会においてもこの問題を早急にともかく議論をする必要がある。  そのこともきちっと骨太方針の中に言わば入れさせて、入れて議論をするということでありますから、教育論をきちっと展開することによってこのことの理解を求めていくということに私はしていかなきゃいかぬし、これがこれからの課せられた課題でございまして、恐らく次の予算編成に向けてもう夏には概算要求等始まるわけでございますが、その中で当然議論が始まる、こう思っておりまして、それまでに早急に中央教育審議会の有識者の皆さん方の御意見、既にこの根幹をどういうふうにして守っていくのかという議論が今されておると承知をいたしておりますが、そういうものを取りまとめたいと、こう思っておりまして、そういう意味で御案内のような総額裁量制、先ほど来からその手法等々についても意見がございました。  こういうものを踏まえて、特にこのいわゆる一般財源化の言い出し元は知事会でございましたから、知事会のお方の、皆さん方への理解も今求めるということでかなり評価は定まってきておりますし、今日午前中の加戸愛媛県知事辺りも、最初は理解は少なかったが、この総額裁量制についても理解は深まりつつあるということでございますから、それに向けての努力もしなきゃいかぬ、こう思っておりまして、正にこれからの夏の陣が一つの山場だと、こう思っておりまして、全力を懸けて教育論を展開してまいりたい、そしてこの義務教育国庫負担制度の根幹を守ってまいりたいと、このように考えておるところであります。
  97. 中島章夫

    ○中島章夫君 その点については是非頑張っていただきたいと思いますが、午前中の今お話に出ました加戸参考人も、知事会としては義務教育国庫負担のこのお金を、最初はトップバッターに並べて地方一般財源化ということを言っていたが、今ではラストバッターだというお話から、最後にはベンチウオーマーに回したというお話がありました。是非その方の説得も、これは我々も一緒になって、これは国を挙げて盛り上げていく必要があると考えております。  さて、今日は私は、義務教育費国庫負担制度といった、そういう義務教育の基本については国が財政的にきちんと守っているという制度前提にいたしまして、私が最も問題視しております中等教育、前回もこの中等教育についてお話をさせていただきましたけれども、そのうちでも職業実務教育の部分が、これは有馬先生もお話があったかと思いますが、このことについて少し集中的にお話をさせていただきたいと思います。  ただ、このことを話を進められますのは、そういう義務教育費国庫負担という、そういう世界から見てもうらやましがられるだけのきちっとした制度全国、本当に離島へ行ってもどこへ行ってもきっちりできているということの上に初めて可能であるということを前提に話をさせていただきたいと思います。  このことについて実は一つ話が、この義務教育国庫負担というのは、当然義務教育ですから六年プラス三年の九年間ということになるんですが、実は今、中学校教育そのものが、私の考え方では、むしろ高等学校とくっ付けて教科教育というものを専門的に始めていく導入の部分として完全に失敗をしていると、そう思っております。教科の教育と、学校の一番の中心の売りはそこですから、それが面白くないと。  実は大変面白い調査がありまして、藤沢市が一九六五年、昭和四十年から定期的に、五年置きに藤沢市内の全中学校十九校の全生徒に対して、同じ質問用紙を使いながら、もちろんその時々必要な課題を足したり減したりしながら、その時々の課題を追っ掛けているんですが、これがずっと既に七回出ておりまして、今八回目の準備をしているところであります。この中に、今これから私が申し上げようとしている問題を端的に示すものが幾つか出ておりますので、後ほどこれ申し上げますが。  いずれにしても、義務教育としては九年間、国がきちんとどの地域子供が産まれても保障するという制度は絶対に大事だと思っておりますが、ただ、制度の中身の運営を、中身としてはこれは私はもう中等教育としてとらえていくべきだと、こう考えております。義務教育だからといって中身まで画一になってほしくないというのが私の基本的なスタート、今日の課題意識であります。  それで、昭和五十七年に、たしか中曽根首相の臨時教育審議会が昭和五十九年からスタートしますが、その前に中教審が既にスタートしておりまして、教育内容等小委員会というのがありまして、それが審議経過報告というのを昭和五十七年に出しております。この中で既に中高を一貫してとらえて、むしろ中学校を高等学校の前期としてとらえ直すべきであるという主張を出しているのでありますが、この主張がそのころから既に出ておるのであります。そして、教育課程の多様化は、前回のときにも私ちょっと申しましたけれども、一九九二年から始まった教育課程改定、中学校では九三年からでしょうか、これから本当の選択を入れようとしたんですが、ほとんど入っておりません。  そういう意味で、六年間は本当に画一的に教えられているんですが、この五十七年のをもしごらんになったとしたら、大臣、どういうふうに御感想をお持ちかについてお聞かせいただきたい。
  98. 原田義昭

    ○副大臣(原田義昭君) 私から取りあえずお答えをさせていただきたいと思います。  委員お話しになりましたように、戦後もう六十年近くなっているわけでありますけれども、義務教育の在り方といいますか、まずは六年制、六年、三年の九年間でしっかりとした基礎教育をということでございましたけれども、現在は同年代で高等学校に進学する生徒がもう大体九六、七%になると。ほとんど高校の三年間も学ぶということでありますから、そういう意味で、この五十八年の中間報告だというふうに承っておりますけれども、この中央教育審議会の中で、もう昭和五十八年にこれは議論されたんですけれども、正に中学校と高校の教育を、中学校教育義務教育の最後の部分というよりも、むしろ中等教育の大事な部分というような位置付けで少しこの課程を考え直さなきゃならないんではないかと、こういうことでございます。  それで、中等教育義務教育段階の前段と後段というふうにして、中学教育義務教育の最終段階というのではなくて、むしろ中等教育の前段としてとらえて、また中学校、高校を一体としてとらえるべきではないかと、こういうようなことになるわけでありまして、実際上、この両方の中学校、高校のカリキュラムの組み方とか学校の在り方については一貫性を重視した、そういうような取組がもう既にしてなされているところでありまして、基礎、基本を確実に身に付けるような教育指導を行いながら、なおかつ選択の幅を一層拡大する、そしてまた個性の伸長を図ると、こういうようなやり方で現在の中学校教育の在り方にも十分生かされている、その努力をしておると、こういうことであります。  具体的にカリキュラムの組み方、今の教科制度の在り方、選択教科というのを相当程度導入をしておりまして、先生おっしゃるような正にそういう方向で今動いておるのであると、こういうふうに思っております。
  99. 中島章夫

    ○中島章夫君 五十八年、一九八三年だと思いますが、そういう形で出ましたのは、何も中高一貫校にしろという意味でももちろん何でもありませんでして、中等教育はあの辺りから、義務教育にくっ付けておきますと内容的にも指導方法の上でも画一という方向に引っ張られてしまうんだけれども、高等学校教育の前段と考えることによって多様化という、指導方法上もそういう面を重視していくべきだと私自身は取っておりますが、もちろんそういうふうにお考えいただいていることだと思っております。  後ほど職業実務教育的な部分が非常に落ち込んできたということについて触れてまいりますが、実は一つだけ、主要な教科についてどうするんだと、多様化といってもそういうあれが出てくると思うんですが、例えば数学とか理科とかというのはどこの国でも差が出るんです。もう当然、基礎ができていないのにその上の部分を教えてもこれは分からないのは当然でありまして、その部分について、集団指導の中でもマスタリーラーニングという理論がありまして、完全習得学習というのでありますが、これはそういうシークエンスを持ったカリキュラムを一こま一こま確実に教えたということを小さな評価で、形成的評価というもので確認をしながら進むと。それは、一定の授業を一定の時間同じ方法で教えるという方法では子供たちは必ずしも付いてこない。まして、塾に行く子、その他様々、環境ありますから、その基礎教育の部分そのものが、理解度がもう小学校六年終わったところで全然違っているということを前提に始めるということが極めて大事だと私は思っておりまして、そういう意味では、ある子供には、場合には、極端な言い方すれば、ある一こまをマスターさせるのに十時間掛けにゃいかぬかもしれない、あるいは違った指導方法を加えてみなきゃいかぬかもと。そういう意味で、定数の問題だって、いわゆる三十人学級だ何だというよりも、むしろそういう差の出る教科には半分の十五人ぐらいにしてみるというぐらいな発想がないと教育は変わってこないと、こういうふうに思っております。  さてそこで、大臣の所信表明の中に、これは生涯学習の考え方として出されていると思うんですが、生涯学習の環境整備やキャリアアップのための教育ということが述べられております。キャリアアップのための教育というのはとても大事なことだと思うのでありますが、このキャリアアップ、それぞれいろんな、まあ後ほど少しお伺いするシステムの中で取り上げられていくのでありましょうが、私は、たしかアメリカでこのキャリア教育というのが話題になりました一九六〇年代の後半の部分、まあ教育庁長官、何といいましたか名前は忘れましたが、この人が言い出したのでありますが、そのころから言われているのは、一般の学校のカリキュラムの中でこのキャリア教育というものが大事にされなければいけない。キャリアアウエアネスとかあるいはその体験をしてみるとかという、そういう段階を踏んでこのキャリアに付けていく必要があるということが話題になったと思うんですが、現在のその学校教育のゼネラルコースの中でこのキャリア部分というのはどういうふうになっているのか、お教えいただきたいと思います。
  100. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  子供たちにしっかりとした勤労観、職業観を身に付けさせるためには、人間関係形成能力、情報活用能力でありますとか将来設計能力、意思決定能力などについて、それぞれの児童生徒の発達段階で身に付けることが期待される到達目標を設定するなどいたしまして、小中高等学校を通じた組織的、系統的なキャリア教育取組が必要であろうかと思っておるわけでございまして、それぞれ小学校段階、中学校段階、高等学校段階で今学習指導要領でもそれぞれの記述があるわけでございまして、また、学校現場では、このキャリア教育を効果的に実施する取組として、職場見学、職場体験あるいはインターンシップなど、将来の進路や職業にかかわる啓発的な体験活動を取り入れるとともに、産業界の動向でありますとか、企業の人事動向に精通した地域人材を進路指導に活用し、職業の実際について理解させるなどの取組が行われているわけでございます。  ただ、例えば今申し上げましたように、職業体験、こういったものはまだまだ日数的にも少ないというのが現状でございます。よく引き合いに出されます兵庫県のトライやる・ウイーク、これなどは週五日間ということで、すべての公立学校の中学生二年全員を対象にして、地域の例えば商店街などに行きまして職場体験学習を行うと。しかし、これはまだまだ特異な例でございまして、多くの学校では一日ないし二日間というのが実態であろうかと思っておりますけれども、ただ、このキャリア教育が重要であると、こういう認識は高まってきておると思っておりますし、私どもはそういう視点からこのキャリア教育をしっかりと進めてまいりたいと考えております。
  101. 中島章夫

    ○中島章夫君 小学校辺りでも、まあ総合的な学習の時間が中高でも入ってきたんですが、私の考え方では高校、中学校でこそ教科を超えそういう総合的な学習の指導というのがなされなきゃと思っておりましたら、やたら小学校で熱心ということになっておりまして、私にはよく分かりません。  ただ、中学校の体験でもだれが指導をするのか。中学校では非常に大事な教科が、例えば社会科の中の公民というようなことに関連をしたら、地方自治の問題、地方自治なんてもうそんなことに関連しなくたってほかの教科に全部関係してきます。それから、環境問題だってわざわざ総合的な学習の時間に取り込まなくたって、それはもう社会科の中の主要課題でありますし、あるいは理科の中でも重要な課題でありますから、そういう教科と離れてそんなことは、こういう体験はできないという気がします。だから、そういうことと関連をしながら、そういう体験学習あるいはキャリア教育のカリキュラムを学校で取り組んでいくという体制が私は必要になってくると思っております。  こんなことをやっておりますと、また時間が足りなくなりますので、そこで一つ伺いたいんですが、厚生労働省にお越しをいただいております。私はこれは素人考えかもしれませんが、約二十五年ぐらい前、ヨーロッパなどへ行きましたら、ヨーロッパ社会では御承知のとおり、中等教育では職業教育が非常に中心課題になっておりまして、日本のことをよく聞かれました。しかも、ヨーロッパの職業教育は、アメリカも同じですが、いわゆる具体的な職業技術教育であります。  我が国ではテクニカルエデュケーションというんでしょうか、技術的な教育に関しては幸いにして職場の中に企業内教育というのが非常に発達をしてきていて、技術的な教育に関しては職場の中へ、職場に入ってから組織的に教えてもらうという体系がかなりできているので、まあ主として大きな企業、あるいは中小の企業はなかなかそうはいかないのかもしれませんが、学校に期待されるのは一般的な教養とか基礎的な学力だというふうに、ある種仕分けをしながら説明をする余裕があったんでありますが、最近見ておりますところ、企業が何か体質改善といったって真っ先にやりますのはリストラ、人の首切りでありまして、そしてそれと併せて、企業内教育というようないっとき聞かれたようなものを最近はほとんど聞かないような気がするんでありますが、この辺、何か統計数字その他で追っ掛けておられるのか、そういうものがあるのかどうかといったことについてお教えいただきたいんです。
  102. 上村隆史

    政府参考人(上村隆史君) 企業における教育訓練の実施状況でございますが、賃金等労働費用総額に占める教育訓練費の割合というので見てみますと、先生のお話にもありましたが、企業規模別では、企業が規模が小さいほどその割合は少ないという傾向になっております。それから、業種別では、電気・ガス・熱供給・水道業ですとか金融・保険業、そういったところが比較的割合は高いということでございます。  その割合ですが、過去との比較でございますけれども、企業規模や業種にかかわらず全体的にはいわゆるバブルの時代にその比率が高まったのでございますが、その後はその前の水準に戻っております。  それから、先生のお話にございました最近、企業の取組状況で下がってきているんじゃないかということですが、これは別の統計でございますけれども、従業員に教育訓練、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練や研修を受けたかどうかという調査を行ったものがございます。ちょっとその古いのがないので、昭和六十三年、いわゆるバブルのころだと思うんですが、そのころは受けたというのが七五・三%、それがだんだん下がってきておりまして、ぶれはあるんですが下がってきておりまして、平成十年で五五・五、ちょっと調査が別の調査なんですが、十二年、十三年と、同じようなことを聞いている別の調査ですが、同じようなことを聞いている調査では、平成十三年では三二・一というような状況になっております。  先生が受け取られている感じはそういうことから来ているのではないかというふうに思いますが。
  103. 中島章夫

    ○中島章夫君 ありがとうございました。  恐らく、最初におっしゃった労働統計、その中の教育訓練費というのではなかなか有意差が出ていないようでありますが、後でおっしゃったのではかなりの差が見えているようで、差を出してくれといって頼んでいるわけでも別にないんですが、どうも企業内でそういう組織的な教育訓練というものがするゆとりがなくなってきているというのとほぼ同じ時期に、私は学校教育の全体の中で、いわゆる職業教育というものが非常に軽視をされたまま今日まで来てしまったんではないかという反省をしております。  ジェームス・ブライアント・コナントという非常に有名な、今日の総合制高校の基本的なものを理論として、実態調査を全面に行いながら、一九五九年ですから古いものですが、今日でもこのコナントの理論というのはアメリカの高校教育の中に生きておりますが、その中で言われております高校教育の一番何をやるところかという基本的な問いに対しましては、一つは職業準備教育、職業教育、もう一つは進学者のための準備教育、それの、準備と言いますと語弊がありますが、それと一般教育と、こういう三つのカテゴリーを言っておりますが、このいわゆる職業教育部分、これは余り狭くとらえる必要はないんでありますが、この部分が我が国にももちろんあるわけですが、今日、私は最近のデータをここ十五、六年ちょっと追っ掛けておりませんが、職業コースを高校の中で取っている子供は、卒業していく子供は高校卒業生全体の中でたしか二五%ぐらいいたように思うんですが、今日、その辺の統計はどれぐらいになっているんでありましょうか。
  104. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) これは平成十五年五月のデータでございますが、高等学校の学科別の生徒数で見ますと、普通科が生徒数が二百七十六万八千五百人余でございまして、比率にして七二・八%と。職業教育を主とする学科が小計、これは八十二万四千人弱でございますが、比率にして二一・七%。そのほかの総合学科等がございますから、若干、足して一〇〇にならないわけでございますが、大まかな比率からいけばそういった比率でございます。  ちなみに、昭和三十年当時は普通科が五九・八%に対しまして職業学科が四〇・一%と、こういうことでございましたですから、やはり職業教育を主とする学科の生徒数に占める比率は減ってきているということは事実でございます。
  105. 中島章夫

    ○中島章夫君 本当は主な分野別の学校数、生徒数とか生徒の就職状況等を聞きたいんですが、特に生徒の、職業高校の例えば農業、看護はかなり最近伸びているというお話があるんですが、農業、それから工業、商業といったものについて生徒の伸び、それから就職受入れ状況等について簡単に教えてください。
  106. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) 御説明を申し上げます。  約三十年前の昭和五十年度と平成十五年度を比べてみますと、農業学科、これは生徒数は十九万六千人余でございましたが、平成十五年度には十万五千六百五十六人ということで、高等学校全生徒に占める当該学科の生徒の割合で申し上げますなら、四・五%が三十年後には二・八%に減ってきていると。工業について申し上げますならば、五十万八千八百十八人が三十二万九千九百九十一人ということで、これもまた率にいたしまして一一・八%が八・七%と。商業で申し上げますならば、昭和五十年度が六十二万五千五百九十九人が平成十五年度二十九万八千三百四人ということで一四・五%から七・八%と、こういうふうに減少してきておるわけでございますし、生徒の就職の状況でございますが、これも約三十年前と比べますと、農業では、これもそういった産業構造の変化があるわけでございますが、農林業で働く者が減少していると。商業でも事務職として働く者の割合が減少いたしまして、農業、商業、いずれもサービス業で働く者の割合が増加傾向にあると。ただ、工業につきましては製造業を中心に就職をしておりまして、わずかに割合は減少しておるわけでございますが、それほど大きな変化はないと、こういった状況にございます。
  107. 中島章夫

    ○中島章夫君 ありがとうございました。  今お聞きのとおり、かなり割合も減ってきておりまして、その分総合制というところへ行っている者もいるんでしょうが、いわゆる総合、一般の普通科というところに進学をしているんです。普通科に行きまして所を得ておれば何も問題はないんでありますが、普通科にいてかえって所を得ていないというのが問題であります。  私は、前回のここでの質問でも一部触れましたけれども、私の、中等教育は病んでいると、こう思っておりまして、九七%もの同年齢層が高校に進学をしながら、非常に多くの者が、今二二%ぐらいが職業、職業の中でももちろん一般、ゼネラルコースあるわけでありますが、大学進学を目指した形のかなり単一のカリキュラムと単一の評価方法の中に閉じ込められているということが、非常に我が国の、基礎は世界で今、今の時点で比較をしましても各教科の到達度等で必ずトップレベルに出てまいります。これは、そういうどこのランダムチョイスをやりましても高い基礎数字が出てくるからであります。ところが、我が国は中等教育の比較に参加してないんです、ほとんど。これをちょっと後で少し質問をしたいと思いますが、人生の出発点に当たりますときに自分の打ち込むべき得意の分野を見付けられない、中等教育の期間六年も掛けてということが非常に残念に思います。  アメリカのミドルスクールというところへ行きますと、大体規模は物すごく大きいんですが、この前もちょっと申しましたように、スクール・ウィズイン・スクールのぐらいにスモールスクールに分けておりまして、そこの校長以下の人的スタッフは非常にインティメートな関係が取れるようになっておりますが、そこの教室の廊下へそれぞれ行ってみますと、いろんな学校、大抵そうですが、学力だけでトップから名前を張り出したりしていないです。自治活動とかフットボールとか、音楽イベントの何だとかという、いろんなそういう得意ジャンル別によくやったねというのが、写真入りで褒めているんですね。  つまり、その子供の特徴が一番発揮するところを写真入りで褒めている。つまり、何か一つ元気付ける、何か得意を見付けてやるということほど大事なことはない。主要五教科についても、五教科平均して点数を取れるというのは、小学校六年生まででもう十分と私は思っておりまして、そこから後はもう、ある不器用な子供は特定の教科が、アインシュタインじゃないですが、特定の教科が面白いという子は、そこをしっかり頑張れと言って時間割を作ってやるということが必要なんではないか。  時間割にしても、あれ、年度初めにどこの学校へ行っても、四十五分か五十分か知りませんが、初めに作ったのが年度末までいくんです。私、あんなものは子供のために作った時間割だなんて一つも思ってない。あんなものは教員向けに作ったものです。教員の都合向けに作ったものだ。だから、一学期終わって評価をしてみて違った組合せにすると。最近ではそれをもっと、二時間組み合わせる、ほかの教科と合同でやってみる、体験学習はもっと違った体験、こういうことが起こってこないと駄目なんではないかと、こう思っておるのであります。  そこで、先ほど申しておりました藤沢の、実は一九六五年、昭和四十年からの学習意識調査というのがたまたま昨日着いたんでありますが、この概要については既に知っておりました。というのは、私、昨年、二年掛かりで、研究会で、中等教育に関してのある提言書を小さな研究グループで出しまして、その途中で朝日新聞の湘南版にこのことが紹介をされておりました。つまり、中学生の学習意欲について五年置きに同じ学校、藤沢市内に今現在十九校中学校があるんですが、全校生徒を対象、中学三年生にずっと同じ質問をしてきたんです。  その中で、極めて特徴的なことを申しますと、実は「勉強の意欲」というのがあるんですが、一九六五年度、六五・一%は「もっと勉強をしたい」という欄、ほかの欄は、改めて言っておきますと、「いまくらいの勉強がちょうどよい」というのが二九・七、「勉強はもうしたくない」というのがこのときは四・六、すごい少ないですね。(資料提示)これが、ちょっと皆さん方に、これが上からずっと今日までの、この黒い部分が減ってきているんですが、もう確実に学習意欲が落ちてきているんです。二〇〇〇年度、五年置きですから、七回目が二〇〇〇年度にやりまして、そのとき「もっと勉強をしたい」というのが二三・八%に落ちていると。ずっと落ちてきているんです。そして、もう「勉強はもうしたくない」というのは二八・八%にまで膨らんでいると。  これはもう、これ実はほかの項目で調べましてちょっとショックを受けたんですが、基礎、基本に絞って子供に創意工夫をといった一九八〇年の学習指導要領のところからだんだん落ちてきているのがあるんですね。何でありましたか。  いずれにいたしましても、この中で特に私が申し上げたいのは、IEAの類似の調査三回やりましたが、この中でも、国際的な比較は小学校レベルが主に出てきておりますから、一喜一憂するにはある意味で足りないと、ここは義務教育国庫負担制度できちっと守っていただく必要があると、今後とも。内容的には各現場の先生方を中心に大いに工夫をしていただく必要があると、こう思っておりますが。生徒の学習に対する意識というのはどんどん落ちてきているんですね。いずれのときも余り良くない、たしか。例の二〇〇〇年のときにやりましたOECDのPISAという調査、あのところでも、学習意欲というのでは世界で非常に良くないはずであります。  こういうのは中学校というこの時点、つまり中学から高校に教科の学習が、まあ面白くなれば結構なんですが、もうこの時点でやる気なくしているというのは、どこかに基本的な問題があるんではないかという気がするんでありますが、今ちょっといきなりこれを持ち出して、大臣のあれを、御意見を伺うのも恐縮ですけれども、どんな御感想をお持ちでありましょうか。
  108. 原田義昭

    ○副大臣(原田義昭君) 先生から新しい数字を開いて、児童生徒の学習意欲が間違いなく落ちてきておると、これはまあ俗にはよく言われますが、また改めて先生から今の数字を示されてそのことを痛感した次第でございます。それゆえに、中等教育の早い段階から、余り画一的なものではなくて、自分が打ち込めるような得意教科や分野を見付けて、それに自信を持たせる形で教えるべきではないか、またそういう環境を作るべきではないかと、こういうようなお話だったような感じがいたします。    〔委員長退席、理事亀井郁夫君着席〕  中学校、高校、いわゆる中等教育の段階で正にそういうことの必要性は確かにあろうかと思いますし、あわせて、新学習指導要領に基づきまして基礎的な、基本的な知識、技能、態度を確実に身に付けさせるという、こういうような要請もまた並行してあるわけでございます。そういう意味では、生徒の興味、関心や進路希望等に応じた、できるだけその選択の幅を可能にするような、個性の伸長を可能とするような、そういう教育並びにまた教育制度、それを作るべきではないかと、こう思うわけであります。  私どもも、中学校においては、先ほど先生もお触れになりましたけれども、選択教科というのを大分増やし、またそれを、機能を充実させておるところでございまして、生徒がそれぞれの特性に応じて多様な学習活動、これはもう昔に比べると随分変わってきたわけでございますけれども、またそのためのガイダンス機能といいますか、いろいろ、どの教科を選択したらいいよというようなこと、またそのための先生をしっかり意識付けると、こういうような観点からやられておるところでありますし、また、高等学校においても必修単位を縮減といいますか、そういうことをすることによって、その枠を生徒の興味、関心又は進路希望等にうまく対応させる、より深く学んだり、より幅広く学んだりすると、こういうようなことによってそれぞれの能力を引き出すと、こういう教育を進めておるところであります。  しかし、いずれにいたしましても、画一的な、基礎的な部分、まあ学習指導要領でしっかりその辺を身に付けさせなきゃいけませんが、あわせて、世の中の動き、さらには、それぞれの個性を重視することとうまくバランスを取りながらこれからの教育行政を進めていかなければいけないなと、こう思っておるところであります。
  109. 中島章夫

    ○中島章夫君 今の高等学校について、新たにこういうのをいろいろ示しながらというより、むしろ高等学校は、もうそれぞれの地方が、県が競ってみるということ。もうここまで、何というんでしょうか、充実の方策が国でなされてきているわけですから、やり方が分からぬというような県はないわけでありますし、それこそ地方自治でありまして、競ってみると。まあこれはまた後、大学とのつなぎの問題が出てくるんですが。  制度の問題とか定数の問題、それから学校規模の問題。学校の規模も、そんな本当に小さな規模で多様な選択肢をというのは、これはもう不可能であるのは始めから分かっているんです。そういう条件整備もしないで、中学校の多様化というのは無理であります。    〔理事亀井郁夫君退席、委員長着席〕  もう一つ大事なことは、今、各都道府県が、高校入試の責任都道府県がやっておりますが、これはもう基本的には調査書とそれから入試と半々ということにたしかなっているとは思いますが、実際には何が利いているかといいますと、五教科、つまり国社数理英という五教科の入試の、全教科の、教科の差は出ちゃいかぬのです。というよりも、合計点の高い子供ほど褒められるという、こういう一点の評価しかないんです。同じことは、ほぼ同じことが大学に一般的に言われる。そういう評価方法もどう変えていくのかということから変えてまいりませんと、もう中等教育というのは、よほど手を入れていかないと、そういう喫緊の問題が、しかも構造的な問題が山積をしていると私は思っております。義務教育の問題に本当にかかずり合っている暇はないぐらいのものではないかと思っておりますが。  ひとつ、せっかく御紹介をしましたので、私は、今まで見ました資料の中で非常に基本的にいい調査研究をしていると思いますのはこの藤沢市の学習意識調査、こういうのは本来、これ国でやれと言いません、こういうものは各都道府県等で、あるいはできるしっかりしたところでやるべきですが、国のカリキュラム開発センターというのはそういうところと連携をしながら基準に反映させていくという、そういう役割を持つべきだと、私はそう思っているんです。何でもかんでも国でやる必要なんかないと思っているんです。ここまでいろいろその現場のことが分かり、そしてきちっとしたことが調査できるというのは現場に近いところであってこそだと思います。  そういうシステムというものをどう作っていくか。これもちょうど教育課程開発センターという、開発研究所というのが、センターというのができたわけですから、これの運営方法についても基本的に考え直していただく必要が私はあると思っております。これはこの間も申しましたが、再度申し上げておきます。  さて、そこでもうPISAの問題、ちょっと飛ばしまして、ひとつ先日の、例の教育課程実態調査の一環としてやったんだそうですね。先日発表された高等学校の、高校生の学力テストの結果というのが余りにも期待値と、数学とかそれから理科の各教科なんかでその乖離が大き過ぎるということ、数学、八割がもう通過しなかった、期待値に届かなかったということですが、物理、理科の各領域は全部六割から七割ということのようですが、これは私は、ひとつどこに問題を今見いだしておられるかについて聞かせていただけますか、現場に問題ありとするのか、あるいは期待をした方が問題なのか。
  110. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) 平成十四年に高校三年生を対象に実施をしたこの教育課程実施状況調査でございますが、調査を実施した四教科のうち、国語と英語は、もちろん課題はあるんでございますが、一応それなりの想定を上回る結果であったわけでございます。しかし、数学と理科、これは想定を下回って大変多くの課題があると認識をいたしております。  これはいろんな原因もあるんだろうと思っております。もちろん、高校三年生の十一月という時期が良かったかどうかとか、いろんなこれは議論もございました。それから、やはり先ほど来出ておる学ぶ意欲、学ぶ習慣、こういったような問題、それからやっぱり学校現場における指導の問題でありますとか、特に今回、もう少し理科などではそういう実験、観察、こういったものに重点を置いていただきたいと、こういった点がやはり弱いんではないんだろうかと。  いろんな原因があるということは承知をいたしておりますが、いずれにいたしましても、現在、この細かな、更に詳細な教科ごとの分析をしておるところでございまして、その結果も踏まえながら、更に指導方法の改善なり、あるいはやがていつかは次の教育課程の改訂ということも議論の課題にはのってくるんだろうと思いますけれども、そういったものについてもきっちりといろんなデータを集計した上で反映させていかなきゃいかぬ、研究していかなきゃいかぬ、そういう大変大きな研究課題だろうと思っております。
  111. 中島章夫

    ○中島章夫君 この問題は、恐らく、今お答えがありましたように、教育課程の、教育課程そのものの中身の構造的な改革もさることながら、教育課程そのものの枠組みの構造改革が必要だと思っております。  そのことも関連をしまして、次に、昭和五十一年に専修学校制度がスタートをいたしました。これはいろいろ、都市部にもうこれ以上高等教育の人口を増やさないとかいろんなあれが絡んでいたことはそうなんですが、それ以外にも専修学校制度というものが熟成をしてきたということでありまして、この辺りから専修学校制度が今日まで発展をしてきていると思います。  いわゆる高等専修学校、専修学校、各種学校の大体このころから、一九〇〇、そのちょっと前からでも結構ですが、どれぐらい生徒数、学校数、専門分野別特徴、若干男女別等も含めて、最後に都市部に集中しているとかというようなそういう傾向も含めて、概略御説明いただきたいと思います。
  112. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 専修学校の全体的な状況につきまして、お尋ねの観点に即しながら御説明をさせていただきたいと存じます。  まず、昭和五十二年の制度発足当初と平成十五年で比較をいたしますと、学校数でございますけれども、中卒者対象の高等専修学校は五百六十三校から六百二十二校、約一・一倍でございます。それから、高卒者対象の専門学校は千五百二十三校から二千九百六十二校、一・九倍、二倍近い伸びでございます。それから、各種学校は六千九十四校から千九百五十五校と、これは七割減ということでございまして、全体的に見ますと専門学校について飛躍的に増加をしている状況にございます。  生徒数も同様の傾向でございまして、高等専修学校は五万八千人が五万三千人ということで横ばい、やや減少でございますが、専門学校は二十六万九千人が六十八万五千人ということで二・五倍という数でございます。各種学校は八十七万人が十九万人ということで八割減という状況でございます。  それから、生徒数の男女別の比較でございますけれども、発足当初は大変女子が多かった、女性が多かったということでございますが、男子の割合でいいますと、高等専修学校が発足当初の一八%から現在四三%、専門学校が三〇%が現在四五%、各種学校が四五%が五〇%ということで、近年男子が増加をしている傾向にございます。  それから、専門分野で見ますと、これは高等専修学校、専門学校、各種学校共通でございますが、発足当初、これは昭和五十四年でございますけれども、五十四年ではやはり服飾・家政という分野がトップを占めていたわけでございますが、現在では衛生とか医療とか工業といった分野の伸びが目立つところでございます。もちろん服飾・家政も結構な数を占めております。  それから、最後でございますけれども、地域別の特徴ということで申し上げますと、先生お話ございましたように、やはり首都圏、近畿圏、中部圏、ここが大変学校としては多くなっておりまして、学校数で見ますと、高等専修学校では全体の五三%、専門学校では全体の五四%、各種学校では五七%が首都圏、近畿圏、中部圏というところに所在をしているという状況でございます。
  113. 中島章夫

    ○中島章夫君 お聞き及びのとおり、昭和五十一年といいましょうから今から約三十年弱前から、この専修学校、特に専修学校に特徴的ですが、非常に着実に伸びてきていて、そして青年たちがこの分野で学習をしているというのが非常に大きくなってきている。そういう意味では、日本全体の教育システムの中で極めて重視をしなければいけない分野になってきているわけでありますが、この点について、まあ何もかも財政的に丸抱えせないかぬとは思いません。しかし、財政的にどういうその支援の体制ができているのかお教えいただけますか。
  114. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) 先ほど申し上げましたように、特に専門学校については非常な伸びを見せているわけでございます。例えば、平成十五年で見ますと、高等学校の新規卒業者の一八・九%、二十四万人が専門学校に進学をいたしております。これは大学進学者の約半数であり、短期大学進学者の約二倍という数字でございまして、高等学校卒業後の重要な進路として専門学校は位置付けられているというふうに私ども思っております。  こういう専門学校を含みます専修学校に対する振興策といたしましては、一つには、意欲的に教育向上に取り組む専修学校に対しまして、その教育内容の高度化を図るための教育プログラム開発事業への支援といったことを行っております。また、大型教育装置や情報処理関係設備整備費の補助等、国の予算額では、平成十六年度予算では約三十三億五千万円を計上して支援を行っているところでございます。また、専修学校には都道府県からの経常費助成の対象となっているわけでございまして、国は専修学校の助成に対する交付税措置を行っているところでございます。また、いわゆる学費負担の軽減を図るということから、奨学金事業についてもその充実を図っているところでございます。  なお、最近、フリーター対策等いろいろ言われておりますので、いわゆるフリーターの方々が専修学校で短期間でございますけれども学び直したり、あるいはいわゆる日本版デュアルシステムということを専修学校が取り上げたりする際のそういう研究開発事業に対する支援も十六年度から開始をするということにいたしております。
  115. 中島章夫

    ○中島章夫君 その点について、大学にはいわゆる経常費補助というのがあるわけですが、この専修学校分野は恐らく栄枯盛衰が激しいとか、様々、ベースが都道府県にあるということやら様々あって、経常費補助は私立学校経常費補助で都道府県でというお話ですけれども、こういう奨励的なところにお金が集中的に、奨励的に流していこうと、こういう政策を取っているということでしょうか。
  116. 銭谷眞美

    政府参考人銭谷眞美君) お話のとおりでございまして、現下の厳しい財政状況の下では、専門学校法人等に対する国の経常費助成制度を創設するというのはなかなか難しい状況にあると思っております。  ただ、私どもとしては、専門学校が柔軟な制度の下でその特色を発揮して意欲的にいろんな教育活動に取り組んでいただく場合に、そういう専修学校に対して教育装置や情報処理関係の設備への補助を実施をしたり、あるいは教育内容、方法の開発普及を図るためのモデル事業というものに対して振興策を講じていきたいと、また講じてきているところでございます。
  117. 中島章夫

    ○中島章夫君 時間が少なくなってまいりましたので、高等専門学校についてもお伺いしようと思っておりましたがこの部分はちょっと便宜飛ばさせていただいて、今度新しく、その上にというんでしょうか、高度な専門的、実務的教育の頂点に立つべきものということで専門職大学院というのがたしかスタートをいたします。  今年から、この四月からスタートをするわけでありますが、そのうちの法科大学院というのはたしか来年から六十校ぐらいが開校するということのようですが、既に公共政策タイプとか、昨日の朝のラジオで聞いておりましたらなかなかいいニュースだなと久しぶりに思ったんですが、東大が、あそこの原研の場所でしょうか、現場で原子力安全に関連をした何か専門職大学院大学構想を発表したとかということを何か聞いたんでありますが、そのことを詳しく今聞こうとは、別に構いません。  それよりも、法科大学院の場合、ロースクールと、ハーバードなんかに関連をしてよく言われてみんな知っているわけですが、これはたしか卒業生が出ていくとき、たしか四千五百人ぐらい、そのうちに弁護士等の資格を取るのが三千人ぐらいはなれるということでかなり口が決まっておるわけですが、その他の分野というのがちょっと貧弱なような気がするんでありますが、これはどういうことでありましょうか。今年スタートをしたというのは、何か実社会でのメリットが少ないということなんでありましょうか。  法科大学院がやたらあって、それにリードされてこれがスタートをしたという面もそれはなきにしもあらずですが、私なんかはどちらかというと、これから地方分権の時代にもなっていきますと、例えば地方の公共政策タイプとかそういったものがもっとある種のインセンティブを持って増やされるべきではないかという気もするんでありますが、その辺について伺わせてください。
  118. 原田義昭

    ○副大臣(原田義昭君) 御指摘のように、専門職大学院が本格的に始まったところであります。十六年度から発足します法科大学院は六十八校から出発する予定でございます。それ以外の専門職大学院はもう既に平成十四年十一月の学校教育法の改正によって制度としてはでき上がっておりまして、平成十五年度におきまして八大学十専攻が開設されております。十六年度、来年度からは十五大学十五専攻が新設される予定でございます。累計では、二十二大学二十五専攻というふうになるようになっております。  御指摘いただきました公共政策分野では、そのうち四大学というふうに報告されております。大部分がまだ経営管理、会計、ファイナンスの分野、いわゆるビジネススクールのようなものを念頭に置かれるといいと思いますが、これが一番多うございます。十四専攻ということで始まるわけでございます。  いずれにしましても、高度な技術、高度な知識、これがこれからの社会にとって極めて大事でございますから、この専門職大学院の要請というのはますます大きくなるんではないかと、こう思います。また、法科大学院がこういう形でスタートするということが他の専門職大学院の奮起にも大分影響を与えているんではないかと、こう思っておるところでございます。  いずれにしましても、これらの大学院、専門職大学院は国としましてもしっかりともう支援をしていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。
  119. 中島章夫

    ○中島章夫君 この専門職大学院は、いずれにしても、例えば修士号という、いや、博士論文じゃない、修士論文というものに代えてコースワークでというふうに、ある意味でプラクティカルな面を非常に強調しているはずであります。そういうこととの対比で、例えば教員審査なんかも、昔どおりの大学設置審的なところで学術的な観点で合否の判定がなされたんでは恐らく、さっきの公共政策のところで東大と東北大にできたものをちょっとのぞいてみたんですが、余りプラクティカルな方がおられないで、大学教授が相変わらずずらりと並んでおられるという、それは悪くないんですが、もっとそういう性格の変更ということが余りなされていないという気がいたします。  特に、魅力を与えていく、インセンティブを与えていくという意味で、何か学びやすい環境を提供するとか、あるいは職場での基礎的な資格、今、博士号を要求しているものがやたら多いんですが、修士号で十分というふうに検討してみる考えがあるのかないのか、そういったことについてもお教えください。
  120. 遠藤純一郎

    政府参考人遠藤純一郎君) 昨年度から始まりました専門職大学院でございますが、これまで専門的な職業能力を培うための教育というのは学部教育レベルを中心に行われてきたわけでございまして、大学院教育では研究者養成と、これが主眼であったと、こういうことでございます。  ただ、最近の社会経済の複雑化あるいはグローバル化と、こういう状況の中で、こういう、それだけの枠組みだけでの教育では不十分ではないかということで、大学院レベルにおける一層高度で体系的な専門職業能力の育成ということへの期待が高まったということを踏まえまして、専門職大学院の仕組みができたと、こう理解しておるわけでございまして、そういうことで、私ども、これを充実をさせることによって、我が国の国際競争力の向上等、いろんな面での進展に役立てようと、こう思っておるわけでございます。  今、余り変わらないじゃないかという御指摘もございましたけれども、教員等につきましても、研究指導能力という人たちをずらっと並べるだけではなくて、実務者ということで、そういうことも一定割合必要だと。今、東大、東北大の公共政策大学院、どうもそうじゃないんじゃないかということでございます。今の肩書が教授なものですから、例えば東大にしろ、東北大にしろ、以前、国の官庁あるいは地方公共団体その他のところでそういう政策に携わったというような方々もかなりの数配置をされているというこういう状況で、私どもそういった実務的な教育を通して専門職業能力の向上を図ると、こういうことでこの制度を発展充実させたいと、こう思っておるわけでございます。  当然、この専門、そういうことでございますから、専門職業大学院、社会人ということをかなり意識もしてございまして、例えば昼夜の開講をする、あるいは夜間での授業と。あるいは、例えば小樽商科なんかもそうなんですけれども、本校は小樽にあるけれども、通う人は札幌だから札幌にサテライトキャンパスを置くとか、そんなようなこととか、入試にしても特別の選抜方法を取るとか等々、そういった形でできるだけそういういろんな方が更に能力をアップするということにしていただければと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  121. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 中島章夫君、時間が参っておりますので、よろしくお願いします。
  122. 中島章夫

    ○中島章夫君 もう質問時間が終わったのは知っておりますが、今日申し上げました中等教育の中でも、職業実務教育的な部分がすっぽりその意識から抜けてしまっているところがあるのではないかという気がいたします。そのためにも、義務教育費国庫負担という土台というものは絶対に守っていくということをみんなで誓い合いながら、これで私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  123. 山本香苗

    山本香苗君 公明党の山本香苗です。  まず最初に、確認させていただきたいんですけれども、今回の義務教育費国庫負担法改正につきまして、退職手当及び児童手当国庫負担対象外になって一般財源化するわけでございますが、これによって、地方負担が生じることはないと、地方への負担転嫁には決してならないと、それでよろしいんでしょうか、文科省と総務省にお伺いいたします。
  124. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  今回、退職手当児童手当に要する経費国庫負担対象外にすることといたしましたのは、あくまで国庫補助負担金廃止、縮減に係る政府全体の方針を踏まえまして、義務教育に係る国と地方役割分担でありますとか、費用負担の在り方の見直しを図ると、こういう観点に立って、対象経費を国として真に負担すべきものに限定するためのものでございます。  今回の見直しに伴いまして、退職手当及び児童手当に係る所要額につきましては、税源移譲予定特例交付金を設けまして、税源移譲までの各年度の退職手当等の支給に必要な額を確保し、地方財政運営に支障が生じないよう財源措置が講じられたと、こういうふうに理解をいたしております。
  125. 岡本保

    政府参考人(岡本保君) お答えをいたします。  税源移譲予定特例交付金の総額は、特例交付金法によりまして、改正前の義務教育国庫負担法を適用した場合に国が負担すべき額というふうに定められております。このことによりまして、都道府県退職手当所要額の総額が増加した場合でも、それに応じて当該交付金の総額は増加するということを法律上担保しております。  ただ、各都道府県におきましては、この特例交付金、人口により配分されますので、その予定特例交付金の額と退職手当等に係るこの二分の一の減少額とは違いが出てくることはあり得ますが、その部分は全額地方交付税の基準財政需要額に算入するということといたしておりますので、交付税の算定を通じて個別団体ごとの必要額も確保されるというふうに考えております。
  126. 山本香苗

    山本香苗君 いや、ちゃんと負担が生じないか生じるかと、短くて答弁よろしかったわけなんですけれども。  今回、地方の方では満額、十分の十が出るから実害はなかろうということで、やむを得ず受け入れようということを今日の参考人の方も言っていらっしゃったわけなんです。私も、今回、そういう形できちんと前提がなっているということでやむを得ず賛成という形になるわけでございますけれども、これ、前提が崩れると話は別になってしまいますので、しっかりやっていただきたいと思っております。  今回の改正案の焦点というのは附則の第二条になるわけでございますけれども、「平成十八年度末までの検討の状況並びに社会経済情勢の変化を勘案し、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるものとする。」、この文言につきましてはなかなか理解し難いものがあるわけなんですけれども、これがまず入った意味、また、この附則第二条を、この文言をどう理解しているのか、文部科学省、総務省、財務省、それぞれにお伺いいたします。
  127. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  この退職手当児童手当に係る取扱いにつきましては、昨年来、三省庁の間でもいろいろな議論があったわけでございます。知事会からもいろんな御議論がございました。  結果として、昨年の十二月の三位一体改革に関する政府・与党協議会では、「義務教育費国庫負担金の退職手当児童手当に係る取扱いについては、暫定的な措置とする。」と、こういうふうに決定、合意がなされたわけでございまして、私どもといたしましては、この附則第二条を設けるに当たりましては、この政府・与党の決定を踏まえまして、今回の法改正による退職手当児童手当に係る措置につきましては、政府として、一方では、義務教育学校教職員給与等に要する経費負担の在り方について平成十八年度末までに所要の検討を行うということになっているわけでございますから、その検討の状況や社会経済情勢の変化を踏まえつつ、必要に応じ適切な措置を講ずると、こういう趣旨をこの附則の中に盛り込んだわけでございます。
  128. 岡本保

    政府参考人(岡本保君) 附則二条の趣旨につきましては、ただいま文部科学省の方から御答弁があった趣旨と同じような考え方により設けられているというふうに総務省としても考えております。
  129. 杉本和行

    政府参考人(杉本和行君) 改正法附則二条の趣旨でございますが、文科省、総務省からお答えがあったところと違いませんが、繰り返しになる点も御勘弁いただいて申し上げますと、義務教育費における経費負担の在り方につきましては、基本方針二〇〇三の改革工程、それから政府・与党の協議会の決定におきまして、中央教育審議会における教育制度の在り方の一環としての検討も踏まえつつ、「平成十八年度末までに国庫負担金全額一般財源化について所要の検討を行う。」とされております。  今般、その退職手当児童手当について国庫負担対象から除外することとする一方、これに係る税源移譲の時期は、さきに述べました義務教育国庫負担金全額の検討等を踏まえつつ判断するとされておりまして、それに至るまでの間の暫定的な措置として税源移譲予定特例交付金による地方への財源手当てを講ずることとされたところでございます。  このように、退職手当等の一般財源化に関しましては、平成十八年度末までの検討状況を勘案した上で最終的な取扱いを今後決定するとされておりますので、そのような趣旨を附則に書かれたものと理解しております。
  130. 山本香苗

    山本香苗君 三省庁で暫定的な措置だというところまで、じゃ、その後どう転ぶかというところは皆さん全然違う御主張を持っていらっしゃるんじゃないかなと思うわけなんです。先ほど、同床異夢という話もございましたけれども、総務省の方では一般財源化を主張されていると、財務省の方では目的の範囲内で使途を自治体が決定することができる交付金化というものを主張されている、文部科学省堅持と。  こういう形で、そこで、まず総務省さんにお伺いしたいんですけれども、地方分権の流れの中で、地方の方へ裁量を移していくということは必要なことだと思っているわけなんです。ただ、総務省の主張されている一般財源化ということをした場合には、地方財政地方財政が厳しい中で必要な額が確保できなくなるんじゃないかとか、あるいは地域格差というものが生じるんじゃないか、また教育費以外にも、色が付きませんから、いろんな形で使われてしまうんじゃないかという強い懸念があるわけなんですけれども、この点についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  131. 岡本保

    政府参考人(岡本保君) お答えをさせていただきます。  既に御案内のように、教育はその地域住民の最も関心の高い行政分野でございまして、現実にも、各都道府県におきましてそのそれぞれの地域の実情で、標準法に定めます教職員定数を超えて、県担と呼んでおりますが、そういう教職員を配置しているというような実態もございます。  そういうようなことを考えますと、国が全国的な水準を、その大枠を定める中で、所要の財源につきましては、現在のほかの一般財源化された施策についても同様でございますが、所要の財源地方財政計画の策定や地方交付税の算定というものを通じて確実に保障をするということを講ずれば、全国的に確保すべき教育水準というのは維持できるものと考えております。  地方分権は、その住民の代表である首長さん、知事さんたちが住民代表であります議会の御審議、議決、そういう監視の下で、住民監視の中でそういう教育行政のいろいろな適否を講じていくということであるわけでございますので、今、教育に対する国民の高まりの中でそういう問題が生ずる、あるいは財源が用いられないというような懸念はないと考えておりますし、地方団体からは、その一般財源化の中で、知事会等の意見にもございますが、教育環境や児童生徒の実情に応じた弾力的な学級編制、教職員配置というものをやって、地域における教育論議を活発化していきたいというような声も聞いているところでございますので、今先生御指摘のような懸念は生じないのではないかというふうに考えております。
  132. 山本香苗

    山本香苗君 今日、午前中に、参考人知事教育長の方からお話をお伺いしたわけなんです。実際、教育をないがしろにするような知事さんはなかなか、そんな首長にならないというふうな話を言われていらっしゃる過去の答弁もあるわけでございますが、教育、現段階、当面は考えられないと思うと。しかし、地方財政は厳しいと。そうなってくると、財政財源を捻出するのが困難になっていって、もうのどから手が出るほど財源が欲しいと。そういうときにカットしてしまうところに、その知事さんのお言葉をかりれば、悪魔的な魅力があると、そういったことも言っていらっしゃったわけでありまして、これが生の声です。これだけ申し上げておきたいと思います。  今回の制度自体、この制度自体というものに対して、総務省としては地方自由度を阻害しているというふうなお考えはお持ちなんでしょうか。
  133. 岡本保

    政府参考人(岡本保君) 現在の国庫負担制度につきましては、地方団体から、学級編制や教職員の配置についての運用の幅が狭い、あるいは教育委員会のあるいは依存体質というようなこともマクロとして指摘されてございますし、国庫負担金のいろんな手続の問題もあると。そういうことも全部合わせまして、知事会等から義務教育国庫負担金についてはその全額一般財源化をしてほしいというような声もあるというふうに承知をいたしております。  これからいろんな議論がなされてまいりますし、これから十八年度に向けてのいろんな議論があるわけでございますが、私どもとしましては、そういう地方分権の推進という観点から、そういう義務教育の充実活性化ということも十分踏まえながら対応していきたいというふうに考えております。
  134. 山本香苗

    山本香苗君 引き続き、総務省さんにお伺いしますけれども、仮にこの制度をなくして、全額税源移譲した場合の各都道府県における現在の負担金の交付額との比較表、これは文部科学省さんの方で試算されて出されているものでございますけれども、この表をどのように総務省としては受け止めていらっしゃいますか。
  135. 岡本保

    政府参考人(岡本保君) 義務教育国庫負担金廃止いたしまして、仮に機械的にその額に見合ったものを所得税から個人住民税税源移譲をするというような想定であろうかと思いますが、そういう場合に、結局、現在の個人住民税のシェアで単純に国庫負担金の総額を案分するということになるわけであろうかと思います。  先ほど税源移譲特例交付金のことで申し上げましたけれども、結局、教育の行政、それぞれのその地方で講ずべき大枠は決まっているわけでございますから、その全額につきましては、地方できちんと標準的に行うべき行政であるというふうに観念をいたしますので、その必要な額につきましては、毎年度の地方財政計画に必要な計上額を計上いたしまして、その計上した額と税収の分布が一致しないものは、その差引きが地方交付税という形で算定を通じて確保される、正にそれが地方交付税財源保障機能でございますので、そういうことによりまして全国的な教育水準の維持に必要な財源ということを保障することができると考えておりますし、またそういうことをしていかなければいけないというふうに考えております。
  136. 山本香苗

    山本香苗君 次に、財務省さんにお伺いいたします。  財務省が主張されているように交付金化すると、一般財源化ほどではないとしても、地方自由度は増えるわけです。そういう自由度が増えるけれども、いろんな声が聞こえてくるわけでございますが、財務省の本音は総額抑制じゃないのかと、そうすると教師の大幅減になるんじゃないかと、そういう懸念があるわけです。  実際、財務省さんの方で言われていらっしゃるのは、児童生徒数の減少を機械的に予算額に反映できる仕組みを導入すべきじゃないかということも同時に主張されているわけでございまして、これに対しては、こうなったら本当にオートマチックに減っていくわけですよね。この点につきまして、財務省はどうお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  137. 杉本和行

    政府参考人(杉本和行君) 義務教育国庫負担金制度につきましては、閣議決定でございます基本方針二〇〇三等の改革工程に従いまして、地方自由度を大幅に拡大するということが必要だと考えております。こうした観点に立ちまして、引き続き見直しを進めるということになりますが、私ども財政当局としては、その際、近年の少子化の進展による児童生徒数の減少、こういった社会経済情勢も十分に踏まえて議論を進めていくことが必要だと思っております。  いずれにいたしましても、義務教育に係る経費については、負担金という形にしろ、交付金という形にしろ、それぞれ具体的な制度の仕組みに従って必要となる経費を適正に、適切に予算計上するということとなると考えておりますので、仮に交付金化ということになった場合におきましても、そのことの一事をもって予算が減少する、そういうものではないとは考えております。
  138. 山本香苗

    山本香苗君 次に、文部科学省の方にお伺いしたいと思うわけなんですけれども、今回導入されます総額裁量制につきまして、今日来られていらっしゃいました参考人方々は非常に評価をされていらっしゃいました。  ですが、今回のこの総額裁量制につきまして、もう一度どこまで本当に自由度が増すのかという点と、また、これから総額裁量制といったときにも、標準法と人確法というような形をきちっと維持していくという話であるわけですけれども、実際、実態として割合としては少ないとしても、守られていないところもあるというふうにお伺いしておりますが、これらもすべてきちっと守っていくような形を、体制を取っていくのかどうかということと、財務省から、この総額裁量制を出した途端に、コメントとして、実質的に裁量や自主性を増やすことになるのかと、やってみたけれども余り変わらなかったというのでは適当ではないといった、効果を疑問視するようなコメントが出ておりましたけれども、これについて、文科省としてはどういうふうに反論されますでしょうか。
  139. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) まず、総額裁量制の導入による地方自由度の問題でございますが、これは負担金総額の範囲内で給与額や教職員配置について都道府県の裁量を拡大しようとするものでございますが、具体的には、これはあくまでも一つの例でございますが、都道府県の創意工夫によりまして、例えば給与抑制措置を講じた場合に生まれる財源を活用して少人数学級を実施するための教職員を配置をする、あるいは非常勤講師、再任用教員等の活用によりまして習熟度別少人数指導を充実させるなど、地方独自の施策をより一層展開しやすくなる、あるいは都道府県の主体的な判断で教職員の能力と実績をより反映することができる給与制度を設計することが可能になるだろうと考えております。これは従来なかなか、細かな国庫負担の最低限度を定めておったものですから、今申し上げたようなことがなかなか地方公共団体レベルで難しかったと、そういうものを今回の総額裁量制の導入によってよりやりやすくしようと、こういうものでございます。  なお、この総額裁量制は、当然義務標準法あるいは人確法を前提としての制度でございますから、義務標準法の趣旨等につきましては引き続きそれを守っていただくよう指導はしてまいりたいと思っております。
  140. 山本香苗

    山本香苗君 最後に、大臣にお伺いしたいわけなんですけれども、今回のこの義務教育費国庫負担制度、いろんな議論が報道に出ております。その中で、よく報道で見掛けるのが、一般財源化されれば地方に配分してきた文科省がなくなるのも同然だとか、これ以上の譲歩は役人、役所の死活問題だとか、そういうふうに報道に書かれていることが多々あるわけなんです。  何かこういう話を、こういう報道で出ているわけであってそれを言っているわけではないとは思うんですけれども、そういうのが出るたびに、何か非常に大事な大事な問題が矮小化されているようなイメージを持ってしまうわけなんです。本来こうした大きな、この教育の深さが社会の未来を決めるとも言いますけれども、教育にかかわる大きな問題であるにもかかわらず、小さな、小さなというか、単なる役所の問題とかそういうふうにとらわれないように、しっかり中教審での審議を踏まえながら、また国や地方意見を聞きながら、将来に禍根を残さないような結果を是非ともこの検討の末にかち取っていただきたいと思うわけなんですけれども、大臣の御決意を最後にお伺いしたいと思います。
  141. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) 大変大事な御指摘だと私も受け止めさせていただきました。  先ほど、林財務、当時、財務次官、その人材確保法、標準法、これを置きながら裁量と言ったってそれは無理じゃないかと、本当に効果が上がるのかという指摘があった。しかし、その時点で本当にこの裁量制がどこまで裁量権を、裁量権といいますか自由度を増して考えているかということを十分御理解いただけないままの発言じゃないかと思うんですね。  知事会も最初はその裁量制という意味がなかなか御理解いただけなかったようでありますが、現実にその大事な教育費、これが保障されながら、そして同時に、いわゆる加配の問題等とかを自由にやれるんなら、これがやっぱり一番、教育費考えたときに一番必要ではないか、大事なことではないかというのが大きな私は声に今なりつつありますので、これこそ正に私は義務教育費の、義務教育というものの在り方の重要性といいますか、それを理解いただけるのならば、やっぱりこれは財源確保しながらきちっとやるということが大事でありますから、一般財源化という、それはそれを保障すればいいじゃないかと、こう言われるかもしれないけれども、絶対的な保障がないものを保障すると言われたって、これは今までの歴史現実に示しておるわけでありますし、特に財源力の弱い市町村辺りは非常にその点を不安に思っている。特に交付税等々の抑制化の方向というのは非常に、これが教育費に来る懸念というのは非常にあるわけです、現実に。  そういうことを思いますと、やっぱり教育の、義務教育責任は国が負うべきだという憲法の要請等々から考えて、この財源もきちっと確保して、教育責任を持つ、文部科学省はそれに責任を持つと、このことがやっぱり義務教育をきちっと位置付ける上で非常に大事なことでなければいけないと、こう考えておりますので、これはいろいろな御意見があることは今もお聞きのとおりでありますけれども、これに対して、しからば義務教育は国が責任を持たなくていいのかという問題に入ってくるわけですから、そこのところをきちっと話ししなきゃならぬと思うんですね。  当然、これから財務当局あるいは総務大臣等々ともこの点踏まえてどう位置付けるのか。この国庫負担制度そのもの、そのものをなくしてしまうのか。交付税化という話が出ていますね。この国庫負担制度をなくして、このものを元々もうなきものにするんだという考え方なら、しかしこの義務教育費をどういうふうに保障するかということをまた別途考えなきゃいかぬ。しかし、この義務教育費国庫負担制度を残すならば、ほかの方法を考えたって、これがやっぱりベストじゃないかという議論に私は教育論からいきゃなると思うんですね。私は、こういう議論をしながら、この義務教育費国庫負担制度堅持するという方向で貫いていきたいと、こう思っているわけです。
  142. 山本香苗

    山本香苗君 大臣には大変期待しておりますので、正にこの大きな地方分権化という流れの中で裁量を増やしていくということは大事だと思うんですけれども、増やし方が問題だと思うんですね。そのときに、いわゆる大事な大事なこのものを絶対的な保障がない状況で放すということは大臣としても非常に心忍びないところだと思います。制度的な保障があって、これが大事だと思いますので、是非とも堅持の方向で頑張っていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  143. 林紀子

    ○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。  前回に続いて質問をしたいと思います。前回はちょうど時間切れになってしまいまして、総額裁量制の問題に入ったところで終わってしまいましたので、今日はその続きということで、総額裁量制の問題からお聞きしたいと思います。  総額裁量制地方自由度を増すということが盛んに言われておりますけれども、じゃ、この増す自由度というのは何かということをお聞きしたいと思うんですね。ただいまの御質問にも近藤局長の方からお答えありましたけれども、もう一度確認の意味でお伺いいたします。  教員給与水準を落として、その分でほかに教員を増やすとか、常勤の教員の代わりに非常勤講師を増やすとか、そういうことができるようになるのが自由度を増すということでしょうか。
  144. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  先ほど申し上げましたのは一つの例でございまして、いろいろな工夫は地方の公共団体で行っていただける、そういう仕組みであろうと思っておりますが。  今の御指摘の点でございますが、総額裁量制教職員給与費の実支出額の原則二分の一を国庫負担をすると、まずこういう大前提の上で、義務教育に関する地方自由度を高める観点から、負担金総額の範囲内で教職員給与や配置について都道府県の裁量を拡大しようというものでございまして、地方の判断によりまして、各学校において多様な人材を活用したきめ細かな指導でありますとか特色ある取組を一層推進していくために、非常勤講師や退職再任用教員をより多く配置をするということはもちろん可能になるわけでございまして、これらによりまして、例えばきめ細かな指導のための習熟度別少人数指導を従前にも増して充実させるとか、あるいは専門分野、得意分野を異にする幅広い指導スタッフを導入すること等が以前よりも可能になるわけでございまして、教育の質の維持向上を図りながら地方独自のいろんな教育施策の展開がより一層可能になるであろうと、こういうふうに考えております。
  145. 林紀子

    ○林紀子君 そうしますと、非常勤講師の実情ですね、例えば各県でどのくらい人数がいるのか、お給料はどうなっているのか、勤務時間はどうなっているのか、勤務形態ですね、そういうものはどういうふうになっているのか、その実情を文部科学省としてはつかんでいらっしゃいますか。
  146. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  非常勤講師の勤務実態につきましては、これは服務監督権者である各教育委員会がその権限と責任においてこれを適切に管理すべきものと考えておりまして、私ども全国的な調査を行っていないところでありまして、その具体の勤務実態については把握をしていないところでございます。
  147. 林紀子

    ○林紀子君 文部科学省の方では把握をしていないということですけれども、私は、京都の教職員組合の報告、これがあるわけですけれども、ここでは非常勤の乱用というような状況で非常勤講師の種類というのがいろいろあるというんですね。がんばる先生支援講師、非常勤TT加配、定数活用非常勤講師、看護士、こんなふうにいろいろ種類があるわけです。その中の定数活用非常勤講師というのは、常勤の教員一人の週の勤務時間、四十時間ですね、それを定数一とカウントして、それを分解して分けて活用する。例えば十時間ずつを四人の講師で分けて持つと、そういうようなこともしている。また、定額講師というのは、報酬は正味時間でしか計算をされない。しかも、手当というのは一切支給されないし、一時金も支給されない。通勤手当は支給はしているけれども、一日から勤務した場合だけ支給して二日から勤務した人にはもうその月の交通費は支払いませんよと、そんなような状況もあるということなんですね。  しかも、これが非常に私はびっくりしたし重大な問題だと思うのは、青年教職員の半数が臨時教職員だということなんですね。ほかの分野でも今若者の非正規の雇用というのは大変大きな問題になっております。先ほど総額裁量制というお話ありましたけれども、これを取るともっとこのように非正規の雇用を加速させる、そういうことじゃないかと思うんですね。  そういうことでは、今大きな社会問題になっているこういう部分で、教員分野、公的な分野ですね、それでこういうことを加速させていくということが果たして許されることなのかどうか。ここは大臣にちょっとお答えをいただきたいと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  148. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) この非常勤の配置の問題は、実は地方がいわゆる教育を進める上で幅広い指導スタッフを整備したいと、そして、専門分野、得意分野を異にするいろんな方がいらっしゃる、それを大いに教育現場で活用したいんだということで、地域学校の実情に応じて柔軟な教職員の配置がしたいという求めがございまして、平成十三年度、制度を改正されまして、教員定数を非常勤講師の数に換算して国庫負担対象にしようということを図ったわけですね。これ、今回の総額裁量制によって更に自由度が高まるので、これまで以上に学校運営というのは私は柔軟性が増すと思います。  今御指摘の面、ある面では一部、本来常勤講師じゃなきゃいけない部分をどんどんどんどん非常勤講師にして何か効率を上げる、これは、学校経営というのはいわゆる株式会社の会社経営とは違うわけですから、やっぱり教育の質をどうやって確保するかということも大事であります。もちろん、働く人たちのことも十分考えなきゃいけません。  しかし、その具体的な配置に当たっては、やっぱりそうした教科の指導上の効果、あるいは学校運営全体に対する影響とか、教育上の必要に応じて各都道府県において正に適切な教員配置をしていただくということで、今日、正に地方自由度をそういう観点から増すということでございますから、これが余りにも行き過ぎて本来の、余りそれをやったら教育効果が上がらなくなると思うんですね、やっぱり限度があるんです。それをやっぱり必要性に応じておやりをいただく、それが正に地方自由度だと、こう考えておりますので、そういう意味で適正な配置がされると、このように私は考えておるわけであります。
  149. 林紀子

    ○林紀子君 兵庫県の教職員組合の実態調査というのも私は持っているわけですけれども、兵庫県では二〇〇一年度に小中学校に約百人の非常勤講師が配置されている。そのほとんどの人が契約をした勤務時間を超えて勤務している。ここでも残業があるわけですよね。そして、教育活動の悩みとして、連絡や打合せの時間が持てない、時間内だけのかかわりでは子供の心がつかめない、授業だけの非常勤職員というのは小学校では無理だ、こういう声も出ておりますし、また、高知の非常勤職員に対してのアンケートでは、身分が不安定であるという不安が一番大きいわけですけれども、それと同時に、子供との継続的な関係が結べない、四四%、情報等の引継ぎがなくて困る、保護者とのコミュニケーションが取りにくい。正に今、大臣がおっしゃったように、教育の部分で非常に大きな支障が出ているというこれは例ではないかというふうに思うわけですね。  ですから、これは、非常勤というのが増えるということは教職員の問題だけではなくて、正に子供たち立場から考えると教育の問題、立場から考えると大変大きな問題があるわけです。今大臣は、それは適切な形で行われるのではないかという話がありましたが、じゃ、それに対する何か歯止めというようなものがあるんでしょうか。やはり非常勤という身分ではなくて常勤で教員を増やす、ここのところをきっちり押さえていくということが必要ではないでしょうか。
  150. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) 私どもは、現在、第七次の定数改善計画を推し進めているわけでございまして、個に応じた指導、きめ細かな指導を図るための教職員定数確保していくと、こういった施策を一方では進めてまいりたいと思っておりますし、それから、やっぱりもちろん常勤ということもあるかとは思いますけれども、やはりきめ細かな教育指導を行っていく際に、各都道府県教育委員会の判断でいろんな方々に御参加をしていただいて、もちろん適切な学校運営をするということが前提になるわけでございますけれども、そういった中でそういった子供たちへのきめ細かな指導を工夫をしてやっていくと、こういったことが肝要ではないんだろうかと思っております。
  151. 林紀子

    ○林紀子君 国の制度に合わせて地方教員の雇用形態というのを決めているということだと思うんですね。その責任を果たすためにこの義務教育費国庫負担制度というのがあるというふうに私は思っております。  ですから、定数は決まっているけれども、先生の人数、自由にどうぞいいですよ、給料の方も御自由にどうぞ、こういう総額裁量制というのは、自由度自由度という言葉をいろいろおっしゃいましたし、今、局長のお答えの中にもありましたけれども、実態は国の義務教育に対する責任を放棄してしまうことではないか、こういうことではやはりこの義務教育国庫負担制度というのは守れないんじゃないかというふうに思うわけですね。  非常勤の問題に続いて、じゃ正規の教員の問題、どうなっているか。義務教育費国庫負担制度ということを論じることは教員給与の在り方をどうするか、こういうことだと思うんですね。現在の教職員の勤務の実態がどうなっているか、その実情をどのように把握しているか、お答えいただきたいと思います。
  152. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) これは前にも御答弁を申し上げたとおりでございますが、公立学校教員の勤務実態につきましては、服務監督権者である各教育委員会がその権限と責任においてこれを適切に管理すべきものと考えておるわけでございまして、現在、私ども、全国的な調査を行っていないところでございまして、その具体の勤務実態の状況につきましては把握をしていない、承知をしていないところでございます。
  153. 林紀子

    ○林紀子君 今お答えいただきましたが、非常勤の実態もつかんでいない、じゃ正規の教員の実態もつかんでいない、何にもつかんでいない、こういうことなんじゃないかと思うんですけれども。  それでは、教職員学校から帰っても持ち帰りで仕事をしている、こういうことは御存じでしょうか。
  154. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) そういう例があることは承知をいたしております。
  155. 林紀子

    ○林紀子君 どうしてこういうことをお聞きしたかといいますと、最近、堺市の小学校教諭の過労死認定を含めた裁判で判決が出ました。そして、その中で持ち帰り仕事も校務だと認定されたわけですね。ですから、校務ということであれば承知をしていて当然なんですが、じゃ具体的な中身がどうかというのはちょっとこれからお聞きしたいとも思うんですけれども。  これも組合の調査ですが、全教の二〇〇二年五月、一か月の残業時間というのが、小学校では平均八十三時間二十六分、中学校で九十九時間四十八分。休息時間も労基法の規定どおり取れるのはわずか四・八%の人たちです。土曜、日曜も出勤したり、持ち帰りで仕事をする。これでは、厚生労働省が通知をしました過労死、発症前の八十時間、百時間の時間外労働という過労死ラインで多くの先生たちが働いているという、こういう姿があるんじゃないかと思います。  こんな状況教育というのが本当に守れるものなのかどうなのか。大臣に、ちょっと通告はしておりませんでしたけれども、こういう過労死、非常に寸前というような状況があるということについてどういうふうにお考えになるか、お聞かせいただきたいと思います。
  156. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) この勤務の今の実態をお話しをいただきまして、学校の直接の担い手で教育の成否を握っておられる教職員の皆さん方がやっぱりこれは健康で意欲を持って教育に当たっていただく、これはやっぱり大事なことだと私も思っておりますから、教職員の管理が適切に行われる、これは大事なことだと、こう思っております。  そういう意味で、今後とも適正な勤務管理、時間管理というものが行われなきゃならぬわけでありますから、各都道府県においては、さきのああいう過労死のケース等が認定されたようなケースについては通達を発して、こういう点についてはやっぱり適切な管理がされるように各都道府県教育委員会は適切な指導をお願いしたいということを言っておるわけでございまして、どうしても一部の教員に過剰な負担が掛かるようなケースであると、やっぱり校務分掌といいますか、そういうところが問題があるんじゃないかとか、会議見直し等によって効率的な学校運営をやっていただく。これはやっぱり校長先生、お考えをいただかなきゃいけない課題だと、私はそういうふうに思いまして、そういう痛ましいことがやっぱり起きてはならぬと、こう思っております。  教職員の皆さんが使命感を抱いて職務に専念をしていただく、しかしそのために過労になってしまうということでは、そのときは夢中でそれでいいかもしらぬけれども、本来の教育が、子供たちにとって教育が十分できないということが起きるわけでありますから、そこのところはやっぱり学校運営の中できちっと対応を考えていただかなきゃいけない課題であろうと、このように思います。
  157. 林紀子

    ○林紀子君 今、大臣お話の中にも一部の人に偏らないようにと、そういうこともお話ありましたけれども、この過労死認定をされた方の働き方というのは本当にびっくりするような状況なわけなんですね。  これは裁判でもう裁判長により認定されたところですので、どういう状況だったかというのをちょっと引用したいと思うんですけれども、この大阪の堺市で三十九人のクラスを受け持っていたわけですけれども、五年二組というのを受け持っていたということなんですが、そのうちの二十七人、約七割が要配慮児童であったということなんですね。特に指導困難な生徒が、児童が四人在籍していた。一人は知的障害があって情緒不安定で養護学校にも在籍していた。母親から虐待を受けて登校拒否ぎみであって、登校しても教室に入れない、ささいなことで泣きわめいて教室を飛び出す。だけれども、この先生は何とかこの子ともコミュニケーションを図りたいと努力をしてきた。また、養父が暴力団関係者で、その対応に振り回されて、そしてその子の母親は情緒不安定でこの先生につらく当たって、児童の問題行動も顕著になった。こういうような例が四人もいるわけですね。  そして、それ以外に校務分掌ということで、保健主事を担当している、それから体育のところでも責任者を引き受けて、体育会の運営というのもやらなくちゃいけない。そのほか、通常の校務のほかに、夏休み中の児童の作品点検、添削、各種コンクールへの出品作品選考、こういうことが次々と重なる、多岐にわたる校務が重なっていたというふうに言われているわけですね。そして、先ほどの持ち帰りの業務が続いて、この先生が倒れる前一か月間の時間外労働時間は合計で百時間五十分を超える。だから、あらゆる面でこの先生に本当に大きな負担が掛かって、とうとう命を失うような事態になってしまったわけです。  しかし、更に深刻なことは、この先生だけに限っているのか。それがそうじゃないというのは、先ほどアンケートの結果もお知らせをいたしましたけれども、過労死の問題については、過労死の不安を感じ、人ごとではないと思っている人が四九・五%もいる、過労死の現実の不安というのを持っている人は五・三%、合計五四・八%の先生が、自分は過労死になるんじゃないかと思っている。先ほど全教のアンケートの結果ですけれども、こういう状況になっているわけですね。  ですから、先ほど各地方自治体にきちんとやりなさいということを言っているというお話だったんですけれども、しかし、こういうふうな教職員の健康というものは、これは以前、中曽根委員大臣のときに私に答えていただいたところなんですが、「教職員が健康で安全な職場環境のもとで職務を遂行できるようにすることは、教職員自身にとりましても大変重要なことでございます。」と、「また、学校教育を円滑に実施する上でも極めて大切なこと」でございますと、こういうふうにおっしゃっていたわけですから、本当にそうである以上、今私は労働組合のアンケートをお知らせをしたんですけれども、文部科学省が本当にこういう問題というのがどうなっているのかというのを、まず実情をつかむ必要があるんじゃないでしょうか。局長で結構ですからお答えいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  158. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  確かに今、全国で公立学校教職員九十万人いるわけでございまして、そのすべてについて個々の勤務状況を国が把握をするということは技術的、物理的にもなかなか難しい課題があるわけでございまして、私ども、これまでも適正な勤務時間管理が行われるよう都道府県教育委員会に対しまして指導をしてきたわけでございますけれども、やはり校務分掌等に関して一部の教員にやはり過重な負担が掛かるようなことがないようにしたり、あるいはいろんな会議を見直すでありますとか、いろんなことをまた努力をしていかなければならないかと思っておりますし、また、委員指摘のように、こういった厚生労働省の通知もあるわけでございまして、更にその趣旨を会議等を通じまして徹底してまいりたいと思っております。
  159. 林紀子

    ○林紀子君 やはり会議で徹底するじゃなくて、実態がどうなのかということをきちんとつかむ、その上でそういうこともやるべきじゃないかと思うんですね。  また、大臣にお伺いしたいんですけれども、この義務教育国庫負担の問題については、やはり教育論に引き戻して論議をすべきだというのをもう前回から何回も聞いているわけですね。中教審には論議をお願いしているということなんですけれども、それはそれで一つ必要なんですけれども、今、実際にこの非常勤の状況も、それから教員状況もどうなっているのかというのをまず文部科学省自体がきちんと把握をする、実態を。それが一つ、この義務教育費国庫負担守らなくちゃいけないというその一つの大きな実例、実証になるんだと思うんですね。  今日、午前中、参考人に来ていただきましてお話を聞きました。そのときにおっしゃったのはコンセンサスを得るというお話だったんですよね。私は、コンセンサスといったら国民世論というふうに思っていたんですが、教職員の中のコンセンサスだというお話もあったんですが、しかし、加戸参考人などは、今回こういう問題が出てきたことは、国民すべてに義務教育費国庫負担というその重要さを大きく論議をして知らせていく、コンセンサスを得るいい機会だというふうにおっしゃったわけですよ。  そういう意味では、中教審で論議をするだけではなくて、もっと実態をきちんと把握をして、だからこういう実態なんだから、義務教育費国庫負担というのは本当に守らなかったら、これがもし一般交付税なんかになっていったらもっともっと非常勤は増えるということになるでしょうし、先生たちの勤務状況というのももっとひどくなる、そしてそのことは結局子供たちに大きく跳ね返ってくる。日本の将来の教育というものを本当に大変な状況に追いやっていくんだ、そういう観点できちんとこれを調べる必要があるというふうに私は思うわけですね。  その点で是非、コンセンサスを広げていく、そのことを、中教審にお任せよだけではなくて、文部科学省自身がもっと先頭に立ってやってもいいじゃないですか。そのことできちんと調査もする、実態も調べる、それを明らかにしていく、そのことを是非やるべきだということを申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
  160. 河村建夫

    ○国務大臣(河村建夫君) 公立学校教職員の勤務状況がいかにあるべきかということ、どのような状況になっているかというこの問題につきましては、さっき局長からも答弁申し上げたんでありますが、一義的には服務監督管理者という形で各教育委員会がその権限と責任において管理する立場にありますから、これは実態は県の教育委員会、それぞれの教育委員会責任を持ってこれを管理していただかなきゃならぬわけでありまして、これを国の方がさっき申し上げた九十万人になんなんとする全体を掌握してというわけにはなかなかいかない部分がありますから。  しかし、現実に、先ほどからの議論にありますように、やっぱり子供たち教育する段階において、今の教育環境、また現実に昔の我々の時代と違った家庭環境、いろんな面からいって確かに指導が非常に難しくなっている。そして、当然、数学とか算数とか理科とかいうのには学力に差がある。そうなると、これは当然きめ細かな教育をやっていかなきゃいけない。そこには加配が必要になってくる。習熟度別が必要になってくる。教員確保というのは非常に必要になってくるわけですから、そういう視点は、これは我々これまでも持ってきておりますし、単なる子供の、先ほど財務当局の答弁の中にありましたけれども、子供の数が減るんだから当然教職員の数が減るんだという単純な考え方、単なる財政論的な机上の考え方だけで今教育が健全にやれるかどうか、このことは教育論としてきちっと我々は対応していかなきゃいかぬと思います。  その中には、今御指摘があったような勤務実態にもこういう問題も出ておるということは当然加味しなきゃいけない課題だと。それは過重になってくればそういう問題が出てくる。指導困難のクラス、これは本当に指導困難ということが認定されれば当然そこは加配の対象になるんでありましょうが、このケースの場合にはそれがちょうど、何というんですか、その認定のできないぎりぎりのところであったということがその方にとっては大変結果的に不幸なことになったと思いますが、そういうことを考えれば、またそういう加配も必要になってくるわけですね。補助教員も必要になってくる。  そういう実態というのは、我々、教育委員会の連携の中でつかみながら、理論構成をしながら、義務教育国庫負担、この義務教育がいかに重要であるかということの理論といいますか理論立て、持説の中にきちっと入れていきながら、今、林委員が御指摘になった点も踏まえながら、この義務教育国庫負担制度堅持していく、その方向の考え方の中にしっかり取り組んでいっていきたい、まいりたいと、このように思っております。
  161. 林紀子

    ○林紀子君 義務教育費国庫負担制度、本当にもうこれは絶対給与の部分守り抜くんだというお話ずっとありまして、私たちもそうだと、こう応援をするという気持ちなんですけれども、でも、この実情調査するぐらい、確かに大変なことですけれども、これ守り抜くためにこんなくらいのことをやれないで、本当に文部科学省は守る気なのかどうなのかということすら私は言いたくなってしまいます。だからこそ、義務教育国庫負担守るんじゃなくて省益守るんだ、さっきマスコミがそんなこと言っているというお話ありましたけれども、今の態度だとそんなこと言われてもそうかなと思っちゃうんですよね。  是非、この義務教育費国庫負担制度守るために実情もきちんと調査をしてほしい、そのことを重ねて申し上げまして、私の質問終わります。
  162. 山本正和

    山本正和君 今日は、総務省も、それから財務省も来ておったんですけれども、山本香苗委員の御質問の中で答弁聞いておりまして、これやっぱり違うなと、明らかに文部省の受け止め方と違うニュアンスで受け止めていると。ですから、大変私はまた心配な気がしてなりません。  ただ、ここでちょっと大臣に、また局長にも聞いておいていただきたいんですけれども、文教委員会が台東区の中学校と、最近では、それから愛知県の小学校をみんなで視察をいたしました。すばらしい実践です。それで、台東区の中学校では校区外の者までが来て学びたいと言ってきていると。愛知県の小学校も本当に子供たちが生き生きとして、高学年、低学年が分かれて、給食、行ったんですけれども。  ところが、私も実はもう少しいい例がないかと思って三重県で調べてみた。そうしたら、三重県のいなべの中学校ですけれども、五年ほど前に大荒れに荒れて、もう三年生になったらみんな、何と言うんだったかな、これは、書いてあったな、靴下のずうだら、何と言うかな、あれは。忘れたけれども、あれを履くのが三年生の習慣であると。学校の中では、もう荒れていて、大きな声で言うのが当然だし、走り回る、先生の言うことは一切聞かないと。それを五年間掛かって、一生懸命になって、生徒会をもう一遍やらすとか学級委員会やらすとかして教師が取り組んで、今はやっとおとなしくなりましたと。おとなしくなっただけならいいけれども、みんなで朝、始業時から三十分間は朝読書会というのをやると。みんなが声上げて読むんですね。それから、生徒会も本当に良くなってきたというレポートがここにあるんですけれども。  そういうふうに、全国の公立学校の小中の教員が、義務教育教員が一生懸命になって働いている姿があるんですけれども、こういういいことは全然新聞には載らないんですね。それで、もう公立学校は駄目だ、駄目、駄目ばかり言われているですね。しかし、私が言いますと、何だったらあれだけれども、我々国会議員も、中に悪いことをしている一人おったら、国会議員というのはけしからぬと、こうやられるのと一緒ですからね。だから、これは教員が何かあると大変な事件が起こる。警察でもそうですよね。その悪い潮流というのは、だれでもおかしな気持ちがありますから、のぞき根性で、マスコミの、これ取り上げたら視聴率上がるからね。いいことは絶対に出さないわけでしょう。  しかし、私は思うんだけれども、日本じゅうの圧倒的多数の義務教育学校で働いている教職員はまじめにやっていると思うんですよ。しかし、そのやっているのに、なぜやっているかといったら、私はこう思うんです。それは自分の村の子供だ、自分の町の子供だと言いながら、おれたちは日本子供を育てているんだと、それがあるからみんな頑張っているんですよ。大臣がこの委員会で言われたですよね、国の責任ということを言われた。それにはやっぱり、最低日本人として知らなきゃいけない最低の基準というもので学習指導要領があると。あるいは設備があると。しかし、その中で、この教員に対して給与水準を確保するというためのこれがあるんだと、義務教育国庫負担があるんだということを言っておられる。だから、私は言いたいのは、これは正直言って、総務省も財務省も分かるはずないんですよ。義務教育というものの位置付けが分かっていないから、ああいう話になる。  それからもう一つ、私は非常に危険だと思っているのは、全額、全部税源保障したら義務教育国庫負担やめてもいいじゃないかと、こんな議論があるんだ。これも教育というものの根幹についての議論がない議論ですよ。  アメリカがそうだからと言われる。アメリカは違うんですよ。たくさんの人種が混ざっている、非常に広大な地域ですよね。しかも、国のよって立つゆえんが違うんだ。日本の国は、明治維新以来、全部一つの国としてやってきている。そこに我が国の特徴があるでしょう。だから文部省があるんだと。それでなかったら、文部省要らぬですよ。フランスは文化省だったかな、忘れたけれども。だから、そういう意味でいったら、我が国の教育の根幹は義務教育だと。これを国が責任を持っているんだと。その責任を持っておる一番先頭部隊が文部省なんですよ。文部省が腰砕けたらすぐやられちゃう、こんなものは。  私はこんなことは余り言いたくないけれども、もう七十代の大分私に近いような連中で、他の省で局長さんまでした偉い人ですよ、みんな。何言っているかといったら、文部省も役所のうちですからなんて、こういうことを言われた、若いときにね。何、きさまって大げんかしてやったですよ。そういう目で見られておったら、負けるですよ、これは、文部省は。私は、ここは本気になって文部省はけんかしなきゃいけない。お国のためですよ。日本の国のために闘い抜かなきゃいけない時期だと私は思っておるんです、ここのところは。  だから、本当に義務教育で一生懸命頑張っている教職員の実態は、先ほど林さんから話があったけれども、別に文部省が直接やらぬでも、都道府県に言わせて調査させればいいんですよ。市町村にさせればいい、そういう指導をして。それを集めて堂々と闘わなきゃいかぬですよ。公教育は、過去、文部省が、あれは明治以来こうやってきているから、義務教育費国庫負担があるから守っているんですよと。それをやらぬことには、これは勝てませんよ、こんなの。さっきの話だって、一般財源化しますよと、今までと同じように給料払えばいいんでしょうと、そんなものじゃないんですよ。国に責任を負う教育なんだね。そこが教育論私は欠けておると一番心配しておるんだ。  だから、これは私も、前総務大臣だった片山さんと近々会うから、一遍徹底的に言うつもりでおるけれども、本当に大切なことは、我が国の教育はどうなんだと、この今までの、だれが責任を持ってこうしてきたんだというね。それを文部省が責任を持って、大臣を先頭にして、本当に今は大臣、副大臣、政務官、皆さんすばらしい人ばっかりおるし、スタッフも皆いいですよね。全力を挙げてこれ闘い抜いていただきたいと私は思うんです、ここは。  もう、文教委員会は皆、恐らく必死の勢いで応援団ですかね、これ。何を一体、今時分のあの二人の局長、局長じゃなくて、役所の担当の人だったですか、答弁聞いておって、何にも教育論がないなと。法律の条項の解釈と三大臣の文書をこう読みますというだけの話ですよ。それじゃいかぬのですよ。やっぱりそれを何とか直さなきゃいけない。これが、私は、大臣の本当に政治家として今から頑張っていただきたい、私からのお願いですし、それから、本当に、文部大臣やられた方々はみんなよく分かっているはずなんですね。何としてもここはもう頑張って、それから役所も一歩も引かずに、これは交渉するのはだれがやるのか知らぬけれども、官房長がやるのか局長がやるのか分からぬけれども、本気になってけんかしなきゃいかぬですよ、つかみ合いして、殴り合っても構わぬから。それぐらいの気持ちでけんかしてもらわなきゃ私はいかぬと思う。このことを一つ要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  163. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  164. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 私は、民主党・新緑風会を代表して、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論を行います。  反対の第一の理由は、本法案が国と地方の権限や財源の在り方を明らかにせず、さらには負担金と補助金との違いをも無視して、国の財源負担軽減のためにやみくもに地方負担を押し付けるという、何ら理念なき場当たり的なやり方を昨年と同様に繰り返していることであります。  この法案は、昨年の共済費長期給付と公務災害補償基金負担に要する経費に引き続き、義務教育教職員退職手当児童手当に係る部分を国庫負担対象から外し、一般財源化するものであります。今回の法案改正が義務教育改革にどれだけ資するのかといった教育上の観点からの検証、検討が全くないままに一般財源化のみが進展することに大いなる懸念を抱くものであります。  反対の第二の理由は、一般の立法事例からも極めて異例な附則第二条の存在であります。政府がこの条項をあえて盛り込んだことは、近い将来、義務教育国庫負担費の一般財源化を強行するための布石としか言いようがなく、そうした政府の意図を断じて容認するわけにはまいりません。  反対の第三の理由は、本法案が昨年の義務教育費国庫負担法等改正案採決の際に行われた参議院文教科学委員会附帯決議に違反しているからであります。  すなわち、昨年、本委員会は、「義務教育は、憲法の要請により、国民として必要な基礎的資質を培うものであり、今後とも、国の責任において、その水準の維持向上を図るとともに、教育機会均等を損なうことのないようにすること。」と決議をいたしましたが、本改正案はその意向に全く逆行しています。また、義務教育については、国はその責任を適切に果たすため、地方財政運営に支障を生じることのないように適切な措置を講ずることや、財源措置は次年度以降も地方財政を圧迫しないように適切な措置を講ずることなどを決議をいたしましたが、本改正案は、将来急激な負担増が予想される退職金などを地方に一方的に押し付けるものであることなど、明らかに附帯決議違反となっています。我々文教科学委員会としては、国会の威信に懸けても附帯決議違反の本法案を可決するわけにはまいりません。  我々民主党は、義務教育の重要性にかんがみ、教育分野については国が最低基準を責任を持って保障した上で、地域主権、現場尊重の教育改革、とりわけ現場のニーズを的確に反映した教育の多様化などを進めていくことが必要と考えております。  そうした観点から、我々は、政府に対して、義務教育政策の立案推進に当たって次の点について十分な配慮を求めます。  第一に、義務教育憲法の要請により国民として必要な基礎的資質を培うものであり、今後とも国の責任においてその水準の維持向上を図るとともに、教育機会均等を損なうことのないよう、義務教育費を国が責任を持って確保するとの基本方針を堅持すること。  第二に、義務教育については、国はその責任を適切に果たすため、地方自主性の拡大という視点に配慮しつつ、地方財政運営に支障を生じることのないよう適切な措置を講ずること。  第三に、本法律案に係る地方への財源措置税源移譲までの暫定措置となっているが、将来にわたり地方財政に支障が生じることのないよう適切な措置を講ずること。  第四に、学校栄養職員、事務職員は学校における基幹職員であり、その果たす役割の重要性にかんがみ、今後ともこれらの職員に係る経費を国が責任を持って確保するとの基本方針を堅持すること。  第五に、義務教育学校教職員給与については、学校教育の水準の維持向上のため、義務教育学校教育職員の人材確保に関する特別措置法を今後とも堅持し、同法の趣旨が損なわれることがないよう十分配慮することの五点であります。  真に子供たちの未来に資する義務教育を実現するためには、国が責任を持って全国津々浦々の教育現場が必要とする財源確保し続けることが極めて重要であります。  その観点から、本法案の成立は我が国の教育政策史上重大な禍根を残すものであることを強く指摘して、私の反対討論を終わります。  以上でございます。
  165. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 私は、日本共産党を代表して、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。  この法律案そのものが、小泉内閣三位一体改革の一環として出されたものであります。小泉内閣は、義務教育費国庫負担制度廃止を検討し、来年度は大幅な削減をしようとしております。二〇〇三年度の改悪によって、公務災害補償基金負担金十七億円、共済費長期給付二千百六十七億円が既に一般財源化されており、さらに今回その上に給与費と言える退職手当児童手当一般財源化するのは、国としての責任を放棄するものであり、許せるものではありません。  法律案にはありませんが、文部科学省は、義務教育費国庫負担法の政令の改定で総額裁量制の導入を図ろうとしています。非常勤講師などによる少人数授業の実施など、教職員の待遇の後退につながるものであります。  しかも、法律案の附則二条で、平成十八年度末、二〇〇六年度末までの検討結果に基づいて所要の措置を取るとしており、三位一体改革により、教員等に要する経費負担の在り方について、この間の委員会審議や参考人質疑でも明らかなように、いわゆる給与・諸手当、事務職員、栄養職員にかかわる経費に手を入れ、義務教育費国庫負担制度そのものを危うくするものであります。  義務教育費国庫負担制度は、財政力のない市町村に住んでいても全国と同じ条件で教育が受けられるように、教職員給与など義務教育に係る費用を国と県が半分ずつ負担することにしたものです。憲法に明記された、国民が義務教育を受ける権利を国が保障するための根幹を成す制度にほかならず、それを投げ捨てることは許されません。  既に、全国知事会全国市長会など自治体関係団体がこぞって反対を表明し、五百を超える地方議会で反対決議が上がっています。義務教育費国庫負担制度削減は直ちに中止し、教材費を補助の対象に戻すなど、その拡充を求めて、反対討論を終わります。
  166. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  167. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十三分散会