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2004-03-11 第159回国会 参議院 農林水産委員会 第2号
公式Web版
会議録情報
0
平成
十六年三月十一日(木曜日) 午後零時二十分開会 ─────────────
委員
の
異動
二月三日
辞任
補欠選任
小林美恵子
君
市田
忠義
君 二月二十五日
辞任
補欠選任
松山
政司
君
関口
昌一
君 二月二十六日
辞任
補欠選任
関口
昌一
君
松山
政司
君 ─────────────
出席者
は左のとおり。
委員長
岩永
浩美
君 理 事
加治屋義人
君
段本
幸男君
常田
享詳君
和田ひろ子
君 紙 智子君 委 員
市川
一朗
君 太田 豊秋君 小
斉平敏文
君
服部三男雄
君
松山
政司
君
三浦
一水君 小川 勝也君 信田 邦雄君
羽田雄一郎
君
千葉
国男君
福本
潤一
君
市田
忠義
君
岩本
荘太君
中村
敦夫君
国務大臣
農林水産大臣
亀井
善之
君 副
大臣
農林水産
副
大臣
市川
一朗
君
大臣政務官
農林水産大臣政
務官
福本
潤一
君
事務局側
常任委員会専門
員 高野
浩臣
君 ───────────── 本日の
会議
に付した案件 ○
農林水産
に関する
調査
(
平成
十六年度の
農林水産行政
の
基本施策
に関 する件) (
派遣委員
の
報告
) ─────────────
岩永浩美
1
○
委員長
(
岩永浩美
君) ただいまから
農林水産委員会
を開会いたします。
委員
の
異動
について御
報告
をいたします。 去る二月三日、
小林美恵子
君が
委員
を
辞任
され、その
補欠
として
市田忠義
君が
選任
をされました。 ─────────────
岩永浩美
2
○
委員長
(
岩永浩美
君)
農林水産
に関する
調査
を議題といたします。
平成
十六年度の
農林水産行政
の
基本施策
について
農林水産大臣
から
所信
を聴取いたします。
亀井農林水産大臣
。
亀井善之
3
○
国務大臣
(
亀井善之
君)
農林水産委員会
の開催に当たりまして、私の
所信
の
一端
を申し上げます。 昨年四月に
農林水産大臣
に就任して以来、
農林水産分野
における
構造改革
を進め、
消費者
、
生活者
の
視点
に立って、
国民
への安全で
安心
な
食料
の
安定供給
や
食料自給率
の
向上
を
実現
すべく取り組んでまいりました。 今後とも、生命をはぐくみ、
自然環境
を
保全
し、
文化
を形作る
食料
、
農林水産業
、
農山漁村
を力強く支える
農林水産行政
の
展開
に向け、
食料
・
農業
・
農村基本法
、
森林
・
林業基本法
、
水産基本法
に基づき、
各般
の
課題
に着実に対応してまいります。 昨年は、地震、豪雨、
冷害
など災害が多発した年でした。被災された
関係者
の方々に、改めて心からお見舞い申し上げます。特に、
農業分野
では、低温と
日照不足
によって、北海道、東北などでは
水稲等
で十年来の
冷害
となりました。お米の
作況指数
は九〇となりましたが、今回は、
緊急輸入
を実施した
平成
五年のときとは異なり、官民の
備蓄等
を基に
安定供給
が図られているところであります。引き続き
被災農家
への
支援
を行うとともに、
価格動向
の注視、
卸売
・
小売段階
での
品質表示
の監視、指導も徹底しながら適正な
販売
が
確保
されるよう努めてまいります。 まず、現在の
農政
の
最大
の
課題
であります新たな
食料
・
農業
・
農村基本計画
の策定に向けた
取組
についてであります。
食料
、
農業
及び
農村
に関する
政策
については、
平成
十一年に制定された
食料
・
農業
・
農村基本法
と、その
理念
を具体化し
平成
十二年に閣議決定された
食料
・
農業
・
農村基本計画
に即して、
各般
の
施策
を実施してまいりました。その後、
BSE
の
発生
など食と農に関する様々な問題が顕在化する中で、食の安全、
安心
の
確保
に関する
施策
の
強化
や
米政策
の
抜本改革
など、
農政
の
改革
を進めているところであります。 しかしながら、
消費者
の食の安全、
安心
の
確保
に対する
関心
が一層高まっている一方で、
農業
、
農村
の現状は、
構造改革
が立ち後れ、
高齢化
、
耕作放棄地
の増加が進むなど大きく変化しております。このため、
国民
の
皆様
の期待にこたえられる
農業
、
農村
の
実現
に向けて
農政改革
を一層加速化していくことが
国民
の要請であると考えております。 こうしたことから、昨年八月から着手した
現行基本計画
の
見直し
の中では、
各般
の
施策
の徹底的な検証と
見直し
を行いながら、
消費者
、
生活者
の
視点
に立った
施策
を
強化
するとともに、
農業
の
構造改革
に関して次のような三つの事項を重点的に検討することとしております。 すなわち、第一には、
品目別
に行っている
価格
・
経営安定政策
から、諸外国で行われている直接支払も視野に入れつつ、
意欲
と
能力
のある
担い手
の
経営
を
支援
する品目横断的な
政策
へ移行することであります。第二には、望ましい
農業構造
、
土地利用
を
実現
するための
担い手
・
農地制度
の
改革
を進めることであります。第三には、
環境保全
を重視した
施策
を一層
推進
していくとともに、
食料安全保障
や
多面的機能
の
発揮
のために不可欠な
農地
、
水等
の
保全
のための
政策
を
確立
することであります。 昨年十二月九日には、
食料
・
農業
・
農村政策審議会
にこの
基本計画
の変更について諮問を行ったところであります。今後、同
審議会企画部会等
において、
国民
に開かれた
透明性
のある議論を進め、
国民
の
皆様
の参画と
理解
、納得の下、
平成
十七年三月に新たな
基本計画
に結実させてまいります。それまでの間にも、本年の夏ごろには
審議会
の
中間論点整理
をいただき、できるものから十七年度
予算概算要求
や
制度改正
に反映していくなど、より一層
スピード感
を持った
改革
を
推進
してまいります。
農政改革
に先行して本年から本格的にスタートする
米政策
の
改革
については、
消費者重視
、
市場重視
の考え方を
基本
に、各
地域
で売れる
米作り
に取り組んでいただくことが重要であります。このため、
米作り
の本来あるべき姿の
実現
に向け、
産地づくり対策
や
担い手経営安定対策
など新たな
制度
を創設したところであり、
地域
の特色や発想を活かした
産地づくり
や
担い手
の
明確化
、
育成
などを
支援
し、
水田農業
の
構造改革
を
推進
してまいります。 また、
米政策
の
改革
にとどまらず、
意欲
と
能力
のある
担い手
が大宗を担う
農業構造
の
確立
に取り組んでまいります。 具体的には、
施策
の一層の
集中化
、
重点化
を進め、
農地
の
利用集積
や
経営
の
多角化
、
複合化等
の
取組
を加速化してまいります。あわせて、これを支える
人材確保
に向け、「
農林業
をやってみよう」プログラムを踏まえ、
新規就農対策
を一層充実してまいります。また、
農協
については、
農業者
、
消費者
に
最大
のメリットや満足を
提供
できるよう、
系統
自らが
経済事業等
の
抜本改革
を進めていくよう
支援
していきます。
農業委員会系統
や
農業改良普及組織
についても、
事業
の
効率化
や活動の
重点化等
に向け、
改革
を促していきます。加えて、
構造改革
の
基礎
となる
生産基盤
の
整備
を進めるとともに、
技術開発
や
研究開発
を重視し、
イネゲノム研究
の
成果
の
早期実用化等
のための
取組
を
推進
してまいります。 こうした
取組
の
一環
として、
就農形態
の
多様化
に対応した
就農支援資金
の
貸付対象
の拡充、
農協
の
経済事業等
の
機能
の十全な
発揮
、
農業委員会
の設置に係る市町村の裁量の
拡大
や
業務運営
の
効率化
、
農業者
の高度で多様な
ニーズ
に対応できる
普及事業
の
展開等
に向けた
所要
の
制度改正
についても進めてまいります。 また、
農林水産業
を守りから攻めへと転換することが重要であります。 近年、
アジア諸国
の
経済発展
に伴う
所得向上等
を踏まえ、高
品質
な
国産農林水産物
や
食品
の
輸出機会
の
拡大
を図るとともに、
海外ニーズ
にも対応する
産地
の
体制整備等
を総合的に
支援
する
体制
の
確立
に努めてまいります。 さらに、
環境保全
を重視する
農林水産業
への移行に向けて、昨年末に決定した
農林水産環境政策
の
基本方針
に即して、健全な水、大気、
物質循環
の
維持増進
と豊かな
自然環境
の
保全
、
形成
のための
施策
を
展開
してまいります。堆肥を
利用
した
土づくり
などの
取組
や
畜産環境対策
の
促進
などにも意を用いてまいります。 次に、食の安全と
安心
の
確保
についてであります。 食の安全と
安心
の
確保
につきましては、
国民
の
健康保護
を第一に、
農場
から食卓までの全行程において、
食品
の
安全性
の
確保
のための
措置
を的確に講ずることが極めて重要であります。 昨年、
食品安全基本法
が制定され、
食品安全委員会
が発足しました。これに併せ、
消費
・
安全局
や
地方農政事務所
を設置するなど
農林水産省
の
組織体制
を
整備
するとともに、農薬、肥料、
飼料
などの
生産資材
の
適正使用
に向けた
制度
を充実しました。今後は、
国民
の
皆様
へのより的確な
情報提供
と
意見交換
に努めつつ、農産物の
安全性
の
確保
や
家畜防疫体制
の
強化
を行ってまいります。
信頼性
の高い
食品
の
トレーサビリティーシステム
の
開発
、
実用化
を進めるとともに、分かりやすく適正な
食品表示等
を徹底してまいります。また、
国民
一人一人が食について考え、判断するための
食育
についても、更に力強い
国民運動
として
発展
を期してまいります。 また、
無線ICタグ
などの
情報技術
を積極的に活用した
食品流通
の
普及
や
卸売市場
の
改革
、
国内農業
と
連携
した
地域ブランド
の
確立
などにより、
消費者ニーズ
の
多様化
、
高度化
に的確に対応した
食品産業
の
展開
に取り組んでまいります。 こうした
取組
の
一環
として、
卸売市場
の
取引規制
の
緩和
及び適正な
品質管理
の
推進
や再編の
円滑化
、
特定農産加工業
の
経営改善
の
促進等
に向けた
所要
の
制度改正
についても進めてまいります。 昨年末に
米国
において
BSE
が
発生
し、
我が国
は直ちに
米国
からの
牛肉輸入
を停止いたしました。この問題は、食の安全、
安心
に関する重要な問題であり、
国民
、
消費者
の安全、
安心
の
確保
を第一に考えなければなりません。
農林水産省
といたしましては、
食品安全委員会
や
厚生労働省
との
連携
を密にし、
国民
、
消費者
の
意見
を伺いながら、適切に対処してまいります。 また、本年に入って、
国内
で高
病原性鳥インフルエンザ
の
発生
が相次いでおります。
国内
で
発生
が確認された場合には、
蔓延
を
防止
するため、
家畜伝染病予防法
及び
防疫マニュアル
に基づき、
発生農場
における殺処分や
周辺農場
における
移動制限
を的確に実施しているところであります。山口県については、
防疫措置
を完了し、
移動制限区域
内の
清浄性
を確認されたことから、
移動制限措置
を解除しております。また、大分県についても、本日午前零時をもって
移動制限
を解除しております。しかしながら、
京都
府では、
養鶏業者
が
通報
を行わず、
大量死発生
後も生きた
鶏等
の
出荷
を続け、
出荷先
でも感染が確認される
事態
となりました。このため、私は、現地を視察し、
蔓延防止対策
を一層
強化
するため、
早期発見
、
早期通報
の
体制
を
確立
すること、
行政
の
連携
を
強化
すること、
移動制限命令
に伴う問題を解決すること、
風評被害
の
防止
のため
食品
としての
安全性
の
明確化
を図ることを指示したところであります。今後とも、
厚生労働省
、
食品安全委員会等
の
関係
府省と密接に
連携
を取り、万全の
対策
を講じてまいる考えであります。 次に、
農山漁村政策
についてであります。
農林漁業生産
の
基盤
である
農山漁村
については、
水源涵養
、
環境保全
、景観の
形成
、
文化
の
伝承等
の重要な
役割
を果たしております。このため、
地域
の個性を生かし、多様な主体の
参加
による風格ある美しい
農山漁村づくり
や
観光立
村の
実現
に向けた
振興施策
を強力に
展開
していきます。また、都市と
農山漁村
の共生・対流に向けた
国民
的な
運動
を一層
推進
するとともに、
バイオマス
・
ニッポン総合戦略
に沿って、トウモロコシなどから作られた
バイオマス
プラスチックを使った食器の
利用実験
を進めるなど、
バイオマス利活用
の
促進
を図ってまいります。 次に、
WTO
、
FTA交渉
への対応であります。
WTO農業交渉
については、
我が国
は、多様な
農業
の共存を
基本理念
とし、
農業
の持つ
多面的機能
を反映した
バランス
の取れたルールの
確立
を目指して
交渉
に取り組んでまいりました。このような中、昨年九月、
メキシコ
の
カン
クンで行われた
WTO閣僚会議
では、他
分野
を含めた
途上国
と
先進国
との対立が解消されず、残念ながら
合意
のないまま終了したところであります。 今後は、
カン
クン
閣僚会議
において配付された
デルベス議長案
を
出発点
として議論し、
枠組み合意
を目指すこととされております。
デルベス議長案
については、
重要品目
に対する一定の配慮が見られるものの、
上限関税
や
関税割当て等
について
問題点
の是正を図る必要があると考えております。引き続き、スイス、ノルウェー、
韓国等
の
関心
を共有する
国々
と
連携
し、
途上国
にも働き掛けを行いながら、
我が国提案
が
交渉
結果に反映されるよう
全力
で
交渉
に取り組んでまいります。 また、
地球規模
の環境問題や
有限天然資源
の
持続的利用等
を目指す林野・
水産分野
についても、
カン
クン
閣僚会議
において、主要な
論点
について
途上国
と
先進国
が対立し、解決が実質的に先送りされているところであります。
我が国
としては、
分野別関税撤廃
について
林水産物
が
対象分野
に含まれることのないよう、また、
我が国
の
林水産物
の
事情
に配慮できる
関税削減方式
となるよう、引き続き
最大
限の
努力
を続けてまいります。
FTA
については、現在、
メキシコ
に続き、
韓国
、マレーシア、フィリピン、タイとの間で
政府間交渉
を進めているところであります。これらの
国々
は、それぞれ、
我が国農林水産業
との
関連度合い
や
貿易事情
などが異なっております。
農林水産省
内に設置した
FTA本部
を中心に
関係省庁
とも
連携
しつつ、各国の
事情等
についてできる限りの
情報
の収集を行い、
我が国
の
食料安全保障
や
農林水産業
の
構造改革
の
進展具合
にも十分配慮しながら、積極的かつ戦略的に対応してまいります。 次に、
森林
の有する
多面的機能
の
発揮
、
林業
の持続的かつ健全な
発展
、林産物の
供給
及び
利用
の
確保
を
基本
とする
森林
・
林業政策
の
展開
についてであります。
地球温暖化防止
に向けて、
京都議定書
で
我が国
が約束した
温室効果ガス
の
削減目標
を達成するため、
地球温暖化防止森林吸収源
十カ年
対策
に基づき、緑の
雇用等
による
担い手
の
育成
を図りつつ、多様で健全な
森林
の
整備
、
保全
を
推進
してまいります。さらに、
地域材
の
利用
や
木質バイオマス
の
利活用
の
促進
、
森林ボランティア等
による
国民参加
の
森林づくり
の
推進等
に積極的に取り組んでまいります。 こうした
取組
の
一環
として、緊急に
間伐等
を要する
森林
の
整備
や
機能
が低下している
保安林
の
機能回復等
に向けた
所要
の
制度改正
についても進めてまいります。 次に、
水産物
の
安定供給確保
と
水産業
の健全な
発展
を
基本
とする
水産政策
の
展開
についてであります。
水産政策
については、海の恵みの
持続的利用
のために、
科学的知見
に基づく
資源管理
の徹底や作り育てる
漁業
を
推進
するとともに、
収益性
の高い魅力ある
漁業
の
確立
に向けて、
技術革新
や
担い手
の
確保
、
育成
などを進めてまいります。さらに、
衛生管理
の的確な実施や
水産加工
の
体質強化
、
流通
の
効率化等
により
消費者
の求める
水産物
の
生産
、
供給
に万全を期すとともに、魅力ある
漁村づくり
を目指して、豊かで活力ある
浜づくり等
の
施策
を
展開
してまいります。 また、昨年、茨城県を始め各地で
発生
した
コイヘルペスウイルス病
については、
関係都府県
とも
協力
しながら、
早期発見
と的確な
蔓延防止等
に取り組むとともに、
被害
を受けた
養殖業者
の
経営支援
を図ってまいります。 以上のような
農林水産政策
を
展開
するため、
平成
十六年度の
農林水産予算
の編成に際しましては十分に意を用いたところであります。 また、
施策
の
展開
に必要な
法整備
につきましては、今後御
審議
をよろしくお願いいたします。 以上、私の
所信
の
一端
を申し上げました。
農林水産行政
の
展開
に当たっては、
国民
の
皆様
の御
理解
、そして
信頼
をいただくことが重要であります。今後とも、
国民
の
皆様
の御
意見
を真摯に受け止め、次の世代に対してどのような姿の
食料
、
農林水産業
、
農山漁村
を残していくべきかという大きな
視点
に立って、
全力
を尽くしてまいります。
委員各位
におかれましては、
農林水産行政
の
推進
のため、今後とも一層の御
支援
、御
協力
を賜りますよう、切にお願い申し上げます。
岩永浩美
4
○
委員長
(
岩永浩美
君) 以上で
所信
の聴取は終わりました。 本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。 ─────────────
岩永浩美
5
○
委員長
(
岩永浩美
君) 次に、去る一月十四日及び十五日に行いました
委員派遣
につきまして、
派遣委員
の
報告
を聴取いたします。
加治屋義人
君。
加治屋義人
6
○
加治屋義人
君
委員派遣
の御
報告
をいたします。 去る一月十四日及び十五日、
熊本
、
佐賀
両県において、
農林水産
に関する
実情調査
をいたしました。
派遣委員
は、
岩永委員長
、
常田理事
、
和田理事
、
紙理事
、
三浦委員
、
羽田委員
、
千葉委員
、
岩本委員
、
中村委員
、そして私、
加治屋
の十名でございました。 以下、その概要を申し上げます。 まず、
熊本
県において、
熊本
県
果実農業協同組合連合会
の
熊本工場
及び
独立行政法人農業
・
生物系特定産業技術研究機構
の
九州沖縄農業研究センター
を
調査
いたしました。
JA熊本果実連
は、
昭和
二十九年の
設立
以来、
果樹農家
の
経営
安定と
所得向上
のため、
熊本
の豊かな自然を生かした
特産果物作り
を
推進
してこられました。
産地ブランド化
も進み、また、
消費者ニーズ
に沿った
生産流通販売体系
が整ってきており、
平成
十四年におきますデコポンや
アマナツミカン
などの
生産量
は
熊本
県が
全国
第一位となっております。 また、
熊本工場
は、
ミカン
の
生産
過剰による
価格
の
低迷
に対処するため、
昭和
四十六年に竣工された
ジュース
の
加工施設
であります。四十八年には
鹿児島
県経済連と提携し、
鹿児島ミカン
の
需給調整機能
をも担うとともに、
需要拡大
や新たな
消費者ニーズ
に対応するため、ニンジン、メロン、スイカ、
ムラサキイモ
、ニガウリなど
熊本
、
鹿児島
の
特産物
を生かした新製品を
開発
してこられました。その結果、当初一億六千万円であった
加工事業
の売上げが、
平成
十四年度には山梨県の
白州工場分
を合わせて三百億円になっております。 同
工場
では、
消費者
の
信頼
を更に高めるため、
平成
十一年には
HACCP承認
を取得し、現在はISO14001の
審査登録
に向けて取り組んでおられます。また、
JA熊本果実連
は、
県連レベル
としては珍しい
ミカン
の
トレーサビリティーシステム
を導入し、昨年十月から傘下の
組合ごと
にホームページで
防除歴
などの
生産情報
を公開しております。 なお、
学校給食
が
地産地
消の新たな
分野
として、また、
食育
の場として注目されておりますが、同
果実連
は、
昭和
四十八年から
学校給食
に
温州ミカン
や自社の
ジュース
を
供給
するなど、
地産地
消にも努めてこられました。ちなみに、
熊本
県は、
平成
十五年の
学校給食
におきます
県内産品使用率
が五〇%で
全国
第一位となっております。 同
果実連
におきましては、最近の
FTA
などによる
オレンジ果実
・果汁の
関税撤廃
の動きに対し、これが撤廃されれば、相当の影響を受けると予想しておりました。そのような
事態
に対して、自らは、
優良品種系統
への転換による
ブランド力
の
強化
や、
園地改造
などによる
コスト低減
を図るための
基盤整備
を進めることとしており、
政策面
では、
需給バランス
が崩れた際の
調整
が確実に実施されるための
緊急措置
、新たな
所得保障制度
の創設など、
果樹経営安定対策
の一層の充実が望まれるとのことでありました。 次に、
九州沖縄農業研究センター
について申し上げます。 同
センター
は、
昭和
二十五年に
設立
された
九州農業試験場
を前身としており、
九州
・
沖縄地域
の
自然条件
や
社会条件
と調和した
農業
、
農村
の
発展
のため、幅広い
分野
で
試験研究
を
展開
しております。 近年の
研究成果
の
一つ
に
バイオマス
があります。
九州
は
畜産
が盛んであり、
平成
十四年におきます
産出額
は
九州農業産出額
の四割を占め、大量に
発生
する
家畜排せつ物
の処理は喫緊の
課題
となっております。この
課題
に対処するため、昨年、同
センター
が
民間
との
共同研究
で
開発
した
コージェネレーションシステム農林バイオマス
二号機を視察いたしました。これは、
家畜排せつ物
や、
食品産業
から排出される
残渣
を原料に、
効率
よく発電するとともに、
廃熱
を用いて、
食品残渣
を乾燥処理し
飼料
を
生産
するなど、
バイオマス
を総合的に有効
利用
するシステムであります。現在は
試験運転
中でありますが、
バイオマス
・
ニッポン総合戦略
の達成に向けた
具体的手段
として
平成
十八年度の
実用化
を目指しておりました。 また、同
センター
の主な
研究
の
一つ
に、
消費者
や
地域産業
の
ニーズ
に対応するため、
特産物
の
潜在機能特性
を解明し、その
特性
を生かした
加工利用技術
を
開発
するという
研究
がありますが、これが近年目覚ましい
成果
を上げております。例えば、肝臓に良いアントシアニンという成分を多量に含む
ムラサキイモ
を
利用
した
ジュース
などを
地域
の企業とともに製品化しております。 同
センター
におきましては、
平成
十三年の
独立行政法人化
によって、人事・
予算面
の
自由度
が増したことを生かし、既に
研究成果
として蓄積されているシーズの周知に努めるとともに、その
実用化
を積極的に進め、
地域産業
の
活性化
に貢献していきたいとのことでありました。一方、
運営面
においては、
産学官連携
などによる
開発技術
の
実用化
といった
成果
が要求される
プロジェクト研究
と、そのベースとなる
基礎研究
との
バランス
をどう取るかが重要であり、その点を
十分考慮
に入れた
予算配分
、
研究員
の
インセンティブ向上
に工夫が求められているとのことでありました。 次に、
佐賀
県において、
佐賀
県
競馬組合
、
松浦東部農業協同組合
及び
虹ノ松原国有林
を
調査
いたしました。
佐賀
県
競馬組合
は、
昭和
四十七年の
設立
以来、累計四百七億円を
地元財政
に寄与するなど、
地域経済
や
畜産振興等
に大きな
役割
を果たしてきました。 しかし、
平成
三年度をピークに売
得金
は減少を続け、十年度以降は単
年度収支
が四年
連続赤字
という厳しい
経営状況
になっておりました。 このため、同
組合
は十三年に
佐賀競馬経営改善委員会
を設置し、その提言に基づいた
経営改善策
を講じてきております。例えば、岩手県
競馬組合
や
熊本
県の
荒尾競馬組合
とネットワークを結び、魅力ある
交流レース
の
提供
や相互の
場外発売
による
市場
の
拡大
などを図るとともに、自ら
人件費
、諸手当などの
経費節減
を行い、その結果、十四年度に黒字化しております。 十五年度の
経営状況
は再び厳しくなっておりますが、
全国
的に
競馬
の
経営状況
が厳しく、国や
地方
において、
競馬
の在り方が検討されている中で、同
組合
のこのような
取組
は
一つ
の
先進的事例
と思われます。 同
組合
におきましては、今後とも他の
主催者
との
協力関係
を生かし
経営改善
に
努力
するとのことでありましたが、
我が国
の
競馬制度
の
見直し
に当たっては、各
地方競馬
間の
連携
による
経営改善努力
への
支援措置
、あるいは、
発売業務
について
中央競馬会
や
民間
への委託などを可能にするための
規制緩和
が期待されるとのことでありました。 次に、
JA松浦東部
について申し上げます。
平成
十四年におきます
佐賀
県の
ハウスミカン
の
生産量
は一万二千トンで
全国
第一位であります。中でも
JA松浦東部
は
県内生産量
の四割、
全国
の一割を占める
ハウスミカン
の大
産地
であります。 同
JA管内
は、従来より有数の
露地ミカン産地
でありましたが、
昭和
四十年代後半におきます
価格低迷
を受け、他
産地
よりいち早く
施設栽培
を
推進
し、今では
果樹
、野菜の
施設
面積が全体の三割を占めるに至っております。 気象災害に強い全天候型の
施設栽培
と
産地ブランド化
を
推進
することによって、農家の所得を
向上
させ、このことで、若い
担い手
を
確保
し、将来にわたって
地域
の農家が
経営
を維持
発展
できるよう、
関係者
一体となって努めてこられました。その結果、県内の他の地区に比べ専業農家の割合が高く、後継者も育っております。 しかしながら、近年、加工原料
ミカン
の
価格低迷
などによって、露地を中心に
生産
者の
意欲
が低下してきております。 このため、個体の内部
品質
を判定することが可能な光センサー選果機を導入し、これによって省力化と
品質
の高位平準化を図り、高付加価値
農業
を更に推し進めるとともに、残留農薬検査機を導入し、
消費者
の安全、
安心
への要求に的確に対応することで
ブランド力
を一層強固なものとするよう努めておられました。 また、同JAでは、
国内
価格
の
低迷
を受け、
昭和
四十三年から
温州ミカン
を
韓国
、カナダ等に輸出しておりますが、近年は円高などによりメリットが薄れているとのことであります。今後は、基幹品目である
ハウスミカン
についても、中国、台湾等への輸出を前向きに検討していきたいとのことでありました。 そして、今後とも
担い手
農家が
安心
して
農業
経営
に取り組めるよう
経営
安定
対策
の充実が望まれるとのことでありました。 最後に、
虹ノ松原国有林
について申し上げます。 同国有林は、四百年前に植林された二百十八ヘクタールの黒松林であります。全域が暴風、防潮、保健
保安林
に指定されているほか、国の特別名勝に指定されている日本三大松原の
一つ
であります。 この美しい松原は、常日ごろ、
地域
住民のレクリエーションの場として、また、小中学生の
森林
環境教育の場として親しまれております。
昭和
三十年代から松くい虫
被害
が多発し、過去に幾度も危機に見舞われましたが、国と県、
関係
市町村、地元の小中学生、そしてボランティア団体等が一体となって防除に
協力
し、あるいは、松くい虫の
被害
調査
、松くい虫に強い品種の植栽、松林の清掃など
保全
活動に取り組んでおり、松原は回復してきております。 今、
全国
的に
森林
整備
の在り方が問われておりますが、
森林
、特に人工林は人の手による適正な
保全
管理がなければ維持が難しく、それには多くの労力と時間が必要とされます。このため、国有林、民有林を問わず、
国民参加
の
森林づくり
を進めることとされておりますが、
地域
やボランティアの長期にわたる
協力
を得るための
体制
作りや活動の持続性を考える上で、虹ノ松原の
取組
は大変参考になると思われます。また、こうした
取組
が成功するためには、その
森林
が
国民
に親しまれる
森林
であるということも大きな要素の
一つ
になると思われます。 以上が
熊本
、
佐賀
両県における
調査
の概要でございます。最後に、今回の
調査
に当たりまして御
協力
をいただきました方々に厚くお礼を申し上げて、御
報告
といたします。
岩永浩美
7
○
委員長
(
岩永浩美
君) 以上で
派遣委員
の
報告
は終了いたしました。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時四十九分散会