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2004-03-11 第159回国会 参議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年三月十一日(木曜日)    午後零時二十分開会     ─────────────    委員異動  二月三日     辞任         補欠選任      小林美恵子君     市田 忠義君  二月二十五日     辞任         補欠選任      松山 政司君     関口 昌一君  二月二十六日     辞任         補欠選任      関口 昌一君     松山 政司君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岩永 浩美君     理 事                 加治屋義人君                 段本 幸男君                 常田 享詳君                 和田ひろ子君                 紙  智子君     委 員                 市川 一朗君                 太田 豊秋君                 小斉平敏文君                 服部三男雄君                 松山 政司君                 三浦 一水君                 小川 勝也君                 信田 邦雄君                 羽田雄一郎君                 千葉 国男君                 福本 潤一君                 市田 忠義君                 岩本 荘太君                 中村 敦夫君    国務大臣        農林水産大臣   亀井 善之君    副大臣        農林水産大臣  市川 一朗君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       福本 潤一君    事務局側        常任委員会専門        員        高野 浩臣君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○農林水産に関する調査  (平成十六年度の農林水産行政基本施策に関  する件)  (派遣委員報告)     ─────────────
  2. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  去る二月三日、小林美恵子君が委員辞任され、その補欠として市田忠義君が選任をされました。     ─────────────
  3. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) 農林水産に関する調査を議題といたします。  平成十六年度の農林水産行政基本施策について農林水産大臣から所信を聴取いたします。亀井農林水産大臣
  4. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 農林水産委員会の開催に当たりまして、私の所信一端を申し上げます。  昨年四月に農林水産大臣に就任して以来、農林水産分野における構造改革を進め、消費者生活者視点に立って、国民への安全で安心食料安定供給食料自給率向上実現すべく取り組んでまいりました。  今後とも、生命をはぐくみ、自然環境保全し、文化を形作る食料農林水産業農山漁村を力強く支える農林水産行政展開に向け、食料農業農村基本法森林林業基本法水産基本法に基づき、各般課題に着実に対応してまいります。  昨年は、地震、豪雨、冷害など災害が多発した年でした。被災された関係者の方々に、改めて心からお見舞い申し上げます。特に、農業分野では、低温と日照不足によって、北海道、東北などでは水稲等で十年来の冷害となりました。お米の作況指数は九〇となりましたが、今回は、緊急輸入を実施した平成五年のときとは異なり、官民の備蓄等を基に安定供給が図られているところであります。引き続き被災農家への支援を行うとともに、価格動向の注視、卸売小売段階での品質表示の監視、指導も徹底しながら適正な販売確保されるよう努めてまいります。  まず、現在の農政最大課題であります新たな食料農業農村基本計画の策定に向けた取組についてであります。  食料農業及び農村に関する政策については、平成十一年に制定された食料農業農村基本法と、その理念を具体化し平成十二年に閣議決定された食料農業農村基本計画に即して、各般施策を実施してまいりました。その後、BSE発生など食と農に関する様々な問題が顕在化する中で、食の安全、安心確保に関する施策強化米政策抜本改革など、農政改革を進めているところであります。  しかしながら、消費者の食の安全、安心確保に対する関心が一層高まっている一方で、農業農村の現状は、構造改革が立ち後れ、高齢化耕作放棄地の増加が進むなど大きく変化しております。このため、国民皆様の期待にこたえられる農業農村実現に向けて農政改革を一層加速化していくことが国民の要請であると考えております。  こうしたことから、昨年八月から着手した現行基本計画見直しの中では、各般施策の徹底的な検証と見直しを行いながら、消費者生活者視点に立った施策強化するとともに、農業構造改革に関して次のような三つの事項を重点的に検討することとしております。  すなわち、第一には、品目別に行っている価格経営安定政策から、諸外国で行われている直接支払も視野に入れつつ、意欲能力のある担い手経営支援する品目横断的な政策へ移行することであります。第二には、望ましい農業構造土地利用実現するための担い手農地制度改革を進めることであります。第三には、環境保全を重視した施策を一層推進していくとともに、食料安全保障多面的機能発揮のために不可欠な農地水等保全のための政策確立することであります。  昨年十二月九日には、食料農業農村政策審議会にこの基本計画の変更について諮問を行ったところであります。今後、同審議会企画部会等において、国民に開かれた透明性のある議論を進め、国民皆様の参画と理解、納得の下、平成十七年三月に新たな基本計画に結実させてまいります。それまでの間にも、本年の夏ごろには審議会中間論点整理をいただき、できるものから十七年度予算概算要求制度改正に反映していくなど、より一層スピード感を持った改革推進してまいります。  農政改革に先行して本年から本格的にスタートする米政策改革については、消費者重視市場重視の考え方を基本に、各地域で売れる米作りに取り組んでいただくことが重要であります。このため、米作りの本来あるべき姿の実現に向け、産地づくり対策担い手経営安定対策など新たな制度を創設したところであり、地域の特色や発想を活かした産地づくり担い手明確化育成などを支援し、水田農業構造改革推進してまいります。  また、米政策改革にとどまらず、意欲能力のある担い手が大宗を担う農業構造確立に取り組んでまいります。  具体的には、施策の一層の集中化重点化を進め、農地利用集積経営多角化複合化等取組を加速化してまいります。あわせて、これを支える人材確保に向け、「農林業をやってみよう」プログラムを踏まえ、新規就農対策を一層充実してまいります。また、農協については、農業者消費者最大のメリットや満足を提供できるよう、系統自らが経済事業等抜本改革を進めていくよう支援していきます。農業委員会系統農業改良普及組織についても、事業効率化や活動の重点化等に向け、改革を促していきます。加えて、構造改革基礎となる生産基盤整備を進めるとともに、技術開発研究開発を重視し、イネゲノム研究成果早期実用化等のための取組推進してまいります。  こうした取組一環として、就農形態多様化に対応した就農支援資金貸付対象の拡充、農協経済事業等機能の十全な発揮農業委員会の設置に係る市町村の裁量の拡大業務運営効率化農業者の高度で多様なニーズに対応できる普及事業展開等に向けた所要制度改正についても進めてまいります。  また、農林水産業を守りから攻めへと転換することが重要であります。  近年、アジア諸国経済発展に伴う所得向上等を踏まえ、高品質国産農林水産物食品輸出機会拡大を図るとともに、海外ニーズにも対応する産地体制整備等を総合的に支援する体制確立に努めてまいります。  さらに、環境保全を重視する農林水産業への移行に向けて、昨年末に決定した農林水産環境政策基本方針に即して、健全な水、大気、物質循環維持増進と豊かな自然環境保全形成のための施策展開してまいります。堆肥を利用した土づくりなどの取組畜産環境対策促進などにも意を用いてまいります。  次に、食の安全と安心確保についてであります。  食の安全と安心確保につきましては、国民健康保護を第一に、農場から食卓までの全行程において、食品安全性確保のための措置を的確に講ずることが極めて重要であります。  昨年、食品安全基本法が制定され、食品安全委員会が発足しました。これに併せ、消費安全局地方農政事務所を設置するなど農林水産省組織体制整備するとともに、農薬、肥料、飼料などの生産資材適正使用に向けた制度を充実しました。今後は、国民皆様へのより的確な情報提供意見交換に努めつつ、農産物の安全性確保家畜防疫体制強化を行ってまいります。信頼性の高い食品トレーサビリティーシステム開発実用化を進めるとともに、分かりやすく適正な食品表示等を徹底してまいります。また、国民一人一人が食について考え、判断するための食育についても、更に力強い国民運動として発展を期してまいります。  また、無線ICタグなどの情報技術を積極的に活用した食品流通普及卸売市場改革国内農業連携した地域ブランド確立などにより、消費者ニーズ多様化高度化に的確に対応した食品産業展開に取り組んでまいります。  こうした取組一環として、卸売市場取引規制緩和及び適正な品質管理推進や再編の円滑化特定農産加工業経営改善促進等に向けた所要制度改正についても進めてまいります。  昨年末に米国においてBSE発生し、我が国は直ちに米国からの牛肉輸入を停止いたしました。この問題は、食の安全、安心に関する重要な問題であり、国民消費者の安全、安心確保を第一に考えなければなりません。農林水産省といたしましては、食品安全委員会厚生労働省との連携を密にし、国民消費者意見を伺いながら、適切に対処してまいります。  また、本年に入って、国内で高病原性鳥インフルエンザ発生が相次いでおります。国内発生が確認された場合には、蔓延防止するため、家畜伝染病予防法及び防疫マニュアルに基づき、発生農場における殺処分や周辺農場における移動制限を的確に実施しているところであります。山口県については、防疫措置を完了し、移動制限区域内の清浄性を確認されたことから、移動制限措置を解除しております。また、大分県についても、本日午前零時をもって移動制限を解除しております。しかしながら、京都府では、養鶏業者通報を行わず、大量死発生後も生きた鶏等出荷を続け、出荷先でも感染が確認される事態となりました。このため、私は、現地を視察し、蔓延防止対策を一層強化するため、早期発見早期通報体制確立すること、行政連携強化すること、移動制限命令に伴う問題を解決すること、風評被害防止のため食品としての安全性明確化を図ることを指示したところであります。今後とも、厚生労働省食品安全委員会等関係府省と密接に連携を取り、万全の対策を講じてまいる考えであります。  次に、農山漁村政策についてであります。  農林漁業生産基盤である農山漁村については、水源涵養環境保全、景観の形成文化伝承等の重要な役割を果たしております。このため、地域の個性を生かし、多様な主体の参加による風格ある美しい農山漁村づくり観光立村の実現に向けた振興施策を強力に展開していきます。また、都市と農山漁村の共生・対流に向けた国民的な運動を一層推進するとともに、バイオマスニッポン総合戦略に沿って、トウモロコシなどから作られたバイオマスプラスチックを使った食器の利用実験を進めるなど、バイオマス利活用促進を図ってまいります。  次に、WTOFTA交渉への対応であります。  WTO農業交渉については、我が国は、多様な農業の共存を基本理念とし、農業の持つ多面的機能を反映したバランスの取れたルールの確立を目指して交渉に取り組んでまいりました。このような中、昨年九月、メキシコカンクンで行われたWTO閣僚会議では、他分野を含めた途上国先進国との対立が解消されず、残念ながら合意のないまま終了したところであります。  今後は、カンクン閣僚会議において配付されたデルベス議長案出発点として議論し、枠組み合意を目指すこととされております。デルベス議長案については、重要品目に対する一定の配慮が見られるものの、上限関税関税割当て等について問題点の是正を図る必要があると考えております。引き続き、スイス、ノルウェー、韓国等関心を共有する国々連携し、途上国にも働き掛けを行いながら、我が国提案交渉結果に反映されるよう全力交渉に取り組んでまいります。  また、地球規模の環境問題や有限天然資源持続的利用等を目指す林野・水産分野についても、カンクン閣僚会議において、主要な論点について途上国先進国が対立し、解決が実質的に先送りされているところであります。我が国としては、分野別関税撤廃について林水産物対象分野に含まれることのないよう、また、我が国林水産物事情に配慮できる関税削減方式となるよう、引き続き最大限の努力を続けてまいります。  FTAについては、現在、メキシコに続き、韓国、マレーシア、フィリピン、タイとの間で政府間交渉を進めているところであります。これらの国々は、それぞれ、我が国農林水産業との関連度合い貿易事情などが異なっております。農林水産省内に設置したFTA本部を中心に関係省庁とも連携しつつ、各国の事情等についてできる限りの情報の収集を行い、我が国食料安全保障農林水産業構造改革進展具合にも十分配慮しながら、積極的かつ戦略的に対応してまいります。  次に、森林の有する多面的機能発揮林業の持続的かつ健全な発展、林産物の供給及び利用確保基本とする森林林業政策展開についてであります。  地球温暖化防止に向けて、京都議定書我が国が約束した温室効果ガス削減目標を達成するため、地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策に基づき、緑の雇用等による担い手育成を図りつつ、多様で健全な森林整備保全推進してまいります。さらに、地域材利用木質バイオマス利活用促進森林ボランティア等による国民参加森林づくり推進等に積極的に取り組んでまいります。  こうした取組一環として、緊急に間伐等を要する森林整備機能が低下している保安林機能回復等に向けた所要制度改正についても進めてまいります。  次に、水産物安定供給確保水産業の健全な発展基本とする水産政策展開についてであります。  水産政策については、海の恵みの持続的利用のために、科学的知見に基づく資源管理の徹底や作り育てる漁業推進するとともに、収益性の高い魅力ある漁業確立に向けて、技術革新担い手確保育成などを進めてまいります。さらに、衛生管理の的確な実施や水産加工体質強化流通効率化等により消費者の求める水産物生産供給に万全を期すとともに、魅力ある漁村づくりを目指して、豊かで活力ある浜づくり等施策展開してまいります。  また、昨年、茨城県を始め各地で発生したコイヘルペスウイルス病については、関係都府県とも協力しながら、早期発見と的確な蔓延防止等に取り組むとともに、被害を受けた養殖業者経営支援を図ってまいります。  以上のような農林水産政策展開するため、平成十六年度の農林水産予算の編成に際しましては十分に意を用いたところであります。  また、施策展開に必要な法整備につきましては、今後御審議をよろしくお願いいたします。  以上、私の所信一端を申し上げました。  農林水産行政展開に当たっては、国民皆様の御理解、そして信頼をいただくことが重要であります。今後とも、国民皆様の御意見を真摯に受け止め、次の世代に対してどのような姿の食料農林水産業農山漁村を残していくべきかという大きな視点に立って、全力を尽くしてまいります。  委員各位におかれましては、農林水産行政推進のため、今後とも一層の御支援、御協力を賜りますよう、切にお願い申し上げます。
  5. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) 以上で所信の聴取は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ─────────────
  6. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) 次に、去る一月十四日及び十五日に行いました委員派遣につきまして、派遣委員報告を聴取いたします。加治屋義人君。
  7. 加治屋義人

    加治屋義人君 委員派遣の御報告をいたします。  去る一月十四日及び十五日、熊本佐賀両県において、農林水産に関する実情調査をいたしました。  派遣委員は、岩永委員長常田理事和田理事紙理事三浦委員羽田委員千葉委員岩本委員中村委員、そして私、加治屋の十名でございました。  以下、その概要を申し上げます。  まず、熊本県において、熊本果実農業協同組合連合会熊本工場及び独立行政法人農業生物系特定産業技術研究機構九州沖縄農業研究センター調査いたしました。  JA熊本果実連は、昭和二十九年の設立以来、果樹農家経営安定と所得向上のため、熊本の豊かな自然を生かした特産果物作り推進してこられました。  産地ブランド化も進み、また、消費者ニーズに沿った生産流通販売体系が整ってきており、平成十四年におきますデコポンやアマナツミカンなどの生産量熊本県が全国第一位となっております。  また、熊本工場は、ミカン生産過剰による価格低迷に対処するため、昭和四十六年に竣工されたジュース加工施設であります。四十八年には鹿児島県経済連と提携し、鹿児島ミカン需給調整機能をも担うとともに、需要拡大や新たな消費者ニーズに対応するため、ニンジン、メロン、スイカ、ムラサキイモ、ニガウリなど熊本鹿児島特産物を生かした新製品を開発してこられました。その結果、当初一億六千万円であった加工事業の売上げが、平成十四年度には山梨県の白州工場分を合わせて三百億円になっております。  同工場では、消費者信頼を更に高めるため、平成十一年にはHACCP承認を取得し、現在はISO14001の審査登録に向けて取り組んでおられます。また、JA熊本果実連は、県連レベルとしては珍しいミカントレーサビリティーシステムを導入し、昨年十月から傘下の組合ごとにホームページで防除歴などの生産情報を公開しております。  なお、学校給食地産地消の新たな分野として、また、食育の場として注目されておりますが、同果実連は、昭和四十八年から学校給食温州ミカンや自社のジュース供給するなど、地産地消にも努めてこられました。ちなみに、熊本県は、平成十五年の学校給食におきます県内産品使用率が五〇%で全国第一位となっております。  同果実連におきましては、最近のFTAなどによるオレンジ果実・果汁の関税撤廃の動きに対し、これが撤廃されれば、相当の影響を受けると予想しておりました。そのような事態に対して、自らは、優良品種系統への転換によるブランド力強化や、園地改造などによるコスト低減を図るための基盤整備を進めることとしており、政策面では、需給バランスが崩れた際の調整が確実に実施されるための緊急措置、新たな所得保障制度の創設など、果樹経営安定対策の一層の充実が望まれるとのことでありました。  次に、九州沖縄農業研究センターについて申し上げます。  同センターは、昭和二十五年に設立された九州農業試験場を前身としており、九州沖縄地域自然条件社会条件と調和した農業農村発展のため、幅広い分野試験研究展開しております。  近年の研究成果一つバイオマスがあります。  九州畜産が盛んであり、平成十四年におきます産出額九州農業産出額の四割を占め、大量に発生する家畜排せつ物の処理は喫緊の課題となっております。この課題に対処するため、昨年、同センター民間との共同研究開発したコージェネレーションシステム農林バイオマス二号機を視察いたしました。これは、家畜排せつ物や、食品産業から排出される残渣を原料に、効率よく発電するとともに、廃熱を用いて、食品残渣を乾燥処理し飼料生産するなど、バイオマスを総合的に有効利用するシステムであります。現在は試験運転中でありますが、バイオマスニッポン総合戦略の達成に向けた具体的手段として平成十八年度の実用化を目指しておりました。  また、同センターの主な研究一つに、消費者地域産業ニーズに対応するため、特産物潜在機能特性を解明し、その特性を生かした加工利用技術開発するという研究がありますが、これが近年目覚ましい成果を上げております。例えば、肝臓に良いアントシアニンという成分を多量に含むムラサキイモ利用したジュースなどを地域の企業とともに製品化しております。  同センターにおきましては、平成十三年の独立行政法人化によって、人事・予算面自由度が増したことを生かし、既に研究成果として蓄積されているシーズの周知に努めるとともに、その実用化を積極的に進め、地域産業活性化に貢献していきたいとのことでありました。一方、運営面においては、産学官連携などによる開発技術実用化といった成果が要求されるプロジェクト研究と、そのベースとなる基礎研究とのバランスをどう取るかが重要であり、その点を十分考慮に入れた予算配分研究員インセンティブ向上に工夫が求められているとのことでありました。  次に、佐賀県において、佐賀競馬組合松浦東部農業協同組合及び虹ノ松原国有林調査いたしました。  佐賀競馬組合は、昭和四十七年の設立以来、累計四百七億円を地元財政に寄与するなど、地域経済畜産振興等に大きな役割を果たしてきました。  しかし、平成三年度をピークに売得金は減少を続け、十年度以降は単年度収支が四年連続赤字という厳しい経営状況になっておりました。  このため、同組合は十三年に佐賀競馬経営改善委員会を設置し、その提言に基づいた経営改善策を講じてきております。例えば、岩手県競馬組合熊本県の荒尾競馬組合とネットワークを結び、魅力ある交流レース提供や相互の場外発売による市場拡大などを図るとともに、自ら人件費、諸手当などの経費節減を行い、その結果、十四年度に黒字化しております。  十五年度の経営状況は再び厳しくなっておりますが、全国的に競馬経営状況が厳しく、国や地方において、競馬の在り方が検討されている中で、同組合のこのような取組一つ先進的事例と思われます。  同組合におきましては、今後とも他の主催者との協力関係を生かし経営改善努力するとのことでありましたが、我が国競馬制度見直しに当たっては、各地方競馬間の連携による経営改善努力への支援措置、あるいは、発売業務について中央競馬会民間への委託などを可能にするための規制緩和が期待されるとのことでありました。  次に、JA松浦東部について申し上げます。  平成十四年におきます佐賀県のハウスミカン生産量は一万二千トンで全国第一位であります。中でもJA松浦東部県内生産量の四割、全国の一割を占めるハウスミカンの大産地であります。  同JA管内は、従来より有数の露地ミカン産地でありましたが、昭和四十年代後半におきます価格低迷を受け、他産地よりいち早く施設栽培推進し、今では果樹、野菜の施設面積が全体の三割を占めるに至っております。  気象災害に強い全天候型の施設栽培産地ブランド化推進することによって、農家の所得を向上させ、このことで、若い担い手確保し、将来にわたって地域の農家が経営を維持発展できるよう、関係者一体となって努めてこられました。その結果、県内の他の地区に比べ専業農家の割合が高く、後継者も育っております。  しかしながら、近年、加工原料ミカン価格低迷などによって、露地を中心に生産者の意欲が低下してきております。  このため、個体の内部品質を判定することが可能な光センサー選果機を導入し、これによって省力化と品質の高位平準化を図り、高付加価値農業を更に推し進めるとともに、残留農薬検査機を導入し、消費者の安全、安心への要求に的確に対応することでブランド力を一層強固なものとするよう努めておられました。  また、同JAでは、国内価格低迷を受け、昭和四十三年から温州ミカン韓国、カナダ等に輸出しておりますが、近年は円高などによりメリットが薄れているとのことであります。今後は、基幹品目であるハウスミカンについても、中国、台湾等への輸出を前向きに検討していきたいとのことでありました。  そして、今後とも担い手農家が安心して農業経営に取り組めるよう経営安定対策の充実が望まれるとのことでありました。  最後に、虹ノ松原国有林について申し上げます。  同国有林は、四百年前に植林された二百十八ヘクタールの黒松林であります。全域が暴風、防潮、保健保安林に指定されているほか、国の特別名勝に指定されている日本三大松原の一つであります。  この美しい松原は、常日ごろ、地域住民のレクリエーションの場として、また、小中学生の森林環境教育の場として親しまれております。  昭和三十年代から松くい虫被害が多発し、過去に幾度も危機に見舞われましたが、国と県、関係市町村、地元の小中学生、そしてボランティア団体等が一体となって防除に協力し、あるいは、松くい虫の被害調査、松くい虫に強い品種の植栽、松林の清掃など保全活動に取り組んでおり、松原は回復してきております。  今、全国的に森林整備の在り方が問われておりますが、森林、特に人工林は人の手による適正な保全管理がなければ維持が難しく、それには多くの労力と時間が必要とされます。このため、国有林、民有林を問わず、国民参加森林づくりを進めることとされておりますが、地域やボランティアの長期にわたる協力を得るための体制作りや活動の持続性を考える上で、虹ノ松原の取組は大変参考になると思われます。また、こうした取組が成功するためには、その森林国民に親しまれる森林であるということも大きな要素の一つになると思われます。  以上が熊本佐賀両県における調査の概要でございます。最後に、今回の調査に当たりまして御協力をいただきました方々に厚くお礼を申し上げて、御報告といたします。
  8. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十九分散会