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2004-06-10 第159回国会 参議院 内閣委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年六月十日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  六月九日     辞任         補欠選任      森下 博之君     福島啓史郎君  六月十日     辞任         補欠選任      松井 孝治君     伊藤 基隆君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         和田ひろ子君     理 事                 西銘順志郎君                 森田 次夫君                 神本美恵子君                 吉川 春子君     委 員                 岡田  広君                 関口 昌一君                 竹山  裕君                 中島 眞人君                 福島啓史郎君                 森元 恒雄君                 山崎 正昭君                 伊藤 基隆君                 岡崎トミ子君                 川橋 幸子君                 松井 孝治君                 魚住裕一郎君                 白浜 一良君                 小林美恵子君                 黒岩 宇洋君        発議者      吉川 春子君        発議者      岡崎トミ子君        発議者      神本美恵子君        発議者      川橋 幸子君    国務大臣        国務大臣        (内閣特命担        当大臣経済財        政政策))    竹中 平蔵君    副大臣        内閣府副大臣   伊藤 達也君    大臣政務官        内閣大臣政務        官        西川 公也君    事務局側        常任委員会専門        員        鴫谷  潤君    政府参考人        内閣国民生活        局長       永谷 安賢君        警察庁長官官房        長        吉村 博人君        総務大臣官房審        議官       田中 順一君        総務省自治行政        局長       畠中誠二郎君        厚生労働省医薬        食品局食品安全        部長       遠藤  明君        農林水産省生産        局畜産部長    井出 道雄君    参考人        一橋大学大学院        法学研究科教授  松本 恒雄君        日本経済団体連        合会経済法規委        員会消費者法部        会長代行        三菱商事株式会        社理事      大村 多聞君        弁護士      浅岡 美恵君        特定営利活動        法人情報公開ク        リアリングハウ        ス室長      三木由希子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○公益通報者保護法案内閣提出衆議院送付) ○政府参考人出席要求に関する件 ○国の行政運営適正化のための公益通報に関す  る法律案櫻井充君外八名発議)     ─────────────
  2. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨九日、森下博之さんが委員辞任され、その補欠として福島啓史郎さんが選任されました。     ─────────────
  3. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) 公益通報者保護法案を議題とし、参考人方々から御意見を聴取いたします。  参考人を御紹介いたします。  一橋大学大学院法学研究科教授松本恒雄さん、日本経済団体連合会経済法規委員会消費者法部会長代行三菱商事株式会社理事大村多聞さん、弁護士浅岡美恵さん及び特定営利活動法人情報公開クリアリングハウス室長三木由希子さん、以上四名の方々でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございます。  参考人方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。  まず、松本参考人大村参考人浅岡参考人三木参考人の順序で、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと思います。  また、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきいただきたいと思います。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず松本参考人からお願いいたします。松本参考人
  4. 松本恒雄

    参考人松本恒雄君) 松本でございます。  このような発言機会をお与えいただきましたことに対してお礼を申し上げたいと思います。  まず、今なぜ公益通報者保護法制化議論しているのかということでありますが、この議論行政内部で始まりましたのが二〇〇〇年ぐらいからでありまして、二〇〇一年に内閣府のコンプライアンス研究会報告書が出ておりまして、その後、国民生活審議会議論が受け継がれ、現在ほぼ四年間議論をしているということになります。  では、なぜこのような議論が出てきたかということでありますが、日本の、我が国の消費者政策の歴史を考えてみますと、次のような三つの波でとらえることができるというふうに私は考えております。  まず、六〇年代に消費者保護基本法が制定されたわけでありますが、これが一つ目の大きな波でありました。ここでの考え方は、行政中心、つまり行政規制事業者規制することによって消費者を守っていくというやり方、それと被害等について行政相談を受けるということであります。それが、九〇年代になりましてから製造物責任法消費者契約法等、裁判による消費者保護、司法による消費者保護を図っていこうという考え方が出てまいります。それが、今世紀に入りましてから、法律を直接使って消費者保護ではなくて、もう少し市場の力、マーケットの力を使って消費者に有利な状況を生み出していこうという政策が着目されるようになってまいりまして、コンプライアンス研究会発想あるいは公益通報者保護発想といいますのもこの第三の波の流れ一つと位置付けることができます。  それでは、第三の波として考えられている市場を利用した消費者政策具体的中身でありますが、次の三で述べておりますような、例えば、各企業あるいは事業者団体自主行動基準を作成してもらってそれを公表し、遵守してもらうとか、あるいは法令遵守するためのコンプライアンス経営に積極的に取り組んでもらうと、あるいは、そのような事業者がきちんとしているということをしかるべき第三者機関評価をしてもらう、そしてその評価消費者に分かるようにマーク等で示すようにしようとか、あるいは、消費者苦情処理について業界としてきちんと紛争処理のための機関、いわゆるADRと言われているものでありますが、これを作って安価かつ公平な解決を図っていってもらいたい、あるいは、もう少し大きな話になりますが、消費者利益以外の様々な企業を取り巻く利益も考慮した、いわゆる社会的責任に配慮した経営をやっていただきたい、そのような企業を支援する投資を促進していこうというような議論、あるいは、事業者団体消費者団体が話し合ってしかるべきルールを考えていこうというような流れ、様々なものがここに含まれます。そして、このような考え方が、本委員会の議員の皆様方の御努力で成立いたしました消費者基本法の中に今回取り込まれたということでございます。  それでは、このような流れが出てくれば、従来の、特に第一の波で行政中心の、行政規制中心消費者保護が行われていたわけですが、これが全く不要になるかという点であります。  不要になるわけではありません。ただ、消費者政策として様々なツールが出てきたことから、行政規制やり方が少し変わってきているということがあります。よく言われておりますのが、事前規制から事後規制中心に変えていこうと。ただ、事後規制といいましても、事前の明確なルールが定められているということが大前提になります。その上で、しかるべくルールを守って自由な競争をしていただきたいということです。  こういうふうな事後規制中心になりますと、事後的にルールが守られているかどうかをきちんとチェックする、モニターする機能が働かないと大変なことになります。かといって、行政がすべての事業者活動を常時監視するというのは不可能でありまして、これは適時にいわゆるピンポイントで監視をしていくということにならざるを得ないだろうと。ほかにも、その事業者ルールを守っているかどうかを監視する主体が考えられて、そのような多様なモニタリング促進していくような仕組みが必要になってまいります。  消費者に様々な、主務大臣に対する申出権を与える法律が多く整理、整備されておりますが、これは、消費者モニタリングチャンネルとしようとする発想でありますし、社内従業員モニタリングチャンネルとしようとするのが今回の公益通報者保護法案ということになります。  さらに、取引先にもそのようなチェックモニタリング機能を持ってもらおうというのがいわゆるサプライチェーン発想ということであります。  さらに、事後的なチェック違反が判明した場合にはしかるべく制裁を加えないと、結局やり得ということになります。その場合の制裁内容といたしまして、ふだんから日常的に法令遵守のための取組を様々に行っている事業者内部でたまたま違反があった場合とふだんから野方図事業者の場合とで制裁に違いを与えるということが非常に重要になってまいります。  そういう点では、独禁法改正案、今回は国会には上程されなかったようでありますが、で、課徴金を強化するという反面、違反通報した事業者課徴金減額しようという仕組み導入するというのは、この点で非常に評価に値することだと思います。  さらに、違法行為によって得た不当な利益を吐き出させるための様々なシステム導入も考える必要があります。  続きまして、その様々なモニタリングチャンネルの中から、今回特に従業員に焦点を当てて公益通報者保護法が作られて、法案が作成されたわけであります。  この公益通報者保護制度をめぐっては様々な意見があります。法案公益通報という用語を使っておりますが、一般には内部告発という表現がよく使われております。ここに典型的に表れますように、告発という言葉を積極的に使う場合のイメージと、通報という言葉を使う場合のイメージが違うというところがあります。ここがこの法案に対する対立の大きな原因になっているかと思います。  すなわち、告発イメージといいますのは、内部から外部への告発を主として考えている。その前提には、企業は悪いことをするんだと。特に企業ぐるみのこと、トップが関与した不正が中心イメージとして抱かれている。あるいは悪徳商法の摘発をこの制度を使ってやりたい。あるいは国民には企業不祥事を含めて知る権利があるんだという考え方。さらに、行政への通報では役に立たないんだという行政不信というのもここに含まれているかと思います。  他方、通報イメージの背景にありますのは、企業内部での通報を重視して、その通報を受ければ企業トップはきちんと対応するはずであるという前提、すなわち誠実な経営を行おうとする企業を主としてイメージしているということになります。そのマネジメントシステムの一環として、企業内部で様々な教育、啓発、あるいはヘルプライン整備等をやっていただきたい、企業の自主的な取組促進しようというイメージであります。  それでは、どちらのイメージ法制化を図るのがいいかというところであります。今回提案されております法案は、後者の通報イメージに立っていると考えられます。法案性格を考える場合には、三つ性格が重層的に出ているというところを十分に御留意いただきたいと思います。  すなわち、この内閣府が出しております案は、公益通報者保護法制企業自主的取組を通じて、これが私が言いました第三の波でありますが、規制法令遵守という第一の波的発想促進するために通報した労働者保護するという、ここは正に民事ルールでありまして、これは第二の波ということになります。このような幾つかの異なった目的一つ法規で実現しようとしている。その中でも、自主的取組促進という部分が一番根底にある法案だということであります。  じゃ、このような法案で所期の成果が達成できるかどうかでありますが、法律整備、制定されれば当然様々な効果が出てくると思いますが、法案議論を開始した時点におきまして既にいろいろ効果が出ております。ここにたまたま持ってきておりますが、経営法友会という企業法務担当者が自主的に組織しております研究会がございまして、そこが「内部通報制度ガイドライン」という、企業内部通報制度をどういうふうに整備したらいいかということについて非常に優れた指針を既に発表されているところであります。  そして最後に、それではこのような法案が制定された後で各関係者がどのような努力をすべきかということを述べて、私の発言を終わりたいと思います。  まず、行政の課題でありますが、この法案自身企業コンプライアンス経営促進ということを一番根底のねらいとしていることでありますから、これに向けての一層の啓発環境づくりを行っていく必要があります。  さらに、先ほど述べましたが、きちんとコンプライアンス経営をしないで、かつ違法な行為を行った企業に対しては、めり張りの付いた制裁をきちんと科していく必要があるということであります。  さらに、既に個別の法律におきまして公益通報者保護を行っている法律がありますが、必要な分野につきましては個別法の制定を積極的に進めていただきたいと思います。  さらに、告発イメージ一つの大きな原因でありますところの、行政企業と癒着していて頼りにならないという部分に対する一般的な不信感を払拭するための積極的な努力をしていただきたいと思います。  これの一つやり方といたしましては、従来、行政内部で、企業業界の振興を担当する部局業界規制する部局が、全く同じところが二つ機能を兼ねていたということが多いです。その結果、薬害や食品に関する安全が侵されたという結果が出たわけで、既に幾つかの省庁におきましてこの分離がなされたところでありますが、それ以外の分野におきましても積極的に業育成行政規制行政を分けるということをやっていただきたいと思います。  企業につきましては、積極的にコンプライアンス仕組みを作るということ、それから作るだけじゃなくてそれを動かしていくということをやっていただきたいと。これを支援する取組といたしまして、国際標準化機構、ISOにおきましてコンプライアンスについてのマネジメントシステムを国際的な規格として作ろうという動きが出てきております。  それから、内部通報が重視をされるということは、企業としては非常に早い段階是正が可能になるということで大きなダメージを受けないという非常に大きなメリットがあるわけですが、それがうまくいくと結局企業内部不祥事が外に出ないで済む、済んでしまうということがあります。これにつきましては、通報者に、通報者個人に対してきちんと結果を告げるということ自身法案の中に既に記載されているわけですけれども、それ以外の他の、社内の他の従業員に対してもしかるべき時期に知らせるとか、あるいは社外社外一般に対して、我が社においては過去こういうような問題があったけれども、内部是正メカニズムがきちんと働いてこういうふうに是正されたんだから信頼してくださいという趣旨情報公開をきちんと行うことがその企業に対する信頼を一層高めるのではないかと思います。  さらに、経営トップがそれでは不正に関与していた場合には内部通報は全く働かないのかという点でありまして、ここはそうはならないような仕組み、すなわち企業内部におけるチェック・アンド・バランス仕組みをうまく取り入れるように努力していただきたいと。いわゆるコーポレートガバナンスの問題であります。  最後に、NPOの役割というのは極めて重要であります。とりわけ相談を受けるという機能であります。  ただ、相談機能と、それから告発受皿としての機能はきちっと分けて議論する必要があると思います。相談弁護士といった守秘義務をきちんと負っている人との間で行われている限りではまだ通報ではない段階でありますが、告発受皿団体に対して持ち込まれますと、そこで通報ということになりますので、ここの機能をきちんと分けて適切な助言、相談が行われるように期待したいと思います。  以上であります。
  5. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) ありがとうございました。  次に、大村参考人にお願いいたします。大村参考人
  6. 大村多聞

    参考人大村多聞君) 日本経団連消費者法部会長代行大村でございます。国民生活審議会消費者政策部会日本経団連の代表として、委員として参加させていただいております。  本日はこのような発言機会をいただきまして、誠に有り難く存じます。  まず初めに、公益通報者保護制度導入に対する日本経団連としての基本的な考え方につきまして申し上げます。  各企業は、あらゆる法令違反企業倫理に反する行為を予防するためコンプライアンスに力を入れております。日本経団連企業行動憲章と、その企業行動憲章の実行の手引も発行し、会員企業のマニュアルとして活用してもらうことなどを通じて未然防止の働き掛けを行っております。それでも企業不祥事が発覚した企業に対しては、会員資格の停止や退会勧告、場合によっては除名もあり得るという厳しい対応を取っております。  本来、内部告発は、個々人の正義感責任の下で行うものであり、制度的に奨励すべきではないと考えております。これまでも内部告発者につきましては、一般法理に基づいて保護されるべきものは保護されてまいりました。  今回の公益通報者保護法案は、一般法理前提として、公的・私的組織を問わず、公益のために通報する労働者保護に関するルールをより明確化しようというものであります。そうであれば、企業が自ら進んで不祥事発生を最小限にとどめるべく、コンプライアンスへの自主的な取組を後押しする観点から、公益通報者保護法案を立法することには一定の意義があるものと考えております。  公益通報者保護法案は、国民生活審議会消費者政策部会が二〇〇三年五月に発表いたしました報告書をベースに制度設計されておりますが、報告書の取りまとめに当たりましては、経済界消費者団体弁護士団体、学者など、関係各界が活発な議論を行いました。その結果、各界意見を十分に配慮して微妙にバランスの取れた制度設計が取りまとめられたわけでございまして、新しく制度をスタートするという意味では合理的な内容であるものと存じます。  この法律対象にならないものにつきましても、これまでどおり一般法理保護されるわけでございますから、全体のレベルを下げることにはなりませんし、ルール明確化される分、前進しております。また、立法による国民企業へのアナウンスメント効果も大きいと存じます。  先ほど申し上げましたとおり、今回の公益通報者保護法案は、公益のために通報する労働者保護ルール明確化と、各企業コンプライアンスへの自主的な取組促進が元々の趣旨でございますが、私どもとしましても、この二つ観点から法的な枠組みを作っていくことが実務の混乱を回避する観点からも肝要かと存じます。  まず、ルール明確化という点についてでございますが、これまでも内部通報者に対する不当な取扱いについては、裁判所で一般法に基づいて是非が判断されており、保護されるべきものは保護されております。  しかしながら、限られた判例等からでは、保護されるための要件や効果が明確でない面がありました。また、企業にとりましても、事実が不確かなものや個人的な恨みなどから誹謗中傷的な情報がいきなり外部通報されてしまっては致命的であります。  そこで、今回、公益通報者保護制度導入して、どのような内容通報をどこへ行えば解雇等不利益取扱いから保護されるかをあらかじめ明確にしておこうということでありますから、いかなる通報保護対象となるか予測可能性が高く、また乱用されないルールにすることが重要となってまいります。  その観点からいたしますと、例えば公益通報者保護法案で、公益に貢献するということで保護される通報範囲につきましては、国民の生命、身体、財産などの保護にかかわる法令違反が生じ、又は生じようとしている場合とし、その範囲明確化し、予測可能性の高い制度となっていることは評価できるものと存じます。  また、保護される通報者範囲につきましても、公益通報者保護法案では、現在雇用されている労働者に加えて、派遣労働者や元労働者取引事業者事業に従事する労働者対象にすることになっておりますが、例えば事業者と直接的な雇用関係にない派遣社員の場合には、派遣先企業契約上の要求に見合わない派遣社員であった場合、自らが交代させられないようにするために通報することや、元労働者については、不満を持って退職した者が報復目的通報する場合も考えられます。このように、不利益処分を受けて当然の者がそれを免れるための悪用や他人への誹謗中傷、あるいは人事処遇への報復等目的とした制度乱用が行われないような対策を併せて講ずる必要が出てまいりますが、今回の法案におきましては、公益通報を理由とした解雇等を禁止するとともに、公益通報をする労働者他人の正当な利益又は公共の利益を害することがないように努めなければならないことを規定することで、ある程度乱用を防止しつつ、法の目指す公益通報保護されるものと評価しております。  一方、企業は自らの問題について他人に頼らず自助努力で解決していくのが基本でございますので、企業も自ら進んで不祥事発生を抑える努力を行うことが何よりも重要でございます。日本経団連では、冒頭申し上げましたとおり企業行動憲章を策定し、会員企業に対し社内へのヘルプライン相談窓口設置を始めコンプライアンス強化自主的取組を働き掛けているところであります。一昨年十二月に全会員企業約千三百社を対象企業倫理行動基準に関するアンケート調査を実施いたしましたところ、ほぼ半数の企業ヘルプライン設置しており、設置予定のところと合わせると八割を超えていることが判明いたしました。そこで、経済界としてはヘルプライン設置など、企業の自主的な取組を尊重、奨励する観点からも、内部告発者保護については、まず社内窓口で対応した者を対象とすべきであると主張してまいりました。  私が所属する三菱商事においても、二〇〇一年より社内目安箱と言っているヘルプライン設置しました。目安箱には社内コンプライアンス部局及び監査部のものがあり、更に社外弁護士のものがあります。現在では年間二、三十件の報告相談を受けております。これらの報告相談の九割は根拠を欠くものであったり、見解の相違のたぐいのものでありますが、客観性や蓋然性がないものであってもその中に一割の真実があれば企業としては大変貴重な情報でありますから、会社としてはすべての報告相談に真摯に対応しているわけでございます。  今回の公益通報者保護制度の立法に当たりましては、英国の公益開示法の考え方がベースになっております。英国では一九九八年に慎重な議論を踏まえて公益開示法が制定されたわけですが、その過程ではメディアなど外部にいきなり通報することに対する警戒感や、内部告発制度的に奨励するような制度を創設することによって、使用者と労働者の間の信頼関係、忠誠心といった文化、風土の問題が懸念されました。その結果、まず最初に事業者に対して通報がなされることを原則とする制度にすることにより、事件や事故の早期発見のみならず企業内の健全なガバナンス体制や、オープンな組織体質を促す上でも有効であるという認識が広がり、ようやく各界からの支持を得ることができ、法案の成立に至ったという背景があると聞いております。  企業が幾らまじめにコンプライアンス取組を行っていても、いきなり外部機関通報されてしまってはコンプライアンスへ自主的に取り組むインセンティブが阻害されてしまいます。また、事実かどうか分からないのにあたかも事実かのように扱われ、簡単に企業の信用や評判を損ね、その株主や従業員取引先にも不利益を生じさせ、ひいては失業者を生む可能性も十分にございます。そのため、今回の法案では企業内部への通報を自主的に促し、企業がきちんと対応しない場合や証拠隠滅を図る場合、あるいは急迫性がある場合には外部通報できる制度になっておりますことは合理的であると存じます。このような枠組みであれば、事業者側といたしましても、労働者が安心して通報してきてくれる環境を整えるなど、コンプライアンスへの自主的な取組を積極的に行うことへのインセンティブも働きます。  次に、コンプライアンス経営内部通報の関係について付言させていただきます。  現在、企業経営資源を割き、コンプライアンス経営に努めています。経営システムでありますので、コンプライアンス施策もシステムとしてとらえる必要があります。お手元のレジュメの二ページに、コンプライアンス施策の七つの段階を記載しています。  すなわち、第一は、コンプライアンスを最優先とする企業理念、経営トップの方針の明確化です。第二は、コンプライアンスについての組織的コミットメントを明らかにするためのコンプライアンスオフィサーの任命、コンプライアンス委員会設置及びその運営です。第三は、コンプライアンス企業倫理のための包括的な行動規範や個別規定といった規範定立です。第四は、コンプライアンス関連法令社内規範の周知徹底活動です。第五は、モニタリング、すなわち監視、チェックの活動です。第六は、コンプライアンス違反についての調査と処罰の実施です。第七は、再発防止策を講じることです。  第五のモニタリングには三種類あります。第一が、日常業務において上司が部下の活動を管理したり監督したり、法務部が社内予防法務活動の一環として牽制したりする活動で、これが主体的かつ基本的なモニタリングです。第二は、内部監査部門による事後的かつ第三者的なモニタリングです。監査なきコンプライアンスなしとも言われますが、現在、企業内部監査部門の強化に努めています。第三のモニタリング内部通報によるものです。内部通報はあくまで補充的、補助的なものでありますので、これですべての企業不祥事問題を解決できるというわけではございません。  したがいまして、本法につきましては、日本の法制度や判例、企業自助努力などを含めたシステム全体の中に適切に位置付けることが重要であると存じます。  先生方におかれましても、是非政府案の方向で立法していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  以上でございます。
  7. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) ありがとうございました。  次に、浅岡参考人にお願いいたします。浅岡参考人
  8. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 浅岡でございます。  本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  私は、消費者の立場で被害者救済など実務をやってまいりました弁護士でございますけれども、あわせまして、日本弁護士連合会が製造物責任法消費者契約法、情報公開法などの消費者に関連いたします制度の制定に当たりまして関与をいたしました。そして、今般の国民生活審議会の審議には一員として参加させていただきましたので、その経験を踏まえまして意見を申し上げたいと思います。  今般、既に消費者基本法が成立しておりますけれども、この消費者基本法に係ります部分につきまして、消費者部会の報告につきましては、私は、細部で意見はございますけれども、この公益通報者保護に関する部分を除きましては賛成をいたしました。しかし、この部分につきましては異議を留保させていただいております。この国会で、消費者基本法国民生活審議会報告を更に前進させて立法していただきましたので、その点については敬意を表したいと存じます。  なぜ公益通報者保護制度に関します部分について異議を申し上げたかと申しますと、これはそもそも今回の報告消費者政策の実効性の確保の方策の一つとして位置付けられたものであります。その政策全体は、消費者に、市場にも参加し、積極的に自らの利益を確保する自立した主体としての行動を求める、その前提といたしまして、消費者が必要な情報を得て選択ができる、そうした権利を認めていこう、事業者にも情報公開コンプライアンス経営を求めようというものであります。  しかしながら、今般のこの公益通報者保護制度についての審議会報告部分、またさらにそれを消費者の立場から見ますと、保護対象を詳細、厳格にいたしました、小さくいたしました本法案につきましては、こうした消費者の役割あるいは権利をどう実現していくのかという観点が欠落していると、そうした点で異質なものと感じましたからであります。  この議論の過程で、日弁連や消費者団体意見を申してまいりました。先ほどの大村委員の御発言ですと、これらが十分配慮され、微妙に調整されたということでございますが、私どもはそう考えておりません。  例えば、検討委員会の第四回、最後から一回目でありますが、そこでもう消費者側代表の委員の方は、この委員報告案は余りに事業者保護に偏り過ぎていると苦言を呈しておりますし、そこから更に後退したということでございます。  こうして見ますと、私の個人的な関心も含めてでございますが、今般、この国会で成立いたしました消費者基本法の本当に真価がここで問われる、ここで目指したものは何かということが、まず同じ国会で問われていると私は考えるところであります。  まず最初に、私どもは事業者性善説あるいは性悪説、いずれに立つものでもございません。事業者があるいは行政組織が自主的に内部取組をされるということはこれは必要なことでありますし、それを推奨していくという制度の必要性も考えます。また、こうした内部告発制度について、常に外部への通報が必要だと考えているものでもございません。  しかし、これらのバランスをどのように取っていくか、これは大変慎重な審議が必要でございます。特に、今般は通報者保護に関する民事ルールを作ろうということでございますので、決して行政の一部の規定を作ろうというわけではないわけでありますので、そうしたバランスを特に取っていただかなければならないと思います。  先ほどの松本先生のお話の中でも、告発イメージあるいは通報イメージというお話がございましたが、こうしていずれかに切り分ける、どちらかというようなことは本制度にはなじまないものであると思います。これらをいかにバランス取っていくか、相互に補完し合う関係、これが必要である。  と申しますのも、事業者の秘密保護という観点、それも重要でございますけれども、通報者保護消費者の知る権利、これにバランスを取ることによって事業者との関係が緊張関係が生まれ、事業者の適切な措置が担保されていく、これは今日の法制度基本考え方であろうと思います。  本日、私の方で用意いたしましたものは、A3の用紙で、英国公益開示法と、そして国民生活審議会報告、そしてパブリックコメントに付されました内閣府からの骨子案について、また、本法案につきましての各項目を一覧表にいたしました。そして、オレンジのパンフレットは国民生活審議会報告を整理したものでございます。  本日は、先ほどの大村委員のお話にもありましたように、英国でいろいろ議論の末、バランスを取られたと評価されております英国公益開示法と比較いたしまして、本法案の問題点を、大きな二つの点について指摘申し上げたいと思います。  まず、通報対象でございますけれども、本法案は犯罪行為あるいはこれにつながる規制違反に限っております。犯罪行為に限られることになりましたのは、国民生活審議会報告ではございません。この法律案になるところで変わったものであります。これは入口を大変狭くする、そして通報者の最初のステップを大変ハードルを高くするというものであります。一覧表をごらんいただきましたら分かりますように、英国公益開示法はこのような考え方には立っておりません。法令違反と申しますときにも、民事法違反、不法行為を含みますし、そうした法令違反に当たるかどうかを問わず、生命、身体、財産に影響を与えるものをそうした事実について含めております。  また、それも、起こったこと、起こっていること、また起こるだろうこと、将来のことについても含めまして、それは今法案にありますように、正に生じようとしているというような切迫性を要求しているものではございませんで、イズ・ライクリー・ツーという表現でございます。正にその発生のおそれと表現しておいていただいたことで十分足りたわけであります。  こうした、この規定ぶりは英国公益開示法の制定に大変貢献いたしましたパブリック・コンサーン・アット・ワークで働いております弁護士のガイ・ディンによりますと、国民にサムシング・ロング、何か悪いことを通報させよう、してもらいたいということを従業員に求めているというものであります。こうした市民の感覚、常識的な感覚を生かすということが今、大村委員がおっしゃられました企業社会的責任にこたえ、また持続可能な経営に資するものであると考えるところでございます。  また、本法案は、匿名ではなく、書面によって、あるいは氏名を明らかにしてということが随所にうかがわれる法案になっております。私も、公益通報が匿名ではなく顕名で、名前も姿も示してできるようなことは大変望ましいことだと思いますけれども、このような、そういう仕組みを作ろうというのであれば、正に犯罪行為だけを対象とするというふうにいたしますと、あなたは犯罪をしているということを通告せよということでありまして、これは大変心に負担を感じさせるものではないでしょうか。こんなことでよろしいのでしょうかということを通報させる仕組みということによって、こうした名前や姿も示して通報できるということになっていくのではないかと思います。審議会の意見、検討委員会議論の中でも、こうした意見は私は決して少数ではなかったと、むしろ多数であったと認識をしております。  次に、保護される通報の要件につきましてであります。とりわけ、外部通報先の要件について申し上げます。  審議会で外部通報先の要件を議論した機会は決して十分ではありませんでした。本当に議論もなく、この中身、この法案の意味が、報告の意味がどんなものかということの議論、質問をたくさんしなければいけないと、そこはそういうものでございましたが、その答えも得られないまま最終報告に至っております。学者委員からも、やはりもう少しちゃんとしておかないとこの先どうなるか分からないという不安を持たせるものではないかということが、例えば第四回の議論最後段階でも出ていたというものでございました。本法案が、さきも申しましたように、包括的な民事ルールを定めるというものでございますので、とりわけそうした要素が重要である、慎重な議論が必要だと思います。  国民生活審議会報告におきましても、また現在は更にそれが制約されておりますけれども、外部への通報のルートというのは大変厳しいものに設定されております。例えば、その第一番目、審議会報告では(a)でございますけれども、不利益処分を受けるおそれというふうなものにつきましては先例があればということでございますが、これは例えば訴訟にでもなっているとか、紛争が公然化して顕在化しておりませんと、あったかどうかを知ることは大変難しいことであります。  また、コンプライアンス対策のヘルプラインが設けられているということでありますと、それが機能するかどうかを問わないという仕組み、ことになりますので、それではやはり通報者にとっては不安を禁じ得ないというのが現状ではないかと思います。  証拠隠滅につきましても、衆議院での答弁も伺いますと、例えば代表者や担当役員が関与している場合と、こう答弁がありますけれども、そのようなことを労働者通報者が知ることはほとんど不能に近いのではないかと思います。こうした要件は事実上機能することは余り期待できない、よほどの場合でなければ機能しないというものであります。  もう、あと二つ通報ルートがございまして、その一つ内部通報し、あるいは行政機関通報し、それが相当期間内に適切な措置がなされない場合ということでございましたが、この要件が大変本法案では大きく変化をいたしまして、変質、後退をいたしました。  まず、行政機関への通報につきましてはこの要件から外されております。これは、事業者にとりましては行政機関が適切に措置をするかどうか分からないので、そうした要件に係らしめることが不安であると、こういうことでありまして、行政機関への不信感がその背景にあるのではないかと思います。これは消費者、いや通報者側にとりましても、その後、行政機関への通報がどのようになっていくのかということを不安に思うものでございますし、ただただその後の措置をじっと待っていなければいけないという制度になるのでは、不安を禁じ得ないというものであります。  事業者に対する通報につきましては、審議会報告では相当の期間内に措置がなされない場合となっておりましたが、本法案につきましては、最終的には二十日を経過して調査するかどうかを報告するというようなところにとどまるものとなりました。  といたしますと、調査すると報告がありました後、その措置がいつどのようになされるのか、そしてなされなかった場合にそれではどのように通報者ができるのかということについては大変不明確なものになりますし、それは通報者にとっては知り得ないもの、通報者側に立証責任があるものでございますけれども、立証し得ないものということになってしまっているわけであります。  これに対する、この問題につきましての公益通報者公益開示法、英国法は、外部通報する前に、その事業者あるいは行政機関に本質的に同じ問題を通報したことがあることということであります。これは通報者にとっては立証可能なことであります。そうしたことは、いきなり通報するということについての先ほどの大村委員からの御批判にこたえるものであります。しかし、今回の法案は、いきなり通報したことに対する対策ではなくて、内部行政機関通報された後、次のステップとして外部通報をされるという道筋を事実上封じるということにつながる仕組み、これは立証責任の分配も絡みまして、そうした仕組みになっております。  そういう意味で、ステップ・バイ・ステップの方式ではなくて、並列的と内閣府もおっしゃっておりますけれども、これは並列的なように見えますけれども、外部通報のルートがほとんどなきに等しいものでありますので、事実上内部及び行政機関への通報ルートだけが残る。これは消費者保護基本法議論にあります、行政中心になって今後の消費者政策を行うという従来型のものにまた戻ってしまっていると、こう思うわけであります。もう少し消費者、市民の役割というものをそこに加えていっていただきたい。  さらに、最後の、国民生活審議会報告最後の要件は、その問題、生命、身体に対する危険が急迫していると、正に急迫したものであることということを要件にしておりました。これに相当する英国公益開示法は、その問題の性質が重大であることというものであります。  私は、こういうふうに記載していただく法律を作っていただくのであれば、そして英国公益開示法の中にはすべての事情を考慮してそうした通報が相当、保護するのが相当である場合という規定も加えております。こういうふうに、一般的に社会通念に従いまして、保護すべきものが保護されるということを法律案の中にしっかり担保されております場合は、私どもは賛成をしたいと思います。  しかし、現状におきましては、そうしたものは一般法理にゆだねるということで従来どおりでよろしいではないかと、こう大村委員もおっしゃるわけでございますけれども、それは通報者にとりましては、こうしたことで明確化されることによりまして保護範囲は大変狭いもの、そのほかにつきましては大変不明確でリスクの大きいものというふうにかえってなるわけでありますし、一般的なその保護要件がどのように機能するのかということを議論します前にこうした詳細な通報ルールというもの、通報のルートというものを定めてしまいますと、これにそぐわないものにつきまして保護を、裁判所としては大変使いづらい法律として登場するであろうということを懸念をしております。  最後になりますが、こうした民事ルールを制定いたしますときは、消費者契約法におきましてもそうでありました、製造物責任法の立法でもそうでありました。やはり一般、個別に明確化することの要請は一方でございますけれども、すべてを、すべての場合を羅列することは事実上無理でありますし、どうしてもそうした中から漏れるところが出てまいります。このように、本法案のように極めて限定をいたしますと、大変漏れるところが出てまいります。そうしたものにつきまして、ちゃんと手当てをする一般条項というものを加えることがどの法律議論でも大変議論になってまいります。  製造物責任法ではそのような欠陥の概念規定に国会で変えていただきました。そして、消費者契約法では、審議会の中で無効規定につきまして、そうした一般条項を組み入れたものにしていただいて現在の法律になっております。そのことによって今日の役割、法律案が、そうした法律機能しているのでありまして、もしこうした制度を設けるのでございましたら、法律の中に、通報者にとってステップ・バイ・ステップを基本とするのでもそれはよろしいのですけれども、ちゃんとした例外があり、ステップそのものも通報者にとって踏み出せるものにすること、そしてその擁護につきましても、ちゃんと法律の中で一般条項を組み入れた保護規定としていただくことが民事ルールとしての基本であろうかと思います。  よろしくお願いいたします。
  9. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) ありがとうございました。  次に、三木参考人にお願いいたします。三木参考人
  10. 三木由希子

    参考人三木由希子君) 私は、NPO法人情報公開クリアリングハウスで室長を務めております三木でございます。今日は、このように意見を申し述べる機会を与えていただき、大変感謝をしております。  まず最初に、私どもが何をしているか簡単に紹介をさせていただきます。  私どもは、主に公的機関情報公開を推進する活動をしているNPO法人であります。NPO法人としては一九九九年の設立でございますが、その前身は一九八〇年に情報公開法の制定を目指して活動を始めた情報公開法を求める市民運動というものでございます。発足以来、情報公開制度だけではなく、個人情報保護制度にも取り組み、最近では、組織の透明性を向上させる仕組みであり、また市民が危険や不利益を回避するために必要な情報を知る権利を保障する仕組みとして公益通報者保護制度にも関心を持ち、意見表明等を行ってまいりました。こうした立場から、公益通報者保護法案に対して意見を申し述べたいと思います。  今日は皆様のお手元に、私どもの方で昨年の七月にイギリスで公益開示法の導入に主導的な役割を果たしましたNGOの事務局長をお招きした際のお話の内容をまとめたものをお配りしております。公益開示法につきましては、今般の法案については参照をしたというふうに言われておりますが、公益開示法と今般の法案が似て非なるものであるということはこの資料をお読みいただければよく分かるというふうに思っておりますので、是非後でお読みいただければと思っております。  まず冒頭に、私たちの事務所にこれまで寄せられた、仕事場で不当、違法な行為が行われていて、それを何とか改善したいという相談をしてきた匿名の電話で繰り返された会話というか、やり取りを紹介したいと思います。これらの人たちは、私たちが報道等で紹介をされるたびに、わらにでもすがる思いで私どもの事務所に相談の電話をしてきていただいた方です。  まず冒頭に、こうした相談の電話はこういう形で始まります。職場で問題があって何とかしたい、職場で自分が通報したことを知られるのはとても怖いと。もし私が通報した場合どうなるのでしょうかと。何か守ってくれる仕組みはあるのでしょうかということを大抵聞かれます。残念ながら、私はそれに対して、職場で訴えてどうなるかは職場環境次第なので何とも言えませんとお答えするしかありません。また、残念ながら、今のところ、通報したことで不利益を受けても具体的にそれを保護する仕組みというのはありませんということもお答えをします。その上で、公益通報者保護法案というものが今ありますという説明を申し上げます。  そうすると、大抵、相談をされる方はこういうふうにお聞きになります。その法律ができると私は保護されるのでしょうかと。私はそれに対しても、大変残念なことですが、明確なお答えをすることができません。この法案というのはすべての通報保護する仕組みではないということをまず説明を申し上げます。法律と政令で定められた、法律に定められた犯罪行為通報した場合に保護をする仕組みですと。ですから、そちらが通報したい問題がこうした条件に当てはまるかどうかを確認してみないと何とも言えないんですということを申し上げざるを得ません。  そうすると、大抵、相談をされた方は、そんなに確認しないと保護されるかどうか分からないんですかと。もし犯罪行為に当たるということになると、法律はどのように守ってくれるのですかというふうにお聞きになります。そうすると、私の方では、法案通報したことで解雇や待遇等に不利益を与えることを禁止しているだけなものですから、もし何かあれば、この制度を根拠に争いやすくなるということにはなりますということをお話しせざるを得ません。  そうしますと、大抵相談される方は、通報して保護されるかどうかもよく分からないし、具体的に守ってくれるわけではないですねと、法律ができてもとても怖くて通報ができないというふうにおっしゃいます。私は、最終的には、残念ながらやってみないと分からないんですということを申し上げざるを得ないということが何度も繰り返されております。  こうした電話というのは、自分の利益とは関係なく、また自らの良心の下に事態を何とか改善をしたいということを、その思いで私どもの方に電話をしてくるわけであります。私は、こういう思いにこたえられない社会ということに対しては、非常に情けなくなることがございます。  それからもう一つ、具体的に、いわゆる内部告発をしたということで不利益を受けたという方からのお話を紹介したいと思います。この方は、裁判で証言をしたために内部告発者として病院で嫌がらせを受け続けている医師であります。この医師は、金沢大学医学部附属病院で患者に無断で卵巣がん治療の比較試験が行われていたことで、ひどい副作用に苦しんだ患者の家族が国を相手取って賠償を求めた裁判で患者側の証人として証言をした方です。今回の参考人で私が意見を申し述べるということをお伝えしたところ、意見を寄せてくださいました。このケースの詳細につきましては、新聞記事をお配りしておりますので、後でごらんいただければと思います。  このお医者様から寄せられた意見は次のようなものです。患者に無断で比較試験を行ったとしても犯罪行為ではありませんし、それを規制する法律はありません。私がかかわっている裁判では、臨床試験の際の被験者からのその旨の同意が必要かどうかが争われているものですから、法案では、私が患者さんやその家族に無断で被験者にされているという事実を知らせた途端、その行為内部告発になってしまう、つまり外部通報になってしまうということであります。その結果、通報者はその組織からのけものにされてしまう。私の場合、私の勤務する科の不祥事について、意を決してまずは直接の上司である臨床試験の責任者の教授へ通報し、次いで他の上層部の方々通報したにもかかわらず、医局講座制という大きな壁のせいか、それこそ取り合ってもらえずに黙認されたことからしても、一般には、勤務先によほどの公正な機関設置されない限り、このような勤務先への通報は、通報者にとっては無駄どころか一層つらいものとなります。組織の一員として雇用された者にとっての内部告発は、それこそ自分の一生を懸けても余りあるような非常の行為なのですということをお寄せいただきました。  この医師の方は、具体的には、大学の勤務医にはアルバイトが認められているそうでございますが、それをするためには直属の上司の許可が必要だそうで、この許可が下りない、他の勤務医に比べて全く下りないという状況にあるそうでございます。また、学生への教育機会を制限されるというような不利益を具体的に受けているというふうに話を聞いております。  私は、このようなことに触れるにつけて、問題を知って改善をしなければと思う人々の思いが達成される社会であってほしいというふうに思っておりますし、そうした法制度は社会インフラとして必要だと考えております。公益通報者保護法案は、本来であればそうした社会インフラとして必要な制度のはずだと思っております。しかし、残念ながら、次に述べるような理由から、現在の法案というものはそういう仕組みになっていないと考えております。  まず一つは、この法案というのは入口が狭くて複雑で、私の目からすると迷路のようだというふうに感じておるからであります。法案は、別表、政令でした法律で定められている犯罪行為通報対象事実としております。しかし、目の前にある問題行為法案、政令で指定した法律で規定される犯罪行為に該当するか否かの判断を通報に当たって通報者に求める仕組みが、果たして現実的な制度なのでしょうか。人の生命や身体に直接的に被害を与えるような緊急事態が目の前にあったとしても、まず通報者はそれが指定された犯罪行為に該当するか否かを調べなければこの法案によって保護される通報か否かが分からないような仕組みが、社会が求めるような仕組みなのでしょうかということを思うわけでございます。  公益通報者保護制度は、通報された事実が改善を要するものであればそれを改善することによって組織の自浄能力を高める、また、未然に問題や被害、損害を予防し、だれの利益でもない社会の利益を守るものであるべきだと考えております。指定された犯罪行為に限定した仕組み導入することは、保護すべき通報は犯罪行為に関するものでよいという誤った認識を生み出す可能性があります。また、通報すること自体が何か特別であるかのような誤った印象を生み出す原因になりかねないと考えております。  先ほどからも御紹介がございましたが、多くの企業ではヘルプラインなどが設けられております。このヘルプラインでは、犯罪行為だけではなくて、もっと幅広く問題について通報を受け付けているところが少なくないはずであります。しかし、通報対象を限定した法律ができることで、今後、企業内部通報した場合、ヘルプラインでは幅広く受け付けている、そうすると、入口では、通報する点においては同じでございますが、出口においては、一方では現在の法案で特別の民事ルールによって保護をされる、別のものについてはそうした特別な保護がないというような形になります。これでは、入口は同じでも出口が異なるという状況を生み出すだけだというふうに考えております。  したがって、そもそも法案目的規定自体が法令遵守目的とするのではなくて、法令遵守のほか、国民の生命、身体、財産その他の利益保護のため公益通報者保護するということで、法令遵守ではなくて公益保護するということをより明確に打ち出すべきであったというふうに考えております。そして、通報対象として、別表、政令で指定する法律にかかわる犯罪行為に限定をするのではなく、国民の生命、身体、財産その他の利益に関するものなど不正行為全般について広く通報対象とし、通報対象に該当するか否かで不要な混乱を招くような制約は取り除くべきだというふうに考えております。  二つ目の問題点として、通報先の要件について意見を申し述べたいと思います。法案では内部行政機関外部三つ通報先が定められております。それぞれに条件が付されております。私は、事業者が独自に取り組んでいる内部通報の受付と、それに対する対応を否定する気は全くございません。むしろ、内部での取組をしっかりしていただくというのは非常に重要だというふうに思っております。しかし、内部取組が確実かつ実効性のあるものにするためには、内部で適切な対応ができない場合は外部通報されるという仕組みが不可欠であるというふうに考えております。法案は、一定の条件の下で外部通報することができるとしておりますが、外部通報する場合は非常に条件が厳しく、これは内部での通報又は行政機関への通報を適切に対処をするということのインセンティブを与えることにはならないと考えております。  特に問題だと思う点は、法案の三条三号ニの規定であるというふうに考えております。内部に書面による通報を行ってから二十日を経過しても調査を行う旨の通知がない場合又は正当な理由がなく調査が行われない場合は外部通報できることとされております。しかし、通報に対しては調査が行われるか否かが重要ではなく、問題が是正されるかどうかが問題であります。ですから、調査をしたか否かをそもそもの要件としていること自体が、私は本末転倒であるというふうに考えております。  この規定につきましては、別の観点からも問題を指摘したいと思います。行政機関通報した場合は二十日以内に調査を行う旨の通知がなくとも、調査を行っていなくとも外部通報する道が閉ざされる仕組みになっております。確かに法案の十条で、行政機関通報に対して法令に基づく措置その他適切な措置を取らなければならないという義務が課されております。しかし、この規定をもって行政機関の対応については何ら担保されていないというふうに考えております。これは、私自身の経験則上申し上げることができる点でございます。  私どもは、情報公開制度の経験が大変長くございます。情報公開法の例を挙げて説明をしたいと思います。行政機関情報公開請求を受けてから原則三十日以内に開示、不開示等の決定をしなければならないとなっております。また、三十日の延長、決定期間の延長というものも認められておりますし、それでもできない場合は特例というものの適用も可能でございます。この特例につきましては、期限の限定がございません。行政機関が必要と思えば裁量の範囲で延長ができるということになっております。その結果、二年近くたっても請求から決定までの、請求したものに対する決定が出ないという事態が起こっております。これは、法律で明確に期限が定められた情報公開法又は期限に関する定めがある情報公開法でもこのような事態が起こっております。  また、情報公開法では、非公開となった場合につきましては行政不服審査法に基づく不服申立てを行うことができるとなっております。不服申立てにつきましては、第三者機関である情報公開審査会に諮問され、審査をされるという仕組みが取られてございます。請求者に対しては、不開示決定を知ってから六十日以内に申立てをしなければならないという時間の制約がございます。しかし、行政機関には、その不服申立てをいつどのように扱うかということについての時間的な制約は一切ございません。その結果、不服申立てを行ってから二年以上、何ら対応しなかったというケースが起こってございます。行政機関には、法律上何ら時間の制約がなく、それを処理する義務だけが課されているというのが行政不服審査法でございます。  こうしたことを勘案しますと、行政機関に対して、通報に対して適切に対処をするという義務を課したとしましても、時間の制約がない以上は、そこをどのように対応するかについては裁量の範囲になってしまうというふうに考えております。こうした規定は、何ら迅速かつ適切な通報処理を担保することにならないと考えております。  ほかにも細かく申し上げれば様々な問題がございます。しかし、以上のことから、総じて法案通報者にとって分かりにくくかつ使いにくい制度であり、また通報の適切な処理が必ずしも担保をされていないという、このような根本的な問題を抱えたままの法案には反対をせざるを得ないというところでございます。  私は、公益通報者保護法案通報者通報しやすい仕組みであると、つまり通報したことによって初めて問題が是正をされるという仕組みでございますので、通報者の立場に立った御検討を本委員会でしていただければというふうに思っております。  以上でございます。
  11. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。     ─────────────
  12. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、松井孝治さんが委員辞任され、その補欠として伊藤基隆さんが選任されました。     ─────────────
  13. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 森田次夫

    ○森田次夫君 自由民主党の森田次夫でございます。  参考人の皆様、ただいま大変貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。私からは、ごく基本的な事項につきまして二、三お伺いをさせていただきたいと思います。したがいまして、ただいまの陳述いただきましたそうしたことと重複するところもあろうかと思うわけでございますけれども、私としてはもう少し詳しくお聞かせ願いたい、こういう思いからお尋ねするわけでございますので、その点よろしくお願いを申し上げたいと思います。  そこで、最初に松本参考人と、それから大村参考人、お二方にお願いを申し上げます。  三菱自動車のリコール隠しのような正に人命にかかわるような事案は、これは論外といたしましても、我が国には昔から内部告発というのは裏切り行為だとか裏切り者だと、こういうような企業風土というのはあるわけでございまして、現在でも私は根強く存在しているんじゃないかなと、こんなにも思うわけでございます。そうした中で、最近こうした考え方も大分変わってきた、こういうことも事実でございますけれども、まだまだあるんではないかなと、こんなに思うわけでございます。そこで、この法律では保護されたといたしましても、企業内でいわゆる村八分的といいますか、そういうようなことも十分考えられるんじゃないか、こんなにも思うわけでございます。  そこで、そこまでに至る前に通報者保護するための工夫であるとか知恵であるとか、こういったことが極めて重要になってくる、こういうことでいろいろと今先生方からもお話しいただいたわけでございますけれども、こうした点についてもう少しお聞かせをいただければと、このように思います。よろしくどうぞお願いします。
  15. 松本恒雄

    参考人松本恒雄君) 正に今議員おっしゃったとおり、従来の日本企業内における内部告発イコール悪というイメージ、仲間に対する裏切りであるというイメージ、その単純なイメージを打破するというのが今回の法案のメッセージの一つだと思います。保護される内部告発というのも十分あるんだということを明確にしたという点、したがって企業サイドとしてはそれに対して内部努力しなきゃならないというふうに企業経営者の意識を変えるというところが一番大きいと思います。  ただ、それでも、法案ができても実際村八分が起こるかもしれないではないかという部分につきましては、企業内部努力ということになるんですが、その最大の努力はやっぱり企業トップがきちんとこの法律の精神を理解をして社内に対してトップとしてメッセージをきちんと出すということ、そしてそれを裏打ちするような社内仕組みを作って、実際に動かしていくことによって透明な社風を作っていくというふうに努力されることだと思います。
  16. 大村多聞

    参考人大村多聞君) 実は、三菱商事は、先ほど申し上げましたように二〇〇一年に内部通報と申しますか目安箱という制度を設けたんですが、もう一九九〇年代からこういうのを設けるかどうかということを社内で検討している、そのメンバーが私でございましたが、実は私は一九九〇年代は反対していたんですね。  というのは、私は会社の社員に対して大変信頼していて、一方、現実はいろんな問題が起こると。そういう場合にはきちんとその上司、それから法務部その他関係部局相談すればいいだけのことで、何でこんなものが必要かと。正々堂々とするという我が社の社風に反するんじゃないかと個人的には思っていました。こんな制度を設けるというのは、よほどコンプライアンス経営が劣化した会社が考えるんであって、弊社では要らないなんという意見内部で言ったんですね。  ところが、それからそういう考えというのがだんだんだんだん、一つ基本ではあるけれども、一方では人間というのは弱いものであると。必ずしもそういうふうに正々堂々と問題点を指摘することができない人がいると。これもまた事実であり、これを積極的にくみ上げることが結局、経営全体、それから役員、最終的には株主代表訴訟等のリスクを背負っている役員を守るためにもなるんだと、こういうことに議論が行って、大変長い準備した結果、二〇〇一年にもう既に導入して先ほど申し上げましたように運用しているわけでございます。  当然その導入に当たっては、内部で本来の職制を外してコンプライアンス通報ラインに通報したことをもっていかなる差別的扱いもしないし、それから秘密は必ず守ると、通報者の名前を漏らさないとか、こういうようなことは当然守って、ルールとして決めて、そしてそれを実行しているんですけれども、その結果、それなりの相談が来まして、私も、それは全部私が受けていますけれども、先ほど申し上げましたように、九割は見解の相違だとか、やっぱり弱い人間が事実を、全体を把握しないでやっていくこととか、いろいろ競争が厳しいために上司の逆に管理が強過ぎると、そういうことに対する反発とか、そういうのがほとんどでございますが、ただし、そういう通報をきちんと聞いていると、やはりその部門の管理の在り方とか問題点が浮き彫りにされるということもあって、それが逆に経営者に対して大変有効なアドバイスにもなるというような体験をしていまして、今現時点で社内ではこういうような物の考え方というのは、私の知る限りは大手の大企業はほとんど共有されております。  すなわち経営者に上がってくるということが、結局、経営自身のためであり、そして企業のためであると、こういう前提がありますので、この辺のところ、内部でこういう形で吸い上げるという形になっていることは、もう先ほど申し上げましたようにこれを更にエンカレッジしてほしいなということが背景にあります。ただ、これが内部でもそういうことをしないでいきなり外部へ行くということになると、それは今御指摘のように、何で内部でもこれだけ努力しているのにいきなり行くんだと、きっと動機不純じゃないかと。こんな話にはなろうかと思います。  以上です。
  17. 森田次夫

    ○森田次夫君 ありがとうございます。  それでは、もう一度大村参考人とそれから三木参考人にお願いを申し上げます。  本法では、公益通報対象者を労働者とそれからその退職者ということでなっておるわけでございますけれども、これ労働者だけではなく役員も含めるべきだと、こういう意見もあるわけでございますけれども、この点についてどのような御見解をお持ちか、お聞かせをいただきたいと思います。
  18. 大村多聞

    参考人大村多聞君) この法律がすべての問題を解決するということではなくて、例えば役員に関しては大変重い責任が商法上ありまして、株主代表訴訟問題もあり得ると、こういうことで立場が違うということで、労働者保護するという法制としてでき上がっていると理解していますので、それはそれで合理的だろうと。ただし、小さい企業なんかについて、役員がいわゆる労働者を兼ねていると申しますか、労働者の立場と兼務と、役員兼務しているというような立場は、これは労働者としての立場で法律が適用されるというふうに理解していますので、現法案で特に問題はないんじゃないかなという認識をしております。
  19. 三木由希子

    参考人三木由希子君) 私は、役員しか知り得ない問題というものも多くあるというふうに思っております。ですから、私は、この法案の中では、確かに労働者保護というものを前提法律はできているという御指摘はそのとおりであるというふうには思いますが、役員も含めた保護というものをしていかないと、本来保護すべき又は通報されるべき情報通報されないという事態が発生するのではないかと大変危惧をしております。
  20. 森田次夫

    ○森田次夫君 ありがとうございました。  それでは、最後の質問になりますけれども、松本大村浅岡の三人の参考人の方にお願いを申し上げます。  通報対象の事実についてでございますけれども、当初の骨子案では、生ずるおそれがある、こうしていたのを、そのおそれの有無については当事者間の事実認識の相違を招く可能性がある、そういったことを踏まえまして、正に生じようとしていると思料する場合、こういうふうにしたと聞いておるわけでございますけれども、このことに対しまして、元に戻して、生ずるおそれがあるとすべきだと、こういう意見もあるわけでございますけれども、このことにつきましてどのように考えておられるか、お聞かせをいただければと思います。
  21. 松本恒雄

    参考人松本恒雄君) 基本的には日本語の表現をどこまで広げて解釈するかというところの話に尽きると思います。  その生ずるおそれであると、通報者が主観的に勝手に思っていることだけでもいいんではないかと、それじゃおかしいんじゃないかということで絞られたんだと思いますが、生ずるおそれがあるだけではなくて、あると信じるにつき相当の理由があるという絞りを掛けてあれば、そんな極端なケースには多分ならないというのが普通の法律家としては判断になると思います。ただ、おそれという言葉を広げていけば、非常に広くなってあいまいになるというのは確かに事実であります。  逆に、正に生じようとしているということも、例えば先ほどの三菱自動車のケースなんかですと、ある事故があって、これであれば他の同型の車でもまた事故が起こるかもしれない、起こる可能性があるということを技術員が、その会社の技術者が判断をしたにもかかわらず、上が、トップが黙っていようというようなことで決断をして隠したとしますね。そうしますと、また起こるかもしれないわけですが、そこで正に生じようとしているというのを事故が起こる直前であるというふうに極端な解釈をすればこれは何の意味もないということになりますが、そこまで極端な、つまり事故が起こる一秒前をカメラで撮ってとか、こんな極端な解釈をされれば何の意味もないわけですが、恐らくそうはされないだろうと。したがって、どちらの表現を取っても、極端な解釈をすれば極端な非常識な結論になるという点では同じことだろうと思います。  将来、一定の期間内に起こる蓋然性がかなり高い決断をある時点で行ったということで正に生じようとしているということを解釈されれば、当初の生ずるおそれがあるということとそんなに変わった結論にはならないというふうに考えます。
  22. 大村多聞

    参考人大村多聞君) その生じるおそれが正に客観的な事実に基づいた蓋然性の高いものということであれば結局同じことになるんですけれども、単に生じるおそれがあるということになったらもう何とでも、誹謗中傷から人をおとしめることから全部生じるおそれがあるでなってしまって、先ほど申しました我々の実感からいっても、やはり通報がなされるときには一部の真実、九割の誤認というのが現実でございます。そのときに、この生じるおそれというような表現のままでは、現場で真剣にコンプライアンス対応をしようとしている部局経営に対しては大変問題が多いというふうに認識していますので、現在の法案は妥当かと思っています。
  23. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 先ほど松本先生がおっしゃいましたように、元々、審議会報告におきましても、骨子におきましても、生ずるおそれがあると信じるに足る相当の理由があることという制限が付いていたわけであります。単なる思い込みがここで対象となっていたわけではございません。それをなおかつ、正に生じようとしているというふうに変えていかれましたのは、時間的切迫性ということを強調しようとされたことであります。また、言葉といたしましても、それが常識的に取られるところではないかと思います。  そのような解釈がされる余地のあるところをわざわざなさる必要も全くないわけでございますし、そうしておいた上で適切に解釈される余地もあるのではないかと。このようなことから法律を作っていただくということは、民事ルールとしては不適切であろうと思います。  元々、英国公益開示法におきましては、生じる可能性があることでありまして、そういう可能性が高いこととまで言えるかどうかというようなものでありまして、それで十分判断ができているものでありまして、これは是非とも元へ戻していただきたいと思います。
  24. 森田次夫

    ○森田次夫君 終わります。
  25. 川橋幸子

    川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子と申します。本日は四人の参考人方々、貴重な御意見をありがとうございます。  まず初めに、もう少し補足して伺わないと分かりにくかった点を浅岡参考人にお伺いしたいと思います。  大変盛りだくさんに豊かな御意見ちょうだいしまして、ちょっと私、消化不足のところもあるのでございます。自分の能力不足をおわびして、まず伺いたいと思いますのは、最後のところで、一定条項とおっしゃいましたでしょうか、個別具体的にきめ細かく規定するのではなくて、包括的に一定の法理条項、(「一般条項」と呼ぶ者あり)一般条項ですか、一般条項というものが本法に置かれることを非常に強く希望しておられたように感じまして、その一般条項というのはこれまでの製造物責任法やら過去の二つ法律の中ではあったはずなのに、どうしてここの法律ではそれが入らないのだろうかと、そういう御疑問を投げ掛けたように伺いましたので、その点をもう少し補足してお述べいただきたいと思います。
  26. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 衆議院の参考人出席されました落合参考人が、製造物責任法のときとか消費者契約法のときもこうした法律で判例水準を切り下げるという批判があったけれども、実際はそうはなっていないではないかという御指摘がありました。  これは、私どもは、製造物責任法の最終的な立法におきましては、日本弁護士連合会も基本的に賛成の参考人意見陳述をいたしております。しかしながら、国民生活審議会議論されておりましたときは日本弁護士連合会としてもこれでは反対であるということを言ってまいりました。と申しますのは、本法案につきましてと同じように、欠陥概念、何を欠陥とするかという考え方につきまして、予見可能性を高めるために明確な判断基準を盛り込むべきであるという基本になりまして、幾つかの判断要素を盛り込むことを主張していたわけであります。  これに対しまして、アメリカ、ヨーロッパの法律、とりわけヨーロッパのEC指令として出されておりましたものは、その製造物が安全でないことということが欠陥なのだと、こういう基本的な理解に基づく法律を作っていくということでございました。これが正に一般条項でありまして、国民生活審議会報告の後、与党、野党間の協議の中で、当該製造物の特性、流通に置かれた時期、通常予見される使用形態、流通に置かれた時期その他の事情を考慮して、様々な事情を考慮して、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」と、こういう規定にしたわけであります。これを私どもから見ますと、一般条項としてといいますか、広く欠陥を包摂する規定として民事ルールを作っていただいたということでございました。  今般の法律につきましても同じ考え方を盛り込むことが必要で、単に労働基準法十八条の二の適用を妨げないというようなことでは不十分であるということであります。  消費者契約法につきましても、契約条項の無効につきまして、事業者責任を免責する条項、あるいは損害賠償額を一定のところを超えるものにつきましては無効とするという規定を入れることには当初から議論が固まってまいりましたけれども、そのほかに、ある無効とすべき事情というものにつきましての規定を入れるかどうかで大変議論になったわけであります。そこで、消費者に一方的に不利益な条項というもので信義則に反するものというようなものを無効とするという規定を第十条で入れていただいております。このことが今現在、裁判所で大変役に立っているというものであります。他方、勧誘行為につきましてこうした措置がなされなかったために、第四条の取消し権に関しましてはそうした措置が十分できておりませんので、契約法の今活用が限定的になっているというところでございます。  そうした事情から、特にこの法律につきましては、通報すべき内容通報に至った事情その他の様々な経緯を考慮して、保護されるものは保護するんだということをきちっと盛り込んでいただきたい、これは裁判所での基本的な考え方であろうかと思います。
  27. 川橋幸子

    川橋幸子君 衆議院の段階からの法律的な御議論があったように私、今伺いましたけれども、こういう問題につきまして、どうも素人の私には判断付きかねることも多うございます。  そこで、松本参考人の方にお伺いしたいと思うのでございますけれども、過去二法でそうした一般条項が設けられたことに対して、今回の法案についても、当然、審議会の中で御議論されたりあるいは答申の中で盛り込まれたりという、そういうことがあったのではないかと推測、あるのが普通ではないかと思うのでございますが、今回の法律の中に、今、浅岡参考人がおっしゃられるような一般条項が入らないということは、むしろ過去二法の実績を踏まえると不自然な感じがいたすのでございますが、私の理解は間違っておりましたでしょうか。  今までの御議論で、この点はどのように有識者の間では御検討なさったのでしょうか。
  28. 松本恒雄

    参考人松本恒雄君) この法律性格をどのように見るかということにも少し戻るわけですけれども、労働者保護を、従来保護されていなかった部分に新たな保護を作るという、労働者の権利を拡張するという新規立法というふうに見るのか、そうでないのかということになります。  私あるいは労働法学者の見解はそうではないということでありまして、元々、労働基準法において労働者の権利は、一般条項の形ではありますが、相当保護されているというのが日本であります、特に解雇に関しましては。他方で、公益通報者保護するための特別の法律をいち早く制定しております幾つかの国、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アメリカといった国は、いずれも英米法の国でありまして、英米法の国の労働法の原則は解雇自由という大原則に立っております。  したがって、公益通報を理由にして解雇できないぞという法律を作るということは、今まで保護されていなかった部分に新たな保護を作るという非常に積極的な、労働者保護という意味で積極的な意義があります。それに加えて企業経営をきちんとさせるという効果もあるわけですが、日本の場合は、労働法上、解雇不自由が大原則で、最近少しそこが変わってきたというところはございますけれども、英米法に比べて解雇自由ではございません。したがって、一般条項的な労働者保護は既に日本においては存在をしているということがあります。  しかし、一般条項ではどちらになるか分かりにくいところがあるから、はっきりとさせられる部分ははっきりとさせよう、それによって企業経営者に対するメッセージをより明確にしようというのがこの法律基本的な発想でありますから、一般条項がないから保護が切り下げられたとか、特定の条項に当たらない場合は保護をしないとかという性格ではなくて、当然、労働基準法の解釈上従来からされていたし、されるべきであった部分という部分は全然変わらないというふうに理解しておりますし、それを念のために明らかにする規定が加えられたということであります。そのことは審議会でも議論になりまして、答申の中にも入れられているところです。
  29. 川橋幸子

    川橋幸子君 済みません、確認的に短く。  ということは、審議会の中ではそのような議論でよいという、多数意見だったのかも分かりませんけれども、結論的にはそうなったと。審議会意見に反映して、それを反映して正確にこの法案は閣法として作られていると、このように考えるということでございますか。
  30. 松本恒雄

    参考人松本恒雄君) はい、そのとおりでございます。
  31. 川橋幸子

    川橋幸子君 それでは別の質問、この今の質問もまだまだ興味あるところですが、別のところに移らせていただきます。  大村参考人にお伺いしたいのですが、目安箱、大変大きな経験を積んでおられて、それには敬意を表したいと思いますけれども、目安箱の場合は非常に何か緩やかな提案といいますか、苦情といいますか、様々な従業員からのそういう意見を聴取する、余り問題はないと、九割方は根拠ないにしてもあとの一割に貴重なものが隠されているという、そういうお話であったとすると、企業内部でもそうであるならば、企業内部をクリアして外に出ていく外部通報についても同じように緩やかでよいのではないかという印象を私は受けたのでございますけれども、やっぱりおそれというのは大変大きなおそれなんでしょうか。
  32. 大村多聞

    参考人大村多聞君) そのとおりでございます。  企業内部のあれでも、三菱商事のによりますとコンプライアンスの定義は大変広いわけでございまして、法令にきちんと遵守するということのみならず、社内規定、社内規範も遵守する、それのみならず、社会規範、世の中の常識に沿った行動を取るように適切な配慮をすることと、この三つ社内の定義になっておりまして、この観点から少しでも疑問があることは全部言ってきてくれと、こうなっていますので、そういう形から、思い違いであろうと何であろうと全部受け付けているということでございまして、そういうことによって、それがすべてではないんですが、不満ですね、いわゆる。職場の不満、人事上の処遇に対する不満等も実はそこで全部引き受けて、代わって聞いてあげているわけですが、それがそのまま外へ行ってしまったら大変誹謗中傷対象になった方の人権を害すると。上司が不満であれば上司がパワハラだと言い、男女関係があればセクハラだと言うのが今の世の中ですね。ですから、内部では極力広くやって、外にはそのまま行かないように、人権侵害を起こらないように運用しています。
  33. 川橋幸子

    川橋幸子君 今の質問の同じような問いを三木参考人に伺いたいと思うのですけれども、企業内部のことは企業社会で信頼できると、これを一般社会に適用するのはまだ無理だというふうに今私伺いましたけれども、三木参考人はどう思われますか。
  34. 三木由希子

    参考人三木由希子君) そもそも、大村参考人御指摘の企業内の取組につきましても、この法律が通りますと、この法案が通りますと犯罪行為については特別の民事ルールがある、それ以外についてはないという状況が生まれるわけでございます。実際に内部での取組につきましてはより幅広くということでございますので、このような矛盾をはらむような法律を通したことによってヘルプライン取組そのもの、企業内部での取組そのものに問題が生じるのではないかというふうに思うわけでございます。  外部に出す要件につきましても、法律がなくても恨みや誹謗中傷目的情報を出すということはもう現に存在しているわけでございます。ですから、この法律ができたからといってそれが促進されるということではなく、現在既に行われている以上は、それは、それに対してはほかの手段をもって対処されるというのが本来であって、法律で間口を狭くするという話ではないと考えております。
  35. 川橋幸子

    川橋幸子君 それでは、最後にこれ、もう時間ないですね。  おそれのところが非常に大きな変更要件になりましたようで、審議会段階の結論と今度の閣法のところが変わって間口が狭くなった。そこのところのおそれをそう極端に解釈することはなかろうというふうに松本参考人がおっしゃったし、浅岡参考人はむしろ時間的切迫性というのが今回の正に生じようとしているというふうに、修正したことによって強くなったと、その心配をしておられるわけですけれども、お二人の心配をうまく調整することってできるのでしょうか、松本参考人、代表して、済みません。
  36. 松本恒雄

    参考人松本恒雄君) 一つ言葉で適切なのがあればそれなりに議員の皆様で議論してやっていただければいいと思うんですけれども、要は、この法律というのはコンセンサスのできた部分について早急にまとめて制定していただくことに私は意義があるんだというふうに考えます。細かい言葉の違いの対立だけで反対してつぶすには余りにももったいないというふうに思います。  したがって、それぞれの表現を使えば、それに対する疑念は必ずどちらかから起こってくる可能性は、これはゼロではないだろうというふうに思いますから、お互いに少しずつ納得できるところで調整していただければいいんではないかというふうに思います。
  37. 川橋幸子

    川橋幸子君 浅岡参考人、済みません、申し訳ございませんでした、時間切れです。  終わります。
  38. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。  四人の参考人の皆様、御苦労さまでございます。貴重な意見、ありがとうございます。  それでは、何点かお聞かせいただきたいと思いますが、まず大村参考人にお願いをしたいんですが、自主的なコンプライアンスへの取組を後押しするということから一定の意義があるという評価をされているところでございますが、確かにそういうふうになっていくんだろうなと思うんですが、ただ、労働者従業員といいますかね、それ以外にもやはり取引先もかなり大きな要素になるんではないだろうかなと思うんですね。雪印のようなことを考えると、ある意味じゃ継続的な、あの西宮冷蔵ですかね、継続的な取引をやっていて、ある意味じゃ関係会社といいますかね、身内みたいなものですわね。  ですから、取引先とはいいながらも、やっぱりそういうところからきっちり自分の方に言ってきてねといった方が、そもそも雪印の場合は会社の存亡にも懸かってきちゃったわけですから、かえってそういう通報者範囲を広げた方が会社のためになるんではないのかなというふうにも思うんですが、こういう点はいかがでございますか。
  39. 大村多聞

    参考人大村多聞君) この点につきましても、議論はあった上でいろいろと意見バランスを取って、結論的にはその請負関係とか、一応契約企業としては別なんですけれども、同一事業をやっているんだという関係のある取引先についての通報した場合には、その通報元の企業の労働雇用契約不利益扱いしないという形でこの法律の、本法案に入っていますので、一定程度その配慮はされているというふうに理解します。
  40. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ただ、それは雇用契約あるいは派遣の契約であって、普通の契約まで及んでいないわけですよね。その点を今聞きたいなと思ったわけでございますが、そこのところは配慮しているということですね。
  41. 大村多聞

    参考人大村多聞君) これは先ほど松本先生からも話がありましたけれども、本法律というのは労働者の解雇法制、若しくは不利益をしないという労働法制についての分野について、現在ある法律考え方を明確なところを決めようと、こういうふうに入口が、議論はそういうことでございますので、取引関係そのものとかいうのはそもそも対象にはなっていないんですが、ただ、この考え方というのは、もし取引関係も対象にするという考え方にしますと、これは世界じゅう例もない議論でございまして、かつ取引の自由という憲法上のこともあるし、自由主義の根幹にかかわる問題で、これは現状ある労働法制の解釈を固めようということから少し外れるというふうに理解しております。
  42. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 次に、三木さんに、参考人にお願いしたいんですが、先ほど松本先生からの中で、NPOの法制定後の課題ということで御指摘がありました。そこでは、相談機関の重要性ということと、告発受皿団体との区別ということがこのレジュメでは書いてありますが、確かに相談機関としての機能とそれから告発受皿としての機能と、大変ちょっと違うんだろうなといいますか、二律背反といいますかね、一方は守秘義務をしっかりやらなきゃいけないよとかあると思いますが、この情報公開クリアリングハウスとしてはどういうような、その辺は、ことになっているんでしょうか。具体的な機能分化とか、具体的な、内部で文字どおりツーカーになったら意味がないわけですから、その辺の方策とか、どのようなことが扱われているんでしょうか。
  43. 三木由希子

    参考人三木由希子君) 今、私どものところで特に公益通報について相談を受けるあるいは通報を受けるという形で明確に外部に対して御案内をしておりませんので、今のところは相談というものと通報そのものをして一緒にやってほしいというものが雑多に混ざってこちらに連絡がございます。確かに、御指摘のとおり、相談機能とそれから受皿機能というものは分けて考えた方がいいと思っております。私どもは、情報公開制度や個人情報保護制度については、むしろ相談機関相談機能の方を重視して活動をしてございます。  ただし、この法案が通りまして、NPOの役割ということが、松本参考人から御指摘がございましたが、相談機関として機能するにしても受皿機関として機能するにしても、NPOとしてのリスクが非常に高い、あるいは通報者自身を危険にさらす可能性が非常に高いと。つまり、通報を受けたとしましても、その通報が適切かどうかということについても非常に判断に迷う、又は通報先等について相談を受けるにしましても、非常に対象となる通報事実が複雑でございます。即座に判断することが非常に困難でございます。このような法律のままでNPO等にそのような役割を期待するというのは、私はちょっと荷が重いというふうに考えてございます。
  44. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 浅岡先生にお願いしたいんですけれども、この通報事実ですか、何か犯罪行為の事実とか法令違反行為の事実なんていいますと、起訴状とか告訴状の犯罪事実を考えたら、どうやって書くんだろうな、大変実務的にも大変な思いをするんだろうなと、弁護士であってもそうだろうなというふうに思うところでございますが、この辺の事実調査、そしてその起案等について、通報者に過酷なことを要求してきているのかなというふうな思いもするんですが、その点いかがでございましょうか。
  45. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 先生御指摘のとおりで、これは、本当に公益通報を有益なものとして、社会に有益なものとして、これを前向きにとらえて認めていこうとする発想には立っていないのではないかという疑念を抱かせるのがこうした規定ぶりにあるのではないかと思うところであります。  一つは、犯罪に当たるかどうかということで一つのフィルターが掛かるわけでありまして、これを一つ明確化と呼んでおります。もう一つ、事実、どういうことがあったのかという事実はある程度客観的に整理できるといたしましても、それが犯罪と評価されるのかという点では、これは大変意見の相違が出てくる。それゆえに、刑事訴訟が、裁判がある部分あるわけでありますし、そういう意味で、明確化をいたしましたということにはなり得ない、かえって犯罪性をめぐって意見の違いの差が出てくるということになりますので、通報者から見ますと、極めて通報に対して保護されるということへの危惧を高めてしまう。現実に行動することにもまた大変難しいし、弁護士相談を受けましてもアドバイスは大変困難であると思います。
  46. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 終わります。
  47. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。  今日は、参考人の皆さん、御多忙の中お越しいただいて、貴重な御意見、本当にありがとうございます。  私は、今回の公益通報保護法案政府案は、やはり国民の皆さん、また消費者の安全、健康、財産を守る上では役立つものにはなっているかどうかというのは随分懸念材料があるというふうに考えています。そういう点で、幾つか今日は参考人の皆さんにお伺いをしたいというふうに思います。  まず、松本参考人浅岡参考人にお伺いをしたいんですけれども、政府案では、通報対象事実を国民の生命、身体、財産その他の利益保護にかかわる法律として別表に掲げるものに規定する犯罪行為の事実というふうになっています。そうしますと、例えば六本木ヒルズの回転ドアで子供が亡くなるという事故がございました。また、児童公園の遊具で負傷するという事故もございましたけれども、こういうことは対象にならなくなると思うんですね。本来、公益通報者保護制度公益というのは、法令違反はもちろんですけれども、法令違反と規定されていない段階でも、人の健康、安全、財産に対する侵害ないし危険及び環境に対する悪影響などを未然に防止するということがやっぱり重視されなければならないのではないかというふうに思います。  この点、両参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  48. 松本恒雄

    参考人松本恒雄君) 二つ申し上げられると思います。  一つは、この法律は、先ほども言いましたように、従来保護しない部分について新たに保護を作るという法律ではないということでありますから、したがって、この法律にぴったり当てはまらない場合には保護しないというわけではないという点、十分保護される可能性も大きいということがまず一般論としてあります。  二点目、例えば遊具とかあるいは回転ドアの場合ですと、少なくとも一回目の事故が起こります。そして、そこでその生存者とか管理者が調べて、一定の事柄が原因ではないかという推定をしたにもかかわらず適切な是正措置を取らないと、で、ほっておいてまた別のビルで同じような事故が起こるのを放置したということであれば、これは業務上過失致死傷という犯罪につながるおそれのある、あるいはここが正に生じようとしているというところとの関係がもちろん問題になるわけでありますけれども、業務上過失致死傷につながっていく行為を当該製造業者等が行ったということでありますから、この法律の中に入ってくる可能性も十分あるというふうに考えます。
  49. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) この議論は、先般申し上げました、こうして規定、通報対象でありましても、通報の要件でありましても、具体的に個々に書いていくということから漏れるものをどのように扱うかということにまた戻るわけであります。どのように書きましても必要な事項が漏れるということはどうしても起こります。このような犯罪行為といたしますと、更にたくさんの領域が、国民から見ますと大変重要な領域が大きく漏れてくるということが現に起こっていることからもよく分かるわけであります。  そうした意味で、先ほど松本参考人からは、日本では労働法制で十分解雇が制限されていて、その中での一部の部分について法制化をするからその従来の保護は変わらないのだと言われますけれども、もう一方で、他方の中で、例えばこの公益通報に関する、労働法制の中、労働紛争の中で公益通報に関する部分はまだ判例は十分じゃないということを落合参考人がおっしゃったりしておりますし、先ほどの大村委員のお話ですと、現在、現状の労働法制の解釈を固めようというのがこの法案であるというふうにおっしゃっておられまして、ここに大きな焦点があるわけでございまして、こうしたどのような書きぶりをいたしましても漏れていくもの、しかしそれは社会に有用なものをちゃんと酌み取れる形で、松本参考人の御意見によりましても、それらは本来救済されるものは救済されるという趣旨でございますので、別に増やすわけではございません、増やしてくれと申しているわけではございません。そのとおり読みやすく書いておいていただければ今のような御懸念は消えるのではないかと思います。
  50. 小林美恵子

    小林美恵子君 二点目は、先ほどとかかわりますけれども、公益通報対象から税法とか公選法、政治資金規正法は除外されることになっていると思うんです。そこで、この件につきましては大村参考人浅岡参考人にお伺いしたいんですけれども、例えば、企業が商法違反などで刑罰に当たらない限り、仮に労働者の方がやみ献金の事実を知って告発した場合は保護されないということになると思うんです。  やみ献金によって政治をゆがめるようなことは私たちはあってはならないと思うんですけれども、そういう意味では、税法でありますとか公選法、政治資金規正法などの問題も公益通報対象に含める必要があるというふうに考えるんですけれども、この点はいかがでしょうか。
  51. 大村多聞

    参考人大村多聞君) 先ほども申し上げましたように、社内でのコンプライアンス通報に関しましては、あらゆる法令違反社内違反、それから社会規範違反対象にして狭めていく考えは一切ありません。  それから、今回の法案に関しても、日本経団連からは、法律を特に限定する必要は感じられないと、あらゆる刑罰法令違反でいいじゃないかということは申し上げましたが、この消費者政策部会とかいうことから、まず消費者と。国民の生活、生命の安全と、生命、身体の安全ということで、取りあえず、先ほどもお話がありましたように、目の前にあることについて合意できることとか緊急性があることで合意しようという流れでこういうふうになったと私は理解しています。したがって、法律のこの全体の位置付けという意味でこうなったということで皆さんの合意が得られたので、それはそれで結構じゃないかと。  ただし、会社のコンプライアンス経営がその特定法律なんという発想は全くありません。あらゆる法令違反、社会規範違反についても配慮するというのが当然のことでございます。
  52. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 制限することなく当然入れてしかるべきであろうかと思います。  国民生活審議会議論におきましても、消費者利益に係る部分だけを扱うということに対して、委員のほとんどすべての方がおかしいのではないかという指摘をいたしました。しかし、事務方、事務局側からの要請、あるいは国民生活審議会の守備範囲というものはこうであるということから、極めて限定的な審議をせざるを得なかったという経緯でございます。
  53. 小林美恵子

    小林美恵子君 次に、こちらは三木参考人浅岡参考人にお伺いします。  法案の三条三号では、マスコミや国会議員、労働組合、またNGOなどの外部通報に厳しい要件を設けていると思います。外部通報する場合は、企業内や行政機関通報する要件に加え、事業者行政機関通報すれば不利益扱いを受ける、証拠隠滅のおそれがある、通報を口止めされた、通報してから二十日間を経過しても調査しない、生命、身体に切迫した危険がある、このどれかに該当しないと保護されないということになっています。そうしますと、通報が非常にハードルが高くなりまして、結局、企業内や行政機関に閉じ込められてしまって、マスコミや国会議員などを通じての国民の前に出てこないのではないかと。外部通報が非常にしにくいというふうに思うわけでございます。  政府案はイギリスのモデルを、モデルをしたというふうに言われていますけれども、しかし、そうではやっぱりよく見るとないというのは御意見の中でもあったというふうに思うんですけれども、改めて私は、そういうことをモデルにするんであればハードルを低くすべきだというふうに考えるんですけれども、この点、もう少しお聞かせいただけるでしょうか。
  54. 三木由希子

    参考人三木由希子君) 政府答弁も含めて、イギリス公益開示法をモデルにしたと、又は参考にしたということが度々説明されておりますが、私は、イギリス公益開示法については一部参考にされていると思いますけれども、全く似て非なるものだというふうに思っております。  なぜそういうふうに思うかと思いますと、まず、イギリス公益開示法においては、通報者がいかに沈黙をせずに安全に問題について通報をするかということを最大のテーマとして、又は課題として検討をされてございます。しかし、それに対しまして公益通報者保護法案は、いかに情報外部に出さないかということで、通報者を安全に通報できるようにするというものとは別の目的があるとしか思えないというような部分がございます。  私は、先ほども申し上げましたとおり、例えば行政機関通報した場合は、その後外に出しにくいと、又は事実上出せないというような仕組みではなくて、行政機関が必要な対処をしなければ当然外部通報ができる、あるいは性質が重大なものについては直接外部通報できるというような形で、通報者がこのような通報をしてもあなたは安全ですよというメッセージを法律で明確に示すべきであるというふうに考えております。
  55. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 日本でこの議論をしておりますときに、日本の新聞記者が国民生活審議会議論をこう図に、階段の図にいたしまして、内部への通報のハードル、行政機関への通報のハードル、当時はそれを経由して外部へということもある程度書かれておりましたから、そして外部へという階段を上る図をかいたわけであります。それを英国のパブリック・コンサーン・アット・ワークのガイ・ディン氏が、コメントを求められたことからごらんになったそうでありますが、彼はイギリス法はこれと違うよと言ったと、こんなにステップが、段が高くないんだよと。で、外部への通報あるいは行政機関への通報というものをまずやることを考えましょうねと言っているのは、それは軽いステップだからやってくださいよと、そしてそれができなければ外部へつながっていくという仕組みということを重視していることの絵と違うなとおっしゃったわけであります。  もちろん私との話の中でも直接そうなのですけれども、ところが、今回の法律案というのは第一ステップ、第二ステップがとても高い上に、先ほど三木さんもおっしゃいましたように、特に事業者通報いたしまして、調査するかどうかということですが、その後、措置をいたしましてもその報告が義務ではないわけですね。八条では努力義務にとどまっておりますから、通報者は何をされたのか待たなければいけませんし、どうなりましたかということを聞けば答えるんじゃないかというふうなことを要求しているわけであります。行政機関に対してはそれすらない、次のステップにつながらないという仕組みでありまして、これが一番、英国公益開示法と日本制度とは、議論されていたことから法案段階で大きく変質してしまったところであります。  それでは、やはりこの国際化、情報化の時代でありまして、英国法を倣って議論したということであれば、やはりきちっと入れていただきたい。それも解雇制限のある国で設けた制度ということであります。そうしたことを日本の、先ほどの松本参考人のお話のようなところで入れることにやぶさかではないはずだと思いますので、再度ここで十分議論していただきたいと思う点であります。
  56. 小林美恵子

    小林美恵子君 最後の質問になるんですけれども、大村参考人にお伺いしたいと思います。  三菱自動車の問題が大きな社会問題となりましたけれども、タイヤ脱落事故でありますとか、クラッチ系部品の欠陥による死亡事故など、企業としてやっぱり隠ぺいしてきたという問題があると思うんですよ。で、厳しいちょっと言葉でございますけれども、それがやっぱり国民の命を犠牲にしてきたということで、本当に重大な社会問題だと、なったというふうに思うんです。先ほど目安箱のお話もございましたけれども、改めてこの公益通報制度の重要性をこういう事故というのは浮き彫りにしたというふうに思うんですけれども、その点で、こういう告発保護してそれを生かして事態の改善に進むということが本来の企業の健全な発展も保証することになると、同時に、国民経済の損失も防いでいくということになるというふうに私は思うんですけれども、こういう点、どのようにお考えなのかお聞きしたいというふうに思います。
  57. 大村多聞

    参考人大村多聞君) 目安箱三菱商事のことをお話し申し上げたので、他の、上場企業である他社のことを引用したことではないし、他社のことは私は全く把握、全くというんですか、直接的には把握していません。  それから、三菱自動車さんの件に関しましては、むしろ経団連として、このような事態は誠に遺憾であるということで、活動は当面自粛していただいておりますし、将来事実が解明されたところで適切な処分を取ると、こういうのが日本経団連の立場でございます。  その内部通報のことに関しましては、企業の方がやはり今や取締役が大変重い責任を持っていまして、もしきちんとその不祥事に対し予防とか、それから発生しました不祥事の対応をしないと、いずれも株主から責任追及をされると、こういうことになっておりますので、社内のこの目安箱というツールで経営トップに問題点がつながるということが担保されることは、先ほど申しました企業コンプライアンス経営とか、企業の、そういう意味ではいい意味での企業防衛ということがなされるということで価値あるものと思っています。  以上でございます。
  58. 小林美恵子

    小林美恵子君 終わります。
  59. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 無所属の黒岩宇洋でございます。  今日は本当に四人の参考人の皆様から意義深いお話を聞かせていただきまして、ありがとうございます。  それでは、取り急ぎ三木参考人にまずお聞きしたいんです。  三木参考人のお話の中で、本当に現場の声をお聞きして私も大変貴重だったんですけれども、NPOの方にお電話が掛かってきて、その方々がやはり内部通報することが大変怖いという、そういう御発言ございました。その点でお聞きしたいんですけれども、もう少しいろんな事例も踏まえて、やはりどうしてそんなに内部通報することが労働者の皆さんにとっては怖いのか、この点をお聞かせいただけますでしょうか。
  60. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) どなたに。
  61. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 三木参考人
  62. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) 失礼しました。三木参考人
  63. 三木由希子

    参考人三木由希子君) 私どもの事務所に電話をいただくケースで多くございますのは、つまり職場で有形無形の嫌がらせを受ける可能性があると。つまり、通報したことによって、例えば調査をされる又は問題解決のために何かが社内で始まるといったときに、仮にこの問題について知っているのならこの人たちだろうという特定がされると、そのことによって、例えば解雇とか待遇に対する不利益ではなくて、職場にいられなくなるという状況ができてくるのではないかということを皆さん恐れているわけでございます。  実際に、例えば福祉施設なんかでお年寄りの方に対してひどい扱いをしているというようなことをトップに直訴をする又は上司に直訴をしたケースでは、連絡をいただいた方は結局いられなくなってしまって自主的に辞めざるを得なくなりましたと。ただ、これは解雇ではなくて自主退職ということになるわけでございます。そういうことを皆さん恐れていらっしゃるということがございます。  このようなことになる原因は、そもそも企業トップを始め、内部通報することは悪いことではないという組織文化が根付いていないということが私は大きな原因であると思っておりまして、公益通報者保護法案のような制度を通じて、公益通報は悪いことではないと、必要なことであり、それを適切に対処することが組織としての責任であるというような文化を根付かせるためには、やはりきちっとした法律が必要だというふうに考えておるわけでございます。
  64. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 ありがとうございます。  今の御意見を踏まえて大村参考人にお聞きしたいんですけれども、確かに三菱商事さん、大変立派な会社でございますし、参考人のお話のように大変コンプライアンス経営に取り組んでいらっしゃるというんですけれども、今のお話ですと、やはりもうちょっと、中小の企業さんと言ったら怒られるかもしれませんけれども、多くの企業ではなかなかそういった内部通報者に対するやっぱり事実上の不利益等を行っているという、そういう中でやはり外部通報というものに頼らざるを得ないという、これは私、現状ではないかと思っているんですが。  大村参考人は、やっぱり外部ではなくまず組織内部への通報を優先するという、こういう考え方を支持していると思うんですが、私は今の法案、そして今のお考え方ではなかなか現実には則し切れないんじゃないかという、その懸念について御意見をお聞かせくださいますでしょうか。
  65. 大村多聞

    参考人大村多聞君) 今の法案でも、内部で問題をきちんと吸い上げるようなコンプライアンス経営をしていなければ外部に行けるという形になっておって、その内部コンプライアンス経営をしていない企業が罰せられるという構造になっていると理解しています。
  66. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 分かりました。  そうしたら、松本参考人にお聞きしたいんですけれども、今、大村参考人のお話でも外部の方に通報できる仕組みになっているという、こういうお話ございましたが、松本先生の新聞記事拝見しまして、そこにはこう書いてあります。外部通報した従業員らを保護するとして、その要件をこの法案では定めていると、しかし条文を余り厳密に解釈するとほとんどのケースで保護を受けられなくなると、こう松本参考人はおっしゃっているんですけれども、そう考えますと、なかなか外部には通報できなくなるという懸念が更に生じるんですが、いかがでしょうか。
  67. 松本恒雄

    参考人松本恒雄君) ほとんどということの意味は、先ほど言いました、まだ事実が生じていないけれどもこれから起こるかもしれないという部分について、正に生じようとするという言葉を非常に極端に解釈をすれば、事故が起こる一秒前までは通報できないというようなことになると、これは何のための法律ですかということになるというのは事実ですが、ただ、そんな極端な議論をする人は恐らくいらっしゃらないんだろうと思います。  だから、もしそういうようなことをすればというのが前提ですし、さらに、この法律保護されないとしても、先ほどから何回も言っていますように、労働基準法上の一般的な規定がございますから、解雇権の濫用等、その他民法の一般的な不法行為等で保護がされる可能性も十分にあると思います。
  68. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 厳密に解釈といっても、やっぱり条文上でそういう解釈が成り立つということ自体が、私は法文としてはやはり不備があるのではないかと、そう思っております。  そうしますと、更に踏まえて浅岡参考人にお聞きします。  今回の議論も、例えば自浄作用というものと、組織内部のですね、それと外部からの監視というものが何か相反するような議論というのがちょっとかいま見られたんですけれども、私はそうでなくて、外部の監視があってこそまた更に自浄力というものが高まるという、そういう考えを私は持っておるんですが、浅岡参考人、この点についてはいかがでしょうか。
  69. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 先生御指摘のとおりに私も考えております。英国公益開示法は、そうしたことを考慮して、それぞれの通報対象あるいは要件をバランスを取るということにしているものであります。ただ、先ほどから大村参考人がおっしゃいますように、例えば株主代表訴訟のような制度があることが大変役員の自浄力を高める大きな力になっているということも見やすいことでございます。  そこで、やはり、何度も戻るのですけれども、外部に行ける仕組みになっていますよと先ほどからおっしゃいますが、ではなぜ英国公益開示法のような制度が取られなかったのでしょうか。なぜ事業者やそれから行政機関通報したときに、通報したことがいきなりではいけないというのであれば、いきなりではありませんということ、通報しておきますということを英国公益開示法は要件にしているわけです。なぜそうした制度が今回取られていないのでしょうか。  ここが一番大きな問題でありまして、外部に行けるようになっているというところの評価をしっかり先生方でやっていただきまして、それをまた通報者が立証しなければいけない問題として、立証事項は何かというところをとらえていただきますと、先生の御懸念というものは本当に私は同感することになると思っております。
  70. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 ありがとうございます。  そうしますと、更に質問の趣旨を変えますけれども、先ほど三木参考人のお話にもありましたけれども、やはり公益通報者が組織内で名前等が特定されるというこの瞬間に、事実上の大変なる不利益を被るという、これ私事実だと思っているんです。  今回のこの法案見てやはり非常に欠けているのが、その今言った通報者にとって致命的な出来事というのは、やっぱり組織で密告したことがばれてしまうという、これはやっぱり日本の風土でいいますと裏切り者ということですんで、私、この点を何としても払拭することがこの法律にとって私は必要なことだと思っておるんですが、それなかなか明記されていないと。  そこで、松本参考人浅岡参考人に御意見伺いたいんですけれども、やはり私は、まず公益通報者特定したりないしは名前を漏えいすることを明確に禁止して、なおかつこの行為に対して罰則を設け、しかも特定された方の救済を条文できっちり明記する必要があると、私はそう考えているんですけれども、いかがでしょうか。
  71. 松本恒雄

    参考人松本恒雄君) ここで言う公益通報者として匿名の場合も含むのかそうでないのかという話でありまして、匿名性が維持されている限りは不利益はないから入ってこないという構造になります。ただ、最初は匿名で社内通報した、しかし名前がはっきりしてきた、これはもう名前を出しての通報と同じことでありますから、ここで不利益なことをしてはいけないということになります。  また、外部への通報あるいは行政機関への通報において、名前を出してもいいか、その場合に、匿名で通報した場合に、それを受けた機関がどのように対応するかというのは、まずそれぞれの行政機関あるいはNPO等の方針によるだろうと思います。名前を出して、私はこの会社のこういう者でこういうことでというふうに持っていった場合に、それを、その通報した人の名前を世間一般に公表していいのかどうかは、これは守秘義務の話になるというふうに思いますから、守秘義務がきちんと課されているところに限定する必要があるんではないかというような議論とつながってくるところであります。
  72. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) もし現在のこの法案のような仕組みにいたしますと、通報者側は大変、後々の措置、また公益を実現したいということをどう目的達成するかという思いから、むしろ匿名で信頼できるところに相談をするということが想定されるところであります。現在もあるわけでありますが。  これまで議論の中でも出てはおりますけれども、そうしたことがありましたときの犯人捜しをすることは戒めておく、また顕名で事業者あるいは行政機関通報がありましたときに、その個人の名前等をしっかり守っていくということを、言葉ではおっしゃっておられるところもありますけれども、これは制度仕組みの中にしっかり入れていくということも、本来公益通報を有益に社会が活用していくと、その事業所も活用していくという大きな仕組み一つの、枠組みの一つの要素として十分考えていかなければならないと思います。
  73. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 最後にお聞きしたいんですけれども、これも実は松本先生の主張で、こういった公益通報者保護法律がうまく機能するか否かは公益通報者相談に乗り支援する弁護士中心としたNPOの存在に懸かっていると、こういったNPOが各地に組織されることを期待するという、こういう表現がございまして、これお聞きしたいのは、三木参考人にお聞きしたいんですが、このようなNPOというのは今現在どのくらい機能して、今後こういったものはどのくらいできていきそうなのか、その現状についてお聞かせいただけますでしょうか。
  74. 三木由希子

    参考人三木由希子君) 公益通報を受け付けるということを明確にうたって活動しているのは、公益通報支援センターという大坂にあるNPO一つだけでございます。私どものところはまだそういう状況にはございません。また、そうした支援をするということで活動しているNPOは、私の知る限りございません。  先ほども申し上げましたとおり、この法律では、NPOにこういう問題があるというふうに相談をしたら、これは外部通報に該当する可能性がございます。ということは、NPOも責任持って対応ができないということは十分に考えられるわけでございまして、更に言いますと、NPOも通報者自身又は相談自身もリスクを非常に背負うという構造にあるということを考えてございます。  イギリス公益開示法の場合は、弁護士等への相談につきましては特別の免責がございます。南アフリカの同様の公益開示法におきましては、NPOに対する相談についても免責がございます。そのような仕組みをなくしてNPOの役割を期待されるというのは、私は本末転倒ではないかと思っております。
  75. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 終わります。
  76. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言お礼のごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたり御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  午後一時まで休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  77. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  公益通報者保護法案及び国の行政運営適正化のための公益通報に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として内閣国民生活局長永谷安賢さん外五名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  79. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) 公益通報者保護法案及び国の行政運営適正化のための公益通報に関する法律案、両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  80. 岡田広

    ○岡田広君 自由民主党の岡田広であります。公益通報保護法案につきまして質疑をさせていただきたいと思います。  午前中、参考人の質疑も行われ、いろいろな議論が行われましたが、本法案国民生活審議会議論報告を受けて、本法案の立案に当たってはパブリックコメントを行っています。パブリックコメントで適切な意見を受け付けた場合には、それを踏まえて柔軟な対応を取るべきだと考えるわけでありますが、本法案のパブリックコメントに当たりましては、八十五の個人、団体から意見があったということであります。郵送、ファクス、電子メール等で提出をされたわけでありますが、本法案のパブリックコメントにつきましてはどのような意見があり、そしてそれを受けましてどのように内容を変更したのか、まずお尋ねをしたいと思っております。
  81. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) パブリックコメントで寄せられました適切な御意見を踏まえて柔軟な対応を取るべきとの御指摘、正にそのとおりであるというふうに思っております。この法案でございますけれども、昨年の十二月十日から今年の一月二十一日までの間、パブリックコメントを行いまして、幾つかの御意見法案に反映させていただいております。  具体的にそのパブリックコメントの意見を踏まえて法案の骨子から変更した点を申し上げますと、一つは、法律の二条とか三条にかかわる犯罪行為等の通報対象事実が生ずるおそれについての通報を、当事者間の事実認識の相違を生む可能性が高いことから、正に生じようとしている旨の通報に修正して、そこの部分明確化しているということが一つ。  それから二つ目には、これは法案の第三条の第三号の外部通報の要件にかかわる部分でありますけれども、内部通報してから二週間を経過しても調査の開始等がない場合には外部通報保護するという規定を置いて、骨子の段階では置いておりましたけれども、それを二十日に修正して、社内手続等に要する期間に配慮したという修正を行っております。  それから、骨子の段階では記述がなかった点で、パブリックコメントの結果について追加的に規定したものがございます。それが第八条、ごめんなさい、法案の第六条の第二項にかかわる部分でありますけれども、本法案対象とならない通報については現状どおり一般法規に基づいた保護が図られる点を明確にする観点から労働基準法第十八条の二との解釈規定を置いたということ、それからもう一つが第八条でありますけれども、公益通報に伴い他人の正当な利益等を害さないよう通報者の義務努力を設けたことということであります。
  82. 岡田広

    ○岡田広君 今、犯罪の対象、生ずるおそれを正に生じようとしている旨とか、あるいは通報の要件とか、いろいろパブリックコメントをいただいてから直しているということが今説明がありました。本法案の場合は法案の骨子案の段階でパブリックコメントを実施しています。国民審議会で議論をしたものを余り、直すというのはどういうことなのかという議論もないわけではありませんけれども、こういうことで国民生活審議会でひとつ骨子案をまとめて、そしてパブコメにかけてそれを直すと。そうすると、直したその考え方をまた国民審議会にかけて最終的な成案を得るというのはどうなんだろうかという考え方一つあるわけであります。  正にこのパブリックコメントにつきましては、八十五件ということでありましたが、これ聞いてみましたら、大体今までのパブコメは五十件ぐらいという意見が寄せられている、平均ですね。そういう中でありますけれども、先日、道路交通法の改正の法案を審査をして、質問に立たせていただきました。このときには正にもう一万件を超えるパブコメ意見国民から寄せられています。その中でもとりわけ自動二輪の二人乗り、これにつきましては、委員会の中で黒岩委員が指摘をしましたように、一万件超える、ほかは千五百件とか千八百件といろいろありましたけれども、正に一万一千件超えて、九千六百件ほど賛成だと。八四%が賛成。内閣府の調査では二千百四十九人という数字が出ていますが、約七六%が反対だという、もうどうも整合性が分からない、組織ぐるみで意見が寄せられているような、そんな感もしないではありませんけれども、正にこのパブコメの在り方について今後国民に啓蒙して知らせていく必要性があるんではないかと思います。  できるだけ国民意見を反映しやすいように、その時期とか受付方とかあるいは意見の対応方法など見直すべき点は大変多いと思うんですが、この点につきまして、これは総務省の考え方をお伺いをしたいと思います。
  83. 田中順一

    政府参考人(田中順一君) ただいま御指摘のいわゆるパブリックコメント手続でございますが、これは平成十一年の三月の閣議決定によりまして、当方、当時の総務庁が言わば音頭取りをいたしまして全省一斉に導入したものでございます。その閣議決定では、規制の設定又は改廃に伴い政省令等を策定する場合を対象にいたしておりまして、当方の調べでは平成十四年度で三百九十九件実施をされております。今御審議、御議論いただいています公益通報者保護法案は、これは法律案でございますので、その意味では直接には閣議決定の対象外ではございますけれども、このような閣議決定対象外のものでも約十四件実施されております。  そこで、いろいろな御意見がおありかと思いますけれども、このパブリックコメントにつきまして見直すべき点が多いという今の先生の御指摘でございますけれども、総務省といたしましては、去る三月に規制改革・民間開放推進三か年計画というのを閣議決定をいたしまして、また骨太でも一部触れておりますけれども、この中で、要旨、行政立法手続の法制化等を速やかに検討するというふうにいたしておりまして、その際、パブリックコメント手続の法制化を検討することにいたしております。  早速この四月から、麻生大臣の下で検討会を参集いたしまして議論を始めているところでございます。御指摘の時期、あるいは受付方であるとか意見への対応方法、今回の検討が、骨太でも述べておりますように、国民参加の充実に資するということでもございますので、今御指摘の点、パブリックコメント手続の法制化に当たり、重要な論点になるであろうというふうに考えております。
  84. 岡田広

    ○岡田広君 今答弁にありましたように、来年の通常国会にパブリックコメント制度法制化をする行政手続法改正案を提出するということでありますが、是非、麻生総務相の下で検討委員会を作り、時代に合った改正案を提案してもらいたいと考えております。  茨城県でも友部町というところで、多分茨城県で初めて、全国では調べてないから分かりませんけれども、パブリックコメント制度を条例化しようということで、今月の三十日までで、これ民間公募ということで検討委員を公募するということで進めていくということであります。年度中には条例を提案したいということでありますから、正に国に先駆けて地方でも行われているということでありますので、是非、このパブリックコメントの制度国民に広く啓蒙普及をしていく、そしてたくさんの意見をもらってこれからの行政運営に反映をするというのは正に住民自治の在り方であろうと、そう思うわけであります。この改正案の提出を契機に更にこの広がりを期待しておきたいと思っております。  次に、通報対象事実の範囲の拡大についてお尋ねをしたいと思っております。  この通報対象事実の範囲につきましては、いろいろ参考人質疑でも議論がありました。どの分野対象とするかといった分野議論と、それから犯罪行為対象とするのか、あるいは法令違反行為をすべて含めるかなどの深さの議論もあります。  まず、どの分野対象とするかという点については、いきなりすべての法令違反、全分野から制度をスタートすることよりも、国民の生命、身体、財産などという優先度の高い分野から始めるのが妥当ではないかと考えているわけでありますが、政府の考え方をお尋ねをしたいと思っております。
  85. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 通報対象事実の範囲をどう決めるかという、正にこの制度の設計に当たって、一番基本的な論点の一つについての御質問であります。  私ども、この法案通報範囲につきましては、食品偽装表示事件などの近年の企業不祥事発生状況でありますとか、国民生活審議会の提言を踏まえて国民生活の安全や安心に資する観点から、国民の生命、身体、財産の保護にかかわる利益利益保護にかかわる、ごめんなさい、財産等の保護にかかわる法令違反対象とするというふうにいたしております。  これらの分野につきましては、事業者違法行為によって国民の生命、身体、財産等に被害が発生しますと、その性質上被害が広範囲に及んだり、回復し難い被害が生ずるなど、事後的な損害賠償請求によっては効果的な救済とならないということが考えられますものですから、その被害の未然防止あるいは拡大防止の観点から違法行為を抑止していく必要性が高いというふうに考えております。  今申し上げましたような以外の分野取扱いにつきましては、この法案の施行状況を見極めながら検討を行っていくことにしたいというふうに思っております。
  86. 岡田広

    ○岡田広君 次に、深さの議論については、本法案通報対象事実の範囲は、犯罪行為及び罰則で最終的に担保された法令違反行為とされています。これについても対象が狭いんではないかという意見があります。一方で、最近問題となっています三菱自動車のリコール隠し事件などの近年の企業不祥事が、事件が続いております。この三菱自動車のリコール隠しについて触れますともうとても時間がありませんから、これはまた後日に譲りたいと思っております。  このリコール隠し事件とか、あるいは食品の偽装表示など、本制度の検討のきっかけとなった事案、あるいは鳥インフルエンザのような事案が本制度でカバーをされなければならないと考えているわけでありますが、これらが本制度公益通報対象となるのかどうかについてお尋ねをしたいと思っております。
  87. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 法案の第二条第三項の通報対象事実にかかわるお尋ねであります。  今先生が御指摘されましたように、第二条第三項の通報対象事実の定義でありますけれども、その範囲としまして、一つは犯罪行為、それからもう一つが犯罪で担保された法令違反行為というふうに考えております。  それで、最終的に罰則によって実効性を担保していない法令の規定というのは非常に構成要件が不明確でありましたり、違反行為に罰則を加えるべきであるというような社会的なコンセンサスのないものであるということを踏まえて、この法案では通報対象事実の範囲を、先ほど申し上げましたように犯罪行為と罰則で最終的に担保された法令違反行為対象とするというふうにした次第であります。  それから、三菱自動車のリコール隠し事件などの最近の企業不祥事対象になるかというお尋ねでございました。  例えば、リコール隠しの問題につきましては道路運送車両法違反、それから鳥インフルエンザの話につきましては家畜伝染病予防法違反にそれぞれ該当するということで、いずれも罰則で担保された規定でございます。したがいまして、これらの法律対象法令として政令で定めれば、今御指摘にありましたこれらの事案もすべて通報対象事実に該当するということであります。  なお、通報対象法令を定める政令の制定に当たりましては、こうした事件の発生、現実の事件の発生という現実も踏まえて適切に対応してまいりたいというふうに思っております。
  88. 岡田広

    ○岡田広君 次に、保護対象となる労働者についてお尋ねをしたいと思っています。  リコール隠し事件では匿名の通報がなされています。本法案保護対象は退職者を含む労働者であり、また労務提供先に派遣先取引先などを含めるなど、幅広い範囲対象としています。これらについては経済界に消極的な意見もあったと聞いておりますが、このように対象範囲を広げた理由は何なのか、お尋ねをしたいと思っております。
  89. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 法案の第二条の公益通報の定義にかかわる公益通報をする者、公益通報する主体は労働者というふうに規定しております。  ここで何ゆえに労働者通報の主体としているかということでありますけれども、労働者でありますと事業者内部法令違反行為を知り得る立場にあるということでありますが、その反面では、知り得た事実を事業者の意に反して通報した場合には、労働契約関係に基づく指揮命令違反でありますとか誠実義務違反ということで、解雇等不利益な扱いを受けることが考えられるということで、この法案保護対象としております。  それから、退職者につきましても、既に職場を離れておりますので解雇されることはないわけですし、降格、減給などの不利益取扱いを受けることも通常でありますとないわけでございますが、ただ一方では、事業者から退職年金を差し止められたという、これ実例が過去にあるということでございまして、そういうケースを念頭に置いて保護対象に含めております。  それから、派遣労働者でありますとか取引先労働者の御指摘ございましたけれども、通報した場合に派遣契約が解除されるとか、あるいは労務提供先の意向を酌んだ雇用元から解雇されるなどの不利益取扱いを受ける可能性があるということは同様でございまして、このために保護対象に含めたということであります。
  90. 岡田広

    ○岡田広君 はい、分かりました。  三菱自動車の事件、連日、新聞、マスコミで報道をされておりますが、これに対しましては、国交省でリコール調査官制度を創設をするということを決めたと。早い対応ということには感謝をしたいと思っております。  この事件を踏まえますと、まずはいろんな議論ありますが、制度を早急にスタートさせるということが必要ではないかと私は思うわけであります。新しい制度でありますからいろんな問題点があろうと思いますが、まずスタートをして、そしてその後の状況を踏まえて制度を適切に見直すことが重要と考えておりますが、これに対するお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  91. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 先生の御意見に全く同感であります。  国民生活の安心でありますとか安全を阻害する事業者不祥事が依然として続いている現状を踏まえれば、事業者による法令遵守経営を実現するということは急務であろうかと認識しております。そのために、今御指摘ございましたように、通報者公益通報者保護を通じて、事業者による法令遵守の確保や国民生活の安心、安全の確保をねらいとした本制度を早急にスタートさせることが肝要であるというふうに考えております。これは、公益通報に関する一般法導入するということでありますので、これが事業者の活動でありますとかあるいは労働者の動きに大きなインパクトを及ぼして、そのコンプライアンス経営を後ろから促進していくということを期待しております。  今、先生もおっしゃいましたように、新しい制度でありますから、その後の状況を踏まえて制度を適切に見直すことが重要ということであります。国民生活審議会の提言でも、制度化後の運用状況を踏まえて必要な見直しについて検討を行っていく必要があるという指摘をいただいております。そういう指摘も踏まえまして、法案の附則の第二条では、施行後五年後を目途として必要な見直しを行う旨を明記させていただいております。
  92. 岡田広

    ○岡田広君 本法案につきましては、午前中の参考人質疑でいろんな御意見がありました。  まず、行政通報するけれども、行政国民側から見た場合には行政不信がある。正に浅田農産の問題とかあるいは警察の裏金作り、そして昨日ですか、新聞に出ました厚生労働省の年金の関係のコマーシャルや冊子の問題、随契があの金額でどうなのかどうか、これはもうここで議論しませんけれども、いろんな問題があります。先ほどの意見の中でも、行政企業と癒着をしているんではないかと、そういう意見も出されました。正にこれを払拭をしていかなければならない。しっかりと私は行政の様々ないろんな不祥事に対しても襟を正して臨んでもらうということが大変大事なことであろうと、そう思っております。  内部告発奨励法だという御意見もありますけれども、正にコンプライアンス経営に向けての啓発環境作りだという参考人の御意見もありました。経団連もそこに正に力を入れていると、そういう御意見もありましたが、本法案を成立をさせて、この成立後についてお尋ねをしたいと思います。これは大臣にお尋ねをしたいと思っております。  本法案の成立後については、まず対象法令を定める政令を策定する必要があると思います。政令を策定した後は、政令を含めた本制度内容労働者事業者を含めた国民に幅広く周知徹底し、また通報の受け手である事業者行政機関において受付体制の整備を促していくという必要があると考えるものであります。政府においてはどのような方針で政令を策定し、またこの本法案の施行のための準備をしているのか、PRも含めてお尋ねをしたいと思っております。
  93. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 岡田委員御指摘のように、法案法令は大変重要でありますが、それに関連する政令の問題、また周知徹底の問題、受付体制の整備の問題、やはりそれが一体となって初めて政策効果が発現されるものであると認識をしております。  まず政令でありますけれども、この法案対象といたします国民の生命、身体、財産その他の利益保護にかかわる法令範囲につきましては、本法案の別表で例示をしております。  一つは、刑法、食品衛生法など七つの法律を例示している。もう一つは、個人の生命又は身体の保護消費者利益の擁護など分野を例示しているというところでございます。そうした対象法令を定める政令の策定に当たりましては、これらの分野及び法律の例示を踏まえながら、まず法令違反行為国民の生命、身体、財産等に及ぼす被害の大きさ等々を精査する必要がある、またパブリックコメントなどを通じて各方面の意見も聞く必要があると思っておりますが、その上で適切に是非定めてまいりたいと思っております。  また、この本法の施行に当たりましては、どのような事例がこの本法案保護対象に該当するのか、具体的な通報先としてどのような機関があるのか、こうしたことを分かりやすく解説したハンドブックの作成、説明会の開催などを通じまして、労働者事業者を含め、広く国民への周知徹底に我々としても全力を挙げて努めたいと思っております。  さらに、この通報の受け手であります事業者行政機関に対しましては、通報者の個人情報保護でありますとか、通報への適切な対応等の指針を定めましたガイドラインの作成等によって、この法律の円滑な施行に万全を期したいというふうに考えております。
  94. 岡田広

    ○岡田広君 是非よろしくお願いをしたいと思っております。  ちょっと順序逆になってしまいましたが、行政不祥事の話をしましたので、これを聞いて終わりたいと思っております。  これは新聞報道でありますけれども、BSEの対策事業をめぐる牛肉偽装事件で元ハンナン会長の浅田容疑者らが補助金適正化違反などの疑いで再逮捕されました。この事件で、大阪地検が事業を担当していた元農林水産省畜産部長から参考人として事情聴取をしたというニュースが報道されましたが、この部長は浅田容疑者らと会食をしていた事実が明らかになり、農水省の石原事務次官が国家公務員法倫理規程に反すると、違反すると述べたということであります。  これは法令違反するということでありますが、農林水産省はこの件についてどういう報告を受けているのか。そして、現在は家畜改良事業団の参与をしているということでありますが、職場にも自宅にも現れていない、参与は常勤ということだと思いますが、これは違ったら訂正してください、こういう、退職をしているから懲戒処分の対象にはならないということは、これは、家畜改良事業団というのは正に農水省のもう外郭団体に当たるんですかね、この辺について農水省はしっかりと指導ができないのか、この辺についてお尋ねをしたいと思います。
  95. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 委員お尋ねの件でございますが、当時の担当部長等が飲食店での会合へ参加したことにつきましては、所要の手続が取られていないなど、国家公務員倫理規程に抵触しているおそれがあると考えております。  今お話がありましたように、当時の部長は既に退職しておりまして、国家公務員倫理法の懲戒処分の対象とならないところでございますが、農林水産省としては、当時同席していた担当職員につきまして、国家公務員倫理審査会に対しまして六月二日付けで違反行為の疑いがある旨の報告と、調査開始の通知を行ったところでございます。今後、この調査の中で当時の部長からも事情を聴取し、事実関係を解明していきたいと考えております。  なお、当の元畜産部長につきましては、マスコミ等の取材攻勢により近隣に迷惑が掛かるということからやむを得ず出勤を控えているということでございますが、休暇等は所要の手続により取得しておりまして、また、既にこの五月二十七日からは出勤をいたしております。
  96. 岡田広

    ○岡田広君 はい、分かりました。  これについては、家畜事業団ですか、家畜改良事業団について、そこについての指導というのは全然できないということで理解していいんですか。
  97. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 家畜改良事業団という名前が付いておりますが、農林水産省所管の公益法人でございますので、公益法人に対する監督官庁としての関与は一定程度できると考えております。
  98. 岡田広

    ○岡田広君 しっかりと、やっぱり国民にも分かりやすく、どういう指導をしてどういう処罰をしたのかというのを明確にして、公表していただきたいと思っております。  最後でありますが、公務員の不祥事の話を先ほど申し上げましたけれども、正に公益通報保護法、民間の不祥事への対応、民間企業、これも重要でありますが、それを監督する公務員の不祥事というのはもっと大変大事なわけであります。本法案の制定に伴い、民間企業ではヘルプライン設置等が加速すると考えられますけれども、行政機関でも同様にこのヘルプライン設置するべきではないかと思うんですが、これ最後にお尋ねをしたいと思っております。
  99. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 今、日本の大きな組織はほとんどコンプライアンス対応室を持っていると思います。しかし、実は役所は大変後れております。私、金融担当大臣になりましてから、金融庁において初めて霞が関の中でこのコンプライアンス対応室を作りました。二番目に内閣府でこれを作りました。その中には、ヘルプラインとしまして、これは弁護士さんに、外部弁護士さんに直接いろいろいろんな御相談ができるような、また通報もできるようなシステムを取っております。  これは是非、我々としてもこれを、金融庁、内閣府の例を霞が関全体に広めたいと思っておりますので、それに向けた努力を引き続きさせていただきたいと思っております。
  100. 岡田広

    ○岡田広君 終わります。
  101. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 民主党・新緑風会の岡崎トミ子でございます。よろしくお願いします。  公益通報者保護法案、先週、私は竹中大臣に本会議で質問をさせていただきました。日曜日の深夜に、二〇〇四年、ドキュメンタリーの番組でありますけれども、雪印食品取引先でありました西宮冷蔵の水谷社長が会社を再建するまでというのがドキュメンタリーで放映されておりました。大変な御苦労の二年四か月が映し出されておりましたけれども、結局、これは偽装牛肉を預かった際に在庫証明書を改ざんしたとして、この西宮冷蔵の方が国土交通省から一週間の営業停止処分になって休業に追い込まれたわけなんですが、もうすべての電気が消されて、そしてお嬢さんは受験勉強を冷房も暖房も電気もないところでやっていた、もう社員は給料ももらえないままに会社再建に懸けて頑張った。八百万円が必要だったわけですけれども、その八百万円を、自分のこの現状を本にして、そして街頭で売って、これが全国的な反響になって、そしてカンパが集まって八百七十万円になって、二年四か月たって初めての給料を社員に渡した。初任給をもらったときよりも私は本当にうれしかったという、社員のそういう声、長い長いその御苦労が放映されていたわけなんですけれども。  私がそのときの質問をさせていただきましたのは、告発者たちの勇気ある行動をどう評価されているのか、通報した方たちが払わされている代償について十分な認識を持ってこの法案に反映させたと考えているか、こういうことを伺ったと思います。大臣は、そもそも犯罪行為法令違反行為は許されるものではない、事業者による法令遵守を確保し、国民の生命、身体、財産などへの被害を防止していく観点から、公益のために通報する行為は正当な行為として評価されるべきと考えている、また、このような公益通報者事業者から解雇そのほかの不利益取扱いを受けることは社会的公平を欠くものであると認識をしている、そして、そうした認識の下に、公益通報者保護に関する制度的なルール明確化するために提出をしたと、こういうふうに答弁をされたんですが、この答弁は法案提出の趣旨を説明されたという理解でよろしいでしょうか。大臣、お願いします。
  102. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) そのように御理解賜りたいと存じます。
  103. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 そもそも、犯罪行為法令違反行為が許されないというところから大臣の答弁はスタートされましたけれども、この法案目的は、その犯罪行為法令違反行為を取り締まるということにあるんでしょうか。
  104. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) この法案は、そういう許されない犯罪行為そのものをこの法律だけで取り締まるということは、これは無理だというふうに思います。犯罪行為はあくまで犯罪行為でありますから、これはしかるべくそれなりの法律の世界でしっかりと対応していただくしかない。この法案は、あくまでも国民の生命、身体、財産等にかかわる法令違反についての公益通報を行った労働者に対して解雇等不利益取扱いを制限する、そのことを目的としております。
  105. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 大臣は、法令遵守することを確保して様々な被害を防止する観点から、公益のための通報を正当な行為だと認めるべきだというふうにおっしゃっておりますけれども、この法令違反に関する限りにおいて公益のための通報が正当な行為だと認められるべきだ、こういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
  106. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) お尋ねは、法令違反のものだけが正当な行為ということでございますか。
  107. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 限定されている……
  108. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) これは一般法理においてはより広い解釈がなされているものというふうに考えております。  我々は既に法治国家の中に住んでおりまして、この一般法理の中でしかるべく通報者保護というのは既に行われているわけであります。この一般法理一般法理として、私たちが長年築いてきた私たちの社会の一つの価値でありますし、尊重されるべき重要なやはり法的な枠組みであると思っております。  今回の法案は、その一般法理の中で、とりわけその予見可能性等々を高めるために条件を明記した上で、外部通報、失礼、公益通報を行った人々に対して不利益な被害が及ばないように予見可能性を高めるというところに今回の法案の重要な現実的な意味があるというふうに考えております。  一般法理一般法理として、これは我々が既に築いてきたものとして、引き続き我々としてしっかりと社会全体の価値として大切にしていかなければいけないものであると思います。
  109. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 これまでの皆さんの質問の中からも、参考人のお話の中からも、大変、国民の生命、身体、財産、この被害を防止していく、それはもう事業者法令遵守というのを確保する上でということで言っているわけなんですけれども、国民の生命、財産、身体と、この被害の防止というのは、事業者法令遵守だけではとても達成できないというふうに思うわけなんですね。罰則で担保された法令違反する事項以外についても、通報でもやはり正当な通報というものが多いというふうに思うんですけれども、この二つの点についてはいかがでしょうか。
  110. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 罰則で担保されていない法令違反というのももちろんあるわけですけれども、それに対する違反ということは、罰則で担保されていないがゆえに、構成要件、法令の構成要件というのは非常にあいまいであるようなケースというのが多うございます。それからまた、ある罰則でもってそれを強制するということで、コンセンサスがないということでありますので、今回、この法令公益通報者保護通報対象範囲につきましては、そこを限定して制度の明確性を担保したというふうに考えております。
  111. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 これまで、例えばダイオキシンですとかPCBですとか、環境面で行政が早くやらなければならない、なのになかなか動かないということで、健康や安全にかかわる法令整備というのはどうしても後追いになってきたというふうに思います。罰則付きの法令違反に絞って通報対象事実とするのでは、本当に後手後手になるということはもうお分かりになるだろうというふうに思うんですね。  私がこういう指摘をしましたときに、竹中大臣は、衆議院の方なんですけれども、法令の不備はそれを改める方向でということで、今もそういう話で議論すべきだというお話をされたんですけれども、この法律ですべてカバーすることはできない趣旨という発言と取ってよろしいんでしょうか。
  112. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 基本的には委員がおっしゃるような、ダイオキシンの例を挙げられましたけれども、規制というのはなかなか後追いになってできない、うまく適時適切な対応ができないというような事例は確かにあろうかというふうに思います。  そういうことに関しましては、これは衆議院で確かに答弁させていただきましたように、これはやはりそのそれぞれの分野規制すべきものをしっかりと議論をして、それなりの枠組み、あるときは法律かもしれません、あるときは政令等々かもしれません、そういうものをやはりしっかりと作っていく、それしか我々のこの方法は基本的にはないのではないかと思います。  私が委員に対しましても、この法律だけですべてうまく、すべてを解決できないというふうに申し上げたのは、一つは、今正に申し上げたような、現実にはそれぞれの分野での規制をしっかりとやるべきことをやっていかなきゃいけないという意味と、もう一つは、犯罪そのものに関しても、これは犯罪を取り締まるための枠組みではございません。これ、犯罪を取り締まる、それを迅速にやるための枠組みは、これは法務省等々になるかもしれませんが、しっかりとやっていただかなきゃいけないわけでありますけれども、我々としては、まずこれは消費者の立場に立って、国民生活の立場に立って、その生命、財産等々に危害が及ばないようにしよう、既に我々はそういった意味での通報一般法理の枠組みを持っている。その中で、しかしまだこれは非常に予見可能性が低いし、本当に今、この今の枠組みの中で通報するには、確かに冒頭で委員が御指摘になられたように、大変やはり勇気が要ることだと思いますし、そのための場合によっては犠牲も払わなければいけない。そういうことがないように、この範囲について明確化していこうと。そういうことをまず我々のこの法整備の第一歩としたい、そういう趣旨で申し上げているわけでございます。
  113. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 少し、法の整備というのは現実には本当に時間が掛かるということについてちょっとこだわって伺いたいと思うんですけれども、法令整備に時間が掛かる場合に、罰則のある法令整備されるまではそのような問題に対する通報保護されない、これは当然であるというふうにお考えでしょうか。
  114. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) それはケース・バイ・ケースだと思います。  一般法理の下で保護されるものはかなりあるのではないでしょうか。既に、繰り返し言いますが、そういったものを公益の方が重視されるべきであると、そういうような我々は一般法理を持っているわけでありますから、そういうものが包括されるべきではないというようなことは全く考えておりませんし、我々はそういう一般法理を持っている、枠組みを持っている、その中で今回は予見可能性を高めるためのより明確な枠組みを作りたい、その第一歩にしたいというのがこの法案趣旨であります。
  115. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それから、問題が発生しましたら直ちに罰則付きの法律を作るべきだと、こういう主張にも受け取れる部分の御発言もありましたが、それは大臣の本意でしょうか。
  116. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) それはもちろん、これどういう問題を想定して岡崎委員が言っておられるんかだと思いますけれども、問題があるような場合はというふうに岡崎委員がおっしゃいましたので、問題があるのにそれをほっとくというのは、これは行政府としても立法府としても、これはそういうことをするとそれこそ行政府の怠慢になるということなのではないでしょうか。  念頭にどういうことを置いておられるかはよくちょっと理解をしかねますけれども、やはり本当に問題があるんであるならば、今、一九七〇年代にはそれまでにはなかった公害という排気ガスという新たな問題が出てきた、それに対してはやはりその分野においてしっかりとした枠組みを我々作ってきて今日に至っているわけでありますから、今後どういう問題が起こるかは分かりませんですけれども、それに対しては常に前向きに対応していく、つかさつかさでしっかりと対応していくということではないかと存じます。
  117. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 つまり、私は世の中には生命、健康、財産に被害を与えるようなことでも、それを直ちに罰則の対象にしなくてもいいというものがあるだろうというふうにあるんですね。罰則の対象とすべきかどうかということは、これを通報した人を保護すべきかということとは別の次元だというふうに思うんです。それはいかがですか。  罰則の対象とすべきかどうかということと、通報した人をやっぱり保護しなきゃいけないというのは全く別の次元の問題だというふうに思いますけれども。
  118. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 個々の法令で罰則を付けるかどうかというのは、その個々の法令の中身に応じて、こういうケースというのは罰則を付けて強制した方がいい、あるいはそこまでする必要はないという判断の下に罰則を付けるか付けられないかというのが決められるんだろうと思います。  今回、私どものこの法令で、罰則の付いた法令違反通報対象にするというふうに範囲を決めておりますけれども、そこは制度そのものの運用の安定性というものに配慮して、そこでもって線を引くという形にさせていただいたということであります。
  119. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それでは、いろいろと空中戦のようなことを言っていてもしようがないので、現実に即して、問題がこれまで起きたことについて、やはり今の規定ぶりというのはいかにも細か過ぎるのでお伺いしていきたいんですけれども、事例を挙げてお伺いしていきたいので、私がお伺いしたことだけに答えていただきたいなと思うんですが。  例えば、薬害エイズの問題ですけれども、これで考えてみたいと思いますが、アメリカでは、一九八三年に加熱血液製剤が緊急承認されて、非加熱血液製剤の使用は事実上禁止されました。さらに、一九八五年に非加熱製剤の使用が明確に禁止されました。日本では、製造、販売の承認が取り消されたのは一九八六年、翌年のことなんですね。アメリカで使用が禁止されましてから日本で使用禁止がされるまでの間、例えばこれ一九八五年、その決まる前の年ですね、時点で公益通報者保護法案が成立していたとして仮定します。非加熱製剤の販売、製造は通報対象事実になったでしょうか。
  120. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) これは、非加熱血液製剤の使用が日本の国内ではまだ禁止されていないという時点でございますので、薬事法違反には該当しないということだろうと思います。したがいまして、非加熱製剤の使用自体はその時点では通報対象事実には当たらないというふうに考えます。  ただ、あくまで一般論として申し上げるんですけれども、事業者が業務上必要な注意を怠り、人を死傷せしめた場合には業務上過失致死傷罪に該当するということでありますので、法令上は刑法を対象法令として掲げております。したがいまして、業務上過失致死傷罪に該当するというケースであれば通報対象事実に該当することになるというふうに考えております。
  121. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 これ、今回の七つの法の枠の中には薬事法というのは入っていないというのは私は問題だなというふうに思っているんですが、これからも薬事法に関係のあるものいろいろと出てくるのではないかとは思っておりますが、これはまた後ほど事例をいろいろ挙げてから申し上げたいと思いますが。  続いてシックハウスの問題について伺いますが、このシックハウス対策のための規制導入しましたのは改正建築基準法、二〇〇二年ですね、七月十二日に成立しまして、その翌年の七月一日に施行されました。内容は、居室内において、部屋の中で、政令で定める化学物質の発散による衛生上の支障がないように、建築材料とか換気設備について政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならないというもので、違反すると三十万円以下の罰金になっているわけなんですが、このシックハウスの問題で、一九九四年からマスコミで報道されました、社会問題化いたしました。そして、一九九六年ごろには国会質問で取り上げられました。建設省等関係四省庁が健康住宅研究会をスタートさせました。  つまり、どんどん問題が持ち上がってきていたわけですね。結局、その結果、クロルピリホス、これを添加した建材を使ってはいけないというふうに禁止されました。それから、第一種ホルムアルデヒド発散建材、発散する建材を居室の内装仕上げに使っちゃいけない。これは、政令で定められたということなんですけれども、この二〇〇二年に成立する以前、九六年ぐらいに国会で取り上げられて問題にずっとなってきた。結局、せきが止まらない、目がちかちかする、手足が震える、そういう状況が持ち上がってきているときに、これ通報対象事実にはなりますでしょうか。
  122. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 改正建築基準法の施行前であれば、いわゆるシックハウスの原因となる物質の使用は同法違反とはならないために、この場合には通報対象事実には該当しないということであります。  それから、先ほども申し上げましたけれども、刑法上の業務上過失致死傷罪に該当するような場合には通報対象事実に該当することになるというふうに考えております、一般論でありますが。
  123. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 これは、本当にシックハウス、シックスクールは後追いのいい例なんですね。  一九九七年に、厚生省はシックハウス検討会を発足させて、ホルムアルデヒドの室内濃度指針値を〇・〇八ppmというふうに発表しました。それから、先ほど申し上げた健康住宅研究会は、一九九八年、翌年ですね、住宅生産者向けには設計・施工ガイドライン、消費者向けにはユーザーズ・マニュアルを発表しました。シックハウス対策として優先的に取り組む物質として三つの物質、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、それから三薬剤、木材保存剤、可塑剤、防蟻剤をこれ選定したというわけなんですが、その翌年、一九九九年に住宅生産者団体連合会が安全基準を設けました。  こうした時点で基準やガイドラインを超えるホルムアルデヒドが検出された場合、この法案通報対象事実に当たりますか。
  124. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) あくまでも、改正建築基準法が成立しているかどうかというのがメルクマールになるんだろうと思います。
  125. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 質問はおっつけ、次に、これも聞いておきたいと思いますが、この改正建築基準法に基づいて、シックハウス対策の規制というのは施行前に着工された建築物には適用されないと。今おっしゃったように、法律ができる前では難しいでしょうとおっしゃっているわけですね。二〇〇三年の七月一日、去年の七月一日に施行ですから、七月では、からですから、六月中に着工された建築物には適用されないわけなんですね。  あのときにも、ちょっと思い出しますと、何となく在庫一掃みたいな感じで、七月からだから六月中にとにかく建物を着工してしまおうという、そういう空気などもあってどんどん建てられたというようなこともちょっと聞いているんですけれども、そんな家に住んじゃ駄目というふうに通報するわけですね、こういうときに。  問題がどんどん盛り上がってきているわけですから、みんな知っているわけですよ。シックスクールで子供たちなんかは本当に呼吸困難になったりもしていると、そういう状況もあったわけですから、問題はとにかくみんな分かっているわけなんですが、その基準やガイドラインを超えるというふうな状況になっても、これ残念ながら、法律ができる前だと、例えばこれ仮定して、どうでしょうか、立証が通報者にできると思いますか。
  126. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この法律の枠組みでは、その法律の改正が施行されているかどうかというのがメルクマールになるということであります。  先ほど来一般論という形で申し上げていますけれども、その当該行為が刑法上の業務上過失致死傷罪に該当する、その構成要件に該当するような場合もあり得るだろうと思います。そういう場合には、そちらの方で通報対象に含め得るケースというのも場合によったらあるんだろうと思いますけれども、個々、今、岡崎先生がおっしゃっているような個々のケースについて、そういうケースについては通報対象になりますというのは、今の時点ではよく定かに言えないということであります。
  127. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 結局、丈夫な子供もいて、だれもがシックハウス症候群になるとは限らないといって事業者の方がそういうふうに言う。でも、実際に被害を受けている方は、いや、本当に大変なんだと言う。つまり、事業者通報者との間にも認識の違いが生じるということを局長はよくお分かりになっておっしゃっているわけですね。この法案だとそんなふうにもなると。  これ、過失致死の場合には監督官庁はどこになるんでしょうか。
  128. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 法務省、警察であります。
  129. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 そうですね、本当に全部警察なわけですね。
  130. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 済みません、警察と検察であります。
  131. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 これは、こういう問題になると、もう警察、検察の方に行っちゃうんですね。本当は、事前告発されたら、何か本当に通報されたらそれが救えるかというと、もう一気に検察、警察というふうな、こういう状況になるわけなんですけれども。  まだまだ問題がありますのでお聞きしたいと思いますが、最近の例で伺いますと、先月の二日に高槻市で、これは小学校一年生と五年生の男の子が同じ回転遊具で相次いで指を切断する事故がありましたが、この遊具は構造上危険であるということは、何となく見たんだけれどもというおじさんのテレビでの発言なども聞いておりましたけれども、これは通報対象事実となりますでしょうか。
  132. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この事故の詳細について、詳細承知しておりませんので、お答えすることは困難であります。  また、同じことを繰り返して恐縮でありますけれども、あくまで一般論ということでありますけれども、刑法上の過失致死傷罪に該当するということであれば、通報対象事実になろうということを考えております。
  133. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 最近のことで、先ほど小林さんもおっしゃっていましたが、六本木ヒルズの回転ドア、あの事件について、これ、回転ドアの構造にも問題があったことが明らかになりましたけれども、この構造上の欠陥というのは通報対象事実に当たりますでしょうか。
  134. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 六本木ヒルズの事件でございますけれども、これ、現状でこの事案を規制する法令はないというふうに承知しております。したがいまして、このような場合には、適切なリスク評価を所管省庁で行って、法令により規制するか否かを判断した上で対処すべき問題であろうというふうに思っております。  それから、これはもう御案内かと思いますけれども、その回転ドアの問題につきましては、経産省と国土交通省において事故防止策に関する検討が今進められているというふうに承知しております。  それから、これもまた同じことの繰り返しでありますけれども、刑法上の過失致死傷罪に該当するということであれば、通報対象事実になり得るということであります。
  135. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 もう一つお聞きしたいと思います。  具体的に私が内部通報を受けた方から聞いた話ですが、ある殺虫剤メーカーにお勤めの方が自社製品、これは当然薬事法で承認を受けているものなんですけれども、これについて、爆発性があるから、そういう成分があるから大変危険だよと、製造販売をやめさせた方がいい、こういう通報をしたわけなんですね。法律に基づいて承認を受けている製品です、これ。この成分に非常に危険な問題があった場合、これは通報対象事実になりますか。
  136. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 今、岡崎先生がおっしゃいました危険な成分というのがどのようなものであるかというのはちょっと私分かりませんですけれども、仮にそれが薬事法に規定するような危険な成分であるということであれば、通報対象事実に該当する可能性はあるというふうに考えますが、ただ一方では、法令違反に該当しないで、通報者の、単なるその通報者の判断として危険と考えられる成分ということであれば、通報対象事実には該当しないということではないかと思います。
  137. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 最後のところがどうでしたっけ、通報対象事実には……。
  138. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 通報者の判断として危険と考えられる成分ということであれば、通報対象事実には該当しないというふうに考えております。
  139. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 そうですか。いや、だから、本当に一つ一つこういうふうに、各方面でいろんなことが起こりそうだといって、これ爆発する成分が、いつ爆発するかも実は分からないものを含んでいて大変危険なものだ。でも、残念ながら今のような状況ではそういう事実にはならないだろうというようなお答えだったわけなんですけれども、医療過誤にしましても、今まで一つ一つ挙げた事例につきましても、業務上過失致死傷罪に当たる可能性はもうあるということでおっしゃってくださいました。  私は、この法案に当たっては現場の弁護士さんにいろんなお話を伺いました。その業務上過失致死傷罪の判断を得るというのは非常に困難だという話なんですね。警察もなかなか動かない。つまり、神本理事が今こちらの方から、死ななきゃ動かないという話がちらっとあったんですけれども、本当に何か事故が起きたり、死亡したとかそういうことにならない限り、なかなか警察動いてくれない。今までのいろんな様々な事件から、そういうことは、私たちみんな胸に思い当たることなんですけれども。  その事業者通報者の間で必ずしも判断が一致しないということがこれまでのことでもずっとあったわけですよね。そうだとしますと、その明確化のために罰則による担保のある法令に限ったという、これは私は議論として成り立たないのではないかなというふうに思うんですが、いかがですか。
  140. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この制度は、新しく、正に公益通報というのは、公益通報をやったら保護されるんだよということを世の中に対して法律の形で宣言するわけですよね。そういうことでありますので、そこの対象を罰則でもって、罰則の付いた法令違反行為対象にしていて、そこが限定的になっているから非常に使いにくいという御主張をされているんですけれども、どうなんでしょうか。  先ほど来、先生がおっしゃっている各種の事例というのは、すべてこの今回の公益通報者保護法の枠組みの中で対応しなきゃいけない問題なのかなと。むしろ、先ほど来おっしゃっていますような、まだ既存の規制官庁等が当該問題に対してその判断を下していないような事柄については、まずその所管省庁で一義的にどうするかという答えを出していただく。それを見た上で、そこでその規制法が定められてそれに罰則が付くというような形であれば、それをこの法律の中に、枠組みの中に取り込んでいくということが、この法律の運用の安定性というのを考えたときにはそういう形にならざるを得ないんじゃないかなというふうに思っております。  要は、明らかであるとかというようなことをよくおっしゃるんですけれども、本当にそれが客観的に明らかであるのか、あるいはそれを通報しようとする人にとってだけと言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、そういう形で明らかであるのかと、そこはある意味では非常に大きな違いがあるんだろうと思うんですね。そこを判断する一つのメルクマールとして、罰則の付いた法令違反行為ということでもって切らせていただいているというふうに御理解いただけたらと思います。  今回こういう、新しくこういう制度導入して、公益通報というのは保護されるんだよということを宣言するわけですので、それがある意味では物すごく大きなインパクトを及ぼし得る可能性があるんだろうと思うんですね。そういうものを見ながら、それがその企業事業者の行動をどういうふうに変えていくか、あるいはその労働者行為をどういうふうに変えていくかと、そういうのを見ながら、かつ今の法律でもって使いにくい部分が仮にあるとすればそれがどこであるか、そういう実態を踏まえながら必要な手直しを加えていくというアプローチの方が、私は今やるべきアプローチ、今取るべきアプローチではないかなというふうに感じております。
  141. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 しかし、実際に問題に対処しようとしたらという意味で私はいろんな例を挙げさせていただいたわけなんですけれども、一般国民の皆さんは、公益通報者、その人は問題があるといったらばそれを通報して、その人が保護されるんだということをまずインプットするだろうというふうに思うんですね。でも、実際は非常に狭過ぎる。だから、労働者保護になりにくいし、明確化もしないという、そういうことが非常に私は今回この法案の中からそれを感じ取ることがあるわけなんですけれども。  この一般法令違反ですね、それから法令違反でなくても、生命や健康や重大な影響を与える事実を通報対象事実に加えるべきだというふうに思っておりますし、じゃ国民の目がどういうふうに見ているのかというので、内閣府がアンケート調査されたわけなんですけれども、そういう中でも、従業員等に安心して社内の窓口へ相談通報してもらえるようになるからということで、これは法制度が必要だということで、企業の方ですね、企業が七二%、そういうふうにおっしゃっているし、それから社内の問題が早期に発見して解決されるようになるんだから、消費者との信頼関係の構築に役立つんだからと回答した企業が七二%となっていて、やはり公正な社会を築くために必要な制度であるからこれは是非とも作るべきであるという回答をした企業というのは四八%というふうになっております。  市民の方からいいますと、国民一般対象としたアンケート、一部上場企業対象としたアンケート、それぞれ健康、安全の危険について通報した通報者保護されるべきなんだということがこれを見ても分かるだろうというふうに思いますし、多数を占めていると。これは国民的なコンセンサスだというふうに考えてよろしいでしょうか。
  142. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 生命でありますとか健康に重大な影響を与える事実を通報対象事実とすべきという考え方については私どもも同様に考えているということであります。  ただ、そうは申しましても、その際問題になりますのは、法律上単に命や健康に重大な影響を与える事実とだけ規定したのでは、何が具体的に命や健康に重大な影響を与える事実なのかというのは、正にそこが人によって判断が分かれるということであります。そこの判断が分かれれば、制度の運営に混乱が生ずるおそれがあるということであります。そういうような意味で、この法案では、制度運営の混乱を避けるという観点から、命や健康に重大な影響を与える事実として、範囲の明確な犯罪行為でありますとか、各種の法令違反、罰則で担保された各種の法令違反対象とすることにしたということであります。  これはもうずっと申し上げていますけれども、国民生活審議会議論でもいろんな議論が行われて、最終的に、保護される通報範囲明確化するという観点から、規制違反や刑法犯などの法令違反とするというふうに提言をしていただいたところであります。そこをもっと広げて、何でもかんでもすべからく法令違反一般対象にするということについてはコンセンサスが得られなかったというふうに考えております。
  143. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 最初の議論対象となりましたのは四百八十九本の法案のリストだったと思うんですね。それが七本に集約されたと。これ、なぜ引っ込めたんだろうという思いがあるんですね。その辺のところについてお伺いしておきたいと思います。
  144. 西川公也

    大臣政務官(西川公也君) 今御指摘ありましたように、四百八十九本の法律を当初政府の内部資料と、こういうことで検討をしてきたと、こういうことでありますが、そもそも最初の法案の原案を作るときに検討、内部での検討資料でありまして、法案を作るときにはその検討はしてきましたけれども、対象法令はこれだと、こういう決め方をせずにやってきたということでありまして、途中で引っ込めたと、こういうことではありません。
  145. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それでは、検討の俎上にのっていたということだけは間違いないわけですから、内部の検討材料というなら、今の検討状況についてお知らせいただきたいと思います。
  146. 西川公也

    大臣政務官(西川公也君) お示しをしておりますように、七法案を挙げました。そして、それらに等を付けまして、これらを今回まずこの法案の中でお示しをして、代表的なものだけお示しをしたと、そしてこれから政令を決めていくわけでありますけれども、この委員会等の御審議もよく私ども踏まえまして政令の対象を広げて決めていきたいと、こう考えております。
  147. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 こういう点について私は実は本会議でも大臣にお伺いしているわけなんですが、その法令範囲については別表において七つの法律分野を例示したと先ほどからおっしゃってくださっておりますけれども、そしてその上で政令として決めていくんだと、だから政令の委任だから問題ないというふうにおっしゃっているわけですよね。だとすると、別な言葉で言いますと、法令に丸投げしたんじゃないですと、国会審議をきちんとして、そして法文で政令の決め方について基本的な考え方、方向性を示しているんだから問題ないと、こういう趣旨発言と理解して大臣よろしいでしょうか。
  148. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) その対象法令の定め方についていろんな定め方があり得るんだろうとは思います。一応私ども、その検討の段階では、先ほど来おっしゃっています四百八十九本の法律のリストというのを作ったこともございました。ございましたけれども、それはあくまでも内部の作業のベースであります。一応最終的には今のその七つの法令プラス政令で指定するものという形での定め方でありますけれども、最終的に、法律というのは制定とか改廃というのが頻繁に行われるわけでありますので、それに伴ってその対象法令というのも当然変わり得るよねという議論がございました。そういうことを踏まえて、この法案対象法令を固定化するというやり方ではなくて、法律違反行為国民の生命、身体、財産に及ぼす被害の大きさ等を精査した上で政令で定める方がより機動的に対応できるんではないかというような考え方もあって、そっちの方が適切ではないかということで、取りあえずは今の形にさせていただいているということであります。
  149. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それでは具体的にお伺いしたいと思いますが、これも本会議で質問をして、私が質問をしたようには答えていただけなかったものなんですけれども、私はもう四百八十九、これはもう大抵のことなら堪えられる、これならもう公益通報者としても通報しようというふうにもなるわけなんですけれども、大体どの程度が対象になるかというのは今までの御答弁の中ではさっぱり分からないわけですね。  どの程度の法令対象となるかによってこの法案の意味は全く違ってくるというふうに思います。それで、その四百八十九の法令のうち幾つぐらい対象法令とすると考えているのかと、イメージを示していただきたいという、これは審議の前提としては不可欠だというふうに私は思っていまして、どの程度を政令で指定するお考えなのか、再度お伺いしたいと思います。その上で、あとは大臣にこの間お聞きしたとおりのことをもう一回聞いてみたいと思っておりますので、まず国民生活局長ですか。
  150. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) いずれにしましても、その当該法令違反行為事業者が行う違反行為というのは国民の生命、身体、財産にどの程度の被害を及ぼすかということを精査する必要があります。それを精査した上でパブリックコメントなどを通じて各方面からの意見も聞くという形で幅広く適切に定めていきたいというふうに思っておりまして、今の段階で何本法律対象にするというのはちょっと勘弁していただければというふうに思います。
  151. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 勘弁しないで大臣にもこの間と同じようにお聞きしたいと思いますが、つまり四百八十九のうち、これ八割程度ぐらいとか半分ぐらいとか、それとも一、二割程度か、それ以下かというふうにお聞きして、どんなものなんでしょうね、相当程度だということについてか、いやそうでもないという、大臣、そのぐらいイメージなくて、この法案皆さんにお願いすることはできないだろうというふうに思いますよ。大臣ですよ、大臣
  152. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 先ほど岡崎委員からも御紹介いただきましたように、アンケート調査等々におきましても、やはりこういう枠組みが必要だと、これ非常に幅広いコンセンサスがあると思います。同時に、我々は、こういう我々の社会にとってある種新しい試みでありますから、これを混乱なく出発させたいという、しっかりとスタートさせたいという思いがございます。  ただ、いずれにしても、これは事後的に、せっかく枠組みは作ったけれども骨抜きだと、そういうようなことが間違っても言われないように、我々としては、今の時点でその数がどれだけかというのを前もってお示しするのは、これは我々はこれから必要性を精査をしてパブリックコメントにも付すわけでありますから、数を申し上げるのは困難だということは是非とも御理解を賜りたいと思いますが、この枠組みの必要性を国民が強く支持しているということも踏まえまして、しっかりとその法案を政令で掲げられるようにするつもりでございます。
  153. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 一本一本の精査が必要だということについては理解をいたします。でも、主なところについては考え方が固まっているのではないかと思いますが、その要綱の段階で示されておりました独占禁止法、これは指定されますでしょうか。
  154. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この今の政府案の別表のところにございますように、別表のところの八でございますけれども、国民の生命、身体の保護消費者利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産の利益保護にかかわる法令として政令で定めるというふうに掲げてございます。  今回この法案を決定するに当たりまして代表的な例を七本、刑法以下七本掲げてございますけれども、骨子の段階で独占禁止法というのは先生御案内のとおり掲げていたわけですけれども、独占禁止法に代わって、この今回のお示ししてあります法案では個人情報保護法を掲げたということであります。  今申し上げましたように、公正な競争の確保というのは一つ分野として掲げておりまして、独占禁止法というのは正に公正な競争の確保にかかわる代表的な法律じゃないかなというふうに私どもは考えておりまして、そういうような点も踏まえながら、政令制定の際に具体的に検討していきたいというふうに思っております。
  155. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 私どもで、事前内閣委員会の調査室で出されたものにも、公正な競争の確保にかかわる法律としては、私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律として独占禁止法を想定しているというようなことが書かれておりまして、今のことは明確にばしっとは言わなかったけれども、そういった方向をにおわせていた、そういう感じでしょうか。
  156. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) その骨子の段階で書いていたものをこの法案の中では落としたということが何か非常に大きな疑心暗鬼を生んでいるような気がいたしますが、独禁法を落としたというのはこの七つの法律バランスを考えて落としただけの話でありまして、これを入れないとかいうような趣旨で落としたということではないということを御理解いただければと思います。  その上で、先ほど来申し上げていますように、この委員会での御議論でありますとか、あるいは事業者が行っている法令違反行為が現実にどういうものがあるのか、そういうようなものを見ながら、かつ当該法令への違反行為というのが国民生活にどういうふうな影響を及ぼすのか、その辺りを精査した上で案を作っていきたいと。案が作られた暁には、それをパブリックコメントにかけるなどして広く一般の御意見も賜りながら固めさせていただければというふうに思っております。
  157. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 何だか分かりにくいことをまどろっこしく、こんなになっておっしゃらなければならない苦しさが私の方にも伝わってきちゃいますよ、局長の苦しさが。  もう一つ私たちが想定しておりますのは、この今、三菱自動車のリコール隠しですね。これだけ問題になっておりますこの道路運送車両法、これは当然政令で指定されると思いますけれども、これについてはいかがなんでしょうか。
  158. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 今先生御質問でございます道路運送車両法でございます。国民の生命、身体、財産その他の利益保護にかかわる法令であるというふうに認識してございます。  これをその対象法令として政令で定めるかどうかということでありますけれども、そこにつきましては、先ほど来御答弁申し上げていますように、これから検討させていただければというふうに思っております。検討に当たりましては、自動車のリコール隠し等の事件が実際にその通報によって判明しているというようなことを踏まえて、適切に対処していきたいというふうに考えております。
  159. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 やっぱり国会の中でいろんなことを明確にしていただきたいなというふうに思うんですね。  パブリックコメントに付す内容を国会に示すことができないというのは非常に問題だというふうに思いますし、政令でその独占禁止法が指定されなくても、道路運送車両法が指定されなくてもこれ文句が言えない、こういう法案に対して賛成か反対かという判断をしろというのは、本当に、本気でそんなことを言っているのかというふうに私はだんだん怒りになってきますね。これ国会軽視と言われても仕方がないと思いますよ。明快に言える問題だというふうに私は思うんですね。  私は、そこで手にいたしましたのが、毎日新聞の「内部告発は守られるか」、六回シリーズ、今日で終わっておりますが、その一回目にこういうふうに出ております。それは、初めのところでは、公職選挙法と政治資金規正法のこの問題について、どんどん自民党の中でトーンがダウンして消えちゃった。何回も何回も足を運んでいるうちにこれ消えちゃった。  ですから、自民党のところにいろんな問題があったんだなということで、こういう文章があります。党内閣部会の消費者問題に関するプロジェクトチーム座長の岸田文雄衆院議員は、内閣府から更に担保を取っていた。公選法や政治資金規正法は非常に微妙なもの。官僚が勝手に政令に盛り込むことがないよう、何を政令で決めるか事前に我々に説明させることにしたと明言したということが言われておりまして、このような事実はあるんですか。
  160. 西川公也

    大臣政務官(西川公也君) 私、このプロジェクトチームに常時出席をしていました。その中で、法令の四百八十、何本だ七本か、四百八十九本、これは少し多過ぎるなという議論があったことも事実でありますが、意見はそれぞれ様々でありました。  そういう中でありますけれども、この新聞記事のように特定されるような公職、公職選挙法云々とか、そういう話は議論はされておりません。プロジェクトチームの検討会の中ではそういう議論はされていないと、こういうことだけ申し上げておきたいと思います。
  161. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 自民党の部会の中でどういう法令を指定するか、考え方というのを具体的に示した上で、私は、四百八十九がどんどん狭まってきたのかな、もう整理もされなきゃならないということもあっただろうともちろん思いますけれども、そういうふうになったと。そういうふうに自民党の部会では議論されたんじゃないですか。
  162. 西川公也

    大臣政務官(西川公也君) 自民党の部会も大変回数多く、広範に検討してきました。その中で、先に法律を四百八十九本、こう挙げて、そこでどうするかこうするかというような状況の検討はしておりませんで、やはり時間を掛けて、しっかり対象法令は国会の議論等も踏まえて決めていこうと、こういうことで最終的に了解をもらっておりますので、特段、自民党の部会でそのように公職選挙法云々とか、そのような関連について特に目立った議論をしたわけではないと、こういうことだけ申し上げておきたいと思います。
  163. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 目立った議論をしたというのだけは漏れてきているんです、私の方にはね。だから、ちょっとにわかにそうですかとうなずけないところもあるんですが、その前の段階では、法案作成中の二月から三月にかけて幹部が、内閣部会ですね、自民党の内閣部会、総務会の席に頻繁に出向いて、まず公職選挙法、政治資金規正法のこの二法は対象としないことを繰り返し説明して自民党も了承したというようなことで、何回も何回も通って、そしてそちらの方の議論は激しくやってきたんですよ。  そういうことは、この国会のこの中でも、そちらはそちらで通ってくるというのはもちろんあります。与党としてあるのは私は理解しておりますけれども、この委員会でもやはり私は議論をきちんとして、そして政令、この政令はどうであるかというようなことをもっと前向きな感じで私は審議すべきだというふうに思うんですけれども、いかがですか。何回も通われたやっぱり国民生活局長に聞かないといけませんね。
  164. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 先ほど来申し上げていますように、この制度を作る、作ろうという契機になったのは、御案内のとおりその食品の偽装表示事件でありますとか、その手の、正に消費者利益を害するようなことについていろんな企業不祥事が起こって、それを契機としてこの制度を考えるに至ったというのがそもそものきっかけであります。したがいまして、その国生審の提言をそこにいただいて、国民の生命、身体、財産の保護にかかわる法令違反をこの通報対象にするというふうに決めたわけであります。  したがいまして、今おっしゃっていますような、政治資金規正法の話でありますとか、公選法の話というのは、それ自体は物すごく大事な法律だと私は認識しているんですけれども、国民の生命、身体、財産を直接的に保護する法律かといったら、そこはそうじゃないですよね。そういうことで、そこは、じゃ対象外として考えようかというふうに考えたわけであります。  もちろん、これ制度の中身については、自民党の先生方ともいろいろお話をさせていただきましたけれども、その先生方の方からこれを外せとかなんとかということが、そういう要請があったかといったら、そこは絶対になかったということであります。
  165. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 この国会での議論が終わってからどうやって決めていくのか。先ほど、岡田さんの質問に対しても大臣お答えくださっておりますけれども、私は委員会で具体的に議論をしないで、後から事務方が特定の政党の議員と交渉して決めるようでは、これは提案した大臣に対して大変失礼、裏切りにもなるだろうというふうに思うんですね。そういう認識を持ってしっかり大臣には監督もしていただきたいというふうに思いますが、御答弁いただきたいと思います。
  166. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 先ほどから局長も答弁しておりますように、これは政令に関しましては、それは法律、政令の決め方に関しましては、法律分野の例示、法律そのものの例示を示して考え方を示しております。  その中で、今日も岡崎委員には非常に多くの法律について言及をいただいて、御議論を正にいただいていると思っております。私自身、この国会での御議論を踏まえながら、さらに、国民の生命、生活等々に対する影響をしっかりと精査をして、そしてパブリックコメントにも付して、それを、これは担当大臣責任においてしっかりと決めていくように指導をしたいと思っております。
  167. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 結局、私は、詳細なその検討をするために時間をこれは要する、もっともっと議論しなければいけない、今も明快にいただけない部分などもありますので、そういう検討が済んでから私は法案を提出すべきではなかったのかなというふうに思うんです。  それほどこの問題は重要な問題だというふうに思っていまして、そのために個別の、今までこういう法はどうだということについてお聞きをし、政令についてもどのようなイメージがあるんですかということについても何かここではっきりしないような議論になっていて、それだったら、十分国会の中で審議をして、そして時間を掛けて、そしていい法律を生み出すということが大事なんじゃないかなというふうに私は思っております。  今の大臣のコメントをいただきましたけれども、とにかくこの国会、十六日が閉会ということで、たくさんの時間は残されていないので、本来ならば次の国会にもまたがってやらなければならないようなそういう問題なのかなと私自身は思いましたけれども、次の質問をさせていただきたいと思います。  この法案保護される範囲を非常に狭くしたと規定したことについてはいろんな方が指摘をしているわけなんですけれども、大臣は、その保護される通報範囲を明確にすることによって公益通報者保護を図ろうとするものだというふうに答弁をされました。この事業者側が通報の正当性について争おうという、そういうようなケースについては通報すべきではないという考え方を取っているのかなと、そうだったらどんどん狭くなってしまうというふうに思うんですが、これについてはいかがですか。
  168. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 私は、その予見可能性を高める必要があると、そのことを繰り返し申し上げているわけでございます。私たちの、一般法理で守られている一つの我々の労働者を含む権利というものがございます。しかし、とりわけ労働者に対してこの分野に関しては、範囲を明確にすることによって公益通報がしやすくなる、もって国民経済的なメリットをもたらす、そのことを今回の法律で強調しているわけでありまして、それ以外のことはやるべきではないと、そういうことは全くそれは法律の想定外のことでございます。  一つ我々は、繰り返しますが、一般法理がある、その中で特に明確な言わば安全地帯のようなものを示しているわけでありますので、それを明確化することによって、ほかのことはやるべきではないと、これはそういう議論では全くならないと考えております。その分、他の部分については、これは一般法理で今までどおりむしろ守られているわけでありまして、一般法理は適用されるのだということをこの法律の中にもあえて明記をしているわけでございます。
  169. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 この労働者保護についてなんですが、政府が法律で決めた狭い範囲公益通報以外は危ないからやめた方がいいですよとアドバイスする、そういうものじゃないですよね。
  170. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) もちろんそういう意味では全くございません。安全地帯ができたからほかのところが危険になるということではないということであります。
  171. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 例えば、裁判になりましたときに、その裁判を通して通報者保護されることとなったとしても、それまでの間は通報者が不安な立場に置かれることになるというふうになっておりますけれども、これはそのような状況にならないように知恵を働かせるべきではないかと思いますが、その点に関してはいかがですか。
  172. 西川公也

    大臣政務官(西川公也君) 御心配をされるように、この法律保護対象以外の場合どうするんだと、こういうことがあると思うんですね。それは、何度も竹中大臣が申されていますように、一般の法理の中で対応すると、こういうことでありまして、したがって、労働基準法第十八条の二項にある、これは当然生きているものでありますから、対象から外れた方はそちらで守られる、それはもう当然、守られるのかどうかというのは裁判が判断すると、こういうことになると思います。
  173. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 その裁判関係でありますけれども、大臣は、イギリスでは労働関係の紛争については迅速に解決を行う専門の裁判所があるんだと、日本とは制度的な背景が違うので、そのことを踏まえて制度を立案すべきだと考えると本会議で答弁されておりますけれども、この答弁は、当事者間の認識の相違が発生した場合に迅速な解決を行う手段があれば通報対象事実の拡大はむしろ積極的に行うべきという、そういう見解を示したものと受け止めますけれども、それでよろしいですか。
  174. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 申し訳ありません。ちょっと今の岡崎委員の論理といいますか、ロジックが明確に理解できなかったのでございますけれども、私がそのときに申し上げましたのは、労働裁判、労働専門の裁判がありますから、そこで片付けられる問題が多い、それで判例も積み重ねていっている、しかし、日本はそういう制度ではございませんから、そういった意味ではしっかりと要件を明記しなければいけない、そのような趣旨で申し上げたわけでございます。委員の御質問、もしよろしければもう一度していただければと存じます。
  175. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 日本にも裁判所による仮処分がありますよね。これでいうと、百十一ページのこの調査室でも示されているんですけれども、裁判所による仮処分があって迅速な解決が行われているわけなんですけれども、大臣の答弁で、この実態を踏まえた上でおっしゃっておりますか。日本にもやはりありますよね。
  176. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) その具体的な数等々は存じ上げませんが、もちろんそういう制度があるということは存じ上げております。ただ、これは労働争議といいますか、労働上の係争の専門の裁判所というのとはやはり本質的に違うところがあるというふうに思っております。
  177. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 そうであれば、適切な範囲公益通報保護する法律を作れば、判例の集積、また社会への定着によって無用な紛争を減らすということも十分期待できるだろうというふうに思うんですね。  いずれにしても、不利益を受けた通報者を速やかに救済する制度の構築というのは大変大事だというふうに思うんです。別問題だというふうに思うんですが、大臣が言われるイギリスの専門の裁判所ですね、雇用審判所のことですけれども、これは雇用審判所がないから公益通報範囲を狭めるというのではなくて、それならば雇用審判所を作るべきではないでしょうか。
  178. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 今国会で労働審判手続などを定めた労働審判法案が成立したというふうに私は理解しておりますけれども、そういうようなものも活用しながらこの公益通報者保護に全力を傾注していくということだろうと思います。  先ほど来イギリスの話が出ておりますけれども、これは、今現在はそういう簡便に労使間の紛争を裁くシステム日本にはないということであります。したがいまして、通報者はこれは保護される通報だと思って通報した、ところが事業者の方は、いや、そんなことはないよ、これは保護されないよねという形で、そこで解釈の食い違いが起こりますと、それは必然的に裁判にならざるを得ないわけですね。その裁判になった瞬間、非常に長期化、日本の場合はですけれども、長期化するというのが常態でありますので、そういうような間切りを極力なくすということも制度の設計に当たっては非常に大きな部分、非常に我々として心しなきゃいけない部分だろうと思います。  そういうことで、先ほど来岡崎先生がおっしゃっていますけれども、通報対象範囲を狭めた、狭めたというふうにおっしゃっていますけれども、明らかにある一定のメルクマールでもって、これは通報対象になるんだ、ならないんだというのが仕分けできるような形でその制度化をさせていただいたつもりであります。そこが分かりにくいじゃないかとおっしゃる議論に対しては、これは運営に当たってこの制度の周知徹底を図るべく最善の努力を尽くしていきたいというふうに思っております。
  179. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 今の局長のようなお考え方では、やむにやまれず公益のために通報したその通報者保護の役に立たないんじゃないかと、なぜこの法案を用意したのかという、その真意が私は疑われるんですね。  結局、紛争が起こらないように狭い範囲明確化をするというと、それでは労働者はこれは公益通報をあきらめてしまう、あきらめさせることによって紛争を減らそうという、そういう考え方にも私たちは取れるわけなんですね。いや、笑っていらっしゃいますけれども、今の説明だとそういうふうになっちゃうんです。だから、公益通報を行わせて公益を擁護しようという本則の目的には反することになってしまうんだというふうに思うんです。やっぱり、通報を可能として、何かあったらきちんとそれは守られる雇用審判所のようなものがあって、抑制しないということがすごく大事なんだというふうに思うんですね。  ですから、是非、この法案目的であります公益通報を本当に可能とするために、どんどん狭めているように思いますけれども、その辺あたりは是非とも雇用裁判所、雇用審判法案をきちんとさせて、そして、通報した人たちが紛争があったとしてもきちんと守られていくような、きちんと審判されるような、そういうふうに将来持っていくというふうな御答弁がいただけないでしょうか。
  180. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 今回のこの法案というのは、もう先ほど来議論になっていますけれども、一定の要件に合致した通報であればそれは保護しますよというだけの話であります。その要件に合致しない通報をこれでもって抑制するとかなんとかということは全く考えていないということであります。それは、現実には一杯いろんな通報というのはあり得るわけですから、この法令で定めるその通報対象事実に合致しないような通報というのもあるでしょうし、それは、これが予定していない法令等についての通報というのも行われる。そういうものが行われるということについてこの法律が何か影響、悪影響を及ぼすかといったら、そこは全くそうじゃない。そういうような通報というのをしてはいけないということでなくて、して、それが原因で解雇とかなんとかという形で問題が生じてきたら、そこは労働基準法の第十八条の二の一般法理でもって保護されるのかされないのかというのが判断されるというだけの話であります。
  181. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それ止まりでございますね。  それでは、次の質問に行きます。  この六条の二項に反対解釈を許さない規定がありますけれども、労働基準法のその十八条の二の規定を妨げるものではないという非常に弱い書き方なんですね。例えば消費者契約法が「民法第九十六条の規定の適用を妨げるものと解してはならない。」とはっきりと規定していて、こっちは非常に分かりやすい、強い、そういうふうに私たちにも、法律だと、消費者契約法の方は私はそのように理解しますけれども、これ解釈指針とは言えないというふうに思うんですね。万一、本法の反対解釈によって通報者保護観点から後ろ向きの判決が一度出た場合、一度出ちゃったらもう本当に影響は深刻であるというふうに考えるわけなんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  182. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 法案の六条の二項でございますが、この規定ぶりでどうも十分ではないんじゃないかという御指摘であります。  この六条の第二項というのは、第三条に解雇の無効というのを定めておりますけれども、この第三条に、通報先として事業者内部、それから監督権限のある行政機関、それからその他の事業者外部通報先ごとに保護される通報の要件というのを規定してございます。  この第六条の第二項の規定の趣旨でありますけれども、第三条に規定する通報の要件に合致しない通報であっても、その労働基準法第十八条の二に基づき解雇が権利を濫用したものとして無効となる場合にはその適用を排除するものではないと、その旨を確認的に規定させていただいたものでございます。  要は、この規定によって、この法律が制定されても、労働基準法十八条の二の規定については何らの変更はないと。この法案対象とならない通報であっても、一般法理に基づいて個々の事案ごとに通報公益性等に応じて通報者保護が図られる趣旨というのをこれでもって十分明確になっているというふうに私どもは考えております。これ、法律の専門家が一応これでもって十分その意は尽くされるということであります。そういうふうに判断してこの規定を置かせていただいております。  なお、衆議院では附帯決議で、ここをもうちょっと一般の人に分かりやすくするような附帯決議を置いたらどうかということで、今読み上げますと、「特に、本法の保護対象とならない通報については、従来どおり一般法理が適用されるものであって、いやしくも本法の制定により反対解釈がなされてはならないとの趣旨及び本法によって通報者保護が拡充・強化されるものであるとの趣旨を周知徹底すること。」という附帯決議を付けていただいておりますけれども、正にこれが法律の用語ではこの六条の二の規定になっているということであります。
  183. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 この最低限のその下の前提としてこの法案はあくまでも最低限の部分を明確したのであって、その周辺部分もできるだけ広く保護されるべきであるという考え方、これを明確に示していただきたいというふうに思います。
  184. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 岡崎先生、その周辺部分と今おっしゃったんですけれども、それは何を意図されているのかと、もうちょっと御説明いただければと思いますが。
  185. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 つまり今、先ほど申し上げた部分の最低限守らなければならないその下の前提と、その前の前提というふうに言ってもいいのかもしれませんけれども、最低限の部分明確化したということをはっきりとさせていただきたいし、その最低部分の周辺部分も全く広く保護されるべきではないかということを明確化してほしいというふうに思うんですね。
  186. 西川公也

    大臣政務官(西川公也君) 先生の御心配と御希望、よく分かります。  それで、この法律が、身体、生命、財産を守るときに、オールマイティーの法律であればそれはその周辺部分まで守れると思いますが、これが、通報したことが果たして生命、身体、財産に本当に影響あるかどうかと分からないやつも出てくる可能性もあります。そういうときに、これは消費者側にも被害が出る場合もあるし、企業側に出る場合もあるし、いろいろのことがあるということも前提に考えまして私どもはある程度の枠組みをはめたと、こういうことなんですね。  これを枠組みをはめずに、すべて通報したやつ守りますよと、こう言えばいいんですけれども、そうしますと、逆に今度、合理性が、本当にそれで整合性が保てるかというとそうもいかないと、こういうことで私どもは限定をして、限定したものについてはしっかり守りますと。しかし、その守るところから外れたやつは労働基準法の十八条の二でしっかり今までどおりに守られるはずだと、こういう解釈でありますので、私どもとしては、この法案で身体、生命、財産を守っていきたいと、こういう考え方でございます。
  187. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 しっかりと守って、広く保護していただきたいという意味で質問をいたしました。  政府案がむしろ後ろ向きの判例を誘導するおそれがあるという法律の実務家たちの方から強く指摘されたんですけれども、衆議院の参考人質疑でも、せっかく前向きの判例も出てきているのに、判例水準を切り下げるおそれがあると指摘されておりました。この点についてどのように認識をされているか。  私が頭にありますのは、阪口参考人、これ衆議院の場合ですけれども、奈良地裁でのごみ収集所ですね、通報した人が守られたという例がございましたけれども、こういうところですね。判例が安定していない、そういう中で判決がよりどころになってしまうと、このラインという、余り判例もなくてこのラインと決めてしまったその水準を更に引き下げてしまうという、そういうおそれがあるんじゃないかという意味で質問をさせていただきたいと思いますが。
  188. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この法案ができることで従来の判例水準が切り下がるんじゃないかという御指摘でございます。  もう先生御案内のとおり、この公益通報に関する既存の裁判例でありますけれども、解雇その他の不利益取扱いが不当とされた例もあれば正当とされた例もあるというのが現状であります。そういう意味で、通報者保護という点で現在でも十分保護されているというふうには私ども考えておりません。そういうような現状に照らしまして、先ほど来何回も申し上げていますけれども、できるだけその具体的な要件を掲げるということでその通報保護されるか否かの予測可能性を高めると、通報者保護する場合を明確化することによって通報者保護を図ろうとするものであります。この要件に該当する通報というのは、今よりもはるかに通報が容易になるというふうに考えてございます。  それから、今も御議論ありましたけれども、この法案の要件に該当しない通報でありますけれども、現行どおり一般法理に基づいて保護が図られる点に何らの変更はないということでありまして、その趣旨を明確にするための規定も、先ほどお示ししましたように六条の二で置いているというところであります。そういうことでございますので、この法案ができることで、従来の判例水準を切り下げるものになるということは全くないというふうに私は思っております。
  189. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 是非、水準が切り下がらないようにというふうにお願いをしたいと思います。  衆議院の附帯決議の第一番は、「本法の保護対象とならない通報については、従来どおり一般法理が適用されるものであって、いやしくも本法の制定により反対解釈がなされてはならないとの趣旨及び本法によって通報者保護が拡充・強化されるものであるとの趣旨を周知徹底すること。」というふうに挙げられました。大変もっともな附帯決議で、すばらしいと思います。  しかし、残念ながら附帯決議はこれ六法には載らないわけですよね、当然ですね。こうした趣旨がより明確になる規定、一般条項を設けたら本当にいいなというふうな思いがあるんですけれども、この一般条項を設ける必要があるとお考えですか。いかがでしょうか。
  190. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 今、岡崎先生がおっしゃった一般条項というのは、外部通報についての、外部通報の要件としての一般条項という意味でありますか。──そこは第三条の、第三条の外部通報の要件のところに書いてございますように、イからホまで五つの要件というのが掲げてございます。岡崎先生の今の御趣旨というのは、イからホに加えて、その他外部通報が適当であると認められるような場合に外部通報ができますと、そういうような条項を一つ入れろと、そういう趣旨の御質問でありますよね。そういう理解でよろしいですか。
  191. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 はい。
  192. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 分かりました。  そこは、その他外部通報が適当と認められる場合という規定をこの条項の中に入れたときにはまた全く同じ問題が起こってきまして、何がその外部通報が適当であるかどうかというのが個人の主観によって判断が食い違ってくる可能性が出てきますよね。そこはやっぱり、その制度の予見可能性というのを高めるということで、ここではイからホに掲げる五つの明確な場合に外部通報ができますという形で要件を定めさせていただいておりまして、むしろ制度の実際上の運用に当たっては、このイからホでほとんどのケースというのは尽くされているんじゃないかなというような気もしておりまして、あえて一般条項を設けてその法律関係を不安定にするよりも、この形の方がいいと私は思っております。
  193. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 私が今質問をさせていただいて、あと、これの詳しい担当は神本さんになりますので神本さんの方にしてもらいたいと思いますが、イからホまでで駄目なのでヘを加えると、こういうことでございます。詳しくはこちらの方にやっていただきたいというふうに思っております。  それで、大臣労働者というのは一般国民とは異なって、自らが従事する事業に関連する情報については一定の知識を有しているというふうに考えているというふうに御答弁されているんですね。私は今日、今回こういうふうに質問をするに当たって、いろんな方からお話を伺ったり参考にさせていただいたりしましたけれども、とっても難しいです。働いている自分の事業所のことについて本当に一定の知識を持ってやっているかなというと、大変不安な面があるんですけれども、幾らその業務にかかわっているといっても、一般労働者法令違反であるかどうか判断できるだけの正確な知識を要求するのは、私は非現実的だというふうに思うんですね。  例えば、先ほど政令で指定されるかどうかの明確な答弁はいただかなかったんですけれども、道路運送車両法、あれは設計上の危険性に一番気が付きやすいのは技術者の方なわけですよね。日本の自動車メーカーの技術者は非常に優秀だと。技術者の方たちは本当にこの道路運送車両法の規定まで精通しているかといえば、どうでしょうか、大臣
  194. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 本会議での御答弁で、私自身、確かに一定の知識がある者と考えておるというふうな答弁をさせていただきました。これは個々の業界によって、また個々人によっていろんな差は当然のことながらかなりあると思います。しかし、一般に想定される場合に一定の知識があると。一定の知識があるというのは、これはそれで事実なのではないかと考えております。  ちょっと極端な例かもしれませんけれども、恐らく銀行や証券会社、そういうところは、これはいろんなことをやるとインサイダー取引に引っ掛かるわけでありますし、金販法の適用を厳しく受けているわけでありますし、そういうことを勉強しないと販売員の資格が取れないわけでありますから、そういうところではかなりの知識を持っているという面もございましょう。ただ、製造現場等々で携わっておられる方で、その局部のものについて、パーツについては詳しいけれども、製品全体についての法体系を詳しく存じ上げていると、そういうことではやっぱり必ずしもないのだと思います。  したがって、そこはあくまでも一定の知識があるという考え方に立たなければいけないと思います。その意味では、法体系を完璧に知っているということを我々はもちろん前提としているわけではございません。したがって、この法律とともにいろんな、何といいますか、これは自分が通報したら法律ではどのような位置付けになるのか等々の相談等々ができるような仕組みは、これは別途法律の外の問題として我々はしっかりと作っていく、そういう努力はしなければいけないというふうに思っております。  もう一つ重要な点は、この法案でございますけれども、その通報保護要件としては、これはもう委員よく御存じのとおりだと思いますけれども、内部への通報に関しては、通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合でありますから、そこはそういうふうに思料するに足る状況があれば、これは保護されるということになります。行政機関を含めた外部への通報に関しても、等々と信ずるに足りる相当の理由がある場合でございますから、その意味では非常に厳密な法律の一言一句を熟知しているということを要件としているわけではない。こうした点も踏まえて御理解をいただきたいと思います。
  195. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 この道路運送車両法についても、どういう場合に罰則の対象となるのかというのは、法律の構造は単純じゃないわけですよね。この欠陥自動車を放置することは罰則の対象になるわけですけれども、自動車運送法では原因が設計、製作の過程にあると認める基準不適合自動車、これは、つまりこれは基準に不適合した自動車ですよ、そしてこれにリコール勧告がされます。しかし、その勧告についても違反をする。違反をしたことをまたさらに、さらに今度はまた公表する。そしてなお違反しっ放しだ、そして次はリコール命令が来る。そして、またさらにそれは違反している。つまり、全然従ってない。その次にやっと罰則ですよね。自動車運送車両法についてはそういうふうに今なっているわけですよ。随分いろんな過程があるわけですよね。不適合自動車というふうに言われて、リコール勧告になってから公表して、リコール命令で、それでも違反続けていて罰則と、こういうふうになるわけですから。  これは、本法案公益通報対象事実の二つの定義の一つ、ここが本当に難しいんですけれども、「別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場合における当該処分の理由とされている事実(当該処分の理由とされている事実が同表に掲げる法律の規定に基づく他の処分に違反し、又は勧告等に従わない事実である場合における当該他の処分又は勧告等の理由とされている事実を含む。)」という、これ普通に読んでは絶対意味の分からない条文ですよ。本当分かりにくいです。  初めてこれで通報対象事実だというふうに分かることになっているんですけれども、欠陥自動車の放置はだれに考えても悪いという、分かるんですね。だけれども、これが通報対象事実であるかどうかというには、こんなに難しい法律を理解しないと分からないですね。  大臣は、すべての労働者が従事する事業に関連する法令に従って正確な知識を有しているとは必ずしも言えないというふうに、相当程度の知識を持っている労働者の方が一般的であるような言い方を最初したわけなんですけれども、こんなことが一般労働者に分かるというのは考えにくいです。今、私、何回かこれは読んでみた文章なんですが、これはぱっと分かりにくいな。法律の専門家じゃない場合にはそういうことが起きるんですけれども、これは本当に一般労働者に分かりにくい法案ですね。
  196. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 第二条の第三項の第二号のお話であります。これが分かりにくいというお話であります。  ここにつきましては、非常に簡単に言えば、ある規制法がありますと、その規制違反に対して主務大臣が命令を掛けると。その命令が用意されていて、主務大臣の命令に違反することが罪になる、それに違反したら罰則が掛かってくるよという場合が一つ。  それから、その括弧の中にまた考慮事項が掛かっていますけれども、それは、今申し上げたのは、ある規制違反があって、主務大臣の命令があって、その命令に違反する行為に対して罰則が掛かる行為というのを本則の方では言っているんですけれども、この括弧の中では、今度はある違反行為があったときに、最初から命令を掛けるんじゃなくて、主務大臣が勧告をするというケースがありますよね。勧告を出して、勧告に従わない場合に次は命令を掛ける。命令を掛けたけれども、それに従わない場合にその罰則が掛かってくる。そういう法律、そういう行為対象にするということを言っております。  これは、今、岡崎先生がおっしゃっていましたように、例えば会社ぐるみで違法行為がずっと行われていて、それがそのことに対して行政機関への報告とか何かについても虚偽の報告をすると、そういうのがこうずっと続いておれば、罰則の段階に至っていない状況であっても通報対象事実に該当してくるというふうに考えております。
  197. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 なかなか労働者は分からない。お互い何となく分からない同士で言っているみたいな、失礼しました、いや、ごめんなさい。何か本当に分かりにくいんですよ。これ法律家の方も分かりにくいと言っているんだから分かりにくいんだろうなと。私が分からないのは、私が駄目だからというだけとも言えないというふうに思うんですが。  今日は、私はその後十問以上また更に用意をしているんですが、終わらないです、これ本当に。終わらないんです。次に神本さんに譲って、私はまだ終わっていないということだけを申し上げて、終わりにしたいと思います。失礼します。
  198. 神本美恵子

    神本美恵子君 続きまして、民主党・新緑風会の神本美恵子でございます。  まず最初に、竹中大臣公益通報者保護法案基本的スタンスについてお伺いをしたいんですけれども、今日、午前中の参考人質疑から午後の質疑を通して、この法律保護される通報対象事実も、それから通報者も、対象となる通報者ですね、それから外部通報要件も非常に限定をされて狭過ぎるのではないか、対象となる事柄がですね、というようなことが私にはたくさん聞こえてまいりました。  この限定された要件を満たさないものは、たとえそれが公益のために通報されたものであっても、国民の被害防止、被害拡大防止のためと思って通報しても保護されませんよというようなメッセージが私には聞こえてくるんですが、先ほど竹中大臣は、そうではありません、保護される対象を明確にしたんであって、それ以外のものは一般法理保護されるものであるしというようなことをおっしゃいましたけれども、私は、この間の経過をいろいろ読ませていただいて、当初からこういう狭い範囲に限定するものを目指したのではなくて、例えば国生審の消費者政策部会報告、二〇〇三年五月に出されたもの、それから二〇〇三年十二月に出された骨子案、それからこの法律案、この経緯を見てみますと、特に論点となっております、正に生じようとするというようなおそれからそういうふうに変わっている。それから、外部要件、通報要件も保護要件も非常に限定されてきているというようなその変化を見ると、やはり限定されたものになっていて、これは本当に公益のために通報した勇気あるその人たちを保護する法律を目指しているのか。そうではなくて、保護をする対象を限定して、これだけで、それ以外はだから通報を余りしない方がいいよというように受け取る私がおかしいのでしょうか。  まず大臣に、そのよって立つスタンスをお聞きしたいと思います。
  199. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 神本委員が今御指摘してくださったようなその範囲、要件、そういうものについては様々な御議論があるということを私も十分に承知をしております。  そもそも、こういう枠組み作りを議論をしましたときに、やはり議論をしなければいけませんでしたのは、確かに公益のために通報する方、その方が不利益を受けないようにしっかりと保護しなければいけない、それは我々の非常にはっきりとした明確な、同時に強い気持ちでございます。同時に、これは事実に反する通報がその事業者外部等々になされることにもしなれば、これは事業者が風評被害などを受けることになる。こういうことが大きくならないような配慮も同時に必要である。やはりそのバランスを取らないと私たちの社会の自由な活動に障害が生じかねない、そのやはりバランスを取りながらしっかりと保護していこうではないかというのがこの立法を考えるときのやはり重要な出発点でございました。  今、神本委員から例示的にお話のありました、例えば、通報対象事実が生じ、又は正に生じようとしている旨、これを対象とすることによって、例えば通報対象事実が生じる前の通報対象に含めて被害の未然防止に資するという意見がありましたが、同時に、生ずるおそれというふうにしたのでは通報者の主観による合理的でない通報もなされてくる。それで事業者に不当な損害が発生する可能性があることも考慮しなければいけないのではないか。結果的に、正に生じようとしている場合という、通報対象事実の発生が切迫して蓋然性が高い場合にやはり限定すべきではないかというような考え方になったわけです。我々のよって立つのは、決して通報をむしろ抑える方がいいとか、そんなことはもちろんみじんも考えているわけではありません。そういう方々内部通報によって最近の幾つかの残念な事実が明らかになっているというのは、これはもう動かせない事実でありますから、そういう勇気のある方々だけはしっかりと保護しなければいけない。  しかし同時に、冒頭申し上げましたように、事実に反する通報等々がその中に混じってきて、事業者が風評被害を受けることのないような配慮を一方でしていかなければいけない、そういうバランスを取りながら多くの人が納得できるような仕組みにしたい、そのような思いでこのような法律議論を進めてきたわけでございます。
  200. 神本美恵子

    神本美恵子君 あと具体的に聞いていきたいと思うんですが、その前に、その保護することと、一方でその通報された内容が事実と反していたりして風評被害を事業者に与えたりすることとのバランスでこういうふうにしたというお話ですけれども、私は、その風評被害と、それこそこの間ずっと企業不祥事なり、そのことによって命を落としたりというような国民の被害が相次いでおりますよね。こういったものと、いわゆる経済的な自由な活動と、そういう公共の、国民の生命、身体、財産その他の利益保護にかかわることとがてんびんでこういうふうにバランスを取るものなのかなということについて、私はちょっと疑問を持ち続けながら質問をさせていただきたいと思います。  今日の午前中の参考人の方にいただいた資料の中に、これは今回のこの法案も英国の公益開示法を一つ参考にされたというふうなことが出ていますが、その資料の中にもあったんですけれども、私がなぜ最初からそういう色眼鏡でこの法案を見るかと、色眼鏡じゃない、だんだん眼鏡が曇ってきたんですが、それは、これは調査室に作っていただいた資料の一番最初の目的のところの解説として、「本法の目的は、通報をしやすくすることやいわゆる「密告」の奨励ではなく、」というふうなことがあります。そして、ずっと読んでいって最後に、「実際に公益通報が全くなかったとしても、本法の目的は達成されることになる。」、間を抜いてちょっと分かりにくいかもしれませんけれども、通報そのものを目的とするのではないと。それはもう私も分かります。  しかし、ここで、この間ずっと社会問題になってきたものが大抵内部からの告発通報が発端になって、その原因、背景が究明されていって規制法を作ったりというような今の状況になっていますよね。そういう今の社会を見たときに、密告というこの言葉に私はどきっとしたんです。  ただ、そういうまだ社会風土なり組織の中ではチクりとか密告とか、そういう、子供の間ではチクりと言いますが、そういう風土、組織、文化といいますか、日本の、そういうものがあるのかなとも思いながらですけれども、この今朝いただいた資料の中にイギリスの公益開示法の制定などにかかわってきたNGOの事務局長のガイ・デンさんという方のお話の引用があるんですけれども、イギリスでこの公益開示法を作ったときに、作るに向けてのずっと活動の中で、沈黙以外の選択肢を根付かせるということで、私たちの経験で初めに気付いたことは、職場での危険を見付け、それに懸念を覚えた労働者には三つの選択肢がある。一つ目の選択肢は沈黙。イギリスでは沈黙は最も選択され、また容易な選択肢である。もう一つの選択肢は、問題があることを内部で社長や上司に通報すること。三つ目の選択肢は、問題を外部通報するというものですというふうに書かれているんですね。私たちは、人々が責任を持って問題を提起し、その問題を消費者が被害を受ける前に職場で解決するという文化を持つために努力することが公益であると信じていますというふうに書かれています。  この説明では、この中には、日本ではまだ公益という定義がないと、広辞苑からの引用が出ておりますけれども、その公益のとらえ方というものが、先ほど竹中大臣が、その企業の風評被害なり、そういう経済的な自由権とのバランスでてんびんに掛けるのかというところはこれからの議論も残ると。私としては是非議論をしていく必要があるんではないかなと思っておりますので、時間が、それについてじゃ一言、大臣
  201. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 誤解を生じるといけませんので是非私も明確に御理解を賜れればというふうに思うんですが、公益が害されているということが明らかな場合は、個人の自由な取引云々というのはもちろんそれはもう問題外、そういうことを考える必要はないわけであります。しかし、これが例えば、よく犯罪者を保護するのかというような言い方もされたことがあるんですが、もしある企業が行っていることが犯罪であり悪いことであるということが確定しているんだったら、これはもう問題にする必要がないわけでございます。これはもう法律にのっとって逮捕するなり処罰するということに尽きるわけでございます。  今、しかし私たちが問題にしているのは、本当にこれが悪いことなのかどうなのか判断ができないわけです。少なくとも、その当事者から見ると悪いと思われるから公益通報しようかどうかと考えるわけですけれども、本当にその御判断が正しいかどうかは分からないわけであります。したがって、そのような場合にその通報が風評リスクをもたらすんだと、もし、そうでない場合があり得るわけですから、そこのバランスを取らなければいけないと。そういうことを私は申し上げているんであって、例えば一方でこれはもう公益を害しているということが明らかであるならば、これは法律違反であるならば、我々が作った、多くの人が認めた法律で罰則を伴った違反であるなら、これは公益を害しているということが非常に明白なわけですから、これについてはもうきちっと通報する人が守られる、そういうことを明確にしようというのが今回の法律でございますので、決してその公益と私的な利益バランスを掛けているということではございません。この公益が害されているかどうかということが不明確な時点で、風評リスクとのバランスをどのように取るかと、そのように是非御理解を賜りたいと思います。
  202. 神本美恵子

    神本美恵子君 時間が限られておりますので、具体的な問題に入っていきたいと思います。  私は今日はもう外部通報要件のみに絞って、そこに絞っていきたいと思うんですけれども、三条のところで先ほどから話題になっておりますイからホです。そこのところについて、一つずつ確かめさせていただきたいんですけれども、外部通報をするときの要件として、イからホが挙げてあります。ただ、これこのまま読んでみますと、一つ一つがどういう場合を指すのかが分からないというのが正直なところです。  それで、一つ一つ。こういう場合が、分からないから何とも言えませんが、あるの。こういう場合ってどういう場合、それって本当にあるの。全体見るとこういう場合が非常に限られたことであるとすれば、外部に出せるのは非常に針の穴を通るぐらい細いものであるというような感想をまず最初に申し上げましたけれども、例えば、通報対象事実、この法律では犯罪行為等というふうになっておりますので、その犯罪行為等の場合においては、もちろんこのイに書かれているような解雇やその他不利益取扱い、あるいは証拠隠滅、偽造、変造のおそれという危険性は常にあると思います。ただ、公益通報の正当性が訴訟で争われた場合に、通報者はその通報段階で、将来不利益取扱いや証拠隠滅が行われるはずであると信ずるに足る相当の理由があることを立証することは極めて困難であるというふうに考えられるんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  203. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 例えば、第三条の第三号のイでありますけれども、これは、内部あるいは行政機関への公益通報をすれば解雇その他不利益取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合ということになっております。この場合に、じゃ、どういう場合が具体的に該当するのかというお尋ねだろうと思いますけれども、例えば、過去に本人でありますとかあるいはその同僚が内部事業者内部通報したところ、その不利益取扱いを受けたようなそういうような例があるというような場合を想定していただければと思います。  それから、ロの場合には、その内部通報をした場合に証拠が隠滅され、偽造され、変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合ということであります。ロにつきましては、例えば、事業者ぐるみ、社長以下みんなが一緒になって法令違反行為をやっていると、そういうケースで、その事業者の中に、通報してもその事業者がそういう法令違反行為是正するというのがほとんど期待できない、むしろ、証拠を隠滅するとかいうような形の行動を取るというのが予想されるというような場合であります。  これ、いずれにしても、信じるに足りる相当の理由があるということでありますので、労働者は、事業者の中に置かれたそれぞれの立場の範囲内で、正に自分に過失がなく、そういうふうに思ったということを証明すればいいだけの話であります。それが結果的に真実ではなかったという場合も、これは救済しようとしているというものであります。
  204. 神本美恵子

    神本美恵子君 過去に本人あるいは同僚なりがそういう事実があった、不利益扱いを受けたというような場合とおっしゃいましたが、人が、ほかの人がそういう不利益扱いを受けたということを必ずしもほかの人に言うわけではないので、そういうことを知り得るかどうかも分からないし、それから、自分は初めてこういう通報をするんだというようなとき、そのことは一つの例として挙げられましたけれども、必ずしもそういう場合があるとは思えないというのが一つと。  それから、ロの点で、組織ぐるみやトップの犯罪というようなことが証拠隠滅とかにつながるというふうな御答弁だったように聞こえたんですけれども、企業ぐるみトップの犯罪というのが必ずしも証拠隠滅につながるとはまた限らないと思うんですが、その点はいかがですか。
  205. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この通報をする人は事業者内部労働者であります。したがいまして、一般人がこういう通報をするとかいうようなケースとは全く異なるということであります。ある程度その事業者の中での事情が分かっている人が通報するわけですから、当該法令違反行為事業者ぐるみであるかどうかについては、当然のことながら通常の労働者であれば知り得る機会があるんではないかというふうに考えております。  その事業者内部法令違反行為通報しようとする労働者であれば、その労働者が通常知り得る範囲内で、組織ぐるみに該当する事実として、例えば法令違反行為の抑止策が講じられないままに継続してその法令違反行為が続いていることを示すとか、あるいはその事業者法令違反行為を黙認しているということを立証するという形で可能ではないかというふうに思っております。
  206. 神本美恵子

    神本美恵子君 いや、トップが、トップの何人かとか、社長を含めて役員の何人かでこういう法令違反行為が計画をされているとか、そういうことは事業所の中にいれば分かるといいますけれども、一般社員には分からないことの方が多いと思うんですね。そういうことは、ばらばら、あちこちで言うわけでもないですし、悪いことと知ってやっていることでしょうから、そこで、密室で行われていることを知り得ないと思うんですが、だから、そういう組織ぐるみやトップの何人かで行われようとしている、あるいは行われている法令違反行為に対して、どうしてそれを知り得るんですかね。それが当たり前のような、当たり前って、そういう場合とおっしゃいましたけれども。
  207. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 例えば、食品の会社でありますと、そこで作っている食品にこういう添加物は使っていけないというのは決まっているはずですよね。現にそういうものが使われているというのはその事業の中にいる労働者であればある程度分かりますよね。それから、有害物質とか何かを不法投棄するというケースを考えていただければと思いますけれども、そういうケースでありますと、いつどこにだれがその不法投棄をしているかというのはある程度は分かりますよね。  そういう事実、法令違反行為の事実があったというのを端緒に、中にいる人であればそれがその事業者、社長も結託してやっている、あるいはおっしゃる、社長もそういうことを結託してやっている、あるいは役員がそれに加担してやっている、そういうものは、何というんですかね、伝わってくるものなんじゃないでしょうか。
  208. 神本美恵子

    神本美恵子君 いや、それこそ、いいことは広まるでしょうけれども、そういうことというのは秘密裏にやられますから、だからこそ、そこで証拠隠滅や偽造や変造がされるおそれがあるというふうに衆議院の答弁でもされていると思うんですね。それというのは、そこにかかわっている社長や役員なら分かりますけれども、一般労働者には知り得ないことではないかと。だから、つまり、このロで言われている、証拠が隠滅され、偽造され、変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由というのはまれな例ではないかと、そのことを労働者が知り得るというのは、ということを私は言いたかったわけです。  次に行きたいと思います。  次にハ。ハは、公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合というふうにあります。だから、するなと言われた場合ですね。これは法令違反じゃないかと知り得たその情報を持ったら、あいつは知っているなということを知った上司なり同僚なりが外に出すなというふうに言った場合がこのハだと思いますけれども、これについては、これも衆議院での答弁ですかね、答弁と、それからこのやっぱり調査室の資料の中にあるんですが、就業規則、社内規程などでそういうのが、例えば、社内規程や就業規則において、社内ヘルプライン設置したので通報はこちらを通すこと、ヘルプラインへの通報をせずに行政機関通報した場合は解雇するなど、一律にこういう内部通報前置を義務付ける規定を置いた場合はこれに該当するとありますが、こういう社内規程とかあるんですかね、解雇するとか。こんな例があるのかをまずお聞きしたいと思います。    〔委員長退席、理事森田次夫君着席〕
  209. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) そういう明らかに口止めをしているという例があるのかどうかということでありますけれども、そこは実際、具体的にそういうことがあるかどうかというのはつまびらかではないんですけれども、例えば、通報をすれば本人でありますとか家族に危害を加えるよみたいな、そういうような脅迫をするというようなケース、正に通報者にそういう意味で有言無言の心理的な圧力を加えるような行為がなされるというようなケースはあり得るんだろうと思います。  この辺りの具体的な事例につきましてもう少し実態等も調査させていただきながら、そういうような具体的な事例としてこういうものがあるよというのがあれば、その労働者に対してそういうような具体的な事例をどういうふうに証明していけばいいのか、証明していけるのかということを周知するようなことも考えていきたいというふうに思います。
  210. 神本美恵子

    神本美恵子君 有言無言のそういう圧力なりがある場合もあるということですけれども、それこそ有言無言で、じゃ、だれがそういう圧力を掛けるのか、ここでは労務提供先というふうに書いてありますけれども、社長なのか、社長からの場合がここに当たるのか、上司それから同僚、上司もいろいろいますよね、直属の上司からそうじゃないところ、それから匿名、匿名でメモが来るとか、何かそういういろんな口止め圧力があると思うんですが、これはそういう全部含むんですかね。
  211. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この第三条の第三号のハでございますけれども、公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合、要求された場合というのを掲げております。これを掲げておりますのは、こういうふうな場合に事業者内部にその通報をしても法令違反是正が期待できない、むしろその通報者不利益取扱いを受けることが考えられるということで、こういう規定を置かせていただいているということであります。  したがいまして、その通報をしないというのをだれが要求するのか、要求する主体でございますけれども、この法律事業者内部通報先となり得ますヘルプラインでありますとか相談窓口コンプライアンス本部、そういうものに加えて、経営責任者である社長、取締役あるいは直属の上司、それから通報事案についての責任者などが該当するものというふうに考えております。
  212. 神本美恵子

    神本美恵子君 私の質問とちょっとずれていたような気がしますが、私がお聞きしたのは、このハのところは、労務提供先から公益通報しないことを要求された場合ですよね、簡単に言えば。正当な理由なく要求された場合。その労務提供先というのは、労働者ですからその事業主、社長さんとか上司とかでしょう。だから、それは個人でいえば、会社が言うわけじゃないですから、社長さんとか上司とか直属の上司とか同僚とかいろいろあると思うんですが、そのだれから言われてもこれに当たるんですかって。
  213. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) ですから、先ほども申し上げましたように、経営責任者であります社長でありますとか取締役、それから直属の上司、通報事案の責任者などが該当すると、そういう方から言われた場合にこの規定に該当するということであります。
  214. 神本美恵子

    神本美恵子君 何かさっきNPOとかおっしゃったような気がして、えっと思ったんですが……
  215. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 言っていません。
  216. 神本美恵子

    神本美恵子君 違います。はい。  それで、そうすると、こういうことを今もろに社内規程に書くなんということはもちろん非常にまれ、少ないんではないかと思いますし、直接、そんなことを言うと不利益扱いするぞとか、どうなるか分からないぞとかいう、そういうことは恐らく今でも余りないと思いますが、この規定が入ることによって逆にかえって陰湿な圧力が加えられるようなことも考えられるのではないかというふうに私は懸念いたします。    〔理事森田次夫君退席、委員長着席〕  それで、一番大きな問題が次のイロハニのニなんですけれども、これは内部通報した日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該労務提供先から調査を行う旨の通知がない場合又は正当な理由がなくて調査を行わない場合には外部通報されるというふうな規定ですよね。この調査を行ったとした事業者から、例えば間違った調査結果を押し付けられた場合は外部通報できるんですかね。
  217. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 間違った調査結果というふうにおっしゃいましたけれども、その何が間違っているのかというのがよく分からないんですが、ただ、いずれにしても、これ内部通報に関する手続であります。内部に、事業者内部通報をして、二十日たっても調査を行う旨の通知がない場合、あるいは正当な理由がなくて調査を行わない場合には外部通報できるというふうに規定しているものであります。  虚偽、誤った調査結果が通報者に届いた場合にどうするのかというようなお話でありますけれども、それがですね……
  218. 神本美恵子

    神本美恵子君 委員長、質問変えます。  分かります、分からない。
  219. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) いえ、そのときに、この個々の外部通報の要件に合致する通報通報要件が備わっておれば、当然その外部通報はできるというふうに考えていただければと思います。
  220. 神本美恵子

    神本美恵子君 この二十日以内に調査を行うという規定になっていますので、そういうふうに通報者に返事をすればいいんですよね、これはね。調査を開始すればいい、開始すると言えばいいんだ。開始しなくてもいいんですか、二十日以内に。
  221. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) これは二十日以内に調査を行うという、その旨を通知すればいいということでありまして、二十日以内に調査を開始することまでを求めてはおりません。  ただ、事業者がその調査をする旨の回答をしたにもかかわらず、その後調査を行う意思がなく放置していたような場合でありますけれども、これはそこに書いてございます正当な理由がなくて調査を行わない場合というふうに該当しますので、外部通報をできると、外部通報保護されるということであります。
  222. 神本美恵子

    神本美恵子君 そしたら、その放置しているという判断は通報者はどの時点でできるんですかね。一週間ぐらい待っても返事がない、あるいは一か月ぐらい待たなきゃいけないのか、一年待たなきゃいけないのか、そこは全然明確ではないんですが。
  223. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 個々のケースごとにどういう状況であるかというのを見ないとなかなか一概には言えないんだろうと思いますけれども、いずれにしても、これ調査を内部通報するということは、その事業者に対して通報した事実についてそれが事実であるかどうかというのを調査して、かつそれが事実であればその是正措置を講じてくださいということを言うわけで、それをその通報に込めて申請しているということであります。したがいまして、その事業者がそれを受け取って、調査をするすると言いながら、いつまでもその調査をしないというふうなことは、当然のことながらそれは許される話ではありませんし、そういうような場合には、もちろん行政機関通報もできますし、それから事業者外部通報もできますしということ、そういうような形になろうかと思います。
  224. 神本美恵子

    神本美恵子君 ということは、一定期間待ってということではなくて、英国の開示法と同じように、内部通報をして、そしてなかなからちが明かないと、それはケース・バイ・ケースだというようなニュアンスですけれども、一週間待っても、このぐらいの規模の事業所では調査はそんなに掛かるはずないと通報者が判断して、もう行政機関に言ったり外部に言ったりしてもいいということなんですね。そこはハードルはそんなに高くないということですか。
  225. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 事業者内部に対してその当該事業者労働者通報をしているわけですから、自分が通報したことを事業者側がどういうふうに取り扱っているかというのは、それはある種の、何というんでしょうか、その事業者サイドに通報者が問い合わせるとかいうような形である程度の把握というのはできるんだろうと思っております。  今日その事業者内部通報して、どうも事業者が誠実な対応を取ってくれないから、あした外部通報するというのは、そこはバランスバランスというか、そこが正当な外部通報であると認定されるかどうかというのは、ちょっと個々のケースを見てみないと分からないんですけれども、ただ、いずれにしても、第三条の第三号のほかに定めるような要件を満足する、要件に合致しているような通報ということであれば、その当該外部通報保護されるということであります。
  226. 神本美恵子

    神本美恵子君 いや、ですから、ケース・バイ・ケースと言われればもう身もふたもないんですけれども、だから、じゃいろんなケースで、さっき言いましたように、内部通報したけれども、その調査の結果がなかなか報告されないし、こちらから聞いても、調査中、調査中で、このままではそれこそ危害が急迫していると通報者が判断したり、いろんな判断の仕方があるでしょうけれども、そのときは外部通報ができるということですね。イエスかノーかだけでこれはいいです。
  227. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 調査はしたけれども是正せずに放置しているような場合には、例えば、内部通報をすれば証拠隠滅等のおそれがあるといったような要件を満たしているということで、外部通報保護されることになると思います。  また、たとえ二十日以内にその調査を行う旨の通知がなされたとしても、その正当な理由がなくて調査を行わない場合、あるいは人の生命、身体に危害が生じ、又は急迫した危険がある場合等のほかの外部通報の要件を満たせば、外部通報保護されるということであります。
  228. 神本美恵子

    神本美恵子君 いや、ほかの要件を満たせばではなくて、この要件で、調査結果が調査中、調査中ということで一年も二年もたつとか、あるいは調査を、調査をしていると言いながら一向に改善をされない、こういう改善をしたと言いながら改善されない、あるいはその調査結果、こうだ、さっき間違ったというふうに言ったんですけれども、本当の問題はそこではなくて、例えば三菱の自動車の問題も、最初は整備不良というようなことで言っていましたよね、でも実際はそうではなかった。これは本当に携わっている技術者だったら、これはハブの問題だということが分かって言ったとすれば、そうしたら会社が言う、事業者が言う整備不良というのとは違うわけですよね。そうじゃないと思ったときは外部に言っていいのかということを、このニに当てはめて、していいのかということを言っているんです。
  229. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 通報をして、調査をしますと答えて、事業者が調査をしますというふうに答えて、実際は何らの調査をやらずにどんどんどんどん月日が流れていく、そういう場合というのは、このニの要件に書いてございます正当な理由がなくて調査を行わない場合に該当します。該当しますので、通報は、外部通報すれば保護されます。
  230. 神本美恵子

    神本美恵子君 分かりました。  じゃ、次にホに行きたいんですが、ホは、個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合というふうになっていますけれども、この急迫したというのが非常にちょっと分かりにくいので、具体的な事例でちょっと申し訳ないんですが、お聞きしたいんです。  六本木ヒルズの回転ドアの場合ですね。これはそれこそもう、今まだ業務上過失致死にはまだ決まっていないんですかね、そういうのは。ちょっと分かりませんけれども、例えば回転ドアの設計段階でそこに携わっている方がこれは危ないんじゃないかというふうに気付いた。それから次に、それを設置するときにこれはやっぱり危ないというふうに思った。で、その次に、もう実際に設置された回転ドアで何人もの人がぶつかり掛けたり挟まれそうになったりした、けがはしていないけれどもぶつかりそうになった段階。それから次に、実際に挟まれてけがをした。と、この前の事件、事故のように不幸にも亡くなったというような段階があると思うんですね。この段階のどの段階からが急迫した危険というふうに言えるんでしょうか。
  231. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この六本木ヒルズの事件でございますけれども、現在捜査中であるというふうに理解しておりまして、そういう意味で答弁を差し控えさせていただければと思います。  それで、一般論として申し上げれば、これは先ほども申し上げたことでありますけれども、刑法上の業務上過失致死傷罪に当たるというようなケースについては、当然通報対象事実に該当することになるというふうに思います。それで、業務上の過失致死傷罪であれば、構造上の欠陥により事故が続発しているにもかかわらず安全上の措置を怠っている場合には、個人の生命又は身体に急迫した危険があるというふうに考えられます。
  232. 神本美恵子

    神本美恵子君 構造上の欠陥が分かってそのことを通報した場合は、これはこのホに当たるということなんですね。
  233. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 構造上の欠陥が明らかになって、それで事故が続発しているというようなケースの場合には、このホの要件に該当するということだろうと思います。
  234. 神本美恵子

    神本美恵子君 ちょっと非常に細かいようですけれども、その事故というのは、けが人や死傷者といいますか、そういうことを言うんですか。それとも、俗にひやり・はっとと言われるような冷やりとした経験とか、そういうことがクレームとしてデパートにとか銀行に何件も出されてきたと、そういうのも事故が続発しているという判断になるんですかね。
  235. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 刑法上の業務上過失致死傷罪の構成要件に該当するということが前提であります。
  236. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) 神本さん、時間になっておりますので急いでお願いします。
  237. 神本美恵子

    神本美恵子君 結局、今私が申し上げたようなのは当たらないということですね。  で、あと、これからが本当に言いたかったことなんですが、要するにこのイからホまでというのは非常に例外的とか、そういう例は少ないとかいう部分と、それからまだまだあいまいな、ニのところなんかはあいまいなところがあると思うんですね。本当に、生命や身体、国民の生命、身体の、あるいは消費者の被害を未然防止したり、拡大防止したりするために外部通報しようとするには、この要件は、この要件だけでは非常に限定され過ぎて不十分であるということを申し上げて、午前中の参考人の方がここに一般保護要件を入れるべきだというふうにおっしゃいました、これはまた次の機会に申し上げたいと思います。  時間超過して済みませんでした。ありがとうございました。
  238. 白浜一良

    ○白浜一良君 いろいろ議論をされておりまして、本法律のいわゆる通報対象事実ですか、極めて限定しているというような意見がございましたが、限定というのはどういうふうにとらえるかいうことで、批判する立場から見ますと非常にもう物すごく狭くしたと、こういう意見になろうかと思いますが、法律に則して考えますと、個人の生命又は身体の保護でしょう、消費者利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保とその他の国民の生命、身体、財産その他の利益保護にかかわる、こういう事実をおっしゃっている。まあ主要な理念は含まれているわけでございますし、また、この要件以外の通報を抑制するための法律じゃないと大臣何回もおっしゃっているように、私もそういう理解をしております。  それで、ただしこの法律の、のっとりまして、公益のための通報者保護されなきゃならないということは当然なんですが、一方で、いわゆる企業コンプライアンス経営というんですか、そういうことを促進するという、この法律そのものが、そういう機能を持つべきだと、持つという前提法律だと当然思うわけでございます。  そういう意味で、最初に大臣に、何も通告しておりませんがちょっと伺いたいんですけれども、今日も一貫して具体例で出ておりますが、三菱自動車のリコール隠しの問題ございましたですね。これは事実関係まだ詳しく分かりません。分かりませんが、報道によりますと、元社長が欠陥を、事実を隠ぺいしたと、こういう刑事責任も問われそうだと、こういうような報道されているわけでございますが。  また、三菱自動車の中で善意の通報者がいたかどうか、これ分かりません。いたかも分かりません。いてもそれをまた押しつぶされた、隠ぺいされてしまったと、こういうことかも分かりませんし、全くそういうことがなかったかも分かりません。これは分からないんですけれども、少なくとも、本法の趣旨にのっとりまして、この公益通報者保護法という法律が施行されているという前提でいうとどうだろうかということを、大臣の所感でいいので、余りに悪質で長期にわたるリコール隠しだったんで、ちょっと所感を伺いたいんですが。
  239. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 個別のその事件そのものを、詳細もちろん存じ上げているわけではございませんので、あくまで印象のお話、かつ一般論的なお話になると思いますが、やはり多くの国民消費者、非常に存在感のある企業がこのような問題を起こしたということに対しては、やはりショックを少なくとも受けていると思います。私も同じような思いでございます。  今回の、今後いろんな捜査でいろんなことが解明していくというふうに思いますが、私はやはり、今本当に物すごく私たちは自由な社会に住んでいて、毎日すさまじく新しいことがどんどんどんどん起こっていく。この中で消費者国民生活を安全にしていこうと思えば、ちょっと極端な話、公益通報制度そのものがどんなに立派になっても、それによっていろんな問題を暴き出すというようなことは、これはしょせん非常に難しいんだと思うんです。やはり私たちのこの自由な社会が規律を持って運営されていくに当たっての最大のポイントは、何といっても、正に委員おっしゃったコンプライアンスです。経営者がコンプライアンスの認識をきちっと持ってもらう、国民一人一人が法令遵守の精神をしっかりと持つ、そこが私は重要なんだと思います。  今回の法律に関連して申し上げるならば、限定されている、狭いという御批判はあるかもしれませんが、私はやはり、こういう枠組みができることによって一種のやはり経営者が常に緊張感を持ってコンプライアンスの精神を高めて経営に当たっていただく、これこそが国民生活にプラスをもたらす最大の要因であろうかと思っています。  いずれにしましても、今回の三菱自動車の問題等々に象徴されますように、やはりコンプライアンス経営、これをしっかりやっていただかないと、私たち、ますますその豊かで自由な社会の中で住んでいけなくなりますし、そういう観点からも今回の法律がもたらすコンプライアンス経営を通した国民生活の向上の効果というのは、私は一般に考えられている以上にむしろ大きいのではないかというふうに考えております。
  240. 白浜一良

    ○白浜一良君 それで、先ほど神本さんもお話しされておりましたが、一つ局長にお伺いしたいんですが、先ほど答弁されておりましたけれどもね、この三条三項のニの問題でございますが、これは二十日以内に調べますよと、そういう通知すればいいということなんですね。これも、本当に疑って考えれば、神本さんおっしゃったように、ごまかせるわけですね。調べますよといってずるずるずるずる引き延ばすと。でも、大事なことは、そういうことが許されない企業倫理というかね、そこを一方できちっとすることがこれ大事なわけで、だから、この法律立てがいいか悪いかというのは私も多少疑問ございます。  ちょっと逃げられるような、外部通報したらいいって局長言うていますけれどもね、外部通報をすぐできるような勇気ある人というのはすぐすると思いますよ。よっぽどやっぱり社内で、これ我が社にとってこんなことはよくないということを、勇気要るんですよね、通報するということは、内部通報するということは。そういう方は、二十日過ぎて、調査しますと会社から言われたと、でも一月たっても二月たってもなかなか出てこないと、だからもうここで踏ん切り付けて、もうマスコミに言うたれ、行政機関に言うたれと。言うたれって、ちょっと私なまっておりますので失礼。そういうことがなかなかできない善意の人も多いわけで、だからやっぱりこの法律立てが、やっぱり企業倫理そのものを確立する流れを作ることが必要だと、一方でですよ、この法律の立て方そのものが。局長、どう思いますか。
  241. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 白浜先生おっしゃるとおりだろうと思います。あくまでも企業コンプライアンス経営というのは企業自らが自主的にきちっとやるべき話なんだろうと思います。  今回こういう形で、公益通報という形でこういうメカニズムを経済社会の中に組み込んで、事業者としても緊張感を持った経営をやっていってくださいよという形のことを考えておりますけれども、これはある意味ではあくまでも側面的な補足的な手段にしかすぎない。もう繰り返しになりますけれども、基本的には、事業者自らがきちんとした法令遵守経営を自主的にやっていくというのが本来あるべき姿なんだろうと思っております。
  242. 白浜一良

    ○白浜一良君 それで、少しデータをいただいたんですが、内閣府の調査で、平成十四年十月ですか、上場企業七百七十六社にアンケート調査を行われたと、その企業コンプライアンス経営という観点から言っているんです。それによりますと、二百八十九社が通報制度を持っていると。七百七十六社を対象に調査したんですから、三七%ぐらいしかないわけですね、この調査によりますと。そのうち告発保護規定があるのは百三十五社、一七%しかない。大手の上場企業でしょう、七百七十六社のアンケートでこういう実態なんですよね。  だから、企業の方が進んでこういう、要するに公益のための通報はやっぱり、幾らやっぱり経営者といえども分からないことがあるわけですから、どんどん内部通報してくださいよと、そういうやっぱり企業制度を、企業内に制度を作っていくことが大事だと。しかし、この十四年の十月の調査によりますとこの程度でないわけでございます。だから、これをいかに自主的に進めていくかということが大事だと思うんですが、そのことに関しまして何かお考えはございますか。
  243. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 今回のこの法案というのは、一般的な公益通報制度導入するということでありまして、正に業種横断的に各事業者がやるべき最低限のミニマムなレベルのことを今回こういう法律案の形にして出させていただいたということであります。  各事業者においてもっともっと通報者保護するという、そういう事業者独自にいろんな通報者保護規定を置いていただくということは、そこはもう全くこの法律の精神からいえば歓迎すべき話でありますので、私どもとして、今回こういう法律を作らさせていただいた上で、制度自体を皆さんに周知するような形にしていければというふうに思っております。  私ども内閣府としましても、関係の事業者団体と協力しながら、モデル的な社内規程を作成するというような形で、事業者による自主的な取組というのを促進していくようなことをやっていきたいというふうに思っております。
  244. 白浜一良

    ○白浜一良君 局長はそうでしょう。  大臣、申し訳ございませんが、これは大変大事なことだと思うんですよ。日本企業はもう世界を相手に商売しているんですから、やっぱり国際的な評価というのもございますしね。  これも報道しか知りませんが、三菱自動車の大株主のダイムラー・クライスラーが、経営を放棄したというのはこれは社内の方針でしょう、しかし、自分が買った、株を買った会社から損害賠償を求めるというような、そういうことも報道されているわけで、そういう面ではやっぱり大臣大臣お忙しい、もうあちこち担当されてお忙しいのは分かりますが、そういういろんな経済団体があるので、こういう企業コンプライアンス経営というのがいかに大事かというようなことを、大臣、先頭に立って各団体に啓蒙されるべきだと思うんですが、いかがですか。
  245. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 白浜委員、大変コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー、幅広く大変高い御見識をお持ちだと伺っておりますが、企業というのは正に社会的な存在であって、その社会的な存在、責任を果たすことによってそのコーポレートバリューそのものが評価されるという時代になっているということなんだと思います。残念ながら、日本のまだ多くの企業は非常に狭い業域の中での収益の最大化にきゅうきゅうとしているという面があろうかと思います。  しかし、日本の中にも幾つかの先進的な企業があって、そこは正に、委員御指摘のように、世界の中でトップクラスで勝負している企業でありますけれども、そういうところはこの企業社会的責任というものに十分にやはり配慮した経営に移りつつある、大変重要な段階だと思っています。  そうした中で、これは環境の問題でありますとか世界の貧困にどのように対応するかとか、非常に幅広いものがあろうかと思いますが、実はコンプライアンスというのはその正に基本になる問題であろうかと思います。  いろんな機会にそこのコンプライアンスについては私自身お話をさせていただきたいと思っておりますし、先般もたまたま取締役協会の総会で記念講演をさせていただいたときも、正にこのコンプライアンスの話をさせていただきました。日本法律の世界の中にもコンプライアンスの専門家、私はたまたまよく存じ上げているのは弁護士の久保利先生でいらっしゃいますが、そういう方々も御活躍を始めておられる。是非いろいろ協力をしながら、先生おっしゃったような方面においても努力をさせていただきたいと思っております。
  246. 白浜一良

    ○白浜一良君 よろしくお願いしたいと思います。  それからもう一つ大事なのは、その通報公益通報の一環で、行政機関も受けますですよね。その場合、受けた通報をどう対応するのかという、これ大変大事な話でございまして、これは中央省庁として受けられる場合もございますし、それぞれ地方の公共団体が受ける場合もございますので、当然、一番国民の意識高いという面でいうと、割かし進んでいるなというのは原子力なんですね。原子力安全・保安院にいろんな心配事というのが来るわけで、ガイドラインができているんですけれども、これから中央の省庁のそういう行政機関の対応、それから地方の対応、それぞれ基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  247. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この法律の第十条でありますけれども、通報を受けた行政機関について、必要な調査を行い、法令に基づく措置その他適当な措置を取ることを義務付けております。正に、通報を受けた行政機関通報者の個人情報に配慮しながら適切に公益通報処理していくことは、本制度の円滑な施行の上で非常に重要であるというふうに認識しております。  今、白浜先生御指摘になりました、原子力保安院のガイドラインのお話をされておりましたけれども、こういうようなガイドライン等を念頭に、それをモデルにしながら、行政機関における通報処理のガイドラインというのを作成していこうというふうに考えております。
  248. 畠中誠二郎

    政府参考人畠中誠二郎君) お答えいたします。  地方公共団体の対応についてのお尋ねでございますが、もう先生御案内のとおり、この法律案行政機関には地方公共団体の機関というのも対象になっておりまして、先ほど内閣府の局長がお答えしましたが、内閣府が中心になって策定される行政機関通報処理のガイドラインの行政機関には地方公共団体も当然含まれるんじゃないかというふうに考えております。  私どもといたしましては、このガイドラインの策定に当たりましては内閣府と十分連携を取りまして、地方公共団体において適正な取扱いがなされるよう、私どもとしても努めてまいる所存でございます。
  249. 白浜一良

    ○白浜一良君 それともう一つ大事なのは、ガイドライン作ってきちっとした対応をしていただくということは大事なんですが、もう一つは、いろんな通報はあろうかとは思いますけれども、必要なそういう通報は、この原子力安全・保安院もそうしているんですけれども、こういう通報があってこういう調査してこういうことだとやっぱり公表することが極めて信頼を、国民の皆さんの信頼、当然、通報者の信頼もそうですけれども、公表すると、きちっと公表するということが大事だと思うんですが、この点も両者から御答弁をいただきたいと思います。
  250. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この制度の運営に当たりまして、通報者の、通報した人の秘密をどういうふうに厳守していくかというのは、そこは正にこの制度の運営にとってクルーシャルなポイントなんだろうと思っております。  もうこれ白浜先生御案内のとおりでありますけれども、行政機関が保有する個人情報取扱いでありますけれども、正に情報公開法で不開示情報とされております。かつ、その行政機関、個人情報保護法において利用目的を具体的に明確にさせて目的外利用・提供を厳しく制限しているということであります。したがいまして、通報者の意思に反して通報者の氏名などの個人情報が開示されないように、そこは徹底的に留意しながらやっていこうというふうに思っております。  先ほども申し上げました保安院の運営要領の話でありますけれども、ここでも個人情報保護ということについて非常に留意されているということであります。それから、この申請件数というか、保安院の場合には、これ行政機関への申告というふうに言っていますけれども、その通報件数を定期的に公開する、公表するというようなこと等もやっておりまして、そういうふうなことも含めて運営の的確性を担保していくようなことを考えていきたいと思います。
  251. 畠中誠二郎

    政府参考人畠中誠二郎君) お答えいたします。  調査結果の公表とか個人情報取扱いにつきましては、正に今内閣府からお答えになったとおりでございまして、それは地方公共団体にも十分当てはまるものでございます。  ちなみに、既に地方公共団体の中にはこの公益通報制度を条例によって設けているところもございまして、その条例の中では、ある区の例ですが、調査結果の報告及び公表の規定、それからその場合に通報者の氏名はこれを報告しないと、要するに秘匿するというような規定等もございまして、そこは十分地方公共団体においても配慮されるものというふうに考えております。
  252. 白浜一良

    ○白浜一良君 当然、そういうことで個人情報保護せにゃいかぬということ、そうでございますが、公表するということが通報者に対しても安心感与えますし、国民の皆さん全体がそういう制度そのものに対する信頼度が増すということなんで、適切な対応をお願い申し上げたいと思います。  それから、いわゆる行政機関通報しようと思われる方もいても、自分の通報したいというこの問題がどこの省庁か分からぬということがあって、私、大阪なんですけれども、大阪でしたら公益通報支援センターというようなボランティア組織でございまして、そこが窓口でやっていただいているということなんですけれども、こういうふうな、どこらに問い合わせしたらワンストップで、この問題は国土交通省ですよとか、こちらに聞いてくださいと、行ってくださいとか、そういうサービスというか窓口はできるんでしょうかね、これ。
  253. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) イギリスにおきましても、例えばでありますけれども、パブリック・コンサーン・アット・ワークという弁護士さんを中心とする民間団体が公益通報に関する各種の相談に応じているというようなことがあります。  したがいまして、我が国におきましても、その通報者通報前に相談できるような環境を整備するということがこの法案の円滑な施行を図る上で非常に重要であるというふうに認識しております。  運用上の問題ということで、例えば内閣府でありますとか、各省庁において通報前の相談を受けることができるような仕組みが考えられないかどうか、あるいはNPOとか労働組合など、実際にその通報者公益通報者通報前に相談すると考えられる民間組織との連携を深めることができないかどうか等について検討を行っていきたいというふうに考えております。  なお、この点に関しまして、衆議院内閣委員会での参考人意見陳述及び質疑の中で公益通報支援センターの阪口事務局長から、この法案に基づく行政機関への通報先が分かりにくいという御指摘をいただいております。この御指摘に対応するためにも検討をしていきたいと思っておりますけれども、例えば、各省庁での問い合わせ窓口を設置するとか、あるいは内閣府が各省庁の窓口に照会するなどの枠組みを作るなどの工夫ができないかどうかということについて検討してみたいというふうに考えております。
  254. 白浜一良

    ○白浜一良君 それから、しっかりお願いしたいと思います。余りそういう知識が、我々こちらで仕事していますから大体各省庁がどういう所管しているかよう分かりますけれども、一般国民の皆さんはよく分からないんで、非常にそういう善意の通報者がやりやすいそういうシステムを、どうかサービスをお願い申し上げたいと思います。  それから、十一条に教示というのをわざわざ挙げてあるんですが、一つ確認しておきたいんですが、匿名の通報ってありますね、これはいろいろあると思います。何というか、ためにするようなそんなのもあると思うんですけれども、やはり匿名であっても、大事なやはりそういう通報が、公益のための通報というのはあると思うんですよね。ですから、そういうものもきちっと対応してあげていただきたいと思うんですが、この点はいかがですか。
  255. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この十一条の規定でありますけれども、これは、処分等の権限を有しない行政機関通報がなされた場合、つまり誤ったところに、誤った行政機関通報がなされた場合には、当該行政機関は処分等の権限を有する行政機関公益通報者に教示しなければならない旨の規定をしております。  今、白浜先生おっしゃいました匿名の通報が誤った行政機関になされた場合の教示の問題ということでありますけれども、その匿名で行われた通報の場合でも本法の保護対象となる労働者からの通報である場合も考えられるということでございますので、適切な教示が行われる必要があると考えております。その際、その通報者の連絡先が、匿名ということで連絡先さえも不明であれば教示はできないということも考えられるわけですけれども、今先生がおっしゃいましたような点も踏まえながら、できる限り適切な教示が行われるような工夫をしていきたいというふうに思っております。
  256. 白浜一良

    ○白浜一良君 この点もよろしくお願いしたいと思います。  最後に、竹中大臣にお伺いいたします。  行政機関の中、中央の省庁の中での内部通報をどうするかということがあるんですよね。それで、竹中大臣が担当していらっしゃる金融庁は昨年にコンプライアンス対応室というのを作られたんですか、そのように伺っておりますし、内閣府でも今年の二月に法令遵守対応室を設置されたと、こういうふうに伺っておりますが、やっぱりそういうたくさんの権限と情報と予算を持っていらっしゃるわけですから、中央省庁の中にもやっぱりそういう公益のためのいろんなお話というのはきちっと吸い上がるようにされるべきだと思うんです。  それで、金融庁と内閣府はよく分かりましたが、ほかの省庁ですね。特にたくさんの権限と予算を持っている例えば国土交通省とか厚生労働省とか、そういうところこそそういう制度をきちっと作るべきだと思うんで、そこで、大臣の所管じゃないんですけれども、こういう公益通報者保護法を所管された大臣として、そういう他省庁に対してもきちっとそういうふうな、しっかりするべきだということを督促されるべきだと思うんですが、最後に御決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  257. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 白浜委員から大変良い点の質問をいただきまして、むしろこちら、感謝申し上げます。  先ほども申し上げましたけれども、日本の今大きな組織はもうほとんどすべてがコンプライアンス対応室を持っていると思います。しかし、霞が関でそれがないわけですね。これはちょっとおかしいだろうと思いまして、昨年、私が直接担当しているところからまずやろうということで、金融庁の中に作りました。それの一つの、それをモデルとしてさらに、これは今年になって内閣府でも作りました。この話は閣僚懇等々でも紹介をさせていただいて各省庁にも是非参考にしていただきたいというようなことを申し上げております。  この中にはヘルプラインも作っておりますし、ヘルプラインは役所の内部の人間ではなくて外の弁護士さんにお願いしておりますので、そのような意味で一つの非常に重要なモデルケースになるのではないかと実は自負をしております。これは是非各省庁にこれから我々働き掛けていきたいと思います。  今回の法律が、法案が成立すれば、これはいろんなそういった意味での対応の仕方を各役所にも考えていただかなきゃいけませんし、ガイドラインも作っていただかなきゃいけない。こういうことを機に、総務省でありますとか人事院とも是非協力をしながら、話合いをしながら、後れております役所のコンプライアンスの対応、是非しっかりとやっていきたいと、頑張ろうと思っております。
  258. 白浜一良

    ○白浜一良君 終わります。
  259. 吉川春子

    吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。  公益通報者保護法案について質問をいたします。  企業行政組織内部の重要情報を外に漏らすということについては許されないというシステムになっておりますし、そういう感情もまた強いと思います。情報を漏らした労働者は処分されるわけです。しかし、国民利益のためになるのであれば、情報を漏らした労働者不利益扱いを許さず、彼の労働者としての地位も守ろうという立法が幾つかの国で行われるようになり、日本もその仲間入りをしようということで今回の公益通報者保護法案が提案されたというふうに思います。  竹中大臣は、過日、提案理由説明で、事業者による法令遵守を確保して国民生活の安定を図っていく上で、公益のために通報を行ったことを理由として労働者解雇等不利益取扱いを受けることのないよう公益通報に関する制度整備していくことが緊要な課題というふうにおっしゃっています。  そこで、公益のために通報を行ったという点について伺いますけれども、政府がこの法案作成に当たって参考にしたとされるイギリスの公益公開法ではこの公益範囲というのはどのようになっておりますでしょうか。
  260. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) イギリスの公益開示法の通報対象事実の範囲についてのお尋ねであります。  イギリスの公益開示法では、犯罪行為法令違反行為に加えまして、これらに該当しない場合であっても、個人の健康や安全の危険、環境の破壊が生じたことなどが通報対象に含まれるというふうに考えております。
  261. 吉川春子

    吉川春子君 今お答えもいただきましたけれども、国会図書館の、国会図書館の資料とそれから内閣調査室の資料によりますと、イギリス公益開示法の公益範囲、四十三条Bは、以下のaからfのいずれかを生じた、生じている、又は生じる可能性があることとして、a、犯罪、b、法的義務、c、裁判の誤り、d、個人の健康や安全の危険、e、環境破壊、f、以上の事項を示す情報の意図的な隠ぺいというふうになっております。  なぜイギリスでは公益範囲を、犯罪だけではなくて、法的義務、個人の健康や安全の危険、環境破壊など広くとらえているのでしょうか。
  262. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) なぜイギリスで広くとらえていて、なぜ日本の場合は狭いのかという……
  263. 吉川春子

    吉川春子君 いや、前半だけでいいです。
  264. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 前半だけ。  恐らく、法体系そのものが違いますし、裁判の制度とかそういうものも違いますので、一概にその彼我の通報対象事実の範囲というのは比較できないんじゃないかというふうに思っております。
  265. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと、その対象範囲の広さは比較できないというふうに今ちょっと聞こえたんですけれども、日本の今回の法案もそんなに狭くないよと、イギリスに準じているよというふうにも聞こえたんですが、私は、イギリスの立法例を研究されたというので、それに倣った法案が出てくるというのが普通だと思うんですけれども、先ほど参考人の御発言にもありましたけれども、全く非なるものだというふうに説明された方がおりましたけれども、なぜ日本はイギリスのように比較的広く範囲を取られなかったのか、極端に狭い公益範囲にしたのは、それではなぜですか。
  266. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) これも何回も御答弁しておりますけれども、国民生活審議会の場でいろんな御議論がありました。通報対象範囲として、法令違反に限らずもっと広くやればいいじゃないかという御議論もあったということでありますが、最終的にはそれがコンセンサスに至らなかったということであります。かつまた、そこの審議会の議論にも集約されていますように、日本においてはまだ、公益通報対象範囲について広く全般的に、法令全般あるいは法令がないようなものについても当不当にかかわるような問題についても対象に含めるべきというコンセンサスは確立しているとは言えないんじゃないかというふうに思っております。  それからもう一つ制度的な面では、先ほどもお話が出ましたけれども、イギリスの場合には、労働関係全般について迅速に裁判を行う雇用審判所が存在しているということであります。仮にその事業者労働者の間で紛争が生じても迅速な解決が可能であるというような点も異なっております。その彼我のこういうような差を勘案して、今回の私どもの方から提案させていただきました公益通報者保護法案では、極力明確にするという意味で予見可能性を高めるということで制度設計を考えたということであります。  ただ、いずれにしましても、この法案の附則の第二条でその制度の見直しの検討の規定を置いております。本制度通報対象につきましては、法律施行後の状況等も見ながら検討を行っていきたいというふうに思っております。
  267. 吉川春子

    吉川春子君 まだ法律が成立しない前から見直しということをおっしゃるということは、かなり不十分な法律だと、法案だということが言えると思いますし、先ほど私、午前中の参考人質問の議論を聞いていまして、やっぱり一番狭く絞ったのは政府であるみたいですね。そういうことを印象を受けたんですけれども、竹中大臣に伺います。  この政府の法案が、通報対象事実を国民の生命、身体、財産、その他の利益保護にかかわる法令として、さらに保護範囲を罰則のある犯罪行為に限定した、これでは対象範囲が極めて狭く限定されて、保護すべき通報が限られている、限られるというのが多くの関係者からの指摘ですけれども、私はこのことを参議院の本会議で質問をいたしました。それに対して、大臣のお答えは、刑罰による担保のない法令違反行為対象にすることは通報対象範囲を不明確にし、制度の運用に当たって混乱が生じると答弁されました。それで、なぜ、刑罰のない法令違反内部告発し、それを保護したらどういう混乱が生ずるんでしょうか。イギリスでもそういう事態があるんでしょうか。伺います。
  268. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 直接のお尋ねはどういう混乱があるかということでございますけれども、かねてから答弁させていただいていますように、我々、既にこの一般法理に基づく雇用者、労働者保護という体系は持っているわけでございます。  しかし、例えば、先ほどからいろいろ議論が出ていますように、シックハウスの問題でありますとか回転ドアの問題とか、そういうものについて、例えば法律で明確な規定が必ずしも十分ではない、しかし、大変それを広げてこれは危険であるというふうに判断をして、それでそれが係争等々になった場合、これはしかし、正にこれは一般法理の中で裁かれる問題であって、今回の我々の法律目的である予見可能性を高めるということに対して、実はほとんどこの法律が貢献しないということになってしまうのだと思います。  我々としては、とにかく今回、今問題になっている問題、今日の私たちの問題というのは、多くのいろんな問題点、企業不祥事というのが、その企業内部企業内部からの通報によって生じている。しかし、その対象となるものがそもそも不明確であって、今企業不祥事というふうに言いましたけれども、これは不祥事であるかどうかということがよく分からないようなものについてまでこうした範囲を広げるということは、これはもう正に一般法理そのものになってしまいますから、法律の意味がむしろなくなってしまうのではないのかと。一般法理一般法理としてしっかりと引き続き我々は大切に社会の価値として守っていかなければいけない。  今回の法律によって、そうした中で要件を明確にして、この部門については非常に明確な形で労働者の立場が保護される、そうする予見可能性を高めることが今の私たちにとって一番重要な問題であるというふうに判断をしているわけでございます。
  269. 吉川春子

    吉川春子君 一般規制法律規制法律ができるまでの間にいろいろなことが生じて、そしてそれが結局国民の生命、身体、財産にいろんな影響を与えてきたという例は今日もずっと具体的な事例が挙がってきております。だから、そういうものが規定されていないからということでそれを外してしまうということは、本当の意味で国民の生命、財産、健康というようなものを保護するための内部告発法律としての目的が達成されないのではないか。  そういうふうに思うわけですけれども、大臣の認識が、内部告発内容について企業が争ってくるんだと、法律がないとねという意味であるならば、刑罰のある法令違反内部告発してもそれは同じじゃないですか、企業はやっぱり争うんじゃないですか。そういう意味で混乱ということが生ずるわけであって、やっぱり国民利益公益が守られるかどうか、企業の方を守るかということまで直截的には言いませんけれども、どっちが大事なのかということの選択が迫られているのではないか。混乱、混乱とおっしゃるその混乱の内容は非常に不明確だし、説明したことにはならないと思うんですが、大臣、もう一遍、どうですか。
  270. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 吉川委員の御質問の中で、やはり二点、是非申し上げたいというふうに思うんですが、例えば回転ドアが十分に法律規制されていない、先ほどもあったシックハウス等々がある時点までは十分に規制されていない。これは、明らかにそういった意味で残念だけれどもその時点では法律に問題点があったと、不備があったということだと思います。  今回の法律で他の法律の不備を補うというのはこれは無理だと思います。そういうような目的で今回の法律が作られているのではありません。あくまでも私たちは既に守るべき法体系を持っている、それを時代の要請に合わせて常に良くしていくということは、これはつかさつかさでしっかりやっていかなければいけません。重要なのは、今正に企業の中で、これは本当にこれが犯罪なのかどうかよく分かりません、分からないけれども事前に通告することによってそれが防げるかもしれない、そういう場合に十分これはある条件を満たしていると思料される場合にはそれをしっかりと通報していただいて、それが結果的に国民の生命、財産を守ることがあり得るではないかと、そういうものについては労働者の立場をしっかり保護しようと。それが今回の法律があくまでも目指しているところなわけでございます。  したがって、繰り返しますが、先ほどから多くの委員の方が御指摘くださったように、世の中に様々な問題があると思います。シックハウスの問題等々も、ああいう問題があったのは大変残念なことだったと思います。しかし、だからといってほかの法律の不備をこの法律で補うということはこれはできない。これは法技術的にはできないことだというふうに思います。  あと、混乱そのものにつきましては、やはり判断が分かれると最終的には裁判で決着が付くわけでありますけれども、その間やはり労働者は非常に不安定な立場に置かれる。そういうことをしっかりと避けるためには要件を明確化して、その間、労働者方々通報した場合にしっかりとよって立つ基盤があるようなものにしていきたい、それがやはり混乱を避けるということだと思います。
  271. 吉川春子

    吉川春子君 どっちみち企業は黙っていなくて裁判になると。提訴されれば、その間は労働者の立場は不安定になるということはそれは同じだと思います。  それから、例えば六本木ヒルズ、もうあんまり何遍も何遍も例に引かれるので、私は言うのはよそうかと思っていたんですけれども。例えばセンサーの位置を八十センチから百二十センチに上げると、ドアの回転の確率は速くなるけれども、そこで子供がセンサーに察知されなくなると。こういうようなことをもし労働者が、いや、あれは回転を速くするために百二十センチまで上げたんですよ、これは事故の危険があるんじゃないですかというような告発を仮にした場合には、この法律では守られないということになるわけですよね。その労働者は解雇されるか、不利益扱いされるか、そういう立場に置かれるということなんです。  それで、私は大臣にもう一つ伺いたいのは、今度の法律の中で企業コンプライアンスということが非常に強調されておりますけれども、企業が社会の一員として法律遵守するというのはもう余りにも当然なんです。通報者保護が罰則のある犯罪行為ということに限定されるということであれば、非常に企業コンプライアンスというのはレベルの低い、レベルの低い段階での法の遵守ということになりませんか。  今度の法律は、この内部告発法案は、そういう非常に企業に低いレベルでとにかく法律を守っていればいいという仕組みになっておりますので、なかなかその企業告発されにくく、内部告発されにくくなっていると。そういうことであれば、やっぱりコンプライアンス経営といいますか、自浄能力を高めるということではなくて、犯罪行為という、最低このレベルで企業法律を守っていればいいんですよということを逆に明確にしてしまうおそれがないんでしょうか。日本企業というのはそんなに低い水準のコンプライアンスしか持っていないのか。私はそうではないと思うし、もっと高い水準のコンプライアンスというものを期待してもいいのではないか。そういう点については大臣はどう思いますか。
  272. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) コンプライアンス法令遵守の水準に関して言うならば、高いところも低いところもあるということだと思います。そんなに低いことないだろうという御指摘、私もそう思いたいですが、現実問題として、我々が今問題にしている雪印の問題等々、その最低のレベルが守られなかったからこそ問題になっているわけです。そういうところを、残念だけれども、そういうところをやはりまずきちっと法令遵守でやってもらおうではないか。それが、やはり私たちがまず、まず取り組むべき重要な課題であると思います。  今委員お尋ねの件、これは私はそれはそれで大変重要だと思います。法律を守ればそれでよいのか、決してそんなことはありません。先ほどから御質問もいただいた社会的責任を果たしていただかなければいけないし、さらにはより高い倫理上の何らかのメルクマールを持って経営をしていただきたい。しかし、倫理について、じゃ国家が何か枠組みを決めて倫理を縛るのかという問題にも、これはちょっと極端な例で大変申し訳ありませんが、倫理のことを言うならそういう問題も惹起してしまう。  我々としては、その意味では今正に問題になっている法令違反、それについてしっかりとそういうものを未然に防いで、国民の安全、身体、財産の保護を図ろうではないかと、それがこの法律趣旨になっているわけであります。
  273. 吉川春子

    吉川春子君 法律ですから、倫理の世界じゃないんですよ、大臣。そうじゃなくて、刑罰、処罰、そういうものがあることだけを対象にするということについて余りにも狭過ぎるのではないか。法律の中には刑罰をもって処するものもあるし、禁止規定だけの場合もあるし、いろいろあるわけなんですね。だからそれを刑罰という、一番低い水準ですよ。倫理ということからいえば一番遠いところ。そういう企業がありますよ、実際に。それは大臣から言われるまでもなく、私たちの方が強く感じていると思います。しかし、その水準でいいということではないと思うんですね。だから、やっぱりもう少し高い水準のコンプライアンスということを企業に求めるような法律にしなくては内部告発の実益が上がらないのではないかと思います。  それで、私は、具体的な問題について幾つか伺っていきたいと思うんですけれども、犯罪行為というふうに限られていても保護されるのかどうか微妙な問題があるわけですけれども、例えばサービス残業というものが日本では横行しております。つまり、残業をするんだけれども残業手当が払われない。日本独特のことらしいのですけれども、これは賃金の不払ですね、サービスというと言葉がいいんですけれども、不払残業なんですが、これは本人が労働基準監督署に申告してきちっと是正してもらうことによって是正されて、厚生労働省もそれは熱心に取り組んでおられますが、しかし、実際にサービス残業の申告というのは、私もいろいろ相談を見て、扱ってみて、自分で言っていくというのはなかなか難しいことなんですね。  それで、例えばの例なんですけれども、サービス残業を示す資料などを入手できる立場にいる労働者が自分以外の他のサービス残業の実態を見てこれを通報した場合、労働基準監督署という意味ではないです、国会議員であるとか、あるいはマスコミであるとか、そういう外部通報をしたような場合、この法律では保護されるんですよね。確認します。
  274. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) サービス残業の問題でございますけれども、これは労働基準法違反に当たると考えられます。労働基準法をその対象法令に含めるかどうかについては、国会での御議論等も踏まえて今後検討していくこととしたいと思いますけれども、対象法令に含まれれば、サービス残業をさせられている労働者の同僚からの通報であってもこの法の保護対象となるというふうに考えております。  ただ、いずれにしましても、外部通報というふうにおっしゃいましたけれども、それは外部通報の要件を満たしているというのは当然の前提ではありますが。
  275. 吉川春子

    吉川春子君 さっき岡崎議員の質問でも、何本だっけ、四百何本、四百八十九本の中の一つに入っていて、労基法が削られるなどということは今の政府でもやらないだろうと私は思っていますが、さっきおっしゃいましたその要件ですね、イ、ロの要件、これをクリアしなきゃ駄目だと、こういうわけですね。二つという意味じゃなくてね。  例えば、サービス残業でいえば、こういうものを告発して過去に不利益を受けた例がないと駄目と。だから、初めて通報するような場合は、これは保護されない可能性もあるということになりませんか。
  276. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 過去にそういう例がないから駄目ということは一切申していませんよね。要は、第三号のイの要件でございますと、内部なり行政機関通報をすれば、解雇とかその他の不利益取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由があるということを証明すればいいということであります。
  277. 吉川春子

    吉川春子君 いや、私、これ何遍も、たしかそちらの方じゃないかと思うんですけれども、レクを受けましたら、過去にそういう受けた例があるというような例示をされたんですけれども、そういうことじゃないんですね。
  278. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 分かりやすい例として、例えばこのイの要件に該当するような場合はどういうようなことがあるのということを聞かれて、過去にそういう例があれば分かりやすいですよねということで御説明申し上げたということであります。
  279. 吉川春子

    吉川春子君 そうすると、例えば企業が、もう故意ですよね、残業しているのに賃金を払わない、残業手当払わないというのは故意だから、明確な故意があるわけですから、そうすると、これを例えば国会議員に通報したりすれば、国会で取り上げてもらったりすれば、それは公益通報すれば解雇その他不利益取扱いを受けると信ずるに足りる相当な理由がありますよね。どう思います。
  280. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 仮に不利益取扱いの前例がない場合でありましても、その通報をすれば不利益取扱いを行われる旨を、例えば社内会議といった公式の場あるいは非公式の場を通じて労働者が何らかの形で認知しているようなことというのはあり得るんだろうと思うんですね。そういうケースについては、このイの要件、信ずるに足りる相当の要件があるということで立証は可能だろうというふうに思います。
  281. 吉川春子

    吉川春子君 それで、ロなんですけれども、「第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合」、これも今のサービス残業の例でいうと、これはクリアできそうですか。
  282. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 正に個々の具体的なケースでどういうことかというのを判断しないとなかなか一概には言えないということだろうと思うんですが、証拠隠滅等のおそれがあると信じるに足りる相当の理由ということで、例えば社長、担当役員などが関与してサービス残業をさせているというようなこと、それからサービス残業が生じていることを社長や担当役員が知りながら放置しているというようなことを示せば、この信じるに足りる相当の理由がある場合というふうに認定されるんではないかと思います。
  283. 吉川春子

    吉川春子君 私がサービス残業をさせている労働者で、あなたに内部告発しようかと思うんだけれどもどうと聞かれたら、おやりなさいと言ってくれますよね、そうしたら。
  284. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 個々のケースに応じて判断するしかないということしか申し上げられないと思います。
  285. 吉川春子

    吉川春子君 恐らく非常に頭脳明晰で、官僚の方たちが考えて、その立法者が、困っている労働者がこういうふうに聞いているのにケース・バイ・ケースですよと言われると、もう本当に労働者としては、内部告発していいかどうかというのはなかなか判断に苦しみますね。  もう一つ例を聞きます。  例えば、労働基準法の第四条に男女差別の賃金を禁止している規定があるわけですね。これについてはやっぱり百十九条で懲役六月以下の罰則が掛かっているわけですけれども、そしてこれは国連も、日本の女子賃金の間接差別を禁止するようにという勧告も出しているんですけれども、例えばこういう女性が賃金差別を受けているという判決は一杯ありまして、このところ結構勝訴してきているんですよ。その場合に、しかし十年とか、それに近い年月掛かっているんですけれども、一番困るのは証拠がないわけなんです。  つまり、公務員ですと、行(一)、行(二)とか、いろいろそれぞれの給料表を公表していますけれども、民間はこういう給料表を公表していませんから、個々に聞いてみると、もう明らかに女性だから賃金が低いんですけれども、企業一般的に公表していないので裁判になったときに証拠の提出ができないわけなんです。それで、どこという名前は挙げませんけれども、労働組合も一緒になって、つかんでいるものも証拠提出してくれないという困った例もあるわけなんです。  そういうときに、この賃金表を知り得る立場にある労働者内部告発して公表したというような例、これは内部告発法律で、今度の法律でこれは保護されますか。
  286. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 女子の賃金差別の問題でございますけれども、これも今先生御指摘ございましたように、労働基準法違反に当たるというふうに考えております。  同じ答弁になって恐縮でありますけれども、労働基準法を対象法令に含めるかどうかということについてはこれから検討をすることにさせていただければと思いますけれども、対象法令に含まれれば、当然のことながら差別賃金を通報した場合も保護対象になるということであります。
  287. 吉川春子

    吉川春子君 要するに、刑罰をもって処罰するという法律じゃない場合はもう駄目ですよと。駄目なところはもう非常にはっきりしていて、しかしその対象に含まれるところは、今度はいろいろな要件が重なり合っていて、これはもう本当に作った御当人に聞いてもなかなかケース・バイ・ケースですとおっしゃるということになれば、非常に労働者にとってはなるべくこれでもって労働裁判もやりやすくなるかなと私もちょっと期待も持ちたいんですけれども、そういうものについてやっぱり期待もなかなか持てないんじゃないか。  その辺については、やっぱりこういう、狭い範囲であれ、内部告発をした労働者保護するという法律ですから、これは、ここは保護できるのよというはっきりした基準を示して発表すべきじゃないかと思いますけれども、その点は大臣大臣か政治家か、大臣か、これはもう事務当局じゃない政治家、政治的な答弁をお願いしたいと思います。
  288. 西川公也

    大臣政務官(西川公也君) すべての事案、通報した、通報を受けたというのがシロかクロかはっきり分かるやつであれば非常に判断もしやすいと思いますけれども、通報したことによって、労働者を守るのが目的でありながらも、企業全体が駄目になるとか、人間関係が通報した人が駄目になるとかといって、その通報した人を法的に守っても本当に社会的な地位というのは守れたかどうかと、そういうケースも私は出てくると思うんです。  ですから、すべてシロクロはっきりしているような形で守れればいいんですけれども、さっきから苦労して答弁しているのは、グレーなゾーンがあってなかなか判断が付きにくい、こういうケースがあって、できる限り守っていくけれどもなかなか守り切れないものもあると、こういう考え方であります。
  289. 吉川春子

    吉川春子君 非常に限界を感ずる答弁でしたが、もう一つ具体的な例を挙げていきたいと思います。  私は、公正な経済社会を作る上で、不正とか反社会的な行為通報者はやっぱり保護すべきだと、内部告発をですね、保護すべきだというふうに強く思うわけです。それで、行政の不正行為内部告発が本当に保護される仕組みになっているんだろうか、こういう疑問が生ずるわけです。  そこで、最初に一番ダイレクトに伺いますけれども、今、内閣委員会では警察の裏金作りの問題について何遍も何遍も議論をしてきました。今度のこの公益通報法律が仮に成立すれば、警察の裏金作りについての内部告発をした労働者、警察官は保護されるわけですか。
  290. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) その警察の裏金作りの実態について私ども詳細を承知しておりませんので、コメントできる立場にないということであります。  ただ、一般論でありますけれども、裏金作りと言われる中身についても、いろんな法律違反する、例えば刑法の詐欺とか横領とか、そういうような構成要件に該当するようなケースもあり得るんだろうと思うんです。仮に、その裏金作りとおっしゃっている部分がそういう刑法上の犯罪行為に該当するということであれば、この法律対象になり得る可能性はあるんじゃないかというふうに思っております。  ただ、いずれにしても、その中身の詳細について存じ上げませんので、そこについてはコメントは差し控えさせていただければと思います。
  291. 吉川春子

    吉川春子君 実は今年の予算委員会で私、法務省に聞きました。そしたら、法務省は、横領罪、詐欺罪、私文書偽造罪、同行使、公文書偽造、同行使に、一般的にと言いましたけれども、当たるというふうに答弁いただきました。  それで、警察の方にお見えいただいていますので、具体的な問題についてお伺いしたいと思います。  北海道警とか静岡県警、福岡県警で裏金作りが行われておりました。これは全部お認めになっている例だけ挙げました。そして、捜査費、報償費の偽領収書を作成させて裏金を作って、あるいは空出張によって裏金を作ったりしておりました。警察は私的流用はなかったとか説明されておりますけれども、ただ、処分はされているんですよね。  そこで伺いますけれども、発覚した裏金作り、空出張、不正経理は、そうするとどの法令違反ということになるんでしょうか。
  292. 吉村博人

    政府参考人(吉村博人君) 北海道警察と静岡県警と福岡県警に対してのお尋ねでございますが、北海道警と福岡県警の事案は、国費の捜査費あるいは道や県の捜査用報償費が定められた手続に沿って適正に執行されなかったというものでありまして、現在、事実関係について調査中でありまして、国家公務員法あるいは地方公務員法に定められた服務義務に違反する可能性があると考えております。  また、静岡県警における県費旅費の不適正事案につきましては、いわゆる旅行実態がないのに旅費を請求したと、いわゆる空出張でありますが、これも現在調査中でありまして、その結果によって、静岡県の条例あるいは国家公務員法違反、国家公務員法あるいは地方公務員法に定められた服務義務にこれも違反する可能性があると考えられますが、いずれにせよ、それぞれの事案がどのような法令に抵触するのか、結果により明らかになった事実に基づいて個別具体的に今後判断していく必要があると考えております。
  293. 吉川春子

    吉川春子君 今日は内部告発法案の審議ということですので、そんなに厳しくは警察には今日は聞きませんが、例えば領収書の不正についても調査中、調査中って何か月やっているんですか。これだってもうそろそろ結論が出てもいいと思うんですけれども。  それから、国費を、例えば空出張などといって、本来出張に使うお金を出張に使わないで別に流用しちゃったというのは、これはやっぱり詐欺に当たる場合もあるかもしれないし、横領に当たる場合もあるかもしれないし、少なくとも、例えば全然関係のない飲み屋さんから領収書を作らせて判こも押して持ってきたなんというのは私文書偽造。それから、あるいは情を知らない会計課に行ってお金を引き出した、その文書は公文書偽造。情は知らないということは、私はないと思うんですが。  だとすれば、そういうような、やっぱり刑法、この内部告発対象に、今度の法案対象になっております刑法の条文に当たるものがあるのではないかと。今、一つもおっしゃらなかったんですけれども、調査中で逃げたんですけれども、しかし調査の結果によっては刑法のこれに当たる可能性というのも出てくるんじゃありませんか、刑法に抵触する事例も出てくるんじゃありませんか、官房長。
  294. 吉村博人

    政府参考人(吉村博人君) いずれにしましても、事実関係についてまだ全貌が明らかになってまいりませんので、刑罰法令も含めて、どのような法令に抵触するのかということについては調査結果で個別具体的に判断をされるべきものと思います。
  295. 吉川春子

    吉川春子君 服務規程とか内規だけには抵触するということだけは分かったんですか、刑法は分からないけれども。
  296. 吉村博人

    政府参考人(吉村博人君) 空出張あるいは北海道警や福岡県警で明らかになった、あるいはなりつつある事実関係について、一般的に刑法上の問題がどのように当てはめができるのかということについては、法務省の御答弁もあったかと思いますが、あくまで一般論でございますので、個別のケースケースで判断をいたしませんと、にわかにこれは当たる、これは当たらないというふうには今の時点ではお答えできないということを御承知おきをいただきたいと思います。
  297. 吉川春子

    吉川春子君 もう一つ伺います。  この問題は引き続き当委員会でやることになっていますので、その際にやるといたしまして、もう一つ警察に伺いたいんですけれども、一連の警察による不正経理問題に絡んだ保存期限内の会計文書を紛失、破棄したということが明らかになりました。で、内閣委員会で福岡の方に調査にも行ってまいりました。そして、その後、警察庁も詳しく調査をされまして、それも私たちの理事会で報告をしていただきましたが、全国の部局の四分の三に当たる四十五部局、計三百二十六の課や署に及んで旅費、給与に関する文書、捜査費に関する証拠書類まで含まれていました。警察庁の会計課、人事課、国際一課、二課、薬物対策課が含まれておりまして、会計文書管理を指導していた警察庁会計課でも紛失をしております。  裏金作りが問題になっている中で、警察ぐるみの文書の廃棄は証拠隠滅の疑いも指摘されております。要するに、警察庁としては、今不祥事が一杯起こっているから、もっと保存しておきなさいよと通達まで出しているにもかかわらず、それを期限の来る前にシュレッダーに掛けちゃった、証拠隠滅というのはそういう意味なんですけれども、こうした保存期限内の会計文書の紛失、廃棄というのはどういう法令に触れると警察としてはお考えですか。
  298. 吉村博人

    政府参考人(吉村博人君) 警察庁における会計文書の亡失あるいは廃棄事案につきましては、定められた手続に沿って管理や廃棄が行われていなかったという点において国家公務員法に定められた服務義務違反に該当する場合があるものと考えております。  これは、委員御承知のとおり、九州管区警察局では、既に当時の九州管区警察局の会計課長外二名を戒告処分といたしましたほか、廃棄の実行行為者である当時の広域調整部の広域調整一課の係長については管区局長訓戒とするなど、所要の懲戒処分等を行っているところでございますが、その余の廃棄事案、亡失事案については、現在これも事実関係を調べておりますので、早急に結論を出してまいりたいと考えております。
  299. 吉川春子

    吉川春子君 今はっきりしていることは、公文書を期限の前に全部、全部というか、今挙げたところではシュレッダーに掛けちゃったわけですね。そういう行為は警察としては内規違反だけですか。刑罰法規に当てはまらないんですか。どうでしょう。もう一度答弁をお願いします。
  300. 吉村博人

    政府参考人(吉村博人君) 考えられる条文は、委員御承知のとおり、刑法の二百五十八条に公用文書等の毀棄罪というのがありまして、公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は一定の処罰に付されるということでございますが、当該九州管区のケースにつきましては、必要な文書を毀棄をするという故意は認められないのではないかということで公用文書毀棄罪は成立をしないと判断をしたものでございますが、その余のケースについては、現在、それも念頭に置きながら事実関係をまだ解明中ということでございます。
  301. 吉川春子

    吉川春子君 故意があるとかないとかというのはもう前にも一度議論をしていますけれども、公用文書等毀棄罪ということは初めておっしゃいました。そういうものには少なくとも、証拠隠滅はともかくとして、そういうものには少なくとも当たると思うんですね。  今、ちょっと議論を、警察との議論を聞いていていただいて、大臣、今度のこの内部告発法律で、こういう事態を現場の警察官が内部告発をして、こういうことがありますよと言った場合に、これは、この法律で以後は保護されることになるのでしょうか。
  302. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) その個別の事案について承知をしておりませんので、これが保護されるかどうかというのはちょっと個別にはお答えようがないわけでございますが、先ほど永谷局長からも答弁しましたように、所定の刑法関連の法令等々に違反するような場合であるならば、かつ、これから政令で法令を定めますけれども、それに定められる、政令でその法令が指定されるのであるならば、これはこの法案対象になるということになると思います。
  303. 吉川春子

    吉川春子君 なぜ私が警察の問題を言ったかというと、非常に悩ましい問題があるわけですよ。この法律では刑法となっていますでしょう。そして、例えば外務省、例えば農水省なんかでこういう裏金作りやると捕まっちゃうわけですよね、やっぱり刑法の何条違反ということで。ところが、その適用する警察自体の犯罪だから今までだれ一人捕まっていないという、こういう悩ましさがあるわけです。会計検査院も摘発していないわけですよ、五十年間一件も。  これは別に今初めて言っているわけじゃなくて、さんざん今国会も各議員もやりましたので、私だけが言っている問題じゃないので申し上げているわけですけれども、そういうときに、具体的にこれとこれとこれとこれの法律に当てはまればその内部告発保護しますよという法律になっているんですよ。だから、おそれでは駄目なんですよね。  ところが、実際にはそのおそれというところまで広げないと、今ちょっと議論しましたような問題については対象にならなくて、そして私は、非常に警察の方は一生懸命たくさんの方がまじめに仕事をしていらっしゃると思うし、命の危険も感じ、体力の限界も感じ、そういう中で一生懸命仕事をしていらっしゃる。だから、私はもう不正をなくしてほしいというふうに思って質問をしているわけで、警察全体を悪く思っているわけじゃないんですよね。  ただ、やっぱりこういう、何というんですか、そういう中で勇気を持って告発する警察官が後を絶たないわけですよ、この何十年間。それで、私たちの党にもたくさんの警察官からの内部告発が寄せられているし、ほかの党もそうです。  そういう中で、やっぱり刑法の何条に当てはまらないと駄目という仕切りをこの今回の法律でしておりますと、勇気を持って告発した警察官が保護されないということになるわけです。  だから、そういう意味でこの法律が非常に厳しく限定的に法律を列挙して、それに当てはまらないものはもう駄目と、おそれも駄目というふうな仕組みになっているということは、本当に公益通報という法律目的が達成できるのかどうか、こういう危惧があるわけですけれども、竹中大臣、その点について、私はちょっと余りにも範囲が狭いという例として今警察の問題を申し上げましたが、その点についてどうお考えでしょうか。大臣にお願いします。
  304. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) そのおそれの場合が全く通報対象にならないというふうな御指摘をされていますけれども、ちょっとその点については誤解をされていませんか。正に、そういうおそれの場合を入れるがために、入れんがために、正に生じようとしているということを入れさせていただいているということであります。だから……
  305. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) 竹中大臣、お願いします。大臣、お願いします。
  306. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 生ずるおそれがある、正に生じようとしているにつきましては、何回か答弁をさせていただきましたし、今の局長の答弁のとおりだと思っております。  今委員がお尋ねになりました範囲のことで、やはり法令範囲法令違反に限定するのかということがやはり極めて基本的なお問い掛けであろうかと思います。  この点については、これも御答弁させていただいておりますように、これはやはり社会の中で何が公益を害することか、そこはやはり様々な価値観があるということだと思います。我々の社会の全体の価値観を集約したのが法律であり、その法令違反、ないしはその罰則付きのものにそれが集約されていると。そこがやはり私たちのよって立つ基盤なのではないのでしょうか。  これはいろんな価値観があろうかと思います。しかし、先ほどから言っていますように、やはり本当に社会的にこれは問題だということであるならば、それを罰する法律をやはり作っていくということ、それが正論だと思います。それでないと、内閣府の法律だけですべての問題に目配りした、何か世の中の問題をすべて解決するスーパー法律のようなものはこれは作れないわけでありますので、ここはやはり私たちのよって立つ法律一つ一つの積み重ねであると、そこの上に立った今回の公益通報保護法案であるということを御理解賜りたいと思います。
  307. 吉川春子

    吉川春子君 時間が来たのでこれは次回に譲りますけれども、やっぱり余りにも対象範囲が狭いと、そこは問題だということだけ申し上げて、終わります。
  308. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 無所属の黒岩宇洋でございます。  今回の法案について、ある方がある文章を書いたのを読んだことがございます。それは、チクったらばればれの告発保護なんて意味ないよと。今日も議論の中で出てきました。嫌な言葉なんですけれども、チクる、すなわち、密告しても、その密告者がだれかがその組織で分かったら大変な目に遭ってしまうというのが我が国の組織、社会だと、こういうことなんです。  今日お聞きしたいのは、第五条で不利益取扱いの禁止ということがございます。条文では、降格とか減給その他とありますけれども、いろんな例示で、例えば左遷されるとか様々なことがあるんですが、局長、これは白い目で見られるとか、そのほかいろいろとあると思うんですね。例えば、その課で飲みに誘ってもらえないとか、局長ぐらい偉くなるとそれはないかもしれませんけれども、例えば若い時分、課全体で飲みに行くときに自分だけ誘われないとか、これもう二、三度続いただけで私なんかもうつらくて出社拒否ですね。だから、こういうような様々な不利益な事実というのは、事実上の不利益があり得るわけですよ。それに対してこの法案はどこまで対処し切れているのか、これをまずお聞かせください。
  309. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 法案の五条でございます。  公益通報を理由として労働者が解雇その他の不利益取扱いを受けることがないような法的措置を講ずることとした、この法案はしたものでございます。それで、第五条の第一項に例示しております降格、減給その他の不利益取扱いのその他の不利益取扱い、どこまで何が入るのかという御質問でございます。  例えば、懲戒処分に該当しないような訓告、厳重処分、それから自宅待機命令、あと、不利益な配置の変更などの人事上の差別的な取扱い、それから昇給、昇格などの給与上の差別的取扱い、それから専ら雑務に従事させるといったような就業環境を害するようなことなど、正に事業者労働者に対して行うおそれのある様々な不利益取扱いを含む趣旨であります。  この法案によりましてこういうような不利益取扱いが法的に禁止されるということになるということであります。
  310. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 どういったことが不利益取扱いかを聞いたんではなくて、そういったことに対して本当に条文上どこまで対処し切れているかということをお聞きしたかったんです。  私、あえてこれを先に聞いたのは、やはり密告した人間がそれだけで立場が悪くなるという、これはやっぱり日本社会をある程度表していることだと思うんですね。  これ、竹中大臣にお聞きしたいんです。私、今までこの内閣委員会で多くの法案審議をしてきた中で、今回のこの公益通報者保護法案の審議というのは大変異例だと思っているんです。どういうことかと申しますと、様々な条文、例えば三条の三号のイ、ロ、ハ、そしてその中の様々な文言に対して、今日の質疑でもここまで事細かく多くの疑問点が出ている法律というのは、私は本当に珍しいと思っているんです。これはなぜかと考えたときに、やはりこの法案自体が様々なものを抱え過ぎていると、そう思うんです。  それはどういうことかと申しますと、例えば目的なんですが、公益通報者保護という目的がある傍らに企業コンプライアンス経営法令遵守という目的がある。私、これだけじゃなくて、先ほど申し上げた、やはり密告社会、私も日本人ですから、密告社会はどうかと言われれば、余り好みませんよ。ただ、そういったような伝統文化にも対応させていこうという、今朝の参考人質疑ではやはり経営者の立場のお話もございました。そして消費者の立場のお話もございました。この様々なものをやはり一つ法案で受け止めようとするがゆえに、私はいろいろな矛盾点が出ているんだと、そう思うんですね。  そこで私、竹中大臣にお聞きしたいのは、例えば先ほど申し上げた密告者、こういった方が例えば本当に奨励されて、よくやったと言われるような職場環境まで作るという、ある意味、日本の伝統文化に一歩踏み込むようなことまでして、そして公益通報者保護しながら、昨今起こっているような様々な企業のあのような法令遵守違反是正していくという、こういったところまで覚悟を決めていくのか、それとも、やはり日本の文化はあるんだと、そういった中では、じゃやっぱり法令遵守に絞ろうとか、私、ある程度の踏ん切り、覚悟がない限りやっぱりすっきりした法律にはなりづらいと思っているんですね。  そういう意味で、竹中大臣のやはりこの法案を作って、そしてどういう日本社会にしていくんだというこの覚悟といいますか、お気持ちをまずお聞かせください。
  311. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 今、黒岩委員は非常に適切にこの法案が置かれた状況を御説明してくださったと思っています。といいますのは、確かに企業コンプライアンスを高めるように我々はしたいと、国民利益を守りたい、しかしこれは企業としては風評リスクにさらされるわけですから、ここはやはりしっかりと守らなければいけない。正に非常にその微妙なバランスの上に立って、しかしそういう一般法理は我々はあるわけですが、それを更に一歩踏み出したようなものを作りたい、それが我々が目指すところでありますから、そもそもがやっぱり非常に微妙なバランスの上に立っています。  この一般法理のよって立つ基盤というのは、要は実態判断だということだと思います。つまり、公益と私的な利益いろいろあります。それをどのように実態判断するのかという問題なんだと思います。その実態判断にすべてを任せておくとなかなか予見可能性がままならないから、分野を明確にしていこうというのがこの法律趣旨なわけですけれども、これはある程度分野が明確にできた面があります。分野が明確にできた面は、これは法律違反法令違反の場合は云々と、これについてはむしろ明確になり過ぎて狭いというような御批判がある。  一方で、しかし外部に対してやらない、外部通報の要件としては、これは幾つかの例示を挙げておりますけれども、これは局長一生懸命答弁させていただいておりますが、局長が言いたいことは、要は実態判断だということなんだと思います。しかし、実態判断としてはなかなか、しかし何とか例示を法律になじむような形で書きたいという思いで、こういう判断、書き方をしているわけですけれども、これは法令のような形でなかなか明示しにくい。だから、実態判断を更に予見可能性を高めるという意味では、先ほどのイ、ロ、ハの部分はなかなか難しい部分がある、面があるということだと思います。  よって立つ、法律のよって立つ立場というのはそのような意味で、そもそもが非常に微妙だと思うんですが、先ほど委員おっしゃいました、それによって飲みに誘ってもらえなくなる、これは人間関係の問題ですから、その人間関係に政府が立ち入るというようなことに対しては私たちはやっぱり抑制的でなければいけないと思います。したがって、あえて言えば、こういう問題に私たち初めて踏み出すときに、やはり政府が物事を規制するということに関してはやはりある程度抑制的に、それが混乱なくスタートをさせたいという私たちの言葉になっているわけですけれども、その上で混乱なくスタートをさせて、その上でこうした問題がこの社会に定着していくペースを見ながら、更に必要な措置を講じていきたい。私たちがよって立つ基本的な立場というのは、そのようなものでございます。
  312. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 大臣、私も飲みに誘ってもらえなかったから、この法律でまた誘ってねなんて言っているわけじゃないんです。  ただ、やっぱり今の御答弁をお聞きしても、実態判断だということをそこまで強調されるということは、やはりこの条文の各規定の、やはり何というんですかね、裁量がやっぱり幅が広過ぎて、そういった意味で我々が判断しづらいと、この条文から。正に実態判断ですよ。これ、法を取り締まる側も取り締まられる側も判断するのは実態だと言われると、これなかなか難しいということはあえてこれ指摘にとどめておきます。  さらにじゃ進めます。  非常に細かいところから入っていきますけれども、この不利益取扱いという点に絞ってお聞きしますが、第三条、これは様々な要件の下に、こういった場合には、の解雇は無効ですよという、無効という文言を付してあります。  翻って、この五条で言うところのこの例示列挙の例えば降格、減給、その後、その他は切り離してくださいね。今言った様々なことのその他は引き離して、降格、減給等に対して無効をこれ触れていないのは一体なぜなんでしょうか。
  313. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 第五条の不利益取扱いについて、無効ではなくてどうして禁止規定にしているのかというお尋ねであります。  まず、一つ目には、この法案不利益取扱いというのは、法律行為だけではなくて、先ほど申し上げましたけれども、専ら雑務に従事させるというような事実行為をも対象としております。事実行為について法律行為と違って法的効果を有しない、有していないために無効という概念が事実行為についてはないということが一つでございます。  それから、解雇については、その重大性、労働者にとっての重大性にかんがみまして、その復職を前提とする無効が適当と考えられるというふうに思いますのに対して、不利益取扱いについては、例えば戒告処分の場合など、必ずしもその効力をすべて否定するよりも、損害賠償請求の対象とした方が公益通報者利益となる場合があると考えられると、そういうようなことを考えて、第五条の不利益取扱いについては禁止と、不利益取扱いをしてはならないという規定にさせていただいたということであります。
  314. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 私、その事実行為を無効にせよと、そんなことにこだわる気はないんですよ。ただ、この後私もいろいろと触れますけれども、禁止規定だけで、それに対する罰則であるとか、ないしは救済規定等が盛り込まれていないということを考えると、私は、この条文立ても、先ほどおっしゃった降格、減給や、そのほか昇給しなかったとか、様々な事実行為を例示列挙して、それについての対応とかを書いてもいいと思うんですね。その後に、その他云々の禁止規定でもいいと思うんですけれども。  で、質問はこういうことで聞きましょう。第三条の解雇ございましたし、今の第五条のその他の不利益取扱いの禁止規定がございますね。この禁止規定に対してなぜ罰則がないのか。そして、罰則なくして公益通報者保護できるのかどうか。この点についてお答えください。
  315. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) この法案が制限する解雇やその他の不利益取扱いでございますけれども、正に労働者事業者との労働契約関係という民事関係における問題でございます。したがいまして、そこに対する民事ルール整備を行うことを基本として制度を考えているということであります。  一般的に申し上げまして、違法行為に対して罰則を設けるかどうかというのは、その規定によって行おうとする強制の程度等を勘案して決定すべきものというふうに考えられますけれども、国民生活審議会での御議論あるいは提言におきましては、このような幅広く適用される民事ルールを罰則により担保すべきというような議論には、そういう結論にはならなかったということでございます。  なお、この法案では、例えば原子炉等規制法のような個別法において、通報者に対する不利益取扱いを禁止して、これを罰則によって担保するということが原子炉等規制法等でなされておりますけれども、この法案ではそういうようなことを排除するものではなく、その旨を法案の第六条第一項に規定させていただいております。
  316. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 私、事前に事務方にもこのことは聞いておりまして、確かに永谷局長のおっしゃったことと同趣旨のことで私もお聞きしているんです。だから、要約しますと、民事ルールを尊重しましょうと、他の個別の法律に対しては個別の法律で対応していると。だったら、この五条の禁止規定要らないじゃありませんか。いかがですか。
  317. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 例えば、労働基準法の十八条の二に解雇権濫用に関する一般法理というのがございます。その法理、法理から、一般法理から直接この不利益取扱いに対する禁止というのは出てこないということであります。  したがいまして、これ今、黒岩先生要らないんじゃないかというふうにおっしゃいましたけれども、その禁止ということを、事実行為まで含めて不利益取扱いを禁止するという意味はあるんだろうと思います。
  318. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 もちろん全くないとは私も正直思っているわけではないですけれども、やはり罰則規定という、こういったことで担保する。だって、今回のこの通報対象事実についても刑罰で担保だとか、これはやっぱり刑罰とか罰則というのはそういった意味での一つの大きな抑止効果にはなるわけですよ。だから、そういうものがない中で、本当に通報者が、私、保護されるかなということは甚だ疑問だという、これは疑問で収めておきます。  この次に、やはりこれ大臣にお聞きしましょう。  これも冒頭の質問に戻るんですけれども、やはり、ある人間が通報しました。言葉を悪くすれば告発しましたということがその組織内で明らかになってからではもう遅いわけですね。その後、解雇が無効であるとか、そのほか今あった不利益取扱いの禁止ですといっても、ある意味、日本社会においては、ともすれば致命的な状況にもなっているかもしれないわけです。  ですから、衆院での附帯決議では公益通報者の個人情報を漏えいしてはいけないというものが盛られていますけれども、私は、むしろもうこの法案本体、真っ先に個人情報の漏えいを禁止し、かつそこに罰則規定を設け、なおかつ、このことによって事実上でも不利益取扱いを受けた方の、公益通報者の救済規定を盛り込む、私はこのことが大変重要だと思っているんですけれども、竹中大臣、いかがでしょうか。
  319. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 冒頭、正に黒岩委員御指摘されたことに関連しますけれども、これ、通報を受けた事業者がこの通報者の氏名等の個人情報を漏らすというような行為は、これは、通報者の就業環境を著しく害するということにこれはもう明らかになるんだと思います。このため、この法案では公益通報を理由とした不利益取扱いを禁止している、正にこれは不利益取扱いそのものであるというふうに思います。そうした意味で、個人の情報の問題はその条項、第五条の中でしっかりと書かれているというふうに考えております。  それで、この点は、やはり十分に周知を図って、通報者の個人情報保護が図られるように、これは附則にもありましたけれども、我々としても是非努力をしたいと思っております。  もう一点、これに関連しますけれども、行政機関が保有する個人情報の問題も当然出てまいろうかと思います。  情報公開法においては、これは不開示情報にされているところである。また、行政機関個人情報保護法において、利用目的を具体的に明確にして、目的外の利用、提供を禁止しているということがございます。また、通報者の意思に反して通報者の氏名など個人情報の開示すべきではないということは当然でありますけれども、それに関しては国家公務員法の定める守秘義務対象にも当然なるということだと思います。そうした意味では、この法律の中で個人情報が漏れないような規定というのは一応なされているというふうに考えております。  唯一、罰則と、それと救済というお言葉委員からございましたけれども、罰則については、先ほど局長から御答弁させていただきましたけれども、あくまでも民事ルールの枠組みの中でこれは考えていかなければいけない問題であるということだと思います。まして救済ということになりますと、これはだれが何を救済するのか、一般論としては、もしこれで個人情報を漏らしたような場合、これは、いわゆる個人が損害を受けたという意味での損害賠償の対象にはこれは一般論としてはなろうかというふうに思いますけれども、これは正に一般的な法理の中で解決されていくと思います。
  320. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 これは大臣への指摘にとどめますけれども、やはりリアリティーを持って職場環境とかをイメージしていただきたいんです。  竹中大臣がサラリーマン経験あるかどうか私は存じ上げませんけれども、今日も参考人質疑の中で、NPO法人の方なんですが、こういう相談を受けると。こういった不正があるんだけれども、とにかく内部に言うのは怖い、最も内部が怖いと。それは、やはり不利益取扱いもあるし、もちろん解雇とかもあるわけですけれども、やはり立場が悪くなるんだと。それは、私冒頭に申し上げた、やっぱりいい悪いにつけ、日本の社会、組織なんですよね。  そんな中で、やはり通報するんだという方をどうして保護していくのかということは、その職場の環境とか状況というのも、官僚の皆さんも、そしてここにいらっしゃる国会議員の我々も真摯に、そして現実的に考えていかなければ、やはりこの法案自体が現実に即したものにならないのではないかという、この点は指摘ということでとどめさせていただきます。  それでは、次に進みます。  今日も大変長い時間議論されていた、やはり外部通報、これがなかなかしづらい、要件が厳しくて外部通報が大変困難であるという様々な指摘がございます。私も、この点について細かいところから一つ一つお聞きしていきたいと思っております。  それでは、お聞きしますけれども、二条一項にございます、通報対象事実若しくはこれによる被害の拡大防止に必要と認められる者とございますね。これについては、具体的に何かというこれ質問通告なんですが、ちょっと聞き方を変えて、これは私、疑問なんですが、具体的には、報道機関のみならず、消費者団体とか環境団体も入っていると聞いております。  消費者団体、環境団体に外部通報しましたと。その後に、この環境団体等がその事業者に直接何か警告とかするのではなく、二次通報といいましょうか、マスコミに訴えた、それからマスコミから話が報道されたという場合に、今のマスコミにもう一度訴え掛ける環境団体とか消費者団体は、この二条一項で言うところの認められる者になるんでしょうか。お聞かせください。
  321. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 環境団体でありますとか消費者団体でありますとか、そういうところに通報をして、彼らが更に外部に対してそれなりの警告というか、それなりの通報をするというようなケースでありますけれども、その場合も、当然のことながら、当該通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に該当する、つまり外部通報先として該当するということであります。
  322. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 いや、私、例えば資する者とかいう表現でなくて、認められる者というあえて表現をしているということは、かなり要件としては私、狭まっているという印象なんですね。私の勝手なこれは判断なんですけれども、やはりここに通報しなければ今の公益が例えば損なわれた状況が回復しないとか、やはりここが最も外部通報先に適しているという、こういうところの意味じゃないかと私は勝手にとらえているんですね。  でも、今の私の例だと、せっかく環境団体へと行ったんですけれども、結局、環境団体は、自ら直接には今言った事業者への是正措置ができないがために、また更なる二次通報をしているわけですよ。このような通報先がこの条文で言うところの認められる者に本当に入るんでしょうか。
  323. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 直接その環境団体が、いろんな活動をされているんだろうと思いますので、その活動自身が正にここで言う要件、要件というか、被害の拡大を防止するために必要であると認められるということになろうかと思います。
  324. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 ごめんなさい、局長、しつこく聞きますよ。だって、そこは、通報を受けたけれども、自ら直接には是正措置をせずに、マスコミに、外部の、要するに報道機関に流しているわけですよ。こういったようなところでもこれは外部通報先なんですか、認められる者なんですか。
  325. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 当該環境団体が是正措置を取ることができるということであれば、それは外部通報先に該当するということであります。  ただ、能力がなくて、更にマスコミ等に通報したときにどうなるかということですけれども、その場合は、その当該環境団体等について、その当該環境団体から報道機関等に通報したことについて別の意味での責任問題というのは出てくるんじゃないかと思います。
  326. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 そうしますと、その別の意味というのは具体的に何を指しますか。
  327. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) 事実関係を明確にせずにそういうケースを報道機関等に言うというのが、例えばでありますけれども、名誉毀損罪等に該当する場合が出てくるということであります。
  328. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 このこと、そこにこだわりたくないんです。私、じゃ、今言ったような状況の場合の環境団体や消費者団体外部通報先として認めないでほしいと言っているんじゃないんですよ。お分かりですよね。これ、やはりいざ外部通報といったときに、通報者側の立場で私今言っているんです。  じゃ、そこが本当に認められる者だろうかという判断、私、大変難しいと思うんですよ。今言った是正措置ができるだろうと思って環境団体の方に行ったと。そうしたら、実はそれはできなくてマスコミの方に流れちゃったと。名誉毀損なんかどうでもいいんです。そういったときに、何だと、ここは認められる者じゃないんだよと、あなた、だから今回あなたの通報保護されませんよという、こういうことになることを危惧しているんです。いかがですか。
  329. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) そこは、ここで言っている外部通報先というのは極力広く解釈するということでありますので、環境団体等に通報したということでもって、それ自体外部通報先として認められなくなるということではないというふうに思います。
  330. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 ならば、やはり、あえて認められる者という、これ非常にやっぱり一般的に解釈して要件が厳しいんですよ。それを今広く解釈してと言っていても、これ広く解釈しようがないんですよね。だから、我々は、せめて資する者だったら、やはり間接的に、マスコミに更に二次通報しても、資するという意味なら資するなという、これ普通の日本語をしゃべっている方は、私、これで理解できると思うんですよ。  これ、必要と認められる者、必要とですよ、となれば、やはりここは必ずや要するということですよね、本当に。だから、そういった意味でやはり今回のこの条文の文言というのが非常に我々も解釈しづらくなる。我々以上に重要なのは、何度も繰り返しますけれども、通報する側の人間がこれではちゅうちょするどころかとても怖くてできなくなるわけですよ。それが今日ずっと議論の中で、ともすれば抑止に働いてしまうんではないかという、この文言の我々は若干なる危惧を覚えているという、こういうことなんです。  ちょっとここで時間取り過ぎちゃったので、じゃ最後、質問いたします。  じゃ、さっきの神本先生の質問を受けて一つお聞きしたいんですけれども、三条三項のニのこれですね、調査を行う旨の通知がない場合、これ議論されていましたね。ここ、実はすごくまた大きな問題がはらんでいるんです。どういうことかといいますと、じゃ、どのぐらい通知がなかったら、その後の正当な理由がなくて調査を行わない場合なのか。これガイドラインがないと、どういうことかとなると、例えば一年間ほったらかしたとなると、なったとすると、これは何を意味するかというと、企業法令遵守、この本来大きな目的一つであるコンプライアンス経営が担保、保たれないということになるんですね。  じゃ、例えば、三日や四日で、何だと、調査するといってもしていないじゃないかと、で、いきなり外部通報したら、あなた、それは違いますよと、それは早過ぎますよといってその公益通報者が仮に保護されなかったら、これ目的の、大変大きな公益通報者保護というこの目的が満たされないんですよ。  だから、これどの時点で局長のおっしゃった調査を行う旨を通知して、その後正当な理由がなく調査を行わない場合というふうに切り替わるかどうかによって、大変重要な保護法益の二つのうちどっちかが満たされない場合があるんですよ。これについて、ちょっと明確に答弁してください。
  331. 永谷安賢

    政府参考人(永谷安賢君) まず、どの時点で通報するのかということであります。一つは、通報者がその通報対象となる事実を発見した段階であれば、通報者はいつでも通報できるということであります。それを受けた事業者でありますけれども、二十日以内にその調査を行う旨の通知をするというように努力義務が課されているということであります。  そこで、二十日過ぎてもしないと、調査をしないということでありますけれども、それはこのニにございますように、ニの要件にございますように、労務提供先が正当な理由がなくて調査を行わない場合というのが書いてございます。正にこれで調査を行わない場合ということで外部通報対象になるということでございます。
  332. 黒岩宇洋

    ○黒岩宇洋君 委員長最後に。  局長、これ実は、この議論をしない方法というのはあったんですよ。それは、国民生活審議会報告書に従えばよかったんですよ。要は、今回は調査を行う旨の通知云々ですけれども、国民生活審議会は、適当な措置がなされない場合と。私、こういう条文立てだったら今こうした議論をしなくて済んだと。私、できたら調査が、是正措置が行われない場合はという、こういう条件付で外部通報していいんだと、私はこういう条文立てにしていただきたいと、これはもうお願いで、時間が来ましたので質問を終わります。
  333. 和田ひろ子

    委員長和田ひろ子君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十五分散会