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2004-04-20 第159回国会 参議院 財政金融委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年四月二十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月十三日   委員森山裕君は公職選挙法第九十条により退   職者となった。  同日     辞任         補欠選任      山口那津男君     荒木 清寛君  四月十四日     辞任         補欠選任      荒木 清寛君     山口那津男君      大門実紀史君     大沢 辰美君  四月十五日     辞任         補欠選任      野上浩太郎君     加藤 紀文君      池田 幹幸君     西山登紀子君      大沢 辰美君     大門実紀史君  四月十六日     辞任         補欠選任      加藤 紀文君     野上浩太郎君      西山登紀子君     池田 幹幸君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         平野 貞夫君     理 事                 入澤  肇君                 尾辻 秀久君                 野上浩太郎君                 大塚 耕平君                 続  訓弘君     委 員                 清水 達雄君                 田村耕太郎君                 西田 吉宏君                 山下 英利君                 大渕 絹子君                 平野 達男君                 円 より子君                 山根 隆治君                 山口那津男君                 池田 幹幸君                 大門実紀史君                 椎名 素夫君    国務大臣        財務大臣     谷垣 禎一君        国務大臣        (内閣府特命担        当大臣経済財        政政策))    竹中 平蔵君    副大臣        財務大臣    山本 有二君    事務局側        常任委員会専門        員        石田 祐幸君    政府参考人        警察庁生活安全        局長       伊藤 哲朗君        金融庁監督局長  五味 廣文君        財務省国際局長  渡辺 博史君    参考人        日本銀行総裁   福井 俊彦君        日本銀行総裁  武藤 敏郎君        日本銀行理事   三谷 隆博君        日本銀行理事   小林 英三君        日本銀行理事   白川 方明君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  )     ─────────────
  2. 平野貞夫

    委員長平野貞夫君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平野貞夫

    委員長平野貞夫君) 異議ないと認めます。  それでは、理事野上浩太郎君を指名いたします。     ─────────────
  4. 平野貞夫

    委員長平野貞夫君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として警察庁生活安全局長伊藤哲朗君外二名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 平野貞夫

    委員長平野貞夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 平野貞夫

    委員長平野貞夫君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君外四名の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 平野貞夫

    委員長平野貞夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 平野貞夫

    委員長平野貞夫君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 平野達男

    平野達男君 どうもおはようございます。民主党・新緑風会の平野達男でございます。  今日は日銀報告に対する質疑ということで、主として量的緩和ということに関連しまして何点か基本的に疑問に思っていることがございますので、それについてお考えをちょっと聞いていきたいというふうに思っております。  御承知のように、公定歩合の操作から、今もうゼロ金利になりまして量的緩和に変わってきたということで、そういう形で推移をしてきております。その量的緩和も、日銀当座預金目標値が、三月、二〇〇一年の三月以前までは四兆円ということだったんですが、今は三十兆から三十五兆円ということで、大分膨らんでおります。  その一方で、マネーサプライということがよく議論されるんですが、この間の報道によりますと、二〇〇三年度のマネーサプライ伸び率は、代表的な指標であるM2プラスCD平均残高が前年度一・七%増と、十年ぶりの低水準になるというような報道もなされていまして、ベースマネーが増えていく、伸びているという一方で、マネーサプライ伸び率がなかなか伸びていない、むしろ十年ぶりの低水準伸びだったというような、そういう報道もなされています。  そこで、改めて金融量的緩和ということについての意味、これはもう何回も総裁からお話ちょっとお伺いしておるんですけれども、その量的緩和意味ということについて、冒頭、簡単で結構でございますからちょっとお考え方を、考え方をちょっとお示ししていただきたいと思います。
  10. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 福井でございます。  今日は日本銀行半期報の御審議をちょうだいすることになりまして、大変恐縮に存じております。よろしくお願いを申し上げます。  ただいまの御質問にまずお答え申し上げます。  日本銀行、過去三年ちょっとお尋ね量的緩和という枠組みの下で金融政策を行ってきております。世界の中央銀行で恐らくこの枠組み金融政策をした例はございませんし、日本におきましても過去三年ちょっとの経験が実は初めてでございます。この量的緩和枠組みについて、学者内外学者、その他優れた識者の基本的なお考えは、今委員お尋ねのとおり、ベースマネー供給すれば、それのある乗数倍マネーサプライが増える、あるいはその他の金融資産に対する金融機関投資が増えるというふうな枠組みが頭にあるということでございますが、私ども過去三年ちょっとの経験から考えますと、実践的な意味でこの量的緩和効果というものは、日本の場合に大きく言えば二つの方向でかなり明確な効果がある。  一つは、やはり金融市場多額流動性供給いたしますので、金融市場に参加している個々の金融機関にとって、本来ならば資金繰りに様々な不安が伴うところを、その不安を刈り取ることができる、結果として金融市場安定感というものを保つことができる、これが第一の効果でございます。  それからもう一つは、金融市場多額流動性供給いたしますと、短期市場金利が低く抑えられる、その余波としてやや長め金利も抑えられる。加えて、日本銀行の場合、かなり先々まで今の量的緩和枠組みを続けるという約束をしておりますので、先行きの金利予想の安定にもつながる。これは何を意味するかといいますと、企業がリストラを行う、これは後ろ向きの努力、あるいは順次新しい事業展開のことを考える、前向きの努力、こういうことをしていきます場合に、金融面のコストを大幅に下げて、かつそれを安定させて、企業金融の面で非常に好ましい条件を提供することができる。これは企業努力金融面から強く後押しすることができる。この二つ効果が非常に明確に確認されているところでございます。  現在は、いわゆる構造調整の下、民間部門におきましても様々な過去の過剰の調整努力が行われております。金融機関においては不良債権処理という努力が引き続き行われている状況でございますので、内外学者その他優れた識者がお示しをいただいておりますいわゆるポートフォリオリバランス効果というふうなものに属する効果が明確には出ていない、恐らく潜在的にはそういう効果を持つ政策だろうと思っておりますが、その辺が本当にどれぐらいの効果があるものか、なおこれからもうしばらく量的緩和を続けます。そうした力がどれぐらいあるかということは、これから更によく検証したいというところでございます。
  11. 平野達男

    平野達男君 今の御答弁の最後の方にポートフォリオリバランシング効果の話がありまして、この政策委員会金融政策決定会合議事要旨、これ時々見させていただきますが、前は財務省出席の方がポートフォリオリバランシング効果という意味合いからも量的緩和を続けてもらいたいという発言をずっとされていまして、最近ぱたっとこの発言がやんでいるんですね。その発言がやんだ背景にはどういう意味があるかというのはよく分からないんですが、どうもやっぱりポートフォリオリバランシング効果というのは言われたほど出ていないということが背景にあるのかなというような感じがしましたけれども、そこはどういう、総裁、何か御見解ございますれば。
  12. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 私も理論的にそれほど優れた知識を持っておりませんが、少なくとも内外の優れた理論家識者のお考えによると、やはりこの量的緩和フレームワーク、基本的なメカニズムというのは、ベースマネーを提供する、たくさん提供すれば金融機関を中心としてその多額流動性に押される形であるいはそれがしみ出る形で貸出しが増える、株式購入が増える、債券の購入が増えるというふうな形で金融面から緩和の姿が展開する、これが想定されている姿だというふうに理解しております。  現状日本現状はそれを逆に妨げる実態が存在している、強く妨げる実態が存在している。金融機関が手元に多額流動性があるからといって、すぐに貸出しを増やせる環境にない。株式を買おうか、株式は逆に持ち合い解消で処理しなければいけない状況にあると。社債につきましても、企業の方が過去の有利子負債返済の一環として社債についてもごく最近まではかなり慎重な発行姿勢であったというふうなことがありまして、したがいまして、今の構造調整が強く進展していく過程の中においては、必ずしも本来の理論どおりポートフォリオリバランス効果が表には出にくい、恐らく潜在的な力があるんだろう。ここから先は少しそういう効果が出てくるかもしれないと私は思っておりまして、そこをよく検証したいということでございます。
  13. 平野達男

    平野達男君 まあ、以下は私の勝手な推測なんですけれども財務省ポートフォリオリバランシング効果と言えば、国債を買ってくれというふうにもちょっと取れまして、余り言い過ぎるのもちょっとこれは恥ずかしいかなと思って途中でやめたんじゃないかなというふうにも勝手に取っておりますけれども、これは私の余談であります。  そこで、目詰まりという言葉を最近よく聞きます。目詰まりといいますと、量的緩和ということで当座預金に三十兆ぐらいのお金を積んでいるんですけれども、それが市場に出ていかないということを指して目詰まりというふうに言っておるんですが、ただ、この目詰まりという言葉だと、一つパイプならパイプがあったとして、何かの原因でそこに何か物が挟まった、詰まっているというふうなニュアンスに取れてしまうんですが、実際は、途中の経路に問題があるんじゃなくて、例えば水が積んであってそこにパイプがあって下にコックがある、栓をひねれば水が出ますよということになっておるんですが、栓をひねる人がいないんじゃないかと。つまりは、もう資金需要がないんじゃないかというのが一番の原因じゃないかというふうに私はちょっと感じています。  もちろん、不良債権処理が進まないために銀行がリスクを取らないとか、それからあと企業は、もうキャッシュフローの中で、設備投資もその範囲内に抑えてあって、銀行からお金は借りない、そういったことも、言い方もできますけれども、それは総じていえばもう資金需要がないということではないかと思うんですが、この目詰まりという言葉は必ずしも適切ではないんじゃないかというふうに思うんですが、どのようにお考えになりますか。
  14. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 今、目詰まりという言葉委員企業の方の資金需要のサイドからもう少し詳しく言えばどういうことになるかというお尋ねであったと思いますが、おっしゃるとおりだと思います。  これまでのように長く経済が低迷した状況の中では、企業はなかなか前向きの投資をしない、当然新しい資金需要の出方が非常に鈍いということがございました。それだけではなくて、そういう苦しい経済状態の中でも企業は結構経済活動しているわけですけれども、その中から生み出された収益、つまりキャッシュフローは極力過去の過剰借入れ返済に振り向ける、むしろ新規に借り入れるよりはどんどん返そうというふうな力の方が強かったと。したがって、蛇口は逆に閉めている、企業の方からいえば逆に閉めているという状況が長く続いたということでございます。  最近はその状況が少しずつほぐれてきているというふうに私ども思います。企業段階で過去の過剰設備あるいは過剰借入れが完全に解消したわけではありませんけれども、これだけイノベーション進展が非常に速い時代でございますので、過去の過剰借金がまだ十分は返済し切れていない、過去の過剰設備がなお残存していて、設備稼働率という面からいきますとまだちょっと低い、こういうふうな状況の下でも、イノベーションを追求した新しい投資を少し早い段階から始めるというふうなことが出ております。  したがいまして、徐々にこれから資金需要が出てくるかと、こういうことでございますが、この場合でも一つ留保条件がありますのは、過去と違いまして、企業新規投資をする場合に即借入れないし社債発行には向かわない、できる限りキャッシュフロー範囲内で行おうと。こういうグローバル化の下の新しい競争に立ち向かう財務面での対応の異なりということが出てきているというふうに思っています。
  15. 平野達男

    平野達男君 そこで、ベースマネーというか、量的緩和ということの効果ということにちょっとテーマを移らせていただきますけれども、先ほどの冒頭総裁の御説明の中にも、どうもベースマネーは、当座預金は積んであるけれどもマネーサプライという形でつながっていないんだというようなちょっとお話がございました、というようなお話があったかと思います。つまりは、そのベースマネー伸びマネーサプライ伸び率の中には少なくとも短期的に見れば相関関係はないということであろうと思います。  ところで、竹中大臣はさきの参議院のこの財政金融委員会でこのような発言をしているんです。ちょっと読ませていただきますと、「マネーサプライをコントロールできるのは日銀中央銀行しかいない。中央銀行がそのことをやらないんであるならば、これは中央銀行としての役割を果たせなくなるのではないだろうかという議論もございます。」という、ちょっと自分見解ではなくて、議論もございますということでちょっと発言を若干逃げておるんですが、そういう発言をされているわけです。  そうしますと、今、日銀マネーサプライそのものがやっぱりコントロールできているかというと、これはもうコントロールできていないんではないかと思うんです。この竹中大臣発言に対しまして総裁はどのように思われますか。
  16. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 非常に長い期間を取りますと、日本銀行がいわゆる金融緩和を行いまして狭い意味ベースマネーというものをより多く提供いたしますと、それの一定乗数倍マネーサプライが増える、またそのマネーサプライと最終的な実体経済あるいは物価の姿との間にかなり安定的な相関関係がある、これは事実でございます。  ただし、非常に長い期間を取ればということでございまして、期間を短く取れば取るほどそこのところは不安定になる。しかし、比較的短い期間を取りましても、それを安定していた期間というのがないかというと、それはやはり一九七〇年代とか八〇年代の初めぐらいまでは世界的に経済が比較的安定していた時期で、そういう相関関係が非常に強く見られた時期がございました。主要国中央銀行マネーサプライというものをターゲット政策上のターゲットにしていた時期があったのはそういう時期でございます。  しかし、八〇年代後半以降、特に九〇年代になりまして以降は、世界的にグローバル化進展の下で経済構造変化という要素が非常に強く入ってまいりますと、従来安定していたベースマネーマネーサプライとの関係、そしてマネーサプライ実体経済ないし物価との関係というものの相関係数が非常に乱れてまいりました。主要国中央銀行マネーサプライターゲットから離脱をするというところが非常にたくさん出てきたわけでございます。日本の場合にもほとんど同じような系譜をたどっておりまして、特に九〇年代以降はベースマネーマネーサプライとの関係、そして実体経済物価との関係が必ずしも安定的には掌握できない状況になってきております。  しかし、私どもはやっぱりマネーサプライというものが、金融政策運営上、他の経済指標の中ではぬきんでて重要な意味合いを持つ指標だというふうに思い続けております。ターゲット的というふうに絞り込むことは非常に難しいんですが、重要な指標と。したがいまして、現在はベースマネーをたくさん供給いたしましてもすぐにはマネーサプライ増加に結び付いていない。委員指摘のとおり、昨年一・七%と低い伸び率だったということをよく承知しておりますが、これから経済が更に持続的な成長に向かい、デフレ脱却が可能になってくる、あるいは本当にデフレ脱却に成功するというふうなプロセスを経ていくうちに、日本銀行緩和マネーサプライ増加とはより安定的な関係が、その姿が見えてくることは間違いない、そういう姿に持っていきたいというふうに思っています。
  17. 平野達男

    平野達男君 今の段階ではなかなかマネーサプライとの関係が構築できていないということであろうかと思いますけれども、それでは量的緩和の持つ意味ということにつきまして、これは将来的な話というのは今、日銀総裁からお話がございましたけれども、ここ何年かの状況ということで見た場合にどういう意味合いを持つんだろうかということで、私が特に気にしているのは、量的緩和、量の持つ意味合いということが、これはちょっとよく分からないなと思っています。  例えば今よりもっと経済状況あるいは金融状況が危機的な状況にあると思われていた時期、例えばデフレスパイラルに入るんじゃないかというふうなことが盛んに議論されていた時期がございましたですね。そのときの日銀当座預金というのは多分二十兆か、それより下じゃなかったかと思います。しかし、結果的には金融危機そのものは起こらなくて、デフレスパイラルの入口に入るといいながらも結局は現在まで推移してきて、いろんな指標によりますとどうやら景気は上向きになってきているというような判断も出されているようです。  そうしますと、量的緩和をしている、そのときの日銀当座預金は二十兆か、二十兆その前後だったと思うんですが、今その一方で三十兆から三十五兆ぐらいの当座預金が積んである。そうすると、この当座預金の量というのがどういう意味合いを持つんだろうかというのがちょっとよく分からないんです。この量的な、量の緩和ということは何となく分かるんですけれども、例えば一つのファンクションというか、関数として、何かの形で量的な緩和をしていけばどこかの経済指標が良くなるというような相関関係があるなら別ですけれども、どうも量的緩和を、積むということ自体に対して、積んだ結果出てくる当座預金の量ということはどこにも見える形で結果が出てきていないんじゃないかというふうに思いますが、そこはどのように御説明されるんでしょうか。
  18. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 今、委員指摘のとおり、我々がいわゆる量として流動性マーケット多額供給した場合に、一定相関関係を持ってマネーサプライ伸びる、あるいは景気指標の中でも特定の指標が確実に反応する、あるいは物価指標が確実に反応するということであれば、この量的緩和枠組みというのはより理解しやすいし、我々としましても政策運営がよりやりやすくなる、こういうふうに思います。  しかし、過去三年ちょっとの経験では、本来そういう姿であるのかもしれないこの量的緩和枠組みは、必ずしも日本現実、今のこの厳しい現実の中では、本来持っている姿がそのまま政策効果として発現しにくい状況にある。しかし、我々の経験といいますか、日々やっておりますことから明確に我々が確信持っておりますことは、かなり実践的な効果ということでございます。  それは、まず金融市場の中で日々どんなことが行われているかといいますと、ある一定流動性に対して資金の余っている金融機関資金の足りない金融機関市場機能を通じて資金の融通が行われるということでありますけれども金融市場の中に不安感がない以前の正常な状況の下であれば、資金出し手からいえば資金の取り手の方の信用度合いというものが相応に正確に判定できる状況にございましたので、その相手方によって多少の金利差が付くということによって資金が円滑に流れると。これは、そういう意味では金利機能が有効に作用して、比較的少ない量の流動性であってもうまく再配分される、こういうことがあったわけでありますけれども、やはり不況が深まり、様々な金融上の不安が起こってくるということになりますと、資金出し手からいいますと取り手の信用度というものがだんだん正確には把握し切れなくなってくる。そうしますと、流動性は取り手に放出するよりは自分のところにキープしていこうという傾向が強まる。  そういう状況になりました場合には、同じ量の流動性供給ではなくて、日本銀行がより多くの流動性供給する、つまりオペレーションの量あるいは回数を増やせば、取り手の金融機関は必ずしもマーケットの中の出し手からだけではなくて日本銀行オペレーションに応ずることによっても資金調達ができると。結果として、金融市場の中における資金繰り不安というものが相当緩和され、金融市場全体の中で日本経済に外から及んでくる様々なショックが金融市場の中で増幅されないで不安感はむしろ収束するというふうな効果が期待できるし、現実にそうである、これが一つ効果でございます。  もう一つは、多額流動性供給ということは、必然的に短期金融市場金利をもう限りなく低いものにいたします、いわゆる実質ゼロ金利と。ここから上に離れる瞬間というのはもうほとんどないという状況が現出いたしますと、次第に期間のやや長め金利についてもその金利を低めに抑える効果というものがしみ出るように波及していく。したがいまして、短期金利だけでなくて、やや長め金利についても日本銀行流動性供給量が少ないよりは多い方がより低く抑えられる効果がある。  これらは、今度は企業にとっては金融費用を最低限のものに抑え込められているという状況が提供されるということでありますので、リストラ努力、そのためには相当コストが掛かります、あるいは新規の事業を考えていく場合にも投資採算というものを考えます。金融費用との関係では有利な金融環境を提供できると。  この二つは明確に確認されていることでございます。
  19. 平野達男

    平野達男君 今二つのことを言われたと思いますけれども、後段の話はよく分かりました。  前段の話の中でちょっとまだ私理解しにくかったのは、オペレーションが大事なのか、それとも当座預金の量が大事なのか、ここの点なわけです。お話ですと、今オペレーションすることによって資金調達のルートができるよということに力点が置かれたと思うんですけれども、そうしますと、こういう量的緩和をするという行為自体の問題であって、当座預金の積み増しそのものというのは余り関係ないんだというふうな、そういう取り方でもよろしいんでしょうか。
  20. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) そこのところは、量と日本銀行オペレーションとが相互に連関して金融市場における不安感の高まりを抑える効果があるというふうに私どもは理解しています。  まず、比較的少なめの量であれば取り手に対する信用度というものの確認というものが十分できないままに資金繰り不安が多少市場の中に残っていると。で、オペレーションで取り手の資金需要がある程度追加的に賄われた場合には、限界的に更に必要とする取り手の資金需要というものが減るわけでございます。ところが、出し手の方では、言ってみれば余剰な資金が一杯ある。この資金の中でどれだけリスクを取って取り手に回すかという場合のリスク度がうんと減るわけでございます。そういう意味では余剰な資金が回転しやすくなる。  こういうことで、オペレーションは、市場の中での資金の回転を硬直的になって止まっているのをほぐす力がある。ほぐせば、相対的に資金繰りの不安感が消え、したがってオペレーションをむやみに増やさなくても、一定の量さえ当初の量よりも増やしていけば、期待したとおりの金融緩和効果市場に生まれると。だから、オペレーションと量の大きさの存在ということとは相乗作用を持って緩和効果を示すと、こういうふうに理解しております。
  21. 平野達男

    平野達男君 よく当座預金、どんどんどんどん積んでおく状態を担当者の方は豚積みというふうに言って、これ豚積みって何ですかと聞いたら、業界の一つの、業界というか、金融の世界の一つの隠語ですというふうに言われました。豚に真珠とかといって豚も随分災難なことだなというふうに思うんですけれども、ある人に何で豚積みと言うんでしょうかねと聞いたら、答えはとんと分からぬというお答えであって、小ばなしならここでもう終わってしまうんですけれども。  質問をちょっと続けさせていただきまして、いずれにせよ、どうも量というものの意味合いというのが多分、総裁はもう経験も本当にずっと積んでこられましたし、知識も本当にたくさん持っておられまして豊富でありまして、私なんかには分からない世界が多分あるんだろうと思うんです。ただ、量というものがどういう意味合いを持つのかというのがもう少し見えるような形で説明というのができないのかなという感じが強くします。  その一方で、この間から一部マスコミなんかでは言われているのは、為替介入とセットでやっているというような話がございまして、基本的には為替介入については短期国債を直接政府から購入するという形でやっているはずです。たしか普通のオペレーション市場から短期国債にしても長期国債にしても調達するんですが、為替介入、いわゆる突発的な資金需要がある場合には政府から調達をするということでやっているわけでありまして、これがどうも、昨日の日経でしたか何かでは、最近そのどうも量が増えているというふうな報道もありまして、どうも量的緩和というその資金量というよりは、そういう折々のオペレーション自体に意味があって、特に最近は、最近というか、為替介入が、大量の為替介入というのが何回かやられているわけでありますけれども、そのオペレーションと併せて量的緩和をやるという意味においては、量的緩和自身の方が問題ではなくて、むしろ為替の方にウエートが置いているんじゃないかというような見方も成り立つような気がするんですが、そこはどのように。
  22. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 市場関係者がいろいろコメントを、ある意味で起こっております現象を鋭角的にとらえて表現しておられる、それは全部私もよく承知しております。オペレーションに強い意味があるとか、あるいは積みの量そのものがかなり豚積みになっているとか、それから為替介入との関係に非常に強い意味があるんではないか、いずれもよくその話聞いておりますが、率直に申し上げまして、この三つともかなり誇張されているというふうに思います。  先ほど申し上げましたとおり、オペレーションだけが頼りではなくて、多額流動性そのものがやはり市場の中で相当回転している。でも、回転し切れない残りの部分が資金の持ち手としては運用し切れなくて日本銀行当座預金に利を生まない形で余っているものも多い。  これを一文もないようにやっていければ一番理想的なわけなんですけれども、それは市場の中で資金資金繰り、取り手の方からいきますと十分円滑に、これ毎日、毎時間の瞬間瞬間の話でございますので、その瞬間瞬間、あるいは今日の締め際において不安感が残ってしまうということになります。それを摘み取っていくと、結果として、オペレーションがすべての意味ではないけれども、普通の状況に比べればオペレーションの持つ意味が相対的に高まっている。そして、流動性の余剰部分というのは、日々の調節の結果、びた一文も残さないというよりは残る結果になる。これは今量的緩和枠組みの中で緩和効果を結果として目一杯出そうと思えば避けられない附帯的な現象としてそれは出てくるということでございます。  為替介入との関係でいえば、そういうふうに余剰の資金の持ち手が市場の中にたくさんいる状況というのは、一方で政府が政府の責任において為替市場への介入が必要と判断された場合に、これは円資金の調達が必要になる。円資金調達のために政府短期証券を発行して市場に出てこられました場合に、これは資金の余剰の持ち主としては格好の運用対象先になるという意味では、結果としてそれは介入のための資金繰りが円滑に付く条件になっている。これはあくまで結果論ということでありまして、初めからそれをねらって余剰な流動性供給しているわけではないと。  この論理の順序というものは、私どもは、まず経済物価情勢、金融市場状況を見て必要な流動性供給している。結果として、市場の中に残っている資金の余剰感というものは為替市場の介入が必要という場合の政府の資金繰りがより円滑になっているであろう、そういうふうな結び付きでございます。
  23. 平野達男

    平野達男君 仮に、また当座預金の量の話に戻りますけれども当座預金の量が増えてきているわけですけれども、要するに、経済用語に限界効用というのがありまして、あるもののやつを一単位増やしたときのその効果がどれだけあるかということを限界効用というふうにたしか使っていると思ったんですが、量的緩和で今ずっと、二〇〇一年の三月期からの四兆円から、今三十から三十五兆円まで増やしてきたということなんですけれども、仮に当座預金が一単位当たり増えたときの効用があったとして、その限界効用がだんだんだんだんやっぱり小さくなってきているんじゃないか。むしろ、所要準備金がたしか六兆円でしたですね、当座預金の。それからどんどんどんどん乖離をしまして、これからゼロ金利量的緩和をやめるというような状況になりますと、今度はそれを取り崩していかなくちゃならない。その幅が非常に今度は厚くなってくる、厚いという問題もあったりしまして、逆にこれ以上の積み増しをすれば、限界効用という言葉を使えばむしろもうゼロ若しくはマイナスになってきているんじゃないかという感じが、これはもう私は何の証拠もなく、何の根拠もなく言っているわけですけれども、するんですけれども総裁は、積み増しということの効果ということについて、更に積み増すことがまだ効果があるというふうにお考えなのか、これはどのようにお考えでしょうか。
  24. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 経済の情勢というものが正に一直線に、つまり波打つことなく一直線に持続的な回復ないし成長に向かって進む、それから需給ギャップも一直線に縮小の方向をたどって、デフレ脱却の道も行きつ戻りつしないで一直線に進むと、今後ですね、という前提に立てば、量的緩和枠組みそのものは、限界的な効用よりは限界的なコストの方が大きくなっていくというのはおっしゃるとおりでございます。  これまでは非常に経済は波打ちながら悪くなり良くなり悪くなり良くなりという状況をたどってまいりまして、非常に厳しい局面において問題を先取りして刈り取りながら前進してきたというのが実際の現場、闘いの現場における金融緩和の進めてきた軌跡でございますけれども、これまでの判断では、限界的な効用の方が限界コストを明らかに上回っているという判断でここまで来たということでございます。  限界的なコストというのは何を意識しているかということでありますけれども、やはり金融市場において多額流動性供給するということは、先ほど申し上げましたように、本来すべて金利機能資金の再配分が行われる部分というものをかなり減殺している、つまり金利機能の役割を低下させているということがあります。これが私どもにとっては一番副作用だというふうに思っています。  それからもう一つは、おっしゃいましたとおり、所要準備額五、六兆円に対して数倍の流動性供給しているということは将来における調整コストを高めている、これはもう確かでございます。  そのほかに、論者によりましては、企業の整理、再生の努力を余りにも緩和的な金融環境を提供するとむしろ弱めてはいないかということをおっしゃる方もいらっしゃいますが、それらはすべて私どもの念頭にもございまして、今後とも限界コストと限界効用との比較ということは厳密にやりながら対処したい。  しかし、私どもは、経済は必ずしも一本調子に良くなるかどうか、これは今後の様々な条件によって変化いたします。金融システムもまた様々な波をくぐり抜けながら今後進展していくと思いますので、その局面局面の厳しい状況に対しては我々は断固たる姿勢でやっていきたいというふうに思っています。
  25. 平野達男

    平野達男君 今までのお話をお聞きしていましてちょっと感じたのは、非常に大量の資金供給をしているんですけれども、その効果短期的な金利変動を抑えたいという意味でミクロの調整をしているのかなという感じがちょっと受けました。  あともう一つは、やっぱり市場では見方がちょっと一つの方向にずれているという意味で、先ほどの為替介入の話なんですが、必ずしも実態をとらえていないような評価をしているというお話がございましたけれども、ああいう見方というのがマスコミの中で連日出てきますと、やっぱり量的緩和というのはそういう意味を持つのかなという感じもちょっとしてくるというのもあります。  それから、その一方で、もう一つやっぱり重要なのは、マネーサプライ伸びが停滞しているということがあって、本来はやっぱり資金供給が目的ということでベースマネーの拡大をやってきたわけでありまして、その効果が出ていないということについてはこれはやっぱり大きな問題だろうと思うんです。  そこで、日銀も資産担保証券の購入とか、いろんな形で努力をされていますけれども、量的にはそんな大きな量に至っていないということで、やっぱりマネーサプライを増やすというのは、基本的に、政府、日銀一体ということでいろんな政策をやっているというふうに言っていますけれども、これはやっぱり資金需要ということで、これは日銀さんの政策というよりはもう政府の政策主体になってくるんじゃないかなというふうに思うんですが、総裁、それについてどのようにお考えでしょうか。
  26. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 日本銀行量的緩和施策というのが短期的な現象に対するストップギャップ的な措置ではないかという御印象を私お持ちのような感じを受けたわけでございますが、私どものアクション一つ一つをごらんになられますとそういう御印象を持たれるのもやむを得ないなという気もいたします。  それは、イラクとの戦争が起こったとかSARSの問題が起こったとか、りそな銀行の問題で市場に、マーケットに非常なショックが起こったとか、株が急激に下落している状況とか、そういう現象が我々の行動にある意味で強く結び付いている部分がありますけれども、私どもが本当に見ておりますのは、さらにその底辺において企業がリストラ努力、そしてさらに将来の付加価値創出のプロセスに入るための企業再構築の努力というものが一貫して営々として進められている、この動きをそうした様々なショックによって妨げられてはならない、こういう非常に基底的な動きに常に注目しながら、ショックを排除して企業努力を支援するという姿勢は一貫しているわけでございます。そういう意味では、非常に、何といいますか、短期的な対応に明け暮れているように見えながら、本当は長期的な目標を着実に、かつしつこく追っ掛けている。  マネーサプライの面につきましても、我々は今マネーサプライ伸びていないということは決してそう強く残念には思っていないわけでございます。こうした企業のリストラ努力、そして金融機関不良債権処理努力進展してきている。この先更にいい進展を見せれば、もう確実にマネーサプライ一定のペースで伸びるその入口に差し掛かるであろうということについては確信を持っておりますので、この点については余り不安感なく状況をウオッチしているという状況でございます。
  27. 平野達男

    平野達男君 私も量的緩和が広い意味での経済の底割れを防ぐんだという意味において一定効果、あるいはかなりの効果を出しているということについては理解をしているつもりです。  それでは、ちょっと量的緩和のことにつきましてはひとまずおきまして、時間も迫ってまいりましたので、ちょっと次の質問に移らせていただきたいと思います。  国債の補完供給制度についてであります。  これは短期的な国債の需給というか、に滞りが出た場合に、特定の銘柄についての品貸しをして、それを円滑にするんだ、円滑化するんだという、そういう趣旨ではなかったかと思うんですが、その延長線上にどうも日銀さんは、日銀は国債の長期金利のコントロールというところまではいきませんけれども、ある一定の長期金利についての制御についても関与をしていくんだというような姿勢を打ち出したのかなという感じがしないでもないんですが、ここはどのようになっておるんでしょうか。
  28. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 国債の金利に限らず、金融資本市場の中におきますいろいろな不規則な動きが日本経済が持続的な成長軌道に戻るまでの人々の様々な努力を著しく妨げるというふうな状況にあってはならない、金融政策の面でもできる限り、効果のある施策がもしあれば、それはきちんとやっていきたいというのは基本の考えでございますけれども、その中で、国債につきましては、御承知のような財政状況の下で大量の国債が発行され続け、市場残高としてこれが累積し続けている。これから財政規律が更に高められていくであろうということを我々は期待しておりますけれども、そういう状況にあっても、今後とも、かなりの期間、国債の発行増加というのが続くであろうということは避けられないと思います。  そうしますと、金融政策が今後とも歩んでいく場合の我々の基本的な土壌である金融市場の中には国債の発行残高という非常に、何といいますか、マーケットの中でともすれば期待の安定化を妨げるような材料というのは大きく抱えながらこれから仕事をしていかなければならない、そういう気持ちを持っていることは確かでございます。しかし、さはさりながら、国債の金利の形成というものを日本銀行のアクションによってあめ細工のように操作することができるというふうには毛頭考えておりません。  これは非常に難しい仕事でございまして、やっぱりマーケットの中で国債の金利というのはどういうふうに形成されるか。基本的には、経済の先行きあるいは物価情勢の先行きに対するマーケット参加者の基本的な判断に沿って決まると。市場には非常にいろいろイレギュラーなショック要因が外から一杯降り掛かってまいります。その場合、そのショックに対して市場が過剰に反応するのか、市場がうまくこれを吸収するのか、マーケットというのはショックに過敏に反応する性格とショックを吸収する力、この矛盾する相二つの力を持っているものでございます。  こういったことを考えますと、将来にわたって国債の金利というものが経済実態つまり経済の先行き感、物価情勢の先行き感というものにぴたっと合う形で形成されていくかどうかということは、人々の将来に対する期待の安定化を図る必要がある。これは金利をあめ細工のように操作するんではなくて、人々の期待を安定させる。もう一つは、市場のショックに過敏に反応する性格とショックを吸収する力、そのショックを吸収する力を少しでも強めていく、この二つしか方法がないわけでございます。  その後者について申し上げれば、市場流動性を高めるということでありまして、今回の制度のように時として特定銘柄の調達困難化が起こった、それだけで市場流動性が低いんだなということを市場参加者が必要以上に強く認識してしまうということは、別のショックが起こったときに市場はショックに非常に過敏に反応するばかりであって、ショックを吸収する力の方をより弱くしか発揮しないことになります。そういうことがあってはならないということで、やや長い目で見まして国債市場のショック吸収能力を強めよう、市場流動性を高めようというふうな趣旨から実施したものでございます。将来の国債の金利日本銀行の意のままに形成しようというふうな考え方によるものではございません。
  29. 平野達男

    平野達男君 いずれこれから景気が今の見通しのとおりいい方向に向かう、是非向かってほしいと思っているんですけれども、向かえば二つの大きなリスクがあるというふうに言われていて、一つは円高、それからもう一つは長期金利というふうに言われております。特に長期金利については日銀さんは今資産として大量の国債を持っている。片一方で量的緩和をやめるということで量的緩和の方針転換をするとしますと、今度は国債のこれを吐き出しをするのか償却をするのか分かりませんが、今までみたいに買うということはできなくなってくる。そうすると、仮にそれを売り出すということにいたしますと、これは売りの圧力が働いて、今度は金利に逆の効果をもたらすというような、そういうようなことも出てきまして、日銀さんはかじ取りが非常に難しいんじゃないかなというような感じもします。  いずれ、そういったことで、そういったリスクもありますから、是非かじ取りを、しっかりとしたかじ取りをお願いしたいと思います。  最後に一つだけ、これは日銀さんの、日銀の所管事項ではないかもしれませんが、最近の為替介入についてどうもアメリカが反発をしていると。どこまで反発しているか分かりませんが、少なくとも快く思っていないというような報道がなされております。どうも蔵相七か国会議、G7でしたか、ではそれが一つのテーマになるんじゃないかなといった報道もなされていますけれども、これに関しましては、総裁、どのような感想をお持ちでしょうか。  ちなみに、財務大臣とランチでしょっちゅう食事をしながらいろいろ意見交換されているということも一部に伝えられておりましたけれども、それも差し支えない範囲で御披瀝願えれば有り難いなと思いますが。  この質問で私の質問を終わりたいと思います。
  30. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) まず、為替でございますけれども、グリーンスパン議長とかスノー長官、その他米国の政策当局者の発言、伝えられているところはすべて承知しておりますし、それ以外にもいろいろな会議の場等を通じて直接御意見も伺っております。  私の承知しております限りでは、米国の当局者も、為替相場というものは一方的にマネージできるものではない、やっぱり経済実態に即して形成されるべきものだと。基本的にはマーケットはそういう方向に常に潜在的な力を示している。しかし、先ほど国債の市場について申し上げましたのと同じように、為替市場も時としてショックに対して過敏な反応をし、言ってみれば行き過ぎたボラティリティー、不規則変動を示すことがある。これに対してはやはり為替介入というのは時に有効であり、有効な措置を取る、そういったことについて基本的な認識に不一致はないということを度々確認しているところでございます。最近の米国の当局者の発言も大きく言えばその枠内の発言だというふうに私どもは理解しております。  それから、財務大臣との食事をして話をしたんではないかと。もう全くそのとおりでありまして、時々インフォーマルに意見を交換させていただいておりまして、為替の話ばかりしているわけではありませんで、むしろ為替は私の専門外でございますので、金融財政全般にわたって、将来にわたってこれはやっぱり最適なミックスの政策をやっていきたいと私は思っております。大臣もそういう御見解を持っておられるということを時々確認させていただいて、お互いに自信を持って政策をやろうと、そういうふうなことでございます。
  31. 平野達男

    平野達男君 終わります。
  32. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 今日は竹中大臣の御出席をいただきまして、ありがとうございます。  今、G7の話が出ていますけれども、私もそこから入らせていただきたいというふうに思います。  先進七か国財務相・中央銀行総裁会議が四月二十三日、二十四日にワシントンで開かれるというふうに聞いていますけれども、招聘状等々は届いているのかどうかというのも、あるということで昨日質問通告のときに言われたんですけれども、それは届いたのかどうかということと、世界的に景気回復が進む一方で、イラク情勢が非常に世界経済に与える悪影響も懸念をされています。過去二回のG7ではドル安是正が焦点となりましたけれども、今回のG7での主要課題について財務大臣はどういうことになると考えておられるか。
  33. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) G7について招聘状が届いているかどうかと、今、秘書官に確認しましたけれども、まだ届いていないようでございまして、日程それからどういうことを議題にしていくか、今回はアメリカであるわけですが、まだ議長国であるアメリカから正式な発表がございませんので確実なことはお答えできないんですが、今までのG7の例から見ますと、やはり世界経済の見通し、それぞれ日米欧がどういうことにまた取り組むべきかといったような世界経済の見通し、それから新興市場国にどのような課題があり、対応していくべきかと、それから開発問題ですね、発展途上国等の開発をどうしていくかという開発問題、また、それとちょっとまた違いますが、テロ対策をどうしていくかというようなこと、前回もそういう議論をいたしましたけれども、今回も引き続きそういうことが議題になるのではないかなと考えております。
  34. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 もちろん、イラク情勢が非常に緊迫している状況の中で開かれるわけですから、地政学的なリスクに対しての話題がその主題になっていくのではないかということは予想ができるわけですけれども、イラク情勢が緊迫化以降も為替は安定をしておりまして、今回は政治的な色彩の強まる会議になるのではないかというような憶測もされるわけでございます。  フセイン政権崩壊後、G7では、三回開かれて合意されてきたことは、一つにはイラク復興を支援すること、二つにはイラクの新通貨導入を歓迎しG7以外の国々にもイラクの債務の軽減を求めること、あるいはテロ資金対策を強化することなどでしたけれども、イラク復興の計画に対して具体的に日本から今回のG7で発するメッセージというようなものはありますか。
  35. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 先ほど、今回のG7の議題で、私、テロ対策と申し上げましたのはちょっと言い間違えまして、G7でやっておりますのはテロ資金対策でございますので、訂正させていただきたいと存じます。  それから、イラクの問題に関しましては、前回もイラクそれからアフガニスタンの財務大臣においでをいただきまして、ボカラトンのときですね、いろいろ現状や課題も伺ったわけですが、今回G7では通例どおり、先ほど申し上げましたように、恐らく開発問題が議論されますので、その中で、その一環でイラク問題についても議論が及んでいくということは想定されるところでございますけれども、じゃ我が国としてどういうメッセージかということになりますと、これはイラク再建ということが、イラク国民にとってというだけじゃなくて、中東地域、それから我が国も含む国際社会の平和と安定にとって極めて大事な課題でありますので、そういう観点で当然会議に臨むということになると思います。  今、治安情勢もなかなか厳しいものがございますので注意深く見守っていく必要は当然私もあると思っておりますが、国際社会として引き続きイラク復興支援の進展努力していこうと、こういう姿勢で臨みたいと思っております。
  36. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 G7に臨むに当たって、マスコミ各社とのインタビューで、五十億ドルの支援について明確にお答えになっておられますけれども、この金額についてのお考え方を教えてください。
  37. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 日本は、去年十月にイラク復興支援国会合で、当面の支援として、今五十億ドルとおっしゃいましたけれども、当面の支援としては総額十五億ドルの有償資金を供与するということを表明いたしまして、これまで順次──無償ですね。また間違えました。無償、無償資金を供与するということを表明いたしまして、順次決定、実施してきたところでございます。これは、引き続き現地の情勢を見極めながら、可能な限りの支援を着実に実施していかなければならないと思っております。  それから、中期的な復興需要に対する我が国の支援は、やはり昨年の十月、復興支援国会合で、基本的には円借款によって三十五億ドルまでの支援についてはやろうということで、これは治安の状況を始め、今後の復興事業の進捗ぶり、それから政治プロセスの進展、それから債務問題の解決、これはパリ・クラブでの議論ということになると思いますが、債務問題の解決、こういった動きを見極めながらこの三十五億ドルの問題についても対処していく、こういう方針でございます。
  38. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 更に日本の支援の金額が増えていく懸念もあるわけですけれども、着実にイラクに対して、平和が戻り、あるいは安定した国家がつくられていく状況の中で出されていくとすれば、それは歓迎すべきものというふうに思いますけれども、是非、日本財政事情もこういう状況にある中で、アメリカのイラク侵攻に対する支援を日本が請け負うというような形でだけは出していってほしくないと強く思っているところでございます。  さらに、イラク情勢の中で、原油の価格なども急騰が懸念をされていますけれども、今回の会議でこのことに対して各国と協調の歩調をどう合わせていくかということをお聞かせください。
  39. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 当然、今、原油価格の問題にお触れになりましたけれども、世界経済の見通しの中で、こういうようなことも視野に入れながら議論になるのではないかなと思っておりますが、現在、世界経済の回復の力強さが増しているというのは共通の認識になっているのではないかと思っております。そういう中で、原油価格等の値上がりがあるということはこれは事実でございますし、我が国にとってもこれは大きな影響がございますので引き続き注意深く見ていく必要はあると思いますが、私は、今の世界経済の力強い回復の流れの中では、こういったリスクが直ちに世界経済の回復の妨げになるというふうには考えておりません。  いずれにせよ、現在の世界的な景気回復傾向というものを確実なものにしていくということ、世界経済を持続的成長につなげていくということは、これは一番大事なことでございますから、そういう観点からしますと、我が国ももちろんでございますが、各国が中長期的それぞれ構造問題を持っておりますので、そういう財政構造改革等の構造改革、各国、各地域が他の経済政策とバランスを取って進めていくということが一番大事なことではないかと思っております。  それで、この認識は今年の二月のボカラトンのG7でも共同声明に盛り込まれておりまして、G7としては共通認識になっているというふうに考えております。
  40. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そういう構えで大丈夫でしょうかね。石油輸出国機構へなどに積極的に原油の高騰を抑えるべくG7で声明を出していくような方向を日本から発していく必要があるんじゃないでしょうか。日本は非常に中東に原油を依存している率が高いですよね。中国などは原油価格高騰を避けるために拡散をして、原油国、輸出国を広くアフリカや南アメリカからも広げて買っているというような状況があるわけですけれども、そうした中国の対応などを見るときにも、日本が、今中東のこういう情勢を受けて、せっかく開かれるG7の場所でもう少し積極的に各国に働き掛けて、そうしたことができるような状況を作っていくことが私は今回の大臣のお仕事ではないかと思うのですけれども、もう一度答えてください。
  41. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 原油価格が今上がってきている。これは、三月中旬、ニューヨークでは一バレル当たり三十八ドル台ということになりましたが、三月中旬ですね。それ以後も、おおむね三十ドル台後半の水準で推移しているということでございますけれども、この高まりの背景市場指摘されていることは、三月末のOPECにおける減産合意であるとか、あるいは米国それから特に中国における石油需要の高まりというようなことがあると言われております。  この原油価格の動向については、そういった需給動向だけではなく、原油市場の参加者の思惑といったこともあると思いますし、様々な要因があると思いますから、我々としては注意深く見る必要がございますし、こういう問題意識を持ってG7に臨んでいきたいと。そこでまた議論がいろいろあると思いますが、どういう議論をするかはまだ今いろいろ頭を巡らしているところでございますが、問題意識はしっかり持って臨みたいと思っております。
  42. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 日本の姿がしっかりとその会議の中で、見えるように頑張っていただきたい。  前回のG7では、福井総裁、非常に活躍が目に見えていたというふうに思います。為替の介入について、アメリカ側から過大な介入について注意がなされるというような状況の中ですけれども、ヨーロッパ諸国と共同声明の中で、過度の変動は好ましくないというようなことをその共同声明の中に盛り込んでいって、そして日本からの円売り介入ということに対しての批判に対してかわそうという試みもなされたというふうに思います。  しかし、その後、大量な円売り介入をやって、そしてドル安の流れというのが作られてきたと思いますけれども、今、最近は少しそのことが止まっていて、介入も三月中旬ぐらいからはやらなくても済んでいるという状況でございますけれども、こうした日本の巨額な円売り介入について各方面から批判が起こっているということについて、大臣にお聞きをしたいというふうに思います。  非常に興味深い新聞ニュースがあったんですけれども、それは十五日の読売新聞だというふうに思いますけれども、為替政策の評価についてアメリカのエコノミスト四氏に聞くという記事が出ていました。  その中で、これは大統領補佐官を辞任したローレンス・リンゼーさんという方は、通貨供給量を増やす手段の一つとしてならば日本の円介入、円売り介入というのは理解できるという発言をしています。あるいはまた、批判的な見方では、これは、カンターさんというのは、クリントン政権で通商代表を務めたミッキー・カンターさんですけれども、世界の資金の流通量を考えれば幾ら介入しても影響は限られる、なぜ介入を続けるのか分からない、こう言っているんですね。  もう一方、ブッシュ政権のCEAなどで勤務経験のある国際経済研究所のキャサリン・マン主任研究員の方は、マンさんは、日本経済は競争力のある輸出部門と国内部門の二重構造になっている、輸出部門が競争力を保てる水準に為替相場を維持することで経済成長を促し、国内部門も後押しすべきだという議論が過去には成り立った、しかし現在、両部門の関連はずっと小さい、日本経済成長にとって為替相場が重要だという議論はもはや適切ではないという批判をしているんですけれども、こうした批判に対して大臣はどのようにお答えになりますか。
  43. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) これは、我が国、私どもがやっております為替介入というのは、一定水準を維持しようとか、こういう方向に持っていこうということでやっているわけではございません。これはG7でも度々確認されておりまして、この前のボカラトンの声明にも述べられておりますように、為替レートは経済ファンダメンタルズを反映すべきであり、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済成長にとって望ましくないと、これはボカラトンの声明を引いたわけでございますが、そういう考え方に立ちまして、ファンダメンタルズと乖離したような動きが起きてきたときにはタイムリーに適切な手段を取らしていただくと、こういうことでやってまいりましたので、今のいろいろな海外からの見方の中には、必ずしも、この私どもの基本的な立場に対して、やや誤解に満ちた御意見もあるのではないかなと思います。  それから、私が入ってまいりましたときに福井総裁が答弁をされておりましたけれども、海外からもいろいろな批判がございますけれども、少なくともG7では、日銀がこれだけ通貨供給量を増やそうといろんな形での努力をされている中で、金融政策もぎりぎりまでやっている、財政政策もここまでやっておる、そういう中で、デフレ脱却の出口を模索していくためにこういう急激な為替変動が害があるということでこういう手段を取っているということは理解できるというふうに見ていただいている場合が、見ていただいている方が多いのではないかというふうに私は理解しておりますが、ただ、もちろんこれはいろんな考え方がございますから、私どもも、それは注意深く、耳を長くしていろんなお声もよく聞いておかなければいかぬとは思っておりますが、基本的には以上のように考えております。
  44. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 同じくそのインタビューの中で、アメリカのブッシュ大統領の関心はもう既に日本ではないんだと、中国の為替に対してもう少しより柔軟な対応をすべきだというふうに向かっていて、日本のその介入に対してさほどの関心は持っていない、だから、自由に任せるべき、市場に任せるべきだというようなことを重ねて言っているわけなんですね。  そしてさらに、不健全な相互依存が存在をしていると、こう指摘をしているわけなんですよね。マン氏は、米国と日本などは好ましくない方法で依存し合っている、この関係を変えるのは難しい。これは、日本が介入で得たドルで米国債を買っている、そしてアメリカの双子の赤字の穴埋めに資しているというようなことをとらえて、不健全な相互依存体質だというふうに指摘をしているわけなんですね。  このことに対して、じゃ、大臣はどう考えますか。不健全な関係だと言われていることに。
  45. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 余り不健全な関係だなんと言われるのはうれしくはございませんけれども、私どもは何もアメリカの双子の赤字を支えようと思ってこのような介入をしているわけではございません。あくまで目的は、ファンダメンタルズと乖離したような動きがあるときに、そして急激な変動があるときに、それはこういういろんな形でデフレを脱却しようと努力している経済にも悪い影響を与える、為替の在り方としてもファンダメンタルズを安定的に反映すべきものだと、こういう観点から介入をせざるを得ないときはしているということでございまして、それがアメリカの双子の赤字を支えようという、不健全な関係を作ろうと、こういうことでやっているわけでは毛頭ないということを御理解いただきたいと存じます。
  46. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 しかし、はたから見ていると、どうもそういう関係に見えてくるんですよね。それ、過去のプラザ合意以後の日本の円売り介入のときにもそういう懸念はあったわけですよね。当時、宮澤大蔵大臣は、もう円がブラックホールに吸い込まれていくような恐怖感を感じたような御答弁を国会でもなさっていたわけですけれども、その第二番が今なのかなというふうに思えて仕方がないわけでございます。  日本人が稼ぎ出した利益をアメリカに還流をさせていかれるというこの状況というのは、やっぱりどこかでやめていかなければならないのじゃないかというふうに思っています。  次は、過度の資金調達について、さっき平野委員の方から日銀総裁に質問がありましたのでここは飛ばさせていただいて、さっきの日本のメッセージ、日本が、財務大臣が世界に向けてのメッセージの中にアメリカの双子の赤字についてアメリカ側に明確に自助努力で削減をすべきだという主張を、こうした会議を通じて主張すべきじゃないのかと思いますけれども、この件についてお答えください。
  47. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) これは度々過去のG7でも議論になっているところでございまして、今おっしゃったような経常赤字とか貿易赤字等の問題は、為替の問題ももちろん無関係ではないわけですけれども、それで解決しようというのは無理があることでございまして、やはり貯蓄・投資バランスがどうかとか、いろんなことが影響してくるわけですから、そういう問題を改善していってこういう双子の赤字の問題に対応していくのが本筋であると。それぞれ、アメリカはそういうような課題を抱えているし、日本日本でいわゆる構造問題等の克服の努力が求められるというような、単に為替だけで物事を解決しようというような議論は主流の議論になっているというふうには私は考えておりません。    〔委員長退席、理事大塚耕平君着席〕  大きな流れの中でそういう問題を克服していくような努力は、これはG7の中でも議論をしましたし、アメリカもそこは十分意識して、何というんでしょうか、G7に臨んでおられるというふうに思っております。
  48. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そうした国際会議等々でそうしたアメリカの一方的な要求ばかりが見えてきてしようがないんですね。私が日本にいるからなのかもしれないんですけれども、そうしたことに対して日本の政府が日本の国を代表してきちっとメッセージを発していくという、そうした場面をきちっと作っていただきたいというのが私の今の趣旨でございます。是非よろしくお願いを申し上げます。  それからもう一点、ドルというのがこれから先基軸通貨、世界の基軸通貨として存在をし続けていくということの可能性について、財務大臣あるいは福井総裁はどういうふうに考えておられるのかということをお聞きをしたいと思います。非常に難しい問題だと思うし、今、現にドルが基軸通貨として働いていることは認めますけれども、しかし、この双子の赤字に見られますように、日本が買い支えなければもう維持ができないような状況に陥っているこのドルの現状に対して本当に危機感は持っていないんでしょうか。危機感を持っていないとすれば私は非常に日本財務大臣として心配だというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  49. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 今、大渕委員指摘されましたことはいろんな問題を含んでいるんではないかと思いますが、いろんな問題点を含んで言っておられるのではないかと思いますが、差し当たって申しますと、これだけ大きな外貨準備を、しかもほとんどドル建てで抱えることがいいのかどうか、そのことのリスクはどうかということをおっしゃっていると思うんですね。  それで、確かにこういう、日本が外貨準備、三百六十円の時代がございましたけれども、それ以来ずうっと長い期間で見ますと円高の傾向、円高ドル安の傾向が長期的にはあるわけでございますから、その期間いろいろ為替介入をし、外貨準備をドルで持ってまいりますと、それが長い間には含み損になってきているということは、これは否定できないことでございます。    〔理事大塚耕平君退席、委員長着席〕  ただ、他方で、現実には外貨準備の運用利益というものがございまして、これははるかに、今言われている含み損よりもはるかに大きなものになってきております。  それから、含み損、こういうドルで持っているリスクということが議論されますときに、これからまたドルが下がっていくんじゃないかと。  普通の民間でありますと、為替を扱います場合に、片っ方でもうけたら片っ方でやはり損を埋めておくとか、いろんなことをして短期にその決着を付けるというのが普通の民間の方たちの行動様式だと思いますけれども、外貨準備の場合にはすぐに売り戻して埋めるというようなことを目的としているわけではございませんで、政策的に見て長い間持っているということに意味がありますので、そういうリスクが理論的にはあり得るわけでございますけれども、顕在化してくるというのは実は相当、そういう顕在化してくる場合を考えるというのはかなりすぐに現実化してくるようなものではないというふうに考えております。
  50. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 米ドルの基軸通貨制というお尋ねでございますけれども、長い歴史の中で、米ドルもかつては英国のポンドに振り替わって基軸通貨に成長してきたということであります。  ここから先の長い将来を見渡して、米ドル以外の通貨が基軸通貨の座を占める可能性があるかないかと。それはないとは言い切れない、米ドルがいつかはやっぱりその座を降りることは大いにあり得べしというふうに思いますけれども、しかし、目先、そういうことがやっぱり予想される状況ではないということもまた事実ではないかというふうに思います。  米ドルに取って代わる、強くてかつ使い勝手のいい通貨というのが急速に成長しつつあるかという点からいきますと、ユーロもそれから日本の円も、将来のことは、より強くならなきゃなりませんけれども、まだこれからの課題の方が多いという状況でございますので、目先、基軸通貨の代替わりがあるというふうなことを前提にいろいろ物を考えていくことはまだできない状況だというふうに思っておりますが、米ドル自身がその背景にあります米国経済に様々な問題を引きずっているということはもう委員指摘のとおりでございます。  しかし、強い面と弱い面と両方あって、やっぱり世界経済全体を今イノベーションの力で最も強く引っ張り続けているのがやっぱり米国経済であるということは否定できません。資本の還流という面で見ましても、日本あるいはアジア諸国の介入による資金が一部米国に還流されているということはもう御指摘のとおりなんですけれども、やはり全体としての資本の流れを見ておりますと、やはり米国の経済の高い生産性、あるいは企業の高い収益性に着目した民間の資本の米国への流入というのが途絶えているわけではないし、むしろそれは営々として続いていると、これが基調であるということに変わりはないというふうに思います。  したがいまして、今後とも米国経済がそのダイナミズムを有効に生かして内外に有望な投資の場、あるいは収益機会を提供し続ける限り、そう簡単に米ドルが基軸通貨の座を降りることはないんではないかと私は思っておりますけれども、しかし、別の問題点があると、委員指摘のとおり双子の赤字というのがあると。これは、プラザ合意のときには米国のGDPに対して三%ぐらいの赤字の大きさでありましたのが今は五%という大きさになっていると。どこまでこういった赤字を大きくすることができるかという、グローバルインバランスといって世界共通の大きな問題になっているわけでありますので、非常に長い目で見ると、やっぱり米国自身がこの問題に健全に対処していく必要が明確にあるということも否めないというふうに思います。
  51. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 かつて宮澤さん、大蔵大臣のことを引き合いに出して恐縮なんですけれども、アジアに新たな基軸通貨を作っていくべく努力をしたいということを表明をしながら、ASEAN諸国とその努力に向かった時期がございます。しかし、その後、残念ながら東南アジア全体を金融恐慌みたいな形が襲ってきて、そのことがとんざをしていったということを、この国会でも議論をしてきた経過があるわけですけれども、アジアの金融資本市場の育成とか、あるいは投資環境を整備する必要性、あるいはアジア通貨制度の確立などについて今財務大臣はどのように考えられますか。
  52. 山本有二

    ○副大臣(山本有二君) 先生御指摘のように、年々アジアと我が国との関係が大変緊密になってきておりまして、特に東アジアとの貿易が輸出入とも総額の約半分を占めております。近年、そういった観点から、このアジアの安定というのは極めて我が国にとっても重要だと、こう考えております。  そういう中での先生の金融面での御指摘でございますが、特に、一つ通貨金融の危機の再発を防止を、防ぐという観点、それから域内の高い貯蓄率を経済発展に必要な長期投資に結び付ける、この二つの観点から我が国も、ASEANプラス3財務大臣プロセス、こういったものを中心にしまして、チェンマイ・イニシアチブあるいはアジア債券市場育成イニシアチブ、こういったものを推進しております。  こういった議論の中で、また、先生御指摘のように、通貨体制をアジアの中でどう考えていくかでございますけれども、この通貨制度の協調の在り方につきましては、関税・外国為替等審議会の専門部会において報告がされておりますけれども、この報告を含めまして、専門家や研究機関の知見も参考としつつ、東アジアの政策当局者間で中長期的な課題として議論を続けてまいりたいと考えております。  具体的には、ASEM財務大臣会議プロセス、こういったところで通貨バスケット制度とかアジア通貨単位の創設なんという研究成果もあるわけでございまして、中長期の課題として真剣に受け止めてまいりたいと考えております。
  53. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 是非、日本がそうしたことに大きな力を発揮していただきたいというふうに思います。  アメリカの利上げについて福井総裁にお聞きをしたいと思います。  二〇〇四年三月のアメリカの雇用統計において非農業部門雇用者数が前月比三十・八万人増という結果を受けて、FRBのグリーンスパン議長が近々に利上げに動くというような観測が流れて、そこから、その観測が流れた辺りから非常に円安に変わってきた状況があったというふうに思うんですけれども、今日の新聞でも、米の長期金利一段と上昇、これは日本経済新聞の今朝の朝刊ですが、利上げ観測拡大、ドル買い要因になっているというようなことで報道もなされていますけれども、この利上げの影響について、どのようになるのかということを教えてください。
  54. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 米国が実際に利上げをするかどうかということは、海外の中央銀行の独自に判断される事柄でございますので、その可能性について私の立場からコメントをすることは適当でございません。  その点はできないのでございますが、ごく一般論として申し上げますれば、委員ただいま御指摘のとおり、米国経済について非常に大きな残る問題と言われていた雇用問題が先般の雇用統計の発表でかなりいい方向性をうかがい知ることができるという一般的な観測になって、したがって連邦準備制度の金利政策をめぐる観測がかなり強まっていることは事実だと思います。  今日、米国においてはグリーンスパン議長が議会証言をなさる予定になっておりまして、その証言にも注目が集まっている、それを先読みしながら市場金利がまた少し上がっている、為替相場も少し動いていると、こういう状況にあることは御指摘のとおりだと思います。  しかし、私が考えますに、ふだんからの連邦準備制度の金融政策に対する物の考え方、なかんずくグリーンスパン議長の物の考え方からいたしますと、やはり米国経済そのもののやっぱり物価安定を基軸とした持続的な成長パス、これをより強固なものにしていくという基本路線でやはり判断されるだろうと。  それからもう一つは、マーケットは、米国の金融政策が世界経済全体に与える影響も大きい、したがってそれを冷静に見ようという心と、同時に、いろいろとそこをめぐって、投機的な物の考え方も入れながら過敏な反応を示して一つのプレッシャーを掛けるという両面の動きがございます。その辺の市場の反応というものを十分判断しながら、できる限り市場の期待の安定性というものを乱さないような政策措置を取りたいと、この二つの尺度で冷静に判断されていくんではないかというふうに思います。  そうした連銀の判断が誤りなければ、持続的な、アメリカ経済の持続的な成長というのは日本経済にとっては最も好ましいことでございますし、マーケットを通じて不規則な変動が及んでくるということが、米国の政策措置よろしきあるいはその説明ぶりよろしきを得て、なければ、これまた日本経済にとって害があるどころか、むしろプラスの影響があるというふうに考えていいと思いますので、その辺は連銀の手腕に期待しているということでございます。
  55. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 最後に、竹中大臣に私は一つ確認をしておきたいことがございます。  先ほど、アメリカのエコノミストのマンさんが、日本経済は非常に体質的に変わってきたんだということを述べておられましたですけれども、そのことを受けて、不況脱出の過程で日本経済は大変強靱な体質に生まれ変わったと言われています。  その一つは、企業財務金利変動に強くなったこと。二つ目には、円高差益を生む体質に変えてきていると。これは海外生産の拡大や貿易のアジアシフトを進めていって決済の円建て比率を高めたことなどによるわけですけれども、こうした企業努力によって昨年の貿易収支は、円建てで十兆円の黒字、ユーロ建てでは三兆円の黒字、ドル建てでは四兆円の赤字となっており、ドル安による為替差益も発生しておる、大量の為替介入が大義名分を失っているんじゃないかという指摘があります。三番目には、対外資産残高が拡大した結果、所得収支の黒字が増えて、黒字が黒字を生む好循環が一段と明確になってきている。問題は三%に満たない海外投資収益率をどう高めていくかということであると。これを一%改善することによって経済成長率は〇・八%高まるという試算もあるということが言われているわけなんですけれども、このことの事実関係と、私自身が、このことと利回りの低い、さっきの米国財務省証券投資一辺倒を改めて、アジアへの投資を本格的に拡大される時期に来ているんじゃないかということをさっきも申し上げたんですけれども、そのことについて、この二点について竹中大臣の御見解をお聞かせください。
  56. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 質問通告にない難しい御質問をいただいていると思うんですけれども……
  57. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 してあります。
  58. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 済みません、マンさんの話でございます。マン、エコノミストの。個人的にもよく存じ上げている方でございますけれども二つの視点を今指摘されているんだと思います。  一つは、実物経済面で、企業財務リストラ等々が進んで、損益分岐点が下がって、それによっていわゆる財務的にも、また、恐らくもう一つは技術的にもという要因もあるんだと思いますけれども、価格変動、為替の価格変動に対する輸出、輸入、その競争力が高まっているのではないのだろうかと、そういう御指摘。これは、財務リストラは進んでいる、損益分岐点は下がっている、かつ技術的に特化していると。それは、指摘としては私は正しい御指摘であろうというふうに認識をしております。  一つには、内閣府で試算をしておりますけれども、例えばですけれども、円レートが一〇%円高に振れた場合にGDPが最終的にどれだけの影響を受けるだろうかと。これはまあ期間の取り方にもよるわけですけれども、実は初年度のGDPへの影響というのは〇・二%弱ぐらい、〇・一%から〇・二%ぐらいということで実はそんなに大きくない。その意味では体質が強くなっているというマン教授の指摘は当たっていると思います。  ただ、為替介入の目的というのは、先ほど財務大臣もおっしゃいましたように、その水準に影響を与えるということではなくて、急激な変化が企業経営、企業の経営判断に攪乱要因にならないようにするということでありますので、マン教授が言っていることと先ほど財務大臣がおっしゃったことというのは私はやはり矛盾はしないというふうにまず第一に認識をいたします。  もう一つは、実物ではなくて今度は所得収支とおっしゃいましたけれども、基本的には日本は世界一の対外資産を持っている国であって、その利回りがしかし低いのではないだろうか、それを高める努力が必要だと。これも御指摘としてはそのとおりなのだと思います。  しかし、その中で、対外資産を持っている中で外貨として運用している面もありますけれども、基本的には対外的な直接投資を行って、それの利回りがどのぐらいあるのかと。これは間接投資、直接投資ございますけれども、民間のもの、部門の利回りをマン教授は主に指摘しておられるのではなかろうかというふうに思います。  その意味では、大渕委員がおっしゃった御指摘は大変重要なポイントだと思いますし、マン教授のことを引用されて重要なポイントをついておられるというふうに私も認識をいたしますが、今の為替政策との矛盾とか、そういうことでは必ずしもないのではなかろうかというふうに伺った次第でございます。
  59. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 済みません、一番肝心なところは、日本経済がそういう体質改善をもう行ってきているという事実関係について大臣はどう認識されているか。単にマンさんの引用の部分はもう前段なんですよ。その後の部分の日本経済が本当にそういう形になっているのかどうかということをお聞かせいただきたいのです。
  60. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 一部申し上げたかったのは、先ほど申し上げましたように、我々の内閣府の試算でも、為替レートが変化したことによる実物経済への影響というのは、少なくとも一年とか短期を取って見る限りそれほど大きくないという試算を我々も得ております。その意味では、要因は多々あるかと思いますけれども日本経済の体質改善が進んで、そういう強い競争力を持っているということは私もそのような認識を持っている次第でございます。
  61. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。終わります。
  62. 続訓弘

    ○続訓弘君 公明党の続でございます。  本日は、さきの当委員会福井日本銀行総裁が報告されましたこの報告に基づきまして、何点か御質問をさせていただきます。  まず、景気現状及び見通しについてでございますが、過般発表されました政府の月例経済報告におきましても、また三月の日銀短観におきましても、また昨日開催されました日銀支店長会議におきましても、大企業製造業に加えて中小企業にも業況改善の様子がうかがえるとのことであります。しかしながら、地方の経済や中小企業には財務面や雇用面の問題が残っており、今後も構造改革の痛みが続くとの見方もあります。  日銀総裁は中小企業景気現状についてどのように見ておられるのか。さらに、大企業を中心とした景気の回復が今後中小企業にどの程度波及していくとお考えなのか、この点について総裁の御意見を伺います。
  63. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) お答え申し上げます。  日本経済全体の景気動向ということになりますと、私どもの認識では、昨年の夏ごろからかなり大きな局面変化があったというふうに思っています。次第にいい方向への動きがそのころから出てきたということでございまして、景気回復のスピードは、昨年の十二月期、つまりカレンダーイヤーの昨年の第四・四半期はかなり速い成長速度になりました。年率六・四%、私どもの予想を超えるスピードでございました。年が明けまして、もう一—三月既に終わったわけでありますけれども、一—三月は、多分この景気回復のスピードは十—十二月の速さに比べて少し反動調整が行われただろうというふうに思いますけれども、しかし景気実態を見ますと、今委員がまさしく御指摘になられましたとおり、景気回復のすそ野が次第に広がってきているという好ましい現象が確認できるようになってきているというふうに思います。  日本景気回復は当初は大企業製造業から始まった。輸出、生産、それが企業の所得、収益を生み、更に新しい投資をするという循環がそこから始まったわけでありますけれども、この一—三月の動き、短観あるいは昨日の支店長会議の報告を聞いておりましても確認できることでございますが、大企業製造業だけではなくて中小企業の製造業、更には非製造業大企業という辺りぐらいまでは次第にいい影響が波及してきていると。非製造業中小企業はやはりまだ少し遅れていると。ここは中小建設業あるいは中小卸小売業といった今御指摘の構造問題をなお大きく抱えておられる部門が含まれているところでございますので、少しその全体の流れの中からは遅れていると、こういうふうな印象を今持っております。  私どもは、現在の経済のこの回復のリズムからいきまして、順当にいけば当面先行きも緩やかな景気回復が続くことはほぼ間違いないし、その中で今申し上げましたような前向きの循環が次第に強まっていくと。中小企業は自らの経営刷新努力ということを引き続き前面に押し立てて、更に工夫を凝らしていかれる必要があるだろうというふうには思いますけれども、しかし、全体としてはやはりあるタイムラグをもって中小企業にも次第にいい影響が及んでくるんではないか、そのことが持続的な経済の回復につながっていくというふうに考えております。
  64. 続訓弘

    ○続訓弘君 せっかく景気回復の芽が出てまいりました。今総裁がおっしゃいましたように、持続的な景気回復のためにも是非とも日本銀行としての役割を果たしていただきますことを御要望申し上げます。  続きまして、企業金融の円滑化について伺います。  さきに述べましたように、非製造業や中小企業はいまだに構造調整の痛みに苦しんでおり、資金繰りの面でも金融機関の貸し渋りの影響を受ける企業が少なくありません。日銀総裁は、就任以来、金融目詰まりを取り除くことを金融政策の優先課題として様々な政策を実行されてまいりました。その中でも、中小企業向け貸出し債権を裏付けとした資産担保証券の購入は中小企業まで資金を行き渡らす新たな手段として期待されてまいりましたが、実際の日銀購入残高は、先ほども御質問がございましたけれども、見込額のわずか八分の一程度の千二百億円にとどまっております。  日銀は資産担保証券を活用した中小企業への資金供給効果を上げていない理由についてどう考えておられるのか、また、主に中小企業に対する金融目詰まりを解消するため日銀としてどのような取組を続けていくおつもりなのか、お答えください。
  65. 武藤敏郎

    参考人(武藤敏郎君) 資産担保証券市場の発展というものが我が国の金融の円滑化のために非常に重要である、特に中小企業金融の円滑化のために非常に重要であるという認識を日本銀行として持っているわけでございます。  御承知のとおり、アメリカにおきましては資産担保証券市場が非常に大きなものに発達しておりまして、重要な役割を演じておるわけでございますが、日本の場合にはまだ資産担保証券市場は未成熟な段階にあるわけでございます。  そこで、金融機関の信用仲介機能というものが万全でないという下でこの資産担保証券市場を更に発展させていくためにどうしたらいいかということで、日本銀行として取ったのはこの資産担保証券の買入れでございます。したがいまして、資産担保証券市場がまだ未成熟な段階にありますから、なかなか御指摘のように利用実績の金額がそれほど大きなものにならないというのも事実でありますが、私どもといたしましてはそういう金額の目標というものを持ってこれを運営しているわけではございません。どうしたらこの資産担保証券市場の発達に貢献できるかということで、去る一月、日本銀行の買入れ基準というものを緩和するということを行いました。  さらに、日本銀行としての努力も当然なんでございますけれども、やはりこの市場が発達するためには市場参加者自身の努力が必要だというふうに考えられます。日本銀行としてはこの民間のそういう努力の場を提供するために証券化市場フォーラムと申すものなんでございますが、その場を提供いたしまして民間の市場参加者が今後どういうことを検討していくのかといったようなことについて支援をしているというところでございます。  こういうことでございますので、今後ともこの資産担保証券市場の発達、ひいては我が国の経済の成長に中央銀行として可能な限りの貢献を行っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  66. 続訓弘

    ○続訓弘君 せっかくお取りになった日銀の良策が、今後中小企業金融の円滑化に行き渡るように御努力をお願い申し上げます。  続いて、量的緩和策について伺います。  日銀は、デフレに対処するため、先ほどもお答えございましたように、約三年にわたり量的緩和策を続けておられますが、量的緩和策は、デフレ懸念の払拭や金融システムの安定化に効果を及ぼした一方で、問題企業の淘汰の遅れや短期金融市場の機能低下といった副作用をもたらしたことが指摘されております。日銀としてこれまでの量的緩和策の効果及び副作用をどのようにとらえておられるのか、お答えください。
  67. 武藤敏郎

    参考人(武藤敏郎君) 量的緩和政策の下での潤沢な資金供給につきましては、まずは金融市場におきます流動性懸念というものが払拭されておる、それから短中期金利あるいは信用スプレッドの落ち着きなど金融市場の安定に寄与しております。また、緩和的な企業金融環境の維持にも寄与するということで、この民間の経済活動を下支えしているというふうに考えております。  現に、この三年間に我が国経済には様々なストレスが生じました。米国でのテロ事件、国内の金融システム不安、イラク戦争、株価の大幅下落といったようなことであります。そういう中で、かつて金融システム不安が起こった九七、八年当時、クレジットクランチといったようなことが盛んに言われたわけでございますけれども、今回ではこういう心配はないと言ってよろしいかと思いますし、ひところデフレスパイラルに陥るのではないかというような懸念も言われたわけでございますが、現在では緩やかな景気回復過程にあるというところまで参りました。  ただ、先ほど委員からも御指摘ありましたとおり、この量的緩和政策については幾つかの副作用があるというのも、そのとおりでございます。問題企業の淘汰そのものが遅れるということ、あるいは金融市場の機能が低下してしまうということ、あるいは更に将来の調整コストが増大するといったような副作用でございまして、私自身も重々承知しておるわけでございます。  したがいまして、こうした副作用の存在に十分目配りが必要だと思いますが、ただ、現時点では、消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になる、すなわちデフレ脱却ということを最優先に量的緩和政策をしっかりと続けていくことが適当だというふうに判断している次第でございます。
  68. 続訓弘

    ○続訓弘君 ただいまお答えございましたけれども、今後、量的緩和策を継続、強化した場合、量的緩和策の副作用の面が強く現れるほか、量的緩和策を解除した際の経済に与えるショックも大きくなるものと予想されます。したがって、今後の金融政策におきましては、単に量的緩和策を拡大するのではなく、長期金利の急上昇を抑制しつつ、銀行から市中に資金が流れやすくする政策に重点を移すべきとの意見もあります。  日銀は、この点についてどのようなお考えをお持ちなのか、また、今申し上げた意見に肯定的な立場を取られるのであればどのような政策が有効であると考えておられるのか、お答えください。
  69. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 日本銀行、常に先々のことをいろいろと予想しながら、かつ勉強も重ねながら金融政策をやらせていただいておりますが、当面、引き続き消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで量的緩和政策をしっかりと続けるということでございます。  この流動性をたくさん供給するという政策効果は、既に繰り返し申し上げておりますとおり、金融市場の安定性を保つ、そして企業にとって好ましい企業金融の環境を提供申し上げる、こういうことでございますけれども、この後者の点、つまり企業にとって望ましい企業金融の環境というのは、経済が次第にその回復の力を強め、そして物価情勢についてもなおデフレでありましても需給ギャップが徐々に縮まるというふうな方向を想定いたしますと、企業の将来にわたる採算性向上というものが見えてくる。その中にありましては、その多額流動性供給の下で金利が低い水準で安定的に形成され続ければ、企業にとっては採算性の向上という姿につながるわけでございますので、量的緩和効果はより強めながら作用する、こういうふうに認識しているからでございます。  それから、同時に、委員指摘のとおり、銀行部門の信用仲介機能がそれでもなお必ずしも万全とは言えない状況がしばらくは続くということでございますので、資金企業の手元までより流れやすくするような様々な工夫を凝らしていかなければいけない。私どもはできる限りの知恵をここに払ってまいりたいというふうに思っておりますが、やはりこれは民間の金融機関と私どもとの共同作業という面が非常に多いわけでございます。  民間金融機関の方では、既に不良債権処理の問題に相当引き続き力を入れておられますけれども、しかし、同時に、将来に向かって新しい金融ファシリティーの用意ということも始めておられます。もう委員も御承知だと思いますけれども、シンジケートローンという形での貸出しとか、あるいは中小企業に対しても無担保無保証のローンとかいうふうにいろいろ新しい金融のやり方を工夫され始めております。そして、いったん貸出しを行って、貸出し債権という形で銀行の資産の構成を組んでも、様々な資産を再構成したり、あるいは市場の中へこれを、流動化可能な形にこれを編成し直したりするような、つまり銀行のポートフォリオを能動的に形成していくような新しい経営手法というふうなものにも着手され始めております。  私どもは、今年度から各金融機関に対して行います考査につきましても、不良債権問題の処理を更に強く促すと同時に、こうした銀行の新しい融資あるいは金融サービスの展開に向けての能力向上、業務範囲及び業務能力の向上という面で、考査の面からもできるだけこれをアシストしてまいりたいと新しい考査方針を出しております。そうしたことが全体としていい効果を出していけるように努力をしていきたいというふうに思っています。  さらに、もう一つ重要なお尋ねがございまして、長期金利を中心に市場が不安定にならないようにすることが非常に大事だとおっしゃいました。私どもも非常にそれは大事だというふうに思っています。景気の回復の方向性が強まれば強まるほど、そしてデフレ脱却への最後のゴールに近づけば近づくほど、その長期金利の問題というのは更に重要性を増していくというふうに私ども認識いたしております。日本銀行の力だけで長期金利を思いのままの水準にセットするということはできないにいたしましても、できる限り私どもの情勢判断を明確にし、市場との対話を密にして市場の期待の安定化を図っていきたいというふうに考えております。
  70. 続訓弘

    ○続訓弘君 続いて、今後の金融政策の在り方について伺います。  日銀は消費者物価指数の前年比上昇率が数か月ならしてゼロ%以上などの条件を満たされるまで量的緩和策を継続することを公表しておられます。しかし、専門家の間では、消費者物価指数は実際の物価動向よりも一%前後高めの数字となり、実際の物価動向を必ずしも正確に反映していないとの議論もあります。事実、経済全体の物価状況をより明確に示すと言われるGDPデフレーターは前年比マイナス二%で推移しております。いまだにデフレが続くことを示唆するなど、指標の違いにより物価現状は大きく異なっております。このように、消費者物価指数が経済全体の物価状況を反映しているとは言い難いにもかかわらず、それでも日銀量的緩和策の判断条件としているのはなぜなのか、その理由を伺います。  金融政策の決定に際しては、消費者物価指数の動向のみならず、物価経済状況を総合的に把握することが重要だと考えます。日銀はこの点についてどのような配慮をしながら金融政策の判断を行おうと考えておられるのか、伺います。
  71. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) ただいま委員がまさしく御指摘のとおり、日本銀行も、物価情勢全般について判断をいたします場合に、消費者物価指数だけを見て、つまり片目で物を見て、それ以外の物価指標、GDPデフレーターを含め、これを見ないということでは決してございません。常にあらゆる物価指標を総合的に判断しながら、現状物価状況、そして物価の先行き、見通しを判断していると、この点は今後とも変わりはございません。  しかしながら、極めて中央銀行としては異例のことでございますが、現在の量的緩和というこのフレームワークをいつまで続けるのだと。つまり、この通常ではない異例な姿の金融政策というものをいつまで続けるのかという点について、国民の皆様一人一人に一番分かりやすい姿でお約束をしたいということで、どう考えましても、あらゆる物価指標の中で国民の皆様方に一番分かっていただけるのは、台所の中まで入ってきている物価指数、つまり消費者物価指数ということでございます。したがいまして、皆様に一番分かりやすい物価指数一つを取り上げて、これと結び付ける形で将来の金融政策を私どもは約束していると、これは日本銀行としては極めて異例の形でございます。つまり、異例な金融政策をやっているがゆえに、この異例なことをいつまで続けるのかということは、最も分かりやすい姿でお約束したいという趣旨でやっているものでございます。  したがいまして、私どもは、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上というのは、すべての我々の目標が達成した時点というふうに思っているわけではありませんで、一つの通過点だと、少なくとも一つの通過点まではだれにも分かる指標できちっとお約束したいと。  しかし、我々は、物価情勢については、常に、その通過点の手前にいる段階でも通過点を過ぎた段階でも、あらゆる物価指標を見ながら、物価の情勢についてはあるいは先行きについては正しく判断していって、通過点を過ぎた後もより均衡の取れた日本経済の姿を目指して、我々はその延長線上できちんとした金融政策をやっていきたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  72. 続訓弘

    ○続訓弘君 次に、量的緩和策の解除に関して伺います。  日銀は、量的緩和策の解除条件については明示しておりますが、解除する場合のプロセスについてはいまだ明らかにしておられません。つまり経済情勢が量的緩和策の解除条件に近づきつつある場合、徐々に量的緩和策を縮小した上で金利政策目標とした通常の金融政策に戻すのか、又は現在の量的緩和策を維持し、解除条件が満たされたら一気に通常の金融政策に移るのか、現在の日銀の動向からはうかがい知ることはできません。  量的緩和策の解除の前後で金融市場実体経済に不測の混乱が生ずるのを防ぐとともに、量的緩和策の時間軸を確実にするため、量的緩和策の解除条件だけでなく、そのプロセスについても明らかにすべきであると考えます。日銀の御見解を伺います。
  73. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) ただいま御指摘のとおり、現在、ただいまの時点で私どもが国民の皆様方に明確にお約束をしていることは、CPIの前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで今の量的緩和枠組みを続けさしていただきたいということだけでございます。つまり、通過点までの我々の金融政策の運営の仕方は明確にお示しして、これをお約束しているということでありますが、通過点以降の姿についてはまだお示しをしておりません。  それはなぜかと申し上げますと、時々、私、ザ・ラスト・ワン・マイルは厳しい、こう申し上げておりますとおり、消費者物価指数の安定的にゼロ%以上という当面のゴールに行くまでのプロセスはまだまだ我々としてはそう安易に予測できるような状況ではないと思っているからでございます。つまり、いわゆる出口政策議論するにはまだ早過ぎると。もっと手前の段階で、民間の企業も、民間の金融機関も、そして日本銀行も更に努力を重ねて、より確信を持ってこの通過点を経過したいと思っているからでございます。  通過点以降のことにつきましては、いずれ先になりまして、先ほどお答えいたしましたとおり、金融政策はあくまで連続線上のものでございますし、その連続線上の上に立って市場の期待、そして国民の皆様方が安心して日本銀行金融政策をフォローしていただけるように、新しい日本銀行金融政策枠組みというものはきちんとお示ししながらやっていきたいというふうに思っています。今、そこを画用紙にかいてお見せするには前提条件である経済物価情勢がまだそれを満たしていないということでございます。必ず将来は次のパスということを明らかにしながら我々は政策運営をやらしていただきたいというふうに思っております。
  74. 続訓弘

    ○続訓弘君 今、出口論につきましては、去る三月の十九日付けの毎日新聞に、もう総裁はお読みになったと存じますけれども、社説で、「福井総裁一年 量的緩和の出口探る時だ」と、こういう社説がございました。そして、その中に、一番最後に、海外での福井総裁の評価はこのところウナギ登りだと、これが後生にも残るとは限らない、量的緩和を円滑に終わらせることができるかどうか、これに掛かっていると、こんな最後の社説の記事がございました。  このほかにもいろんな方がこの出口論についていろいろと議論というか、自分の所説を述べておられます。報道によりますと、これは日本経団連の奥田会長が株価一万五千円が出口の基準になるのではないかという発言をされたという記事が載っておりましたけれども、これに対する総裁の御見解はいかがでしょうか。ただ、大変答えにくい問題だとは存じますけれども、あえて御質問申し上げます。
  75. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 毎日新聞の社説も、私、読ましていただいておりますし、実はその社説を書かれたであろう方は、私はもう以前から大変親しくさしていただいていて、私のやっていることを、そして私の気持ちまで分かった上で社説を書いておられるんじゃないかなと思うぐらいのことでございます。私自身も、早く現状枠組みから脱却できるようにという、その気持ちはひとしく持っております。  しかし、冷静に今の物価情勢を見ますと、まだ残された距離と我々のなすべきこともきっと少なからずあるんではないかと、こう思っておりますものですから、気持ちは焦れども、実際の我々の行動はあくまで冷静に貫きたい。そして、通過点経過後、また市場の期待の安定化を図れるような新しい金融政策枠組みについて、十分我々はそこに知恵を働かしていきたいと、こういう気持ちでございます。  そして、奥田会長にも時々御意見を拝聴しておりますし、株価一万五千円というのはどういう意味ですかということをお尋ねしたこともございます。やはりこれは優れた企業経営者の直観、そういう感じを私は受けました。株価が一万五千円になるというふうなことに象徴されるような、そういう雰囲気の中になれば、日本経済の持続的回復、そしてデフレ脱却、こういったことが、日本の国民の皆様一人一人が心の中で自然にそういう確信を持つに至るんではないかというふうに経営者が直観としてそう思っておられるということだと思います。  我々は金融政策を直観で運営するわけには残念ながらまいりません。我々自身の冷静な分析と我々自身の道具立て、それをきちんと皆様方にお示ししながら政策運営をやっていくという立場にございます。  したがいまして、我々の方から申しますと、繰り返しになりますけれども現実の消費者物価指数の前年比変化率が数か月ならしてゼロ%以上になること、そして政策委員の多くが先行きの消費者物価前年比変化率がゼロ%を超える、つまり再び物価がマイナスに戻らないという状況になること、さらに実態的に見て今の量的緩和をもうこれ以上続けるべきではないという状況になること、そういう条件をお示しして今政策を進めている。最終的に我々の目指すゴールが達成されたときに、奥田会長の直観が当たって一万五千円になっているかどうか、これは予測の限りではございませんけれども、奥田さんの予感と我々の政策経路とが一致すればこの上もなく幸せなことだというふうに思っています。
  76. 続訓弘

    ○続訓弘君 大変率直な御答弁、誠にありがとうございました。  そしてまた、私は、今、福井総裁が御自らこの毎日新聞の社説は自分の気持ちを代弁していると、こういう御回答がございました。これを見て安心いたしました。  日本銀行総裁におかれましては、やはり金融政策の責任者でございます。そのかじ取りの誤りなきを期していただきますことを御要望申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  77. 大門実紀史

    大門実紀史君 私の方も最初に量的緩和についてお伺いいたします。  この委員会でただもう量的緩和については何度も今日も含めて議論がございました。とにかくなかなか市中に回らないということも再三指摘されているところでございますし、デフレ克服の効果、もう今日も議論ありましたけれども、私は一つ一つこういう効果があったと言うほどのものはなかったんではないか、まあ、やらないよりましといいますかね、それと、やめるにやめられないいろんな条件が重なっている、このようなことではないかというふうに再三指摘しているところですけれども。  今日は、全体像について、個々のことよりも、量的緩和とは一体何だろう、何だったんだろうかという全体像について質問をしたいと思いますけれども、率直に申し上げて、量的緩和をやってきて、一番この量的緩和で助かったのは総裁はだれだと思いますか。
  78. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 助かったという言葉が該当するかどうか分かりませんけれども、民間経済の担い手はあくまで民間の経済主体、つまり民間の企業と民間の金融機関でございます。この両者が過去に抱えた問題を処理し、新しいビジネスに取り組む体制を早く整える、この努力のプロセスと日本銀行量的緩和政策とがどういうふうに結び付いているかというふうに考えますと、これは、明らかにこの量的緩和政策の下で金融市場の安定が確保され、そして企業金融にとって好ましい条件が用意されるということでございますので、金融市場不安感にさいなまれながら努力が中断するということがないと。そして、企業は最も低い金利コストというものを背中に背負いながらリストラを進め、新しいビジネスモデルの構築にいそしむことができるという意味金融面条件としては最も恵まれた条件を提供することができたんではないかと。つまり企業努力を、あるいは金融機関努力を後押しする効果というのは非常に強かったんではないか。  それが証拠に、もう多くの内外の観測者が日本経済デフレスパイラルに陥るリスクが非常に強いと言われていた。つまり、非常に強くおっこちる力を完全に下支えしたということは明確に言えると思いますし、これから経済が徐々に立ち上がり、今緩やかな回復、そして広がりというものが始まったばかりでございますけれども、この傾向が更に強まっていけば、先ほども申し上げましたとおり、量的緩和の下で金利の安定的な形成、先行きについても安定的な形成がなされるというふうな確信を企業の方で持っていただければ、景気回復が徐々ではあっても進行すれば企業の採算見通しが好転すると。そのときに、金融費用との関係でいえば、企業の採算見通しをより強く好転させるということになって、量的緩和は今後更にいい効果を強める可能性すら持っていると、こういうふうに思っている状況でございます。
  79. 大門実紀史

    大門実紀史君 金融緩和一般を言えばそういうこともあるかも分かりませんけれども、私、この異常な量的緩和で一番助かったのはといいますか、一番直接的に助かったのは政府自身ではないかということをずっと思っております。  それはもう再三私も取り上げたことがありますが、要するに、日銀がじゃぶじゃぶに資金金融市場供給すると。先ほどからありましたとおり、市中に回らないと。回らない原因は、一つ資金需要が低下していますね。これは国内の景気が悪いから設備投資をやろうと思ってもやれないと。もう一つは借りたいところにも貸さない状況が生まれている。これは、不良債権処理を並行して進めておりますので、不良債権処理をやりながら貸出し増やすというのは、これは、私、予算委員会で取り上げましたけれども、そもそも矛盾があるわけですね。貸出し増やして、自己資本比率上げながら不良債権処理する、こんな芸当できるわけございません、不況のときに。したがって、借りたい人にも貸せない、だから市中に回らないと。  銀行にじゃぶじゃぶに供給されていて、銀行はどうするかというと、置いておいても、先ほどありました、豚積みといって、置いておいても仕方がないから国債を買う、国の国債を買うということがずっと続いてきているわけですね。ですから、政府が発行する国債を安定的に吸収するという役割を一番果たしてきて、それほど世の中、経済一般に対しては、ここまでの量的緩和という意味ですよ、ここまでの量的緩和がそれほど効果を及ぼしたとは私は思っておりません。  もう一つ日銀自身が国債保有、日銀自身の国債保有も増やし続けておられますね。ちなみにこの五年間でどれぐらい国債保有増えたか、お答えいただけますか。
  80. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  日本銀行は長期及び短期の国債を保有しておりますけれども、その数字を合計したベースで申し上げますと、二〇〇〇年の三月末が五十五・五兆円、二〇〇一年三月末が五十一・七兆円、二〇〇二年三月末が八十六・七兆円、二〇〇三年三月末が八十八・七兆円、そして今年、二〇〇四年三月末がちょうど百兆円でございます。
  81. 大門実紀史

    大門実紀史君 こうやって増やしてきた、急激に増やしてきた原因を簡潔にちょっと教えてもらえますか。
  82. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  日本銀行は現在量的緩和を採用しておりまして、資金市場に潤沢に供給をするということを行っております。  このことは、具体的に申し上げますと、日本銀行市場から長期及び短期の国債を買い入れるということを主として使いまして資金供給しておりまして、そのことがこうした国債の増加に反映されております。
  83. 大門実紀史

    大門実紀史君 国債というのは国にとっては、長期とは言えませんが、中長期の借入金ですけれども、それを、先ほど言いました、日銀がじゃぶじゃぶに供給して、銀行が買って、さらに日銀がまた銀行から買いオペで増やしてきたと。それから、何かお金がぐるぐるぐるぐる上の方で回ってきているわけですね。  もう一つ指摘したいのは、今、国債の問題は中長期の国の借入金と申し上げましたが、短期の、国の短期の借入金、つまり政府短期証券、FBのことですけれども、これの発行高の推移ですね、もうこちらで申し上げますけれども、政府短期証券の発行残高の推移ですけれども、これも急激に増えています。二〇〇一年度が四十九兆六千億だったのが二〇〇三年度末で八十六兆ですね。この原因は先ほど大渕さんが取り上げられました円高介入資金ですね。円高介入資金だけで二〇〇一年度末が四十八・六兆円だったのが二〇〇三年度末では八十五兆円にも増えていると。  この円高介入の問題、私も予算委員会で大変問題があるということで取り上げましたけれども、今日申し上げたいのは、この短期証券も、円高介入資金、急激に必要になったということで発行して、調達したわけですが、これも言ってみれば日銀量的緩和金融市場にじゃぶじゃぶにお金供給しているからこれだけの調達が可能になってきたということが言えると思います。  さらに、この問題でも、日銀が直接この短期証券、この間引き受けられておりますけれども、これは金額は幾らになりますか。
  84. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えします。  日本銀行は、政府短期証券の引受けを臨時的、一時的に行っております。  現在の残高、過去の五年間の数字を申し上げますと、二〇〇〇年三月末が七・九兆円、二〇〇一年三月末、これはゼロでございます。二〇〇二年三月末、これもゼロでございます。二〇〇三年三月末が〇・七兆円、そして二〇〇四年三月末が六・三兆円でございます。
  85. 大門実紀史

    大門実紀史君 もう少し分かりやすく私の方で申し上げますと、ちょうど昨日、日経新聞が、政府がこの短期証券、日銀からの借金十五兆という記事が出ておりましたけれども、これは正確に言うと十二・五兆ですね、日経新聞は若干計算を間違っておりますけれども。この十二・五兆は、これは速やかに返してもらうということに日銀としてはなると思います。  この問題もちょっと重要な問題ですので改めて取り上げますが、私、申し上げたいのは、要するに、先ほど言いました量的緩和って一体何だったんだろうというふうに見ますと、直接一番いろいろ助かってきたのは政府自身ではないかと。国債発行、そして短期証券、つまり、長期であれ短期であれ、両方とも借入金を調達しやすくしてくれたのが日銀量的緩和と。これは事実として否めないところだというふうに思います。その一方で、中小企業にはこの三年間で貸出しが五十兆も減っています。  ですから、どう言えばいいんですか、もうお金が本当にぐるぐるぐるぐる、日銀量的緩和をやって、そのお金で政府の借金の手当てをして、さらに日銀自身も政府のそういう証券を買うと。何かもう日銀と政府の間で莫大なお金がぐるぐるぐるぐる回っていると。金は天下の回りものというのがありますけれども、天下ばっかり回って下に下りてこない、これが今の現実なんですね。  私はこんな国はほかにはないと思いますが、総裁、どう思われますか。
  86. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 民間経済が停滞している期間は、どうしても国の政策としても財政の面からの行動によって経済が支えられる面が多いと。それから、実体経済が非常に基盤が脆弱なときに、金融資本市場なかんずく為替市場から及んでくる不規則なショックが景気回復の基盤を決定的に痛め付けないように、これまた政府の方の御判断で為替市場の介入が行われ、必要資金の調達が行われる。量的緩和政策の結果が政府の活動のファイナンスの面、つまり長期国債の発行環境を容易にし、政府の方の国債費用を軽減させる、短期資金調達についても市場調達が容易である、そして市場調達が容易であるがゆえに日本銀行は一時的なつなぎの引受けをするということも問題なくできるというふうな状況になっているということは事実でございます。  しかし、やはり私ども金融政策でねらっておりますことは、ただただ政府にお金が円滑に回れば民間経済は生き返るという考え方に立って行動しているわけではありませんで、なかなか、いい結果を出すことに随分時間を掛けてフォローしてまいりましたけれども、基本的には、日本銀行供給するお金は、民間部門において過去の問題処理及びこれからの新しい投資活動、企業活動に使ってほしいということでやっていることでございます。  その成果が現実の貸出しの増加マネーサプライ増加というところに結び付くまでにもう少し時間は掛かるけれども、今その背後において実体経済物価情勢の変化は次第にその方向に向かって動いているということを確認しながら金融政策をやらせていただいていると申し上げたわけでございます。
  87. 大門実紀史

    大門実紀史君 私が伺ったのは、こんなことやっている国がほかにありますかという質問だったんですけれども、ないと思います。こんなお金の回り方している国はないと思います。日本金融はもう狂っているというふうに指摘したいと思います。  その点で、武藤副総裁、そこにいらっしゃいますけれども、私は、政府との関係ですね、特に財務省との関係、きちっと独立性を保つべきだと。余り仲良くしたり、いろいろ影響を受けるという関係を持つ、すべきでないと。やっぱり日銀の独立性を保たないと、そういう政府のいろんなことの引受け、今回の介入の短期証券は特にそう思いましたけれども、特に政府がやることにすべてしりぬぐいをさせられていくような、そういう日銀であっては今後大変心配だということを御指摘しておきたいと思います。  今日はもう一つ、そういう全体の金融状況の中で、この金融の一番川下で起きている問題について、残りの時間、触れたいと思います。やみ金融の問題です。  これは要するにどうなっているかといいますと、先ほど申し上げました運転資金への融資がもう大変今厳しくなっているわけですね。運転資金が、なかなか銀行はプロパーで貸さないというふうになってきますと、この不況の中ですから、町の中小企業は運転資金が回らなくなって、その中には売上げが落ちてくるともうどうしようもなくて町金にまず手を出すと。町金に手を出して、町金の決済はもう十日に一遍、一週間に一遍来ますから、それが回っていく分にはいいんですけれども、また売上げが伸びればどこかでクリアできるんですけれども、それができなくて、ある瞬間、どこかでまた手形が落ちないとか何かのときに、とうとうそこにファクスが一枚届いて、やみ金から届いて、それに手を出してしまうと。  こういう事例が去年、社会問題になったわけですね。それで、与野党一致でやみ金規制法を成立させて、今日は時間がないので一個一個お伺いしませんが、金融庁あるいは警察庁でもう特段の努力も含めて始まっているところだと思います。  ただ、その中で、そういう中でも実はかなりやみ金の相談、私の部屋にも増えているわけですけれども、ちょっと時間がないので簡潔にお願いしたいんですけれども、あのときの議論で、法律だけ作ればいいものではない、その作られた後の現場での対応が大事だということで議論になりましたが、金融庁と警察庁それぞれ、やみ金規制法施行以降、どういう取組をされているか、時間がないので簡潔にひとつお願いをしたいと思います。
  88. 五味廣文

    政府参考人(五味廣文君) 御説明申し上げます。  主として監督体制の整備それから関係当局との連携の強化ということに努めております。  具体的には、まず苦情相談窓口の拡充でございます。都道府県及び財務局に対して窓口の拡充の要請をしまして、この結果、平成十六年度、金融庁及び財務局そして都道府県におきまして担当職員の増員というのが認められております。一例を申し上げますと、財務局で十八名、あるいは東京都十名、大阪府九名と伺っております。  また、窓口として、四十七都道府県中、現時点で二十一の都道府県でやみ金一一〇番というものが設置をされております。十六年三月末時点でございます。  それからもう一つ、口座の不正利用防止、これに関しましては、金融機関に対して口座名義人不存在あるいは公序良俗に反する行為に利用される場合の預金取引停止等を要請をいたしました。同時に、そうした預金口座の不正利用に係る情報を当局が得ました場合には、当該の金融機関そして警察へ速やかに提供いたしております。  金融庁、財務局に寄せられました預金口座の不正利用に係る情報、平成十五年の九月から十六年二月末まで累計がございますが、情報提供、二千七百十二件いたしました。このうち、口座解約に至りましたもの四百五十一、取引停止に至りましたもの八百三十六、こういう実績がございます。  なお、全銀協におきましてもこうした通報とは別にそれぞれ努力をしていただいておりまして、十五年十月—十二月の三か月間で九千百五十八件の口座について利用停止又は強制解約等の措置を取ったということになっております。  このほかにパンフレットの作成など広報に力を入れております。やみ金対策法の広報、こうしたパンフレットなどを作りまして説明をしております。同時に、裏面には相談窓口の連絡先などを付けております。  関係当局との連携強化では、やみ金等被害対策会議、これを各都道府県ごとに設置をするということで、十六年三月末現在では四十六都道府県に置かれております。財務局、都道府県、警察、弁護士会等がメンバーとなっております。こうした形で関係当局とも連携も強化してまいりました。
  89. 伊藤哲朗

    政府参考人伊藤哲朗君) 警察におきましては、昨年の法改正を受けまして、全国の都道府県警察に集中取締り本部を設置しまして強力に取締りを推進したところであります。  その結果、平成十五年中のやみ金融事件の検挙は五百五十六事件、千二百四十六人を検挙したところでありまして、この数はいずれも一昨年の二倍を上回っておりまして、統計を開始しました平成二年以降最多の数字となっております。また、検挙した事件の被害規模についてでございますけれども、被害人員で約三十二万人、貸付総額で約三百二十二億円に上っておりまして、これも統計開始以降最多の数字となっております。  また、昨年九月に一部施行されました法改正の無登録業者の広告禁止違反を適用した事件につきましては、本年三月末までに十七事件、二十三人を、また高金利要求罪を適用した事件では、三事件、五人をそれぞれ検挙しております。  また、本年の一月一日から改正法が全面施行されたことを踏まえまして、今後更に強力な取締りと適切な被害者対策を推進してまいりたいと考えております。
  90. 大門実紀史

    大門実紀史君 金融庁、警察庁とも一定努力をされていることは評価したいというふうに思います。  ただ、やみ金被害は、あるいは金融詐欺という新しい形で、こういう恐らく暴力団絡みなんでしょうけれども、根絶されてないんですね。いろんな新手も出てきておりますけれども一つ本当は今日の委員会で質問をしようと思った事案があったんですが、栃木県の印刷屋さんの件なんですけれども、これ足利銀行と取引をしていたのが、先ほど言った流れでプロパー融資を断られ、運転資金に行き詰まって町金からやみ金へというお決まりのコースといえばお決まりのコースなんですけれども、これは東京台東区の日興商事というやみ金業者です。ただ、これは私が警察庁に問い合わせをした途端、すぐ捜査に入っていただきましたので、それはもう感謝申し上げますので、細かいことはもう申し上げません。  ただ、一つだけ教訓にしていただきたいのは、御本人は当該警察署に最初やっぱり四、五回、私に相談される前に四、五回相談されているんですね。その時点で明らかに無登録業者、やみ金業者ですから、すぐ捜査に入ってほしかったと、国会で取り上げられるんじゃなくて、個別の相談のときによく判断をして取り上げてほしかったということだけ申し上げておきたいというふうに思います。  いずれにせよ、警察の体制も十分なのかどうかというふうに思いますので、体制強化しながら、是非徹底的取締りをお願いしたいと思います。  もう一つ、資料をお配りしましたけれども、今こういうものが、これは仙台市を中心に、恐らく多重債務と思われる人たちのリストをどういうわけか、どうしてか手に入れて、こういうものを郵送していると。ちょっと白黒だとあれですけれども、本当はこういう赤と黒のこういう物すごいインパクトのある、これで、これをはがきにしたり封書にしたりして送り付けるわけですね。中身はもう見てもらったとおり、相当でたらめです。「裁判所最高裁判所」というのはあるのかどうかというのはありますけれども、「簡易裁判所管理部」の電話が〇九〇から始まるとか、非常にでたらめなものです。  ただ、これは多重債務の人たちが、いわゆるブラックリストに載る前のグレーリストといいますか、そういう人たちがこれを見ると、もう全部やられてしまうというので、慌ててここに連絡をして、振り込み先を聞いて、架空口座だと思いますけれども、そこに振り込んでしまう人も出てくるというふうな被害が今出始めているわけですけれども。  私、この問題で思ったのは、そのリストですね、町金業者あるいはサラ金も含めてですけれども、そういう町金で、あるいは多重債務で町金の中で返済が少し滞っている、あるいは多重債務、こういう人たちのリストがやっぱり今も出回っている、売り買いされているということを強く感じるわけですね。  やみ金の手法も、先ほど申し上げたとおり、ある日突然ファクスがその家に、その会社に送られてくると。これはあらかじめそこがもう行き詰まっているなと分かってファクスを送ってきたわけですね。そういう手法が今取り締まられていますので、こういう手法で今やり始めていると。同じように、やっぱり基になるのはそういうリストがあるんではないかというふうに思うんですね。  警察庁、こういうリストの取締り、どういうふうにやっていかれますか。
  91. 伊藤哲朗

    政府参考人伊藤哲朗君) リスト自身の取締りというのはなかなか難しいかと思いますけれども、私どもの過去に検挙した事件といたしましては、いわゆるそうした不法な行為に使われるということを知りながら名簿を譲り渡したというような人物につきましては、そうした不法行為事件の幇助犯として検挙したという事例がございますけれども、そうしたふうに、名簿を譲り渡す行為が不法行為に加担しているということを十分承知して、情を知って行うというようなケースの場合はそうした幇助犯という形で検挙できるというふうに考えております。
  92. 大門実紀史

    大門実紀史君 もう一つ、これそのものはまだ警察に、もう持ち込まれているかも分かりませんけれども、恐らく携帯電話ですけれども、これ、やりようによっては突き止められて逮捕すること可能だと思いますが、そういう対処をしていただけますか。
  93. 伊藤哲朗

    政府参考人伊藤哲朗君) 具体的なそこに書いてある電話につきましては、それ自身が直ちに具体的に信憑性があるのかどうかというのは分かりませんけれども、これが詐欺行為に当たるということであれば、もちろんその具体的な被害等の状況も踏まえながら、厳正に対処してまいりたいというふうに考えております。
  94. 大門実紀史

    大門実紀史君 是非よろしくお願いします。  最後、日銀総裁にお伺いしたいのですけれども、要するに川下では、金融の川下では依然こういうことが起きている。その根っこにあるのは、運転資金まで貸さないような今の金融機関の在り方があると。いわゆる、何といいますか、ギャンブルに手を出してやみ金だとかそういうのじゃないんですね、中小業者が非常に多く今引っ掛かっているということがあるわけですね。  そういう点も踏まえて、このやみ金問題といいますか、この川下の一番末端で起きているこういう問題について、総裁、余りこういうこと聞かれたことないと思いますけれども、御感想といいますか、お伺いしたいと思います。
  95. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 私ども、やはり考査という一つの接点を持っております。個々の金融機関の貸出し動向につきましてはかなりきめ細かく事情を拝聴しながら、できる限り中小企業、零細企業の末端に至るまできめ細かい金融サービスの提供が行われていくようにお互いに知恵を交換し合っております。  今後とも、そういう努力は強めていきたいというふうに思っております。
  96. 平野貞夫

    委員長平野貞夫君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十八分散会