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公述人(立谷秀清君) 御指名いただきました福島県相馬市長の立谷と申します。
私は、
地方の小都市の市長としてこの
高速道路の問題についていろいろとかかわってまいりましたけれ
ども、本席にこのように
意見を陳述する機会を与えていただきましたことを心から感謝を申し上げたいと思います。そしてまた、私
どものような
地方の小都市が、高速交通ネットワークという社会的なインフラを完成していただくことによって、私
どもの
地方がより元気になる、より暮らしやすい
地域になると、そのような思いでいろいろと活動してきたわけでございますけれ
ども、そのことを踏まえまして、今回、皆様方の議題になっておりますこの
法案について若干の
意見を述べさせていただきたいと思います。
この二年間でありますけれ
ども、
民営化推進委員会の
議論の中で、
国民生活の
向上と日本の健全な発展のために
道路の果たす役割、あるいは費用
負担、さらには
債務の問題がいろいろ
議論されてきたと
考えております。今回の
法案につきましては、これらの諸問題を解決する
一つの手段として方向性を示したものと私は
考えております。
理念のとおりにこの
法案が成立しまして施行されることになれば、私はそれなりの大きな
国民生活に対する効果が出てくるのではないかと、そのように
考えているわけでございますが、まず新
会社設立の理念でございますけれ
ども、一番注目すべきは、
国民経済の健全な発展、あるいは
国民生活の
向上のために
民営化するんだということでございます。これは、ここ二年間のいろいろな立場の
方々の共通する認識ではなかったのかなと思うわけでありますけれ
ども、そのことと、それからもう
一つは、機構の設置
目的が
国民負担の軽減を図るということになってございます。
この三つの課題を実践するに当たりまして、実際には
民営化された新
会社が
建設、管理、
運営に当たるということでございますけれ
ども、
民営化することによって企業論理が
導入されまして、そのことによってしっかりと働いていただけるシステムが整うのではないかということを期待しております。
この
高速道路でございますけれ
ども、私
ども地方にとりましては、
地域振興にとって極めて有効な手段でございます。しかしながら、
建設費用に見合った効果が果たして得られるのかということは、これは大分
議論されてきたようであります。また、そのことが大きなポイントではないかと思います。
私自身、無駄な
道路は造らないという
考え方には極めて賛成でございますけれ
ども、その無駄という定義が、これも新
会社の営業
努力あるいは
企業努力によってまた変わってくるのではないかと。費用対効果と申しますけれ
ども、効果に対してどのぐらい費用が掛かるかというところで無駄という
考え方が出てくるわけでありますから、費用をできるだけ下げることができれば、どこまでが無駄なんだという
考え方も若干変わってくるのではなかろうかと。そういった
意味では、新
会社の
コスト削減等の
企業努力に対する期待が極めて大きくなってくるのではないか。私は、しっかりと働いてくれればいい結果が出てくるのではないかというふうに
考えておりますし、今回の
法案はそのしっかりと働いてもらうための仕組みではないのかなというふうに
考えております。
しかしながら、私
ども、
地方に住んでおりまして、この
高速道路の効果を
考えた場合、これを
料金収入のみで判断することが果たして適切かということを
考えた場合、新
会社の設立の
目的にございますように、
国民生活の
向上ということが大きな課題でございますから、したがいまして、
地方を含めた
国民生活の
向上、つまり私
ども地方は、この
料金収入等々の問題で
考えた場合、やはり首都圏のような人口集積の非常に進んでいるところに比べまして
料金収入という
意味では極めて弱いところでございます。
しかし、そのような
地域であればこそ、あるいはそのような
地域であるからこそ、森があり、自然があり、川があり、この日本という国を静かでありますけれ
ども土台から支えている、いわゆる
地方のすばらしい自然
環境と共存して私
ども地方の住人は暮らしているわけでございますから、その
地方の住人が、
地方の
国民が、今非常に国際間競争の厳しい時代というふうになっておりますけれ
ども、この厳しい時代の中でも、やはり森の自然を守る、日本の
地方の自然を守るという役割を我々は果たしていかなきゃいけないわけでありますから、そのような
意味も含めて、これは
道路の問題だけでなくて、私、昨今の
三位一体改革を始めとする税制の問題にも抵触してくるんではないかと思うんですけれ
ども、この際、やはり
地方の役割、
地方の置かれている立場、そして
地方の将来性というものをこの際、
高速道路の
議論と一緒になって、新
会社になった後も
考えていただきたいと。それらのことを進めていく上で、私は、この新
会社設立の
目的というものがきちんと機能すれば非常に理にかなったものになるのではないかと期待している一人でございます。
皆さんのところにお示ししましたこのレジュメに従ってしゃべっていきたいと思いますけれ
ども、
道路の、特に
高速道路の問題を
議論するに当たって、
地方と首都圏の、対立軸とまでは申しませんけれ
ども、その機能分担というのは避けて通れない問題なのではないかと常日ごろ
考えているわけでございますけれ
ども、私
どもは、東北でございますけれ
ども、東北のそれぞれの小都市、それぞれの
地域がお互いに
連携することによって、それぞれの特徴を生かしてそれぞれが
地域の発展を遂げるようにこの有機的な
連携ということを図っていくことがこれからの大きな課題ではないかと思っております。
そういった
意味で、このネットワークの形成、
高速道路による
地域間のネットワークの形成ということが非常に大きな課題ではないかと思うわけでありますけれ
ども、それでも若干弱いところがあるかもしれません。
しかしながら、
地方には
地方の大きな役割がございまして、私の相馬市は福島県でありますけれ
ども、例えば東京という首都圏を
考えた場合、日本の顔として大変立派な都会でございますけれ
ども、しからば東京だけでやっていけるのかということを
考えた場合、やはりこの集落の周辺に田んぼ、裏山があるように、東京の周辺には私
どものような、福島県のような、どちらかというとローカルな
地方として都会を支える
地域がないと東京も日本もやっていけないんではないか。
私
どもの福島県は、例えば首都圏に対して農産物を供給しております。それから電力も供給しております。さらに、都会の
方々にとって非常に貴重なものだと思いますけれ
ども、豊かな自然というものを提供している。さらには、これはとても大事なことだと思うんですけれ
ども、東京のお母さんたちは子供を産まないですね。合計特殊出生率と申しまして、これは一人の女性が平均したら何人の子供を産むかという推測値でございますけれ
ども、これは一・〇〇でございます。福島県はそれが一・六〇。福島県のお母さんたちが子供を産むというから偉いというわけではありませんけれ
ども、少なくても子供を産んで育てようという、そういうある
意味では日本古来の健全な風土を残した
地域でございますから、東京の経済性と我々
地域の、
地方の果たす役割をうまくミックスさせることによってこの国が、この日本という国が健全に成長できるんではないかと、そんなふうに
考えているわけでございます。
続きまして、ネットワークについて若干お話をさせていただきたいと思いますけれ
ども、私の福島県相馬市は福島県の北端にございます。福島県は非常に広大な県土を持つ県なんでありますけれ
ども、昨今問題になってございます小児科医療の問題、このことについてお話をさせていただきたいと思うんですけれ
ども、福島県の私は相馬
地方というところなんですが、相馬双葉
地方という大体細長い六、七十キロの生活圏がございまして、その生活圏の一番端っこの相馬市に小児集中治療室がございます。したがいまして、未熟児とか条件の悪い子供さんが生まれた場合には、私
どもの相馬市が経営する病院に連れてくるわけでございますけれ
ども、これが
高速道路がないために時間が掛かってその治療効果がなかなかうまくいかない。遠いところですと、救急車で走っても一時間以上掛かるわけです。
未熟児というのは、やはり
早期治療、特に保育器に早く収容してそれなりの対応をするということが極めて重要でございますから、先ほど福島県の合計特殊出生率が高いという話を申し上げましたけれ
ども、周産期死亡率という指標がございまして、この周産期死亡率というのは産前産後の死亡率をいうんですけれ
ども、民度を図る
一つの大きな指標と言われております。出生千人に対して
全国平均が五・八人、日本は世界有数の立派な数字を持っているんですけれ
ども、福島県は県土が広い分若干不利でございまして、六・九人でございます。さらに、私
どもの相馬双葉
地方は八・一人でございます。もしも
高速道路があって早く救急車が到達することができれば、せっかく子供をたくさん産むわけでありますから、私はこれらの
状況について大きな改善が見られるんではないかと。
それは私
ども地方自治体に携わる者としての住民福祉の
向上ということにつながりますし、あるいは今後の少子高齢化対策の
一つの大きな課題ではなかろうかというふうに
考えてございますので、先ほど来申し上げておりますように、この新
会社の設立が、
国民経済の発展ということももちろんでございますけれ
ども、
国民生活の
向上ということを目途とするものであれば、私は、今の私
どもの
地方の
状況を
考えた場合、できるだけ頑張っていただいて、早急にできるだけ早く造れるような、そのような
スキームであっていただきたいなということを
お願いするわけでございます。
それともう一点でございますけれ
ども、実は私は医者でございまして、二年前までは現役の内科医でございました。
救急医療にも従事しておりましたし、あるいは介護保険という制度の中で往診もしておりました。五十軒ほど往診先を持っていたわけでありますけれ
ども、そのような中で、今
地方で何が困るかと申しますと、この介護力という言葉があるんですが、お年寄りを介護するときに介護の担い手になる若い人がいないんですね。これは、高齢化率が高い、さっき私は合計特殊出生率が高いと言いましたけれ
ども、育った子供たちは
地域に職がないから、職業がないから東京に行ってしまうんですね。その結果、老老介護という言葉を皆さん御存じだと思いますけれ
ども、おばあちゃんがおじいちゃんを介護すると、そのような事態が起こっております。それで実際、介護
計画というものを作った経験が何度かあるんですが、自分の
地域に身内がいるかどうか、子供や孫がいるかどうか、そのことによって福祉は大きく変わってきます。
私は、福祉を
向上させることだけが
地域の役割ではないと思いますけれ
ども、福祉を支えるものは何かということを
考えたときに、それは福祉のビジネスでは決してなくて、やはり日本古来のおじいちゃんの面倒をお母さんが見る、孫も手伝う、そのような日本の儒教的な美徳とでも申しますか、そういう家族制度を、家族の中の愛情というものをこれからの時代も我々は大事にしていかなきゃいけないんじゃないかと思っているわけです。そのことを、往診をしながら非常に強く感じてきたわけでございますけれ
ども、ところがその若い
方々の
地域での職場をどうやって確保するか。
私は、
地域振興という言葉があるとしたら、それは、
地域振興の裏返しは
一つは雇用創出ではないかと。特に若い
方々にとっての雇用を創出することによって
地域に子供や孫たちが定着してくれないか。ちょっとここに書きましたけれ
ども、子供や孫たちと一緒に住める以上の福祉はないんじゃないかと。これは私が今まで医療に携わってきて、介護保険に携わってきた率直な感想でございます。
その
地域振興を図るために、これいろんな問題がございますし、いろんな課題がございますけれ
ども、我々
地方の小都市といたしましては、まず
一つは
コスト倒れになるような無駄な投資はしたくない、これございます。しかしながら、できれば、先ほど申しましたけれ
ども、お互いの
地方の小都市が高速交通ネットワークで結ばれることによってお互いの社会資本を共有することができないかと。さらに、
高速道路、あるいは自動車専用
道路でもいいんですが、そのような交通の利便性ということを用いた上で企業誘致等々の雇用創出が図れないか。
数年前ですけれ
ども、これからの時代の雇用は福祉と情報通信だというふうに言われていました。情報通信は確かに当たりましたけれ
ども、私は、福祉が、特に老人福祉が
地域の基幹産業であってはいけないと思います。スウェーデンの
国民負担率は七六%といいますけれ
ども、日本は三五、六%でしょうか。高福祉高
負担という社会が果たしていいかというふうに
考えますと、私は、老人が多いから、老人が大変だから、介護も大変だから老人ホームを数多く造ればいいんだと、老人保健施設をたくさん造ればいいんだと。そのことによってみんなが安心だし、そこでの雇用が生まれるんだという
考えが果たして適切かと申しますと、私はそれは違うんではないかと。やはり、福祉社会というのは、正常な産業基盤の上に乗っかっているんでないかと。
そのことを
考えたときに、我々
地方の小都市もしっかりとした産業基盤の構築を図って、よって
地域振興、すなわち雇用創出を図って、我々の先輩であるおじいちゃん、おばあちゃんを支えられるような、そういう
地域にしていかなくてはならないんでないかと。そういうことを、往診をし出しながら、往診をして市長になりながら、毎日そんなことを
考えております。
そのための有効な手段が、私は、
道路のインフラではないかと、高速交通体系ではないかというふうに
考えるわけでありますけれ
ども、その
実現のために今回お示しいただいております
法案の精神が十分に生かせるんであれば、必要な
道路をできるだけ早く造るという、そして低
コストで
運営して
国民の
負担を軽減していくんだという、そのことが
実現できるんであれば、もっと言えば新
会社にしっかりと働いていただけるシステムであれば、私は心から賛成したいと、そのように
考えております。
以上です。
ありがとうございました。