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2004-02-16 第159回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年二月十六日(月曜日)    午後一時十六分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         関谷 勝嗣君     理 事                 愛知 治郎君                 加納 時男君                 山崎  力君                 岩本  司君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 緒方 靖夫君     委 員                 入澤  肇君                 河本 英典君                 小林  温君                 椎名 一保君                 西銘順志郎君                 野上浩太郎君                 舛添 要一君                 三浦 一水君                 池口 修次君                 今泉  昭君                 小川 勝也君                 田名部匡省君                 広野ただし君                 荒木 清寛君                 池田 幹幸君                 大田 昌秀君    事務局側        第一特別調査室        長        渋川 文隆君    参考人        ジャパンプラッ        トフォーム評議        会アドバイザー  長 有紀枝君        東洋英和女学院        大学国際社会学        部教授        元駐クウェート        大使       津守  滋君        元駐イスラエル        大使        前国際テロ対策        担当大使     茂田  宏君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題に関する調査  (「新しい共存時代における日本役割」の  うち、イスラム世界日本対応イスラム地  域社会に対する貢献のための課題)について)     ─────────────
  2. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ただいまから国際問題に関する調査会開会をいたします。  国際問題に関する調査議題といたします。  本日は、本調査会調査テーマである「新しい共存時代における日本役割」のうち、イスラム世界日本対応に関し、イスラム地域社会に対する貢献のための課題について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、ジャパンプラットフォーム評議会アドバイザー長有紀枝参考人東洋英和女学院大学国際社会学部教授・元駐クウェート大使津守滋参考人及び元駐イスラエル大使・前国際テロ対策担当大使茂田宏参考人に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  本調査会では、イスラム世界日本対応について重点的かつ多角的な調査を進めておりますが、本日は、イスラム地域社会に対する貢献のための課題について参考人から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず長参考人津守参考人茂田参考人の順でお一人二十分程度で御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、長参考人から御意見をお述べいただきます。長参考人
  3. 長有紀枝

    参考人長有紀枝君) よろしくお願いいたします。  ただいま御紹介にあずかりました長有紀枝と申します。  現在は退職しておりますが、昨年十月まで難民支援をいたしますNGOに所属しておりましたので、本日はNGO立場からお話をさせていただきたいと思います。ただ、私がお話しいたします内容はあくまで私個人見解でございまして、関係している団体組織のそれとは、それを代表するものではないことをあらかじめお断りさせていただきます。  イスラム地域に限らず、他国に発生しました人道的な問題に対して介入する手段としては、緊急の人道支援、それからその後の長期的な復興開発支援がございます。平和構築紛争予防観点からも、緊急の人道援助、それから復興開発支援は重要な役割を担っているわけですが、その担い手は様々でございます。国家、政府国連地域機関NGO、企業、個人など様々なアクターがございますが、もとより、こうした人道支援復興支援は、一つ組織であるとか一つアクターのみで完結するものではなく、すべて規模目的優先順位も異なる複数の組織現場でより良い支援のための調整を行って、初めて点ではなく途切れない面としての支援が可能となるものと思います。  しかしながら、こうした様々なアクターの中でも、政府NGO官民人道援助復興支援には、その基本的性格から大きな違いがあることはお互い協力する上でも常に念頭に置くべきことかと思います。それは、国際協力に携わるNGO中立不偏性を旨として人道支援復興支援そのもの目的として成り立っているのに対して、ODA大綱の冒頭にもございますように、我が国ODA目的は、国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と平和に資すること、繁栄の確保に資することとありますように、あくまでも広い外交戦略外交政策の一環として成り立つものであり、人道支援が不偏的なものであるのに対して、ODA政治政策の一部である点です。  ここで私が申し上げておりますのは、だから政府支援は悪くてNGOが良いというような単純化した図式ではございません。こうした見解は誤っておりますし、こうした議論の中からは何も生まれません。ただ、より良い支援をするためには、お互いのこうした違いを認識することが大変重要ではないかと思い、まず申し上げさせていただきます。  さて、イスラム社会復興開発というとき、まず念頭に上がるのがアフガニスタン、そしてイラクに対する支援かと存じますが、援助関係者にとって、ともに今一番の懸念材料はその治安安全対策でございます。その際、議論に上がりますのが、軍と民の協力、あるいは軍隊が直接人道支援復興支援に携わることの是非でございます。民間の援助職員軍隊とどれぐらい密接に協力して働くべきかという問題は、援助関係者で最も意見の分かれるところでございます。これは、今日の議題であるイスラム社会に対する支援に特有のものではございませんが、この論争が特に高まりましたのが、コソボ紛争を始めとしてアフガニスタンイラクというイスラム社会でもあり、ここで言及させていただきます。  ここで言う軍隊というのは、当事国の中の軍隊ではなくて外国軍隊ですが、大別して、紛争当事者の間で結ばれた協定に基づいてPKOが行われる場合と、紛争当事者の合意なしに国際社会が介入に乗り出す場合、あるいは外国軍隊自体紛争当事者である場合などがあるかと思います。軍と民の協力、あるいは軍による人道支援には、また軍隊が直接支援する場合、物資要員警護をする場合、それから文民との情報交換、この三つに大別されるかと思います。  まず、物資要員警護ですが、軍隊協力なしには援助活動ができないという事態の出現はNGOの不偏不党の原則を危険にさらすことにもなりました。私自身は、ボスニアの紛争の折にPKOとして展開していた国連防護軍フランス部隊警護を受けて、セルビア勢力に包囲されていたイスラム教徒の飛び地であるゴラジュデで医薬品を配布した経験がございますが、PKOの場合はともかく、外国部隊による援助関係者の保護は必ずしも成功しないどころか失敗に終わる場合が多いという指摘もございます。外国軍隊武装して紛争地帯に介入する場合、地元の武装勢力にとってこれらの軍隊はもう一つ紛争当事者となって敵対心や敵がい心の対象となる、援助物資の輸送中は、これら外国軍隊の護衛を得て瞬間的に安全が高まったとしても、大局的には援助関係者軍隊が同一視されて、結果として危険性が高まるという結果を招きやすいというような議論です。  さらに、軍隊による直接支援につきましては、そのロジスティックス、兵たん部門の活用により効率的な支援が可能だという議論がある一方で、軍隊活動によりNGO軍隊の一部と見られ、その中立性あるいは不偏性が損なわれ、人道援助障害となる、要員安全確保が困難となる、NGO支援と比べ莫大なコストが掛かり、費用効率が悪い、現地文化ジェンダーを考慮した支援が困難だといった指摘もございます。多くのNGO物資援助の面でどれだけ有益であっても、この種の協力組織中立性人道的使命を致命的に傷付けると主張しているというのが大方の意見でございます。  アフガニスタンを例に取りますが、九・一一後の米軍による空爆と並行して行われた空からの食料投下が、これは米軍が行ったものですが、大変問題になりました。そのもたらした危険と費用効率からでございます。  アメリカは、アフガニスタンで四千万ドルを掛けて六千トンの食料投下を行いました。しかし、投下された食料が広範囲に飛び散って、高い殺傷力や焼夷弾としての機能を持つクラスター爆弾の子爆弾と同じ黄色の缶に入っていたことから、米軍は当時、食料パックと勘違いした住民が不発弾を拾おうとするのではないかと、ラジオ放送などを利用して警告を発するというような事態にも至りました。  また、その中身なんですが、国防総省はイスラム教律法にのっとった食べ物が入っているというふうに公表しているんですが、実際にはビスケットやピーナッツバター、ジャムやサラダなど、アフガニスタンの人々の食生活には合わないものが中心であったと同時に、その費用も、英国NGOの調べでは一キロ当たり七ドル五十セントもしていたと。同時期に国連世界食糧計画、WFPが行った小麦、油、砂糖を中心とした支援キロ平均約二十セントであったと。両者に大きな隔たりがあったわけです。  また、同じ団体の報告ですが、イギリス軍イラク南部粉ミルクを配給をしている件について、公衆衛生水質管理などの対策が取られているのかどうか英軍に確認するというようなこともございました。粉ミルクの配布というのが適切な場合もございますが、通常、緊急支援状態では粉ミルクを配布することは余りございません。清潔な水ですとか容器の入手が難しいことと、それから適切な栄養管理、これが不可欠になるためです。  また、昨年三月ですが、ユニセフが軍隊警護の下でトラックで水をイラク南部に届ける活動をしているやさきに自爆攻撃が発生したというようなこともございました。昨年八月の国連事務所爆破、それから九月に起きた英国地雷除去団体に対する襲撃、英国の方が一人亡くなっております。さらに、十月に起きたバグダッドの赤十字国際委員会事務所爆破事件は、中立人道援助の象徴とも言える赤十字標的としたものだけに、人道援助をも標的としたことは明らかでございまして、この事件は他の援助機関にも大きな影響を与えることになりました。  こうした危険な状況の中で要員の安全が確保できるか否か、援助ができるか否かということは、NGO政治や軍から独立しているというその一点に懸かっているというのが多くのNGO意見でございます。  では、こうした絶対必要な独立性確保した上で安全対策がどのように行われているのか。現在では、攻撃対象イラク人医療従事者NGO関係者にも及んでおりまして、いずれの組織外国人隣国などに引き揚げざるを得ないような状況にも陥っております。ジャパンプラットフォームの場合ですと、紛争地域における緊急人道支援の実績のあるNGO経験を有するスタッフのみで行うことですとか、当該地域において国際人道機関国連職員活動しており、またその日本NGOがこれらの人道機関と密接な協力体制にあること、それから治安情勢が悪化した場合に備えて撤退計画を事前に作成して関係機関に提出しておくこと、また常時通信可能な体制を維持して必ず最低一日一回は連絡を入れること、また活動に伴う危険を十分認識した上でNGO自らのリスクで行うことなどを活動の条件にして安全対策としております。  また、徹底した現地情報収集も必須ではございますが、いずれにせよ、私たちNGO支援は、戦争を終結させ、治安を回復し、和平を達成するということにおいては無力です。それは政治領域あるいは外交領域であり、今後、良き中立者あるいは調停者としての活動日本政府に望みたいと思います。  もとより、我が国は戦後、世界のほとんどの紛争に直接かかわらず、欧米諸国のように植民地主義経験も持たず、また人種差別政策宗教外国を差別することもしてこなかったために、日本国際的支援は全般的に政治的に中立とみなされております。大半の紛争地から遠く離れているという地理的な位置関係もございます。また、日本人の多くの信仰する宗教が仏教や神道であるということも大きな意味があろうかと思います。特に、イスラム圏での紛争人道的危機状況の折には、キリスト教ともイスラム教とも無縁の日本NGOはより中立的とみなされて活動の機会が多くなることと今までとらえておりましたが、今回の我が国イラク支援や自衛隊の派遣がこうした我が国NGOの強みにいかなる影を落としていくのか、今後の推移を慎重に見守ってまいりたいと思います。  次に、ジェンダーの問題に触れさせていただきます。  イスラム社会での復興支援で大きな注意が必要なのがジェンダーの問題です。女性立場権利については国あるいは地方によって大きな隔たりがございますので、イスラム社会というふうに一くくりにしてよいものかどうか甚だ疑問ではございますが、往々にして、イスラム圏ではジェンダー視点を、そういう文化だから仕方がないじゃないかと、そういう社会だから仕方がないというふうに安易に退けられる場合も多々あるようでございます。しかし、そうした理由で退けることなく積極的に取り組んでいく姿勢が重要ではないでしょうか。  特に、七九年のソ連の侵攻以来続いた度重なる戦闘とタリバンの支配により女性権利が著しく制限されてきたアフガニスタンの場合は、復興の過程でも最重点分野一つジェンダーの問題が上がっております。特に、長い内戦の結果、学校が壊されたり女子教育が禁じられてきた結果、アフガニスタン識字率は男性五〇%に対して女性が二〇%という数字がございます。我が国でも、政府、JICA、NGOともに直接、間接に女性支援念頭に、学校の修復ですとか女性教師医療専門家の養成、未亡人を対象にした養鶏事業などがなされております。  御承知のように、アフガニスタンでは女性の患者を診るための医師女性に限られます。女子生徒教育女教師に、また、地雷回避教育を教えるためのトレーナーも女性に限られます。こうしたことから、医師教師理学療法士地雷回避教育などの分野で、あらゆる分野女性専門家が不足しておりまして、その育成が急務でございますが、こうした人材育成カブールのような都市ならまだしも、地方では大きな障害が多々ございます。例えば、未婚の女性が一人で学校のある都市まで行くことは許されないことですし、既婚者であれば必ず御主人同伴でないと動けないような事態がございます。あるいは、部族長がそういったことは許さないというような問題がありまして、こういう状況女性のリーダーをどうやって育てていくのか。ただ、これもそういう文化だからまあ仕方がないというふうに終わらせない努力が肝要になってくると思います。  また、アフガニスタン女性の中でも多様性を忘れてはならないと思います。  タリバン政権崩壊直後、日本新聞紙上でも、カブール女性が次々にブルカを脱ぎ捨てているといったような報道があったかと思います。しかし、同じ女性と一口に申し上げましても、過去二十年間に置かれていた立場は千差万別でございまして、難民として欧米先進国で暮らしていた女性、それから、同じく難民として海外にいたとしても隣国パキスタンで暮らしていた女性、また、同じ隣国パキスタン難民キャンプにいたとしても、難民キャンプにずっといた女性と、それから、パキスタンのペシャワールには欧米NGO欧米政府資金助成でたくさんのアフガンNGOができておりましたが、そういったNGOで働いていた難民女性、また、難民にはならなくて国内にとどまった女性カブールという都市にいた女性地方の村にいる女性とでは大きな隔たりがございまして、画一的な対応ではなくて、こうした多様性を重視した視点が重要ではないかと思います。  二〇〇一年の十二月の暫定政権下でも女性課題省が設立されましたが、まだまだ女性地位向上を図るための本部機構としては十分に機能していないという指摘もなされており、一年前、女性課題省のカカール副大臣が来日した折には、現在の移行政権女性のエンパワーメントも含めすべてがゼロからの出発であることを述べたと聞きます。  紛争終結直後は国際社会からの支援が集中したアフガニスタンですが、イラク問題の発生もあり、先細りが予測されます。紛争終結直後のその巨額な資金を使いこなす準備のない段階に多額の資金がつぎ込まれて、やっとその力が付いた段階には各国の支援が、日本支援がないというようなことがないように、長期的な視野で支援を作っていくことがまた肝要ではないでしょうか。  最後になりますが、イスラム社会官民協力の一例として、我が国地雷対策地雷対策分野への貢献を挙げたいと思います。  アフガニスタン世界で最も地雷汚染が激しい地域一つでございまして、全土三十二州のうち三十州で地雷汚染があり、九・一一の前の時点で何と十か国で作られた五十種類の地雷の存在が確認されておりました。被害者数も八〇年代前半の最悪のときには年間で八千人、二〇〇一年の時点でも年間二千人から三千人の被害が出ていたと言われております。  これが二〇〇一年九月の米国同時多発テロ後の空爆内戦の激化により、除去現場の様相が一変いたしました。タリバン政権下でも約五千人のアフガン人除去要員地雷対策を続けていたわけですが、この九・一一後は完全な活動停止を余儀なくされました。  まず、九月下旬から十月中旬にかけて、タリバンを始めとする紛争各派国連ですとか様々な機材を持っている地雷除去団体事務所に押し入り、地雷除去機材車両略奪され、国連の推計では被害の総額は車両だけで八十台、また通信機器などその損害は金額にして数億円規模に達したと言われております。また、こうした略奪米英連合軍による空爆が拍車を掛けました。実際、誤爆により地雷除去団体事務所が破壊されましたし、また地雷探査犬訓練施設も爆破されました。さらに、米英軍空爆で使用した、先ほども申し上げた、クラスター爆弾の子爆弾がこれまでアフガニスタンでは一切使用されてこなかったこと、使用された経緯がなかったがために、それまで五千名いた地雷除去要員をまた改めて一からの訓練が必要になったわけです。  こうした折に、二〇〇一年十二月、日本NGO主宰アフガニスタン復興NGO東京会議が開かれました。アフガニスタンから二十八のNGOを招き、開催したわけですが、農業や教育保健分野とともに地雷対策分科会も開かれまして、三つNGOアフガニスタンから参加し、日本関係者意見交換をいたしました。  その際に、アフガンNGOは、こうした九・一一後の地雷除去停止状態ですとか略奪状況を報告して、とにかく一刻も早くまた地雷除去を再開することが必要な旨述べたわけですが、この会議には政府関係者出席しておりまして、その後、一月のアフガン復興支援会議に向けて様々な準備がなされ、十二月中に日本NGO、それからアフガンNGO国連日本政府とともにパキスタン地雷対策会議を開きまして、そこで、とにかく損失分を一日も早く日本の力で補てんして地雷除去が再開できるようにしようということで、二十億円の拠出が決定いたしました。  その後も、我が国は、アフガニスタン復興支援の中でも重要事項であります地雷対策貢献を続けております。現在、地雷対策部門の三分の一を拠出しておりまして、日本は最大のドナーであるわけですが、DDRの部門とともに我が国アフガニスタン復興支援の中で特に重要な治安対策貢献しているものと思われます。  日本政府支援もあって、元々五千人であった地雷除去要員ですが、現在、七千二百人にまで拡大しております。もう少しこの数は拡大しそうですが、これは除隊兵士の雇用の促進にもつながりますし、将来、万が一紛争が再発したときに、こうした要員の再武装予防にもなると思われます。  カルザイ政権は、二〇〇二年夏に地雷禁止条約に加入いたしました。地雷埋設国から一転、対人地雷全面禁止をうたった条約締約国になったわけでございます。これは本当に我が国の力も多いと思いますが、今後は、貯蔵地雷の破壊が大きな課題になってまいりますので、この分野も含め、我が国貢献できればと思います。  以上でございます。ありがとうございました。
  4. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  次に、津守参考人から御意見をお述べいただきます。津守参考人
  5. 津守滋

    参考人津守滋君) 津守でございます。  本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。  湾岸安全保障環境は、今回のアメリカ等によるイラクに対する軍事行動及びサダムフセイン政権崩壊によって大きく変わりました。現在の状況安全保障構造という観点から申し上げますと、まだ永続的な構造ができ上がっていない過渡的な段階、変則的な状況であろうかと思います。  湾岸安全保障については、三つ段階に分けて考えてみたいと思います。  第一段階は、サダムフセインイラク軍によるクウェート占拠、それに対する安保理決議六七八に基づくアメリカ及びその他の軍によるイラク軍クウェートからの駆逐、つまり湾岸戦争前の状態。それから、湾岸戦争後、今回のアメリカ等によるイラクに対する軍事行動までの十四年の間。それから、第三段階は、サダムフセイン政権崩壊後の状況、現在及び予見し得る将来。この三つに分けて考えてみたいと思います。  第一段階湾岸戦争が始まるまでの間の湾岸安全保障は、六〇年末まではイギリス軍がこれを一種のバランサーとしてその任務に当たっていたというふうに言えるかと思います。イギリス軍は、六〇年代末から七〇年にかけまして、スエズ以東から撤退しました。その後を埋める形でアメリカ軍が軍事的なプレゼンスを増強してきた。そして、八〇年代には、八年に及ぶイランイラク戦争の際には、ホメイニ革命影響を恐れるアラビア半島GCC諸国湾岸協力機構の六か国とアメリカがともにイラクを助けたと、軍事的に支援したということであります。  クウェートからイラク軍が放逐された後でき上がりました安全保障構造、これはレジュメ一の(1)にございますが、イラク軍イラン軍及びGCC軍米軍、この三者間で一定の勢力均衡が成立していたというふうに言えるかと思います。つまり、アメリカがこの湾岸において一種のバランサーとしての役割を果たしてきたということでございます。  ちなみに、このときのイラク軍の兵力は約五十万。湾岸戦争前は百万いたわけでありますが、湾岸戦争の結果、ほぼ半減したと。イラン軍はやはり五十数万。GCC軍は、これは全部「註」に載っておりますけれども二十万足らず、及び、アメリカ軍、若干のイギリス軍、合わせて五万、二十数万と。この三者間で勢力が均衡していたわけであります。  これをアメリカの対湾岸戦略という観点からいいますと、いわゆる二重封じ込め戦略であります。ダブルコンテインメント。この戦略は、九三年に、アメリカの中東研究家で二度にわたってイスラエル大使を務めましたインディクが唱えたものでありまして、実質上、アメリカ政府の対湾岸政策はこのダブルコンテインメント、二重封じ込め戦略に従って遂行されてきたというふうに言えるかと思います。  この点について、イラクはともかくとしまして、イランはどう考えていたかということで、私は九八年の二月にクウェートに着任してすぐにテヘランに行きまして、イラン関係者アメリカ湾岸における軍事的プレゼンスをどう考えるかという質問をしたわけでございますが、もちろん表向きはこれに反対ということでございましたが、実際は、サダムフセインの軍事的脅威が余りにも大きいために、イランアメリカの軍事的プレゼンスを必要悪として認めていたという感触を抱いたわけであります。  この点については異論もありますので、私はそこにクエスチョンマークを振ってあるわけであります。  次に、今回のアメリカ等によるイラクに対する軍事攻撃の後、安全保障環境はまた新たな展開を迎えたわけであります。現在、存在しております状況は、イラン軍は五十数万のまま。GCC軍プラス米軍も二十数万。これに対して、イラク軍は完全に崩壊したわけでありますが、そこに現在、御案内のとおり、アメリカ軍十四万、イギリス軍九千、それから、昨日の報道によりますと韓国の国会が三千人増派するということでありますが、こういった国合わせて約十六万のいわゆる連合軍が存在している、こういう状況でございます。  しかし、この現在の状況がどの程度続くか。つまり、アメリカ等によるイラクの占領が終わり、イラクの暫定政権ができ、さらに本格的なイラクの国軍が再建されるまでどの程度掛かるか、現在全く予想は立っておりません。  ちなみに、アメリカアラビア半島におけるプレゼンスでありますが、若干の変化がございまして、去年夏にサウジアラビアにおりました米軍をカタールに全員引き揚げております。現在、サウジアラビアにはアメリカの軍事顧問団が存在するだけであります。米軍の拠点はしたがってカタール、これは大きな空港がございます。バハレーンは、第五艦隊、海軍基地がございます。クウェートは約三万数千、イギリス軍を合わせますと約四万の陸軍が中心であります。こういったところがアメリカ及び一部イギリスのアラビア半島におけるプレゼンスでございます。  こういう状況が今後永続することはない。もちろん、予見し得る将来、湾岸における安全保障という観点からはアメリカの軍事的プレゼンスは、善きにつけあしきにつけ、これは一定程度必要だろうと思います。  しかしながら、アメリカ等の軍事的プレゼンスに全面的に頼る構造はもちろん永続しない。現地の住民の国民感情もありますし、それは過渡期のびほう策にすぎない。したがって、この安全保障面での構造をどのようにして補強し、補完していくか、これを考える必要があろうかと思います。  レジュメの三でございますが、その補強策、補完策の内容としましては、まず何よりもイラクではできるだけ早く治安を回復させ、イラク独自の政権を樹立し、そしてイラク国軍の養成を図る必要がある。イランという強大な地域の軍事大国が存在する以上、バランスを取る意味から、イラクにはこれに対抗するための、あるいは均衡を取るための一定の軍事力が必要であることは言をまちません。現在、ほぼゼロになりましたが、これを時間を掛けて、あるいはかなり早い段階イラク国軍を再建を図る必要がある。それとほぼ並行して、米占領軍の引揚げを、及び、場合によれば国連PKOあるいはアフガンスタイルの多国籍軍の治安維持部隊を派遣することが必要になろうかと思います。PKOについては、いわゆるPKO三原則の関係で、イラクPKOが可能なのかどうか、これは議論のあるところでありますが、取りあえずその点については、一応理論的可能性としてPKOということで触れておきたいと思います。  しかしながら、中長期的にこの地域安全保障構造をどうするか、これが私の本日のお話の中心的なテーマであります。レジュメの四になりますが、結論的には、ここに安全保障議論し、あるいは場合によれば政策を策定する多国間の枠組みを作る必要があるんではないかということであります。  この点で、特に重要な点は、その(一)の①に書きましたが、これは集団的防衛機構ではない、協力安全保障の仕組みであるということであります。コーポラティブセキュリティーという概念は、八〇年代の終わりにブルッキングス・インスティテュートで初めて使われ始め、特に九〇年代の初めにドイツのゲンシャー外相等がしばしばこの概念に言及しております。協調的安全保障という訳は一般的でありますが、私が、更にこれに積極的な意味を持たせる意味で、協力安全保障という日本訳の方が適当ではないかと思います。  換言すれば、この協力安全保障の思想というのは、いわゆる集団的安全保障、集団的自衛権の抑止、デタレンスではなくて、リアシュアランス、安心を主眼とするということであります。最近、若干この協力安全保障という概念は下火になっておりますけれども、しかしながら、これは現在の国際環境、この中東においても今後適用できる有効な、思想的な、考え方ではないかというふうに思います。  第二番目は、この仕組みは欧州にありますOSCE、欧州安全保障協力機構のような制度化は取りあえずは目指さない、むしろアジアにありますASEAN地域フォーラム、ARF、これはいわゆる会議の連続体と称しておりますが、つまり、事務局は設けないと。閣僚会議あるいはその下の事務レベル協議の会議を積み重ねる。これがARFの本質でありますが、こういうスタイルのものを作ることが適当ではないかと思います。  具体的な目的とその活動につきましては、まずARFと同じように、まず、あるいはOSCEとOSCEの前身であります、これはOSCEは九四年にできたわけでありまして、それ以前は欧州においても会議の連続体としてのOCSCというものがあったわけでありますが、まず、信頼醸成を図るということであります。信頼醸成の中身としては、国防費の透明性を図る、それから通常兵器の国連登録、これは日本政府がイニシアチブを取って国連に設けた制度でありますが、中東諸国がなかなかこれを利用しないという状況にありますが、この国連登録制度をその中東諸国にも活用する、あるいは軍事演習の事前通報、軍事演習への相互招待。これは実はイランとオマーンの間ではお互いの軍艦の相互訪問等は行われているわけでありますが、これをこういった枠組みの中で組織的に行うということであります。そして、信頼醸成の段階を終えた後は、ARFが目標に設定しておりますような予防外交、あるいは行く行くは紛争予防、こういう問題に取り組む。  さらに大変重要なポイントは、中東における軍縮であります。メンバーシップにつきましては、正式メンバーはイランイラク及びGCC湾岸協力機構、これはサウジアラビア、オマーン、アラブ首長国連邦、カタール、バハレーン、クウェートの六か国でありますが、この八か国で構成すると。そして、ここにオブザーバー、又は、ASEANにはPMC方式というものがありまして、毎年ASEANの外相会議の後、日本アメリカ、ロシア、中国等、域外国がASEANの外相と一緒になって協議をする、こういう制度がありますが、これをPMC方式と呼びますが、オブザーバー方式又はPMC方式で、この枠組みにはアメリカ、EU、それから日本、それからロシア、中国は安保理の常任理事国ということでここに参加してもらうと。エジプト、トルコについては、これは域外の非常に複雑な利害関係がありますので適当かどうか、これは域外国、特にこの正式メンバーの意向に従って場合によっては入れると、こういうことであります。  ここで大変重要な点は、こういうような枠組みを作る上で日本がまずリーダーシップを取る必要があるんではないか。日本はこれまでイランイラク戦争あるいは湾岸戦争、今回のアメリカイラク攻撃、いずれの場合もある意味では後始末をさせられたという面があるんではないか。後始末をするんではなくて、むしろ油の輸入の九割近くも依存している日本にとっては、この湾岸安全保障というのは死活的に日本の国益にとって重要であります。したがって、この地域安全保障の枠組みを作るイニシアチブを取る資格は十分ある。むしろ日本外交の積極性を示す能動的な外交という観点から、このような湾岸安全保障構造の枠組み形成にリーダーシップを取るということが大変重要ではないかと。  リーダーシップを取る背景としまして、一、二、三と書きましたが、まず、日本はこの地域政治的にいわゆる色が付いていないということであります。第二に、特にこういった枠組みを作る上で決定的に重要な位置を占めますイランイランとの関係では、御案内のとおり日本は非常に独自の政策を取ってきております。イランに対する日本外交は、これは日本外交の大きなアセット、財産であります。これを活用する。それから、言うまでもなく石油の九割近くを依存している。さらに、ここに書いておりませんが、ARFについても日本はASEANと共同してイニシアチブを取って作ったわけでありますが、ARFの経験を十分持っているというような観点から、日本がリーダーシップを取る適格性、資格は十分あるというふうに考えます。  ただし、日本が先頭に立ってその旗を振るのがいいのか悪いのか、これはやはり吟味する必要があると思いますが、一つの案としましては、このGCCの一か国であるクウェートにイニシアチブを取ってもらう。クウェートは、地図でごらんになればお分かりのように、地政学的、経済地理的に極めて重要な国であります。経済的には、現在ドバイの方が圧倒的に強くなっておりますが、安全保障を考えますと、クウェートの重要性というのは一向に減じていないのみならず、今後ますます重要になっていく。特にイラクとの関係では、言わばイラククウェートにとってはヒンターラント、後背地でありますが、イラクにとってクウェートはアウトレット、出口と、こういう関係にあります。それから、イランのやはり近くにも存在するということで、これまでクウェートは、湾岸戦争後、意図的にイランとの関係を重視してきております。  この点は、例えばアラブ首長国連邦はイランとの間では三島問題、領土問題がありまして、いつも関係がぎくしゃくしている。サウジアラビアがイニシアチブを取るにはちょっと大き過ぎるということで、正にこのような構想を進める上でイニシアチブを取る国としてはクウェートが非常に適している。実は、私は昨年二月に、アメリカイラク攻撃をする一か月前にクウェートに行きまして、クウェート関係者とポスト・サダムについて話をしました。その際にこういう枠組みを提示しましたところ、イラクのかなりの関係者は大変な関心を示したということを付言しておきます。  最後に、この地域の極めて重要な問題であります大量破壊兵器、今回のイラクに大量破壊兵器があったかどうか、大変議論になっておりますが、私の考えるところ、サダムフセインと大量破壊兵器というのは切っても切れない関係にある。七〇年代にフランスから二基の原子力発電所を導入しました。これについて昨年、フランスのドゴールの右腕と言われた、現在九十七歳ですが、ガロア博士が、そのときにフランスは当然イラクは核兵器を作る意図を持っているということはもう分かっていたということをフランス人が言っているんですね、ドゴールの右腕が。それに一番脅威を感じたのはもちろんイスラエルでありまして、八一年に二基のうちの一基のオシラクの原子力発電所を空爆をして破壊しているということであります。  その後、イランイラク戦争では化学兵器を何回も使うというようなことで、いろいろ今議論されておりますが、私はサダムフセインと大量破壊兵器というのは切っても切れない関係にある。それは、アラブの盟主になるためにはイスラエルに対抗するための大量破壊兵器を持つ必要がある、これがサダムフセインの基本的な考えであるというふうに私は理解しております。  この地域に大量破壊兵器を禁止するためのイニシアチブは既に七四年の段階で、当時のイランのシャー・パーレビとサダト・エジプト大統領が共同提案で中東非核地帯構想を出しております。以後、毎年のように国連でこの提案が出されています。しかし、もちろんイスラエルはそう簡単には乗ってこない。イスラエルも絶対に反対だというわけではない。ここに前のイスラエル大使がおりますので、間違っておれば後で訂正していただきたいと思いますが、私の知る限り、イスラエル立場というのは、そこに書いていますとおり、まず大量破壊兵器を持っているかどうかは否定も肯定もしないと。それから、外部からの脅威がなくならない限り抑止力が必要だと。それから、信頼醸成が先決だと。もちろんこれはパレスチナ問題であります。NPTやIAEAは信頼できない、その証拠に、イラクが核兵器を開発しようということをIAEAは全くストップ掛けられなかったではないかと、これがイスラエル立場であります。  したがって、このような合意を作る場合には、ラ米で現在、トラテロルコ条約に基づいてラ米非核地帯構想というのがありますが、これは例えば査察についてはチャレンジ査察あるいは相互査察、こういったIAEAにはないような厳しい査察制度を取っておりますが、こういうものであれば自分たちはのめるということをイスラエルはこれまで非公式にも言っております。  いずれにしましても、パレスチナ問題が片付かない限り、こういった大量破壊兵器の禁止条約はできないと思いますが、やはり将来の目的としていつもこれを念頭に置いていく必要がある。湾岸にもし今述べましたような新しい仕組みができた場合には、もちろんそういったものも目指すべきだというふうに考えます。  最後に、「註」の四でありますが、一番最後にケネス・ポラックの案というのを書いております。ケネス・ポラックというのは、九五年から九六年、九九年から二〇〇一年までの二回にわたって、NSC、ホワイトハウスの国家安全保障会議湾岸部長をやったアメリカきっての湾岸通であります。彼は、昨年七月、八月のフォーリン・アフェアーズでポスト・サダム湾岸安全保障について三つの案を提示しております。  一つは、沖合均衡と、これは私の勝手な訳でありますが、オフバランシング。これは、要するにアメリカが余り裸のままでアラビア半島に存在するのは良くない。むしろ、カタールの空軍基地とか、あるいは武器を集積しておいて、あるいはディエゴガルシアに武器を集積しておいて、いったん緩急あるときはアメリカが出動すると、こういう考えであります。  二番目は同盟制度。かつてはバグダッド条約という反共同盟がありましたが、うまくいかなかった。ここにも新たな形の同盟条約を作ればと。  最後に、安全保障共同体、これは正に私が先ほどから説明していたような同じ思想であります。ただし、この思想の中には日本という言葉は一言も出てこない。この雑誌の文章にはアメリカが主導権を取ってこれをやるというふうに読めるわけでありますが、それはアメリカが主導権を取ったらうまくいかない可能性がある。むしろ正に日本の出番ではないかというふうに考えます。  どうもありがとうございました。
  6. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  次に、茂田参考人から御意見をお述べいただきます。茂田参考人
  7. 茂田宏

    参考人茂田宏君) 茂田でございます。よろしくお願いします。  参議院の国際問題に関する調査会が中東問題について、かつイスラムとの関係について関心を持たれるというのは大変意義深いことだと思います。従来、この中東に対する関心というのが日本国内で全体として低くて、かつその低さが中東が日本に対して持つ意味との間で釣り合っていないというふうに感じておりましたので、大変いいことだと思います。  私、今日申し上げたいのは中東和平、中東和平について私の意見を申し述べたいと思いますけれども、レジュメをお配りしましたが、中東和平問題は二千年以上に及ぶユダヤ人とアラブ人の対立の問題だというようなことがよく言われます。しかし、これはそういうものではありません。二十世紀初頭、更にさかのぼっても十九世紀の末から起こったユダヤ人のナショナリズムとその後で起こってきたアラブ人のナショナリズム、このナショナリズムが対決している問題だということであります。したがって、何か大変深い宗教的な根があって解決が不可能だと、不可能に近いような問題であるというふうにはお考えいただかない方がいいのではないかというふうに思います。宗教的要素がこの紛争に全くないわけではありませんけれども、本来はそういう問題ではないということであります。  それから、この問題の解決の在り方ですけれども、解決の在り方についても大筋は大体もう分かっていると言えるかと思います。今、イスラエルが西岸・ガザを占領して占領行政をしいているわけですけれども、この占領を終わらせると、その終わらせた後にパレスチナ国家をつくると、それからそれに見合いましてアラブ諸国がイスラエルの存在を認めるということで、この二つの国家の間で平和共存を成立させるというのが解決策です。イランとか、それからパレスチナ内での過激派、イスラエル内での過激派がこういう解決策に反対していますけれども、これはほんの少数にすぎないと。大多数はこういう解決策を望んでいるということであります。国際社会もほとんどがそうだということです。  そういう状況でありながら、なぜこの問題が解決を見ないのかということなんですけれども、それは幾つかの点で双方が譲歩できない、譲歩しないということで、和平の努力、今言ったような和平の形ができる状況が頓挫すると。その頓挫の中で一方が暴力を行使する、それに対して他方がやり返すということで、暴力の悪循環に陥りがちであるというのがこの問題が解決しない原因だと思います。  私は、日本イスラエル大使というのは、イスラエルに対する大使であると同時にパレスチナに対する大使なんです。したがって、アラファトさんともしょっちゅう会っておりましたけれども、とにかく今の暴力の悪循環というのは、イスラエル、パレスチナ双方にとって大変不幸な事態であるということです。これを終結するために努力をしていくということが求められていると思います。  パレスチナ国家ができる、パレスチナ国家をつくっていく過程においてどういう問題があるかということを少しお話ししたいと思います。  これは、もう皆さん方よく御存じの話であろうかと思いますけれども、幾つかの大きな問題があります。一番難しい問題というのは難民問題です。難民問題というのは、イスラエルが成立したときにパレスチナ人がいろいろ逃げたり追い出されたりして難民が発生したわけですけれども、難民が今も難民としているということです。パレスチナ民族運動の非常に大きな眼目というのは、この難民を帰還させるというのがその眼目でした。ただいまこの難民の数は三百万から三百五十万人になっております。イスラエルは現在六百万の国ですけれども、五百万がユダヤ人、百万がパレスチナ人です。イスラエル国内でパレスチナ人の人口増加率というのは大変大きいんです。ユダヤ人の人口はそれほど増えておりません。したがって、この難民がもしイスラエルに帰ってきた場合には、これはイスラエルがユダヤ人の国家として存続することができなくなるという問題がございます。異民族の国家になってしまうということで、この難民の帰還はイスラエル側から見るとユダヤ国家としての自殺行為ということになります。この問題をどうするかということがございます。  国連では、今でも国連総会決議一九四という決議がありますけれども、それを再確認しております。再確認することによって難民が帰還できるんじゃないかという希望をパレスチナ難民に与え続けているんです。そういうことが果たしていいのかどうかという問題が一つございます。  二番目の非常に難しい問題、これがエルサレムの問題でございます。お配りした資料の最後のページを開いていただきたいと思いますけれども、これはエルサレムの中心部の神殿の丘の写真であります。こちら側に出ている壁のところで小さく写っているのがユダヤ人がお参りしている図であります。そこに黄金のドームを持ったモスクがありますけれども、これが岩のドームです。その一番この写真の右側にあるのがアル・アクサ・モスクというイスラム教のモスクであります。このエルサレムに対してユダヤ人、イスラム教徒、それぞれが大変な思い入れを持っているということがございます。  実は嘆きの壁に向かってユダヤ人が祈っているんですけれども、私、イスラエル、ユダヤ人になぜこの遺跡の壁に向かって祈るのかということを質問しましたら、大使は全く分かっていない、ここは神殿の跡なんだ、神殿というのは神がいるところなんだ、ローマはこの神殿を壊したけれども神を引っ越しさせたわけじゃないんだと、したがって、ここに神様がいるので、神様に向かって祈っているんだという話で、ユダヤ人にとってはこの部分は大変聖なる場所です。  ユダヤ人の過越の祭りというのがありますけれども、そこに行きますと、出エジプトの話などがずっと続くんですけれども、その晩さん会の最後には必ず、来年はエルサレムでと、来年はエルサレムでということでその晩さん会を終えるんです。これをユダヤ人というのは二千年くらい続けてきたということがございます。  ユダヤ人の結婚式に行きますと、結婚式の最後にはグラスを踏みつぶすんです、新郎が。それは、なぜそういうことをするかといいますと、この結婚という楽しいときにもエルサレムの神殿が破壊されたということを忘れるなというために結婚式の後で新郎がグラスを踏みつぶすんです。そういう思い入れがユダヤ人にありまして、永遠の不可分の首都、イスラエルの永遠の不可分の首都エルサレムというのがユダヤ人の頭の中にかなりしっかりとこびり付いているという、そういう思い入れがございます。  他方で、イスラム教徒については、ムハンマドが天国に行ったときに最後にけった岩というのがこの黄金のドームの下にあるんです。そこには馬のひづめの跡があるというような話がありますけれども、私もよく見てみましたが、しわが寄っていますけれどもどうもよく分かりませんでしたが、そういうことになっている。ムハンマドの時代にももう既にエルサレムというのは聖地としての意味がありまして、ムハンマドがメッカから、メッカ、メディナから天国に直行してもよかったんですけれども、直行しないでエルサレムでトランジットしなきゃならないと考えたんですね。それでエルサレムに必ず寄る。その結果としてこのエルサレムはイスラム教徒にとってもメッカ、メディナに次ぐ第三の聖地になっているという問題がございます。この問題をどう扱っていくかということが大変難しい問題としてございます。  それから、国家をつくるためには国境線を決めなければいけませんけれども、その国境線をどこにするかということで、お配りした資料の中に国連の分割決議、その後の独立戦争の後の地図、一九六七年の戦争の後の地図というのをお配りしてありますけれども、国境線をどうするかという問題がございます。この一九六七年の戦争が始まる前の線が大体国境線となるべき線なんですけれども、それをどこまで尊重するかという問題がございます。  それから第四点としまして、パレスチナ国家、樹立されるパレスチナ国家の軍事力をどうするかという問題がございます。私は、パレスチナ人には、日本国も憲法第九条というのがあるんだけれども自衛隊も存在していますよというような話をしておりましたが、このパレスチナ側に軍事力を持たせたくないというのがイスラエル側の考え方であります。それからもう一つは、パレスチナに対して軍事同盟を結ばせたくないということがございます。これはパレスチナが国家として独立した後、イランイラクと、今はイラクは変わりましたけれども、イランイラクと軍事同盟を結ばれてはかなわないということで、そういうことでのいわゆる安全保障措置の問題がございます。  それから入植地の問題というのがございます。これはイスラエルがこの西岸・ガザにいろいろな入植地を造ってきたということで、その入植地を撤去する問題というのがあります。こういう点が問題になりましてこの和平の問題が進んでいないということであります。  最近はイスラエル側が一方的な分離ということを主張しまして、分離するための壁というのを造っております。ただ、この壁が一九六七年の国境線には沿っておりません。西岸・ガザの側のパレスチナ側の領土をイスラエル側に囲い込むような形で壁を造っているという問題がございます。  私は、この中東和平問題というのは、イスラエルとパレスチナ側が話し合って双方が納得できる、そういう解決策が出てくるのが一番いいのだろうと思います。しかし、この問題はもう何年間もそういうことを目指して努力をしてきたということなんですけれども、和平が実現しない。最近の暴力の応酬の結果、私はますますイスラエル側のパレスチナに対する、またパレスチナ側のイスラエルに対する不信というのが深まっていると思います。これはもう既に不信というものを通り越して相互憎悪、憎悪にまでなってきているというような感じがいたします。私はこうなってきている段階では、アメリカを始めとする国際社会が介入をして双方に解決策を、言葉は悪いんですけれども、押し付けるぐらいのことでこの和平を進めていかないとこの中東和平は実現しないのではないかというふうに思います。  日本役割ということに関しては、和平の当事者に努力を促す、米国を始めとする関係国に努力を促すということをしていくということですし、その努力を促していく内容というのは、国連決議二四二というのがありますけれども、それに基づいて和平をということを促していくということかと思います。ただ、そういう努力を日本がしていくためには、一方ではイスラエル日本が信用されなきゃなりません。パレスチナ側からも日本が信頼を得なきゃなりません。それから、アメリカに対しても原則に基づいたきちっとした意見を言うということが必要だろうと思います。ただ、私はイスラエル大使をしておりまして、率直に言って日本影響力、日本の力というのには限界があるということも自覚させられました。したがって、そういう力の限界も自覚しながらこれをやっていくということかと思います。  中東和平の問題としましては、パレスチナの問題に加えましてシリア、レバノンとの和平の問題がございます。ただ、これは私はパレスチナ問題と比較しますと簡単な問題であるというように思います。ゴラン高原をイスラエルがシリアに返還する、それに伴って安全保障上の措置を取るというのがこのシリアとイスラエルの和平の内容になると思いますけれども、これはパレスチナ問題よりはずっと解決が容易であると思います。レバノンというのは今、シリアの支配下にあると言っても差し支えありません。したがって、イスラエルとシリアの和平が片付けばレバノンとイスラエルの和平が片付くということであります。  それから、今日の議題に即して言いますと、この中東和平との関係で日本がやってきたことというのは、パレスチナが国家として成立してくるのを手助けする、パレスチナ人の今の現状に対する不満を緩和するというような趣旨で、中東和平の下支えということでパレスチナ支援というのをやってきました。このパレスチナ支援というのは、ODAのことが、削減される中でいろいろな問題が提起されておりますけれども、私は、このパレスチナ支援というのはアラブ世界日本との関係という意味で大変大きな意味がある、大変大きな評価を得ているということを最後に申し上げたいと思います。  以上でございます。
  8. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  これより質疑を行います。  本日も、あらかじめ質疑者を定めず、質疑応答を行います。  質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきます。  できるだけ多くの委員の方々が質疑を行うことができますよう、委員の一回の発言時間は五分程度でお願いをいたします。  また、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  なお、理事会協議の結果でございますが、まず大会派順に各会派一人一巡するよう指名をいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、山崎力君。
  9. 山崎力

    ○山崎力君 自民党の山崎でございます。  いろいろお話、三参考人の方々、ありがとうございました。それぞれごもっともと言うと非常に失礼な言い方ですけれども、納得できるお話だったと思います。  ただ、私個人のこれは感想なんですが、一言で言えば、そうなんでしょうね、だけれどもどうなのよといいますか、どうしたらいいのよという疑問が日本として残るという内容でございます。  というのは、私どもが、共通していると思いますが、イスラム社会との付き合い方というよりは、むしろもっと端的に言えば、一神教の価値観を持った人たちとの付き合い方をどうしたらいいのかということが、キリスト教と、長い間といってもせいぜい百数十年ですけれども、その考え方、価値観が一神教の考え方だというふうな形で来て、それがそうでもないんだというのが分かったのがつい最近と。で、どうするということが、申し訳ないんですが、参考人の方々の話から余り見えてこない。そこのところがしっかりしないと、私自身、だからこれでいけばいいんだといったところになかなか方向性が見えてこないと、こういう気持ちを持っていますので、その辺のところを中心に御回答願えればと思います。  まず、発言された方と逆になりますが、発言順でいった方がいいかな、それじゃまず長参考人にお尋ねしたいんですが、要するに、NGOのいろいろな問題ございますけれども、例えばイラクの問題、あるいはアフガニスタンでも結構ですが、このNGO自体に伴ういろいろな難しいこと、これすなわち軍との絡みというものもおっしゃっていましたけれども、そうではなくて、イスラム社会に対してのNGOとしての難しさというものですね。それから、そこのところでの政府、あるいはそこに介入してきている外国の実力組織、軍というようなもの、これはほとんど、キリスト教がほとんどでございますから、そういった中での難しさと、そしてその中で、ある種、仏教、神道、そういった形での一神教でない日本人としてのアイデンティティーの持ち方といいますか、そういったものがどうマッチングするんだろうと。逆に言えば、日本国内の人にその辺のところをどう説明したらいいのかということを教えていただきたいと思います。  それから、津守教授にお願いしたいんですが、いろいろな湾岸のことがございましたけれども、おっしゃっていた部分あるんですが、いわゆる実力組織、具体的に言えばアメリカ・プラス・イギリス・プラスどこかということなんですが、そういう軍抜きでいろいろな安全保障の枠組みが可能なのかということでございます。さっきもおっしゃっておられたように、何というんでしょう、そういった中では、抜きで、オブザーバーでやっぱり入れなきゃいかぬということをおっしゃっていましたが、そういった中で、そこのところが入ればどうしても実力組織のたがというものが必要だということにもなりかねませんし、そこに日本がリーダーシップを持つということが、イラククウェートのバックでということは、それがリーダーシップと言えるのかと。確かに外交テクニックとしてはいいかもしれないけれども、日本の国民としてそういうふうなことがリーダーシップを取ったというふうに外交を見ることができるのかという基本的な疑問を感じました。  最後に、茂田参考人でございますけれども、これはほかの参考人の方々にもそうなんですが、すべての何かするといったときに、十分御存じだと思いますけれども、このテロといいますか、イスラムの大義というものに基づいた、少数派であろうともその実行に対してイスラム教徒としてそれをストップ掛けれないと。せいぜい反対だと言って、そういうふうな暴力的なことは反対だと言うけれども、それを体を張ってというか、実力でそれを阻止することがイスラム教徒として果たしてできるんだろうかという根本的な疑問がございます。  ということで、私、最後の方で結論的に言わせていただければ、このイスラム社会との付き合い方というのは、非常に日本としては、おずおずとといいますか、消極的な方がいいんじゃないか。もっと端的に言うと、身近な北朝鮮あるいは東アジアの安全保障、そういったものに日本がしっかりとしたことを考えて実行するかどうか分からぬときに、幾ら油のためといいましても、そこのところだけでいけば、正に金のために介入しているとしか思えないという気持ちの部分、逆にそういう気持ちを持っている。  そして、今回のイラクへの派遣の問題も、自衛隊の派遣の問題も、一言で言えば、その北朝鮮の問題と、アメリカに対して、自分たちもそれなりのことをしているんだよという、同盟国としての最低限度のことをやるんだという、皆様方の考えている、アメリカに物申す、日本がリーダーシップを何かのために取ると、取れるような基礎固めをするために派遣したんじゃないのかなと、そういう国益を考えていたんじゃないのかなと。その辺は説明はしていないとは思いますけれども、そういうふうな感覚で私思っておりますので、その辺に対しての御意見もあればお答え願いたいと思います。
  10. 長有紀枝

    参考人長有紀枝君) 山崎先生の御質問、どこまでお答えできるか分かりませんが、私見を述べさせていただきます。  日本NGOイスラム社会、特にアフガニスタンで働く場合にやはり一番念頭に置かなければいけないのは、イスラム教と、それから女性という問題です。欧米NGOもそういう面が多々あるかもしれませんが、日本NGOの場合、やはり女性が圧倒的に多うございます。これまでの様々な現場ですと、女性だけが現場に出るとか、女性だけのチームというのが十分成り立つ場合も多うございましたが、イスラム社会においては、女性だけで行っても一切お仕事はすることができません。まず、政府関係者など相手が男性の場合には、一切会っていただくこともできないですし、ですので、まず、女性、それと女性一人では、イスラム社会、歩くことさえできない。場合によっては、一人で歩いていますと、もう私はだれの庇護も受けていないフリーな立場だから何をされてもいいというような意思表示になりまして、実際、ちょっと道端を横切っただけでも体を触られたり、ぴたっと付いてくる男性がいたり、そういうような状況で、そこで働く女性陣のストレスも大変なものでございます。  そうすると、必ず男女ペアでなければいけない。小さいNGOなどでは複数の男女をペアで出すというのは大変難しい問題がございます。かといって、男性だけでいいかといいますと、女性に対する支援の場合は、これは完全に女性でないとできないわけですから、必ず男性、女性出すということがイスラム特有の必須条件になるかと思います。  それからまた宗教に関連してですが、なかなかイスラム教あるいはイスラム社会専門家NGOの職員として現地に出すわけではございませんので、NGO職員にとってもイスラムというのは初めての経験でございます。どこに行っても、例えばお茶を一杯飲むにしても出てくるのは全部男性で、女性というのは不可侵といいますか、顔を見てもいけない。仲のいい友達であっても奥さんは紹介してもらえないと。そういう中で、何か女性に対することで問題を起こしてしまうと、命がねらわれるような場合もありますし、場合によってはその団体自体が撤退しなければならないような場合にもなると。実際、そういうことが起きた団体も聞いております。これは女性の問題だけではありませんが、イスラム教に対する冒涜などがあった場合も同じでございます。そういったことに対する知識といいますか、そういったものが必要になるのではないかと思います。  もう一つアフガニスタンなどで難しいのは、やはり二十代、三十代、場合によっては四十代の日本人の男性、女性が行くわけですが、人生経験、これまでの艱難辛苦という面からいきますと、アフガニスタンの職員、現地の方の方が大変な困難を今までなめてきたわけですので、相手の方が一枚も二枚も三枚も上手といいますか、そういう意味で、なかなか全員をまとめていくのが難しかったり、あるいは金銭的な面でも苦労するような場合も多々ございます。  そういった中で、やはりそれでもなお日本NGOとして強みがあるかなと思いますのは、やはり宗教的な側面といいますか、社会的なバックグラウンドといいますか、日本人が一神教とは比較的無縁であったがゆえに、キリスト教的、西欧的な考えですと善悪両極端に判断するような場合があるときに、その中庸で灰色の部分というのが理解できるのが日本人の強みではないかと思っております。これが、現地でとにかく二極化されてしまうような構造の中で、どちらかが善、どちらかが悪というのではなくて、両方の意見を考え、聞けていけるという部分が日本人の強みであり、日本NGOの特性にもなっていくのではないかと思っております。  以上です。
  11. 津守滋

    参考人津守滋君) もっともな御指摘をいただきましたが、まず第一点、単なる話のための場を作るだけでは安全保障確保できない、実力が必要じゃないか、全くおっしゃるとおりであります。  これは、正にアジアにおきましてはアメリカがハブ、それから日米、米韓、こういうのがスポーク、ハブ・アンド・スポーク・システムと言われておりますが、これを補完する形でARFというのがあって、ARFは決してそういうハブ・アンド・スポーク・システムに代替するものでない。同じことが中東についても言えるわけでありまして、申し上げましたように、やはりアメリカのプレゼンスというのは最低必要だろうと思うんです。ただ、それだけではうまくいかないんではないかと。それを補完する、補強するシステムとしてその新しい枠組みが必要じゃないかということでございます。  それから第二点の、日本がイニシアチブを取るといっても余り大した意味はないんではないかというような御指摘だったように思いますが、これは私はやっぱり、イラン要素をさっき申し上げましたが、これは大変重要だろうと思うんですね。イランが参加しないとこれはできないんです。ところが、イランアメリカは今の状況からいいましてとても話す状況にはない。ここに私は日本の出番があるというふうに考えるわけです。それは、さっき申し上げた日本外交の非常に大きなアセットとしてまず評価する必要があって、対イラン外交をですね、これをフルに利用するということではないかと思います。別に、そういうものを作ったからといって、日本がそこに軍隊を派遣してその軍事的なプレゼンスを確保するという話は、もちろん憲法上もできませんし、そういうことではございません。  それから、イスラムというものの非常に大きな問題提起をなされたわけで、私はとてもそういう文明論できる立場にありませんが、二年間クウェートにおりまして感じましたことは、ちょうどハタミ大統領が文明間の対話というのを唱えた時期でありまして、いろんな考えの違いを克服して、あるいは克服しなくても対話を進めようというムードが広がったわけですね。  それで、その際よく出てくる言葉は、ヒンズー、インドの昔の賢人が、真理は一つだと、賢者はそれを様々に説くと。これはしょっちゅう出てくるんです、つい最近の宗教学会の東京での会議でもそれは出てきましたが。要するに、釈迦にしろマホメットにしろキリストにしろ、あるいはモーゼにしろ、言っていることは結局同じだというふうな見方がイスラム社会にもあるわけですね。ですから、一神教だ多神教だということは余り区別して言う必要はないんじゃないかと、これは全く私の私見でございますけれども、そういう感じがします。  特に、クウェートの知識人は、非常に指摘してきたのは、日本とイスラムというのはいつもヨーロッパを通して間接的にしか接触がなかったと、これからは直接の接触をしたいということをしょっちゅう言っていました。実は、明治の後、日露戦争日本が一応の勝利を収めた後、イスラム社会が一斉に日本に顔を向けたんですね。そのときに、むしろイスラム教日本に取り入れてもらいたいということでいろんな形で働き掛けがあって、そういう意味ではイスラム社会においては日本に対する親近感というのはかなり伝統的に根強いものがあるというふうに考えています。  非常に卑近な例であれなんですが、クウェートには日本人が二百五十人しかいません。しかし、一割は、日本女性が、クウェート人と結婚した日本女性なんです。すべてうまくいっています。これは、ドイツ人と結婚する日本女性というのはうまくいかないんですけれども、いかないケースが間々あるんですが、クウェート人と結婚した日本女性は全部離婚せずうまくいっているんですね。というようなこと、極めて卑近な例でございますが。
  12. 茂田宏

    参考人茂田宏君) 会長、どうもありがとうございます。  山崎先生の問題提起は大変大きくてなかなか答えにくいんですけれども、最後の方の部分からちょっと話していきますと、日本にとって、東アジアでの安全保障問題、北朝鮮問題、これがイラク、中東の問題より優先度が高いというのはそのとおりです。したがって、その件については我々真剣に取り組まなきゃなりませんけれども、だからといって中東でおずおずする必要もないのではないかという気がします。私は、中東で日本が言うべきことというのは、それはあれば言っていったらいいだろうというふうに思います。  それから、対イラクとの問題についての一番我々が払うべき大きな考慮というのは対米協力じゃないかという御指摘がございましたが、それはそのとおりだと思います。対米協力するためにあそこに行ったということだと思いますし、それはそういう判断でいいのだろうというふうに思います。  それから第二点目は、テロのことに触れまして、山崎先生、イスラム教徒はテロリストと闘っていないのではないかというふうな趣旨の御発言がございましたけれども、それはそういうことはないというふうに言いたいと思いますですね。エジプトの政権は、イスラム教ジハード、ジハード団、イスラム集団に大変強い弾圧を加えてきました。シリアも、イスラム過激派に対しては大変きつい対応をしてきたということで、イスラム諸国もこのテロ集団というものに対しては大変厳しい姿勢を取ってきたということだと思います。  その中で、スーダン、一時期のスーダンそれからついこの間までのアフガニスタン等でアルカイダ等が活躍していたわけですけれども、イスラム諸国がテロについて、それをストップするのに十分な役割を果たさなかったということでは必ずしもない。ただ、非常に難しい問題であるということが言えるかと思います。  そして三点目、一神教の問題と日本のような、日本の神道ですとか仏教とかの関係ですけれども、これについては、日本のような考え方というのは非常に寛容だから、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の間に立って対話の促進に役立つのではないかというふうな意見がございますけれども、一神教の人から見ますと、多神教の人というのは価値観がない人だというふうに考えておりまして、基本的には敵対的な感情を持っているということです。したがって、自分は仏教徒であって、いろんな価値を信じているんだと、したがってあなた方我々の意見も聞いてみたらどうですかというような意見は、一神教の信徒にとっては余り説得力はないということです。  したがって、私は、この一神教と多神教の問題については、これはそういうものとして存在しているということを前提として考えていくべきで、どちらがどちらに影響を与えるというようなことを考えていくことをやりますと非常に大きな問題を引き起こすだろうというふうに考えます。  それから、日本国が中東等で果たし得る役割というのは限られているのではないかという御指摘については、そのとおりです。その限られている中でも、やることはあるのかなというふうに思っております。  以上でございます。
  13. 山崎力

    ○山崎力君 済みません。ちょっとあの、今……
  14. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 山崎さんから再質問の御要望があるんでございますが、今日は質問のお申出の方が大勢いらっしゃいますので、本来では止めたいんですけれども、許しましょうか。  では、短く、どうぞ。
  15. 山崎力

    ○山崎力君 今の私の聞き方が悪かったのかもしれませんが、テロとの問題、アラブの大義を持ち出したのは、国家が、そういうテロリストに対して行政府がやったというのは、シリアでもやったことも知っています。ただ、私の、このときで言っているのは、いわゆる宗教指導者、民間に対しての、物すごく一般の人に対しての大きな影響力を持つ人たちが、あれを止めろと、あれをやっつけろというようなことはほとんど言っていないし、むしろ黙認しているような発言の方が多い。それに対して、政府その他も強くそういった人たちを取り締まっていないではないか、そういう意味で、結局黙認した形である種野放しに近いような活動を許している部分があるのではないかと、その辺のところをお伺いしたかったわけでございます。
  16. 茂田宏

    参考人茂田宏君) よろしいですか。  私は、山崎先生言ったのは大体そのとおりだと思います。イスラム宗教界がもう少しオサマ・ビンラーディンなんかが主張しているイスラムの解釈について発言すべきだと思うんです。それがなされていないということは、そのとおりだと思います。  タンタウィさんというアズハール・モスクの総長さんがいますけれども、この人がエジプト政府の意を体して少し発言をしております。しかし、それ以外の宗教指導者が、大衆との関係を考慮しているのかどうか分かりませんけれども、はっきりした発言をしていないというのは御指摘のとおりだと思います。それをどうすれば是正できるのかはよく分かりませんけれども、事実としてはそういうことがあるということだと思います。
  17. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  続きまして、池口修次君。
  18. 池口修次

    ○池口修次君 民主党・新緑風会の池口でございます。できるだけ簡潔に御質問をさせていただきたいというふうに思っております。  私がお聞きしたいと思っているのは、これから日本はどのような国際貢献をすべきかという観点でございます。これから日本にとっては、私は国際貢献というのは非常に大事なことだというふうに思っておりますし、ある意味、これから日本が、どの程度発展できるかというのはありますが、やっぱり国際社会の中で生き残っていくというためには、この国際貢献をしなければ私はなかなか国際社会の中で生き残ることは難しいんではないかというふうに実は思っております。  ただ、どういった国際貢献をすべきかと。特に、紛争地域なり不安定な地域での国際貢献が、日本がどういう形でするのかということで言いますと、ある意味、貢献というか、支援のやり方によっては、場合によっては宗教間の対立なり部族間の対立をかえってあおることになるんではないかなというふうにも思っております。  今回のイラク特の中でも一部議論があったわけですけれども、自衛隊が派遣をされるに当たって、イラクに宿営地を借り上げをすると。その費用が百万ドルなのかどうなのかというのは、これはマスコミで聞いているだけなんですが、かなりのお金があの地域に落ちると。そうすると、それが一つの部族の中にお金が落ちた場合には、かえってそれがあの地域の不安定要因を増すんではないかというような議論もしたわけですけれども、特に今日のテーマでありますイスラム地域社会に対する貢献ということをやろうとするときには、文化的な違いなり宗教的な違いもありますので、どんな点に気を付けなければいけないのかということと、日本として一番いい形、支援の形というのはどういう形でやるのがいいのかというのを三名の参考人の先生にそれぞれお聞きをしたいというふうに思っております。よろしくお願いします。
  19. 長有紀枝

    参考人長有紀枝君) 今、池口先生がおっしゃられたとおり、何か支援をする場合に現地の既にある均衡を崩さないような形、大変重要な御指摘かと思います。  今おっしゃられたように、現地の特定の部族に収入があるという場合も問題かと思いますし、あるいは今、日本政府が主体となってアフガニスタンでDDR、武装解除などを進めておりますが、これは伊勢崎先生が中心になって大変力強い貢献なわけですが、そのときもやはり一つの部族から、あるいは軍属から、軍閥から武器を取り上げてしまうと、これによってそれまである程度保たれていた均衡が崩れる、そういったこともあるので、大変にそのDDR、慎重にというお話がありましたが、そういう部分を大変慎重にしながら進めていくということが肝要かと思います。  私は地雷の問題に携わっておりましたので、我が国貢献一つ地雷対策というのをやはり挙げたいと思います。  今、日本貢献していくときに、特に地雷除去支援というのが大変に多いのでございますが、世界には今埋められている地雷が大体六千万前後と言われておりますが、他方、世界七十か国以上に貯蔵されている地雷が二億個以上というふうに言われております。その大半は条約に入っていない国にあるわけなんですが、除去の支援だけではなくて、こういう埋められていない、武器庫に入っている貯蔵地雷の破壊を防衛庁の専門家であるとかあるいはそのノウハウを持っている企業などを中心に進めていくのも一つ現地の軍縮であるとか、あるいは地雷という切り口で和平ですとか治安貢献できるのではないかと考えております。  以上です。
  20. 津守滋

    参考人津守滋君) 若干繰り返しになるかもしれませんが、私は、基本的にはイスラムとの対話というのはできるし、今までやってこなかったところを日本側から積極的にもっといろいろイニシアチブ等取ってやるべきだと。  外務省は特に、日本の外務省は特にハタミ大統領の文明間の対話というのを非常にとらえまして、何回かそういう、イスラム諸国から文化人等を呼んで何回か会議をやっておりますが、実はヨーロッパは非常に冷たいんですね、ハタミ大統領の提案については。しかし、やはりハタミ大統領のあの提案には、もちろん政治的な思惑はありますが、かなり真正なもの、ジェニュインなものはあるというふうに考えて、かつ日本はヨーロッパやアメリカと違う立場にあるわけですから、それをフルに生かして、懸け橋というほど大層な話ではありませんが、ヨーロッパとイスラムの懸け橋というほどのことはできないかもしれませんが、やはり積極的なそういう文化交流、精神面での交流、思想面での交流、単なる石油外交だけではないよということを示していくことがイスラム社会との今後の付き合い方の上で基本的なベースになるんではないかというふうに考えます。
  21. 茂田宏

    参考人茂田宏君) 会長、どうもありがとうございます。  池口先生、国際貢献の在り方ということでの御質問だと思うんですけれども、特に、紛争があった場合の国際貢献ということかと思いますけれども、私、先生おっしゃった、そういうことに入っていくことによって紛争の激化をもたらすというようなことに気を付けなきゃならないというのは、そのとおりだと思います。  ただ、紛争の問題に入りますと、いつも、何といいますか、きれいな手でやれることだけではなくなってくるわけで、それはこれから日本国際社会役割を果たしていく上で少しは覚悟をしなきゃならない点ではないかなと思います。  一番易しいのは人道復興支援というようなことをするというのがみんなに受け入れられるわけですけれども、そういうときにも、現地のいろんな団体の力関係ですとかそういうことに気を配らなきゃならないし、文化についても尊重していかなきゃならないということだと思いますが、和平に関連したようなことに貢献していくときには、もっといろいろな情報を集めて紛争激化につながらないようなことをよく考えなきゃならないと思います。  私は、逆制裁といいますか、制裁の逆を日本はこれからの紛争に対する対処の仕方としては掲げていったらいいんじゃないかと思うんですけれども、それは、和平ができたならば復興支援として日本はこれくらいの支援をしますよということを明示していくということで和平を推進していくということなんですけれども、そういう努力をしていったらいいんじゃないかと思います。これはカンボジアの場合にもある程度の効力を発揮しましたし、スリランカの問題についてもそういうアプローチを取っていくということが大切なんではないかと思います。  ただ、その和平の実質について全く発言しないでお金だけ出すということについては、もちろん国民の側にも割り切れない気持ちがありますから、そういう政策を可能にしていくための和平の内容についての発言というものもしていくべきじゃないかなというふうに思います。
  22. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 高野博師君。
  23. 高野博師

    ○高野博師君 長参考人に簡単に二点ほどお伺いしますが、NGOの関係の仕事をされるということでのあなた自身のどういう理念、思想あるいは信念というものがあってこういう分野に入っていかれたのか。人間の安全保障とかいう、こういう考え方についてどう思われるか。  もう一つは、NGO政府とか軍から独立性を保つということなんですが、政府から資金援助をもらうということについてはどうお考えか。NGOが民間の資金調達だけでは間に合わないと思うんですが、それについてお伺いいたします。  それから、津守参考人に、この現在の、このペーパーにありますアメリカのプレゼンスも含めた現在の安全保障構造の脆弱性と、それを補完する意味での、中長期的には多国間の安全保障の枠組みと、こう言われているんですが、この枠組みはイスラエルは入らないと理解しているんですが、イスラエルが入らない安全保障の枠組みというのはイスラエルにとっては脅威と映らないかどうか、あるいは、この作った枠組みがだれからの、どこからの脅威、だれからの安全保障なのか、そこの位置付けをお伺いしたいと思います。  それからもう一つ、ちょっと簡単に。先週、中国へ行ってきたんですが、中国の要人に聞いてくりゃよかったんですが、時間がなかったものですから。  中国がイラクに今回かかわっていないという理由はよく私理解できないんです。ただ武力行使が反対というだけではないんじゃないかと。というのは、胡錦濤さんがこの間フランスに行って、エジプトとアルジェリアとガボンに行かれた。これはもう明らかに石油をねらって行っているわけですが。それから、中南米に対する中国のプレゼンスも相当大きくなっている。中国が全体としてこの石油戦略を持っていると。そういう中で、中近東、中東からの石油の依存を脱却したいというそういう意図があるんじゃないかと思うんですが、しかし一方で、中国には二千万人ほどのイスラム系の国民がいるんですね。その中にはかなりイスラムにかかわってテロにも関係している人が相当いるという情報もあるんですが、そういう中で、中国のイラクも含めた中東へのかかわり方というのはよく理解できないんですが、その辺を分かれば教えてもらいたいと思います。  それから、茂田参考人には、イラク問題との関係で、この中東問題の根源はパレスチナ・イスラエル問題だと、こう言われるんですが、今回のイラクの問題というのはどうもパレスチナ・イスラエル問題と余り関係ないような気がするんですが、それ、関係があるとすればどういう関係性なのか、ちょっと分かりやすく教えていただきたいと思います。  もう一つ、中東におけるアメリカが言っている民主主義革命というこのやり方というか考え方をどう思われるのか、簡単で結構ですので。  以上です。
  24. 長有紀枝

    参考人長有紀枝君) 高野先生、ありがとうございます。  私自身のNGOの仕事とのかかわりでございますが、きっかけは大変に単純でございまして、今この豊かな、日本はまだまだ豊かでないと言う方も、おっしゃいますが、この豊かで平和な日本に暮らしている私たちとそうでない大多数の国に暮らしている方々の生活の落差に単純にびっくりして、何かしたいと思ったことがきっかけでございます。ただ、この世界に入りましていろいろな人に会い経験をしていく中で、今、人道というもののために仕事ができるのが大変うれしく思っております。  これは日本赤十字社の近衛副社長の言葉なんですが、人情と人道の違いを表されまして、人情というのは人間に生まれたらばだれでも持っている、ちょっと言葉が悪いと、まあやくざでも持っているものが人情であると。それこそ任侠映画があれだけ日本で人気があるのは、その親分子分であるとか仲間内でのそういった助け合いとか思いやりとか。他方、それが、じゃ全然見ず知らずの人に行くかどうかというのが人道ということで、日本人というのは、通常、そういった人道的な概念というのを欧米キリスト教と密接な関係があるというような言われ方もしますが、日本でも困ったときはお互いさまというのは、正に知っている人だけではなくて遠い人とも困ったときはお互いさまという概念でいたわけですから、人道というのは日本人にも大変分かりやすい概念ではないかと思っております。  人間の安全保障という概念でございますが、ある意味で、人間の安全保障自体は比較的新しい言葉ではございますけれども、その中身というのは今までNGOが長い間取り組んできたものではなかったかと思います。  例えば、また地雷の話になりますが、それまで使われていた通常兵器を廃絶しようという動きは、今まで軍縮というのは国家の専売特許であったものを、被害を受ける一人一人の個人立場からこの非人道性を何とかしなくてはいけないという形でNGO政府が共同して禁止条約を作っていくわけですが、正にそれも人間の安全保障の考え方ではなかったかと思います。  ただ、その人間の安全保障という概念自体が比較的新しいものでございますので、今後、我が国政策概念としても人間の安全保障というのは使っていくべき場面が多々あると思いますので、そういった勉強といいますか研究をNGO立場からもしてまいりたいと思っております。  それから、御指摘のあったNGO資金源の問題ですけれども、NGOとはいえ確かに政府資金はいただいております。ただ、そこで大変重要なのは、必ず民間の資金といいますか、資金源の多様化をすることではないかと思います。  組織によっては、これも本当に組織によってまちまちですが、政府からの助成金を二割に上限を設定して、残りはとにかく民間の方からお願いしようとか、あるいは政府のお金をいただいても同じ政府のお金でいろんな窓口のお金にしようとか、そういった資金の多様化を図ることで中立性であるとか独自性が保たれるのではないかと思います。  もちろん、民間からの資金が重要なのは言うまでもありませんが、そういった意味ではまだまだ日本NGOは弱うございまして、そのときに比較的影響を受けますのがメディアでございます。一般の方の御寄附が集まるかどうかというのはメディアがその紛争を取り上げているかにかかわっているような部分もございまして、昨今はインターネットなどでNGO自身から情報発信をすることが可能になっておりますが、まだまだ一般の御寄附を下さる方たちの層は、インターネットというよりは一般のテレビ、新聞をごらんになる層が大変多いので、日本のメディアに放送されない紛争支援というのが大変難しくなるところです。  ちょっと先ほどの御質問ともかかわってしまうのですが、これからの日本NGO役割といたしまして、忘れられた紛争といいますか、あるいはアフガンイラクに対する報道がなくなった後も現地のニーズは引き続きあるわけですから、息長くそういった地域支援するための資金確保というのが大変重要になってくるかと思います。  以上です。
  25. 津守滋

    参考人津守滋君) イスラエルをどう扱うかというのは実は大変重要な問題です、御指摘のとおり。  実は、ケネス・ポラックのこの論文では、イランはこれを、こういう枠組みを作るのを、構築するためにイスラエルを入れたらどうかと言い出すんじゃないかということを書いているんです。しかし、結論的には、イスラエル入れるべきではないと思います、湾岸だけで作るべきだ。イスラエルを入れますともうできません、これは多分、できない。  こういうものを作ったからといってイスラエル脅威に感ずる必要はないんで、そのためにアメリカやヨーロッパや日本がオブザーバーあるいはPMC方式へ入るわけですし、それから、そもそも脅威認識という点からいいますと、冷戦が終わったときに、いわゆる敵、アドバーサリーがなくなって不確定要因が今後の対象だと、安全保障のですね、という言葉がはやったんですが、正にこれは、アドバーサリーというのはいないと。つまり基本的には、湾岸、アラビア諸国にとってはイスラエルが当面最大の脅威になったと思います、イラクが、サダムフセインがいなくなった後ですね。  しかし、実はGCCの中にも、関係は複雑なんですね。カタールはサウジに対しては大変脅威を持っています。それからカタールとバハレーンの関係は非常に良くない。だから、そういう意味で脅威認識は非常に複雑なんですね。だから、そういう内部の、このメンバー国の安全を保障するという意味があるんだろうと思います。  それから、中国要素、これは私申し上げませんでしたが、大変重要です。  確かに中国は、今後の油の消費量、もう急上昇しますので、多角化を図っております。しかし、この湾岸からの依存度は急速に上がるはずです。そうすると日本等との食い合いが始まるわけです、油の。現にもう中国は湾岸戦争のときにサウジアラビアに武器を売っていますし、それからクウェートとの間には防衛協定みたいなのがあるわけですよ。だから、かなりいろんな形で中国はこのアラビア半島に出てきているんです。それから、イランについてはもちろん言うまでもありません。アザデガンの例の油田に対して大変な関心を持っておるのは御承知のとおりだと思います。  そういうことで、私は、中国が今後どんどんここへ出てきた場合のことも考えた場合に、正にこういった枠組みは早く日本がイニシアチブを取って作る必要があるんじゃないかというふうに思います。
  26. 茂田宏

    参考人茂田宏君) 会長、どうもありがとうございます。  高野先生の質問、二点だと思うんですけれども、イラク問題とパレスチナ問題との絡みについてというのが第一点ですけれども、私は、対イラク戦争というのは、これはイラクが、湾岸戦争の後に大量破壊兵器を廃棄する条件で停戦が成立しているのに、それをきちっと実行しなかったという疑惑についての戦争だったと思っております。したがって、このパレスチナ問題が直接関係したわけではないというふうに思います。ただ、中東情勢全般の中でパレスチナ問題がアラブ人の心理その他に与える影響というのは大変大きいということかと思います。  第二点は、イラクその他における民主主義、民主化の問題をどう考えるかという質問でした。  この間の年頭教書でブッシュ大統領は、神様は人々の心の中に自由の中で生きるという願望を植え付けたと私は信じていると、したがって我々は民主化を進めるんだという趣旨の発言をしております。  ただ、私から見ますと、この近代民主主義というのは、一七七六年のアメリカ革命、一七八九年のフランス革命、さらに、少しさかのぼってもイギリスの権利章典ができたのが一六八九年です。ということは、まあせいぜいここ二、三世紀の間の話でして、神とか人類の歴史全体とかいうような話ではないというふうに思っております。  私は、民主主義というか、民主化をするのがすべての問題にとっての解決であるということで、理念先行型で政策を進めていくことが良い結果をもたらすのかどうかと、あるいはそれが成功するのかどうかということについては若干疑問を持っております。特に、イスラム圏の中でそういうものが根付くのかということについては若干疑問がありまして、今までの歴史の中できちっとした民主主義というのが出てこなかったというのはそれなりに理由のあることなんだろうというふうに考えております。  したがって、まあ革命の輸出ということで言われますが、フランスも革命を輸出した、ホメイニもしました、ロシアのレーニンもしましたが、まあ革命の輸出で今まで一番成功した国というのは私はアメリカだと思います。ただ、そのアメリカにしても、この民主化という、民主主義という革命を中東に輸出するのに成功するかどうかについては大変大きな疑問があるというふうに考えております。
  27. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  次に、緒方靖夫君。
  28. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  三人の先生方、本当に有益なお話をありがとうございました。  ちょっと流れを逆転いたしまして、最初に茂田大使にお伺いしたいと思います。  私たちの経験でも、中東紛争、わけてもパレスチナ、イスラエルの対立ですね。例えば七〇年代に私たちの党は、イスラエル承認すべきだと、生存権を認めなきゃいけないということを言ったことがあるんですね。そうしたら途端にPLOから裏切り者と言われました。イスラエルは海の、地中海の底に沈める対象だということですね。それからその次に、八〇年代の初めに市民の乗ったバスの無差別テロに対して、これを非難したことがあるんですね。こんな手段は間違っていると。それに対しても裏切り者だと言われたことがある。まあその後、PLOのアラファトがそれに対しては謝罪するという形でなったんですけれども、僕は、結局こういう問題というのは清算されていないと、いまだに。  それは、ちょうど昨年ですけれども、PLOのカドウミと話す機会があったんですね。彼ははっきりと、自爆テロは止められないんだと、幾らいろいろ自分たちがやっても止められないということをはっきり述べていました。ということは結局、怨念の応酬がずっと続く、それを止めなければ展望が開かないと思うんですね。  ですから、その点で私は、中東問題を見るときに、これだけ重要な問題なんだけれどもなかなか展望を見ることができないという思いがあるわけですね。その点で大使のお考えを伺いたい。それが一点です。  それからもう一つ、それに付随して、今イスラエルが壁を造っていますね。先週聞いたら七百三十キロになっていると。これはすごいスピードで造られているわけですけれども、これが中東和平に及ぼす影響、これについてお考えをお伺いしたいと思います。  それから、津守大使にお伺いしたいんですが、イラク問題なんですけれども、アメリカ戦争はよく準備した、しかしイラクの統治についてどれだけよく準備したかと。イラクの統治についてですね。  それは、例えばイラクは公務員が大変多い国です。しかし、それをバース党員だという理由で、バース党員になるのが義務付けられていたからしようがないんだけれども、それをパージすると、かなりの部分をですね。そういうこと一つ見ても、やはり現状を知らなかったなということを感じさせることがあるわけですね。  そういう中で、結局、今のアメリカ軍イラクでのプレゼンス、これがやはりイラク、それから中東、周辺の中東諸国、さらには広く言うとイスラム諸国に非常に大きな反感を呼んでいる。決してあの地域は反米ではなかったと思うんですけれども、反米機運が非常にそれによって高まっているということがあると思うんですね。今言った中東和平の問題とも絡まってそれが更に加速する、フラストレーションがもう爆発に至るようなところに至っているという、そういうことがあると思うんですね。  政府もそれに非常に苦労していると。国民の世論とこのアメリカとの関係で、政府がどういうスタンスを取るのかということについて非常に苦労しているということがよく見えるわけですね。元々、かなりの国はアメリカに防衛を依存する。強い軍隊を持つとクーデターが起こるかもしれない、だから安全はアメリカに依存しようという、そういう考え方がかなり強かったと思うんですね。だから、当然アメリカといい関係を保持したい、保持し続けたいという願いがあるわけですけれども、しかしそういう苦境にアメリカ戦争が追い込んでいるという一面があると思うんですね。  そうすると、長期的に見て、アメリカにとってのあの地域での安全保障上の利益、それが今どういう問題を抱えるのかという、あるいは今後どういう問題を抱える可能性があるのかということについてお伺いしたいと思います。  それから、長先生には、一つは、NGOとして現場で、紛争現場でずっと働いてきた、仕事をされてきたという経験からなんですけれども、それをお聞きしたいんですけれども、人道支援ということについては国連赤十字NGOもずっと経験を積んできていると思うんですね。  それで、人道支援というのはもう原則非武装だということが国連のマニュアルなどでも出されていると思います。それは特に、コソボの紛争の中で、先生は詳しいと思うんですけれども、やはり武器を持った軍隊支援に行って、結局支援者も危うくする、それから同時に援助を受ける人たちも危うくなるという、そういう経験からそういうマニュアルが作られたというふうに聞いているんですけれども、その点で、現場に立っての実感として、先ほどもちょっと触れられたと思うんですけれども、援助の在り方というのはどういうものが理想的なのか、それからNGOとしてどういう形態がいいのかということについてお伺いしたいと思います。  それからもう一点、地雷撤去についてなんですけれども、私もアフガン問題の関係で、イスラマバードでダニエル・ケリー、地雷撤去の担当者と会ったりとか、まあ東京でも会いましたけれども、そういう彼の苦労なんかを聞きながら、改めてこれがどんなに多くの労力と人力とエネルギーが要る仕事なのかということを痛感しているわけですけれども、この分野で長い間仕事されてきて、日本が、政府としてもあるいは民間としても、どういう支援あるいはどういうことを望まれているのかということについてお聞きできたらと思います。  以上です。
  29. 茂田宏

    参考人茂田宏君) 会長、どうもありがとうございます。  緒方先生が指摘された点、二点ありますけれども、共産党がイスラエルの生存権を認めるという立場を取ってこられたことは、私よく承知しております。  テロと、テロは止められないという問題についてですけれども、このテロの問題について、イスラエル国内では大ざっぱに言いますと二つの考え方がございます。一つは、和平を進めないとテロが収まらないと。和平を進めるのがテロを抑えるのにつながるんだという、和平を進める、まあハト派という、左派と言いますか、そういう考え方がございます。右派の方は、安全がない、テロがあるのに何で和平交渉なんかできるんだということで、まずその安全を確保するのが先だという考え方がございます。これがまあシャロン首相の考え方、右派の考え方でございます。  私は、今は右派の考え方が非常に強くなっておりますけれども、やはり和平を進めることがテロを抑えていくのに役立つだろうというふうに思っております。テロの問題を軍事力でテロのインフラを破壊するというふうなことだけで解決できるというのは多分幻想ではないかというふうに思っております。やはり人間の動機という、テロを行う動機というものに踏み込んだ対応をしないと解決しないということかと思います。  私、イスラエルにいたときにも、イスラエル政府の方はテロが起こるから和平交渉ができないんだと、パレスチナ側との交渉ができないんだということを盛んに言っておりましたけれども、私はそれに対しては、そういうことを言っていると和平交渉をするかしないかをテロリストに決めさせることになるんではないかということを問題として提起しておりました。私は、この和平交渉が進むかどうか、進むときに、一つテロが起こったからもう和平交渉はやめますということをすることは過激派に和平に対する拒否権を与えることにつながりますから、これをやめなければならないというふうに思います。他方で、パレスチナ側にはやはりテロをしっかりと取り締まってもらうということを求めていくべきだろうというふうに思います。  第二点の分離壁の点ですけれども、私はこれは大変悪い影響があるというふうに考えております。こういうことで中東和平に対する希望をなくさせるということは事態をより悪化させることにつながるだろうというふうに思います。人によってはこの分離壁を造ることによってテロリストが入ってこない、テロが少なくなる、それで和平の機運が出てくるんだという議論をする人がいますけれども、そういうことには、これは将来のことですから分かりませんけれども、多分ならないんだろうと思いますので、大変悪い影響があるというふうに考えております。
  30. 津守滋

    参考人津守滋君) アメリカサダムフセインを打倒した後、うまくイラクを統治できるかどうか自信があったかどうかというのは、これははっきり言ってだれも分からないと思います。アメリカ人自身が一〇〇%自信あったわけではないと思います。パンドラの箱を開ける可能性があるということを一部認識していた可能性もあると思います。  ただ、事前にアメリカが非常に工作をしていたのは、チャラビーというINC。ただ、これは余り人気がない、御承知のように。しかも、イラクの反体制派全部を代表しているわけじゃない。大きな固まりはやはり、それからクルドについては、これは湾岸戦争後からかなり関係を持っている、二つの政党と。  問題は、人口の六割を占めるシーア派との関係ですね。これは御承知のように、ハキムという指導者がテヘランに亡命していたわけで、イランとの関係で彼はアメリカへ行きたかったんだけれども行けない。私は、実はハキムと一回会っているんです。残念ながら彼は暗殺されましたんで、アメリカの関係を中心に話を聞いたときに、決してアメリカが嫌いという話ではない、やっぱりアメリカは必要だと彼ははっきり言っていました、その当時。結局そういうことで、アメリカは事前にやっぱり反体制派、共産党を含めて、共産党非常に強いですからあそこ、いろいろ関係を持っていた、そういう地ならしはしていたと思うんですね。だけれども、開けて見たところ、なかなかうまくいかないというのが現状だろうと思います。  それから、安全保障面でのアメリカの利益は何か。これは大変難しい。アメリカ自身が迷っているんじゃないかと思いますね。御指摘のように大変反感を今生んでいますし、アラブの住民の感情を踏まえながらどういうふうな安全保障の枠組みを構築していってアメリカがどのような役割を果たすかというのは、これからアメリカが考えて、現在考えているところだろうと思います。  その証拠に、さっき引用しましたフォーリン・アフェアーズのケネス・ポラックというのも非常に慎重ですね。だから、ダイレクトにアメリカの軍事的プレゼンスということを言っていないわけで、オフショアバランシングと言っているんです、第一番に。つまり、外にいていったん緩急あるときは出て行くと。それから、彼はこの三つの案のうち、正にセキュリティーコンドミニアム、つまり私が今まで説明したようなそういうアイデアを非常に中心に考えている。もちろん彼の意見アメリカ政府意見になるかどうか分かりませんが、少なくともアメリカ政府湾岸専門家はそういうふうに考えているということだろうと思います。
  31. 長有紀枝

    参考人長有紀枝君) 緒方先生の御質問にお答えいたします。  先生おっしゃられたように、緊急の人道援助の場面で軍隊と一線を引くというのは、国連それからNGO問わず大原則としてあるわけですが、実際オスロ・ガイドラインという形でもまとめられております。その中では、もしもどうしても軍隊を使う場合には、ラストリゾートといいますか、最後の最後の手段であることと、必ず軍隊はシビリアンコントロールの下に置かれることというような大原則の下で認められております。どちらかというと、赤十字は絶対に軍隊というのとは一線を画しておりますが、国連組織の方が一緒に共同して働く場合が多いのではないかと思います。  私自身も人道援助というのは軍隊と一線を画すべきだと思っているわけですが、実際にPKOのときには、九五年のボスニアでイスラム教徒地域人道援助ができたということもございますし、また、実際、九九年のコソボでございますが、地雷原の近くで交通事故に私遭いまして、そのときに助けてくれたのがイタリア軍でしたので、そういった意味でも大変恩義にも感じているわけですが、基本的には人道援助というのはあくまでも軍ではない組織がすべきものというふうに考えております。  それから、地雷除去ですが、特にアフガンで、アフガニスタンから日本が求められていることは、今の支援を継続することかと思います。  二〇〇二年にアフガニスタン地雷禁止条約に入ったわけですが、この条約に入りますと、発効後四年以内に貯蔵地雷の廃棄を完了して、十年以内に除去を完了することというのが定められております。アフガニスタンの場合二〇〇三年の三月に発効しておりますので、プラス十年で除去を完了しなければいけないわけなんですが、先生おっしゃられましたMAPAのダン・ケリー氏は、向こう五年間で最優先地域の除去を完了して、さらに五年間で二次的、三次的に必要な地域を除去するというような計画を立てておりますが、それができるかどうかは、国際社会からの支援が続くかどうかに掛かっております。  アフガニスタン復興に関しましては、日本が除去で最大ドナーであるわけなんですが、日本の除去に関する支援国際社会の呼び水になったという部分が多分にございますので、今後も日本がそういった呼び水的な効果を発揮することが肝要かと思われます。  以上です。
  32. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 ありがとうございました。
  33. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  大田昌秀君。
  34. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 社民党の大田でございます。先生方、大変御苦労さまでございますが、簡単な質問をそれぞれの参考人にお願いいたします。  まず長さんに、先ほどのお話でアフガニスタン識字率が男性の場合五〇%、女性の場合が二〇%程度ということをおっしゃっておられたんですが、そうしますと、政府が国民に対してどのようなコミュニケーション手段を設けてコミュニケーションをやっているのか、そして、放送関係の施設というものは整備されているのかどうか、それが一点ですね。  それから、二番目にお聞きしたいのは劣化ウラン弾の問題でして、政府にこの問題について伺いますと、政府国連保健機構や国連環境計画が問題ないと言っているというふうに絶えず答えるわけです。しかし、長さんはNGOの体験で劣化ウラン弾の問題について触れる機会があったと思いますが、御自身、どういうふうな認識をお持ちかということを伺いたいと思います。  それから、津守先生には、御承知のように、自衛隊をイラクに派遣することについては賛否両論が渦巻いておるところですが、率直に先生の御見解を伺いたいのは、自衛隊を今イラクへ派遣することによって、イラクを始め中東諸国へ一体どういう影響を与えるというふうにお考えなのか、その点をお伺いしたいと思います。  それから、茂田先生には、レジュメの一番目と関連することなんですが、宗教的な対立というのは解決不可能とお考えなのかどうか。不可能だとお考えだとすればその理由は何かということを教えていただきたいと思います。  また、二番目の問題として、イスラエルとパレスチナ問題の解決策としていい解決策が示されております。二番目に書かれているとおりですが、イランとか少数の国とイスラエルとパレスチナ内の少数の人々がその解決策に反対しているということをおっしゃっているわけですが、なぜ反対しているんですか。そこを教えていただきたいと思います。  以上です。
  35. 長有紀枝

    参考人長有紀枝君) 大田先生、御質問にございました識字率の問題でございますが、おっしゃるように、特に女性二割、識字率二〇%ということは、新聞などを通しての周知というのは不可能でございまして、基本的には、何かあるときには、ロヤ・ジルガの後も、それぞれの部族長やその地域の代表がそれぞれの地域に持ち帰ってそれを広めていくという形になるかと思いますし、また、日本ODAでメディアの整備を大分進めておるようでございます。  コミュニケーションに関しましては、政府からの指示だけではなくて、例えば地雷回避をどうするかといった、地雷に注意しようという呼び掛けもラジオなどを通して行っております。  それから、劣化ウラン弾でございますが、私自身はそういった被害というのは確実に出ているのではないかと思いまして、実際、援助に出て行く側といたしましては、その場に行くと余り防ぎようがないものですから、ある程度の被害が出るということを予測して、なるべく飲み水は現地で調達しないとか外から持って入るとか、あるいは現地の野菜などは、特に劣化ウラン弾の被害が言われている場所での野菜などは取らないようにしたというような経緯がございました。  また、人員を派遣するときに、実際にどのような被害が出るかというのがすぐには分からないものですから、それぞれに実態は分からないけれども、何がしかの被害が出る確率はあって、それでも行く気はあるかというのを必ずその派遣する人員に確認して、それでもいいという人だけというとちょっと変なんですが、そういう形で派遣しております。  まだまだ劣化ウラン弾につきましては、広島のNGOなどが中心になりまして、その被害ですとか、またそれに反対する動きなどもございます。地雷禁止国際キャンペーンという対人地雷を禁止した動きに倣いまして、劣化ウラン弾を世界的に禁止するNGOのネットワークが最近立ち上がっておりますが、まだそれほど大きな活動にはなっていないようです。  以上です。
  36. 津守滋

    参考人津守滋君) 大変難しい質問で、私も学生からいつも意見を求められるんですが、まず自衛隊を派遣することについての賛否の前に、アメリカの対イラク攻撃は大義があったかどうかと、ここについて私の考えは、私はやむを得なかったと思っています。  ただし、戦争は短期間で終結する自信がないんであればやるべきでないと、こういうことをもういろんなところで、私、学校でもいろんなところで言ってきたわけでありますが、五月一日にブッシュ大統領が主要な戦闘は終わったということでほっとしたんですが、その後の状況はごらんのとおりでですね。  しかし、私はなぜ大義があったかと、あるいは理由があったかと申しますのは、やはり九・一一、あの飛行機にもし大量破壊兵器を積んでいたらどうなるか。つまり、ブッシュ大統領は何回も言っていますが、大量破壊兵器とローグネーション、つまり、ならず者国家あるいはテロリストの交差点、クロスロード、こういうことをしょっちゅう言っているんですね。これは、やはりみんな考えたことだろうと思います。かつ、サダムフセインというのは本当に予見不可能な、私も二年間いたばかりですが、隣の国に、本当に何をするか分からない。別にテロリストとの直接の関係があったかどうか、証拠はないんですが、やはり十何年間も自国民を、制裁を受けながら、UNSCOMに対するちゃんとした協力をせずに、UNMOVICについても四の五のいろいろ妨害をするようなこと、そういうような状況の中で、やはりこのサダムフセインが残る限り大量破壊兵器の恐怖は付きまとうというのは、私はやっぱりあったと思うんですね。  ただ、それと、それじゃ自衛隊派遣がどうかということですが、私は実は非常に懐疑的なんです。反対ではないんですが、非常に懐疑的です。それは、やはりPKOが、これはもう問題ないと思うんですが、やはり日本国憲法というものがある、これとの関係どうなるという問題があって、今現在問題が起こらなければ、戦闘、非戦闘地域に派遣するということで、それはもうそれで問題なく済むんだろうと思うんですが、かなり危険水域に来ているなという気がします。  だから、私は、もう今派遣した限りは、大変重要なことは出口戦略をちゃんとすると。どういう場合に引き揚げるかと。これは実はアメリカも、いわゆる選択的介入という方針をワインバーガー・ドクトリンという形で八六年に出したときに、やっぱり出口戦略というのは非常に重視したんですね、アメリカは。まあ別にアメリカがやったからというわけじゃありませんが、非常に、いったん出すと、なかなか引き揚げにくいんですが、やはり非戦闘地域が戦闘地域になる、巻き込まれる、憲法との関係で非常に疑義が生ずるような事態になった場合には、やはりきちっと引き揚げる、そこの戦略をしっかりするべきじゃないかと思います。
  37. 茂田宏

    参考人茂田宏君) 会長、どうもありがとうございます。  第一点、私が宗教的対立は解決不可能な問題であると考えているのかどうかということですけれども、言葉遣いが少し不適当だったのかもしれませんが、私は宗教的対立は解消不可能であるというふうに思っております。  宗教的な信念については妥協というものがあり得ないのが特色でして、したがって、妥協によって、ないしは互譲、相互が譲ることによって解決がもたらされるということがないということかと思います。ただ、そういう宗教的な考え方二つが、じゃ共存して平和裏に存在し得ないのかというと、それは存在し得る余地はあるんだろうというように思います。  私、一ポツで書きましたのは、幸いにしてパレスチナ問題というのは宗教的対立に今のところはなっていないということで、妥協、相互の譲歩によって解決する可能性がある問題であるという認識を持っております。それが第一点でございます。  それで第二点、イランとか少数の国とイスラエル、パレスチナ内の少数の人々が解決に反対している、何ゆえ、なぜ反対しているのかということですけれども、これはイランに関して言いますと、イランは、パレスチナ問題については一か国の解決にすべきであると、二か国、二国家方式の解決に反対であるということを言っております。基本的にはイスラエルの生存権、存在権というのを否定する立場であります。  それで、パレスチナ内でのPLO、PA以外の勢力、すなわちハマス、それからパレスチナ・イスラミック・ジハードですけれども、この両者とも、イスラムに基づくパレスチナ国家をつくるが、それは今のイスラエルを解消した上で、今のイスラエル領域をも含んだ上で一つの国家としてつくるという主張をしております。  したがって、イスラエルの生存権を認めるかどうかというところで、そういう態度が出てきているということかと思います。
  38. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  以上で各会派一人一巡いたしましたので、これからは自由質疑に入らしていただきます。
  39. 小林温

    ○小林温君 自民党の小林温です。  まず、長参考人にお聞きをしたいと思うんですが、その前に、ジェンダーのことについて触れていただいたんですが、我が調査会女性が今年はおりませんで、大変申し訳ないなと思っておりました。  それで、これ先ほどほかの委員の方々からも質問があったんですが、例えば大義がイラク戦争にあったのか、あるいは憲法と自衛隊との関係がどうだったのかという論点は残るにしても、現実的に今自衛隊が中東に行って、そして人道復興支援にかかわっているわけですね。この中で、長参考人が言われた官とそれからNGOとの役割分担というのがどうあるべきかということについて具体的に教えていただければと思います。  というのは、自衛隊が行くのはまかりならぬ、その代わりにNGOにそれを担ってもらおうという実は議論もあるわけですが、どういう、まあ治安状況を考えると、やっぱり自衛隊のように自己完結できる主体でなければやっぱり中東ではその任は負えないんじゃないかという反論もあるわけで、そういう点から、現実的に自衛隊がどういうことをすべきかと、まあ自衛隊が必要じゃないというもしお考えでしたら、それも踏まえて、教えていただきたいと思います。  次に、津守参考人にお聞きしたい。  これは先ほど高野委員からもお話があったことですが、ポラックさんというのはブルッキングスの方だと思うんで、多分どちらかというと政権寄りの方だと思うんですが、彼の案を下敷きにいろんなお話を今回、今日はいただいたわけですが、そうすると、例えば先ほど高野委員からあったイスラエルがこの湾岸の枠組みには入らないということが、まあどちらかというと、アメリカの、イスラエルには余り触らないで、湾岸の方の枠組みだけ作るという流れの中で出てきているということは否定し得ないんじゃないかなという気がするんですが、この点について、つまりアメリカのコミットメントというものとイスラエルとの関係というのはどういうふうにお考えかということですね。  それともう一つは、日本が仮にリーダーシップを取るという場合に、それはアメリカの今の考え方の中では、日本がリーダーシップを取るということと、当然日本の独自性を発揮するということですが、これがアメリカの考え方なり国益なりと、アメリカの持っている考え方と背反するという可能性はないのかということについてお伺いできればというふうに思います。  それから、茂田参考人でございますが、国際テロの対策担当の大使もやられていたということで、ちょっと今日の意見からは少し離れるんですが、九・一一があって、テロ特措法を国会でも制定をさせていただいて、昨年、その延長もかなり混乱した中で行ったわけですが、どうもそのテロ特措法という名前が付いているのにもかかわらず、米英軍への燃料補給がこのテロ特措法の中身になってしまっていて、現実的にテロに対する対応というものがどういうふうに法的に担保されているのかということが今見えない状況があるというふうに思います。  これから、例えば、今回中東に自衛隊が行くことによって、例えば現地で様々なテロに自衛隊も含めた我が国関係者が遭遇することもある、あるいは、巻き込まれ論で、自衛隊を出したことによって例えば日本国内でテロも予想されるということも実は言われているわけですが、こういう点について、現実的にテロ特措法という文脈で今どういうことが議論として必要なのかということについて御意見をいただければ。  それと、テロ特措法、それからイラク特措法で自衛隊の海外派遣において恒久法が必要だということが言われているわけですが、これもどちらかというとテロの話とは少し離れたところで議論が行われている気がするんですが、この辺との絡みも含めてお考えをいただければというふうに思います。
  40. 長有紀枝

    参考人長有紀枝君) イラクの場合なんですが、現在、政府支援あるいはNGO支援、例えば学校建築であるとか病院の修復であるとか、一見したところでは余り政府の、官民支援の違いが出てこないような気もするんですが、実際にはやはり政府に担っていただきたいのは行政機能の回復でありますとかシステムの構築とか、そういう部分ではないかと思います。  イラクでは、ある意味で医療従事者がおられる、病院もある、しかしそれを統率するような機関なりがもう破壊、瓦解してしまっているために病院が一切機能していないというような部分もございますので、そういったシステムをもう一回再開するというような部分はNGOにはできにくいことでございますので、病院の再建とか物資の調達、学校再建といったことはNGOがいたしますが、そういったシステム全体の構築を是非政府にお願いして、そういった意味で官民協力ができればと思います。  また、自己完結を自衛隊のようにNGOができるかというと、おっしゃるようにそれは不可能ではございますが、ただ、治安の面でいいますと、自衛隊も治安が悪いところには行けないのであれば、その意味ではNGOも自衛隊も同じかなというようなところがございまして、ただ、NGOの強みといいますか、日本NGOだけですべてを完結しようと思いますと、これはもう不可能だと思いますが、それぞれに現地スタッフがおりますし、あるいは、現地NGO協力することによって自己完結型に近いものができるのではないかと思います。  例えば、アフガニスタン空爆中、人道援助に携わる外国人国連も含めほとんど撤退したわけですが、当時、人道支援現地で続けていたのはアフガン人の方たち、アフガンNGO、それからアフガニスタンの職員であったわけです。同じように、イラクでも現地NGO支援をこれからも強化していければと思います。  以上です。
  41. 津守滋

    参考人津守滋君) 繰り返しになりますが、イスラエル入れるとこの構想は成立しないと思います。  その前に、湾岸というのは一つの単位を成しているんですね、あの地域では。例えば環境問題については、このイラクイランGCCを含めた既にフォーラムはあります。ただ、サダムフセインがいたためにペルシャ湾の環境問題を改善するための協力ができなかっただけであります。経済的にもこの湾岸の六か国、GCCの六か国及びイランイラク一つの単位になっているというようなことで、安全保障についても、大変難しいパレスチナ問題は取りあえず除いて、そして湾岸だけで作るということが合目的的であろうと思いますし、例えばスウェーデンのSIPRIという研究所、あるいはア首連にあります研究所もそういう考えに立っております。  それから、日本がイニシアチブを取った場合にアメリカとの関係はどうか。これは、もうアメリカは私は歓迎するんだろうと思いますね。アメリカとまだ話をしたことはないと思うんですが、日本がまだ政府政策としてこういうのができ上がっていないものですから。これは、日本がイニシアチブを取ることについてアメリカが反対する理由はないんだろうと思います。これは中国ではありませんから。中国がイニシアチブを取ればかなりアメリカは神経をとがらすでしょうけれども。
  42. 茂田宏

    参考人茂田宏君) 会長、どうもありがとうございます。  小林先生の質問、何点かですけれども、四点お答えいたしたいと思います。  アフガニスタンで戦う米英軍等に対する燃料補給のためのテロ特措法ですけれども、これは、私は対テロ対策という点で大変大きな意味があったと思います。というのは、このテロの問題というのは、テロ全般の問題ではなくて、やはりアルカイダを中心としたイスラム過激派のテロの問題でして、この脅威を抑えていくためにアフガニスタンを彼らの聖域でなくするということは大変重要な意味を持っていたということで、このテロ特措法はそういう意味で大変重要だったし、役割を果たしたのではないかと思います。対米協力という点からも良かったと思います。  日本へのテロの脅威の心配ですけれども、私は日本に対するテロの脅威は上がってきているというふうに考えております。十一月にトルコでテロがありまして、その後で東京のど真ん中でテロを起こすということが、という脅しがアラブ語の週刊誌ですけれども、に掲載されました。これはその週刊誌の編集局にEメールで送られてきたものなんですけれども、そういうものが四回ございました。ただ、私はこれは余り信憑性がないというふうに思っております。というのは、アルカイダその他のテロリストはどこでテロを起こすというようなことは余り言わないんです。それから、いつ起こすということも言わないんですけれども、このEメールでは自衛隊がイラクに派遣されたときにはとか、時、場所を指定したEメールでして、これはどうも信憑性がないのじゃないかというふうに私は判断しております。  ただ、十月十八日、オサマ・ビンラーディンが自分の肉声で、日本に対して適当な時期、適当な場所で報復する権利を有するというのをアルジャジーラを通じて放送させているんです。これは、この放送は各地に散らばっているアルカイダの細胞の人たちは対日攻撃へのゴーサインというふうに受け取った可能性があるというふうに私は思っておりまして、そういう意味では日本への脅威というのは上がってきているのではないかと思います。  これは、テロリストは、じゃ、テロ行為をどこでいつやるかというのを言ってくれるほど親切でありませんから、これはイラクで起こるのか、ないしはほかの外地で起こるのかというのは全く予測ができないと思います。ただ、日本国内に関しては、日本の警備当局というのは非常にしっかりしていますから、その可能性はイラクないしはそれ以外の外国と比べると低いのかなというふうに思っております。  それから、テロ特措法とは別に、テロに関連した日本国の法制がただいま現在十分なのかということに関しては、私は十分ではないというふうに思っております。これは安保理決議一三七三というのがございまして、その中で、テロ集団がその要員を獲得することを阻止しなければならないというのが書いてあります。この安保理決議一三七三というのは国連憲章第七章下の決議ですから、日本国にとってそれを実施することは国際法的な義務です。いつまでにということは書いてありませんが、もうこの決議が採択されて二年以上がたっております。テロ集団がテロの要員を獲得するのを阻止するということになりますと、どういうテロ組織、どういう組織がテロ組織かというのを指定しないとできません。しかるに、日本国にはこのテロ組織を指定する法制度がない。それ以外に、入国管理の面についても今の体制、法体制を強化しないとテロ対策がうまくできないということがございます。  私は、これは国会の方でいろんな法律の都合もございますから、政府の方でも検討しているんだと思いますけれども、テロ対策という点ではできるだけ早くこのテロ新法というのを考える必要があるのではないかというふうに思います。  それから、自衛隊の派遣についての恒久法の問題ですけれども、私、もう昔になりますけれども、PKO事務局長というのをやっていたことがありまして、そのときに武器使用、上官の命令で武器使用できるように改正したときの事務局長でしたが、その後、いろんな個々の、個別の事態に個別の法律を作っているということがございます。これは私は、国会の負担ということもありますし、政策としての不安定性というのもありますから、やはり恒久法というのを作って、その枠内でアフガンの問題、イラクの問題等に対処できるようになれば、それはそれで非常にいいことではないかと思います。  以上でございます。
  43. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 ちょっと粗っぽい質問をさせていただきますが、津守先生には、先ほど日本のリーダーシップを発揮すべきだということを強調せられておられますけれども、私は、自分の国を自分で守ることができない国がリーダーシップというのを発揮するためには、今でいうとアメリカの許可を得ないとできないんじゃないかと思っています。どうやって、アメリカがいいって言えばいいかもしれませんが、今現在まだ、五十年たってもですよ、米軍基地が沖縄にあり、青森には陸海空自衛隊がいるわけです。それで、我が国は自らの国を、自らの国を守る決意もなく、五十年も外国軍隊が駐留するというのは歴史的にないわけですね、そんなことは。ヨーロッパを見ても、ここ百年ぐらいですね、そういう国はないんですね。  そういう国がですよ、自分の国を自分で守る決意もない国がリーダーシップなんか取って、取れるんですか。もし取れたら、なぜクウェート大使をおやりになっていておやりにならなかったんですか。リーダーシップをお取りになる絶好の機会をお持ちだったんじゃないですか。それが取れなかったということは、何かやっぱり取れないような外務省の体質があると、我が国政府の体質があるというふうにお考えになった方が、お辞めになってからこういうこと言われても私は非常に困ると思うんですが、いかがでありますか。  それから、長参考人にお聞きしますけれども、ずっとNGO活動をおやりになって、私は敬意を表しますけれども、おやりになっていて一番お困りになったことは何か。なければ結構ですけれども、あったら教えてください。  それから、茂田参考人は外務省の御出身なので、津守参考人にお聞きした質問と同じことで何か言いたいことがあったらおっしゃってください。  以上です。
  44. 津守滋

    参考人津守滋君) どうも、大変重要な御指摘をいただきまして。  アメリカの許可なくして何もできないというわけではないと思います。ARFは日本がイニシアチブを取って作ったわけです。ARFは日本とASEANが、これはどっちが、先陣争いがあるんですが、日本とASEANが共同でやったんですよね、ARFは。もちろんアメリカとは協議して、こういうものを作りますよという話はもちろんそれはする必要はあるんで、アメリカ抜きでARFもできなかったと思います。だから、同じことが中東でなぜできないかということなんで、私は日本アメリカの基地があるからそういうものはできないというふうには考えません。  それから二番目に、クウェート大使のときなぜやらなかったか。実はこの話はしているんです、当時から。ただ、当時はこういうものができる状況じゃなかった。なぜかというと、サダムフセインがいるからです。サダムフセインのような人物がいて、こんなものを作ろうなんというのは話にもならないわけですよね。だけれども、正に今サダムフセインいなくなったんで、かつイランはかなり、ホメイニ時代と違ってかなり温和になってきたという状況は新たにできたということなんですね。したがって、私は去年の二月に、アメリカ攻撃する前にクウェートに行ってクウェート関係者と話をしたんでありますが。  まあ、そういうことで御容赦いただきたいと思います。
  45. 茂田宏

    参考人茂田宏君) ありがとうございます。  田村先生の御指摘は非常にポイントをついていると思うんですけれども、いろんなことを言う前に日本国自体がしっかりしなければならないということがポイントだと思うんですけれども、それはそのとおりだと思います。ただ、私は外務省に長くいまして、国際情勢というのを見ていますと、今の国際情勢の一番特色というのは、アメリカが非常に強くなりまして、アメリカの言わば一極支配的な状況ができてきているということなんだと思うんです。そして、そういう状況に対してどう対応していくのかというのが世界の各国が大変悩んでいる問題だと思うんです。  フランス等は、一極じゃなくて多極化していくのがいいんだということでやってきていると。イギリスは、アメリカ協力しながら、アメリカに自分たちの意見も聞いてもらって世界の秩序を作っていこうということをやっていると。要するに、今の日本の、日本対応はイギリスの対応に似ているんだと思いますけれども、今の状況の中ではそういうことで対応していくのが多分世界の秩序の安定のためには有益なんだろうというふうに考えております。  答えにはなっていないかもしれませんけれども、そういうことを申し上げたいと思います。
  46. 長有紀枝

    参考人長有紀枝君) 田村先生、一番困ったことということなんですが、一言で言ってしまうと元も子もないんですが、お金は常に困っておりました。募金も、募金や助成金も来ますが、募金や助成金が集まるところと、もちろんそういう場所にも現地のニーズはあるんですが、全然募金が集まらないところあるいは関心が集まらないところにも大きなニーズはございまして、そのはざまがいつも難しかったかと思います。  先ほど私は、NGO独立性を保つためには財源の多様化ということを申しましたが、例えば外務省の助成金を上限二割で残りは全部自己資金、一般の方の御寄附というのは、言うのは簡単なんですが、これをするのは大変に難しくて、そういった面が苦労しておりました。これは多分どこのNGOも同じかと思います。  また、人道援助自体が様々な矛盾に満ちておりまして、先ほど来私は軍から中立していなければいけないとは申しましたが、では、実際その軍の護衛がないところで働けないとしたらどうするのかと。多少独立性を犠牲にしてでも、軍の護衛を得ても人道援助をすべきだというような意見も当然ございます。そういった矛盾もございますし、あるいはNGOの、あるいは人道援助そのものが復興、和平を遅らせている、あるいは紛争を長引かせているのではないかというような御指摘もあります。そういった面も確かにあると思いますし、人道援助復興支援自体が様々な矛盾を含んでいるというのを分かった上で事業を行っていくのが大変難しいかと思います。  以上です。
  47. 岩本司

    ○岩本司君 本日はありがとうございます。  まず、長参考人にお伺いします点は、現在アフガニスタン国内で毎月百五十人から三百人の方々が地雷被害に遭っているということで、長参考人御承知のとおり、現地地雷には、ひもがこうくくってあって、ひもの先に人形がくくってある地雷等も多々あるわけですよね、子供たちをあれする、殺すために。  それで、現在のこの被害状況は、ここに今書かれ、文章に書かれておりますけれども、義足ですね、義足の対応アフガニスタン国内でどうなっているのか。御承知のとおり、パキスタン国内にも義足の工場があるんですけれども、アフガニスタン国内で対応できない場合に隣国パキスタンとかからの義足工場からちゃんと供給されているのかどうか、その点についてお伺いします。  またあわせまして、義足、子供たち成長早いから義足がもう合わなくなってくるんですね、成長が早いので。そういった義足は、サイズが合わなくなった義足はどのように対応されているのか、その点をお伺いします。  また、津守参考人には、私は、先ほど津守参考人がおっしゃったイランとの関係というのは、僕は本当に重要なことだと思うんですよね、日本のアラブ諸国に関する戦略上ですね。リーダーシップというのはなかなか難しい点もあるかもしれませんけれども、しかしイランアメリカの仲介役を日本が務めるということは、僕は十分可能だと思うんです。イラン中心日本は中東関係の修復といいますか、その重要な国になると思うんですけれども、具体的に、まずステップ・バイ・ステップで何からイランに関しては始めたらいいのかをお伺いします。  以上でございます。お二方にお伺いします。
  48. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) それでは、これで最後の質問になりますので、もし今までの御質問の先生方のことも含めて言い残されたことがございましたら、どうぞ含んで御答弁いただいても結構でございます。
  49. 長有紀枝

    参考人長有紀枝君) 岩本先生、地雷についての御質問なんですが、私自身はその人形が付いている地雷というのは現地ではちょっと聞いたことがないんですけれども、子供も含め大変多くの方が今現在も犠牲になっておられます。  ほかの地雷埋設国よりはまず地雷被害者が少ないようだというようなことがございまして、その理由が、生き残る方が少ないと。それが、実際事故に遭ってから医療施設に運ばれるまでの移動の手段がないというようなことが大きな問題になっておるんですが、義足もやはり同じような問題がございまして、赤十字国際委員会NGOを始め様々な団体が義足の支援をしておりますが、全国の津々浦々を網羅できるわけではございませんので、そういった義足の工場に比較的近いところに住んでいる方は義足を手に入れることができますが、遠隔地に住んでいる方たちはそういったアクセスが一切ないような状況で、いかにそういったことを広げていくかというのが今後の課題かと思います。  それと、先生がおっしゃったとおり、大体子供の場合、早くて半年ぐらいでサイズが合わなくなるというふうに言われておりますけれども、子供に限らずアフガニスタンの場合、一度手に入れた義足を定期的に維持できるかどうかというのが今後の大きな課題ではないかと思います。  今はまだといいますか、国際NGOなどがおりまして国連機関もともに義足の支援を続けておりますが、義足というのは本当に未来永劫必要なものでして、また一人一人に言わばあつらえるものですから、現地で自足している義足の工場がない限りは被害者の方は義足を履き続けることが、身に付け続けることができませんので、いかにそういった今ある国際NGOなどの義足施設を現地の人に手渡して、それが未来永劫続くようなシステムを作るかというのが今後の大きな問題になっていくかと思います。
  50. 岩本司

    ○岩本司君 ありがとうございました。
  51. 津守滋

    参考人津守滋君) イラン日本の今までの関係、ちょっと一言だけ。  これは、実は私が外務省にいたときから、直接の当事者ではありませんが、かなりいろんな形で日本の外務省の高官がイランに行き、ワシントンに行き、橋渡しというか、こっちの言ったことをあっちに言い、あっちの言ったことをこっちに言うというような形で、実際上はそういうことをかなりやっているというふうに私は記憶しております。  それから、例えば、大変重要なのは、国際問題研究所はイランの研究所と非常にいい関係にあるんですね。それから、さっき申し上げた、ハタミ大統領の文明間の対話を非常に日本は積極的に取り入れて具体的にシンポジウムを開いているということで、イラン日本に対する親近感、これはもうかなりはっきりしている。  そういう中で、それじゃアメリカとの橋渡しをするための目玉というか、玉は何かということになりますと、繰り返しになりますが、今度の、私、今日申し上げたような安全保障の枠組みを作るということをてこにして、アメリカイランの関係を近づけることが可能ではないかと思います。
  52. 岩本司

    ○岩本司君 ありがとうございました。
  53. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 茂田参考人、何かございましたら、どうぞ。
  54. 茂田宏

    参考人茂田宏君) 会長、どうもありがとうございます。  今日はいろいろ私の思っていることを言わせていただきまして、かつ皆さんのいろんな御意見を聞かせていただいて、大変有意義でございました。ありがとうございました。
  55. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 予定の時刻も参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。  一言ごあいさつ申し上げます。  参考人におかれましては、長時間にわたりまして大変貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。  皆様方の今後ますますの御活躍を祈念いたしまして、本日のお礼のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十六分散会