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2004-05-27 第159回国会 参議院 経済産業委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年五月二十七日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月二十五日     辞任         補欠選任      直嶋 正行君     樋口 俊一君      平田 健二君     柳田  稔君      藁科 滿治君     郡司  彰君  五月二十六日     辞任         補欠選任      郡司  彰君     藁科 滿治君      樋口 俊一君     直嶋 正行君      柳田  稔君     平田 健二君  五月二十七日     辞任         補欠選任      泉  信也君     柏村 武昭君      本田 良一君     岩本  司君      浜四津敏子君     日笠 勝之君      西山登紀子君     小林美恵子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         谷川 秀善君     理 事                 魚住 汎英君                 加納 時男君                 松田 岩夫君                 広野ただし君                 藤原 正司君     委 員                 柏村 武昭君                 小林  温君                 関谷 勝嗣君                 福島啓史郎君                 保坂 三蔵君                 岩本  司君                 勝木 健司君                 直嶋 正行君                 平田 健二君                 藁科 滿治君                 日笠 勝之君                 松 あきら君                 緒方 靖夫君                 小林美恵子君    国務大臣        経済産業大臣   中川 昭一君    副大臣        経済産業大臣  坂本 剛二君    大臣政務官        経済産業大臣政        務官       江田 康幸君        経済産業大臣政        務官       菅  義偉君    政府特別補佐人        公正取引委員会        委員長      竹島 一彦君    事務局側        常任委員会専門        員        世木 義之君    政府参考人        内閣法制局第四        部長       石木 俊治君        内閣官房知的財        産戦略推進事務        局長       荒井 寿光君        文部科学大臣官        房審議官     丸山 剛司君        特許庁長官    今井 康夫君        特許庁総務部長  迎  陽一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○特許審査迅速化等のための特許法等の一部を  改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、浜四津敏子君が委員辞任され、その補欠として日笠勝之君が選任されました。     ─────────────
  3. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  特許審査迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会内閣法制局第四部長石木俊治君、内閣官房知的財産戦略推進事務局長荒井寿光君、文部科学大臣官房審議官丸山剛司君、特許庁長官今井康夫君及び特許庁総務部長迎陽一君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) 特許審査迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 小林温

    小林温君 自民党の小林温でございます。  本日は特許法改正案審議でございますが、私は一昨年、昨年と二度特許庁の方にお伺いをして視察をさせていただきました。実際に審査現場も見せていただいたわけですが、その際に感じましたことは、後ほど触れさせていただく最新鋭の電子化されたシステムと、それからすばらしいその審査ノウハウを持った審査官のいわゆるたくみの技が融合して我が国のイノベーションを支えていると。ひいては我が国産業競争力あるいは経済活力の基盤を支えるような社会的インフラの一端をこの特許庁皆さんに担っていただいているという事実でございました。  今回の法改正によって、やはり今の我が国知財戦略全体の中においてこういう取組が進んでいくということが可能になるということだと思いますので、そういった観点から今日は質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、先般、中川大臣が発表されました新産業創造戦略、いわゆる日本版ヤングレポートというふうに言われているわけでございますが、ヤングレポートというのは、そのアメリカの今の競争力の源泉のスタートラインに立った重要なレポートとして位置付けられているわけでございます。いずれこの戦略が成功裏に終われば、中川レポートということで後世に長く伝えていただけるようになるような、そういう中身も非常に野心的に取り上げていただいているというふうに私は思います。  その新産業創造戦略の中で描かれました新産業ビジョン、それと今般の特許法改正案との関係について幾つか質問をさせていただきたいと思います。  先ほど申し上げましたように、一九七〇年代から米国経済というものは衰退に向かっていたわけでございますが、その再生を果たす中でヤングレポートというものは非常に大きな役割を果たしたわけでございます。産業競争力の強化を目指した、あるいは通商政策も重視したと。一方で、IT政策の実は出発点にもなったわけでございます。そして、その中で知的財産権保護という方向性を打ち出し、いわゆるプロパテント政策アメリカが採用することを明確に宣言したレポートでもあるわけでございますが、以後アメリカはこのヤングレポートを基に確固とした国際戦略の下、米国知的財産保護を強力に推進してきたわけでございます。  今回の新産業創造戦略の中では、燃料電池情報家電ロボット等我が国が現在世界最先端技術を有する七分野について将来ビジョンを示した、あるいはその分野横断的な重点政策として知的財産権政策というものも明確に位置付けられているわけでございます。アメリカの例を見るまでもなく、この七分野に代表される我が国競争力を有している分野において成果を上げるためには、その知財政策推進ということが不可欠でございます。そういう意味において、このレポート基本的方向性というものは評価に値するんじゃないかと思います。  そこで、まず大臣にお伺いをさせていただきますが、今回の法案の中では、特許審査迅速化に向けて包括的な取組が提示をされているわけですが、この特許審査迅速化というものがこの新産業創造戦略の中でどのように位置付けられているのかと、この意義について大臣のお考えをいただければと思います。
  7. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) おはようございます。  今、小林委員から御指摘の新産業創造戦略を評価していただきまして、誠にありがとうございます。これはあくまでも一つの土台といいましょうかビジョンでございまして、これを実現していくためには、いろんな国としてやるべき問題、法律面あるいは財政面等々のバックアップも必要でございますし、それから産学官、あるいはまた政府部内、これはもう経済産業省だけではない問題も提起しておりますので、あるいはまた地方との関係といった総合的な、何といいましょうか、チームプレーが必要だというふうに思っております。そういう中で、新しい産業群を特に頑張ってもらおうということで、主役はあくまでも企業産業、地域であり人であるというふうに思っておりますが、それにバックアップができるだけ必要であるという下で作ったものでございます。  そういう中で、大きな柱としては、やはり人材育成知的財産の更なる、何といいましょう、知的財産が更に日本の中で大きくなっていく、発展をしていく、前進をしていくということが極めて大事なツールであるというふうに考えております。知的財産につきましては、正に知的財産が生まれるようなインセンティブを与えることが必要であると同時に、その生まれた知的財産がきちっと権利保護されて、そして保護されると同時に、特許権として保護されるものが公開されたらそれを利用して世界じゅう皆さん方ルールにのっとって活用していただくということまでが必要なのではないかというふうに思っております。  そういう意味で、その知的財産一つ作った、それを特許として申請をして保護されるという中には、今御審議をいただいております特許法の中の迅速化の問題であるとか、あるいはまた待機の解消の問題であるとか、あるいは、特に資金面あるいはいろんな面で大企業に比べて厳しい中小企業に対する特許申請のための支援制度でありますとか、そういうものが必要になってくるというふうに考えておりますので、正に新産業創造戦略の目指す方向性の大きな前提条件として、この特許法改正、あるいはアメリカなんかはヤングレポートを作った後に産業スパイ法とかあるいはエクソン・フロリオ条項とか、そういった知的財産を守るためのかなり強力な法制度もセットでやっているわけでございますから、特許侵害に対する問題も含めましてやることによって、日本人の知恵あるいは技術、新技術、新発明等が生まれるインセンティブをより与えていくと同時に、生まれたものをきちっと保護することによって発明者権利あるいは関係者権利を守りながら、そしてその新知的財産を有効に活用していくような体制作りにしていきたい、そのためにも本法案審議は極めて重要であるというふうに考えております。
  8. 小林温

    小林温君 ありがとうございます。  インセンティブ、あるいは権利保護ルールにのっとった活用という、そういう道筋をお示しをいただいたわけでございますが、この戦略の中で研究開発効率向上というものを知財政策によって図っていくという実は中身があるわけでございます。  私、これ実は大変重要だというふうに思うわけでございますが、この研究開発効率向上、これ具体的にどういったものを意味されるのか、あるいは目指されているのかということについて、改めて確認をさせていただきたいと思います。
  9. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) お答え申し上げます。  先生御指摘の問題でございますけれども、現在特許になる特許率が非常に低下しておりまして、五割を割り込んで、昨年は四九・九%ということになりました。  非常に割り切ってあらあらに申し上げますと、現在、民間企業は十二兆円の研究開発を行っておりますので、それはすべてが特許に向かっているということではありませんが、非常にあらあらに申し上げまして、そのもし半分が特許に結び付いていないということになりますとこれは非常に大変なことでございます、六兆円ということになるわけでございますけれども。こういう事態を少しでも改善をして企業特許率を上げていく、研究特許に結び付くようにしていくということによって研究開発効率を非常に高めることができるのではないかということでございます。  そして、この特許率が五割を割ったという、割っているという原因でございますけれども、やはり企業研究者研究を開始する時点で過去の従来技術というものについての十分な調査が行われていない、それによって重複投資が行われているんではないかというのが問題意識でございまして、私どもの調べたところでいいますと、特許庁審査官拒絶をした場合に、拒絶理由については、平均しますと出願の八年前の技術拒絶をされているという事実がございます。また、私ども計算でいいますと、研究開発時点でもし調査を徹底的にしておれば、過去の技術を徹底的に調査しておれば、七六%程度がそれでそういう技術があるということが分かったかもしれないというふうに私どもとしては計算をしております。  そういたしますと、研究開発時点でどういうふうに、その過去の技術を徹底的に調査をしてもらった上で研究に入ってもらうというのが大事なことでございます。そして、今回の新産業創造戦略におきましては、新しい試みといたしまして、特許審査審査官が持っております審査ノウハウといいますか、そういうものを研究者方々に開放してこれを活用してもらいたいというようなことを考えているわけでございます。  具体的に申し上げますと、ちょっと長くなりますけれども特許審査官というのは、約五千万件という大変大量な従来技術蓄積の中から重要な、出願関係するような技術を漏れなく過不足なく必要な情報だけを取り上げて、それで審査をするわけでございます。もしそういうようなノウハウ研究者が持つことができれば大変研究効率が高まる、無駄な研究といいますか、そういうものがなくなるんではないかということで、私どもは、言ってみますと審査秘伝のような、審査秘伝といいますかノウハウといいますか、そういうものについて、今まで蓄積してきました、特許庁審査官蓄積してきましたそういうノウハウというものを民間研究者に開放していくと。代々の審査官暗黙知として受け継いできたコツといいますか、そういうものについて、これを分かりやすく整理をして、私どもサーチ戦略ファイルというふうに呼んでおりますけれども特許庁の中で呼んでおりますけれども、こういうものも開放していくと。  そうしますと、先ほど申しましたように、研究開発段階研究者が常日ごろ昔の技術確認をしながら、行き止まりかどうかを確認しながら進んでいくことができるということでございますので、研究開発効率に非常に役立つんではないかというのが考え方でございます。
  10. 小林温

    小林温君 日本全体のRアンドD投資に対してどのような効率化が図られるかということは、これは我が国競争力にもかかわってくるところでもございますので、是非この視点で知財政策を進めていただきたい。それから、今の長官からお話がありましたように、審査官が持っていらっしゃるノウハウ、これは大変な蓄積だというふうに思います。これを外に向けてオープン化していくという取組についても引き続き進めていただきたいとお願いを申し上げるところでございます。  次に、中小企業の問題について質問させていただきたいと思いますが、やはり知財立国を実現していくためには、我が国企業の大宗を占める中小企業知的財産を持っていかに武装をしていくか、積極的に活用できるようになるかということが大きなかぎを握っているというふうに思います。  現在でも中小企業に対しては審査請求料等減免制度があるわけでございますが、あるいはこの点についてはその対象範囲等も広げていただいていると思いますが、現在のこの制度利用状況についてお伺いをしたいと思います。
  11. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) お答え申し上げます。  料金減免制度のここまでの利用実績というのは、ここ三年平均年間八百件程度と非常に低い数字となっております。  御指摘ございましたように、減免制度対象についてはその拡充をいたしまして、現在のところ中小企業出願の約半分、試算によりますと一万五千件ぐらいまでがその減免対象になる可能性があるというふうなことでございますけれども実績が非常に低調になっているということでございまして、これはやはりこの制度が十分周知されていないんではないかということで、今年の一月から、特許出願人、過去に出願をされた方四万社、それからその手続を代行される弁理士方々約五千七百人の方にも特許庁の方からダイレクトメールを出して周知を図ったところでございます。  こういった活動をしました結果として減免制度利用が増えてきているという感触は得ておりまして、実際問題として、年間八百件と申しますと月平均六十件余だった利用実績が、今年の三月、四月では一か月に二百件ぐらいの利用が出てきているというふうなことでございますんで、今後とも、せっかくの制度でございますんで、利用実績が十分に上がるように更に努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  12. 小林温

    小林温君 是非、その利用実績、更に伸びるような周知徹底も図っていただきたいというふうに思います。  ただ、この減免制度も含めて中小企業に対していろんな施策を打っていただいているわけでございますが、一方、大企業中小企業間の間での知財デバイドという言葉もございます。やはり、資金人材に恵まれている大企業とそうでない中小企業との間には、知財戦略をめぐってもやはり大きな壁があるというのも事実だと思います。ですから、この減免制度含めて、様々な中小企業に対しての施策というものはあくまでも呼び水として、結果としては知的財産を使いこなすことのできる中小企業をいかに多く育成できるかということが知財政策の中でも大きな意味を持つと思います。  この点について、経済産業省として、特許庁としてはどのようにお取り組みになられる考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  13. 坂本剛二

    ○副大臣坂本剛二君) 中小企業知的財産を十分に活用するためには、研究開発段階から五千万件の特許情報活用して絞り込んでいかなくちゃならないわけであります。出願から権利取得までの様々な手続を行って、さらに自らの権利活用してライセンス収入を得るなど、幅広い知識が必要とされております。一方、大企業であれば社内に専門のセクションを設けることによって十分に知的財産活用支援する体制を整えることが可能ですが、中小企業においてはこれが困難であるのが現状でございます。  経済産業省としましては、中小企業に対して料金減免制度早期審査制度だけでなく、研究開発段階から、出願権利取得活用及び事業化に至るまで総合的な支援策を講ずることが必要であると考えております。こうした観点から、特許制度に関する説明会出願に関する相談、従来技術調査支援などを行うとともに、技術開発支援金融支援などの中小企業施策産業クラスター施策などの諸施策との有機的な連携を図りつつ、総合的な支援策を実施しているところであります。  また、こうした総合的な支援策を実施するためには、人材の充実が必要になってまいります。人材面で不利になりやすい中小企業について、知財に通暁した人材育成したり、中小企業をサポートする人材をアドバイザーとして派遣するなど、積極的な支援策を講じてまいりたいと考えております。  こうした取組によって、本当に知財知的財産を使いこなすことのできる中小企業育成に一層努力してまいりたいと考えています。
  14. 小林温

    小林温君 是非中小企業に対する様々な対応をお願いをしたいと思います。  次に、国際的な問題について少し質問させていただきたいと思いますが、グローバルな規模で特許出願数が増加しているということは御承知のとおりだというふうに思います。その中で、これは新産業創造戦略の中でも書かれているわけでございますが、一つには特許制度の国際的な調和、ハーモナイゼーションをどう推進するか。それから、我が国で生み出された知的財産をいかに保護していくか、これは発展途上国との関係になるかと思います。  さらに、特にIT世界等においては標準化戦略というものが、企業産業界、例えば今のOS等、半導体等見ると、これは国家戦略にも大きくかかわってくる、競争力にもかかわってくるわけでございますが、こうした世界特許への取組というものは様々入り交じって容易じゃないということは分かるわけでございますが、我が国として特許国際戦略というものについて今どういう考え方を持ち、そしてどのような外交努力を行っていこうとしているのか、これについて政府の御方針を伺いたいと思います。
  15. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、小林委員指摘のように、やはり世界じゅうどこでも、いいものを発明したり知的財産を生み出した人というか、その発明者に対しては、やっぱり特許申請した場合にはきちっと保護されるというのは、こういう世界が狭くなっている状況の中ではいわゆる世界特許権保護、確立というものが必要だろうというふうに思っております。しかし、現実には、例えばWTOのTRIPsの議論とか何かでも、特に発展途上国の方から、それは先進国の横暴であるみたいな批判が強いことも現実でございます。  我々としては、きちっとした権利保護というものが、先ほど申し上げたようにインセンティブにもなりますし、特許利用する人々にとっても最終的にはプラスになるという考えを持っておりますから、現実には、特許の八割がアメリカEUそして日本という現状であり、しかもアメリカは御承知のとおり先発明主義という、全く日本EUと違うシステムを取っておるとか、あるいはいわゆるグレースピリオドの問題であるとか、日米欧だけでもかなり基本的な部分で特許制度知的財産保護制度が違うという現状、これをまず直していくということが重要なのではないかなと。もちろん、最終的には途上国の御理解もいただきながら世界統一ルールというものにしていかなければならないということだと思います。  それからもう一つは、模倣という、あるいはまた知的財産侵害という問題につきましても、先ほど申し上げましたが、きちっとした形で、とにかくこれは各国とも、知的財産権の問題と少し違う分野知的財産を模倣したり盗んだりということが堂々と行われているという現状に対しては毅然とした態度で各国間でよく話合いをし、協力をしながらやっていかなければならないというふうに考えております。
  16. 小林温

    小林温君 国際化という問題についても、更に積極的な取組是非お願いしたいというふうに思います。  次に、青色発光ダイオードで有名になり、今回の改正の中にも盛り込まれております職務発明制度についてお伺いをしたいというふうに思うんですが、判決については、発明者の側は拍手喝采で、これで研究者のモチベーションが上がったと。一方、使用者の側からすると、あんな巨額な対価を請求されてはとても会社を経営することはできないと、そんなつぶやきも聞こえるわけでございますが、一つだけ言えるのは、やはり今ここで職務発明についてしっかりとしたルールを作らなければいけない、そういうことをすべての関係者に対して認識をいただいたということがあの判決一つ意味だったのではないかというふうに私は思うわけでございます。  この点については、産業構造審議会でも廃止論から現状維持論まで様々な意見があったようですし、先日、参考人をお招きした際にも、いろいろ御意見はあるようですが、発明者使用者のバランスに配慮した妥当な内容ではないか、こういう意見も伺ったかに思うわけですが、このような今回の法改正の結論に至った経緯、研究者発明インセンティブ、それから企業側研究開発投資についてこの法改正がどういう影響を与えるのかということについて御見解をお伺いしたいと思います。
  17. 坂本剛二

    ○副大臣坂本剛二君) 訴訟が多発しましたことを契機に、職務発明制度見直し議論が高まってまいりました。平成十四年九月以来、産業構造審議会知的財産政策部会において慎重な審議が行われまして、今年の一月に報告書がまとめられたところであります。その間、昨年の通常国会における参議院の附帯決議において、「発明者使用者のバランスに配慮して検討を行うこと。」という御指摘をいただいたところです。  このような見直しの経緯を経まして、今般提出させていただいた本改正案では、各企業の経営環境、経営戦略や社風を理解しているのはその企業研究者と経営者であることから、職務発明の対価については、基本的にこれら当事者間で自主的に取り決められた対価を尊重することとしております。これによって、研究者にとっては、自分たちの意見を述べる機会が得られるため、発明評価に対する満足感が増しますので、更なる発明へのインセンティブが高まると考えております。また、企業にとっては、対価の予測可能性が増すことによって経営の安定が図られ、更なる研究開発投資の活性化に資することができると考えております。
  18. 小林温

    小林温君 今のお答えにもありますように、実際に職務発明を生み出す企業内の研究者、それからそれを知的財産として活用する企業との協力が今まで以上に必要不可欠だということがこの改正案中身には書かれているんだろうというふうに思いますが、そういう環境整備をまず実現する、そして十分な意見交換の下に契約を結ぶ、こうした文化を日本企業社会の中にやはり醸成をしていくということが今後必要なんだろうというふうに思うわけでございます。  ただ、青色発光ダイオード判決によって、やはりこれから司法の場で決着を付けよう、こういう動きも更に多くなるかというふうにも思うわけでございますが、これを、今回の法改正中身を、ではいかに司法の判断において担保していくのか、尊重していくのかということ、私は、これはやはり契約の中身についても司法の判断においてある程度尊重されるべきだというふうに思うわけでございますが、この点について政府側はどういうふうにお考えでしょうか。
  19. 江田康幸

    大臣政務官(江田康幸君) 御指摘のとおり、今般の改正案につきましては、企業については対価の予測可能性を増すことによりまして経営の安定化を図れる、また、研究者におきましては、自分たちの意見を述べる機会を得て、その満足感を、発明の評価に対する満足感を増す、こういうバランスの取れた環境整備を図るというのがその目的でございます。  具体的には、各企業の置かれました経営環境や経営状況、また戦略研究戦略等、そういうことに熟知しているそういう企業と、またその研究者が十分話合いをした結果としてその契約が成立した場合には、その契約の内容がこの司法の判断においても尊重されるべきと、そのように考えております。
  20. 小林温

    小林温君 分かりました。  ただ、もう一つ、その訴訟例を見ると、かなりその以前の職務発明に対して対価の算定を求めるものも多く見られるわけです。これは青色発光ダイオードもそのとおりでございますが。今回の改正がこれから先の職務発明についてのみ適用されるということになれば、現在既に起きている訴訟、あるいは過去の発明に対してこれから起こされる訴訟については意味を持たないということにもなりかねないかと思います。  その法律を遡及適用させるということは、これは難しいんだろうというふうに私も理解をしておるわけですが、こういう点については何か対応策をお考えでいらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  21. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) お答え申し上げます。  先生御指摘のように、現行特許法三十五条三項に規定されております相当の対価の請求権というのは、研究者企業発明を承継させた時点で発生しておるわけでございまして、したがって、現行法で発生している権利について、この改正法案改正法によりましてこれを遡及する、遡及して適用するというのは困難であろうかというふうに思います。  ただ、研究者企業が協議を尽くして対価を決定するための取決めが策定された場合、今度この法律に基づいてそういうものが策定された場合に、現行法の下で既に発生している権利に関する裁判においても、その取決めの趣旨とかこの法案の趣旨でございますとか立法府の意思でありますとか、そういうものが参酌されるということを私どもは期待するわけでございます。  また、これは最終的には裁判所が現行法に基づいて判断することでございますけれども、例えば現行法によって不合理とされないような取決め、きちっとした現行法の手続に従った取決めが行われた場合に、企業研究者との個別の契約を新たに結びまして、既に発生しております相当の対価請求権をこの新しい取決めに基づいて再計算をすると。そして、その再計算した額で対価を払うというような新しい合意をする、契約をするという場合には、その契約が尊重される場合もあり得るんではないかというふうに考えております。
  22. 小林温

    小林温君 私もかつて会社を経営していたときに、社員の中に技術者もおりました。研究者もおりました。なかなか企業側とそういった専門職の方と意見交換をしたりコミュニケーションをしたり、あるいはビジネス全体の枠組みについてそういう研究者の方に理解をいただくということは実は難しいということを私は実感をしておったわけでございます。今回の改正案の中では、企業が社員に対して説明責任をしっかりと果たすということも求めているわけでございまして、是非この点はしっかりと対応していただきたいと。  ただ、やはり産業ですとか企業によって文化や風土は異なるというのもまた事実でもございます。ですから、ここは、ガイドラインというのはこれは横断的になると難しいと思いますが、例えば事例集のようなものを是非作っていただく、そういう前提だろうというふうに思いますが、それを意見聴取やコミュニケーションの中で活用するということは、今後のこの改正案を施行していく中で大変重要なことだろうというふうに思います。  そういったことを前提にして、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取、これについては、やはりある程度企業、それぞれその文化、業容等違うということも勘案すべきだというふうに私は思うわけでございますが、この点については政府はどういう御見解をお持ちでしょうか。
  23. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) お答え申し上げます。  今般の改正案におきましては、各企業の経営環境でございますとか経営戦略、社風、こういうものを理解して一番分かっているのはその企業研究者と経営者であるということから、その対価については自主的な取決めで決められた対価を尊重していくということでございます。  また、先生御指摘のように、算定に当たりまして、研究者意見を聴くための適正な手続というものについても、業界ごと、企業ごとに異なっているというふうに考えております。  例えば、大企業の場合は何千人も研究者がおられますので、それぞれの研究者ごとに、かつたくさんの発明について一つ一つ相談をしながら対価を決めていくというのは大変なことでございます。その場合、それは企業にとっても研究者にとっても負担になるということでございます。そうした場合に、例えばまず企業ルールに従って算出する、対価を算出して、それを支払って、それに異論がある際、研究者が申し出てくれば、それに対して誠実に対応する、不服に対して対応できるというような体制を作っておれば、原則として問題はないというふうに私どもとしては考えております。
  24. 小林温

    小林温君 先ほど申し上げましたように、やはり今回のこの改正法が目指すものは、職務発明について、やはり今までとは違ったしっかりとしたルールを作らなければならないと、そしてそれをすべての関係者皆さんにしっかりとした御認識をいただくということだろうと思います。  ですから、今幾つか質問申し上げましたような改正法の運用の部分については、是非これから日本の中で、あるいはそれぞれの産業企業の中で、どういった形がバランスが取れたものであるのかということについてしっかりと御考慮をされて当たっていただきたいということをお願いをしておきたいと思います。  時間もないようでございますので、最後に特許事務システム見直しの問題についてでございますが、私これ、いろんなところで、先日の予算の委嘱審査の際にも質問させていただきました。決算委員会でもさせていただいているんですが、特許庁のお取組というのは、現在レガシーシステム、三十六の見直しを進めている中で、真っ先に手を付けていただいて結果を出していただいた、今後そういう大きなシステムをこれから見直していく中で、そのモデルになるような取組をしていただいたわけでございます。  具体的に申しますと、データ通信役務契約というこの説明の付かない契約形態、あるいは残債という、これもえたいの知れない借金なわけでございますが、こういうものの解消に踏み出していただいたということには改めて評価を申し上げたいと思います。  ただ、これはシステムを電子化をするということじゃなくて、このシステムの見直しというのは、そのシステムによって何を今後実現していくかということが重要でございまして、当然ながら、特許審査迅速化、今回の改正案の中にも含まれております、あるいは出願者に対するサービスの向上、これをどう図っていくかということがしっかりと中に入った改革でなければいけないと思います。是非、この取組について業務改革を進めていただきたいということをお願いを申し上げ、簡単にそれについてコメントをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  25. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) お答え申し上げます。  小林先生が主要なメンバーをしておられます自民党のe—Japan特命委員会からの御指摘も踏まえまして、いわゆるレガシーシステムから脱却ということで、本年度、いわゆる残債の一括支払という予算を計上させてもらいまして、既にこの支払を終えております。この結果、ソフトウエアの著作権が特許庁に帰属いたしまして、審査迅速化のためにより主体的なシステムの開発を実施することが可能になったというふうに考えております。  私どもは、具体的に現在、業務システム最適化計画というのを策定中でございまして、この業務システム最適化計画というのは、今、先生がおっしゃったような具体的な効果のあるような、審査迅速化その他に効果のあるようなものを盛り込んだものでございまして、現在パブリックコメントで外部のユーザーの御意見をちょうだいしているところでございます。  一例を申し上げますと、今般、法律でお願いしております従来技術の登録調査機関に関するシステム上のサポートと、こういうものについても今回盛り込んでまいりたいと思いますし、先ほど申し上げましたように、特許庁がこれまで世界最高水準の電子化の下で蓄積してきました五千万件の特許情報、それから審査ノウハウとして蓄積してきました従来技術の検索方法を研究者方々に開放すると、こういうこともこれからの課題でございますので、盛り込んでいきたいというふうに考えております。
  26. 小林温

    小林温君 終わります。
  27. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 自由民主党の福島啓史郎でございます。引き続き、法案につきまして質問したいと思います。  まず、知財立国、そのための審査順番待ち期間ゼロを目指して施策を集中することが必要である、今回の法案もそのための法案であります。昨年の特許法改正審議におきまして、私、IPCCの独占の廃止と民間への開放を主張したわけでございますが、これが今回盛り込まれていることは評価するわけでございます。  それで、まず、この民間企業の新規参入に向けてどのような、特許庁、行政庁としてどのような努力を行っていくのか、またその実現の見通しはどうかということと、また、日本弁理士会もこうしたアウトソーシング機関を作る必要があると思いますが、その指導等につきましての考え方をお聞きしたいと思います。
  28. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 特許庁におきましては、これまで外部の調査機関にサーチを外注しまして、その規模をこれまで徐々に拡大をしてきているところでございます。今後、八十万件に上る審査待ち案件を一掃しまして審査順番待ち期間ゼロを実現すると、このためには従来技術調査の外注の一層の拡大、それから品質の一層の向上が必要不可欠でございます。  前国会におきまして、当委員会におきまして福島先生より、特許審査の従来技術調査の外注に民間調査機関の新規参入を促進すべしという御指摘をいただいたところでございます。今般の法改正は、従来技術調査業務へのその意味民間企業の参入を可能とする、そういう環境整備を図るものでございます。  御案内のとおり、特許庁審査官というのは従来技術調査を信頼をして、外部で調査……
  29. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 答弁は簡単にしてください、申し訳ございませんが。
  30. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) はい。  その意味で、新しい機関に民間企業に参入してもらいまして、これに対して特許庁としましても、検索ノウハウを提供するでありますとか、そういう人材育成、こういうものについて十分な配慮をしていきたいというふうに思っております。  また、弁理士会の関係でございますけれども弁理士会の目的そのものが弁理士会員の品位の保持とか指導とかそういうものでございますので、そういう目的達成との関係でこういう業務とどういうかかわりになるのか、なお弁理士会の方からよくお話を伺っていきたいというふうに思っております。  ただ、個々の弁理士さんが今後新しく拡大してきます登録調査機関に参画したり協力していただくということは大変意味のあることだというふうに思っております。
  31. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 その意味でも、今回拡充されましたこの独立行政法人の工業所有権情報・研修館を活用して、弁理士審査官の相互交流、共同研修をして、将来的には法曹界と同じように、任期付審査官の大幅増大に伴いまして、法曹界と同じように弁理士審査官の一元化を図るべきだと私は考えます。  次に、荒井知財本部事務局長にお伺いしたいわけでございますが、先ほど、同僚議員、小林議員から話がありました青色ダイオードに関する二百億円の判決、私は個人的には、いろいろ議論はありますけれども、個人的には、今、子供なり学生の理工系、理科系の関心、これは医者、理科系をやるなら医者だと、それ以外は理工系が特に関心なり志望が落ちているという状況にあるわけでございます。そうした子供、学生の理工系への関心を深めるためにも私は良かったんじゃないかと思うわけでございます。  荒井事務局長は、この三十五条の改正につきましては、従来から契約でやるべきだと削除を主張しておられたわけでございますけれども、今回の改正案、どういうふうに考えておられるのか。私は、経過的なもの、言わば中途半端といいますか、経過的なものではないかと思うわけでございます。したがって、現行改正案でいくならば、先ほども出て、小林議員も言っておりました事例集、例えば一億円未満の売上貢献、一億円未満であれば定額の報償金であるけれども、例えば一億円以上の売上増につながる場合にはその何%、一定割合を職務発明者に供与するなど、そうした事例集なりガイドラインを設けるべきだと思いますが、その点についてはどうでしょうか。
  32. 荒井寿光

    政府参考人荒井寿光君) ただいま先生からお話ございましたように、日本の若い人たちあるいは研究者がいい発明をしようというインセンティブを持っていくような社会を作っていくということは非常に大事な点だと思っておりまして、その点は私も先生のお考えに全く賛成でございますが。  同時にまた、インセンティブを与えることと、それから、そういうことを実用化したりするときに企業の方が安定的に経営ができるかという点も大事な点じゃないかと思いますので、そんな観点から、この職務発明規定については、いろんな方の御意見が出て、そして今回御提案しているように職務発明規定を改正するという案が出ているわけでございますが、こういうことができた後、じゃ果たしてどういう形で実行していくと一番日本からいい発明ができるかということでございまして、いろんな手続の決め方については経済産業省の方で参考事例集を作ると聞いておりますし、それから、お話、御指摘ございましたように、ガイドラインとかそういうお考えもあるかと思いますが、いろんなこれ、業界によって違ったり商品によって違うと、そんな点もございますので、是非これは、参考事例集がきちんとできて、そしてそういうことが定着して日本でいい発明が一杯できる、それから産業界がそれに基づいて立派なものを世界じゅうに売っていくということができるのが適切じゃないかと思っております。
  33. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 それともう一つの課題といたしまして、農林水産物なりあるいは工業品の競争力強化、あるいは地域の活性化のための、また消費者保護という観点から、私は地域ブランドを確立すべきだと思います。これはWTO、TRIPs等でも議論が進められているわけでございます。知財推進計画の中にこの地域ブランドの保護制度を位置付けて、その推進を図るべきであるというふうに考えます。また、その場合に地域ブランド保護法のような法制度考えるべきだ、新しい法制度考えるべきだと思いますが、これらにつきまして、検討状況を含めて荒井事務局長にお聞きしたいと思います。
  34. 荒井寿光

    政府参考人荒井寿光君) 地域ブランドにつきましては、各地域の方が一生懸命努力して、長い間努力したものが伝統に裏打ちされて確立していくということで、これは非常に重要なことでございますし、同時にまた、消費者の方にとりましても、そういうものがしっかりしていれば安心して買えるということで、正に先生御指摘のとおり、地域ブランドというのは非常に大事な点じゃないかというふうに思いますので、全く先生のお考えに賛同するものでございますが、ちょうど今日、本日、政府知的財産戦略本部を開きまして、そこで知的財産推進計画二〇〇四、こういうものを決定するわけでございますが、そこの案では地域ブランドの保護制度を検討するという項目が盛り込まれる見込みでございます。  これは昨年の計画には入っていなくて、先生のお考えとかいろんな方面の御意見、そういうことで今回初めて入るということでございますので、是非、こういう地域ブランドの保護制度を検討すると、その検討の過程で、先生の御提案のような、どういう保護法がいいか、法律体系がいいか、そういうことも検討されていくものだと思っております。
  35. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 中川大臣にお聞きしたいわけでございますが、大臣は、農林水産大臣もやられ、今、経済産業大臣でもあります。地域の農林水産業あるいは地域の工業品、そういったものを振興していく上でも、この地域ブランド制度是非実現すべきだと思います。経産大臣としての御見解をお伺いしたいと思います。
  36. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、福島委員指摘のように、地域ブランド、いわゆるブランドの中でもその地域というものが付加価値を生んでいるということについては、私も基本的に、そういうものは守り、発展すべきだというふうに思っております。  福島委員もよく御承知のとおり、WTOの今、議論の中でも地理的表示という問題が非常に大きな問題になっているわけで、この中には本当に、ああ、これが地名だったんだというようなものも、特にいわゆる旧大陸といいましょうか、ヨーロッパ側から非常に大きな問題として提起されているわけでありますし、他方、新大陸の方、アメリカ大陸とか豪州の方は、いや、それは困るというような議論があることは我々承知をしておりますが、基本的に、地域ブランドの育成、そして保護というものは大事でございます。  ただ、具体的な事例になると、例えば瀬戸物がどうだとか奈良漬けがどうだとか野沢菜がどうだとかいうことになると、じゃ野沢菜は長野の野沢でしか作っちゃいけないんだと、あとは駄目と、何か商標法か何か違反とかいうことになると、なかなかこれは難しい。どこまでが一般名称になり、どこまでが地理的ブランドとして保護育成すべきかということになると、個別のところは難しいんですが、基本的にどうだといえば、大いに振興、推進すべきだというふうに思っております。
  37. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 個別の品目については確かに議論があるところでございますけれども、しかし、方向として、私はこれは是非新しい制度を作っていただきたいと思うわけでございます。  次に、公正取引委員長にお伺いしたいわけでございますが、先ほど、この独禁法の見直しにつきまして、公取委としても今回の通常国会への提出は見送り、引き続き検討するという方向、方針を出されたわけでございます。  私は、この独禁法改正議論の中で、特に中小企業を代表する日商等からも意見が出されております。この日商、日本商工会議所の意見としましては、むしろ不十分な適正手続の確保やこれまでの法改正に関する効果の検証、さらには不当廉売あるいは優越的地位の濫用に対する独禁法の迅速適切な運用というようなことを言っております。各方面の意見を参考にしてこれから検討されなきゃならないわけでございますが、単に、四月一日にまとめられた改正法案を、これをもう一度出すということではなくて、各方面での意見を十分聴いていただきたいと思うわけでございます。  特に、私はこれ、公取委員長にも、竹島委員長にも前回にも御質問したわけでございますが、不公正な取引方法、なかんずく優越的地位の濫用というのが法規範として確立していないんではないかと。法規範として確立するために課徴金を導入すべきだというふうに私は主張しているわけでございます。  今回の取りまとめ、自由民主党の取りまとめの中にも、「公正取引委員会は、中小事業者に不当な不利益を与える優越的地位の濫用、不当廉売などの不公正な取引に対して迅速かつ厳正に対処するとともに、一層効果的な措置を講ずることができる方策につき検討する」ということがうたわれておるわけでございます。その中には当然のことながら法的措置、先ほど言いました課徴金の導入などの法的措置が含められているというふうに考えるわけでございます。  今後の独禁法改正への検討及び取組につきましての委員長の見解をお伺いしたいと思います。
  38. 竹島一彦

    政府特別補佐人(竹島一彦君) いろんな点、御提起があったわけでございますが、まず、独禁法の改正につきましては、関係方面の御理解、御協力もいただいて、私どもとしては、議論を詰めて四月一日に具体的な法律改正案ということをまとめさせていただいたと。それは、昨年の十月以降の議論を見ますと、変えるべきものは変えて、皆様方の意見にも柔軟に対応して四月一日の案ができてきたということでございます。さはさりながら、時間的な問題もございまして今国会は見送りということになりまして、しかしながら、本年中には是非国会に提出をさせていただきたいと。  そのために、各方面からの更なる御要望もございましたので、私どもは、五月の十九日でございますけれども、これまでの議論の経過、それから具体的な四月一日の案の物の考え方、それを改めて世の中に問うてございまして、六月の末までに御意見があればいただくと。こういうことで、更に関係方面との意見調整なり理解を深めるという努力をさせていただきたいと。それで、本年中に国会に提出ができるように私どもとしては引き続き最大限努力させていただきたいと。  先生方の御理解も是非よろしくお願いしたいと思います。  それから、具体的な問題としてかねがね福島委員から御指摘のあります不公正な取引方法について課徴金の対象にしたらどうかと、なかんずく優越的地位の濫用とか、まあ不当廉売も言っておられると思いますが、この問題がございます。  これにつきましては、今、委員のお話の中で法的規制がしっかりしておらぬじゃないかという御評価もありましたけれども、私どもはこれは、優越的地位の濫用にしましても不当廉売にしましても、現行法で立派にこれ、違反行為として立件できることになっておりまして、私どももそういうことで積極的に事案を取り上げて勧告なり警告なりをしてきているということでございますんで、その点は是非御理解をいただきたいんですが、更に抑止力を強めるために課徴金の対象にしてはどうかという御見解だと思います。確かに自民党の独禁調の取りまとめにおいても、そういう趣旨があの取りまとめの中には入っていると私どもも受け止めております。  ただ、これは、課徴金は一体どういう行為に対して掛けるべきかという正にそもそも論にかかわることでございまして、政策的にやりたいと思っても法律的な問題も当然ございます。それで、もうこれは釈迦に説法になりますが、独禁法で課徴金とか罰則の対象になっているものというのは、基本的にいわゆるハードコアカルテルというものでございます。これは正に、事情を酌量することなく、カルテルであるとか談合であるというものは、これはもう即違法であるということになって、そういうものがハードコアカルテル。そこへまいりますと、不公正な取引方法、具体的には優越的地位の濫用であるとか不当廉売、これにつきましてはそういうジャンルに入っていない。しかしながら、確かに中小企業においては問題のあることでございますんできちんとした対応をする必要があるとは思っておりますけれども、法律上は基本的に違ったジャンルのことであるということを是非頭に入れていただきたいと。  我々も、真摯に検討することはお約束いたしますし、努力をさせていただきたいということは申し上げさせていただきます。
  39. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 ハードコアカルテル、談合というのが日本経済にとって、じゃどれぐらいのウエートを占めているのかということは、正にこの日商の意見書にもありますように、そういうことを中心にやっているから独禁法がわき役的存在だと、私は、言われることにもなっているんじゃないかと思います。  法制的な問題もありますんで内閣法制局にお聞きしたいんですが、EU等では課徴金を導入しているわけでございます。私は、日本も独禁法においてこういった不公正な取引方法等につきまして課徴金を課すことは法制上どのような問題があるのか。これは、個別具体的でなくても、一般論でもよろしいですが、お聞きしたいと思います。
  40. 石木俊治

    政府参考人石木俊治君) 一般に政府における法律の立案の際には、まず、担当省庁が立案をして法制局に持ち込んでいただきまして、そこで、その必要性、合理性、あるいは既存法制との整合性等について十分説明をいただくということが必要になるわけであります。  御質問の件については、担当の公正取引委員会で具体的な成案を得られたとは承知しておりませんので、このため、具体的にどのような法律上の問題があるのかということについて現段階でお答えできるものではないということを御理解いただきたいと存じます。  ただ、一般論として、お尋ねの件につきまして検討すべき論点として思い当たるものを若干申し上げますれば、例えば、まず、EUにおきましては、経済取引を規制する法規の違反に対して、刑罰でなく、専ら課徴金といいますか制裁金といいますか、そういうもので対応しているものと承知しておりますが、我が国においては、こういったものについては刑罰を科すことによって対応しているというのが原則となっておりまして、御質問の件のようなことについて、なぜ刑罰のみでは十分でないのかといったようなことがまずあるわけでございます。  それからまた、仮に課徴金を課すということにいたしますと、その金額について、具体的な算式、算定方式を合理的に設定することができるのかといったこと、あるいは、さらには独禁法で言います不公正な取引方法というものは公正取引委員会の告示でその対象が定まるということになっておりまして、そのように行政庁の判断で禁止されるか否かが定まるような行為に課徴金を課すということが適当なのかどうかといったような点があります。  こうした点を含め、十分に検討していくことが必要であると考えられるところでございます。
  41. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 そういう法制的な検討を、是非竹島委員長お願いしたい点でございます。  私は、豪腕竹島、私も昔から存じ上げ、かつまた尊敬もしているわけでございますが、是非、私は日本経済にとって知財立国とともに競争ルールというのは重要だと思うんですね。結局、泣かされている下請中小企業というものを、何とか彼らが存続できるような競争ルールを作らないと日本経済の再生はないと思うので、私はいろいろ失礼なことも申し上げておりますけれども、これ、是非実現をしたいと思います。また、立法作業におきましても御意見いろいろ申し上げますので、是非検討していただきたいと思いますので、最後の決意をもう一度お伺いしたいと思います。
  42. 竹島一彦

    政府特別補佐人(竹島一彦君) とにかく、各方面の御意見もよく伺いながら、今の先生の具体的な御提案もその中に当然入るわけでございますが、これから誠意を持って検討をさせていただきたいと思います。
  43. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 終わります。
  44. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 どうも、おはようございます。民主党の直嶋でございます。  随分久しぶりに質問をさせていただきますので、ちょっと要領を忘れちゃった感もあるんですが、幾つか質問をさせていただきたいと思います。  今日は特許法審査ということなんですが、その前に一、二、大臣の御所見等を伺いたいというふうに思います。  一つは、去る二十二日に小泉総理がピョンヤンに行かれました。それで、お帰りになった後、二十五日だったと思うんですが、閣僚懇談会で中川大臣が小泉再訪問を批判されたと。これは私はマスコミで読んだわけですが、かなりマスコミ各社の記事等に、こういう記事になっています。  小泉さんの訪問についてはいろいろ、当然様々な批評があると思うんですが、もちろん内閣の一員でもございますし、中川大臣の御見解といいますか、お考えをちょっとお聞かせをいただきたいというふうに思うんですが。
  45. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 火曜日の閣僚懇談会、そもそも閣僚懇談会というのは自由に閣僚が発言ができる場というふうに理解をしております。また、その議論は外には出さないというルールもあるというふうに理解をしておりますので、夕刊等々で一斉にばっと出て、私自身ちょっとびっくりしているところでございますが、ひょっとしたらその筋からおしかりを受けるかもしれませんけれども、せっかくの御質問でございますから。  私は、二十二日はアムステルダムのエネルギーフォーラムに行っておりまして、ちょうど時々日本語放送を見ながら会議をやっていたんですが、テレビを見る限りにおいての範囲内で外務大臣に今回の訪朝について幾つか教えていただきたいということを質問をしたところが、総理自ら御説明をいただきまして、そして私としてはその説明で納得をいたしましたというやり取りがあったわけでございます。
  46. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 何か、どういう話になったのか、大臣がどういうお考えなのかというのは結局今お話しにならなかったように思うんですが、私は、以前から中川大臣日本人拉致問題の議連の会長をされたりして、この問題に随分長くかかわってこられました。そのことを私は敬意を表しております。私も実はこの日本人拉致問題というのは非常に関心を持っています。早く本当に解決をしたいというふうに念願している一人であります。  そういう立場から、ちょっと私なりに申し上げさせていただきますと、言うまでもなく五人の御家族の帰国は実現をしました。これは良かったというふうに思います、率直に。しかし、曽我さんの御家族三名の帰国は実現はまだしていない。再会ということで今いろいろ動きがあるようでありますけれども、帰国を実現するのは、アメリカの姿勢もありますし、かなり難しくなったんではないか、なかなかハードルが高いんではないかと、こういうふうに思っております。  それからもう一つは、安否不明者十名について、これは私もマスコミの報道、それから先日の総理の本会議での御報告しか分かりませんが、その範囲内で私なりに言いますと、この十名の方についての協議はほとんどされていないんではないかと。ただ、新たな情報もしかもなかったと。その中で、調査をする、白紙に戻って調査をするということになったわけでありますが、極めてあいまいな形で終わってしまったと。  それから、三点目でありますが、それ以外に特定失踪者と言われる方々がいらっしゃいます。この方々については全くどうも話題にもなっていないんではないかというふうに思います。  にもかかわらずというふうに申し上げた方がいいのかもしれませんが、にもかかわらず総理は国交正常化交渉をにらんで人道的支援の形をとおっしゃっていますが、食糧、医薬品の援助を決められた。しかも、国会であれだけ議論して成立をさせたいわゆる経済制裁については発動をしないということを向こうにおっしゃられたということでありますから、正直言って政権の足下をかなり、今回の訪問そのものが当初からいろいろ言われていましたから、かなり足下を見られて、見透かされて非常に不満な結果に終わったと、拉致問題にかかわってこられた中川大臣はこういうことをお考えになったんではないかと私なりに推測をしたんですけれども、こういった点についてはどうなんでしょう。  もちろん、御発言は個人としての見解でも結構です。ここでのお話を閣内不統一だと言って責めません。是非お聞かせいただきたいと思います。
  47. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今の直嶋委員のお考えは承りました。私は、大臣になる前まで、先生方、この中にもメンバーの先生方いらっしゃいますが、拉致議連の、超党派の議連の会長を務めておりまして、そういう中で拉致問題の解決というものに取り組んで、取り組んでというか、重大な関心を持ってやってまいりましたし、今もその気持ちは変わっておりません。  今御指摘があったように、曽我さんの離れ離れになっている御家族、それから認定されている十人の方々の一刻も早い安否、そして特定失踪者と言われている拉致の可能性のある大勢の皆様含めて、いずれにしても拉致問題の解決というのは、普通に暮らしている日本人が、日本の国内がほとんどでございますけれども、外国によって盗まれたという事実を解決することが拉致問題の解決であり、そのために私はどういう立場であろうともこの問題の解決のためにできる限りのことをしていかなければならない。これは国会議員であるということもありますけれども、あの皆様方と接しておりますと、一人の人間として、ひょっとしたら私の家族がとか、私の周りでというような状況方々も本当に大勢いらっしゃるわけでございますので、こういうことがあってはならないし、起こった以上は全面的解決をしなければならないというふうに思っております。  そういう中で、今回の総理の訪朝というのは、私は閣僚懇でも実は二回申し上げましたけれども、総理は重大な決断をもって行かれたということについては私は評価を申し上げますという発言をした上で、先ほど申し上げたように、幾つかの私が分からない点について外務大臣にお聞きをしたところ、総理の方から御説明があったということでございます。  いずれにしても、こういうことが今後にあってはならないし、起こったことは、これは国家による犯罪ですから、きちっとこの問題を、原状を回復し、そして私は、お元気で暮らしている方々、あるいはまた万が一何らかの事情によってお亡くなりになった方々も含めて日本人は全員日本に戻すべきだと、これが拉致問題の解決であり、国家としての当然やるべき行動だというふうに思っているところでございます。
  48. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 この問題はこの程度にさせていただきたいと思います。  拉致問題そのものについては、私どもも我々なりにまた努力はさせていただきたいと。当然、北朝鮮の問題全般ということにもなるのかもしれませんが、そのことはここで申し上げておきたいというふうに思います。  それからもう一点は、大臣の年金の問題なんですが、未納、未加入ということなんですが、これについてのお考えをお伺いしたいと思うんですが、もう言うまでもなく、四月の下旬だったと思いますが、小泉内閣の閣僚七名の方の未納、未加入が明らかになった。その中で福田さんはお辞めになったわけでありますが、大臣のこの期間が二十年以上、たしか。後、二年分納められたということなんですが、二十年以上にわたって、最長でした。  これは、率直に言って、何人かの方がいらっしゃいますが、大臣や政務官になったときにいわゆる手続上の問題でという話とはちょっと違うんじゃないかと、私はそういうふうに受け止めています。  全くのミスと、こういうふうにおっしゃられたんですが、正直言って、二十年以上気が付かれなかったということもなかなか信じ難い面もございます。この点について、大臣のまず御見解をお伺いしたいと思うんですが。
  49. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 四月の二十四日に私自身公にして以来、何回この問題について質問をされても、そのたびに、まず申し訳ないというふうに思っているわけでございます。  なぜ申し訳ないかということは、言うまでもなく、今の年金制度は、今我々働いて納めるべき年金によって今のお年寄りを支えているというシステムである以上、これは自分のために払っているんじゃなくて、今の世代を支えているというシステムである以上、それに参加をしなかったということについては誠に申し訳ないことであり、私が知り得た日の翌日、知り得たといいましょうか、そういう話があったので確認をしたところ、未納というよりも未加入ということでございましたので、すぐできる限りの手続を取ったところでございますが、今のシステムでは全額ということにはならないと、こういうことでございます。  いずれにしても、そういう意味で誠に申し訳ないという気持ちのみでございます。  二十年間知らなかったことはもう信じられないと言われれば、本当にそれに対しても私からお答えすることもできないわけでございます。  サラリーマンとして厚生年金、二階建てに乗っかってサラリーマン生活を送っていて、突然事情で会社を辞めて、そして政治の世界に入ってきたという中で、国民年金を支払うということに対しての認識が全く欠けていた。無知という言葉を私自身使いましたけれども、全く関心がないまま今日まで来てしまったと。もちろん、六十一年のときの強制義務についても、当時はもう議員でしたから、多分その賛否について参加をしていたんだろうと思いますし、それにもかかわらず関心がないまま今日まで来たことについては、もう弁解の余地がないわけでございます。  他方、じゃ、福田官房長官はお辞めになったじゃないかということに関しましては、私自身、自分の未加入、未納が分かった時点で総理大臣に御報告をし、総理大臣に御判断を御相談したわけでございますけれども、大きなミスを犯したということについては反省をしなければならない、と同時に、引き続き与えられた職務を全うすることによって挽回するようにという指示がございましたので、私としては重たい指示をいただいたものと思いまして、今与えられた仕事に今まで以上に専念をし、責任を全うしたいというふうに思っているところでございます。
  50. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今お話あった御説明は、ずっと一貫してそういうふうにおっしゃっています。  ただ問題は、大臣が総理からの指示だと、こうおっしゃっているわけですが、入っていなかったことに関して大臣としての一つのけじめが何も付いていないわけですね。もちろん、仕事を全力で挽回しますというのはそれは結構でございます。しかし、別に、私が見る限り、大臣はこの年金の未納問題が出る前も全力で仕事をされていたと思いますし、それがどうこうということではないと思うんです。  ですから、今の年金の仕組みからいっても、いわゆる今の年金給付を支えている保険料を払っていなかったということも大臣よく御存じで、そのことについても先般もこれ広野さんが決算委員会質問されたときですか、やはり同じことをおっしゃっています。  今の世代の我々が今の受給資格のある方々をいわゆる支えているんだというシステムでございますから、そういう意味で、本当にこの年金というものは国の大きな柱、国を運営していく上での大きなシステムでございますから、そこに私が大変なミスを犯してしまったと、こういう言い方をされています。  ですから、私はここでどうこうしろとは申し上げませんけれども、やはりこういう大きなミスを犯されたということでありますから、それなりのけじめをお付けになるべきじゃないかと。でないと、もう一つ大きなミスをしてしまうことになるんではないかと、こういうふうに思います。  最近の世論調査なんかを見ましても、今ちょうど参議院でこの年金法案審議していますが、国民の六割、七割の人が、この国会でもう成立すべきではない、成立させるべきではないと、こういう結果が出ています。恐らく大臣も閣僚のお一人としてこの法案に署名もされたと思うんです、閣議で。ですから、そういうことも含めて考えますと、やはり国民の政治不信を招いた責任は非常に大きいと思うんですね。  ですから、そういう意味で、今の国民感情からいいますと、私は本当に、年金を払っていない閣僚や国会議員が自分たちの、今度のはとにかく十四年間保険料を上げ続けようという法案ですから、そんなに負担を増やす法案をどういう資格があって決めるんだと、こういう声が私は大勢だと思うんですよ。  ですから、こういう状況をやはり踏まえて、是非大臣としてのけじめをお付けされるべきだというふうに思うんですが、この点はどうでしょう。
  51. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私としては、先ほど申し上げたような経過でございまして、それ以上でもそれ以下でもないわけでございますから、同じ答弁になって申し訳なかったと思っておりますけれども、けじめにつきましては、もちろん私自身、未加入、未納であったということが分かったときにどういうふうにしたらいいのだろうということで、いわゆる任命権者でございます総理大臣に指示を、こういう経過を説明をして指示を仰いだところでございまして、辞めるべきだったという御意見もあることは私も承知をしておりますが、私としては総理からより重たい使命をいただいたと、こういうことで、職務を全うすることによって挽回しろという総理の指示に従って、今仕事をしているということでございます。
  52. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 この場でお考え変わるとは思えませんのでもうこれ以上申し上げませんが、しかし、正直言って、私は、閣僚として法律にも署名もされている、しかもその方が二十年入っていなかったと、この責任はやっぱり大きいと思いますよ、率直に言って。総理からの御指示だということなんですが、それはやはり大臣も政治家ですから、大臣御自身でやはりきちっと御判断されるべきだと、このことだけちょっと申し上げておきたいと思います。  それから、ちょっと坂本大臣、実は、年金をずっと払っておられるかどうか。政府の副大臣、政務官で明らかにされている方もいらっしゃいますが、明らかにされていない方が何人かいらっしゃいます。まず、坂本大臣からちょっとお伺いしたいんですが、年金はずっと払ってこられた。
  53. 坂本剛二

    ○副大臣坂本剛二君) 国会議員が国民年金に強制加入となった昭和六十一年四月一日以降で、私が国会議員となった平成二年以降、私は国民年金を払い続けております。
  54. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 それ以前についてはここでは、どうなんでしょう。お調べにはなっていないんですか、六十一年以前は。
  55. 坂本剛二

    ○副大臣坂本剛二君) それ以前のことにつきましては、衆議院でもお答えしたんですが、プライバシーにかかわることでありますので答弁を控えさせていただきます。
  56. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 いずれまた、是非明らかにされたいというふうに思います。  続きまして菅政務官、菅さん、菅政務官、失礼しました。大変恐縮ですが、同じ質問なんですが、お答えいただけますでしょうか。
  57. 菅義偉

    大臣政務官(菅義偉君) 私は未納の時期はありません。
  58. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 政務官も六十一年以降という解釈でよろしいですか。
  59. 菅義偉

    大臣政務官(菅義偉君) そうでございます。それ以前につきましては副大臣と同じでございますので、御理解いただきたいと思います。
  60. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 この場でこういう質問を余りしたくないんですが、是非私は、今、実は自民党の皆さんだけですね、公表、すべて公表されていないのは。こういう状況になってしまったわけですから、是非、自民党の皆さん、きちっと公表されるようにお願いをしておきたいというふうに思います。是非、副大臣も仲間の皆さんにもそのようにお勧めいただければというふうに思います。  それでは、大分時間が過ぎましたが、特許法審議の方に、質問をさせていただきたいというふうに思います。  今回の特許法、幾つかのポイントがあると思うんですが、一番やはり大きな問題は、大きな問題といいますか関心事といいますか、これは職務発明規定、三十五条の部分だというふうに思います。それで、今度は三十五条を、四項を追加して、旧四項を五項にして文言を少し変える、改正すると、こういう内容になっているわけですが、先ほどもお話ございましたが青色発光ダイオードの訴訟等、いろいろございました。  そんな中で、現在のこの職務発明規定の見直し、改定は、研究者一つはある程度正当な評価をしようと、こういうことと、企業が非常に心配していますが、これによる訴訟の乱発といいますか、増えてくる、このことをなるべく避けたいと、こういうことが元々あったと思うんですが、法改正の目的にあるというふうに思うんですが、この三十五条で、これは大臣にお伺いしたいんですけれども、今申し上げましたように、研究者への評価が適正になされて、その訴訟が回避されると、こういうことにつながってくるのかどうか、大臣の御所見をまずお伺いしたいと思うんですが。
  61. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) そもそも、日本はいわゆる天然資源に恵まれていない国で、狭い国土に一億三千万近い国民が平和で豊かに暮らしていくためには、やはり知的財産というものが大きな資源としてこれは作っていかなければいけないということでございますから、先ほども御答弁申し上げたように、そういうインセンティブ研究者なりあるいは企業なりいろんな諸機関に持ってもらうということが必要であり、そのためには、そのための法制度も整備されていなければいけないわけでございますが、この三十五条につきましては、現実にいろいろな裁判事例が現在も進行形のものが多数ある、特に最近は増えてきているという状況でございますから、知財立国としてのその能力を遺憾なく発揮するためにもこの辺を法的にクリアにしていかなければならないと。そしてまた、そのためには裁判に行かない方がいいんだと思いますけれども、行くに当たっても、その一つの前提として、例の不合理でないという当事者間の話合いの結果というものを作っておく必要があるということでございます。  企業側から見ると、対価、つまりコストの可能性、予見可能性とか、あるいはまた研究者も自分の研究成果に対しての権利の主張といいましょうか、当然得られるべきものについてお考えになっているところを自由にお話をして、そして企業研究者でございますから、一つの組織という中ですから、対立ありきではなくてお互いによく話し合って研究成果が、研究者のもちろん経済的な面も含めた満足、あるいはまた企業としての発展、そしてそれが生かされることによって国民にとってもプラスになるというような観点で、きちっとしたいわゆる職務発明制度というものに整備をしていこうということでございまして、趣旨におきましては、委員指摘のような認識と同じ趣旨で法の改正ということを御提案を、御審議お願いしているところでございます。
  62. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 実は、この相当の対価の、特に企業からいうと予測可能性という問題なんですが、実は、今、大臣の方も御答弁の中にございましたけれども、今幾つか裁判が起きています。例えば、これは日立の、今、裁判のケースなんですが、これは実は二審まで進んでいます。この裁判を見ると、かなり裁判官によってこの判断の基準が違っていて、対価の非常にばらつきが大きいんじゃないかなと。ですから、こういう問題を本当に、当然これは裁判官個々の判断ですから当然、違って当然だということなんですが、例えばこの日立製作所のケースで見ますと、一審の東京地裁では、この特許による利益を約二億四千九百五十九万、約二億五千万と算定して会社に、原告の貢献度をこのうちの二割と、従業者の貢献度が二割、そして個人の貢献度がその二割のうちの七割と、こういう計算をして、三千四百九十四万円支払えと、こういうふうに一審では判決が出ているわけですね。ところが、二審になりますと、この今申し上げた特許による利益が十一億七千九百七十四万、だから、一審のもう五倍、四倍か五倍という算定をして、あとの貢献度は一緒なんですが、結論として一億六千五百万余りを払えと、こういう結論になっていると。  そうしますと、やはり裁判官も含めて、やはりこの三十五条そのものは非常に抽象的に書いていますから、これで本当にこういう大きな、何といいますか、訴訟が本当に回避できるのかどうか、予測可能性企業としてちゃんと持てるのかどうか、私はちょっと疑問だなと、正直言って、この裁判見ている限りは。  これはもちろん、まだ法律が変わる前の訴訟ですから当然違うんだということかもしれませんが、先ほどの御答弁にもありましたけれども、かなりこれは今回の法改正を先取りしたと、こういうふうに巷間言われているわけですね。だから、こういうのを見ていると、何かいろいろ、法改正だけではなくて、ある種の相場観みたいなものをいろいろと考えていかないと、いろいろまた裁判ざたになって、二百億は極端にしても、いろんなケースが出てきて混乱を来すんではないかという心配をするんですけれども、これらの点について今回の改正との関係で言いますとどういうことになるか、お答えいただきたいと思うんですが。
  63. 坂本剛二

    ○副大臣坂本剛二君) 御指摘のとおり、現在の職務発明制度の下では予測可能性が低くなっております。これは、企業ルールに基づいて対価を支払っても、その額が現在の三十五条四項の基準に合致したものでない限り相当の対価とは認められず、事後的に差額が請求され得るからであります。  これに対して改正案では、企業研究者との間の自主的な取決めを尊重し、研究者意見が反映されて取り決められた対価については、相当の対価として認められるようにすることとしております。これによって、企業研究者の意向を酌み取るように努めれば研究者の納得感が高まるため、訴訟が提起される可能性は減ると期待をいたしております。  また、仮に訴訟になった場合でも、企業研究者意見を反映させた取決めによって対価を支払っていた場合には、これが相当の対価と認められることになります。したがって、企業研究者の意向を酌み取るように努めれば、訴訟にならない場合はもちろん、訴訟となった場合でも企業ルールが適用されるケースが増えますので、企業の予測可能性は現在よりも格段に高まるものと考えております。
  64. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 これは、今行われている裁判の話ですからどこまで言えるのかどうか分かりませんが、かなりこれは今回の三十五条改正を判断として先取りしたんではないかと、こう言われているわけなんですけれども、何といいますか、今回の改定では、確かに手続も含めて、あるいは研究者の意向、意思を確認するということも含めて細かく書かれているんですが、問題は、どれだけの利益がグロスでこの研究によって上がったかというところの見方の差、今、一審と二審の差を申し上げましたけれども、それは人によってすごく違うわけですね。  ですから、私は、法律は法律でこういうことで、なのかもしれないけれども、やはりもうちょっと、法曹関係者も含めてやはりこういうものの見方について、どういう物差しが本当に適当なのかどうかということ、まだ私は日本は定まっていないと思うんですが、そういうものも含めて、やはりある種のコンセンサス作りといいますか、議論の場を作って、そういう物差しを社会的に作っていくといいますか、そういうことが必要なんじゃないかなと。  でないと、実際に三千万の話が一億何千万になれば、それはちょっと裁判しようかという気になってくると思いますしね。いろいろこれは見方が、利益は当初話を聞いたときよりもかなりもっと売れていると、だから利益は大きいんだとか、もういろいろとそれは主張はできると思いますので、そういう相場観をやはり社会的にある程度、余りぶれないように作っていくという努力が必要じゃないかなという感じはするんですけれども、この点はいかがでございましょう。
  65. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) お答え申し上げます。  先生御指摘のように、それぞれの製品によりましても、実は大変特許の価値が違います。特許出願平均いたしますと、研究費は大体三千万ぐらい掛かっておると思います。薬の場合は三億円というのが私たちの調査の結果でございまして、それぞれによって特許権を得るまでの研究開発費も違います。それから、その後、特許を取った後、いろんなコマーシャルをやったり新しい技術開発をしてその特許を実用化していくという過程も随分違います。  それから、先ほど来議論がありますように、企業の開発戦略とか経営戦略、それからチームプレー重視でいくか、それとも個人発明家を重視するかと、いろんな形がありまして、実は、今回の法案を提案させていただいた背景というのは、そういう千差万別と申しますか、いろんな事情を熟知している研究者と経営者の間で話を徹底的にやってもらうということで、その企業のある程度の結論を出してもらうと。一般的なルールとしてこれが正しいということになかなかならないものですから、そういう意味で、その企業研究者と経営者で徹底的な議論をしてもらうというのが今回の趣旨でございます。  そういうものが今後の職務発明のメーンになっていきますと、それが裁判所でそれを尊重されることになりますので、その意味で訴訟は減っていくという期待をされますし、だんだんその過程で相場観といいますか、それぞれの企業発明者が納得するような水準に落ち着いていくと。一方でまた、それぞれの企業が競争することに、研究者を獲得するために競争することはあるかもしれませんけれども、今の私どもの法律の考え方はそのように考えておるわけでございます。
  66. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 考え方は分かりました、はい。  それで、私がちょっと心配しているのは、実は研究者もそれから企業も、これはお互い事情を分かっていますから話はできると思うんです。ただ、裁判になったときに判断をするのは裁判官ですから、問題は、そこに例えば、今回のいろいろな訴訟も私個人的にもいろいろヒアリングしていますけれども、やはり関係者の話と裁判官の判断とかなり、相当違う、違うなと、正直言ってそういうふうに思わないこともありません。  そういう意味でさっきそういう話を申し上げたんですが、それから、次にもう一つは、全部これ訴訟は辞めて起こしているということなんですよね。会社を辞めた方が起こしているということでありまして、まあここまで法律で心配する必要があるのかどうかというのはあるんですが、実際には発明、発見というのは、特許を取ってそれが事業化されて普及をしてということになると、やはり十年、二十年掛かる先の話だというふうに思うんです。  ですから、そういうことを考えますと、当事者同士の話合いで合理的だと、法律で言うと不合理と認められないというような判断で話合いがなされて決めたとしても、やはり後々、後で考えてみると随分違うなと、こういうことにつながってきて、余りこの訴訟の軽減というんですか、そういうことにはなってこないんではないかという心配もしているんですけれども、この点はいかがでしょうかね。
  67. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 発明者企業との間で議論が尽くされて、それぞれ企業が持っている情報等が提供されて、その中で議論がされたと、そのときに発明者のサイドもそれを了としたというような場合には、それを裁判所は尊重するというのが今度の法改正でございます。  そして、それが、先生おっしゃるように、十年、二十年そのままにしておくということではないと思います。企業というのは、社会事情、企業環境も変わってまいりますので、恐らく何年かに一度そういうものを見直すとか議論をしていくと。それがこの企業研究者の間の協議の一つの適切性というか合理性、合理的であることの一つの証左になるかもしれませんが、その意味で、それが固定されるというふうに考えておりませんで、非常に大きな社会変動があったり企業をめぐる環境が変わった場合には、例えば労働協約でいいますと三年で見直すということになっておりますが、そういうものを考えますと、こういうルール状況の変化に応じて企業発明者議論をしながら変更していくと、このように考えているわけでございます。
  68. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 次にお伺いしたいんですが、今の訴訟の可能性の話は今お答えあったということなんですが、もう一つは、この法律にございます「不合理と認められるものであつてはならない。」と、こういうことなんですが、この合理的か不合理なのかというところ、これについて、当然、裁判になるとこれは裁判所がそこで判断をすると、こういうことになるわけですよね。その点はよろしいんですかね。
  69. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) もしそれと協定を作る手続、手順、それからそれが開示されているかどうか、そういうものについてそれが不合理であるとすれば、それを裁判所が不合理と認定すれば、新五項に基づいて新たに相当の対価を決め直すということになります。
  70. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 結局、だからさっきお話ししたような事の性格からいうと、ここの判断も含めて、最終的にはだから裁判で、どうしても不満がある場合は確認をすると、こういうことにならざるを得ないんじゃないかと思うんですけれども、そういう意味で、この判断基準も裁判所の判断を仰いで判例を積み重ねるということにならざるを得ないんじゃないかと思うんですが。
  71. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) この特許法考え方は、例えば研究者企業の間で何らかの合意があったら裁判所に行ってはいけないというものではなくて、不合理なものであればやっぱり司法判断を受けるというのが大前提になっておりますので、司法判断を受ける。その場合に、何が不合理であるかということについて先生の御質問は不明確ではないかということだと思いますけれども、これにつきましては、先ほど来御説明申し上げますが、事例集という形で、いろんなこれから取決めの仕方があると思いますが、そういうものについてのどういう場合不合理になると、どういう場合にはそれを是正するにはどうすべきだということについて私ども事例集というものを作って、これを公開をしたいというふうに思っております。
  72. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 事例集の話はちょっと後でまたお伺いしたいと思いますが、もう一つ、今度のこの改正の中に研究者の処遇という言葉がいろいろ入ってきておるわけですね。済みません、法案には入っていないんですが、意見の聴取あるいは多分企業側の貢献あるいは従業者等の処遇ということで五項に入ってきていますね。  これも実際の裁判例でちょっと申し上げますと、まだやっていますが、味の素判決というのを見ますと、ちょっと読ましていただきますと、概要ですね。この結論を読む限り、企業が受けた利益とか企業の負担とか発明者に対する処遇を考慮するということになっているんですが、ちょっとこの判決を事例として読みますと、「「使用者等が貢献した程度」として、具体的には、」、「その発明出願権利化し、さらに特許を維持するについての貢献度、実施料を受ける原因となった実施許諾契約を締結するについての貢献度、実施製品の売上げを得る原因となった販売契約等を締結するについての貢献度、発明者への処遇その他諸般の事情が含まれるものと解するのが相当である。」と。これらを総合的に判断すると、企業の貢献した程度としては全体の九五%と認めるのが相当であるということで、この残り五%の対価が二億円ということで、一千万円のボーナスを払っていたんですが、差額一億九千万円払えと、こういう判決になったわけであります。  実際には、この方を企業は、言ってみれば同期の技術系社員の出世頭のような形で昇進もさせていますし、退社後は関係会社の役員にしているということで、私もちょっといろいろ聞いてみましたけれども、かなりいい処遇されていると。しかし、裁判ではこういうことが全く、処遇も考慮するといいながら、実はほとんど考慮されていないんじゃないかと、こういうふうに聞いているんですが、この処遇というものをどういうふうにこれ判断するのかということは、なかなかこれ実際には裁判へ出ていくと非常に判定が難しい問題になってくるんではないかと、こういうふうに思いますが。  したがいまして、さっきちょっとお話ししたように、結局これで不満を持つ人は本当に裁判を避けるということになるのかなという、ちょっとそういう心配をしているわけですけれども、どうなんでしょう。
  73. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) ただいま御指摘の処遇というふうなものを現行法の判決におきましても考慮要因として挙げている判例もあるわけでございます。  ただ、それが、そういったものを勘案して何%というふうな結論にどういう形で結び付いているかというのは、必ずしもはっきりしていない、客観性がないんではないかと、こういうふうなお話かと思いますけれども、むしろそういう事情、確かに、どういった発明をした者がどういった処遇に結び付いているかというふうなことを会社の外にいる人間が判断をするというのはなかなか難しい性質のものだと思います。  逆に、企業の中におりまする実際使用者とそれから研究に携わっている方々というのは、そうした実際どんなふうな社内で慣行なり処遇が行われているか、そういった事情にはむしろ通じておるわけでございますんで、むしろそういうのを熟知した当事者同士がそういったファクターというのを織り込みながら実際の報酬規程なりなんなりというのをどうしていくかというのを決めていくというのが一番合理的なのではないかというのが、今般の改正案の基本的な考え方であるというふうなことでございます。  じゃ、両者が決めていって、それが不合理なものでなければ裁判所においてもそれを認めると、こういうことになるわけでございますけれども、そこの部分について、じゃ、訴訟の提起というのが余地が残るではないかと、こういう点につきましては、もちろんこうした問題について訴訟の道というのは必ず保障というか、裁判を受ける権利というのは残るわけでございますけれども、ただ、現行法のように、言うなればストレートに相当の対価のレベルというのを裁判所が判断するというふうなもの、一つの道というよりも、まずはその当事者で話し合ったものについてのその結論に至る協議の状況とか意見聴取の状況が合理か不合理かというふうなものの方が、言うなれば一種、裁判にもなじみやすい性質の、裁判所が判断しやすいような事項であると思いますし、もちろん、そこで不合理と言われた場合には現行法と同じレベルの判断ということに行くわけですけれども。言うなれば、訴訟に行くにしても判断事項というのが変わってくる、かつそれが裁判をやるについても妥当な、裁判になじみやすい事項であろうと、こんなふうに理解しておるわけでございます。
  74. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ここはちょっとやってみないと分からないというところがあるのかもしれませんが。  私、ちょっと申し上げたかったのは、今の判例なんかを見る限り、処遇というのは計数的にはっきりしないものですから、結局、だから不合理と認められなきゃいい、手続上、手続も含めて不合理と認められなければいいということなんですが、結局、突き詰めていくと金で解決するということに、裁判になって、結局はそういうふうになってしまうんではないかなということを若干心配させていただいたということなんですが。  もう一つ、ちょっと逆な話するようなんですが、実は、研究者がこういうふうに報酬を、例えば特許を得たことによってそれなりの対価をもらうということになってくると、実は企業の中では非常にやりにくいということも事実なんですね。研究者だけじゃなくていろんな人を抱えていまして、それぞれ全体的なバランスを見ながらこういう処遇をしていると。  だから、私がちょっと心配するのは、こういうことでうまく是非生かしていただきたいと思うんですが、いろいろ問題が出てきてやはり裁判が増えてくると、企業からいうと、研究者方々だけを特別に手厚く処遇するのは難しいと。例えば研究一つ取っても、チーム全体でやっている、それから特許を取る場合には、特許専門家がいてその人たちがいろいろ苦労すると。そういうことによって発明特許になっていって、それから事業化する場合には当然マーケティングやそういう人たちの努力が必要になると、こういうことになってくるわけで、発明、発見をする人だけが功労者、功績がほとんどを占めるということではありませんということになるんじゃないかと思うんですよ。私も会社に、企業で働いていた人間として申し上げますと。そうすると、この人たちだけをそういう特別な扱いをしていくということになると、全体的な企業における人事管理が非常に難しくなってくる。  法律の世界へ出ていくとこれは別な話ですけれども企業の中では今度はそういう問題が出てきて、逆に言うと、この日本での研究開発活動のある種の阻害要因になってくるんではないかという心配をしているんですけれども、ここら辺は、例えば産構審の審議会とかいろんなところでどういう議論があったのか、ちょっと聞かせていただければと思います。
  75. 江田康幸

    大臣政務官(江田康幸君) 先生の御質問の趣旨はよく分かった上で御回答をさせていただきたいと思っておりますが、まず、企業が国際競争力を持って発展していく、科学技術立国日本においてはそれが非常に重要で、そのために研究者を適切に処遇するということが重要であるという意味で今般の改正案に至っているわけでございます。職務発明制度もあり、また改正に至っているわけでございます。  今般のこの改正案の特徴でございますけれども、これは、一番、会社の経営戦略とか研究戦略、それをよく知っているところの両当事者の間でこの対価を決定するための基準を策定するわけですが、その基準を策定するに当たって必要な情報を共有していく、そのために協議を尽くす、またその基準を研究者に開示する、そういうことがこれまで以上にできることになります。すなわち、手続面でのインセンティブが働くというか、手続面での相応の努力企業側に求められていくことになりますので、研究者にとってすれば納得感が出てくるという形になると思います。  ですから、先生おっしゃるように、全労働者の皆さんがいらっしゃるわけで、その中で研究者が特別に配慮されたような規程を企業は設けにくいのではないかということでございますが、私も企業に長年おりまして研究をやっておりましたが、そういうことも総合的に配慮して今般のこの改正を参考に企業内のルールを決められるかと思います。先ほども申しましたように、研究者への満足感、それから企業のリスクが減る、適切な対価が取り決められる、そういうことの手続が進むことによって企業研究開発力も、また競争力も伸びてくるというふうに思われます。  以上でございます。
  76. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 前に比べると前進だとは思いますね。と思われますが、ただ、いろいろ心配なところはたくさんあるということで申し上げたんですが。  それからもう一つ、法律上、この間参考人の方もちょっとお答えされていましたけれども、四項で「対価を支払うことが不合理と認められるものであつてはならない。」、これはよく言われるように、合理的でなければならないとかこういう表現じゃ駄目なのかという議論がよくあったんですが、ここは「不合理と認められる」という、不合理、ちょっと持って回った言い方なんですが、これはどういうふうに解釈をすればいいのかということをお伺いしたいと思います。
  77. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 本件につきましても産構審でも議論がございました。報告書にも書かれておりますけれども、今般の改正が、先ほど来申し上げていますように、各企業の経営環境だとか経営戦略、社風というものを理解しているのが研究者と経営者であるということから、基本的には、職務発明の対価については当事者間で自主的に取り決められた対価を尊重する。その手続につきましても、いろんな多様な手続が許容されて、当事者間の自主的な取決めが尊重されるようにするというのが今回の趣旨でございますし、産構審の答申でもございました。この点、産構審の報告書では、例えば、具体的な協議、交渉の方式などに法や行政が過剰に介入することなく、個々の実態に合わせて柔軟に決定することが許容されるべきではないかというような表現も報告書にはございます。  一方、その意味で、それを法律に書き込むという意味で、不合理という言葉、不合理でないということを使ったわけでございますが、一方で、合理的でなきゃならないというような定めにいたしますと、その手続が非常に限定されて、各企業の事情に応じた方法が採用できなくなって、当事者間の手続の多くが場合によっては合理的でないということになる可能性があります。  したがいまして、必ずしも合理的とまでは言い切れないけれども不合理とは認められないような手続と、そういうある程度の余裕があるような表現にしたのが不合理と認めるものであってはならないという今回の規定でございます。
  78. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 なかなか分かりにくいんで。まあ、いろいろ判断に、実態に合わせてできるように判断に幅を持たせたと、こういうことでいいんですか。このぐらい、この程度なら、ある幅の中に入ればいいと、こういうことですかね。余り理屈一本じゃなくてと、こういうことですよね。
  79. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) この審議会の議論では、合理の裏側が不合理というわけではなくて、合理性というのは連続線上にあって、合理的それから不合理というのの間に少し範囲があると、そこにある程度の余裕があってもいいのではないかという議論をした経緯がございます。
  80. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ゴルフでいうとあれですか、OBくいのこの上はセーフだと、こういうのと同じような感じですかね。  済みません。もうちょっと時間が来ましたので、あと、続きは午後にしたいと思いますので。
  81. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  82. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、西山登紀子君が委員辞任され、その補欠として小林美恵子君が選任されました。     ─────────────
  83. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) 休憩前に引き続き、特許審査迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  84. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 それでは、午前中に引き続きまして……(拍手)どうも盛大な拍手をありがとうございます、質疑をさせていただきたいと思います。  職務発明の部分で、あと、先ほどちょっと議論させていただきました、不合理と認められないということについてなんですが、これは幅があるという話だったんですが、これは訴訟になった場合、普通は研究者側が裁判、原告になるんですけれども、この不合理という表現だと挙証責任は原告側になると、合理的でなければならないという表現だったら逆になると、こういうことが言われているんですが、この点についてちょっと確認をさせていただきたいと思います。
  85. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 現行法に基づきまして、不合理であることの証明責任につきましては、証明して利益を得る者が責任を負うという民事訴訟の原則にかんがみますと、新五項の基準で対価の支払を求める場合、それがその前提として不合理であるということを説明しなきゃならないわけでございますが、それは研究者でございますので、民事訴訟法上研究者側に立証責任があるというふうに考えております。
  86. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 そうすると、普通、企業相手に闘うわけですから、挙証に当たって、これは被告の方が有利になるんじゃないかと、こういうことになってくると思うんですが、この点はどうなんでしょう、やはりそういう理解で、非常に、ですから、裁判が難しくなるというふうに思うんですが、どうなんでしょうか。
  87. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 立証責任というのは発明者側にあるわけでございますけれども研究者側にあるわけでございますが、ただこの場合、手続的なことでございますので、対価を決定するための取決めの策定に対してどういう状況であったと、協議が不十分だったとか、対価の算定の段階で意見聴取が不十分であったとか、自分の御経験、経験された手続を挙げて不合理であるということを主張、立証するということは、手続的なことでございますので、比較的容易なことではないのだろうかというふうに私どもとしては考えております。
  88. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 そうすると、手続だからということと。  そうするとあれですかね、被告側は全くそういう反証責任といいますか、そういうものは負うことにはならないと、こういうことになるんですかね。  先日の実は参考人質疑の中でもちょっとこのやり取りがあったんですが、参考人の方は、実際の裁判上、これは裁判官の判断ということになるのかもしれませんが、被告側に反証責任を負わせると、こういう形でバランスを取れるんじゃないかと、こういう御説明があったんですが、そういう理解でよろしいですか。
  89. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) お答え申し上げます。  現実の訴訟の実務におきましては、企業研究者の間で証明能力の格差といいますか、力の違いがありますので、裁判所は現実の訴訟運用としては、研究者説明を負うことになっている、証明責任を負うことになっている事項につきましても、企業側が事実上の証明責任を負うと、証明をさせるというような運用をしております。  現実に、現行の三十五条の訴訟におきましても、研究者が相当な対価等々につきましての証明責任を負っているわけでございますけれども、訴訟実務におきましては企業が、実際は企業が相当の対価の算定根拠となります企業の利益の額でありますとか、企業の貢献した程度などにつきまして証拠を提出しているというのが現実でございます。
  90. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 そうすると、裁判の実務上は研究者のみがそういう挙証責任で負担を負うわけではないと、バランスは取れると、こういう理解でよろしいですか。
  91. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 現実の裁判におきましては、従来の三十五条の、これまでの三十五条の運用からいたしましても、もちろん言い出す方は発明者のサイドが訴えるわけでございますが、自分の現実のどういう取扱いを受けたかということについて話がありますと、裁判所の訴訟指揮によって、企業側が実はそうではないとか、きちっとした対応をしなければいけないような訴訟運用になろうかというふうに考えております。
  92. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 それからもう一点、この職務発明に関して確認しておきたいのは、日本の、日本国内での発明、発見で、それに基づいて特許を取るということなんですが、それは外国でも、外国で特許取得した場合にこの三十五条は適用されるのかどうかなんですが、この点はいかがでございますか。
  93. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) 午前中の質疑の際、先生の方から日立の判決について、日立製作所の光ディスクの読み取り装置についての裁判において、一審と二審で利益の額について大きな差があったと。結果として、判決においても一審が三千五百万円、それから二審が一億六千五百万円というふうな相当の対価の額が認定されたわけですけれども、これ一審と二審の違いは、一審は、この発明について日本取得した特許についての利益に関する対価を算定をしたと。その際、海外で取得した特許については対価を認めなかったのが一審判決でございまして、それから二審では、海外で取得した特許権というのについての対価も認めた結果がこういう開きを生んだわけでございます。  この点については、三十五条に外国特許も含ませることが適当か否かという点については、現行の判例でも、あるいは学説でも二つに分かれているところであります。今回三十五条の改正検討した際にも、この点をどうするのかということは検討したわけでございますけれども現状、その判例、学説が分かれていると。それから、仮に外国の特許に基づく請求権についての何か特許法三十五条で規定をいたしたとしても、これ国際法との関係でそれが適用される保障がないというふうなことで、今回この部分については改正を見送るというふうなことにしたわけでございます。いずれ、今の日立の訴訟についても上告がなされていて、最高裁の判断等出てくるというふうなことになろうかと思います。そういう面で、判例の世界においては、どちらかに収束をしていくというふうなこともあろうかというふうに思っております。
  94. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ちょっと確認なんですが、ちょっと私、不勉強なんですが、今のお話で、日本国内でなされた発明、発見の場合、例えばアメリカ特許を取ったという場合は、あれですか、必ずしもそれがこういうケースで報酬の対象にはならないと、なるとは限らないと、含めるケースもあるし含めないケースもあると、こういう理解でよろしいんですか。
  95. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) はい。正に日立の事件においては、一審では含めないという判断をし、二審では含めるという判断をしたわけで、そういう意味で、判例の世界で定着を見ていない分野であるということでございます。
  96. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 国際法的な通念で見た場合は、これはどういうことになるか、ここも判断は分かれているわけですか。
  97. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) 国際法の世界では、例えば特許権が要するにちゃんとした権利を有する人からの出願であるかどうか、例えばちゃんと発明をした人の出願であるか、あるいはその人からその権利を承継した人の出願であるかというふうな判断がまず第一に必要になるわけですね。それで、この部分については、基本的には各国の、海外での発明においても出願された国の特許法によるというのが基本的な特許世界での考え方として確立しているわけでございます。  ですから、承継の適否等が争われたりいたしますと、それは、アメリカにおいて出願されたものについて本当にその承継がなされていたかというと、これは日本の三十五条ではなくて、アメリカ特許法の法律なり判例で裁かれると、こういう世界になるわけです。  じゃ、それと一種、表裏一体になっている対価の方について、それは別々に切り離してそれぞれの国でさっきの承継のところの適用法律と対価の適用法律を分けてやるのか、それともアメリカ、それは表裏一体なんだから、もうアメリカ法でやるのか、そこのところはもうはっきりしていないというふうなことであります。
  98. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ありがとうございました。  あえて申し上げれば、もう最近のビジネスはほとんどグローバル化していますので、これ、あれですかね、今判例がそういうふうに分かれておる、それからそれぞれの国の承継の仕方によって異なるんだということなんですが、それはそれで現時点ではやむを得ないのかもしれませんが、一方でグローバル化が進んでいますから、やはりそういうところの判断はある程度そろえようとか国際的な基準を作ろうとか、こういうことはあるんですか、今後の話として。
  99. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) 特許世界というのは、午前中の議論にもございましたように、世界的な制度あるいは運用の統一というのが求められている世界であるわけですけれども、この三十五条の職務発明については、これは一種の、各国の労働法制ですとか企業法制とか、そういったところと近い分野でございまして、どちらかというと、例えば発明者に帰属をするという法制を取っている日本アメリカ、ドイツみたいな国と、最初から企業のものに、職務発明企業に帰属させる英仏みたいな国と、大変制度が分かれておりますし、したがって今のところ、ここいら辺についての国際的な統一の動きとかこういったものは、そういった話合いがなされているというふうな状況にはございません。
  100. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ありがとうございました。  それじゃ今度、次に、特許審査迅速化の部分について幾つかお聞きしたいと思うんですが、まず今回の概要ペーパーの中に、法律の概要ペーパーちょうだいしていますが、この特許庁でお作りになったペーパーの中にも実はこの迅速化の目標として二つうたっているわけですね。今の日本状況は順番待ちが五十万件もあると。二十六か月分と。今後八十万件に拡大する、増大すると。これを何とか処理を速くするために任期付審査官を大幅に採用すると。こういう今回の法律なんですが、この審査迅速化に関して二つのフレーズがありまして、一つは、世界最高レベルの審査迅速化、こういう表現と、それからもう一つは、審査の順番待ち期間ゼロという、二つ入っているんですけれども、これは、政府知財戦略本部の目標としてはどちらに、どちらをターゲットに置いているわけでしょうか。
  101. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 従来の政府推進計画では、世界最高レベルの迅速・的確な審査を実現するというふうになっております。その後、任期付審査官の増員、それから今般お諮りしております特許迅速化法などの手段を用いまして、最終的には審査待ち期間をゼロにするということを現在の目標としております。
  102. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ということは現在の目標はゼロと、こういうことでよろしいわけですか。政府のその推進もゼロに向けて迅速化推進すると、こういう理解でよろしいんですかね。
  103. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 私ども、最終目標は審査待ち時間ゼロでございます。それを、できれば中期目標、それからやや長期目標という形で、もう少し具体化をして今般の新しい推進計画に盛り込んでいきたいというふうに私どもとしては考えております。
  104. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今の特許庁長官、最終的には審査待ちゼロが優先だというふうに答弁いたしましたけれども、最終的には、審査待ちも特許審査の期間も短くして、申請してから判定が出るまでが短くなることが目標ですから、だから最終的には両方ともなくすということが最終的な目標であるわけでありますけれども、取りあえず待機とそれから審査が開始されてから結論が出るまでの期間と、どっちを取りあえず優先にするかという意味で、特許庁長官からは審査待ちゼロを取りあえずやると、最終的にはこのスピードの社会、知的財産の競争の中でやっていくためには、審査の受付をしてから最終的な審査決定、特許申請の最終的な判定が出るまでのトータルを短くすることが目標でございますから、最終的にはどちらかといえば両方ということで御理解をいただきたいと思います。
  105. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 それで、任期付審査官についてお伺いしたいんですが、今回の特許庁の計画では、平成十六年度以降、任期付審査官を毎年百名ぐらい増員すると、そして五年かけて採用して今の、在庫一掃といいますか、審査待ち八十万件になると想定される部分の処理に当たると、こういうふうに理解しているんですが、この任期付審査官の方も、今いらっしゃる正規の審査官といいますか、既にいらっしゃる方々と同じような処理をすると、例えば処理件数等も同じで考えていると、こういう理解でよろしいんでしょうか。
  106. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) ちょっと先ほどの件で、私、もたつきましたので修正させていただきますが、審査順番待ち期間をゼロにするというのが政府、小泉総理大臣がこの一月の施政方針演説で明示したところでございます。そこにどういう過程をたどっていくのかということについて私は説明したかったわけでございます。  そうすると、五年間で幾らにする、それから十年間審査待ち期間、順番待ち期間を幾らにするということを推進計画で明示をしていきたいというふうに御答弁すべきでございました。  今の先生のお話でございますけれども、任期付審査官は、今、通常の審査官は、特許庁に採用して四年間審査実務について先輩の審査官とマンツーマンで非常に濃密な指導を受けて育っていくわけでございます。  今度の任期付審査官は、もう既に企業とか大学とか研究機関とかでもう四年以上の実務をやっているということを前提に採用させていただいておりますので、その部分の四年間というのが随分短くなりまして、私どもとしては二年間審査官に昇格してもらうということでございます。そして、二年間審査官に昇格したときに、三年目、四年目はまだ六割から八割ぐらいの能力だと思いますが、五年目以降はフルの通常の審査官と同じ能力で審査処理をしていただけると、こんなふうに思っております。
  107. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 基本的に私は、この処理を速くする、そして待たなくてもすぐ審査に入っていただける、それから審査の時間を短縮するというのは非常にいいことだというふうに思っています。  是非これを実現していただきたいと思うんですが、多少欲が深いものですから、もっと、特許庁の計画よりももっと速くならないかと、傾斜採用してうんと今のたまっているものを速く処理をしていただくようなことは考えられないものかと、こういうふうにちょっと欲張りなことを考えていますが、この点はやはりどうなんでしょう。  今の計画だと五年かけて百名ずつフラットに採用していくと。それで今お話しのように、二年で、三年目から一人前になるんだけれども、三年、四年の辺りは少しまだ慣れていないので五年目ぐらいからどんどん能力が上がってくると、こういう話なんですが、それをもう少し傾斜してというようなことは不可能なんでしょうか。
  108. 坂本剛二

    ○副大臣坂本剛二君) 本年度は六十五名の通常審査官の採用を行っております。さらに、任期付審査官九十八名を採用いたしましたので、合計百六十名を超える審査官対象として今トレーニングに入っている、大規模に開始したところでございます。  順番待ちの案件の一掃のために任期付審査官の前倒し採用ですか、というようなおただしでございましたけれども、そもそも百名を超える規模で優秀な人材を一気に確保できるかどうかというそういう問題もございますし、また仮に百名を大幅に超える規模で任期付審査官を採用した場合には、今後、独立行政法人工業所有権総合情報館等に研修機能を移すなどいろんなことをやって研修体制を強化することを勘案しても、十分な研修を実施できるかどうかといったような課題がありますし、また指導審査官に携わる方々の仕事量が減っちゃって、結果的には通常審査業務がダウンすると、件数が。  そんなことも考えられますので、したがって当省としては、まずは今年度の任期付審査官九十八名の育成に全力を挙げるとともに、計画どおり毎年百名ずつ任期付審査官が確保できるように努力していきたいと、こう考えているわけでございます。
  109. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ありがとうございました。  今、坂本大臣からお答えがあった正規の方六十五名というのは、通常に比べるとやはり多いということですか、採用人数としては。今、六十五名採用したという話がありましたよね。
  110. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 過去一番のピークで昭和四十六年百十七名というケースがございましたが、最近では五、六十名というのが通常だというふうに理解しております。
  111. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ありがとうございました。  普通より少し多いめぐらいですか、通常ぐらいということですね。  分かりました。事情は、なかなかこれはすぐ、採用してすぐ一人前の審査官として仕事ができるわけではありませんから、難しいことはある程度承知の上でお聞きしたんですが、できるだけひとつ、世界最高レベルのゼロも早く実現できるようにひとつお願いを申し上げたいというふうに思います。  それでは続きまして、今回の法改正の中に実用新案制度の見直しというのも入っておるわけでございますが、次にそちらについて一、二確認をさせていただきたいというふうに思います。  今度の見直しは、この実用新案の存続期間を五年前の改正までそうであった十年に戻すということになっているわけですね。そして、この無審査登録制度というのはそのまま維持をすると、こういうことでよろしいんでしょうかね。まずちょっと確認をさせていただきます。
  112. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) 無審査登録制度はそのまま維持すると、それでその期間については十年にするということでございます。
  113. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 そうすると、五年前にこの期間を短縮したんですが、五年たってまた戻すということになるわけなんですが、これはあれですかね、前回の改正というのは余り意味なかったと、無審査登録の部分はそのまま続けるということなんですが、どうなんでしょうかね、余り意味なかったということなんでしょうか。
  114. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) 平成五年の実用新案法の改正におきまして、実用新案制度を無審査登録制度に移行したわけでございます。それと同時に、その権利の期間というのも登録から十年としていたものを出願から六年というふうに短縮したわけでございますけれども、そのときの考え方というのは、初めて無審査制度というのを導入するというふうなこともあり、権利の強さとその安定性のバランスを取るという意味権利期間について短縮を行ったわけでございます。  その後、無審査登録制度を十年余り運用をしてまいったわけでございますけれども、その際、大規模なアンケート等実施してみますと、権利期間が短過ぎるのではないかというふうな御意見が非常に多数に上ったというふうなことでございまして、こうした利用のされておられる方々の御意見等も踏まえまして、本制度の魅力を向上するというふうな観点から、その権利期間を出願から十年というふうに今般延長したいということで御提案申し上げている次第でございます。
  115. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 規制緩和と合わせて短くしたけれども、余り評判が良くないので戻すと、こういうことですよね。  それで、今、例えばこの出願件数を見ますと、改正前は大体約八万件ぐらい年間あったのが、今八千件ぐらいに減少、十分の一になっていると、こういうふうにお聞きをしているんですけれども、そういう状況だと、特許制度と併せて実用新案制度を併存させるということの意味合いが、今八千件に減っちゃっていると、こういうことなんですが、今のお話は、期間を延ばすことによって魅力を高めてこれも活用したいと、こういう趣旨だと多分思うんですが、これだけ減少してしまっていることを考えると、果たして実用新案を併存させることの意味があるのかどうかということをちょっと疑問に思うんですけれども、いかがでしょうか。
  116. 江田康幸

    大臣政務官(江田康幸君) 今、最近では製品開発のスピードが非常に上がってきておりまして、製品が上梓していくという期間は非常に短縮化する傾向にございます。さらに、アジア諸国を始めとして外国からの模倣品という、模倣品の流入の問題がございます。例えば、玩具、おもちゃなどのように早期に模倣品が出回るような技術につきましては、早期にこの保護をするということが重要な課題になっているわけでございます。一方、特許権取得ということに関しましては審査が要ります、要します。現在、審査を開始するまでに、先ほどからもありますように一定の審査順番待ち期間が掛かっておりますので、必ずしも早期に保護が行えない状況になっているのが特許権の方でございます。  これに対しまして、実用新案制度というのは、今、現行では無審査でございます。出願後数か月でこの登録を受けることができますので早期の保護が可能であると、極めて有意義な制度であると思っております。また、実用新案権というのが、特許権に比べまして安いコストでこの権利取得できるということもございますので、中小企業とか個人発明家の間では実用新案を活用していきたいと、そういう声も根強くあるわけでございます。  したがいまして、この実用新案制度というのは、模倣品対策などの早期保護のための有力な手段でありまして、特許制度とともに併存するという形は理想的ではないのかなと思われます。
  117. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ありがとうございました。  ちょっとこの辺が、今度はあれですよね、実用新案を登録した後、特許に切り替えることも可能になると、こういうことですよね、特許出願ができるということなんですが。先ほどからやり取りしていますように、特許審査そのものが迅速に行われていくようになれば、それはそれで、実用新案の意味合いは今の政務官の御説明である程度理解したんですが、なかなか、特許自体の審査が迅速に進むようになっていけば、逆に言うと、今、実用新案に出しておいて、特許に、特許出願に切り替えると、こういう部分は、特許を取りたい人がもういきなり出願できると、こういうことになってくれば、多少役割も今よりも少し変わってくるというか、そういうことも当然想定し得るということになるんでしょうかね。
  118. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) これまで御議論いただいておりますように、審査順番待ち期間がゼロになりますと直ちに審査に入れるという意味で、随分時代が変わる、環境が変わると思います。  ただ、実用新案と、今、審査迅速化観点から御議論をいただいておりますけれども特許の場合は高度な発明、実用新案については小発明といいますか、そういう中小企業、それから特におもちゃの業界でございますとかそういうところが非常に活用している。高度な創作性まではいかないけれども、小発明であるという。それから、特に形態、形等に化体されたような小発明であるということでございますので、それはそれで従来も共存してきたわけでございますが、その制度と二つの制度が並び立つんではないかというのが今私の考えておるところでございます。
  119. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 まあ、審査待ちゼロになってからまた考えますか、特許との関係はね。  それじゃ、ちょっと、直接法案審査ではないんですが、知的財産戦略全般について、あと残る時間の中で幾つか確認をさしていただきたいというふうに思います。  私もこの知的財産戦略というのは非常に重要な政策であるというふうに思っています。日本産業の国際競争力を高めるために、やはり今回の特許法改正もそうでありますが、迅速かつ実効が上がるように早急に政策推進すべきだというふうに思っています。  それで、まず大臣にお伺いしたいんですが、私はこの特許取得保護もこの知的財産政策のワン・オブ・ゼムだというふうに思っていまして、その他、例えば今お話に出ました模倣品の対策だとか、あるいは一方で国際標準というようなことが盛んに言われています。こういう問題だとか、いろいろ課題がたくさんあるというふうに思うんですが、今後の、大臣の念頭にあるこれから取り組むべき事柄といいますか方向について、ちょっと御所見をまずお伺いしたいと思うんですけれども
  120. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 知的財産戦略というのは、政府においても今いろんな場で、会議で議論がされているところでありますけれども、午前中も申し上げましたように、日本というのは資源に恵まれていない。外国から物を買って、そして輸出をするということになりますと、国民の生活の向上という面からも、また、世界に買ってもらえるような製品作りという観点からも、やっぱりいいものを作らなければならないという意味で、技術、そしてその根っこにある知的財産というものが大事になってくる。これが知的財産国家と、知財国家というものが今後ますます我が国の生きていく上で重要な大きな戦略になっていくんだろうというふうに確信をしております。  一口に知財立国と言っても、今御指摘のようにいろんな側面があるわけでございまして、先ほどからこの法案審議いただいている中で、ふと私も疑問に思うことがあるんですけれども、すばらしい何か発明をして、そして特許が得られても、それがうまく企業化というか製品化というか、そこに結び付かないまま埋もれてしまうということもあるわけですから、知財として権利が確立して、企業職務発明なんかでありますと、最終的には企業としてのいいものを売るということによる企業収益にもつながっていくでありましょうし、その製品を購入したユーザーにとってもプラスになっていくというところまでが多分知財立国としての一つの姿であろうというふうに思っているわけであります。  他方、もっとさかのぼると、そういうような人材をどうやってつくっていくかということも大きな、これから考えていかなければいけないことではないかと。先ほど御指摘がございましたように、理科系というとお医者さん以外は理科系離れみたいなことがあってはなりませんし、誠に卑近な例で恐縮でございますけれども、日々食べている御飯が、根っこが稲であるということと結び付かない子供たちだとか、私の地元のシャケというのは、切り身がシャケだと思って、シャケを一本上げるとマグロと勘違いするとか、こういうことが都会の子供たちの間にあるようでは、そもそも独創的な子供たちの無限の可能性を摘んでしまうことになるということは非常にもったいないといいましょうか、損失だろうと思います。  そういうところから始まって、知財立国というものをつくり上げていかなければいけないという前提に立ちまして、話すと長くなりますからポイントだけ申し上げますと、そういう人材なり企業なり研究機関なりがそういう知的財産を作り上げ、そしてその権利を守られながらきちっとその成果を残していくというところが知財立国であり、昨年策定されました推進計画というものも、そういう観点を含めて、それと相対立する現実世界にあります知的財産権侵害、あるいは模倣品、海賊品対策とかああいったものも含めまして、国際的なルールを確立をしていきながら、何も日本に限らずでありますけれども、いい発明あるいはその知的財産を作り上げた人の権利保護しながら、その利益を世界的に享受していくということが国際的な意味での知財の進むべき方向であるし、冒頭申し上げたように、日本はその道しかないとは言いませんけれども、その道が一番日本にとっての今後も取るべき道であるという確信の下で、これから知財立国としてのいろいろな、この特許法改正も含めまして、まだまだやるべきことが一杯あると。  一言で言えば、知財立国を目指して、これから制度面でもさっき言った人材面でも、あるいは国際的な面でもやるべきことが一杯あるという認識の下で今諸課題に取り組んでいるところでございます。
  121. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ありがとうございました。認識はそんなに変わらないというふうに思うんですが。  日本がそもそも知財立国に取り組み始めた経緯のそもそもの発端はやはりアメリカの動きにあるというふうに思うんですが、特に八〇年代の前半ですか、ヤングレポートというのが出されまして、アメリカが基本的にそのヤングレポートに沿った形での知財戦略というのを強力に進めてきました。  実は、私も、ちょうどそのヤングレポートが、ヤング委員会というんですか、競争力強化のための委員会ができたころに、まだ国会議員になっていませんが、労働組合の役員をしていたわけですけれども、あの当時、日米貿易問題で特に自動車は非常に大きな焦点になっていましたが、いつもジェトロの出先からレポートが来るんですね。ジェトロ・レポートというのがありまして、割合速報で、レーガン政権がヒューレット・パッカードの会長のヤングさんを委員長にしてこういう委員会を作ったとか、いろんなアメリカの動きが報告がございまして、実は当時はそれを楽しみに拝見をさせていただいていたんですけれども。  実は、このヤングレポートがまとまったのは大体八〇年代の半ばでございますから、日本は二十年後れているというふうに言えると思うんです。一つは、この後れがなぜこういうふうになってきたかという、なぜ後れたかという問題も一つあります。  それからもう一つは、これは質問というよりも、これから大臣政策をお進めになるときに是非念頭に置いていただきたいと思うんですが、このヤングレポートの中では、いわゆる競争力とは何ぞやということを割合明確に定義をしていまして、我々も、ともすれば競争力というと、例えば日本の商品が世界を席巻するとか、台数でほかの国のものよりたくさん例えば数が出るとか、金額が上がるとか、こういうことを思いがちなんですが、実はヤングレポートで言っている定義というのは、そういう特に一つ世界的に、国際的なマーケットを焦点にして競争力を高めると、それからもう一つは、そういうことを通じて究極は国民生活の水準を向上させると、ここに、これを競争力だと、こういうふうに定義しているわけです。  私は、一つは、最近日本議論を見ていまして、やはりそういう物の考え方というんですか、何のために、じゃ国際競争力を強化していくかと。特にこのバブル崩壊以降、やはり少し例えば乱暴なリストラもございましたし、どうも、例えば中国へ進出していく話なんか聞いていますと、人件費が安いから行くと、こういうことが盛んに言われたわけですね。  ヤングレポートの中で明確に言っているのは、価格を下げていわゆる賃金レベルを低くして競争するという国もあるけれども、我々はそうじゃないんだと、国民生活の水準を高めるためにこれをやるんだと、こういうことを明確にしているんですね。  私は、やはりもう、ちょっと経済も幸い少し明るい兆しが出てきましたから、改めてそういう何のためにやるかというところの精神をやはりきちっと確立をして、であるがゆえに、やはり技術で勝負するんであって人件費で勝負するんじゃないと、価格で勝負するんではなくてそういう技術のレベルの高さで勝負するんだと、こういうことになってくると思うんですが、是非そういうところをやはり政策一つの根幹の物の考え方としてひとつ柱にしていただいて、そして政策を進めていただきたい、これは要望として申し上げたいと思うんですが。  それで、御質問したいのは、そういう中で見ますと、アメリカという国はこの知財戦略をやるために相当強烈なことをやっているわけですね。例えば、中国なんかとも交渉して、何か聞くところによると査察をしていると。ちゃんとアメリカ権利が守られているかどうか査察をしていると。それから、USTRという専門部署があって、ちゃんと情報がそこへ上がるようになっていて、そして現場へ入って検証できるようになっていると、こういうふうな話も聞いています。  もちろん、法律的にも、例のスーパー三〇一条とか、スペシャル三〇一条なんというのは、これは知財用の三〇一条らしいんですが、こういうものも駆使してかなり強力にやっているんですが、なかなか日本はそういうふうにできないですよね。アメリカのように、例えば中国に行って査察をするなんということは現実にはなかなかできないと思うんですけれども。  じゃ、日本はどういう方法でこれからそういう、今大臣がおっしゃったように、やはり国際的に日本のそういう知的財産というのを守っていかなければいけませんから、どういう方法でこれを進めようと。アメリカのスーパー三〇一条に代わる何か方法論があるのかどうか、その辺はいかがなんでしょうか、ちょっとお聞きしたいと思うんですけれども
  122. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) ヤングレポートの直嶋委員の御指摘については全く、私もあのレポートを随分読まさせていただきまして、競争力が残っている分野は八〇年代にはもうたしか農業と航空機しかなくなってしまったと、ほかの八分野はすべて日本その他に競争力を奪われてしまったと、だから立ち直らせなければいけないと。その直接のきっかけは自動車ということでございますから、ヤングレポート作成に直嶋委員も間接的に随分貢献されたのではないかというふうに思うわけでございますけれども。  私どもといたしましては、ヤングレポートをレーガン政権の基本的な施策の根幹にした結果、明らかに外から見えてくるのは、一つ研究開発費の急速な増大と人材育成と、それから、今お話しになりました法的な、いい悪いは別にして、アメリカのための知的財産を守るための法的な整備ということで、例の産業スパイ法でありますとか、これはちょっと後の話でありますけれども、国防生産法に基づくエクソン・フロリオ条項の導入でありますとか、日本にとってみれば何ができるかということに関していえば、今委員指摘になりましたように、一部先端産業は海外から日本に戻ってきているという産業というか企業もあるわけで、極端に言えば、人件費が五分の一であっても、一人で四つの工程ができるんであれば、それは中国で五人雇うのと、コスト、運賃なんか、時間なんかも計算すれば十分日本でペイするじゃないか、そして、大事なコアの技術が外に流れ出さないようにしていくこともできるじゃないか、一挙両得だ、あるいは三得だというようなことで、一部先端企業は逆に日本の中に戻ってきて、そしてブラックボックス化をして先端の製品を作っているという例も最近ぽつぽつと見え始めてきておるわけでありまして、これは私としては非常にいい方向だろうというふうに思っております。  それから、やはり私は、できることならば法整備というものもよりきちっとしたものにして、守るべきものはきちっと守り、それに対する侵害はきちっとした対抗措置を国内的にも取っていかなければなりませんし、それから国際的にもそういう必要があるというふうに思い、これはWTOなり、あるいはWIPO、ワイポの世界なりでやっていかなければいけないと思いますが。  今、中国に関して御指摘がありましたが、一つの例としては、例の増値税、中国国内で生産されたものについては税を還付して輸入品との差を付けて国内製造を優遇するというものがWTO違反であるといってアメリカが提訴をいたしまして、日本EUもそれに参加をすると。中国に参加をするぞと言ったら、中国も結構ですというふうに言ったことによりまして、日本EUも参加をして、この増値税問題については日米、EU共同でこの問題に取り組んでいくということもございまして、そういうような意味で、極端に言うと、特許を取って公開するよりも、特許を取らずに隠してブラックボックス化して、ほかにまねのできないような、例えば平面テレビの第何とか世代とかデジタル家電の問題とか、あるいは私どもの新産業創造戦略で言いますと燃料電池だとかロボットだとか、こういったものも含めて、簡単には盗まれないぞ、盗ませないぞという自信と、そしてまた、国あるいは法制度としての担保、国際的なルール作りというものも含めて、日本知的財産というものが最終的には、直嶋委員がおっしゃるように、世界的な競争の中でナンバーワンを走り続けると同時に、国民あるいは世界のユーザーに対してプラスになるような製品を供給し続けるというのが私どもにとりましての新産業創造戦略の基本的な考えでございます。
  123. 坂本剛二

    ○副大臣坂本剛二君) 今の海賊版、模倣品についての政府取組、御報告します。  今までもWTOとか多国間協議、あるいは中国政府との二国間協議などで、この各種協議の場を利用して模倣品を製造する国の政府に強く働き掛けてきましたが、五月二十日に行われました中国商務部と、経済産業省から佐野審議官が行きました、この次官級定期協議においても、模倣品、海賊版対策を強化するよう要請しました。また五月九日から十五日にかけて、業種横断的に模倣品対策に取り組むための民間組織であります国際知的財産保護フォーラムと政府が合同で中国にミッションを派遣しまして、再犯者対策の強化などを中国政府に申し入れ、中国側から今後一層の対策強化を図るとの決意が表明されたわけでございます。  今後とも、官民挙げて対策強化のために取り組んでまいる考えであります。
  124. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ありがとうございました。  今、実は副大臣言われたように、日本の対応というのは、さっきアメリカの話をしましたが、これは法律作って強烈に制裁もやる、それから、さっきお話ししたように、行って査察もやる、もうこれは非常に強権的なやり方ですよね。だから、これがいいかどうかというのはまた議論が分かれると思うんですが、ただ、日本のやり方は、逆に言うと、要請をするとか、例えば中国政府に要請をするとか申入れをするとか、これはまた対照的にソフトなんですよね。非常にソフトなんですよ。  だから、本当はこういう特に知財の問題というのは、やはりある意味でいうと価値観の問題のところがありますから、お互いの価値観をどう相手に、相手にですよ、自分じゃなくて、相手に分からせるかという、こういうことですよね。だから、是非、これから特に中国もそうですし、アジアもそうだと思うんですが、やはり世界的に経済発展が見込まれる地域の人たちにこういう我々の価値観をいかに分かってもらうか。アメリカは制裁をしながら、まあ、ぴんたの一つ二つ張りながら分からせるというのがアメリカ流だと思うんですよ。日本はそういうまねはできないと思うんで、しかし、どうも要請とか申入れだけじゃちょっとなかなか簡単に言うこと聞いてくれそうにないと思うものですから、これをどうやるかというのは私も答えありませんが、是非、これから大きな課題になるんじゃないかというふうに思いますので、一言申し上げておきます。  それで、もう最後になりますが、そんな中で、ちょっと一つ確認させていただきたいのが、今の意匠制度なんです。  これは、日本の意匠制度というのは、実は外形的なデザインの部分だけを、要するに形のあるものに限定をして保護しているわけなんですけれども、これ、国によって、例えばアメリカだと形のないものも保護しちゃうと。  こういう言い方しても分かりにくいんで、具体的な例を挙げますと、例えば、今、洗濯機で斜めにしたやつがありますね、ドラムを斜めにしたやつ。これはなかなか使い勝手がいいんですが、これは日本流に、日本の意匠制度で当てはめると、例えば円筒形を少し形を変えるとか、デザインを少しいじると保護対象にならなくなると、こういう話をちょっと聞いたんですけれども、そうすると、こういう商品というのは、実は一つのデザイン的には似たようなものできるかもしれませんが、今まで洗濯機というのは縦に入れて回すものだと思っていた常識からいうと、新しい一つのコンセプトを提案しているようなものだと、こういうふうに思うんですけれども、これがそうなるのかどうか別にしまして、一つの例として今お話ししたんですが、こういうものも、新しい発想とかそういうものもこういう意匠制度の中で守っていくと、こういう方向というのが考えられないのかどうか。そういうデザインを保護していくという意味でいうと、そういう拡大していくというか、こういうものもこれから検討していく必要があるんじゃないかと、こう思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  125. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) お答え申し上げます。  意匠につきましては、審査期間が過去の二十か月から現在八か月まで短縮されてきましたので、戦略的に使えるようになりつつあるというふうに評価していただいている面もございます。  ただ、先生御指摘のように、斬新なデザインを考えた人が、そのデザインについて意匠権を得たとしても、どの程度改変をするとほかの人が取ってしまうのかということについて今議論があるというふうに理解しております。  これから、先ほどの大臣の下で作りました新産業創造戦略におきましても、個性と個性との競争を通じてこれから産業競争力の強化をしていくということでございますので、やっぱり斬新なデザインが次々と生まれ出すような、個性競争が行われるような形でこの意匠制度を少し見直していきたいということでございまして、私ども、そのこれから見直しの検討に入りたいというふうに思っております。
  126. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 よろしくお願いしたいと思います。  じゃ、大体時間が来ましたので、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。
  127. 松あきら

    ○松あきら君 松あきらでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  午前中から質疑が繰り返されておりまして、私も職務発明制度、これはなかなか分かりにくいので、職務発明制度の在り方をめぐる議論の本質というのを伺おうと、こう思ったんですけれども、御質問、御答弁を伺っておりまして、やはり現行制度は、例えば特許権発明者に原始的に帰属する、あるいは契約、勤務規則等により発明者から使用者等への権利の承継が認められる、あるいはその場合には発明者は相当の対価を請求する権利を有する。こういうことによってやはり、例えば企業にすると、裁判で決定される発明の対価の額というのは予測困難、法的安定性がやはり低いと。あるいは発明者によりますと、対価の額というのを企業が一方的に定められるとしますと、対価に対する納得感が低い等々の問題点があるのでこれを見直したということなんだろうなというふうに伺っておりました。そうすると、発明者企業のバランスに配慮する、この御答弁もありました。  それから、企業の訴訟リスクを軽減して研究開発投資を増大させるインセンティブ、これを与えると、付与すると。それからまた、発明者に対しましては、発明の対価への納得感を高め、更なる発明に向けたインセンティブを付与すると、こういうことになるのかなというふうに、これはもう御質問をしようと思ったんですけれども、いろいろ出ましたのでこの質問はやめて、そういうところであるのかなというふうに思っております。  ところで、三十五条に関しまして新聞等で、例えば高名な学者の方が、これはもう三十五条廃止すべきだと、こういう意見があると。また、その反対に、一方、訴訟当事者の方なんでしょう、三十五条は現行法のままがいいと、両方の意見があるんですね。  これについて、例えば廃止論あるいは維持論、どんな検討がなされたのか、お伺いをさせていただきます。
  128. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) お答え申し上げます。  いずれの問題につきましても、審議会におきまして明示的な議論がございました。  まず、アメリカに並びまして、特許法三十五条を廃止すべきだという意見があること。これにつきましては、審議会では、日本におきましては依然として終身雇用制が残っているということでございますので、研究者と会社との間で契約締結に際して、必ずしも研究者の意思が反映されるとは限らず、結局研究者にとって不利な契約になってしまうんではないのかということが主要な意見でございました。  一方、企業サイドから見ましても、やはり日本企業はそういう個別の雇用契約ということに慣れておりませんで、多数の研究者がおられる企業、大企業に特におきましては、各研究者ごとに契約を結んで、それぞれの能力に応じてアメリカのように賃金も決めていく、処遇を決めていくということは現実問題としては無理だということで、産業界サイドからもこれについて、三十五条の廃止ということについては反対であるという意見でございました。  そのほかに、いろいろ理由、議論がありました。省略させていただきますが、おおむねそういう議論でございます。  一方、三十五条をこのまま残せということにつきましても、明示的な議論がここでも行われております。そして、我が国の雇用関係を前提とする限り、逆にこの場合は、今の現行法で研究者企業と対等に話合いをするということは無理なので、何らかの形、このままの形では難しいんではないかということでございます。  研究者の立場からいたしますと、三十五条によって相当な対価の請求権が今与えられているというわけでございますけれども、現在の雇用の環境の下では、企業研究者が実際に企業を相手取って訴えを起こすということはなかなか難しい。その結果、先ほど来議論がありますように、実際に訴えを提起しているのはほとんどが退職された方でございます。したがいまして、企業にとどまって研究活動を続けておられる研究者というのは、もし不満があるとしても、なかなかその不満についてそれを訴えるということは難しいということでございます。  一方、三十五条を維持するということになりますと、正に現在の現状でございますけれども企業サイドから見ますと、企業ルール企業は一生懸命努力して、例えば発明者意見も聴いたりして相当の対価を決める努力をしても、最終的には裁判所が後から決めてしまうということでございますので、使用者、それから企業、それぞれに現行制度について、維持することについては問題があるというのが審議会の議論でございます。
  129. 松あきら

    ○松あきら君 まあいろんな意見があるようでございますけれども、やはりこの改正をしても相当の対価についての予測可能性というのが特に高まるものではないとも私も思っているんですね。ですから、予測可能性あるいは法的安定性の観点からは、相当の対価について規定するのであれば、より具体的な、先ほどから出ておりますけれども、ガイドライン等を設けること、これも重要ではないかなというふうに思っております。  それから、今回の三十五条の改正案では、職務発明に係る外国における権利の承継や承継の対価について規定することは見送られているわけなんです。しかし、今日、知的財産権というのは国際的に展開をされておりまして、国際的な特許戦略が不可欠である、これはもう本当に私もそう思うんですね。外国での権利をどのように取り扱うかは極めて重要であるというふうに私は思っております。  したがって、対価請求権について規定するならば、本来、この点が法律上手当てされるべきであると思っているんですけれども、先ほど、そう思っていたんですけれども、国際法上の担保がないということで、今回、これ入れなかったというふうに先ほど私も伺いました。  しかし、やはり私は、日本は先願主義、あるいは米国等は先発明主義で、サブマリンなんかもアメリカはありますので、すごく、ちょっとこれは私もいかがなものかなと思っているんですけれども、こういうものがあるので各国ばらばらを例えば日米欧一つにしようと思っても、アメリカなどはいろんな意見が、なかなか難色を示しているというか、あるみたいですけれども、やはりこれ、制度をそろえる努力は大切だと思うんですね。ですから、今後ともその努力は続けていただきたいと申し上げておきます。  それでは、ちょっといろいろと重なったり、いろいろしていますので、カットしたりして飛ばしたりいたしますので、よろしくお願い申し上げます。  次は、文部科学省関連の質問をさせていただきたいというふうに思います。  新聞報道などによりますと、最近、大学の法人化に併せまして、大学内に知的財産本部を設置する動きが全国的に見られるようであります。もう我が国のイノベーションを担う重要な柱であるこの大学、大学においてこのような動きが進んでいるということは、知的財産立国の実現に向けた重要な一歩であるというふうに私も思っているところでございます。評価をしたいというふうに思います。  こうした中で、今般の職務発明制度の見直しに併せて大学内の職務発明規程の整備も当然進めていくべきだと私は思うんですけれども、文部科学省にこれは御見解をお伺いいたします。
  130. 丸山剛司

    政府参考人丸山剛司君) お答え申し上げます。  今、先生御指摘のとおり、知的財産立国を目指します我が国において、大学における研究開発等に基づいて生み出されます知的資産を適切に管理、活用していくということは極めて重要でございます。このため文部科学省では、法人化より以前の昨年度より、大学の知的財産本部整備事業というものを実施してまいりまして、この事業を通じてそれぞれの大学で職務発明規程などの知的財産に関する基本的なルールの策定あるいは知的財産戦略の企画立案等を行う体制を整備しているところでございます。それぞれの大学、特色を生かしながら、主体的な判断に基づきまして職務発明手続発明補償などに関する規程の整備を進めております。  具体的な規程の内容につきましては、いろいろな大学まちまちでございますが、研究者意見等も踏まえて、研究活動の活性化のためのインセンティブを付与するという観点からかなりの配慮がなされたものというふうに、なっていると承知をしております。例えば、大学ごとに内容は違いますが、東京大学におきましては、知的財産から得られた収入のうち、経費を控除した残りの額について四割は研究者に支払うと、こういうルールを決めているところでございます。  確かに、今回の法改正によって職務発明規程を改正する必要があるのではないかという点につきましては、既に研究者意見等も十分聴いて職務発明規程にこの内容を盛り込んでございますので、改めてその規程の整備を行う必要はないかとは考えてございますが、この法案の内容につきましては、法案成立後、速やかに大学関係者にも徹底していくと、そしてさらにこの知的財産の創出、管理、活用と、こういった意識を高めていくことが重要ではないかというふうに考えております。
  131. 松あきら

    ○松あきら君 ありがとうございます。  今般の国立大学の法人化は、大学においてその研究者の評価というのをいかに行うかを検討する良い契機になるのではないかと思います。もちろん大学の研究というのは必ずしも利益に直結するものではないと、非常に基礎的なものも数多く含まれている、これも承知をいたしております。  他方、独立行政法人化に伴いまして、しっかりと特許取得し、利益につなげていくことも重要である、これも事実であります。先ほど伺いましたら、利益の四割は研究者に支払うと、これすごくいいことですよね。やっぱり大事なことだと思っておりますけれども。そういうことも含めて、大学における研究者の評価の問題について、職務発明の問題と関連してどのように見直しを進めていくつもりなのか、あるいは見直すことはないとお思いなのか、この辺の御見解もお伺いしたいと思います。
  132. 丸山剛司

    政府参考人丸山剛司君) 先生御案内のように、大学におきます学術研究というのは、新しい原理や法則の発見を通じて広い意味の人類の知的資産の形成に貢献するという大きな目標があるわけでございます。その中にはもちろん成果を特許化して我が国の社会経済発展に貢献していくというものも当然多数あるわけでございます。  こういう学術研究の意義というのは、国立大学の法人化によっても基本的には変わらないというふうに考えておりますが、各大学において行われる研究者の評価という問題につきましては、それぞれの大学におきまして、それぞれの考え方で適切なルールを定めて行うというべきものだと考えております。その際、知的財産の創造と活用の促進を図る観点から、教育研究活動の学問的意義という評価のほかに、社会経済への貢献がどの程度なされたかという観点からは特許取得状況等をもって評価の視点に加えると、こういったこともありまして、多様性を持って学術研究の評価をしていくというのが基本的に重要だと考えております。  例えば、横浜国立大学では届出のあった職務発明で所定の要件を満たすものは、大学及び技術移転機関等の外部機関が権利を継承するかどうかにかかわらず、届け出た教職員の業績評価の対象とするということで、正に特許を取ることを一つの業績評価の中に取り入れたという例もございまして、大学によってそれぞれ違うわけではございますけれども職務発明というのを研究者評価の重要な項目として位置付けているところも出てきております。
  133. 松あきら

    ○松あきら君 大学において特許になる技術が多く生み出されること、もちろん大変重要であります。そのように、横浜国大のように届け出たものは業績に評価というものに取り入れるということも大変すばらしいと思います。  しかし一方で、特許に結び付かない基礎的な研究やあるいは調査を行うこと、これも大学の重要な使命であるというふうに思っております。必要のない心配に終わればいいんですけれども、このような基礎的な研究調査が大学において正当に評価されないようなことがあっては決してならないと思うんですね。  昨年も小柴教授に参考人でお出ましいただきましたら、実は地味だけれどもこういう基礎的な研究とか調査というのはとても大事なんだと、これをおろそかにしてしまっては絶対にいけないというお話ありましたけれども、やはり政府としてこの点についてどのような手を打っていく予定なのか、御見解をお伺いいたします。
  134. 丸山剛司

    政府参考人丸山剛司君) ただいまも申し上げましたように、大学の学術研究といいますのは、やはり研究者の自由な発想に基づく幅広い研究を行うということが重要でございまして、先生御案内のように、大学の学術研究の中にはいわゆる人文社会科学の研究あるいは特許という形ですぐには成果が得られないけれども、長期的に見ると非常に重要な基礎的な研究、こういったものも多数行われているわけでございます。こういった研究の重要性というのは各大学においても十分認識されているというふうに承知をしておりまして、文部科学省との関連におきましては、例えば国立大学法人に私どもが示す中期目標の中にもそういう重要性というものが意識をされて策定されているというふうに考えております。  繰り返しになりますが、大学の重要な使命というのは、国際的に見て質の高い学術研究を多様性を持って推進するということが非常に重要でありますので、特許に結び付かない学術研究についてもこういう観点から正当に評価されるべきものというふうに考えてございます。
  135. 松あきら

    ○松あきら君 中国などでは中関村などに非常に大学あるいは企業が集まって大々的に知財立国を標榜して行っていると。先ほど大臣もおっしゃったように、日本は私は、この日本知財しかないといっても言い過ぎでないと大臣さっきおっしゃったと思うんですけれども、私も正にそのとおりであると。ここをおろそかにしてしまってはもう日本の先は、未来はないというふうに私も確信をしているところでございます。よろしくお願い申し上げます。  それから、これはいつも私申し上げているんですけれども、その知財立国を実現するためには知財教育ですね、これをしっかりと行っていかなきゃいけないと。また小柴教授のことを申し上げますけれども、やっぱり小さいときに実験をやったら面白かったと、あるいは先生がとても面白おかしく楽しく授業をしてくれた、これも大事な要素だと思うんですけれども、昨今の若者はなかなか、難しい何か本を読んで、あるいは難しく授業をするだけでは付いてこないようなところもあるわけでございまして、例えば学生のうちから、あるいは私は本来なら小学校のうちからと、こう申し上げたいんですけれども、小さいときから自らの能力というもの、実はこれは将来的には知的財産に結び付くことだってあるんだよという、こういうような何というんですか、教育ですね、これが非常に重要じゃないかと思うんですね。  例えば、知的活動、知的何というんですか、授業というのを例えばゲーム、ゲームでやるとか、今いろいろありますよね、財産を増やすゲームですか、何か証券を買うとか何とか、あれアメリカの学生が授業で取り入れているそうですね、高校か何かで。ゲームをさせて、数学の授業で。そういうアメリカではやり方もあるそうで、それはともかくとして、例えばいろんなやり方で、それは一つはゲームであってもいいし、ともかく子供たち、教育現場に知財教育を組み込んでいくべきであると、こう思っておりますけれども、これはいかがでございましょうか。あるいは後で大臣ももしあれでしたら。
  136. 丸山剛司

    政府参考人丸山剛司君) お答え申し上げます。  今、先生御指摘のとおり、知財教育というのは子供の段階、それから社会人に至るあらゆる段階で必要かと思っております。知財という具体的な問題については大学とか高専というところが主に関係するとは思いますけれども、例えば大学における知財教育については、法学部や経済学部等のいわゆる文系の学部で最近は知的財産権法あるいは無体財産権法といったような授業科目を開設して幅広い学生に学んでいただく、あるいは理工系の学部におきましても技術開発と工業所有権あるいは特許とベンチャーと、こういったようなタイトルの授業科目が開設されるなど、非常にいろいろな大学で特色ある取組が行われてございます。  私どもが調べたところでは、平成十四年度に二百七の大学におきまして合計四百二十二の科目が知的財産に関連の深い授業科目として開設をされてございます。  それから高専につきましても、知的所有権や工業所有権法の授業科目の開設ということが行われてございまして、平成十四年度では十六校におきまして合計十八科目が開設をされております。  やはり先生御指摘のように、知的財産権に関する理解というのは、プロの方はもちろん必要ですけれども、一般の方々にもこういった理解が広まるということが非常に重要だと考えてございまして、いろいろな大学や高等専門学校におきましても知財立国という考え方を踏まえて自発的にいろいろな工夫をして多様な教育が展開されるように、その取組を期待しているところでございます。
  137. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私、松委員の御質問はもっと子供のころからという前提でお答えをさせていただきますが、もうそのとおりでございまして、私も実はまだちっちゃい子供、小学生がおりまして、いかに興味を持たせるかというときに、私自身がそういう体験をしなかっただけに子供たちにさせたいと思って苦労しているんですけれども、興味を持たせるきっかけを何とか作りたいと思って自然に触れさせたり、あるいはまた今委員も御指摘になった例えばエジソンの伝記とかキュリー夫人の伝記とかを何とか読ませたいと思うんですが、なかなか苦労しておりますけれども、きっかけを持たせて、それをきっかけに子供の無限の可能性を引き出していくということも、ある意味では教育というか親の務めなのではないかなと思いながらも、苦労している毎日でございます。  国会の場でこんな個人的な話をして誠に申し訳ございませんでしたが、例えば、文部省の学習指導要領によると、円周率はおおむね三と教えてもよいということになっているんだそうでありますけれども、仮に、円周率は三だよというふうに仮に大ざっぱにそういう教え方をしたときには、じゃ円と正六角形とどう違うんだろうという疑問を持つというふうになっていけばこれは大成功なんでありまして、そういう意味では、この文部省の円周率はおおむね三と教えていいというのは、子供たちを啓発する上で大変いい私は記述をしているのではないかなと思っておるわけでございます。  いずれにしても、子供たちが知的な刺激に対して敏感に反応してすくすくとその能力を生かしていけるような体制作りが、ある意味では知的財産立国の大事な土台だというふうに思っております。
  138. 松あきら

    ○松あきら君 大臣、ありがとうございます。私もいわゆる高等教育だけでなくて子供たちへの教育という面でもお伺いしたかったんですけれども、ちょうどお答えいただいて、正に子供たちの無限の可能性を引き出すためには、いかに興味を引き出せるかという、きっかけを作るかという、これが大人の責任であると、本当に私もそういうふうに思っております。ありがとうございました。  それでは、本案の元々の特許審査迅速化にまた戻りたいというふうに思います。  今般の法案には、特許審査迅速化に関する施策、数多く盛り込まれておりますけれども、これらについては当然賛成であります。是非とも大臣、副大臣、政務官、指導力を発揮していただいて、一過性のものに是非とも終わらせることなく、審査順番待ち期間ゼロの実現に向けて、継続的、計画的に施策を講じていっていただきたいというふうに思う所存でございます。  この迅速化に関連して質問させていただきますけれども、近年、技術進歩のスピードというのは大変急速になっております。このような中で、特許庁審査官出願された技術を正確に理解して、それが従来になかった技術なのかどうか、これを判断しなきゃならない。このような急速な技術進歩に追い付いていくというのは決して容易なことではないと。特に、審査官もある程度の年齢を超えますとなかなか新しいことを学ぶのは難しいと。これは私自身が痛感しているところでありますけれども。  その迅速あるいは的確な特許審査を実現する上で大変重要な点であると思いますけれども特許庁としてどのように審査官の能力を育成していこうとしているのか、御見解をお伺いいたします。
  139. 江田康幸

    大臣政務官(江田康幸君) 御指摘のとおり、私も研究出身でございますので、もう技術は日進月歩でございます。遺伝子工学とかを始めとするバイオテクノロジー、またナノテクノロジー、ITと、そういう分野は非常に高度化、複雑化してきておりまして、この最先端の分野発明を的確に審査するということは、その審査員がしっかりとその内容、技術を理解しておくという必要がございます。  そのためにも、その能力向上が必須でございますが、審査官にはそれぞれに担当する技術分野は持っております。各自が責任を持ってこの自己の分野審査を行っているところでございますけれども、審判、例えば審査結果については出願人が不服とした場合には審判請求ができることになっておりますので、その判断は随時見直されると、審査結果は見直されるというようなことで、常に審査官は逆に言えば評価を迫られていると、そういう状況です。  このような状況の中では、やはり、自己研さんでこの最先端の技術の習得をしていただくという仕組みにしておりますし、また、特許庁としましても、審査官が常に最新の技術を習得できるように、まず国内外の学会、そこに派遣させる、また企業研究活動の現場に派遣してその研究内容を見る、また各種の技術研修、こういうメニューがございます。これで審査官技術レベルの向上に力を入れているところでございます。
  140. 松あきら

    ○松あきら君 大変ですけれども大事な分野でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  私も経済産業省大臣政務官をさせていただきましたけれども、その間に特許庁を視察をさせていただきました。それからもなかなか伺おうと思ってまだ伺えていないんですけれども特許庁に行きましたら、ええっと思うぐらい、想像を超えるぐらい、あ、あれもこれもこれもこれもと、もう多岐にわたるわけですね、その内容は。正にブランドのバッグから洋服から、正に環境技術に至るまで、もう本当に多岐にわたって、特許庁というのは本当に大変だなという、百聞は一見にしかずであるというふうにつくづく感じたわけでございます。  やはり、実際にその特許審査を見ますと、特許とは何かということがやっぱり非常によく分かるというふうに思うんですね。そういう意味では、やはり国民に広く特許というものを理解してもらう必要があると。やはり、実際に特許庁に来ていただいて見ていただくということが大事じゃないかな。  ですから、特許庁としては例えば子供向けの見学コースを作るとか、まあそれは子供向けだけじゃなくていいんですけれども、そうしたことも考えて、積極的に国民の見学というのを受け入れていくべきではないかというふうに私は思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  141. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 先生の御指摘のとおりだと思います。  ただ、今までそれほど私ども慣れていないものですから、ホームページで庁舎の見学の御案内というのを出しておりまして、十五年度でいいますと総数千百九名の方が来ていただきました。このうち小中学生が二百三十名でございますので、先生のおっしゃっているのとは規模が違うんですが、そういうことに心を用いてこれからも進めてまいりたいというふうに思います。
  142. 松あきら

    ○松あきら君 ぞろぞろ見学者が来たりするといろんなやりにくいということもあるんでしょうけれども是非私は見ていただくことも大事であるというふうに思いますので、これ見たら自分も発明者になろうなんていう子供が出てくるかもしれないということで、是非御対応よろしくお願いを申し上げます。  特許申請が停滞しているという中で、先ほども直嶋先生、五年で五百名の審査官をという御質問もありました。初年度応募したところ、百名のところ千名の応募があったと。これ伺いましたら、本当にすごい人材がざくざく来たというふうに伺っているんですね。それで、ちょっと変な話なんですけれども、例えば千三百万とか四百万とかもらっている人が半分でいいと、でも国のこういうものに携わりたいと、期限付きですよね、それで応募してくる人もいると、お金ではないと。  それで、優秀な人材を九十八名採用することができた。私、これ百名なのに何で九十八名か、総務省を呼んで何でかと聞いてやろうかと思って、財務省も呼んでついでに聞いてやろうかと思ったんですけれども、多分時間がないだろうから呼ばなかったんですけれども。この辺が何か日本て、百名というのを二人減らして九十八名なんてこそくだなと、ちょっと個人的には思うんですね。非常に大事なところでこういうことをするんだなと。  やはり、その人材がたくさんいるわけですから、そうした、今お話ししたような、やはり私も前倒しをして、早い時期に優秀な人材を採用してたまっている申請をまず片付けるべきだと、こう実はお伺いしようと思ったんですけれども、教育をするのにも手間暇掛かるって変ですけれども、いろんな事情があるからこの辺でいいというようなお答えだったかなとさっきお伺いしておりましたけれども、これもできれば早くたくさん入れておいて、後どうなるか分からないんですから、総務省だって、財務省だってと、私は個人的にはそんなふうに思う次第でございます。  もう時間がありません。質問はこれぐらいにいたしますけれども、やはり私は、知財立国を目指すしか日本の未来はないというふうに思っております。先ほども申し上げましたように日米欧、この各国ばらばらであるこうした制度をそろえる、これも大切であると、これも是非努力をしていただきたい。  それからまた、質問いたしませんでしたけれども、先ほど質問が出たのでいたしませんでしたけれども中小企業方々特許あるいは知財権というもの、これが不利にならないように是非サポート体制を併せてお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  143. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 まず最初に、大臣に基本的な問題についてお伺いしたいと思います。  現行の特許法の第三十五条ですけれども、大正十年以来、長年にわたって職務発明に対して発明者主義を取ってきているわけですが、これに対して同時に、職務発明規定を撤廃せよという議論もあります。私は、この撤廃論というのは日本発明従業者の雇用に重大な悪影響を及ぼすと考えるわけですけれども、こうした問題について、先ほど長官からも、三十五条を守れというのと撤廃論、両方あって、詳しい説明ありましたけれども大臣の基本的な見解を伺っておきたいと思います。
  144. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほども三十五条についていろんな意見があると、この法案を御審議いただくまでの間にもいろんな方々の御意見を聴いてきたわけでありますが、いろんな意見があったわけであります。  私といたしましては、とにかく、今朝から何回か申し上げておりますが、知的財産を生むためのインセンティブにしたいし、それから法的安定性というものも守っていきたい。法的安定性といった場合、裁判まで持ち込みたくないという法的安定性と、それから裁判まで行ったときにきちっとした判例なり事例なりという裁判をやる上での基準となるデータがそろっているという意味の法的安定性まで行く場合と、これは、特に企業側なんかは裁判まで行きたくないという意向が多分強いんだろうと思いますし、そうはいっても、おれは我慢できないといって裁判所に行っちゃった場合の法的安定性までと、いろいろあるんだろうと思いますけれども、いずれにしても、法的安定性と知的財産を生産するための刺激というか、インセンティブになるためにこの三十五条の改正の趣旨があるというふうに理解をしております。
  145. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 経済産業省は、今回の職務発明規定の改正の意図について、使用者である企業とそして従業者が対価の取決めを策定するときは協議を尽くして開示することに力点があると、そう説明しているわけですね。  今、現場研究者がどういう状態に置かれているかという現状ですね、これが非常に大事だと思うんですけれども特許制度委員会が行った発明者アンケートの調査によりますと、職務発明規定の改定についての主な反対の理由に、労使の交渉力の差を考慮した労働者保護観点が必要、あるいは多くの現場労働者と受賞者がそう回答している、そういう実態があるわけですね。  私は、労使の絶対的力の格差がある中でいかにして協議を尽くしていくのか、それを尽くすことができるのか、これが非常に大事だと思っているわけですが、この改正案にかかわる具体的な点で、まず企業の中に労働組合がある場合は労働協約の一環として協議による合意の対象になると思いますが、その点について伺っておきます。
  146. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 特許法三十五条の趣旨からしまして、先生おっしゃいましたように、研究者と経営者、企業との間で議論を尽くすということでございますので、労働組合がある場合に、それが研究者を代表するという意味でそういうカバレッジを持っているということであれば、労働組合がそれを交渉するといいますか、議論を協議をするということでよろしいかというふうに思います。
  147. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 それでは、企業に労働組合がなくて就業規則を決める場合についてなんですけれども、この場合、使用者の意図で、使用者の意思で就業規則を決めていくことが多く、通常、就業規則を管理している総務課の一職員が単に形式的に意見を聴取して改定することが多い、そういう実態がいろんな調査で示されております。  私はこの場合は、実質的に研究者意見を反映させるようなより具体的な措置をやはり政府が積極的に講じる、そういう必要があると思いますけれども、その点についてはどうお考えか、伺います。
  148. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 今、先生がお話しになられたようなケースでいいますと、就業規則でそれが書かれておったとしても十分の協議が行われていない、研究者企業との間でのきちっとした議論が行われていないということでございますから、それは三十五条四項における不合理なケースということになろうかと思います。したがいまして、組合がないような場合、それから組合があっても研究者に対するカバレッジが非常に低いとか代表性がないような場合には、例えば総員と、全員と議論をしていただくだとか、研究者の集会を開いて代表を選んでいただいて議論をする、そういうものを記録に残してもらうと、こういう手続が必要だと思います。
  149. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 それから、事例で申し上げますと、例えば社内のイントラネットで研究者に労使の取決め案を電子メールで配信して、そして反対も少ないので意見を聴きましたと、そういうことで済ましてしまうと。実質を伴わない、なおざりな協議のやり方、こういうこともあるということを伺っているわけですけれども法案にある不合理の一例と私はこういう場合みなされると思うんですけれども、その点についてはお考えはいかがでしょうか。
  150. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 不合理であるか合理的であるか、これから私ども審議会を開催して、透明な形で議論を公開しながら詰めていきたいというふうに思いますけれども、インターネットを使ってそれぞれの社員に、研究者に趣旨を伝えたと。例えの議論をいたしますと、それに対して意見が来た、それに非常に丁寧に返して、それが全部記録に残っていて、研究者の方が納得したというのは一つのやり方ではないかというふうには思います。
  151. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 まあそれは程度によると思うんですね。例えば一応こうやって電子メールで配信しましたと、それについてもう反対が少ないと、それで、これでいいことになりましたと、そういうケースについては、まあ余り具体的な例に入るつもりはありません、詰めてやると言われているんですから、しかしこういうことについては、やはり不合理の一例じゃないかと思われませんか。
  152. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) これは事例集で私ども関係者皆さん研究者にも、それから経営者のサイドからも、それから労働界からもまたメンバーを入ってもらって議論をさしていただきますけれども、基本的には、最終的に裁判所が不合理ということになっては企業にとっても発明者にとっても不幸なことになるわけで、現在と同じことになるわけでございますから、恐らく企業のサイドは非常に真剣にこれに取り組むと思います。  したがいまして、そういう後々法的安定性を害するようなことにならないような手順を私は尽くすものだと思っておりますが、いずれにしましても、今後よく検討してまいりたいと思います。
  153. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 こういうやり方について、私は極端なことを言っているかもしれませんけれども、よくある話なんですよ。ですから、そういうことについては、やはりこれは正常ではないと、不合理な一例だと、そのぐらいは言っていただきたいと、そう思う次第ですね。  この間、大企業を中心にして、かなりの企業でいわゆる報償金制度をそれなりの意図を持って改定してきております。こうした現在の社内規程は、この法律が成立して新三十五条が制定された場合、どのように扱われるのかという問題なんですけれども、つまり特許制度委員会の事務局の説明では、協議や開示というプロセスを通じて新しい規程を作っていただく必要がある、そう言っているわけです。これらの企業にとって現行法下で策定したばかりの規程なので、この場合、なおざりの開示で片付けられるおそれがあるのではないかという、そういう危惧を感じるわけです。この点は、企業内の知財関係者はとても深い関心を持っている問題でありますので、特許庁の見解を伺っておきたいと思います。
  154. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 新法が今度、改正法が成立いたしました暁には、この新しい法律を適用する場合には、新しく手順を踏み、開示をし、それから意見の聴取をするというこの新三十五条で進めていただくということが必要であると思います。
  155. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 まあ労使の間には絶対的な力の格差があるわけで、実質を伴わない、なおざりな協議が行われないように政府は様々な措置を講ずる必要がある、このことを述べておきたいと思います。  次に、発明従業者の立証責任について質問したいと思うんですね。  まず、特許法改正案に対する日弁連の意見書があります。これは大変興味深い重要な指摘があると思うんですけれども、どう書かれているかというと、少し長くなりますけれども、「対価の決定の手続を、使用者等に対し従業者等が一般的に弱い立場にあるにもかかわらず形式的には対等な当事者間での契約や勤務規則等として処理されるのであるから、公平の観点から定められるべき主張・立証責任の分配としては、使用者側にその「合理性」についての主張・立証責任を負担させるのが妥当である。」、こういうのが日弁連の意見として出されております。  ところで、改正案の立法作業で、この見解、こうした見地というのはどこまで反映されているのか、あるいは配慮されているのか、伺っておきたいと思います。
  156. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) 立証責任の問題については審議会等でも議論をしたわけでございますけれども、基本的に、まず訴えを起こして利益のある人がその立証をすると。ですから、通常その従業者の方が対価について不満があって、もっともらってしかるべきというふうな訴えを起こす場合であれば、まずは、規則あるいは契約で決まったものが不合理であるというふうな主張をして、それについての立証を行わなければ五項による算定の数字を求めるというところに行かないわけでございますので、当然その訴えを提起する従業者の方に立証の責任を負っていただくしかないだろうというふうに、それから、それが妥当であると。  ただ、実際の裁判実務になりました場合、そこのところは現行法の三十五条の訴訟の例なんかを見ましても、使用者の側がいろいろ持っているようなデータとかいう、立証能力が高いケースもあるわけでして、そこは訴訟指揮の中で反論を求めるとか、そういう形で、裁判の訴訟指揮の中で妥当な責任の分配というのがなされるということが十分期待できるのではないかと、こういうふうに考えている次第でございます。
  157. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 今、私がお聞きしたのは、裁判の訴訟指揮とかそういうのが実際あると思います、実際これまで行われてきております。  しかし、この法案の中で、ここにある、「使用者側にその「合理性」についての主張・立証責任を負担させるのが妥当である。」と、こういう主張について反映させるとかあるいは配慮するということが行われているのかということについて伺っているわけです。ないんなら、ないと言ってください。
  158. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) 日弁連の御意見として、使用者側に分配をさせるというふうなことにすべきだというふうな御意見があると、かつ、そういう法的な手当てなりをしたのかという点については、それはしていないということでございます。
  159. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 今言われたように、発明従業員自身が立証責任を持つということ、これは大変重いことなんですね。  この対価請求を裁判で争う場合、その場合についてお伺いしたいんですけれども、現行法では、原告である発明従業者がすぐに相当の対価議論に入ることができるわけですね。現状はそうです。改正案では、第三十五条四項で、発明従業者と使用者の間の協議状況、開示の状況意見聴取が不合理であってはならないと規定しています。そして、第五項で、これらが不合理と認められる場合に、初めて相当の対価を争うことができるという段階を踏みます。今、答弁があったわけですね、そういうことで、そういう趣旨だということで。  すなわち、対価請求裁判の原告は発明従業者であるから、原告にとって対価請求の手続一つ増えることになる、そういうことになりますよね。
  160. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) 手続が増えるといいますか、要するに、今回の改正法におきましては、当事者間で自主的に取り決められた対価があれば、その取決めによることが不合理でない限り、その対価を尊重するということが妥当な結論を得る道だというふうな理解の下に、今回、この改正を行おうとしているわけでございまして、したがいまして、訴訟を提起する場合には、そもそもその取決めによることが不合理であるというのを証明をして、そうであるならば、新三十五条の五項で、そこと異なるその対価の請求をすると、こういうことになるわけでございます。  ある意味、それを、言うなれば負担が増えるから妥当でないというふうな考え方もないとは申しませんけれども、ただ、むしろそこはその問題よりも、むしろよく事情に通じた両当事者が自主的に取り決めたものというのを尊重するという形の制度にすることがより妥当な結論を導く道であろうということでございますので、その点は一種やむを得ないことではないかというふうに思っております。
  161. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 答弁は長いんですけれども、要点を得ていないんですよね。  私がお尋ねしたのは、要するに、私のことに答えているんですがね、要するに一つ増えるわけですよ。今までだったら、対価についてすぐ議論入れるわけでしょう。それを今度は不合理性を立証しなきゃいけない。その段階を踏むからまた一つ増える、段階が増えるでしょうと聞いているわけですから。そうですよね。だから、イエスと言っていただけばいいわけです。
  162. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) 増えると、そういうことでございます。
  163. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 はい、分かりました。  その増える際に、要するに、先ほど長官からも少し話があったんですけれども、その不合理性の立証というのは容易だと、易しいんじゃないかという、そういうことを言われるが、本当に易しいんですか。
  164. 迎陽一

    政府参考人迎陽一君) 実際に訴えられる研究者の方というのが、自らがその協議においてどんな経験をしたのかとか、あるいは個別の対価算定においてどんなふうな意見を言って意見聴取が行われたのかと、こういうふうなことを自らの経験を挙げて、こんな点が欠けていたというふうなことを主張、立証するということは、それほど難しいことではないんじゃないかというふうに思っておるわけです。  それで、先ほど申し上げましたように、逆に訴訟の能力の格差に応じて適切な訴訟運用というふうなことが行われましたら、これが要するに一種、非常に高いバリアになるというふうなことではないんではないかというふうに理解しております。
  165. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 今の答弁は、やはり現状を全く御存じない、そういう御答弁ではないかと思うんですね。  原告の発明従業者が自分自身の手続の不合理性、手続が不合理であるということを裁判所で主張、立証するということは、これは大変なことだと言わざるを得ません。対価をめぐる争いの大半がやはり退職後に行われていることを考えますと、実際には原告の体験に基づくことでも、不合理性の証明というのは極めて困難ですよ。みんなそう言っていますよ。だから、例えば基礎資料について企業知財部が握っている、これは現状ですからね。これをどうやって手に入れるのかということが大きな問題になる。そういう資料に大変原告は乏しいわけですよ。私は、関係者から聞いた話では、発明従業者は基礎資料を十分に収集してから対価請求裁判を起こすために退社している、これが実態だと。  そうすると、対価請求裁判でも、裁判所の訴訟指揮で、さっき話がありましたけれども使用者側に資料を出させているという現実があるわけですから、自らそれをやるというのは大変なことだと。このことはやはり特許庁としてもきちっとわきまえていただきたい、そういうふうに思います。  原告にとってハードルが一つ増える、負担が大きくなる。このことは、御答弁がありましたけれども、そう言わざるを得ません。確かに、取決めが不合理であるとの証明責任は、証明されて利益を得る者が証明責任を負担するという民事訴訟法の原則があるわけですね。これは確かなことですよ。第五項に基づいて対価の支払を求める。つまり、裁判所は、相当な対価の支払を求める利益は発明従業者にあるから立証責任を発明従業者が負担する、そう言いたいんだろうと思うんですね。しかし、特許法は、発明従業者という弱者保護規定、つまり片面的強行規定に置いていることを私はやはりきちっと見る必要があると思うんですね。これは、借地借家法、割賦販売法、特定商取引法など皆そうですよ。  私は、特許法発明従業者という弱者保護規定という立法精神に立ち返って、使用者側に立証責任を負わせる何らかの措置を講じる、そういう何らかの措置を講じる、そういうことを考える必要があるんじゃないかと思うんですが、その点は何か考えがあるんですか。
  166. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 先ほど御説明しましたけれども、不合理、こういう場合は不合理になる可能性が高いというような事例集というのを私ども作りまして、これを全国周知をしていきたいと思いますけれども、そういう場合に、そういう不合理なものを排除するという意味の事例集ができますと、それを参考にしてもらって新しい協議が行われていくというふうになりますと、先生の御危惧も少し減ってくるのかなと。元々、こういう新しい制度を作って、新しいルールに従って不合理でない手順で進むということになれば、今のような御懸念も随分減るんではないかというふうに思います。
  167. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 これまでの議論で、発明従業者の裁判での負担ですね、もうこれは決して軽減されていない、かえって負担が大きくなっている、そのことがやはり明らかになったなと思います。  使用者発明従業者が発明補償規程を決める際、使用者側から上限を提示するとか、あるいは発明従業者への配分割合などを提示する、こういうことをあらかじめやること、あるいは仮にそれを発明従業者の意見を聴いてやったとしても、特許法第三十五条の三項の相当の対価を受ける権利という法定の権利に照らして考えた場合、これはやはり不合理だと思いますけれども、その点について御見解を伺っておきます。
  168. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 先ほど来御説明しておりますように、新しい法律では、企業のサイド、経営サイドと発明者との間で議論を尽くすと。その場合に、企業の方により情報量があろうかと思いますから、そういうものも開示しながら議論が行われていくと思います。  そういうものについては、今度それを新しく相当な対価として認めていくということでございますので、それからそれの手続自体、それからそのレベル、水準自体は企業、商品、それから社風、そういうものによって変わってくるかと思いますので、一概に今、内容そのものについて議論するのはちょっと難しいというふうに思います。
  169. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 話が具体的じゃありませんけれども、しかし私は、上限を決めたりあるいは配分割合を決めるとか、そういったことをあらかじめ、仮に協議があったとしても、それを進めるということはやはり問題があるんじゃないかと思います。  先ほど大学の話が出ておりました。国立大学法人の規程など、例えば四〇%というその割合を決めるとする、しかし実際の対価はそれよりも高いものがあるとする、あるいは低いかもしれない。その点で、それは発明者に手厚い保護をしているということでそれは自慢の話になるかもしれませんけれども、しかし私は、実際においてもっと高い評価があり得るわけですから、その点では、これについてもやはり法の趣旨からしてもっと考えるところがあるのではないかというふうに思う私の意見もこの際述べておきたいと思います。  次に、事例集にかかわることなんですけれども、少し具体的にお伺いしたいと思うんですね。  ちょうどお戻りになったところで、坂本大臣に。  五月七日に衆議院の審議で、事例集を整備しまして各中小企業に配慮するという、そういう答弁を伺っておりますけれども中小企業にどういう方法で配慮されるのか、それについてお伺いしておきたいと、具体的にお伺いしておきたいと思います。
  170. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) お答え申し上げます。  今度の事例集というのは、例えば協議を行う方法でございますとか、開示の方法でございますとか、意見の聴取の方法、この法律に書いてあることでございますけれども、こういうものが、いろんな形があります。例えば、協議でいいますと、全員で、先ほどの話のように、全員でインターネットでやるようなケースでありますとか組合があるケースとか、いろんなケースがあります。それぞれについて、ここから先に、これ以上のこういうことをすると不合理になりますよと、そういうことにならないようにするにはこうしたらいいですよというようなものを作っていこうというふうに思っております。  御指摘中小企業のケースでいいますと、今でも三分の一ぐらいの企業職務発明規程そのものを持っていないという現実がございます。したがいまして、もう少し個々の、大企業の場合はそれぞれがそこの手続できちっと進んでいくと期待しますけれども中小企業の場合は、例えばどういう項目は新しい発明規程に入れなきゃいけませんよというような少し具体的なことをはっきり書きまして、それを私ども広報していきたいというふうに思います。
  171. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 それでは、今度は大臣にお伺いしたいと思います。  今、長官から、中小企業の多くは職務発明規程を持たないという話があって、確かにそのとおりなんですね。発明者発明の対価を受け取っていない、啓蒙も非常に大事なわけですけれども、理解ある経営者であっても、原資が限定されているならば、やはりそれが大きなネックになっているという限界も同時にあると思います。  中小企業職務発明助成金制度等を創設して、中小企業技術者の発明意欲を増進する、底上げする、そうしたことがやはり草の根からの真の知財立国のために趣旨に添う、そういう方向ではないかと思いますけれども大臣の見解をお伺いいたします。
  172. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、中小企業に対して、あるいはその会社自体、あるいは従業員というか研究者皆さん方に対して、どうぞいい発明知的財産を作ってください、そしてそれを特許として保護させていただきますよという制度については、今回の改正の中で中小企業に対するコストの優遇ということで措置を取っているところでございます。  今、緒方委員指摘の、中小企業には、いい、何ですか、まず規程そのものがない場合、それから、あっても職務発明研究者側の対価を支払えるかどうか分からない、能力が中小企業の場合には弱いのではないかという御指摘でございますけれども、それはまあ一般論としてはそうだと思いますけれども職務発明というのは、発明して、それが企業として利益を上げたことまでが職務発明のカバーしている部分であって、単に特許取得されましたというだけではこれは何の利益も生まないわけでございますから、そういう意味で、職務発明によって製品化して、製品化といいましょうか、企業化して、いいものができて、そして企業として売上げが伸び、そして得たときにどういう対価を研究者側が得るかという意味で、言葉は大変乱暴な言い方をすれば、企業も、それから研究者側の対価も、ある意味では成功報酬という中での研究者側の対価をどういうふうにするかというルール作りでございますから、極端に言えば、本当にちっちゃな企業が一発当たって、いわゆるホームラン特許というんでしょうか、どおんと大変な売上げに貢献をしたという場合には適切、不合理ではない対価を得るべきだということが法の目的だというふうに理解しております。
  173. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 続いて大臣にお伺いしたいんですが、参考人質疑でもちょっと私も聞いた話なんですけれども特許制度委員会議論があったことですが、特許庁の事務局は、企業発明・考案規程を公表すべきだと、そういう見解を述べている。それに対して産業界は、こうしたものは本来、企業機密で公表すべきではないと、そう反対していると。相当の対価請求権が一種の国民の権利であって、また特に中小企業に多いわけですけれども、まだまだこうした発明・考案規程を持たない中小企業が多い中で、大企業がそういったもの、可能な形で可能な限り公表していくということは、やはり非常に啓蒙的な意味を持ってくるんじゃないかと思うんですね。  ですから、そういう方向が進むことは、日本産業界にとっても、また日本の在り方としてもいいのではないかというふうに考えるわけですけれども大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  174. 今井康夫

    政府参考人今井康夫君) 大臣の御答弁の前に、審議会での議論を御紹介させていただきます。  審議会の報告書におきましては、この新しい法律でできるような新しい制度の合理性を側面から担保するために、使用者などは対価を決定するための基準を公表するように努めることが望ましいというのが審議会の議論でございます。  したがいまして、私ども事務方としては、この特許審議会のお考えを踏まえて今後対応したいというふうに考えております。
  175. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 そういう方向で是非考えていただきたいと思います。  最後にお伺いしたいことがありますが、特許審査迅速化しなければならない深刻な事態があるということで話を伺っております。特許審査迅速化しなければいかなる国家的な損失が発生するのかと。一般的にいろいろ言われておりますけれども、具体的にどういう損失なのか、それを伺っておきたいと思います。
  176. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 一つは、今の状態が、スピード化する前に、とっても後れているという、待機の時間だとか、それからこれからますます増えていくということを、まず取りあえず何年か掛かって御破算といいましょうかゼロまで持っていくと、マイナスからゼロまで持っていくと、これが当面の緊急の重要な課題であると同時に、同時並行的に今、アジルコンペティション、物すごいスピードで競争をやっているわけでありますから、先ほどから多くの委員方々の御指摘と私と同じ意見でありますが、今後、日本はますます知的財産というものを大きな柱として国家を繁栄をさせていかなければならない。そのためには、研究者企業が一体となっていい知的財産を、今度は国民的な経済財として発展をさせていくということが非常に重要である。  もとより我が国は天然資源その他自然資源が少ない国として、国民の暮らしの向上、あるいはそのためには経済の繁栄、あるいは世界的な貢献という観点からも、我が国としてはこういう特許によって知的財産がより生まれやすく、そこから多くの富、財が国民や世界の人々にお届けできるようなためにこの法律の、というか特許迅速化というものが必要であるというふうに考えております。
  177. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 時間ですので、終わります。
  178. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。     ─────────────
  179. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、本田良一君及び泉信也君が委員辞任され、その補欠として岩本司君及び柏村武昭君が選任されました。     ─────────────
  180. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  181. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私は、日本共産党を代表して、特許審査迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  反対理由の第一は、特許法第三十五条の改定は、企業側の利益を優先させ、発明従業者の権利侵害し、抑制する危険性が極めて大きいものになっているからです。  昨年のオリンパス事件最高裁判決を始めとする最近の一連の職務発明に係る特許裁判は、発明従業者に対する正当な評価を示した最初の本格的な判決となっており、画期的なものです。本法案は、企業の経営リスク回避と発明従業者の納得感のバランスを取るとの口実の下、実際は、企業内において経営側に対して弱い立場にある発明従業者の状況を無視し、対価請求権を争う訴訟において、契約、就業規則その他の手続が不合理なものであることを発明従業者側に立証させる新たなハードルを持ち込むものであります。そして、発明従業者の立証負担は、現行法よりも更に重くなります。  これは、発明従事者の正当な評価に光を当て始めた流れを逆行させかねないものであり、容認できません。  また、改正法の遡及適用については、附則の規定が、発明従業者の既存の利益保護の目的で設けられたものであり、その濫用は厳しく戒めるべきです。  我が国国民の発明などの知的資産が、内外の産業の健全な発展、人類の進歩と福祉に貢献するよう、特許制度がその役割を果たす真の改革に向けられるべきであることを表明して、討論を終わります。
  182. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  特許審査迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  183. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、藤原正司君から発言を求められておりますので、これを許します。藤原正司君。
  184. 藤原正司

    ○藤原正司君 私は、ただいま可決されました特許審査迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読します。     特許審査迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 技術開発の活性化及び重複研究の回避等により我が国産業の国際競争力を強化するためには、発明の早期権利化が重要であることにかんがみ、特許審査待ち期間ゼロを目指した中・長期目標を設定するとともに、これらの目標を早期に実現するよう努めること。  二 審査待ち案件を減少させる観点から、特許審査官及び任期付き審査官の増員、外部人材の一層の活用など審査体制の整備に努めるとともに、多くの民間機関が新たな登録機関として参入できるよう、アウトソーシングの拡充に向けた環境整備に努めること。  三 職務発明については、使用者等と従業者等との間で行われる協議など適正な手続を踏まえた職務発明規定が企業において整備されるよう、その促進に努めること。    また、今回の改正の趣旨を関係各方面に周知し、適正な手続を踏まえた職務発明規定が成立している場合にはその内容が十分尊重されるとともに、既存案件については円滑な問題解決が可能となるよう努めること。  四 特許審査迅速化を始め知的財産政策の効果が中小企業に十分もたらされるよう、中小企業人材育成支援の強化に努めるとともに、弁理士活用を図ること。また、職務発明規定の整備に当たっては、中小企業への相談・支援体制を充実すること。    右決議する。  以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  185. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) ただいま藤原君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  186. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) 多数と認めます。よって、藤原君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、中川経済産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。中川経済産業大臣
  187. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。  ありがとうございました。
  188. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  189. 谷川秀善

    委員長谷川秀善君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十分散会