運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2004-03-18 第159回国会 参議院 外交防衛委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年三月十八日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月十六日     辞任         補欠選任      大渕 絹子君     榛葉賀津也君  三月十七日     辞任         補欠選任      荒木 清寛君     千葉 国男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山本 一太君     理 事                 舛添 要一君                 齋藤  勁君                 高野 博師君                 小泉 親司君     委 員                 阿部 正俊君                 荒井 正吾君                 月原 茂皓君                 中島 啓雄君                 矢野 哲朗君                 岩本  司君                 佐藤 道夫君                 榛葉賀津也君                 田村 秀昭君                 若林 秀樹君                 千葉 国男君                 吉岡 吉典君                 大田 昌秀君    国務大臣        外務大臣     川口 順子君        国務大臣        (防衛庁長官)  石破  茂君    副大臣        防衛庁長官   浜田 靖一君        外務大臣    阿部 正俊君    大臣政務官        防衛庁長官政務        官        中島 啓雄君        外務大臣政務官  荒井 正吾君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 信明君    政府参考人        警察庁警備局長  瀬川 勝久君        外務大臣官房審        議官       門司健次郎君        外務省アジア大        洋州局長     薮中三十二君        外務省北米局長  海老原 紳君        外務省中東アフ        リカ局長     堂道 秀明君        財務大臣官房審        議官       加藤 治彦君        国税庁長官官房        審議官      鹿戸 丈夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国政府アメリカ合衆  国政府との間の条約締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 山本一太

    委員長山本一太君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十七日、荒木清寛君が委員辞任され、その補欠として千葉国男君が選任されました。     ─────────────
  3. 山本一太

    委員長山本一太君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の条約締結について承認を求めるの件の審査のため、本日の委員会警察庁警備局長瀬川勝久君、外務大臣官房審議官門司健次郎君、外務省アジア大洋局長薮中三十二君、外務省北米局長海老原紳君、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君、財務大臣官房審議官加藤治彦君及び国税庁長官官房審議官鹿戸丈夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本一太

    委員長山本一太君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山本一太

    委員長山本一太君) 所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 舛添要一

    舛添要一君 おはようございます。自民党の舛添要一です。  まず、外務大臣にお伺いしたいと思いますけれども、この日米租税条約、三十年ぶり改定、私は、非常にこれはメリットがある改正でありますので大賛成でございますけれども、まずこういう改正をするに至った背景が何なのか、それから今回の改正意義について御説明願います。
  7. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 三十年ぶり改定ということでございますので、これができた三十年前、これは一九七二年、昭和四十七年に締結をされたわけですが、当時の日米経済関係を考えてみますと、例えば投資交流ということはほとんど行われていなかった時代であります。七〇年代の初め、石油ショックの直前という時代でして、日本アメリカに対して今持っている相互依存関係は今ほど深まっていなかった時代であるわけです。  したがいまして、そういった点につきまして、投資が例えば、の交流の今のレベルがこの租税条約に反映されているかといえば、そういうことではない、そういった観点から改正を求める声が高まってきているわけです。したがいまして、その新しい条約では日米間の投資交流促進をする、積極的に促進をするということで、この内容を改めております。  それで、具体的にもう少し詳しく申し上げますと、一つ投資所得に対する源泉地国課税の大幅な軽減、そして条約乱用防止のための措置、こういった点が入っておりまして、この考え方については今後我が国がほかの国と租税条約締結交渉を行っていくに際して基本的な方針になるというふうに考えております。  意義としては、これが締結をされることによりまして、日米間で投資、文化、人的交流、これが一層促進をされるということにつながりますし、その結果として我が国においてもビジネス機会が拡大をし、雇用が増え所得が増える、経済活性化をするということにつながるということであると思います。  両方の経済界両国経済界からも、早く結んでほしい、締結をしてほしいということについての強い要望が寄せられております。
  8. 舛添要一

    舛添要一君 今幾つか具体的な例もお挙げいただきましたけれども一つ背景は、例えば特許使用料の推移なんというのを見てみると、大幅な日本にとって赤字であったのが、支払超過であったものが、相当日本知的財産権についてもこれは稼げるようになったということだと思いますけれども、ここのところの背景についても、加藤審議官でも御説明できればお願いします。
  9. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) ただいま先生から御指摘のございました使用料お話でございます。  実は、租税である以上、税収確保ということが非常に大きな要素であります。一方で、その投資交流経済活性化と。従来、先ほど大臣からもお話ありましたように、相互関係がそれほど緊密でなかったのに加えまして、やはり税収、そういう使用料関係もやや日本アメリカではアンバランスが大きかったと。それは逆に言えば、そういう段階使用料相互免税を行うと。これは元々二重課税調整ということで本質的には本来進めるべきものですが、やはり我が国租税債権租税額確保という面では、やはり源泉地国課税を維持することが従来はより租税税収に必要なことであった。しかし、それが、先ほどございましたように急激に改善、先生の御指摘のように、使用料においても日本がかなり使用料収入も増えてきて、そういう基本的なインフラも整ってきた。これで、よりそういう状況を踏まえて一歩踏み出して相互に二重課税を一層調整しようというのが今回の基本的な考え方でございます。
  10. 舛添要一

    舛添要一君 源泉徴収の問題をめぐって今のまま、つまり改正する、ままの現行状況でも一定規模控除の対象になるわけなんで、企業によっては結果的に見れば余り変わらない。しかし、控除のための諸手続をやるための事務的な非常な負担があったわけですから、これがなくなるという点も、結果として金額的に変わらなくても大変この経費の軽減につながると思いますが、この点はどういうように御認識でしょうか。
  11. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 正に御指摘、これはミクロの企業経営者にとってみれば、元々二重課税調整というのは、租税条約のない場合でも外国税額控除制度ということでこれは基本的に行うという原則でございます。ただ、二重、外国税額控除制度自体完全な調整はできません。例えば、日本税金を納めていなければ、アメリカで納めてもそれを最終的に調整する手段がない場合もございます。それから、期間のずれ、これは非常にキャッシュフロー経営が今非常に重視されている時代に、申告の手続のみならず、資金繰りの問題とか、いろんな問題があります。  したがいまして、できればもう一番最初の段階でそういう二重課税が起こらないようにしていく、これが正に各国租税条約で、を目指しているものでございますので、私どもとしても先生の御指摘のとおり、そういった単に税収調整を後からすればいいということではなくて、やはり実際の企業活動経済活動が円滑にいくということのインフラとしてこういう制度が非常に意義があるというふうに考えております。
  12. 舛添要一

    舛添要一君 アメリカ系企業であって、いろいろ支店を、支店というかフランチャイズで日本の支社があると、それもやっぱり本社に対してはパテント料を払っていたわけですから、これは相当軽減されることになるんでしょうか。
  13. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 御指摘のとおり、日米関係だけをとらえますと、今の時点でもまだアメリカに支払う使用料の方が日本アメリカから受け取る使用料よりも多うございますので、実際にはアメリカにとって、今回アメリカ企業にとっての一番大きなメリットはその使用料の問題だと私ども認識しておりますし、はっきり彼らもそういう評価をしております。
  14. 舛添要一

    舛添要一君 そういうメリットがありますから、なるべく早くこれは我々としても承認して、できれば七月一日から実施できるようにと思っています。  そこで、これだけメリットのあるこの租税条約改正というのをアメリカだけとではなくて、同じような条約世界で今四十四か国と締結しております。四十四というのは締結したときの数字で、例えばチェコスロバキアなんて二つに分かれちゃいましたから、現実の国はもう五十五に増えている。そうすると、これ一つ一つ変えていくと大変なメリットがあるなという感じがするんですが、ただ日米関係先ほど特許料の話が出ましたけれども日本アジアという関係になると日米関係が逆転する、つまり特許料で稼ぐのは我が国の方が多くなっちゃいますので、アジアはちょっと待てということになると思いますが、そういう問題を十分認識した上でほかの五十五か国に同じようなイニシアチブを進めていくという計画があるのか。あるとすれば具体的にどういうタイムスケジュールで進めようとしているのか、御説明願いたいと思います。
  15. 門司健次郎

    政府参考人門司健次郎君) 大臣からお話がございましたように、正に今回新しい点を盛り込んだこの日米租税協定、これは今後の条約締結モデルになるということで、現在締結している国との改正あるいは今後新たに締結する国との条約において、この条約に基づいた基本方針で臨んでいきたいと思ってございます。  幾つかの国ともいろんな話はしてございますけれども、今後、具体的にはその国との関係、それから我が国との経済関係、そういったことも踏まえて、どういった国からやっていくかということを検討したいと思っております。
  16. 舛添要一

    舛添要一君 私が先ほど指摘した日米関係と全く逆の関係アジアとの関係についてはあるというこの点について、つまり進めていこうという決意は結構なんですけれども、どういう障害があるのか、特に我が国よりも相手国の方で、いやうちは改正したくないよ、もっと守りたいよという、つまり過去三十年間日本が取ってきたような、ある意味の同じような反応が出てくるんじゃないかというふうに思うんですが、この点いかがでしょう。
  17. 門司健次郎

    政府参考人門司健次郎君) 正に先ほど新条約について説明のありました、特に配当、利子、使用料に対する源泉地課税軽減という点が問題になるのではないかということでございますが、今後、特に我が国アジア諸国等との租税条約をこのような内容のものに改正していく、あるいは新たに結びたいという場合、相手国自国での源泉地国課税軽減され、したがって短期的にはその国の税収に影響があるということを懸念すると。したがって、その点が障害相手が感じるというようなことがございます、あるかもしれません。しかし、投資条約というものはあくまでも二重課税排除を通じて投資交流促進を図るということを目的としております。それによって両国が中長期的に経済活性化を図るというより大きな恩恵というものに浴することができるという、そういうものでございます。  したがって、そういった点も丁寧に説明することによって相手方の理解を得ていくような努力はしていきたいと思っております。
  18. 舛添要一

    舛添要一君 今、FTAを世界各国とも結ぼうということで、この前メキシコとの間で結ばれましたけれども、そういう側面租税側面もある面で密接に関連していますので、細かい配慮ということをやっていただきたいと思います。  それから、やがてこの委員会日米日韓については社会保障について、つまり年金や保険なんかの二重課税の問題解消していこうという条約についても審議する予定でありますけれども、こういう税制だけじゃなくて、あらゆる二重課税的なもの、二重な掛金的なものを変えていくということが新しい時代グローバルエコノミーを実現する道だと思いますので、政府におきましても外務省財務省以外の、今申し上げました社会保障については阿部大臣おられますけれども厚生労働省が非常に大きな意味を持っていますので、ひとつ政府一丸となってこの問題に取り組んでいただきたいと思います。  さて、この租税の問題を話していますと、もう一つ裏側の問題としてタックスヘーブンの問題がございます。租税回避地というんですか、いろんなタックスヘーブンを利用して企業がその恩恵にあずかると。一番日本人の神経を逆なでしたのは新生銀行を買収したリップルウッド、これがオランダの法律を使ってタックスヘーブン租税逃れをやったということでハゲタカファンドなんていう言葉が出てきたりしているわけですけれども、具体的には、今私がリップルウッドオランダの例を出しましたけれども日蘭租税条約改正しようという動きがこれは財務省あると思いますが、このタックスヘーブンの問題、これ外務大臣でも財務省加藤審議官でも構いませんが、まずその一般的な御認識をお伺いして、その次に日蘭租税条約改正問題について御説明願いたいと思います。
  19. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) まず、私ども認識として二重課税排除の問題とそれから租税回避の問題、これはもう全く似て非なるものであって、租税回避の問題に対してはもう厳正に対応していかなきゃいけないと思っております。  実は、それぞれ各国において、先ほど申しましたように、租税条約以前の問題として、租税条約がない場合の外国で支払った税金調整制度が若干違うとか、いろんな違いを利用するということによって租税回避というのがどうしても発生する余地がある、それに対して私どもとしては二重課税防止という目的とともに、今条約においてもそういう租税回避をふさぐようないろいろ手当てをしてく。今回、特に日米条約でいろんな意味源泉地国課税軽減を行いましたので、源泉地国課税軽減を行う反射的な条件としては本国できちっと課税が行われるという条件が必要なわけで、それはもう当然のことですが、逆に本国第三国人、本来条約適用を受けない第三国人でありながら実は条約締約国居住者を装って源泉地国免税メリットを受けるというのが一番我々としては困るということで、今回、それについてはきちっと特典制限条項を行いました。  そういうことと、あと、先ほど申しましたように、若干の本国課税制度の違いをやはり盛り込んで条約にしておくということで、これから、今オランダの方から申入れがございます。これはまだこれからいろいろ議論をするというところでございまして、今確たることは申し上げられませんが、具体的なお話もございましたが、あくまでも各国との間で基本的には二重課税排除というのを大目的にして、その中で個別に、個々の国によってそういう租税回避の原因をそれなりに分析して対応していく、これはもうどこの国を問わず我々としてはその国ごと税制状況を踏まえて対応をしてまいりたいと思っております。  それからもう一つ、いろいろ投資所得の問題につきましては、租税回避先生が今具体的におっしゃったお話は、租税回避の問題というよりはむしろ投資所得本国地課税の問題ともう一つ投資体が正に企業、具体的な、実質的な企業である場合と、それから構成員課税と申しまして、法人というよりは組合的な、透明な集合体で、元に返って本来の投資家のところに課税をいく場合と二つ問題が、そういう形式がありますので、それは今回の議論されている問題も根本の投資家にさかのぼれば課税ができるケースもございます。例えば、日本企業が、ちょっと具体的な名称を挙げていいのかどうか分かりませんが、リップルウッドのような投資組合を経由して投資している場合は日本投資家そのものがまた課税されるわけですから、その辺もきちっと分析をして御議論をしていかなきゃいけないと思っております。  私どもも、そういう意味では先生の御指摘最も重要な点だと思っておりますので、きちっと対応をする、それが条約も、そういうことで考えております。
  20. 舛添要一

    舛添要一君 日蘭オランダとの間の日蘭租税条約については、今審議官おっしゃいましたけれどもオランダ側我が国と同じような問題認識というのは持っておられるわけでしょうか。
  21. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) まだ、本格的な議論に入るまだ手前の段階でございますが、私どもの非公式の事務的なそういう接触の中で、私どもの権利に対しては彼ら自身もその問題意識は共有しているというふうに私ども伺っております。  ただ、実際の交渉にまだ入っておりません。これから具体的に詰めてまいりますので、相互のこれから正確な認識を深め合っていって、結果的にはきちっとしたものにしていきたいと思っております。
  22. 舛添要一

    舛添要一君 経済界の方々と議論をしたりしますと、自由競争の世の中だと。悪い言葉で言うとジャングルの法則と言いますけれども、そうするといろんな条約とか法のカバーするところをうまくくぐり抜けて利益を上げるのは、それは企業家として当然であると。たまたま今私が申し上げました新生銀行リップルウッドの例があって、タックスヘーブンの問題が出てきたと。そうすると、これはまた政府が出てきてこれはけしからぬということでまた取り締まるのかと。そうしたら、また我々はどこか法の抜け穴と言ったら悪いですけれども、またそれはビジネスチャンス見付けますよと。私、今極論でわざと単純化して言っているんですけれども、そういう意見も散見されます。  これに対してはどういう御反論をなさいますか。
  23. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 租税の正に原則、これは公平に適用になると。  それで、タックスプランニングということも実は実際に極めて大きなウエートで行われていることも承知し、ただ、その場合、結局、競争、正にグローバルないろんな競争の中で、競争条件が不公平になると、それがまた税制を活用してそういう不公平な状態を作り出すというのは、これは租税の面からも問題ですし、それから公平な競争という面からも問題です。  ですから、私どもは、法の抜け道を使って競争条件を不平等にする行為というのは、やはり決して、税制面だけじゃなくて、ひとしく正しい経済活動経済競争をするという面ではどうも問題があると思っておりますので、そういう、ただ、逆に言えば、制度抜け道があるということ自体の責任もまた重いわけですから、これは各国でやはり共通の認識、その租税担当者のみならずやはり全体として、税のそういう関係者も含めて、ハーモナイゼーションという議論もございますが、なるべくそういうのをないようにしようということで、OECD等でも議論しております。  これは地道な努力もしていかなきゃいけませんが、基本的な考え方としては、やっぱり、適正な競争条件ということを維持していくためにそういうことを許してはいけないのではないかと思っております。
  24. 舛添要一

    舛添要一君 タックスヘーブンの問題は租税回避ですから、今おっしゃるとおりだと思うんですけれども国内見ていますと、日本国内税制改正論議を見ていますと、それは簡素、公平、中立って言っているけれども中立をどうするんだという。もうたくさん租税特別措置を作って、極めて有効に利く政策手段ですから、だから本来の住宅政策をやらなくて税制によって住宅政策をやるという、ある意味では本末転倒だと思うし、いったん租税特別措置できたらなかなか、既得権の上にあぐらをかいてみんなやめようとしないと。そういう問題が片一方にあるものですから、タックスヘーブンの問題は若干違うんですけれども、どうしてもそういう産業界意見が出てくる。  この前は、竹中大臣でしたか、簡素、公平、中立中立というのはどうなのかということでやっていくと、経済の効率なんかを優先しようということなんで、これはまた国内税制改正論議とも絡めましてまたいろいろ議論をしたいと思います。  そこで、この、こういう日米租税条約改正のような問題を考えたときに、グローバルエコノミー、それからボーダーレス化というようなことが念頭に浮かびますし、もっともっと国境のない世界を作って経済活動を拡大する、投資活動を拡大すると、これは非常に好ましいと思います。やっぱり、障害があって保護主義よりも、それから抜け出す自由な道を選んだ方がいいと私は思います。  そういう中で、地域統合を遂げているEUの例があります。この、今、今日議論しているこの日米租税条約は、元々モデルは御承知のようにOECDモデルでやっていますので、そこにモデルはありますが、マーストリヒト条約通貨まで統合する、そういうところまで行っています。それから、先ほど阿部大臣の名前を出しましたのは厚生省におられたからですけれども、いろんな社会保障について国境のないモデルを作ろうとしている。  そこで、こういう租税条約的なものは、EU域内メンバー国間、例えばドイツ、フランスの間ではどういうふうになっているのか。それがまた一つのこの問題を考える参考にもなるのかなと思いましたので、EU域内についてどなたか知識がおありであれば、御説明願いたいと思います。
  25. 門司健次郎

    政府参考人門司健次郎君) EUにおきましては、物、人、サービス、資本の自由移動を可能とする市場統合通貨統合内容とする経済統合が進展しております。今、先生指摘のとおりでございます。  税制に関しましては、依然として国家主権の根幹にかかわる問題と、そういう認識が強うございまして、税制に関してEUの果たしている役割は、市場統合確保するために必要な限りでの間接税の調和、あるいは自国製品を優遇する差別課税の禁止など、まだ限られたものにとどまっております。  他方、最近、EUは、自らをより競争力のある地域とするために、有害な税の競争の除去などを目指した議論を行ってきております。例えば、法人税を中心とした企業課税についての行動指針の採択、そして域内に存在するグループ会社間での分配利益に対する二重課税の廃止の指令の採択などが既に行われております。  このように、EU各国税制は統合に向かっているというわけではございません。したがって、租税条約にどのような影響があるかについては必ずしも明らかではございませんけれども、最近のEUにおける動きというものは、在欧州日系企業経済活動あるいは我が国経済活動にも非常に大きな影響を与えることになりますので、外務省としても引き続き、今後のEUの取組を注視してまいる所存でございます。
  26. 舛添要一

    舛添要一君 加藤審議官財務省の立場から見て、今門司審議官にかなり詳しく御説明願ったわけですけれども、私はマーストリヒトをやるときに、ずっとヨーロッパだったものですからEUの動き研究者としても見てきたんですけれども、まあ通貨統合までやれるのかなと。理論的に、経済学的に言うとこれはめちゃくちゃなんですけれども、やっぱり政治の意思でやった。軍隊の統合ということもいずれ考えないといけないけれども、これも非常に主権との、国家主権との関係で難しい。例えば消費税、付加価値税の問題なんかは、これは一五%以上とか、それから財政赤字の問題が三%以内、こういうのは決めておきながら守れないよという側面があったりします。しかし、税制もやっぱり主権の範囲内であって、今言ったことが当てはまるんですけれども、ただ、どうでしょうかね。通貨のように政治的決断ということで、相当やれるのかどうなのか。これ財務省の立場として、外から見ててどういう、今の門司審議官の御説明に対してどういう感想を抱かれましたか。一言で結構ですので。
  27. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 大変事務的な立場で、なかなか私どももお答えする能力が必ずしもないわけですが、やはり今までのところ、やっぱり税というものが、先ほどちょっとお話ありましたように国家主権という問題と、それから、まだ各国のそれぞれの立場で若干政策的な差異がある。その政策的な差異を税制によってある程度担保しよう、例えば、利子の源泉徴収問題なんかすったもんだしたのも、やはり金融で、言わばその地域、一種の地方自治的なニュアンスも出てくるかもしれません。ですから、これはなかなか一言で単なる経済インフラだから一緒にというわけにもなかなかいかない。  ただ、そういう中で、先ほど御説明ありましたように、いろんな幾つかの合意をしながら少しずつ統一化、ハーモナイゼーションをやっているという状況、これがいましばらく続いていくんじゃないかなという、私ども、部外者としてはそういう目で見ております。
  28. 舛添要一

    舛添要一君 外務大臣、この租税条約のような、の改正問題のようなことも、実は世界を自由にして繁栄させる、世界経済をもっともっと回復軌道に乗せる。そして、人との交流企業の間の交流、こういうことを進めてボーダーレスな社会を、国際社会を作るために非常に重要でありまして、長期的には安全保障にもつながってくる問題でありますし、日本の国益にも大きく関係していると思いますので、目の前のイラクとか北朝鮮とかございますけれども、これ財務省を含めほかの省庁とも連携を取りながら、ひとつ外務省が司令塔になりまして、是非こういうグローバルエコノミーへの対応ということを頑張っておやりいただきたいと思いますので、最後、その御決意をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  29. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 租税条約にしても、様々な制度の広い意味でのハーモナイゼーション、これはWTOでもやっているわけですし、WIPOでもやっているわけですし、いろんなところでやっているわけですけれども、それはすべて各国経済活性化をし、そして世界全体として繁栄をしていくということにつながっていく重要なステップであると私は思っております。  そういう意味で、外務省が引き続き、その観点からこの問題についてリーダーシップを取って、各省と連携を密にしながら進めていくことは重要であると私は思っております。その取組を行っていきます。
  30. 舛添要一

    舛添要一君 大臣は、通産省で長い経歴がございますので釈迦に説法だったかもしれませんけれども、是非頑張っておやりいただきたいと思います。  質問を終わります。
  31. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 民主党の若林でございます。  私の方から質問させていただきたいと思います。  かなり舛添委員の方からこの条約に関して私が聞きたいことを聞いていただきましたので、だんだん質問する項目も少なくなるわけですが、二番手として基本的なことについても聞きたいと思います。  まず、租税条約、今回私も考えるいい機会だったと思うんですけれども、やっぱり考えれば考えるほど我が国経済・通商総合戦略の私は一環ではないかというふうに思いました。単なる国際課税の問題ではないという意味です。そういう意味ではFTAも、メキシコと大筋合意というようなお話もありましたけれども、やはりもっと大所高所から日本の国益を考えたときにどうすべきなのかということを、やはり一元的に考えリードするやはり部署、組織というものが私は必要なんではないかなというふうに思っております。  このFTAでも、必要なのは一にスピード二にスピードでありまして、省庁間で議論するというのはそれはいいのかもしれません、やっぱりちょっと時間がやっぱり掛かり過ぎですよね。メキシコでも一年やっぱり数か月掛かって、一緒にもうやろうじゃないかと言ってからまだ一年数か月掛かるわけですから。私は、USTRとちょっと違いますが、租税も通商も一体として、我が国はやっぱりこうやっていくんだという部署が必要なんではないかという意味日本版USTR的なものを私は作るべきではないかなというふうに思いますが、その辺について御見解を伺いたいと思います。
  32. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 一元化するか多元的に、多元的にといいますか、今のような形でやるか、これは常にどの政府にとっても非常に悩ましい問題であると思うんですね。  それで、例えば韓国の例を見ましても、今は外交通商部の下に通商関係は一元化されているということですし、それがもっと自由な関係にあったこともあるわけでして、いろいろな紆余曲折、変遷をたどっているという、各国試行錯誤であると思います。  実際面として、日本制度がこれが機能しないような制度であるかというと、私はそうではないと思っています。各省いろいろな権限を持って自分のところについて所管を、所管があるわけですけれども、そういった権限に基づいて、この通商交渉というのは波打ち際の交渉ではありますけれども、それは同時に国内のことにも大きく影響を与えるわけですから、国内についてきちんと把握をし、あるいはその後必要な対策を取れる、そういうような体制を望む国であれば、それは日本のような形になるというふうに思います。  そういうことで、実際日本で今何が起こっているかというと、これは官邸を中心に各省が意見を言い合い、連携をし、そして進めているということであると思います。おっしゃるように、その問題、アプローチのマイナスの点というのは時間が掛かるということであると思います。これはトレードオフ関係にある、その代わり日本は、よく世界から評価をされていることですけれども、いったん決めれば実行のところでは全く問題がない。これは選択肢でどちらをいいかということであるというふうに私は自分の心の中では整理をしています。  それで、実際に今の日本のやり方が非常にベストかどうか、これは実際なかなか問題があり得ると思うんですね。特に、交渉の窓口が多元的になってはいけないということはあると思います。それを今各省が連携をするという体制を官邸を中心に取り、今後更に連携を強めるための動きがいろいろあり得ると思いますけれども、いろいろなやり方をしながらその問題を解決をしていこう、マイナス点を減らしていこうということに今あると思います。  USTRというのは、これは若林委員アメリカにいらっしゃいましたからよく御存じでいらっしゃると思いますけれども交渉の窓口は貿易交渉という意味では一元化されているわけですけれども、実際に貿易に対する権限を全部持っているかというと、そうではないわけですね。これは商務省が持っているということですし、農務省その他関係をしてくるということで、窓口だけの基本的に問題であるというふうに思います。  ですから、そういう形を作るかどうか、その窓口になる人が国内の事情を十分に反映をして交渉ができるかどうか、できなかったときの責任をどうするか、いろんなことを議論していく必要があるんではないかなと思っております。必要なことは、日本の中で連携をきちんとしていくという実態を作っていくことなので、これについては、少なくとも今の制度の中ではそういうことですから、それを一生懸命に取り組んでいくということで今考えているわけです。
  33. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 結局、今のままでいいというお答えではないかなというふうにとらえておりますんで。もちろんトレードオフの関係にあるというのは分かるんですが、さっき言いました、やっぱりスピードなんですよね。時間が掛かる、時間によって失われるコストの方が非常に大きいという認識が私はやっぱり政府にないんじゃないかなと。企業はこの一年間どうやって生き延びてやっぱりやっていくかということを必死にやっぱりやっていきながらも、一方やっぱりスピードが遅いということがありますので、みんなが、各省庁が出したら後はやっぱりリーダーシップで国益次第でばんとやるという部分がやっぱり必要ではないか。そこを外務省に求めるというのは、今の枠組みの中ではちょっとやっぱりきついと思いますので、そういう部署が私はあってもいいんじゃないかなというふうに思います。  ちなみに、卑近な例でいうと、例えばシイタケの問題でセーフガードを発現した、それによっての経済制裁、その影響の方が逆に大きいということをきちっと、例えば全体の利益見たときに、そこについて何かぴしっと言えるというんでしょうか、そういうことも私は必要ではないかなというふうに思いますので、それはアメリカと比較して、ここのいいとこ取りというのはもちろんできないのは分かりますけれども、やっぱりスピードというものをどうやってやっぱり意識して、それを決定プロセスに組み込んでいくかということが私はもっともっとやっぱり必要ではないかなというふうに思います。  二番目に、租税条約改定におきまして、先ほど舛添委員からもあったんですけれども、それぞれの使用料あるいは配当等に伴う課税の差引きというんでしょうかね、具体的には、最終的には税収にどういうふうに影響するかということに対しまして、租税の恐らく日米間では全部テーブルに情報を出して、お互いにこれだったらまあなくした方がいいなという話に多分なっていると思うんで、その辺の具体的なちょっと数字を出していただきたいんですけれども
  34. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 今回の租税条約による税収の影響でございます。正に二重課税排除するということの結果、日本源泉地国とする所得、これは免税になりますので、日本側の減収になりますが、逆にアメリカ源泉地課税が免税になればその分本国である日本税収が増えるということで、これは一方的なというよりは相互関係、影響し合うということでございます。  先生、今御指摘のように、税収についてどういう影響かということにつきましては、この制度改正が結果的にどういう増減収に反映してくるかということについて具体的に計算することはなかなか難しいと思っております。  例えば一つのフェーズとして使用料だけ見れば、今の国際収支の状況からすればアメリカが受取超でございますので、その意味では日本が少し減収になるということは言えると思います。しかし、配当とか利子とかを考えますと、これは逆に今の段階では日本が非常に受取が多いと。しかし、この配当も非常に、企業行動の結果であり、かつ景気等の企業収益の結果ということで、これは非常にフラクチュエートしておりますので。で、私ども実は交渉においてこの問題、それを双方が税収をどの程度意識してこの交渉に臨むかというのはそれぞれ国の立場によってかなり異なってくると思います。  それから、というのは、申しますのは、この租税条約の本来、本質目的はやはり二重課税排除、これは投資交流企業経済活動企業活動の円滑化というのをやはり目的としておりますので、税収を第一に考えて行動すればなるべく源泉地課税を維持しようという考えもある。しかも、それは国際収支の状況によってどっちが得かもあれするわけですけれども外国との間でその問題を正面から議論するということは基本的にはむしろなくて、我が国がどういうスタンスで臨むかというときに影響があると思っております。済みません。
  35. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 それにしてもお互いにある程度数字をつかみながらやっていると思うんで、そういうところをちょっと情報で出してほしいということでありますが。  じゃ、例えば日本において、アメリカ企業日本でのその使用料と配当の税収が幾らあったかと。じゃ、それを教えていただけますか。で、幾らなくなるかと、それが。
  36. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 失礼しました。  使用料、例えば平成十四年の国際収支統計から見ますと、使用料につきましては、アメリカとの関係では七百三十三億円の支払超でございます。したがいまして、この一〇%の分を考えますと七十三億円の我が国の減収になるというふうに考えられます。  ただ、これはあくまでも平成十四年の国際収支統計に基づくものでございますので、これは毎年趨勢的にいろいろ変わっております。十四年度ということで、例えばということで申し上げました。
  37. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 使用料以外で、配当はどうですか、じゃ。
  38. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 失礼しました。大変恐縮です。今、全世界と対米とを間違えまして、恐縮です。  対米は、二千五百億円の支払超でございますので、二百五十億円です。  恐縮でございました。失礼しました。
  39. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 いや、配当です。
  40. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) もう一つ、配当ですね。  直接投資の配当につきましては、逆に、日本の方が四千八百億円、同じ十四年度、十四年の話ですが、四千八百億円の受取超でございます。  ですから、これは、これはちょっと難しいのは、受取超の配当が、日本企業の中で逆にどれだけ法人税を払っているかによって、今度全然税収に跳ね返る分が分からないところがございます。  配当の、純粋の配当金額の受取超が四千八百というのは国際収支統計で分かるんですが、そのうちどれだけが黒字法人日本で最終的に税を払うのかとか、還付になる部分もございますので、税収に計算がこれ落とせないというのが一つどもの悩みでございます。
  41. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 すべて私もそこまでの理解できる範囲ではないので、また資料等あったら、ある概要がつかめればいいと思いますので、いただければ有り難いなというふうに思っております。  それで次に、この日米租税条約が今後の新たなモデルになるというお話がありました。先ほども外務省の方からもお答えなりましたけれども、今四十四か国と条約を結んでいるということですが、それにはやっぱり先進国もあれば途上国もあるということでおきますので、先ほどは、もうすべての国に対して一方的にやっぱり理解を求めていくんだというお話もありますが、一方、これは徴税というものに対して非常に大きな影響を与えるわけですから、一方途上国には指導としていわゆるしっかりした税収確保しろと言いながら、一方投資があれば逆にそれを徴税機能を失わしめるということに対しまして、私は、すべて一方的に理解を求めるということではないんではないか、そこはやっぱりODA等の供与の中でやっぱり微妙に配慮というものも違ってくるんじゃないかというふうに思います。  例えば、ザンビアとか、調べましたら、パキスタン、ベトナム、バングラデシュと、そういう租税条約が行って、いきなりこの日米租税条約をぽんとテーブルに出してやるというのは、やっぱりちょっと私は難しいんじゃないか。その辺についてのお考えがあれば、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。大臣か門司審議官
  42. 門司健次郎

    政府参考人門司健次郎君) 御指摘のとおり、今、日本租税条約関係にある国は五十五の国がございます。欧州もございますけれども、正にまだ開発途上国といった国もございます。  ちなみに、アフリカは南アフリカとザンビアの二か国でございますが、こういった国との間で改定交渉をどのように進めていくかということでございますけれども、正にこれからどういう国と進めるか、あるいは今ある国の中で何を改正するかということにつきましても、やはり経済関係を中心とする我が国との二国間関係相手国との税制、あるいはその租税条約をほかのどんな国と締結しているかといったようなことを総合的に勘案して締結の必要性について考えていきたいと思いますので、確かに、たくさんある、五十五ある国の全部一遍にということはそれは物理的にも無理でございますので、いろんな状況、例えば経済発展が必要な国、それら、それはその国に対して日本として総合的にどういう政策で臨むのかといったことも踏まえて、総合的な観点から検討していくべきものであろうと思っております。
  43. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございます。  その中で、具体的に他国と何らかの条約改定に対して意見交換を行っている国というのはありますでしょうかという質問と、過去に、途上国との経済格差解消に伴ってこういう条約を今回の日米のようなものに変えていったケースというのは過去にありましたでしょうか。
  44. 門司健次郎

    政府参考人門司健次郎君) 現在交渉中の国としては、ニュージーランドがございます。それから、オランダにつきましては、先ほども話にございましたけれども、あくまでも非公式な形で当局間での話合いというのが行われております。  それから、開発途上国との関係でこういった形での改正ということでございますが、これまでのほとんどの条約OECDモデルというものに基づいておるところでございますけれども、今回アメリカとの間で初めてこのような、特に源泉地課税の免税ですとか特典制限条項といったものを取り入れたものでございますから、今後これが新しいモデルになるということで、これはアメリカが第一号ということで、これから先の問題ということでございます。
  45. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございました。  続きまして、この租税条約は最後になろうかなと思いますが、また時間があれば後で戻ってきたいと思いますけれども、第この二十九条に基づいて国内法の改正により発生する問題に対応するために行われる協議というのがあるんではないかなと思います。いずれにせよ、条約は結んだわけですから、早急にそれに合った国内法が、改正が必要であればそれに伴ってやるというのはこれは当たり前の話ですけれども、一方、アメリカという国は条約国内法との関係においては必ずしも上にあるわけではないというときに、もし国内法が整わず条約の趣旨に沿ったものが行われないということに対して日本は、やっぱりもしそうなったら日本はどういう立場で、最終的にはどういうことになるんでしょうか。大臣、じゃなくて……
  46. 山本一太

    委員長山本一太君) えっ、大臣ですか。
  47. 門司健次郎

  48. 山本一太

    委員長山本一太君) じゃ、まず門司審議官
  49. 門司健次郎

    政府参考人門司健次郎君) 今御指摘条約の第二十九条の規定でございます、国内法の改正により発生する問題について協議するということがございますが、三か月以内に協議を行うということになっておりますけれども、しかし、いつまでにということはこの条約については定めがございません。したがって、日米政府は、一方の締約国における法令の改正がこの条約上何らかの問題を生じめさせるのではないかという場合には、その解決の方法について意見が一致するまでずっと交渉を続けるということになると思いますけれども、ただ、条約があるのに国内法で勝手に変えていいかということにつきましては、日米間の間ではその条約というものがある以上その規定を遵守するということが国際法上の義務であり、基本であるということでございます。
  50. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 その関連でいうと、基本的には当然ある意味じゃ立法府が、国内法を改正するという意味での権限は立法府にあるわけですので、そこの確約というのは難しいながらも、米国政府としては一応この条約に基づいて必要なものは改定していきたいという意思表明はきちっと表明されているんでしょうね。一応、その確認だけ。
  51. 門司健次郎

    政府参考人門司健次郎君) まず、この条約改正については別途規定がございます。日米双方で話し合って条約の規定を改正するということはほかの条約と同じように当然にできるものでございます。  この二十九条の規定につきましては、ある一方の国で例えば税制について実質的な改正が行われた場合に、それがこの条約関係でどのように評価されるべきかということについて意見が必ず常に当然に一致するということではないかもしれないという、そういうこともあり得るというので、そういう場合に協議の行うという規定を置いた次第でございます。
  52. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございました。  租税条約についてはちょっとこの辺に終わらさせていただいて、外交問題等にお話を移りさせていただきたいと思います。  まず、スペイン総選挙の影響等について外務大臣と石破長官にお伺いしたいと思います。  今回でのスペインでの同時テロ、そしてその後の総選挙の結果、イラクからの撤退発言、あるいは欧州寄りの政策に回帰するような発言もあるわけであります。そしてまた、それにおける有志の同盟の枠組み、あるいは自衛隊の派遣、国内テロへの影響、対策という様々なことがやっぱり考えられるわけですが、現時点で大臣長官がどういう分析をされているのか、どういう影響がこれから起こるだろうと想定しているのか、お伺いしたいと思います。当たり前ですけれども、スペインの状況がすぐ我が国へ影響を及ぼすものではないというのはもう分かって承知で伺っていますので、詳細な分析はこれからだという話がないように、取りあえず現時点において私はこう思うというのを言っていただいて、それで今日の発言で言質を取って後で云々ということはしませんので、そういうことを前提にお話をいただければ有り難いなと思います。
  53. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 選挙の後を受けまして、サパテロ、新しい政権ができるわけですけれども、彼が言っているのは、イラクについて言うと、六月三十日までに現状に変更がなければ、友好国及びすべての政治勢力に連絡を取った上でイラクにいるスペイン派遣部隊は帰国するであろうということを言っているわけですね。  それで、今のイラクで政権が六月の三十日、主権が六月三十日をもってイラク人に渡るということになっていまして、これはアメリカを含む国際社会もイラク人も、この点については全く意見の違いがないと思います。したがって、現実問題として、これがどのように行われるか、それがどれぐらい円滑に行われるかということにこのスペインの今後の行動というのも懸かっているんだろうというのがまず第一点です。  それから、同時に、したがいまして今国際社会としてやらなければいけないことというのは、イラクで政権を移すということがスムーズにどのように行われるか、それをどのように支援することができるかということ、これが一番大きな日本も取り組まなければいけない課題であるというふうに思っています。  それから二番目に、新しいサパテロ書記長は、テロの対策、これについては最、最というのが付いたかちょっと今はっきり覚えていませんが、重要な課題であるということを言っている、最も重要な課題の一つとして位置付けているというふうに私は認識をしています。これが具体的にどのような政策になるのかということを注視をしていきたいと思っています。  テロということを考えたときに、イラクを今このまま放置をしていくというようなことが仮にあったとしたらば、それは世界じゅうのテロについての状況の悪化をもたらすということはこれは目に見えているわけですから、それも含めてスペインの政権、新しい政権がどういう対応をするかということで、これは恐らく今政権をいろいろ考え、政策をいろいろ考えているということであると思いますから、この状況を見たいというふうに思います。  欧州、EUの国も含めて、このテロ対策の重要性については一致をしているわけでして、フランスのような国も主権が移ればこれはイラクに対してより積極的な行動を取るということも言っているわけですし、ドイツのような国は既に警察という意味でイラクに対する支援も行っているということでありますから、実際、イラクから全く手を離してしまうということは恐らくあり得ないだろうと私は思っているということであります。  それから、スペインの軍隊が仮に帰国をしたとして、数からいえば、これは千三百人ぐらいでありますから、イラクにいるその軍隊の約一%であって、重要な、それほど大きなことでは、数の上からいえば問題ではないだろうというふうに思います。この千三百人を埋め合わせるということができない話ではない。  ただ、委員も御示唆なさっていらっしゃるように、スペインはポーランドと一緒になって地域の治安に努力をしている国でありますから、しかも今までイラクの復興マドリッド会議をスペインで開いたということからも分かるように、今までイラクの復興には治安面あるいは資金面両方から相当な大きな貢献をしてきた、リードをしてきた国であるわけです。もしこの国が、これは今後どのようなことを本当に実際にやっていくかということに依存をしますから、はっきりしたことは言えませんけれども、この国が何らかの形で結果的にはイラクから離れるということになれば、それはほかの国に対して何らかの発想上の影響を与え、十分に与え得るというふうに私は思います。  ただ、これは国際社会が一致をしていることだと思いますけれども、イラクあるいはテロに対して、テロに対して負けた、敗退をしたということをやってはいけないという意識も十分に、特にヨーロッパの国は持っているわけです。したがいまして、そういうふうに思われるような行動というのは取らないだろうというふうに私は思っていますし、日本も含め、ほかの国も取るべきではない。仮にスペインがどのような行動を取るということが何らか大きなことがあったとしても、そういうことをやるべきではない。  ですから、基本的なところにおいて大きな、大変に大きな問題を今後後に引きずっていくということには私はならないと思っております。
  54. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 基本的に外務大臣と同じ認識でありますが、よく我々が考えなきゃいかぬのは、法と民主主義によって国家が運営をされておる。そこにおいて、どのようなことがどのようにして決せられるのかということについては、本当に注意を払わねばならないことだと思っております。  我々のイラク派遣についていろんな御議論がありました。イラク特措法を定め、基本計画を定め、実施要項を定め、そして実施の措置について国会の御承認を賜って今出しておるわけであります。我が国我が国として、民主主義のプロセスにのっとり、法の手続に従ってやっておるわけでありまして、それはスペインにおいても同様なのだろうと思っています。  スペインでどのような形で、これ私どもと、国と同じようなスキームでやっているとは思いませんけれども、どのように推移をしていくのか。そして、今回のスペインの選挙の結果が何ゆえあのような結果になったのか。これはもう私どもはとやかく申し上げる立場にありませんが、例えばマドリッドであのようなことが起こった。それをめぐって、だれがやったのかということについて国民が疑念を持ったということであって、イラク派遣がストレートに反対という世論が出たのかどうか。それも結局、選挙においてどのように情報を開示し、正確にかつ迅速に主権者たる国民に向かって情報を開示するかということは極めて重要なことだと思っております。  今委員が御指摘になりましたように、また外務大臣も言及されましたように、有志連合ですから、それぞれの国が参加するということに大きな意味があるのでありまして、スペインが仮に抜けるということがあれば、影響なしとはしないと私は思います。  しかしながら、私ども日本の国は民主主義のプロセスにのっとって派遣をしておるわけであり、これはなぜ必要なのか。テロとの戦いであり、イラク国民のためであり、そのことに関してスペインの状況が影響を与えるというものだとは考えておりません。
  55. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございました。  単なる数の問題だけじゃなくて、やっぱり質的に影響というのはやっぱり大きいだろうと。やっぱり今後非常に注意深く我が国としてもきちっと把握しておく必要があるんではないかなと思います。  例えば、イタリア、ある意味では親米路線を取ったイタリアも、昨日テレビでちょっと見ていたんですが、世論調査やりますと、ナシリアでテロ事件がありましたよね。あのときに反対が、撤退すべきだみたいな反対が四五%。しかし、今それが今回のスペイン等々の影響も受け、やっぱり六七ぐらいにやっぱり上がってきているという状況ですから、やっぱりテロに屈しないと言いつつも、一方では様々な部分、要素があると思うので、やっぱりいろんな影響が出始めているんではないかなというふうに思いますので、私の立場でもこれしか言えませんけれども、しっかりとした情報分析、そして我が国対応というものがやっぱり必要ではないかなというふうに思います。  石破長官、もう私の質問はこれまでですので、御退席いただいて結構でございます。  続きまして、残り、余りないな、済みません、十二分。ちょっとイラクでの日本人外交官襲撃に関してお伺いしたいなというふうに思っております。  舛添議員からもいろいろ様々な角度から質問していただいて、被弾車両につきましては、一か月、四月上旬には鑑定結果が出るというお話もありましたので、それまでに、そこで一挙に聞くんじゃなくて、少し私自身の調査において疑問に感じているところがありますので、それについて幾らか、幾つかお伺いしたいなというふうに思います。  まず、被弾車両なんですが、いつイラク警察の手に渡り、そしてそれが米軍に渡り、それに、日本大使館に来たのかということについて、ちょっと具体的に日にちをお伺いしたいんですが。
  56. 堂道秀明

    政府参考人堂道秀明君) お答え申し上げます。  この被害車両につきましては、昨年の十一月の二十九日でございますが、同日の夕刻以降、米軍が地元警察より回収の上、保管しておりまして、その後、十二月の六日、バグダッドに移送され、日本大使館の管理下に置かれました。
  57. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ということは、一回はイラク警察に行っているわけですね。
  58. 堂道秀明

    政府参考人堂道秀明君) はい、そのとおりです。
  59. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 その日のうちにもう米軍に渡って、それで十二月六日まで米軍が保管されて、六日の日に大使館に来たということですね。
  60. 堂道秀明

    政府参考人堂道秀明君) そのとおりでございます。
  61. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 そういう意味で、十二月六日からかなり日にちがやっぱりたちながら大使館にずっと置いてあったということが言えるわけですから、私が二月五日に多分質問したと思いますが、その間やはり二か月ぐらい何もしないで放置されていたんではないかという見方もできるわけであります。  私は、確かにイラクの大使館の体制から見れば非常にやっぱり厳しいと思うのは非常に理解できるんですけれども、これは外務省の問題じゃなくて日本政府総体としてこの真相解明に取り組まれなきゃいけないという、一体的な取組が全然感じられない。  で、ずっと二か月間もあそこに放置してあったということ自体が私はちょっとやっぱり問題ではないかなというふうに思いますが、その上で、私はやっぱり、例えば警察庁がなぜ持ってこれないんだったらすぐにでも行って調査しなかったのか、その辺についてお伺いをしたいと思います。
  62. 瀬川勝久

    政府参考人瀬川勝久君) 車の関係につきまして、なぜ現地へ行って調べなかったのかというお尋ねかと思いますけれども、車両の鑑定ということは、今現在警視庁において実施をしておるわけでございますが、かなり精緻な鑑定を要する部分も多々ございます。その検証あるいは捜査を徹底するというためには、私どもとしては、これは日本国内において十分な体制、それから装備資機材というものをもって行うべきであるというふうに考えたところでございます。
  63. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 余り答えになっていないと思うんですが、行かなかったのはそういう装備とかいろいろあって、持っていって調べるよりはこっちへ戻した方がいいということではないかなと思いますが、その間警察庁としては、ずっとこの車があそこに放置されているということに対して、証拠能力も含めて平気だと思っていらしたんですか。
  64. 瀬川勝久

    政府参考人瀬川勝久君) 私どもとしましては、本件事件全体について申し上げますと、これはイラクで発生した事件でございますので、これは一般的には発生したその国において捜査を行うというのが原則だろうと思っております。しかし、同時にこの問題というのは、委員の御指摘のとおりでございまして、極めて我が国としても重大な問題であり、もちろん我が国警察としても極めて重大な事件であるというふうに考えておりまして、そういう意味で真相究明に可能な限り努めてまいりたいというふうに当初から考えたところでございます。  それで、当該車両につきましては、私どもとしましては外務省当局に、これは車両の検証なり鑑定なりということが事案の真相究明に非常に大きな役割を果たすであろうということを当初から思っておりましたので、できるだけ早期に我が国に搬送していただいてしっかり検証等を実施をしたいということは申し上げてまいりました。そしてまた、大使館において保管をしているという状況が続く中で、その保管につきまして、何といいますかその現状を、現状保存といいますか、その車両が大使館に来たときの状態をそのまま保存していただくようにいろいろお願いもしてまいってきたところでございます。
  65. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 お二人の御意見を伺っていますと、警察庁は警察庁で早く戻してほしい、一方ではやっぱり大使館としての事情がありということが、ある意味ではやっぱり縦割り組織の弊害というんでしょうか、やっぱり政府一体としてこれは本当にやるんだ、いつまでにやるんだという形の中で、もっとやっぱりスケジュールを計画立ててやっていくという姿がやっぱり見えないんですよね。だから、本当に真相解明やる気あるのかというふうにやっぱり映るんではないかなというふうに思います。  次の質問なんですが、被弾車両の写真で公開されているのは三枚でありまして、委員会での私の質問に対しまして全部で十一枚あるという話がありました。なぜ三枚しか出せないのかという質問に対しまして、これは捜査上の影響があるという話で出せないんだということがありました。じゃ、何ゆえに、何で三枚が出せたのか、なぜ三枚が捜査に影響しないのかということについてちょっとお伺いしたいというふうに思います。  つまり、あの三枚というのはかなりのことを物語っているんですね。なぜこれが影響しなくて残りの八枚が影響あるということが言えるのか、その辺についてちょっとお伺いをしたいと思います。
  66. 堂道秀明

    政府参考人堂道秀明君) 先般公表いたしました三枚の写真でございますけれども、これは事件の重大性とか国民の皆様の関心の高さということにもかんがみまして、国民の皆様の御理解を得るために必要かつ十分なものとして、警察当局とも御相談の上、捜査に支障がない範囲ということで公表することにいたしたものであります。残り八枚の被害車両の写真につきましては、公表したものとは違う角度、距離、場所から撮影されたものでございます。  この公表に当たりましては、先ほど申しましたとおり、必要かつ十分ということでございます。公表に当たりましては、例えばその御家族、御遺族の御意向についても配慮すべき点というのもあったと思います。そういうことで写真の公開については差し控えたわけでございますが、これについては今後、被害車両の検証結果などをも踏まえまして、総合的に整理した上で可能な範囲で公表に努めていくというふうに考えたいと思っております。
  67. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 じゃ、瀬川局長にお伺いしますけれども、あの三枚は捜査に影響ないとお考えという判断でよろしいんでしょうか。
  68. 瀬川勝久

    政府参考人瀬川勝久君) 捜査中の事件に関する情報の公開、公表というのは、これは非常に難しい問題があるんだろうというふうに思います。その事案にもよるだろうと思いますし、ケース・バイ・ケースだろうというふうに思いますが、現在捜査中の事案でありますので、捜査当局の立場としては、これはしっかりとした捜査を進めて、公表に本当に問題がないという状況が見られた段階でなければこれ公表ができない。普通の事件であれば、最終的に公判というものがございますので、公判廷が開会されるまではこれは、捜査上の秘密というのは法的にもこれ規定されているものだというふうに思います。  ただ、今回の事案につきましては、こういった特殊な状況でもあり、また非常に重大な事案であるということで、ただいま外務省から御答弁ありましたとおり、捜査上の支障の問題と、それからこういった事案の重大性と、それから関係者の御意向なりというものを十分勘案した上で可能な範囲で公表したということだろうというふうに思います。それがその三枚ということだったろうと思います。
  69. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございます。  続きまして、銃撃に遭った際にその個々人を特定するIDがもうなかったというお話が出ているんですけれども、パスポート等がもうなかったと、でも一方ではもう日本人だというふうに断定して発表されている段階が途中でありました。なぜなのかなというふうに思っていて、あえて思ったのは、ナンバープレートを外していたということで言いますと、ナンバープレートはひょっとして中にあったんではないか。中にあったからその車両番号を見ればそれが日本大使館のものであるという登録があってということがあったんではないかと推定するんですが、そのナンバープレートは車の中に搭載してあったんでしょうか。
  70. 堂道秀明

    政府参考人堂道秀明君) この被害車両のナンバープレートにつきましては、これは安全対策上ということでございますけれども、車両より外しておりました。このナンバープレートについては、その車両の中で保管していたというふうに考えております。  なお、先生指摘のなぜその身元確認にそういう時間が掛かったのかと、ナンバープレートよりすぐに発見できたのではないかということでないかと思いますけれども、この点については、事件当初、起きた時点でこの車両ナンバープレートについてはにわかにその発見ができていなかったと。車両の中にはあったということでございますけれども、現場で見えないところで、目立たないところで保管していたということだと思います。
  71. 山本一太

    委員長山本一太君) 時間ですので簡潔にお願いします。
  72. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 はい、分かりました。  いずれにしろナンバープレートは中にあって、それは持っていかれたわけじゃないということだというふうに理解しております。  もう時間がないので、是非とも、被弾車両につきましては、鑑定終了後、これは外務省の判断と思いますけれども、是非ともマスメディア等一般にもやっぱり公開する義務があるんじゃないかなというふうに思いますので、時間がありませんけれども、その辺だけお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  73. 高野博師

    ○高野博師君 最初に、租税条約改正について、二、三、基本的なことをお伺いしたいと思います。    〔委員長退席、理事舛添要一君着席〕  同僚議員から御質問がありましたので簡単にしたいと思いますが、この条約改正によって、例えば知的財産権使用料の非課税日米対等に適用すると、収入減については日本は約九百億円、これに対してアメリカは約六百億円にとどまると、そういう試算もなされておりますが、なかなかさっきの話でも数字は出ないということでありますが、こういう差が出るということはアメリカにとって有利な条約改正になるわけですが、なぜ日本にとって不利と思われるこの条約改正をするんでしょうか。
  74. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 今御指摘の数字は、先ほども私もお答えさせていただきました平成十四年の国際収支統計の特許等使用料の対米関係の数字を基にその一〇%を計算されたものと認識しております。したがって、事実関係として、その十四年の暦年ベースで、そういうことは事実でございます。私ども、先ほども申しましたが、この特許使用料以外の配当、それから利子、様々な投資収益ございますので、そういうもの全体で税収減がどうなるかについては、なかなか今回の改正でどうなるかということを計算することは難しいということを申し上げました。  是非御理解いただきたいのは、今回の一番の租税条約目的は、税収確保ではなくて、むしろ相互投資交流活性化、それがやはり国益として今必要なことだというまず大きな、二重課税排除する、ミクロの経済活動を重視するということでございます。したがいまして、一時的な税収減が発生するおそれも、これは経済状況とか企業活動によってあり得る場合もございます。  しかし、そういうことをむしろ乗り越えて、今回の租税条約改定我が国の国際国家としての地位にふさわしい租税条約改定をしたいというのが我々の願いでございます。
  75. 高野博師

    ○高野博師君 これは報道によるんですが、これをモデルとしてこれからアジア諸国との租税条約を結んでいく、そういう中で知的財産立国を目指すんだと、日本は、そういう報道もありますが、これについてはどうでしょうか。
  76. 舛添要一

    ○理事(舛添要一君) どなた答えられますか。
  77. 高野博師

    ○高野博師君 どなたでも結構です。
  78. 川口順子

    国務大臣川口順子君) どうでしょうかという意味は……
  79. 高野博師

    ○高野博師君 そういうことを目指しているのかどうかという意味です。
  80. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 知的財産立国ということをよく使われていますけれども、これは知的所有権、知的財産権というのは将来の成長の糧を生み出すという意味で大変に重要であり、我が国としても力を入れておりまして、その保護にはいろいろな働き掛けも、そうなっていない国に対して行っているわけです。これは、知的財産権を生み出すためにそれなりの国内の資源、お金も人も使っているわけですから、それがよその国によって安易に侵されるということになりますと、競争上も問題でありますし、我が国として経済活性化に資するということにはならないということです。    〔理事舛添要一君退席、委員長着席〕  具体的に何をやっているかということでありますけれども、例えば中国との間では首脳間の共同宣言で働き掛けをしていますし、ASEANとの間でも、この間の首脳国間の会談、首脳会談で、その宣言にもそういうことが書いてあるわけです。中国は今制度的にはWTO加盟の過程を経てきちんとかなり整ってきていると思いますけれども、実際は運用面ではかなり問題があると我々は認識をしているわけです。それで、それに対してはいろいろな支援をしていかなければいけないというふうに思っています。  いずれにしても、我が国が知的財産立国であるためには、国内でそういう、それを育てるための施策も必要でありますし、近隣の諸国においてあるいは世界の他の国においてそれが尊重されるような仕組みが存在をしているということが大事ですので、その働き掛けをやっていく必要が引き続きあると思っています。
  81. 高野博師

    ○高野博師君 二重課税防止するという意味では、双方の投資促進される、あるいは企業活動が円滑化するということですが、そうすると、この租税条約とFTAとの関係ということについてちょっとお伺いしたいんですが、これ、FTAを結ぶ国との関係でいいますと、租税条約とはどういう位置付けになるんでしょうか。
  82. 川口順子

    国務大臣川口順子君) FTA、EPA、租税条約は、先ほど来審議官がおっしゃっていらっしゃるように課税権の調整であるわけですね。それで、それはいかなるシステムにのっとって、考え方にのっとって調整をするかということであります。  FTAないしEPA、これはいろいろなことを内容として含み得ると思いますけれども、例えばWTOのTRIPsの協定にあるような内容を含むということもあり得るわけでございます。その場合には、知的所有権についてそれをどういう考え方で、要するに内容ですね、知的所有権そのものの保護の仕方の内容、それを規定していく、あるいはそれをどうやって運用上実現をしていくかということについても規定をしている部分ということもあり得るかもしれませんが、やっていくということで、それを規定していくと。要するに、TRIPs協定のFTA版、二国間版と思っていただければいいんじゃないかと思います。
  83. 高野博師

    ○高野博師君 韓国とかマレーシアとかあるいはタイ等々、これからFTAの交渉をする中で、例えば租税条約を最初に結んじゃった方がFTAがやりやすくなるのか、あるいはFTAの中で租税条約ということを交渉していくのか、あるいはFTAの後にやった方がいいのか、これはどういう関係にあるんでしょうか。あるいは、どういう戦略を取った方がFTAの促進には役に立つのか。
  84. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 直接的には関係がないと申し上げてもいいんだと思います。それぞれ二国間の経済関係をより透明にしていくというか分かりやすくしていく、円滑にしていく、そういう意味では同じ方向に資する部分というのはあると思います。同じ目的に資する、経済活性化という意味で同じ方向を向いている、ベクトルは同じであるという言い方はできると思いますけれども、どちらが先行しなければいけないとか、そういう意味で直接的な関係はそれほどないんではないかと思います。
  85. 高野博師

    ○高野博師君 そういうことなんですか。  多分、メキシコとFTAをこれから、合意が一応できたということですから、メキシコはNAFTAがありますので、そういう関係からいうと、アメリカとこの租税条約が結ばれて投資促進される、企業活動が円滑化するということであると、日本アメリカのFTAというのは、これはどういうふうにとらえたらいいんでしょうか。結ぶという方向に行った方がいいのかどうか、これはどうでしょうか。  直接的な、FTAと関係ないということではありますが、しかし実態的に投資促進するということでありますと、人と物と金、これが自由に動く、これがFTAであるとすれば、将来的な日本アメリカ関係もFTAを結んだ方が日本はもっと、メキシコもできるわけですから、カナダ、アメリカにもっと入りやすくなるんではないかと思うんですが、ここはどうでしょうか。
  86. 川口順子

    国務大臣川口順子君) FTAというものを我々はWTO、マルチの体制の補完であるというふうに位置付けているわけです。それで、FTAだけを結んでいきますと、例えばFTAの恩恵に浴さない小さな国、世界の貿易から取り残される国ということが出てくるということであります。  ですから、WTOを進めながら、マルチを進めながらFTAをやっていく、特に経済関係が非常に強い国、あるいはメキシコのように日本が貿易関係において劣後に既に置かれてしまった国に対してはこれをやっていくという考え方アジアの国、メキシコ等とやっているわけですけれども日本アメリカというのは世界で一位、二位の大きな経済大国であって、その二つのGNPを合わせると半分近くに、四六%強に行くわけです。それから、貿易量からいっても世界で一位、二位の大きな国であって、この二つがFTAを結び、その関係、貿易関係を更に膨らませていくということは、それは一つ考え方ではありますけれども、やはり世界全体のほかの国が、一位、二位の大きな国としてどのように貿易の恩恵を受けていくかということをやはり常に考えていかなければいけない立場にあると私は思います。  アメリカとのFTAについては今まで相当に長い間いろいろな形でいろいろなところで議論をされてきている話であると私は思いますけれども、政策として今アメリカとの間でFTAを結ぶかどうかということについては今の時点ではっきりこうであるという、どちらにせよ決まった考え方は存在を、今はまだないわけでありますし、今後、中長期に世界の自由貿易体制がどうなっていくかということを見ながら考えていくべき課題であるというふうに思っています。  日米のFTAがマルチの自由貿易の自由化、この進展に何らかの形でマイナスの影響を与えるようなことがあってはこれはいけないと私は思っております。
  87. 高野博師

    ○高野博師君 ありがとうございました。  それでは、ちょっとロシアのプーチン大統領の再選について前回質問をし残したものですからちょっとお伺いしたいと思います。  プーチン大統領が再選されて、日本は、小泉総理も歓迎するというような発言をされていますが、そもそも選挙のやり方も含めて、例えばマスコミへの候補者のアクセス、これもかなり制限されていたとか、自分の宣伝だけは相当やったとか、投票率を上げるためにもいろんなことをやりまして、議会もかなり翼賛的になってきていると、大統領の直接的な批判というのはもうタブー化されつつあると、言論の自由も制限されつつある、こういう批判がかなりありまして、独裁体制を固めつつあるのかなというような感じもするわけです。そういう批判も若干ある。  ロシアの政治文化というのは、どちらかというと独裁の歴史というか、そういうツァーによる政治的なそういう文化があるのかなという気もするんですが、ロシアの国旗というのは双頭のワシというか二つの頭のあるワシなんですが、一つはヨーロッパに向いていると、もう一つアジアに向いていると。この両方をにらみながら、領土拡大というのは本質的にロシアには持っているんではないかと私は思っているんですね。  プーチン大統領が当選してから、外交的には帝国的野心は示さないと、わざわざこういうことも言っている。それから、ラブロフ外相が、北方領土問題についてはロシア憲法を遵守しなければならないと、要するにロシアの領土保全と不可侵、こういう憲法規定に言及しているということもありまして、どうも日本政府の方は北方領土問題についてはやりやすくなるんではないかという感じを持っているのかと思うんですが、むしろ私は北方領土の返還とは逆の方向に行くんじゃないかという懸念を持っておりまして、これについては、これから北方領土返還についてはどういう方針で進めようとしているのか。かつては潜在的主権なんというやり方も使ってこの交渉をやりましたけれども、非常に私は難しくなるんではないかと思っているんですが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  88. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 選挙によりましてプーチン大統領が非常な高い支持を得て大統領に再選をされたということの結果、プーチン大統領の基盤、国内における基盤というのは強化をされたというふうに思っています。  それで、プーチン大統領が国内の改革いろいろ今進めていらっしゃいますけれども、そういったことも含め指導力を発揮をしていくことができる土壌があるというふうに思います。  それで、北方領土の問題でありますけれども、これはどういう戦略でやるつもりかということについて、正に今交渉中のことでございますから、今まで申し上げてきたように、日ロ行動宣言、これにのっとってやっていくということが基本的な考え方である。そして、四島の帰属の問題を、そこにも書いてありますが、帰属の問題を解決して平和条約締結をするということを言っているわけでございます。それが方針であります。  それで、ラブロフ新外務大臣の御発言、私は、昨日お電話で、就任おめでとうございますということで短い電話の会談をいたしましたけれども、今後G8の外務大臣の会合の場で会いましょう、それからまた、今年の前半にもロシアに行きたいと考えておりますのでその日程を調整していきましょうというお話をいたしました。先方からも、そういうことで調整をしていきましょうということでございました。  ラブロフ外務大臣が北方領土について憲法との関係で何か御発言をされたということについては、これは報道で我々は承知をしています。ということで、発言の真意が必ずしもはっきりしていないということですし、領土問題については交渉中なのでこれについてコメントをすることは避けたいと思いますが、プーチン大統領は、これは私が一昨年の十月に伺ったときも、それから今年に入ってからも、この領土問題というのが二国間にはある、これを早期に解決をすることが重要だということをおっしゃっていらっしゃるわけです。  私が行きましたときには、これは過去の、我々の過去の世代が作った問題であるけれども、我々の世代で解決をしていくことが大事だということを私におっしゃられました。それから、その後には、首脳会談の折だったと思いますけれども、領土問題を沼にうずめるつもりはないということをおっしゃられた。プーチン大統領自身は、この問題を自分の手で解決をしていきたいという強い意識あるいは意思をお持ちでいらっしゃると私は思っております。  ということで、高い支持率を得、基盤を強化したプーチン大統領と小泉総理との間でこの問題を是非解決していただくべく、私とラブロフ新外務大臣との間でも努力をしていきたいというふうに思っています。
  89. 高野博師

    ○高野博師君 分かりました。四島返還ということを主張して、しっかりやっていただきたいと思います。  終わります。
  90. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日本共産党の吉岡です。  最初に、経済のグローバル化というのは、これは避けられない流れだということ、そしてまた、二重課税回避というのは国際ルールになっている問題で、それ自体は合理性を持ったものだというのが私ども認識ですので、それを前提として幾つか質問させていただきます。  税制というのは国民から見て非常に関心の深い問題でありまして、いろいろな論議が今度の問題を、この条約をめぐっても行われております。そして、専門家に我々電話をしますと、いろいろ質問を逆に受けたり、こういうことは是非ただしたりしてほしいといういろいろな注文も受けてきました。  それで、税制の難しさ、とりわけ国際的な課税をどうするかという問題は国民に、一般には自分の体験を通じて分かりにくい問題のために、新聞報道等の読み方もいろいろな読み方が生まれて、それで国と国との課税調整の問題と企業の税負担の増減とが混同して取られたりして、この協定というのも一体何のための協定なのかという根本をめぐっていろいろな議論もあれば、我々、問い合わせも受けるわけです。  そういう点、やっぱり国民によく分かる説明が必要だと思いますので、新聞報道等も念頭に置きながらお伺いさせていただきます。  まず、この租税協定、これは、条約の題名にもあるように二重課税回避するための条約だということ、これは私、さっき言いましたように当然のことだと思いますけれども、したがって、その調整によって、日米協定でいえばアメリカ側に、あるいは日本側に、どちらにプラスが大かマイナスが大かという二国間の問題は起こるとしても、またその結果が個々の企業にも一定の影響を与えることはあるとしても、この条約自体は個別企業税制を低くしようとかあるいは高くしようとかいうことを目的とするものではないという説明を私は財務省から受けてまいりましたし、また、私、割と長い間大蔵委員会でいたこともありますので、その当時もそういうふうに考えてきたんです。  ところが、その新聞報道は、企業にとって減税、減税という大きい見出しの報道があるために、この条約は結局は企業に減税をもたらそうとするものだという、だから企業も歓迎しているんだという印象を与えていることは間違いないんですね。  もちろん、この新しい協定によって、先ほど来議論がありますように、税務上の手続とかあるいは資金繰り等による恩恵はこれはあること、これはまあお認めになっていることですけれども、しかし、減税ということを目的としたものではないという説明と、それから今の減税だという報道と、具体的には後からもう一度聞きますけれども、この税はそういう意味でいえば日米両国企業の減税を図ろうとする取決めという要素も持っているのかどうなのか、この点だけ、結論だけで結構ですから、まず。
  91. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 正に、税制面から申しますと二重課税調整目的でございまして、個々の企業の税負担を軽減する目的ではございません。
  92. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 ところが、新聞報道を見ますと、例えばこれは朝日ですが、日米租税条約改定によって「「減税効果」企業は歓迎」と、「配当など免税」、「負担減、数百億円に?」と、こういう大きな見出しが、これ今朝日ですけれども、大体新聞、そういうふうな調子の見出しでこの協定が紹介された結果、今言いました資金繰りとか税務の実務による恩恵以外に、数百億円にも上る企業に対する減税を内容とするものだという印象を与え、したがって、これは二重課税調整という問題でなくて企業のための減税取決めじゃないかということが私らが問い掛けられるわけですね。私があれこれ言っても、新聞がこういう報道をするからにはそれなりの根拠があるだろうと、特に数百億円の減税だというのは経団連の担当者の言葉を引用して報道されているからなおさらそういう疑問が出てくるということです。企業に減税になれば国の税収は数百億円減ることになるわけですからね。だから、それは国民の間から見て、二重課税調整だといって数百億円も企業に減税して国の税収が減るようなこと、いいか悪いかということが議論にこれなってくるわけなんですね。企業はいいかもしれませんけれども、国民的な関心から見ればどうかと。  そういうわけで、私、具体的に考えてみるのには、その二重課税部分が数百億円も残っていて、それで今度の条約改正排除されるということであるか、あるいは、その二重課税はもうそんなに残っていないけれども、何か新しい減税が数百億円も生まれるのか、それとも、そんな多額の減税はない、新聞が正確に伝えていないということなのか、そのどちらかだろうと思うんですけれども、ちょっと正確化してください。
  93. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 新聞の報道について、私どもコメントする立場にはございませんが、事実関係として、まず、例えば具体的に数字がどうだということで、これは減収とかそういうことではございませんが、二〇〇二年、平成十四年にアメリカから受け取ったいわゆる直接投資的な配当の金額が七千四百億、七千五百億ほどございました。これが、これまでの現行の制度ですと現地で一〇%源泉徴収をされている、それが免税になるということになると。しかしその分、結局日本にいる受け取る側の所得が増えるわけですから、それで日本の方で課税をするという、こういう関係に変わるわけですから、実際のところ、その個別のアメリカで払っている税金が減るということでの減税という意味ですとそれはそうですけれども、その分は所得計算して、トータルでまた日本調整しますので、その部分はあくまでも二重課税の問題だと。  ただ、非常に特殊なケースで、本来的に、全体の所得がないにもかかわらずアメリカで支払っていると。基本的に普通は外税控除調整をするわけですけれども、外税控除日本税金を払っていない場合はできない、いろんな制約もございます。そういう場合で、一部の場合に、企業が従来納めて、納める必要のない税金を納めていたのが納めなくて済むという現象は発生すると思います。しかしそれは、本来的には、法人課税所得がない者が納めていて、アメリカの方で源泉課税をされて取りっぱなしになっていたというケースであって、それはやはり本来、正しい、所得に応じて正しい税金を納めていただくという税制からすれば、やはり是正すべきものだと私ども考えております。
  94. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この数百億円というのがこれは日米で全部合わせての減税だというふうに、この新聞記事だれも読むと思いますよ。そのアメリカで払う部分が減るだけで、日本では逆に増えるというような読み方はしないわけで、だから、僕は、一体なぜこういうのが出るかがよく分からないんですよ。私も大蔵に大分長くいましたから、幾らかこういうのを当時勉強させられましたからね。だから、どういうわけだか分からない。  経団連へ私の部屋から行って、担当者、談話発表した人に聞いてもらいました。そうしたら、いや、実はこういうふうな減税になること、我々もよく分からないんだと。財務省から一千億ぐらいの減税効果があるから賛成してくれ言われたんだと。一千億円というと少し大げさ過ぎるので、ちょっとさじ加減をして数百億円ということで語ったら、それが新聞にかぎ付きで出ておりますと、こういう説明なんですね。ですから、私は、これはとにかく企業にとって大変利益があるということを事実を大げさにまでして大宣伝してこの成立を図ったのかなという気がするぐらいの感じがして、私の頭の中にある理屈では通らないから聞いたわけですけれども。  それで、続いて、この、私、今、どっちの言い分が正しいかなんということ、ここで、時間もありませんから解明しようと思いませんけれども、いずれにせよ似たような記事が出たんですから、だから僕、だれかがそういう説明をやったと思いますよ。数百億円というのは朝日だけじゃなくて書いていますから。だから、そういうことはやっぱり良くないと思いますが。  でも、同じ記事読んでみますと、税の知識いかんによってはどのようにでも取れる。例えば日本の親会社が米国の子会社から配当を受けた場合、新条約では持ち株比率が五〇%超なら米国の課税が免税となる、これは事実ですよね。その後に書いてあることが誤解のもとになるんですね。「米国に進出した日本企業は八割以上が免税の恩恵を受ける。」と、こうなっているんです。それ、どういうふうにとらえているか言うたら、進出企業はもう税金は一切払わないんだと、もう法人税も掛からなければ、いかなる税金もなくなっちゃって、正にすばらしい恩恵を受けると、そういうことでいいんですかということが来るんですね。  私が言ったって、私、税の専門家でないから信用されないから、だから財務省、その法人税も含めて八割が免税になるという条約取決めなのかどうなのか説明してください。
  95. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 本当に正しい認識を是非私どももしていただくように努力しなきゃいけないと思っておりますが、あくまでも日本が、日本からアメリカに進出している企業の現地でのまず課税は、米国の居住者として完全に普通の向こうの法人税がまず掛かるわけで、今この租税条約議論しておりますのは、その後の話。つまり、その後、配当で日本に送られてくる、その日本居住者が受け取るときに、さらにアメリカで、従来は、従来というか今の制度では一〇%源泉徴収をしておるのを、これをやめると、アメリカではやめると。その代わり、日本に送られてきた段階で全部合算して日本法人所得税なり法人税で払っていただくという制度でございますので、まずもって、日本アメリカに進出した企業そのもののアメリカにおける課税は全く今回の租税条約とは、には関係ございませんので、向こうの、従来どおり向こうで、向こうの課税が掛かると。  逆に、日本に進出しているアメリカ企業、子会社も全部、まずは日本法人税をきちっとお支払いいただいて、その後、本国投資家に配当で行くときにその配当部分について一〇%、従来の課税を免税にすると。その代わり、逆にアメリカの方でその方、アメリカ居住者ですから課税をしていただくと。そういう整理をするのが今回の条約でございます。
  96. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それが大量の新聞でそうでない印象を残した状況があって、私が言っただけじゃなかなか、そうだ、分かったということにならない状況さえある。  それで、税制というのは、さっき最初に言いましたように、国民にとって非常に関心の強い問題。とりわけ公平であるかどうかということと、今度は国と国とが、にかかわる問題ですから、日本にとってプラスになるかマイナスになるか。同時に、日本国内でも、企業は減税でいいかもしれないけれども、国の税収はがたがたに減っちゃったらこれはまたこれで困るという、そういういろいろな問題を念頭に置きながら税制見ていくわけですけれども、ところが、このマスコミの報道によって人々は、今度大減税、だから企業が大歓迎しているんだという、企業が、最初言いましたように、税務手続とかあるいは資金繰りでの恩恵があるという問題と別個の税そのものの大減税条約だというような問題ね。僕はこれは、政府が国民に分からせてきていない、怠慢だと思うんですね。  僕は時間があれば一杯、新聞報道で受けている質問、聞きたい点があるんですけれども、二十分しかないそうですから、僕それ全部やるわけにいかないんですが。  もう一つ、この二重課税回避の方法をめぐっては、これはまた日本国内でも、また国際的にもいろいろな議論がありますね。いろいろな議論によっていろいろな問題も出てくると思います。源泉地国課税原則かあるいは居住地国課税原則か、これはなかなか僕は難しい問題だと思いますね。源泉地国の側からいえば、いろいろなサービスもしてそこで大いに利益を上げている、これに課税するのが当たり前じゃないかという理屈も成り立ってくる。しかし、居住地国課税を取る立場からいえば、自分の国の大企業が海外へ行ってもうけているのに、それ、居住地国も掛けるのは当たり前だという理屈も成り立つ。  僕もこれなかなか難しい問題だと思いますが、国際的な趨勢、日本の立場、これはどうなっているのかお伺いします。
  97. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) 正に源泉地国課税権と居住地国の課税権が併存するという状態が、正に国際社会の実際、正に国家主権というのは、その両者がどうしても併存しております。したがって二重課税というのが起きる、それをどう調整するかということでいろいろ議論をしておりますので、どっちが正しいとかどっちが原則だということはなかなか言えないと思います。それで、ただ、その中で、所得に応じて、それで調整の方式として基本的には、条約のない場合は外国税額控除をするとか、とにかく二重課税排除していかないと企業のそういう国際的な活動が困難であるということは事実で、それはまずそれぞれの国がいろいろな方式で努力するのと、もう一つは、条約で、今申し上げましたように、相互に合意の上課税権を調整していくと。これはもう二国間なり、の条約で、正に合意の上でやるわけです。  その場合も、実はその所得の種類によって考えて、を変えるわけでございまして、今回の租税条約でも、免税になるのは使用料とか直接投資の配当とか。やっぱり利子とか間接的な証券投資は一部源泉地国課税を残しております。したがって、それは所得の種類に応じて二国間のそういう状況ども総合的に勘案してそれぞれ、それぞれが適切な条約を結んでいく。  ただ、今、我が国の今回の方針は、やはり国際国家日本経済的な今の立場からいえば、やはりなるべく相互投資しやすい、投資所得相互免税にしていくことが望ましいということで今回の日米租税条約が今後の基本的な考え方になるのではないか。これは我が国の今の考え方でございます。  しかし、条約はあくまでも双方の合意によって今後とも各国と結ばれていくということになろうかと思います。
  98. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 最初の方の議論にもありましたけれども、現に主権国家があって、その主権国家同士の課税をめぐる調整ということですから、だとすると、主権国家である限りは主権国家としての国民感情というものもあるわけでね。  そこで、幾つかの問題では、源泉地課税ゼロ、課税しないという問題がある。課税ゼロというのは、これは課税権の放棄じゃないかと、これはどうも納得できないという意見もあるんですね。だから、僕はこれについてもどのようにお考えかお伺いしたいんです。  というのは、この条約モデル条約として今後アジア諸国等との条約も進めたいということが表明がありました。その場合に、日米関係での租税協定が、やっぱりこれは双方とも発達した経済国ですね、が途上国との間にこれをモデル条約として相手国課税権を放棄を迫るみたいな形もなりかねない。私は、結果としてどういう条約が結ばられるかは別として、経済……
  99. 山本一太

    委員長山本一太君) ほぼ時間が来ておりますので、短く、簡潔にお願いします。
  100. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 はい。  経済大国日本がこれをモデルとして進めるんだということを宣言していくということは、相手の国に対してやっぱりちょっと正しくない態度じゃないかという気がしますので、そういう点、お答え願います。
  101. 山本一太

    委員長山本一太君) 短く、簡潔にお願いします。
  102. 加藤治彦

    政府参考人加藤治彦君) まず一点、課税権の放棄という表現が適切かどうかですが、私ども、あくまでもその二国間で合意の上、それぞれ譲歩して課税権を譲り合うという考え方でございますので、それはお互いの合意に基づく、お互いの関係だと思っております。  それから、二点目でございます。あくまでも私ども我が国基本方針でありますので、それは相手国がどうお考えになるか、それはお互いに合意の上、結果的には結ばれていくと思います。
  103. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 終わります。
  104. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 社民党の大田でございます。  簡単な質問をさせていただきます。  まず最初に、外務省にお伺いしますけれども日米租税条約は一九七二年に発効して三十二年目を迎えるわけですが、先ほど来お話を伺っておりますと、非常にメリットがあるという趣旨のお話でございましたけれども、だとすれば、どうして今日まで改定しなかったのか、例えば十年前とか十五年前になぜやらなかったのか、なぜ今日なのかということについて簡潔に御説明をお願いします。
  105. 門司健次郎

    政府参考人門司健次郎君) 日米租税条約につきましては、確かに一九七二年という三十年以上も前の条約でございます。その後、先ほど大臣からも話がございましたが、日米経済関係が大きく進展した、ますます密接になったということを踏まえまして、これを新しい状況に合わせようという声が起こってきたわけでございます。  したがいまして、この条約につきましては、最近、たしか四年前でしたけれども交渉を始めまして、そして昨年の十一月に署名、そして直ちに一番早い段階でこの国会に御提出させていただいたということになっております。
  106. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 先ほど同僚議員のこの条約改定意義についての御質問に対して外務大臣は、投資、文化、人的交流が一層促進されるという趣旨の御答弁をなさいましたけれども投資はともかくとして、文化、人的交流が一層促進されるというのは、その中身はどういうことでしょうか。
  107. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 投資が行われるということは単にお金が動くだけではなくて、人も動く、技術も動く、その技術が繁栄をしているところのその考え方、広い意味で文化、そういったものが動く、そういうことで申し上げている。それから、もちろんその文化自体を、例えば漫画ですとか映画ですとか、それを対象とする産業の投資というのもあると思います。
  108. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 これは通告しておりませんけれども、どなたかお分かりでしたら教えていただきたいんですが、現在アメリカ企業日本にどれくらい入っていますか。また、日本企業アメリカにどれくらい入っていますか。その実態を御存じでしたら教えてください。
  109. 海老原紳

    政府参考人海老原紳君) 企業の数ということだとちょっと今手元に資料はございませんけれども、対日投資という、直接投資ということであれば、最新の統計によりますと、二〇〇二年末の米国の対日投資、これはストックでございますが、三百五十七億ドルでございます。反対に、日本の対米直接投資、これは残高、これも残高でございますが、同じく二〇〇二年末の段階で千三百六十二億ドルでございます。
  110. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 財務省にお願いいたします。  先ほども関連した質問がございましたけれども日本外国税制の違いによって、いわゆる租税条約のすき間を利用してどこの国にも税を納めない外国企業があると聞いております。我が国において、このような外資系企業の不適切と思われる課税逃れの実情についてどう把握しておられるのか、またどのような対策をもし事実だとすればこれに取っておられるか、教えてください。
  111. 鹿戸丈夫

    政府参考人鹿戸丈夫君) 企業活動が非常に近年国際化をしてまいりまして、いわゆる軽課税国と言われていますタックスヘーブンとか、そういったところを利用して国際取引を行い、事実上租税回避を行っているというようなケースが増加してくることが十分懸念をされているところでございまして、私ども、必ずしも全部把握をできるような立場でございませんけれども日本に限らず、ほかの例えばアメリカやヨーロッパの国においてもそういった国際的な租税回避が増大することを懸念するという、そういう認識でかなり一致をしているところでございます。  私ども国税庁といたしましては、とりわけ国際取引を頻繁に行っておられる法人につきまして、その実態を把握するということから調査を的確にやるように努めておりますし、また、そういった国際課税国内課税とはやはりかなり違いますものですから、専門家をかなりチームを作って調査を行うようなそういう体制面の整備も行っております。  それから同時に、やはり海外での活動についてなかなか国内で情報が取れませんものですから、いろんなルートを通じて海外からの情報を入手する、そういった努力も併せて行っているところでございます。  また、その入手した情報をいかに分析して調査等に役立てるか、これも大変重要なポイントでございますので、主要な国税局等にそういった言わば国際的な情報を分析するような専門のセクションを置いて活用に努めているというようなところで対応しているところでございます。
  112. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 小泉総理とブッシュ大統領の日米経済パートナーシップに基づいて設置された日米投資イニシアチブの協議が昨年三月から開始されていると聞いています。また、小泉総理は、昨年一月の国会における施政方針演説で、今後五年間で米国の対日直接投資残高の倍増を目指すと表明されました。  そこで、今回のこの改定もその一つだと思いますが、米国の対日投資促進策について具体的にどのような施策を取っておられるのか、簡潔に御説明ください。また、今後アメリカ投資が急激に増えるというふうなことも考えられるわけですが、その見通しについてお聞かせください。
  113. 海老原紳

    政府参考人海老原紳君) 今委員から御紹介のありました小泉総理とブッシュ大統領により立ち上げられました成長のための日米経済パートナーシップの下に日米投資イニシアチブというフォーラムが設置をされております。このフォーラムは、日米両国における外国直接投資のための環境を整備していくことを目的としておりまして、両国における外国直接投資のための環境改善を意図する法令、政策その他の措置を取って扱っております。  具体的に申しますと、特にアメリカの対日投資促進策といたしましては、例えば国際的な株式の交換を促進するための制度の整備、これは既に法令の整備が行われて発表されておりますけれども、そのようなこと、あるいは医療サービスへの株式会社の参入の問題、これにつきましても現在改正法案を検討中でございます。その他、外国の直接投資に対する一般の国民の認識の改善についてどういうことが行われるかというようなことについても議論を深めてまいっております。  このような措置によりまして、具体的な見通しということになると難しいわけでございますけれども、米国の対日投資促進されるということを期待しております。
  114. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 ありがとうございました。終わります。
  115. 山本一太

    委員長山本一太君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  116. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日本共産党を代表して、日米租税協定に反対の討論を行います。  今日、経済の国際化が進行する下で、様々な条約国内法制で多国籍企業利益を図る措置が取られており、この租税条約もその一つです。とはいっても、二重課税回避し、排除することは既に国際的ルールとなっており、合理性を持つものであり、二重課税回避そのものに反対するものではありません。  反対する第一の理由は、審議の入口にあって、条約をめぐる疑問などを解明するに至らないまま賛否を問うことは無理だという点にあります。  三十年ぶり条約改定ということで、本条約企業の間でもまた学者の間でも非常に大きな関心が持たれており、国民の間からも様々の疑問が寄せられております。そしてまた、二重課税回避の方法をめぐっては、国際的にも様々、意見が分かれている問題であり、これら国民が十分理解ができるだけの論議を尽くして国会で賛否が問われることが最も望ましいことだと思います。  しかし、国会審議は、衆議院三時間、参議院二時間にしかすぎません。そもそも政府は本条約を国会に提出したのは二月二十七日、成立を急ぐなら、なぜもっと余裕を持って提出しないのか。国会は成立させればいいと考えているとしか思えません。  かかる状況で賛成することはできません。  反対の第二の理由は、条約内容にかかわる問題です。  同課税の在り方として、源泉地国課税原則とするか居住地課税原則とするかという問題があります。日米政府は居住地国課税を取っています。  今回の改定で、特許、商標、著作権の使用料、親会社と子会社の配当や利子収入の一部について源泉地課税ゼロとしています。日本に進出している企業が幾ら配当金を送っても日本課税しない。これらの利益日本のサービスを受けて上げたものであり、一定の課税を行うのは当然であり、税額ゼロは課税権の放棄だとの強い説もあります。その他出された議論についても論議し、疑問の解明を、国民的理解を図ることも十分ないまま、内容上も賛成ができません。  第三に、本条約締結する、この租税協定を今後アジア諸国との間で結ぼうとする条約モデル条約とするという問題です。  発達した資本主義国同士の租税協定がそのまま発展途上国との租税協定に適切なものとは思えません。とりわけ、特許、商標、使用料、子会社の配当や利子課税免税は発展途上国には不利で、日本の一方的利益になります。発展途上国の立場も十分考慮し、相手の国情に合った協定を結ぶべきであり、この条約モデル条約として発展途上国と下交渉などを行うということには強く反対します。  以上です。
  117. 山本一太

    委員長山本一太君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の条約締結について承認を求めるの件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  118. 山本一太

    委員長山本一太君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 山本一太

    委員長山本一太君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三分散会