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2004-06-11 第159回国会 参議院 イラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年六月十一日(金曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  六月十日     辞任         補欠選任      吉川 春子君     井上 哲士君  六月十一日     辞任         補欠選任      福島啓史郎君     愛知 治郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         清水 達雄君     理 事                 田村 公平君                 常田 享詳君                 舛添 要一君                 齋藤  勁君                 若林 秀樹君                 高野 博師君                 小泉 親司君     委 員                 愛知 治郎君                 有村 治子君                 大野つや子君                 小泉 顕雄君                 後藤 博子君                 田浦  直君                 中原  爽君                 西銘順志郎君                 野上浩太郎君                 藤野 公孝君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 森田 次夫君                 山崎  力君                 池口 修次君                 岩本  司君                 神本美恵子君                 佐藤 道夫君                 榛葉賀津也君                 高橋 千秋君             ツルネン マルテイ君                 辻  泰弘君                 森 ゆうこ君                 遠山 清彦君                 森本 晃司君                 山本  保君                 井上 哲士君                 吉岡 吉典君                 大田 昌秀君                 山本 正和君    衆議院議員        修正案提出者   増原 義剛君    国務大臣        外務大臣     川口 順子君        厚生労働大臣   坂口  力君        経済産業大臣   中川 昭一君        国務大臣        (防衛庁長官)  石破  茂君        国務大臣     井上 喜一君    副大臣        外務大臣    阿部 正俊君    大臣政務官        防衛庁長官政務        官        中島 啓雄君        外務大臣政務官  荒井 正吾君    事務局側        常任委員会専門        員        鴫谷  潤君        常任委員会専門        員        田中 信明君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       増田 好平君        内閣官房内閣審        議官       大石 利雄君        内閣官房内閣参        事官       猪俣 弘司君        防衛庁防衛参事        官        大井  篤君        防衛庁防衛局長  飯原 一樹君        外務大臣官房審        議官       鈴木 庸一君        外務大臣官房参        事官       長嶺 安政君        外務大臣官房参        事官       鈴木 敏郎君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部ジュネー        ブ条約本部長   荒木喜代志君        外務省アジア大        洋州局長     薮中三十二君        外務省条約局長  林  景一君        厚生労働大臣官        房審議官     鶴田 康則君        厚生労働省医政        局長       岩尾總一郎君        厚生労働省健康        局長       田中 慶司君        海上保安庁長官  深谷 憲一君    参考人        京都大学大学院        人間環境学研        究科教授     西井 正弘君        松阪大学政策学        部教授      浜谷 英博君        国際連合大学客        員教授        北海道大学大学        院国際広報メデ        ィア研究科客員        教授       山中あき子君        弁護士        自由法曹団平和        ・有事法対策本        部副本部長    田中  隆君     ─────────────   本日の会議に付した案件武力攻撃事態等における国民保護のための措  置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国軍隊  の行動に伴い我が国実施する措置に関する法  律案内閣提出衆議院送付) ○武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用  に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○国際人道法の重大な違反行為処罰に関する法  律案内閣提出衆議院送付) ○武力攻撃事態における外国軍用品等海上輸送  の規制に関する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する  法律案内閣提出衆議院送付) ○自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間に  おける後方支援、物品又は役務の相互の提供に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間  の協定を改正する協定締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約  の国際的な武力紛争犠牲者保護に関する追  加議定書議定書Ⅰ)の締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約  の非国際的な武力紛争犠牲者保護に関する  追加議定書議定書Ⅱ)の締結について承認を  求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ただいまからイラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十日、吉川春子君が委員辞任され、その補欠として井上哲士君が選任されました。  また、本日、福島啓史郎君が委員辞任され、その補欠として愛知治郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 武力攻撃事態等における国民保護のための措置に関する法律案外九案件を一括して議題といたします。  これより、十案件審査のため、参考人として京都大学大学院人間環境学研究科教授西井正弘君、松阪大学政策学部教授浜谷英博君、国際連合大学客員教授北海道大学大学院国際広報メディア研究科客員教授山中あき子君、弁護士自由法曹団平和有事法対策本部本部長田中隆君、以上四名の方々の御出席をいただき、御意見を拝聴し、質疑を行います。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  参考人方々から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  本日の議事の進め方でございますが、参考人方々からお一人十五分以内で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず西井参考人からお願いをいたします。西井参考人
  4. 西井正弘

    参考人西井正弘君) ただいま紹介していただきました京都大学西井正弘でございます。  本日は、四点につきまして参考人としての意見を述べさせていただきたいと思います。  第一点は、大規模テロ攻撃のような緊急対処事態について国際法からのとらえ方に関して意見を申し上げます。第二点は、去る五月二十日、緊急事態基本法(仮称)について、自由民主党、民主党、公明党の三党の合意を見ました点についての意見でございます。第三点は、武力攻撃事態における外国軍用品等海上運送規制に関する法律案、以下海上輸送規制法案と略します、についての意見でございます。第四点は、武力攻撃事態などの国家緊急事態が発生した場合の人権の制約に関する問題です。  まず第一に、大規模テロ攻撃に対する国際法からのとらえ方について意見を申し上げます。  御承知のように、二〇〇一年九月十一日の同時多発テロは、国家以外の行為者アクター国家に対して仕掛けた大規模テロでありました。国家による軍事力行使がこれに対して許されるかという点について議論がございますが、以下のように私の意見を申し上げます。  国連憲章規定された武力による威嚇及び武力行使禁止原則は確立されており、憲章規定された例外的な場合、すなわち第五十一条の自衛権行使と第四十二条による軍事的強制措置を除いては武力行使は許されないとする見解がございます。その見解によれば、戦争が違法化された現代においては、それら以外の武力行使国際法違反という結論になります。  しかし、国家の実際の行動を見ますと、一九七六年に、ハイジャックされた航空機ウガンダに着陸し、それに対してイスラエル特殊部隊が強行着陸し人質を救出したエンテベ空港事件では、イスラエルは、ウガンダ政府外国人保護しなかったこと及び自衛権根拠としてその軍事行動正当化しました。その他のテロ事件でも、テロ武力で対抗する国家の側は、自衛権行使であるとして正当化を図ることが多いと言えます。  九・一一事件後採択された安保理決議の前文において、個別的又は集団的自衛の固有の権利を、行使対象を明記することなく再確認しております。国際の平和及び安全に対する脅威を構成する大規模テロを実行した集団に対して、被害国武力行使を行っても国際法に違反しないとする事例が認められたと私は認識しております。  このような武力行使について、国際法的な根拠自衛権概念の拡張に置くのか、あるいは復仇に置くのかの立論は、いずれも理論的には可能ですが、国家以外のアクターに対する武力行使国際社会においてあり得ることは認識しておく必要があるかと思います。  次に、第二の意見として、三党合意に基づき次期通常国会で審議されることになる緊急事態基本法についての考えを述べたいと思います。  合意された骨子によれば、法案対象とする国家緊急事態には、一、我が国に対する外部からの武力攻撃、二、テロリストによる大規模攻撃、三、大規模自然災害等、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態とされています。  衆議院におきます武力攻撃事態等における国民保護のための措置に関する法律案、以下国民保護法案と略します、の修正により、武力攻撃事態武力攻撃予測事態に加えて、大規模テロ行為のような緊急対処事態に関する規定武力攻撃事態対処法に設けようと修正された点は、法的な整合性の点から考えましても適切であると考えます。  すなわち、広い意味での国家緊急事態に対する基本法を来年整備され、その下に武力攻撃事態武力攻撃予測事態、さらに緊急対処事態対処するための基本方針対策本部事態対処するための法制整備実施することを規定した武力攻撃事態対処法災害対策基本法とが対処方針の作成、必要な法的整備枠組みといったレベル法律として存在することになります。さらに、事態に対する対処のための保護措置実施といった第三レベル法律として、現在、当院が審議されておられます国民保護法案を始めとする七法案が全体的な整合性を保ちつつ法制度として位置付けられることになると考えます。  アメリカ合衆国では、ロースクールでの授業科目安全保障法、ナショナル・セキュリティー・ローといった学問領域が存在しておりますが、我が国でも国家国民安全保障法制整備されることになれば、法治主義原則から申しましても好ましい状態になるものと考えております。  第三に問題があると思いますのは、憲法海上輸送規制法案との関係です。  現行憲法の第九条第二項、「国の交戦権は、これを認めない。」との規定から、外国軍用品等に対する停船検査などを武力攻撃事態の発生に対する自衛権行使として実施すると考えられている点であります。衆議院特別委員会におきまして、石破防衛庁長官が本年四月十四日、二十二日にそのように答弁されておられます。  国際法上、他国による武力攻撃に対して自衛権の発動は当然認められますが、海上輸送規制法案の適用上、第三国との間で摩擦を生じる可能性があるように思います。海上輸送規制法案が適用される事態は、国際法上の通説に従いますと、平時国際法に一元化された現代においてはいわゆる戦時国際法の範疇に入る事態ではないとしている点であります。  法案では、臨検、拿捕という用語を用いず、停船検査、第十六条、積荷検査、第二十二条、回航措置、二十七条から三十四条、などの規定を置き、外国軍用品審判所における審判手続、三十九条から六十条、などを規定しております。  戦時国際法戦争法において認められてきた海上捕獲マリタイムキャプチャーといかなる点が異なるのかに関心が向くところでございます。海上捕獲とは、武力紛争時に敵国海上交通を妨害し、その戦争遂行能力を奪うための手段であり、交戦国軍艦軍用機公海上又は交戦国領海敵国中立国船舶航空機やそれらの積荷を拿捕し没収することを言います。  確かに、本法案規定されている内容は幾つかの点において海上封鎖と異なります、海上捕獲とは異なっております。第一に、停船検査実施する区域実施区域、第四条二項、が我が国領海我が国周辺公海に限定され、武力紛争相手国領海を含まない点が挙げられます。第二に、実施主体海上自衛隊部隊、第四条一項、であって、航空機に対する措置を含まない点があります。  しかし、海上捕獲手続は、臨検、捜索、引致及び捕獲審検所での審検から構成されるのであって、停船命令、第十七条、船上検査実施、第十八条、船舶書類検査、第二十条、積荷検査、第二十二条、回航措置外国軍用品審検所での審検手続国際法上は海上捕獲の一形態とみなされるでありましょう。海上捕獲であるか否かの認識の相違は、憲法規定にある交戦権行使に該当するか否かの結論が先にあって導き出された苦肉の策であるように思われます。  最後に、第四として、国民保護法案第五条において基本的人権の尊重がうたわれていることは極めて重要であり、かつ好ましいことと思います。しかし、次期通常国会緊急事態基本法が審議される際に留意いただきたい点がございます。我が国条約当事国となっております政治的及び市民的権利に関する国際規約、以下自由権規約と略します、の第四条との関連について配慮が必要だと考えます。  自由権規約第四条は、第一項で、「国民の生存を脅かす公の緊急事態の場合においてその緊急事態の存在が公式に宣言されているときは、この規約締約国は、事態緊急性が真に必要とする限度において、この規約に基づく義務に違反する措置をとることができる。」と規定しております。国家緊急事態のうち、いかなる事態人権制限をもたらすのか、あらかじめ研究しておく必要があるかと思います。  また、同条第三項で、義務に違反する措置を取る権利行使するこの規約締約国は、違反した理由を国連事務総長を通じてこの規約の他の締約国に直ちに通知するとされています。  同条第二項で、生命権に関する第六条、拷問、残虐な刑罰の禁止の第七条、奴隷、隷属状態に置かれないとする第八条一項、二項、遡及処罰禁止、第十五条、思想、良心、宗教の自由を規定した第十八条など、公の緊急事態においても制限できない権利があることも重要であります。  自由権規約人権委員会は各国の政府報告書を定期的に審査し、当該国家に勧告を行います。過去にも、戒厳令などの国家緊急事態を国内的に宣言していながら、自由権規約制限される権利について国連事務総長に通知していなかった国家が、自由権規約義務を履行していないと委員会によって指摘されたケースが存在しております。  我が国も、万一緊急事態が発生し、自由権規約規定される権利の一部、例えば移動及び居住の自由を定めた第十二条に該当する国内法規定に関して制限が課される場合には、速やかに通知しておく必要があります。その手続なども立法化に当たって考慮しておくべき事項ではないかと思います。  いずれにせよ、今回の法案におきましては、武力紛争事態緊急対処事態など、非常事態においても国民権利義務制限や剥奪を極力少なくするよう十分な配慮がなされているという印象を持ちます。当院において一層慎重な検討がなされることを期待して、参考人意見陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  5. 清水達雄

    委員長清水達雄君) どうもありがとうございました。  次に、浜谷参考人お願いいたします。浜谷参考人
  6. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) 御紹介いただきました浜谷でございます。  今回、有事関連三法と車の両輪を成すと言われる国民保護法案、それが正に制定されようとしていること、それから、これが制定されますと、ようやく普通の国というものにふさわしい地に足の着いた安全保障論議というものが行われる素地が作られたという感じがいたしております。  しかし、防衛法制整備が終わったからといって防衛体制の確立ができたというわけではありません。あらゆる緊急事態における具体的な国民保護計画ということについては、諸外国が半世紀にもわたっていろんな形で地道な努力と作業が行われてきたわけでありまして、それに比べますと、我が国のその法制及びその実行ということは正に端緒に就いたばかりであります。  しかし、我が国防衛法制全体に今回の法律、前回の、去年の有事関連三法と並んで今回の法律が大きな節目をもたらしたということだけは確かでございます。これらの法律が有機的に作用しながら、独立国家としての国土防衛国民保護ということに向けて国と地方自治体役割分担を明確にして、そしてその法的枠組みを構築した上で万全な有事体制というものの指針と根拠を示しているということになるんだろうと思います。しかし、国民保護法に関していえば、正に詳細な肉付けはこれからであります。  以降、諸見と今後必要な視点の幾つかを申し上げたいと思いますが、ただ今回の法案は余りにも膨大で、これを正にここに出席されている先生方が隅から隅まで読んだとすれば、これはその労力と努力にただ感服するばかりでありますが、これはもう大変な量でありまして、読むのだけで一苦労という感じでございます。時間が許す限りコメントしながら、時間が許せばそれに付け加えて、今回合意されました緊急事態基本法というそのことについてまでちょっと意見を述べたいと思っております。  まず最初は、地方自治体国民保護計画についてであります。  これは、武力攻撃事態対処法の七条で国と地方自治体役割というものが一応明確になっております。すなわち、国は国家防衛地方自治体国民保護という形になっているわけであります。今回、全国知事会とか市長会とかいうことの意見をほとんど前例がないぐらい、異例ともいうぐらい念入りに聞いて、そしてそれに対応する法制を整えたということですから、いかに地方自治体が今後重要になってくるか、具体的には地方自治体協力がなければこの国民保護法制は成り立たないと言ってもいいぐらい重要な部分だろうというふうに思います。  地方要望からは、国が基準となるマニュアルを早急に作成してほしいという要望とか、それから住民避難に不可欠である道路基盤であるとか、それから住民避難収容施設の拡充であるとか、そういうものが求められたというふうに聞いております。また、費用負担についても、国の費用負担でそれをやろうということになったようでございます。  住民避難マニュアルというのはこの後すぐ消防庁が作成するというようなことになっていると聞いていますが、しかし具体化となると、地方発想、これが不可欠でございます。  と申しますのは、日本が御承知のように島国であって、国土面積が狭い割には、いわゆる非常に自然の特有の、地方特有のものが多いということであります。この地理的条件とかそういうものに配慮したそういう法制でなければ、具体的に実効性が望めないということは当然考えられるということでございます。平野部山間地、それから砂浜、岩礁、いわゆる海岸線があるないに至って、いろんな形の自然があるということであります。すなわち保護法制、いわゆる住民保護法制には地方分権的な発想というものが正に不可欠であるというふうに考えております。その地方分権的なことからいえば、正に条例でそれを具体的に決めていくということも一つのアイデアだろうというふうに思います。  また、一地方公共団体対応可能であるかどうかについては非常に疑問な部分もかなりございます。今後、県内外の複数の地方自治体というものとの相互協力ということが不可欠になるだろう、いわゆる広域的措置というものも重要になるだろうというふうに思っております。  しかし、そのためには、現場の責任者である知事権限強化ということが確かに望まれていましたし、またそのようにもなっているわけではありますが、これだけでは何も動かないというふうに思われます。強化された権限対応するだけのいわゆるマンパワー、それから各種の機器、機材とか設備、施設、こういうものが整備されない限りはほとんど実効性は上がらないだろうというふうに思われます。  また、首長さんには、今後、緊急事態、そういうものに際しての対応能力であるとか、それから迅速な決断力であるとか、それから行動力であるとか、そういうものも不可欠の要素になるというふうに思います。地域の実情に熟知した地方自治体首長が的確に判断した対応というものに勝るものはないだろうというふうに考えるからでございます。  いずれにしろ、今後、いろんな形の計画に基づいて、警察、消防、海上保安庁、それから自衛隊等々、これを有機的に連携させつつ、自主防衛組織であるとか個人参加とかそういうものの総合訓練というのを定期的に行いながら、課題の改善を図って啓蒙していく必要があるというふうに考えます。  次は、指定公共機関等国民保護業務計画について若干の指摘をしたいと思いますが、この指定には当該機関意見を聴きつつ総合的に判断するということが政府見解のようでありますが、つまり、指定には当該機関の意向が尊重されるということなんであります。  ただ、国民保護計画というものの実効性ということを最優先に判断した場合は、その指定の拒否というものが計画全体に致命的な空白を生み出す可能性がないかということが多少危惧されるわけであります。  とりわけ放送事業者につきましては、これは警報、避難の指示、それから緊急通報、こういうものを放送する義務というものが生じます。NHKを除いて、民間放送連盟は、いわゆる報道の自由が脅かされるおそれが否定できないということで除外の要請をしているというふうに聞いておりますが、確かに、ジャーナリズムの政府に対するチェック機能ということを重視する姿勢というものからはこの考え方はごく当然の考え方でもあろうと。  しかし、指定の目的の中に、国民に対する正確な情報と指示を迅速かつ広範に与える、そして犠牲と被災というものを最小限に抑えようとするというところにもその目的があるとすれば、これに対する配慮、すなわち情報に触れる機会が多いにこしたことはないということでありますし、この点、民間放送としても十分な配慮が必要ではないかというふうに思います。いたずらに取材、報道の自由を振りかざして、いわゆる取材、報道の自由の背景にその主張の根拠としてある国民の知る権利というものを危うくする機会があるとすれば、これは何にもならないということであります。  それから、国民協力ということと私権の制限ということにも若干の指摘をしておきたいと思います。  これは、国民協力についての基本的スタンスでありますが、必要な協力をするよう努めると、国民の方がですね、それから強制されることがあってはならないというふうに規定されております。そして、自主防災組織であるとかボランティア団体、これらに自発的な支援を国が行うと。  ただ、考えますと、災害対策基本法の事例を挙げても、いわゆる災害時の住民への従事命令とか協力命令、保管命令というものが規定されておりまして、これには罰則まで付いております。そう考えますと、有事対応とのバランスというものが果たしてどうなのかということが一つ指摘できるかと思います。  後にも述べますが、諸外国のいわゆる民間防衛とかそれから市民防護、こういうものの実態から考えますと、緊急事態時の国民協力というのは言わば義務化されているというのが一般でございます。この事実をどのように考えたかということでございます。  逆に考えますと、これほど自由と権利が保障され、なおかつ国家の独立と国民の安全とが確保されるということであれば、ひょっとして日本のこの国民保護法制は世界一ではないかというふうにも考えられるわけであります。これ、いわゆる国民権利が犠牲にならないでその安全が保たれるということがこれはベストなわけでありますから、その意味では日本法制が世界一ではないかという感想を持ったということであります。これは、実効性の確保ということを考えますと、正に失敗が許されない分野でありまして、そこから考えますと再検討の余地があるのではないかということであります。  それから、こういう形で国民の自由に配慮したというのは、与党と民主党との間の言わば合意があったということが言われておるわけでありますが、有事の際の国民の自由と権利制限は最小限にする、それから憲法上の基本的人権は最大限に尊重すると。  しかし、この原則というのは、これは立憲主義の建前からすれば言わずもがなの、ある意味当然のことなわけであります。この合意があったからこそ、このいわゆる自発的意思とか非強制と言われるものが規定されたというふうに考えるのは余り合理的だとは思わないということであります。もし仮にそうなら、いわゆる合意のない法律では人権保障の効力というのは薄弱になるのかということであります。また、憲法上の基本原則国民保護国民権利の尊重というものが立法のたびごとにこれは確認する必要があるのかということにもなってしまいます。  そもそも我が国の存亡にかかわるような事態を想定して、そして、その際の国民保護というのを目的にして作られた法律であるならば、いわゆる被害を局限化して避難住民の混乱を回避するということが最大の目的でありますから、そういう意味では、一定限度の私権制限とかその国民協力を求めるということは逆に大多数の国民の方が理解しているんではないかというふうに思います。いかに心地よい美辞麗句を並べたからといって、国民保護という、また国の独立の確保という、そういうものができなければ何のための法制かということになってしまうわけであります。  それからもう一点は、いわゆる民間防衛、市民防護、いろんな言葉がありますけれども、我々国民保護ということであります。  これは、御承知のジュネーブ条約に基づいて採択されました二つの追加議定書の第一議定書の方に書かれていることであります。これは御承知だと思いますので一々定義は述べませんが、この民間防衛の書かれた議定書締約国はもうほとんど世界の四分の三を超えておりまして、ほとんどこの人権条約の重要な部分を占めているということが指摘されております。  すなわち、民間防衛というのは何か言葉のニュアンスから、何か国民が武器を取って戦わなきゃいけないようなそういうことが想定されてしまうわけですが、決してそういうものではないということであります。すなわち、行動する主体を問わず、あくまで文民保護という目的に限定して行われる諸活動であるということでありますから、これを徹底して尊重するということは当然であります。  国民保護、これが国は専らその国防に専念する、それで地方公共団体住民の安全確保に重点を置くということで考えますと、いわゆる地方自治体行動というのは正に民間防衛活動、市民防護活動の概念にほとんど一致するものである、一致する行動であるというふうにも見ることができます。国はあらかじめ国民保護に対する基本方針を定めて、それから地方公共団体はその区域内における民間保護措置、これを総合的に推進するということになりますと、これは当然知事レベル、市町村レベルでの首長の強い権限が必要になって、それが付与されたわけであります。現場責任者としてのその卓越したリーダーシップと危機管理能力というのが求められるようになりました。  しかし、この権限自体を強化することはいいんですが、そのいわゆる実効性のある具体的行動を支えるためにはその人的、物的資源というものが必要であって、この点については甚だ心もとない感じがいたします。実際上、知事や市町村長にはいわゆる国民の生命、財産を擁護するための必要な知識、それから経験、装備、資源、こういうものがほとんど備わっていないというのが実情であります。すなわち、避難とか救援に不可欠な機構や要員ですね、さらには情報や財政的裏付けということなども言わば皆無に等しいのではないかというふうに指摘されております。  したがって、権限にこたえる実動部隊、これの欠如というものはひょっとしたら権限自体を有名無実化してしまいかねないというふうにも考えるわけであります。すなわち、各首長に一定の役割といわゆる責任を持たせるのであれば、その下に人的資源をいかにして確保するか、それにこたえる人的資源をいかに確保するかということは問題であります。そうなりますと、正に重要なのは民間防衛のその組織の確立といわゆる活動だということになります。  今回の修正で訓練にも防災を含むということが入り、また国民保護協議会と防災会議が兼用されるということなどを考えますと、いわゆる今現在ある自主防災組織というようなものが市民防護という目的を付与されて、そして有効な活動をするということは正に目的拡大で済むわけですから、こういう方法も一つ検討されてしかるべきではないかというふうに考えております。日本の防災組織の組織率というのは約六割強等々であります。しかし、組織率の高さだけでは、これは物の実態が測れません。すなわち、組織の質の問題がございますから、それを十分今後検討してみるべきではないかというふうに考えます。  時間が迫っておりますので、緊急事態基本法のコメントについては一点だけ、また質問のときにでも御紹介したいと思いますが、一点だけ、国会の関与という問題について述べたいというふうに思います。  緊急事態対処に当たっては、開始と終了に国会の関与を求める、これは適切であろうというふうに思います。ただ、国会の関与という議論が、従来の議論はほとんど事前であるか事後であるかの議論に終始して、ほとんど不毛でございました。これはどっちでも結果的には同じことであります。すなわち、ここで重要なのは、国会の承認というものがいわゆる政府の政策に対して責任を共有するという、こういうことだということですね。そう考えますと、いわゆる国会の役割とは何か。いわゆる、そうすると議決の内容とか議決の性質ですね、決議の性質ですね、こういうものに合わせて国会関与を言わば多段階で規定するということは重要であろうと。すなわち、国会への報告から国会の承認、さらには国会拒否権というところまでいわゆる多段階で考えておく必要はなかろうかということであります。  例えば国会の承認ということを考えても、事前承認というものについては有効期限が必要ではなかろうかと。これは元々の持論でございますが、いわゆる有効期限であります。すなわち、ほうっておけばその有効期限で消滅してしまうという。現在、それがなければ、いわゆる国会の承認というものは行政府の行動にいわゆる白紙委任状を渡してしまったようなもので、その後のチェックはできないということであります。それで、更新手続を満了前に取らなければ自動的に消滅する効力ですから、当然行政府側はある程度の情報を提供して、そして国会の言わば更新手続を取ろうとする。そうすると、国会が情報空白からも救われるだろうというふうに思います。  また、事後承認ということにつきましても、これはほとんど承認までの時間が明確にはなっておりません。よく新聞報道なんかでは二十日以内に承認を求めると書いておりますが、あれはちょっと誤解をするんではないかと思います。二十日以内に国会へ付議するだけで、そこまでで、承認はないのであります。すなわち、付議すればいいわけであって、国会の承認はそれから何か月掛かろうが、これは規制がありません。そうすると、その間に事態が終わってしまえば、何のための国会承認かということになるわけであります。あれだけ厳格な三権分立体制を取っているアメリカですら、議会の審議には、こういう軍隊を投入するような場合には期間の制限を設けて議論をするということになっておりますから、これもよく考えるべきではなかろうかというふうに思います。  それから、最後は国会拒否権でございます。国会拒否権というのは、最近ようやく各法律の中に事態の終了というものが国会の議決だけで終了できるという条項が入りましたから、これは、僕は国会拒否権と名付けているんですが、これがようやく普通に考えられるようになった。そうすると、この国会拒否権を使いながら国会が有効にいわゆる政府の政策をチェックできるということになります。これはほとんど乱用も考えられない。なぜならば、一回、国会の承認を与えたものを取り消すわけですから、すなわち賛成した人の大多数が反対に回らないとこの決議自体が通らないわけであります。したがって、乱用のおそれもないし、また一種泥沼化したような状態で政府がその対応を苦慮しておるときに、政策転換を図るための一つの手段としても考えられるということでございます。  こういう形でいろいろアイデアはあるわけですが、これについては来年の通常国会というもので検討されるということですので、これから私も注目してまいりたいというふうに考えております。  どうもありがとうございました。
  7. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ありがとうございました。  次に、山中参考人お願いいたします。山中参考人
  8. 山中あき子

    参考人山中あき子君) ただいま御紹介いただきました山中あき子でございます。  不審船舶検査のプロジェクトチームの一員として検討したことがございますので、今回、ああ、ここまで来たなというふうに思っているところでございます。また、動燃の事故の折にワシントン州の燃料工場の危機管理と危機対応のシステムの視察をいたしましたし、また、そのときにカリフォルニア州の原子力発電所で国、州、それからその会社、付近住民の危機管理の提携の在り方、これを調査したこともあります。それを含めまして、「Think, or Sink」という予防国家論を昨年末まとめました。  そのような視点から、今日は緊急事態基本法の制定に関して少し意見を述べさせていただきたいと思います。  現状認識をしてみますと、地下鉄サリン事件以後、サリン等毒物製造禁止法が制定されたり、あるいは阪神・淡路大震災の折に救助犬のことですとか外国人医師の問題ですとか、国際社会の善意にこたえられなかった経験からいろいろな受入れ手続の申合せがありますけれども、まだ法的な改正はありません。  そういう状態で、緊急事態という概念を基本的な、すなわちあらゆる原因による、テロもあり、事故もあり、外敵からの攻撃もあり、自然災害もある、いかなる原因であっても国民が危機に瀕すると、そういう状態でとらえるという、この修正された方向というのは非常に現実的であるというふうに評価いたします。私自身は、緊急事態基本法というのは実は国家安全保障と危機管理基本法、これを併せたようなものであってほしいというふうに望んでいるわけでございます。  まず、基本的には、一体何のための法律かということをもう一度考え直していただきたい。すなわち、国民の生命と国土の保全が国家の最大の義務であれば、何かが起こったとき、果たして日本国民を守れるだろうか、国民の生命を守ることが第一の目的のはずである、そういう可能性を視野に収めた法律を是非立案していただきたい。そのためには、実は各省庁又は関係各団体の利益を優先するような法律がもし今あるとすれば、これは正にポリティカルウイル、皆さんの政治的な意思をもってそれを統廃合する大変いい好機であるというふうに考えます。  ですから、国民に対して分かりやすく、そして関連の諸機関や地方自治団体にも分かりやすく、しかも機能しやすい包括的な一本の法律として災害救助、有事対応国民保護自衛隊や消防、警察の役割国民の基本的な権利義務などがはっきり分かるようなスタンスの基本法の制定を期待しております。  政府は、いかなる理由があろうと、国民が脅威にさらされたときに最小限の被害で食い止められるような政策を打ち出し、立法化すること、これを今なされば、正に時宜を得ていると思います。  その意味で、国民保護法案に関して一言申し上げます。  これまで衆参で大変長い時間を掛けて議論されてきております武力攻撃以外の事態のときという認定、また緊急対処組織というのはどういうものか、文民保護組織の法制化は不要なのか、国、都道府県、市町村という従来型の伝達パターンで緊急時に間に合うのだろうか、あるいは私権制限の要請拒否の正当な理由というのはマニュアル化しておかなくてよろしいのだろうか、あるいは総理大臣の代執行権というのは本当に現実的なのだろうか、こういう議論に対して提案者である国は早急に検討をしておくべきであるというふうに思います。  危機の段階というのは、私は危機の発生前、それから警告期、危機発生、それから進行期、そして危機終息後というふうに分けられると思いますけれども、危機が何日も前に予測できる場合は手順を踏んでいくわけですけれども、わずか数分、又は起きてしまったときに手順を踏んでいたら、その判断が現場でできなければ間に合わないこともあり得ると。そういうふうなことでは、危機管理センターがいかに最新の設備を誇ろうと、結局のところ、国民はもちろん関係の協力体制がいかに構築され機能するか、つまりソフトパワーがいかに機能するかに掛かっていると。  具体的には、情報の収集、連絡、活動の体制の確立と同時に並行して、人命救助、救急活動、医療活動、消火活動などの応急対策活動が実施されなければ被害を最小限に食い止められることができません。つまり、被害を最小限に食い止めるためには様々なものが同時に進行するという、そういうシステムにならなければならないわけで、常にと言ってよいほど、これまで様々な経験の中で政府の対応の遅さが指摘され、すべて後手後手だったという不満が被害者や住民から出ています。  何か起こったら、そこにかかわるすべての機関が整然とそれぞれの役割を同時並行的に果たす、そういう体制にあるかということが問われているわけで、すなわち消防、警察、自衛隊が同時に連携を取って即座に動くことができるかというようなことであり、災害も事故も事件も時間との勝負であるということを再認識すれば、国民保護法案の疑問点の早急な検討が必要なことが改めて強調されると思います。  私がここで申し上げたいことのもう一つの視点は、発想の転換を図っていただきたいという点です。  テロ特措法も有事法制も、これまでの冷戦時代の枠組みの積み残しの処理に腐心しているように見受けられます。つまり、政府の冷戦後の新しい時代への国家像や日本の将来像への政治哲学、政治理念というものが感じられない。つまり、できるところから少しずつというこれまでの政治手法から脱皮し、改革を標榜する小泉総理らしく、思い切って国家百年の計で将来展望に基づき、日本の国土と領域におけるあらゆる不測の事態に備えた基本法を制定してほしいというふうに思うわけです。  それから次の視点は、総合的視座で是非立法していただきたい。  有事法制災害対策基本法も、また原子力災害対策特別措置法もすべて包含されるべきであるというふうに思っております。私は、厳しい言葉で言えば、タコ足配線のような今の法整備にどこかで終止符を打つときが来るとしたら、今このチャンスではないかというふうに思っているわけです。したがって、国家安全保障、危機管理、そういったものを包含した今回の危機対応基本法というのに期待が大きい。国民はどのように国によって守られ、どういう義務を負うのかということもきちんと総合的視座で位置付けてほしい。  例えばスイスでは、核戦争に備え、各建造物の地下に地下ごうの設置と食糧の備蓄を義務付けておりますし、牧草地を農地に転用できる体制を作ったこともよく知られております。  私権の制限自衛隊と米軍の陣地の構築、通行などが特化していますけれども、阪神・淡路大震災のときを思い出していただけば分かるように、避難路や避難場所の確保など、いわゆる防災都市、すなわち災害を予防するような町づくり、これを作る絶好のチャンスだったわけですが、私権の制限ができないために、結局、災害前の状態に戻すというようなやり方の復興になってしまった。そういう意味で、前向きの私権の制限ということも検討に値するというふうに思います。  国、地方自治体などの地域住民が一致団結して被害を最小限に食い止め、危機を早期に終息させなければならない。そのためには、互いの信頼関係の構築というのがかぎになります。  私権の制限を適用する場合はなおさらのことであって、したがって、日ごろから各地方自治体の生涯教育の場などを使って予防国家論や危機管理論などの学習の機会を積み重ねることが効果的であるというふうに思います。国民の意識の向上にも寄与しますし、また一方で、国、地方公共団体や自治体などの役人は自分たちがパブリックサーバントであるということを再認識する必要があると思います。つまり、総合的視座と長期的展望での全体像が法制には必要だと思います。  法整備のポイントはかなり網羅されているように私は拝見しましたけれども、まとめますと、まず第一に、国民の生命と財産を守り、国土の保全を図るという目的の明確化をしていただきたい。第二に、実現のためにどのような国土づくりが必要かという全体像に基づく国づくりの提示をしていただきたい。第三に、国や地方のあらゆる機関に機能的に活用できるシステムを構築してほしい。第四には、民間と国民協力的参画体制の整備が必要である。第五番は、駐留米軍との協力の具体的な取決めを国民にも提示してほしい。それから六番目は、情報をどの時間内にどこに通知するか、そういった手順の明確化というものを考えていただきたい。先日の羽田空港の滑走路の侵入事件は幸いなことに事なきを得ましたけれども、警察を入れる許可を得るのに時間が掛かった、これが今日本の現状なんです。七番目は、都道府県の単位より、より広域的なブロック制ということも視野に入れてはいかがか。つまり、消防、病院、警察、自衛隊などのネットワークは、県単位ではなくて、それより広い範囲でブロックとして機能できないかという視点です。八番目は、避難場所や避難路の確保や救助活動のために私権の制限規制緩和を提示していただきたい。九番目に、立法と行政の両面で順次整備できる仕組みを構築し、実効性を担保していただきたいということです。  具体的な施策としては、全国のブロックごとに避難場所や避難施設整備するという意味で、緑地確保のために国や都道府県、市町村の所有地の拡大も努め、ふだんは公園などとして住民に開放し、またダムや貯水施設も水に親しむ余暇の利用の視点を加えながら必要に応じて再整備するという視点も大変大事です。  また、世界のエネルギーの安全保障にも貢献し得ることを視野に入れて、地域特性を生かしつつ、太陽熱や風力などの自家発電など、代替エネルギーの確保に努めるという視点も必要です。  食料の自給率が極めて低い日本ですから、食料の備蓄方法の研究を促進するという視点も欠落させられません。  国際レベルで活動できる救助隊員の育成を加速化し、建築物の安全性やライフラインをチェックするインスペクターや危機管理専門家などの人材を育成し、専門家を増やし、新しい雇用創出にもつなげるという視点も考えられます。  冒頭に申し上げましたシーメンスの燃料工場では、燃料工場ですのに四十五人の各分野の安全専門家を雇用しております。チームに分けて二十四時間体制で、安全対策組織としての危機対応チームと、起こった危機にどう対応するかという管理危機チーム、この二手に分かれているわけで、ここでは予測し得る十三項目に及ぶ最悪の事態発生への対応を具体的に分析し、全従業員を訓練しております。同時に、連邦政府の原子力委員会はこの燃料工場の施設運営のライセンスの取得にも厳しい基準を示しております。日本でそれができていたら死亡の事故はなかったというふうに私は思います。  こういった縦走したネットワーク作りに留意して、自衛隊、消防、警察を一元化する、常にではなくて、非常事態の体制の確立も必要だと思います。  カリフォルニアの原子力発電所では、カレンダーで自然に必要手順を学ぶというやり方をしています。例えば、どういう指示が出たら脱出避難するのか、どういう指示が出たら自宅待機をするのか、非常に大事なことです。また、十六キロの円の中に七十二基のサイレン、それからラジオを使って、何かが発生したら十五分以内に施設外のすべての部局に緊急事態が通報されるというシステムになっています。二年に一度、八時間にわたる避難訓練を実施しております。地元の消防、病院、交通諸機関、それから軍、連邦政府の担当者、核の研究所などが協力して学童の退避、住民避難訓練などを実施しているわけです。  そういうふうに見てまいりますと、各首長の危機管理の研修も大事になります。  是非、皆様に今国会から次の国会までの間にしていただきたいことは、時限的検討委員会というものを設けていただきたい。これは与野党の担当者と内閣府、防衛庁、国土交通省、総務省、外務省、そして文科省から局長クラスを担当者として参画させて、そして夏の一週間から十日間に分けて、これは識者を集めて現在の法律の在り方を精査し、何を廃止し統合するかを検討した上で、基本法の制定をし、同時にそれを機能させるための実施まで皆さんが関与していただきたい。  そして、小学校からリスクマネジメントの教育や大学の危機管理専門家の養成講座、そういったものを導入し、先ほど申し上げた生涯教育における国民の意識の向上と相まって、そういった人材の養成を図ることは非常に重要なことです。  このようになれば、期待される波及的効果としては、まず行政改革により規制緩和の促進、耐震構造物や備蓄可能な食品加工技術などの技術開発、専門家の養成による新しい雇用の分野の創出、救助隊員や専門家の近隣のアジアや世界の災害、事故、紛争などの派遣や、備蓄食糧物資の提供などの国際協力国家目標に沿った公共工事などの内需拡大、そして冷戦後の新しい時代に合った自衛隊、警察、海上保安庁、公安などの任務の見直しと訓練方法の改革、新分野の人材確保というような連携作り、そして国民の政治への信頼を回復することができるというふうに思っています。  重層的な危機管理体制を構築するには多大な予算が必要です。ですから、その意味では、予算の執行優先順位を付けることや、多年度予算の導入ということで、十年、十五年後までに全国がきちっとした形の防災国家になっていることを期待します。  最後に、私が予防国家という言葉を使っておりますのは、予防国家としてあるべき十原則というものを考えているからです。一つは、国家安全保障・危機管理基本法、これは今ので解決できます。あとは、迅速な意思決定。三番目は、統括指揮者の責任を明確にすること。的確な情報の収集、分析を行うこと。そして、地方自治体の危機管理能力を強化すること。六番目は、警察機能の強化。七番目は、医療機関の充実。そして、自衛隊の活動。国民の認識力の強化。そして、最後十番目は、効果的な実践訓練です。  日本国民のいわゆるフェールセーフ、失敗しても安全を確保する、こういう予防国家発想、そういうシステムの構築と人材の育成、そして非常事態勃発に即応する法整備と国の危機管理システムの構築は、日本の国の歴史に残る偉業と思います。  国会の御検討を心から御期待申し上げます。  以上でございます。
  9. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ありがとうございました。  次に、田中参考人お願いいたします。田中参考人
  10. 田中隆

    参考人田中隆君) 御紹介いただきました弁護士田中隆と申します。全国一千六百名の弁護士で構成する法律家団体の自由法曹団というところで活動をしておりまして、平和・有事法対策本部の副本部長をしております。  自由法曹団は、一昨年、二〇〇二年春に有事法制が浮上して以来何度も出版や意見書の発表を重ねてきました。発表した意見書、合わせて十五次に及んでおりまして、自由法曹団のホームページにすべて掲載しておりますので、御参照いただければ幸いです。  本日は、参考人として陳述する機会を与えていただきましたので、法律家として三つの点に絞って述べさせていただきます。  第一点、最初は有事法制が発動される場面と及ぼす影響の問題であります。  今回の有事十案件の母法に当たります武力攻撃事態法、もう略称で申し上げます、の構造は、現実にこの国への武力攻撃がなくても、切迫あるいは予測の段階から、政府の判断で武力攻撃事態あるいは予測事態を宣言して対応態勢を構築する、そして米軍と自衛隊の作戦や兵たんのサポートを行うという構造のものでした。  一昨年来の国会審議の中で、この武力攻撃事態や予測事態が、現に米軍が武力行使を行っており、自衛隊がその後方支援に当たっている周辺事態法上の周辺事態と併存することが明らかになり、現在では確定的な解釈になっています。しかも、この武力攻撃というのは何もこの国本土に対するものに限られず、在外公館や海外にいる自衛隊への攻撃武力攻撃に当たるというのが政府答弁ですから、周辺事態法で米軍の後方支援などに当たっている自衛隊に相手の国あるいは国に準じる者から攻撃が予測されれば予測事態が宣言できると、こういう構造になります。  法案を提出された政府の側から、この有事法制あるいは事態対処法制の発動場面が具体的に明示されることはついにありませんでした。しかし、米軍との共同対処を前提にした法制の構造や北東アジアの政治情勢からして、発動可能性が最も高いのは、米軍が北東アジアで軍事行動を取る周辺事態に際しての相手国の軍事的行動武力攻撃事態あるいは予測事態に至る場面と考えざるを得ません。それゆえに、この国会でも、一昨年来、周辺事態との併存等が繰り返し問題にされてきたと考えます。  今回の法案は、こうした有事法制に極めてドラスチックな内容を付け加えます。  箇条書的に指摘します。  米軍支援法では、予測の段階から、米軍の行動をサポートする無限定の行動関連措置が組み上げられ、地方自治体や企業が協力を要求されます。自衛隊は米軍に弾薬まで提供しますが、米軍がその弾薬をどう使用するかをチェックする法的手続はなく、最終的には米軍に対する信頼によってしか担保されない。これも、予測の段階から、公共施設等利用法で政府が優先順位を指定する空港、港湾等の優先権は米軍や自衛隊にも付与され得るという答弁でありますし、元々交通や電波の管制は作戦をサポートするための法制として制定を要求されたものですから、軍事優先になることは法制上も明らかです。  事態が進行して一触即発の事態になって発動される海上輸送規制法では、第三国の船舶に不審な敵性国人が紛れ込んで密輸的に物資を運んでいると認められている場合にも臨検が可能、停船命令ですね、が可能で、危害射撃ができるとなっています。これは自衛権では到底説明はできないと思います。  捕虜法や人道法等は、文字どおり交戦を前提にした規定で、重要文化財破壊罪や占領地入植罪などは自衛隊が海外に出ていった場面での国外犯しか想定できない。  これらは、すべて法文及び政府の答弁から抽出したもので、自由法曹団がそうなると言っているものではありません。これでは、米軍との一体化を果てしなく進めて、いつでも臨戦態勢を構築して戦争ができると宣言しているものと考えざるを得ないんです。  かつて政府は、武力攻撃の意図を明示して多数の艦船や航空機を集結させる状況は武力攻撃の切迫、当時はおそれでしたが、だと説明されました。公共施設等利用法によって、予測段階で港湾や空港に米軍や自衛隊の艦隊や航空機を集結させれば、それは相手の国からすれば一触即発の切迫事態ということになります。こうした軍事緊張のエスカレートを法制上組み込んだ法律を制定することがこの国周辺のアジア諸国との関係にもたらす影響をいま一度考えるべきではないかと考えます。  なお、事は周辺事態に限られた問題ではなく、自衛隊の海外派遣でも同じ問題が発生するはずです。  新聞報道によりますと、内閣法制局は、イラクで抵抗戦を続けるサドル派は国に準ずる者に該当するとの法解釈を示されたとされています。仮にもし、このサドル派が国に準ずる者と認定され、そのサドル派によるサマワにいる自衛隊への攻撃が予測されるとなると、イラク特措法とは別チャンネルが、有事法制が動き、別チャンネルの有事法制が動き出すことがあり得ることになります。そのとき、サドル派が果たして国に準ずるかどうかということを事後的に国会が十分チェックできるでしょうか。現に、自衛隊が海外で行動するようになっている今日、有事法制が発動態勢に入ることの重大性をもう一度検討すべきではないでしょうか。  二点目は、国民保護法が社会に及ぼす影響の重大性です。  国民保護法制は、すべての地方自治体や地域に直接かかわる法律という点で特別の重大性を持っております。御承知のように、警報や避難から始まって応急復興、武力攻撃災害対処国民生活安定、復旧・復興に至る十万字を超える壮大なる法律案です。  この法制の構造からすると、地域全住民が県境を越えて、県の境を越えて避難しなければならないほどの大規模な着上陸脅威、攻撃あるいは大規模な空襲がこの国の本土に加えられる場合を想定しているとしか考えられません。  しかし、現在の国際情勢からしてこうした事態が考えられないことは明らかですし、現に政府自身、まず考えられないと答弁されています。政府の答弁はその後、しかし絶対にないとは言い切れないと続きます。しかし、蓋然性どころか可能性の計測もできない下で、ないとは言い切れないとして対応態勢を組み上げることは、殊更危機や不安をあおり立てることになり、政治の道筋としても危機管理のありようとしても重大な問題をはらんでいると思います。  この国会でも、地域全住民避難のはらむ問題について、例えば鳥取県でのシミュレーション等を摘示しながら、様々な指摘や議論が行われました。しかし、全体としては、こうした指摘がありながらも、何としても自治体に対応態勢を確立させるという極めて強権的とも見える方向に向かっているように思われます。  政府がモデルを作って自治体の計画を促す、防衛庁は幹部自衛官を全自治体に派遣してイニシアチブを行使する、図上訓練では足らないから実地訓練も行う、やってくる中で対応も早くなって知事や市長などの意識も変わっていく等々、こんな答弁が繰り返されました。  政府は、本年を含めて五年計画で都道府県、市町村の実動演習まで持っていく計画のようで、と伝えられています。こうなりますと、自治体は、自治体部局はおろか、地域の町会、自治会、商店会、学校、病院、交通機関、医療機関などを挙げて演習に駆り立てざるを得なくなります。問題は、その演習が軍事緊張が高まって政府がどう努力しても戦争が避けられそうにないという状況で行われるのではなく、具体的な想定事態もなく、仮想敵も存在しない中で行われることです。実際の戦争が訓練をやったとおりに起こる保証はなく、避難先に想定した地方から敵がやってきたとなれば何の効果もありません。この点で最後に申し上げたいのは、言わば空中楼閣に近い対応を組み上げること自体のはらんでいる危険性です。  かつてこの国が初めて帝都の防空演習をやったのは一九三三年と記録されています。このとき、どの国にもこの国に空襲を加える空軍力はありませんでした。その架空の危険を掲げて行われた演習がその後の防空法の制定や防護団につながり、隣組や自警団につながっていったのは歴史の記録するところです。  空中楼閣に等しい対応法制を生み出すことが社会の不安や亀裂を拡大し、社会全体を好戦的な方向に誘導し政治を誤りかねない、法制度がそういう危険をはらんでいると思いますので、実は法律家としてこの法制に反対せざるを得ないのであります。  最後に、三点目、法案の提出と研究や審議について一言申し上げます。  この有事十案件が提出されたのは三月九日。法文だけで四十万字、対照表や関連条文を含めると六十万字に及ぶ膨大なものでした。国民保護法制だけは若干概要が伝えられていましたが、それ以外の法制は直前まで明らかではありませんでした。これだけの法案を短期で審議し、行動や問題点を明らかにし、国民の十分な理解を得た上で結論が出せるかというのが、最初に全文読んだ考えでした。どうもこの考えは法律家だけのものではなかったと思っています。  四月十三日、この法案衆議院本会議に上程されたとき、民主党から代表質問に立たれた首藤信彦議員は、その一つ一つに関して、その審議で国会会期全体を使ってもおかしくないような非常に重要な案件であり、これを一括して国会に提出した政府の行為は、正に神を恐れぬ行為と言わざるを得ないと質問を締めくくられました。達見だと思います。  この四月十三日とは、イラク全土が戦場となって、三人の青年が拘束されているさなかでした。私たちの仲間にもイラクで救援活動に当たっている弁護士がいます。人ごとと思えず、全世界のNGOと結んで救援に当たっていました。そのさなかでした。参議院で審議が行われた五月下旬は、国民の関心が年金問題に集中しているときであり、審議が途絶えることもございました。このような中で、すべての自治体や地域に直接に関係する国民保護法を含めて、これらの法案国民に十分理解され、検討、研究が尽くされたか。率直に言って甚だ疑問と考えざるを得ません。  さらに最後に、衆議院議員の最終盤になって挿入された修正についても一言申し上げておきます。  今度の修正は、法案として提出された国民保護法案修正することによって母法と言うべき武力攻撃事態法を改正するという、通常の法制定の過程では考えられない内容を持ったものでした。このまま改正されますと、この武力攻撃事態法は、武力攻撃という戦争の場面を想定したものが大規模テロ等という犯罪の領域に属することまで、問題までサポートすることになります。法的に言えば、安全保障と治安の二つの領域にまたがる法制となります。  あらかじめ予測がほとんどできず、捜査も密行で進められざるを得ない治安の問題と、外交の延長として生じる軍事緊張が発端となる安全保障の問題、さらに、一過性であって意思を持った敵が介在していない自然災害の問題を安易に同じカテゴリーで考えることは重大な誤謬と考えざるを得ず、犯罪捜査や災害対策にいたずらな混乱をもたらす危惧も禁じ得ません。  以上、全体として、この法案は重大な問題をはらんでおり、いまだ十分に研究、解明されたとは言い難いものでありますので、採択、成立に至ることには、私自身としても自由法曹団としても反対せざるを得ません。  また、全国二万名の弁護士が全員加入している強制加入団体の日本弁護士連合会も、かつての有事三法案にも米軍支援法案国民保護法案を中心とする今回の有事法制にも強く反対をしていると付け加えます。  最後に、二年半前から有事法制にかかわった自由法曹団が問い掛け続け、掲げ続けたのは、行くべきは平和の道ではないかという問い掛けでした。この二年半、私自身を含めて多くの弁護士がアフガニスタンやイラク、朝鮮半島、中国等に赴いて、微力ながらも救援や支援を続け、平和的な道筋のために努力してきました。いかに苦難の道であっても、その平和を行くためにこの国の力を発揮していただきたいと思います。そのことをお願いをして、陳述といたします。  ありがとうございました。
  11. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、参考人方々お願い申し上げます。御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 松村龍二

    ○松村龍二君 自由民主党の松村でございます。  本日は、本法案の審議に当たりまして、貴重な御意見を四人の参考人からお聞かせいただきまして、ありがとうございました。  非常に大きい問題でございますので、私もよく勉強していない面があるわけですが、まず山中参考人にお伺いするんですけれども、原子力発電所についてアメリカの事例をいろいろ研究してこられたように先ほどお伺いしたわけですが、実は私、出身が北陸の福井県でございまして、十五基の原子力発電所がございます。  この国民保護法制を審議し、地方自治体権限というようなことになってきましたので、地元の県知事も非常に神経質になりまして、具体的にどのように参画したらいいか、意見を述べたらいいかというようなことで苦慮しておられましたけれども、私、お伺いしたいのは、この原子力発電所が現に日本の場合テロ対象になるようなことがあるとお考えになるかどうかということなんです。  先般、佐賀県の国会議員の方とお話ししていましたら、佐賀に玄海原発というのがありますが、あの周辺では密輸、密入国等の事案も非常にあって、そういう野放しの事件等が起きる中において原発が大丈夫なんだろうかと、なように、地理的に朝鮮半島に近いという立場から何か心配しておられました。  私どもの方は十五基の原子力発電所がありまして、非常に我が県の場合、県民のこれを支える意識もしっかりしていまして、過去に幾つかの事故等もありましたけれども、さほど神経質にならないでこれと共生しておると、こういうような状況です。  それで、こういう施設がありますと、すぐ、何かやられるんじゃないかと、こういう攻撃対象になるんじゃないかと、こういうように考える人が多いわけですけれども、それじゃそこを襲って具体的にどういうことをしたいのかと。ただコンクリートの壁に爆薬を仕掛けるだけでは何の被害もないわけでありますし、それじゃ発送電を止めたいのか、あるいは放射能をまき散らすようなことまでやりたいのかということになりますと、その単発的なことをやったところで、日本に対してそれだけのテロでは余り大した実害もないんじゃないかと。そうしますと、襲う価値もないんじゃないかというような面で一つ一つ分析していきますと、そういうふうにも考えられるわけですけれども。  アメリカの施設その他を研究されまして、有事立法につきましてもいろいろの御高見をお持ちの山中参考人に、そういう原子力施設がこの法案対象としてどういう位置付けになるかということについてお聞かせいただきたいと思います。
  13. 山中あき子

    参考人山中あき子君) 日本への攻撃というのは二つあると思っております。  一つは、全く外からの場合には、日本は海上をきちっと守るということと、あとミサイル、そういう形でしか例えば原子力発電所に対しては攻撃ができないわけですから、その点でいろいろな問題、臨海のいろんな問題ありますけれども、海のやっぱり警護というのは非常に大事であることと、やっぱりミサイルというものに対する考え方をきちっとしておくと。あとは、中から、じゃだれがその原子力発電所をターゲットにしてねらうかということに関しましては、国内でミサイルを発射するということはまず考えられませんので、それは警護をきちっとしておけばよろしいと思います。  ただ、これは外からの攻撃ではなくて、どんな制度もどういう施設も一〇〇%常に安全であるというものはないわけですから、万が一のことを考えて、いざとなったときにどのようにその地域住民が安全に、放射線が出たときには外に出ない方がいいというのは、先ほどちょっと申し上げましたように、アメリカの場合には自宅に入っていく方がいいというその認定もあるでしょうし、そういった計測のやり方というのは日本は大変に科学技術進んでおりますから、それで住民の方が安心できるような形で信頼醸成をしておけばいいと思いますけれども、私はこの法案の中には、やはりそのテロと、それから外からの攻撃と、それから自然災害のほかに、必ずしも原子力発電所のみならず、大きな事故ということも入れて想定するというのが一つ考えられるのではないかというふうに思っております。
  14. 松村龍二

    ○松村龍二君 原子力発電所でミサイルの問題があるんですが、発電機もコンクリートでまず守られている、またその外形も守られていると。一番真上から原子力の炉がねらわれた場合に真ん中へすぽんと入ってしまうというようなことが指摘されますけれども、そのような事故というのは余りちょっと考えにくい部分もありますし、日本のほかのところを襲わないで、そこの原子力発電所の上から真上を一つだけねらうということの軍事的意味といいましょうか、そしてそのことが近辺一帯に放射能をまき散らすようなものであれば被害は大きいと思いますが、そのような点でもどうなのかなというようなことで、いろいろこういう問題を考えていくときに具体的に緻密に問題を詰めていく必要があるなと。  いわゆる今北朝鮮がノドン、テポドンを持って日本をどうだこうだと、こう言いますけれども、核を積んでいないノドンが飛んできても鉄の塊が落ちるだけですからまあ痛くもかゆくもない。真下にいたら、私が真下にいたらやられるでしょうけれども、そうでない限り痛くもかゆくもないと。こういうことで、しかも無尽蔵にあるものでないノドン、テポドンを、どこをねらうのかと。米軍の厚木、横須賀、沖縄というような軍事基地を襲う場合には北朝鮮としても価値があるでしょうけれども、ただ国会周辺に落ちてもまあ痛くもかゆくもないというような問題もあろうかと思うんで、非常に抽象的にぱっとすべて危険だというふうに考える嫌いが日本人の場合あると思いますので、その辺は具体的に詰めていく必要があるなというふうに思うわけでございます。  第二問ですが、田中参考人にお伺いしますけれども、テロに対する国権の発動としての戦争をするということについての御説明があったわけで、九・一一以降そのような考えが許容されるというようなお話だったのかどうかですが、あのイラク、九・一一の後、あれも実際に持っていた武器というのはカッターナイフなんですね。長崎で使った、女児と同じものを使ってあの事件をやってしまったということで、それが今までの情報の集積で、アルカイダが世界じゅうにテロをやろうとしているというようなことの下にアフガニスタンに対して戦争を仕掛けたと。この後、イラクが大量破壊兵器と民主主義、独裁から民主主義を守るというようなことでやったんですが、大量破壊兵器がなかったということになると、アメリカのイラクに対する戦争のあれが、そういうテロに対して戦争を仕掛けることができるといった議論に対して疑いを持たせる面があるかと思いますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。
  15. 西井正弘

    参考人西井正弘君) ただいま御質問になられましたイラクに対する軍事行動正当化の問題でございますが、その前に、先ほど御質問の中に、九・一一に対してアルカイーダに対する武力攻撃軍事力によって対抗することが国際社会で許容されているというふうに先ほど私が申し上げましたことを再確認されていたと思うんですが、もちろんそれは現在の国際法学者の中でも認めていない方もおられます。  それはただ、私自身の考えを申しますと、この二十一世紀になって国際社会というものがやっぱり大きく変わってきているというふうに思っています。もちろん本質的には国家が中心的な単位でありますので、その国家を基本としていることは変わりないのでありますが、特に情報がこれだけ行き来しておりますと、国境というものを簡単に越えることができる時代になっているわけです。そうなりますと、テロリストに対する対応でもいわゆる人とかそれからお金とか情報とか、そういったものをいかに規制するかということになりますと、従来の国家主権を単位として領域というものを中心とした管轄権だけで対応することは非常に難しい事態が起こってきていると思います。  その一つの病的な現れと言っていいかと思いますが、それがテロ集団ではないかというふうに思います。もちろん、御承知のように、テロというのは古くから存在するものでありまして、そのこと自体は何も目新しくはないのでありますが、現在、テロのネットワークはやはり世界に広がっていると思います。  で、イラクに対するアメリカの軍事行動の直接的なきっかけというのは、私もちょっと詳細を今記憶しておらないんですけれども、基本的にはイラクがテロのネットワークの中でそれに貢献をしている、ある意味では、悪い意味ですけれども、貢献をしているという認識は、九・一一の時点で既にアメリカは持っていたことは御承知のとおりであります。それに対して取った措置でありまして、大量破壊兵器の存在というのは一つの理由といいますか、武力攻撃の理由とはなっておりますけれども、それだけではないというふうに考えます。  法的にそれをどう評価するかということですけれども、これも学説としてはいろいろ分かれているところでありまして、違法説ももちろんございますけれども、国際社会でやはり国内法と違いましてすべてが法によって規定されているわけではなくて、法が欠けている部分も現実にはあるというふうに言わざるを得ない。そうしますと、力の行使が、突き詰めて考えますと、若干の合法性に疑いがある場合が起こり得るというふうに私は考えております。
  16. 松村龍二

    ○松村龍二君 三問目ですが、田中参考人にお伺いします。西井参考人にもお答えいただきたいんですが、時間がないんで田中参考人にだけお伺いします。  この委員会において協議しております際に、御指摘のように、実際に戦争といいましょうか、攻められる、日本が攻められるということが考えられないのにいろいろなことを決めても、畳の上の水練といいましょうかね、大田議員は沖縄戦を経験された、また山本議員はさきの大戦を経験されたという観点から、実際の戦争というのはそんな生易しいものじゃないぞと、国民に対する協力とか、地域の知事へのいろいろな権限を持たしても、そんなことは正に戦争の最中になったらすべて無視されるようなものだという御指摘が度々、貴重なお話があったんですが。  そういう意味において、さきの有事三法は必要があってあれした、これを完結するものとして国民保護法制、さらにまたそれをつじつまが合うようにいろいろな法案を作ったという点で、元々完璧ではないけれども基本的にそのようなことを合意しておくという、何もないよりはいいというような見方もあろうかと思うんですけれども、それについて、先ほどの田中参考人の説明とちょっと食い違うような御指摘になろうかと思いますが、どのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  17. 田中隆

    参考人田中隆君) お答えいたします。  私自身は戦争を知らない世代でございますので、実際の戦争の実情を体験したことはありません。しかし、あの当時のあの状況を聞き、あるいはあの伝わる戦争を知れば、あの法制をどう作ったとしても、現実の戦争、まして本土で戦場が、戦場になる戦争になったら、また違った実態が起こってこないもの、だろうとは思います。その限りにおいて、国民保護法あるいはその前提の有事法制も、あの言わば蓋然性のない場面を想定して作っておこうと考えられたのかもしれないという気はいたします。  ただ、繰り返しになりますが、事は戦争と平和、あるいは軍事にかかわる法制、まして国民保護法制の場合には、すべての自治体に対して計画を組み実効性をあらせようとすれば、図上演習をやり、実動訓練をやり、あるいは民間の方々協力を得てと、こうなっていかざるを得ない。抽象的ですが、もしあったらどうするんだというふうに考えていけば、本当に地域ぐるみの準備をしておかなきゃ助からないよという話になります。  まあお金の掛かるのもそうなんですが、そのことによって実は地域社会が変容していくことを私たちは懸念をしています。災害に対して万全な訓練するんなら反対しません。災害については、繰り返しますが、敵もいませんし、隣同士が協力し合えるんです。しかし、犯罪もそうですが、とりわけ戦争という事態というのは、想定する敵をどこかで頭の中に描かなければ訓練も組み立てられない。恐らく、先ほどから出ている北の方の国が危ないとか、あるいはイスラムがというような言葉が、公式に言われないにしても、地域でささやかれるだろうと思います。そのことがもたらす地域社会の変貌や、あるいは見えざる敵に対するおびえがかえって地域社会をおかしくし、前向きに地域社会を構築していくことを妨げるんではないかという気がしています。  更に厳しく言えば、ひょっとしてそういうことを作りたいというお気持ちがあって、つまり臨戦態勢の社会を作りたいためにこの国民保護法を作るのであれば、これはおやめいただいた方がよろしいというのが私の、私の意見です。
  18. 松村龍二

    ○松村龍二君 浜谷参考人に一言お伺いしますが、指定公共機関ですね、民間放送に対して拘束が甘い、あるいは国民の必要な協力というものが何か生ぬるい形で決められたと。これにつきましても、私も、第二次世界大戦にいかに大本営発表が国民を間違った方向へ引っ張っていったかという点において、余り強力に一本化することは危険だなというふうな認識を持っておったわけですけれども、そのようなことで取りあえずこのような法制にしたのかなと。国民協力といっても、理想を言えばしっかりした義務が必要かと思いますが、そういうふうに理解するわけですが、一言コメントをお願いします。
  19. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) 私が考えるのは、いわゆる例えば何か危ないことが実際には起こりそうであるとか、それからここにこういう危険な存在があるとかというその以前の問題で、いわゆる国そのものが一つの独立国としてあるべき姿は何かということを考えたときに、そういう国民の生命、財産を脅かすもの、あらゆるものに対する保護政策を取らない国家なんというのは国家じゃないということが基本的な私の視点でありますから、その例えば一部門がこれだというだけの話で、これに特化するようなことはあり得ないわけであります。  したがって、そういう意味で、どういう場合にも言わば国民の生命、財産を保護して、どういう場合にも国の独立が守られるというような体制のためには何が必要かと。それが具体的なそういう危険なものがあったらなおさらそれが必要だというだけの話であって、それがないから必要でないということにはならないと。これが率直な感想であります。
  20. 松村龍二

    ○松村龍二君 どうもありがとうございました。
  21. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 民主党・新緑風会の森ゆうこでございます。四人の参考人先生方には、本日は大変貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございます。  まず、一番私が聞きたいところに入る前に、少し枝葉末節という感じかもしれませんが、先日、本当は大臣に質問したかったんですが時間がありませんでしたので、一問だけ松谷先生と山中先生の御見解を伺いたいと思うんですが、まず日米協力の在り方につきまして、今回のACSA協定の改正により日米の物品役務の融通について決済手続が整うこととなりますけれども、テロ特措法に基づくアフガニスタンにおける自衛隊の給油活動についても、これまではガソリンスタンドというふうなやゆもあったわけでございます。これは無償の提供にとどまってきたわけですが、今回のACSAの締結によって日本が提供した油の対価に当たるものについても米国から返済を受けることが制度上可能となったわけですが、日本としてはどのように対応するのが適当とお考えか。  成熟した大人の日米関係であれば、米国に対して油の返済を求めていくことが適当なのではないかと思います。むしろ、日本としての国際的なテロ対策への貢献が、そのような無償のガソリンスタンドというような役割が主なものであり、そもそもこのような形での提供自体に意味があるのかという疑問もございますので、この点について御見解を伺いたいと思います。
  22. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 浜谷参考人ですか。
  23. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 はい、そうです。
  24. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) ACSAにつきましては、これは一番最初のいわゆる有事ACSAと言われるものの前のACSAの段階から、いわゆるこれは相互にそれを決済するというのが基本的な建前でございますから、それは、対等な独立国としてあるべき姿ということを考えますと、当然それはあり得ることだろうというふうに思います。  ただ、要するに、あとは、法的にはそうでありますから、あとは政治的な配慮の問題で、それを今回はどういう形の決済にするかという、そういう柔軟性はあってもいいかと思いますが、基本原則はその最初のACSAに書かれた相互にそれを決済するということが原則だろうと思います。
  25. 山中あき子

    参考人山中あき子君) 今、浜谷委員がおっしゃったところと見解はほとんど一致しているところでございます。そういう協定をしたわけですから、協定に沿って動いていくというのがそれぞれの国の責務だろうと思いますし、ただその柔軟性の面で、運用の柔軟性の面で、油であったら油で返すのか、油であるけれども別のもので返すのか、まあ代金にするのか、そういったことというのは弾力性のうちの一つであるというふうに考えますけれども、協定を結んだからには一応協定をきちんと遵守するという姿勢でいかないと、法治国家がなかなか機能しなくなるというふうに思っております。
  26. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 私が今、今回のこの法整備の中で国民保護法制につきまして一番問題意識を持っておりますのは、先ほど先生方からも御指摘がありました国民協力についての位置付けでございます。やはり、あらゆる非常事態に対して、それは国がもちろん国家としてやるべきこと、そしてそれに対して、国民が今回は協力という形にとどまっているわけですけれども、国民の主体的な活動というものがなければそういうものに対処することはできないということでございまして、既に、先ほども言及されました現在の災害関係法令においても、災害の現場にある者に対して消火活動や救援活動に従事させたりする例がきちんとあるわけですね。  そういう意味におきまして、国民協力という、国民役割について今回の法案の中では、国民協力としているのは、本来自分の問題として主体的に活動するのではなく、いつまでも他人の問題に対して援助するという印象を国民に与えるのではないかというふうに思っております。つまり、あくまでも、いつまで、あくまでもというかいつまでも国民が客体として位置付けられているような印象があります。  この点についてはもちろん与野党を問わず様々な意見があるというのは承知しておりますが、先日の質問の中でもちょっと引用しました、先ほどの先生方意見陳述の中にもありました、国民権利の裏側にある義務という形での位置付けが上手にできないものか、国家権力に対する個人の私権というようなことではなくて、自立した国民の当然の果たすべき義務というような形で、もっと、国民がこの法律の成立後、自分たちがやるべきことということをきちんと認識できるようにするにはどのようにしたらいいかと。例えば、こういう言葉を法文の中に入れたらいいのではないかというような点ももしありましたら是非伺いたいと思いますが、これに関しては、浜谷先生、そして山中先生、西井先生の御意見を賜りたいと思います。
  27. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) 私が先ほど国民協力について申し上げましたのは、何か国民協力国民協力するということは、何か他人に対して自分が犠牲になって、そしてそういう活動をしなければならない、それ自身が義務付けられるということについて意識がちょっと違うんじゃなかろうかということを申し上げたんですね。結局、例えば国や地方公共団体国民を守るべき存在、国民は守られるべき存在というような、言わばステレオタイプ的な発想で果たしていいのかということなんですね。  じゃ、国家というものが生きているか、地方公共団体というのは息を吸っているか、これは自然人ではありませんから、そうではありません。そうすると、国が守る、地方公共団体が守るといっても、これを守るのは人間であります。この人たちはみんな国民なんですね。そうすると、考えるべきことは、守るはずのものも国民、守られべき、守られるべきものも実は国民なんですね。お互いにそういう自覚があって初めてそういう保護政策や、そういう防衛政策というのは成り立つわけであって、それを考えますと、それを考えますと、先ほどのようなステレオタイプで考えるのは果たしていかがなものかという、そういう感想を持ったということであります。  いわゆる、それがどっかから抜け落ちてしまっているものですから、何か自分に一方的なそういう義務だけが来る、そういう滅私奉公的なそういう発想ではないということを言わば御承知いただければというふうに考えております。
  28. 山中あき子

    参考人山中あき子君) 最近、様々な事件が起こっております。これは有事などというものではなくて、日常の生活の中の事故や、それから殺人や、こういうものを全部考えてみますと、民主主義、自由主義というものに対しては、自由を得る代わりに責務があると、責任があると、ここのところの教育が本当にきちんと国民に徹底できたのかどうか、この辺を私たちはこの過去五十年の中で、もう一度本物の民主主義、本物の自由主義国家になるために、言わばさなぎが脱皮すると、そういう時期に来ていると思うんです。  そういう意味で、先ほど私ははっきりと権利義務ということを申し上げて、スイスの例も申し上げましたけれども、やはりそれは、一つの面では法的にきちっと決めるということ、もう一つの面では意識をどういうふうに醸成していくかと、この二点の面で、そこにきちんと留意をするということは今回のような基本法を作るときには非常に大事だというふうに思っております。
  29. 西井正弘

    参考人西井正弘君) 先生御承知のように、当然、義務という問題が出てまいりますと、一体その義務を果たさなかった場合はどういう制裁が科されるかという問題が出てくるんじゃないかと思うんですが、ただ、同じ義務といいましても、やっぱり段階が当然あるかと思います。例えば、協力義務というような非常に中間的なタイプの義務の課し方もあるわけでありまして、それに違反したからといって何ら罰則がないというものも当然考えられるとは思います。  ただし、私は、この国民保護法制国民保護法案等では、そこまで義務付けなければ本当にいざというときに人々が協力しないだろうかというふうに考えますと、必ずしもそれほど我が国国民は冷たいものではないんじゃないかというふうに思っておりますので、先ほども自由と責任ということを山中参考人がおっしゃいましたけれども、責任があるとか責務であるとかというような表現でもそれは適当なのではないかというふうに私個人は考えております。
  30. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 続いて、今回のこの法案でいかに非常事態に機能し得るかということで、それぞれの先生方からいろんな問題点、指摘がありました。  特定の公共施設の利用法案について、浜谷参考人、そして山中参考人、両先生に伺いたいと思うんですけれども、この法案について、これまでの審議でなかなか触れる時間がなかったと思うんですが、現実にこのスキームで果たして機能するかということがやはり問題だと思っております。  この法案では、飛行場や空域の利用調整に関して内閣総理大臣である対策本部長が利用指針を定めるということになっているわけですけれども、このような内閣総理大臣が定めるような概括的な利用指針というものでその対処の現場において果たして機能するので、機能するかどうか、どのようにお考えでしょうか。両先生の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  31. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) 機能するかどうかというふうに答えられれば機能しないのではないかというふうに答えるしかないんですね。というのは、要するに、いわゆるこれから先、政令か何かほかのもので具体的なものが作られていくのでありましょうけれども、いわゆる各国でも、そういう公共施設の利用だとか、港湾、空港というのがほとんどですが、そういうものについては、かなり、何というんですか、強制的なそういう使用方法というのが、これ普通ですよね。  それから、日本の場合には、いわゆる船舶でも安全確保、船舶の安全確保とか民間航空機の安全確保というような、そういう発想でとらえられがちですが、もうちょっとこれは、端的に言えば、要するに飛行制限であり、それから航行禁止なわけですね。ですから、そういうような発想で考えない限り、具体的に実効性が果たして上がるのかどうかということはちょっと私は疑問です。  ただ、そのときに大事なのは、先ほども言ったように、我々の自由と権利というところのどこでそれを折り合いを付けるかということなんですね。したがって、それをいわゆる政令だけですべて任せてしまっていいのかということが一つ疑問がありまして、それはその方向性なり、それからいわゆる概括的な類型化のようなものについては国会等で縛りを掛けておくということは、これは非常に大切なことではなかろうかというふうに考えます。
  32. 山中あき子

    参考人山中あき子君) 今の緊急事態が起こってからの、先ほど私が申し上げました危機管理の方では、多分、現場の判断というものが非常に大事になってきますし、そのスピードという、判断のスピード、実施というのが大事になってきますから、総理大臣からのその伝達という、そういう形では機能しない場合があるだろうというふうに思いますけれども、是非お考えいただきたいのは、その前の予防措置というものを是非検討していただきたいし、講じていただきたい。  その場面では、国が一つの方針に基づいて、全国の地域性を考慮しながらどういう準備をしておくか。どういう、例えば代替エネルギーに関しましても、北海道の北見のように日照時間の長いところでしたらこれは太陽熱を利用できるけれども、湿度の多い雨季のある、梅雨があるこの本州では難しいとか、そういう対応性がたくさんあるわけですから、この対応の方の準備の段階では、やはり全体の図をかいた上で、個々の地域、この点でひとつブロック制ということをもう一度視野に入れていただければ大変いいなと。ですから、実際に起こるまでの準備の段階、予防の段階の一つの流れと、それから起こってからの管理のその流れと、これは二つきちんと分けて想定をしておくという発想は大事ではないかと思っております。
  33. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございます。  四人の参考人先生方にそれぞれの御意見を伺いたいと思うんですけれども、今のこの法案については直接関係ないんですが、今回の多国籍、イラク、イラク、イラクの問題に関して伺います。  多国籍軍への自衛隊の参加について、我々は今のままでいくとなし崩し的になっていくのではないかと非常に懸念を抱いているわけです。湾岸戦争のときには憲法の条文によって参加できないとしていながら、今回はもう参加すると総理大臣が約束してきてしまう。その後を追い掛けるように内閣法制局長官がその裏付けを後から一生懸命後追いでしていくというような、そういうやり方というのは非常に私は危険だと思っているわけですけれども、この多国籍軍への参加についてそれぞれ先生方はどのような御意見をお持ちでしょうか。田中参考人西井参考人、山中参考人浜谷参考人の順序で御意見を賜りたいと思います。
  34. 田中隆

    参考人田中隆君) 多国籍軍への自衛隊の参加について、私自身も明白に憲法違反と考えておりますし、恐らく弁護士法律家の大半がその認識ではないかと思います。また、実態においてもこれはやるべきことではないというふうに考えます。  多国籍軍と言われているものは、実質上は現在イラクを占領している米英軍がおおむねそのまま承継される、そして手続的には新しい状態で治安の維持に当たる、併せて人道救援にも当たるという、人道復興支援に当たる、こうなっておりますが、その一部に人道復興支援が入っているからということだけで、現実的には占領軍の続行であり、治安維持、そのための武力行使を行うことを予定した多国籍軍に加わることは、事実上、集団的自衛権への踏み込みになりますし、我が国憲法が認めないものだと考えます。  なお、占領軍が全く人道的な、ないしは復興支援を行わないような事態というのは逆に全く考えられない。占領した以上、人心収らんや復興のために一部は必ず復興します。その復興が一部入っているから参加できるというところで盾を省いてしまえば、完全に歯止めがなくなってしまうと考えます。
  35. 西井正弘

    参考人西井正弘君) 御質問の点でございますが、イラク復興支援特措法の規定の仕方から見ますと、安全保障理事会決議を幾つか列挙して、その後に、これに関連する同理事会決議に基づいてイラクに対して行われた武力行使及び引き続く事態対象としたこの法律であることは明らかでございます。  そうなりますと、この人道復興支援活動及び安全確保支援活動の範疇であれば、それを今回の多国籍軍への参加という形でも法的には可能だろうと思います。我が国の場合は憲法によって集団的自衛権の行使を行わないという解釈がなされておりますので、目的はそのための軍事行動ではないわけでありますが、万が一それを、何かそういった事態が起こった場合、それをどうするのかというような問題はそれはあり得るかもしれませんが、少なくとも、目的を限定した上で参加すること、そしてそれを例えば政令で新しい安全保障理事会決議を指定するという形を取れば、法的な意味での整合性は保てるのではないかというふうに考えております。
  36. 山中あき子

    参考人山中あき子君) 非常に綱渡りのような、多分これは法的に大丈夫だろう、いやちょっと法的には厳しいだろうという綱渡りの状況であるというのが現実だろうと私は思っておりまして、二〇〇二年の十二月に官房長官の下で国際平和協力懇談会の報告書というのを出しました。その中で、日本国際平和協力の新しい時代に向けて、自衛隊、文民警察、あるいは行政、あるいはNGOの人たちがどのような形でどういう条件であれば参画するか、つまり国連が決議あればいいのかと。現実は必ずしもそういうものではありませんし、もう御存じのように、拒否権を使えば、お隣辺りで何か起こっても何もできないということになりかねませんから、そういうことも含めて、国連のどういう決議、国連の決議がない場合でも日本はどういう条件が整えばどのような活動をするか、そういう基本法をきちんと定めて、国民も納得し、そして海外の人も納得すると、その作業をきちんと早くやってほしいと。  もう一点は、自衛隊の人たちがどういうミッションを基にどういうトレーニングを受けて今サマワに行っているかということと、この今回の新しいミッションとがそごを来さないのかどうか。これは、現場に派遣される人の身になって考えてみれば、もしミッションが違ったらやっぱりトレーニングも違うでしょうから、であれば別のトレーニングをした人を送るということだってあり得るだろうという点で、現実に派遣される身というのももう一方視野に入れてみたら少し見えてくると思いますが、基本的にはこの問題は全く同じで、日本国際社会の中でどのような役割を果たすのかと、そこのところでどのような基本的な理念を持って、背骨を持って国際社会で自由に出ていく人が胸を張って活動できるような体制をバックアップとして作れるかと、これが私は立法府に問われているというふうに思っております。
  37. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 せっかくお願いしたので、一言お願いします。
  38. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) では端的に、なし崩し的参加ということが良くないことはこれ、文字どおりでありまして、これは良くないと思います。  ただ、法的に考えれば、多国籍軍を、いわゆる武力行使型とかそれから国際治安部隊型とか両方がありまして、そのいずれか選択すれば、選択できればできるかなということもありますし、それから、各国が主体性とかそれから指揮権、そういうものが保持できるという確証があれば、それはそれなりにまた参加もできるかなと。  さらにまた、目的からいえば、人道復興支援という目的にだけ貢献するということが果たして可能であるかどうかは別にして、それができるのであればそういう方法もあるかなというふうに思いますが、しかしいずれにしろ、これは基本的な枠組みというのがまだ全くできないわけですね。  ですから、前にも話題には出てきましたあの海外派遣恒久法のような、そういうものの基本原則をきちっと立案した上で、そして今回の多国籍軍、それから国連決議のあるなしですね、それからさらに正規の国連軍、さらにPKO等々の多段階での言わばマトリックスを作った上での考察みたいなものが基本にあるべきであって、その後の参加ということであるのが一番正当な姿だろうというふうに考えます。
  39. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございました。
  40. 高野博師

    ○高野博師君 公明党の高野でございます。  今日、四人の先生方に貴重な御意見、本当にありがとうございます。  まず最初に、西井先生に一つお伺いしたいんですが、イラクの戦争というのは国際法上どういう位置付けになっているのか、そして、いわゆる自衛のための先制攻撃というのは国際法上許されるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  41. 西井正弘

    参考人西井正弘君) お答えいたします。  イラクの戦争といいましても、いつの時点のことを言うのかというのは一つ問題になろうかと思うんですけれども、昨年アメリカ、イギリスを中心としてイギリス、イラクに対する攻撃を開始した時点の問題と、それからサダム・フセイン政権が崩壊した後現在も続いている武力紛争をどうとらえるのかという、その二つに分けることができるのではないかと思います。  前者の方でありますけれども、国際法上、先ほども申し上げましたけれども、第二次大戦後、戦争というのが、侵略戦争は違法であるというふうに考えるとしますと、アメリカ、イギリスの行動を何らかの形で正当化しない限りそれは違法だということになりかねないわけでございます。しかし、私自身は、国内社会と違いまして国際社会は違法性の判定をする機関もございませんし、安全保障理事会は、その任務の一部は果たし得るかもしれませんが、必ずそうできるわけでもないわけですから、現実には国際社会において戦争というものが完全に違法化されているとは考えておりません。そうなりますと、正当、不当という問題は当然あるかもしれませんが、イラク戦争というものが起こった時点で、その政治的判断というのはあったとしても、どちらかの側が違法であるあるいは合法であるという、正当であるという、そういう議論は余り成果を生まないのではないかというふうに思っております。  問題は、サダム・フセイン政権が倒れた後に起こっている今の状態でございますが、一種の内戦状態が続いているとも言えるわけでありまして、それに対して軍事力行使している軍隊があるわけですが、極めて形式的なお答えで済ませようとしますと、これは、イラクのサダム・フセイン政権の後に成立している暫定統治当局であるとか、あるいは今ですと新しい政権への移行期にあるオーソリティーというものがそれを、駐留を認めているという、あるいは安全保障理事会決議に基づいているということを根拠にする以外にはないと思います。ですから、これの国際法的な評価というのは、国内社会において一種の内戦状態が続いていると見るのか、あるいは単なる治安が悪化している状態と見るのか、これも見解の分かれるところであろうかと思います。  それからもう一点の、自衛に対する先制攻撃といいますか、先制自衛の問題でございますが、これも技術の進歩に伴いまして変わってくる問題でございます。かつてのように陸上の戦闘でありますと、隣国に攻め込むだけでもその準備に相当の時間が掛かるわけでありまして、宣戦を通告して隣の国に攻め込むというのがむしろ国内の士気を高めるということにもつながるわけでありますからそういったことが行われるわけですが、今日のようにミサイル時代になってまいりますと、相手方が攻撃の意図を持っているかどうか、あるいは現実にそれに着手したかどうかの判定が非常に難しくなってくるかと思います。  もちろん、情報衛星とかそういったものによって攻撃の意図あるいはその準備状況というのがある程度把握はできるのかもしれませんけれども、例えばある国が我が国に向けてミサイルを発射しようとする、その準備が開始され、あるいはその活動が活発化してくるというその段階が、武力攻撃が発生するあるいは発生の危険が非常に高いという段階と見るのか、あるいは前もってそれをたたいておこうというふうに判断するのか、そこはぎりぎりのところになりますとかなり微妙で、現在の国際法では先制自衛が認められるという学説と認められないという学説と両論あるという、そういうお答えでございます。
  42. 高野博師

    ○高野博師君 ありがとうございました。  それでは、山中参考人にお伺いいたします。  国家安全保障・危機管理基本法の制定は非常に重要な考えだと思いますし、大規模テロとか自然災害とか、あるいは外部からの武力攻撃等あらゆる国家的な危機に対応できる体制を整えておくということは極めて重要でありますし、先生がおっしゃったように、これも時間の問題とか、あるいは発想の転換も必要だとか、あるいは総合的な視座に立ってというような観点がこれもまた重要だと思うんですが、国民保護法も含めて有事関連法案法律条約も一応形は整ったと。浜谷先生の言葉によりますと、普通の国としてやっと端緒に就いたと、こういうことでありますが、これからこれらの法律国民に周知させ、理解させ、そして実効性あるものにしていくという、そこが非常に重要でありまして、そうでないと絵にかいたもちになってしまうと。いざ危機が起きたときに機能しないということであっては意味がないと思うんですが。  ところで、有事関連諸法の成立とかあるいはイラクへの自衛隊の派遣、あるいは多国籍軍への参加、するかしないのか含めて、さらにはミサイル防衛の予算措置とか、いわゆるハード面で我が国の動きがかなり急ピッチで、急ピッチであるということもありまして、国民の中にはある程度不安を持っている方も、ある程度、かなり不安を持っている方もいるのではないかと、こう思うんですが、一方で、万一の事態に備えるというのと、本来はそういう事態が起こらないようにするというそういう予防措置、そういう意味での平和戦略とか予防外交とか、こういうこともダイナミックに展開する必要があるのではないか。いわゆるソフトパワーとしての外交、あるいは平和部隊とか危機管理のための専門家の養成、これも先生おっしゃいましたけれども、そういう人材育成等の教育面、この充実も必要ではないかと思うんですが、その辺について、先生のお考えを伺いたいと思います。
  43. 山中あき子

    参考人山中あき子君) 私は、外交というのはやっぱり両手を使うべきだと思っておりまして、両手の外交というふうに考えているんですけれども、その両手の片方というのは、ある意味でハードの部分であって、そして、今回のようにイラクへの、あるいはアフガンへのそういった自衛隊の派遣というようなのも含めて現実に動いていく部分、それからもう一つは、ミサイル防衛もするかどうかは別として、夢は世界の中にすべての武器もなくなって戦争がなくなればどんなにいいかとだれでも思っているわけですが、歴史を見てみますと、我々人間の歴史を見てみますと、今のところそれは非常に難しいとすれば、やはり備えをしておくという意味で軍事的な準備をある程度するということは、これは必要なことであると。  しかし、もう一方の手は、これは非軍事的な国際平和あるいは平和を構築すると、もうPKOからPBOの時代に移ってきていると私は思っております。つまり、ピースキーピングという、紛争が終わって国連のPKOが行って、そこで停戦を監視していく時代から、ピースビルディングですね、平和を構築していくという時代に変わってきていると。  国連もその対応がまだ少し鈍いので、こういうときこそ日本が、どこかで紛争が起こったら、その武力紛争になる前に、先ほど先生がおっしゃった予防外交というようなことで、その紛争を収めると。しかし、万が一武力行使になって武力紛争になった場合には、どのようにそれを停戦させるかという交渉力とか戦略とか、そういったものをきちんと持つと。そして、それに引き続いて国際平和の維持と、それからそれに引き続く国際平和の構築と、もう一つ、国際平和の定着と、この定着というのが復興支援につながっていくと。しかし、それが全部終わったとしても再発しないという保証はないので、再発の防止という意味では、また紛争予防とか予防外交というふうに戻ってくるというふうに思うんです。  日本は、今回、イラクの人たちが是非日本が我々の友達だから支援してほしいと言っている根底にある幾つかの条件は、日本は敗戦を知っている、日本は占領された経験があると言っているわけで、この経験はアメリカもイギリスもしたことがない。そういう日本独自の経験を基にして、人材の育成ということを含めて、これは先ほど恒久法というお話も出ましたけれども、私は恒久法という自衛隊法律だけではなく、もう境目がなくなっていきますから、自衛隊の人たちも再訓練が必要になってきますでしょう、語学も含めて。それから、交渉力であるとか、あるいは停戦監視、これは日本は余り養成しておりません。肝心な、だれがどこを協力するかという、決めるところに日本がいないんです。それで、アフガンのようにDDRが残って、最も厳しい武器解除、そこへ日本が行かざるを得ないと。  やっぱりこれでは日本の主体性というのは見えませんので、そういう意味で、国際平和協力というその基本法と同時に人材の育成、しかも日本の若い人だけではなく、できれば、アジアの日本ですから、アジアの若い人たちが日本の人たちと一緒に、しかも英語を使うなりしてトレーニングを受けることになると、年間三百人のそういう紛争予防の専門家が日本のおかげで輩出すれば、十年たったらこのアジアに三千人のそういう人たちが出てくることになる。  どんな立場にいようと、どの国にいようと、国家の尊厳がありますから、国が介入できないときに、そういう個人のネットワークというのが非常に大きな役割を果たせる。これが将来の国際平和の基盤になると思いますので、今見えることをやることと同時にもう一つ、中長期展望に立ったもう一つの手を、今、日本が国連への新しい発想も主導しながら、是非実現していってほしいというふうに願っておりますし、それができるのは日本なんです。
  44. 高野博師

    ○高野博師君 ありがとうございました。  浜谷先生にお伺いいたしますが、民間防衛組織についてなんですが、私、ちょっとイメージがはっきりと浮かんでこないんですが、この民間防衛組織とそれから消防、警察、あるいは自衛隊との連携、関係性、これはどういうあれなのか。例えば、自治会のような組織がありますが、そういうものを生かせるのかどうか、どういうあれなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  45. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) 先ほど時間の関係でその辺は詳しく述べなかったことなものですから、御質問いただき感謝しております。  民間防衛というのは、ジュネーブ条約の第一追加議定書の中に、定義としてこのように書いていまして、敵対行為又は災害の危険から文民たる住民保護し、文民たる住民が敵対行為又は災害の直接的影響から回復することを援助し、また文民たる住民の生存のために必要な条件を提供することを意図した次の人道的任務の一部又は全部を遂行すること。その人道的任務の一部というのは、正に警報であるとか立ち退きであるとか避難所の管理とか救助、医療上の役務とか消防。ですから、そういう意味では、今先生がおっしゃったそういうことは全部含まれているわけですね。  要するに、具体的な敵対行為ということには参加しないと。要するに、住民保護、文民防護ということだけの活動をそういうふうにさせているというのが一般的なとらえ方であります。これは、各国によって多少民間防衛の組織や在り方や意図が多少違いますので、全部が全部こうではありませんが、基本的なコアの部分はこのようなものであります。  自主防災組織云々については、これ、こういう形で見てみますとかなりその役割といいますか、任務が重なっている部分があるわけですよね。したがって、地方にある、地域にあるいわゆる自主防災組織とか、それからボランティア団体とか、そういうものを組み込んだ形でやるのが、一番自分の身近にいる、お互いに相互扶助から共助の精神まで含めて一番自分の身の回りでお互いに助け合うことのできる組織、また当てにできることの組織ということが言えるんではないかと思うんです。  要するに、自衛隊と警察、それから自治体職員というのは、いざそういう緊急事態が起こればそれほど余裕のあるところはどこもないと思うんですね。そうすると、正に自分の身は自分で守るという、そういう基本的な国民の実態に近くなるわけであって、そういうところの言わば一番当てにできる組織というのが身近にあるのが一番効果的ではないかと。  そういう意味で、民間防衛という言葉自体がシビルディフェンスというものですから、言葉自体がちょっと抵抗があるかと思いますが、いわゆる市民防護ということですね。そういう組織であるということでございます。
  46. 高野博師

    ○高野博師君 ちょっと、もう一つ浜谷先生にお伺いしたいんですが、国民保護法の中で避難の問題、避難訓練とかいろいろあるんですが、どうもこれから起こり得ることを考えると、ミサイル攻撃とか生物化学兵器とか、そういうテロ行為等が考えられますが、地上戦というのは余り考えられないんじゃないかということもありまして、この避難というのが私、ぴんとこないんですね。  実は、治安のすごい悪いところに何年かいたんですが、ここで結構大きなテロがありまして、何度もありまして、それからクーデター等もありました。それは、一番現実に起こり得るのは緊急事態令を政府が出すと。そして、外出禁止令というのがもうしょっちゅうありまして、これは夜だけの夜間外出禁止令というようなこともありまして、むしろ避難、どこに避難するのかという場所の問題もある、そういう訓練の問題もあるということも考えると、自分の家に、さっき参考人の先生がおっしゃったように、スイスのように備蓄をしておくと、食糧も。ある程度シェルターに近いようなものを、新しくこれから造るときは、建物を造るときはそういうものも考えてやるとか、これの方がより現実的じゃないかなと思うんですが、その辺、どうお考えでしょうか。
  47. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) その点はおっしゃるとおりで、必ずしも、避難というのがその重要な要素なものですから避難という形で一番先に出てくるんですが、その避難の中には、必ずしも外のどこかの地域からどこかの地域に移動するということだけではありませんで、自宅にいるというのはそれは避難そのものなわけですね。ですから、そういうものも全部含んだ概念だということを御理解いただきたいというふうに思います。  ですから、先ほどの民間防衛の中に、要するに立ち退きとかそこにとどまるということも、スイスの場合なんかは全部それ含まれている概念ですから、そういう形のいわゆる市民防護ということでございます。
  48. 高野博師

    ○高野博師君 西井先生にちょっとお伺いしたいんですが、テロの問題なんでちょっとこれは御専門と違うかもしれませんが、テロリストに対して抑止力というのは働かせることができるのかどうか、であるとすれば何が有効なのか、分かる範囲で結構でございますが、教えてください。
  49. 西井正弘

    参考人西井正弘君) ちょっととっさにうまく答えられるかどうか分からないんですが、通常の国家ですとその抑止というものが働く場合が当然あると思うんですが、テロ集団に対して、例えば何でもってテロ攻撃をじゃあきらめさせるかといいますと、事後の処罰であるとかそういったものではやっぱり抑止できないと思うんですね。としますと、防止という観点から、警備であるとかそういった守る方の方策しか実際のところは防ぎ得ないところがあります。  ただし、その守るというのはかなり広い概念でありまして、例えばお金を出し入れさせないというような、今も現実に行っておりますけれども、そういった措置を取りますと動こうにも動けないということが起こってまいりますので、それが御質問の意味でいうある程度の抑止にはつながるかというふうに思います。
  50. 高野博師

    ○高野博師君 同じ質問なんですが、新しい、これから新しい脅威として要するに非対称型の戦争と、こう言われているんですが、要するにテロ対策に非常に重要なポイントかと思うんですが、山中先生、何か御意見があったらお伺いしたいと思います。
  51. 山中あき子

    参考人山中あき子君) ただいま西井先生がおっしゃった金銭、物資、そういったものを止めるというのは一つありますが、マレーシアの前マハティール首相が、虐げられた者の怒りがある限り、いかなる武力をもってしてもテロは根絶できないと言った言葉があるんですが、テロは支援している人たちがいるというのが非常に大きな精神的な支えになっています。支援の理由というのは、人権を侵害された場合もありますし、貧しさゆえということもあります。  アジア各国を見ても、アジアの一員として眺めてみても様々な要件があるわけですが、テロの支援者を支援しなくていい状態に持っていくために国際社会が、最初に私たち先進国の人間が、享受した富というものをいかに後から来るレートカマーの人たちに支えていくかと、そういう様々な経済的な動きも含めて、テロの周りの人たちを幸せにしていくと。少し時間が掛かりますけれども、これは始めなければいつまでも成果が出ないものです。そして、お金も掛かりませんし、それで国際社会が安定していくのならばこれほど安いものはないというふうに思いますので、私はそこの視点を日本はもっと、これまでのODAを使ったアジアとのいろいろな縁もありますし、中東との縁もありますので、追求できるところではないかというふうに期待しております。
  52. 高野博師

    ○高野博師君 ありがとうございました。  終わります。
  53. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  今日は、四人の参考人の方、貴重な御意見をありがとうございます。  まず、田中参考人にお伺いをいたします。  先ほどのお話の中で、軍事緊張のエスカレートを組み込んだ法制を制定することが周辺アジア諸国との関係にもたらす影響をよく考える必要があると、こういう御指摘がありました。  かつて侵略を行った日本が、戦後、国際社会に復帰する際にこの平和憲法を掲げたわけでありますが、そうした今日のアジア情勢とも絡めながら、憲法と今回の有事法制との関係で御意見を伺いたいと思います。
  54. 田中隆

    参考人田中隆君) 実は、有事法制論議を通じて、全体として、憲法あるいは憲法の理念、あるいは憲法というものに対する近隣アジアの方々の理解、認識についての検討が十分ではないんではないかというのを憲法にかかわる仕事をしている弁護士として懸念をしています。端的に言って、有事法制そのものが内容的に見て憲法に直接抵触するという内容も帯びていることは法律家の目から見れば私は明らかだと思っているんです。  言わば法律の組合せで説明がされます。周辺事態、さっき例出しましたが、周辺事態では、米軍が武力行使をしています。自衛隊後方支援しています。それが予測事態になります。その米軍に弾薬を供給します。これについて、法律上の説明であれば、二つの法律それぞれやっているんだから全く別なんだという説明は法的にはまあ一応可能なのかもしれないんですが、現実にそれが軍事や外交の世界あるいはアジアの目から見たときに、私には、ちょっと法律家が言うのは何だと、どうかと思いますが、レトリックにしか思えないんです。  たしか石破防衛庁長官の答弁でしたか、外から見たら一緒にやっているように見えるねという言葉がありました。法的には違うけどと、こういう説明付くんです。法律的には違うかもしれないが、実はむしろ大事なのは、外交や政治や軍事の世界では、相手がある話なんですから、それぞれの国からどう見られるかという実態なのではなかろうかという気がします。  もう指摘するまでもなく、海上輸送規制法は交戦権、否認された交戦権を使ってしまうことを、事実を、素直に読めばそうならざるを得ないと思いますし、先ほど予測事態の艦隊や空軍の集結が武力の威嚇と相手の国に取られてもしようがないということも指摘をしました。それぞれが憲法の条文あるいは憲法理念に抵触すると思います。  ただ、より大きな問題は、そういう軍事法を今作っていくこと、その大本のシステムを発動させることが、これまでこの国が進んできた、いろんなことがありましたが、進んできた、平和憲法の下で進んでいくというありようを変えてしまう、少なくとも変えたというふうに理解されてしまうことではないかと思います。  この間、例えば朝鮮半島、韓国の法律家とは何度も行ったり来たりして議論をしてきました。韓国の弁護士集団、自由法曹団のような集団があるんですが、その弁護士に言わせると、今や北朝鮮は脅威じゃないんだと。自分たちにとって一番脅威なのは、日本がどう軍事化して、アメリカ、韓国をさておいて武力行使に踏み切ってしまう、その条件を開くんじゃないかというのを繰り返し言います。何で日本に平和憲法があるのにそうなるんだという疑問をやはり持つんだと思います。  アフガンやパキスタンの方にもかかわりましたが、この国の理解は、やはりさっきも先生おっしゃいましたが、敗戦があり、そしてそこから平和憲法を持って立ち直った国だということに対する評価が大変大きい。これこそがこれからの国際貢献に生かしていく非戦の道、もう私、政治専門家じゃないから繰り返しませんが、予防外交であるとかあるいは復興支援であるとか、非軍事、民生の方法は十分あるはず。それを有事法制作ることによってねじ曲げてしまうことになる。憲法を、平和憲法を持った国という理解を失ってしまうという気がします。  なお、その平和憲法について、時代が変わったから憲法も変わるべきだという議論がどうもあるかと聞いています。率直に言うと、理念という点でどこが一体変わったのか、私には理解ができません。あの憲法が制定された、六十年、制定史を読んでも基本にあったのは非戦という考え方、皆さん方の先輩の議員の皆さんがそう国会で答弁されました。六十年たって冷戦が崩壊をして、今もう一度戦争の、あとテロの時代を迎えて、そうして今世界で叫ばれているのが正に非戦であり、平和的、平和の構築ではなかったかと思います。その理念を示した平和憲法こそこの国が実践すべきだし、仮にも有事法制を制定することによってその憲法の理念をねじ曲げるべきではないというのが私の意見です。
  55. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。  もう一点、田中参考人にお伺いをしますが、米軍が行う作戦行動とのかかわりについても先ほどお話がありました。イラクなどの事態を見たときに、様々な先制攻撃等に日本が関与をしていくということの関係で危険性が指摘をされたわけですが、国会の中では政府は、アメリカとの信頼関係、そしてアメリカというのは国際法を守る国なんだから大丈夫なんだと、こういうことが繰り返しあるわけですね。一方で、法的にはこのアメリカが行う行動に何ら制約がないんではないかと私は見るんですが、法律家としてこうした関係についての御意見お願いをいたします。
  56. 田中隆

    参考人田中隆君) これも実は三年前からの有事法制の議論を通じての法的にも重大論点の一つだっただろうと思っています。  あの事態対処法制の前提にある武力攻撃事態法、その事態法によって米軍の行動をサポートします。どのような行動がサポートされるかということについて、法律上書かれているのはただ一つなんです。日米安全保障条約に基づいて武力攻撃を排除するために行う行動、簡単には安保に基づいた行動をサポートすると、こういうことしか限定がありません。じゃ、その米軍がどのように行動するのかということは、政府が取りまとめて、そして国会に提出する対処基本計画にすら書かれませんから、国会の側から米軍の作戦の枠組み行動枠組みについてチェックすることもできない、あるいは条件付けることも法的にはできなくなります。もちろん、国民には全く知らされないことになります。じゃ、戦争だからそうだというふうにならないのは、自衛隊の作戦については対処基本計画に書かれて、大綱でしょうけれども、明らかにされ、そして国会でチェックされる、議論の対象になるんです。米軍だけが同じ戦争の場面でフリーハンドになっているとしか考えられないんです。二年前も私ども指摘しました。  どうやらそれについては、米軍というのは日本の主権の下にはないから法令では規定できないんだとされているものだと思われます。その一点はそうかもしれません。しかしながら、主権を言うのであれば、米軍を日本の主権の下の国土でどのように行動させるかとか、ましてや日本日本国民がどのような行動を支援、サポートするかについては、これは主権国家日本が自主的、自立的に決定できるものではないのかと私どもは指摘したんですが、残念ながら有事法制全体通してそのようなアメリカに対するこの国の自立の法的担保が全くありません。  先ほども多少議論が出ましたが、その米軍が例えば、国際法に抵触すると私は思っていますが、先制攻撃を行っているとか、残虐無比な劣化ウラン弾を使用しているとか、あの刑務所で拷問等があるなどというのはもう公知の事実になっている。今度この有事法制の下で同じことをアメリカがやったときに、どうチェックするんだという問題が起こります。  で、政府がそれを万全にチェックするという姿勢をお持ちなら、運用上のチェックも法律は確かに可能ですからできるかと思うんですが、率直に申し上げて、この国会、衆議院、参議院ともに、あの政府が答弁された姿勢ではそれが十分できると思えないんです。先制攻撃と言うけれども、国連憲章に合う自衛権を越えてやっているとは思わないとか、あるいは拷問についても、アメリカは国際人道法、ジュネーブ条約を遵守する国だと考えるとか、劣化ウラン弾は健康上被害があるということはきちんと言われているわけではないとか、事実上アメリカ追認型の答弁が余りにも目立ちます。  世界には確かに事実を裁く法廷はありません。ありませんが、仮にそのような法廷があったとしたら、このような事実認定に裁判結果は、私、ならないと確信を持ちます。はっきり言って、その政府の姿勢がきちんとしない間に、アメリカにフリーハンドを与えるような法制を作って、本当にこれでいいんだろうかという懸念を持つ次第です。
  57. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。  今、憲法と安保のことなどについてお聞きをしたわけですが、次に浜谷参考人にお伺いするんですが、九八年に出された「防衛法研究」に書かれたものを読んでおったんですが、このように書かれております。「政府解釈による「憲法の枠内」を厳格に当てはめれば、安保条約の運用上の効率は相対的に低下しかねないばかりか、真の同盟関係を崩壊させかねない事態も想定される。」と。「また逆に安保条約実効性を向上させ、国家の独立と安全および国民の生命と財産を守ろうとして防衛協力を推し進めれば、限りなく政府の憲法解釈の枠外、とりわけ集団的自衛行使の問題につきあたるのである。」と。こうした上で、「したがって両者を満足させようとすれば、憲法解釈の枠内での最大限の実効性確保という、常に違憲の疑義にさらされながらの困難かつ中途半端な政策に終始するか、論理優先の非現実的解釈で実態を糊塗するしか選択肢はなくなる。」と、こうお書きなんですが、今回の法案というのは、先生の言われたこの選択肢ということからいえばどういうところに当てはまるんでしょうか。
  58. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) それが、その解釈が非常に積極的に有効になるというふうに考えます。要するに、そのぎりぎりの選択肢、ぎりぎりの選択肢の中で実態を糊塗するようなことをやり続けていたんでは、いわゆる独立国としての安全保障政策そのものが立ち行かなくなる、それはもう先生もお考えだと思いますが、全く同じです、それは。  したがって、国家として何をすべきなのかという国家戦略というようなものをきちっと打ち立てるためには、どうしてもその今の政府解釈の一部であるとか、そういうものを変えなければしようがない、若しくは憲法の改正にまで踏み込んでそういうものをやらなければしようがない、それがいわゆる国民の意思であるならば、そういう形でそれをすっきりさせた方がいいと。ですから、今のような綱渡り的な解釈をやらなければいけないような、そういう実態はおかしいのではないかという意味で書いたのですから、今の場合はそれがおかしくなくなる可能性が一つ増えたということで、要するに評価しております。
  59. 井上哲士

    井上哲士君 次に、西井参考人にお伺いをいたします。  先ほどのお話の中で、大規模テロへの対応のことで、その被害国がこのテロに対しての武力行使を行うことは国際法上あり得るんだというようなお話がありました。それについてはいろいろ議論はあろうかと思うんですが、例えばアフガニスタンに当てはめた場合に、仮にアルカイダに対しての武力行使が可能であったとしても、実態としてはアフガニスタンという国に対する武力行使が行われたわけですね。こういうことが許されるような国際法上の根拠があるんだろうかと思うわけですが、その点、いかがでしょうか。
  60. 西井正弘

    参考人西井正弘君) お答えいたします。  先ほども申しましたように、基本的には国際社会というのは国家を単位としておりますので、私的な団体というふうに言うことができるテロ集団が行った行為に国家がどの程度の関与をしていたのかということが一つ問題になろうかと思います。  直接、国家の指示、指令に基づいてテロ集団テロ行為を行ったのであれば、それは当然その国家そのものの責任になろうかと思うわけです。ところが、アフガニスタンの場合、タリバン政権というのはそこまでアルカイダに指揮命令をするという行為を行っていたかどうか、それははっきりしておりません。  そうではなくて、私的なアルカイダというテロ行為をタリバン政権があるいは黙認をしていたのではないかという、そういう考え方はできるかと思います。その場合に、国際法はこれに対してどういう措置を取り得るのかということにつきましても必ずしも明快な見解が出ているとは申せません。  ただ、先ほど、指示、指揮命令とか、あるいは支配というような場合とか、あるいは国家テロ行為を認知し採用したような場合、こういった場合は明らかに国家に責任が帰属するという考え方が二〇〇一年に国連国際法委員会で採択された国家責任条文草案の中に明記されております。ですから、国際法の観点からしますと、そこまでは明快だろうと思います。  問題は、その私的なテロ集団に対して実質的な関与をする場合ということと、それから黙認をした場合だと思いますけれども、実質的な関与があればそれは場合によっては他国に対する国家自身の違法行為だというふうにとらえる考え方は、一九七四年に国連総会が採択しました侵略の定義という決議で規定されております。  ですから、そこまでは国際法に違反する行為だというふうに言えるかと思いますが、御質問の最後のカテゴリーの場合、黙認をしていたという程度のときに、アフガニスタンという国家に対して軍事的な行動をアメリカが取ったらアフガニスタン国家に対する攻撃に当たるのではないかという御質問ですと、そこについては国際法が必ずしも明快には規定しておらず、私自身は、それもアルカイダに対する攻撃を受忍しなければならないという程度の責任をタリバン政権は負っているというふうに私は考えております。
  61. 井上哲士

    井上哲士君 タリバン政権崩壊後も様々な攻撃もあるわけでありまして、どういう説明が付くのかなと思うんですが。  もう一点、西井先生にお伺いしますが、憲法海上輸送規制法についての問題ありというお話もございました。当委員会でも議論になってきたわけですが、政府は、自衛権行使とは別に自衛権に伴うものが停船検査なんだという説明をしまして、先ほどありましたような範囲などについて、拿捕と多少違うんだと、こういう説明をするわけですが、実際には、先ほど言われましたように手続的には余り中身的にも変わらないということなわけで、自衛権行使自衛権に伴うものとして使い分けるということが国際法の立場からいかがなんだろうかという点、いかがでしょうか。
  62. 西井正弘

    参考人西井正弘君) その自衛権に伴うものという発言につきましてちょっと十分に承知しておらないものですから、少しお答えが的外れになるかもしれませんが、私自身の見解を申し上げますと、先ほども意見陳述の中で申し上げましたが、これはやはり国際法の観点から見ますと交戦権行使であるというふうに私は考えております。  ところが、国際法上は我が国は別に交戦権を否定されているわけではございませんので、当然国家としての交戦権はあるわけですけれども、憲法解釈の問題としてそれを行わないというふうに言っているものですから、恐らく政府の答弁では、自衛権あるいは自衛権に伴うものという理由付けでもって正当化しておられるのだろうと思います。  私自身は、仮に今回この法案で行われている措置実施したとしましても、もちろん海上捕獲そのものの歴史を見ましても、それをやれば当然中立国との間では摩擦が生じることは過去の歴史が示しているところでありますので、起こり得るかもしれませんが、国際法で認められたその海上捕獲の要件を満たしてさえいれば、国際法の観点からは違法性を問われるということはないというふうに判断しております。
  63. 井上哲士

    井上哲士君 最後に、田中参考人にお聞きしますが、先ほど浜谷さんの、先生のお話では、国民権利配慮は世界一だと、この法案はと、こういうお話もありました。  法律家としてはいろんな国民権利の問題の御懸念があろうかと思うんですが、その辺りをお願いをいたします。
  64. 田中隆

    参考人田中隆君) 簡単に申し上げます。  そもそも論からいいますと、自由法曹団の立場からいいますと、戦争というのは人間を殺傷して物を破壊することを正義あるいは大義とするという、そういう性格を持っていますから、最大の人権侵害は戦争そのもの。そうすると、その人権を守って戦争をすることができるかと考えると、私どもは一般にはそれはそもそも形容矛盾だというふうに答えます。本当に人権を尊重しようと思うなら、どんなに苦労をしても戦争をしないことだ。してしまえば、幾ら法を規定したところで残念ながら人権は抑圧されるだろうと、これは一般論なんです。  ただ、そのことをおいても、今回の有事法制事態対処法制の中に、やはり国民人権を直接制約する原理や法理が随所に盛り込まれているということは直視しておく必要があると思います。自衛隊法による保管命令違反とか、あるいは国民保護法制による立入禁止違反とか、もう数え出すとかなりの数に上ります。  確かに、戦前のあの治安維持法のように言論、思想、信条を直接取り締まる条項はないんですが、最終的には刑罰規定でもって国民行動を規律させますから、それが、さっきから繰り返して指摘している、例えば演習や訓練等々で地域を覆っていったときには、やはり平時からある種の威力を発揮することになると思うんです。現実に演習が行われると、本来、任意のはずですね、反対する、嫌だよと言ったときに、確かに捕まりません、しかしながら、村八分にはされる可能性があるというような構造になっておると思います。  なお、この間の審議等で、基本的人権を尊重するという規定は入っているんですが、どうも答弁とか運用を考えると十全と言いにくいのも懸念するところです。二つほど挙げておきます。  一つは、報道については最大限自由だというふうに理解をしていたんです。ところが、どうも答弁を読んでいますと、民間放送が知り得た軍の装備、人員、輸送道路等が放送されるのは敵を利する、日本のためにならない、よって放送が制限されるのは当然だと言いつつも、その言論、表現の自由が利敵行為というふうに理解して表現されている答弁が目立ちます。今回の修正でも、どうやらその報道の自立性については見送られていますから、やはり報道というものについての自由が万全とお考えかどうかについては懸念が残ります。  もう一つ懸念は外国人人権の問題で、何度も指摘が国会でもされていますが、国民保護法のどこにも外国人に対する取扱い上の差別を禁止した規定は入っていません。答弁では、人権規定は性質上適用されないものを除いては外国人にも適用すると、こうは言っているんですが、事は選挙権の議論をしているわけじゃないわけですから、国民保護する、住民保護するときに適用できないような人権があるならあるで、これはもうはっきりさせるべきですし、そこをあいまいにすれば、結局、敵性外国人的な理解を生み出していくことになるのではないかという懸念をしています。
  65. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。
  66. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 社民党の大田でございます。  四人の先生方、御苦労さまでございます。  まず最初に、四人の先生方参考人にそれぞれ、ごく素朴な二つの質問をお伺いしたいと思います。  一つは、法律の専門家として、戦争の教訓というのが何か得られたか、得られているかどうか、その点についてそれぞれからお伺いしたいと思いますが。  もう一つは、戦争の歴史を振り返ってみますと、第一次大戦から今日に至るまでの戦争、歴史を振り返ってみますと、第一次大戦のときは軍隊犠牲者、軍人の、職業軍人の犠牲者が圧倒的に多かったわけですが、今は全く逆転して民間人が犠牲になっていますね。その観点から、軍隊というのは国民の生命、財産を守り得る存在とお考えかどうかということをお伺いしたいと思います。
  67. 西井正弘

    参考人西井正弘君) お答えいたします。  御質問にまとめてちょっとお答えさせていただきたいと思います。  先生御指摘のように、戦争の形態がどんどん変わってまいりまして、犠牲者が軍人から民間人に変わってきているということはもう周知の事実だろうと思います。総力戦の時代になり、戦場というものが特定できない時代になってまいりますと、必然的に民間人の犠牲者が増えてくる、これが二十世紀の悲惨な歴史だろうと思います。さらに、例えばベトナム戦争のようにゲリラ戦になってまいりますと、そこでの犠牲者は、ゲリラと市民の区別が付かないということもあるわけですが、市民の犠牲が更に増えていくという、そういう事態になってまいったわけでございます。  そこで、法律の世界でこの戦争というものがどういった教訓を与えてきたのかということでございますが、多分プラスの側面と、マイナスと言ったらちょっと語弊があるかもしれませんが、やはり二つの意味があるのではないかと思います。  一つは、戦争というのは非常に悲惨なもので、私は直接知らない世代でございますが、その戦争というものが終わった段階では、もう二度と戦争をすべきではない、してはいけないという意識がもちろん人々の間に、そしてそれは政治、政府の中にも、あるいは法律の中にも反映されると思います。  具体的な例を申しますと、それが今国会で審議されておりますジュネーブ追加議定書だと思います。これは、ベトナム戦争のあの経験を反映して、極めてゲリラに有利な規定を含んでおります。それは、ゲリラの保護という観点から見ますと確かに良くなったようにも思えるのですが、考えようによりますと、これは市民の犠牲を増やすという側面もあるわけです。戦闘員と非戦闘員を区別するというのは、一九〇七年のハーグ条約以来、四つの要件を満たしていないと戦闘員として認められませんし、必然的に捕虜の地位を与えられないわけですけれども、ところが、ゲリラが市民の中に隠れて、突然武器を取り出して、市民と同じ格好をして相手に対して攻撃を始める、こういうベトナム戦争型のゲリラ戦ですと、相手になる軍隊の方はだれが本当のゲリラかというのが分かりませんので、むやみやたらにといいますか、区別せずに射撃してしまう、その結果、市民が非常に犠牲になる。  そう考えますと、この一九七七年のジュネーブ追加議定書自体を見ていきましても、すべてが何か戦争の教訓を正しく読み取っているというふうには私には思えない部分もあります。もちろん、そうではなくて、戦争の犠牲をできるだけ減らそうとする努力の跡も見られますので、プラス、マイナス両方があろうかというのが私のお答えでございます。
  68. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) 戦争の教訓ということでございますが、私も戦後生まれでありますから、そういう意味では直接的な教訓を得られているというわけではありません。  ただ、戦争自身が、先ほどもありましたが、最大の人権侵害であるということは同感でありまして、そのことから、二度と戦争を起こすなという、そういう発想はそれは大事にしなければいけないというふうには考えます。  ただ、確かに日本憲法九条は戦争を放棄しておりますけれども、戦争そのものが日本を放棄してくれたかというと、必ずしもそうでもないかもしれない。そうすると、戦前とは比較にならないぐらい民度が高まった、こういう中で、民主的な議論を闘わせる上で一つの備えを設けておくということ自体は可能ではなかろうかと。ですから、それがまた戦争を抑止する力になるかもしれないというのが私から見る戦争の教訓であります。  軍隊のいわゆる役割については、これは軍隊というのは正に二面性があるということであります。侵略にも使える、防衛にも使えるということでございます。そうしますと、日本の場合、いわゆる民主的なコントロールが掛けられている実力組織ということになりますと、正にこれは抑止力としての効果というような面が確かに否定はできないだろうと。そのときに重要なのは、それが二度と外向きに使われないような民主統制をいかに掛けるかということでありますから、国会の重要な責任がますます民主社会の中では大きくなっていると。ですから、国民一般の期待もシビリアンコントロールを掛けられる国会にそれだけ期待が高まっているということは指摘できるかと思います。
  69. 山中あき子

    参考人山中あき子君) 私は法律家でございませんので法律的な観点ではないのですけれども、第二次世界大戦の後、冷戦時代がずっと続きました。これは、武力が抑止力になって、まあ危ういときもありましたけれども、使わずに何とか国際的な均衡が保たれてきた。今、私ども、冷戦後にいるわけですけれども、ここで三つのキーワードがあると私は思っております。  一つは、今、過渡期に世界じゅうがいて、一体私たちはどういう国際秩序に向かっていけばいいのか。NATOももう昔の役割は要らなくなって、ワルシャワ条約機構もなくなって。そうしますと、一体どんな世界に向かっていけばいいか。大きな試みはEUだと思います。  私はそれは、アゲンストからウイズ、つまり対峙する、相敵対するというような発想から、今、冷戦後はウイズ、つまりその地域全体の国も、ネーションステーツがみんなでその地域の平和を考えなければいけない時代になっている。国連というのの役割が大きくあったとしても、地域地域でそれを考えていくというような時代になりつつあるんですが、まだそれに対する考え方というのは個々ばらばらなところがあると思っています。  それで、国益というものがどういう形で追求されるかという意味で、実利的な国益を得るために武力を使うということはある意味では前近代的な発想だと私は思っていますけれども、まだそこから脱却できない部分というのも国際社会の中にはあるわけで、それが信頼を醸成する、信頼を得るというのが国益であるというような発想に移っていくために、今苦しみながら努力をしているところだと思うんです。  ですから、逆に日本は、平和国家というものを標榜していますから、やっぱりどういう歯止めを自分たちで掛けていくかというところで基本法などの制定というのが非常に大事になってくるというふうに思っております。
  70. 田中隆

    参考人田中隆君) 戦争そのものの歴史の専門家ではありませんので、ポイントだけ。  全体として戦争というものを法律面で見たときの最大の前進評価は、やはり戦争というものを可能な限り違法化し、そして発動する場面を限定してきたということだと思います。その戦争違法化の中で国連憲章が作られ、その延長線上に日本国憲法が更に進めてあったと、こう理解しています。  で、あの冷戦が続いて、時々ベトナム戦争のようなこともありましたけれども、やはり第二次大戦の時期の戦争違法化という流れが様々な矛盾がありながらも枠組みを維持してきたというのが、第三次世界大戦を生まなかった一つの理由なんだろうと思うんです。  実は、考えねばならないと思っていますのは、国家国家が激突するという形の戦争から、何度か出ました非対称の戦争ということに戦争の局面が変わってきています。これは事実だと思います。その原因にあるのは、やはり地域、国土の貧困、亀裂等からテロの土壌が生まれ、あるいはテロリズムが発生してしまう等にあるはずです。この非対称の戦争の時代になったときに、その戦争をいかに規律するのかということが今問われているような気がします。  懸念をするのは、その非対称の戦争になったことから、かえって戦争武力行使の概念を拡張してしまう、そのことがもたらす事態がこの間、不幸にして起こっているような気がします。その方法では、戦争は、失礼、テロは根絶できない、平和の構築だと、繰り返しになりますが、そのことが次の課題だと理解しています。
  71. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 西井参考人お願いいたします。  過去に戦前の日本がかかわった戦争国際法が有効性を持っていたとお考えですか。持っていなかったとすれば、どこに原因があったとお考えでしょうか。
  72. 西井正弘

    参考人西井正弘君) お答え申し上げます。  我が国戦争にかかわりましたのは、もちろん細かいものまで入れますとかなりあるかと思いますが、大きなもので言いますと、日清、日露の戦争から始まっているかと思いますが、日清戦争及び日露戦争におきましては、我が国は極めて国際法を遵守した模範国家であったと思います。それは、開戦の詔勅の中にも国際法を遵守するということが明治天皇によって言われておりますし、国際法をとにかく守らせるために、軍隊法律顧問として国際法の学者を随行させるというようなことをやっていたわけでございます。  その理由は、これも歴史学の方では恐らく周知の事実だろうと思うんですが、我が国は不平等条約に悩んでいたわけでありまして、条約を改正するためにはヨーロッパ並みのいわゆる近代国家にならなければいけなかったわけで、そのための法律の遵守、法の整備ということが近々のテーマであったわけでございます。そのためもありまして、非常に国際法教育が盛んであったと私は理解しております。  ところが、その後、我が国の教育としましては、士官に対する教育は多分十分行われていたんだと思うんですけれども、兵員に対する教育が必ずしも十分ではなかったように思われます。その結果として起こったのが第二次大戦といいますか、太平洋戦争あるいは大東亜戦争の悲劇ではなかったかと思います。  特に捕虜の虐待であるとか、そういった戦争犯罪で処罰された兵士たちの原因なんですけれども、これもそれだけが原因だとは思いませんが、一つは、戦陣訓等で捕虜というものを、捕虜になってはならない、恥ずかしい行為であるというような、そういう認識を植え付けたことだと思います。ところが、御承知のように、西欧の発想ですと全く逆でありまして、戦闘員が力限り戦って、力尽きて最後には降伏をするということは、それは名誉ある地位であって、その捕虜に対して名誉ある地位を与えなければならないというのが、今回議論されておられますジュネーブ条約あるいはその前のハーグ法と言われている戦時国際法の基本的な考え方だったと思います。  そういった点で、お答えになるかどうか分かりませんが、一つの原因は、戦争というものに対する教育がややある時期から不足したといいますか、問題が生じたのではないかというふうに思っております。ただ、これはもう少し研究してみる必要があろうかと思います。
  73. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 浜谷先生にお願いいたします。  去る四月十二日付けの産経新聞に先生の談話が掲載されておりますが、その中で先生は、有事の際の私権制限国家国民のための措置であり、法の精神にもかなうという趣旨のことをおっしゃっておりますが、しかし、国民保護法案の第四条の「国民協力等」の条文で、国民に対して協力を強制してはならないというふうに規定しておりますが、この規定についてどうお考えですか。
  74. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) それは、だから、先ほどもちょっと申し上げたことなんですが、強制せずにすべてのことがうまくいくんだったら、それは強制しない方がいいというのはそれは同感でありまして、ただ、この法の実効性、この法律は何を目的にしてどういう状態を前提にして作られたかということを考えたときに、法の実効性が満足されるかどうかということが重要な視点だと思うんですね。その意味で、そういう制約もやむを得ない部分があるのではないかというふうにコメントをしたんであって、制約まずありきというような、何が何でも国民義務化すべきだとか、そういう論で言ったわけではないわけです。  要するに、法の実効性をいかに担保するかということになれば、余り美辞麗句を並べた上で実効性が伴わなかったとしたら何のための法制かということになるということが申し上げたかった点であります。
  75. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 田中参考人お願いいたします。  先ほど、既にもう部分的にはおっしゃっていましたけれども、有事法制に代わる安全保障体制をどのように構築すればいいとお考えでしょうか。
  76. 田中隆

    参考人田中隆君) 極めて壮大かつ難しい問題で対応に困っておりますが、理念的には、私は、この国はやはり非軍事、少なくとも外との関係では非軍事に徹するべきだという考え方を堅持したいと思っています。  それができないものかどうかということを、言わば誠に小さい世界ですが、弁護士の中で検証するために、先ほどから話をした海外の弁護士との懇談であるとか、あのNGOとのかかわり等を続けてきました。まだまだ初歩的ですが、この国の若い人たちもそういう活動を続けており、それが朝鮮半島でもイランでもアフガン等でも評価され、受け止められていると思います。  相当の経済力を持ち、そして、アジアの中では、その意味では被爆国であり、あるいは敗戦国であり、その中から復興した国だという大変な評価を受けています。その国がもう一度、非戦、平和という方法で、経済力も投入してアジアとネットワークを結んでいくこと。私どもは北東アジアの何らかのまとまりが必要だと思っていますが、そこまで私まだ詳しく構想しておりませんが、そういう努力を蓄積すること。そして、それを可能な限り国が支えること。これがこの国の平和を守る、安全保障の一番根っこにあるべきものではなかろうかと考えています。
  77. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 時間がございませんが、最後に山中参考人に一問だけお願いいたします。  危機管理の観点から、戦前の有事法制と今我々が審議しているところの有事法制と、基本的にどこがどういう点で違うとお考えですか。
  78. 山中あき子

    参考人山中あき子君) 先ほど危機管理基本法と申し上げましたのは、有事というのの発想が、戦争ということの概念が変わってきているわけですから、相手からの武力攻撃というのが、先ほどのあの原子力発電の話もありますけれども、ほとんどないだろうと思いつつも、いろいろな国際情勢を見て、あるかもしれないと。しかし、もっと有事なのは事故であり災害でありあるいはテロ、国内的なサリンの事件もありましたから、そういうものに対してどういうふうに国民を守っていくかというのは、これまでの概念の中で、あるいはこれまでの法律の中で論じられてこなかったと。そういう意味で、今回の、有事という形を取っていますけれども、これから来年に向けての基本法の中には、もう少し視点を変えて、きちっと総合的な、あるいは中長期的な日本の国の在り方というものを起点にしたものにしてもらいたいというふうに思っています。  今のところ、その言葉で言った部分と、沖縄のように、国民が国のためと思ったものがいつの間にかアメリカ軍の基地になってしまった。これは、私ははっきり言えばやっぱり国というものが、敗戦も含めてきちっと機能しなかったし、その地域の人に対して本当に誠実でなかったというのは事実だったと思いますから、そういうことの繰り返すことのないような法律を作るために全力をやっぱり国民全体が意識を持ってかかわっていくことが必要かというふうに思っております。
  79. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 ありがとうございました。  終わります。
  80. 山本正和

    山本正和君 大変どうも御苦労さんでございます。  最初に、西井先生に教えていただきたいんですけれども、アメリカが、国際法の関係ですけれども、アメリカがイラクに対してああいう形でもって攻撃をし、占領したと。このことについていろんな議論があると。これは国際法違反であると。また、場合によっては許容されると。いろんな議論があるんですね。  これはいいんですけれども、戦争のきっかけは例の九・一一のもう大変なビル爆破で、私もそのときワシントンにおったんですけれども、けしからぬと言って犯人捕まえて徹底的に戦えというふうな気持ちになったんですよね。  それはいいんですけれども、日本がもしも、例えば六本木タワーでもいいし新丸ビルでもいいし、そこへぼかんと攻撃を受けたときに、それじゃ一体どういう格好でそれに対して報復し、若しくはそういうことをさせないような取組をするかと。我が国は、国際法上、そういうことはすることは禁止されているのかいないのか。アメリカの場合はやったことに対して、議論はあるにしても、現実があるわけですね。  我が国がもしそういう攻撃を受けた場合に、どういう対抗措置を取れるんだろうかと。これ国際法上、許される範囲というのはどこまでなんだろうかと。この辺をちょっとまずお聞きしていきたいんですが。
  81. 西井正弘

    参考人西井正弘君) うまく答えられるかどうかちょっと自信はないのですが、我が国の場合、憲法というものを前提として考えるという立場もあろうかと思いますが、今御質問のように、国際法の観点からということでしたら、取り得る措置には制約はないわけでございますので、仮にテロリストの攻撃であったとしたら、そのテロリストに対する、もちろんそれを国際手配をして逮捕を各国に要請するとか、そういった手段は当然取ると思うんですけれども、軍事力でもって具体的に対抗するというのは多分、私の専門ではございませんが、日本自衛隊の能力からしても、それは現実には余り起こり得ないことではないかというふうに思います。  ですから、取り得る措置としましては、本当にありとあらゆる手段を使う以外にないと思うんですけれども、今御質問について考えておりまして、特に何か制約があるかと言われると、国際法的に我が国が取る措置に対する制約というのは他国の主権を侵害しないというぐらい以外にはちょっと考えられないんじゃないかというふうに思います。
  82. 山本正和

    山本正和君 まあおっしゃることで、私もそういうことだろうと思うんですけれども。  ただ、我が国が仮に今度は国家としての攻撃を受けたと、どこかの国からですね。その場合に、攻撃を受けたことが、かなり強力な武器を使用されて、例えばミサイルですけれども、本土攻撃を受けたと。となると、それに対して、これを排除し、止めようとすれば、相手の国の攻撃の主体の基地をたたかなければ制止できないと。こういう場合、これ、やっぱり自衛力というのを行使するといった場合に、これは国際法上許されるのか許されないのか。憲法上はいろいろ書いてありますけれども、国際法上は許されるか許されないか、それから、憲法とのかかわりではどうなのか、その点はいかがでございますか。
  83. 西井正弘

    参考人西井正弘君) 国際法の観点から申しますと、それはもう明白でありまして、相手方の基地がまた再度ミサイル攻撃計画しておれば、それをたたくことは当然できるわけでございます。  憲法の観点からどうかと言われますが、我が国武力攻撃が行われ、そしてまた再度行われようとしているときに、例えばミサイルが発射されて以後でなければそれに対応できないということでは防衛ということはできないわけでありまして、それを可能にするのがそのミサイル防衛なのかもしれませんが、能力があるかどうかは別として、相手国の基地をたたくことは憲法上もできると私は考えております。
  84. 山本正和

    山本正和君 憲法上も可能だと、こういうことですね、これは御見解として承っておきますが。  そこで、次に、これも国際法上の観点からお聞きしたいんですけれども、第二次大戦では、連合軍も、いわゆる同盟軍、枢軸も様々な戦いをやったんですけれども、その戦闘行為の中で、例えば我が国は南京における大虐殺とかいろいろと言われて、戦争犯罪で問われたりしましたですね。  しかし、連合国側の戦争犯罪というものについて、これは国際社会で問われたんだろうかと。例えばアメリカの広島、長崎の原爆、あるいは、何というか、正に無差別爆撃ですね。こういうことは連合国にも、またそれからノルマンディーの上陸のときにも若干あったようだけれども、ドイツ軍と戦うときに、ドイツの国内における無差別攻撃、こういう連合国側のいわゆる国際法違反と思われるようなことについては問われたのか問われていないのか、この辺はいかがでございますか。
  85. 西井正弘

    参考人西井正弘君) お答え申し上げます。  御承知のように、戦後行われました戦争犯罪裁判というのは、我が国やドイツの敗戦国の戦争犯罪人の処罰に限られておりまして、連合国側の戦争犯罪は直接裁かれてはおりません。  ただし、我が国の国内裁判所で、広島、長崎に対する原爆投下行為が当時の国際法に違反した違法な行為であったということは認定されておりまして、一審でもう確定してしまったものですから、原告の主張は敗訴だったわけで、それで終わっているわけですけれども、国内裁判所としてはその認定がなされております。国際法の世界では結構有名な判例でありまして、世界的にも知られております。  ですから、アメリカの行った行為が国際法に違反する行為があったということは、実は、幾つかの我が国の国内裁判所であるとか、あるいは日本の戦犯が裁判されたいわゆるBC級戦犯の裁判の中でもかなり明らかになっております。  御質問にありました無差別爆撃に関しましても、東海方面軍司令官が裁かれた事件で、連合国による無差別爆撃が国際法に違反しているという主張は大々的に展開されておりまして、最終的にそれが判決に影響したわけではございませんが、そういった意味ではかなり明確になっているかと思います。  それから、日本政府の対応としましては、広島、長崎に対する原爆投下に対して、中立国を通じまして連合国に抗議をしております。  さらに、戦争中にいわゆる緑十字船がアメリカの潜水艦によって撃沈された事件がございますが、これも、戦後、その違法性を追及し、損害賠償の問題が議論されましたが、最終的には、一種の政治的な合意によって追及しないという形で終わっております。
  86. 山本正和

    山本正和君 どうもありがとうございました。  そこで、山中参考人にお尋ねしたいんですけれども、大変、先ほどのお話も、私、何というか、感銘しながらお聞きしておったんですけれども、平和戦略がやっぱり欠けているという、ここを大切にしなきゃいけないと、こういう御趣旨だと思うんですね。  ただ、お書きになった中に、これいつのだったかな、一九九九年の国会の日米新ガイドライン特別委員会で、日本は軍事的準備と非軍事的信頼醸成のもろ手の外交を展開するべきだと、こういうことをおっしゃったんですね。ここでおっしゃっている後半の方はよく分かるんですけれども、前半の方の軍事的準備というのはどの程度のことをお考えになっているのか、ちょっとここを御説明願いたい。
  87. 山中あき子

    参考人山中あき子君) 先ほど私が申し上げた両手の外交というのの基本は、もうそこからずっと流れておりますけれども、これは日本が主体的に攻撃を行うというようなことを全く想定はしていませんけれども、しかし国際社会の中がこういう状態であるからには、攻撃を受けた場合にそれを防衛するというだけの軍事力というのは必要です。  もう一つ、今、これは二〇〇一年の国会でPKFの本体業務が解除になりました。ただ、PKO五原則がそのままになっておりますので。国際社会から見たら、日本はもうPKF、つまりPKOの本体業務の警護活動もできると思っている国がたくさんあるんです。ですから、アメリカもある意味では日本に一緒にやれるだろうというふうに言っているのは、そういうその法的な修正があったということが前提にあると私は思っていますし、イギリスの方でも、もうあれで我々と一緒にPKOもそれから多国籍軍もやれるんだろうというふうに言っているんですね。そういうふうになってきますと、警護の問題ということが当然発生してきますから、そういうときに使う武器というのは必要だろうと思うんです。  ただ、基本的にはそれは準備であって、できれば使わなければ使わない方がいいとそのときも申し上げたと思いますけれども、もっとその信頼醸成の方の努力がちょっと日本は今見えていない。  特にイラクに関しては、お時間あれですけれども、昨年の五月の一日付けで、私はちょうどカタールから帰ってきてすぐ、まだアメリカの統治がうまくいくかいかないか分からないこの二、三か月というのが一番平和な時期なので、そのときに水と、そのときは食料もありました、お米のことも言いました、それから教育とそして医療。これは、G8ありましたけれども、あの国の中で防衛医科大学を持っている国というのは本当に少ないわけで、日本の医療技術とそれからそういう戦時の訓練を受けているこういう人たちが自衛隊の活動と別にいろいろなところに出ていって、災害、この間のイランのようなときもそうですけれども、地震が起きたようなときも含めて出ていけるように法を改正しろというようなことも含めて申し上げましたけれども、その時点は、自衛隊と関係なかったし、イラク特措法も関係なく、民間の人も行けたしNGOも行けたときでした。しかし、そのとき日本は動いていないんです。  結局、今自衛隊が水のそういうことをやっているわけですから、やはり日本というのは、法律というものを考える場合に、法律がなくてもやらなければいけないし、やれることというものをもっと積極的に考えていくという意味で、今この立法府において、してはいけないことの法律なのか、していいことの法律なのかという基本のところに戻ってきますけれども、私は、軍事的準備というのは使わなくて済めば使わない。  しかし、日米同盟というものを日本は歴史の中で選択したんです、個々にいろいろあったとしても。ですから、日米同盟を選択してきたということがある限りは、そこのところの同盟のその動きというのは、これは今の段階では法的に担保されているという意味の準備というのも含まれております。
  88. 山本正和

    山本正和君 要するに、平和的な手段あるいはもっといろんな軍事力以外の部分でしっかりやらなきゃいけない部分があると。しかし、最低の軍事力は必要だと、守るためのね。こういう御趣旨だということですね。  それで、次は浜谷先生にお伺いしたいんですけれども、ちょっとおっしゃっているので、本も、著作もちょっと読んでみたんですけれども、どうも私はこう裏返して言う癖があるので、失礼になるかもしれませんけれども、簡単に言えば、憲法を改正しなさい、すっきりしなさい、このままではどうももやもやしていけませんよと。  また、私も実は本当はそう思うんですよ。国民に問うて、国民が改正しようと言って、新しい憲法を持ってやるんなら結構ですよ。しかし、今の憲法の中でやるのは随分無理があるし、そういううそをついたらいかぬと私は思っておるものだからね。私は改正すべきでないと。するとしても、もっと議論すべきだと思っていますけれどもね。しかし、やるんならば、きちっと国民の同意を得てやるんならば、これは一つのルールですよね、憲法に改正条項もあるんですからね。そういう御趣旨だと思うんですけれども、その辺でいかがでございますか。
  89. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) それは別に裏返しでも何でもなく、そのとおりでございます。  要するに、それがまず第一にあるべき姿だと。要するに、基本法を変えた上でそういう法整備が具体的に整っていくというのは、それは法治国家ですから当然のことです。  ただ、法律というのは、特に憲法の場合はいわゆる国家基本法ですから、朝な夕なに変えられたらかなわないということもございますから、その理念を要するに変えない範囲の中で、ある意味での柔軟性というのはいつの時代でも、どこの国でも取られるべきものだというふうには思っております。  要するに、変えないで今まで来たというのは、変えなくてもよかったのかどうか。要するに、変えなくてもよかったものまで変えろとは言う気は全くありませんから、変えなければいけないことを変えないできた部分もあるのではないかと。そういうことが議論になって、そしてあるべき姿というのが国会の席上それから国民投票等で明らかになる、これが一番おっしゃる理想的なことだと思いますから、その面では裏返しでも裏読みでも何でもございません。
  90. 山本正和

    山本正和君 まあ、上手におっしゃったんですけれども、言い換えれば、今の憲法ではやりにくいことをぎりぎりやっていると。ちょっと見ておれぬよと、こういう気持ちがあるみたいに思うんですけれどもね、その辺、いかがですか。
  91. 浜谷英博

    参考人浜谷英博君) やらなければいけないことを今の憲法があるがゆえにやれないということがおかしいというふうに申し上げているんです。
  92. 山本正和

    山本正和君 これはひとつ国民の中でしっかり議論していったらいいと思いますが。  そこで、最後に田中参考人に、もう四分しかございませんけれども、伺っておきたいんですけれども、私は、我が国がどんなことが起こるか分からないという二十一世紀の不安定な状況ですから、有事に対してきちっとした対応を国として整えるのは当然と思うんですね。ただ、そういうことでいったら、一番我が国が怖いのは、私が一番怖いのは地震だと思うんですけれどもね。あるいは南海大地震で言っている津波だとかいろいろありますから、そういうものに対する非常事態対処というのはきちっとしなきゃいけないね。  しかし、この武力攻撃ということについては、私はそれは備えなきゃいけないけれども、よその国の軍隊が何万、何十万とやってきて占領するという事態を考えるのはちょっといささかと、こう思っているんですよ、今の軍事情勢から見てもね。それはあるんですけれども、ただし、テロリストが何かやるかもしれぬと。これは備えなきゃいけない。それから、先ほど言ったように、何か知らぬけれども、突然間違ってミサイルがどんとぶっ飛んでくるかもしれないですよね、これは。そういうことは備えなきゃいけないと思うんですよね。  そういうことに対する備えという問題と、それから今度の法案はちょっと、私もいろいろ斜め読みしながら、さっきおっしゃったけれども、難しい大変な、斜め読みしながら思ったんだけれども、これ十分とは思いませんけれども、しかし何らかのそういう対応をするのが必要だと、こういう見解については田中参考人はどうお考えか。
  93. 田中隆

    参考人田中隆君) あくまで軍事問題、しかも外に出ていくという点に焦点を当てて非戦と申し上げました。法律家ですから、いかなる備えも必要ないんだと、備えをいささかも検討しなくていいと考えているわけではありません。私が懸念しているのは、災害と治安、テロとそれから戦争、ましてそれが複雑な法律の組合せで海外まで及んでいるもの、これが一体として処理されようとしているかに見える点については整理をした方がいいと考えます。  そして、仮に緊急事態法制のようなものを国民保護を軸にして考えていくなら、ベースになるべきものは災害だと思います。ここには敵もいません。そして、共同して対応ができます。そして、その対応ができていたら、万々々が一どこかのビルにミサイルが撃ち込まれたときのその国民の救援も、まあ災害救助法の準用なのかというような問題はあるかもしれませんが、できるはずなんです。そして、テロやミサイルの問題は、本来的にはこれは犯罪者による犯罪の問題と一度立てて、今の国内法と国際的な法規の中でどのようにしてその真相究明と責任追及ができるかと、こう考えていくべき。  最後、それは国家国家に対して本当に大規模攻撃を仕掛けてきたという事態が起こるのであれば、何らかの検討要るでしょう。しかし、軍事の問題というのは突発的には起こらないというふうに考えられますから、その時点で冷静に検討すべきと、こういうふうに考えております。
  94. 山本正和

    山本正和君 ありがとうございました。  終わります。
  95. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言お礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  参考人方々は御退席いただいて結構です。  引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  96. 舛添要一

    ○舛添要一君 私は今日は、我が日本、海洋国家日本の海洋権益をいかに守るかという点について集中して質問いたしたいと思います。  こういう問題もちゃんとやらないで有事法制やってもどうしようもないんで、国益を守らない、自分の領土、領海をちゃんと守れないような国は諸外国から侮られるわけであります。これだけの海洋国家でありながら、最近、中国が調査を本当にやりまくっている。それから、尖閣諸島に対して不法に侵入する。しかも、それ十二時間後にしか対応できない。それから、油田の開発を我が経済水域のそばでやってしまっている。こういうことに対して全くどの省庁もばらばらで政府が統一していない。これは極めてゆゆしい事実で、事態であります。  そこで、まず中川経済産業大臣、お伺いします。先般のASEANプラス3のエネルギー大臣会議で、この点について中国側にあなたはどういうふうに問いただしましたか。    〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕  それから、私、十五分しかありませんから、すべての関連省庁に質問いたしますので、五つの省庁にやります。一省庁三分しかありません。全部の答弁一分以内にしてください。お願いします。
  97. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) おととい、今御指摘の会議に中国のエネルギー担当の責任者が来られましたので、前の会談で、今マスコミ等でも大きく取り上げられております日中中間線付近でのガス田の開発について、外交ルートを通じて今申入れをしている、データをきちっと教えろということについて一時間余にわたりまして協議をいたしました。
  98. 舛添要一

    ○舛添要一君 私は、これ国連海洋法七十四条の三項、つまり、「最終的な合意への到達を危うくし又は妨げないためにあらゆる努力を払う。」というので、努力していないですね。こういうことをちゃんと問いただしましたか。
  99. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 日本は国連海洋法七十四条及び八十三条を忠実に守っているという前提で、我が国の権益に違反する疑いがあるという前提で話合いをしたところであります。
  100. 舛添要一

    ○舛添要一君 相手が調査をやっているのにこっちが何にもしない。相手が試掘しているのをこちらが何もしない。中国見ているわけですよ。何やっても日本というのはぼけっとしてやらないな、それでどんどんやっちゃえと。もうここでわざわざ地図を示しませんけれども、どれだけの調査をやり、どれだけのことをやっているか御存じでしょう。  そうすると、経済産業省として、資源エネルギー庁として直ちに調査をやる、対抗するためにも。そして、調査やって、ほぼそこに天然ガスとか油田あること分かっているわけですから、試掘をやってくださいよ。どうですか。
  101. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 我が国として、基本的に権益を守るためにやるべきことはやっていかなければいけないと思っております。他方、両国の友好関係ということ、また、条約法律等々もありますので、我が国としては、今までもやってきた向こうに対する問い合わせ、去年の十月もこの件に関してやっているところでありますけれども、今回、外交ルートを通じてやっているところでありますが、いろんな、我が国のその目的を達成するためにいろんなことをやっていかなければならない。今、舛添委員御指摘のようなことも十分懸念されるということを前提にして、いろんなことを今後やっていかなければならない。  ちなみに、調査については過去も複数回やっておりますし、また、公のデータによると、それが日本の中間線の中にその資源が入っているという公のデータもあるわけでございます。それが事実だとするならば、きちっとした対策を取っていかなければならないわけでございますので、そういうことも含めて、今慎重に検討しているところであります。
  102. 舛添要一

    ○舛添要一君 まあ、あなたの立場だとそこまでしか言えないと思いますけれども、権利の上に眠っていたらこちらの権利が主張できないんですよ。だから、日本の資源、どんどん中国が持っていくだけになりますから、我々は党の中で海洋権益を守るワーキングチームを作って提言まとめました。これ政府に持っていきますから、必ず実行していただきたいということを申し述べます。  さて、そういうことをやって、実際試掘をやる、調査をやる。それから我々は、中国の調査を妨害するために地震波を発生させるという、いろんなことがやれます。必ず中国は漁船団を組んだりして妨害に来ることが予想されます。  海上保安庁長官、どういう対応をしますか。手短に。
  103. 深谷憲一

    政府参考人(深谷憲一君) 先生御指摘の我が国の排他的経済水域内において日本がそうした資源調査等の活動が妨害されるケース、その妨害の内容によりまして様々なケースが想定されますので、一律的に申し上げるのはなかなか難しい点もございますけれども、実際に行われる妨害の内容に応じまして、法令に従って警告、指導など適切な措置を講じていくということになろうかと思いますが、いずれにしましても、そうした場合には、その具体的内容に応じまして関係省庁と協議して、国内法に基づいて妨害を排除するための適切な措置を講じていきたいと、かように考えます。
  104. 舛添要一

    ○舛添要一君 まあ、能力はあると思いますけれども、あなたたちに十分な権能が与えられてないと思うんです。平成八年のガイドライン、平成十年のガイドライン、中身はもう時間ないんで言いませんけれども、恐らく現場はこれでは動けないと思っていると思いますが、どうですか。
  105. 深谷憲一

    政府参考人(深谷憲一君) 排他的経済水域におきましてのいろんな法執行につきましては、一般論的に申し上げますと、国際法上、排他的経済水域において日本が、今テーマになっております資源調査等、これに対しての妨害行為、これについては、その排他的経済水域をも含めたいわゆる日本の領域外、領海外における国内法の適用、これにつきましてはあくまでも必要最小限の適切な範囲内でのみ許されるべきではないかというふうな考え方が一般的に多い中で、国内法的な問題もありまして、そういったものを踏まえながら、現実には先ほど申し上げたような対応をしていこうと、かように考えています。
  106. 舛添要一

    ○舛添要一君 しっかりやっていただきたいと思いますけれども、防衛庁長官、先般のあの北朝鮮の不審船のときに、海保がロケット弾を撃たれてやっているときに海上自衛隊後ろにいないと。スピードの違いもあるけれども、ああいうことが起こっちゃいけないんで、こういう海保がそこで現場でやるときに、ちゃんとP3C含めて海上保安庁をバックアップする態勢、自衛隊やれるんですか。で、そういう態勢取っているんですか。
  107. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 基本的に、ああいう場合には第一義的に警察機関たる海上保安庁対応するということでございますが、海上警備行動をいかなるタイミングで発令をするかということにつきましては、今後、海上保安庁ともよく議論をしながら、タイムリーにやっていきたいと思っています。  いずれにいたしましても、これは法律、それから装備、そして運用、訓練、そこのすべての場において海上保安庁と防衛庁・海上自衛隊との間で緊密な連絡を取っていかなければいけない。ワーキングチームの御提言も踏まえまして、私ども、政府部内できちんとした検討をして適切に対処をしてまいります。
  108. 舛添要一

    ○舛添要一君 防衛庁長官、私が心配している、そして国民が心配しているのは、例の不審船のときにP3Cで写真を撮ったけれども、あなたたち、その現像もできない、東京まで持ってこないとカメラでできないという、こんなばかなことをやっていたわけですね。間に合いませんね。こういうことをちゃんと改めましたか、その後。
  109. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 相当に改善をいたしておりますが、私はあのときも先生と部会で御一緒でしたが、きちんとリアルタイムで電送できるというシステムを作らなければ駄目だと思っております。在り方検討の中におきましても今度の大綱の中におきましても、その点は極めて重視をし、優先をして整備をしてまいりたい、このように考えておりますが、よく政府の中で議論をしてまいります。
  110. 舛添要一

    ○舛添要一君 もちろん、備えあれば憂いなしということでちゃんとやれということを言っているんですが、かといって、私は別に日中関係を悪化させろとかそういう意図で言っているんではないんですね。隣の国であります。中国と友好的な関係を結んでいい関係を保つということは、これは当然のことです。しかし、是は是、非は非として、言うべきことはちゃんと言うという、そういう姿勢がないといけない。  しかし、今まで、我々のワーキングチームのこの検討過程におきましても、どうしても、これ外務大臣にお伺いいたしますけれども、そういう意味で中国に言うべきことはちゃんと言うという姿勢がない。そして、どうしても腰が引けている、それで先送りだと。いや、調査をします。調査してたって、実施しなければ、結果出さなければしようがない。向こうはどんどんやっている。  だから、大局的に日中関係をいい関係にするというのは私も当然だと思います。そういう中で、今回のこの海洋権益に関して調査であるとか尖閣諸島の問題であるとか、こういうことについて外務省としては私が今非常に腰が引けているという印象を持っていますが、外務大臣、どういうふうにお答えになりますか。
  111. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) おっしゃるように、中国との間で友好関係、これは中長期的に強力なものにしていかなければいけないと思っていますし、そのためには率直に物を中国との間で言っていくということは非常に重要であると私は思っております。そういう観点から、この前、四月に中国に参りましたときも、これは尖閣の上陸の直後でございましたけれども、はっきりと中国に日本の考えていることを伝えたということでございます。  海洋調査船の件につきましても、我が国の海洋法条約に基づく主権的なその権利、これが侵されてはいけない、そういう観点から、関係省庁とも十分に御相談の上、適切に対処してまいりたいと存じております。
  112. 舛添要一

    ○舛添要一君 例えば中国の石油の精製を日本の民間企業の精製会社がやると、そういうビジネス、ビジネスのいい関係もあるわけです。それから、春暁のガス田の、この問題になっている、にしましても、どこにあるかといったら、日本と中国比べて中国側に近いんですね。しかし、開発して、例えば十あるキャパシティーの中の七が日本側だ、三が中国側だったら、七の取り分は日本にあるわけです。ですから、先ほど中川大臣にちゃんと調査し、試掘しろということを申し上げたんで。そうすると、私たちの七の取り分は、長いパイプライン引いて日本に持ってこなくても中国に売ってもいいんです。    〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕  そういう権利の使い方があるんで、特にそういうことをちょっと御注文申し上げておきたいことと、時間がありませんので細かい議論は避けますけれども、排他的経済水域についての国連海洋法二百四十六条の解釈が、ちょっとこれは海上保安庁、それから外務省とちょっと違うと思うので、これを厳格にやれば、例えば「排他的経済水域及び大陸棚における海洋の科学的調査は、沿岸国の同意を得て実施する。」と、そして沿岸国が、相手がちゃんと外国の船がやってきたときクレーム付けられるようになっているんですけれども、ちょっとこの点も弱腰だと思いますが。  一言で構いません。条約局長かどなたか、この問題に詳しい、外務省おられますか、三十秒ぐらいでお答え願います。
  113. 鈴木庸一

    政府参考人鈴木庸一君) お答えいたします。  今御質問のございました海洋法二百四十六条二及び三でございますが、これによりまして、沿岸国は科学的調査の実施について同意を求められた場合に規則にのっとり遅滞又は拒否しない形で同意をするということになっております。そのためのガイドラインが御指摘のガイドラインでございますが、このガイドラインは国連が制作したガイドラインにのっとっておりまして、関係省庁で不当な遅滞がないようにということで作られたものでございます。  他方……
  114. 舛添要一

    ○舛添要一君 いや、そこまででいいです。そこまでで結構です。  あなたが読んでないところがあるんで、その前に、「専ら平和的目的で、かつ、すべての人類の利益のために海洋環境に関する科学的知識を増進させる目的で実施する海洋の科学的調査の計画については、」ということがあるんで、要するに中国が自分の利益のためにだけやっているならそこを問題にしろということだけ言って、また次の機会に議論します。  そこで、今日、実は内閣官房長官の出席を求めたんですが、記者会見の時間だということでできませんので、官房長官の意を体して猪俣参事官。正にばらばらなんですよ、省庁が。どう統一するんですか。ちゃんと対策本部、官邸内に作るんですか。
  115. 猪俣弘司

    政府参考人(猪俣弘司君) 官房長官の御指示に基づきましてお答えさせていただきます。  海洋権益をめぐる問題が我が国の国益に直結するとの認識というのは当然持っておりますので、内閣官房といたしまして、関係省庁ともなお一層密接な協調を図りつつ、政府一体となった取組を進めてまいりたいということでございます。
  116. 舛添要一

    ○舛添要一君 我々はちゃんと内閣に対して党の、党としてこのことをちゃんとやれということを申し上げ、そして対策本部をどういう形であれ、関係閣僚会議であれ何であれ作ってやってもらうということでありますので、今の御答弁は官房長官の意思だということで承ります。  そこで、最後に私申し上げますのは、幕末明治維新、百五十年前の歴史を外交官の皆さん方もちゃんともう一遍振り返っていただきたい。私は福岡の生まれですけれども、隣の下関、赤間の関にイギリス艦隊来るわけです。そのときに、測量をやる、検分ということで。測量が終わったらその港は夷狄の手に落ちたも同然であるということで、その検分をほったらかして何もやらない徳川幕府を見捨てたんですよ、長州は。そして、倒幕という方向に持っていった。そういう先人の、百五十年前の先人の努力があったから我が国は独立国としてちゃんとこの体を成したわけであります。  測量を幾らでもやらせる、そしてほったらかしている、こういうことをほっておくようでは政府として私はいかがなものかというふうに思いますから、百五十年前の幕藩体制の終わりを感じますので、是非しっかりやっていただきたいということを申し上げて、終わります。  ありがとうございました。
  117. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 民主党・新緑風会の若林でございます。  いよいよこの有事関連法案も来週十四日月曜日には質疑終局、採決ということが一応理事会でも合意したところでございますので、私としても質問するのはこれがもしかしたら最後になるのではないかなというふうに思っております。  今回の質疑を通じて感じたのは、やっぱり自分が経験してないことに備える法律を作るということは本当に難しいなと。私は、山本委員とか大田委員がお話をされているときの経験に基づく質問の迫力に非常に感銘を覚えたわけであります。私も戦争を知らない世代でありますけれども、事実経験してないわけですし、六十年近く経験がなかった、そのこと自体私は非常に幸運なことではないかなというふうに思いますが。  しかし、将来を見たときに、やはり万一のときにきちっとやっぱり備えることが我々の責務ではないかなということを思っておりますので、非常に膨大な法律の中で、そのすべてを掌握する難しさというのは正直言ってあろうかというふうに思いますが、今回の法案を通して、これがやっぱり第一歩ではないかな、これを法律が作ったからといって日本を守れる、国民保護できるというものでは全くありませんので、そういう意味では、これからの基本指針、計画作り等を通じて、そして避難訓練等通じて、国民とともに、国民の意識とともに、万一のために備えておくことが必要ではないかなという、そんな思いであります。  そういうことを申し上げて、幾つか個別具体的な質問についてお伺いしたいというふうに思っているところであります。  今回の国民保護法案に対して、民主党としては十の修正を求めました。その中で六つぐらいは法案に反映されたということで理解しているところでありますが、四つぐらいが盛り込めず、附帯決議等に反映されたというふうに思っております。  その中で、まず第一番目に、衆議院法案提出者にお伺いしたいんですが、民主党が提案しておりました、指定公共機関及び指定地方公共機関は、それぞれ国民保護に関する業務計画を作成するに当たっては、その雇用する労働者の理解と協力を得るように努めるものという修正案を出しましたが、残念ながらこれを盛り込むことは必要がないという判断がなされたと思いますけれども、あえて与党という言葉を使わさせていただきますが、どのような議論がされたのか、まずその理由についてお伺いしたいと思います。
  118. 増原義剛

    衆議院議員(増原義剛君) ただいま御指摘の点ですけれども、いわゆる指定公共機関及び指定地方公共機関として指定されました法人は、国民保護のための措置実施主体として自ら国民保護に関する業務計画を作成する、これはもう先生御承知のとおりでございます。  一方でまた、国民保護法案で定めるところにより、その業務につきまして国民保護のための措置をまた実施することになるわけでございますが、このために、それらの業務の前提となるそれぞれの業務計画の作成に当たりましては、正に業務に従事することとなるいわゆる方々、労働者の方々の理解と協力を得つつこれを行うこととすると、することが重要であると、こういう点についての民主党の考えは我々も十分理解できるところでございます。  我々は、民主党からの提案を受けまして、与党と民主党との協議の結果、緊急事態に的確かつ迅速に実施しなければならないという事態の性格も考慮した上で、実際に幅広く関係者あるいは国民各層の理解を得る努力が行われることが重要でありまして、これはこの法案の全体に流れている、こういう私は考えであるというふうに思っております。  したがいまして、法律上の規定がなくとも、指定公共機関等において業務計画の下で業務に従事する者等の意見を聴取する機会が確保されるように配慮することを政府に求めていくことで理解が一致し、その趣旨を附帯決議に付したということでございます。
  119. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございます。  そういう意味では、この法案には盛り込まれませんでしたけれども、そこで働く人の意見を聴くという趣旨は附帯決議にもありましたので、そういう趣旨に沿って立法府としてそれを政府に要求をするということでありますので、その中で労働者の理解と協力を得るということが重要だと考えますが、そのことを担保するために具体的にどのような措置が講じられると考えられるのか、議論の中で出てきたら教えていただきたいと思います。  例えば、いろんな法制にもありますように、働く人の声を聴くという意味では、そこにある過半数を超える労働組合と意見を協議をするとか、過半数に達しないものは代表する者の意見を聴くとかということもありますが、その辺についてのお考えがもしあればお伺いしたいと思います。
  120. 増原義剛

    衆議院議員(増原義剛君) 今、ただいまの御指摘の点でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、我々としましても民主党との合意に基づく附帯決議、これに示されているとおり、指定公共機関等におきまして業務計画の下で業務に従事する者等の意見を聴取する機会が確保されるよう政府が配慮することを求める、こういう趣旨の附帯決議でございます。  今後におきましては、正に委員御指摘のとおり、この附帯決議をより実効あるものとしていく必要がありますので、政府におきましては幅広く国民各層関係者の理解を得つつ、その運用に遺漏なきを期していただくように、我々としても引き続き強く求めていきたいというふうに考えております。
  121. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 そうですね、修正案の提出者に求めても仕方ないわけですから、それはその附帯決議に沿って井上大臣に逆にお伺いしたいなというふうに思いますが、もし今のことに関して御意見があれば伺いたいと思います。
  122. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) 修正案の提出者の方の御説明のとおり、私どもとしては対処していきたいと、こんなふうに考えております。
  123. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございます。  その趣旨にのっとった対応をよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。  次の質問に行きたいと思います。  今回のその提案された条約等の中に国際刑事裁判所、ICCが入っていないということに対して私はびっくりしているところであります。我が国は、御存じのとおり、八八年のICCの規程採決に至るまで非常に多大な貢献をしてきましたし、議長国まで務めたということですが、なぜかそれからもう数年たったにもかかわらず、いまだにそれが署名も批准もされていないということでありまして、国際社会における最も深刻なこの犯罪を防止する、あるいはそのあったときの処罰をするという、こういう正にこの国民保護法制とこの有事関連法案と一体となって提案されるべきものが私は欠落しているということは非常に問題ではないかなというふうに思いますが、なぜこれまでICCを放置し、批准してこなかったのか。  ここまでこれだけやっぱり積み重ねてきて、外務省も努力されていたにもかかわらず、もう規程ができて数年たち、もう既に発効をして一年ちょっとたつわけですから、なぜそうしてこなかったか、そしてなぜここに盛り込まれなかったかということについてお伺いしたいと思います。
  124. 林景一

    政府参考人(林景一君) お答えいたします。  この武力、今回の有事法制整備の中で、どうして国際刑事裁判所、ICCと略称させていただきますけれども、この関連の規程が含まれなかったということ、含まれなかったのかということでございますけれども、この今回の武力攻撃事態対処法に言います国際的な武力紛争において適用をされる国際人道法、この実施を確保する、適切な実施を確保するということがうたわれておるわけでございますけれども、これは具体的にはジュネーブ諸条約、それからいわゆる追加議定書、これを念頭に置いておいたものでございまして、武力攻撃事態対処法における国際人道法と申しますのは、これは国際的な武力紛争に関して適用される国際法という、その戦争のルールといいますか、そういうものを念頭に置いておりましたので、このICC規程が直ちに含まれるということはないということは、テクニカルに申し上げればそういうことかと思います。  ただ、正にその御指摘にもございましたとおり、ICC規程の中には戦争犯罪というものがその対象犯罪として含まれているということでございますので、これは、人道的な観点からこれは重要な条約であるというふうに、私どもとしてもそれは認識はしております。  ただ、戦争犯罪以外にも集団殺害罪あるいは人道に対する罪など、いわゆる平時におきましても、いわゆる平時におきましても犯され得る罪というものも対象にしておるというところがございまして、これは必ずしも武力紛争における法規範ということだけではない、そういう場合における、そういう平時における罪、これは国際社会の人道的な観点から国際社会全体が関心を持つような罪ということではございますけれども、そういう平時における罪も含むような罪に対しまして管轄権を行使し得る常設の国際裁判所を設立する条約だということでございます。  そういうことで、私どもとしましても、御指摘いただきましたような最初の採択の経緯におきます積極的な姿勢というものを何も変えているということではございませんで、私どもといたしましては、この採択会議以降におきましても、例えばこのICCの立ち上げがございましたけれども、それに向けて開催されました準備委員会、十回ぐらいございましたけれども、こういうところにもきちんと参加をしてきておりますし、現在でも締約国会合におきましてオブザーバーとして参加するなど、積極的に議論に参加しておるわけでございます。  ただ、この条約、これは条約でございまして、それで新しい国際裁判所、これは常設の国際裁判所を設立するというのは今までになかったことでございます。私どもの国内法の法体系におきましても、これは犯罪類型、先ほど申しましたような犯罪類型を本当にきちっと担保できるような形というのはなっているのかどうか、そういうことについて検討する必要がございますし、その担保されないようなものについては法整備を新たにしなければならない。また、それ以外に、手続的にも、これは引渡し、あるいは証拠の収集等におきまして裁判所と協力しなければならない。これも私どもの国内では今までなかったことでございますので、こういうことについての法体系の整備といったものについて検討しなければならない。そういうことで時間が掛かっているということでございまして、そういう状況にあるということを御理解いただければと思います。
  125. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 いつ聞いても鋭意検討中であるということしか返ってこないんですけれども、私から見れば本当にやる気あるのかなという感じがします。(発言する者あり)与党の皆様からそういう声が飛ぶとは思いませんでしたけれども、私、本当にまじめに何回もこれ聞いているんですけれども、やっぱり我が国テロリスト、テロ対応ということに対してきっちりやっていくんだということにもこれ対応するものでありますし、集団殺害罪、様々なものがこれは含まれておりますので、国際貢献をするに当たっても、我が国として私はやっぱり日本のそういう法律の専門家がそういうところに出ていってそういう裁判官なんかやるとか、そういうところも含めて積極的に貢献すべき範囲内だと思いますが、いつも聞いても鋭意検討中です、鋭意検討中です、それしか返ってこないんですよ。  じゃ、具体的にはあとどのくらいの期間、どの程度までこれまでその整備する作業が終わって、あとどのくらい掛かるのか、それについて具体的な数字でちょっと明確にちょっと答えていただけないでしょうか。そうじゃないと我々も分からないですよ、それ。掌握力ないですよ、それは。是非とも分かるように答えていただきたい。
  126. 林景一

    政府参考人(林景一君) このICC規程、全部で十三部百二十八条から構成されておりますけれども、このうちの集団殺害罪、人道に対する罪、戦争犯罪、それぞれ多数の行為類型というものがございます。こういうものにつきましての実体的な規定におけます処罰の担保といったものをどういうふうにするかということについて、これは事が当然のことながら人権にかかわることでございますし、慎重に検討しなければならないということでございまして、これについて今何%できておりますということをちょっとなかなか定量的に申し上げられない。これはもちろん、ある犯罪類型について担保するということについても、既存の犯罪類型で刑法等で対応可能ということであれば、もちろんそういうことで済むわけでございますけれども、正にそういうことの見極めということが少ないものですから、これ何%できますということを申し上げるのはなかなか難しい。  それから、それ以外には、やはり先ほど申し上げましたような手続規定、これは今までになかった手続外国に引き渡すとかあるいは外国協力するということはございますけれども、裁判所とどうやって協力していくのか、これは裁判所におけます例えば偽証の問題とか、そういったものを処罰しなければいけないとか、そういったことについてやはり綿密にやらなければならないということでございますので。
  127. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 じゃ、川口大臣にちょっとお伺いします。  もう川口大臣のリーダーシップで来年の通常国会までにこれを全部整備して、法律も含めて、関連法案も含めて批准するんだという決意をちょっと述べていただければなと思います。
  128. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 若林委員もおっしゃっていただいたように、我が国としては、これは設立に向けて準備の段階から非常に積極的に関与をしてきたわけでございます。そして、今度の一連のジュネーブ条約追加議定書、今回の担保の法律整備すると、条約を批准するということにより、またそのための国内法を整備するということを通じて前進を更にしたという段階に今あると思っております。  それで、細かくなりますから申しませんが、先ほど条約局長が言ったような様々なことを今後やらなければいけないということは引き続き残っているわけでございまして、今後これについてこのモーメンタムを失わないように鋭意検討をしていきたいというふうに思っております。
  129. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 もうちょっと前向きに答弁していただきたいなというところがありますけれども、それ以上言えないんだったらそれまでかなという、逆にがっかりしますけれども、是非とも来年の通常国会までには出していただきたい、そのことを要望しておきたいと思います。  その上で、ジュネーブ条約について、残りもう余りありませんけれども、伺いたいと思います。  最近のほとんどの紛争が、いわゆる国と国との正規戦よりは、どちらかというと国際武力紛争ではなくて、ソマリア、ボスニア、シエラレオネ、チェチェン等の内戦というんでしょうか、既存の政府に対して反徒が対抗するとか、あるいはいろんなグループのぶつかり合いとか、様々な状況が出ているという意味では、このジュネーブ条約にも非国際的な武力紛争への対応というのが言われているわけで、私もその辺に非常に興味は持ったわけなんですけれども。  例えば第一議定書の民族解放戦線に、そこに参加した人にも捕虜資格が与えられるということでありますけれども、例えば第一議定書の民族解放戦線に適用されたこれまでの例、あるいは第二議定書におきましては更に細かく分けておりまして、非国際武力紛争としての内乱みたいなものが、例えばチェチェンのようなものもそういうのの適用になって、具体的にそれにのっとって判断されているのか、その辺についてちょっとお伺いしたいと思います。
  130. 荒木喜代志

    政府参考人荒木喜代志君) お答え申し上げます。  一般に、ある武力紛争が、先生御指摘の第一追加議定書の一条四項に言ういわゆる民族解放戦争、こういうものであるとされ、当該武力紛争の当事者に同議定書が適用されるためにはプロセスがございまして、当該武力紛争が一条四に規定する要件を満たすと、これが最初のことでございますが、それに加えて、当該武力紛争を戦う人民を代表する当局、これが第一追加議定書の九十六条三というのがございますが、それに従って、議定書の寄託者であるスイス政府あてに宣言を行うと、これが寄託者によって受領されるということが必要でございます。  これまでの例を調べますと、寄託者たるスイス政府によってこの議定書九十六条三に基づく宣言が公式に受領された事例はないというふうに承知しております。  それから、御指摘の第二追加議定書でございますけれども、もちろん、我が国が当事者でなくて、事実関係を承知していない特定の事態についてこの追加議定書の適用事態に該当するか否かという判断はなかなか確定的に行うことが難しいということをまず申し上げたいと思いますが、そのような前提で申し上げれば、過去において、ルワンダにおける事態で、九四年に国連安保理決議によって設立されたルワンダ国際刑事裁判所、これが第二追加議定書の深刻な違反行為を行った者を訴追するものとその裁判所規程に定めている事例がございます。また、コンゴ民主共和国、これにおける事態について、九九年に安保理決議が紛争当事者に対して第二追加議定書を含む国際人道法を尊重するように求めた事例、これがあるというふうに承知をしております。  なお、御指摘のチェチェンでございますけれども、九五年の七月でございますが、ロシアの連邦憲法裁判所がチェチェン共和国で生じている事態への第二追加議定書の適用を認めたというふうに承知しております。
  131. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 もう時間が来てしまいましたので、もうこの辺で終わりにしたいと思いますが、今見ても、法律上は一応そういう規定があってもなかなか適用されないという意味において、やはり認定、適用に際していろんな問題が私はやっぱりあるんではないかなという感じはしておりますので、これからお伺いしたいことも様々あったんですが、こういう国際法が必ずしも今起きている状況に対応していないんではないか、そんな思いがしているところでありますが、やはり約束は守らなきゃいけませんので、この辺で終わりたいと思います。  あとの時間は同僚議員にゆだねたいと思います。
  132. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 民主党・新緑風会、辻泰弘でございます。  私は、厚生労働委員会に所属をしておりまして、年金法案中心にかかわってまいりまして、こちらの委員会に十分来られないこともございまして、本日が初質問なんですけれども、これから一生懸命やろうと思ったところでもう終わりだよというふうな状況もあるようでございまして、若干寂しい思いもいたしておりますけれども。  そもそもこちらで列席させていただきましたゆえんは、厚生労働委員のメンバーも国民保護法制にかかわるべきだと、そういう見地からかかわるべきだと、こういうふうな御意向をいただいて、森さんと私がそういう形で入らせていただいたということでございまして、後ればせながらその見地からも質問したいと思うんですが、こうやって坂口大臣にお会いしますと、つい年金のことでも聞いてしまいそうになるわけでございますけれども、それが今日の本意ではございませんけれども、まあ昨日今日のことでございますので、ちょっとだけ、恐縮でございますけれども、やはり例の少子化の問題で、一・二九の合計特殊出生率の問題でございます。  大臣御自身も大変立腹されているというふうにもお聞きしておるわけでございますけれども、簡単で結構なんですけれども、大臣にも十分連絡がなかったというか、説明なかったということなんでしょうか。
  133. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 余り内々の話を言っていても駄目なんですが、私が申し上げておりますのは、国会において私が答弁をいたしますときに、まだこれは決定いたしませんというふうに国会で私が御答弁を申し上げ、私のところに中間報告もないままに、マスコミの方から、いや、あした出しますからという話を聞いて、それはないでしょうと。それは私自身、大臣どうのこうのの話ではなくて、それは国会軽視の話につながってくると。それで、それは私としては許すことができないということで私は怒っているわけでございます。  しかし、これは内々のことでございますから、私の、すべて責任は私でございますので、おわびを申し上げなければならないというふうに思っております。
  134. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 そのことをたくさん聞くことが本意じゃありませんけれども、いつも役所の体質のこういうのがあって、隠ぺい体質、また大臣をもすっ飛ばすほどの、前は大臣が、私もたらい回しにされますというふうなお話も伺ったわけですけれども、やはり行政の在り方として、やはりしっかりとこういうことも含めて、政治の立場から、大臣のお立場からもしっかりとしかるべく対処していただきたい。しかるべくするということのお話もあるようでございますけれども、その点は今後も、社会保険庁の在り方等もございましたけれども、しっかりとお取り組みいただくように申し上げておきたいと思いますが。  それでもう一点だけ、結果として一・二九ということで、十四年一月の将来推計人口ができて二年半たつわけですけれども、あの時点での十五年は一・三二だったと。それが一・二九なわけですね、中位推計ですけれども。低位推計は一・二七だったわけですね。ですから、どちらかといえば中位と低位の間よりちょっと低位に近いというところに来ているようなことになるかと思うんです。  それで、一言、一つだけお聞きしたいことは、そういうようなことで先般通ってしまった年金改革法案なるもの、これについて、やはり前提条件が大きく揺らいでいるというふうに思わざるを得ないわけです。すぐに変えようということにはならないんでしょうけれども、お立場からすれば。しかし、少なくとも、五年に一回の国勢調査に基づく次回、十九年一月の将来推計人口が出るんでしょうけれども、その過程において、その中で大きく変わってくれば当然見直しはしかるべきだと思うんですけれども、その点については御見解はいかがでしょうか。
  135. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) この年金制度というのはいろいろの前提の上に成り立っております。その中の一つの大きな前提は、この合計特殊出生率が今後どうなるかということでございます。そういう前提の上に計算をいたしておりますから、この前提が例えば数年なら数年の間にどういうふうに変化をするかということによりましては、それはいろいろの計算を検討しなければならないことにもなるというふうに思っております。しかし、この一年だけでそれをどうこうするという段階ではないというふうに今思っているところでございます。
  136. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 今日はこのことを議論する場ではございませんのであれですけれども、やはりそういったものをしっかりとベースを踏まえて時宜に応じて対応していただくということは当然必要だと思いますので、そのことを改めて申し上げておきたいと思います。  そこで、国民保護法案法制についてでございますけれども、正に国民生活を、厚生行政、労働行政通じてかなり広範にわたって国民生活を預かっておられるお立場からする、厚生労働大臣のお立場からするこの国民保護法制についての必要性というものについてどのように御認識か、簡単に御説明いただきたいと思います。
  137. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) この国民保護法案につきましては、武力攻撃から国民の生命あるいは身体等を保護するために国として万全の体制を整備をして国民保護をしていく、生命を守っていくというその措置を的確に、そしてまた迅速に進めていくということが目的であろうというふうに思っております。  そうした中で、都道府県知事によります救援の実施、それに対してどう対応していくか、それから保健衛生の確保ということでどうしていくか、あるいは水の安定的な供給ということでどうしていくかといったようなことが厚生労働省の担当として大きな項目になってくるというふうに考えておりまして、これらの分野におきまして綿密な計画を立てていかなければならないというふうに考えているところでございます。
  138. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 以下、具体的なことについてお伺いしたいと思うんですけれども、まず九十一条の関連でございますけれども、ここは外国医療関係者による医療提供の許可というところでございます。法律はもちろん承知しているんですけれども、分かりやすく言った場合、言って、いかなる場合にその外国医療関係者を受け入れるのかということについて御説明いただきたいと思います。
  139. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 武力紛争等が起こりましたときに大量の傷病者あるいは死傷者というものが出ましたときに一体どう対応をするか。とりわけ傷病者が非常にたくさん出ましたときに国内におきます医療従事者、しかもある局地的にそれが起こるということになりますと、そこに皆が集合して、そしてそこで対応をするというのが第一段階でございますけれども、しかしその中でも特別な、特殊ないわゆる生命を脅かすような物質が使われるといったようなことになりましたときに、国内だけで対応できないといったことも起こり得るわけでございます。そうしたときに、外国の皆さん方からお申出がありましたときにそれをお受けをするということになるだろうというふうに思っております。治療に特殊な知見を要するといったようなことがその中の大きな項目になろうかというふうに思っております。  そのときに、外国政府からの申出を受けて外国治療関係者に許可をすると申しますか、じゃ、お願いしますというふうに言いますときには、その受入先となります地域の、公共団体の実情というものをよく加味をいたしまして、従事する地域でありますとか、あるいはまた業務の内容というものを指定をするといったようなことは必要ではないかというふうに思っております。
  140. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 外国医療関係者の方が来てくださったときにどういうことをしていただけるのかという部分が具体的なイメージが十分持てませんで、そこをちょっと御説明いただきたいと思うんです。  外国医療関係者が協力する際の具体的な医療提供の姿とイメージというものについてどんなことを考えていらっしゃるのか、御説明いただければと思います。
  141. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 先ほど申しましたように、非常に多数の傷病者が発生をする、あるいはまた生物化学兵器などが使用されまして治療に特殊な知見を要するといったようなときにお願いをすることになるというふうに思いますが、しかし、日本におきます地震等の災害におきましても、神戸等の場合にもそうでございましたが、外国から来ていただいて、そしてその皆さん方にいろいろお願いをしましたときに、現場で国民の皆さん方になかなか言葉が通じないとか、いろいろのことが起こったりもいたしました。したがいまして、外国から来ていただきますそういう支援チームにお願いをいたしますと同時に、それが現場で的確に行われるように、治療が現場に的確に行われるような体制というものも必要ではないかというふうに思っております。  そのやっていただきます内容につきましては、そのときそのときの状況によってそれは違うというふうに思いますが、例えば生物化学兵器等の問題でありましたら、その種類によって多様な変化がございますし、その多様な変化に合わせてそれはお願いを申し上げるということになってくるのではないかというふうに思います。  御質問いただきました趣旨が私が違っておりましたら御指摘をいただきたいと。
  142. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 端的に言えば、例えば病院とかでお手伝いいただくとか、そういうふうなことだったら分かりやすいわけですけれども、何か特別に何か別の形があるのかということなんですけれども。すなわち指揮系統とか、そういうことに係ってくるのかと思うものですから。
  143. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) もちろん、病院等がそこに存在をいたしますとき、あるいはまたその病院の中でお手伝いをいただくというようなことができる態勢であれば、まず優先的にそういうことになるだろうというふうに思っております。  そういう場合でない場合、例えば大きい病院も存在をしないというような地域で事が起こりましたときに一体どうするかといったことも考えておかなければなりませんので、そのときにはそのお手伝いをいただく皆さん方の御判断に任せて治療をしていただかなければならないということもあり得るというふうに思っておりまして、そうしたときにどういうふうに対応するかということも考えておかなければならないというふうに思っております。
  144. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 次に、九十二条の方の外国医薬品等の輸入の許可のことについてお伺いしたいと思います。  時間もございませんので御説明はいただかないままにして、要は未承認薬を使用できるようにすると、そういうことの趣旨だというふうに理解するわけでございますけれども、やはりそれは一つ考え方として分かるんですけれども、そうであれば、この法律が通って以降、未承認薬というか外国の医薬品ですね、それはやはり常時調べて、どういう効能があり、どこに在庫があるとか、そういうものはやっぱり調べておいて、やはり備えておかなきゃいけないと。  また同時に、そのことは、この対応とはまた別に、医学的見地からも、日本には未承認であるけれども、外の、外国にいい薬があれば使ったらいいんだということになるわけですが、いずれにいたしましても、外国にある薬をしっかりと調査し、分析し、ある意味で把握しておくということは大事だと思うんですけれども、それに向けての方針をお伺いしたいと思います。
  145. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) その点は御指摘をいただいたとおりだというふうに思っております。  したがいまして、日本の国の中で承認をされていない、しかし諸外国におきましては通常使われておりますようなものにつきましては、リストアップをして、そしていざというときにお願いをするということをやはりしなければならないというふうに思っております。  できる限り、諸外国で使われております薬につきましては、ふだんから日本の国の中におきましてもそれが使用できるような体制を作り上げていかなければならないということも前提としてあろうかというふうに思いますが、今御指摘いただきましたことはそのとおりでありまして、平素から準備を進めていきたいというふうに思います。
  146. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 次に、百二十二条についてでございます。  これは、埋葬及び火葬の特例ということでございまして、時間もございませんのでまとめてお伺いしたいと思いますけれども、ここでは、墓地、埋葬等に関する法律の五条、十四条の規定手続の特例ということを規定しているわけでございますけれども、どういう方針で、いつもの墓地、埋葬、埋葬、火葬のときの手続を省略するというか、せざるを得ないと、そういうようなことになってきて、わけですけれども、しかしそうは言っても、やはり公的な何らかの形のものがなければならないと思うわけですけれども、その部分について簡単に御説明いただきたいと思います。
  147. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 多数の死者が一度に発生をいたしましたときに、埋葬又は火葬に関します通常の手続を行うことが困難であるという場合がございます。そのときには、厚生労働大臣がその適用期間及び適用地域を定めるということが一つ。  それからもう一つは、死亡届を本来ならばその市町村に出すわけでございますが、その市町村と申しますか居住する市町村に出すわけでございますが、いわゆる居住している市町村以外の市町村長でも埋葬あるいは火葬の許可を行うことができるというふうにするのが一つでございます。  さらに、多数の死者が出ましたような場合におきましては、墓地又は火葬場の管理者が埋葬又は火葬の許可証の提出を受けなくても、死体検案書等で死亡の事実が確認できれば埋葬又は火葬を行うことができるというようなことで、段階を決めて行い、行うようにしておるところでございます。
  148. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 時間限られておりますので、次に移らせていただきます。  九十三条について井上大臣にお伺いしておきたいと思うんです。  この条項は海外からの支援の受入れということでございまして、災害対策基本法にもかかわってくる、準拠しているのかもしれませんけれども、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないときには、必要な措置を政令で対応ができると、こういうふうになっているわけです。  ですから、本当は立法する、あるいは法改正が必要だということをもある意味で飛ばして、飛ばしてといいますか変えて、政令でやれるよというふうになっているわけですね。そういう理解でよろしいですね。
  149. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) はい。基本的にはそのような理解で結構だと思います。
  150. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 それについては、もちろんそういう状況になったらそういうこともあり得るとは思うんですけれども、立法権の侵害という議論もあり得るかと思うんです。災害対策基本法のときでございましたか、そういう議論もあったように思うんですが、今回の立法の過程でそのことの議論といいますか指摘については、どういうふうな検討をされた結果、こういうふうになっているんでしょうか。
  151. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) 憲法国民権利義務に関することはこれは法律で定めるということになっておりますんで、委員御指摘のとおり、政令で定めるというのはその例外になるわけでありますけれども、あくまでその例外措置というのはもう最小必要限度のものじゃないといかぬということはもう当然のことだと思うんです。  そもそもこういった規定を置きます原因になりましたのが阪神・淡路の大震災なんですね。こういう緊急政令ができなかったということで海外からの支援も受けられなかったと、こういうことでございまして、そういう経験を踏まえまして、災害対策基本法で、海外からの支援を緊急に受け入れる必要がありますときに内閣が緊急政令を制定をして海外からの支援の受入れを実施できるような法律の改正がされたところでございます。  この国民保護法案におきましても同様の考え方でこの規定を置いたものでございまして、今、坂口大臣御答弁になりましたけれども、予想できるといいますか、それにつきましてはそれぞれの規定を置きまして例外的な措置をするようにしておりますけれども、どうも何が起こるか分からないという状況が実はあるわけでございまして、そういう場合に、国会がどうしてもやっぱり立法措置を取るいとまがないような場合には法律の委任によりまして特例としてこの緊急政令を制定させていただきたいと、こういうことでございまして、極めて制限的に考えているものでございます。
  152. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 その政令で対応した後、後に法律的な対応をするということは想定されるんでしょうか。
  153. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) これは、もとより立法権というのは立法府にのみ帰属するものでございますので、仮にこのような、政令も非常に制限的でございまして、著しく大規模武力攻撃の災害が発生しているとか、あるいは海外からの支援の受入れができないということとか、あるいは国会が閉会中又は衆議院が解散中であってなかなか臨時会の召集ができないときとか、あるいは参議院の緊急集会ができないと、こういう場合に限るわけでございまして、仮にこういうような緊急政令が出ますと、後、臨時会が召集をされたりあるいは参議院の緊急集会ありました場合に、そこでの承認を得ないといけないということでございまして、これにつきましても期限を二十日とか十日というふうに切りましてこの緊急政令の制定権をお認めいただきたいという規定を実は入れているわけでございます。
  154. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 時間が参りましたので、もっと質問したいところでございますが、これにて失礼いたします。ありがとうございました。
  155. 高野博師

    ○高野博師君 G8サミットと日米首脳会談を踏まえまして、イラク問題について何点かお伺いしたいと思います。  これはもう小泉総理御自身にお伺いした方がいいかと思うんですが、日米首脳会談で小泉総理が新決議案はアメリカの大義の勝利だと、こういう表現をしているんでありますが、これちょっと通告していないんで、大臣、川口大臣、分かる範囲で結構ですが、どういう意味でこれ使ったのか私よく分からないんですが、アメリカの、米国の大義の勝利だと、こういう言い方したんです。これ、どういう意味だと理解していますか、大義。
  156. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 今回の国連決議、これは全会一致で決まっていった、採択をされたわけでございます。それで、正にそのための努力を米英はしたわけでございまして、そういった意味で、ずっと今まで米国が武力行使の前以来追求をしてきた核不拡散、大量兵器の不拡散ということについての流れの中で、その上で正に国際社会が全会一致でイラクを支援するということになっていった、そういう、国際社会がここで一致をしたということに焦点を当てておっしゃったのではないかと、これは私は推測でございますけれども、いたしております。
  157. 高野博師

    ○高野博師君 本人から聞きたいと思いますが、どういうふうに大義と訳したのかも若干関心があるんでありますが、これは月曜日にしたいと思いますが。  新安保決議の一五四六、この原案の作る段階で日本はどういうふうにかかわって、我が国意見というのはどういうふうに反映されているんでしょうか。
  158. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 一五四六を作る過程で我が国としてはかなり、こういったことが新しい決議の要素として入ることが大事であるということを働き掛けを行いました。  それで、例えばどういうことであったかといいますと、一つは、占領の終了とイラクの暫定政府による統治権限の引受け、これについて明確に規定をするということ。次に、イラク国民努力、そしてその努力の支援のための国際社会協力を改めて呼び掛けるものであること。次に、国連が政治プロセスの支援、選挙ですとか、そういった支援において中心的な役割を果たすべきである、状況が許せば人道復興支援活動を更に促進すべきであるということを明確に規定をすること。四番目に、多国籍軍の役割、そして多国籍軍とイラク暫定政府との関係、これを明確に規定をすることといったようなことを我が国として働き掛けてきたわけでございまして、この我が国の言ってきた意見、これについてはおおむね決議に反映されることになってきたというふうに私どもは考えております。
  159. 高野博師

    ○高野博師君 今のお話の中で、多国籍軍の役割についても働き掛けをしてきたということは、多国籍軍に参加するという前提で働き掛けやってきたということでしょうか。
  160. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 我が国が多国籍軍に参加をするか、あるいは何らかの形でその中で我が国のできる活動を、人道復興支援活動をやっていくかどうか、これは総理が記者会見でおっしゃられましたように、今後、総理の帰国の後でいろいろな方の意見を伺って議論をしていくということでございます。  我が国として考えておりましたのは、自衛隊がサマワでやっている活動、これについては、サマワの人たち、あるいはイラクの暫定政府の首相に任命されました首相、あるいは外務大臣に任命された人からも聞いておりますが、是非続けてほしいというイラクの人たちの声があるわけで、我が国としては、国際社会が一段と協調をするということになったこの時点で、これを続けることが必要であるというふうに考えてきたわけでございます。そして、我が国として、こういった活動ができる、やり続けることができ、それが可能であるということは重要であると考えてきたということでございます。  ただ、どういう形でそれが位置付けされるかということは正にこれからの議論で、政府として適切に判断をしていく話であるというふうに思っております。
  161. 高野博師

    ○高野博師君 念のため確認しておきたいんですが、そもそも小泉総理は多国籍軍への自衛隊の参加を表明したんでしょうか。どういう言い方、これは報道によりますと、総理は、日本は新決議に基づいて来週、自衛隊の派遣継続を決定する、すべく準備をしていると、こういう表現、これはそのとおりでしょうか。
  162. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 今日、総理、記者会見をなさいましたけれども、その時点の前、それ以前に総理がブッシュ大統領との日米首脳会談で、来週に決定をするということをおっしゃったということは私は承知をいたしておりません。  それで、今日、記者会見で総理がおっしゃられたわけですが、それは、多国籍軍が形成され、その中で日本としてできること、いわゆる人道復興支援を継続していく方向で検討していきたいと思う、この問題は国内に、日本に帰国してから与党を始め皆さんと相談していきたい、どのような日本としてふさわしい支援、協力ができるのか検討していきたいということを表明をされたということでございます。  先ほど申しましたように、我が国として、自衛隊がイラク特措法に基づいてこの人道復興支援をしていくということは適切であるというふうに考えております。どのような自衛隊を形で位置付けてこれを行うかということは、今後、政府として適切に判断をしていくということでございます。
  163. 高野博師

    ○高野博師君 日米首脳会談で、小泉総理の発言について承知していなかったということでありますが、そもそも首脳会談でどういう発言をするかということは事前に相当詰めて、これはある程度知っておくということじゃないと、これは外交というのは非常に危険なんじゃないでしょうか。そこを全く知らないで、小泉総理は自分でこういう発言をしたということでしょうか。
  164. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 私の申し上げ方が悪かったかもしれませんが、例えば来週中にもそれを決めるとかということを言われたということが報道でなされていますけれども、そういう発言が現実にあったというふうには我々は承知をしていないということを申し上げたわけでございます。(発言する者あり)
  165. 高野博師

    ○高野博師君 ああ、どうぞ。
  166. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 現実に総理が何をおっしゃったかということをお話をするのが一番それでは分かりいいかというふうに思います。  総理がおっしゃられたことは、日本としてイラク暫定政府にも歓迎される形でイラク人道復興支援特別措置法に基づく自衛隊の派遣を継続する考えである、これが総理が日米首脳会談でおっしゃったことでございます。  それがどのような形で報道されたかということはいろいろ報道されているわけですけれども、今申し上げたことが総理がおっしゃられたことであるということであります。
  167. 高野博師

    ○高野博師君 分かりました。  それではもう一つ、日米首脳会談の関係で、ジェンキンスさんの取扱いについてなんですが、これは、ブッシュ大統領は、同情し理解するけれども、脱走犯としての取扱いについては、これは日本の要求は、総理の要求は受け入れられないというような回答だったかと思うんですが、もしそうだとすると、そもそもこういうテーマを日米首脳会談で上げるときに、いい回答が得られるという保証がなくて、その場で断られるというのは、これはそういう危険を、リスクを冒していいのかという問題がそもそもあると思うんですが、その事前の根回しとかということはどのぐらいやっていたんでしょうか。
  168. 薮中三十二

    政府参考人(薮中三十二君) お答え申し上げます。  正に曽我さん御一家の問題、そして曽我さん御一家が何とか幸せに暮らせる方法を見付けられないかと、これが正に総理が非常に心を砕いておられることでございます。  そうした中で、日米の間で、当然、曽我さんの御一家ということになればジェンキンスさん、そしてジェンキンスさんは、アメリカの中での、アメリカの脱走兵であるということはございますけれども、そうした中で何とかいい方法がないのかということ、そしてまた、それを日米間で率直に、どういう問題でもやはり話し合うということは、これはある意味、当然やるべきことであるということで、そうした中で当然のことながら事前にも意見交換はしてまいりましたし、そうしたことを踏まえての今回の首脳会談でのやり取りであったというふうに私は理解しております。
  169. 高野博師

    ○高野博師君 そうすると、前向きの回答が得られると見込んでいたんでしょうか。  もしそうでないとすれば、そもそも平壌に小泉総理が行かれて、それで日朝首脳会談があったと。その後、ジェンキンスさんと直接総理が話をされたと。そして、アイ・ギャランティーと、こう言ったと。そんなことをやって、もし連れて帰ってきてたらば、これは大変なことになっていたんじゃないでしょうか。犯罪人引渡しというようなことが日米間で問題になるおそれがあったんじゃないでしょうか。そういう詰めがなしに、そもそも訪朝については、これは若干、若干でない、相当のリスクを冒してやっているなという感じはするんですが、その辺はどうでしょうか。
  170. 薮中三十二

    政府参考人(薮中三十二君) 今、委員御指摘ございましたアイ・ギャランティーというのは、報道でございました。実際には、総理はジェンキンスさんに対して、正に曽我さん御一家のことを思って、そして御一家が日本において一緒に幸せに暮らせるよう最大限の努力はしたいんだという趣旨のことを言われただけでございます。  もちろん、そうした中で難しさというのは十分我々としては承知しておりますけれども、そうした中でも、何とか曽我さんの御一家が幸せに暮らせるような方法を、やはり人道的な解決策というのは日本としては引き続き模索していかなければいけないと、そういう思いでジェンキンスさんとも話をされましたし、また今後ともいろいろと努力をしていかなければいけないというふうに考えております。
  171. 高野博師

    ○高野博師君 曽我さん御一家が幸せに暮らせるようにという人道的な観点から配慮は、それはもう言わずもがなで理解できるんですが、しかし、それでは、あのときに訪朝されて一緒に帰ってくるという、連れて帰るということを一生懸命説得したわけですが、アメリカとの関係で何の担保もないまま連れてくるというやり方は若干無謀だったんじゃないでしょうか。そこはどうでしょうか。
  172. 薮中三十二

    政府参考人(薮中三十二君) 日本政府として、あの時点において御家族、これは五人の帰国された方々の御家族ということで、八人の方々の帰国、来日を我々実現したいという思いでございましたので、もちろんそうした中で問題が、更に解決すべき問題が残ることは十分承知しながらも、やはりそうしたことを実現したいという思い、それを総理が強く思われて訪朝され、またそういう努力をされたということでございます。
  173. 高野博師

    ○高野博師君 局長が一生懸命やられたのはよく存じておりますが、こういうジェンキンスさん等の問題については、むしろ外務大臣が事前に平壌とも詰めておくと、そしてアメリカとも詰めておくというようなことを、根回しをきちんとやった上で総理が出ていったときにぴたっと決まるようにするということをやらないと、うまくいっていればそれでいいんですが、そうでないときにこれは非常に、外交上の非常にリスクを負い過ぎるという私は印象を持っているんですが、外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  174. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 一連の総理の訪朝につながる前の日本と北朝鮮との間の政府間のいろいろなやり取りということがございまして、その中で外務省として、これは二月でございましたか、平壌で会談もいたしましたし、その他の場でもいたしておりますけれども、その中で外務省としては私の指示の下でそういった準備をしてきたということでございます。
  175. 高野博師

    ○高野博師君 時間ですので終わります。
  176. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日本共産党の吉岡です。  前回、前々回に続いて、その続きの部分を質問させていただきます。  新ガイドライン後、周辺事態法、それから武力攻撃事態等対処法、今度の関連法案等で日本の米軍に対する様々の支援体制が法制化され、詰められてきました。法律が、新しい法律が作られるたびにその支援対象も拡大されてきたというように思います。それを、ガイドラインじゃない、ACSAからそれは始まったと私は思っておりますので、ACSA及びACSA改正、また一連の法律でどういうふうに米軍に対する支援が法制化されてきたかということをちょっと整理して説明していただきたいと思います。
  177. 長嶺安政

    政府参考人(長嶺安政君) お答えいたします。  ただいまの委員御指摘のございましたACSA協定でございますが、この協定のこれまでの経緯についてちょっと御説明させていただきたいと思います。  これは、自衛隊と米軍との間の物品役務の相互提供の手続枠組みを定める協定でありますこのACSAでございますが、この協定が最初に締結されたのは平成八年でございます。この八年に締結されたときのACSAの、日米ACSAの適用範囲、これは共同訓練及びPKO、人道的な国際救援活動に限定されておったものでございます。その後、平成十一年に至りましてこのACSA協定は改正されましたが、この改正された際に新たに、今申し上げました共同訓練、PKO、人道的な国際救援活動に加えまして、周辺事態に際しての活動にも適用されるということになったわけでございます。  今回の改正でございますけれども、今回のACSAの改正の中には二つの新たな適用事項がございますが、その一つが武力攻撃事態又は武力攻撃予測事態に際して日本に対する武力攻撃を排除するために必要な活動でございます。そしてもう一つが国際の平和及び安全への寄与、大規模災害への対処その他の目的のための活動ということでございまして、これがこれまでのACSA、それから改正の経緯でございます。
  178. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今回提案されている、我々、米軍支援法と言っていますが、これによっての支援内容、これは私は、この法律の第十条の二項、三項によれば、予測事態から米軍に対する支援を行うと、そういうふうになっていると思いますが、そのことを含めてこの米軍支援法で行う協力内容、これちょっと説明してください。
  179. 増田好平

    政府参考人(増田好平君) お尋ねは法案の、米軍支援法案の第十条の二項、三項に関するものと存じます。  この米軍行動関連措置法案に基づきます支援の対象となりますものは、日米安保条約に従って我が国に対する外部からの武力攻撃を排除するために必要な合衆国軍隊行動であります。かかる行動には、一つは我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態における日米安保条約に従って行われる武力攻撃を排除するために必要な武力行使を含む合衆国軍隊行動、また、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態以外の武力攻撃事態等におきます日米安保条約及び日米地位協定で認められる武力行使には至らない準備のための合衆国軍隊行動があろうと存じております。  この法案の下で、我が国はこのような合衆国軍隊行動に対して、法案に申します行動関連措置として以下のような支援を行うことが想定されております。一つは、先生が今御指摘になりました自衛隊による物品及び役務の提供、法案の十条に規定されております。そのほかでいえば、例えば防衛施設庁によりますところの合衆国軍隊のための物品等の調達というものがあろうと思いますし、また、防衛施設庁によりますところの日米地位協定上の施設及び区域の提供ということが挙げられようと思います。なお、この施設区域の提供に当たりまして、武力攻撃事態におきまして緊急やむを得ない場合には、土地等の使用権限を取得するため、この法案の第十五条の手続により土地等の使用が行うことができるようになっております。
  180. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 三項は、これは予測事態と私は取ります。  今の説明にもありましたけれども、安保条約に基づいて米軍がその段階では武力侵攻排除の準備活動を、準備行動を行うと、こういうことになっていると思いますね。その安保条約というのは第五条に根拠を置く、そういう米軍の行動に対する自衛隊の支援というのは二項、三項あるわけですが、二項はもう最初から、初め、自衛隊法第七十六条、「防衛出動」と書いてあるわけですが、三項はこれは自衛隊法の何条になるんですか。
  181. 増田好平

    政府参考人(増田好平君) 御質問の趣旨、十分に取れたかと、あるいは自信のないところもございますけれども、法案の第十条三項に対応します自衛隊法の条文は、自衛隊法で言いますと第七十七条に当たろうと思います。
  182. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると……
  183. 増田好平

    政府参考人(増田好平君) 七十七条の三でございます。
  184. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 要するに待機命令ですね。この予測事態は七十七条で待機命令。そうすると、その第二項は、七十六条というのはどこからが第七十六条になるんですか。
  185. 飯原一樹

    政府参考人(飯原一樹君) 七十六条、防衛出動を命ぜられた部隊に関しましては七十六条、それから命ぜられていない場合若しくは予測事態につきましては附則で、済みません、附則の三条で七十七条の三というのを設けることになっておりますが、その場合には七十七条の三ということでございます。
  186. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それは書いてあることで、七十七条、七十六条はどの段階を言うかということを聞いているんであります。
  187. 増田好平

    政府参考人(増田好平君) 今の防衛局長の答弁を補足させていただきますと、この法律の立て方でございますが、第十条で「自衛隊による行動関連措置としての物品及び役務の提供の実施」という条文でございます。一項は物品の提供について規定をしております。二項がいわゆる役務提供、二項、三項が役務提供の規定でございます。  そこで、二項は防衛出動を命ぜられた自衛隊、既に自衛隊にある種の出動が命ぜられておりますので、この出動時における自衛隊権限として役務提供を規定しておるわけでございます。三項は、正に出動を命じられていない自衛隊というものを対象にいたします。  そういたしますと、その行動の淵源と申しますか、そういうものがまだありませんので、正にそれを与えるために三項で、行動関連措置としての役務の提供の実施防衛庁長官が命ずることができるということで規定しておるわけでございます。
  188. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 前回もちょっと言いましたけれども、私、時間がわずかしかないから今日ここで論議できませんけれども、ともかく米軍は安保条約第五条に基づいて行動する、それに対して日本自衛隊協力する。その自衛隊は、まだ防衛出動も発令されていない七十七条での役務の提供ですか。こういう、それから一方では七十六条だと。この関係というのはやっぱり私はきちっとしなくちゃならない問題。なぜそういう無理が生ずるかというのも、これは安保条約上想定されていなかったことをやる、その無理がこういう形になって現れていると思います。  次に私は、この十二条、十二条で武器使用が規定されています。これ、長くきちっと書かれているわけですけれども、その武器の使用というのはどういう事態を想定しているのか、これだけでは全然分からないので説明してください。
  189. 増田好平

    政府参考人(増田好平君) 法案の第十二条の武器使用の権限でございますけれども、これは我が国に対する武力攻撃等を企図いたします組織等にとりましては、武力攻撃事態等に、自衛隊法案に基づきまして合衆国軍隊に対する支援活動を行っている場面におきまして、情報収集活動とか妨害工作活動を行うことは予想されるところでございます。  したがいまして、法案に基づきまして合衆国軍隊に対する支援活動に従事する自衛官に対しまして不測の危険が生起する可能性が皆無とは言い切れないところでございますので、防衛出動下令前におきましても、当該職務を行っている自衛官に対し自己の生命等を防護するために必要最小限の武器使用権限を新たに付与する必要があると判断してこのような武器使用権限規定しているところでございます。
  190. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、この武器使用というのは、相手はつまり武力攻撃が予測される、武力攻撃してくる可能性のある相手ということなんですね。それの妨害活動等々に対して武器を使用することがあると、そういう説明なんです。そこら辺が私、条文でよく分からなかったんですが。  そうしますと、ちょっと整理して言いますけれども、周辺事態法のときには、自衛隊が米軍に対して後方地域支援をやっていると、それは危険が迫った場合には中断ないし撤退という、そういうことに法律上はなっていたわけですけれども、この法律の場合には、中断とか撤退ということではなくて武器を使用する、そして妨害を排除する、こういう事態になると、こういうことと取っていいですか。
  191. 増田好平

    政府参考人(増田好平君) いわゆる先生が今お示しになりました周辺事態というものは、我が国に対する平和と安全にとって重要な影響を与える事態ではありましても、我が国に対する武力攻撃というものを、何といいますか、概念の中心に置いている概念ではございません。  他方、今御審議いただいております例えば米軍支援法案が念頭に置いておりますのは、武力攻撃事態若しくは武力攻撃予測事態であります。我が国に対する武力攻撃が起こっている若しくは切迫しておる若しくは緊急、予測されるというような事態でございます。こういったことでありますときに例えば活動を中断するとかいうことを行いましては我が国に対する防衛を全うすることができませんので、そういう仕組みは入れておらないところでございます。
  192. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 だから、私もそういうふうに整理して、そういうふうに取っていいですかと聞いたところなんです。それがけしからぬとは僕は言っているわけじゃありませんけれども。  しかし、そうすると、それは我が国に対する武力攻撃ということではないが、いろいろな妨害活動もあると。そういう妨害活動が行われたときに、それを武器を使用してでも排除するということが起こると。これは排除活動とは、武力攻撃を排除する活動とはどう違うんですか。
  193. 増田好平

    政府参考人(増田好平君) 先生、今排除活動というふうにおっしゃったかと思いますが、この十二条の規定ぶりは、正に自己の生命等を防護するための必要最小限の武器使用権限ということでございます。
  194. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 あなたは相手国の妨害活動に対して武器を使用すると言ったわけですね。それは直接的には生命、財産を、生命、財産じゃないわ、生命を守るための武器使用であるかもしれませんけれども、しかしそれは、それによって妨害を排除するということではないんですか。  私は、いろいろな理屈が成り立つでしょうけれども、思うに、周辺事態が波及して予測事態になる、予測事態から、米軍に対して自衛隊が役務物品の提供を行うと、それはまだ待機命令の段階であっても、それが、そういう行動自体がやはり武器使用という事態になり、そのことが発展して次の武力攻撃という事態にもつながりかねない、そういう危険を持つことではないかと私は思いますが、それはどういうふうにお答えになりますか。
  195. 増田好平

    政府参考人(増田好平君) まず最初に、先生、先ほど私の答弁の中で、例えば妨害活動というものが予測されると。そうした行為を行う者がおったときに、正に支援活動に従事する自衛官に不測の危険が生起する可能性が皆無とは言えないと。そういった場合に身を守るための武器使用権限を与えておるという意味でございます。  先生、例えばこういう武器使用権限が多分エスカレートしていって武力攻撃そのものに至るというようなことがあり得るんではないかというお尋ねかと存じますけれども、まず前提として、我が国に対する武力攻撃というものは、我が国から見ればそもそも違法な攻撃でございます。そういったものに対していかに我が国を防衛するかという観点から考えてきておりますのが、昨年成立させていただいた武力攻撃事態法であり、今回の国民保護法案以下七法案なり三条約の仕組みだろうと、こう思っております。  そういった意味において、少なくともこの種の十二条のような武器使用権限は、正に活動に従事する自衛官の身の安全というものにとってはどうしても必要なものであろうということで設けておる武器使用権限でございます。
  196. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それはあなた方のおっしゃることで、私は、この二回わたって言ってきたことというのは、周辺事態法も武力攻撃事態等対処法も今度の関連法案も、元は一九九六年の日米安保共同宣言でアジア太平洋地域の安保責任を日本が分担した、ここが出発点であり、アジア太平洋地域の日米の安保体制を隅々まで確立していこうというその中で今のこの法案も作られたものだと。それは私、この前も言いましたけれども、九六年、安保共同宣言や周辺事態法を作ったときのいろんな関係者の文書を読んでみると、大体かなり大胆にそういうことが書かれていると思います。  ですから、日本は今、日本攻撃されたらどうするかという体制をここで整えているのじゃなくて、まず日本の領域防衛を超えて、日本自衛隊がアジア太平洋の安全保障を分担するようになった結果がこういう法律になっていると思います。  大事な問題は、私はそこにとどまらないで、今はアフガンのテロとの戦争でのインド洋への自衛隊の派遣、イラクへの自衛隊の派遣という事態になって、もうアジア太平洋地域の安全保障体制から世界安保への日本自衛隊役割を果たすという段階になり、その上、もっとそれが自由にできるようにしようということで、私どもは自衛隊海外派遣恒久化法というふうに新聞報道によって言っているわけですが、それを準備しているということを福田前官房長官は繰り返し言っていましたが、これは今どうなっていますか。
  197. 猪俣弘司

    政府参考人(猪俣弘司君) お答えいたします。  国際平和協力法あるいはテロ特措法等に基づきまして、委員御案内のとおり、我が国はこれまでも様々な国際平和協力を行って、平和協力を行ってまいりました。我が国国際平和協力を更に的確に実施していくために、今後の我が国国際平和協力の在り方全般について幅広く検討を進めているところでございます。
  198. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それはどういう内容のもので、時期はどの時期をめどにしていますか。
  199. 猪俣弘司

    政府参考人(猪俣弘司君) 先ほど御答弁しましたとおり、現在まさしく検討しているところでございまして、その内容等につきましては具体的にお答えし得る段階にはございません。
  200. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 めどを私は聞いているわけで、言えませんというのじゃない、私、答弁になりません。  じゃ、今度は防衛庁長官、お伺いします。  防衛計画の大綱を年内に変えるという構想が報道されております。それはどうなっている、事実であるかどうか。それから、改定するとすればどういう理由で何が中心になって改定されるか、簡単にお答え願います。
  201. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 本十六年末までに新しい大綱を作るということが昨年末の閣議において決定をいたしております。  なぜ変えるかということでございますが、今の大綱は平成七年に作られたものでございます。その後、例えて申し上げれば、テポドンミサイルというものが飛んできた、あるいは工作船事件というものがあった、九・一一というものがあり、そしてアメリカのトランスフォーメーションというものがあり、技術の革命的な進歩があるということがございました。そうしますと、今の大綱というものを見直す、そういうようなことになってきたのではないか。これは、先ほど来先生御指摘の、自衛隊が海外において何をするべきかということも含むものになるのかもしれません。  大綱というのは、これから先の防衛力をどのようにして整備をしていくかということでございます。これは一年や二年のものではございませんで、相当長期を見通したものになるのかもしれませんが、いずれにいたしましても、この環境の激変に伴う大綱でなければならない、そうでなければ政府の責任は果たせないと考えておる次第でございます。
  202. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 秋山さんのお書きになった、ここで何回も名前出しますけれども、本によると、九五年ですか、防衛計画大綱の改定というのは、日米協議の第一歩だったと、戦略的対話の第一歩だったということをお書きになっており、そして、いろんな特徴があるけれども、最大のものは何かというと、我が国周辺地域における平和と安定を確保する、そこに自衛隊役割を果たすこと、これが特徴の最大のものだったというふうにお書きになっているんですね。ですから、いろんなことがあるけれども、最大のものを、私、繰り返し言ってきたことですけれども、自衛隊日本防衛の自衛隊から周辺での役割を果たす自衛隊に転換する、これが最大の特徴だったと、これを日米対話で作り上げたということ、こう言っているんですね。今度は、今おっしゃった周辺、周辺じゃない、国際活動もあるかもしれない。私は、アジア周辺から世界で自衛隊が大きい役割を果たすものへの転換であると思います。  それから、同時に、これは今の大綱を作ったときと同じように、日米の戦略対話の中、戦略という言葉を使うのがいいかどうかは別で、日米協議を繰り返しながら改定作業が行われているかどうか含めて、お伺いします。
  203. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは一昨年の2プラス2でもそのようなお話をいたしました。ただ、私、心しておりますのは、これが受け身ということではないのだと。アメリカから言われてどうのこうのというお話ではなくて、我が国としてどうするべきなのかということを主体的に考えていかねばならないということが第一。  それからもう一つは、これは先ほど来参事官も答弁をしておりますが、まだ政府の中でいつ法案を出すということを決めているわけではありません。議論をしておる段階でございます。しかし、常に自衛隊の任務というのは、今の防衛法の位置付けでもそうなっておりますが、やっぱり我が国の防衛というものが本来任務の主たる任務でございます。それは世の中がどのように変わりましょうとも防衛力というのはそういうものだと私は思っております。自衛隊の持てる力というものを憲法の範囲内でどのようにして国際社会の安定のために生かしていくかという見地は当然重要でございますし、議論もいたしますが、やはり自衛隊の本来の任務、主たる任務は国土防衛であるということは常に変わらぬものだと考えております。
  204. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 時間が来ましたから終わりますけれども、短時間でこういう問題、論議が尽くせません。私も改めて徹底した審議を求め、審議のないままでの成立というふうなことは絶対ないように求めます。そのことだけ申し上げまして、終わります。
  205. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 社民党の大田でございます。  まず、井上大臣にお伺いしたいと思いますが、米軍の、米軍行動関連措置法案による武力攻撃事態における米軍に提供する土地、家屋の強制使用等の問題についてでございます。  本法案の第十五条では、総理は、武力攻撃事態において、米軍の用に供するため土地又は家屋の使用や立ち木の処分等を行うことができると規定しています。また、日米地位協定第六条による土地使用等に関する特措法の規定にかかわらず、期間を定めて、当該土地等を使用することができると定めています。同法案十四条で損失補償が規定されておりますが、具体的にどのように補償措置を担保なさるおつもりですか。
  206. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) 委員、今御指摘のように、一定の場合に米軍の行動のために土地等を提供する必要がある場合には、政府といたしましては、契約その他の手段によりまして土地の使用権限を取得をして米軍の方に使用させると、こういうことにいたしておるわけでございますけれども、その場合には、補償ですね、補償を伴うということはこれは当然のことでございまして、この補償の方法につきましてはあるいはもう少し詳細に検討する必要があるかも分かりませんけれども、通常、時価ですね、時価を基にして補償の価格は決定されるべきものと考えております。
  207. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 まあ前にも申し上げましたけれども、このような質問をせざるを得ないのは、実は、戦争中の補償がまだなされていないわけです、半世紀以上もたってですね。ですから、こういう法律の文言を掲げても大変不安になりますので、その辺は是非具体的に審議していただきたいと思います。  それから、本法案の今申し上げました第十四条の補償の規定ですが、同第九条による米軍への措置、つまり米軍の通行上の道路工事や妨害物の除去等によって生じた損害は補償するとなっていますが、その他の米軍の行動によって生じた損害についてはどうなりますか。
  208. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) ちょっと質問の御趣旨がよく分かりませんけれども、通常、特定人にだけ帰属するような損失につきましては、例えば今お話しになりました土地の収用でありますとかあるいは使用権限の取得でありますとかあるいは施設ですね、家屋の使用権限等につきましては、これは補償するわけでございますけれども、今のこのお尋ねは、恐らく武力の衝突がある、戦いがありまして、そのときに私有財産が毀損した場合にどうかというような御質問であるのか、あるいはどうなのか、私ちょっとよく分かりませんけれども、いずれでございましょうか。
  209. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 人身事故とか交通事故とか、そういういろいろな米軍の行動によって、単に立ち木や家屋の損害だけじゃなくて、基地を抱えておりますと現に今でも一杯事故があるわけなんです。  ところが、その人身事故なんかに対してもまだ補償されていないのがあるわけなんで、そういった意味で、立ち木の補償とか家屋の補償とかということは明確に書かれているわけですが、その他の人身事故とか米軍の行動によって生ずる損害に対してはどういうふうに補償をするかということでございます。
  210. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) そういうような場合にはもう損害賠償をするということでございまして、例えば人身事故が起こったとか、あるいは何らかの損害が生じたというような場合には、それは通常の損害賠償を行うということでございます。
  211. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 その場合の賠償の責任者は米軍になるんですか、日本国になる、日本政府になるんですか。
  212. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) これは日本政府が代わって行うと、こういうことになるわけでございます。
  213. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 米軍の行動によって一般市民がいろいろと人権の侵害とかあるいは財産権の喪失みたいな形で損害を受けたときに、法的な手続によってその市民が自らの持っている権利を回復することは可能でしょうか。何か法的な手続規定がございますか。
  214. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) これは、今委員が御指摘のように、通常生ずる民事上の損失の補償のことじゃないかと思うんでありますけれども、もちろんその場合は民法の原則によりまして補償がされるということでございます。
  215. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 日米物品役務相互提供協定、つまりACSAの改定に伴う米軍への自衛隊の支援活動に関連して、イラクに派遣されている航空自衛隊の輸送業務について防衛庁長官にお伺いいたします。  イラクでの空自による輸送の実績については以前外交防衛委員会で御質問いたしましたが、三月三日からクウェートとイラク国内の空港間の輸送を開始したとのことでありました。ところが、四月八日付けの日経新聞は、津曲航空幕僚長が四月八日早朝、訪問先のクウェートで記者会見し、空自のC130輸送機で米軍など連合軍の兵士を輸送したことを明らかにしたと報じられています。津曲幕僚長は、さらに、武器弾薬を単体で輸送していないが、兵士とともに携行可能な武器類を運んだことを認めたともあります。  米兵を輸送したことは事実でございますか。防衛庁長官お願いします。
  216. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 空幕長会見、四月八日の御指摘をいただきました。その四月八日までの間に、関係各国、関係機関などの人員を輸送したことは、これは事実でございます。  関係各国、関係機関等の人員の中には、これはあくまで一般論でございますけれども、コアリショングループの中核を成しますアメリカの兵員が含まれているということがございますのは、これは当然のことでございますし、また先ほど単体というお言葉をお使いになりましたが、それが小銃等々、そういうようなものを携行している、そういうことのアメリカの兵隊、これを運ぶということも、これは当然あり得ることでございます。
  217. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 古い話で恐縮ですが、一九九〇年十月二十九日の衆議院の国連平和協力特別委員会で、当時の工藤法制局長官は、他のものに対しての協力武力行使と客観的に見られるケースとして、現に戦闘が行われている前線へ武器弾薬を供給する、輸送するようなことを挙げていますけれども、今回の空自の米兵の輸送はこのケースに当てはまるんじゃありませんか。    〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕
  218. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 当てはまりません。  これは兵員を輸送するものでございますし、そしてまたこれが武器弾薬そのものを運ぶということではなくて、彼らが携行をしているという、この彼らが主体なのでございまして、武器弾薬というものは、それは小銃であれ、それは小銃弾であれ、これは携行しておるものでございます。この輸送というものは武力行使と一体化するものでは全くございません。
  219. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 外務大臣にお伺いいたします。  ACSA改正案第五条二項の付表を見ますと、自衛隊による米軍への補給業務の中に、軍用機、軍用車両、軍用艦船の部品及び構成品並びにこれらに類するものとありますが、このこれらに類するものとは武器類の部品あるいは構成品も入っているわけですか。
  220. 常田享詳

    ○理事(常田享詳君) ちょっと止めてください。    〔速記中止〕
  221. 常田享詳

    ○理事(常田享詳君) 起こしてください。
  222. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) ACSAでございますけれども、これはACSAによって武器の提供自体は行えないということでございますけれども、これは同時に、他方でと申し上げた方がいいと思いますけれども、部品、構成品、これは提供し得る枠組みでございます。  したがって、武器そのものではない武器の部品、構成品を提供するということがACSAに基づいて排除をされたということではないということでございます。
  223. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 武器の提供はできないということですね。武器の提供はできないということですか。
  224. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) そういうことでございます。
  225. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 米軍行動措置法案第十条四項に自衛隊による米軍への物品及び役務の提供が定めてあります。その中で、補給は武器の提供を除くとされていますが、輸送は、輸送については特別のただし書はありません。  防衛庁長官にお伺いしますが、輸送は、弾薬はもちろん、武器もできるということでございますか。
  226. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) 武器もできるということでございます。
  227. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 弾薬。
  228. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) 弾薬、輸送ですね。輸送につきましては武器も弾薬もできるということでございます。
  229. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 井上大臣にお伺いしますけれども、米軍を支援するに当たって今お話しのように武器も弾薬も輸送を行うことができるとすれば、周辺の国々からは米軍と自衛隊が一体的な作戦をしていると見られるおそれがありますが、そういう懸念はございませんか。つまり、集団的自衛権を行使していると見られるおそれはありませんか。
  230. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) 日本武力攻撃をされました場合に米軍と一体になりまして対処するわけでございまして、米軍からいえばこれは正に集団的な自衛権といいますか、その部分はそう言えると思うんでありますけれども、これは正に日本がこれ攻撃されたときでありまして、日本は自衛のために応戦をする、武力行使しということでございまして、正にそういう場合に、日本対処する場合に米軍は支援するわけでございますから、それはもう、何といいますか、米軍とともに対処をしていくということでございます。
  231. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 米軍側は集団的自衛権と認めるという趣旨のお話ですが、日本側はそれを集団的自衛権と認めるのですか、認めないのですか。
  232. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは先生、場合分け、どういう場合に使うかということでございます。  ですから、それが日本攻撃が、日本に正に武力攻撃が加えられているという事態であるとするならば、それは我が国集団的自衛権は行使できませんから、それは個別的自衛権というお話になるわけでございます。  日本に対していまだ武力攻撃が仕掛けられていないという場合には、当然日本自衛権というのは使えないわけでございまして、それは武力行使に当たらない、その範囲でなければ支援はできないということに相なりますので、それは集団的自衛権の問題ということは発生する余地がないというふうに私どもとしては考えております。
  233. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 終わります。ありがとうございました。
  234. 山本正和

    山本正和君 いよいよ最後ですので、もうちょっと頑張ってください。  私は、この法案をずっと見ておって、もしも何かあった場合にどうするかということにきちっと備えをしなきゃいけないと、そういう意味で法案を作ることは賛成なんですよね。ところが、どうも中身を見るとこれでいいのかしらと思うものだから、それでしつこいぐらい質問するんです。  ちょっとそこで聞きたいんですけれども、外国では、こういうふうな非常事態というか、その場合に、住民避難計画とか、どう対応するかというような計画外国でもそれぞれ持っておると思うんだけれども、外国ではどのような形になっていますか。
  235. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) 外国でも、私ども十分なこの調査をしておりませんけれども、余りこういった例はないというふうに承知をいたしております。  ただ、韓国の場合は、この民防の基本法におきましてこの計画を作るようなことはあるようでございますけれども、いわゆるここの国民保護法で言いますような、に類する計画につきましては、我々としては十分な調査はいたしておりません。
  236. 山本正和

    山本正和君 特に、この法案で、国と地方自治体あるいはその他の関係がいろいろ書いてあるわけですね。  それで、Q&Aまで出していろいろと理解を求めるために作っておられると、こうおっしゃるんだけれども、それを読んでいてちょっと私が心配したのは、もし私が仮に日本国内に混乱を起こさせようと、攻撃をする立場で考えてみたんですよ、攻撃をする立場でね。例えば、あの例のサリン事件、何とか彰晃だったですね、がやったような格好で地下鉄にまくと。それを東京だけじゃなしに、東京、名古屋あるいは大阪、京都、ありとあらゆる地下鉄のあるところにみんな分散させておいて、一斉にそれと言ってぱっとやったと。そういうときに対してこの事態法は対応できるかと私は思ったんです。  どうもできそうにないんだけれども、これ、どうですか。これ、できると思いますか。一斉にもし、例えばテロリストでもいいですよ、あるいは国内で政府を転覆しようとする人でもいいよ、そういう人がいろいろと考えてこの国で大騒動を起こそうと思ってやったと。これは正に武力攻撃事態という中で想定する事態。それにこれ対応できると本当にお思いですか。
  237. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) どういう具合にこの避難をしていくかとか、そういったことに関係してくると思うのでありますけれども、そういった場合の避難の地域でありますとか、あるいはこの防毒マスクを付けるだとか、いろんな想定をいたしまして、そういった、つまり化学兵器ですね、による攻撃の場合は、これは考えていかないといけないと思うんであります。委員御指摘のように、特定の地域の場合もありましょうし、数か所を目標にしたこともあろうと思うんでありますけれども、考えられる限りの対応はしないといけないと思います。  御承知のとおり、この基本指針におきまして、どういうような避難をしていくか、どういうような対処をするかというようなことをこれから検討するわけでありますけれども、考えられる、想定され得る、そういう場合に対処ができますようなことを検討していきたいというように考えているわけでございます。    〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕
  238. 山本正和

    山本正和君 実は、一生懸命お作りになったことはよく分かるんですよね、あらゆる事態を想定されてと。しかし、現実に事が起こったことをシミュレーションしておやりになったんだろうかということは非常に気になるわけですよ。  それで、いろんなことを言うけれども、いろいろな事態を、四つの事態を想定してとかいろいろ書いてありますよね。しかし、私は実際に我が国がまずやらなきゃいけないことは、そういう国内の騒動を起こそうと思っていろいろやる者がやった場合にどうなるか、それにテロリストが結び付いた場合はどうなるかと。こういうことは本気になって考えないといけない。だから、そのシミュレーションできているだろうかと。例えば、この前の例の麻原彰晃なる者がやった事件でも、対応するのにはもう大わらわですよね。  しかし、まず、じゃそこで、そこで市町村の長の責任はどうなんだ、知事の責任はどうなんだと、国の責任はどうなんと言っている暇はないんですよね。正に国民全体にパニックが起こりそうな問題が起こったら、これは戒厳令とまではいかぬでもね、国家が非常大権をもってでも守らなければいけないんですよ、そのために国家があるんだ。  そこが何かこう及び腰でね、やれ民主主義で人権を守らなきゃいけないからとか、自治体もそれをちゃんと守らなきゃいけないとかね、そういうふうなところが頭にふわっとあって、しかも突っ込まれたら困るから、どうもこれはアメリカ軍の補助するための準備行動だなんてやられると困るものだから、一生懸命に何とか文句を言われないようにぐしゃぐしゃっとこう作ったというふうに見えるんだ、私は。  本当に大変なことが起こったらどうするかということをシミュレーションして、それでいかなる事態でも対応しますよというのを作るのが私は対処法だと思う、実際はね。  そういう意味で、本当に今のようなことを想定したシミュレーションをおやりになりましたか。どうですか。
  239. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) 例えばサリンあるいは生物兵器ですね、こういったのが広範に、例えば日本全国を対象にして散布をされるというような状況というのは、これは一体どんな状況なのかということなんですね。  やはりいろんな情報を収集をする。それは、国内はもちろんでありますし、海外の方からも情報を収集して常に分析をする、あるいはそれに対する措置を考えるわけですね、水際であるいは国内で。そういう措置を前提にいたしまして、なおかつそれでも日本で起こり得るような場合、そういうものを想定いたしまして、委員の言葉をかりればシミュレーションをいたしまして、我々は対応を考えていかないといけないと思います。  どれだけ完全なものができるかよく分かりませんけれども、できます限り我々としてはいろんなことで最善を尽くすということを前提にいたしましてシミュレーションをいたしまして、この基本指針の方でその対応を明らかにしていきたいと、こんなふうに考えているわけであります。
  240. 山本正和

    山本正和君 井上大臣はどうも温厚な方なものでそういう形で答弁されるけれども、私は、これは、本当はこの前のあんな地下鉄事件のようなことが起こったら、内閣が責任を持って、自衛隊にも消防にも警察にも一斉に直ちに指揮して、行けと、それを言わぬことにはできぬと思うんですよ。  ところが、権限がそれぞれ分かれておって、警察は警察、消防は消防、自衛隊自衛隊と、市町村は市町村、知事知事と。それで、もしあんなことがぱっと起こったらできますか、本当の話は。私は、そういうことは、だから国民に遠慮せずに、こういうことになった場合はこうしますよということは提案すべきなんですよ。何か、こうじわじわとおしりが引けてやっているように見えるんですよ。  私は、そこでちょっと聞きたいんだけれども、しかも国民に対して、これはどなたがお考えになったか知らぬけれども、協力をしてもらうよう、協力するよう努めるものとすると。しかも、それはあくまで自由意思とは言わぬけれども、それに近いような格好でやりますよ、国民の皆さんには迷惑掛けませんよということを言っているんですよ。しかし、三宅島の例見てくださいよ。全村挙げてみんなが災害に対して立ち向かうんですよ。一緒になってやりますよ、一生懸命、それね。  だから、問題は、本気になってこの国を守らなきゃいけない、何かあった場合はみんなで助け合いしてもやりましょうということを国民が分かるような格好で、この武力攻撃事態とは何かということをきちっと説明して理解を得る自信があったらそういうことを言わぬでいいんです。みんなで一緒にやりましょうだっていい。何か知らぬけれども、したくない人はせぬでもいいですよと見えるような、そうは書いてないけれどもね。  だから、そういうことを含めて、やっぱり私はこの武力攻撃事態法については、本当は本気になってみんなで考えなきゃいけない。私はいろいろ質問してきましたけれども、本当はそんな、我が日本の国に外国軍隊が上陸して戦うなんという事態は考えませんよ。また、事実不可能だと私は思う、正直言ってね、この海岸線持っている国に。しかし、ひょっとしたら、もし僕がテロリストで日米安保ぶっ壊してやろうと思ってやるんならばサリンぐらいまきますよ。そういうことに対しては本気になってみんなが守らなきゃいけないんだけれども、何か知らないけれども、日本軍とアメリカ軍が共同行動をして世界であちこちするために都合良くしよう、そのためにこの法案作ったんだというふうな印象を与える、これは。  本当に国民の皆さん、これでいいんですかということから発するんならば、そこをきちんと私はすべきだと思うんですよ。その辺はどうですか、御見解は。
  241. 井上喜一

    国務大臣井上喜一君) 二つのことを御質問だと思うんであります。  一つは、こういう緊急事態が発生いたしました場合は、まあ武力攻撃事態ももちろんその最たるものでありますけれども、どうも自衛隊とか警察とか消防がばらばらでやっているんじゃないかというようなことを言われたんでありますけれども、これは類似のいろんな事件が起きまして、だんだんとそういったことに対処する体制が今整備されてきております。  確かに、日本の行政組織のいい点は、縦割りにつきましては非常に早く的確に対処する場合が私は多かったと思うんでありますけれども、どうも横の連携というのが、つまり一斉にみんなが一緒にやる、同じ目的に向かって行動するということが少なかったんじゃないか、そこに問題があったんじゃないかという御指摘でありますけれども、今はこの緊急の事態を想定いたしまして本当に関係各省が参集する、特定の場合にはやっぱり閣僚にも連絡すると同時に閣僚の会議を開くというようなことで、これは内閣官房を中心にいたしまして今そういう体制ができ上がってきていると私どもは考えております。  やっぱり御指摘のとおり、これはもうでき上がったからそれでいいということではなしに、いろんな技術だって、あるいはいろんなやり方もこれ変わってくるわけでありますから、常に研究をしながら、更に体制を、的確な対応ができるような体制を整備していかないといけないと考えておりますけれども、今現在、私は内閣官房を中心にした体制というのは、まずまずこれは統一的な行動ができるような体制ができ上がってきているというふうに考えるわけであります。  それから、国民協力義務でありますけれども、委員のような国の命令といいますか方針で全部をまとめていくといいますか、一つの方向に持っていくということもあるいは方法としてあるかも分かりませんけれども、これも、やはり前の武力攻撃事態法のあの審議の過程でいろんな異論が出まして、やはり最大公約数といたしまして、そこまで義務付けるというのはいかがなものかということで、そういったことが法案の中にも織り込んでおりますので、私どもはそれを基本的に尊重いたしましてこのたびの基本法案を作ったんでありますけれども、しかし、事が起こりますと、これは三宅島の例でもお分かりのように、やっぱりみんながまとまって、じゃこうしようということになると思うんですね。私は、こういう事態が起これば、ばらばらでおれはこっちだ、いや、おれは向こうだというようなことにならないと思うんでありまして、事態をよく説明いたしますれば一つの方向で動くと、対処するということは皆さん方の御理解を得られるものと考えているわけであります。
  242. 山本正和

    山本正和君 それでは、一言だけ言って終わりますが、しっかりもう一遍本当はきちっと、何というか、検討し直していただきたい、本気になって非常事態に対する対応を考えていただきたい、このことを申し上げて、質問を終わります。
  243. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後六時二十三分散会