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2004-02-09 第159回国会 参議院 イラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年二月九日(月曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員異動  二月六日     辞任         補欠選任      千葉 国男君     渡辺 孝男君  二月九日     辞任         補欠選任      中原  爽君     藤井 基之君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         清水 達雄君     理 事                 田村 公平君                 常田 享詳君                 舛添 要一君                 山内 俊夫君                 齋藤  勁君                 若林 秀樹君                 高野 博師君                 小泉 親司君     委 員                 有村 治子君                 大野つや子君                 小泉 顕雄君                 後藤 博子君                 田浦  直君                 西銘順志郎君                 野上浩太郎君                 福島啓史郎君                 藤井 基之君                 藤野 公孝君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 森田 次夫君                 山崎  力君                 池口 修次君                 岩本  司君                 神本美恵子君                 佐藤 道夫君                 榛葉賀津也君                 高橋 千秋君             ツルネン マルテイ君                 辻  泰弘君                 平野 達男君                 森 ゆうこ君                 荒木 清寛君                 遠山 清彦君                 渡辺 孝男君                 池田 幹幸君                 吉岡 吉典君                 大田 昌秀君                 山本 正和君    国務大臣        内閣総理大臣   小泉純一郎君        外務大臣     川口 順子君        国務大臣        (内閣官房長官) 福田 康夫君        国務大臣        (防衛庁長官)  石破  茂君    内閣官房長官        内閣官房長官  山崎 正昭君    副大臣        防衛庁長官   浜田 靖一君        外務大臣    阿部 正俊君    大臣政務官        防衛庁長官政務        官        中島 啓雄君        外務大臣政務官  荒井 正吾君    事務局側        常任委員会専門        員        鴫谷  潤君        常任委員会専門        員        田中 信明君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       増田 好平君        防衛庁防衛参事        官        松谷有希雄君        防衛庁人事教育        局長       小林 誠一君        外務省中東アフ        リカ局長     堂道 秀明君    参考人        財団法人平和・        安全保障研究所        理事長      渡辺 昭夫君        独立行政法人日        本貿易振興機構        アジア経済研究        所地域研究セン        ター参事     酒井 啓子君        国際政治軍事        アナリスト    小川 和久君        専修大学法学部        教授       小田中聰樹君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保  支援活動実施に関する特別措置法第六条第一  項の規定に基づき、自衛隊部隊等による人道  復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の  実施に関し承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付)     ─────────────
  2. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ただいまからイラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る六日、千葉国男君が委員辞任され、その補欠として渡辺孝男君が選任されました。     ─────────────
  3. 清水達雄

    委員長清水達雄君) イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動実施に関し承認を求めるの件を議題といたします。  これより、本件審査のため、参考人として、財団法人平和・安全保障研究所理事長渡辺昭夫君、独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター参事酒井啓子君、国際政治軍事アナリスト小川和久君、専修大学法学部教授小田中聰樹君、以上四名の方々の御出席をいただき、御意見を聴取し、質疑を行います。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  参考人方々から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。ありがとうございます。  本日の議事の進め方でございますが、参考人方々からお一人十五分以内で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず渡辺参考人からお願いをいたします。渡辺参考人
  4. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) 御紹介いただきました渡辺でございます。おはようございます。  本日は、参考人として意見を述べさせていただく機会を与えていただき大変ありがとうございます。私、安全保障専門としている者でございますので、安全保障の見地からまずお話をさせていただきます。後半、イラク問題の持つ新しさという点についてお話しできればと思います。  安全保障という問題が非常に大きく変わりつつあるということがまず申し上げたいことであります。その中で、今、日本が何をすべきか、また何をしようとしているのかについて考える必要があると存じます。  変化というのは、一言で言えば国際安全保障という言葉で表現できるような変化でございます。国家が各々自国の軍事力を主な手段として有事に備えるという古典的なタイプ安全保障政策から、国家国際組織地域組織、NGOなど様々な主体がそれぞれの立場から力を出し合って、全体としての国際社会安全度を高めるために協力するというタイプ国際安全保障政策へという変化でございます。  無論、今はその過渡期でありますので、安全保障政策二つの面が交じり合っていると思います。特に、東アジアの場合は近代国家形成の歴史的な課題が未完成でありますので、古典的、伝統的な国家安全保障政策重要度がほかの地域に比べて大きいことに注意をすることが必要であると思います。  例えば、領土問題などがあるのがその例であります。国家というものの一つの特徴である領域性ということがございますが、その領域性ということについての定義がまだ確定していないという問題だと思います。また、政治的な自己決定主体としての括弧付き民族とは何かという問題にまだ答えが出ていないと。朝鮮半島や台湾海峡の問題を見れば明らかであります。  そういうような国際環境に置かれながらも、日本東アジアを越えた地域、地球全体の規模での国際安全保障にかかわる問題の対応をその外交・防衛政策の重要な課題として抱え込むようになってきているわけであります。最近十余年、十年余りの安全保障政策の展開を見ればそれは明らかであります。  冷戦が終わった後に新世界秩序時代がやってくるという一時の楽観的な未来像はたちまちしぼんだというふうに言われておりますが、ローマは一日にして成らずという言葉がありますように、新世界秩序建設も即座にはできないわけであります。そのための苦しい試行錯誤を人類は経験しているというのが今日の姿であると私は存じます。  湾岸危機湾岸戦争後、日本もおずおずながらその新世界秩序の大事業に参画し始めたわけであります。カンボジア東ティモールの例がございます。イラクもその延長上にあると言っていいと思います。ただし、イラクにはこれまでにない新しい面もあるわけでありまして、日本国際安全保障政策が新しい試練に立たされていることも指摘しなくてはなりません。  何がイラク問題の新しさなのかの議論に入る前に確認しておくべき問題がございます。国際安全保障とは比較的に少ない危険や犠牲で済むような易しい気軽な活動分野であり、国益とのかかわりからいっても、やや遠い国際的な慈善事業又は奉仕活動のようなものであるのかという問題であります。答えノーであります。人道的介入とか国際社会による支援といういささか美しい言葉でそこを錯覚してはいけないと思います。  その理由は幾つかございます。  第一は、この事業自分一人でやれるものではなくて、またやるべきものでもない、できるだけ多数を巻き込んでその協力の下に行って初めて可能な活動であります。  みんなで分担するのだから一人で担ぐには軽いかというと、そうではありますが、多数の間の協力組織、維持するというのは気苦労もエネルギーも必要でございます。各参加者のエゴがぶつかり合うのをどう調整しながら全体の仕事を進めていくのか、正直申して日本は余りこの点で得手ではございません。リーダー格アメリカも決してその点でスマートとは言えない。これが第一点ですね。  第二は、時間を労することであり、忍耐と持続力が必要であります。  目前の組織された敵、軍事力相手に戦うのとは違って、何を相手に何をすれば目的が達成できるのか非常に分かりにくい。したがって、目標を失いがちである。そうすると、必要な緊張度を長時間にわたって保っていくというのは大変容易ではございません。  第三は、これはだれも反対しようがない立派な目的を目指す活動なのだから、それに対して妨害するものがないのかというと、ノーでございます。  名は何であっても、これが他者による介入であることは間違いがない。仮に頼まれて仲裁に入った場合でも、紛争の当事者双方、場合によっては双方から忌避されるのは夫婦げんかだけではございません。善意であれ何であれ、他者介入はしょせんは要らぬおせっかいなわけであります。  ただし、そう言って済ませるためには大事な前提がございます。それは、当事者自己の責任で内政を、家庭内をちゃんと治めるという意図と能力があるという前提が必要であります。そうした前提がない場合は、国内の諸悪が国境を越えてあふれ出て、平和と安定の追求を脅かす危険が大きくなります。そこで国際社会が、様々な困難や、場合によっては支援の受け手からの大小の反発と抵抗を覚悟であえて介入せざるを得ないということになります。したがって、国際的支援というのは極めて骨の折れる仕事であります。場合によってはペイしない話であります。  さてそこで、後半の話に入りますが、じゃ、イラク問題とは、何がどこ、何であって、どこが今までと違うのかという後半の話に移らせていただきます。  今まで申し上げましたような国際安全保障課題の困難さというものをアメリカヨーロッパ諸国は既に旧ユーゴとかコソボとかルワンダとかソマリアなどで既に経験してきております。日本にもカンボジア東ティモールの経験がありますけれども、人道的な介入にまつわる深刻な諸問題に初めて直面するというのが今度のイラクだと言っていいと思います。  もう一つの新しい側面は、これは日本についてだけではございません。一般的に言えることですが、九・一一後に明白になった国際テロの問題であります。アフガニスタンの山奥でタリバーンの支援の下でひそかに訓練されたアルカイダが、遠く離れたニューヨークで生活する人々を大量に殺することができるという事実が示していることは、国境で区切られた国家同士武力で争うという古典的な戦争世界とは異質な世界へと二十一世紀の人類が入り始めていることであります。国境なきテロリストとどう立ち向かうのかという問題にいやでも我々は直面せざるを得ません。  言い換えれば、人道的な介入や破綻し掛かった国家への復興支援は、自分自身安全保障と深いところでつながりがある問題だという事実を直視しなくてはなりません。イラクへの人道復興支援は、その意味では他人へのお情けではありません。情けは人のためならずの心意気で取り組むべき事業であります。  次に、イラクカンボジア東ティモールの場合と違って、内紛の当事者が長年の争いにくたびれ果てて、外部からの調停者介入を、仮に渋々であっても、望んでこうなったのではなくて、統治主体外部の力で打ち砕いて、その後に内部の諸勢力が新しい統治機構建設に向かって呼び出されるという経緯をたどっております。また、中東地域が占める戦略上、資源上の重要性から見て、他の先例に比べて異なる利害関係者のせめぎ合いの舞台となりやすいところであります。一言で言えば政治性が極めて濃い。  そのためには、介入主体である国際社会を言わば単数形のものとして語るのは難しくて、その内部にかなり深刻な分裂を含んだ国際社会でしかないという事態が露呈しているわけであります。言い換えれば、国際社会とは名のみでありまして、影響力を競い合う諸国家集合体でしか実はないわけであります。  本来、国連常任理事国として国際社会の屋台骨を支えるべき主要国家間の一致度が希薄になればなるほど、今申し上げたことの印象が強まるわけであります。そうすると、国際社会という一致したものがあるという前提で、その国際社会への協力を名として国際安全保障共同事業に身を投じようとするスタンスを取ってきた日本にとっては苦悩が深くなるわけであります。みんなで渡れば怖くないといいますが、このルビコン川を渡るのに一部の反対を押し切ってでも渡ろうとする気概が日本にあるのかということが今問われているわけであります。  以上で私の最初の意見陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  5. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ありがとうございました。  次に、酒井参考人お願いいたします。酒井参考人
  6. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 議長、ありがとうございました。  御紹介にあずかりましたアジア経済研究所酒井でございます。本日は、私は、日本の対イラク復興支援の在り方と自衛隊派遣位置付けというテーマで、日本イラク支援という形で何ができるか、何が問題であるかという点についてまとめさせていただきたいと存じます。  お手元にお配りいたしましたレジュメが二枚、それから資料を五つほどお配りしております。それから、たくさんで恐縮でございますけれども、先日、北海道新聞の方に寄せさせていただきましたコメントを、読みにくいコピーで恐縮でございますけれども、配らせていただいております。  まず、私が本日申し上げたい点の一番大きな点は、現在、サマワ自衛隊が昨日派遣されましたサマワというところで自衛隊に対する過剰な期待が高まっていると、そのことによってサマワ自身サマワという町自体が大きな社会的な混乱が生じつつある、あるいは経済的なバランスの変化というものが起こりつつある。そうしたサマワの今後の安定性をどういうふうに見るかということを中心にお話しさせていただきたい。  そして、それを、安定を確保するために、結論から申し上げれば、サマワだけでこのサマワ地域における自衛隊の安全というものが確保できるわけではない、日本全体あるいは国際社会全体の包括的な対イラク取組というものが実現できてこそ自衛隊の安全が保障できると。それがなくては、逆に自衛隊サマーワに取り残されるというような形で状況が不安定化するということを申し上げたいと存じます。  まず、サマワにおける日本に対する期待というものが一体なぜこのような形でギャップがここまで開いてしまったのか、期待されるものと実際に自衛隊ができることのギャップがなぜここまで開いたのかという点については二点原因を述べさせていただきます。  一番目の点については、よく言われていることでございますけれども、イラク人サマーワのみならず、イラク人一般には日本に対して経済大国としての期待が非常に高い。これは七九年から八二年までの間の日本企業イラクにおける活躍、その記憶がイラク人の間に非常に鮮明に残っているということが挙げられます。これにつきましては資料で多くのデータを挙げさせていただいております。  資料の一から四までごらんいただければ分かりますように、七〇年代後半、八〇年代前半は、日本企業がほとんどのイラク建設プロジェクトなり国内での開発事業というものを一手に引き受けて行ってきたということがございます。この間、資料四に挙げさせていただいておりますけれども、日本ODAイラク向け混合借款を提供していた時期はございます。しかし、後ほど詳細に見ていただければ分かりますが、日本ODAの額に比べて、使用されたODAの額に比べて民間の関与した額というのは比べ物にならないほど多い。つまり、これまでの日本イラク関係民間主導で行われてきたということがございます。  そして、更に言えば、日本に対する期待原因一つとしては、アメリカイギリス中心とした現在のイラク復興統治政策、これがイラク人にとっては大変不評であると。この英米主導不評な戦後統治日本がやってくることによって変えてくれるのではないかと。つまり、英米に代わる代替案としての日本という位置付け日本が大変期待されているという側面がございます。  この二つ期待日本企業のような活動自衛隊がしてくれるのでは、そして自衛隊あるいは日本英米に代わった役割を果たしてくれるのではないかというこの期待は、残念ながら今の自衛隊にはこたえることができないと言った方がよろしいかと思います。  こうしたこたえられないという環境が生じたときに何が起こるかという点は、二番目の点のように、まず第一に短期的には自衛隊に対する失望感からそれを排斥すると。つまり、これまで数々の外国軍イラクに駐留しているわけですけれども、それらのほとんどが復興支援に来たのではなくて何もしないでイラク国内にただいるだけではないかと。むしろ外国軍イラク国内に駐留することによって、生活環境が変わって生活の支障になっているという悪評を特にアメリカ軍などは最近受けているわけですけれども、日本イラクの、イラク国民期待に沿えないということになると同じような非難を浴びる危険性があるというのがまず短期的な第一の問題です。  これにとどまらず、長期的に見てもやはり大きな問題が残る。つまり、ここで自衛隊万が一イラク人国民の気持ちをつかむことができずに、むしろ反発を受けるということになりますと、長期的に見て、日本企業が今後イラクにおいてビジネスをしていく際に日本全体が悪いイメージで語られてしまうということがございます。  私は基本的に、冒頭に申し上げましたように、日本イラクの友好だった時代というのは民間企業中心となった経済関係によって日本イラク関係は支えられてきた、石油安定供給日本製品の輸出というような形で交易関係によって成り立ってきたというのがございます。そういうことを考えれば、長期的に見れば恐らく自衛隊人道支援というのは一種言わばつなぎのような役割を果たす。自衛隊がつなぐ、つないでいるとしても、将来的には民間企業なり経済界中心になって日本イラク関係というものは構築される、それが将来の姿であろうというふうに思っております。ですから、そういう意味では将来の日本イラク関係を考えても、ここで日本全体に対する失望感を抱かせるということは大変マイナスになるということだろうと思います。  そうしましたらば、そういった期待にどうやってこたえていくかということを考えますと、先ほど申し上げましたように、サマーワ自衛隊が何とか地元住民とうまくやっていけばそれで何とかなるという問題ではございません。これは政治的に、あるいは外交的、あるいは国際社会全体に関連して、総合的な包括的な対イラク復興政策を考え直していく必要がある。  つまり、今はアメリカイギリス主導で行っている復興政策が様々な形で障害を生じている、あるいは不備な点が多々ある。こうしたものを一回見直す形で、これは国連が母体でもいいし、あるいは日本アメリカ関係を軸にするのでも構いませんけれども、いずれにしても今のようなやり方の復興支援を見直すというようなことを長期的に考えていく必要があるかと思います。  それでは、具体的に、では具体的にどういうことが日本に今できるのか、あるいは何が問われているかという点に移りたいと思います。  まず、経済的な側面においては自衛隊サマーワにおける自衛隊活動ということ以上にやるべきことが多々あるというふうに私は考えております。  まず第一点目、これは、サマワというところは大変地方部イラク国内でも過疎地に当たる地域でありますので、サマワを経済復興することによってイラク人全体の経済水準を上げるということには無理がございます。となれば、逆に言えば、サマワで一生懸命自衛隊が頑張ってもサマワ生活水準が上がらない。ほかの地域、ほかの産業集積地における経済発展経済復旧がなされない限りはサマワも十分な発展が遂げられないという限界を背負っております。そのためには、産業集積地中心にインフラを回復していくという手だてを取る必要がある、これは早急に取る必要がある。  この産業集積地はどこかといいますと、バスラでございます。バスラからコールズベールあるいはウムカスルといった港湾施設が続いている石油コンビナート中心にした産業集積地がございますけれども、これは資料をごらんいただいてもお分かりのように、この地域のほとんどの工場あるいは港湾施設日本が、日本企業がかつて提供したものであります。  それだけに、復旧作業は、造った企業が直すというのが一番手っ取り早い。今、アメリカイギリスがそうした復旧作業に当たってはいるけれども、しかし事前調査の段階で手間取っていて、実際に復旧がスムーズに進んでいるという状況ではないというのが問題だと言われておりますので、そうしたところに極力早く日本が関与していくということが最もイラク人に目に見える復興ということになろうかと思います。  二番目には、よく言われておりますように、雇用の創出でございますけれども、雇用も、イラク人技術水準の高さ、テクノクラートの多さということから考えれば、ただ単純労働雇用を増やせばいいというわけではない。むしろ、技術者や医師、テクノクラートなどを日本に招聘して、日本から多くの、たくさんのお金を掛けて調査団を派遣するよりもイラク人をどんどん呼んで、そこで技術研修を行う、必要なものを持って帰ってもらうというような形の研修事業、人材開発といったようなものがあれば、ある意味では単純な復興事業などはイラク人自らができる、そういうイラク人の手によって行われるような復旧作業をいかに日本が後ろから背中を押してあげるかということが問題になるかと思います。  時間の関係で省略をいたしまして、次に政治的な支援側面に行きたいと思います。  政治的には、やはりはっきりとイラク人の方を向いて、イラク人道復興支援を行っているんだということをより明確に出していく必要性があるのではないかと私は考えております。  すなわち、地元住民との良好な関係を維持するためには、しばしば言われておりますように、地元の部族民とうまく付き合っていく、宗教勢力とうまく付き合っていくというのが前提として言われておりますが、これは部族民に羊十頭を配ればよいというものではございません。あるいは、失礼ですけれども、隊長がアラビア語であいさつをされたって、これは大変、比較の問題としては大変頑張っていらっしゃると思います、ブッシュが七面鳥を持って米軍の兵士に感謝祭のお祝いをしに行くよりはよっぽど配慮の利いたいい措置だったと私は思っておりますが、しかし、大きな相談をするために手土産一つで態度ががらっと変わるというわけでは決してないわけでございまして、そのためには本格的にいかにイラク人の現地の住民に政府としてそちらの方を向いているかということを示す必要がある。  そして、ここで一番問題になるのは、これからイラクは暫定政権の設立を控えているということであります。すなわち、選挙であれそうでないにしろ、地方どこもが全国的にこれから政争のあらしの中に巻き込まれていくということが想定されます。  現在、サマーワ中心的に指導しているのは、シスターニと呼ばれるシーア派の最高権威がこの地域を一応影響力下に置いているというふうに言われておりますけれども、この安定的な状況もいつまで続くか分からない。シーア派の間でも、この表にございますように幾つかの派閥に分かれております。  選挙あるいは暫定政権の設立ということになりますと、皆様の方がよく御存じだと思いますが、いかに地方で地盤を獲得するかということは、これから激しい争いになってくる。しかも、自衛隊というある意味では、あるいは日本というある意味ではそこに富が落ちるということがこれから想定されることになると、熾烈な権力抗争が正にサマーワで展開されるという可能性が出てくる。そうした場合に、今現在自衛隊を守ると言ってくれているシスターニさんを中心にした派閥に対してどうこたえていくのか、あるいはどうこたえなければいけない必要性に迫られるのか。  ちなみに、シスターニさんは直接選挙を行うべきだと、暫定政権の設立においては直接選挙を行うべきだというふうに主張しているわけですけれども、これに対して日本政府が同意してくれ、サポートしてくれというような形で言われたときに日本政府がどのように対処していくのか、その対処の仕方によって自衛隊がどういう環境に置かれるのかというような複雑な政治抗争の中での対応ということを十分配慮した上で行動していく必要が出てくるのではないかというふうに考えます。  以上で私の方の陳述は終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
  7. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ありがとうございました。  次に、小川参考人お願いいたします。小川参考人
  8. 小川和久

    参考人小川和久君) 皆さん、おはようございます。御紹介いただきました小川でございます。今日はお招きいただきまして大変光栄に思っております。  私は、軍事専門家の端くれといたしまして、主に国家戦略の立場から現在のイラク復興支援に関する日本の議論の問題点というものについて若干の問題提起をさせていただき、皆様方とより良い日本の進路について考えていくことができればと思っております。  私自身は、お手元の配付資料に、一枚目にございますように、イラク復興支援に関する日本の議論の問題点というのは、いまだ非論理的である、非科学的である、非現実的であると、その三点において世界に通用しないという部分を残しているんじゃないかという立場でございます。その中で、頭に三角が振ってある上の二つでございますが、やはりこれは象徴的であろう、その辺はやはり整理しなければいけないだろうということでお話をしたいと思います。  まず第一点は、自衛隊の派遣がイラク復興支援のすべてであるかのごとく錯覚され報道されている、こんなばかな話はないということなんですね。  イラクがつぶれて、この国が立ち上がっていく上でのお手伝いを日本の国はやっていこうと、世界の国々もそういう形でかかわっているわけでございます。復興支援全体が一〇〇だとすれば、その大部分は民間主体にならなければできないものなんです。しかも、十年二十年と掛かるようなものでございます。自衛隊という軍事組織、あるいはほかの国の軍隊もそうでございますが、できることは限られているということなんです。そこを明確にしない限り、イラク復興支援を語ったことにはならないということなんですね。  自衛隊という軍事組織は、私も今日、自衛隊と、陸上自衛隊と同じ色の背広を着ておりますが、私も十五歳で陸上自衛隊へ入った人間でございまして、同い年の仲間はトップになっているわけでございます。ただ、そういう中で、皆様方よりは少し内部のことを知っている立場として問題提起をさせていただきたいわけでございますが、軍事組織はなぜこの復興支援の中で必要性が求められるのかという点でございます。  最初から民間でやれればやったらいい、私もそう思います。しかし、軍事組織を持っていかなければならない理由がある。それは、国がつぶれ秩序が崩壊している、そこにおいては治安もやはり危うい状況にある、その中ではやはり戦場じゃなくても危険な地域はたくさんある。ですから、最初から民間の人たちを持っていったらその危険に耐える能力がないという点で大変な問題が出てくる可能性がございます。ですから、そういった危険に対応できる能力を持った軍事組織を持っていき、一日も早く復興支援の足場を固める、言わば骨を折った後のギプスや添え木を当てるような位置付け軍事組織を使うということでございます。  これが分からないということになりますと、やはり我々は税金の使い道を通じて民主主義のシステムを機能させているのだろうか、あるいは国民軍事組織の暴走などをコントロールするという意味での本来的な意味でのシビリアンコントロールを放棄していることになりはしないか、そういう疑問にも突き当たるわけでございます。  例えば、イラク戦争に反対をしたカナダという国が、復興支援に関しましてはいち早く軍の輸送機を三機持っていった。これだって、戦争に反対した立場だったらチャーター機を持っていけばいいんじゃないかということもございますが、パーフェクトに民間でやろうとしますと輸送機を地上でサポートするチームも民間人だけにならざるを得ない、これではやはり治安が不安定な状況での対応は不可能でございます。ですから、軍事組織を、輸送機を持っていったというのがカナダの考え方なんです。  私はこれで日本国民の一人として自問自答をしなきゃいけないわけでございますが、やはり軍事組織の使い方というのは、外見を見たら、米軍と同じようなヘルメットをかぶり、防弾チョッキを着け、ライフルを持っているからいわゆる戦闘行動しかできないのかと。そんなばかな話はない。軍事組織を使おうという意思があり、頭を働かせれば、百通り二百通りという使い方が出てくるはずじゃないですか。国内においても、国防の任務とは別に例えば災害派遣に使っているということなんです。だから、そういったことをきちっとわきまえながら、この一枚紙の下の方の「日本の大義」に即したような形でどうやって持っていくかということを考えなければならないと思います。  ですから、私自身は、自衛隊という軍事組織で最初の足場を一日も早く固め、そして民間主体復興支援にシフトしていくべきだと。そのことが、この後述べますけれども、テロの根絶という問題でもございますが、暴力が暴力を生むという暴力の連鎖を断つための一つの方向性を示すのではないか、民間主導復興支援のためのギプスという役割自衛隊という軍事組織の派遣にはあるのではないか、その辺はきちんと整理をして自衛隊の派遣についても議論していただきたいと思っているわけでございます。  第二点でございますが、日本の議論は、イラクという国の安定を抜きにしてテロの根絶ができるかのような錯覚に陥っているという感じがいたします。本当にそうなんでしょうか。  例えば、自衛隊を派遣すれば日本の心臓部を攻撃するといったようなメールが中東の放送局に届いたとかなんかということになりますと、いや、自衛隊は派遣しない方がいいという議論が出たり、それを殊更強調する放送局が出てきたりするわけでございます。私は、そういったときに、じゃ自衛隊を派遣しなければ日本を攻撃しないということをだれが保証するのか、世界じゅうで活動している日本のビジネスマンや世界じゅうをうろついている日本の観光客がテロのターゲットにならないという保証をだれがするのかということを問い返したいわけでございます。そんな言葉に踊らされていたら、世界の平和を実現しようという日本国憲法の精神にももとるのではないか、やはりこれは科学的、論理的に、現実的に考えながらテロの根絶や暴力をなくしていくための営みをすべきではないかということで考えるわけでございます。  冷静になって考えてほしいんですが、日本という国は、自衛隊を派遣しようとすまいと、あるいは何をしないでいてもテロのターゲットになる可能性は極めて高い国であるということを自覚しなきゃいけない。  例えば、アルカイダのようなイスラム原理主義者の過激派組織などが目指すのは何でしょうか。これは近代文明の否定という側面が極めて強い。そして、彼らが勝手に解釈しているコーランに、コーランの教えなるものに基づいて一つの秩序を作っていこうとしている営みでございます。そうであればこそ、タリバンの支配下にあったアフガニスタンを根拠地にしたということなんですね。  そういう中では、女性の教育の受ける権利というものは否定されるような大変前近代的な状況が創出される。そして、彼らがそういう近代文明の象徴として、そして世界経済の象徴として目標としたのがあのニューヨークのワールド・トレード・センターであったということは忘れてはならないと思います。アメリカであったからやられたという面だけではないんです。  日本はたまたま極東の離れ小島でございますし、アルカイダの中に日本人のメンバーがどれぐらいいるか分かりませんが、日本に潜り込んでくればすぐばれるからというようなこともあって、彼らは日本をターゲットに今までしていない。しかし、既に資金の洗浄、マネーロンダリングにおいては日本の金融機関を使っているじゃないですか。ですから、我々はターゲットになり得る国だという自覚の下に、国内のテロ対策をきちんと取る、これはまあ当然でございますが、やはり世界からこういったテロ集団の根拠地がなくなっていくための営みをきちんと科学的に進めていかなきゃいけない。順序よく進めていかなきゃいけない。その中心にあるのがイラクの安定であり、これが復興支援であるということなんです。  そういう日本でございますが、やはりこの今の二点に関する議論を整理する中で、これは今酒井参考人がお話しになった考え方と大筋で一致いたしますし、その中身については酒井参考人のような専門家にお任せするのが妥当だと思いますが、私は、日本が描くべきイラク復興支援の青写真というもの、これはやはり一つのグランドデザインでございますが、大規模な雇用の創出による復興支援基盤の確立というものが求められるんではないか。そしてこれが、自衛隊員の安全のみならず、民間がこれからイラク復興支援に参入していく上での安全を保ち、それがイラク全体の安定につながっていく条件になるのではないかなと考えております。  私はイラクや中東の専門家ではございませんが、たまたまこの問題にかかわる中で、イラクの人々、いろんな立場の方に少しずつではありますがお話を聞く機会がございました。その中で、これ大枠の描き方としては適切かなと思ったのは、ここではかぎ括弧でメソポタミアの湿原という言い方をしておりますが、エデンの園のモデルだと言われている世界四大文明を生み出したあの広大な湿原地帯、これがサダム・フセイン政権の一つの政策によって今正に枯れようとしている。数字によっては八五%、数字によっては九三%が枯れようとしている。五年も放置したらこの湿原はなくなってしまう。世界最大の環境破壊だと言われている。これを復元してほしいという声がイラクのいろんな方々の中から出てくるんです。これはやはり世界最大の環境破壊への取組で、住民の帰還を促進するというだけではございません。これに取り組むことによって豊かな農業地帯が回復をする。また、淡水漁業の面でも大きな回復が見られる。当然住民は帰ってまいります。  そこにおいて行われる湿原復元の事業というものは、内容を見れば非常にシンプルなんです。これは大規模な土地改良事業と大規模な土木工事なんですね。これは、例えば昼間だけ働いてもらうとしたら、一か所当たり一万人ぐらいの雇用しか出ない場所であっても、最初の二年、三年は突貫工事である。急がなきゃいけない。一日四交代でやれば一か所当たり四万人の雇用が創出される。二十五か所の現場を作ることは簡単でございます。ということになりますと、百万人規模の雇用が創出できる。最初から職にあり付き、給料がもらえるということになりますと、相当部分不安定な要素が排除されるであろうということは確かでございます。  また同時に、酒井参考人のお話にもございましたが、我々が考えなきゃいけないのは、やはりイラク復興支援のかぎを握っている港湾の復旧あるいは商工業地帯の整備というものを取り組みながら、その中でやはり雇用の創出にも寄与する必要があるのではないかと思います。ウンムカスルの港あるいはバスラの港湾の問題などは極めて重要になってくるだろう。  これは、日本外務省も、昨年四月、バグダッド陥落の直後にいろんな関連の会社に依頼をいたしまして、イラン・イラク戦争当時の沈没船まで含めて、それの引揚げ、サルベージがどれぐらい可能か、あるいは機雷の除去の問題がどれぐらいあるかということは下調べはしたようでございます。もちろん、船のサルベージは一隻当たり五億円ぐらいでできるというような見積りも私は見ましたが、やはり機雷の問題がある。ですから、今朝のNHKのニュースでやっておりましたように、海上自衛隊の機雷掃海部隊を持っていって機雷の除去を行いながらこの沈没船の引揚げなどを行うことが、やはりこのウンムカスルあるいはバスラの港湾をイラク復興一つ中心位置付けていくためには極めて重要ではないかなと思います。  とにかく、私どもはこういったことで、枠組みをきちんと書く、そして日本が担うべきは、明治期において国家建設を行ったノウハウや、戦後復興のノウハウをやはりイラク復興支援のために役立てるようなきちんとした位置付けではないか。  しかし、私自身は、この参考のところにも書いてございますが、やはりそこにおいては、我々は日本の大義にのっとった形で、沿うような形で理論武装を行い、間違っているところは修正しながら進まなければならないだろう。そこにおいてやはり準拠しなければいけないのは日本国憲法の精神であり、戦後我々が原理原則として掲げてきた平和主義と国連中心主義であろう。その辺はきちんと整理をしながらイラク復興支援の中で重要な役割を果たし、そしてそのことによる評価、そして世界から寄せられる信頼が日本の安全と繁栄を約束する形に持っていきたいものだと考えております。  どうも御清聴ありがとうございました。
  9. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ありがとうございました。  次に、小田中参考人お願いいたします。小田中参考人
  10. 小田中聰樹

    参考人小田中聰樹君) 専修大学の小田中でございます。  私は、四十年近く、主として平和主義、民主主義、基本的人権を厚く保障する憲法の理念及び論理に即して刑事法の研究を行い、思索を重ねてまいりました。また、個人的には、太平洋戦争開始直後に国民学校に入学し、敗戦までの三年半近く戦争賛美の軍国主義教育を受けたという、そういう体験を持っております。  本日は、このような研究、思索、体験を踏まえながら、イラク特措法に基づく基本計画及び対応措置、すなわち自衛隊イラク派遣について、主として憲法的な視点及び歴史的な視点から意見を述べたいと思います。  先に結論を述べますと、今回の対応措置、すなわち自衛隊派遣は、憲法に背き、これに違反するものであり、国際的にはもちろんのこと、国内においても政治、社会、文化、教育など、あらゆる分野において憎悪と暴力の連鎖、悪循環を拡大、深刻化させ、社会を荒廃に陥れる言わば亡国亡民の行為とも言うべき愚挙であるというふうに考えるものであります。  以下、その理由を述べます。  改めて説くまでもなく、憲法は第九条において戦争の放棄、武力による威嚇又はその行使の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を定めております。  ところが、今回の対応措置により派遣される自衛隊は、いまだ戦争状態が継続し、事実上は戦闘行為が日常的に発生している地域に派遣され、占領軍の指揮下に事実上置かれ、占領行政の一翼を担い、人道復興支援活動と併せて安全確保支援活動を行うべき立場に置かれております。  そもそも交戦権とは、占領行政を含む交戦国の国際法上の権利の総体のことであるというふうに言われておりますので、自衛隊は憲法の禁ずるこの交戦権を行使すべき任務を今回の対応措置により負わされたことになるのであります。その違憲性は明らかであります。  また、今回の対応措置により、自衛隊は武器等の、警護に際しての武器の使用、これは自衛隊法九十五条でございますが、それに加えて、対応措置の実施に当たり、上官の命令により、無反動砲を始めとする殺傷能力の高い武器を組織的に使用することを認められております。そして、場合によっては物や建造物の損壊、焼燬のみならず、人への危害、すなわち人の殺傷をも認められているのであります。しかし、人道復興支援安全確保支援の任務の遂行上、無反動砲等の殺傷能力の高い武器を組織的に使用することは、それ自体としても武力の行使に当たり、憲法上認められるとは思われません。  政府は、武力の行使とは、国家の物的、人的組織体による国際的武力紛争の一環としての戦闘行為であると、イラク特措法の武器使用は自己保存のための自然的権利であって、武力の行使には当たらないというふうに言っております。  しかし、自衛隊員が奇襲攻撃、すなわち戦闘行為にさらされ、自己保存として武器の使用が必要となるのは、イラク特措法により国家的な任務として占領行政の一環としての客観的意味を持つ任務の遂行行為を行うべき組織的存在だからであります。そうだとすれば、攻撃に対応する武器使用による応戦行為は、正に武力の行使そのものと言うべきであります。  しかも、問題なのは、武器の使用につき、法的な、実効的な歯止めがないことであります。この点についてイラク特措法は、生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認められる相当の理由がある場合には、事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用できるとし、正当防衛又は緊急避難の場合以外は、人に危害を加えてはならないというふうに規定を置いております。  これは、一定の制約を加えているかのごとく見えるのですが、しかし、武器使用の現場ではもちろんのこと、事後的な司法的審査の段階でも、ほとんど全く実効性を期待することはできません。ゲリラ的な奇襲攻撃が日常的に発生している現場では、防衛という要件からその一種としての先制攻撃的な行為を全く排除することは恐らくできないでしょうし、また、合理的な限度という要件も、それが実は軍事的な観点から見た軍事的合理性を意味することになるのは避け難いからであります。そして、その判断はすべて現場、その上官の裁量にゆだねられざるを得ないでありましょう。  また、これらの武器使用行為は、CPA命令十七号によりイラクの裁判権からも免除されるとされておりますけれども、そして、日本の刑法の国外犯に当たる場合に限って帰国後に日本の裁判権に服するというふうにされております。  したがって、自衛隊員は、武器使用の結果として生ずる殺人、殺人未遂、傷害、傷害致死、放火、放火未遂などについては罪責を問われることになりますけれども、その際に、人に危害を加える行為、すなわち殺傷行為以外の行為については、やむを得ない必要があると認める相当の理由、それから合理的に必要と判断される限度の有無が一応は問題となります。しかし、結局は、前述のように、現場の判断を尊重せざるを得ないとされ、法律上は法令による行為として違法性なしとされていくでありましょう。  また、殺傷行為については、正当防衛又は緊急避難の要件を満たしているかが問題になります。そして、この要件は、正当防衛の場合には侵害の急迫性と不正性、防衛行為の必要性と相当性、防衛意思などであります。また、緊急避難の場合には、危難の現在性、避難行為の必要性と補充性と相当性、避難意思、法益の均衡性などが要件であります。  確かに、これらの要件は、長年にわたる刑法理論及び判例の蓄積があることもあって、かなり限定的なものであって、殺傷行為に厳しい制約を課するとの印象を与えます。しかし、元々正当防衛、緊急避難というものは、法秩序が厳正に保たれていることを前提としており、その下で、法秩序の下でなされた構成要件該当行為について、法の自己保全とかあるいは優越的利益の保護とか、あるいは法確証の利益を加味した後の優越的利益の保護といったようなことなどを根拠として、例外的に違法性ないし責任が阻却されるとして不可罰化されているものであります。ですから、その例外性が現実的な基礎を持つのは、法秩序の厳正保持という前提の充足下においてであります。  ところが、今回の対応措置の場合には、急迫不正の侵害や現在の危難が日常的に発生しているイラクの実情を考えますと、正当防衛又は緊急避難が、武器使用に対し厳しい制約的効力を現実に持つことは考えられないのであります。しかも、更に重大なことは、仮に正当防衛又は緊急避難の要件を厳密に解釈、運用しようとしても、その判断に必要な詳密で客観的な証拠を現地の警務隊や国内の検察当局が、果たして関係者双方から公正に収集できるかには大きな疑問があるということであります。  なお、報道機関など第三者の調査も、軍事的秘密保護の壁に遮られて、不徹底に終わるでしょう。また、警務隊や検察当局の捜査、訴追の意欲にも期待し難いものを感じます。このことは、ケースは違いますけれども、外交官殺害事件についての真相解明の作業すらいまだ遅々として進まない現状を見るときには、単なる観測では終わらないであろうと思われます。  以上、要するに、自衛隊は武器の組織的使用につき広い裁量を事実上持つということであります。その武器は極めて殺傷、破壊能力の高いものだということであります。  このように考えてきますと、憲法の禁ずる武力の行使そのものに当たると言うべきであり、これは違憲であります。  このようにして、対応措置による自衛隊派遣は違憲でありますが、注意すべきは、以上に述べたことは実は米英によるイラク攻撃の国際法的正当性とは法理論上は全く別個、独立の問題だということであります。この点については、時間の関係もありますので省略をいたします。  最後に、私は今回の自衛隊派遣が亡国亡民の愚挙であるということについて述べておきたいと思います。  周知のように、戦前、日本は十五年にわたりアジア侵略を行い、国の内外を問わず全世界の人々に対して塗炭の苦しみを与えてきました。にもかかわらず、日本国際社会に迎え入れられ、活動の場を与えられ、また私たち国民も希望を持って平和な良き社会を築くよう国の内外で孜々として努力してきたのは、これはひとえに平和憲法によるものだと考えます。  周知のように、憲法は前文の第二段で、恒久平和の崇高な理想を掲げ、専制と隷従、圧迫と偏狭、恐怖と欠乏からの脱却、克服のかぎを平和のうちに生存する権利の実現、保障に求めてまいりました。そして、第九条において戦争放棄、武力行使放棄、戦力不保持、交戦権否認を明記したのであります。これは、平和が確保されてこそ初めて民主主義、基本的人権、福祉の追求、実現が可能だということ、換言すれば、平和、民主、人権、福祉は四者一体不可分の関係にあるが、その中でも平和こそが中核的、前提的な位置を占めるという思想に基づくものであります。  私は、これは極めて体系的で優れた憲法思想であり、戦争と貧困にあえいできた人類の歴史的体験を踏まえた人間の理性と良心が結晶したものだと考えます。そして、それゆえに、暴力と憎悪の連鎖、悪循環にあえぎ、混迷する二十一世紀の現代に生きる人々、とりわけ日本の私たちにとって現状打開の指針となり、政治的、社会的、文化的な思想的なよりどころともなると考えるのであります。  この優れた思想、憲法、とりわけその中核としての第九条をしっかりと守り、一層豊かなものにして次の世代に伝達することは、現代に生きる私たちの歴史的な任務であります。もしも私たちがこのことを忘れて、平和主義を、平和憲法をないがしろにし、これに背き、自衛隊イラクに派遣し殺傷行為に赴かせることになるならば、そしてそれを承認するならば、平和憲法を持つ日本に対する国際的信頼を裏切ることになるのみならず、日本の社会をも憎悪と暴力の連鎖、悪循環の拡大に陥れ、荒廃へと赴かせることになるでありましょう。  イラクへの自衛隊派遣は、明治の義人、田中正造の表現に倣って言うならば、亡国亡民の行為とも言うべき愚挙であると考えます。参議院の議員諸氏は、己の理性と良心を懸けて賢慮を持って違憲の対応措置に反対すべきであると信じます。  以上をもって陳述を終わります。
  11. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、参考人方々お願い申し上げます。御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 山崎力

    山崎力君 自民党の山崎と申します。  四参考人の皆様方、御苦労さまでございました。貴重な意見、ありがとうございました。  それでは、今お話ございましたけれども、限られた時間でございますので簡潔にお答えして、なるべく多くの質問をさせていただきたいと思いますので御協力お願いいたします。  まず、酒井参考人にお話を伺いたいと思います。  イラクの経済復興というもの、経済に限らず復興というものは大切で、その点の要点を簡潔に貴重な御意見を伺ったんですが、今回の私どもの審議をしている内容からいきますと、一つはこの自衛隊の、まず自衛隊の派遣、今回の有無が、今先生のおっしゃられる、参考人のおっしゃられたことに対して悪い影響があるのか、それとも余り影響がない、これからの問題なのか、それともむしろいいという影響の方が期待できるのか、その辺のお考えをまずお伺いしたいと思います。
  13. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) ありがとうございます。御質問ありがとうございます。  自衛隊の派遣そのものが悪い影響になるのかいい影響になるのかという御質問だったかと思います。私は、現時点では余りいい影響は想定できないというふうに考えております。  それは第一に、先ほど御説明いたしましたように、余りにも期待と実際に自衛隊ができる能力にギャップが大きいと。このギャップをできる限り埋めていくことが必要とされているわけですけれども、現在の能力から考えればかなり難しいと言わざるを得ないということが第一点ございます。  二点目は、自衛隊が派遣されることによって生ずるその地域におけるトラブルという問題がございます。  現在でも既にサマワというところは、日本自衛隊及びその周辺の日本、マスコミなども含めてだと思いますけれども、大挙して入ってくるということで、物価水準がかなり高騰しているという問題がございます。これは、宿営地の賃貸料等々の交渉などを見ても分かりますように、相当地元の経済自体が混乱状態に陥っているということ、つまり外国がきちっとした準備もない形で地方の安定した小都市に行くということによって生ずる大きな混乱ということはもう既に起こっているという意味では、地方社会に対してはマイナスが大きいということがあります。  三点目は、これはサマワは言われておりますように地域的にはシーア派の地域でございますので、これまでいわゆる反米テロといったような行動はそれほど見られなかったわけですけれども、しかし外国軍が駐留しているということになれば、これはその地域以外から、あるいはイラク以外からもそうした外国軍をねらったテロの集団が入り込んでくるという危険性もやはり増えるというふうに想定する必要があると。  その三点から考えれば、今のところ自衛隊の派遣は悪い効果を生むのではないかということを想定して行動された方がよろしいかと存じます。
  14. 山崎力

    山崎力君 ちょっと観点を変えまして、酒井参考人に続けてお伺い、二、三お伺いしたいんですが、今回の戦争で大量破壊兵器の発見の有無、発見されていないということがいろいろ議論を呼んでおりますが、このことは、今の一連の参考人の発言と影響はあるでしょうか、ないでしょうか。
  15. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 大量破壊兵器の発見につきましては、私の意見、今の意見とは基本的に関係ないというふうに御理解いただければと思います。
  16. 山崎力

    山崎力君 それでは、酒井参考人に三点目、最後の質問になりますが、一連の参考人のお話を聞いていて、自衛隊は余り役に立たない、悪い影響も出るかもしらぬと。それから、復興にはやはりそれなりの計画性あるいは専門家等の必要があるというもっともな御意見なんですが、それがうまく機能するためには現地の治安がどこかできちっとさせてもらわなきゃいかぬという前提があるように感じまして、それがまず一番の問題でございまして、それをだれがやるのかと、またできるのかということを抜きにこの議論というのは成り立たないと思うんですが、その点のところで私の見るところ、国際社会、どこもその辺の回答を出していない。  国連ということも、一連のことを考えれば、本当にはっきりしていたクウェートのときも国連軍は結成できなかったと、あるいは今回のイラクへの問題でも安全保障理事会が真っ二つに割れて、特にアメリカとフランスは感情的な対立部分もあると、そういった中を折り合いを付けてやるのに、日本が、あるいはほかの国がどれだけのことができるかということも、どこも実際にできると思っている国はまず、人たちはまずいない。その辺のところはどういうふうにお考えでしょうか、現実的な判断として。
  17. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 現地の治安が悪い状況では、私の申し上げているようなことがあっても自衛隊が行く必要があるという趣旨の御意見かというふうに承ったかと思いますけれども、確かに現地の治安が悪いという、これを何とかしなければいけないというような状況はございます。  しかし、現地の治安の回復ということと復興というのは、これはもう鶏と卵のような状況がございます。そして、治安が悪くなっている原因一つとして、やはり失業問題であるとかあるいは生活水準が上がらないという問題が大きいという、つまり、元々が外国軍に対して反対していたからいまだにずっと反対行動を続けているということではない。むしろ、戦後統治の失敗によって反発する人々が増えているということであろうかと思います。  ですから、逆に言えば、そのために戦後復興をきっちりやっていかなければいけない。その戦後復興の何が一番問題になっているかといいますと、これは端的に申し上げまして、製油所と電力、発電所でございます。この製油所と発電所に関しては、これはアメリカ企業が一手に引き受けているわけですけれども、実際にその復興が進んでいないということが問題でございます。ですから、イラク国民の要求は、治安を回復するためにも、製油所や発電所といった今アメリカ主導でやっている復興計画を見直して、だれかできる人たちがやってほしいという希望であろうかと思います。  ですから、先ほど申し上げましたアメリカ主導の今の経済、イラク復興政策を全体をオーバーホールして、より国際社会主体になって、日本もそのうちの一員となって復興に物を言っていくというようなことがなければ、今までのとおり、むしろ治安の悪化を進めてしまうような復興計画が進んでいってしまうという問題が一つございます  さらに、外国軍の駐留は、確かに今の米軍を中心として治安の回復のために必要かとは存じますけれども、しかしその駐留のやり方にも大変大きな問題がある。アメリカ軍がむしろいることによって、アメリカ軍との接触によって巻き添えを食って、外国軍反発を生むという事件が多発しております。そのためにも、むしろ治安の回復を進めるために駐留の数を減らす、あるいは駐留のやり方をよりソフトなものにしていくというような必要が迫られているわけですけれども、それに対してなかなかイラク人アメリカに直接物を言っても聞いてくれないというような問題がある。そうしたことを逆に日本あるいはそういった国際社会が、今の治安維持体制あるいは復興開発全体に対して、もっとより、先ほども代替案というふうに申し上げましたけれども、違ったやり方を提示してほしいというのが、今のイラクにおける治安回復への一番の近道ではないかというふうに私は考えております。
  18. 山崎力

    山崎力君 続いて小川参考人に一、二質問させていただきますが、今、酒井参考人からの治安に対するお考え出たんですが、軍事専門家として、あるいは軍政といいますか、占領下の今までの経過として、あるいはアメリカに代わってアメリカ企業を引かせてできるところにやると、そこをだれがプロテクトをするのか、アメリカ以外でやれる国はあるのか、やれる能力のある人の意に逆らって国際社会自分がやれないことをやれるアメリカにさせることができるのかという問題が出てこようかと思うんですが、その辺のお考えはいかがでしょうか。
  19. 小川和久

    参考人小川和久君) 御質問ありがとうございました。  お手元にお配りいたしました配付資料の黒丸の一番上のところに関してお話を申し上げるのが良いかと思います。  「テロ根絶に向けての取り組み」とここに書きまして、一番上にイラクの安定ということに関しましては、イラク国民の反米感情の改善というのがまず大事だろう、そのためにアメリカ側を中心とする占領政策の失敗というのは速やかに改めなきゃいけないだろうと。これは今、酒井参考人がおっしゃったようなソフトな形へのという問題でございます。私は先月中旬ワシントンに参りまして、アメリカ側ともそういった話をしましたら、大いに反省しておるという、占領政策は失敗だったという話はしておりました。ですから、やっぱりそれはこちら側からも提案をいたしまして、やっていかなきゃいけない。  ただ、これは手順を踏まないと治安の確立というのは難しいんですね。やはり国民の反米感情の改善ということを試みながら、同時に進めなきゃいけないのは、今サダム・フセイン元大統領の拘束の後、攻勢を活発化しているサダム・フセイン政権の残存勢力、これの掃討作戦やらなきゃいけない。  これはイラク戦争一つのプラスの面が出ているという評価もあるんですが、イラクの国がああいった形で新たな段階を迎えるに当たって、リビアとかイランとかスーダンとかあるいは北朝鮮が態度をどんどん和らげていると思うのであります。ですから、そういう中ではサダム・フセイン政権を昔のベトナム戦争当時の北ベトナムやベトコンに対するソ連や中国のサポートのような形で支える国はない。  だから、こちらがきちっとした態度で治安の確立に向けて手順を踏んだ営みをしていけば、彼らはじり貧で、そのうちにその活動は終息していくだろうと思っております。そのサダム・フセイン政権の残存勢力の活動が終息するという営みが続けられる中で、そのテロ組織による行動というものもイラク国内でのその足場というものを失っていくだろうと。  ただ、これに関しましても、アメリカ側とも話をいたしましたが、アメリカ軍のようなイラク戦争を戦った編成、装備の部隊が活動しなきゃいけない地域というのは限られておる、例えばスンニ・トライアングル、あるいは北部のモスルとかキルクークの周辺。例えば、自衛隊が今度参りました南部、東部のサマワとかナシリーア、この辺の地域におきましては、一定の対処能力を持った組織であれば治安の確立へ向けての営みはできるだろう。そういったことで使い分けをしながら、できるだけ早い段階でいわゆる占領統治のイメージが払拭される形に持っていくというのが大事だろうと思っております。  ただ、いずれにせよ、このイラクの全土どこを、どこを見ても治安は悪いんです。戦場じゃなくても危ないんです。だから、やはり最初の段階では、足場を築くのは一定の対処能力を持った軍事組織でなければ駄目だろうと私は思っております。  ありがとうございました。
  20. 山崎力

    山崎力君 ありがとうございます。  ちょっと時間の関係で、時間が余ればまた小川先生にも、参考人にも質問させていただきますが、小田中参考人のお話を伺って、今回はイラク特措法に関する活動実施に関しての承認を求める件のあれですが、先生のお考えですと、イラク特措法自体が憲法違反の可能性が極めて強いというふうにお考えでしょうか。
  21. 小田中聰樹

    参考人小田中聰樹君) そのとおりでございます。
  22. 山崎力

    山崎力君 その関連でいきますと、自衛隊も憲法違反の可能性が極めて強いというお考えでございましょうか。
  23. 小田中聰樹

    参考人小田中聰樹君) 疑いがあると思います。
  24. 山崎力

    山崎力君 今回の私どもの議論の中で一部出てきたんですが、これは集団的自衛権の問題との絡みなんですが、政府見解では、集団的自衛権は認められているけれども行使できないのだと、こういう解釈のようでございますが、日本国憲法の、私ももう三十年以上前、学生時代習った記憶で、それ以来大してあれがないんですけれども、九条の場合のあれを、文言をそのまま読みますと、国家としての正当防衛権を否定する内容ではないのかなと。  要するに、正当防衛権というのはある種自然権的で、憲法をもってしても、生存権と同じように自然権的なもので、憲法をもってしても否定できないというような形の性格を、それは学者の皆様方は、どれを読んでもあるんだと、だけれども制限しているんだという言い方をしています。これは分かるんですけれども、実質、それはそのまんまでいけば使えないということになれば、あるんだけれども使えないというものがあるのかという、まあ神学論争の一番の典型ですが、その辺のところはどのように先生、説明なさっているでしょうか。
  25. 小田中聰樹

    参考人小田中聰樹君) 正当防衛権はあると思います。しかし、それは軍事による、軍事力による正当防衛ということについては、憲法九条は軍事力を持たないというふうに言っているわけですから、これは否定されているものだというふうに考えます。
  26. 山崎力

    山崎力君 それでは、国家のいわゆる意思表示といいますか、行動様式として軍事以外に国際法で認められている実力、相手からの実力攻撃に対する排除の機能というのはあるんでしょうか。
  27. 小田中聰樹

    参考人小田中聰樹君) 軍事力以外の正当防衛ということについてのお尋ねだと思いますけれども、それは様々な形での防衛の仕方はあり得ると思います。例えば、これは歴史上そういうものが本当にあったかどうかということは一つの問題だと思いますけれども、いろいろな形での民間抵抗ですね、それも含めて正当防衛ということはあり得ると思われます。
  28. 山崎力

    山崎力君 民間抵抗というのは、私の習った国際法では、いわゆる国際法規、ジュネーブ条約等の保護を受けない、簡単に言えば、裁判なしで幾ら処刑してもいいというような形で、非常に非人権的にといいましても、近代法において排除されるべきものじゃないかというふうに私は記憶しておりますが。  その辺の議論はちょっと抜きにいたしまして、時間の関係でちょっともう一点だけ小川先生に戻らせていただきますが、今回の派遣で一番の問題だと私思っていますのは、行く自衛隊に、ソフト面、ハード面でああいうところへ行ってああいう任務をするという準備が本当にできていたんだろうかと。あるいは、本当に国家として彼らにそれをさせるのであれば、もっと早い時点からやるべきことがたくさんあったんではないかという気がするんですが、その点いかがでしょうか。
  29. 小川和久

    参考人小川和久君) まさしく私がお話をしたかった部分を御質問していただいた感じがいたします。  実は、昨年の夏の段階、あるいはもう初夏の段階から陸上自衛隊のトップたちとその辺の話をずっとしてきました。その中で、やはり九二年のカンボジアPKOのときのことがはっきりと総括されていないという問題が出てきたんですね。九二年のときも、私は宮澤内閣のときに実際に下働きをさせていただいた立場でございますけれども、あのときも六月の半ばにPKOに関する法律が成立するということがもう日程に上っているのに、四月二日の段階で陸上自衛隊の中枢である陸上幕僚監部と防衛庁内局との接触が一回もない、そしてカンボジアに関する情報も何もない、そういう状況でありました。それで行けるのかということを具体的に聞きましたら、いやもう靴から服から使えない、そんな話でございます。ですから、あのときは総理官邸主導で陸上幕僚監部に対して聞き取りが行われ、急遽その辺の手当てが行われたんです。  ただ、今回も全く同じ状況でございまして、九月の半ばに陸上幕僚監部と話をいたしましたら、とにかく装備品がまず間に合わない。ごまかして前倒しで調達できるものはあります。例えば、水の供給に使う装置などは災害派遣用という名目で国内でも使うわけですから、前倒しで調達することもできるけれども、それだってやはり発注してから納品されるまで最短でも四か月半掛かるというのを九月の半ばに言っているんですよ。正に本当にお金がない。  それから、陸上自衛隊中心専門調査団などを秋に派遣しましたが、現地で日本の総合商社の人たちがあきれているんですね。百万円の活動費すら持っていない。事務所を借りる金も持っていない。おれが貸してやろうかと言ったぐらいですよ、本当に。そんな余裕のない中で何をしろというのか。これは全く政治が機能していないということにおいてみんなで反省しなきゃいけない問題であると思います。  関連いたしましてもう一点ございますのは、是非お考えいただきたいのは、サマワの現地において陸上自衛隊の佐藤一佐ばっかりがテレビに出ますけれども、彼がやっていることの大部分は地元との接触やなんかで、外務省がやるべきことなんですね。ところが、外務省側の働きというのは、現地から上がってくる情報を私が見ますと、やはり鈍い。これは恐らくすみ分けといいますか、役割分担が明確になっていない結果であろうと。このままでは、やはり陸上自衛隊がどんなに頑張ろうとしてもその能力を発揮できないし、外務省にとっても良いことではない。やはり日本国を挙げてきちんとした任務を遂行するための整理をする必要があるかなと思っております。  どうもありがとうございました。
  30. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 山崎力君、時間がもうわずかです。
  31. 山崎力

    山崎力君 はい。  時間がないので、渡辺先生に最後にお伺いしたいんですが、今の諸参考人の、特に酒井さん、小川さんの話を聞いて、本当に国民の理解を得る気概を持つ状況なのかどうかということを、先生、本当に短くて恐縮ですが、言っていただけたらと思います。
  32. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) それはどうお答えしたらいいのか。そうあってほしいというのが私の希望でありまして、私は、国民という言葉で何を意味するかによるんですが、世論、いわゆる世論なるものが大きく分かれているということは否定できないであろうと思います。これは別に日本に限ったことではなくて、アメリカでもイギリスでもオーストラリアでも韓国でも、どこでもそうであります。  それはある意味で、それぞれの国の事情でなぜ世論が分かれるかというのは違っているわけですが、日本に関していえば、一般的にほかの国とも通用する、例えば、果たしてどれだけイラク介入することに法的な根拠があるのだろうかとか、どれだけ道義的な理由があるのだろうかとか、どれだけ困難を覚悟しなきゃいけないのだろうかとか等々等々、また、どれだけ効果的な支援が本当にこういう場、状況で可能なのだろうか等々等々、様々な疑問がどこの国でもあると思うんですね。それが我が国にもある。  それと同時に、先ほどからの議論の中にも出てきましたように、基本的には我が自衛隊も我が国も、このようなことに本格的に取り組むという覚悟を固めてしっかり準備してきたかというと、そうではないということであって、その辺の覚悟の決まっていないということが、例えば今御指摘があったように、自衛隊外務省やその他様々な国の機関が十分に準備があってこのことに携わっているのかということについての疑問が提起されるゆえんだと思うんですね。その意味で、まだ、俗に言うと……
  33. 清水達雄

    委員長清水達雄君) お答え、簡潔にお願いしたいんですけれども。
  34. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) 俗に言うと、頑張らなきゃいけない点がたくさんあると思っております。
  35. 山崎力

    山崎力君 終わります。ありがとうございました。
  36. 神本美恵子

    神本美恵子君 民主党・新緑風会の神本美恵子でございます。  今日は、四人の参考人の皆さん方、大変貴重な御意見、ありがとうございました。  私は、今回のイラクに対する自衛隊の派遣という問題については、そもそもこの戦争が何だったのかという点に対する国民世論も大変な意見が二分された中で行われ、そしてそれに対する、日本政府は復興支援ということを前面に出して自衛隊を今もう派遣をしているわけですけれども、そのことによって国民全体も、戦争には反対だったけれども、その結果、イラク国民が今大変な状況の中に置かれている、それに対する支援は非常にやっぱり日本としては大事だということで、国民の調査でも自衛隊派遣に対する反対が少し減っているというような状況があると思います。  私の問題意識としては、人道復興支援、これは本当に大事だけれども、今、自衛隊を派遣して行おうとしていることが本当にイラク国民が望んでいることなのかという問題意識を持って今日参考人の皆さん方のお話を聞かせていただいたんですけれども、支援というのは、あくまでやっぱり当事者、その支援を受ける当事者がどのような復興を望んでいるのか、どのような復興の仕方を望んでいるのかということがまずあって、そのことを的確に把握してそれに対して支援をしていくということがあるべき姿ではないかと思うんですが、この間のこの国会での議論も政府の説明も、人道復興支援に行くんだ、それは、日米同盟、国際協調、そしてテロとの戦い、戦争に行くのではないというような説明を繰り返すばかりで、国民に対して、イラク国民が何を望んでいるのかというようなことが全くありませんでした。  そういった観点で、今日、私は酒井参考人のお話に大変共感をしたんですけれども、その中で幾つか御質問をさせていただきたいと思います。  酒井参考人小川参考人の方から、今の戦後、イラクの戦後の占領政策は大変国民不評であると、それから報道されているように大変治安の悪化を招いているというようなお話がございましたけれども、占領政策の決定的な誤りというのは何なのか。それから、そもそもこの戦争イラク占領が目的として行われたんではないかというような不信感がイラク人の間にも広まっているというようなこともちょっと言われておりますけれども、その点について一点と。  まず、その点についてお願いしたいと思います。お二人に。
  37. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 二点御質問、占領政策の誤りというのは一体何かということ、そして戦争目的が占領だったのではないかという二点だったかと思います。  一点目の御質問に関してですけれども、占領政策の最大、幾つか細かい間違いというのはございますけれども、最大の間違いは、イラク人復興政策の中から排除したということにあるかと思います。  現在、アメリカ主導とした復興計画の策定過程を見ている限りでは、基本的に今、CPA、連合国暫定当局が中心になって行われているわけですけれども、このCPA自身がアメリカ中心とした外国人によって運営されている。しかも、そうしたCPAの中でイラク情勢についてアドバイスするアドバイザーは基本的に亡命イラク人中心であって、必ずしも国内でフセイン政権の下で弾圧に苦しんできた、あるいは戦争を生き延びてきた、艱難辛苦をかいくぐって正にこれから国づくりをしていこうというふうに考えているイラク国内国民、その当事者そのものは起用されていないわけです。  そうしたイラク人が排除されているということによって、これまでフセイン政権の下ではあってもそれなりに国づくりに寄与してきたようなテクノクラートやあるいは知識人、そうした人まで旧体制の支持者というような形で政権の政策の決定過程から排除されている。それによって現場と占領の政策自体が大きく懸け離れてしまっている。  現場の工場で何が必要だからこの工場が動かないんだというような情報がCPAの中心に上がるまでに相当な時間を要する。あるいはCPAの中に上がったところで、CPAに勤めている外国人は三か月の任期を何とか無事に殺されないで終われればそれでよいというような、レッドテープのような状態で事態が回っている。この工場を生かすために何とかしてくれという声が一日、二日では届かずに、三か月も四か月もたって、それでもまだなかなか動かないというのが今の復興の最大の問題点であるということを考えますと、やはり復興事業の中にいかに現地のイラク人の声を届けていくかという、その体制作りが必要になってくるだろうと思います。  二点目の、戦争が占領が目的であったのではないかということについてでございますけれども、私は若干これに対しては否定的でございまして、戦争自体の目的については、これはいまだにまだ議論が多々ございます。大量破壊兵器の問題に関しては国連等々を動員するための一つの口実であったろうというふうには認識しておりますので、大量破壊兵器を廃棄するということが主要な目的ではなかったとは思います。  しかし、一般に言われておりますように、いわゆるイラクの民主化、あるいはフセイン政権の独裁を終わらせるため、あるいは中東全体の親米化とでもいいましょうか、アメリカにとって良い関係を持ちやすい政権を樹立するというようなたぐいの、中東の全体の安定化ということを目的とした戦争だったのではないかと思います。  その中に、占領というよりはむしろ、フセイン政権を倒せば、その後、自然と米軍は解放軍としてみなされて、その下で親米的な政権が自動的にできてくるに違いないというふうに情報を見誤ったということによってやむなく直接占領を続けざるを得ないというような環境に陥っているというのが現状ではないかというふうに私は認識しております。
  38. 小川和久

    参考人小川和久君) 御質問ありがとうございました。  私自身は軍事専門家の端くれとして、占領政策というのは、もう最初は四月のバグダッド陥落の直後から間違っているということを言ってきたわけでございます。  というのは、その戦争の大義云々というのはちょっと答える時間がありませんから今は触れませんが、ラムズフェルド国防長官がいわゆるラムズフェルドの戦争という実験をやって、極めて効率的にバグダッド陥落に至ったという側面があるわけでございます。これに対して、やはり占領政策は全く違った形でなければ効果を上げることができないのに、その効率的な戦争のやり方をそのまま踏襲するようなことをやった結果、現在の混乱、それからイラク国民の不信、不満、そういったものが出てきていると思います。  占領政策というのは、これは、戦争の大義そのものには触れませんけれども、やはりバグダッドが陥落する直前の段階から準備をしまして、それこそ各国に声を掛けて、百万人に近いような人員でもって少なくとも三か月間徹底してローラー作戦を行い刀狩りをやらなきゃいけない、武装解除をやる、フセイン政権の残存勢力に対して武装解除を行うということが一つ。その中で占領に当たる部隊は、イラク側と戦ってきた部隊は前面に出さず、できれば戦ってこなかった部隊、つまりイラク人との間に感情的なしこりのない部隊を持ってきて、そしてイラク人のやはり、占領軍と言ったらいいでしょうか、それに対する感情が悪化しないように努めるというのが占領政策の基本でございます。  その原則というのは、恐らく日本国が無条件降伏をした直後の連合国、特にアメリカの占領政策にははっきりと表れていたんですね。とにかく、日本に上陸させる部隊というのは、日本軍と直接戦った部隊は沖縄以外には上がっていないんです。そのことによって、やっぱり日本人はアメリカに対する感情を悪化させることなく今日に至っている面もあるわけであります。それを彼らが学んでいたらそういった事態はなかっただろう、決定的な誤りはそこだということはワシントンでもアメリカ政府に言って、いや実はそうなんだと、ただラムズフェルドの立場もあるからなとか、その点の話でございます。これについては大いに彼らは反省しているだろうと、そういう感じがしております。  そこには、我々は助言をしたり、どんどんどんどん変えていかなきゃいけないわけでございますが、やはりこれはイラクのいろんな立場の人たちにちょっと話を聞きますと、アメリカイギリスを比べると、やっぱりイギリスのまねをした方がイラク側の反発は少ないんだよということをはっきりイラク人が言いますね。やっぱりこれは植民地支配の歴史でたけている。さっき酒井参考人のお話にもありましたように、イラクの人をきちんと使う、それもチャラビに代表されるような亡命イラク人のちょっと色の付いた人たちじゃなくて、中できちんとやってきた人たちを使うというようなマインドはやはりイギリス側は持っているんだと。やはり、そういったことも我々は視野に入れながらアメリカとの話をしなきゃいけないと思います。  それから、占領そのものがねらいであったのではないかというような御質問でございますが、そこまでは申しません。ただ、やっぱりアメリカが、特にオイルの支配というのは完全に戦略目標としてあるわけでございますから、そういったものが余り露骨に出るような形の復興支援であれば、我々はやはりそれに対しては日本なりの意見を言って路線を修正してもらわざるを得ない。その辺のことは明確にしておいてよいかと思います。  どうもありがとうございました。
  39. 神本美恵子

    神本美恵子君 ありがとうございました。  そういう間違った占領政策というふうな中に自衛隊はCPAの統治の下に日本政府としては復興支援という形で送り出すわけですけれども、先ほどの酒井参考人のお話でも、先行の外国駐留軍と同じ轍を踏まないようなやり方をしなければいけないというふうにおっしゃったんですけれども、その同じ轍を踏まないために、非常に限られていると思うんですね、できることは。しかし、その中で現地での対応の仕方、先ほど少し触れていただきましたが、もう少し詳しく酒井参考人に。  そして、日本政府として、ではその間違った占領政策の統治下に送っている、そのことについての、これからどういうふうに、じゃ本来の、本当にイラク国民のための復興を成し遂げるためにはどういう復興政策日本政府としてアピールなり提言なり発言をしていくべきか。その点について、またお二人、お願いします。
  40. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 英米、先陣の英米占領軍の轍を踏まないために何が、日本として何ができるかということ、とりわけその復興政策に関して何ができるかという御質問だったかと存じます。  これに対しては、先ほども申し上げましたように、いかにこれまでの英米とは違うかということを打ち出していく必要がある。それは、先ほど渡辺参考人の御発言にもございましたように、大変難しい困難な作業でございますから、これは政府全体としてやはり取り組んでいく必要がある。つまり、自衛隊サマワに行けばそれだけで済む、あるいはそれで任せたというようなことでは決して達成できない、逆に、先ほど申し上げましたように、それだけではむしろマイナス効果の方が大きい、逆に言えば、それを相殺するような形で様々な復興支援をやっていかなければいけないと私は考えております。  その第一は、やはりイラク人の経済基盤となるような重要な地域の開発を行っていくということがございます。とりわけイラクの場合は、唯一の輸出の港がバスラにございます。このバスラという地域は、アメリカではなくてイギリスが管轄をしている南部地域になりますけれども、比較的、スンニ・トライアングルと違いましていわゆる政治的なテロというものは少ない、経済的な困窮によって略奪やサボタージュというようなことはしばしば聞かれてはおりますけれども、いわゆる反米テロ活動というものはそれほど多いわけではございません。  このバスラ、製油所や石油コンビナート、その他発電所、その他主要な産業施設がこのバスラには集中しておりますし、さらにまた、その港湾地域に続けば輸出入の唯一の窓口ともなっております。このバスラ復興することによってイラクの経済状態が格段と向上するということは目に見えて分かる話でございますし、今申し上げました治安状況ということを考えれば、必ずしもスンニ・トライアングルのようにテロ掃討作戦をやりながら同時並行的に開発をしなければいけないというような環境では決してございません。  ですから、まずはそういった要点となるような産業施設を回復するということが一番大きな問題になりますし、それと同時に、やはり先ほども申し上げましたように、経済復興だけで済む問題ではないということがございます。住民の意見をくみ上げるということは、どうしてもやはり今後は、政治体制の在り方、民主化とは何かというような議論にも踏み込んでいく必要が、必要に迫られるのではないかと思っております。  とりわけ日本の場合は、戦後の民主主義の導入というような経験がございます。先ほど小川参考人の御説明にもございましたように、今行われている、イラク国内で行われている戦後復興は、民主化とはほど遠いものがございます。逆に、アメリカの特にいわゆるネオコンの主張するような民主化というのが、非常に狭隘な、非常に限定されたアメリカ型の民主主義しか考えていないという側面がございますから、むしろここは日本型の、日本型のといいますか、日本の学んできた道というものをむしろ積極的に提示していくというようなことによって、イラクにも民主化を導入することは容易であるという道にイラク人を説得していく、さらにまたアメリカをも説得していく。そのことによって、今ちょうど暫定政権の設立に向けて、アメリカは直接選挙は時期尚早であると、むしろ民主主義を阻むようなやり方を取っておりますけれども、そうした頑強なアメリカの姿勢に対して、いや、民主化は少しずつでも進めていくことは、日本の事例でも見られるように十分可能であるというようなことを助言していくというような立場に立つことも重要なのではないかというふうに考えております。  よろしいでしょうか。ありがとうございました。
  41. 小川和久

    参考人小川和久君) 私は、現在のCPAに代表される占領政策と一線を画するということは、別に余り大上段に振りかぶる必要はないと思うんですね。これは、もうアメリカ側が一貫して言っておりますように、イラク復興支援イラク戦争の開戦を支持するかどうかによって北朝鮮の脅威に対して日本に対する態度が変わるということはないんです。だから、日本がどうイラクにかかわろうとかかわるまいと、北朝鮮に対する問題は日米安保を発動するしというようなことをはっきりアメリカは言っている。日本はその辺で、北朝鮮があるからイラクやらなきゃいけないと、そんな子供染みた議論はやめた方がいいわけですが。そういう日米関係でございますので、大変重要な関係を持っており、イラク復興支援においてもすみ分けることは可能でございます。  そこにおいては、イラクの人々から私は、数限りがある方々でございますが、ひとしく聞いたのは、今まで言われてきたような格好で水の供給をするとかあるいは学校を造るとかあるいは医療の支援をするという活動自衛隊が従事し、それがすべてであるような格好で展開されれば、イラクの民から見ると、はたから見て、アメリカ軍イギリス軍、いわゆる占領軍と同じようにみなされる、だから自衛隊の安全についても保証するとは言いかねるという話でございました。  ただ、先ほどちょっと申し上げましたように、湿原地帯の復元によって非常に大きなグランドデザインをかき、そしてそこで雇用を百万人規模で創出する、あるいはバスラやウムカスルの問題についても、その基盤をきちんと整備するという事業の中でやはり百万人規模の雇用を創出する、そういう枠組みをかき、最初の段階で民間主導復興支援が可能になるための足場を築くために自衛隊が、さっき話しましたような給水をやるとか学校建設をやるとか、そういった営みをするということになれば、イラク国民を挙げて自衛隊あるいはそこに入ってくる日本民間人の安全は保証しますと、それ太鼓判を押すかどうかという問題はともかく、同じ人たちがそれぐらいのことを言うわけでございます。  ですから、我々はそういったグランドデザインをかく、その前提は、イラクの幅広い層に常に意見の聴取を行いニーズをきちんと酌み取る、その中で初めてこれまで失敗だと言われてきた占領政策とは違う姿を示すことができるだろう。  アメリカの側も実は若干手詰まりなんですね。軍事的な面にウエートが掛かっている、お金も掛かっている、それから戦死者もどんどん出ている、雇用の創出なんといったって五万人規模ぐらいのものを提示するのがやっとだと。だから、やっぱり日本がそういったグランドデザインを描き、イラクの南部から中部、北部という順番で安定の基盤を作ってくれることは望ましいといったようなことをかなり言っております。  この湿原の復元事業については、先々週でございますか、小泉総理は国会で、中期的、短期的に取り組んでいくという答弁をしておられたのを聞いたような気がいたしますので、やはり一つの有力な選択肢ではないかなと思っております。  ありがとうございました。
  42. 神本美恵子

  43. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 時間がなくなりました。
  44. 神本美恵子

    神本美恵子君 はい。ありがとうございました。
  45. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。  今日は、四名の参考人の方、大変にインフォーマティブな話をしていただきまして、ありがとうございました。  まず、渡辺参考人小川参考人にそれぞれ簡潔にお答えをいただきたいんですが、日本のこの最近の議論の中で、日米同盟とそれから国連中心主義が相反する路線であるかのように説かれ、そしてその上で、日本は日米同盟と国連中心主義とどっちを取るんですかと、こういう問い掛けが例えばテレビの討論番組なんかでも私たち国会議員に対して問い掛けられたりするわけであります。私、個人的には、この問い掛けというのは、問い掛けをすること自体が国際社会から見るとちょっと違和感のある問い掛けなんではないかと思っております。  なぜかといいますと、そもそも日米同盟というのは日本と米国という二国間関係の中での話でありまして、日本にとりましては、日本が有する二国間関係の中で最も重要な二国間関係であるという位置付けになる話であります。他方、国連ということを考えました場合に、そもそも米国自体が国連の重要な一加盟国でありまして、安保理の常任理事国でもある、また、今回のイラク戦争は別といたしましても、その他の過去の国連の様々なオペレーションにアメリカは多大に貢献をしてきているということは事実としてあるわけであります。ニューヨークにも、アメリカのニューヨークに国連本部があるわけでありまして、そもそも国連アメリカを分離して、どちら取るんですかという問い掛けすること自体、私は若干違和感覚えているわけでありますけれども、両参考人の、このいわゆる日米同盟と国連中心主義というのをどうとらえるか、これについて御意見を伺いたいと思います。
  46. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) 簡潔にお答えします。  遠山委員の御意見に全く一から、始めからしまいまで賛成でございまして、特に異論はございません。  国連というものが、何というんでしょうかね、おっしゃるとおり、アメリカが例えばそっぽを向いた国連というものがあり得るかどうか、機能し得るかどうかということを考えればそう言えると思うんですね。ただ、先ほど私の最初の陳述で申し上げましたように、どうしても国連というものが国際社会一つのまとまった姿として人々は考えているわけで、何かまとまった国際社会というのがあるんだという前提で議論が進んでいるから、もしその中で意見の対立があったときに日本はどっちかを選ばなきゃいけないということになるんですね。そうすると、国連の中でのアメリカの立場を日本は支持するのか支持しないのかということを問われているわけでありますので、日米同盟を選ぶと日本が決めた以上は国連政策についての日本の立場もおのずから明らかであるというふうに私は考えます。
  47. 小川和久

    参考人小川和久君) 大変重要な御質問、ありがとうございました。  私は、やはり日米同盟か国際協調かという設問そのものがやはり我々自身整理しなければいけない問題ではないかなと思っております。  私たちは、ややもすると始めに同盟関係ありきという格好ですべてを語る。しかし、それは違うだろう。一つ日本という独立国家が平和と安全、それから繁栄を実現していくためには、同盟関係をいずれの国と結ぶかという同盟関係の選択というのは、これは最初に来るものではないということなんです。  まずは、独立国家としてどういう形で積み上げていけばそれが実現できるのかということを検討し、一つの外交・安全保障の構想を描き、そこにおいてやはり適切な同盟関係を選んだ方が効果的であろうということでどこかの国を選ぶ、最後に持ってくるような位置付けなんですよ。ですから、設問自体がそういった問い掛けがあることはおかしいという遠山さんの御意見は全く同感でございます。  ただ、私たちが考えなきゃいけないのは、まず日本国憲法というものが国際主義に立ち、また平和を実現しようということをうたっている、そして九条においては我々が指弾をされている侵略戦争をしないということをうたっている、そういう立場で、やはり世界の平和のために我々はできることにおいて行動しなきゃいけないという立場なんです。  そういったことを前提にして、憲法の精神を受けて、戦後日本国は二つの旗印を掲げてきた。原理原則と言ってもいいんですが、それが平和主義であり、国連中心主義ですよ。平和主義というのは、日本なりに世界の平和の実現のために努力をし、それに対する世界の評価と信頼が生まれてくることによって日本の安全と繁栄が確かなものになる、国益を追求した考え方でございます。そして、その平和主義を実現するために我々が使おうという仕組みが国際連合という国際機関、これが国連中心主義であります。まずそこから始まって、そして自らの国の安全を高めるために日米同盟を選んでいるんだという考え方に持っていかないとやはり落ち着かないと思うんですね。  ただ、そうはいっても、アメリカという国は国連の中でも一番、分担金二二%を負っているような大きな立場でございますし、世界のスーパーパワーでございます。この国の影響を受けないで済むということはあり得ない。ただ、アメリカから見て日本という国は一番重要な同盟国でございますので、その立場を自覚してアメリカとの戦略対話を常に進め、日本が掲げてきた平和主義や国連中心主義にふさわしい形で日米同盟の中身を変えていく、その営みがあってもいいだろう。  私は、一九八九年以来、日米同盟の平和化という言い方をしておりますが、そういった方向をやはり考えていく中では、討論番組などでそういう質問をする司会者も消えていくだろうと思っております。  どうもありがとうございました。
  48. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 ありがとうございます。  続きまして、酒井参考人にお伺いをしたいと思いますが、二点質問ございます。  私も個人的にイラクは三度訪れておりまして、北部に二回、それから南部のサマワ、昨年神崎代表と行かせていただいたわけですが、一問目は、これは私の全く個人的な素人感覚の印象でありますが、イラクといっても非常に広い、北部と南部ではかなりいろんな相違があるなあと思っております、感じております。  酒井参考人はもう御専門ですので、歴史的観点、民族的観点、宗教的観点、政治的観点、いろんな観点から違いをお述べになれるというふうに思いますが、私が感じたことは、北部においてはそもそも地元の社会の中のテンションが南部に比べて高いと。つまり、北部ですとクルド人もいる、クルド人の中でも争いがある。それからトルクメン人、トルコ系の方々もいる。それからアルメニア人とか、またイラク人も、当然アラブ系の方もいるわけですけれども、スンニ派、シーア派ということで、そもそも非常に北部は地元社会にテンションがあって、そこに今はアメリカ軍が、また北部は特にアメリカ軍が多いわけですけれども、来て、そのテンションの在り方というのはダブルフォールド、スリーフォールドになっているんじゃないかと。  他方、南部はシーア派の方が非常に多数を占めておりまして、サマワなんかでも余り、地元の、部族間のテンションというのは当然あるとは思いますけれども、いわゆる北部と比べると非常に南部というのはテンションが低いんではないかということを感じたわけでして、それが、例えば私が現地に行ったときに米軍の将校と話をして、北部では例えばヘリコプターに対する地対空ミサイルの攻撃がかなり頻発をしたけれども、バグダッド以南では一度も起こっていないということも現実としてあるわけでありまして、このことがそれだけで説明できると思いませんけれども、北部と南部の違いといったものをちょっとお話をいただければと思います。  それからもう一つは、先ほど来ほかの質問者からもありましたが、やはりイラク復興にとっては治安の安定が大事である、治安の安定のためには武装解除というのが大事であると言われております。ただ、私もイラクに三度行った者として、イラクには自衛の文化というものが非常に根強くあって、もう一家に一丁銃があるのが当たり前と。そのこと自体に何か特別に悪いことだという意識は地元の方ないと私これは思うんですね。  そうなりますと、治安安定のために武装解除をやらなきゃいけない、こういうことを外の社会で我々がしても、それを実行すること自体が現地の人にとっては非常に阻害される、侵害されるという感覚を持たれるんではないかという懸念を私持っております。  そういう意味で、この治安の安定のための武装解除とイラクにある自衛の文化、この関係についてコメントいただければと思います。
  49. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 南北の相違、イラクにおける南の社会と北の社会の違いについて簡潔に述べさせていただきます。  まず、全体として申し上げたいのは、今モスルの御指摘がございました、迫撃砲で攻撃があったりヘリコプターが落とされたりという。モスルは実はこれ、最近矮小的に、矮小されて解釈されておりますスンニ・トライアングルの中に入っております。スンニ・トライアングルといいますのは、基本的にモスルからバグダッド、バークーバ、ラマディといったいわゆるチグリス川、ユーフラテス川に挟まれた、バグダッドから北の三角地帯のことを一般にスンニ・トライアングルと言うんですが、余りにもティクリート辺りの攻撃が激しいものですから非常に小さく考えられておりますけれども、モスルも一応スンニ・トライアングルの一部です。ということは、攻撃が激しいのは北部というよりはむしろこの拡大されたスンニ・トライアングル、モスルを含めた三角州、チグリス・ユーフラテス川の間の三角地帯が一番激しいわけでございます。  恐らく、先生が行かれました北の地域、クルド地域であるかと思いますけれども、クルド地域は確かにおっしゃるとおり民族的な対立が激しいところでございます。キリスト教徒もおりますし少数民族もおります。ただ、一番そういった問題が集約しておりますのはキルクーク、油田地域のキルクークという町とその周辺に集中しておりまして、むしろそれよりも北になります山岳地域になりましたらばクルド人が優勢でございますので、同じクルド地域であってもかなりテンションの高いところとそうでないところと分かれております。ただ、おっしゃるとおり、これまでの経緯からいえば、南よりも北の方がテンションが高いと、南の方が比較的に低かったということは言えるかと思います。  ただ、問題はこれからでございます。これからは、南部地域も必ずしもシーア派ということで一つにまとまっているわけではございません。今のところはまずシスターニという最高指導者の下に動いておりますけれども、シーア派の中にも幾つかの派閥がございまして、いわゆる急進派から穏健派までかなりございます。  例えば、南部の、同じ南部でございましてもいわゆる先ほど御指摘のあったようなメソポタミア湿原の辺りというのは、イランがかつてゲリラ活動をかなり頻繁に入り込んでいた地域でございますので、アマラからクート、失礼、アマラから、そうですね、クート、そしてその湿原地域というのは、いわゆるイラン系のゲリラ活動によって教育された脱走兵によるゲリラ活動というものが、まあ強硬、いわゆる強硬派の拠点であったりいたします。その一方で、ナジャフというところでは穏健派がまあ指導、支配的であるというような、様々な色模様が戦後徐々に徐々に明らかになってきております。  ですから、これから政権構想、暫定政権を作るという段階までこのシスターニさんを中心とした大同団結の関係が維持できれば安定が続く可能性はございますけれども、これもある意味では一触即発。そうした派閥抗争があらわになれば、北部と同様の権力抗争がかなり激しくなるという危険性もあるというふうに考えた方がよろしいかと思います。  それから、自衛の文化、イラクにおける自衛の文化ということでございますけれども、確かに部族社会におきましては、地方のですね、地方部の部族社会においては、部族は自分たちで自分たちの社会を武器を持って守るという文化がございます。しかし、都市部におきましては、銃を持ってそれぞれの家庭が自らを守るということは最近の傾向でございます。もっと具体的に言えば湾岸戦争以降でございます。  湾岸戦争のときに全面的なアメリカの攻撃を予想したイラク軍が、これはもたないかもしれない、政権がもたないかもしれないということで、それぞれの地方に銃を配りまして、イラク軍が守れなかった場合には自ら敵に対して戦うようにということで配った、それによって銃が蔓延したという経緯がございますので、必ずしも、ここ十三年間はそうした銃社会だとは言えますけれども、それ以前は必ずしも銃がそれぞれの家庭で持っているのが当たり前というようなことではなかったと言えると思います。
  50. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 続きまして、再び小川参考人にお伺いをいたします。  テレビでも出ていますし国会でも出ていますが、今のイラクを事実上の戦地という表現が日本で今出回っております。私も元々議員やる前に国際政治学の研究をしていた者として申し上げますと、確かにイラクはテロも頻発をしております。強盗、野盗のたぐいも頻発をしている。そして、毎日のように、週によってはアメリカ兵の死傷者の数が報じられるということで、ベトナム戦争のときと同じじゃないかという気持ちを持つ日本人がいるということは私も理解をしておりますが、しかし、戦争というのは、戦地というのは、ある組織がある政治的目的を達成するために存在して、組織的、計画的に日常的に敵に対して攻撃を加えている状況が常態化していないと戦争とは呼べないんではないかというふうに私は思っておりますが、今、小川参考人から見てイラクは戦地と呼べるんでしょうか。
  51. 小川和久

    参考人小川和久君) 大変難しい御質問をいただきまして私もちょっと困っております。ただ、学問上の定義ということでいいますと、今、遠山さんがおっしゃったとおりでございます。  ただ、もう一つの角度から私たちは見ておく必要があると思うんですね。それは、今日最初に意見陳述の中で申し上げましたように、イラク全体ということでいいますと、秩序が崩壊している、当然治安が悪い、いわゆる戦場と明らかにみなされる地域だけではなくて、全般的に危険が存在するということでございます。その中で、日本は、国内世論の問題もございますし、いわゆるアメリカ軍イギリス軍が本格的な武装、武力行使可能な編成、装備で行動している地域は避けた。そこにおいては、私は官僚的な答弁で非戦闘地域なんて分けるのはナンセンスだと思っておりますし、それをやっている官僚機構の皆さんもナンセンスだと思っておりますと、まあ内々言っているんじゃないかと私は思いますけれどもね。  やっぱり私たちが考えなきゃいけないのは、武力行使可能な編成、装備とはどういうものかということも視野に入れながら、我々が平和実現のための、平和創出のための足場を作る任務を自衛隊に与えるということを考えなきゃいけないという話なんです。  最初お配りした資料の黒丸の二番目にありますが、やっぱり軍事知識の欠如が議論を混乱させているという印象が非常に強いんですね。これはもう本当に、税金の使い道を通じて自衛隊を健全かつ適正に生かしていこうというマインドに欠けるからシビリアンコントロールを放棄した状況があると言わざるを得ないんですが、その中で、本当に武力行使可能な編成、装備といいますと、この中でRCT、連隊戦闘団という言葉がありますが、これじゃなきゃ駄目なんですよ。これ組まないで、歩兵連隊、普通科連隊と自衛隊で言いますが、それが持っている武器の範囲で何ができるかという話なんですね。ですから、やっぱり陸上自衛隊は今回そこにも行っていないレベルの編成、装備でありますので、やはりそれにふさわしい地域、つまり日本的に言いますと、戦場じゃないところでの活動を行うことになるんだろうと思っております。  ちょっとお答えにならないような話でございますが、ありがとうございました。
  52. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 以上でございます。終わります。
  53. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  今日は参考人方々、本当にありがとうございます。時間非常に短いので、私は、この自衛隊派兵がイラク国民にとってどうなのか、そして片っ方、日本国民にとってどういったことをもたらすのかという、この二点で質問をさせていただきたいと思います。  まず、酒井参考人に伺いたいんですけれども、小泉総理は一貫して、人道復興支援に行くんだ、戦争に行くんじゃない、盛んに言っています。しかし、今日のお話にもありましたように、イラク方々はそういった言葉もあってか、非常に過剰な期待自衛隊に持つようになってきていると。錯覚ですね、持っているということだと思うんですけれども。自衛隊日本企業を混同したような考え方が一体どこからきたのかということについては、先ほどもお話ありました。これまでの日本企業と貿易関係ですね、主に、そういったところにあったということなんですが、私は今度の場合は正に日本政府自身が人道復興支援ということを高らかに言って、こういった錯覚をむしろ起こさせる行為をしてしまったんじゃないかというふうに考えているんですけれども。  例えば、これだけ言いますと、日本はインフラ整備やってくれるんだ、港も整備してくれるんだ、電気施設も、施設も復興してくれるだろうと当然思うわけですね。そういったことに本当に私は起因している、大変な過ちを犯したんじゃないかと思っておるんですが、そのことについてどうなのかということが一点と、そして自衛隊にはそんなことはできっこないことは最初から分かっているわけです。雇用の拡大もできません。そういったことがはっきりすればどうなるかということは先ほどのお話にありました。大変な失望を招くだろう。私は、これについては単なる想定ではなしに、もう時間的な問題だろうというふうに思うんです。もう短期間のうちにそういった状況が現出するのではないかと思うんですけれども、そのことについてどのようにお考えか、お尋ねします。
  54. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 御質問ありがとうございました。  日本政府の広報、地元に対する広報が人道支援ということを余り言い過ぎて過剰な期待を生んだのではないかということでございますけれども、申し訳ございません、私は地元で一体どのような形で広報が行われたのかというところまで詳細に知る能力がございませんので、それについては若干答えにくいところがございます。  ただ、やはり自衛隊がどういう組織であるかということ、そして現実に自衛隊がどういうことができるのかということに対して、どこまで地元住民までのレベルで説明があったのかということについては若干説明不足だったのではないかなと。説明が行き届いておれば、住民にここまで過剰な期待を生むこともなかったのではないかという気がいたします。ちょっと、その程度しかお答えできないので残念なんですけれども。  二番目の、この過剰な期待が失望に変わる、将来的に変わるのではないかという御意見、早くそういう問題が起こるのではないかということがございます。私も、おっしゃるとおりだと思います。  世間ではよく、六月の暫定政権の設立のとき辺りまではまだ、状況は落ち着くんではないかというような予測もされておりますけれども、実は見逃されておりますのは、この二月、二月中にイラク国内ではそうした暫定政権の設立に向けての基本法を決める期限が来ると。つまり、二月中に今後の政体を決める動きが出てまいります。動きといいますか、そういったことが決まってまいります。ですから、様々な、富をめぐる利権対立であるとか、政権、権力抗争であるとか、そういったものは二月に正に水面下でかなり激しく行われるであろうということが想像されます。  その二月に正に自衛隊が入って、そして巨大な富がここに落ちるのではないかというような幻想が存在する。そうしたところで正に権力抗争が激しくなるというようなもの、ところで、失望も、失望ということもさることながら、やはり言ってみれば、幻想に近い将来への期待に向けて様々に周りが動いていくことがその状況を不安定化させる。現地の勢力抗争に自衛隊自身が巻き込まれて、いろんな形で巻き込まれていくということがあり得るのではないかと思います。  先ほどレジュメの方にも指摘いたしましたけれども、先日、シスターニさんの系統であるサマワの宗教指導者が自衛隊は守れというファトワを出したという報道がございました。これはある意味では、現地において最大限自衛隊を守る姿勢の現地住民からの表現だというふうに私は考えております。  ということは、どういうことかといいますと、シスターニさんという一つの宗教勢力の一つの派閥が一つのメッセージを出した。我々は自衛隊日本を守ります、その代わりに日本自分たちを支援してくれと、支持してくれというようなメッセージが隠されていないとは言い切れない。既にある意味では、政治抗争の中で発せられるメッセージを日本は知らず知らずに受け取っているという危険性はあるのではないかという気がいたします。
  55. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 もう一点、酒井参考人に伺いたいんですが、私どもは、イラク問題については米英で占領軍が支配をする実態、これをもう早急に終わらして国連中心のところに持っていかなければならないんだということを主張をしております。その下での主権の返還ということを速やかにやろうじゃないかと提案しているんですけれども、今、今日のお話にありましたように、米英占領、アメリカ占領は失敗したということですね。  要するに、そういった下でも小泉総理は、じゃ、今占領軍が撤退したらイランの治安はどうなるのだというふうなことを開き直った形で言われるわけですけれども、しかし今の占領軍の実態を見るならば、むしろこのまま居座る方が治安の回復にとってはマイナスになるんじゃないか、私は考えるんです。  今日の話を伺って、本当に痛切にそれを考えるんですが、参考人はそのことで、要するに、日本政府はもう米英に対して今のやり方を改めろということを提言すべきだというふうにおっしゃっています。私はそのとおりだと思うんですが、ただ、じゃ、事ここに至って、アメリカイギリス軍のやり方を修正する程度で今はうまくいくんだろうかと。私は、やはりもう今の米英占領の支配をやっぱり改めて国連中心に移していくという、そういったことにこそ中心的なこれあるんじゃないかと。今日のお話の中でも世界全体の包括的な取組こそが大切なんだということでしたけれども、とするならば、国連中心に早急に持っていく、その下での政権移譲、そのことが今本当に求められていると思うんですけれども、そのことについてお伺いしたいと思います。
  56. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 米英中心の、主導の戦後統治の枠組みから国連へ移管を早く求めるべきだという御意見、全くそのとおりだと存じます。  ただ、留意しなければいけないのは、国連といっても必ずしもイラク国民に全幅の信頼を得られている存在であるというわけではない。これは湾岸戦争以降の経済制裁、長らく続いた経済制裁に対するイラク人の反応を見ましても、やはり国連であっても最終的には英米の言いなりであると、国連もこれまで英米によっていいように利用されてきたではないかと、だから、国連だったらよいというわけでは決してないんだというのがイラク国民の正直な反応であろうかと思います。  ただ、そうはいいましても、やはり英米ではない形で何か外国の協力を求めるということになると国連という枠組みしかないのが現状でございます。それで、その認識はイラク人もある。例えば、先ほど申し上げましたシスターニさんという人が今直接選挙を求めて英米と対立しておりますけれども、彼などは、対立をこのまま続けるわけにはいかない、何とかしてその妥協策を模索しなければいけないということで国連に判断をゆだねているというのが現状でございます。  ですから、イラク人の今後の政体をどう作っていくかということにおいても、やはり最終的には国連の関与を求める、国連に何か言ってもらう形で妥協案を作り上げていくということをイラク人はやはり求めている部分はございます。  問題は、この国連が、じゃ果たして妥協案というような形で回答が出せるかどうかということでございます。すなわち、結局はアメリカの意向を再び国連が言い換える、アメリカが言いたいことをニュートラルな形に見せるために国連が代弁するというような形で提示することになっては逆に代替案にならないという問題がある。そういうことを考えれば、ただ国連に移管すればよいというのではなくて、国連として、いかにアメリカにある程度制御を掛けた形でニュートラルな行動が取れるかというようなことをまず行っていく必要があるのではないかと。  日本期待されている、英米の代替として期待されているという背景には、やはりアメリカに物が言える、アメリカに物が言えるような、しかしアメリカとパイプが切れているものではないという、その微妙な存在を必要としているというところが今のイラクにとっては一番重要だと思いますので、国連をいかにそういうポジションに位置付けるか、戻していくかということも重要になってくるかと存じます。
  57. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 ありがとうございました。  小田中参考人に伺いたいと思うんですが、小泉首相は、憲法前文の「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という、この部分を引用してイラクへの自衛隊の派兵を合理化しようとしたことについてはもう御承知のとおりなんですけれども、この日本国憲法は、前文と、それからそれに続く百三条全体がこれ一貫したものだと私は思うんですね。一貫した思想と理念に貫かれていると思うので、その一部をつまみ食いしてやることは正に曲解だと、曲解を招く。小泉首相の引用の仕方は正にその典型だと私は思うんですけれども。  さらに、総理大臣がそれをやったということですよね。これは一般の国民がやったこととは大違いで、やっぱり総理大臣がこの一貫した思想、理念、憲法の思想、理念を理解しないでこういったことをやった、その姿勢そのもの、そのものが九十九条に定めた憲法遵守義務に違反するんじゃないかと私は思うんですけれども、そのことについてお伺いしたいと思います。
  58. 小田中聰樹

    参考人小田中聰樹君) 先ほどの意見陳述の中でも申しましたけれども、私は今回のイラク特措法に基づく基本計画、さらには今回の対応措置、これは憲法に違反するものだというふうに考えるわけですが、もちろん直接的には第九条の戦力の行使とかあるいは、に当たるという、武力ですね、武力の行使に当たるというところが中心的な問題でもあり、また交戦権の行使に参加しているといいますか、自らも行使する立場に立ってしまったということも問題だと思うのであります。  私は、そういう問題の奥底にあるのは、やはり日本国憲法が平和主義を取って、そういう戦力不保持とか、さらには交戦権の放棄とか、さらには武力の行使の禁止などを定めたその根源的な思想は何だろうかと。そこのところにさかのぼって考えてみると、私は今回のイラク特措法に基づく対応措置というものがいかに根源的なところに反しているかということを考えたわけであります。  私は、平和主義というのは、一般にはただ平和主義として存在しているのではなくて、実は国家なり社会なりの在り方、あるいは個人の在り方というものと深くかかわっているんだというふうに思うわけであります。そのことが憲法の前文には、小泉首相の引用された前のところで非常に明快に語られているわけですね。なぜ我々は平和のうちに生存する権利という形で平和主義を取るのかということがるる説明されておるのであります。そのエッセンスというのは、一つは歴史的な反省、そして特に「専制と隷従、圧迫と偏狭を」、いうものを克服するというようなことが最もその平和主義を取る根本的なところに据えられているわけであります。  つまり、全体として、日本国家の在り方あるいは社会の在り方、個人の在り方、これは平和主義というものが一番その基本の前提にある。それを分かりやすく言えば、平和あってこその民主主義であり、平和あってこその基本的人権であり、平和あってこその福祉ないしは生存権であると、そういう構造になっているんだと思うんですね。そういう三位一体的なところがあって、だからこそ憲法九条でその「平和のうちに生存する権利」というものを具体化として、言わば軍事力を持たないし、またそれを行使しないという、そういう条文を置いたのだというふうに思うわけであります。  そういうことを基本としながら、国際社会において名誉ある位置を占めたい、こういうくだり、流れになっているわけでありますので、したがって、平和主義というものが国際社会における日本の在り方というものの基本になっているのではないかというふうに考えるわけであります。  私自身は非常にこの点を最近考えさせられているわけでありますが、例えばもっと具体的な形で申しますと、今回のイラク特措法に基づく自衛隊派遣というもの、これが日本の社会に与えた衝撃というものは、あるいは影響というものは、これは計り知れないものがあると思います。これまで日本国家なり社会なり国民なりを支えてきた一つの理念がこういう形で、つまり、イラクに対して、いわゆる占領行政の一環として武装をもって、しかも、をして、しかもその武器たるものは物すごい武器ですね、そういうものを持って安全確保支援にまで乗り出していくという、そういうこの自衛隊のあの活動の参加の仕方というものは、これは日本国憲法の平和主義というものがそのことによって大きく崩れ去られようとしているという、そういう、あるいは崩れたというふうな感じを与えたわけであります。このことは、恐らくこれから日本の社会に対して非常に大きな影響を与えていくんだというふうに思うのであります。  先ほど、私、陳述の中では、日本の社会にも憎悪と暴力の連鎖、悪循環というものを生んでいく危険があるということを指摘いたしました。これは、単に我々大人だけの世界ではなくて、子供の世界に至るまで、あるいは次の世代に至るまでそういう危険というものに我々は直面しつつあるということなのであります。  こういう根本的なところから見て、私は、今回のイラク特措法に基づく自衛隊派遣に対しては、正にこれは違憲であるという、条文づらの問題だけではなくて、根本的、思想的な面において違憲であるということを述べたいのであります。  先ほどもお尋ねの小泉首相のお話というのは、そういう一切脈絡を抜きにして、「国際社会において、」と、云々というそこのところだけを取り出した、正に質問者のおっしゃるような部分的なつまみ食いにとどまらずに、脈絡を無視した誤った使い方ではないかというふうにすら考えるものであります。
  59. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 小田中参考人、あと二点ほどお伺いしたかったんですけれども、時間が非常に短くなりましたので簡単に伺いたいと思うんですが、御専門のお立場からの正当防衛権の話伺いました。時間がないから繰り返しませんけれども、全くそのとおりだと思うんです。  ただ、私ね、もっと素人の考えで、一体占領軍の指揮下に入る自衛隊に正当防衛権、主張できるんだろうかという素朴な国民の考え方についても一言簡単にお教えいただきたいのと、私は、最近高校生の小泉首相への請願ございました。それに対する総理の答弁というのはとんでもないことだったですよね。こういったこと多々あるんですけれども、しかし、若い世代に憲法をしっかりとつかんで平和を守っていこうという、そういう声が出てきているということについては一種の安堵感を私は持ったんですけれども、そういったことについての感想も、あと二分しかございませんけれども、ちょっと一言お話しいただきたいと思います。
  60. 小田中聰樹

    参考人小田中聰樹君) 正当防衛の問題については、私ちょっと先ほど意見陳述の中でも述べましたけれども、大変日本にとって大きな法律問題を抱えたことになると思うんですね。イラクにおいて、イラク人が、あるいはイラクにおいて行われる日本、占領当局に対する、あるいは日本に対するある種の行動が、日本の刑法の正当防衛というその前提となる急迫不正の侵害という、そこのところに本当にうまくフィットしてくる問題であろうかということを考えるわけですね。ですから、私は、正当防衛云々というのは、法律家としてはいろいろと議論しますけれども、根本的な、前提的なところが実は問題であって、細かい解釈論以前のところにこそ我々は目を向けて議論すべきであるというふうに考えるものであります。  それからもう一つ、高校生の方々のお話ということでありますので、私も実は大学で若い人に接してまだ教えているわけでございますけれども、若い方々の意識というのは非常に純粋であることは昔も今も変わりありません。私は学生たちとよく議論をするんですが、彼らはやはり今回のイラク特措法に基づく自衛隊派遣に対しては非常に大きな疑問と憤りを持っております。その点は高校生のあの要望書にも表れていると思いますけれども、我々が聞くべきはそういう若い方々の声、言わばまだ生まれてこない人々も含めた未来の声を聞くべきであると私は固く信ずるものであります。
  61. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 ありがとうございました。  終わります。
  62. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 社会民主党の大田でございます。  四人の先生方、今日は大変御苦労さまでございます。大変いろんなことを教えていただきまして、感謝申し上げます。  さて、お話を伺っていて、ちょっとよく分かりづらいので、あえて端的な質問をさせていただきます。これは小田中先生の方は立場がよく分かりますのでもうお聞きしませんが、御三人の方にお一人ずつ、今回の自衛隊イラク派遣についてどうお考えなのか、賛成ならば賛成の理由、反対ならば反対の理由をごく簡潔にお願いいたします。
  63. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) どうもありがとうございます。  私は賛成の立場で申し上げております。  で、なぜ賛成かというのは、私の冒頭の陳述で申し上げたつもりでございますが、今、安全保障というものについての考え方が非常に大きく変わってきている、問題の性質が変わってき、それについての考え方が変わってきているという大きな枠組みの中で考えるべきだと。ただし、自分たちで日本自身が、我々自身が果たしてそのことをよく分かって事に臨んでいるかどうかということについては私は若干の懸念を持っているので、そういう点について我々の考え方をもっとはっきりした上で事に臨むべきだという趣旨から申し上げたつもりでございます。
  64. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 御質問でございますけれども、私は一国民としての立場はまた別にございます。私がここに呼ばれたのは、恐らく、中東現代政治の専門家ということで、分析の結果どういうふうな結論が出るかということで呼ばれたかと存じますので、その結果、分析の結果、現在イラクイラク日本自衛隊を出すということはマイナス点が多いというふうに申し上げたというふうに御理解いただければありがたいと存じます。  よろしゅうございますでしょうか。
  65. 小川和久

    参考人小川和久君) どうも御質問ありがとうございました。  私は、自衛隊をやむなく派遣せざるを得ないという立場でございます。  で、私は、陳述で申し上げましたように、自衛隊という軍事組織を秩序と治安がなくなっているイラクの社会において民間主導復興支援をするための足場を作るためのギプスや添え木の役割として使うというのが一つ考え方としてある。だから、できるだけ早く民間主導復興支援にシフトすべきだということなんです。  で、自衛隊といったような軍事組織を使わずに済めば済んだ方がいい。もちろん酒井参考人がおっしゃったようなデメリットもあるわけであります。しかし、ほかにそれに勝るような対案がどこからも出てこない。どこか他の国がやっているからまねするという立場では私はございません。だから、逆にもっとすばらしいプランが出てくれば、私は支持します。今のところないということで、自衛隊の派遣というものをひとつ足場を作るために認めざるを得ないということで御理解いただきたいと思います。  ありがとうございました。
  66. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 もう一つだけ御三人の方にそれぞれお伺いしたいんですが、御専門の立場から、イラクでのこの戦争といいますか、これは戦争が終わって、いわゆる平和な生活に戻るまでに一体どれくらいの期間を要するとそれぞれお考えでしょうか。渡辺先生からひとつ御三人の方、同じ質問でその見通しについてお願いいたします。
  67. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) 大変長く時間の掛かる問題だと思います。戦争は、古典的なというか、伝統的な考え方、定義での戦争は終わっているわけでありますが、戦後の統治、これを占領と呼ぶかどうかになりますが、の段階だと思います。沖縄の占領は随分長く続きましたが、全く別の意味でこのイラク統治というものもそう簡単には終わらないと思うんですね。  私は、先ほどから占領が失敗だというふうにいろいろな御意見がありましたが、私はそうは思っておりません。未完成であると、たくさんの点で未完成を残しているという点で、どこをどう手当てしていかなきゃいけないかという問題なので、それには非常に多くの時間が掛かるわけでありまして、何かみんなが合意した中に行って何か統治しているというわけではなくて、意識的にそれを妨害しようとする破壊活動をあえてするという勢力を前にして、このことをやっているんだということを忘れてはいけないわけだと思うんですね。  そうすると、そのためにはたくさんの障害を軍事的な手段でもまた対応しなきゃいけないという問題が残っているわけです。その上でいかに平和的な、いわゆる民政的な統治を根付かせていくかということなんであって、そう簡単ではなくて、いわゆる当面の占領期間が終わってイラク自身に主権が戻るということが果たして六月にできるか、七月にできるか、多分難しいだろうと。その辺は酒井参考人の御専門でありますが、今年中にそれがうまくいってベストだと、多分。そして、それで事が終わるわけではない。  そういう意味で、イラクに本当の意味での平和な生活が戻るためには多分十年ぐらいは覚悟しなきゃいけないのではないかと思います。
  68. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 御質問、いつになったら平和な生活が可能かという点でございますけれども、私は経済復興さえ適切に早急に行われればかなり早い段階で落ち着いた安定した生活イラクには戻るというふうに考えております。  これは、戦争が、五月の一日にブッシュが主要な戦闘の終結を宣言いたしましてから、五月の一日から六月の半ばまでの間に起こったイラク人によるアメリカに対するテロ行為あるいは攻撃というのは、過去一年間の間で最も少ない時期でございます。つまり、戦後直後、占領統治政策がまだ明確ではない、どのような形で今後その戦後復興が行われていくのか、占領統治が行われていくのかということがまだ分からない、イラク国民に見えない状況が一番アメリカに対する攻撃が少なかった。しかし、徐々に徐々にその統治政策が明らかになっていくにつれて攻撃が増えていったということをもって私は占領統治政策は失敗であったというふうに申し上げているわけです。  ですから、その意味では、五月から六月の半ばに期待していた、つまりイラク人生活水準が戦前までに極力回復するようなインフラの修復、復旧作業が早く終わり、そしてこれまでフセイン政権の下で働いてはいたけれども、中堅の官僚や技術者といったような者が、罪はある程度問われるにしても、一定の職を得る、一定の社会参加を果たしていくというようなことが保障されていればこのような混乱には陥らなかった。逆に言えば今からでもそうした政策の転換を行えば、それほど長く続く、混乱が続くということではないのではないかと思っております。
  69. 小川和久

    参考人小川和久君) 私は、一つの国が秩序を失い、また治安が乱れている状況を克服するためには、やはり十年単位の時間を覚悟しなきゃいけないだろうと。これは明治維新、西南戦争が終わるまで十年でございます。それから、これは治安だけの問題でございませんが、一つ復興が実現するためには様々な要因があって一概には申せないかもしれませんが、日本がもはや戦後ではないと経済白書でうたったのは昭和三十年、これも終戦から十年掛かっております。ですから、それぐらいの時間を覚悟しながら地道に積み上げていくということによって初めてイラクに平和がもたらされるだろう。  ただ、占領政策の失敗ということは、これは私、実務者ですから、研究者のように机の上の話じゃなくて、実際に下手くそだな、おまえらと、アメリカと言っているわけであります。アメリカ側の国防総省や軍の中でも実は下手くそなんですという声もあるぐらいでございますから、それはきちんと直していかないと、イラクの民の命が無駄に失われていくことが続くんじゃないかと思っております。  ありがとうございました。
  70. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 小田中先生にお伺いします。  先ほどお話しのほとんどに私も賛成する立場でございますけれども、日本には非常に有能な学者というのが相当おりまして、今の憲法の問題なんかにつきましても非常にいい説を唱えておられる方々がおられるわけなんですが、世論とかこの政治の場で見ますとイラク派兵賛成とかというのが多い、それはどうしてだとお考えでしょうか。
  71. 小田中聰樹

    参考人小田中聰樹君) 大変難しい質問をいただいたように思いますけれども、その世論自体が非常に動いているというところがあるわけですね。  最近、ごく最近の調査では、賛成というか、支持がむしろ多くなって、反対の方がむしろ下がって逆転していったということも含めて大変変動があるわけですが、一つには、やはりよく言われているところでは、マスコミの影響というものがあるというふうに考えますが、私はやはり、混沌としたこういう状況の中で、正しい情報がどれほど国民に伝えられているかというところに問題があると思うんですね。それはマスコミだけの問題ではなくて、むしろ情報という、そのマスコミが流す、あるいはマスコミに流すその情報の質と量の問題が私はあると思うのであります。  例えば、例えば外交官の殺害事件一つ取ってみても、我々が本当に知りたいところについての情報というのは事件後ほとんど伝わってこないと。もしもあの事件についての真相解明の努力と、そしてまたそれについての情報が適切に日本に伝えられていれば、我々に伝えられていれば、あるいは世論も動いたかもしれない、今のような世論ではなかったかもしれないということも含めて、世論というものと情報との関係が一番問題ではないかというふうに考えています。そこのところを抜きにしたパーセンテージの上下では、日本国民の本当の気持ちというのは分からないのではないか。  私は、先ほど言いました、冒頭にも言いましたように、軍国主義教育を受けたそういう割合に古い方の世代なんでありますけれども、それで、我々の世代とか、あるいはずっと今度は飛んで最近の学生の人たちなどの話を聞きますと、一様に疑問とそれから非常に深刻な憂慮を持っていますね。これから日本はどうなるんだろうかと。日本国憲法というものを言わばないがしろにして、言わばそれを放棄に近いような形でもしもこれから日本が進んでいった場合に、日本という国が本当に国際的にも、国内的にも理想としてきたようなそういう国になるだろうかと。目前の単なる一時的な利害、あるいは一時的なそういうもので、利害得失で進んでいった場合に、一番大切なものを失うんじゃないか。  例えば、一番私は端的に先ほども挙げた例で言えば、子供たちの考え方ですよね。朝から晩までイラクの攻撃のあのテレビのニュースを見せられた子供たちは、長じてどういうイメージを平和というものに持つかということも含めて、そういう問題も含めて私はやはり考えるべきことがあるのだと、そこを見失ってはならないと、賢明に我々は判断しなくちゃいかぬというふうに考える次第です。
  72. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 あと簡潔にお願いしたいと思いますが、軍事専門家あるいは安全保障専門家として渡辺先生と小川先生に伺いますが、在日米軍基地から米軍がイラクへ直接出動していますね。この問題は一体、事前協議の問題と関連して、どのように受け止めておられますか。お二人にお願いいたします。
  73. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) 事前協議については、極めて官僚的な答弁かもしれませんが、いわゆるこちらから戦闘行為に出掛けるということでありまして、直接戦闘行為にここから出掛けていくという事態ではないというのが多分法律専門家の解釈だろうと思います。それについて、我々、国会がどういうふうにお考えになるかというのは、むしろ私の方からお聞きしたいところでございます。
  74. 小川和久

    参考人小川和久君) 私は、事前協議ということがうたわれている以上、日本側から問題提起をし、常に説明を求めるべき事柄であろうと思います。  ただ、残念ながら、日本の政府にはアメリカとの間で軍事的対話を行うだけの専門的な能力がございません。私の方がましかもしれないですね。それぐらいのレベルでございますから、対話能力がないから話にならないというのがアメリカ側の言い方なんですよ。だから、当然ながら、事前協議ということを提起することもなく、なし崩し的に来てしまった面がある。これは独立国家として例えば周辺の諸国からの信頼を損なうという面もございますので、やはり我々はその点をきちんと整理をし、軍事的対話能力のないところで同盟関係を機能させることはできない、あるいは平和を実現することはできないということで、もう少し戒めていきたいものだと思っております。  ありがとうございました。
  75. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 渡辺先生に伺います。  先生は軍事力でテロを撲滅できるとお考えでしょうか。軍事力でテロを撲滅できるとお考えでしょうか。
  76. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) 軍事力だけではできません。  ただ、極めて直接的な攻撃を受けた場合に、その攻撃能力を温存していると見られる組織がある以上、それに対する軍事的な措置は必要であると。もっと広い意味で、その背後にある様々な複雑な社会的、経済的な背景からこのような問題が出てくるということは間違いがないわけでありますから、したがって、例えば今我々が一緒に議論しているような、イラクという国がそのようなテロの温床になったりテロの支援国家にならないようにどう立て直していくかという問題だと思いますので、先ほどからの話にもありましたように、これは非常に気の長い、忍耐の要る、かつあらゆる手段でもって取り組まなきゃいけない大大事業、難事業だというふうに私は考えておりますので、あくまで軍事的な対応というのは、何というんでしょうか、健康に例えて言えば、ほっておけばこれは死ぬかもしれないというときの外科手術的なものでありまして、健康体を作るということは決してそれだけで済むわけではございませんので、というのが私の考え方であります。
  77. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 小川参考人お願いします。  いろいろ法律を作って、先ほども小田中先生からもちょっとお話がございましたけれども、法律を作るわけですが、戦争が始まって法律が通るとお考えですか。私は戦争が始まったら超法規的にならざるを得ないと考えますが、いかがお考えでしょうか。
  78. 小川和久

    参考人小川和久君) 私は、法治ということを考えるときに、戦争のような極限状況においてそういう逸脱行為が必ず起こり得るものだということで、日ごろから法治国家を機能させることがより重要だというふうに考えております。  例えば交通の問題を取っても、例えば確信犯である飲酒運転についてつい先ごろまで厳罰で対処するということがなかったがゆえに大変な命が失われてきた。厳罰で対処するということが決まった途端に相当交通事故の死者が減るようなことがあるわけであります。つまり、それまでの日本は本当に法治国家ではないような状況があった。これ、検察官の研修でもかなりその辺を厳しく言ったことがございます。  でも、やっぱりそういったことを一つ一つ我々が日ごろの社会の営みの中で積み上げていって初めて、法律のできの良さ悪さはあるかと思いますが、極限状況における逸脱行為、あるいは脱法行為は局限されるような理想に近い形が生まれ得るんじゃないかと思っております。日ごろの営みが恐らく大事だと思っております。  どうもありがとうございました。
  79. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 もう一つだけ小川参考人にお伺いします。時間がないので簡潔にお願いしたいんですが、嘉手納からイラクへ三千人海兵隊が行くことになっているんですが、嘉手納からというよりか沖縄からですね。軍事的に支障があるとかという説もありますが、どうお考えでしょうか。ああ、ごめんなさい、イラクへ戦闘に行って、それから沖縄へ戻らないでアメリカ本土に帰るということで沖縄では非常に喜んでいる人たちと、いや、また戻ってくるというのがありますが、一言で結構でございます。
  80. 小川和久

    参考人小川和久君) 沖縄の海兵隊がイラクに派遣されるのは、これまで占領政策の中で第一線に立ってきた陸軍部隊などの代わりでございます。ただ、それが沖縄に戻ってこようがアメリカ本土に帰ろうが、キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、それからまだ、返還が実現したとは言い難いですが、普天間の飛行場がある限り、これは沖縄の海兵隊は撤退したというようなことではなくて、いつでも帰ってこられるということですから、目に見える部隊の移動や変化で慌てて判断をする必要はないと思います。  どうもありがとうございました。
  81. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 ありがとうございました。終わります。
  82. 山本正和

    ○山本正和君 大変御苦労をお掛けしておりますが、最初に渡辺参考人にお聞きしたいんですけれども、かなりこれは積極的に、これはいいことだと、いいことだと、当然我が国としてやらなきゃいけないことだと、こういう立場の御意見だったと思うんですけれども、同じ自民党の中で総理大臣も務められて、この国の責任を取ってこられた方の中にも意見がいろいろある。中曽根さんは、いいことをやったなと、小泉君、立派だと、こう言っているんですね、一つね。ところが、宮澤さんは、私だったら何とか話をしてお断りするよと、こう言っているんですね。違いがある。  渡辺さんは、これはいいことだという中曽根さんの立場でございますか。となるならば、なぜそうかということをひとつ説明してください。
  83. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) 中曽根さんに、中曽根さんに私は義理がないんでありますが。積極的にいいことだというふうに言い切れるかどうか分かりませんが、やらなければならないことであろうということであって、できるならばもう少し様々な心の準備、それから法体制の整備、訓練度の整備等々ということが整った上でこのような事態に臨むべきだと思います。その意味では、様々な準備が不十分な状況の中で、しかしこの難しい仕事をあえて引き受けなければならなくなったという立場にある現場の方々に対して私は大変同情的であります。  したがって、何かその意味で積極的にいいことだと思っているかという御質問であるとすると、私としては何の条件もなしにそうだというふうにお答えはできません。ただ、国の姿勢として、基本的な姿勢としてはこのような方向に行くべきであるというふうに私は考えているわけであって、その基本的な方向のために先ほど申し上げたような様々な不十分な条件の下で仕事をしなければならない現場の人々のことを考えてあげなければいけないだろうというのが私の立場であります。
  84. 山本正和

    ○山本正和君 小川参考人はやむを得ざる措置だという言い方をしておられますね。  私も、実はこれは、ブッシュさんが何としてもやっちゃったからどうしてももうやらざるを得なかったんだよと、国民の皆さん、分かってくださいよというのが小泉さんの立場じゃないかと私は思っておるんですよ、これはね。本当に、小泉さん、これいいと思って私やっておると絶対思わない。ブッシュともうあれだけ一生懸命手を組んでやってきたのに、もうぼんとやっちゃったと、助けてくれよという中で、これはほっとけぬからもうやらざるを得ないんですよと。これが僕はどうも小泉さんの立場のように思えてならないんですけれども、この辺は、小川参考人、どういうふうな御判断でございましょうか。
  85. 小川和久

    参考人小川和久君) 私は小泉さんではございません。ですから、小泉さんがどのようにお考えになったか分かりません。  ただ、私がやむを得ざる措置だと言うのは、日本が憲法の精神あるいは掲げてきた平和主義や国連中心主義という原理原則に基づいて行動しようとするとき、イラクの安定というものは世界の平和にとって避けられないプロセスである。そこにおいて民間主導復興支援をやっていくのが大部分であるけれども、治安や秩序が乱れているところではやはり民間人を最初から持っていくというのは危険が伴う。だから、これは骨を折った後のギプスや添え木の役割軍事組織を持っていき足場を固める、そういう意味自衛隊の派遣というのが位置付けられるべきだということを言ってまいりました。  ほかにそれに代わる手だてがあれば、私はそちらを支持しますし、採用します。ただ、実務家の一人として言えば、ないんです。だから、やむを得ざる措置だという言い方を申し上げております。  ありがとうございました。
  86. 山本正和

    ○山本正和君 私は、別に、小泉さんのことは、後で言うんだけれども、それは結構ですけれどもね。  ただ、これは、一応支持するという立場を取る以上は、あるいはやむを得ないという立場を取る以上は、将来について一定の展望というか、これはやっぱりこうなるだろうと、こうやってよくできるだろうとか、あるいは安定するだろうということについての見解を持たずに、これ行った方がいいよと、やらざるを得ぬよと、こういうことにならぬと思うんですよね。  ただ、私は、アフガンと今度のイラクと大分違うと思うんですよね。アフガンもまだ混乱していますよね。しかし、イラクにおける状態とアフガンとは違う。  イラクはやっぱり戦おうという人がたくさんまだおるんだと、現実問題。アフガンは正にごく少数のテロというか、アルカイダの残党の諸君がやっておるけれども、イラク国民の中の相当の人が戦うという気持ちを持っているように私見えるんですよね。というのは、私も最後の兵役の世代ですから言いますけれども、もし天皇陛下が詔勅を下さなかったら私は戦ったと思う、鉄砲を持って。日本の国は、陛下が詔勅をもって忍び難きを忍びと、こうと言われたから戦うのをやめたんです。イラクはそうじゃないんですよ、現実。私は、やっぱり戦うだろうと思う、まだ。大分アフガンとは違うと思うんです。そういう中で、今自衛隊が行っておるわけです。  その自衛隊が、それじゃ一生懸命人道援助だと、復興だと、そのために一生懸命やるんですと。昨日も佐藤隊長が言っていましたよ。イラクの人と仲良くするんだと、一生懸命言っている。ところが、戦おうとしている人たちから見ると、アメリカの兵隊の応援に来たと思うんだ、軍隊というのは。そういうこと、すると非常に難しい気がするんだけれども、その辺の展望については、渡辺参考人も、小川参考人はどういうふうにお持ちで、お考えでございますか、その辺は。戦っている国民があるというんですね。
  87. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) どうも御質問ありがとうございました。  私も、山本委員と同じように、イラク状況はいろんな意味でアフガンとは違っていると思います。  占領という言葉がさっきから飛び交っておりますが、我々、少なくとも私の世代の日本人は、日本が占領に置かれた時期のことをよく記憶しているわけでありますが、それと比較して大きな違いがあると。イラク戦争の前に、戦争が終わった後のイラク統治について日本モデルということを議論する人がアメリカの中にいるというので、私はびっくり仰天したわけであります。もし、そのような感じで戦後のイラク統治を計画しているんだとすると、これはもうとんでもない間違いだと、様々なミスが起こるというふうに私は考えていました。  戦後の日本と比べた場合に、大きな三つの違いがあると思うんです。というか、今の無秩序状態の原因は私は三つあると思うんです。それは、一般的に食えない等々の社会的な混乱の中で不満がたまっていて、それが根拠になっていろいろないわゆる犯罪行為があるという、これが一つ原因だと思います。したがって、そのようなものがなくすためにいろいろな復興措置を取らなきゃいけないということですが、問題はそれだけではないわけですね。  武装解除という言葉が出ましたけれども、つまりサダム・フセインの残党は武装解除されていないわけですよね。私は、これは大変サダム・フセインが捕まったときに絶好のチャンスだと思ったんですが、残念ながらそのチャンスを逃したと思います。というのは、はっきりとサダム・フセインに対して降伏文書の署名を迫るべきであって、これでサダム・フセインが代表した国家が消滅したのである、したがってその国家の下に行動した武装組織は解除されるべきであるといって、正式な武装解除をすべきであったと思います。  ただ、それだけではない。最も重要なのは、外部からプロフェッショナルな、専門的な破壊活動者、アルカイダの手が明らかにあそこには働いていると。それは、一九九三年のソマリアで起こったことと極めて似たような現象が今のイラクで起こっているということは、明らかにそのプロフェッショナルな破壊活動家であるアルカイダの手が働いているということだと思うんですね。そういうものを排除しなければこの復興秩序というのはできないということなんで、私は、展望を示せとおっしゃるのでなかなか答えは難しいんですけれども、そう簡単なことではないだろうというふうに思っております。
  88. 小川和久

    参考人小川和久君) 御質問ありがとうございました。  ただ、私は終戦の年の生まれでございまして、戦争行きたくても行けたわけではありませんので、諸先輩の経験というのは将来に生かしていきたいという立場でございます。山本さんの経験と先ほどの社民党の大田さんの経験も全く違うわけです。大田さんは鉄血勤皇隊で沖縄戦で九死に一生を得られた。やっぱり全然違う。  ですから、やはりこのイラク状況に対して、あるいはアフガンやアフリカの角での対テロ戦争状況を踏まえながら、我々は、世界からテロのような暴力がなくなり、平和が実現できるためにどうやっていったらいいかという中で、イラク復興支援位置付けながら取り組んでいくということが大事だろうと思います。  ただ、そこにおいては展望を示すというのは非常に難しい話でございます。しょっちゅうその修正をしなきゃいけない問題かもしれない。ただ、日本なら日本、あるいはほかの国々もかかわっていく中でできることは、まずイラク復興支援を支えるための基盤を安定させること。これは自らの構想を描き、その中でタイムスケジュールを含めて計画を立てることは可能であろう。ただ、その上に、その足場の上に本当に展望を見いだし得るような、イラクの将来を描くことができるのはイラクの人々だけなんですね。それをお助けするというのは僕らはできる。その辺の形に早く行けるようにというのが復興支援に対する私自身の考え方でございます。自衛隊の派遣も、そのための足場作りのためにきちっとやれよということなんですね。  だから、イラクの人たちと仲良くやるという、先遣隊の佐藤一佐のコメントがテレビで出る。いいんですよ、これは自衛隊としてイラクの人たちとそういうかかわりを持つということで言っているんだけれども、ただ政府としてコメントする人間はいないじゃないかという話なんですよ。だったら防衛庁自衛隊に全権を与えて全部やらせるのかと、外交まで。そうじゃないでしょう。外務省どこへ行ったんだ、そういう話ですよ。だから、その辺はやっぱり参議院で徹底して審議していただきたいと思います。  ありがとうございました。
  89. 山本正和

    ○山本正和君 本当に今のはなかなか核心の部分で、ありがとうございました。あと、今日は総理ともやりますから、しっかり聞くつもりですけれども。  一番、これは酒井参考人が今後の展望についてこういうことをしたらどうだ、ああいうことをしたらということを言って提案されておりますけれども、本当にいいことだと思うんですけれども、私も本当に人道援助、復興、我々としてやるべきことをやろうと、これはもう当然のことであって、そこが本当にイラク国民に分かるようにしなきゃいけないということはよく分かるんです。だから、それでいかにゃいけないんですけれども、今最大の不安は、まだ戦っていると思っている人たちがたくさんおると。アメリカに占領されているけれども、こんちくしょうと思っている国民がたくさんおると。この問題を整理せぬことには、どんなに援助しようとしても、復興のために働こうとしてもできないと私は思うんですね。そこのところの問題がどうも飛ばされて議論されているように見えてならないんですね。  これは本当に、私は実は、大田さんとは違うのは、私は二年間満州に残ったんですよ。国軍建設と称してね。そんなアメリカみたいなのに負けるはずないといって。そうしたら、陛下の詔勅があるぞというので、恭順したんだ。そんなもんなんですよ、兵隊というのは、兵隊というか戦った者はね。イラクがどんなに悪いというのじゃなしに、一つの国つくって、その国の中で銃を持って戦おうとした者は皆そういう気になるんですよね。そこのところに単にデモクラシーの論理だけ言ったって、私は通るものじゃない。  イラク国民に対して、戦争は終わったんですよということをするためにはどうしたらいいかということを考えなくちゃいけないんで、そのことを我々が、我が国が提案すべきだと私はいつも思っておる。単に自衛隊をぽんとやったらいいことじゃないんですよね。その辺のことが、だからまあ渡辺参考人は積極的に、後ほど細かく説明されましたけれども、また小川参考人はやむを得ざる選択だったと、またやらざるを得なかったと、こういう言われるその背景に、やっぱり今、日本人がみんなが心配しているものをお互いに持っていながらそういうことになっていると。  しかし、私が今申し上げたイラク国民戦争は終わったんですよということを、それを告げるためにもし何かこういう方法がありはしないかということをお考えでしたら、四人の参考人の方から、一言で結構ですから、御意見ございましたらお願いいたします。
  90. 渡辺昭夫

    参考人渡辺昭夫君) 白状いたしますが、大変難しい質問で、どういう方法を取ったらいいのかという即座に解答がないので今困っておりますが。  少なくとも、先ほど私が少し申し上げましたように、イラク、サダム・フセインがいかな人物であり、サダムの統治がいかに悪らつなものであったとしても、イラクという国家の代表であったということは間違いがないわけであります。したがって、そのサダム・フセインという者を拘束したという段階で、私はもう少し正式な手続が必要であったというのが私の意見であります。  で、それは先ほど申しましたように、ここでイラクという、自分が率いてきた、サダム・フセインが代表してきたイラクという国家はここで終わったのだという儀式が私は必要であったというふうに思うわけですね。それに伴って、サダム・フセインの体制の下で存在してきた軍組織は正式に解体されるべきであると。なぜそのような立場を取らなかったのかというのが私の残念に思っているところであります。  過ぎたことを言っても仕方がないということになるわけですが、今後のサダム・フセインをどういうふうに処置するかという問題は残っているわけでありまして、そのときが一つのチャンスであるかと思っております。
  91. 酒井啓子

    参考人酒井啓子君) 御質問ありがとうございます。  まだ戦争が続いているということで戦っているというたぐいの人々は、私は少ないと思っております。サダム・フセインに本当に最後まで付いていって戦おうと考えている人たちは、一般に百人から三百人程度というふうに言われております。その他の人々は、戦争が終わる段階で、あるいは戦争が終わる前から既に戦闘を放棄している、戦争はしたくないということで逃げたというのが事実であろうかと思います。  逆に、先ほど申し上げましたように、そのように逃げて、これから新しい体制になれば今度こそはサダム・フセインではなくて自分たちが政権のその主体になっていくんだという、国を動かしていく主体自分たちが新しいその主人公になっていくんだというふうに期待して、皆占領統治がどうなるかということを見守っていたわけです。ところが、五月の二十二日に占領統治軍が軍を解体いたしました。そして、武装解除を始めました。そこで、これまでフセインに嫌々ながら付き従っていた、本来ならばフセインがいなくなれば今度は自分たちが正当な形で、フセインを守る軍ではなくて国を守る新たな軍として役割を担わされるというふうに考えていた正規軍が、これが一斉に解体され、あたかもフセインと同罪であるかのようにパージされてしまったわけです。  そうした人々が、先ほど申し上げましたように、五月の一日から六月の半ばまでは今後の展開によっては新体制に協力しようという形で見ていたにもかかわらず、残念ながらアメリカの占領統治の下でその新たな体制の中で排除されてしまった。今現在アメリカに対して攻撃を行っている、その中には、もちろん海外から来ているようなテロリストグループもございますし、先ほど申し上げましたような百人から三百人というようなコアなフセイン支持者たちがいることは確かではございますけれども、そういった者たちだけではなくて、やはり戦後の統治の中で新たに、これまではアメリカ期待を掛けていた、復興期待を掛けていたけれども裏切られたと思って外国軍、外国の駐留軍をターゲットにしている人たちの方が私は恐らく多いというふうに考えておりますから、これはフセイン体制はむしろ終わった、その後の問題だ、その後の早く主権を自分たちに渡してくれという新たな戦いが始まっているというふうに考えた方がよろしいのではないかと思います。
  92. 小川和久

    参考人小川和久君) 私は、先ほどお渡しした資料にも書きましたように、テロの根絶に向けての取組というのはやはり三段階ぐらいで考えるべきであろう。今、酒井参考人がおっしゃったように、やはりイラク国民の大部分の期待が裏切られたというような感情、それが反米感情になったり反占領軍感情になっている。それをやはり改善していくという営みがいろんな形で行われなきゃいけないだろう。それがやはり進むほどサダム・フセイン政権の残存勢力の活動の基盤がなくなっていくという話なんです。  先日もアメリカ陸軍第四師団の大隊長からは、陸軍省への報告書を一部、機密扱いじゃないものをちょっと読む機会がありましたけれども、かなり客観的なものでした。ただ、その中で、やはりサダム・フセイン政権の残存勢力については、金で雇われて攻撃に加わっている人間たちが攻撃目標に対して向かわずに途中で武器を捨てて逃げたりしているのに残存勢力が大変戸惑っているとか、あるいは家に帰り始めているとか、そういう報告もあるわけです。これをもって楽観的になっていいというわけではございませんが、サダム・フセイン政権の残存勢力は、リビアもスーダンもイランも手を上げつつある中で支えてくれる国はなくなっている。持っていっている武器だって大した武器はないんですから、使えば使うほどなくなるわけですから、これはじり貧なんです。  そういう中で、やはりイラクにおける国際テロ組織アルカイダなどの活動の基盤もどんどん狭まっていくという話でございますから、やはりサダム・フセイン政権の残存勢力にしても、これは最後のあがきをしているぐらいの猛攻撃に掛かっておりますが、より固く守っているところはターゲットにしないという傾向は当然あります。と、ソフトターゲットがねらわれる、民間人がねらわれる。だから、サマーワにおいても、陸上自衛隊が一定の備えをしていれば、陸上自衛隊をねらうよりは群がっている報道陣がねらわれる可能性の方が高いわけです。そういったことにきちっと目を配りながら、そういった活動の足場がなくなっていくための備えをしていくことが大事だろうと思っております。  ありがとうございました。
  93. 山本正和

    ○山本正和君 委員長、よろしいですか。時間が過ぎている。
  94. 清水達雄

    委員長清水達雄君) よろしいですか。──よろしいそうです。
  95. 小田中聰樹

    参考人小田中聰樹君) 私は法律家でありまして、いわゆる国際的な政治的なものについて判断する立場にはないわけでありますけれども、一人の市民ということで申し上げれば、今後のイラク復興というものはやはり平和的な枠組みで行われるべきであって、法秩序の回復のためにというよりも、むしろもっとそれ以前の、治安、安全確保のために武力日本が投入するという立場にはないということを強調したいと思います。
  96. 山本正和

    ○山本正和君 どうもありがとうございました。
  97. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。どうもありがとうございます。  参考人方々にお礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩をいたします。    午前十一時五十九分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  98. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ただいまからイラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動実施に関し承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  99. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 自由民主党の福島啓史郎であります。  今日は、まず最初に、総理大臣に対外政策の実行段階の問題につきましてお聞きしたいと思います。  私は、対外政策といいますのは、その政策の決定に至るまでには正にけんけんがくがく、大論争はいたしましても、その実行は国論を統一して当たるべきだというふうに考えます。  例えばこれは、アメリカにおきます民主あるいは共和両党は、対外政策、危機に臨んでは同一歩調を取るという伝統。また、私、ポツダム市を訪問したことがあるわけでございますが、第二次大戦終了時のポツダム会談は、最初は保守党の、イギリスはチャーチル、出たわけでございますが、その後は政権交代によって労働党のアトリーが出て、しかしイギリスの立場、主張は変わらなかったということにも見られるとおりでございます。  この実行段階で国論が分裂すれば、派遣されております自衛官の士気なりあるいは責任感、また家族の気持ちが動揺いたすわけでございます。日本として非常にマイナスであるわけでございますが、この点につきましての総理の見解をまずお伺いいたしたいと思います。
  100. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 民主主義、自由な選挙が行われている国においては、やっぱり与党、野党がありますから、それぞれの考え方をいかに国民に理解してもらおうかという努力をされると思います。  そういうときに当たって、やっぱり与党と野党が同じでは自分たちの主張は理解されないという場合は、まあ意見の対立が表面化するのもやむを得ないではないかと思いますが、日本全体の基本方針、外交方針ということについては、でき得れば、与党と次の政権をうかがう野党第一党ぐらいは基本的認識を一にしていた方が、政権交代の場合でも外国に対してそれほど不安を及ぼさないであろうという点があると思います。  その辺は、実際具体的な事案にどう対処するかということで政党が良識と自制心というものを、節度というものをどう考えるかという問題だと思います。  常に全国民意見が一致するという状況にはなかなかならない現状を踏まえながら、でき得れば、大方の点においては、外交方針ぐらいは基本的認識においてある程度、政権交代あっても不安を及ぼさないような、外国に不信感を抱かせないような、そういう対処が私は望ましいと思っております。
  101. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 私も今、小泉総理の言われた点、心して国会議員、あるいは、いつ私どもが野党になるかも分かりませんので、そのときにも心して、特に現在の野党の諸君には心して聞いておいていただきたいと思うところでございます。  次に、外務大臣でございますが、ケイ博士が、軍備、軍用配備可能な生物化学兵器の大量の備蓄が存在していた可能性は非常に小さいと、と同時に、イラク国連安保決議一四四一の重大な違反を起こしていたことは明らかであると、また、調査完了時には、一九九八年以降の絶対的に腐敗した体制の下、イラクは我々の想像をはるかに超えて危険な国であったことは明らかになろうと、明らかになるだろうというようなことを発言しておられます。  これを受けてのアメリカのブッシュ大統領及びイギリスのブレア首相の見解はどういうふうなことになっているか、お聞きしたいと思います。
  102. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) ブレア首相、ブッシュ大統領ですけれども、これを受けて、基本的に引き続きその調査、大量破壊兵器についての調査、これを、アメリカの場合です、米英で置いているイラク監視グループ、これがその捜索をするということでそれは決定を、依然としてそれをやっているということであると理解をしています。  それから、大統領も首相も、それぞれ自分の国において、インテリジェンスの情報収集能力、あるいはその大量破壊兵器に関する情報をどのように取っていくかというような観点から委員会を、調査委員会を設けたということを承知をいたしております。
  103. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 と同時に、ブッシュ大統領及びブレア首相双方とも、いずれも自分たちの下した決定が完全に正当なものであったというふうに述べていると思うところでございます。  次に、総理大臣にお聞きしたいわけでございますが、今回のイラク戦争の大義及び今回の自衛隊派遣の大義についてお聞きしたいと思います。  私は、この国際的な武力による危機の除去には、一つには、国内での圧制がある、相当程度ひどい圧制が行われているということ、二つ目には、虐殺やあるいは大量破壊兵器の開発、拡散やあるいはテロ支援といったような排除すべき緊要性が高いということ、三つ目には、そうしたことが国際的に容認できないと、武力による排除をすべきであるという、ある種の国際的な合意があるということが一般的な行動原則としてあると考えるわけでございます。これは、例えばコソボの場合でございますが、ミロソビッチのジェノサイドに対しまして、国連決議はなかったわけでございますが、NATOとして武力によります排除を行ったということ。  イラクはまさしくこの三つの要件、国内での圧制、また虐殺、あるいは大量破壊兵器の開発、拡散、あるいはテロ支援、また国際的にこれを容認できない、武力による排除が必要だという国際的な合意、これは国連決議一四四一、六八七、六七八があるわけでございます。正にこの要件に該当していると考えるわけでございます。そこが私は北朝鮮とは違うところだと思います。  北朝鮮につきましては、確かに国内での圧制やあるいは大量破壊兵器の開発、拡散等があるにしましても、国際的な認識といたしましては、武力行使ではなく、対話と圧力による解決というのが国際的な合意ではないかと考えるわけでございます。そういうことから見て、このイラク戦争の大義をどういうふうに考えておられるか。  また、自衛隊の大義に関してでありますけれども、この大義あるイラク戦争後のイラク人道復興支援を我が国の憲法と能力の範囲内でやるということでございます。私は選択肢は三つあると思います。一つは、要するにお金だけで解決する。湾岸戦争のときのトラウマがあるわけでございますが、百四十億を出したけれども、何ら国際社会から評価されなかった。二つ目には、人を出すわけでございますが、その場合に民間人を出すと。しかし、治安が十分でない状況の下で民間人を出すわけにはまいらぬと思います。そうすれば、三番目の選択としては自衛隊を出す以外にないと思うわけでございます。  今申し上げましたように、我が国の憲法と能力の範囲内で国際的な連帯と貢献を果たす、これを通じまして、このエネルギーの、エネルギー資源の確保を始めとします国益の追求と戦後の秩序形成に寄与していくということが私は自衛隊の大義ではないかと考えるわけでございますが、総理のこのイラク戦争の大義及び今回の自衛隊派遣の大義につきましてお聞きしたいと思います。
  104. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) コソボ等の問題につきましては、正確を期す意味において外務大臣に後ほど譲りたいと思いますが、今回のイラクの開戦につきましては、私どもは、国連の決議、一連の決議にのっとって支持したものであり、今でも正しかったと思っております。  北朝鮮との違い、これは当然、この十数年の動きを見ても、イラクはクウェートに侵略し、湾岸戦争を起こし、その停戦決議ある状況国連での議論、北朝鮮の議論と違いますね。対応は今でも、六者協議等これから開かれると、北朝鮮に対する対応とイラクに対する対応は私は違っていいと思っております。また、北朝鮮に対しては、各国が平和的、外交的解決を目指すということで、今そういう基本方針を一致させた上での六者協議がこれから再度開かれますので、その対応が大事だと思っております。  また、現在、イラク復興支援につきましては、日本として、これも国連がすべての加盟国に対してイラク復興支援協力を要請している。そういう中で、私は日本政府としても国連の要請にこたえてどのような復興支援人道支援ができるかと。言わば、国際協調の精神を大事にしてイラク復興支援にできるだけの寄与をしていこうということで、いろんな支援策を考えているところであります。  その中で、今、福島議員指摘されたように、日本日本にふさわしい支援の仕方があるのではないかと。資金的な協力もします、物的な協力もいたします、同時に人的な協力もいたしますという中で、今残念ながら民間方々協力を要請しても、なかなか企業にしても個人にしても難しい面があります。治安状況を考えまして、奥大使、井ノ上書記官等の外交官のあのような悲惨な件もありますので、民間の方あるいは民間企業、難しい状況でありますので、自らの危険を防止する能力も装備もある自衛隊の諸君に行っていただく。  もとより、人的貢献は自衛隊諸君だけではありません。でき得れば多くの民間人も民間企業もこれから状況が許せばどんどん支援に当たっていただきたいと。あくまでも自衛隊は、人的支援におきましても日本の国際貢献におきましても一部であります。自衛隊の派遣が焦点当たっておりますが、これは一部であって、日本としては現時点において自衛隊の諸君に汗を流していただこうということで進めておりますので、今後、多くの日本の、一民間人にしても一企業にしても、できる状況があれば日本としてもそういう協力を求めるということが必要ではないかと思っております。
  105. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 外務大臣にお聞きいたしますけれども、イラク国民がどういうふうに考えているか、各種の世論調査があるかと思いますけれども、イラク国民は、多くのイラク国民は、今行われておりますイラク国内でのテロ攻撃やあるいは、には反対をし、また連合軍の即時撤退にはこれにも反対をしているというふうに私は認識しておりますが、どんな世論調査が出ておりますか。
  106. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 最近の例で申し上げますと、昨年の十一月の下旬に、これは米国務省調査部がバグダッド、バスラ、キルクーク、ヒッラ、ディワーニヤの五つの都市に住む十八歳以上の住民、千百六十七人を対象に世論調査を実施をしたということでございますが、その結果について申し上げますと、まず住民の最大の懸念事項は、治安、安全が一番、六二%がこれが最大の懸念事項だと言っている。次いで、経済問題が一八%、そしてインフラの整備、これが一四%という順番でした。次に、イラク人イラク警察、国際機関に対する攻撃がイラクの将来にとってマイナスになると考える人がいずれも全体の九〇%以上。三番目に、仮に連合軍が即時撤退した場合、治安に不安を感じると答えた人、これが全体の七五%。さらに四番目に、イラク人の治安機関が治安維持を主導することでより安全が増すと考える人は全体の八二%。五番目に、治安改善の良策として住民が考えているのは、一番目に失業者に対する雇用機会の創出、これが九七%、次いで、より多くのイラク人警察官の訓練と採用、これが八三%、三番目に政権移譲、これが七九%、こういった状況でございます。
  107. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 そうしたイラク国民の感情なりあるいは感覚、そういうものを非常に大事にした対応をしていかなければならないと思うわけでございます。  次に、防衛庁長官にお聞きいたしますけれども、先日の本委員会におきます同僚委員とのやり取りでも取り上げられたわけでございますが、この今般の国会承認におきます人道復興支援活動及び安全確保支援活動活動実施する国につきまして、改めて分かりやすく御説明をお願いしたいと思います。
  108. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) いかなる国から同意をいただいて当該外国で活動するかということは、その外国の主権との関係から、基本計画に基づきます対応措置の実施に当たっての重要な前提であると考えまして、国会におきます御承認の対象といたしております。  今回、具体的にはイラク、クウェート、我が国の領域からイラク及びクウェートに至る地域に所在する経由地、人員の乗降地等となる国と、これらの国の間の移動に際して通過する国、イラク、クウェートを除きましたイラク国境を接する国とペルシャ湾の沿岸国、さらにこれらの国の相互間やこれらの国とイラク、クウェートとの間の移動と連絡に際して通過する国を挙げておるわけでございます。  何か国になるのかというお話をいただきました場合には、これはどのように移動をするかということに、どのように移動するか、あるいはどこで人員が乗降するかということによって変わりますので、どれだけという数につきましてはなかなかお答えがしにくい。  今委員の御指摘のように、私が二月六日の答弁におきまして、イラク安全確保活動をどこでやるのかということですが、海外において行うことは想定されない、イラク国外において行うことは想定されないというふうに申し上げました。しかしながら、それは想定されないのであって、やることを完全に否定したというわけではございませんと、安全確保支援活動というものはイラク国内においてしかやってはいけないということを述べたものではないということを申し上げておるところでございます。  つまり、これはどういうことかというと、米英等国連加盟国によります治安の維持などのイラク国内における安全及び安定を確保する、回復する活動、すなわち安全確保活動そのものにつきましては、通常はイラク国内実施されることが想定されるということを指摘申し上げました上で、このような米英等の活動を対象とした我が国の安全確保支援活動につきましてはイラク国内でしか実施されないものではないということを申し上げました。  想定しておりますのは、通常、イラク国内におけるものでございます。しかしながら、それ以外のものというのもあり得るということでございまして、もう一度答弁をさせていただきました。
  109. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 引き続き防衛庁長官にお聞きしたいわけでございますが、この日本自衛隊武力ないし武器使用に関しましては、法律上大まかな三分類があると私は考えるわけでございます。  一つは防衛出動タイプでございまして、これは例えば自衛隊法の第八十八条、要するに合理的に必要と判断される限度におきましての行使ができるという規定でございます。もう一つは、二番目のタイプとしましては治安出動タイプでございまして、この自衛隊法九十条あるいは九十一条の二のように場合を限定をいたしまして、同様に合理的に必要と判断される限度での使用が認められるというものでございます。三番目のタイプは警職法タイプでございまして、要するに今回のイラク法もそうでございます。また、自衛隊法八十九条もそうでございますが、正当防衛、緊急避難の場合に限定されているというものでございます。  こうした分類がされているわけでございますが、これにつきましては、まず外国の軍隊の法制はどうなっているかをお聞きしたいと思います。
  110. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 他国もこういうのを全部明らかにしておるわけではございません。ただ、法律、法律というのは私どもも知り得ることでございまして、法律におきまして合理的な武器使用の態様が決められている場合があります。  先生もよく御存じのドイツの直接強制法でございますが、これはドイツ連邦軍等の軍事施設の警備や戦時における警衛、保安任務の根拠法でございます。これはどのようなことが書いてあるかといいますと、実力行使の手段の選択については厳格な比例原則が適用される。特に銃器の使用は、ほかの直接強制手段を用いても効果が上がらず、又は明らかに効果が期待できない場合に許されるものであり、中でも対人使用は、物に対する使用では効果が上がらない場合で相手の逃走能力や攻撃能力を奪う目的に限って許される。あるいは外見上児童とおぼしき者には使用はできない。そして、実力行使に先立って警告が義務付けられ、特に群衆に対して発砲する場合には、事前の警告は繰り返し行わねばならないと、これがドイツの規定でございます。直訳調で恐縮ですが。  また、韓国の郷土予備軍設置法というものは、武器を使用せずに武装、騒擾を鎮圧又は重要施設などを警備する手段がないと認められる場合に限って必要な最小限度内で武器を使用することができると。  このような規定が諸外国にはございます。
  111. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 そうしますと、防衛庁長官は、今回のイラク法によります武器使用及び今回派遣自衛隊が持っていきました武器につきまして、他の派遣諸国と比べて遜色ない、同等と考えているということでよろしいわけでしょうか。
  112. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) これはすべてを見たわけではありません。もちろん、どの国もすべてのものを明らかにしておるわけではございません。しかし、今お答えをいたしましたように、ドイツにおきましてもそしてまた韓国におきましても、きちんとした比例原則というものが重んじられ、そしてまた警告ということも規定がなされておるわけでございます。そういたしますと、巷間言われますように、自衛官の手足を縛り、武器使用権限に十分なものを与えずイラクに送り込むのは無責任ではないかという御指摘は、私は当たらないと思います。  それは、よく指摘されますのは、任務遂行を阻止する動きを排除する目的で武器が使えないと、これはおかしいではないかい、こういう御指摘をいただくことがございますが、じゃ、それは一体どういう場合なのか。自分に対して向けられたものでもなく、武器に対しても向けられた武器等防護の権限を使う場面でもなく、じゃ、そういう場合にその権限を与えねばならないというのは一体どういう状況であろうか。そういう状況を想定したときに、それでもなおそういう場合に武器使用の権限を与えなければいけないかといえば、私はそうだとは思いません。私は、自分を守るという範囲において他国と遜色があるような権限を与えているというような御批判は当たらないものと考えております。
  113. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 要するに、他派遣国と比べてこの武器使用あるいは武器につきまして遜色ないというふうに考えておられると、また現にそれを実行しておられるというふうに理解いたしたいと思います。  次に、総理大臣にお聞きしたいわけでございますが、今回のイラクへの人道復興支援のための自衛隊の派遣を成功させるためには、言わば総力戦、もちろん戦争に行くわけではありませんが、国を挙げて総力で取り組む必要があると。その総力とは、自衛隊あるいは外務省あるいはODAを始めとした各種協力事業、あるいはNGO、あるいは民間企業等密接な連携を取り、かつ政府全体としてこれをバックアップして進める必要があると考えるわけでございますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
  114. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) イラクに安定した民主的政権を作らなきゃならないということについては、私は、国際社会、大方一致しているのではないかと思います。日本国内においても、イラク開戦時において意見の対立はありましたけれども、これをめぐって反対している方にも、私は、イラクに安定した民主的な政権作らなきゃならないということについてはそう大きな違いはないと思っております。  そのために、このイラク状況を現在どう考えるかと。国連がすべての加盟国にイラク復興支援を要請している、どう協力していくべきかということを考えるのは極めて重要なことだと思います。それぞれ政党に違いはありますが、意見の違いがありますけれども、イラク復興失敗させていいと考えている人は私は野党の中にもそんなにいないんじゃないかと思います。  そういう中で、日本としては、各国と協力しながら、イラク復興支援成功させるためにはできるだけの貢献をしていこうと、支援をしていこうという中での今の現在の自衛隊の派遣であります。その点については、これからも多くの国民の理解と協力を得ることができるように政府挙げて努力していかなきゃならないと思っております。
  115. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 次に、先ほど総理の御答弁がありましたけれども、この二月二十五日から第二回の北朝鮮六か国協議が行われることになっているわけでございます。  まず第一に、北朝鮮の態度に関してでございますけれども、現在言っておりますことは、核活動を凍結し、その代償として経済支援を主張しております。また、拉致家族の帰国に関しまして様々な言わば変化球を投げると、投げているというような状況でございます。北朝鮮の態度に関しまして変化が出てきているのかどうか、これが第一点でございます。  第二点目は、我が国の対処方針についてであります。北朝鮮が言っております核の凍結ではなく、検証可能な形での完全な核開発の放棄が私は必要であると思います。また、二番目には拉致問題の解決が必要でございます。拉致被害者家族の早期帰国、また拉致被害者で未帰国者の真相究明、また百人にも及ぶと言われております拉致されたと見られる方々の調査。これを、検証可能な形での完全な核開発放棄とそれから拉致問題の完全解決、これを同時、同等に求めるという対処方針であるというふうに考えてよろしいかどうか、総理の見解をお聞きしたいと思います。
  116. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 北朝鮮の対応に変化があるかということでありますが、私は日朝平壌宣言をお互い署名して発出した時点で、既に北朝鮮が今までの対応を変えようという意思があると見ておりました。その大きな現れは、全く拉致も認めていなかった、武装不審船、工作船の存在事実も認めていなかった、それが、私が北朝鮮に行って金正日総書記と会談した結果認めて、二度とこういうことを起こさないと言ったわけですからね。これは大きな変化であります。ということは、北朝鮮がもはや国際社会から孤立しては自らの発展はないと考えたからこそ私を招待したのではないかと、そしてあのような日朝平壌宣言を発出したと。  この日朝平壌宣言に沿って、日本としては北朝鮮との間に国交正常化つなげていきたいと今努力しているわけであります。その中で、今、六者協議と、アメリカ、韓国、中国、ロシア入ってきて、この北朝鮮問題は単に日朝間だけじゃないと、朝鮮半島全体、世界全体の平和と安定に大きく影響するということで今真剣に二回目の会議が行われようと検討を進めている。  私は、北朝鮮もいろいろ言っていることは一様ではありませんが、本音のところと建前と両方ありますから、これよく見極めて、北朝鮮が国際社会から孤立することにとって、何の利益もない。これだけ今世界が、早く国際社会の責任ある一員として北朝鮮が平和的、外交的解決に向け努力の姿勢を見せるべきだということを手を差し伸べているわけですから、北朝鮮も核開発の放棄と、それから日本においては拉致問題の解決について真摯に誠意ある対応を取っていくことをこれからもあらゆる協議、会議を通じて働き掛けていきたいと思っております。
  117. 福島啓史郎

    福島啓史郎君 今、総理も明言されたわけですね。私はこの問題、正に核の凍結ではなく検証可能な形での完全な核開発の放棄、また拉致問題の完全な解決、これを求めなければならないと思うわけでございます。  昨日サマワに到着した陸自本隊を始め、派遣自衛官の無事の帰還、これが我々祈念するところでございます。私も今日はこの黄色いハンカチを着けまして質問したわけでございます。冒頭申し上げましたように、対外問題の実行段階では主要な与野党は意見を一致して当たる、そのことが我が国は、我が国に取りましてこのイラクの派遣自衛官の、自衛隊の成功にもつながるわけでございますし、日本の国益にもつながる、国際的な地位の貢献にも、向上にもつながると思うわけでございます。  それを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  118. 平野達男

    ○平野達男君 民主党・新緑風会の平野でございます。民主党の平野としては初めて総理大臣並びに関係閣僚に質問させていただきます。  改めて、今日の質問は、イラク侵攻への大義ということに関してまず質問させていただきたいと思います。  米英のイラク侵攻に関しましては、初めから各国間で意見の相違がございました。その相違を埋めるために一番何がいいかということは、今、開戦前にイラクにWMD、大量破壊兵器があったということを証明することだったというふうに思います。そのために出されたのがケイ氏を始めとする千四百人の査察団であります。  御承知のように、このケイ氏は、テネットCIA長官アメリカで最も信頼できる武器査察官として自ら選んで、あなたが行きなさいといってイラクに派遣をした。このケイ団長も、イラクに行く前は絶対の自信を持って、イラクの大量破壊兵器を見付け出してみせると、こう言ってイラクに行きました。で、六か月の調査をやった。  その結果行われたのが先月、今月ですか、のアメリカの議会での証言であります。私たちは、恐らくほとんど皆、間違っていたかもしれない、その中に確実に私も含まれる、大量破壊兵器が将来とも発見される見込みというのはほとんどないじゃないかと、こういう発言をされました。今、この大量破壊兵器が本当にひょっとしてなかったんじゃないかということで、大義ということがやっぱり大きな問題になっていると思います。  そこで、基本的な問題をまず何点か質問していきたいと思いますけれども、小泉総理は、米英のイラクに対する武力侵攻は、これは武装解除を目的としたものだ、武装解除を目的としたものだという前提で政府はそれに支援したんだというふうに私は理解しておりますが、こういう理解でよろしいでしょうか。
  119. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) イラク、中東に平和と安定をもたらすためにイラクの武装解除が必要だという理解であります。そういう中で、国連でいろんな議論が行われました。日本政府としては、この国連決議にのっとって支持を表明したわけであります。
  120. 平野達男

    ○平野達男君 もう一点、確認させてください。  その武装解除は当然大量破壊兵器を指しているわけでありますが、総理、小泉総理は開戦前にイラクは大量破壊兵器を持っていたと思っていましたか。
  121. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 私は、いろんな議論の中で、それは過去、累次、実際にイラクが大量破壊兵器を保有し、使用していた事実を考えて、あのような状況の中で、持っていたと思っておりました。
  122. 平野達男

    ○平野達男君 それでは、この大量破壊兵器に関して、どうも大義が崩れているんじゃないかという我が党の小川委員の予算委員会の質問に関して、小泉総理はこのように答えておられます。大量破壊兵器があるかどうかというのは有力な証拠の、根拠の一つであるが、我が国が支持したのは国連憲章、これは国連決議のことだと思うんですが、累次の国連憲章にのっとって支持したと、このように答えております。  この答弁をお聞きしますと、大量破壊兵器があったか否かという問題と国連決議というのは別問題だというふうに答弁しているように聞こえますが、こういう理解でよろしいんでしょうか。
  123. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) これは湾岸戦争以来の情勢、それ、大量破壊兵器の脅威が存在していたという情勢、それを基に国連で度重なる議論が行われ、累次の決議がなされたわけであります。  そういうことから、私は、日本政府は国連決議にのっとって支持したということでございます。
  124. 平野達男

    ○平野達男君 私の質問に答えておりません。  大量破壊兵器がイラク開戦前にイラクが持っていたかどうかといういかんにかかわらず国連決議が有効かどうかというふうに、そういうふうにお聞きしているんです。
  125. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 大量破壊兵器がないと断定されたならばあの国連議論は行われなかったと思います。
  126. 平野達男

    ○平野達男君 私が言っているのは、そうしますと、分かりました、六八七というのは大量破壊兵器がイラクにあるという前提で作られたと、こういうことですね。
  127. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 六八七というのはイラクの停戦の条件を決めたものであります。  それで、その条件の一つとして、パラ八で、イラクに対して、国際的な監視の下で、化学兵器、生物兵器等大量破壊兵器並びに射程距離百五十キロメートルを超えるすべての弾道ミサイル及び関連施設の破壊、撤去又は無害化を無条件で受け入れることを求めていると、そういうものでございます。
  128. 平野達男

    ○平野達男君 ところが、まだ今、大量破壊兵器が開戦前にイラクがあったかどうか、なかったかどうかというのは、これはまだはっきりしていません。ただ、ケイ団長の発言からすると、どうやらなかったという可能性がどんどん出てきている。その前提で今話をしております。  そうしますと、今、結果的にこれから調査が進んで、イラクは実は大量破壊兵器がなかったんだということになりますと、国連決議一四四一、六八七──六八七は、今、川口大臣が言われていましたように、あくまでもイラクに大量破壊兵器があるという前提で作られているというふうに私は理解しました。にもかかわらず、イラクがなかったということになりますと、一四四一、六八七、六七八に戻るというその論法は崩れませんか。  すなわち、六八七はですね、いいですか、六八七は、イラクに結果的に査察が入って、大量破壊兵器があったということでよって初めて一四四一、六八七、六七八の正当性が出てくる。だけれども、もしこのままずっと進んで大量破壊兵器が全く出てこなかったという段階になれば、実は六八七というのは、これは武装解除をまとめた規定なんです、武装解除を求めた規定なんだけれども、イラクは実は武装解除をすべき大量破壊兵器を持っていなかった、こういう状況の中で六八七、一四四一、六七八とがまだ有効かどうかという、これを確認しているんです。
  129. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) これは何回も申し上げているように、イラクはかつて大量破壊兵器を持っていた、そして自ら申告をしているということであります。そしてそれを、国連の決議によれば、我々が持っていないということを証明するのではなくて、イラクが自ら、持っていなければ持っていない、途中で廃棄をしたということであればいかに廃棄をしたか、そういうことを見せなければいけないというのが国連の決議に書かれていることです。  イラクがそれをしない限り、我々は、イラクがしない限り、それはイラクがそのような状況をかつて持っていたわけですから、ということであるというふうに考えざるを得ないということだと思います。
  130. 平野達男

    ○平野達男君 それは答弁として何回もお聞きしました。  ですから、結果としてイラクが大量破壊兵器を持っていなかったということが分かったときに、まだその論法が通じますかという話なんです。それは、今、川口大臣が言っておるのは、イラクは証明していないじゃないかと、だから持っているか持っていないか分からないと言った。  ところが、査察が入ったんです、もう、ケイ団長を始めとしてですね、イラクに侵攻した後にですね。そして、まだ調査は続行しています。だけど、その結果として、大量破壊兵器はなかったということになるかもしれない。そのときに、政府が言ってきた、それでも一四四一、六八七、六七八というのは通じるかという、それはどういう理屈になるかということを聞いているわけです。  今、川口大臣が言っている答弁は、従来の、今までの答弁、なぜあのとき日本支援したのかという説明にはなっていても、これから調査が進んで、大量破壊兵器がなかったということに対してなおかつ日本支援するという説明になっていませんよ。これ、ちょっとしっかり説明してください。
  131. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 先生も御案内のように、今正に調査が続いている。イラクが持っていなかったというふうにだれも言っていない。だれも分からないんです、今の時点で。持っている可能性が十分にあると思えばこそ調査を引き続きやっているということだと思います。
  132. 平野達男

    ○平野達男君 じゃ、そうすると、日本はあくまでもイラクが大量破壊兵器が持っているという前提支援をしたと、こういう理解ですか、でよろしいんですか。それをはっきりしてください。  小泉総理の答弁は、大量破壊兵器が持っていようと持っていまいと、国連の決議があるから、これで支援したと、こう言っているんです。そしてさらに、小泉総理、いいですか、総理はこういうふうにも言っていますよ。イラクが証明しなかったから悪いんだと、こう言っているんです。このように言っているんです。今も言っています。それは、結果としてイラクが大量破壊兵器は持っていなかったということが後に分かったとしても通じますかということ、それを聞いておるんです。
  133. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) それは、イラクが努力して自ら持っていないということを証明していれば戦争は行われていなかったんですから、それは私はイラクに責任があったと思っています。  また、持っていなかったとしてもという質問なんですが、決議一四四一を含め一連の安保理決議は、イラクに大量破壊兵器の脅威が存在することを認定してその除去を求めてきているんですね、一四四一の決議は。そして、ある時点で仮に大量破壊兵器がひそかに廃棄されていたとしても、廃棄したことが明らかにされなきゃいけないんです。そうでなければ、大量破壊兵器の脅威は存在し続けていたと、こういう一連の安保理決議の義務が果たされていない状況に変わりはなくて、私は、イラクに対する武力行使の正当性は失われていないと思っております。
  134. 平野達男

    ○平野達男君 ですから、いいですか、開戦前は査察が入りました。そして、イラクも何だかんだと邪魔をしました。これはパウエルさんが国連でいろいろ言ったとおりです。邪魔をしたという事実は多分あったと思うんです。  しかし、今フセイン政権が打倒されて、査察団が自由に入れる。結果として、大量破壊兵器がなかった。その状態の中で、一四四一、六八七、六七八が有効かどうかとだれも今説明して、答えていませんよ。これ答えてくださいよ、これ。  今総理が答えたのも、なぜあのときに日本支援をしたかという説明しかしていないんです。今、これからの、ずっと調査をやったときに、実はやっぱりなかったということを我々、政府として想起しなくちゃならないんですよ。それを想起しないで、いつまでも一四四一、六八七、六七八ということで言うんであれば、これは、じゃ、別な聞き方をします。  今の、今後の調査のいかんにかかわらず、調査の結果、仮に世界イラクに破壊兵器が、大量破壊兵器がなかったと認めたとしても、日本政府はあくまでも一四四一、六八七、六七八、これによって支援したというふうに言い張るわけですね。これをはっきり言ってください。
  135. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 言い張っているわけではなくて、そのとおりであるからです。これは、アメリカも言っている、イギリスも言っているように、この一連の国連決議に基づいて武力行使が行われたということは正当であるということでございます。
  136. 平野達男

    ○平野達男君 全然、私はこれ、答弁になっていないと思います。  それは、あくまでも開戦時のときの要するに正当性を言っているだけです。今度は、私どもが本当にそれが正しかったかどうかを挙証しなくちゃならない。その準備が政府にできていますかという話なんです。  じゃ、今、ちょっと、じゃ、質問の仕方を変えます。この問題は、また後でぶり返し、もう一回持ち出しますけれども。  それじゃ、いいですか、イラクに査察が入ったとき、査察は、査察官はイラクに大量破壊兵器があると思って入っているわけです。だから、六八七決議ができました。あると思っている査察官に対してイラクが私どもはありませんと言ったとしても、これ証明するのはなかなか大変です。あるというのは簡単に証明できるんです、見付ければいいですから。ところが、イラク全土にないということを証明するとなると、これは大変ですよ。大変で、なおかつ、実はイラクは本当になかったかもしれないんです。  ないものをないと説明するのにどうするか。だけれども、査察官は、六八七がありますから、査察官の視点は、ないかどうかを見るんじゃないんです。あるという前提で入っているはずなんです。この中で、総理が言うように、イラクが悪い、イラクが証明しなかったじゃないか、これは余りにも一方的じゃないかという指摘も出てくるかもしれませんよ。  イラクの肩を持つわけじゃありません。ただ、今までのずっと流れが、六八七のその決議自体も、イラクに大量破壊兵器がある、あるから、あるかどうかということをちゃんとチェックしろということでブリックスの査察官も行った。それから、繰り返しますけれども、ケイ氏を団長とする調査団も、私は絶対あると思って、あると思うという断言して行った。そういう査察団にイラクが私どもはありませんと言ったときに、これが本当に証明できたんだろうか。  つまり、手続上の中に瑕疵をイラク側に全面的に求めることができるかどうか、こういう問題も出てくるんです。こういう問題を一切捨象して、あっけらかんとして一四四一、六八七、六七八でもって正当性だとやっているのは、多分こんなことを言っているのは日本だけだと思いますよ。  なぜパウエルさんがあの国連でああいうことをやったか、ああいういろんな写真を使って証言したかといったら、イラクは、査察官が行ったって大量破壊兵器が見付からないのは、イラクが妨害しているからです、査察官が入る前日にトラックを使って武器を運んでいるからですということで、航空写真とかいろんなことを使って証明したわけです。つまり、査察が機能しない、査察を妨害しているから、あるものが見付からない、だから強制武力、侵攻して強制的に武力排除をしなければならないというのがパウエルさんのあのときの国連の演説だったはずです。だから、手続上の瑕疵とか何かの問題じゃない。アメリカも、焦点は、一番あそこに大量破壊兵器があるかどうかということが核心だったはずなんです。  だから、小泉総理、もう一回言いますよ、もう一回言います。今までの説明は、一四四一、六八七、六七八、これは開戦時について小泉総理が支援した理由の説明です。だけれども、本当に大量破壊兵器がなかったという、分かった時点においては、本当にあれが、あれが本当に妥当だったかどうかという、これを挙証しなくちゃならないと思うんです。だから、ここに関して言えば、挙証しなくちゃならないという意味においては、自信を持って、今の段階では一四四一、六八七、六七八でもって支援したということは、自信を持って、あるいは胸を張って言える状況にはなくなっているはずです。これのことを言いたいんです。
  137. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) イラクが、国連の決議によれば、自ら破壊をしたということを見せなければいけなかった。イラクがかつて持っていた、これはよろしい、だれもその持っていなかったと言う人はいないと思うんですけれども、自らその査察団に対して、VXガスをどれぐらい持っている、サリンをどれぐらい持っているということを全部数字を挙げて言っているわけですね。  それで、国連査察団がやることというのは、イラクがそれを、例えば廃棄したなら廃棄をした、その場合はその証拠、それから持っていればその今ここにこれだけ持っていますということを見せるということをイラクがやらなければいけないというものが国連の決議が言っていることです。これは一四四一もそのように書いてあります。それで、イラクがそのようにやらない限りは、あれだけ日本の一・二倍ある広い国土で査察団が入って自ら探し出すということは、これはもう不可能に近いわけです。  ですから、あの当時よく言われていたのは、押し入れを開けて中に何もありませんということを見せるのはイラクの役目であって、イラクがやらなければいけないことで、査察団がいろいろな押し入れを開けて中にありませんねということを言わなければいけないということではないということです。  それで、実際にないということを見せるのは非常に難しいというふうにおっしゃられますけれども、ものがないということを見せるのは難しいにしても、イラクはかつて持っていて、もしないとしたらば、破棄をしている、どこかでということですから、それは、どのように破棄をしたのか、いつ破棄をしたのか、本当に破棄をしましたという証拠を見せていくということがイラクが果たさなければいけない義務であったわけです。これは国連の決議上の義務であるということです。  それで、それを、そのようになっていたかというのをチェックをずっとしてきたのが査察団であって、例えば科学者に自由にインタビューをさせるというようなことをやって、イラクがどのように廃棄をしたのか、あるいは廃棄をした残滓等々を、あるいはその記録、そういったことを見せるということはできるわけですし、それによって証明できるということです。
  138. 平野達男

    ○平野達男君 ですから、手続上に対して、妨害をしたとか協力的でなかったことはあるかも、あったかもしれないと言っているんです。  ちなみに、ケイ団長が今言ったいろんな、科学者のいろんなインタビューもやっています。やった結果、何も出ていなかったということで、これもはっきり証言しているんです。  まあ今この問題はいいです。繰り返しになりますけれども、もう一回だけ言います。今の外務大臣の説明も、依然として開戦時におけるその支援の根拠を言っているにすぎないんです。もし、もう一回繰り返しますけれども、実は大量破壊兵器は、こういったことなんです。例えば、確かに炭疽菌とかVXガスというのはあったという説はあります。しかし、あれを保管するのは大変難しい。それから、あれ残存期間もそんなに長くない。それから、破壊したんだけれども実は写真は撮らなかったかもしれないんです。だから、証明しようにも証明できなかった、そういうことだって今度は想起されるんですよ。  今、川口大臣は、頭から一方的に全部イラクが悪いというふうに決め付けているんです。その前提で話をしている。だから私らが、ケイ団長の言った言葉を思い出してくださいよ。ウイ・ワー・オールモースト・オール・ロングと言ったんですよ。実は私たちは全部前提が間違っていたかもしれないという意味も含めたかもしれない。(発言する者あり)はい。ちなみに、ほかのことと言っているのは、査察を継続すべきだということでしょう。後ろから言っていますけれども、まずそれは総理がじゃ代弁してください。ということを言っているんです。ということで、今ちょっと福島さんが後ろから口を挟んじゃったから頭がちょっとあっちの方に行ってしまいましたけれども。  もう一度お伺いします。いずれにせよ、この、これだけ答えてください。以後、大量破壊兵器が全くなかったということがこれから、これはまだ調査が継続中ですから、分かったとしても、我が国としては一四四一、六八七、六七八、これが唯一の根拠であるということでずっと押し通すわけですね。世界じゅうに向かって言うわけですね。これを確認させてください。
  139. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 先生自らおっしゃられたように、正に今調査が引き続き継続をしているわけなので、なかったらということでお答えするのはなかなか難しいんですけれども、我々としては、六七八、六八七、一四四一、それをもって我が国が武力の行使を支持したということについては変わりはありません。それは日本だけではなくて、英米それぞれの国も言っていますし、ほかのその支持をした国、それもみんな言っていることでございます。
  140. 平野達男

    ○平野達男君 今の川口外務大臣の答弁というのは、私は半分受け入れます。つまり、あの当時、一四四一、六八七、六七八というふうに、手続違反があったというふうに判断せざるを得なかった状況だということで、結果として言うなら別です。しかし、大量破壊兵器がないにもかかわらず、まだ一四四一、六八七、六七八というふうに、に根拠があるというのと、あの当時、一四四一、六八七、六七八に根拠があって支援した、それはやむを得なかったというのじゃ、ちょっと別だと思います。今、川口大臣が言ったのは、ちょっと後半の方に半歩出たような答弁だったと思うんです。  ところが、小泉総理ははっきり言っているんです。大量破壊兵器があったということも一つでありますけれども、一四四一、六八七、六七八でやったことが、違反したことがその理由でございますと。その答弁は、大量破壊兵器のいかんにかかわらず、国連決議に違反したからでございますという、こういうふうにしか取れないんです。こういう理解でよろしいのかどうかという話なんです。
  141. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) これは、まだ大量破壊兵器はないとは断定できない状況だからこそ捜査を続行しているんです。同じ答弁なんですよ、これ。
  142. 平野達男

    ○平野達男君 それは、それは私は違うと思います。大量破壊兵器というよりは、明らかに私らの、この今までの総理の答弁というのは国連決議ということを前面に出したんです。ただ、今それじゃなくて、査察継続中だからということでやるというのなら、そういうふうに答弁変えたというか、それが真意だというならそれで受け入れますよ。  そうすると、大量破壊兵器がもし今後なかったということが明らかになった場合については、政府は別の解釈をすることもあるということも考えてよろしいんですか。よろしいですか。
  143. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) これは、一連の決議が、大量破壊兵器の脅威が存在しているということを認定して国連決議がなされているんです。その除去を求めてきているんです。そういう時点で、ひそかに仮にイラクがあの大量破壊兵器を廃棄したにしても、じゃどうやって廃棄したのかというのをイラクが証明しなきゃならなかったんですよ。そういう決議の、一連の決議の国連の決議の義務が果たされていない状況に今も変わりないんです。だから私は、イラクに対する武力行使の正当性は現在でも失われていない、これに変わりないんです。
  144. 平野達男

    ○平野達男君 私は、一四四一、六八七は大量破壊兵器があったということと、そしてイラクがその査察に協力しなかったということのやっぱりセットであるというふうに、こういうふうにしか読めません。これは私の考え方です。違うと言えば、政府が違うと言えば違うんでしょう。  それから、もう一つは、大量破壊兵器が結果としてあったに、ないにかかわらず、あれが正当性だったということを世界が認めれば、あなたはあるよ、あるよ、あるよと言っていろんな調査はやるでしょう、ないにもかかわらず。だけれども、あなたは、ないということを証明しなかったということで武力攻撃できるという先例を作っちゃうんです。これは、日本としてはこういう状況は絶対許してはいかぬと思うんです。  私は、小泉総理に求めるのは、今ここで言えば深い憂慮ですよ。なぜこういうことになったのかと。日本はあれを支持したということについては、あの状況からやむを得なかったし正当性はあったかもしれない。だけれども、大量破壊兵器がもしなかったとすれば、イラクは武装解除すべき大量兵器は持っていなかったことになるし、そのためにイラク侵攻をやって武装解除しようと思ったらその武装解除もできなかった。こういうその背後の、そこまで至る中にたくさんのイラク人が死んでいるし、米兵も死んでいる。これは本当に良かったかどうかというこの判断も求められるんですよ。それでも一四四一、六八七、六七八。これは私はおかしいと思います。  これ、もう一回総理の、今ケイ団長のああいう発言を踏まえて、我が国がイラク、米英がイラクに侵攻したときの支援するその理由、それを今どのように考えているか、もう一回答弁をお願いします。
  145. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) これはもう何回も答弁しているんですが、私は正当性は失われていないということをはっきり言っているんです。  それとケイ博士の証言、引用していますけれども、ケイ博士は同じ委員会で、上院軍事委員会で大量破壊兵器の大量の備蓄はなかったというのが結論であるというのは確かに述べていますよ。しかし同時に、その委員会で、調査が完了した暁には、一九九八年以降の絶対的に腐敗した体制の下、大量破壊兵器の拡散の観点から、イラクは我々の想像をはるかに超えて危険な国であったことが明らかになろうということも述べているんです。  同時に、米政府が国民を欺いたということかとNBCのインタビューに問われて、それは公正な見方ではないと。開戦前、アメリカ政府、アメリカ情報機関のみならず、フランス、イギリス、ドイツ及び国連のすべてがサダムが大量破壊兵器を所有していると考えていたと。同時に、開戦は賢明であったかと問われて、絶対に賢明であったとケイ博士は答えているんです。
  146. 平野達男

    ○平野達男君 ケイ博士がどう言おうと関係ないんです。それは、いいですか、私が言っているのは、一四四一、六八七と六七八の関係なんです。いいですか、それはケイ氏は、ケイ氏はテネットに指名された方で、開戦前から最もイラク侵攻を強力に推進していた人です。その人がアメリカに対してあの開戦に対して駄目だったなんて言うわけがないんです。今、私が言っているのは、その根拠を聞いているんですよ。だから、今、総理が言っている答弁は全く関係ないですよ、それは。
  147. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) ケイ博士の言っていること関係ないと言うんだったら、何で引用するんですか。
  148. 平野達男

    ○平野達男君 もういいですよ。私がどこで何を引用しましたか。
  149. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) ケイ博士。
  150. 平野達男

    ○平野達男君 それは、私は大量破壊兵器がないということになりそうだという状況の中でケイ博士の発言を引用したんであって、引用したんであって、日本政府が米英のイラク侵攻に対する正当性の中でこうこうこうだということに対するイラクの、ケイ博士の、ケイ前団長の発言はどこにも引用していませんよ。  私が言っているのは、ケイ博士はどうもイラクに大量破壊兵器が前からなかったようだという前提で、ここでケイ博士の発言の引用は終わりですよ、終わり、ここのやつは終わり。私が議論しているのは、米英のイラク侵攻に対する大義を議論しているんですから、全然違いますよ。もう一回答弁してください。
  151. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) それは、大量破壊兵器がないということの引用をケイ博士の言葉を引用して言っているわけでしょう。そのケイ博士の証言を引用したから、私もケイ博士を引用したんですよ、これだけじゃないよと。関係ないと言われたら、引用する必要ないじゃないですか。
  152. 平野達男

    ○平野達男君 はい、分かりました。  じゃ、もう一度お聞きします。  いいですか、大量破壊兵器が今後の調査によってなかったということが明らかになったとしても、日本の米英のイラク侵攻に対する支援の理由は一四四一、六八七、六七八というこの三つのことだということでいいんですか。
  153. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) まだイラクに大量破壊兵器がないということは断定できないからこそ捜査を続行する必要があると言っているわけですね。だから、仮定の質問、ないとは断定できないんですから。しかし、断定できませんが、あの開戦時の状況から考えて、日本が支持した正当性というのは一連の国連決議ですから、その正当性は現在でも失われていないと考えております。
  154. 平野達男

    ○平野達男君 どうも、もう一度しつこく質問しますけれども、今の御答弁を聞いていますと、やっぱり小泉総理は、イラクがやっぱり、当初の一番最初の答弁にも、答えましたけれども、イラクは大量破壊兵器を持っていたというふうに考えているというふうにおっしゃいました。私もそうだと思いました。だけれども、結局、大量破壊兵器がなかったということになりますと、やっぱりこれを考え直す余地が出てくるはずなんです。これはお認めになりますか。仮定の問題だとか云々の問題じゃないんです、これは。
  155. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) いや、仮定の問題だからないとは断定できないんですよ、今現在。だから捜査を続行しているんですから。しかし、支持した正当性は失われていない、これは私の答弁ですよ、意見が違うかもしれないけれども。
  156. 平野達男

    ○平野達男君 何回も聞きます。  いいですか、私が言っているのは仮定の答弁ができないと言っているんじゃないです。そういう答弁では納得できないと言っているんです。  ケイ団長がやっぱりアメリカの議会で証言したというのは、私はこれは大変重要だと思います。それを前提にして、日本イラクの、米英のイラク侵攻に対するその支援の大義、これに対しては、私は今後見直す可能性が、見直す余地というか必要性が出てくると思います。  もう一度聞きます。それはないということですか。仮定の問題に答えられないということですか。
  157. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) いまだに正当性は失われていないと思っております。
  158. 平野達男

    ○平野達男君 それはまだ調査が続行中だからということですね。
  159. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 一連の国連決議にのっとっているし、今も捜査が続行中でもあります。
  160. 平野達男

    ○平野達男君 いずれ、ちょっと私の質問には本当に答えてくれませんね。  それからもう一つ、私、本当に世界が間違っていたかもしれないという可能性は否定できないと思うんです。先ほどちょっと言いました。イラクは、確かに証明すべきだ証明すべきだと言いますけれども、あるということを前提に入った査察官に対して、これはイラクがひょっとして証明するのは本当に難しかったかもしれないんです。そのところまでの原点までやっぱり立ち返って、これやっぱり調べてみる必要があるんじゃないかと。  そうでないと、私が何でこんなことを言うかというと、とにかくさっき言ったとおりです。これからのいろんな世界の情勢について好ましくない先例を作ってしまうし、日本はそれを支援するという、支持したという、その過去の実績だけが残ってしまう。これを大変憂慮すると、こういうことです。  時間、こればっかしやっていてもしようがありませんから、しようがありませんじゃなくて、この問題につきましてはまた時間を改めてしつこくねちこく執念を持ってやりたいと思いますので、私は長所粘り強い、短所しつこいですから、そういうことでやります。  それで、次の質問に移らせていただきます。  自衛隊イラク派遣についてでありますけれども、今回の派遣の実施計画、これを認めるかどうか、国会で通すかどうかということが一つのこのテーマになっているわけですが、この実施に当たって、一つの大きなテーマというのは、幾つかテーマはあると思うんですが、その間違いなく一つのテーマというのは、今回自衛隊活動する予定である地域が非戦闘地域であるかどうかということのこれは確認であっただろうと思うんです。  自衛隊実施要項では、ムサンナー県あるいはその他飛行機その他、そういったところのそういった活動予定地域は示されております。しかし、なぜそこが非戦闘地域かということについての説明がどこにもないんです。  非戦闘地域かどうかというのは、これはもう今までの御答弁で分かりますように、二つ、大きく二つ要件を課していて、現にそこに戦闘が行われておらず、これからも戦闘が行われる見込みの、行われる可能性のないところという、時間軸を入れたことでやっているわけですね。それがなぜこの地域が非戦闘地域かということについての説明がないというのは、これは法律上に求められてないといえば求められてないかもしれませんが、これは政府の説明責任を、文章として出さないというのはその説明責任を果たしていないということになるような気がするんですが、防衛庁長官、どのように考えられますか。
  161. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 非戦闘地域の御理解で、時間軸を取ったという御指摘はそのとおりでございます。  二点、ポイントがあろうかと思いますが、一つは、何で将来のことなんか分かるんだと、こういうことだと思います。今そうでないからといって、何で将来そうなんだと言われれば、それはいろんな情勢を判断して、やはり未来は過去の延長線にあるので、そういうような状況が続き得るであろうという判断だと思います。  そんなに大事なことならば何でここを非戦闘地域というふうに決めたのか、その理由を書けというお話でございます。  これは、例えば襲撃の件数でありますとかあるいは治安の状況でありますとか、そういうようなものを総合的に判断することになります。つまり、総合的にといいますといい加減だということになるのかもしれませんが、例えば、やはりこの日本国内におきましても、ここは治安がいい、ここは治安が悪いということは一般的に申し上げることでございます。じゃ、あの日本の一・二倍広いイラクにおいて、じゃ、例えばスンニ・トライアングルとムサンナー県というのを比べてみたときに、それはやはり治安が良いというふうに言うのだと思います。  そういうような情報をどこから入れたか、件数等々全部明らかにせよということになりますと、これ、そういうような情報を提供してくれた国が、その国でもオープンにしていないものをオープンにするわけにはまいりません。やはり治安の状況というのは、そういうような犯罪あるいは事件というものの何%がどこで起こっているかというようなこと、そしてまたそれが何を対象にし、どのような態様で行われたかということを総合的に勘案するとしか申し上げられません。  これをかくかくしかじか、こういうわけでという理由を書けないのは、それはいろいろなところから情報を提供していただいておりまして、それを私の責任におきまして実施区域というのを定めますときに、その理由まで書く必要はない、あるいは書くことによって支障が生ずる場合があるということでございます。
  162. 平野達男

    ○平野達男君 今言った書く必要がない、あるいは書くことによって支障が生じるということになりましたが、前段のもし書く必要がないということであれば、これはやっぱり私はそれは理解できない、理解というか、それを受け入れるわけにはいかないと思います。これはやっぱり憲法違反とか憲法違反でないとかといういろんな議論されて、九条からやって、武力行使をしない、武力行使と一体するものとはしない、それはどうやって担保するんですかと。そう言うと、行為の内容と場所の内容だというふうに言ってきたわけですね。  今回は、場所ということを、なぜここでやったということはやっぱりきっちり説明せにゃいかぬと思うんです。これについて、もし今ここでなぜあそこが非戦闘地域とやったかということを正式に説明するとすればどのような説明になりますか。
  163. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) まず、なぜサマーワを含むムサンナー県なのだ、こういうふうにまいりますと、南東部の中でもムサンナー県はバスラ県、マイサン県に比べて事件数は少ないと。特に、宿営地を設ける予定のサマーワについては治安は比較的安定し、現地の治安維持を担当するオランダ軍も警戒態勢を取っている、これまで大きな事件もない、住民は不審者を通報するなど治安当局に協力的であるということであります。  これは、委員もいろいろな報道をごらんになって、町は平穏です、町は平穏です、町は平穏ですというような報道が多く出ているということは御認識のとおりであります。そしてまた、これは現地に先に展開をしておりますオランダ軍のいろんな情報というものも加味し、そして状況を通報してくれる、それが部族社会というものだそうであります、それがこういうことがあるんだよということを通報してもらえる。そしてまた、オランダも警戒態勢を取っている。元々事件が少ないのに加えまして、そのような通報の体制、そしてオランダ軍も警戒態勢を取っている。そういうようなことで、比較的治安が安定している、そして非戦闘地域であるというふうに認定をいたしておるわけでございます。  これは、それを閣議決定のときにその理由を書くべきだというのは、それは委員の御見解だと思います。それを書くべきではないというのが私の見解でありまして、ここにはその一致点がございませんが、しかし今申し上げたような、そもそも事件が少ない、部族の社会であり、通報がなされる、そしてオランダ軍が警戒をしているというようなことで非戦闘地域だというふうに国会で答弁を申し上げたことは、それなりの意味を持つものではないかと愚考しておる次第でございます。
  164. 平野達男

    ○平野達男君 今の説明はやっぱり現状の説明だと思うんですが、これは衆議院での議論の中でも筒井議員が何回も聞いていますけれども、時間軸ということに対する説明がなっていないじゃないかと。将来とも戦闘が起こらないということに対する説明がないというふうに言っていますが、それはどのような説明になりますか。
  165. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) それは委員が御指摘なのは、現に戦闘が行われておらずというのは、仮に百歩譲ってそうだとしても、活動を行う期間において戦闘が行われることが認められないというのは、どうしてそんなことが言えるのだというようなことなんだろうと思います。それは、いろいろな情報から勝手に、勝手に私が思っているのではなくて、願望を込めて思っているのではなくて、どう見てもこのような状況、そして先ほど申し上げたような部族の通報体制、オランダ軍の警戒態勢からいって、そういうことは起こらないと思われます。  しかしながら、世の中には絶対ということはないのであって、さればこそ、近傍で戦闘が行われるようになった場合にはという規定を設けまして、自衛隊が非戦闘地域活動を行うということを担保しておるわけでございます。仮に委員がおっしゃるようなことだとするならば、近傍で戦闘が云々というような規定意味を持たなくなります。
  166. 平野達男

    ○平野達男君 いずれ防衛庁長官は、これからあそこは治安上大丈夫かどうかということと併せて、戦闘地域か非戦闘地域かというのをずっとチェックする義務があります。  実は私は、国会でもあそこは非戦闘地域か戦闘地域かというのはやっぱり判断、見ていく必要があるんじゃないかと思っています。ところが、それを見ていく上での材料がないんですね、国会で。今のような分かったような分からないような答弁をされていても、何をもって非戦闘地域であるかというのは、ちょっとすとんと来ないんです。  これは、委員長にちょっとお願いなんですけれども、あそこを非戦闘地域にしたということについての政府の公式見解、これを当委員会に出すようにお願いしたいんですが、どうでしょうか。
  167. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ちょっともう一回、政府側、答弁して。
  168. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) これは、公式見解というのは国会における答弁が公式の見解でございます。私は、国務大臣防衛庁長官として答弁をさせていただいております。  それで、オランダ軍の情報ということを申し上げました。これは、委員もあるいはごらんになったことがあるのかもしれません。オランダ軍、オランダ国防省がオランダの議会に対しまして駐留の継続についてどうなのかというふうな、やはり国会におけるような、この日本の国会におけるような議論がございまして、そこにおいて提出をしておる資料がございます。  また、先般オランダに参りましたときに、カンプ大臣とも随分と長い時間このことについてお話をいたしました。それは、やはり実際にそこにおいて、ましてや治安を担当しているオランダ軍がこういうような状況であるということを言っている。そしてまた、専門調査団も参りました。先般の報告もございます。その前に、例えば院におきましても現地を見ていただいております。CPAの情報もございます。  そういうようなものをすべて勘案をいたしましてそのような判断をいたしておるものでございまして、公式な見解というのは、私がここで、国会の場で答弁をしておりますのが公式な見解でございます。これ以上のものは私は明らかにするということになりますと、それは情報というものの観点から、申し上げることはできません。私はこれ以上のことを申し上げることはできませんが、仮にこういうこともどうなのかねというようなこと、こういう観点もどうなのかねということがありますれば、それはまた御教示いただければ有り難いと思います。
  169. 平野達男

    ○平野達男君 私が求めているのは、そういった長々としたくどくどした説明、状況説明じゃなくて、こうこうこうこうこうによってこれは非戦闘地域ですというふうに考えましたという、その流れる、その考え、その説明がほしいんです。
  170. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) それはまたジャストフィットしないお答えなのかもしれませんが、国際紛争を解決する手段として国又は国に準ずる組織によって行われる組織的、計画的な武力の行使というものが行われているかどうかという判断になるわけでございます。  そうすると、ますます分からないというふうにおっしゃられるのかもしれませんが、日本国憲法九条というものを体現するためには、そこにおいて何が行われているのか、例えば国際紛争を解決する手段としての武力の行使なのかどうか、それがムサンナ県で行われているかどうかにつきましては、それはオランダが一番了知をしておるところでございます。
  171. 平野達男

    ○平野達男君 オランダが知っているから非戦闘地域にしたということですか。ちょっと言葉じりをとらえるようですが、今のはそういうふうにしか聞こえませんでしたけれども。
  172. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) それは、例えて申しますと、イラク南部の事件発生数全体の七五%がバスラ県であると、二五%が主にマイサン県であるという答弁はたしか参議院でもしたと思っております。  それは、オランダが言うからそうなのかと、おまえはうのみにするのかという話ですが、南部で申しまして、バスラで七五%、二五は主にマイサン県、これはあくまで比率、パーセンテージのお話でございますけれども。要するに、このムサンナー県においては、バスラ、マイサーンに比べて事件数は少ない。そして、サマワにおいては治安は比較的安定している。オランダは警戒態勢を取っている。そしてまた、住民の治安当局に対する協力の度合いということがございます。そういうようなものを考えてみて、何が起こっているのか、だれによってなされているのか、どれぐらいの数が起こっているのか、そういうことを勘案した結果でございます。
  173. 平野達男

    ○平野達男君 これはやっぱりこういった答弁じゃなくて、やっぱりきちっとした文章としてやっぱり当委員会に私は提出すべきだと思います。その上で、その文章に基づいてこれから各、この委員会イラク自衛隊の派遣の状況を審議してまいりますので、これを是非求めたいと思います。
  174. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ちょっと理事さん、じゃ、ちょっと集まってください。  速記止めて。    〔速記中止〕
  175. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 速記を起こしてください。  ただいまの平野委員の御発言については、後日、理事会で協議をいたします。
  176. 平野達男

    ○平野達男君 これも何回も委員会で質問あった質問、またします。  周辺でいろんなテロが起こっています。あれは戦闘行為かどうかという質問については分からないという答弁でした。しかし、私は、ムサンナ県がこれから非戦闘地域か戦闘地域かと判断するに当たってのいろんな考え方、基準、それをいろいろ頭の体操をする上で、周りでテロが起こっているということに対して、あれが戦闘行為かどうかというのをやっぱり判断するというのは、これからあの地域が非戦闘地域か戦闘地域かを見極めていく上でのいい判断材料になると思います。あるいは、個別の案件は分からないということじゃなくて、今いろんなテロが行われているということを、個別でいろんな情報を使ってあれは戦闘地域かどうかということをやっぱりこれ判断するという準備をしておくべきじゃないかと思いますけれども、防衛庁長官、どのように思われますか。
  177. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) それが戦闘行為に当たるか否かというのは、その行為が国又は国に準ずる組織の間において行われる武力を用いた争いの一部を構成するかどうかということを判断するしかこれはございません。これはもう何度も答弁をしておりますが、国際性、計画性、組織性、継続性、そのようなものから個別具体的に判断をするものであって、かくかくしかじかこういう基準を満たせば戦闘行為、かくかくしかじかこういう基準を満たさなければ非戦闘地域というようなことを定型的に申し上げることは困難であります。
  178. 平野達男

    ○平野達男君 それは理解します。だからこそ、今やっているテロについて、個別案件で題材があるんですから、国際性、計画性、継続性、これを判断する題材に使ったらどうですかと言っているんです。そうでなければ、将来ムサンナ県で不幸にしてテロがあった場合に、あれはどうだこれはどうだなんて議論する時間的余裕ないかもしれない。長い時間を掛けることになるかもしれない。そういうふうに掛けないように迅速に判断するために、今現に起こっているテロというものを分析しておいたらどうですかと言っているんです。
  179. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) これも何度もお答えをいたしましたが、我々に求められているのは、イラクの国土を非戦闘地域と非戦闘地域、二分することが求められているわけではなくて、自衛隊活動するところは非戦闘地域でなければならないということが求められておる。  それから、条文をよくお読みをいただけると御理解をいただけるのかもしれませんが、その場合に、戦闘行為かどうかということを、中断あるいは避難、指示を待つという条文がございます。これはむしろ抑制的に、どうだかよく分からない、しかしながらそこに危険が近づくようなことであれば、それは抑制的に判断をすることになるのだろうと思います。  実施区域の変更をいたしますのは防衛庁長官でございます。そのときに実際にそこがどうであるのか、実施区域として外さなければいけないものであるのかどうか、それはいろいろな状況によって判断をするものでございます。自衛隊が非戦闘地域において行わねばならないということと、自衛隊活動というものは安全に行わねばならない、両方を満たしていかねばならないものと考えております。
  180. 平野達男

    ○平野達男君 石破長官、私の質問にはやっぱり答えていただけませんね。  要は、やった方がいいんです、これは。できないというなら、できるできないという問題はあるかもしれませんよ。そういうことを、テロというものが同じようなものが起こる可能性があるんです。何だっけ、サマンナ県でしたっけ、サマンナ県でした。(「ムサンナ」と呼ぶ者あり)ムサンナですね。そういう状況に出たときにぎっちり判断するための材料が周りにあるんだということを強く申し上げておきます。  それから、そろそろちょっと時間になりましたけれども、私は自衛隊の派遣の考え方については、まだ日本はしっかりとしたものをまだ持っていないんじゃないかという疑問が非常にあります。自衛隊が有事という概念の中で海外に派遣するという法律を作ったのは、御承知のように、私の理解では周辺事態法でありました。まあPKO法案もその前にありますが、周辺事態法、これは周辺の日本近海という領域を設定して後方地域という概念を作りました。その後、これは日本近海でしたね。(「周辺」と呼ぶ者あり)はい、周辺ですね。その後、九・一一テロ事件、これはアメリカの自衛権の発動で、その自衛権の発動を受けてNATOは集団自衛権の発動を出しましてアフガニスタンに攻め入った。テロ特措法を作って、自衛隊日本周辺から今度はインド洋まで行きました。あのとき私らが反対したのは、補給というのは兵たんだと、兵たんを武力行使の一体としないのはおかしいじゃないかという、概念規定でおかしいじゃないかということで反対しました。  今回はイラク特措法、インド洋をずうっと通り越してイラクまで行きまして、海ではない、公海でもない、その上空でもない、陸の上で上がっていきました。しかも、その周辺の中ではテロが、テロ行為がどんどんどんどん行われている。こういう中で、非戦闘地域でございます、復興支援に行くんです、戦争に行くんではありませんということで自衛隊を出している。  ここで、私は二つの問題があると思います。自衛隊の派遣する理念、基本原則、これ、なし崩し、なし崩しということを私何回も言いました。今回は物すごい今までの概念を通り越して表へ出ているということがまず一つ。  それから、実際には戦闘行為、戦闘地域でない、非戦闘地域と言っていますけれども、あるいは戦争に行くんじゃない、復興支援に行くんだと言っていますけれども、派遣される自衛官の覚悟というのは相当のものがあるはずです。私は、自衛隊の、自衛官のその気持ちと、実際ここの国会の中で議論している中に物すごいギャップがあると感じられてしようがありません。このギャップを埋めるような状況を作って、自衛隊が本当にしっかりとした活動ができるような法整備、これが私は今本当に求められているということをちょっと最後に、ちょっと時間がなくなりましたので、強く最後に申し上げて、あと残りの時間を同僚の議員に譲りたいと思います。  今日言った議論についてはまた時間を含めて、改めてまたいろいろ議論をさせていただきたいと思います。
  181. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 その同僚議員の佐藤でございます。どうかよろしくお願いしたいと思います。  もう長時間を掛けて議論をしておるので、いささか御退屈そうな感じの方もおられるようですけれども、どうか申し訳ございませんけれども、心を込めて誠心誠意御回答をいただければ有り難いと思います。  そこで、イラク問題、いろいろあるわけですけれども、今まで長時間にわたって議論されている、それを聞いておりまして、おや、本当にこれでいいのかと、もう少し考えようがあるのではないかとか、そういう感じを持ったことについて二、三の点を拾い上げまして、総理以下の御見解を承ればと、こう思っております。  最初に、フセイン氏の所在というんでしょうか消息というんでしょうか、フセイン元大統領か現大統領かよく分かりませんので一応フセインと、こういうふうに呼び捨てにさせていただこうと思います。  彼が身柄を拘束されたのは十二月の十三日ですか、もう二年越しになっております。二月ぐらい掛かっておるわけですけれども、一体どこでどうなっているのかと。新聞報道はほとんどないと。わずか二回だけ。一つはトイレ掃除をやらされていると。ああ、さすがのあいつもやっぱりかわいそうだなという女性たちの声もちょっと聞こえてきました。トイレ掃除ですね。  それから、何か二、三日か、もう少し前でしょうかね、一日十時間ぐらい調べ官の追及を受けて取調べを受けておると。それもやはりへえ、もう何日にもわたってそれだけの調べを受けている、本当にかわいそうだなと、これを私もそんな感じがいたしました。そこまでやりますと、我が国ではうるさいですから、弁護士会が。すぐ人権じゅうりんだと、こういうふうな話も出てこないとは限らないわけであります。  一体に、法の適正手続、デュー・オブ・プロセスというあの言葉はどこから出てきたかというと、中世から近世初頭にかけて各国で、特にヨーロッパ諸国あるいは中国などで、権力者の思うがままに裁判が行われると。あいつは悪いやつだと、捕まえてこいと、そしてすぐ裁判をやって死刑にしろと、分かりましたと言って裁判なるものが行われていたと。  これについて、果たしてこれでいいんだろうかという疑問の矢を投げ掛けたのがアングロサクソン民族、イギリスですね。そしてイギリス人の分派ですかね、末裔がアメリカに移住して、米英法を中心として本当にその人権の問題ということを真剣に取り組むようになりまして、いろんな言葉が生まれてきているでしょう。疑わしきは罰しないとか、それから有罪判決が確定するまでは何ぴとといえど無罪の推定を受けると。要するに、どんな極悪非道だと世間が言う犯罪者であっても、裁判手続だけは厳正、公平にやって真相を解明して判決を下すと。もちろん、厳格な証明が必要だともされておりますから、いい加減な証拠では有罪判決にはしないというふうな裁判制度になっているわけです。  そして、一番大事なことは、捕まえてきたら二十日なら二十日、一か月なら一か月の勾留期間というのを定めまして、その間に必要な捜査を遂げて裁判に起訴するか、釈放するか、不起訴にして釈放するかを決めると。もう何年も未決勾留を、扱いをしておって、さあどうだ、おまえ本当のことを言えと、そうでないといつまでもこれは終わらぬぞと、そんなことは許されないわけであります。  それからもう一つ、大変大事なことは、罪名と犯罪事実を関係者にきちっと告知する。おまえの親族のあの男はこういう罪名で、こういう事実で今勾留中なんだと、近々こういう裁判が開かれるはずだからと、分かりましたと、こういうことで内容を明らかにする。それは、重要人物の場合には国全体に、この男はこういう、元総理の、これはこういうことで逮捕したんだと、いいかと、結構でございますということで国民も納得する、裁判は慎重にお願いしますと。それが一切ないんですね。どうしてなんだろうかと。私、法律家の端くれとして大変不思議に思っている。  アメリカという国、イギリスという国、法律家が、日本どころじゃない、大変威張っておる国でありまして、法律家がそれはおかしいよと、こう言ったらば、政府もなるほどそうだなと言って政治を改めると。それがあの国でもイギリスにおいても日本でもだれ一人、一体何だろうか、これはと、こんなことが許されるのかと。  彼だって、フセインだって無罪の推定を今のところ受けているんだと。ところが、彼が捕まったらすぐと言ってもいいくらい、ラムズフェルド国防長官が軍法会議を開いてすぐ死刑しようと、死刑にしようと。そうだそうだという声がほうはいとして起こって、それに引き続くようにしてブッシュ大統領が裁判にはイラク人も入れようと、公正な裁判が形作られると。アンチ・フセインの連中を入れようというわけでしょう。結論はどうせ死刑だということをはっきりと権力者が言って、裁判の結果はもう物語っているわけですね。これに反して、あれは無罪にするとか執行猶予にするとか、とてもできた話じゃないですよ、代わりにおまえが死刑だなんて言われかねないわけで。  いずれにしても、フセインは大変な野蛮人だと、そんな裁判なんか面倒くさいから簡単にやって、もうすぐ死刑にしちまえと、そういう気持ち、分からぬわけでもない。彼が捕まったときに、もうロンドンやニューヨークでは大勢の人たちが街路に出てきて、肩を組んで、ワッショイ、ワッショイ、悪いやつを捕まえた、すぐ死刑にしろ、万歳、万歳やっていました。ああいう風潮を受けて、ブッシュもラムズフェルドもああいう意見を述べたんだろうと思います。  しかし、文明国、文化国家の指導者たる者がそれでいいんだろうかと。今度は彼以上の権力者が現れて、じゃおまえはすぐ死刑だと言われたって文句は言えないわけなんで、やっぱりああいうときは、もうこれから先は裁判だと、裁判に任せてそれを見守ろうというしかないはずなんですけれども、軍法会議なんかないわけですから、まだ。  それから、イラク人を入れて裁判制度を新しく作ろうと。これは日本では泥棒を捕らえてから縄をなう。裁判制度を作り上げようと。権力者に不利益な判決をするであろうような裁判制度を作るわけはないですからね。大変おかしいと。  こういう問題について、我が国も文化国家の端くれですから、アメリカイギリスに倣って司法制度を作り上げたと。これ、そういう点から見ると、一体あなた方が今やっていることはどんなものなんでしょうかと、本当にそれでいいとお思いなんでしょうかと。少なくとも世界の人たち、イラク問題に気を使っている人たちについては、フセインはこういう罪名でこういう犯罪事実で、それからもう一つ大事なことは弁護人なんですね。必ず弁護士が付いて、そして声高らか、私ほど高くはないかもしれませんけれども、声高らかに無罪の弁論をする。  我が国の場合だってそうなんですよ。オウムの何がしは国選弁護が付いて、そしてその弁護人たちが頑張ってもう五年、七、八年たつでしょう。そして近々判決が言い渡される。あれだって、あんなやつに国選弁護費用何億もし、もうもったいないという声もよく耳にするんですけれども、やっぱりそれでは野蛮人が野蛮人を裁いていると同じことなんでありまして、きちっと法律を守って弁護士を付けて、関係者にも事実を告知して、こういうことでいつから裁判を始めますということをやるべきなんであって、そのことを文化国家のリーダーである小泉総理はブッシュ大統領あるいはイギリスの、何といいましたかな、ブレア首相ですか、彼らに会ったときに、ちょっとあなた方おかしくはないんですかと当然質問をしていると思いますけれども、どういう御回答だったでしょうか。
  182. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 米国防総省は今の時点で、フセイン元大統領はジュネーブ諸条約での、諸条約の下での戦争捕虜と位置付けられるということを明らかにいたしております。  なお、これについては、赤十字国際委員会ですけれども、これもそのアメリカ当局のこの決定は法的に正しいという見解を明らかにいたしております。  それで、委員がおっしゃった裁判のことですが、米国はフセイン元大統領の裁判に関して、サダム・フセインが行った虐殺やイラク人に対して行った残虐行為への責任をイラク人によって問われることになる旨述べたというふうに承知をいたしております。ただ、それ以上の具体的な詳細については、特別裁判所の活用を含め、現在CPA、統治評議会におきまして種々の検討が行われていると承知をいたしております。
  183. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 大変失礼だけれども、こんなありきたりの答弁聞く気は私全くない。そんなこと知っていますから、全部ね。  私は聞いたでしょう、総理に。罪名は一体何なんだと、犯罪事実は何なんだと、弁護団はどういう方に構成されているのか、これが一番裁判の基本です、こういう場合のですね。そのことについて、同じような文化程度のある日本アメリカの首脳陣が会えば必ず話題に出る。いや、忙しくてそんなもの相手にしていられなかったと、そんなことは言わせませんよ。だれだってこれ大事なことですから。いつ何どきあなたの上にも来ないとも限らないんですよ、アメリカが次に侵攻してきましてね。  どうですか、ちょっとまじめに答えてください。全然忘れていて質問もしなかったというなら、それはそれでいいんですよ、どうぞ。忘れた総理として私記憶にとどめておきますから。
  184. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) いや、法的なことですから、正当な裁判が行われるように、今外務大臣が答弁したとおりだと私は思っております。
  185. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私聞いているのは、罪名が、フセインの罪名と犯罪事実が何なのか、話はここから始まるわけですから、それをお聞きしたのかと、こういうことです、まず話の初めは。知らないの。
  186. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 戦争犯罪あるいは人道に対する罪、それを含めまして犯罪の訴追、処罰について、これはフセイン元大統領に対する関係当局の尋問、これを経まして、しかるべき取扱いが検討されていくというふうに承知をいたしております。  それから、弁護人というお話ございましたけれども、弁護人を、今の時点でフセイン大統領に付いているのか、あるいは付いていないのか、それについては承知をいたしておりません。
  187. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 何度も言っているでしょう。罪名は何なのか、犯罪事実は何なのか、それから弁護士はどういうことになっているのか、これらをお聞きになっているでしょうと。外務大臣だって向こうの国防長官などと会えば必ずその話が出るわけですから。あなた法学部出ているんでしょう。それならば、きちっとやっぱり私と同じような疑問を持つ、日本じゅうの大学生が、法学部の学生たちが皆、一体何の罪であれ捕まえているんだと、あんなことができるのかと、アメリカという国は本当に文明国なのかと、こんな疑問をお互いに交わし合っていますよ。  まあそれはいいとして。お聞きになっている、なっていない、その結論だけで結構ですから。
  188. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 私は直接には聞いておりません。
  189. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 こんな大事なことを、一国の首脳が身柄拘束をされているという問題です。あなたの問題でもあるわけですよ、さっきから言っていますけれども。それについて聞く、会っても聞かないなんて、よくもこう、大変な疑問を持っておりますけれども、まあいいです。  それじゃ、次の問題に、大量破壊兵器の問題に移ります。  これはもう嫌になるくらい議論されておって、皆さん方も確かに聞き飽きておるというような感じもいたします。  最初に、ある私の尊敬する方の言葉を提示しておきます。これは、そこにおられる福田官房長官でしたね、官房長官のお父さん、福田内閣のときにダッカ事件が起きましてね、そして日本人のあらかたが、あれは拉致したのは、ハイジャックしたのは過激派ですから、あんなやつらをもう何をあんなことさせておくんだと、内閣は何をしているかと、もうすぐに救助隊を、特殊救助隊を差し向けて、もう多少の犠牲が出ても仕方がないと、奪い返せと、それぐらいのことをやるのが政府というものじゃないかという声がほうはいとして起きたときに、福田総理大臣が、国民一人の命は全地球よりも重いと。  このことを私、後で真意を確かめたことがあるんですけれども、要するに、権力者が、権力を持つ者が権力を行使する場合には慎重にも慎重を期すべきだと。相手はどうせ全学連の連中だ、そんなやつは皆殺しにしても構わないと、あるいは乗客の三人、五人は死んでも仕方がないと、それよりも一刻も早く被害者を救助して日本の名誉を回復せよという考えのマスコミ始め政治家の意見もそういうことだったんですけれども、先ほども言いましたけれども、権力者というものは権力を行使する場合には本当に最小限度の犠牲でもって最大の効果を収めると。ですから、時間が掛かっても慎重に対応すべきなんだと。そういう意味で、日本国民一人の命は全地球よりも重いと、こう言ったというわけです。  それを援用させていただきますけれども、大量破壊兵器、いろんなことが議論されておりますけれども、いずれにしても、イラク国連の言うことに従わないとか、もういかにも危険極まりない大量破壊兵器を手にして世界じゅうを暴れ回る、被害を届ける、だからこそすぐイラクに侵略を、侵入をするんだということ。せっかく調査をしておったイラク国連の使節団をイラクから退去させまして、アメリカが軍を、軍隊を送り込んだと。その結果、これ私、新聞しか読んでいないので新聞情報しか知りませんけれども、イラク人民二万人から五万人ぐらいの犠牲が出ていると、新聞情報で当たるも八卦当たらぬも八卦だと思いますけれども、二万人から五万人。それはそうでしょう。アメリカは侵攻をして、そしてイラクじゅうの町という町を全部空爆したんですよね。もうテレビで見る限り、バグダッドなんというのはもう瓦れきの山と言ってもいいわけでしょう。その間をイラク人たちが子供も含めて右往左往をしている。  私、軍隊を派遣して大量破壊兵器を摘発するというからには、もうちゃんとした確証があって、あそことあそことあそこに何と何と何が埋めてあるという、そして犠牲はもう必要最小限度にとどめようという思いを持ってイラクに侵攻したんだろうと思っておりましたら、こんなことうそっぱちなんですね。とにかく行けと、どうなっても知らねえと、イラク全土も爆撃しろ、どうせろくでもない連中が集まっているんだからと言わんばかりにして各地を爆撃して、大変な、二万人か五万人か、まあどちらでもいいですけれども、何万人と付くだけの犠牲を出してしまっている。そして、一体どうするつもりなんだと。我々はもう勝利を収めたと勝利宣言もしていますしね。本当に不思議としか言いようがないんですよ。  やっぱり徹底して、軍を派遣する以上は調査をして、アメリカというのは情報機関が非常に優れていますからね、十二万人か何人かおって、金を使ってもうイラク人を買収するなんか楽なもんでしょう。おまえ、どうも大量破壊兵器を運んで隠したらしい、さあ、どうだと言って金を渡せば皆べらべらしゃべる、そういう人たちなんです。そう言っちゃ悪いけれどもね。  そういうふうないろんな手段を講じて、そしてぱっと大量破壊兵器を摘発して、さあ、どうですかというのが文化国家、文明国家アメリカイギリスのやることだろうと思ったら、一切そんなことしない。これは危ないですよ、本当に。何かの食い違いがあってアメリカ軍が我が国に侵攻してきたら、もう一億のうち半分ぐらいは殺されるかもしれませんよ。そう言ってもおかしくないくらい乱暴なやり方をしている。  やっぱり、何度も言いますけれども、侵攻前にきちっと状況調査をして、あそことあそことあそこと、これで行こうということで軍を派遣する。しかし、その前に国連調査団が行っていたわけですから、アメリカが間に入って、イラクの関係者と本当に協議をさせて、そして、あそことあそこに埋まっているはずだからそれを摘発してくださいよというところまでやるのがこの世界をリードするアングロサクソン民族の私責任だと思うんですけれども、全然そんなことないんですね。本当に不思議としか言いようがない。  こういう問題も、やっぱり総理も当然私と同じように、同じ学部を出ているらしいですから、疑問を持たれて、そしてブッシュ大統領その他に問いを発しているんでしょう。どれだけ、本当にどれだけの確信を持って軍を侵攻させたかということです。絶対間違いないと、あそこにあるはずだと、証拠はこれとこれとこれということで行ったら何もなかったと。これはこれで、まあやるべきことやったんだから同情してもいいのかもしれませんけれども、そういうことを一切やらずして軍が行って、イラク全土をもう瓦れきの山と化してしまって、さあ、復興に金が掛かるから日本も金を出せと。こういう問題も、やっぱり首脳会議のときに総理とブッシュ大統領の間で意見が交換されていると思いますけれども、いかがでしょうか。
  190. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 一連のイラクの問題につきましては、ブッシュ大統領との間でもいろいろ意見交換をいたしまして、国際協調体制を構築することが必要だという話合いは常にしております。  今回のイラクの開戦に至る経緯におきましても、過去イラクがクウェートを侵略した事実を踏まえ、一連の決議にのっとって、国連ができるだけ協力して対処しようという中で結論が出されたものであると私は理解しております。
  191. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 お話をしてブッシュ大統領からどういう御回答をいただいているのか、それを差し支えない限り話をしていただければ我々も安心するわけです。
  192. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 国際協調体制を構築するために努力するということで一連の国連決議がなされたわけであります。そして、最終的には、イラクが大量破壊兵器を持っていない、廃棄したという責任、立証責任をイラクが果たさなければならなかったという中でイラクがそれを果たさなかったということで、今回、開戦の経緯に至ったわけでありますが、私は、あの国連決議を誠実にイラク実施していれば戦争は起こらなかったと、今でもそう思っております。
  193. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 何か、私のお尋ねしていることをわざと聞いていないのか、あるいは聞く気がないのか。  私は、ブッシュ大統領に、アメリカ軍イラクに侵攻するときに、どれだけの確証があって、絶対間違いない、あそことあそこにあるから、無関係なイラク人民に被害を与えるようなことは一切ないということで侵攻させたんですと。いやいや、何もしないで、まあとにかく行ってみろといって侵攻させたのか。その辺の質問に対してどういう回答があったのかと。先ほどの質問と同じことですけれどもね。
  194. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 先ほどの答弁と同じことなんですけれども、国連の一連の決議にのっとって支持したわけですよ。大量破壊兵器の脅威が存在していたんです。だからこそ、国連で何度も議論が行われたんです。
  195. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 もう嫌になりますけれども、私も何度も聞いているでしょう。あのアメリカ軍が侵攻するときに、どれだけの確度を持って、あそことあそこにあることは間違いない、じゃ軍隊を派遣しようということ、それは当然のことですからね、権力者としてね。無関係な人民の血を流す、そんなことをやってはいけないわけですから。そういう、おやりになったんでしょうと聞いたら、ブッシュ大統領はどう答えたかと。そういう問題はしたのかしないのか、したとすればどんな回答だったのか、それを聞いているんですよ。
  196. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) そのような話合いもしておりますが、日本としては武力行使を支持した根拠は国連、一連の国連決議だということなんです。何回も御質問ですが、何回も私、答弁しています。
  197. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 何回も聞きますけれども、軍が直接行くときに、やっぱり徹底して調査を遂げて、あそこに行けば出るはずだというぐらいの細心の注意を持って行ったはずです。はずでしょうと質問したでしょう。それに対して、何、国連決議があるから構わないなんて、そんな答えをしたんですか、ブッシュは。そんなばかなと言いたくなりますよ。
  198. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 何回も答弁しているんですよ。イラクが立証責任を果たさなきゃならなかった。妨害した。いろんな状況の中で国連で決議されて、日本としては、一連の会談の中で、最終的には一連の国連決議にのっとって支持したわけであります。
  199. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 何度も言いますけれども、アメリカ軍が侵攻するときにどれだけの調査をし、どれだけ徹底した調査をして、証拠もあるし、あそこにあるはずだということで軍を派遣したのかどうかと、そういう質問をしたでしょうと聞いているのに、何も国連決議なんかどうでもいいんですよ、私にとってはね。当たり前ですよ。いかがですか。
  200. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) あの当時、アメリカ軍が勝手に調査なんかできるわけないじゃないですか。フセインが許しませんよ。だから国連で、イラクが廃棄した証拠を示しなさいということを国連で決議しているのに、イラクの当時のフセイン大統領はそれをしなかったんです。
  201. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 いずれにしても、自分の手足が行くわけですからね、イラク国内に。それが侵攻するときに改めて調査をしようと。だって、現に国連調査団が、おまえ出ていけといって、アメリカ軍がぱっと入っちゃったんでしょう。まず、国連のあの調査団を退場させるなら、それから今度はアメリカは本格的な調査を遂げて、そして確信を持って軍隊を派遣する。先ほど、あの福田官房長官のお父さんが本当に国民一人の命は全地球よりも重いと言った、あの言葉ですよ。何にもそんなこともないんですね。国連の決議といったってもう何年も前の決議でしょう。  今から、これから軍隊が、派遣するんだから、軍人たちにもいろんなことを言うし、それから調査団も一緒に行って、こういう角度から調査をしろとか、徹底してそういうことをやるでしょう、軍隊である以上は。恐ろしい軍隊ですからね。そのことを聞いているんだけれども、いいですよ、これは。どうしようもないですね。何でだろう。当たり前のことを私聞いているだけですよ。ブッシュに聞いていないとすれば、聞いておりませんでした、申し訳ございませんでしたと──何ですか、質問者に何か指示するんですか。  まだ時間ある、もうないか。(発言する者あり)ああ、そう。  最後に、それじゃ時間がなさそうなので、憲法のことをちょっとお尋ねします。  私、憲法、学生の集まりなんかでよく話をするんですけれども、何か終わってから質問があるかと言うと多くの学生が手を挙げますけれども、私だから手を挙げるわけでもないんだろうけれども、やっぱり学生というのは大変興味を、憲法九条なんですね。あれはどう考えても、陸海空軍その他一切の戦力はこれを保持しないと書いている。あれは、自衛隊はもう憲法違反じゃないですかと。政府の説明が、何か先生の説明、先生の講義ではあれですか、正当防衛だとか。正当防衛というのは個人対個人の問題で適用される法理なんで、国家の立場を正当防衛で説明するような、私これよく知っていますけれども、だれがこれ考え出してああいうことを今の人たちに、今の政府にも伝えているのか、正当防衛でいこうやと。ちょっと悪名高いさる法律家が、おれの知恵でどうだというようなことを威張っておりましたけれども、正当防衛なんてそんな理論で今の自衛隊を説明する、そんなこっちゃないんです。戦力そのものでしょう。  しかし、結論はどちらでもいいんですけれども、二十一世紀ですから、新しい時代ですから、よく、そろそろ、論憲ですか、総理がよくおっしゃるのは、それから創憲、憲法を作る、そういう議論をしようやと言われて、私も全く賛成です。もう二十一世紀、新しい時代、この時代に五十年前の憲法を持ち出して、いや、どうだこうだと、一切保持しないと書いてある、正当防衛はこの規定の適用外だからとかって思わず笑っちゃうような、学生だってこれ恥ずかしくて外国の友達が来たときに説明できませんよと言っていますよ。  もうこういう機会ですから、改めて、二十一世紀、新しい時代を指導する憲法はどうあるべきかということを小泉総理、これはブッシュさんと相談する必要はないと思いますから、どうかきちっと提案されて、国民に呼び掛けて、みんなで議論しようというふうにしていただけないものかと、こう思うんです。いかがでしょうか。これは外務大臣じゃなくて、あなたが答えなさい。
  202. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 自民党も来年の秋を目指して憲法改正案をまとめようと今鋭意審議をしております。今御指摘のとおり、自衛隊は一切の戦力を保持しないという、学生の皆さんが不思議だなと、この憲法はおかしいんじゃないかと思うのも私は無理からぬことだと思います。  そういう点、確かに人によっていまだに、自衛隊は憲法違反である、いや合憲である、分かれていることを見ても、専門家の間でも分かれている、一般の常識のある国民の中でも分かれている、そういう点も踏まえて、あるべき姿にしていくのは大事なことだと思っております。
  203. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 ついでですけれども、憲法二十条、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」と書いています。この点はいかがなのかということが一つと、それから八十九条、これは私学助成の問題、五千億近くの私学助成金が支払われているんですけれども、はっきり憲法書いているでしょう、公金は学校経営に支出してはならないと。それにもかかわらず五千何百億も支出している。だれもこれ議論しないんですね。国立大学の先生は天下るときは私大に行きます。それやこれやでやらないんですよ。やっぱり議論だけはしましょう、そして必要があれば法律を変える、そこで言って、当たり前のことですけれども。問題があれば変えればいいだけ、現状で必要だといえば変えればいいだけですからね。  以上。
  204. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 今御指摘の二十条にしても八十九条にしても、議論は今までも何回かされております。そういう点も含めて、私は、新しい時代の新しい憲法というのはどういうことが望ましいかというのを今自民党でも議論しておりますし、多分民主党でも議論されているんだと思います。自民党としては、二〇〇五年の秋ごろには自民党としての案をまとめたいということで作業をしておりますし、民主党も、聞くところによると、二〇〇六年をめどに民主党としての考え方を打ち出そうということで議論が進められているのではないかと承知しています。  いずれにしても、この憲法の問題というのは、極めて各政党が関心を持ち、多くの国民も関心を持っていることでありますので、国民的な議論も踏まえて、新しい時代にふさわしい憲法を作っていくべきだと思っております。
  205. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 民主党の若林でございます。民主党としては最後のバッターになろうかと思いますけれども、十七分ほど質問させていただきたいと思います。  まず、通告はしてないんですが、金曜日、バグダッドの大使館員が避難されたというニュースが入ってきましたけれども、大変心配されている方も多いですので、しゃべれる範囲内でお答えいただければと思います。  その関連で、もし、オランダの大使館が数日前に迫撃弾を撃たれたということもありまして、当然、そのオランダの、南部を守っているオランダ軍との関係もあるのかなという感じもしますけれども、その辺、どんな認識かも含めてお答えいただければ有り難いと思います。
  206. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) イラクは今、邦人に対して退避勧告を出している国であります。ということは、様々な脅威、様々なリスクがあるわけでして、今おっしゃったような、これはオランダのみならず、イタリア軍というのもありましたし、実際にイラク人道復興支援のために活動している様々な外国の組織、あるいはイラク人イラク警察、ほかのソフトターゲット、いろいろな脅威があるわけでございます。ということで、その大使館の関係者もこういった状況を十分に認識をして、安全確保に注意を払いながら勤務をいたしています。  それで、具体的に今大使館がどのような体制で勤務をしているかということについては、これはそういう状況で勤務をしているということでございますので、申し訳ないんですけれども、これ以上申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思います。きちんと機能いたしておりますし、連絡を取るということは可能であるということでございます。
  207. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 オランダ軍は分かりませんか。
  208. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) それから、オランダ軍の関係ということもおっしゃられましたけれども、そういった、先ほどイタリア軍ということも申しましたし、ほかにいろいろありますということも申しました。いろいろな脅威、リスクがあるということをきちんと踏まえて、外務省も退避勧告を出しておりますし、大使館の人間もいろいろな安全確保に対して配慮をしながら勤務をしているということでございます。
  209. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 イラクのバグダッド日本大使館は機能しているという御答弁だったというふうに思います。これについてもセキュリティーの問題、私も前々回、十二月にも質問させていただいたところですけれども、今日は次の質問に移りたいというふうに思います。  前回、私の推論で、日本人外交官の殺害は米国の誤射の可能性を否定できないという推論を申し上げました。これはあくまで私の推論でありまして、もちろん断定的なことを言っているわけでも全くありません。私がお願いしたかったのは、やはり日本政府がやっぱり一日も早くこの真実を解明するということをお願いしているわけで、そのときに私のこの推論を完璧に否定していただきたい、そんな思いでありますので、その気持ちを是非分かっていただきたいなというふうに思います。  私は、あの質問したとき、その日から次の日にかけて報道は一切ありませんでした。マスコミの皆さんも聞いていると思いますけれども、是非ともこの問題についても、終わった問題では全くありませんし、正に国家主権にかかわる重要な問題だというふうに思っておりますので、この問題についてもきちっとして取り上げていただければ有り難いなと思っております。今日、シンガポールのアメリカ人の友人からメールがありまして、シンガポールの英字新聞に報道されて、びっくりして私のところに来ましたけれども、海外の人もそういうふうに見ている人もいるのかなという感じもいたしました。  その上で、もう一度だけ小泉総理に御答弁いただきたいんですが、この一日も早い解明のために政府を挙げて努力していただくということで、できれば独立した調査委員会みたいなものを設置して解明していただければ、確かに時間が掛かるのは分かります。一生懸命やられているのも分かります。でも、なおかつ国民に見えるように、そういう形でやっていくことがやっぱり必要ではないかなというふうに思いますので、御答弁を願いたいと思います。
  210. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 今までも真相解明に努力してまいりましたけれども、これからも政府を挙げてこの真相解明に努力をしていきたいと思っております。
  211. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 是非ともよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。  それで、次の質問に移りたいというふうに思いますが、自衛隊派遣後の撤退基準についてお伺いしたいなというふうに思います。  石破長官もテレビ報道で、ニュースだけ見ますと、犠牲者が出ても自衛隊撤退せずという、そういう見出しになるわけですが、恐らくそういうふうに言っていないというふうに思いますが、自衛隊派遣目的ではありませんので、派遣して何をするか、その目的が達成された場合にどうなのかということであります。  私は、やはりどういう状況自衛隊が撤退するのかという基準に対して、きちっとやっぱり明確に文書化しておく必要があるんではないかと思っております。やはりいろんな意味での国内的なプレッシャーがある中で、やっぱりここはきちっと帰るべきだ、どういう基準に沿ってということも私は必要ではないかなというふうに思いますので、いろんなこれからの議論の中で出てくると思いますが、そういう正しい判断ができるような基準について明確化する必要があると思いますが、もし長官、何かお考えがあればお伺いしたいと思います。
  212. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 文書化を必ずしもしなければならないものだとは思っていません。ただ、私たちとしては、私たちがお手伝いをしなくてもイラクの人々でやっていけるという体制ができたならば、それはやはり速やかに引くべきものだと思っています。それは医療にいたしましても教育にいたしましても、あるいは水道にしてもそうでございますが、自衛隊自己完結性、あるいは決して一〇〇%安全ではないので、装備、権限、能力をもってしてなぜ自衛隊かという説明をいつもしております。  それは、例えばNGOでできる、あるいはODAでできる、そういうようなことになったとするならば、それは自衛隊でなければならないという理由がなくなるわけでございます。私は、自衛隊でなければならないという、るる今まで派遣の必要性で総理始め政府として御説明をしてまいりました。逆に言えば、その自衛隊でなければならないという理由が消えたときは、それは自衛隊は速やかに撤退すべきものと考えております。
  213. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございました。  いずれにしましても、撤退しても自衛隊の方が早く帰られるような環境が来れば、それはそれにこしたことはないわけですから、そのきちっとした見極めの判断ができるように、石破長官としてもきちっと見ていただきたいなというふうに思っております。  その上で、小泉総理もこれまで国連の関与を強めることが重要だというふうにおっしゃってまいりました。六月にはうまくいけば暫定政府ができる可能性もありますので、そのときに国連決議等が出て、暫定政府の要望によってPKO五原則が合えば、我が国としても自衛隊をPKOに切り替えていくことは必要ではないかなというふうに思いますが、その辺の認識について、総理、どういうふうにお考えでしょう。
  214. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) PKOのことですから私から答弁をいたしますけれども。  現在、イラク復興支援とか安全確保支援に関する国際社会協力、これは決議、安保理決議一四八三とか一五一一がございまして、これで十分な対応ができるというように考えております。ですから、当面はPKOを発動する、PKOを通じてという、そういうことは必要ないというふうに考えております。また、将来のことにつきまして、PKOが、これが組織されるかどうかという問題もございますので、これはやはり国際社会の動向を見極めながら考えていく問題だというふうに思っております。
  215. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 今の御答弁は、国際社会がPKOは必要だということになれば、それは我が国としてもその方向でやっぱり考えていくということだというふうに御答弁されたという認識で考えたいと思います。  次に、これまでの議論で、私が聞く限りにおいては少し落ちていた問題についてお聞きしたいんですけれども、メンタルヘルスの問題であります。  先ほどイラク民間の死者の方で、我が同僚の齋藤議員の質問に対して、イラクのボディー・カウントが、九千数百人ですか、そこがカウントしたというお答えがありましたけれども、イラク自由党の総括官モハメド・アル・オバイディさんによりますと、三万七千百三十七人の民間人、イラク民間人が既に殺されているというお話もありますので、政府としてはこの詳細について調べる立場にないのかもしれませんが、現実的にはかなり多くの方が亡くなっているのではないかという状況であります。  その上で、現時点で、イラク国内で死亡した米国兵数値、米国兵の中で、非戦闘中での死亡者、うち自殺者あるいは死因不明者の数が分かれば教えていただきたいと思います。
  216. 堂道秀明

    政府参考人堂道秀明君) お答え申し上げます。  米国防省の発表によりますと、イラク自由作戦の中で死亡した米兵数は、二月六日の時点でございますが、五百二十九名でございます。そのうち百六十名が非戦闘事由により死亡しているということでございます。  なお、その国防省の幹部軍医が最近発表したところによりますと、イラクの自由作戦における自殺者は十九名とされております。また、その国防省の死亡公報上、死因が特定されていない事案は三件と承知しております。
  217. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございました。  五百二十九名、百六十名の非戦闘中十九名ということで、私が見た数字だとちょっと低いですけれども、いずれにせよ多くの方が自殺で亡くなっているという状況であります。  御案内のとおり、ベトナム戦争におきまして心的外傷ストレスというんでしょうか、専門的な言い方は分かりませんが、いわゆるPTSDで、三六%の兵士がそれを経験して、後にいろんなこの後遺症で悩まされたという話がありました。  今回も、これだけ経験ある米国でもこういう状況ですから、私は、この辺が未経験の分野というんでしょうか、自衛隊にとりましては非常に大変なことではないかなというふうに思いますので、やっぱり撃たれる怖さ、撃ってしまう怖さ、両方あるんではないかな。万が一そういうときに状況になると、私は、かなりパニック状態で、その後の精神的なダメージは非常に大きいんではないかなというふうに想像しますので、この辺についても石破長官としてどんなふうに今御認識され対応策を考えているのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  218. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 対応策につきましては後ほど専門家からお答えいたしますが、本当に先生のおっしゃるとおりなんです。そういうのに出たことがありません。実際に生きている人を撃ったこともありません。そういうことがないようにしてまいりますけれども、でもおっしゃるようなPTSDというようなことは私は起こり得ないという断言はできません。そのことについての対応策は防衛庁内で考えておりますので、ちょっと政府参考人から説明をさせていただけるでしょうか。
  219. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 じゃ簡潔にお願いします。
  220. 松谷有希雄

    政府参考人松谷有希雄君) 先生御指摘の傷害後、外傷後のストレス障害に対する対応でございますけれども、先生御指摘のとおり、テロまがいのような傷害その他重大なストレスを生ずるような事案があった後にそのような障害が起きるということが一般に知られてございます。  自衛隊におきましてもこれに対する対応を常日ごろからもちろん取っているわけでございますが、今回の派遣におきましても、派遣部隊には臨床経験の豊富な医官を配置することといたしておりまして、仮に派遣隊員がPTSDなどのストレス障害に陥った場合には、現地派遣の医官等が診察、治療を行うとともに、症状に応じましては速やかに本邦から専門的な知識を有する医官等を派遣いたしまして治療を行うほか、さらに状況に応じまして本邦に移送いたしまして、本邦でより専門的な治療を行うということといたしております。また、派遣した医官等は状況に応じまして予防的措置として集中的に全派遣隊員の精神的ケアも実施できるような体制を取っているところでございます。  いずれにしても、隊員が安心して業務を遂行できるような体制を構築していきたいと考えております。
  221. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございました。是非ともしっかり対応していただきたいと思います。  医官のみならず、自衛隊員の方同士がその兆候をきちっと受け止めて、しっかりそれをこたえてあげる、それを医務官に報告するということも必要ではないかなというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  時間が短くなりましたので、最後の二つぐらいをお聞きしたいと思いますけれども、今回、昨年来、私の感想の一つは、やはり現憲法下で自衛隊を派遣することのある部分限界を露呈したのが今回のイラク特措法ではないかなというふうに思います。同一国内で戦闘地域、非戦闘地があるということの論理の展開で、石破長官も何百回となく答弁されて非常に苦労されたというふうに思いますが、いずれにせよ、これはこれから様々な議論の中で、やっぱりどういうときに自衛隊を派遣するのか、そのときに、案件、その派遣の要件も含めて、国会承認、様々な議論がなされるべきだろうというふうに思いますので、是非とも、今日はここで御答弁は要りませんけれども、私自身の感想としては、そういう理念的な面も含めてそういう法制の必要性も感じたところであります。  それから、最後になりますけれども、やはりこれからの時代の二大政党制における例えば民主党の政策というんでしょうか、私は二大政党制になれば、ある分その両方の政党の政策が中道に寄らざるを得ないだろうと。そのときに、とりわけやっぱり外交・安全保障政策というのは、やはり外交の継続性、安定性から見てもかなりやっぱり近い方が望ましいというのが、結果論として私は必要なことではないかなというふうに思います。  この間、イギリスの大使館の人に聞いたら、どのくらい重なり合っていますかといって、私の想像以上だったんで、九割から九五%一緒だというふうに言っていました。そういう意味では、今この自衛隊派遣がこうやって対立しているというのは非常に残念ではありますけれども、これは無理やり合わせる必要もないわけで、我々としてはこれから乗り越えていかなきゃならない非常に山があるんだろうと、そういう議論を通じて国民も意識もやっぱり変わってくるんではないかなというふうに思いますので、我々としてもしっかりその辺も議論していきたいと思いますので、最後になりますが、この審議を通じての民主党への要望も含めて、小泉さんの、小泉総理の御見解をちょっとお伺いして私の質問を終わりたいというふうに思います。
  222. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 二大政党制というと、すぐ例として持ち出されるのが英国でありますが、英国では今、野党よりも与党の造反でブレア首相、かなり苦慮していると聞いております。この武力行使、イラクの問題についても野党の方は支持している、与党の方から造反が起きているという事例、いうことを考えましても、外交・安全保障については二大政党の下で、今、若林議員は九割以上一致しているという話ですが、そのような状況日本がどうなるか分かりませんが、今後二大政党制を志向するというように国民が多く思ってくれば、必然的に野党第一党も常に次の政権を取ったらどう現実的な対応を取るかということを考えていきますから、そう基本的な問題においては大きな違いがなくなっていくのではないかなと私も思っていますが、本当にこれが二大政党制、今の制度がつながっていくかということについてはまだ何回か選挙しないと確たることは言えないという状況じゃないでしょうか。
  223. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 質問を終わります。     ─────────────
  224. 清水達雄

    委員長清水達雄君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、中原爽君が委員辞任され、その補欠として藤井基之君が選任されました。     ─────────────
  225. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。  今日、参議院でのイラク派遣承認に関する特別委員会、最後の総括質問でございまして、私も幾つか、政府・与党の立場ではありますけれども質問をさせていただきたいと思います。  総理、先ほどの質問で二大政党制の話出ましたけれども、イギリスは今、三番目の自由民主党が支持率二五%で三党制に近い状態で頑張っておりまして、我が公明党も二大政党の中で沈まないように頑張りたいと思っておりますので、その辺の御理解よろしくお願いいたします。    〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕  イラクの問題ですが、総理御存じのとおり、私は昨年の十二月二十日に我が党の神崎代表とともにイラクサマーワを訪問させていただきました。この視察の後に私たちが現地情勢について出した結論は、治安は比較的安定をしていると。三つ、当時は私たちは理由を見たわけでありますけれども、その一つは、サマワに居住をしている市民の大半がシーア派の教徒で、サダム・フセインの時代に大変に弾圧を受けたと。そのためサダム・フセイン政権の崩壊を大変歓迎をしており、その裏返しでCPAとか、あるいは米軍、英軍、また現地に既に入っているオランダ軍に対して反感が低いということでございます。  それから二番目の理由としては、イラクのほかの地域と同様サマーワでも、一般家庭にも武器が非常に流通をしているという状況です。であるにもかかわらず、民衆が武装蜂起してオランダ軍に抵抗したということはイラク戦争が終わってから今日まで一度も起こっていない、オランダ軍に対するテロ攻撃、大規模なもの、中規模なものは一切ないということがあったわけでございます。雇用を求めるデモはサマワでも起こっているというふうに私たちは認識をいたしました。  三番目の理由は、やはりこれはもう国会でも何度も議論されていますが、日本日本に対する、また日本自衛隊に対する期待が強い、そしてまた、自衛隊が向こうに行ってもできることがたくさんあるということを確認をさせていただいたわけでございます。  これが昨年の十二月二十日時点での私たちの視察後の感想、分析であったわけでありますが、それから二か月弱たって、いよいよ陸上自衛隊の本隊の先発隊も現地に入っているわけでありますが、この二か月たって治安状況変化があったのかどうか、防衛庁長官に伺いたいと思います。
  226. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 神崎代表、また議員が現地に行かれて、いろいろな御報告をいただきました。基本的に変わっておりません。  ただ、治安状況は流動的でございますので、それを踏まえた上で、現在本隊が行っておるわけでございますけれども、今後も注視をしていかねばならぬと思っております。
  227. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 ありがとうございます。  総理、また外務大臣防衛庁長官にお伺いしたいと思いますが、私は、昨年、個人的には二回、イラクに行かせていただきました。一回目は太田幹事長代行と一緒に北部を見てきたわけでありますし、二回目は南部のサマワを見てきたわけでありますが、公明党は、結党以来、現場第一主義というのをモットーにして、国会議員また地方議員も現地に、現場に入っていって、そこで見たものを基に政策判断をしていこうということでやってきているわけですが、これは私、与野党の党派を超えて議員たちの普遍的実感として、やはり現場を見ることは大事だと。  俗に、百聞は一見にしかずという言葉もあるわけでありまして、そういう意味も含めて、私は、今日参議院で、国会で正式に派遣承認をされた後に続々と自衛隊の、陸上自衛隊の本隊も続くわけでありますけれども、政府、特に総理、また外務大臣、そして防衛庁長官のお三名におかれましては、適当な時期を選んで現地へ行くということを当然考えておられるというふうに思いますけれども、お三方それぞれの御決意を伺いたいと思う。  それに関連して、実は私、今日びっくりしたのは、イギリスのチャールズ皇太子も昨日、電撃的にイラクを、バスラを訪問して、イギリス軍の現地で活動している兵士を激励をしたと。もうイギリスはブレア首相も行っておりますけれども、皇室の皇太子までがイラクの現地に行っているということもありますので、そのことも踏まえて、御決意を伺いたいと思います。
  228. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 厳しい環境の中にも自衛隊の諸君が使命感を持って活動されている、こういう状況、そして国際社会イラク復興を心から願っていると。その中で、日本国際社会の一員として責任を果たしているその姿を、私は状況が許せば私の目で視察したいと思っております。  時期については、やはりいろいろ判断もありますので今言えませんが、いつか私もこの目で、イラク復興の姿と、そして多くの自衛隊員、並びにいずれ環境が許せば民間人も出ていってくれると思います、そういう状況自分の目で確かめてみたいと思っております。
  229. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 今、イラクにおいては、その自衛隊方々も、そして外務省の職員も、バグダッドとサマワで厳しい環境の中で人道復興支援ということで懸命になって仕事をしているわけです。  私は前から、機会があれば是非訪れて訪問をし、激励をし、また委員がおっしゃるように、やっぱり現場を直接に見るということは非常に重要ですので、それを行いたいというふうに考えています。将来、しかるべきタイミングが到来をしましたときにそういうことをやりたいというふうに思います。
  230. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 行ける状況になれば一刻も早く参りたいと思っております。  それやはり、自衛隊の本隊が参りまして、日本自衛隊日本防衛庁長官を警備できるということは、やはり軍隊として絶対に必要なことだというふうに私聞いてまいりました。あわせまして、そういうことになるとしますれば、現場の英軍や蘭軍に負担を掛けることはないということであります。  委員始め多くの方々が貴重な現場の視察をいただきました。それをきちんと生かしながら、私も機会を見てなるべく早く参りたいと思っております。
  231. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 ありがとうございます。  現地に行って、特に総理が行かれますとマスコミだけでも百人ぐらい付いていって、かえって迷惑を掛けるということもあり得ますので、いろんな配慮をされながら、好機を逃さずに実行していただきたいというふうに思います。    〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕  次に、総括質問でありますので、若干国会でも、またテレビ等でも出ているこのイラクに対する自衛隊派遣についての批判についてちょっと考えてみたいんですが、一つは、今回の自衛隊派遣について、米国の言いなりで決めたという意見があるようであります。私は、個人的にはこれはかなり国民をミスリードする意見であるというふうに思ってあります。  なぜかといいますと、まず、そもそもこの自衛隊が派遣されるその根拠の法律になっているイラク人道復興支援特措法の第一条に明記されているとおり、この法律を政府が昨年通常国会に提出したのは国連決議一四八三を受けてであるということであります。また、そういう意味においては、日本の対応措置の出発点というのは、米国というよりも法手続上は国連であるということは私まず明確であるというふうに思います。  また、一部でアメリカ政府高官がブーツ・オン・ザ・グラウンドという言葉を言ったとか言わないとかという話がありますが、これは客観的な証拠が一つもない情報でありまして、憶測でありまして、これで一方的にそう決め付けることはできないというふうに私は思っております。  また、一部では、総理とブッシュ大統領あるいはラムズフェルド国防長官、会談している中で、日本に対して、いついつまでにイラクのどこそこに自衛隊どれぐらいの規模で送ってくれと、あるいは送れというようなことを言われたんではないかというような話もあるわけであります。私は、個人的にアメリカ政府の関係者と話した限りでは、そんなことは一切言っていないと、それは、日本がどういう支援イラクに対してするかということは日本国民が決めることであり、またその代表者である国会議員が決めることであると、こういう立場しか聞いていないわけであります。  そこで、総理にお伺いしますが、総理は、米国の言いなりで自衛隊派遣をお決めになったのかどうか、また、アメリカの政府の首脳との話の中で具体的にこういうことをしろ、あるいはしてくれという指示をアメリカ側から受けたことあるのか、御本人でいらっしゃいますので、御意見を、お話伺いたいと思います。
  232. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 意見の違いがあると同じものを見ても違う言い方をするんですよ。イラク自衛隊派遣をすることに反対という人が見ると、アメリカの言いなりと言うんですね。自衛隊を見ても、片っ方の方は、これは自衛隊は憲法違反じゃない。自衛隊の存在が憲法違反だと言う人もいます。見方違ってくるでしょう。  日本として、日本の国益というのは何かということは日本自身が考えることであります。それは、世界の情勢を見なきゃいけない、国際社会状況も見なきゃならない。その中で日本がどういう責任を果たしていくかということで考えているんであって、今まで私は、米国の言いなりとか、あるいはブッシュ大統領の会談でブッシュ大統領が自衛隊出してくれなんということは一度も言っていないし、私も、どのような支援をするかというのは日本で決めると、日本が決めることだということを言っているのに、そうでない、マスコミ批判では全然言っていないことをあたかも言ったことのような報道をしています。これは民主主義の社会だから仕方ないんです。幾ら否定しても、政府を批判されるのはこれはやむを得ない。  日本主体的に考えて今回のイラク復興支援をしているわけでありまして、そういう中で、憲法に合致する、憲法の範囲内で何ができるかということで、憲法にのっとって自衛隊を派遣している。ところが、意見の違いがあれば全部逆に取るでしょう、これは憲法違反だと。イラク復興支援も、これはアメリカの言いなりだと。アメリカ協力しなきゃならない、国際社会協力しなきゃならないというのは日本の一番大事な方針なんです。ところが、見方の違う人は、協力というと追随、言いなり、国際協調というと憲法違反、もう見方が違うのはこれ仕方ないんです。  そういう中で、日本国際社会の中で責任を果たしていこうということで、今回も日本独自の判断で決定したわけであります。これはやっぱり見方の違いがあればいろいろな批判が出てくるというのは民主主義の時代でやむを得ないことだなと。しかし、そういう中でも、政府の考え方はできるだけ多くの国民の理解と協力を得られるように努力していかなきゃならないなと思っております。
  233. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 総理、今独自に主体的に決断をされたということを聞いて安心をいたしました。  日米同盟は、日米同盟は大切でありますけれども、今回の派遣の決定のように、自衛隊員、日本人の命にかかわる決断については、これはやはり日本の政治家が主体的に決断をしなければ、私は与党の一員でありますが、そうでない場合は断固反対をせざるを得ないというふうに思っておりましたので、安心をいたしました。  それに関連をして、総理にもう一回お聞きしたいのは、今日の朝の参考人質疑でも私、参考人に聞いたんですが、日本のマスコミとかあるいは野党の一部の方々の議論の中には、日米同盟と国連国連あるいは国連中心主義というのをあたかも相反する路線、コンセプトであるかのように話をして、その上で、総理は国連取るんですか、日米同盟取るんですかと、そういう問い掛けをする。私は、個人的にはそういう問い掛けをすること自体が国際社会で笑い物になるような議論だと思っています。なぜかといえば、アメリカ国連の重要な一加盟国であるわけで、国連の外にアメリカがいるわけじゃないわけですね。それが一つ。  それからもう一つは、日米関係というのは日本が有する二国間関係の次元の中で最も大事な二国関係ということで大事にしているんであって、それと、いわゆる全世界のほとんどの国が加盟をしていろんな議論をする場である国連日本がどういうふうに付き合っていくかということは、私は次元が本質的に異なる話だというふうに思っているんです。ですから、それを並立で並べて、どっち取るんですかという話、設問を設定すること自体が国際社会ではなかなかないことではないかなというふうに思っています。  さらに、もっと言えば、日本の報道を見ておりますと、常にこのイラクの問題をめぐってはアメリカ国連が対立をしているというふうに印象付けられることが多いんです。  ところが、一番最近でいいますと、二月三日には国連のアナン事務総長がホワイトハウスにブッシュ大統領を訪ねて直接対談しているんですね。テーマはイラク問題。そして、アナン事務総長は、これから国連が、イラク人の政府に主権が移譲されることに関してより積極的に国連の関与をしようということで調査団の派遣を決めておりまして、要は、アナン事務総長とブッシュ大統領が直接ホワイトハウスで話し合って、このイラク問題、それで協調できるところは協調しようと、こういうことも二月三日に、数日前に起こっているわけですね。  そこで、総理にお聞きしたいんですが、総理がよく日米同盟の話をするところばっかりがテレビの画面に出るものですから、総理の見解として、この日米同盟を大事にするということが必ずしも国際協調路線あるいは国連を大事にするということと相反することに、あるいはお互いに排除することにならないと私思いますが、いかがでしょうか。
  234. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 日米同盟にしても国際協調にしても、日本を第一に考えているからやっているんであって、国連中心主義かと言いますけれども、どの国も自国中心主義だと私は思っています。日本も自国中心なんですよ。どの国も、アメリカアメリカ中心ですよ。そういう場が国連です。日本の国益を第一に考えるから日本日本の安全と平和を確保するためにアメリカと同盟関係を結んでいるんです。  今回、国際社会日本協力していないと日本発展と繁栄はあり得ないと考えているから、国際社会が今イラク復興支援協力してくれと国連がすべての加盟国に要請している。だから、日本もできるだけのことをする。日本の利益、そして日米関係の信頼性、国際協調を図っていく利益、全部合致するのが一番望ましいんです。私はこれを、日本の利益を中心にするために日米同盟と国際協調が重要だから、この両立を図っていくために考えていかなきゃならない、努力していかなきゃならない、言葉だけじゃない、行動で示す必要があると。現に今、国連でも、イラク復興支援のためにアメリカは撤退せよなんという声は出ていませんよ。国連の関与を強くしようということについては多くの国が同調しています。しかし、国連の関与を強くした中でアメリカイギリス出ていけという声はありません。むしろ、アメリカの参加がないと中東に安定した状況には生み出せない、米英の協力を求めた上で国連がいかに関与していくかというのが、これから極めて大事な局面になってくると私は思っております。
  235. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 総理が今、自国中心主義だというふうにおっしゃった真意は、いわゆる各国国益をまず考えて行動しているということだというふうに思うんですが、ただ、自国中心主義というのがそれぞれの国の国家エゴになってしまったら、私は、これまた国際社会は崩壊してしまうと。私自身は、今回のイラク派遣ということを大局的に考えれば、やはり日本の平和と安定の前提として世界の平和と安定があると。その世界の平和と安定にとってイラクの再建は重要であると。だから、そこに日本が貢献することは世界平和に貢献することであり、日本の国益にかなうことだと。これは非常に大ざっぱな議論でありますが、しかしそういうことがしっかりと国民に理解していただくことが私は重要だというふうに思っております。  次の質問ですが、今回の自衛隊派遣について憲法違反だという批判もあるわけでございます。一番記憶に新しいところでは、民主党の菅代表が衆院の本会議の代表質問で、総理のことを念頭に、引用しますと、「明らかに憲法に違反する行動を命令している。」と主張をされております。また、そのちょっと後に、「自衛隊がテロ攻撃を受けた場合に反撃をするのは武力行使にならないんですか。」と聞いております。  この委員会にいる議員全員知っているとおり、自衛隊による海外での武力行使は憲法で禁じられているわけであります。しかし、イラク特措法に明記されているとおり、自己又は自己とともに現場にいる者あるいは自己の管理下に入った者の生命や身体を防衛をするために武器の使用をすることは禁じられていないということになっているわけです。  私、この菅代表の発言は、そもそも民主党の立場を考えると、非常に矛盾した発言だというふうに思っております。まあ私が言うまでもなく、党内からも異論があったみたいでありますが、それ、なぜかといいますと、民主党さんは国連のPKOに自衛隊が参加することを問題だとは言っていないんですね。ところが、国連のPKOに参加している自衛隊も、テロ攻撃を受けたら応戦するんですね。ですから、今回のイラクに派遣される自衛隊がテロ攻撃受けたときに、応戦したら武力行使だから憲法違反だと言ったら、国連のPKOに参加してテロ攻撃を、これ、理論上、理論上あり得るんですから、受けて応戦したら、それも武力行使で憲法違反となってしまう。片方の方は憲法違反じゃなくて、片方は憲法違反であると、同じことを言っているんです。これはすごく矛盾していると思うんですが。  そういう意味で、私は野党第一党の党首としては見識を疑わざるを得ないと思いますけれども、総理、コメント下さい。
  236. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) まあ菅代表は、自衛隊、存在そのものは憲法違反だとは思っていないでしょうが、今回のイラク派遣については憲法違反だと言っておられますが、最近、何か民主党の党内で、この憲法違反発言、余り気にするなと菅さん言っているようでありますが、その真意はどうなのか分かりませんが、いずれにしても、政府としては、今回の自衛隊イラク派遣されるのは、武力行使のために行くわけじゃありません。戦争に行くものでもありません。復興支援活動人道支援活動でありますので、憲法違反ではないという立場を何回も繰り返して申し上げております。  また、テロ組織なり外部から自衛隊の隊員諸君が攻撃された場合に使う武器、これは正当防衛で、自らの自己を守るためであって、これは憲法に規定する武力行使とは思っていないし、これを武力行使とは言えないと、正当防衛だと。でありますから、憲法違反ではないんだという解釈を取っております。  これは、今までのPKOの活動でも、かつて自衛隊を海外に派遣することさえも憲法違反だという議論が長年来たわけです。しかし、それを乗り越えて、積み重ねて、武力行使伴わない自衛隊の海外派遣を積み重ねてきたわけですから、それはまあ合憲だろうという大方の今見方になっているわけです。そういう議論の積み重ねがあって、今回も自衛隊の諸君に、困難な状況だけれども復興支援活動人道支援活動に行ってもらう。決して憲法に違反するものではないと私は思っております。
  237. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 分かりました。  現地に行かれる自衛隊の皆さんからすると、若干国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為である武力行使と、正当防衛と一言で言ってしまえばそういうことのための武器使用と、現場で本当に峻別できるのかという技術的な問題があることは私も認識しておりますけれども、決して今回の自衛隊イラク派遣について憲法違反の命令を政府が下しているということではないということは、私この委員会で総括質問の中で確認をさせていただきたいと思うわけでございます。  続いて、防衛庁長官にお伺いをいたします。  いろんな報道がありますが、基本計画では、自衛隊が取りあえずイラクに派遣される期限というものは今年の十二月十四日までになっておりますけれども、その延長ということの可能性について長官は現時点でどうお考えになっているかということが一つ。それからあわせて、通常、今までPKOに出ている自衛隊なんかですと、六か月ごとに部隊交代をしておりますね。今回は私、寡聞にしてそういう交代のお話を聞いていないものですから、長官の方で、例えば今正にイラクに入っている部隊が六か月後辺りでいったん交代するのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  238. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) まず一点、相手が国又は国に準ずる組織であったとしても、正当防衛、緊急避難で武器は使用し得るわけでございまして、その場合に自衛隊員に、自衛官にその迷いは生じないということは委員御案内のとおりでございます。  で、今の、いつまでやるのだということでございますが、例えば報道で、何新聞でしたか、自衛隊先遣隊の佐藤一佐が、今後十年間三段階に分けて復興支援を行うなぞと言ったという報道がございますが、そのようなことは全くございません。そのようなことをお話もいたしておりません。要は、自衛隊が、自衛隊でなくてもできる、それはNGOでありあるいはODAであり現地の方であり、そういうことになればそれは引くということでございますが、逆に申し上げれば、それは自衛隊がまだいなければならないという状況が続くとすれば、それは十二月十四日というものも、それは派遣期間というものが変わることはあり得るということだと思っています。  それから、何か月ということを具体的に申し上げることは極めて難しいのですが、先ほど若林委員の御指摘にもございましたが、非常に厳しい環境の中で、ああやってテレビではみんな明るく元気にやっていますが、それはもう内心本当に極度の緊張状況にあると思います。そしてまた、環境も違うわけでございます。したがいまして、ある程度の期間で順次交代をさせるということが望ましいと考えておりまして、どれくらいの期間をもって交代をさせるかということを今確定的には申し上げられませんが、現地の事情等々勘案しながら、そういうような現地の緊張感というものがきちんと保たれるように、そしてまた隊員の安全面もよく考慮してまいりたい。そして、帰りを待っている御家族のためにもきちんとそのことは配慮していかねばならぬと考えておる次第でございます。
  239. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 行かれている隊員の御本人は当然として、やはり御家族の皆さんが、そういった派遣が長期化した場合の隊員の皆さんの精神的あるいは身体的なウエルネスについて非常に心配をされているようですので、是非そこはしっかりとした配慮を取っていただきたいと思います。  最後に、総理に御紹介したい文があるんですが、私、今まで二回東ティモールに行きました。二回目は、たまたま当時の中谷防衛庁長官と一緒になりまして、自衛隊の皆さんの宿営地も行かせていただきましたし、また東ティモールのPKFの司令部でほかの国の将校から自衛隊員の活躍について直接伺う機会もあったわけでございます。  実は、その際に知り合った関係者から指摘を受けて、実は昨年の十月十五日の国連安保理の会議で、国連東ティモール支援団という今でも東ティモール支援をしている国連組織があるわけですが、そこのシャルマ代表ですね、これはイラクで亡くなったデメロさんの後任になりますけれども、このシャルマ代表が安保理で東ティモールでの活動について報告をしているんです、安保理で。  その中で、自衛隊の施設部隊の貢献に言及をしておるわけですね。これは事情通の方に聞くと、安保理で国連ミッションのリーダーが特定の国に言及をするというのは非常に異例であると。なぜなら、ほかのいろんな国々からも部隊来ているわけですから一か国だけ取り上げたらやっぱり不公平。ところが、何と言ったかというと、本当に関係あるところだけ申し上げますと、私はここで国連機関の軍事部門の工兵隊が東ティモールの道路網の主要幹線を維持するために行っている非常に有意義かつ不可欠な職務に関して安保理の注意を喚起したいと、まず言っているんです。  それから、いろいろ言うんですが、最後のところで、この分野、つまり道路網を東ティモールで整備をするという分野における継続的支援及び能力の向上が日本自衛隊工兵部隊、これは施設部隊のことですね、部隊が行った優れた所期の成果の拡大のために不可欠であるということで、この自衛隊の施設部隊が東ティモールでしたことを優れた所期の成果と。それを拡大しなきゃいけないから、これからも国連としてしっかりやっていかなきゃいけないということを言っているわけです。  是非、あの東ティモールの、今でも、私が話しているこの今でも活動している自衛隊の皆さんの中には、みんな日本へ行くとイラクの方ばっかり注目して自分たちが忘れ去られると、忘れ去られているといって不満な方もいるようであります。  こうやって国連安保理で報告、異例な形で報告されるぐらい頑張っておりますので、政府におかれましては、こういったことも国民にしっかりと周知徹底をしていただきたいということをお願い申し上げます。  総理、一言御感想をお願いします。
  240. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 今も自衛隊の諸君が東ティモールでPKO活動尽力し、それが東ティモールのみならず国連の場で紹介され高い評価を受けている。私も東ティモール、じかに行って自衛隊の諸君、激励してまいりましたから、あの厳しい環境の中で汗だくになって活躍している自衛隊の諸君、本当に御苦労も多いけれども、大したものだなと感銘を受けました。  こういう地道な実際の行動が日本全体の評価を高めているんだなと思いまして、こういう経験は今後、国際社会の中でも生かされていかなきゃならないし、自衛隊の諸君に対しましても、イラクだけでなく、国際社会の中で活躍する分野に意欲を持って、使命感を持って、また誇りを持って活動しているのが国際社会の中で評価されているということに対しては自衛隊の諸君も胸を張っていいのではないかと、敬意を表したいと思います。
  241. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 以上で終わります。
  242. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日本共産党の吉岡です。  総理にお伺いします。  日米関係を表す言葉として、政府はこれまでいろいろなことを言ってきました。日米安保条約に基づく協力関係とか、あるいは日米安保体制と言ったこともあります。総理は、そこのところ、日米同盟という言葉で強調されております。私は、日米安保体制ということが盛んに言われた時期にその定義を政府に聞きました。こういう定義付けでした。日米安保条約及びその関連取決め並びにこれ以外の安全保障における日米の協力に関するもろもろの取決め並びにこれらに基づく協力の実態を総称したものと、北米局長の答弁ですけれども、総理が盛んに今言われる日米同盟というのはこの日米安保体制と同義語なのか、違ったことを言おうとしておられるのか、簡潔に定義をまずお伺いします。
  243. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 日米同盟関係とは何かということでありますけれども、一般には、日米安保体制を基盤としまして、日米両国がその基本的な価値及び利益をともにする国として、安全保障面を始め政治及び経済の各分野で緊密に協調、協力していく関係を総称するものであると申し上げていいと思います。  それで、日米両国は強固な同盟関係の下で、世界における様々な重要な問題の解決にほかの国々と協調しながら取り組んできたということです。昨年五月のその総理とブッシュ大統領との首脳会談において世界の中の日米同盟という言葉を使われたわけですけれども、それはこのような意味世界の中の日米同盟を強化していこうと、そういうことであったわけです。
  244. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 同盟関係というのは、友好関係というような意味で使われるのでもなく、国と国と仲がいいというようなことではなく、これまで使われてきた、また国際法辞典等を見れば必ず書いてあるわけですけれども、日米軍事同盟のこと、安保条約を土台にしているということで、今の日米同盟についても同じことが言えると思います。  日米が同盟関係を結んだのは、私は一九五一年の日米安保条約以来だと思います。その安保条約は、六〇年安保では大体、日本の領域を守るための同盟だったと言われてきたと思います。九六年の日米安保共同宣言でアジア太平洋地域の安保ということが確認され、そして今、外務大臣も言われましたように、去年の総理の五月の日米首脳会談で世界の中の日米同盟と言われるようになりました。  これの意味を去年の首脳会談の直後、読売新聞はこういうふうに書いております。去年の五月二十一日の読売新聞ですけれども、日米同盟の意義付けは、旧ソ連を仮想敵国とした日本有事の際の共同防衛から、冷戦終結後にはアジア太平洋地域の平和と安定へと拡大。さらに、ブッシュ政権誕生と地球的規模での対テロ戦争を受けて、国際社会の平和維持に寄与する地球的規模の同盟関係に実質的変化を遂げようとしていると、これは読売新聞の解説と。大体そういうふうに取っていいですか、総理。
  245. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 日米同盟というのは、先ほど外務大臣の説明にありました定義のとおりでありますが、安全保障面だけでなくて経済面等、幅広く、世界の中の日米がどのように協力していくべきかという中で世界の中の日米同盟という言葉を使っているわけであります。  読売新聞の社説に対してとやかく私は言うつもりありませんが、私は、安全保障の面だけでなくて、日米間で国際社会の中で協力する分野は多々あると。それが日本にとってどういうものであるか、どのような利益につながるかということをよく勘案して、今後、日米同盟と国際協調、重要性をよく認識しながら日本日本の安全を確保して発展を図っていくというのが、私がかねがね言っております日米同盟、国際協調、この重要性を認識して、これからの日本の外交方針としていくということを言っているわけでございます。
  246. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 どういう説明をしようと、日本の同盟国は総理もアメリカ一国だとおっしゃっているわけですね。これは、これまでの国会答弁でも同盟国はアメリカだけであると。それは、日米安保条約という関係で結ばれた関係だからアメリカ一国が日本の同盟国だということであります。  私は、今度の自衛隊イラク派遣もその日米同盟の実行ということだろうと思います。かつて、第一次世界大戦は日英同盟のよしみで参戦しました。今度の自衛隊イラク派遣は日米同盟のよしみを、そういう言葉がいいかどうか、日米同盟を、の責任を果たすと、そういうものだったと思いますが、それはどうですか、総理。
  247. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 今回の自衛隊イラク派遣は国際協調体制を重視したものであります。国連ですべての加盟国に対してイラク復興支援協力を要請しております。そういうものを踏まえて、日本は国際協調の中で日本の責任を果たすということでございます。
  248. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 総理は、これまでの国会の論議を私、今度ずっと読んでみましたけれども、やっぱり日米、世界の中の日米同盟、地球的規模の日米同盟、その実行としてのイラクへの協力ということをおっしゃっている。それはもう速記録に残っているわけで、それは否定なさらないと思います。  そこで、私は、これまで日米安保体制ということが論議になったときにも問題になったんですけれども、日本がそこで果たそうとして自衛隊を海外に出す、これは日米安保体制が土台だという、今、川口外務大臣もおっしゃったから聞くんですが、やっぱりその土台は安保条約にあるわけで、安保条約とイラクへの派兵とは関係がある、ないか。私は、安保条約の条文どこを見たってイラク派遣ということは出てこないと思いますので、まずそれ、お答え願います。
  249. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 日米安保条約とは関係するものではなくて、今御答弁しておりますように、国際協調体制の中で日本に何ができるかという中でイラク復興支援人道支援を考えていることでございます。
  250. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうしますと、それはそれで、私は大変な時代日本は入ったと思います。  日米安保条約というのは条文で自衛隊の行う範囲も非常に厳密に定められていました。しかし、それが日米安保体制と言われるようになった当時から、防衛庁の答弁でも、必ずしも安保条約の条文によらない日米協力が始まるんだという答弁が行われるようになりました。その安保条約と全く無関係の自衛隊の行動が日米同盟、地球的規模の日米同盟ということで行われるようになるということになると、私は、この間、後藤田さんも書いていましたように、自衛隊、どこへ行くか分からない時代が来ると。  今、海外派遣の恒久化法ということも論議になっておりますが、そうすると、私は、この地球的規模における日米同盟ということの結果としては、この間はアフガニスタンのテロへの報復戦争にも自衛隊を出しました。今度はイラクに派遣しました。同じ形を取るか取らないかは別として、この世界、地球的規模でそれと似たようなことが起こった場合には日本は同じ形で派遣することがあり得るし、そのことを考えて恒久化法の検討、準備を今進めているというふうに取ってよろしいかどうか、お伺いします。
  251. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 自衛隊を派遣するということが必ずしも日米同盟のためではないということはPKO活動を見ていただければ明らかだと思うんであります。世界の中で平和維持活動、これは直接、日米安保条約と関係するものではございません。自衛隊の諸君がPKO活動に今、汗を流していただいている、それがまた国際社会の中でも高い評価につながっている。  これから自衛隊の諸君が世界の平和と安定のために何ができるかということを考えるための恒久法が必要じゃないかという議論が一部にあることは承知しております。こういう点についてもよくこれから議論していかなきゃならないし、実際にもしそのような事態を想定して恒久法が必要かどうかということについては、今後も国民的な議論を踏まえながらよく検討していきたいと思っております。
  252. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その去年当時、読売新聞と数日違えて、東京新聞は、地球の、地球的規模での日米同盟というのは、政府関係者によれば、日米同盟の質的転換点であったとその意義を強調したと、こういうふうに出ております。いずれにせよ、自衛隊がアフガンあるいはイラクというような事態で出動するという事態は、これは日米安保体制あるいは日米同盟と言ってもいいでしょう。質的転換という指摘が行われるとおりだと思います。  そこで、私は、この日米同盟を強化することがアジア安定の基礎だと、こういうふうに総理は去年の首脳会談でも共同声明で確認されております。アジア太平洋地域安全保障をどうするかということはアジア太平洋諸国が決めることであって、それを、日米同盟を強化することがそれの基礎だということは、これはどういうことなのか。私は、アジア諸国が何要らぬことを言うかという余地の大いにある問題だと思います。  あなたはアジアの安全保障の方向を決める決定権でも持っておられると。そう思っておられるかどうか知りませんけれども、私はそういう言い方というのはアジア諸国の反発を招くだけだと思いますが、そうはお考えになりませんか。
  253. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) いずれの国も、自分の国の安全保障をどのように確保していくかということについて、よその国から指図されるというのは好まないと思います。日本がアジアの安全に対してどう考えるか、それぞれの国にああしなさいこうしなさいと言う立場ではございません。  しかし、日本の国の安全、平和を確保するためには、日本としてアメリカとの間に安全保障条約を締結した。これは私は、アジア諸国も今の時点において、現在の時点において理解を示していると思います。日米安保条約があるから、アジア諸国が脅威に感じているという状況ではないと思っております。その点については、大方の私は理解を得ているのではないかと、決してアジア諸国に脅威を及ぼすものではないと思っております。
  254. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、そこが総理がアジアの本当の声が分からないでいることの表れだと思います。よその国のことを指図するということでないとおっしゃったんですけれども、日米同盟が引き続きアジア太平洋の平和と安定の基礎であると言っているわけですから、これはアジア太平洋から見れば、アジア太平洋諸国の上にあることを示す言葉ですから、それはそれで不快な念を持つことは当たり前だと思いますよ。  同時に、九六年の日米共同宣言以降、アジア諸国に現れている議論というのは、明らかに安保条約批判に変わっております。そして、安保条約が自国を守るための範囲のものであった時期には、我々は日本のことだからとかく言わない、しかしそれをもってアジア太平洋の安保の基礎だというようなことになってアジア太平洋にまで目を向け出してくればこれは黙っているわけにはいかないというのが九六年を境に強まった批判であり、この間引退されましたけれども、マハティール首相、彼らも、これはもう軍事同盟は反対だということを言い続けてきました。  アジア太平洋は今、国連憲章が目指したような域内での協力による紛争の平和的解決ということで軍事同盟的な方向に強く反対している。そして、日本が日米安保体制あるいは日米同盟がアジア太平洋の平和と安定の基礎だというふうなことを言うのには、政府レベルの会議では出てこないかもしれませんけれども、強く反対しております。  ある政府関係者が言いました。橋本総理がかつて東南アジア回ったときに、日米安保体制はアジア太平洋の共有財産だという意味の演説をやって、そこで拍手が起こることを期待していたけれども全然拍手が起こらなかった、それで次の箇所からそれを取りやめたんだと、アジアの気持ちがよく分かったよということを私はある政府関係者から聞いたことがありますけれどもね。それが今のアジアの情勢であります。  私は、総理はアジアのそういう声にもっと耳を傾けていかなければならないと思います。東南アジア協力機構ですか、あそこに入る入らない問題をめぐっても日本の態度がアジアから厳しく批判されたという報道がありました。その後、加入はしたものの、私はそのときにいったん失った信用は本当に簡単には回復できないと思っております。  アジアの声に対して、政府間の会議以外での本当のアジアの声に耳を傾ける用意があるかどうか、お伺いします。
  255. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 昨年十二月に日本とASEAN諸国の特別首脳会議、全首脳の参加の下に行われまして、日本のASEAN重視政策は変わらないということに対しましてASEAN諸国から歓迎の意向が表明されました。  日本がアジア諸国を重視しているということについては、一部の意見は知りませんが、大方の政府関係者は今までの日本協力に対して非常に高い評価を示しておりますし、また交流も一段と進んでおります。現に、昨年一年間は、ASEAN諸国との間に毎月、それぞれ国を替えて日本とASEANの交流事業が盛んに展開されまして、お互いの交流も深まっております。  日本がアジアを重視していく、ASEAN重視政策というのはこれからも一貫して変わらないんだということを十二月の東京で行われましたASEAN・日本特別首脳会議におきましても私は改めて表明したわけでございますので、私は日米安保条約がASEAN諸国に脅威を及ぼしているとかという考えは杞憂ではないかと思っておりますし、現に韓国も、お隣の韓国もアメリカとの間に同盟関係を結んでおりますが、むしろアメリカが韓国から手を引いた場合の方が脅威をもたらすという観念の方が多いんじゃないんでしょうか。やっぱり、韓国にも米軍が存在しているということがこの朝鮮半島の平和ということを考えますと極めて重要だというのが私はASEAN諸国、アジア諸国の大方の見解ではないかなと思っております。
  256. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、やっぱりアジアの声が、本当の声が分かっていないと思います。  日経新聞でアジアのジャーナリストのシンポジウムがあったときに、代表の一人がこう言って演説しているのを私は感銘深く聴きました。  アジア諸国は日本に感謝している、戦後の復興に経済面でいろいろ協力してもらったことに感謝していると、しかし、本当に心の通う関係、心の通う感謝にするためには日本に注文があるという話です。それは、過去の清算、過去の戦争と植民地支配の清算、もう一つは、アジア、世界軍事的に出掛けることをやめてくれと、それがなくなれば本当に心の通う関係になるというのがそのときの言葉です。  私は、そういう点で、時間が来ましたので私の質問はここで終わりますけれども、今の日本の動向というのを日本国内でもアジアでも非常に大きい心配を持って見られているということを再度申し上げて、同僚の質問に移ります。
  257. 小泉親司

    小泉親司君 日本共産党の小泉でございます。引き続き質問をさせていただきたいと思います。  時間が余りないので、三つの点に絞ってお尋ねさせていただきたいと思います。  まず一つは、憲法と武力行使、武器の使用の問題でございます。  宮澤総理大臣は、実は先ほどもこの武器の使用と武力の行使の関係につきまして議論がございました。実は、九一年の九月二十七日に政府統一見解、これは武器の使用と武力の行使の関係ということの見解が出されております。その点については先ほど総理がお話しになりましたから省略しますが、その後、九二年の六月十一日、当時の宮澤総理大臣が、平和維持活動に従事している者が先方から攻撃を受けましたときにどの程度武器を使用し得るかということでございますけれども、本来、国連の考え方は排除し得るという考え方がございますけれども、我が国の場合には、しかしそれが一歩誤りますと武力行使と疑われる心配があるんだということを述べられまして、したがって国連コードよりも非常に厳しい武器使用の基準を設定しているんだということを繰り返し述べられております。  そこで、私、昨日、石破防衛庁長官に、この宮澤見解に沿いました武器の使用の基準と今回の使用基準は変わっているのかどうなのか、変わっていたらどういう点が変わっているのかということをお聞きいたしました。変わっているということはお認めになりましたが、中身は教えていただけませんでした。  そこで、総理にお尋ねをいたしますが、これ、変わっているとなりますと、宮澤さんが言っておる、宮澤元総理大臣が言っておられますような当時の見解が非常に厳しくしているんだと。それはなぜかといえば、武力行使にわたらないようにするために厳しくしているんだということを言ったのと比べますと、これは一体どこに、武力行使に一歩誤ると陥ってしまう、しまわないというその総理の見解は一体どこにその保証があるんですか。まず、お尋ねしたいと思います。
  258. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 宮澤元総理は一歩誤るとと言われたんだと思いますね。その一歩誤らないように十分な配慮をしなければいけないと。武器使用の問題についても、憲法の問題で武力行使につながらないというのは大事でありますので、正当防衛、自己保存、自己防衛のための武器使用というのは武力行使には当たらないというのが政府の見解でありますから、私はその宮澤元総理の意見についても矛盾はないものだと思っております。
  259. 小泉親司

    小泉親司君 総理は正当防衛だと武力行使にならないとよくおっしゃるけれども、宮澤さんが言っている見解というのは、正当防衛の武器使用であっても一歩誤ると武力行使に陥る危険があるんだと、こう言っているんですよ。そこのところはよく理解をしていただきたいと思いますが、そこで私お尋ねしますが、実は部隊行動基準という中に武器使用基準が含まれているんだそうです、私も石破長官に教えていただきましたが。そこで、総理にちょっとお尋ねしますが、武器、失礼、部隊行動基準というのは防衛庁長官が定めることになっておりますから、訓令で、ないしは命令で。それはいいんですが、総理はその内容というのは見たことおありになるんですか。今度のですよ、今度のイラク派兵。
  260. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) それは、憲法に合致するように、法律の範囲内でいかなる武器を使用するかということについては防衛庁長官よく承知していると思います。
  261. 小泉親司

    小泉親司君 総理が見たことあるかとお聞きしているんです。どうですか。
  262. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 私は武器については余り詳しくありませんので、どれがどういう威力を持っている武器かということについては余り知識がございません。憲法の範囲内で法律に違反しない、そういう前提自衛隊安全確保できるような装備はしていくべきだと考えております。
  263. 小泉親司

    小泉親司君 いや、これで総理が見ておられないということははっきりしましたが、そこには別にピストルがどうだとかライフルがどうだとか書いてあるわけじゃないんですね。私が防衛庁長官から教えていただいているのは、結局は、この武器使用基準はどういう場合に自衛隊が武器使用できるのか。つまり、武力行使にわたらないようなと、これは政府の見解ですから、わたらないような武器使用の基準が書いてあると。  そこで、私、昨日、防衛庁長官にお尋ねしたら、今度の武器使用基準の中には、場合によって警告射撃なしでも武器を使用できることがある、それから急所などを直接攻撃できるということが含まれている、こういうふうな武器使用基準を採用していることが明らかになりましたが、総理はこういう武器使用基準を採用しても武力行使にはならない、こういう心配はないという御見解なんですか。──いやいや、総理、総理にお聞きして、お尋ねしている。もう防衛庁長官、いいですよ、昨日しっかりやりましたから。
  264. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 昨日は日曜日でありました。金曜日のお話かなと思っておるわけでございますが、先生御指摘のことを事細かに総理に御報告を申し上げておるわけではございません。  ただ、先生御指摘の警告射撃をしなくてよいのかとか、いきなり急所をねらって撃つのかということは、金曜日の御議論でも、ぷりんす号シージャック事件のお話をさせていただいたかと思います。あるいは、昭和二十三年の最高裁の判例の例もお話をさせていただいたかと思います。  要は、何をもって急迫というふうに判断をするかということでございまして、ROEの内容を事細かに申し上げることは事の性質上いたしません。しかしながら、それが正当防衛の要件を満たします急迫性ということについて、必ず警告射撃をしなければならないとか、あるいは必ず急所を外して撃たなければならない、そうでなければROEに反して駄目であるというようなことにはならないのですということを答弁申し上げておるのです。
  265. 小泉親司

    小泉親司君 失礼。金曜日の日に私も議論いたしましたが、そのときにも、問題は、総理が正当防衛なら武力行使にならないんだと。私は、この概念というのは非常に総理一流の概念で、また違った概念を同じように言うから、何か武力行使しないんじゃないかとみんな思いますけれども、宮澤さんが言っておられるのは、正当防衛の武器使用でも武力行使になる可能性というのはあるんだと。だから、その点で武器使用基準を極めて厳しく限定しているわけです。これは、宮澤総理大臣が繰り返し、あのPKOの国会の中で言ったことなんですよ。  ですから、その点については、総理、私は今度の基準というのは、先ほど、今防衛庁長官が言われたように、今度の基準の中にはいわゆる急迫性が認められたら、私は急迫性をどうやって認めるのかと、これ議論しました、金曜日に。その中でもありましたが、例えば場合によっては警告なしでも撃てるんだと。そうすると、例えば大変なことになる。イラク国民が、先ほども言いましたように大変武器持っている方が多いですから、そういうふうな場合に、これは実際に誤った射撃もあるだろう、しかしひょっとするとこれが武力行使につながる可能性も出てくるんじゃないか、そういう心配はないのかと、これは総理にお尋ねしているんです。どうですか。
  266. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) それは、論理上、可能性を言及すれば切りがありませんよ。しかし、今回は戦闘行為に参加するものでもないしテロ掃討作戦に参加するのでもない、武力行使をするものでもない、そういう中での武器使用基準ですから。私はそういう状況にはないと思っております。
  267. 小泉親司

    小泉親司君 いや、私は金曜日、同じ議論のまた繰り返しになって恐縮ですが、これは防衛庁長官がサピオという雑誌で対談やっておられる。サピオという雑誌で、一番最新の雑誌ですが。  そのときに、防衛庁長官ばかり指して申し訳ないですけれども、議論ですからね。そこで何と質問されているかというと、「最悪の事態を想定するのが危機管理の要諦です。万一、オランダやイギリスの連絡将校等が自衛隊の宿営地の近くで襲撃を受けたといった場合は」と質問されて、石破長官が、直ちに武器を使用できる要件を満たしている状況か否かは別として、まず退避するためのできるだけの支援を行う、その中に、例えば割って入る、つまり物理的に間に入ることによって相手の襲撃の意図をくじくというようなこともあるだろうというふうにお答えになっているんですよ。  私こんなことはあるのかと聞いたら、防衛庁長官の答弁は、武器の使用ではないけれども、例えば車を中に入れるでありますとか、武器の使用に至らないで相手の攻撃から攻撃を受けている者を隔離するというようなことを行うことは当然のことでありますと答弁されているんですね。  だけれども、実際に戦闘の場面でイギリス軍とオランダ軍が襲撃を受けている、その中に自衛隊がわっと車で入っていく、そのときに実際に攻撃を受けたら、これは反撃してもいいということになりますから、そうなったら、実際にはこれは、こういうのを私は事実上の武力行使、こういうふうなことが起こり得ると。  これは確かに可能性の問題ですよ、総理が可能性とおっしゃるけれども。それはあり得ることですから、防衛庁長官自身もあり得るお話としてしているわけですから、こういうふうなのをなぜ武力行使じゃないと、武力行使には当たらないというふうに言えますか、総理。いや、総理ですよ、時間ないですから。
  268. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) それは、今指摘されましたように、英軍とオランダ軍が襲撃されているところに自衛隊が割って入るというような地域は想定しておりません、今言っているのは。そこがそもそも大事なんですよ。そんな状況自衛隊を派遣するんじゃないんですから、その前提が崩れている。  可能性といえば、それは論理上、可能性といえば切りがありませんよ。しかし、国家権力の発動である武力行使、そうではなくて、自己の防衛のために必要な、そのための武器使用というのはいわゆる憲法で禁じている国権の発動たる武力行使に当たらないということであります。
  269. 小泉親司

    小泉親司君 私は、想定が違っているとおっしゃるのは、私におっしゃるんじゃなくて防衛庁長官に言っていただきたいと思います。防衛庁長官御自身がサピオの中で述べられているんですよ。私が言っているんじゃないんですよ。私の対談じゃないんですよ、総理。防衛庁長官が言っているんです。あなたが防衛庁長官に、いや、そんな想定はないよと言えばいいのに、防衛庁長官はそういう想定があると言っているんですよ、総理。そんな……
  270. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 石破防衛庁長官
  271. 小泉親司

    小泉親司君 いや、防衛庁長官、要らないよ。そんな、要らないって。何、委員長、駄目ですよ。
  272. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 指名をされましたので……
  273. 清水達雄

    委員長清水達雄君) ちょっと、聞いて。
  274. 小泉親司

    小泉親司君 駄目ですよ、委員長。僕の時間がなくなっちゃうじゃないですか。
  275. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 私からその設定を出したか、それとも対談相手がしたかは、それは定かではございません。  ただ、これも何度か答弁申し上げましたが、そういうふうにオランダもやられる、イギリスもやられるというような状況であるとするならば、そもそもそういうものは設定しにくい、サマワにおいてそのようなことはあり得ないということはまず大前提としてあるわけでございます。  しかしながら、それは可能性を言い出せば切りがありませんので、突如として、もう全く人知をもって予測し難いようなことが起こってそのようなことがあったとしても、しても、我々としては、武器の使用というのは刑法三十五条に基づく正当行為であって、そして緊急避難、正当防衛を危害許容要件として認められるということでございますから、そこでもしオランダやイギリスをこれは見捨ててはおかれないということがあったとしても、自分を守る、つまり自己の管理の下に入った者でない限りはそれはできないことになりますので、そうしますと、割って入るとかそういうことが考えられる。あくまで武力の行使にはならないということは、これは憲法の要請に基づくものでございます。
  276. 小泉親司

    小泉親司君 どうも総理と防衛庁長官、見解が違うようでございまして。そういうことがあり得るとおっしゃっているんですよ、防衛庁長官は。総理は違うと。そんな、おかしいじゃないですか。  じゃ、現実問題としてそういうことが私は起こり得るということなんだろうと思います。そのときに実際に割って出ると、割って入るということになったら、実際にそれは応戦の活動に当然武力行使をしないからといってもなりますから、なるでしょう、総理、うなずいているから、なるんですよ。──あなたに関係ないよ、そんなものは。総理、総理、だから、総理、明確にそこを言ってくださいよ、それ、武力行使になるでしょうと。どこが心配ないということなんですか。その根拠をお示しください、そうしたら。
  277. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 今、英軍とオランダ軍が襲撃を受けて、そこに自衛隊が割って入るというような状況に今自衛隊が派遣されている地域はないと。だから、想定しにくいと。  防衛庁長官も確かにそうだと思いますよ。これは、そういう私との意見について相違はないと思いますが、防衛庁長官がどう思っているのか、防衛庁長官に聞いていただきたいと思います。
  278. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 防衛庁長官。(発言する者あり)いや、それは大事なところだから立ってください。
  279. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 先生、それは、先生、私の言い方が悪いのかもしれませんが、人知の限りを超えてそのような想定し難いことが万が一起こった場合にはというふうに申し上げたつもりでございます。そのようなことは起こり得ない、現地のサマワにおいてイギリスもオランダもやられて、そこにおいて日本がそういう場面に遭遇するというようなことは起こり得ないと申し上げました。  しかしながら、世の中に万々々が一そのようなことが仮に起こったとしても、仮に起こったとしても、武力の行使というふうに評価されるようなことはやらないのだと。だから、割って入るとか、その車を中に入れるとか、そういうことを申し上げておるのであって、私はそのようなことが起こり得るということを申し上げたわけではありません。ただ、可能性として、理論的にそういうことは一二〇%あり得ないのかと言われれば、それはそうである。しかしながら、同時に、この法律はそういうことが起こった場合には一時休止、そして中断というものを持っておるわけでありますから、幾重にも委員がおっしゃるようなことは起こらないようになっておるわけであって、起こるという想定をおまえはしたではないかというのは、それは事実と異なるのではないでしょうか。
  280. 小泉親司

    小泉親司君 あなたが答弁されているんじゃないですか、万々が一あり得ると。そんなでたらめなこと言っちゃ駄目ですよ。  私は、ですから、そういう意味では、何遍も言っているように、こういう武力行使の危険が伴うこのようなイラクへの派兵というのは駄目なんだと。これは武器の使用基準をどんどんどんどん緩和して、どんどんやはり武力行使に道を開くようなことは私は問題だということを指摘しておきます。(発言する者あり)違うじゃないよ、僕の質問なんだから。  もう一度、もう一つだけ──あなたに時間を大分取られているんですよ。そんな、駄目だよ。もう一つだけ私、質問させていただきます。  この前、総理と参議院予算委員会でやり取りいたしまして、総理、私、この前、資料だけだったので、総理に何かさっと、私はいい加減な答弁だと思いましたけれども、そういう感じで押し切られてしまい、答えをいただけませんでしたので、私、これホームページなんです、占領軍の。(資料を示す)  この占領軍のホームページの中に明確にジャパンと書いてあるわけですね。これは、総理は、占領軍に当たらない、当たらない、繰り返し言っておりますが、私はこれは明白にジャパン、明確になっていると、連合軍の一員として。しかも、最近、これは色が違うんです、青くなっている。何で、総理、これ青くなっているかお分かりだと思いますが、ここをクリックすると自衛隊に入ってくるんですよ。自衛隊のホームページに入るんです。ですから、いかに自衛隊が占領軍の一員として深く入り込んでいるんじゃないかなというのを、この前も私申し上げましたが、この点では、私、明確に占領軍の一員だと思いますが、総理、どうですか。当たらないという見解はこれで私は崩れていると思いますが、どうですか。
  281. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 日本自衛隊は我が国の指揮下に入っているんであって、占領軍、CPAの指揮下に入っているわけではございません。
  282. 小泉親司

    小泉親司君 私はこの前も言いましたが、自衛隊の指揮は自衛隊になるのはこれは当たり前なんですよ。問題は、占領軍と自衛隊の関係がどういう関係になるのかと私は総理に質問しているんです。その総理の質問に私は何遍も言っているように、このホームページの中に明確に日本だと、占領軍そのものが日本は占領軍であるということを言っているんですから。  問題は、ここを明確にしないと、総理、幾ら主観的におれは違うんだと言っても、明確に占領軍の一員であることは明白じゃないですか。
  283. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) ああ、それは明確にするために、正式に、正確に川口外務大臣に。
  284. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) これにつきまして、我が国の自衛隊が連合の司令部の下、指揮下に置かれない、連合軍には該当しないということは国防省に確認をいたしております。確認済みのことでございます。  それから、そもそもCPAの命令十七号、これには明らかになっていますけれども、イラク活動する要員というのは、連合軍のみならず、イラク復興等に貢献をするために活動する各国の要員を含むものであって、その際に、各国の要員がイラク活動するに当たって、連合軍の指揮命令に服するということが条件になっているということではないということも申し添えておきます。確認済みでございます。
  285. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 時間がなくなりました。
  286. 小泉親司

    小泉親司君 一つだけ。まだです、一つだけ質問させてください。  私、川口外務大臣がそう言いますけれども、実際に、これが違うと、確認済みだと言うんですが、何でこれ、ホームページに今なおここにこうやってあるんですか。しかもですよ、総理、ずっとあるんですよ。しかも、先ほど言ったようにリンクしている。何でこういうことが続くんですか。  私は、そういうものであれば、総理大臣がはっきりとすべきだというふうに思います。
  287. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) いや、そのホームページは私は関係ありませんよ。どこの。
  288. 小泉親司

    小泉親司君 占領軍のホームページです。
  289. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) だから、日本とは違いますよ。日本日本の指揮下に入ると。
  290. 小泉親司

    小泉親司君 私は、そういう点では、占領軍の一員というのはこのホームページを見れば明確だと、これを認めないというのは大変おかしいというふうに思います。  以上で終わります。
  291. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 社民党の大田でございます。お疲れでしょうが、あとしばらくですので、よろしくお願いいたします。  まず最初に、総理の歴史観についてお伺いしたいと思います。これは通告はしてございませんけれども、是非ともお聞きしたいと思いますので。  実は我が国は、去る第二次大戦で二回も原子爆弾の被爆を受けまして、それから、その戦争で三百十万人の尊い人命を犠牲にいたしました。それで、財政的にもピーク時には予算の九六%、失礼、八六%を軍事費に使っておったわけですが、御承知のように無条件降伏するということになったわけですね。  それで、最近いろんな雑誌なんかの論文なんかを読んでおりますと、どうも総理には歴史から学ぶということがないのではないかと、今回のイラクの問題でそういうことが書かれておりましたので。  なぜこういうことをお聞きするかといいますと、前にもちょっと申し上げましたが、アメリカのベトナム戦争を指揮したマクナマラ元国防長官がベトナム、「マクナマラ回顧録—ベトナムの悲劇と教訓」という本の中で、アメリカの国益に基づいて、また伝統的な価値観に基づいてあの戦争を指揮してきたけれども、我々の判断が間違っていたということを正直に告白しておられるわけですね。そして、つい最近は、またドキュメンタリーに出ておられて、その中で、一番今伝えたいことは何かといったら、去る二十世紀は戦争や内戦で一億六千万の人命を犠牲にしてしまったと。したがって、この二十世紀の教訓として、これを二十一世紀に引き継いではならないという趣旨のことを言っておられるわけですね。  そういった立場からお聞きするわけですが、総理は過去の戦争若しくは歴史からどのようなことを学んでいらっしゃるでしょうか。
  292. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 極めて大きな問い掛けであり抽象的な御質問でありますので、お話も抽象的にならざるを得ないんですが、戦争ほど悲惨なものはないと思います。この戦争の反省から、日本としては二度と戦争を起こしてはいけないと。これを、第二次世界大戦後、いかに戦争を起こさないかということに日本の政府は全力を傾けてきたと思います。平和を確保して繁栄を図ると。そういう中で、世界の中ではいろいろ戦争や紛争が絶え間ない、日本はおかげさまで紛争に巻き込まれず、日本国民戦争の惨禍を受けることなく経済的な繁栄を確保することが今日まで来ているわけであります。  今回のイラクの問題におきましても、日本が戦後多くの国の援助を受けてここまで発展してきた。現在、イラク国民も苦境の中にある。そのイラク復興支援するというのは、日本国際社会の一員として責任があると感じているからこそ、このイラク復興支援を、復興イラクに安定した民主的政権を作るということは国際社会の責任であり、なおかつ、国連加盟国の日本としてもその要請にこたえるのは必要であろうという観点から、このイラクに対しまして復興支援人道支援をしていこうという決意を表明して、実際に行動に移しているわけであります。  私としては、今や日本の平和と発展というのは日本一国だけで確保されるものでもないし確保できるものではない、やはり世界の平和と安定の中に日本発展と繁栄があるんではないかという観点から、世界のいろいろな紛争問題の解決に、日本武力行使をしない、戦闘行為には参加しないという範囲内でできるだけのことをしていかなきゃならない、これがやはり歴史の教訓ではないかなと思っております。
  293. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 そうしますと、今回イラク自衛隊を派遣するということは、二度と戦争を起こさないという歴史の教訓から出てきた考えと見てよろしゅうございますか。  それともう一つは、今もおっしゃったんですが、総理のお話を伺っておりますと度々平和という言葉が出てまいりますけれども、ちょっと私なんかと違うのかなという感じがしないでもないものですから、総理がおっしゃる平和というのはどういうことでございますか。
  294. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 平和というのはやはりあらゆる施策の前提でありますから、平和を確保しないと、福祉政策にしてもあるいは国づくりの施策においても進展できない。一国の独立、安全を確保しながら平和を確保していかなきゃならない。いわゆる平和というのはあらゆる施策の前提であります。  その平和というのはどのように確保されるかというのは、人それぞれによって考えもあるでしょう。また、国によって違っていると思います。中には、軍隊を持たないで平和を確保しようという人もあるでしょう。  しかし、常に歴史を見て、侵略勢力が存在しない時代はないんだ、侵略を抑止するために自国に治安部隊なり軍隊なり組織的な実力部隊を持つのは必要だというふうに考える国の方が圧倒的に多いと思っています。  私は、何もそういう侵略勢力に対する備えをしないで平和が確保されればこれはいいと思いますが、世界の実情を見ると必ずしもそういう状況ではないと。いついかなる時代におきましても、日本に対して混乱をさせよう、攪乱をしよう、あるいは脅迫しようという勢力がないとは言えない。そういう脅しに屈しないで日本国民が平和の中で諸施策を推進できるような体制を整えていくということが極めて重要である、だからこそ日本におきましても自衛隊が必要だということで自衛隊を保持しているわけでありますので、非武装中立論者の考えとは違うと思いますが、私は、非武装中立というのは、もし実現した場合に、そういう攪乱をしよう、混乱を起こさせよう、脅迫をしようという勢力に対しては極めて脆弱な国になってしまうのではないかという点を危惧しております。
  295. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 先ほどの御質問にまだお答えいただいていないんですが、今回自衛隊イラクへ派遣することは、総理が歴史観をお持ちにならないからそういうことをなさるんだという意見があるわけなんです。それに対して、総理は歴史を学んでいるからこそイラク自衛隊も派遣するんだというお考えですか。
  296. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 私は、歴史に学ぶということは極めて重要なことだと思いまして、私もいろいろ歴史書を読むのが好きであります。  そういう中にあって現在も、先ほどお話ししましたように、日本一国だけでは平和と繁栄は確保できない、国際社会の中の平和があって日本発展が図られるんだという観点から、今イラク復興支援に何が必要かと。じゃ、日本日本一国だけのことを考えて果たして憲法の前文にある精神が生かされるのか。困難な仕事だと、危険を伴うかもしれないから、そういう危険を伴う仕事はよその国にやってもらおうと、全く危険が伴わなくなったら日本は出ていこうという考えで、果たして国際社会の中で信頼をかち得ていくことができるかどうか。そういう点も考えなきゃいかぬということで、今回の自衛隊派遣するからすぐ戦争に導くんだと、戦争に行くんだというとらえ方を私はしておりません。今までの議論の中で、自衛隊が海外に出動するならば、これはもう武力行使につながるんだという見方を私は取っておりません。  過去の憲法の議論におきましても、いろんな積み重ねで、自衛隊が海外に行くのは、これは派兵だという議論が一時起こってまいりましたけれども、いや、派兵というのは武力行使をするための言葉であって、そのPKO活動に行く自衛隊というのはたしか派兵ではなくて自衛隊を派遣するということになっていると思います。そういう、一見よその国から見れば派兵と派遣はどう違うのかと言われれば極めて理解しにくい定義だと思いますが、日本はそういう憲法の制約といいますか、憲法の枠内で考えながら、戦争の反省をいかに実際の平和維持に生かしていくかという議論を積み重ねてきたわけでありますので、今回も一方では、確かにイラクへ行くというのは戦争に行くんだというとらえ方も一部にありますが、政府としては、これは戦争に行くんではない、イラク復興支援人道支援のために行くんだということで、自衛隊の諸君もそういう理解の下に今行っているわけでありますので、決してこれが戦争に結び付くものではないと。むしろ、国際社会の中での日本としての責任を果たす、それが日本の平和と繁栄を確保する道だということで、私は現在の状況においてイラク自衛隊を派遣することを判断した次第でございます。
  297. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 先ほどもお話がございましたけれども、人道支援のため、あるいは復興のためとおっしゃっておりますけれども、現在、イラクの方では何ら罪もない一般市民が二万人から五万人、正確な数字は分かりませんけれども、というような状況で犠牲になっているわけですが、本当の意味人道支援ということをおっしゃるのであれば、この人たちのことをまず考えるということが大事ではないかと私は思うわけでございます。  まあそれはいいとして、次の質問に移らしていただきますが、これは前回委員会外務大臣にはお伺いしましたけれども、どうしても総理のお考えを伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。  今回のイラクへの自衛隊の派遣との関連で、総理は日米同盟が非常に大事だと、我が国の国益にかなうためにも日米同盟をこれからも大事にし、強化していかなくちゃいけないとおっしゃっているわけです。  そのことは分かるつもりです。私自身、日米の友好関係というのは極めて大事だと認識しておるわけなんですが、私なんかから見ますと、日米同盟の義務というもの、日米安保条約に基づく義務というものは我が政府はちゃんとやっているというふうに思うわけなんですね。例えば、巨大な基地を提供していたり、特に財政面からいいますと、思いやり予算でも平成、二〇〇三年度で二千四百六十億円も思いやり予算で単年度で出しているわけなんですね。そうしますと、沖縄なんかにいる海兵隊とか米軍に対するもてなしというのはもう至れり尽くせりという感じで、アメリカへ行ってお話ししますと、兵隊を減らしてくれと言うと、我々が減らそうとしても、兵隊たちは沖縄は世界一住みよいところだから帰る気はないよなんて、ということを言うんですね。  ですから、そういう問題で、私は、思いやり予算にしても、実は一九七八年から二〇〇三年度までの思いやり予算の総額は四兆二千三百九億円、それからその思いやり予算を含めて在日米軍五万人足らずを駐留してもらうために日本政府が駐留費として払ったお金の総額は十一兆七千八十二億円、十一兆という巨額のお金になるわけですね。ですから、それで十分に日米安保条約の義務も果たしていると思うんですが、もしこれ以上イラクに兵隊、自衛隊を派遣してアメリカ側を支援するとかということをやると、一体どこまで支援すればこの日米安保条約というのは達成されるのかという考え持たざるを得ないわけですが、その辺について総理はいかがお考えでしょうか。
  298. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 今回のイラク自衛隊を派遣するということの根底は、国際協調体制の中で日本が何をなし得るかということの中で考えているわけであります。言わば、国連決議によって加盟国にイラク復興支援を要請してきたと。そういうことの中で、それでは今の日本の国力からこのイラク復興支援人道支援に何ができるかということで、よくアメリカ追随とか小泉内閣を批判する方は言いますが、決してそうではなくて、国際協調体制を果たしていくことが日本の国益にかなうと。その国際協調体制というのは一体何だろうかと。イラク復興支援を失敗させていいんだろうかということについては、これは国際社会ほとんどの国がイラク復興支援を失敗させてはいけないという認識だと思います。  そういう中で、やり方があると思います。アメリカイギリスのように、それじゃ日本イラクの治安を回復するためにテロ掃討作戦等、治安活動をするかというと、日本はそういうことはいたしませんと言っているわけです。日本のできることは復興支援人道支援ですと。極めて日本にできること、日本国民に理解されるような復興支援人道支援をしていかなきゃならないという前提でやっているのであって、アメリカと同じにやれ、イギリスと同じにやれなんということはとても日本としてはそういう気もありませんし、現にしていないわけです。極めて日本活動できる分野はかくかくしかじかですということをはっきり連合当局にも示しているわけでありまして、これは日本独自で国際協調体制を図るために何ができるかという中で責任を果たそうという行動であります。  ですから、その点についてはアメリカとかイギリスとやり方は全然違うのは私は日本日本の事情があるからでありまして、韓国も部隊を派遣している、あるいはヨーロッパの諸国も派遣している、あるいは日本よりももっと経済的に弱い国々も派遣している、三十か国以上の国々がそれぞれの支援活動をしているんですが、その国と日本というのは同じである必要はないし、得意分野、不得意分野があります。それは、日本日本にできること、日本に、日本の能力にふさわしいことをやっていく必要がある。その中の一環が今回の自衛隊派遣なんです。自衛隊派遣がすべてじゃない。自衛隊の派遣、自衛隊活動というのは極めて限られた一部であります。そのほかに、資金的なものでも物的な支援でも、私はほかの国にはできない日本活動があると思います。  現に、この開戦に対して米英軍と一線を画したフランスにしてもドイツにしても、日本となら一緒にやっていこうということで、今現に具体的にフランスと何をやろうか、ドイツと何をやろうかという話合いが進んで、どういう協力ができるかということは既に具体的な計画が進んでおります。同時に、アラブ諸国の間でも日本というのは非常に、米英に対して違う感情をアラブ諸国は持っている。その中で、アメリカとは協力できないけれども、日本とは協力していこうという国とは日本もアラブ諸国と積極的に協力していこうと、そういうことに際して、エジプトとの間でも現に医療活動なんというのにおいては具体的に今進展しております。  そういう点において、日本としてこのイラク支援というのは国際社会の中でどういう責任を果たそうかということであって、自衛隊はあくまでその一部であります。自衛隊活動がすべてじゃないんです。すべてどころか一部であります。これから自衛隊員以外に、政府職員なり民間職員なり、あるいは民間企業なり、どんどん出ていってもらうような状況が出て初めて私はイラク復興支援が成功につながっていくんじゃないかと思っております。
  299. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 アメリカ従属とよく言われるわけですが、カナダはアメリカとの関係、非常に密接ですが、冷戦時代アメリカとソ連の間に挟まれた地政学的、軍事的要衝として米軍のミサイル基地を置き、かつ、アメリカとの深い経済的関係にあったにもかかわらず、アメリカのベトナム戦争政策に反対し、アメリカに先んじて中国を承認し、アメリカが敵視するキューバとも友好関係を持って自主外交を展開してきました。  私は、総理が今御説明のように、主体的になさっておられるということであれば、率直に先ほどの思いやり予算の問題とか安保体制の問題についてアメリカに申し上げて、申し上げられるよう要望いたしまして、終わります。
  300. 山本正和

    ○山本正和君 今日は七十代後半の者が次から次に現れて質問いたしますが、ひとつよろしく。  金曜日の日に、総理が退席された後、防衛庁長官と大分やり合いいたしましてね、そこで、総理がお見えになったときに念を押しますよと、こういったことからまず始めたいんですけれども、ちょっと先ほどの長官の答弁の中にも万が一という言葉がたくさん出てきたんですけれども、総理はそういうことは想定していないという立場で物を言っておられる。しかし、万が一ということはあり得ると、こういう話なんですね。  それで、それをめぐって私がいろいろお話しする中で、いろいろあったと、今まで。海外に自衛隊を出してきたと。しかし、今回の場合は今までと違いはしませんかと、装備においても決意においても。また、本当の話、千人針持って行った人もたくさんおるんですね。だから、ただならぬものがやっぱり今度は行ったじゃないかという意味で、私は何遍も防衛庁長官に、今度は違うんですよということを率直に国民の皆さんにも言って、理解を得て行くべきだと私は言ったんですけれども、防衛庁長官は、いや、違いは法律が違うんですから違うと、こう言う。私は、そうじゃない、ただならぬものがあると、こういうことを言っているんです。そこはなかなかしっかりしていないんだけれどもね。  私は、やっぱり今度行かれる自衛隊の諸君というのは今までとはまた違ったただならぬものがあると私は思うんです。その辺は、総理、どうお考えですか。
  301. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 確かに、PKO軍というのは存在していませんし、今までとは違った状況にあると思います。しかも、覚悟においても、必ずしも安全でないかもしれない、危険かもしれないという意識は今までと違って確かにあると思います。そういう中での活動ということを考えますと、相手イラクにおいても安定した政権ができていないという状況を考えると、確かに今までとは違った状況だと思っております。それだけに、意識においても緊張感というものもやっぱり違いがあるのではないかと思っております。
  302. 山本正和

    ○山本正和君 そこで、私は申し上げておきたいのは、これは何度言っても、現在の国会の状況からいえば、野党、与党の数からいっても今の流れからいっても、これは法案は通っていくだろうと。今日はどうも採決と、こうなってくるようですけれども。私は、そこで思うのは、これは本当は、昔は野党が少数でも、場合によってはこの種の法案だったら参議院で七十二時間ぐらい徹夜やって大騒動してというようなのもあったんですけれども、このごろはそういう時勢、情勢じゃありませんからね。本当からいえば、大臣の答弁の中でも、もしこれも経過の中で答弁されたことのようなことがあれば、その大臣一言の答弁で一日ぐらい止まるというような答弁がたくさんありましたけれども、まあ時代の差ですからこれは余りそれ以上追及しませんけれども。  しかし、いずれにしても私は、ここまで来て一番心配なことは、今からいろんな状況が起こる、一番いいのは、それは成功していただくことです。ちゃんとイラクが安定して、自衛隊も無事任務を終えて帰ってくる。これなら本当に万々歳です。私ども反対しておった立場の者も本当に良かったと思う。しかし、もしものことがあった場合を一番心配するわけですね、私どもは。ですから、そのときのもしものことについていろいろと質問をしているんですけれども。  そこで、やっぱりここははっきり総理からお答えいただきたいと思っているのは、戦闘状態にもしなったら、現地が、そのときに撤退するという決定をするのはどなたと昨日聞いたら、それは総理大臣ですと、内閣の責任者です、こういうことを昨日、いや金曜日の日に防衛庁長官が答弁されたんですね。位置の変動は長官の責任でもってやりますけれども、全面イラクから帰るというふうなことは総理の責任でございますと、こう言った。私はそのときに、やっぱりそうはいっても、兵隊というのをいったん出したら撤退するぐらい難しいことはない。過去の戦争の歴史は全部そうです。  ちょっと私は金曜日の日もお話ししたんですけれども、私の父親はシベリア出兵へ行っておった。四年間やったんですけれども、初めから合計でいくと。一番厳しい二年間おりまして、全身凍傷で帰ったんだけれども、これは撤兵の指示が遅れたんだ。外国はどんどん要領よく、もうイギリスは真っ先に帰っていくしね、アメリカもちょっとおったけれども帰っていくし。もう日本だけひどい目に、おった、最後まで。撤兵するぐらい難しいことない。  私は今度の特措法の審議の過程からいって、総理が言っておられた、何といってもこれは人道支援なんですと、国連みんなで何とかイラクを助けようと言っているんですと、そのことのためにイラク自衛隊を出すんですと、だから絶対戦争行為させないんですと言っておられた。もしもそういう状態になったら、これはもう総理は国民に対するそういう今までのいろんなあれからいって、たとえどんなことがあろうと、もう戦闘状態になったら帰す、そこのところだけを今日明言していただきたいと思うんですけれども、それはいかがですか。
  303. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 自衛隊の諸君がイラクに赴くのは復興支援活動人道支援活動でありまして、そういう活動が困難だという状況にならない地域に派遣するわけであります。仮にというか、万一のお話だと思うんでありますね。そういうことについては、この法律の想定にない事態が起こった場合にはこれは十分撤退するということも考慮の中に入れなきゃならない。その判断は、現実にどういう状況かとよく見極めなきゃならない。その点についての責任は私も十分認識しているつもりでございます。
  304. 山本正和

    ○山本正和君 そこのところを総理が、私ははっきり言っていただきたいんですよ。  まず、万一の事態と私は言っていますけれども、そういうイラクがもう再び戦闘状態に入るとか、大きな武装集団がどんどん襲撃してくるとか、大きなデモが起こってそこから暴動になるというふうなことは願ってもいないですよ。しかし、もしそうなったら、これは明らかに今度の法律に基づく派遣と違うんだから、そういう事態になったら帰しますと、これはやっぱり総理から言っていただきたいと私は思うんですが、いかがですか、そこのところは。
  305. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) それはいろんなケースが起こり得ることでございます。ただ、そういうような近傍で、近くでということでございますが、そういうような状況になれば一時中断、退避するなどして指示を待つということになっております。  ですから、そういうような状況が近くで起こるようになれば、とにもかくにも避難をするのだ、中断をするのだ、安全な地域に行って防衛庁長官が例えば実施区域、つまりA県というのはもう戦闘地域であるからB県と、非戦闘地域に移せとか、それはもう例示の話ですが、そういうような指示を待つこともあるでしょう。あるいは、本当に全土がそうなっちゃって、そんなところ、もうそんな安全なところなんかどこにもない、非戦闘地域なんかどこにもないということであれば、それは撤退ということもございましょう。  しかしながら、そこで、近傍で戦闘行為が行われたような場合にどうするかということもそれは個々具体的に判断をしなければいかぬ。しかし、それが戦闘行為なのかどうなのかということはすぐは分かりませんから、いずれにしてもそこは抑制的に判断をすべきものだと、指揮官が、ということを累次答弁申し上げているとおりでございます。
  306. 山本正和

    ○山本正和君 総理大臣を補佐する立場で言うのはいいんですけれども、私が今お聞きしていることはそういうことじゃないんです。それはもうこの前、六十分間にわたってしっかりやり合いしましたからね。そうじゃない。私が今言っているのは、そういう事態を受けて、しかも防衛庁長官も恐らくこれは戦乱場になったと、こういう報告があるはずです、そうなったら。国際社会もそれ認めるわけですからね。その段階ではもう地域、逡巡することなしに、法律の目的に反するからということで直ちに撤退すると。これがあるとないんで、国民の皆さんに総理が言われると言われないのとで、今の自衛隊の皆さんも家族の皆さんも国民の皆さんも気持ちが違うと思うんですよ。そこを私は総理に言っていただきたいと、こう言っているんです。助言を得るのは当然ですよね、大臣防衛庁長官
  307. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) それはこのイラク特措法に基づいて自衛隊の諸君は派遣されているわけでありますので、この法律にないような状況が出てきた場合、それは総理として適切な判断をしなきゃいかぬと思っております。
  308. 山本正和

    ○山本正和君 本当に今の答弁で私もひとつ安心いたしました。  そこで、今度はそういう事態にならないためにというか、私は別にこの法案に反対なんですけれども、行った以上は成果を上げてほしいということがありますから、ここでちょっと外務大臣も含めて、我が日本の外交の立場から申し上げたいんですけれども、正直言って、よその国の軍隊がやってきて攻め上げられるとだれでも感情的にかっとなるんですよ、どこの国でも。  日本がかつて韓国に対して併合したという問題だとか、あるいは満州を占領したとかいう問題ありますね。要するに、いずれにしても他の国の軍隊が来る場合には必ずそこに衝突が起こる。当たり前なんです。戦おうと思うんですね。これは私がこの前申し上げましたけれども、戦争終わって私らは、そしたら若い者集まって、国軍がつぶれたけれども、もう一遍国軍作ってアメリカと、やっつけようというようなたくらみがあって、その謀議に私も加わったことがあります。それぐらいのもんですよ、国家というのは。  私は、そこで申し上げたいのは、だって日本でも戦争に負けたときに、何にも罪もとがもない年寄りと子供と女の人が原爆をばあんとされて一遍に二十万も三十万も殺されたんです。人道に対する罪、これがもうない。アメリカは特にね。そうしたら、アメリカの兵隊来たら、敵ですから皆殺されかねない、本当からいえば、親の敵。なぜやらぬかったかといったら、天皇陛下から耐え難きを耐え、平和の世の中を作ろうという詔勅を出された。国民はみんな戦争終わったんだなというので、そういう恨みを忘れたわけですよ。  ところが、イラクはいまだ戦争が終わったか終わっていないか分からない状態にあると私は思うんです。だから、フセインは捕まえられたけれども、何も宣言していない。いやしくも、何といってもフセインがその国の、何というか、責任者、代表者だったわけですからね。それは捕まえたと。  しかし、イラクという国は独裁国家であって、めちゃくちゃしたかもしれぬ。それを他の国であるアメリカイギリスがやってきて占領した。徹底的な爆撃をやって、たくさん子供たちも死んだ、女も子供も死んでいる。そういう中で、国民の間にはどうなんだという気持ちがあって私当然だと思う。そこが解決しないのが最大のものだ。どうしたらいいかといったら、やっぱりイラクの人たちが戦争は終わりましたと宣言する、その組織がないと私はできないと思うんですよ。だから、アメリカは必死になって今政府を作ろうとしている。六月になってできるかできないか分かりませんよ。  私は、だから、日本がやっぱり今どうしても国際社会で言ってほしいことは、早くイラクに正統政府を作りましょうと。イラク国民みんなが、これは戦争負けたけれどもイラク国家国民を代表する政府ができましたという自覚を持ってもらおうとする、それが何よりも先だと私は思うんですよね。  ところが、どうもそれよりも、今はもうアメリカは、もう兵隊が殺されますから、殺されたらまたかっとなるんです、だれでも。だから、アメリカが占領政策に、本当にきちっと占領政策を心得てやっておったのか。ある過去の戦争の歴史の中でイラクに対してどうしていたのかについて、私は国際社会の中でいろんな異論、意見があると思うんですよ。それをやっぱりちゃんと出すべきだと。  日本としては、これぐらい敗戦の、また侵略戦争の歴史を持っている国ないんですから、日本の体験をアメリカに言うべきですよ、私は、きちっと、なぜできないんだということを。それで、やっぱりアメリカに対して、私は、日本政府はそういうことをしなきゃいけないし、それからあわせて、今度イラクにいよいよ自衛隊を、自衛隊というのを、我々は自衛隊と言っていますけれども、よその国は皆軍隊と言っていますよ、アジアの諸国も皆軍隊と言っている、日本の軍隊を出すんだということについて、やっぱり了解を得るための、理解を得るためのきちっとした話合いをすべきだと思うんです。  幸いに、総理特使でヨーロッパへ派遣されました。私はあれを見てすばらしいことをやったと思った。  ところが、ちょっと聞いてみると、隣の中国やフィリピンやなんかへ行ったんだろうかと。私、分からない、知らぬ、聞いていないんですよね。本当は、こんなことはもう外務大臣外務省が総理の特使を出す前にぱっとやらなきゃいかぬですよ、自衛隊のこんな法律を作るときにもね。だから、ちょっともそういうことに対する思いやりが足りないようなところ、気が気でない。だから、日本が本当に善意を持ってイラク復興に、人道支援のために自衛隊が行くんですよということを本当に言うならば、そのことを世界じゅうに知ってもらうための努力をしなきゃいけない。  ですから、二つ私は申し上げたんですけれども、第一点は、イラク国民が、戦争が終わったと、新しい国がここにできましたということをするために一日も早くやれということをアメリカ並びに国際社会日本から主張してもらうということと、それから二つ目は、アジアの国を含めて世界じゅうの国に日本自衛隊はこうなんですよということをきちっと説明してもらうと。そのために外務省は総力を挙げると。これらの、この二つのことは是非やっていただきたいと思うんですけれども、この辺について御見解願いたい。
  309. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 今の御指摘に対しまして、各国に理解を求める努力を今までもしてまいりました。橋本元総理だけではございませんし、国連に対しても中山元外務大臣、あるいはアラブの周辺諸国に対しては高村元外務大臣、あるいは逢沢副大臣等、外務大臣行けない地域については派遣して、日本の立場なり方針に理解を求める努力をしております。  アジアの諸国に対しましても、昨年、ASEAN諸国全首脳が東京に来て会議が行われた際にも、私からじかに日本イラクに対する考え方を説明し、御理解を得られたと思っております。  周辺諸国それぞれの関係者を通じましてこれからも、日本イラクに対する復興支援活動いかなるものか、また、自衛隊の派遣に対しまして、どういうものかということについては十分説明していきたいと思っております。
  310. 山本正和

    ○山本正和君 ひとつ何分ともよろしくお願いしたいと思います。  そこで、もう一つだけ最後に、国民の皆さんに対して総理から説明していただきたいと思うんですけれども、やっぱりこれは、日本国憲法の五十年間の中で来た流れの中で、どうしても今もう一遍国民が考え直さざるを得ない国際情勢の移り変わり、あるいは歴史の転換というものがあると思うんですね。それを、何はともあれ憲法の部分に全然タッチせずにずっと来て、どうしても、いや、これは憲法違反じゃないんですということを言い続けてきたわけですよ、これは政府も国会も。そこからくる矛盾というか、これは今日の冒頭にもいろいろと御質問がありましたけれども、私は、国民が、憲法がどうもおかしいぞと、憲法を読んでも実態と違うぞと。しかも、それをどうも国会も政府も何か言葉を巧みに操ってずばっとこぬよとなると、国が私は乱れると思うんですよ。間違ってもいいから、今の実態に合わせるなら合わせるで、こういうふうに変えましょうと、こうしないとこの国はもちませんということを、仮に、それこそ総辞職を、総辞職したらおかしいですよ、国会議員が全部、議員の人たちが不信任食らうというぐらいの気持ちをしてでも、本当にこの国の実態に合わせて国民に提起すべきだと私は思うんですよ。それをずっとやらずに五十年間来たんだ。  私は、そうは言っても、一九六〇年から社会党に入って護憲でずっと頑張ってきましたから、おまえらが一番悪いんじゃないかといっていつもしかられるけれども、しかし、私どもが思った護憲というものと今の実態と違ってきているわけですよ。やっぱりここできちんと本当に国民みんなが、この新しい二十一世紀の中で日本の国の憲法はどうあるべきかということを言っていなかった。そこからくる様々な混乱が今の世相を悪くしている、政治の世界も悪くしていると私は思うんですよ。それから、子供が信用せぬですよ。先生、そんなこと言うけど、憲法に書いてあることと違うじゃないですかと、このように言われたら、子供に対してどうやって説明しますか。  一番根っこのところをやっぱり私どもやってきていなかったということに対して、これは別に、総理の今の時代に出てきたということでのその宿命なのかもしれませんけれども、やっぱり国民の皆さんに、今の政治を代表する立場から率直にこのことに対しておっしゃるべきだと私は思うんですよ。その辺の問題についていかがですか。
  311. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 今まで憲法改正の議論が幾度か出てまいりましたけれども、現実を考えますと、国会の三分の二以上の賛成を得て発議しなきゃならない。そうすると、国民投票にかける前から、もう国会勢力の中で絶対憲法改正しちゃいかぬという勢力分かれますから、それを持ち出せないということが現実の姿だったと思いますね。  そういう中で、最近、与党の自民党も、それから野党第一党の民主党も、やはり新しい時代にふさわしい憲法改正すべきだという議論が盛り上がってきたと。公明党も、これから憲法改正の問題についても議論していこうという機運が出てまいりましたので。今言ったように、確かにあいまいな部分がたくさんあります。自衛隊は戦力ないと。中学生見れば、戦力のない自衛隊あるかと。これ不思議に思うのは当然ですよ。で、日本では軍隊と言っちゃいけない、しかし外国へ出ればみんな実質上軍隊と思っている。こういうあいまいさはあるんです。だから、そういう点も含めて、私は、各党が真剣に、新しい時代に合った、だれもが理解しやすいような分かりやすい言葉で憲法を作ってみようと、新しい憲法を作ってみようという考えが出てきたというのは大きな前進だと思います。  自由民主党も、来年秋ごろには自民党が考える憲法改正案、そして翌年、二〇〇六年には民主党も民主党が考える憲法草案を出すという状況になってきております。そういうことから、国民が関心を持って、より理解のしやすいすっきりした姿の憲法というものは日本が持つべきだなと思っております。
  312. 山本正和

    ○山本正和君 ありがとうございました。  時間で終わります。
  313. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。  お諮りいたします。  イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動実施に関し承認を求めるの件につきましては、以上をもって質疑を終局することに賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  314. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 多数と認めます。よって、本件の質疑は終局することに決定いたしました。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  315. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 私は、民主党・新緑風会を代表して、イラク特別措置法に基づく自衛隊派遣の国会承認を求める件に対し、反対の立場から討論を行います。  まず、衆議院審議において、政府・与党は暴力を伴う強行採決という手段を取りました。このような非民主主義的かつ卑劣なやり方でイラク自衛隊を派遣しようということには憤りを感じる次第です。  また、政府・与党の傍若無人なやり方に抗議するために、民主党はやむなく採決を欠席しましたが、これをもって小泉総理や与党は、野党の審議拒否というレッテルを張ろうとしました。事実関係は全くその逆さまで、とりわけ昨年の基本計画の閣議決定以来、我々民主党こそ、閉会中審議を含め徹底審議を求めてきたという事実を改めて明確にします。  国会審議を通じて、イラクへの自衛隊先遣隊の調査がいかにずさん、かついい加減なものであったかが明白になりました。  陸上自衛隊先遣隊の到着した直後、サマワでは直接選挙の実施を求めるデモがあったということです。現地の情勢は極めて不安定であり、今、平穏であってもいつ変化が生じるかは不明の状況ですが、政府の情報収集、分析、政府内の伝達能力は極めて低レベルであり、しかも常に情報を国民から隠ぺいしようとする体質が顕著です。  今、日本にできる貢献は、まずイラク人による統治機能の再構築のために、アメリカイギリスに働き掛けを強めながら、国連主導の下でその環境整備を行うことだと思います。政治プロセスを進めて、早期に真にイラク国民が選んだ暫定政権を樹立する道筋を示すことは迂遠のようですが、結局はイラクの治安回復への一番の近道ではないでしょうか。  自衛隊の皆さんに対して、心から生命、身体の無事をお祈りいたします。  以上、国民の信託を受けてきた私たち国会議員は、まことの勇気を示し、一人一人が自身の良心に従って反対票を投じるべきであることを切に訴え、私の反対討論を終わります。
  316. 高野博師

    ○高野博師君 私は、自由民主党・公明党を代表して、ただいま議題となりましたイラク特別措置法第六条に基づき、自衛隊の対応措置の実施に関し承認を求める件について、賛成の立場から討論を行います。  イラクへの自衛隊派遣承認に賛成する理由を三点簡潔に述べたいと思います。  第一の理由として、国際の平和と安全にとり、今や最大の脅威となっているテロリズムの根絶に我が国が協力することは、国際社会の一員として当然の責務である。また、イラクを含む中東の平和は我が国にとり、石油の安定的確保という観点からも国益に合致する。さらには、北東アジアの不安定な状況からも、日米の高い信頼関係を維持することは極めて重要である。  第二は、我が国が人的貢献として自衛隊を派遣することは、国連安保理決議一四八三号及び一五一一号に基づくものであり、また憲法の枠内において人道復興支援に従事するもので、危険も予想される厳しい環境の下では、衣食住など自己完結型のかつ防御装備を有する自衛隊しかあり得ない。自衛隊は、給水や浄水、学校や病院の修復、食糧や医薬品の輸送などの人道活動に従事するものであり、派遣する地域は非戦闘地域の比較的治安の安定している地域である。  第三は、自衛隊の派遣は、イラク復興支援全般の一部分であり、治安が改善され、政情が安定した段階では、政府や民間のNGO等の幅広い協力活動ができる状況になるまでの限定的なものである。将来的には、経済、環境、教育、文化等の総合的、長期的な支援を行うことになる。  以上が賛成の理由でありますが、政府は、隊員の安全確保を最優先すべきであることは言うまでもなく、治安に関する情報収集を始め、万全の対策を取られることを強く要望し、賛成討論を終わります。
  317. 小泉親司

    小泉親司君 私は、日本共産党を代表して、イラクへの自衛隊派兵を承認することに反対の討論を行います。  今回の自衛隊派兵は、戦後初めて戦争状態にあるイラクへ武装した自衛隊を派兵し、米国の、米英の軍事占領支配に加担するものであります。私は、アジアと世界の平和を希求する日本国憲法を真っ向から踏みにじるこの歴史的暴挙に断固抗議するものであります。  反対の理由の第一は、自衛隊が米英による無法な戦争と占領に支援、参加、合流するものだからであります。  政府は占領軍の指揮下に入らないと言ってきましたが、連合軍司令部や米軍の文書で自衛隊が占領軍の指揮を受けることが明記されています。しかも、自衛隊が行う安全確保支援活動は、家屋を焼き払いイラク国民を不当に逮捕、拘束する非人道的な米英占領軍の軍事作戦を支援するものにほかなりません。さらに、武器弾薬を輸送しないということも、実際には米兵が携帯する機関銃や無反動砲、携帯用対戦車弾なども輸送することが政府答弁からも明らかになったのであります。  このような自衛隊活動は占領軍そのものであり、占領と交戦権に関する政府見解に照らしても、憲法違反であることは明白であります。  第二に、あらゆる点から憲法第九条に真っ向から反するものだからであります。  政府は非戦闘地域自衛隊を派兵すると言いますが、バグダッド飛行場を離着陸する米軍輸送機が繰り返しミサイル攻撃を受けているように、依然として戦闘状態にあることはだれの目にも明らかであります。このような戦闘地域への派兵は、自衛隊武力行使に道を開くものであり、絶対に許されないものであります。  武器使用について、総理は、正当防衛であって武力行使ではないと強弁していますが、従来政府が示してきた、憲法違反の武力行使にならないように、いかに身に危険があろうとも説得や警告射撃などの手順を尽くすといった抑制的な基準を放棄し、警告射撃なしに発砲できるようにしたことは、憲法違反の武力行使になるおそれを一層増大させることになるのであります。  最後に指摘したいことは、政府が虚偽とごまかしで自衛隊派兵を強行したからであります。  我が党が入手した防衛庁の文書によって、政府が先遣隊の調査開始の前に派兵ありきの報告を作成してきたことが明らかとなりました。いい加減な報告で国会を欺いたことは重大であります。  また、大量破壊兵器がなかったとのアメリカ調査団長の証言によって、総理の大量破壊兵器があると断定した根拠が根底から覆ったにもかかわらず、総理はその論拠すらまともに示そうとしなかったことは言語道断であります。  虚偽とごまかしで、日本が侵略戦争に突き進んでいった過去の過ちを二度と許してはなりません。イラクへの派兵の中止、イラクからの自衛隊の即時撤退を強く要求して、討論を終わります。
  318. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 私は、社民党・護憲連合を代表いたしまして、今回審議されましたイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動実施に関する特別措置法による自衛隊への派遣命令に関する国会承認に反対する立場から討論を行います。  反対の理由は幾つもあります。まず第一に、自衛隊イラク派兵は、その根拠も薄弱な上、拙速に過ぎると思われるからです。しかも、米英軍の対イラク先制攻撃の大義自体が情報操作による怪しいものだということが判明しています。大量破壊兵器があって、独裁者フセインがそれを使用するとアメリカに危害が及ぶ、しかも危険は差し迫っているといった大義名分は、今や有名無実であり、イラク戦争の正当性も世界じゅうから疑問視されています。正当性のない戦争支援することは更に悪いことです。そのことは、国連加盟国百九十三か国中、アメリカ日本を含めわずか三十五か国しか軍隊を派遣してこの戦争に加担していないという事実からもはっきりします。  それにもかかわらず、小泉政権と与党は、中長期的展望に立って国益を考えるのでなく、北朝鮮が攻めてきたときアメリカ以外だれが守ってくれるのかと言って、目先の日米同盟に係る利害関係への思惑から、十分に熟慮することもせず、あえて真っ先に対米支援に踏み切ってしまったのです。軽挙妄動と言うしかありません。  言うまでもなく、今回、武装した自衛隊をいまだ戦闘地域とされているイラクへ派遣することは、本イラク特措法の本旨に違反することは明白です。イラク特措法は、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域に限って自衛隊の派遣を認めているからです。  改めて指摘するまでもなく、武力行使も武力による威嚇も禁じている憲法を始め、日米安保条約及び国連憲章にももとる不当な行為です。あまつさえ、本参議院がかつて全会一致で採択した自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議をも踏みにじるものと言わねばなりません。  武装した自衛隊の海外派兵は、戦後この方多くの国民が誇りを持って大事にしてきた憲法を危機に陥れ、日本の歴史に一大転換を画す極めて重大な問題です。このような国の基本的根幹にかかわる問題を粗略に扱うことは許されません。しかるに、政府・与党は何ら過去の歴史から学ぶこともせず、衆議院のイラク特別委員会で十分な慎重審議を求める野党の声に耳をかさず、理不尽にも強行採決をなすといった暴挙を犯したのです。  我が社民党は、到底かかる国会軽視の暴挙を容認することはできません。また、個人的にも、さる大戦で銃を取って戦場に出て、無数の罪もない人々の死を目の当たりにして戦争の愚かさを身をもって体験した者として黙認するわけにはいかないのです。戦争から生き延びた者の義務として、私は死者たちの声なき声をこの国政の場できちっと伝えなければならないことを申し上げ、本承認案件の反対表明とします。
  319. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動実施に関し承認を求めるの件を承認することに賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  320. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  321. 清水達雄

    委員長清水達雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十二分散会