○遠藤(乙)
委員 公明党の遠藤乙彦でございます。
連日の早朝からの予算
委員会審議、大変にお疲れさまでございます。もう少しですので、頑張っていただければと思います。
私は、特にきょうは農業
構造改革を
中心に、
総理のお考え、また、
日本政府のお考えを伺いたいと思っております。
私も、以前は
東京ベースの選挙区でございましたが、一回お休みをしまして、今回、北関東にコンバートして復活をいたしましたもので、当然、農業が重要な分野でございますし、私も強い関心を持ちまして、特にこれから
日本の再生を考えれば農業をどうやって
構造改革するかに大きくかかっていることは明らかでございまして、ぜひとも、この問題につきまして
総理のお考えを伺っていきたいと思っております。
私も、
総理の
改革に対する思い、決意には大変共鳴しておりまして、ぜひとも、この農業分野につきましても強力な
リーダーシップを発揮していただいて、
日本再生の道筋をつけていただきたいと思っているところでございます。
さて、農業につきましては、今、大変大きな転換期、あるいは危機的な状況にあると言っても過言ではないと思います。
一つは、今、農業就業人口は三百六十八万人ですけれ
ども、うち六十五歳以上の方が二百七万人、何と五六%が六十五歳以上という、非常に高齢化が進んでおります。それに加えて、後継者がいない、嫁さんが来ない、耕作放棄が進んでいる、こういったことを考えますと、このまま十年たったら、
日本の農業の未来予想図は非常に暗い、非常に壊滅的な状況を迎えるのではないかと私も危惧する一人でございまして、農業の
構造改革待ったなしということだと思っております。
特に現場の農業者の方また若い人々に聞きますと、やはり農業に夢がない、未来へのビジョンが欠けている、将来への希望がない、それが非常に大きな要因でありまして、彼らの本当の言葉は、もっと夢のある農業、楽しい農業、さらに言えば、もうかる農業をしたい、これが農業者たちの声でございます。だから、どうしたらそういった
構造改革を進め、希望の持てる農業をつくれるか、これは非常に大きなテーマでございます。
そういった危機的状況の反面、農業をめぐる
環境は大きなチャンスが訪れているとも、私は認識をしております。
例えば、国内では、食の安全あるいは食と健康、大変な関心が強まっております。例えば、みのもんた番組などを見ると、もうこれでもかこれでもかというぐらい、食と健康に関するテーマが連日出ておりますし、また、スローフードへの志向性あるいはまた地産地消、こういったことは新しい文明における食の形態として世界的に定着しつつあります。
また、世界的にも
日本食は健康食として非常に定着しつつありますし、特に東アジアにおいては、急速な経済発展に伴い富裕層がたくさん出てきて、食に対しても、食の安全や質の高い食あるいはまたおいしい食というものに対して強い志向性があって、少し高いお金を払ってもそういう食を求めていこうということが大きな傾向でございまして、これは特に
日本の農業にとっては非常に大きなチャンスではないかと私は考えております。
そういった中にあって、
日本の農業
政策、余り厳しい批判をするつもりはないんですけれ
ども、いろいろ今まで努力をしてきた功績はあるかと思いますが、功に対して罪の方も非常に大きいんではないかと私は思っておりまして、特に、余りにも行き過ぎた保護主義、これによって、結局、
日本の農業の潜在的な可能性を逆に摘んでしまったという面があるかと思っております。
本来、賢い親であれば、はえば立て、立てば歩めの親心ということで、子供の早い成長と健康な元気いっぱいの発展を願ってさまざまな配慮をしていくのが賢い親でありますけれ
ども、余りにも行き過ぎた過保護、おんぶにだっこ、場合によってはおしめにおっぱいと、余りにも過保護な農政によって、本来もっと早く成長できる子供がいまだに保育器の中に入ったまま外に出られない、これが今の
日本の農業ではないかと思っておりまして、ぜひとも、今のこの転換期の中で早急に
構造改革を進めて、世界でも自立し得る農業、世界に打って出る農業、私自身の言葉で言えば、守りの農業から攻めの農業に転換していくべきだというのが私の感想でございます。
そういった
意味では、農業に関しては専守防衛
政策は放棄すべき、これは
防衛庁長官に言っているわけじゃありませんけれ
ども、むしろ攻めの農業にどう転換していくかということだと思っております。
具体的に攻めの農業をつくっていくに当たって、私は、一律の農業
政策ではなくて、やはりカテゴリー別、特に大きくは
三つに分けたきめの細かい
政策体系の樹立が必要だと思っております。
まず第一は、国際競争力を持ち得る農業。
これはもちろん、価格競争力だけではなくて、むしろ非価格競争力の方が
日本の場合は非常に重要ですけれ
ども、食の安全とか品質、
あとはブランド、そういったものに対して
日本の農業は非常に可能性を持っております。
特に果物、あるいは野菜、あるいはまた花、そしてまた場合によっては和牛肥育等、畜産もその分野に入るかもしれませんが、そういった国際競争力を持ち得る農業をしっかりと育成して打って出るということが
一つの
政策だと思います。
それから二番目に、稲作ですね。
これは
構造改革が御承知のように非常におくれておりますけれ
ども、ただ、今のどんどん後継者が減っていく中にあって、逆に耕地を拡大していく重要なチャンスであるかと思っております。
そういった
意味で、今、
農林水産省もさまざまな
構造改革に取り組んでいることは承知をしておりますが、
基本的にもっと単位を拡大しなきゃならないと思っている。
日本の場合、少なくともスケールメリットを生かすには三十ヘクタールぐらいが
基本単位と考えて、それを基準に稲作農業をつくっていく必要がある。さらにもっと効率化を進めて抜本的に農業生産性を高めないとこれはやはりやっていけませんので、そういった
意味の
政策を徹底的に追求すべきであると思っております。
その上で、ブランド化等も加味しまして、今、コシヒカリ等もどんどん世界でも結構売れているような状況もありますので、そういった面も加味しながら徐々に競争力を高めて、それに見合って自由化も進める、例えばFTAとかWTOの協議も積極的に対応していくという姿勢が必要ではないかと思っております。
それから
三つ目に、中山間地の農業。
これは非常に競争力は厳しいわけでありまして、むしろ、そこには、地球
環境の保全とか、あるいはまた美しい景観の保持、ふるさと
日本の景観を保持していく、そういったことを明確な
政策目標として、それを支援していくための、例えば所得補償制度をしっかりと充実させて、その上でグリーンツーリズムやエコツーリズム等を展開していく、こういった考えが必要ではないかと思っております。
ぜひとも、今後、そういうきめ細かなカテゴリー別の
政策をつくっていく必要があるかと思っております。
そういった中で、ただ、実際にそういった可能性があるかということを考えるんですが、いろいろ
地方の現場では、子細に見ると、非常にすばらしい可能性を秘めた現象が起こりつつあります。
例えば、
総理は御存じかどうか、今、
日本全国で三千二百の自治体、市町村がありますけれ
ども、その中で最も経済的に活性化している地域はどこか。具体的に言うと所得成長率が一番高い地域はどこか、
総理は御存じでしょうか。それは、
東京でもなく大阪、
福岡、札幌でもない、何と和歌山県の南部川村という人口六千七百のいわば過疎の村なんですね。
ここは、一九八四年から二〇〇二年までの間、この間をとってみますと、一九八四年を基準にして二〇〇二年、十八年後の経済規模は何と三・五倍に所得水準が拡大しておりまして、年率平均八%、平均値ですよ、この大変な御時世で年率八%で成長を続けてきて、常にトップの座を守っているというすばらしい成功事例があるということを、ぜひ
総理にも知っていただければと思っております。
ここは、実は例の南高梅、この産地でございまして、梅の生産それから梅干し、これがほとんど唯一の産業でございまして、ここが過去十八年間ずっと連続して、この大変な御時世にあって連続トップの座を維持しているというすばらしい成功例があるわけなんですね。
ここは、村も非常に傾斜地が多くて通常の農業をやりにくい非常に不利な条件にありますが、ここの村長さんが非常に偉くて、産業といえばもともと梅干し生産ぐらいしかなかったわけですね。村にしても、梅以外に見るべき産業もないということで、もう一度この梅を見直すしかない。近年、梅は、特に若い人の梅干し離れもあって、非常に需要が減退した時期がありましたけれ
ども、ここで村長さんを
中心に徹底的に
調査研究をした結果、なぜ需要が減退しているのか、若い人々の嗜好が変わってきている、しょっぱい梅干しはもう受け付けない、もっとマイルドなおいしい梅を求めているということを、まずニーズを把握しました。
では、どうしたらそのニーズにこたえられる
改革ができるかと徹底して研究した結果、行き着いた結論が、梅干しの製造工程の隠し味にハチみつを使うということを実は思いついたわけですね。これが非常にうまくいきまして、ハチみつはもちろん味が非常にマイルドになる、また、ハチみつ自体が天然の防腐剤の役割を果たして食品が長もちする、また、ハチみつも健康食品でございますので、健康食イメージに合って売れに売れ始めた。特に今、非常に味がよくなって、これはうめえという話になったわけですね。
さらに、村はこれに南高梅というブランド名をつけて、村を挙げて全国的に販売促進を行った。そうしたら、これが売れに売れて、とうとう、全国のスーパー、食料品店を席巻しちゃったわけですね。最近では、何と、梅干し農家のトップグループの中では年収二千万を超える梅干し農家が多数出現しているという大変な事態になっているわけですね。こういったすばらしい例がある。
そのほかにも実はいろいろな例がありまして、八丈島なんかも、花の栽培、これで非常に成功しております。特に、非常に高級な観葉植物あるいは高級な花、ストレチアとかフリージア等、こういった花の生産に特化をして、
東京という大市場を活用して、トップグループは大体年収千三百万ぐらいに到達しているわけでして、
日本の専業農家が約七百万円台ということを考えれば、これは大変なパフォーマンスだと思います。
そのほかにも、私の知る限りでは、宮崎県の野尻町が、これは中山間地なんですが、完熟マンゴーの栽培に成功して、これも非常にブランド化をしておりますし、その他いろいろな、リンゴの例、イチゴの例、実は随分あるんですね。
実は
日本で経済が一番活性化して元気なのは何と農業分野だということに私は気がつきました。むしろ、今までの農業
政策に外れた異端児がみんな成功している、これが現実なんです。
そこで、何が共通の成功の方程式かということを私なりに
調査をしてみたんですが、結局、みんな同じことをやっています。それは、結論から言うと、現代経営戦略理論の精髄を把握して、それを実行している、ここに尽きるんですね。
それは何かといいますと、
三つありまして、
一つは、マーケティングという発想です。もう
一つは、イノベーションという発想です。もう
一つは、ブランド化という発想なんですね。いずれも適切な
日本語がないんですけれ
ども、それだけ非常に
日本に経営感覚が定着していないということのあらわれかと思います。
まず、マーケティングは、つくったものを売りさばくという在来型の発想じゃなくて、売れるものは何か、ニーズを把握して、売れるものをつくる。そうすれば、当然、自然に売れるわけですね。そういうマーケティングを徹底してやる。さっきの梅の例で言えば、最近の若い人がどうもしょっぱい梅はだめでマイルドな味を望んでいるということを、ニーズをつかんだということがマーケティングの第一です。
それから、イノベーションについては、これは創造革新、中国語では最近、創新という言葉を使っているようですけれ
ども、これは、さっきの例で言えば、まさに梅干しの製造工程にハチみつを使う、これがイノベーションなんですね。
それから、ブランド化というのは、南高梅という名前をつけて差別化をして売りまくる、これがブランド化です。
成功したケースは、全部、この現代戦略論の精髄をそのまま実行しているということが言えるわけですね。
例えば南高梅なんか、梅の実そのものですが、スーパーへ行くと、ビニール袋に入った一握り、大体九百八十円です。ところが、ノーブランドの梅は、同じ、見た目には全然変わらないのに約四百円台、倍以上の差が出ているわけですね。南高梅、何と高い梅だろうと私は思っているんですけれ
ども、見かけは全然変わらないのにそれだけ差が出る。これは本当にブランド化の威力なんでしょうね。それだけ消費者に信頼感、イメージを植えつけているということですよね。まさに、こういうことが起こっているんです。それも農業の分野でこそ起こっている。
私がなぜこれを非常に言うかといいますと、農業だけじゃなくて、あらゆる、ハイテク産業も流通業も製造業もすべて含めてこれが通用するから申し上げているわけで、
構造改革にはこの経営感覚をいかにつけるかが必要だと思っています。
今、世界全体がデフレ構造不況、長期化が予測されております。冷戦が終わって、中国や、また東欧圏、旧ソ連圏が入って、非常に質の高い労働力、それが非常に今、市場経済化を進め、世界的に物やサービスがあふれ返っています。そんな中で、在来型の発想に執着して、つくったものを売るという発想だけではやっていけない。特に
日本のような最もコストの高い国においては、どうやって今言ったようなマーケティング、イノベーション、ブランド化という現代経営戦略の精髄を早く定着させて
構造改革を進めるか、これが一番大事だと思っているわけで、それで、この例を申し上げたわけであります。
これが、以上、私の演説といいますか、総論なんですけれ
ども、まず、
総理の農業
構造改革に対する思い、ビジョン、決意というものをお伺いしたいと思います。