○若井康彦君
民主党の若井康彦です。
私は、
民主党・
無所属クラブを代表して、
政府提案の景観緑三法案について
質問をいたします。(
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まず初めに、今日の切迫した
状況の中で、
景観法とは何とのどかなと思われるかもしれません。しかし、百聞は一見にしかず、すべての
国民は、この不透明な時代を、景観を通じて、時代の姿、社会の形を目で見、肌で感じています。時代が大きく変わろうとしている今、その方向をわかりやすく示し、だれもが共感できるコンセンサスをつくる、その上で、景観の問題は欠かすことができないと思います。
そこで、まず大臣、あなたが今暮らしておられる
日本の都市、そして町、その景観は本当に美しいと言えるでしょうか。
ヨーロッパでは、パリやローマだけではなく、どんなに小さな町や村も美しい町並みを有しています。かつて、
日本と同じように、町を建設し続けた時代の歴史を
経験しています。しかし、いつまでも建設を続けてきたわけではありません。何百年も前につくられた町ですけれども、今は、これらを上手に使いこなすことに没頭しています。そのためにお金と知恵を傾けています。
その点、
我が国の現状はいかがですか。二十一世紀に入った今、思い切った方向転換をすべきときではありませんか。今回、この景観緑三法が提案されたことを、その意味で私は率直に評価をしたいと思います。今後の国づくりの大きな転換点としてこの
景観法を位置づける、そしてそれがより実効性のあるものになることを心から願うものであります。
さて、そのためには、法案は今のものよりもより大胆なものでなければならない、私はそう
考える。そこで、次の五つの問題点を提起したいと思います。
まず、公共事業の
あり方についてお伺いしたい。
我が国は、二十世紀の後半、半世紀の間に実に五千万人の人口の増加を
経験した。百万人の巨大都市を毎年一つずつつくってきたに等しい。今、突入しつつある超高齢化の時代、今後は逆に、急速に人口が減少する。これからの半世紀の間に、今度は三千万人以上の人口が減るのです。毎年六、七十万人の巨大都市が確実に一つずつ姿を消していくのと同じです。今、私
たちは、その変曲点に立っている。これから毎年、加速度がついてきます。
かつて、急増する人口を既存の町に押し込むために、大変な無理を重ねてまいりました。その結果、今の景観の現状がある。多少ばらばらであったり窮屈であったりというような市街地を延々とつくってしまいました。時には、古くからの由緒ある歴史的な町並みを壊してしまったこともあったに違いない。しかし、そうした粗製乱造の時代はとうに過ぎ去っています。
今、抜本的な方向転換をすべきときです。そのため、相変わらず毎年三十兆円余も注ぎ込まれているこの公共事業の方向、これを抜本的に変える必要がありますが、この点、大臣の所見はいかがでしょうか。(
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そこで、先般、
平成十五年七月に国土交通省が公表をした美しい国づくり政策大綱において、国土交通省は、この国土を魅力ある国にするために、まず襟を正すとある。行政の方向を美しい国づくりに向けて大きくかじを切ることにしたと述べている。そのとおりです。では、それをどのように政策化するのですか。
この大綱の中で、十五の具体的施策を挙げていらっしゃる。例えば、公共事業における景観アセスメントシステムの確立、あるいは分野ごとの景観形成ガイドラインの策定、これらの提案がなされています。しかし、今回のこの法案の中には、これらの内容は全く含まれていません。大臣、なぜこうしたものを落としてしまったのか、その
理由をぜひ教えていただきたいと思います。(
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第二に、緑とオープンスペースについてお聞きをしたい。
先ほど申し上げたとおり、これから半世紀の間に三千万人以上の人口減が起きます。これまでの過密な市街地に生じる遊休地、これを積極的に集約して、コンパクトな土地利用を実現すべきときです。近い将来予想されている大震災に備えて、安全で質の高い都市へ脱皮をしていくことでもあります。
人々はだれも、安全、安心な環境を心地よい景観として見ているわけです。
今日、あいた土地を公園にすれば周りの地価は上がります。しかし、そこを建物で埋め尽くしてしまえば、周囲の地価は下がってしまう例が多い。真の都市再生とは、この貴重な空地を超高層ビルで埋め尽くすことではなくて、空地を確保し、環境や景観を取り戻すことだと
考えますが、大臣の
見解を伺いたい。(
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関連して、都市緑地法の改正について伺います。
今回の提案では、名称こそ保全法から都市緑地法に変わっていますけれども、内容は相変わらず既存緑地の保全に主眼が置かれており、緑を創出し、都市に自然を取り戻そうという積極的な
姿勢がうかがえない。緑をふやす方策に見るべきものはなく、ひたすら
民間開発に依存をし、部分的な緑地をそこに付加させようという他人任せの
姿勢に終始しているのではありませんか。
過密都市東京よりもさらに人口密度の高いシンガポール、国の最重点政策の一つとして緑の創造に取り組んでいます。緑地の面積を年々ふやし続けています。緑は人と社会を安定させる大きな自然循環のシンボルであるにとどまらない、ガーデンシティーこそ
海外から観光客を集め、資本を呼ぶ条件であるということがよくわかっているからです。
市街地に生じる遊休地を積極的に集約して緑地に転換し、都市の中の自然循環を
回復し、緑豊かな景観を創出すべきです。観光立国をかけ声倒れにしないためにも大転換が必須と
考えますが、大臣の所見をお伺いしたい。(
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また、この点に関連いたしまして、農水大臣に伺いたい。
農水省は、緑に関するこの政策課題にどのように取り組もうとしているのか、今回の法案の中ではっきりしない。都市縁辺の田園と里山、あるいは農山漁村の集落等の景観に、どのような政策を実施しようとしているのですか。さらに、農水省所管の公共事業が今国土景観の上に重大な影響を与えていると
考えますけれども、これらに関するガイドラインの
必要性についてどのようにお
考えか、お答えください。(
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第三に、景観創造の主役はだれかという問題です。
既に八〇年代より、全国各地で、景観計画を柱とする町づくりの
取り組みがなされてまいりました。五百近い自治体が景観条例を定めて、それぞれの創意工夫を凝らしながら望ましい景観づくりを進めています。
今回の
景観法案は、こうした自治体の景観計画の流れをバックアップすることを基本的な目標とすべきでありましたけれども、なぜか、景観行政団体としての権限を都道府県や政令指定都市、中核都市に限定をしている、それはなぜなのでしょうか。大臣にお答えを求めます。
さらに、
我が国には、想像を超える時代の激変を何度も越えてきた、例えば京都のような貴重な歴史的景観が少なからず残されています。こうした歴史的遺産ともいうべき景観を守るには、当該自治体だけではとても限界がございます。自治体との
協力のもと、古都保存法の活用等、今日の
状況に合わせた法的
措置と、都市景観を
国民の共通財産として守るための補助事業の投入が必要と
考えますけれども、大臣の所見をお伺いしたいと思います。(
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第四に、
景観法との関連で、今
政府が推進をしておられる都市再生についてお伺いをしたい。
都市再生の本来の
目的は、活力や魅力を失った都市地域を生き生きとした美しい町につくりかえることではないのですか。そのために重点的に公共投資を集中し、都市・建築法制の緩和を重ねてきました。しかし、それが地域にそぐわない開発を誘発し、都市の景観を損ない、かえって都市の活力をそぐことになっている例が少なくない。一刻も早く、都市再生という名で行われている景観の破壊をやめ、町のルールを取り戻し、
市民の
合意による町づくりへ根本的に軌道を改めるべきです。
日ごろ、美しい町づくりを標榜しておられる石原大臣、基本的な軌道修正、お約束をしていただけますね。
また、先般の施政方針演説における
総理の観光立国
行動計画についてお伺いをしたい。
石原大臣も、
景観法の意義を観光立国宣言との関連で先ほど述べられました。しかし、景観は観光立国の手段そのものでないことは言うまでもありません。理にかなった、時代にふさわしい景観づくりの道筋が確立をし、風格ある美しい風土を有する国となってこそ、景観を観光立国にうたうことができると
考えますが、その点についての大臣の御感想をお聞きしたいと思います。
第五に、都市計画と景観の
関係について申し上げたい。
日本の都市計画は、規制緩和の繰り返しの歴史です。今回の都市再生においても、容積や高さ制限等、都市計画の緩和が行われました。これは、
世界的な都市政策の流れとは完全に逆行しています。
みずからルールをつくることは、
合意の形成であり、他からの規制とは本質的に違います。規制緩和という名のもとに、都市づくりのルールを破壊して、容積を積み増し、高さ制限を撤廃した、その結果、視界を妨げ、調和のとれたスカイラインが損なわれている。こうした都市計画の
あり方こそ、今日の都市景観破壊の元凶ではありませんか。大臣の
見解をお伺いしたいと思います。(
拍手)
建築行政にも大いに問題ありです。どんな良好な景観も、それにそぐわない一つの建物が建つだけでもろくも損なわれてしまう、そんな事例は枚挙にいとまがありません。景観は、建物のデザインそのものよりも、土地利用、位置、規模、高さなど、より基本的な要素が決定的なのです。
建築行政は、大部分の自治体の権限の外にあり、手の届かないところで建築
確認がおりることをチェックしようがない場合が少なくありません。それでは、いつまでも安心して住み続けられる環境や景観の維持は難しいと思います。
住民の
関与できない巨大な高層マンションが目の前に建ってしまうというようなことが起きる、そんな危ない町にだれが宅地を求めようとするでしょう。地価は下落をし、結局、町は寂れてしまうのです。
景観というものは、こうした町のありようの指標なのです。景観権を織り込んだ建築行政への転換こそ良好な都市景観を守り育てる基本であると
考えますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。(
拍手)
景観をつくるとは何なんでしょうか。必要にして十分なものこそ美しい。要不要を見きわめる判断力と思い切った決断が景観づくりの要諦であり、今こそ、それが必要とされています。ヨーロッパの
国々では四半世紀、土地利用において、景観を共有することを私的に土地を所有し利用することに優先させる法を整備し、国と地方自治体が
責任を持って都市計画を推進しています。それが美しい景観をつくる基礎になっている。本法案は、その点で勇気を欠いている、あるいは理念が薄弱であると言わざるを得ません。(
拍手)
改めて申し上げたいことは、景観こそ、
国民のだれもがみずから
考え、
行動する国づくりへの入り口なのだということです。その意味から、望ましい都市、地域をつくっていく道筋として、都市計画法の抜本的改正を柱に、すべての公共事業の見直しを視野に入れた景観基本法の制定を私
たちは改めて求めたいと思います。
以上、
質問いたします。明確なお答えを期待します。どうもありがとうございます。(
拍手)
〔
国務大臣石原伸晃君
登壇〕