○上田勇君 私は、自由
民主党、公明党を代表いたしまして、
内閣提出の
金融機能の
強化のための
特別措置に関する
法律案外
一案及び
民主党提出の
金融機能の
再生のための
緊急措置に関する
法律等の一部を改正する等の
法律案外
一案につきまして、
総理及び関係大臣並びに法案
提出者にお伺いをいたします。(
拍手)
我が国経済は、設備投資の
増加や好調な輸出に支えられ、明るい兆しが見えてきたとも言われております。しかしながら、
地域の
中小企業の
経営はまだまだ厳しさが続いているというのが実情であり、いまだ景気回復の実感がないというのが
現実であります。
小泉総理は、今国会の施政方針演説におきまして、「
地域の
再生は、元気な日本
経済を実現するかぎ」とおっしゃっております。
地域の
経済や雇用を支える
中小企業の
経営の
改善を通じた
経済再生の動きが全国津々浦々まで広がっていくよう、総合的な政策努力が必要と
考えます。今回の
法律案も、こうした総合的な政策努力の一環と位置づけられるものと
考えます。
そこで、まず、
地域の
再生を通じた日本
経済の
活性化、さらには持続的な成長の実現に向けた
小泉総理及び竹中
経済財政担当大臣の御所見をそれぞれお伺いいたします。
地域経済の
再生を図っていく上では、
地域の
金融機関が健全な機能を発揮していくことが必要であります。しかし、
地域金融機関は、
地域経済において極めて大きな役割を担っているほか、
中小企業と密接な関係にあることから、
地域の
中小企業の厳しい
経営がそのまま
金融機関の財務状況の悪化につながっているのが実情であります。こうした中で、
金融機関では、
経営の健全化に向けたさまざまな努力が進められているところではありますけれども、十分な結果が出ているとは言えないというのが実情であります。
現在の
地域金融機関の全般的な財務
内容などの
経営状況をどのように評価されているのか、竹中
金融担当大臣にお伺いいたします。
また、本法案が、こうした
地域金融機関の
経営の健全化、
金融システムの機能
改善にどのような役割を果たすものなのか、
小泉総理にわかりやすく御
説明をお願いいたします。
先ほども申し上げましたとおり、日本
経済が本格的に
再生していくためには、現在大変な苦労をされている
地域の
中小企業が元気になることが不可欠であります。
地元の
経営者の方々に、最も困っていることは何かということをお伺いすると、返ってくるのは、第一に製品やサービスの価格が下落をしているということ、第二に
資金繰りの難しさであります。
金融機関の
中小企業向け貸し出しの状況を見ると、残高の減少が続いておりまして、二〇〇〇年末には二百三十五兆円だった貸出残高が、二〇〇三年九月には百八十七兆円となっております。九〇年代末以降、
中小企業はずっと厳しい
金融環境下に置かれております。こうした背景には、借り入れ企業側の要因もありますけれども、
地域金融機関が本来の使命を十分に果たしていないと言わざるを得ません。
本法案は、
金融機関の救済だけを
目的としたものとはなってはならないわけであります。
地域の
中小企業の
経営改善を通じて
地域経済全体の
再生に役立つものでなければ、
公的資金を投入する
意味がないと思います。
この
スキームで
金融機関の
資本を
増強することによりまして、確実に
地域における
金融の
円滑化が具体的に図られるよう、どのような手だてが講じられているのか、竹中大臣にお伺いいたします。
また、本法案の
スキームによりまして、長期的に見ても
経営改善が期待できないような、本来は淘汰されるべき
金融機関や、また、そこから
融資を受けている企業の延命が図られ、かえって
経済構造改革の進展が妨げられるのではないかという批判があります。確かにそういう可能性もないわけではありませんけれども、多くの企業が将来の
再生、成長の可能性を持っているにもかかわらず、
資金繰りが円滑にいかないために
経営が成り立たなくなってしまっているというのも事実であります。
その
意味から、この
スキームによる
資本増強を通じて、
金融機関が適切な
リスクをとり、将来性のある事業に円滑に十分な
資金を提供することが可能になると
考えております。
総理の御所見をお伺いいたします。
公的資金を投入するに当たっては、
金融機関の健全性や
地域経済において担っている役割の重要性などについて厳正に
審査されなければならないことは当然のことであります。また、
資本増強後も、
経営強化に向けて適切な
措置がとられていることを確かめるとともに、
経営陣のモラルハザードを
防止する仕組みが必要であります。竹中大臣の御所見をお伺いいたします。
さらに、
地域金融機関への検査についても配慮が必要であるというふうに
考えます。もちろん、
預金者等の保護の観点から、検査は厳正に行う必要があります。しかし、
地域金融機関が仲介機能を的確に発揮していくためには、
中小企業の実態に即したきめ細かい検査を行ったり、
中小企業の
再生に向けた取り組みを評価するなど、それぞれの
地域金融機関の取り組みを検査において十分に反映させていく必要があります。
二月二十六日に、
金融庁は、
金融検査マニュアル別冊・
中小企業編を改訂いたしました。大企業とは異なる
中小企業の特質、特に
経営者の資質や意欲に注目していることは、重要な点だと
考えます。こうした改訂を
実施した
目的と、それによりまして期待される効果につきまして、竹中大臣の御所見をお伺いいたします。
また、改訂された検査マニュアルでは、代表者からの借入金や通常の債務を劣後ローンと交換するデット・デット・スワップなどについて、短期間での返済が求められることのない安定した
資本に準じた性質を持っているものとして適切に評価することを明記しているところであります。外部からの
資金調達手段が限られている
中小企業におきまして、
経営の安定性を
現実的に評価するという
意味ではとても重要な視点だと
考えますが、竹中大臣のお
考えを伺います。
次に、
預金保険法の一部を改正する
法律案につきまして
質問いたします。
金融危機に
対応するための
公的資金制度である
預金保険法第百二条
措置につきましては、昨年は、まず五月に、りそな
銀行に対し第一号に基づく
資本増強について、また十一月には、
足利銀行に対しまして三号に基づく特別
危機管理について
必要性の
認定が行われました。これらの
措置は、いずれも
金融危機に
対応するための例外的な
措置であり、その発動の
必要性等については十分な
説明責任が求められております。これらの
措置の発動の意義につきまして、
小泉総理のお
考えを伺います。
第百二条第一号の
措置の
必要性の
認定は、あくまでも
金融機関に着目して行われるものでありますが、近年、
金融機関の
組織再編が進んでおり、
銀行持ち株
会社を通じた
経営統合も行われております。
金融危機を未然に
防止する
セーフティーネットとして、こうした
金融機関の再編にもしっかりと
対応できるようにしておくことが重要であります。
こうした中で、
金融危機への円滑な
対応を確保する観点から、今回の
預金保険法の改正案では、
預金保険法第百二条第一号の
措置について、
銀行持ち株
会社を通じた
資本増強も認めることとなっております。ただし、この場合は、持ち株
会社への
資本増強が、
子会社銀行に対し直接
資本増強を行った場合と同様の効果が発揮されるよう、しっかり担保することが重要であると
考えます。
今回の
枠組みでは、こうした点につきましてどのように手当てがなされているのか、竹中大臣にお伺いをいたします。
次に、
民主党提出法案についてお伺いをいたします。
一九九七年以降、
金融機関の相次ぐ
破綻により
金融危機が危惧される中で、与野党を超えて英知を結集し、
金融再生法さらには
早期健全化法が策定され、同法に基づく一時国有化や
資本増強等が行われた結果、
金融システムの崩壊という事態は
回避されたのであります。
その後、緊急避難
措置であった
金融再生法における
金融機関破綻時の
規定は、
預金保険法本則に盛り込まれ恒久的な制度となり、また、
金融庁が誕生し、特別検査の
実施など検査監督体制の
強化、
政府における
金融再生プログラムの策定などによりまして、
金融行政は着実に整備、
改善されてきたと
考えております。
こうした流れを十分に踏まえた上で、さらに必要な
施策があれば、必要に応じて
強化拡充していくという努力が求められているのではないかと
考えます。
その点、
民主党御提案の
金融再生法の復活等を柱とした
法律案は、こうしたこれまでの
金融行政の流れを踏まえたものとはなっていないのではないでしょうか。すなわち、既に預険法本則の中で恒久法として
規定、整備されている同
趣旨の
規定を、再度、
金融再生法で復活させようというものでありますが、こうした同
趣旨の
規定が二つ存在することになりますと、
金融行政の混乱を招くおそれがあるものではないでしょうか。竹中大臣並びに法案
提出者のお
考えをお伺いいたします。
最後になりますが、今回の
内閣提出の
公的資金に関する二法案は、
我が国金融システムの安定
強化と
地域経済の
活性化に向けた
政府の強い決意のあらわれと理解をいたしております。これら法案が強固な
金融システムの構築と日本
経済の
再生に十分寄与することを期待して、私の
質問を終わります。
以上でございます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣
小泉純一郎君
登壇〕