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辻委員 民主党・
無所属クラブの
辻惠でございます。
民主党は、この第百五十九回
通常国会に
刑事訴訟法の一部
改正案を提出いたしました。その
内容は、
取り調べ時の
弁護人の
立ち会い権を認めること、録音、
録画等捜査の
可視化を図ること、そして
人質司法と言われる今の
保釈制度の改善を求めることを主な
内容とするものであります。この法案については、四月二十日に
質疑、答弁が行われ、残念ながら四月二十三日に否決になりました。
私は、この問題を実現することが、
日本の
刑事司法、そして
捜査の
適正化のために極めて焦眉の課題であり、緊急不可欠であると思っております。そのような
問題意識から、五月十七日の
決算行政監視委員会におきまして、
捜査の
可視化、そして
弁護人の
立ち会い権の問題について、引き続き
法務省の
刑事局長に
質疑を行わせていただいておりました。
本日は、この
民主党の
提案がまさに
立法事実に基づくものであるということを端的にあらわすような例が
鹿児島の地において明らかになっております。先日の
民主党の
提案のときに、
質問者であられた
与謝野馨委員は、時期尚早であって、
民主党の
提案はある
意味フライングぎみではないかというふうにおっしゃられましたが、しかし、
現実はそんな、一刻の猶予もならない、非常に重大な問題が現に生起している、こういう
現実があるわけであります。そういう
意味におきまして、
民主党の
提案の
立法事実は十分に熟した形で存在しているということを
冒頭で強く述べさせておいていただきたいと思います。
どのような
事案かということについて、
新聞報道や、そして現に
国家賠償訴訟が
鹿児島地裁に対して提訴されているということにかんがみて、
事案の概要、これはあくまでも
真偽はいずれ
司法判断にゆだねられることではありますが、具体的にどのような事実が
報道されているのかということについて、まず
冒頭で御紹介させていただきたい、このように思います。
これは、昨年の
統一地方選挙、四月十三日に
投開票が行われた
鹿児島県議会選挙の
曽於郡区で、定数三名、主な町としては
志布志町がありますが、ここで
中山信商店を経営されている
中山信一さんが
無所属で立候補されて、当選された。その後、自民党に入党されたのでありますが、六月四日に
逮捕され、六月二十五日、七月二十三日に再
逮捕、
再々逮捕され、七月十二日付で県議を辞職されております。現在、
鹿児島地裁で
裁判が係属中であって、少なくとも五回にわたって
鹿児島地裁の
保釈決定が出ているにもかかわらず、
検察側の抗告によって、これは高裁の支部でそれが取り消され、
保釈がまだ実現していない、まさに
人質司法と言われる
現実がここに現出している、このような例であります。
この
中山信一さんは、みずからが辞職した
鹿児島県会議員の
補欠選挙が七月十一日の
参議院選挙と同時に行われるということで、本日六月二日に、獄中から、
県会議員選挙に立候補するということを表明される予定であるというふうに伺っております。
私がこの問題の中で注目すべきと
考える点について、まず、
新聞報道等を引用しながら、御紹介させていただきたいと思います。
新聞報道によれば、少なくとも十五名が
逮捕されて、そのうち十二名、そして引き続いて一名、合計十三名が
起訴されて、現在、同じ
裁判体で
公判が行われている。そして、
中山信一さん御夫妻の奥さんが先日
保釈決定になって、まだ御主人の元
県会議員の方は
保釈決定になっていないという
現状であります。この
逮捕された十五名の
方々のうち九名の方について再
逮捕されている、そしてそのうち四名の方が
再々逮捕されているということであります。
これは、学説や判例で
指摘される、
講学上の
違法捜査と
指摘される
事例がふんだんに、盛りだくさんにこの
現実の中にあらわれているというふうに思います。具体的に、
新聞報道等に基づいて引用してみたいと思います。
まず、
川畑幸夫さんという五十七歳の方につきましては、四月十三日の
投開票の翌日の四月十四日の朝八時に
志布志警察署が車で乗りつけて、今から
任意同行するんだということで、朝八時から夜の十一時まで、翌日に
任意同行と称して、そこで
任意の
取り調べをやっております。この
取り調べは、四月十四日から十六日の三日間、朝八時から夜の十一時までの間、継続して行われた。また、六月五日から十七日までの間の十三日間について、やはり
任意ということで
捜査が行われ、
取り調べが行われているわけであります。そしてさらに、六月二十九日から七月十六日まで十八日間にわたって、さらに
任意同行による
取り調べが行われ、ようやく七月二十四日に
逮捕された。しかし、八月十三日付で
処分保留で釈放になり、昨年の十二月二十六日付で不
起訴処分になっている。このような例があります。
この方の
取り調べの
内容を見ますと、例えば、
捜査官が言った言葉として引用されておりますが、このわろは血も涙もないやつだ、親や孫を踏みつけるやつだと言って、
捜査官が、A4の紙に、
マジックで書いた紙に何回も足を持っていって踏ませようとしている、現に踏ませているという
現実があります。
どのような
内容かといいますと、
お父さんはそういう
息子に育てた
覚えはない。つまり、この方の
お父さんの
名前をまず書いて、
お父さんはそういう
息子に育てた
覚えはないという、
マジックインキでA4の紙に書いて、それをその上から
本人に踏ませるように
捜査官が足を、強要して踏ませている。また、元
警察官の娘をそういう婿にやった
覚えはない。これは娘さんが、嫁ぎ先の
お父さんの
名前を書いて、元
警察官の娘をそういう婿にやった
覚えはないということをA4の紙に書いて踏ませている。さらに、沖縄の孫、早く優しいじいちゃんになってね。これは孫がそういうふうに呼びかけているような紙を書いて、それを踏ませている。
これは、いわば
キリシタン弾圧の踏み絵に似たような、踏み字というふうに
当事者たちは呼んでおりますが、このような行為を強要しているという事実があります。それで、四月十七日から三十日の間には
曽於郡の
医師会立病院に入院を余儀なくされるような事態になっていたということがあります。
また、
山下邦雄さんという七十二歳の方。この方は
捜査官からどのように言われているのか。これは
有留弁護士さんという方の、
弁護人の
意見陳述書に記載されている事実であります。
井上弁護士という
弁護士さんが、
中山信一さんと同じくこの方の
弁護人についていた。
井上弁護士は
中山さんの
弁護士ではないか、
中山さんが
逮捕された後は
弁護士から捨てられるよ、だからあなたが
井上弁護士に依頼をしても裏切られるんだということを言って
井上弁護士を
解任させている、現に
解任したという事実があります。
また、
懐俊裕さんという五十四歳の方について、この方も
任意同行を繰り
返し、
疲労のために
自殺未遂を行っている。おまえが
逮捕されれば
名前が出るから子供の将来もないし、財産もなくなるぞ、こういうふうに言って、その翌日、
自殺未遂を行っている。
また、
藤元いち子さんという方。この方には、認めなければ何度でも
逮捕できるぞ。やってないと言うと
うそをつくなとどなられ、おまえが認めないのであれば
東京の刑務所に行くぞ、こういうことを言われている。
そしてまた、
藤山成美さんという女性でありますが、机をたたかれて、今にも身体がたたかれそうだと畏怖するような過酷な
取り調べが行われている。それで、
お金をもらったと言えば早く帰してやるよと。
また、
川畑まち子さん。この人は
逮捕されておりませんが、この
うそつきやろう、
外道者と大声でどなられている。十二時間同じ姿勢を強要されていることのために、結局、八月五日から二カ月間、
頸椎ヘルニアのために入院して手術をして、九月三十日に退院をしている。おまえは麻原以上だ、おまえだけは絶対に許さない、早くサインをしろと無理やりペンを持たせて押しつけたりしている。
また、
津曲さと子さんという方。この方も
逮捕はされていませんが、すごいけんまくでどなられて、暴力団みたいだったという感想を漏らしている
陳述書があります。
そして、
永山トメ子さん、七十三歳の方。長時間厳しく
取り調べられて、
自宅トイレで倒れ、一時意識不明になった。
また、
永利忠義さん、七十歳の方。この方も五月一日から長時間の
任意の
取り調べを五月四日まで受けて、五月八日の夜、
自宅トイレで倒れて
救急車で運ばれている。これは
国家賠償請求訴訟の
証拠で、
救急車の
搬送証明書が出ております。
また、
山中鶴雄さん、七十四歳の方。この方は、四月十七日以降
任意同行を繰り返され、連日の
取り調べで
疲労したために、四月三十日、
交通事故を起こしてしまっている。
このような、まだまだ取り上げれば切りがない、もう
違法捜査のオンパレードと言ってもいい
事例がいっぱい起こっているわけです。
このことを要約しますと、
任意出頭の名目をかりて、事実上の
取り調べを長時間、長期間にわたって先行させている。しかも、再
逮捕、
再々逮捕を蒸し
返しをしている。確かに、最終的な
起訴事実を見ると、二月の二回そして三月の二回に、それぞれ三十万とか二十万とか現金を渡して領収したということで四つの公訴事実で
公判請求されている方がいるということから見れば、それぞれは別の
事案だということが言えるかもしれないけれども、しかし、一体的にそれは
捜査が可能であったわけでありますから、これは不当な
逮捕、勾留の蒸し
返しであるというふうに
指摘される余地があると私は思うわけであります。
また、暴行、
脅迫や
利益誘導の
取り調べがなされている。
弁護人解任を慫慂する違法な
取り調べがなされている。そして、
疲労のあげく、病気で入院したり、また
交通事故を起こしたり
自殺未遂に追い込まれる人も出ている。そして、踏み字を強要するというような事実。また、多くの方が高齢であります。
起訴されている十三人の方のうち、七十二歳、七十三歳、七十五歳の
方々がいらっしゃる、ほとんどが六十歳以上。このような
事例であります。
そして、しかもこの主犯とされている
中山信一さん、前
鹿児島県会議員の方については、いまだ
保釈をされていない、まさに
人質司法と言われるような
現実なのであります。
さらに、二〇〇三年九月二十日付の
南日本新聞によりますと、
被告人の
藤元いち子さんという方が
任意同行を求められた、そのしばらくした後の四月二十日の日に、
取り調べ室の中から
携帯電話で
自分の姉ともう一人に
電話をしている。そして、
お金を受け取ったのは、しょうちゅうと一万円もらったということにしてほしいというふうに、
自分の実の姉ともう一人に
電話をしている。
そして、それを受けた姉は、
陳述書が出ておりますけれども、何を言っているのかわからない、戸惑っているところに
電話がかかってきて、別の
警察官から近くの派出所に来てほしいと。そこで
取り調べを受けているんです。そして、六時半から九時過ぎまで
取り調べを受けて、その
藤元いち子さんが姉に伝えた
内容の
調書をとられている。これは、まさに
捜査機関がそのような
調書をとることを仕組んだとしか思えないような
事案が生じている。
そして、この
電話をかけた
内容について、これは二〇〇四年の五月二十七日の
南日本新聞の
報道によれば、その
取り調べた
警察官が証人尋問されて、午前中の
公判で、
電話を
藤元いち子さんがお姉さんにかけたときに録音していたんじゃないかと言われて、いや、していませんと答えた。ところが、午後の尋問では、
本人に知られないうちに録音しましたということを答えている。それは、
新聞報道によれば、午前と午後の昼休みの休憩の時間に、検事から、あんたはやっぱり録音していたんだろうということを
指摘されて、
うそをつくとまずいよと言われて、午後、供述を翻している。このような事実が出ております。
さらに、
鹿児島新聞の二〇〇三年の七月十二日付の
報道によれば、
検察庁、
鹿児島地検が
国選弁護人の
解任請求を行って、それを
鹿児島地裁が
解任を認めるという、そのような事実が存在しております。
その
理由は何なのかというと、
報道によれば、
弁護士が
接見禁止中の
被疑者と
接見したときに、
親族の
手紙、
お父さん頑張ってねとか、あなた頑張ってねというような
手紙を、
メッセージを
ガラス越しに見せた。
被告人を励ますために、
被疑者を励ますために、
証拠隠滅のおそれなど全くないような、そのような
メッセージを見せた。このことを
理由に、
国選の
解任請求を
鹿児島地検が行って、それを
鹿児島地裁が決定する、認めるというようなことをしておる。
これは、
鹿児島弁護士会はこれに対して
抗議声明を出して、その後の二カ月間、
国選弁護の
推薦手続について拒否している、
裁判所、
検察庁の
やり方が極めて違法であるということで拒否しております。このような
事案、
事例も生じています。
そして、この問題については、
志布志町の有志の
人たちを
中心に、住民の
人権を
考える会ということが組織されて、一万人近い署名を集めて、
公安委員会やいろいろなところで訴えておられます。
また、
志布志警察の
警察官だと称する人から匿名の
手紙まで来ております。「私は
警官であるのが恥ずかしい。違法な
捜査で
警官同士おかしくなっている。今、
志布志署は、四浦を
中心とする
選挙違反の
捜査で、進むも
地獄・退くも
地獄の状態だ。
署長は「進む以外にないのだ」と、ことあるごとに言っている。
事情聴取の
やり方は、昔の特高の
やり方と同じだ。長く
警察官をやっているが暴力以外の何ものでもない
やり方だ。
署長は「
志布志式取調べだ。
取り調べ方もそれでいいのだ」と言っている。」いろいろこれは書いてあります。
これは、すべて、
真偽のほどは
司法判断なりで明らかにされなければいけないし、しかし、これだけの大きな
報道がなされ、たくさんの人々がこの問題を注視しているということは、まさに火のないところに煙は立たない、非常にそれに疑わしい
捜査が行われたのではないかというふうに私としては思わざるを得ない。このような
現実があります。
私は、やはりそこで、この問題は、まさに今の
刑事司法で、
自白偏重の
取り調べ、そして
利益誘導や拷問、
脅迫による
取り調べというのは過去のものではないんだ、現に起こっている、この
日本の地で現に起こっているんだ、だからこそ
捜査の
適正化を図るための制度的なものを
国会できちっと
議論しなければいけない、このように思うわけであります。
個々に申し上げれば、田舎の
警察署の
最初の
見切り発車の、
ボタンの
かけ違いを、
県警本部がそれを追認し、しかも、事もあろうに
鹿児島地検がそれを上塗りするような行動に出ていて、そして
国選弁護人の
接見の際に、
親族の頑張りなさいという
メッセージを見せただけで
解任請求した
事案なんて、これは、
日弁連がそんな事実はないと言っております。過去、空前絶後だというふうに
日弁連が言っている。
このように、
検察庁自身も行き過ぎた
警察の
捜査を抑制できない、このような、ある
意味で
ドミノ式に、どんどんどんどん、
最初の
ボタンの
かけ違いが最後まで行ってしまうような、この
日本の
捜査のありよう、
現状に対して大きな
危機感を持っております。これを何とかしなきゃいけない。
このようなことについて、私は、
警察庁なり、やはり
法務省に対して、どのようにこれを是正していかなきゃいけないのか、この事実の
真偽はともかくとして、仮にそのような同種の
事案があるとしたときに、やはりそれは看過できないものであって、どうすべきなのかということを真剣に
考えていただきたいと思います。
まず、
大臣、
真偽のほどはともかくとして、
捜査の
あり方について、より適正な
捜査に向けた
議論を
国会で真剣にきちっとやるべきだというふうに私は思いますが、この点はいかがでしょうか。