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市川参考人 市川茂樹でございます。
この三月三十一日まで、
日弁連の副会長をしておりました。四月以降は、同じ
日弁連の
日本司法支援センター推進本部副
本部長として、この
総合法律支援という
テーマについて担当しております。本日は、お招きくださいまして、ありがとうございました。
現在、国会におきましては、
裁判員の参加する
刑事裁判に関する
法律案、それから
刑事訴訟法改正案など、
司法改革の総仕上げともいうべき重要な
法案を
幾つか御審議いただいておりますが、この中でも、
市民の
司法への
アクセスの充実を目指すものとして重要なのが、この
総合法律支援法案であると承知しております。
〔
委員長退席、
漆原委員長代理着席〕
日弁連あるいは各地の
弁護士会は、かねてより、いつでも、どこでも、だれでも良質な
法的サービスを受けられる社会を実現するということを目指しまして、
法律扶助の
拡充でありますとか
法律相談の
全国展開、あるいは
当番弁護士制度、
弁護士過疎地への
公設事務所の設置などの諸
施策に取り組んでまいりました。また、
日弁連等は、これらの
取り組みの過程におきまして、つとに、これらの
テーマというのは国の
責務ではないのであろうかということも指摘させていただいたところであります。
こういった経緯から、
日弁連は、本
制度構想につきましては、
日弁連の経験あるいは
意見を取り入れていただけるよう、
関係各方面に
意見を申し上げるなどの
活動もしてまいったところでございます。
本日は、この
日弁連が申し上げてきた
意見の一々をここで御紹介するということは省略させていただきますが、現在御審議いただいておりますこの
総合法律支援法案につきましては、今申し上げました
日弁連の
意見がある
程度取り入れられたものとなってございます。
例えば、
運営主体となる
日本司法支援センターにつきましては、いわゆる非公務員型の独法に準拠するというふうにされておりますが、この非公務員型とされたこと、あるいはまた
弁護士等々の
個々の弁護
活動の
独立性を
確保する旨の条文が設置されたこと、またさらにこの
独立性を担保する
機関といたしまして
審査委員会が設置されたこと、さらには
業務に地域の声を反映させるため地方協議会を設置するということが定められたことなどを挙げることができます。
また、
支援センターは、一定の
枠組みのもと、公的
団体からの委託によりまして、新たなニーズに対応する
業務、目的外
業務と申しておりますが、これも行うことが可能になったということなどもそうでございます。
このように、
日弁連が
意見などを申し上げまして
制度設計がある
程度進められたという今回の
法律案につきましては、
日弁連といたしましてはこれを高く評価しているところでございます。
具体的に申し上げますと、特に、新しく
公的弁護制度が
導入されまして、これにつきまして、それを
運営するためにこの
支援センターが設立されたということ、それから、いわゆる
弁護士過疎
対策につきましては、国がこれを行う、国の
責任において行うというふうに明定されたことなどにつきましては、まことに
意義深いものだと思っておりますし、
市民に対する
法律サービスの
拡充のためには重要な
意義を持つものと考えているところでございます。
こういった基本的評価の上で、
日弁連といたしまして
幾つかの要望を述べさせていただきたいというふうに存じます。
まず
一つ、第一でございますけれども、この
法人の運用に当たりましては、弁護
活動の
独立性の
確保、これが十分に考慮されるべきであるということでございます。特に、
刑事弁護におきましては、国家からの訴追の対象とされております
被疑者あるいは被告人の権利を守ることが役割となっておりまして、
個々の
弁護士の弁護
活動につきましては、
支援センターからも、国からも、その
独立性が
確保されなければなりません。このことは、
刑事裁判だけではなくて、行政を相手にする、例えば
民事訴訟、これは国家賠償などでありますけれども、あるいは行政
訴訟、行政処分の取り消しを求める
訴訟でありますけれども、こういった
訴訟などの場合にも妥当するかと存じます。
法案では、前に述べましたとおり、弁護の独立を
確保するため各種の手当てがなされてはおりますが、今後の詳細な
組織づくりあるいは実際の運用におきましても、この点が重ねて十分配慮されることが必要であるということを申し上げたいと存じます。
また、この点に関連いたしましてでございますが、
法案の二十九条八項あるいは三十五条の二項におきましては、
支援センターの契約
弁護士等への
措置に関しまして、「(懲戒を含む。)」という文言が使用されているわけでございますが、この点につきましては、自治が認められております
弁護士会による懲戒との
関係について疑義、混乱を招く記述になっているかとも思いますので、できれば削除を
お願いできないものかと考えているところでございます。
第二番目に、
お願いの第二でございますが、すべての
市民が良質な
法的サービスを受けられる社会を実現するためには、この
支援センターというのは国の
責務に応じて積極的にその
業務を展開することが必要であろうかと存じます。
欧米諸国、先進国では、既に相当規模の財政出動によりまして、
法律扶助事業を初めとする各種の
法的サービスを展開しているところでございますが、
我が国におきましても、
総合法律支援の
運営主体である
支援センターに対しましては、十二分な
財政措置がなされることが必要かと存じます。この点につきましては、
法案成立後、なお継続して、政府はもちろんでございますが、国会におかれましても積極的な対応をしていただけるよう切望する次第でございます。
お願いの三つ目でございますが、
支援センターの行う
業務の
範囲につきましては、
法案の成立後も引き続き
拡充に向けて
検討が継続される必要があるという点でございます。
まず、
民事法律扶助制度につきましては、
法案は、裁判手続とその準備を
援助するものとされております。したがいまして、裁判外手続、例えば、労災保険の
審査手続でありますとか介護保険の
審査手続、そういったようないわゆる行政手続などには
扶助は及ばないものとされておるわけでございますが、この点につきましては、より幅の広い手続も
弁護士の
支援を対象とするよう引き続き
検討を
お願いしたいというふうに思います。
また、
資力要件を緩和する、あるいは、立てかえ制が原則となっておりますけれども、一部は給付制、渡しきりにして返還を求めないという給付制の
導入等についても
検討されるべきでないか、
制度の
拡充に向けて
検討がなされるべきでないかというふうに考えるところであります。
また、
犯罪被害者の
支援業務につきましても、
法案の
内容は必ずしも十分ではなくて、さらに
犯罪被害者に対する保護法制の
整備が図られるべきだと思いますし、また、この
支援センターの役割につきましても
拡充が
検討されるべきであるというふうに存じます。
四番目でございますが、
日弁連あるいは
弁護士会のこの
法人の
運営の関与の問題でございます。
この
法案の十条には、
日弁連あるいは
弁護士会の
責務について、「
総合法律支援の
意義並びに
弁護士の使命及び職務の重要性にかんがみ、
基本理念にのっとり、会員である
弁護士又は
弁護士法人による
協力体制の充実を図る等
総合法律支援の実施及び
体制の
整備のために必要な
支援をするよう努める」というふうに定められております。
日弁連は、この
責務を果たす
観点から、
支援センターに対しまして、
市民の皆様が必要とする優秀な
弁護士を
確保、養成して継続的に供給していく所存でございます。
総合法律支援制度が真に
市民の役に立って、そして円滑かつ適切に運用されるためには、
日弁連あるいは単位
弁護士会との
連携あるいは
協力が不可欠であろうというふうに存じます。
日弁連といたしましては、各地におきまして、
支援センターの設立準備や発足後の
運営に積極的に関与していくつもりではありますが、
連携協力の実を上げるという
観点から申しますと、例えば、
理事長等の任命、
業務方法書や
法律事務取扱規程の認可、あるいは中期目標の指示など、法務大臣が、その権限を行使するに当たって、
最高裁判所の
意見を聞かなければならないとされておる事項につきましては、法務大臣はあらかじめ
日本弁護士連合会の
意見も聞くというふうに運用していただけると大変ありがたいというふうに存じるところでございます。
今国会は、
我が国の
司法制度にとって歴史的な
意義を持つ国会であると存じます。貴
委員会におかれまして十分な御審議をいただきまして、よりよい
法律とするようしていただきまして、今国会でこの
法案を成立させていただきますよう
お願い申し上げまして、私の
意見とさせていただきます。
どうもありがとうございました。(
拍手)
〔
漆原委員長代理退席、
委員長着席〕