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辻議員 大野局長の方から、
自白事件と否認
事件で余り
保釈率に変わりはないというような数字が出ておりますが、これは、現場にいる者の実感としては全く違います。
私なんか素朴に、やはり時代がどんどんたって、世の中がどんどん自由に、そして民主主義的になっていくものかなというふうに、非常に楽観的に
考えておりましたけれ
ども、私は
弁護士を二十三年間やってまいりましたけれ
ども、
保釈の
運用というのは逆行している。どんどんどんどん、ある
意味では
身柄の
拘束がされる率が多くなるというか、
保釈が認められにくくなっていくということを非常に実感しております。
例えば、起訴後に
保釈される割合が非常に減っている。起訴後、第一回の
裁判が開かれるのは大体一カ月とか一カ月半でありますけれ
ども、その一カ月か一カ月半の間、否認していない
自白事件であっても、なかなか
保釈が認められないという例があります。起訴後直ちに
保釈されるというのは、本当に
自白をしていて、かつある特定の罪種にどうも限られるんじゃないか。道路交通法違反でそんなに大きな被害が生じていない場合とか、かなり限られている。それは、この十年、十五年、やはり
保釈率がどんどん悪くなっているというふうな実感がありますし、第一回が開かれても、否認しているとなかなか
保釈されない。
これは、先ほど
自白事件は一二・五%の
保釈率であり、否認
事件は一一・七%だとおっしゃられましたけれ
ども、どのような
事案、どのような根拠でこの統計の数字が出ているのか、極めて疑問であります。
いろいろ
裁判実務に関与している多くの人々からいろいろなアンケート調査をしたりしている統計表も出ておりますし、やはりこれは、
法務省なり
裁判所なり、きちんと調べて、本当に責任を持った回答をしていただきたい。人質
司法ということが今の
捜査をゆがめているし、
裁判の
あり方もゆがめているんです。
本当は争いたくても
身柄が出ない、否認し続けたらもう半年ぐらい出ない、外に出ることができない。やむを得ず調書を全部認めて、
裁判も争わないで、早期に、公判廷で認めて
保釈してもらおうというふうに思う場合が結構多いですし、
捜査の段階でも、いつまでも否認しているとずっと出られないぞと言われて結局
自白してしまう。本当にそうだと思っていなくても、事実が事実どおりではなくても、軽微な
事件だから早く出られた方がいいとかいろんなことを言われて、
自白調書をとられてしまう。
ですから、
捜査の段階における
弁護人の
立ち会い権とか
捜査の
可視化によって
取り調べの
自白偏重主義を正さなければいけないという
要請は、一方で、
保釈をしっかりと
権利として認めるということをきちっと
制度として確立することによって、一体となって前進するということが言えるというふうに思います。
民主党の今回の八十九条の案は、従来の「相当な
理由があるとき。」というのを「充分な
理由があるとき。」に改める。これは、昭和二十八年にこの
刑事訴訟法八十九条の五号のいわゆるお礼参りの規定が、当初は「充分な
理由」があるとき許すということになっていたのが、昭和三十三年に「相当な
理由があるとき。」というふうに変えられている、そういう、強化されたという経過があります。
やはり法文も
保釈を限定する方向に流れてきているということについては、今やはり流れを変えるときであろう、それが憲法の
趣旨にも合致するし、
日本の
刑事裁判を本当によりよいものにしていくことであろうというふうに思います。そういう
意味で、
保釈制度を改善する必要がどうしてもあるということで、この
法案を
提案しております。
以上でございます。