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デゼルスキー参考人(
通訳) 御紹介いただきましてありがとうございます。ただいま御紹介にあずかりました
GERAジャパン国際
レコード小売協会
日本支部世話人
ポール・
デゼルスキーでございます。
GERAとは、グローバル・
エンターテインメント・リテーラーズ・アライアンスの略でございまして、ジャパンのほかに
GERA・USA、
GERA・UK等、
世界十二カ国に姉妹
団体を持っております。また本日は、HMVジャパン株式会社
代表取締役社長兼HMV
アジア・パシフィック統括
代表としても
意見を述べさせていただければと思っております。
HMVジャパンはCDのチェーン店でございます。一九九〇年に渋谷に第一号店をオープンし、現在、
日本全国に四十五の店舗を構えております。そして、
日本で現在、千五百名以上の従業員を雇用しております。HMVは、香港、シンガ
ポール、オーストラリアを含む
世界八カ国で
音楽ストアを営業しております。
通常、私
どもは、法的または政治的な議題には関与しないようにしております。しかしながら、今
法案の場合、幾つかの深刻な
懸念があり、これは
日本の多くの
消費者の
皆様と共通の気持ちであると確信しております。
まず、今回の
著作権法の一部を
改正する
法律案の中の、
音楽レコードの
還流防止措置に関しまして申し上げます。
その目的とされている、
アジア諸国等でライセンスされた
日本よりはるかに安い
日本の
音楽レコードが還流してくるという問題は
理解できるものであり、何らかの措置が必要であることは同意できます。しかしながら、非常に大きな
懸念点があります。
現在の
法律案では、残念ながら、私
どもの店舗でも
消費者の方に楽しんでいただいております
洋楽の
輸入盤CDも、
副作用としてこの
規制の対象になります。そして、この点は先日の審議でも明らかになっております。この
洋楽の
輸入盤の
売り上げ枚数は、弊社だけでも年間五百万枚にもなります。
昨年九月より、
日本レコード協会を初めさまざまな関係省庁、
団体とも協議を行ってまいりました。そして、何とかこの
洋楽の
輸入盤が明確に
規制の対象にならないようにできないものか、お願いしてまいりました。しかし、
著作権法では、内外無差別の原則により、
洋楽と
邦楽を差別できないとの説明を受けました。
そういった中、
参議院文教
委員会での答弁、
日本レコード協会が提出されている確認書、参院本
会議で可決された
附帯決議等、さまざまな形で
洋楽輸入盤を
適用除外にするという言質は既にいただいております。それは非常に高く評価するものです。しかし、五月二十八日の
文部科学委員会の答弁でも、これらには法的拘束力はないというお話がございました。これでは、まだ不安が完全に払拭されないものであります。
ここで、念のため、実際にCDをお見せしながら御説明したいと思います。
こちらは、現在
日本全国の
洋楽チャートでも上位にランクしております、プリンスという
アメリカの
アーティストのCDでございます。こちらは、
再販制度により
価格が決まっております
国内盤で、二千五百二十円で
販売しております。そして、こちらが
輸入盤で、当店では千八百九十円で
販売しております。この
販売価格の差額は六百三十円、つまり
国内盤の方が三三%高いということになります。
また、こちらはやはり
人気のある
アーティスト、ノラ・ジョーンズです。このCDの場合、
国内盤が二千五百四十八円、そして
輸入盤は、当店では千八百九十円で
販売しております。この
国内盤との
価格差は三五%となっております。
いわゆる
洋楽の
輸入盤のこのような
価格差は、大変一般的であります。そして、五月六日に奥田先生、川内先生より提出された質問主意書に対する答弁書でも、この点は
回答されております。しかし、このような
価格差があっても、この
商品は、今回の
法案の言葉で言いますと、不当に
利益を害することに当たらないと明確に保証していただきたく、お願いいたします。
この質問に関しましては、非常に多くの
日本の
音楽消費者が明確な保証を求めております。既に私
たちは、
日本先行発売という形で
輸入盤より
国内盤を先に
日本で発売し、ディストリビューターが再販で
規制された高い小売
価格のCDをより多く売ることにより追加の
収入を得るという多くの事例を見てきております。
つまり、私
どもの最初の
懸念は、この
法案が
利益の優位性を利用し、将来的に乱用されるのではないかという点でございました。
依田会長からは、そのようなことは起こりません、私
どもを信じていただきたいとお願いされました。そして、もちろん、
依田会長のお言葉は信じております。
しかし、この
法律は、多くの利害関係者に非常に大きな権限を与えるものです。そして、将来的には会長が
コントロールし切れない状態になり、してくださったお約束を守り切ることが難しくなる
状況を危惧いたします。
次に、
導入された場合において、実
運用面に関する大きな
懸念について申し上げます。
私はHMV香港も統括しておりますので、弊社の事例として、
導入されている
輸入権がどれほど似通ったものであるか、香港での実例を申し上げます。この件に関しましては
参考資料を御提出させていただきました。ここでは詳しいことは申し上げませんが、何千というタイトルの
商品が毎週発売になります。それに対して
一つずつ許可をとるという作業は非常に困難でございます。そういった影響、こういった
輸入規制により香港の市場はダメージを受けて、顧客の
選択肢は間違いなく減ってしまいました。
オーストラリアでは、ここ数年、逆の動きがございました。つまり、
輸入規制を撤廃しました。そして、この結果、決して安価な
商品や海賊版が市場にはんらんすることもありませんでした。逆に、
消費者の
選択肢は広がりました。
私
どもの
考えでは、この
法案は
日本での実務面で実際にどのように
運用されるかという点において非常にあいまいであると思われます。
弊社だけでも年間十二万六千種類ものCDの
輸入を現在行っております。どのCDが還流防止との表示がされていたとしても、
一つ一つ確認作業を行うことは余りにも膨大な作業となります。万一、税関でそのような作業を行った場合、
商品が滞留するのではないかとの危惧もあります。流行
商品であるCDは、滞留することで
商品価値を大きく損なうリスクがあると思われます。また、CDを
輸入する行為において、
商品を没収されるおそれや、訴訟の
可能性などによって
輸入行為自体の縮小も
懸念されます。
では、ここで、お時間もありませんので、私が本日申し上げた点につきましてまとめさせていただきます。
まず第一に、私
どもは、
日本よりはるかに安い
アジア盤の
日本音楽の還流を防止する措置には、これは
日本の
音楽市場に悪影響を及ぼすおそれがあるという点で同意いたします。
第二に、私
どもは、この
法案が
洋楽の
輸入を
規制するためには絶対に行使されないという一〇〇%の法的担保をいただきたいと存じます。
第三に、この
法案が
導入された場合の実務面に関し、さらに明確な御説明をいただきたいと思います。
消費者の
皆様が一日も早く安心し、
懸念を払拭できるよう、ぜひともこの
文部科学委員会で十分な検討がなされますよう心よりお願いする次第でございます。
私からの
意見は以上とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(
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