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2004-04-22 第159回国会 衆議院 憲法調査会最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会 第4号
公式Web版
会議録情報
0
平成十六年四月二十二日(木曜日) 午後二時二分
開議
出席小委員
小
委員長
保岡
興治
君 小野
晋也君
下村 博文君 平沼 赳夫君
船田
元君 森岡 正宏君 綿貫 民輔君 大出 彰君
武正
公一
君 計屋
圭宏
君
古川
元久
君 増子 輝彦君 赤松 正雄君
塩川
鉄也
君
土井たか子
君 …………………………………
参考人
(
北星学園大学経済学部助教授
)
齊藤
正彰
君
衆議院憲法調査会事務局長
内田 正文君
—————————————
四月二十二日 小
委員古川元久
君同月八日
委員辞任
につき、その
補欠
として
古川元久
君が
会長
の
指名
で小
委員
に選任された。 同日 小
委員小林憲司
君、
山口富男
君及び
土井たか子
君同月十五日
委員辞任
につき、その
補欠
として
武正公一
君、
塩川鉄也
君及び
土井たか子
君が
会長
の
指名
で小
委員
に選任された。 同日 小
委員塩川鉄也
君同日
委員辞任
につき、その
補欠
として
山口富男
君が
会長
の
指名
で小
委員
に選任された。 同日 小
委員武正公一
君同日小
委員辞任
につき、その
補欠
として
小林憲司
君が
会長
の
指名
で小
委員
に選任された。
—————————————
本日の
会議
に付した
案件
最高法規
としての
憲法
の
あり方
に関する件(
憲法
と
国際法
) ————◇—————
保岡興治
1
○
保岡
小
委員長
これより
会議
を開きます。
最高法規
としての
憲法
の
あり方
に関する件、特に
憲法
と
国際法
について
調査
を進めます。 本日は、
参考人
として
北星学園大学経済学部助教授齊藤正彰
君に御
出席
をいただいております。 この際、
参考人
に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用中にもかかわらず御
出席
をいただきまして、まことにありがとうございます。
参考人
のお
立場
から忌憚のない御
意見
をお述べいただき、
調査
の
参考
にいたしたいと存じます。 本日の議事の
順序
について申し上げます。 まず、
齊藤参考人
から
憲法
と
国際法
、特に
人権
の
国際的保障
について御
意見
を四十分以内でお述べいただき、その後、小
委員
からの質疑にお答え願いたいと存じます。 なお、
発言
する際はその都度小
委員長
の許可を得ることとなっております。また、
参考人
は小
委員
に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御
承知
おき願いたいと存じます。 御
発言
は
着席
のままでお願いいたします。 それでは、
齊藤参考人
、お願いいたします。
齊藤正彰
2
○
齊藤参考人
ただいま御
紹介
を賜りました
北星学園大学
の
齊藤
でございます。本日は、私のような浅学の者に
発言
の
機会
をいただきまして、大変光栄に存じております。 本日は、
憲法
と
国際法
の
関係
について総論的に述べるとともに、特に、
人権
の
国際的保障
の
枠組み
やその履行の確保について、また、
人権条約
の
国内法
的な規範としての
効力
についてといった
観点
から陳述せよとのことでございます。
憲法
と
国際法
の
関係
についてということで
検討
されるべき
内容
は極めて広範でございますが、広く
国際社会
の中で、あるいは昨今の
国際情勢
の中での
日本
及び
日本国憲法
の
あり方
といった大きな問題につきましては、私の能力をはるかに超えておりますし、また、既に
国際社会
における
日本
の
あり方
に関する
調査小委員会
におきまして御
審議
のことと
承知
しております。また、本日は、特に
人権
の
国際的保障
に重点を置いて陳述せよとのことでございまして、時間も限られておりますので、既に
安全保障
及び
国際協力等
に関する
調査小委員会
において御
審議
の
内容
と重複のないように、論点を絞りたいと存じております。また、私は
憲法学
を専攻しておりますので、研究の領域や
観点
にも限りがございます。 そうしたことから、以下、お
手元
にお届けしております
レジュメ
のような
項目立て
で申し述べさせていただきたいと存じます。 なお、
レジュメ
の原稿を
事務局
に提出いたしました後に、
事務局
から大変に行き届いた
資料集
、「「
憲法
と
国際法
(特に、
人権
の
国際的保障
)」に関する
基礎的資料
」をお送りいただきました。 そこで、前半は、
レジュメ
の目次では、「I.
憲法
と
国際法
」の総論的な
部分
でございますけれども、こちらについては、多少、用意の
レジュメ
とは
順序
が前後いたしますが、この
資料集
の方を参照しながら御説明申し上げることといたします。後半、「
II
.
国内裁判所
と
国際人権訴訟
」のところは、
資料集
から離れまして、主に
レジュメ
の
記載
に沿って愚見を申し述べることといたします。 まず、
憲法
と
国際法
の
関係
について総論的にとのことでございますが、後半の
国際人権法
の
国内的実施
の問題を
検討
する上で必要な
範囲
で論じるということでお許しいただきたいと存じます。 また、御
承知
のとおり、
国際法
の
法源
といたしましては、
条約
と
慣習国際法
とがございますが、本日は、
条約
に絞って
検討
いたします。 一国の
法体系
において
条約
がどのように取り扱われるかということでございますが、
国際法
としての
条約
がどのように
国法体系
の
内部
に入ってくるかということが、まず問題となります。 なお、
人権保障
を
内容
とする
条約
、いわゆる
国際人権条約
の
内容
の実現につきましては、少なくとも第一次的には、
国内裁判所
における
国内的実施
が重要であるとされるところでございます。
条約
の
内容
が
国内
においていかに
実施
されるかということを考える際には、従来から、その
前提
となる問題がるる論じられているところでございます。お
手元
の
資料
では六
ページ
以下に
紹介
がございます。 ごく大ざっぱに申し上げますと、第一に、
国内法秩序
と
国際法秩序
とは全く異なる
次元
にあるのか、それとも同一の
次元
にあるのかということが論じられます。 第二に、
資料
の九
ページ
の図にございますように、
条約
は、それ
自体
が
国法体系
の
内部
に入ることはできず、
国内法
につくりかえられなければならないのか、それとも、次の十
ページ
の上の図にございますように、
国際法
としての性質のままで
国法体系
の
内部
に入って、
国内
で適用されることができるのかということが問題となります。 第三に、
条約
が
国法体系
の
内部
に入ってきた場合でも、
条約
の条文には抽象的なものや
国家
を義務づけるだけのものが多いから、そのまま
国内裁判所
で適用できないのではないかという
議論
がございます。
資料
では、
ページ
が後ろの方になりますけれども、五十五
ページ
に自動執行的という
言葉
が出てまいります。この問題でございます。 これらの問題は、
レジュメ
で申しますと二
ページ
の(2)の1から3でございますが、長らく難しい
議論
がなされてきております。しかし、実際に
国法体系
において
条約
がどのように扱われているかという問題を考える上では、
各国
の
憲法規定
や
国家機関
の実行などの分析に力を注ぐべきであると考えるのが、近年の主流でございます。 そこで、既に御
承知
のこととは存じますが、
日本国憲法
がどのように
条約
を取り扱うことと定めているかということを確認いたしたいと思います。 まず、
憲法
第九十八条第二項は、
日本国憲法
における
条約
の取り扱いを考える上で極めて重要でございます。
資料
の一
ページ
から、
憲法
第九十八条第二項の
趣旨
について
記載
がございます。
資料
の二
ページ
から三
ページ
にかけて述べられておりますように、この
制定過程
を見ますと、外務省が、
資料
の二
ページ
の一番
最後
の行でございますけれども、「
日本
が
条約
・
国際法
を尊重する旨の
規定
が欠けることは好ましくない」として提出した案がもととなっております。 さて、
一般
に、
条約
の
締結
は
政府
が行いますが、
立法権
を保護し、
国家
の
対外作用
の
民主的統制
のために、現代では、
議会
が一定の関与を行うことが多くなっております。
日本国憲法
もそのような
仕組み
をとっておりまして、
条約
の
締結
に際しましては
国会
の
承認
を経るということとなっております。
国会承認
の
手続
につきましては、
予算
の
議決手続
を準用しております。ここで留意すべきは、
予算
の
議決手続
は第五十九条が定めている
法律
の
制定手続
よりも
厳格度
が緩和されているということでございます。仮に
衆議院
と参議院が対立いたしました場合、
法律制定
の場合は
衆議院
の
出席議員
の三分の二の賛成が必要ですけれども、
条約承認
の場合は過半数で足りるということとなるわけでございます。
国会
の
承認
が必要とされる
条約
の
範囲
でございますが、
資料
の三
ページ
から四
ページ
にかけて
記述
がございますように、その
内容
を実質的に考えて
判断
されております。
締結
された
条約
は、
憲法
第七条の定めにより公布され、
条約
は
国法体系
において
国内
的な
効力
を獲得いたします。
資料
十
ページ
の中ほどにございますように、
一般的受容方式
というふうに呼ばれる
仕組み
でございます。
国内的効力
を獲得した
条約
が
国内法
の
秩序
においていかなる
地位
を認められるかにつきまして、
日本国憲法
は
明文
の
規定
を持っておりません。
憲法
第九十八条第二項は、
条約
の誠実な
遵守
を要請しておりますけれども、
通説
は、このことから、
条約
は
国法秩序
において
法律
に
優位
する、
法律
よりも上にあると解しております。この点につきましては、
幾つ
か難しい問題がございますので、後ほど論及いたします。
レジュメ
では三
ページ
に参りまして、
国法秩序
において、
条約
と他の
法形式
との
優劣関係
がどのようになっているかという問題でございます。 まず、
憲法
との
関係
でございます。
資料
では十四
ページ
から説明がございます。
資料
の十五
ページ
の「
参考
」というところにございますように、当初は、
条約
の方が
憲法
に
優位
するとする
条約優位説
が有力でございました。
条約優位説
の
論拠
のうちで重要なものは、十四
ページ
の表の「主な
論拠
」というところの3でございます。しかし、
条約優位説
は、
条約
に対する過去の
日本
の
態度
についての反省ということを
出発点
としていたこともございまして、
憲法
に対する
優位
が認められる
対象
をすべての
条約
であると考えることになり、
国際主義
の射程の
明確化
が不十分なものとなってしまったと考えられます。
条約優位説
にかわって
通説
的な
立場
を占めることとなりましたのが
憲法優位説
でございます。
憲法
の方が
条約
に
優位
するという
考え方
でございます。
憲法優位説
の
根拠
、これも
幾つ
かございますが、最も強力な
論拠
と考えられていますのが、十四
ページ
の表の「主な
論拠
」のこれも3、その後半
部分
でございます。
憲法改正手続
と
条約
の
締結手続
を比べた場合、厳格な
憲法改正手続
に対して、
条約
の
締結手続
は、先ほど述べましたように、
法律
の
制定
よりも簡易な
手続
で足りる、そのようにして成立する
条約
が
憲法
に
優位
するとするならば、
憲法
と抵触する
内容
の
条約
を
締結
することによって、実質的に
憲法
を改正してしまうことができるということが強く主張されたのでございます。 このようにして
通説的見解
となった
憲法優位説
でございますが、
憲法
優位
には
例外
があるとする
条件つき憲法優位説
というものが登場いたしました。
憲法
優位
の
例外
の
内容
及び
根拠
につきましては、
幾つ
かの
種類
がございますが、詳細は
資料
の十五
ページ
の後半から十六
ページ
の
記述
に譲りたいと考えます。 実は、この
条件つき憲法優位説
でございますが、
政府見解
は早くからそのような
考え方
をとっておりました。これに関する代表的な
政府答弁
が
資料
では十六
ページ
から十七
ページ
に掲載されております。 なお、この
憲法制定過程
における
金森徳次郎国務大臣
の
答弁
において注目されますのは、
条約
を一律にとらえるのではなく、これを分類して対応を考えるという思考が
憲法
第九十八条第二項の文言との
関係
で説明されている点でございます。すなわち、
資料
の十六
ページ
の下の
囲み
の中の下から三行目でございますが、「
条約
と云うものには、種々なる
種類
があろうと思うのであります。」とされておりまして、さらに十七
ページ
に行きまして、
囲み
の中の
最後
の方でございますが、「此の二頁に於きましては、其の両方を含めまして、…そう云う種々なる
関係
を命令的に
規定
すると云うことは、なかなかやりにくいのでありますから、斯様な広い
言葉
を以て
遵守
すると云うことを書きまして、それから以下は
解釈
に依ってさせると云う
方法
に出でたのであります。」と述べております。
金森国務大臣
は、ほかの
機会
にもこの旨の
答弁
をしております。
判例
でございますが、
レジュメ
の2の(1)の3に書きましたように、
最高裁判所
のいわゆる
砂川事件
における昭和三十四年十二月十六日の大
法廷判決
につきまして、
資料
では十九
ページ
に
記載
されておりますが、十九
ページ
の太字の
記述
にございますように、
判例
は
憲法優位説
の
立場
から、
条約
の
違憲審査
も可能であるとしたものと理解されております。多くの
学説
もほぼそのような
見解
でございます。 なお、
国法秩序
における
条約
の
地位
は
各国
の
憲法
の定めるところによりますが、
資料
では二十
ページ
以下をごらんいただきますと、オランダとオーストリアでは
憲法
に対する
条約
の
優位
が認められております。ただし、両国とも、
憲法
と抵触する
内容
の
条約
を
締結
するときには、
憲法改正手続
に匹敵する
手続
を踏むということを求められている点に
注意
が必要かと思います。
レジュメ
三
ページ
に戻りまして、(3)のところでございます。従来、
憲法優位説
が
通説的見解
となり得た強力な
論拠
は、
憲法
と抵触する
内容
の
条約
によって
憲法
が実質的に改正されてしまうことを防ぐということでございまして、それは
レジュメ
の
一つ目
の
黒丸
のような
事態
を
前提
としていたものと考えられるのでございます。 しかし、
国際人権条約
の
規定
と
憲法
の
規定
との
関係
を考えますと、いずれも
人権保障
という意味ではほぼ同じ方向を目指しながら、時に
両者
の間に相違が生じるというものでございます。そうしますと、
両者
が全く矛盾、抵触するという場合は必ずしも多いわけではございません。それよりも
レジュメ
の
黒丸
の1から
黒丸
の3のいずれかの場合が多いと考えられます。中でも、
国際人権条約
の方が
保障範囲
が広いとか、
規定
の書きぶりが詳細であるという場合にどうするかということが問題となります。この点につきましては、本日の主要な問題の
一つ
として、後に
検討
いたします。
レジュメ
の3に参りまして、
法律
との
関係
でございます。
資料
では、恐縮でございますが、
ページ
を戻っていただきまして、十二
ページ
のところでございます。
国法秩序
において
法律
と
条約
のいずれが
優位
するかということにつきましては、
日本国憲法
に
明文
の
規定
はございませんが、現在の
学説
は、ほぼ異論なく、
法律
に対する
条約
の
優位
を認めております。
政府見解
も同様でございます。その
論拠
は
幾つ
か挙げられますが、いずれも必ずしも説得的ではございません。実際には、
憲法優位説
において、
憲法
に対する
条約
の
優位
は認められないとされたことの裏返しとして、
法律
に対する
優位
までは認められるというのであって、
条約
と
法律
との
関係
についての詳細な考察の結果としてではないのではないかと考えられるのでございます。
レジュメ
の四
ページ
の冒頭のところでございますが、
憲法優位説
が、
憲法改正手続
と
条約締結手続
との対比を
根拠
とするのであれば、前述のように、
条約
の
国会承認
の
手続
は
法律
の
制定手続
よりも簡単でございますので、
手続
の厳格さという点を
根拠
といたしますと、
法律
に対して
条約
が
優位
するとは言えなくなってしまいます。
憲法
九十八条第二項が
根拠
として援用されることもございます。しかし、例えば、
憲法
第九十八条第二項は、
条約
が
法律
に
優位
することを認めたものと解することが
国際協調主義
の
立場
から見て当然だとしながら、
他方
で、
憲法
が
国際協調主義
をとるといっても、
条約
が
憲法
に
優位
するという
趣旨
ではないとするのは、
結論
の先取りとも思われまして、いささか疑問が生じるところでございます。
法律
に対する
条約
の
優位
ということにつきましては、
憲法
の前文はもちろんのこと、
条約
を
国内法
と同様に公布することを定める
憲法
第七条、
平和主義
についての第九条、
条約締結
の簡易迅速な
手続
による
国会承認
を
規定
する第六十一条、時宜によっては事後に
条約締結
の
国会承認
を経るということをも許容している第七十三条の第三号、
違憲審査
の
対象
に
条約
を明示的に列挙しない第八十一条、
最高法規
たる
憲法
の
下位
に置かれる
国法形式
に
条約
を明示的に列挙しない第九十八条第一項、そしてこの第九十八条第二項などから読み取られる、
日本国憲法
の基本的な
態度
としての
国際主義
といったものを基調としまして、他の
憲法
上の諸原理との調和を求めた結果と解するのが整合的ではないかと考えるものでございます。
条約
が
法律
に
優位
するということは、
法律
を
制定
し、
条約
の
締結
に
承認
を与えている
国会
との
関係
で、難しい問題をもたらす
可能性
がございます。従来は、
国会
の
承認
を要する
国際約束
の
範囲
が問題とされてまいりましたが、ここでは、
国会承認
の重みというものが問題でございます。 問題は三つございまして、第一に、
法律
の
制定
よりも簡易な
手続
で
締結
される
条約
が、
国会
の
制定
した
法律
に
優位
するということでございます。
条約承認
の
案件
についての
国会
での御
審議
が、仮に
法律案
の
審議
よりも簡潔になされるというようなこととなりますと、さらにこの
逆転現象
が強まるということになります。 第二に、二国間の
条約
はもちろん、近年の
多国間条約
におきましても、
政府
や
関係省庁
が
条約
を起草する
国際機関
や
国際会議
の作業に積極的に関与するという場合が多くございます。このときに、
政府
が、
条約
の
内容
に
政府
の政策を盛り込むことに成功し、そのようにして作成された
条約
が簡易な
手続
で
承認
されて
法律
に対する
優位
を獲得する、さらに
国内
での
実施
に必要な
法律
の
制定
、改廃も、国際的に要請されている
条約
の
関連法令
の整備であるということで正当化できるということとなります。場合によっては、
政府
は、
国会
に
法律案
を提出するよりも、
条約
を作成してきてその
承認
を求めるという
方法
を選択するかもしれません。類似の問題は、EC、EUにおいても問題とされているところでございます。 第三に、
裁判所
が、
法律
に対する
条約
の
優位
ということを
根拠
に
法律
を
条約違反
と
判断
した場合、
国会
は、通常の
立法権
ではその
解釈
、
裁判所
の
解釈
に対抗できないということでございます。
法律
と
条約
が同位、同じ
ランク
にあるならば、
後法優先
の
原則
、後からできた法の方が優先するという
原則
がございますので、後から
国会
が
制定
した
法律
が
条約
に優先するということになりますが、
法律
に対する
条約
の
優位
が認められているといたしますと、後から
国会
が
幾ら法律
を
制定
いたしましても、
条約
と抵触する場合は
条約
の方が優先するということになってしまうのでございます。
日本
の
憲法学
は、この
法律
に対する
条約
の
優位
というものを半ば自明のものととらえてきましたため、この点についての
外国法
との
比較検討
も必ずしも多くはございませんが、そもそも、
憲法
が
法律
に対する
条約
の
優位
を認めるという
例自体
、
検討
を要しないほど
一般
的と言えるわけではございません。
法律
に対する
条約
の
優位
を
憲法
の
明文
で
規定
している例としてすぐに思い起こされますのが、
フランス
の第四
共和制憲法
及び
フランス
の第五
共和制憲法
でございます。
他方
で、
フランス
の
裁判所
が、長い間にわたって
法律
の
条約適合性審査
を行うことをちゅうちょしていた、あるいは拒否していたということも、よく知られていることでございます。 また、
法律
に対する
条約
の
優位
を定める
憲法
の
規定
が、
国際協調主義
といったもののみを
基礎
として成り立っているのかどうかということにつきましても、
注意
を要するところでございます。
違憲審査
において
最高裁判所
の示した
憲法解釈
を覆すには、
国民代表
である
議会
も
憲法改正
に訴えなければならないわけでございますが、そのような
最高裁判所
の
権限
というものは、
憲法
第八十一条に
明文
の
根拠
がございます。しかし、それでも、
裁判所
がどの程度の厳格さで
違憲審査
を行うべきかということは大きな問題でございます。
法律
が
条約
に適合するか否かの
審査
につきましては、
憲法
第八十一条に相当するような
憲法規定
はございません。かえって、後に述べますように、
訴訟法
上は、
最高裁判所
が
法律
の
条約適合性審査
には関与しないということとされているのでございます。
国法体系
における
条約
についての総論的な
検討
を終えまして、
国際人権条約
の
国内的実施
の問題に入りたいと存じます。
レジュメ
では、四
ページ
の
II
というところでございます。
日本
の
国内裁判所
の
国際人権条約等
に対する
姿勢
につきましては、
レジュメ
の四
ページ
の下の方でございますが、
黒丸
の1から3のような傾向が指摘されております。さらにこの
黒丸
の3の
タイプ
は、アルファとベータに分類されております。これは、
レジュメ
の末尾の
参考文献欄
に掲げました、
参考文献
の二番目、
岩沢教授
が指摘されている分類でございます。 確かに、近年、
国際人権条約
を積極的に活用したとして高く評価されている
裁判例
もございますが、それらも、
注意
して見てみますと、必ずしも
法律
が
国際人権条約違反
であると
判断
したわけではございません。 このような
裁判所
の
姿勢
につきまして、
岩沢教授
は、先ほどの
参考文献
の二番の中で、
レジュメ
では五
ページ
の(3)の1、2のような評価をされております。
かぎ括弧
の中は、
岩沢先生
が御論文にお書きになっている
部分
を引用したものでございます。 このような
裁判所
の
姿勢
ですけれども、
国際人権法
の
違反
を示唆しながら、
結論
としては訴えを棄却して、
事態
の改善を
立法者
にゆだねるという
タイプ
の
裁判例
が存在していることに注目しますならば、
裁判所
は、
法律
の
条約適合性審査
を行うことに十分な
根拠
を見出せないために、
条約違反
の
判断
を避けていると考えられるのでございます。
国会
の
制定
した
法律
を
条約違反
と
判断
することは、結果としては
憲法違反
の
判断
に匹敵する効果を持つにもかかわらず、そうした
権限
を行使する
根拠
、
条件
あるいは限界といったものが必ずしも明らかではございません。 〔小
委員長退席
、
船田
小
委員長代理着席
〕 このように、
法律
に対する
条約
の
優位
というものを
根拠
として
国内裁判所
が
法律
の
条約適合性審査
を行うという
仕組み
が、期待に反して論理的にも脆弱であるといたしますと、さきに述べました
レジュメ
の三
ページ
の2の(3)の
黒丸
の3ですけれども、「
憲法
よりも
条約
の
保障内容
が広範であったり具体的に詳細である場合」、そういう場合におきまして、
国際人権条約
の誠実な
遵守
のためには、
国際人権条約
の
内容
を
違憲審査制
の
枠組み
の中で実現していく、つまり、
違憲審査制
とのすり合わせといったものを考えなければならないと思われるのでございます。
裁判所
は、
法律
などが
憲法
に
違反
しないか否かを
審査
する
権限
を持っているのでございますが、その際に、
国際人権条約
を
憲法解釈
の
基準
として用いることによって、
国際人権条約
の
内容
の
国内
的な
実施
を図るという方策が考えられるのでございます。 まず、
憲法解釈
に
複数
の
選択肢
があり得るという場合でございますが、このときは、可能な限り
国際人権条約
に適合的な
解釈
を選択するということが、
日本国
が
締結
した
条約
は、これを誠実に
遵守
することを必要とすると定めている
憲法
第九十八条第二項の求めるところにかなうものであろうと考えられます。
複数
の
選択肢
がある場合、
条約
に適合的なものを選ぶという
考え方
と截然と区別することは難しいところもございますけれども、
憲法
よりも
国際人権条約
の
保障内容
の方が広かったり
規定
が詳細であるという場合には、そうした
国際人権条約
の
規定
の
内容
を
憲法解釈
を通じて
憲法
の
内容
に取り込むということが考えられるのでございます。
憲法
の
解釈基準
として
国際人権条約
を援用するということは、
憲法優位説
の
考え方
のもとでは、
国法秩序
において上位にある
憲法
を、
下位
、下の
ランク
にある
条約
を
基準
として
解釈
するということになりますので、そのことについて
学説
の一部には強力な批判もございます。 しかし、
日本国
が
締結
した
条約
は、これを誠実に
遵守
することを必要とするという
憲法レベル
での決定がございますので、
国際人権条約
の
内容
は、
憲法解釈
を通じて
憲法
に引き上げられ、取り込まれることになり、そのようにしていわば間接的な
憲法
的
地位
を獲得すると考えられるのでございます。
レジュメ
の六
ページ
に参ります。
国際人権条約
を
憲法
の
解釈基準
とすることにつきまして、
憲法レベル
でどのような考慮がなされ得るかという問題でございます。 第一に、
国際人権条約
を
憲法
の
解釈基準
とするということを
憲法
の
明文
で
規定
している例もございます。しかし、
国際人権条約
の
内容
が
憲法
よりも
保障範囲
が狭いというものであったり、
憲法
と矛盾、抵触を生じるという場合も考えられますので、
憲法
条文で一律に
解釈基準
として指定するということは疑問があるかもしれません。 そこで、例えばドイツ連邦共和国の例を見ますと、
憲法
であるドイツ基本法の
幾つ
かの関連
規定
から、国際的な開放性あるいは
国際法
に対する友好的な
態度
といった意味合いでの
国際法
調和性といったものが、
憲法
の基本的な
態度
として認められるとされております。そして、これを基調としまして、
国際法
を尊重するというドイツ基本法の
憲法レベル
の決定として
国際法
調和性の
原則
といったものが導かれております。
日本国憲法
につきましても、同じように解することが可能ではないかと考えられます。
日本国憲法
の中にも、前に述べましたように、
国際主義
に基づく条項が少なからず存在しております。そうした
日本国憲法
の基本的な
態度
としての
国際主義
というものを基調といたしまして、
憲法
第九十八条第二項に示された、
日本国
が
締結
した
条約
は、これを誠実に
遵守
することを必要とするという
憲法レベル
の決定から、
日本国
が
締結
した
条約
の性質に応じて、当該
条約
に内在する要求を可能な限り考慮に入れるということが求められるのでございます。
国際人権条約
につきましては、
憲法
の
条約
適合的な
解釈
によって間接的な
憲法
的
地位
を認めるということが求められるかと思われます。これを
国際法
調和性の
原則
による要請と考えてもよろしいかと思います。
違憲審査制
とのすり合わせということを考える上で極めて重大な問題は、
国際人権条約違反
を理由としては
最高裁判所
に上訴することができないという問題でございます。
レジュメ
の六
ページ
のbの(1)のところに、園部元最高裁判事の
見解
を引用してございます。まず第一に、
憲法
では明示されていないような
規定
が
国際人権条約
にある、つまり、
国際人権条約
の
内容
が
憲法
よりも
保障範囲
が広いという場合には、国際
人権
規約に沿った
憲法
の
解釈
による。それも不可能な場合、つまり、
国際人権条約
を
解釈基準
としてその
内容
を取り込もうにも類似の
憲法規定
がない、取り込む先がないというような場合には、国際
人権
規約の
国内
直接適用を行うということでございます。 確かに、
一般
的な
考え方
としてはそのとおりかと存じますけれども、
国際人権条約違反
を理由とする
最高裁判所
への上告及び特別上訴というものは認められないという問題が存在しております。かつては、民事
訴訟法
上の上告だけは可能でございましたが、平成八年の改正によって、上告ができるのは
憲法違反
を理由とするときに限られました。 しかし、法令の
解釈
を統一する最上級
裁判所
としての任務、さらには
法律
の
条約
適合性という問題と
憲法
適合性という問題の平仄を確保するという
観点
からも、
法律
の
条約
適合性の問題に
最高裁判所
が全く関与しないというのは疑問でございます。また、
法律
に対する
条約
の
優位
が
日本国憲法
の基本的な決定であるとするならば、その実現を確保するということについて
最高裁判所
が等閑視するというのは果たして適切かどうかも問題でございます。
レジュメ
の(3)のところで引用してございますように、「
法律
等の
人権
規約
違反
の主張を
憲法違反
に準ずるものとして扱い、上告理由に該当するものとすることによって、
国内法
整備のためのインセンティヴ効果を期待することができる」、樋口先生の
見解
でございますが、とされてございます。前述のように、類似の
憲法規定
がなくて国際
人権
規約に沿った
憲法解釈
をするということができない場合には、
憲法
第九十八条第二項を通じて違憲性を主張するという
方法
が考えられます。 これは、必ずしも、あらゆる
条約違反
が直ちに
憲法
九十八条二項
違反
になるということを意味してはおりません。 少なくとも、重要な
条約
の
規定
について、安易に
憲法
の
規定
と同一視したり、
条約違反
の主張に対して
判断
を示さないというような下級
裁判所
による
条約
の瑕疵ある適用、不十分な適用、あるいは無視といったものが存在する場合には、
憲法
第九十八条第二項に反するものとして
最高裁判所
への上訴を認め、それによって
日本
がその
国際法
上の義務に反すると評価されることを防ぎ、そしてさらには、そうすることによって、下級
裁判所
による
国際人権条約
についての尊重ないしは配慮といったものを確保するということが
最高裁判所
の責務ではないかと考えられるのでございます。
レジュメ
の
最後
の
ページ
、七
ページ
に参ります。 市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆるB規約あるいは自由権規約と呼ばれるものでございますが、これにつきましては規約
人権
委員
会と呼ばれるものが設けられております。 規約
人権
委員
会の
一般
的
意見
及び
見解
と
国内裁判所
の
関係
というものが近時問題とされております。
日本
はこのB規約の第一選択議定書をいまだ批准しておりませんので、
日本
についての個人通報が規約
人権
委員
会で
審査
されて、それについての
委員
会の
見解
が示されるということはございませんが、問題は、ほかの国の事例についての規約
人権
委員
会の
見解
や
一般
的
意見
、その中で示されたB規約の
解釈
が
日本
の
裁判所
でも考慮されるべきではないかということでございます。 実際に、規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
といったものやヨーロッパ
人権条約
機関の
判断
を援用する主張が
裁判所
で増加しております。
日本
の
裁判所
の対応を見ますと、規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
を積極的に参照する
裁判例
、あるいは規約
人権
委員
会で問題とされた事案とは事情が異なるとして直ちに退けてしまう
裁判例
、あるいはB規約の第一選択議定書をいまだ批准していない以上、
日本
に対しては規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
は法的な拘束力がないといたしまして十分に考慮に入れない
裁判例
などがありまして、
裁判所
の対応は揺れております。
一般
に、
条約
機関の
判断
の先例に従わないということをいたしますと、後に
条約
機関に申し立てがなされた場合に
条約違反
の
判断
を下されてしまうということが予想されますので、締約国の
国内裁判所
は、
条約
機関の
意見
、
見解
に適合的な
解釈
を採用することによって自国が
条約違反
と
判断
されることを避けようとする傾向が強いというふうに言われております。しかし、
日本
はまだB規約の第一選択議定書を批准しておりませんので、このような影響力を語り得る状況にはございません。 ただ、そのような事実上の拘束力が及ばない場合であっても、規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
に最も適合的な
解釈
を採用するように
国内裁判所
が要請されているというふうに言えないかが問題でございます。 ここで、規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
といったものの
日本
の
国内裁判所
における実効性の確保を考える際に重要でございますのが、るる申し述べておりますように、
裁判所
による
違憲審査
の
枠組み
においてB規約が活用される
方法
を探るということでございます。規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
が
憲法
の
解釈基準
となり得るかということを
検討
しておかなければならないということでございます。 そこで、
条約
機関の
意見
、
見解
が当該
条約
において有する意味というものを考えてみますと、
国際人権条約
につきましては、締約国の
国内裁判所
において
実施
されるということが重要ではあるわけですけれども、
条約
の
規定
の
解釈
が締約国ごとに区々まちまちでありますならば、
国際人権条約
を結んだ意義というものは大幅に減殺されてしまうのでございます。したがいまして、
原則
として
条約
機関の示す
解釈
が
遵守
すべき
条約
の
内容
を示していると考えられるのでございます。 B規約も、
人権
及び自由の普遍的な
基準
を定めるものでありまして、その
規定
の
解釈
を示す機関として規約
人権
委員
会を設けているところでございます。この規約
人権
委員
会によって示された
内容
というものが、第一次的にはB規約によって保護されなければならない
内容
と考えられるのでございまして、規約
人権
委員
会がB規約の
解釈
を示すという
仕組み
がこのB規約にとって不可欠であるという理解を示しているものと考えられるのでございます。 先ほど述べましたように、
憲法
の
制定過程
において、
条約
というものは種々なる
種類
があろうから、その
条約
の
種類
、性質に照らしていかに扱うかを慎重に考えなければならぬとされていたことも思い起こしますと、誠実に
遵守
することというのは、
日本国
が
締結
した
条約
の性質に応じて、当該
条約
に内在する要求を可能な限り尊重するということを意味していると考えられるのでございます。 規約
人権
委員
会が
解釈
を示すという
仕組み
を有するB規約を
締結
した以上、
国内裁判所
においても、規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
を可能な限り考慮に入れるということが、
日本国
が
締結
した
条約
は、これを誠実に
遵守
することを必要とするという
憲法
第九十八条第二項の要請にかなうと考えられるところでございます。少なくとも、
条約違反
の主張や
条約
機関の
意見
、
見解
の無視ないしは安易な取り扱いというものは、
条約
を誠実に
遵守
するという
憲法
の求めに反するものと解されるのでございます。 なお、
国内裁判所
が規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
に従わなければならないとすることは
憲法
第七十六条第三項に抵触するという懸念が示されるかもしれません。しかし、規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
が
解釈基準
として援用されるとしても、それは、規約
人権
委員
会の
判断
をもって有効な
国内法
を排除するということではなくて、それによって
国内的効力
を有する
条約
、さらには
憲法
を含む
国内法
の
内容
が確認されるということでありまして、裁判官が
憲法
及び
法律
のみに拘束されるという
憲法
の定めとは矛盾しないと考えられるのでございます。 さらに本質的であるのは、規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
についての尊重ないし配慮というものは、
憲法
第九十八条第二項の求めに基づくということでございます。
憲法
第七十六条第三項は、裁判官は
憲法
に拘束されるとしております。規約
人権
委員
会の
意見
、
見解
の尊重は、まさに、
憲法
が
国際人権訴訟
における
国内裁判所
の役割として要請するものであると考えられるのでございます。 従来、規約
人権
委員
会の報告や
意見
に法的拘束力が与えられていない以上、それをどのように生かすかは最終的には当事国の裁量にかかっていると理解されておりましたが、この裁量を
憲法
が統制している、コントロールしていると考えるのでございます。 以上でございます。 甚だ不十分な
内容
にもかかわらず、長時間にわたり御清聴いただきましたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。(拍手) 〔
船田
小
委員長
代理退席、小
委員長
着席
〕
保岡興治
3
○
保岡
小
委員長
以上で
参考人
の御
意見
の開陳は終わりました。
—————————————
保岡興治
4
○
保岡
小
委員長
これより
参考人
に対する質疑を行います。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野
晋也君
。
小野晋也
5
○小野小
委員
齊藤参考人
には、
憲法
九十八条の関連でいろいろな
学説
の存在等についての御
紹介
を賜ったわけでありますが、これらの話をお伺いさせていただきながら、いま
一つ
整理がつかない
部分
がございますので、そんな点を少し御質問させていただきたいと思います。 その
一つ
は、きょうの論点の中心でございましたけれども、
憲法
ないし
法律
とこういう
条約
、どちらが
優位
に立つものであるかという点なのでございますが、多様な価値観があり、そして国際化が進展する中で結ばれる
条約
というのも、いろいろな
条約
が生まれてくることを考えますと、現実的問題としてこれから随分数多くお互いが整合性をとれないというような状況も生まれてくることが想定されるわけでありますが、そのとき、ならばいかにこれを解消すればいいのか、このあたりのお話を実はお伺いしたいと思うわけであります。 私からの提案というわけではないのですが、
一つ
の
意見
としては、例えば、
憲法
を今後改正するときに、
憲法
または
法律
に合致しない
条約
というのは結ぶことができない、こういうふうに明記すれば、
国内
的には、
憲法
に反する
条約
は結べないわけでありますから、当然先ほど来の話というのは生まれてこないわけでありますし、ないしは、
法律
に反する
条約
を結ぼうというときは
国内法
を直ちに改正せねばならない、こういうふうな
規定
を入れておくというふうな形でこの問題を回避するというようなことも考えられようと思いますが、これは御
意見
としていかがでございましょうか。
齊藤正彰
6
○
齊藤参考人
憲法
、
法律
などの
国内法
の
規定
とそれから
条約
が抵触した場合のその抵触の解消の
方法
といたしまして、今お話がありましたのは、そういう抵触状態を事前に防ぐということの一方策として、
憲法
に合致しない
条約
は結ぶことができないとして、さらには、
条約
の
締結
の段階で
憲法違反
がないかどうかを
審査
するという
仕組み
がどうかということであったかと思います。 これは、諸外国の例を見ますと、特に
憲法
裁判所
を置いている国におきましては、
条約
を
締結
する際に、
憲法
との抵触が疑われる場合には
憲法
裁判所
の
判断
を仰がなければならないという
仕組み
をとっている国もございます。 また、今お話にもありましたように、もし
憲法
と
条約
が抵触するというふうに
裁判所
が
判断
した場合には、
憲法
の方を改正してからでなければ
条約
を
締結
できないというふうに定めている国もございますので、そのような
方法
はあり得るかというふうに存じます。
小野晋也
7
○小野小
委員
それでは、現状の
日本国憲法
のもとにおいて、
憲法
裁判所
が設置されているわけではありませんから、事前にそれが公式な形で、
憲法違反
である、ないしはどこかの
法律
に
違反
するというふうなことは、もちろん、
衆議院
、参議院の
法律
関係
の機関、また
政府
にもそれがございますから、それぞれのところでチェックはされるわけでございましょうが、その中にどうしても矛盾する
部分
が残ってしまうというようなことが起こった場合に、これはどう措置をするということが現状では最適の
方法
だと思われますでしょうか。
齊藤正彰
8
○
齊藤参考人
確かに、
憲法
裁判所
のない国の場合、あるいは
裁判所
に勧告的
意見
制度のようなものをつくっていない場合、今の
日本国憲法
を
前提
といたしますと、御指摘のように、
条約
の
締結
に際しまして、外務省の
条約
局ですとか内閣法制局などが慎重に
審査
をしておりますし、もちろん
国会
の両議院で慎重に
審議
されるわけでございますけれども、それでも
条約
と
国内法
の抵触が問題になるというのは、実際に適用されてそれが裁判上問題になったという場合かと思います。 裁判上で、例えば
憲法
と抵触をしていてこの
条約
が
国内法
上は適用ができないということになりますと、それでも
国際法
上の
効力
は残りますので、あとは、
政府
を中心といたしまして、相手国との間でその
条約
の改正あるいは廃止といったことをするなどといったような
手続
を踏むしかないというふうに考えております。
小野晋也
9
○小野小
委員
少し古い話になってまいりますけれども、この国際的な問題と
国内
の
憲法
ないし法の問題としていまだに
日本
の国の中で引きずっている大きな問題に、東京裁判の問題があると私は思うんですね。 占領下において、戦勝国が中心になって、ほとんど戦勝国と言っていいと思いますが、戦争に敗れた国の戦争犯罪人を裁くというふうな形で行われたこの東京裁判というのは、果たしてその当時の
国内法
等に照らし合わせて妥当な裁判であったんだろうか否だったんだろうかと、いまだに我々もこの
議論
の整理がつかないままに現在に至っているわけでございますが、このあたり、
齊藤参考人
の専門分野ではないかもしれませんが、ちょうどきょうのテーマに関連するものだと思いますので、御
意見
をお聞かせいただければありがたいと思います。
齊藤正彰
10
○
齊藤参考人
東京裁判についてということでございますけれども、これは大変難しい問題で、私の理解の
範囲
では御質問に十分お答えできないところもあろうかと思うんですけれども。 ただ、ポツダム宣言の受諾から始まりまして東京裁判などにつきましては、いわば空前絶後の出来事であったわけでございまして、それまでの
国際法
上の理論でも十分に説明できない
部分
がございましょうし、その後類例が繰り返されているというわけでもございませんので、
比較検討
が可能な場面も少ないところがございますので、恐らく、
国際法
学上も
憲法学
上もなかなかこれといった
一般
的な説明がしにくい面はあろうかと思います。 ただ、例えばポツダム宣言の受諾などに関して申しますと、あれも事実上の力の優劣でいいますと非常に大きな差があったわけでございますけれども、ただ、
国際法
の
一般
的な
考え方
でいいますと、例えば休戦とか講和の
条約
の場合には、事実上、力の優劣が歴然としているということが通常でございまして、そのことによって直ちに
国際法
上の
効力
が左右されるということはないというふうに考えております。 例えば、
条約
を
締結
に行った代表者個人に対して、その身体や安全等に対して危害が加えられるとか脅迫がなされるということがあれば別ですけれども、
国家
の間に力の差があるということは、これはしばしばあることでございますので、そのことだけでポツダム宣言の受諾のようなものが
条約
としては考えられないということにはならないというのが
一般
的な
考え方
かと思います。 さらに進んで、東京裁判というものについて、これを
国際法
上、
国内法
上どう評価するかということにつきましては、私もちょっとまだ勉強不足でわかりませんので、これから
検討
させていただきたいと思います。
小野晋也
11
○小野小
委員
それでは、
最後
の御質問になろうかと思いますが、先ほども
憲法
裁判所
の問題に少しお触れになられましたが、
日本
の現状に照らし合わせる中で、
齊藤参考人
の個人的
見解
といたしまして、
憲法
裁判所
というのは設けられるべきものであるというような御
見解
でございましょうか。それとも、その他のお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
齊藤正彰
12
○
齊藤参考人
憲法
裁判所
との
関係
で御質問でございますが、きょうの陳述の
内容
との関連で申し述べますと、
憲法
裁判所
をつくった場合に、
憲法
裁判所
に訴えることができる
条件
として
憲法違反
だけということになりますと、本日も申し上げましたように、
国際人権条約違反
を理由としては
憲法
裁判所
に訴え出ることができないという問題が発生いたします。これは、実際にドイツなどでも問題があったところでございます。 これは、いろいろな
解釈
等によってその問題をクリアしようということがなされているわけですけれども、実際に今、
日本
の
最高裁判所
でも
憲法違反
に絞り込むということで、民事
訴訟法
の改正を行った結果、似たような状況になっておりますので、もし仮に
憲法
裁判所
といったものが考えられる場合には、そういった従来の問題点等においても考慮が必要かというふうに考えております。
小野晋也
13
○小野小
委員
どうもありがとうございました。
保岡興治
14
○
保岡
小
委員長
次に、
武正公一
君。
武正公一
15
○
武正
小
委員
民主党の
武正公一
でございます。
齊藤参考人
にまずお伺いをしたいのが、
条約
は
国内法
に優先するという
学説
についてでありますが、今、
政府
もこういった
考え方
に立っているように見受けられております。ただ、いろいろこれは、留意する点あるいは
条件
があるのではないかというふうに考えております。 というのも、今、
日本国
政府
が未批准の
条約
が二百六十以上あり、そして、署名しながら未批准の
条約
が、昨年十一月末現在、十二あるということでございまして、先ほど来触れられております国際
人権
規約、B規約の第一選択議定書もその未批准の
条約
の
一つ
でもあります。
人権
関連の
条約
が未批准ではないかという指摘を我が党もしておりますところでありますが、この二百六十以上の内訳を見ますと、特に八十三
条約
がILO
条約
関係
といったことも非常に際立った特徴かなというふうに思っております。 そういった意味では、すなわち、
政府
が
国内法
整備をしたくない
条約
は未批准のまま放置しているのではないかという疑い、あるいは、
条約
が未批准だから
国内法
は未整備でいいという言いわけにされる
可能性
がある。 これについて、まず
参考人
の御
意見
を伺いたいと思います。
齊藤正彰
16
○
齊藤参考人
国際
条約
が
法律
に
優位
するということの第一の意味合いといたしましては、御指摘のように、
法律
の整備のためのインセンティブになるということがございまして、
法律
の整備が十分ではなかったりした場合、あるいは漏れがあった場合に、
裁判所
でそれが
国内
実施
の問題となるというような手順かというふうに存じます。その意味では、
条約
の
締結
といったことが
法律
の整備にもたらす意味というのは非常に大きいというふうに考えられます。 ただ、その際に、
法律
との整合性の問題で
条約
の
締結
をちゅうちょする。これは、
法律
といいますよりも
憲法
との
関係
で、例えば人種差別撤廃
条約
の批准が非常に遅かったというのは、
憲法
の表現の自由との
関係
であるということがしばしば指摘されていますし、そういったことはあろうかと思います。 具体的に個々の、御指摘のような例えばILO
関係
の
条約
との
関係
で、
国内
の
法律
整備の進捗状況に合わせて
条約
の批准をおくらせたり考えたりしているのかどうかということについては、私もその点はよく存じません。
武正公一
17
○
武正
小
委員
私の考えとすれば、やはり
条約
が
国内法
に優先する
条件
として、あるいは留保として、
政府
が
条約
の批准、未批准を、こういった言い方がいいのかどうかわかりませんが、恣意的に利用することがないようにというのが、
条約
が
国内法
に優先する
前提
条件
というふうに私は考えております。これについては、
参考人
、今、御
意見
はちょっと難しいというお答えだったというふうに思います。 ちょうど今
国会
でも、外務
委員
会でサイバー
条約
という
条約
の
審議
がありまして、これは
衆議院
を可決して参議院に送られておりますが、これも、これまでサイバー
条約
はわずか四カ国しか批准をしていない、
日本
が批准をすると五カ国になって、やっと発効するという代物でございまして、なぜここまで急がなければならないのかといったことが、やはり
委員
会でも
議論
になりました。また、今
国会
でも、電波法改正や有線電気通信法の改正など関連法案の諸整備が、一挙にそれぞれの
委員
会で同時並行で行われております。 そういった中で、
条約
の中で、
条約
は署名をしてきて
国会
にそれを付議をするわけですが、何を留保するか、何を留保しないかというのは
政府
の方に決定権がある。だから、
審議
の中で、じゃ、これを留保しましょう、留保しませんというのは言いませんというようなことで、
審議
に供せられております。 これが果たして本当に、
条約
は
国内法
に優先するというか、あるいは、
条約締結
は
政府
の専権事項である、
国会
は事前事後の
承認
ということでありますが、その留保、未留保、こういったことも
政府
のみに決定権があるんだ。これは、
参考人
として、こういったことをもう御存じなのかどうか。あるいは、これについて、私は、
国会
の
審議
ということに関して言うと、
条約
の
承認
に関して、国民を代表した
国会
の意を
条約
の、特に留保
条件
、何を留保するかしないかについてはなかなか影響が与えられない、こういったところが
条約
の問題点としてあると思うんですが、これについてどのように考えるか、お伺いします。
齊藤正彰
18
○
齊藤参考人
ただいまの、
条約
の
承認
の際に留保を
国会
で新たにつける、あるいは
政府
の原案にある留保を削るといったようなことが可能かということでございますけれども、従来は確かに御指摘のように、
政府見解
としては、
国会
が留保を付したり、留保を外したり、あるいは修正をつけ加えることはできないという
立場
をとっておりましたが、これは、
国会
の立法府としての
権限
を考えますと、必ずしも正しくないというふうに考えられます。 かつての二国間
条約
のように、
政府
が相手国と交渉してきまして条文を詰めてきて、それで
国会
に
承認
を諮っているという場合は、
国会
で留保を新たにふやしましたり修正をいたしましたりしますと、相手国とまた一から交渉をし直すということになってしまいますので、こういった場合に留保や修正ができないということは
一つ
理由があり得ますけれども、例えば、既に
国際会議
等で文書がつくられている
多国間条約
の場合、これは、
日本国
が留保をつけるとかなんとかということによって
条約
の本文
自体
が変更されるということではありませんので、実際にその留保を付すことによって、まさに
国内
で
法律
に
優位
する
効力
を持って適用される規範の
範囲
、あるいは適用される規範の
内容
といったものが変化を来たすわけで、実質的には立法にかかわる問題かと考えられます。 こういったことについて、つまり、御指摘のような、留保をふやす、あるいは、
政府
が留保しようと提案しているところについて、留保せずに
国内法
の整備を図るべきではないかというふうに提案するというようなことは、
国会
の
権限
の
範囲
内として考えられるというふうに思います。
武正公一
19
○
武正
小
委員
これはまた
国会
の
審議
の
あり方
にもかかわってくるんですが、実は、
条約
というのは非常に複雑多岐な分野にわたっておりまして、今、
国会
では、
衆議院
の場合は外務
委員
会でその
審議
を行うんですけれども、関連する
委員
会が非常に多岐に及ぶ。ただ、外務
委員
会だけで
審議
をしておりますので、それも、
条約
が三つ四つ五つ、同時に
審議
をするようなやり方をとっておりまして、実際にこのやり方がどうなのかといったことも
議論
があるところでございます。 そういった意味では、
条約
について、例えば連合
審査
が必要であるとか、やはり
条約
は
一つ
一つ
丁寧にやるべきだ、そういった意味での、
国会
の立法府としての
条約
審議
の
あり方
、これについてはまだまだ工夫が必要ではないかというふうに言われておるんですが、
参考人
、このことについて何か御
意見
がありますか。
齊藤正彰
20
○
齊藤参考人
今の
国会
の御
審議
の実際につきましては、これは私が申し述べるのも何か釈迦に説法なことになりますけれども、御指摘のように、仮に
条約
の
審議
といったものが、
複数
のものを一括して行うですとか、実際に
内容
について逐条
審査
を余り精密に行わないという形でなされるといたしますと、それによって
承認
された
条約
が、
国内
ではその後、
法律
よりも
優位
する
効力
を持って、しかも、
国会
が後から
法律
をつくってもそれに打ちかつ力を持ってしまうわけですから、先ほど
レジュメ
で言いましたような
逆転現象
が強くなってしまうという問題がございますので、
国会
での
審議
というものは、具体的にどのような方策があるのかというのは私もよくわかりませんけれども、御指摘のような点は十分考慮していただく必要があろうかと存じます。
武正公一
21
○
武正
小
委員
今度は
条約
と
憲法
との
関係
ですが、戦後、いわゆる
条約優位説
、そして、東西冷戦の進行、サンフランシスコ平和
条約
、日米安保
条約
を軸とする西側陣営入りで
憲法優位説
、これは
憲法
調査
会
事務局
作成
基礎的資料
十五
ページ
に書かれていることであります。 今回、イラク開戦に当たって、首相が、日米同盟、国際協調の両立と申しました。そして、ある面、国連は助けてくれますか、アメリカは助けてくれるんですというような言い方をしておりましたところ、今回、アメリカ大統領の
発言
もあり、やはり国連中心だということで、首相の
発言
も、やはり国連中心だ、米英占領当局、CPAではなかなか難しかろうというような形で、ある面、政治的リーダーシップがぶれるということが見受けられております。 すなわち、これはやはり、日米同盟の
根拠
となる日米
安全保障
条約
、二国間の
条約
と多国間の
条約
、あるいは日米同盟と国際協調といったことでの、どちらが
優位
なのか、こういったことが問われているのが今イラクをめぐる現状だと思いますが、この点についてのお考えをお聞かせください。
齊藤正彰
22
○
齊藤参考人
今の御質問は、日米同盟と国際連合とどちらを優先的に考えるかというような御
趣旨
でよろしかったでしょうか。
武正公一
23
○
武正
小
委員
国際協調でございます。
齊藤正彰
24
○
齊藤参考人
もしかすると、御質問の御
趣旨
から多少離れるかもしれませんけれども、国際協調あるいは
国際協調主義
という
言葉
が
一般
にも用いられていると思いますし、
日本国憲法
の、例えば前文ですとか第九十八条第二項の説明としても、
国際協調主義
あるいは国際協和主義といったものが
憲法学
の基本的な文献などでもしばしば使われるのでございますけれども、ただ、
日本国憲法
自身は、国際協調という
言葉
はその文字どおりには用いておりませんし、
憲法
第九十八条も、
条約
を
遵守
するということを言っているわけであって、どのような国際活動を行うかといったことを
国際協調主義
といったようなタイトルで掲げているわけではございません。
国際協調主義
という
言葉
が
憲法学
説上出てくるのは、当初の
条約優位説
が言っていた
国際主義
といったものが余りにも漠然としているということで、これを
明確化
するというような
趣旨
で言われていた
部分
もあるのかなと思いますけれども、ただ、その
内容
が多少漠然としていて、
憲法
九十八条が定めている
国際法
規あるいは
条約
を
遵守
するということよりは多少不明確な
部分
を含んでしまう
部分
があるのではないかというふうに考えております。 もちろん、そういう
憲法学
上の問題とは別に、
日本国
の政策としてどのような形で
国際社会
に協調、協力していくかということは、これは政策の問題でございまして、
憲法解釈
の問題とはまたちょっと趣を異にするかなというふうに考えております。
武正公一
25
○
武正
小
委員
ありがとうございました。
保岡興治
26
○
保岡
小
委員長
次に、赤松正雄君。
赤松正雄
27
○赤松(正)小
委員
公明党の赤松正雄でございます。
齊藤参考人
には、大変にありがとうございました。 先ほど、冒頭で御説明いただいた
レジュメ
の中から二点、さらにもう少し説明を加えていただければありがたいなという箇所がございます。といいますのは、
事務局
からいただいた「
国法体系
における
憲法
と
条約
」、
齊藤
先生のお書きになられた本の中で二点、
レジュメ
の
部分
のさらに一層詳しくお聞きしたいこととの関連がございます。
一つ
は、
レジュメ
の三
ページ
の真ん中にあります「「
条件つき憲法優位説
」と「
条約
分類論」」というところの中に、「
政府見解
」として、「確立された
国際法
規」、それから「一国の安危にかかわるような問題に関する件」、「二国間の政治的、経済的な
条約
」、この三つに関する
政府見解
が出ているわけですけれども、これにかかわる、
齊藤参考人
の書かれている書物の中で確認をさせていただきたいと思うのは、この書物の五十
ページ
であります。
金森国務大臣
が、
条約
に関する
部分
は学問によって発達すべき
部分
が非常に多い、学問で十分ひとつ
内容
をはっきりさせてほしいというようなことを言ったというくだりがあって、今申し上げたところは三十三
ページ
です。五十
ページ
において、
政府見解
は
条約
分類論を展開したんだけれども、
憲法
施行後の
政府見解
の分類の
内容
について、
多国間条約
あるいは
国際人権条約
も言及されていないし、国際機構に関する問題にも触れていないということで、金森
答弁
が
学説
及び実務に対して期待した発展の要請を満たしているとは評しがたい、こういうくだりがあります。 この
政府見解
、三つの
見解
については、
国際法
優先、
条約
優先、
憲法
優先と分類した上での
政府見解
を明確に述べてありますが、このときに想定されていなかった、その後に出てきた
多国間条約
、
国際人権条約
あるいは国際機構に関する、触れていないということについての現在の
学説
上の
考え方
を手短に教えていただきたいと思います。
齊藤正彰
28
○
齊藤参考人
御指摘のとおり、
金森国務大臣
の
答弁
を見ますと、九十八条二項のやや抽象的とも思われる書き方というのは、その後のいろいろな
可能性
を埋めていくという用意なのであるというふうに考えられるわけですけれども、
政府見解
は、今御指摘のような三
種類
を提示したというところにとどまっていようか、明確に出した形ではこういう形だろうと思います。
学説
の方でも、近年になりまして、
条約
はいろいろ
種類
があるので分類を考えなければいけないという
見解
が多少出てきておりまして、その中でも、お読みいただいてありがとうございます、私の本に書きましたように、多国間の
条約
であるとか、特に
国際人権条約
といったものについては多少扱いを考えるべきではないかといった
見解
が出ておりますけれども、まだ、大きな力を持つといいましょうか、
通説
的と言い得るほどには至っていないかなというふうに考えます。
赤松正雄
29
○赤松(正)小
委員
次に、
レジュメ
の六
ページ
でありますけれども、「
最高裁判所
への上訴の
方法
」というところで、一、二、三、三つに分けて、「
国際人権条約違反
を理由とする最高裁への上訴の封鎖」、また「最高裁が関与しないことへの疑問」、「下級
裁判所
による
条約
の瑕疵ある適用または無視の統制」ということで、先ほど、非常に大事なことであるという御説明をるるいただいたんですが、これも、
齊藤参考人
の御著作の四百六
ページ
の中にあるところで、ちょっと私自身も理解が足らないところがあるので、説明をいただきたいんです。
齊藤参考人
の本、読むのに大分苦労いたしましたけれども、四百六
ページ
に、唯一私が感動した文学的表現に近いところがあるんですけれども、「
最高裁判所
は、未だ無意識の揺れの中にある」、こう書いてある。このくだりにいたく感動いたしましたけれども、この「
最高裁判所
は、未だ無意識の揺れの中にあると考えられる」「
憲法
第九八条第二項による方途は、
最高裁判所
によっても未だ完全には閉ざされていないと解することができるであろう。」というこの表現と、それから、
レジュメ
の六
ページ
の、ずっと流れてきて、「
最高裁判所
は監視すべきではないか。」というこの
結論
との
関係
というのは、どういうふうに理解すればよろしいんでしょうか。
齊藤正彰
30
○
齊藤参考人
拙著の大変悪文のところをお読みいただきましてありがとうございます。また、大変な読書家の先生にお褒めをいただきまして大変光栄でございます。 御質問のところでございますけれども、この無意識の揺れ云々ということを書きました時点といいますか、ここで問題になっている判決の当時には、まだ、民事
訴訟法
上、上告が
最高裁判所
へはできた。法令違背、法令に反するということで上告ができました。その段階で、
条約
の
違反
が
憲法
九十八条二項
違反
であるという形をとって上訴をするという当事者が
幾つ
かいたわけですけれども、その場合の
最高裁判所
の対応といたしましては、中身に入って
条約違反
ではないと
判断
する場合もありましたし、それは単なる法令違背にすぎないといって退けてしまう場合もありました。 無意識の揺れ云々と言いましたのは、実際に起こっているものを見ますと、取り上げられて簡単ではあるけれども
判断
した場合もあるし、十分に取り上げられなかった場合もある。それが、
最高裁判所
が何か上訴の
あり方
との
関係
で意識をして理論的に分類をしていたというよりは、多少、その上告をする側の上告理由の書き方などにもよって対応が分かれていったということかなと思いまして、そのような表現をしているところでございます。
赤松正雄
31
○赤松(正)小
委員
ありがとうございました。
最後
にいたしますけれども、ちょっと少し角度が違うというか、先生の直接の御専門ではないかもしれませんが、さっき
武正
委員
からも出ましたイラクの問題に関することなんです。 今回、イラクに自衛隊を派遣するという政治的決断を小泉総理大臣がしたときの
根拠
に
憲法
前文を挙げられたと記憶をするわけです。
憲法
前文を挙げて、もちろん、先ほど
武正
委員
が言われたような、それに付随するさまざまなこともあるわけですけれども、集約的に、
根拠
は
憲法
の前文であった、そんなふうに思うわけですが、
憲法
前文に制約されるがゆえに、イラク・サマワにおけるところの人道復興支援ということに限定した形で自衛隊を出した、こんなふうに私は理解しているわけです。 今、この一年ぐらいの間の中でこういう
議論
があります、ある一部の学者から。つまり、国際テロという、近過去において想定されなかったというか、自由と民主主義社会というものに対する大変な挑戦をする動きというものがある国際テロと大量破壊兵器が結びつく、こういう
事態
が今の地上の
秩序
を乱すということを防ぐために、対テロ防衛同盟という、国際テロに対する多国間の防衛を図るための
条約
を仮につくるということによって、対テロ防衛同盟
条約
をつくることによって、言ってみれば、
憲法
の九条の制約というか、直接的にかかわってこないんですけれども、
憲法
上この九条というものが想定する制約というものを脱却することができる。 つまり、対テロ防衛同盟
条約
を結ぶ、そういう
多国間条約
を結ぶことによって、いわゆる近過去の
国際法
が想定していなかった
事態
に対して
日本
のあるべき責務というものを果たすという、それは、決して今の
憲法
が禁じているような、そういう武力行使をするという意味ではないんですけれども、直接的にそこに結びつくわけではないんですけれども、もう少し、いわば行動の自由というか、新しい
事態
における対テロ防衛同盟というものに、
国際社会
における多国間の
条約
という中で役割を果たしていくということができる。 そうすることによって、それは
憲法
九条とは違う
次元
で、
日本
の役割、つまり、
憲法改正
をしなくても、その
条約
をそういう形でつくって、
条約
を結ぶことによって新しい
日本
の役割というものを果たすことができるということを主張する論者がいる、学者がいるんですけれども、それについて、
憲法
と
条約
の
関係
から
齊藤参考人
はどのようにお考えになるか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
齊藤正彰
32
○
齊藤参考人
ただいま御指摘の対テロ防衛同盟
条約
といったようなものが、その名称のいかんにかかわらず、実質的な
内容
において、御指摘のように、武力行使をするものではなく、その意味で
憲法
第九条と全く異なる
次元
といいますか、
憲法
第九条が
対象
としている問題とかかわらないということであれば、これは当然に
憲法
第九条
違反
という問題はそもそも発生しないわけでございますし、対テロ防衛同盟
条約
という名称であったとしても、そこで盛り込まれている
内容
が、
憲法
第九条が問題としておりますような武力行使に係る
内容
を含むものであれば、それはもちろん従来の、例えば集団安保にかかわるような問題と
議論
は同じようになるだろうというふうに考えます。
赤松正雄
33
○赤松(正)小
委員
ありがとうございました。終わります。
保岡興治
34
○
保岡
小
委員長
次に、
塩川鉄也
君。
塩川鉄也
35
○
塩川
小
委員
日本
共産党の
塩川鉄也
でございます。 きょうは、
齊藤参考人
に貴重な御
意見
をいただきまして、本当にありがとうございます。 私は、
憲法
第九十八条二項のそもそもの意義について最初にお伺いしたいと思っております。九十八条の二項は、九条や前文とあわせて読み取ることが重要ではないかと考えます。九条で、戦争放棄とともに軍事力をも放棄する徹底した
平和主義
の
立場
をとり、前文では「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と国際協調の
立場
を明らかにして、九十八条二項でそれを具体的に表現したという点に大事な意味があると思います。 そこでお聞きしますが、
参考人
は、この九十八条二項の意義について、特に、
日本
の過去の歴史問題も含めてどのようにお考えか、お示しいただければと思っております。
齊藤正彰
36
○
齊藤参考人
ただいま御指摘がありました、
憲法
九十八条第二項を、
憲法
のそのほかの条文、もちろん前文も含めまして、こういったものとあわせて読み取るべきではないかということにつきましては、私も基本的にそういう
考え方
を持っておりまして、御指摘のような前文、九条のほかにも、先ほど陳述の中でも申し述べましたように、
日本国憲法
の中には
国際主義
と評し得るような条文が多々ございまして、こういった条文の
基礎
にあるといいましょうか基底にあるような
日本国憲法
の
考え方
といったものを背景に置いて、九十八条二項の条文がどこまでのことを求めるかということを考えていくということは重要であろうというふうに考えております。
塩川鉄也
37
○
塩川
小
委員
特に、
条約
を無視して起こした過去の侵略戦争との
関係
で、私、この反省から生まれたという意味で、九十八条二項に大きな意味があるというふうに感じております。
参考人
から、
砂川事件
の
判例
を挙げて、
条約
も
違憲審査
権の
対象
となることが認められているとのお話がありました。九十八条二項の意義を九条、前文とあわせて理解するときに、日米安保
条約
の
憲法
適合性というのがやはり問題になると思います。日米安保
条約
の違憲
判断
について、私自身は
砂川事件
の一審判決を支持する
立場
ですけれども、全体としては、司法は積極的ではない
立場
ですが、学界ではどんな論議が行われているのか、この点についてお聞かせいただけますか。
齊藤正彰
38
○
齊藤参考人
一つ目
の、侵略戦争等と言われた過去あるいはその反省ということと九十八条二項の
関係
でございますけれども、最初の方でも申しましたように、戦後初期のころの
憲法学
説、例えば宮沢俊義先生などの書かれたものを見ましても、九十八条二項を考える際に、戦前に
日本
が
条約違反
をしたということを
国際社会
から批判を受けた、そのことの反省が九十八条の二項のベースにあるということが書かれております。 ただ、
条約優位説
は、そのことから、であるから直ちに全部の
条約
を
憲法
に抵触しても守らなければいけないというふうに帰結をしてしまったわけですけれども、
条約
にもいろいろ
種類
がございますので、一律に全部
憲法
より
優位
だと言ってしまうことは難しいところがありまして、そこは丁寧に分類をして考えていかなければいけないだろうというのが私の陳述の
趣旨
でございます。 二つ目の、
砂川事件
のことでございますけれども、これはもう先生御指摘のようなことでございまして、
憲法学
説上の
議論
ということでございますけれども、これも陳述で申し述べましたように、
砂川事件
の
違憲審査
の
あり方
としては、御
承知
のような形で、
裁判所
としては積極的に
判断
をしない、
政府
、
国会
、あるいは最終的には国民の
判断
にゆだねるという
態度
をとったわけでございますけれども、ただ、
注意
が必要なのは、
砂川事件
の最高裁判決でよく引かれます「一見極めて明白に」という
部分
だけではなくて、その前後を、御
承知
のとおり読んでみますと、かなり踏み込んで詳細に
判断
をしておりますので、その点には多少
注意
が必要かなというふうには思っております。
塩川鉄也
39
○
塩川
小
委員
次に、
齊藤参考人
から、
憲法規定
と
国際人権条約
の
規定
との
関係
について、
幾つ
かの類型に基づいての御説明がありました。
日本国憲法
の場合に、他国の
憲法
と比べても
人権
規定
は大変
内容
が豊富だと言われておりますけれども、その際、
国際機関
が国際
人権
規約や
人権条約
をつくる際に、この
日本国憲法
が与えた影響というものがどのぐらいあるのか否か、その辺について、御認識、御
見解
があれば教えていただけますでしょうか。
齊藤正彰
40
○
齊藤参考人
国際人権条約
の成立に際して
日本国憲法
の側が与えた影響という御質問かと思いますけれども、これは、
国際人権条約
それぞれ多種ある中で、それの
制定過程
といいますか、準備作業というふうに言われますけれども、それをつぶさに私も分析をしたわけではございませんので、どこにどういうようなことがあったかということは詳細には存じませんし、ただ、見ていけば、直接には
日本国憲法
がここにこう影響したということがなくても、
日本国憲法
が享有する立憲主義の
考え方
といったものが、同じ
考え方
を享有する
国家
によってそこへ反映されているという面はあろうかというふうには思います。
塩川鉄也
41
○
塩川
小
委員
二十五条の生存権のところで、国の責務など非常に積極的な値打ちというのは、広い普遍的な意味があるのではないかなというように私自身は感じております。 そこで、
日本国憲法
には豊富な
人権
規定
がありながら、
日本
は国連の機関から
人権保障
の状況に対して改善を求める勧告をたびたび受けております。 例えば、公務員制度改革にかかわって、一昨年の十一月に、結社の自由
委員
会から、
政府
は公務員の労働基本権に対する現行の制約を維持するとの考えを再考すべきであるとの勧告も出されておりますし、これは、
憲法
二十八条には勤労者の権利を定めておりますので、この勧告は当然のものだと考えます。 また、婚外子差別については、九三年にもその
規定
を削除すべきという勧告を受けておりますけれども、重ねて、ことしの一月には、子どもの権利
委員
会からも、婚外子に対するあらゆる差別を廃絶するために
国内法
を改正することとの勧告が出されています。これも
憲法
十四条の法のもとの平等から見れば当然のことだと考えます。 これらは、
憲法
に定めがありながら、
下位
法によって制限されたり差別されたりという現状であります。 そこで、内政に干渉しないという
立場
から、法的拘束力のない勧告という形式をとっていると思うわけですが、この
国際機関
からの指摘そのものは大変重いと考えます。こういう勧告を受けた場合に、
政府
としてはどういう努力が求められるか、その点についてのお考えをお聞かせください。
齊藤正彰
42
○
齊藤参考人
一つ目
の、先ほどの御質問にお答えが不十分だった点でございますけれども、
憲法
二十五条といったものの御指摘があったわけでございます。二十五条のような社会権、生存権の
規定
は、
日本国憲法
の
一つ
の特色でございますけれども、
国際社会
ではあの
タイプ
の
憲法規定
を持っていない国もございますし、
人権条約
の
規定
の中でもなかなかないところがあって、ただ、
人権条約
の中で、生命についての権利、生命権などが
規定
にあるものがありまして、その生命権の
解釈
の中に、
日本
でいえば生存権に当たるような
内容
を読み込んでいこうという
議論
がありまして、あるいはそこに一定の影響があるということが言えるかもしれないということは、今伺いながらちらっと考えました。 それから、次の
日本国憲法
の
人権
規定
は豊富なはずではないかという点なんでございますけれども、確かに豊富に
人権
規定
がそろっているということは言えますでしょうし、
国際人権条約
に入っているようなものは、
憲法
条文はかなりシンプルでございますので、明示的に書かれてはいなくても、
解釈
で導くことができるんだというのも多くの
学説
が言うところでございます。ただし、それでも、例えば自由権規約と
日本国憲法
の条文を比べてみますと、自由権規約の方がかなり詳細に定めている
部分
がございますし、
日本国憲法
にはそもそも入っていないというような条文もございます。 あちらの方が二十年ほど新しくできておりますので、その分の新しい発展の
部分
もありますので、
日本国憲法
が豊富で、それで十分だというのは必ずしもどうかなという気がいたします。 三つ目の
国際機関
、その
条約
の監視機関等から勧告を受けた場合ということでございます。実は、ヨーロッパ
人権条約
に加盟している国でも、
人権
裁判所
とか
人権
委員
会の管轄のもとになかった、裁判権を受け入れていなかった時代などは、やはり今の
日本
と同じように、自分の国には
憲法
の
規定
が整っているから
憲法
だけで十分だ、
憲法
の
人権保障
を十全にしておれば
人権条約
の方も同時に要求が満たされるというふうに考えている国々が少なくなかったわけですけれども、実際にヨーロッパ
人権
裁判所
から
条約違反
の判決を受けますと、それで大変だということになりまして、
憲法
裁判所
も何か対応を考えるとか、
学説
上もいろいろ対応が考えられるといったことがございます。
日本
はまだそういう
国際機関
、
条約
機関から、特に
裁判所
というような形で
条約違反
の判決を受けるという
機会
がありませんので、その意味ではまだ
憲法
だけで大丈夫ということでいられるのかもしれませんけれども、いつまでも
国際機関
、そういう
条約
機関の管轄権を受け入れずにいられるかということは問題でございますので、その段階では、いろいろ
条約
機関が勧告を出す段階で対応していくということは御指摘のとおり非常に重要だろうと思います。
国際機関
でもかつては、
政府
報告の結果であるとかいろいろな勧告について、その後の
国内
でそれがどれだけ実際に実現されたかということの監視が不十分ではないかという指摘があったわけですけれども、最近は、いろいろな機関でフォローアップの制度をつくって、本当に事後に措置をとっているかということを細かく監視していくというシステムをつくる方向にございますので、これも、もちろんそれぞれの
条約
の機関、
条約
の定めている
仕組み
によって差はございますけれども、いつまでも、勧告が出たからそれだけということでは済まないということかと思います。
塩川鉄也
43
○
塩川
小
委員
ありがとうございました。
保岡興治
44
○
保岡
小
委員長
次に、
土井たか子
君。
土井たか子
45
○土井小
委員
きょうは、先生、どうもありがとうございました。
憲法
と
条約
を統一的な
法体系
とする一元論の
立場
で、
条約
優位
であるか
憲法
優位
であるかという問題が常に問題視されてまいりました。 実は、私は一元論の
立場
をとって今まで考えてきたことがないものですから、したがって、これは少し、いずれが
優位
であるかという問題をここで取り上げるということを横に置いておいて、基本的なことについて、二、三、先生のお考えをぜひ承りたいと思うのでございます。 その
一つ
は、まずもって、これは
条約
と言われている中身なんですが、必ずしも
条約
と呼称されるものに限らないで、広く、協定も、議定書も、約定も、それから憲章も、協約も、そして覚書も、取極も、それからさらには宣言という名称も、これは用いられているものを指して、広義に解した場合には
条約
というふうに呼ばれていると思いますが、それはそれでよろしゅうございますか。(
齊藤参考人
「はい」と呼ぶ) そうすると、必ず
国会
の
承認
が
締結
する際には必要なんですね、
条約
に対して。事前に、あるいは時宜によっては事後に必要なんですね。それで、この
国会
の
承認
を必要としている……
保岡興治
46
○
保岡
小
委員長
発言
を求めてください、大事なところですので。
齊藤正彰
47
○
齊藤参考人
はい。済みません。
土井たか子
48
○土井小
委員
それで、事前に、あるいは時宜によっては事後に必要とする
国会承認
の
対象
になる
条約
の問題になってくると、これは必ずしも
国会承認
を、いずれも、先ほど申し上げた名称で取り交わしを既にしている、署名もしている、すべての
条約
に対して
国会
の
承認
を必要とするという取り扱いが今までにないんですね。それで、それがどうなっているかというのが、先ほどおっしゃっていた外務
委員
会でも随分長い間問題視されてまいりまして、先生御存じのとおりなんです。 これは、実は昭和で言うと四十九年ですから随分古い話になりますが、二月の
衆議院
の外務
委員
会で当時の大平外務大臣が
答弁
をされまして、いわゆる大平三
原則
で整理していくという受けとめ方というのが今まで
一般
的となって、
国会
の場所では、
条約
の
承認
を必要とする
条約
という、中身としては大平三
原則
が常に問題視されてきたわけでございます。 この大平三
原則
を見ていくと、いずれの
条約
が
国会
で
承認
を必要とするか、いずれの
条約
が
国会承認
を必要としないかという決め方は、この三
原則
に従って、行政サイド、つまり内閣がこれに対して取捨選択をするということに相なるわけで、
国会
が決定するということにはならないわけなんですね。したがって、これは本来は
国会
が決定することではないのかというふうに私は思うわけでございますが、つまり、
承認
を必要としている
条約
であるかどうかということですね、中身についても。いかがでしょうか。
齊藤正彰
49
○
齊藤参考人
先ほど途中で思わずうなずいてしまいましたけれども、
条約
というものがそのタイトル、名称にかかわらず実質的に
判断
される、いわゆる実質的意味の
条約
である、
国際法
のレベルでは、
条約
というのは名前にかかわらずその中身で
判断
するんだということは御指摘のとおりでございます。 その上で、その実質的意味の
条約
、非常に広い意味での
条約
のうち、
国会
の
承認
を要するものを
日本国憲法
上は通常、
国会承認
条約
という名前で呼びまして、それ以外のものを行政取り決めあるいは行政協定ということで、これは
政府
限りで
締結
することができる。
憲法
の条文で言いますと、七十三条第二号に基づいて
政府
限りで
締結
ができるという扱いを行っておりまして、その
両者
の分類につきましても、今御指摘のとおり、いわゆる大平三
原則
というものでやっているということでございます。 その分類分けということでございますけれども、
議会
の
承認
等を要する
条約
というものと、それから
政府
限りで
締結
をできる行政協定という二
種類
に分けるというのは、これは別に
日本国
独自のものではございませんで、アメリカでもドイツでもあることでございます。 実際上の必要を考えましても、例えば
法律
と政令、省令の
関係
のように、一々
国会
の御
承認
をいただかなくても、既にある
条約
を
前提
として
実施
できるもの等もございますので、そういったものについて
政府
限りで
締結
をするということは合理的な
部分
があろうかと思います。 ただ、その分類分け、どこで線を引くかというのは、確かに御指摘のとおり難しい問題が多々発生するわけでございます。これも御
承知
のとおり、例えば旧安保のときは、行政協定として
国会承認
が要らないのか要るのかということで御
議論
があったと思いますけれども、その後、
地位
協定については、そのときの
議論
を踏まえて
国会承認
を経るという
手続
がされていると存じますし、その後、例えば本体の
条約
の
実施
措置を定める附属の行政協定等については、恐らく
参考
資料
か何かの形で本体の
条約
と一緒に、直接
承認
の
対象
とはならなくても、提出されているように存じます。 一律にここだという
基準
を明確に示すというのは難しいと思いますけれども、そのようなあたりで従来行われているのではないかというふうに思います。
土井たか子
50
○土井小
委員
先生おっしゃるとおり、これはまことに微妙で難しい問題だと思うんですけれども、しかし、少なくとも
憲法
の第九十八条から考えますと、
憲法
を国の
最高法規
と
規定
した上で
締結
した
条約
に対しては誠実に
遵守
するということを求めているわけですから、この文脈から考えますと、
政府
間で取り交わしてきたガイドライン、指針やあるいは今先生おっしゃるような行政協定等々について、
条約
と同等あるいは
条約
以上の重点を置いて行政を行うということは正しい行政の
あり方
ではないと思うんですね。だから、国の
あり方
に影響する重要な国際的行政措置というのは、新たな
条約
の
締結
という形をとるということが大事なので、いわば既存の
条約
があるならばそれの改正という形をとるということが当然必要なのではないかということが考えられるわけです。 今私が申し上げたように、ガイドラインや行政協定などが、ただいまの現状でもそうです、
条約
と同等あるいは
条約
以上の重点を置くような取り扱い方が立法上もそのうちなされるということが続々と出てまいっておりますから、したがって、これは本来、行政の
あり方
からすると好ましくないということが私は言えるのではないかというふうに思っておりますが、いかがでございますか。
齊藤正彰
51
○
齊藤参考人
今の御質問の点を私なりに理解してお答えをいたしますと、
一つ
には、
条約
を
国会
の
承認
を経るために内閣が提出するというのは
憲法
の
仕組み
でございますので、これは内閣の側が出すということは崩れないと思うんです。 ただ、先ほども言いましたように、
条約
というものが
法律
に
優位
する
効力
を持っていて、さらには、今御指摘のように、
条約
という形をとらなくても、広い意味で国際的な合意あるいは他国との合意といったものが、非常に強い形で
国内
の立法を拘束するという場合が最近は多々あろうかと思います。例えば、首脳会談で他国と何か合意をしてきた、そのことによって何か
国内法
もつくらなければいけないとか、既存の
国内法
を廃止あるいは改正するという
趣旨
の約束をされてくるとか。そうなりますと、立法府で何か御
審議
をする以前に、もうこの
法律
は改正であるとか廃止であるということが決まってしまうというようなこともなくはないか、そういう
可能性
もあり得るかというふうに思うわけです。 そういたしますと、今先生御指摘のような行政協定かというところだけではとどまらずに、もっと広く
国会
が、
政府
の対外活動といいますか、外交権あるいは対外権といったものの行使の状況を日ごろからつぶさに監視して、必要な統制をされるということが、今これだけ国際
関係
が緊密になっている中では非常に重要かというふうに考えるわけです。
土井たか子
52
○土井小
委員
今先生おっしゃったことが非常に大事だと私思いますのは、
人権
に関する国際
条約
というのが年々ずっと進歩発展してまいっております。それに比べますと、
日本
の
締結
するための措置というのが大変に時間をとっているということもありまして、人種差別撤廃
条約
などは三十年、これはずっと言われ続けてやっと、
日本
が締約国になるには三十年かかったわけですね。女性差別撤廃
条約
にしましても、子どもの権利
条約
にいたしましても、これはやはり先進国とすれば随分おくれた
締結
の仕方をしております。そして、ILO
条約
などについては、早く批准するようにという催促をどれほどいたしましてもなかなか遅々として進まないという実情もございます。 そういうことを考えますと、今
最後
に先生おっしゃった、
国会
がこの問題に対してやはり意思表示ということを積極的にどんどんやっていくというのが大変大事なことだというふうに考えております。 今の
人権
関係
の
条約
に対して、
日本
の
締結
状況というのは余り積極的でないというふうによく言われたりするんですが、どのように先生はごらんになっていらっしゃいますか。
齊藤正彰
53
○
齊藤参考人
確かに、
日本国
が
国際人権条約等
について
締結
している数が少ないですとか、あるいは、
締結
したものについてもそれまでに非常に時間がかかるという指摘があることはおっしゃるとおりかと思いますけれども、ただ、これも
他方
で、
国際人権条約
を
締結
している数が多ければそれでいいかといいますと、必ずしもそうとは言えないというふうに思います。
国際人権条約
はたくさん結んでいるんだけれども、実際にその国の
人権
状況がどうかということになるといろいろ問題があるという国も多かろうかと思いますし、
日本国
の場合
締結
に時間がかかるというのは、御指摘の例えば人種差別撤廃
条約
につきましても、
日本国憲法
の表現の自由との
関係
が非常に問題となって、それの
審査
をしていたということでございますので、そういう
国内法
整備でありますとか
国内法
の
関係
というものを余り考えずに、とにかく早く早くというふうに結んでしまうということが果たしていいのかどうかということは、これもまた別途問題があるところでございますので、両方の考慮が必要かとは思いますけれども、確かに、今先生の御指摘のような面もあるいはあろうかというふうには考えます。
保岡興治
54
○
保岡
小
委員長
次に、下村博文君。
下村博文
55
○下村小
委員
自民党の下村博文です。 きょうは、貴重な
機会
をありがとうございます。
参考
資料
の三十六
ページ
を見ていただきたいと思うんですが、今の
最後
の質問に関連することから質問させていただきたいと思います。 今のお話のように、この三十六
ページ
の表のところに国際
人権
規約があって、社会権規約、A規約、これは
日本
は一九七九年に批准した。そして自由権規約、こちらの方は一九七九年に批准をしているんですけれども、この自由権規約の選択議定書、これはまだ批准をしていないということで、今、
齊藤参考人
からお話がありましたように、必ずしも我が国がこの
人権
について熱心でないということではないというふうに私も思うんですね。しかし、努力をしなければならない
部分
はたくさんあると思いますが。
国内法
の整備もされていないという
部分
もあるかと思いますけれども、この自由権規約の選択議定書がまだ批准されていないということの背景について、もうちょっと詳しく
齊藤参考人
の方からお話をしていただければと思います。
齊藤正彰
56
○
齊藤参考人
自由権規約は二つ選択議定書がございまして、恐らく第一選択議定書の方かと思いますけれども、第一選択議定書は、個人が規約
人権
委員
会に通報できる
仕組み
を導入するものであることは、御存じのとおりでございます。 これについて、我が国の批准がおくれている、あるいは批准がまだなされていないといいますか
検討
中であると言われることの理由として
一般
に言われていますのが、
日本国憲法
が定める司法権の独立との
関係
で問題がある、あるいは問題がある
可能性
があるということが大きな理由かというふうに思います。その点の詳しくは当局の方に御説明いただくのがよろしいかと思いますけれども、通常、そのような説明がなされているわけです。 ただ、御
承知
のとおり、ヨーロッパでは、あれだけの
人権
裁判所
のシステムがつくられて運用しているわけでございまして、まさに
日本
が今まで
憲法学
、
憲法
について比較の
対象
といいますかお手本としていた国々が、そういう制度を導入していて、司法権の独立が侵害されたという
議論
が必ずしも行われていないということから考えますと、そのあたりのところは多少どうなのかなという気もいたします。
下村博文
57
○下村小
委員
この
人権
規約について、例えば、サミュエル・ハンチントンが「文明の衝突」という本の中で、
一つ
は文明、これはその国の宗教観とか歴史観とか、トータル的なそういう文明史観ということの中で、この
人権
ということについて、
考え方
なりあるいは思いが必ずしも同じではない、かといって、それが
人権
無視ということでもないという、
一つ
の文明的な
観点
からとらえているところもあると思うんですね。 そういうことから、この
人権
規約等あるいは選択議定書等の批准をした国との分類の相関
関係
というのは、ごらんになって分析されたことがあれば、つまり、どういう国が
締結
をしているのか、していないのか、その文明との違いの中で。そういう
観点
から見た場合、相関
関係
があるかどうか、調べたことがあれば、ちょっとお話をしていただければと思うんです。
齊藤正彰
58
○
齊藤参考人
今御指摘の点でございますけれども、これは、
締結
して批准している国は、それほどはっきり差は出ているかといえば、必ずしもそうではない面も多いかと思います。 ただ、
条約
の条文を起草します段階でどのようなことを盛り込むか、あるいはどのような
規定
かということになった場合に、いろいろな
意見
が出てきていて、その中に、あるいは今先生の御指摘のような
考え方
の対立というふうに読める
部分
もあろうかというふうに思いますけれども、ただ、今
手元
にそういう正確なデータがございませんので、これ以上細かくはちょっとお答えできません。
下村博文
59
○下村小
委員
端的に申し上げますと、
参考
資料
の三十八
ページ
の
最後
の行のところですけれども、
日本
が一九九三年、自由権規約四十条に基づき
人権
委員
会からいろいろと勧告を受けたことがあったと。その中に、死刑廃止への取り組み等があるわけですね。 これは、死刑廃止の議連もあるわけでありまして、いろいろな方が
国会
議員でも入っておられますが、実際、世論
調査
等を見ますと、国民の九割ぐらいの方が、死刑はあっていいのではないか、またあるべきだということで、必ずしも死刑廃止については多くない、非常に少ないと言ってもいいかもしれません。 これはどういうことかなということを考えると、
日本
というのは、文明あるいは宗教観ということでとらえますと、そこで死んでもうおしまいということじゃなくて、輪廻転生といいますか、肉体はそこでおしまいかもしれませんけれども魂は永遠だとか、例えばそういう宗教観といいますか、そういうのもかなり影響しているのではないかなというふうに思うわけであります。 ですから、この死刑廃止への取り組みといっても、実際、九割が賛成しているのを、勧告があるからといってこれに
締結
をするということは、やはり国民の意識、世論とギャップをかなりしたということにもなるわけであります。 そういう意味では、
日本
が
人権
意識がおくれているというふうにはならないし、また、
政府
の取り組みが大変に遅いともならないのではないかというふうに思うんですが、そういう
観点
からコメントがあれば、お答えいただければと思います。
齊藤正彰
60
○
齊藤参考人
御指摘の死刑廃止との
関係
でございますけれども、死刑あるいは生命観といったものをどう考えるかという難しい問題についてはお許しをいただくとして、しばしば問題になりますことは、自由権規約本体では死刑を禁止しているわけではございませんので、その中でコメントで問題になりますのは、死刑が法定刑として盛り込まれている犯罪の数が
日本
の場合多いということと、御
承知
のとおり、その中には本当に死刑をもってすることが必要なのかと思われるようなものもあるのではないかというあたりが問題になっているかと思います。 そうしますと、死刑といったもの
自体
については必要である、あるいは死刑について廃止に積極的ではない考えが強いと仮にいたしましても、じゃ、犯罪の中でどれに法定刑死刑を盛り込むかということは、また別途考え得る余地があろうかというふうに思います。
下村博文
61
○下村小
委員
今のことについてもうちょっと詳しくお聞きしたいんですけれども、御
承知
かと思いますが、あしたは
衆議院
の法務
委員
会で裁判員制度について可決をされる予定でございまして、この裁判員制度は、特に、裁判官と
一般
の市民が無差別で選ばれた中で一緒に裁判を行うということの中で、刑事事件、重大事件、ですから、かなり、死刑にかかわるような事件について、今度、
一般
の国民が裁判員として参加するということなわけですけれども、今のお話はよくわからなかったところがありますので、もうちょっと詳しくお話をしていただけますでしょうか、先ほどのお答え。
齊藤正彰
62
○
齊藤参考人
失礼しました。 今ちょっと条文を持っていませんので、正確に挙げることはできませんけれども、刑法の中で法定刑、この犯罪の場合にはどういう刑罰というのが定められているわけですけれども、その中でどういう犯罪をした場合に最高刑として死刑があり得るかということの問題は、死刑を廃止するか存置するかという問題とは別に、どの犯罪について死刑を刑罰として定めるかという問題はあり得るだろうと思うわけです。 その場合に、例えば、多くの国民が、極めて残虐な強盗殺人でありますとか大量殺人といった場合、これについてはやはり死刑をもってしなければ償うことができないのではないかと考えていたとしても、それよりは軽微な犯罪ですとか人の生命が直接問題にならない
可能性
がある犯罪について、それについても死刑が定められているということについては、同じように、死刑存置だということになるかどうかというのはまた別の問題ではないかということが先ほどの
趣旨
でございます。不明確で申しわけありませんでした。
下村博文
63
○下村小
委員
では、終わります。
保岡興治
64
○
保岡
小
委員長
次に、大出彰君。
大出彰
65
○大出小
委員
民主党の大出彰でございます。 最初は、先生のお話の中にもありますが、
法律
に対する
条約
の
優位
を理由として
国内裁判所
が
法律
の適用を排除するということについて、
憲法
上に
明文
の
根拠
規定
がなく、先例ないし理論にも頼るべきものがない場合、
国内裁判所
に
法律
の
条約適合性審査
を期待することには限界があるだろう、このようにおっしゃっておられるわけですね。 このところで、最近、
国際法
の方の学者さんにお会いしましてお話をしたんですね。どうも
裁判所
は
条約
を適用しない傾向にあるという話をしましたんですね、国際
人権
規約の話だったんですが。そうしたところ、その先生は何とおっしゃるかというと、我々
国際法
学者は
憲法
をよく勉強するけれども、
憲法学
者が
国際法
を勉強しないことが裁判にも影響している、こんなふうにおっしゃっておりまして、あながちそう言えないこともないのかなと実は感触を得たんですが、その辺の、
国際法
学者からの、おちょくりかもしれませんが、そういう反応についてどのようにお考えでしょうか。
齊藤正彰
66
○
齊藤参考人
憲法学
者が
国際法
を勉強していないかということについて、私が
憲法学
者を代表して反論するのも何かおかしな気がいたしますので。 ただ、そういう面がもし言われるとすれば、今の、
法律
の
条約適合性審査
との
関係
で言いますと、特に
国際人権条約
と
法律
が抵触をしているという場合に、確かに
条約
の方が
法律
より上にあるわけで、上下
関係
があるわけですけれども、この上下
関係
のセットが、
憲法
と
法律
の
関係
と同じというふうに考えられるか、それとも
法律
と地方自治体の条例の
関係
と同じと考えるかという問題があろうかと思います。 どういう
趣旨
かと申しますと、例えば、
法律
の場合は、どういう場合にどうということがかなり細かく条文に
規定
されていると思います。条例についても、この場合にはこうということがかなり細かく
規定
されている。そうすると、ある場合に、
法律
に書かれてある
内容
と条例に書かれている
内容
が異なっている、どちらを使えばいいのかということになった場合に、
法律
の方が上ですよということになれば、
法律
に書かれているとおりにやればいいということになるわけです。 ところが、
憲法
と
法律
の
関係
で申しますと、
憲法
の条文は抽象的な書き方をしていまして、
憲法
を
基準
として、あるいは
憲法
に盛り込まれている価値といったようなものに
法律
が
違反
していないかどうかということを
審査
しなければいけないということになるわけです。そういたしますと、もちろん、先ほど言いましたように、
裁判所
が、立法府がつくった
法律
について
審査
をして、場合によってはこれを適用しないということをするわけですから、どれぐらいの厳しさで、どういう形でチェックをするかということを
議論
を詰めておかないと、これは大変困ることになるわけです。 先ほどの、
憲法学
者が
国際法
を勉強していないということで言いますと、
国際人権条約
の
規定
が
憲法
の
人権
規定
と同じように、そういった裁判で使うためには、いろいろとその
審査
のための
基準
ですとか
厳格度
といったものについて
議論
を詰めなければいけない。にもかかわらず、実際にはそれがまだ十分に行われていない面がありまして、そういう面で、
憲法学
の人が、
憲法
の
規定
については
違憲審査
基準
ということでいろいろ
議論
しているけれども、
国際人権条約
については足らないのではないかということを
国際法
の先生がそうおっしゃったのであれば、そういう面もあり得るかなというふうには考えます。
大出彰
67
○大出小
委員
しょっぱなそういう話をしたのは、国際
人権
規約等を見ていて、諸外国もそうなんですが、何でその水準まで諸外国の
国内
の中で
人権
が守られないのだろうかと考える方が多いわけですね。そんな中で、なぜこんないい
条約
があるのに、まだ批准していない国についてはすぐ批准しないのかと思いますし、適用しないのかなと思うわけですね。そして、国際
人権
規約
自体
が、
条約
であれば、セルフエクスキューティングですかのようなことで
効力
があるんだとすれば、即適用してもいいのではないかと単純に考えるわけなんですよ。 そして、それと同時に、
日本
的に言えば、
法律
よりも
条約
が上だというのがどうも自明の理として考えているというようなことになると、なぜ適用が遅いのだろうか、こんなふうに考えるんですが、どのような御感想でしょうか。
齊藤正彰
68
○
齊藤参考人
今、お話の後半の方にありましたように、
日本
の例で申し上げますと、
法律
よりも
条約
が
優位
をしている、上の
ランク
にあるのであるから、
条約
に
違反
するような、
人権条約
に
違反
するような
法律
は、
裁判所
が次々と、これは
条約違反
であるから適用しないということをすればいいではないかという御指摘ですけれども、本当にそれができるか、あるいはしてもいいのか、その
根拠
が十分に説明できるかというところが非常に困難な問題で、
日本
の
裁判所
がちゅうちょする理由もそこにあろうかと思いますし、先ほど陳述の中で少し申し上げました
フランス
の裁判官がちゅうちょをしたというのも、やはりそういったところが背景にあろうかと思います。
憲法
の場合ですと、
憲法
と
法律
の
関係
で、
法律
の
違憲審査
をするということになりますと、これは
憲法
に基づいてやるということで、民主主義に対して立憲主義といったものを持ち出して正当化が何とかできるわけですけれども、
条約
の場合に、では、
条約
の条文にどこまで
法律
にまさるだけの民主的
根拠
があるのかということを考えていきますと、多少難しい問題にも突き当たる面がございまして、そうすると、裁判官として、立法府がつくった
法律
を、
条約
を
根拠
として簡単に適用しないと
判断
ができるか、あるいはどれだけできるのかということにはためらいが生じるのも無理がないところはあろうかという
趣旨
でございます。
大出彰
69
○大出小
委員
そういう話なんですが、例えば、条例と
法律
を比べたときに、いわゆる条例の方が
内容
が濃くてというか、広かったりしまして、横出しとか言いますよね、それで認めていくことございますよね。同じように、国際
人権
規約との
関係
の中でも、どうも国際
人権
規約の方が、その国の
人権
を守ることよりも、普遍的な意味でもっと守っているではないかと思うようなことがあるわけですね。そういうときに、なぜ
法律
と条例と同じように、横出しでもいいですから、即
解釈
をしないんだろうか、そんなふうな思いがあるんですが、どうでしょうか。
齊藤正彰
70
○
齊藤参考人
今のお
言葉
をおかりして言いますと、上乗せ
条約
あるいは横出し
条約
というようなものがあった場合に、これを
国内
的にどう
実施
をして実現をしていくかということでございますが、これは、もちろん、それに抵触する
法律
があった場合、
法律
との
関係
で、
条約
の方が上乗せであるとか横出しであるといった場合であれば、これは
法律
ではカバーされていない
部分
で、
法律
と衝突するわけではございませんから、その
部分
を
条約
を直接適用するという形で問題の解決はできると思いますし、実際の
裁判例
でも、
法律
に
規定
はないけれども
人権条約
にはこう書いてあるからという形でその
条約
の
内容
を
実施
している例はございます。ここでは、
法律
と衝突をして
法律
を排除するという問題が生じませんので、先ほど言ったような困難な問題には余り行き当たらない。 もう
一つ
、今の上乗せ
条約
、横出し
条約
といったものが、
憲法
との
関係
で、
憲法
の
人権
規定
との
関係
で上乗せ、横出しであるという場合、これは、もちろん
憲法
よりも幅広く、あるいは厚く保障しているわけですから、その
内容
を直接
裁判所
で適用すればいいというわけでございますけれども、ただ、先ほど申しましたように、
最高裁判所
に上訴をする場合に、
条約
ということを争いとしてはいけないということがありますので、そうなると、上乗せ
部分
あるいは横出し
部分
といったものを
憲法
の
規定
の中に読み込む、あるいは、読み込む
対象
の
規定
が見出せないという場合には九十八条二項を使った
方法
でいくということが必要ではないかというのが陳述の
趣旨
でございます。
大出彰
71
○大出小
委員
その辺のことで、いろいろなところで、上訴も可能とするような話が、例えば、
憲法
の
規定
と
国際人権条約
の
規定
の
内容
を安易に同一視して、
国際人権条約違反
の主張について十分な
検討
を行わない場合には、これを
憲法
九十八条二項
違反
として
最高裁判所
に上訴も可能とすることを考えるものであると、少し前段もありますが、おっしゃっておられるんですが、この場合の、上訴も可能とするというところは、
訴訟法
上整備をしろ、こういう意味なんですか。
齊藤正彰
72
○
齊藤参考人
もちろん、民事
訴訟法
なり刑事
訴訟法
なりを改正して、
人権
条約違反
でも上訴できるようにするというのが恐らく正攻法でしょうし、そうなれば問題がなくなるわけですけれども、そうなされない場合、あるいはそういった改正がなされるまでの間にもいろいろ事件は生じますので、その場合の手当てといいますか、
考え方
として、
憲法
を使って考えるというのもあり得るのではないかというのが
趣旨
でございます。
大出彰
73
○大出小
委員
最後
になると思いますが、そのときに、今のようなことで上訴というのもありますが、国際
人権
規約を最終的に
国内
に直接適用するという話もなさいましたね。この直接適用というのは、自動執行とは別で直接適用する、こういう意味なんですか。
齊藤正彰
74
○
齊藤参考人
今御指摘の、
条約
の
規定
の直接適用
可能性
、あるいは直接適用という問題と自動執行性あるいは自力執行性、セルフエクスキューティングの訳語ですけれども、これの二つの概念が全く同じものであるか、それぞれに違う意味があるか、あるいは片方が含んでもう片方がそれよりより広いとかいうことの定義につきましては、これは
国際法
学上も、
日本
だけではなく、いろいろ複雑な
議論
がございまして、とても今ここで御説明し尽くすのは困難なんですけれども、
一つ
の
考え方
としては、これは両方イコールだというふうに考えても説明は成り立つのではないか。 つまり、
裁判所
で直ちに、その
条約
の条文だけを
根拠
として、その
条約
の
内容
を具体化する
法律
の助けをかりなくても裁判の
結論
を出すことができるという場合はあるだろうと思われますので、そういう場合の
条約
の
規定
を直接適用可能だ、あるいはセルフエクスキューティングだという形で説明することは可能だろうというふうに考えております。
大出彰
75
○大出小
委員
ありがとうございました。
保岡興治
76
○
保岡
小
委員長
次に、森岡正宏君。
森岡正宏
77
○森岡小
委員
私は、自由民主党の森岡正宏でございます。 私が
最後
の質問者になりますので、長くかかりましたけれども、しばらくおつき合いをいただきたいと思います。 私は、
日本国憲法
の
制定過程
にちょっと触れさせていただきたいと思うわけでございますが、ハーグ陸戦
条約
と
日本国憲法
との
関係
ですね。ハーグ陸戦
条約
の附属規則には、先生御
承知
のとおり、占領者が占領地の現行
法律
を尊重すべきということを定めているわけでございます。 これは、主権
国家
がみずからの政治的、経済的または文化的システムについて他国の干渉を受けることなく自由に選択する、譲ることのできない権利を保持するという伝統
国際法
、
憲法
の自律性というものを確認したものだと思います。 とすれば、占領軍主導のもとにつくられた現行
憲法
が、基本
原則
である国民主権でありますとか、
国家
主権でありますとか、ひいては伝統的
国際法
である
憲法
の自律性というものに反するんじゃないか。つまり、ハーグ陸戦
条約違反
じゃないかという
考え方
を持っている人がおりますし、私もそういう
考え方
に立つわけでございますが、先生のお考えはいかがでございましょうか。
齊藤正彰
78
○
齊藤参考人
日本国憲法
が歴史上あのような形で
制定
をされたということとハーグ陸戦
条約
の
関係
、特にハーグ陸戦
条約
に
違反
しないのかということでございます。 この関連では、
日本国憲法
の
制定
が明治
憲法
の改正という
手続
を踏んで行われたということの事情の
一つ
として、GHQの側が、新しく
憲法
をつくり直す、
憲法
制定
会議
のようなものをつくってやるということになりますと、ハーグ陸戦
条約
との
関係
が心配だというようなことがあったという指摘もあったりするわけですけれども、ただ、私もハーグ陸戦
条約
については十分勉強しておりませんので、正確なお答えができるかどうかわかりませんけれども、それについては、交戦中の占領時、占領地において占領行政が行われるわけですけれども、その場合の
原則
を定めているものと理解しておりますので、
日本
の場合は、戦闘行為が終わっていて、つまり、戦闘中の占領下ではないというふうに考えれば、必ずしもそういう問題ではないのかなというふうにも思われます。 あるいは、もう
一つ
の説明としては、ハーグ陸戦
条約
のあのようなものが存在している
趣旨
としては、戦争中に占領軍が占領地の人々の権利を無視するであるとか、そういったことをしないようにというのが根本的な
考え方
だとすれば、ポツダム宣言にうたわれたような
内容
を、
日本
政府
もそれを受諾しているわけですから、それを
実施
するために行ったということが、根本的な
考え方
において、ハーグ陸戦
条約
の根本的な
考え方
と真っ向から対立するかというと、必ずしもそうではないという説明もあるいは可能かというふうには思っております。
森岡正宏
79
○森岡小
委員
今おっしゃったポツダム宣言との
関係
でございますけれども、国民主権をうたっておる
日本国憲法
が、ポツダム宣言の受諾に基づいて、欽定
憲法
である大
日本
帝国
憲法
の改正
手続
を用いて
制定
されていると。そのポツダム宣言という、先ほど土井先生もおっしゃった、宣言だけれども
条約
、この
条約
に基づいて主権原理の変更をも伴うような
憲法改正
が行われたということを考えますと、
日本国憲法
自体
が、先ほど先生がおっしゃっている
条約優位説
を
前提
とした
憲法
だということになりますね。 ところが、この
制定過程
は、私はいささか不純なものがあるんじゃないかと思えてしようがないわけでございまして、ポツダム宣言の受諾が国民主権の要求を含むかどうかということは当時疑義があったことだと思います。また、ポツダム宣言がたとえ国民主権の要求を含むものであったとしても、受諾と同時に
国内法
上の根本改革を生じたと見るには無理がある。また、ポツダム宣言受諾後も占領下で明治
憲法
が正常に機能していたとは考えられない。にもかかわらず、明治
憲法
第七十三条の改正
手続
を用いて
憲法改正
が行われた。この
根拠
が薄弱じゃないか。いろいろ疑問点があるわけでございまして、力の優劣、圧倒的なものがあったと思いますけれども、この辺の事情について、先生はどういうふうに考えておられるでしょうか。
齊藤正彰
80
○
齊藤参考人
ポツダム宣言をめぐる問題につきましては、先ほども御質問がございましたけれども、やはり空前絶後の出来事でございまして、この間、
国際法
の研究者の先生とも少しお話をしたんですけれども、やはりこれを
国際法
学上どのように説明するかというのは、かなりいろいろ難しいところもあるようでございます。 今の先生の御質問のすべてに十分お答えすることはできないのですけれども、ただ、本日の陳述の
内容
との関連で申し上げますと、先生が、ポツダム宣言が今おっしゃったような効果を発揮したのは
条約優位説
との
関係
があるのではないかという御指摘が途中であったかと思います。 ただ、
学説
上も、ポツダム宣言あるいはそれに関して八月革命説などの説明をする際に、
条約優位説
ですとか、あるいは
国際法
優位
の一元論が
前提
になっているという説明がされる場合があるんですけれども、これにつきましては、場合によっては
国際法
優位
の一元論という
議論
についての混乱ないしは誤解が
前提
となっている場合もあるように思いますし、
国際法
優位
の一元論ですとか
条約優位説
といったものを
前提
としなくても、ポツダム宣言から
日本国憲法
に至るその過程は説明が可能であろうというふうに考えられる点があろうかと思います。
森岡正宏
81
○森岡小
委員
ポツダム宣言の受諾に関する
日本国
政府
の申し入れに対しまして、連合国の回答が、いわゆるバーンズ回答、こう言われているわけでございますが、そこで、
日本国
の最終的な政治形態はポツダム宣言に従い
日本国
国民が自由に表明する意思により決定されなければならない、こう書いてありました。当然、
憲法
という国の政治形態を含む基本法の決定というのは、
日本国
民の自由意思によって決定されなければならない、こう解するのが自然だと思います。 そのように考えていきますと、占領軍主導によって
制定
された
日本国憲法
の正統性はポツダム宣言からも導き出すことができないんじゃないか、私はそう言いたいわけでございますけれども、重ねて先生の御
意見
を伺いたいと思います。
齊藤正彰
82
○
齊藤参考人
今御指摘のように、
日本国憲法
の
制定過程
等を見た場合に、
日本国
民が自由な意思を持って行ったのではないのではないかと先生のように評価をする余地もありましょうし、そうではなくて、その後の経緯なども考えますと、
日本国
民はこれを自由に受け入れていたのだというふうに言う余地もあろうかと思いますし、これはどちらも説明は成り立つのではないかというふうに考えております。そのいずれがすぐれているかということについては、今私も用意がございませんし、本日の陳述の
内容
からも離れますので、そこについては遠慮させていただきます。
森岡正宏
83
○森岡小
委員
私は、当時、
日本国
民が
日本国憲法
についてそのような見識を持っておったとは考えられないわけでございまして、やはり押しつけられた
憲法
だなというふうに考えているわけでございます。 もう
最後
になると思いますけれども、ちょっと今集団的自衛権の問題がございますけれども、国連憲章と
日本国憲法
との
関係
におきまして、先ほどの御説明の中で、オランダとかオーストリアでは、
国会
の
承認
を求めるとき、
国会
議員の三分の二の
承認
を得られるというような、
憲法
と同じような
承認
手続
をとればその
効力
が高められるんだというようなお話だったと思いますけれども、今
日本
では、集団的自衛権について、持っておるけれども行使できないという
解釈
が行われているわけでございます。 国連憲章を
承認
するときに
憲法改正
と同じような
手続
をとっておったら、もっと国連憲章そのものの
優位
性といいますか、
日本国憲法
に対して
優位
性が高められる、そのことによって集団的自衛権に対する
考え方
、
政府
の
考え方
も変わってくるのかなと思ったりするわけでございますけれども、その辺について先生はどうお考えでしょうか。
齊藤正彰
84
○
齊藤参考人
ただいまお話にありましたオランダあるいはオーストリアの例でございますけれども、これは
憲法
優位
か
条約
優位
かということを考えます際に、必ずしも、それを一元的にといいますか、二つを割り切って考えられないところがございまして、オランダ、オーストリアというのは、確かに
条約
優位
が認められる場合がある例でございますけれども、ただ、
条約
優位
が認められる場合には、つまり、
憲法
に抵触する、
憲法
と衝突する
内容
がある
条約
を
締結
する際には、
憲法改正
に匹敵するだけの難しい
手続
を踏まなければいけない。完全に同じではないんですけれども、
憲法改正
に匹敵する
手続
を踏まなければいけない。 その上で
条約
優位
だと言っていますと、
条約
優位
だと言っても
憲法
を改正したのとほぼ同じことになってしまいますし、あるいは、先ほど最初の方の質問でお答えした中にもございましたけれども、
条約
を
締結
する際に
憲法
と抵触する
可能性
があると思われるものについては、これはだれが申し立てることができるかというのはいろいろ
規定
があるわけなんですけれども、
憲法
裁判所
にかけて、
憲法
裁判所
がもしこの
条約
は
憲法
と抵触するというふうに
判断
した場合には、
憲法
の方を改正しなければ
条約
を
締結
できない。 ではそれで、
憲法
を改正した場合には
憲法
と
条約
の衝突はなくなりますし、以後は
国内
的には
憲法
の方が
優位
すると言えるわけですけれども、
憲法改正
をしてしまうわけですから、そうなると、
憲法
優位
か
条約
優位
かということでは純粋に割り切れないということになろうかと思います。 先生の御質問の後半の方のお話に行きまして、
日本
が国連憲章を結ぶときに、あるいはほかの
条約
を結ぶときに、オランダやオーストリアと同じように、
憲法改正
に匹敵する厳重な
手続
を踏んでおれば
条約
優位
と解することができる場合もあったかということでございますけれども、ただ、オランダ、オーストリアのように、そのようにすれば
条約
優位
になるというような
憲法規定
があるわけでもありませんし、そのような
憲法
上の慣行があるというわけでもありませんので、直ちにそうなるかというのは難しいところでございますけれども、ただ、
憲法改正
と同等の
手続
を踏むということであれば、そのことについての特別の
規定
がない
日本
においては、単純に
憲法
を改正すればよかったという
結論
になるかというふうに思います。
森岡正宏
85
○森岡小
委員
ありがとうございます。終わります。
保岡興治
86
○
保岡
小
委員長
これにて
参考人
に対する質疑は終了いたしました。 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
齊藤参考人
におかれましては、貴重な御
意見
をお述べいただき、ありがとうございました。小
委員
会を代表して、心から御礼を申し上げます。(拍手)
—————————————
保岡興治
87
○
保岡
小
委員長
これより、本日の
参考人
質疑を踏まえて、小
委員
間の自由討議を行います。 一回の御
発言
は、五分以内におまとめいただくこととし、小
委員長
の
指名
に基づいて、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたします。 御
発言
を希望される方は、お
手元
にあるネームプレートをお立てください。御
発言
が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。
発言
時間の経過については、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。 それでは、ただいまから御
発言
を願いたいと存じます。御
発言
を希望される方は、ネームプレートをお立てください。
船田元
88
○
船田
小
委員
自民党の
船田
元でございます。 きょうは
憲法
と
国際法
との
関係
、あるいは
条約
との
関係
、非常に複雑な問題でございまして、討議をしろといいましてもなかなか難しい点がありますけれども、私なりの論点整理ということで、三つほどちょっとまとめてみましたので、
参考
に供したいと思います。
憲法
九十八条の第一項は、
憲法
は
最高法規
であるという
規定
、そして第二項が、これも先ほどもずっと話をしております、
国際協調主義
に基づいて
日本
も
条約
あるいは
国際法
規についてそれを
遵守
する必要がある、こういう二つの
規定
があります。 過去の、この二つの
規定
をどう
解釈
するかという中で、一方では
条約優位説
、これは戦後すぐの、
憲法
ができて割と早い段階で
条約
優位
という
学説
が主流を占めていた、しかし、だんだんと
憲法優位説
というものになってきた、こんな御指摘がございました。 現在、
政府
の
解釈
によりますと、これは
条件つき憲法優位説
ということで、その
条約
の性格、そういうものによって、あるときは
憲法
が
優位
する、しかしあるときは
条約
が
優位
する場合もある、こういうケース・バイ・ケースの対応ということになっている、そういうこともうかがい知ることができました。 ただ、やはりこれから
憲法
の見直しを行う、あるいは新しい
憲法
をつくっていこうというときには、この若干あいまいな状況というのをそのまま放置しておいたままで
憲法
の見直しをするというのでは、私は完結しないことであると思っておりまして、やはりその作業のときには、
条件つき憲法優位説
、これを
言葉
として出すかどうかは別としましても、そういう
解釈
が万人によって間違いなくできるようなそういう
憲法
の
規定
を設ける、あるいは九十八条に書いてあるような両論併記とは違った形をやはり私は書くべきであるというふうに感じております。 それから、二番目の指摘といたしましては、先ほど来、国際
人権
規約を初めとして、各種の
人権
関係
の
条約
、これが、
日本
は批准をすることが消極的ではないか、こういった
意見
が大分出されておりましたが、私は必ずしもそうではないと思っております。 確かに、批准の項目が多ければ多いほど、それは
日本
が世界
基準
に近づいていくわけでありますから、それにこしたことはないのでありますけれども、例えば、
国内法
との調整がまだできていない、また、
国内法
がなかなか
条約
の条文に合わせられない、それを無理してねじ曲げていくということになると、これはやはり
日本
の行政あるいは政治におけるゆがみを生じる危険性もございます。 やはり、あくまで
日本
の国が主体的にこのような
人権
関係
の
条約
を見て、もちろん恣意的に取捨選択することはこれはよろしくないと思いますけれども、やはり
国内
の状況、我が国の現状、あるいは、先ほど下村
委員
からもお話をいただいたような、文化とか文明、そういったものと照らし合わせて、これは大丈夫である、これはいいのではないかというものについて、それはきちんと批准をしていく、あるいは
国内法
の整備をしていく、こういうことで、あくまで主体性を損なわない形での
人権
関係
条約
との調整をやるべきというのが二番目のことであります。
最後
の、
憲法
と各種
人権
の
条約
との
関係
でございますが、どうも
人権条約
の方が相対的に
日本
の
憲法
よりも広い
範囲
をカバーしているというふうに感じております。ですから、先ほどの話にもありましたけれども、
憲法
をこれから見直していくときには、やはりできるだけそのような国際的に認められた
人権
関係
の
条約
を取り込んでいくということは、努力としては当然必要であると思っております。 ただ一方で、
人権条約
、
幾つ
かの中には、例えば差別唱道禁止の
条約
であるとか、戦争宣伝を禁止する
条約
であるとか、要するに、
日本
の
憲法
における表現の自由というものを制約するような
部分
も逆に一方ではあるというふうに考えておりまして、それとの調整というのはやはりきちんとすべきである、こう考えております。 以上でございます。 〔小
委員長退席
、森岡小
委員長代理着席
〕
武正公一
89
○
武正
小
委員
まず、
人権条約
に対する
日本
の対応ということでございますが、先ほど、二百六十以上未批准の
条約
がある、八十三がILO
条約
関係
という御
紹介
をいたしましたが、やはり、
人権
関係
の未批准
条約
は二十七あるといったことを指摘させていただきたいと思います。 それから、
条約
と
憲法
との
関係
でありますが、戦後すぐにはいわゆる
条約優位説
であったものが、今は
憲法優位説
である。やはり今の注目は、日米安保
条約
と
憲法
との
関係
ということだというふうに思います。 昨年のイラクへの自衛隊派遣をめぐる首相の
発言
、日米同盟と国際協調の両立を図るんだというようなことが言われておりますし、また外務大臣にも、外交の指針というか、
日本
外交の二つの柱は何ですかと言うと、第一が日米同盟、第二が国際協調、このように言われるわけであります。 私は、今の現
憲法
は、
平和主義
と国際協調、そして基本的
人権
の尊重といったことからかんがみますと、今のこの現
憲法
下における外交、
安全保障
といったことからいうと、やはり、
憲法
があって、国際協調があって、そしてその
下位
の概念に日米
安全保障
条約
がその
選択肢
の
一つ
として
条約
として
締結
されているということでありますので、あだや日米同盟、国際協調が同じ概念である、同じところに並ぶ概念であるということはないということでありますし、国際協調、日米同盟の上位の概念である、これを当初から言ってきたのでありますが、ここに来て、アメリカ大統領の
発言
、そして首相の
発言
ということで、いや、やはり国連中心でありますと。 こういったところを見ても、やはり、
憲法
があっての
条約
、すなわち
憲法優位説
というものがここに必要である、確かであるといったことの背景もここにあろうかというふうに考えるところでございます。
土井たか子
90
○土井小
委員
きょうのこの問題は、まず入り口のところで、
憲法
が
優位
か
条約
が
優位
かという問題が必ず論じられるんですけれども、これはつまり、
憲法
と
条約
の
内容
が抵触する、衝突を起こすという場面で、いずれに重点を置いて、上位として考えてこれを解決するかという問題のときに、現実的な、大変差し迫った問題になると思うんですね。 しかし、それにつけても、
憲法
と
条約
、いずれが
優位
かという問題を問題にするときには、統一的な
法体系
とこの
憲法
、
条約
を考えた一元説の
立場
に立たないと、実はこれについて上位か
下位
かという問題は出てこないと思うんです。 私、実は、
条約
は
国際法
だ、
憲法
は
国内法
だと。あくまで
条約
は
条約
であって、
憲法
は
憲法
だ、これを一元論として考えていくというのはどうも合わない、
条約
は
国際法
として考えるべきだし、
憲法
は
国内法
として考えていくべきだと。しかしながら、衝突を起こしたときにはどのようにこの解決を図るかということは、
各国
は
憲法
でそのための
規定
が置かれている。 果たして
日本国憲法
の場合はどうかということになると、これは、
憲法
を上位に置いて考えなさいという条文は具体的にはありませんけれども、しかし、見ていくと、
憲法
の八十一条を見た場合に、
条約
についてはなるほど違憲、合憲の決定をするという
権限
はございませんけれども、しかし、違憲、合憲の法令
審査
というのは
最高裁判所
にも下級
裁判所
にもあるわけですね。その法令
審査
の結果、違憲であるという
審査
結果が出た場合は、
最高裁判所
が、そういう違憲の
内容
を持った
条約
を
締結
した国務行為については違憲、合憲の決定ができるのではないでしょうか。 なぜかというと、八十一条の条文を見れば、そこには
最高裁判所
が違憲、合憲を決定する問題として「一切の
法律
、命令、規則」それから、その次です、「又は処分が
憲法
に適合するかしないかを決定する
権限
を有する終審
裁判所
」となっているわけですね。ここに言う「処分」というのはまさしく行政措置、あるいは国務行為を処分というふうに考えて、これは間違っていないのではないかと私は思うわけです。 したがって、八十一条から考えて、この
最高裁判所
は、その結果、
条約
について
憲法
に
違反
している
違反
していないということの認識を持たないと、この処分に対しての違憲、合憲を決定するわけにはいかないということになろうというふうに思うんですね。 ところが、現実は、そういうことを最高裁は今まで果たしておりませんで、きょうも話題になりましたけれども、
砂川事件
のときの
最高裁判所
の判決というのは、一見極めて明白に違憲であるということが認められない限りは、これについて違憲かどうかの
審査
をすることはできないというふうに言い切っちゃったんですね。 しかし、その
前提
になった、あの、いわゆる世に言う伊達判決。この第一審の判決では違憲であるということをはっきりさせたんですが、ただ、違憲であるということを言ったのは、
憲法
裁判として違憲であると言ったのではないのであって、刑事裁判としてそこに適用される刑特法というのが、なぜこういう
法律
が存在しているかという由来を考えれば、安保
条約
を実行する
法律
として刑特法が考えられている。刑事特別法ですね。したがって、安保
条約
が違憲の
条約
であるならば、それを実行せんとした、特別に立法された刑特法も違憲の
法律
と言わざるを得ない。したがって、違憲の
法律
を適用して裁判を行うわけにはいかないといって、刑事事件でこれを適用しなかったわけでしょう。そこで無罪になったわけですね、あのときには。 だから、刑事事件の中で違憲、合憲
審査
というのがそういう形で行われたということを
前提
にして最高裁に行ったときに、最高裁がこれを実効あるものにしなかったというふうに私は考えるという考えに立つものですから、きょうは、一切
最高裁判所
にはそういう
権限
がないので、改めてそういうことを
憲法
で明記すべきだという御
意見
に対しては、現に八十一条からすると、それは最高裁がなすべき中身として
規定
があるじゃありませんかというのが私の理解です。
大出彰
91
○大出小
委員
民主党の大出彰でございます。 私どもは、きょうの、
条約
の適合性というところで、
憲法
適合性ということで、
法律
が
憲法
に
違反
しているかしていないかということをやるわけなんですが、
条約
についても、私は非常に、特に
国際法
の
条約
ですから、ジュネーブ協定等を思ったときに、現実にそれがいろいろな事象としてあらわれているところを見たときに、なぜすぐに
国際法
が守られないのだろうか、あるいは、裁くところがないのだろうかと常々思っていました。 特に、今回のイラク等を見ていますと、女性も子供もどんどん殺されていく、余りにも残虐なことがある、テレビには映らないけれども、ある。そう見たときに、ジュネーブ協定があるのにな、虐殺じゃないのかなと思うようなことがあるわけですね。 そして、そうかと思うと、モスクというところにどんどん攻撃しているんですね。普通は、宗教施設ですから、あれをやればあれもジュネーブ協定
違反
だろうと思うのに、起こっているわけですよ。 さらに、精密誘導弾といいながら落としているんですね。ところが、間違って落ちているわけですね。ところが、よく見ていると、間違って落ちたんじゃなくて、意図的に間違っているんじゃないかと思うようなところもあるわけですね。こういうのを見たときに、無差別殺人で、反するんではないかなと思うんですね。 そうかと思うと、クラスター爆弾とかいろいろな爆弾がありまして、これはもう残虐兵器ではないかなと思うと、新しい爆弾だから残虐兵器の中に入っていなかったりとかするんですね。 こういうことがどんどん起こっていて、それで、ではアルカイダはどうなっているかというと、キューバの、よく読めない、グアンタナモとかなんかいうところの基地のところに押し込められていまして、これは、だって、捕虜に対する取り扱いはこんなことでいいのだろうかと思うと、捕虜じゃないと勝手に
解釈
しているんですね。 幾ら決めても現実的に進んでいないところを、どこの
法律
で裁いたらいいのか、どこの
裁判所
で裁いたらいいのかという、できるんならどこかでやってほしいというような思いで、
国際法
ということと
国内
というものが、
国内
というのは、
一つ
一つ
の国が独立しているものですから、定立しているものですから、そこですべてに、国連にうんと力があればまた別なんでしょうけれども、そうでもないところといいますか、そういう機構にはなっていないところがありますので。 そういう意味で、
国際法
と
国内法
を見たときに、おかしいんではないか、何とかしなきゃいけないんではないかということがある。どんな
解釈
でもいいから、早くなるようにやっていただきたいなと思いながら、政治家で頑張ってまいりたいと思います。 以上です。
森岡正宏
92
○森岡小
委員長
代理 他に御
発言
ございますか。 それでは、討議も尽きたようでございますので、これにて自由討議を終了いたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後四時三十二分散会