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2004-02-19 第159回国会 衆議院 憲法調査会基本的人権の保障に関する調査小委員会 第1号
公式Web版
会議録情報
0
本小
委員会
は
平成
十六年一月二十二日(木曜日)
憲法調査会
において、設置することに決した。 一月二十二日 本小
委員
は
会長
の
指名
で、次のとおり選任された。
小野
晋也君
倉田
雅年
君
棚橋
泰文
君
平井
卓也
君
船田
元君
古屋
圭司
君
松野
博一
君
園田
康博
君 辻 惠君
村越
祐民
君
山花
郁夫
君 笠
浩史
君
太田
昭宏
君
山口
富男
君
土井たか子
君 一月二十二日
山花郁夫
君が
会長
の
指名
で、小
委員長
に選任された。
平成
十六年二月十九日(木曜日) 午前九時一分
開議
出席小委員
小
委員長
山花
郁夫
君
小野
晋也君
倉田
雅年
君
棚橋
泰文
君
平井
卓也
君
船田
元君
古屋
圭司
君
松野
博一
君
園田
康博
君 辻 惠君
村越
祐民
君 笠
浩史
君
太田
昭宏
君
山口
富男
君
土井たか子
君 …………………………………
憲法調査会会長
中山 太郎君
憲法調査会会長代理
仙谷
由人君
参考人
(
中央大学
(
法科大学院開設準備室
)
教授
)
内野
正幸
君
衆議院憲法調査会事務局長
内田 正文君
—————————————
二月十九日 小
委員土井たか子
君同日
委員辞任
につき、その補欠として
土井たか子
君が
会長
の
指名
で小
委員
に選任された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
基本的人権
の
保障
に関する件(法の下の平等) ————◇—————
山花郁夫
1
○
山花
小
委員長
これより
会議
を開きます。 この際、
一言
ご
あいさつ
を申し上げます。 先般、小
委員長
に選任されました
山花郁夫
でございます。 小
委員
の皆様の御協力をいただきまして、公正円満な運営に努めてまいりたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
基本的人権
の
保障
に関する件、特に法の下の平等について
調査
を進めます。 本日は、
参考人
として
中央大学教授内野正幸
君に御
出席
をいただいております。 この際、
参考人
に
一言
ご
あいさつ
を申し上げます。 本日は、御多用中にもかかわらず御
出席
をいただきまして、まことにありがとうございます。
参考人
のお
立場
から忌憚のない御
意見
をお述べいただき、
調査
の
参考
にいたしたいと存じます。 本日の議事の順序について申し上げます。 まず、
内野参考人
から法の下の平等、特に一票の
格差
の問題、非
嫡出子相続分等
の
平等原則
に関する重要問題について、
企業
と
人権
に関する
議論
を含め御
意見
を四十分以内でお述べいただき、その後、小
委員
からの
質疑
にお答えいただきたいと存じます。 なお、
発言
する際はその都度小
委員長
の許可を得ることとなっております。また、
参考人
は小
委員
に対し
質疑
することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。 御
発言
は着席のままでお願いいたします。 それでは、
内野参考人
、お願いいたします。
内野正幸
2
○
内野参考人
御紹介いただきました
内野正幸
でございます。 お配りしましたもののうち、三枚とじで、その1、その2、その3となっております「〔
改訂版レジュメ
〕現
憲法下
で
差別撤廃策
の
推進
を」というものに即しまして、これをアレンジした形で話していきたいと思います。 先ほどの御紹介の中で一票の
格差
の問題などなどを含むという御指摘がありましたけれども、これはあくまでも含むということでございまして、それを中心とするという
趣旨
ではございませんので、あらかじめ申し上げておきます。 それで、この
レジュメ
その1の「1、はじめに」というところですけれども、
憲法改正
を主張するよりも現
憲法下
でさまざまな
施策
を
充実化
させよというところであります。 (1)です。伝統的に
日本社会
は、
人々
がいわば異質な
少数者
に対して
偏見
を抱きやすい
同質性社会
の
傾向
があります。
単一民族社会
という不正確な
言葉
が使われることもあるわけですけれども、いずれにしましても、
同質性
を重んじる
傾向
があると思います。また、そこでは、不利な
立場
の
人々
、いわば
社会的弱者
ですが、そういう
人たち
に対する
配慮
の
不足
というものも感じられるわけです。 そこで、
社会的弱者
に優しい
社会
とか、あるいは
社会的弱者
の苦しみを最小化することを目指す
社会
、あるいは
社会的弱者
の
人たち
がより快適に暮らせるような
社会
を築き上げることに向けて、国や地方自治体に啓発を含めいろいろな責務があると思います。その中では、
人々
が多かれ少なかれ抱きがちな
差別意識
を克服していくという
課題
も重要になってくると思います。 なお、
平等論
の枠を超えて言いますと、例えば
過疎地
における
医師不足
などの問題も重大だと思います。 (2)ですが、
人権
の
領域
では、
プライバシー
の
権利
などの明文化ということも含めまして、
憲法改正
の
必要性
は当面少ないと考えております。現在の
日本国憲法
の
解釈
によって
プライバシー
の
権利
などを引き出すことができるわけでして、むしろ、現在の
憲法
のもとで、
国際人権
諸
条約
の
国内実施
も含めて、法令、その
充実化
あるいは
行政措置
などを通じて
人権保障
や
差別撤廃
を
推進
していくという
課題
が重要だと思います。 なお、「
人権擁護法案
」というやや厚めの
資料
も用意してありますが、これについては後に述べます。また、
学校教育関係
にかかわる平等や
差別
の諸問題については省略いたします。さらに、
外国人
の
権利
や国籍にかかわる問題につきましても、深入りしないことにいたします。 そこで、(3)典型的な
差別禁止事由
というところです。 きょうお配りした
資料
で、一枚の紙でいろいろな
条文
が掲げられているものがあります。その
最初
に
日本国憲法
の十
四条
が引かれていますが、その第一項では、「
人種
、信条、
性別
、
社会的身分
又は門地により、」「
差別
されない。」とあります。この場合の
人種
を初めとする
差別禁止事由
の列挙は例示的なものだと思います。
憲法
四十
四条
というのがその下に引かれていますけれども、これは、「両議院の
議員
及びその
選挙人
の
資格
は、
法律
でこれを定める。」と本文がなっておりまして、その
ただし書き
で
差別禁止事由
が列挙されています。これもやはり例示的なものだと思います。 そこに書きましたように、
部落出身者
であるということは
社会的身分
に含まれるということです。 それから、
人種差別撤廃条約
の抜粋の
条文
もこの
資料
で用意しましたけれども、その第一条で、この
条約
で「「
人種差別
」とは、
人種
、皮膚の色、
世系
」、「
世系
」という
国語辞典
に余り載っていない
日本
語なんですけれども、「
世系
又は民族的若しくは
種族的出身
に基づくあらゆる
区別
、」とあります。ここで言う「
世系
」という中にも、
部落出身者
であるということを含ませるべきではないかと考えます。なお、このような主張は、
部落
を
人種
と同列に扱おうとする
趣旨
に基づくものではありません。 なお、そこに書きましたけれども、
住宅ローン拒否
の
事件
に関する
東京地裁
の
平成
十三年の
判決
では、この「
世系
」を
人種
に準じて狭く
解釈
しています。 いずれにしましても、
差別
を受けやすい
人たち
としては、
部落住民
、
アイヌ民族
、
在日定住韓国
・
朝鮮人
を初めいろいろな
在日外国人
、
心身障害者
、さらに
女性
、
同性愛者
などの
性的マイノリティー
、それからハンセン病などの
一定
の病気の(元)患者、さらには
宗教的少数者
というものが挙げられますし、そのほかに
刑事事件
の
関係者
、
被疑者
とかあるいは
出所者
などです。さらには、
高齢者
などなどが挙げられます。 なお、
障害者
の害という漢字を気にする人もいるようで、平仮名でがいと書いて障がいのある人でもいいわけですけれども、広くは、
排せつ機能
の障がいとか顔面、顔の障がいなどなど、いろいろな
タイプ
の人を含むと思われます。 そこで、次の
項目
、「2、
憲法
の「平等」
条項
の読み方」というところです。 先ほど
条文
を確認しました
憲法
十
四条
や四十
四条
ただし書き
による
差別禁止
というのは、絶対的なものではありませんで、合理的な
区別
を許すものであります。 四十
四条
ただし書き
に関するちょっとした説明ですけれども、
供託金
を出せなければ立候補できないとしても、財産による
差別
として
違憲
とは言えないわけです。また、机の上の話ですけれども、仮に、初歩的な
政治的教養
を試す試験にあらかじめ合格していなければ立候補できないという仕組みを将来設けたとしても、それは
教育
による
差別
として
違憲
であるということにはならないと思います。 次に、その2というところですけれども、(2)で、
憲法
十
四条
が
原則
的に
禁止
しております
差別
というのは、
差別的取り扱い
であるというふうに考えるべきだと思います。
差別的取り扱い
といいますのは、いろいろな
施設
を利用させないことなどなど各種の
タイプ
のものを含みますけれども、いずれにしましても、
差別意識
や
差別的表現
を
憲法
十
四条
が
差別
として
禁止
しているというわけではないというふうに確認しておきたいと思うわけです。 それで、(3)としまして、
差別的表現
について言及しておきました。不
特定
多数の
人たち
のグループに対する
差別的表現
、例えば
アイヌ民族
は何とかだという
発言
、そのような
差別的表現
に対しまして、
民事救済
とかあるいは
行政的対応
というのは認められるわけですけれども、しかし、
刑罰つき
の
法的規制
を行うことは慎重にすべきだと考えます。
行政的対応
という場合、従来からあるものとしまして、
地方法務局
による
勧告
など、例えば、このような
差別ビラまき
はしないようにとする
勧告
、そういう
タイプ
の
勧告
などのほかに、
人権擁護法案
における
人権委員会
の
特別救済手続
も含まれるわけです。 なお、確認のためですけれども、
特定
の
個人
、Aさん、Bさんに対する
差別的表現
に対しては、
現行法
上も処罰可能です。
侮辱罪
や
名誉毀損罪
になるわけです。 それで、この
差別的表現
に関しましては、
人種差別撤廃条約
の
四条
というのがありまして、これは
条文
が
資料
で確認できると思うのですけれども、この第
四条
の中でも特に(a)、さらには(b)です。この
条文資料
の上の左の方にあるんですけれども、
四条
の(a)によりますと、「
人種的優越
又は憎悪に基づく
思想
のあらゆる流布、」というふうになっておりまして、こういうものについて
法律
で処罰すべき犯罪であることを宣言せよとなっているわけです。
日本政府
はこの
条約
の
四条
を留保したわけですけれども、私の
立場
からいいましても、このような留保は
原則
的に支持できるわけです。 と申しますのも、
人種差別撤廃条約
の
四条
の(a)は、広い
領域
におきまして
差別的表現
やそれに類するものに
刑罰
を求めているわけでして、
表現
の自由という見地から見て、
規制
が行き過ぎているのではないかと思うからであります。 次に、3としまして、「形式的平等と実質的平等」というところであります。
レジュメ
には「(その定義は
別紙
)」と書いてありますけれども、「法の下の平等」というタイトルの
縦書き
の
プリント
があるんですけれども、その中の十行目近く、「第三に、」というところですけれども、平等の
観念
には二つあると。形式的平等というのは、諸
個人
をその事実上の違いにかかわらず一律に同等に扱うべきことを求めるものだと。それから、実質的平等というのは、事実上劣った
地位
にある人をより有利に扱うことにより結果を平等なものに近づけようとするものであるということです。 それで、
憲法
十
四条
は、実質的平等ではなくて、形式的平等を
原則
的に命じるものである。その際に、
合理的区別
を
例外
としているということであります。 その2という
レジュメ
の
真ん中あたり
の(a)というところですけれども、
衆議院
では
議員定数
不均衡を
格差
二対一内におさめることが
憲法
上
要請
されるにしましても、参議院につきましてはそこまでは言えないだろうと考えております。と申しますのも、
半数改選
に伴います
偶数選出
の
要請
がありますし、また、
都道府県別選挙
区というのは、これは
憲法
が
要請
しているものではありませんけれども、許容しているものだと思われまして、そういう点を考慮する必要があるからであります。 それで、政治的平等としましては、ほかに
選挙資格
や
投票
の
機会
の
保障
の点で
現行制度
をもう少し再点検する余地があるのではないかと思います。 次に、(b)ですけれども、いわゆる非
嫡出子
、
婚外子
というふうに呼ぶこともできるんですけれども、
婚外子
への
差別
は
違憲
であるというふうに書きました。とりわけ、
最高裁
で
相続分
に関する非
嫡出子差別
の
事件
の
判決
が出ていまして、そこでは依然として
少数意見
にとどまっているわけですが。 他方、非
嫡出子
とは別に、
選択的夫婦別姓
ですけれども、これは
憲法
十
四条
が
要請
するものであるとは考えておりません。
立法政策
的に望ましいものとして、その実現、
推進
を図るべきだと思うわけです。 それから、(c)としまして、
性的指向
による
差別
です。この
性的指向
というのは、シというのを志すという字ではなくて指という字で書くということなんですけれども、
同性愛者
に対する
差別
、あるいは、ここには書きませんでしたけれども、
両性
愛、同性も異性も愛するという両
性愛者
というのもこの
性的指向
でカバーできることだと思います。
同性愛者
に対しては、
施設利用
などの点で
差別
があってはいけないのは当然であります。 最近
話題
になっておりますのは、
同性愛者同士
の
結婚
であります。あるいは
結婚
に準じるパートナーシップの形成です。その場合、
条文
ですと、
日本国憲法
二十
四条
で、その第一項ですけれども、「婚姻は、
両性
の
合意
のみに基いて成立し、」というところで、「
両性
の
合意
」という
言葉
がひっかかるわけです。文理
解釈
いたしますと、
憲法
二十
四条
一項を改正することなしには
同性愛者
の
結婚
は認められないというふうになりそうですけれども、その点の
解釈
については
議論
のあるところだと思います。 最近の
話題
としましては、そこに書きましたように、昨年十一月のアメリカ合衆国のマサチューセッツ州
最高裁判決
が、
同性愛者
に対する
結婚
を認めるべし、認めないのは
平等違反
であるとしたわけでして、それに対する
ブッシュ大統領
の
批判的反応
などのいきさつがあるわけです。 次に、(2)です。
立法
や
行政
の
施策
によって、いわゆる
積極的差別是正措置
、アファーマティブアクション、あるいは似たような
意味
で
ポジティブアクション
と呼ばれますけれども、そういうものも含めまして、今後、実質的平等を
推進
すべきだと思うわけです。 それで、そこに書きましたように、
障害者
のためのバリアフリーなどであります。ここでは具体的な中身をお話しする余裕はありませんけれども、最近の動きとしまして、
改正公職選挙法
による
障害者
の
投票機会
の
保障
とか、あるいは
性同一性障害者特例法
、それから
身体障害者補助犬法
というのが注目されるわけであります。
ポジティブアクション
といいますと、さまざまな分野での
女性
の
積極登用
というのが今後重要な
課題
になってくると思います。その中には
女性
の
政治進出
を促進するための
政策
も含まれるわけでして、
幾つ
かの
ヨーロッパ諸国
あるいはアジアの
幾つ
かの国で
女性
が積極的に
政治家
として進出できるための
枠組みづくり
が行われていますけれども、今後
日本
でそのような
政策
をとるべきかどうかは
議論
のあるところだと思うわけです。 それで、
女性
ということですと、次の4という
項目
に入るわけです。「
女性差別
(ジェンダー平等)」と書きました。 まず、(1)ですけれども、
憲法
十
四条
などは
性別
による
差別
を
禁止
しているわけです。その
判断基準
につきましては、
縦書き
の
別紙
の一番
最後
の三行に書いてあるのですけれども、
男女
の肉体的・
生理的条件
の違いに由来する
性差別
は合憲であるが、男は仕事、女は家庭といった
男女
の
役割分担
についての固定的な
観念
、ないしは
女性
の
地位
についての
偏見
、男尊女卑の
思想
に由来するものは
違憲
となると言えると思います。 関連しまして、
憲法
二十
四条
には、「
夫婦
が同等の
権利
」とか、あるいは「
両性
の本質的平等」という
言葉
があります。
女性差別
に関しましては、
女子差別撤廃条約
の一条から六条という
最初
の
部分
を
プリント
で示したわけですけれども、その中では、そこに書きましたように、特に五条による
男女役割分担慣行
の
撤廃
ということが注目されるべきだと思います。先ほど触れました
ポジティブアクション
のことは、
条約
の第
四条
で、暫定的な
特別措置
という形で規定されているわけです。 このような点も含めまして、最近のスローガンとなっております
男女共同参画社会
を築き上げていくということが今後の重要な
課題
になると思うわけです。 次に、
レジュメ
のその3というところですが、(2)としまして、
女性天皇
についてであります。
男系
か
女系
かという問題もあるわけですが、
男系
であれ
女系
であれ、
女性天皇
を認めるかどうかは
立法政策
の問題であるというふうに私は考えております。言いかえますと、
女性天皇
を認めなくても
憲法
十
四条
違反
にはならないと
解釈
しております。と申しますのも、世襲の
象徴天皇制そのもの
が、生まれによる
差別
の
禁止
という
原則
に対する大きな
例外
を
憲法
が明文で定めたものだからであります。 次に、(3)としまして、
一定
の
スポーツ競技
や刑務所などの
男女別
は合理的な
区別
として許容されると思います。あるいは、国公立の女子大や
女子校
が合理的な
区別
としてどこまで許容できるかは
議論
のあるところだと思います。 次に、(4)ですけれども、
間接差別
という
言葉
が最近時々
話題
になっておりますけれども、例えば、
世帯主
でない者、非
世帯主
に対して劣った
扱い
をする。こういう場合に、事実上の
傾向
として、男性よりも
女性
の方が、夫よりも妻の方が劣った
扱い
をされる結果をもたらす
可能性
が高いわけですけれども、このような
間接差別
に対する
規制
というのも今後考えていく必要があるわけでして、
枠組み
としましては、
合理的理由
なく形式的平等を侵してはならないというこれまでの
枠組み
のもとで、
間接差別
に対する
規制
は
理屈
の上では可能でありますが、何をもって
間接差別
と見るかの
基準づくり
は今後の
課題
だと思います。
最後
に、5という
項目
で、「
民間社会
における平等と
差別
」というところであります。
企業関係
の問題は、
男女雇用機会均等法
とか
労働基準法
などの
法律
によって、少し、あるいはかなり解決されつつあるわけです。少なくとも、
法的側面
においては解決に向かっているわけです。 最近の
話題
としましては、
住友電工男女差別訴訟
で、
大阪高裁
で画期的な和解が行われたということであります。これは、仮に
判決
という形式をとったならば、このような画期的な
内容
のことは書けなかったかもしれないと思われるほど、
男女差別撤廃
に向かってのいい方向を裁判所が示したものとして評価できるわけです。 関連しまして、
企業
の
社会的責任
ということが最近よく言われますけれども、
環境保護
の
責任
などのほかに、
企業
内で
男女
平等の
推進
あるいは
女性
の
積極登用
を行うということも、
企業
にとって中長期的に見てプラスになることだと思うわけです。その
意味
で、
企業
の
社会的責任
ということに関連づけられると思います。 一般的に言いまして、
民間社会
における
差別
につきましては、
公序良俗違反
に関する
民法
九十条や
不法行為
に関する
民法
七百九条などを媒介にしまして
憲法
の
人権規定
を私
人間
へ間接適用することによって、
理屈
の上では十分対応できるわけです。その場合、
民間
における
差別
は
憲法
十
四条
違反
とはならず、
憲法
十
四条
の
精神
に照らして違法になり得るわけです。 ただ、
三菱樹脂事件
に関する
最高裁判決
によりますと、私的な
支配関係
におきましては、平等に対する具体的な
侵害
またはそのおそれがあり、その態様、程度が
社会
的に許容し得る限度を超えるときに違法となり得るとされるにとどまるわけです。この
言い方
は漠然とした
抽象論
です。 思いますに、ある
人たち
の人格や
地位
を低く見る
内容
の
差別
、
人種差別
とか
部落差別
などですけれども、このような種類の
差別
というのは、
民間
のお店とか宿とか住居、その他の
施設
でも厳しく
禁止
されるという
ルールづくり
が必要になると思うわけです。確かに、
差別禁止
あるいは
排除禁止
という
要請
と、ほかのお客さん
たち
への
配慮
などの
民間施設側
の
営業的利益
というものが衝突するということがよくあるわけでして、
一般論
としては、この二つのものとの間でバランスをとれということになるかもしれませんけれども、しかし、その場合であっても、
差別禁止
の
要請
をずっと重視するべきだと思うわけです。 そこで、「なお、」として
旅館業法
五条に触れてありますけれども、そこでは、
宿泊
を拒める場合の
一つ
として、「
宿泊
しようとする者が」「風紀を乱す
行為
をする虞があると認められるとき。」が挙げられています。仮に
旅館業者
が、この
条項
に基づいて、
日本
に来た
外国人
とかあるいは
知的障害者
とか
同性愛者
などなどの
宿泊
を拒むということがあったとしましたら、これは
憲法
十
四条
の
精神
に照らして違法になるわけです。また、別の
言い方
をしますと、この
旅館業法
の五条も、
憲法
十
四条
の
精神
に沿うように
解釈
されるべきだと思うわけです。 次に、(2)で、
人権擁護法案
というところであります。 これは、おととしの三月国会に提出されながらも、
審査未了
でいわば廃案になった
扱い
だと思うんですけれども、その見直しや再提出を検討すべきだと思うわけです。先ほど言いましたように、
民間社会
における平等や
差別
というのは、
憲法
の
人権規定
を私
人間
に間接適用することによって
理屈
の上では対応できるわけですけれども、しかし、
人種差別
などが厳しく
禁止
されるという
ルールづくり
のために、そのための特別の
法律
を整備するということも必要なのではないかというふうに考えるわけです。その手がかりとしまして
人権擁護法案
というものが
参考
になるわけです。この
法案
は、公の機関も
民間
の団体も
適用対象
になっております。 お配りしましたやや分厚い
資料
で
一つページ
をめくっていただきますと、第二条とか第三条というのが出てきます。第二条の五項ですけれども、この
法律案
における
差別禁止事由
の中では、その終わりに「
性的指向
」という
言葉
が出てくるわけで、この点は評価できると思います。 それで、三条で、これこれの
人権侵害
をしてはならないということで、その第一項で、「次に掲げる不当な
差別的取扱い
」となっています。先ほど申しましたように、
差別
とは
差別的取り扱い
であるということをこの文脈でも確認してよかろうかと思います。 なお、
人権擁護法案
の第二条の五項に
差別禁止事由
が列挙されていますけれども、これにつきましても、「その他の
事由
」という
言葉
をその後に入れるのも一案だと思います。 なお、
人権擁護法案
については、
人権委員会
の
独立性
などの問題があるわけです。 また、
差別禁止法
などの名称の
法律案
を新たに準備するということも検討されてよかろうかと思います。
最後
に、(3)で、最近の
判決
としまして、
宝石店外国人拒否
に関する
静岡地裁浜松支部
の
平成
十一年十月十二日
判決
、それから、小樽での
外国人入浴拒否
に関する
札幌地裁平成
十四年十一月十一日
判決
などが注目されますけれども、時間の
関係
上、その
内容
に立ち入るのは差し控えまして、以上で私からの
陳述
を終えたいと思います。(拍手)
山花郁夫
3
○
山花
小
委員長
以上で
参考人
の御
意見
の開陳は終わりました。
—————————————
山花郁夫
4
○
山花
小
委員長
これより
参考人
に対する
質疑
を行います。
質疑
の申し出がありますので、順次これを許します。
小野晋也君
。
小野晋也
5
○
小野
小
委員
内野参考人
におかれましては、平等と
差別
という観点からの
人権
問題について、いろいろな例を挙げながらの御
陳述
、ありがとうございました。 まず、ちょっとお尋ねを申し上げたいのは、この平等と
差別
という問題を少し超える話になろうかとは思いますが、
憲法
第三章の
部分
における国民の
権利
と義務についてということでの
項目
がずっと挙がるわけであります。
内野参考人
は、冒頭に、
憲法改正
の
必要性
よりもその運用に努力すべきであるというふうなことをおっしゃっておられるわけでありますが、私ども、いろいろな
議論
をする中において、
憲法
全体として、
権利
規定は非常に多いけれども、義務規定においては、例えば納税、勤労、そして
教育
を受けさせる義務等々と、非常にその数が少ない。これはいかにもバランスを欠いたものになっているのではないかというような指摘があるわけですね。加えて、最近の世相を見ておりますときに、
社会
的秩序を守るということにおいての義務的、また
責任
感を伴うような
観念
が国民の中から薄らいできているのではないかというような指摘も多々なされているわけであります。 この点、
憲法
における
権利
規定と義務規定、このバランスの問題についてはいかなる御見解をお持ちか、お尋ねしたいと思います。
内野正幸
6
○
内野参考人
御指摘の
意味
はよくわかるところでありますけれども、そもそも
憲法
とは何かという場合に、歴史的に見ても今日的に見ても、公的機関による
侵害
に対して
人々
の
人権
を
保障
する、いわば国家権力を制限することによって
人々
の
権利
を
保障
するというのが
憲法
の最も重要な任務であると考えますので、そのような
憲法
のそもそもの任務に照らしますと、
権利
規定が非常に多くて国民の義務の規定が非常に少なくなるというのは、いわば自然の成り行きであるというふうに考えます。
小野晋也
7
○
小野
小
委員
その点に関しまして、私自身の
個人
的見解ということになるかもしれませんが、国民側から政府に対する権限を制約する形での契約を結んだものである、これは歴史的に見るとそういうことであるかもしれませんが、私はむしろ、今日的な
意味
から見るならば、政府と国民が相互にお互いのなすべきことを規定し合う契約というふうにみなす方がうまく
社会
が運営されるのではなかろうか、こんな見解を持っているものでございます。 まあこれは見解の違いだといえばそれだけのことになるわけでございますが、
内野参考人
、そういう考え方に対していかがお考えか、御教示いただきたいと思います。
内野正幸
8
○
内野参考人
今の質問に対して今すぐきれいに反応するような答えができる自信はないのですけれども、
社会
契約説のような発想でいった場合であっても、政府の側の権限を制限するという
タイプ
の契約だというのが
憲法
に対する私の理解でありまして、御指摘のような点は、一般の
人々
に対してさまざまな法典でどのようなメッセージを発すべきかという文脈では、有意義な指摘が含まれていたと感じます。
小野晋也
9
○
小野
小
委員
質問を移らせていただきますが、平等という問題を考える場合、そして、その
差別
救済という問題を考える場合、そこには
一つ
の価値観が反映されないと、実際の働きを行うことができないと思いますね。特に、先ほどの
陳述
の中に弱者という
言葉
が出ておりますが、この弱者ということが出てくるということについては、その強弱の判定の物差しが存在するということになろうかと思います。 これは一体、
社会
的にどういうものをもってその強弱というものを判定する物差しと認定することが可能なのか。そしてまた、公的機関がその物差しを人に当てることによってこの人は弱者であると認定することは、これはかえって
社会
的
差別
をそこで実行しているということになるのではなかろうかという気持ちがいたしますが、御見解、いかがでございましょうか。
内野正幸
10
○
内野参考人
私は、
陳述
の中では、不利な
立場
の
人々
、いわば
社会的弱者
という
言い方
をしまして、私自身も弱者という
言葉
を積極的に使おうとは思っておりません。便宜上、このような短い
言葉
を使ったわけであります。 それで、強い、弱いという
言い方
を、有利、不利というふうに言いかえましても、依然としてどのような判定基準なのかということが問われると思うわけです。ですから、仮に不利な
立場
の
人々
というふうに私が言いかえましても、依然として何をもって不利だというふうに判定するのかというふうに質問され得るわけです。 これは、一概には言えませんで、さまざまな種類の
差別禁止事由
に即して個別に見ていくしかないと思います。
小野晋也
11
○
小野
小
委員
ま
たち
ょっと次の
課題
に移らせていただきますが、選挙区の
違憲
状態の問題についてもお触れになられました。 実は、御存じのとおり、もうこの夏に参議院の選挙が控えておりますが、参議院における選挙区選挙の五倍を超える有権者数の差は、
違憲
状態に近いのではないかという御
意見
が各界から出され、
最高裁
の
判決
においても、
違憲
ではないとしたものの、今回それで施行される、そのまま施行されるならば
違憲
判決
も出すかもしれないというようなこともその
意見
の中に含まれていたということもお伺いをいたします。 先生の御
意見
は、これは、参議院においてはそうではないということをおっしゃっておられるのでありますが、もう少しその点、細かくお聞かせをいただきたいと思います。
内野正幸
12
○
内野参考人
参議院につきましては、どこら辺から
違憲
と見るかについての判定基準は、私は述べなかったわけですが、正直言って迷っているところであります。
一つ
参考
になりますのが、
憲法
学者の佐藤功氏の
意見
や元
最高裁
裁判官の園部逸夫氏の
意見
でありまして、
都道府県別選挙
区を前提とした場合に、人口の最も少ない選挙区との比較というところでは相当程度の
格差
は許さざるを得ないであろうと。つまり、一人区といいますか、両方合わせて二人区といいますか、一番小さいところをベースにした場合には、それとの
格差
はある程度まで許さざるを得ないであろうと。しかし、二人区といいますか四人区といいますか、それとの
関係
の場合ですと、三倍か四倍に抑えなければいけないということは
憲法
上
要請
されるだろうというふうに考えております。その場合でも、二倍に抑えるというところまでは
要請
されないと思います。
小野晋也
13
○
小野
小
委員
それでは、これで終わります。ありがとうございました。
山花郁夫
14
○
山花
小
委員長
次に、笠
浩史
君。
笠浩史
15
○笠小
委員
本日はどうも、
内野参考人
、御苦労さまです。貴重な御
意見
、ありがとうございました。 民主党の笠
浩史
でございます。 先生の御
意見
の中で、
憲法
十
四条
について、平等についてどう考えるべきかという
意見
陳述
がなされたわけでございます。この十
四条
が要求しているのは形式的な平等である、実質的な平等についてはまさに
立法政策
に期待されているという見解を先ほど
レジュメ
で示されておりますけれども、この実質的な平等をどう確保していくかということが、もちろん
立法
府であるこの国会の最大の役割であるというふうに理解をしたんです。 そこでお尋ねをしたいことは、私は、二十一世紀のこの国の姿というものを考えていくときに、やはり官から民へ、そして中央から地方へという形に移行して、小さな政府の実現を図らなければいけないと思っております。そのときには、当然ながら自己
責任
というものがこれまで以上に伴ってくる中で、やはり結果の不平等というものをどうしても今まで以上に許容せざるを得ないと考えているものでございますけれども、この点については、十
四条
のもとの平等の概念とどのように
憲法
上関連をしてくるのか、お聞かせいただければと思います。
内野正幸
16
○
内野参考人
自己
責任
という発想が強まってくることに伴って、結果の不平等がふえてくるとしましても、
憲法
十
四条
違反
にはなりにくいだろうと考えております。もたらされた結果の不平等は、
立法
や
行政
の力で
政策
的に解決を図っていくべきものだと思います。
笠浩史
17
○笠小
委員
そして、先生先ほど、この十
四条
第一項の五
項目
、
人種
とか信条、この五
項目
に限定されるものではない、例示的なものであるということをおっしゃったわけですけれども、今日、平等に関するいろんな概念というものが大変ふえてきている、そういったことでいろんな訴訟等も起こっているわけでございますけれども、例えばこれについて限定的にとらえる見方というものも多いんでしょうか。
内野正幸
18
○
内野参考人
十
四条
一項の列挙
事由
が限定的であるという考え方は、学界ではごく少数であります。ただ、列挙
事由
に特別の
意味
を認めるという見解はかなりあるとは思いますけれども。
笠浩史
19
○笠小
委員
私はやはり、今後生まれてくる新しい
権利
といったものも含めて、どうしても
憲法
の中に規定すべき、
差別
にかかわる
項目
等も今後出てくるのではないかと思いますけれども、この
部分
というものはどうしてもいじれない、そういったものを
憲法
の中に新たに加えていくということは、将来考えられないとお考えでしょうか。
内野正幸
20
○
内野参考人
将来の
課題
として、私は、
憲法
の
条文
を一切いじくってはまずいというふうには考えておりません。当面、
人権
領域
に関して
憲法改正
の
必要性
は少ないと申し上げたにとどまるわけです。
笠浩史
21
○笠小
委員
私は、この
憲法
の、これから二十一世紀、新しい形を我々若い世代として考えていくときに、この
人権
にかかわる問題についても、先ほど先生が改正の
必要性
は当面はこの
人権
の
領域
では少ないということをおっしゃっておりますけれども、やはり、今
違憲
審査というものがなかなか機能していない、
最高裁
が消極的である中で、例えば
憲法
裁判所等を新設するとかそうしたことなくして、余りにも
解釈
等が広がり過ぎていて、そこが非常に問題を複雑にしているような気がしているわけですけれども、この点についてしっかりとやはり
憲法
に明記をしていくような姿勢が大事ではないかなと。あるいは、
憲法
裁判所等をしっかりとつくることによって
憲法
の
解釈
というものをきちんと判断していくということをやるか、どちらかにしないといけないのかなという気がしているんですが、その点についてはいかがでしょうか。
内野正幸
22
○
内野参考人
憲法
の
条文
を
解釈
するだけではわかりにくいところがあるという御指摘も確かに言えるところがあるのですけれども、
憲法改正
を考える場合の基本的視点は、
憲法
のそれぞれの
条文
について、この
条文
を改正する
必要性
があるのか
必要性
はないのか、そういう視点からまず考えるべきだと思うわけでして、御指摘の
憲法
裁判所につきましては、
憲法改正
をしなければできないという
意見
と、現在の
憲法
のままでもできるという
意見
があるわけでして、そういう点も踏まえて検討すべきだと思います。
笠浩史
23
○笠小
委員
もう一点、先ほど質問にもありましたけれども、先ほど先生の説明で、政治的平等としては
選挙資格
や
投票機会
保障
の点で
現行制度
を再点検する余地があるということをおっしゃったわけです。例えば、この中で選挙の
資格
について、今世界の大半の国が選挙権を十八歳としているわけですけれども、二十歳から十八歳に引き下げること。高校を出て働かれている方はほとんど納税義務が課せられている、その一方で選挙権がない。このことについては十
四条
における
差別
とのかかわりというもの、あるいはこうした物の考え方というものについての御
意見
を承れればと思います。
内野正幸
24
○
内野参考人
選挙権を十八歳に引き下げるということは
立法政策
として望ましいことだと思いますが、
憲法
がそういうふうにせよと命じているわけでありませんで、その
意味
で、この文脈では
憲法
十
四条
違反
の問題も生じないと考えます。
笠浩史
25
○笠小
委員
政治的平等としてはやはり望まれるということで、それは
立法政策
でということで、確認なんですけれども、やるべき
課題
であるという。
内野正幸
26
○
内野参考人
政治的平等という場合に、
憲法
上の
要請
としての政治的平等というのが一方であり、他方で
立法政策
的に望ましいという
意味
、緩やかな
意味
での政治的平等があるわけでして、選挙年齢十八歳引き下げというのは後者の方に属すると思います。
笠浩史
27
○笠小
委員
やはりこの一票の
格差
の問題というのがさきの
最高裁
の
平成
十三年度の参議院選挙における
判決
からも大変今大きなテーマになっていると思うんですけれども、この参議院の一対五以上でも今合憲とみなされているような状況で、
衆議院
は一対二であると。こうしたことについて、先ほどちょっと同じような質問があったんですけれども、少しわかりにくかったのが、やはり
衆議院
と参議院の違い。先生先ほどおっしゃっていた、参議院はなぜそうは言えないんだと、
衆議院
に対して。そのことをもう少し詳しく説明をいただければと思うんです。
内野正幸
28
○
内野参考人
憲法
の四十六条によりますと、「参議院
議員
の任期は、六年とし、三年ごとに
議員
の半数を改選する。」となっているわけです。こう定めています以上、
特定
の、
一つ
の選挙区から偶数の参議院
議員
を出す。ですから、ある年一人選んで三年後に一人という
意味
で二人、最低二人選ぶということが
憲法
上の
要請
になると思います。この点については一部に異なった
意見
もあるんですけれども。 このような一選挙区
偶数選出
の
要請
というのが、参議院の
衆議院
とは異なった特性として考慮せざるを得ないわけでして、その
偶数選出
の
要請
を、学説が言っている
衆議院
で最大
格差
二対一を修正するについてどのように考慮すべきか、反映すべきかについては、三対一なのか、四対一なのかという点については、私も今自信を持ってこれというふうには言えないわけですけれども、今言いましたような
偶数選出
の
要請
が参議院の特殊性だと思います。 あと、
最高裁
の判例によりますと、都道府県代表のような地域代表的性格というのも言われていますけれども、これは
憲法
が
要請
する特性ではなくて、そのような性格づけを参議院に対して行っても、
立法政策
の問題であって、
憲法
上は許されるであろうという
意味
では、参議院の特性と言ってよかろうかと思います。
笠浩史
29
○笠小
委員
終わります。
山花郁夫
30
○
山花
小
委員長
次に、
太田
昭宏
君。
太田昭宏
31
○
太田
小
委員
きょうはありがとうございます。 まず、
憲法
第十
四条
の全体を見ますと、第二項に「華族その他の貴族の制度は、これを認めない。」ということが書いてあった上に、「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、」というのが、第一項の法のもとの平等ということ以上に文字数が多いという、非常に私は時代性の産物であるという感じがするわけですが、そうしたことをどうお考えか。もう削っていいのではないかということも含めて、お考えを伺いたいということが
一つ
。 そして、この法のもとの平等ということの中に、「
人種
、信条、
性別
、
社会的身分
又は門地」ということが書かれているわけですが、これは例示であるということを言うわけです。それが学説というお話でありましたが、身体にハンディキャップを持っている人とか、そういうことに対しての政治の働きというのは非常に多いわけですから、例示するならもう少し今の時代に即した例示というものが考えられないかということについて、まずお答えいただきたいと思います。
内野正幸
32
○
内野参考人
質問は二点あったかと思います。
憲法
十
四条
の二項及び三項という長い文章は削ってもいいのではないかという御指摘です。確かに時代の産物という側面がありまして、十
四条
と言う場合に、一項の方が二項や三項よりも重要視されるわけでありますけれども、もしも将来、仮に
憲法
十
四条
の文言を直すということが
課題
になった文脈では、二項や三項を削除を含めて見直すということがあり得るかもしれないと思います。 また二点目で、十
四条
一項の列挙
事由
が仮に例示だとしても今日流に
言葉
を改めてもいいのではないかということであります。これもある
意味
で検討に値する御
意見
でありまして、御指摘のように、ハンディキャップを負っている
人たち
とか、あるいは、先ほど触れました、
性的指向
に基づく
差別
を
禁止
する、これは南アフリカ
憲法
に実例があります、このような
条文
の字句を改めるということについては、私は、絶対反対という
立場
はとっておりません。
太田昭宏
33
○
太田
小
委員
先ほど
小野
先生がおっしゃったんですが、私は、
権利
義務ということもまた時代性の中ということが
一つ
あるんではないかと。
人権
ということについてはかなり、国家権力対国民という間の
人権
論というものを超えて、人と人との間というもの、そうした横といいますか平面での間の
人権
ということの確立が今
要請
されているような気がします。 その中で、
権利
義務という先ほどのお話があったわけですが、私は、義務をふやすというよりも、もう
一つ
の軸として
責任
という
言葉
、なかなか
法律
では、責務ということはあるんですが、
責任
という
言葉
はないんです。
責任
という新しい軸を
憲法
の中に挿入するということが、ある
意味
では大事なのではないのかなというふうに思うんです。例えば知る
権利
、その知る
権利
の側から迫るということもあるが、
行政
の
責任
、レスポンシビリティーということからの説明もあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
内野正幸
34
○
内野参考人
ただいま御指摘の
責任
ですけれども、
個人
の側の
責任
なのか
行政
の側の
責任
なのかという問題がありまして、少なくとも
個人
の側の
責任
ということは、
憲法
の
人権
領域
におきましては、先ほど述べたのと同じ理由で、重視して挿入すべき性格のものではありません。
行政
の
責任
というのは、
個人
の
人権
や
権利
に対応するものとして、何らかの形で盛り込むことは
理屈
の上で十分考えられますけれども、当面、今それを
憲法
に盛り込むことが必要であるとまでは考えておりません。
太田昭宏
35
○
太田
小
委員
「
人権
の
領域
では
憲法改正
の
必要性
は少ない。」として、「(
プライバシー
などの明文化も含め)」、こういうことがあるんですが、私は、
プライバシー
権とかそういうものは積極的に加えるというようなことがあっていいという判断をしているんですが、その「(
プライバシー
などの明文化も含め)」というふうに、あえて括弧して先生がおっしゃっているのは一体なぜであるのか。 そして、そもそも
憲法
というものは、
積極的差別是正措置
、アファーマティブアクションというようなそれは、むしろ
法律
にゆだねるとか
立法政策
としてゆだねるというのが本来の
憲法
というものの書き方であるのかという、その辺について教えていただきたいと思います。
内野正幸
36
○
内野参考人
二点質問がありましたけれども、私が、
プライバシー
などの明文化も含め
人権
領域
では
憲法改正
の
必要性
は少ないという文脈で
プライバシー
などと掲げたのは、
人権
領域
で挿入せよという声が割と顕著なものの例として
プライバシー
権と環境権が挙げられるからであります。
プライバシー
権に関しましては、個別的な
プライバシー
保護法の制定というのが依然として
課題
になり続けておりますし、また、環境権につきましては、どのように
表現
するかの問題もありますけれども、
環境保護
政策
を
推進
するというのは、
憲法改正
をしなくてもできる話、すべき話だと思うわけであります。
太田昭宏
37
○
太田
小
委員
積極的にやるという
行為
については
法律
に任せて、できるだけ
原則
的なことについてむしろ抑制的に
憲法
という文言に書くという基本的な物の考え方がいいというふうにお考えなのか、それとも、二十一世紀は環境とかいうことを強調するがゆえに
憲法
ということに明文化する、そういう意欲的な書き方というものがあるのではないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
内野正幸
38
○
内野参考人
そもそも、
憲法
をどういうふうに理解するかという問題が絡んでいるのですけれども、
憲法
の
条文
にあることを規定するということは、裏からいいますと、その規定に
違反
する事態は
憲法
違反
であるという含みを伴っているはずだということが前提としてあります。 ですから、その
意味
で、
憲法
がこうせよというふうに命じていることと、
憲法
はそこまで命じていないけれども
政策
としてこうすることが望まれるということを
区別
して
議論
すべきだと考えます。
太田昭宏
39
○
太田
小
委員
ありがとうございました。
山花郁夫
40
○
山花
小
委員長
次に、
山口
富男
君。
山口富男
41
○
山口
(富)小
委員
日本
共産党の
山口
富男
です。 初めに、やや包括的な話なんですけれども、先ほど、
憲法
第三章のとらえ方の問題で、公的機関や国家権力などの
侵害
に対して
人権
を
保障
するものだというお話がありました。私も大きなとらえ方としてそうだと思うんですけれども、その上に立ちまして、
日本国憲法
の場合は、第三章で三十条にわたって大変詳細な
人権規定
があるわけですね。そして、九十七条ではこの
人権保障
を最高法規として扱っているわけですけれども、
日本国憲法
がこれだけ詳細に
人権
の
保障
を規定した意義ですとか、それからこういう形を生んだ歴史的条件、これについて
内野参考人
はどういうふうにお考えになっていますか。
内野正幸
42
○
内野参考人
詳細な
人権保障
規定という御指摘がありましたけれども、その詳細なという
意味
は、
一つ
は
憲法
三十一条以下で刑事手続
関係
の規定が比較的詳しく触れられているということと、それから
憲法
二十五条以下で
社会
権に関する明文があるということが主な話だと思うわけです。これは、戦前の明治
憲法下
で
日本
の
人々
の
人権
が十分
保障
されていなかったということの反省に基づいて、やや詳しい規定を設けたということと、それから、
日本国憲法
が制定された段階で自由権の考え方のほかに
社会
権という考え方が国際的に広がり始めていましたので、そういうことも反映されていると考えます。
山口富男
43
○
山口
(富)小
委員
きょうは
憲法
十
四条
一項の読み方の問題で、形式的平等を要求するものというふうにお読みになられたわけですけれども、となりますと、二十五条の生存権ですとか、二十六条の
教育
を受ける
権利
、それからまた二十七条の労働の
権利
、これらの読み方を教えていただきたいんです、
内野参考人
の。私は実質的平等を求める
内容
を含み得るものとして読むという読み方もあると思うんですが、その点はいかがですか。
内野正幸
44
○
内野参考人
二十五条、二十六条、二十七条の諸規定は、国から積極的な給付を求めるという
権利
は法的
権利
として
解釈
できると思うわけです。これは、広い
意味
では実質的平等に関連する話ではあるんですけれども、
憲法
十
四条
そのものは実質的平等を命令するという
趣旨
を含んでおりませんで、実質的平等を実現するために形式的平等を犠牲にするということを許している、その限りで
憲法
十
四条
が実質的平等の
趣旨
を含んでいると言うことはできます。
山口富男
45
○
山口
(富)小
委員
そうしますと、
参考人
の十
四条
関係
のとらえ方の問題でいきますと、結局個別具体的な問題でよく考える必要があるということになると思うんですね。形式的平等を
要請
しているわけですから、それが実質的にどうなるかということを含めて、個別の問題として具体的に考えていきましょう、それは
立法
や
行政
の仕事にもなるんですという話になると思うんです。 それで、きょう、当面の問題として、
人権
関係
では
憲法改正
でなくて現
憲法下
での諸
施策
を
充実化
しなさいというお話で、この点、私も賛成なんですけれども、そうしますと、そういう提起の裏腹の問題として、
行政
や
立法
の側が立ちおくれがあるじゃないかという問題意識が
参考人
は当然おありだと思うんですね。それはなぜそういう事態が生まれているのか、その点についてはどういう御
意見
をお持ちなんですか。
内野正幸
46
○
内野参考人
立法
や
行政
に立ちおくれが生じている原因は、今この場で簡単に申し上げることは難しいのでありますけれども、
一つ
のファクターとしましては、伝統的な
日本社会
がマイノリティーに対して
差別
的
偏見
を抱きやすいという
同質性社会
の
傾向
がありまして、その
傾向
というものを
立法
や
行政
に携わっている
人たち
も多かれ少なかれ反映させて持っている
可能性
があろうかと思います。
山口富男
47
○
山口
(富)小
委員
先ほどのお話の中で、
民間社会
における平等と
差別
の問題で、昨年の
住友電工男女差別訴訟
の
大阪高裁
和解について、大変画期性を持つものだというお話がありました。もう少し、
参考人
が考えていらっしゃる画期性とは何なのかを示していただきたいんです。どの点に画期性を
参考人
が認めているのかということなんですけれども。
内野正幸
48
○
内野参考人
これまでの裁判例の流れですと、
男女雇用機会均等法
が制定されるよりも以前における
企業
内での
男女
差別
的慣行については、
憲法
十
四条
の
精神
に反しても
公序良俗違反
とまでは言えないから、法的救済の対象にならないという流れが定着してきたわけです。私が言及した画期的な和解というのは、このような流れを変えるというところが大きいと思います。
山口富男
49
○
山口
(富)小
委員
住友電工の和解というのは、
企業
側だけでなくて国に対しても
勧告
しているんですね。それで、この点についての画期性はどういうふうにお考えですか。
内野正幸
50
○
内野参考人
今手元に
資料
がないので、国に対する
勧告
の具体的な中身が確認できませんので、ちょっと即答を控えさせていただきます。
山口富男
51
○
山口
(富)小
委員
実質的な
男女
不平等が存在するようなことを、簡単に言いますと、黙って見過ごすなというような
趣旨
だったと思います。 では、次に、もう一点お尋ねしたいんですけれども、国際
社会
からの批判なんです。例えば、昨年八月ですと、国連の
女性差別
撤廃
委員会
がコース別雇用管理などの問題について
女性差別
をなくすような法整備をしなさいという
勧告
をしているんですけれども、そういう国際
社会
から
日本
の政府が
勧告
などを受けた場合に、これはどういう形でそれに応じるのが望ましいというお考えなのか、ちょっと教えていただきたいんです。
内野正幸
52
○
内野参考人
条約
を批准した
日本
国としては、国際
社会
の、
条約
の実施
委員会
からの
勧告
についてはきちんと受けとめて、
条約
の
趣旨
を
国内実施
する方向できちんと対応すべきだと考えます。
山口富男
53
○
山口
(富)小
委員
最後
になると思うんですが、
一つ
は
思想
差別
の問題で、これは
男女
差別
との絡みで必ず付随的に起こるというか、どちらが主になるかはありますけれども、
民間
企業
で起こりがちなんですね。これについても、きょうの
参考人
のお話ですと、
憲法
十
四条
の
精神
に照らして、やはり法的に考えても違法であるというお考えになるかと思うんですが、この点、
一言
御
意見
をお聞かせください。
内野正幸
54
○
内野参考人
民間
企業
が従業員をその
思想
に基づいて
差別
した場合には、
憲法
十
四条
の
精神
に照らして違法になると考えます。
山口富男
55
○
山口
(富)小
委員
ありがとうございました。
山花郁夫
56
○
山花
小
委員長
次に、
土井たか子
君。
土井たか子
57
○土井小
委員
どうもきょうはありがとうございました。 これは問題として非常に大きいテーマですから、大きいテーマのところにもってきて、具体的に問題にしないと、どうも言っていること自身がはっきりしないということでもございまして、非常に難しいテーマだと思うんですね。 きょうは、先生のお話を承っておりまして、
憲法
十
四条
による
差別禁止
ないし平等というのは絶対的なものではなくて、合理的な
区別
ということを許すものだという御指摘がございましたけれども、これは実は、それでは合理的判断というのはだれがするのか、そして合理的判断というのは何を基準に判断するのか、それはどういう具体的な姿形で提示されるのかということになってくると、多分にこれは問題があると私は常に思っている一人なのでございます。 きょうは、先生御自身、非
嫡出子
に対する
差別的取り扱い
というのは
憲法
十
四条
違反
ということをおっしゃっておりまして、私自身も同じ
意見
なんでございますけれども、この問題をめぐって、実は、
合理的理由
があるから
憲法
十
四条
違反
でないという答弁を、国会の外務
委員会
の席で私は連続して受けたという経験がございます。 それは何かといいますと、御存じのとおり、子どもの
権利
条約
を審議いたしますときに、この子どもの
権利
条約
の中で非
嫡出子
に対しての取り
扱い
ということが
差別
的であって、これ自身は
憲法
十
四条
に
違反
する、したがって、この点を正すということはこの
条約
を締結するということからすると大事な要件ではありませんかということを尋ねているわけなんですね。 そうしたら、それに対して、一九七九年に法制審議会の答申がございまして、法務省の提出された相続に関する
民法
改正要綱試案の中では、例の配偶者の
相続分
の増加と、それと同時に非
嫡出子
の
相続分
を
嫡出子
と同等という一項が併記されていたわけなんですね。ところが、一九八〇年、七九年から一年たって、明けて八〇年の、国際児童年のスタートの年でもあったその年の国会提出のときには、非
嫡出子
の改正だけが削り取られていたという経過がございまして、配偶者の
相続分
の増加だけがそこで問題になったということがございます。 なぜですかということをその当時も質問をいたしているわけですが、それに対して、世論がそこまでいっていないからという答えなんですね。世論がそこまでいっていないからというのも
合理的理由
になるのかどうか、そこは非常に私は問題多いというふうに考えざるを得ないんでございますけれども、国際世論は、この問題に対しては、非
嫡出子
に対する
差別的取り扱い
というのは認められるべきでないということになっているのが、種々、国際的な観点でこの問題が取り上げられるたびごとに出てまいります。
日本
に対してむしろそういう
意見
というのが出てきているということが具体的になっているわけですから、そういうことからいたしますと、この合理性の判断というものの中身を先生どういうふうにお考えになっていらっしゃるか、もう少しそこのところ詳しく教えていただきたいと思います。
内野正幸
58
○
内野参考人
御指摘のように、
違憲
の
差別
と
合理的区別
とを分ける
判断基準
を一般的に示すということは難しいところがありまして、また、
合理的理由
がある
区別
ならばオーケーという
言葉
がひとり歩きすると困ることもあるわけです。 先ほどの報告では子どもの
権利
条約
に言及しませんでしたけれども、非
嫡出子
の問題は、本人の意思ではいかんともしがたい
事由
に基づく、いわば生まれによる
差別
であって、その場合には、そのような異なった取り
扱い
が合理的かどうかについては、この種の
差別
は
原則
的に厳しく
禁止
されるという基準のもとで判断していくべきだということであります。この点は、先ほど言及しました
最高裁判決
の反対
意見
、
少数意見
の方でかなり言い尽くされていると思います。
土井たか子
59
○土井小
委員
もう
一つ
その
最高裁
の
判決
の中身もちょっとはっきりしないなと思って私は実は読んだ中身なんですね。むしろ高裁は、これは
違憲
であるという
判決
を二例出しておりますから、高裁の
判決
の方がよほどはっきりしておりまして、読んですぐわかるというふうな
判決
理由であるなというふうに私自身は読みました。 さて、それで、今の問題もそうなんですけれども、
条約
締結について、特に
人権
にかかわる問題を審議しなければならないということが昨今ふえてまいっております。それはつまり、国際
社会
においては、
人権
尊重とか平等という認識というのは国際的に非常に高まりと強さをどんどんどんどん増幅していっているということだと思うんですね。 ところが、
日本
の場合は、この
条約
に対して批准するということが随分時間がかかるんです。例えば、
人種差別撤廃条約
というのは三十年たなざらしだったんですね。採択されたのが一九六五年ですけれども、
日本
が批准いたしましたのは九五年ですから、三十年間かかったということにもなるわけで、百四十六番目です、
日本
が批准したのは。この
条約
の
趣旨
を考えれば、できるだけ早期に締結するということが必要だと思うんですね、拙速は困りますけれども。 しかし、できる限りこういう
人権
問題については、やはり具体的に中身を検討して、そして早く、できるだけ早期に締結するという努力が大切だと思うんです。しかし、これに対して、この問題を質問いたしますと、
条約
に対しては、
憲法
の
保障
する
基本的人権
との
関係
をいかに調整するかなどの難しい問題がございまして、長期にわたる検討を要したというお答えが返ってくるんですね。 ほかにも、今の
女性差別
撤廃
条約
についてもそうです。大変時間がかかっているわけで、
日本
は七十二番目の批准国だったわけですね、一九八五年ですが。
日本
は遅い方です。それから、子どもの
権利
条約
、これも百五十八番目でして、
日本
は大変これまた遅いんです。こういう
条約
に対しての対応というのが、締結時、遅いばかりでなくて、先ほど
山口
議員
がおっしゃいましたけれども、
日本
が
条約
を締結してから後、
条約
を遵守する義務が少なくともあるわけですが、これに対しての努力というのがもう
一つ
不十分だという指摘を、国際
社会
から
日本
に対して向けられる中身として出てくるという度数が非常にあるんですね。 例えば、
女性差別
撤廃
条約
について言うと、
日本
の取り組みを四年に一回国連に報告しなければならないわけで、この結果が去年の八月に、御案内のとおり政府の報告書について最終コメントが出てまいっておりますが、その中では、根強く残っている雇用
差別
対策の不十分さが指摘されますし、
男女雇用機会均等法
の指針の改正などを強く求める
内容
となっておりますし、もう国会では、出してもいつも審議未了のまま廃案になったり、継続審議にならないで今日に至っております
選択的夫婦別姓
制度の導入とか、それから
女性
の婚姻可能年齢を男性と同じ年齢に引き上げる問題とか、
女性
の再婚
禁止
期間を百日に短縮する問題とか、これはやはり、それぞれ考えてまいりますと、
憲法
十
四条
に非常に
関係
する中身というのをすべて持っている問題を指摘される度合いが非常に強いんです、
日本
の場合。 したがいまして、これは、先ほども義務の問題が
条文
に対して少な過ぎるということがございましたけれども、少なくとも九十九条では国
会議
員、閣僚は
憲法
尊重擁護の義務というのがあるわけですから、この義務を国
会議
員や
行政
サイドの閣僚が果たすということを努力しておれば、私は、かなりこの中身は違っていると。
憲法
に問題があるんじゃないのであって、
憲法
に対して尊重擁護の義務というのを持っている
立場
の取り
扱い
方が違ってきているんじゃないかというふうに思っておりますが、その辺は先生どのようにお考えになりますか。
内野正幸
60
○
内野参考人
今の御指摘とほぼ同じ
意見
でありまして、私は、言及し忘れたのですけれども、男性と
女性
の婚姻年齢の違いとか、あるいは
女性
の再婚期間の問題ですけれども、これは、私が言う形式的平等という見地からしましても、
憲法
十
四条
に
違反
すると見る余地があると考えております。 あと、先ほどの
憲法
尊重擁護義務のことですけれども、これは御指摘のとおりでありまして、あわせて
憲法
九十八条二項に基づく
条約
遵守義務ということにかんがみましても、
国際人権
諸
条約
の
国内実施
に
日本
はより一層努めていくべきだと考えます。
土井たか子
61
○土井小
委員
ありがとうございました。
山花郁夫
62
○
山花
小
委員長
次に、
松野
博一
君。
松野博一
63
○
松野
(博)小
委員
内野
先生、よろしくお願いします。
最初
の質問は、きょう先生にお話をいただいた現
憲法下
での十
四条
を中心とした国内における平等、
差別
の問題とちょっと違った観点になるかもしれませんけれども、先生にお話をいただいて、国内において
憲法
の非常に大きな柱としてこの
基本的人権
の確立ということが挙げられているというお話がありました。一方で、
憲法
の前文の中に、国内外にかかわらず人類の普遍的な
権利
として
基本的人権
を尊重し確立をしていこうという宣言が述べられているわけであります。 現実的に、各国の内政不干渉という前提を超えて各国がさまざまな働きかけをするときに、第一の大義として挙げるのが人道上の問題、
人権
上の問題ということでありますけれども、今、
日本国憲法
のこの前文で、国内外を問わず人類普遍的なものとして挙げられているこの
基本的人権
の要素というのと、
日本
国内における
基本的人権
の要素の問題、これがそれぞれ同質のものであるのか、また違う、ダブルスタンダードになっているのか、その範囲とレベルについて、
内野
先生がどのようにお考えであるかについてお話をいただきたいと思います。
内野正幸
64
○
内野参考人
憲法
の前文ですけれども、そこでは御案内のように、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する
権利
を有することを確認する。」という
言葉
があります。「人類普遍の原理」という
言葉
は、それとは少し異なった文脈で出てきますが、その点はさておき、
憲法
の前文で掲げられている「恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する
権利
」というのは、多分に政治的宣言という色彩を含んでいるものと考えます。と申しますのも、「全世界の国民」というのが主語になっているからであります。 これに対して、
日本国憲法
は、
日本
国民あるいは
日本
国に在住する
人たち
の
人権
を
保障
するものでありまして、その
意味
で、
憲法
十三条以下の
条文
で具体的に示されている
人権保障
と
憲法
前文での全世界の国民の
権利
の制限とは必ずしも性格が同じではないと考えます。
松野博一
65
○
松野
(博)小
委員
次の質問は、一転して、具体的な事例に関してでありまして、私は常々、公然と行われているけれども、このことは
人権
上からいってどうなのかなと思っていることがありまして、それは
刑事事件
における容疑者、
被疑者
の実名報道の件であります。 一般的には、逮捕状が出た時点、起訴された時点で実名となり、そして敬称等が除かれて報道がされるわけであります。しかし、
日本
の三審制の
原則
からいえば、この時点ではまだ推定無罪とするというのが
原則
的な考え方でありますから、その
刑事事件
のあたかも犯人であるかのような思いを抱かせる実名の報道のあり方というのは、これは明らかな
人権侵害
ではないのかなというふうに考えております。 もちろん、客観的な証拠の中で、非常に犯人である
可能性
が高く、なお実名報道また顔写真等を一般に知らしめないとまた被害が重なるというような事例であれば考えられるかもしれませんけれども、今の場合は、ほとんど無
差別
に、逮捕状が出た時点、起訴された時点で実名報道に切りかわっていくというような状況でありますけれども、このことに関して、
人権
上の問題から
内野
先生はどのようにお考えかをお聞かせいただきたいというふうに思います。
内野正幸
66
○
内野参考人
詳しい実情は知らないのですけれども、現在でも、いわば軽微な犯罪については実名報道を差し控えるということが少し行われていると承知しております。 それで、一般には広く実名報道が行われているわけでありまして、その中には
人権侵害
の疑いがあるものも含まれていますけれども、ただ
憲法
論として言いますと、
被疑者
、容疑者段階での実名報道が行われたからといって、その多くが
憲法
違反
の
人権侵害
になるとまでは考えておりません。
松野博一
67
○
松野
(博)小
委員
先生のお話の中に、ハンディキャップを負った方の実質的な平等というのを、
立法
や
行政
政策
によって、
積極的差別是正措置
を含めて
推進
をすべきであるというお話がありました。私もまさにそのとおりだというふうに思いますが、例えば、ハンディキャップを背負っている方々、
一つ
の分野として身体的な障害をお持ちの皆さんを考えれば、
日本
の
障害者
として認知をされているというか正式に届け出を得ている方の数というのは、諸外国の比率から比べると非常に低いという現実があります。 これは先生のお話の中にありましたとおり、
日本
国が非常に
同質性社会
で、
少数者
に対して
偏見
を抱きやすいというような、そういう
社会
性が大きな影響を与えているものだというふうに思いますが、この実質的な平等を維持するに当たって、
社会
意識の問題でありますから、先生のお話の中にありましたとおり、
憲法
から外れた
部分
、
憲法
外の問題であるかというふうには思いますけれども、この実現のために今の、特に
障害者
の申請による届け出方式を先生はどう評価されているのかについて、お話をお伺いしたいと思います。
内野正幸
68
○
内野参考人
御指摘の申請の方式というのは
障害者
手帳の文脈かと思いますけれども、
積極的差別是正措置
などの形で車いすの人なども暮らしやすいような
社会
をつくっていくということは、申請方式とは別次元の話でありまして、御指摘のように、
社会
意識の変革の問題もありますけれども、あわせて、お金の使い方、予算の使い方という問題が大きいと思うわけです。つまり、
少数者
のためにたくさんの予算を、お金を使うことは必ずしも効率的なことではないという意識があるとしたら、そのような意識を
立法
や
行政
の
関係者
の側で変えていくことが重要だというふうに認識しています。
松野博一
69
○
松野
(博)小
委員
ありがとうございました。
山花郁夫
70
○
山花
小
委員長
次に、辻惠君。
辻惠
71
○辻小
委員
民主党の辻惠でございます。
憲法
は、マグナカルタ以来、時の政治権力と人民との間の闘争の産物である。そういう
意味
におきまして、人類の知恵の集積されたものである。したがいまして、
憲法
の規定というのはあくまでも時の為政者、権力に対して向けられるものであって、義務や
責任
を数多く規定すべきものではないというふうに私も考えております。この
意味
において、
内野参考人
と同
意見
であります。 今、問題にされるべきなのは、自由、平等というフランス革命以来
保障
されてきた
権利
をどう実質的に、実効的に
保障
していくのか。この
意味
におきまして、
憲法
十
四条
の平等主義というものをどのように実効あらしめていくべきなのか、これが一番今問われていることなのではないかと思います。その
意味
におきまして、
行政
、
立法
、司法、そして私
たち
が帰属している市民
社会
がそれぞれ平等主義を実効あらしめるために何をすべきなのか、これに関して御質問させていただきたいと思います。 まず、
行政
、
立法
に関してでありますが、実質的な平等を実効あらしめるためにそれぞれ
政策
を実施していかなければならない。
参考人
が言われるように、不利な
立場
の
人々
に対する
配慮
がなされなければいけない、不利な
立場
の
人々
が救済される
社会
をどのように構築していくべきなのか、このことが問われなければならない。その
意味
において、マイノリティーに対する
配慮
ということが不可欠である、こうおっしゃっておられます。
部落
、アイヌ、
障害者
、在日、
女性
、
同性愛者
等々とありますが、とりわけ
刑事事件
関係者
ということで、
行政
なり
立法
に問われているものについて、具体的に何か御
意見
があれば伺わせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
内野正幸
72
○
内野参考人
刑事事件
関係者
ということですと、必ずしも平等の問題プロパーではありませんけれども、
被疑者
、被告人あるいは受刑者に対する
刑事事件
関係
当局の取り
扱い
について
人権保障
の見地から是正を図っていく、そのための
立法
や
行政
施策
というものが当面必要だと考えます。
辻惠
73
○辻小
委員
参考人
も述べておられるように、伝統的に
日本社会
は、
人々
がいわば異質な
少数者
に対し
偏見
を抱きやすい
同質性社会
の
傾向
があると。一番、一番とまでは言いませんが、マスコミに多く喧伝され、
社会
が
同質性社会
に傾いてしまうような場面の
一つ
として、凶悪犯罪の場合に、これは
社会
の敵である、ある
意味
で人類の敵であるということで指弾される、
一言
で言えば魔女狩り裁判のような様相を呈することがあります。このようなことを許さないのが人類の歴史であり、成熟した
社会
のなすべきことだと考えますが、その点はいかがでしょうか。
内野正幸
74
○
内野参考人
御指摘の点は当たっている面が多いと思いますが、マスコミなどの力で、一方的な
意見
によって
人々
を同じ方向に持っていこうという
意味
での
同質性社会
と、それから私が報告で示しました、いわば異質な
少数者
に対して
差別
的
偏見
を抱きやすいという
同質性社会
、この二つは深く関連していますけれども、必ずしも同じものではないと考えます。
辻惠
75
○辻小
委員
時間の
関係
もありますので、次に移ります。 司法が果たすべき役割ということに関してでありますが、平等主義を実現するために司法が果たすべき役割、司法に問われているもの、この点についてはどのようなお考えがありますでしょうか。
内野正幸
76
○
内野参考人
裁判の
判決
という形ですと、いわば白か黒かをはっきりつけるようなスタイルになりがちですので、裁判、司法に問われていることは形式的
平等原則
違反
に対して
違憲
とか違法という判断を示すことでありまして、司法の力をもって実質的平等を実現していくということについては必ずしも大きな期待はかけられないというふうに考えます。
辻惠
77
○辻小
委員
実質的平等を実現する担保として司法というものがあるというふうに私は理解しております。その
意味
におきまして、
参考人
が挙げておられる
議員
の定数の
違憲
問題そして非
嫡出子
への
差別
の問題について、司法の果たすべき役割は大きなものがあったと思うわけであります。 前者について申し上げれば、明らかに一対二以上の
投票
権の
格差
がある、これを
憲法
違反
と認めない。まさに
違憲
立法
審査権が後退しており、司法の役割を放棄しているに等しいのではないかというふうに考えておりますが、この点におきまして、具体的に
婚外子
の問題について、結局
最高裁判決
が言っているのは、
法律
婚の尊重と、そして一方で非
嫡出子
の
人権
の利益考量の問題だ、こういうふうに言っていると思います。 確かに利益と利益が対立する。しかし、平等主義を実現するために、その利益の中にも優先順位があるんではないか。それは
人権保障
という観点がやはり優先すべきである。そのような優先順位で物を考えるべきではないかと考えますが、その点はいかがでしょうか。
内野正幸
78
○
内野参考人
御指摘の点で、一票の
格差
の問題と
婚外子
の問題は、実質的平等の問題ではなくて形式的平等の問題でして、その
意味
で、まさに裁判所が積極的に実現、救済できる、あるいはすべき事柄だと考えます。
辻惠
79
○辻小
委員
最後
に、市民
社会
の中において実質的平等をどう図るべきなのかという点に関連してでありますが、私も、
参考人
が言われましたように、
民間社会
における平等を実現するために
刑罰
権を適用するというのは誤りであって、むしろ、成熟した市民
社会
の中で
差別
をなくしていく、
差別意識
を含めてなくしていく、そのような啓蒙、自覚が必要だと思います。 それに関連して、
参考人
は
人権擁護法案
ないしは
差別禁止法
を新設せよ、このようにおっしゃっておりますが、
差別禁止法
の新設ということについて、具体的に述べていただければと思います。
内野正幸
80
○
内野参考人
人権擁護法案
の場合は
差別禁止法
という
趣旨
もかなり含まれているのですけれども、それ以外の
趣旨
、国家権力による虐待その他
幾つ
かのものが含まれておりますので、
差別禁止法
というふうないわば独立した形で、
人種差別
や
部落差別
などが
民間
でも厳しく
禁止
されるということを明記する価値があると思います。 それで、私は先ほど
差別的表現
については
刑罰
的
規制
は慎重であるべきだというふうに言いましたけれども、
民間
における
差別的取り扱い
については、場合によって
刑罰
的
規制
があってよかろうかと思います。
辻惠
81
○辻小
委員
ありがとうございました。
山花郁夫
82
○
山花
小
委員長
次に、
船田
元君。
船田元
83
○
船田
小
委員
自由民主党の
船田
元でございます。
内野
先生には入れかわり立ちかわりの質問で大分お疲れのことと思いますが、もう少しだと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
内野
先生からは、きょうのお話の中でも、平等ということについての概念、
幾つ
か整理をしていただいて、大変ありがたかったと思っております。ただ、私は、この平等の概念の中で、
機会
の平等ということと、それから結果の平等という、どうも私の頭の中ではそういう整理をいつもしてしまいますので、こういう観点からちょっと教えていただきたいことがございます。
内野
先生は形式的平等それから実質的平等というお話をされておりますが、この
機会
の平等、結果の平等ということからすれば、二十世紀、今でもそうですけれども、
社会
的、経済的弱者を保護していこう、そういう福祉
社会
あるいは
社会
福祉国家、これをつくろうという
要請
からは、
機会
の平等よりも、
機会
の平等は当然のことであるが、できれば結果の平等まで
保障
したい、あるいは実現したい、こういう流れがあったかと思っております。 しかし一方では、この結果の平等は、これを
最後
まで
保障
し合うということになりますと、我々の今、国として動かしておりますまさに資本主義あるいは経済的自由というものとは、この結果の平等はどうしても両立し得ないという問題が出てくると思います。 したがって、現在の
日本国憲法
が求めているものは、余りにも差がつき過ぎたスタートラインの差を埋める、
機会
の平等を少なくとも
保障
するということで、結果の平等については、それはそのときの状況によるということで、そこまでを
保障
してはいないのではないか。また、それを最終的に求めていくのも、これは大きな
社会
的な問題があるのではないか、こう理解をしておりますが、先生のお考えはいかがでございましょうか。
内野正幸
84
○
内野参考人
ただいま御指摘の御理解と同じであります。
船田元
85
○
船田
小
委員
ありがとうございます。 それともう
一つ
、この形式的平等、できるだけ実質的平等を実現しようという方法の
一つ
として、アメリカで特に先駆的に取り組んでいたと思われますアファーマティブアクション、
積極的差別是正措置
あるいは優先処遇という訳語がございますけれども、このアファーマティブアクションにつきまして、アメリカにおいては、確かに一九六〇年代、黒人問題を初めとして、いわゆるマイノリティーをできるだけ
社会
の中で積極的に認めていこう、そういうために、例えば大学の入学試験あるいは
企業
の採用、昇進、もちろん役所の採用、昇進も同じだと思いますが、特別の枠を設ける、こういうことでやってきたかというふうに思っております。 ところが、アメリカにおきましても、その後、八〇年代、九〇年代が大きいと思いますが、それが行き過ぎると今度は逆に、逆
差別
になるんではないか、あるいは特別
扱い
をするということは、その
扱い
をされた方あるいはその
扱い
をされているグループが他に比べて劣っているというレッテルを逆に張るということで、このような問題が指摘をされ、九〇年代後半においては、
幾つ
かの分野、
幾つ
かの方策においてアファーマティブアクションの廃止ということも大分見えてきた、そういうことが実現されてきた、また検討されている、このように感じております。 現在どうなのか、アメリカの動きは落ちついているのかどうかも含めまして、このようなアファーマティブアクションというものについての先生のお考え、そして、これが行き過ぎた場合にはどういうことがあるか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
内野正幸
86
○
内野参考人
アファーマティブアクションを支持すべきかどうかについては、
一般論
としては一概に申し上げることはできません。 その中でも、人口比率を反映するような、いわば結果の平等に近いようなものを目指すアファーマティブアクションから、もう少し緩やかな
ポジティブアクション
というふうに呼び得る形態までありまして、御指摘のように、劣った者、弱者というレッテルを張りつけられるという問題点もあるわけであります。 その
意味
で、ケース・バイ・ケースながら、
日本社会
においては
ポジティブアクション
のようなことをこれから
推進
する余地はかなりあるだろうと考えておりますし、特に
男女
共同参画という文脈では、
女性
の方が一見して男性よりも有利に扱われるようなことがあっても、そのような
政策
は場合によって
推進
されるべきだと考えます。
船田元
87
○
船田
小
委員
ありがとうございます。 今、
男女
の問題を少しおっしゃっていただきましたが、ちょっと具体論で、これは
最後
になると思いますが、先生のお考えをお聞かせいただきたいことがあります。 それは、先生のペーパーに、さらっと流しておられましたが、学校における
男女別
学の問題。特に、私立の場合は別としましても、国立、公立の学校の
男女別
学、これは一部残っております。これは
憲法
十
四条
における
性別
による
差別
はいかぬという例示の最たるものでありますので、やはり
原則
として
違憲
の推定が働くんじゃないか、こういうふうに言われております。これを、別学は合理的な理由があるんだということをやはり積極的に示していかなければいけない、正当化
事由
というものが当然必要である、こう考えております。 例えば、これまで言われていたことには、
男女
のいわゆる肉体的な条件の差があるから、男子のみ、あるいは女子のみということで入学をさせることは合理的である、こういう
理屈
もあります。しかし、最近では、例えば防衛大学校に
女性
の入学を認めたり、さまざまな共学の方向が出てきている。 それから二番目の理由として、分離しても、
男女
を分けても、それぞれの学校で全く同じ
教育
内容
や設備を持っていれば、別にこれは単なる分離であって
教育
的には平等である、こういう
意見
もありますが、これもやはり本当に全く同一の
教育
の条件を別々の場所でつくれるかどうか、こういった問題点が指摘をされている。 また、三番目の理由として、特に女子大学などにおきましては、
女性
の
社会
進出を促すためであって、これは先ほど御
議論
いたしましたアファーマティブアクションの一種である、だからこれは当然認めるべきだということですが、しかし最近、
女性
の大学進学率は極めて上昇してきております。また、大学入試において
女性
の方が何か優位に立っているというところも相当あるわけでございまして、そういう積極的、合理的な理由、正当化
事由
というのがかなり薄れてきている、こんな感じがしております。 実は、私の選挙区のある栃木県の県立高校は、かつては約三〇%
男女別
学でございまして、
日本
全国の中でもかなり珍しい、高い率にあります。これを今度再編成して一五%程度にしていこう、こういう動きを今やっている最中でございますが、この
男女別
学について、これをその平等の考え方からするとどのような御
意見
があるか、お聞きしたいと思います。
内野正幸
88
○
内野参考人
性別
というのは
憲法
十
四条
の列挙
事由
でありますが、それに基づく
差別
について
違憲
の推定を働かせるという説も確かにあります。かなりありますけれども、しかし
性別
は、
人種
とは異なって、いわば中間的な審査基準で対応していいのではないかという学説もかなり有力であります。 そういう点からかんがみて、私自身は、今のところ
男女別
学というものを、
立法政策
的には改めるべきだと思いますけれども、
憲法
十
四条
違反
とまでは断定し切るところまでは至っておりません。
船田元
89
○
船田
小
委員
ありがとうございました。
山花郁夫
90
○
山花
小
委員長
これにて
参考人
に対する
質疑
は終了いたしました。 この際、
一言
ご
あいさつ
を申し上げます。
内野参考人
におかれましては、貴重な御
意見
をお述べいただき、ありがとうございました。小
委員会
を代表して、心から御礼を申し上げます。(拍手)
—————————————
山花郁夫
91
○
山花
小
委員長
これより、本日の
参考人
質疑
を踏まえて、小
委員
間の自由討議を行います。 一回の御
発言
は、五分以内におまとめいただくこととし、小
委員長
の
指名
に基づいて、自席から着席のまま、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたします。 御
発言
を希望される方は、お手元にあるネームプレートをこのようにお立てください。御
発言
が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。
発言
時間の経過については、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。 それでは、ただいまから御
発言
を願いたいと存じます。御
発言
を希望される方は、ネームプレートをお立てください。
中山太郎
92
○中山
会長
自民党の中山太郎でございます。 小泉政権は、
日本
の政府を電子政府にするということを既に決定して必要な作業を進めております。こういうことになってくると、
個人
情報をいかに今後保護するかということが一番大きな問題になってくるのではないか。 現にフィンランドでは、フィンランドの
憲法
で
個人
情報の保護を決めております。ちょっと御紹介をいたしますと、フィンランド
憲法
の第二章の第十二条ですね。「何人も、
表現
の自由を有する。
表現
の自由は、誰にも妨げられることなく、情報、
意見
その他のコミュニケーションを
表現
し、流布し、及び受領する
権利
を伴う。
表現
の自由の行使に関する詳細については、
法律
で定める。子どもの保護のため必要な映像番組
規制
に関する規定は、
法律
で定める。」「公共機関の有する文書及び記録は、その公開がやむを得ない理由で
法律
により明示的に制限されていない限り、公開される。何人も、公の文書及び記録にアクセスする
権利
を有する。」
権利
を
憲法
が
保障
しているわけですね。 これが、将来
日本
の電子政府が完了した場合に、国民の
個人
情報がどういうふうに政府のデータベースに入っているかということを各
個人
が確認できるような
権利
というものを
保障
する必要があるんじゃないか。これが
一つ
の、私の今日までの海外
調査
も含めた、新しい電子化される
社会
の中での
行政
機構における情報の管理、こういう問題だろうと思うんです。現に、各地方自治体でも電子化が相当進んでいます。 こういう点について、私はぜひ、この問題は新しい科学技術と
人間
の
社会
の
関係
においても、
議論
を詰めておかなければならないことだというふうに考えておるということを申し上げておきたいと思います。
園田康博
93
○
園田
(康)小
委員
民主党の
園田
康博
でございます。 今の御
発言
もございましたし、それから先ほどの
内野参考人
からのお話でもございますけれども、
人権
の
領域
では
憲法改正
の
必要性
は少ないということを明言されておられたわけでございますし、
プライバシー
などの明文化も含めてという話でございましたけれども、私が考えますに、やはり
日本国憲法
を国家対国民という位置づけの中で考えていくならば、時の国家権力に対する抑制措置、これが
憲法
の果たす役割であるというふうに考えます。 そうなってきますと、弱者救済という
意味
を込めれば、
人権
の
侵害
が過度に行われたり、あるいはそのおそれがある場合、これを
憲法
によって抑制することができる、いわゆる法の支配の概念でございます。 したがいまして、
プライバシー
、今
個人
情報保護の話が出ましたけれども、その
プライバシー
保護というもの、
プライバシー
権というものを積極的に明記をしていく必要があるというふうに考えると同時に、さきの
平成
十一年に成立いたしました情報公開法でございますけれども、
行政
情報に関して公開を
推進
していくという
法律
でございました。しかし、この
法律
の
意味
、
内容
につきまして一点だけ残念でありましたのは、先ほどの政府の
責任
という話がございました。しかし、これは政府の国民に対する説明
責任
という形での情報公開法が成立された経緯、これに関しては少し残念なところがございました。すなわち、私の考えでいきますと、アメリカあるいは諸外国の中において、国民の知る
権利
というものをしっかりと明示してこの
法律
ができてきた、フリーダム・オブ・インフォメーション・アクトという形でできてきた経緯がございます。 そうなってきますと、
法律
の性質そのものが大分変わってきてしまう。政府からの説明
責任
において情報が公開されるのと、国民の知る
権利
に基づいて情報が公開されるということでは、まるでその
法律
の
趣旨
、それから国家の姿勢、国家権力の姿勢というものが変わってくるのではないかという気がいたします。 したがいまして、
人権保障
を
推進
するという点からすれば、これはやはり
立法政策
で時々において行っていくということではなかなか追いついていかない
部分
、これだけ多様化している、あるいは高度情報化時代の流れの中ででございますけれども、そういったことから勘案しますと、やはりきちっと
憲法
に明記をしておけば、これらのいわゆる新しい
権利
、
人権
と言われているものを
憲法
の中に明記しておけば、より国民の
人権
が
保障
をされる形になっていくのではないかというふうに考えております。 それからあと、先ほどの話の中でなかなかこれは触れられなかった
部分
がございますけれども、
憲法
の私
人間
適用について。これは
憲法改正
云々の話ではございませんが、私
人間
適用、これにつきましては、昭和五十六年の三月二十四日の日産
事件
でも明らかでございましたけれども、なかなか私
人間
に対して
憲法
が適用されるという形にはなっていないのが今の
日本
の現状でございます。 しかしながら、もう既にアメリカでは理論操作がなされておりまして、いわゆるステートエージェンシーという考え方、ステートアクションの法理という考え方でなされているわけでございますので、こういう考え方を積極的に我が国も取り入れてステートアクション、いわゆる直接的な
部分
で
憲法
が保護、
人権
を
保障
するという形へ持っていくことで、より強固な
人権保障
というものがつくり上げられるのではないかというふうに考えております。ありがとうございます。
棚橋泰文
94
○
棚橋
小
委員
自由民主党の
棚橋
泰文
でございます。 私は、
基本的人権
に関しては、さらにこれから二つの視点から
議論
すべきだと考えております。 第一は、今までのお話にもございましたが、やはり
憲法
制定当初には想定しなかったような
基本的人権
、例えば今お話にありましたように知る
権利
、これも単なる
表現
の自由の反射的効果としての知る
権利
ではなくて、知る
権利
固有としての知る
権利
、あるいは
プライバシー
権、環境権、二十一世紀に入って特に
人権
感覚が研ぎ澄まされた中での、
人権
の中でも特に重要な問題、こういった問題に関しての討議をさらに深めるべきだと思っております。 それから第二点は、特に重要な観点として、もともと
憲法
は、御承知のように、国家対
個人
あるいは国家の
人権侵害
に対して
個人
の
権利
を守るという歴史的な経過から制定されるケースが多いわけでございますが、今
園田
議員
のお話にもございましたように、
憲法
の私
人間
適用、あるいは国家と同じような力を持っている巨大な私的組織、こういったものとそれから
個人
との
人権
の調整、こういった観点からも
基本的人権
というものを考えていかなければいけないと思っております。 特に、私人ないし私人ではあるけれども非常に大きな力を持った私的組織が他者の
人権
を
侵害
するような場合、他者の
人権
を不当に
侵害
するような
権利
、あるいは自由、あるいは
人権
というものはだれも持ち得ないという観点から、私
人間
での
人権
制約に対してどういう観点から
憲法
が規律をするか、そういう観点からの討議をこれからさらに進めて、また
議論
として進めていただくようにお願いいたします。
小野晋也
95
○
小野
小
委員
先ほど中山
調査
会長
から出されました問題提起に関しまして、
一言
述べさせていただきたいと思います。 それは何かと申しますと、情報
社会
と言われるこの時代の、情報サイバー空間と言われる世界でございますが、これが果たしてこれまでのそれぞれの国々が持ってきた権限ないしはその法的な効力と言われるものに合致するものかどうかという点の検討がこれからぜひ必要だという点でございます。 これには
幾つ
かの点があろうかと思いますが、
一つ
には、このサイバー空間というものは、果たして国境線を的確に設定ができるものなのであろうかという問題でございまして、国境線が設定できないとなれば、国家権力というものをどうここへ働かせていいかというようなところに非常にあいまいな問題が残るという点があります。 第二点目は、この情報空間の技術進歩が非常に急速に過ぎるということですね。 一年
たち
ますと、もう既にそのサイバー空間の性格が大きく変わってしまう。技術進歩の中において新しい要素がどんどん加わってくるのがこの情報世界の特徴でございまして、それが果たして、今までの、
法律
を制定しながらその秩序を形づくるという速度と合致できるのかどうか、このあたりについても検討が必要な点があろうと思います。 第三点目は、今、
日本国憲法
の中にも
表現
されるところの
思想
、信条の自由に非常に近い
部分
で行われる営みなんですね。 ですから、何らかの外的なアクションが具体的な物的な損害を与える、そういう圧力を何らかのものに加えるというような形であれば、非常にこれは法的な体系に乗りやすい問題でありますが、情報世界の場合はそうではなくて、非常にあいまいな、こういう
表現
の自由と言われるようなもの、
思想
、信条の自由と言われるようなもの、これに立脚して行われる
行為
であるだけに、これをどういうふうに律するのかという点にも
一つ
の問題があろうと思います。 第四点目の問題は、権力を持った人が何らかの
行為
を行い、それが国民に対して何らかの被害や
権利
制約を起こすというよりも、今、
棚橋
委員
からもお話がありましたとおり、国家権力でない存在がこの点における問題を引き起こす
可能性
を非常に高く持っている。 一
個人
であっても、この情報ネットワークの上で流した情報によって、非常に広範、急速に世界全体に影響を及ぼすことができるというのがこのサイバー世界の特徴でありますだけに、それを現在までの
憲法
ないしは一般法の考え方で律することができるのかどうか、こういうところも一点、検討が必要だということでございます。
憲法
の
議論
をしている場において、こういう問題提起は、少し大き過ぎる問題提起をしたのかもしれませんが、やはり国際的な
枠組み
を検討する
必要性
があるだろうし、またこのサイバー空間は今までのリアル空間と違う性質を持ったものであるだけに、新しい法体系を構築していく必要も生まれるだろうという点を指摘しておきたいと思います。
村越祐民
96
○
村越
小
委員
民主党・無所属クラブの
村越
祐民
です。 本日の
参考人
のお話と諸先生方の
質疑
を踏まえて、二点に関してちょっとコメントをしたいと思います。 まず一点目は、
男女
共同参画の問題であります。 先ほど来、アファーマティブアクションのお話などございましたが、やはり我が議会、それから、私はいっとき地方議会に所属をしていたわけでありますが、
女性
の
社会
進出というものがまだまだ十分果たされていないと私は考えています。ですから、この
委員会
を見渡しても、土井先生が非常に活躍をされておりますが、半分ぐらい
女性
の先生方がいても不思議ではないというふうに考えていまして、その段階的な移行措置としてアファーマティブアクションというものを導入するのも非常にいいのではないかと私は考えています。 つまり、先ほど
船田
委員
がおっしゃられましたスティグマ効果というものも十分に検討してこういう制度を導入しなければいけないんだとは思いますが、やはり
女性
の
社会
進出というものを考えたときに、私ども男性の側からも積極的にいろいろな制度を考えて、導入してやっていく必要があるのではないかと私は考えています。 それからもう一点、私
人間
効力のお話が先ほど来出ているわけですけれども、最近ではもう一歩踏み込んで、ドイツなんかでは基本権保護義務論というような
議論
がなされていまして、より国家が積極的に
人権
を
保障
するような、つまり、国家による
人権保障
ということを考えていく必要があるのではないか。 つまり、この基本権保護義務論においては、典型的な三極構造をとるわけでありまして、まず国家があって、それから、
人権
が
保障
される人、それから、私
人間
効力のお話ですから、
人権侵害
を受ける人という三極構造があって、そこに国家が積極的に介入して
人権
の
保障
を実効たらしめる。 つまり、
人権
を
侵害
する人に対してはその人に対する
人権
の制約理論として働いて、他方で、
人権
の被
侵害
者に対しては
人権
を
保障
する理論というふうになるような新しい
議論
が最近では蓄積されていますので、こういった理論も参照しながら、いかに
人権保障
を実効あるものとしていくのかということを考えていく必要があるのではないかと私は考えています。 ありがとうございます。
山口富男
97
○
山口
(富)小
委員
日本
共産党の
山口
富男
です。 私は、IT
社会
や電子政府にかかわる問題ですと、複眼的な接近が必要ではないかと思うんです。 第一の接近というのは、現にこの問題が引き起こすであろう問題について、具体的な法の問題ですとか政治、
社会
の範疇で考えるという問題と、もう
一つ
は、きょうの
参考人
のお話ですと、例えば
憲法
十
四条
でしたら、形式的平等を求め、その実質的なものを
立法
なり
行政
で具体化していくという話があったわけですけれども、そういう角度で見たときに、
憲法
とのかかわりでどういう問題があるのかという複眼的な接近が必要な
課題
だなというのを感じました。 それから二つ目に、
プライバシー
権や環境権の話も出たわけですけれども、これを
憲法
論として考える場合に大事なのは、もともとこれが、
憲法
の
人権規定
に根差して国民の運動ですとか判例等を積み上げていく中で生まれてきた
権利
ですから、十三条の幸福追求権や二十五条の生存権からいきましても、そういう新しい
人権規定
を十分支え得る
憲法
規範になっているというところに注目することが大事だと思うんです。
最後
になりますが、きょう、
参考人
の御
意見
をお伺いして強く感じましたのは、十
四条
を初めといたしまして、
憲法
の
人権
や民主主義にかかわる規定について、これを
立法
と
行政
の場できちんと生かす、その上でも、現状がどうなっているのかという不断の検討が必要だなということを感じるんです。
男女
平等や同権の問題についても、十
四条
を受けて、二十
四条
、四十
四条
で、
社会
それから家庭、政治参加の面で
男女
の平等、同権が詳細に規定されているわけですけれども、現実には労働条件や雇用の問題を含めて
格差
が厳としてある。こういう問題の解決がどうしても必要だというふうに思いますし、今、現に問題になっている問題でいいますと、二十五条で定めている
社会
保障
の増進の
責任
を政府が果たすという問題では、今、なかなかそこに力が注げない問題があって、
社会
保障
への国の支出を抑制、削減する政治が続いておりますから、その点についても、私は、
憲法
の規定するところからいって、現状への批判と検討が必要であるというふうに考えております。 そのほかにも多々ありますが、やはり、我が国の
憲法
で規定しております
人権
や民主主義の規定に照らして、今の政治それから
立法
、
行政
のあり方についてよく見定めていくということが、きょうの
参考人
のお話をお聞きしても必要だということを痛感いたしました。
倉田雅年
98
○
倉田
小
委員
自由民主党の
倉田
雅年
でございます。 前にもこの会で述べたような気がするんですが、今、
日本
にとって一番重要な問題は、少子化の問題であります。 慶応大学の清家先生だったと思いますが、NHKの教養講座か何かで述べておられましたけれども、御承知のように、
日本
の合計特殊出生率ですか一・三二だ、現在少子化に悩んでいる国は、主としてドイツとイタリアとスペインと
日本
だと。清家先生のおっしゃるのには、これは旧枢軸国である、こういうことをおっしゃっておりました。 旧枢軸国とはどういうことをいうのかといいますと、要するに、経済的には非常に発展を遂げて先進国化しているけれども、しかしながら、
社会
的な実質としてはまだ後進国なんだ、簡単に言えば、
女性
を本当の
意味
で尊重していないのではないかと。それに比して、例えばフランスなんかは、今言った出生率が、いっとき一・二か三まで下がってしまったけれども、かなり回復をしてきている、あらゆる手だてをもって、本当の
意味
での
女性
の母性を尊重するということをやってきたからなんだと。私は、
日本
もそれに見習わなきゃならない、こう思うわけでございます。 それと
憲法
論議との
関係
でございまして、今言ったことは
立法政策
ではないかと言われちゃうと思うんですが、
憲法
というのは、既存の普遍的な価値を書くだけではなくて、国家としての意思というか、これから
日本
国がどうあるべきかという理想というか、こういうものも
憲法
には書かれていいと思うんです。 例えば
憲法
第九条ですが、これはずっと、とにかく国権としての戦争はやらないとか、武力による国際紛争の解決をしないとか、大変大きな理想を述べたものであります。これが、現代のテロとかあるいは北朝鮮の問題とか、こういうものとの現実とどういうぐあいに衝突するか。私も、できれば歴史を後戻りさせたくないという一人でありますけれども、そういう
意味
で、この現行
憲法
にもちゃんと理想とするところが書いてあるわけです。 どういう形で書くかは別ですが、単なる
立法政策
というよりも、
女性
をより尊重して、本当の
意味
での
男女
平等の
社会
を実現していくというのを
一つ
の理想として
憲法
に書き込むこともどうであろうかな、こんなことを思いますので、
一言
述べさせていただきました。
土井たか子
99
○土井小
委員
きょうは、
憲法
第十
四条
が中心になるテーマで午前中は考えさせていただいたわけですが、十
四条
の
条文
の、私はこれは大変大事な
部分
だと思ってまいりましたのは、「法の下に平等であつて、」という法に対する認識なんですね。この法ということについては、恐らくは、範囲を広く考えるということは当然のことだと思いますから、
憲法
も入るし、もちろん
法律
、入りますし、法令も入る、政令も入るというふうに考えるのが尋常だというふうに今まで思ってきたんですね。 最近、そのことに対して、特に
人権保障
というのは、
法律
でこれを決めるという中身について
保障
するということが
憲法
自身の
条文
にございます。例えば、二十六条がそうですし、三十条そうですし、三十一条そうですしと、軒並みこれは、
法律
事項と申し上げれば、それは具体的に
法律
事項でないものが少ないぐらい、
権利
に対して
人権保障
ということを
法律
で具体化するということを、
憲法
自身がこれは決めているわけですね。 国会が唯一の
立法
機関なものですから、
法律
はほかの場所でつくるわけにはいきません。しかし、
法律
自身が本当に
法律
事項に徹しているかどうかというところが、むしろ
人権
尊重の考えが強いか弱いかということに直結するわけで、昨今は、私、一々
法案
の名前を挙げるわけにいかないんですが、大事な
部分
を、政令にこれを委任するというふうなことが間々ございます。これは非常にゆゆしいことだと、私、常に思うんですね。特にこれは、政令に委任するというのは、政府に白紙委任状を出すような格好にもならざるを得ぬような場面すらあるわけで、これはやはり、法のもとに平等だと言っている法に対する認識というのを、改めてこれは強く持たなきゃいけないなというふうに私は思います。つまり、
法律
事項ということをもっと徹底して考えるということが、
人権
尊重主義からすれば大事なんじゃないかというふうに考えます。
園田康博
100
○
園田
(康)小
委員
今の
議論
の中で、
人権保障
をするという概念、これは、やはりこの
憲法
が、一番、最大の主張をしている、
要請
をしているところだと私も思っております。 したがいまして、だからこそ、だからこそでありますけれども、それをより確実、より強固なものにしていかなければいけないというのが
一つ
やはりここで出てくるのかなという気はいたしております。したがいまして、
憲法
の中にも、二十条あるいは二十一条に、制度的
保障
としてのいわゆる政教分離
原則
、あるいはまた通信の秘密という形で、
人権
が規定されているんだけれども、それをより確実なものにするために制度的
保障
というものがこの中に含まれているというふうに考えております。 したがって、
人権
そのものが歴史的あるいは
社会
的な現象の中で
侵害
されてきた経緯を踏まえていくならば、これから出てくるであろう、あるいは今実際にさまざまな
解釈
の中で出てきたものを確実なものとして、今後の私
たち
の子孫に対しても
人権
を保護していく、
保障
していくということを考えれば、ここで明記をしていく必要があるのではないかなという気はいたしております。
船田元
101
○
船田
小
委員
自民党の
船田
元です。 先ほど私も
内野参考人
に質問を
幾つ
かいたしましたけれども、これまでの皆様のお話の中でも、やはり平等あるいは
人権
、これを
憲法
において、これは、形式的平等をまず最低限
保障
する、しかし、それを実質的な平等というものにできるだけしていく努力は必要である。そのために、
幾つ
かの
政策
なり、もちろん
法律
なり、そういったものが
幾つ
かあるわけでありますが、今の我が国の
社会
、特に、さまざまな新しい
権利
の概念が出てきたり、あるいはさまざまな、例えば国と
個人
という
関係
だけではなくて、先ほど来出ておりますように、国に匹敵するような強大な権限あるいは機構を持った団体、そういった新たな
社会
の中での要素というものが生まれている。こういうものには常に我々は気を使いながら、心を砕きながら、
立法
措置あるいは
政策
的なアクション、これを起こすべきであるというのが私の基本的な考えであります。 そういう中で、きょう
議論
に余りなかったと思いますけれども、
在日外国人
、定住
外国人
に対する参政権を付与するべきかどうかというような話、これは、非常に長いこと各政党の中でも
議論
をし、我々自民党の中でも
議論
をしてきたわけですが、なかなか結論が出ない、そういう状況にあります。 確かに、参政権、これは、その国民が自分の属する国の政治に参加するという
権利
でありますから、当然のことながら、当該国家の国民にのみ参政権は認められる、これがまずは第一義的な
解釈
であると思います。ただしかし、さはさりながら、特に市町村などの、我々に非常に身近な、住民に身近な地方自治体、住民の生活に最も密着したレベル、そういう点での選挙権あるいは参政権、こういうものについては、やはりある
一定
の条件、これは例えば入管法上の永住者、あるいは一九九一年の入管特例法による特別永住者、そういう
人々
には、やはり
一定
の参政権、選挙権を与えるべきではないかというのが私の考えであります。 ただ、一方では、いや、それはそうではない、やはり
日本
国民であるということが極めて重要であり、そのことを求めるのであれば、そういう
人々
は帰化をすればいいではないか、国籍を
日本
国籍にすればいいではないか、そういう
議論
と、まだ完全にその闘いが決着がついていないという状況にあり、これはやはり、我々
立法
者の
立場
において、私は、怠慢、ある
意味
の怠慢であるというふうに思っております。これについては、やはりきちんとした結論を出す、そういう時期がもう来ているなというふうに考えております。 それともう
一つ
、先ほど
男女別
学についてちょっとお話をしましたけれども、
夫婦
別姓ということについても、これはやはりまだ
議論
が続いている、そういう状況でございます。 確かに、
憲法
十
四条
の
精神
を生かして
民法
がつくられておりますが、その七百五十条には、婚姻のときには「夫又は妻の氏を称する。」ということで、これは形式的には
男女
平等ということになっています。しかし、
社会
通念上、あるいは慣行上、ほとんどの場合は夫の姓になるということであります。妻の姓になるというのはごく限られたものであります。これは、多分、間接的
差別
、学術用語では間接的
差別
と言ってもいいのかもしれませんが、そういう、やはり
男女
の差、あるいは
差別
に近い形がこういう
社会
通念の中にまだまだ入っているということがありますので、そういうものを積極的に是正をしていく。そういうための
法律
、
立法
措置というのは、私はやはり、当然ながら求められるべきものであるというふうに理解をしております。 私見を申し上げました。
小野晋也
102
○
小野
小
委員
たび重なって申しわけございません。 土井
委員
の法のもとの平等に対する考え方について
一言
発言
させていただきたいと思うのでございます。 きょうもいろいろな御
議論
がありましたけれども、形式的な平等、そしてまた実質的な平等、こういうところに必ずしも
一定
のきちんとした見解が立ち得なくて、それぞれの問題ごとに、常識の中において、良識の中において妥当なところを求めていくというのがこの平等の基本的なものなんだろうというような印象で私はこの
議論
を聞かせていただいてきたわけであります。 そういたしますと、法のもとで平等を確保するということを論ずる場合に、余り法というものにおいて細かく状況を設定した規定をつくり過ぎますと、その場面場面におきます対応力を損なってしまうおそれが出てくるのではなかろうかというようなことを懸念いたします。ですから、理念としての平等ということは、これは極めて私
たち
も重視すべきものであって、この尊重を図っていかねばならないと思うわけでありますが、その実際にあらわれる形というところについては、より自由度を残しておく必要があるのではないだろうかというのが私の
意見
でございまして、また御
意見
ございましたら、お聞かせいただければ幸いでございます。
土井たか子
103
○土井小
委員
法律
が政令に委任するという場合、一切それを認められないとは言っていないんですよ。ただ、
法案
からすれば、
法案
を見た場合に、骨格になる
部分
についてまでも政令に委任してしまっているというふうな場合は、その
法律
自身の、言ってみたら形骸化につながるじゃないですか。だから、命取りみたいなものですよ、
法律
の。みずからそれを意識してやっているとなると罪は重いと言わなきゃならぬと思うんですね。 だから、おっしゃったように、技術的な側面で、細かい点について、これはもうここまでは
法律
できちっと決めてあるんだから、あとはこの中身を実施するために政令でつくることというふうに
法律
自身が指示することは何ら差し支えないと思います。私はそんな問題を言っているわけじゃないの。
法律
の本旨にかかわる問題について政令に委任しているというふうな場合は、言ってみれば法治主義の放棄ですよ、簡単に言えば。 だから、そういうことが、
憲法
の
条文
からすると、わざわざ
法律
の定めるところによるというふうにきちっと規定している
条文
なんかについて言うと、特に
人権
尊重の点からこういう規定になっているわけですから、
人権
を
保障
するためにこういうことになっているわけですから、
法律
ということに対しての認識をよほどこういう場合はしっかり持っていないといけないなというのが
法律
主義の中身だと私は思うんですね。そういうことを言っているんです。最近どうもその辺はルースになってきているんじゃないかなと思われる節があるものだから申し上げたんです。
山花郁夫
104
○
山花
小
委員長
他に御
発言
ございますでしょうか。 それでは、討議も尽きたようでございますので、これにて自由討議を終了いたします。 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時四十五分散会