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武石参考人 富士通総研の
武石です。
きょうは、
原油価格が
異例に高い、この理由はなぜだろうか、それが
世界の
石油需給の
影響を受けている、では、それが
日本の
石油会社に対してどのような
影響を与えているだろうかということまで含めてお話しさせていただきたいというふうに思います。
お手元に三枚の紙、二枚ずつ図表がかいてありまして、
合計六枚あるんですけれども、これに基づきまして話をさせていただきます。
まず、一ページ目の上の図を見ていただくとわかるんですけれども、これは、二〇〇〇年以降、
世界の代表的な
原油がどのような
価格の推移を示したかということを示しています。
三つありまして、WTIというのは
アメリカの代表的な
原油です。それから、ブレントが
欧州でして、ドバイが
アジアということになっています。
二〇〇〇年以降を示してありますけれども、
世界の
原油需給というのは、
年間の間に二度の
需要が高まる時期というのがあります。それは、六月、七月というのがまず
一つ目の
ピークでして、小さな
ピークなんですけれども、
アメリカの
ガソリン需要、
ドライブシーズンというんですけれども、これが高まるという、この
影響を受けまして一度
需要が高まる時期があるわけです。それから、
世界の
主要国というのは
北半球にたくさんありまして、それらの国が、冬の
暖房需要なんですけれども、これが高まるということで、やはり冬期に大きな
ピークが来るということで、二度の
ピークが来るわけです。この
ピークが来ますと、やはり
需要が高まりますから
需給が締まるということで、自然と
価格が高くなる
可能性が高まるというふうに動くわけです。
例えば、二〇〇〇年を見ていただくとわかるんですけれども、冬に向かって
価格が高くなっていっている
状況を
ごらんになれると思います。ですけれども、この年は、二〇〇〇年の冬、十二月にはもう
価格が下がり始めてしまうという、つまり、
OPECが一生懸命高い
価格を欲して
需給をタイトにさせようとしましても、余り高い値段をねらうと急に
価格が下がってしまう。つまり、春先に
需要が少なくなることを見込んで、それを、先に下がるのであれば、じゃ、今下げてもいいということで、
価格は先を読んで動いてしまう、こういうふうに動くわけです。
原油の
価格の
動向というのは、
世界の
政治状況を映す鏡、こういうふうに言われるぐらい
世界のいろいろな
動向を読み込んで動いていくわけです。
例えば、二〇〇一年の九月ですけれども、これは九・一一が生じたわけです。ここで、
世界は大変なことになった、
経済が落ち込んでしまうということで、実際に、飛行機に乗る人も減ってしまうということで
価格は急落するわけですけれども、何とかこれを持ちこたえて
経済が回復したことによって、その後、二〇〇二年になって
価格が戻すというように動いてくるわけです。
さらに、二〇〇三年の二月を見ていただくとわかるんですけれども、ここで急上昇しているわけですね。これは何かというと、
イラクの
戦争が始まるということで、
イラクが
戦争になれば、
イラクだけじゃなくてクウェートの
原油の
輸出もとまるんじゃないか、これを心配しますと一時的に
価格が上がるわけです。そして、これは早く終わりそうだと一たんは情報が出ましたから、それで安心して
価格が下がるというふうに、一度は下げるわけです。ですけれども、この後、
中東情勢が非常にまた
混乱してしまう。
イラクだけではなくて、ほかの
中東の
諸国に対してもさまざまな
混乱というか、そうした
状況が今続いてしまったわけです。
こうした、例えば
中東諸国がこれからどういうふうになっていくのか、
世界の
原油の
埋蔵量の七割という非常に大きな割合を占める
中東諸国が安定的に成長できるかということを心配しますと、これはやはり
価格が引き上げられてしまう要因がどうしても今存在しているということで、
異例に高いという
状況が出てしまったということです。ですから、
価格の
動きというものが非常に政治的な
動向、これを受けているということがわかります。
次に、では、
需給、その
バランスというのはどこが、どういう
地域がどのぐらいの
影響を及ぼしているかということを図の二で見てみたいと思います。
一ページ
目の下の図の二を見ていただくとわかるんですけれども、
世界の
需要というのは、非常に重要なことは、
OECD北米というのが、この青い線でありますけれども一番上にありまして、これが着実に伸びている。ほかの
地域と比べて非常に量が多いところが着実に伸びている、これが非常に大きな意味を持っているわけです。
つまり、
アメリカを初めとします
北米の
地域がこの
需要の
下支え、しかも毎年
需要が伸びますよというその
下支えをしているということで、ですから、
北米の
需要次第で、非常に
基盤となる、ベースとなる部分は、
北米がその
石油需要において担っているということがわかります。
そして、次に、赤でかいてあります
OECD欧州があるんですけれども、ここは伸びていないということで、伸びているのはどこかというと、
中国その他
アジア、
茶色でかいてありますけれども、この
地域が急上昇していることが
ごらんになれると思います。
ということは、何かといいますと、
世界の
需要というのは、
北米が
基盤をつくりまして、それに対してさらに
アジアが押し上げるという、この
二つの
地域が
需要を構成している。つまり、そこの
動向次第で
世界の
需給というものが引っ張られていく
傾向がはっきりと出ているということがわかるわけです。
では、二ページ目を見ていただきまして、
供給側はどうかということを見てみます。
これは、
世界の
石油供給を
三つのところに分けて見てみると、
OPECが青で書いてありますけれども、
OPECの
供給量が一番多いわけです。赤で書いてあるところ、これは、
OPECでもなく
OECDでもないということですから、
ロシアを初めとします旧
ソ連の国とかアフリカとかその他の国の
合計なわけです。ここが急上昇しているのが見てとれると思います。
これは、要するに、
需要が今非常に伸びていますけれども、その
需要を賄うように、この赤い、その他計、
ロシアを初めとします旧
ソ連の国が
生産量を回復してきたということで、今
需給が何とかマッチングしているというか、
需給が合っている
状況が出ているわけです。ですけれども、
ロシアの回復というのは、私たち知っているのは、一九八〇年代に、
日量千二百万バレル
生産していたんですけれども、今は、
合計しますと、旧
ソ連で千百万バレルぐらいまで
生産量が回復してきているわけです。
ということは、八〇年代に持っていた設備、そうした施設を使いながら、
輸出用の
パイプラインを使いながら今
生産量がやっと戻してきたというところで、ですけれども、ではこの先、
あと百万バレルあるとしても、それ以上
生産が伸びるかというと、これは、新たに
油田を開発しなくちゃいけない、そしてそれに合わせて
輸出用パイプラインをつくらなくちゃいけないということでして、今まで回復してきたこととここから先伸びるかということは、全く別の話になるわけです。
ということで、その他計がこれから余り伸びないということがわかっていますから、そうしますと、では
OPECは
供給ができるのかということで、
OPECの
動向ということに今注目が集まるわけです。
そして、主要な
OPECの
生産国である
中東の
OPEC諸国、ここで
生産が回復できるか、これ次第でこの先の
需給関係が決まるということがわかっていますから、そうしますと、
中東での安定がもたらされない以上は、この先大丈夫だろうかという心配が出てしまうわけです。こうした
状況を反映しまして、
異例の高い
原油価格というものがもたらされてしまったということがわかるわけです。
二ページ
目の下、図四ですけれども、これを見ていただきますと、これは、
OPECは
自分たちで
生産枠を設定するわけです。
生産枠まではどうぞ
生産してくださいということで、それをとにかくフルに
生産しようというのが基本的な
方針ですけれども、そうした
生産枠を維持できない国というのが出たりします。
それは、例えば図の四の下、薄い
茶色ですけれども、
ベネズエラが非常にマイナスの数字になっているのがおわかりになると思います。これは、
政治紛争がありまして、
ベネズエラの
国営石油会社の社員がストライキをしたということで、その
人たちが、要するに
従業員が半分首になるというような大変な
混乱がもたらされてしまったわけでして、そうした
混乱が続いた後、これを見ていただくとわかるように、二〇〇三年、二〇〇四年を見ましても、常に
生産枠を満たせないというような
状況が生じているわけです。
もう
一つ、
インドネシアについて見ていただいてもわかりますけれども、ここも
生産枠を満たせない。ここまではどうぞ
生産してくださいということが言われているにもかかわらず、
インドネシアはできないんですね。これは、要するに、今非常に
油田が古くなってきたということがありまして、新しく
増産ができないということで、計算してみましても、どうも準輸入国入りしてしまったということで、
アジアで
OPEC参加国がこれでなくなってしまうんじゃないかというような、要するに
アジアでの自給、
アジアの
地域内で
原油を
生産してそれを消費していくということが非常に苦しくなってきている
状況があるわけです。
あともう
一つ、図の四で見ていただくとわかるように、プラスの方に大きくサウジアラビアというのが、青い線で出ていますけれども、これは要するに、
イラクの
戦争が始まるぞというときに、
イラクが現実にストップしましたけれども、それに対してサウジが
増産で補ったということで、九百五十万バレルという
日量ですけれども、そうした
フル生産、かなりフルな
生産を続けてみたということがあるわけです。
このように、
各国事情がそれぞれありまして、
OPECの中といっても、非常に、それぞれの国が、
増産できるかできないかということで、中が分かれている、こうした
状況があるということがわかります。
三枚目を見ていただくと、これが図の五でして、今度は、では
需要と
供給、それを大きく、
需要を
二つに分けまして、
供給を
三つに分けて、これを
一つの図で見てみるとどういうことがわかるかということを示したいと思います。
これは
四半期ごとに書いてありますから、
OECD諸国、
北半球にありまして、冬には
需要がふえるという
傾向が顕著に図の五で見ていただくとわかると思います。
年間、冬になると非常に
需要がふえて、その後春先に減るという、
シーズナル、季節的な
変動ということを
石油需要はしていくわけです。これがうまく補われないと、どこかで多量の備蓄を持たなければいけないということが生じることは明らかなわけです。
もう
一つ、では、
需要ということで、
途上国はどうかというのを見てみますと、これは赤い線で書いてありますけれども、真ん中、下の方に赤い線がありますけれども、
途上国の
需要というのは着実に、
中国、インドを初めまして、
需要は着実に伸びてきている。しかも、温帯といいますか暖かいところにある国が多いということで、それほど季節的な
変動を受けていないわけです。ということは、
世界の
需要の
変動というのは、
四半期別に見ていくと、
OECDの
需要をうまく満たしているとかなり
需給の
バランスがうまくとれていくだろうなということが予測できるわけです。
では、
供給側はどうかといいますと、薄い
茶色の線で書いてありますけれども、
OPECは一生懸命
OPECの
生産枠を調整しまして、それで
需給を調整しようとするわけです。
需要が非常に緩んだとすると
生産を減らす、
需要がきつくなると慌てて
会議をしてまた調整する、そういうことをしているというのが、非常に、何か特に決まった
方針がないように見えるような、この線の
動きでわかると思います。
もう
一つ、
供給、ここに青い薄い線で書いてあるのが非
OECD・非
OPECの国でして、これは、先ほど申し上げました旧
ソ連の
諸国が特に押し上げているんですけれども、着実に、
季節性を持たずに、今一生懸命
増産に走ってきたということがわかります。
そして、
あと、
供給の
最後ですけれども、赤い線でありますのが、一番下に、
OECD諸国ということで、ここは
供給をふやそうにもふえていないということがわかるわけです。
そうしますと、これは何が起こっているかということは歴然でして、つまり、
シーズナルに、
季節性を持って
OECDの
需要が非常に振れるにもかかわらず、
OPECは後追いで、非常にやり方として問題があるような、要するに、市場に余ってしまったり非常に足りなくなったりするようなことを慌てて追っかけて調整している、この
状況が生じていることがわかるわけです。
この
状況に対しては、これは非常に問題がある、
価格を乱高下、上がり過ぎたり下がり過ぎたりしてしまう、こうした
状況をもたらしてしまうんじゃないかということで、こういう話に関しては、私自身も
中東の
石油省の方なんかと、何とかこれは考えた方がいいんじゃないかという話をしてみたことがあるわけですけれども、
中東諸国は何が一番大切かといいますと、今のように上がったときに
自分の国だけがその収入にあずかれない、これはもう
石油大臣の首が飛ぶわけでして、そういうことはできないわけです。
自分の一カ国だけが違ったことができないという、その中におりますからしようがないので、とにかく今の
価格、今の制度を追いかけるしかないという
状況が生じているわけです。ですから、
価格が高過ぎる、低過ぎるというのは、これは構造的に今生じてしまっている状態ということがわかるわけです。
三ページ目の一番下ですけれども、
最後で、では、その
状況を受けまして、
原油を輸入してくる
日本はどういうふうな
立場にあるかということをお話しさせていただきます。
これは、
原油が高くなれば仕入れ原価が上がりますから、売上高はそれに応じて
変動するわけです。ですけれども、では、国内要因で、国内で石油製品が売れるかどうかということはまた別の問題でして、ですから、経常利益を見ていただくと、これはトータルとしてマイナスになったりとか、非常に振れているということがおわかりになると思います。
これは売上高経常利益率なんですけれども、パーセントとしましても、一番いいときでも二%台ですね。九〇年の前後のときですけれども、初めてここで二%台になったということまでしか上がったことがない。製造業の平均というのは四%台ですから、常に
石油会社は平均を引き下げてきた役割をしてしまったということでして、構造的な要因に引っ張られて
日本の
石油会社が非常に経営的に苦労しているという
状況が、表一を見ただけでもわかるということになっております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)