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蓮池参考人 本日は、
発言の
機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
北朝鮮に
拉致されまして帰ってまいりました
蓮池薫の兄の透と申します。よろしくお願いいたします。
時間が限られておりますので、早速本題に入らせていただきたいと
思います。
平成十五年七月三十一日、弟薫と妻祐木子が
北朝鮮に
拉致されてからちょうど四半世紀が経過いたしました。四半世紀と申しますれば、オリンピック六回分でございます。生まれた子供が成人してばりばり働き出す年月に相当いたします。しかし、いまだにこの
拉致問題は
解決しておりません。これほど長きにわたって
日本人の人権が侵害され続けております。
昭和五十三年七月三十一日、弟
たちは
拉致されました。だれもがデートし、遊びに行くごくごく普通の海岸で、不法侵入した
北朝鮮の工作員の手によって暴力的に
拉致されたのであります。この上ない凶悪犯罪、人権じゅうりん、国家主権の侵害、国家
テロであります。これはほかのだれにも
拉致される危険性があったという状態であり、それがまだ継続している
可能性があるということだというふうに
思います。
弟
たちは一体どのような
気持ちで連れ去られたのか、到底私
たちには想像がつきません。
北朝鮮で二十四年間、祖国へ帰るという究極の自由を剥奪され、わずかに与えられたささいな自由らしきものの中、希望のない不毛な暮らしを強いられてきたのです。
弟も言っています。二度と
日本へ帰ることはできないと思っていた、
日本に帰ることを忘れること、それが我々にとってのプラス思考である、
日本に帰りたいなどと始終考えていたら死ぬしかない。プラス思考という
言葉に私はショックを受けました。
ようやく
帰国した現在もなお、
家族離散の状態に置かれています。人権じゅうりんも甚だしいと
思います。親子二代にわたっているこの
拉致行為、こういうことを働いている卑劣な
北朝鮮を絶対に許すことはできません。
と同時に、四半世紀にわたってこの問題を放置し続けてきた
日本の国家責任は甚大であるというふうに考えます。
五人の
気持ちは、二十四年前、青年のままでございます。純真で生まじめで、二十四年間見捨てられてきた
日本政府に対して、どう責任をとってくれるんだなどとは絶対に言いません。それは、我々周りが言っているだけであります。
弟は言っています。
北朝鮮では自由がなかった、だれかと会うにも、どこかへ行くにも、好きなように自由にそういうことができる、平凡だが、それが今の我々にとっての幸福だと。これほどまで彼らはぎりぎりの
生活をして生き延びてきたのであります。そして、まだ同じ
思いで
北朝鮮で
生活をしている
拉致された
日本人とその
家族が大勢いる状態でございます。
二十四年間何もしてくれなかった国を、この期に及んで、まだかいがいしく信用していると言っているのであります、国がきっと
家族を取り返してくれると。
政府は、
外務省は、彼らのそのけなげな
思いをもっと重く受けとめなければいけないというふうに
思います。
しかし、
帰国一年が過ぎ、五人の心中は決して穏やかではありません。
北朝鮮に対する怒り、憤り、
日本政府に対する
不満、不信は募り募って、もうのど元まで来ていると
思います。しかし、その
思いのたけをすべて口にすることはできません。
北朝鮮を刺激したくない、
日本政府を信頼する、そういう
思いで、
自分自身の中にストレスとしてためているだけでございます。
とにかく当事者意識がまるでない。
政府も、
外務省も、多くの政治家の
皆さんも、真剣に
日本人を
救出しようという意志が本当にあるとは思えません。多くの
拉致被害者とその
家族の
気持ちをおもんぱかる優しさなどみじんも感じられないのであります。
これは、憲法にもうたわれ、国際条約にも規定されている人権問題です。四半世紀以上にわたり、人権が侵害され続けているのです。世の人権を標榜する識者の
皆さんは、なぜ声高に
日本人の人権を守れと叫ばないのでしょうか。不思議でなりません。人権人道課、人権擁護局という看板を掲げている
外務省、法務省はなぜその職務を全うしようとしないのでしょうか。
一昨年の九月十七日、情勢は一変したのであります。私
たちはこの二十四年間、
疑惑にすぎないとかでっち上げだとか言われ、ほとんどだれにも相手にされない中、必死で闘ってまいりました。それがあの日、
疑惑が真実となり、でっち上げが事実となって、
北朝鮮の
拉致行為が白日のもとにさらされました。これでこの国も本気になって取り組むだろう、対応も一変するだろうと
期待したのであります。しかし、そうではありませんでした。その後も事態は一向に動いておりませんし、むしろ後退させるような政治家や官僚がいるほどです。
我々も、やっとここから始まるんだ、二十四年目にしてようやく本当の闘いが始まるんだと思ったのです。しかし、
政府、
外務省は、九月十七日、あの日一日で終わりにしようと考えたのではないか。つまり、日朝
国交正常化こそが
日本の国益だという理不尽な思惑に支配された
北朝鮮外交が行われたとしか思えないのであります。
飯倉公館における我々への対応を見ていただければ一目瞭然だと
思います。
あの日の報告は、
日本政府が血眼になって得た
情報ではなく、
北朝鮮が一方的に伝えたものにすぎなかったのであります。五人が生存、八人
死亡、
北朝鮮がそう言っただけで、あたかも真実であるがごとく我々に伝えられました。おたくの息子さん、娘さんは残念ながら亡くなっておられます、
死亡日時も場所も死因もわからないままに、そうはっきり宣告されたのです。報告の中にも、その伝え方にも、およそ
被害者一人一人の人権、尊厳、人格などまるでありませんでした。
一人一人の生存、
死亡という
情報は非常に重たいと
思います。しかも、一日千秋の
思いで待っている
家族に伝える
情報です。
北朝鮮がそう言ったとして、一人一人の
情報についてもっと詳しく、もっと吟味しなければならなかったのです。死んだというのなら、いつ、どこで、どういう状態で亡くなったのか。いや、その前に、
拉致を認めるのであれば、いつ、どこで、どうやって
拉致したのか、その後北でどういう
生活をしていたのか、それを確かめもせず、ただただ北が伝えた
情報をそのまま真実がごとく我々に宣告したのです。どこかで
情報操作が行われたとしか思えません。
それも、
北朝鮮とホットラインであたかもつながっているように思わせる飯倉公館にわざわざ我々を軟禁して、マスコミの
皆さんから隔離して、重要な
情報なので最後の詰めと確認をしているという大層ごもっともな言い分で、平壌宣言サイン終了まで巧妙な時間稼ぎをしたのです。異常な作為を感じます。この真実は私は暴かれなければならないと
思います。
そこで、
死亡、生存の唯一の生き証人であるとされた梅本駐英公使は、
横田めぐみさんの
死亡は検分したわけではないので確認していないとおっしゃいました。そして、生存とされる五人と面会しても、本人と断定する
情報を何も持ち合わせていないのですから、確認などできるはずがありません。梅本氏御本人も、
自分が見て聞いてきたことを客観的に伝えただけだとはっきり認めておられますし、後に
小泉総理にも確認しましたが、あれは伝聞
情報にすぎないとおっしゃっておりました。
それを聞いて、我々は、
政府、
外務省のやり方に憤慨したのです。すると、急に
調査団が派遣されることになりました。我々がもし騒がなければ、
調査団は決して出なかったと
思います。その
調査団も、あきれたことに、出発当日朝になって、
被害者の特徴を聞かせてくれと
家族に依頼してきたのです。ここでもまた、二十四年間にわたる
外務省の不作為が明らかになりました。
要するに、こういうことだったと
思います。八人はかわいそうだが死んだ、だから葬式を出してあきらめなさい。五人は生きているが、
北朝鮮がいいと言っている。
家族が会いたかったら、
北朝鮮に行きなさい。事実、五人は
調査団の撮ってきたビデオの中で盛んに両親の
訪朝を訴えていましたし、一時
帰国という名目の
帰国の目的は、両親を初めとする
家族の
訪朝を促すことだったのです。五人をすべて寺越武志さんのようにしようとしたのです。
拉致した人間を帰そうともせず、性懲りもなく自国の利益のためにまた利用する、
北朝鮮という国はそういう卑劣きわまりない国なのです。それで、
拉致問題は一件落着、さあ日朝
国交正常化交渉スタート、これが描かれていたシナリオだというふうに考えております。これでは、どこの国の
政府なのか、
外務省なのか全くわかりません。この真相もまだ暴かれておりません。
謝って済む問題ではないと
思います。もっとも、
金正日氏が謝ったという確実な証拠などどこにもないのでありますが。
拉致を認めるなら、なぜそれに怒らないのか。八人も死んでいるというのなら、責任を追及して、その補償問題まで突き詰めてしかるべきだと
思います。五人の生存者がいるというのなら、二十四年間かかってやっと見つけたのですから、即刻連れて帰るとなぜに言えないのでしょうか。せめて保護下に置くべきだというふうに私は
思います。
外務省が身柄を保護するのは当然ではないでしょうか。邦人保護とか邦人
救出などという発想は、彼らには全くないとしか思えません。
北朝鮮は、
拉致という国家犯罪、国家
テロを犯したのです。
日本にとって
被害者の
帰国を要求するのは当然の権利であって、これを
交渉のカードにするな
どもってのほかのことだと
思います。
それを、
拉致のラの字も書かれていない、私
どもにすればあのような屈辱的な平壌宣言にサインがなされました。私は、あの宣言、サインこそ、その後の混乱を招き、事態を膠着状態に陥らせた元凶だと思っています。確かに、
小泉総理が
拉致問題の扉を開かれたという方がいらっしゃいますけれ
ども、そうであるならば、この問題を最後まで決着してくださるのは
小泉総理の責任ではないでしょうか。
とにかく、こんな冷たい国はないと
思います。
帰国した五人にしても、当初は
北朝鮮に戻すつもりでいたわけでございます。泥棒が盗んだものを一たん返すからまたよこせなどという、通常では考えられないことを平気でしたんです。五人は、
拉致という国家犯罪、
テロの
被害者なのです。国には、本当に
拉致被害者を
救出しようとか、
日本国民を守ろうという意識があるのでしょうか。
被害者五人に対する扱いも非常に冷たいと
思います。
国会議員の
皆さんは、
支援法をつくって満足し切っているような気がしてなりません。失われた二十四年間のアフターケアはだれがやってくれるのでしょうか。身
一つで帰ってきた
日本人の面倒はだれが見るんでしょうか。これは国の責任ではないでしょうか。
大体、なぜ国に
拉致事件の対策本部がないのでしょうか。先般、各党内に対策本部ができましたが、二十四時間
拉致事件だけに従事して、どうやって
救出するかさまざまな知恵を絞るプロジェクトチームはどこにもないのです。
政府も、
外務省も、警察も、いろいろの仕事がある中で、いわば片手間にやっているのだと
思います。細田官房副
長官の幹事会にしても、専属の人ばかりで構成しているわけではありません。責任者はだれなのか、だれが責任を持ってこの問題を
解決してくれるのか。私は、担当大臣を置くぐらいのことをしてもいいのではないかというふうに
思います。
とにかく、
北朝鮮に対する
対話のみの段階は過ぎていると
思います。
圧力をかけていく必要があります。
日本政府は、
経済制裁も辞さないという
姿勢をはっきり示さなければならないと
思います。
北朝鮮の恫喝におびえて譲歩すれば、彼らの術中にはまります。今まで、
日本政府が
北朝鮮に対し厳重抗議をしたということを聞いたことはございません。せいぜい、遺憾である、その程度でございます。なぜもっと怒らないのでしょうか。
日本人を帰せ、その
家族がいるんならその
家族も帰せ、さもなければ
経済制裁だと言わなければならないと
思います。そして、責任を追及し、犯人を処罰し、補償問題まできっちりさせなければならないと
思います。もっと正面から正々堂々と要求すればよいではないですか。これほど
日本人の人権がじゅうりんされ、国家主権が侵害されている問題はないのですから。
北朝鮮を刺激して、日朝の
国交正常化が遠のくのがまずいなどという考えがもし存在しているのであるとしたら、言語道断だと
思います。
今まさに六
者協議が始まろうとしておりますが、私は、
政府が示しております方針、すなわち、最優先で五人の
家族八人の
無条件帰国を実現し、その後の
国交正常化交渉の中で十人ほかの真相解明を追及していく、この方針にのっとり、
北朝鮮を凌駕するような、いや凌駕する、したたかで、戦略的、戦術的な
外交を望むものであります。そして、その
外交の強力な後ろ盾となる改正外為法に続き、特定船舶
入港禁止法案の
早期成立、衆参両院への
拉致問題特別
委員会の設置を強く求めます。
一体、いつになったらこの国は私
たちを救ってくれるのでしょうか。四半世紀以上も待たされて、まだ辛抱しろとおっしゃるのでしょうか。私
たちは、もうこれ以上待つことはできません。
ありがとうございました。