○山本保君 私は、自由民主党・保守新党、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました内
閣提出の
個人情報保護五
法案について、
総理並びに
関係大臣に
質問をいたします。
現在、我が国は、世界最高水準の
高度情報通信社会の実現のため、様々な
制度、インフラの
整備を推進しております。これにより、
個人ニーズを的確に反映し、迅速なサービスを
提供するオンディマンドと呼ばれる新しい産業形態を生み出し、より便利で活力ある
社会づくりが進むと
考えられますが、その反面、企業等の顧客名簿の流出などによって
個人の
プライバシーの
権利を損なうおそれも増大しております。こうした
観点から、憲法の保障する
表現の自由等に十分配慮した
個人情報保護法制を
整備することは喫緊の課題であります。
内
閣提出のこの五
法案は、第百五十一
国会に
提出された
法案を基に、
メディア規制との
批判を受けた
基本原則部分を削除し、
行政機関の
職員等に対する
罰則を新設するなど、
報道の自由などの人権や
国民の信頼の確保、法治
行政などに配慮した
与党三党の
修正要求を盛り込んで再
提出されたものであります。
私は、この
法案が自由で民主的な
情報化
社会の基盤をつくるために不可欠の枠組みとなり得ると
考え、一日も早く成立するよう願うものであります。
以下、
個人情報保護法案並びに
行政機関個人情報保護法案を中心に、
政府に対して
質問をいたします。
まず、
政府は、高度
情報通信ネットワーク
社会推進戦略本部、いわゆるIT戦略本部を
設置し、IT化の迅速な推進に努めておられますが、そもそも小泉
構造改革においてIT化推進政策はどのように意義付けられ展開されているのか、そしてこの
分野での
総理の
考える日本の未来像はどのようなものなのか、その構想をお伺いしたいと思います。また、現今の厳しい経済情勢の打開策として
情報通信技術の振興が極めて重要かと思われますが、このような
考え方についても
総理の御
見解をお尋ねいたします。
そして、このIT化推進政策の中で本
個人情報保護法案がどのように位置付けられるのかについて、
細田国務大臣にお尋ねいたします。また、現在、携帯電話やパソコンなどの
情報通信機器は私たちの生活に不可欠なものとなっており、その結果として、普通に生活をしている
個人が本
法案の規制対象となりやすくなるとも
考えられますが、細田大臣の御
見解をお尋ねいたします。
一方、現在、
住民基本台帳ネットワークの本稼働に向けた取組が進められていますが、住基ネットにおける
個人情報保護と本
法案との関連性について、また一部には住基ネットへの接続を停止している市町村があることについての御所見を
片山総務大臣にお尋ねいたします。
さて、今日のグローバル化した
社会においては、
個人情報を
保護する
法制度は世界的にも求められております。このような潮流の中で盤石な
個人情報保護法制を
整備することは言わば世界の常識となっており、先進国の中で十分な
保護法制を
整備していないのは我が国だけとも言われております。私は、日本も
個人情報をしっかりと
保護し、
プライバシーの
権利を守る人権国家であるということを世界に積極的に発信すべきであると
考えますが、
総理の御
見解をお尋ねいたします。
有名なジョージ・オーウェルの小説「一九八四年」を引くまでもなく、また、近隣の専制国家、独裁国家での著しい
情報統制の姿を見ますと、
表現の自由が
いかに大切であるかということがよく分かります。
個人情報保護法制がその本来の
目的を離れ、
政府が
個人を管理するための道具になってしまっては本末転倒であります。
国民の一部には、今回の
法案がそのような管理
社会への第一歩になるのではな
いかと
懸念する向きもありますが、そういった不安を払拭する
総理の
答弁を求めます。
我が国では、戦前戦中の理不尽な言論統制への反省を踏まえ、現行憲法においては
表現の自由には特別の
保護が与えられております。一方、
個人の
プライバシーの
権利は、憲法にこそ明記されておりませんけれども、すべての人権の母体としての憲法十三条の幸福追求権の一部であると理解されております。
このように、
表現の自由も
プライバシーの
権利も、どちらの法益も憲法上の重要な人権でありますが、時としてこの両者は対立することがあるわけです。この二つの関係について細田大臣の
見解をお尋ねします。
また、
金融、
医療、教育、信用
情報など、
個人が余り明らかにしてほしくない
情報を多分に
保有する
分野については、更に
個別法による
取扱いの適正化が必要であると私も
考えますが、それが
整備されるまでの対応について
細田国務大臣にお尋ねいたします。
次に、
個人情報保護法案は種々の
個人情報保護法制の
基本法ともいうべきものです。
法案の第三条、「
個人情報は、
個人の
人格尊重の
理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることにかんがみ、その適正な
取扱いが図られなければならない。」という
理念、
基本理念はすべての者が理解し、守らなければなりません。しかしながら、本
法案が強制力をもって規制を掛けようとしている対象は、あくまで
個人情報を
業務として取り扱う者に限定されております。
そこで、細田大臣には、本
法案の条文の
理念規定と
義務規定との違いについて分かりやすく御説明していただきたいと思います。
一方、
メディアの中には、心ない言論による暴力などにより無辜の人々に金銭では補償できない被害をもたらしたり、青少年の健全育成を妨げるなど不適切な記事を掲載するものも存在しますが、しかしながら、これまで
放送機関、
新聞社、
通信社のほか、雑誌などの
メディアが政官財の重大な事件等をえぐり出し民主
政治の健全な発展に寄与した意義は大きく、今後もその活動は最大限に保障されなければならないと
考えます。
本
法案では明確な
報道の
定義が加わり、週刊誌などについてもここで言う
報道に該当するということは
政府の
答弁でも明らかになりつつあります。しかし、依然として、本
法案中の
主務大臣の関与の
規定によって
国会議員や公務員のスキャンダルが
報道できなくなると
懸念する向きもあります。そこで、雑誌などの
メディアが民主主義
社会に果たす
重要性、それを規制することへの
懸念、これについて細田大臣の明確な
答弁を求めます。
次に、今回
提出された
行政機関個人情報保護法案では、
行政機関の
職員等に対する
罰則が新設されました。しかし、依然として、本
法案に対して、官には甘く民には厳しい規制であるという
批判もあります。そこで、本
法案がそのようなものではないということを
政府は分かりやすく説明する責任があると思いますので、
片山総務大臣の
見解を求めます。
個人情報を最も集積しているのは、国や
地方公共団体等の
行政機関であります。ところが、
防衛庁の
個人リスト作成問題など、
国民の信頼を損ねるような事件が起きたことは大変遺憾であります。どんなに良い
法律をつくっても、それを執行する公務員にモラルがなければ
法律の
理念は絵にかいたもちとなってしまいます。今回の
法案提出を機に、改めて公務員の
個人情報の
取扱いについての倫理の確立を行うべきであるとも
考えますが、
総理の御決意をお聞かせください。
最後に、
個人情報保護法制は、濫用されれば
国民の
権利に重大な
侵害も起こし得るものであります。厳正な運用が求められます。そのためにも、
参議院、本院は良識の府として
政府の運用
姿勢をただし、
国民の不安を払拭する責務があると
考えます。衆議院での
審議に負けないよう、与野党問わず、本案についての議論を深めていこうではありませんか。
政府におかれては、
個人情報保護法制が成立した場合、当然、
国会審議や附帯決議などを尊重し、これに沿う形で厳格に法を実施していくべきと
考えますが、この点についての
総理の御所見をお伺いし、
質問を終わります。
どうもありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇、
拍手〕