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2003-06-03 第156回国会 参議院 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十五年六月三日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月二日     辞任         補欠選任      松井 孝治君     大塚 耕平君      小池  晃君     岩佐 恵美君      大江 康弘君     平野 貞夫君      大脇 雅子君     田  英夫君  六月三日     辞任         補欠選任      平野 貞夫君     田名部匡省君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山崎 正昭君     理 事                 阿部 正俊君                 国井 正幸君                 中川 義雄君                 山本 一太君                 齋藤  勁君                 榛葉賀津也君                 山口那津男君                 小泉 親司君                 平野 達男君     委 員                 愛知 治郎君                 荒井 正吾君                 泉  信也君                 加治屋義人君                 木村  仁君                 椎名 一保君                 田村耕太郎君                 谷川 秀善君                 月原 茂皓君                 福島啓史郎君                 松山 政司君                 山下 善彦君                 吉田 博美君                 池口 修次君                 岩本  司君                 大塚 耕平君                 岡崎トミ子君                 川橋 幸子君                 佐藤 雄平君                 谷林 正昭君                 広中和歌子君                 若林 秀樹君                 遠山 清彦君                 山本  保君                 池田 幹幸君                 岩佐 恵美君                 吉岡 吉典君                 田名部匡省君                 田村 秀昭君                 平野 貞夫君                 田  英夫君    衆議院議員        修正案提出者   前原 誠司君    国務大臣        外務大臣     川口 順子君        国務大臣        (内閣官房長官) 福田 康夫君        国務大臣        (防衛庁長官)  石破  茂君    副大臣        防衛庁長官   赤城 徳彦君        外務大臣    矢野 哲朗君        国土交通大臣  吉村剛太郎君    大臣政務官        防衛庁長官政務        官        佐藤 昭郎君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 信明君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       増田 好平君        内閣法制局第一        部長       宮崎 礼壹君        防衛庁防衛局長  守屋 武昌君        防衛庁運用局長  西川 徹矢君        消防庁長官    石井 隆一君        法務省入国管理        局長       増田 暢也君        外務省北米局長  海老原 紳君        農林水産大臣官        房審議官     山本 晶三君        国土交通大臣官        房審議官     鈴木  実君        国土交通省航空        局管制保安部長  岩崎 貞二君        国土交通省政策        統括官      鷲頭  誠君    参考人        慶應義塾大学総        合政策学部教授  草野  厚君        拓殖大学国際開        発学部教授    森本  敏君        国際政治・軍事        アナリスト    小川 和久君        亜細亜大学法学        部助教授     石埼  学君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(  第百五十四回国会内閣提出、第百五十六回国会  衆議院送付) ○武力攻撃事態における我が国の平和と独立並び  に国及び国民の安全の確保に関する法律案(第  百五十四回国会内閣提出、第百五十六回国会衆  議院送付) ○自衛隊法及び防衛庁職員給与等に関する法  律の一部を改正する法律案(第百五十四回国会  内閣提出、第百五十六回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) ただいまから武力攻撃事態への対処に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、松井孝治君、大江康弘君、大脇雅子君及び小池晃君が委員辞任され、その補欠として大塚耕平君、平野貞夫君、田英夫君及び岩佐恵美君が選任されました。     ─────────────
  3. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 民主党・新緑風会の佐藤雄平でございます。  大臣皆さん方には、連日、本当に御苦労さんでございます。  私も、ここの委員会に所属をさせていただきましていろんな議論を聞いております。どうしても質問者よりも答弁者の方が何となく奥歯に物の挟まった、オブラートだけ、場合によってはあんこのないまんじゅうの皮だけを議論しているような、特にまた法制局答弁等を聞いておりますと、どっちにでも理解できるような答弁で、この委員会国民皆さん方がごらんになっていれば、何か歯がゆさを感じるのではないかなと、そんな思いをいたします。  それも冷静に考えてみると、日米安全保障条約、そして集団自衛権、それからまた周辺事態、さらにまたテロ特措法、それぞれの個別法が絡み合って、その上に日本国憲法の第九条というのがあることが答弁の明確さを欠いているのかな、それだけに本当に大臣また役所の方の答弁がその明確さを、どうしても言えないところがあるのかなと、そんな思いをしてなりません。  まず、通告はしておりませんけれども、このような質疑の中で、今のことを前提として、防衛庁長官外務大臣はどのような感想、今の私の話についてどのような感想をお持ちですか。お伺いしたいと思います。
  5. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 先般、川橋委員の御質疑のときに、もやもや感というお話がありました。恐らく佐藤委員の御質問もそういうようなことではないかと思います。  ただ、私ども政府としてお答えをいたしておりますのは、私は論理的には一貫をしたものだというふうに考えております。日本の、私の所掌で申し上げますと、安全保障政策というのは、理屈からいうと極めて精緻にできていると思っております。ただ、その理屈が非常に複雑なものですから、今御指摘集団的自衛権の問題にいたしましても、行使という概念、そして保有という概念国際法上という概念国内法上という概念、さらに加えて憲法上の概念、そういうような幾つもの要素が絡まり合って非常に議論が分かりにくくなっているのだろうというふうに思っております。  現内閣として集団的自衛権に関する考え方を変えるという考えはございませんが、私は、その辺の理屈というものをもう一度分かりやすく整理をして御提示をするということをいつかいたしませんと、委員おっしゃいますように、どうもよく分からないねということになってしまうのだろうという気がいたしております。  政府として、理論として一貫しておるということにつきましては、私はそれなりの自信を持っております。
  6. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 委員のおっしゃっていることは、感覚的には私はよく分かります。そのような議論がずっとなされているということは、考えてみれば、日本の戦後のずっと歴史を通して安全保障の問題に対する考え方、これが国民のレベルでかなり変わってきているという、その変化の過程で、政府はそのときそのとき、政府の見解、政策も述べてきたということがベースにございまして、そういった意味政策一貫性と、それから国際情勢あるいは国民考え方変化との間でもやもやとした部分というのが今出てきているということはあるかと思います。  ただ、申し上げたいのは、国会というのは、これはシンポジウムや学者の論議の場ではないわけでございまして、こういう可能性こういう可能性がありますという議論学者議論であればできる部分というのはあると思いますけれども、責任を持つ政府立場として、それは単にこういう可能性がありますというだけの議論を申し上げられないところはあるということは御理解をいただきたいというふうに思います。  また、様々な現実的な可能性がある中で、そういったことを先取りをして、こういうことになった場合にはこういうふうにいたしますということをはっきり申し上げられない部分もあるということは、政策を担当する立場としてはやむを得ない部分があるということも御理解をいただきたいというふうに思います。
  7. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 どうしてもやっぱりこれは憲法の問題にかかわってくるのかなと、一言で言うと、私はブレーキとアクセルを一緒に踏んでいるような気がしてなりません。それだけに、やっぱり外交防衛というのは非常に相手のあることで難しい、こっちの正しいと思ったことだけがなかなか通らないというところであろうと、そんな思いをしております。  この事態法議論している中で、ある新聞にこんなことが実は書いてありました。有事議論をするということは、いかに有事事態にならないような外交をすることが大事であるかということを論ずることと一緒だということが書いてありまして、正にそうであろうと。そしてまた、この委員会の中でも度々閣僚席から、起こさないためどうするかというふうなことが最も大事だし、この法律を施行しないようにするためにはどうするかというふうなことをそれぞれ考えているんだと、正にそのとおりだと思います。  今日、官房長官は遅れるわけでございまして、順序が逆になりますけれども、川口大臣に、正に私はその外交の大事さが今ほど問われているときはないような気がしてなりません。  おととし、参議院安全保障でロシアとベルギーに行ってまいりました。ベルギーに行って、ブラッセルでずっと歩いていますと、もう本当にヨーロッパ一つだなと、そんな感じを受けてまいりました。今、参議院国際問題調査会でいろんな話を聞いておりますが、いずれこれは、安全保障ももちろんでありますけれども、その前提となる経済的な安定、これは北東アジア、それからアジア全体を考えた中での日本の役割というのは、私は、一番いいのはヨーロッパのようなEU、それから、場合によってはまたユーロの統一通貨、こんなのが平和の大前提になるのかなと、そんな思いをしてなりません。  二十一世紀日本外交、特に今、日本脅威というのはこの北東アジアにあるわけですから、そういうふうな点を踏まえながら、日本外交、将来の二十一世紀平和外交というのはどういうふうな形でしていかなきゃいけないのか、まず外交の基本と、それからこれからの日本北東アジアアジアを中心とした平和を前提とした外交とはどういうものか、その辺について川口大臣からお伺いしたいと思います。
  8. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 武力行使という事態外交が失敗をしたところにあるということがよく言われますけれども、私もそういうふうに思っています。  それで、日本外交、そのために委員も御指摘のように外交を進めていくということは重要であるわけでございますが、外交の目的というのは我が国の及び我が国国民の平和と安全であると思います。日本は開放された国、資源も少ない国、貿易に依存をする国、国際的に国際社会の一員として活動することによって成り立っている国でありますから、当然に国際社会が平和で安全である、安定的に発展をしているということが重要であると思います。外交はそのために行っているわけでございますし、また、その一端として、委員が御指摘のように、経済における世界全体が発展をし成長しているということが大事であるというふうに思います。この経済発展というのはまた最近問題になっているテロ等脅威との関連でも重要であると思います。  外交努力ということではそういうことをやっているわけでございますけれども、当然に、最近の脅威ということでいいますと、冷戦時代冷戦アジアで終わっていないということが言われておりまして、私もそう思いますが、この地域ではまだ不透明性、不確実性が残っているということへの対応が重要でありますし、それから九・一一に見られるように、今の脅威というのは大量破壊兵器あるいはテロ脅威といった、国ではないアクターによる脅威ということも考えておかなければいけないと思います。  そういった環境の中で我が国が平和と安全を確保していくためには、もちろん外交力も重要でありますし、それから抑止力日米安保抑止あるいは我が国が自ら防衛力を持つことの抑止ということも重要であると思います。この有事法制ということは、そういう意味では一つの、我が国有事においてどのような対応を取るかということを諸外国にも明らかにする、もちろん国内的にも明らかにするという意味で、ある意味抑止となるものでありまして、そのような事態にならないように我が国が行っていく努力の一環であると私は考えております。
  9. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 本当にそうだと思います。先般の「戦場のピアニスト」、あの映画見さしてもらって、また、去年まで沖縄北方委員長をさしてもらって沖縄へ行って、例のひめゆりの塔、あの状況を見たときに本当にあの悲惨さは絶対残しちゃいけないな、外交、本当に頑張っていただきたいと思います。  次に、この事態法成案となったとき、これは当然のことながら近隣の国にいろいろ御説明というか御理解をいただきたいという、理解をしてもらわなきゃいけないような状況になると思うんですけれども、まず、今この有事法審議をしていることについて、近隣韓国にしても中華人民共和国にしても、どのような思いをしているか。さらにまた、その成案について外務省としてはどのように説明していくのか。それは、最近自衛隊の評価というのは非常に世界的に高まっておりまして、これも石破長官が就任してからにわかに高くなったのかなと思ったら決してそうでもないようでありますけれども、しかし私はそういうふうな意味で、韓国にしても中国にしても、自衛隊にする、ある意味では懸念することというのはあると思うんです、今度の法案ができ上がれば。やっぱりその辺も踏まえながら、どのように外交の中で説明していくか、大臣から御所見を願いたいと思います。
  10. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 我が国有事法制について近隣の諸外国説明をしていくことは、委員の御指摘のとおり大変重要なことだと思います。これを持っているということは、むしろ有事のときに我が国がどういう行動を取るかということについての透明性を高めるという意味があると思います。無用な誤解又はそれに起因する摩擦があってはいけませんので、我が国は、東京において、あるいは出先の大使館を通じて、近隣の諸外国にはずっとこの有事法制については説明をしてまいっております。そして、昨年の四月に武力攻撃事態対処法制関連法案国会提出をされて以来、中国韓国からは随時関心が表明されているということでございますが、決してそれは反発ではないと考えております。  具体的に細かく申しませんけれども、昨年の三月以来、様々な場で、例えば日中安保対話の場で、あるいは防衛庁長官から韓国国防部長官に対し、あるいはARFというASEANの地域フォーラムの場で随時説明を重ねてきておりますし、この努力は今後とも続ける必要があると思っております。
  11. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 まだ官房長官お着きになっておりませんので、防衛庁長官にお伺いをさせていただきます。設問、質問が前後すると思いますけれども。  長官が、官房長官がお見えになりましたから、元に戻りましょう。  また、官房長官就任歴代最長不倒距離ということで、昨日はおめでとうということでございましたが、本当に私は御苦労さまと申し上げておきたいと思います。  先般、二十九日、公聴会で実は横須賀に行ってまいりました。市長さん始め商工会議所の副会頭、それから弁護士さんとか防大助教授、そして隊友会の会長のいろんな話を聞いてまいりまして、横須賀というのは総理大臣地元でありまして、そこの市長さんでさえも、この有事立法には賛成だがと言いながらも、国会質疑また内閣からの説明で分かんないことがたくさんあると。その一つとして、この予測事態というのは具体的にどういうことですかということを聞いておりました。  私は、市長さんだから何も国の予測事態にそんな関心を持つことはないんじゃないかなと思いましたら、これ、現実問題としては、国も県も大変なこと、事態になると思いますけれども、役柄、私はやっぱり一番苦労するのは、地元市町村長というのは非常に苦労すると思うんです、実務部隊として。  そういうふうな中でやっぱり、地元市長は市民から現実問題としてその武力予測というのはどういうものだと聞かれると全く答弁ができようがないと言っておりまして、できるんであれば何かQアンドAを作ってもらいたいというような話もありまして、さらにまた、昨日阿部委員の報告の中でちょっと足らないところがあったかなと。それは、武力攻撃と同時に、市町村長が実は困っているのは、これは国民保護法制一体であれば私は理解したと思うんですけれども、残念ながら国民保護法制がこれ終わってからの議論になるわけで、ただ、市町村長サイドからすれば、個人の財産の制限とか私権の制限があるわけですから、同時並行的にそれを考えていかないとなかなか国民理解を得ることができないということだと思うんです。  ですから、国民保護法制と、さらにまた、これ陳情めいたことになるんですけれども、市町村のこの事態における臨時支出について国はどうやって面倒見てくれるのかなと。地方議会とか市町村長やった者は、一番最初ぴんと来るのが、この臨時的な支出、後で国がどのように面倒見てくれるかということだと思うんです。  そんなことがまずありましたので、冒頭官房長官お願いというか、当然これからの国民保護法のときの中で、同時並行的にやっぱり自治体の意見をよく聞いていただいて、自治体が協力するということは国民が協力するということになりますので、頭に入れながら進めてもらいたいということのお願いをまずしておきます。  次に、本論に入ります。  今もありましたように、本当に私も、傍らここずっと聞いておりますと、予測事態というのは実に分からない。分かるのは、場合によってはミサイルが飛んでくるかな、場合によっては海の船から上陸してくるかな、場合によっては飛行機から爆弾を落とされるかな、そんな事態予測ということになるわけでありますけれども、まず冒頭にその予測事態についての所見をお伺いし、さらにまた、その予測事態を認定するということは、これはもう当然のことながら情報の下で認定するということになると思います。  残念ながら、日本外交インフラというのは世界で一番希薄である。となってくると、私は、その情報をどこに頼るかということが大変大事なキーを握ることになるのかなと。多分に、ほとんどこれはアメリカからの情報になると思いますけれども、特にまた、北東アジアというふうなことになると、韓国中国も場合によっては迷惑を掛けるようなことになるかもわからぬ。となってくると、その情報のいろんなそごがあったときに、だれがどの情報をきちっと把握して、どういうふうな判断をするかということがうんと大事なことになるのかなと。  あるこれは某県の知事が、これも言っている話が、要するに、天気図日本にはないと。だから、場合によっては情報というのは天気図一緒に台風も一緒に持ち込むことになりはしないかと、そんなこともやゆされておりますので、主体的な判断をする基準というのはどういうことなのか、この件について答弁を願いたいと思います。
  12. 福田康夫

    国務大臣福田康夫君) 委員から、公聴会における質疑、首長の疑問点ですね、そういうようなことに関連して幾つか御質問ございました。  確かに、予測事態の定義とかそういうことについては、難しいといえばそれは難しい。そういう事態が目の前にあるというわけでない、なかなか理解しにくいところもある、要するに、頭の中で考えたことであるということになるわけで、しかし、そういうことは現実になり得るというような事態を想定した上でのこの法制でございますので、それはそれで、できるだけ分かりやすく説明するという、そういう責務はあるわけであります。  横須賀市の市長さんですから、当然、国民保護という、それから地方自治体責務とかいったようなことについての関心が非常に強いということもございますので、委員の御指摘のとおり、それは国民保護法制一体であれば、それは分かりやすいということになります。しかし、今回提案させていただいておりますのは、この有事に対する対応の仕方についての基本的な枠組み、それから考え方、そういったようなものを提示をしているということでございますので、この点の御理解はいただいておるものだというように思います。  この基本的な枠組みに関する有事法制、これが成立しまして直ちに国民保護体系整備に努めるということでございますので、これについてはできるだけ早くその整備ができるように努力をしてまいりたいと、こういうように思っております。  そこで、具体的に幾つかございましたけれども、予測事態は分かりにくいと、こういうことでございます。予測事態というのは、武力攻撃事態には至っていないと。至っていないけれども、事態が緊迫し、武力攻撃予測されるに至った事態であるというように今まで説明を申し上げている。そういうふうに言うから、もうなおさら分かりにくいぞと、こういう話なんでありますので、もう少し具体的に申し上げるという努力もいたしております。  その説明を少し突っ込んで申し上げますと、これはいろいろな想定がございまして、私は、これから申し上げることが、これがすべてということではもちろんないし、そういうように申し上げても、実際にはそうでなかったということもこれはあり得るという前提で、それはそのときのいろいろな情勢判断して行うことでございますので、そういう前提でこれから申し上げますけれども。  例えば、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められる事態、に至った事態というのは、それは、そういう事態には至っていないけれども、その時点における我が国を取り巻く国際情勢の緊張が高まっている状況下で、そしてある国が我が国への攻撃のため部隊の充足を高めるべく、要するに軍隊をどこかに集結するとか人数を増やすとかいったようなことですね、要するにそういうような他国の情勢、緊張が高まっているというそういう情勢、それから、そのために予備役の招集とか軍の要員の禁足、非常呼集を行っていると、こういうようなことも入ってくるわけでございますけれども、そういうようなこととか、それから、我が国を攻撃するためと見られる軍事施設の新たな構築を行っているということなどから見まして我が国への武力攻撃の意図が推測されると、そして、我が国に対して武力攻撃を行う可能性が高いと客観的に判断される場合、これは当該事態に該当するということでございまして、客観的に判断される場合ということでございますから、じゃ、その客観的に判断する根拠は何かと、こういうふうに言われるとまたいろいろ説明をしなければいけないということで、より細かいことを申し上げると切りがないということはあるんですよ。あらゆるケースというものが想定しなければいけないということでありますので、今現在、その程度の説明をさせていただいておるということでございます。  そういうことで、そういう判断をじゃだれがどうするのかということになりますけれども、これ、今のような総合的な判断を行うわけではございますけれども、このこういう事態の認定は関係省庁が相互に緊密な関係を保ちながら必要な情報収集、分析、評価するということになります。日米間の情報交換とか政策協議を通じて得られます米国からの情報だけということでなく、近隣諸国からの情報も、これも有益な情報であるというように考えます。これはまた、そういう事態がいつ来るのか、そのときの国際情勢いかん、そういうようなことに関係をしてくるわけでございます。  また、そういう場合に、もちろん防衛庁外務省というのは大変重要な役割を果たすわけでありますけれども、政府部内において、内閣官房を中心として関係省庁間の緊密な関係を保つと。それは防衛庁外務省、それはもうそれぞれ異なった情報もあるわけでございますので、その情報の比較、分析、評価も含めまして、安全保障会議を経て最終的には閣議決定をすると、こういうことになるわけでございます。  いろいろな事態が想定されるものですから、そういう個々の事態においてどういう判断をするかということは、そのときの情勢判断するしかないということであるということを御理解を賜りたい。しかし、常々、その判断を、的確な判断をするための情報収集、分析等は平時においても常時行っていかなければいけないものであるというように考えております。
  13. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 情報がすべてを私は握ると言っても過言ではないかなと。特に私、外務省防衛庁情報に違いがあったりしたらもう大変なことになる。その一方の話も、一方の話も実は私はよく分かると思うんです。外務省外務省で本当に最後まで外交努力をしながら、臨戦、戦い、有事にならないようにしなきゃいけないというふうな一つ外務省としての見識があるし、防衛庁防衛庁として、万が一その外務省情報が間違っていたらこれ日本が壊滅するというふうなことにもなりかねないと。非常にこの辺の調整というのは、今、官房長官のおっしゃるとおり、難しいところがあろうかなと。至らないような、事に至らないような是非外交防衛をしていただきたいと、そんな思いをします。  時間がどんどん過ぎてきましたので、ちょっと順番、はしょるところもあるかと思いますけれども、お許し願いたいと。  次に、こういうことです。日本日米安全保障条約の中でアメリカの基地がたくさんあります。仮に米国とAという国が戦争状態になったと。そのときに、そのA国が日本の米軍の基地に攻撃をしてきた、またしてくる予測が生まれたという場合、これは、日本のいろんな個別法の中で、法律要綱は、今度の事態法というふうなことを行使していくのか。しかしながら、逆に相手側とか世界から見ると、それは場合によっては集団的自衛権を駆使しているんじゃないかと思われる可能性もあるかとも思うんですけれども、この辺についての一つの御所見をお伺いしたいと思います。
  14. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、我が国として個別的自衛権の使用以外の何物でもございません。アメリカ軍の基地が日本国にあり、それをA国、今の委員の御設定でいきますとA国が攻撃をいたします場合に、それは日本の領土に所在をいたしておりますアメリカ軍の基地でございますから、それは個別的自衛権ということに相なるわけだと思っております。  これが集団的自衛権に見えるかというふうな御指摘でございますが、それは日本の領土に対します攻撃であります限り、それに対しまして仮に自衛権の発動の三要件を満たして我が方が武力攻撃を、武力行使をいたします場合は、すべからく個別的自衛権に基づいて行うものでございます。
  15. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 それは長官、あれですかね、法律の優先順位という意味ですか。
  16. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、周辺事態法や今回の対処法の優先順位というものではございません。その事態がどの状況に適合しておるかということでございまして、その場合にはもう周辺事態でも何もなく、つまりそのまま放置すれば我が国の平和と安全に影響を与える事態というものではなくて、我が国に対する攻撃があるわけでございますから、これは対処法に従って行動することになるものと存じます。
  17. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 本当に法律はなかなか理解できないところがあるんですけれども、これまたはしょりますけれども、となってくると、今度は専守防衛というのがありますよね。  専守防衛の中で、この事態法審議している中で、私は、ミサイルが飛んでくることを前提とすれば、今までの議論の中でもミサイルは七、八分で着弾するという話が何回かありました。となってくると、いろんな法律がそこに絡んだ中で、私は、撃ってきて日本海、迎撃するということもあるんでしょうし、また着弾する前にそれを破滅するということもあるんでしょうけれども、当然のことながら、これはもう現実問題としては、その予測されたところに先制攻撃というか、これをしなかったら、実は私はこの法律が有効しないんじゃないかなと思うわけですけれども、この辺は専守防衛との絡みでどのような解釈をするのか、御説明願いたいと思います。
  18. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これは繰り返しの答弁で恐縮ですが、我が国において先制攻撃という概念はございません。これは本当によく間違って報道されることもございますが、私どもは、自衛権の行使といたしまして、三要件を満たした場合に限り武力行使ができるということでございます。  ただ、昭和三十一年の答弁を何度も紹介を申し上げておりますが、それが、着手ということが認められるような場合には自衛権の三要件を満たす場合もあり得るであろう。それは、ほかに手段もなく最小限にとどまるべきというものも含めまして、そういうような判断に資する場合があるであろうということでございます。  七分、八分で飛んでくるときに、それじゃ何ができるのかねと、そしてまた能力的にあるのかねという御質問もこの委員会でも幾つかございました。私どもはそのような能力を有しておりません。海上自衛隊にいたしましても、航空自衛隊にいたしましても、適地攻撃能力というのを有しておらないわけでございます。それはアメリカ合衆国の打撃力にゆだねるということになっておるわけでございまして、アメリカ合衆国がそういう場合に我が国と緊密な協議をしながらどのように打撃力を行使するかと、そういう問題だと思っておるわけでございます。
  19. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 それは、長官日米安全保障条約ということですか。
  20. 石破茂

    国務大臣石破茂君) さようでございます。
  21. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 次に、情報をいろいろ初期の段階で私は判断するのが事態対処の専門委員ということになるのかなと思います。ですから、これはもう相当の各省庁の専門官、また第三者も含めるのかどうか分かりませんけれども、これはもう大変な私は役割を果たす委員会ではないかなと思うところでありますけれども、まだその詳細についてはまだ決まっていないようでありますが、まずこの専門委員会の位置付けと、それから構成メンバーどれぐらいになるのか、どれぐらいのやっぱり権限を持たせるのかということについてのお伺いをしたいと思います。
  22. 福田康夫

    国務大臣福田康夫君) 安全保障会議設置法の改正案に規定されております事態対処専門委員会は、これは内閣官房長官をこれを委員長といたします。そして、その委員につきましては内閣官房及び関係省庁の中から局長級以上の関係者を任命すると、こういうことを想定しておりまして、委員の御指摘のとおり、これからそういう具体的なことは決めていくことになっております。  しかし、関係省庁ということでありますので、安全保障上の必要な部署ということになりますと、大体推定できるわけでございますね。そういうところの局長級若しくはそれ以上の者と、こういうような形になる。どういう職種かということをこれから具体的に定めていかなければいけないと、こういうことになっております。  いずれにしても、これ緊急事態でございます。ですから、こういう事態にどういうような対処をするか、その前に認定をするかということがございますが、対処をするかという、そういう基本的な方針を策定するために、これはもう時間的制約が掛けられているという中で行うわけでございますから、これは大変な緊張感を伴う仕事になるかと思います。そういう意思決定につきまして、安全保障会議、これは今申し上げました事態対処専門委員会がいろいろな情報とかそういうものを上げる安全保障会議、その安全保障会議の果たす役割、これはもう極めて重要でございまして、この今申し上げております対処専門委員会は、これはもう正に迅速的確な意思決定ができるように、平素からいろいろな準備をしていかなければいけないということでございます。
  23. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 次に、基本的人権に移っていきます。  本法案を作るに当たって、与野党の中でいろいろ基本的人権についての議論がありました。また、いろんなマスコミの中でも、何で基本的人権というのが憲法冒頭に書いてあるのに改めてここで書く必要があるのかと、そんな記事も何度か読ませていただきましたけれども、私は、有事の際というのはもう本当に緊急さを要しているわけでありますから、当然のことながら、基本的人権なんという、更々場合によっては頭の中から薄れることもあるかなと。逆に、だから私は基本的人権というのを冒頭に入れておくことが大事であろうと、そんな思いをしておりますし、また今度の立法というのは、一面ではやっぱり軍事的な側面、それと同時に危機管理の側面、しかしながら、この議論を通して国民サイドに、私はやっぱり自衛隊とか軍事的な側面の方が強力に映っていると思うんです。  そういうふうな中で、私は、この有事立法が運営される前提として、国民理解ということになります。だからこそこの基本的人権ということは私は大事であるかなと。この基本的人権を入れたことによって国民のこの有事に対する理解が非常に深まったような気がしておりますけれども、この点についての官房長官の御所見をお伺いしたいと思います。
  24. 福田康夫

    国務大臣福田康夫君) 基本的人権につきましては、政府の元々の案においてもそういうような規定はあったわけでございます。しかしながら、国民保護という観点から、特に基本的人権を、これを尊重しなければいけないというそういう理念を更に強化するというために、御党から提案のありましたこの基本的人権についての規定を強化、更に強化という意味で盛り込んだわけでございます。  ですから、今、ただいまの委員の御指摘の点も踏まえまして、国民の基本的人権が今後の国民保護法制等を策定する上において最大限尊重されるように十分配慮しながら検討してまいりたいと思います。
  25. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 国民保護法制と、それから危機管理の基本法、そして管理庁、これについてお伺いをしたいと思います。  先ほども公聴会の話をさせていただきましたけれども、これ実態、現場としては一日も早いこの保護法制を作ってもらいたい。それは現実問題として、有事になったときの市民の、また国民の避難、それからまた生活物資を現実問題としては対応するのが市町村になるわけであります。もちろん、その間に都道府県の知事ということはありますけれども、これはもう本当に今議論をしてもらわないと、繰り返しますけれども、どういうふうにしていいか分からないというのが現実問題でありますので、この法制をする中で、繰り返し、再び繰り返しますけれども、市町村との同時並行的な話を聞きながら、これはもう内閣として何回かもう聞いておるという、想定問答の中でありましたけれども、これも十分入れながら進めてもらいたいと。  それとまた、これは県の立場というのは極めてこれ宙ぶらりんな立場になるんです。というのは、現実問題として、国から指令が出る、県が受ける、県がまた市町村にそれを発令するわけでありますけれども、県というのは実は現実問題として足を持っていない。持っているのは消防。これは月給をもらっている消防職員でありまして、ただ現実問題としては、これは後でも触れますけれども、地方に行きますと消防団の方がはるかに活動をしている経緯もある。また、持っているとすれば今度は警察、例えば福島県なら福島県警ですから、福島県の警察は福島県の知事の指揮官の下かというと、現実問題としては警察庁があって、警察庁の方がこれ親方であるという認識に当たるのかなと思いますけれども。  となってくると、まず都道府県の知事のこれ役割というのは何なのかと。そしてまた、市町村長の役割とは何なのかと。これは国民保護法制と同時にきちっとしなきゃいけないと思うのでありますけれども。例えば、これも通常の災害のときというのは、これは私はもう慣れていると思うんです。ただ、やっぱり有事のわけですから、当然避難する場所も今までのような場所では良くないところもあると思うんです。それはやっぱり内閣が、どういうふうな条件を満たしたところが避難する場所で適当であるかというようなことも、もう時間も私はないと思うんですけれども、その点についてはもう既に自治体の方にはサウンドしておく必要があるのかなと、そんな思いもしますけれども、その点についての御所見をお伺いしたいと思います。
  26. 福田康夫

    国務大臣福田康夫君) 委員指摘のとおり、自然災害があるときに武力攻撃事態が起こる、これはもう十分考えられることですね、その逆のこともあり得るかもしれぬし。ですから、そういうような様々な事態対応できるようにしなければいけない。そのためには、緊急事態対処の中核を成します地方公共団体等を含めたそういう組織の在り方についても、既存の組織や法令との関係などに留意をしながら検討していかなければいけないと思います。  また、緊急事態にかかわる基本的な法制の検討に際しましては、警察、海上保安関係法、自衛隊法、それから災害対策基本法、消防法等の既存の法令との関係などの問題についても、これを国民に分かりやすく説明をしていく必要があります。そうでないとまた成果が上がってこないというように思いますので、十分な議論が必要だと思います。  それから、武力攻撃事態においては、国や地方公共団体の関係機関が相互に連携協力する、そして万全の措置が講じられることが必要でございます。御指摘のようないろいろな消防の問題とか警察のことも、また自衛隊などによります緊密な連携と、これは対処措置の円滑な実施を確保するために重要なものでございます。例えば、住民の避難の誘導につきまして市町村が中心的な役割を担うということになりますけれども、消防、警察、自衛隊と協力して必要な措置を実施することが必要となるということもございますので、これらの関係機関が緊密な連携を取ることができるように、市町村長を中心に調整を行うための仕組みについて検討をするというようにしたいと思っております。  武力攻撃事態への対処全般を通じて関係機関の連携は大変重要であり、今後、事態対処法制整備する中で詳細に検討してまいりたいと考えております。
  27. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 消防庁長官、来ておりますよね。おとといですか、あれ、神戸で火災があって消防署の職員が三人殉職なさって。  もう本当に、消防署の職員ももちろんですけれども、消防団、地方の消防団というのはもう大変苦労するんです。特に、私なんか福島県の会津ですから、官房長官殿、消防団の最近の仕事というのは、老人の介護もあるんですよ。群馬県も雪が降ると思いますけれども、冬になると屋根の雪降ろしまでやっているんです。  最も今困っているのは、国土交通大臣お見えになっておりますけれども、今、一極集中でしょう。今、六本木ヒルズなんて行くと、ますますこれ、地方の青年が東京に集まる要素をどんどんどんどん作っているんです。ですから、民間消防団の平均年齢というのはずっともう高くなって、もう老人が入っているようなところもある。そんなことを考えると、消防団の、民間消防団の役割というのは地方において物すごく過重になっている。  そこにもってきての今度の有事の話になりますと、今、官房長官が言った中で、自然災害とは違った要素が出てくるわけですから、これはもう今からでもやっぱりひとつ訓練、消防団と警察というのはもうしょっちゅう一緒なんです、一体なんです。ところが、自衛隊と消防団というのは相当大きな災害でもないとなかなか共同の訓練をしないというふうなこともありますので、消防団、警察それから自衛隊、この辺の訓練について何か消防庁長官としての考えと、今どのような対応になっているか教えていただきたいと思います。
  28. 石井隆一

    政府参考人(石井隆一君) お答え申し上げます。  事態対処の消防の役割につきましては、現時点におきまして、国の避難措置の指示を受けた都道府県の避難の指示の下、避難住民の誘導を行う、あるいは警報の伝達、消火活動、救助活動、重傷病者の搬送といったような役割を想定をいたしております。  御指摘がありましたように、常備消防の職員だけではなくて、特に地方におきましては地域の消防団が常備消防と連携しながら一定の役割を担っていただくことを想定しておるわけでありまして、そういった際に、お話に出ましたように、こうした消防を中心とした市町村の活動を警察あるいは自衛隊等が補完をしていただくというような関係になると思います。今、官房長官からもお話にございましたように、市町村を中心に消防とこれらの関係機関との間で必要な調整を行うといったようなことも考えているわけでございます。  具体的な国民保護法制の在り方については今後具体的に検討してまいりますので、常備消防なり消防団の役割についても関係者の意見をお聞きしながら検討してまいりたいと思います。  また、お話に出ました訓練につきましては、その中で具体的に検討していきたいと思いますけれども、例えば昨年ワールドカップサッカーなんかがございましたが、ああいった会場の対策につきましても、警察ですとか医療機関とか、あるいは時には自衛隊とか、その状況に応じまして従来からいろんな訓練をやってきております。ですから、この国民保護法制につきましても、全体のスキームそれから具体的な対策をこれから進めていく中で当然検討していくことになると思っております。
  29. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 時間も少なくなってきましたので、もう二つ──もう一問だけやらさせてください。  特に要望は、電気というのはこれ福島県から二五%来ているわけでございまして、今ストップしておりますけれども、原発地域でありますから、もう本当に原発なんというのは一番ねらわれるところです。  もう一つは、やっぱり国土交通大臣に何回か私委員会でも、答弁しておりますが、備えあれば憂いなしと総理が一生懸命言っておりますけれども、備えがないとやっぱり憂いがありますから、そういう意味で私はやっぱり一極集中の今の都市体制というのは一番焦点になる、行政からすべて機能的に集まっているので。そういうふうな中で、官房長官も含めて私はやっぱり国土政策というのを、いざ攻められたときの、まさか人のいないところには攻めていかないと思うんです。
  30. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 佐藤君、時間が来ております。
  31. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 ですから、そういうふうな中で、国防も考えた国土政策を進めていただくことをお願いしながら、質問を終わります。  ありがとうございました。
  32. 小泉親司

    ○小泉親司君 日本共産党の小泉でございます。  引き続き、法案に関する質問をさせていただきます。  まず初めに、米軍の嘉手納ラプコン、この問題にかかわる問題についてお尋ねをしたいと思います。  五月の二十九日の日に、外務省の発表文書によりますと、政府沖縄の民間空港を管轄いたします那覇の航空交通管制部を共同使用にいたしまして、この中に米兵を立ち入らせて民間機と米軍機の管制を行わせました。このことについて、これは沖縄返還後初めてのことで、米兵が立ち入って、那覇の航空管制部に立ち入って管制をするというのは初めてのことで、これ外務省の発表文書によりますと、米軍がこのレーダーを更新する、そのために米軍が移動式レーダーを持ち込んでこれを管制する、しかし、もしもレーダーの、移動式レーダーの不具合が生じた場合に困るので、このバックアップ措置としてこれをやったんだというふうな御説明でありますが、結果はこの米軍はどうだったのか、米軍はなぜこういうことを要求してきたのか、まず初めにお尋ねしたいと思います。  外務大臣外務大臣外務大臣今お答えしようとしている。
  33. 海老原紳

    政府参考人(海老原紳君) 申し訳ありません。私から事実関係をお話しさせていただきますけれども、結果としてどうであったのかという事実関係でございますけれども、これは正に小泉委員がおっしゃいましたように、今回の措置は民間航空に万が一にも支障が出てはいけないということで、私専門家ではありませんけれども、移動式のレーダーというのは固定式のレーダーと比べると具合が悪くなる率が高いということで、そういうふうになったときに民間航空へ悪影響が出ないようにということでそういう体制を取っていたわけですけれども、結果といたしましては、移動式レーダーに不具合が生じたということで那覇のレーダーを米軍は使用したということでございます。  理由につきましては、今申し上げましたように、民間航空の安全を図るため、レーダーの更新中に万が一にも支障が出てはいけないということでそういう体制を取ったということで、それ以外の理由はございません。
  34. 小泉親司

    ○小泉親司君 移動式レーダーに不具合が生じたから入ったんだとおっしゃいましたけれども、私、運輸省に聞きましたら、元々移動式レーダーは不具合であった、しかしそれが直らなかったので結果としてこうなったんだというふうに私はお聞きしております。これは、私はこの外務省の発表文書というのは非常におかしい。  そのことで私、お尋ねしたいんですが、米軍はこれまでも嘉手納ラプコンのレーダーについて更新をしてまいりました。これまで何回かやったそうですけれども、これまで那覇航空管制部を使用して嘉手納ラプコンの運用をし続けたと、こういうことはこれまでに例が、外務大臣、あるんですか。
  35. 海老原紳

    政府参考人(海老原紳君) これは、あくまで先ほど申し上げましたように民間空港の安全というものを第一に考えるということで、前回の更新は、今、小泉委員がおっしゃいましたようにありまして、九三年に行われております。その後、御記憶のことと思いますけれども、九九年にレーダーに若干の不具合が生じまして、そのときに民間航空に若干の混乱が生じたということもありまして、今回その反省に立ちまして、日米間で十分協議をしながら、更新に当たっては万が一にもそのような混乱が生じないようにということで万全を期したという次第でございます。
  36. 小泉親司

    ○小泉親司君 私、そういうでたらめな説明をしちゃまずいと思うんですよ。私、運輸省に聞きましたら、元々この移動式レーダーは不具合だった。本来であれば、移動式レーダーで九三年に、先ほど北米局長が言ったように、九三年のレーダーの更新のときには全く運輸省は知らない。これは外務省は知っていたかどうか知りませんが、知らないで米軍が独自にこれ運用し続けたんです。ですから、今回がこれは初めてなんですよ。このことは運輸省、お認めになるんでしょう。(「運輸省じゃないよ、国土交通省だよ。」と呼ぶ者あり)国土交通省。失礼。
  37. 岩崎貞二

    政府参考人(岩崎貞二君) お答えいたします。  九三年にその嘉手納のレーダーが更新されたときに移動用レーダーを使ったかどうかにつきましては、そのときには順調に飛行機が遅れなく飛んでおりましたので、その事実関係まで把握をしておるわけではございません。  それから、移動式レーダーについて不具合があったというのは、今回の事件、今回の件でございますけれども、移動式レーダーの調整に少々不具合があって直すという作業を、修正するという作業を米軍がやっておられたということで聞いております。
  38. 小泉親司

    ○小泉親司君 いろいろと私、調査いたしましたけれども、これは周到な準備があれば、米兵がわざわざ那覇航空交通管制部に立ち入って民間機と米軍機と一緒に管制しなくても、これは那覇航空管制部だけでも十分な時間的余裕があって準備があればできるんだというようなお話でありました。  私、米軍も相当長期間にわたって、これ要請してから訓練などをやっていますね。これはどのくらいの期間米軍は訓練して、今度は米兵が那覇航空管制部に立ち入ったんですか。
  39. 岩崎貞二

    政府参考人(岩崎貞二君) お答えします。  今回は、那覇航空管制部の方に、先週の土曜日から那覇航空管制部のレーダーを使って米軍が運用いたしましたけれども、たしか、正確にはちょっと覚えておりませんけれども、二、三日前から米軍の管制官が入って習熟訓練を行ったと承知しております。
  40. 小泉親司

    ○小泉親司君 要請があったのはもっと前でしょう。それは米軍から要請があったのはずっと前なんじゃないですか、どうですか。  それから、技術的には十分な時間的余裕があれば那覇航空交通管制部だけでも、米兵がなくても、民間機の管制とそれから米軍機の管制というのは可能なんじゃないんですか、技術的な問題ですよ。
  41. 岩崎貞二

    政府参考人(岩崎貞二君) まず那覇航空交通管制部の管制官が管制ができたかどうかということにつきましては、それは残念ながらできません。
  42. 小泉親司

    ○小泉親司君 なぜですか。
  43. 岩崎貞二

    政府参考人(岩崎貞二君) 航空管制というのはその地域においてどういう飛行機がどのように飛んでいるかということを十分トレーニングをしないと、十分知識がないとできません。  したがいまして、私どもの管制官は、その今の嘉手納の米軍が管制をしているエリアについてはそうした訓練をしておりませんので、私どもの管制官が米軍に代わって管制をするということはこれは安全上問題があります。したがって、そういう選択はしておりません。
  44. 小泉親司

    ○小泉親司君 私が言っているのは、時間的なそういう訓練をすれば、米軍だって逆に訓練したんでしょう。だから、逆に、あなた方が米軍の問題について訓練をするという時間的余裕があれば十分技術的には可能なんでしょうとお聞きしているんです。  私は、今おっしゃっていることは、当然嘉手納ラプコンが、沖縄の場合についてはあなたも御承知のとおり、皆さんも閣僚も御承知のとおり、米軍が全部米軍機も民間機も仕切ってやっている、そういう大変属国的な状態があるから、主権を侵害された状態があるからそういう問題になるわけであって、技術的にもし訓練があるというのならこれは可能なんじゃないですか。時間がないので一言だけ答えてください。
  45. 岩崎貞二

    政府参考人(岩崎貞二君) 私どもの管制官があるエリアで管制をするにはおよそ半年から一年ぐらい習熟訓練をしてから行います。  今回、米軍から嘉手納のレーダーが停波をするという連絡を得ましたのは一月弱前でございますので、一月強前でございますので、その時間的余裕で私どもが代わってやるということは安全上、技術上不可能でございます。
  46. 小泉親司

    ○小泉親司君 ということは、私は時間的な余裕があれば、つまり非常に周到な準備をすれば技術的には可能だということだと思います。  そこで、なぜこれ米兵が立ち入ったのか、私、日米ガイドラインでは周辺事態の際に日米が航空管制及び空域調整を行うことになっている、そういうことになりますと、米兵の、米軍のニーズがあった場合については武力攻撃予測事態、こういう場合などで今回のような民間航空の管制を担当する航空管制部に米兵が立ち入ってこの管制を行うということも当然想定されると思うんですが、それは認められるんですか。外務大臣どうですか、外務大臣
  47. 海老原紳

    政府参考人(海老原紳君) これは、今回の場合には地位協定の第二条四の(b)でいいますいわゆる二四(b)でございまして、ちゃんとこういう手続を地位協定に基づいて施設・区域として米軍に提供を一時的にいたしまして、それに基づいて当然米側は施設・区域に立ち入ったということでございまして、そのことと武力攻撃事態あるいはそのおそれの事態においてどういう対応をするかということは全く別のことでございます。
  48. 小泉親司

    ○小泉親司君 私は別なことだなんて、同じことだなんて一言も言っていませんよ。そういう武力攻撃予測事態でそういう米軍が民間航空の担当する航空管制部に入って米軍機や自衛隊機や民間機などを管制する、つまりそういう場合も当然予想されるんじゃないんですか。外務大臣どうですか、防衛庁長官
  49. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 今、北米局長が言いましたように、いずれにしてもこういうことについては、これは合同委員会、失礼しました、日米地位協定の第二条四項一に基づいてできることになっているわけでございまして、それはまた、その有事についてどのような枠組みで物事を行うかということについては、ずっと申し上げているように、今後そういった事態に対しての法制を検討するということでありますけれども、いずれにしてもその有事でない今についてもできるということでございます。
  50. 小泉親司

    ○小泉親司君 ということは、有事においても米軍のニーズがあればできると、こういうことですね、外務大臣
  51. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 必要があればそういうことだと考えます。
  52. 小泉親司

    ○小泉親司君 私、今回の問題は、外務省の報告では移動式レーダーの不具合があるからバックアップだというのが最大の理由であった。しかし、実際にはもう不具合は始めから生じていて、実際に米兵が立ち入るということを、民間航空機を担当する那覇航空管制部に立ち入る、これが先にありきであって、このことがやはり私は米軍の大変重要な目的にあったんじゃないかというふうに思います。その意味で私は、この那覇航空管制部の問題については嘉手納ラプコンの問題が密接に関係する、嘉手納ラプコンについてはもう既にアメリカは日本に移管するということを二〇〇〇年ですか、もう既に決定されておりますけれども、一体私たちはこれは直ちにこの嘉手納ラプコンについては返還すべきだと、その作業を私は急ぐべきだと思いますが、その点外務大臣に最後にお尋ねを、この点について最後にお尋ねいたします。
  53. 川口順子

    国務大臣川口順子君) これにつきましては、委員がおっしゃられましたように、平成十二年の三月の時点でコーエン前国防長官から返還に同意をする旨の発言があったということを受けまして、今民間航空分科委員会の下に専門家レベルの特別作業部会、これが設置をされまして、具体的な問題について検討をいたしております。  外務省といたしましては、国土交通省と協力をしながら、今後ともこの件については鋭意取り組んでまいりたいと考えております。
  54. 小泉親司

    ○小泉親司君 次に、日米統合演習の問題についてお尋ねいたします。  まず、防衛庁長官にお尋ねしますが、今回のいわゆる有事関連法が成立すると、日米の共同軍事演習などにも関係省庁や自治体、こういうものを参加させた演習をやるというふうな方向になるんですか。
  55. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 今後どのような演習をするかということは検討してまいりたいと思います。今ここでこういう形になるということは確たるお答えはいたしかねます。
  56. 小泉親司

    ○小泉親司君 しかし、そう言いますが、実際に私、米軍と、在日米軍と藤縄自衛隊統合幕僚会議議長が合意をいたしました、日本自衛隊とアメリカ合衆国軍隊間の日米共同統合演習等の中期構想についてといういわゆるコンフィデンシャル、マル秘の日米協定を私ここに持ってきております。これによれば、この計画の中では……(発言する者あり)ちょっと待っていなさい、これは防衛庁から取ったんだから、防衛庁が出したんだから。その中期構想の中では、関係省庁をこの演習に参加させるということになっておりますが、この中期構想はなぜこれ結ばれたんですか、防衛庁長官防衛庁長官だよ。
  57. 西川徹矢

    政府参考人(西川徹矢君) 事実関係でございますので。  今、先生御指摘の文書につきましては、日米共同統合演習等の計画や実施に関する構想についてという形で自衛隊と在日米軍との間で認識を共有をするために五年ごとに作成、確定されているものでございますが、これは訓令に基づきまして、また五年ごとの大臣が承認されます訓練の構想がございます。それの前提作業としてのいわゆる相互の認識を確認するということでございまして、藤縄当時の統幕議長が、先生御指摘のとおりの平成十二年の九月の二十六日に相互に認識を共有するという形でサインをした、こういうものでございます。
  58. 小泉親司

    ○小泉親司君 この構想は、これはコンフィデンシャル、マル秘となっているんですが、このマル秘の文書の中で何て書いてあるかというと、この構想には日本の関係省庁をできる限り参加させるような拡大を図るということが明記をされております。この合意書、日米の軍の関係の合意書に基づいて二〇〇一年二月の日米合同演習では警察庁、外務省、海上保安庁、国土交通省が参加をいたしました。またこの演習の中では、この演習の中で、日本国関係省庁等係という係が付けられまして、この中で、日本政府省庁、自治体などの模擬訓練、このことの表示がありますが、ここではどのような自治体が参加した訓練が行われたんですか。
  59. 西川徹矢

    政府参考人(西川徹矢君) 平成十三年の訓練の際には、先ほど先生御指摘の五つの省庁から参加ないしはオブザーバーとしての出席をいただきましたが、自治体については入っておりませんので、自治体からの参加者等はございません。
  60. 小泉親司

    ○小泉親司君 そんなこと聞いていないですよ。あなた方が、統合幕僚会議議長で、日米共同統合演習基本実施計画というのを、これ私たち入手しているんですよ。この中にちゃんと、日本国関係省庁等係、日本政府省庁、自治体等の模擬とちゃんと書いてあるじゃないですか。そんなでたらめ言っちゃ駄目ですよ。具体的に何やったんですか。
  61. 西川徹矢

    政府参考人(西川徹矢君) それはあくまでも先生今御指摘のように模擬でございまして、参加とかそういうのはしておりません。それから、具体的な、どこが、どこが……
  62. 小泉親司

    ○小泉親司君 何をやったかということを聞いているんですよ。
  63. 西川徹矢

    政府参考人(西川徹矢君) いや、中身につきましては、ちょっと事柄の性格上ここでの答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  64. 小泉親司

    ○小泉親司君 そんないい加減なことじゃ駄目だと思うんですよ。  私、じゃ自治体を動員する。動員する模擬演習があったんですね。私は自治体が参加したかどうかということを聞いているんじゃないんですよ。自治体の参加、動員、これを模擬した演習やったんですね。
  65. 西川徹矢

    政府参考人(西川徹矢君) 繰り返しの答弁で大変恐縮でございますが、この訓練の中身そのものにつきましては、事柄の性格上、我々としてはこの答弁には控えさせていただきたい、ここでの答弁は控えさせていただきたいと思います。
  66. 小泉親司

    ○小泉親司君 いや私、これはおかしいと思いますよ。私たち、この前も岩佐恵美議員が、自治体はどういうこの法案で役割を果たすのかと質問しまして、今日、政府から出ました見解いただきました。これは同意反復みたいなもので、何言っているか全然分からない。私は、具体的にここで模擬訓練やっているじゃないかと、自治体が。それだったら、自治体を、私は、中身についてじゃなくて、自治体を動員する、こういう訓練をあなた方はやっているんですかとお聞きしているだけなんです。どうですか、防衛庁長官
  67. 西川徹矢

    政府参考人(西川徹矢君) 先生、これも繰り返しの答弁で大変恐縮でございますが、個々のやはり内容等につきましても、これは相互にいろんな想定も含みますが、それはその都度いろんな形での考え方でやるとは言いながらも、事柄の性質上、ちょっとこういうところでの答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  68. 小泉親司

    ○小泉親司君 これは駄目ですよ。絶対にこれは認められない。何でかといったら、今度の法案というのは、自治体を参加させる。国民を、責務国民を参加させる。どういうふうな中身なのかということが議論になっているのに、私は、実際に今演習が自治体を動員してやっているじゃないかと。その中身というのは一体どういう中身か。それから、自治体を動員する模擬的なものをやっているのかどうかと。これだけお聞きしているんです、委員長。これを答えられないというのは、これは審議になりませんよ、委員長
  69. 西川徹矢

    政府参考人(西川徹矢君) お答えいたします。  現在行われている日米統合訓練、統合演習等についてのお尋ねという形の事実関係について私先ほど申し上げておりまして、それについては先ほど来の答えはそういう形の範囲の答えでございます。  これから有事法制云々につきましてはまたいろいろ検討をという格好になると思います。
  70. 小泉親司

    ○小泉親司君 そんなことは言っていないよ。駄目だよ。委員長、ちょっと速記止めてくださいよ。
  71. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 速記止めてください。    〔速記中止〕
  72. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) じゃ、速記起こしてください。
  73. 小泉親司

    ○小泉親司君 いや、私はこの法案自治体に関係する、これは防衛庁長官もお認めになりますね。密接に関係する。  さて、先ほど私は、初めに、自治体も参加した演習やるのかとお聞きしたら、それもどうか分からないと防衛庁長官言われる。それじゃ、私実際に防衛庁から資料取ったものの中には、ちゃんと自治体を模擬した、自治体の動員を模擬した訓練があるじゃないかと。一体これはどうなるんだということなんです。防衛庁長官、どうですか。
  74. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 先ほど来運用局長がお答えをしておりますとおり、今まで行いました演習につきまして、どの自治体がどのようにというようなことは申し上げるわけにはいかないということを言っておるわけでございます。西川局長がるるお答えしているのはそういうことでございます。  じゃ、今後はどうなんだということでございますが、今後、自治体等々がそういうような武力攻撃事態におきましてどのような役割を果たしていくかということにつきましては、今後議論させていただきたい。  ただ、委員が御指摘のように、では自治体が戦争に参加をするのかというような観点でお尋ねでございますが、自治体とか一般国民が戦争に参加をするとか動員をされるとか、そのようなことを私どもは考えておるわけではございません。これは、自治体日本国民がアメリカの引き起こす戦争に参加するための法律だと、こういうような御議論かと思いますが、そのようなことは間違っても起こらないわけでございます。
  75. 小泉親司

    ○小泉親司君 私はそんなことを言っているんじゃないんですよ。あなた方の資料でちゃんと自治体を模擬した訓練がやられているじゃないかと。だから、これは自治体を動員した訓練をやっているじゃないか。その動員という言葉が何であれば、自治体を協力させるための一定の方策の訓練やっているじゃないかと。この事実の問題としてお聞きしているんです。  やっているんでしょう。それから今後も自治体を動員するという言葉が何であれば、自治体をどのように協力させるのか、その訓練をやるんでしょうと。そのことなんです、防衛庁長官
  76. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 何度も同じことを申し上げて恐縮なんですが、過去の訓練においてどの自治体がどのようなことに参加をしということは、訓練の内容、演習の内容、こういうものを明らかにいたしますようなお答えはできません。  そして、これから先のことについてどうかということをお尋ねになれば、それはこの武力攻撃事態というものを引き起こさないために、予測事態の場合でございますが、あるいは武力攻撃事態というものを早急に収束をさせるために、国民保護という観点から何ができるかという議論は当然あるだろうというふうに考えております。  それは、自治体が参加をするとか動員とかそういうものではなくて、いかに日本国の平和と安全を守るか、国民の生命、財産を保護するか、そういう観点において議論が行われるべきものと考えておりますが、具体的な内容について今ここで御答弁できる段階にはございません。
  77. 小泉親司

    ○小泉親司君 私、自治体を協力させるかどうかの演習をやるのかという質問に対して全然防衛庁長官答えていないんですよ。ちょっとはっきりさせてくださいよ。自治体を協力させる仕組みの演習を日米合同演習でこれまで指揮所演習でやってきたそういう演習をやるんじゃないのかと聞いているんですよ。あなた答えていないですよ、全然。
  78. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは先ほど来お答えをいたしておりますとおり、今後どのような形で行うのか、それに自治体がどのような形で協力をするのか、そういうことも含めてこれから議論をしていかなければいけないということでございます。それはもう委員おっしゃいますように、それじゃ自治体も参加させるのかというようなことでございますが、参加させるともさせないとも今ここで申し上げるわけにはまいりません。しかしながら、すべからく国民の生命、財産をどのように守るかという観点において議論が行われるものでございます。
  79. 小泉親司

    ○小泉親司君 私、実際にこういう自治体の訓練をやっておきながら、どういうふうなことを、形で参加させるのかということについて具体的に、私、言わないというのは、今、自治体で懸念が高まっているのに、一体どういう協力をさせるのかとみんな疑問を持っているのに、実際は米軍と自衛隊が軍事的には先にやっていると。これ、模擬してやっている、参加すると、私、参加しているとは私は言っていませんよ、自治体を協力させるための仕組みの演習をやっていると。  私、この点でもう一度、私たちは再度、この自治体がどういう形で今度の演習にも協力してきたのか、それから、今後のこの自治体の協力の在り方というのはどういう形になるのか、この点で、私、再度資料を求めたいと、見解を求めたいと。  委員長お願いいたします。
  80. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) ただいまの件につきましては、後刻理事会においてその取扱いを協議いたしたいと思います。
  81. 小泉親司

    ○小泉親司君 次に、先ほど言いましたように、国の関係省庁が参加しておりますが、私、もう繰り返しませんが、国土交通省が参加していますが、国土交通省はどの部局が御参加されているんですか。ほかの省庁は、もう時間がないから繰り返しませんが、全部省庁名を挙げております。国土交通省、何局が参加していますか。
  82. 鷲頭誠

    政府参考人鷲頭誠君) 日米共同統合演習につきましては、防衛庁より、防衛庁の機密保持の観点から演習の具体的な内容は部外秘とするように伺っておりまして、演習視察者の所属部局等をお答えいたしますと事実上演習の内容が推定されるということがあり得るために、演習視察者の所属部局などにつきましてはお答えを差し控えさせていただいているところでございます。
  83. 小泉親司

    ○小泉親司君 防衛庁長官、何か防衛庁が秘密保持のために関係した局を言っちゃいけないと言われているそうですが、あなたにじゃお聞きします。どことどこの局が見学、これは見学ですが、参加したんですか。
  84. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 今、国土交通省からお答えをしたとおりでございまして、それを申し上げるわけにはいかないということを言っておるわけでございます。
  85. 小泉親司

    ○小泉親司君 日米ガイドラインでは、例えば民間機の調整などをやるとかという具体的な航空管制や様々な空域の取決めが出ておりますが、航空局は参加したんですか。
  86. 鷲頭誠

    政府参考人鷲頭誠君) 繰り返しの答弁になって申し訳ございませんが、先ほど申し上げましたとおり、具体的にどの部局から出たという、だれが出たということにつきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  87. 小泉親司

    ○小泉親司君 私は、何でじゃ航空局が参加してシナリオが分かるんですか、それをお聞きしたい。航空局が一名と例えばあなた方が言って、それじゃ、演習のどのようなシナリオが分かるんですか、私、そのことをお尋ねします。
  88. 鷲頭誠

    政府参考人鷲頭誠君) 本件につきましては、防衛庁におきまして密接な連携調整が想定されます関係省庁がその演習を視察をするということによりまして、その省庁間の相互理解を深めることが有意義であるというふうにお考えになりまして、当省を含む関係省庁に呼び掛けを行ったものというふうに伺っております。  当省といたしましても、こういう趣旨を踏まえて演習の一部を視察したところでございます。
  89. 小泉親司

    ○小泉親司君 私は、ほかの省庁は全部局を言っているんですよ。例えば外務省、これも参加しましたが、北米局の安全保障課と、これ、言っているんです。何で国土交通省だけが言えないのか、航空局だと言って、これ、何でシナリオが分かるんですか。防衛庁長官、そこを私に具体的に説明していただきたいと思います。(「何で聞きたいんだ」と呼ぶ者あり)
  90. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 委員は、航空局の中でどのような部課があるかよく御存じの上での御質問だと思います。  例えば、今、外務省であればそれは安保課でしょうねとかそういうようなこと、それしかございませんから。これ、外務省であればここであろう、あるいは厚生労働省であればここであろうということは、それはもう一般人の通念をもってしても理解ができるし、推測もできることでございます。しかしながら、国土交通省航空局の場合ですと、それがそれぞれ細かい所管を所掌しております部局、部課に相なります。そういたしますと、そこから一体何をやっておるのかということが一般人の通念をもってしても推測し得るということになるのだろうというふうに考えております。  それはやはり演習の内容というものが表になる、少なくとも推測をされるということは、我が国の平和と安全を保つ上に有益だと考えておりません。そういうような理由に基づくものと私は考えておる次第でございます。
  91. 小泉親司

    ○小泉親司君 最後に申し上げますが、私、自民党席からなぜ聞くんだと言いましたので、私、そのことについて一言申し上げますと、今度の法案というのは、自治体ばかりじゃなくて国民全体を動員する、その形ですから、いわゆる関係省庁を動員する、その計画が今、日米の間で軍事的にはどんどんどんどん、私、先に進められている。先取りされてやられておいて、その中身は何だというふうに聞いたらそれは知らないと、そういうふうな、言えないと、こういう形で、私、進めておいて、今度の法案の中身についてはこれから二年後だと、これは全然私は道理に合わないというふうに思います。  その意味でも、先ほど自治体の問題もお聞きしましたが、関係省庁の問題も含めてこういう中身についてははっきりと私たちはこれは国民の……
  92. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 時間が来ております。
  93. 小泉親司

    ○小泉親司君 ところに明らかにすべきだということを強く要求をして、質問を終わらせていただきます。
  94. 平野貞夫

    平野貞夫君 国連の平野貞夫でございます。  国連では二人平野がいまして、平野達男さんは当委員会の理事で非常に勉強なさっていますが、私は素人でございます。  それからもう一つ、この有事三法に衆議院での私が所属しています自由党は修正に賛成しておりまして、素人の上に賛成した修正を質問するのは非常に難しゅうございまして、かなり唐突な質問があると思いますのでお許しいただきたいと思います。  そこで、これ、防衛庁長官でございますか、最初にお聞きしますのは、この有事三法の目的といいますか性格についてですが、一言で言えば戦争開始手続とそれから戦争遂行手続を法制度として整備したものだと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  95. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 私どもが所掌しておりますのは自衛隊法でございますが、御指名でございますので、ほかのものも併せてお答えをお許しいただければと存じます。  我が国は戦争というものはいたさないことになっておりまして、戦争の開始という言葉は、もう委員にはもうそういうこと、細かいことをよく御存じですので、あえてお尋ねするのも失礼な話でございますが、これはどのようにして自衛権を行使をするかということの開始時期、それは今までこの法律が出ます前も、自衛隊法におきまして防衛出動につきまして規定がございました。  しかしながら、それは自衛隊がおそれあるいは実際の防衛出動をいかにして行うかというだけの規定でございましたが、今回はこれに事態対処法を併せることによりまして、そして、そこの中に防衛出動の手続も記述をすることによりまして、そういうような我々が自衛権を行使をしなければならない事態、逆に申し上げれば、日本に対する武力攻撃予測事態あるいは武力攻撃事態、それは先ほど定義について御説明をしたとおりでございますが、そういう場合に自衛隊はどう動くのか、併せて国民に対してどのようなことをお願いし、国民保護するために、例えば避難でありますとかそういうこと、そういうことを政府としてどのように対処方針を決めるかということを定めたものでございます。  したがいまして、どのようにして自衛権を行使をするかということよりも、国全体として、政府全体として、そういうような予測事態あるいは武力攻撃事態に対してどのような対処をするかということを定めたというのが、従来申し上げておりました有事法制とは異なる点だというふうに考えております。  もう委員ずっと長い御経験で御案内のとおり、今までは第一分類、第二分類というふうに言われておりました。自衛隊にかかわる法制、あるいは他省庁にまたがる法制ということが言われておりました。しかし、それは一に掛かって、私ども防衛庁自衛隊の行動をいかにして円滑にするかということに重点が置かれたものでございましたが、これ、国全体としてどのように対処するのかということが加わっておるのが今回の法律の意義だというふうに理解をいたしておるところでございます。
  96. 平野貞夫

    平野貞夫君 非常にぼかしておっしゃって、国民に分かりにくい。  要するに、戦争というとちょっとドラスチックな言葉なんですけれども、それは意味は同じだと思うけれども、自衛隊武力行使を自衛権の行使としてやる場合の開始手続と、言うならばそれを実行する、実施する手続、それにかかわるいろいろな国民的な問題ですね、国家的な問題を整理したのがこの法律だというふうに、それでよろしいですね。  そうしますと、これ、ちょっと確認をしておきますが、武力攻撃事態対処する場合、状況によっては日本国領土に限らない場合があると思うんですね。事態発生の原因となるところに対処するということもこの事態法は想定しておりますか。
  97. 石破茂

    国務大臣石破茂君) この事態法が想定しておるというよりも、我が国として自衛権の三要件を充足するような場合があれば、それは自衛権の行使我が国の領土、領空あるいは公海、公海以外の地でも行うことが法理的にはあり得るということでございます。
  98. 平野貞夫

    平野貞夫君 今の大臣の話をちょっと具体例に当ててみますと、これ、仮の話ですから誤解をしないでください。  北朝鮮のあるポイントから、一番可能性のある話ですから、ロケットが、ミサイルが飛んできた。恐らく、万景何とか号ですな、あそこのある新潟をねらわれた。新潟をねらわれた。小さな核爆弾を積んでいた。同時に、北陸地区周辺で工作員と言われる人たちがいろいろな活動を始めた。こういう事態になった場合ですね。その原因の、また攻撃されそうだという可能性がある場合に、原因を作っているポイントですね、北朝鮮のある地域、基地ですね、そこに自衛隊が自衛権の行使として攻撃を始める、対処するという可能性も理論的にはこの法律で出てくるわけですね、対処方針でそのときに、基本方針で作れば。それ、ちょっと確認しておきたいと思います。
  99. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、理屈の上からはそういうこともあり得ることですが、ただ、それはほかの手段がないのかどうなのかということ、そしてそれが必要最小限のものなのかということに係ってくるお話だろうと思っております。  例えば、よく言われますミサイル基地攻撃ということがありますが、それはまだおそれの段階では駄目なのだと。これから新潟の何々に向けてミサイルを発射するぞ、発射するぞ、発射するぞと言っているようなおそれの段階では全然駄目なのであって、しかしながら、もうミサイルが飛んできて甚大な被害を受けてからでも遅いのであって、だとするならば、発射せよという命令があり、そして燃料充てんとかミサイル直立とかそういうようなことがあり、実際に着手をされて、そしてほかに手段もなくというような状況、そしてそれが、今ある国のお名前をお出しになりましたが、そこのいろんなものを破壊するということではなくて、本当にピンポイントでそこの基地だけたたくということは、理屈としては自衛権の範囲であることは法理上あり得るということでございます。  ただ、私どもといたしましては、そういうことを今アメリカの打撃力にゆだねておりますので、私どもとしてはそういうことを考えていないということであります。ですから、これは本当にほかに手段がないのか、そして必要最小限なのかということを考えてみませんと、一概にそういうことは可能だということを申し上げることは不適切かと存じます。
  100. 平野貞夫

    平野貞夫君 私は、状況によってという、言わば最悪の状況を想定した上の理論的な話をしておりますから、まあ結構です。今の答弁で確認できました。  そこで、官房長官にお伺いしますが、最近、周辺事態法とかテロ特措法とかという非常に複雑な分かりにくい法律ができておりますが、今度、事態法ができるわけですが、この事態法自衛隊法法律論で言う憲法との関係で、どっちが上位になりますか。どっちが、いわゆる自衛隊を、組織とかそういうことじゃなくて、武力攻撃を受けたときに主体になる法律というのはどっちになりますか。
  101. 福田康夫

    国務大臣福田康夫君) この武力攻撃事態対処法は、御案内のとおり武力攻撃事態等への対処に関して基本となる事項を定めた法律でございます。それに対して自衛隊法は、自衛隊の任務、行動及び権限等について定めるものでございます。  先ほど来、防衛庁長官からこの関係についていろいろ説明がございました。そういう関係でございますけれども、この両法のこれは非常に密接な関係があるということはお分かりのことだと思いますけれども、これはともに独立した法律であるということでございまして、法形式上は両者に上下関係とかそういうものはないということでございます。
  102. 平野貞夫

    平野貞夫君 理屈としては分かりますのですけれども、例えば防衛出動については従来自衛隊法にあったものを、今度、自衛隊国会承認については事態法に移していますですね。  そういう意味から見て、私は自衛隊の活動の実態においては事態法の方が上位と、実質的にそういう、私はそういう思いでございます。そのことは、これ、私が勝手に思うことですから答弁求めませんから。  そこで、率直に言いまして、私は元は自由民主党にいて、防衛庁長官とは随分仲良く日本の国を憂えた仲でございますが、私の論理でいいますと、周辺事態法、テロ特措法、それから事態法、全部僕は憲法違反だと思っているんですよ、本来は。ただし、共産党の言う憲法違反とは論理が違う。  これはやっぱり九条の戦争放棄という常識論にはこれらの法律はやっぱり反していますよ、それは。小泉総理も時々それに近いことを言うんですが、本来はやっぱり今の憲法は残念ながら、いい部分もあるけれども、占領中に作られた、夜、夕方か夜、朝の憲法なんですよ。今やすっかりもう国際情勢はもう変わって真っ昼間。すごく厳しい国際情勢の中で昼間の憲法が欲しいんですよ、やっぱりきちっとした。しかしそれはなかなかできないから、我が自由党は、少なくとも憲法の精神を踏まえた、憲法を補完する、すなわち平和を確立するにはどういう考え方であるべきか、あるいは自衛権を行使する際には、集団的自衛権はこういう考え方で、個別的自衛権はこういう限定的にというものを、いわゆる憲法を補完する基本法というものをまず作って、それからやるべきものなんですよ、こういう具体例というのは。それを、難関度の高いものはほったらかしにして、事態その場、その場しのぎ、その場しのぎのものから始めるところに、我が国国際社会からとやかく言われる、責任のない国と言われるここが元だと思うんですよ。  そういう意見を私は持っておるんですが、質問通告はしていないんですけれども、一言ずつ、官房長官防衛庁長官に、私の意見に対してどういうお考えか言ってくれませんか。
  103. 福田康夫

    国務大臣福田康夫君) すべて憲法から発する問題だと思うんですけれども、様々な考え方があるんだろうと思います。  現行政府といたしまして、今るる御説明しておるような考え方憲法の解釈を行い、そして自衛権を、これを守るための自衛隊というものを今の政府として整備をしていると、こういうことでございます。  お考えはお考えとしてそれはよく分かるところでございます。しかし、それがいいというふうには申し上げているわけではございません。
  104. 石破茂

    国務大臣石破茂君) すべて憲法違反という御指摘でございますが、私はそうは考えておりません。それは自衛権というものを固有の権利として考えます以上、国家に当然ある権利として考えます以上は、それは憲法違反という御指摘は当たらないと思っております。  したがいまして、今回の法案も含めまして、それぞれの法案が極めて分かりにくいのは、憲法に起因をすると申し上げますよりも、自衛隊法制の仕組みというものに由来するものが多いのだろうと思っております。  私は、今の自衛隊法制のやり方が駄目だと申し上げているわけではありません。それは、我が国としてそれなりに筋の通ったやり方をいたしております。  しかし、よく私申し上げることですが、軍の法律というものは本来ネガリストであって、これとこれとこれはやってはいかぬと、あとのことはやってもよろしいと、こう書くのが軍の法律であって、逆に警察の法律というのはポジリストであって、これとこれとこれとこれはやってよいと、あとのことはやってはいかぬと、こういうような法律の立て方になっている。  では、自衛隊の場合に、それはもう、そこで自衛隊は軍なのかどうなのかという議論にもまた直結をするお話でございますが、そこに由来をするものが多いのではないか。したがって、いろいろなことをやる場合に、新しい法律を立てそれなりに権限を付与していく、そういうやり方を今まで取ってまいりました。それは何も憲法違反でも何でもなくて、我が国自衛隊法制のやり方がそういうスタイルになっている、そういうことに由来をする部分が大きいのだろうと私は思っております。
  105. 平野貞夫

    平野貞夫君 その気持ちは分かるんですけれども、私も逆な立場だったら同じことを言うかも、言わさせるかも分かりませんけれどもね。  率直に言いまして、自衛隊法それからPKO法までは憲法というものをやっぱり踏まえて作られたんですよ。やっぱり周辺事態法から、すなわち、やっぱり自衛隊が海外で武力行使をできる可能性の道を開いてから、私は、乱暴に言えば憲法違反あるいは憲法に反したもの、それをいろいろ理屈付けてやり始めたと。非常に日本の国が、そういう意味国民がうつ病状態になっていると、これからの平和というのはどう確立するかという。  ここはやっぱり自衛権はいかにあるべきか。我が国の平和確立というのはいかにあるべきか。憲法九条を置いていてもいいですよ。この憲法九条や前文の中から、ここまでやるんだと、ここから先はやらないんだというやっぱり基本法が必要だということを申し上げて、次に移りますが。  前原さん、非常に努力されて、修正、衆議院で修正された。修正された何か所かがあるんですが、何か所か、いろいろあるんですが、前原さん、あなたが中心になって与党側と作った修正に何点付けますか。
  106. 前原誠司

    衆議院議員(前原誠司君) 点数というのはなかなか難しいと思いますが、大学でいえば優は与えられる点数、つまり八十点以上だとは思います。  しかし、御質問じゃないので、また御質問があればお答えをいたしますけれども、有事法制議論というのは正にこれから始まったばかりで、国民保護法制でありますとか米軍との協力の問題、細かな法律をいろいろこれからやっていかなくてはいけませんので、そういったところをすべて見た上で評価をするのが妥当ではないかというふうに思っております。
  107. 平野貞夫

    平野貞夫君 ここから非常に申し上げにくい質問になるんですが、防衛庁長官、この二条の武力攻撃事態の定義を変えましたね。修正しましたね。修正で……
  108. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 予測事態のことですか。
  109. 平野貞夫

    平野貞夫君 そうそうそう。これは原案と実態的に違うんですか。
  110. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 私、いや、修正案……
  111. 平野貞夫

    平野貞夫君 いやいや、あなたに、防衛庁長官としてどう思うか、修正されたものと政府原案と、施行する、使うのに実態的に差があるかという。
  112. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これは昨年来ある議論でございまして、そのおそれと予測というのは一体切り分けられるのかと。それはもう概念の上では切り分けられても、実際上そのようなことを分けることは難しかろうということでございます。したがいまして、完全に法律の仕組みが変わったとか、そのようなことではなくて、概念を分かりやすく整理をしたものだというふうに私は考えております。
  113. 平野貞夫

    平野貞夫君 私もそう思います。要するに言葉の整理、悪く言えば言葉の遊び。  それから、三条の修正の基本的人権と国民情報提供、これも非常に大事なことなんですけれども、どなたか与党の人がありましたね、憲法に書いておるといって、わざわざ法律に書くことはないという与党の幹部の意見がありましたね。これも、そういう意味で、そう点数を大きく付けれるものじゃないですね。  それから、まああえて点数を付けるとすれば、国会の議決による対処措置の終了宣言ですか、これはまあ与党の発想じゃなかったことだと思います。  そのほか、私は、前原さんは優を付けたけれども、ほとんど大事なことは書いてありますが、すぐ実行する、この国会で実行するというものじゃなくて先送りという意味で、私のところは、自由党は賛成しましたよ。賛成しましたけれども、なかなかいい点数で賛成したわけじゃない。まして、国会の議決による対処措置の終了宣言というのは、これは我が自由党の緊急事態基本法の中から取ったものでして、一体、実を取ったという、話付けられた民主党のオリジナルというのはどういうところに、この修正の中にあるんですか。
  114. 前原誠司

    衆議院議員(前原誠司君) 先ほど自由党さんが基本法の必要性ということをおっしゃいましたけれども、我が党も全く同じでありまして、緊急事態基本法というものを提出をいたしました。  ただ、その求めたところが少しお話を伺っていると違うなと思いましたのは、我々は、憲法の中に緊急事態に対する規定がない。そして先ほど、基本的人権の書きぶりを三条四項で詳しく書いたことは余り評価はされませんでしたけれども、私は、これは非常に大きな意味を持つと思っております。なぜならば、緊急事態に対しての規定が憲法上ない。しかし、この事態対処法においては、基本的人権については訓示規定しか全く書いていなかったんですね。それを我々は修正案の中で、憲法に保障されている基本的人権の各条の内容までしっかりと武力攻撃事態対処法の三条四項に書いたということは、緊急事態においても、当然我々が想定している憲法上に認められた権利義務というのは守られるんであるということを緊急事態法制に、その条文ごとに、内容ごとに書いたというのは、私は非常にプラス、またそれは私は評価され得るべきことなんだろうというふうに思っております。  願わくば、先ほどおっしゃったように、その基本法に、私は、緊急事態に対する基本的な国家としての構え、考え方をしっかり書いた上で、それがまあある意味憲法の下にあって、そしてそのまた下に各個別の法案があると。そしてまた、将来の憲法改正の議論のときに、緊急事態に対する規定というものも、ドイツのボン基本法やロシア憲法と同じように、そういったものを書くということも議論があっていいと思いますけれども、御質問にお答えをいたしますと、基本法の重要性はそういった意味の中で持たせていただいておりますし、基本的人権の書きぶりというものは、私は、緊急事態にはより基本的人権が制約されることにおいて、しかし憲法上書かれたことがしっかり守られるということが書かれていることは極めて重要なことだと思っております。  もう一つだけ、時間取って恐縮ですが、先ほど情報提供について、これも評価しないとおっしゃいましたけれども、これは、私、非常に大きな進歩だというふうに思っています。つまりは、大本営発表するとは、いうふうにはうがった見方しておりませんけれども、しかし、危機のときに余り生々しい本来の情報というのは出したがらない部分というのはあるわけでありますが、それを客観的に出せと法律にしっかり書いたというのは、私は、過去の大本営発表を繰り返さないためにも、条文に明文化したということについては評価をしておりますし、時間がありませんので、あといろいろ宣伝をしたい、また評価をしていただきたいところありますが、御質問があればお答えをしたいと思います。
  115. 平野貞夫

    平野貞夫君 あと三分しかありませんから、もう質問せずにしゃべりっ放しで終わりますが。  まず、基本的人権の問題ですね。これ、緊急事態に、憲法にある基本的人権を法律に書いて、大事なことですよ。大事なことですが、果たしてその危機を退避できるかどうかという問題もあるんですよ、これは。だから、ここは非常に難しい問題で、これはもういい政府作って、政府自衛隊を信頼するしかないんですよ。だから、僕は、これ、書き過ぎると問題だと思うんですよ。これは個人の、党の意見じゃありません、個人の意見ですから、非常に大事な点だと思います。  それから、大本営発表するような政治をやる政治家はもういませんよ。しかし、それは情報公開法とかそのほか、これは僕は、そう鬼の首取ったような話じゃないと思うんです。  それから、率直に言いまして、我が党ではやっぱりもめましたんですよ。そして、私ら年いっている方ですから、若い人は、自由党の案は高い次元だと、あの修正案は低い次元だということで随分あったんですが、私が違った次元の同時存在というのが政治だというので、何とか収まったんですが。  そういう意味では、私は、やっぱり基本法を作ろうと思ったら作れるんですよ。私ら十年前から主張しているんですよ。しかし、その基本法を作ろうとしたら、自由民主党、与党も、それから、民主党の批評も余りしちゃいかぬけれども、なかなか党の意見として一本化しないというところに我が国の悲劇があるんですよ、我が国の悲劇が。  ですから、本来、あと、この事態法が施行されるには一年は掛かるでしょう。年内にこういう武力攻撃事態が起こったらどうするんですか。恐らく全く新しい法律を作る以外ないでしょう。それを、何か修正して、何かもう立派な有事体制ができたように国民に錯覚させているということは私は非常に問題であるということを申し上げて、終わります。  失礼しました。
  116. 田英夫

    田英夫君 武力攻撃事態とか有事立法とか言われておりますが、日本はそもそもこういう問題を考えるよりも戦争をしない方法を考えるべきですが、現実の問題として、北朝鮮というものがみんなの頭の中にあることは事実でありますから、前回に続いて、この朝鮮の問題を議論したいと思います。  昨日ですか、残念ながら自民党の麻生政調会長が大変な発言をされました。創氏改名は朝鮮の人が名字をくれといったからやったんだという、正に日本人としてあってはならない発言だと思いますが、それを与党の最高幹部が言われたということに驚きを感ぜざるを得ません。  官房長官、どういうふうにこの問題を考えておられますか。
  117. 福田康夫

    国務大臣福田康夫君) 自民党の麻生政調会長が講演の際に、創氏改名は当時朝鮮の人々が求めたために始まったものであるといったような趣旨の発言をされたというようなことが報じられたわけでございます。  麻生政調会長が実際にどういうような言い方をされたか、それは正確に私ども知っているわけではございませんけれども、いずれにしても、創氏改名ということについての政府立場、これはもうはっきりいたしております。一九九六年に橋本総理が訪韓をされまして、そのときに、金泳三大統領との共同記者会見におきまして、創氏改名がいかに多くのお国の方々の心を傷付けたかは想像に余りあるものがありますと、こういうふうに述べているわけでございます。この言葉で分かりますように、植民地時代に我が国が行ったことについて正当化されるということは我が国の方から言うべきことではないのではないかと、こういうふうに考えておるところでございます。
  118. 田英夫

    田英夫君 本当に盧武鉉新大統領が来日をされるその直前にこういうことを言われるという神経は全く分かりません。しかも完全な誤りでありますから。  しかし元々、日本人お互いの中に朝鮮民族に対する差別というか、べっ視の傾向が歴史的にずっとあったんじゃないかというふうに思えてならないんです。ですから、麻生さんの問題も人ごとととらえない方がいいかもしれない。  実は、私は関東大震災の年に生まれたんですが、そのときに大勢の朝鮮の人が、これはもうデマがもとですけれども、殺されている。全くばかげた話ですが、私は、もちろん生まれた年ですから、小学生ぐらいのときに母親から聞かされて驚きましたけれども、もっと朝鮮民族に対する本当の理解をするという意味で、今、日本に大勢の朝鮮民族、いわゆる在日の方々がおられますが、在日の総数というのは、法務省、何人とつかんでおられますか。
  119. 増田暢也

    政府参考人増田暢也君) 平成十四年十二月末現在の統計でございますが、韓国、朝鮮人で外国人登録をされている数は、六十二万五千四百二十二人でございます。
  120. 田英夫

    田英夫君 今、六十二万もの、いかに隣の国とはいえ、その南北合わせてそれだけの方がおられる。  関東大震災のとき、さっきそういう話をしましたが、あのころは一体、概算でいいんですが、どのぐらいでしょうか。
  121. 増田暢也

    政府参考人増田暢也君) 今の外国人登録制度が昭和二十二年にできたものでございますから、大正時代のいわゆる在日に当たる方の数は把握しておりません。
  122. 田英夫

    田英夫君 これは私の聞いた概算ですが、二、三万だろうというんですよ、当時は。それが今六十二万まで激増しているのは一体いつかというと、それも調べてみたら、戦争中なんですね。つまり、戦争中の昭和十七年、東条内閣が閣議決定したいわゆる強制連行、これによって数十万の朝鮮の人が日本に来て、そのまま居着いてしまったというか、これが今の六十二万の在日の皆さんのルーツであります。元をただせば強制連行ですよ。  そういう意味も含めて、本当に我々はもっと朝鮮の皆さんに対する意識を正さなければならないと思っていますが、その在日の中で、皆さんは恐らく朝鮮総連系とそれから民団と言われる韓国系という頭で見ておられるかもしれませんが、それは全く違います。在日六十二万の中で一番数が多いのは、実は日本の政党支持率と同じようなことでありまして、総連も民団も支持しない、その中間です。この人たちの間で、何年か前に在日同胞の生活を考える会という一つの市民組織のような形のものができておりますが、今度それが全国的に組織を強化して一つの新しい組織を作るということが表面化しつつあります。もう今年の末か来年には発足するようでありますけれども。  我々は本当に隣人どころか一緒に住んでいる人たちのことすら余り正しく理解していないのではないかと思いますが、もう一つ、我々が理解しておかなくちゃいけないのは、昭和二十三年、一九四八年に済州島で起きました済州島事件。一九四八年の四月三日ですけれども、南北分断に反対をして市民が蜂起をして、結局、二万とも三万とも言われて、実際正確な数が分からないんですが、人たちが死にました。米軍が関与しているということがあって、長いことこれはタブーにされまして、表面で議論することすらできなかった。数年前に金大中大統領が誕生したときからオープンになっておりますけれども、これは南北分断に反対をしたと。  南北分断されたということは、実は日本に責任があると私は思っています。つまり、太平洋戦争で日本が負けた、終わったときに朝鮮半島に朝鮮という独立した国家があれば、いかにアメリカとソ連も三十八度線を引いて南北に分断をするという、そういうことはできなかったと思いますよ。それを、日本の植民地だったから、日本が植民地にしていたから、負けた日本の植民地だからアメリカとソ連はそれを分断する、こういうことになって民族の悲劇が生まれたわけですが、そのことに、まず李承晩政権ができようとしたことに反対をし、そしてソ連が入ってきた北にやはり社会主義の国ができてしまったという、こういうことを正しく考える、歴史を考える必要があると思います。  そこで一つ外務大臣始め皆さんに考えていただきたいのは、昨年の八月、私は実は驚くべき情報を聞いて疑っておりましたが、私はそのころ国会におりませんでしたから一民間人でありますが、北朝鮮の金正日総書記が一つの決断をして、従来の政策を全面的に転換をすると。経済もいわゆる開放経済、市場経済を取り入れるという方向に大転換をする、そして日本に対する姿勢も変える、世界に対する姿勢も変えると、こういうことをかなり朝鮮問題に詳しい人から聞きました。そして、八月三十一日の小泉総理訪朝ということがその後すぐ現実に発表されました。九月十七日にそれが実現をしたと。  私は、したがって、九月十七日まで、これは劇的な転換の舞台になるんだなと、こう一民間人として予想をしながら見詰めておりましたら、拉致問題を認めるということを含めて柔軟なことを、姿勢を取ったと思います。小泉総理が、従来からのいきさつからすれば、訪朝されたということ自体が既にその姿勢の変化ということを表しているというふうにさえ思っていたわけです。しかし、結果、今日に至るまで、説明を要しません、むしろ対立が激化してしまった。これは一体どこに原因があるのか。  今我々は考えるべきことは、こういう戦争を予想した法律を作るよりも、まず一番残っている国交正常化ができていない北朝鮮との関係をどうするかという、その絶好のチャンスだったわけですね。よくあそこまで行かれたと私は評価しますよ。それが駄目になったのは一体どういうことなのか、官房長官、いかがですか。
  123. 福田康夫

    国務大臣福田康夫君) 対北朝鮮という問題とこの有事法制、これは切り分けてお考えいただきたい。この有事法制につきましては、もう長年の懸案事項であったということでございまして、国民を守り国を守るためにどういう法体系が必要なのかということで御審議をいただいておるわけでございます。  北朝鮮とのことにつきましては、昨年九月十七日に総理が平壌に行かれて、平壌宣言というものをこれを作成し、そして署名をしたわけでございます。これがその後いろいろな事情がございまして解決が長引いているという、これはもう事実でございます。ただ、五人の方々の帰国ということは実現した、しかしその後、その被害者の子供さん方はまだ帰ってきていないと、こういう現実があるわけでございまして、これは何としても早く帰してもらいたいと、こういうことは、これはもう大前提だというように思います。  あわせて、詳細の分からない今の拉致被害者の事実関係を究明しなければいけないということもございます。もし生存しておられる方がいらっしゃれば、またそういうことを信じて今いろいろ運動もしている方もたくさんいらっしゃるわけでございますので、そういう事実関係を明らかにし、一人でも多くの方々が日本に、日本の土を踏めるようにしてあげる、そのために交渉は継続をしているということでございまして、その交渉の今過程にあるということでございます。  私は、これが失敗したということではなく、これからも粘り強く交渉する、そして拉致の問題のみならず、核の問題という極めて重大な安全保障上の問題も解決する、またその他いろいろ安全保障上の問題ございますが、そういうことについても心から納得できるような、そういうような北との関係、これを我が国としても作り上げるべく最大限の努力を傾注してもらいたいと、このように考えているところでございます。
  124. 田英夫

    田英夫君 時間がなくなってしまいました。  私は、この問題を解決するには、この問題の周辺にアメリカのネオコンと同じようなジャパニーズ・ネオコンがいると思っています、そういう北朝鮮をつぶしてしまえということを第一目的にするような勢力は排除しながら正しい解決を図っていただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  125. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時八分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  126. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) ただいまから武力攻撃事態への対処に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。  これより、三案の審査のため、参考人として、慶応義塾大学総合政策学部教授草野厚君、拓殖大学国際開発学部教授森本敏君、国際政治・軍事アナリスト小川和久君、亜細亜大学法学部助教授石埼学君、以上四名の方々の御出席をいただき、御意見を聴取し、質疑を行います。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  参考人の方々から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  本日の議事の進め方でございますが、参考人の方々からお一人十五分程度御意見をお述べいただきまして、その後、各委員から質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず、草野参考人からお願いをいたします。草野参考人
  127. 草野厚

    参考人(草野厚君) ありがとうございます。  慶応大学で国際関係論、戦後日本外交論、政策過程論等々を教えております草野でございます。よろしくお願いをいたします。  短時間ではありますが、法案に対して感じているところ、そして今後について期待を込めて述べさせていただきます。  国会議員の皆様の御苦労を顧みずに失礼をお許しいただければ、ようやくここまで来たなという感を深くしております。なぜこれほどまで時間が掛かったのかという疑問はぬぐえません。しかし、衆議院において、政府案が与党によって単独ではなくて、野党民主党等の積極的協議を踏まえてこしらえられた修正案が、自由党を含め、与野党の大半の賛成を得て可決し、参議院に送られてきた、この意義というものは大変大きいと思います。なぜならば、国の防衛にかかわる法制度が国論を二分させたままで与党単独によって成立するということは、一般の国民にとり、また実務に当たる、今回の法制度が予定をしております地方自治体自衛隊など現場の人々の士気にも影響する、あってはならない不幸な事態だと考えるからです。  さて、私は、この分野の専門家というにはふさわしくない専門分野でございます。しかも、法案の文言の不確かさなど詳細部分については既に自民党と民主党の協議で相当前進をしていると承知しております。そこで、ここでは少し客観的に、日本において有事法制が準備される意義と必要性、さらにこれらの法制整備された後の状況というものを考えてみたいというふうに思います。  三つ特に申し上げたいことが、このレジュメに沿ってお話を申し上げますが、ございます。  第一は、独立国家として緊急事態対応する法制度がないということは、議論以前の異常な状況だというふうに言わざるを得ません。  自国の安全を確保できずに、どうして自ら地域的に不安定要因にならないと言えるのでしょうか。これは国際的な信用の基礎だというふうに思います。また、有事法制整備するということは、アジア太平洋地域の平和と安全のかなめでもある日米同盟にも大変に寄与するというふうに考えております。他方、有事法制がないということは、万が一にそのような緊急事態が発生したときに、政治の意思と無関係に超法規的な行動を現場が取るという可能性を全く排除するものではありません。より具体的に後ほどこの点については触れたいと思います。さらに、各国とも何らかの形で緊急事態の発生に政府がどのように対処するか、国民はどういうようなことをしなければならないかということについて言及している法体系を持っております。  さて、現在、国際社会脅威は三つあると思われます。第一に、九・一一に象徴される国際的テロリズムによるもの、それを支援する国家によるものですね。これらの国家は大量破壊兵器拡散を試みている国家と重なり合うわけであります。第二に、冷戦終結後少なくはなりましたが、インドとパキスタンのカシミールをめぐる緊張のように、国家と国家の紛争による脅威というものが引き続きございます。第三に、民族の違いから分離独立やあるいは現政権の打倒を目指して内戦が起こるといったことによる脅威でございます。それが周辺諸国、ひいては地域を不安定にさせているということはございます。アフガン、東ティモール、インドネシアの、アジアなどが典型でございます。  日本周辺の場合、言うまでもなく、特に朝鮮半島の緊張状態がございます。しかし、仮に北朝鮮問題が混乱なく解決をしたとしても、先ほど述べた国際的脅威から日本が逃れることは、このグローバル化した国際社会を考えれば恐らく不可能だというふうに思います。  ならば、よく聞く議論でございますが、そうした状況が生まれないように外交努力をすればよろしいのではないかという声がございます。もちろん、そうした努力を重ねていかなければなりません。しかし、そうした議論が期待するほど国際社会は、話せば分かる、暴力はいけませんということで解決できるような甘い理想的な社会ではありません。既に自爆テロを含めた国際的テロが多発してきたこと、数々の国際社会との約束を破ってきた北朝鮮の存在を振り返ればこのことははっきりしております。  そこで、万が一に備えるということが必要になるわけです。もちろん、冷戦華やかなりしころの米ソの緊張を念頭に置いた有事が起きるとは必ずしも言えません。しかし、国際社会は、冷戦がだれも予想しない形で終わったように、何が起きるか分からないという社会でございます。あらゆる事態対応し、日本の安全を守るための法整備が必要であり、現在審議中の一連の有事法制がそのような役割を担うというふうに考えています。  さて、第二番目でございます。第二に、日本安全保障に関する法的枠組みとの関係です。  冷戦後、日本安全保障に関する法的枠組みは随分と整備されてまいりました。冷戦が終わりましたのが一九八九年でございますから、もう既に十四年でございます。ここに書きましたように、日本安全保障に関する法的枠組み、一九九六年に事実上の安保の再定義、カバーする範囲が広がりました。次いで、周辺事態法が二〇〇〇年にできました。また、九・一一を受け、テロ対策特別措置法が成立をいたしました。今、イラク新法が取りざたされております。日本の平和と安全、日米同盟の観点から大いに意義のあることだというふうに思います。しかし、改めて申し上げるまでもなく、いずれも日本本土の話ではない、ここが欠けていたというふうに思います。  その点でいえば、国際平和協力への日本自衛隊の協力、自衛隊だけではございませんが、自衛隊、警察の協力もこの十数年実績を重ねてまいりました。一九九二年に湾岸戦争の日本対応ぶりに対する批判から作られました国際平和協力法、これができて、まず最初にカンボジアに自衛隊、警察の方々が出掛けられました。御存じのように、憲法九条の制約から、あるいは憲法九条に抵触しないように極めて複雑な内容を持ったこの国際平和協力法でございますが、その中身は国際的なPKOの標準とは必ずしも一致はいたしません。しかし、今では、ゴラン高原、東ティモールと、三けたの隊員が平和協力に従事をしております。後方支援による彼らの活動は、私もゴラン高原参りましたけれども、大変に同じPKOに参加しているよその国の隊員からも評価をされております。  実績は十年以上にわたるわけですが、その間、この国際平和協力法、いろんな問題点が参加者からも指摘をされているわけですけれども、武器を上官の命令で発砲できるようにしたり、パトロールなど本隊業務への参加の凍結を解除するなど、自衛隊の方々が国際社会においてより望ましい形で国際の平和と安全に協力することができるようになったわけです。大変に結構なことです。  しかし、次のようなことを申し上げたいんですね。やや乱暴な比較かもしれませんが、自衛隊の役割を考えますと、国際平和協力はもちろん極めて重要です。しかし、最大の使命は国土防衛ではないでしょうか。  自衛隊法の第一条には、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」とあります。そして、このことは第三条で、防衛を主たる任務としてより具体的に書いてございます。他方、治安出動や災害派遣などは公共の秩序の維持を従たる任務として別のところに書いてあります。PKOはどこに書いてあるか、国賓の輸送などと同様に付随的任務とされております。  この扱いについては大いに私は異議がありますが、今日はこの話をしにやってまいったわけではございませんが、念のために申し上げますと、私もメンバーでした国際平和協力懇談会の報告書の中でも触れていますけれども、国際平和協力業務というのは自衛隊の主たる業務にすべきだというふうに私は思っております。これ以上この点については触れません。  何を申し上げたいんでしょうか。国際平和協力は、紛争終了後の平和と安全を確保し、新たな国づくりに日本が協力をするという意味で極めて大事ですが、では、主たる任務である直接間接の侵略に対して自衛隊の役割をきちんと決めておかなくてよいのか、政府と現場の関係を規定しておかなくてよいのかということなのです。  今ではそうした見解は少ないと思われますが、これは、私がお目に掛かった自衛隊の幹部の中には、国内の防衛に関する法制もきちんと仕組みがないのになぜPKOにどんどん出掛けていかなければならないのかという声、これも聞いてきたわけであります。誠にもっともな見解だと私は思います。  第三に、法律が未整備状況で危機が発生したときにどのようなことが起こるかということを過去に学ばなければいけないということです。  御記憶の方も多いかもしれませんが、一九九三年秋から九四年前半の朝鮮半島危機です。詳しくは御紹介する時間がありませんが、朝日新聞等々の報道で明らかになっているところによれば、九四年の初め、北朝鮮の核開発疑惑による緊張が高まり、アメリカのクリントン政権は軍事行動も選択肢の一つとして考えた。後から振り返れば相当危険なレベルにまで達したという話です。  ところが、日本はそうした緊急事態対応する法制度が御存じのようにございませんでした。それだけではありません。当時、日本の政治は十分に機能しておりませんでした。細川、羽田、村山内閣と短期間に政権が目まぐるしく替わるという、言わば国内的な政治の危機状況にございました。  そこで、報道で明らかになったところによれば、内閣を中心に、いざというときにやれと言われ、準備がないのはみっともないということから、後の周辺事態法にもつながる法案の骨格を用意したわけでございます。自衛隊などによる海上臨検の参加、海上封鎖海域などでの機雷掃海、海上封鎖を行う米軍への後方支援などを可能にするという内容でございます。私は、万が一のときには、失礼、これは、万が一のときには有事の時限立法ということにすることが検討されたということのようでございます。  私はここで官僚の方々の行動を批判するつもりは全くございません。選択肢を含め、法案の準備をするのは官僚の役割でございます。その作業は当然であったと思います。問題は、このときは辛くもカーター元大統領の訪朝で衝突は回避されましたが、回避されなかった場合に、混乱した政治の中で果たして国家の危機に十分耐え得る、しかも政治のチェックが利いた法的整備がその時点で効率よくできたのかどうかははっきりしないということでございます。  その意味では、今回、有事法制を取り巻く環境は、政治は正常に機能しておりますし、他方、北朝鮮の緊張はあるという意味で、日本安全保障を考える上で大変に好ましい環境だというふうに考えております。  さて、残る時間で多少、これからの法案という意味で期待と注文を付けておきたいというふうに思います。  一つは、法律やルールができましても、その法律が目的どおりに機能するかどうかは定かではないということです。この法律を作ったら、この法整備をなしたならばそれで終わりということではございません。  軍事的な理由による危機ではありませんが、私は、阪神・淡路大震災、あるいはえひめ丸事故、潜水艦「なだしお」の事故、東海村核関連施設放射能漏れ等々、政府の危機対応に関して調査研究をして本にまとめたことがございます。そこで明らかになりましたのは、もちろん、法律やマニュアルがないということは、これは最悪でございますが、あってもそれが十分に機能しない可能性があるということでございます。  一例を挙げますと、阪神・淡路大震災、一九九五年に起きました、皆さん御記憶でございますが。村山内閣のときの総理への第一報というのは幾つかのチャネルがございました。このチャネルはございましたが、首相秘書室、首相秘書官経由が、その秘書官がたまたま身内の御不幸で帰省をしていなかったために機能しませんでした。このことはよく知られている事実でありますが、実はバックアップ体制というのは、これはマニュアルではあったんですけれども、そのバックアップ体制が機能しなかった。つまり、マニュアルはあったのに、なぜかうまく働かなかったということがポイントでございます。  結構、私、こういう危機事例を扱っておりますが、共通しているのは、大きな失敗につながるのは大抵小さな失敗の積み重ねだということでございます。  そこで申し上げたい。今回の有事法制では、国と地方公共団体の責任や役割分担、それに国民の協力が極めて重要になっております。この間の連携や信頼をどう担保させるんでしょうか。  法案によれば、指定行政機関、地方公共団体などは、武力攻撃事態等を終結させるために、その推移に応じて自衛隊が実施する武力行使や部隊等の展開に対して責任を負うことになっております。あるいは、国民の生命、身体及び財産の保護又は国民生活及び国民経済への影響を最小とするために、武力攻撃事態等の推移に応じて警報の発令、避難の指示、被災者の救助、施設及び整備の、応急の復旧等の措置について責任を負うことになります。ということは、これらの責任と義務が果たせるためには、国や地方、地方公共団体と国民の間に信頼関係が構築をされていなければならないというふうに思っております。  先ほど御紹介いたしました阪神・淡路大震災に戻らさせていただきますが、当時よく言われましたのは、自衛隊対応が遅過ぎるという批判でございます。しかし、これをよく調べてみますと、ほとんどが、知事による派遣要請の複雑さだとか当時の法的制約から説明ができるわけでございます。  しかし、一つだけはどうしても問題点として残ります。それはこういうことでございます。日ごろから神戸市などの防災訓練に自衛隊が参加していなかったということでございます。これは市が、神戸市が参加要請をしていなかったからなのです。これは、当時、内閣官房副長官だった石原信雄さんが「官邸2668日」にも書き残しております。  さて、残るもう一つの課題、あるいは私が是非お願いをしたいこととして申し上げたいことがございます。これは今述べたこととも関連をいたしますが、この有事法制というのは国民の生命と財産を守るということが最大の目的と承知しておりますが、そのためには公共の福祉に合致する限りにおいては私権も制限されるという、こういう可能性のある法律でございます。であればこそ、この国民保護法制という、この有事法制がこれから必要だと述べております国民保護法制整備について期待を述べておきたいと……
  128. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 先生、そろそろおまとめいただきたいと思います。
  129. 草野厚

    参考人(草野厚君) はい、分かりました。  法案の中には、警報、避難、被災者救助、消防等、施設整備の応急の復旧、保健衛生の確保、社会秩序の維持、輸送、通信、国民の生活の安定、被害の復旧など並んでおりますが、これらはいずれも我々国民の安全確保のための措置でございますから、私、個人的には協力は惜しみません。しかし、同時に、この点で基本的人権の侵害ではないかという批判を招くおそれがあります。  その意味で、国民保護法制は、できる限り透明性確保しつつ策定されなければいけないと思います。単に地方公共団体の意見を聞く、あるいは地方公聴会を開くというだけにとどまらずに、九九年にこれは各省庁が持つ規制に関して義務付けられましたパブリックコメントを、広くインターネットを通じてこの国民保護法制には求めるべきではないかと思っております。  まだいろいろ言い足りないこともございますが、時間も参りましたので、この程度にさせていただきます。  どうも御清聴ありがとうございました。
  130. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) ありがとうございました。  次に、森本参考人お願いいたします。森本参考人
  131. 森本敏

    参考人(森本敏君) 本日、この特別委員会参考人として招致され、大変光栄に存じます。  安全保障の分野の仕事をしておりますので、本日は主として、現在審議中の法案の中で武力攻撃事態法について所見の一端を述べてみたいと思います。  総論は私は草野参考人とほとんど同じ考えで、有事法制は国家の安全、国民の安全にとって不可欠な法案であり、今日までかかる法整備が行われていなかったこと自体、異常な状態であったと考えます。しかし、衆議院の方で与党及び野党の多くの議員の方々の賛成が得られてこの法案が通過し、参議院で現在審議中であるわけでして、この法案が速やかに今国会で成立し、通過し成立することを期待するものです。  今までかかる有事法制がなかなか整備されなかったのは、やはり正直申し上げて、国民に国家の危機感というものについての認識が共有されていなかったこと、並びに憲法に明文の規定がないという政治的な環境の下で、なかなか有事法制というものを整備する政治的な環境が整わなかったのではなかったのかと思います。  しかし、北朝鮮問題を含む我が国周辺の情勢国民の意識あるいは危機意識というものに結び付いて、この法案について今日多くの国民が言わば異論を唱えないといいますか、有事法制はあってもしかるべきという考え方を持つに至ったことは、言わば日本が戦後半世紀、ようやく通常のというか正常の先進国と同じような状況になりつつあるということだと思いますので、そのこと自体、私は大変喜ばしいと思います。  私は、このいわゆる有事法制、特に武力攻撃事態法の法律の中身について、全般的によく配備された、配慮された構造になっていて、しばしば感心をすることがあるのですが、細部にいろいろな問題があることはもちろんでしょうが、しかし全体としてこの法律は非常によく考えられた法案になっているという印象を強くするものです。  本日は、いわゆる参考人として、しかしながらこの法案について幾つか細かい私の印象あるいは注文等について、よい機会でもあり所感の一端を述べたいと思います。  まず最初に、私は、民主党が、与党四党と民主党の調整、衆議院で行われた調整のプロセスの中で、言わば緊急事態に関する基本的な法制整備するという民主党の所論といいますか立場は、私は国家の在り方としては正しいのではないかと考えます。しかしながら、既にある既存の法体系との整合性、あるいはそういった包括的な基本法制というものを作ることに伴って国家の行政組織がどのようにこの法律を実行するかということを考えた場合に、なかなか整理するところが難しいところがあり、簡単にいかなかったんだろうと思います。  しかし、用語の定義を考えても、例えば緊急事態というのは、この法律の二十四条に緊急事態、特に武力攻撃事態以外の緊急事態という表現になっていて、武力攻撃事態は国家の緊急事態の一部を構成するかの表現になっておりますが、しからばその他の緊急事態とは何かということについては必ずしも定かではなく、一般にも非常事態あるいは災害対策基本法に言う災害緊急事態といったいろいろな事態の言葉があり、この言葉を整理し、一般的に分かりやすく説明をするということが必要なのではないかと思います。  私は、先ほど草野参考人の御説明の中で、日本は戦後いろいろな事態対応し、法律整備してきたとの説明がありましたが、日本の今までの法体系はどちらかというと事態対処型の法整備をずっと積み重ねて今日に至り、今またイラクへの復興支援に協力するための法案というものがいろいろと議論になっているところで、このように事態に応じてその都度その都度法体系を整備していくというシステムというかやり方はそろそろ脱却し、一般法を一本通し、その中にこの有事法制を統合するというプロセスがこの有事法制ができた後にできればよいのではないかと私は考えているものです。  その法律の名前がどのようなものであれ、言わば国の内外における緊急事態一切に対して一つ法律で国家と政府が持っておる権限、国民の責任を明記し、いろいろな事態に対して柔軟に対応できるという法整備が一本化されているということが国として最も望ましいのではないかと考えます。  国会の関与については既に与野党でいろいろな議論が行われてきたわけですが、私は、このような国家の緊急事態あるいは有事事態に際して、立法府というものの体制を整備し、有事における立法措置の手続について、例えば有事、この法律で言う、言わば予測される事態というものが起きたときに、立法府の中に速やかに委員会あるいは特別な組織が設けられ、通常の法整備のやり方ではなく、正に国家の有事対応できる法整備の手続が進められるということが必要で、有事に際して立法府がいかなる役割を果たすかということについては必ずしもこの法律の中では明らかにされておらず、言わば行政府の責任が事細かに規定されているというだけになっているわけで、その意味で、私は立法府の関与というものをもう少しこの法案の中に書き入れてもよかったのではないかと考えます。  国と地方公共団体の役割については、この武力攻撃事態法の中で最も重要な部分を占めていて、私は、当初この役割分担は一体機能するのかと思った時期がありましたが、だんだん実態を見るにつけ、やはり国というのは有事に国家の安全、国家の防衛をするだけで精一杯であり、一般国民の安全、生命、財産の確保というのは地方公共団体に任せるという以外には方法がないという考えに至り、今日、この法律の中で国と地方公共団体の役割分担がはっきりと明記されていることは正しいやり方だと思います。  しかしながら、地方公共団体の長、例えば具体的に言えば、各県の県知事にそもそもそのような責任を持たせるということが現行法の中で果たして可能な方法であるのかどうか、あるいは現在の知事の方々が県民の安全について責任を持つという意識があってそもそも選挙に出て当選しておられるのかどうかということを考えると、この法律の十五条にある代執行というやり方、すなわち県知事によっては、この責任を果たす人あるいは果たしたくない人、果たしたくない場合には国がこれに代わってその責任を執行するというやり方は、県によって対応がばらばら、あるいは県の中で市の対応がばらばらということが将来起こり得るわけで、私は、これは法律の体系というよりむしろ実態に合わないのではないか。  つまり、県知事にかかる責任を持たせるのであれば、一切異論なくすべての県知事にその責任を果たさせるよう法を改正しても、この責任を明記し、代執行というシステムを採用するという考え方にはなかなか納得し難いところがあるわけです。  しかしながら、一方において、県にそのような責任を持たせるといっても現在の県庁にはそのようなノウハウも情報も知識も要員も予算も訓練もできておらず、これから地方公共団体を、実際、この有事法制法律を有効にするための言わば啓発、教育、訓練をどのように進めるかということは今後の大きな課題であるのではないかと考えます。  危機管理庁の設置についても、私は、民主党の主張が本来は正しく、国として国家の緊急事態を一括統括して一元的に国家の危機管理をやる特別な行政組織があることが望ましいと思うのですが、しかし、それは既存の行政組織や既に各県レベルでできている防災組織との関連においてやや屋上屋を重ねる要素があり、かつまたアメリカの例えば本土安全保障省やFEMAのようなシステムを大統領制でもない日本にそのまま持ってくるということは必ずしも適当ではなく、組織の在り方について検討すべく附則の中に明記されておりますので、これは今後検討していただくという必要があると思いますが、私は実現可能なといいますか、非常に現実的な方法としては既に各県レベルで言わば災害対策基本法に基づいてでき上がっている地方の防災組織を活用し、これを国が一元的に運用するというのが現実的なやり方なのではないかと考えるものです。  国民の自由と権利というものについてはいかなる場合でも尊重されるべきであり、この原則については憲法の原則に従って守られるべきであると考えますが、この法律の中で唯一私が納得できないというところがこの表現でありまして、実は国家と国民の安全を確保するためには有事にかかる国民の自由とか権利が制限されるということは全体のためにやむを得ざる手段であり、この表現そのものは制限される場合にはどうなるかという表現になっていて、制限されるべきであるという表現にはなっていないわけです。本来は、国家の有事あるいは緊急事態には憲法で認められた国民の自由と権利が必要に応じて合理的に判断される範囲の中で制限されると、されるということが明記されているのが法律のありようだと思いますが、その意味でこの法律の第三条四項の表現は少し弱いのではないかと考えます。  最後に、この法律ができ上がった後のいろいろな法的な整備の中で、私は、最も厄介で困難な問題はアメリカとの関係ではないかと考えます。  といいますのは、現在の日米地位協定というのは有事に適用できる項目があることにはありますが、これは原則、平時における合衆国軍隊の地位と特別な権限を認めた協定であります。一方、有事において合衆国軍隊は日本の領域の内外で自由に活動するわけで、その米軍の活動に日本として協力するという側面と、それからもう一つ、一般国際法の中で駐留する外国軍隊が国内法の制約を受けないことによって引き起こされる一般国民の権利義務の保護という問題をどのように調和するかということを考えた場合、日本国内法だけでこれを担保することには少し無理があり、現在はACSA、すなわち物品役務相互提供協定を有事版に変えるいわゆる有事ACSAというものによってこれを担保するというやり方が検討されているかのように伺いますが、これはあくまで物品とサービスを相互に提供するというための協定であって、実はもう少し広範な日米協力を行うためには、どうしても日米間に協力協定が必要なのではないかと考えます。  そういう協定を作ることによって、これを外国軍隊、すなわちアメリカ軍以外の外国軍隊に適用する余地を残しておくということが必要で、日本の周辺で紛争事態が起きたときに、現在の国連安保理ですんなりと安保理決議が通るとは思われません。したがって、ある種の、日米間で対応する以外は多国籍軍型の活動が起こり得るわけで、その場合、アメリカ以外の外国軍隊が日本に入ってくるということについては、現在は国連軍地位協定という特殊な場合に限って地位協定がありますが、それ以外の外国軍隊に対する協力というのは法的根拠がないわけであります。こういうこともこれから検討する余地があるのではないかと思います。  私の全体の結論は、このような有事法制を今後整備していく間、どうしても最後に残る問題は憲法との関係であり、本来であれば、憲法有事における規定を一文書き入れて、国家のあるべき姿を明記するということによってその根拠を作ること、これが本来、有事法制を最もすっきりとしたものにする手だてではないかと考えます。  以上でございます。
  132. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) ありがとうございました。  次に、小川参考人お願いいたします。小川参考人
  133. 小川和久

    参考人(小川和久君) 小川でございます。  本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。  私は、これまで草野参考人、森本参考人がお述べになったとおり、これまで国家国民の安全を図るための法律や制度が整備されてこなかったことが異常であると。ですから、大変オーバーなことを申し上げますと、私が総理大臣であれば、国民からなぜ今かと聞かれれば、ないから整備するということを申し上げるだろうと。そういう問題として、今回の与党、そして野党のかなりな部分の賛成による大きな前進というものを高く評価したいと思っております。  しかしながら、私は今評論家稼業でございますが、実際には政府の幅広い意味での危機管理、これ外交安全保障を含みますが、そこに当事者として、末席ではありますけれどもお手伝いをしている立場でございます。そこから申し上げますと、いかに優れた法律や制度ができても、あるいはどのような政権によってそれが行われたとしても、日本的な発想から一歩抜け出ないことには機能しないという問題がある。絵にかいたもちに終わる可能性がある。その辺についての専門家の一員としての危惧を若干述べさせていただきたいと思います。  お話は、時間が限られておりますので、お手元の一枚紙のレジュメを基に進めてまいりたいと思います。  私自身は、法制度そのものが内包する問題点、それから法制度を取り巻く問題点についてきちんと議論をし、詰めていかなければ法律や制度は機能しないということをもう一度御議論いただきたいと思っているわけであります。  一番目の、法制度が内包する問題点としては、大ざっぱに三点ございます。  一つは、国民保護法制、特に住民の避難誘導が含まれた部分を同時進行で整備しなければ自衛隊は円滑に活動できないという問題でございます。  それから二番目には、「司令塔」というかぎ括弧付きの表現を取っておりますが、日本版FEMAのような組織、これは今、森本参考人が危機管理庁についてお述べになりましたが、そのような組織と考えていただきたい。そういったものがなければ、国民を現実に保護することはできないという問題があるということでございます。  三番目には、武力攻撃事態のみならず、大災害や大事故を含む、かぎ括弧付きの表現で、仮の表現でございますが、「緊急事態」として位置付けなければ、こういう危機における国民の、国民的な合意を形成しにくいのではないかなという問題点を感じざるを得ないわけであります。  まず、一番目の国民保護法制を同時進行しなければいけないという問題でございますけれども、現在考えられている、あるいは語られてきた有事法制の言わば原点に当たるのが昭和五十二年当時にささやかれたいわゆる北方脅威論でございます。これは、ソ連軍が北海道に上陸してくるぞというお話でございます。  もちろん、何十個師団も来るなんというのはこれは政治的なデマゴギーでございまして、非常に輸送能力から限られた戦力しか北海道北部に上陸させることはできませんでしたけれども、アメリカとソビエトが全面戦争に入る状況の下には、宗谷海峡の通峡権の確保のために北海道北部に限られた軍事力を上陸させてくる可能性があり、その能力をソ連軍は当時持っておりました。それを迎え撃つために我が陸上自衛隊は、名寄の北方の音威子府という村がございますが、ここを中心に防衛計画を整備してきたわけであります。  御存じのとおり、近代軍隊の地上部隊は大規模な物量を必要といたします。また、それを運搬するための多数の車両を有しております。そういったこともありまして、必ず前進する場合には幹線道路を使うことになります。ですから、我が陸上自衛隊としても、当時は稚内から旭川に抜ける国道四十号線を中心に防衛計画を作っておった。ところが、その音威子府を中心に国道四十号線でソ連軍を阻止しようと考えても、一つの大きな問題があるということが明らかになるわけであります。  それは、南下してくるソ連軍の前を、何万人とも知れない北海道北部の住民がマイカーに家族と家財道具を乗せて南下してくる。ソ連軍は日本人が盾になるから、これは都合がいい。しかし、陸上自衛隊はソ連軍を阻止するための戦闘行動ができないわけであります。だから、そこにおいては、まず明確な避難の計画があり、安全地帯に国民を避難誘導しておくことが前提になるだろうと。そういったことについて議論が始まるわけであります。  しかしながら、当時、どこを見ても、警察、消防、自治体、あるいは自衛隊の中を見ても避難誘導に関する具体的な議論というのはなかった。そういったことから、この有事法制議論は始まっているんです。だから、やっぱり、国民保護法制の中に避難誘導ということを含めるんであれば、同時進行で整備しなきゃ駄目だということを言わざるを得ない。  また、今回の提案されているものには陣地の構築や物資の確保が可能になったという部分はございます。確かに、その面では自衛隊の活動は円滑になったんでしょう。しかし、陣地を構築する場所に行くアクセスが避難民で詰まったら前進できない。物資を確保するための場所に行くためにも、道路が確保できなければ前進できない。何が自衛隊の活動が円滑になるのかということを申し上げざるを得ないわけであります。これが第一点であります。  第二点は、司令塔がなければ国民保護できないと申し上げました。この有事法制が必要だという議論が始まった当時から出ておったんでありますが、自衛隊は外敵と戦うのが役割分担であります。ただ、その状況下において国民保護する役割分担は警察、消防、自治体なんです。  ところが、この役割分担が明確になっていない。言わば危機管理に関する思想、哲学が存在しない結果、自衛隊側もそのプレゼンテーション能力がないということもあるんですが、自衛隊国民を守るんじゃない、国を守るんだとか言って、舌足らずなことを言うから誤解をされる。あるいは、消防や警察とどうすり合わせるんだという議論にならないから、意思の疎通もないというのが実は現状なんです。警察と消防すら意思の疎通がないんですよ、現場にいますと。その辺の問題が実はあります。やはり、これは消防、警察、自治体が縦割りにならないようにきちんと調整をし、束ねる司令塔がなければ国民保護はできないという問題なんです。そして、この司令塔は自衛隊との調整も行う役割を持つということなんですね。  ただ、そういう中で、やはり自治体などが具体的に避難計画を策定できるかということは、なかなか難しい。しかし、こういう、自治体が地の利を踏まえた避難計画を策定するに当たって助言をするための専門組織として、この司令塔に当たる組織が機能する、また、自衛隊とそういった問題を調整する上でも機能するということで不可欠な組織だと思います。  ただ、そういう中で、若干整理をしなければいけない議論が残っているというのは、その新しい組織を作るというのは行政改革に逆行するという言い方があるということなんです。これは内部的な話を申し上げますと、こういう危機管理庁のような組織が自衛隊まで全部指揮するかのように誤解されているという話なんですね。そうじゃないということなんです。これは、警察、消防、自治体を束ねるということが基本的な任務である組織だとお考えいただきたい。  そして、行政改革というのは、要らないものは削る、廃止をする、必要なものは増強する、また新設をするということではないですか。スクラップ・アンド・ビルドなんです。ところが、何か新しい組織を作れば行革に逆行するというのは、惰性で行政をやっていると言わざるを得ない。その辺は、若干、御議論を整理していただきたいと思うわけであります。  ただ、そういう中で、有事法制という言葉については私が抵抗があるのは、やっぱり国民が身近な危機としてリアリティーを持って受け止めているのは、大災害、大事故であり、大規模テロなんです。そして、長期的に国が備えなきゃいけない問題として武力攻撃事態がある。だから、短期的、中期的にリアリティーを持つ大災害などと同時に、武力攻撃事態にも対処する法律や制度を整備すべきだと。この辺をきちっとしなければ国民的な合意を形成しにくいだろうと思うわけであります。  やはり、武力攻撃事態について議論が非常に空論に陥りがちの問題としては私権の制限の問題がございます。私の権利。しかし、大災害、大事故において、人命救助のために緊急自動車が走らなきゃいけない道路を確保するために自治体の首長が外出禁止命令を出すなどというのはアメリカの地方自治体においては当然あるわけであります。ここにおいてはコンセンサスできている。しかし、アメリカの国民的な合意としてもう一つの合意があるのは、これはマーシャルロー、戒厳令についてはほとんど発動できないぐらい厳しい合意もあるわけであります。  これは身近な危機をどう克服するかという、言わば基礎問題に当たるところからずっと積み上げていってでき上がった合意なんです。こういったことで合意を形成しておれば、究極の危機である武力攻撃事態においても、ここまでの私権の制限はやむを得ないだろうということがはっきり国民の側から出てくる。しかし、これ以上は譲れないということもはっきり出てくる。具体的な話になるということです。そういったことも含めて、やはり司令塔に当たる組織を作り、緊急事態という一つ幅を広げた取組というものをやっていただきたいと私は思うわけであります。  災害、あるいは大事故、あるいは交通事故や医療事故も含む基礎問題について取り組むのは非常に取り組みやすい、国民の合意も作りやすい。しかし、外交安全保障ということになりますと、自衛隊をどのレベルで整備するかということについても、やはり賛成も反対も分かれますし、議論は百出する。まとめるのは難しい。まあ安全保障というのは言わば高度な応用問題なんです。基礎問題ができずに応用問題できるわけないじゃないですか。どこを見ても基礎問題ができていないんですよ、日本は。そういった意味も込めて、やはり緊急事態という幅を持たせていただきたいと思っているわけであります。  二番目に、法制度そのものを議論すると同時に、法制度を取り巻く問題点についても議論していただきたいと思っております。  私自身は内閣官房などでこういった作業を末端の方でお手伝いしておりますけれども、法律や制度が幾ら完璧なものになったとしても、日本の現状じゃ機能しないんですよ。  例えば、一例は道路なんです。道路は、昨年、日本国土交通省のトップ官僚たちと勉強会をやった中でも向こう側が認めておりましたけれども、国家建設における道路整備の位置付けが今まで語られたことがないんだそうです。国家建設の目的というのは何ですか。国民に安全を保障すること、そして自由を保障すること、繁栄を保障することでしょう。それに向けて国家建設があり、道路の整備がなきゃいけない。ところが、どこから切ってもこういったことが議論されたことがないんだそうであります。何をやっていたかというと、極端言うと、路面を掘りくり返しておりましたという話なんですね。ただ、非常に優秀な官僚だから正直にそれを言うわけですよ。だから、そこのところをきちんとやらなきゃ、法律や制度が整備されたって駄目だということなんです。  例えば、道路について申し上げますと、これ危機管理上の問題でいいますと、国防、防災、救急救命などありますよ。でも、例えば国防でいいましても、防衛計画と住民避難路の整合性について議論されたことはない。  あるいは、ハイウエーストリップなんてありますが、これは西側先進国では高速道路を飛行場にするというのは当たり前ですよね。韓国だって八か所あるし、北朝鮮だって十三か所ある。航空地図に載っていますよ。韓国なんかは高速道路を目をつぶっていたって、走っていてゴーっと音が変わるから見ると、長さ四キロぐらいの直線区間、中央分離帯もない、照明灯もない、強化コンクリートになっている。戦闘機が発着できるようになっている。これは当たり前なんです。そういった道路は一切ありません。  あるいは、軍用車両の通行に耐える設計で造られた道路もありません。例えば、高速道路でも、東名高速の東京バリアほか数か所以外は、戦車も装甲車も通れないんですよ、あの料金所の幅が狭くて。例えば、九〇式戦車は幅が三・四メートルある。今度、バグダッドに入っていったアメリカのM1戦車は幅が三・六三メートルもあるんですよ。だから、料金所を踏みつぶしていかなきゃしようがない。まあむちゃくちゃ、何にも考えていないということです。大型バスは幅二・五メートルですけれども、全然大きいんですよ、戦車とか装甲車は。  あるいは、敵が上陸してきそうな場所というのは大体限られるわけであります。これは、軍事技術上それがはっきり言えるわけでありますが、そういったところに、国防のための道路があり、例えばトンネルなどを利用した戦闘機の格納庫がありといったようなことを全部考えていくというのが、これは国民の安全を考える道路整備であろう。こんなもの、何にもありません。  あるいは、防災上もそうであります。防災計画と住民避難の整合性が考えられたことはない。  それで、一番問題になってくるのは、これ、下から二番目のところでありますが、巨大災害、大規模テロと幹線道路網の関係でございます。こういった危機が発生した直後に、救助、救援のために緊急自動車等を向かわせる。あるいは住民を避難させるための循環という考え方がなきゃいけないんです。  阪神・淡路大震災でいいますと、海側の国道四十三号線、これを西行き一方通行にする、山側の国道二号線を東行き一方通行にするといったような計画が事前にあり、ぐるっと回していけば、これはやじ馬につかまって緊急自動車が走れないなんという問題も相当緩和される。もちろん、交通の流入点には、ヘリコプターから警察の白バイを下ろしていって、赤色灯をつけるだけで止まるわけであります。こういったものが循環なんです。こういったものがないのに、何で防災なんだと。  第二東名は防災上は役に立つなんて、後知恵みたいなことを言うけれども、とんでもないと自民党の道路部会の先生方と話をしたことあります。向こうも認めていましたよ。大体、防災考えるんだったら、同じ地域に高速道路を通すばかはいないだろうと。これは国土交通省道路局だって、そのとおりだと。少なくとも中央高速の方を通す、あるいは北陸道の方を循環として考えなきゃいけない。第二東名というのは、設計強度は上がっていますから、結果としていえば東海地震にも耐えるかもしれないけれども、あれは元々、拡幅の発想であの地域に通したんですから、やっぱりその辺はもう一回整理した方がいいだろうと。  あるいは、防災都市計画だって、東京だって大阪だって、どこにもないわけですよ。これはきちっとやるんです。国民の命を守るための公共事業をやるぐらいの発想がなきゃ駄目なんですよ。要らぬところは全部削っていきゃいいんです。そういったことをやるということが大事であります。  それから、最後の方になりますが、救急救命につきましても、私は、ドクターヘリを実現する委員会でずっと作業をしてきた。ところが、ヘリコプターが飛ぶようになって、お医者さん下ろせるようになっても、日本の高速道路で事故現場に下りられるということは限られるんですよ。全部スズラン型の照明灯が出ちゃっていて、ヘリは下りられない。何を考えているのかという話ですよ。戦争のことを語るのは十年早い。その辺のことをやっぱりきちっと積み上げていくということが大事だろうと思います。  私は、三番目に、有事法制を健全に機能させるためにと書いておりますが、やっぱり二点のことを是非この参議院で御議論をいただきたい。  一つは、日本の場合、どこの問題を取っても縦割り行政に陥って、個々にむちゃくちゃな税金の食い散らしが行われている。だからこれ、国家としてのイニシアチブを明確にしていく、そこに有事法制の問題を集約させていくということが大事だろう。  第二点目といたしましては、日本の陥りやすい通弊、陥穽でございますが、法制度の制定が自己目的化して、法律や制度ができたら一丁上がり、もう完璧なものだと思っちゃって、機能しないものであっても、棚の上に載せて、ほこりかぶって終わり。マニュアルもそうでございます。とにかく、法律や制度なんというのは、どんなにできのいいものができたとしても、完成度を高めるために、改正の手続を絶えることなくやらなきゃいけません。  そういったことをやはりこの有事法制をモデルとして是非お進めいただき、我々の子孫が安全で豊かな国を生きていけるように計らっていただきたいと思います。  以上でございます。ありがとうございました。
  134. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) どうもありがとうございました。  次に、石埼参考人お願いいたします。石埼参考人
  135. 石埼学

    参考人石埼学君) このような場に私のような若輩者をお招きいただきまして、ありがとうございます。  今後の参議院でのこの有事関連法案の慎重な審議に私の意見が多少とも御参考になればと思う、そういう思いで発言させていただきます。  まず第一に、私は、この有事法制をめぐる昨今の動きについて非常に危惧している点が第一点あります。まず、その点から始めます。それは、立憲政治という問題であります。有事法制論議をする以前の問題として、果たして今の日本の政治が立憲政治に基づいた政治の枠内に収まっているのか。  立憲政治というのは、フランス革命あるいはアメリカの独立宣言というものから始まりまして、二百年にわたって世界の様々な国民がそれこそ自由と民主主義のために闘ってきた、その成果としてでき上がっているもので、日本国憲法も当然、近代立憲主義の、立憲政治の立場に立っております。  しかし、第一点として、是非この点、国会で責任あるいは事実を究明していただきたいと思いますけれども、テロ特措法に基づいてインド洋へ行った自衛艦がイラク戦争に参加したアメリカの艦隊に、艦船に給油をしている、つまり、自衛隊は何の法的根拠もなく勝手に行動したということであります。政府国会もこの点を抑止し得ない。どういう経緯かは私は知りませんけれども、そのように、何ら法的根拠もなく動く自衛隊、こういうものを抑止し得ない国会あるいは政府が、果たしてこの有事法制ができたときに、武力攻撃事態が起こったときに、どうして法律憲法を守って行動できるのか、この点、厳しく最初に言っておきたいと思います。  もう一点ですけれども、小泉総理大臣が五月二十日の参議院のこの委員会で、自衛隊は、「実質的に自衛隊は軍隊であろう」という言い方をしております。これ非常に問題のある言い方でありまして、自衛隊が実質的に軍隊であるのであれば、それが事実であるのであれば、その事実に憲法九条という規範を当てはめれば、それは自衛隊憲法違反だということになります。それが法的思考というものです。小泉総理大臣がどういうお考えで自衛隊は実質的に軍隊だと言ったのか、その真意、あるいは自衛隊は合憲なのか違憲なのかという問題、その辺も是非明らかにしていきながら、そういうことも含めながら議論が進められるべきだろうと思っております。  ちなみに、今までの政府の見解では、なぜ自衛隊を戦力と、じゃ自衛隊を軍隊と呼ばずに実力と呼んできたのか。それはひとえに自衛権の行使のための必要最小限度の実力だからだと、だから普通の国で言う軍隊とは違うんだ、だから軍隊ではなくて実力だという言い方をしてきたわけです。  小泉総理が言ったように自衛隊が軍隊であるならば、これは明らかに憲法九条違反、あるいは、そういう過去の政府答弁を踏まえた上であえて実力ではなくて軍隊だという言い方をした、事実上の軍隊だという言い方をしたのであれば、それは政府が今までの政府とは違う安全保障政策に転換したことを意味する。そういうことをしっかりと踏まえた上で慎重に有事法制論議をしていただきたいというふうに私は考えております。  第三に、立憲主義の問題になりますけれども、そもそも憲法九条が、私は憲法学者として日本日本国は当然自衛権を放棄しているとは思いません。しかし、それが凍結されているというふうに考えております。  国際法上あるいは法学的な論議で自衛権と言う場合には、武力でもって自国の安全を守るというのが自衛権の内容であります。とするならば、一切の戦力を放棄した日本国憲法の下では、自衛権は持っているけれども、それを凍結している。この九条の含意は何なのかということは今更私から言うまでもないかもしれませんけれども、かつての日本の侵略戦争あるいは沖縄戦で見られたような、正に国民に対して銃を向けた、あるいは、それこそ抵抗することができないアジアの人たちに銃を向けて虐殺していった、そういう日本国家の過去への、対する反省として自衛権の行使としての戦力の保持を凍結しているわけです。  場合によっては、日本が将来的に自衛権の行使を凍結を解除するということはあり得ますかもしれませんけれども、今のような事態で、法的根拠もなくアメリカ軍の戦争に協力してしまうような自衛隊、あるいは、憲法あるいは法的思考があるのかないのか分かりませんけれども、平気で自衛隊は軍隊である、事実上軍隊であるということを言ってはばからない人が総理大臣である、このような政治が行われている下で、憲法九条第二項が自衛権を凍結している、その行使を凍結しているという凍結を解くべきではないというふうに私は考えております。  第三点として、今回の有事関連法案、とりわけ武力攻撃事態法案にかかわることですけれども、国民の安全のためだというふうに書かれておりますし、今までの国会答弁、あるいは私の前に発言した三人の参考人の先生方の意見でもそうですけれども、重要なことを忘れないでいただきたいと思うんですけれども、確かに国には国民の自由や安全や財産を守る、そういう責務はあります。しかし、一方で近代立憲主義というものは、そういう責務を有する国家が憲法違反、憲法を無視して、あるいは法律を無視して国民の権利や自由を恣意的に侵害することがないように、明文の憲法典でもって公権力、国家権力がやることのできる権限というものを明記しているわけであります。あるいは、その憲法を具体化するために法律というものが作られるわけです。したがいまして、憲法法律に明確な権限の根拠のないような公権力の行使は慎重に、行使はできないということになるわけです。  つまり、国民の安全を守る、それは確かに政府の重要な役割の一つでありますし、我々もそれを期待しておるところですけれども、しかしながら、一方では公権力というものは時には憲法法律を無視して、現に日本政府がそうなっておりますけれども、そういうものを無視して国民の権利や自由や安全を侵害する危険がある、そういう危険な存在でもあるんだという近代立憲主義の基本的な考え方が全くこの有事関連法案の論議では意識されていないのではないかと。  こういう点も踏まえまして、以上の点からして、正に今私たちが向き合っているのは憲法九条の危機であります。日本国憲法の危機であります。  しかし、それを越えて、この日本の政治が立憲政治というフランス革命やアメリカの独立革命以来築き上げられてきた、それこそ与党の国会議員の皆様方がその普通の国家と呼ぶもの、そういうところで築き上げられ、築き上げられてきた立憲政治、それを日本も明治維新以来長い間掛かってやっと作り上げようとしている、それをぶち壊すような、そういうものであるという、そういう状況の中で、あるいは有事法制法案の中にもそういう要素が含まれているということを非常に危惧しておりますので、私たちは、向き合っているのは正に立憲政治の危機だということを最初に言っておきたいと思います。  次に、安全保障政策を考える際に、私は二つのことを明確に区別するべきであろうと思っております。  一つは、多くの人は安全という言葉を聞いた場合に当然に思い浮かべるであろう事柄、すなわち現実に具体的な可能性のある危険、それに対する概念としての安全という概念です。例えば、山を歩いていたら突然ヒグマが出てきた、そのときにどうしようかというような具体的な危険に備えるための安全という概念であります。  もう一つは、取りあえず危険はないのだけれども、将来もしかしたら何か危険なことが生じるかもしれない、将来もしかしたら生じるリスクですね、確率論的なリスクに備えるためのセキュリティーという概念であります。これはソーシャルセキュリティーという言葉がありますように、社会保険というものと同じです。もしかしたら将来病気になるかもしれない、今は全く心配がないけれども、でも人間である以上病気になる可能性はあります。あるいは、事故に遭うかもしれない、そういうことで確率的にはあり得ることです。  そういう確率的な将来起こるか分からない、起こるかもしれないし起こらないかもしれない、そういうリスクに対するためのセキュリティーの論議、それと具体的な可能性の高い危険に備えるための安全という概念とを混同しながら議論が進んでいるのではないかというふうに思っております。  リスクに備えるということであれば、まず第一なのは、当然一人一人の人間でもそうですけれども、病気にならないようにいろいろ健康に配慮するであるとか、事故に遭わないようにちゃんと道路交通法等を守って自動車を運転するだとか、そういうことがまず第一に必要になるわけですね。  もし、将来のリスクに備えるための、小泉総理大臣が繰り返し備えあれば憂いなしと言うのは、保険会社のキャッチコピーと似ているというのは偶然ではなくて、今回の法案審議全体が、起こるか起こらない将来に関するリスクに備える法整備だという政府説明の下に進んでいる。もしそれが事実であるならば、そういう姿勢で有事関連法案整備するのであれば、まずやるべきは、有事関連法案についてはこれからも慎重に審議していただきたいと思いますけれども、本当に必要なのかどうかということを改めて立ち返って考えていただきたい。  リスクを回避するために今、日本政府ができることはたくさんあります。一つだけ例を出しますけれども、例えば日本政府はこの間、周辺事態法を作り、周辺事態においてアメリカ軍が介入した場合にはアメリカ軍の後方支援をするということで、自らそのリスクを大きくしていくような政策をしていく、大きくしていくような安全保障政策を取っていっている。対テロ特措法もそうでございます。しかも、対テロ特措法にも違反して、法律にも違反してアメリカの戦争に協力してしまった自衛隊がいまだにインド洋に派遣されています。まず、この自衛艦を撤収するというだけでも日本に対する様々な危険というもののリスク、確率は減るであろうと。  なるべくそのようなところには行かないというようなこと、周辺事態法に基づいて、取りあえず我が国の、直接的な我が国に対する武力攻撃が行われる場合でもないところにアメリカ軍の支援のために後方支援に行かない等々、日本武力攻撃事態というものに巻き込まれないようにするためにリスクを減らしていく努力というのは政治の力で幾らでもできるものであると思っております。そういうものをわきに置いておいて、自らリスクを大きくしていくような安保政策を取りながら、リスクに備えるための有事法制が必要だというのは全く本末転倒ではないかと私は考えておりますということですね。  それでもう一点、もう一点じゃないです、もう二点ぐらいあるんですけれども。  まずは、今の点の、もう一回分かりやすく説明いたしますと、自らで危険運転をしながら保険に高く入っておこうと、それは明らかに本末転倒である。危険な運転はやめる、それがまず最初にやるべきことであるというふうに私は考えております。  それで、あと最後にということになりますか、有事関連法案ができ上がりますと、皆様、御承知のとおりですけれども、事態対処法制、いわゆる国民保護法制というものの整備が速やかになされるというふうになっております。しかし、この国民保護法制というものに対して私は非常な危惧を持っております。一言で言うならば、国民保護法制はいわゆる有事武力攻撃事態が発生するに至った時点より前に先倒しして、平時から、すなわち平和なときからこの日本社会を戦争モードに変えていく危険が非常に大きいということでございます。  例えば、国民保護法制の概要、四月十八日に政府が示した国民保護法制の概要では、地方公共団体あるいは指定地方公共機関あるいは指定公共機関等々に対して、業務計画、国民保護に関する基本指針、政府が作る、それに基づく業務計画作りも検討しているというふうに書かれております。すなわち、武力攻撃事態の危険すらない段階で、平時から地方公共団体の職員や指定公共機関の職員等々に対して有事に備えた、武力攻撃事態に備えた業務計画、つまり有事対策マニュアル作りというのを作るということになっていく危険性が非常にあります。  あるいは、福田康夫官房長官が百五十四国会ですか、で言いましたように、ちょっともしかしたらそこは間違いかもしれませんけれども、平時から国民の訓練をする、あるいは民間防衛組織を作るというふうに言っております。  平時から、今、例えば大地震に備えて災害対策の訓練というのは幅広く行われておりますけれども、これが、この国民保護法制ができた暁には、公然たる武力攻撃事態に備えた訓練になる危険性がある。災害に備える訓練であれば、それを指揮するのは消防署であり警察署でありましょう。しかし、武力攻撃事態に備えた訓練であれば、日常からそのような国民の訓練というものを自衛官があるいはもしかしたら指揮して、あるいは参加する形で行われていくということで、日常生活までが戦争モードに入っていくという危険が非常にあると思っております。  あるいは、民間防衛組織を作る。四月十八日の国民保護法制の概要を示した時点では、福田康夫官房長官は、新たな民間防衛組織を作ったり、あるいは既存の民間組織に新たな任務を与えることは考えていないと言っておりますけれども、地縁に基づくいろいろな団体、地域のコミュニティーを作っている団体等々が民間防衛組織として再構成されるならば、あるいは地域単位で民間防衛組織、どういう名前になるのか知りませんが、そういうものが作られていくならば、仮にそれが一部の市民の自発性に基づくものであっても、地域で日ごろから戦争モードを強いられる、住民たちがですね、そういうことになりかねないという危険を非常に感じます。  この際では幾ら強制ではないと言われても、例えば町内会の回覧板で、何月何日に武力攻撃事態に備えた訓練を行います、つきましては御参加をお願いしますというものが配られた場合にはどうなるのか。また、憲法九条、大事だと思っている人たち、あるいはいろいろな形で信仰上の理由もあるでしょうし、いろいろな意味でそういうものには参加したくないという人たちが生活しづらいような、生きづらいような社会になっていくのではないかということを私は非常に危惧しております。  むしろ、国民保護法制と称して、この現時点で政府説明のとおりであれば、具体的な武力攻撃事態可能性がないのであれば、むしろ国民保護法制審議というものは慎重にも慎重を重ねて、間違っても社会を戦争モードに変えるようなことがないような形で行っていかなければならないというふうに私は考えております。  最後に、憲法学者というよりも、一人の人間として発言させていただくことをお許しいただきたいと思います。  私は、一九六八年に生まれました。いわゆる戦争を知らない世代よりもっと下です。日本国憲法の下で生まれ育ち、その下で人間として、自分とは全く異なる人々、あるいは全く異なる考え方をする人々、いろんな人々が社会で生きております。そういう他人、他者、自分とは異なる人々も受け入れていく、一緒に暮らしていくということ、そういうこと、あるいは楽しんだり悲しんだり、そういうこと、そういった平和的な感情をはぐくみながら今まで生活してきたつもりですし、今後も日本国憲法下の下でそういう平和的な感情というものをはぐくみながら生活をしていきたいというふうに考えております。  しかし、戦争モードになった社会で果たしていろいろな形でそういうのに付いていけない人たちが排除されたり、あるいは逆に利用されたりということもあり得るかもしれませんけれども、付いていけない人たちは置いていく、そういうような日本社会の在り方になっていくということを非常に危惧しております。  少なくとも私個人について言えば、有事関連法案が仮に可決成立したといたしまして、その後にいろいろな対処、緊急事態法制あるいは国民保護法制というものができたとしましても、私は一人の憲法学者の良心としてあるいは一人の人間として、一切そのようなものに協力するつもりはございませんということを述べたいと思います。ちょっと暴言かもしれませんけれども、お許しください。  以上です。
  136. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、参考人の方々にお願い申し上げます。御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  137. 国井正幸

    ○国井正幸君 自由民主党の国井正幸でございます。  今日は参考人の先生方、本当にお忙しいところおいでをいただきまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。限られた時間でありますので多くのことを質問できないかもしれませんが、ひとつ御見識を御披露いただきたいと、このように思います。  まず、三人の、草野参考人、森本参考人、小川参考人からは大方、このいわゆる法律がおおむね評価をいただいているようでございまして、私も、戦後五十年余過ぎておりますけれども、いまだにこういう有事に関して法整備がなかったのかということ自体が異常な事態だと、国政にある者として私も反省をしておる一人でございます。  そういう意味で、例えばテロ特措法とか、あるいは災害時における災害対策の特別措置法とか、個別の案件についていろいろやってきて、最後に残ったのが、いわゆる外国からの武力攻撃があった場合、あるいは予測される場合に我が国としてどのように対処するかと、こういうことになってしまったと結果的に思うわけでございます。そのためにはやっぱり、先ほど来出ていますが、憲法との兼ね合い、そして自衛力という概念等々、国内に多くの議論もあったというのもこれまた事実だろうというふうに思っております。そういう部分で、ある一定の年月を過ぎた中でおおむね合意を得られる多くの部分ができてきたというのもまた政治の現状だろうというふうに思っております。  そういう中で、草野参考人の方から、冒頭、ようやくここまで来たかというお話、それから、いわゆる衆議院において修正、政府原案をいわゆる政治の場において修正をして可決をして今参議院に送ってきた、このことに対する評価をいただいたわけでありますが、端的に御質問させていただきたいと思いますが、いわゆる内容的にその修正内容が評価できるという部分と、いわゆる政治手法として、やはりこういう重要なものであるから、与野党合意をして、多くのいわゆる賛成を得てしっかりやっぱり確立させるべきだ、国民合意の形成を図るべきだと、そういう意味で、いわゆる政治手法としてこの修正というものに対して評価があるのか、内容的にこの辺が、例えば国会の関与の在り方等々、後で補強された部分が評価の対象になっているのか、その辺、お聞かせをいただきたいと思います。
  138. 草野厚

    参考人(草野厚君) お答え申し上げます。  今、国井先生がおっしゃった二点、双方私は評価をしております。  まず、政策面でいえば、例えば森本参考人あるいは小川参考人からお話がありました、危機管理庁という具体的な名称は使っておりませんけれども、そういう一元的な組織の在り方について将来検討する、将来というか、検討するというふうなことは、これは元には入っていなかったわけで、私もその点に関しては先生方と同じような考え方を持っております。  あるいは、くしくも国井議員がお使いになりました文章ですけれども、「おそれ」だとか非常にあいまいな文言を使っていたところがございましたけれども、それをよりパラフレーズしたというか、具体的に分かるようになった。  政治的な手法に関しては、付け加える必要はございません。
  139. 国井正幸

    ○国井正幸君 それから、包括的な部分は後で先生方に共通してお聞かせをいただきたいと思うわけでありますが、次に森本参考人にお伺いしたいというふうに思いますが、このレジュメの中でいわゆる国会の関与という部分がありますけれども、予測事態に際して立法府の体制を整備し、有事における立法措置の特例を検討ということでありますが、有事のときに、先ほど先生のお話ですと、有事のときに行政府の取り得る部分、あるいは地方公共団体の取るべき行動等々をこの法において定めておるけれども、一体、法治国家である国会がその有事のときにどのように機能するんだと、こういうふうなお話だったように私受けたわけでありますが、現在の国会の中においても、いわゆる予算委員会もありますし、あるいは参議院でいいますと外交防衛委員会もありますし、あるいは災害対策特別委員会等々もあるわけでございますが、先生のお考えですと、そういう特別なものをやる、言うなら委員会みたいなものを常時置いておくという意味合いでおっしゃっているのか、これはちょっと疑問なものですからお聞かせをいただきたいと思っています。
  140. 森本敏

    参考人(森本敏君) 国家の有事の際に立法府の手続というものは、もちろん事態の重大さあるいは事態の推移にもよると思いますが、通常の立法府としての機構だとか、その立法措置のやり方で必ずしも適応できないという場合が起こり得る。そういう意味では、立法府の機能も、言わば緊急事態対応でき得る体制がなければならないと思います。  通常、国家の危機に際して立法府がどのように措置をするかということについては、通常の特別委員会を設置するということが必要かもしれませんが、しかし、そういう特別委員会を設置するのも実は大変手続に時間が掛かるやり方なので、私は、国家の緊急事態に立法府が取るべき措置というのは、本来であれば、このような危機事態に衆参両院が一つのまとまった特別な委員会が常時作られていて、そして、安全保障会議設置法の一部改正の法律の中にある、言わば事態対処専門委員会が行う検討措置を常に立法府において説明を受け、立法措置の在り方を平時は検討しつつ、緊急事態にはその特別な衆参両院で設けられた委員会が極めて短時間に立法措置ができるという特別な措置が設けられていないと、立法府が機能しないとこの国のあらゆる措置というのは動かないわけですから、立法措置だけでむしろ、国が滅ぶわけではありませんが、すべての活動が止まったり遅れたりするということはあってはならないわけで、そういう意味において、通常の手続とは違う措置が取られる、そのための体制があってしかるべきではないかとの趣旨でございます。
  141. 国井正幸

    ○国井正幸君 これはやっぱり貴重な御提言だというふうに思います。今のいわゆる法体系の中になじむのかどうかは分かりませんが、確かに検討すべき課題かなというふうにも思っています。  それから、これは森本参考人もあるいは小川参考人も共通しているわけでありますが、小川参考人にお伺いさせていただきたいというふうに思いますが、やはり、いざ有事というときには私権の制限はあってしかるべしと、私もそう思うんです。やっぱり一番大切なことは命だというふうに思うんです。命を守る、生命を守る、一番大切なものを守る、そのときにはやっぱり、いろんな権利あるけれども、しかし最も大切なものを守るために、一部はやっぱりその瞬時において、あるいは極限の状況においてこれは制限されてもしかるべきだと思うんですね。  で、小川先生の、私も、著したマネジメント講演録というんですかね、これをちょっと見させていただいているわけでありますが、そのときに、いわゆる大災害のときに、先ほども先生お話ありましたが、言うならもう避難をする人の車も当然あるでしょう、人そのものもたくさんいるでしょう、あるいはそれを手伝いに、よく言えば手伝いに来た人もいるでしょう、物見に来た人もいるでしょう、あるいは逃げる中で車を放置しっ放しの人もいると思います。いろんなことが考えられるわけでありますけれども、そういうときに、やはりそれは放置された車といえどもだれかの所有物でありますから、それは権利はあると思うんですね。しかし、やっぱり事有事という中で国民の生命、そして財産を守るというときにおいては、これはやっぱりしかるべき制限があってしかるべきと、私も思うのでありますが、その辺について、私もちょっと、これ与党として賛成の立場なんでありますが、その辺がちょっと弱いのではないかというふうに思っている一人なんです。  そういう意味で、先生の御見識の中でこの辺の問題について御指摘がありましたら、お聞かせをいただきたいと思います。
  142. 小川和久

    参考人(小川和久君) 大変重要なポイントの御質問、ありがとうございました。  私も、私権の制限という言葉そのものを使いますと、何か思想、信条の自由まで制約されそうな響きがどこか込められているようで、言葉として本当に適切かどうかという疑問は持っております。  ただ、御指摘にもありましたように、例えば大災害や大事故のとき、人命救助のために現場に向かう緊急車両がやじ馬とかその他の用のない人たちの通行によって妨げられることになりますと、人命の問題でありまして、もっと違う表現をいたしますと人権の問題でございます。ですから、思想、信条の自由とか、本来的に人間が保障されなければいけないものに触れないところで、やはり通常行使できる権利が一定程度制約されても仕方がないということについて国民の合意を作り上げていく作業が必要だと思うんですね。  例えば、違法駐車と、これ法律に違反した駐車の状態なんですね。もちろんそれについては所有権はあるわけです、所有者の。しかし、これが違法駐車していた結果、被災地のあるいは大事故の現場の、あるいは武力行使事態でもいいんですが、武力攻撃事態でもいいんですが、やはり住民の命にかかわるということになりますと、緊急自動車や何かが通行する場合、それを傷付けたとしても、あるいは傷付けることを前提として排除をしたとしても、それについて所有権はあるけれども、やはり違法な行いをしたということで、それ以上の賠償請求はできないといったような権利の制限というのは国民的な合意の下に行われてしかるべきだと思います。憲法で保障された基本的な権利がいろいろございますけれども、そういったものの中で思想、信条の問題とか、そういったものは触れることではないと思いますね。  ただ、やはり本当に国民の命を守るためにどの程度のその権利が制約されても仕方ないのか、その辺は具体的な、しかも国民が身近に感じている危機、これは大災害であり大事故であり、そういったものが一番いいモデルになると思いますが、きちんと議論を積み上げていくことが大事だろうと。  ですから、そういった面から、基礎問題であり、一つの入口の問題としても、やはりその有事法制ということで言葉をくくるのではなくて、もうちょっと表現も変えながら幅広くとらえていくというアプローチが必要ではないかなと私は思っております。  どうもありがとうございました。
  143. 国井正幸

    ○国井正幸君 そこで、これは先生方に共通してちょっとお聞きをしたいというふうに思います。  実は当委員会審議の中でも何人かの委員から指摘もあるわけでありますが、この武力攻撃事態法の中で、第四条には国の責務というのが書いてあります。これは、武力攻撃事態対処するとともに、国全体の万全の措置が講じられるようにする責務を有すると、前段は省略しますが、第五条が、地方公共団体の責務としてもろもろの機関と、国、もろもろの機関と相互に協力して対処する、必要な措置を実施する責務を有する、そして第六条には指定公共機関の責務というものがある。そして今度は七条が、国と地方公共団体の役割分担というのがありまして、そして第八条が国民の協力ということなんですよ、協力。  災害対策基本法ではやはり同様に国の責務があり、都道府県の責務があり、市町村責務があり、指定公共機関及び指定地方公共機関の責務というのがあって、住民等の責務ということで、災害対策基本法では責務というのがあるんですね。しかし、この事態法では国民の協力ということで、国民は、国及び国民の安全を確保するための重要性にかんがみ、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努めるものとすると、こういうふうなことなんですね。  私も、何度も言うようでありますが、与党として一刻も早くこれ成立をさせなくちゃならない、重要なことだ、空白を置いておくわけにはいかない、そういうふうに思いますが、しかし、それにしてもやはり、国民としてしっかりとやっぱり自分の安全は自分が守るということも含めて、国民責務というのがしっかり私は、うたうべきではないかと、このように思うんです。自らやっぱりやること、協力ということではなくて自らの問題だろうというふうに思います。そして、妨げなどをしてはならぬというふうにもちろん思うわけでありますが、その辺の考え方について、もうこれ十二分しかないわけでありまして、それぞれちょっと御意見をお聞かせいただければと思います。
  144. 草野厚

    参考人(草野厚君) ありがとうございます。  私もこの条文を、そしてまたこの概要を読んでいって、ほかの部分と、国民が何をすべきかというところについての書きっぷりがちょっと弱いのではないかなという印象を持ちました。  ただ、同時に、重要なことは、先ほど来議論でも出ておりますけれども、私権の制限ということはこういう緊急事態においては当然ではありますけれども、当然ではありますけれども、後ほど国民から説明責任という形で政府説明を求めたときにきちんと答えられなければいけない、あるいは透明性というものも確保されなければいけないという点からしますと、この法体系全体の中に、住民に対する、今回民主党の要求によって加わりましたけれども、住民に対する情報の十分な伝達であるとか、あるいは先ほど私が最後に申し上げましたようなパブリックコメントという形で、この今おっしゃったようなところにもう少し強い文言を入れるとすれば、十分国民の合意を取った上でというふうなリザベーションを付けたいなと。それを前提にすれば賛成でございます。
  145. 森本敏

    参考人(森本敏君) 有事の場合に国民の負うべき責務というのを法の中に書き込むというのは、私は、他のケースの場合は国民がどのような責任を負うかということについてはっきりと法律の中に書き込むということは必要な場合があると思いますが、有事というのは言わば一方的にどこかの国からそういった不法な行為が行われていることに対して、どのように国が対応するかというときに国民が果たすべき役割というものは、結局のところは、国や地方公共団体が国民の安全を守るためにいろいろな措置を取ることに対してどのように国民が協力するかという一点に私は尽きているのではないかと思う。  といいますのは、国民が主体的に何かができるということでは必ずしもありませんで、この場合、国民の協力というものの内容をもし細かく考えれば、国や地方公共団体の指示に応じて積極的に避難をしたり情報を提供したり、あるいはボランタリーな活動に自ら参加をしたりするということで、そのほとんどすべての国民の活動は、つまり国や地方公共団体が国民の安全のために行う行為に対してどのように国民が協力するかということに私は尽きるんだろうと思うんです。  したがって、例えば納税の義務だとか教育の義務だとかという、いわゆる憲法法律で言う国民責務だとか責任だとかというものよりはるかに、国民に積極的に国及び地方公共団体が行ういわゆる有事のための措置に協力してくれるということが、むしろ国民の最も大きな責務、この場合は、であって、したがって、私は協力という言葉で十分用が足りているのではないかと、このように考えます。
  146. 小川和久

    参考人(小川和久君) 私は、元々どのような政権であろうとも、武力攻撃事態ということを考えた場合、国民はやはり自らの国や社会を守るために国の活動に対して協力をしなければいけないというのは当然でありまして、これはやはりそれをうたわなければいけないということ自体、日本議論の未整理部分を表しているのかもしれないと思います。  しかし、やはりこれは責務という言葉を使って強力に打ち出すのがいいのか、あるいは協力という表現の方が極めて自然なのか、それは議論が分かれるところかもしれませんが、やはり私も協力といったような表現でまずその辺をうたっておくことが国民的合意を形成していく上でも重要ではないかなと思うんです。  私自身やはり、これまでの参考人の方々のお話を伺ったり、あるいはこれまでこの有事法制に関するいろんな国民の皆さんのお話を伺っている中で、やっぱり日本というのは外交安全保障、危機管理、あるいは軍事については先進国の中では相当基礎知識に欠ける、つまり国民的に苦手だとしている部分がある。  だから、例えば武力攻撃事態において、国民を避難誘導するなんということと軍事訓練するということが混同されていたり、ばかな、そんなことはないんですよ、ただ単に逃がすということなんです。それも、自衛隊がやる仕事じゃなくて、役割分担としては消防、警察、自治体の仕事でしょう。そういったものを明確にできていない日本国民のレベルですから、やっぱりこれ、自己責任なんということを語る場合にもきちんとその辺をしておく。その場合にはやはり協力という表現から入っていくのがいいのかなという感じがしております。  以上であります。
  147. 石埼学

    参考人石埼学君) 御質問ありがとうございました。  そもそも私はこの法案自体に反対しておりますので、何と答えていいのか分からないんですけれども、一点だけ申し述べさせていただきますと、国民という抽象的な言葉でその責務を語ることの危険性です。  この日本社会には、国民というと法的には日本国籍保持者ということになります。しかし、日本国籍を保持していない多くの在日外国人の方がいらっしゃいます。国民といいましても、いろんな仕事の方がいらっしゃいますし、あるいは障害を持っている人、健常者、あるいは病気を持っている人、いろいろあります。一律に国民という抽象的な言葉で責務を課するというのは、協力でもそうなんですけれども、非常に危険なことだというふうに思っております。  以上です。
  148. 国井正幸

    ○国井正幸君 時間も限られているので余りここで議論もするわけにもいきませんので、私も締めくくりたいというふうに思いますが、石埼先生を除いては、冒頭申し上げましたように御評価をいただいていると。そういう中で、ただ、共通しているのかなと、こう思って私自身も受け止めたのは、どんな立派な法制度をやってみても、本当にそれがうまく動くか動かないか、そっちの方が国民から見れば重要だよと、こういうふうなことだろうというふうに思います。  そういう中で、やはりそれぞれの先生方から、常日ごろの訓練の必要性というのが御指摘されていただいておりまして、それはいろんなレベルがあるというふうに思うんですね。そういうことを、我が国は議院内閣制でもありますので、政治の責任としてもこれからしっかりそのことを私どももやっていきたいと、このように思っております。  貴重な御意見をいただきましたことに感謝を申し上げて、私の質問を終わりにします。ありがとうございました。     ─────────────
  149. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、平野貞夫君が委員辞任され、その補欠として田名部匡省君が選任されました。     ─────────────
  150. 榛葉賀津也

    榛葉賀津也君 民主党・新緑風会の榛葉賀津也でございます。  四名の参考人には、お忙しいところ本当にありがとうございます。大変豪華な、日曜日の報道番組のような様相を呈してまいりましたけれども。  先ほど、石埼参考人から若輩者ですがというお話がございましたけれども、決してそうではないと思います。私も石埼さんと同じ年でございますけれども、正に私たちがこれからの国を憂い、この国を牽引をしていかなければいけない。石埼参考人と私の考えは全く違いますけれども、あなたの御意見には敬意を表したいというふうに思います。  本来、この有事法制というのは、私は、国民を安心させなければならない、そもそもそういった法案だというふうに思っております。しかし、この法案で多くの方々が逆に不安を感じたり不満を持ったりしている。私のところには連日このような束の手紙やメールやメッセージが届いてまいります。  なぜこのような、本来国民が安心しなければならない法案国民が不安に感じるのか。様々な理由はあると思います。戦前の国家総動員体制をほうふつとさせたり、また、先ほど御意見もありましたが、アメリカの戦争に自衛隊が巻き込まれるんじゃないかという懸念があったり、このテーマそのものが国民の中に物騒だというようなイメージがあるのかもしれませんけれども。    〔委員長退席、理事阿部正俊君着席〕  しかし、私、一番の原因は、やはり地域で暮らす、現場で暮らしている国民の皆様がじかに接するいわゆる国民保護法制がいまだに見えてきていないという点と、それ以上のその根底には、政治家や自衛隊に対する私は不信があるのだというふうに思い、その不信を抱かれているであろう政治家の一人として、私は襟を正してこの法案しっかりと審議をしていかなければいけないというふうに感じております。  私は、民主党で今回四党共同提案という形で法案の修正に我々は携わらさせていただきました。少し面白くない質問なんですけれども、立場上これは聞かなければならないものですから、森本参考人と小川参考人にお伺いをしたいと思います。  今回、政府原案に対する与党の修正案と民主党案の協議の結果出たのがこの四党共同提出案ということでございますけれども、民主党の主張によりまして約三点が明確になってまいりました。一点が国会の関与ということ、そしてもう一点が基本的人権の保障ということ、そして三つ目が国民への情報開示というものでございます。  これらの、民主党の案によりましてこの三点が更に改善をされたという点につきまして、両参考人はどのように評価をなさっておられますでしょうか。
  151. 森本敏

    参考人(森本敏君) 御質問の件については、私は、民主党として、この与野党の協議を通じて合意ができた点は、いずれもこの法案を少し、より良いものにしたといいますか、改善が図られたということで、それ自体、私は評価しているものです。しかしながら、一つだけ留保といいますかがあるとすれば、第二番目の人権の保護といいますか、人権の尊重という点についてです。  先ほど、冒頭にお話をいたしましたように、有事の際、憲法で認められた国民の個々の自由や権利が尊重されるべきであることは、これはもう当然でありますけれども、何ゆえ有事国民の自由とか権利を制限、制約しないといけないのかというと、それはやはり国家とそれから国民全員の安全、よりよい国家の安定あるいはより多くの人の安全を維持するために、やむを得ざる措置として国民の自由とか権利というものを制約、制限せざるを得ないということであり、したがって、人権が尊重されるべきであるということを強調することは本来憲法で守られているので当然なので、私は、有事法制の中で重要なことは、むしろそうではなく、有事に際して国民憲法で守られた自由とか権利が制限、制約されることがあり得るのであるということを強調することの方がむしろ重要であったのではないかと、かように考えておる次第です。  以上でございます。
  152. 小川和久

    参考人(小川和久君) 大変重要な御質問、ありがとうございました。  私は、今の三点につきましては、大きな前進であったろうということで高く評価を申し上げております。  国会の関与の問題につきましても、先ほど森本参考人の方から詳しくお話がございましたが、私も同じような考え方を持っております。特に、緊急事態ということになりますと、これは戦争であろうが大災害、大事故であろうが、それに対処するスピードは、世界のどこに出しても同じようなスピードが求められるんです。日本だからのろのろやって済むかと、そういうことはない。だから、国会においても、非常に国際的に通じるスピードでお話合いが行われ、手続が進められるための準備というのはなきゃいけない。これはもう本当に重要な点が盛り込まれたと思っております。  それから、基本的人権の問題につきましては、私は、やっぱり緊急事態というのは本当にみんな泡を食うわけであります、パニック状態になる。例えば、総理官邸の地下の危機管理センターにいる人だって、何か起きると頭の中が真っ白けになるということがしょっちゅうあるようでありますけれども、そういう事態において人権がやはりこれは意図的にかどうかはともかく踏みにじられる可能性は常にあるんです。  だから、憲法で認められているからこの有事法制で触れないということは、私はやはりよくないと。やはり、くどいようだけれども、緊急事態であればあるほどそのことを繰り返して述べる、そこに触れておく、絶対に忘れないようにしておくという意味で、これは大変重要なポイントが盛り込まれたと思っております。  ただ、今、森本参考人のお話にもありましたように、やはり緊急事態において個人の権利が制限されるという問題、これは国民的合意がなければいけませんけれども、そこについては、やはり基本的人権の尊重とひとつセットで、もう少し議論を整理していく必要があるのかなという感じがいたします。  国民への情報の開示というのは、これは当然のことでありますが、ただ、日本の場合、情報公開法とかできても、国民の側、あるいは国民の代表としての国会も含めて議会の側に、それを取りにいくだけのマインドがどれぐらいあるのか、それを取って、きちっと取ってくるだけの能力がどれぐらいあるのか。その能力を磨かなきゃいけない問題、これが課題として残されておりますよね。  その辺をやはり、この情報の開示が盛り込まれたということが最終目的ではなく、そういったことを実現するための更なる議論が必要だというふうにお考えいただきながら、更にレベルの高いものに完成させていただきたいというのが私の考えでございます。  ありがとうございました。
  153. 榛葉賀津也

    榛葉賀津也君 次に、草野参考人にお伺いをしたいと思います。  政府原案とこの修正案と、元々の修正案と民主党案の違いの一つに、緊急事態における基本法というものがございまして、これは五月十三日の四党幹事長の覚書によって今後整備していくという話になっているわけでございますけれども、御承知のとおり、我が国憲法には緊急条項というものがございません。唯一それに相当するという緊急条項は、第五十四条の緊急集会、参議院の緊急集会という点だというふうに理解しておりますけれども、私は、だからこそ民主党は、この基本法というのをしっかりと位置付けて基本的人権や民主的統制の原則というものを明確にしていこうというふうに考えておりましたけれども、この基本法の必要性について参考人はどのようにお考えでしょうか。
  154. 草野厚

    参考人(草野厚君) お答えをいたしたいと思います。  非常に重要な問題提起ですし、私も民主党に知り合いがたくさんおります。その話はたくさん伺っているわけですけれども、基本法はその美しい法体系ということでいえば必要なんだろうと思います。しかし、現実の問題として、この基本法を作る政治的なコストというようなことを考えれば、今回その危機管理庁が検討の課題になりましたように、取りあえずは、今喫緊の課題としてその周辺の危機的な状況対応するための有事法制ということで作って、後から基本法を追っ掛けるという、こういうことも次善の策としては可能なのかなというふうに思っております。  私は、今日、森本先生がおっしゃっておりましたように、おっしゃっておられましたように、日本安全保障に対する法制度というのは、全部対処型で来たわけですね。対処型というのは、余り法体系としては美しくないと思います。やはり、基本的な原則を書いたものというものが本来あるべきだと思いますし、何で国の最も重要な安全にかかわる基本法がないのかなというのは、これ、だれしも研究をしている者にとっては不思議なことでございますので、是非それは追っ掛けやっていただければというふうに思っております。  以上でございます。
  155. 榛葉賀津也

    榛葉賀津也君 次、森本参考人にお伺いをいたしますけれども、先ほど民主党の対案の中の危機管理庁、日本版FEMAというやつですけれども、これに対しまして参考人は、災害対策基本法等を活用して現場の都道府県知事にイニシアチブを与えていくべきだ、それで対応できるんじゃないかというような御発言がありましたけれども、私もそれは一理あるのかなというふうに感じました。  ただし、現場の消防若しくは警察では対応し切れない外部からの武力攻撃が起こった場合、これにはどのように対処したらいいとお考えでしょうか。
  156. 森本敏

    参考人(森本敏君) いわゆる有事、外部からの武力攻撃というのは、この法律の建前は、あくまで国がその任に任じ、各国民、この場合は実際は県の中では県民、都の場合は都民の安全は、国の指導とか方針に従って地方公共団体の長が第一義的な責任を負ってその責務に任じるという、こういう役割分担にこの法律はなっているわけです。  その際、なぜ危機管理庁なる別途の役所が要るかというと、私は、一つ情報という、つまり危機管理というのを行うためには、八割以上が、いわゆる統一された情報というものを全体が集め、評価し、分析し、政策に使い、それが末端の国民にうまく知らされる、それで不安感を取って、みんなが一貫した方針の下に行動して危機を救う。そのためには、どうしても情報というものの運用が大変難しく、これは、それぞれ今の国家行政組織の中で、警察は警察、あるいは消防は消防、あるいは県庁のお役人の方はお役人、自衛隊自衛隊、海上保安庁は海上保安庁、それではとてもやっていけないので、したがって情報というものが一貫して運用されていないといけない。  ただし、情報というのはそのための措置に必要なものなわけですから、情報だけが動き回るということはあり得ないわけで、したがって情報とペアになっている、その情報に基づいて個々の国民がどのように避難をし、行動し、より安全な措置を取っていくかということを機能するためには、何らかの組織が必要なわけです。でも、県知事に権限、責任を与えても、県の県警本部といいますか、県の警察にはそのような事態有事に余裕があるはずもなく、消防だって本当は必要最小限の人員しかいないわけでその余裕もなく、県庁の役所の方々にそんな急に任務を与えられても機能するはずもなく、結局何らかの組織というのが要るわけです。手足がないと、これは幾ら法律に書いても動かないわけです。しからばその法律を、国全体で危機管理庁なるものを作っても、それがすべての末端の離島に至る一人一人の国民の安全まで危機管理庁なる組織がマネージできるか、私はそこらは余り現実的でないなと思うんです。    〔理事阿部正俊君退席、委員長着席〕  しかも、その危機管理庁なる組織と、それでは警察やあるいは自治省の、あるいは海上保安庁の、あるいは自衛隊の諸活動とどのように権限を調整するかというと、非常に厄介な調整が必要で、つまり、屋上屋を重ねるもう一つの組織を、有事がどれぐらい蓋然性があるかとは別に、つまり公務員なる膨大な組織を別途また作るということが果たして有効なのかどうかということを考えた場合、今既にある地方で育ってきている防災組織というものを、そういう国民保護国民の安全を確保するための避難にうまく使うように平生からノウハウを積み重ね、訓練をしてそれに活用するというのが現実的な方法なのではないかと。  理想の姿は、危機管理庁なるものが一括して、すべての有事には、県の警察職員、自治、消防、保安庁、自衛隊を全部一括統括してその組織の中に入れるというのがあり得べきかもしれませんが、それは、日本の今の行政組織の中ではとてもそういうことは期待できないので、既にみんなが随分と組織を確立し、訓練をし、今まで育ててきた防災組織を、この際十分に使うというのが現実的な方法なのではないかという趣旨のことを申し上げた次第でございます。  以上でございます。
  157. 榛葉賀津也

    榛葉賀津也君 大変丁寧な御意見、ありがとうございました。  次に、石埼参考人にお伺いをしたいと思います。  参考人も私も同じ世代でございますけれども、誤解を恐れずに言うと、我々の世代は、戦中、戦前、戦後の先輩たちの世代に比べると大変恵まれた世代に我々は生を受けたんだろうというふうに思います。比較的不自由なく、高度経済成長の中、我々は今日まで、それは個人的には様々な御苦労はあったでしょう。しかし、我々の世代とすると、右肩上がりの時代に生をうけ今日に至っておりますけれども、振り返りますと、様々なしわが我々の世代に押し掛かろうとしている。気が付いたら、七百兆円を超える莫大な国の債務もそうでしょうし、社会保障制度の壊滅状態に陥っている現状もそうでしょうし、教育問題もそうでしょう、環境の問題もあるかもしれません。しかし、その中の一つとして、私はこの安全保障の問題があると思います。我々の前の世代が積み残した問題を我々の世代できっちりと解決をする努力をしなければならないと思います。  参考人と私の見解には相違があることは分かりましたけれども、参考人有事の際、いや有事になる前にリスクを解除して、予防をしっかりしていけばいいんだという発言がございましたけれども、しかし、そのようなことであっても、仮にこの国が外からの、外部からの武力攻撃に遭った場合、参考人のお考えではどのようにこの国を守ることが可能だとお考えでしょうか。
  158. 石埼学

    参考人石埼学君) 御質問ありがとうございます。  榛葉委員のことは、実は以前に同じ雑誌に掲載されたことがありまして存じ上げているんですけれども、「ステージ」というインディーズ系の雑誌の八巻で、榛葉議員のあれですね、御意見伺って大変尊敬申し上げておりましたんですけれども、お考え違うとおっしゃっていますけれども、そこでは榛葉議員は平和憲法に勝る武器はないということをしっかりおっしゃっておりますので、多少同じかなと思っていたんですけれども、どうも違うようなんですけれども。  今の話ですけれども、少なくとも、国家としては先ほど申しましたように自衛権は凍結されているということでありますから、凍結されているということでありますから、その国家として自衛権の発動に当たるような戦争はできないというふうに私は理解しておりますが。  仮にということですけれども、仮にという、万が一というのは非常に確度が低いとは思いますけれども、私個人としましては、仮にですね、違法な、国際法上違法な何の道理もない戦争を私たちの住んでいるこの列島に行ってくるような国があるならば、一つには国際世論に我々は徹底的に訴えるべきであろうと。二月、三月にイラク攻撃に反対した世界的な反戦運動というものを信じて、そうして生きていきたいと思っております。  ちょっとお答えになっていないかもしれませんけれども。
  159. 榛葉賀津也

    榛葉賀津也君 この法律は、私は憲法の趣旨に背いているとは思いません。  次に、小川参考人にお伺いしたいんですけれども、実は、先ほど日本国民の中にある危機管理、危機に対する意識の希薄さという御発言がありました。私も全くそのとおりだと思っております。  実は、九・一一以降、この議員会館に金属探知器とボディーチェックの制度が導入をされました。実は、九・一一以降大分たってから、当時の議運の委員長である当山崎委員長が御配慮を願いましてこの制度を導入したんですけれども、実は国会議員と秘書バッジを付けている人間はフリーパスなんですね。しかし、国会議員だけでも何百人といる。恐らく守衛さんは国会議員の顔はすべて覚えているでしょう。まあ、冬などになりますと、コートを着ていると自分なんかはちょっとちょっとというふうに止められるんですけれども、大分まだ顔が知られていないなと反省しているんですけれども。秘書はこの数掛ける何人かという、数千人の人間がこの議員会館に出入りをする。しかし、そのバッジさえ付けていれば自由に出入りをできる。そして、金属探知器も、手荷物は金属探知器を通さずに横の手動の金属探知機で中もチェックせずにその荷物をまた持って会館に入ることができるというわけでございます。  先日の韓国の地下鉄の事件も、そしてつい先日の、参議院に入ったある男がペットボトルにガソリンを持って参議院会館に乱入いたしましたけれども、この国会議員の議員会館でさえもそういう状況である。私はまだまだ改善の余地があるんだろうというふうに思いますけれども。  私は、これは制度だけではなくて国民一人一人の意識の問題なんだろうというふうに感じています。有事法制というものが、法律によってトップダウンで何かを押し付けられるものではなくて、私、やはりボトムアップで国民一人一人が危機意識を持ってやっていく。  先日、中東のイスラエル、テルアビブとエルサレムを訪問してまいりました。ちょうどイラク戦争の前でございましたけれども、各家庭一軒一軒に避難マニュアルというものが配付をされておりました。決して戦火にある当地を参考にしろと言うつもりは毛頭ございませんが、スイスでもそのようなことはやっております。  国が国民一人一人にきっちりと、まず自分でできることはしっかりとやりなさいというメッセージを発していく。そして、この国の安全というものは、上から押さえ付けられるものではなくて、我々一人一人が守っていくんだという意識を持っていくことが大事だというふうに感じますけれども、このボトムアップの、国民を、国を守っていくという意識、決してその戦前のような意味合いではなくて、一人一人がしっかりと守っていくんだという意識を構築していくためにはどのようなことが必要か、参考人にお伺いしたいと思います。
  160. 小川和久

    参考人(小川和久君) 私が話したいと思っていたことについて御質問いただきまして、ありがとうございます。  私は、先ほども災害とか大事故とか交通事故とか医療事故というのは基礎問題としてやはりきちっと取り組んでいきやすいテーマであると。それで、安全保障問題というのはやはり高度な応用問題であり、それを健全かつ適正に維持していくというのは相当難しい、これは応用問題であろうという話をいたしました。  で、基礎問題からやらないと応用問題はできないと言いましたけれども、我々この日本列島に生きてきた人間、これは国民と呼ぼうが何と呼ぼうがいいんですが、やっぱり安全な環境の中で歴史をずっと経てきた結果、一九四五年八月十五日に無条件降伏するまで外国に占領されたことがないような大変恵まれた環境にあった。その結果、様々な能力を備えることができたし、高い文化もはぐくまれたと思いますが、その反面、やはり危機に対するセンスは、これは備わりようがなかったという面があると思うんです。  だから、これはもう私自身、本の中でずっと書いておりますが、DNA的な欠陥であろうといったような非科学的な表現を取っておりますけれども、その辺は、やっぱり当事者意識を持つためには身近な問題、身近な命の危機から常に自らを守るための取組をしないと、戦争のこととか北朝鮮のことを語るのは十年、二十年早いよという思いがあるんです。  例えば、一番象徴的なのは、交通事故の死者を減らすに当たって、先進国の中で日本は何で立ち後れたかという話なんですよ。私も直接当事者として、小渕政権のとき、当時の野中官房長官にドクターヘリの調査検討委員会内閣内政審議室に作っていただいて、それを実現するのにかかわった人間の一人でございます。ただ、私が最初に野中官房長官に当時申し上げたのは、日本は先進国なのか、民主主義国家なのか、人権を語れる国なのか、人命尊重なんて言える国なのかということで、交通事故の死者の話をしたんですよ。  例えば、先進国においてはドクターヘリ、医者がヘリコプターに乗って現場に飛んでいくなんというのはかなり常識になっております。これは西ドイツが一九七〇年に始めた。当時は二万人以上の年間の交通事故の死者があったのに、ドクターヘリ導入した結果、今、東ドイツを吸収合併して人口は増えている、でも交通事故の死者は年間七千人台まで抑え込んでいる。アメリカなんかはそれを見て、一九七〇年代にドクターヘリによって交通事故の死者を四八%減らすのに成功した。みんなやっているわけですよ。前例があり、効果がある。みんなに喜ばれる。  日本だって、お医者様方が、一九七五年以降四回、やらなきゃいけないということで、国に委員会を作ったんです。ところが、六つの役所と組織が絡む結果、どこかが権限争いで反対するんですよ。だから空中分解、できない。その間に、警察の統計の取り方だけで、西ドイツが始めてから交通事故で日本人は三十万人以上が死んだ。警察の統計の後死ぬ人を含めたら、五十万人以上死んでいるわけです。広島、長崎の死者と一方で言いながら、交通事故の死者を止めることができない。半分は助かっているんですよ。これが先進国なのかということを野中官房長官にお話をしたら、空中分解しないように内閣内政審議室に委員会を作りますからということをおっしゃった。  やりゃできるわけです。これは野中さんじゃなくても榛葉さんだってやろうと思ったら政治家としてできる話。何でやってこなかったのか、我々は。これは政治家の問題じゃなくて、政治家の悪口を言うときは天につばするようなところがありまして、国民の問題だから、我々が身近な生命の危機である交通事故の死者を減らすことにすら取り組むことができず、車が来たら、ああぶつかって死ぬんだわと思うだけの感覚で来たということですよ。  だから、やっぱり身近な危機、これは災害であり交通事故であり、医療事故であり、そういったものですよ。そういったものを乗り越えるための取組をする。だから、有事法制という言葉もやっぱり緊急事態全体を包括するような、基本法でも何でもいいんですが、そういったものとして、災害とか事故に対する部分をきちっと押さえて進めていくということが究極の、あるいは起こる可能性は一番低いかもしれないけれども、武力攻撃事態という究極の危機に対して我々が生命あるいは財産あるいは社会、国家を守っていく基本になるんじゃないかなという感じがしております。  どうも御質問ありがとうございました。
  161. 榛葉賀津也

    榛葉賀津也君 残り時間が三分になりました。短い時間で一点、この有事法制とは関係のない、実はせっかくこれだけの方々がおいでですので、イラク新法について最後質問をしたいというふうに思います。  今、報道では、イラク新法の話が持ち上がってきております。その報道によりますと、政府が考えているのは、今のイラクに自衛隊を送りたい、送ったらイラクを戦闘地域と非戦闘地域に分けるんだと。そして、武器の使用基準はそのままにして、安全な任務を、後方支援をするんだ。  しかし、現場では一体どのようなことが起こっているのか。そして、現実問題に、米英軍が様々な占領行政をやっている中で任務に当たっている。その一つ一つをチェックして、武力行使一体化になるかどうかといったことを現場で本当に判断できるのか。いや、そもそも今のイラクを戦闘地域と非戦闘地域に分けることができるのかと、様々な疑問が今私の中にあります。  この状況について、非戦闘地域、戦闘地域を分けることができるのかどうなのか。もし行く場合、武器の使用基準はこのままでいいのかどうなのか。そのことについて、草野参考人と小川参考人に御質問して、終わりたいと思います。
  162. 草野厚

    参考人(草野厚君) 予想外の質問でございますが、持論でお答えを申し上げたいと思います。  私は自衛隊の派遣には条件付で賛成でございます。今、正におっしゃいました、武器の使用基準を改めずに安全なところに自衛隊を送るというのは、これは非常に不可思議な議論だろうと思います。  これは、国際平和協力法も周辺事態法も安全ということを前提にして出掛けるんですけれども、なぜPKOが展開されるところが安全なんでしょうか。私は、これは非常に語義矛盾だろうというふうに常々思っているわけです。どうせ出掛けるんであれば、国際平和協力が充実したものになるためには、武器の使用基準も国際標準に合わせるべきだと。そうでなければ、手足を縛られたままで危険かもしれない状況、私は、これは区分することできないと思います。そこに出すということはいかがなものかなと。ただ、条件付では賛成だというふうに申し上げたいと思います。  以上でございます。
  163. 小川和久

    参考人(小川和久君) 御質問ありがとうございます。  私は、イラク新法なるものを作るに当たっても、例えば日本政府はどのような理由からアメリカ、イギリスのイラクに対する武力行使に対して支持をするという決断に至ったかということをもう一回整理しておく必要があると思うんです。あの選択が良かったか悪かったかは国民的な議論が分かれるところだと思います。  ただ、例えば大量破壊兵器開発疑惑を持たれている国が国連の査察に対して非協力的であった、あるいはそれを妨害したなどのかどによって国際的な軍事制裁を受けるときに、日本国はやはりその大量破壊兵器開発疑惑国とテロリストの結合というものが、世界の先進国の一つ、主要国の一つであり、テロとの戦いを進めている国の一つであり、あるいはアメリカの最重要同盟国であるという立場から、三つの立場から攻撃の対象になりかねないという国家存亡の問題、違う言葉を使いますと、個別的自衛権の問題からあの武力行使を支持するという選択はあり得るんです。これは反対する立場は反対すればいい。ただ、そういった格好で賛成したということであれば、やはりイラクに自衛隊を送ってきちっと活動させるための法律整備するというのは流れとしては一つ当然だと思うんです。  これは、日本国が戦後掲げてきた原理原則、平和主義、つまり世界の平和を実現するために日本なりにできることを努力をし、それに対する評価と信頼によって自らの安全と繁栄をかち取っていくという考え方に基づくものであるとも言えるわけであります。  ただ、そういう場合、やっぱり戦闘地域と非戦闘地域を分けるなんというのは日本でしか通用しない議論でございます。私は十五歳から自衛隊へ行って、一応ライフルから機関銃からバズーカから撃ってきている人間でございます。最低限のことはできるんですよ。皆さん方は撃ったことある人少ないでしょう、大先輩いるんで余り言うことはできないんですがね。ただ、やっぱり日本で軍事の問題語るとき、全く見たこともないような武力行使についてお役人が語ったりするわけですよ、困ってしまうのね。だから、世界に通用しない。世界に通用すればいいかという話じゃないけれども、日本世界の信頼をかち取るために、原理原則を貫くために、きちっと世界に通用するような話をする前提でその辺を整理していただきたいんです。  とにかく、アメリカの軍事力の一つの特徴を言いますと、極めてロジスティックス重視ですよ。補給、兵たんであります。どんな精鋭部隊を前に出したって、はっきり言うと、うんこもすればおしっこもする、飯も食うんです。コンドームも要る場合もある。弾は常に補給しなきゃいけない。今回だって、イラク戦で乾燥地帯の戦争では、第一線部隊の兵士は一日十五リットルのミネラルウオーター補給しないと戦えないわけです。あと生活用水を入れると、一個師団があと七百トンぐらい水が要るわけですよ。そういったものを支えていくのがロジスティックスのシステムなんです。それと戦う敵の立場で見たら、戦闘部隊、手ごわいやつをたたくより、後ろにあって非常に重きを成していて戦闘部隊を支えているロジスティックスのシステムをたたいてくるのは当たり前であります。これは後方地域であり、非戦闘地域日本の役人の方々が考えがちのところであり、これは分けられないということです。  もう一個、武器の使用基準についてはやはり……
  164. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 先生、おまとめいただきたい。
  165. 小川和久

    参考人(小川和久君) はい、簡単に申し上げます。  これはやはり、日本武力行使ということについて、どの辺で現行憲法と抵触するかという議論の整理を行う中で、やはり任務を遂行するために自衛隊の部隊に持たせてふさわしい兵器の基準というものを明らかにし、その中で任務によって取捨選択をするということを明らかにする、そしてそれの行使の基準、ROE、部隊行動基準のようなものを明らかにすることがなければ自衛隊員をそういう危険な任務に赴かせることはできない。これはイラク新法で派遣される自衛隊が活動するのは危険な地域であるということを前提にすべきであります。それを実行するのが日本の平和主義の一部であるということは明らかにしておかなきゃいけないと思います。  どうもありがとうございました。
  166. 榛葉賀津也

    榛葉賀津也君 ありがとうございました。
  167. 山口那津男

    山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。  四人の参考人の皆様には実に思いのこもった貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。限られた時間ではありますが、順次お伺いをしてまいりたいと思います。  今回この法制議論するに当たり、これまでのいわゆる有事法制研究と言われてきたものの中で所管が明らかでない分野というのが数多くありました。それがゆえに、関係する省庁が積極的に議論、研究を深めてくるということもなかったわけであります。この言わば行政組織ですらそういう状態で、国民の皆さんの理解が急に広がるということも到底望めない状況でありました。したがいまして、今回の法整備に当たりましては、研究の煮詰まった分野から作る、そして未整備な分野もはっきりと示して、それをいつごろまでに作るかという、そういうスケジュールもある程度決めて提示をしていると、こういう作り方をしているわけであります。そんな中で、私は、これからももっともっと国民との往復の中でこの法整備を進めていかなければならないと強く思っているものであります。  そこで、草野参考人にまずお伺いいたします。  国民保護法制整備するに当たっては透明性確保すべきであると、こういう御主張を承りました。この自治体の方をいわゆる地方公聴会参考人として伺ったことがあります。そこで私が強く感じましたことは、例えば市長会ですとかあるいは知事会ですとか、そういう自治体のある程度意見を集約するところの意見というのは聞かれているようであります。しかし、個々の自治体、数も多いわけでありますけれども、もっとやっぱり個性的な意見や不安やアイデアを持った自治体というのはたくさんあるだろうと思います。ですから、この自治体の皆さんにももっともっと意見を吸い上げる、そしてまた情報を伝達する、こういう往復作業が必要であろうと思います。また、国民個々の皆さんにあっても、それは一般の庶民の皆さんから、あるいは有識者と言われる方々から、やっぱりいろんな意見を往復作業で詰めていく必要があると思います。  いよいよこれからこの国民保護法制整備を進めるに当たって、この透明性確保した中で議論を進める在り方というものについて、具体的な御意見がありましたら承りたいと思います。
  168. 草野厚

    参考人(草野厚君) 私、この有事法制とは直接関係ございませんが、ODAの総合戦略会議というところのメンバーで、現在、ODA大綱の見直し作業を行っております。この策定過程において、このODAにかかわりを持つ国民というのはそれほど直接的には多くないわけですね。ですから、どの程度参考になるかということは別の問題でございますけれども、かなり広く、単に先ほど地方公共団体の長というお話がありましたけれども、このODAの場合には、特にNGO、大変に関心を持っている方が多いということもあって、それから、タウンミーティング等々のかなりこちらから積極的に集会を持って、いわゆるこれまでの行政が手当てしてきたような公聴会というスタイルよりは、もっと積極的に意見を開陳してもらって議論を深めるという場を積極的にこしらえているんですね。  ですから、この有事法制に関しても、一つは、そういう全国規模で、できればこれは行政主導というよりも、与党、公明党は与党でございますけれども、与党と一体となって、国会議員もそこに参加をするような形で説明をするという、こういう機会を持っていただければと思います。  もう一つは、パブリックコメントというのが、これは今、様々な法整備やあるいは行政のルールを作るに当たっては一般的ではございますけれども、どうやらこの国民保護法制のいろいろな準備書面等々を見ましてもパブリックコメントということは出てこないような、私の勘違いかもしれませんけれども、これは時代の流れとはやや反しているのではないかと。特別この私権の制限というような分野にもかかわりを持つということを考えれば、これはもうパブリックコメントは避けて通れない手続ではないかなと。逆に、この点に関して山口さんの御意見を伺えればというふうに本来ならば申し上げたいところでございます。  以上でございます。
  169. 山口那津男

    山口那津男君 次に、森本参考人にお伺いいたします。  この政府原案あるいは修正を通じまして、国民の基本的人権を尊重し保障しようと、こういう原則が強調されたことは極めて望ましいことだろうと思っております。特に戦前の人権の在り方と比べましたときに、基本理念のところで、まず保障する、尊重する、これを原則として、しかしまた、実際には制約を免れない部分もあるわけでありますから、それを認めた上で、その必要最小限の制約にとどめると、これは今の日本憲法の人権に対する原則的な考え方だろうと思います。それをあえてこの基本理念で強調したというところに私は第一歩の画期的な意義があると思います。  しかし、問題は、実際にこれから国民保護法制あるいはその他の法制度を整備していくに当たって、その具体的な事態に応じてどこまでが必要最小限の制約と言えるのか、あるいはその制約そのものが必要か否かと、こういうことを詰めていく必要があると思うんです。  森本参考人の御意見では、立法府の関与ということを強調されておられるように思います。私は、これが、具体的な事態が発生した場合には、やはりその事態に応じて権利、自由を制約するに当たっての規範、法規範というものをやっぱり作っていくのが原則的な在り方だろうと思います。あらかじめすべての場合を想定して、それを決め切るということはできないことだろうと思います。そうすると、その実際の事態に臨んで、何らかの規範を作りながらやっていくという必要性は出てくるかもしれません。しかし、それは事態の特性なるがゆえにスピーディーにやっていく必要もあるわけだろうと思います。  そこで、その法規範の作り方というものが、例えば行政権にある程度任せると、そして事後的にチェックするというやり方が望ましいのか、あるいは国会が行政権とかなり同レベルの情報を持ちながらこれに言わば同時進行でこの法規範の形成に携わっていく必要があるのか、この辺の在り方について御意見を賜りたいと思います。
  170. 森本敏

    参考人(森本敏君) あくまで国の有事というのは正に言葉どおり有事で、大変言わば緊急事態なので、十分に法案の中身を審議する時間的いとまがないということを前提に考えれば、平常時から、どういう法案があり得べきなのか、そのときの原則は何であるかということを十分議論し詰めておくという必要がまずあるんだろうと思います。  その際、やはり立法府の役割というのを考えると、法案の作り方について、先ほど申し上げたように、すべてを行政府、つまり政府から上がってくる法案という形にすることが必ずしも適当とは思われず、しかし一方、いわゆる普通の言葉で言う議員立法という形ですべての法案を短期間に作るということも難しく、私は、一番良いのは、いわゆる安全保障会議の中に設置されたいわゆる専門委員会のメンバーと立法府が、つまり行政府と立法府が一緒になって、どういう法案整備しておくかということを平生からスタディーをしておいて、それは金庫に入れておいて、状況に応じて修正をして直ちに出せるという状態にしないと、とても国家の緊急を、緊急時を救えないというふうに思うんです。  それが私の答えなんですが、その前に、いわゆる国民の人権というものについての基準をいずれ国民保護法制審議の際に十分御議論になると思いますが、私が現時点で持っている印象というのはこういうものです。全く印象なのですが、幾ら基本的人権として国民の権利とか自由とかというものを尊重するといっても、どうしても、何といいますか、できないところというのはあるんだろうと思います。できるものとできないものと。  例えば徴兵というのは、私はこの国で、現在の日本の社会を見た場合に、いかように考えてもこれはできそうにないなと。それから、一般的な言葉で言う報道管制というのもできないなと思います。他方、移動の自由というのは、これはある程度制限せざるを得ないと。例えば、有事だというのに、海域だとか空域に休暇だとかレジャーだとかといって勝手に船とか飛行機で飛び回ると、そういうことを許して国の有事を救うということはとても難しゅうございますし、また個々の国民の安全をそれでは確保できませんから、したがって移動の自由、住居の自由というのは多少は制約することはあるのかなと思います。  ここで一番難しいのは、実は情報なんです。つまり表現の自由というやつです。例えば、私は学生と付き合っておりますが、学生は毎日諸外国の人といろんな形でインターネットで情報交換しているわけですが、敵性国家の友人に平気で情報を送ったりするというのが出てくる。それを法律で規制できると仮にしても、実際にそれではそれを監督する実行機関なる行政組織が、それを探知し、そしてそれを取り締まるなんというようなことが実際上できるのかというとほとんどできない。つまり、現代戦というのは、一人一人の国民が自分の部屋にこもって戦争に加わることができるという非常に特殊な様相を来すということなんで、戦場で戦闘員が戦うという戦争は過去の戦争であるわけです。  そういう意味において、現代における戦争というのは日常性を非常に帯びたものですから、したがって憲法で認められた個人の自由とか権利というものをどこまで制約しどこまで制約できないのかというルールを平生から、今申し上げたように、行政府と立法府できっちり詰めて、そしてそういうことを一々何も起きていないのに事を大きく言う必要はなく、整々と事務をやって必要なときに備えるということが一番望ましいのではないかと思います。  以上でございます。
  171. 山口那津男

    山口那津男君 続いて小川参考人にお伺いします。  司令塔の存在が必要であると、こういう御議論だったと思いますが、まずこの法制議論するに当たってなかなか基礎知識も不足している、これは政治家にも行政マンにもそういうことが言える、国民はましてそうである、そういう状況の中で現実的な第一歩をしるそうとしているわけであります。その場合に、これから国の在り方あるいは国民の生きる道の在り方、これに安全保障事態への対処をどう組み込んでいくかと、こういう大きな意味での国の在り方を決めていく、そういう司令塔の在り方というのもあるだろうと思います。私は、それには当然国会国民の代表である国会も参加をしながら、その在り方を議論していかなきゃならないと思います。それともう一つは、具体的な事態対処するために、それぞれのいろんな組織を間違いのないように導いていく、そういう意味での具体的な司令塔も必要だろうと思います。  この司令塔がどういう形で作っていくのが望ましいかということはこれからの議論ではあろうと思いますけれども、しかし、いわゆる統合的な運用、活用ということは言うべくして簡単なことではないと思います。アメリカの例が時々出されますが、やはり基礎的な国の組織や歴史というものが違いますから、それを単純に応用するというわけにもいかないだろうと思います。  そういう意味で、私はこの国の経営という大きな意味の司令塔と、そして具体的な制度の運用に当たっての実際の司令塔の在り方、これについてもう少し御意見を賜りたいと思います。
  172. 小川和久

    参考人(小川和久君) 大変重要な御質問、ありがとうございました。  私は、現在、消防審議会の委員などをさせていただいているわけでありますけれども、消防の世界とかかわりを持ったのは、阪神・淡路大震災のとき、日本の消防庁などが主張している考え方に対して幾つか疑問を呈したところ、やはり日本国内での調査研究が十分ではなく、やはり思想、哲学に関するような部分が欠落しているということに遭遇をいたしまして、それについて自分でノースリッジ地震のときのアメリカの対応などをアメリカに行って調査した結果、消防の人たちと仕事をするようになったという立場なんです。  その中で、やはりアメリカの連邦の緊急事態管理庁、FEMA、FEMAと書きますが、これがやはり日本にとっては一つ、大災害、大事故を含む緊急事態において国民の命を守るための司令塔として参考になるのではないか、モデルになるのじゃないかということで、消防庁の皆さん方日本版のFEMAの可能性について検討をしてきたところなんです。  同時に私は、内閣官房の方で情報の集約をどうやっていくかという検討を主査としてずっとやってまいりました。それは、それの先に来るのは、緊急事態において総理をどう補佐するのか、どういうシステムがふさわしいのかという問題でもあるんですね。でも、やっぱりその中で、日本版のFEMAというものがないと、どういう事態にも動きが取れないということが具体的なケーススタディーをやればやるほど明らかになってくるんです。  アメリカのFEMAというのは、今回、国土安全保障省の中に吸収をされましたけれども、やはり、この間も私、ワシントンで国土安全保障省へ行きましたけれども、まだ元々の組織のまま動いているようなところがあるんですね。ただ、アメリカがそういう動きをしているからといって別に倣う必要はなくて、FEMAというものの参考になる部分をすくい上げて、縦割り行政にならないようにしていくということが大事である。FEMAは、私が調査した当時でいいますと二千五百人ぐらいの人員がいて、基本的には復旧のためのお金を作る組織だという性格がありますけれども、やはり現場が縦割りになるというのはアメリカも一緒なんです。それを調整するだけのやはり権限と高度な知識を持った専門家集団であると。  やっぱりこれがないことには、日ごろから調査研究をし、国際水準の能力を備える、あるいは人材を豊富に育成していくための教育訓練を行う、そして緊急事態において現場を調整しながら国民の命を救っていくという動きができないんですね。だから、そういう組織が一元的に末端まで何かコントロールするというような発想は全くないんですが、やはり本当に頭脳組織としての在り方ということを考える上でこれは必要不可欠かなという感じがいたします。  私自身は、過去の戦争に備えよという逆説的な言い方をしているんですね。これはアメリカの言い方で、将軍たちは過去の戦争に備えるという軍人の悪口を言う言葉があるんです。というのは、将軍たちは過去の戦勲ばかり勉強して、それを基に軍備を整えるから実際役に立たない、あいつらあほうだという話なんですが。  あえて過去にあった阪神・淡路大震災、JCOの臨界事故とか、そういった典型的な過去の危機、これに対処できるだけの組織とはどういうものか、システムはどういうものか、レベルはどういうものかということを、後知恵というのは便利なものですから、考えるというのは楽なんですよ。同じような事態が起きたときにきちっと対処できるような仕組みを常に作っていく、そういったことが大事だろうと。  この過去の戦争を戦おうと思えば思うほど、この司令塔に当たる組織が不在であったらどうしようもないということなんですね。私自身は過去の幾つかの例を通じて感じておりますが、政治のイニシアチブがあればこれはできると思います。これはやっぱり国会が大いに力を発揮すべき問題ではないかなと思っております。  以上であります。ありがとうございました。
  173. 山口那津男

    山口那津男君 最後に、石埼参考人にお伺いします。  この今度の法案におきましては、いわゆる武力攻撃事態以外の様々な危機、例えばテロですとか不審船、工作船、そういったものに対応することについても規定を置いているわけであります。この法案に対する賛否は別にいたしまして、現行法では警察あるいは海上保安庁が相協力してやるというのが基本でありますけれども、しかしその二つの組織で持っていない能力を使わざるを得ない場合も出てくるわけでありまして、その場合には自衛隊も使うということが現行法の考え方であろうかと思います。  こういった武力攻撃事態以外の危機に対してどのような在り方が望ましいと思われるか、そのお考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  174. 石埼学

    参考人石埼学君) 御質問、ありがとうございます。  今回の法案では、テロ、不審船事案等についてのことも盛り込まれ、書かれているということなんですけれども、基本的に武力攻撃事態とこのテロだとか不審船事案というのは非常に性質が異なるというふうに私は考えておりますので、基本的には海上保安庁も含めた警察活動の範囲内で対処するべきだろうと思います。  むしろ不審船の事案とかでありましたら、それは現に起こっていて、また起こる可能性もなくはないという意味で、具体的に可能性の高い事案でありますので、むしろ海上保安庁あるいは警察庁というところにテロだとか不審船対策の専門の、専門の部隊を置くであるだとか、あるいはそういう警察力の強化でもって対応すべきであろうと思っております。  以上です。
  175. 山口那津男

    山口那津男君 では、時間が参りましたので終わります。  参考人の皆さんには、貴重な御意見、本当にありがとうございました。
  176. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  日本共産党は、この有事法案に反対でございます。衆議院におきましては九割が賛成したということで参議院に送られてきたわけですけれども、しかし、国民レベルで見ますと、こういった比率で賛否が成っているわけではありません。最近の新聞のアンケートを見ましても、賛成派が反対派を少し上回っているとはいえ、四割以上が分からないと答えているわけで、したがってこの有事法制についてはまだまだ審議が不十分だということを一つ表しているんじゃないかなというふうに思います。  とはいえ、法案審議の中で重要なことも明らかになってきました。政府は、武力攻撃予測事態とかあるいは武力攻撃事態、こういったことはアメリカがかかわる周辺事態の進展に従ってその結果発生するということも答弁の中で明らかにしてきました。結局は、周辺事態法に基づいて公海上で米軍の支援をしている自衛隊が攻撃されたというような場合には自衛権発動もあり得るんだという答弁もなされております。ありていに言えば、周辺事態法に基づいて支援することが日本武力攻撃事態を引き起こすということがあるんだということだと思うんです。  この法案が通りますと、法案の仕組みというのは、事態対処法制というのが作られます。この事態対処法制というのは、国民保護法制、それから自衛隊の活動を円滑にする措置、そして米軍の活動を円滑にする措置、この三つですね。  今この国会で大体明らかになりましたのは、国民保護法制については明らかでないということになりまして、衆議院段階で保護法制についてその輪郭が成されました。四月十八日に出されました。二番目の自衛隊に関しましては、これはもう既に自衛隊法があります。三番目の米軍支援なんです。これについては本当に何にも明らかになっておりません。米軍支援も米軍支援法制についても明らかになっていないわけなんです。  そこで、私、四名の参考人の方々に二点伺いたいんですが、一つは、今日の最初のお話の中で米軍支援、米軍支援法制についてお触れになったのは石埼参考人ぐらいで、あとはほとんどお触れになっていなかったということもあるんで、そこのところを追加して伺いたいんですけれども、一体この米軍支援法制について議論は尽くされているのか、明らかになっているのか、どのようにお考えになっているかというのが第一点です。  それからもう一つは、大事なことは、日本が支援をするアメリカ軍ですけれども、そのアメリカは単独行動主義、これを今推し進めております。これがアジアでこの政策を進めるということもあるわけですが、こうした単独行動主義がアジアで展開されるということになりますと、アジアの緊張が一層高まっていく、そういうおそれがあるだろうと思うんです。そこで、ブッシュ政権が進めております単独行動主義、これについて参考人の方々はどうお考えになっているか。  一つ議論が尽くされているか、単独行動主義、どうお考えか、この二点について簡単にお答えいただきたいと思います。
  177. 草野厚

    参考人(草野厚君) お答えを申し上げます。  第一点目の米軍の支援でございますが、これは早急に議論をしなければいけないんじゃないかなというふうに私は思っております。今日、その他のところで触れる予定でございましたけれども、触れられなかったということでございます。  それから、二番目のブッシュ政権の単独行動主義については、ちょうどおとといの日本経済新聞の書評欄に、大型の書評のところに私の持論も含めて書評しておりますけれども、いかがなものかなというふうに思っております。ただ、それはかなり抽象的な言い方でございますけれども。  ある時点において必ず、アメリカのこれまでの政治からすれば抑止的な考え方が出てくるのではないか。つまり、単独行動主義はいけないよという議論が出てくるんだろうというふうに私は強く期待をしております。ブッシュ政権、永遠に続くわけでもございません。リベラルは死んでないというふうにも私は思っておりますので、あの単独行動主義が永遠に続くという前提議論をするというのはいかがなものかなというふうには思います。  以上でございます。
  178. 森本敏

    参考人(森本敏君) 御質問の点につきましては、第一については、私は、米国に対する日本側の支援と協力というのは、言わば現在アメリカとの間で既に締結している、いわゆる先ほど申し上げたACSAというんでしょうか、物品と役務の相互提供協定を、これは平時並びに周辺事態法の改正に伴って周辺事態にも対応できるようにACSAを修正しておりますので、これを有事に照らして、有事の際、日本側が米国とどのような相互の提供協力ができるかということを日米間で約束をして、それに基づく国内の法整備をするという作業になるんだろうと思います。  私は、先ほど冒頭に申し上げたように、それでは少し足らないのではないかと、すなわち物品役務の相互提供という範囲の中でカバーできない部分があって、これは現行日米地位協定でも少しカバーできない部分があって、この点については、本当は有事における日米協力の協定が締結され、そしてその協定の実施を可能にする国内法整備するというのが順当なやり方なのではないかという趣旨を冒頭申し上げたはずです。  第二については、私は、実はアメリカは単独行動主義だとは思っていないんです。  といいますのは、言葉が非常に良くないのですが、アメリカというのは、国益を非常に重視して他の国と協議をしないで自ら決断をするという意味において単独決心をする国ではありますが、しかし、単独で行動するということでは必ずしもないと思います。必ず同盟国に諮り、同盟国の協力を得て、価値観を共有する国が一緒になって行動するという活動をずっと続けてきたと思いますし、それは国連のいわゆる、言葉は余り適当ではないのですが、お墨付きというものがなくてもアメリカは価値観を共有する国と一緒になって必要な行動をやっていくということに私は従来から変わりはないと思うんです。  その意味において、それを単独行動主義という表現にして説明をすることが果たして適当かどうかという点については私は必ずしも適当とは思いませんし、このようなアメリカの考え方は共和党であれ民主党であれ余り変わらないということで、政権が変わったから変わるというものではなく、現在のアメリカの、言わば国益を重視した積極的な国際協調主義の下にアメリカがあるという限りにおいて、政権のいかんにかかわらず、アメリカのこの動向は大筋において変わらないのではないかと。それにどのように我々として価値観を共有して行動をともにするかということは正に日本が、日本を、国益を基準にして考えるべきことで、行動をともにするべきときもあれば、そうしないときもある、それは自ら日本が主体的に判断すべきことと、このように考えております。
  179. 小川和久

    参考人(小川和久君) 御質問ありがとうございました。  まず、米軍支援法制については議論が尽くされていないという印象を持っております。  我々はやはり原点に戻って考えなければならないんですが、アメリカとの同盟関係は何のために我々は選んでいるのか。つまり、反対する人たちももちろんいるんですよ、違う考えもあるんだけれども、やっぱり戦後の日本国民の過半数がそれを認めてきたという現実があるわけであります。その中で、我々はやはりアメリカ軍の行動を支援する場合には、我が国の国防上必要な場合が一つ。それからいま一つは、国際的なやはり日本の責任を果たす上での支援が一つといったようなことがあると思います。そういったことをきちっと整理しながら、やはり米軍支援法制についてきちんと議論をしていくことがより求められているなという感じがいたします。  それから、米国の単独行動主義についてという御質問でございますが、アメリカが単独行動をするということは私も基本的にはないという受け止め方をしております。とにかく、敵対国に対しては厳しい国ですよ。ただ、友好国、同盟国に対しては、相手の国益をほかの国と比べても極めて尊重しながら行動する国だということがはっきりあるわけであります。だから、アメリカが日本の原理原則を踏みにじるような、あるいは国益をやはり損ねるような提案をしてきたときには、これは独立国家として反対をすればいいわけでありますが、基本的には私はそのような懸念というものは現在持っておりません。  ありがとうございました。
  180. 石埼学

    参考人石埼学君) 手短に申し上げます。  いわゆる米軍支援法制については全く明らかでないと。しかも、このいわゆる有事関連法案でいうところの武力攻撃事態の中には、周辺事態と併合する場合、あるいは周辺事態から武力攻撃事態に至る場合があるというふうに政府答弁しておりますので、その場合には周辺事態法に基づいて米軍の後方支援を自衛隊がすることになっておりますので、この米軍支援法制の中身が明らかにならない限り、有事関連法案についての、それがどういう性格の法案なのかということは国民の目から分からないと思うので、早急に明らかにすべきでありますし、明らかになるまで可決、成立するべきではないというふうに考えております。  米軍の単独行動主義につきましては、私も非常に危惧しておりまして、やはり国際法上の問題等々ありますけれども、何よりも現実に、脅威が現実になる前に自らの気に食わない国を先制攻撃でたたいてしまうということ、そういうふうに脅威が現実化する前に先制攻撃で相手をたたくという、いわゆるブッシュ・ドクトリンの考え方に基づいてきているので、極めて危険です。  脅威が現実になる前にということは、脅威は現実的にあるかどうか分からない状態で相手をたたくわけですから、アメリカの政府の決断一つで恣意的に、どんな国でも、アメリカに対して将来脅威になるかもしれないということで先制攻撃をするという論理ですから、国際法の在り方あるいは世界平和の在り方に真っ向から反するものだと思っております。
  181. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 じゃ、憲法有事法制の問題について石埼参考人に伺いたいと思うんですが、修正もなされたわけですが、基本的人権の問題というのがかなり論議されました。されたようですね、修正の過程で。にもかかわらず、公共の福祉の名による基本的人権の制限というのは一貫として入っているわけです。  この公共の福祉の名による人権制限一体どこまで許されるのかと。日本国憲法下では、公共の福祉というのはあるけれども、軍事的な面での公共の福祉という考え方そのものはこの中にはないんじゃないかなというふうに思うんですね。そういう点から考えて、この有事法制におけます基本的人権制限憲法との関係について、ひとつお答えいただきたいと思います。
  182. 石埼学

    参考人石埼学君) 御質問ありがとうございます。  一つは、軍事的な意味での公共性というのが日本国憲法の中に想定されていないのではないかということですけれども、おっしゃるとおりだと思いまして、先ほども申しましたように、日本は自衛権を凍結している、そのために憲法九条二項で一切の戦力を放棄しているということになっております。その一つのねらいは、まさしく軍隊というものが時として国民の権利や自由を侵害する危険性があるから。それゆえに、軍隊という公権力が最大の人権の侵害の主体になり得るという危険を回避するためにも一切の戦力の放棄をしているということがあります。  もう一つは、その点ともかかわりまして、過去の戦争の経験などを踏まえまして、日本国憲法では平和のうちに生存する権利というものを保障しております。つまり、戦争こそは最大の人権侵害なのであって、平和のうちに生存する権利というのを一人一人の国民に保障しているわけですから、この平和のうちに生存する権利という憲法前文に書かれている考え方と、その軍事的な意味での公共性というのは全く相入れないということ。  もう一つは、憲法十二条、十三条に出てくる公共の福祉という文言は、あくまでも人権と人権とが衝突した場合の調整原理のことでありまして、人権のいわゆる内在的制約ですね。例えば、たとえ自由だといっても人殺しをする自由はありません、人間には。そういうことで、人権の内在的制約のことを公共の福祉というふうに呼んでいる。  したがいまして、人権を飛び越えたところにどこか超越的な公共の福祉というものを日本国憲法は想定しているわけでもありませんし、憲法学界の通説もそのように理解しておりますということで答えさせていただきます。
  183. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 指定公共機関に対する強制といいますか、事態対処措置に関する問題を私はこの委員会質問したんですけれども、法案では、武力攻撃事態法の法案では十五条に当たるんですが、ここでは、武力攻撃事態法でも突破できなかったといいますか、国民に対する強制、これを別の法律に定めるという形でくぐり抜けようとするんじゃないかなというふうに私は考えているんですが、十五条の仕組みというのは、要するに、事態対処措置、これを指定公共機関にやってくれと言うと。しかし、その指定された公共機関、例えば航空会社がそれ嫌だと言った場合、その場合には総理大臣がやりなさいということで指示することができると。指示しても、なおかつやらなかった場合はどうするかと。その場合には、総理大臣が直接自分でその事態対処措置をやるか、実施するか、あるいは所掌大臣に実施させると、こういうことができると、こうなっています。  そこで、そのときの説明では、総理大臣が実施するというのは、指定公共機関に、例えば航空会社にやらせる、あるいは航空会社の資材を使ってやるんだ、あるいは航空会社の労働者にそれやらせるということじゃありませんというお答えでした。したがって、今度の事態対処法では、少なくとも強制はできないし、総理大臣がやると言っても機材も何もなければ実施できないということになってしまう。そうなったときどうするのかということになりますと、これは別に作る法律で云々かんぬんするということになっております。結局、内閣府は、内閣府からの答弁では、総理が直接実施するということであって、強制はできません。防衛庁長官は、その強制も含めて別の法律で検討するという答弁でした。  そうなりますと、私は、結局、最初に申し上げましたように、武力攻撃事態法で突破できない国民の権利を、国民に対する強制、それを今度は別に法律を作ってやるということで、二重三重に国民の権利制限、基本的人権の制限あるいは権利制限ですね、それを実施しようとやるもので、二重三重の憲法破りじゃないかというふうに考えているんですけれども、石埼参考人、これ、憲法学者としてこの点についてどうお考えでしょうか。
  184. 石埼学

    参考人石埼学君) 御存じのとおり、指定公共機関というのは、憲法七十三条六条、に基づきまして政令で定められるものでありますから、ある程度、災害対策基本法で指定されている指定公共機関なんかを念頭に置けば大体分かると思います。  かなり広範囲に及ぶ可能性がある、公益性のある営利企業なども含まれる可能性もあるということで、そういう人々にもすべて強制が及ぶというような法律が作られるならば、それは非常に問題ですし、正に国民総動員法という法案になりかねないという点が一点と、その場合、果たして指定公共機関に指定された企業で働いている一人一人の労働者の思想、良心の自由等々が守られるのかどうかという点で非常に危惧を覚えます。ということでよろしいでしょうか。
  185. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 最後に一点、いろいろ伺いたいことあるんですけれども、先ほどの、立憲政治の解釈が何か逆立ちしているといったお話がありました。結局、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こらないようにという憲法前文のそこから来ているんだろうというふうに私は思うんですけれども、ただ、国民の生命と財産を守るのが政府の最大の責務だというこの言葉自身は、何も悪いことないし、当然のことなんですよね。  問題は、その守り方です。それを武力によって守るのか、あるいは憲法の命ずる平和原則でそれを実現していくのかということだと思うんですね、当然、後者でなければならないわけなんですけれども。この憲法の命ずる平和原則で実現していくということは、一体じゃ、どういうことを意味するのかということについて、時間の許す限り御意見をお聞かせください。
  186. 石埼学

    参考人石埼学君) 平和憲法に基づいて平和を守っていくということですけれども、基本的には、力による平和ではなくて、例えば国民単位ですらなくて、いろいろな世界じゅうの人々と結び付いていく。現に、例えば反戦運動なんかは既に世界的な結び付きを持っております。というような形で、こういう大きな国際的な戦争反対の世論が盛り上がっている現在こそ、諸国民の公正と信義に信頼して我が国の平和を維持していきたいという日本国憲法の理念が生かされる諸条件が整った時期は、時代は、日本国憲法ができて以来、今に至るまで、今に至って初めて現れてきたのではないかというふうに私は考えております。  ということで、力による平和ではない、別の道を探るということが必要かと思います。
  187. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 どうも参考人の方々、ありがとうございました。
  188. 平野達男

    平野達男君 国会改革連絡会(自由党)の平野達男でございます。  今日は、四人の参考人の皆様方、本当にどうもありがとうございます。  私は、石埼参考人からちょっと質問をしていきたいと思うんですが、先ほどの参考人のお話の中に、リスクに備えるというお話がございました。正に今回の有事法制はリスクに備えるという面が私も強いと思っているんですが、これは他方で、日本は戦争は絶対起こしてはいけないという、これは大原則が私もあると思っています。だからこそ平和憲法だというふうに言われておりますし、その戦争を起こさせないために最大限の努力を、外交あるいは経済協力、そういった形でふだんからやっておくと。  しかし、どうもその結果、それがすべてうまくいかない場合もある。その確率をとにかくできるだけ、有事が起こらないような確率を限りなく小さくするというのがふだんの我々の政治の役目だと思うんです。ところが、いったん起こりますと大変な被害が出る。確率の数字に被害を掛ければこれ期待値が出てくるわけですが、この期待値というのが無視し得ないほど大きいものではないかという、そういう見方を私なんかはしておるわけです。それに対して何も準備をしないという国家があるんだろうか。  これは憲法という流れから、解釈は別として、国のあるべき姿として、石埼参考人はそこに対してどのような考え方を持っておられますか。
  189. 石埼学

    参考人石埼学君) 御質問ありがとうございました。  おっしゃるとおり、何も備えをしていない国家というのは世界的にも非常に珍しく、その意味では日本の国家というのは普通の国家ではないというふうに思っているんですけれども。  何も準備しないということをなぜ日本国憲法が、何も準備していないというのは、いわゆる有事法制がないというのは正に日本国憲法があるからでありまして、それは、まず日本の国家においては最近のイラク攻撃への先ほども申しました協力を事実上してしまったというような形で、国家が、かつてもそうですし、やはり立憲政治の枠組みを超えて暴走する危険のある、正にそういう近代立憲主義、立憲政治がまだ定着していないのではないかと思わせるような国家であるからこそ、そういうリスクを回避して回避して回避して、最終的に、それでも攻撃された場合に対して準備することができないのであるというふうに考えております。ということでよろしいでしょうか。
  190. 平野達男

    平野達男君 いずれ、最後の最後の部分のところで、やっぱり準備をするのは国家じゃないかなというふうに私は強く思っておるところです。  そこで、小川参考人にお伺いしますが、先ほどの御説明の中で北方脅威論という話がございまして、実はこれ、小川参考人のこれは講演録にも出ておるんですが、司馬遼太郎の話を私も改めて思い出させていただきました。  司馬遼太郎さんは戦車隊の隊長だったんじゃないかと思うんですが、ずっと満州にいて、そのまま満州にいると日ソ不可侵条約を破ったソ連軍が来て自分はくし刺しになって満州の野でしかばねをさらしていたはずだと。しかし、その直前になって配属転換を命じられて、栃木県でしたか群馬県でしたかちょっと忘れましたが、そこに行って、何を備えるかといいますと、九十九里浜から米軍が上陸してくるということで、それに備えるんだということが任務でした。そのときに、九十九里浜に戦車が行ったときに住民が避難してくるじゃないかというときに、その住民をどうすればいいんでしょうかというのを聞いたら、上官は、踏みつぶせというふうに言って、その住民を守れない国家というのは一体なんだろうか、たしか、これで戦争、日本は負けるんじゃないかと暗たんたる気持ちになったというような、そういったエッセイ、回想があったと思います。  これがもう本当に太平洋戦争中の真ん中の話でありまして、昭和五十二年に、国道四十号線を南下してくる避難民の大群を想起せよという問題提起したけれども、何も対策をしなかった。それが今回初めて有事法制武力攻撃事態法という法律で出てきたわけですが、先ほどの参考人の中に、日本人の遺伝子の問題があるんじゃないかというお話もございましたけれども、私もそこの点に関しては若干共有するところがあります。  そういった流れの中で見て、今回の武力事態攻撃法、国民保護法制というのはまだできていないわけですが、参考人から見て、改めてその評価というものをちょっとお伺いしたいんですが。
  191. 小川和久

    参考人(小川和久君) 大変重要な御質問、ありがとうございました。  評価という点では、大枠としての評価は、冒頭に申し上げましたとおり、私は大きな一歩だというふうに高く評価しております。  ただ、本当に機能するものにしてくださいよというのが国会議員の皆さん方に対するお願いなんですね。その点からいいますと、先ほど冒頭に話をさせていただきましたような部分だけを取ってもまだまだ機能するとは言い難い面がある、そこのところを直していただきたいと思うわけであります。  ただ、私自身、やはりお隣に座っていらっしゃる石埼参考人と意識を言葉の上で共有する部分が実はあるんですね。憲法学者として大変優れた御見解をお述べになっていらっしゃいましたが、日本ではまだ立憲政治が定着していないとおっしゃいました。まさしく同感でございます。だからこそ、憲法改正がないわけであります。  憲法というものは、これは法律の頂点にあるんですが、最初に制定されたものがやはり理想を実現できる力を持つためには、絶えることなく改正という手続を続けていかなければあり得ない。ところが、日本憲法改正というと、何か軍国主義化するという議論ばかりで、なぜ憲法擁護という側からも憲法改正という問題提起がないのか。その中で本当にちょうちょうはっしとした国会議論が、論戦が行われ、本当に世界の平和を実現する能力を持った憲法になっていないのかという疑問があるわけであります。  そういったことも視野に入れながら、我々が自らの命をどうやって守ることができるのか、そして、本来憲法が理想として掲げている平和主義をどう実現するのか、あるいは基本的人権をどう守っていくのかの部分まで、世界に誇れるような法律や制度を作り上げていただきたいという考えでおります。  どうもありがとうございました。
  192. 平野達男

    平野達男君 どうもありがとうございました。  森本参考人にお伺いします。  森本参考人には私ども自由党の勉強会にも来ていただきまして、いろいろ今回の有事法制については細部にわたっていろいろお考えを聞かせていただいておりますが、今回の法律の中身についてちょっと具体的に一点お伺いしたいと思います。  いわゆる武力事態攻撃的の事態になったときに、今回の法律では武力攻撃事態対策本部というのが作られます。この武力事態対策本部というのは、指定公共機関あるいは地方公共団体、そういったものとの総合調整をするという対策本部です。これはどちらかというと目が国民の方に向いている。  片っ方で、武力事態攻撃法になりますと、これは有事ですから自衛隊が行動を始めます。自衛隊が行動するときに、自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣ですから、内閣総理大臣が指導監督権を発揮していろいろ、を行使していろいろ指図をするわけですが、これをサポートする側が多分安全保障会議だろうと思うんです。これはまだ、今のところまだ国会議論もうちょっと詰める必要があるんですが。  この有事に、武力攻撃事態法になったときに、この国民の側をよく注意しておく武力攻撃事態対策本部というのと、自衛隊の行動する、それをいろんなアドバイスする安全保障会議、これを二つ分かれて置くというのは、ちょっと運用上非常に私は問題が多いんじゃないかなというふうに思っておりまして、自衛隊の行動と住民の避難誘導、あるいはいろいろなマスコミとのいろんな調整、これはもう常にセットではないかというふうに思います。  今回、頭の部分、頭の部分というお話が先ほど来ずっとございましたけれども、この頭の部分というところが今回の法律の中でもう既に二つ割れているんじゃないかというような、そういう危惧をちょっと私は個人的に持っておるんですが、森本参考人はどのように考えておられるんでしょうか。
  193. 森本敏

    参考人(森本敏君) この武力攻撃事態法に言う対策本部というのは、私は、この法律全体は災害対策基本法をモデルにして、その法律の中身は、つまり有事における国の全体のシステム、在り方と、原理原則というんですか、方針、目的、目標というか、それと法整備のためのガイドライン、この二つが法律の中身になっているわけです。これはあくまでこの法律が災害対策基本法をモデルに作られたわけで、したがって、つまり災害の場合もそうですが、有事の場合も、対策本部が設けられて、そこで一貫した国の活動を総理大臣が指揮統制するという形になって法律ができているんだろうと思います。  このことの問題は、私は、幾つか細かい点があって、一つは、安全保障会議というのはあくまで安全保障会議設置法に言う会議なので、したがって常時安全保障会議というのが国の行政機関及び各地方公共団体を監督するという機能を果たすようにはそもそも作られていないものですから、したがって対策本部を基本にして国の全体の活動が一括して統制されるということになるんだろうと思います。  ただ、そうなるためには二つ、私は、問題というわけではありませんけれども、我々が注意しなければならないことは、一つは、今おっしゃったように総理大臣というのが言わば行政の長であり、閣議の長であり、そして安全保障会議の事実上の長であり、対策本部の長であり、自衛隊の最高指揮官であるという、このキャップというんでしょうか、がたくさん一人で持ち過ぎているものですから、それを全体としてどのように機能、有機的に機能するかという点については、相当組織をすっきりとしたものにしていないとなかなか全体が機能しないということが第一。  もう一つは、このような場合、対策本部ができ、かつ防衛庁というか、防衛庁には指揮所ができ、外務省には外務省でまた指揮所ができ、総務省には総務省の本部ができ、それぞれの役所に指揮所ができ、本部ができ、そういった、つまり指揮監督をする機関というものが言葉は良くないのですがやたらにたくさんできて、全体としてそれがすっきりとするのか、みんなそれぞれの情報を持ちたがり、それぞれが一つ一貫した総理大臣の指揮監督の下に統合されるためにはどうしたらよいのかということは一度シミュレーションをすれば一度に分かる話なので、私は国の指揮監督の機関というのが全体として、例えば何かシナリオを作ってシミュレーションをするとよいと思いますが、指揮監督の在り方というのは、私はこのまま放置するとなかなか難しいのではないかと思います。  もう一つは、実はアメリカとの関係だとか、それから国内だけではなく、例えば隣国、周辺国との関係とかあるいは国連本部との関係というのは相当きちっとしていないといけないんで、特に日米間についてはガイドラインに言う日米共同指揮所というのが設けられることになっていて、まだどこにも設けられていないと。しかし、実際には、合衆国軍隊との調整というのは非常に難しくて、かつ一番大事なものなわけですが、それをどこでやるのかということについてもまだはっきりしないわけです。この対策本部で、必ずしも合衆国軍隊、つまり米軍のリエゾンオフィサーが詰めるようにはこの法律はなっていないので、アメリカとの調整というのはどういうルートでやるのかということも今後の検討課題なのではないかと思います。  以上でございます。
  194. 平野達男

    平野達男君 どうもありがとうございました。  草野参考人にお伺いしますが、「おわりに(残された課題)」という中で、「パブリックコメントの必要性」、「国民保護法制の制定は透明性確保」ということでお話がございました。これは本当に非常に重要だと思います。  ただ、今回の法律の中で、これはひょっとしたら先ほど来どなたさんからも質問あったのかもしれませんが、今回の基本的人権につきましては、森本参考人から御指摘があるように、必要に応じて制限される旨の明記という、そういう制限されるよという規定ではなくて、制限されないように、できるだけ制限されないようにという規定になっています。ですが、やっぱり今回の場合は、有事という中において、国民の中にそれなりの覚悟と協力を求めるという観点からすれば、私は、先ほどの森本参考人指摘というのは全部、全面的に賛成するわけではないんですが、非常に重要な指摘じゃないかと思うんです。  このパブリックコメントをやるに当たっての基本的人権の位置付け、特に国側からどういった観点で説明すればいいというふうにお考えでしょうか。ちょっと抽象的な質問になったかもしれませんが。
  195. 草野厚

    参考人(草野厚君) 難しい質問でございまして、なかなか答えにくい感じがいたします。  ただ、これも、抽象的な御質問でございますから抽象的にお答えいたしますと、やはり世の中の、先ほどもどなたかに対するお答えでも述べましたけれども、透明性説明責任というのはあらゆる公共政策に共通した政府に対して求められている事柄だろうと思います。そういう意味で、やはりこういう手続はどうしても取らなければいけないというふうに思っているんですね。その場合に、どうやって公共の福祉を説明するかというこの観点に関しては、残念ながら、私、今のところ知恵がございません。  以上でございます。
  196. 平野達男

    平野達男君 小川参考人に今回の武力事態法からちょっと離れたお話をちょっとお伺いしたいんですが、著書の中で、湾岸戦争のときに、日本はイラクに対して非常に経済援助をやっていた国だから、もっともっとイラクに対して、経済制裁なりあるいはいろんな対話を通じて、すぐ部隊を撤収させるべきだというようなことで、もっともっと日本として果たす役割があったんじゃないかというようなことを書かれております。今回、隣に今、イランが今非常に注目を浴びております。アメリカが悪の枢軸として名指しした一番手がたしかイランではなかったかと思いまして、どうも最近の情報なんかによると濃縮ウランをどうも作っているらしいということで、これはどこまで本当だかよく分かりません。  イラクとイランを考えますと、日本にとってははるかにイランがその重要性、いろんな意味で関係が深くて、例えば原油なんかの輸入量はサウジアラビアに続いて二番目だった、私の記憶が正しければ二番目だったと思いますし、従来から非常にいろんな交流も盛んであります。その脈絡からいいますと、どうもイランに対しては、この間、アメリカとロシアが少しイランはちょっと危険だというような、そんなニュアンスでいろいろ話し合ったみたいですが、日本は今回、このイランに対してはどういった行動を取っていけばいいか、小川参考人、ちょっと意見をお伺いしたいんですが。
  197. 小川和久

    参考人(小川和久君) 自分の能力を超える御質問をいただきまして、どれぐらいお話ができるか自信がございません。  ただ、湾岸危機の段階でいいますと、日本は三つの点から最も外交的に有利な立場にあるということを税金の使い道を通じて自覚をして、湾岸危機の平和的な解決に向けて努力をすべきだと、そこで国益を追求すべきだということを書いたわけあります。その一つは、アメリカにとって最も重要な軍事的同盟国であり、アメリカは日本の言うことは相当聞くんですね。それから、国連に対して最大の経済的スポンサーであり、国連中心主義を掲げているから、やはりその面からも国連を機能させなきゃいけない立場である。同時に、当時のイラクが海外から、外国からもらっている経済援助の七三%は日本からのものであったし、民間のものは当時のレベルでいっても六千億円近く日本側の債権というものがあった。つまり、日本の援助というものは全部民生面に限られていて、軍事援助したわけじゃないけれども、間接的にイラクの軍事力増強を支えてしまったという責任を問われれば問われるような国である。だから、それを逆手に取って、サダム・フセイン大統領と話をし、クウェートからの撤兵というものを求めるというものも日本の平和主義を貫く上では重要であったかなという話を本に書いたわけであります。  ただ、イランにつきましては、アメリカやロシアがイランの政治的な影響力や危険性について危機感を抱いているのと同等の危機感を日本政府あるいは民間が抱いているとは思えないですね。やっぱりイランが危険な方向に行った場合にどれぐらい世界の大きな危機が生まれるか、またイランという国が、さっきおっしゃったようにエネルギーの面で日本とのかかわりがあったり、これまで友好関係もかなりあったわけであります。そういうところで、日本との国益の観点からどういうかかわりができるかということについて、まだまだアメリカ、ロシアと肩を並べてイランに対する外交をできるような話が整備されているかどうか、これは甚だ疑問である。それはやはり日本なりのイランに対する外交というものをきちっと組み立てて、国連との絡み、あるいは国際協調というものを考えてみるべき時点になっているんじゃないかなという感じがいたします。  ありがとうございました。
  198. 平野達男

    平野達男君 時間になりましたのでこれで、まだまだお聞きしたいことがあったんですが、また別の機会にお願いしたいと思います。  今日はどうもありがとうございました。
  199. 田英夫

    田英夫君 四人の参考人の皆さん、大変いいお話をありがとうございました。興味深く伺いました。いろいろな意味で驚きもありました。  一つは、私のような戦争体験者は、今の憲法が作られていく過程、またその原因になった戦争、このことを知っていたわけでありますから、つまり、日本は普通の国ではないということを日本国憲法は定めている、戦争をしない国なんだと自ら言わば覚悟を決めた、そしてそれは国際社会に対する信頼の上に決断をするんだ、こういうことを心に決めたはずなんですけれども、今やそれが多数の皆さんの中から崩れてきているということに一つの改めて驚きを感じます。それでいいのかなと、反省のような気持ちもないわけじゃありませんけれども、しかし死ぬ覚悟をして生き残ったという立場からすると、これは容易に変えるわけにはいかない、こう思っているだけに、驚きでもあります。  そこで、具体的な問題として一つ石埼さんが言われた戦争モードのことですね。戦争という雰囲気になっていっちゃうんじゃないか。これは私は、今度のこの有事法制というものが果たす一つの目に見えないといいますか、隠れた危ない役割になるんじゃないかなと。この有事法制を作って準備をしていくのは当たり前じゃないかと三人の参考人は言われました。それは分からないではありませんけれども、それを作って冷蔵庫に入れておくとか神棚に上げちまうとかいうことならこれはまた分からないではないんですが、そうではなくて、これが歩き出すことによって戦争という雰囲気が国民の皆さんの間にできてくる。その過程を昭和の初め、私の場合は小学生ぐらいからですから、まだ幼いことですけれども、例えば二・二六事件なんというのも小学校六年生で、身近にいわゆる反乱軍が蜂起しているさまを学校に行く途中で見た経験があります。  そういう中で、次第次第に国民総動員法ができていく、戦争が激しくなってくる、そういうことを体験しておりますと、これがその役割を果たすんじゃないかという心配をいたしますが、もう皆さんにお答えいただくほど時間を私は持っていないものですから、草野参考人からその点をお願いします。
  200. 草野厚

    参考人(草野厚君) お答えを申し上げます。  大変に重要な御指摘だと思いますし、実は田さんがTBS時代にニュースでお顔を、そしてまた議論を随分聞かせていただきました。  ただ、こんなふうな感想を率直に申し上げたいと思います。  一九四五年に日本は敗戦という形で第二次世界大戦を終えたわけですけれども、その言ってみれば戦争の責任を五十五年以上過ぎた今日まで日本の後代の者が責任を負わなければいけないんだろうかという思いがしてなりません。そして、国家総動員法が制定される過程だというふうに、それになぞらえてお話をされましたけれども、現在の国際状況あるいは国内の状況を考えたときに、同じような状況でございましょうか。言論も保障されておりますし、反戦運動も自由にできるという状況でございますから、私は、御危惧それから御懸念というのは非常に分かりますけれども、この有事法制というのが、本来国民の財産と生命を守るという、こういう目的から憲法の枠内でできているというところを私は評価をしたいというふうに思っておりますし、もちろん今日の議論にありましたように、基本法を含めてもう少しきちんとした法整備にしなければいけないし、それから何度も申し上げましたけれども、国民的な合意を作り上げるために透明性確保しなければいけないという、こういうことを申し上げましたので、お分かりいただければなというふうに思っております。  以上でございます。
  201. 田英夫

    田英夫君 同じことを石埼さんに伺いたいんですけれども、この法律ができ上がって独り歩きし出すと、これは棚に上がっていなくて歩いていますから、戦争のモードが発生するんじゃないかという点はいかがでしょう。
  202. 石埼学

    参考人石埼学君) 恐らく、田委員と同じ考え方、私持っておりますということなんですけれども、僕自身は戦争を経験していませんので、一体、果たしてかつての戦争、侵略戦争に日本がのめり込んでいったときもこのように何事もなかったかのように進んでいったのではないかというふうに非常に怖い思いをして日々暮らしております。  それで、戦争に進むのではないかというような形ですけれども、やはり先ほど申しましたように、アメリカの後方支援という形で実際に、一応政府説明では武力行使とは一体化していないということになっておりますけれども、戦争に協力するようなことを既に行っておりますし、インド洋に行った日本の自衛艦がアメリカの現に戦争している艦船に燃料を補給したというのは、現に日本が参戦しているということにほかならないわけであります。  戦後責任というのを私も実は痛感していまして、ちょっと長くなって恐縮なんですけれども、実は私のような者が、直接戦争を知らない者が何で戦後責任を負わなくちゃいけないのかということをずっと私、実は疑問に思っていたんですけれども、酒井直樹さんという歴史学者が連累という言葉を使っているんですけれども、連なるに田んぼの田に糸と書く累ですけれども、連累ということを言っているんですけれども、簡単に申しますと、かつて本島等長崎市長がその銃弾に倒れたときに、私を撃った銃弾は、かつての侵略戦争のときの軍国主義教育が日本人のメンタリティーというものをゆがめてしまったんだ、軍国主義教育が十年にわたって、あるいはそれ以上にわたって続いたことによって、日本人自身が平和な感情だとかそういうものを、平和的要素というのを人間の中から失ってしまった、いろいろな感性を奪ってしまった、それがその本島等元長崎市長に対する銃弾として現れたんだということを言っております。  その意味で、かつての軍国主義教育のゆえに、十年間か、それ以上にわたって、憲法学者もその間、切断、断絶しております。そういういったんいろいろな感性だとか文化とか、そういうものが切断してしまった、それがまだいえていないであろうし、またそこに新たに最近こういう問題が起こってきていると、非常に危惧しております。  長くなって申し訳ありません。
  203. 田英夫

    田英夫君 もう一つ、これはもう皆さんも触れられましたが、人権の問題というのがやはり今度の修正の結果、クローズアップされた問題ですけれども、戦争のときに人権を守ることができるかと。  これはもうできないということを私自身も体験をしております。特攻隊に志願する者はあしたの朝までに言ってこいと言われて、一晩寝ずに考えた結果、私は、志願しなかった非国民、ひきょう者と言われる部類に入った経験があります。その悔しさといいますか、同時に、志願すりゃ死ぬんだと、事実、そのとき志願した者はみんな死んだんですけれども。そういうことを考えますと、戦争というものは人権なんてものはもうどこかに行ってしまうということを具体的に如実に体験をいたしました。  しかし、今度修正をしようと言われた党の皆さんの考えは分からないじゃありませんよ。何とかそういうものを今度できるなら法律の中に入れておこうと。実際問題として、これは小川さんに伺いますけれども、そういうことは法律に入れた方がやっぱりよかったと思われますか。さっきちょっとそういう意味のことを言っておられるんですが、それはどういう意味ですか。
  204. 小川和久

    参考人(小川和久君) 御質問ありがとうございます。  私は、先ほど申し上げたのは緊急事態、これは戦争のような事態だけではなくて、大災害、大事故においてもそうですが、これはそこにかかわる地域というのはパニック状態になります。大混乱を起こします。そこにおいて人権がじゅうりんされたり侵害されるということは大いにあり得ると、無意識のうちにでも。だから、くどくても人権の尊重というのは触れた方がいいという意味で申し上げたわけであります。  ただ、私は人権という言葉を聞きますとちょっと鳥肌が立つんですね。というのは、日本人は人権ということを語るだけ人権についてきちんとした議論をしてきたんだろうかと、自分も含めてですよ、思うんです。  例えば、私は危機管理でテロ対策なんかちょうどやっておりますが、例えば西鉄バスのバスジャック事件のとき、あれは世界のどこに出ていっても、体制の違いを超えて、事件発生から三時間で解決しなきゃいけないケースであった。それは、犯人のタイプが話合いに応じないタイプ、人質に手を掛けて殺すタイプだったから、一刻も早くあの犯人の動きを止めて事件を処理しなければ、人質の人命、つまり人権がじゅうりんされるケースでしょう。ところが、日本では議論されていないものだから、あの犯人の少年を狙撃をするという選択ができないわけですよ。そこにおいて人質の人権というのはもう完全に踏みにじられている。  あの場合は、加害者の人権と被害者の人権をとことん擁護するというのは民主主義社会の宿命だけれども、これはあの場合、人質の人権とそれから犯人の人権と同列に議論するというのは、議論が整理されていない国のやることですよね。だから、やっぱり人権というものについて、もっといろんなところでいろんな出来事を通じて考えて議論をする中で初めて、こういった緊急事態における人権の尊重ということが可能になるだろうと。だから、くどいほどやっぱり入れておいた方がいいというのが私の考えでございます。  ありがとうございました。
  205. 田英夫

    田英夫君 今、率直に言えば、北朝鮮のことが、それぞれのお立場からも、私もそうですが、心配ですね。  よく北朝鮮が暴発するんじゃないかと、こういうことを言われます。あの指導者の性格からして、やり方からして、そう言われる部分理解できないじゃありませんけれども、私は、というならば、もっと具体的に心配なのは、ブッシュ大統領のアメリカがあのイラク戦争に突っ込んでいったあのやり方、論理、そのやり方で今は北朝鮮とは平和的に話合いでいくと言っておりますけれども、しかし、軍事的な制裁を選択肢の中に残していることも事実です。言わば、そういう意味のアメリカの暴発といいましょうか暴走といいましょうか、そういうものがあり得ると考えておかなければいけないんじゃないかということは心配ですね。  それをも、それも抑えて、日本は戦争しない国ですということを貫かなくちゃいけない。今危険なのは、そのアメリカのブッシュ大統領のやり方というものを北朝鮮に適用させないということを日本外交の中でやっていかなくちゃいけないというところに来ているんじゃないかと思いますが、これは森本さんに伺いたいと思います。
  206. 森本敏

    参考人(森本敏君) 私は安全保障の仕事をしているんですが、今、田先生の御説明とは全く違うことを私は考えていまして、確かに、アメリカがあらゆるオプションをオープンにしている、閉じていないということは確かだと思います。それが北朝鮮に対する非常に重要な抑制要因になっているとも思います。  アメリカは先生がおっしゃるような暴発を北朝鮮にするとは私は思いませんが、そしてそのことはまだ考えていないと思いますが、つまりそういうことをしないと言ってしまった段階で、北朝鮮に対する基本的な、言わば日米で約束したいわゆる圧力というてこを失うということだと思います。常にあらゆるオプションがあるということが、北朝鮮に対する最も有効な働き掛けなんだろうと思います。その理由は、北朝鮮がそれを恐れているからだと思います。もし恐れていなかったら、何を言われようが、どういうオプションがあろうが恐れてはいないんですけれども、実はそれを一番恐れている、恐れているということを知っているからこちらが道を開けている、それが最も有効なんだろうと思います。  したがって、この問題は、北朝鮮が自分たちの体制をどう考えているかということに懸かっていると私は思います。自らがつまり国際社会の懸念を払拭をして安定して周りに脅威を与えないような国になって生存を図るか、あるいは自らが周りを脅かしても体制生き残りの手段を自ら確保して生き残るかという、この二つに一つしか方法はないと思います。  したがって、先生のお言葉だと、有事法制が戦争に、何といいますか、の引き金になるかのごとき印象を私は受けますが、それでは我々の周りの環境はどのような状態なのかというと、むしろ我々はこの半世紀の間の中で最もリスクの高いといいますか、危険が非常に高いという環境の中に身を置いているわけで、いかなるリスク、いかなる危険があっても国民の安全を守るということはこれは国及び政府の最も重要な責任であって、そのための法整備をするというのは言わば国の立場からいえば最低限、最小限の責任を果たそうとしているわけであって、私は、こういう法体系、法整備というものが戦争にこれから入っていくとか巻き込まれるとかということとは全然私は違うし、それは過去百年ぐらいの日本の置かれた客観的な国際環境の中で同様に論じるような状況には僕はないんではないかと思います。  戦後、日本が五十年間、ここまで安定し繁栄し我々は豊かな生活を享受できているのは、私は、平和憲法があるからではなく、日本がアメリカという国と同盟を結んで今日まで防衛力を持って努力してきた結果であって、単に平和憲法を神棚に置いてずっと拝んで今日まで安定と繁栄を維持してきたかと、私はそうではないと思います。  このようなアメリカという、まあ、いろいろな問題はあるかもしれませんが、地域の安定にとって非常に重要な役割を果たす国と同盟関係を堅持するということが今後に、今後、恐らく日本の将来の安定と繁栄にとって引き続き重要な役割を果たしているんだろうと思います。その点について、多くの国民が共感しているから、今日、日米安全保障体制や日本防衛力に対して七割以上の国民が支持をしているということなのではないかと考えます。  以上でございます。
  207. 田英夫

    田英夫君 率直に言えば、戦争というのは国家の名において人間が人間を殺すことなんですね。それはもう如実に体験をいたしました。だから、人類というのはよっぽどばかな生物だと私は思っているんですよ。それをもうこの人類の歴史以来、ずっとそれを続けてきた。  そして、重光さん、幣原さんの言葉、前にも引用したんですけれども、あの戦争の体験、特に原子爆弾の体験の中から、我々はもう二度と戦争をしてはならないと思う。だから、ここでそれを憲法に入れるんだと、マッカーサーのところへ行ってそのことも表明をされたということが、マッカーサー自身の上院の証言で残っておりますね。  このことを私は、やはり日本の皆さんがもっともっと、戦争を知らない世代の皆さんも大事にしていただきたい。広島、長崎のあの悲惨な体験、幸いにして人類はまだ我々日本人だけが体験しているんですが、このことも大事にしていただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  208. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言お礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十二分散会